1: 2008/12/29(月) 00:37:34.07 ID:Aa6r3ucR0
ハルヒが自分の事を私と言っているのは仕様です。

2: 2008/12/29(月) 00:38:15.38 ID:Aa6r3ucR0

「好きだ。」

男は私の唇を奪った。

今まで何人もの男が私に愛の言葉を押し付けた。
メール、手紙、人伝い。
方法は違えど彼らは皆一様に、何かを通し私を試した。
だが誰一人として私を正面から試すものはいなかった。
私は彼らの誘いを受け入れた。そして彼らを捨ててきた。ゴミを道端に捨て去るように。
流石に私だって、彼らが可愛そうだと思うときがある。
でも、私の瞳のファインダーは曇り曇って灰色がかり、彼らの存在は周りの背景と同化する。
ただの人間には興味ありません。
私が一番普通の人間だってのは、疾の昔に分かっていた。

3: 2008/12/29(月) 00:38:43.19 ID:Aa6r3ucR0
私達はこの冬、雪山で合宿をしていた。
全てを多い尽くす白に、私達は心弾ませ、たくさんの思い出を作るはずだった。
合宿最終日。事件はその日、起こった。

5: 2008/12/29(月) 00:39:15.65 ID:Aa6r3ucR0
「じゃあ、行って来る。」
分厚いスキーウエアを身にまとったあいつはドアノブに手をかけた。
私はあいつの背中が小さくなるのを確認すると、大急ぎで鞄にしまってあった編みかけのセーターを取り出した。
このセーターは特別製だ。
徹夜もした。編み方も習った。毛糸選びにすら、あいつに似合う色をと時間をかけた。
それもこれも今日のため。
私は小さく息を吸い込むと、指先に気持ちを込め一縫い一縫い丁寧に編んでいった。

6: 2008/12/29(月) 00:39:42.24 ID:Aa6r3ucR0
よし、できた。
完璧だ。
その出来栄えは我ながら賞賛に価する。誰にも文句は言わせない。もちろんあいつにも。
私は出来たばかりのセーターを袋に納め、あいつの帰りを待った。
しかし、いくら待ってもあいつは帰ってこなかった。
息を切らせながら部屋に入ってきた男は、私には到底理解できないような事を私達に告げた。

7: 2008/12/29(月) 00:40:03.47 ID:Aa6r3ucR0
あいつが雪崩に巻き込まれたのだそうだ。
一緒に滑っていた男は自力で雪から這い出たものの、まだあいつは厚い雪の下に埋まったままらしい。
外気との温度差で曇った窓ガラスが、風に煽られガタガタと音を立てるのを私は立ち尽くしたまま聞いていた。

すぐに警察が来て大掛かりな捜索が始まった。だが、あいつの姿は一向に見つからないままだった。
あいつの両親も到着した。
ただ祈る事しか出来ない私達は、警察やあいつの両親に言われるがまま、帰路へ着いた。

9: 2008/12/29(月) 00:40:20.15 ID:Aa6r3ucR0
帰りの電車の中、
「彼がいないとはどういうことですか、長門さん。」
「言葉の通り。彼はいない。」

私にはその言葉の意味が分からなかった。
意味を追求できないほどに私の心は疲弊していた。

12: 2008/12/29(月) 00:42:47.90 ID:Aa6r3ucR0
新学期。長かった休みを終え、多くの生徒が長い坂を登る。
口々に休みの出来事や休み明けテストへの愚痴。
明らかに私の周りの空気とは一線引いた会話ばかり。
私は重い両足を引きずりながら教室へと向かった。

13: 2008/12/29(月) 00:43:07.90 ID:Aa6r3ucR0
何度も何度も立ち止まり、教室についた頃にはすでに始業のベル直前になっていた。
ドアに何度も手をかけるが、中々言う事を聞いてはくれない。
もし、前の席にあいつがいなかったら・・・。
スピーカーから流れるチャイムの音に背中を押され、私は教室へと踏み入れた。

14: 2008/12/29(月) 00:43:24.87 ID:Aa6r3ucR0
私を出迎えたのは二つの空席だった。
どこからか吹きつけた風が私の髪を撫ぜる。
その風は私の体内へと入り込み、心の最も奥へと吹き付ける。
鳥肌と共に私を襲う絶望感。
クラスメイトの笑い声とチャイムの無機質な音が私の頭をループし続けた。

15: 2008/12/29(月) 00:43:42.29 ID:Aa6r3ucR0
担任が入ってきた。
担任はざわついたクラスを沈めると、真剣な面持ちで真っ直ぐ前を見据えた。
小さく深呼吸をし、硬くこぶしを握り締めると私達に語りかけた。
"行方不明"
この言葉が私の頭上を捉え、重く圧し掛かった。
その後の事はよく覚えていない。
私は半狂乱で担任の胸倉を掴みかかったらしい。
詳しい状況を知らされていないクラスメイトからすれば私の行動は理解できないものだったかもしれない。
ただ私達はあいつが行方不明になった状況を知っている。
そして未だに行方不明だということがどういう事なのかも。
窓の外ではいつの間にかちらちらと雪が降っていた。
そして、その雪振り払うかのように飛行機雲が天へ天へとどこまでも昇り続けていた。

17: 2008/12/29(月) 00:48:31.97 ID:Aa6r3ucR0
私からすればあいつは何ら他の男と変わりはなかった。
いや、むしろあいつ程普通な人間はいなかっただろう。
The普通。私の求める人材からは遠くかけ離れた男だ。
だが、何故だろう。あいつは背景にはならなかった。
いつもは曇ったファインダーも、なぜかあいつを見るときだけ妙にピントが合う様だ。
今思えばあの普通さが、私の興味を誘ったのかもしれない。
兎にも角にも、あいつは私の特別な存在だった。
今更思い出した所でどうなる訳ではない。ただ、私の心に詰まったこの思いは、
やがて私の心を狂わすだろう、そんな気がした。

18: 2008/12/29(月) 00:48:48.05 ID:Aa6r3ucR0
部室へ向かう足取りも重い。
二人で作ったSOS団。私がここに向かう理由も潰えた今、私を動かすものはなんなのだろう。
ただ安心が欲しいから?
疑問は膨らむだけ膨らんで、割れる前に私の肩に降り積もった。

19: 2008/12/29(月) 00:49:04.96 ID:Aa6r3ucR0
部室の前に立つ。
気が進まず、何度も帰ろうとしたが私はドアを開ける決心をした。

「そんな・・・。」

20: 2008/12/29(月) 00:49:20.87 ID:Aa6r3ucR0
声と共に小さなすすり泣きが部屋の中から聞こえる。
女の子の泣き声。
私は小さくドアを開けた。
そこには震えながら嗚咽交じりで泣いている女の子がいた。
そしてその横に、あいつがいた。
紛れもない。間違えようがない。

「よう。」

そこには、あいつがいた。

25: 2008/12/29(月) 00:59:45.86 ID:Aa6r3ucR0
なぜ?どうして?疑問がどこからともなく湧き上がる。
ただどの疑問の答えも、この目に映る真実だけが答えのようだ。
寒さで冷え切った指先を温めたのは、点いたばかりの電気ストーブの熱だけではないだろう。

26: 2008/12/29(月) 01:00:02.05 ID:Aa6r3ucR0
あいつはまるで何事も無かったかのような態度だった。
周りはこんなに心配していたのに、こいつは・・・。
でも今はそんな事どうだっていい。こいつが生きて、無事で帰ってきたのだから。

28: 2008/12/29(月) 01:00:32.09 ID:Aa6r3ucR0
「ハルヒ、今から少しいいか?行きたいところがあるんだ。」

「何よ、急に。それより家族にはちゃんと知らせてあるの?」

「いいんだよ。そんなことより行こうぜ。時間がもったいない。」

「え?・・・。まあいいわ。じゃあ古泉君達も―――」
あいつは私の腕を掴み、強引に引っ張った。

「わりいな古泉、長門、そして朝比奈さん。俺、こいつに少し話があるんだ。」

「了解しました。」
「・・・。」
「・・・・はい・・・。」

「よし、決まりだ。行くぞ、ハルヒ。」

「え、ちょ、ちょっと。」

「またな。」

あいつは小さく微笑み、三人に別れを告げた。
閉めたドアの隙間から漏れ出した泣き声に私は気付いていなかった。

29: 2008/12/29(月) 01:02:15.95 ID:Aa6r3ucR0
すいません、ちょっとはずします。
すぐ帰ってこれるとは思います
落ちてたらまた立てます

34: 2008/12/29(月) 01:19:46.69 ID:Aa6r3ucR0
行き先も告げられぬまま、私達は今にも泣き出しそうな曇り空の下を歩いた。
私の目の前にはあいつの背中がある。
団長である私が、雑用の背中を見ながら歩くなんて屈辱的だが・・・悪くなかった。
上下する背中は男らしい立派な背中だった。だがどこか切なげで、悲しさが滲み出ているようでもあった。
不意に歩みが止まる。
あいつは振り返り私をベンチへと誘った。
少し高台の公園。周りに人は見当たらず、静寂だけが私達を包み込んでいた。
真っ黒なキャンパスの上に無数に散らばった白のインクが私達を優しく照らし出す。
二人、無言のまま時間はゆっくりと流れた。

35: 2008/12/29(月) 01:20:08.07 ID:Aa6r3ucR0

「なあ、ハルヒ」

こいつの切り出しはいつもこうだ。

「俺はさ、お前に会えてよかったよ。」

意外な言葉に驚いた。言葉の真意は分からない。
でもいつも鈍いこいつの口からこんな言葉がでるなんて想像もしなかった。

36: 2008/12/29(月) 01:20:24.36 ID:Aa6r3ucR0

「最初はさ、めんどくせえやつにからまれたーとか、俺の高校生活はどうなるんだーとか思ってたんだ。」
「けどさ、今はSOS団の団員になれて、お前の仲間になれてよかったと思ってる。」
「だってそうだろ?こんな面白い連中、地球上、いや宇宙のすみずみまで探しても見つかりやしねーよ。」
「俺はほんとに、本当にお前達に会えてよかった。」

37: 2008/12/29(月) 01:20:45.34 ID:Aa6r3ucR0
何の脈絡もない言葉。
だがその言葉には本心と暖かさが詰まっていた。
私は目頭が熱くなるのを感じ、あいつに背を向けた。

「あと一つ、お前に言っとかなきゃならんことがある。」

声は私のすぐ後ろから聞こえた。
驚いて振り返る私。

「好きだ。」

私は唇を奪われた。

38: 2008/12/29(月) 01:21:07.28 ID:Aa6r3ucR0
慌てて私の前に立ちはだかる男を突き飛ばす。

「ちょ、ちょっと!何してんのよ、あんた!」

「ははっ、わりい。我慢できなかった。んじゃ、改めて言うわ。」


「ハルヒ、俺はお前が好きだ。」


39: 2008/12/29(月) 01:21:23.27 ID:Aa6r3ucR0
大きな世界の小さな舞台に上がった主人公とヒロイン。
観客も共演者も、監督もいない。
世界は彼らのためにあり、世界は彼らの中にあった。
二人の間にもう言葉はいらなかった。
私はもう一度あいつと唇を重ねた。
そして"馬鹿、キョン"私はあいつにそう言ってやった。

41: 2008/12/29(月) 01:24:05.84 ID:Aa6r3ucR0

「それで?」

「それでって何よ。」

「返事だよ、返事。俺はお前の事が好きだ。お前はどうなんだ?」

私は俯き、何も言わずに首を縦に振った。

「そっか。じゃ、俺は晴れてお前の彼氏って訳だ。」

彼氏という単語に少しくすぐったさを感じながらも私はあいつの言葉を否定しようとはしない。
ほんと・・・卑怯だ。

42: 2008/12/29(月) 01:24:26.91 ID:Aa6r3ucR0
「それじゃ、お前の彼氏からのお願いだ。聞いてくれ。」

「これからどんな事があっても、お前は前だけ向いて生きていってくれ。」

「この世界はお前からしちゃー少し退屈かもしれない。けどさ、今日までの高校生活を思い出してみてくれ、どうだ?」

「普通の高校生活もそう悪くはないだろ。俺はお前にそんな喜びも知って欲しいんだ。」

「だからさ、   お前はずっと前だけ向いて生きていってくれ。」

言い終えたあいつの頬を冷たい雫が伝った。

43: 2008/12/29(月) 01:24:45.78 ID:Aa6r3ucR0
ぽた、ぽた

空は彼の感情を映し出すように幾千の雨粒を少しずつ少しずつ地表へ落とした。

「雨か・・・。よし、帰るぞ、ハルヒ。」

あいつは立ち上がり、一歩踏み出そうとする。

「待って。」

私の冷え切った指は彼を捕まえていた。
私は自分の鞄から小さな袋を取り出し、強引にあいつに突きつける。

44: 2008/12/29(月) 01:25:19.80 ID:Aa6r3ucR0
「これ、あげるわよ。」

驚いた表情を見せるあいつにしてやったりと思う私。

「なんだ一体・・・セーター?これ、お前が作ったのか?」

「ありがたく思いなさい。」

私の心臓は今にもはちきれそうなくらい激しく鼓動した。

「ははっ、わりいな。そうだ、着てみていいか?」

「どうぞご勝手に。」

投げやりに答えながらも、緊張で両手が少し汗ばんでいるのが自分でも分かる。

46: 2008/12/29(月) 01:26:22.09 ID:Aa6r3ucR0
「よし・・・どうだ?似合うか?」

「まあまあじゃない?」

「そうか、そうか。」

あいつはサンタからのプレゼントを親に嬉しそうに見せる子供ような顔で笑った。
私の緊張もいっきにとけ、汗ばんだ手をスカートで拭った。
あいつはそんな事に気づくはずも無く、能天気な顔で

「温かいよ。」

なんて。でも、私はそんなあいつが好きだ。
私はあいつの腕を後ろから取り、腕を絡めた。
あいつはそれを嫌がらず、顔を傾け完全に預ける形となった私の体を優しく支えた。
今日からこいつは私の彼氏になった。また新しい世界がやってくる。
私の心は雨の落ちる音に合わせて弾むように踊った。


この世界が偽者だとも知らずに。

47: 2008/12/29(月) 01:28:13.42 ID:Aa6r3ucR0
次の日。
教室のドアを開けた私の目に飛び込んできたのは昨日と同じ二つの空席。
今日は休みかな・・・。
私はあいつが明日には元気な顔を見せてくれる事に何の疑いも持っていなかった。
担任が入ってくる。昨日と同じ険しい顔をしていた。
私は担任にあいつの事を聞いた。

「後で職員室に来い。」

帰ってきた答えはこうだった。
なんだろう。
私の疑問は狂気の答えに変化した。

48: 2008/12/29(月) 01:28:31.83 ID:Aa6r3ucR0
今日、あいつの遺体が見つかった。
分厚い雪の下で何日も過ごした氏体はビックリするほど綺麗だったそうだ。
まるでさっきまで生きていたかのように。
そして明日、葬式があるそうだ。
みんなには帰りのHRで打ち明けるらしい。
私はトイレに駆け込むと何度も何度も吐いた。
私は体内の物が出て行く事を拒もうとはしなかった。

49: 2008/12/29(月) 01:28:54.09 ID:Aa6r3ucR0
放課後。
私はふらつく足をどうにか動かし、部室へ向かった。
ドアを開けると三つの顔が目に飛び込んできた。
暗い顔、泣き顔、無表情。
でもあいつの顔はそこにはなかった。

昨日、あいつここにいたわよね?

私は三つの顔に聞いた。
三つの顔の三つの口はどれ一つとして動く事をしない。
私は泣き顔に掴みかかった。

50: 2008/12/29(月) 01:29:30.64 ID:Aa6r3ucR0
昨日、あいつここにいたわよね

「涼宮さん!涼宮さん、僕達は昨日"誰にも"会っていません。そう、誰にも・・・。」

暗い顔は珍しく怒鳴った。
しかし震える暗い顔の目からは涙が流れ、泣き顔が二つになった。
私は何もかもが信じられなくなった。そして泣き顔が三つになった。
目映く輝く世界とは何と儚いものなのだろう。
笑い声が飛び交ったこの部屋も、今では嗚咽だけが部屋を支配した。


60: 2008/12/29(月) 02:15:07.76 ID:Aa6r3ucR0
人が氏ぬ。
頭で分かっていても、心はそう簡単に受け入れてはくれない。
あいつはまだどこかで生きてるんじゃないか。
そんな思いが心の隅の隅で私の事を見ている。

61: 2008/12/29(月) 02:15:25.09 ID:Aa6r3ucR0
次の日。
私は眠れぬ夜を過ごし、あいつのお葬式に参列した。
やってくるあいつとの対面。
受け入れたくない現実が、私の前にどっしりと横たわっていた。
さっきまで私を見ていたやつも綺麗さっぱりいなくなっていた。
私は腰が抜けてしまいその場に座り込んだ。
泣いた。ないて ナイテ 泣いた。
あいつが何をしたというのだろう。
もし氏に値する事をしたというのなら、私が一緒に罪を償おうじゃないか。
駄目というならいっそ私がその罪を被ろう。
これじゃあまりに急すぎる。
お別れだって言えなかった。
チャンスはあった。でも・・・言えなかった。
もしこの世に神が居るのだとしたら、あなたの望みは何ですか。
私の生涯をかけてもまだたりないものですか。
それなら何故あなたは私とあいつを出会わせたのですか。
何故私の瞳のファインダーを曇らせてはくれなかったのですか。
こんなことなら、最初から無かった方がよかった・・・。
あいつとの思い出を思い返せば思い返すほど失う物の大きさと辛さが私の心に噛み付いた。

62: 2008/12/29(月) 02:15:41.08 ID:Aa6r3ucR0
そして最後のお別れ。
あいつの棺桶に皆が花や遺品を手向ける。
私も一輪の花を手に持ち、一歩一歩近づいた。
私は手に持っていた花を落とし、口に手を押し付けた。
彼の頭の横にはセーターが入れられていた。
私が編んだセーターが。
目を大きく見開き驚く私に、彼の母らしき女性が近づいてきた。

65: 2008/12/29(月) 02:16:03.41 ID:Aa6r3ucR0
「あっちが寒いといけないから入れたのよ。このセーター、最期にあの子が着てたの。」

「発見された時ね、このセーター、まだ温かかったの。不思議でしょ?」

「誰のプレゼントかしらね。フフッ、彼女でもいたのかしら?最近あの子、とても楽しそうだったから・・・。」

女性の顔は涙でくしゃくしゃになり、見ているだけで心が締め付けられた。

「ねえ、起きなさいよ。」

私は白装束の襟元を掴んだ。

66: 2008/12/29(月) 02:16:32.14 ID:Aa6r3ucR0
ねえ、起きなさいって言ってんでしょ。これは団長命令よ。
ねえ、ねえってば・・・。
起きなさいよ、まだやる事がたくさんあるでしょ?
まだ手だって繋いでないじゃない。
買い物にだって行ってない。
キスだってまだまだしたいよ・・・。

私は周りを憚らずに泣き叫んだ。

67: 2008/12/29(月) 02:16:49.28 ID:Aa6r3ucR0
何なのよ、起きてよ・・・もっとキスしたいよ・・・
もっと一緒にいたいよ・・・
もっとあんたのそばで笑ってたいよ・・・
お願いだから・・・起きてよ・・・

68: 2008/12/29(月) 02:17:08.57 ID:Aa6r3ucR0
ふっと体の力が抜けて私は天井を見上げた。
溜まっていく涙に、霞んでいく天井。
私は届きもしない天井を何度も何度も必氏に掴もうとした。

71: 2008/12/29(月) 02:18:33.51 ID:Aa6r3ucR0
空けた方がいいっすか?
じゃ30分まで空けます
すいません

72: 2008/12/29(月) 02:19:38.99 ID:Aa6r3ucR0
式が終わり、私はあの部屋にやってきた。
流石にあいつが焼かれるのを待っていることはできなかった。
グラウンドでは運動部員が声を張り上げながら練習に精を出している。
人一人いなくなったって、変わらないところは何一つ変わらない。
私は窓から身を乗り出し、空を見上げた。
澄み渡った青だけの世界にどこか懐かしさを感じる。

「馬鹿ヤロー!!」

私は叫んだ。
神様に、私に、そしてあいつに。

73: 2008/12/29(月) 02:19:54.61 ID:Aa6r3ucR0
「おい、ハルヒ。」

あいつの声。慌てて振り返る。
だがそこには誰もいなかった。
私はまた空を見上げた。
零れそうな涙を必氏に堪えた。
そうだ、私は前だけ向いていればいいんだ。
過去はあいつが振り返ってくれるから。
私はただ、前だけ向いていなきゃいけないんだ。
あいつとの約束、守らなきゃ・・・。

風があいつに伝えてくれるよう、私は小さく呟いた。

「待ってなさい、・・・キョン。」

74: 2008/12/29(月) 02:20:13.10 ID:Aa6r3ucR0






おしまい。

75: 2008/12/29(月) 02:20:29.18 ID:Aa6r3ucR0
読んでくれてありがと。
質問とか指摘とかあったら書いてください。
感想とかも書いてくれると嬉しいです。
それではありがとうございました。

82: 2008/12/29(月) 02:32:19.33 ID:mnsInavmO
おもしろかったよ~ 
乙でした

85: 2008/12/29(月) 04:08:17.65 ID:Aa6r3ucR0
質問ないようなので寝ます。おやすみなさい

引用: 涼宮ハルヒの再会