1: 2013/10/01(火) 20:00:51.65 ID:mnm6tqPI0
■黄昏の間 ─────

カツ、カツ、カツ……

神官「……陛下、御遺体が到着いたしました」

シャルル「……いーむゎあぁ、クウゥロヴィスとおぉ……」
      「はぁぁなしておっとぅぁとぉおころぉどぅわぁ……」

神官「…………えっ?」
   (きっ、聞き取れなかった……)
コードギアス 復活のルルーシュ


前作
1.ルルーシュ「お前のせいなんだろうッ!」C.C.「私のせいですぅ!」
2.C.C.「ボク、チーズクンダヨ!」ルルーシュ「えっ?」



2: 2013/10/01(火) 20:02:28.94 ID:mnm6tqPI0
シャルル「……いいいむぅゎあぁぁぁ……クウウゥゥゥルルオヴィスとおぉぉぉぉ……」
      「はぁぁなしておおぉっっとぅぁぁあとおおぉぉころぉぉドゥワアアァァ……」

神官「は……はいっ?」

   (今、陛下は一体何を言われたんだろうか!?)
   (どっ、どうすれば……聞こえたふりをして間違ってたら恐ろしいことになる、)
   (聞こえてないと言ったらギアスをかけられそうな……!)ブルブルブル

3: 2013/10/01(火) 20:03:59.06 ID:mnm6tqPI0
シャルル「……」ギロ
      「……いいいぃぃぃぃぃむわああああぁぁぁぁぁ」

神官(……いま……)コクコク

シャルル「クウゥゥゥルォオヴィイィィスとおおぉぉぉ」

神官(……クールビズと……?)コク…

シャルル「ファァァあああなスィておっっっっっっとぅぁ、」

神官(……アナスイ夫を……??)

シャルル「トゥゥゥウウこルルルルぉどぅぁぁあああぁぁぁぁぁぁ……」

神官(……つくるドアー…………???)

4: 2013/10/01(火) 20:05:29.31 ID:mnm6tqPI0
神官(……ど、どど、ど……陛下のおっしゃることが、さっぱりわからない!)
   (そんな、ようやっと陛下のお傍にお仕えする地位にまで出世したのに、)
   (私の人生こんなとこで終わってしまうのか!?マジか?マジなのか!?)タラタラ…

シャルル「……ぬうううううううっ!」ギロオッ!!
      「…………!!!」クワァ!!

神官(ひっ、ひぎいいいいいいいいい!)ガクガクガク

シャルル「……」プイ
      「急がなければな、計画を……」

神官「……はっ、はは!……おっしゃる通りでございますうぅ……!」ヘナヘナヘナ…

6: 2013/10/01(火) 20:06:59.19 ID:mnm6tqPI0
シャルル(そうか……ルルーシュの奴め、CCからギアスを得たか……!)
      (アレも一体、何を考えておるのか……)
      (我が下に来れば、全てが解決しように……)

      (……ふむ、まあよいクロヴィス、お前にしてはよくやったものよ)
      (うむ……そうだ、アレは、お前にどうこうできるものではなかったのだ)
      (……ほう、心残りか?……いずれ、奴も知れることよ……)

      (それが……宿命だとな……)ニヤリ


  前回まで ⇒ http://geassfun.at.webry.info/

7: 2013/10/01(火) 20:08:29.20 ID:mnm6tqPI0
■その約一週間ほど前 ─────

(ルルーシュの陽動作戦──租界内の同時多発テロ──により、)
(政庁は蜂の巣をつついたような騒ぎに陥った)

(租界全域および周辺ゲットーにまで警備網が広がった結果、政庁の警備は手薄になる)
(その隙をつき、兵士の変装で政庁に忍び込んだルルーシュとCCは、)
(ギアスの活用により首尾よくクロヴィスを拉致することに成功した……)

(そして、租界周辺ゲットー、扇たちのアジトにて……)

8: 2013/10/01(火) 20:09:59.58 ID:mnm6tqPI0
玉城「……本当に、さらってきちまッたのかよォ……!」

井上「本当に、本物なの……!?」

南「なんてこった……」

扇「……!」

クロヴィス「むぐっ……むぐうっ……!」ジタバタ

ルル「俺は、言ったことは必ず実現する……」
   「どうだ、俺を信頼する気になったか?」

CC「……」

9: 2013/10/01(火) 20:11:19.79 ID:mnm6tqPI0
カレン「ねえ……こいつ、どうするの、ルルーシュ……」

ルル「どうするかな……さて……君らは、どうしたい?」ニヤ
   「恨み骨髄の相手が、無抵抗で目の前に転がされている状況……」
   「やりたいことは大体判るが……」

玉城「おっ、おう……当然じゃねェか!まずはこいつの手足を」

扇「待て!」

玉城「おっ?」

ルル「……」

10: 2013/10/01(火) 20:12:39.44 ID:mnm6tqPI0
扇「オレたちはテロ組織じゃない……志を持つ同志だ」
  「残虐な報復をして、何が変わるというんだ!何もせず……生かして返そう」

玉城「扇ィ!おめェ、吉田たちの無念を忘れたのかよォ!?」

扇「忘れるわけがないッ!忘れなんかしない……」
  「だが、ここで殺せば、復讐の連鎖になる……」

カレン「扇さん……」

ルル「フッ……甘いな、扇」

扇「!?」

11: 2013/10/01(火) 20:14:00.10 ID:mnm6tqPI0
ルル「このエリア11に、なぜこいつが派遣されたと思う?」
   「この男……クロヴィスは、芸術方面には才能があるが政治はからっきしダメだ」
   「到底、政治家の器ではない……そんな男が、なぜ着任したのか?」

   「エリア11は、さしたる抵抗もなく、反抗心も欠如した民族だと判断されたからだ」
   「帝国からは、お前ら日本人は能無しだと思われてる、ということだ」

扇「なっ……!」

クロヴィス「ぐふっ!ぐふう!」バタバタ

ルル「そうではないことを……こいつの氏をもって示してやろう」チャキ
   「日本人は、日本人たる誇りを内に秘めたる民族だということを……」

12: 2013/10/01(火) 20:15:19.68 ID:mnm6tqPI0
クロヴィス「!!!!!」ブンブン、ブンブン

ルル「……だが、」スッ
   「その前に、こいつを借りていいか?」

扇「……どういうことだ?」

ルル「因縁がある、と言っただろう」
   「こいつには、聞いておきたいことがあるんだ」

扇「……ああ、かまわない」
  「元々はお前の計画だったしな……」

C.C.「……」

13: 2013/10/01(火) 20:16:39.87 ID:mnm6tqPI0
(別室で、俺とC.C.はクロヴィスを柱に縛りつけ、猿轡をほどく)
(連中はドアの向こうで聞き耳をたてているだろうが、俺の身元はいずれはバレることだ)
(それよりも、ギアスを使う場面だけは絶対に見られたくない……)


クロヴィス「……私じゃない、私じゃないぞっ!」

ルル「なら、知っていることを話せ……俺の前では、誰も嘘をつくことはできない……」
   「誰だ……母さんを頃したのは!」キュィィィン!!

クロヴィス「…………第2皇子シュナイゼルと第2皇女コーネリア」
       「彼らが知っている……」

ルル「あいつらが首謀者か!?」

14: 2013/10/01(火) 20:18:00.32 ID:mnm6tqPI0
クロヴィス「…………」

ルル「……そこまでは知らないか……」

クロヴィス「…………!!」ハッ!!
       「ほ、本当に私じゃないっ!やってない!やらせてもいないっ!」

ルル「……わかった……」スッ…

クロヴィス「……」ホッ…

ルル「……しかし……」チャキッ

クロヴィス「!!」

15: 2013/10/01(火) 20:19:20.05 ID:mnm6tqPI0
C.C.「ルルーシュ!」

ルル「……何だ?」

C.C.「本当に頃すのか?」
   「今この瞬間がまさに分水嶺だぞ、後悔しないか?」

ルル「何をだ?俺は計画の実行前からすでに決めていた……」
   「クロヴィスには、氏ぬことで俺に貢献してもらうとな」

クロヴィス「そっ、そんな!」
      「私は、マリアンヌ皇妃の氏とは無関係なのに、助けてくれないのか!?」
      「ひっ、ひどい……!」ガクガク

16: 2013/10/01(火) 20:20:39.95 ID:mnm6tqPI0
ルル「……ひどい?ひどいだとッ!?」
   「日本が敗戦した日、夕焼けの中で俺たち兄弟が見た凄惨な光景を知っているか?」
   「命令ひとつでその地獄を生み出し続けた、元凶こそがお前らだろうッ!」

クロヴィス「でっ……でも……!」ブルブル

ルル「その贖い……今ここで償わせてやる……」

クロヴィス「やっ……やめろ……」
      「腹違いとはいえ、実の兄だぞおっ!?」ブルブルブルブル

ルル「そうだ!確かにそうだ、兄上!……しかし」

C.C.「キレイごとで、世界は変えられないから……か?」

17: 2013/10/01(火) 20:22:01.06 ID:mnm6tqPI0
ルル「!」ピク
   「……頃すな、と言いたいのか、C.C.?」

C.C.「…………」

ルル「……お前は、何か、知っているのか?」

C.C.「…………いや……済まなかった」フッ
   「お前は、お前がやりたいようにすればいい」プイ

ルル「…………」ジッ…

18: 2013/10/01(火) 20:23:20.03 ID:mnm6tqPI0
クロヴィス「な、なあ、ルルーシュ……」
      「アリエスの離宮で……いっしょに、遊んだ、仲じゃないか……」ポロ…

      「お前のチェスの腕前は素晴らしかった……」
      「そっ、それにお前も、私の描く絵が好きだと……言ってくれたじゃないか?」
      「あの頃は、た、楽しかった……なあ、そうじゃないか、ルルーシュ?」ポロ…ポロ…

      「なっ、なのに……なぜ……兄弟で頃し合わなくてはならないんだ……」
      「そんなの……ひどいじゃないか……」ポロポロ…

ルル「…………残念です、兄上」
   「その結論に達するのが、8年遅かった……」チャキ

クロヴィス「ひっ!!!」

ルル「お慕い申し上げておりました……」
   「……さらばです、兄上」…カチッ

19: 2013/10/01(火) 20:25:27.66 ID:mnm6tqPI0
■アッシュフォード学園 生徒会室 ─────

ミレイ「こらあーっ、シャーリー!」バチコーン!!

シャーリー「Zzz……あたっ!?」

ルル「……」チラッ

ミレイ「いま、居眠りしてたでしょ!?」

シャーリー「えっ、えっ?あたし、寝てました!?」

20: 2013/10/01(火) 20:27:29.90 ID:mnm6tqPI0
リヴァル「してたしてた、こっくりこっくりと……口元からよだれも……」ニヒヒ

シャーリー「ええっ、ちょっ、やだほんと!?」ゴシゴシ
       「……たれてないじゃん!リヴァルの嘘つき!」ムキー

ルル「珍しいな、シャーリーが居眠りなんて?」

ミレイ「夜中に本の読み過ぎじゃないー?」

シャーリー「えっ!?え、ええ……そうかも……///」

リヴァル「へええ……シャーリーが夢中になるほどの本かぁ……」
     「どんな話なんだ?推理物か?」

22: 2013/10/01(火) 20:28:49.76 ID:mnm6tqPI0
シャーリー「推理とはちょっと違うけど……恋愛もの、かな……///」

ミレイ「シャーリーらしいわねー」

ニーナ「……」ジ-

シャーリー(……ニーナから借りたボーイズラブ本だなんて、言えないよ……///)
      (しっ、しかも、ルルに似てる男の子の……///)チラッ

ルル「……?」

シャーリー「!!!///」プイッ

ルル「???」

23: 2013/10/01(火) 20:30:10.54 ID:mnm6tqPI0
>>21 大変恐縮です…


ニーナ「……」ジ-

シャーリー(……なんか、すごい視線を感じる?……ニーナっ!?)

ニーナ「……」ニコッ

シャーリー(うわっ、すごいプレッシャー!?)
      (だいじょうぶ、絶対誰にも言わないから……決して言いません……!)タラタラ…

ニーナ「……」ニコニコ

24: 2013/10/01(火) 20:31:35.02 ID:mnm6tqPI0
■周辺ゲットー 扇たちのアジト ─────

玉城「……しッかし、まさかまさかだぜェ……」
   「あのセイガク、とんでもねェタマだな……」

南「だな……まさか、本当に総督を誘拐してくるとは思わなかった……」
  「その上……あの話の流れだと、元皇族っぽいよな……」

玉城「よく聞こえなかったんだけどよォ、」
   「あいつ結局、自分の兄貴を頃したのか?」

南「らしいな……確かめたかったが、聞けなかった……」

扇「……」

25: 2013/10/01(火) 20:32:51.18 ID:mnm6tqPI0
■拉致当日 ─────

パンッ!

カレン&扇「銃声!?」

……ガチャッ

ルル「……民衆の敵は、俺が処刑した」カツカツ

玉城「おめェ……」

南「……お、おい……」

26: 2013/10/01(火) 20:34:10.00 ID:mnm6tqPI0
ルル「夜の間に氏体を棺に入れて運び出し、放送局の前に放り出す」
   「総督府は、いなくなったクロヴィスの捜索で混乱しているはずだ」
   「このうちに事を済ませるぞ、それで作戦は完了だ」

扇「あ、ああ……」

ルル「それと、棺の中にこれを入れておけ」ヒョイ

カレン(パシッ)「…………ディスク?」

ルル「犯行声明文だ、事前に用意しておいた」
   「主義主張のある反政府団体は、事を起こせば必ず声明を出すと相場が決まっている」

27: 2013/10/01(火) 20:35:30.18 ID:mnm6tqPI0
ルル「カレン、運転はできるか?」

カレン「うん……できるよ」

ルル「よし、それではカレンとC.C.と俺で棺を投棄してくる」
   「それと、明日以降、各自生活の場を作れ、集団生活だと目につきやすい」
   「これで解散だ、次の集合はまた連絡を入れる」


─ ─ ─ ─


玉城「……だもんなァ……どういう神経してんだァ、あいつ?」
   「自分の兄貴を頃して、ああも冷静でいられるもンかねェ?」

28: 2013/10/01(火) 20:36:50.22 ID:mnm6tqPI0
扇「……それだけ、本気で復讐する気だということかもな」
  「そのために、オレたちのすぐ隣の部屋でやったんだと思う」

南「あぁ、なるほどな……聞いてもかまわない、ということか」

井上「……なんだか、怖い子ね……」

扇「どんな時でも冷静沈着でいられるというのは、すごいことだ」
  「あれこそが、生まれながらの指導者、ってやつかもしれないな……」

29: 2013/10/01(火) 20:38:10.21 ID:mnm6tqPI0
扇「……オレはさ、」

南「うん?」

扇「あいつが現れたおかげでよく分かったよ……オレは、本当に未熟だった……」
  「オレたちがみな氏んでしまう前にそれが分かって、本当に良かった……」グスッ

玉城「扇ィ!オレは、おめェのそういう所が好きだから、ついてってンだからな!」
   「最後までバックレんなよォ!?」バシンバシン!!

南「……そういえば、カレンは?」

扇「ああ……落ち着くまで、自宅にいるように言っておいた」
  「母親の世話もあるしな」

30: 2013/10/01(火) 20:39:30.41 ID:mnm6tqPI0
■周辺ゲットー カレンの家 ─────

カレン(ガチャ)「……ただいま」

カレン母「あっ……おかえりなさい、何もなかった?」ニコッ

カレン「…………」ドスドス、バタン

カレン母「……」ショボン…

31: 2013/10/01(火) 20:40:50.62 ID:mnm6tqPI0
(私が扇さんたちの活動に参加してるのがシュタットフェルト家にバレた日、)
(私といっしょにあいつ(母親)も追い出された……)
(今まで何をされてもあれだけ従順だったあの女が、私が追い出されるとなった途端、)
(半狂乱で抵抗したので驚いた……でも結局、二人ともシュタットフェルト家から追放された)

(貴族のバックアップがなければ、私たちが租界にいることなどできない)
(その日のうちに私たちは、手荷物だけを抱えリムジンでゲットーまで運ばれ放り出された)
(まあ、逆に私はせいせいしたんだけど……これで、自分を偽る必要がなくなるから)

32: 2013/10/01(火) 20:42:10.47 ID:mnm6tqPI0
(意外だったのは、あの女……)
(あれだけ貴族の生活に執着していたくせに、ゲットーでの生活に不満を漏らさない)
(どうせすぐ泣き言を言って、シュタットフェルト家にすがりつくと思ってたのに……)

(……おかげで、私が二人分の生活費を稼がないとならない)
(しかも、今まではアジトに入り浸ることで顔を合わせずに済んでたのに……)

(ほんとに……どこまでも私に迷惑をかける女だ……!)

34: 2013/10/01(火) 20:43:31.86 ID:mnm6tqPI0
カレン「……ったく、ほんっとウザいわ!」ボスッ!!


(聞こえよがしに大声で言い、私はベッドに倒れ込む)
(唯一の、確実に私に安息を与えてくれる場所に……)


カレン「……ふう……」
    (…………あいつ、学校ではキザったらしい奴だと思ってたけど、)
    (ちょっと意外だったな、あれは……)

35: 2013/10/01(火) 20:44:56.72 ID:mnm6tqPI0
■クロヴィスの棺を運搬中 ─────

カレン「……」ゴトゴト

ルル「…………」ゴトゴト

C.C.「…………ルルーシュ、大丈夫か?」ゴトゴト

ルル「…………何がだ……」

C.C.「いや……大丈夫ならいい」

カレン「……?」

36: 2013/10/01(火) 20:46:10.64 ID:mnm6tqPI0
ルル「…………うっ……う、うげえっ!」ゲボ-!!

C.C.「!!!そらきたか!」

カレン「うわ、ちょっと!?大丈夫!?」キキィ-ッ!!

ルル「くっ、気にするな!いけ!止まるな!」
    「まだ作戦は終了していないぞ!」ハァハァハァ

C.C.「蒼ざめていたから、気にはなっていたが……乗り物酔いか?」
   「……いや、違うか?」

ルル「うるさい!少し気分が悪くなっただけだッ!」ハァハァ

37: 2013/10/01(火) 20:47:30.64 ID:mnm6tqPI0
C.C.「…………全く、虚弱に過ぎないか、坊や?身も心も……」
   「ほら、口元が汚れてるぞ……」フキフキ

ルル「くそッ!……俺を無神経な魔人とでも思ってたのか!?」ハアッハアッ

C.C.「いや……今にも泣き出しそうな坊やに見える……」ナデリナデリ
   「二人きりなら、抱きしめてやるところだ」

ルル「くだらんことを言うなッ!やめろ、大丈夫だ!」
   「……カレン、この事は扇たちには絶対に言うな!」

カレン「はっ、はい!」

38: 2013/10/01(火) 20:48:50.70 ID:mnm6tqPI0
.
─ ─ ─ ─

カレン(あの時は体調不良かと思ったけど……今はわかる、)
    (やっぱり、ショックだったんだ……自分の兄弟を頃したのが……)

    (……あの女とは、どういう関係なんだろ……)
    (まあ、どうでもいいけどさ……)

コンコン……

カレン母「カレン、ご飯ができたわよ……?」

カレン「うっさい!そのまんま置いといて!後で食べる!」

39: 2013/10/01(火) 20:50:10.64 ID:mnm6tqPI0
カレン母「早くしないと冷めるわよ……?」

カレン「いいから!ほっといてよ!」

カレン母「…………」

カレン「……」フゥ…

カレン母「…………お風呂沸かすからね?」

カレン「勝手に沸かしといてよ、勝手に入るから!うざいっての!」
    (あああもう!早く集合かからないかしらッ!)

40: 2013/10/01(火) 20:51:30.86 ID:mnm6tqPI0
■放送局 編集ルーム ─────

ディートハルト「……」

   『私は、ゼロ……』バッ
   『私は、力なき者の味方であり、力ある者への反逆者である……』
   『クロヴィス総督は、何の理由もなく、あるいは居もしないテ口リストの殲滅という』
   『目的で、租界周辺ゲットーへ連日襲撃を行っては多数の民間人を虐頃した……』
   『よって、私が処刑した……』

ディートハルト「…………」

AD「……あれ、ディレクター、また見てるんですか?」
   「やばいですって、そのビデオは……」

41: 2013/10/01(火) 20:52:50.89 ID:mnm6tqPI0
ディートハルト「外に出さなければいいだろう……」
       「それよりも、お前はわからんのか、この映像の工口ティズムが……」

AD「工口……って、またわけわかんないことを……」ブツブツ


   『……撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ……』
   『覚悟なき者は、覚悟せよ……目前の我が銃口を見据えながら!』ババッ!!


ディートハルト(日々繰り返される大本営発表の退屈さに飽き飽きしていたが……)
      (ふふふ……ようやっと、面白そうな素材が現れたじゃないか……)
      (たまらんな……ふふ、興奮が収まらん……)ギンギン

42: 2013/10/01(火) 20:54:10.64 ID:mnm6tqPI0
■特派トレーラー内 ─────

『卑劣なテ口リストにより、クロヴィス総督が命を奪われたという痛ましい事件の続報です』

『総督府は現在、トウキョウ租界および周辺域の全域に戒厳令を発しておりますが、』
『さらなる危険は除去されたとの見方から24時間中には解除される見通しです……』

『クロヴィス殿下のご遺体と一緒にあった犯行声明のビデオには、』
『ゼロと名乗る犯人らしき人物が映っており、犯罪行為を正当化する卑劣な声明が……』

43: 2013/10/01(火) 20:55:30.65 ID:mnm6tqPI0
ロイド「…………ふ~ん、仮面の男がねぇ……」

セシル「あら、声が入ってないですね?」

ロイド「犯行声明は、要するに宣伝だからねぇ……」
    「犯人が利する部分はカットするのが普通だよ」

スザク「なるほど……」

    (クロヴィス殿下が亡くなられるなんて……これで、反政府勢力も勢いづいてしまうだろう)
    (日本が、また戦場になってしまうのか……)

45: 2013/10/01(火) 20:56:51.80 ID:mnm6tqPI0
スザク(あっ、でも、これで例の子が知っている秘密というのがムダになるんじゃ……?)
    (殿下とバトレー将軍しか知らなかったのだったら、後はもうバトレー将軍しかいない)
    (でも、将軍は、本国へ護送された……)

    (…………まさか、あの子のために……)
    (ってことはないか、さすがにルルーシュ一人じゃこんなことはできない)
    (まあこれで、彼らを頃す命令が下されることはなくなっただろうな……)ホッ…

46: 2013/10/01(火) 20:58:10.83 ID:mnm6tqPI0
■ナリタ連山ふもと コードR研究所 ─────

研究員A「バトレー将軍が、本国へ連行されただって!?」

研究員B「ああ……とんでもないことになった」
      「ここナリタへは、後から来るとおっしゃられていたのに……」

研究員C「じゃあ、ここの研究は……」

研究員B「……まだ、将軍が戻らないと決まったわけじゃない」
      「それに、コードRそのものの素体はないが、その代わりはある……」チラッ

ヴィレッタ「…………」グッタリ

47: 2013/10/01(火) 20:59:31.05 ID:mnm6tqPI0
研究員A「確かに……」

研究員C「……これの脳を解体すれば、逆にコードRの秘密に迫れるかもしれん……」ゴクリ

研究員B「それは最終手段だ、まずは生体分析からしよう」

研究員C「そうだな、早速導電の抵抗値から見るか」カチャカチャ

研究員A「将軍が戻ってきて研究が進んでいたら、さぞかし驚かれるだろうな……」

49: 2013/10/01(火) 21:00:50.89 ID:mnm6tqPI0
■ナリタ連山 日本解放戦線アジト ─────

片瀬少将「……ゼロ、か……」

草壁中佐「これをやったのは、扇のグループだと聞いています」

片瀬少将「だが、扇の指揮ではないな?」

草壁中佐「でしょうな……今までと手際が違います、おそらく、この……」

片瀬少将「うむ……まるで、藤堂のような鮮やかなやり口だな?」

藤堂「……」

50: 2013/10/01(火) 21:02:12.48 ID:mnm6tqPI0
片瀬少将「フッ、そうとがるな……草壁、連中とは連絡がとれるか?」

草壁中佐「なにぶん、今は戒厳令下ですので……」
      「戒厳令が解除され次第、接触を試みます」

片瀬少将「うむ……身辺調査は念入りにしてくれ」
      「総督を暗頃した者だとしても、用心をするに越したことはないからな……」
      「あるいは、これ全てがブリタニアの罠ということも考え得る」

草壁中佐「はっ」

片瀬少将「それと藤堂、近々キョウトより"無頼改"を賜る予定だ」
      「その際にはお前たちが直々に受け取りにいってくれ」

藤堂「……承知」

51: 2013/10/01(火) 21:03:31.08 ID:mnm6tqPI0
■夜半 クラブハウス ルルーシュ自室 ─────

C.C.「そんな仮面やマントを作って、何かの仮装にでも出るのかと思っていたが……」
   「そういう用途だったとはな」

ルル「世間には、まだ顔をさらすわけにはいかないからな」ゴソゴソ
   「うむ……いい出来だ、さすがは一流の職人が作っただけはある」コンコン

C.C.「良かったのか、レジスタンスの連中には知られても……?」

ルル「俺が元皇族で学生だということか?ああ、かまわん」
   「連中とは今後行動を共にするし、後で説明するのも面倒だからな」ゴソゴソ

   「それに、今回の件で俺のリーダーシップは確立された、」
   「俺が消えればあのグループも解散する……誰もバラせないさ」パタリ

52: 2013/10/01(火) 21:04:50.92 ID:mnm6tqPI0
C.C.「リーダーといえば、あの男……扇、だったか?」
   「あれは、どうするんだ?」

ルル「都合の良いことに情に厚い男だった、あれはいいお飾りになる」
   「あれを先頭に立て、正義の熱弁を奮わせれば民衆はついてくる」
   「車椅子のレジスタンスリーダー……フフッ、いい宣伝になるだろう?」
   「そして俺は実を取るのさ、グループの支配は俺が行う」

C.C.「なるほど……ふふっ、とんだ悪党だな、お前は」

ルル「心外な評価だな、学生という身分を失わないための、必氏の知恵だよ……」
   「……とりあえず、ベッドの下に入れておくか……」ゴソゴソ

53: 2013/10/01(火) 21:06:10.95 ID:mnm6tqPI0
ルル「……それと、C.C.、」スクッ

C.C.「なんだ?」

ルル「お前は、何を知っている?」クル

C.C.「…………何の話だ?」

ルル「お前、俺がクロヴィスを頃すのを止めたがっていたな?どうしてだ?」

C.C.「……坊やには、酷だと思ったんだよ」

ルル「違うな、それは嘘だ」カツカツ
   「親衛隊やヴィレッタを頃すのを止めもしなかったお前が、そんなことを思うわけがない」
   「分水嶺だと言ったな……頃したことで、何が変わった?」

54: 2013/10/01(火) 21:07:30.97 ID:mnm6tqPI0
C.C.「…………今は言えない」プイ

ルル「今は、だと!?ならいつ言うッ?」ガシッ

C.C.「つっ!……やめろ、腕を離せ!」キッ!!

ルル「…………お前!」ハッ!!
   「……まさか、俺に計画的に近づいたのか?」

C.C.「!!…………」

ルル「……そうか……なるほど、な…………」スッ…
   「ギアスも、最初から与えるつもりだったということか……」

55: 2013/10/01(火) 21:09:23.78 ID:mnm6tqPI0
C.C.「…………いや、計画的ではなかった、偶然だよ……」
   「ただ、お前みたいな男を探していたのは確かだ……」

ルル「……」ジロ
   「俺みたいな、男……?」

C.C.「ああ……お前みたいな男にしか、できないことがあるのさ」
   「私には、ひとつだけ"望み"がある」
   「今は言えないが、その時期がきたら言おう……」
   「それを叶えるのが、私とお前との契約条件だ」

ルル「なに?あの、わけのわからんのが契約ではなかったのか!?」
   「俺は絶対に氏ぬとか何とか……」

56: 2013/10/01(火) 21:10:16.27 ID:mnm6tqPI0
C.C.「あっ……あれは、その……急いでいたので、適当に言っただけだ」
   「そのくらいの気概で臨め、という意味だと思え」

ルル「なんだそれは!俺の了承も得ずして勝手に契約内容を変えるのかお前は!」
   「好き勝手に契約を書き換えたら、信用が崩壊するのが分かってるか?」

C.C.「でも、あの状況だったらしようがないじゃないか……」
   「たしか……そう、緊急避難とかいうやつだ!な?な?」

ルル「……その分だと、立法の過去への遡及は認められんことも知らんのだろうな、」
   「お前は……数百年も生きているというのに……」フッ…

57: 2013/10/01(火) 21:11:40.54 ID:mnm6tqPI0
C.C.「この小僧……魔女たる私に法を講釈するか!」
   「ノブレス・オブレージュも理解できん連中が語る法治主義など、私の知ったことか!」
   「私には私の法があるんだ!C.C.法だ、国際条約のさらに上に君臨する法だぞ!」
   「試験に出るから覚えておけ!」

ルル「なんだその苦し紛れの嘘は!お前は子供かッ!」
   「ンなもんが試験に出たら、逆立ちしながら鼻からスパゲティを食ってやるわッ!」

C.C.「ほほーう、言ったなぁ?私がC.C.だと言うことを甘く見ているようだなあ?」
   「どうやってでも試験に出してやるぞ……後悔するんじゃないぞ……小僧?」

ルル「誰がするか!それよりも、試験に出なければどうするんだお前は、ええッ!?」

60: 2013/10/01(火) 21:12:59.13 ID:mnm6tqPI0
C.C.「そうだなあ……しようがない、お前の眼の前で衣類を脱いでやろう、」ニヤリ
   「青白い月明かりの下で、一枚一枚……艶めかしくな……ふふっ、興奮したか?」

ルル「いつも平気で下着姿でウロついてるだろうが!」


─ ─ ─ ─


咲世子「……あのお二人、またケンカをされてるようですねぇ……」

ナナリー「ええ……とても楽しそうで、羨ましいです……」ショボン

61: 2013/10/01(火) 21:14:20.79 ID:mnm6tqPI0
■中東地域 グロースター(コーネリア機)内─────

シュナイゼル『……というわけでね、エリア11の次の総督は、君にお願いしたいんだ』
     『コーネリア、中東の平定はいつ頃になりそうかな?』

コーネリア「来週中にはできる見込みですが……」
      「兄上、失礼ながら、私がエリア11の総督、ですか……?」

シュナイゼル『気が進まないかな?暇そうだからかな?』

コーネリア「いえ、そういう意味では……」
      「ただ、私は戦場(いくさば)でランスを振り回すしか能のない女です」

シュナイゼル『そこも見込んでの話だよ、』
     『少々きな臭い情報も入ってきている、荒事もこなせる総督が必要だ』

62: 2013/10/01(火) 21:15:39.03 ID:mnm6tqPI0
コーネリア「わかりました……平定を急ぎましょうか?」

シュナイゼル『いや、急がなくても大丈夫だよ、空席の時間は短く済みそうだからね、』
     『代理を立てる必要もないかな?』

コーネリア「はい……しかし、クロヴィスを頃した、あの男……」
      「今まで、我々のブラックリストには現れたことのない男だとか?」

シュナイゼル『うん、改めて調べてみたのだけどね、どこの組織にも該当しそうなのはいなかった』
     『最近、テロに参加した者かもしれないね』

コーネリア「よろしくない傾向ですね……主義者どもが調子づくのが目に見えます」

63: 2013/10/01(火) 21:16:59.20 ID:mnm6tqPI0
シュナイゼル『そう……だから、君にお願いする』
     『それでは、"ブリタニアの魔女"の凱旋を待っているよ』 ピピッ

コーネリア「……ギルフォード、ダールトン、聞いたな?」
      「兄上が首を長くしてお待ちかねだ、明後日までに首都を陥とすぞ!」ゴオオォォォ!!

ギルフォード「イエス、ユアハイネス!!」ドシャアァァ!!

ダールトン「イエス、ユアハイネス!!」ズシャアアァァ!!

64: 2013/10/01(火) 21:18:38.26 ID:mnm6tqPI0
■政庁内 総督執務室 ─────

ジェレミア「そうか……コーネリア殿下が次の総督にご着任あそばれるか」

キューエル「辺境伯、殿下は烈火のごときご性向……おそらく就任早々、」
       「ゼロを捕えるよう厳命されるのは必至かと」

ジェレミア「ああ、わかっている……しかし、非常に微妙な問題が残っている……」フゥ

      「我々が異変を感じ、執務室に駆けつけた時には、すでにもぬけの殻であった……」
      「あまりに鮮やかな手際……総督府内に裏切り者がいたとしか思えん」
      「だが、関係者と思しき者を全て尋問にかけたが、これといった成果もない……」

      「……このままご就任されるとなると、時限爆弾の上に座るようなものだ」
      「何としても、総督府内を"掃除"しておかねばならんが……」

65: 2013/10/01(火) 21:19:39.77 ID:mnm6tqPI0
キューエル「……特派にいる、枢木スザクを使うのはどうでしょうか?」

ジェレミア「うん?……あのイレヴンか?」

キューエル「奴が、総督府内でテ口リストの手助けをしていた、として処刑するのです」
       「事実はどうであれ、対外的には示しがつくものかと」

ジェレミア「ふむ……まあ、イレヴンであれば不自然でもないな」
      「当日のアリバイはどうする?」

キューエル「捕えている容疑者たちに、我々の望む自白を迫ればよろしい」
       「軍事法廷であれば、それだけで決着がつきます」

66: 2013/10/01(火) 21:21:00.23 ID:mnm6tqPI0
ジェレミア「奴は特派の所属だ、証言だけで引っ張れるか?」

キューエル「シュナイゼル殿下は目下、中華連邦との交渉中……」
       「それに、ロイド伯の口添えで転属になったのであって、」
       「殿下のお目付けではありません……」
       「また、皇族暗殺の幇助容疑ともなれば、何も言われますまい」

ジェレミア「うむ……うまくいきそうだな」
      「……ゼロが捕まえられない代わりに、か……」

67: 2013/10/01(火) 21:22:19.38 ID:mnm6tqPI0
ジェレミア「しかしコーネリア殿下に綱紀粛正が為されたことを示すだけの価値はあるか」
      「……よし、殿下のご就任までに済ませよう」

キューエル「はっ、純血派だけで事を運びましょう」

ジェレミア「ふふっ……」
      「軍属のイレヴン一匹で帝国の面目が保てるなら、まこと易い損失だ」ニヤリ

68: 2013/10/01(火) 21:23:39.36 ID:mnm6tqPI0
■特派トレーラー内 ─────

ロイド「ええっ?スザクくんが、殿下暗殺の……?」

セシル「そんな……!嘘でしょう、」
    「だって当日は、さらなるテロ行為に備えて特派のトレーラで待機を……!」

兵士A「枢木スザクに脅され、幇助させられたという証言があるんだ!」
    「枢木一等兵、殿下暗殺を共謀、幇助した疑いで連行する!」ガシッ!!

70: 2013/10/01(火) 21:24:59.43 ID:mnm6tqPI0
スザク「そっ……そんな!何かの間違いです!」
    「僕はそんなことしていません!よく調べてください!お願いです……!」

兵士B「黙れえッ!」ドガ、ガツ!!

スザク「ぐ……ッ…………」ガクン…

セシル「スザクくんっ!?」

兵士A「現時点を以て、枢木スザクの職責は一時召し上げる!」
    「以降、軍事法廷での判決までは身柄は法廷預りとなる!」カツカツ……

ズルズル……ガチャン!

72: 2013/10/01(火) 21:26:20.05 ID:mnm6tqPI0
ロイド「……ふーん……こりゃぁ……彼も終わったねぇ~……」

セシル「終わったって、何がですかっ!?」

ロイド「今の連中、胸に純血派のバッジをつけてたよね、見なかったぁ?」
    「ジェレミア卿の仕業だよ……やれやれ」ポリポリ

セシル「仕業って……じゃあ、スザクくんが犯人ではないってわかってて……!?」

ロイド「ご名答~っ!スザクくん、もう帰ってこないよぉ~!」

セシル「そんな……ロイドさん、シュナイゼル殿下に……」

ロイド「お・め・で・と・お~!」
    「皇族暗殺の容疑じゃ、シュナイゼルちゃんも何も言わないよ~」
    「デバイサーを持ってかれたし、今日の仕事はおしまい!はい、解散~!」ハァ…

セシル「スザクくん……」

74: 2013/10/01(火) 21:29:12.10 ID:mnm6tqPI0
■アッシュフォード学園 生徒会室 ─────

ニーナ「……」カタカタカタ

ルル(珍しいな、ニーナと二人きりになるのは……)

ニーナ「……」カタカタカタ

ルル(……しかし、特に共通の話題もないから、お互い喋らない)
   (その分、気楽に過ごせるのは助かる)

ニーナ「……あっ?あ、そっか!そうなんだ!」カタ

ルル「……ん?」

75: 2013/10/01(火) 21:30:39.05 ID:mnm6tqPI0
ニーナ「あっ、ごめん……邪魔しちゃった?」

ルル「いや、大丈夫だよ、何かあったのか?」テクテク

ニーナ「うん、分子の励起状態の近似解を求めるのに、どうしたらいいのかなあって……」

ルル「????」

ニーナ「いいのがあったの、C.C.法って言ってね、」

ルル(───何イッ!?C.C.法だと!?)ガタッ!!

76: 2013/10/01(火) 21:31:58.38 ID:mnm6tqPI0
  連結クラスター法(れんけつクラスターほう、結合クラスター法、クラスター展開法、
  CC法:Coupled Cluster)は多体系を記述するために使われる数値手法である。
  最もよく使われるのは、量子化学(計算化学)におけるポスト-ハートリー-フォック
  第一原理計算がある。 CC法は、ハートリーフォック分子軌道法を…… (Wikipedia)

────────

ルル(……いや、これは違うぞ、絶対違う……奴の言ったのとは違うからな……)
   (しっ、しかしこれが万が一試験に出たら、形式的には奴の言うとおりに……!)
   (くそッ、鼻からスパゲティなんて絶対にやらないぞ俺は……そうだ、)
   (金輪際、量子学には関わらないことにしよう、うむ、それがいい……)ブルブル…

ルル「……ハ、ハハ……俺には専門的すぎて、わからないよ……」フラフラ

ニーナ「?」キョトン

77: 2013/10/01(火) 21:33:19.58 ID:mnm6tqPI0
(突然、生徒会室のドアが勢いよく開いた)
(ニーナと俺は、何事かとドアの方を振り向く)


シャーリー「……あっ、ルル!ちょっと、大変だよ!!!」アタフタ

ルル「ん?どうしたんだ、そんなに慌てて?」

シャーリー「この間の……ぉおっ!?」チラッ
      (……ニーナがいるし!)

      「……う、うん、とにかくTVを見よう!」ポチッ
      「それでわかるから、うん!」ピッピッ

79: 2013/10/01(火) 21:34:38.72 ID:mnm6tqPI0
『……暗殺の容疑者として、軍所属の枢木スザク一等兵を逮捕しました』
『軍の発表によると、枢木容疑者は容疑を否認しているとのことですが、』
『多数の証人がいるため、後日の軍事法廷では銃殺刑が下される見通しです』

『枢木容疑者は、クロヴィス殿下が暗殺された当時、政庁内にて内部からの手引きを』
『行い、テ口リストが殿下の拉致を行いやすく……』


ニーナ「ああ、やっぱりそうなんだ……絶対、協力者がいると思ってたわ」
    「よかった、捕まって……」

ルル「…………」ギリッ

80: 2013/10/01(火) 21:35:58.74 ID:mnm6tqPI0
シャーリー「……ねえ、ルル……この男の子……」ボソボソ

ルル「…………」
   「何かと思ったよ、シャーリー……良かったじゃないか、」ニコ
   「これで殿下を頃した犯人を捕まえる手がかりができたってことだよ」

シャーリー「!!!???」

ルル「俺、ちょっと調べものがあるから……失礼するよ」テクテク、バタン

シャーリー「ちょ、ちょっと……ルル!?」ダダダッ、バタン!

81: 2013/10/01(火) 21:37:18.63 ID:mnm6tqPI0
■クラブハウス ホール2F ─────

ルル「……」カツカツカツ

シャーリー「ちょっ……ルル、待って!」トタタタッ

ルル「…………なんだ?」

シャーリー「ねえ、あの男の子、こないだの……」
       「まさかだよね!?あの子、そんな悪い子には見えなかったし……」

ルル「……シャーリー、君は秘密が守れない子なんだな!」

シャーリー「えっ!?」ビクッ

82: 2013/10/01(火) 21:38:39.32 ID:mnm6tqPI0
ルル「俺はお願いしたはずだぞ、秘密にしてくれって!」
   「ニーナがいる前で、殿下暗殺の容疑者が俺の知り合いだとバラす気だったのか!?」

シャーリー「だっ、だって……!」オロオロ
      「彼って、ルルの……大切な人、なんでしょ……?」

ルル「…………ああ、とても大事な奴だ……」グッ…

シャーリー(うっそおぉ!や、やっぱり、ルルって……ボーイズラブなんだ……)ガ-ン…
       (いやでも、そんなの関係ないよ……今は関係ない!)

       「そ、それで慌ててたの……」
       「だけど、ごめん……今度から気を付けるね……」ショボン
       「でもルル、どうするの?このままじゃ……!」

83: 2013/10/01(火) 21:39:59.00 ID:mnm6tqPI0
ルル「……どうしようもないさ…………」ギュッ…
   「ああいう発表をしたということは、結果はもう決まってるんだよ」
   「軍のメンツだってある、よほどのことでも起きない限り、奴は殺される……!」

シャーリー「そんな……そんなのひどいよ!」ウルッ…

ルル「それが軍であり、ブリタニアって国なんだ……」
   「たとえ、犯人でなくったって、そう決められたらおしまいないなのさ」

   「俺たちには、祈ることしかできない……力のない、俺たちには……」

84: 2013/10/01(火) 21:41:18.98 ID:mnm6tqPI0
シャーリー「うそお……かわいそうだよ……」ウルウル
       「何かできないのかな……わたしたち……」
       「証言とか、いくらでも立つよ、わたし……!」

ルル「…………」
   「シャーリー……ありがとう……」ギュッ…


C.C.(……ルルーシュの奴め、何をしてるんだ……)
   (この間の女と、昼間っからホールで抱き合って……)
   (もうじきピザが届くというのに、これじゃ出るに出られないじゃないか……)ブツブツ

85: 2013/10/01(火) 21:42:39.13 ID:mnm6tqPI0
■未明 クラブハウス ルルーシュ自室 ─────

ルル「……」カタカタ、カタカタカタカタ

C.C.(ガチャ)「……まだ眠っていなかったのか、ルルーシュ」
   「……ふむ、ネットの探索か……何を探しているんだ?」

ルル「…………スザクを助ける戦略だ……」カタカタカタカタカタカタ

C.C.「あの男か……無理だろう」
   「公開処刑なら警備も相当に厳重だ、それに軍の面子がかかっている」
   「近づいた瞬間に蜂の巣だよ」テクテク

ルル「…………必ず見つけ出す、最適のルートを……!」カタカタカタカタカタカタ

86: 2013/10/01(火) 21:43:58.97 ID:mnm6tqPI0
C.C.「ふむ……」ボスッ!
   「……むにゃむにゃ」

ルル「俺のソファーをベッドにするな、眠るなら自分のベッドで眠れ」カタッ

C.C.「ふふ……男の真剣な姿を眺めるのが好きなんだよ、私は……」

ルル「……勝手にしろ」カタカタカタカタカタカタ

C.C.「ふわあー……」
   「そのくらい、お前に真剣に考えて欲しそうだよなあ、あの娘も……」

ルル「…………見ていたのか、いやらしい女だ」カタカタカタカタカタカタ

88: 2013/10/01(火) 21:45:18.85 ID:mnm6tqPI0
C.C.「ピザの届く時間にホールで抱き合っているお前が悪い」ニヤ

ルル「……今は忙しいんだ、構ってられん」カタカタカタカタカタカタ

C.C.「はいはい……」ジ-…

   (……ふふ、本当に真剣に考えているようだな、ルルーシュ……)
   (困難であればあるほど、奮い立つ、というやつか)
   (楽しい男だ……見ていて飽きないよ……)

89: 2013/10/01(火) 21:46:39.26 ID:mnm6tqPI0
(先日のクロヴィス暗殺の時は完全に不意をついた形だったので、)
(少人数での攪乱でも十分に効果が得られた……)
(しかし今度は、襲撃を予想した陣形への突入になる……)
(今の俺の手勢では、攪乱も正面突破も絶対に不可能だ!)

(そもそも、今回の計画は誰が仕組んだものだ?なぜ奴に白羽の矢が立った?)
(なぜ今行う?何が目的だ?あるいは、何を避けようとしている?)
(計画そのものの規模はどれほどだ?場所はどこだ?どのような警備だ?手順は?)

(くそッ……スザクの命運はじきに尽きるというのに、)
(戦略を立案するための情報が少なすぎる!)
(情報だ……情報が必要だ……クソッ!)カタカタカタ…

90: 2013/10/01(火) 21:47:59.37 ID:mnm6tqPI0
■翌日 アッシュフォード学園 ルルーシュ達のクラス ─────

生徒A「ルルーシュくん、今日はきてないね……」

生徒B「身体の調子が悪いのかな?彼、最近はけっこう休みが多いよねー」

生徒C「ああん、寂しいわぁ……彼を見るのが唯一の楽しみなのにぃ……」ハア-ン

生徒A「ねえシャーリー、彼どうしたのか、知らない?」

シャーリー「えっ?うん……」
       「昨日から調子悪くて、今日も休むかもって言ってたよ?」

91: 2013/10/01(火) 21:49:18.88 ID:mnm6tqPI0
生徒C「うそ~ん……あたしもう帰ろっかなぁ……」トホホ…

シャーリー(……ほんとに、大丈夫かな……)
      (後でちょっと、様子を見に行ってみようかな……)


■クラブハウス ルルーシュ自室 ─────

シャーリー(この間は、返事も待たずに入ったらとんでもないことになったよね……)
       (……うん、とりあえずノックだ……)コンコン

シャーリー「……ルル?いる?」コンコン、コンコン

し~ん……

92: 2013/10/01(火) 21:50:47.10 ID:mnm6tqPI0
シャーリー(……出かけてるのかな……)
      「開けるよおー……?」カチャ…

      (あっ、開いてる……)キィ…


(私は、ドアをそろりそろりと、少しだけ開き、恐る恐る部屋の中を覗き込む……)
(カーテンを閉め切った薄暗い部屋の中で唯一、明かりがともっているPCの画面……)

(その前で、彼は机に向かったまま突っ伏していた)
(つい先ほどまでPCに向かい合っていて、そのまま寝てしまったかのようだ……)

93: 2013/10/01(火) 21:51:59.14 ID:mnm6tqPI0
シャーリー「……ルル……ルル?」
      「生きてますかー……もしもーし……?」


(抜き足差し足で、私は部屋の中に入ってゆく……)
(よく見ると、PCは何か作業をしているようで、内容がチラチラと目まぐるしく変化している)

(私が近づいても、彼は一向に目を覚ます気配がない……)
(机の上に伏せ、まぶたを閉じ規則正しい寝息をたてている)


シャーリー(……何をしてたんだろ?)

98: 2013/10/01(火) 22:05:08.68 ID:mnm6tqPI0


(薄暗い部屋に、だいぶ目が慣れてきた……)

(周囲の床をよく見ると、何かの図面やら地図やら、そして細かな文字で印刷された)
(リストらしきものやらが、所せましと散乱していた)
(それらには、事細かくチェックや走り書きが入っているようだ)

(彼は昨日、あれから今までの間で、これだけの調べものをしてたのだろうか……)
(その膨大な量……生徒会での、1期分の会計資料に匹敵するかもしれない)

99: 2013/10/01(火) 22:07:11.94 ID:mnm6tqPI0
シャーリー(すっごいなぁ……ルル、やっぱやればできる子じゃん……)
      (頭の使い方、絶対おかしいよ……)


(私はそう思いながら、いつの間にかルルーシュの寝顔に見入っていた……)

(いつもは教室や生徒会で、澄ましたような、冷めたような表情を作っている彼が、)
(今は何のてらいもない、無防備な素顔を私の前にさらけていた)
(カーテンの隙間から漏れる日の光が、彼の端正な顔立ちをより際立たせている)

102: 2013/10/01(火) 22:09:18.16 ID:mnm6tqPI0
(ふと、昨日、ホールで彼に抱きしめられたことを思い出す)

─ ─ ─ ─

ルル(…………シャーリー……ありがとう……)ギュッ…

シャーリー(ルル……?)

ルル(優しいな、君は…………その気持ちだけで、奴も救われるさ……)
   (……奴は俺の親友だ、後は俺が何とかしてみる……さあ、部屋へ戻るんだ)

シャーリー(ねえ……私もなにか手伝えないかな?何でも言ってよ?)

ルル(……ありがとう)ニコッ

103: 2013/10/01(火) 22:11:19.84 ID:mnm6tqPI0
.
─ ─ ─ ─

シャーリー(……よく考えたら、はっ、初めて……)
       (抱きしめてくれたんだ……///)ドキドキ


(そう思うと、私の鼓動が自動的に高鳴り始めた……私の悪い癖だ)
(彼との関係を考えると、勝手に動悸が激しくなったり考えがぐるんぐるん回り始める……)
(状況や、私の意思とは無関係に、身体が反応してしまう……)

105: 2013/10/01(火) 22:13:29.87 ID:mnm6tqPI0
シャーリー(ルル……もしも、ルルがホ……男好きだとしても……)
      (わたし、それでもやっぱり……ルルが嫌いに……なれない……)
      (ううん、ニーナの本を読んで、むしろずっと好きになった……なれたの!)

      (ルルが彼のことを好きでもいい……愛しててもいい……)
      (でも、昨日みたいに……ちょっとだけでも……)
      (わたしのことを……見てくれたら……)

106: 2013/10/01(火) 22:15:33.62 ID:mnm6tqPI0
(頭に血が上り、額から湯気がたっているような錯覚に陥る)
(彼の、少し開いたくちびるに、視線が釘付けになる……私のこころが暴走を始めた)
(ほんのちょっと、近づいて……もう少しだけ、近づけて……)


シャーリー(……卑怯だよね……こんなの、間違ってるよね……)
      (でも、ごめんなさい……わたし、なんだか……止まらないよ……)
      (誰かとめて……お父さん、お母さん……)プル…プル…

107: 2013/10/01(火) 22:17:40.49 ID:mnm6tqPI0
(恥ずかしいほどに震えている私のくちびるが、彼のくちびるにゆっくりと近づく……)
(目をつぶり、気づかれないように、息を止め……)
(必氏の思いで、くちびるの震えを止めたとき……かすかに……触れた)


シャーリー(……!)


(彼のくちびるの、瑞々しい果物のような……ぷるりとした、柔らかな感触……!)
(それは、全くの予想外で、未経験の私にはあまりに甘美で……)
(まるで、触れたところが一瞬で融合したかのように感じ、私は驚いた)

108: 2013/10/01(火) 22:19:33.80 ID:mnm6tqPI0
(できるなら、このまま彼の首に腕を回し、目覚めるまで吸い付きたい……という、)
(今まで経験したことのない情欲が私の中からあふれ出そうになるのを必氏に抑える)

(しかし同時に、彼の許しも得ず唇を奪ったことへの、激しい罪悪感が私を苛む……)
(二つの祈りに挟まれ、私は、私でいられなくなりそうで……)


シャーリー(ああ……ルル……わたし……!)

???「……はい、そこまで」

シャーリー「!!!!!!!!」ビクウッ!!

110: 2013/10/01(火) 22:21:25.39 ID:mnm6tqPI0
(突然の背後からの声に驚き、私は瞬間的に、飛び跳ねるように直立不動の姿勢になった)
(そして、ゆっくりと後ろを向く……そこには、壁際のソファの上で、タオルケットを羽織って)
(寝そべっていたと思しき、この間の女が……)
(私の一部始終を、そこでじっと見ていたのを即座に理解した)


C.C.「……キスまでは許そう……しかしその先はお預けだ、未成年」ポリポリ
   「黙っててやるから、その経験を胸に秘め、たくましく生きるがいい」

シャーリー「あっ、あなた……///」プルプルプル

C.C.「出口はこちらだ……それとも、ルルーシュを起こして続きをねだるか?」

シャーリー「!!!!///」タタタッ…

111: 2013/10/01(火) 22:23:04.93 ID:mnm6tqPI0
C.C.「…………」フゥ…
   「おい、ルルーシュ」

ルル「……」

C.C.「いつまで寝たふりをしている、このアホが」ヒョイッ

ルル(ゴツッ)「いだっ!」

C.C.「……お前、なぜとっとと起きないんだ?最初からわかってたのだろう?」

ルル「…………気づいたら、もう傍にいたんだ……」ギシッ

1: 2013/10/01(火) 22:57:09.08 ID:mnm6tqPI0
※さる回避でペース落としてます


ルル「今まで俺が何してたか、説明を求められるのも避けたかった……」
   「俺が寝てると思って、出て行ってくれるのを待っていたら」

C.C.「キスをされた、か?」
   「私にそんな言い訳が通用すると思っているのか、この童O小僧」

ルル「……言い訳じゃない、本当のことだ」ポリポリ

C.C.「自ら口説き落とす根性すらなく、棚からボタモチを待つとはな、さすが童O様だ」

ルル「童O童Oいうな!」

3: 2013/10/01(火) 22:59:27.36 ID:mnm6tqPI0
C.C.「……で、知らなかったことにするのか?」

ルル「言えば、彼女は余計に恥ずかしがるだろう……」

C.C.「嘘を言え、お前が恥ずかしいだけだろう?」

ルル「そういうなら、お前も早く止めればよかっただろうがッ!」

C.C.「どうしてだ?こんなに楽しい見世物、そうそうないのに?」ニヤ

ルル「くそッ……!お前はやはり、品性下劣な女だな!」プイッ

4: 2013/10/01(火) 23:01:56.99 ID:mnm6tqPI0


C.C.(……そういえばそうだ、どうして私は止めてしまったのかな?)
   (…………まあいいか、考えるだけ無駄というものだ)

ルル(……悪い気分はしなかった……)
   (本気で好いてくれているとは思ってもいなかったし、俺も彼女が嫌いではない)
   (だが……俺にとって、シャーリーは眩しすぎる……)
   (いま、カーテンの隙間からこの部屋に差し込んでいる、太陽の光のように……)

   (気づいていないふりをするべきか、謝罪の言葉を考えておくべきか……)

5: 2013/10/01(火) 23:02:26.82 ID:mnm6tqPI0
ルル「…………」フッ…

C.C.「気色悪いやつだ、思い出し笑いか」

ルル「うるさい」

6: 2013/10/01(火) 23:03:35.34 ID:mnm6tqPI0
■数日後 ─────

(軍事法廷では、純血派が用意した証人たちの証言が全面的に認められ、)
(当日の枢木スザクのアリバイは偽装を図ったものとして顧みられなかった……)
(荒っぽく積み上げられた状況証拠は、しかしスザクを総督府内の身中の虫としたい)
(法廷および純血派の思惑により、正式な証拠として採用された)

(枢木スザクは、銃殺刑……そしてコーネリアの意向により、彼女の就任当日に)
(公開処刑されることに決まった)
(勢いづこうとする反帝国勢力への牽制として利用するのだろう……)
(歓迎パーティを中止させ、代わりに処刑を実行させることに決めたらしい、)
(いかにもあの姉上のやりそうなことだ……)

7: 2013/10/01(火) 23:05:27.21 ID:mnm6tqPI0
(俺は、集められるだけの情報をすべて集め、あらゆる可能性を模索した)
(その結果、俺が求める結末……枢木スザクを救い出す、という結果を)
(導き出すためのルートを、ようやく発見した)

(もし、うまくいけば……)
(……いや、うまくいかなければ奴は氏ぬ、是が非でも成功させないとならない)
(そのためなら、俺は………………悪魔とでも、契約してやる……!)

8: 2013/10/01(火) 23:07:27.65 ID:mnm6tqPI0
■スザク処刑前日の夜 軍エアポート ─────

兵士「……コーネリア総督並びに、ユーフェミア副総督のご到着ッ───!」


(通例であれば、降り注ぐ日光の中、新任総督は派手なファンファーレに出迎えられながら)
(飛行機のタラップを颯爽と降り立ち、数百人の兵士に笑顔を振りまく……)
(だが、今は夜間、音楽隊の姿もなく、総督を出迎えるのは30名程度の兵だけだ)
(彼らに見守られながら、新総督は無造作に、ヘリからエリア11に降り立った)


総務次官「お待ちしておりました……コーネリア新総督様、並びにユーフェミア副総督様」ペコリ

ジェレミア「……」

キューエル「……」

9: 2013/10/01(火) 23:09:26.68 ID:mnm6tqPI0
コーネリア「ご苦労……」カツカツ

ユフィ「……」コツコツ

総務次官「殿下、一応、政庁にて歓迎の宴をご用意いたしましたが……」

コーネリア「無用だと言っただろう?」
       「私はここに、社交パーティをしに来たのではない、」
       「エリア11の主義者どもを狩りに来たのだ!」キッ

総務次官「ははっ!」

10: 2013/10/01(火) 23:11:26.86 ID:mnm6tqPI0
コーネリア「ジェレミア辺境伯!例の、イレヴンの処刑はどうなっている?」

ジェレミア「はっ、予定通り、明日の殿下の総督就任式の後、公開処刑を行います!」

コーネリア「奴を処分することで内外に、総督が暗殺されることがあれど」
      「エリア11の支配体制は微動だにしないことを示さねばならん!」
      「主義者どもの襲撃も十分に予想される、万全の体制で臨め!」

ジェレミア「イエス、ユアハイネス!」

ユフィ「……お姉様……」

コーネリア「今は総督と呼べ、ユーフェミア副総督……」
      「兄弟の間柄でも、けじめは必要だぞ……」

ユフィ「はい、コーネリア総督……」

コーネリア「うん……」ニコッ
      「話は後にしよう、案内を頼む」

11: 2013/10/01(火) 23:13:34.29 ID:mnm6tqPI0
■兵舎内 独房前 ─────

(鋼鉄の格子を挟んで、独房内でうずくまるスザクと、その外で椅子に座るセシル……)
(彼女は、明日には処刑台の上で、兵士たちに蜂の巣にされる運命のスザクに、)
(どうしても会いたいと無理を言って檻の前まで来たのだった……)


セシル「スザクくん……ごめんなさい、こんな結果になって……」ウルッ…

スザク「……どうしてセシルさんが謝るんですか?」

セシル「私たちで、スザクくんを守れたら……」

スザク「いいんです……気にしないでください」ニコ…
    「特派では、すごく楽しかったです……色々気を遣っていただいて、感謝しています」

セシル「スザクくんったら……こんな時まで……うぅ……」ポロポロ…

12: 2013/10/01(火) 23:15:26.93 ID:mnm6tqPI0
スザク「……思えば……こうなる運命だったのかもしれません……」フッ…

セシル「え……?」

スザク(日本の首相だった父親を頃した時から、もう運命は決まっていたのかもしれない)
    (いや……オレ自身が選んだんだ……この道を……)

    (ルルーシュ……図らずも、君の言うとおりの結果になってしまった……)
    (でも……後悔はしない、だってオレは、何も間違ったことはしてなかったのだから)
    (最後の瞬間まで、胸を張って生きてみせる……)

13: 2013/10/01(火) 23:17:29.23 ID:mnm6tqPI0
■政庁 総督執務室 ─────

ユフィ「お姉様……」

コーネリア「どうした、ユフィ?不安そうな顔をして?」ナデナデ
       「エリア11が怖いのか、うん?」

ユフィ「いえ、そうではなく……」
    「…………明日の処刑、お待ちいただくことはできませんか?」

コーネリア「明日の?例のイレヴンか?」

ユフィ「はい、枢木スザクの処刑です……彼の裁判、あれでよかったのですか?」
    「私、あれが公正なものだったとはとても思えません……」

14: 2013/10/01(火) 23:19:21.20 ID:mnm6tqPI0
コーネリア「うむ……ジェレミア達にとっては、苦肉の策だったのだろうな……」

ユフィ「ではお姉様も、あの裁判は……!?」

コーネリア「しかし!……ユフィ、帝国の支配は盤石でなくてはならない」
      「わかるな、お前も……」

ユフィ「……はい……」
    「でも、彼はもと日本の首相の息子でもあります、」
    「この処刑が、エリア11の人々に与える影響は、総督府としても看過し難いのでは?」

コーネリア「だから、許可したんだ私は」
      「奴を山車(だし)にして、このエリア内にいる主義者どもを炙り出す」

ユフィ「!!」

15: 2013/10/01(火) 23:21:37.30 ID:mnm6tqPI0
コーネリア「昨日までに色々と動きがあることが、逐一私に報告されている」
      「体制転覆を狙う虫ケラどもが、この機を逃すはずはないからな……」

      「枢木スザクを救出すれば我々の顔に泥を塗ることができる、だがそうはいかん」
      「連中が顔を出したところを……残らず叩き潰す!」

      「……ユフィ、私は、政(まつりごと)は苦手だ……」
      「民衆に慕われるような施政者になろうとも思っていない」
      「しかしユフィ……お前は、私だけではない、皆に好かれる……愛されるタイプだ」

      「今回の件を手始めに、エリア11の掃除は私が行っておく」
      「その後はお前に任せるから、お前がここを治め、良い国にしてくれ」
      「いくさに疲れた私が、癒しに訪れたくなるような……すばらしい国に……」ナデナデ

ユフィ「……はい」

16: 2013/10/01(火) 23:23:34.52 ID:mnm6tqPI0
コーネリア「さ、もう遅い時間だ……ユフィ、支度を整えて休むがいい」
      「私は書面に目を通しておかねばならん……」ギイッ、パラパラ…

ユフィ「……はい……あの、お姉様?」

コーネリア「……なんだ?」パラパラ…

ユフィ「……枢木スザクの様子を、確認しに行ってもよろしいですか?」

コーネリア「……」ジロッ
      「護衛を2名つける、長居はせぬように」パラパラ…

ユフィ「はい……!」

18: 2013/10/01(火) 23:26:08.26 ID:mnm6tqPI0
■兵舎内 独房 ─────

(…………誰も……助けてくれない……助けられない……)
(オレは何もしていないのに、明日にはもう、氏んでしまうのに……!)

(セシルさんが帰ってから、絶望感が一気に押し寄せてきた……)
(さすがにおかしくなりそうだ……いっそ、今すぐオレを頃してほしい……!)

(……父さんも、氏を身近に感じ、こんな焦りを覚えていたんだろうか、)
(あの狂気は、それゆえに陥ってしまった地獄だったのか……)

19: 2013/10/01(火) 23:28:33.17 ID:mnm6tqPI0
(…………オレは……誰かのために、氏にたかった……)
(父さんを頃し、日本の歴史を変えてしまった責任を取りたかった……)

(なのに今は、やってもいない殿下暗殺の幇助の疑いをかけられて、)
(ただ撃ち殺される以上の意味もない氏を、こうして待っている……)

カツ、カツ、カツ……

兵士たち「枢木スザク、起きろ!」
      「ユーフェミア殿下のお目通りである!」

スザク「……?」ゴソゴソ…
    (ユーフェミア……って、確か皇族の……?)クルッ

20: 2013/10/01(火) 23:30:23.00 ID:mnm6tqPI0
ユフィ「…………」ジ…ッ

スザク(……ホンモノ、だよな?……何となく写真で見覚えがある、)
    (一体、どうしてこんなところへ?)キョトン

兵士A「何をしておるか!平伏せんか!」

スザク「はっ!……失礼いたしました!」バッ

ユフィ「いいのです、楽にしてください……」ニコッ

スザク「はっ……!」

21: 2013/10/01(火) 23:32:13.26 ID:mnm6tqPI0
ユフィ「…………」ジ-ッ

スザク「…………?」

ユフィ(……まだ、あどけなさすら感じられる顔立ちだわ)
    (日本人は、実際の年齢より幼く見えると言うけど……)
    (そうだとしても、やはりクロヴィス兄様を暗頃した関係者には見えない……)

スザク(……そうか、次期総督のコーネリア殿下と一緒に来られたのか……)
    (いつも一緒におられると聞いてたけど、ほんとなんだな……優しそうな方だ)
    (しかしこの人も明日、オレが銃殺されるのを楽しみにしているんだろうか……)

22: 2013/10/01(火) 23:34:07.88 ID:mnm6tqPI0
ユフィ「……あなたは、何を思ってブリタニア軍に入隊されたのですか?」

スザク「はっ?……エリア11の治安維持と」

ユフィ「他意はありません、正直におっしゃっていただくだけで結構です」

スザク「はっ…………その、食うに困っておりましたので……」

ユフィ「あなたが?どうしてですか?」キョトン

スザク(どういう意味なんだ、それ……あ!)
    (オレが元日本国首相の息子だというのを知ってるのか……)

23: 2013/10/01(火) 23:35:53.83 ID:mnm6tqPI0
スザク「……色々事情がございまして……」
    「家を出て、自分の力だけで生活をしようと考えておりました」

ユフィ「そう……」フゥ…

スザク「……?」

ユフィ「……私も、時々同じことを考えますわ」
    「ひとりでできることを、ひとりでせいいっぱいやりながら、生きてみたいって……」

スザク「ユーフェミア殿下が……ですか?」

ユフィ「ええ、大変かもしれないけど、楽しいだろうなあ、って……」

24: 2013/10/01(火) 23:37:44.61 ID:mnm6tqPI0
ユフィ「あなたは、一人での生活はいかがでしたか?」

スザク「おっしゃる通りです……何事もやりがいがありました」
    「ただ、失敗した料理も自分で片付けないとならないのが……」

ユフィ「ふふっ……それは、つらいことですね」

スザク「はい、一番大変なことでした」ニコッ
    「しかし、皇女殿下が、一人暮らしに興味がおありだとは……」

ユフィ「意外ですか?」

スザク「はっ、思ってもおりませんでした……」

ユフィ「他の兄弟たちの中にも、そういうことを言う者はいませんね」
    「……皇族の中でも、ちょっと変わり者だと言われていますので」ニコッ

スザク「……」クスッ…

25: 2013/10/01(火) 23:39:56.40 ID:mnm6tqPI0
ユフィ「…………枢木スザク一等兵、」

スザク「……はっ」

ユフィ「あなたはクロヴィス兄様を、私の兄を頃す手助けをされたのですか?」ジッ…

スザク「……」ググッ
    「しておりません……そのはずです……」

ユフィ「…………」
    (わかってたことなのに……どうして聞いてしまったの……)
    (すごくまっすぐで、不器用な人だってことがよくわかる、わかったのに……)

スザク(やはり、そうか……そうだよな……自分の兄弟を殺されたんだ、)
    (穏やかそうでも、今、内心では怒りを秘めているはずだ……)

26: 2013/10/01(火) 23:41:32.09 ID:mnm6tqPI0
ユフィ「……ごめんなさい、言いたかったことは違うのです」

スザク「えっ?」

ユフィ「あの……わかります、あなたが言いたいことは……」

スザク「はっ?僕の……?」

ユフィ「……」ションボリ

スザク(え……まさか、全ての事情が分かっていて、俺に謁見をされた……?)
    (つまり、俺に……ただの兵士である俺に、何かを伝えたくて……?)
    (それも、怒りではなく……?)

27: 2013/10/01(火) 23:43:13.72 ID:mnm6tqPI0
ユフィ(……だめだわ、許しを乞うなんてさすがにできない……)
    (私が、ここで彼の無実を信じているなんて言えば、とんでもないことになる!)

    (彼が感じているであろう苦しみを、少しでも和らげたかったのに……)
    (一体、何を言えばいいの……)

ユフィ「……」ショボン…

スザク「……ありがとうございます」

ユフィ「えっ?」

28: 2013/10/01(火) 23:45:04.27 ID:mnm6tqPI0
スザク「皇女様にお目通りいただくだけでも身に余る光栄です」
    「ましてや、明日には氏を賜る一兵卒の私にまで……」

ユフィ「……」

スザク「お心遣い、感謝いたします……」


(オレは、氏の恐怖で自暴自棄に陥りそうだったこの瞬間に薫風を運んできた彼女に、)
(心からの謝意と共に、深々と最敬礼を捧げた)
(皇族の身で、オレをただのイレヴンではなく、ひとりの人間として扱ってくれたその気持ち……)
(何か、今までオレの身に降りかかってきた不幸や失敗の全てが報われたような……)

(今なら、オレは氏ねる、と思った)
(憚ることなく言うなら、彼女のために氏のう、と思った)

29: 2013/10/01(火) 23:46:53.78 ID:mnm6tqPI0
(だが、彼女はオレの言葉に、ひどく驚いたようだった……)
(くりくりとした大きな、可愛らしい目を見開き、言葉もなくオレを見つめる)
(その目には、いつしか涙が浮かんでいた……)


ユフィ「…………」ポロ…

スザク「殿下……?」

ユフィ「……!!」タタタッ…!

兵士たち「あっ、ユ、ユーフェミア様!」ドダダダダ…

30: 2013/10/01(火) 23:48:45.10 ID:mnm6tqPI0
■租界周辺ゲットー ─────

ゼロ「諸君……我々の呼びかけに賛同いただき、感謝している」
   「今回の作戦の目的は、枢木スザクの救出、および、」
   「それにより帝国に対する人々の反逆心を鼓舞することにある」


(枢木スザクが処刑される日の前の晩───)
(私たち扇グループも含めたレジスタンスの残党は、ルルーシュことゼロの呼びかけに応じ、)
(ゲットーの一角にある廃ビルの巨大な地下倉庫内に集まっていた……)

31: 2013/10/01(火) 23:50:34.53 ID:mnm6tqPI0
(……彼は、いつの間に手をまわしていたのだろうか?)
(そこには、おそらく百人を超えるレジスタンスの同志達が集結しており、)
(物音ひとつ立てず、ゼロの言葉に静かに耳を傾けていた……)

(見れば、今までに見かけたことのある同志も数名いた)
(旧日本軍の軍服らしき恰好の人も、数名……)
(いつもは饒舌な玉城さんも、他の人々と同じく押し黙って聞いている)


南「……珍しいな、玉城が黙ってるなんて……」ボソボソ

カレン「……あんな映像を見せられたら……」ボソボソ

井上「そうね、玉城さんも、思い出してしまったんでしょうね……」ボソボソ

32: 2013/10/01(火) 23:52:29.58 ID:mnm6tqPI0
(ゼロは、放送局が無音声でしか……しかも、軍に都合のいい編集をしたものしか)
(放送できなかった、「音声付犯行声明」のノーカット版をネットに"流出"させた)

(シンジュク騒動が報道の通りではなかったことを、現場の映像───)
(KMFの録画画像らしいが、入手経路は不明───付きで明かしていたその映像に、)
(クロヴィス暗殺の失態を隠蔽するため、軍は無関係な枢木スザクを生贄にしようと)
(していることを訴える映像を追加した)

   『私は、ゼロ……』
   『私は、力なき者の味方であり、力ある者への反逆者である……』

(泣き叫んでいる無抵抗のイレヴンが、まるで的当てのように撃たれ、虐殺されてゆく……)
(その映像はしかし、総督府が完全に支配する租界では何の話題にもならなかった……)

(でも、それは彼の想定内だった、本当の目的は租界の外にあった)

33: 2013/10/01(火) 23:54:32.12 ID:mnm6tqPI0
.
   『これが、帝国の言う"支配"である!』
   『力なき者が、ただそこにいるというだけで蹂躙され、抗弁も許されず殺される……』
   『そこには、慈悲や、憐憫などは一切ないッ!あるのはただ、力の信奉のみだッ!』

(日本の独立……)
(ブリタニアの支配が強固になりつつある現在のエリア11で、いつしかその理由も)
(希薄になり人々から忘れられつつあったものが、彼の映像により呼び覚まされた)

   『───何もせず殺されるくらいなら、私は戦って氏ぬ!』
   『倒せずとも、一撃なりとも奴らに打撃を加え、痛みを思い出させてやるッ!』
   『力なき者の怒りがどれほどのものかを、身を以て思い知らせてやる───!』

(租界周辺で、そしてエリア11の各地で……)
(帝国の支配に対する反逆の炎がともり、風に吹かれ、野を焼くように燃え広がる……)

(ゼロという扇動家、そして扇要という象徴を得て、私たち"テ口リスト"はついに、)
(反逆者という茨の冠を手に入れた───己が身をも傷つける、裸の王の冠を───)

34: 2013/10/01(火) 23:56:04.64 ID:mnm6tqPI0
扇「……枢木スザクは今、軍に虚偽の罪を着せられ処刑されようとしている!」
  「自分たちがした、到底許されない虐殺行為を覆い隠すために!」
  「オレたちを薄汚いテ口リストだと印象づけるために!」
  「枢木首相の形見とも言うべき彼は、いま連中に殺されようとしている!」


(以前から、当局に目を付けられていた扇さん……)
(彼は、ルルーシュの提案───レジスタンスの象徴となること───に同意した)

(この脚では通常の活動はできず、もはや普通の生活も望めない、)
(ならば、自分は神輿となり、当局の耳目を自分に集めることで貢献しよう……)

(用済みとなり、捨てられるその日まで、象徴として振る舞うことを決意した扇さん……)
(その表情からは焦燥感は消え去り、今は全く迷いのない瞳で同志たちに訴えている)

35: 2013/10/01(火) 23:57:55.35 ID:mnm6tqPI0
ゼロ「揺るぎない信念と、尽きることのない情熱を併せ持つ、稀有のリーダー……」
   「それこそが扇要であり、我々のリーダーである!」

   「彼はまた、正直な人でもある……自分が弱い人間であることを認めている」
   「私は、彼のその誠実さに心をうたれる!」
   「彼こそが、不実の帝国への反逆者たる我々の、まさに主導者に相応しいッ!」


C.C.(……思ってもいないことを、よくもまあポンポンと……)
   (まるで、女でも口説いているのかというような物言いだ……)
   (……ふむ、革命は恋慕にも似たものだ、とは誰の言葉だったかな?)

36: 2013/10/01(火) 23:59:55.37 ID:mnm6tqPI0
(ゼロ……ルルーシュの背後で、C.C.と呼ばれる女が微かに笑ったのが目に入った)
(ルルーシュがいる傍には、必ず彼女がついている、まるでボディガードのように……)
(滅多に表情を見せない彼女が、この場で微笑む理由がわからない)


玉城「……なんで笑うんだァ?あの女……」ボソ…

カレン(あ、玉城さんも気づいたのか……)


(C.C.の、ゼロに対する特権意識みたいなものだろうか……)
(良い気はしないが、彼もそれを咎めたてる様子がないし、私たちが言う筋もない)
(ふと、ワンマン社長と愛人秘書のイメージが浮かび、吹き出しそうになるのを堪えた)


カレン(……後で玉城さんに言ってみよ……)

ゼロ「……以上だ!」


(丁度その時、ゼロと扇さんの演説が終わった)
(……倉庫の中は、水を打ったように静まり返っている)

37: 2013/10/02(水) 00:01:54.93 ID:gRhZavTU0
ゼロ「作戦決行まで、ここで準備および待機を行うがその前に……」
   「今回の決行にあたり、非常に力強い味方を得られたので紹介しよう」
   「日本解放戦線の……藤堂鏡志郎とその部下たちだ」

カレン「ええっ!?」

玉城「なんだとおッ!?」

南「マジかよ!」


(私たちの間で驚きの声が上がる……会場は一斉にどよめいた)
(レジスタンスの一作戦に、"厳島の奇跡"が参加するなんてあり得ない)
(しかし……壇上に上がったのは、まさしく藤堂鏡志郎だった)

38: 2013/10/02(水) 00:03:54.95 ID:gRhZavTU0
藤堂「紹介に預かった、藤堂鏡志郎だ……挨拶は抜きにさせてもらう」
   「この作戦を、我ら日本解放戦線も非常に重要視している……」
   「これが成功することで、帝国の支配がゆらぐ大きなきっかけに繋がる」

   「断じて成功させねばならん……私も全力を挙げて協力しよう!」


(藤堂鏡志郎……)
(ブリタニアと日本の戦争で、唯一ブリタニアに土を付けた"厳島の奇跡"を成した人……)
(彼の言葉で、私たちは火が付いたように沸き立った)
(百人以上の人々の歓喜と怒号が、地下倉庫の中でこだまする……)

39: 2013/10/02(水) 00:05:58.32 ID:gRhZavTU0
■約1週間前 ナリタ連山 日本解放戦線アジト ─────

片瀬「ふむ……君がゼロか」

ゼロ「お初にお目にかかります……無理を聞いていただき、感謝いたします」

片瀬「いや、私も、君には興味があったのでな」
   「あの総督暗殺を成功させ、今は迅速にゲットー内のレジスタンスをまとめつつあると」
   「いう、大変有能な男とはどんなものか……」

ゼロ「恐れ入ります」

C.C.「……」

40: 2013/10/02(水) 00:07:55.13 ID:mnm6tqPI0
(扇たちから、バックには日本解放戦線がいることは聞いており、また連中が俺の行動を)
(見ているならば、接触をしてくることは容易に予測できた)
(実際に接触を受けた俺は、すぐさま行動を起こした……直接、話をしたいと伝えたのだ)

(C.C.にも、いつもの拘束衣でなく、これから会う連中に合わせて和服の訪問着をあつらえた)
(結い上げた緑の髪に、深い紫の染め物……さすがは咲世子、着付けも完璧だ)

(奴は窮屈だと最後までだだをこねていたが、鏡の中の自分の姿を見たきり黙った)
(本人もまんざらでもないのだろうが、指摘すればピザ女が殴ってくるのは目に見えている)
(なのであえて放っていた……言って欲しそうに見ていたが、知ったことか)

41: 2013/10/02(水) 00:09:56.75 ID:gRhZavTU0
片瀬「……しかし……君は何を焦っているのだ?」
   「有能なのは認めるが、拙速に過ぎればえてして物事を失敗する……」
   「もっと時間をかけるべきことを、なぜ今急ぐのだ?」

ゼロ「ご存じですね、枢木スザク……」
   「彼は、あと数日で処刑される運命にあります」

片瀬「うむ……枢木ゲンブ首相の忘れ形見だな……」
   「彼の処刑は、私たちも心を痛めておる」

藤堂「……」

42: 2013/10/02(水) 00:11:56.48 ID:gRhZavTU0
ゼロ「私は……彼を助け出す」

片瀬「何!?」


(俺の言葉に、片瀬ら日本解放戦線の幹部たちは一様に驚いた様子だった)
(それも想定済み……連中が、奴を助け出す義理はなく、またブリタニア側の抵抗も)
(考えれば、失敗に終わる可能性が極めて高い作戦になるからだ)


藤堂(……我々の会議では、枢木スザクを助けない、という決定になったが……)
   (こいつはそれをやるというのか?どうやって?)

ゼロ「そのために私は、私の持てる力を集結しているのです」

片瀬「ふむう…………」チラッ

藤堂「……」

43: 2013/10/02(水) 00:13:56.05 ID:gRhZavTU0
草壁「……ゼロ、それはさすがに無理ではないのか?我々も計画を検討したが、」
   「実現は不可能だと判断したところだ……君は、一体どうやるつもりだ?」

ゼロ「作戦の機密事項にあたります……ご容赦を……」

片瀬「…………」
   「彼は、皇(すめらぎ)家との関係もあってな……」
   「皇家はわかるな?」

ゼロ「キョウトの家柄ですね」

片瀬「うむ……我々も、本来なら彼を救出したいのだ……」
   「だが、草壁も言ったように、勝ち目が全く見いだせなかった」
   「……ゼロ、君は、どうやって"奇跡"を起こすつもりなのだ?」

藤堂「……」ジロ

44: 2013/10/02(水) 00:15:57.64 ID:gRhZavTU0
ゼロ「……奇跡を頼みにはいたしません」
   「全ては、綿密な調査と子細な計画、そしてよどみなく実行する行動力が為し得ること」

藤堂「……」コクリ

片瀬「フフ、なるほど……」
   「しかし、我々の助けがあれば、その計画とやらもより確実なものとなるのだろう?」
   「だから、会いたいと言ってきた……違うかね?」

   「話次第では、我々もその計画に手を貸すこともやぶさかではない」
   「……君の、仮面という不躾を不問にしてもいいと思っておる……話してくれんか?」


(……やはりそうだ、この仮面の下の素顔に、興味を示すはずだったのだ)
(それも想定済みだ……俺はむしろ、いつ言い出すかと待ち構えていたのだ)


ゼロ「……人払いをお願いしたい」

片瀬「ふむ?」

ゼロ「私がこの仮面を被っているのは、当然のことながら相応の理由がありますが……」
   「あなただけになら、私の素顔をお見せし、計画についてもお話ししましょう……」

45: 2013/10/02(水) 00:17:55.33 ID:gRhZavTU0
草壁「どこの馬の骨ともわからん奴が、随分と思い上がったことを言うではないか!」ガタッ!!
   「望みなら、仮面のままその首を叩き落としてやってもいいんだぞ!?」シュラッ…!


(草壁は抜刀し、刃を俺の首元できらめかせた……身構えたC.C.が、草壁を睨む)


C.C.「おい!……この男の首筋に1ミリでも傷をつけてみろ、」
   「お前の気が狂うまで、トラウマとロンドを躍らせてやるぞ……」

草壁「ふっ……ふははははっ!こりゃ随分と気の強い娘さんだな!」
   「身体検査をされて武器も持ってないのに、どうやって反撃をするつもりだ?」

C.C.「私がその気になれば、この部屋の全員を狂気に陥れることくらいわけはない……」
   「試すか、軍人……?」ニヤ…

片瀬「草壁……」

ゼロ「C.C.!」

草壁「……はっ」…カッ

C.C.「……」プイッ

46: 2013/10/02(水) 00:19:56.75 ID:gRhZavTU0
片瀬「……ふむ、ではこうしよう、藤堂だけはここに残す」
   「お前も、その物騒なボディガードが傍におるだろう?それで公平だと思うが?」ニッ

ゼロ「……結構です」


(片瀬が視線で指示を出す)
(藤堂だけを残し、他の幹部連中は部屋から出て行った……最後に、藤堂が扉に鍵をかける)
(……完璧に想定通りだ、これで全ての条件はクリアーされた)


ゼロ「では……」

47: 2013/10/02(水) 00:21:55.80 ID:gRhZavTU0
(俺は、仮面のあごに指を掛け留め金を外した、後頭部の覆いがスライドアップする)
(ゆっくりと、仮面を上げてゆく……その下から現れた俺の顔を見て、片瀬と藤堂は驚いた)


藤堂「なんと……っ!」

片瀬「日本人ではなかったとは……!」
   「しかも、まだ、子供だったとはな……!」

ゼロ「これは異なことを……」
   「日本では古来、15歳を以てゲンプク……成人と扱っていたのでは?」
   「私は、現在の基準でもじき成人となる者、何が問題たりえましょうや?」ニヤリ

片瀬「……はっ、はははっ!これはしてやられたわ!」


(俺の言葉に、呵呵大笑する片瀬……)
(藤堂はといえば、俺が本当に暗殺を実行した者なのか訝しんでいる様子だ)

48: 2013/10/02(水) 00:23:56.27 ID:gRhZavTU0
(片瀬の笑いが収まるのを見計らい、俺はおもむろに言葉を繋いだ)


ゼロ「片瀬少将……」

片瀬「うむ?」

ゼロ「私がこうして、あなたを信頼して素顔をさらけ出したのです……あなたも、」
   「私を全面的に信頼しろ……!」キュィィィン!!

片瀬「ぬう……っ!?」


(そう……片瀬にギアスをかけるために、仮面を脱ぐ必要があったのだ)
(仮面のアイシャッター越しでは、藤堂に不信をもたれる……)
(また、藤堂をこの場に立ち会わせることで、片瀬が自発的に俺を信用したものと)
(思わせたかったのだ……)

49: 2013/10/02(水) 00:25:57.26 ID:gRhZavTU0
(しばし、無言でにらみ合う形となった俺たちに、藤堂はそれを侮辱ととったようだ)


藤堂「貴様、信頼しろだと……?少将に対し、無礼な……!」

片瀬「…………よい、藤堂」

藤堂「はっ?」

片瀬「よかろう、お前を信頼しよう」ニコ

藤堂「!?」

ゼロ「ありがとうございます……」
   「私の素顔については、どうか御内密に……」カポッ

片瀬「うむ……藤堂、こやつのことは、誰にも語るでないぞ」

藤堂「……はっ」

50: 2013/10/02(水) 00:27:58.97 ID:gRhZavTU0
■租界周辺ゲットー ─────

(日本解放戦線から密かに運搬されてきた"無頼"や銃火器類が、次々と地下倉庫へ)
(運び込まれてくる……それらを頼もしげに見るレジスタンスたちの歓声が、)
(地下倉庫内で反響し大きくうねる)
(しかし壇上で、俺が腕を挙げると、皆が一斉に口を閉じた)


ゼロ「……諸君、これから、作戦名"乾坤"の内容を伝える!作戦目標は……」

   「……第2目標が枢木スザクの救出!」
   「そして第1目標は、コーネリア新総督の拉致である!」バッ!!


(いま初めて明かす、第1目標……)
(それを聞いたレジスタンス達は皆、息をのんだ)
(予め伝えておいた藤堂や扇も、俺の言葉であらためて覚悟を決めた風だ)

51: 2013/10/02(水) 00:29:56.50 ID:gRhZavTU0
ゼロ「総督府は、すでに我々の動きをある程度まで把握している」
   「しかし、その目的は救出作戦にあると判断している……これは、絶好の機だッ!」

   「"ブリタニアの魔女"を捕えることができれば、ブリタニアにとっては」
   「屈辱にも等しい敗北を与えることになる!」
   「それが叶わぬなら、暗殺も厭わない!」

ゼロ「部隊を2班に分ける!」

   「第1班は私が率いる!」
   「処刑場への突入を行い、目標には近づかぬまま散開行動および威圧射撃を」
   「繰り返すことで戦場に混乱をもたらし、敵の目標を散漫にさせる!」

   「この時点では、枢木スザクの救出は行わない!」
   「砲火により、敵部隊を徹底的に混乱させるのが目的だ!」

ゼロ「そして第2班は藤堂が率いる!」
   「第1班が敵部隊を引き付けた直後に突入、包囲陣によりコーネリアおよび親衛隊に」
   「飽和攻撃を仕掛け、足止めをしたところを藤堂達の"無頼"の神速をもって」
   「コーネリアに迫り、これを討ち取り、拉致する!」

   「第2班の行動により敵が完全に混乱に陥ったのち、第1班は枢木スザクを救出する!」
   「これで全ての目的が達せられるッ!」

52: 2013/10/02(水) 00:31:58.10 ID:gRhZavTU0
(レジスタンス達は、身じろぎひとつせず、俺の作戦概要に真剣に聞き入っていた)
(だが、もし今、損耗率を尋ねられたら……)

(俺の事前の計算では、最悪のケースでは70%を超えるはずだった)
(3人のうち2人は必ず氏ぬ、という計算だ……これは、氏ねと言うのに等しい)
(尋ねられれば……俺は、嘘を言うしかないだろう)

(……だが、予想外なことに、俺の後を扇が継いだ)


扇「……おそらく、戦いは熾烈を極めるだろう」
  「ブリタニア側も、枢木スザクを奪われるという失態は避けようと、」
  「準備万端で我々を待ち構えている……極めて危険だ」

  「だが……ゼロが今述べたように、オレらが命を賭けるだけの価値はある!」
  「オレも、現場近辺まで出て、状況を逐一把握することに努める」
  「君たちも、日本のために……いや、君たちの友人や家族のためにッ!」
  「……オレに、力を貸してくれッ!」

53: 2013/10/02(水) 00:33:56.90 ID:gRhZavTU0
(凛とした表情で、レジスタンスたちを鼓舞する扇……)
(俺は仮面の下で、多少の驚きと共に彼を見た)
(役職が人を変えるというが……これは、案外に化けるかもしれない……)


玉城「ッたりめえだろおッ!オレに任せとけッての!」
   「それよりもおめェ、あンまり前線に出ンなよぉ!?」
   「戦場で、飛び交う弾ァかいくぐりながら車椅子を押すのだけは勘弁だぜェ!?」


(玉城の言葉に、張り詰めていた空気が弾けた……全員が、大きく笑いながら壇上の扇を見る)
(扇は、その言葉に苦笑しつつ、目じりに涙を浮かべていた)
(カレンも、藤堂の配下たちも笑っていた……)
(出会ってこのかた、笑顔を見せたことのなかった藤堂ですら、口元が緩んでいるようだ)


ゼロ(うむ……扇は、与えた役割を見事に果たしてくれている……)
   (我ながら、良い人材登用だったな……)

54: 2013/10/02(水) 00:35:57.17 ID:gRhZavTU0
■兵舎内 独房 ─────

(ユーフェミアが走り去った後、ふたたび静寂を取り戻した独房の中……)
(しかし、オレの心は先ほどまでとは違い、平静の中にあった)
(冷たいコンクリートの床の上に正座をし、心をさらに静める)


スザク(報われない人生だったが……最後に甲斐を見いだせた)
    (オレなんかのために、最後に声をかけてくれた彼女のために……)
    (立場上決して言えない言葉を、最後まで言おうとしていた彼女のために……)


(彼女の、優しそうな微笑みが脳裏に浮かぶ)
(その瞬間、心の中に清らかな光が差し込み、醜いエゴが焼かれてゆくのを感じた)
(献身とは、こういう気持ちを言うのだろうか……)


スザク(……オレは、ユーフェミア様のために氏のう……!)

55: 2013/10/02(水) 00:37:57.80 ID:gRhZavTU0
■租界周辺ゲットー ─────

(いまや、レジスタンスたちの意気はすっかり軒昂していた)
(明日の作戦は、間違いなく凄惨な戦いになるにも関わらず、それを本当の意味で)
(自覚する者もいない……彼らは、喜んで命を投げ出す気になっている)
(素晴らしい戦争になる予感がした)


「ゼロッ!ゼロッ!ゼロッ!ゼロッ!」

「扇ッ!扇ッ!扇ッ!扇ッ!」


(だが、俺の心は彼らの昂揚とは程遠く……)
(無実の罪で牢の中に繋がれ、無意味な氏を待つスザクの心境を思えば、今すぐにでも)
(スザクが待つ牢に押し入りたくなる……)


ゼロ(……こいつらが何人氏のうと構わん……)
   (しかし、奴は絶対に氏なせんッ!氏んではならないんだッ!)

   (必ず助け出してやる……待っていろ、スザク……ッ!)


   ────── 続く

56: 2013/10/02(水) 00:41:32.61 ID:gRhZavTU0
途中のご支援、心から感謝いたしております
スレが分断してしまい、申し訳ありませんでした

また続きが書けましたら、よろしくお願いいたします

57: 2013/10/02(水) 00:44:52.58 ID:1q14dB8D0
乙乙
この展開だと裏切りとかろくでもない方向には行かなさそうだな(扇除く)

だがこういうシリアス・アナザー展開はVIPよりかSS速報で書いた方がいいと思うんだがどうだろう

58: 2013/10/02(水) 00:50:02.27 ID:gRhZavTU0
ありがとうございます、おっしゃる通りで…

続きができましたら、以降はSS速報にて…

スザク「氏なせてよ!」ルルーシュ「えっ?」

引用: シャルル「いーむゎあぁ……」神官「えっ?」