1: 2017/04/25(火) 00:17:05.583 ID:7F7iA+1i0.net
女「では、さっそく今大人気のドーナツをいただきたいと思います」
女「それでは……」モグッ
女「おいひぃ~!」
女「口の中でとろけりゅぅぅぅ!」
女「もう最高でひゅっ!」
女(ハァ……もうこんなリアクションしたくないよぉ……)
女「それでは……」モグッ
女「おいひぃ~!」
女「口の中でとろけりゅぅぅぅ!」
女「もう最高でひゅっ!」
女(ハァ……もうこんなリアクションしたくないよぉ……)
5: 2017/04/25(火) 00:20:29.406 ID:7F7iA+1i0.net
マネージャー「お疲れ様!」
マネージャー「いやー今日のグルメリポートもよかったよ」
マネージャー「全国の男性のハートをわし掴みにしたこと間違いなしだ!」
女「はぁ……」
マネージャー「じゃ、次の現場に行くよ」
女「次はなんですか?」
マネージャー「CM撮影さ」
マネージャー「いやー今日のグルメリポートもよかったよ」
マネージャー「全国の男性のハートをわし掴みにしたこと間違いなしだ!」
女「はぁ……」
マネージャー「じゃ、次の現場に行くよ」
女「次はなんですか?」
マネージャー「CM撮影さ」
7: 2017/04/25(火) 00:21:43.435 ID:7F7iA+1i0.net
演出家「じゃあ、この牛乳をグイッと飲んで下さい」
演出家「いつもやって下さってるようにね」
女「……はい、分かりました」
演出家「いつもやって下さってるようにね」
女「……はい、分かりました」
8: 2017/04/25(火) 00:25:02.102 ID:7F7iA+1i0.net
女「……」グビッ
女「!」ビクビクッ
女「おいひぃ~!」
女「おいひふぎて、口から白い液体があふれちゃうのぉ~~~~~!」
演出家「――素晴らしい! 一発オーケーだ!」
女「……どうも」
女「!」ビクビクッ
女「おいひぃ~!」
女「おいひふぎて、口から白い液体があふれちゃうのぉ~~~~~!」
演出家「――素晴らしい! 一発オーケーだ!」
女「……どうも」
10: 2017/04/25(火) 00:28:09.922 ID:7F7iA+1i0.net
女(ったく、バカじゃないの?)
女(なぁ~にが、口から白い液体があふれちゃうの、よ)
女(あんなもんお茶の間に流れたら苦情くるんじゃないの!?)
女(でも今はああいうアヘってるようなリアクションが受けるってんだから仕方ないけど……)
女(私としては、もっと普通なリアクションをしたいんだけどなぁ……)
女(なぁ~にが、口から白い液体があふれちゃうの、よ)
女(あんなもんお茶の間に流れたら苦情くるんじゃないの!?)
女(でも今はああいうアヘってるようなリアクションが受けるってんだから仕方ないけど……)
女(私としては、もっと普通なリアクションをしたいんだけどなぁ……)
11: 2017/04/25(火) 00:30:47.207 ID:7F7iA+1i0.net
女「ねえ、マネージャーさん」
マネージャー「ん?」
女「私……もっと普通のリアクションしちゃダメなのかな?」
マネージャー「な、なにをいってるんだ!」
マネージャー「君のウリはなんといってもあのお色気リアクションじゃないか!」
マネージャー「キュートな君がおいしい物を食べて、アヘアヘすることで」
マネージャー「三大欲求のうち、食欲と性欲に訴えかける!」
マネージャー「そのおかげで、君はここまで売れっ子のグルメタレントになれたんじゃないか!」
女「そうですよね……すみません」
マネージャー「ん?」
女「私……もっと普通のリアクションしちゃダメなのかな?」
マネージャー「な、なにをいってるんだ!」
マネージャー「君のウリはなんといってもあのお色気リアクションじゃないか!」
マネージャー「キュートな君がおいしい物を食べて、アヘアヘすることで」
マネージャー「三大欲求のうち、食欲と性欲に訴えかける!」
マネージャー「そのおかげで、君はここまで売れっ子のグルメタレントになれたんじゃないか!」
女「そうですよね……すみません」
12: 2017/04/25(火) 00:32:14.900 ID:7F7iA+1i0.net
―マンション―
女「ふぅー、疲れた」
女(グルメタレントといっても体型崩すのは厳禁だから、あまり量は食べられないのよね)
女(あーあ、お腹すいた……)
女「ポテトチップスでも食べよ……」パリッ
女「ふぅー、疲れた」
女(グルメタレントといっても体型崩すのは厳禁だから、あまり量は食べられないのよね)
女(あーあ、お腹すいた……)
女「ポテトチップスでも食べよ……」パリッ
14: 2017/04/25(火) 00:35:39.091 ID:7F7iA+1i0.net
女「おいひぃ~!」
女「ポテトの味が口の中でふんわり広がりましゅぅぅぅ!」
女「塩もピリリとしてて……もう最高っ! ほわぁ~……」
女「――!」ハッ
女「……またやっちゃった」
女(誰もいないとこでも、こんなリアクションするなんて、もはや一種の病気だわ……)
女(気分転換に散歩でもしようかな)
女「ポテトの味が口の中でふんわり広がりましゅぅぅぅ!」
女「塩もピリリとしてて……もう最高っ! ほわぁ~……」
女「――!」ハッ
女「……またやっちゃった」
女(誰もいないとこでも、こんなリアクションするなんて、もはや一種の病気だわ……)
女(気分転換に散歩でもしようかな)
15: 2017/04/25(火) 00:37:41.529 ID:7F7iA+1i0.net
女「あら……?」
女(へえ、こんなところに料理屋があったんだ)
女(ちょっと寄ってみようかな)
女「お邪魔しまーす……」ガララ…
女(へえ、こんなところに料理屋があったんだ)
女(ちょっと寄ってみようかな)
女「お邪魔しまーす……」ガララ…
17: 2017/04/25(火) 00:42:39.632 ID:7F7iA+1i0.net
―料理屋―
料理人「へい、らっしゃい」
女「こんばんは」
女(あら、なかなか渋くてかっこいいお兄さんじゃない)
料理人「――ん、あんたは」
料理人「へい、らっしゃい」
女「こんばんは」
女(あら、なかなか渋くてかっこいいお兄さんじゃない)
料理人「――ん、あんたは」
18: 2017/04/25(火) 00:45:18.847 ID:7F7iA+1i0.net
女「あら、私のこと知ってるんですか?」
料理人「……ファンだからな」
女「アハハ、ウソつき」
女「あなた、あんな間抜けなリアクションを好きになるタイプじゃないでしょ」
料理人「冗談はさておき、最近テレビでよく見る顔だからな」
料理人「まさか……こんな店に現れるとは思わなかったが」
料理人「……ファンだからな」
女「アハハ、ウソつき」
女「あなた、あんな間抜けなリアクションを好きになるタイプじゃないでしょ」
料理人「冗談はさておき、最近テレビでよく見る顔だからな」
料理人「まさか……こんな店に現れるとは思わなかったが」
19: 2017/04/25(火) 00:48:17.477 ID:7F7iA+1i0.net
女「散歩してたら、たまたまこの店が目に入っちゃって……」
料理人「こんな夜中に散歩を?」
女「……」
料理人「お客さん、なにか悩みがあるみたいだな」
女(こんなこと話すの本当はまずいかもしれないけど……この人ならいいかな)
女「うん……実はね……」
料理人「こんな夜中に散歩を?」
女「……」
料理人「お客さん、なにか悩みがあるみたいだな」
女(こんなこと話すの本当はまずいかもしれないけど……この人ならいいかな)
女「うん……実はね……」
20: 2017/04/25(火) 00:52:02.654 ID:7F7iA+1i0.net
女「ご存じのように、私はお色気リアクションをウリにしてるグルメタレントだけど」
料理人「ああ、おいひぃ~、とかうみゃいぃ~、とかいうやつだな」
女「そうそう」
女「だけどホントはね……私、あんなリアクションしたくないのよ」
女「もうやめたいのよ」
女「普通に食べたい、大げさで性的なリアクションなんてしたくない」
女「だけど、あのリアクションやめたら私なんかしょせん一山いくらの女タレント」
女「しかも、ついに誰もいないところでもああいう食べ方するようになっちゃって」
女「ホント、もうどうしたらいいのか……」
料理人「ああ、おいひぃ~、とかうみゃいぃ~、とかいうやつだな」
女「そうそう」
女「だけどホントはね……私、あんなリアクションしたくないのよ」
女「もうやめたいのよ」
女「普通に食べたい、大げさで性的なリアクションなんてしたくない」
女「だけど、あのリアクションやめたら私なんかしょせん一山いくらの女タレント」
女「しかも、ついに誰もいないところでもああいう食べ方するようになっちゃって」
女「ホント、もうどうしたらいいのか……」
21: 2017/04/25(火) 00:52:45.768 ID:aiUuyJjHr.net
真面目な話になってきおった
22: 2017/04/25(火) 00:56:28.183 ID:7F7iA+1i0.net
料理人「じゃ、これでも食ってみ」スッ…
女「これは……」
料理人「サバの味噌煮だ」
料理人「あんたが日頃食ってるような洒落た食い物じゃなきゃ」
料理人「あんなリアクションも出ないんじゃねえか?」
女「いただきます!」モグッ
女「これは……」
料理人「サバの味噌煮だ」
料理人「あんたが日頃食ってるような洒落た食い物じゃなきゃ」
料理人「あんなリアクションも出ないんじゃねえか?」
女「いただきます!」モグッ
23: 2017/04/25(火) 00:58:44.059 ID:7F7iA+1i0.net
女「おいひぃ~~~ん!」
女「サバから煮汁がにじみ出るにょぉ~!」
女「サバさん、ありがとほほぉぉ~~~~~ん!」
女「――!」ハッ
女「ね?」
料理人「……重症だな」
女「サバから煮汁がにじみ出るにょぉ~!」
女「サバさん、ありがとほほぉぉ~~~~~ん!」
女「――!」ハッ
女「ね?」
料理人「……重症だな」
24: 2017/04/25(火) 01:03:33.958 ID:7F7iA+1i0.net
女「だけど、本当においしかったわ。どうもありがとう」ニコッ
料理人「……」
料理人「あんた、さっき性的なリアクションをしなきゃ、自分に価値はないっていってたが」
料理人「決してそんなことはないと思うぞ」
料理人「あんたはまともにやっても十分売れる人だと思う」
女「どうもありがとう、料理人さん」
女「またちょくちょく通わせてもらうわ」
料理人「お待ちしてます」
女(洗いざらい話したら……なんだかスッキリしちゃった! 悩みが少し晴れたかも……)
料理人「……」
料理人「あんた、さっき性的なリアクションをしなきゃ、自分に価値はないっていってたが」
料理人「決してそんなことはないと思うぞ」
料理人「あんたはまともにやっても十分売れる人だと思う」
女「どうもありがとう、料理人さん」
女「またちょくちょく通わせてもらうわ」
料理人「お待ちしてます」
女(洗いざらい話したら……なんだかスッキリしちゃった! 悩みが少し晴れたかも……)
25: 2017/04/25(火) 01:08:27.337 ID:7F7iA+1i0.net
ところが――
女「じゃあ今日はこのマカロンをいただきまぁ~す」サクッ
女「おいしいですね!」
スタッフ「ちょっと! もっとリアクションして! いつものやつ!」
女「おいひぃぃぃぃぃん! マカリョンが舌の上でとろけりゅぅぅぅん!」
スタッフ「そう、それだよ!」
女「このオレンジジュース飲むと……果汁が私の中に入ってくりゅぅぅぅ!」
女「焼きそばが口の中で私に絡みついてくるようで……あはぁ~~ん!」
女「うみゃひぃ~! なんておいひぃカレーライスにゃにょぉぉぉぉぉ!」
…………
……
女「じゃあ今日はこのマカロンをいただきまぁ~す」サクッ
女「おいしいですね!」
スタッフ「ちょっと! もっとリアクションして! いつものやつ!」
女「おいひぃぃぃぃぃん! マカリョンが舌の上でとろけりゅぅぅぅん!」
スタッフ「そう、それだよ!」
女「このオレンジジュース飲むと……果汁が私の中に入ってくりゅぅぅぅ!」
女「焼きそばが口の中で私に絡みついてくるようで……あはぁ~~ん!」
女「うみゃひぃ~! なんておいひぃカレーライスにゃにょぉぉぉぉぉ!」
…………
……
27: 2017/04/25(火) 01:12:26.241 ID:7F7iA+1i0.net
マネージャー「やったよ! とんでもないチャンスがやってきたよ!」
女「どうしたんですか?」
マネージャー「君のリアクションが、映画監督の目に止まって、映画の主演が決まったぞ!」
女「映画!? どんな映画なんですか?」
マネージャー「おいしそうに食事をする女性が、そのリアクションで世界を救うって映画らしい」
女「……すごい内容ですね」
マネージャー「今まで以上に色っぽいリアクションを期待してるよ!」
女(イロモノ映画っぽいけど、これは芸能界で羽ばたくチャンス! 頑張らなきゃ……!)
女「どうしたんですか?」
マネージャー「君のリアクションが、映画監督の目に止まって、映画の主演が決まったぞ!」
女「映画!? どんな映画なんですか?」
マネージャー「おいしそうに食事をする女性が、そのリアクションで世界を救うって映画らしい」
女「……すごい内容ですね」
マネージャー「今まで以上に色っぽいリアクションを期待してるよ!」
女(イロモノ映画っぽいけど、これは芸能界で羽ばたくチャンス! 頑張らなきゃ……!)
29: 2017/04/25(火) 01:15:24.680 ID:7F7iA+1i0.net
―マンション―
女「はぁ……」
女(映画の主演なんて願ってもない話だけど、またあのリアクションしなきゃいけないのか……)
女(私は一体どこに向かってるんだろう)
女(本当にこのままでいいのかな……天国のお母さんが見たらなんていうだろう)
女(おっと、ネガティブになっちゃいけない。深呼吸しないと……)スゥゥ…
女「空気おいひぃ~! 私の中で酸素がシャッキリポン~!」
女「――!」ハッ
女(とうとう呼吸しててもリアクションするようになっちゃった!)
女(このままじゃ……私、おかしくなっちゃう!)
女(料理人さん、助けて!)
女「はぁ……」
女(映画の主演なんて願ってもない話だけど、またあのリアクションしなきゃいけないのか……)
女(私は一体どこに向かってるんだろう)
女(本当にこのままでいいのかな……天国のお母さんが見たらなんていうだろう)
女(おっと、ネガティブになっちゃいけない。深呼吸しないと……)スゥゥ…
女「空気おいひぃ~! 私の中で酸素がシャッキリポン~!」
女「――!」ハッ
女(とうとう呼吸しててもリアクションするようになっちゃった!)
女(このままじゃ……私、おかしくなっちゃう!)
女(料理人さん、助けて!)
30: 2017/04/25(火) 01:19:24.328 ID:7F7iA+1i0.net
―料理屋―
女「――どうしよう!」
料理人「ついに空気の味にもリアクションするようになっちまったか」
女「そうなの!」
女「このまま症状が進んだら私、グルメタレントっていうかただの頭おかしい女になっちゃう!」
料理人「たしかに……日常生活もままならなくなっちゃうな」
料理人(何とかしてやりたいが……)
料理人(この人は何度かうちに来たが、俺の料理にもあのリアクションをしてしまってる)
料理人(まして、空気にも反応するレベルのを治すとなると……)
女「――どうしよう!」
料理人「ついに空気の味にもリアクションするようになっちまったか」
女「そうなの!」
女「このまま症状が進んだら私、グルメタレントっていうかただの頭おかしい女になっちゃう!」
料理人「たしかに……日常生活もままならなくなっちゃうな」
料理人(何とかしてやりたいが……)
料理人(この人は何度かうちに来たが、俺の料理にもあのリアクションをしてしまってる)
料理人(まして、空気にも反応するレベルのを治すとなると……)
31: 2017/04/25(火) 01:22:08.918 ID:7F7iA+1i0.net
料理人「料理人としては不本意なやり方だが、試しにわざとマズイ料理を作ってみた」
料理人「食ってみてくれ」コトッ
女「ショック療法ってやつね」
女「いただきます」モグッ
女「ぶはっ!」
女「まじゅいぃ~! 口の中でまずさがびゃくはつして、沸騰しちゃうにょぉぉぉ!」
女「……ダメだ」ウルッ…
料理人「今のあんたは、何を食べてもそのリアクションをしちゃいそうだな」
女「どうしよう……」
料理人「う~ん……」
料理人「食ってみてくれ」コトッ
女「ショック療法ってやつね」
女「いただきます」モグッ
女「ぶはっ!」
女「まじゅいぃ~! 口の中でまずさがびゃくはつして、沸騰しちゃうにょぉぉぉ!」
女「……ダメだ」ウルッ…
料理人「今のあんたは、何を食べてもそのリアクションをしちゃいそうだな」
女「どうしよう……」
料理人「う~ん……」
32: 2017/04/25(火) 01:25:25.509 ID:7F7iA+1i0.net
料理人「そもそもあんたはなぜ、グルメタレントに?」
女「私……昔から食べることが大好きで、ある料理番組に試食役として参加したの」
女「そしたら、その時おいしそうに食べてたのが、番組の偉い人の目に止まって」
女「それがきっかけでタレントになったの」
女「だけど……どこからどうおかしくなったのか」
女「いつからか、今みたいにおいひぃ~なリアクションばかりするようになってしまって……」
女「私のリアクションが先だったのか、それとも求められて始めたものだったのか」
女「それすらよく覚えてないのよ……」
料理人「卵が先か、鶏が先か、ってやつか」
女「私……昔から食べることが大好きで、ある料理番組に試食役として参加したの」
女「そしたら、その時おいしそうに食べてたのが、番組の偉い人の目に止まって」
女「それがきっかけでタレントになったの」
女「だけど……どこからどうおかしくなったのか」
女「いつからか、今みたいにおいひぃ~なリアクションばかりするようになってしまって……」
女「私のリアクションが先だったのか、それとも求められて始めたものだったのか」
女「それすらよく覚えてないのよ……」
料理人「卵が先か、鶏が先か、ってやつか」
35: 2017/04/25(火) 01:31:52.270 ID:7F7iA+1i0.net
料理人「だが、問題はそこじゃない」
料理人「元々あんたは、今みたいなリアクションをする人じゃなかったのは確かなんだろ?」
女「うん、それはその通り」
料理人「……あんたはなんで食べることが好きだったんだ?」
女「それは……氏んじゃったお母さんの料理がおいしかったから」
料理人「……!」ピクッ
料理人「お母さんの得意料理は?」
女「肉じゃが……だったわ。安いお肉を使っていたって素朴なものだったけど、おいしかった」
料理人「……」
料理人「ちょっと待っててくれ」
料理人「元々あんたは、今みたいなリアクションをする人じゃなかったのは確かなんだろ?」
女「うん、それはその通り」
料理人「……あんたはなんで食べることが好きだったんだ?」
女「それは……氏んじゃったお母さんの料理がおいしかったから」
料理人「……!」ピクッ
料理人「お母さんの得意料理は?」
女「肉じゃが……だったわ。安いお肉を使っていたって素朴なものだったけど、おいしかった」
料理人「……」
料理人「ちょっと待っててくれ」
36: 2017/04/25(火) 01:34:27.370 ID:7F7iA+1i0.net
女(すると、料理人さんは黙って料理を作り始めた)
女(何を作っているかはすぐに分かった)
女(これは……肉じゃがだ)
料理人「お袋さんの味、完全再現とはいかないだろうが……食ってみてくれ」コトッ
女(何を作っているかはすぐに分かった)
女(これは……肉じゃがだ)
料理人「お袋さんの味、完全再現とはいかないだろうが……食ってみてくれ」コトッ
37: 2017/04/25(火) 01:38:14.275 ID:7F7iA+1i0.net
女「……」モグッ
女「……おいしい」
女「まるで実家にいるようで……安心できる……そんな味だわ」
女「……あ」
料理人「……」ニヤッ
料理人「今までのリアクションで、今のが最高だったよ」
女「……おいしい」
女「まるで実家にいるようで……安心できる……そんな味だわ」
女「……あ」
料理人「……」ニヤッ
料理人「今までのリアクションで、今のが最高だったよ」
39: 2017/04/25(火) 01:42:40.079 ID:7F7iA+1i0.net
女「……ありがとう、料理人さん」
女「私……タレントになる前の、純粋に料理を食べてた時の気持ちを思い出せた!」
料理人「初心にかえれたようだな」
女「私、決心したわ!」
女「もう不自然なリアクションなんかしない! たとえそれで干されたとしても!」
料理人「……いい顔だ」
料理人「もし干されちまったら、俺が拾ってやるよ。なーんてな」
女「おかげさまで気が楽になったわ。どうもありがとう!」
女「私……タレントになる前の、純粋に料理を食べてた時の気持ちを思い出せた!」
料理人「初心にかえれたようだな」
女「私、決心したわ!」
女「もう不自然なリアクションなんかしない! たとえそれで干されたとしても!」
料理人「……いい顔だ」
料理人「もし干されちまったら、俺が拾ってやるよ。なーんてな」
女「おかげさまで気が楽になったわ。どうもありがとう!」
40: 2017/04/25(火) 01:45:39.436 ID:7F7iA+1i0.net
―撮影所―
監督「やあやあやあ、はじめまして!」
監督「君のリアクションがあれば、きっといい映画が撮れる!」
監督「じゃあさっそく撮影を始めよう!」
マネージャー「頼んだよ! こんなチャンス、めったにないんだからね!」
女「……はい!」
監督「やあやあやあ、はじめまして!」
監督「君のリアクションがあれば、きっといい映画が撮れる!」
監督「じゃあさっそく撮影を始めよう!」
マネージャー「頼んだよ! こんなチャンス、めったにないんだからね!」
女「……はい!」
41: 2017/04/25(火) 01:48:58.103 ID:7F7iA+1i0.net
監督「じゃあそこにあるサンドイッチを食べて!」
監督「アクション!」
女「……」モグモグ
モグモグ…
監督(――ん、なぜリアクションしない!? 早くおいひぃぃぃって叫んでくれ!)
マネージャー(おいおい何をやってるんだ!? のし上がるチャンスなんだぞ!?)
監督「アクション!」
女「……」モグモグ
モグモグ…
監督(――ん、なぜリアクションしない!? 早くおいひぃぃぃって叫んでくれ!)
マネージャー(おいおい何をやってるんだ!? のし上がるチャンスなんだぞ!?)
42: 2017/04/25(火) 01:51:53.788 ID:7F7iA+1i0.net
女「おいしい……」ニコッ
監督「!!!」ビビビッ
マネージャー「!!!」ビビビッ
監督「!!!」ビビビッ
マネージャー「!!!」ビビビッ
44: 2017/04/25(火) 01:56:08.152 ID:7F7iA+1i0.net
監督「す、素晴らしい!」ガタッ
女「え?」
監督「今の、とてもよかったよ!」
監督「なんていうか、お母さんの料理を嬉しがる子供のような純粋さがあった!」
女「ど、どうも」
監督「過剰じゃないリアクションにこんなにも魅力があったとは……!」
監督「おい脚本家、今からでも脚本を作りなおせるか!?」
脚本家「お任せ下さい! 彼女の演技でどんどんインスピレーションが湧いてきました!」
マネージャー(ボクはこの子は派手なリアクションあっての娘だと思ってたが……)
マネージャー(今のだけで確信した)
マネージャー(この子には自然のままでやっていける底力があったんだと――)
マネージャー(今までボクはこの子を誤った方向に進ませていたんだと――)
女「え?」
監督「今の、とてもよかったよ!」
監督「なんていうか、お母さんの料理を嬉しがる子供のような純粋さがあった!」
女「ど、どうも」
監督「過剰じゃないリアクションにこんなにも魅力があったとは……!」
監督「おい脚本家、今からでも脚本を作りなおせるか!?」
脚本家「お任せ下さい! 彼女の演技でどんどんインスピレーションが湧いてきました!」
マネージャー(ボクはこの子は派手なリアクションあっての娘だと思ってたが……)
マネージャー(今のだけで確信した)
マネージャー(この子には自然のままでやっていける底力があったんだと――)
マネージャー(今までボクはこの子を誤った方向に進ませていたんだと――)
46: 2017/04/25(火) 02:00:07.526 ID:7F7iA+1i0.net
―料理屋―
料理人「映画は大ヒットしたし、過剰なリアクションも求められなくなったし、よかったな」
女「なにもかも料理人さんのおかげ!」
料理人「いや……俺は何もしてないよ」
料理人(実際、肉じゃが作っただけだし)
女「ううん……料理人さんと出会ってなきゃ、今頃どうなってたか……」
女「本当にありがとう!」
料理人「映画は大ヒットしたし、過剰なリアクションも求められなくなったし、よかったな」
女「なにもかも料理人さんのおかげ!」
料理人「いや……俺は何もしてないよ」
料理人(実際、肉じゃが作っただけだし)
女「ううん……料理人さんと出会ってなきゃ、今頃どうなってたか……」
女「本当にありがとう!」
48: 2017/04/25(火) 02:04:27.082 ID:7F7iA+1i0.net
女「これから私、忙しくなるけど」
女「何度も何度もこの店に来るから!」
料理人「ああ、待ってるよ」
女「ところで――」
女(前にいってくれた“俺が拾ってやるよ”ってのは、干されなくても有効なの?)
料理人「ところで……の続きは?」
女「う、ううん、なんでもない! いずれちゃんと話すわ! それじゃ!」ガラガラ…
料理人「……」
料理人(あの人はまだ俺に何か隠してるようだが、実は俺も隠しごとがある)
女「何度も何度もこの店に来るから!」
料理人「ああ、待ってるよ」
女「ところで――」
女(前にいってくれた“俺が拾ってやるよ”ってのは、干されなくても有効なの?)
料理人「ところで……の続きは?」
女「う、ううん、なんでもない! いずれちゃんと話すわ! それじゃ!」ガラガラ…
料理人「……」
料理人(あの人はまだ俺に何か隠してるようだが、実は俺も隠しごとがある)
50: 2017/04/25(火) 02:08:21.834 ID:7F7iA+1i0.net
料理人(実は俺があの人の大ファンだってのは、本当だったりして……)
料理人(あの人の力になれたのは嬉しいが――)
料理人(あのリアクションがもう見れないと思うとちょっと寂しかったりして……)ピッ
テレビ『おいひぃぃぃぃんっ! 口の中ではじけりゅぅぅぅぅ!』
料理人(今までのあの人の出演番組、録画しといてよかった)
―おわり―
料理人(あの人の力になれたのは嬉しいが――)
料理人(あのリアクションがもう見れないと思うとちょっと寂しかったりして……)ピッ
テレビ『おいひぃぃぃぃんっ! 口の中ではじけりゅぅぅぅぅ!』
料理人(今までのあの人の出演番組、録画しといてよかった)
―おわり―
51: 2017/04/25(火) 02:16:17.039 ID:zeQQgfClr.net
料理人もやはり男だったか…乙
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