606: 2013/06/22(土) 21:17:42.75 ID:xeJ/Hl25o

607: 2013/06/22(土) 21:19:03.78 ID:xeJ/Hl25o


同日 17:20

-黄泉川家・キッチン-


吹寄「…………」

結標「…………」

姫神「…………」


グツグツ



吹寄「……えっと、結標さん?」

結標「何かしら?」



グツグツ



吹寄「これ……たしかチョコレートよね?」

結標「うん、そうだけど」



グツグツ



吹寄「だったらさ、何で……」

結標「?」



チョコレートだったもの『俺は最強の業務用チョコレートだ! そう思ってた時期が僕にもありました』



吹寄「何でこんな緑色の物体が出来てるのよっ!?」


とある魔術の禁書目録 (電撃文庫)
608: 2013/06/22(土) 21:20:37.01 ID:xeJ/Hl25o


結標「いやー、気がついたらこうなってたわ、あはは」

吹寄「あはは、じゃないわよ。くっ、こっちが少し目を離してた間に一体何があったの……?」

結標「何があったって……普通に言われた通りに調理したつもりよ?」

吹寄「言われた通りにやったらこうにはならないわよ普通」

結標「ええっー? あれー? おかしいわねー?」

姫神「何か変わったものでも入れた?」

結標「えっ? 別にそんな変わったものは入れてないと思うけど……」

姫神「とにかく何を入れたか言ってみて」

結標「ええと……ゴーヤジュースの粉、ワカメ、ビタミン剤、その他諸々」

吹寄「あれ? 結標さんは今何を作っているんだったっけ!?」

結標「? 何ってチョコレートだけど?」

吹寄「そんな『何言ってんのコイツ』的や顔されても困るんだけど!」

姫神「……とにかく。今度は私たちがちゃんと見ながら教えるから。きっちり丁寧にやっていこう」

結標「わ、わかったわ!」

姫神「じゃあ。このチョコレートだったものは廃棄しよう。万が一誰かの口に入ったら一大事」ポイッ

結標「ああっ! 私の手作りチョコレートが……!」



打ち止め「…………」



~回想~



一方通行『超能力者(レベル5)っつゥのはなァ、必ずどっか頭のネジが数十本吹っ飛ンでる人格破綻者だ』



一方通行『まァ、よォするに変人の集まりってことだな。学園都市の上位能力者っつゥのはよォ』

打ち止め『うーん、あなたが言うとすごい説得力かも、ってミサカはミサカは静かにうなずいてみたり』ウンウン

一方通行『…………』ビシッ

打ち止め『痛っ!? ええっ!? 何でミサカ叩かれたの!? ってミサカはミサカは理不尽な暴力に糾弾してみたり!』

一方通行『うっせェ、俺の癇に障ったからだ』

打ち止め『むむっ、じゃあじゃあ、前も話したけどお姉様はどの辺りが破綻してるの? ってミサカはミサカは首を傾げながら尋ねてみたり』

一方通行『あァ? ああ、そォだな……あっ、そォ言えば』

打ち止め『なになにー?』


一方通行『アイツ平然と自販機蹴り飛ばして飲みモンタダ飲みしてたな』


打ち止め『……ああ、そういえばそんなこともあったね、ってミサカはミサカはしみじみ思い出してみたり』

一方通行『真似すンなよクソガキ』

打ち止め『し、しないよ! ってミサカはミサカは失礼なことを言うあなたに徹底反論してみたり!』





609: 2013/06/22(土) 21:21:50.65 ID:xeJ/Hl25o


打ち止め「…………」ジー


姫神「さて。じゃあまたチョコレートを刻む作業から始めよう」

結標「うん、わかったわ。よし、切って切って切りまくるわよー!」つノコギリ

吹寄「……いい加減包丁を使うことを覚えたほうがいいわよ」

姫神「時間はあまり多く残されてない。早く刻み終えてしまおう」トントン

結標「や、やっぱり速いわね姫神さん……よーし、負けないわよ」ギコギコ

吹寄「あー、やっぱりこっちで刻んじゃうかー……ん? 何この臭い?」クンクン

姫神「……香辛料の香り?」クンクン

吹寄「んー、でもそんなもの使ってないわよね? というか普通使わないし」

姫神「うん。そうだけど……」

吹寄「…………」チラッ

結標「おりゃー」ゴリゴリゴリゴリ

吹寄「……結標さん」

結標「何かしら?」

吹寄「あなたは一体何を切り刻んでるのかしら?」

結標「何って……ただのチョコレートだけど?」



カレールー『板チョコちゃんだと思った? 残念カレールーちゃんでした!』



姫神「……どう見てもただのカレールーなんだけど?」

結標「えっ、本当? あっ、本当だ! 何か辛い臭いがすると思ったら……」

吹寄「というか何で今の今まで気付かなかったのか……」

結標「まあいいわ。似てるからこれで大丈夫でしょう」ゴリゴリ

吹寄「って、そのまま続けないで!! たしかにそれを間違うのは鉄板ネタだけどそのまま続行する人は見たことないわ!!」

結標「大丈夫よ。これちゃんと甘口のカレールーだから」ギーギー

吹寄「そういう問題じゃない!」



打ち止め「……なるほど! たしかに超能力者(レベル5)だ、ってミサカはミサカは勝手に納得してみたり!」



───
──



610: 2013/06/22(土) 21:23:25.22 ID:xeJ/Hl25o


同日 17:30

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-



ピコピコ、キラーン!



禁書「ぐっ、この、あっ!」ポチポチ

一方通行「オイオイ構築が甘めェンだよクソシスターが」カチッカチッ

禁書「く、クソシスターじゃないんだよ! ……あっ、しま──」ポチポチ

一方通行「そんなンじゃ、俺には到底勝つことは不可能だ……ぜッ」ピッ



チャラララーン!



テレビ『1P:LOSE 2P:WIN』



禁書「ああ……負けちゃった」

一方通行「当然の結果だなァ。オマエの残念な脳みそと俺の最強の脳みそじゃ比べるまでもねェだろ」

禁書「私の脳みそは残念じゃないんだよ!」

一方通行「知ってるかァ? そォいうことを言うヤツは大抵自覚してねェンだよ」

禁書「ふふん。だったら私は関係ないかも」

一方通行「オマエ人の話聞いてたか?」


スフィンクス「にゃーごー! しゃー!」ピョンピョン

風斬「……ふふふっ」つ猫じゃらし

スフィンクス「ヒョオ────シャオッッ!」ザクッ

風斬「!?」ビクッ


611: 2013/06/22(土) 21:25:06.48 ID:xeJ/Hl25o


禁書「しかしあくせられーた、てとりす強いね」

一方通行「そォか? 単純にオマエが弱いだけじゃねェのか? 俺これ初めてやったからな」

禁書「えっ、嘘っ!? それなのにあんなに軽快にボタンを押せるの!?」

一方通行「だから言ってンじゃねェか。頭の出来が違うってな」

禁書「ぐぬぬ、ひょうかとやったら負けなしだったのに……」

一方通行「ハァ? オマエそれマジで言ってンのか?」

禁書「うん。ねえひょうか」

風斬「……えっ? ええと、うん……」

一方通行「…………」

禁書「じゃあひょうかやろう!」

風斬「うん、いいよ」ニコ



~五分後~



チャラララーン!



テレビ『1P:WIN 2P:LOSE』



禁書「わーい! 私の勝ちかも!」

風斬「あはは、負けちゃった」

一方通行「…………」

禁書「ほらっ、私だっててとりす上手なんだよ」ドヤッ

一方通行「……いや、殴りたくなるほどムカつくドヤ顔してるところ悪りィけどよォ」

禁書「何かな?」フフン

一方通行「誰がどォ見ても風斬が手加減してンじゃねェか」

風斬「えっ」

禁書「手加減?」

一方通行「ああ」

風斬「……べ、別にそんなことは……ないですよ」

一方通行「嘘ついてンじゃねェよ。わざとらしい操作ミスをしている上に、インデックスの画面の方へ異常な頻度で視線を移してだろ?」

風斬「!? どうしてそれを……?」

禁書「?」キョトン

一方通行「レベル5の観察力を舐めてンじゃねェよ。まァ、それ以前によォ」


一方通行「このクソみてェな機械音痴が、ゲームの対人戦で全勝なンて偉業成し遂げられるわけねェだろォが」


612: 2013/06/22(土) 21:26:10.65 ID:xeJ/Hl25o


禁書「き、機械音痴じゃないんだよ! てれびのリモコンとえあこんのリモコンの区別がちゃんとつくもん!」

一方通行「ンなこと言ってる間は一生機械音痴だ」

風斬「え、えっと……」オロオロ

禁書「でも信じられないんだよ。ひょうかがわざと負けてるなんて」

一方通行「何なら俺とやってみるか風斬? 手加減とかなしでだ」

風斬「えっ?」

一方通行「そォすりゃコイツもいかに井の中の蛙だったかよくわかるだろ。あ、それ以前に俺に負けてるからこの言葉は使えねェか……」

禁書「……そんなこと言ってあくせられーた。ひょうかをいじめるつもりなのかな?」

一方通行「ンなわけねェだろォが。ただゲームで対戦して遊ぶだけだ」

風斬「……あ、あの」

一方通行「つゥわけでコントローラーを持て風斬。俺相手に手加減なンて馬鹿みてェな真似しやがったらブン殴るぞ?」

風斬「…………は、はい」スッ



~五分後~



ピコピコピコ、キラキラーン、チャーン!



一方通行「…………」カチッカチッ

風斬「…………」カチカチ



ピコピコ、チャラリン! ドーン!



禁書「す、すごい……早すぎて何が何だかわからないんだよ……」

上条「何やってんだお前ら?」テクテク

禁書「見て見てとうま! 何かすごいんだよ二人とも!」

上条「ああ、テトリスやってたのか。……たしかにすげえな、俺じゃこんなの無理だな」


613: 2013/06/22(土) 21:28:21.92 ID:xeJ/Hl25o


一方通行「……チッ、予想以上にやるじゃねェか」カチッカチ

風斬「い、いえ、そんな……」カチカチ

一方通行「ンなこと言いながら俺の攻撃平然とやり過ごしてンじゃねェよ」カチッ

風斬「…………」カチカチ

一方通行「……まァ、普通に考えたらうめェンだろォが……」カチッカチッカチッ

風斬「…………ッ」カチカチカチ

一方通行「だけど相手が悪かったな、これで詰みだ」カチッカチッ



チャラリン! チャラリン! ドーン! ドーン!



チャラララーン!



テレビ『1P:WIN 2P:LOSE』



一方通行「……ケッ、クソが。無駄に頭ァ使っちまったな」ボリボリ

上条「お疲れー。ほらよ、缶コーヒー」スッ

一方通行「ほォ、気が利く三下じゃねェか。アリガトよ」カチッ

上条「しかしさすがレベル5だな。やっぱゲームも上手いんだな」

一方通行「まァ、ものにもよるけどな。あまりに専門的なモンだとモノにするのに二、三十分かかる」

上条「レベル5パネェ……」


風斬「…………ふぅ」

禁書「ひょうか!」

風斬「! な、何?」

禁書「ひょうかって実はすごかったんだね! 知らなかったんだよ!」

風斬「……べ、別にそんなことないよ」

禁書「でも私とやるときは手加減してたのはちょっと許せないんだよ」

風斬「……ごめんなさい」

禁書「だから次からはちゃんと真面目にやって欲しいんだよ!」

風斬「…………うん!」


一方通行「まァ、その場合オマエが勝てる可能性はゼロになるっつゥわけだがな」

禁書「ううっ、それは言わないで欲しいかも……」


―――
――



614: 2013/06/22(土) 21:29:31.75 ID:xeJ/Hl25o


同日 17:50

-黄泉川家・キッチン-



パァン!!



結標「ぎゃあああああああああっ! チョコレートが爆発したぁ!!」ベトッー

吹寄「何があったの……ってわっ!? 一面がチョコレートだらけじゃない!?」

結標「ううっ、制服がベトベトだわ……こんなことなら着替えてからすればよかった……」

吹寄「エプロン付けてても防ぎきれない爆発って、一体何をどうすればこうなるのよ?」

姫神「ほんの少し。ほんの少し目を離しただけだった。どうしてこうなった?」

結標「私は普通にしてるつもりなのにー!」

姫神「そんなことより早く着替えてきたほうがいい。今からなら洗えばまだ間に合うかもしれない」

吹寄「洗うって……今からクリーニングに出すつもり?」

姫神「さっきチラッと洗濯機が見えたけど。あれは超高性能の値段の高いやつだった。あれならたぶん制服とかでも一晩でいける」

吹寄「そういえばここ高級マンションだったわね」

結標「じゃあちょっと着替えてくるわね、ってにぎゃぁ!! チョコレート踏んだぁ!!」ネチャッ

吹寄「スリッパも新しいの持ってくるわね」テクテク

姫神「私はキッチンを掃除しておく」

打ち止め「ミサカも手伝うよー! ってミサカはミサカは華麗に参上してみたり――ってぎゃあっ!! ミサカもチョコレート踏んだぁ!!」ヌチャ

姫神「あまり不用意に動かないほうがいい。ここは戦場と同等の危険度」



ガラララ



黄泉川「ただいまー! おっ? 何か甘い香りがするぞー?」


打ち止め「あっ、ヨミカワおかえりー! ってミサカはミサカは……ぎゃうっ! またチョコレート踏んだぁ!」ネチャ

姫神「……お邪魔してます」フキフキ


結標『ぎゃー! 髪の毛もチョコレートだらけだぁ!!』

吹寄『一回シャワー浴びといたらどう? 下準備はあたしたちがやっとくから、というかまだ結標さんは下準備すらろくに終えてないわけだし』

結標『う、ご、ごめんねーホント』


黄泉川「…………どういう状況じゃん?」


―――
――



615: 2013/06/22(土) 21:30:30.92 ID:xeJ/Hl25o


同日 18:10

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-


一方通行「……そォ言えばもォ六時過ぎてンのか」チラッ

禁書「何やってるのあくせられーた? あなたの番だよ」

一方通行「あァ、よっと」カチッ



カラカラカラカラカラー、タラン!



一方通行「……ええと何だァ? ランダムで誰か一人から五百万搾取できるだァ? 随分と気前のイイマスじゃねェか」

禁書「……何か嫌な予感がするんだよ」

一方通行「まァイイ、ほらルーレットだ」カチッ



カラカラカラカラカラー、タラン!



一方通行「あ、シスターのところで止まった」

禁書「ぎゃあああっ! 案の定私のところで止まったぁ!!」

一方通行「まァ、三分の一の確率だしなァ。止まってもおかしくねェよ」

禁書「ううっ、これで借金が一千万になったんだよ……」

一方通行「何つゥか……上条の頭ばっか噛み付いてるから不幸が感染ったンじゃねェか?」

禁書「ぐぬぬ、言い返す言葉がないんだよ」


616: 2013/06/22(土) 21:32:14.05 ID:xeJ/Hl25o



ジュー



上条「…………ぐふふふ、久しぶりの肉だぜ」

風斬「……あの」

上条「どうかしたか風斬?」

風斬「何か手伝うことありますか?」

上条「うーん、別にこれと言ってはねえけど……何でだ?」

風斬「いえ、いつもお世話になっているので……」

上条「別に気にする必要ねーのに。逆にインデックスのヤツの相手してもらってんだからこっちがお礼を言いたいくらいだぞ?」

風斬「わ、私はそんな……」

上条「そうだ。どうせだからお前もメシ食っていけよ。今までのお礼っつーことで」

風斬「で、でもそれって大事なお肉なんじゃ……?」

上条「大丈夫だって。一方通行のおかげで全部で四百グラムあるんだ、一人百グラムで十分足りるだろ。インデックスは……うん」

風斬「……あはは」

上条「つーわけで食っていくだろ? 晩メシ」

風斬「…………じゃ、じゃあごちそうになります」

上条「おう、じゃあ向こうで待っててくれ。すぐにできると思うからよ」

風斬「はい!」


一方通行「……オイ」


618: 2013/06/22(土) 21:32:59.61 ID:xeJ/Hl25o


風斬「!?」ビクッ

上条「どうかしたか一方通行?」

一方通行「缶コーヒーが欲しいンだがよォ、後ろ通してもらえねェか?」

風斬「ご、ごめんなさい!」ササッ

一方通行「おォ」ガチャリガチャリ

上条「で、結標から連絡は来たのか?」

一方通行「イイや、これっぽっちも来ねェよ。何やってやがンだアイツァ?」

上条「こっちからかけてみればいいんじゃねえか? 電話するの忘れてるだけかもしれねえし」

一方通行「アイツが忘れるよォなヤツとは思えねェけどな」

上条「一応だよ一応。それに進捗度のほうも聞いてみればどれくらいで帰れるかもわかるし」

一方通行「オマエ……それ本気で言ってンのか?」

上条「?」

一方通行「はァ……ま、とりあえず電話はかけてみるか」ピッピッ

上条「……ええと、俺なんか変なこと言ったか?」キョトン

風斬「え、その、あの、ええっと……」オロオロ

一方通行「オイ、肉焦げてンぞ」プルルルルル

上条「へっ?」



ジュー



上条「おわっ、マジだ! クソッ、不幸だっ!」

一方通行「くっだらねェ」ガチャリガチャリ


―――
――



619: 2013/06/22(土) 21:34:15.92 ID:xeJ/Hl25o


同日 18:20

-黄泉川家・結標淡希の部屋-


結標「あー、さっぱりした」←シャワー浴びたあと


結標「くんくん、うっ、あんなにシャンプー使って洗ったのにまだチョコの臭いが残ってるような気がするわ……」

結標「……ふぅ、しかしひどい目にあったわね……」

結標「まさかチョコレート作っててこんなことになるなんて思わなかったわね」

結標「これが手作りという名の戦いなのね、油断ならないわ」

結標「これからは一層気合を入れて挑まないとっ」グッ

結標「……というか今何時かしら?」キョロ

結標「って、えっ!? もうこんな時間!? 完全下校時刻余裕で過ぎてるじゃない!」

結標「ま、不味いわね。まさかチョコレート作りにこんなに時間を使うとは思わなかったわ」

結標「これ以上は吹寄さんや姫神さんに悪いわね。次で決めないと……」



タラララーン♪ タラララーン♪



結標「あっ、私の携帯! 誰かしら……?」カチャ



『一方通行』



結標「あ、一方通行? 何で電話なんか……って、あっ!」

結標「そういえばこっちが連絡するまで帰ってくるな、って言ってたの忘れてたわ」

結標「あわわわっ、今頃遅すぎって怒ってるんじゃないかしら……」アセ

結標「と、とにかく出ないと――もしもし?」ピッ


620: 2013/06/22(土) 21:35:40.55 ID:xeJ/Hl25o


一方通行『……よォ結標クゥン? 俺に言えねェ用事とやら終わったのかなァ?』


結標「……ご、ごめんなさい。実はまだ終わってないのよ」

一方通行『……はァ、ンなことだろォとは思ってたがな』

結標「えっ、何で?」

一方通行『どォでもイイだろそンなことはよォ。それよりあとどれくらいで終わりそォだ?』

結標「え、ええっと……わかんない」

一方通行『つまり未だに迷走中っつゥことか。状況はよォくわかった』

結標「だ、大丈夫よ! すぐに終わらせてみせるから!」

一方通行『……とりあえず言っとくが、あンま頑張ンじゃねェぞ?』

結標「どういうことよそれ?」

一方通行『そのままの意味だ。無駄なベクトルの頑張りは意味がねェっつゥことだ』

結標「?」

一方通行『まァ、そォいうわけだ。また七時くれェにかけ直すから、それまでには終わらせとけよ』

結標「が、頑張るわ!」

一方通行『……チッ、じゃあな』ピッ

結標「うん、またあとでね」ピッ


結標「…………ふぅ」

結標「やっぱり迷惑だったかしらね? まあ突然だからしょうがないわよね」

結標「このお詫びのためにもちゃんとしたおいしいチョコレートを私が作らなきゃ」

結標「しかし一方通行の言ってることはさっぱりだったわね……何で私が頑張っちゃいけないのかしら?」

結標「まあとにかく、みんなのためにアイツのために早くこの戦いを終わらせないとね!」

結標「よし、いざ戦場へ!」テクテク



ガチャ



―――
――



635: 2013/07/07(日) 22:44:28.58 ID:Rt3NtiTNo


同日 18:10

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-


一方通行「……そォ言えばもォ六時過ぎてンのか」チラッ

禁書「何やってるのあくせられーた? あなたの番だよ」

一方通行「あァ、よっと」カチッ



カラカラカラカラカラー、タラン!



一方通行「……ええと何だァ? ランダムで誰か一人から五百万搾取できるだァ? 随分と気前のイイマスじゃねェか」

禁書「……何か嫌な予感がするんだよ」

一方通行「まァイイ、ほらルーレットだ」カチッ



カラカラカラカラカラー、タラン!



一方通行「あっ、シスターのところで止まった」

禁書「ぎゃあああっ! 案の定私のところで止まったぁ!!」

一方通行「まァ、三分の一の確率だしなァ。止まってもおかしくねェよ」

禁書「ううっ、これで借金が一千万になったんだよ……」

一方通行「何つゥか……上条の頭ばっか噛み付いてるから不幸が感染ったンじゃねェか?」

禁書「ぐぬぬ、言い返す言葉がないんだよ」


636: 2013/07/07(日) 22:46:20.69 ID:Rt3NtiTNo

すみません↑はミスです


同日 18:25

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-


一方通行「…………はァ」ピッ


上条「どうだったんだ?」

一方通行「まだまだかかりそォな感じだな。どォやら苦戦してるよォだ」

上条「そうか。頑張ってんだな結標」

一方通行「そォだな。その頑張りで一体何を生み出してるのかわかったモンじゃねェけど」

上条「じゃあそろそろメシできるから、一方通行も向こうで待っててくれ」

一方通行「随分とメシの時間が早ェな。まだ六時半だぞ?」

上条「そうか? 別に普通だろ。あんまり遅くしてもアレだし」

一方通行「まァ、俺はいつだろォと構わねェけどな」ガチャリガチャリ


禁書「あっ、やっときた! 早くルーレットを回して欲しいかも」

一方通行「そろそろメシの時間だァ。あとルーレットニ、三十回分ぐらいありそォな人生をそれまで終わらせるのは不可能だろ?」

禁書「そういえばいい匂いがしてきたんだよ!」


グー


禁書「……いい匂いを嗅いだらおなかが鳴っちゃったんだよ///」カァ

一方通行「勝手にキャラ崩壊させてンなよ暴食シスター」

禁書「なっ、きゃ、キャラ崩壊って何かな!? 私だって一人の女の子であるわけで――」

一方通行「どこの世界に牛一頭食べられる女の子がいンだよ」

禁書「」ピキッ


禁書「……あくせられーた?」


一方通行「あン?」


禁書「普段は温厚で優しい聖女マリアのような広い心を持った私でも、今のはさすがにいらっときたんだよ」


一方通行「ハァ? 誰が聖女マリアだァ? ガキが何言ってンだか」

禁書「…………」プルプル

一方通行「…………」ズズズ

風斬「……え、えっと、その……」オロオロ

スフィンクス「にゃおー?」


637: 2013/07/07(日) 22:48:41.67 ID:Rt3NtiTNo



禁書「がうっ!!」バッ



ガキン!!



一方通行「よっと」スッ

禁書「なっ、避けられたっ……!?」

一方通行「ぎゃはっ、三下なら無様に噛み付かさせてくれンだろォが、残念ながら俺を噛み付くなンざ不可能なンだよ!」ケラケラ

禁書「ぐぬぬぬぬっ、だったらもう一度――!」

一方通行「やめとけやめとけ。たとえその犬歯が俺の頭部に命中しよォが、皮膚に突き刺さる前に俺の『反射』っつゥ絶対的なチカラが働く」

一方通行「この歳で入れ歯を使いたくねかったら、大人しく下唇でも噛んでるンだな、ぎゃはっ」

禁書「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬっ!」

上条「……一方通行」

一方通行「あァ? 何だよ上条」

上条「…………」ポン

一方通行「…………は?」

上条「…………」

一方通行「……お、オイオイ何の冗談だヒーロー? その右手で触られたら能力が使えねェじゃねェか」

上条「…………」
.                      キラーバイト
一方通行「こ、これじゃあシスターの頭蓋粉砕を避けられねェ――」

上条「……一方通行」

一方通行「……ハァ!?」




上条「一度食らってみろって。すっげぇ痛てえから」ニコッ




一方通行「」


禁書「ふふふふっ、覚悟するんだよあくせられーた」キラン


一方通行「…………ふっ」






ガブリッ!!






―――
――



638: 2013/07/07(日) 22:49:16.38 ID:Rt3NtiTNo


同日 18:30

-黄泉川家・キッチン-



ガララララ



結標「……さて、頑張らないとっ!」グッ


黄泉川「よぉ淡希」


結標「あっ、黄泉川さんおかえりなさい。帰ってたんですね」

黄泉川「話は聞かせてもらったじゃん。どうやら明日のバレンタインに向けて手作りチョコレートを作ってたようじゃんね」

結標「すみません、勝手にキッチン使っちゃって」

黄泉川「別にいいじゃん。明日は大事な日なんだろうからゆっくりじっくりやるといいじゃん」

結標「あ、ありがとうございます黄泉川さん!」

打ち止め「でもヨミカワー! それじゃあキッチンが使えないから晩ご飯作れなくなるんじゃないのー? ってミサカはミサカは空腹を感じながら尋ねてみたり」

黄泉川「んーたしかにそうじゃんね。だったら久しぶりに出前とか頼むか?」

打ち止め「おおっー! いいねいいねえー! 何頼むの!? お寿司!? ラーメン!?」

黄泉川「まあそれはおいおい決めればいいじゃん」

結標「……なんかすみません、ほんと」

黄泉川「そう何度も謝ることじゃないじゃん。子供は我が侭を言う権利があるんだからさ」


吹寄「結標さーん! こっちは準備できたわよー!」

姫神「ここまでやれば絶対に失敗はない。……たぶん」


黄泉川「ほら、友達が呼んでるじゃん!」

結標「は、はい!」テクテク



ワイワイガヤガヤ



黄泉川「……ふふっ、やっぱり青春ってのはいいじゃんね」

打ち止め「ヨミカワ! やっぱりミサカはお寿司がいい! それも特上!! ってミサカはミサカはお子様セットじゃないアピールをしてみたり!」

黄泉川「別にお子様セットでいいだろ」

打ち止め「やっぱり駄目かくそう、ってミサカはミサカは床を叩きながら悔しさを現してみたり」ドンドン


―――
――



639: 2013/07/07(日) 22:50:33.03 ID:Rt3NtiTNo


同日 18:40

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-


一方通行「痛っつ、少しは手加減しやがれクソシスターが……」ズキズキ

禁書「ふんだ! 少しは自分のやったことを悔い改めた方がいいと思うんだよ」

一方通行「へェへェスンマセンでしたワタクシめが悪ゥごさいましたよシスター様ァ」

禁書「ふふん。私は心が広いから許してあげるんだよ」

一方通行(ちょろっ……)

禁書「それじゃあ人生ゲームの続きしよ! あくせられーたの番からなんだよ」

一方通行「オマエさっきの話聞いてたか? これから晩メシだって言ってンだろォが」

禁書「そういえばそうだったんだよ。じゃあ一時せーぶっと……」ピッピッ

一方通行「まだこの出来レースを続けるつもりなのかオマエは?」

禁書「ところでとうまー! 今日のごはんは何かな?」

上条「……ふふっ、喜べインデックス! 今夜の晩メシは──」



ドン!



上条「──何とステーキだっ!!」

禁書「おおおおっー!! お肉だお肉ー!!」

一方通行「ただし、極めて安く、限りなく怪しいステーキ肉だがなァ」

上条「おいやめろ」

一方通行「事実を言ったまでだ」

スフィンクス「にゃーん」

上条「はいはいわかってますってスフィンクスさん。はい、いつものキャットフード」コトッ

スフィンクス「…………」

上条「……? どうしたスフィンクス?」

スフィンクス「……しゃおっー!! しゃー!!」

上条「ッ!? な、何だよ何怒ってんだよスフィンクス!?」




スフィンクス『俺様にも肉を寄越しやがれよこの三下ァ!!』




一方通行(とか言ってンだろォか……)


640: 2013/07/07(日) 22:51:17.49 ID:Rt3NtiTNo


風斬「……えっと、お茶碗にご飯の盛りつけ終わりましたよ」コトッ

上条「あっ、悪りぃ風斬。お客さんなのに準備させちまって」

風斬「い、いえそんな……」

一方通行「お客様が甲斐甲斐しく働いてるっつゥのに、何もやってねェシスターさンがいるってのは面白れェ話だよな」

禁書「ぐっ、な、何もせずにこたつの中でぬくぬくしているあなたには言われたくないんだよ!」

一方通行「勘違いすンな俺は客だ。つゥかコタツでくつろいでンのはオマエも同じだろォが」

禁書「むむっ、そんなに言うんだったら私も準備するんだよ! とうま! 何か私にも手伝えることはあるかな?」

上条「別にいいって、下手に動かれて食器とか割られても困るし」

禁書「……とうま? それはどういうことかな?」キラン

上条「ま、待てインデックス、そこで歯を光らせるのはおかしいだろ!? 今までお前がドジで物壊しまくってきたことは事実だろ!?」

禁書「ドジじゃないんだよ! あれはたまたま運が悪くて転んだだけだもん!」

上条「そういうのをドジって言うんだよ!」



ワーワーギャーギャー!!



一方通行「…………うるせェ」

風斬「……ど、どうぞサラダです」コトッ

一方通行「おォ、すまねェな……って、えっ? サラダ?」

風斬「は、はい。そうですけど……?」

一方通行「何でサラダなンてモンが盛り付けられた皿が、俺の目の前に置かれてンだ?」

風斬「えっと、キッチンに置いてあったので……」

一方通行「いやそォじゃなくてよォ、何で一人一つずつサラダの入った皿が置かれてンだ? しかも一人分とは思えねェほど山盛り」


641: 2013/07/07(日) 22:51:49.72 ID:Rt3NtiTNo


上条「ふっふっふ、解説しよう一方通行」ダラダラ

禁書「ふーっ、ふーっ」ガジガジ


一方通行「どォいうことだ三下ァ? あと頭からスゲェ量の赤い液体が流れてるけど大丈夫か?」


上条「一見、腹の足しにもなりそうもない野菜たちだが、実はその認識は間違っているのだ!」

上条「シャキシャキとした触感と程よい固さのおかげで食べるのに結構顎を使わなければならない」

上条「しかぁし! これは逆に満腹中枢を刺激してくれるので、結果的に腹いっぱいになるのを助けてくれるのだ!」

上条「キャベツやキュウリなどの緑黄色野菜はもちろん、安くて量多いことに定評のあるモヤシは我々貧乏人の味方なのだ!!」


一方通行「果てしなくどォでもイイ熱弁アリガトウ。つまりアレかァ、空腹をしのぐ悪あがきとしてこンなモン用意されてるっつゥわけか?」

上条「それだけじゃないぞ。普通に栄養もあるし、いろいろな料理に使えるし……」

一方通行「ンなこたァどォでもイイ。オマエこの量の雑草どもは野菜嫌いの俺に対しての当て付けかコラ」

禁書「あくせられーた! 好き嫌いをしちゃ駄目なんだよ!」

一方通行「うるせェよ、別に好き嫌いとかしねェし。食べる必要性が見いだせねェだけだし」

上条「さっき自分で野菜嫌いって言ったじゃねえか」

一方通行「……とにかく俺は野菜なンざ絶対ェ食わねェ」

上条「へー、まあそんなに言うなら許してやらねえこともねえか」

一方通行「ケッ、さすが三下だ。懸命な判断だな」

上条「…………何て言うと思ったか三下ぁ!」バッ

一方通行「何ィ!?」

上条「悪りぃがこのサラダは葉っぱ一枚たりとも残させはしねえよ! この野菜を作ってくださった農家の人の気持ち考えろコラァ!」

一方通行「機械のオートメーションで生まれてきたもん並べて何を言ってンだオマエはァ?」

上条「そういうことは関係ねえんだよ。『お残しは許しまへんで』っていう有名な偉人の言葉を知らねえのか?」

一方通行「それ言ったヤツが偉人かどォかは置いといて、よォするに作ってくれたヤツに感謝の気持ちを持てっつゥことだろ?」

上条「ま、まあそうだけど…… 」

一方通行「作ってくれてアリガトウ。だからサラダとかいう食の反逆者を残させてくれ」

上条「お願いの仕方の問題じゃねえだろ! つーか絶対感謝してねえだろテメェ!」


つんつん


上条「ん?」

風斬「……あ、あの」

上条「何だ風斬?」

風斬「早く食べた方が良いんじゃないでしょうか? せっかくの料理が冷めてしまいますし……」

上条「あ、ああそうだな。悪りぃ」

風斬「それに……」チラッ

上条「?」


禁書「──うん、うん、やっぱりお肉は美味しいんだよ!」パクパク


風斬「……もう食べ始めてるし」


642: 2013/07/07(日) 22:53:04.95 ID:Rt3NtiTNo


上条「なっ、何勝手に食ってんだテメェは!」

一方通行「気のせいだと思うンだけどよォ、何か俺の分の肉が減ってるよォな気がすンだが!? つゥか気のせいじゃねェだろ暴食シスターがッ!」

禁書「それは気のせいなんだよ。あなたの勘違いなんだよ」

一方通行「ほォ、ステーキっつゥのは作る過程で自然と噛み千切られた跡が出来るモンなのかゴルァ」

上条「まあまあ落ち着け一方通行。少しぐらいいいだろ?」

一方通行「オマエの分にいたっては五割持っていかれてるからな」

上条「おいこらインデックス」

禁書「世の中には早いもの勝ちという言葉があるんだよ」

上条「それはある一定のルールが設けられてから適用される言葉だ!」

一方通行「……まァ、もォどォでもイイや。俺も食う」パクッ

上条「なっ」

一方通行「…………やっすい肉の味だなァ」モグモグ

禁書「そう? 普通においしいんだよ」グモグモ

一方通行「誰も不味いとは言ってねェ。及第点には達してる」ズズズ

禁書「相変わらず素直じゃないね、はむっ。……あともう少し量が欲しいんだよ」マグマグ

一方通行「人の肉奪ったヤツのセリフじゃねェよな」パクッ

禁書「奪ってないんだよ。気付いたら口に入ってたんだよ」

一方通行「やっぱりオマエが俺の肉食ったンだな」


上条「っておいいいいいいいいいいいいい!!」


禁書「!?」ビクッ

一方通行「あァ?」


上条「まだいただきますの挨拶してねえだろうがっ! 勝手に食い始めてんじゃねえよテメェら!」

一方通行「オマエのキレるところがいまいちわかンねェよ。肉奪われた方に怒りの比重を増やせよ」

上条「うるせえ。とにかく一度挨拶しとこうぜ? これ以上収拾がつかなくなる前に」

一方通行「真面目だねェ上条クン。小学校じゃねェンだからどォでもイイと思うけどなァ」

上条「けじめってのは必要だろ。何をするにしてもな」

一方通行「さすがはヒーロー様だ。言うことが違う違う」

上条「そんな大したヤツじゃねえよ俺は」

禁書「とうまー! するなら早く済ませちゃおうよ。早く食べたいかも」

一方通行「つゥかよォ、オマエは十字教のシスターさンだろォが。食前のお祈りはどォしたお祈りはァ?」

禁書「わ、私は修行中の身だから完全なる聖人の振る舞いができないから忘れてただけで、決して神に感謝の気持ちを持っていないわけじゃないんだよ!」

一方通行「ちゃンと修行しろエセシスターが」

上条「あーもううるせえ! メシが冷める前にとっとと食っちまうぞ! ほいじゃー」


『いただきます!!』


―――
――



643: 2013/07/07(日) 22:54:24.13 ID:Rt3NtiTNo


同日 19:00

-黄泉川家・リビング-


芳川「……ところでこれはどういう状況かしら?」


打ち止め「見ての通りだよ、ってミサカはミサカはタマゴのお寿司を食べながら説明してみたり」モグモグ

芳川「…………」


吹寄「──そう。ここでチョコレートを一口大になるように切るのよ」

結標「てやっ!」バッ



ドグシャ!



吹寄「って、何でそこで包丁を叩きつけるのよ! 普通に切ればいいでしょ普通に!」

結標「ふ、吹寄さん怖い……」ガクブル

姫神「チョコレートが飛び散った。無残」

吹寄「はぁ、また作り直しか……」

結標「ごめんなさい……」

姫神「吹寄さん。これはなりふり構ってはいられない。スプーンですくってラクラク配分作戦を進言する」

吹寄「そうね。じゃあ今冷蔵庫に入ってるヤツが固まったらそれで行きましょう」


芳川「……つまり、明日のバレンタインに備えて手作りチョコレートを作っているのだけど、思った以上に苦戦している、ってことかしらね?」

打ち止め「おお、さすがヨシカワ! 的確な分析力だね、ってミサカはミサカは褒め称えてみたり」

芳川「ふふっ、ありがと。で、彼女たちがキッチンを使っているから今日の夕食はお寿司の出前ってわけね」

黄泉川「そうじゃん。ほい、これが桔梗の分」スッ

芳川「お寿司ならパソコン使いながらでも食べられ──」

黄泉川「ここで食べるじゃん」ニコッ

芳川「いや、今ちょっとネットが盛り上が──」

黄泉川「…………」ニコニコ

芳川「はい」


644: 2013/07/07(日) 22:55:49.97 ID:Rt3NtiTNo


黄泉川「おーい、チョコレートばっか作るのもいいけどそろそろ何か食べたほうがいいじゃん!」

結標「はーい」

黄泉川「ほらっ、吹寄に姫神も」

吹寄「えっ、あたしたちもいいんですか?」

黄泉川「おう、別に遠慮する必要ないじゃん。というかもうお前らの買っちゃったから食べてくれないと逆に困る」

吹寄「すみません、ありがとうございます」

姫神「その分のお代払います」

黄泉川「別にそんな変な気使わなくてもいいじゃん。子供なんだから大人からの好意は素直に受け取るもんじゃん」

吹寄「は、はい、じゃあお言葉に甘えて……」

姫神「いただきます」


結標「……! ……!」モグモグ

打ち止め「どうしたのアワキお姉ちゃん? 何か食べるペース早いね、ってミサカはミサカは首を傾げてみる」

結標「もがもがまがまが」

芳川「……淡希、ちゃんと飲み込んでから喋りなさい。何言っているのかわからないし、何より下品よ」

結標「……ごくん。す、すみません」

打ち止め「結局、どうしてそんなに急いでるの? ってミサカはミサカはは同じ質問を問いかけてみたり」

結標「うん、私いまだにチョコレート完成してないから、早く再開したほうがいいかなっ思って」

黄泉川「あんまり焦ってもいいものができるとは思えないけどな。ゆっくりじっくり作ればいいと思うじゃん」

姫神「黄泉川先生の言うとおり。トリュフは作るのにそんなに時間がかかるものじゃない」

芳川「かと言って、あんまり遅いと困るんじゃないかしら? 吹寄さんや姫神にとっては」

吹寄「……そうですね。たしかに完全下校時刻もう余裕で過ぎてますし」

黄泉川「何なら私が車で送ってやるじゃん。あんま遅くなるのは許さないけど」

吹寄「いいんですか?」

黄泉川「おう」

芳川「でも愛穂? そんなこと言っちゃったらこの子たちが帰るまで貴女の生きる活力が飲めないわよ?」

黄泉川「ぐっ、い、いや大丈夫じゃん。生徒をきちんと自宅まで送り届けるまでが先生の仕事。仕事中に酒を飲んだりするわけにはいかないじゃん!」

芳川「……そういうわけで三人とも。今日愛穂が至福の時間を迎えることができるかどうかは貴女たちの手にかかっているわ。せいぜい頑張ってちょうだい」

結標「な、何か一気にプレッシャーがかかりましたね」

吹寄「結標さん。次こそ成功させましょう、ね?」

姫神「大丈夫。結標さんは頭がいいから絶対にできる。ただそのおかしな思考回路をどうにかすればいい話」

結標「褒めてるのか貶しているのかどっちかにして欲しいわね」

打ち止め「ひどい言われようだね、ってミサカはミサカは少し同情してみたり」


645: 2013/07/07(日) 22:56:58.09 ID:Rt3NtiTNo


結標「…………!」モグモグゴクン

結標「よし食べ終わったわ。ご馳走様でした!」ガタッ

吹寄「なっ、食べるの早っ!?」

結標「悪いけど必ず成功するという確証がない以上、こんなところで時間を食うわけにはいかないわ」

姫神「何も知らずにこのセリフだけ聞いたら。料理の話なんてしてるとは思わない」

結標「そういうわけで先に行ってるわね。吹寄さんたちはゆっくりしてていいわよ」

吹寄「えっ、ちょ、結標さん!」

結標「大丈夫よ! 冷蔵庫の中のチョコレートはもう冷えてるはずだからすぐにでも作業に取り掛かれるわ!」

吹寄「いやそうじゃなくて、あたしたちがいないとまた何をしでかすかわかったもんじゃ――」

結標「わかってるわ、ちゃんとレシピ通り作ればいいのよね?」

吹寄「た、たしかにそうだけど」

結標「作戦は一刻を争うわ、今度こそ成功させてみせる!」ダッ

吹寄「あっ……」

姫神「…………」


吹寄「過ちは、繰り返させないっ!! ご馳走様でした!」バッ


姫神「……ご馳走様でした」バッ


黄泉川「はいはーい、頑張るじゃんよー」

打ち止め「しかし人の話を聞かないねーアワキお姉ちゃん。自分が料理音痴だって自覚はしてるはずなのに」

芳川「たぶんあれじゃない? 一つ一つできることが増えていくたびに変に自信を付けちゃって暴走、って感じ」

黄泉川「まだまだ若いんだから、今の内に失敗をするのはいいことじゃん」

芳川「彼女の場合成功の元になる失敗かはわからないけどね」

打ち止め「ふぅ、これじゃあいつになったらチョコレートができるのかわからないね、ってミサカはミサカは呆れながら首を振ってみたり」ヤレヤレ

芳川「……で、そういう貴女はバレンタインチョコは作ったりしないのかしら打ち止め?」

打ち止め「ふっふっふ、その点はアワキお姉ちゃんとは違って抜かりないよ、ってミサカはミサカは自信満々の表情を浮かべてみたり」

黄泉川「おっ、意外じゃん。てっきり何も考えてないかと思った」

打ち止め「明日のことはすでに今日、エンシュウと打ち合わせ済みなのだ! ってミサカはミサカは声を大にして発表してみる」

芳川「……何だか嫌な予感しかしないわね」


―――
――



646: 2013/07/07(日) 22:58:09.01 ID:Rt3NtiTNo


同日 19:40

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-



タッタラタッタッター♪



禁書「……おおっ! 何か騙されて買わされた宝くじが当たったんだよ!」

一方通行「おォおォスゲェスゲェ。上条クンには絶対ェ無理な芸当だなァ」

禁書「これで三千万円ゲット! もしかしたらあくせられーたに追いつけるかも」

一方通行「あァ? オマエ借金っつゥモン知ってっか?」

禁書「うっ、せっかくそんなの忘れてポジティブにゲームしてたのに……」

一方通行「借金っつゥのは忘れて許されるよォな甘めェモンじゃねェンだよ」



ジャバババババ!!



上条「……くっ、やっぱり肉の油汚れはしぶといな。一個十八円で売ってた超安物洗剤じゃ厳しいぜ」ゴシゴシ

風斬「……、……あの」ゴシゴシ

上条「何だ?」ゴシゴシ

風斬「これ……、本当に洗剤ですか?」

上条「ああ、歴としたスーパーで買った洗剤だぞ? 安物だけど」ゴシゴシ

風斬「……いくら安物といっても汚れ落ちなさすぎじゃ?」

上条「そうだよな。全然汚れ落ちる気しねーもん」ゴシゴシ

風斬「はい……」

上条「あ、そろそろ洗剤が少なくなってきたな。足さなきゃな……」カポッ

風斬「えっ」



ジャボボボボボボボッ!



上条「……これでよし」キュッキュッ

風斬「……もしかしていつも水で洗剤をかさ増ししてるんですか?」

上条「まあな。少しでも長く使いたいからな。上条さん物を大切にする主義ですから」

風斬「……それじゃあ落ちる汚れも落ちないじゃないですか。シャンプーじゃないんですよ?」

上条「な、何でシャンプーもかさ増ししてるってわかったんだ!?」

風斬「……、何となくです」


647: 2013/07/07(日) 22:58:44.36 ID:Rt3NtiTNo


上条「……しかし困ったな。今まで肉の油汚れなんてなかったから、ここまで洗剤が弱体化してるとは思わなかったぜ」

風斬「わ、私が買ってきましょうか? ……洗剤」

上条「いや、そこまでしてくれなくてもいいよ。……うーん、ほんとどうしよ……」


一方通行「あァー、コーヒーコーヒーっと」ガチャリガチャリ


上条「あっ、一方通行」

一方通行「あン? 何いかにも三下だっつゥ顔でこっち見てきてンだよ?」

上条「い、いや別に……。そういや一方通行。お前の能力って何でもできる万能能力だよな?」

一方通行「何でもっても限度があるけどな。で、それがどォかしたか?」

上条「それがさあ、今この油で汚れまくった皿を洗ってんだけど洗剤が弱すぎてなかなか汚れが落ちねえんだよ」

一方通行「……何となく察した。よォするにこの俺に皿洗いをしろって言いてェンだな?」

上条「おう。お前のベクトル操作なら楽勝だろ?」

一方通行「まァたしかに俺からしちゃ楽勝だがよォ、正直能力使用モードになってまでンなことしたくねェンだよな」

上条「頼む! そこを何とか一方通行様!」

風斬「…………」

一方通行「……チッ、しょうがねェな。こっちとしてもどっかのシスターみてェにタダ飯食らいなンて言われたくねェからな」

上条「さすが一方通行! そこの流しに置いてあるヤツだ、よろしく頼むぜ!」

一方通行「……オイオイ何だァ? 学園都市製の洗剤で落ちねェ汚れって聞いてどンな重油クラスの油汚れかと思えば、ただの安肉からあふれ出てきた汚ねェ油汚れっつゥいかにもな三下じゃねェか」

上条「いや、一般的な家庭に重油で汚れた皿なんてあるわけねえだろ」

一方通行「ったく、こンなモンで俺を使うなンざオマエ、万札で額の汗拭うくれェの贅沢してンぞ?」

上条「それはたしかに贅沢だな! もしやってるヤツ見かけたらぶん殴りたくなるほど贅沢だな!」

一方通行「まァイイ、とっとと終わらせて缶コーヒーにあり付くとするかァ」カチ

風斬「あ、あの……これ、スポンジ」スッ

一方通行「あァ? いらねェよそンなゴミ。俺にはこの手とチカラがあれば十分だ」スッ


一方通行「さァて、お片付けの時間だァ。一瞬で終わらせてやる」


シュバババババババババババババババババババババババババババババババババッ!!


一方通行「……ほらっ、終わったぞ」カチ

上条「お、おう……」

一方通行「? 何だよ」

上条「い、いや、何が起こったのかさっぱり理解できなかったら驚いてんだよ」

一方通行「原理はシャワーと同じだ。水を圧縮して皿に向けて高速で噴射して汚れを落としただけだ」ガチャ

上条「へー、でもそういうのって水流操作系のヤツらの専売特許じゃねえのか?」

一方通行「そりゃそォだろ。アイツらほど器用に水を操ることなンざ俺には出来ねェよ。俺はただ力の向きを操作してるだけだ」

上条「? よくわかんねえけどサンキューな。おかげさまで洗い物が終わったよ」

一方通行「ケッ、次からはンなこと頼むンじゃねェぞ、面倒臭せェから」ガチャリガチャリ

上条「ありがとなー」

風斬「…………」


648: 2013/07/07(日) 22:59:22.72 ID:Rt3NtiTNo


一方通行「……チッ、くっだらねェ」ズズズ

禁書「どうしたの? 何かすごい音がしてたけど」

一方通行「俺が働いてやっただけだ。何もせず遊んでるだけのオマエと違ってな」

禁書「むぅ、またそんなこと言って。もしかしてあなたは私が嫌いなのかな?」

一方通行「さァな。少なくとも野菜よりかは嫌いじゃあねェ」

禁書「何だか微妙な立ち位置な気がするんだよ……」

一方通行「果てしなくてどォでもイイ」ズズズ

禁書「……ところであなたは会うたびいつもコーヒー飲んでるよね。好きなの?」

一方通行「好きじゃねェと飲まねェだろ」

禁書「おいしいの?」

一方通行「……ンだァ? あまりの空腹に俺のコーヒーにでも集る気になったかァ?」

禁書「そ、そんなことないんだよ! というか何でもかんでもそっちの方面に話を持っていってほしくないかも!」

一方通行「まずは普段の行動を見直すことから始めろ。そォすりゃ少しは俺のレスポンスも変わるかもな」

禁書「ううっ、ただ私はかんコーヒーって飲んだことないから少しどんなのか気になっただけなのに……」

一方通行「結局は自分の欲望に沿って動いてンじゃねェか」

禁書「で、でも私から食欲を奪ったら何も残らないと思うんだよ。つまりこの食欲こそが私の唯一のアピールポイントなんだよ」

一方通行「自分で悲しいこと言ってンなよ。つゥかアピールポイントなら完全記憶能力があンじゃねェか」

禁書「たしかにそうかもだけど、日常生活で活かせた覚えがこれっぽっちもないんだよ」

一方通行「豚に真珠とはまさしくこのことだな」

上条「何話してんだよお前ら」テクテク

風斬「…………」テクテク

一方通行「あァ? コイツの存在意義について話し合ってただけだ」

禁書「あれ? いつの間にそんな話題になったの?」

一方通行「自分で言い出したことだろォが。今こそ完全記憶能力を活かすときだ」

禁書「…………、あっ、ほんとだ」

上条「一体どんな会話が繰り広げられてたんだよ」

一方通行「他愛もねェ世間話だよ」

禁書「あっ、そういえばあくせられーたの番でずっと止まってたんだよ。早くルーレット回してほしいかも」

一方通行「まだやるつもりかよ面倒臭せェ。大企業の社長とフリーターじゃあスペック差がありすぎて面白くねェンだよ」

上条「つーかインデックス。ゲームばっかしてるのもいいけど、さっさと風呂入っちまえよ? そろそろお湯溜まってると思うから」

禁書「うん、わかったんだよ。一時せーぶっと……」ピッピッ

一方通行「まだやるつもりなのかよオマエ……」

上条「そういえば一方通行。結標から連絡は来たのか?」

一方通行「……あ、そォいや七時にかけ直すっつったのにかけ直すの忘れてた」

上条「今からでもかけてみれば?」

一方通行「そォする」ピッ



プルルルルルルル、プルルルルルル



649: 2013/07/07(日) 23:00:38.30 ID:Rt3NtiTNo



ピッ



結標『……も、もしもし?』

一方通行「調子はどォかな結標クゥン?」

結標『あ、あはは、ま、まずまずかな?』

一方通行「で、用事とやらは終わったのか? まァ、その様子じゃ聞くまでもねェか」

結標『……ごめんなさい』

一方通行「つゥかよォ、俺は今上条の家で世話になってる最中なンだけどさァ」

結標『えっ、今上条君の家にいるの?』

一方通行「そォだ。だからイイ加減出て行かねェとここにいる人に迷惑にかけちまうンだわ」

結標『そ、そうね。もうこんな時間だし迷惑になるわよね』

一方通行「そォいうことだ。だからオマエが居間何をしてンのか知ンねェけどよォ、俺ァ今からそっちへ戻るぞ」

結標『えっ!? ちょ、ちょっとそれはタンマ! 待ってもうちょっと待って!』

一方通行「待てねェな。さっきから言ってるが上条に迷惑がかかるわけだし、何より俺が早く寝たい」

結標『そ、そこを何とか一方通行様ぁ! 第一位様ぁ!』

一方通行「無理」

上条「……なぁ一方通行?」

一方通行「あァ?」


上条「別に帰らなくても泊まって行きゃいいじゃねえか」


一方通行「……ハァ?」

上条「お前がよかったらの話だけどな」

一方通行「…………待て待て。一体どォしてそォいう話になったンだァ?」

上条「何でって、まだ結標の用事は終わってねえんだろ? だったらその邪魔をしてやるのは悪いと思って」

一方通行「オマエはそれでイイのかよ? こンなただでさえ狭っ苦しい上にインデックスとかいう居候を住まわせてる部屋に、俺みてェなヤツを止まらせることァできンのかよ?」

上条「別に今さら一人増えたところで変わんねえだろ。何とかなるって」

一方通行「…………チッ」スッ

一方通行「もしもし結標クン? どォやらここの家主のご好意で俺はここの部屋に一泊させてくれるらしい」

結標『えっ、ほんとなのそれ?』

一方通行「あァ。そォいうわけでその用事とやらをゆっくり終わらせることができるっつゥわけだ。よかったな」

結標『……で、でも何か悪いわ。ただでさえいろいろ迷惑かけちゃってそうなのに』

一方通行「そォ思ってンならその用事とやらを確実に終わらせろォ。その迷惑っつゥのを覆せられるくれェの完成度でなァ」

結標『……わかったわ』

一方通行「じゃ、切るぞ? せいぜい足掻くこったな」

結標『了解! じゃあね』ピッ


650: 2013/07/07(日) 23:01:11.02 ID:Rt3NtiTNo


一方通行「…………」スッ

上条「で、どうすんだ?」

一方通行「そォだな。お言葉に甘えさせてもらうとするわ」

上条「そうか。じゃあ着替えとか用意しとかないとなー」

一方通行「チッ……、ってかいつの間にかコーヒーなくなってンじゃねェか。コーヒーコーヒーっと」ガチャリガチャリ

風斬「…………、あ、あの」

上条「何だ風斬?」

風斬「私、そろそろ帰ろうと思います」

上条「おう。何つーかいろいろありがとな」

風斬「い、いえ。私は別に何も……」

上条「おおーいインデックスー! 風斬が帰るってよー!」


禁書『うんわかったー!! またねひょうかー!!』


風斬「う、うんまたね……!」

上条「じゃ、途中まで送ってくよ」

一方通行「待て上条」

上条「ん? どうかしたか?」

一方通行「俺が代わりに行く」

風斬「…………!」

上条「どういう風の吹き回しだ? お前らしくねえこと言って」

一方通行「缶コーヒーのストックが切れた。それを買いに行くついでだ」

上条「あー、そういうことか……って、あの大量の缶コーヒーもう尽きたのかよ!」

一方通行「そォいうわけだ。つゥわけだ、行くぞ風斬」ガチャリガチャリ

風斬「は、はい……」タッタッ

上条「夜道には気をつけろよー」

一方通行「あァ? 誰に向かってンなこと言ってンのかわかってンのかオマエ?」

上条「ははっ、まあそうだよな」

風斬「お、お邪魔しました……」

上条「また来いよー」



ガチャリ



―――
――



651: 2013/07/07(日) 23:03:14.81 ID:Rt3NtiTNo


同日 20:00

-黄泉川家・キッチン-


結標「…………ふぅ」ピッ


吹寄「電話どうだったの?」

結標「上条君のおかげでなんとかなったわ」

姫神「上条君? 何で上条君の名前が?」

結標「何か今上条君の家にいるらしくて、あまりに遅いからって泊まらせてもらえるようになったらしいわ」

吹寄「へー、そんなことがあったのね」

結標「まあこれで私のタイムリミットが少し延びたってことになるわね」

吹寄「そうね。じゃあせっかく上条が時間を稼いでくれたんだから、それを無駄にしないためにもさっき失敗したトリュフの元を作り直さないとね」

結標「……はい」

姫神「吹寄さん」

吹寄「何?」

姫神「たしかにタイムリミットは延びたかもだけど。あまりにも遅すぎると明日に支障が出るかもしれない」

結標「そ、そうよね。九時や十時まで付き合わせるわけにはいかわないわよね」

吹寄「別にそんなのあまり気にしなくてもいいのに。あたしたちの分はもうできてるわけだから、あとは帰って身支度してから寝るだけだし」

結標「それでもいつもより遅くなるのは確実だわ」

吹寄「まあそういう心配をしてくれるなら、ちゃんとあたしたちの言うこと聞いて早くチョコレートを無事完成させてほしいわ」

姫神「うん」

結標「…………次からは気をつけます」

吹寄「じゃあまず役割を分けましょ。最初はまずみんなでひたすらチョコレートを刻んでいって、あらかた終わったらあたしたちで湯銭をするわ」

吹寄「だから結標さんはそのままひたすらチョコレートを刻む作業に取り掛かってちょうだい」

吹寄「そのあと湯銭を終えた大量のチョコレートを一気に冷やして、そのあと総力戦にかかるわ。わかった?」

結標「りょ、了解!」

姫神「把握した」

吹寄「よし! じゃあまずは包丁で刻むわよ」シャキーン

結標「わかったわ」つノコギリ

吹寄「はいそこ! 言ったそばからこっちが言ったことを無視しない!」

結標「で、でも、私これのほうが使いやすい……」

吹寄「いいから包丁持ちなさい包丁を」

結標「……はい」

姫神「果たしてチョコレートは完成するのか。ものすごく不安になってきた」トントントン

吹寄「それは思っても口に出すのはやめたほうがいいわよ」トントントン

結標「ううっ」ドンッドンッ

吹寄「はい包丁を思い切り叩き付けない!」トントントン


―――
――



652: 2013/07/07(日) 23:04:32.93 ID:Rt3NtiTNo


同日 20:10

-第七学区・街頭-



<ありがとうございましたー!!



一方通行「さァて、こンだけ買やァさすがに足りンだろ」ガチャガチャ

風斬「…………、それ、全部飲むんですか?」

一方通行「そりゃそォだろ。そのつもりで全部買ったンだからよォ」

風斬「……今日中にですか?」

一方通行「いや、そりゃねェだろ。さすがの俺でもこれを今日中に飲み切るなンざ無理だ。つゥか、そもそもそンな急いで飲む意味がねェよ」

風斬「た、たしかにそうですけど……」

一方通行「コーヒー、っつゥのはじっくり味わって飲むモンだ。缶コーヒーだろォが、キチンと豆から作られたコーヒーだろォがな」

風斬「そ、それであのペースで飲むんですか?」

一方通行「ああ」

風斬「……味わってるんですか?」

一方通行「ああ」

風斬「…………、そうですか」

一方通行「?」

風斬「…………

一方通行「…………」

風斬「…………」

一方通行「……つゥか、オマエってどこに住んでンだ? この学区内か?」

風斬「えっ?」

一方通行「今何となく道を歩いてっけどよォ、正直オマエがどこに住ンでるか知らねェからな」

一方通行「一応見送りっつゥことで歩いてる以上、どの辺りまで送ればイイか把握しときてェからな」

風斬「そ、そうですか。えっと……、い、一応この学区内です……、はい」

一方通行「……そォか」

風斬「は、はい……」

一方通行「…………」

風斬「…………」


653: 2013/07/07(日) 23:06:29.76 ID:Rt3NtiTNo


風斬「あ、あの……」

一方通行「何だ?」

風斬「こ、この辺りまででいいですよ? もうここまで来ればすぐに帰れますから」

一方通行「本当か? もし俺に気ィなンてモン使ってやがったらブン殴るぞ」

風斬「い、いえ、そんなことない、です」

一方通行「そォか。なら別にイイけどよォ」

風斬「で、ではこれで――」


一方通行「…………いや、待て」


風斬「……? は、はい」

一方通行「オマエに話しておきてェことがある。少し時間イイか?」

風斬「話……、ですか……?」

一方通行「ああ」

風斬「……別にいいですよ、な、何でしょうか?」

一方通行「話しておきてェ……つゥか、実際は聞きてかったことだ。上条の家でオマエと再会したときからな」

風斬「…………」

一方通行「率直に聞くぞ」

風斬「は、はい」



















一方通行「結標にトラウマの壁を乗り越えさせ、チカラを与えたのはオマエか?」











風斬「…………!」

一方通行「…………風斬氷華……いや、『正体不明(カウンターストップ)』、っつった方がイイか?」

風斬「…………」


―――
――



670: 2013/07/15(月) 23:53:00.04 ID:u/ieRukjo


同日 20:15

-第七学区・街頭-



風斬「…………私のこと、知っていたんですか?」



一方通行「……ああ。話だけならだいぶ前から聞いたことがあった。昔、実験関係で霧ヶ丘女学院へ通っていたときがあって、その時にな」

一方通行「オマエと初めて会って名前を聞いた瞬間から、俺はこの噂を思い出していた」

一方通行「『虚数学区・五行機関』を知る鍵。それがオマエだってことをな」


風斬「…………」


一方通行「一般人から見たらオマエはただの人間かもしれねェ。だが、あらゆるベクトルを観測し操る俺の目から見れば、オマエがただの人間じゃねェことはわかる」

一方通行「能力者が無意識に発生させるAIM拡散力場。それによって構築されてるいわば全身異能の人間だ」

一方通行「上条当麻の右手から逃げるような立ち回りも、アレに触れたら即消滅させられるからだろ?」


風斬「……やっぱり、あなたには隠し通すことができないようですね」

一方通行「俺を誰だと思ってやがる」

風斬「じゃあ私に何かと気をかけていたのは、単に私の動向を探っていたから、ということですか?」

一方通行「否定はしねェよ」

風斬「…………」

一方通行「……チッ、まァ安心しろォ。オマエに敵意がねェっつゥことはすぐにわかったからな」

風斬「そう、ですか。それはよかったです」

一方通行「だが残念ながら今は違う。場合によりゃあこの首筋に付いている電極のスイッチを押すことになる」コンコン

風斬「……、さっき言った結標さんの件ですか?」

一方通行「ああ」

風斬「……だったらあなたは、何で私が彼女をを超能力者(レベル5)にしたと思ったんですか?」


一方通行「……そォだな。アイツがレベル5になったきっかけはスキー旅行のときの雪合戦だ」

一方通行「電極の充電が切れて絶体絶命になった俺をアイツは自分自身をテレポートさせることで救った」

一方通行「はたから見れば自分自身でトラウマを乗り越えて、壁を打ち破った女。そォいう風にしか見えねェだろォ」

一方通行「だが俺は感じたンだよ。演算補助を受けていなくて何が起こっているのか理解できねェ状態でも、アイツの周りから何か異質なチカラの動きがあったことをな」


一方通行「で、そのチカラの感じが何となくオマエから発せられるモンと似ていた。それがオマエがアイツにチカラを与えたと考える理由だ」

風斬「……単純に勘違いじゃないんですか? 演算補助を受けていない状態だからいろいろパニックのようなものに陥っていただけじゃ……?」

一方通行「いや、それはありえねェよ。ハッキリ言うがこの感じてるモンっつゥのは俺の能力とはまた別のモン、よォするに直感だ」

一方通行「俺自身のカラダが……言わば本能が感じとったモンだ。これこそ現実味のねェ曖昧な答えかもしれねェ。だが俺は俺自身を信じてる」

風斬「……そうですか。たしかに自分を信じることは大事かもしれません。けれど、それで私を犯人みたいに言われるのは……いやです」

一方通行「そォだな。オマエの言うとおり何の確証もねェただの憶測だ。だが俺を今キチンと確証を持ってオマエの前に立ってンだよ」

風斬「どういうことですか?」

一方通行「じゃあ仮にだ。オマエはアイツのトラウマ克服に手助けしてねェとしよォ」

風斬「……はい」


671: 2013/07/15(月) 23:54:37.42 ID:u/ieRukjo



一方通行「だったら何でオマエはアイツが超能力者(レベル5)になったことを知ってンだ?」



風斬「!? そ、それはあ、あなたが――」

一方通行「俺がアイツが超能力者(レベル5)になった、って言ったからか? 悪りィが俺ァオマエの前じゃそンなこと一言も言ってねェぞ」

風斬「うっ……」


一方通行「さらに言うならこのことは重大な機密、っつゥことに一応なっている。だから俺らの間じゃこれは正式に発表されるときまで秘密にする約束をしている」

一方通行「オマエが一番関わりがあるヤツら、上条、インデックスの中でこれを知ってるのは上条だけだ」

一方通行「上条はこういうことをべらべら言いふらすような三下みてェなことをするヤツじゃねェ」

一方通行「だからオマエはアイツが超能力者(レベル5)になったことを知る手段はほぼねェっつゥことになる」


風斬「…………、…………」

一方通行「答えてもらうぞ風斬。どォいうつもりでアイツにこンな超能力者(レベル5)なンつゥ過酷な道に引きずりこンだのかを……」

風斬「…………」

一方通行「…………」

風斬「…………です」ボソッ

一方通行「あァ?」


風斬「…………、あの子を、あの子の取巻く環境を……守りたかったから……です」


一方通行「あの子……ソイツはインデックスのことか?」

風斬「……はい」

一方通行「どォしてインデックスの話になりやがンだ? それが結標の手助けをした理由にどォ繋がるンだよ」

風斬「…………もし、あのまま結標さんを助けずに、そのまま雪合戦を続けたとします。おそらくあなたは今をここに立っていないかもしれません」

一方通行「……俺が垣根に殺されてたっつゥことか?」

風斬「…………」

一方通行「……チッ」

風斬「……もし、そんなことになったら絶対にあの子は悲しみます。もしかしたら、まったく関係ないのに、自分のせいだと自分を責めてしまうかもしれません……」

一方通行「……それはありえねェ話だろ。俺みてェなクズが氏ンだところでインデックスにはまったく関係のねェはずだろォが。ヤツと俺はまったくの他人なンだからよォ」

風斬「それは間違ってますよ。あの子はあなたの思ってる以上にあなたのことを信頼してますから」

一方通行「……わけがわからねェ、ありえねェよそンなこと」

風斬「……さっき、あなたはあの子に噛みつかれましたよね?」

一方通行「それがどォかしたか?」

風斬「あれって、あの子が本当に信頼してる人にしかやらないんですよ?」

一方通行「ハァ? そンなわけ……いや待てよ」


一方通行(たしかにアイツの噛みつき攻撃を食らってるヤツは基本的に上条だ)

一方通行(だけどスキー旅行ンときに、インデックスのヤツおちょくった回数が上条より圧倒的に多かったアホ二人、土御門と青髪ピアスがいる)

一方通行(けどソイツらがアイツの怒りの牙を食らったところなンざまったく見たことねェ。つゥか上条の方に全部行っていた……)

一方通行(……つまり、上条に噛付くことでしか鬱憤を晴らすことができない。それができるのは決してそのせいで繋がりが断ち切られることがねェって信じてるから……?)


672: 2013/07/15(月) 23:55:42.78 ID:u/ieRukjo


一方通行「…………」

風斬「……思い当たるところがあったみたいですね」

一方通行「……ああ。……いや、やっぱりおかしいだろォが」

風斬「何がですか?」

一方通行「俺がアイツに一体何をしてやったンだと言うンだ? ただで食いモン食わせてやったことかァ? 一緒にゲームで遊ンでやったことかァ?」

一方通行「アイツがどォいう経緯で上条と一緒にいるのか知らねェが、俺は上条みてェなヒーローじゃねェっつゥことは周知の事実だろォが!」

風斬「……それは私にもわかりません。でもあなたにはあの子が信頼するに足る何かがあることは間違いないです」

一方通行「信じられるわけねェだろォが。インデックスが俺を信頼してるなンていうクソみてェな妄言はよォ」

風斬「……たしかに、この話はあなたの言うように妄言かもしれません。けど……」

風斬「あの子があなたに向けている笑顔は全部、あなたの言うようにまったく信頼されてない人に向けられているような笑顔ですか?」

一方通行「……笑顔なンざどォとでも作れる。外じゃ誰にでも満面の笑みを見せられるヤツなンざクソみてェにいるぜ? 全部目先の利益のためのな」

風斬「あなたにはあの子の笑顔がそういう風に見えるんですか?」

一方通行「……ああ」

風斬「なら、何であなたはあの子と一緒にいられるんですか?」

一方通行「…………ッ」

風斬「何でわざわざゲームで対戦をして遊んであげたりしたんですか? 何でお腹を空かせたあの子に食べ物を食べさせてあげたんですか? 何でお互い憎まれ口をたたき合うような意味もない会話をしてあげたんですか?」

風斬「あの子があなたの言うような笑顔をするような子だったら、あなたはここまでのことをしてあげないんではないですか?」

風斬「あなたも本当はわかってるんじゃないですか? あの子がそんなことを目先の利益なんてものを考えるような子じゃないってことを」

一方通行「…………」

風斬「インデックスは優しいですよ。私のことを『化け物』だと知ってても、何の曇りもない笑顔で私のことを『友達』と呼んでくれます」

風斬「そんな子だから、私は一人じゃないんです。私はここに存在できるんです」


風斬「だから、私は悲しませたくないんです……! 私に、生きる意味を与えてくれた友達を……!」


一方通行「…………オマエがどれだけアイツのことを想っているのかはわかった」

風斬「…………」


一方通行「だけどよォ、こっちからしたらだからどォしたっつゥ話になっちまうンだけどよォ? なァ?」


風斬「…………、そうです、ね。たしかに彼女には、結標さんにはひどいことをしてしまったのかもしれません。あなたの言いたいこともわかります」

一方通行「だったらこれからどォいう展開が繰り広げられるのか、っつゥのもわかってンだろ?」

風斬「はい……どうぞ、その電極のスイッチを入れてください」

風斬「私がそれだけのことをしたってことは、わかっていますから……それ相応の罰を受けなきゃいけないことも」

風斬「あなたに消されるのだったら、それも本望なのかもしれませんから……」

一方通行「…………そォか」

風斬「…………」

一方通行「…………」スッ

風斬「!」ビクッ


一方通行「…………はァ、ったくうざってェンだよ」

風斬「……え」


673: 2013/07/15(月) 23:57:26.73 ID:u/ieRukjo


一方通行「ハナっからわかってンだよ。オマエが善人だってことは、アレに悪意なンてなくて純粋な善意しかねェってことはなァ……」

一方通行「ただ確認したかっただけだ。ロクなことにしか働かねェカンが外れてることを祈ってな」

風斬「……え、えっと」オロオロ

一方通行「そもそもこンな事体を引き起こしたのは全部俺のせいだ。俺が垣根なンざ速攻で潰せるくれェ強かったら、さらに言うならアイツを巻き込ンじまったりしなかったら……」

一方通行「俺がこンなにも無様だから、グループに、木原に、そしてオマエに力を借りなきゃいけなくなっちまったンだよ」

一方通行「だから別にオマエが気に病む必要もねェ。これは全部俺の責任だ」

風斬「え、そ、そんなことは……」オロオロ

一方通行「……ケッ、オイオイどォしたオマエ? さっきまでベラベラ喋ってたくせによォ、急に吃りだしてンじゃねェよ」

風斬「ご、ごめんなさい。さっきは……あの……その、必氏でしたから」

一方通行「だろォな。まるで別人のよォに雰囲気が違ったな」

風斬「ううっ……」

一方通行「…………オイ」

風斬「……は、はい?」

一方通行「オマエさっき自分で自分のことを『化け物』って言ってただろ? アレもォやめろ」

風斬「な、何でですか……? だって私はばけ――」

一方通行「…………」カチッ

風斬「えっ」ビクッ

一方通行「『化け物』っつゥのよォ――」コツン





ドグッシャアアアッ!!




一方通行「――俺みてェなヤツのことを言うンだよ」カチ

風斬「…………」

一方通行「オマエみてェなただ人とちょっとカラダの造りが違うだけじゃ、何の話にもならねェよ。残念だったな」

風斬「…………」

一方通行「…………」

風斬「…………ふふっ」

一方通行「……あン? 何がおかしい?」

風斬「え、えっとあの……やっぱりあの子の言ったとおりだ、って思ってつい……」

一方通行「ハァ? あのクソシスターは一体何を言ってやがってンだ?」

風斬「あなたのことを『表には絶対に出さないけど、本当は優しくて思いやりのある人』。そう言ってました」

一方通行「……オイオイ何言ってンだあのクソ野郎が。頭に蛆でも湧いてンじゃねェか?」

風斬「そうですか? 私もそう思いますよ?」

一方通行「ここにも脳内お花畑野郎がいたか」

風斬「はい。だって私はあなたたち能力者の発するAIM拡散力場が集まってできているんですよ? だから、別に脳内お花畑でもおかしくはないですよね?」ニコッ

一方通行「…………チッ、うっとォしい」

風斬「ふふっ……」


674: 2013/07/15(月) 23:58:00.07 ID:u/ieRukjo


一方通行「……つゥかよォ、一つ気になることがあるンだけどイイか?」

風斬「何ですか?」


一方通行「問いただした俺が言うのも何だけどよォ、何でこのことをオマエは俺に話したンだ?」

一方通行「霧ヶ丘で聞いたあの話も所詮は噂にしか過ぎねェし、風斬氷華っつゥ名前も偶然と言い張っちまえばどォにでもなる」

一方通行「隠そうとすればいくらでも隠せたンじゃねェのか? このことも、オマエのカラダのことも……」


風斬「……ふふっ、そもそも隠してもバレるんじゃないんですか? あなたさっき自分で言ってたじゃないですか、私が異質なことがわかるって」

一方通行「それはあくまで俺個人が勝手に言っているだけのことだ。大した証拠にもならねェよ」

一方通行「オマエぐれェの頭の良さだったら、本気で隠そうと思えばこォいうところを使ってこの場を逃れることもできただろ」

風斬「買い被り過ぎですよ。そんな私は頭良くないです。……まあ、たしかにさっきからあなたが言ってることには気付いてましたけど」

一方通行「だったら尚更気になってくンじゃねェか。一体どォして俺にこのことを話したのかをな」

風斬「そう……ですね、何と言えば良いのかわかりません。けどあえて言うなら……あなたのことを信じてたから、でしょうか」

一方通行「信じてた? まさかクソシスターが言ってた戯言をか?」

風斬「ええっと、それも少しはあります。けどその前に、あなたはこのことを知ってもなお、今までどおり変わらず接してくれるって思ってたから……」

一方通行「一体俺のどこにそォいうことを思える要素があるってンだよ?」

風斬「一方的な思い込みだからそんなに気にしないで欲しいんですけど、あなたは何となくあの人と似てると思ったので」

一方通行「あの人……誰のことだ?」


風斬「主義主張、性格、見た目、立場、そういうところは全然違うんですけど、根本的な部分はあなたたちはまったく同じように見えるんですよ」


風斬「だから、あなたもあの人と同じように接してくれる、そう思ったから話したんです」

一方通行「それこそ買い被り過ぎだ。俺はオマエの言うよォな人間じゃねェ」

風斬「はい、所詮は私が勝手にそういうことを思い込んでいたにすぎませんよ」

風斬「でも現にあなたは、今までと変わらないいつも通りのあなたを私に見せてくれてるでしょ?」

一方通行「……内心俺がオマエのことをどォ思ってるかなンてわかンねェンだぞ?」

風斬「はい!」ニコッ

一方通行「…………」

風斬「…………」ニコニコ

一方通行「……チッ、くっだらねェ」ガチャリ


675: 2013/07/15(月) 23:58:30.21 ID:u/ieRukjo


一方通行「……さて、そろそろお開きとしよォぜ。引き止めて悪かったな」

風斬「いえ、これぐらい大丈夫です」

一方通行「つゥかオマエ、本当にここらで別れて大丈夫なのか? 時間的には結構遅せェだろ」

風斬「はい、大丈夫ですよ。というか、私の正体を知ってるんですから、別にそんなこと聞かなくてもいいんじゃ……」

一方通行「ケッ、ハイハイそォですねェ。つゥか急にデフォルトを饒舌に変えてンじゃねェようっとォしい」

風斬「え、ええっと、その、ご、ごめんなさい」

一方通行「戻してンじゃねェよ。逆にそれはそれでウゼェだろォが」

風斬「ふふふっ」

一方通行「チッ、じゃあな……」ガチャリガチャリ

風斬「……あっ、そうだ。最後にいいでしょうか?」

一方通行「あァ?」

風斬「さっき、あなたは私はただカラダの造りが違うからって『化け物』を名乗るな、って言いましたよね?」

一方通行「ああ、それがどォかしたか?」

風斬「……実は、私――」ヒュン

一方通行「ッ!?」カチッ





バチィ!! バチィ!!





風斬「あなたが思ってる以上に『化け物』かもしれませんよ?」





バチバチィ!! バチィ!!





一方通行「…………き、消えた……?」カチ


一方通行(な、何だよありゃあ。今までいろいろな能力を見てきたが、あンなモン初めて見る……)

一方通行(……一体何者だ? 風斬氷華……)

一方通行(そして、上条やインデックス、アイツらはこれを全部知ってたっていうのかよ?)


一方通行「…………クソッたれ、帰るか」ガチャリガチャリ


―――
――



676: 2013/07/15(月) 23:59:12.21 ID:u/ieRukjo


同日 20:40

-黄泉川家・キッチン-


吹寄「……い、いよいよ最後よ」ゴクリ

結標「え、ええ……」

姫神「最後は。この丸めたチョコレートにの周りにチョコを塗って。それにココアパウダーをまぶすだけ……」

吹寄「む、結標さん。間違えちゃダメよ? 周りに塗るのはチョコレートを溶かしたものであって、それ以外のものはこの際全部なしよ?」

結標「わ、わかったわ。チョコレートね、チョコレート……」ブツブツ

姫神「……ところで。肝心なココアパウダーはどこ?」

吹寄「ココアパウダーは、ええっと……あれ? そういえばパウダー買ったっけ?」

姫神「そういえば。籠の中に入れた覚えがまったくない」

吹寄「……結標さん? ココアパウダーはちゃんと買ったの?」

結標「…………」

姫神「…………」

吹寄「…………」

結標「…………」ニヤァ


結標「もちろん買ってません!」ニコ


吹寄「」ガクッ

姫神「やっぱり。そんな気はしてた」

結標「い、いやだってそんなこっちは作り方知らなかったわけだし。だから必要な材料もわからなかったわけだし」

吹寄「大まかだけど作り方も説明したし、材料とかもちゃんと教えたわよ?」

結標「あ、あれー? そ、そうだったかしら?」

姫神「……まあ。私たちも忘れてたからしょうがない」

吹寄「たしかにそうね。今はこの危機をどう乗り越えるかが先決よ」

姫神「うん。ところで結標さん。この家にはココアパウダーはある?」

結標「え、ええっと、うん。たしかあったはずよ」

姫神「ならそれを使おう。今すぐ持ってきて」

結標「りょ、了解! えっと確かこの辺に……」ガサゴソ


打ち止め「……ふぅ、やっぱり体が冷えてる時のココアはすっごく美味しいぜ、ってミサカはミサカはコップを片手に酔いしれてみたり」フゥ


結標「……打ち止めちゃん?」

打ち止め「ん? 何アワキお姉ちゃん?」

結標「今貴女が飲んでるそれは何かしら?」

打ち止め「えっ、何ってただのココアだよ! ってミサカはミサカはコップの中を見せながら答えてみたり!」スッ

結標「…………えっと、じゃあそれを作るために必要なココアパウダーはどこかしら?」

打ち止め「ま、まさかアワキお姉ちゃんもココア飲みたかったの!? そ、そのココアパウダーは……」


ココアの空ビン『』


677: 2013/07/16(火) 00:00:02.30 ID:wBv7Ieywo


結標「」

打ち止め「え、えへへごめんね? アワキお姉ちゃんどっちかと言ったらコーヒー飲んでるから、まさかココアが飲みたいなんて突発的に言ってくるとは思わなくて……」

結標「い、いいのよ別に。打ち止めちゃんは何も悪くないわ」

打ち止め「で、でも……」

結標「大丈夫よ! ココアなんてなくても私は戦い抜いてみせるわ! 絶対に!」

打ち止め「? 何だかよくわかんないけど頑張ってね、ってミサカはミサカはエールを送ってみたり」


結標「……というわけでココアパウダーはなかったわ」

吹寄「そ、そう……それは残念だったね」

姫神「何か代用品でも使うか。それかもうこれを完成品とするか……」

吹寄「代用品って?」

姫神「例えば粉系ではなくソース系を使うとか」

吹寄「ホワイトチョコとかフルーツを使ったソース?」

結標「でもそれを作ってる時間はあるの?」

姫神「正直無理。ホワイトチョコは私が使うからって買ってはあるけど。そんなソースに出来るほど残ってはない」

吹寄「買いに行くとしても今の時間帯、大体閉める準備をしてるから買うのは困難ってことか……」

結標「…………」

姫神「…………やっぱり」

吹寄「そうね。もう、これで完成ってことにするしか……」

結標「……! そうだ!」ピコン

吹寄「な、何かいい案でも思いついた?」

結標「うん! 代用品ならちゃんとあるわ! この家の中に!」

吹寄「ほ、ほんと?」

結標「嘘はつかないわ!」

姫神「それが本当なら。ちゃんとしたトリュフを作ることができる」

結標「よし! じゃあ持ってくるわね」テクテク


678: 2013/07/16(火) 00:00:53.92 ID:wBv7Ieywo


~1分後~


結標「持ってきたわ! これが私が思いついた代用品よ!」バッ


吹寄「…………えっ?」

姫神「…………」

結標「あ、あれ? 我ながらいい案だと思ったのに微妙な反応ね」

吹寄「え、ええっと、何というか……」

姫神「思ったより結構まともなものが出てきてびっくりしてる」

吹寄「で、でもこれって正直微妙かもね」

結標「え、そうなの?」

吹寄「貴女が買ったチョコレートとそれを合わせたら、何だかすごいことになりそうよ。いろいろな意味で」

姫神「でも。一応こういうものも存在するから問題ない」

吹寄「たしかに存在はするけど……やっぱり果てしなく微妙なのになりそうよ?」

結標「二人が一体どういう会話をしてるのかわからないけど、とりあえずこれでオッケーってこと?」

吹寄「うーん、まあ結標さんがいいと思うならいいと思うけど……」

姫神「ただし必ずいいものができるとは保証はできない」

結標「……大丈夫よ! 何となくだけど、これでいいような気がするから!」

吹寄「……わかったわ! じゃあこれで作るとしましょう!」

姫神「早速作業に取り掛かるとしよう」


~十分後~


結標「――最後に綺麗に配置して」コソコソ


吹寄「…………」ゴクリ

姫神「…………」


結標「……これで、終わりっと」スッ


吹寄「……ってことは?」

姫神「うん」

結標「か、完成したの……?」

吹寄「や、やったわね結標さん!」

結標「私が、まともな料理を、完成させたの?」

姫神「うん。おかしなものは一つも入ってない。あなたが作った正真正銘のチョコレートだよ」

結標「…………や」ウルッ





結標「やったああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」





679: 2013/07/16(火) 00:02:37.41 ID:wBv7Ieywo



黄泉川「じゃ、帰り支度は済んだじゃん?」



吹寄「大丈夫です」

姫神「同じく」

結標「二人とも。こんな時間まで付き合わせちゃってごめんなさいね」

吹寄「いいよ別に。だってあたしたち友達じゃない!」

姫神「そう。お互い助け合うのは当たり前のこと」

吹寄「だから、そこはごめんじゃなくてありがとうって言ってほしいわ」

結標「う、うん、ありがとね! 吹寄さん姫神さん!」

吹寄「あ、あと言っとくけどバレンタインはチョコを完成させてゴールじゃないわよ? むしろやっとスタートラインに立てたと言っても過言じゃないわ」

結標「わかってるわ。渡してやっとゴールよね」

吹寄「それがゴールになるかスタートになるかは結標さん次第だけどね」

結標「えっ? それってどういう……?」

吹寄「とにかく頑張れってことよ!」

結標「が、頑張ります……」


黄泉川「ほいじゃあ、そろそろ出発するじゃん?」


吹寄「そうですね。じゃあ結標さん、また明日ね!」

姫神「また明日」

結標「うん、また明日!」ノシ



ガチャ



―――
――



680: 2013/07/16(火) 00:03:28.37 ID:wBv7Ieywo


同日 21:00

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-



ガチャ



一方通行「…………」ガチャリガチャリ

上条「おっ、一方通行おかえり」

一方通行「おォ……」

上条「? 何か元気がねえぞ? どうかしたか?」

一方通行「イイや何でもねェよ。オマエが知る必要もねェことだ」

上条「?」



禁書「あっ、あくせられーたおかえり!」←パジャマ姿



一方通行「…………誰だオマエ?」

禁書「ええっ!? 何で少し会わない間に私忘れられているの!? インデックスだよインデックス!」

一方通行「インデックスゥ? ……ああ、オマエインデックスか」

禁書「もう! もしかしてあくせられーたって忘れっぽい人かな?」

一方通行「ンなわけねェだろォが。大体オマエの特徴の九割を占めてる修道服を着てねかったから誰だかわからなかっただけだ」

禁書「あれ? 私ってそんなに特徴ないの? 修道服以外に?」

一方通行「ちなみに残り一割は外国人ってところだけだ。なお、イギリスとかに行ったらその特徴も潰される模様」

禁書「ううっ、何だかショックなんだよ……」

一方通行「あっ、そォいやまだ食欲っつゥ特徴があったな」

禁書「フォローにならないこと思い出してくれてありがとなんだよ……」

上条「ま、まあ気にすんなよインデックス。こいつがあまりに特徴的過ぎるだけだ。何なら俺なんてただ男子高校生だぜ? 特徴のとの字もねえくらい特徴ねえよ」

一方通行「自分で言ってて悲しくならねェか?」

上条「うるせえ。大体普通に生きてくならいらねえだろそんな特徴なんて」

一方通行「まァな。その無駄に特徴を持ったまま生きた結果が俺だからな」

上条「だったらそれは無駄じゃねえだろ。それがなかったらお前はここにいないわけだからな」

一方通行「チッ、くだらねェ」


681: 2013/07/16(火) 00:04:04.04 ID:wBv7Ieywo


上条「あ、そうだ。お前さっさと風呂入っちまえよ。着替えは中に置いてあるから」

一方通行「あァ? 別に風呂なンざ入らねェでもイイと思ってたンだがな。体表面の汚れは全部反射すれば終わりな話だし」

上条「たしかにそうかもだけど、風呂に入る入らねえだったら気分的に結構違うだろ」

一方通行「そォか?」

上条「そうだろ。だってさっぱりするんだぞ?」

一方通行「反射でもさっぱりすンぞ?」

上条「何つーかなー、その反射ってのをしたことねーからわかんねーけど、やっぱ風呂ってのはいいもんだぜ?」

一方通行「面倒臭せェなァ」

上条「……てか、お前まさか毎日風呂入ってねえのか?」

一方通行「いや、普通に入ってる」

上条「だったらその流れで普通に入れよ」

一方通行「何つゥか、他人の家の風呂に入るなンざ面倒臭せェ気持ちしか湧かねェよ」

上条「まあその気持ちわからないことはないけど」

禁書「そうかな? 私よくせんとうとか行くけど、別にそんな面倒臭いなんてことはないんだよ」

一方通行「銭湯はまた別だろ。まァどちらにしろ俺ァそォいうモンは嫌いだがな」

上条「文句言ってる暇があったら行ってきたらどうだ? あとがつかえてんだからさ」

一方通行「あァ? オマエまだ入ってねかったのかよ。つゥかオマエが先に入ればイイじゃねェか面倒臭せェ」

上条「いや、正直俺が最後に入ったほうがいろいろ都合が良いんだよ」

一方通行「一体どォいう都合だ」

上条「まあいいから先行けよ。ほらほらっ」

一方通行「わかったから押すンじゃねェ三下ァ! こっちは杖突いてンだから歩きにくいだろォが!」ガッチャガッチャ

上条「あっ、そうだ。中にあるシャンプーとかは適当に使っていいからな。でもあんま使いすぎんなよ!」

一方通行「ヘイヘイわかりましたよォと」ガチャリガチャリ

禁書「いってらっしゃい!」

一方通行「面倒臭せェ」


―――
――



682: 2013/07/16(火) 00:05:01.77 ID:wBv7Ieywo


同日 21:20

-黄泉川家・浴室-



ザッパーン!



結標「…………はぁ、疲れたぁ」チャプン

結標「まさかチョコレート一つ作るのにこんなに時間がかかるなんて思わなかったわ……」

結標「まあ……全部私のせい、ってことよね……はぁ」

結標「二人ともやることだっていっぱいあったのだろうし、それなのにこんな時間まで付き合わせて……」

結標「どうしてこう常識的な発想ができないのかなー私って」

結標「もし常識的な……普通で何の面白味のない考えを持ててたら、こんなことにはならなかったはずよね」

結標「…………」

結標「……やっぱり私も超能力者(レベル5)……人格破綻者なのかな、ははっ」

結標「…………」チャポン

結標「……とにかく、明日はバレンタインデー本番。明日の頑張りっぷりでスタートかゴールが決まるのよね」

結標「しかしバレンタインってどうやって頑張ればいいのかしら? ただチョコレートを渡すだけじゃいけないのかしらね」

結標「バレンタインなんてイベントは漫画とかでしか知らないけど、だいたいそういうのってうやむやになって終わるのよねー」

結標「……このままじゃ私もうやむやのまま終わってしまいそうね」

結標「んー、かといってバレンタインにかこつけて告白する勇気もないのよねー」

結標「でもこういうイベントごとで行かないと一生できるような気もしないわ」

結標「…………もし」

結標「もし告白したとして、一方通行は私のことを受け入れてくれるのだろうか……」

結標「普段があんなのだから、絶対に受け入れてくれない気がする……」

結標「そしたらそのあとずっと気まずい雰囲気のまま同じ家に住んで、同じ学校に通って、同じクラスで授業を受けないといけなくなるかもしれないわね」

結標「……だから、そうならないために明日のバレンタインがあるのか……」

結標「…………ふぅ」ジャポン

結標「……青髪ピアス君がよくやってるゲームみたいに、アイツの好感度がパラメーターみたいになって見えればいいのにな」

結標「そうすれば……いや、もしかしたら嫌われてる可能性もあるから逆にへこんでしまうかもれないわ……」

結標「…………」

結標「……そろそろ上がろ」



ジャバーン!



―――
――



683: 2013/07/16(火) 00:06:13.63 ID:wBv7Ieywo


同日 21:30

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-


ガチャ


一方通行「……上がったぞ」ホカホカ

上条「了解。じゃあ俺も入るかなーと」テクテク

一方通行「……はァ、やっぱ他人の家の風呂は使い勝手がわからなくて面倒だわ」ガチャ

上条「そうか? 普通の風呂場だと思うけど」

一方通行「普通だろォと普通じゃなかろォと使いにくいのは変わらねェだろォが」ガチャリガチャリ


ガチャ


一方通行「…………はァ、面倒臭せェ」カチャ

禁書「……あなたっていつも面倒臭いって言ってるよね」

一方通行「そォか?」

禁書「うん、さっきの一連の流れだけでも二回は言ったよ?」

一方通行「……まァ、アレだ。何かと面倒臭せェと言うのは俺のアイデンティティだっつゥことで」

禁書「いやなアイデンティティだね……」

一方通行「…………」ズズズ

一方通行「……あァ、風呂上りのコーヒーうめェ」

禁書「……うっ」

一方通行「……どォした?」

禁書「……いや、何でもないんだよ」ジュルルル

禁書「ふぅ、やっぱりいちご牛乳は甘くて美味しいんだよ!」

一方通行「…………オマエ、俺の缶コーヒー勝手に飲ンだだろ」

禁書「えっ? な、何のことやらさっぱりなんだよ……」


一方通行「証拠第一。なぜだか冷蔵庫にある缶コーヒーの数が一つ減っていた」


禁書「と、とうまが飲んだんじゃないかな?」


一方通行「証拠第二。流し台が軽くだがコーヒー色に染まっていた。何者かがあそこにコーヒーを流した跡だと思われる」


禁書「ちゃ、ちゃんと掃除ができてなかっただけじゃないかな?」


一方通行「証拠第三。流し台にコーヒーを捨てたイコール自分には苦すぎた。その口直しといわンばかりに甘めェモンを摂取してる」


禁書「な、何を言ってるのかな? 私は単純にいちご牛乳が好きで飲んでるだけなんだよ」


一方通行「そしてこれが決定的な証拠だ。オマエ口の周りにコーヒーが付いてるぞ」


禁書「えっ、そんな!? ちゃんと拭いたはずじゃ……はっ」


684: 2013/07/16(火) 00:06:41.05 ID:wBv7Ieywo


一方通行「……ほォ、何でコーヒー飲ンでねェヤツがそンな口の周りに付いたコーヒーなンざ気にするンだ?」

禁書「えっえっと、それは……」

一方通行「キチンと白状すりゃ、罰を軽くしてやらねェこともねェ」

禁書「私が飲みました! ごめんなさいなんだよ!」

一方通行「有罪」ビシッ

禁書「あたっ、ううっ……ひどいんだよあくせられーた」

一方通行「何がひどいだ。勝手に缶コーヒー飲ンだあげくほとンど排水溝にぶち込みやがったヤツよりはマシだろ」

禁書「うっ、ま、まあそうだけど……」

一方通行「つゥかよォ、オマエは何で人のコーヒー勝手に飲みやがったンだ? やっぱりあの夕食じゃあ足りねかったのか?」

禁書「そ、そんなんじゃないんだよ! …………たしかにちょっとおなかは空いてるけど」ボソッ

一方通行「最後の呟きでますます言い訳の信憑性がなくなりそォだな」

禁書「え、えっと、今まで飲めなかったけど、もしかしたら今なら飲めるかなーと思って試しに飲みました」

一方通行「へー」

禁書「まあ言うならば、大人の階段を上ろうとした結果かも!」

一方通行「で、上れたのか大人の階段」

禁書「まだ私には早すぎるんだよ」

一方通行「だろォな。そもそもブラックコーヒーごときで大人の階段を上れると思ってる時点で、一生その階段を上りきることはねェだろォな」

禁書「いいもん! 私にはこの甘い甘いストロベリーミルクがあるからいいもん!」ジュルルル

一方通行「はァ……くっだらねェ」つリモコン


テレビ『――続いてのニュースです。今日はバレンタインデー前日だということがあり、各地のお菓子――』


一方通行「…………」

禁書「…………」ジュルルルル

一方通行「……なァ?」

禁書「何かな?」

一方通行「オマエは明日何の日か知ってるか?」

禁書「バレンタインデーでしょ? さっきテレビで言ってたとおり」

一方通行「そォだな。で、オマエは何か贈り物でもしよォとでも思ってンのか?」

禁書「うーんと、別にそんなことは考えてないよ」

一方通行「へェ、そりゃまた意外だな」

禁書「そうかな? まあでも日頃お世話になってる人に感謝の気持ちは伝えるつもりなんだよ。贈り物とかはお金を持ってないからさすがに無理かも」

一方通行「……やっぱオマエら外国人から見れば、日本のバレンタインデーは異質なのか?」

禁書「うーん、そうだね。違和感がないと言ったら嘘になるけど、文化っていうのは国によって違うから」

一方通行「そォか。俺からしちゃ違和感しかねェけどな」

禁書「あれ? あなたって日本の人じゃないの?」

一方通行「イイや日本人だ。ただそォいう環境にいなかっただけだ」

禁書「ふーん」ジュルルルル


685: 2013/07/16(火) 00:07:44.64 ID:wBv7Ieywo


一方通行「……まァでも」ゴロン



一方通行「そォいうことで騒げるよォな居場所にいれるっつゥだけで、それは幸せっつゥことになるンだろォな」



禁書「…………」

一方通行「……って、あァ? どォした?」

禁書「……ねえあくせあれーた。何か変なものでも食べた? 何か変だよあくせあれーた」

一方通行「安物の肉を食った」

禁書「へー、安物のお肉にそんな効果があったんだ……」

一方通行「真に受けてンじゃねェよ。……まァ、たしかにオマエの言うとおりちょっと頭がおかしくなってたよォだ」

禁書「まあそれでも何もない日常の中に幸せがあるってことに気付けたって事は、それはいいことだと私は思うんだよ」

一方通行「…………」

禁書「…………」ドヤ

一方通行「ケッ、くっだらねェ。寝る」ゴロン

禁書「あっ、あくせあれーた! コタツで寝ると風邪ひいちゃうよ!」

一方通行「俺には反射がある。つまり風邪ひかねェ」

禁書「んーと、それってその首に付いてるぼたんを押さないとできないんじゃなかったかな?」

一方通行「こまけェこたァイインだよ」

禁書「……んーたしかのそうだね。よーし」ゴロン

一方通行「あン?」

禁書「私もコタツで寝ようっと」

一方通行「風邪ひくぞ?」

禁書「ふふん。こう見えても私体は結構強い方なんだよ」

一方通行「とてもそォには見えねェンだけどなァ、まァどォでもイイけど」


スフィンクス「Zzz」


禁書「あれ? そういえば見ないと思ったらこんなところにいたんだねスフィンクス!」


686: 2013/07/16(火) 00:08:23.16 ID:wBv7Ieywo


禁書「ねえあくせられーた! スフィンクスがコタツの中で丸くなってるんだよ!」

一方通行「…………」

禁書「……? あくせられーた?」

一方通行「……Zzz」

禁書「って早っ! もう寝ちゃったの!?」

一方通行「Zzz」


禁書「…………ふふっ、じゃおやすみなさいスフィンクス。あくせられーた」ゴロリ



~数十分後~



ガラッ



上条「――ああ、いいお湯だった……ん?」



一方通行「…………」Zzz

禁書「……すぅ、すぅ……」Zzz

スフィンクス「……にゃぉ」Zzz



上条「…………どういう状況だ? これ?」

上条「まあでも、仲よさそうで何よりだ」


―――
――



687: 2013/07/16(火) 00:09:27.08 ID:wBv7Ieywo


同日 23:00

-黄泉川家・結標淡希の部屋-



ボフン!



結標「ふー、宿題終わった終わった」

結標「……というかアイツ宿題ちゃんとやってるのかしら」

結標「上条君の家で遊び倒してなきゃいいけど……」

結標「…………」

結標「……とにかく、明日は絶対頑張ろう」

結標「うまくいくかいかないかなんて全然わかんないけど、とにかく頑張ろう」

結標「せっかくのバレンタインデーなんだから楽しまないとね」フフッ

結標「…………」

結標「よし、じゃあ明日に備えて早く寝るとしますか」

結標「おやすみなさい……一方通行……」






こうして夜は過ぎていく。様々な人の様々な思いを抱いたまま。

そして彼ら彼女らは迎えることになる。ある人にとっては、もしかしたら人生のターニングポイントになるかもしれないこの日を……。





February 14,Thursday 00:00 ~バレンタインデー~





――――


725: 2013/07/28(日) 23:41:42.58 ID:29cPYilCo

ひゃっはっー!! 少量投下だすみません

726: 2013/07/28(日) 23:42:34.98 ID:29cPYilCo


21.バレンタインデー


February 14,Thursday 07:00

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-



チュンチュン



一方通行「…………朝か」

一方通行「…………」キョロキョロ

一方通行「…………」ボー

一方通行「…………」


一方通行「……どこだここは?」


禁書「……すぅ……すぅ……」

一方通行「…………」

禁書「……ん、……むにゃ……」

一方通行「……あァ、そォいや上条の部屋に泊まってたンだっけか」

一方通行「…………朝のコーヒー」ムクリ


ガチャ


一方通行「…………」カチャ

一方通行「…………」ズズズ

一方通行「……つゥか上条どこ行った?」

一方通行(見たところベッドの中はもぬけの殻。コタツの中にはシスター一人だけ)

一方通行(こンな時間にどっかに出かけるなンつゥことは恐らくねェだろ)


一方通行「……だったらどこに行きやがったンだァ? 三下様よォ」


禁書「……んっ、……あ、さ……?」

一方通行「……起きたか」

禁書「……あれ、あくせられーた……?」

一方通行「あン?」

禁書「……何でここにあくせられーたが ?」

一方通行「寝ぼけてンじゃねェよ。キチンと完全記憶能力活用しろコラ」

禁書「……そういえばここに泊まっていたんだっけ?」

一方通行「聞かなくてもわかンだろこの状況ォみりゃ」

禁書「…………」

一方通行「…………」

禁書「……おはようあくせられーた」

一方通行「……おォ」


727: 2013/07/28(日) 23:43:32.72 ID:29cPYilCo


禁書「ところで今何時かな?」

一方通行「あァ? 大体七時くれェだな」


ぐー


禁書「…………」

一方通行「…………」

禁書「おなか空いたんだよ」

一方通行「今度はキャラ崩壊しねェのかよ」

一方通行「……つゥかよォ、上条の野郎はどこに消えやがったンだ? シスターの暴食に耐えかねて、ついに夜逃げでもしたかァ?」

禁書「そ、そんなことないんだよ……たぶん」ボソッ

一方通行「ほォ、じゃあンなことねェっつゥ理由を言ってみやがれ」

禁書「んんと、たぶんとうまはここにいるから……」ガラッ

一方通行「……ハァ? 風呂場?」

禁書「とうまー! 朝だよー! 起きてー!」

一方通行「……何やってンだコイツ」

禁書「おなか空いたんだよー! だから朝ごはん作って欲しいかもー! とうまー!」

一方通行「ったく、こンなとこに三下がいるわけ──」


ガチャ


上条「……はいはい、わかったから静かにしてくれインデックス」

一方通行「」

上条「……ああ、一方通行。お前も起きてたのか」

一方通行「」

禁書「とうまー、おなか空いたー!」

上条「へいへい、何か残ってたっけなぁ……?」

一方通行「……オイ」

上条「ん?」

一方通行「何でオマエ風呂から出てきてンだ……?」

上条「何でって……風呂で寝てたからに決まってんだろ?」

一方通行「…………は? 今何つった?」

上条「だから風呂で寝てたっつったんだよ」

一方通行「風呂でってアレか? 浴槽の中で無様に毛布に包まってガタガタ震えながら寝てたっつゥことか?」

上条「言い方はムカつくがそういうことだな」

一方通行「…………」

上条「?」

一方通行「は?」


―――
――



728: 2013/07/28(日) 23:44:06.93 ID:29cPYilCo


同日 07:20

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-



禁書「――いっただきまーす!」


スフィンクス「にゃー」モグモグ

一方通行「……いただきまァす」

上条「おう、どんどん食えよ」

一方通行「…………」

上条「……どうした? 食わねえのか?」

一方通行「…………」



サラダ『盛られるぜー超盛られるぜー!』



一方通行(何で朝っぱらからグリーンマウンテンが出てきてンだよクソが)

禁書「とうまードレッシングー」

上条「ちょっと待ってろ……ほらっ、あんま使いすぎんなよ、特売じゃなかったら高いんだから」スッ

禁書「わかってるんだよ」ギュッ



ブパパパァ!!



禁書「……あ」

上条「あのーインデックスさん? 使いすぎんなって言ったそばから何盛大にぶちかましてくれちゃってんですか?」

禁書「ちょっと力加減を間違えたかも」

上条「不幸だ……」

一方通行「……オイ、さっさとこっちにもドレッシング寄越せ。かけまくってやらねェと食い切る自信がねェ」

禁書「はい」スッ

一方通行「って空っぽじゃねェかクソ野郎がァ!」

禁書「反省はしてるんだよ」


729: 2013/07/28(日) 23:45:16.98 ID:29cPYilCo


一方通行「……チッ、今はとにかく主食のパンだな」ガジッ

上条「ありゃ? ジャム塗らねえのか?」

一方通行「甘ったるいのは嫌いだ」

禁書「ええっー? こんなに美味しいのに……。人生の二割ぐらい損してるんだよ」

一方通行「ガキが人生語ってンじゃねェよ。まァ、俺はコーヒーがありゃ人生に不自由はねェ」

禁書「コーヒーじゃおなかは膨れないかも」

一方通行「コーヒーは空腹を凌ぐモンじゃねェよ。嗜好品だ嗜好品」

上条「……じゃあ結局お前はパンにジャム付けねえのか?」

一方通行「ああ」

上条「そうか。まあ上条さんもそっちの方が助かるけど……」

禁書「じゃあ私が代わりにあくせられーたの分二重に塗るんだよ!」ベチャベチャ

上条「無駄遣いしてんじゃねえよ! もったいないだろ!」

禁書「ええっー、もともと減る予定だったんだからいいと思うんだよ!」

上条「一方通行がいらないって言った時点でその予定はねえことになんだよ!」

一方通行「朝っぱらからうるせェンだよ。静かに食事もできねェのか馬鹿ども」ズズズ

上条「あ、すまねえ」

禁書「ご、ごめんなさい」

一方通行「チッ、わかりゃイインだよ。それじゃあ俺ァもォ食い終わったからごちそうさまさせてもらうぜ」ガタッ

上条「……一方通行」

一方通行「あン?」


上条「まだサラダ食ってねえじゃねえか」


一方通行「」


―――
――



730: 2013/07/28(日) 23:45:57.19 ID:29cPYilCo


同日 07:35

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-



禁書「――ごちそうさま!」



一方通行「……おェっぷ、氏ぬ……うェ……」

上条「大丈夫か?」

一方通行「大丈夫なわけ、ねェだろォが……。調味料なしサラダ……ぐはっ」

上条「どんだけ野菜嫌いなんだよお前。今までよく生きてこられたな」

一方通行「ウチには何かしら調味料っつゥモンがある、多種類な。それをかけすぎることによってことで何とか凌いできたわけだ」

上条「あんまかけすぎんのは身体によくないぞ? 塩分とか取りすぎて」

一方通行「うるせェよ。そォいうわけで何もかけられてねェクソ野菜どもには耐性がねェンだよまったく」

禁書「好き嫌いはだめだと思うんだよ」

一方通行「大体オマエがドレッシングを全部ブチ込ンだのが元凶だろォが!」

禁書「野菜が嫌いなのは自分のせいだと思うんだよ」

上条「どうでもいいけどさっさと学校行く準備しろよ? せっかく早く起きれたんだから遅刻なんてしたくねえからな」

一方通行「……あァ、もォそンな時間か」

上条「まだ時間的には余裕があるけど、もしものことがあるからな」

一方通行「能力使えば関係ねェからゆっくりするわ」

上条「おのれレベル5め!」

一方通行「……まァ何つゥか面倒臭せェな」

上条「何がだ?」

一方通行「こォ朝起きると別のヤツの家でしたっつゥ状況だと学校とか行く気なくなる」

上条「うるせえよ、とっとと準備しやがれ」

一方通行「チッ、面倒臭せェ」


731: 2013/07/28(日) 23:46:25.59 ID:29cPYilCo



~身支度終了~




上条「……よし、じゃあそろそろ行くとしようぜ」

一方通行「面倒臭せェ」

禁書「とうま! 今日はあるばいとはあるのかな?」

上条「ああ。まあ一度ここには帰ってくる予定だから晩メシは心配しなくていいぞ?」

禁書「うん。わかった」

一方通行「今日の晩はバイトか。こンな平日までご苦労なこった」

上条「まあやらねえと生活していけねえからな」

一方通行「何つゥ人生ハードモードだ」

上条「別にそうでもねえだろ。この程度でハード言ってたら本当につらいヤツらに怒られちまうよ」

一方通行「ケッ……まァそォだな」

上条「ほいじゃインデックス。行ってくるよ」

禁書「いってらっしゃいとうま! あくせられーた!」

一方通行「俺は帰ってこねェがな」

上条「そうだ。昼メシは冷蔵庫にチャーハン置いてあるから、レンジで温めて食ってくれ」

禁書「了解なんだよ!」

一方通行「チャーハンを作れるだけの財力がオマエにあったのか」

上条「失礼な。それくらい上条さんのひもじいお財布の中身でも作ることできますよ……まあ、具はネギと卵だけだけどな……」

一方通行「悲しいチャーハンだな」



ガチャ



上条「あっ、もし出かけることがあったら、ちゃんと戸締りしとけよ」

禁書「もうとうま! そんなこと毎日毎日言われなくてもわかってるかも」

上条「わかった上で忘れそうだからこう何回も言ってんじゃねえか」

一方通行「まるで役に立たねェ完全記憶能力だな」


―――
――



732: 2013/07/28(日) 23:46:59.86 ID:29cPYilCo


同日 07:45

-とある高校学生寮・一年七組教室-



結標「…………」



シーン



結標(な、何か早く来過ぎちゃった……!?)

結標(い、いや、別にそんなに早すぎるってわけじゃないわよね? ぽつぽつと来てる人たちがいるもの)

結標(でもこのクラスの人たちは誰一人とも来てないわね……)


結標「…………とにかく。昨日の夜吹寄さんたちと考えた作戦を絶対に成功させなきゃいけないわね」

結標「一応、確認のために復習しておこうかしら。……ええっと――」



~回想~



ガチャ



結標「……ふぅ、さっぱりした。この短時間でお風呂に二回も入るとは思わなかったわ」

結標「まあ、お風呂入るの好きだからいいけど」

結標「ドライヤー、ドライヤーっと……」カチッ



ゴアアアアアアッ!!



結標「~~♪」



タラララララン♪ タラララララン♪



結標「? 電話? いや違うわ、チャットね」ピッ



吹寄『やっほー結標さん!』

姫神『……やっほ』



733: 2013/07/28(日) 23:47:37.00 ID:29cPYilCo


結標「どうしたの二人して?」

吹寄『ちょっと明日の打ち合わせをしたいと思ってね』

結標「明日の打ち合わせ?」

吹寄『そうそう。明日のバレンタインデーでチョコレートをどうやって渡すかの』

結標「……別に普通に渡せばいいんじゃないかしら?」

姫神『それは私も思った』

吹寄『普通って言うけどじゃあ例えば教室でみんながいる中で正々堂々正面から渡すの?』

結標「別にそれでも構わないけど」

姫神『同じく』

吹寄『……そんなんで向こうに想いが通じるとでも?』

姫神『どういうこと?』

吹寄『そういう渡し方だったら義理だと思われてもしょうがないってことよ?』

結標「なん……ですって?」

吹寄『そりゃそうでしょ。『あっ、バレンタインだからあげるー』みたいな風に捉えられてもおかしくなわよ』

姫神『……となると。一対一にどうにか持ち込むしかない』

結標「たしかにそうなるわね……」

吹寄『まあその一対一にする方法のは置いとくとして、あたしにちょっとした作戦があるんだけど』

結標「結構重要な方法を置いとくね……」

姫神『その作戦というものは何?』

吹寄「ちょっとしたドッキリみたいなものよ――」





結標「……たしか吹寄さんの義理クッキーを私たち三人からのプレゼントとして渡す」

結標「今年のバレンタインプレゼントはこれだけか、と油断させてからの本命の私たちのプレゼントをあとから渡す、だったかしらね?」

結標「……何というか、上条君には通じるかもしれないけどアイツには通じる気がしない作戦よね」

結標「まあ、何もせずにそのまま直接渡すよりはマシかもだけど……」

結標「…………」


734: 2013/07/28(日) 23:48:24.46 ID:29cPYilCo



ガララララッ



結標「!」


吹寄「おはよー! ……っと、早いわね結標さん」

姫神「おはよう」

結標「二人ともおはよう! 何か緊張しすぎて居ても立ってもいられなくて……」

吹寄「別にそこまで緊張する必要はないと思うけど? 必ず成功させなきゃいけないってわけじゃないし」

結標「そうは言われても、緊張するものはするわよ……」

吹寄「ま、でもそれだけ本気になれてるってことだからいいんじゃないかしら?」

姫神「うん。今は緊張してない私より遥かにマシ」

結標「えっ、緊張してないの姫神さん!?」

姫神「今はまだ。でも渡すときになったらどうなるかわからない」

結標「私渡すときになったら心臓爆破してるような気がするわ」

姫神「わかる」

吹寄「……はぁ、まあ緊張しとくのもいいけどどうやって一対一に持ち込むかも考えといた方がいいわよ? 昨日言ったように」

結標「うっ、すっかり忘れてたわ……」

姫神「…………」

吹寄「簡単な方法で行くなら呼び出しよね。ベタなところを言うなら校舎裏とか屋上とかにね」

結標「正直それができれば苦労しない、って言いたいわね」

吹寄「あはははっ、まあまだ時間はあるんだしじっくり作戦を練ればいいと思うわ」

結標「そうね。よし、じゃあ授業中にじっくり考え――」

吹寄「授業は真面目に聞いときなさい」


―――
――



744: 2013/08/04(日) 22:12:04.33 ID:rXGMadHpo


同日 07:50

-第七学区・通学路-


一方通行「…………はァ」

上条「どうした? そんなため息ついて」

一方通行「あァ? ああ、何か木曜日って異様にダルいなァって思ってな」

上条「あー、それ何となくわかるわ。まあでもあと今日明日と行けば休みじゃねえか」

一方通行「そォだな……」

上条「つーか、土御門のヤツどうしたんだろうな? いつもならこの時間はまだ部屋にいるはずなんだけど……」

一方通行「オマエがあまりに遅刻ばっかするから巻き込まれたくねェから先に出たンじゃねェか?」

上条「何つう薄情なヤツだ」

一方通行「とりあえず遅刻するからしないかの境界線をうろうろするのをやめろ」

上条「違うんですよ、いつも決まって目覚ましがセットされてなかったり、携帯のマナーモード切るの忘れてたりという不幸が……」

一方通行「ただの不注意だろォが。何でもかンでも右手のせいにしてンじゃねェ」

上条「うっ、いや俺だってそれくらいわかってるって……」

一方通行「つゥかよォ、オマエンとこには居候が一人いンじゃねェか。インデックスの野郎に起こしてもらやイイじゃねェか」

上条「うーん、たしかにそれを考えてたこともあったけどさ、あいつも別にそんなに起きるの早くねえからな」

一方通行「アイツは本当にシスターなのか?」

上条「まあ俺よりは余裕で早いけどな」

一方通行「残念ながらフォローになってねェ」

上条「というかお前って実は早起きだったんだな。正直びっくりしたよ」

一方通行「寝付きが悪かっただけだ。たまたまだたまたま」

上条「お前が起きてくれたおかげで俺は今日こうやって余裕を持って登校できるわけだしな」

一方通行「そォいや起こしに行った時思ったンだけどよォ、何で風呂場で寝てたンだオマエ?」

上条「えっ? いや、まあ何つうか……なあ?」

一方通行「…………ああ、そォか。思春期真っ盛りの上条クンは、インデックスと一緒に寝ると色々な意味で大変なことになるから、わざわざ風呂場なンかで寝てンのか」

上条「ま、まあそういうことだな」

一方通行「つまり上条クンは口リコンということですねわかります」

上条「はあっ!? おまっ、何言ってんだよ!?」

一方通行「だってそォいうことだろ? あンなガキと一緒の部屋で寝るだけでムラムラきて寝られねェくれェだからな」

上条「いやお前ガキとか言ってるけどあいつも俺たちとあんま歳離れてない女の子だぞ? 逆に一緒にいて意識しねえヤツいんのかよ?」

一方通行「何も同じベッドで仲良く寝るわけじゃねェンだからよォ。別に余裕だろ」

上条「それは単にお前が異常なだけだろ」

一方通行「これが超能力者(レベル5)と無能力者(レベル0)の違いっつゥことだな」

上条「関係ねえだろそれ」


745: 2013/08/04(日) 22:12:32.24 ID:rXGMadHpo


一方通行「……はァ、歩くの面倒臭せェ」ガチャリガチャリ

上条「やっぱ杖付きって大変なのか?」

一方通行「もォ慣れた。まァ面倒なのは変わりねェけどな」

上条「俺も松葉杖とかよく使ってたから何となくだけどわかる気がするなぁ……」

一方通行「ンなことわかられてもこっちが困ンだけどよォ」

上条「松葉杖突いてる時に料理するのって結構大変なんだぜ? 片方の手が使いにくいからな」

一方通行「知るか。何なら俺は杖で片腕奪われた上に能力なしで料理したことあるけどな」

上条「へー、器用なんだなー」

一方通行「いや、残念ながらその料理は悲惨な結果で終わっちまった。どっかの馬鹿のおかげでな」

上条「……ははっ、そいつが誰だかは聞かねえでおくよ」

一方通行「聞くまでもねェってヤツだ」

上条「そういや器用って言えば、清掃用のドラム型ロボットを乗りこなして移動をする器用な知り合いがいるんだぜ」

一方通行「は? 何だそりゃ? ンなヤツいンのかよ?」

上条「おうすげえぞ。この前人ごみの中を華麗に通り抜けていったのを見たけど、あれはマジでヤバかった」

一方通行「……オマエの周りにはどォしてそンな変なヤツばっか湧いてンだよ?」

上条「そうか? 別にそんな変じゃねえだろ」

一方通行「周りに変人が集まりすぎて感覚が麻痺しちまってンだろォな。学校じゃシスコン野郎とただの変態」

一方通行「学校から出りゃ暴食シスターに露出狂の女や自販機荒らし、そして今回のドラムロボ乗り」

上条「……言われてみればたしかに変だな。つーか露出狂って誰だよ?」

一方通行「冬休み明けの週にオマエが公園で一緒に歩いてたヤツだよ。ほら、ジーンズの裾が片足だけねェとかいう面白い格好してた女」

上条「……もしかしてそれ神裂のことか? まあたしかに変な格好だよなあいつ」

一方通行「変なことに首ばっか突っ込ンでるからンな変なヤツらに付きまとわれることになンじゃねェか?」

上条「そうかもしれねえな。でも俺はそいつらと出会えてよかったと思うよ。何だかんだあったけどお前ともな」

一方通行「……チッ、くだらねェ」

上条「そういやさっき言ったドラム型ロボの乗ってるヤツなんだけどさ」

一方通行「あン? そいつがどォかしたか?」

上条「そいつ、実はつちみ――」


??「あっ、いたいた。うーい、上条当麻ー」ウイーン


746: 2013/08/04(日) 22:13:11.22 ID:rXGMadHpo


一方通行「…………は?」

上条「おお、舞夏じゃねえか。よーっす」

舞夏「おはよー、今日は珍しく早起きなんだなー」ウイーン

一方通行(な、何モンだコイツ? 本当に掃除ロボを操ってやがる……どォいう仕組みだ?)

上条「おう、こいつのおかげでな」

舞夏「んー? おおー? おおおー?」ウイーン

一方通行「……ンだよ?」

舞夏「あなたはもしかして一方通行ではないかー?」

一方通行「何で俺の名前を知ってンだ?」

舞夏「兄貴からいろいろ聞いてるからなー。『クラスに白髪で赤目で杖を突いた面白いヤツが転校してきた』ってなー」

一方通行「兄貴だと? コイツは一体誰だ……?」

上条「ああこいつ、土御門舞夏っていうんだよ」

一方通行「土御門……オイ、何だかものスゲェ聞き覚えのある苗字なンだけどよォ……まさか」

上条「そう、そのまさかだ。土御門の妹、もとい義妹がこいつだよ」

舞夏「兄貴がお世話になってるぞー、いつも馬鹿に付き合ってくれてありがとなー」

一方通行「……あのクソ野郎の妹とは思えねェほどしっかりしてやがる。いや、たしかに血は繋がってはねェけどよ」

上条「ところで俺に何か用か? ただ挨拶しに来たってだけじゃなさそうだし」

舞夏「ふふふっ、バレンタインデーに女子が男子に話しかける用なんて一つしかないんじゃないかー?」ニヤッ

上条「ん? 別に一つではない気がするんだけど……ってバレンタイン?」


舞夏「じゃじゃーん、チョコレートだぞー」バッ


上条「へっ?」

舞夏「ありがたく受け取るといいと思うぞー」

上条「…………くれんの? それ?」

舞夏「あげなきゃ何のために私はこれを差し出したんだー? ほい、ちゃっちゃ受け取りなー」グイグイ

上条「お、おう。……な、何つうかありがとな」

一方通行(……シスターといい超電磁砲といい、さらに今回は土御門の義妹。……コイツは一体どこまで手を広げてやがンだ?)ジロ

上条「……あのー一方通行さん? 何でしょうかそのゴミを見るような目は?」

一方通行「別に何でもねェよ。単純にオマエの手がどこまで及んでンのか興味が湧いただけだ」

上条「?」


747: 2013/08/04(日) 22:13:43.37 ID:rXGMadHpo


舞夏「あははー、残念ながら私は兄貴一筋なんだぞー。というわけでほい」スッ

一方通行「…………何だそりゃ?」

舞夏「何ってさっきの流れ見てるからわかるだろー。チョコレートだぞー」

一方通行「何でそれを初対面の俺に渡してきやがるンだ? そォいうモンはいつも世話になってるよォなヤツに渡すモンだろ」

舞夏「兄貴といつも遊んでもらってるからなー、そのお礼だと思ってくれ。お歳暮みたいなもんだなー」

一方通行「……そォかよ。まァ、ありがたくねェけど受け取ってやるよ」スッ

上条「おまっ、せっかくものくれたんだから礼くらい言っとけよ」

一方通行「俺は甘ったるいモンが嫌いなンだよ。それにこンな大層なモンもらえるほどアイツとつるンでねェよ」

舞夏「おおっー、兄貴の言ったとおり本当にツンデレだー」

一方通行「は? 何言ってやがンだこのガキは」

舞夏「じゃあじゃあ私はもう行くぞー。勉強頑張れよー」ウイーン

一方通行「なっ、待ちやがれ! 俺はツンデレなンかじゃねェぞゴルァ!」

舞夏「ああ、そのチョコレート感想とか聞かせてもらえると嬉しいぞー」ウイーン

上条「おう、じゃあな舞夏ー」ノシ


一方通行「…………」

上条「…………」

一方通行「チッ、やっぱガキっつゥのはうっとォしくて敵わねェ」

上条「まあ別にいいじゃねえかあれくらい」

一方通行「とりあえず土御門はあとでシめる。ブチ頃し確定だあの野郎」

上条「つーかあれだな。不幸の塊の上条さんがチョコレートをこんな朝早くもらえるなんて、未だに信じられねえラッキーだ」

一方通行「……ちなみにその不幸な上条さンは去年はいくつもらったんだ?」

上条「えっ、去年? え、えーと……あんま覚えてねえなー、あはは」

一方通行「なるほど。数え切れねェほどもらったっつゥことか」

上条「い、いやそういうわけじゃねえけど」

一方通行「ケッ、まァ俺には関係のねェ話だな。行くぞ」ガチャリガチャリ

上条「お、おう……」


―――
――



748: 2013/08/04(日) 22:14:15.63 ID:rXGMadHpo


同日 08:10

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-


禁書「……むむむ」

スフィンクス「にゃー」トコトコ

禁書「……むむむむむ」

スフィンクス「にゃー?」

禁書「むむむー、やっぱり退屈なんだよ!」

スフィンクス「!?」ビクッ

禁書「お留守番歴は長いけどやっぱりこの退屈なのは慣れないんだよ」

禁書「ゲームもあらかたやったから飽きちゃったし、まんがも一回通り読んじゃったから全部一言一句覚えてるし」

スフィンクス「にゃー」

禁書「ああー! 暇なんだよスフィンクスー!」ゴロゴロ

スフィンクス「……にゃー」トテトテ

禁書「……うう、スフィンクスにまで見捨てられちゃった」

禁書「…………」グー

禁書「……何か暇過ぎておなかがすいた気がするんだよ」



ピンポーン!



禁書「! お客さん!? もしかしてひょうかが遊びに来てくれたのかな!?」ガバッ

禁書「はいはーい! 今出るんだよ!」タッタッ



ガチャ



舞夏「おはよー」

禁書「あっ、まいかだ! おはようなんだよ!」

舞夏「んー? どうしたんだ? 何だかいつもよりテンション高くないかー?」

禁書「さっきまでものすごっく暇だったんだよ! だからまいかが遊びに来てくれて嬉しいんだよ!」

舞夏「へー、別に遊びにきたわけじゃないけどそこまで喜んでくれるのなら嬉しいぞ」

禁書「遊びに来てくれたんじゃないの? 何か違う用事かな? ちなみにとうまはもう学校行っちゃったよ?」

舞夏「上条当麻ならさっき会ったから知ってる。私がようがあるのはお前だぞインデックス」

禁書「うん? 私?」


749: 2013/08/04(日) 22:14:42.79 ID:rXGMadHpo


舞夏「はいこれ」スッ

禁書「おおっ! 何その高級感あふれる箱は!」ガシッ

舞夏「バレンタインチョコだぞー。お歳暮感覚でもらってくれー」

禁書「おせーぼ? 何それ?」

舞夏「いわゆるプレゼントだなー」

禁書「おおっー! これはあれだよね! 『ともちょこ』ってやつだね!」

舞夏「お歳暮知らないのにそういう文化は知ってるんだなー」

禁書「てれびで見たんだよ!」

舞夏「まあそういうことだから遠慮せず食べてくれー」


禁書「じゃあいただきます」バリッ

禁書「はぐっ」パクッ

禁書「もぐもぐ」


禁書「おいしいんだよ!」ペカー


舞夏「まさか玄関で接客しながら、しかもこんな時間に食べ出すとは思わなかったなー。でもおいしいって言ってもらえて何よりだぞー」

禁書「さっきから暇過ぎておなかが減っていたんだよ!」

舞夏「時間的にはさっき朝食を食べたばかりじゃないかー?」

禁書「細かいことはいいんだよ! それよりこのチョコほんとおいしいね! これは一体どこで売ってるのかな? 今度とうまに買ってきてもらうんだよ」

舞夏「ふふふっ、実は私が研究に研究を重ねたお手製の品なんだぞー、つまり非売品だなー」

禁書「ふーんまいかが作ったんだ。まいかは料理が上手だからおいしくて当然かも」モグモグ

舞夏「真のメイドさんはバレンタインチョコを美味しく作ることなんて造作もないんだぞー」

禁書「あれ? さっきけんきゅーにけんきゅーを重ねてとか言ってなかったっけ?」

舞夏「私はまだまだヒヨっ子メイドだからなー」

禁書「しかしほんとおいしいんだよこれ!」モグモグ

舞夏「全然話聞いてないなー、別にいいけど」

禁書「……ふぅ、ごちそうさま! そしておかわり!」

舞夏「お前にやるチョコレートはもう残ってないぞー。残念だったなー」

禁書「ううっ、ほんとに残念な気持ちを味わってる気分かも」


750: 2013/08/04(日) 22:15:25.86 ID:rXGMadHpo


舞夏「そーいえばお前は上条当麻に何かあげたのかー?」

禁書「何かって何かな?」

舞夏「何ってバレンタインプレゼントに決まってるだろー」

禁書「あげてないよ。というかそんなものを用意するお金がないかも」ドヤッ

舞夏「ドヤ顔言うようなことじゃないと思うぞー」

禁書「うーん、やっぱり何かあげたほうがいいのかな? 一応感謝の気持ちを伝える気ではいるんだけど」

舞夏「そうだなー、男ってのは形あるものがほしいもんだろうしなー」

禁書「そうなの?」

舞夏「放課後ぐらいの時間になったら外に出てみるといいぞー。目をギョロつかせてる男がたくさんいるからなー」

禁書「へー、よっぽどバレンタインのプレゼントが欲しいんだねー」

舞夏「上条当麻も一人の男だからなー、きっと同じくそういうのが欲しいと思うぞー」

舞夏(まあさっき渡した時のリアクションはちょっと微妙だった気がするけどなー)

禁書「ぐぬぬぬ、無一文には辛い話なんだよ」

舞夏「まあでも日頃の感謝を伝えるってのはいいことだと思うぞー」

禁書「むーどうしようかな……」

舞夏「じゃあ私はこれで帰るとするぞー。そろそろ時間だしなー」

禁書「えっ、帰っちゃうのまいか?」

舞夏「私はこれから研修だからなー。メイド見習いはいろいろ忙しいのだー」

禁書「そうなんだ。頑張ってねまいかー」

舞夏「それじゃーあでゅー」ウイーン

禁書「ばいばーい!」ノシ



ガチャ



禁書「…………はっ!」

禁書「また暇になっちゃったんだよ……」

スフィンクス「にゃおー」ゴロゴロ

禁書「しかしプレゼントかー。どうしようかなー? ねえスフィンクスー」ゴロゴロ

スフィンクス「にゃあ」ゴロゴロ


―――
――



751: 2013/08/04(日) 22:15:53.57 ID:rXGMadHpo


同日 08:20

-とある高校・昇降口-



ワイワイガヤガヤ



上条「……いやー何ごともなく無事学校にたどり着くことができたなーよかったよかった」

一方通行「嵐の前の静けさってヤツだな。これからどォなるかわかったモンじゃねェ」

上条「不吉なこと言うんじゃねえよ」

一方通行「用心しとけっつゥことだ」

上条「別にそこまでする必要はねえんじゃねえのか?」

一方通行「そォだな、俺もそォ思う。だが何が起こるかなンてわかンねェンだからよォ。ましてやオマエならな」

上条「まあそりゃそうだけどよ」

一方通行「ま、オマエがどォなろうと俺には関係ねェがな」

上条「さりげにひどいなお前」

一方通行「今さら何言ってンだこの三下は?」

上条「そういやバレンタインといえば」

一方通行「あァ? 唐突に話を変えやがるなァ、何だ?」

上条「漫画とかだったらサッカー部のエースのイケメン先輩とかの靴箱の中にはチョコレートがたくさん入ってた! っつーネタとかよくあるよな」

一方通行「あンま漫画読まねェから知らねェが、それがどォしたか?」

上条「実際にそんなことってあんのかな? 俺は見たことねえけど」

一方通行「知るか。そォいうモンはまともな学校生活を送ってきたヤツに聞け」

上条「学園都市第一位のレベル5っていわゆるそういうポジションだろ? そういうことなかったのかよ?」

一方通行「あるわけねェだろ。いつも言ってンだろォが俺はそンなモンに関われる環境になかったってな」

上条「でも今は違うだろ?」

一方通行「チッ。……で、その漫画のベタな展開がどォかしたのか?」

上条「いや、別にないならないでいいんだけどよ。たぶんそういうのはリアルじゃありえないってことだろうし」

一方通行「……つまりそォいうフリってことか?」

上条「? 何のことだ?」

一方通行「自分の靴箱には大量のチョコレートが眠っていますっつゥ」

上条「は? そんなわけねえだろ。残念ながら俺はサッカー部のエースでなければ誰もが憧れるような学校一のイケメンでもないんだぜ?」

一方通行「自分で言って悲しくねェのか?」

上条「…………言うな」


752: 2013/08/04(日) 22:16:42.65 ID:rXGMadHpo


一方通行「ケッ、くだらねェ」

上条「まあでも、男ならやっぱり少しは期待しちまうよな。そういう夢のような展開。なあ?」スッ

一方通行「俺にそォいう同意を求めるな。つゥか残念ながらそンな面白れェ展開あるわけねェだろォが」

一方通行(でも、コイツの場合そォいう展開がありそォなのが困るよなァ、本気で)

上条「そーだよな。ま、期待はしないで開けてみるよ」

一方通行「靴箱開けるだけでどンだけ時間かけてンだよ」ガチャ

上条「いざオープン!」ガチャ

上条「…………」



上条の靴箱『中に誰もいませんよ』



上条「……はぁ。やっぱお前の言う通りだな。そんな面白い展開あるわけねえよな」

一方通行「……そォだな」

上条「じゃ、さっさと教室行こうぜ? みんないるだろうし」

一方通行「……そォだな」

上条「……どうした一方通行? 何靴箱の前で立ち尽くしてんだよ」

一方通行「……なァ上条」

上条「ん?」

一方通行「さっき俺はこンな面白れェ展開ねェっつったよな」

上条「おう、それがどうかしたか?」

一方通行「……これ見てみろよ」

上条「あ、ああ…………いいっ!?」



一方通行の靴箱『異物感がしゅごいよぉぉぉっ!!』



一方通行「…………」

上条「す、すげえ……漫画ほどじゃないけど結構入ってるぞ、これ」

一方通行「……さっき面白れェ展開っつったけど訂正させてもうぞ」


一方通行「何一つ面白くもねェよ、このクソ展開」



―――
――



753: 2013/08/04(日) 22:17:37.58 ID:rXGMadHpo


同日 08:25

-とある高校・一年七組教室-


結標「…………遅いわね。上条君と一方通行」

吹寄「まさか上条の馬鹿に巻き込まれていまだにベッドの中、とかないわよね?」

姫神「それがありえるから困る」

結標「アイツも起こさない限り絶対起きない時あるから心配だわ……」

吹寄「まあ学校に来ないなんてことはさすがにないでしょ。普通の人なら起きるでしょうし」

結標「それで起きない可能性があるのが一方通行なんだけどね……あはは」

姫神「たぶん。いや絶対。学校には来るから大丈夫。心配はしないでいい」

結標「遅刻しないことは保証しないのね……」

吹寄「……しかし」



男子生徒A「…………」ギロッギロッ

男子生徒B「…………」ソワソワ

男子生徒C「…………」フンッフンッ



吹寄「……やっぱりこの日は男子どもの目の色が見てわかるくらい変わるわね」

姫神「それはしょうがない」

結標「これがリアルバレンタインの空気ってやつね。漫画でしか見たことないから初めてで新鮮ね」

吹寄「いつも馬鹿やってる人が今日に限って大人しかったりするのよね。反対にいつもよりテンションが高い人とかもいるし」

結標「何というかすごいわね」

吹寄「見てみなさい。あれがその中で一番バレンタインマジックの影響を受けてる馬鹿よ!」ビシッ



男子生徒D「ちっ、バレンタインとかくだらないぜ。なあ?」

男子生徒E「そうだな。バレンタインとか別に興味ねーし、チョコレートとかいらんし」

男子生徒F「お前もそう思うだろ? 青髪ピアス」



青ピ「~~♪ ん? 何か言った?」フッ



754: 2013/08/04(日) 22:18:43.91 ID:rXGMadHpo


吹寄「…………あれ? 何か予想と違う」

姫神「そわそわしてるというか。どちらかというと余裕があるように見える」

結標「そうね。まるで勝ち組のような表情をしてるわ」

吹寄「……まさかとは思うけど、もうすでに誰かにチョコもらっとかないわよね?」

姫神「そんなこと。果たしてありえるのか……」

結標「あはは、そうね……」



男子生徒E「おいおいどうした同士青髪ピアスよ? 何でそんな余裕綽々って感じの顔してんだ?」

男子生徒D「…………お前まさか」


青ピ「ふふふっ、せやで! ボクはすでにチョコレートをもらってるんやでぇ! 勝者の切符をこの手に収めてるんやでぇ!」ドヤァ


男子生徒F「何だとっ!? このッ……裏切りもんがあああああああああああああああああああああああああっ!!」

男子生徒D「おい青髪のゴミ野郎がチョコをゲットしやがったぞ!」

男子生徒B「ぶっ頃す!!」



青ピ「ふふははははははははははははっ!! 神ならぬ身にて天上の意思に辿り着いたボクに、キミらみたいな凡人が勝てるわけないやろ!!」



男子生徒A「容赦すんな殺っちまえ!!」

男子生徒F「氏ね!」

男子生徒C「ついに一子相伝の暗殺拳を使う時が来たようだな……」



結標「……どうやらすでに誰かにもらっていたようね」

姫神「すごい調子の乗り様。あっ。一発でノックアウトされた」

吹寄「というかあの馬鹿にチョコレートあげたの誰よ? 下宿先のパン屋の店員さん?」

姫神「その辺りが妥当」

吹寄「しかしあの馬鹿者がもらう信じられないわね。実はコンビニとかで自分で買ったやつじゃないの?」

結標「ひどい言われようね彼。てかそれ悲しすぎるでしょ」

吹寄「……ん? もう一人機嫌の良さそうなやつがいるわよ」



土御門「――舞夏は俺の嫁、いや俺の女神か? いや違うな。舞夏は……まさしく俺の人生ッ!!」



755: 2013/08/04(日) 22:19:27.69 ID:rXGMadHpo


姫神「聞かなくても。あれは舞夏ちゃんからもらってる」

吹寄「うん、口走ってる戯言を聞けばわかるわ」

結標「……土御門君、ちょっといいかしら?」

土御門「うん? 何だ結標?」

結標「上条君がまだ来てないようなんだけど知らない?」

土御門「あー、カミやんな。最近はどうせ寝坊するだろうと思って勝手に学校行ってるから知らないにゃー」

結標「そう」

吹寄「それくらい待っときなさいよ。というか起こしなさいよ隣人なんだから」

土御門「いやー正直メンドイですたい。……というか姉さんはいるけど、アクセラちゃんが見かけないにゃー。どうかしたのか?」

結標「実はアイツ昨日上条君の家に泊まってたのよ」

土御門「な、何だってい!? まさか隣の部屋がそんなにオイシイことになってるとは知らんかったぜよ。くそう、からかいに行けばよかったにゃー」

吹寄「ま、そーいうわけで上条が来ないとアクセラも来ないってことになるわけ」

青ピ「…………何やー、エラく楽しそうに話しとるやん。ボクも混ぜてえや」ボロッ

結標「随分とボコボコにされたわね」

青ピ「いやーチョコレートもらったことが嬉しゅうてなぁ、つい」

土御門「へー、ピアスくんチョコレートもらったのかにゃー? よかったな」

青ピ「……まあでも、カミやん辺りが大量のチョコレートをカバンに詰め込んでおはようしてくる未来を想像すると、おちおち喜んではいられへんけどなー」



ガラララッ



上条「おし、余裕で間に合ったぜ」

土御門「おっ、噂をすればカミやんだぜい」

吹寄「余裕じゃないわよ。ギリギリよギリギリ」

結標「おはよー上条君!」

姫神「おはよう」

上条「おっす、どうしたんだみんなして集まって?」

吹寄「別に、いつもどおりの雑談よ」

青ピ「あれ? というかカミやん大量のチョコレートはどこなん?」

上条「んなもんあるわけねえだろうが。漫画じゃねえんだぞ」

土御門「まさかカミやんが全然もらえてないなんてな。今日は雪でも降るんじゃないかにゃー?」

姫神「別に季節的に降ってもおかしくはない」


756: 2013/08/04(日) 22:19:58.43 ID:rXGMadHpo


結標「で、上条君。一方通行はどこかしら?」キョロキョロ

上条「……あー、あいつちょっといろいろ苦戦してっからな。もう少しで来ると思うぞ」

吹寄「苦戦って……一体に何に対して苦戦してるのよ」

姫神「もしかして。上条君の不幸に巻き込まれてしまった?」

上条「そりゃないよ姫神さん。いくら何でも傷つきますよ上条さんでも」



上条「まあ一目見りゃすぐわかると思うぞ」



ガチャリ、ガチャリ。



結標「ん? この変な杖の音は……」

吹寄「どうやら来たようね」

青ピ「おっはよおおおう!! アクセラちゃ……ん?」



一方通行「クソがッ。鞄に全部入り切らねェじゃねェかクソったれ」←たくさんの箱を持ってる



土御門「は?」

姫神「え?」

吹寄「なっ?」

結標「」

上条「ははっ、すげえだろこれ?」


一方通行「チッ、……あァ? ンだァその幽霊でも見てるよォな目はァ?」


青ピ「…………な」





「「「何じゃそりゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」」」





―――
――



772: 2013/08/11(日) 21:36:51.60 ID:gQYViCn7o


同日 08:50 ~一時間目・能力開発~

-とある高校・多目的教室-


男子生徒A「ぬおおおおおおおおおおおっ!!」グググ

男子生徒B「たあありゃああああああああっ!!」グググ

男子生徒C「まっがーれ」クイ


女教師「じゃあこのカードは?」スッ

女子生徒A「ええっと……〇ね!」

女子生徒B「ふふふっ、違うわ。これは……見えたっ! ☆ね!」

女教師「残念。□でした」


吹寄「……ふぅ、相変わらず能力なんて目覚める気配なんてないわね」

姫神「お疲れさま」

吹寄「あっ、そっちも終わったの?」

姫神「うん。相変わらず成果はない」

吹寄「あはは、しかし結標さんたちはすごいわよね。高位の能力者だから個別指導なんて」

姫神「私たちと違って。どんな能力かハッキリわかっているから」

吹寄「……ま、今はそんなどうでもいい話題は置いといて」

姫神「……」コクリ

吹寄「アクセラがあたしたちの予想以上にチョコレートをもらっていたことよね」

姫神「うん。まったく考えもしなかった」

吹寄「よくよく考えればレベル5の第一位でお金持ちでそこそこ顔がいいんだからおかしくはないわよね……ちょっと性格面がアレだけど」

姫神「でもほかのクラスや学年の人たちは。そういうところを全く知らない」

吹寄「つまりいわゆる白馬の王子様的な感じに見られてるって感じか……」

青ピ「せやなー、ほんま羨ましいでー」ウンウン

吹寄「ふん」ゴッ

青ピ「あいたっ!? 何やねんいきなり!」

吹寄「馬鹿がいきなり現れたらとりあえず迎撃するでしょ?」

青ピ「横暴やで! 暴力反対!」

姫神「無断で女子の中に割って入る。青髪君が悪いと思う」

青ピ「ええやん。ボクも混ぜてえや女子トーク」

吹寄「お前が混ざるだけで女子トークじゃなくなるでしょうが」


773: 2013/08/11(日) 21:37:37.35 ID:gQYViCn7o


姫神「……そういえば青髪君。さっきチョコもらったって言ってたよね?」

青ピ「そうなんよぉ、いやーボクもついに勝ち組になったんやでえ!」

吹寄「何だかすごくムカつくわね……で、誰にもらったのよそれ?」

青ピ「舞夏ちゃんやでえ」

吹寄「舞夏ちゃん……って土御門の妹の舞夏ちゃん?」

青ピ「せやでー、まさか通学路で待ち伏せまでしてくれてたなんて思わへんかったわ。いやーモテる男はつら――」



ガシッ



土御門「屋上へ行こうぜ……久しぶりに……切れちまったよ……」



青ピ「ちょ、土御門君……? この学校屋上開いてたっけ? いやまっ、やめっヘルプミー!!」ズザザザ

吹寄「……行っちゃったわね」

姫神「ご愁傷様」

吹寄「まあ舞夏ちゃんの本命は兄だろうから。青髪が哀れでしょうがないわね」

姫神「うん。そういうポジションだからしょうがない」

吹寄「しかしクラスメイトの目線から見ると、アクセラがあんなにチョコレートもらってるのに違和感があるわね」

姫神「どうして?」

吹寄「たしかに第一位だから人気あるのかもしれないわ。でもそれに反したマイナス点も結構知れ渡ってるはずよね」

姫神「……ああ。学内ラジオ」

吹寄「会話が全然いいようにできてなかったし、さらに言うなら授業中は大体寝てるっていうだらしない部分もアピールしちゃったわけだし」

姫神「……それはさほど問題ないのだと思う」

吹寄「えっ、何で?」

姫神「恋は盲目。という言葉があるぐらいだから。そういう部分は目に入らないのかも」

姫神「それに多少は欠点があったほうがいいのかもしれない。完璧超人には近寄り難いみたいに」

吹寄「うーん、そうなのかな? あたしは嫌よ、授業中に寝てるような馬鹿者は」

姫神「趣味嗜好は人それぞれ」

吹寄「……そうね。じゃあこれは許容したとしてもまだ疑問点があるのよね」

姫神「言ってみて」

吹寄「去年やったマラソン大会あるじゃない。その時にアクセラは結標さんをお姫様だっこをしながらゴールという、ものすごく恥ずかしいことがあったわよね?」

姫神「うん。あった。学校新聞にもでかでかと載ってた」

吹寄「あれって傍から見たら二人はそういう関係なんだなぁ、って見えるんじゃないかしら? 普通」

姫神「……うん。言われてみればそう」

吹寄「だったら普通はチョコレート渡したりなんかしないんじゃ……?」


土御門「にゃー、そいつは間違ってるぜい吹寄」


774: 2013/08/11(日) 21:38:05.27 ID:gQYViCn7o


吹寄「終わったのねおかえり」

姫神「青髪君は?」

土御門「あの勘違いクソ野郎にはアスファルトの染みになってもらったにゃー」

吹寄「ふーん。で、何が間違ってるっていうの?」

青ピ「ちょっとおおおおおおおおおおおおっ!! 何かリアクション薄ぅないいい!?」

吹寄「あっ、いたの青髪ピアス」

姫神「気付かなかった」

青ピ「酷いでみんなぁ! ボクの存在は永久に不滅なんやでえ!」

吹寄「……で、何が間違ってるっていうのよ土御門」

土御門「そうだにゃー、例えばだな」

青ピ「ちょ、スルーはやめてっ!」

姫神「青髪君。ちょっとうるさい」

青ピ「……あい」

土御門「まず一つ言っとくが、二人がそういう関係じゃないっていうのは結構知られてると思うぜい」

吹寄「どういうこと?」

土御門「お前らがさっき話してたラジオのことを思い出してみるんだな」

吹寄「ラジオ……って学内ラジオのことよね?」

姫神「アクセラ君が。望んでかは知らないけど。イメージダウンに努めていたあれ」

吹寄「あのラジオでそんな話してたっけ……?」

土御門「……よーく思い出してみるんだな。あのラジオのエンディングトークの会話の内容をな」

姫神「……ああ」

吹寄「それって……まさか……?」



部長『ところで一方通行君はバレンタインデーにチョコをもらう予定はあるのかなー?』

一方通行『……! ン、ンなモンねェ……と思う、そォ信じたい……』



土御門「そう。この返答でアクセラちゃんと結標はそういう関係じゃないって認識になるんじゃないかにゃー?」

吹寄「い、言われてみれば……」


775: 2013/08/11(日) 21:39:17.16 ID:gQYViCn7o


姫神「……でも。仮にだけど二人が付き合っていて。そういうのを隠していたとしたら。こういう嘘もつくんじゃないの?」

土御門「ま、そうだな。少しでも頭が回るヤツならそう考えるだろう。でも残念ながらバレンタインデーが近くて浮き足立ってる時期だぜい?」

吹寄「正常な判断ができない、ってこと?」

土御門「ああ。まあでも、気付いてても略奪愛上等みたいな考えを持ってるヤツには関係ない話だけどにゃー」

姫神「略奪愛……」

吹寄「何だか急にドロドロした話になったわね」

土御門「そういうわけで、アクセラちゃんにチョコ渡したヤツらは脳内お花畑のヤツらかNTR趣味のヤツらの二パターンだろうな」

吹寄「……もしかした純粋な気持ちで渡した人もいるかもしれないのにひどいこと言うわね」

土御門「で、いろいろ話を統合した結果、つまり何が言いたいかというと――」



青ピ「アクセラちゃん爆発しろ!」



土御門「というわけだにゃー」

吹寄「あー、そう」

青ピ「何か今日の吹寄さんいつもより冷たい気がするんやけど……」

吹寄「そう? いつもどおりでしょ」

姫神「……! そういえば。上条君へのチョコレートが少なかったのは。まさかのアクセラ君効果?」

土御門「それもあるだろうけど……まあでもカミやんも人気もんだからにゃー」

青ピ「みんなタイミングを計ってんやろうなー。だから靴箱なんていうベタなところに置かないんやろ」

土御門「姫神もカミやんに渡すんだったらよーく考えてから動いたほうがいいぜい。どうせ本命だろ?」

姫神「……う。うん」

青ピ「チッ、氏ねカミやん」

吹寄「……で、その上条当麻が見えないようだけど、どこに行ったわけ?」

青ピ「ああカミやんなら別室に連れて行かれたで」

土御門「ある意味アクセラちゃんたちと同じ特別扱いだにゃー」

吹寄「こんな日まで大変ねほんと……」


―――
――



776: 2013/08/11(日) 21:40:36.88 ID:gQYViCn7o


同日 09:00

-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-



ガチャ



数多「あー、仕事するのだっる……」


ヴェーラ「おはようございます社長!」

ナンシー「おはようございます!」



数多「……あん? 何だお前らもう来てたのか。ついに仕事熱心な社畜になっちまったかぁ」



マイク「おはようございます!!」

デニス「おはようございますっ!!」

オーソン「はぁざいまっす!!」


数多「んだぁ? 今日はやけに集まるの早ぇなあ、何かあったか今日?」

円周「何って今日はバレンタインだよ数多おじちゃん」

数多「バレンタイン? あー、そーいやそんなもんあったわ。で、それがどーかしたかっつー話だけどな」

円周「相変わらずどうでもいいことにはとことん興味がないよね数多おじちゃん」

数多「しょうがねえだろ興味がねえんだからよ。もうもらえるかもらえないかドキドキワクワクしてる歳じゃねえんだからな」

ヴェーラ「社長! 少しよろしいでしょうか!」

数多「あぁ? 何だ」?」

ナンシー「あのぉ……これ! 受け取ってもらいたいんですが!」スッ

数多「……何だこりゃ?」スッ

ヴェーラ「今日がバレンタインというわけなのでチョコレートです。私とナンシーで作りました」

ナンシー「猟犬部隊が解体して路頭に迷った私たちを拾ってくださった社長への感謝の気持ちです!」

ヴェーラ「ちっぽけなものだと思いますが是非受け取ってください!」

数多「…………」

円周「よかったねー数多おじちゃん。今年のバレンタインチョコがお母さんだけ、って感じの悲惨な思いをせずに済んで」

数多「うるせえぞクソガキ。……まぁ、何つーか……ありがとよ」

ヴェーラ「ほかの皆さんの分もありますのでどうぞもらってやってください」




<っしゃああああああああああああああああああああああっ!! <いええええええええええええええええええい!! <キタコレ!!




777: 2013/08/11(日) 21:41:29.55 ID:gQYViCn7o


数多「……ちっ、んなことでいちいちはしゃいでんじゃねーよ馬鹿どもが」

円周「もーそんなこと言ってー。いい歳いったおじちゃんがテレてるなんて面白い話だよねー」ニヤニヤ

打ち止め「そうだよねー、ってミサカはミサカは同意してみたり」ニヤニヤ

数多「……おい打ち止め。いつからここにいやがったんだ?」

打ち止め「ついさっきだよ。鍵が開いてたからいつでもウェルカム! ってことだと思って勝手に入ってきました! ってミサカはミサカは経緯を簡潔に説明してみたり」

円周「打ち止めちゃんが早めに来ることを見越してロックを解除しときました」ビシッ



ゴッ



打ち止め「そんなことより、はいキハラ!」スッ

数多「あん? ……何だぁ? またチョコレートかよクソッタレが」

打ち止め「ヨミカワとヨシカワからだよ。いつもお世話になってますー、って感じで渡してくれって言われましたー!」

数多「だったらいつもお世話になってますーって感じに渡せよ」

円周「おおっー、数多おじちゃんモテモテだねー」

数多「ちっ、くだらねえこと言ってねえで早くどっか行けクソガキども! 仕事の邪魔だ」


円周・打止『はーい!!』タッタッタ


数多「…………はぁ、面倒臭せぇ……ん?」

数多「そーいやあのガキども何でキッチンに行きやがったんだ?」

数多「何かロクでもねぇこと考えてんじゃねえだろうな?」スタスタ

数多「…………」スッ|д゚)


円周「――ふふふふふっ、いよいよ長年温めてきた計画を実行するときが来たよーだね」

打ち止め「実際は一週間前だけどここはツッコマないでおこう、ってミサカはミサカは口をチャックしてみたり」

円周「じゃあ始めようか打ち止めちゃん?」

打ち止め「うん!」




円周「これより『オペレーション・ハニーハニースウィートバレンタイン』を!!」

打ち止め「開始する!! ってミサカはミサカは高らかに宣言してみたり!」




数多「…………すっげえ不安なんだが」


―――
――



778: 2013/08/11(日) 21:42:19.83 ID:gQYViCn7o


同日 09:35 ~二時間目前休み時間~

-とある高校・一年七組教室-



吹寄「……さて、どうやら全員集合したようね」



上条「何だよ? 一時間目が終わってから全員集合って?」

一方通行(嫌な予感しかしねェ……)

青ピ「次も移動教室やから早めに頼むでー」

一方通行「オマエが言う台詞じゃねェだろそれ。クソ似合わねェよ」

青ピ「いつもはおちゃらけてるキャラが急に真面目になるとポイント高くなるんやでー」

上条「テメェが真面目になっても気味悪りぃだけだよ」

青ピ「ひどい!」


吹寄「………………」ピキピキ

結標「ふ、吹寄さん! 落ち着いて!」

姫神「冷静さを欠いたら負ける」

結標「何に!?」


土御門「……で、結局何の用だにゃー?」


吹寄「ええっと、今集まってもらったのはこれを渡すためよ」スッ

青ピ「えっ? 何それ?」

土御門「一見可愛くラッピングされたクッキーが入った小袋のように見えるんだが……?」

吹寄「見えるも何もその通りよ」

上条「は? 何でそんなもんを吹寄が俺たちに渡してくんだよ?」

吹寄「何でって、今日はバレンタインデーだからに決まってるじゃない」

土御門「……へー」

吹寄「……何よその目は?」

青ピ「どう見ますかつっちーさん」

土御門「これは何かのトラップだと推測しますぜカミやんさん」

上条「そ、そうだよな。あの吹寄がそんなバレンタインプレゼントなんて女子らしいもん渡してくるわけ――」



ゴッ! ガッ! バキッ!



779: 2013/08/11(日) 21:43:04.89 ID:gQYViCn7o


吹寄「貴様らの中であたしは一体どういう位置付けなのよ!!」

土御門「にゃー! これは罠にかかろうがかからまいが結果は一緒! すでに俺たちは吹寄の手の中で踊らされていたんだぜい!」

上条「くそっ! 俺たちはハメられたってのかよ!」

青ピ「吹寄制理……恐ろしい娘……!」

吹寄「ったく、バカのこと言ってないでさっさと受け取りなさいよ」スッ

上条「お、おう」

青ピ「あ、あざーす」

土御門「ごちになりまーす」


吹寄「あっ、ちなみにこれはあたしたち三人からよ? そこんとこ勘違いしないでちょうだいね」



パキッ!



青ピ「ん?」

一方通行「…………」ガタガタブルブル

青ピ「どーしたんやアクセラちゃん? そない固まったままクッキー握りしめてぇ。あんなにチョコもらったのにそんなに嬉しいんかいな?」

一方通行「い、いや、そォいうわけじゃねェよ……」



一方通行(こ、これかァあああああああああああッ!? 昨日俺を家から追い出してまで作り上げた化学兵器はァああああああああああああああああッ!?)



土御門「さて、小腹も空いたことだしちょっぴりいただくとするぜい」シュルル

一方通行「なっ!?」

青ピ「せやな。ボク今日朝メシ食べてへんかったからなぁ、いただくとしましょ」シュルル

一方通行「ちょまっ!?」

上条「おっ、何か食べる流れっぽいな。じゃあ俺も」シュルル

一方通行「ばっ!」



上条土御門青ピ『いただきまーす!』パクッ



780: 2013/08/11(日) 21:43:56.57 ID:gQYViCn7o


一方通行「あ…………」

上条「…………」モグモグ

青ピ「……うん、うん、美味美味」モグモグ

土御門「なかなかのお手前だにゃー」モグモグ

吹寄「…………ほっ」

一方通行「…………は? どォいうことだ?」パクッ

一方通行「…………」モグモグ

一方通行「……普通だ」

土御門「相変わらずアクセラちゃんは素直じゃないにゃー」

青ピ「恒例のツンデレレータさんやでー」


一方通行(普通過ぎるだろ!? 塩の配分が少し多めで甘さ控えめになっててむしろ好感を持てるぐらいにな!)

一方通行(見たところ他のクッキーも全部普通だ。オイオイおかしいだろ、結標が武力介入して無事に完成される食いモンなンざ存在しねェはずだろォが)

一方通行(いや、逆に考えろ。吹寄と姫神がいろいろサポートしてこれを完成させたとする、とするとアレだ。つまり、バレンタインの恐怖はもォ去ったということになる)

一方通行(こればかりはあの二人に感謝すべきだな……)パクッ

一方通行(…………いや、待てよ?)バッ


結標(……さすが吹寄さんね)

姫神(吹寄さんが美味しいものを作ってくることはわかってた。だけど私も負けない)


一方通行(……コイツらがまだチョコレートを隠し持ってるっつゥことはねェか?)モグモグ

一方通行(姫神は料理の腕に自信を持ってる。そンなヤツが他のヤツと合作クッキーを作って満足するか? しねェだろ)パクッ

一方通行(そォ考えると必然的に結標もチョコレートを用意してるだろォ。つゥか、じゃねェと俺が外泊した意味がまったくねェ)モグモグ

一方通行(クソっ、まだ恐怖は始まったばかりっつゥことかよクソったれが……)パクッ


上条「……いつまで食ってんだ一方通行? とっとと次の授業の教室行くぞ?」

一方通行「あ、あァ、済まねェすぐ行く」モグモグ


―――
――



781: 2013/08/11(日) 21:44:29.76 ID:gQYViCn7o


同日 10:00

-第七学区・とあるアパート-



浜面「……ごがぁ、すぴぃ……」Zzz



ピピピピピピッ! ピピピピピピッ!



浜面「ふがっ!?」バサッ



ピピピピピピッ! ピピピピピピッ!



浜面「何だぁ!? 電話ぁ!? こんな朝っぱらから誰だ?」スッ



『麦野沈利』



浜面「…………えー、何かすげえ嫌な予感がすんだけど」



ピピピピピピッ! ピピピピピピッ!



浜面「とりあえず出るか……」ピッ

浜面「もしもし?」


麦野『はーまーづーらー、電話に出るのがちょろーっと遅すぎるんじゃないかしらーん?』


浜面「はぁ? 別にいいだろ」

麦野『何言ってんだテメェ? 電話っつーのは2コール以内に出るのが常識でしょうが』

浜面「何でそんな会社のルールみたいなのをプライベートでもしなきゃいけねえんだよ」

麦野『社会人の常識よ? 仕事もプライベートも関係ないわ』

浜面「俺は一応学生だっつーの。学校には全然行ってねえけどな……」

麦野『中卒で働いてるヤツらは社会人だろ? つまりそーゆーこと』

浜面「へいへいわかりましたよ。で、何の用だよ? こっちは寝起きの頭だからあんまり難しいのは勘弁して欲しい」

麦野『もともとテメェの頭のスペックは低いでしょうが……へー、こんな時間までグースカ寝てるなんざいいご身分じゃないか』

浜面「昨日……つーか今日帰ったの朝の五時だぞ? 寝てなきゃやってらんねーよ」


782: 2013/08/11(日) 21:45:02.19 ID:gQYViCn7o


麦野『ま、んなことどーでもいいわ。おい浜面。今日昼の十二時にいつものファミレス集合な』

浜面「は? 今何て言った?」

麦野『だから今日の昼十二時にいつものファミレス集合って言ったのよ』

浜面「……ええと、今日ってたしか仕事はなかったんじゃねかったか? まさかまた急に仕事でも入ったのかよ?」

麦野『いーや、今日のアイテムは休業よ。つーか、もし今日あの女から電話きたらソッコー拒否するから』

浜面「だったら休ませてくれよ。久しぶりの休みなんだからゆっくりさせてくれ」

麦野『うん、それ無理』

浜面「何でだよ」

麦野『だってアンタはアイテムの下部組織、いわば私たちの手足同然の下っ端でしょ?』

浜面「……そうだけど」

麦野『そんなヤツに拒否権なんて初めから存在するわけないじゃない。違う?』

浜面「…………はぁ。わかったわかったよわかりました。行きゃいいんだろ行きゃあ」

麦野『遅刻なんてしたら拡散支援半導体(シリコンバーン)で拡散された粒機波形高速砲をひたすら避け続ける、リアル弾幕ゲーをしてもらうことになるから』

浜面「ははっ、初弾で蜂の巣になってる自信があるな……」

麦野『だいじょーぶ、もしものために漫画雑誌懐にしまわさせてやるから』

浜面「たしかに防弾チョッキの代わりになる展開よく見るけど、お前のビームの前じゃ何の意味もねえよ!」

麦野『そう? 友情、努力、勝利のパワーで案外どうにかなるかもよ?』

浜面「なるわけねーだろ。しかもそれジャンプ限定のパワーじゃねえか。マガジンとかじゃダメなパターンじゃねえか」

麦野『つまり何が言いたいかというと、きちんと遅れずに来いってことよ? わかった?』

浜面「はいはい」

麦野『じゃねー――ピッ』


浜面「……はぁ、くそっ、貴重な休日が……」

浜面「まあいいや。つーか今何時だ?」

浜面「……十時過ぎか。だったら少し仮眠の時間が取れるな」ゴロン

浜面「…………ごがぁ」Zzz


―――
――



783: 2013/08/11(日) 21:45:39.57 ID:gQYViCn7o


同日 10:30 ~三時間目前休み時間~

-とある高校・一年七組教室-


吹寄「……さて、あたしはもう渡したわけだから次はあなたたちの番ね」

姫神「うん。まかせて」

結標「……うう、何というか緊張するわね」

吹寄「まだ緊張するのは早いんじゃないかしら? というか二人は渡す手段考えた?」

姫神「だいたいは」

結標「私は、その……まだかな?」

吹寄「まあ、そんなに焦る必要はないけどそんなんじゃあっという間にバレンタイン終わっちゃうわよ?」

結標「それはわかってるけど、何というかこういう作戦を考える、みたいなのが苦手なのよね」

姫神「でも。だからと言って何も考えないと。取り返しのつかないことになってしまうかも」

結標「えっ? そ、そんな大げさな……」

吹寄「たしかにそうね。上条並に……というか現時点では上条よりモテるとわかった以上放置するのは危険そうね」

結標「くっ、というかチョコ渡してる人から見たらあんな変人のどこがいいのかしら?」

姫神「結標さん。それブーメラン」

吹寄「ま、見たところアクセラはクラス内では人気はないようね。やっぱりどういう人か知ってるからか。……まあその代わり」


青ピ「でさぁ、そのロボット娘の喋り方が可愛くてなぁ」

上条「へー」

女子生徒A「ねえねえ上条君?」

上条「はい?」

女子生徒A「この前は委員会の仕事手伝ってくれてありがとね。はいチョコあげる」

上条「お、おう。サンキューな」

女子生徒A「じゃねっ」タッタッタ

上条「……はぁ、別にいいのになお礼なんて。なあ?」


青ピ「青髪グレートスペシャルアームストロング腹パンッ!!」ゴッ


上条「ごふっ!! な、何しやがる!?」

青ピ「とりあえず氏んどけカミやん。それが世界のためや」

上条「何でだよ!」

女子生徒B「あのー上条君?」

上条「あ、はい。何だ?」

女子生徒B「この前備品の買い出し付き合ってくれてありがとね。はいチョコどーぞ!」





青ピ「がああああああああああああああああああああああああああッ!! この世は理不尽やあああああああああああああああああああああああああッ!!」





784: 2013/08/11(日) 21:46:36.83 ID:gQYViCn7o


吹寄「…………こんな感じにクラス人気は上条の方があるようね」

結標「たしかこれで八個目だっけ? 吹寄さんの分を抜くと」

土御門「いーや、九個だぜい」

吹寄「ふん!」バッ

土御門「おっと危ない」サッ

吹寄「ちっ、青髪ピアスの馬鹿のようにはいかないか……」

土御門「にゃー、いきなり攻撃なんてひどいぜ吹寄ー」

吹寄「お前が唐突に現れるからでしょうが!」

姫神「……土御門君。九個目とはどういうこと?」

土御門「ここに来る前に舞夏が渡したらしい。さすが舞夏近所付き合いができるいい妹だにゃー」

吹寄「随分と余裕そうね。てっきりまたキレてるのかと思ったけど」

土御門「いやーよくよく考えたら俺と舞夏は絶対的な絆で結ばれてるからにゃー。いくらカミやんでもこれはどうしようもないぜよ」

姫神「それ。何てフラグ?」

結標「あ、でもそれじゃあもしかして……」

土御門「どうかしたかい姉さん」

結標「……一方通行も舞夏ちゃんにもらったんじゃないかしら?」

土御門「ふむ、言われてみればそうだな。今朝はカミやんと一緒に登校して来たみたいだし、心優しい女神舞夏が渡していてもおかしくはないな」

姫神「ライバルがふえるよ。やったね二人とも」

土御門「おいやめろ」

吹寄「絶対的な絆はどこいったのよ」

結標「ま、まあ大丈夫じゃない? た、たぶん二人とも初対面だろうし、か、上条君にも渡してるみたいだから義理だろうし」

吹寄「声が震えてるわよ」

土御門「だ、大丈夫だ! 俺と舞夏の愛のベクトルは! あの第一位のベクトル操作でも操ることはできないぜい!!」

結標「そ、そうよね! 頑張って土御門君!」

吹寄「土御門を応援する前にまず自分が頑張りなさいよ」

結標「……ううっ。ま、まだ刻が来てないのよ」

吹寄「そんな中二的なこと言われても」

姫神「……あ。そんなこと言ってる間に。アクセラ君に忍び寄る影が」

結標「えっ」


785: 2013/08/11(日) 21:47:23.01 ID:gQYViCn7o


一方通行(……クソっ、油断するンじゃねェぞ俺ェ。いつあの野郎が仕掛けてくるかわからねェ)

一方通行(いや、しかしもしアイツが渡してきたとして俺は断れるのか?)

一方通行(『そンな生ゴミを渡してきてンじゃねェ』っつって一蹴することが出来ンのか?)

一方通行(…………)


一方通行「…………だったら」ボソッ

女子生徒D「えっ? 何?」

一方通行「…………」

女子生徒D「…………」

一方通行「いや、逆にオマエが何だよ」

女子生徒D「え、ええっと、急に喋りだすから……その」

一方通行「あン? ……つゥかオマエ」

女子生徒D「な、何?」

一方通行「どっかで見たことある顔かと思えば、前ドッジボールしたときに敵チームにいた念動使いじゃねェか。同じクラスだったのかよ」

女子生徒D「体育って同じクラスでしか滅多にやらないよね!? というか私はクラスメイトとすら認識されてなかったの!?」

一方通行「で、何だよ念動使い。演算の簡略化はイイ加減やめたのか?」

女子生徒D「あっ、それについてなんだけどちゃんとやめて今はきっちり演算してるわよ」

一方通行「そォか。そりゃ何よりだ」

女子生徒D「おかげさまで最近は結構能力の調子がいいのよね。こりゃ二年生になる頃には異能力者(レベル2)になっちゃうかもね」

一方通行「そいつはよかったな」

女子生徒D「…………、それで何だけどね。私がここまで成長できたのはいわばアクセラ君のおかげってわけよ」

一方通行「ンなこたァねェよ。成長できたのはオマエの努力のおかげだ。俺はきっかけを与えたに過ぎねェ」

女子生徒D「でもそのきっかけがないと私は成長できなかったかもしれないわ」

一方通行「チッ……」

女子生徒D「だからそのお礼、って言ったらおかしいかもしれないけど、これを受け取って欲しいのよ」スッ

一方通行「……俺はこンなモンもらうために助言したわけじゃねェぞ」

女子生徒D「うん知ってるわ。別にそれいらなかったら捨ててくれても構わないわ」

一方通行「…………」

女子生徒D「じゃ、ありがとね」タッタッタ


一方通行「…………」

一方通行「チッ、くっだらねェ」


786: 2013/08/11(日) 21:48:42.43 ID:gQYViCn7o


結標「」

吹寄「な、何か漫画のヒロインからチョコをもらう主人公みたいだったわね……リアルで」

姫神「これは思わぬ伏兵。結標さんピンチ」

結標「ぎゃー! わ、わ、私も何かそういうシチュエーション考えたほうがいいのかしら!?」

吹寄「落ち着いて結標さん。大事なのは自分らしさよ!」

姫神「そんなこと言ったら。余計にハードルが上がるような気がするのは私だけ?」



キーンコーンカーンコーン



ガラララッ



家庭科教師「ちっ……。はーいみなさーん! 授業始めるから席着いてくださいねー!」


男子生徒A「(……おーおー家庭科の先生機嫌が悪そうだなー)」ボソッ

男子生徒B「(そりゃあれだろ。そろそろ行き遅れそうだからこういうきゃっきゃうふふしてるイベントにイラついてんだろうなー)」ボソッ


家庭科教師「そこっ! うるさいわよ! 私はまだまだ行き遅れないわようえーん!!」タッタッタ



ガララララッ!!



青ピ「あっ、せんせーどっか行ってしもーた」

土御門「……あーりゃりゃ。こりゃ今日の授業は中止かにゃー?」

吹寄「そういうわけにはいかないわ。ほらっ委員長。早く追いかけなさい」

青ピ「えっ、ボクッ?」

吹寄「お前以外に誰がいるのよ?」

青ピ「で、でも女子の方の委員長とかい――」

吹寄「いいから行きなさい」ゴキゴキ

青ピ「はい喜んでー! ちょっとフラグ立ててきますわー!」



ガラララッ



上条「相変わらず能天気だな」

一方通行「……はァ、そォだな」

上条「どうした一方通行? 元気がねえな」

一方通行「何でもねェよ面倒臭せェ」

上条「?」


―――
――



787: 2013/08/11(日) 21:50:08.05 ID:gQYViCn7o

今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございます

今回はちょっとモブという名のオリキャラが出しゃばりすぎましたねすみません
まあでもあわきんにはちょっと危機感持ってもらわないといけないよね!

ではではノシ

788: 2013/08/11(日) 22:10:51.45 ID:QqDUUcN50
乙っ

789: 2013/08/11(日) 22:30:31.01 ID:LfwI4Nwz0

引用: 結標「わ、私が……」一方通行「超能力者(レベル5)だとォ!?」