229: 2011/06/27(月) 02:56:44.20 ID:hKVnYh4z0
230: 2011/06/27(月) 02:58:47.76 ID:hKVnYh4z0
垣根は携帯電話の着信音で目が覚めた。
昨日は疲れたから、今日は惰眠を貪ろうと思っていたのに誰だ。
ダルそうに手を伸ばし相手を確認する。
携帯のディスプレイには“心理定規”と表示されていた。
舌打ちして通話ボタンを押す。
垣根「……もしもし?」
心理『もうお昼よ?いつまで寝てる気なの?』
垣根「うっせーよ……なんのようだばか」
心理『昨日はどうなったのよ?』
垣根「あ?」
心理『一方通行とはどうだったの?』
垣根「わかいした」
心理『は?』
垣根「じゃあな。今日は連絡してくんな。寝る」
心理『ちょ、ま、待ちなさいよ!ピンセットはどうしたのよ!?』
垣根「無くした」
ブチリと携帯を切り、会話を終了させる。
ちなみに“ピンセット”は垣根が病院に運ばれた時に、冥土帰しに回収された。
さらにそこから土御門が強奪したのだが垣根が知ることはない。
231: 2011/06/27(月) 03:00:47.72 ID:hKVnYh4z0
垣根はもう一度眠ろうと目を瞑る。
が、家のチャイムが鳴り響いた。
垣根(……ネットで何か買い物したか?)
ピンポーン
垣根(いや、してねぇ。まぁいい、居留守でも使うか……)
ピンポーンピンポーン
垣根「……」
ピポピポピポピポピンポーン
垣根「だぁぁああああぁぁっぁうっせぇぇぇぇ!!!!」
垣根はベッドから飛び起き、扉の向こうの相手をぶっ殺そうと足早に玄関に向かった。
昨日のこともありイライラがマックスな垣根は、丁度良いストレス解消だと思いニヤリと笑った。
そして、勢いよく扉を開ける。
垣根「どちらさんですか!!!!?クソ野郎!!!!!」
一方「おはよう」
垣根「……………は?」
そこには、モジモジしながら立っている一方通行が立っていた。
ソワソワしながら垣根を上目使いで見てくる。気持ち悪い。
垣根「あんだよ?」
一方「これェ……」
ゆっくりと垣根の前に何かを差し出した。
それは家庭用ゲーム機Xbox 360のソフト。
可愛いらしい女の子達が微笑んでいるパッケージには“THE IDOLM@STER”と書かれていた。
232: 2011/06/27(月) 03:02:22.20 ID:hKVnYh4z0
玄関に立っている訳にもいかず一方通行を家へと入れた。
そのままリビングに通し、ソファに座らせた。
垣根は、自分と彼の分のブラックコーヒーを入れてからソファに座る。
垣根「ミルクとか無くて平気?」
一方「ン。ブラック好きだし」
垣根「つーかいきなり家来るの止めろよ。連絡くらいしろ」
一方「メアド知らない。それによォ、アイマスやらせたくて仕方がなかったンだ」
垣根「……何で家知ってんの?」
一方「調べた」
垣根「……」
一方「なァ、誰をプロデュースしたい?」
垣根「お勧めは?」
一方「ゆきぽ。でも、オマエが気に入った子をプロデュースしろよォ」
垣根「分かったよ。とにかく付けるか」
いがみ合っていた男と並んでゲームをするなんて不思議だなと思う。
あれだけ気持ち悪いと思っていたゲームが、今では興味津津だ。
上条とかいう男の右手で殴られてから、自分は何か変わってしまったのだろうか?
一方「箱にホコリ被ってンな…。使ってねェの?」
垣根「買ったはいいけど面白いソフト無くてよ。アイマス以外にもお勧めあったら教えてくれ」
一方「ン……」
一方通行は、アイマスのオープンニングムービーを見ながらコーヒーを飲む。
垣根は眉間に皺を寄せながら画面を見ていた。
233: 2011/06/27(月) 03:04:07.72 ID:hKVnYh4z0
一方「何でそンな難しい顔してンだよ」
垣根「……こうして見ると、けっこう可愛いと思って」
一方「だろォ!?プロデュースすればもっと可愛く見えンだよォ!!」
垣根「誰にすっかな……」
一方(……こいつ真剣だなァ。昨日はキモゲーとか言ってたくせによ)
垣根「んー……」
一方「フィーリングで決めろォ」
垣根「この子にする」
一方「美希だと……?」
垣根「あ?何驚いてんだよ?」
一方「いや、何でもねェよ……最初から美希を選ぶとは、見る目があると思っただけだ」
垣根「見る目?」
一方「やってみれりゃ分かる」
垣根「分かったよ」
―――数分後
垣根「おいおい、何だこのゆとりキャラは……」
一方「まァ、落ち着けよ。美希に対しては最初皆そう思う」
垣根「キリがいいからここで止める。あとはテメェが帰った後にじっくりやるよ」
一方「おう、そうしろ。分からねェことがあったら俺に聞けェ」
垣根「そうする」
234: 2011/06/27(月) 03:06:10.41 ID:hKVnYh4z0
一方「なァ、オマエ、豊崎さンのキャラで誰が一番好きなンだ?」
垣根「なんだよ突然」
一方「いや、昨日帰ったあと豊崎さンのラジオ聴いて、
けっこう気に入ってよォ、でもやってるキャラ多くてどのアニメ見ればいいか分からねェンだよ」
垣根「なるほどな。まず、けいおん!がいいんじゃねぇの?
有名になるきっかけだし、見といて損はねぇよ。BD貸す」
一方「分かった。けいおン!か…」
垣根「俺が思い入れある作品はしゅごキャラかな。愛生ちゃんを知ったきっかけだし」
一方「あれって少女漫画だろォ?男が見て楽しいのか?」
垣根「俺はメルヘンッチクな世界観に惹かれて見始めたんだけど、けっこう面白いぞ」
一方「へェ」
垣根「スゥってキャラを愛生ちゃんがやってたんだけど、これがまた可愛いんだ。俺の所にも来て欲しいぜ」
一方「ほうほう」
垣根「そういや、アイマスってアニメに」
一方「なってねェよ」
垣根「やってろ、声優変わって」
一方「なってない」
垣根「え?なんかロボ」
一方「なっていませン」
垣根「……」
236: 2011/06/27(月) 03:07:35.83 ID:hKVnYh4z0
―――数時間後
一方「いきなり来て悪かったなァ」
垣根「別に?でも次からはメールしろよ」
一方「ン……」
垣根「何ニヤニヤしてんだよ」
一方「……俺、今まで、ゲーム勧めたり、アニメ勧めてもらったりすンの無くて…」
垣根「……」
一方「だから、なンか、楽しいっつーかァ……」
垣根「俺もだよ。すっげぇ楽しかった。また来いよ」
一方「ン」
垣根「貸したCDちゃんと聞けよ?」
一方「当たり前だろォが。つーかよォ、オマエ、顔平気?」
垣根「見た目ほど痛くねぇよ」
一方「よく考えたら一方的に殴られて、黙ってなくても良くないかァ?」
垣根「は?」
一方「これから、三下の家に殴り込みに行かねェ?」
垣根「……それは、いいな」
一方「うし、決まったなら行くぞ」
第1位と第2位は悪ガキのような笑みを浮かべると、レベル0の家へと向かった。
軽く小突いてやろうと思ったのだが、それがあんなことになるなど、二人は知らない。
知らなくても無理はない。
この時、垣根と一方通行は好きな物を他人と共有できる喜びに感動していたのだ。
一方「いきなり来て悪かったなァ」
垣根「別に?でも次からはメールしろよ」
一方「ン……」
垣根「何ニヤニヤしてんだよ」
一方「……俺、今まで、ゲーム勧めたり、アニメ勧めてもらったりすンの無くて…」
垣根「……」
一方「だから、なンか、楽しいっつーかァ……」
垣根「俺もだよ。すっげぇ楽しかった。また来いよ」
一方「ン」
垣根「貸したCDちゃんと聞けよ?」
一方「当たり前だろォが。つーかよォ、オマエ、顔平気?」
垣根「見た目ほど痛くねぇよ」
一方「よく考えたら一方的に殴られて、黙ってなくても良くないかァ?」
垣根「は?」
一方「これから、三下の家に殴り込みに行かねェ?」
垣根「……それは、いいな」
一方「うし、決まったなら行くぞ」
第1位と第2位は悪ガキのような笑みを浮かべると、レベル0の家へと向かった。
軽く小突いてやろうと思ったのだが、それがあんなことになるなど、二人は知らない。
知らなくても無理はない。
この時、垣根と一方通行は好きな物を他人と共有できる喜びに感動していたのだ。
238: 2011/06/27(月) 03:12:43.16 ID:hKVnYh4z0
――――――――――――――――――――
垣根「かっみじょーくーん」
一方「あっそびィましょォー」
玄関の前に立った二人は借金取りのようにチャイムを連打する。
出てきた瞬間に殴ってやろうと二人は構えていた。
ゆっくりとドアノブが廻される。
??「どちらさまですか?新聞ならいらないんだよ」
そこにはパーカーとジーンスを着た銀髪の少女が立っていた。
髪は一つに束ねてありエプロンを着ていた。
手にはお玉が持たれていて、ご飯の準備をしている最中だと分かる。
二人は、開いた口がふさがらなかった。
住所は絶対に間違いないのに、女が出てきた。
しかもけっこう可愛い。声なんて最高にウザ可愛い。
??「もしかして、とうまのお友達?ちょっと待ってるんだよ。玄関にどうぞ」
笑顔でそう言うと、パタパタと音を立てて部屋の奥へと戻っていった。
二人は茫然と立っていることしか出来なかった。
垣根「……どうせい?」
一方「……ただれてんなァ」
上条「あれ?お前らどうした?」
??「せっかく来てくれた友達にそんな態度取っちゃ駄目なんだよ」
一方「その黒歴史春香さんみたいな声してる女は誰だ?」
上条「は?インデックスのことか?」
禁書「あ、自己紹介してなかったんだよ」
垣根「……」
禁書「私、インデックス。とうまと仲良くしてくれると嬉しいんだよ」
インデックスは、名前を名乗ると台所へと戻っていった。
歩くと揺れるポニーテールが眩しい。
二人はその姿をボケッと見ていた。
垣根「かっみじょーくーん」
一方「あっそびィましょォー」
玄関の前に立った二人は借金取りのようにチャイムを連打する。
出てきた瞬間に殴ってやろうと二人は構えていた。
ゆっくりとドアノブが廻される。
??「どちらさまですか?新聞ならいらないんだよ」
そこにはパーカーとジーンスを着た銀髪の少女が立っていた。
髪は一つに束ねてありエプロンを着ていた。
手にはお玉が持たれていて、ご飯の準備をしている最中だと分かる。
二人は、開いた口がふさがらなかった。
住所は絶対に間違いないのに、女が出てきた。
しかもけっこう可愛い。声なんて最高にウザ可愛い。
??「もしかして、とうまのお友達?ちょっと待ってるんだよ。玄関にどうぞ」
笑顔でそう言うと、パタパタと音を立てて部屋の奥へと戻っていった。
二人は茫然と立っていることしか出来なかった。
垣根「……どうせい?」
一方「……ただれてんなァ」
上条「あれ?お前らどうした?」
??「せっかく来てくれた友達にそんな態度取っちゃ駄目なんだよ」
一方「その黒歴史春香さんみたいな声してる女は誰だ?」
上条「は?インデックスのことか?」
禁書「あ、自己紹介してなかったんだよ」
垣根「……」
禁書「私、インデックス。とうまと仲良くしてくれると嬉しいんだよ」
インデックスは、名前を名乗ると台所へと戻っていった。
歩くと揺れるポニーテールが眩しい。
二人はその姿をボケッと見ていた。
239: 2011/06/27(月) 03:16:03.91 ID:hKVnYh4z0
上条「上がれよ。ついでに夕飯食べてく?」
垣根「なにあの子?」
上条「だからインデックスだよ」
説明になってない説明に二人は頭をひねる。
早く来いよ、と上条が言うので二人は上条の部屋へと上がった。
部屋を見て二人は絶句した。
ポスターだらけで壁も天井も見えない。
フィギュアが綺麗に並べられており、ベッドには抱き枕が置いてあった。
大量の声優雑誌が詰まれいる。
地震が来たら雪崩のように落ちてくるだろう。
一方通行の部屋もけっこうな痛部屋だ。
しかし、彼は雪歩一筋で雪歩と水があれば生きていけるので、ここまでではない。
垣根の部屋は、整理されている。
ポスターは額縁に入れてきちんと飾らているし、上条の部屋のように狭くないので、ここまでひどくない。
垣根(花飾りのガキは、上条を気持ち悪くないって言ってたけど、この部屋見たら気絶すんだろ……)
ふと、声だけ天使のガキを思い出してしまって垣根は内心舌打ちする。
あんなガキさっさと記憶から抹消しようと思っていたのに。
あ、声は別です。
上条「そこ座っていいぞ」
垣根「……失礼します」
一方「……ン」
禁書「お茶なんだよ」
二人が座るのを見計らって、インデックスが紅茶を持ってくる。
その紅茶の色は薄く、味も薄くてただのお湯だった。
お茶を出したインデックスは再び台所へに引っ込んで行った。
240: 2011/06/27(月) 03:17:25.85 ID:hKVnYh4z0
上条「何か用?」
垣根「あ、えっと……」
壁や天井からの美少女キャラの視線に落ち着かなく二人はキョロキョロしていた。
抱き枕を見て一方通行は驚愕した。
一方通行が見たのは“魔法少女りりかる☆なのは”のコミケ限定の抱き枕。
それは、選ばれた者にだけにしか手に出来ない代物。
一方通行は上条の顔を見る。
一方(こいつ、俺が思ってるよりも、凄いヤツなンじゃ……)
垣根「すっげぇ部屋だな。この部屋で同棲してるっつーのが信じられねぇよ」
上条「同棲?同居ですよ?」
垣根「あ?」
上条「インデックスは同居人だ。今日の夕飯はインデックスの担当なんだよ」
垣根「……へぇー。つーかあそこにかかってる修道服何?」
上条「インデックスのだ」
垣根「……」
241: 2011/06/27(月) 03:20:37.35 ID:hKVnYh4z0
一方通行はテレビの横にアイマスが置いてあるのを確認すると、満足そうにニヤリとした。
でも、この部屋は物が多すぎる。
一方「銀髪ポニテはこの部屋に不満ねェのかよ……」
上条「え?半分はインデックスの物だし」
垣根「は?」
パタパタと足音を立ててインデックスが戻ってくる。
上条の隣にチョコンと座ると、テーブルに煎餅を三枚置いた。
禁書「紅茶とお煎餅じゃ合わないけど、今はこれしかないんだよ」
垣根「ありがとうございます」
せっかくなので垣根と一方通行は煎餅に噛り付いてみた。
しけっている。
垣根「……」
一方「……」
禁書「とうまのお友達なんだよね?好きな曲は?ライブは何回行ったの?」
インデックスがキラキラした瞳で二人を見つめてくる。
質問の意味が分からずに、二人は黙りこんだ。
上条の友達だと何かあるのだろうか?
上条「あ。インデックスこの二人は、違うんだ」
禁書「そっか……」
インデックスは俯きショボンとすると、立ち上がりエプロンを脱ぐ。
そして、再び顔をあげて、笑顔になった。
242: 2011/06/27(月) 03:23:22.30 ID:hKVnYh4z0
禁書「今日はカレーなんだよ?一緒に食べて行ってくれると嬉しいな」
垣根「あ、じゃあ、ご馳走になります」
一方「……黄泉川に連絡しねぇと」
一方通行が家に連絡を入れている最中に、上条とインデックスは鍋と皿を運んできた。
カレーの臭いが二人の嗅覚を刺激する。
食欲をそそる匂いに惹かれて鍋を見て、二人は愕然とした。
上条「カレーなんて久しぶりだなぁー。普段はこんな贅沢できないからな」
禁書「今日は大奮発なんだよ!」
鍋には、お湯にカレールーを溶かしただけの液体が入っていた。
具なんて何も入っていない。
可哀想なカレーだ。
カレーをかける筈のご飯はなく、代わりに茹でたもやしがある。
確かに色は近いかもしれないが、代用品になるとは思えない。
上条「美味しそうだなぁ!もやしも買ってきたばかりのやつだし!」
禁書「明日からはまた水だけの生活だね!」
垣根と一方通行は、頭が痛くなってきた。
これで贅沢とは、この二人は普段どんな食生活をしているのだろうか。
243: 2011/06/27(月) 03:27:30.16 ID:hKVnYh4z0
上条「ほら、お前らの分もよそったぞ?遠慮しないで…」
垣根「こんなモン食えるかーーー!!!!!!」
一方「お前らアホじゃねェのォォォォォォォ!!!!」
垣根と一方通行は叫んで、上条の家を飛び出した。
その足はスーパーへ真っ直ぐと向かう。
垣根は米を買えるだけ買いこみ、一方通行はカレーの具材を買った。
そして、上条家に戻って勝手に台所に入り、買ってきた具材をフライパンで炒める。
具に全て火が通ると、可哀想なカレーに投入した。
それと同時に、ご飯が炊ける。
炊きたてのご飯は白く輝いていて、カレーをかける為だけに存在しているみたいだった。
上条「……」
禁書「……」
一方「おら、これがカレーだ」
垣根「ちゃんと米食え。日本人だろ。あ、そこの嬢ちゃんは違うか。でも喰え」
上条「……貴方達が神様か」
禁書「主よ……感謝します……」
垣根「拝むな!やめろ!」
一方「いいから喰おうぜェ。腹へった」
上条「本当にありがとうな!!!お前ら大好き!!」
垣根「それよりも上条」
上条「ん?」
一方「礼はいいからよォ……」
垣根一方「「殴らせろ!!!」」
上条「え、ちょ、」
垣根の拳と一方通行の拳が上条の頬にめり込む。
インデクッスは“男の友情を深めるには拳なんだよ”とか何かと言いながらニコニコしていた。
上条の顔がボコボコになってから、四人は手を合わせていただきますをした。
当初の目的を果たした垣根と一方通行は、スッキリとした顔でカレーを食べ始める。
244: 2011/06/27(月) 03:30:31.39 ID:hKVnYh4z0
禁書「本当にありがとうなんだよ。いつもは節約してるから、こんなご馳走食べれないんだよ」
垣根「どうも。つーか節約って……。昨日、ファミレスに居たろ?」
上条「昨日は匂いがご飯だったんだよ。水を飲みながらだと実際に食べてるみたいになるんだ」
禁書「ハンバーグの匂いが美味しかったんだよ!」
一方「匂いはご飯じゃねェから。あと、店に迷惑だから止めろ」
上条「はい」
禁書「はい」
垣根「つーか、そんな切りつめてるなら買い物我慢しろよ」
禁書「それは無理なんだよ」
上条「ああ。無理だ」
一方「バイトとかすればァ?」
禁書「してるんだよ。早朝はコンビニで、そのあとはスーパーでやってるんだよ」
垣根「そんだけバイトしてんなら、ここまで切り詰めなくても……」
禁書「駄目なんだよ。ライブに行けなくなっちゃうんだよ!」
垣根「は?ライブ?ライブって一体何の?」
すると上条がドヤ顔で、テレビを付けてDVDを再生する。
画面の中では、世界一可愛い女の子が踊りながら唄い、それに合わせて国民達がズレることのないコールをしていた。
ピンクのサイリウム、王国民の振り上げる腕、眩しい照明、安定した唄声。
垣根と一方通行は、再び絶句した。
246: 2011/06/27(月) 03:31:46.15 ID:hKVnYh4z0
TV<OK!この余はEASY~♪
TV<(L.O.V.E. ゆかり!)
TV<All right! 私がいちばーん♪
TV<(ゆかりがいつでも一番さ!)
禁書「これはSuper Special Day っていう曲なんだよ。
コールのタイミングが分かりやすいし、コールも覚えやすいし、私のお勧めなんだよ」
垣根「」
一方「」
上条「ちなみにこの曲はときめきメモリアル2の伊集院メイのキャラクター・イメージソングだ」
禁書「なのはの曲も大好きだけど、ゆかりんの曲はこういう可愛い系が良いと思うんだよ。二人も聞いてみるべきなんだよ!!!」
垣根(こ、こいつら、)
一方(二人揃って、)
垣根一方((王国民だったのか――――!?))
258: 2011/06/29(水) 02:50:26.94 ID:BUvmwCZW0
食事を終えた後も王国民による姫トークが続いた。
なんだか異次元に居る気分だ。
垣根がTV画面に目をやると、世界一可愛い女の子が“ドウモアリガトッ”と笑顔で言っていた。
上条「ん?垣根はゆかりんに興味あるのか?コール覚える?」
垣根「無理です」
一方「オマエらの話は分かったからTV消そうぜェ?節約してンだろォ?」
上条「それもそうだな」ブチッ
禁書「二人も興味持ってくれると嬉しいんだよ」
垣根「俺には愛生ちゃんが居るし」
禁書「あきちゃん?」
垣根「あ?知らねぇの?けっこう知名度あると思うんだけど」
上条「あー…インデックスはなのはとゆかりんにしか興味ないんだ」
垣根「すっげぇ偏ってんな」
一方(もしかしてェ……抱き枕は、この女の所有物なのか?)
禁書「“なのは”は凄いんだよ!まずキャラクターが可愛い!デバイスの設定も凝ってて、
心が躍るんだよ!ド派手で熱い魔法バトル!心に響くストーリー!見る価値ありなんだよ!!!」
一方「へぇ…」
禁書「口リコンアニメだと思われがちだけど、少年漫画寄りなんだよ。
けっこう王道ストーリー。あと、私が一番好きなのは日常とシリアスの使い分けなんだよ。
切り替えが上手くて、シリアスが良く映えるんだよ。そこがワクワクするんだよ!!!!」
垣根「……へぇ」
禁書「あるキャラ達の深い家族シーンは、私生活を見直すきっかけになったんだよ。
ニートじゃ駄目だ、私も頑張ろうって思えたんだよ。それくらい温かいんだよ」
上条「インデックス、二人が引いてるからそろそろ止めような」
禁書「……ごめんなさい。なのはのことになるとつい熱くなっちゃって」
垣根「いえいえ、貴重なお話が聞けてびっくりしました」
一方「僕もですゥ」
上条「なんだその口調」
259: 2011/06/29(水) 02:55:23.05 ID:BUvmwCZW0
禁書「二人は何が好きなのかな?お話してくれると嬉しいな!」
垣根「俺はさっきも言ったけど愛生ちゃんだ」
垣根「好きなアニメのキャラの声が良いと思ってなんとくググったんだよ。そしたら、天使が居た。惚れた」
禁書「そうなんだ!」
垣根「柔らかい声を聞くとすっげぇ落ち着く。癒されるし、興奮するな。
しかも、ラジオトークも良いし、唄声は人に聞かせる為に一生懸命唄ってるって感じがして好きだな」
禁書「なるほどね!今度聞いてみるんだよ!」
上条「俺だって散々勧めてるだろ……」
禁書「とうまは色々浮気してるから駄目なんだよ!」
上条「だって、良い物はたくさんあるし……。一番はゆかりんだけどさ」
一方(ヒーロー兼プロデューサー兼王国民かァ……)
禁書「で?何が好きなのかな?」
一方「萩原雪歩ちゃん」
禁書「とうまがやってるゲームだね」
一方「ン。雪歩は、俺に初めてメールをくれた女の子なンだよ」
垣根「は?メール?」
一方「アイマスは元々アーケードだったンだ。その時は携帯と
連動したゲームで、待ち受けとか着うたとかダウンロードできたンだよォ」
垣根「へ、へぇ……」
一方「そンで、実際にメールも来るンだ。何時に事務所に居ますとか最近会えなくて寂しいとか」
垣根「…………すっげぇな」
上条「アーケード時代からのプロデューサーだったのか」
一方「雪歩の頑張ってる姿を見てると、俺も頑張れる気がするンだよなァ……」
上条「その気持ち分かる!俺も千早見てるとそう思う!」
一方「……なンか、語るのって性に合わねェや」
禁書「皆、色んな物が好きなんだね!こういうお話は面白いんだよ!」
垣根(ただ喋ってるだけで時間を無駄にしてるみてぇだけど、何かいいな。こういうのって……)
260: 2011/06/29(水) 02:56:41.79 ID:BUvmwCZW0
一方「おい」
垣根「あ?」
一方「ずっと気になってたんだけどよォ……」
垣根「ん?」
一方「オマエ、なンで1位になりたかったンだ?」
垣根「……いきなりだな」
上条(空気読んで黙っておこう……)
禁書(私は洗い物でもして来るんだよ……)スタスタ
垣根「お前はどこまで知ってる?」
一方「『スクール』は学園都市の反乱分子。そのリーダー垣根帝督は“ピンセット”を強奪。
第1位の座の為に、あのガキを狙った。雑な説明だけど、これくらいは知ってンぞ」
垣根「全部知ってんじゃねぇか」
261: 2011/06/29(水) 02:57:55.52 ID:BUvmwCZW0
一方「オープンカフェからずっと尾行してたしなァ」
垣根「マジかよ。全然気づいてなかった」
一方「それ暗部のリーダーとしてのどうなの?」
垣根「仕方ねぇだろ…びっくりしてたんだからよ」
一方「倒れた時は正直、引いた。あのリアクションはねェよ」
垣根「うっせぇな。つーかさっさと出てくれば良かったろ」
一方「ヒーローっぽい登場がしたくてェ、タイミングを……」
垣根「ばーか」
上条「真面目な話かと思ったらアホな話だな」
一方「いいえ真面目ですゥ。で?」
垣根「……交渉権を得る為だよ」
一方「あ?」
上条「こーしょーけん?」
垣根「アレイスターとの、交渉権が欲しかったんだよ」
一方「……何のためだ?」
垣根「……」
一方「……言いたくねェのか?」
垣根「別に。お前らにだったら言ってもいいや」
一方「……」
垣根「……あれは、少し前のことだ」
262: 2011/06/29(水) 02:59:56.96 ID:BUvmwCZW0
――――――――――――――――――――――――
大人気声優豊崎愛生。
セカンドシングル“ぼくを探して”発売決定。
“ぼくを探して”の発売記念として、握手会が決定致しました。
イベントは抽選でのご招待をなります。
奮ってご応募して下さい。
垣根「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
垣根「セカンドシングルきた!!!!!!」
垣根「良い曲名だ。神曲の予感しかしないな」
垣根「しかも握手会だと……?絶対に行くしかない……」
垣根「抽選か……。色んな店舗で買って数枚、抽選券手に入れないとな……」
垣根は感喜していた。
待望のセカンドシングル。
愛生ちゃんとの握手会。
滅多に無い言葉を交わすチャンス。
絶対に行かなければ。
そして愛生ちゃんに大好きで愛していることを伝えなければ。
むしろ、ウェディングドレスと指輪をプレゼントしたい。
垣根(でも抽選券配る店舗って全部、学園都市の外なんだよな……)
垣根「……」
垣根(そういや俺って学園都市から出たことないかも……)
大人気声優豊崎愛生。
セカンドシングル“ぼくを探して”発売決定。
“ぼくを探して”の発売記念として、握手会が決定致しました。
イベントは抽選でのご招待をなります。
奮ってご応募して下さい。
垣根「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
垣根「セカンドシングルきた!!!!!!」
垣根「良い曲名だ。神曲の予感しかしないな」
垣根「しかも握手会だと……?絶対に行くしかない……」
垣根「抽選か……。色んな店舗で買って数枚、抽選券手に入れないとな……」
垣根は感喜していた。
待望のセカンドシングル。
愛生ちゃんとの握手会。
滅多に無い言葉を交わすチャンス。
絶対に行かなければ。
そして愛生ちゃんに大好きで愛していることを伝えなければ。
むしろ、ウェディングドレスと指輪をプレゼントしたい。
垣根(でも抽選券配る店舗って全部、学園都市の外なんだよな……)
垣根「……」
垣根(そういや俺って学園都市から出たことないかも……)
263: 2011/06/29(水) 03:01:59.70 ID:BUvmwCZW0
垣根は幼い頃から学園都市に住んでいた。
もしかしたら昔は違う場所に住んでいたのかもしれないが、そんな記憶は無かった。
そして家族が居ない垣根には外に出る理由など無い。
レベル5になってからは、未元物質の情報などの流失を恐れられて、外へ出ることは許されなくなった。
垣根(CDは下っ端に買いに行かせるか……。レベル0なら外出届は受理されやすいし)
今まで垣根は、学園都市から出ようとは思っていなかった。
大きすぎる力は学園都市に居たって持て余してしまうのだ。
外の世界になんか出たら、もっと住みづらくて煙たがられるだろう。
だから外には興味は無かった。
垣根(でも今回は事情が事情だ。当選したらIDを偽造してでも外に出てやる!)
垣根「……」
垣根(いや、偽造なんて駄目だ。俺がそんなことしちまったら、
愛生ちゃんファンの評判が下がって、さらには愛生ちゃんの評判も下がっちまう……!!)
きっと大丈夫だ。
愛する女性に会いに行くと言えば、学園都市からすぐに出られるだろう。
愛を否定するほど、この街は無慈悲ではない筈だ。
垣根(とにかく応募して当選しないことには何も始まらねぇ)
264: 2011/06/29(水) 03:04:24.32 ID:BUvmwCZW0
さっそく下っ端を呼び出して命令をくだす。
街頭店舗でCDを購入し、応募券を手に入れること。
簡潔でアホくさい内容に下っ端は心の中で苦笑した。
心理「ねぇ、自分の趣味に組織を巻き込むのは止めさないよ」
垣根「うっせぇな。きちんと報酬は与えてるんだからいいだろ。
それに遺体処理とかに比べればよっぽどマシだろうが」
心理「……はいはい」
当選する確率は低いだろう。
でも倍率が高いのは人気者の証拠だ。
そう思うと何とも言えない喜びが溢れてくる。
垣根(やべぇやべぇやべぇ…………もう当選した気分だ。
でも、期待して抽選漏れしたらショックで氏ぬから、そんなに期待しないでおこう)
垣根(抽選は完全に運だからな……。どうか当選してください!お願いします神様!!!!!!!!!)
そして、月日は流れる――――
265: 2011/06/29(水) 03:08:31.98 ID:BUvmwCZW0
垣根(そろそろ、当選者には参加権が来る筈だ……!)
期待と不安を抱きながら、ポストを開ける日々が続く。
何も入っていなくてため息をつくことが多かった。
しかし、神様は垣根を見捨てなかった。
暗部の胸糞悪い仕事を終わらせて帰宅した垣根はポストを確認する。
どうせハズれだろうと諦めつつポストを覗くと、そこには待ち続けた参加権が入っていた。
垣根「くぁwせdrftgyふじこlp!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
垣根は喜びのあまりのた打ち回った。
嬉しさで頭がおかしくなりそうだ。
愛生ちゃんに会える。
天使の声を生で聴くことができる。
その上、彼女に触れることができる。
垣根(ど、どうしよう、握手してるとき、何て言おう?好きです愛してますってのは絶対言うだろ?)
垣根(そんで頑張って下さいって言って、あ、でも頑張りすぎて倒れるとかは勘弁だ。健康第一で頑張って下さいって言うか)
頭の中で、愛生ちゃんとの握手のシミュレーションを何度もした。
心の準備無しで彼女に会ったら、トキメキで心臓が止まってしまうだろう。
脳内の愛生ちゃんは、はにかんだ笑顔で“ありがとうございます”と言ってくれる。
本物はもっと可愛くて素晴らしいに違いない。
楽しみすぎて氏にそうだ。
垣根(あ、そうだ。学園都市から外出許可を得ないといけねぇんだ。今日はもう遅いし、明日にするかな)
垣根は最高に良い気分で眠りについた。
何を着て行こうか?髪はどんな感じにするか?プレゼントは何にしようか?
まるでデートするかのようにルンルン気分だった。
神様は残酷だ。
神様は垣根に微笑んだかのように見えたのだけれど、実際には垣根の方など見てもいなかったのだ。
266: 2011/06/29(水) 03:11:49.75 ID:BUvmwCZW0
垣根「は?外出許可は出せないだと?」
下っ端「はい。レベル5の第2位がそんな理由で外出するなと」
垣根「はぁぁぁぁぁぁぁ!?そんな理由!?
愛生ちゃんの握手会をそんな理由呼ばわりだと!!!!?テメェぶっ頃すぞ!!!」
下っ端「痛い!痛いです!羽で叩かないで下さいよ!」
垣根「うっせぇばーか!氏ねクソボケ!!!!」
下っ端「俺に言わないで下さい!」
心理「八つ当たりは止めなさいよ。あなたが外出なんて出来るわけないでしょ?」
垣根「あ?」
心理「分かっているでしょ?貴方くらいの力を持っていたら、
学園都市の利益にならない限り、この街から出られないわ」
垣根「……クソが。俺は散々この街に利益を提供してきたんだ。
たまには我がまま聞いてくれても良いだろうが馬鹿野郎」
心理「馬鹿なのは貴方よ。この街にとってレベル5は
貴重な実験動物なのよ?モルモットが自分の意思で檻の外に出れると思ってるの?」
垣根「……超電磁砲は外に出てるだろ」
心理「彼女は家族が居るわ。外出を制限してたら、家族は黙っていないでしょ?」
垣根「……」
心理「それに貴方や第1位に比べたら、超電磁砲の力は赤ん坊みたいなものじゃない」
垣根「それはそうだけど」
心理「自分で思ってるよりも化け物なんだから、大人しくしてなさい」
垣根「でも、握手会が……」
心理「馬鹿じゃないの?そんな理由で第2位が外出できるわけないでしょ?考えなくたって分かるじゃない」
267: 2011/06/29(水) 03:15:02.57 ID:BUvmwCZW0
垣根「……」
心理「……」
垣根「……ッ」
心理「……泣かないでよ。気持ち悪い」
垣根「うっせぇ……出てけ……ふっ……ひっく……」
心理「……はいはい。ほら、貴方も行くわよ」スタスタ
下っ端「あ、はい」スタスタ
バタン
垣根「……」
垣根「……………」
垣根「あぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
垣根は体中の水分が無くなるくらい泣いた。
義務教育を終えた男がこんなに泣くなど、みっともないとは理解している。
けれど瞳から溢れてくる感情は止められなかった。
会いに行ける権利があるのに、街から出る権利はない。
あともう少しだったのに。
もう少しで彼女に会うことが出来たのに……!
垣根はこの街に初めて怒りを覚えた。
自分が実験動物扱いされようが、上層部の連中にいいように使われようがどうでも良かった。
しかし、今回のことでハッキリした。
この街は腐っている。腐りきっている。
愛する女性に会いに行くのすら許されないような街は、変えなくてはならない。
そして、第2位は決心する。
この街を変えよう。
レベル5でも、自分の意思で気軽に外出できるように、と。
垣根(でも今から動いたんじゃ、握手会には間に合わない……)
垣根(愛生ちゃんはこれからどんどん人気出るだろうし、握手会は二度とやらねぇだろうな……)
垣根(そう思うと、俺の行動は無駄かもしれねぇ……でも……)
垣根「それでも、俺はやらなくちゃならねぇんだよ……!」
268: 2011/06/29(水) 03:17:05.45 ID:BUvmwCZW0
―――――――――――――――――――――――
垣根「という訳で、俺は直接交渉権を手に入れようと色々やった訳だ」
一方「……」
上条「……」
禁書「……」
垣根「笑えるだろ?どんなに頑張った所で握手会には行けないっつーのによ」
一方「……」
上条「……」
禁書「……」
部屋には重い雰囲気が漂っていた。
上条とインデックスは、悲しそうな顔で垣根を見ていた。
一方通行は何かを思い出しているようで、少し俯いてる。
ちなみに“そんなくだらないことでいちいち暗部組織動かすな”という突っ込みは入らない。
なぜならこの部屋には、似た者同士しか居ないからである。
垣根「それに、愛生ちゃんの声に似てるクソ花に気を取られて計画は破綻した。頭悪すぎて氏ねって感じだろ?」
一方「……本当に、アホ野郎だな」
垣根「心配するな。自覚はある」
一方「なンで、早く言わねェンだよ」
垣根「は?」
一方「俺もだ。……俺も、テメェと似たようなことがあった」
垣根「え」
震えた声で一方通行は話し始める。
かつて、自分がアイマスライブのチケットに申し込み、チケットが当たったこと。
そして、垣根と同じ理由で、ライブには行けなかったこと。
垣根「という訳で、俺は直接交渉権を手に入れようと色々やった訳だ」
一方「……」
上条「……」
禁書「……」
垣根「笑えるだろ?どんなに頑張った所で握手会には行けないっつーのによ」
一方「……」
上条「……」
禁書「……」
部屋には重い雰囲気が漂っていた。
上条とインデックスは、悲しそうな顔で垣根を見ていた。
一方通行は何かを思い出しているようで、少し俯いてる。
ちなみに“そんなくだらないことでいちいち暗部組織動かすな”という突っ込みは入らない。
なぜならこの部屋には、似た者同士しか居ないからである。
垣根「それに、愛生ちゃんの声に似てるクソ花に気を取られて計画は破綻した。頭悪すぎて氏ねって感じだろ?」
一方「……本当に、アホ野郎だな」
垣根「心配するな。自覚はある」
一方「なンで、早く言わねェンだよ」
垣根「は?」
一方「俺もだ。……俺も、テメェと似たようなことがあった」
垣根「え」
震えた声で一方通行は話し始める。
かつて、自分がアイマスライブのチケットに申し込み、チケットが当たったこと。
そして、垣根と同じ理由で、ライブには行けなかったこと。
269: 2011/06/29(水) 03:19:11.82 ID:BUvmwCZW0
一方「俺はテメェと違って、この街を変えることなンか思い付かなかった」
垣根「……」
一方「俺は化け物だ。そんなヤツが他のプロデューサーと肩を並べて
サイリウムを振って良い訳がねェと思ってあっさり諦めたンだよ」
垣根「……」
重い雰囲気の中、上条とインデックスが口を開く。
二人は好きな声優のライブに行っているし、コミックマーケットにだって行っている。
好きな人を応援し声援を送る、それが普通だと思っていた。
しかしレベル5というだけでそれをできない現実。
上条「……そんなこと、知らなかったな」
禁書「私もだよ……」
垣根「つーかなんで上条はライブに行けてるんだよ?テメェだってレベル高いんじゃねぇの?」
上条「俺はレベル0だけど?」
垣根「あんだと?」
一方「こいつはズルいよなァ……。けっこうな力を持ってるくせに、気軽に外出してンだぜェ……」
垣根「……羨ましいな」
垣根はため息をついた。
羨ましいけれど、妬んだって仕方ない。
不意に隣に居るインデックスに手を取られた。
何か用か?と視線を送る。
インデックスはまっすぐ垣根を見ながら、力強く言った。
禁書「私も協力する!!」
垣根「は?」
禁書「好きな声優さんに会いに行けないなんて、酷過ぎるんだよ」
上条「俺もだ!何か出来ることがあったら言ってくれ!」
垣根「……お前ら」
270: 2011/06/29(水) 03:20:42.17 ID:BUvmwCZW0
一方「……なァ」
垣根「ん?」
一方「テメェの言う直接交渉権とやらには、俺が一番近い場所に居るんだろォ?」
垣根「そうだ」
一方「なら、俺がアレイスターと交渉してくればいいンじゃねェの?」
垣根「……マジで?」
一方「知り合いに空間移動能力持ってるヤツ居るし、どうにかなンだろ」
垣根「……」
一方「でもよォ、理由には氏ぬほど同意できるが、あのガキを狙おうと思ったのは理解できねェ」
垣根「……」
一方「手段を選んでる暇が無かったンだろうが、それだけはやっちゃいけねェよ」
垣根「……そう、だよな」
一方「もしかしたら、俺とお前はこうやって喋ることなく頃し合ってたかもなァ……」
垣根「……まぁ、最初はテメェを頃すつもりだったし」
一方「……俺だけが思ってるかもしれねェけど、」
垣根「?」
一方「そうならなくて、良かった」
垣根「……一方通行」
一方「だからと言って、ガキを狙ったことを許した訳じゃねェ」
垣根「……」
一方「でも、オマエと、友達になれたことは、嫌じゃねェ」
垣根「お前……」
271: 2011/06/29(水) 03:23:41.65 ID:BUvmwCZW0
垣根は目頭が熱くなった。
一方通行の大切な存在に危害を加えようとした自分を、友人だと認めくれるなんて。
それに誰もこんな話を理解してくれるとは思っていなかった。
自分の考えに賛同し、協力してくれる人が居るとは考えもしなかった。
垣根(不思議だな。一方通行とこんなにも近い距離に居るなんて……)
本来ならば彼と自分は頃し合いをする運命だった。
それが何故狂ったのかは分からないけれど、そんなクソッタレな運命が変わったのは喜ばしいことだと思える。
手段を選ばず行動していた自分が恥ずかしい。
一方「何ボーっとしてンだ?」
垣根「……なんでもねぇよ」
そゥかよ、と薄く笑う一方通行はどこか恥ずかしそうだった。
そんな一方通行の顔を見て垣根も何故だか恥ずかしなる。
ともだち。
その言葉を胸の中で呟いてみると、暖かい気持ちになれた。
一方「うし、明日にでも行くか」
垣根「え?」
一方「早いほうがいいだろォ?」
垣根「そうだけど……」
一方「まァ、俺に任せとけェ。その間テメェは美希をプロデュースしておくンだな」
垣根「……でも、テメェはあくまで直接交渉権に近いだけで、アレイスターと対等な訳じゃねぇぞ?」
一方「そンなモンどうにでもなンだろ」
垣根「適当だなオイ」
上条「俺も行く!」
禁書「私も!」
一方「……オマエらが居てもなァ」
272: 2011/06/29(水) 03:27:36.54 ID:BUvmwCZW0
二人の申し出は嬉しかったけれど彼らは無関係だ。
直接アレイスターの所へ出向くなど何があるか分からない。
危険な目に合うかもしれないと思うと連れて行くことは出来なかった。
しかし、腫れた顔の上条は必氏に懇願する。
上条「じっとしてられないんだよ!頼む!お前に降り掛る幻想は俺が全部ぶち頃す!だから、お願いだ!」
禁書「私もなんだよ!絶対に足手まといにはならないから、お願い」
一方「……なら、いいけどォ」
垣根「なら俺も行く。皆で行った方がいいだろ。仲間外れとか嫌だし」
一方「やれやれ、結局全員かよ」
禁書「ライブに行けるようになったら、ゆかりんのライブに行こうね?」
垣根「さり気に布教するな」
一方「あ……でも、空間能力の知り合いってオタク嫌いなンだよなァ…」
上条「じゃあ無理かもな……」
一方「頼ンではみるけど、駄目だったらごめンな?」
垣根「別にお前が謝ることじゃないだろ」
一方「ソイツが説得出来なきゃ、あのビルには
入れないからなァ……。もしかしたら明日に行くのは無理かもしれねェ」
垣根「まぁ、どうにかなんだろ」
話が一段落つくと、インデックスの提案で“なのは”観賞会が始まった。
垣根は正直興味が無かったのだけれど、皆で見ると面白く感じられた。
本当に、一方通行と戦わなくて良かった。
彼と戦っていたら上条やインデックスと知り合えなかったかもしれない。
こんなひと時を過ごすことも無かっただろうし、自分がプロデューサーになることもなかっただろう。
垣根帝督と一方通行の運命を変えたのは、誰だかは分からない。
けれど垣根はその知らない誰かに、そっと感謝した。
287: 2011/07/03(日) 01:44:29.33 ID:ImYSX0aq0
翌日、4人は再び集まった。
一方通行の知り合いである空間移動能力者を説得する為だ。
数分待つと一人の女性が現れた。
彼女の名前は結標淡希。
軽く挨拶を済ませると一方通行が結標に事情を説明する。
結標は、話を真剣に聞いていたのだが……
結標「いやよ」
一方「なンでだよォォォォ!?」
話が終わった後の第一声は、拒否だった。
それもそうだろう。
たかが声優のイベントの為だけにアレイスターに会いに行くなど、頭が悪すぎる。
そんなことに自分の能力を使うなんてバカバカしくて出来る訳がない。
それに、一方通行が他の女性に会い行くのを手伝うなんてしたくなかった。
これは本人に言えないけれど。
結標「そんなくだらないことに、何で私が協力しなくちゃいけないの?」
垣根「くだらなくねぇよ!!!ぶっ頃すぞクソ女」
結標「あらヤダ。声オタって本当にキチOイね。自分の思い通りに
ならなかったら相手に危害を加えるの?最低ね。キモい、気持ち悪すぎるわ」
垣根「……う」
一方「テメェに全面協力してやるよ」
結標「は?」
一方「テメェにも大切な仲間とやらが居ンだろォ?ソイツらを助ける時には、オマエと一緒に命をかけてやる」
垣根「事情は知らないけど、俺も協力する。だからお願いします」
結標「……別にいらないわよ」
一方「お願いだ!この通りィ!」
垣根「本当にお願いします!!」
288: 2011/07/03(日) 01:46:40.91 ID:ImYSX0aq0
二人は同時に土下座をした。
第1位と第2位のこんな姿は滅多に拝めないだろう。
一方通行のつむじが見えて結標は胸キュンする。
触りたいな、と思っていると残りの二人も土下座を始めた。
上条「俺からもお願いします!」
禁書「私からもなんだよ!」
結標「ちょっと……私を囲んで土下座しないでくれる?何の宗教よ」
人通りの多い街中で四人から土下座されているのは異様な光景だろう。
通行人の視線がこの上なく痛い。
結標「はぁ……分かったわよ。顔上げなさい」
一方「連れて行ってくれンのか!?」
結標「いいけど、私はこの件には無関係よ?キモオタに巻き込まれた被害者ってだけだから」
一方「分かってるゥ!ありがとう!すっげェありがとう!!」
結標「ひゃっ!?」
一方通行は感謝のあまり結標に抱きついた。
とくに仲が良い訳ではない。一緒の組織に属しているだけの関係。
それに一方通行は前に彼女を殴り飛ばしている。
加えて結標はオタクに嫌悪感を持っている女の子だ。
それなのに、結標は協力してくれると言うのだ。
289: 2011/07/03(日) 01:49:14.60 ID:ImYSX0aq0
一方「オタク嫌いなのにわりィな」
結標「別に嫌いな訳じゃないわよ……」
一方「え?」
一方通行は首をかしげた。
隠れ家でアイマスをしていると邪魔してくるし、ゲームなんかしてないで彼女作りなさいよ、とか余計なことを言ってくる。
本当はオタクが嫌いでやっている行為ではない。
しかし彼女の心を全く知らない一方通行は結標がオタク嫌いだと勘違いしているのだ。
結標「…………離してよ」
一方「あ、わりィ」
一方通行は結標を離した。
少しだけ残念だけれど、これ以上彼に抱擁されていたら、嬉しさで頭がおかしくなってしまう。
一方「本当にありがとなァ!オマエはいい子だと思ってたよォ!!」
結標(私の協力で、こんなに喜ぶなんて……。手伝ってあげるって言って良かった……)キュン
一方「何か礼してやる。俺に出来る範囲でだけどな」
結標「じゃ、じゃあ一日だけ買い物に付き合いなさいっ!」
一方「あン?カード貸してやるから、一人で行ったほうがいいンじゃねェの?」
結標「馬鹿!アンタなんて荷物持ちよ!荷物持ち!」
一方「なるほどォ」
結標「べ、別にアンタと一緒に居たいとか、デートしたいだなんて思ってないから!勘違いしないでよねっ!」
一方「分かってるっつーの。冗談抜きでマジで感謝しンぞ」
290: 2011/07/03(日) 01:50:30.60 ID:ImYSX0aq0
垣根「……」
上条「……」
禁書「……ここまで典型的なツンデレ台詞が聞けるなんて思ってなかったんだよ」
一方「あ?」
垣根は呆れた目で一方通行を見た。
雪歩一筋とか言ってたくせに、3次元でフラグ立ててんじゃねぇよ。
しかし、これでアレイスターと会うことができるのだ。
もうすぐ願いが叶うと思うと、口元が緩んでしまう。
一方「笑うのはまだだ。これからが本番だからなァ?」
垣根「分かってるよ。頼りにしてるぜ一方通行」
こうして4人は窓の無いビルに行くことになった。
話し合いで事が済めば良いのだけれど、どうなるかは分からない。
一方通行と垣根は気を張り詰めた。
上手く行けば、輝かしい未来が待っている。
291: 2011/07/03(日) 01:52:51.30 ID:ImYSX0aq0
―――――――――――――――――――――――
結標「無理ね」
上条「……そうですか」
一方「やっぱりか……」
窓のないビルに行く前に、一方通行が気になることがあると言いだした。
それは上条当麻を座標移動することができるかどうかだ。
結果としては無理だった。
結標が完璧な演算をしても上条の体が動くことは無い。
上条「これっばかりは……諦めるしかないか……」
一方「右手置いて行けばァ?」
上条「できるか!!!!!」
上条はその場でうな垂れる。
二人の手助けをしたかったというのに、それすらも叶わない。
ヒロインでもあるまいし、外で皆の無事を祈っているだけなんて嫌だった。
インデックスの暖かい手が上条の右手を包んだ。
まるで“貴方の右手は何も悪くないよ”と言っているみたいに。
そして彼を慰めるように、シスターは笑う。
禁書「大丈夫だよとうま。私が当麻の分まで頑張るから」
上条「……インデックス、無理するなよ?」
垣根「インデックスちゃんは俺達に任せとけ。傷なんてつけさせないから」
一方「三下は待ってるしかねェな。すぐ戻ってくるからそンな泣きそうな顔すンな。きもい」
結標「決まったわね?行くのは、第2位と一方通行とそこの女の子でいいわね?」
一方「おう。頼む」
上条「…………頑張れよ」
上条に見送られ、垣根達は窓の無いビルへと向かった。
垣根は緊張と高揚と不安で鼓動が早くなっていた。
何が待ち受けているか分からない。
垣根「……」
隣に居る一方通行を見た。
目が合うと彼は力強く微笑んだ。
禁書「平気だよ。ていとく。きっと神様は私達に味方してくれるんだよ」
不意にインデックスが言う。
そちらを見ると彼女も力強く微笑んでいる。
この二人が居れば、どうにかなる気がしてきた。
緊張を解すため、息を吐く。
そして愛する彼女のこと想った。
愛生ちゃん、待っていてくれ。この街から出て必ず君に会いに行く。
結標「無理ね」
上条「……そうですか」
一方「やっぱりか……」
窓のないビルに行く前に、一方通行が気になることがあると言いだした。
それは上条当麻を座標移動することができるかどうかだ。
結果としては無理だった。
結標が完璧な演算をしても上条の体が動くことは無い。
上条「これっばかりは……諦めるしかないか……」
一方「右手置いて行けばァ?」
上条「できるか!!!!!」
上条はその場でうな垂れる。
二人の手助けをしたかったというのに、それすらも叶わない。
ヒロインでもあるまいし、外で皆の無事を祈っているだけなんて嫌だった。
インデックスの暖かい手が上条の右手を包んだ。
まるで“貴方の右手は何も悪くないよ”と言っているみたいに。
そして彼を慰めるように、シスターは笑う。
禁書「大丈夫だよとうま。私が当麻の分まで頑張るから」
上条「……インデックス、無理するなよ?」
垣根「インデックスちゃんは俺達に任せとけ。傷なんてつけさせないから」
一方「三下は待ってるしかねェな。すぐ戻ってくるからそンな泣きそうな顔すンな。きもい」
結標「決まったわね?行くのは、第2位と一方通行とそこの女の子でいいわね?」
一方「おう。頼む」
上条「…………頑張れよ」
上条に見送られ、垣根達は窓の無いビルへと向かった。
垣根は緊張と高揚と不安で鼓動が早くなっていた。
何が待ち受けているか分からない。
垣根「……」
隣に居る一方通行を見た。
目が合うと彼は力強く微笑んだ。
禁書「平気だよ。ていとく。きっと神様は私達に味方してくれるんだよ」
不意にインデックスが言う。
そちらを見ると彼女も力強く微笑んでいる。
この二人が居れば、どうにかなる気がしてきた。
緊張を解すため、息を吐く。
そして愛する彼女のこと想った。
愛生ちゃん、待っていてくれ。この街から出て必ず君に会いに行く。
292: 2011/07/03(日) 01:54:22.35 ID:ImYSX0aq0
――――――――――――――――――――――――――――――
ラジオ『うわぁぁぁああああぁぁぁ!!!』
ラジオ『井口裕香のむ~~~~~~ん⊂( ^ω^)⊃!!!』
ラジオ『こんばんはー。井口裕香でーす』
ラジオ『ちょっとー作家さん?冒頭から叫ぶの止めてもらいます?』
ラジオ『えぇ!?俺?』
アレ「素晴らしくうざ可愛いな。それにこの出落ちがたまらない。さすがゆかちだ」
垣根「……」
一方「……」
禁書「……」
結標「……」
アレ「ん?」
アレ「…………え?」
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―――――
――
ラジオ『うわぁぁぁああああぁぁぁ!!!』
ラジオ『井口裕香のむ~~~~~~ん⊂( ^ω^)⊃!!!』
ラジオ『こんばんはー。井口裕香でーす』
ラジオ『ちょっとー作家さん?冒頭から叫ぶの止めてもらいます?』
ラジオ『えぇ!?俺?』
アレ「素晴らしくうざ可愛いな。それにこの出落ちがたまらない。さすがゆかちだ」
垣根「……」
一方「……」
禁書「……」
結標「……」
アレ「ん?」
アレ「…………え?」
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――
293: 2011/07/03(日) 01:57:35.81 ID:ImYSX0aq0
――――――――――――――――
―――――――――――
―――――
――
四人は窓のないビルに潜入した。
ここには、この街の最大権力者、学園都市総括理事長の“アレイスター・クロウリー”が居る。
四人に緊張が走る。
薄暗い雰囲気に圧倒され、頬に汗が伝う。
震えた足で進むと、彼は居た。
男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える『人間』。
緑の手術着を着た彼は生命維維持槽のビーカーの中で逆さまに浮かんでいる。
顔には薄い笑みが貼り付けられていて、まるで4人がここに来ることを知っていたみたいだった。
「何か用かな?」
ゆったりと口調で問う。
睨みつけてくるわけでもないのに、何故か威圧感がある。
一方「いや、さっきのことを無かったことにしてシリアスに話を進めようとすンな」
アレ「……」
垣根「ラジオの録音聞くとか……お前、声オタかよ……」
一方「オマエが言うな」
アレ「……」
結標「うわぁ……こんな薄暗い部屋で声優のラジオ聴くなんて本格的にキモオタね」
アレ「……」
一方「なンだよォ……色々心配してたのに。テメェも同類か」
アレ「……」
結標「もうやだこのまち」
アレ「……」
―――――――――――
―――――
――
四人は窓のないビルに潜入した。
ここには、この街の最大権力者、学園都市総括理事長の“アレイスター・クロウリー”が居る。
四人に緊張が走る。
薄暗い雰囲気に圧倒され、頬に汗が伝う。
震えた足で進むと、彼は居た。
男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える『人間』。
緑の手術着を着た彼は生命維維持槽のビーカーの中で逆さまに浮かんでいる。
顔には薄い笑みが貼り付けられていて、まるで4人がここに来ることを知っていたみたいだった。
「何か用かな?」
ゆったりと口調で問う。
睨みつけてくるわけでもないのに、何故か威圧感がある。
一方「いや、さっきのことを無かったことにしてシリアスに話を進めようとすンな」
アレ「……」
垣根「ラジオの録音聞くとか……お前、声オタかよ……」
一方「オマエが言うな」
アレ「……」
結標「うわぁ……こんな薄暗い部屋で声優のラジオ聴くなんて本格的にキモオタね」
アレ「……」
一方「なンだよォ……色々心配してたのに。テメェも同類か」
アレ「……」
結標「もうやだこのまち」
アレ「……」
294: 2011/07/03(日) 02:00:01.02 ID:ImYSX0aq0
今のアレイスターに威厳など微塵も無かった。
隠していた趣味が一気にバレてしまったのだ。しかも4人に。
誰も来ないと思っていたらこの有様だ。
穴があったら入りたかった。
顔が熱くて沸騰しそうだ。ついでにビーカーの水も沸騰しそうだった。
良い年して声優に夢中など、誰にもバレたくなかったのに……。
アレイスターが羞恥心に襲われいると、修道服を纏った少女がペタリとビーカーに手を付いた。
禁書「何でそんなに恥ずかしいのかな?」
優しい声で、優しい顔で聞いてくる。
微笑みは聖女そのものだ。
禁書「自分の趣味を恥じるなんて、悲しいんだよ」
アレ「……」
禁書「私は今の人を誰かは知らないけど、あなたは好きなんでしょう?」
アレ「……」
禁書「誰かを好きになるのは全然恥ずかしいことじゃない。むしろ良いことなんだよ?」
インデックスは彼を宥めるように話す。
その声にアレイスターの羞恥心は薄れていったが、すぐに別の感情がわき上がってくる。
アレ(この、可愛らしい口リボイス。どことなくウザい感じ……)
インデックスの声はアレイスターが夢中になっている井口裕香にそっくりだったのだ。
もしインデックスがアニメのキャラクターなら、声をあてるのはゆかちに違いない。
垣根「おいアレイスター」
アレ「何だ」
295: 2011/07/03(日) 02:01:54.29 ID:ImYSX0aq0
アレイスターがゆかちそっくりな声に耳を傾けていると、それを遮るように低音が響いた。
今はゆかちに似た声を堪能しているというのに、なんだこの空気を読めない男は。
そんなアレイスターを無視するように垣根は続ける。
本当に空気読めないなお前は。
だからスペアなんだよ万年2位野郎め。
垣根「俺達がここに来た理由、テメェなら知ってんじゃねぇのか?」
アレ「……知っているが、本当に来るとはな」
垣根「早く外出許可出せコラ」
アレ「まさか案内人がこんな理由で動くとは思わなかったからな。完全に油断していたよ」
結標「……」
アレ「そういえば、一方通行のことを……」
結標「あー!!!!わー!!!駄目よ!言わないで!お願い!!!」
アレ「仕方ないな。黙っていよう」
一方「おい、なンで俺や垣根をこの街から出さない?」
アレ「決まっているだろう。君達だからさ」
一方「訳分からないこと言ってンじゃねェよ」
垣根「俺達と同類なら気持ちが分かるだろ?」
アレ「君たちの気持ちなど関係ないさ。それに同類と言われたくないな」
垣根「なんだと?」
296: 2011/07/03(日) 02:03:56.13 ID:ImYSX0aq0
アレ「私が興味あるのは、ゆかちの演技と声とトークだけだ。本人に直接会いたいとは思わないのでね」
一方「……」
アレ「ファンサービスなどラジオだけで十分だ。それ以上はやりすぎだし、無駄だな」
垣根「……」
アレ「握手会やコンサートをやる暇があるのなら、少しでも台本を読み込んで良い演技をして貰いたいだろう?」
垣根「……」
禁書「意味分かんないんだよ」
アレ「なに?」
禁書「握手会だってコンサートだって大事なお仕事なんだよ。それを無駄とか言うのは許せないんだよ」
アレ「……ふむ」
禁書「それにコンサートって凄い楽しいんだよ。行ったことないから分からないだけだよ」
アレ「人の多い所は苦手でね」
禁書「分かった。なら、コンサートの楽しみを分かってもらうしかないんだよ」
一方「あ?」
禁書「口で言っても分からないから、体に分からせるんだよ」
アレ「ふむ。どうやってだゆかち?」
垣根「いや、ゆかちじゃねぇからインデックスちゃんだから」
禁書「こうやってだよ!」
297: 2011/07/03(日) 02:05:27.99 ID:ImYSX0aq0
そう言うと、インデックスはDVDデッキを勝手に操作し始めた。
大きな画面にDVDの映像が映し出される。
そして手際良くピンク色のサイリウムとコール表を全員に配る。
アレイスターにはビーカーの上から落として渡した。
TV<Chuppy Chuppy スpi にゃん スpi にゃん Chuppy Chuppy ぴょんぴょん chu/(*^ ^) \
垣根「」
アレ「」
一方「」
結標「え?何これ?」
禁書「何ボーっとしてるんだよ!?ゆかり王国の国家なんだよ!さっさとサイリウム振るんだよ!!!!」
インデックスに凄まれ、四人は渋々サイリウムを振り始めた。
画面の中の王国民達はズレることなくサイリウムを振っているが、四人はバラバラだ。
インデクッス一人だけリズミカルかつ正確に振っていた。
禁書「ゆーかりはい!ゆーかりはい!ゆーかりはい!ゆーかりはい!はい!はい!はい!はい!」
インデックスのノリノリコールが部屋に響く。
その声からは王国民であることを誇りに思っていることが伝わってくる。
楽しそうなインデックスにつられて、四人のサイリウムは少しずつ合わさっていった。
垣根(いや……なんでこんなことに……)
一方(DVDとかサイリウムとか、どこに持ってたンだよォ……)
アレ(ふむ。ゆかちのあらぶる声も良いものだな)
結標(なにこれ……なにこれ……)
298: 2011/07/03(日) 02:06:37.53 ID:ImYSX0aq0
禁書「ふふふふふっ・ふー!」
TV<願いごとを 乗せて廻る 今日も 明日も これからも ずっと側にいてね
垣根(インデクッスちゃんマジで楽しそうだな……)
一方(アイマスライブもこンな感じなのかァ?)
アレ(ゆかちの楽しそうな声……思わずつられてしましそうだ……)
TV<このままどこまでも 二人 描く未来探しにゆこう~♪
禁書「ゆーかーり ゆかり!」
アレ(もう駄目だ!我慢できん!)
アレ「ゆーかーり ゆかり!」バシャバシャ
垣根「!?」
一方「!?」
禁書アレ「「はい!はい!はい!はい!」」
垣根(ば、ばかな……!アレイスターがコールだと……!?)
一方(すっげェノリノリじゃねェかァ……)
299: 2011/07/03(日) 02:08:09.58 ID:ImYSX0aq0
TV<ちょっとずつねー♪
禁アレ「「ちょっとずつねー!!!」」
垣根(……そもそも俺達がアレイスターを説得しなきゃいけないのに、)
一方(こいつばっかりにやらせてちゃ、駄目なンじゃねェの?)
垣根(インデックスちゃんは頑張ってるんだ…)
一方(俺達が頑張らなくてどうすンだ!!!!)
TV<ちょっとずつよ~♪
禁アレ垣一「「「「ちょっとずつよー!!!!」」」」
結標「Oh...」
~数分後~
TV<いつかこの恋が叶うなら 私、なんにも いらないかもしれない~♪
禁アレ垣一「「「「へい!へい!へい!へい!へい!へい!へい!へい!」」」」
結標(なんなの…?なにこれ?……でも、一方通行が楽しそうだからいいか……)
禁アレ垣一「「「「誰にも負けないこのキモチ!」」」」
禁アレ垣一「「「「ゆかりに向かって咲いている!」」」」
禁アレ垣一「「「「世界で一番大好きな!!!」」」」
禁アレ垣一「「「「ゆかりにもっと恋したいー!」」」」
TV<ひまわりみたいに きらきら揺れてる この想い~♪
~さらに数分後~
TV<Happy fancy baby doll Love me fancy baby doll♪
禁アレ垣一「「「「世界一 かわいいよっ!! 」」」」
TV<ドウモアリガトッ
禁アレ垣一「「「「 うぉおおおおおおおおお!!」」」」
結標(休まず腕振ったりしてるけど疲れないのかしら……?)
300: 2011/07/03(日) 02:10:19.33 ID:ImYSX0aq0
―――――――――――――――――――――
熱い掛け声。振り上げる腕。飛び散る汗。乱れることのないコール。
なんとも言えない一体感に垣根達は満足していた。
汗が頬を伝ってくるが、全く不快ではない。
アレ「はぁはぁ……これがライブ、けっこう楽しいものだな。興味深い」
禁書「そうでしょ!?」
垣根「つーかアレイスターの水でビショビショなんだけど」ビッショリ
一方「ビーカーの中ではしゃぐなよォ…」ビッショリ
DVD鑑賞が終わった四人は向かい合う。
アレイスターは顎に指を置いて、何やら考えている。
禁書「あのね、この二人もコンサートに行きたがってるんだよ!」
アレ「……」
禁書「好きな人を生で見れるって凄いことなんだよ!だからお願い!」
アレ「考えを改めよう。素晴らしいものだな。それに楽しかった」
禁書「なら!」
アレ「でも、この二人を学園都市から出すことはできない」
アレイスターの声は冷たかった。
さっきまで熱いコールをしていた男と同一人物だとは思えない。
垣根と一方通行は苛立ちを覚えた。
そこまでして、自分達を学園都市に閉じ込めておきたいとは。
禁書「……何で駄目なの?ていとくもあくせられーたも可哀想なんだよ」
アレ「それには仕方のない理由があるからさ」
垣根「ふざけんなよ…!何が理由だ!!!!!!」
一方「答えによってはビーカーと一緒にスクラップにしてやるよォ……!」
垣根は力一杯ビーカーを叩く。
ヒビが入ることは無かったけれど中の水が大きく揺れた。
一方通行は電極にスイッチを入れてアレイスターを睨みつけている。
そんな二人をアレイスターは冷静に見つめていた。
熱い掛け声。振り上げる腕。飛び散る汗。乱れることのないコール。
なんとも言えない一体感に垣根達は満足していた。
汗が頬を伝ってくるが、全く不快ではない。
アレ「はぁはぁ……これがライブ、けっこう楽しいものだな。興味深い」
禁書「そうでしょ!?」
垣根「つーかアレイスターの水でビショビショなんだけど」ビッショリ
一方「ビーカーの中ではしゃぐなよォ…」ビッショリ
DVD鑑賞が終わった四人は向かい合う。
アレイスターは顎に指を置いて、何やら考えている。
禁書「あのね、この二人もコンサートに行きたがってるんだよ!」
アレ「……」
禁書「好きな人を生で見れるって凄いことなんだよ!だからお願い!」
アレ「考えを改めよう。素晴らしいものだな。それに楽しかった」
禁書「なら!」
アレ「でも、この二人を学園都市から出すことはできない」
アレイスターの声は冷たかった。
さっきまで熱いコールをしていた男と同一人物だとは思えない。
垣根と一方通行は苛立ちを覚えた。
そこまでして、自分達を学園都市に閉じ込めておきたいとは。
禁書「……何で駄目なの?ていとくもあくせられーたも可哀想なんだよ」
アレ「それには仕方のない理由があるからさ」
垣根「ふざけんなよ…!何が理由だ!!!!!!」
一方「答えによってはビーカーと一緒にスクラップにしてやるよォ……!」
垣根は力一杯ビーカーを叩く。
ヒビが入ることは無かったけれど中の水が大きく揺れた。
一方通行は電極にスイッチを入れてアレイスターを睨みつけている。
そんな二人をアレイスターは冷静に見つめていた。
301: 2011/07/03(日) 02:11:57.23 ID:ImYSX0aq0
禁書「理由ってなに?」
アレ「理由は今、二人がしたことだ」
垣根「あ?」
一方「は?」
アレ「君たちは、ありえないくらいに怒りやすい。そんな奴らを外に出せる訳ないだろう?」
結標「確かに……」
垣根「……そんなことねぇよな?」
一方「……そンなことねェな」
アレ「自覚なしか……。短気なうえに強大な力を持つ化け物を普通の人間と一緒にできるわけがない」
垣根「外に行ったら能力なんて使わねぇよ」
アレ「本当か?」
垣根「本当だ」
アレ「信用できんな。今だって怒りに任せて行動したではないか」
一方「……」
垣根「……」
アレ「学園都市の中で何が起こっても隠蔽できる。しかし外で問題を起してみろ。大騒ぎになって収拾がつかなくなるぞ?」
垣根「でも、俺は」
アレ「“トド崎マジ巨人。つーかキャラ作りすぎだよねぇ”と言われたら、君は我慢していられるか?」
垣根「!!!!」
アレ「反射的に翼を出してしまうようでは、外出を認めることなどできないな」
垣根「クソが……!」
302: 2011/07/03(日) 02:13:33.85 ID:ImYSX0aq0
アレ「レベル5であっても人並みに温厚であれば外出くらい許可はするぞ?」
垣根「なんだって?」
禁書「怒らなければいいんだね?」
アレ「ん?どうしたゆかち?」
禁書「これから一週間、二人が一度も怒らなければ、外出を認めて欲しいんだよ」
アレ「それは無理だ。この二人にそんなことが出来る訳がない」
垣根「やる!」
一方「できますゥ!」
アレ「なんだと?」
垣根「絶対、一週間怒らずに過ごしてみせる!我慢できるってこと分からせてやるよ!」
一方「俺もだ!そンくらい楽勝なンだよォォォォ!!!」
アレ「雪歩って喋ってる声と唄声が全然違うな?他のメンバーに比べて浮きすぎだろう」
一方「……」プルプル
アレ「あいなまさんって顔だけで演技はそこまで上手くないな」
垣根「……」ギリギリ
アレ「…………ふむ。本気のようだな。ならば明日から一週間、本当に我慢できたのならば外出を考えてやってもいい」
一方「本当かァ!?」
垣根「やった!」
アレ「しかしどんな理由であれ怒ったらその場でアウトだ。チャンスは一度だけだぞ?」
垣根「ハッ。楽勝なんだよ」
一方「楽勝すぎて欠伸が出ちまうなァ……」
結標(え……本気で言ってるの?)
アレ「そうか。せいぜい頑張れ」
こうして四人は窓のないビルを後にした。
交渉が成功したか失敗したかは分からないけれど、外出への第一歩を踏み出すことができたのだ。
337: 2011/08/19(金) 01:35:56.60 ID:0MaAjyLP0
佐天「それは初春が悪い」
白井「わたくしもそう思いますの」
御坂「んー……私もそう思うかな……」
垣根が窓のないビルで命がけ(?)の交渉をしている時、
とあるフェミレスでは四人の少女が集まっていた。
流行っている曲や服、新しく見つけた都市伝説、風紀委員の仕事、
最近あったことなどをケーキやパフェを食べつつ仲良くお喋りしていた。
他愛のない話が一段落すると、久しぶり集まったということで、一人ずつ近状報告をすることになった。
先ほどの言葉は初春の話を聞き終えた三人の感想である。
ちなみに初春がした話は垣根のことだ。
初春「……やっぱりそうですよね」
白井「大体、過去に色々あったからと言ってオタクという人種を差別しすぎじゃありませんの?」
初春「でも、実際キモいですし」
白井「平気ですの。真性オタクは3次元の女になんか興味ないですから。
初春に性的興奮を覚えるのはオタクではなく口リコンですの」
初春「口リコンですか……」
御坂「そもそもオタクって言っても色んな人居るでしょ?
き、きっと良い人だって居るわよ!ひ、人の為に頑張っちゃうヤツとか!」
白井「……お姉様、それって」
御坂「へ!?アイツとは関係ないわよ!」
佐天「あ!例の殿方ですね!」
338: 2011/08/19(金) 01:37:31.94 ID:0MaAjyLP0
初春「え、御坂さんの好きな人ってオタクなんですか?」
御坂「え!?べ、べべべべ別に好きとかじゃなくて、でも、いや、その!!」
佐天「へー。オタクの彼氏かぁ……。御坂さん漫画好きだし、お似合いなんじゃないですか?」
御坂白井「「お似合い!!!?」」
御坂「そんな、そそそそそそんなことあるわけ…………!」
白井「そんなことわたくしは認めませんわよ!!!あんな類人猿!絶対に!ぜーーーーったいに認めませんの!!!!!!」
初春「二人とも落ち着いて下さい」
白井「お姉様は類人猿のゴミみたいな部屋を見てもまだ目が覚めませんの?」
御坂「だって趣味なんて人それぞれじゃない」
白井「だからってあんな男と付き合ったりなんかしたらお姉様が腐ってしまいますの!」
御坂「でもアイツは良いヤツだし!そ、それに優しいし、ちょっとお人よしの所があるけど、でも…」
白井「キッー!!!あの類人猿キモオタのクセにお姉様をたぶらかして!!!」
初春「はぁ……でも、恋愛してるって良いですよね……私なんか何も無いですよ」
白井「あら、初春が発情期ですの」
初春「違いますよ!」
佐天「初春にはまだ早いんじゃない?」
初春「そんなことないですよ!」
佐天「好き嫌いが多いお子様は恋愛なんてまだまだ先だと思うわ」
白井「ですの!ですの!」
339: 2011/08/19(金) 01:39:35.72 ID:0MaAjyLP0
佐天「それにさ、顔が良いなら性格くらいどうでもいいんじゃない?」
初春「でも、その“うんたん”とか意味分からないこと言われましたし……」
御坂「うんたん?」
初春「そう言ってくれって言われたんですよ。言ったらテンション高くなってキモかったです」
御坂「……それは気持ち悪いかも」
白井「気持ち悪いというか……やっぱり気持ち悪いですの」
佐天「でもすっごく理想の顔に近かったんでしょ?その垣根さんって人」
初春「はい」
佐天「初春が変なこと言わなきゃLOVEが始まったかもしれないのに」
初春「……」
佐天「自分で出会いを潰しちゃうなんて、アホだよねぇ」
白井「ですの。欠点の一つや二つ、目を瞑れないようでは恋愛なんて出来ませんの」
初春「そんなことないですよ……」
白井「実際、わたくしはお姉様の欠点である子ども趣味や男の趣味の悪さなど目を瞑っていますの」
御坂「おい」
白井「まぁ好きになってしまえば、欠点さえも愛おしくなってしまうのですけれどね」
御坂「……それは、分かるわ」
白井「類人猿のことかーーーーッ!!!!」
初春「白井さん、叫ばないで下さい」
佐天「初春って乙女思考だから理想高そうだよね。その理想をクリアするなんて垣根って人は凄いなぁ」
初春「でも顔だけですし。それに、オタクとか抜きでも性格良く無さそうでした」
佐天「どういう所が?」
340: 2011/08/19(金) 01:41:58.52 ID:0MaAjyLP0
初春「病院まで付き添ったって話したじゃないですか?」
佐天「うん」
初春「寝てる時に色んな女の人の名前を呼んでたんですよ」
御坂「あら…それは……」
白井「イケメンな殿方でしたら彼女が数人居ておかしくないですの」
初春「そういうのって嫌じゃないですか?やっぱり一途な人が良いですよ」
御坂「それにはすっごく同意だわ!!!!!!」
白井「初春が変な男に引っかからなくて良かったですの」
佐天「つまんないなー……青春が始まったかと思ったのに」
白井「初春はわたくし達と談笑したり、風紀委員の仕事をしてるのがお似合いですの。男なんてまだまだ早すぎますの」
初春「なんですかそれ……」
佐天「とにかく、次にその垣根さんって人に会ったら先日はすいませんでしたくらいは言った方がいいんじゃない?」
初春「……そうですね」
御坂「それじゃそろそろ行く?もう夕方よ?」
白井「そうですわね」
話題が終わった所で四人はファミレスを後にした。
病院で垣根が口にした名前は全て2次元の住人なのだが、彼女達は知るよしもない。
友人達に“悪い”と言われ、初春は深く反省した。
確かに初対面であそこまで言ったのは失礼だ。
しかし、ほっこり(?)ボイスを大切にしろとか訳の分からないことを言ってくるあの男は、やっぱり嫌だ。
良い顔だと思ったら、相当な女たらしのくせにオタクだし、でもやっぱりあれは言い過ぎだと思うし…………。
とにかくあの男にもう一度会えたら謝罪をしようと思う。
会えたら、だけれど。
350: 2011/08/22(月) 01:33:15.53 ID:/wfrVaSz0
垣根は気持ち良く朝を迎えた。
昨日はアレイスターとの交渉が上手く(?)いった。
その後は上条家にお邪魔してなのはA's観賞会をしながら一方通行と垣根のお金で寿司を注文し、盛大にお祝いした。
この街から出られないのは、レベル5だからという理由ではなかった。
自分の性格。短気なせい。
そんなものいくらでも変えられる。
彼女に会えるのなら罵倒されようがプライドをへし折られようが全て笑って許せる、と思う。
垣根(こんな清々しい気持ちは久しぶりだぜ……)
リモコンでデッキを操作し愛する彼女の曲を流す。
彼女の唄声は、垣根の心をほっこりとさせてくれる。
朝食のトースターとブラックコーヒーをテーブルに置き、イスに腰掛けた。
窓から差し込む朝日が、部屋を明るく照らす。
いつもの光景なのになんだか特別に感じた。
ゆっくりと、カップを手に取った瞬間、チャイムがけたたましく鳴りだした。
狂ったように響くチャイム音に良い気分は削がれていく。
良い気分でご飯を食べようと思っていたのに誰だ。
舌打ちしそうになったけれど、我慢した。
垣根(これくらいで怒ったら駄目だ、きっと急用なんだ、急用だったら
メールか電話でいいだろクソボケ、いちいち家に来てんじゃねぇよ氏ね)
イライラしてきたことに気付き、頭をふった。
駄目だ。
こんなことで腹を立てていたら外出許可が出なくなってしまう。
心を落ち着かせるために深呼吸をしてから、玄関に向かった。
351: 2011/08/22(月) 01:36:23.21 ID:/wfrVaSz0
――――――――――――――――――――――――――
心理「……」
垣根「は?」
扉を開けると見知った顔が居た。
同じ組織に属する少女。
普段着ている派手なドレスに比べると、いくらか落ち着いた服をまとっていた。
そういう格好してる方が年相応に見えて可愛い、とか言ってからかってやろうと思ったけれど、少女の目は鋭くつり上がっている。
そんなことをして良い空気ではないようだ。
心理「あなた、馬鹿なの?」
垣根「……意味分からないんだけど」
心理「自分の胸に聞いてみなさいよ」
心理定規は更に垣根を睨みつける。
視線だけで人を頃すことが出来そうだ。
心理定規は任務を遂行するときだってこんな顔を見せたことはない。
垣根は唾を飲んだ。蛇に睨まれたカエルは、きっとこんな気分なのだろう。
心理「…………」
垣根「…………」
垣根は自分より背もレベルも低い少女に圧倒されていた。
何やら、よろしくない雰囲気が漂っている。
今すぐ逃げ出したほうが良いと、脳が警報を鳴らす。
心理「あがっていいかしら?」
垣根「あ……は、はい」
シベリアの大地のような冷たい声で心理定規が言い放つ。
思考が氷ついた垣根はその声に従うしかなかった。
心理定規を玄関に招き入れて、扉をしめた。
しめた瞬間、頬に衝撃がはしり、視界がブレた。
数秒立つと頬がじんじんと熱を持ちだした。
垣根(は…?ビンタ……?)
状況を把握した瞬間、反対の頬にも彼女の怒りがぶつけられる。
バッチーン!と良い音がして、垣根の両頬には赤い手形がくっきりと浮かんだ。
心理「……」
垣根「は?」
扉を開けると見知った顔が居た。
同じ組織に属する少女。
普段着ている派手なドレスに比べると、いくらか落ち着いた服をまとっていた。
そういう格好してる方が年相応に見えて可愛い、とか言ってからかってやろうと思ったけれど、少女の目は鋭くつり上がっている。
そんなことをして良い空気ではないようだ。
心理「あなた、馬鹿なの?」
垣根「……意味分からないんだけど」
心理「自分の胸に聞いてみなさいよ」
心理定規は更に垣根を睨みつける。
視線だけで人を頃すことが出来そうだ。
心理定規は任務を遂行するときだってこんな顔を見せたことはない。
垣根は唾を飲んだ。蛇に睨まれたカエルは、きっとこんな気分なのだろう。
心理「…………」
垣根「…………」
垣根は自分より背もレベルも低い少女に圧倒されていた。
何やら、よろしくない雰囲気が漂っている。
今すぐ逃げ出したほうが良いと、脳が警報を鳴らす。
心理「あがっていいかしら?」
垣根「あ……は、はい」
シベリアの大地のような冷たい声で心理定規が言い放つ。
思考が氷ついた垣根はその声に従うしかなかった。
心理定規を玄関に招き入れて、扉をしめた。
しめた瞬間、頬に衝撃がはしり、視界がブレた。
数秒立つと頬がじんじんと熱を持ちだした。
垣根(は…?ビンタ……?)
状況を把握した瞬間、反対の頬にも彼女の怒りがぶつけられる。
バッチーン!と良い音がして、垣根の両頬には赤い手形がくっきりと浮かんだ。
352: 2011/08/22(月) 01:38:59.21 ID:/wfrVaSz0
垣根「……何するんだよ」
心理「……」
ビンタされた後に髪を引っ張られたり、鋭いネイルで首を引っかかれたり、ヒールで足を思い切り踏まれたり……
いきなり暴れ出す彼女をなんとか宥めて、リビングまで引っ張ってソファに座らせた。
コーヒーを二つ用意してから、垣根は向かいに座って心理定規の様子を観察する。
普段は冷静な彼女が、ここまで感情をぶつけてくるのは珍しい。
垣根「おい、何か用があるんじゃねぇのかよ?」
理不尽な暴力でキレそうになったが、どんな理由であれ怒ってしまったらアウトなのだ。
何があっても耐えるしかない。
心理定規は垣根の問いを無視して不貞腐れた顔をしながらコーヒーに、ふぅ、ふぅ、と息を吹きかけていた。
垣根(そういやこいつ猫舌だったな。無視してんじゃねぇよ舌火傷しやがれ暴力ビXチ女)
口に出せない悪態を心の中でつく。
不意に心理定規が垣根を見つめてくる。
相変わらずその瞳には怒りが込められていた。
心理「ねぇ、お砂糖とミルクは?」
垣根「台所」
心理「そう」
それだけ言うとカップを持ってキッチンに向かった。
いつもは華麗に振る舞っている心理定規の足音は、ドシドシと大きくて彼女らしくなかった。
その足音からは心理定規の明確の怒りを感じた。
垣根は首をひねる。
彼女は、何に対してこんなに怒っているのだろうか。
354: 2011/08/22(月) 01:40:47.51 ID:/wfrVaSz0
しばらくするとティースプーンでコーヒーを混ぜながら心理定規が戻って来た。
そのまま真っ直ぐ垣根の元に歩いて来てちょこん、と隣に座る。
隣に座った心理定規は、垣根をじっと見つめた。
心理「何で私がここに来たか、本当に分からないの?」
垣根「は?分かるわけ、」
言い終わる前に心理定規の手に持たれたカップが傾き、生暖かい液体が顔に勢いよくかかった。
ぽたぽたと、ミルクと砂糖がたっぷりのコーヒーが垣根の髪から滴る。
先ほどの引っかき傷にコーヒーがしみて顔を歪めた。
―――――もう、無理だ。
―――――なんでここまでされて我慢しなくちゃならねぇんだ。
―――――クソ女にされるがままだなんて意味がわからねぇ。
垣根は心理定規の胸ぐらを乱暴に掴む。
思い切りつかまれたせいか、心理定規の口からひゃっと声が漏れた。
しかし彼女は笑っている。
垣根の行動がおかしくてたまらない、という顔だ。
垣根「テメェ、」
心理「あなた、怒っちゃいけないんでしょ?」
垣根「…………あ?」
心理「これくらいで腹を立ててたら、外出なんて絶対にできないわよ」
垣根「…………何でお前がそれを知ってんだ」
電話が掛かって来たの、と心理定規は笑いながら言った。
355: 2011/08/22(月) 01:43:25.87 ID:/wfrVaSz0
――――――――――――――
昨夜。
垣根に何度も連絡をしても繋がらず、作戦は失敗したのだろうかと心理定規は肩を落とした。
それにしても一方通行との和解とはどういうことなのだろう。
もしかして、第1位と第2位が手を組んだのだろうか?
そうしたら作戦は失敗ではない?
そもそも垣根は無事なのだろうか?
スクールは学園都市の反乱分子の筈だ。
リーダーである彼が殺されてもおかしくない。
心理(……ばか。メールくらい返してくれてもいいじゃない)
彼女の手には携帯電話が握りしめられていた。
彼は心配する必要ないくらい強いけれど、今回は学園都市が相手なのだ。
五体満足のままである保証はない。
心理(もう一回、電話してみようかな)
携帯を開き垣根の番号を呼び出そうとした時に、着信で手の中の携帯が震えた。
心理定規は番号を確認もせずに通話ボタンを押す。
心理「もしもし?」
??『初めまして、になるな』
心理「…………誰よ」
心理定規は聞き慣れない声に眉を潜めた。
指示を出す男でも、下っ端でも、構成員でも、リーダーでもない。
その声は男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも聞こえる。
??『スクールの心理定規だろう?上司が駄目だと部下は大変だな』
心理「え?」
??『まだ分からないのか?ヒントをあげよう。私は園都市総括理事長という役職についている』
心理「アレイスター!?」
心理定規に緊張が走る。
まさか、あちらから接触があるだなんて予想していなかった。
そして彼女は思う。
垣根はもうこの世にいない。居たとしても、それは人の形をしていないだろう、と。
昨夜。
垣根に何度も連絡をしても繋がらず、作戦は失敗したのだろうかと心理定規は肩を落とした。
それにしても一方通行との和解とはどういうことなのだろう。
もしかして、第1位と第2位が手を組んだのだろうか?
そうしたら作戦は失敗ではない?
そもそも垣根は無事なのだろうか?
スクールは学園都市の反乱分子の筈だ。
リーダーである彼が殺されてもおかしくない。
心理(……ばか。メールくらい返してくれてもいいじゃない)
彼女の手には携帯電話が握りしめられていた。
彼は心配する必要ないくらい強いけれど、今回は学園都市が相手なのだ。
五体満足のままである保証はない。
心理(もう一回、電話してみようかな)
携帯を開き垣根の番号を呼び出そうとした時に、着信で手の中の携帯が震えた。
心理定規は番号を確認もせずに通話ボタンを押す。
心理「もしもし?」
??『初めまして、になるな』
心理「…………誰よ」
心理定規は聞き慣れない声に眉を潜めた。
指示を出す男でも、下っ端でも、構成員でも、リーダーでもない。
その声は男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも聞こえる。
??『スクールの心理定規だろう?上司が駄目だと部下は大変だな』
心理「え?」
??『まだ分からないのか?ヒントをあげよう。私は園都市総括理事長という役職についている』
心理「アレイスター!?」
心理定規に緊張が走る。
まさか、あちらから接触があるだなんて予想していなかった。
そして彼女は思う。
垣根はもうこの世にいない。居たとしても、それは人の形をしていないだろう、と。
356: 2011/08/22(月) 01:47:27.20 ID:/wfrVaSz0
心理「な、なんで、あなたが……」
声が震える。泣いてはいないけれど、泣きたい。
きっと自分は処分される。されなかったとしても、氏ぬ方がマシだと思うような人生が待っているに違いない。
いつもはピンチになるとレベル5のリーダーが敵を蹴散らしてくれた。
そして嫌味な笑顔で言うのだ。
戦闘に向いてないんだから無理してんじゃねぇよ、と。
彼の嫌いな所はたくさんあった。
でも、嫌いじゃない所もたくさんあった。
垣根が今どうなっているか、自分がこれからどうなるか、それを考えると、どうしようもない絶望に包まれた。
涙が頬に垂れた時に電話の向こう側から、くっくっと笑い声が聞こえた。
アレ『泣くとはwwwwwwそうかwwwぶふっwww何もww知らないからwwwかwwwwwふふふ』
心理定規はアレイスターが笑っている理由が全く分からい。
思考が停止した心理定規は黙って笑い声を聞くことしか出来なかった。
アレイスターの笑い声は数十分続いた。
アレ『ふぅ……笑いすぎた……』
心理「……」
アレ『垣根帝督は生きている。彼は私の所に来た』
心理「!?」
アレ『彼は君に何も言っていないみたいだな。真実を全て教えてやろう』
心理「……しんじつ?」
アレ『TVをつけたら垣根帝督の今日の行動を見れるようになっている。
安心していい。要所はまとめてあるからそんなに長くはない』
心理定規はさらに混乱した。
いきなりアレイスターから電話が来たと思ったら、垣根が生きていると言われた。
そしてテレビをつけろと言われて……。
何がなんだか分からない。
そもそもスクールの隠れ家のテレビに干渉することができるのなら、スクールの企みだって知っていただろうに。
スクールの企みというか垣根の企みなのだけれど。
心理(そういえば、私はあの人が何をしたかったのか、何も知らないわね……)
テレビ画面にはベッドで熟睡している垣根が映っている。
枕元に置いてある携帯が鳴ると、ダルそうに適当な言葉で対応していた。
心理(これ、今朝の……私とのやりとりじゃない……)
本当に垣根の一日が映し出されているようだ。
心理定規がテレビ画面に釘付けになっていると、アレイスターは静かな声で告げた。
アレ『それを見終わった頃にまた連絡をいれる。垣根帝督の野望をきちんと知っておくのだな』
心理定規は携帯を畳み、テレビの前に正座した。
これは作られた映像ではない。一秒でも見逃さないようにしなければ。
そして心理定規は知ることになる。
自分が属している組織のリーダーは、私欲の為だけに大掛かりな計画を立てたことを。
357: 2011/08/22(月) 01:49:02.21 ID:/wfrVaSz0
―――――――――――――――――――――――
見終わった頃に、携帯が震えた。
心理定規は無表情で電話を取る。
悲しみや怒りが体中に渦巻いて感情の整理が上手く出来ない。
怒りに震えた手で携帯を持つと軋む音がしたが、そんなことはどうでも良かった。
アレ『言いたいことは分かる。落ち着いて欲しい』
心理「…………」
アレ『垣根帝督は私の所でゆかりんのライブDVD見てコールしてたのに、心配をしていたのが滑稽だな』
心理「…………」
アレ『ミシミシ聞こえる、もうちょっと携帯を労わってやれ』
心理「…………ばかじゃないの」
アレ『ん?』
心理「…………計画を立てるのに、私がどれだけ手伝ったと思うのよ?」
アレ『……』
心理「ピンセットがどこで保管されているか調べるのだってすっごい大変だったのよ!」
アレ『ほうほう』
心理「施設のデータが管理されてるバンクにアクセスしたら凄腕ハッカーにメタンコにされるし!」
アレ『ふむふむ』
心理「それに、狙撃手の補充だって私がやったのよ!!
適当に選んどけ、とか言ってたくせにふざけんなって感じよ!!!!!!!」
アレ『お疲れさまだな』
心理「慣れないクレーン車だってちゃんと操作したのよ!!!アイテムの足止めだって頑張ったし」
アレ『そうだな』
見終わった頃に、携帯が震えた。
心理定規は無表情で電話を取る。
悲しみや怒りが体中に渦巻いて感情の整理が上手く出来ない。
怒りに震えた手で携帯を持つと軋む音がしたが、そんなことはどうでも良かった。
アレ『言いたいことは分かる。落ち着いて欲しい』
心理「…………」
アレ『垣根帝督は私の所でゆかりんのライブDVD見てコールしてたのに、心配をしていたのが滑稽だな』
心理「…………」
アレ『ミシミシ聞こえる、もうちょっと携帯を労わってやれ』
心理「…………ばかじゃないの」
アレ『ん?』
心理「…………計画を立てるのに、私がどれだけ手伝ったと思うのよ?」
アレ『……』
心理「ピンセットがどこで保管されているか調べるのだってすっごい大変だったのよ!」
アレ『ほうほう』
心理「施設のデータが管理されてるバンクにアクセスしたら凄腕ハッカーにメタンコにされるし!」
アレ『ふむふむ』
心理「それに、狙撃手の補充だって私がやったのよ!!
適当に選んどけ、とか言ってたくせにふざけんなって感じよ!!!!!!!」
アレ『お疲れさまだな』
心理「慣れないクレーン車だってちゃんと操作したのよ!!!アイテムの足止めだって頑張ったし」
アレ『そうだな』
358: 2011/08/22(月) 01:51:19.96 ID:/wfrVaSz0
心理「それなのに……!それなのに!!!!」
心理「声優に会いに行くための外出許可の為だなんて!!!!!!!!!!!」
心理「私の頑張りはなんだったのよ!!!!!!!!!!!!!!!
ふざけんなよ腐れメルヘン!!!!!!!!!!!!!!!!」
アレ『あまり怒鳴らないでくれ。耳が痛い』
心理「煩いわよ!キモオタのくせに!!!!」
アレ『私はキモオタではない。ゆかちの』
心理「うるさい、うるさい、うるさーい!!!」
アレ『え、シャナ?』
心理「………っ」
アレ『?』
心理「ふっ……ひっく、ふぇ…う、ぅ……」
アレ『……』
心理「れ、れんらくも、ひっく…無くて、どれだけ、心配したと…ぐしゅっ……」
アレ『泣きたい気持ちは分かるが泣いている場合じゃない』
心理「なによぉ……」グシュ
アレ『垣根帝督に、ちょっかいを出してみないか?』
心理「へ?」
アレ『彼は今、怒ることができない。煮るなり焼くなり好きにしたらいい』
心理「…………」
アレ『気が済むまでなじってやるのがいいだろう。じゃあな』
心理「…………」
心理「…………」
359: 2011/08/22(月) 01:53:37.10 ID:/wfrVaSz0
―――――――――――――――――――――――――――――
心理「ということがあったの」
垣根「へー」
心理「学園都市を変える、だなんて馬鹿馬鹿しい。あなたなんて冷蔵庫になれば良かったのよクソ野郎」
垣根「そんなに怒ることか?」
垣根「あ、いたいいたいいたいごめん、ごめんなさい」
心理「サイッテーよ、あんた」
垣根「そうでもないだろ」
心理「…………私は、てっきり、チャイルドエラーのことを」
垣根「はぁ?そんなもん助けたいヤツがやりゃいいだろ」
垣根「いたいいたいいたいたいいたたたたごめんね、ごめんってば」
心理「学園都市よりあなたの思考回路の方が腐ってるわよ。ばか」
垣根「はぁ……アレイスターの野郎、余計なことしやがって」
心理「余計なことしたのはあなたでしょ。声優に会いに行くだなんて、本当にアホよ。ばか。私の時間をかえせクズ」
垣根「おい、口が悪いぞ」
心理「でも、さっきのでスッキリしたわ。一応許してあげる」
垣根「ありがたい」
心理「思ってもないことを……」
垣根「俺を殴りに来ただけならもう用済みだろ?出てけ、俺はアイマスやんだよ」
心理「……はぁ」
垣根「なんだよ?」
心理「少しでも期待した、私が馬鹿だったわ」
垣根「何も言わなかったのは悪かったな」
心理「撫でたって機嫌は直らないわよ。もう、子どもじゃないんだから」
心理「ということがあったの」
垣根「へー」
心理「学園都市を変える、だなんて馬鹿馬鹿しい。あなたなんて冷蔵庫になれば良かったのよクソ野郎」
垣根「そんなに怒ることか?」
垣根「あ、いたいいたいいたいごめん、ごめんなさい」
心理「サイッテーよ、あんた」
垣根「そうでもないだろ」
心理「…………私は、てっきり、チャイルドエラーのことを」
垣根「はぁ?そんなもん助けたいヤツがやりゃいいだろ」
垣根「いたいいたいいたいたいいたたたたごめんね、ごめんってば」
心理「学園都市よりあなたの思考回路の方が腐ってるわよ。ばか」
垣根「はぁ……アレイスターの野郎、余計なことしやがって」
心理「余計なことしたのはあなたでしょ。声優に会いに行くだなんて、本当にアホよ。ばか。私の時間をかえせクズ」
垣根「おい、口が悪いぞ」
心理「でも、さっきのでスッキリしたわ。一応許してあげる」
垣根「ありがたい」
心理「思ってもないことを……」
垣根「俺を殴りに来ただけならもう用済みだろ?出てけ、俺はアイマスやんだよ」
心理「……はぁ」
垣根「なんだよ?」
心理「少しでも期待した、私が馬鹿だったわ」
垣根「何も言わなかったのは悪かったな」
心理「撫でたって機嫌は直らないわよ。もう、子どもじゃないんだから」
360: 2011/08/22(月) 01:56:28.54 ID:/wfrVaSz0
垣根「…………」
心理「何よ」
垣根「お前が、チャイルドエラーなんて言葉を使うとは思わなくて」
心理「……」
“チャイルドエラー”
学園都市における社会現象の一つだ。
学園都市では原則的に入学した生徒は都市内に住居を持たなければならない。
その制度を利用し、入学費のみ払って子供を寮に入れて、その後に行方を眩ます行為のことだ。
もちろん捨てられた子どもを保護する制度はあるが、
それを逆手にチャイルドエラーに非人道的な行為をする研究チームもある。
心理「法に触れるような実験を黙認してる学園都市に殴り込み
でもするのかな?とか思ったけど、あなたがそんなことするわけないわよね」
垣根「よく分かってんじゃねぇか」
心理「……」
垣根「俺はそこまで、この街が嫌いなわけじゃないからな」
心理「……あなただって、けっこうな実験されたじゃない。よくそんなこと言えるわね」
垣根帝督と心理定規もチャイルドエラーだ。
垣根は自分がチャイルドエラーであることに対して特に何も思っていない。
家族の記憶なんてあまり無いし、今では学園都市で好き勝手しているので不満なんか何もないのだ。
しかし、心理定規は違う。
彼女は家族との記憶がはっきりとある。
そのせいか自分が捨てられたという事実はあまりにもショックだった。
そのうえ酷い実験にも関わったり、哀れな目で見られたり、
家族に愛情を注がれながらぬくぬくと育っているやつらに同情されたりした。
たくさん嫌な思いをし、チャイルドエラーであることが嫌になって、チャイルドエラーという言葉さえも嫌いになった。
心理「…………」
垣根「つーか学園都市の外だって、親に捨てられる子どもなんざ腐るほど居るぜ?」
心理「……そうね」
垣根「俺達は捨てられたのがたまたま学園都市だっただけだ」
心理「……」
361: 2011/08/22(月) 01:59:44.28 ID:/wfrVaSz0
垣根「もしかしたら公衆便所で生み捨てられてたかもしれねぇんだぜ?
それを考えればチャイルドエラーの方がマシだろ」
心理「まぁ、そうかもしれないけど」
垣根「むしろ学園都市に捨てられてラッキーだと思わないか?
反吐が出るような実験はたくさんあったが、そのお陰で力と財力と地位を手にできたしな」
心理「あなたって、ポジティブよね。もしかしたら氏んでたかもしれないのよ?」
垣根「実際、氏んでないからいいだろ」
心理「はぁ……」
垣根は結果オーライってやつだ、と薄い笑みを浮かべて言った。
この男はおかしい。
心理定規よりも過酷な実験に付き合わされていたというのに、何で笑えるのだろうか?
垣根「それにチャイルドエラーに対する非人道的な実験をやめさせたって、捨てる親がいりゃ問題は解決しねぇよ」
心理「そうよね……」
垣根「俺は実験に狂ってガキの脳みそ弄くるアホな学者より、
恋愛に狂ってガキ作って捨てるアホな大人の方がよっぽど残酷だと思うぜ?」
心理「…………」
それに関しては心理定規も同意だった。
生命活動が停止しそうな実験をされた時や、血を撒き散らしながら
氏んだ同じ施設の子を見た時は衝撃のあまり気を失ったことがある。
それでも、両親に捨てられた事実の方がずっと、ずっと、ショックだった。
心理(……だって、ここに来る時は、)
少しでも昔のことを思い出すと、学園都市に来る時に両親と一緒に車に乗ってきたことも、自動的に思いだしてしまう。
車内で自分に向ける笑顔はいつも通りで、捨てられる気配なんて少しもなかった。
何年経っても、あの笑顔だけは一生忘れないだろう。
362: 2011/08/22(月) 02:01:48.21 ID:/wfrVaSz0
垣根「どうかしたか?」
ずっと俯いている彼女に声をかけた。
心理定規はチャイルドエラーの話をすると決まって俯いてしまうのだ。
だったらこんな話題を口にしなきゃいいのに、と垣根は思う。
心理「気分、悪くなっちゃって」
垣根「だから施設に居た時のことは忘れろって言ってるだろ?」
肩に寄り掛る心理定規の頭を柔らかく撫でた。
彼女の元気がないと頭を撫でてしまうのは幼い頃からのクセだ。
このクセは直したいのだけれど、なかなか直ってくれない。
垣根が手をどかすと、心理定規が顔をあげる。
その顔には少し笑みが浮かんでいた。
ようやく機嫌が直ったようで垣根はホッとする。
そして心理定規は、意地悪そうな笑顔になり、ゆっくりと口を動かした。
心理「忘れられないわよ。あなたが職員にイタズラしたら、すっごく怒られて涙目になってたのは一生忘れないわ」
垣根「忘れろって言ってんだろ!!」
心理「えー?無理よ。だってあの時のあなたってすっごく可愛かったもの」
垣根「……クソ女」
心理「はいはい」
363: 2011/08/22(月) 02:03:21.12 ID:/wfrVaSz0
垣根「……」
心理「何よその顔」
垣根「お前、昔は可愛かったよな。俺のこと」
心理「あー!!!!あー!!!!!止めて!!!!!!!!!!!!聞こえないわ!!!!」
垣根「お」
心理「止めてって言ってるでしょ!!ばか!!!!」
垣根「仕方ない。言わねぇでやるよ」
心理「……もういいわ。疲れたから帰る。あなたシャワー浴びたら?コーヒー臭いわよ?」
垣根「テメェのせいだろ尻軽女」
心理「煩いわよキモオタ。さっさとブチ切れて一生、学園都市に飼い頃しにされるといいわ」
垣根「ねーよ。一週間堪え切って絶対外に出てやる。外に出れたらお前の親でも探して来てやろうか?」
心理「…………」
垣根「……わりぃ、今のは意地が悪すぎた」
心理定規がまた俯いてしまったので、垣根は少しだけ焦る。
頭に手を置こうとすると、彼女が頭を上げて笑いだした。
心理「ふふふ。……俯くと泣いてるんじゃないかって焦るのは昔から変わらないわね」
垣根「うせるぇよ……」
364: 2011/08/22(月) 02:06:30.35 ID:/wfrVaSz0
心理「あの頃のあなたは声オタなんかじゃなくて、活発で可愛い男の子だったわよね」
垣根「あの頃のお前はビXチじゃなくて、清楚で可愛い女の子だったよな」
心理「……」
垣根「……」
二人はしばらく睨み合った後に、笑い合った。
そして心理定規は垣根の頬を抓りながら
“せいぜい頑張るのね。努力が無駄になることを願ってるわ”と言って、家から出て行った。
垣根は頬をさすりながらシャワーを浴びる準備を始めた。
そういえば、心理定規のあんなに怒った顔を見たのは彼女を置いて施設を脱走したとき以来だ。
あの時は実験が嫌になって一人で抜け出したのだけれど、あっさり捕まってしまった。
施設に戻って来た垣根に“置いて行くなんてひどいよ”と、彼女は泣きながら怒ったのだ。
そしてどこかに行くは一緒に連れて行く、と指きりをした。
垣根(だからって暗部にまで着いて来なくて良かったのによ…)
施設に居た頃の二人は、仲が良くて行動を共にすることが多かった。
垣根の後ろを一生懸命に着いてくる少女は、妹みたいでとても可愛かった。
実際、心理定規は垣根のことを兄ように慕い“お兄ちゃん”と呼んでいた。
初めて呼ばれた時はくすぐったい気持ちになったけれど、家族が出来たみたいで本当に嬉しかった。
垣根(それが今じゃキモオタ呼ばわりだ。しかもケバい尻軽ビXチになりやがって。成長ってのは残酷だな)
昔のことを少しだけ思い出しながら、浴室に向かう。
シャワーを浴びたらすぐにアイマスをやらなくては。
買い物したい気持ちもあったが、外出して嫌なヤツに遭遇するのは危険だ。
垣根(今日から一週間、温厚に過ごさないとな。カルシウムでも多めに取るか……)
シャワーから出たあと、垣根はアイマスに没頭した。
今日はもう誰にも会いたくないし、このゲームをさっさとクリアして一方通行に返さなければ。
垣根(明日はどうするかな……)
一週間はまだ始まったばかりだ。
一日目は怒らないで済んだが、キレかけてしまった。
まだ一日目だというのにとんだ失態だ。これでは先が思いやられる。
せっかくのチャンスを潰すわけにはいかない。
まぁ、とにかく今はプロデュースに没頭しよう。
明日のことは明日になったら考えればいい。
そう思いながら垣根は画面に集中する。
画面の中では金髪の少女が、笑顔で元気に唄っていた。
365: 2011/08/22(月) 02:10:00.08 ID:/wfrVaSz0
―――――――――――――――――――――――――――――――――
垣根のマンションを後にした心理定規は足早に自分の家に向かっていた。
声優に会うための計画に付き合わせれていたなんて、腹立たしくてムカムカする。
心理(ケロッとしてるのがムカついたわね。人がどれだけ心配したと思ってるのよ)
心理(…………でも、)
垣根にキズ一つないことが分かった時は、泣きそうになるくらい安心した。
向こうが自分のことをどう思っているかは分からないけれど、心理定規は垣根のことを、勝手に家族みたいなものだと思っている。
施設でも、研究の時でも、捨てられたと気付いて泣いた時も、隣にはいつも彼が居た。
心細くてたまらなかった心理定規に、手を差し伸べてくれたのは彼だ。
優しくて強い彼は、まるで兄のようだった。
いつからか心理定規は垣根のことをお兄ちゃんと呼ぶようになり、二人は本当の兄妹みたいに仲良くなった。
喧嘩することは少なくなかったけれど、今も一緒に居ることを考えると相性は悪くないのだろう。
今は気持ち悪い声オタだ。
でもピンチな時も、不安な時も、泣きそうな時も、垣根が居てくれれば何とかなると思える。
笑顔を見ればこっちまで元気になれるし、頭を撫でられれば心が安らぐ。
成長しても心理定規にとって垣根は頼りになるお兄ちゃんなのだ。
心理「…………」
そういえば、彼のことをお兄ちゃんと呼ばなくなったのはいつからだっただろうか。
心理定規の記憶が正しければ、暗部に在籍した時くらいからだったと思う。
殺伐とした世界で、いつまでも彼に甘えている訳にはいかず、妹面するのを止めたのだ。
心理定規が垣根のことを“あの人”とか“あなた”と呼び始めたとき、彼は“何か怒ってる?”とか言って焦っていた。
その時に、垣根はお兄ちゃんと呼ばれるのが嫌ではなかったのだと気付き、とっても嬉しかった。
嫌なことだらけの幼少期だったけれど、垣根とのことだけは良い思い出だ。
ウザくて気持ち悪くて大嫌いだと思うこともあるけれど、他人だらけの学園都市で、彼は唯一の家族なのだ。
そんなこと本人には絶対言えないけれど。
心理(ムカついたけど、無事だったから許してあげるか……)
垣根のマンションを後にした心理定規は足早に自分の家に向かっていた。
声優に会うための計画に付き合わせれていたなんて、腹立たしくてムカムカする。
心理(ケロッとしてるのがムカついたわね。人がどれだけ心配したと思ってるのよ)
心理(…………でも、)
垣根にキズ一つないことが分かった時は、泣きそうになるくらい安心した。
向こうが自分のことをどう思っているかは分からないけれど、心理定規は垣根のことを、勝手に家族みたいなものだと思っている。
施設でも、研究の時でも、捨てられたと気付いて泣いた時も、隣にはいつも彼が居た。
心細くてたまらなかった心理定規に、手を差し伸べてくれたのは彼だ。
優しくて強い彼は、まるで兄のようだった。
いつからか心理定規は垣根のことをお兄ちゃんと呼ぶようになり、二人は本当の兄妹みたいに仲良くなった。
喧嘩することは少なくなかったけれど、今も一緒に居ることを考えると相性は悪くないのだろう。
今は気持ち悪い声オタだ。
でもピンチな時も、不安な時も、泣きそうな時も、垣根が居てくれれば何とかなると思える。
笑顔を見ればこっちまで元気になれるし、頭を撫でられれば心が安らぐ。
成長しても心理定規にとって垣根は頼りになるお兄ちゃんなのだ。
心理「…………」
そういえば、彼のことをお兄ちゃんと呼ばなくなったのはいつからだっただろうか。
心理定規の記憶が正しければ、暗部に在籍した時くらいからだったと思う。
殺伐とした世界で、いつまでも彼に甘えている訳にはいかず、妹面するのを止めたのだ。
心理定規が垣根のことを“あの人”とか“あなた”と呼び始めたとき、彼は“何か怒ってる?”とか言って焦っていた。
その時に、垣根はお兄ちゃんと呼ばれるのが嫌ではなかったのだと気付き、とっても嬉しかった。
嫌なことだらけの幼少期だったけれど、垣根とのことだけは良い思い出だ。
ウザくて気持ち悪くて大嫌いだと思うこともあるけれど、他人だらけの学園都市で、彼は唯一の家族なのだ。
そんなこと本人には絶対言えないけれど。
心理(ムカついたけど、無事だったから許してあげるか……)
386: 2011/09/22(木) 01:25:30.46 ID:fzhKxt3x0
一人の少女をトップアイドルへと導いた垣根は、暇を持て余していた。
家に籠っていても仕方ないので、とある友人の所へと来ていた。
垣根「なぁなぁ、何の実験してんの?面白い?」
博士「特に実験はしていない。私の出題した問題を部下が解いて来たから答え合わせをしているだけだよ」
垣根は博士に電話で居場所を聞き出し、無理矢理訪ねたのだ。
しかし構ってはくれず、何束もある紙に熱心に目を通している。
楽しそうに眼を細める博士を見つめて垣根はぼんやりとしていた。
博士「垣根少年は同世代の友達が居ないのだな?若者風に言えば、ぼっちというやつだ」
垣根「ちげぇよ!」
垣根は博士の言葉を必氏に否定する。
学校になんか行ってないので友達は多いほうではない。
でも、ぼっちではない。
ぼっちではないのだ。
……たぶん。
博士「それにしても外出の許可が降りない理由が短気だからとは」
垣根「俺もビックリした」
博士「ふむ。ならば私もアレイスターに抗議してみるか」
垣根「博士が?」
そういえば彼は何故、学園都市から出ることが出来ないのだろう。
攻撃的な面もあるが、知的でゆったりとした雰囲気の彼が自分と同じ理由で許可が降りないとは思えない。
垣根が疑問を浮かべると、それを見透かしたように博士が口を開く。
博士「外出ができない理由は君と同じだと思う」
垣根「え」
博士「こう見えても私は短気なのだよ」
垣根「マジで?」
博士「マジだ」
家に籠っていても仕方ないので、とある友人の所へと来ていた。
垣根「なぁなぁ、何の実験してんの?面白い?」
博士「特に実験はしていない。私の出題した問題を部下が解いて来たから答え合わせをしているだけだよ」
垣根は博士に電話で居場所を聞き出し、無理矢理訪ねたのだ。
しかし構ってはくれず、何束もある紙に熱心に目を通している。
楽しそうに眼を細める博士を見つめて垣根はぼんやりとしていた。
博士「垣根少年は同世代の友達が居ないのだな?若者風に言えば、ぼっちというやつだ」
垣根「ちげぇよ!」
垣根は博士の言葉を必氏に否定する。
学校になんか行ってないので友達は多いほうではない。
でも、ぼっちではない。
ぼっちではないのだ。
……たぶん。
博士「それにしても外出の許可が降りない理由が短気だからとは」
垣根「俺もビックリした」
博士「ふむ。ならば私もアレイスターに抗議してみるか」
垣根「博士が?」
そういえば彼は何故、学園都市から出ることが出来ないのだろう。
攻撃的な面もあるが、知的でゆったりとした雰囲気の彼が自分と同じ理由で許可が降りないとは思えない。
垣根が疑問を浮かべると、それを見透かしたように博士が口を開く。
博士「外出ができない理由は君と同じだと思う」
垣根「え」
博士「こう見えても私は短気なのだよ」
垣根「マジで?」
博士「マジだ」
387: 2011/09/22(木) 01:26:42.44 ID:fzhKxt3x0
そう言って博士は少し前の話をした。
愛生ちゃんがけいおん!で有名になってから、部下の中でファンが増えたそうだ。
しかし、それと比例するようにアンチも増えた。
それからファンとアンチの争いが毎日のように研究室で行われた。
最初は博士の居ない所で行われていたけれど、争いがどんどん過激になっていき、博士の前でも愛生ちゃんの悪口を言うようになったそうだ。
博士「そして、私はオジギソウでその部下を」
垣根「もういい」
博士「まだ話の途中なんだが?」
垣根「もういいから。分かったから」
博士「それに私は学園都市のことを色々と知ってしまっているからな。外出させたくないのだろう」
垣根「あ……なるほどな」
博士「しかしレベル5でも外出できるのなら私だって出来る筈だ。アレイスターに聞いてみるか」
垣根「外に出れるようになったら、一緒にコンサートとか行きてぇな」
博士「そうだな。豊崎さんがソロコンサートをやる予定はないが、あれだけの人気者だ。そのうちやるに違いない」
垣根「だよな!!!」
博士「オリジナル曲はゆったりとした曲が多いから、サイリウムを振ったりするようなコンサートではないと思うのだよ」
垣根「それは俺も同意だ。歌声をじっくり聴けるような静かなコンサートが愛生ちゃんらしいと思う」
博士「坂本真綾さんのコンサートみたいな雰囲気が理想に近いな」
垣根「あー…真綾はマクロスしか知らねぇや」
博士「あと彼女は人気がある。中途半端なキャパ数でやるとチケットの倍率が高くなるだろう」
垣根「でも、流石に武道館くらいの会場は早いだろうな」
博士「そうだな。しかし、そのうち一人で会場を埋められるようになって欲しいものだな」
垣根「……愛生ちゃんが大きい会場でソロコンサートやったら、泣く自信がある」
博士「私もだよ」
その後も、もし愛生ちゃんがコンサートをやるならどこでどんな感じのコンサートになるかという妄想トークをした。
誰ともそういう話をしたことない垣根はテンションが上がり過ぎて氏にそうだ。
博士に、やはりぼっちだな、と笑われてけれど、怒りは全く沸かなかった。
388: 2011/09/22(木) 01:29:14.90 ID:fzhKxt3x0
垣根「博士のアドバイス通りにメールしても読まれないんだけど」
博士「そればかりは運だ。あのアドバイスはあくまで読まれやすいというだけで、必ずしも読まれる訳ではないからな」
垣根「……運、か」
博士「そういえば、垣根少年」
垣根「ん?」
博士「全然関係のない話になるがいいかな?」
垣根「別に構わねぇよ」
嫌なことを言われても許せるし、愛生ちゃん以外の話もできる。
これが友達ってやつなのか、と思うと少しニヤけてしまう。
会ったばかりだというのにこんなにフレンドリーになれるなんて、不思議だ。
やはり愛生ちゃん好きに悪いひとは居ない。
博士「何をニヤけているんだ垣根少年。気持ち悪いぞ?」
垣根「あ!?ニヤけてねぇよ!いいから話って何だよ」
博士「……最近、眠れないのだよ」
垣根「は?」
博士「寝る直前までパソコンを見ているせいか、なかなか眠れない。翌日辛くてな……。何か策はないかね?」
垣根「俺が眠れない時は愛生ちゃんの曲かけてる。やってみれば?」
博士「……ふむ」
垣根「布団の中で聞く愛生ちゃんの声はすっげぇいいぜ。暖かいし、優しいし、甘いし、何より落ち着く」
博士「豊崎さんの声はいつもそうじゃないか」
垣根「いつもよりそうなるんだよ。試してみろって」
博士「そうだな」
垣根「超お勧め」
博士「……彼女の唄声を子守り歌にするというわけか。それは思い付かなかったな」
垣根「……」
博士「どうかしたか?」
垣根「言われてみれば、確かに子守り歌みたいだと思って」
博士「てっきりそれを意識してやっていたと思ったが、違うのか?」
垣根「……別に」
博士「?」
389: 2011/09/22(木) 01:30:19.78 ID:fzhKxt3x0
垣根「俺も関係ない話していい?」
博士「もちろんだとも」
垣根「ムカつくヤツはどうすればいい?」
博士「処分すればいいのだよ」
垣根「それはちょっと……」
博士「意外だな。垣根少年は気に喰わない人間はすぐに頃してしまうイメージがあったのだが」
垣根「そんなことねぇよ」
博士「よく分からないが関わらなければいいのではないかな?」
垣根「ばったり遭遇したらどうしたらいい?顔見たらブチ切れそうで怖い」
博士「ふむ……。そうだな……」
垣根「そしたら外出は出来なくなる……」
博士「逃げればいいのだよ」
垣根「!」
博士「ただ逃げるだけが嫌なら一方的に暴言でも吐いてやればいいさ。それで即退散すれば良い」
垣根「それでいいか!さすが博士だな!頭いいぜ!」
博士「いや、これくらいで褒められても困る。それにこれは私が若い頃、嫌いな人間にやっていたことをそのまま言っているしな」
垣根「……博士ってけっこうガキなんだな」
博士「ガキでなければ、研究者なんて職業には就けないさ」
垣根「そういうもんか?」
博士「さて、垣根少年。私はこれから別の研究所に行かなければならないのだよ」
垣根「俺来たばっかりだぜ?」
博士「急に来られても困る。次は2日前くらいに連絡をくれると嬉しい」
垣根「分かった」
博士「そうだ。最近、通り魔が出没しているらしい。気をつけるのだな」
垣根「心配してくれるのは嬉しいが、俺を誰だと思ってるんだ?」
博士「いきなり襲われても怒らないように気をつけろ、という意味なのだよ」
垣根「なるほどな……」
390: 2011/09/22(木) 01:32:36.95 ID:fzhKxt3x0
――――――――――――――――――――――――
研究所を出た垣根はあてもなくブラブラしていた。
家に帰ろうと思ったけれど、なんとく帰りたくない。
垣根「……」
博士との会話を思い出して、立ち止まる。
“子守り歌”
施設に唄ってくれる優しい大人など居なかったな、と思う。
あの頃は眠れない夜がいくつもあったけれど、今と違って何もできなかった。
心細い夜も恐怖に震えた夜も布団にまるまって耐えるしかなかった。
心理定規と出会ってからは、自分が唄う側となった。
彼女が初めて過酷な実験を目の当たりにした日の夜、震えながら“眠れないからお歌唄って?”とねだられたのだ。
その時の垣根は意味が分からず、なんで寝るのに歌?馬鹿かこいつ?と思った。
そう、垣根はその時まで子守り歌というものを知らなかった。
垣根(昨日、昔のこと思い出したせいか?ガキの頃のこと考えちまうな)
少しだけセンチメンタルになった気がして苦笑する。
自分らしくない。
過去の自分を哀れに思っても空しいだけだ。
そう思い垣根は思考を切り替える。
垣根(それにしても、愛生ちゃんの子守り歌か……。やべぇな、膝枕されながら聴きてぇな)
妄想にニヤニヤしながら、再び歩き出す。
ガキの頃がなんだ。
今の自分は素敵な女性に会えて、こんなにも幸せな気持ちなのだ。
少しくらい過去が気に喰わなくても、今が楽しいのだからそれでいい。
垣根は目を瞑り彼女の笑顔を思い出した。
どうしようもなく胸がいっぱいになる。
あぁ、早く会いたい。
垣根は足早になる。
早く家に帰って、おかえりラジオを聴いて癒されよう。
彼女が“おかえり”と言ってくれればほっこり出来る。
それだけで十分だ。
研究所を出た垣根はあてもなくブラブラしていた。
家に帰ろうと思ったけれど、なんとく帰りたくない。
垣根「……」
博士との会話を思い出して、立ち止まる。
“子守り歌”
施設に唄ってくれる優しい大人など居なかったな、と思う。
あの頃は眠れない夜がいくつもあったけれど、今と違って何もできなかった。
心細い夜も恐怖に震えた夜も布団にまるまって耐えるしかなかった。
心理定規と出会ってからは、自分が唄う側となった。
彼女が初めて過酷な実験を目の当たりにした日の夜、震えながら“眠れないからお歌唄って?”とねだられたのだ。
その時の垣根は意味が分からず、なんで寝るのに歌?馬鹿かこいつ?と思った。
そう、垣根はその時まで子守り歌というものを知らなかった。
垣根(昨日、昔のこと思い出したせいか?ガキの頃のこと考えちまうな)
少しだけセンチメンタルになった気がして苦笑する。
自分らしくない。
過去の自分を哀れに思っても空しいだけだ。
そう思い垣根は思考を切り替える。
垣根(それにしても、愛生ちゃんの子守り歌か……。やべぇな、膝枕されながら聴きてぇな)
妄想にニヤニヤしながら、再び歩き出す。
ガキの頃がなんだ。
今の自分は素敵な女性に会えて、こんなにも幸せな気持ちなのだ。
少しくらい過去が気に喰わなくても、今が楽しいのだからそれでいい。
垣根は目を瞑り彼女の笑顔を思い出した。
どうしようもなく胸がいっぱいになる。
あぁ、早く会いたい。
垣根は足早になる。
早く家に帰って、おかえりラジオを聴いて癒されよう。
彼女が“おかえり”と言ってくれればほっこり出来る。
それだけで十分だ。
391: 2011/09/22(木) 01:34:13.27 ID:fzhKxt3x0
「あ」
沈んだ気持ちが、元通りになった所で不意に声がした。
その声は、飴玉を転がしたような甘い声で、垣根が愛する彼女に似ていた。
良い声なので“あ”だけでも素晴らしいと思っていたけれど、学園都市でこんな声の持ち主は垣根の知る限りでは一人だけだ。
垣根は眉間に皺を寄せた。
初春「えっと……こんにちは……」
ぺこり、と初春が頭を下げる。
花飾りが揺れた。
控え目にお辞儀する彼女は小動物のようで可愛らしい。
気まずそうに上目遣いで垣根を見上げる。
揺れる大きい瞳は、吸い込まれそうなくらいに愛らしさが宿っていた。
しかし垣根はそんなことはどうでもいい。
今すぐこの場を離れたいという気持ちでいっぱいだ。
初春(えっと……とにかく、その)
初春は謝罪の言葉を口にしようとする。
しかしなかなか出て来ない。
モジモジする少女とそれを見つめる少年。
傍からみれば告白の現場に見えるのだけれど、実際は全然違う。
垣根(クソが……やっぱり声だけはいいな。声だけは)
初春(やっぱり、顔はいいなぁ。顔は。一言も喋らないから完璧ですね)
垣根(つーか何でこいつ俺の前で立ち止まってんだよ。花でも見せびらかしてんのか?邪魔なんだよクソボケ)
垣根の顔を見ると、こないだのことが思い出される。
店でくだらないオタク話を大声話したり、短気だったり、この顔の持ち主に相応しくない。
そう思うとなんだか、謝りたくないなぁと思ってしまう。
いやいや、あれだけ失礼なこと言ったのだ。頭を下げるのは当然だろう。
初春がごちゃごちゃ考えていると、垣根が不意に口を開いた。
垣根「その頭の花って、思考がはみ出てるの?」
初春「は?」
392: 2011/09/22(木) 01:36:51.28 ID:fzhKxt3x0
垣根「人の顔がどうのこうの言ってるけどよテメェはどうなんだよクソガキ」
初春「へ?」
垣根「お前はその声の持ち主として相応しくねぇんだよ」
初春「え」
垣根「謝れ」
初春「?」
垣根「お前の“声”に謝れよ。こんなクソみたいな人間ですいませんってな」
初春「へ……」
垣根「あぁ、でもお花畑は人語が喋れねぇから無理か。たった6文字の言葉でも言えないよな?悪趣味フラワー花瓶スイーツちゃん」
初春「……」
垣根「間抜け面だな。ブッサイクだぜペチャパイまな板ガリガリ女」
そう言うと垣根は全速力で走りだした。
垣根の背中をボーっと見ながら、言われた言葉の意味を考える。
ようやく初春は自分が馬鹿にされたと気付いて、垣根を追いかけ始めた。
垣根「うわぁーwwww足おっせぇwwwwそれでも風紀委員かよwww」
初春「はぁっ…はっ…うるっさい…です…よっ!」
垣根「汗ダラダラで顔が真っ赤で酷い顔がさらに酷い顔になってるぜ」
初春「うぐっ…!」
垣根「大股で走るとパンツ見えるぞ?まぁテメェの染みつきパンツなんて誰も見たくねぇけど」
初春「ついてないです!!!!」
街中で追いかけっこしてる二人は注目の的だった。
しかし二人は通行人の視線など気にせずに走り続けた。
393: 2011/09/22(木) 01:37:50.06 ID:fzhKxt3x0
垣根は愉快でたまらなかった。
気に喰わない人間が、悔しそうな顔で涙目になっているのを見るのは最高に気分が良い。
垣根がニヤニヤしながら顔を向けると、初春はさらに悔しそうな顔になった。
あれだけ人を不愉快な気持ちにしたのだ。
これくらいはされても文句は言えないだろう。
垣根(博士に相談して良かった。あれだけ嫌な気持ちだったのか晴れやかな気分だ…)
その時、細い足が垣根の進路を妨害した。
不意に出せれた足に気付くことができずに、垣根は盛大にずっこけた。
垣根「!!!!」
何に躓いたか分からず垣根は混乱する。
起き上がろうと、手を地面に着くと、背中に重みを感じた。
垣根「ぐっ……」
呻く垣根に冷やかな声が降りかかる。
その声はともて聞きなれた声だった。
心理「あなた、何やってるの?」
垣根「テメェかよ。どけビXチ」
心理「大声で女子中学生を罵りながら逃げるなんて、とてもじゃないけど第2位のやることじゃないわ」
垣根「俺は2位である前に垣根帝督というピュアな少年なんだよ」
心理「キモッ……」
数分経つと、初春が垣根に追いついた。
大きい口で酸素を取り込みながらその場にへたりとしゃがみ込む。
鞄からタオルを取り出すと、真っ赤な顔にあてて汗を拭い始めた。
心理「平気?顔、真っ赤よ?」
初春「へ、平気れす……」
394: 2011/09/22(木) 01:38:59.74 ID:fzhKxt3x0
初春は苦しさのあまり回らない呂律で一生懸命に言葉をつむぐ。
ドレスを着た小柄な少女は、手に持っていた有名ブランドのバックから冷たい飲み物を出すと初春の頬に押し付けた。
初春「ひゃっ!」
心理「それあげるわ。水分補給は大事よ」
初春「は、はい……」
垣根「どけよ。重いぞデブ」
心理定規は垣根のふくらはぎにヒールをつき立てた。
下に居る垣根はあだだだだだとか言いながら悶絶している。
その姿を見て初春は少しだけ気分が晴れた。
心理「まったく、失礼な人ね。この女の子にも失礼なことしたんでしょ?」
垣根「はぁ!?ちげーよ!!!!」
初春「あ……あの……」
心理「あ、息が話すのは整ってからでいいわ」
心理定規は可愛らしく初春に笑って見せた。
下に居る垣根は、猫被ってんじゃねぇぞクソ女と言ってまた踏まれていた。
華奢で色気のある少女は、垣根と親しいようだ。
もしかしたら、カップルなのかもしれない。
美男美女でお似合だなぁ、と思ったれど、こんな可愛い女の子にオタクの男は釣り合わないだろう。
顔だけなら釣り合うのだけれど。
少しして、初春の息が整い、汗も引いた。
それを確認した心理定規は垣根からどくと二人を近くのベンチにまで連れて行った。
心理「何してたの?」
初春「え、えっと…」
垣根「あー早く帰りてぇ」
垣根「いたたたた。足踏むな」
心理「で、何しての?こんな非力な女の子相手に」
垣根「仕返し」
心理「え?」
395: 2011/09/22(木) 01:39:51.85 ID:fzhKxt3x0
垣根「こいつ、大人しそうな顔してとんでもねぇ女だぜ?何もしてない人間を平気で罵倒するんだからな」
初春「……うぅ」
心理「あなたが罵倒されたの?」
垣根「おう」
心理「ふーん。でも仕方ないでしょ。だってあなたってすっごく気持ち悪いもの」
垣根「あ?」イラッ
心理「あら?怒っちゃうの?」
垣根「イイエゼンゼンオコッテナイデスヨ」
心理「そう」
初春「あ、あの、あなたは一体……」
心理「私?」
初春「はい」
心理「この人の知り合いよ。ごめんね、この人ってちょっと頭おかしいから」
垣根「テメェはクソ花の味方すんのかよ」
心理「あら?私欲のために組織を使ったお馬鹿さんは誰だったかしら?私まだ怒ってるんだからね」
垣根「…………」
心理「とにかくごめんなさい。お詫びはそのジュースでいいかしら?」
初春「へ!?く、くれるんですか」
396: 2011/09/22(木) 01:40:49.98 ID:fzhKxt3x0
心理「もちろんよ」
初春「ありがとうございます!」
垣根「たったジュース一本で機嫌直るなんてやっぱりバカだなアホガキ」
初春「そのアホガキに必氏になって、仕返しなんてした垣根さんも同じくらいガキですね」
垣根「必氏になんかなってねぇよ。思ったことをそのまま言っただけだよ芋女」
初春「私だって思ったことをそのまま言っただけですよウドの大木」
垣根「口の減らねぇガキだな。だから声以外の長所がねぇんだよカス」
初春「意味分からないこと言うから顔以外の長所がないんですよキモオタ」
垣根「その声でキモオタって言うなよ悪趣味花瓶」
初春「……垣根さん、あそこ花壇にある花の花言葉って知ってます」
垣根「パンジーか?確か思慮深いじゃなかったか?」
初春「違いますよ。パンジーの花言葉は、この野郎すっごくムカつく、ですよ」
垣根「そんな変な花言葉があるわけねぇだろ。頭わりぃんじゃねぇの?」
初春「すいません。ガキですから頭悪いんですよ」
垣根「開き直るなクズ」
初春「うるさいですよばか」
垣根「……チビ」
初春「……あほ」
心理「……っ」
垣根「?」
初春「?」
心理「あっはっはっは!」
初春「ど、どうしたんですか?」
心理「あなた達おかしいわね!……二人とも小学生みたい、あは、ははは!」
垣根「は?」
397: 2011/09/22(木) 01:41:53.72 ID:fzhKxt3x0
心理「仲が良いのか悪いのか分からないわ」
垣根「悪いに決まってんだろ!」
初春「悪いですよ!」
心理「でも相性はいいんじゃないかしら?」
垣根「冗談でもそんな気色悪いことは言うな」
初春「そうですよ。止めて下さい。こんなオタクと相性がいいだなんて最悪です」
垣根「あ?」
初春「最悪です。垣根さんと相性が良いなんて言われるなんて最悪すぎて泣きそうです」
垣根「オマエって、本当に、」ピキピキ
心理「あれ?怒るの?」
垣根「……帰る」
心理「そう。じゃあね」
垣根(早く帰って愛生ちゃんの声聞いて癒されよう……。アホ共のせいで心が荒んだぞクソ)イライラ
初春「あ、あの、垣根さん」
垣根「あ?」
初春「えっと、その、」
垣根「わりぃな。妖怪造花女と話すことはねぇんだよ。じゃあな」
初春「な!よ、ようかい!?」
心理「悪口が小3レベルね。帰るなら早く帰りなさいよ」
垣根「うるせぇな。テメェも暗くならねぇうちに帰れよ尺取りビXチ」
心理「はいはい。分かってるわよ声オタ羽毛」
398: 2011/09/22(木) 01:42:44.77 ID:fzhKxt3x0
――――――――――――――――――――――――
帰宅した垣根は、ベッドに転がった。
イライラする。イライラして氏にそうだ。
身近に居る女は、揃いも揃ってカスばかりだ。
やっぱり、俺には愛生ちゃんしか居ない。
心を鎮めようとして、録音していたおかえりラジオをかける。
ほっこりトークは垣根の荒んだ心を、暖かく包み癒してくれた。
垣根「……はぁ」
ラジオでは、“さけのんというリスナーの、部下に優しくするコツを教えて下さい”
とかいうメールに対して愛生ちゃんが丁寧にアドバイスしていた。
やっぱり彼女は天使だなぁ、と実感する。
垣根(……ムカつくけど、でも、)
彼女に会う為だ。
愛生ちゃんに会うためなら、怒らない自信はそこそこあった。
けれど、あの声だけ天使のクソ花畑に会うとイライラして仕方がない。
垣根(むしろ、一週間家に籠ってるか?いや、アレイスターのことだ。そんなことしたら無効にされるに決まってる)
残りの予定をどうするか考える。
一方通行もぼっちだろうし、彼を誘ってどこかに遊びに行くのはいいかもしれない。
でも“遊ぶ暇があるならアイマスやれよォ”とか言ってきそうなので、連絡するのは止めた。
垣根「……やべぇな、俺ってマジで友達居ないかも」
帰宅した垣根は、ベッドに転がった。
イライラする。イライラして氏にそうだ。
身近に居る女は、揃いも揃ってカスばかりだ。
やっぱり、俺には愛生ちゃんしか居ない。
心を鎮めようとして、録音していたおかえりラジオをかける。
ほっこりトークは垣根の荒んだ心を、暖かく包み癒してくれた。
垣根「……はぁ」
ラジオでは、“さけのんというリスナーの、部下に優しくするコツを教えて下さい”
とかいうメールに対して愛生ちゃんが丁寧にアドバイスしていた。
やっぱり彼女は天使だなぁ、と実感する。
垣根(……ムカつくけど、でも、)
彼女に会う為だ。
愛生ちゃんに会うためなら、怒らない自信はそこそこあった。
けれど、あの声だけ天使のクソ花畑に会うとイライラして仕方がない。
垣根(むしろ、一週間家に籠ってるか?いや、アレイスターのことだ。そんなことしたら無効にされるに決まってる)
残りの予定をどうするか考える。
一方通行もぼっちだろうし、彼を誘ってどこかに遊びに行くのはいいかもしれない。
でも“遊ぶ暇があるならアイマスやれよォ”とか言ってきそうなので、連絡するのは止めた。
垣根「……やべぇな、俺ってマジで友達居ないかも」
399: 2011/09/22(木) 01:43:29.38 ID:fzhKxt3x0
―――――――――――――――――――――――――――――――――
垣根が去ったあと、二人の少女は談笑していた。
垣根のことを“気持ち悪いオタク”と呼ぶ初春と気が合いそうだと思った心理定規は、彼女と話してみようと思ったのだ。
すると予想した通り、初春と心理定規はなかなか気が合い、話が盛り上がっていった。
ベンチに座りながら、長時間話したのは初めてだ。
心理「分かるわー。真面目な顔して“うんたんって言ってくれ”なんて普通は引くわよ」
初春「ですよね!でも、やっぱり言いすぎたかなって……」
心理「そんなことないわよ。あの人はそれくらいが合ってるわ」
心理定規は華やかな笑顔で言うけれど、初春はそう思えなかった。
でも本人と対面すると、言葉がつっかえてしまう。
初春(私って駄目だなぁ……)
心理「話すと残念になるって、その通りよね。顔だけが長所なんだから黙ってればいいのよ」
初春「そうですよね!あなたは分かってます!」
心理「昔はあんな気持ち悪い人間じゃなかったんだけどね」
初春「……垣根さんと心理定規さんは、どういう関係なんですか?」
初春の質問に心理定規は言葉を詰まらせた。
一瞬だけ“家族”と答えそうになった自分に気づいて苦笑する。
心理「……仕事仲間よ」
初春「そうなんですか」
心理「それにしてもキモい人種に好かれやすいって災難ね。大人しそうな外見だからかしらね?」
初春「分からないです。でも最近はそうでもないんですよ」
心理「へぇ、良かったわね」
初春「風紀委員の腕章のお陰だと思います」
心理「……風紀委員か」
垣根が去ったあと、二人の少女は談笑していた。
垣根のことを“気持ち悪いオタク”と呼ぶ初春と気が合いそうだと思った心理定規は、彼女と話してみようと思ったのだ。
すると予想した通り、初春と心理定規はなかなか気が合い、話が盛り上がっていった。
ベンチに座りながら、長時間話したのは初めてだ。
心理「分かるわー。真面目な顔して“うんたんって言ってくれ”なんて普通は引くわよ」
初春「ですよね!でも、やっぱり言いすぎたかなって……」
心理「そんなことないわよ。あの人はそれくらいが合ってるわ」
心理定規は華やかな笑顔で言うけれど、初春はそう思えなかった。
でも本人と対面すると、言葉がつっかえてしまう。
初春(私って駄目だなぁ……)
心理「話すと残念になるって、その通りよね。顔だけが長所なんだから黙ってればいいのよ」
初春「そうですよね!あなたは分かってます!」
心理「昔はあんな気持ち悪い人間じゃなかったんだけどね」
初春「……垣根さんと心理定規さんは、どういう関係なんですか?」
初春の質問に心理定規は言葉を詰まらせた。
一瞬だけ“家族”と答えそうになった自分に気づいて苦笑する。
心理「……仕事仲間よ」
初春「そうなんですか」
心理「それにしてもキモい人種に好かれやすいって災難ね。大人しそうな外見だからかしらね?」
初春「分からないです。でも最近はそうでもないんですよ」
心理「へぇ、良かったわね」
初春「風紀委員の腕章のお陰だと思います」
心理「……風紀委員か」
400: 2011/09/22(木) 01:44:21.82 ID:fzhKxt3x0
心理定規は目を細めた。
初春飾利は闇で生きている自分とは正反対の少女だ。
彼女の笑顔は眩しくて、汚れきっている自分は一緒にいていいのだろうか?
初春「どうかしました?」
心理「なんでもないわよ。ごめんね、そろそろ行かなくちゃ」
初春「そうですか。色々ありがとうございました」
心理「別にお礼言われるようなことはしてないわ」
初春「いえ、垣根さんを捕まえてくれましたし、ジュースだってくれたじゃないですか!」
眩しい笑顔で初春が言う。
こんなにも裏表のない笑顔は久しぶりに見た気がする。
心理定規が初春の笑顔に見惚れていると、彼女は自分のポケットから携帯を取り出した。
そして、驚くべき言葉を初春は言った。
初春「せっかくですし、メアド交換しませんか?」
心理「え」
初春「駄目ですか?」
心理「……」
初春「あ、嫌ならいいんですよ!すいません」
心理「……いいわよ。別に」
アドレスを交換したあと“メールしますね”と初春が笑った。
心理定規が“私もしていい?”と問い掛けようとした時、初春の携帯が震えた。
仕方ないので通話する初春を黙って見つめる。
真剣に通話する横顔は風紀委員らしくて、凛としていた。
初春「何ですか?あ、例の通り魔ですか?…え?うちの管轄でも被害が出たんですか!?」
心理(物騒ね……)
初春「分かりました。すぐ行きます!」
通話を終えた初春は頭を下げながら別れの挨拶して駆けだした。
初春が去った後も、心理定規はその場から動けなかった。
アドレス帳を見ると“初春飾利”と刻まれている。
その4文字を見ると、なんだかくすぐったい。
同年代の女の子のアドレスを登録するなんて、かなり久しぶりだ。
心理「……」
心理定規は嬉しさのあまり微笑んでいた。
それは暗部組織に所属している少女のものだとは思えないほどに、幼い笑みだった。
424: 2011/10/12(水) 02:08:41.54 ID:T9EEgjO90
垣根は最悪な気分で目が覚めた。
悪夢を見たのだ。今までの人生の中で一番最悪だと思われる悪夢を。
夢の中で垣根は、動けず正座していた。
そんな垣根に向かって花飾りの少女と心理定規がひたすらキモオタだの声オタだの言う夢だった。
昨日、あんなことがあったせいだ。
イライラして吐き気がする。
気分転換する為に外出することにした。
顔を洗い、身支度を整えてmp3を手にする。
聴く曲はもちろん決まっている。
垣根(あぁ……この声、本当に癒されるぜ……)
甘い歌声に包まれながら、自宅を後にした。
425: 2011/10/12(水) 02:09:28.65 ID:T9EEgjO90
―――――――――――――――――――――――――――
チェーン店で朝ご飯を食べ終えた垣根は、ストレス解消にゲームセンターに来ていた。
苛立ちを格ゲーにぶつけるとそれなりにスッキリすることができた。
垣根(……張り合いのないヤツばっかりだな)
垣根は何回か対人戦をして全勝していた。
一方的にボコボコにするのは気分がいいけれど、何回もやっていると飽きてくる。
それに、さっきから同じプレイヤーが何回も挑んでくるのだ。
垣根(いい加減に懲りろよ……)
ため息をつきながらスティックを操る。
画面の中のキャラクターは垣根の操作通りに動いて相手をKOした。
対戦相手がどんな野郎か確かめようと思った時に、対戦相手側から大きな声聞こえた。
??「あー!また負けた!!強すぎるってわけよ!!!」
聴き覚えのある声だ。
垣根は席を立つと、声の主の方へと歩いて行った。
フレ「ちょっとは自信あったのになぁ……はぁ……」
垣根「コンボ出すのが遅い。負けるのは当たり前だろ」
声の主は垣根の予想通り、アイテムの少女だった。
フレンダは垣根を見ると驚いた顔をした。
しかし、すぐに笑顔になると親しげに挨拶をする。
チェーン店で朝ご飯を食べ終えた垣根は、ストレス解消にゲームセンターに来ていた。
苛立ちを格ゲーにぶつけるとそれなりにスッキリすることができた。
垣根(……張り合いのないヤツばっかりだな)
垣根は何回か対人戦をして全勝していた。
一方的にボコボコにするのは気分がいいけれど、何回もやっていると飽きてくる。
それに、さっきから同じプレイヤーが何回も挑んでくるのだ。
垣根(いい加減に懲りろよ……)
ため息をつきながらスティックを操る。
画面の中のキャラクターは垣根の操作通りに動いて相手をKOした。
対戦相手がどんな野郎か確かめようと思った時に、対戦相手側から大きな声聞こえた。
??「あー!また負けた!!強すぎるってわけよ!!!」
聴き覚えのある声だ。
垣根は席を立つと、声の主の方へと歩いて行った。
フレ「ちょっとは自信あったのになぁ……はぁ……」
垣根「コンボ出すのが遅い。負けるのは当たり前だろ」
声の主は垣根の予想通り、アイテムの少女だった。
フレンダは垣根を見ると驚いた顔をした。
しかし、すぐに笑顔になると親しげに挨拶をする。
426: 2011/10/12(水) 02:10:16.53 ID:T9EEgjO90
フレ「このゲーム上手いんだね」
垣根「お前が弱いんだよ。それにしてもゲーセンに一人とは寂しい女だな」
フレ「一人じゃないし!」
垣根「へー」
フレ「アンタは一人なの?」
垣根「一人だからお前に話しかけてるんだけど」
フレ「ナンパ?」
垣根「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
フレ「意味分からないって訳よー」
フレンダの元気そうな姿を見て垣根はホッとする。
アイテムの問題に自分が干渉するつもりはないけれど、
スクールの隠れ家に居た彼女が裏切り者扱いされる可能性は十分にあった。
裏切り者扱いされたらまず処分されるだろう。
そのような事態にならなくて本当に良かった。
愛生ちゃんの魅力を分かる人間は一人でも多い方がいい。
垣根「あの後どうなったわけ?」
フレ「滝壺が迎えに来てくれたの!それに麦野がスクールを見逃すって言ってたから超驚いたってわけよ!」
垣根「……へぇ」
おかえりラジオのリスナーであり、アイテムの要である少女を思い出す。
アイテムのリーダーのおっかない女を説得したのは彼女だろう。
どうやって説得したかは知らないけれど、滝壺理后がただ者ではないことは確かだ。
垣根「お前が弱いんだよ。それにしてもゲーセンに一人とは寂しい女だな」
フレ「一人じゃないし!」
垣根「へー」
フレ「アンタは一人なの?」
垣根「一人だからお前に話しかけてるんだけど」
フレ「ナンパ?」
垣根「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
フレ「意味分からないって訳よー」
フレンダの元気そうな姿を見て垣根はホッとする。
アイテムの問題に自分が干渉するつもりはないけれど、
スクールの隠れ家に居た彼女が裏切り者扱いされる可能性は十分にあった。
裏切り者扱いされたらまず処分されるだろう。
そのような事態にならなくて本当に良かった。
愛生ちゃんの魅力を分かる人間は一人でも多い方がいい。
垣根「あの後どうなったわけ?」
フレ「滝壺が迎えに来てくれたの!それに麦野がスクールを見逃すって言ってたから超驚いたってわけよ!」
垣根「……へぇ」
おかえりラジオのリスナーであり、アイテムの要である少女を思い出す。
アイテムのリーダーのおっかない女を説得したのは彼女だろう。
どうやって説得したかは知らないけれど、滝壺理后がただ者ではないことは確かだ。
427: 2011/10/12(水) 02:11:26.24 ID:T9EEgjO90
フレ「私はスクールに人質にされたって嘘吐いたわけよ」
垣根「お前にその価値があると思えないけど」
フレ「私もそう思うけどね。でもお咎め無しだったから良いって訳よ!」
垣根「良かったな」
フレ「それに、麦野も絹旗も無事だったし。手加減してくれてたんだね」
垣根「…………」
フレ「二人を殺さなかった理由は分からないけど、それには感謝してるって訳よ。ありがとう」
フレンダは笑いながら頭を下げる。
殺さなかったけれど、あの二人に暴力を加えたことは事実だ。感謝される筋合いはない。
でも人から感謝されるのは悪い気分ではなかった。
フレ「でもね、あの二人けっこう怒ってるみたい」
垣根「まぁ、そうだろうな。俺なんかと話してる所を見られたらヤバいんじゃねぇの?」
フレ「平気だよ。だって買い物してるから、今は居な―――」
フレンダが言いかけると垣根に向かって自動販売機が飛んできた。
ゲーセン内に居た客は、叫びながら店を飛び出して行った。
フレ「……ヤバ」
フレンダの顔が真っ青になる。
飛んできた自動販売機を防いだ垣根は、出入り口に居る小柄な少女に目を向けた。
少女は殺意の籠った目で睨みつけてくる。
絹旗「フレンダから超離れて下さいゲス野郎」
428: 2011/10/12(水) 02:12:26.66 ID:T9EEgjO90
垣根を睨みつけたまま絹旗が言う。
フレンダはますます真っ青になって硬直していた。
それはそうだろう。
スクールのリーダーと仲良くお喋りしている所を目撃されたら、裏切り者として処分されるに違いないからだ。
垣根はフレンダに“大丈夫だ”と小声で言うと、店の奥へと逃げて行った。
フレ「…………」
フレンダが茫然としていると、絹旗が小走りで駆け寄って来た。
背中をさすりながら“超大丈夫ですか?”と心配そうに言ってくる。
フレ「平気だよ。でも、こんな騒ぎ起こしたら麦野に怒られるんじゃないの?」
絹旗「麦野は未元物質を超追っています」
フレ「え……スクールは見逃すって……」
絹旗「超見逃しますよ。スクール、は」
フレ「……」
絹旗「今は向こうもこっちも超プライベートですから、仕返しても上からは何も言われませんよ」
フレ「そう、かもね……」
思ったよりも二人は怒っているようだ。
もし、自分が垣根と仲良く喋っていたことがバレたら、どうなるのだろうと想像して、身震いした。
絹旗「超平気ですか?こんなに震えて……やっぱり超怖かったですよね……」
心配そうな絹旗の顔を見て、フレンダの中に罪悪感が芽生える。
先ほど、垣根に自動販売機を投げたのは、自分のためだ。
垣根に何かされそうになったフレンダを助ける為に行ったことなのだ。
フレ「……」
心配してくれている二人を騙しているので泣きそうになった。
でも、真実を言ったらどうなるか分からない。
自分の身が可愛くて仲間を騙す自分が最低すぎて吐き気がする。
絹旗「いつまでもこうしてる訳には行きませんよ。麦野と超合流します」
フレンダは腕を引っ張られて、ゲーセンを後にした。
429: 2011/10/12(水) 02:13:47.72 ID:T9EEgjO90
――――――――――――――――――――――――――
垣根「何だよ。抗争でも起こしたいのか?今はプライベートだからお断りなんだが」
麦野「そうじゃねーよ。一発殴らせろって言ってんだよチンピラ」
垣根「チンピラはテメェだろ」
ゲーセンの裏口から出た垣根を待ち受けていたのは麦野沈利だった。
先日のことに腹を立てているらしく、怒りに歪んだ顔は恐ろしかった。
垣根(やべぇな…あんまり騒ぎは起こしたくねぇ…)
怒らなかったとしても派手に暴れれば、それだけで外出を許されなくなってしまうかもしれない。
しかし相手は自分より短気なレベル5だ。
相手にしたら、あの時のように建物が全倒壊するだろう。
絹旗「麦野!フレンダは超無事でした!」
麦野「そう。可愛い部下がチャラ男の毒牙にかからなくて安心だわ」
フレ「……」
フレンダは余計に罪悪感に苛まれた。
二人は心配をしてくれているのに、自分は二人に何も言ってない。
これでいいのか、という問いがフレンダを苦しませる。
垣根「おいおい、テメェらが頑張っても俺には勝てないって分かってるだろ?」
麦野「うっせぇんだよクズ」
垣根「何だよ。抗争でも起こしたいのか?今はプライベートだからお断りなんだが」
麦野「そうじゃねーよ。一発殴らせろって言ってんだよチンピラ」
垣根「チンピラはテメェだろ」
ゲーセンの裏口から出た垣根を待ち受けていたのは麦野沈利だった。
先日のことに腹を立てているらしく、怒りに歪んだ顔は恐ろしかった。
垣根(やべぇな…あんまり騒ぎは起こしたくねぇ…)
怒らなかったとしても派手に暴れれば、それだけで外出を許されなくなってしまうかもしれない。
しかし相手は自分より短気なレベル5だ。
相手にしたら、あの時のように建物が全倒壊するだろう。
絹旗「麦野!フレンダは超無事でした!」
麦野「そう。可愛い部下がチャラ男の毒牙にかからなくて安心だわ」
フレ「……」
フレンダは余計に罪悪感に苛まれた。
二人は心配をしてくれているのに、自分は二人に何も言ってない。
これでいいのか、という問いがフレンダを苦しませる。
垣根「おいおい、テメェらが頑張っても俺には勝てないって分かってるだろ?」
麦野「うっせぇんだよクズ」
430: 2011/10/12(水) 02:14:40.88 ID:T9EEgjO90
余裕そうな態度をしているが、垣根はかなり焦っていた。
争わずに切り抜けたい。
しかし良い方法が思い付かない。
麦野「大体フレンダに絡んできたのはテメェだろうが。スクールのリーダー様がアイテムの構成員に接触なんて、抗争を起したいのはテメェなんじゃねぇの?」
垣根「ただのナンパだよ。ソイツはかなり嫌がってたけどな」
絹旗「無理矢理ですか。超キモいです。最低ですね」
フレ「……」
フレンダは気付いた。
自分のために行動しているのはアイテムの二人だけではない。
垣根もフレンダを庇っているのだ。
自分と関わりを持っていることがバレたらフレンダが殺されると分かっているから、本当のことを言わないのだろう。
この場に居る三人は、全員フレンダを心配している。
それなのに、自分は――――
フレ「ちょ、ちょっと待って!」
大声で叫んだフレンダを三人とも驚いた顔で見た。
フレンダは一生懸命に震えた足で体を支える。
怖いけど、これ以上黙っているわけにはいかない。
フレ「あのね、二人に聞いて貰いたいことがあるの」
そう言うと垣根が呆れたようにため息をついた。
もう引き返すことはできない。
驚いた顔してる二人に真実を話そうとフレンダは口を開いた。
431: 2011/10/12(水) 02:16:27.78 ID:T9EEgjO90
数十分後。
フレンダが全て話し終えると、二人はさらに驚いた顔をした。
麦野はすぐに怒鳴りつけてくると思ったけど、黙って俯いていた。
絹旗「超信じられないです。それってフレンダは私達を超騙したってことですよね?」
フレ「……ごめん」
絹旗「声優の話題で盛り上がって和気あいあいとしてたのも超信じられないです。というか超意味が分からないです」
垣根「お子様は理解力が無くて駄目だな。だから背も胸も小さいんだよ」
絹旗「超氏んで下さい」
フレンダは麦野を見た。
彼女は俯いていて顔を見えない。
自分で自分の腕を押さえて震えている。
そんな麦野を見てフレンダは青ざめた。
フレ(ヤバい!麦野、超怒ってる!!!……でも、当たり前だよね)
ゆっくりと麦野が顔をあげる。
眉間に皺が寄り不機嫌そうな麦野と目が合い、フレンダは失禁しそうになった。
麦野「今のことは本当?アイテムの情報を喋って、豊崎愛生の話で盛り上がって、
このクズに見逃して貰って、スクールの隠れ家でラジオ聴いてたってのは」
フレンダは恐怖のあまり喋れなくて頷くことしかできなかった。
頷くフレンダを見て麦野は短いため息をついた。
少しの間目を瞑り、考え事をしているようだ。
麦野「……ふざけんな」
それは女とは思えないほどに低くドスのきいた声だった。
目を開いた麦野の表情は鬼のようで、フレンダは人生の終わりを覚悟した。
麦野「なんだよぉオイ。今のクソな話は……」
絹旗は諦めたように目をそらした。
こうなっては、彼女を止める術はない。
垣根は、いつ攻撃が飛んできてもいいように備えていた。
緊迫した雰囲気のなか、麦野は垣根に向かって叫んだ。
432: 2011/10/12(水) 02:17:38.55 ID:T9EEgjO90
麦野「本当にふざけてんじゃねぇぞ!!!!ぶっ頃すぞカス野郎が!!!!!!!!!!!!」
麦野「なんで、テメェみたいなキモいチャラ男が愛生ちゃんファンなんだよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」
麦野「きめぇんだよ!!!愛生ちゃんが汚れんだろうが!!!!!今すぐファンやめろ短小包茎野郎!!!!!!!」
垣根「」
絹旗「」
フレ「」
麦野「何よその顔」
麦野の絶叫はその場に居た全員の思考をショートさせた。
454: 2012/01/02(月) 02:39:35.63 ID:pXRZgCYM0
絹旗「という訳でファミレスに超来ました」
フレ「誰に説明してるの」
麦野「鮭弁まだかにゃ~ん」
カランカラーン
垣根「おい、買ってきたぞ」
麦野「おっせぇんだよカスが。第2位のくせに使えない男ね」
垣根「4位の知能じゃお礼も言えないのか。哀れだな」
麦野「氏ねクズ。さっさと何か頼め」
絹旗「超お腹すきましたね。丁度お昼ですし、未元物質も何か超選んで下さい。まとめてオーダーするので超早く決めて下さいノロマ」
垣根「何この扱い」
フレ「久しぶりにパスタでも食べようかなー」
絹旗「私も超同じのにします」
垣根「じゃあ俺もそれでいいや」
麦野「却下」
垣根「は?」
麦野「うちの部下にテメェみたいな粗大ゴミと同じモン食わせる訳にはいかないの。変えろ」
垣根「……えっと、じゃあ、肉とライスで」
絹腹「超頼んでおきますので、未元物質は私とフレンダと麦野のジュースを超取って来てください」ピンポーン
垣根「…………パシリかよ」
455: 2012/01/02(月) 02:40:11.82 ID:pXRZgCYM0
―数十分後
麦野「はぁ……ていうかアンタ第2位のくせに声オタとか恥ずかしくないの?世間体ってのを気にしなさいよ」モグモグ
垣根「テメェもだろ」モグモグ
麦野「鮭弁はおいしいなぁ」モグモグ
垣根「無視すんな」モグモグ
絹旗「さっきの超殺伐とした雰囲気はどこにいったんでしょうか」モグモグ
フレ「さぁ?」モグモグ
垣根「つーかテメェみたいな年増ビXチが愛生ちゃんを好きなんて意外だな」
垣根「あだだだだだだ。足踏むな!いってぇよ!!」
麦野「次はねぇぞ」
垣根「すいません」
絹旗「そうですよ麦野。私も超意外です。麦野が声優を超好きだなんて」
フレ「私もかなり意外ってわけよ」
麦野「……そうね。声優を好きだなんて私のキャラじゃないわね」
麦野は箸を置くと、豊崎愛生と自分の出会いを話し始めた。
456: 2012/01/02(月) 02:41:13.28 ID:pXRZgCYM0
――――――――――――――――――――――――――――――
麦野「はぁ……つっかれた……」
今日はとある施設の防衛が仕事だった。
ターゲットに勝ち逃げされたうえ、服も髪もボロボロで気分は最低に沈んでいた。
早く湯船に浸かりたかったけれど、帰って来たばかりで暖かい風呂など沸いているはずがない。
麦野(一人暮らしってのはこういう時に不便ね。誰も用意なんてしてくれないし)
破れたストッキングを脱ぎ、ゴミ箱に入れた。
風呂を沸かすためにボタンを押してからソファに座る。
柔らかい感触は疲れた体に優しかったけれど、静まりかえった部屋は居心地が悪い。
麦野(テレビでもつけるか。……でもこの時間じゃ、くだらないバラエティしかやってないのよね)
ため息をついて髪をかき上げる。
風呂が沸く僅かな時間が暇でしょうがない。
ふと、少し前に買ったプレイヤーが目に入った。
そういえばこれでラジオも聴けた筈だ。
いつもはラジオなんか聴かないけれど、なんとく手を伸ばしてみる。
457: 2012/01/02(月) 02:42:08.74 ID:pXRZgCYM0
ラジオ『背伸び寝転びクッション完備』
ラジオ『あなたに届けるお喋りセラピー』
ラジオ『はじまるよっ!』
ラジオ『豊崎愛生のおかえりらじお』
なんだこれは。
たまたまつけた局からは、優しいBGMと明るい女性の声が流れてきた。
くだらない、と思い番組を変えようと思ったけれど少しの間くらいいいかと思い直す。
ラジオ『みなさん、おかえりなさい。豊崎愛生です』
ラジオ『さぁ、この番組はお疲れモードで帰宅した貴方を私、豊崎愛生がおかえり!っとお出迎え』
ラジオ『心通わすほっこりトークで、溜まった疲れをゆる~りとほぐしてしまおうというリアルタイムプログラムです』
麦野(おかえり、か……)
一人暮らしの麦野はそんな言葉を滅多に使わない。
同居人が居ても使うかは妖しいが。
麦野(…………おかえりが冒頭のあいさつなんて変なラジオ。ちょっと聴いてみるか)
甘ったるい声だけれどはっきりと喋り、トーク全体のテンポも良くてなかなか好印象だった。
番組の途中で風呂が沸いたが、ラジオが終わるまで動く気が起きなかった。
麦野(……毎週、木曜日。次も暇だったら聴いてもいいわね)
458: 2012/01/02(月) 02:43:14.05 ID:pXRZgCYM0
それから毎週木曜日は知らない女性のラジオを聴くようになった。
ラジオの中でよく分からない単語が出て来て、調べてみたらアニメのタイトルだと分かった。
そこで初めて豊崎愛生は声優だと知る。
麦野(ふーん……最近の声優って可愛いしお洒落なのね)
声優は声が良く顔が悪いという古いイメージしか持っていなかった麦野にとって豊崎愛生の存在は新鮮だった。
それまで漫画もアニメも興味なかったけれど、少しだけ見るようになった。
ろくに練習しない軽音楽部員の日常を描いたアニメは、仕事での嫌な気分を忘れさせてくれた。
麦野「……でも、これってヤバくない?」
声優のラジオを聞いて深夜アニメを見る。
認めたくはないけれど、オタクという部類にかなり近づいてしまっている。
もし仲間にバレたらリーダーとしての威厳が無くなってしまうだろう。
それだけは避けなければ。
絶対にバレてはいけない。
麦野は今まで以上に外見に気を使い、オタクまがいの趣味を持っていることをカムフラージュした。
459: 2012/01/02(月) 02:44:04.29 ID:pXRZgCYM0
―――――――――――――――――――――――――
麦野「というわけよ。パックしながら聴くラジオは最高だわ」
垣根「よく分かってるじゃねぇか」
麦野「つーかテメェのせいでこの二人にバレたじゃねぇかよ。責任とって殺されろ」
垣根「はぁ!?意味分からねぇぞ!テメェが勝手に自爆したんだろうが!」
麦野「あ?テメェのせいだろハゲが!」
垣根「ハゲじゃねぇよ。それに俺のせいじゃない」
絹旗「……」
フレ「……」
麦野「ごめんね。自分らのリーダーがオタクだなんて。気持ち悪いし格好つかないでしょ?」
フレ「そんなことないってわけよ!」
絹旗「そうですよ!ただ、超意外すぎて言葉が出なかっただけです!」
麦野「……本当に?」
フレ「本当に!何が好きでも麦野は麦野だよ!!」
絹旗「気持ち悪くなんて超ないですよ。だって、麦野ですから」
麦野「……ありがとう」
垣根「なんだこの雰囲気」
絹旗「でも2位は超キモイです。超浜面みたいです」
垣根「あ?」
麦野「確かに。テメェが愛生ちゃんオカズに抜いてると思うと吐き気がするわ」
垣根「してねぇよ!!!」
460: 2012/01/02(月) 02:44:53.87 ID:pXRZgCYM0
麦野「はぁ……本当に最悪よ……」
垣根「だから抜いてねぇって言ってんだろ」
麦野「その話はもうしてねぇよ。いつまでも下のこと考えてんじゃねぇぞ糞野郎」
垣根「……テメェ」
フレ「何が最悪なの?」
絹旗「2位ですか?そうですよね超最悪ですよね。私も超同意です」
麦野「それもだけど、違うわよ」
垣根「お前ら素直すぎだ」
麦野「……こないだのね、ラジオを聴き逃しちゃったのよ」
フレ「あちゃー…楽しみにしてるものを逃すなんてショックってわけよ」
麦野「おい糞」
垣根「糞だけで誰を呼んでるか分かるのが嫌だな」
絹旗「分かるってことは自分が超糞だっていう自覚が超あるからですよ」
垣根「超超うるせぇぞ。ミニスカート穿いてるくせに色気が全くないチビガキ」
絹旗「な!?」
麦野「おい無視してんじゃねぇぞ」ガン
垣根「いってぇ!蹴るな!」
461: 2012/01/02(月) 02:46:34.85 ID:pXRZgCYM0
麦野「ねぇ、こないだの放送録音してない?」
垣根「……してるけど」
麦野「アンタに頭下げるなんて氏ぬほど嫌だけど、下げるから貸して」
垣根「全然人に物を頼む態度じゃねぇな」
麦野「…………オネガイシマス」
垣根「心が籠ってねぇ」
麦野「おい!!!テメェいい加減にしろぉぉぉぉ!!!
こっちが下手に出りゃいい気になりやがってよぉぉぉぉぉぉぉォォォォォォォ!!!」ガタッ
垣根「大声出すな!そもそもお前がいつ下手に出てたんだよ!?」
フレ「凄い注目されてる…」
絹旗「超仕方ないですよ」
麦野「……いやなら、いいわよ」
垣根「ばーか」
麦野「あ?」ギロ
垣根「怖いから睨むな。別に頭なんか下げなくても貸してやるよ」
麦野「え」
垣根「テメェは気に喰わないけど、愛生ちゃん好きなら助け合わないとな」
麦野「……アンタ」
垣根「礼はいらねぇよ。その代わり、ちゃんと愛生ちゃんを応援しろよ」
麦野「分かってるわよ」
絹旗「麦野、超良かったですね!」ニコ
麦野「…………うん」ニコ
垣根(やっぱり大人しければすげぇ美人だよなコイツ)
麦野「糞野郎でも使えるときがあるのね。糞だけど」
垣根(……………前言撤回)
462: 2012/01/02(月) 02:48:10.81 ID:pXRZgCYM0
ここまでです。
間をあけて本当に申し訳ありません。
読んでくれてありがとうございます。
間をあけて本当に申し訳ありません。
読んでくれてありがとうございます。
引用: 垣根「ただいま」
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります