1: 2012/07/28(土) 16:27:01.81 ID:Vw9/h9pA0
怜「お疲れ会やて」
の続きになります
待っていてくださった方がどれだけいるかは判りませんが、続きを書いてみました

怜「しかし妙にドアの向こうが騒がしいな」

玄「もうみんな集まって打ってるのかなぁ?」

煌「すばらっ! ではわたくし達も混ぜていただきますか」

照「腕が鳴る(物理的に)」コークスクリュー

宥「私と玄ちゃんは買い出しに行ってくるよ~。温かい飲み物買ってくる~」

煌「買い出しならわたくしが……と言いたいところですが、この辺りの道を知りませんでした。申し訳ありませんが、お願いします」

玄「おまかせあれ!」

ドア「ガラ!」

怜「たのもー……う?」

健夜「やっと見付けましたよ、赤土さん」

晴絵「小鍛治プロ? どうしてここに?」

健夜「貴女を……さらいに来ました!!」
咲-Saki- 25巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)

3: 2012/07/28(土) 16:31:40.12 ID:Vw9/h9pA0
怜「……トンネルを抜けるとそこはお花畑やった」

煌「美味しい蜜をすする蜂もいるようですよ」

恒子「ナンノコト?(棒読み)」

照「カメラとパソコンで実況中継……」

恒子「誤解のないように言っておくけど、今回ばかりはすこやんの要望でやってるんだよ?」

怜「信用できんなぁ……」

恒子「本当だよ。すこやんが『私の求婚を世界中の人に見守っていてほしいの!』って言ってたんだから」

煌「結婚適齢期を過ぎた女性は恐ろしいですね……」

照「ああいう風にはなりたくない……」

5: 2012/07/28(土) 16:35:28.83 ID:Vw9/h9pA0
晴絵「え~と、小鍛治プロ? それはどういう意味ですか?」

健夜「言葉通りです。貴女には私の伴侶になって頂きたい! それとも、イヤだと仰いますか?」

晴絵「はいいいえの回答をする以前に、状況がよく判らないのですが……」

健夜「なるほど、私が貴女に惚れた経緯を知りたいと」

晴絵「ま、まあ端的に言えばそうかな……」

健夜「判りました、お話ししましょう」

7: 2012/07/28(土) 16:40:11.79 ID:Vw9/h9pA0
健夜「覚えていますか? 私達が初めて出会った時の事を」

晴絵「10年前のインターハイ準決勝……忘れるハズもありません」

健夜「私もです。あの時の赤土さんの打ち筋は、一日たりとも忘れた事はありませんでした」

健夜「高校時代とはいえ、私が唯一受けた跳満。正直なところ私のプライドはズタボロでした。生まれて初めて本気で悔しいと思いました」

健夜「プロになり、史上最年少の八冠保持者などと持てはやされても、その想いが頭から離れる事はなかった」

晴絵「まさか、プロの最前線から身を引いたのも……」

健夜「ええ。あえて『貴女のせい』と言わせてもらいましょうか。それほどまでに貴女は私の中で大きな存在になっていたという事です」

健夜「この責任、取って頂かなければ私も引くに引けません!」

晴絵「小鍛治プロ……」

健夜「もちろん直ぐにお返事を頂けるとは思っていません」

健夜「近くの松実館という旅館に宿泊していますから、返事が決まったらいらしてください。恒子ちゃん、帰るよ」

恒子「あ、は~い」

晴絵「……」

8: 2012/07/28(土) 16:47:15.32 ID:Vw9/h9pA0
怜「……えらい場面に遭遇してもうたな」

煌「10年来の想い、ですか。すばらと評するべきか、重いと一蹴してしまっていいものか……」

照「想いのカタチは人それぞれ」

怜「……せやな」

晴絵「あ、キミ達ゴメンね。先客がいてお構いもできなくて」

煌「お気遣いなく。あの状況では仕方がないというものです」

晴絵「ありがとう……。あれ? 玄と宥は?」

照「買い出しに行ってますよ。それより阿知賀のメンバーがみえないようですけど……」

晴絵「あ~、小鍛治プロと打っちゃったみたいで『しばらく麻雀はいいです』なんて言って帰っちゃったよ」

怜「……一体何があったんや?」

晴絵「まあその内勝手に立ち直るだろ。それより、せっかく来たんだ、少しは打っていくんだろ? 相手になるよ」

照「国内最強とまで言われる小鍛治プロが認めた相手……面白そう」

煌「すばらっ! お相手お願いします!」

9: 2012/07/28(土) 16:52:15.33 ID:Vw9/h9pA0
夕方

怜「ん? もうこんな時間か。麻雀をやっとると時間が早く感じるなぁ」

煌「すばらっ! 四時間近く打っていたという事ですか」

照「……お腹空いた」

玄「それじゃあ旅館に戻って夕食にしましょう!」

宥「私達はまたお仕事だけどね~」

玄「でも結局今日は観光案内できなかったけどよかったですか?」

怜「構へんよ。アンタらと打てて楽しかったしな。それに明日は名所案内してくれるんやろ?」

玄「もちろん! 玄ちゃんにおまかせあれ!」

煌「それでは旅館に戻りましょうか」

照「うん。お腹も空いたけど、汗も掻いたから温泉にも入りたい」

怜「温泉か。医者から長湯は止められとるけど、久しぶりに思いっきり手足を伸ばして入るっちゅーんのもええなぁ~……あ」

煌「すばらですねぇ~……ん? 温泉?」

怜&煌(完全に失念していた!?)

11: 2012/07/28(土) 16:56:49.41 ID:Vw9/h9pA0
怜(煌、どないする? 温泉自体は楽しみやけど、照と一緒に入ったら間欠泉が間血泉になってまうで)アイコンタクト

煌(うまい事言ったつもりですか?)アイコンタクト

煌(たしか奈良には間欠泉はなかったハズですが……って、そんな事を言っている場合ではありませんね)アイコンタクト

煌(どうにかして血を流さずに温泉に入る方法を考えなければ……)アイコンタクト

怜(しかし温泉に持って行けるのはタオル一枚だけやで、どうやって凌ぎきるんや?)アイコンタクト

煌(それを今考えているんですよ! お姉様も考えてください!)アイコンタクト

怜(……アカン、別々に入る以外に解決策が見付からん)アイコンタクト

煌(それは最終手段です。お姉様だって照さんの裸を見たいでしょ?)アイコンタクト

怜(もちろんや。せやけど残りの手段といったら……)アイコンタクト

煌(我慢する、しかありませんか……)アイコンタクト

怜(せやな。血かて身体の一部や、気合い入れればコントロールできるかもしれんしな)アイコンタクト

煌(……それはありえないと思いますが)

12: 2012/07/28(土) 17:01:13.01 ID:Vw9/h9pA0
夕食前の入浴タイム~脱衣所~

怜「ついにこの時が来てしまったな」ヌギヌギ

煌「流血にさえ気を付けていれば後は天国ですよ」ヌギヌギ

怜「それもそうやな。しかし肝心の照がまだ来とらんが、どないしたん?」ヌギヌギ

煌「準備があるから先に行ってて、と仰っていましたからもうじき来るとは思いますけど」ヌギヌギ

怜「なら一足先に温泉を満喫しよか。照が来たら温泉を楽しむ余裕もなくなるやろうからな」ヌギヌギ

煌「ですね」ヌギヌギ

怜「……しかしお前、貧相な胸してんなぁ」

煌「お姉様には言われたくありませんね」

怜「……」ペターン

煌「……」ペターン

怜「……どんぐりの背比べとは、よう言ったもんやなぁ(遠い目)」

煌「比べられるだけの胸があればよかったんですけどね……」

怜「……言うなや」

煌「……そうですね」

14: 2012/07/28(土) 17:06:04.93 ID:Vw9/h9pA0
ドア「ガラ!」

怜「気を取り直して温泉を楽しむで!」

煌「すばらっ! 流石旅館の温泉、風情が違いますね」

怜「風情より実用性の方が大切やと思うけどなぁ。シャワーの『押す』ってなんとかならんのか。めんどくさいねん、アレ」

煌「お気持ちは判りますが、旅館側の事も考えればこれは仕方ありませんよ。お湯を出しっぱなしにしてしまうお客もいるでしょうし」

怜「妙に現実的な事言うんはやめてーな」

煌「先に実用性だとか言ったのはお姉様の方ですよ。それより早く身体を洗ってしまいましょう。お背中ながしますよ」

怜「お、ええなぁ。ウチも煌の背中流したる」

煌「恐縮ですわ、お姉様」

怜「たまにはお姉様らしいところも見せんとな」

煌「おや、意識してらしたんですか?」

怜「多少は、な。そもそもウチの方が年上やし、お前の事も……嫌いやないし」

煌「そうやって間を開けると別の意味合いに聞こえますよ?」

怜「……もう別に構へんよ」

煌「すばらっ! これは本格的に清水谷さんとお話しする必要がありそうですね……」

15: 2012/07/28(土) 17:10:53.27 ID:Vw9/h9pA0
入浴中

怜「はぁ~、手足を伸ばして入浴するっていうんは最高やなぁ~。日本人でよかったと思える瞬間やで」

煌「同感です。お風呂は日本最高の文化ですね」

怜「にしても照は遅いなぁ、どないしたんやろ?」

煌「そうですね。まさか道に迷った、とか?」

怜「いくら方向音痴とはいえ、旅館の中では迷わんやろ、普通」

煌「照さんはインハイを三連覇した偉業の方ですよ? 普通という尺度では測れません」ドヤ

怜「……遠回しにバカにしとるやろ?」

ドア「ガラ!」

怜「ん、ようやっと登場みたいやな。遅いで、て……る……?」

健夜「ハーイ! ティーンども! お待ちかね、アラサーの登場だよ!」

17: 2012/07/28(土) 17:15:42.38 ID:Vw9/h9pA0
怜「こ、小鍛治プロ!?」

煌「あ~、そういえば松実館に宿泊してる、と仰ってましたね」

健夜「あら、園城寺さんと花田さん?」

怜「なんや、ウチらの事知っとるんか?」

健夜「貴女達の試合を解説したのは私だよ。それに、赤土さんに想いを伝える勇気をくれた貴女達を忘れるハズがないわ」

煌「それはどういう……」

健夜「気にしないで、こっちの話しだから」

怜「さよか? ……そういやアンタ相方はどないしたん?」

健夜「相方? ああ、こーこちゃんの事? 昼間配信したあの動画の反響がすごかったらしくて、その対応に忙しいからお風呂は後にするって」

煌「それはそうでしょうねぇ。『これから告白します!』と大々的告知しても、釣りか何かと思われたでしょうし。それが有名な人なら尚更ですよ」

健夜「そうみたい……あれ? そう言えば宮永さんは? 阿知賀で会った時には一緒に居たと思ったんだけど……」

怜「せや、照や。いくらなんでも遅すぎる」

煌「……これは本格的に迷子ですかねぇ」

18: 2012/07/28(土) 17:20:13.22 ID:Vw9/h9pA0
宿泊部屋
怜「で、なんで部屋にいんねん! なんで浴衣に着替えてんねん!! なんで少し髪が濡れとんねん!!!」

煌「部屋のお風呂に使用された形跡がありますねぇ」

照「だ、だって……みんなと一緒に入るの……は、恥ずかしかったから……」モジモジナミダメウワメヅカイ

怜&煌「ぶはッ!!」ハナジブー

煌「すばらっ! 危うく飛ぶところでした……」ハァハァ

怜「そ、そんなカワイ子ぶったって許さへんよ……」ハァハァ

照「ゆ、許さないって?」

怜「寝る前にもう一度湯に浸かりに行く。そん時は逃がさへん」

照「で、でも……」

煌「裸の付き合いというものですよ。当たり前のことじゃありませんか、友達なのですから」

照「とも……だち……」

怜「せや。最初に友達っちゅーたんは照やで? それともウチらはもう友達じゃないんか?」

照「そ、そんなことない!」ブンブン

煌「では決まりですね。次のお風呂が楽しみです」

怜「そうと決まればメシやメシ!」

19: 2012/07/28(土) 17:25:23.18 ID:Vw9/h9pA0
襖「ガラ!」

やえ「今度こそお見せしよう、王者の配膳を!」

怜「お、今回も一人で来たな。見せてもらおか」

やえ「夕食はお刺身と添え物が少々あるだけなので、難しい配膳ではないのです」

煌「そ、そうなのですか……」

配膳中

やえ「それではごゆっくりご堪能ください」

照「また普通に仕事して帰って行った」

怜「一体何者なんやろな、アイツ」

煌「それよりも、冷めてしまう前に夕食にしましょう。すばらっ! もといいただきます」

怜&照「いただきま~す」

20: 2012/07/28(土) 17:29:41.39 ID:Vw9/h9pA0
食後

怜「ふ~食った食った。新鮮な魚は刺身に限るなぁ~」オナカポンポン

煌「お昼と同じ事を繰り返さないでください。ほら、膝枕して差し上げますから」ヒザポンポン

怜「ん、おおきに」ヨイショ

照「……」スッ

煌「おや照さん、立ち上がってどうしました?」

照「ちょっと、小鍛治プロを探してくる。確かあの人もここに宿泊してるって言ってたから」

怜「あ~、ウチらは風呂場で会ったで。でも探してどないするん?」

照「お手合わせを願いたい」

煌「昼間にあれだけ打ったのにまだ足りませんか……」

照「赤土さん、とても強かった。そしてそれより強い小鍛治プロ。一回でいいから打ってみたい」

怜「照はホンマに麻雀が好きなんやなぁ。まあ、くれぐれも道に迷わんようにな」

照「わ、判ってる」

23: 2012/07/28(土) 17:34:20.62 ID:Vw9/h9pA0
怜「……」

煌「……」

怜「……あれやな、旅行に来てこういうゆったりとした時間を過ごすちゅーんはいいもんやな」

煌「ええ、本当に……」

怜「……」

煌「……」

怜「……足痺れてこんか?」

煌「大丈夫ですよ。正座には慣れていますし、お姉様は軽いですからね」

怜「そうか……」

煌「はい……」

怜「……」

煌「……」

25: 2012/07/28(土) 17:39:40.56 ID:Vw9/h9pA0
怜「……なあ、昼間は曖昧になってもうたけど、お前ホンマにウチの事が好きなん?」

煌「……もちろんですよ」

怜「……Loveか?」

煌「……はい」

怜「……そうか」

煌「ええ……」

怜「……」

煌「……」

怜「……月が綺麗ですね」

煌「それには『ここからは月は見えませんよ』と突っ込むべきですか? それとも『氏んでもいいわ』と返すべきですか?」

怜「……煌には敵わんなぁ~」

煌「光栄です、とだけ言っておきましょう」

襖「ガラ!」

竜華「怜ッ!!」

怜「りゅ、竜華ッ!?」

26: 2012/07/28(土) 17:43:50.07 ID:Vw9/h9pA0
怜「竜華、なんでここに……」

竜華「怜が心配で来てしもうた……///」

怜「来てしもうたって……」

竜華「それより怜、これはどういう事?」

怜「え?」

竜華「なんでウチ以外の人に膝枕してもらってるのかって事や!」

怜「な、何興奮しとるんや竜華。冷静になりぃ?」

竜華「ウチは冷静や!!」

煌(好きな人を追いかけて県を越えてくる人を冷静とは言わないと思いますが……)アイコンタクト

怜(竜華がここまで後先考えないヤツやったとは知らんかったわ)アイコンタクト

煌(それで、どうやって彼女をいさめるつもりですか? わたくしが口を挟んだらさらに荒れてしまいそうですが)アイコンタクト

怜(な、なんとかしてみるわ)アイコンタクト

28: 2012/07/28(土) 17:49:35.12 ID:Vw9/h9pA0
怜「ええか? 竜華。ウチは病弱なんや、体力ないねん。せやから休憩する為に膝枕してもろてるだけや、他意はあらへん」

竜華「……ホンマに? 変な事してへん?」ジトー

怜「してへんしてへん。なあ、煌?」

煌「ええ。何もありませんでしたよ」

竜華「……そうやな。怜から何かするハズがないなぁ。ヘタレやし」

怜「ヘタレ!?」

竜華「せやけど、膝枕してる側からはどうなんやろうな、花田さん?」ニッコリ

煌「どういう意味でしょうか、清水谷さん?」ニッコリ

怜(何これ修羅場?)

煌「わたくしはただ、お姉様に膝枕をして差し上げていただけで、他には何もしていませんよ」

竜華「お、お姉様!?」

煌「親しい年上の女性を呼ぶ時には当然の呼称だと思いますけど?」

竜華(……初めて顔を見た時から感じとったが、やっぱりこの娘はウチの敵やな)

32: 2012/07/28(土) 17:54:57.46 ID:Vw9/h9pA0
怜(なんで焚きつけるような事を言うたんや)アイコンタクト

煌(す、すいません。ついつい攻撃的になってしまいました……)アイコンタクト

怜(どないすんねん、この状況)アイコンタクト

煌(ヘタな説得は逆効果なのかもしれませんね……)アイコンタクト

怜(ならどうするんや?)アイコンタクト

煌(ハッキリさせればいい、という事ですよ)アイコンタクト

怜(そ、それはちょっと……)アイコンタクト

煌(何故です? 一言「好きだ」と言って差し上げればいいのに)アイコンタクト

怜(せやけど……)アイコンタクト

煌(はぁ、お姉様は本当にヘタレですね)アイコンタクト

怜(お前まで言うか!?)アイコンタクト

煌(兎に角、今は清水谷さんを落ち着かせる事が先決です)アイコンタクト

怜(は、はい……)アイコンタクト

36: 2012/07/28(土) 17:59:00.87 ID:Vw9/h9pA0
煌「大丈夫ですよ、清水谷さん。お姉様は貴女の膝枕の方が気持ちいいと仰ってましたから」

竜華「ほ、ホンマか!?」

煌「もちろんです。ね、お姉様?」

怜「お、おう。あ、当たり前やないか」

煌(もう少し普通に返事できないんですか?)アイコンタクト

怜(しゃーないやろ! 急に話し振るなや!)アイコンタクト

煌(これじゃあ清水谷さん信じません……よ……?)アイコンタクト

竜華「そ、そんな事言われても全然嬉しくないで!!」テレテレ

怜(……ちょろいなぁ)アイコンタクト

煌(そういう事は言わないように)アイコンタクト

竜華「で、でも怜がどうしてもってゆーんなら膝枕してやらん事もないで?」テレテレ

怜(竜華ってこんなにめんどくさいキャラやったか?)アイコンタクト

煌(お姉様?)ギロリ

怜(わ、判っとるって)アイコンタクト

38: 2012/07/28(土) 18:03:59.19 ID:Vw9/h9pA0
怜「そ、それより竜華、外歩いてきて汗かいてないか? せっかく来たんやし、温泉でも入ったらどうや?」

竜華「せやな、怜を膝枕するのに汚い身体じゃあ失礼やもんな。行ってくる」

怜「……行ったか」

煌「そんなに邪険にしなくても……お姉様の事を心配して来てくださったんですから」

怜「竜華は過保護なんよ。ウチかて竜華以外との付き合いがあるちゅーのに」

煌「お気持ちも判らないではないですけど、少し言葉が過ぎませんか?」

怜「……煌はどっちの味方なん?」

煌「どちらの味方でもありません。わたくしはただ、お姉様に人の好意を無下にするような人間にはなってほしくないだけです」

怜「……せやな。ウチも少し言い過ぎた」

煌「判ってくださったのなら何よりです」

怜「煌には頭が上がらんなぁ~」

煌「光栄ですわ」

39: 2012/07/28(土) 18:08:30.03 ID:Vw9/h9pA0
一時間後

怜「……」

煌「……」

竜華「……」

照「……」

淡「……」

怜「え~と、照? その子は?」

照「わ、私の後輩の大星淡だ……」

淡「先輩が心配で東京を飛び出して来ました!」

怜「さ、さよか……」

照「あ、ああ……。それで、そっちの人は?」

怜「う、ウチの同級生の清水谷竜華や……」

竜華「怜が心配で大阪を飛び出して来ました!」

竜華&淡「!!」ガシ 熱い握手

怜&照(なんか結託したぁ~……)

41: 2012/07/28(土) 18:13:51.42 ID:Vw9/h9pA0
煌「でもいいですね、心配して追いかけて来てくれる人がいるというのは。わたくしにも居ないでしょうか?」

怜「いや、居らんやろ」

照「うん、居ないと思う」

煌「え?」

怜「どう考えてもお前が一番しっかりしてるからな、心配するだけ無駄ってもんや」

照「逆に煌ちゃんが居なくて不安になって追いかけて来る人はいるかもね」

煌「……それは喜んでいい事なのでしょうか?」

怜「ええんやない?」

照「いいと思うよ?」

煌「はぁ……」

42: 2012/07/28(土) 18:18:35.17 ID:Vw9/h9pA0
襖「ガラ!」

やえ「お見せしよう、王者の布団敷きを!」

怜「お、また一人か。まあ、布団敷きぐらい一人でできんとなぁ」

やえ「先回りしないでください。というか、人数が増えている気がするのですが」

煌「残念ながら実際に増えています」

やえ「え~と、旅館の方に許可は取りましたか?」

竜華「玄ちゃんがオーケーしてくれたで!」

淡「宿泊費も払いました!」

やえ「お嬢……。少々お待ちください」

~数分後~

やえ「お待たせしました。こちらの部屋では手狭でしょう。お手数ですが、大部屋の方に移動していただきます」

照「あ、はい」

怜(やっぱ普通に仕事しとるな)アイコンタクト

煌(しかも数分で他の部屋の使用許可を取って来ましたし、実は物凄く仕事ができる人なのかもしれませんね)アイコンタクト

43: 2012/07/28(土) 18:24:29.39 ID:Vw9/h9pA0
大部屋

やえ「こちらの部屋をご利用ください」

怜「おお~デカイなぁ~。これなら五人と言わず、十人ぐらいで寝られるんちゃうか?」

煌「ですが、この部屋と先程までの部屋では料金も違うのでは……」

照「私、そんなにお金持ってない……」

淡「先輩の分ぐらいなら私が出します!」

竜華「なんならウチが値切ったろか?」

やえ「その必要はございません。これ以上お代を頂くことはありませんので」

煌「よろしいのですか?」

やえ「もちろんです。手狭なお部屋を提供してしまったのはこちらのミスですので」

怜「まあ、こっちとしては嬉しい限りやけど」

やえ「それに、この大部屋ならお嬢達も一緒に寝られますし、ね」

怜「なるほど、乙なマネしてくれるやないか」

やえ「これぐらいの気遣いもできなければ王者は名乗れませんので」

45: 2012/07/28(土) 18:31:44.59 ID:Vw9/h9pA0
照「せっかくだから、あの二人も呼んできていいかな?」

怜「ん? ああ、アラフォーとその相棒か。ええんやない? その方が賑やかやし。構わんよな、仲居さん?」

やえ「そうですね、スペースにも余裕がありますし、何よりその方がお嬢達も喜ばれるでしょう」

煌「玄さん達を喜ばせる為ならば、もう一人一緒に寝ないといけませんね」

怜「いい事言うたで、煌」

照「そうだね」

やえ「はて、まだどなたかいらっしゃいましたか?」

一同「お前のことじゃ!!」

こうして松実館での騒がしい夜は更けて行った……

カン!

48: 2012/07/28(土) 18:40:50.77 ID:idojCbSn0
面白かった乙!
またかいてね

50: 2012/07/28(土) 18:48:31.40 ID:Vw9/h9pA0
も、もういっこっすか
ここからは即興になるけど、もうちょっとガンバってみます

怜・煌・照・玄・宥・竜華・淡・健夜・恒子・やえ

怜「なんか、スゴイ事になったな」

煌「十人ですからね」

淡「先輩、今夜は寝かしませんよ!」

竜華「怜もやで?」

怜&照「……」

健夜「……若いって、いいね」

玄「でも今一番青春してるのは小鍛治さんですよ?」

宥「そうですよ~、赤土さんに告白したんですよね?」

やえ「お見せしよう、少女達のガールズトークを!」

恒子「これは美味しい!」ビデオアンドパソコン

53: 2012/07/28(土) 18:55:58.12 ID:Vw9/h9pA0
恒子「しかしカメラは一台しかない……よし、まずはあっちの修羅場から行ってみよう!」

怜「……」

煌「……」

竜華「それじゃあ怜、花田さんとウチ、どっちの事が好きかハッキリさせてもらおうやないか?」

怜「……」

竜華「黙ってたら判らんよ?」

怜(き、煌……)アイコンタクト

煌(だから先程好きと言って差し上げればこのような事にはならなかったものを……まったく、ヘタレですね)アイコンタクト

怜(そ、そんな殺生な……)アイコンタクト

煌(はぁ、判りましたよ。今回だけですからね?)アイコンタクト

56: 2012/07/28(土) 19:08:32.80 ID:Vw9/h9pA0
煌「清水谷さん、少しよろしいですか?」

竜華「なんや?」

煌「お姉様は間違えなく清水谷さんの事が好きですよ」

竜華「だったらなんで怜自身が黙っとんのや!?」

怜「」ビクッ

煌「お姉様はまだ自分の気持ちが判っていないだけです」

竜華「それってまだ心が揺れてるって事やろ!」

煌「では、何故お姉様の心が揺れていると思いますか?」

竜華「それは……花田さんが魅力的やから……」

煌「そうではありませんよ、清水谷さん。問題は貴女自身です」

竜華「ウチ、自身……?」

62: 2012/07/28(土) 19:24:38.69 ID:Vw9/h9pA0
煌「清水谷さん、貴女はどうしてここまでお姉様を追って来たのですか?」

竜華「どうしてって、そりゃ怜が心配やったから……」

煌「心配……。そう貴女はお姉様を心配してわざわざ奈良までやって来た」

煌「しかし、お姉様は一度でも心配してくれと言いましたか? むしろ出掛ける前に『心配はいらない』と言ったのではありませんか?」

竜華「な、なんでその事を……」

煌「お姉様の性格を考えれば判る事です。話しを戻しましょうか」

煌「貴女はお姉様が『心配するな』と言ったのに追って来た。それは一見すればすばらな事です。ですが、お姉様からしたらどうだったでしょうか?」

煌「心配してくれた事はきっとお姉様も嬉しかったでしょう。ですが、同時に『自分は信用されてないのでは』と思ったハズです」

煌「それはとてもすばらくないです。相手が好きな人であればあるほど」

竜華「……」

煌「好きな人を自分目の届くところに置いておきたい気持ちも判らないでもありませんが、もう少し、お姉様を信用して差し上げてもいいのではありませんか?」

65: 2012/07/28(土) 19:33:00.63 ID:Vw9/h9pA0
竜華「……そう、やな。ごめんな、花田さん」

煌「わたくしの事はいいですから、お姉様に伝えてください」

竜華「怜……ごめんな。ウチ、随分自分勝手な事しとったな……」

怜「ええんよ、判ってくれたなら」

竜華「怜ッ!!」ギュッ

怜「竜華ッ!!」

煌(はぁ、なんとかなりましたね……)

竜華「怜、自分勝手ついでにもう一つ我儘聞いてもらえるか?」

怜「なんや?」

竜華「好きって、言ってくれへんか?」

怜「え?」

竜華「え?」

煌「え?」

恒子「無限ループ、始めました」

70: 2012/07/28(土) 19:51:16.83 ID:Vw9/h9pA0
恒子「次行きましょ次。よし、次はあのカップルへ!」

照「……淡」

淡「なんですか?」

照「……膝枕してくれない?」

淡(!? 先輩を膝枕!? 我が世の春が来たー!!)

淡「いいですよ」ヒザポンポン

照「ありがとう」ヨッコイショ

淡(あ、先輩の髪が少しくすぐったい。でも、悪い感覚じゃない)

照「淡? 大丈夫? モジモジしてるみたいだけど……」

淡「だ、大丈夫ですよ? ちょっと気持ちよk……くすぐったかっただけです。もう慣れましたから」

照「そう? ならいいんだけど」

淡(先輩を膝枕するなんてもう二度とない事かもしれない! この機会を無駄にしてたまるか!!)

79: 2012/07/28(土) 20:26:42.58 ID:Vw9/h9pA0
照「……淡?」

淡「な、なんですか?」

照「さっき、菫から連絡があった」

淡(あ、やばい……)

照「淡、誰にも言わずに東京飛び出して来たんだってね?」

淡「あ、あれ? そうでしたっけ?」アセアセ

照「そうだよ。淡のご両親が淡の行方が判らなくなったって菫に連絡したらしいんだ。それでまさかと思って私に連絡したんだって」

淡「わ、私おっちょこちょいだから言わずに来ちゃったみたいですね」アセアセ

照「ご両親の話しでは、ちょっとコンビニに行ってくる、といって出掛けたらしいけど? わざわざ奈良のコンビニまで来たの?」

淡「……」アセアセ

照「淡、私だって怒る時は……怒るんだよ?」

淡「先輩、何故私の膝を鷲掴みにしているんですか?」アセアセ

照「淡、今夜は寝かさないから」

淡「ご、ごめんなさぁぁぁぁい!!!」

恒子「……今夜は亜熱帯だね!!」

85: 2012/07/28(土) 20:50:39.61 ID:Vw9/h9pA0
恒子「さあお待ちかね、アラフォー独身による恋話だよ!」

健夜「アラサーだよ!」

玄「お、落ち着いてください」

宥「そうですよ~。怒ってばかりだと赤土さんに嫌われてしまいますよ~」

健夜「そ、そうだね。でも最初から私は嫌われてるかもしれないし……」

玄「そんな事ありません!」

玄「確かに十年前のインターハイの事が赤土さんのトラウマになっていますけど、それはバネにして今まで赤土さんはガンバってきたんです!」

宥「そうですよ~。きっと小鍛治さんの気持ちに応えてくれるハズですよ~」

健夜「ありがとう、二人共……。ね、ねえ、赤土さん私の事について何か言ってたりしない?」

玄「う~ん。あんまりそういう話しはしませんねぇ」

健夜「そ、そうだよね……」

宥「でも昼間、告白された後の赤土さんはなんだか嬉しそうに見えましたけど~」

健夜「ほ、本当!?」

恒子「でもお返事には来ませんよね~」

健夜「や、やっぱり私の事なんか……」

89: 2012/07/28(土) 21:11:47.79 ID:Vw9/h9pA0
やえ「……」スタ

玄「やえさん? 立ち上がってどうしたんですか?」

やえ「見るに堪えません。私は失礼します」

宥「あ、行っちゃた……」

健夜「うぅ~、やっぱり私はアラフォーの独身なんだぁ~」ポロポロ

恒子「あ~あ、泣いちゃった。まあ、これはこれで再生数が稼げていいけど」

玄&宥(まさに外道!!)

~数十分後~

襖「ガラ!」

晴絵「小鍛治さん!」

健夜「あ、赤土さん!?」

晴絵「ごめんなさい、遅くなって。本当なら阿知賀の麻雀部でちゃんと返事をしておけばよかったんだろうけど……」

健夜「赤土さん……」

92: 2012/07/28(土) 21:25:56.98 ID:Vw9/h9pA0
晴絵「昼間の告白、ビックリしたけど……それ以上に嬉しかった。私がずっと気になっていた人が、私の事を気にしていてくれたって」

健夜「そ、それじゃあ……」

晴絵「はい。返事はもちろん『はい』です!」

恒子「エンダアァァァァァァア!!」

玄「よかったよ、本当によかった。想いは叶うんだね」ポロポロ

宥「うん。あったかいね~」

恒子「でもどうしてこんな時間に来たんですか?」

晴絵「ああ、私も明日にしようかと迷っていたんだけど、背中を押してくれた人がいたんだ」

玄「え? 誰ですか? 灼ちゃん?」

晴絵「いや、灼にはまだ言ってないよ。背中を押してくれたのは晩成の……」

~松実館外~

やえ「まったく、世話が焼ける大人たちだ」

98: 2012/07/28(土) 21:37:33.66 ID:Vw9/h9pA0
やえ「さて、今日の仕事は終わったし……」

怜「なんや、帰るんか?」

やえ「お客様、どうしてここに?」

怜「ウチかて外の空気が吸いたくなる時もあんねん」

やえ「部屋に居られなくなったではありませんか?」

怜「……そうともいう」

やえ「ふふ、大変ですね」

怜「人事だと思って……」

やえ「これは失礼いたしました。では月並みなセリフではありますが、一つだけアドバイスを」

やえ「言葉にしない美しさもありますが、言葉にしなければ伝わらない事もあるんですよ?」

怜「……判っとるよ」

やえ「これは重ね重ねご無礼を。では私はこれで……」

怜「……言葉にしなければ、か」

102: 2012/07/28(土) 21:51:38.04 ID:Vw9/h9pA0
怜「……そろそろウチも覚悟決めんとあかんか」

煌「お姉様、こちらでしたか」

怜「煌か。竜華は?」

煌「騒ぎ疲れて寝てしまいましたよ。他の皆さんも寝られたようです」

怜「さよか……」

煌「はい」

怜「……」

煌「……」

怜(……ここで言わなあかんよな)

怜「煌」

煌「なんですか?」

怜「……月が綺麗ですね」

煌「……はい、とても」

カン!

103: 2012/07/28(土) 21:57:04.37 ID:kqmB6xvT0
まさかの煌怜エンド
乙乙
すばらでした!
また書いてね!

105: 2012/07/28(土) 22:04:07.02 ID:Vw9/h9pA0
竜怜を期待されていた方々にはごめんなさい
でも私は怜すばらの方が好きなのです
命を削って戦う怜をサポートするすばら先輩、どう見ても勇者と聖女ですよ!

こんなssに長らく付き合っていただき、本当にありがとうございました
また他のssも書こうと思っていますので、そちらでもお会いできれば幸いです

106: 2012/07/28(土) 22:07:03.15 ID:kqmB6xvT0
長編乙でした!
ほんまに面白かったですありがとう!
次回作もめっちゃ期待してますで!

引用: 怜「やって参りました、阿知賀女子麻雀部」