638: 2014/07/19(土) 20:00:51 ID:1cermemw

639: 2014/07/19(土) 20:01:31 ID:1cermemw
 

・・
・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・

640: 2014/07/19(土) 20:02:16 ID:1cermemw
 
One year later(1年後).......
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 冒 険 学 校 】


冒険先生「…おめでとう、諸君」


全員「…」


冒険先生「今日で、君たちは2年生となる」

冒険先生「後輩を迎え、新たな気持ちでスタートを切るように!」


全員「はいっ!」


冒険先生「良い返事だ。今日の授業は挨拶だけで終わりだが、明日から新たなステージの授業が始まる」

冒険先生「今年も俺が担当となっている分、ビシビシいくからな!解散!」


全員「はいっ!」
葬送のフリーレン(1) (少年サンデーコミックス)
641: 2014/07/19(土) 20:03:06 ID:1cermemw
 
冒険先生「では、今後の事で質問がある場合は教員室に来るように」

ガラッ…バタンッ!


剣士「ふい~…!」

魔道士「…今日から2年生かぁ」

剣士「なんだ、実感ないのか?」

魔道士「それもだけど、あっという間だったなって」

剣士「まぁ…そうだな」

魔道士「いろんな出会いがあって、少しでも成長出来てたらいいな」

剣士「1年前と比べたら、ずいぶんと大人になったんじゃねえか?」

魔道士「えっ…、そ、そうかな?」テレッ

642: 2014/07/19(土) 20:03:53 ID:1cermemw
 
剣士「うむ…。成長している…」ジー

魔道士「…」

剣士「…」

魔道士「…ていっ」

…ズブシュッ!

剣士「ほげーっ!!め、目がぁぁっ!」

ガタァンッ!!…ゴロンゴロンッ!!
 

トコトコ…

武道家「やれやれ…、成長してねぇなお前は」ハァ

剣士「なんだと…」スクッ

643: 2014/07/19(土) 20:04:30 ID:1cermemw
 
武道家「お?やるか?」

剣士「おぉ…?」

…ズイッ


僧侶「二人とも…二年生になったんだから落ち着こうよ」


武道家「むっ…」

剣士「僧侶…、いっぱし言うようになったな…」


僧侶「へっへーん!」

644: 2014/07/19(土) 20:05:18 ID:1cermemw
 
トコトコ…ドンッ!

剣士「いてっ!」

闘術騎士「ちっ…」

クルッ…トコトコ…。ガラッ、バタンッ!


剣士「何だよ…。そういやあいつ、パーティでの行動全然しなくなって解散したんだろ?」

魔道士「うん。だから適当な組み合わせで、パーティとして組ませられたんだっけ?自業自得だから」

武道家「全くだ。組まされた奴らはたまったもんじゃないけどな」

僧侶「相変わらず、剣士君に敵意むき出しだったね」

剣士「まぁ相手になんかしねえけどよ」

645: 2014/07/19(土) 20:07:55 ID:1cermemw
 
タタタタッ…

乙女格闘家「…武道家ぁ~!」

武道家「ん?おぉ、乙女格闘家」

乙女格闘家「今日も、よろしくね~」

武道家「当然だろ。分かってるよ」

乙女格闘家「やったっ!ありがとっ!」

武道家「おう」


剣士「…敵同士っていっても差支えなかったのに、仲良くなったなお前ら」


乙女格闘家「まぁねー!」

武道家「そりゃな」

乙女格闘家「んじゃ、あとでいつもの場所でヨロシク♪」

武道家「はいよー」

乙女格闘家「じゃ、私はちょっと先生に用事あるから先に行ってるよっ」

646: 2014/07/19(土) 20:08:41 ID:1cermemw
 
カツカツカツ…バタンッ…


剣士「…」

剣士「お前ら、付き合ってんの?」


武道家「いや?」

剣士「…お、おう。ずいぶんと早い回答だな」

武道家「ただお互いに、気が合ってる感じなだけだ」

剣士「いい雰囲気じゃねえかよ」

武道家「別に相手もそれ以上望んでいないだろ」


魔道士「でも、武道家…今のあの子は…」

647: 2014/07/19(土) 20:09:17 ID:1cermemw
 
武道家「待て、それ以上言うな。俺だって分からないわけじゃない」

魔道士「!」


武道家「万が一、そうなったら…俺はあいつを組手だろうが殴れなくなる。戦えなくなる」
 
武道家「あいつは、戦ってくれる俺のことを…そうなんだ。そういうことだ」 


剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…」

僧侶「…」

648: 2014/07/19(土) 20:10:26 ID:1cermemw
 
武道家「…んなことより、お前らはどうなんだよ!」

魔道士「えっ」ドキッ

剣士「ん?」


武道家「俺ら知ってるんだぜ?お前、ずっと魔道士の部屋で勉強教えて貰ってるんだろ!」

武道家「それに放課後もたまたま遊びに行ってるんだろ?おぉ!?」


魔道士「な…なんでっ!」
 
武道家「い~い雰囲気なのはお前らだろ!」

魔道士「そ、そんなんじゃないし!!」

武道家「どーだかねー!」

魔道士「うるっさーい!!剣士も何とか言ってやってよ!!」


剣士「…魔道士、可愛くなったな」キリッ

649: 2014/07/19(土) 20:13:51 ID:1cermemw
 
魔道士「…~っ!!」カァァ

魔道士「だ…大火炎魔法っ~~!!!」

ピカッ…!!


剣士「へ?」

武道家「はい?」

僧侶「えっ…」

生徒たち「えっ」
 


ドゴゴォォォォオオオンッ!!!

グラグラグラッ…!!

………
……

650: 2014/07/19(土) 20:14:38 ID:1cermemw
That's where the story begins!
――――――――――――――――
【剣士「冒険学校…!武道家「2年生」】
――――――――――――――――
Don't miss it!

657: 2014/07/21(月) 22:28:16 ID:Jkvmi/g2
 

…………
…………………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日・朝 食堂 】


剣士「教室が爆発した」

魔道士「…」

剣士「なんて言っても、世間一般じゃ信用しないだろうな」ハハハ!

魔道士「はぁ…何してるんだろ私…」


カチャカチャ…ガタガタ…ストンッ

武道家「うーっす」


剣士「ういっす」

魔道士「おはよ~」

658: 2014/07/21(月) 22:29:18 ID:Jkvmi/g2
 
武道家「ちゃんと起きれたんだな、剣士」

剣士「当たり前だ」


魔道士「2年生になって、相部屋じゃなくなったんだっけ?」

剣士「そうそう。今年の1年は少ないらしくて、空き部屋が出来たからな」

魔道士「へぇ…、寂しくなったんじゃない?」

剣士「互いの部屋結構行き来してるし、今までとそんな変わった感じはないな」

魔道士「そっかぁ」

 
武道家「あれ、そういえば僧侶はいないようだが…また寝過ごしか」

剣士「トイレいってるよ」

武道家「あぁ、なるほど」

659: 2014/07/21(月) 22:30:15 ID:Jkvmi/g2
 
トコトコ…ポンッ

乙女格闘家「武道家♪」

武道家「おっ」

乙女格闘家「昨日もありがとっ。楽しかったよ」

武道家「お、おう…」


剣士「…」ジロジロ

魔道士「…」ジロジロ


乙女格闘家「昨日はちょっと散らかってたから、今度部屋に来る時はちゃんとー…」

武道家「うおおおっ!!急に腹が!」

乙女格闘家「えっ、だ…大丈夫!?」

武道家「これは大変だ、トイレにいってくる!」

660: 2014/07/21(月) 22:31:09 ID:Jkvmi/g2
 
乙女格闘家「う、うん!ついてく!」

武道家「い…いや大丈夫だから…」

乙女格闘家「だめ!ほら早く、肩貸すから!」

武道家「あ、はい」

トコトコトコ…ヨロヨロ…


剣士「…」

魔道士「…」


剣士「なんか、なぁ…」

魔道士「うん…」

661: 2014/07/21(月) 22:31:53 ID:Jkvmi/g2
 
タッタッタッ…

僧侶「ただいま!」

剣士「お帰り」

僧侶「…武道家くんが今、肩組んで乙女格闘家さんとどっか行ってたけど…」

剣士「神々の遊びだ」

僧侶「!?」


魔道士「バカな事教えないの」

剣士「はい」

魔道士「武道家とか乙女格闘家が楽しそうなら何より。でも何かさ…、少し寂しいな」

剣士「寂しい?」

662: 2014/07/21(月) 22:32:36 ID:Jkvmi/g2
 
魔道士「大事な仲間が、離れていっちゃってるみたいで…」

剣士「はっはっはっ、あいつが離れるわけないだろう」

魔道士「そりゃ私もそう思うけど、そういうことじゃなくてさ」

剣士「…どういうことだ?」

魔道士「何ていうんだろ…難しいけど…」

剣士「…」


…ガタァンッ!!!


剣士「ん…何かうるせぇ音が」

魔道士「向こう側が騒がしいみたい」

僧侶「誰か喧嘩してるっぽい?…って、あの人って!」

663: 2014/07/21(月) 22:33:32 ID:Jkvmi/g2
 
剣士「ん~…」ジー


三流騎士「三流、三流…うっせぇんだよコラァ!!」

???「…」


剣士「二流騎士…じゃないや、卒業できなくて三流騎士だっけか」

魔道士「変わってないなぁ…、また暴れてる。ってか同級生になるんだ…」

剣士「まぁどうでもいいけど、相手にしてんの誰だ?見たことねえぞ」

魔道士「1年生じゃない?」

剣士「ふむ…」

664: 2014/07/21(月) 22:34:23 ID:Jkvmi/g2
 
三流騎士「何とか言ってみろコラァ!!」

???「…うぜぇ」

…バキィッ!!

三流騎士「うげぇっ!!」

ゴロゴロッ!ドシャアッ…


剣士「あ、吹き飛ばされた」

魔道士「あの人、今年も卒業出来ないんじゃないの…」

僧侶「他人事ながら少し心配にもなってくるね」アハハ…


???「…」クルッ

コツコツコツ…

665: 2014/07/21(月) 22:34:54 ID:Jkvmi/g2
 
剣士「ん、なんかあいつ…こっちに来てね?」

魔道士「…来てる」

僧侶「っていうか、剣士クン睨んでない?」

魔道士「剣士、何かしたの?」

剣士「い、いや…知らねえぞ…」


コツコツコツ…ピタッ

???「…剣士先輩っすよね」

剣士「お…おう」


豪剣士「…自分は豪剣士っていいます。先輩の噂は聞いてます」

剣士「…そ、そうか」

666: 2014/07/21(月) 22:35:31 ID:Jkvmi/g2
 
豪剣士「…」ジロジロ

剣士「…」

豪剣士「…」ジロジロ

剣士「…」


ガチャッ…!!タッタッタッタッ…

武道家「ひーっ、参った参った!ただいま!」

魔道士「あ、お帰り」

僧侶「お帰りなさい」


剣士「…」

豪剣士「…」ジロジロ


武道家「…どういう状況、これ」

667: 2014/07/21(月) 22:36:08 ID:Jkvmi/g2
 
豪剣士「…」

剣士「…」


魔道士「こういう状況」

武道家「…なるほど」

僧侶「わかるんだ」


豪剣士「…先輩」

剣士「何かね」

豪剣士「お願いがあるんですけど」

剣士「…言ってみな」

668: 2014/07/21(月) 22:36:51 ID:Jkvmi/g2
 
豪剣士「…俺と手合せしてくれませんか」

剣士「…」


豪剣士「貴方の強さは、知っていますんで」

豪剣士「だから、是非一度…お願いしてぇんですけど」ギロッ


剣士「…いいぞ。いつでも来い」

豪剣士「では、また会った時に」クルッ

カツカツカツ…

669: 2014/07/21(月) 22:37:21 ID:Jkvmi/g2
 
剣士「…おっかねぇやつ」

魔道士「ああいうのに、よく睨まれるわねぇ」

剣士「面倒くせぇなぁ」ハァ


武道家「…さて、そろそろ学校行かないと遅刻すんぞ」

剣士「おろ、もうそんな時間?」

武道家「2年生の最初から遅刻してたら、世話ねーぞ」

剣士「わかってるよ。んじゃ…行くか」ガタッ


カツカツカツ……

…………
………

670: 2014/07/21(月) 22:37:56 ID:Jkvmi/g2
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 冒険学校 2年生教室 】

キーンコーンカーンコーン…

…ガラッ!

 
冒険先生「おはよう、諸君!」


全員「おはようございます!」


冒険先生「うむ、いい返事だ。今日から2年生として本格的にスタートするわけだが…」

冒険先生「実践はもちろん、歴史や勉学ももっと深く教えるつもりだから、よろしくな!」


剣士「頭痛い。早退する」

武道家「奇遇だな、俺もだ」

魔道士「早いから」

671: 2014/07/21(月) 22:38:47 ID:Jkvmi/g2
 
冒険先生「相変わらずだな…」

冒険先生「仕方ない、歴史の授業は簡単に分かりやすく教えてやろう…」ハァ


剣士「うい」


冒険先生「今日の内容は、魔法の歴史についてだ」

冒険先生「さすがの剣士と武道家でも、"西方大陸と魔法の繋がり"は知っているだろう?」


剣士「…お、おう?」

武道家「…おう」


冒険先生「…」

冒険先生「誰か、答えられる人~…」


魔道士「は、はい…」ビシッ

冒険先生「剣士と武道家の代わりに魔道士が答えるとは…。1年生の頃と何もかわっとらん…」

672: 2014/07/21(月) 22:39:22 ID:Jkvmi/g2
 
剣士「はっはっは」

武道家「わっはっは」


魔道士「いや面白くないから」

魔道士「いい?西方大陸という大陸があって、その大部分は、世界の中で最も魔力の濃度が凄く高いの」

魔道士「それは中央軍の調査隊で計測した結果なんだけど…」

魔道士「まだ仮定の段階とはいえ、西方大陸が魔力の生まれた場所とされてるわけ」


剣士「へぇー…」

魔道士「でも、詳細がなかなか調べられないの」

剣士「何で?」

魔道士「…エルフ族との関わりのせい」

剣士「…エルフ族?」

673: 2014/07/21(月) 22:40:03 ID:Jkvmi/g2
 
魔道士「西方大陸のその濃度の高い地区には、エルフ族っていう人間と一緒の種族が住んでいてね」

魔道士「人間よりも魔力濃度が濃い地域でも住んでいられる特性を持っていて…」

魔道士「さらに幸か不幸か、種族としては少ないのに"非常に美しい容姿"を持ってるの」


剣士「いいじゃん、美しい容姿」

魔道士「…美しい容姿だけならね。人間と比べて、種族としては極端に人口が少ないのが問題」

剣士「…何でだ?」

魔道士「少し前まで、人間たちが美しいエルフ族を狩ってたの。奴隷化、ね」

剣士「!」


魔道士「…今は少し落ち着いたんだけど」

魔道士「でも、まだまだその確執が残ってて、人間には非協力的なのよ」

魔道士「禁止された今でも、奴隷狩りが横暴しているし…」

674: 2014/07/21(月) 22:41:49 ID:Jkvmi/g2
 
剣士「へぇ」

武道家「奴隷化ねぇ……」


冒険先生「見事な説明だ」

冒険先生「西方大陸をもっと調べられれば、魔力の歴史や人類の歴史が分かるとされている」

冒険先生「だが、魔道士の言った通り…エルフ族と人間の関係は最悪だ」

冒険先生「そのせいで、まだまだ西方大陸の調査が進まないんだ」


剣士「なるほどなぁ…。でも、魔力濃度が高い地区なのにエルフ族は平気なのか?」

剣士「あまりにも濃度が濃いと、魔力酔いとか起こすとかいってなかったっけ。エルフ族は大丈夫なんだな」


冒険先生「ほお、勉強しているな」

冒険先生「エルフ族の歴史は解き明かされていないが…」

冒険先生「長いことその地区に住んでいた人間が進化したものだと言われている」

冒険先生「その辺の謎も含め、解き明かす為に人間とエルフ族がより良い関係を築いていかねばならないだろう」

675: 2014/07/21(月) 22:42:21 ID:Jkvmi/g2
 
武道家「世界は広いな。まだまだ知らない事がいっぱいだ」

魔道士「いや誰でも知ってることで」
 
僧侶「…さすがだよ、二人とも」


冒険先生「まぁ…今後の期末試験にも出るから覚えておけよ」


剣士「お…おう」

武道家「覚えとく…」

676: 2014/07/21(月) 22:42:56 ID:Jkvmi/g2
 
冒険先生「では、冒険術の新たなステージの授業を始める」

冒険先生「まずは、教科書を開いてー…」


剣士「あ、教科書忘れた。魔道士見せて」

魔道士「…」


…………
……

677: 2014/07/21(月) 22:43:58 ID:Jkvmi/g2
 
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

684: 2014/07/23(水) 19:57:42 ID:O1cRV8wM
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日・登校中 】


ザッザッザッ…

剣士「ふわぁ…」

魔道士「…剣士、そういやさ」

剣士「ん?」

魔道士「ずっと大戦士先生に稽古つけてもらってるよね?もう1年になるよね」

剣士「もうそんなになるか」


魔道士「少しは成長したの?剣士、大戦士先生のこと"大戦士兄(にい)"なんて呼んで慕ってるみたいで…」

魔道士「結構、私も稽古を見学させてもらってるけど、ただ大剣もって振ってるだけでイマイチ強くなってる感じが…」

685: 2014/07/23(水) 19:58:15 ID:O1cRV8wM
 
剣士「なんか、技を磨くには基本が必要とか言ってさぁ」

剣士「持ち方の基本から、腰の回転、構え動作とか色々教わってる」


魔道士「…意外」

剣士「どういう意味かね」

魔道士「もっと、ハデな技を教えろー!とか騒いでるのかと」


剣士「いやさ、あの大戦士兄がスゲェんだよ。持ち方ひとつ変えただけで、威力が変わるのが分かるんだ」

剣士「ずっと我流でやってたからってのもあるが…」


魔道士「その勢いで、魔法ももうちょっと覚えてくれればなぁ?」チラッ

剣士「お前と一緒にずっと勉強してるだろ!基本の火魔法くらいは覚えたんだぜ?すげえだろ!」

魔道士「1年がかりでやっと小火炎魔法って…」

686: 2014/07/23(水) 19:59:46 ID:O1cRV8wM
 
剣士「苦手なのは苦手なの!」

魔道士「まっ、剣士は剣士の得意な成長があるしイイと思うよ」

剣士「…お前との魔法の勉強はやめねえぞ?」

魔道士「もちろん、もっとしっかり覚えるまで教えるつもり」

剣士「おうよ」


魔道士「それにしても最近、僧侶も武道家も毎日朝練で…たまにしか一緒に登校しなくなっちゃったね」

剣士「そうだなぁ、ここんところずっと二人ばっかで登校とか帰宅することのほうが多くなったよな」

魔道士「…嫌?」

剣士「まさか。楽しいぜ?」

魔道士「そっか♪」

687: 2014/07/23(水) 20:00:44 ID:O1cRV8wM
 
ザッザッザッ…

???「もしもし、そこのお二方」


剣士「ん?オレらのこと?」


???「はい、そうです」

???「二人の時間を邪魔して申し訳ですが、少しよろしいでしょうか?」


剣士「ふ、二人の時間て。何か用スか?」

688: 2014/07/23(水) 20:01:24 ID:O1cRV8wM
 
中央軍人「ごほんっ。自分は、中央軍の部隊に属している者なのですが…」

中央軍人「さっき、聞き間違えでなければ"大戦士殿"の名前が聞こえまして…どうでしょう?」


剣士(中央軍て、世界の秩序を保つとか、武装のオッサンとか大戦士兄のだっけ。まぁ…)

剣士「……確かに、言ったけども」


中央軍人「ということは、君たちは大戦士殿の生徒でしょうか?」

剣士「そうだけど…。あんた、大戦士兄の知り合い?」

中央軍人「これは失礼しました。自分はもと、大戦士殿の指揮した隊の副長をやらせていただきまして…」

剣士「へぇ…」

中央軍人「大戦士殿にお話しがあり、この町へ訪れたのですが…。冒険学校はどこへ行けばいいやら…」

剣士「冒険学校はすぐそこだぜ。つーか、今から行くところだったし一緒に行く?」

中央軍人「かたじけない」

剣士「いいよ別に」

689: 2014/07/23(水) 20:02:04 ID:O1cRV8wM

魔道士「…」

魔道士「大戦士先生の部下でわざわざ訪ねてくるって事は、大戦士先生と仲がいいんですか?」


中央軍人「いえいえ、そこまでではないですが。ちょっと問題が発生しまして」

魔道士「問題ですか?」

中央軍人「あまり大きな声ではいえないのですが、大戦士殿が絡んでいたので、詳細を一応お伝えせねばと思いまして」

魔道士「へぇ…」


剣士「どんな問題なんだ?」ズイッ

魔道士「よ、よく聞けるわね」

剣士「気になるじゃん」


中央軍人「はは、確かに気になりますよね」

中央軍人「…道を教えてくれるお礼に、少し話しますと、西方大陸でちょっと…」

690: 2014/07/23(水) 20:02:37 ID:O1cRV8wM
 
剣士「西方大陸って…、魔力の謎とか、エルフ族の住んでるっつーとこか」

魔道士「ちゃんと覚えてて偉い偉い」

剣士「バカにすんな!」

魔道士「バカじゃん」

剣士「うっせー!」


中央軍人「ははは。まぁ…その件に関して大戦士殿が絡んでたので、一応ご報告に来たわけです」


剣士「なるほど。っていうか、大戦士兄が目的なら、学校へ行くまでもないかも」

中央軍人「はい?どういうことでしょうか」

剣士「いつもあの人、俺らみたくギリギリに学校に到着するからー…」


タタタタタタッ…!!

大戦士「急げ少戦士!遅刻するぞぉぉ!」

少戦士(童子戦士)「師匠が遅いんですよ!」

691: 2014/07/23(水) 20:03:10 ID:O1cRV8wM
 
剣士「…ほら」

中央軍人「…本当ですね。昔と全然変わっていない」

魔道士「昔からあんなんだったんだ…」


タタタタタッ…!!

大戦士「おっ、剣士くん!」

剣士「大戦士兄、あんたに用事あるって人来てるよ」

大戦士「ん?」


中央軍人「…」ペコッ


大戦士「あ…!し、少尉!?」

692: 2014/07/23(水) 20:03:40 ID:O1cRV8wM
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 近くのカフェ 】


魔道士「…で、学校へ行くはずが何故ここに」

剣士「大戦士兄が公認にしてくれるっていうし、いいじゃん」

大戦士「うむ、遅刻扱いにしないように言っておくし、安心してくれ」


少戦士「僕はチョコレートパフェが食べたいなぁ」

大戦士「今、少尉のやつにメニュー注文してもらってるから…少し待っててくれ」


魔道士「っていうか、何で私たちまで…」

大戦士「俺さぁ、あの人苦手なんだよねぇ…」ポリポリ

魔道士「どうしてです?」

大戦士「…堅い」

魔道士「あぁ…」

693: 2014/07/23(水) 20:04:40 ID:O1cRV8wM
 
大戦士「昔からなんだけど、俺がこんなんだしさぁ…」

大戦士「何かと突っかかってきて、二人きりになるの苦手なんだよ」ハァ


剣士「確かに、大戦士兄はどっちかっつーと俺寄りだよな」ハハハ

大戦士「そうそう。適当でいいんだよ」

剣士「はっはっは!」


中央少尉(中央軍人)「何が適当でいいんですか、何が!」ドンッ!


大戦士「出たー!」

中央少尉「はい、コーヒー3つに…お弟子さんにチョコレートパフェです」

カチャカチャ…コトンッ

694: 2014/07/23(水) 20:05:16 ID:O1cRV8wM
 
大戦士「はいはい、どーもどーも」

大戦士「で…何か用があって来たんだろ?面倒なのは勘弁な」


中央少尉「…あまり、人のいる場所で出来る話じゃないのですが」

大戦士「この子らは信用していいよ」

中央少尉「そういう問題ではありません。軍事機密としてのお話ですので」

大戦士「じゃあ、話きかなーい」

中央少尉「子供ですか、貴方は!!」

大戦士「軍事機密っつって、本当に機密らしい話だったことねーんだもん」

中央少尉「軍部の中で話をすることは、全て機密事項に値しますので」

大戦士「だからそれが堅いっていうんだよ…。こいつらに聞かれても大丈夫だって」チラッ

695: 2014/07/23(水) 20:06:16 ID:O1cRV8wM
 
カチャカチャ…

少戦士「…」ハグハグ

剣士「…いいな、俺にもパフェ少しくれよ」ジー

少戦士「自分で頼んで下さいよ」プイッ

剣士「ひでぇ」


魔道士「…少し私も食べたいし、剣士、半分こする?」

剣士「お、いいね」


少年戦士「ま、魔道士さん…アイスクリームあげますよ」

魔道士「え、やった♪」

剣士「おいこら」

696: 2014/07/23(水) 20:07:22 ID:O1cRV8wM
 
大戦士「…」

中央少尉「…」

大戦士「…安心しろって、うん」

中央少尉「はぁ…、では、小声で」

大戦士「おう、何?」


中央少尉「…貴方が調査に加わった西方大陸の魔力計測調査、覚えておりますよね」

大戦士「エルフ族に殺されかけたやつな。二度と行きたくねぇ」

中央少尉「実は、大戦士殿が軍から離れてから…再び調査を行いました」

大戦士「で?」

中央少尉「…超濃度、95%です」

大戦士「…はい?」

中央少尉「あの時、大戦士殿が参加された調査では魔力密度60%。高濃度数値でしたよね」

大戦士「あぁ、確かそうだった」

697: 2014/07/23(水) 20:08:54 ID:O1cRV8wM
 
中央少尉「2度目の第二調査隊での計測は、超濃度の95%の数値を示しました」

中央少尉「元々魔力に強いエルフ族ですので大事にはなりませんでしたが…人間なら即氏量の値です」


大戦士「超濃度の原因は?」

中央少尉「不明です」

大戦士「…」

中央少尉「大戦士殿を含む、当時、調査を行ったメンバー全員に一応この話はしました」

大戦士「誰の命令だ?」

中央少尉「…武装大佐です」

大戦士「!」


中央少尉「武装大佐は1年前に軍へ復帰し、調査隊として西方大陸へ向かいました」

中央少尉「その時の検査結果なので、信じていただけるでしょう」

698: 2014/07/23(水) 20:09:26 ID:O1cRV8wM
 
大戦士「武装大佐が復帰してたとは…。で、俺に軍へ戻れっつーのか?」

中央少尉「意図までは分かりませんが…」

大戦士「…確かに、その超濃度の数値はおかしいな」

中央少尉「数日前に、その付近に住むエルフ族へ身体への異変がないか調べるため…第三調査隊も出発しました」

大戦士「その中にも武装大佐が?」

中央少尉「いえ、中央軍本部で指揮をとっています」

大戦士「本当に武装大佐が再び指揮を…」


…ズイッ

剣士「…難しい話してるな」モグモグ

少戦士「ぼ…僕のパフェが一口で…」プルプル


大戦士「…大人の話だよ」

剣士「珍しく、眼光が鋭いぞ大戦士兄」

699: 2014/07/23(水) 20:10:31 ID:O1cRV8wM
 
大戦士「おっと、失礼」ニコッ

剣士「聞いてる限りじゃ、そこまでの事じゃないように思えるんだが。ただ95%ってだけだろ?」

大戦士「気にすることはないよ。さて、そろそろ学校へ行っててもいいぞ」

剣士「早くね?」


大戦士「まぁまぁ、料金は俺が払っとくから、先に戻っといてくれ」

大戦士「冒険先生には、俺が君たちを誘ったから遅刻にしないでって伝えといて」


剣士「…わかった」

大戦士「じゃあ、少戦士も一緒に学校へいっててくれ」

少戦士「わかりました、師匠」

大戦士「うん。じゃあ、またあとで」

700: 2014/07/23(水) 20:11:32 ID:O1cRV8wM
 
スクッ…タッタッタッタッタッ…


大戦士「…」

中央少尉「…」


大戦士「…で、本題は?」

中央少尉「…」


大戦士「人は払っただろう。武装大佐が自ら指揮を執るのは滅多にないのは分かってる」

大戦士「それに、お前が本当の何かを隠してることもな」


中央少尉「さすがですね。真剣な時は真剣に聞いてくれる」

大戦士「いいから早く本題を教えろって。俺だって学校の仕事があるんだから」


中央少尉「…はい」

中央少尉「実は…、第二調査隊が魔力の計測に行ったのは理由があるんです」

701: 2014/07/23(水) 20:15:55 ID:O1cRV8wM
 
大戦士「なんだ?」

中央少尉「西方大陸で、大地震がありました。震度、原因は不明です」

大戦士「被害は」


中央少尉「震源地にいたエルフ族の村が、壊滅」

中央少尉「すぐさま中央軍が調査へ向わせました。ですが…誰の姿もなかったそうです」

大戦士「…どういうことだ?」


中央少尉「確かに地震が起きる寸前まで、そこの村にエルフ族がいました」

中央少尉「ですが、地震が起きた後に行くと…村には誰もいなくなってたそうです」

702: 2014/07/23(水) 20:17:18 ID:O1cRV8wM
 
大戦士「地震直後に、村全体が神隠しってことか。避難した可能性は?」

中央少尉「その時点での周辺調査では、馬一匹の足跡すら」

大戦士「…ふむ」


中央少尉「中央軍はこれに対して、小隊を救助に向かわせました」

中央少尉「小隊は再び、震源地付近まで近づいたのですが…」

中央少尉「突如、超濃度の魔力が発生し、魔力酔いの症状を起こしまして…」

703: 2014/07/23(水) 20:17:51 ID:O1cRV8wM
 
大戦士「…近づけなかったわけか。で、その近づけない理由のために第二調査隊の結果…」

中央少尉「95%の数値、です」

大戦士「地震との関連性は?」

中央少尉「不明ですね」

大戦士「…」

中央少尉「武装大佐の命令で、念のため…当時のメンバーに心当たりがないかを聞いてほしい、と」

大戦士「…何もないな。あの時は普通に計測して、普通に戻っただけだった」


中央少尉「そうですか、有難うございました」ペコッ

中央少尉「それでは自分はこれで、中央へ戻ろうと思います」


大戦士「お、もう行くのか?」

中央少尉「時間が時間ですので。ご協力、ありがとうございました」

704: 2014/07/23(水) 20:18:25 ID:O1cRV8wM
 
トコトコトコ…
 
大戦士「…中央少尉!」

中央少尉「はい?」クルッ

大戦士「お前、まだまだだなぁ…。精進しろよ」ククク

中央少尉「何がでしょうか?」

大戦士「後ろ」


中央少尉「…?」チラッ

中央少尉「!」ビクッ


…コソッ

剣士「…あっ、バレた!」

魔道士「だから言ったじゃん!」

少戦士「は、早く学校に!」

タッタッタッタッ…

705: 2014/07/23(水) 20:19:05 ID:O1cRV8wM
 
大戦士「はぁっはっはっは!」
 
大戦士「…ま、俺から言っとくから安心しとけ」


中央少尉「…はぁ」


…………
………

706: 2014/07/23(水) 20:20:19 ID:O1cRV8wM

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 冒険学校の一角 】


剣士「…」

魔道士「…」

少戦士「…」


大戦士「ま、聞いてしまったのは仕方ない」

大戦士「だが、言いふらすんじゃないぞ?」

707: 2014/07/23(水) 20:22:00 ID:O1cRV8wM
 
剣士「わかってるよ」

大戦士「いつものどうでもいい話かと思ったら、ちょっと今回は話が違うようでな…」

剣士「やっぱり、異例のことかなんかなのか?」

大戦士「計測だけがおかしいならいいんだが、神隠しとなると…な」

剣士「"地震"と"魔力の急激な濃度上昇"、それに"村全体の神隠し"か…」

大戦士「ま、西方大陸は遠すぎて、首も突っ込めないだろう」


魔道士「…」

魔道士「あっ!」

魔道士「ちょ、ちょっといいですか先生…」


大戦士「ん?」

魔道士「実は、2年生は修学旅行というものがあってですね…」

大戦士「ふむ」

魔道士「それが…西方大陸沿いのリゾート地区の海で…」

708: 2014/07/23(水) 20:22:54 ID:O1cRV8wM
 
大戦士「…」

大戦士「…いつ、行くのかな?」


魔道士「もう少し先の7月中旬には…」

大戦士「…」

剣士「…」

少年戦士「…」


大戦士「いいか剣士これは絶対秘密事項だとにかく首を突っ込むな話を忘れろ武道家とかにも話すんじゃないぞ」ダラダラ

剣士「大戦士兄、早くて何言ってるかわかんねーよ!」

大戦士「ああぁぁ、それを知ってたら、お前らが話聞いてた事を無視しなかったのに!」ワシャワシャ

709: 2014/07/23(水) 20:23:59 ID:O1cRV8wM
 
剣士「…俺らが、修学旅行中にクビを突っ込むような物言いじゃないか」

大戦士「…突っ込むだろ」

剣士「えへっ♪」


大戦士「本気でやめるんだ。魔力濃度の上昇で発注された軍のクエストは、まともだったことがない」

大戦士「ありゃ災害…天災だ。今回もその繋がりだと思うが…地震が引っ掛かる」


魔道士「過去にも、魔力濃度が原因で起きた事案があるんですか?」

大戦士「かなり凶悪な魔獣が魔力を身に纏って現れ、村人全員が食われたなんて話、珍しくもない」

魔道士「…っ」ゾクッ

大戦士「だから、やめろと言ってるんだ。いいか、この話は誰にもー…」ハッ

710: 2014/07/23(水) 20:25:06 ID:O1cRV8wM
 
ボソボソ…

武道家「…まじか」

僧侶「怖いね…」

剣士「だろ?7月に修学旅行だし、俺らで調査でも…」


大戦士「って、おい!!」


剣士「あっ、バレた」

大戦士「…今回の行先は、別の場所にしてもらうよう、冒険先生らに相談しにいってくる」クルッ

剣士「ちょ、ちょいちょい!本気!?」


大戦士「君らがそういうのを恐れないのは知ってる」

大戦士「確かに君たちは強い…が、それは勇気じゃない。自殺と一緒だ!」

711: 2014/07/23(水) 20:25:49 ID:O1cRV8wM
 
剣士「そ…そんな怒鳴ることじゃないだろ…」

武道家「だ、大戦士さんがそこまで怒るのは珍しいな」


大戦士「絶対によすんだ。君たちが少しでも行くというのなら、今回の旅行は別の場所か中止を申し込む」


剣士「…わかったよ。大人しくするよ」

大戦士「本当だな?」

剣士「おう」

大戦士「それならいいんだ」

剣士「…」


大戦士「原因が出ているならまだしも、何が出てもおかしくない状況なんだ」

大戦士「みすみす生徒を頃すようなことは絶対にさせるものか。特に、君たちはね」

712: 2014/07/23(水) 20:26:22 ID:O1cRV8wM
 
剣士「…大戦士兄は、こういう調査に携わってたんだろ?」


大戦士「俺の担当がそういうのだったからなぁ…。当時は隊として数百人いたけど…」

大戦士「同窓会を開こうとしても、集まるのは手で数える程くらいしかいないといえば恐ろしさが分かるね?」


剣士「…」


大戦士「…運だけで残ったといったら皆に失礼になるから、あえて言うけど」

大戦士「俺は、俺が磨いてきた強さがあったから生き残ったと思ってる」

大戦士「そのうえで、今回の案件は手を出すなということさ」


剣士「大戦士兄は、今回の事案で軍へ協力しないのか?」

大戦士「中央軍に任せておけばどうとでもなるさ」

剣士「ふーん…」

713: 2014/07/23(水) 20:27:51 ID:O1cRV8wM
 
大戦士「…だ、が。心配だから、今回の旅行は君らのパーティの監視として俺がつくからな」

剣士「そ、そこまで心配しなくても」

大戦士「君らを教えてきたのは誰だと思ってるんだ…」

剣士「はは…」


キーンコーンカーンコーン…


大戦士「おっ、始業だな」

剣士「あ…次の授業が始まっちまう」

大戦士「じゃあほら、教室戻って。このことは本当に他言無用だからな!」

剣士「分かってるよ!」


魔道士「じゃ、大戦士先生失礼します」

武道家「また」

僧侶「失礼します」ペコッ

タッタッタッタッ…

714: 2014/07/23(水) 20:28:46 ID:O1cRV8wM
 
剣士「…」

武道家「どうすんの?」

剣士「すげー気になるけど、大戦士兄があそこまで言うってことは…ダメなやつなんだろ」

武道家「聞き分けいいな」

剣士「まぁ、仕方ないだろ。さすがになぁ…」


魔道士「じゃ、次の授業に集中して頑張らないとね!」

剣士「わかってますーっつーの!」

僧侶「次の授業は共通魔法だよ~」


剣士「げっ…」

武道家「げっ…」

…………
………

715: 2014/07/23(水) 20:29:22 ID:O1cRV8wM
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

716: 2014/07/23(水) 20:30:28 ID:O1cRV8wM
 
…それから、時間は何事もなく過ぎていった。

剣士は、大戦士との稽古や魔道士との勉強を楽しみ、
 
武道家は乙女格闘家と実力を高め合い、

僧侶は魔法先生と聖魔先生に気に入られてか…魔法のレベル上げに勤しんだ。


そして、いよいよ7月中旬。

修学旅行の日を迎える―…

722: 2014/07/25(金) 21:08:16 ID:AxSnzNAM
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 7月中旬・西海岸行き船着場 港町 】


ザザァン…ミャアミャア…

冒険先生「全員集合しろー」パンパン

ザザザッ…

全員「…」


冒険先生「前もって情報は伝えただろうが、確認しとくぞ」

冒険先生「予定は5泊6日、船で往復2泊分なので、向こうの滞在は3泊予定だ」

冒険先生「自由行動が大半だが、向こう側の西海岸街から出るのだけはダメだぞ」

冒険先生「西大陸含め、あまり友好的ではないエルフ族の村もあるからな」

723: 2014/07/25(金) 21:08:54 ID:AxSnzNAM
 
剣士「ずっと思ってたんだけど、エルフ族がいるのに…西海岸街なんかいくのか?」


冒険先生「西海岸街は、人間側がエルフ族との関係を保つために、優秀な中央軍の面子が常駐している」

冒険先生「難易度の高い依頼を請け負い、エルフ族の助けとなっており…」

冒険先生「その為、目の前で依頼の請負や街で冒険者の姿を沢山見ることが出来るからだ」


剣士「なるほどなー」

冒険先生「それじゃ、早めに船に乗るぞ。部屋の割り振り通りに、各自待機すること!」


全員「はいっ!」

………
……

724: 2014/07/25(金) 21:09:51 ID:AxSnzNAM
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 船の中 客室 】

ボォォオ…

剣士「…で、お前らと一緒の部屋か」

武道家「不満か」

僧侶「このメンバーだと、魔道士さんがいないのがちょっと寂しいね」

武道家「まぁさすがに少しな…」

僧侶「そうだよね…」

725: 2014/07/25(金) 21:10:32 ID:AxSnzNAM
 
剣士「女子はもともと少ないから、個室なんだろ?」

武道家「らしいな」


剣士「だよな!」

剣士「…そうか。そうかそうか」ニヤニヤ


武道家「…行くつもりか」

剣士「だ、誰もそんな事いってねーだろ!」

武道家「顔に出てるぜ!」


剣士「何だと…、お前こそ乙女格闘家のところに行きたいんだろ…おぉ?」

武道家「誰もそんな事いってねえだろうが!」

剣士「顔に出てるぜ!」


武道家「…お?」

剣士「あぁん?」

726: 2014/07/25(金) 21:11:08 ID:AxSnzNAM
 
僧侶「ち、ちょっと二人とも~!」

…コンコン

僧侶「!」

僧侶「お客さんだよ、先生かも!ケンカしてたら怒られるよ!」


剣士「げっ」

武道家「やべっ!」


…コンコン

僧侶「どなたですか、どうぞー!」

727: 2014/07/25(金) 21:12:08 ID:AxSnzNAM
 
ガチャッ!

魔道士「あっ、いた」

乙女格闘家「良かった~」


剣士「あ、魔道士」

武道家「ん、乙女格闘家」


魔道士「どうせ時間もあるんだし、勉強の続きしないかなーと思って」

乙女格闘家「わ、私も…。部屋で少し鍛錬でもどうかと…」


剣士「…お前の部屋なら、なんてね」
武道家「お前の部屋なら、なんてね」


剣士&武道家「むっ」

728: 2014/07/25(金) 21:12:45 ID:AxSnzNAM
 
魔道士「…ね?言ったでしょ」

乙女格闘家「はは、本当だったね。まぁ最初からその予定だったんだけど」

魔道士「ほら、じゃあ行こっ、剣士」

乙女格闘家「武道家、行こう」


剣士「おっ、わかった」

武道家「仕方ねぇなぁ…」


僧侶「あ…。い、行ってらっしゃい」


剣士「僧侶、んじゃあとで戻ってくるからなー」

武道家「部屋の鍵とか自由に持ち出しといていいから」

729: 2014/07/25(金) 21:14:01 ID:AxSnzNAM
 
僧侶「あ、うん…」


ワイワイ…

剣士「教科書もってきてんの?」

魔道士「あ、それは…持ってきてないけど…。ま、まぁなくても…」

武道家「…部屋って狭くね?鍛錬とか難しくないか」

乙女格闘家「や、休むのも鍛錬とか…なんて…」

ガチャッ…バタンッ!

730: 2014/07/25(金) 21:14:43 ID:AxSnzNAM
 
僧侶「…」

僧侶「…」


シーン…


僧侶「わ…、わかってたけど…」

僧侶「辛いなぁ…。」

僧侶「…。」

僧侶「…。」


僧侶「甲板から、海でも眺めよう」

…………
……

731: 2014/07/25(金) 21:15:20 ID:AxSnzNAM
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 甲 板 】

ザザァンッ…ボォォ…

ジャバッ…ズザァンッ!


僧侶「はぁー…」

僧侶「…」

僧侶「何とも言えないなぁ…」


…ポンッ

僧侶「!?」ビクッ

732: 2014/07/25(金) 21:16:11 ID:AxSnzNAM
 
魔術賢者「…どうした、一人か」

僧侶「魔術賢者くん!」

魔術賢者「いつもの…、やかましい面子はどうした…?」

僧侶「やかましいって…。みんなは別の場所だよ」ハァ

魔術賢者「そうか…、一人か…」

僧侶「君だって一人じゃん」


魔術賢者「…あまり、新しいパーティに馴染めない」

僧侶「2年生になってもう3か月近くだよ?」

魔術賢者「話題がない…。みんな、僕を闘術騎士のイメージで見る…」

僧侶「…あのパーティに入ってたしね。でもさ、なんで闘術騎士のパーティにいたの?」

733: 2014/07/25(金) 21:16:44 ID:AxSnzNAM
 
魔術賢者「…正直いえば、剣士たちを面白く見てなかった」

僧侶「…」


魔術賢者「入学当時からうるさかったし…。うるさいの苦手。今はもう…そんな事、思ってないけど…」

魔術賢者「それと…、僕はあまり人に話かけられなかった…」

魔術賢者「そんな時に話かけてくれたのが…、闘術騎士だったから…」


僧侶「なるほどね。確かに…、気持ちはわかる気がする」

魔術賢者「うん…」


僧侶「なんか暗い話になりそうだし、この話はおしまい!」

僧侶「話題ガラっと変えてさ。えっと、君は将来何になりたいとかあるの?」


魔術賢者「本当に急に変わったな…。将来…か」

734: 2014/07/25(金) 21:17:33 ID:AxSnzNAM
 
僧侶「うーん、最近少し悩んでてさ」

僧侶「立派な冒険者もいいけど…、最近、人の為に尽くせる人になりたいなーとか思っててさ」


魔術賢者「人の為…か」

僧侶「そうそう。魔術賢者くんはそういうのはある?」

魔術賢者「…自分は、まだ夢はないな。ただ、冒険者になりたいというのは…違いない」

僧侶「あはは、そりゃそうだろうね」

魔術賢者「…」コクン

僧侶「冒険学校での時間はまだまだあるんだし…、ゆっくり探せばいいんじゃないかな」

魔術賢者「そう…する」

僧侶「…うんっ」


魔術賢者「…」

魔術賢者「な…なぁ、僧侶…」


僧侶「ん?」

735: 2014/07/25(金) 21:18:07 ID:AxSnzNAM
 
魔術賢者「君は…、僕を闘術騎士と一緒の目で…見ないのか…?」

僧侶「何で、君を闘術騎士と一緒の目で見るの?」

魔術賢者「な、何でって…」


僧侶「君は君でしょ。さっき理由を聞いたし…、そもそも闘術騎士は彼が悪役なだけであって、」

僧侶「その周りのパーティだった君は関係ないよ。確かに魔道士さんにやったことは許せないけど…」

僧侶「武道家くんも乙女格闘家さんと仲良くしてるし…、それに君も、もう1年前の君じゃないでしょ」


魔術賢者「…」

僧侶「まだ、魔道士さんや剣士くんに敵意を持ってたり、同じような事をするなら…許せないけどね」

魔術賢者「もう…しない」

僧侶「でしょ。だからもう、気にしないよ。この話はおしまいにしよってば!」

魔術賢者「うん…ありがと」

736: 2014/07/25(金) 21:18:46 ID:AxSnzNAM
 
僧侶「お礼なんかいらねーよ!」

魔術賢者「!」

僧侶「なんて…、剣士くんのマネ」アハハ

魔術賢者「…」クスッ


僧侶「…似てた?」

魔術賢者「少し…」

僧侶「へへっ」


ヒュウウッ…


魔術賢者「うっ」ブルッ

僧侶「少し冷えるね。海の上だからかな」

737: 2014/07/25(金) 21:19:21 ID:AxSnzNAM
 
魔術賢者「部屋であったかい飲み物つくるよ…くる?」

僧侶「いいけど…他の人もいるんじゃないの?」

魔術賢者「え…?」

僧侶「?」


魔術賢者「…一人だよ?」

僧侶「えっ、そうなの!?」

魔術賢者「うん」コクン

僧侶「一人部屋なんだ…、確かパーティメンバーは基本的に一緒の部屋だったはずなんだけど」

魔術賢者「でも、僕…一人だから、気にしないで」

僧侶「うん、わかった」

………

738: 2014/07/25(金) 21:20:15 ID:AxSnzNAM
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 魔術賢者の部屋 】

ガチャッ…


魔術賢者「美味しいお茶淹れるから…座ってて…」

僧侶「わかった」

トコトコトコ…ストンッ


魔術賢者「…」

カチャカチャ…コポコポッ…

僧侶「…」

739: 2014/07/25(金) 21:20:57 ID:AxSnzNAM
 
魔術賢者「…」

僧侶「…」

魔術賢者「ちょっと、お湯沸かしてる間に…部屋着に着替えてくる…」

僧侶「はーい」

ガチャッ…


僧侶(昔、魔術賢者くんと戦った時のこと思い出すなぁ)

僧侶(僕が勝ったけど、今やったら魔術賢者クンもレベル上がってそうだし…どうなんだろ)

僧侶(…)

僧侶(少し戦いたいと思っちゃった。本当に剣士くんたちの性格がうつっちゃったかな)アハハ

740: 2014/07/25(金) 21:21:40 ID:AxSnzNAM
 
ガチャッ…

魔術賢者「…お待たせ」


僧侶「あっ、お帰りなさい」

僧侶「…」

僧侶「って、あれ?」


魔術賢者「どうした…?今、お菓子でも用意する…」


僧侶「…」ゴシゴシ

僧侶「…魔術賢者、くん?」


魔術賢者「お菓子…嫌いか?」

741: 2014/07/25(金) 21:22:46 ID:AxSnzNAM
 
僧侶「いや、そうじゃなくて…なんか、あれ?」

魔術賢者「…何だ?」

僧侶「その…、これ…何…?」クイックイッ

魔術賢者「これ?」

僧侶「…ちょっと、いい?」

魔術賢者「うん…」


僧侶「…だから、これ」

ツンッ…

僧侶「ここ。あれ?」

…フワッ

743: 2014/07/25(金) 21:23:59 ID:AxSnzNAM
 
魔術賢者「…胸、だけど?」

僧侶「…ずいぶんと、あるね…?」

ポフッ…フワッ…


魔術賢者「小さいほうだと…思うんだが…。大きいのか…?」

僧侶「う、うん。あるほうじゃない…?」

魔術賢者「そうか…、乙女格闘家のほうが大きいんだがな…」

僧侶「そりゃだって、彼女は女子でしょ?」

魔術賢者「…僕も女だが」

僧侶「…」

魔術賢者「…」

744: 2014/07/25(金) 21:25:00 ID:AxSnzNAM
 
僧侶「…冗談でしょ?」タラッ

魔術賢者「冗談じゃない…」

僧侶「…そ、そういや…ここ一人部屋って…」

魔術賢者「女子には、一人一部屋与えられてる…。知らないのか…?」

僧侶「…っ!?」


…ピー!

魔術賢者「お…、お湯が沸いた。お茶淹れるよ…」


僧侶「待ったぁぁぁぁっ!!!色々言いたいけど、色々ごめんなさいいい!!」

バババッ!!

魔術賢者「なぜ、謝る…?凄い早い土下座だな…」

746: 2014/07/25(金) 21:25:35 ID:AxSnzNAM
 
僧侶「あ、あの、そのっっ!!さ、触ってごめんなさいぃぃ!!」

魔術賢者「何をだ…?」

僧侶「そ…そりゃ…その!」

魔術賢者「あぁ…胸か。気にするな…」

僧侶「気にするよ!っていうか、下着…つ、つけ…」

魔術賢者「…じゃま、蒸れる」


僧侶「た、確かに普段の魔術師の服はぶ厚いけど!!」

僧侶「部屋着とか薄着なら、気にしてよ!!!」


魔術賢者「…僧侶が恥ずかしがるのは…、おかしくないか」

747: 2014/07/25(金) 21:26:17 ID:AxSnzNAM
 
僧侶「あぁぁもう!!何で、乙女格闘家さんといい、魔術賢者さんといい…!」

僧侶「冒険者には…こういう女の子が…!!」


魔術賢者「…はは」

僧侶「笑い事じゃないよ…」ハァァ

魔術賢者「それより…、ほら…お茶」

…コトン


僧侶「うん、ありがー…って、ちょっと!!」

魔術賢者「?」

僧侶「魔術賢者くん…じゃなかった、魔術賢者さん!!薄着なんだから前かくしてよぉぉ!」

748: 2014/07/25(金) 21:26:50 ID:AxSnzNAM
 
魔術賢者「うむ…?あぁ…、別に気にしないぞ…ほら…」パサパサッ

僧侶「」


魔術賢者「…」

僧侶「絶対、僕のことからかって遊んでるでしょ!もおお!」

魔術賢者「さぁ…どうだろ…」


僧侶「ひえぇぇ…!」


…………
……

749: 2014/07/25(金) 21:27:31 ID:AxSnzNAM
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数時間後・剣士たちの部屋 】


ガチャッ…!

剣士「ただいまー」

武道家「ただいまー」


剣士「いやー、長いこといちゃったな。ほら、魔道士手作りのクッキー貰ってきた」スッ

武道家「こっちは乙女格闘家手作りのチョコだっけかな」スッ

751: 2014/07/25(金) 21:28:32 ID:AxSnzNAM
 
…グデン

僧侶「…」


剣士「あら?」

武道家「どうした、僧侶」


僧侶「お帰り二人とも…」

僧侶「色々と…凄かった…。もう…だめ…」ガクッ


剣士「…?」

武道家「…?」

………
……

752: 2014/07/25(金) 21:29:58 ID:AxSnzNAM
 
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

761: 2014/07/27(日) 20:04:14 ID:xbwezQ1k

…次の日。

冒険学校2年生徒一行は、無事に西海岸街へと着いた。


そして、西海岸街の宿で一旦休憩後―――…

762: 2014/07/27(日) 20:04:48 ID:xbwezQ1k
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 西海岸街 宿 】


冒険先生「船旅、ご苦労だった。今日から3日間、色々と楽しみでもあるだろう」

冒険先生「だが、あまり迷惑のかけることはしないように」

冒険先生「特に、分かってると思うがー…」ギロッ


剣士「…」

武道家「…」


冒険先生「後で一歩遅れてくる大戦士先生に、監視役を頼んであるがー…変なことはするなよ!」

剣士「へい!」

武道家「おう!」

763: 2014/07/27(日) 20:05:22 ID:xbwezQ1k
 
冒険先生「各自、時間は守り、規律を守り、しっかりとした行動をするように!」

冒険先生「では…解散っ!」パンッ!

ガヤガヤ…ザワザワ…


剣士「さぁて…」

魔道士「港街…!いいな…!いいなあぁ~っ!」キラキラ

剣士「どうした?」

魔道士「観光地って感じだし、潮の香りは嫌いじゃないし、見るとこいっぱいあるしぃ♪」

剣士「まぁそうだな」

魔道士「食べ歩きも悪くないなぁ、でも先に何かお土産とか…早いかなぁ♪」

剣士「…楽しそうだな」

魔道士「う~ん、もうワクワクが止まらないっ!」

764: 2014/07/27(日) 20:06:19 ID:xbwezQ1k
 
武道家「まぁ、落ち着いて行動しようぜ」

僧侶「武道家くんは、乙女格闘家さんと行動しないの?」

武道家「一応ここはパーティが基本行動だしな」

僧侶「あ、そっか」


剣士「まぁ久々にパーティで楽しもうぜ」

武道家「そりゃ当然だ。じゃ、どっから行く?」

剣士「観光地っていっても、俺らはどう行動すればいいか分からなー…」


魔道士「えっとね、えっとね!ここから少し歩いた先に、海のモノを使ったアクセショップとか!」

魔道士「海鮮料理屋さんも多くあるし、もちろん砂浜はあるし、日差しが強くて海で遊べるし!」

魔道士「それにそれに、西海岸中心通りには凄いお店もたくさんあって、特にガラス細工とか色々…!」


剣士「」

765: 2014/07/27(日) 20:07:00 ID:xbwezQ1k
 
僧侶「魔道士さんが暴走してる!」

魔道士「あぁっ、もう楽しみで仕方ないの!どこから行く?どこから行く!?」

剣士「じゃあ、そうだな…俺が決めていいか?」

魔道士「うんうん!地図から選んでよ!」ペラッ


剣士「まずは…ここだ!」ビシッ


魔道士「!」

武道家「!」

僧侶「!」

766: 2014/07/27(日) 20:07:46 ID:xbwezQ1k
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 西海岸街・フィッシングエリア 】


ザザァンッ…ジリジリ…

…ポチャンッ


魔道士「…何で、釣り」

剣士「たしなみだ。お前には落ち着きが足りん」

魔道士「…だからって…釣りって…」


武道家「文句を言いながらも、素直に釣りをする魔道士は凄いと思う」

僧侶「うん…」

767: 2014/07/27(日) 20:08:27 ID:xbwezQ1k
 
剣士「…釣りってのも悪くないんだぜ」

武道家「そうだな。こうして、日差しを浴び、遠くに人の声を感じ、揺れる水面に静かに漂うウキを見つける…」

剣士「これこそが、究極の日常だ」


魔道士「…日常じゃなくて、折角こういう場所に来てるのに…」

剣士「でも、案外楽しいもんだぞ?」

魔道士「あのね…釣りはどこでもー…!」


…ググッ!チリンチリンッ!


剣士「魔道士の竿、引いてるぞ!」

魔道士「えっ!」ハッ

剣士「ほら、リールまわせ!」

魔道士「ど、どうすればいいの!」

768: 2014/07/27(日) 20:09:03 ID:xbwezQ1k
 
剣士「ほら、ここをこう持って、こう!」ギュッ

魔道士「あっ…。う、うんっ」

カラカラカラッ…ザッ、ザバァンッ!


剣士「おーっし、いいぞいいぞ!」

魔道士「きゃあっ…!お、重いぃ…!」ググッ

剣士「もっと腰下げて、腕あげろ!こうだ!」グイッ

魔道士「ちょっ…、剣士ぃ…抱きしめられてるみたいで少し恥ずかしい…」

剣士「あっ、じゃあ離れる」パッ

魔道士「…べ、別にいいよぉ!なんとかしてよぉっ!」

剣士「なんだよ!だから、こうするんだよ!」ギュウッ

769: 2014/07/27(日) 20:09:37 ID:xbwezQ1k
 
…ギャーギャー!!


武道家「…熱いな。日差しが強い」

僧侶「それだけのせいじゃない気がするけど」


ザッザッザッ…ピタッ

乙女格闘家「なんだ、こんなところにいたのか」

武道家「…あれ?」

乙女格闘家「てっきり砂浜にいるのかと思って探していたら…。釣りをしてたとは」

武道家「お前、自分のパーティは?」

乙女格闘家「抜けてきた。話も合わないし、面白くもない」ハァ

武道家「あのね…。つーか水着で歩いてきたの?」

乙女格闘家「うむ、海で一緒に遊ぼうと思ってたんだけど…」

武道家「…似合ってるな」

乙女格闘家「あ…。そ、そうかな」テレッ

770: 2014/07/27(日) 20:10:14 ID:xbwezQ1k
 
僧侶「…」

僧侶「…二人とも、太陽のように熱いよ」シクシク

 
…ヒョコッ

魔術賢者「僕も…いるよ」

僧侶「あっ、魔術賢者さん!」

魔術賢者「乙女格闘家が…、一緒に来ないかって…」

僧侶「乙女格闘家さんが?」


乙女格闘家「僧侶、魔術賢者の部屋で、この子の胸ぇまさぐったらしいじゃないか。中々やるな!」

僧侶「」


剣士「!?」

武道家「!?」

魔道士「!?」

771: 2014/07/27(日) 20:11:14 ID:xbwezQ1k
 
剣士「僧侶のやつ…ホ〇なのか!?」

 
乙女格闘家「あ、いやいや。この子…女子だからね?」

ワシャワシャ…

魔術賢者「あうあう…、髪の毛が…」


剣士「ま…まじで!?」

武道家「冗談だろ!?」


魔道士「…!!」

魔道士「……え?待って。っていうか、女子だとしたら…」

魔道士「今…僧侶が魔術賢者の胸をま、まさぐ……って…って…」プルプル

772: 2014/07/27(日) 20:12:16 ID:xbwezQ1k
 
乙女格闘家「部屋に呼んで、部屋着に着替えたら…突然触られたとか…」

魔術賢者「うん…そう…」

僧侶「」


剣士「まじかよ!?女子っていう驚きもあるが…」

武道家「すげぇな…、人は見かけによらないわけか…」

魔道士「…最低っ!」


僧侶「ちょっと待って、色々誤解だから、待って、みんな…その目をやめて!!」

僧侶「うわぁぁぁっ~~!!」

773: 2014/07/27(日) 20:12:56 ID:xbwezQ1k
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

僧侶「っていうわけなんだよぉ!だから、わざと…わざとだけど違うんだよ!!」

剣士「…そういうことね。なら分からんでもない」

武道家「確かに、それは…うん…」

魔道士「そ、それなら…なのかな…」


乙女格闘家「魔術賢者ちゃんは、髪の毛も少し短いし、厚着ばっかだし…仕方ないよね」

魔術賢者「…髪の毛、伸ばしたほうがいいか…?」

乙女格闘家「充分、そのままでも可愛いから♪でも、伸ばしたらもっと可愛くなるかも…」

魔術賢者「…むぅ」

774: 2014/07/27(日) 20:13:33 ID:xbwezQ1k
 
乙女格闘家「…でも、みんなにきちんと女の子って分かって貰えるように、準備してきましたぁー!」

魔術賢者「ほ…、本当にするのか…?」

乙女格闘家「こうすれば、魔術賢者ちゃんの評価もうなぎのぼり!」

魔術賢者「じゃあ…仕方ないな…」

パサパサッ…


魔術賢者「うぅ…」テレッ


剣士「おぉっ!」

武道家「おお!」

僧侶「わっ…」

775: 2014/07/27(日) 20:14:22 ID:xbwezQ1k
 
乙女格闘家「私が選んだ、水着!どう、似合うでしょ!」

魔術賢者「恥ずかしい…ってば…」モジッ

魔道士「えっ…、ま、負けたかも…」ガーン


剣士「…刺激的な色だな」ジー

武道家「普段が普段なだけに、信じられん…」ジー

剣士「しかし、思った以上だ…」ジロジロ

武道家「これが、着やせってやつなのか?僧侶はこれをなぁ…」ジロジロ

僧侶「」

…ジロジロ、ジロジロ

776: 2014/07/27(日) 20:15:12 ID:xbwezQ1k
 
魔道士「…」

乙女格闘家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」


魔道士&乙女格闘家「ていっ」

…ブスブスッ!!


剣士「Noooooo!!」

武道家「目、目がぁぁぁああっ!?」

ゴロゴロゴロゴロッ…バシャアンッ!!


魔道士「あ、落ちた」

乙女格闘家「天誅だ」

777: 2014/07/27(日) 20:16:01 ID:xbwezQ1k
 
魔術賢者「うぅ…、もういいか…。服、着るよ…」

ゴソゴソッ…パサッ


乙女格闘家「どう?僧侶くん、魔術賢者ちゃん、結構凄いでしょ」ニマー

僧侶「えっ!?い、いや…その…」

乙女格闘家「正直に言っていいと思うよー」ニヤニヤ

僧侶「う、うん…、似合ってて、可愛かったと思う…」


魔術賢者「そ、そうか…?」

僧侶「うん、普段とは違った格好だし…、少しドキっとしたかなぁ~」アハハ…

魔術賢者「あ、ありがとう…」

僧侶「い、いえいえ!」

778: 2014/07/27(日) 20:16:51 ID:xbwezQ1k
 
乙女格闘家「初々しいなぁ~♪」

魔道士「ねえねえ」ボソボソ

乙女格闘家「何?」


魔道士「魔術賢者さんって、僧侶のこと好きなの?」

乙女格闘家「うーん、どうだろ。魔術賢者ちゃんは、トボけたところあるし…」

魔道士「だよねえ…、今までそんな素振りも見たことないし…。そもそも女性だとは…。それに私より…」ブツブツ

乙女格闘家「でもさ~、1年前に演習で私らと戦った時あったじゃない?」

魔道士「うん」

乙女格闘家「その時に、自分より努力してる子と戦えて、凄い楽しかったとか…言ってたかな?」

魔道士「でも、それだけじゃ…」

779: 2014/07/27(日) 20:17:59 ID:xbwezQ1k
 
トコトコトコ…

乙女格闘家「なあ、魔術賢者ちゃんって僧侶のことは好きなのか?」ポンッ

魔道士「本人の前でストレートすぎるー!?」

僧侶「」


魔術賢者「好きって…、恋愛…か?」

乙女格闘家「それ以外ないよー」

魔術賢者「うーん…。唐突に言われても…わからないな…」

乙女格闘家「ま、まぁそうだよね」

魔術賢者「でも…」

乙女格闘家「なぁに?」


魔術賢者「今までより…気兼ねなく…話せる。他の人より話やすい…気がする…」

魔術賢者「あと…、先生たちと放課後残って勉強してる努力を知ってるし…」

魔術賢者「僕より強いから、色々教えてほしい…かも」

780: 2014/07/27(日) 20:19:32 ID:xbwezQ1k
 
乙女格闘家「…改めて、お友達からってこと?」

魔術賢者「改めては…違う…。今日の事があって…もう、友達だと思ってたから…」

僧侶「そ、そりゃそうだよ!僕こそ、友達だと思ってて!」


魔術賢者「!」

魔術賢者「ありがと…」


乙女格闘家「なら、それ以上の仲を目指すってことで、お友達からお付き合いだね!」

魔術賢者「…僧侶がいいなら」

僧侶「ふえっ!?」


乙女格闘家「どうなのー?僧侶クン」

僧侶「ぼ、僕~!?」

乙女格闘家「魔術賢者ちゃんは、イイって!」

僧侶「そ、それは…、魔術賢者さんがいいなら…」ボソボソ

781: 2014/07/27(日) 20:20:31 ID:xbwezQ1k
 
乙女格闘家「二人とも、何て奥手な…」

乙女格闘家「まぁ…どっちもイイってことだね!」


僧侶「い、いいの…?」

魔術賢者「うん…」コクリ

僧侶「じゃ、じゃあ改めてよろしく…」ペコッ

魔術賢者「よ…よろしく…」ペコッ


乙女格闘家「わーい!決まった!」


魔道士「な、なんて勢いだけで…」アハハ…

魔道士「あっ…、そういえば剣士たちはー…」クルッ

782: 2014/07/27(日) 20:21:14 ID:xbwezQ1k
 
…ギャーギャー!!

サメ2匹『』


剣士「俺のほうがでけぇだろ、これ!」

武道家「いーや、1センチ差で俺の勝ちだな」

剣士「あぁん!?」

武道家「おぉっ!?」


魔道士「…サメをいつの間にどうやって釣り上げたんだろう…。またケンカしてるし…」


タッタッタッ…

乙女格闘家「ほらほら二人とも、ケンカしてないで!」

783: 2014/07/27(日) 20:21:56 ID:xbwezQ1k
 
剣士「あん?」

武道家「何?」


乙女格闘家「僧侶クン、魔術賢者ちゃんがお付き合いすることになったので…」

乙女格闘家「トリプルデートしよー!」


剣士「なんだと!?」

武道家「まじか…!おめでとう!」


僧侶「」

魔術賢者「ちょっ…」


…………
……

784: 2014/07/27(日) 20:22:57 ID:xbwezQ1k
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 西海岸街 中心通り 】
 
ワイワイ…ガヤガヤ…!


乙女格闘家「人いっぱーい♪」

武道家「…お前、水着のままで歩くのかよ」

乙女格闘家「鍛えてるし、結構自信あるんだけどな?」

武道家「いや別にいいけどさ」


剣士「お前は水着になんねえの?」

魔道士「わ、私はいいよ…」

剣士「そうか、残念だ」

魔道士「ざ、残念って…。仕方ないな…、あとでなら…ね!」


僧侶「…」モジモジ

魔術賢者「…」モジモジ

785: 2014/07/27(日) 20:27:18 ID:xbwezQ1k
 
剣士「つーかこの面子でどこ行く気だよ」

乙女格闘家「先ずは、ソフトクリームを食べよう!」

剣士「お、いいね」


乙女格闘家「二人で一本で!お互い見つめあいながら!どのペアが一番早く食べれるか!」

乙女格闘家「ドキドキ、ソフトクリームゲーム…」


魔道士「待った、待ったぁぁああっ!!!!」ビシッ!


乙女格闘家「ほえ?」

魔道士「待って、待って待って、だめぇぇっ!!どういうことなの!?」

乙女格闘家「ほら、海のそばだし、すぐ汚れても洗えるよー?」

魔道士「そういう問題じゃないから!」

乙女格闘家「…?」キョトン

魔道士「そんな猫みたいな顔してもダメー!」

乙女格闘家「にゃははー、魔道士ちゃんはウブだなー」

786: 2014/07/27(日) 20:27:57 ID:xbwezQ1k
 
剣士「武道家、乙女格闘家ってあんなキャラだったのか。クールな女子だと思ってたのだが」

武道家「…普段というか、一緒にいる時はあんなんだな…」

剣士「魔道士が振り回されてるの見るとさ…、なんか変な感じだ」

武道家「あ~…確かにな」ハハハ


魔道士「だ、だからそれは色々とダメでしょ!」

乙女格闘家「えー」

魔道士「えー、じゃなくて!」

乙女格闘家「仕方ないなぁ…」

魔道士「…仕方なくなぁい!普通なの!」


剣士「武道家は、いっつもそういうことしてると…」

武道家「さ、さぁ」

剣士「何が硬派な付き合いだ、全然ヌルヌルじゃねえか」

787: 2014/07/27(日) 20:28:35 ID:xbwezQ1k
 
僧侶「そ、そういうのは僕らはちょっと…ね」

魔術賢者「う、うん…」


魔道士「ほら、僧侶たちだっていってるんだから、もっと健全な遊び!」

乙女格闘家「健全な遊びっていっても~…」

魔道士「ほ、ほら!例えばそこの海のアクセサリーショップを見たり、とかさ!」バッ

乙女格闘家「…うーにゅ」

魔道士「さ、いこ!ほら、剣士!」

グイッ!!

剣士「わったったっ!引っ張んな!」ヨタヨタ


…ガチャッ、ガランガランッ!

788: 2014/07/27(日) 20:29:32 ID:xbwezQ1k
 
店員「いらっしゃいませー」


魔道士「あ、どーもー…。って、うわぁ~っ♪」

キラキラキラッ…

乙女格闘家「ほほぅ…、これは中々どうして…」

魔術賢者「きれい…」


剣士「…やべえ、ファンシーだ」

武道家「俺らが場違いな痛みが、ヒシヒシと」

僧侶「こ、こんなところ慣れてないから恥ずかしいよ…」

789: 2014/07/27(日) 20:30:14 ID:xbwezQ1k
 
店員「あらあら…3人3人でデートですか?」

魔道士「ひぇっ!あ、あの…」

乙女格闘家「そうです!これキレイなお店ですね!」

魔術賢者「…うん」

ワイワイ、キャッキャッ


剣士「…女子のパワーはすげえな」

武道家「俺らはそこで座ってようぜ」

僧侶「キラキラしすぎてて、なんか…目が…」

トコトコトコ…ストンッ、バフッ

790: 2014/07/27(日) 20:30:47 ID:xbwezQ1k
 
剣士「おぉ、沈む。いいソファーだ」フワッ

武道家「フワフワだな…、高いんだろうな」

僧侶「ふわ…、ふわ。ふわふわ…。あ…、あ~~…っ!」ガシガシッ!


剣士「…どうした?」

僧侶「い、いや何でも」ハッ

剣士「何だよ、言えよ!」

僧侶「何でもないってば!胸のことなんてー…」ハッ


剣士「…」

武道家「…」


僧侶「…うわぁぁあ!」ゴロンゴロンッ!

791: 2014/07/27(日) 20:31:36 ID:xbwezQ1k
 
剣士「フワフワ…ね」

武道家「大人の階段のぼってるな!」

僧侶「そういうことじゃない、そういうことじゃないんだよぉぉおっ!」ゴロンゴロン


剣士「はっはっは、いいじゃん。部屋で二人っきりで」

武道家「お前だって、よく二人きりじゃん」

剣士「…武道家もだろ?」

武道家「む…」

剣士「鍛錬、鍛錬とかいって…普段何の鍛練してんだか」ハァン

武道家「…勉強、勉強とかいって…普段何の勉強してんだか」フゥン

792: 2014/07/27(日) 20:32:09 ID:xbwezQ1k
 
…グイッ!

剣士「…お?」

武道家「…あ?」

僧侶「うわぁぁああ!」

ゴロンゴロンッ!!…ガシャアンッ!


店員「お、お連れ様は楽しい方たちのようですね」アハハ…

魔道士「ぜ、全部聞こえてるんだよなぁ…」

乙女格闘家「そういうお年頃」

魔術賢者「…うん」

魔道士「そういうお年頃って…」

乙女格闘家「剣士と、魔道士ちゃんは付き合ってるんでしょ?」

魔道士「い、いやいやいや!?」

乙女格闘家「あれ?」

魔道士「どど、どうして!?」

793: 2014/07/27(日) 20:33:27 ID:xbwezQ1k
 
乙女格闘家「みんな、そう思ってるけど…ね?」

魔術賢者「…うん」コクン

魔道士「ななな、何で!」

乙女格闘家「…普通、そう思うよ」

魔道士「う…。じゃ、じゃあ乙女格闘家はどうなの!」

乙女格闘家「私?」

魔道士「乙女格闘家だって、付き合ってー…あっ」ハッ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
武道家「殴れなくなっちまうだろ…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


魔道士「な、何でもない…」


乙女格闘家「…」

乙女格闘家「聞こえるから大きな声で言えないけど…、殴れなくなるって話?」

794: 2014/07/27(日) 20:34:14 ID:xbwezQ1k
 
魔道士「えっ、知ってたの…?」

乙女格闘家「そんなの私にかかればすぐにわかる!」

魔道士「…それを知ってて、ベタベタしてるの?」

乙女格闘家「私は…気にしないんだけどなぁ」

魔道士「!」

乙女格闘家「初めて会って、戦った時に、容赦なく殴って来たんだよね…あいつ」ナハハ

魔道士「…」


乙女格闘家「一目ぼれっていうのかなぁ…、今までそういう人いなかったし、女子としか見られなかったし」

乙女格闘家「それからも仲良くしてくれて。気づいたら、惹かれてて…」


魔道士「そっか。私と逆…、か」

乙女格闘家「ほえ?」

795: 2014/07/27(日) 20:35:49 ID:xbwezQ1k
 
魔道士「私は、女子として見られなかったし、けど、弱く見られたくなくて…なんていうんだろ…」

魔道士「ごめん、難しいや。けど、そういうのを何も気にしないで、見てくれるのが剣士っていうか…」


乙女格闘家「…うーん、まぁ、剣士を好きなんでしょ?」

魔道士「えっ…そ、それは!」

乙女格闘家「…好きになってたんでしょ?」

魔道士「…ま、その…気の間違いかもしれないけど…」

乙女格闘家「いいじゃんいいじゃん、それで!間違いでも、好意を持ってるのには変わりないんでしょ!」

魔道士「うっ…」


乙女格闘家「私は、この気持ちが気の間違いでも全然いいよ。本当はさ、武道家が気遣ってくれなくてもいいんだよね」

乙女格闘家「もう、敵同士だったのに全然普通に接してくれて…」

乙女格闘家「そんな毎日を過ごしてるうち、ますます好きになったから…」

796: 2014/07/27(日) 20:36:57 ID:xbwezQ1k
 
魔道士「…乙女格闘家」

乙女格闘家「殴れなくなったとか、一緒に組手とか鍛錬が出来なくなっても、今は…好きって言われる方がうれしい」

魔道士「あ…。う、うん…気持ち…、分かる気がする」


乙女格闘家「ま…まぁ、私のキャラじゃないし、そういう事は望まないけど!」

乙女格闘家「ほら、たまに武道家とは色々遊んでるし…、それでも満足できてるって言うか…」


魔術賢者「…言われるほうが嬉しいって、言った」ボソッ

乙女格闘家「そ、そこで言う~!?」

キャーキャー!!


剣士「全部、聞こえてるんだよなぁ…」

武道家「うむ…」

僧侶「二人とも、お幸せに…」

…………
………

797: 2014/07/27(日) 20:38:11 ID:xbwezQ1k
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 そして 夜 】


ガヤガヤ…ワイワイ…!


魔道士「うわぁ…、夜の街って昼と全然違うね」

剣士「なんか祭りみてえだな」

武道家「独特の雰囲気があるねぇ」

僧侶「…武道家くん、乙女格闘家さんと行動しなくてよかったの?」


武道家「昼間にショップ出たところで冒険先生に見つかって、パーティで行動推奨とか言われたばっかだし…」

武道家「また怒られるのは勘弁だ」


僧侶「うん…そうだよね」

798: 2014/07/27(日) 20:38:58 ID:xbwezQ1k
 
魔道士「それにしても、少しお腹すいたね」グゥ

剣士「何か食おうぜ。刺身とか美味いんじゃね?」

魔道士「高いよ?」

剣士「あー…そうだよな。こんな時、大戦士兄いたら奢ってもらうのに…」

魔道士「未だに監視役で来るっていったのに…、来てないし…」


武道家「その分、自由ってことでいいじゃないか」

剣士「そうだな。とりあえず…こっちいこうぜ」クルッ


魔道士「そっち路地裏だよ?」

剣士「本当に美味い店って、こういう場所にあるもんなの!」

魔道士「うーん、そうなのかな…」

799: 2014/07/27(日) 20:39:47 ID:xbwezQ1k
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 路 地 裏 】 
 
ザッザッザッザッ…

魔道士「路地裏の雰囲気もなんか不思議」

剣士「な?何かありそうだろ」

魔道士「月明かりに照らされて、建物の窓からうっすら見える灯りが幻想的だね」

剣士「そうそう。こういう場所って意外と当たりの店があるんだよ」


武道家「美味くて安い店があればなぁー」

僧侶「でも、お店らしいお店が見えてこないよ」


ガタッ…ガタガタンッ!!!

剣士「…ん?」

800: 2014/07/27(日) 20:40:29 ID:xbwezQ1k
 
魔道士「何の音?」

剣士「そこ曲がった所だな。何か倒れたような音が…」

トコトコ…クルッ

剣士「!」


???「い、嫌だ…」

金髪商人「…銀髪、人が来る前にさっさと袋に詰めろ!」

銀髪商人「わかってるよ金髪、ただこいつ暴れすぎなんだよ」


剣士「な…何だありゃ」ボソボソ

武道家「服装は商人っぽいが…。詰めようとしてるの、人じゃね?」

魔道士「もしかして、誘拐…?」

僧侶「えぇっ!まずいよ、どうするの?」

801: 2014/07/27(日) 20:41:03 ID:xbwezQ1k
 
金髪商人「…どうせ少しくらい殴っても、商品価値は落ちねえよ。気絶させようぜ、任せろ」グイッ

銀髪商人「おぉそうか、じゃあ俺も」グイッ

???「あうっ…!」


剣士(あっ、やべぇ!)ダッ!

武道家(ちっ…!)ダッ!


金髪商人「…おらぁっ!」

銀髪商人「…っしゃあ!」

ビュンッ!ブンッ!!

???「や、やぁぁっ!」ギュッ

802: 2014/07/27(日) 20:41:57 ID:xbwezQ1k
 
バキッ!!バキバキィッ!!…ドサドサッ!


???「…」プルプル

???「…」

???「…あ、あれ?」パチッ


剣士「ふぅ、大丈夫か」

魔道士「なに、なんなのこの二人!女の子を殴ろうとするなんて!」

武道家「子供に対して商品価値とか言ってたし…最悪な野郎だな」

僧侶「もう大丈夫だよ、安心して」ニコッ


???「こ、来ないで…!」ズリッ


剣士「お、おいおい。助けてやったのに…」スッ

803: 2014/07/27(日) 20:42:38 ID:xbwezQ1k
 
???「来ないでぇぇっ!!」

ブンッ…バチィッ!!

剣士「いでっ!」

???「あっ…」


剣士「…」

剣士「…」スッ


???(殴られる…!!)ブルッ!


…ポンッ、ナデナデ

???「…」

???「…え?」

804: 2014/07/27(日) 20:43:16 ID:xbwezQ1k
 
剣士「だから、何もしねえって。助けてやっただけだよ」ニカッ

???「…!」

剣士「僧侶、ヒールしてやってくれ。ちょっとケガしてる」

僧侶「あ、うん!ヒール!」パァッ!

シュワシュワッ…


???「あ…」


魔道士「あなた…どうしたの?名前は?」

幼エルフ「よ…幼エルフ…」


魔道士「え…」

剣士「エルフっ!?」

805: 2014/07/27(日) 20:43:55 ID:xbwezQ1k
 
幼エルフ「!」ビクッ


魔道士「え、エルフって…」

剣士「だから、コイツらが狙ってたのか…」

武道家「…まじか」

僧侶「ど、どうするの?」


幼エルフ「…」ビクビク

剣士「…幼エルフ、俺は剣士。お前はどっから来たんだ?」

幼エルフ「む…村の外で遊んでたら…、急に…あの人らが…」グスッ

剣士「…うん」

幼エルフ「でも…さっき逃げて…、気付いたら…ここ…で…」ウルウル

…ポロポロ

幼エルフ「おうちに…帰りたいよぅ…」グスグスッ

806: 2014/07/27(日) 20:44:34 ID:xbwezQ1k
 
剣士「あ、あぁぁ…な、泣くな!」

幼エルフ「ひぐっ…うぇえぇん…」グスッ

剣士「あー、えっと~…」オロオロ


魔道士「…幼エルフちゃん…だよね?私は魔道士」

幼エルフ「…」コクン

魔道士「折角の可愛い顔が、台無しだよ?ほら、顔をこれで拭いて♪」

…ゴシゴシ

幼エルフ「…あうぅ」

魔道士「うん、可愛い!」ナデナデ

幼エルフ「…」

807: 2014/07/27(日) 20:45:11 ID:xbwezQ1k
 
剣士「…幼エルフ、家はどこにあるんだ?」

幼エルフ「…わかんない」

剣士「わ、わからないッスか。村の名前とか…」

幼エルフ「…西海岸村ってとこ…」

剣士「お…」


魔道士「西海岸街から近いんじゃない?」

武道家「ちょっと道聞いてくるか。送ってやろうぜ」

僧侶「…エルフ族の村に行くの?大戦士先生、殺されかけたとか言ってなかった…?」


剣士「…う゛っ」

魔道士「あ…」

武道家「…」

808: 2014/07/27(日) 20:45:45 ID:xbwezQ1k
 
幼エルフ「?」キョトン


剣士「…ど、どうする?」

魔道士「あまり、村には行きたくないかな…」

武道家「だけど、このまま放っておけるか…?」

僧侶「う、うーん…」


剣士「…」

剣士「じゃあさ、こうしよう」ポンッ


魔道士「…どうするの?」

809: 2014/07/27(日) 20:46:16 ID:xbwezQ1k
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 西海岸街 中央軍支部 】


…ビシッ!!

軍人A「ご苦労様でした!」

軍人B「それと、奴隷商人の確保、ありがとうございました!しかるべき処置をいたします!」


剣士「い、いや」

軍人A「聞けば、冒険学校の生徒さんだと聞きました。さすがですね」

剣士「そ、そうか?」

軍人A「こちらの幼エルフさんは、責任をもって預かり、明朝には送り届けさせていただきます」

剣士「…よろしく」

810: 2014/07/27(日) 20:47:00 ID:xbwezQ1k
 
幼エルフ「お兄ちゃんたち…ありがとう…」フリフリ

剣士「おう、元気でな!」

魔道士「もう一人で外で遊んじゃだめだよ!」

武道家「名前言ってなかったけど、俺は武道家だからな!」

僧侶「僕は僧侶だよ!」


幼エルフ「うん…ばいばい…」


軍人A「では、晩御飯の準備をさせましょう。幼エルフさん、こちらへ」

幼エルフ「…」

テチテチテチ…

軍人B「それでは、失礼いたします」ペコッ

ガチャッ…ギィィィ、バタンッ…

811: 2014/07/27(日) 20:47:41 ID:xbwezQ1k
 
剣士「…ほっ」

武道家「良かったな。支部に預けるなんて、お前にしちゃ機転が効いたんじゃないか」

剣士「…それが浮かばないお前らは、俺以下ということだな」ハッハッハッ!

武道家「あぁ…?」

剣士「おぉ…?」


…ズイッ

魔道士「何度このやり取りすれば気が済むのかなー…?」


武道家「へへっ」

剣士「面目ねぇ」


魔道士「謝るなら最初からしない!」

812: 2014/07/27(日) 20:48:34 ID:xbwezQ1k
 
剣士「へーい」

武道家「はーい」

魔道士「全く…」


タッタッタッタッ…!

大戦士「おーい!!…やっと見つけた!」

少戦士「魔道士さんたち、ようやく見つけましたね」


剣士「あ、大戦士兄!」

813: 2014/07/27(日) 20:49:17 ID:xbwezQ1k
 
大戦士「中央軍の支部で何してるんだ、探したんだぞ」

大戦士「街はパニックにはなってないみたいだし、まだ問題は起こしてないようで何より!」


剣士「…俺らをどんな人間だと」

魔道士「相変わらず遅刻してしまう大戦士先生も大概ですけどね…」


大戦士「あっはっは!さて、これからどこに行くんだい?」

剣士「…大戦士兄って、いわゆる俺らの保護者だよな?」

大戦士「言い方を変えれば、それになるかもね」


剣士「奢って」

大戦士「…うん?」

剣士「…奢って」

大戦士「…う?」

814: 2014/07/27(日) 20:49:59 ID:xbwezQ1k
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 近くの海鮮料理屋 】


カチャカチャ…ハグハグッ!!

剣士「見ろよ、この海老…ぷりっぷりだ!」モグモグ!

魔道士「酒バターで蒸したアサリ、すっごい味が濃くておいしー♪」ムニュムニュ

武道家「このホタテのでっかいこと!」

僧侶「僕はこの、塩が効いたスープがいいなぁ。歩いて疲れちゃった身体に染みる~」ゴクゴク


大戦士「お、お前ら…、あまり食べないでくれよ…。予想以上に高いんだこの店…」

少戦士「…はぐっ、もぐもぐ…もぐもぐ!」

大戦士「話、聞いてる?」

815: 2014/07/27(日) 20:50:50 ID:xbwezQ1k
 
剣士「うめぇぇ~!!」グビグビ

魔道士「その海老もちょうだい♪あ、餡かけ玉子とかもある…おいしそー♪」

武道家「そっちのスープもくれよ。あ、頼むか…。すいませーん!」

僧侶「じゃあ、えっと…鯛飯とか食べたいかも…。美味しい出汁が効いてるんだって」

剣士「遅刻する大戦士兄は、文句もいえないはずだしな!食べろ食べろ!」

モグモグ…グビグビッ…!!


大戦士「…なんてこったい!!」

大戦士「こうなったら、俺も食うぞ!!メニュー、ここからここまで持って来い!!」

…………
………

816: 2014/07/27(日) 20:52:08 ID:xbwezQ1k
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 宿 剣士たちの部屋(3人部屋) 】


剣士「あ゛~。食った…食った…」プハァ

武道家「めちゃくちゃ美味かったなぁ」

僧侶「でも、大戦士先生泣いてたよ…」


剣士「支払い、32万ゴールドだってよ」

武道家「げっ…マジで!?」

僧侶「え、それはさすがに大戦士先生に悪いんじゃ…」

剣士「いや、どっちかっつーとあの人、自業自得だから」

武道家「どういうことだ?」

817: 2014/07/27(日) 20:52:53 ID:xbwezQ1k
 
剣士「メニュー全部もってこーいとか言ったじゃん?」

武道家「言ってたな」

剣士「その中に、天然のなんか入ってて、それが超高かったの」

武道家「でもそれ、大戦士先生食ってなくね?」

剣士「…魔道士が食った」

僧侶「ひぃぃい!」


武道家「はっはっはっ!!笑うしかないな!」

剣士「どんまいすぎんだろ」ハハハ

僧侶「はぁ~…、大戦士先生には悪いけど、お世話になっておこう」

剣士「それが良い」

818: 2014/07/27(日) 20:53:58 ID:xbwezQ1k
 
武道家「さてと…。寝る前にちょっとパンでも買って、腹の足しにしてくる」ムクッ

僧侶「まだ食べるの!?」

武道家「おう」

トコトコトコ…


剣士「…」

剣士「お前、乙女格闘家のところだろ」ニタッ


武道家「…」ギクッ

剣士「いってらっしゃいませー」フリフリ

武道家「そ、それは心外だなぁ。僕は、パンを食べたいだけなんだ」クルッ

剣士「そうだね、美味しいパンでも食べてきなさい」ハッハッハ

武道家「…」ピクピク

剣士「ほら、いってきなさい」

武道家「…行ってきますよ!」

ガチャッ…バタンッ!

819: 2014/07/27(日) 20:54:44 ID:xbwezQ1k
 
剣士「…鍵、しめとこうぜ」

タッタッタッ…ガチャガチャッ、カチャンッ

剣士「さー電気消して寝よ」

僧侶「ちょ、ちょっと剣士くん!」

剣士「ん?」

僧侶「そ、それはいくらなんでも…」

剣士「乙女格闘家は一人部屋だし、泊まってくれば問題ないだろ」

僧侶「そ、そうだけど、そういう問題じゃ!」


…ガチャガチャッ!コンコンッ!

剣士「ん?もう帰って来たのか…。くそっ、しゃあねえ…。今鍵開けるから待ってろ」

820: 2014/07/27(日) 20:55:25 ID:xbwezQ1k
 
…カチャカチャ…、ガチャッ!

魔道士「あ、起きてた」ヒョコッ

剣士「んお」

魔道士「夜は長いし、お話でもどうかなー…とか…」モジッ

剣士「…」チラッ


僧侶「…いってらっしゃーい」フリフリ


剣士「…おう。んじゃ、行ってくる」

魔道士「昼間にジュース買っててね…」

剣士「お茶菓子とかもあんのか…?」

ワイワイ…

ギィィ…バタンッ!

821: 2014/07/27(日) 20:55:59 ID:xbwezQ1k
 
僧侶「…」

僧侶「…」

僧侶「魔術賢者さんのところに…」

僧侶「…」

僧侶「ない…!ないないない!!」ブンブン!


僧侶「剣士くんも、武道家くんも…、怒られちゃえ!!鍵しめといてやる!」

…ガチッ!

…………
………

822: 2014/07/27(日) 20:56:34 ID:xbwezQ1k
 
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

833: 2014/07/29(火) 20:42:01 ID:dVpeKE22
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日 朝 】

…ガチャガチャガチャ!!!

ガチャッ…ガチガチッ!!ドゴォォンッ!!!!


僧侶「ふあっ!?」ガバッ


剣士「あ…、壊れた」

武道家「まぁいいんじゃないか」

剣士「そうだな、置いとこう」ゴトンッ


僧侶「…ちょ、ちょっと二人とも!?」

僧侶「ドアに鍵かかってるからって…壊したの!?っていうか、今帰って来たの…」

834: 2014/07/29(火) 20:42:51 ID:dVpeKE22
 
剣士「いや、1時前くらいに戻ってきて、武道家と鉢合わせしたんだが…」

剣士「このドアに鍵かかってて結局、お互い泊まってきた」

剣士「ま、ドア吹き飛ばしたのも鍵かかってたし仕方ないだろう」

剣士「それはそれでまぁ…」ブツブツ


僧侶「し、仕方なくないでしょ!また怒られるよ…も~!」

剣士「何で鍵を閉めたし」

僧侶「…あ、いや」

剣士「まぁいいけどさ」


僧侶「ご、ごめん」

僧侶「……じゃなくて、武道家くんが出て行ったあと、剣士くんがカギ閉めてやるっていうから僕もつられて!」


剣士「げっ、シー!」

武道家「ほほう…?」ギロッ

835: 2014/07/29(火) 20:43:29 ID:dVpeKE22
 
剣士「つ、つーかもう朝だなぁ~!?早いよな~!?」フワァ

僧侶「もうすぐ、朝の集会だよ。ロビーに一回集まらないと」

剣士「お、そうなの?」

僧侶「…しおりくらいは読もうよ」

剣士「はい」


………
……

836: 2014/07/29(火) 20:44:28 ID:dVpeKE22
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 ロビー 】


ガヤガヤ…

魔道士「あ、おはよっ♪」

剣士「はよーっす…、っていうかさっきも挨拶したけどな」

乙女格闘家「おはようっ」

武道家「俺もさっき挨拶したけどな。おはよ」

魔術賢者「…おはよ」

僧侶「おはよ!」


冒険先生「さーて、静かにしろー」パンパン


全員「…」

837: 2014/07/29(火) 20:45:33 ID:dVpeKE22
 
冒険先生「では、まずは朝の挨拶から。おはよう」

全員「おはようございます」

冒険先生「うむ。昨晩、大戦士先生も合流し、無事に2日目を迎えた」

大戦士「…」ペコッ


冒険先生「さてと、まず最初に報告することがある。悪い話じゃないぞ」

冒険先生「昨日、この生徒の中に、奴隷商人に誘拐されたエルフ族を助けたパーティがいる」

冒険先生「そして、中央軍の支部へ保護をお願いした…立派なパーティだ」


全員「おぉ…」

ザワザワ…


冒険先生「それがまさかの…剣士たちなんだ」

838: 2014/07/29(火) 20:46:22 ID:dVpeKE22
 
生徒たち「!?」

生徒たち「まじかよ!」

生徒たち「先生、ウソはよくないと思います!」


剣士「お、お前らなぁ…」ガタッ

魔道士「剣士、抑えて抑えて!」


冒険先生「ごほんっ、信じられないのも無理はないと思うが本当なのだ」

冒険先生「ちなみに今朝、中央軍が護衛する馬車でエルフの子は村へと向かったから安心するといい」


剣士「お、よかった」

魔道士「よかったぁ」ホッ

武道家「預けた時点で大丈夫とは思ってたけどな」

僧侶「そうだね」

839: 2014/07/29(火) 20:47:19 ID:dVpeKE22
 
冒険先生「えーと…共有する事項はそれくらいか」

冒険先生「今日も1日、自由行動とはいえ調子に乗りすぎないようにな」

冒険先生「では、解散!」パンッ!


…タタタタッ

宿店員「あの、先生。ちょっといいですか?」

冒険先生「はい?」

宿店員「…奥の、お宅らの冒険学校の生徒が宿泊してる部屋のドアがですね…」


剣士「」

武道家「」

僧侶「ほら…言わんこっちゃない…」

魔道士「?」

840: 2014/07/29(火) 20:48:02 ID:dVpeKE22
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 西海岸街 中央通り 】

ザワザワ…


魔道士「朝から、冒険先生の怒鳴り声を聞くことになるとは思わなかった…」キーン


剣士「だって仕方ないよな?」

武道家「そうだな」

僧侶「ぼ、僕も悪いからどっちともいえなーい…」


魔道士「まぁ2日目だし、1日は始まったばかりだし、気分変えていこっ!」

魔道士「今日はどこに行くー?」

841: 2014/07/29(火) 20:48:44 ID:dVpeKE22
 
剣士「昨日、なんだかんだで回りたいところ回ったしなぁ」

魔道士「うーん、確かにそうなんだよね」

剣士「じゃあ地図貸してくれるか」

魔道士「うん」ペラッ


剣士「…」

剣士「お~っ、じゃあさ、ちょっと行きたいところあるんだけど」


魔道士「釣り以外ね」

剣士「ちげえよ!まぁ、ついてこい」

…………
……

842: 2014/07/29(火) 20:49:59 ID:dVpeKE22
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 大型武具店 】


剣士「おぉっ…!」キラキラ

魔道士「なるほどね」

武道家「ナイスだ剣士…」ビシッ

僧侶「あー、ちょっと見たいかも」


剣士「だろ?じゃ、こっちのコーナー大きく一周する形で見て回ろうぜ」

魔道士「んっと…、まずは杖コーナーか。私と僧侶の武器からだね」

843: 2014/07/29(火) 20:51:26 ID:dVpeKE22
 
トコトコ…

剣士「杖とか、魔法書とかか…」

魔道士「どっちも魔力を上げるために魔石が組み込まれてたり、銀が埋め込まれてたりとかするんだよ」

剣士「銀?」

魔道士「銀は、闇属性に対して強大な力を発揮できるの」

剣士「あぁ、そういやそんな事を勉強したな」


僧侶「良い武器がいっぱい置いてあるなぁ。僕も新調しようかなぁ…」ゴソゴソ

武道家「…値段、高くね?」

僧侶「うひゃっ、2万ゴールドとか…。学生にとったら痛い値段だね…」

武道家「一番安い1000ゴールドのとかは使い勝手悪いのか?」

僧侶「魔石も粗悪品だし、練習用だよ」

武道家「なるほど」

844: 2014/07/29(火) 20:52:27 ID:dVpeKE22
 
魔道士「うーん…。見た感じ、欲しいのはないかな?」

僧侶「僕は新しいのが欲しいけど、お金足りないや」

剣士「んじゃ、次のコーナー行くか」

武道家「次はー…」

トコトコトコ…

"格闘術 武具"

武道家「ナックルゥ!!」バッ

 
剣士「…昔からだが、格闘術なんざナックルなんてなくても余裕なイメージあるけどな」

武道家「闘気高めるやつとか、純粋な物理火力あげるとか色々あんだよ!」

剣士「そりゃ分かるんだけど」

845: 2014/07/29(火) 20:53:02 ID:dVpeKE22
  
武道家「今のは鉄のナックルだけどよ~…、もっといいの欲しいんだよな」

剣士「…お、これとかどうだ?」スッ

武道家「なんじゃこりゃ」

剣士「殴ると爆発するんだってよ。火炎拳爆だってさ」

武道家「ほほう、どれどれ」スッ

剣士「ん?」

…ブォンッ!!ボゴォンッ!!

剣士「ごふぁっ!!」

ズザザザァ…!


武道家「ほう、スゲーな。でもいらん」ポイッ

剣士「ぶっ頃すぞコラァ!」ブスブス

846: 2014/07/29(火) 20:54:20 ID:dVpeKE22
 
魔道士「何してるんだか…」ハァ

僧侶「はは…」


剣士「ったく…、あっちぃなこの野郎…!」

剣士「こんなところにいられるか!次のコーナーいくぞ!えーと次は…」

トコトコトコ…


"片手剣・大剣コーナー"


剣士「うひょーー!!」

タタタタタッ!!ズザザ…

847: 2014/07/29(火) 20:54:50 ID:dVpeKE22
 
剣士「…!」

キラキラキラ…シャキンッ…

剣士「さすが剣武器。種類がハンパじゃねえ!」


武道家「剣だけスゲー広くね?天井まで吊るしてあんぞ…、あれ落ちてこねぇだろうな…」

ユラ…ユラユラ…

剣士「こえ~…。さっさと見て、もっと面白いのないか探しに行くか…?」

武道家「うむ…」

剣士「えーとじゃあ、どんなのがあるかなーっと…」キョロキョロ

848: 2014/07/29(火) 20:55:40 ID:dVpeKE22
 
魔道士「剣士の今の武器は、鋼の大剣だっけ?」

剣士「おう」

魔道士「それが丁度いい重さなの?」

剣士「そうだなー…。今あるし、持ってみるか?」チャキンッ

魔道士「うん」

スッ…

魔道士「きゃ…!」

ズルッ…ガランガラァンッ!!!


剣士「あ、大丈夫か!」

魔道士「お…落としちゃった…。ごめん…」

849: 2014/07/29(火) 20:56:40 ID:dVpeKE22
 
剣士「いやいいよ。ケガないか」

魔道士「うん…」

剣士「これでも最近は、ちょっと軽いんだよな」

魔道士「これで軽いって…、私じゃ両手でも持ち上げられないのに…」


僧侶「普段からこんなの背負って走ったり歩いたりしてたら…日常が鍛錬だよ…」

剣士「だから無駄に体力ついてんのかも」ハハハ


武道家「体力物理バカ」ボソッ


剣士「あぁ!?」

武道家「…おぉ!?」

850: 2014/07/29(火) 20:57:28 ID:dVpeKE22
 
魔道士「はぁ…。二人とも!こんなところで、他のお客さんに迷惑でしょー…」


???「さっきから、ちとやかましいぞ、この小僧ども!!」


剣士「…あ?」

武道家「…お?」

魔道士「ほら、怒られた。ごめんなさい…」


???「全く、最近の子供は…。人間はこれだからのう…」ハァ


剣士「…人間?」

武道家「どういう意味だよ、アンタだって人間の爺じゃねーか!」

851: 2014/07/29(火) 20:58:10 ID:dVpeKE22
 
鍛冶長「わしゃ、エルフ族の鍛冶長じゃ!人間と一緒にするでない!」

剣士「いい年こいて、ウソつくなよ」


鍛冶長「な、何を言うか!」

剣士「どう見ても、そこらへんにいるお爺ちゃんじゃねえか!エルフ族のように美しくもないだろ!」

鍛冶長「な、何をぅ!?エルフ族だって、歳をとるんじゃ!!」

剣士「それに、何で人間の街の武器屋に、堂々とエルフ族がいるんだよ!いるわけねぇだろ!」

鍛冶長「何でいるのか、じゃと!?」

剣士「…おうよ!何でだよ!」


鍛冶長「…」

鍛冶長「はて…何でいるだっけ?」

852: 2014/07/29(火) 20:59:24 ID:dVpeKE22
 
剣士「」

武道家「」

魔道士「」

僧侶「」


鍛冶長「…」

鍛冶長「そうじゃ、思い出した!うちの村の、女の子が人間にさらわれたんじゃ!」

鍛冶長「だから、長老であるワシが率先してココへ探しに来たんじゃ!」


剣士「女の子!?武器屋にいるわけねえだろ!」

鍛冶長「それはあれじゃ、ワシは武具造りの職人じゃからな。人間の技術の進歩を見ようとな!」

剣士「…ダメだろ!早く探せよ!」

鍛冶長「わかーっとるわい!!」

853: 2014/07/29(火) 21:00:03 ID:dVpeKE22
 
武道家「…何か楽しい爺さんだな」

僧侶「女の子探すって、早く探したほうがいいんじゃないのかなぁ…」

魔道士「……ねえ、もしかして」

武道家「ん?」

魔道士「女の子って、昨日のじゃないの…?」

武道家「あ…」


鍛冶長「ったく、これだから人間は!お前らに言われんでも、探しに行くわい!」クルッ

魔道士「あ、待ってください!」

鍛冶長「今度はなんじゃ!」

魔道士「もしてかしてですけど、探してる女の子って…」

鍛冶長「…んん?」

863: 2014/08/01(金) 20:42:23 ID:CgEmvBzY
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 西海岸街・中央軍支部 】

軍人「…えぇ、大丈夫ですよ。先ほど送り届けたメンバーも無事に戻ってきましたので」

軍人「確かに"幼エルフ"さんは、西海岸村へ戻られました」


鍛冶長「お…おぉ…。良かったわい…!」

剣士「だから言っただろ、大丈夫だって」

鍛冶長「おぬしらが助けたんじゃろ?ありがとうのぉ」

剣士「い、いいっての別に」

鍛冶長「それじゃ、ワシもこの街にゃ用事なんざない。さっさと帰ろうかのう」

864: 2014/08/01(金) 20:44:00 ID:CgEmvBzY
 
剣士「歩いて帰るのか?」

鍛冶長「そりゃそうじゃ。それ以外何がある?」

剣士「ジイチャン、大丈夫なのかよ」

鍛冶長「来る時だって、氏にかけたが無事についた。魔獣の通り道を歩かぬ限りは大丈夫じゃて」

剣士「…軍人さん、送ってやってくれないかなぁ」チラッ


軍人「い、いやしかし…。今、護衛部隊は戻ってきたばかりで休んでいて…」

剣士「ジイチャンなんざ、誘拐するような輩はいないっしょ?護衛っつー護衛はいらなくね?」

軍人「軍がエルフ族とかかわる際は、彼らの保護や護衛は軍としての原則で…」


鍛冶長「保護だと…、ワシらは動物か!?」

軍人「あっ!し、失礼しました!」バッ

865: 2014/08/01(金) 20:45:34 ID:CgEmvBzY
 
鍛冶長「…」ギロッ

軍人「…」


剣士「まぁまぁジイチャン、じゃあ俺らがー…」

大戦士「…ダメだぞ」ボソッ

剣士「!?」クルッ

大戦士「やっと見つけた。寝坊した俺も悪いんだが…」ゼェゼェ


魔道士「大戦士先生!」

武道家「寝坊て」

僧侶「昨日は、沢山食べてごめんなさい!」ビクビク

866: 2014/08/01(金) 20:46:47 ID:CgEmvBzY
 
大戦士「はは…。痛手な出費だったけどいい思い出だよ…」

大戦士「それよりも、エルフ族の村に行くことは許さない。だったら俺が金を出すから、貸切で馬車を呼ぶよ」


剣士「…」


大戦士「えーと…あなたのお名前は?自分は大戦士と申します」

鍛冶長「ワシか?ワシは、鍛冶長じゃが」

大戦士「鍛冶長さんですね。自分がお金を出すので、傭兵の護衛をつけた貸切の馬車で村へお戻り下さい」

鍛冶長「…そんな施しはいらぬ」

大戦士「そういわれましても、お見受けしたところ…貴方は長老に値するお方。万が一もありますので」

鍛冶長「…」

867: 2014/08/01(金) 20:47:54 ID:CgEmvBzY
 
剣士「ジイチャン、乗ってってくれよ。心配じゃん」

鍛冶長「…ふぅむ」

剣士「早く戻ってやってさ、その幼エルフに会ってやったほうがいいんじゃない?」

鍛冶長「…」


剣士「ジイチャンに何かあったら、みんな哀しむじゃん」

剣士「俺らに礼いうなら、恩があるってことで、その恩を返す意味でも乗って帰ってくれよ」


魔道士「…最近、剣士がまともな事言ってる!」

僧侶「ひぃいい!」

武道家「明日は大雪だな」

剣士「ぶっ頃すぞお前ら」

868: 2014/08/01(金) 20:48:46 ID:CgEmvBzY
 
鍛冶長「…仕方ないのう。じゃが、一ついいかの?」

大戦士「何でしょうか?」

鍛冶長「この子らも、一緒にどうじゃ…?お礼がしたく思うのじゃ」

大戦士「お断りします」

鍛冶長「…」

大戦士「エルフ族の村へは、教え子は連れて行けません」

鍛冶長「…なぜ、ダメなのじゃ」


大戦士「…エルフ族は、自分は信用できません」

鍛治長「信用、できないとな」

大戦士「…」

869: 2014/08/01(金) 20:49:26 ID:CgEmvBzY
  
剣士「大戦士兄…」


大戦士「あなたたちからすれば、人間は信用できないのでしょう」

大戦士「ですが、あの体験をした自分からすれば…。エルフ族は人間と何も変わらないですから…」

大戦士「残虐性という面は、人と何ら変わりないと思っております」


鍛治長「どういうことじゃろうか…」


大戦士「…」

大戦士「……」

大戦士「丁度いいか…。剣士たちもよく聞いてくれ。これは他人に話すんじゃないぞ」

大戦士「軍人サン、悪いけど少し席を外してもらえるか?」


軍人「は、はいっ!」ビシッ

軍人(まさか、こんなところで中央軍の元エース、大戦士さんに出会えるなんて…)

ガチャッ…バタンッ

870: 2014/08/01(金) 20:50:39 ID:CgEmvBzY
 
剣士「あ…あぁ。他言無用か。わかった」

武道家「わかった」

魔道士「わかりました」

僧侶「…はいっ」


大戦士「…」

大戦士「……昔の話ですが、自分はエルフ族の村の護衛にあたったことがあります」


鍛治長「ふむ…」

871: 2014/08/01(金) 20:51:30 ID:CgEmvBzY
  
大戦士「ちょうど、エルフ族と人間の関係を積極的に修復しようとした時期でしたか」

大戦士「その頃、エルフ族のとある村の付近で、強力な大型魔獣の確認がされました」

大戦士「当時現役だった自分は、その討伐隊に参加し、その村の付近でベースを張りつつ護衛にあたったのです」


剣士「…」

鍛治長「…」


大戦士「周辺にいた小型の魔獣などを討伐しながら、大型魔獣の出現を待ち、数日が経過しました」

大戦士「そんな時…あの事件が起こったんです」ギリッ


剣士「あの事件…?」


大戦士「…夜中。休息中の我々に、その村のエルフ族が、ベースキャンプに対して火を放ち攻撃してきた…」

大戦士「守るべき相手に、後ろから矢を打たれたんですよ…」

872: 2014/08/01(金) 20:52:45 ID:CgEmvBzY
 
剣士「なっ…」 
 
鍛治長「…!」

武道家「ひ、ひでぇ!」


大戦士「まぁ考えなかったことではないのですが。人間にエルフ族が恨みを持っていたのは事実でしたし」

大戦士「ですが、その攻撃してきた時間帯が問題だった」


魔道士「時間帯ですか?」


大戦士「討伐対象の大型魔獣が、活発に動きまわる時間だったんだ」

大戦士「だからその火炎や攻撃に触発された大型魔獣が、そのキャンプへと姿を現した…!」


僧侶「そ、それで…」

873: 2014/08/01(金) 20:53:19 ID:CgEmvBzY
 
大戦士「大混乱になった隊は、大型魔獣や、それについてきた魔獣に壊滅状態になったものの…」

大戦士「生き残ったメンバーたちで体制を整え、大型魔獣は何とか討伐しました」

大戦士「だが。…それは地獄の始まりだった」


剣士「…地獄?倒したのにか?」


大戦士「簡単な話だ。全てが終わり、我々がボロボロだった時、助けを求めるのはどこだと思う?」


魔道士「…エルフ族の村!」


大戦士「そう。守り切った村へ、助けを求めた」

大戦士「目の前で彼らの為に命を張ったのだから、少しくらい優しくしてもらえると思ったんだ

大戦士「だけどね、彼らは弱り切った隊員たちを…殺そうとしてきたんだよ」


剣士「…っ!」

鍛治長「…」

874: 2014/08/01(金) 20:54:16 ID:CgEmvBzY
 
大戦士「命からがら逃げたよ。物資はなくなり、帰りの道中は困難を極めた」

大戦士「キズを負った者は倒れ、仲間が氏んでいく。どれだけつらかったか…」


剣士「…エルフ族を襲って、物資を奪うことは考えなかったのか?」


大戦士「軍の規律は絶対。そう教え込まれていた」

大戦士「エルフ族との関係の修復は、世界平和への一歩とし、彼らを傷つけることは許されなかった」


剣士「…それが、軍なのか」


大戦士「当時はそれが当たり前と思っていたからね」

大戦士「だけど、今も同じような事があってもエルフ族には攻撃しないと思うよ」

大戦士「お互いの関係がよりよくするためには、どちらかが犠牲を伴わなければならないのは…仕方ないことだから」


剣士「…」

875: 2014/08/01(金) 20:55:33 ID:CgEmvBzY
 
大戦士「今よりも道具は発展しないなかったし、そのせいで犠牲者が多かったってのあるけど…」

大戦士「そういう理由があって、とてもじゃないがエルフ族は信用できないんだ」

大戦士「あとから聞いた話だけど、そのエルフ族の民は大型魔獣が暴れる時間帯を知っていて…」

大戦士「我々のいた隊に攻撃するよう、わざと仕向けたとも聞きましたから…」


鍛治長「…」


大戦士「そんな目にあっても、彼らを許すことは出来た。軍人としてもですが、エルフ族も同じ目にあってきたのだと思うとね」

大戦士「……ま、まぁ許すことは出来たけど、信用は出来ないのは変わることはないと思います」

大戦士「鍛治長殿、今のお話で彼らを村につれていけない理由としてよろしいでしょうか」


鍛治長「…」


剣士「…だ、大戦士兄」

大戦士「ん?」

876: 2014/08/01(金) 20:56:32 ID:CgEmvBzY
 
剣士「何で、その話を俺らにも…」

大戦士「…君たちには、色々な世界を知ってほしいからさ」

剣士「世界を?」

大戦士「冒険者として旅立つなら、世界は光り輝いていることばかりではないという事を胸においておいてほしい」

剣士「…」


大戦士「冒険学校だけじゃなく、普通の学校でも"光"しか見せないところは多い」

大戦士「光には必ず影が出来る。闇がある」

大戦士「そして、生きることは光と闇を歩くことを繰り返す」

大戦士「…その闇の面の一部を、知っておいて欲しいと思ったんだよ」


剣士「…」

魔道士「大戦士先生…」

877: 2014/08/01(金) 20:57:39 ID:CgEmvBzY
 
鍛冶長「…」

鍛冶長「……大戦士先生」


大戦士「はい」

…ペコッ

大戦士「!」

鍛冶長「…すまなかったな。同じ同族がやったこととして、謝らせていただく」

大戦士「やめて貰えませんか。頭を上げてください」

鍛冶長「…」

大戦士「何をされても、信用はしません。それだけですから」

鍛治長「…ただ、謝らずにはいられなかっただけじゃ…」

大戦士「…」

878: 2014/08/01(金) 21:01:22 ID:CgEmvBzY
 
剣士「…」

剣士「…」

剣士「…」

剣士「…」

剣士「あーあっ!!アホくっさ!!」


魔道士「ちょ、ちょっと!?」

武道家「おい、剣士!」

僧侶「剣士くん!?」


剣士「大戦士兄も、意外と頭が固いんだねぇ。俺寄りだと思ってたけど、全然軍人寄りじゃん」

大戦士「どういうことかな?」ピクッ

879: 2014/08/01(金) 21:02:10 ID:CgEmvBzY
 
剣士「平和、平和といってても、結局さ、エルフ族と人間の間じゃ戦争が続いてたってことだろ?」

剣士「つーか、今まで酷い事してたのに"これから仲良くしようね"なんて突然言われても、エルフたちは信用するはずないじゃん」

剣士「勝手に人間が決めて、エルフたちが"うん、もうケンカはしない"なんていうワケないし」


大戦士「それは分かっていたが…」


剣士「平和にしようとしたのは、人間だけ。エルフ族にとっては、当時、まだまだ戦争は続いてたんでしょ」

剣士「そこへ、のこのこと中央軍が派遣されて、それをチャンスとしたエルフ族が人間に戦いを仕掛けた」

剣士「大戦士兄は、戦争で人が氏んだら"なんで頃した!"っていうの?」


大戦士「それは…」


剣士「今はどうかは知らないけど、こうしてジイチャンが人間のいる場所にいるってことは、当時よりは本当に平和ってことだし」

剣士「そのお礼をしたいってのは、本当の平和の一歩なんじゃないの?」

剣士「"時代が変わるって、誰かが犠牲になることの積み重ね"じゃん」

剣士「大戦士兄も自分を犠牲にしてエルフ族を守ったなら、ジイチャンは人間への気持ちを犠牲にしてココへ来た」

剣士「…二つの犠牲は、誰かが氏んだを関係なしに、凄いことだと思う。それに応えようとは思わないの?」

880: 2014/08/01(金) 21:03:33 ID:CgEmvBzY
 
鍛冶長「こ、小僧…」

大戦士「…ん、んーむ……」


剣士「…行ってもいいと思うな、ジイチャンの村へ」

大戦士「…」

剣士「いや、行くべきだと思うんだ」

大戦士「…」


剣士「やっぱり、だめか…?」

大戦士「お前ってやつは、たまたま心に響くようなことを言ってくるんだよな」

剣士「…」

881: 2014/08/01(金) 21:04:53 ID:CgEmvBzY
 
大戦士「…」

大戦士「…」

大戦士「…」

大戦士「…はぁ」

大戦士「危険だと思ったら、すぐに戻るぞ。いや、村の様子を見て…入る前に戻る。いいか」


剣士「…!」


大戦士「では…、そういうことです。鍛冶長殿、今すぐ馬車を呼んでくるのでお待ちください」

鍛冶長「…いいのか?」

882: 2014/08/01(金) 21:05:55 ID:CgEmvBzY
 
大戦士「…ちょっとだけ考えが変わっただけです」

大戦士「気が変わらないうちに、馬車を呼んできますよ」

大戦士「……はは、あいつらに会ったら、全力で土下座せにゃならないな」ボソッ


鍛治長「んむ…」


タッタッタッタッ…

………

883: 2014/08/01(金) 21:06:47 ID:CgEmvBzY
 
魔道士「…」

魔道士「ねぇ…剣士」


剣士「ん?」

魔道士「剣士の言ってる意味もすごい分かるけど、大戦士先生に対して、あんな強気じゃダメだと思う」

剣士「…何で?」


魔道士「もし私たち…、同級生や先生たちが当時の軍の、同じようなクエストを受注したとして…」

魔道士「そのクエストの最中に、守るべき相手から火を放たれて…」

魔道士「剣士以外の全員が氏んじゃったとしたら…、どんな気持ちなる」

魔道士「私や武道家、僧侶。乙女格闘家、魔術賢者…冒険先生、少戦士、大戦士兄…、みんなが氏んだら」


剣士「う…」


魔道士「きっと軍人さんだった大戦士先生は、戦いを経て、私らが想像もつかないくらいの強い絆で結ばれてた仲間だったと思う」

魔道士「それが、守ろうとしてた味方に背中から矢を打たれたの。そして、全てを失った。…どんな気持ちか、考えてみて」

884: 2014/08/01(金) 21:07:53 ID:CgEmvBzY
 
剣士「……そ、そうか」

剣士「大戦士兄に言葉を言うばかりで、そんなこと考えもしなかった…」

剣士「…じゃあ、大戦士兄は…そのうえで…、あんな軽く俺の意見を受け入れたのか…」


魔道士「そうだと思う。やっぱり普段はとぼけてても…、大戦士先生は大人なんだよ。凄い立派な、戦士なんだよ」

剣士「…」


魔道士「…」

剣士「…」

武道家「…」

僧侶「…」


剣士「俺、子供じゃん…。バカじゃん…。何言ってんだろ…」

魔道士「あっ…。で、でも!剣士の言うことも分からないわけじゃないんだからね?」

剣士「…っ」

885: 2014/08/01(金) 21:08:30 ID:CgEmvBzY
 
鍛冶長「…ワシの一言が、すまなんだな。それとワシの同胞が…本当に迷惑をかけた」

魔道士「あっ。そ…そんなつもりじゃ…」

鍛冶長「いいんじゃ」

魔道士「…」


剣士「…じ、ジイチャン!だったらさ、俺は心開いて仲良くすっから…、な!ここからでも!」

鍛冶長「小僧…」


剣士「悔しいけど、本当に経験も浅いし…どういえばいいか分かんないけどさ…」

剣士「俺は、そういう話を聞いても…仲良くしたいと思う!」

剣士「仲間を殺されてないバカな俺の意見だけど…、大戦士兄とか当時の人らに怒られるかもしんないけど……」

剣士「分かんないなら、分かんないでいいから、分かんないからこそ…仲良く出来ると思う……」


鍛治長「…」

鍛冶長「は…はっはっは!なんじゃ、その理論は」


剣士「…」

886: 2014/08/01(金) 21:09:04 ID:CgEmvBzY
 
鍛冶長「…大戦士先生とやらに、村へ入るかどうかの許可はきちんと聞け」

鍛冶長「とにかくワシは、お前らを歓迎する。大事な村の子を助けられた、その気持ちは忘れぬよ」


剣士「…ジイチャン」


パカッパカッパカッパカッ…!!


武道家「っと…馬車が来たみたいだぜ」

剣士「行こうか…」

魔道士「…どうなるのかな」

僧侶「…少し、不安だけど」


剣士(大戦士兄に…、謝らないと…)


………
……

887: 2014/08/01(金) 21:09:56 ID:CgEmvBzY
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数時間後 西海岸村(エルフ族の村) 】


パカッパカッパカッ…ズザザァ…

馬車商人「つ、ついたよ。さっさと用事を済ませてくれ…」


大戦士「すまんな。余計に払う」チャリンッ

馬車商人「か、金なんかさっきたっぷり受け取ってるだろ!早く帰りたいんだ!」

大戦士「…すまんな」

モゾモゾ…ストンッ


剣士「ここが、エルフ族の村か」

888: 2014/08/01(金) 21:10:53 ID:CgEmvBzY
 
サァァァッ…ソヨソヨ…

剣士「ん…土がいい匂いだ。風が気持ちいいな」

武道家「なんか村って感じがするな。見ろよ、水車が回ってるぜ」

僧侶「のどかな感じで、こういうところに住みたいなぁって少し思っちゃった」

魔道士「本当にきれいな村…」


鍛冶長「…まだ村には入らないでくれるかの。ちょっと待っとれ」

タッタッタッ……


剣士「…さて、大戦士兄はどう思う?」

大戦士「俺としては、あまり歓迎されないと思うね…」

剣士「…そ、そうだよな」

大戦士「……ん?そのセリフお前らしくないな。"そんな事ねえだろ!"とか、言うと思ったが」

889: 2014/08/01(金) 21:11:41 ID:CgEmvBzY
 
剣士「い、いいよ…」

大戦士「…?」


魔道士「そ、そういえば!今日は少戦士くんはどうしたんですか?」

大戦士「今日は別のパーティと行動してるよ」

魔道士「あ、そうなんですか」


ザッザッザッ…

鍛冶長「…おおい、こっちだ!ワシの家に来い!」


剣士「…だってよ」

大戦士「行ってみるか」

………
……

890: 2014/08/01(金) 21:12:24 ID:CgEmvBzY
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 鍛冶長の鍛冶工房 】

カーン…カーン…!

鍛冶長「いらっしゃい、ここが家じゃ」

剣士「…あっ!そうか、ジイチャンは鍛冶屋か!」


鍛冶長「武具よりも、クワやスコップなどの日用道具を作ってるほうが多いけどの」ハハハ

鍛冶長「熱気が凄いじゃろ。部屋は…こっちじゃ」


トコトコトコ…

891: 2014/08/01(金) 21:13:07 ID:CgEmvBzY
 
大戦士「…」キョロキョロ

剣士「大戦士兄?」

大戦士「エルフ族も立派だなと思ってね。置いてある道具の手入れはしてあるし、作ってあるモノも一級品しかないよ」

鍛冶長「はっはっは、ありがとうの」


…ザッ

職人エルフ「…おい、待て」

鍛冶長「…む」

職人エルフ「親父、こんな奴連れてきて何してんだよ。余所者…人間だろコイツら」ギロッ


大戦士「…こちらの方は」

鍛冶長「ワシの息子じゃ。ワシが半ば引退しとるしの…、この工房は息子に任せているんじゃ」

892: 2014/08/01(金) 21:13:50 ID:CgEmvBzY
 
職人エルフ「ご紹介にあずかり、どーも。だが、人間の来るとこじゃねえよココは」

鍛冶長「…ワシらの村の、幼エルフを救ってくれた一行じゃ。礼はするべきじゃろ」

職人エルフ「何?幼エルフの?」

鍛冶長「今朝方、この村へ戻ってきたんじゃろ?」

職人エルフ「…確かに、戻ってきたが」

鍛冶長「お礼はするべきじゃろ」

職人エルフ「…人間がさらい、人間の助けで戻った。それだけで半々だろ。礼はしなくていい」

鍛冶長「…ワシも届けてもらったんじゃが?」


職人エルフ「…っ」

職人エルフ「勝手にしろ!」

タッタッタッタッ…

893: 2014/08/01(金) 21:14:31 ID:CgEmvBzY
 
鍛冶長「…すまんな、みんな」


大戦士「いえ…」

剣士「気にするなよ。っていうか、俺らがいていいのか…?」

魔道士「あまり鍛冶長さんの立場的にも、よくないんじゃ…」


鍛冶長「息子は、子供の時から人間を敵視することを教えられてきた」

鍛冶長「もういい歳だというのに、今更…考え方が変わらないのじゃろう」

鍛冶長「それより、客室へあがってくれ。少々、ここは今のワシにとっても、君らにとっても暑すぎる…」

………

894: 2014/08/01(金) 21:15:10 ID:CgEmvBzY
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…コトン

メイドエルフ「特製のアイスドリンクです。砂糖はお好みで…」ペコッ

カツカツカツ…ガチャッ、バタンッ


剣士「じ、ジイチャン…メイドさん雇ってんのかよ。金持ちだな」

魔道士「すっ~~~っごく、キレイだった…。何あの足の長さとか、美白さ!反則~!!」

武道家「やべぇな…エルフ族」

僧侶「でも、メイドさんは僕らを敵視はしてなかったね?」

895: 2014/08/01(金) 21:16:16 ID:CgEmvBzY
 
鍛冶長「今の若い子らは、あまり人間を敵だ!とは思ってないようでのぉ」

鍛冶長「昔ほど、人間に対しての敵心を植え付ける教育もせんし…」

鍛冶長「"昔悪い事をされた"くらいしか思ってないんじゃないだろうかの?」


大戦士「…そ、それは初耳です。我々は、エルフ族全体がいまだに恨みをもってるのかと」


鍛冶長「ワシの息子の世代が一番、人間を敵視をしているんじゃ。そう教えたからの…」

鍛治長「じゃが、更にうえのワシらの世代は、過去の事として扱い、もう気にしてはいない」


大戦士「…!」


鍛冶長「大戦士先生が現役のころは、ワシやワシの息子らが人間に対しもっとも恨みを持っていた時期にあたろう」

鍛冶長「あなたたちの悲劇は、それが重なっていた…。すまなんだ…」


大戦士「…」

896: 2014/08/01(金) 21:16:48 ID:CgEmvBzY
 
…グビッ

剣士「…う、うまぁっ!!」

武道家「うお、うめぇ!?」プハッ

魔道士「すごく濃厚なのに、喉に残らない飲みやすさで、甘くて…!」

僧侶「なんか身体も涼しくなってきた気がする!」


鍛冶長「はは、旨いと言ってくれると嬉しいのう」


コトッ…ゴクンッ

大戦士「…うまい」

897: 2014/08/01(金) 21:17:33 ID:CgEmvBzY
 
鍛冶長「まぁそれは軽いお持て成しじゃ。本当のお礼は別にあるから安心してくれ」

剣士「本当のお礼?」


鍛冶長「…ワシはこれでも老いぼれたとはいえ、鍛冶屋の長」

鍛冶長「礼に、特製の武器を造ろうと思うが、どうかの?」


剣士「!」

鍛冶長「もちろん小僧だけでなく、その仲間もな」ニカッ

剣士「そ、そりゃちょっと嬉しい話でー…!」


大戦士「ま…、待ってください!」バッ

鍛治長「む?」

剣士「ど、どうしたんだ大戦士兄」

898: 2014/08/01(金) 21:18:15 ID:CgEmvBzY
 
大戦士「え、エルフ族の鍛冶技術で人間の武器を…!?」

剣士「そんな驚くことなのか?」


大戦士「当たり前だ!エルフ族特有の魔の濃い血を持つその腕は、その武具も見事なものなんだ」 
 
大戦士「人間には決して出来ない、魔力輝く武器を打つことが出来る。だ、だが…それは…」


鍛冶長「…人間に求められ、エルフ族がいくら非道をされても…決して人間にはその腕を振るうことはなかった…かの?」

大戦士「そうです!こ、この子らは確かに村の子を救いました!し、しかし!」

鍛冶長「お互いがいがみ合うのは好きじゃなくてのぉ。ワシはワシが生きているうちに、少しでもしがらみを…」


…ガチャッ!!

職人エルフ「…おい!!親父!!」

鍛冶長「…」

職人エルフ「やはり心配して聞いていれば…!聞こえたぞ!今、なんつった!?」

鍛冶長「やれやれ、聞き耳をたててたのかの?ま、その言葉通りじゃが?」

899: 2014/08/01(金) 21:19:01 ID:CgEmvBzY
 
職人エルフ「…っざけるなよ、俺らの魂の結晶を、たった一人の村の同胞を救ったくらいで渡すことはねぇだろ!」

鍛冶長「たかだか、武器くらいで何を言うか。その結晶は、非道の時代にとっくに人間に奪われておるわ」


職人エルフ「それとこれは違う!誇りあるエルフ族が、人間に善意で造るのが問題だと言ってるんだ!」


鍛冶長「それではいつまでたっても、人間との平穏は生まれぬぞ?」

職人エルフ「それでいいだろ!人間とエルフは分かり合えないんだよ!」

鍛冶長「分かり合えないと思っているからじゃろ。お前、初めて鍛冶をした時に言った言葉を覚えているか?」

職人エルフ「…小さい頃のことなんか、覚えてねえよ」

鍛冶長「"鍛冶なんか出来ない。エルフ族の血なんか、分かるわけない"…じゃ」

職人エルフ「!」

900: 2014/08/01(金) 21:19:45 ID:CgEmvBzY
 
鍛冶長「ところがどうだ、お前は今や、ワシを継ぐほどの立派な鍛冶師となった」

鍛冶長「それはどういう事じゃろうか」

鍛冶長「人間と分かり合えない…。その言葉と、今のお前。比べてみるがいい」


職人エルフ「ぜ…、全然関係なんかねぇよ!!くそっ!!」

ガチャッ…バタンッ!!


鍛冶長「やれやれ」

剣士「…ジイチャン、本当にいいのか?」

鍛冶長「気にするな。お前さんが、お礼を受けたいと一番に言っていたんじゃないかね?」

剣士「そ、そりゃそうだけど…」

鍛冶長「だったら責任を持て」

剣士「うっ…」

901: 2014/08/01(金) 21:20:17 ID:CgEmvBzY
 
鍛冶長「ここがどういう場所かは、大戦士先生の話を聞いて分かっていたはず」

鍛冶長「そしてワシが、お前らに武器を作るという意味も…まだ若き心で重く考えろとは言わぬ」

鍛冶長「じゃが…、息子が言っていた"魂"は本物。それだけは胸に留めておいてくれ」


剣士「…」


大戦士「そこまで言われたら、自分は何も言えません…」

大戦士「この話、有難く頂戴致します。願わくば、この子らの未来にエルフ族との友好の兆しとならんことを」


鍛冶長「こちらこそ、じゃ」

鍛冶長「どれ…、少し部屋で待っておいてくれ。準備が終わったら、ワシらの魂を打つ様を…見せたいからの」ニコッ

…………
……

902: 2014/08/01(金) 21:21:43 ID:CgEmvBzY
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コチ…コチ…


大戦士「…参った。こんな事になるとは」

剣士「やっぱり、そんな凄い事なんだな…」

大戦士「のんびりはしていたが、これはとんでもない事だぞ。あの爺さん、よっぽどクセ者だ…」ハァ


魔道士「エルフ族の武具って、そこまで凄いものなんですか?」


大戦士「エルフ族の鍛冶師は、その魔力を武具へと自然と打ち込む技術を持っている」

大戦士「人間にもできなくはないが、元々体内に宿す魔力純度や性質が異なっていて、彼らほどのものはできないんだ」


魔道士「へぇ…」

903: 2014/08/01(金) 21:23:38 ID:CgEmvBzY
 
大戦士「彼らの武具や道具を巡って、奴隷狩りの他にも山賊紛いの面子が当時は多くてね」

大戦士「貴重だった武器や防具は、その時に多く紛失されているし…」

大戦士「エルフ族への危害が大きく規制された今、山賊も減り、裏のオークションには高値で出品されてるんだよ」


武道家「…そんな物を、俺らに?」

僧侶「せ、責任重大っていうか…」


大戦士「それに、彼らが言った"魂"を渡すという事はそのまんまの通りさ」

大戦士「エルフ族にとって、数少ない…人間とは異なる証拠だからね」


剣士「異なる証拠?」


大戦士「宿す魔力の感覚や、その美しさだけでエルフ族と分かるけど」

大戦士「生活や、その基本の容姿は人間とはほとんど変わらない。なのに、人間に一方的に暴力をされてきた」

大戦士「だから、エルフ族は"人間"と"エルフ"の差として、唯一象徴としていたのが魔の道具だった」

大戦士「つまり…エルフ族の"魂"」

大戦士「それを人間の為に造る、渡す。それがどれほどの事か…わかるだろう?」

904: 2014/08/01(金) 21:24:34 ID:CgEmvBzY
 
剣士「…」

魔道士「は、はい…」

武道家「…」

僧侶「魂、ですか…」


大戦士「本当に平和への第一歩となればいいが、不安でしかたないのが本音だ」

剣士「…っ」

大戦士「…その武具が似合う、素晴らしい人間になってくれることを願うよ」


剣士「…」コクン

魔道士「はいっ」

武道家「…わかった」

僧侶「ど、努力します…!」

905: 2014/08/01(金) 21:25:11 ID:CgEmvBzY
 
剣士「…」

剣士「…そうだ、大戦士兄」


大戦士「なんだい?」

剣士「さ、さっきはゴメン…なさい。あんな分かったふうな口を利いて…」

大戦士「さっき?」

剣士「その…、大戦士兄の仲間を、過去のことだと引きずるなとかみたいに…」

大戦士「あぁ…」

剣士「…ごめん…なさい」


大戦士「…」フゥ

大戦士「なんだ、お前らしくもないな!」ハッハッハ

906: 2014/08/01(金) 21:25:59 ID:CgEmvBzY
 
剣士「え…」

大戦士「確かに、時代は変わるものかもしれないと思えただけだ」

剣士「だけど…」

大戦士「思った以上に、お前の言葉も響いてね。それだけだ、気にするんじゃないぞ」

剣士「…だ、だけどさ!」

…グニッ

剣士「あいでででっ!?」


大戦士「謝るな。お前の言葉は俺に響いたといっただろう?お前が俺の心を揺さぶったんだ」

大戦士「それに、お前は謝るようなキャラか?」ハハッ


剣士「だ、だけどよぉ…」ズキズキ

907: 2014/08/01(金) 21:26:32 ID:CgEmvBzY
 
大戦士「お前は謝るくらいなら、俺を見返すくらいの人間になれるよう、いつもみたく前向きにいけ」

剣士「み、見返す?」

大戦士「お前がエルフ族と人間の平和の礎となって、俺に"どうだ、俺が正しかっただろ!"と笑って見せろ」

剣士「…っ」


大戦士「その努力をしてもダメだったら、謝るくらいでいいんじゃないか?」

剣士「ぐぬ…」

大戦士「だから、気にするな。わかったか?」


剣士(…武装のオッサンといい、大戦士兄といい…。何でこう…!)

908: 2014/08/01(金) 21:27:49 ID:CgEmvBzY
 
ドタドタドタ…!!

…ガチャッ!!

鍛冶長「…お、お前さんがた!」


大戦士「あ、鍛冶長殿…ご苦労さまです」ペコッ

鍛冶長「挨拶はいい!それより、ちょっと大変な事が起きての!」

大戦士「…はい?」

鍛冶長「とりあえず来てくれるかの!」

大戦士「は、はい」ダッ

タッタッタッタッ…

909: 2014/08/01(金) 21:28:21 ID:CgEmvBzY
 
剣士「何だ?」

魔道士「…さ、さぁ」

武道家「とりあえず俺らも行ってみよう」

僧侶「だね」


…………
……

917: 2014/08/03(日) 20:19:10 ID:DBmPOYXw
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 村の入口付近 】


ザワザワ…


魔道士「わっ…、武装した若いエルフたちいっぱいがいる…」

大戦士「みんな、一応俺の後ろに」バッ


鍛冶長「みなのもの、静まれ!」


エルフ兵士たち「…鍛冶長」

エルフ兵士たち「さっきの話、本当ですか?」

エルフ兵士たち「というか、その後ろの奴ら…、人間では!?」

918: 2014/08/03(日) 20:20:02 ID:DBmPOYXw
 
鍛冶長「…さっき話をした、幼エルフを救ってくれた恩人たちじゃ」


エルフ兵士たち「あ、そうでしたか。これは失礼しました」ペコッ

エルフ兵士たち「実はあの子は、ずっと遊んでいた子で…有難うございました」

エルフ兵士たち「人間もやはり、捨てたものではないということですな」

ガヤガヤ…


大戦士「…これは」


鍛冶長「兵士たちは、さっきのメイドと一緒くらいの歳の、村の護衛を担っている兵士たちじゃ」

鍛治長「さっき、人間への気持ちは落ち着いていると言ったじゃろ?」


大戦士「し、信じられませんよ…」

919: 2014/08/03(日) 20:20:42 ID:DBmPOYXw
 
鍛冶長「それよか、大事な話じゃ。さっき、ワシらが乗って来た馬車があったろう」

大戦士「は、はい。確か…向こう側で待機させてましたね」

鍛冶長「…実は、ここに待機するのが嫌で逃げたようなんじゃが…」

大戦士「げっ…!」

鍛冶長「その際に、どうやら魔獣とぶつかってしまったらしくてのう…」

大戦士「魔獣ですか?」


鍛冶長「ワシらが近づかない魔獣の巣のルートを通ったらしく…」

鍛治長「臭いを辿って、魔獣の集団がこちらに向ってるようなのじゃ」


大戦士「なっ…!」

鍛冶長「今、先遣で状態を見に行かせたが…」


パカッパカッパカッパカッ!!

エルフ兵士「鍛冶長殿~!」


鍛冶長「…丁度帰ってきたの」

920: 2014/08/03(日) 20:21:18 ID:DBmPOYXw
 
エルフ兵士「報告します!ここから数キロ先、大百足の魔獣の集団がこちらへ押し寄せております!」

鍛冶長「やはりか…」

大戦士「…っ」

鍛冶長「お礼をするつもりが、こんな事に巻き込んですまなんだ…。是非、手を貸して頂けないだろうか」ペコッ


大戦士「あの馬車を呼んだのは自分です。自分にも責任があるでしょう…」

大戦士「少しでもお力になれるなら、この腕を貸しましょう。いえ、やらせてください」


鍛冶長「心から礼を言わせていただく…!」


剣士「じゃあ、俺の出番ってことでもあるわけじゃなーい?」チャキッ

魔道士「私は後ろから支援しよう…」

武道家「任せろ!」スパァンッ!

僧侶「ひ、ヒールなら!」

921: 2014/08/03(日) 20:22:24 ID:DBmPOYXw
 
大戦士「お、おいおい。お前らは部屋の中で…」

剣士「…百足如きで、俺らがやられると思ってるのか?」

大戦士「ただのムカデじゃないんだがな…」

剣士「大丈夫だっつーの!」

大戦士「…危険だと思ったら、下がるんだぞ」

剣士「承知!」


鍛冶長「はっはっは、頼もしい小僧らじゃの」


ゴッ…ゴォォォオ…!!!

922: 2014/08/03(日) 20:23:02 ID:DBmPOYXw
 
剣士「…何の音だ?」

大戦士「魔獣の足音だな。地を這うようにして、風を切り、耳へと届いているんだ」

剣士「…」

大戦士「ほら、来たぞ。目を凝らしてよく見ろ」

剣士「む…」


ゴォォォォ…!!ガサッ…ガサガサガサッ!!


剣士「あ、みえた!!…け、けど…」ヒクッ


魔道士「え゛っ…」

武道家「げっ…」

僧侶「き…ぎもぢわるぃ…」

923: 2014/08/03(日) 20:24:08 ID:DBmPOYXw
 
大百足たち『…ッ!!』

ガサガサガサガサ…!!


剣士「む、ムカデをそのまんまデッカくしただけじゃねえか!なんだあれ!!」

大戦士「だから大百足だと言っただろう」チャキンッ

剣士「で、でかすぎんだろ!つーか、集団でマジで来てやがるし!」


大百足『…』

大百足『…』

大百足『…』

ガサガサガサガサ…ッ!!!

924: 2014/08/03(日) 20:25:35 ID:DBmPOYXw
 
エルフ兵長「全員、武器を構え!魔法を使えるものは、準備!」バッ

エルフ魔術師たち「はっ!」パァッ

エルフ兵士たち「準備完了!」チャキッ


剣士「うお…」

大戦士「4人とも、良い経験になるぞ。しっかりこの空気だけでも、覚えておくんだ」

剣士「…わ、わかった」

武道家「ういっす」

魔道士「わかりました…」

僧侶「はいっ」

925: 2014/08/03(日) 20:26:24 ID:DBmPOYXw
 
エルフ兵長「魔法…うてぇー!!!」 

エルフ魔術師たち「大火炎魔法っ!!」パァッ!

ボッ…ボォォォオッ!!!ドゴォンッ!!ズドォォンッ!!


大百足『…!』

ガサガサガサガサ…!!


剣士「ぜ、全然ひるまねぇぞ!」

大戦士「剣士、武道家。あいつらと対峙しても、口の前には身体を出すな。足を狙うんだ」

剣士「わかった」

武道家「うむ」


大戦士「下手をすれば一瞬で噛み千切られる。相応の覚悟で行くんだな」

剣士「…ッ」

武道家「そ、そんなになのね…」

926: 2014/08/03(日) 20:27:10 ID:DBmPOYXw
 
大戦士「ふむ。では…」スゥゥ

大戦士「…」

大戦士「……エルフ族の者たちよ!!!」ビリビリ


剣士「…うおっ!」ビリビリッ

魔道士「す、凄い声と迫力…!」キーン

武道家「大戦士サンの本気を見られるのか…?」

僧侶「…ッ」ドキドキ


大戦士「ここは先に私が行かせてもらおうと思う!!」ビリビリ

大戦士「元々、これは私らが引き起こしたのと同じこと!その責任は自ら負わせてもらう!!」


エルフ兵士長「…!」

エルフ兵士たち「おぉ…」

剣士「か、かっけぇ…!」

927: 2014/08/03(日) 20:28:04 ID:DBmPOYXw
 
大戦士「剣士、武道家」

大戦士「もし先陣の俺から抜け出た大百足がいたら、お前らはここでエルフ兵士の邪魔にならないように、上手く戦えよ」

大戦士「…今のお前らならできるはずだ」ポン


剣士「わかった」コクン

武道家「任せてくれ」コクン


大戦士「…肉体鋼鉄化魔法!!敏捷化魔法!!大攻撃増大魔法っ!!」

パッ…パァァァッ!!!

ビキビキビキッ…!!


大戦士「…うっしゃあ!!」

ダッ…ダダダダダダダッ!!!ビュウゥゥオオオッ!!


剣士「!」

武道家「早っ…!」

928: 2014/08/03(日) 20:29:04 ID:DBmPOYXw
 
ズザザザァ…ググッ

大戦士「ふんっ!!」

…タァァンッ!!!ビュオオッッ!!


鍛冶長「な、何て高さの飛翔じゃ…!」

エルフ兵士たち「す、すげぇ!どんな脚力してるんだ!」


大戦士「…大…水流魔法っ!!」パァッ!

ザッ…ザボォォォンッ!!!


大百足たち『…ギッ!!』ギロッ

929: 2014/08/03(日) 20:30:24 ID:DBmPOYXw
 
大戦士「…大、雷撃魔法ぉぉっ!!!」パァァッ!!

バチッ…バチバチバチバチィィッ!!ズ、ズドォォンッ!!!

大百足たち『…ッッ!!!』

ドシャッ…ドシャドシャアッ…!!


剣士「うおお!すげぇ…!!」

武道家「はは…、あんなに強かったのかよあの人…」

魔道士「魔術師でも何でもないのに…。あそこまで魔法を極められるものなの…?」

僧侶「まるで水の大砲に、雷の雨…。しっかり弱点属性も抑えてるし…」


大戦士「…仕上げますかね」ニヤッ

ググググッ…!!

930: 2014/08/03(日) 20:31:51 ID:DBmPOYXw
 
剣士「!」

武道家「お、おい!あれって!」

魔道士「剣士の構えのやつ!」

僧侶「…空中から!?」


大戦士「おりゃあああっ!!!」


ズ…トゴオォォォォオオンッ!!!!


大百足たち『ギィィィ!』

ドシャ…ドシャドシャッ…

931: 2014/08/03(日) 20:33:39 ID:DBmPOYXw
 
大戦士「…っし!」チャキンッ


鍛冶長「お…」

エルフ兵士たち「あれ、全部…倒した…?」

エルフ魔術師たち「あっ…!」


ウオ……ウオォォォオッッ!!

エルフ兵士長「す、凄すぎる!?」

エルフ兵士たち「何だ、あの人間!一人で村を守ってくれたぞ!」

エルフ魔術師たち「私らの出番、ほとんどなかったですね!」

ワイワイ…!!

剣士「す、すげぇ…結局、全部一人で倒しちまったじゃねえか…」

武道家「あれが…大戦士さん…」

魔道士「物理も魔法も、一級品。大戦士の称号を持つ人…」

僧侶「世界トップに匹敵する勲章を持った、僕らの先生…!」

932: 2014/08/03(日) 20:34:51 ID:DBmPOYXw
 
大戦士「あら、全部倒しちゃったか?」キョロキョロ

大戦士「全員喜んでるようだけど、こういうときって大抵ー…」


大百足『…』ピクッ

ガサッ…ガサガサガサガサッ!!!


大戦士「…だよな。一匹だけ向かったぞ!!」


剣士「おっ!?」

武道家「来たか!」

魔道士「わ、私だって!」パァッ

僧侶「僕も!」パァッ!

933: 2014/08/03(日) 20:35:45 ID:DBmPOYXw
 
大百足『…ッ』


ガサガサガサガサガサ…!!


大百足『…?』ピクッ

ズザザ…、グリンッ!


剣士「あれ…方向転換?」


大百足『…!』

ガサ、ガサガサガサガサッ!!


剣士「何だ?村の横にそれていくぞ?」

武道家「怖気づいたのか?」

僧侶「そうなのかな。……って、あっ!?あれ見て!!」

魔道士「…あぁっ!!」

934: 2014/08/03(日) 20:36:44 ID:DBmPOYXw
 
幼エルフ「~♪」


魔道士「よ、幼エルフちゃん!!何であんな所に!!」

鍛冶長「なっ、また外で花摘みを…!」

僧侶「幼エルフちゃんっ!!」

剣士「…ッ!」ダッ!

武道家「やべぇぞあれは!」ダッ!!


大戦士「何だと…!いかん、間に合うか!」ダッ!


ダダダダダダッ…!!!

935: 2014/08/03(日) 20:37:48 ID:DBmPOYXw
 
大百足『…』

ガサガサガサガサッ…!!


幼エルフ「…何の音?」チラッ


大百足『…ッ』

ガサガサガサガサッ!!


幼エルフ「ひっ!?」


鍛冶長「に、逃げてくれ幼エルフ!!」

エルフたち「逃げろぉぉ!!」
 
大戦士「く、くっそ!!俺としたことが!!」

936: 2014/08/03(日) 20:38:59 ID:DBmPOYXw
 
大百足『…』

ガバァッ…!!

幼エルフ「…っ!」ギュッ


エルフ兵士たち「だ、ダメだ!間に合わない!!」

鍛冶長「ぬ、ぬああぁ!」

魔道士「…っ」ギュッ

僧侶「……あっ!待って皆!」


ビュッ!!…ガキィンッ!!ボボォンッ!!!


大百足『!?』グラッ

937: 2014/08/03(日) 20:40:20 ID:DBmPOYXw
 
大戦士「お…」

鍛冶長「…おぉっ!?」



幼エルフ「…」

幼エルフ「…?」パチッ

幼エルフ「…けんし!ぶどうかぁ!」

ズザザァ…!!

剣士「…ちっ!走りながらの一撃だと、てめぇの皮膚にゃキズすらつかねえのか…!」

武道家「俺の闘気が簡単に弾かれるとは…!」


魔道士「よ、よかった…」ヘナヘナ

僧侶「さすが二人とも…。一瞬であんなところまで…」


大百足『…』ギロッ

938: 2014/08/03(日) 20:41:21 ID:DBmPOYXw
 
ゴォォォ…

大百足『…』


剣士「さてと、どうすりゃいいんだろうな」チャキッ

武道家「とりあえず…足を狙えっつったか?」

剣士「幼エルフ、ちーっと目をぎゅっとつぶっててくれるかな?」

幼エルフ「…うん」ギュッ


剣士「っしゃ、行くぞ!」ダッ!

武道家「おう!」ダッ!


大戦士「…待てっ!念のため俺が行くまで早まるなー…!」


ダダダダッ!!

…ザシュッ!!グシャッ!!ズシャアッ!!

大百足『ピギィッ!』

939: 2014/08/03(日) 20:42:06 ID:DBmPOYXw
 
剣士「ふははは!何だ、遅いぞこいつ!」

武道家「足は脆いぞ!どんどん潰せ!」

剣士「っしゃあ!オラァ!!」ブンッッ!!

武道家「発っ!!」パァッ!!

…バシュッ!!ドシャアッ!!ズバァンッ…!!


大百足『…ギッ!ギィィ!』


大戦士「…!」

僧侶「ふ、二人とも、凄い速度で百足を切り刻んでいく!」

魔道士「知らないうちに、私たちが想像するよりずっと強くなってたんだ…剣士たち…」


大戦士(…予想以上だ!まだまだ荒いが、格段に攻撃は重くなっている…!)

940: 2014/08/03(日) 20:42:51 ID:DBmPOYXw
 
剣士「仕上げといくかぁ!?」

武道家「いいぜ!」

大百足『…ギギッ!!』クワッ!!


剣士「いっせーの…!!」ググッ

武道家「いくぞこら…!」ゴォォッ


大百足『ギィッ!!』ブゥンッ!!!

剣士「せえぇぇえいっ!!」ブオォッ!!!

武道家「掌底波あぁぁぁっっ!!」グゥオッ!!


ズバアアァァンッ!!ドゴォォォッ…!!!

941: 2014/08/03(日) 20:43:45 ID:DBmPOYXw
 
大百足『ギッ…ガッ…!』

大百足『~…ッ』ヨロッ


ズ…!ズズゥゥン…!!


剣士&武道家「…っしゃあ!」

…パァンッ!


…………
………

942: 2014/08/03(日) 20:44:27 ID:DBmPOYXw
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 鍛冶長の家 】


ガヤガヤ…ワイワイ…!!


エルフたち「はっはっは!」

エルフたち「貴方たちがいなかったら、今頃どうなっていたか!」


大戦士「ですから、元々は私が引き起こしたのと一緒なので、気になさらず…」

エルフ兵士長「何を謙遜しているのですか!」

大戦士「はは…」

943: 2014/08/03(日) 20:45:37 ID:DBmPOYXw
 
剣士「…うま、うまっ!」

モグモグ、カチャカチャ…!!

武道家「この間の海鮮料理以上にうまいかもしれねえ!」グビグビ 
 
魔道士「太る…」モグモグ

僧侶「美味しすぎるよ!」パクパク


鍛冶長「はっはっは、今日は宴じゃ。遠慮せずどんどん食べてくれの!」


剣士「言われなくとも!」

武道家「いただいてるって!」

944: 2014/08/03(日) 20:46:56 ID:DBmPOYXw
 
トコトコ…カチャカチャ…

メイドエルフ「どうぞ…。お代わりです」ペコッ


剣士「あんがと!」

武道家「アイスドリンクも美味いなぁ~…、いくら飲んでも飽きないぜ」グビッ

剣士「こっちも飲んでみ?すげぇうまいぞ」

武道家「うむ…」


ワイワイ…ガヤガヤ…!!


ドタドタ…ガチャッ!

職人エルフ「…うるせーぞ、騒ぎ過ぎだ!!」


剣士「!」

鍛冶長「…」

945: 2014/08/03(日) 20:47:32 ID:DBmPOYXw
 
カツカツカツカツ…グイッ!

職人エルフ「…お前が余計なことして、村を危険にしたんだったなぁ」

職人エルフ「自分が問題起こしといて、自分で解決してヒーローか。気分はいいか?」


大戦士「…申し訳ないです」


剣士「大戦士兄!」

武道家「大戦士さん!」

魔道士「…っ」

僧侶「…」


エルフ兵士たち「おい!折角の宴に水差すんじゃねえよ!」

エルフ魔術師たち「引っ込んでよ!」

ギャーギャー!!


鍛冶長「…」

946: 2014/08/03(日) 20:48:18 ID:DBmPOYXw
 
職人エルフ「…」

大戦士「…」

職人エルフ「…」

大戦士「…」


職人エルフ「…けっ」パッ

大戦士「…」


職人エルフ「せめて一言、目の前で文句言いたかっただけだ」

職人エルフ「こいつが用事あるから、連れてきたついでにな」チラッ


大戦士「こいつ?」チラッ

947: 2014/08/03(日) 20:48:59 ID:DBmPOYXw
 
幼エルフ「…」モジッ


剣士「あ、幼エルフ!」

魔道士「幼エルフちゃん!」


トテトテトテ…ギュッ!

剣士「お?」

幼エルフ「わ、私のせいで…ごめんなさい…」グスッ

剣士「お…」

幼エルフ「ごめんなさい…」ポロポロ

剣士「…」スッ

幼エルフ「!」ビクッ

948: 2014/08/03(日) 20:49:49 ID:DBmPOYXw
 
剣士「…」

剣士「だから、殴らないっつーの」ポンッ


幼エルフ「ふぇ…」

剣士「外で遊びたいお年頃だもんなー。俺も自由にしてたし、気持ちわかるぜ!」

幼エルフ「…!」

剣士「だけど、あまりいう事聞かないと俺みたく怒られる人間になっちまうから、気を付けろよ?」ハハハ

…ナデナデ

幼エルフ「あう…」


大戦士「…剣士」フッ

鍛冶長「はは、小僧…」

職人エルフ「…」

949: 2014/08/03(日) 20:50:27 ID:DBmPOYXw
 
幼エルフ「あの…みんなにこれ…」スッ

剣士「ん?」

魔道士「わっ、花輪?」

武道家「花の王冠か…、懐かしいな」

僧侶「いい匂いだね」スンッ


幼エルフ「あのね…、みんながきたってきいて……」

幼エルフ「それでお外で、お花集めてたの…。みんなにあげようって…」

幼えるふ「だからね、あのね…これね、つくってたの…。だけどぉ…」グスッ


剣士「だ、だぁーっ!!ありがとう、嬉しいぞ!?抱っこしてやる~!」ダキッ!

幼エルフ「あうぅ…」ギュッ

剣士「だから泣くなって。ほら、俺にかぶせてくれよ」チョイチョイ

950: 2014/08/03(日) 20:51:13 ID:DBmPOYXw
 
幼エルフ「…」コクン

…ソッ、パサッ


剣士「…似合うか?」

幼エルフ「えへ…」ニコッ

剣士「あぁ~ん?何だよ、その笑顔は!似合わないってかー!」

…コチョコチョッ!!

幼エルフ「やー!きゃー!」

キャッキャ…アハハ…!!


魔道士「…なんか微笑ましい」クスッ

武道家「剣士って意外と、子供心わかってんのかな」

僧侶「…子供心」

魔道士「そのまんまだからじゃない…?」

951: 2014/08/03(日) 20:52:04 ID:DBmPOYXw
 
職人エルフ「…」

職人エルフ「ちっ…。おいガキども」


剣士「あん?」

魔道士「?」

武道家「…何だ?」

僧侶「な、何でしょう」ビクビク


職人エルフ「ちょっとついてこい。心配なら大戦士と親父も来てもいいぜ」クイッ

952: 2014/08/03(日) 20:52:51 ID:DBmPOYXw
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 工 房 】


職人エルフ「…ほらよ」

…ガチャガチャンッ!!


剣士「…これは?」


職人エルフ「俺じゃねえぞ。幼エルフがどうしても、お礼がしたいってな」

職人エルフ「俺も花輪をもらってな、この代わりに武器を作ってあげてーってな…クソッ」


剣士「!」

大戦士「だ、だからといって貴方が造って下さったのですか…?」

953: 2014/08/03(日) 20:53:43 ID:DBmPOYXw
 
職人エルフ「型がある量産品だがな。…不満なら、貰わなくていい。溶かすだけだ」

大戦士「よろしいのですか」

職人エルフ「…いるのか、いらねぇのかハッキリしろ!!」

大戦士「…有難く頂戴致します」ペコッ

職人エルフ「大剣とナックル、杖はそれぞれ二種。勝手にもってけ、俺は寝る!」

クルッ、タッタッタッタッ…バタンッ!

鍛冶長「…」


大戦士「…4人とも、その武器は大事にするんだぞ」


剣士「すげぇ渡され方だったが…分かってるよ。これがエルフ族の武器か…」

トコトコトコ…ヒョイッ、フワッ!

954: 2014/08/03(日) 20:54:30 ID:DBmPOYXw
 
剣士「…っ!?」

剣士「す、すっげぇ…何だこれ…!!重みありき、剣が身体へ一体化してるような感覚だぞ!?」

剣士「これがエルフ族の魔力の腕ってやつの効果なのか…?」チャキンッ


武道家「魔力武器って言ってたけど、気力に変換されているのか…?闘気が溢れてくる…!」パァ

魔道士「何この感覚…!武器を握っただけで全身に魔力で満ちるのが分かる!」ボウッ

僧侶「真っ白な淡い輝き…、聖なる魔力が杖全体に広がっていく!」キラキラ


大戦士「…本当に大事にするんだぞ。何物にも代えられない宝物を頂いたんだからな…」

大戦士「鍛冶長殿、本当に良いモノを有難うございます」クルッ


…シーン


大戦士「…って、鍛冶長殿?」

955: 2014/08/03(日) 20:56:58 ID:DBmPOYXw
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 職人エルフの部屋 】

…コンコン

鍛冶長「入るぞ…」

職人エルフ「…んだよ」

鍛冶長「…ありがとうの。まさかお前が造ってやるとは思わなんだ」

職人エルフ「幼エルフの頼みだっつっただろ。代金として花輪は貰ったし断れないだろ」

鍛冶長「…よく、造ってくれた」


職人エルフ「村を助けてもらったのは事実だ。あいつらのせいで起きた事もあることも事実だがな」

職人エルフ「何よりも、同胞の幼エルフの願いだから造ったんだけどな」


鍛冶長「言い訳しなくてもいい。あの人間たちに、優しさを少しでも感じたじゃろ?」

鍛冶長「…より良い関係は持ちつ持たれつじゃ。その心を少しは分かったか?」

956: 2014/08/03(日) 20:58:55 ID:DBmPOYXw
 
職人エルフ「うるっせぇ!出てけ!」

鍛冶長「…」クルッ

トコトコ…


職人エルフ「いや…親父、待てよ」

鍛冶長「なんじゃ?人を帰れといったり、待てというたり…」

職人エルフ「…親父は、よく人間どもに笑顔で接する事が出来るな」

鍛冶長「…昔の話じゃ」

職人エルフ「そういう問題じゃねえだろ!!」

鍛冶長「何が言いたい」

職人エルフ「ま、前の村を燃やされて…!村の同胞が殺され…奪われ…!」ギリッ


鍛冶長「…時代は変わる。誰かが許さねば、因果は続く。いつかその連鎖は終わらせねばならん」

職人エルフ「終わらせていいのかよ!」

957: 2014/08/03(日) 21:00:16 ID:DBmPOYXw
 
鍛冶長「ワシ一人で頑張っても、無駄じゃろうな。じゃが…終わりは意外と近いかもしれんぞ」

職人エルフ「…どういうことだよ」

鍛冶長「年の功…違うかの?カンかのう」

職人エルフ「カンだ?」

鍛冶長「予感がするんじゃ。この間の大地震を覚えているか?」


職人エルフ「…当たり前だろ。工房の一部が崩れるくらいのスゲェ地震だったしな」

職人エルフ「遠くにある同胞の村が震源地だったっけかな。それがどうした?」


鍛冶長「…嫌な予感がするだけじゃ。手を取り合う日も近いのではないかと思ってな」

職人エルフ「たかが震災くらい、人の手を借りずとも」

鍛冶長「…」

職人エルフ「…」

958: 2014/08/03(日) 21:01:13 ID:DBmPOYXw
 
鍛治長「…」

トコトコ…カチャッ

鍛治長「…ほほう、今日は月が綺麗じゃの」

職人エルフ「…あん?何だよ急に」

鍛治長「いや何、月は東に日は西にというじゃろ?」

職人エルフ「…それが何だ」

鍛治長「いや、気にするでない。何でもないわい」

職人エルフ「…そうかよ」


鍛治長「…」

鍛治長「…」ジロッ

959: 2014/08/03(日) 21:02:12 ID:DBmPOYXw
 
職人エルフ「…な、何だよその目は」

鍛冶長「ワシはもう歳じゃ。万が一があった時は…頼んだからな」

職人エルフ「…何言ってやがる」


鍛冶長「まぁまぁ。…さてと、夜は長い。久々に一緒に飲まないか?」

職人エルフ「仕方ねぇな…、老い先みじけぇアンタだろうしな」

鍛冶長「ははっ、では今持ってくるでな」


…………
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960: 2014/08/03(日) 21:03:00 ID:DBmPOYXw
 
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961: 2014/08/03(日) 21:03:57 ID:DBmPOYXw
 
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――――【 次の日 】

チュンチュン…


剣士「…マジで歩いて帰るのね」

大戦士「当たり前だ。馬車を呼べる状況でもなし、エルフ族を人間の街に連れて行けるわけがない」

剣士「か~…」

魔道士「日々、これ精進!でしょっ」

剣士「へいへい…」


大戦士「では、有難うございました」ペコッ

鍛冶長「いや何、また寄ってくだされ」

962: 2014/08/03(日) 21:04:50 ID:DBmPOYXw
 
トテテテテ…

幼エルフ「おにいちゃん、おねえちゃん…」

剣士「お、幼エルフ。お見送りか~?」

幼エルフ「ばいばい…。またね…」グスッ

剣士「だ、だから泣くなよぉ~。いつか会えるし、また会いに来るからよ!」

幼エルフ「ひぐっ…」

剣士「た、助けてくれ魔道士、武道家、僧侶ぉ~!」

ワイワイ、ギャーギャー!



大戦士「はぁ…」

大戦士「時に鍛冶長殿。少しお話をいいですか?」


鍛冶長「なんじゃ?」

963: 2014/08/03(日) 21:05:56 ID:DBmPOYXw
 
大戦士「この間の大地震、知っている事があれば教えてほしいのですが…」

鍛冶長「…なるほどの。生憎じゃが、被害が出た事と行方不明者がいる事くらいしか知らんよ」

大戦士「…神隠し。行方不明が意図的なものなのか、何か可能性があるものなのか。教えて頂けませんでしょうか」

鍛冶長「残念ながら、同じ大陸に住む同胞といえど、遠すぎて詳しくはわからんのじゃ」

大戦士「…そうですか。有難うございます」

鍛冶長「じゃが…」

大戦士「?」


鍛冶長「長い事生きておるが、今まで村全体が蒸発したという話は聞いた事がない」

鍛冶長「少なくとも、意図的ではないことは確かじゃなかろうかの…」


大戦士「…やはり、事件の可能性が」

鍛冶長「魔力濃度の話も全部は聞いておるが…。それ以上は何もわからんよ」

大戦士「有難うございます。貴重な情報、有難うございました」

964: 2014/08/03(日) 21:06:43 ID:DBmPOYXw
 
鍛冶長「うむ…」

大戦士「それでは…」ペコッ

鍛冶長「改めて、道中気を付けての」

大戦士「心配、感謝いたします。さぁて剣士たち!帰るぞ!」


剣士「うっす!」

武道家「ういっす!」

魔道士「はいっ」

僧侶「はい!」

幼エルフ「…またね」


大戦士「では…。失礼いたします」ペコッ


……………
…………

965: 2014/08/03(日) 21:07:52 ID:DBmPOYXw
 
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966: 2014/08/03(日) 21:08:36 ID:DBmPOYXw
 
5人は鍛冶長や村のエルフらに見送られ、西海岸街へと戻って行った。

道中、地に潜む魔獣らと何度か対峙するも、

それぞれ手に入れた新たな武器と、磨きをかけてきた技術によって彼らは無事に街へと辿り着く。


そして宿へ戻ったのち、気が付けば最終日の3日目を終えていた。


あっという間に過ぎた修学旅行の思い出をそれぞれの胸に、

冒険学校2年生の生徒一行は、再び北西町へと帰り―――…

967: 2014/08/03(日) 21:10:56 ID:DBmPOYXw
本日はここまでです。
966、これを含め967に達しましたが、本日で1スレとして終了にさせていただきます。
ここまでお付き合いして下さった方々、本当に有難うございました。

次回は同様に2日後に新スレの案内をこちらにしつつ、
物語は展開していきます。では、改めて有難うございました。

968: 2014/08/03(日) 22:08:30 ID:nBcuPLBw
おつ~
幼エルフかわええprpr

誘導来てから埋める感じだね

969: 2014/08/03(日) 22:30:20 ID:fT5IZc2U

980: 2014/08/18(月) 22:18:20 ID:pbcI1Gnk

【埋めネタ】


 
剣士たちが大百足と戦いを終えた後に起きた、ちょっとしたお話。

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――――【 西方海岸村 工房 】

トテトテトテ…

幼エルフ「…おじちゃん」

職人エルフ「…あ?お前か。だから言ってるだろ、おじちゃんじゃなくてお兄ちゃんだ」

幼エルフ「おじちゃん、これあげる…」スッ

職人エルフ「…なんだこりゃ」フワッ


幼エルフ「えへへ…。お花のおうかん!」

981: 2014/08/18(月) 22:18:59 ID:pbcI1Gnk
 
職人エルフ「…」

職人エルフ「…ありがとよ」


幼エルフ「…おじちゃん、けんしたちのこときらい?」

職人エルフ「嫌いだな。人間なんざ、氏滅しちまえばいい。世界のゴミだ、あんな奴ら」

幼エルフ「どうして…そういうこというの?」グスッ

職人エルフ「…嫌なことをされたら、誰だってそいつを嫌いになるだろう?」

幼エルフ「おじちゃん、けんしたちに酷いことされたの…?」

職人エルフ「…あ?」

幼エルフ「けんしたちにひどいことされたの…?」

982: 2014/08/18(月) 22:19:43 ID:pbcI1Gnk
 
職人エルフ「…い、いやそれは」

幼エルフ「むずかしいこと…わかんないけど…。けんしたち、助けてくれたの。やさしいの」

職人エルフ「…人間のせいで、人間が助けただけだ。それ以上でも以下でもない」

幼エルフ「…ひどいことしたのは、けんしたちじゃないんでしょ?」

職人エルフ「に、人間なら人間みんな一緒だ」


幼エルフ「…ちがうよ。けんしも、ぶどうかも、まどうしもそうりょも…やさしいもん…」

職人エルフ「あいつらが優しくてもな、人間は人間だ。悪魔なんだよ」

幼エルフ「…じゃあ、おじちゃんもあくまだよ…」

職人エルフ「何?」

幼エルフ「だってこわいかおしてる…。けんしは、わらってくれるもん!」

職人エルフ「ぐ…」

983: 2014/08/18(月) 22:20:16 ID:pbcI1Gnk
 
幼エルフ「ひどいことしないもん…。そんなかおしないもん!!」

職人エルフ「…こ、こう笑えばいいんだな?」ニタッ


幼エルフ「…」

幼エルフ「…おじちゃん、きらい!」


職人エルフ「おいおい、どうしろっつーんだよ」ハァ

幼エルフ「けんしたちにやさしくして。みんな言ってたよ、おじちゃんがけんしたちに嫌なことするつもりだって」

職人エルフ「…」

幼エルフ「…おうかん」

職人エルフ「あん?」

984: 2014/08/18(月) 22:20:51 ID:pbcI1Gnk
 
幼エルフ「おうかんあげたから。おじちゃん、わたしからもらったよね?」

職人エルフ「…貰ったが」

幼エルフ「じゃあ、それでけんしたちに優しくしてあげて。おじちゃんは、それならいいんでしょ?」

職人エルフ「…」


幼エルフ「おじちゃん、にんげんがやったことを、にんげんが解決したからいいっていってた」

幼エルフ「じゃあ、わたしがそれをあげたら、いうこときいてくれるんでしょ?」


職人エルフ「…そういう問題じゃ」

幼エルフ「…」グスッ


職人エルフ「…」

職人エルフ「…はぁ。大切に思う同胞が、俺の所業で涙を流されちゃどうしようもねーわな…」ポリポリ

985: 2014/08/18(月) 22:21:26 ID:pbcI1Gnk
 
幼エルフ「!」

職人エルフ「…何がしてほしいんだよ。これっきりだからな」


幼エルフ「えっと!えっとね!」


………
……

 
 
【 END 】

991: 2014/09/27(土) 04:37:52 ID:3Xfr13dY
おつ

次回:


引用: 剣士「冒険学校…!」