212: 2014/08/16(土) 22:31:36 ID:Fh9nr8No
皆さま有難うございます。
多忙により、お時間を要してしまいましたが
本日より第三幕の公開を開始いたします。
剣士「冒険学校…!」【1】
剣士「冒険学校…!」【2】
剣士「冒険学校…!」【3】
剣士「冒険学校…!」【4】

213: 2014/08/16(土) 22:34:42 ID:Fh9nr8No

<あの日から4年後…>

・・・・・・・・・
――――【 中央都市 中央軍 依頼一般公開所 】


ザワザワ…ガヤガヤ…


受付嬢「続いての方、どうぞ」

傭兵「失礼する。以前、山奥村の討伐依頼を完了してー…」

受付嬢「では、今回の受諾できるクエストのまとめはこちらに…」

ガヤガヤ……ワイワイ…


トコトコ……

…ストンッ

冒険者A「かーっ!相変わらず混んでるな~!」

冒険者A「待合室の椅子に座るのも一苦労だっつうの」ハァ
葬送のフリーレン(1) (少年サンデーコミックス)
214: 2014/08/16(土) 22:35:13 ID:Fh9nr8No
 
…ポンッ
 
冒険者B「よっ」

冒険者A「おぉっ!久しぶりじゃん!最近調子どうよ?」

冒険者B「全然。まともに依頼もなくてどうするべきか迷ってた」ハァ


冒険者A「だよな…。だから軍事依頼の一般公開に皆集中しちまうんだが」

冒険者B「町村とかの個人依頼を受けるのにも、ある程度有名じゃないと断られちまうし」

冒険者A「俺らみたいな下位冒険者にとったら、軍の一般受付がなかったら廃業だよ」

冒険者B「そろそろ店でも出してさ…まともに働いたほうがいいのかねぇ」

冒険者Aお、「おいおい!強くなって一攫千金の夢を諦めないって言ってたのはどこのどいつだ?」

215: 2014/08/16(土) 22:35:46 ID:Fh9nr8No
 
冒険者B「あまりケガもしたくねぇんだよ…」

冒険者B「実はもうすぐ結婚することになってさ…。子供も生まれるし…」


冒険者A「…こ、子供!?結婚!?お前…本当かよ!」

冒険者B「たまにお前とは一緒にクエストやってたけど、それも無理になるかもなぁ」

冒険者A「はぁ…。そう聞くと、冒険者稼業は俺らみたいなのは現実直視が本当にいてぇよ……」


冒険者B「だな…」

冒険者B「…」

冒険者B「…あっ。そういや、この話知ってるか?」


冒険者A「何の話だ?」

216: 2014/08/16(土) 22:36:26 ID:Fh9nr8No
 
冒険者B「最近、男2人と女2人の4人組パーティが、物凄い勢いで高難易度の依頼をこなしてるらしい」

冒険者A「…何だそりゃ」

冒険者B「軍へのスカウトも断って、あくまでも一般冒険者として立ち回ってるとかなんとか」

冒険者A「お…おいおい、軍へ入れば給金も出るし、勿体ない話だ」

冒険者B「…そういう断ってるから、俺らみたいな冒険者らの憧れの的で、噂になってんじゃないの?」

冒険者A「あ~、納得」


冒険者B「一体どんな奴らなんだろうな」

冒険者A「俺も、そんな風に噂になってみてぇなぁ」

217: 2014/08/16(土) 22:37:09 ID:Fh9nr8No
 
冒険者B「…はぁ」

冒険者A「…ふぅ」


ガチャッ…ギィィ…

コツコツ…


冒険者B「…お?」ハッ

冒険者A「どうした?」

冒険者B「…今、ココに入ってきた子…見ろよ…!」クイッ

冒険者A「今はいってきた子?」チラッ


コツ…コツコツコツ…

コツコツ…ピタッ


???「…」

218: 2014/08/16(土) 22:37:48 ID:Fh9nr8No
 
…ザワッ!ガヤガヤ…!

冒険者たち「…お、おい見ろよ。何だあの女…」

傭兵たち「うわ…、あんな子と付き合ってみてぇ…」

冒険者たち「え、可愛っ…!でも、あの服装ってまさか…」

傭兵たち「中央軍の…軍人……しかも尉官じゃないか!?」


スッ…ペラッ

魔術賢者「受付さん…中央軍所属の魔術賢者少尉だ…。これが、証明書…ね」

219: 2014/08/16(土) 22:38:23 ID:Fh9nr8No
 
That's where
  the story begins!
―――――――――
【剣士「冒険物語!」】
―――――――――
Don't miss it!

220: 2014/08/16(土) 22:38:56 ID:Fh9nr8No
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

受付嬢「は、はい。魔術賢者様ですね…」

受付嬢(うひゃあ~…!綺麗なヒト…。これで軍人さんとか…反則だよ…!)


魔術賢者「…どうした?」

受付嬢「あっ…。ご、ごめんなさい!えと…!ご、ご用事は何でしょうか!」

魔術賢者「…北方大陸の雪降町支部から派遣されてきた。ここの管理長に話は通ってるはず…」

受付嬢「わ、わかりました。今、お呼びしてきます!」ガタッ

魔術賢者「よろしく…」

タッタッタッタッタッ…

221: 2014/08/16(土) 22:39:29 ID:Fh9nr8No
 
魔術賢者(学校を卒業し…、支部に入隊してから今年でもう4年になるのか…。時が立つのは早い…)

…キョロキョロ

魔術賢者(それにしても、中央本部の依頼受付所は初めて来たが…、なかなか綺麗なところだな…)

…パサッ

魔術賢者(む…。乙女格闘家に言われて以来、髪の毛も伸ばしたものの…やっぱり少し邪魔だ…)


トコトコトコ…ボスンッ!

男傭兵「よー、姉ちゃん」ニタニタ

魔術賢者「…む、何か用か。急に肩を組むとは…、馴れ馴れしいな…」

男傭兵「本当にアンタ、軍人さんなのか?可愛いじゃねえか」

魔術賢者「…中央軍北方大陸、猛雪山支部に勤めてるが」

男傭兵「へぇ、本当なのか。驚いたぜ。まぁいいや…このあと俺と遊ばないかい?」

魔術賢者「折角の誘いだが…、このあと仕事があるのでな…」


男傭兵「…夜のお遊びに付き合ってほしーってことなんだけどなぁ?夜にゃ暇だろ?」ニヤニヤ

魔術賢者「ふむ…。夜は休息を取らねば持たない身だからな…。お断りするよ…」

222: 2014/08/16(土) 22:40:04 ID:Fh9nr8No
 
男傭兵「つれない事言うなって~。へへっ」ソッ

…サワッ

魔術賢者「!」

男傭兵「いいだろ?」

魔術賢者「…私は、あまりそういう事は好きではないのでな」パァッ!

男傭兵「へっ?」

ゴッ…ボォンッ!!!

男傭兵「がっ…!」ブスブス…

…ドサッ!


魔術賢者「それに…、男としての話なら…君のようなのはタイプじゃない」

魔術賢者「…と言えばいいのか?そういうセリフは私にはよく分からん…」

223: 2014/08/16(土) 22:40:53 ID:Fh9nr8No
 
ザワザワ…!

冒険者たち「…やっぱ可愛くても、軍人さんだわアレ」

傭兵たち「容赦ねぇな…」


魔術賢者(やれやれ…、どこに行っても絡まれる。髪の毛を伸ばしたのは失敗だったか…?)


トコトコ…

受付嬢「あ、あのっ。お待たせしました、ここの管理長さんです」

管理長「どうも」ペコッ


魔術賢者「あっ…よろしく…」

224: 2014/08/16(土) 22:41:28 ID:Fh9nr8No
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 応 接 間 】

ギィ…

管理長「わざわざ遠い所をお越しいただき、有難うございました」

魔術賢者「いえ…」


管理長「改めてご紹介させていただきます」

管理長「中央軍本部、一般依頼受付所の管理を任せて貰っております豪闘少佐です」

管理長「気軽に、管理長とお呼びください」


魔術賢者「私は中央軍、北方大陸猛雪山区、雪降町支部の魔術賢者少尉です」

225: 2014/08/16(土) 22:42:03 ID:Fh9nr8No
 
管理長「ご丁寧にありがとうございます」

魔術賢者「…こちらこそ」

管理長「それで、本題になりますが。一般依頼へのご用事ですよね?」


魔術賢者「そうですね…」

魔術賢者「簡単に説明させていただくと、実は大型のアイスタイガーが登山区付近で確認されました…」


管理長「ほう」


魔術賢者「ですが、お恥ずかしい話…私たちの支部は面子も少なく…」

魔術賢者「一般に切り替えて募集しようと思いまして…」


管理長「もちろん構いませんよ。ただ…」

魔術賢者「ただ…?」

226: 2014/08/16(土) 22:42:36 ID:Fh9nr8No
 
管理長「有能な冒険者は最近、ほとんど限られてきましてね」

管理長「何というかその…、アイスタイガーに対抗できる冒険者がいるかどうか…」


魔術賢者「そこまで冒険者の質は落ちているのですか…?」


管理長「冒険者の世代といいますか、一昔前は熟練者らがゴロゴロしておりました」

管理長「有名なのでいえば、軍の中では軍に所属する前の"武装中将"や…"大戦士少佐"などですね」


魔術賢者「!」


管理長「大戦士少佐は若くして退役しましたが、彼の世代も現役としては、そろそろ限界」

管理長「そして彼らがいなくなり始める今、今度は一つ、二つ下の世代が主軸となる」

管理長「つまり貴方から、貴方の少し年上の世代がメインとなっていくということです」

管理長「世代交代時期にあたる今日この頃、難易度の高い依頼を受けられる面子も少なくて…」

227: 2014/08/16(土) 22:43:35 ID:Fh9nr8No
 
魔術賢者「…どの世代にも、飛び抜けた冒険者等はいるものだと…思っていましたが…」

管理長「いや~…10年前くらいを黄金期とするなら、今は氷河期でしょうね」

魔術賢者「では、アイスタイガーを倒せる面子もそうそういないと…」

管理長「そうなんです…。更に大型のアイスタイガーは仮にも上位危険種ですし、それが数体となるとやはり…」

魔術賢者「…」


管理長「一応、この中央でも募集は出しておきますが…。時間がかかると思います」

管理長「自分の身は自分で守るってわけじゃないですが、出来るだけ支部の中で何とかできると嬉しいですね…」


魔術賢者「…受け止めておきます」

管理長「力になれそうになくて申し訳ありません」

魔術賢者「いえ、お話を聞いてくださっただけ…嬉しく思います…」ペコッ

管理長「…」ペコッ

228: 2014/08/16(土) 22:44:15 ID:Fh9nr8No
 
魔術賢者「お忙しい時間の中、わざわざお話を聞いていただき、有難うございました…」

魔術賢者「それでは、これで失礼致します…」ガタッ

カツカツカツ…


管理長「…」

管理長「…あぁ、そういえば」


魔術賢者「…はい」クルッ

管理長「こんな入れ替わりの時期に、ガンガンと成果をあげている面子はいましたね」

魔術賢者「…そうなのですか」


管理長「男二人、女二人のやかましいパーティでやってるとか言ってましたか…」

管理長「結構、この中央一般受付けの場所でも、冒険者同士の話題で出てるみたいですよ」


魔術賢者「!」

229: 2014/08/16(土) 22:45:06 ID:Fh9nr8No
 
管理長「うちにも1回だけ来た事あるらしいんですよね。自分は留守でしたから、会えなかったんですが」


魔術賢者「その人たちの…名前は…」

管理長「えーと、何と言ったかな…。確か…けん…」


…ドゴォォンッ!!!


魔術賢者「!?」

管理長「!?」

魔術賢者「爆発音…下からですか」

管理長「…何でしょうか。ちょっと見に行きましょう!」


………
……

230: 2014/08/16(土) 22:46:20 ID:Fh9nr8No
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 一般受付 待合室 】


タッタッタッタッタッ…!

管理長「おーい、今の音はなんだ!?」

受付嬢「あっ…。か、管理長…」グスッ

管理長「ど、どうした!?」

受付嬢「あの…、男傭兵さんのうちの一人が…私に色々してきて…」ブルッ

管理長「…そこに倒れてるやつか」

…グデンッ

男傭兵「」


魔術賢者「また…さっきのやつか…」ハァ

231: 2014/08/16(土) 22:47:10 ID:Fh9nr8No
 
受付嬢「そ…それでその…。一般依頼受付に来ていたパーティの方々に助けていただいて…」

管理長「その人たちはどこに…?」


受付嬢「依頼の受諾経歴や成果歴がとても高い方々だったので…」

受付嬢「今のうちでは、相応の渡せる依頼がなくて…」

受付嬢「それを知ったら、出ていきました……」


管理長「…そうか。お礼の一つくらい言いたかったんだが。もうこの男傭兵は出入り禁止だな」ハァ

管理長「他の一般依頼のところにも、コイツの詳細は渡しておかんとなぁ」ブツブツ


魔術賢者(…そんな人らだったら、うちの支部の問題も何とかしてくれたかも…)

232: 2014/08/16(土) 22:47:46 ID:Fh9nr8No
 
ザワ…ザワザワ…

魔術賢者(ん…?)


冒険者たち「なぁ、さっきの受付のねーちゃん助けた人らってさ…、まさか……」

冒険者たち「…そうかもしれん。だって4人だったし、メンバーもぴったりだったじゃないか」

冒険者たち「今を時めく、あの男女のパーティってやつだったんじゃねーの?」


魔術賢者(…!)

魔術賢者(もしかして、もしかすると…)ダッ!

タタタタタッ…、ガチャッ…バタンッ!!


管理長「あっ…魔術賢者さん…?」

233: 2014/08/16(土) 22:48:19 ID:Fh9nr8No
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 同時刻…中央都市の一角の家… 】


ガチャッ…!

神官(僧侶)「これでもう、大丈夫でしょう」


街人「娘を助けていただき、本当にありがとうございました…」

神官「いえ…。これで失礼します」ペコッ

街人「…」ペコッ


…バタンッ!

234: 2014/08/16(土) 22:49:23 ID:Fh9nr8No
 
神官(…ふぅ!今日のお仕事終わり。今日もまた、人の為に尽くせたぞ)

神官(教会に勤めて4年…、何だかんだで僕のしたいことをやれてるって感じだね)

神官(何より、お礼の言葉とか…あの笑顔を見るのが何より嬉しい)


トコトコ…


神官(…でも)

神官(…)

神官(時々、寂しくもなる。もし僕が、当時のみんなといっしょだったら…)

神官(今どこで、僕は何をしていたんだろう。どんな生活を送っていたんだろうって)

神官(それに何より…当時…魔術賢者さんとか…。僕だって…男だったから…)

235: 2014/08/16(土) 22:49:53 ID:Fh9nr8No
 
神官(……)

神官(男だったからっていうのは、おかしいな)

神官(今も僕は男だってのー!!それに僕には……。もうっ、しっかりしないとな!)


ドタドタ…ガシャアンッ!!


神官(…って、何の音!?)クルッ


タタタタタッ…!!

盗賊「くそ、路地裏か…どんどん狭くなりやがる!ヘマやって見つかるとは!」


神官「と、盗賊!?」


盗賊「む…!?」

236: 2014/08/16(土) 22:50:26 ID:Fh9nr8No
 
タタタタタッ…チャキンッ!

盗賊「そこをどけぇぇ!邪魔だ、頃すぞこらぁ!!」クワッ!

神官「わわっ…!」

盗賊「どけコラァッ!!」

神官「ごめんなさいぃ!」

盗賊「そこに立ってると、邪魔だっつってんだろ!」

神官「ひぃぃっ!」


盗賊「くっそ面倒くせぇ!神父一人くらい頃して通る!!」ブンッ!!

神官「…なーんて。こんな神父の恰好してるけど、実は戦えるんだよ」ニコッ

盗賊「あん!?」

…ガシッ!ギュルンッ!!

盗賊「むおっ!?」

237: 2014/08/16(土) 22:50:57 ID:Fh9nr8No
 
…ドシャアッ!!

盗賊「がっ…!」

神官「人を見かけで判断しちゃダメだってば。神の教えだよ」フフッ

盗賊「…て、てめ…」

神官「牢屋に入れてもらうから、寝ててね」ブンッ!

…バキィッ!!

盗賊「…っ」ガクッ


神官「…よしっ」

神官「警備隊、軍に届ける仕事は増えちゃったけど、街の平和を守る為だし仕方ないね」

238: 2014/08/16(土) 22:51:34 ID:Fh9nr8No
 
ガサッ…!

神官(…!)ピクッ

ダッ…ダダダダッ!!

神官(えっ、まだ足音!?もしかして仲間がいたの!?)ハッ


ズザザザァ…!!

???A「この野郎、狭い路地逃げ込みやがって!」

???B「こっちだったな!」


神官(あ、仲間じゃないっぽい?警備隊の人かな?)


???D「…って、あの盗人、あそこで誰かに抑えられて倒れてない?」

???C「あっ、本当だ!あの恰好…神父さんかにゃ?」
 
???A「あ、すんませーんっす!その人、盗人なんすよ!」

239: 2014/08/16(土) 22:52:27 ID:Fh9nr8No
 
神官「あぁ、分かってますよ!今から、中央軍の警備隊に引き渡そうと…!」


???A「あっ、そうっすか!ならいいんです、ご協力あざっす!」

???B「神父のくせに、随分と強い人もいたもんだな」

???D「この近くの教会の人なのかな?」

???C「そうなんじゃないかなー?っていうかあの人…どこかで見たことあるよーな…」


神官「…」

4人「…」ジー

神官「…」

4人「…」ジー

神官「……そ、そんな所で立ち止まって…どうしましたぁ~!?」

4人「…」ジー

240: 2014/08/16(土) 22:53:01 ID:Fh9nr8No
 
神官「…?」

4人「…あ~っ!!」ハッ

神官「!?」


???A「お前…僧侶か!?」

???B「絶対僧侶だよな!?」

???C「僧侶ぉっ!!私だよ、分かるでしょ!?」

???D「僧侶くんだっ!私のこと覚えてくれてるかなー!」


神官「路地裏は日が薄くて、よく見えないんだけど…」ゴシゴシ

神官「何で僕の旧称を…」

神官「…」

神官「ん~…?」ジー

241: 2014/08/16(土) 22:53:39 ID:Fh9nr8No

???A「おいおい、冒険学校の仲間を忘れたのか?」

???B「神父ってのは、忘れやすい生き物なんじゃないか」

???C「えぇ~…。僧侶、本当に私たちのこと忘れたの?」

???D「こうなったら、私の拳で思い出させるしかないね!」


神官「……あっ!?」

神官「えっ!?ま、まさか……!」

神官「け…、剣士くん!?武道家くん!!魔道士さん、乙女格闘家さんっ!?!?」

242: 2014/08/16(土) 22:54:15 ID:Fh9nr8No
 
剣士「…僧侶!!」

武道家「僧侶!」

魔道士「僧侶っ!」

乙女格闘家「僧侶くーん!」


神官「み…みんなっ!?」


ダダダダッ…ダキッ!!

剣士「いやっほぉぉぉお!!思い出したか!!久々じゃねえか、どうしたんだこんな所で!!」

武道家「お前、その恰好…本当に神父っつーか…教会の偉い人にでもなったのか!?」

魔道士「うわっ凄い!しかも背伸びてるし…!」

乙女格闘家「昔よりよっぽど男っぽくなった気がする♪」

243: 2014/08/16(土) 22:54:48 ID:Fh9nr8No
 
神官「ぼ、僕は今は神官で…!」


剣士「なーにが神官だ!はっはっは、何だどうしてここにいるんだよマジで!」バンバン!!

神官「いたた…!それは教会の仕事でさ…」


武道家「神官っつーことは、色々話あるんだろ?聞かせろよ、俺らの話も聞かせてやるから」

神官「あっ、ぜひ聞きたいかも!」


魔道士「背ぇ伸びたねぇ…、成長期だったのかな?」

神官「あはは…そうかな?」


乙女格闘家「筋肉ついた?」ペラッ

神官「わっ、めくらないでよ!」

244: 2014/08/16(土) 22:55:24 ID:Fh9nr8No
 
ワイワイ…!!ガヤガヤ…!!

剣士「はははー!何だ、すげぇ今日はいい日じゃんか!」

武道家「まさかこんな所で会えるなんてなぁ!」

魔道士「逃げ足だけは早い盗人だったけど、出会わせてくれたのは感謝しないとね」アハハ

乙女格闘家「でも、盗人逮捕はお金になるから許すまじ!」

神官(みんな…、変わってないなぁ…!)クスッ


ガツッ…!!ガランガランッ!!

245: 2014/08/16(土) 22:55:58 ID:Fh9nr8No
 
神官「うわっ、後ろのほうでまた物音?」クルッ

剣士「ん?」クルッ

武道家「何だ?」クルッ

魔道士「まーた盗人さんでも現れた?」クルッ

乙女格闘家「むー?」クルッ


ズザザァ…!!

魔術賢者「はぁ…はぁ…」ゼェゼェ

魔術賢者「やっと…追いついた…!」

246: 2014/08/16(土) 22:56:52 ID:Fh9nr8No
 
剣士「あん…?」

武道家「ん…またどっかで見たことあるよーな…」

魔道士「えっ…。み、見たことあるっていうか…凄いキレイになってるけど…」

乙女格闘家「も、もしかして…?」

神官「魔術賢者…さん…!?」


魔術賢者「やっぱり…!みんな…久しぶり…!」


…………
………

253: 2014/08/18(月) 22:23:00 ID:pbcI1Gnk
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 酒場 】

剣士「では再会を祝してー…」

全員「かんぱいっ!!」

…カァンッ!! 
 
 
グビグビグビ…ッ!!

剣士「ぷはぁ~!」

武道家「うめぇっ!」

254: 2014/08/18(月) 22:23:31 ID:pbcI1Gnk
 
魔道士「それにしても、僧侶…じゃなかった。神官と魔術賢者さん久しぶりだね!」

神官「本当に偶然だったよね~」

魔術賢者「うん…、みんなが中央にいるとは思わなかった…」

乙女格闘家「本当に魔術賢者ちゃんキレイになったなぁ…」
 
サワサワ…

魔術賢者「乙女格闘家に言われて…、髪の毛伸ばした…」

乙女格闘家「うんうん、そっちのほうがすっごい可愛くて、似合ってるよ!」 


神官「剣士くんたちは、今も冒険者として頑張ってるんでしょ?」

剣士「まぁな。それなりに名前も売れてるみたいだぜ」

魔術賢者「うん…。今日も中央軍のところで…話聞いた…」

255: 2014/08/18(月) 22:24:06 ID:pbcI1Gnk
 
乙女格闘家「…」

乙女格闘家「ねぇねぇ、話割り込むけどさ。神官と魔術賢者ちゃん!」

乙女格闘家「これって偶然っていう名前の運命だよね!?」


神官「?」

魔術賢者「?」


乙女格闘家「だーかーらー…!」

乙女格闘家「こんな再会、きっと愛につながるんだって!」キラキラ


神官「あ…」

魔術賢者「あぁ…」

256: 2014/08/18(月) 22:25:15 ID:pbcI1Gnk
 
剣士「はは、確かに運命っぽいか?」

武道家「今の二人の恋愛事情ってどうなってんの?」

魔道士「あ、それ少し気になる!」

乙女格闘家「実は、こっそり二人だけで会ってたとか!?」


神官「…」チラッ

魔術賢者「…」チラッ


乙女格闘家「…」キラキラ


神官「…残念だけど、僕には同居してる婚約者がいるんだ」

魔術賢者「私は、2年前に同じ支部の人間と入籍して…」

257: 2014/08/18(月) 22:25:49 ID:pbcI1Gnk
 
乙女格闘家「えっ!?」

剣士「そ、そうなのか!?」

武道家「待て待て、結婚してる…のか?」

魔道士「神官にも婚約者!?」


神官「うん。僕は、3年前に見習い神官だった時に救った女性に告白されて…」

神官「北方大陸の雪降町の出身者で…。じ…実はその…」

神官「魔術賢者さんと被ったり……とかじゃないや!何でもない!」


魔術賢者「…私は、流されたまま…結婚した感じだ」

魔術賢者「けれど幸せといえば、幸せだ…。優しい人だから…」

258: 2014/08/18(月) 22:26:21 ID:pbcI1Gnk
 
乙女格闘家「そ…そうだったんだ…」

剣士「少し残念な気もするけど、二人が幸せだって思ってるなら別にいいな」

武道家「あたりまえだ。当人らが幸せならいいだろ」

魔道士「うん、そうだよ」


神官「確か、魔術賢者さんは今も猛雪山の支部で働いてるんだよね?」

魔術賢者「うむ…。そうだが…」

神官「僕の奥さん、子供が生まれたら故郷で育てたいっていってるんだ」

魔術賢者「へぇ…」

神官「もしそうなったら、仲良くしてあげたら嬉しいな」

魔術賢者「もちろん…」ニコッ

259: 2014/08/18(月) 22:26:56 ID:pbcI1Gnk
 
剣士「お前らの嫁さんは、一般人なのか?冒険者とかじゃなくて」


神官「恥ずかしいけど、元冒険者。女性の戦士さんだったんだ」

魔術賢者「うちは…支部の中だから…軍人。剣術使いだったな…」


魔道士「へぇ~!じゃあ子供が生まれたら…僧侶と戦士、魔法師と剣術使いの子供かぁ」

武道家「なんか将来、でっけぇ事やりそうな感じ」

剣士「すげぇな、冒険者のハイブリッドじゃん」

武道家「しかし、一歩先の大人になったって感じだな二人とも」ハァ


…ダキッ!!ギュ~!

乙女格闘家「武道家ぁ、私はいつでもオッケー!」

魔道士「わ、私だって…」ボソボソ

260: 2014/08/18(月) 22:27:36 ID:pbcI1Gnk
 
武道家「だぁ~!確かに子供とか、色々あるけど…まだまだ安住じゃなくて!」

剣士「そうそう、もうちょっと世界を駆け巡って、色々楽しみてぇっつーの!」

神官「なんだ、みんな婚約者みたいなもんなんじゃない」

魔術賢者「みんな…大人…」

乙女格闘家「そりゃねー♪」

魔道士「う、うん」


神官「剣士くんたちは、どんな生活送ってきたのか聞かせてよ」


剣士「…俺らの生活か」

武道家「何だっけ、卒業後の1年目はそんな苦労しなかったな」

魔道士「うん。あの時は比較的、簡単な依頼ばかり受けられたし、初心者ってことで救済多かったし」

乙女格闘家「その代わり、大儲けっていうほどじゃなかったけどねー」

261: 2014/08/18(月) 22:28:14 ID:pbcI1Gnk
 
神官「初心者…救済?」


魔道士「冒険者として、成果を上げれてない人は基本的に初心者扱いなの」

剣士「そう。だから軍の一般依頼では、優先的に簡単かつ報酬のいいクエストとかぼんぼん発注されてな」

乙女格闘家「宿に宿泊するお金とかは困らなかったねー」

武道家「1年目終える頃には、依頼の失敗率ゼロで、より上位の依頼を軍から受諾できるようにもなった」


魔術賢者「2年目は…?」


剣士「2年目は1年目より更に楽だった印象だ」

武道家「下位依頼、やや難易度の高い依頼をこなして成果をあげて…」

魔道士「結果的にいうと、1年目より2年目のほうが金銭的に余裕が出来たってかんじ」

乙女格闘家「そうだったねー。だけど…去年は…」

262: 2014/08/18(月) 22:28:53 ID:pbcI1Gnk
 
神官「去年は…?」


武道家「まさに氷河期だ…。下位依頼は初心者じゃなくなったから受けれず、軍の一般受諾は基本的に受けられねーし…」

乙女格闘家「かといって上位依頼は成果が足らず受けられず…」

剣士「2、3か月で宿代に貯めた金が消えてさぁ…」ハァ

魔道士「細い依頼受け続けて、3年目の10月頃にようやく大きい遺跡調査のクエスト受諾して、成果あげて…」


魔術賢者「今年へ繋いだ…と」


剣士「そういうことだ!」

武道家「今年からはデカイ依頼も受諾可能になったから、大体の場所立ち入りできるし」

魔道士「やっと冒険者として、一人前になったかなーってかんじだよね」

乙女格闘家「目指せ、一攫千金!とか!」

263: 2014/08/18(月) 22:29:30 ID:pbcI1Gnk
 
神官「へぇ~…。いいなぁ、たのし…」ハッ

神官(…楽しそう。なんて言葉…!)

神官(…ッ)


剣士「…」

剣士「…僧侶、飲めよ。今日は酒の席だぞ」ドンッ!


神官「剣士くん…」

剣士「飲まなきゃ損!おら、食え!飲めぇ!!」

神官「…うんっ!」


………

264: 2014/08/18(月) 22:31:37 ID:pbcI1Gnk
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 3時間後 】 

…ゴトンッ!

剣士「もう…飲めねぇ…」ゲフッ

魔道士「あーあー…。だから飲みすぎだって…」


武道家「酒はちびちび嗜むもんだぞ」グビッ

乙女格闘家「剣士くんはいっつもダウンしちゃうよねー」


魔術賢者「はは…。えと、店員さん…焼き鳥ください…」バッ

神官「魔術賢者さん、まだ食べるの!?」

魔術賢者「軍人は…身体が資本っ」キラッ

神官「…食べ放題でよかった」

265: 2014/08/18(月) 22:32:09 ID:pbcI1Gnk
 
武道家「はっはっは……」

武道家「…」

武道家「…ッ!」ビクンッ


神官「…」ピクッ


武道家「おっ…と。俺もちょっと酔ったかな。夜風にでも当たってくるわ」ガタッ

乙女格闘家「あ、じゃあ私も」

武道家「い、いや。お前はいいよ。いつものことだし、剣士の介抱手伝ってやっててくれ」

乙女格闘家「もー、また?」

武道家「魔道士一人じゃ大変だろ…」

乙女格闘家「それもそっか。わかった」


武道家「お、おう」フラッ…

266: 2014/08/18(月) 22:35:29 ID:pbcI1Gnk
 
トコトコ…、ガチャッ!ギィィ…バタン


神官「…」

神官(今のはもしかして…)

神官「…みんな、僕もちょっと外に行って来る」ダッ

タタタタタッ…ガチャッ、バタンッ!


魔道士「あ…行ってらっしゃい?」

魔術賢者「神官も…酔ったのかな…」

乙女格闘家「さぁ…?」


………

275: 2014/08/20(水) 20:30:28 ID:5DHux946
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 酒場の外 】

フラフラ…

武道家「げ…げほっ!げほげほげほっ!」

武道家「う゛っ…」

武道家「ごほごほごほっ!おえっ…!」

武道家「がっ…はぁ…、はぁ…!!」


武道家「…っ」


武道家「…ごほっ!?ごほごほっ!!」

…ベチャッ!

276: 2014/08/20(水) 20:31:04 ID:5DHux946
 
武道家「はぁはぁ…!ちっ…!」

ズリズリ…ストンッ

武道家「げほっ…!ま、参ったな…」


トコ…トコトコ…

武道家「…誰だ!」バッ

神官「僕だよ…武道家くん」

武道家「そ、僧侶!」

神官「…見てたよ」

武道家「あぁ?ちょっと酔っただけだっつーの」

277: 2014/08/20(水) 20:31:37 ID:5DHux946
 
神官「…酔っただけの人間が、血なんか吐くとは思えないよ」

武道家「…」

…ドロッ


神官「思えば、武道家くんは学生の時からそんな兆候はあったよね…」

武道家「なぁに、風邪だっての」ハハッ


神官「…違う。今の僕は、君のような人を大勢相手にしてきたんだ」

神官「分かるんだ…。君がさっき、席で少し心臓を抑えたこと…喉を軽く掻いたこと…」

神官「まさかとは思った。けど、今の血で確信した…」

278: 2014/08/20(水) 20:32:13 ID:5DHux946
 
武道家「…何だっていうんだ?神官サン」

神官「君は…、君の体は!数年前から病に蝕まれてる!それも、重病だ…!」

武道家「ははっ…何言ってるんだか」

神官「…何を言ってるんだか、じゃないよ!他の人は知ってるの!?」

武道家「…さぁな」

神官「だめだ、この事はみんなに教えないとー…!」


武道家「…やめろっ!!!」カッ


神官「!」ビクッ

武道家「迷惑かけたくねぇんだ…。頼む…」


神官「…」

神官「そ…そういう事じゃないでしょっ!!」

279: 2014/08/20(水) 20:32:47 ID:5DHux946
 
武道家「お…」


神官「そう隠してるほうが迷惑なんだよ!!パーティでしょ!?仲間でしょ!?」

神官「乙女格闘家さんだって、武道家くんと一緒に幸せになろうって思ってるのに!!」

神官「剣士くんだって、魔道士さんだって…、仲間に隠し事しないって…あの日言ったじゃないか!!」


武道家「あの日…。魔石洞窟の時か…」

神官「そうだよ!ダメだよ…、武道家くん…。それじゃ…」

武道家「…」

神官「…」


武道家「…分かってるよ。だけど、血を吐くくらいで氏にはしないだろ?」

神官「…本当にそう思ってるの?自分の身体のことだから…分かってると思うけど…」

280: 2014/08/20(水) 20:33:44 ID:5DHux946
 
武道家「…」

神官「武道家くん、ちょっと失礼するよ」

トコトコ…グイッ

武道家「お、おい何を…」


神官「…」ボソッ

…パァァッ!!


武道家「なんじゃこの光…?」

神官「黙って。君の身体を簡単に調べてるから」

武道家「…」

281: 2014/08/20(水) 20:34:15 ID:5DHux946
 
神官「…」

神官「…」

神官「…ッ!」ゾクッ


武道家「…どうだ」

神官「…」

武道家「…どうなんだよ」

神官「武道家くん…」

武道家「あん?」


神官「この事はみんなに内緒にはする。だけど、2か月…いや、1か月に1度」

神官「この区域にあるうちの教会に来てほしい。絶対に」

282: 2014/08/20(水) 20:34:52 ID:5DHux946
 
武道家「…1か月に1度とは、世界を駆け巡る俺らにとっては厳しいな」

神官「そうじゃなかったら、みんなに教える」

武道家「お、おいおい…。何でそんな真剣なんだよ」

神官「ダメだ。それだけは譲れないよ」ギロッ


武道家(…!)

武道家(くく…なんつー眼光するようになったんだ…)


神官「武道家くんっ!聞いてるの!?」

武道家「……わかったわかった!わかったよ!」

神官「!」

283: 2014/08/20(水) 20:35:23 ID:5DHux946
 
武道家「わかった。極力、来るようにはする」

武道家「だからこのことは、内緒にしといてくれよ?」


神官「…絶対だよ」

武道家「あぁ、分かったよ」

神官「…」

武道家「それじゃあさっさと皆の所に戻れ。俺はもう少し夜風にあたるからな」シッシ

神官「…うん」クルッ


タッタッタッタッタッ…

284: 2014/08/20(水) 20:36:09 ID:5DHux946
  
神官(…)

神官(…ぶ、武道家くんを蝕んでるのは…まさかとは思うけど…魔力枯渇症じゃ…!)

神官(普通は回復するはずの魔力が、徐々に回復量が少なくなっていく奇病…)

神官(…ッ)

神官(それが本当なら、冒険者としては致命的すぎる病…)

神官(…いや、冒険者云々以前に……。武道家くんっ…!)


………
……

285: 2014/08/20(水) 20:37:12 ID:5DHux946
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数分後 酒場 】

ガチャッ…

武道家「ふぃ~…、ただいま」

乙女格闘家「おっかえりぃ♪」


神官「…」


武道家「まだ剣士倒れてるんかよ」

剣士「」グデンッ

魔道士「はぁ…」

286: 2014/08/20(水) 20:37:54 ID:5DHux946
 
魔術賢者「じゃあそろそろ…お開きかな…」

乙女格闘家「そうだねー、時間もいい感じだし」

魔道士「みんなで久々に会えて、楽しかったよ♪」

武道家「今度からみんなでこうして集まるのも悪くないかもな」

神官「…そうだね」


剣士「…」

剣士「…」ムクッ

剣士「今度は、少戦士やら大戦士兄やら、みんなも呼ぼうぜ」


武道家「起きてるなら最初から起きろよ」

魔道士「…。それにしても、他の人たちは何してるんだろうね」

剣士「ん~…大戦士兄とか冒険先生とかは、今も先生してんじゃねえの?」

287: 2014/08/20(水) 20:39:19 ID:5DHux946
 
武道家「今度、我らが母校にでも遊びに行ってみるか?」

剣士「おっ!面白そうじゃん!」

魔道士「成長した私たちを見せないとね!」

乙女格闘家「にゃはは…、魔道士ちゃんは色々成長したもんね」ペラッ

魔道士「きゃーっ!」


魔術賢者「はは…。さて…私は近くの宿で泊まって…、明朝の馬車で帰るよ…」


乙女格闘家「…」

乙女格闘家「魔術賢者ちゃん、折角だから僧侶くんも一緒に泊めちゃったらー?」プクク


神官「ちょっと!」

288: 2014/08/20(水) 20:39:50 ID:5DHux946
 
魔術賢者「あ…、いや…それはさすがに…」

神官「乙女格闘家さん、相変わらずだなもう!!」

乙女格闘家「やー」アハハ


剣士「ま、とりあえず…お疲れ!付近の教会にいるってわかったし、度々遊びに来るわ」

神官「うんっ」


剣士「ほんじゃ、俺らも宿に行きますかぁ?」

魔道士「だね。でもさぁ、私たちも受諾してるクエストないし…。休み続きになりそうだから、早く次の依頼探さないと」

剣士「そうなんだよなぁ…」ポリポリ

289: 2014/08/20(水) 20:40:27 ID:5DHux946
 
魔術賢者「…」
 
魔術賢者「…あっ」


乙女格闘家「どしたの?」

魔術賢者「その…。もし暇なら…4人に頼みたいことが…」


乙女格闘家「うにゅ?」

魔道士「私たちに…」

武道家「頼みごと?」

剣士「何だ?」


魔術賢者「その…、報酬金はそこまで高く出せないんだけど…」

…………
………

290: 2014/08/20(水) 20:41:00 ID:5DHux946
 
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

291: 2014/08/20(水) 20:41:41 ID:5DHux946
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 3日後 猛雪山 】


ビュオォォォオオッ!!!ゴォォォッ…!!!!


剣士「へ…へっくしょおおい!!」

魔道士「わっ!」

剣士「あー…少し寒いかな。それとも誰かが噂してるのか…」ズズッ

魔道士「少し寒いって、こんな猛吹雪の中のセリフじゃないんだけどぉお」ガタガタ


武道家「だらしないやつめ!」ズルズル

乙女格闘家「鼻水すすりながら言っても、威張れないよ」

292: 2014/08/20(水) 20:42:18 ID:5DHux946
 
剣士「だぁっはっは!おめぇだって寒がりじゃねえか!」

武道家「あんだと…?やるか…おっ?」

剣士「あぁ…?」

武道家「おぉ…?」


魔道士「こんな時くらい、落ちつきなさい!」

魔道士「うぅぅ、魔術賢者ちゃんの頼みだし、断れなかったけど…」

魔道士「こんな猛吹雪、聞いてない~!!」


剣士「アイスタイガー自体の討伐は楽なんだろうけどなー」

武道家「んーむ…」

乙女格闘家「山に入ってからしばらくするけど、一向に討伐対象出てこないねー?」

293: 2014/08/20(水) 20:42:57 ID:5DHux946
 
魔道士「せめて、少しだけ吹雪が収まってくれた後に出てくれたらうれしいんだけどなぁ」

乙女格闘家「にゃはは…。前が見えないと、感覚だけで相手を捕まえないといけないからなぁ…」

魔道士「あっちはこういう時に身をひそめて襲ってくるの得意なはずだから、神経が磨り減るし…」


剣士「はっはっは、いくら強い相手だろうが余裕だ」

武道家「ほう?なら一発で沈められるというのだな?」

剣士「お前の拳より先に、俺の大剣が切り裂くね」

武道家「あぁ…?なら、どっちが先に倒せるか勝負するか!?」

294: 2014/08/20(水) 20:43:33 ID:5DHux946
 
剣士「…いいぞ!負けたほうは、ふもとにあった町の、酒場の奢りな!」

武道家「望むところだオラァ!」

魔道士「だから二人とも…」

乙女格闘家「私も乗ったぁー!」キャハッ

魔道士「」


…ザッザッ!

アイスタイガー『グルルッ…!!』


魔道士「って、出たぁぁっ!?!?」

295: 2014/08/20(水) 20:44:12 ID:5DHux946
 
剣士「酒の飲み放題に、料理付きだからな!」

武道家「おうよ、一番高いところでいいな!?」

乙女格闘家「私は武道家のお助けだからね!」

剣士「ずりぃぞ、おい!」


アイスタイガー『ガウッ!グルル…』


魔道士「さ、三人ともそれどころじゃないから!!いるからぁぁ!そこ!!」


アイスタイガー『…ガァァッ!!』ダッ!!

…ダダダダダッ!!!


魔道士「き、来たぁぁっ!!えぇいもう!大火炎…!」パァァッ

296: 2014/08/20(水) 20:44:44 ID:5DHux946
 
…チャキッ!

剣士「せいやぁぁあっ!!」

武道家「衝撃波ぁぁっ!!」

乙女格闘家「闘気連だぁぁんっ!!」

ゴッ…ゴォォォォッ!ドドドド…!ドゴォォンッ!!!


アイスタイガー『…ッ』フラッ

ヨロヨロッ…、ズズゥン…


魔道士「…」

………
……

297: 2014/08/20(水) 20:45:55 ID:5DHux946
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 ふもとの酒場 】

ワイワイ、ガヤガヤ…!


グビッ…、グビグビグビッ……!!

剣士「ふぃー!!」プハァッ

魔道士「何はともあれ、お疲れ様。最近飲んでばっかりの気もするけど」

武道家「アイスタイガーなんざ、相手にすらならなかったな」

乙女格闘家「魔術賢者ちゃんの話じゃ、アレを倒せない冒険者が大半って言ってたけど」

剣士「あれくらい一太刀でぶっ殺せるっつーのな」

298: 2014/08/20(水) 20:46:27 ID:5DHux946
 
武道家「あぁ、全くだ」

乙女格闘家「私たちが強いだけかもよー?」

剣士「まぁ俺らが強いのは当然だし」

魔道士「剣士と武道家がずば抜けすぎてるんだってば」


剣士「はっはっは、そんなに褒めるなって!お前らだって経験を経て成長してー…」

剣士「…」

剣士「…成長」

剣士「……そうか。あれから4、5年近くになるのか…」ボソッ


魔道士「ん?」

剣士「いや…うーん」

魔道士「…どうしたの?」

剣士「んーむ…。あのさ皆、話変わるけどちょっといいか?」

299: 2014/08/20(水) 20:47:00 ID:5DHux946
 
魔道士「うん?」

武道家「面倒な話はナシな」

乙女格闘家「剣士のそういう切り込む話は、いつも面倒な事に巻き込まれてきたからねっ」


剣士「お前ら…。いや何だ、前々から思ってたが、そろそろ行ってもいいんじゃないかなと考えてんだ」

魔道士「行ってもいい?」

武道家「どこにだ?」

 
剣士「…」

剣士「その…エルフ族の"西海岸村"」

300: 2014/08/20(水) 20:47:47 ID:5DHux946
 
魔道士「!」

武道家「!」

乙女格闘家「!」


武道家「西海岸村って…幼エルフのか?」

乙女格闘家「あー、私がいない時にいったところだね。何で急にまた?」

 
剣士「俺らが村訪れてから、もう結構たつだろ?」

剣士「きちんとこうして自立したわけだし、武器も大事に使ってるって見せたくないか?」


魔道士「…確かに、気持ちは分かるけど」

武道家「未だにエルフ族との友好関係は確立されたわけじゃねーんだぞ?」

剣士「だけどよ、俺らは歓迎されたじゃん」

武道家「…」

剣士「三人はやっぱり…反対か?」

301: 2014/08/20(水) 20:49:07 ID:5DHux946
 
乙女格闘家「私はどんな場所か分からないから、みんなに従うよ」

魔道士「剣士がどうしてもっていうなら、いいけど…」


武道家「…」

武道家「…俺は反対だな」


剣士「…どうしてだよ」


武道家「確かに、あの時の村のみんななら歓迎してくれると思う」

武道家「だが、ありゃ鍛治長がいたからだろ。あれから何年たったと思う?」

武道家「言葉が悪いが鍛治長がもし…いなくなってたら?」

武道家「あの時の職人のエルフが次の長なんじゃないのか?」


剣士「あ…」

武道家「…な?」

剣士「んーむ…」

302: 2014/08/20(水) 20:50:01 ID:5DHux946
 
魔道士「そ、そう言われると…。剣士、残念だけど諦めたほうがいいと思う」

剣士「そっかぁ…。だよなぁ…。武器をもらったとはいえ、俺らをよく見てなかったし…村に入れないかもか…」

武道家「当時はバカみてぇに突っ走ったけど、もう俺らにゃ自立してる以上責任もある」

乙女格闘家「うん…」

剣士「仕方ねぇ、諦めるか…」ハァ


トコトコ…ボスンッ!!!チャリンッ!

剣士「ぬおっ!?」

魔術賢者「みんな、ご苦労様…。これ、今回の報酬…。袋に詰めてきた…」

剣士「目の前にいきなり置くんじゃねー!びっくりしただろ!」

魔術賢者「あ、ごめん…」


乙女格闘家「やー、魔術賢者ちゃーん!」ダキッ!

魔術賢者「お、乙女格闘家…苦しい……」ギリギリ

303: 2014/08/20(水) 20:50:57 ID:5DHux946
 
武道家「…魔術賢者、俺らが報酬受け取るの明日だぜ?」

剣士「まだ正式に依頼完了の報告してないんだが」

魔術賢者「失敗なんかすると思ってなかったから…。出発した後にすぐ完了報告しといた…」

武道家「あぁ、そういうことか」

乙女格闘家「…信じられてるってうれしいよー!」

ギュウウッ…ギリギリ…

魔術賢者「お、乙女格闘家…しまってる…」ゲホッ


剣士「まぁなんだ、ありがとよ。とりあえず頂戴しておくぜ」

魔術賢者「うん…。あ、それとさ…」

剣士「何だ?」

304: 2014/08/20(水) 20:51:32 ID:5DHux946
 
魔術賢者「少し聞こえたんだけど…。エルフ族の村へ行きたいのか…?」

剣士「ん、んむ…」

魔術賢者「なら、現状を知ってる人が…中央軍本部にいるから、話を出来るようにするか…?」

剣士「い、いや…それは…」

魔術賢者「…きっと、みんな知ってる人のはず…」

剣士「知ってる人?」


魔術賢者「武装先生…。今は武装中将…」


剣士「!」

武道家「!」

魔道士「!」

乙女格闘家「!」

305: 2014/08/20(水) 20:52:16 ID:5DHux946
 
魔術賢者「武装中将…、今もエルフ族との関係を保つため色々してるから…」

剣士「れ、連絡がつくのか!?」ガタッ!

魔術賢者「うちの支部長が、武装中将と顔見知りで…」

剣士「…!」

魔術賢者「まぁ…、私の旦那なんだけど…」テレッ


剣士「!!」

魔道士「う、うっそー!」

武道家「す…すげぇ人を旦那さんにしたな…」

乙女格闘家「すっごーい!!」


魔術賢者「だから…もしよければという話で…」

306: 2014/08/20(水) 20:52:49 ID:5DHux946
 
剣士「お願いする!…と、言いたいが」

剣士「…みんなはどうだろうか。俺は話でも聞きたいと思ってるんだけど…」チラッ


武道家「んーむ…。まぁ、話は聞くだけ聞けるなら…」

魔道士「そうだね」

乙女格闘家「みんなが話を聞くなら、それに従うだけかな~」

剣士「…ありがとよ!魔術賢者、そういうわけだ。頼めるか?」


魔術賢者「うんっ…わかった…」

魔術賢者「…任された」ニコッ


乙女格闘家「!」

乙女格闘家「…」ブルッ
 
乙女格闘家「…かわいい~!」

307: 2014/08/20(水) 20:53:25 ID:5DHux946
 
…ピョーンッ…!!

魔術賢者「…!」


…ドスーン!!ガシャアンッ!!


剣士「おおう…」

武道家「乙女格闘家…」

魔道士「楽しそうで、何より…」


………
……

308: 2014/08/20(水) 20:53:57 ID:5DHux946
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

315: 2014/08/23(土) 21:09:07 ID:GuDZ9hnA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日 雪降町の宿 】

モゾモゾ…

剣士「…んにゃ」パチッ


魔道士「あ…起きた?」ニコッ

剣士「ん…。おはよ」

魔道士「うん、おはようっ。もう朝だよ」

剣士「…またずっと寝顔見てたのかよ。起こせよ」フワァ

魔道士「へへっ♪」

316: 2014/08/23(土) 21:10:13 ID:GuDZ9hnA
 
剣士「飽きずに俺のアホ面見て楽しいか?」

魔道士「日課かな?」

剣士「日課って」

魔道士「だって…こういう稼業だと朝に顔を見れる事が何より安心するっていうか…」

剣士「…」

魔道士「…」


剣士「ま、その通りだな。俺も朝、魔道士の顔見ると安心するわ」

魔道士「うん♪」

317: 2014/08/23(土) 21:10:51 ID:GuDZ9hnA
 
剣士「さて、歯でも磨いて……と。今は何時だ?」

魔道士「もう8時だよ」

剣士「武道家たちもそろそろ起きただろうし、準備してロビーで珈琲でも飲んでようぜ」

魔道士「だねっ」


………

318: 2014/08/23(土) 21:11:52 ID:GuDZ9hnA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 宿のロビー 】

ガヤガヤ…!ワイワイ…!!


剣士「…」グビッ

魔道士「ん~…朝のコーヒーは美味しいっ」クピッ

剣士「…」

ガヤガヤ…!

剣士「…な、なぁ魔道士」

魔道士「なに?」

剣士「…なんか…昨日より人増えてないか?」

ワイワイ…

魔道士「…確かにそうかも」

319: 2014/08/23(土) 21:12:35 ID:GuDZ9hnA
 
剣士「どうしたんかね。恰好は冒険者っぽくはないが…」

魔道士「どっちかっていうと家族連れっぽいし、旅行者か何かじゃない?」

剣士「突然こんなに旅行者が…」

…コツンッ

剣士「いてっ!誰だこら!」クルッ


武道家「…よっ。それは俺らのおかげだぜ、たぶん」

乙女格闘家「だねー」

剣士「…あん?」


魔道士「あ…武道家、乙女格闘家!おはよ~」

乙女格闘家「おっはよー♪」

320: 2014/08/23(土) 21:13:39 ID:GuDZ9hnA
 
剣士「…俺らのおかげだ?」


武道家「俺らが大型のアイスタイガーぶっとばしたから、登山可能区域が大幅に解除されたんだよ」

武道家「それで、近辺に宿とってた旅行者やら情報を仕入れた面子が雪降町に集まってきたんだ」

武道家「北方大陸の山奥とはいえ、ここは登山者にとっちゃ割と有名な場所らしいからな」


剣士「…なるほど」

魔道士「そういうことね」


…ボーン!ボーン!


魔道士「っと、もう9時か…」

武道家「中央行きの特急馬車って9時30分だっけか?そろそろ行ったほうがいいんじゃないか」

剣士「あ~…そうだな」

321: 2014/08/23(土) 21:14:54 ID:GuDZ9hnA
 
…スクッ

剣士「そんじゃ、行きますかぁ」

武道家「途中で食料品か何か買っておこう。酒とかも買うか?」

剣士「…馬車で酒って、余計に酔いそうな気がすんだけど」

武道家「葡萄酒とか飲みたくないか?」

剣士「…買おう!」


魔道士「飲むのはいいけど、馬車で倒れたり、吐かないでよ。他のお客さんもいるんだから」

魔道士「っていうか、剣士は見境なくなるから飲んじゃダメ」


乙女格闘家「うん。剣士は、飲んじゃだめ」

剣士「何でだよ!」

武道家「そうだな、やっぱり剣士はダメだ」

322: 2014/08/23(土) 21:15:48 ID:GuDZ9hnA
 
剣士「ぜ…ぜってぇ飲んでやるからな!!」

武道家「やれやれ…」

剣士「何がやれやれだっつーの!」

魔道士「はぁ…」

乙女格闘家「もー…」


コツコツコツ…

魔術賢者「や…みんな、おはよう。まだ町にいてよかった…」


剣士「…あれ、魔術賢者じゃん」

武道家「よっ…どうした?」

乙女格闘家「…おっはよー!」

魔道士「おはよう、魔術賢者さん。どうしたの?」

323: 2014/08/23(土) 21:16:37 ID:GuDZ9hnA
 
ゴソゴソ…ペラッ

魔術賢者「うん…えっと、これ…」スッ

剣士「…何じゃこの封筒」ペラッ


魔術賢者「それ…紹介状。それがあれば、中央軍本部に入れると思う…」

魔術賢者「旦那に話をしたら…これを渡せばきっと大丈夫って…」


剣士「…わざわざ書いてくれたのか。すまないな」

魔術賢者「ううん…別にいい…」ニコッ


乙女格闘家「…」ウズッ

武道家「ここは酒場じゃないし、他の人の目があるから抑えなさい」ガシッ

乙女格闘家「わ、わかってるってばー!」

324: 2014/08/23(土) 21:17:22 ID:GuDZ9hnA
 
魔術賢者「みんな、9時30分ので中央に行くんでしょ…?本当にお世話になった…ありがとう…」

剣士「気にするなっつーの。当然のことしたまでだ」

武道家「報酬は貰ってるし、こっちとしては紹介状まで貰ったし万々歳だぜ」

乙女格闘家「うんうん、魔術賢者ちゃんありがとっ!」

魔道士「色々助かるよ」


魔術賢者「…うん、こちらこそ」ニコッ


乙女格闘家「!」ビクンッ

乙女格闘家「…武道家」


武道家「あ?」

乙女格闘家「…しばらく会えないかもしれないし、公衆の面前とか関係ないよね」

武道家「…」ピクッ

325: 2014/08/23(土) 21:17:58 ID:GuDZ9hnA
 
魔道士「あ…」

武道家「いかん!魔術賢者、逃げろ!」

魔術賢者「…え?」

乙女格闘家「…」ニタァ

…ッピョーン!!

魔術賢者「…!」ビクッ


…ガシャアアンッ!!ズザザザッ…ギュウウッ!!


魔術賢者「」

326: 2014/08/23(土) 21:18:38 ID:GuDZ9hnA
 
武道家「…」

剣士「…」

魔道士「…」


剣士「……あの愛の表現を、お前は受け止め続けているんだな。凄いぜ」ポンッ

武道家「はは…だろ?」

 
…………
……

327: 2014/08/23(土) 21:19:10 ID:GuDZ9hnA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

328: 2014/08/23(土) 21:20:14 ID:GuDZ9hnA
 
改めて魔術賢者に別れを告げた4人は、中央へと戻っていった。

何事もなく中央都市へと到着後、

剣士一行は武装先生へ再会するために中央軍本部のドアを叩く――。

329: 2014/08/23(土) 21:20:57 ID:GuDZ9hnA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 3日後・中央都市 中央軍本部 】


軍兵A「…」

軍兵B「…」

ゴォォ…!ヒュウウッ…!!


剣士「ここが武装のオッサンのいる中央軍本部か…」

剣士「依頼受付じゃなくて本部の方は初めて来たがー…」

ゴォォォ……

武道家「何だこの雰囲気…」

魔道士「門番みたいな人たちも、全然微動だにしないで立ってるし…」

乙女格闘家「紹介状は貰ったけど、正面から入っていい感じじゃないね…」

330: 2014/08/23(土) 21:21:34 ID:GuDZ9hnA
 
剣士「…勇気一発だろうが!」ダッ!

武道家「あっ、おい!」

ダダダダッ…!

剣士「すいませーん!!」


軍兵A「…何か用でしょうか」

剣士「武装中将に会わせてくれ!」

軍兵A「…は?」

剣士「だから、武装中将に…」


魔道士「こ、このバカっ!」グイッ!

剣士「むぐむぐ…!」

331: 2014/08/23(土) 21:22:08 ID:GuDZ9hnA
 
軍兵A「…いたずらか何かですか?」

武道家「あ…。い、いや…」

魔道士「ち、違うんです!えっと…猛雪山支部の支部長から紹介状を!」バッ!

…ペラッ

軍兵A「紹介状?」ジロッ

軍兵A「…」

軍兵A「…ふむ。おい、ちょっと」ボソボソ


軍兵B「ん?」

軍兵A「これは……、…だろ?」ペラッ

軍兵B「あぁ……、…だな」コクン

332: 2014/08/23(土) 21:22:41 ID:GuDZ9hnA
 
剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」


軍兵A「…失礼しました。こちらの紹介状、確かに。少々お待ちいただけますでしょうか」

軍兵A「お伝えするのにお時間がかかりますので…」


剣士「すぐに呼べないのか?」

軍兵A「…武装中将殿は非常に忙しい方です。紹介状を預かってもお会いになることは少ないのです」

剣士「ならさ、"冒険学校の剣士"が来たって教えてやってくれよ」

軍兵A「は…?」

剣士「それで全部通るはずだから!」

333: 2014/08/23(土) 21:23:17 ID:GuDZ9hnA
 
軍兵A「は…はぁ」

剣士「よろしく!じゃあ中に入って待ってるよ」

軍兵A「ど、どうぞ…」

剣士「ういっす」


武道家「むちゃくちゃな…」

魔道士「本当に会ってくれるのかな、武装先生」

乙女格闘家「久々だねー」


………

334: 2014/08/23(土) 21:23:50 ID:GuDZ9hnA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 待 合 室 】


コチ…コチ…コチ…


剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」


剣士「…遅くね?」

335: 2014/08/23(土) 21:24:44 ID:GuDZ9hnA
 
武道家「もう20分か…。会えないなら会えないでいいんだがな…」

剣士「そんな上司に話通すのって時間かかるもんなのかよ」

魔道士「あのね、ここが世界政府の心臓部の中央軍本部だって分かってる?」

乙女格闘家「そのトップを担ううちの1人を呼び出してるんだよー」


剣士「…なるほど、確かにそりゃ色々あるかもしれん」

魔道士「やっぱり分かってなかった。っていうか説明しても分かってないでしょ…」ハァ

剣士「だけど俺の中じゃ、国を支える人っていうよりも…先生のままだぜオッサンは」

魔道士「うーん、確かにイメージが沸かないけど…」

剣士「もしさ…オッサンがあの時のなままの男なら、会った瞬間にタイマン挑んだりしてみるか」ポキポキッ

魔道士「その瞬間、私の魔法で燃やすからね」

剣士「絶対にやめときます」

336: 2014/08/23(土) 21:26:27 ID:GuDZ9hnA
 
…コンコンッ

剣士「!」

武道家「来たのか?」

魔道士「あ…。ど、どうぞー?」

乙女格闘家「…」


ガチャッ、ギィィ…

軍兵A「…こちらです。どうぞ」ビシッ!

コツ…コツ…コツ…

337: 2014/08/23(土) 21:27:15 ID:GuDZ9hnA
 
剣士「…!」

魔道士「あっ…」

武道家「おぉ…」

乙女格闘家「わぁ…」


コツ…コツ…ピタッ


武装中将「…」

武装中将「よく来たな、時代を飾るパーティの諸君」ニカッ


剣士「…オッサン!!」

武道家「武装サン…」

魔道士「お久しぶりです…」

乙女格闘家「武装先生…」

338: 2014/08/23(土) 21:27:50 ID:GuDZ9hnA
 
武装中将「…久しぶりだな、お前たち」


剣士「オッサン…」

武装中将「…剣士、お前の話は聞いてるぞ。立派な冒険者になったじゃないか」

剣士「…ったりめぇだ!」


武道家「久しぶりっすね…」

武装中将「武道家だったな。久しぶりだ、独自の技を開発したと聞いているぞ?」

武道家「衝撃波のことですか…。そんな話まで…あざす!」


魔道士「武装先生っ…」

武装中将「魔道士…。あの時の涙は、今も忘れてないぞ。女性らしい女性になったな」

魔道士「…っ」


乙女格闘家「わ、私は…」

武装中将「黒髪格闘家…、もとい乙女格闘家か。女性らしさは隠しきれてなかったのを覚えてるぞ」

乙女格闘家「まだ目立ってなかった時なのに、ばれてたんですか…にゃはは…」

339: 2014/08/23(土) 21:28:23 ID:GuDZ9hnA
 
武装中将「はははっ!…何にせよ、全員、立派になったものだな」

武装中将「俺の立派になったものといえば、シワと白髪くらいだ!」


剣士「なぁに、まだまだ現役だろって!オッサンがよけりゃ、これから実力をー…」

魔道士「…」パァッ!

剣士「…こ、今度、実力を見せてやるよ!」


武装中将「はっはっは!楽しみにしておくぞ!」


剣士「はは…」

武道家「…で、剣士。そんなことより本題だろ」

剣士「あ、あぁ。そうそう、オッサン…紹介状にもあったと思うけど…」

武装中将「ふむ…そうだったな」

………

340: 2014/08/23(土) 21:28:54 ID:GuDZ9hnA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

剣士「…っつーわけで、学生時代に会ったエルフたちに、もう1度会いに行きたいんだ」

武装中将「なるほどな。それで俺を訪ねたわけだ」

剣士「情勢も詳しくねーし、軍の許可もあったほうが何かと有利かとも考えたけどさ」

武装中将「…冒険者たるもの、世界の情報を知らなくてどうする」

…ピンッ

剣士「いてっ!…へへっ」


武道家「で、どうなんすかね。今もやっぱり危険すか?」

341: 2014/08/23(土) 21:29:38 ID:GuDZ9hnA
 
武装中将「んー、難しい問題だな」

武道家「難しい?」


武装中将「お前たちが学生だった時よりは、格段に友好関係は築かれつつある」

武装中将「思ったよりも、若い世代のエルフたちは人間に対して恨みを持ってはいないようなのだ」


剣士「あぁ…言ってたな」

魔道士「あの時のメイドエルフさんとかかぁ…」


武装中将「だが、少なからず恨みがあるエルフは確認されている」

武装中将「その時と村が同じとは言い切れぬし、"大丈夫だ"とは決して言えるものではない」


剣士「"エルフ族の西海岸村"は西海岸街支部から近いけど、定期に監査する区域とかじゃないのか?」

武装中将「お前の住む村が、常に他のやつから監視されてたら気持ちいいか?」

剣士「あ~…。そ、そっか…」

342: 2014/08/23(土) 21:30:29 ID:GuDZ9hnA
 
武装中将「…」

武装中将「仕方ない。西海岸街の支部に連絡をとって現状を見てもらうか?」


剣士「いいのか!?」


武装中将「成果をあげてるパーティの願いだ、これくらいは聞くに決まってるだろう」

武装中将「ま、何より"教え子"として今も思っているがな」ハハハ


剣士「…ありがとよ、オッサン!」

魔道士「お手数かけます」ペコッ

武道家「どーもっす」

乙女格闘家「ありがとーございます」

343: 2014/08/23(土) 21:31:22 ID:GuDZ9hnA
 
武装中将「…」

武装中将「…ん」ピクッ

武装中将「…いや、ちょっと待てよ。この時期は確か…」


剣士「…どうしたんだ?」

武装中将「今年はあれから3年目の7月…。そうか、もしかしたら…」ブツブツ

剣士「…オッサン?」

武装中将「あ、いや…」

剣士「いやって事はないっしょ」


武装中将「…」

武装中将「ま、そのうち知ることだし先に教えておいてもいいのか…」

344: 2014/08/23(土) 21:31:56 ID:GuDZ9hnA
 
剣士「そのうち知ることって?」


武装中将「…決して口外せぬと約束できるか?」ジロッ

剣士「な、なんだよ急に」

武装中将「この話は現状、まだ公に出来ない事情がある話なのだ」

剣士「…」


魔道士「そ、それを聞いたら余計なことに巻き込まれちゃうとかあります?」

武装中将「そういうのはないだろう。だが、歴史的な話なので少しな…」

魔道士「歴史…ですか?」

345: 2014/08/23(土) 21:32:42 ID:GuDZ9hnA
 
武装中将「まぁ何にせよ、説明せねば納得せぬだろうし、話をしてやる」

武装中将「だがこの話は、まだ知る人ぞ知る話。絶対にしゃべるんじゃないぞ」


剣士「…わ、わかった」

武道家「おう…」

魔道士「はいっ」

乙女格闘家「わ、わかりましたっ」


武装中将「恐らくだが、今の時期、西方大陸にいる一部のエルフ族や町村ごとの年配者は留守にしているはずだ」

武装中将「お前たちの言う西海岸村は確か、長老が留守のはず…。今行くのは少しオススメしないぞ」


剣士「…留守?」

346: 2014/08/23(土) 21:34:34 ID:GuDZ9hnA
 
武装中将「うむ。これは少し入り組んだ話なのだが、お前たちはエルフ族に関してどう教えられてきた?」


剣士「どうって…」

魔道士「西方大陸に住み、魔力の濃い血が流れ、特殊な鍛治技術をもっていて…」

武道家「彼らの歴史は謎に包まれ、その美しい容姿から人間に非道をされてきた」

乙女格闘家「近年、ようやく彼らを守る規律が出来て、昔ほど奴隷狩りや山賊紛いの事件は起こりにくくなっている」

剣士「…だったな」


武装中将「うむ、よく勉強しているな」

武装中将「だがそれは、大きな間違いがある。いや、社会的には正解なのだが…」


剣士「…あん?」

魔道士「間違い…ですか?」

347: 2014/08/23(土) 21:35:46 ID:GuDZ9hnA
 
武装中将「その情報は、中央軍…」

武装中将「つまり、世界政府がエルフ族をより守るために出した情報操作とでもいうべきか」


剣士「ど、どういうことだ?」


武装中将「実はエルフ族はもともと、"東方大陸側"に住む民族なんだ」

武装中将「今も、東方大陸側には軍が警備、閉鎖にあたった区間の中にエルフ族の町村がある」


剣士「…は?」


武装中将「この世界には、東方、西方、南方、北方、中央の5つの大陸が存在しているのは知っているな?」

武装中将「そのうち、東方、西方、北方大陸は中央を挟むようにして、陸続きとなっている」

武装中将「元々東方の民族だったエルフ族は、前々の世代より非道をされてきた」

武装中将「彼らエルフ族の一部は、その非道より逃れるために東方大陸側より西方大陸側へと逃げたのだ」


剣士「そ、そんなの初耳だぞ…」

武道家「そんなの隠ぺいして、意味あるのか?」

348: 2014/08/23(土) 21:36:34 ID:GuDZ9hnA
 
武装中将「東方大陸にエルフ族がいないという事が認知されていれば、それで充分だ。意味は分かるだろう」

武装中将「東方側のエルフ族は、非道を受ける可能性は低くなり、民族としては血を残しやすくなる」

武装中将「だが…これも人間の勝手な非道になっているんだろうな」

武装中将「言い方を変えれば、西方のエルフ族には犠牲になってもらい、東側に住むエルフ族を守るということなのだから」


剣士「なっ…」

武装中将「無論、そんなことはさせないように俺らがいるわけだぞ?」

剣士「そ、その"西方を犠牲にする"っていうのはオッサンが決めたことなのか!?」

武装中将「そんなワケないだろう。これは俺の前の世代、当時軍に所属していた前任者たちのもとで決まったことだ」

剣士「でもオッサンはそれに従っているんだろ!?」

武装中将「従わねばならないということだ」

剣士「オッサンも所詮、犠牲にしていいって思ってるから動かないんだろ!?」

349: 2014/08/23(土) 21:37:30 ID:GuDZ9hnA
 
武装中将「…そう、思うか?」

剣士「ぬ…」

武装中将「…軍従者として大きい声では言えないが、俺は反対だ」

剣士「!」


武装中将「だが、世界で今まで隠してきた事を俺一人で反対したところで、どうこうできる問題ではないんだ」

武装中将「それは…分かるだろう」


剣士「わ、分かるけど…!オッサンともあろう人が!」

魔道士「剣士、落ち着いて。武装先生は悪くないんだから…」

剣士「そ、それは分かってるけどよ…」

350: 2014/08/23(土) 21:39:52 ID:GuDZ9hnA
 
武道家「なぁ武装さん、ちょっといいか?」

武装中将「なんだ?」

武道家「さっき、西方のエルフ族の一部が東方へ行くって言ったのは、東方にいるエルフ族に会うためか?」


武装中将「あぁ…」

武装中将「それもあるだろうが、彼らのしきたりの一つとして、東方へ行かねばならぬ理由があるのだ」


武道家「しきたり?理由?」


武装中将「彼らは、東方大陸にある"太陽の祭壇"というものを崇めている」

武装中将「それがどんな理由かはハッキリしないが、その祭壇に祈るため、エルフ族らが西方から東方へと向かうんだ」

武装中将「特に、お前らの言う鍛冶長は長老。よりそのような伝わりを大事にするだろう」

武装中将「"月は東に日は西に"。これがエルフ族に伝わる、1つの言葉らしいが」


武道家「へぇ…面白い言葉だな」

武道家「でもさ、西方に住むやつらは、当時の面子は東方へ戻りたいっては考えなかったのかねぇ」

武道家「それのせいで、今住む西方の面子は迷惑被ってるっつーのに…」

351: 2014/08/23(土) 21:40:37 ID:GuDZ9hnA
 
武装中将「それこそ、彼らは同胞を大事にする種族」

武装中将「東方のエルフ族に迷惑がかからぬように、戻るべき集団移民はしないのだろう」


剣士「…」


武装中将「かなり難しい話だが、これは中央政府…世界が関すること」

武装中将「剣士の気持ちも充分にわかるが、色々な問題が重なっていて安易なものではないという事を分かってくれ」


剣士「…分かるしか、ないんだよな」

武装中将「ありがとう」


剣士「…」

剣士「…そんな重要な話、俺らにしてよかったのか」

352: 2014/08/23(土) 21:41:55 ID:GuDZ9hnA
 
武装中将「気にするな」

武装中将「俺は若き世代が知らぬことを、作らないべきではないと思っている」

武装中将「だが、時代が変わるまで口外出来ないことなのだ」


剣士「…」

剣士「わかった。もちろん誰も言わねぇよ。オッサンが言う"時代が変わる時"まで」


武装中将「…」ニカッ

剣士「…」

武装中将「お前は正義感が強いというか、本当にもっともっとでかくなる男だと思うぞ」

剣士「…べ、別に」プイッ

353: 2014/08/23(土) 21:42:30 ID:GuDZ9hnA
 
魔道士「でも、エルフ族が東方側の出身だったなんでちっとも知らなかった…。勉強が無駄になった気分」

乙女格闘家「国とか世界政府が行う、情報操作ってここまで強力なものなんだねー」


武装中将「何が正解ともいえぬが、時代がそうなってしまった…」

武装中将「改善はいずれ、必ず…だ。彼らに本当の平和が訪れるその日まで」


武道家「東方出身のエルフ族に、太陽の祭壇か…」

剣士「何にせよ、鍛治長がいないんじゃ西海岸村に行っても意味ねぇな。今回はやめておくか…」

武装中将「…そうだな、そればかりは仕方なかろう」

武道家「えーと…。ちっとだけ、気になったことがあるんだけど」

武装中将「何だ?」

354: 2014/08/23(土) 21:43:01 ID:GuDZ9hnA
 
武道家「話し戻すんだけどさ」
 
武道家「俺らは、西方大陸が魔法の生まれし所と聞いてたんだが、それもウソなのか?」

武道家「西方大陸は魔力濃度が高く、エルフ族との関連性や、魔力の謎を解き明かすため研究が進んでるとか…」

武道家「そう聞いてた気がするんだが」


武装中将「一般教養で習う分野だな」

武装中将「これに関しては謎が多く、実は、東方大陸のその"太陽の祭壇"と呼ばれる付近も魔力濃度が高い」

武装中将「研究者たちの仮説のひとつに、西方大陸の魔力濃度の上昇に関して、」

武装中将「実は西方大陸に移り住んだエルフ族の影響ではないかといわれている」


僧侶「エルフ族たちの影響で、西方大陸の魔力濃度が上昇…ですか?」


武装中将「エルフ族の体内に宿す魔力は、触れた物、造りしモノに魔力を付与させてしまうほど強力だ」

武装中将「エルフ族が全体的に散りばめられていれば、全体的な濃度は上がるだろう」


武道家「なるほどなぁ…」

355: 2014/08/23(土) 21:43:38 ID:GuDZ9hnA
 
魔道士「あ…武装先生。じゃあ私も気になったことが…」

魔道士「5、6年前くらいにあった大地震と魔力濃度の上昇についての謎は解けたんですか?」


武装中将「そんなことまで知っていたのか」

武装中将「あれから何度か調査をしたが、魔力濃度は減少し、今は安定している」

武装中将「西方大陸の大地震と魔力濃度の関連性については謎のままだ」


魔道士「あれから時間が立つのに、まだ解明されてないんですね」

武装中将「地震後にエルフ族の神隠しと、超濃度は謎が多すぎてな…」

356: 2014/08/23(土) 21:44:39 ID:GuDZ9hnA
 
剣士「…」

剣士「…いつまで難しい話してんだよ!!」


武道家「…少し気になんね?」

乙女格闘家「冒険者たるもの、知識を得ていて損はなし!」

魔道士「そうだよ。知らないって罪になるってよく言うし…」

剣士「…バカで悪かったな!!」


武装中将「はっはっはっ」
 

剣士「もういいっつーの!さっさと、これからの行動決めようぜ!」


魔道士「難しい話してると、すぐそれなんだから…」

魔道士「行動って言っても中央じゃ仕事はないし、馬車で遠征して、山沿いの魔獣討伐の依頼でも行くしかないよ」


剣士「金になることせにゃ、どうにもならんしな。そうするか」

魔道士「うん、それでいいと思う」

357: 2014/08/23(土) 21:45:27 ID:GuDZ9hnA
 
武装中将「…」

武装中将「…あぁ、そうだった。話に割り込むが、ひとつ情報を」

武装中将「来月、つまり8月に入れば、東方側に遠征しているエルフ族たちも西方側にも戻るはずだ」

武装中将「それ以後に訪ねてこい。その時は、もう1度ここへ来れば、改めて情報を調べてやろう」


剣士「おうっ、有難う」

武装中将「お、いっぱしにお礼を言えるようになったか?」

剣士「何歳だと思ってるのよ、俺」

武装中将「はは、そうか」

358: 2014/08/23(土) 21:46:10 ID:GuDZ9hnA
 
武道家「んじゃ、遠征も決まった事だし行くならさっさとー…」ドクンッ

武道家「いっ……!!」ズキッ!!

武道家「げほっ!ごほっ!」


武装中将「!」


剣士「…まだ風邪ひいてんの?」

武道家「げほげほっ…!が、学生の時から妙に身体弱くなったのかもな、ははは…」

剣士「一度、治療院とか僧侶…じゃなかった、神官のやつに見て貰ったらどうだ?」

武道家「あ、あぁ考えとくよ」


乙女格闘家「最近、咳がひどいよね……。武道家に何かあったらやだよ?」

武道家「分かってるって。大丈夫大丈夫」ハハハ

乙女格闘家「それならいいんだけど…」

武道家「それよりさっさと行こうぜ!」

乙女格闘家「う、うん…」

359: 2014/08/23(土) 21:47:15 ID:GuDZ9hnA
 
剣士「んじゃ、オッサンありがとうな。また来るよ」

武道家「ありがとさん」

魔道士「有難うございました」

乙女格闘家「ありがとうございました~♪」

武装中将「う、うむ。気を付けてな…」

剣士「ういっす!」

ガチャッ…


武装中将「…」

武装中将「…やはり、待て。ちょっと武道家だけ残って、それ以外は外で待っててくれるか?」


剣士「武道家だけ?」

360: 2014/08/23(土) 21:47:56 ID:GuDZ9hnA
 
武装中将「…ちょっとな。その…新技のことで話がある…うむ」

武道家「…」

剣士「…」


魔道士「…わかりました」

乙女格闘家「はいっ」


………
……

361: 2014/08/23(土) 21:48:31 ID:GuDZ9hnA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

武装中将「…で。その咳はいつからだ」

武道家「もう5年になるかな」

武装中将「本当に学生時代からか。咳以外に、痛みはあるのか」

武道家「胸が少しだけ…」


武装中将「ふむ。…さっきの他の奴らの反応。お前自身、病のことは言っていないな」


武道家(うっ…)

武道家「や、病なんて、そんな大それたことじゃ」ハハッ


武装中将「…気づいていないのか?」

362: 2014/08/23(土) 21:49:03 ID:GuDZ9hnA
 
武道家「この間久々に再会した僧侶に、すげー顔で月一で会いに来いとは言われたけど…」

武道家「それ以外は聞いてないし、大丈夫なんじゃないのかなと」


武装中将「…優しさか。それも辛くはなるんだがな」

武道家「どういうことだ?」

武装中将「お前は今…、魔法を使うことは出来るか?」

武道家「ま、魔法?」

武装中将「魔法だ」


武道家「元々苦手だし、闘気くらいしか」

武装中将「…どんな生き物でも、魔力は宿っている。失敗してもいい、何か簡単な魔法を使ってみろ」

武道家「う、うーん…」

363: 2014/08/23(土) 21:49:35 ID:GuDZ9hnA
 
武装中将「…」

武道家「じゃあ指先にだけ…小火炎魔法っ」パァッ

…ポウッ!ジジッ…ジジジッ…


武装中将「…」

武道家「…もう、いいか?」ポォォ

武装中将「待て」

武道家「…?」ポォォ

武装中将「…」


武道家「…」ポォォ

武装中将「…」

364: 2014/08/23(土) 21:50:22 ID:GuDZ9hnA
 
…ユラッ

武道家「ん…」

武装中将「…」

武道家「…」ドクンッ

武装中将「…」


武道家「いっつ…!」ドクンッ!!

武道家「げほっ!ごほごほっ…!!」プシュンッ


武装中将「…やはりか」

武道家「も、もともと魔力は少ないほうだろうし、軽い魔力枯渇を早めに起こしただけだっつーの…」

365: 2014/08/23(土) 21:51:19 ID:GuDZ9hnA
 
武装中将「…」スクッ

カツカツカツ…、ガサッ!ゴソゴソゴソ…


武道家「な、何してる?」

武装中将「…ほれ。これを受け取れ」ポイッ

武道家「なんじゃこりゃ?」ガシッ

武装中将「その袋の中に入ってるものを取り出してみろ」

武道家「ん…」

ゴソゴソ…パァァッ!

武道家「お、おぉ…?あったけぇ…!なんか力が湧いてくる感じだぞ…。何だこれ?」


武装中将「…それは非常に強力な魔力を持つ魔石。"純気魔石"と呼ばれるモノ」

武装中将「持つと膨大な魔力が溢れ、触れた人間は魔力酔いないし、気絶を起こすレベルの代物だ」


武道家「!」

366: 2014/08/23(土) 21:52:13 ID:GuDZ9hnA
 
武装中将「だから普段は、その魔力を漏らさぬ加工された袋にしまってある」

武道家「お、おいおい…そんな危ないもんを俺に…」


武装中将「…」

武装中将「…気づかぬか」


武道家「何が?」

武装中将「…俺は正直、触れていなくても袋から出された時点で、多少気分が悪い」


武道家「…」

武道家「…あっ」ピクッ


武装中将「…わかったか」

武道家「ど、どうして俺は倒れない?いや、むしろ心地いいっつーか…」

367: 2014/08/23(土) 21:53:36 ID:GuDZ9hnA
 
武装中将「…その魔石は、膨大な魔力を宿す以外、ちょっと特殊な効力を持つ」

武装中将「実は治療院が扱う利点があり、貴重な存在の石なのだ」


武道家「…こんなものが?何に使うんだ?」

武道家「あ、分かったぞ!?魔力の量がどれくらいか調べられるんだろ!」


武装中将「それは近いが…少し違う。これは近年発見された効果で…」

武装中将「"魔力枯渇症"の確認に扱われるわけなのだがー……」


武道家「魔力…枯渇症…?」


…………
………

368: 2014/08/23(土) 21:58:52 ID:GuDZ9hnA
本日はここまでです。

余りこのようなことは書かなかったのですが、少しだけ。
正直なところ、複雑説明パートだったので一気に描きましたが、「そうなんだ」
程度の流しでも大丈夫です。後々のパートで「そうだった」と思えるシーンではありますので、
何卒彼らの話にお付き合い下されば嬉しく思います。

それでは、有難うございました。

377: 2014/08/25(月) 19:43:42 ID:hdO4x83w
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 外 】

…ザッ

武道家「…ただいま」

魔道士「あ、お帰りなさい」

乙女格闘家「おっかえりー♪」

剣士「お帰り。新技とか言ってたが、何の用事だったんだ?」


武道家「あ、えーと…」

武道家「なんかその、新技がどんなもんか見せてくれと…」

378: 2014/08/25(月) 19:45:49 ID:hdO4x83w
  
乙女格闘家「さーっすが武道家!武装先生にも認められちゃった?」

武道家「はは、いや…うん…」

剣士(…?)

武道家「…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

武道家「魔力枯渇症?」

武装中将「魔力が身体から失われていく奇病だ。今のお前は、間違いなくソレだろう」

武道家「う、失われるって…。どういうことだよ!」

武装中将「そのままの意味だ。体内から魔力が失われ、やがて……」

武道家「ま、待ってくれよ!治療方法は?」

武装中将「治療方法は残念ながら、存在していない…」

武道家「…へ?」

武装中将「一旦、その神官のもとへ行くんだ。すぐに。手遅れになる前に…」

武道家「なっ…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

379: 2014/08/25(月) 19:47:11 ID:hdO4x83w
 
武道家「…」

武道家「な、なぁ。今日はちょっと、先にみんなで一回宿に戻っててくれないか」

武道家「用事ができちゃってさ、あとですぐ行くから」


剣士「…用事だ?」

武道家「武装さんに、その技を他の人に見せてほしいってお願いされて…な。その…うん」

剣士「そうか」


乙女格闘家「じゃあ、私も!」

武道家「あ、えーと…。ぐ、軍の許可がいる場所だから、他の人は入れないんだってよ」

乙女格闘家「えぇ~…」ショボン

武道家「あ~…。じゃ、じゃあ終わったら後で二人で遊ぼうぜ。な?」

乙女格闘家「わかった♪」

380: 2014/08/25(月) 19:47:45 ID:hdO4x83w
 
魔道士「じゃあ、私たちはこの間泊まった宿の部屋で待ってるね」

魔道士「宿の人に言えば、部屋に案内してくれると思うから」


武道家「おう、頼んだ」

武道家「…」


剣士「おい…お前顔色悪いぞ。大丈夫か?」

武道家「あたりまえだろ」

剣士「わかった。んじゃ、部屋で待ってるぞ」

武道家「…おう」


………
……

381: 2014/08/25(月) 19:49:01 ID:hdO4x83w
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 郊外にある教会 】


武道家「…ってわけだ」

神官「そう。聞いたんだね」

武道家「…正直に言ってくれ。俺はどうなる?」


神官「…」

神官(……武装先生がそう言ったということは…やっぱり…)ギリッ

神官(武装先生がそう真実を伝えたなら、僕は友達として…)

神官「…」ゴクッ

神官「…うん」

神官「武装先生の言った通り、君は魔力枯渇症の可能性が…高いと思う」

382: 2014/08/25(月) 19:52:48 ID:hdO4x83w
 
武道家「!」

神官「そ、それと…」ブルッ

武道家「…何だ」

神官「し…知るのが少し…、遅すぎたと思う…」

武道家「…どういうことか言ってくれるか」


神官「こ…この病は治療方法が確立されていないから、特殊な魔力を持つ道具で魔力の維持をするしかないんだ」

神官「とはいえ、これは治療方法じゃない。あくまで症状の緩和はで、本人の負担を和らげるだけ…」

神官「和らげるだけとはいえ、武道家くんは元々魔力が少ない体質だから、もっと早く何か治療をするべきだった…!」


武道家「…抜けてくのは分かった」

武道家「だけど、抜ける魔力を、その色々な魔力の道具で維持すら出来ないのか?」

383: 2014/08/25(月) 19:53:24 ID:hdO4x83w
 
神官「簡単にいえばこの病は、体内の魔力タンクが壊れて徐々に衰弱していく病なんだよ」

神官「どんなに魔力を回復させようとしても、タンクが壊れてたら一時的な維持は出来るけど…」

神官「いずれタンクは壊れ、魔力は完全に失われる」


武道家「つ、つまり俺は…」


神官「…どのくらいのペースで魔力の減少が発生しているか分からないから何ともいえないけど」

神官「もし5年前から症状が始まっていたとしたら…」


武道家「したら…?」ゴクッ

384: 2014/08/25(月) 19:53:59 ID:hdO4x83w
 
神官「武道家くんが血を吐いていたり、胸に負担がかかるのは…末期症状」

神官「もともと体力がある武道家くんだから立っていられるけど、普通の人だったら寝たきり生活だと思う」

神官「だ、だから…っ」


武道家「…だから、どうなるんだって!俺はいつまでこうしていられる!?冒険できる!?」

神官「普通の人の基準だけど、武道家くんと同じ症状の人の余命は…」

武道家「よ…余命…は……」


神官「"1年"」

385: 2014/08/25(月) 19:54:33 ID:hdO4x83w
  
武道家「…!!」

神官「~…っ」

武道家「お、おい…ウソだろ?」

神官「う、ウソだったら、どんなに良かったか…」ブルッ

武道家「え、待てよ。俺まだこんなに元気だぜ?学生のころ…いや、それ以上に走り続けられるし!」

神官「…」


武道家「え…?お、俺…1年後に氏ぬのか?」

神官「し、氏ぬなんて!1年後とか限らないよ!個人差はあるし!」

武道家「個人差…。つまり、氏ぬのは確定ってことなんだな…」

神官「…あっ」ハッ

386: 2014/08/25(月) 19:55:08 ID:hdO4x83w
 
武道家「…」

神官「…っ」

武道家「そ、そうか。そうなんだな…」


神官「き、きっと…何か方法があるかもしれない!」

神官「明日には治療方法が見つかるかもしれないんだから!」


武道家「…っ」


神官「…奇病はこの世に沢山ある。僕も、そういう人たちを相手にしてきた」

神官「も、もちろん…武道家くんが侵されている病の人たちの相手も…したことはあるんだよ!」


武道家「その人たちは、どうなった…?」

神官「…そ、それは」

武道家「正直に言ってくれ。頼む」

神官「……もう、この世にはいない。余命1年と宣告した人も、半年すらもたなかった…」

387: 2014/08/25(月) 19:55:44 ID:hdO4x83w
 
武道家「…半年、か」


神官「1か月に1度来てほしいといったのは、病を緩和する魔力維持用の魔石の装備の確保に時間が掛かるのと」

神官「どのくらいのペースで減少しているか改めて調べるつもりだったからだよ」

神官「改めて、本当に武道家くんが魔力枯渇症なら…わずかでも魔力の減少を捉えることは出来るから」

神官「それと…、その過程で治療方法が確保されるかもしれないと思ったのは本当で…!」


武道家「…」

武道家「……そうか。俺、氏ぬのか」


神官「…だ、だから!そんな武道家くんが落ち込まずとも…!」

武道家「…」

神官「ぶ、武道家くん…!」ブルッ

388: 2014/08/25(月) 19:56:23 ID:hdO4x83w
 
武道家「…」

武道家「…」

武道家「…ぷっ」

武道家「は…はははははっ!」


神官「ぶ、武道家くん…?」


武道家「…おいおい。お前、どんだけ情緒不安定なんだよ」ハハッ

神官「えっ?」


武道家「さっきから冷静に回答したり、感情的になったり」

武道家「お前がそんなんじゃ、俺が感情だせねーじゃねーか」ハハハッ

389: 2014/08/25(月) 19:56:58 ID:hdO4x83w
 
神官「う…っ」ガタガタ


武道家「…」

武道家「僧侶、ありがとな」


神官「…え?」

武道家「手がずっと震えてるぜ?俺の事、きちんと思ってくれてるんだろ…ありがとな」

神官「…っ!」ブルブル

武道家「そんなお前が震えてちゃ、感情は出せないわ、当の本人は笑っちまうっつーの」ハハハ


神官「…仕事だから。平静を装うのが普通だから…」

神官「だけど…、君はやっぱり大切な友達で、仲間で…。感情が抑えきれなくなるし…!」


武道家「…」

390: 2014/08/25(月) 19:57:34 ID:hdO4x83w
 
神官「…な、何で武道家くんがこんなことに……!」

武道家「なぁに、神様ってのは、うまぁく人を作るっていうのは本当だってことさ」

神官「ど、どういう意味…?」


武道家「考えてみろ、俺のような強さを持って生まれてきた事は、まさに天運だ」バッ!

武道家「だが、やっぱり人は平等らしいな。短命にして、バランスをとってきたということだな!」

武道家「ただそれだけだ。うはははっ!は~っはっはっはっはっ!」


神官「武道家くん…っ」

391: 2014/08/25(月) 19:59:11 ID:hdO4x83w
 
武道家「ただ、それだけだ。それに…絶対に俺は氏ぬといえるか?」

神官「…絶対なんて言葉、この世にはないと思ってる」

武道家「だろ?何とかなったりするかもしれんぞ」

神官「…」

武道家「話聞いてくれて、色々教えてくれてありがとうな」

神官「…僕も、全力で治療方法を探すから!」

武道家「おうよ、楽しみにしてるぜ」ニカッ


神官「…」

神官「あ…そうだ。武道家くん」


武道家「んむ?」

392: 2014/08/25(月) 19:59:59 ID:hdO4x83w
 
神官「えっとさ…。この袋、持ってってよ」クルッ

ゴソゴソ…スッ

武道家「…これは?」パシッ

神官「"純気魔石"の欠片が入ってる」

武道家「…確か、魔力枯渇症の確認に使うやつだっけ」

神官「うん。だけど、この大きさでも袋から出したら周囲に魔力発しちゃうから、袋からは出しちゃダメ」

武道家「持ってて意味あるのか?」

神官「…小さな欠片だけでも、魔力枯渇症の人にとっては気分が安らぐみたいだから」

武道家「あぁ…そうか。ありがとな!」

神官「うんっ」


武道家「んじゃ…そろそろ皆も心配するし、宿に戻るかー…」

…ミシ…

武道家「ん…?」

393: 2014/08/25(月) 20:00:39 ID:hdO4x83w
 
ミシミシ…

ガタ……ガタガタ…!!

武道家「お…」

神官「地震…かな」


ガタガタ……ガタッ……


武道家「…」

神官「…」
 

ガタッ……シーン…


武道家「…収まったか」

神官「最近、微震だけど地震が多いような気がするんだよね…」

394: 2014/08/25(月) 20:01:20 ID:hdO4x83w
 
武道家「ふむ…」

神官「治療最中に来ると最悪だし、孤児院で子供預かってるとすぐ泣いちゃうし」

武道家「はは、立派に仕事してるなお前は」

神官「へへっ、そりゃね」

武道家「んじゃ…俺は宿に戻るよ。本当にありがとな」

神官「うん。また…」


武道家(結構時間かかっちまったな…)

武道家(怪しまれないためにも、買い物でもしとくか。酒でも買えば剣士も浮かれるだろうし)ハハッ


…………
……

395: 2014/08/25(月) 20:02:22 ID:hdO4x83w
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 宿 】

ガチャッ…ギィィ…

武道家「…ういっす!」


剣士「お、来たか」

乙女格闘家「おっかえりー!」

魔道士「お帰りなさい」


武道家「なんだ3人で集まってたのか」

乙女格闘家「うん」

396: 2014/08/25(月) 20:02:57 ID:hdO4x83w
 
魔道士「で、どうだったの?」

武道家「何が?」

魔道士「何がって……」


武道家「…」

武道家「…あ、あぁ!」


魔道士「?」

武道家「いや、もう大喝采!そんな素晴らしい技、よく開発しましたって!」

乙女格闘家「すごーい!」

剣士「…」


武道家「ま、まぁそんなもんだ!そ…それより3人で集まって何してたんだよ」

剣士「んむ…。これからどうするかって話をしてた」

397: 2014/08/25(月) 20:03:45 ID:hdO4x83w
 
武道家「…さっき武装さんと一緒にいた時、魔道士が山沿いで依頼を探すって言ってなかったか?」

剣士「そうなんだけどよ、ほら…装備とかも使い込んできたし、新調もしてぇなと」

武道家「中央都市にいるんだ、その辺で買えるだろ」


剣士「俺や武道家、魔道士の武器はアレだが…」

剣士「乙女格闘家は使い込んでるとすぐ金属疲労で壊れちまうだろ?」

剣士「それに、俺らは防具がそこまでいいもんじゃないし…これからの事を考えると買い込むのは有りかなと」


乙女格闘家「…ご迷惑おかけします」

武道家「迷惑じゃねーっつーの」コツンッ

乙女格闘家「あうっ」

398: 2014/08/25(月) 20:04:26 ID:hdO4x83w
 
剣士「ま…そういうことだから色々話してたわけ」

武道家「なるほどな」

剣士「…と。そういう前に、お前のその荷物はなんだ」

武道家「ん?」ガサッ

剣士「すげー袋持って来たようだが…?」


武道家「あー…。ほ、ほら、軍に見せたら推奨金出たんだよ!だから食料とかお酒とか買ってきたんだよ!」

武道家(やっぱり反応しやがった。話そらしてくれると助かるぜ)


魔道士「武道家のおごり?珍しい!」

武道家「珍しいってなんだ、珍しいって」

400: 2014/08/25(月) 20:05:35 ID:hdO4x83w
 
剣士「…じゃ!昼間過ぎだけど、早速ー…」ガタッ!

魔道士「早い!」

乙女格闘家「早い!」

武道家「早い!」

剣士「…はい」


武道家「やれやれ、お前はそんなに酒好きだったか?」

武道家(さすが剣士、俺の考えを裏切らない奴だ……ははっ)


剣士「…いや何だ、飲みたい気分かと思ってな」

武道家「誰がだよ。お前が飲みたいだけだろ」


剣士「そ、それはだな…」

剣士「……いや、いい。何でもない」


武道家「…?」

401: 2014/08/25(月) 20:07:29 ID:hdO4x83w
 
…バンッ!

魔道士「と、に、か、く!今は今後の予定とか、色々決めてから!」

剣士「へーい」

乙女格闘家「節操ないな、剣士!」

剣士「なにおう!?」


武道家「はは…」

武道家「んじゃ、俺も話し合いに参加しますかねーっと」


…………
………

402: 2014/08/25(月) 20:08:03 ID:hdO4x83w
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 中央都市 宿のテラス 】
 
ホー…ホー…

…カランッ

剣士「…」グビッ

剣士「…ふぅ。結局色々やったせいで時間がたっちまった」

剣士「みんなでワイワイ飲みたかったんだがな…」


コツコツコツ…

剣士「ん…」


…ポンッ

武道家「よっ、お待たせ」

403: 2014/08/25(月) 20:08:39 ID:hdO4x83w
 
剣士「…乙女格闘家は?」

武道家「寝たよ。昼間の会議で頭使ったーとかって言って即ダウンしてた」

剣士「あいつ、そんなに考えてたっけ」

武道家「くくく…その言葉、伝えてやろうか?」

剣士「やめてくれ、ぶっ飛ばされる」

武道家「ははは!魔道士は来ないのか?」

剣士「あいつも最近疲れてたからなぁ。すぐ寝ちまったよ」

武道家「…だろうな」


剣士「ふん。それよりほら、ウィスキー飲むか?」スッ

武道家「おう、ありがとよ」カランッ

404: 2014/08/25(月) 20:09:25 ID:hdO4x83w
 
…グビッ

武道家「…む」

剣士「ん?」

武道家「少しきついぞ…この酒」プハッ

剣士「はは、そりゃよかった。酔いたい気分じゃないかなーと思ってたっつっただろ」

武道家「昼間の言葉は俺のことだったのか。…よくわかったな」

剣士「そりゃ分かるさ。何年一緒にいると思ってる」


武道家「…」

武道家「なぁ、剣士」


剣士「あん?」

武道家「お前にだけは、話しておかないといけないと思うんだ」

剣士「…病気のことか?」

武道家「どうしてそれを!?」

405: 2014/08/25(月) 20:09:59 ID:hdO4x83w
 
剣士「ばーか、だからさ…何年いると思ってるんだよ。昼間は僧侶の所にでも行ったんだろ?」

武道家「…筒抜けか。そりゃそうか」フッ

剣士「で、酷い病なのか」

武道家「…正直に話そうと思う」

剣士「おう」


武道家「俺の病気は魔力枯渇症っつって、魔力が失われる奇病だと」

武道家「余命は…1年ないし半年程度だそうだ」


剣士「…」

武道家「…」

剣士「ふん…1年な」

武道家「…驚かないのか?」

406: 2014/08/25(月) 20:10:54 ID:hdO4x83w
 
剣士「お前が病じゃ氏ぬと思ってねーよ。何せ、お前は"武道家"だろ?」

武道家「くっ…くははっ!確かにな!」

剣士「…今、お前の身体に起きてる異変は咳くらいなんだろ?」

武道家「以前からだったが、咳の間隔が短くなってきた。心臓の痛みと…後は吐血くらいだぜ」

剣士「はっはっは!笑わせるじゃねえか!立派な病人だぜそれは!」

武道家「くくくっ、どうする?俺が重病人だってよ」


剣士「くく…ははははっ!」

武道家「ははははっ!」


剣士「ははっ…」

武道家「ふっ…」

407: 2014/08/25(月) 20:11:48 ID:hdO4x83w
 
剣士「…」

剣士「……っ」ギリッ!!

剣士「…ば、バカ野郎っ……!」


武道家「…」

剣士「…これからだろ。これからだっただろうが…!」ギリッ

武道家「…悪いな」

剣士「…ッ」

武道家「…」


剣士「…じめてだ」

武道家「…ん?」

剣士「これほど、時間がたつのを止めてほしいと思ったのは初めてだ…!」

武道家「…」

408: 2014/08/25(月) 20:12:27 ID:hdO4x83w
 
剣士「…で。これからどうするつもりなんだ」

武道家「まだ乙女格闘家たちには黙っていようと思う」

剣士「いつ話をする」

武道家「…わからん。もし、その時が来たらのほうがいいだろうとは思う」

剣士「突然倒れられたら、それこそ哀しむんじゃないのか」

武道家「…俺の少しのわがままくらい聞いてくれよ」

剣士「あん?」


武道家「俺はこの、今のパーティが大好きなんだ」

武道家「俺のせいで、このパーティの冒険をやめたくない。命が燃え尽きるまでさ」

409: 2014/08/25(月) 20:13:16 ID:hdO4x83w
 
剣士「…」

武道家「…」

剣士「…そうか」


武道家「あぁ…」

武道家「……げほっ、げほげほっ!」


剣士「…」

武道家「ゴホゴホゴホッ!!ゴホッ!!」


剣士「…武道家」

武道家「ぜぇ…ぜぇ…!…な、なんだ?」

剣士「お前の命がどうとかは、考えたくねぇ。だが、このことはしっかり話すべき相手がいるだろ?」

武道家「乙女格闘家か?だからそれはさっき…」

剣士「ちげぇよ」

410: 2014/08/25(月) 20:13:48 ID:hdO4x83w
 
武道家「じゃあ誰だ?」

剣士「…お前の親だよ」

武道家「!」

剣士「お前の親父と、母親には伝えるべきじゃないのか」

武道家「…」


剣士「しばらく顔出しもしてねぇし、色々とある前に顔くらい見せてやろうぜ」

武道家「…俺は言いたくない。もしそうなったら、お前が冒険の途中でそうなったと伝えてくれないか」

剣士「…それでいいのか?」

武道家「あぁ。それが俺らしい最期だと思ってる」

剣士「それがお前の望みなら、俺はきいてやるさ」

武道家「…ありがとよ」

411: 2014/08/25(月) 20:14:20 ID:hdO4x83w
 
ホウ…ホウ…サワサワサワ……


剣士「……草木がなびく音。夜も更けてきた…か」

武道家「この雰囲気には、酒がよく似合うぜ」グビッ

剣士「はは、全くだ。さて、もう一杯ー…」


ミシ…
 
 
剣士「ん…」


ミシミシミシ…グラッ…


剣士「…何だ?」


…グラグラグラグラ!!ミシミシッ…!!

ゴォオオオッ…!!!

412: 2014/08/25(月) 20:14:52 ID:hdO4x83w
 
武道家「…地震か!?」

剣士「地鳴りも…!結構でかいぞ!」

ゴォォォッ!!グラグラグラグラッ!!…ガチャンッ!!


剣士「あらら…高かったボトルが…。とにかく一回部屋に戻ろうぜ!」ダッ

武道家「そうだな、あとで合流しよう!」ダッ!


タッタッタッタッ…

……


413: 2014/08/25(月) 20:15:36 ID:hdO4x83w
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ガチャッ!


魔道士「あ、剣士!」

剣士「なんかすげぇ揺れだぞ!一回外に出よう!」

魔道士「う、うんっ!」

グラグラグラッ…!!!


剣士「ほら手ぇ貸せ、急ぐぞ!武道家らも外に出てるはずだ!」グイッ

魔道士「うんっ」

タタタタッ…

……

414: 2014/08/25(月) 20:17:14 ID:hdO4x83w
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 宿 の 外 】


タタタタッ…ガヤガヤ…!!

剣士「うおっ、すげぇ人だかり」

魔道士「みんな外に逃げてきたんだね…武道家たちは?」

剣士「えーと…」キョロキョロ


武道家「おーい、こっちだ!」

乙女格闘家「あっ、剣士たち!おーい!」フリフリ


剣士「この人ごみの中でも目立つ奴らだ…恥ずかしい奴らめ!」

魔道士「きっとその言葉は、私らに対しても浮かんでると思うよ…」

415: 2014/08/25(月) 20:17:46 ID:hdO4x83w
 
タッタッタッタッ…

武道家「ふぅ、無事で何より。すげぇ揺れだったな」

剣士「こんなでけぇ地震なんか久しぶりだ」

魔道士「みんな驚いて逃げてきたんだね」

ザワザワ…ガヤガヤ…!!

乙女格闘家「何にせよ、みんなが無事ならよかったよー」


…ウー!!ウー!!


剣士「うるさっ!?…今度は何の音だっつーの!」


魔道士「これは中央軍の緊急招集音…かな。中央軍が、緊急配備されてるんだと思う」

魔道士「凄い地震だったし、何かあったのかも」

416: 2014/08/25(月) 20:18:22 ID:hdO4x83w
 
剣士「…」

剣士「一応、中央軍の一般依頼受付所に行ってみるか?」


武道家「そうだな。何かあった時に動ける面子がいたほうが軍も楽だろうし」

剣士「人助けになるかもしれねーしな、行こう!」

魔道士「うん」

乙女格闘家「だねっ」


…………
……

424: 2014/08/27(水) 20:19:30 ID:p1nH3sk6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍 一般依頼受付所 】 


ザワザワ…ガヤガヤ…!!  


剣士「うへっ…夜中なのにココもすげぇ人だぜ…」

魔道士「一緒の考えの人とか、依頼の発布されるかとお金儲けになると考える人たちもいるんだと思う」

剣士「ちょっとこれじゃ中にも入れねぇな…」

魔道士「どうする?」


武道家「何か依頼があるなら受付所で動きあるだろうし、少し待機してみてもいいんじゃないか」

乙女格闘家「そうだねー。もう少ししたら動くかもしれないし」

425: 2014/08/27(水) 20:20:25 ID:p1nH3sk6
 
剣士「なぁ…ここが震源地じゃなかったら、もっとでかい地震のところがあったってことだろ?」

魔道士「…たぶんね」

剣士「だとしたら、被害がものすげーんじゃ…」

魔道士「うん…。そんな事がないように考えたいけど…」

剣士「…」


サッ…サササッ


武道家「…あ?」ピクッ

剣士「どうした」

武道家「今、受付所の裏から軍人さんたちが出てったのが遠目だが見えたぞ」

剣士「中央軍が?」

武道家「中央軍の依頼受付所だし珍しいことじゃないが、随分急いでたような…」

剣士「…追いかけてみるか」

武道家「受付所のほうでも何かあるかもしれねーんだぞ?」
 
剣士「どうせこの人だかりじゃ前も詰まって動けねーよ。脇道にそれて追いかけてみようぜ」ウズッ

426: 2014/08/27(水) 20:21:09 ID:p1nH3sk6
 
武道家「…仕方ねぇな」

魔道士「はぁ、いっつもそうなんだから」

乙女格闘家「仕方ないね」


剣士「じゃ、行くぞ」


タッタッタッタッ…

……

427: 2014/08/27(水) 20:21:59 ID:p1nH3sk6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 路地の一角 】


タタタッ…コソッ

剣士「…っと、止まれ」バッ

武道家「どうした。いたか?」

剣士「…軍人さんらが集まってる。中心にいるのはお偉いさんか?」

武道家「えーと…」ジー


魔道士「…」ジー

魔道士「……あっ!?」ハッ

魔道士「あ、あの真ん中の人…!あの人ってあの時の人じゃない…!?」


乙女格闘家「あの時…?私は見たことないよー?」

武道家「俺もだな」

428: 2014/08/27(水) 20:22:39 ID:p1nH3sk6
 
魔道士「たぶん、武道家と乙女格闘家は知らないと思う」

魔道士「剣士、ほら!学生の時に、私たちに道を尋ねてきた大戦士先生の部下だったっていう…!」


剣士「……あぁ!」

魔道士「中央少尉!」

剣士「中央少尉!」


魔道士「だけど、今のあの服についてるバッジは…大尉のだね。昇格したんだ」

剣士「…お、静かに。何か話そうとしてんぞ」

魔道士「私らに気付かないでしゃべるって、昇格しても昔と変わってないね…」


ザザザザッ…ビシッ!!

軍人たち「召集致しました!」

中央大尉「ご苦労。中央軍本部より、緊急招集と情報が入った。今から共有するから良く聞いてくれ」

軍人たち「はっ!」ビシッ!

429: 2014/08/27(水) 20:23:44 ID:p1nH3sk6
 
中央大尉「震源地は東方大陸。震域は中央を含め、大陸全土で確認された」

中央大尉「まだ詳しい被害情報等は入っていないが、我々はその救出隊へ組み込まれる可能性が高い」

軍人たち「はっ!」ビシッ


中央大尉「詳細は本部にある転移装置を使用し、東方支部へ到着後に武装中将より指揮を受ける予定だ」

中央大尉「既に中央軍本部には各地より集まった軍人らが待機している」

中央大尉「混乱を避けるため、出来る限りー…」


…ボソボソ

剣士「聞いたか?東方側が震源地だってよ…。転移装置って"扉"のことだよな」

魔道士「うん。東方側って、今は鍛治長さんたちが行ってるんだよね…」

武道家「前の地震は、エルフ族の村の直下だったんだろ?今回も、東方側のエルフ族の村直下とかじゃねえのか…」

乙女格闘家「うーん、どうなんだろ…」

430: 2014/08/27(水) 20:24:39 ID:p1nH3sk6
 
剣士「…つったって、俺ら軍人じゃねぇし干渉できねぇし…」

魔道士「こればっかりはどうしようもないよね」

武道家「…エルフ族の住む場所での地震は二度目…少し不安になるな。無事だといいんだが、鍛治長サンら」

乙女格闘家「神隠しだっけ?あの時みたいな事なかったらいいんだけど…」


剣士「…ま、大丈夫だろ。武装のオッサンも指揮するみたいだし」

剣士「俺らはとりあえず、一般受付のほうで少し待機してたほうがよさそうか」


魔道士「うんっ。武装先生がいるんだし、大丈夫だよ」

…………
……

431: 2014/08/27(水) 20:25:30 ID:p1nH3sk6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 同時刻 中央軍本部 】

…ドンッ!!

武装中将「…一体どうなっている!震源地付近の東方支部にまだ連絡はつかないのか!」

武装中将「緊急隊も準備したというのに、転移装置も動作停止とは!」


大魔術中佐「落ち着いてください。今、うちの配下が取り急ぎ転移装置の復旧を行っております」

拳闘家少佐「加えて、うちの直属の者も小隊で向かわせました。明日の明朝には東方側の情報は把握できます」


武装中将「…槍士大将殿、元帥殿は何をしているんだ!」

武装中将「被害の確認もできず、支部側の最後の連絡は"甚大な被害"のみ!」

武装中将「ただでさえエルフ族が多く住んでいる地区だというのにー…」

432: 2014/08/27(水) 20:26:36 ID:p1nH3sk6
 
大魔術中佐「…まさかこのタイミングで転移装置が停止するとは」

拳闘家少佐「転移装置に利用している魔力に何らかの問題が?」

大魔術中佐「今までこのような事はなかったので、問題の特定からさせていますが…」

武装中将「くそっ…!」


拳闘家少佐「もしかしたら、東方側の支部の面子も中央へ向かっているかもしれません」

拳闘家少佐「…とにかく落ち着かなければ」


武装中将「…分かっているが。くそっ…!」


…ガチャッ!

元帥「…みなのもの、ご苦労」

433: 2014/08/27(水) 20:27:53 ID:p1nH3sk6
 
武装中将「元帥殿!」バッ!

元帥「時間帯のせいもあるが、今いる幹部はたったこれだけか…」


武装中将「…」

拳闘家少佐「…」

大魔術中佐「…」


元帥「槍士大将のやつは、本部へ集まった面子を指揮をしているのでここへは来ない」

元帥「人数は少ないが、このまま会議を始めようと思う」


武装中将「…会議といえども、現地の東方支部と連絡がつかなければどうにもなりません」

武装中将「一刻も早く、東方支部と連絡をつけるべきです!」

434: 2014/08/27(水) 20:28:51 ID:p1nH3sk6
 
元帥「それについては既にに拳闘家少佐と大魔術中佐が行っているはずだろう」

元帥「連絡がすぐにつかないのは仕方ないことだが、今出来るのはそれだけだ…」


武装中将「…し、しかし!転移装置は停止し、少佐の隊は明日の明朝以降など!」

武装中将「どうにかならないものか……!」


…ガチャガチャッ、バタンッ!!!

軍人「し…失礼いたします!」


拳闘家少佐「何だ…確認もせず入るとは、何をしている!」


軍人「っ!」ビクッ

軍人「緊急だったもので、申し訳ありません!たった今、転移装置が作動致しました!」


武装中将「本当か!」

435: 2014/08/27(水) 20:29:35 ID:p1nH3sk6
 
軍人「そ、それでその…、大変失礼とは存じますが、震源地付近にある東方支部の一名をこちらに!」スッ

拳闘家少佐「…連れてきたのか。貴様、たかだか離れ支部の軍人など、話を聞いて伝えるだけでよいものを!」

軍人「も、申し訳ございません!!ですが!!」

拳闘家少佐「言い訳は無用!貴様、いかなる場合であろうが軍人たるものー…」


武装中将「…落ち着け少佐。彼だって分かっているはず」

武装中将「規律…それを犯してまで連れてきたという事は尋常ではない事態」

武装中将「いいぞ、入らせろ」


軍人「…有難うございます!」

軍人「おい、入れ!」


拳闘家少佐「…武装中将殿は甘すぎる」

436: 2014/08/27(水) 20:30:39 ID:p1nH3sk6
 
ガチャッ、ギィィ…
 
…ヨロッ、ポタッ、ポタッ…

東方軍人「ぐっ…うっ…」


拳闘家少佐「!」

大魔術中佐「!」

元帥「!」

武装中将「…どうしたんだ、その傷は」


東方軍人「し、失礼致します。自分は東方大陸…祭壇町支部の…」

武装中将「挨拶はいい。重要な部分だけ伝えろ」

437: 2014/08/27(水) 20:31:52 ID:p1nH3sk6
 
東方軍人「は…はいっ…!地震後、支部より町へ倒壊した建物もあり…救出隊を編成…!」

東方軍人「その救出隊により、エルフ族…一部住民らの消失を確認…!」


武装中将「何だと…!?」


東方軍人「…その村の調査中に…、周辺から町へ"魔獣の集団"が出現…」フラッ

東方軍人「やがて編成隊は魔獣と衝突……。我が支部は援軍を出撃、再び魔獣らと交戦……っ」

東方軍人「その直後、人体への影響はなかったものの…魔力濃度の急上昇を確認しました…」

東方軍人「現在、前線付近の東方支部は、甚大な被害が…。至急、応援を……」


武装中将「!」

拳闘家少佐「!」

大魔術中佐「!」

元帥「!」


東方軍人「あ゛っ…」

フラッ…ドシャアッ……

438: 2014/08/27(水) 20:32:33 ID:p1nH3sk6
 
武装中将「…」

拳闘家少佐「今の話…本当だと思いますか?」

大魔術中佐「事実、彼のケガも酷いですしね。これはちょっと…」


元帥「…」

元帥「とりあえず、その男は治療室へ。今の言葉が本当なら、今すぐ転移装置を使って援軍を送る」

元帥「町のエルフ族の消失が本当なら、あの時の事件と同じ。今回こそは問題を突き止めねばならん」


武装中将「そうですね。大魔術中佐、部下に転移装置の安定を確認をしてくれ」

武装中将「その後、拳闘家少佐は小隊に魔力調査を行うメンバーを隊に加え、救助も視野に入れて向かってくれるか」


拳闘家少佐「小隊でよろしいのですか?」

439: 2014/08/27(水) 20:33:05 ID:p1nH3sk6
 
武装中将「先遣隊として、まずは向こう側の状態の確認等をしてほしい。準備を頼むぞ」


拳闘家少佐「はっ!」ビシッ

大魔術中佐「承知致しました」ビシッ

ガチャッ、タッタッタッタッ…

………

……

440: 2014/08/27(水) 20:33:48 ID:p1nH3sk6
 
……

…………
 
元帥「…」

元帥「さて、少し厄介なことになったな」


武装中将「…こういう時、自分が若ければ前線へと進んで立ったのですが」

元帥「ワシらはもう歳だ。あとは若い者たちの時代だよ」

武装中将「はは…」

元帥「こんな時、彼がいれば"俺がやる"と言って率先して向かったんだろうな」

武装中将「彼とは?」

元帥「…大戦士くんだよ」

武装中将「あぁ…」


元帥「彼もまた、歳といえば歳だ。だが、彼ほど強い男はワシは知らぬ」

武装中将「…そうですね」

441: 2014/08/27(水) 20:34:20 ID:p1nH3sk6
 
元帥「さて、ワシらも出ねば若い軍人らに文句も言われるぞ。槍士大将に代わって指揮へ出よう」スクッ

武装中将「今回のコトは、一般に情報を出しますか?」


元帥「いや、そう問題を大きくしなくてもよかろう。過去に似たような事案はあったものの、問題とはならなかった」

元帥「あの時と違うのは、魔獣が現れたということ。地震に触発されて出現したものとは思うが…」


武装中将「元帥殿が大きな問題にしないというならよろしいのですけども…」

元帥「…どうした。珍しく不安か?」

武装中将「いえ、同じ事件が月日を経て起こるとは…。どことなく胸騒ぎがするだけです」


元帥「…お主の予感は当たるからな。あまり悪い予感は出さないでくれよ」

武装中将「はは、思いすぎかもしれませんしね」

元帥「うむ…。そう考えたほうがよい。何にせよ、最悪の事態は想定すべきだと思うがな」

442: 2014/08/27(水) 20:34:52 ID:p1nH3sk6
 
武装中将(…)

武装中将(あの東方支部の軍人の話が本当なら、あの神隠し事件の再来で間違いはない)

武装中将(すると、魔力濃度の上昇で転移装置に支障が出るほどの魔力があったということか?)

武装中将(だが、前回はなかった魔獣の集団の出現か…)

武装中将(支部とはいえ、手練れの軍人がキズだらけにされるものだろうか)

武装中将(少佐の先遣隊による支部の状態の確認をせねば何も言えぬが、この胸騒ぎは……)


………

443: 2014/08/27(水) 20:35:25 ID:p1nH3sk6
 
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――――【 治 療 室 】

…ガシャアンッ!!

治療員「…おい、早く縛りつけろ!暴れてては治療もできん!麻酔が何故きかん!」

アシスタント「ですが、暴れすぎてて…!」


東方軍人「が、がぁぁっ!は、離せ!ダメだ、まだ伝えるべきことが…!」

治療員「はいはい、幹部連さんたちは忙しくなるんだ、あとで話を聞いてやるから」

東方軍人「ち、違う…!これは大事なことで…!」


治療員「…仕方ない。数週間堕ちるかもしれんが、劇薬の麻酔を直接投与するぞ」スッ

…ブスッ

東方軍人「!」

ドサッ…

東方軍人「…」スヤッ

444: 2014/08/27(水) 20:35:59 ID:p1nH3sk6
 
治療員「…ったく、重病なのに暴れるなっつーの。さて、治療を始めるぞ」

アシスタント「はい」

カチャカチャ…


東方軍人(ダメだ…。寝てしまっては…)

東方軍人(あの軍勢は…)

東方軍人(あの…魔獣たちは…ち…せい…を…)

…………
………

445: 2014/08/27(水) 20:36:33 ID:p1nH3sk6
 
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・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
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・・・・・
・・・
・・

446: 2014/08/27(水) 20:37:42 ID:p1nH3sk6
 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日 早朝 】

元帥「…」

槍士大将「…」

武装中将「…」

大魔術中佐「…」


…コチコチ


元帥「少佐の先遣隊を出発させてから5時間にもなるか」

447: 2014/08/27(水) 20:38:34 ID:p1nH3sk6
 
槍士大将「未だに戻らないとは…」

武装中将「彼らの隊に何かあった…ということか」

元帥「その可能性は否定できぬな…」

槍士大将「すぐにでも第二隊を送るべきとは思いますよ」

元帥「だが、状況も分からず送るには…少し気が重くなる」


武装中将「少佐程の男が、その辺の魔獣にやられるとは思いません」

武装中将「上位種の魔物とぶつかったか、何か起きたか…」


元帥「実力を持っても、対処できない相手…か」

元帥「下の者に向かわせるには、少々危険だな」

448: 2014/08/27(水) 20:39:40 ID:p1nH3sk6
 
槍士大将「自分が参りましょうか」

元帥「いや、ダメだ」

槍士大将「…なぜです?」


元帥「ここにいる面子は、基本的に動かすわけにはいかん」

元帥「何かあった時、指揮をとれる人材は失えん」


大魔術中佐「…今ここにはいないようですが、聖大佐や少将はどこへ?」

元帥「彼らは他の支部で前線指揮中だ。あっちはあっちで大変なようでな」

大魔術中佐「なるほど…」

元帥「世代交代時期とはいえ、層が薄いものだ…。これほど人材が乏しいとは」

大魔術中佐「…」

449: 2014/08/27(水) 20:41:24 ID:p1nH3sk6
 
槍士大将「…自分や元帥殿、武装中将殿は指揮を中心にするとして」

槍士大将「魔術中佐は転移装置や、今後何かあった時の為の知能的立場、会議の中心となり…か。」

槍士大将「…確かに、どうにもなりませんな」

槍士大将「尉官以下では今回の問題は任せられませんね」

槍士大将「…この状況ですし、犬氏の可能性がある。それは可哀想でしょうから」


元帥「…無駄に犠牲を出すことはできん」

武装中将「…」

槍士大将「…」

大魔術中佐「…」

450: 2014/08/27(水) 20:42:02 ID:p1nH3sk6
 
武装中将「…」

武装中将「では…一つ提案があるのですが」


元帥「…何だ?」


武装中将「中央軍として、恥ずるべき行為とはなるでしょう」

武装中将「ですが、その軍への侮辱を承知のうえで、もっとも改善の策になりえると思います」


元帥「ふむ…言ってみるがいい」


………
……

451: 2014/08/27(水) 20:42:36 ID:p1nH3sk6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数時間後 一般依頼受付所 】


…ザワザワ、ガヤガヤ


剣士「ふわぁ~…」

魔道士「夜が明けたのに、いまだに凄い人の数」

武道家「ここぞとばかりに、仕事があるかもと集まってるんだろう」

乙女格闘家「これじゃ、簡単な依頼すら受けられないなぁ…」

452: 2014/08/27(水) 20:43:59 ID:p1nH3sk6
 
剣士「いつまでも俺らもここにいても、どうしようもねーし…」

魔道士「でも、馬車って動いてるのかな。あまりに大きい災害だと、移動制限かかるんじゃなかったっけか」

剣士「えっ、まじで?」

魔道士「うん。前、嵐が来た時も移動制限で田舎町に2週間滞在したでしょ」

剣士「あー…そうだったな」


武道家「だけど、ここにいても仕方ねーのは事実だぞ」

乙女格闘家「馬車が止まってるなら歩きでもいいけど、他の国境とか越えられるかな?」

武道家「んー…」

乙女格闘家「あまりに被害が大きかったら、他国の国境のゲートも閉まっちゃってるかもしれないよね?」

453: 2014/08/27(水) 20:45:43 ID:p1nH3sk6
 
剣士「…とりあえず、人が多すぎるとうるせーし、宿に戻って計画練らないか」

武道家「賛成。ここにいるよりはマシだ」

魔道士「うん、そうしよう」

乙女格闘家「さんせー…」

 
剣士「…さて、じゃあ宿に戻ろうぜ」

魔道士「だね」

武道家「…昨晩は少し待機してたし、眠気がひどい。少し寝てから話し合いな…」フワァ

乙女格闘家「…ぎゅーっと添い寝しよっか!」

武道家「い、いや…」

454: 2014/08/27(水) 20:47:20 ID:p1nH3sk6
 
タタッ…タタタタタッ…!!ダダダダッ!!

???「…おぉぉいっ!!」

ダダダダダッ……!!


剣士「ん…」

武道家「なんか後方がやけにうるせえな」

魔道士「何だろ?疲れてるし、朝から騒がしいのやめてほしいんだけど…」

乙女格闘家「ここに缶詰状態で頭おかしくなった人じゃないかな」


???「…見つけたぞ!!剣士っっ!!」


剣士「あぁん?俺の名前…?」クルッ


???「ラリアットォォォウッッ!!!!!」

…ビュオッ!!!

剣士「…へ?」

455: 2014/08/27(水) 20:49:20 ID:p1nH3sk6
 
…ゴシャアッ!!!

剣士「ぬあああっ!?」バキィッ!!

ズザザ…ドシャアッ…!!


魔道士「け、剣士!?」

武道家「おーおー、吹き飛んだなぁ」

乙女格闘家「っていうか、何で剣士がラリアットされたの」


…ムクッ

剣士「…っ!」

剣士「いてぇな…この野郎!!誰だコラァッ!!」クワッ

456: 2014/08/27(水) 20:49:52 ID:p1nH3sk6
 
???「おぉ、怖いな。立派な冒険者になってるって話は聞いてたが…」

???「すっかり大人になった感じじゃないか」


剣士「…あぁ?」

???「…ちと髪の伸びたし、少しばかり老けたから分からないか?」
 
剣士「…」

???「…おいおい、本当に分からないのか。兄と呼んだ男を忘れるなんて、酷い話じゃない」


剣士「…あに?あに、兄…」

剣士「…」

剣士「…えっ」ピクッ

剣士「まさか…!だ、大戦士兄っ!?」


大戦士「…正解♪」ニカッ

463: 2014/08/29(金) 22:29:51 ID:96dfo0UE
皆さま有難うございます。投下致します。

464: 2014/08/29(金) 22:30:23 ID:96dfo0UE
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 近くのカフェ 】


大戦士「お姉さん、コーヒーね」

店員「かしこまりました、少々お待ちください」ペコッ

タッタッタッタッ…


剣士「大戦士兄、本当に久しぶりじゃん!どうして中央にいるんだよ!」

魔道士「…お久しぶりです」

武道家「久しぶりっすね、大戦士サン」

乙女格闘家「おひさです!」

465: 2014/08/29(金) 22:31:15 ID:96dfo0UE
 
大戦士「…いやー今朝方さ、急に武装大佐…じゃないや、武装中将に呼ばれてさ」

大戦士「今日は学校のイベント日だったんだけど、休んでこっちに来たんだよ」

大戦士「中央本部の転移装置が安定してないらしくてね、ここの受付所に飛ばされたんだ」

大戦士「そして外に出てみれば、人ごみの中から抜け出ようとした君たちの姿を見つけたわけ」ハハハ


剣士「武装中将に呼ばれたって、オッサンが大戦士兄をわざわざ?」

大戦士「あの人が俺を呼ぶなんて、よっぽど何かあったのかねぇ」

剣士「…昨日の地震のことじゃないのか」

大戦士「恐らくね。冒険学校付近も凄い揺れたよ」

剣士「…」

大戦士「それよか、君たちの噂は聞いてるぞ。"黄金世代の卵"って言われてるらしいじゃないか」

剣士「…卵?」

大戦士「何だ、知らないのか?」

466: 2014/08/29(金) 22:31:49 ID:96dfo0UE
 
剣士「…魔道士、聞いたことある?」

魔道士「全然」

武道家「美味そうってことなのかね」

乙女格闘家「私、きっと美味しいよ~♪でも、食べていいのは武道家だ、け」キャー

武道家「…」


大戦士「そういうことじゃなくてだな」

大戦士「俺や、武装中将が活躍していた時代を"黄金期"ないし"黄金時代"と呼んでいるんだ」

大戦士「名だたる冒険者や、実力が高い人らが多く、かつ中央軍として世界統治を安定させていたからだ」


剣士「ふーん。自慢か。それで?」

467: 2014/08/29(金) 22:32:26 ID:96dfo0UE
 
大戦士「…」

大戦士「この数年で、その黄金時代を築いたメンバーは俺を含め…冒険者としては引退の時期だ」

大戦士「そして、下の世代である君たちの時代となった」

大戦士「だが、どうにもこうにも実力の長けた者らはいなかった」

大戦士「そんな中、この短期間でメキメキと成果をあげ、実力も高い若い先鋭パーティが現れたわけだ!」


剣士「…それがもしかして」

魔道士「私たち…?」


大戦士「その通り。君たちは、自分らが噂になっていることくらいは知っているだろうが」

大戦士「俺らや中央軍、引退せし熟練者らからは"黄金世代の卵"と呼ばれているんだよ」


武道家「おぉ…」

乙女格闘家「かっこいー!!」キラキラ

468: 2014/08/29(金) 22:33:06 ID:96dfo0UE
 
大戦士「そーいうこと。ま、これからもがんばってくれたまへ、若き冒険者よ」ニカッ

剣士「へへっ」


武道家「…そういえば、大戦士さん」

大戦士「うん?」

武道家「少戦士とかはどうなったんだ?次の年らへんに卒業できたんだろ?」


大戦士「あー…次の年に卒業してね」
 
大戦士「今は確か豪剣士と二人、ペアで冒険者として世界を駆け巡ってるよ」


剣士「同業者、ライバルになったってわけだな」ニヤッ


大戦士「君たちほど名前も売れてないし、これからに期待って感じかな」

大戦士「依頼紹介は俺が直接出来るわけでもなし、チビチビと小さな依頼をこなして生活してるらしいけどね」

469: 2014/08/29(金) 22:33:38 ID:96dfo0UE
 
武道家「師匠なんだから、もっと色々と手をかけりゃいいのに」

大戦士「彼らも君たちみたく、自由でいたい!と言うだろうし、最初から手をかけるつもりはなかったかな」

武道家「あ~なるほど」


大戦士「…あっ、そうそう!豪剣士くんといえばさ…」

大戦士「豪剣士くんは、尊敬できる剣士みたくなるために、スマートな名前がいいとかで…」

大戦士「"剣豪"って名前にしてたね」
 

剣士「え゛っ」

魔道士「うわぁ…愛されてるね」

剣士「嫌だっつーの!!」

武道家「…」

乙女格闘家「剣豪と、剣士の愛…おえっ」

剣士「変な想像してんじゃねえ!」

470: 2014/08/29(金) 22:34:17 ID:96dfo0UE
 
大戦士「あっはっはっは、君たちは全然変わってないな」

剣士「そうそう変わるかっつーの」

大戦士「うん、君らはそのままでよろしい」

剣士「当然だ」フン


トコトコ…

店員「…お待たせ致しました。ご注文のコーヒーをお持ちしました」


大戦士「おっ、ありがと…」

カタッ…カタカタカタ…

大戦士「…」ピクッ

471: 2014/08/29(金) 22:35:01 ID:96dfo0UE
 
カタカタカタ…ガタガタガタガタッ!!グラグラグラッ!!!

ゴォォォォオッ!!


剣士「ちっ、また地震か!」

魔道士「大きいよ!」

武道家「…乙女格闘家、もっとこっちにこい!」

乙女格闘家「う、うんっ!」


グラグラッ…!!

店員「きゃああっ!」パッ

大戦士「…いかん、コーヒーが!危ない!」バッ

…パリパリンッ!!バシャッ!!

店員「あっ!」

472: 2014/08/29(金) 22:35:37 ID:96dfo0UE
 
グラグラグラ…ミシミシッ…

ミシッ…ミシ………


剣士「ふぅ…収まったか。大丈夫だったか魔道士」

魔道士「うん…」

武道家「乙女格闘家も、大丈夫だな」

乙女格闘家「うん」


剣士「大戦士兄は…、って!」


ジュウウッ…

大戦士「あっちぃ~!熱々コーヒーもろに被っちゃったよ!」ハハッ

店員「あ…あう…」ブルブル

473: 2014/08/29(金) 22:36:27 ID:96dfo0UE
 
大戦士「大丈夫かい?抱きしめて悪かったね、嫌だっただろうこんなオジサンで」ハハ

店員「わ、私…コーヒーを…!やけどが…!」

大戦士「あぁ、これでも俺は元冒険者でさ、こんなのぬるま湯みたいなもんだし、大丈夫だから安心してくれ」ニカッ

店員「で、でも…」


大戦士「いやー、丁度浴びるほどコーヒー飲みたかったんだよな!」

大戦士「ついつい自分から本当に浴びに行っちゃったよ」ハハハ


店員「…っ」


剣士「お姉さん、本当にこの人は大丈夫だから安心して」

武道家「そうそう。火炎で燃やされても、平気な人だから大丈夫」

大戦士「あのね君たち…」


店員「ご、ごめんなさいっ!」

474: 2014/08/29(金) 22:37:19 ID:96dfo0UE
 
大戦士「だから、謝らなくてもいいさ。それより、カップの破片が危ないから動かないで」バッ

店員「…」

大戦士「よいしょっと。今拾うから待ってくれよ」スッ

チャリ…チャリッ…


大戦士「おら、剣士たちも見てないで手伝う。冒険者たるもの、人の役に立ってこそだ」

剣士「わ、分かってるっつーの!」

魔道士「はいっ」

武道家「なんかこういう教え、久々だな」

乙女格闘家「学校に戻ったみたいだね」ヘヘッ

475: 2014/08/29(金) 22:38:17 ID:96dfo0UE
 
店員「…」

大戦士「…」

チャリチャリ…パラパラ…


大戦士「…よしっと。これで大丈夫」

店員「…有難うございました…本当に…」

大戦士「なになに!君のような可愛らしい娘さんにケガがないなら、何より」ニコッ

店員「…は、はいっ」カァッ

タッタッタッタッタッ…


大戦士「お、おいちょっと!せめて破片のごみくらいはもってってー…」

476: 2014/08/29(金) 22:38:49 ID:96dfo0UE
 
剣士「…」

剣士「だ、大戦士兄の男らしさを見た気がした」


魔道士「あんな感じなことばっかりやってきたのかなぁ…」

武道家「罪な男ってやつじゃねえか…」

乙女格闘家「恋に年齢は関係ない…か。完全に堕ちたね、あの店員のお姉さん…」


大戦士「うおっし!コーヒーも満足するほど飲んだし…」

大戦士「そんじゃ久々に、中央軍本部に行きますかぁ!」バッ!


………
……

477: 2014/08/29(金) 22:39:24 ID:96dfo0UE
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 】


武装中将「…で、なぜこの子らがいるのかな?」ピクピク


剣士「…へへ」

魔道士「…」

武道家「…ふふ」

乙女格闘家「…」


大戦士「ははは、未来を担う子たちにも、ぜひ情報を教えてやってくれないかなと」


…ゴツンッ!!!

478: 2014/08/29(金) 22:41:29 ID:96dfo0UE
 
大戦士「」プシュー

武装中将「お前は幾つまで、そのままなのだ!」


大戦士「ぶ、武装中将殿!しかし私が呼ばれるということは相当な事態」

大戦士「いずれ、この若き冒険者たちにも及ぶ事だと思い、先鋭達である彼らを連れてきたのです」


武装中将「例えそうだとしても、元軍人であるお前がそういう事をするでない!」

大戦士「…そ、そんな面倒臭いことばっかだから軍を辞めたんでしょーが!」

武装中将「はぁ…。あのまま続けていれば世界を担う男になる逸材だったというのに…」

大戦士「そういうのはパスですよ。所詮、俺には似合わない舞台でしたから」

武装中将「…似合う、似合わないの問題ではないだろう」

大戦士「いいんですよ、俺は自由で。なーんて」ハハ


剣士「二人のやり取り始めて見たが、なんかなぁ」ボソボソ

魔道士「…だね」ボソボソ

479: 2014/08/29(金) 22:42:11 ID:96dfo0UE
 
武装中将「全く…」

大戦士「…で、本題にいきましょうよ。割と真面目に、由々しき事態なのでしょう?」

武装中将「…確かにそうなのだが」チラッ

大戦士「そんなに剣士たちがいると話辛いのですか?」

武装中将「彼らの性格を知ってるからな…絶対に首を突っ込む案件だ」


剣士「…酷い言われようだな。俺らが規律を乱しかねないみてーじゃねーか!」

武装中将「…乱すだろ?」

剣士「はい」

武装中将「…げんこつ食らうか?」

剣士「いいえ」


大戦士「はっはっは!」

…ゴツンッ!!

480: 2014/08/29(金) 22:42:41 ID:96dfo0UE
 
大戦士「」プシュー


武装中将「ったく…仕方ない。時間もないし、剣士たちは聞くだけにしておけよ」

武装中将「大戦士の言う通りではないが、下手をすれば世界を巻き込まれん事態になっているのだ」


剣士「世界が巻き込まれる事態?」

武装中将「昨日教えた、東方に住むエルフ族の話は覚えているだろう」

剣士「あぁ。西方ではなく、本当はエルフは東方に住んでたってやつな」


大戦士「なんだ、そういう事まで教えてるなら気にせず機密情報もどんどん…」

…ゴツンッ!!!ゴツゴツンッ!!

大戦士「」プシュウ…

481: 2014/08/29(金) 22:43:30 ID:96dfo0UE
 
武装中将「…ごほんっ」

武装中将「今回の震源地は、東方大陸の中心部。太陽の祭壇町付近、つまりエルフ族の町が震源地だ」


大戦士「…!」ピクッ


剣士「!」

魔道士「エルフ族の…」

武道家「…やっぱり、そうだったのか」

乙女格闘家「だ、大丈夫なんですか?」


武装中将「うむ。実は昨晩、その支部から転移装置で連絡が入ってな…」


………
……

482: 2014/08/29(金) 22:44:12 ID:96dfo0UE
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


大戦士「…なるほど。再び住民の消失と、魔獣の集団ですか」


武装中将「…その後、先遣隊として少佐の隊を向かわせたが未だに連絡が入らない」

武装中将「その為、一刻も早く次の小隊を派遣する予定となっている」

武装中将「…俺が自ら行くのも考えたが、指揮をとれる人間がいなくなるのは困るといわれてな」


大戦士「確かに、今の軍の状況で武装中将殿含む、幹部を失うのは痛手でしょう」


武装中将「拳闘家少佐から早めに連絡が入ればいいのだが、どうにもこうにも帰還せず…。」

武装中将「先遣隊が戻らない以上、安易に動くのは得策ではない。だが、情報が必要だ…」

武装中将「先ほども言ったが、今後の為に情報を掴むため小隊派遣を一刻も早くせねばならん」

483: 2014/08/29(金) 22:44:50 ID:96dfo0UE
 
剣士「エルフのジイチャン…そんな場所で大丈夫なのかよ…」

武道家「剣士の飲み会の席の一言が、こんな状況を知ってしまう事になってしまうとは…」

魔道士「別に剣士が起こしたわけじゃないでしょ、そんな言い方やめてよ…」

武道家「わ、わりぃ…」


大戦士「それで俺が呼ばれた理由は?ま、大体分かりますけどね」

武装中将「…小隊に入ってほしいんだ」

大戦士「やっぱりね」ハァ


武装中将「軍を退役した身で、このような事を頼むのは申し訳ないと思っている」

武装中将「だが、頼める人材がいない。…今の軍はあまりにも弱すぎるんだ」

484: 2014/08/29(金) 22:45:24 ID:96dfo0UE
 
大戦士「武装中将殿が歳をとったといっても、中将殿の世代や俺の世代でも充分に戦えるメンバーはいるでしょう」

大戦士「そういった、いわゆる黄金世代の引退した人たちを呼び戻せばいいんじゃないですかね」


武装中将「…最悪、その…呼び戻すことも考えている」

大戦士「!」

武装中将「まだ情報が錯綜しているが、今回は何かが変だと思うんだ」

大戦士「…本気ですね。貴方がそんな考えまで持っているとは」


武装中将「何にせよ、拳闘家少佐の先遣隊ないし、これから送る小隊で情報を固めたい」

武装中将「それまでは大隊を送るにも…無駄になる可能性がある以上、大きな動きは出来ないのは分かるだろう」

485: 2014/08/29(金) 22:45:54 ID:96dfo0UE
 
大戦士「…」

大戦士「…その小隊は、俺が指揮して着いてきますか?」

大戦士「当時ならまだしも、今の若い世代が俺のことを知っているとは到底思えない」


武装中将「お前は有名人だぞ?こう言うのはなんだが、お前の名だけで着いてくるはずだ」

大戦士「もう退役して10年以上ですよ?」

武装中将「未だに大戦士は伝説として残っている」

大戦士「…」

武装中将「…行ってくれないか。頼む」

大戦士「やれやれ。軍も都合がいいですね、結局は俺は小隊のお守りってわけでしょう?」

武装中将「言い方は悪いが、それは認めざるを得ない…」

大戦士「はぁ…」

486: 2014/08/29(金) 22:46:36 ID:96dfo0UE
 
武装中将「どうだろう…。頼めないか」


大戦士「…」

大戦士「…では、武器は俺が現役時代に使ってた軽剣を用意してください」

大戦士「あと、俺に従うよう、しっかり若いメンバーにも伝えること」

大戦士「過去の栄光を振りかざして指揮をしても、現場でついてくる人間はいません」

大戦士「現役の中将である貴方から一言を頂ければ、まぁ何とかついてくるでしょう」


武装中将「!」

大戦士「ただ、本当に役に立つかは分からないですよ」

武装中将「…やってくれるだけ、有難い。有難う」

大戦士「いいですよ。世界の危機になるかもしれないというなら、動ける面子が動くしかないでしょう」

武装中将「…」

487: 2014/08/29(金) 22:47:14 ID:96dfo0UE
 
剣士「大戦士兄…」

大戦士「剣士たちは、まだ動く時じゃない。残念だけど、もうしばらく待機しててくれるかな」

剣士「…わ、わかってるっつーの!」

大戦士「…バカに素直だな」


魔道士「どんなバカでも、こういう空気は読めるということです」

剣士「うっせっ!」


武装中将「ははは、では早速準備をさせよう」

武装中将「剣士たちは、一度自分たちの宿へ戻るといい」

武装中将「中央を離れるなら、東部側には向かわないことだ」

武装中将「祭壇町付近だけでなく、その周囲の閉鎖区域を拡大する強化を進めているからな」

488: 2014/08/29(金) 22:47:53 ID:96dfo0UE
 
剣士「…わかった。とりあえず俺らは俺らのままで生活するよ」

剣士「だけど、必要な事があったら呼んでくれ。これでも俺ら強いんだぜ?」ハハッ


魔道士「…うん、だねっ!」

武道家「そうだな。喜んで戦うぜ」

乙女格闘家「任せて!」


大戦士「あぁ…。分かってるよ」

武装中将「はは、お前らのような若き冒険者がいて嬉しく思うぞ」

大戦士「武装中将殿、これが俺の教え子であり、弟子ですよ。頼もしいでしょう?」ククッ

武装中将「未来を担う冒険者たち…か」

大戦士「…ふっ」

………
……

489: 2014/08/29(金) 22:48:27 ID:96dfo0UE
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市の一角 】

トコトコ…

剣士「はぁ~…大戦士兄、大丈夫かねえ」

武道家「大丈夫だろ。頃しても氏なないような人だし」

魔道士「私、ちょっと今回の事態がどうなっていくか少し不安だな…」

乙女格闘家「こんなこと聞いたことないもんね。本当に私たちに飛び火してきそう」


剣士「なぁに、武装のオッサンと大戦士兄で何とかなるだろ」

剣士「最強の戦士に、最強の指揮官だろ?」


魔道士「…ふふっ、そうだよね」

490: 2014/08/29(金) 22:49:33 ID:96dfo0UE
 
武道家「もし俺らが中央軍にいたら、大戦士さんと一緒に東方へ行ったのかもしれないな」

剣士「あー…」

武道家「ま、今は関係ないか。俺らは俺らの生活の心配しようぜ」

剣士「そうだな…東方側閉鎖するっつってたし、今度は南にでも行くか?」


魔道士「そういえば…北、東、西はいったけどまだ南って行ったことないね」

剣士「船も使って、砂漠地帯とかっつーのでも見に行くか!?」

魔道士「うん、それでもいいよ。過酷な場所って聞いたけど、私らで受諾できるクエストあるかもしれないし」

剣士「よっしゃ、決まったら早速今日から出発しようぜ!」


武道家「砂漠か…。水持ってかないといけないのかね」

乙女格闘家「食料いっぱい買わないとねー。船も出てるか分からないし、調べながらいかないと」

491: 2014/08/29(金) 22:50:06 ID:96dfo0UE
 
剣士「んまぁ、とりあえず南方大陸行きの船着き場まで行くか」

武道家「港周辺にも食料店はあるだろうし、そこで計画のことを改めて話し合うってのもいいかもしれん」

剣士「そうだな、じゃあ早速出発しようぜ!行くぞぉ~っ!」ダッ!

武道家「おっ、待てコラ!!」ダッ!


魔道士「あっ!ち、ちょっと待ってよ!」ダッ

乙女格闘家「まだ中央の宿に荷物置きっぱなしでしょー!」ダッ


タッタッタッタッタッ…………

…………

……


492: 2014/08/29(金) 22:50:47 ID:96dfo0UE
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 転移装置前 】

バチバチッ…!


大戦士「それでは、行ってまいります」

武装中将「…うむ」

大戦士「えぇ、任せてください」


小隊軍人たち「…」ビシッ!


大戦士「どんな状況かは分からないが、俺がお前たちを守ると誓う」

大戦士「ただ、過去にない事である以上、相応の覚悟は…しておいてくれ」


小隊軍人たち「はっ!」ビシッ!

493: 2014/08/29(金) 22:51:42 ID:96dfo0UE
 
武装中将「では、武運を祈る。あまり先走りすぎた無茶はするんじゃないぞ」

大戦士「な~に、ちゃっちゃと俺らでも解決して戻ってきますよ」

武装中将「…本当にそうなりそうだがな」

大戦士「では…」ビシッ!

武装中将「…」ビシッ!


大戦士「これより東方支部、祭壇町へと突入する!」

大戦士「到着後、各自軽率な行動をとらず、小隊長である俺か、副隊長の"中央大尉"に従うように!」


…ビシッ

中央大尉「…また貴方と組むことになるとは思いませんでした」

中央大尉「久々に、あなたが隊長として活躍するところを見せて頂きますよ」


大戦士「…はっはっは、楽しみにしておけ!それじゃあ出発する!」

大戦士「小隊、前進っ!」

494: 2014/08/29(金) 22:52:30 ID:96dfo0UE
  
小隊軍人たち「はっ!!」ビシッ!

ザッ…ザッザッザッザッ…!!

大戦士「…」

中央大尉「…」

小隊「…」
 
 
バチッ…、バチバチバチッ!!ギュウウウウンッ!!

ギュウウッ…!!

ウゥゥン…

……


495: 2014/08/29(金) 22:53:30 ID:96dfo0UE
 
武装中将「…」

武装中将「…頼んだぞ、大戦士」


バチ…バチバチバチ…!!ボォンッ!!!プシュー…!


武装中将「むっ…?」


タタタタッ…!!

軍人「…ぶ、武装中将殿!失礼致します!」

軍人「武装中将殿、魔法転移装置に何らかの異常…停止した模様!」

496: 2014/08/29(金) 22:54:45 ID:96dfo0UE
 
武装中将「…なんだと!」

軍人「すぐに大魔術中佐殿をお呼びし、原因の調査をいたします!」

武装中将「大戦士たちが向かったばかりなのだぞ!急げ!」

軍人「は、はいっ!」

タタタタッ…!!


武装中将「…ッ」

武装中将「大戦士っ……!」


…………
………

497: 2014/08/29(金) 22:55:30 ID:96dfo0UE
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 東方大陸 祭壇町(エルフ族の町) 】


バチッ…バチバチバチッ!!

…ギュウウウンッ!!!バシュウンッ…!


……スタッ…!


大戦士「うしっ!…無事に到着したか」

中央大尉「そのようですね。さて…全員隊列を組め!」

小隊軍人たち「はっ!」

498: 2014/08/29(金) 22:56:19 ID:96dfo0UE
 
…バチバチ…バチィッ!!ボォンッ!!

プシュウ…!!


大戦士「…ん?」

中央大尉「何の音でしょう?」


タタタッ…!

小隊軍人「…報告致します!転移装置が、停止した模様です!」


中央大尉「何?」

大戦士「は…はは。しょっぱなから嫌なことだな…」

中央大尉「どうしましょうか。魔術師らに復旧をさせますか?」

大戦士「復旧は向こう側に任せよう。転移装置の原動力である巨大魔石は本部にあるわけだし」

中央大尉「分かりました」

499: 2014/08/29(金) 22:57:05 ID:96dfo0UE
 
大戦士「それよか、見ろ。この支部の惨状はどうしたんだ……」


ゴォォォォ…!


中央大尉「随分と…荒れていますね。地震があったとはいえ、割れたガラス等も放置されているとは…」

大戦士「ここの支部はそれなりの人数はいるはずだし、本部の少佐が来ているはずだろう。なのに人の気配もないぞ?」

中央大尉「確かに、待機部隊がいてもいいはずなのですが」

大戦士「と、すると…ここに待機できない事態が起きたか…?」

中央大尉「とりあえず町に出てみましょう。エルフ族の民が消失したと聞きますし」


大戦士「そうだな。確か大広間から抜けられるはずだ」

大戦士「そこの角を曲がったところだったはずだ。全員進むぞ!」

ギシッ…!ギシギシ…

大戦士(木造の歩く音って不気味で好きじゃないんだがな…)

ギシギシ……

500: 2014/08/29(金) 22:58:19 ID:96dfo0UE
 
大戦士「…」

中央大尉「…」

小隊「…」

ギシギシ…!ギシギシ…ギシ…


大戦士「…」

大戦士「…」

大戦士「…むっ?」


モワッ…


中央大尉「うっ…」

中央大尉「何ですか…そこの角から流れ出てるこの霧のようなモヤは…」

501: 2014/08/29(金) 22:58:52 ID:96dfo0UE
 
モワモワ……


大戦士「大広間のほうからだ…」

ギシギシ…、クルッ

大戦士「…いっ!?」

中央大尉「どうしましたか…って!こ、これは!?」

小隊軍人たち「…っ!!」


ドロォ…ポタ…ポタ……

支部軍人たち「…」


大戦士「…何だこれは。支部の面子の氏体の山じゃないか…」

中央大尉「何という酷い有様……!」ゲホッ

502: 2014/08/29(金) 22:59:25 ID:96dfo0UE
 
…ザワザワ

小隊軍人たち「お、おい…何だこれ…!うげっ…」

小隊軍人たち「氏体だらけだ…」ゴクッ

小隊軍人たち「き、聞いてないぞ…!!」

ザワザワ…ガヤガヤ…!


中央大尉(…まずい。慣れていない状況で若い奴らが騒ぎはじ…)

大戦士「…静まれ!中央軍人たるもの、この程度でざわついてどうする!」バッ

中央大尉「!」

小隊軍人たち「!」


大戦士「実戦経験のないものもいるだろう。だが、これしきで騒いでいてはどうにもならん!」

大戦士「お前たちは、ここにいる以上、選ばれた者たちなのだ!」

大戦士「その自覚を持ち、しっかりしろ!」

大戦士「そして、隊を率いる俺たちを信じろ。中央大尉ないし、俺はなぁ…強いんだからな?」ニカッ

503: 2014/08/29(金) 23:00:22 ID:96dfo0UE
 
小隊軍人たち「…!」

小隊軍人たち「……はっ!」ビシッ


中央大尉(…さすがです。大戦士殿)


大戦士(…さて。落ち着かせたとはいえ…何だこの状況は…)

大戦士(地震でこうなるものか?美しくあるはずの建物が崩れ、床には支部の軍人たちが転がっている…)

大戦士(四肢が満足でない遺体まで…。魔獣が町の中へ侵入でもしたか…ふむ)

大戦士(それに…一体何だというんだこの…)

モワッ…モワモワ…

大戦士(開きっぱなしの入り口のドアから流れてくる、この霧のようなモヤ…)

大戦士(霧といえるのかどうか…まるで水気がないし、どうも気分がよくない……)


中央大尉「…大戦士殿。これからいかがなさいますか」

大戦士「外に出るのは危険な気がする。霧のせいで前がよく見えない状況での前進は危険だ」

504: 2014/08/29(金) 23:01:01 ID:96dfo0UE
 
中央大尉「それはそうですが、調査を行う以上……」

大戦士「…わかってるよ」


トコトコ…スッ

大戦士「……だがまぁ、この遺体たち。一体なぜココで倒れたのか」

大戦士「床だけでなく、壁までビッシリとした血の跡。それに戦った形跡と思われるものもある…」

大戦士「魔獣の仕業としても、実力のある軍人たちがこうも簡単に殺されるものなのか」

大戦士「そもそも、本部の拳闘家少佐の隊はどこへ消えた…?」


中央大尉「…それと、遺体を見渡す限り…エルフ族の姿はないですね」

大戦士「そうすると…やはり外。町の中…か。あまり動きたくはないんだがな」スクッ

中央大尉「…やはり、出るしかないですね」


大戦士「…」

大戦士「エルフ族の民家はすぐ傍にあるはず。そこの中で何か痕跡があるかもー…」ピクッ

505: 2014/08/29(金) 23:02:34 ID:96dfo0UE
 
…ヒュッ!!ヒュオオォッ!!

大戦士「ぬっ!」バッ!

…カキィンッ!!クルクルクル…ザスッ!


中央大尉「大戦士殿!?」

大戦士「大丈夫、防いだ。今のは…ナイフか?」チラッ

…キランッ


中央大尉「…ナイフ?どこからですか」

大戦士「そこの出入り口だな。霧の中から飛んできた」

中央大尉「…敵でしょうか」

506: 2014/08/29(金) 23:03:58 ID:96dfo0UE
 
大戦士「全員、一歩下がれ!」

小隊「はっ!」

ズザザ…


中央大尉「…ここにいるという、魔獣か何かですかね」

大戦士「魔獣がナイフを投げるって?…床に刺さったそのナイフ、拾ってくれるか」

中央大尉「分かりました」

トコトコ…スッ…チャキンッ

中央大尉「むっ…」


大戦士「どこのナイフだ。文様はあるか?」

中央大尉「これは…中央軍本部のものですよ」

507: 2014/08/29(金) 23:04:29 ID:96dfo0UE
 
大戦士「ってことは、味方が俺らを敵だと勘違いして投げてきたか…」

中央大尉「敵か、ですね」


小隊軍人たち(…すげぇ落ち着いて分析してるな。これが歴戦の人たちなのか)

小隊軍人たち(俺らも、いつかこうなれるのかな)

小隊軍人たち(とにかく今は、この状況でどうなるか…)


大戦士「…試すか」

中央大尉「突撃すると」

大戦士「冗談いうな、この中で突っ込んだら俺が殺されちまうよ」

中央大尉「昔の貴方なら、突撃してたじゃないですか」

大戦士「若い頃とはもう違うんだっての。とりあえず、そのナイフを貸せ」

中央大尉「どうぞ」スッ

508: 2014/08/29(金) 23:05:13 ID:96dfo0UE
 
大戦士「…」チャキンッ

大戦士「…この方向からだな」ググッ


中央大尉「投げる気ですか?」

大戦士「味方だったら困るし、当てないようにずらすつもりだ。そこの扉からモヤの中に薄ら見えている煉瓦にぶつける」

中央大尉「なるほど。相手の出方を伺うと」

大戦士「…おらっ!」ブンッ!!


ビュオンッ!!ヒュウウッ…ガキィンッ!!

…カランカランッ


大戦士「…」

中央大尉「…」

509: 2014/08/29(金) 23:05:47 ID:96dfo0UE
 
…シーン

大戦士「…反応なしか」

中央大尉「やはり、魔獣が何かが投げてきたのでは?」

大戦士「頭のわりぃ魔獣が、俺らを狙って正確に投げられるかよ」

中央大尉「…ふむ」


…ガタンッ!!


大戦士「…物音!」バッ!

中央大尉「外からです」チャキッ

大戦士「…」チャキッ

510: 2014/08/29(金) 23:06:55 ID:96dfo0UE
 
ザッ…ザッ…ザッ……


中央大尉「足音…」

大戦士「霧の中から、何か来るぞ」

小隊軍人たち「…っ」


ザッザッザッザッ…モワッ…


大戦士「お…姿が見えー……って、な、何っ!?」

中央大尉「…なっ!」

小隊軍人たち「な、何だ…こいつら…!」


???『…』チャキッ

511: 2014/08/29(金) 23:08:53 ID:96dfo0UE
 
大戦士「…おいおい、一体何だこいつら…」

中央大尉「ひ、人型ですが、服…武器…防具を持っている…。だけど人には到底見えないですね」

大戦士「そんなの見て分かる。中央大尉、君はどう分析する」


中央大尉「…魔獣でも、魔物でもなさそうですが、人にしてはあまりに異質。正直分かりません」

中央大尉「ですけどそうですね…。一つ確定していることといえば…」


大戦士「今回の事件の中心はこいつらの仕業だということだな」

中央大尉「…そういうことです」

大戦士「こいつら…確かに魔獣、魔物とは呼べないな。知性も高そうだ…が。一体こいつらは…」


ゴォォォ…

???『…知性が高イ?その言葉ハ、俺らをバカにしているな』

???『人間風情ガ、俺らをバカにするトは…』

???『まぁイイ、どうせお前らハ…皆殺シだカらな」チャキッ!!

512: 2014/08/29(金) 23:09:57 ID:96dfo0UE
 
大戦士「お前ら、人語を…!」

???『…我々が、人語を使うノは…不思議かな?』

大戦士「お前たち、失礼ならすまない。…人、なのか」

???『ハハッ!お前ラの言う中では…魔物ニでもなルか』

大戦士「…魔物?まさか!人型で、人語を理解する魔物など!」

???『…フッ』チャキンッ


大戦士「その臨戦態勢…あくまでも交戦希望か…っ!」

大戦士「全員、武器を構え!」


中央大尉「こ、こいつらは一体…!」チャキッ!

小隊軍人たち「…武器、準備します!」チャキッ!

513: 2014/08/29(金) 23:10:31 ID:96dfo0UE
 
???『…』ダッ!

ダダダダッ……!!

???『…ハハハッ!!』ブォンッ!!


大戦士(一体、何が起きているというんだ……!!)


…ビュオオオッ!!バシュウッ!!!
 
…………
………

514: 2014/08/29(金) 23:11:08 ID:96dfo0UE
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

521: 2014/09/02(火) 00:08:35 ID:ZdzePBGg
  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 4日後 ところ変わって南方大陸・砂漠港 】


ジリジリ…ジリジリジリ…!

剣士「あ…つ…いーーーーーー!!!!!」

魔道士「うるっさーい!!」

武道家「いやこれ本気でヤバイぞ…気温何度よ…」フラッ

乙女格闘家「えーと、そこの温度計は…」チラッ


"47度"


剣士「しぬーーーーーーー!!!!!」

魔道士「うるっさーーーーい!!!」

522: 2014/09/02(火) 00:09:05 ID:ZdzePBGg
 
武道家「南方大陸は砂漠地方…。熱帯とは聞いていたが…」

乙女格闘家「さすがに暑すぎるね…」フラッ

武道家「こんなところで依頼受けられるのか…?」

剣士「倒れそうだ…」フラフラ
 

トコトコ…

???「…おや」

???「おいおい、あんな恰好で…。旅行者か何かか?おーい!」


魔道士「…誰かに呼ばれてる?」

武道家「あそこのターバン巻いた男だな…」

乙女格闘家「な…なんですかぁ~…!」

523: 2014/09/02(火) 00:09:38 ID:ZdzePBGg
 
タッタッタッタッ…

ターバン男「君たち、旅行者か何かか?」

ターバン男「そんな恰好でここにいたら、熱中症で氏んじゃうぞ」


剣士「ここまで暑いとは思わなかったからさぁ…」フラフラ

ターバン男「きちんと準備しないとダメじゃないか。この近くに服屋があるからきちんとしたほうがいいよ」

剣士「服屋って…。服装で何とかなるもんじゃぁ…」

ターバン男「…この南方砂漠地方の服は、ちょっと特殊でね」

剣士「ん~…?」


…………
……

524: 2014/09/02(火) 00:10:16 ID:ZdzePBGg
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 砂漠港の服屋 】

…パサッ

乙女格闘家「みてみてー!」

キラキラッ…


武道家「…露出高すぎないか。踊り子っぽいぞ」

乙女格闘家「見せるとこ、見せられるうちに見せたいじゃん♪」

武道家「…いやお前、そうは言ってもな…」ジー

乙女格闘家「水着と一緒だって!」

武道家「あんま他人にお前の露出見せたくないっつーか…」

乙女格闘家「大丈夫大丈夫!この布の中身は、武道家だけのも…」

武道家「静かにしなさい!!」

525: 2014/09/02(火) 00:10:50 ID:ZdzePBGg
 
…パサッ

魔道士「わ、私は恥ずかしいから、露出は抑え目で…」

キラキラッ…

 
剣士「…似合ってるな」

魔道士「そ、そうかな」

剣士「この下とかどうなってんの?下着?」ペラッ

魔道士「こ、こらぁぁっ!!」

剣士「お?いつもと違う…」

魔道士「…火炎で吹き飛ぶ?」

剣士「ごめんなさい」

魔道士「全く…」

526: 2014/09/02(火) 00:11:52 ID:ZdzePBGg
 
乙女格闘家「それにしても、これ着た瞬間から凄いスーっとして涼しいよ、何でだろ?」

ヒヤッ…

武道家「俺と剣士の服も、結構厚めのはずなのに涼しいんだよな」

魔道士「ってことは、私らはスカートだから涼しい…ってわけじゃなさそうだね」

剣士「魔法か何かか?」


ターバン男「ここらで作られるものには、魔法の練りこまれた糸が使われていてね」

ターバン男「この服がないと、すぐに暑さでやられちゃうんだ」


剣士「へぇー…。オッサン、親切だな」


ターバン男「ここに住んで長いんだけど、熱で倒れる人が後を絶たなくてね…」

ターバン男「旅行者とかいたら出来るだけ声をかけるようにしてるんだよ」

527: 2014/09/02(火) 00:12:36 ID:ZdzePBGg
 
剣士「そうなのか。ありがとうな!」

ターバン男「いえいえ。それで、君らはこれからどこへ行くんだい?」

剣士「この周辺に宿をとって、依頼がないか探しに行くつもりだよ」

ターバン男「依頼って…クエストのことかな?」

剣士「そうそう」

ターバン男「え…。もしかして、君たちは冒険者かい!?」

剣士「そうなんだけど…見えなかったか?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
剣士「あぢぃ~…」フラフラ

魔道士「倒れる~…」フラフラ

武道家「氏ぬ~…」フラフラ

乙女格闘家「水~…」フラフラ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

528: 2014/09/02(火) 00:13:19 ID:ZdzePBGg
 
ターバン男「…」

ターバン男「…ちょっと、見えなかったかな…なーんて…」ハハ…


魔道士「ま、まぁ…ね…」

剣士「はっはっは、気にすんな!んじゃオッサン、有難うよ!」

武道家「涼しくなったことだし、宿とって依頼ないか探すか」

乙女格闘家「一応、軍の支部とかにも顔だしてみてもいいかもねー」


ターバン男「…」

ターバン男「…冒険者か」ボソッ

ターバン男「あ~…、君たち!ちょっと待ってくれないか?」


剣士「む…どうかしたのか?」

ターバン男「いや…うーん…」

剣士「…?」

529: 2014/09/02(火) 00:14:08 ID:ZdzePBGg
 
ターバン男「…良ければ、僕が依頼したいことがあるっていうか」

剣士「…お?」

魔道士「本当ですか!?」

武道家「服のお礼もあるし、安く請け負ってもいいんじゃないか」

乙女格闘家「そうだねー」


ターバン男「…ちょっと面倒なんだけどさ」

ターバン男「この海沿いをまっすぐ行ったところに、岩場があるんだ」

ターバン男「そこに出来た自然の洞窟に、盗賊団が住みついちゃってね…」

ターバン男「たまに来る旅客とか、地元の人間を襲ったりしてるんだよ…」


剣士「…ふむ」

武道家「軍の支部の人間は動かないのか?」

530: 2014/09/02(火) 00:14:55 ID:ZdzePBGg
 
ターバン男「つい最近のことで、まだ軍の人間も処理してないみたいなんだ」

ターバン男「頼めるなら、さっさと討伐してほしいんだよねえ…」


剣士「…ま、いいぜ。盗賊程度なら俺らの相手にならねーしな」

魔道士「うん。さっさと倒して、軍に引き渡しちゃおうよ」

武道家「今から行くか?サクっと終わらせて帰ろうぜ」

乙女格闘家「さんせー!」


ターバン男「…有難う!自分の家内も危険に晒されていたので…助かるよ」ペコッ

ターバン男「歩いていけない距離じゃないし、自分も一緒に行きながら案内するよ」


剣士「おう!ちゃっちゃとやろうぜ!」

………
……

531: 2014/09/02(火) 00:15:32 ID:ZdzePBGg
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 砂漠港 付近の洞穴 】


…ヒュウウ

剣士「ここか」


ターバン男「そうそう…。自然の洞穴だったんだけど、盗賊どもがイジったみたいで…」ハァ

ターバン男「出入り口に頑丈な鉄格子と、強固な施錠をしてあるみたいなんだ」


剣士「…確かに、ここから見ても太い鉄格子とでけぇ鍵は見える」

武道家「どうやって入るんだよ。中には盗賊らがいるんだろ?」


ターバン男「前に確認しに来た時は、入口に鍵を持った門番がいたんだけどな…」

ターバン男「今いないということは、もしかしてどこかへ出かけてるのかもしれない」

532: 2014/09/02(火) 00:16:33 ID:ZdzePBGg
 
魔道士「鍵が開かないんじゃ、どうしようもないんじゃ…」

乙女格闘家「狭い洞穴で戦うなら、全員の帰宅待って、外で叩いたほうがやりやすいかも」

剣士「とりあえず、誰もいないなら周辺の地形と入り口から、中を覗いてみようぜ」

武道家「そうだな」


タッ…!タッタッタッタッタッ…


剣士「っと…、よいしょっと」

タンタンッ…ズザザァ…

武道家「よっと」

トントン…ストンッ


魔道士「っとと…」

乙女格闘家「よいしょっと」

タァンッ!…ズザザァ

533: 2014/09/02(火) 00:17:11 ID:ZdzePBGg
 
ターバン男「う、うわ…」

ターバン男「みなさん、は、早いな…!」

ヨロヨロ…

ターバン男「はぁ、はぁ…。みんな身軽だね…さすが冒険者…」


剣士「このくらいはな。さて…」キョロキョロ

武道家「入口の前に、たき火の跡。昨日のだなこれは」

乙女格闘家「うん、少し焦げた匂いが残ってる」スンッ

魔道士「えーと、洞穴の中は…」


…コォォ


剣士「…いたって普通だな。この鉄格子とかは頑丈そうだが」

魔道士「この施錠されてるカギ、かなり大きいね。盗賊団だし、大事なものをしまってあるのかも」

乙女格闘家「一攫千金!?」

534: 2014/09/02(火) 00:17:45 ID:ZdzePBGg
 
剣士「鍵ついてっけど、意外と簡単に開いたりとかしねーかなー…」

ガチャンッ!!ギィィ…


剣士「…」

剣士「…」

剣士「…開いたぞ!?」


魔道士「」

武道家「…何だそりゃ」

乙女格闘家「ま、間抜けな人がカギ当番だったのかなー…」

ターバン男「え…えぇぇ…」

535: 2014/09/02(火) 00:18:17 ID:ZdzePBGg
 
剣士「…どうすんのこれ」

魔道士「ど、どうするって…」

武道家「とりあえず中に入って何あるか調べるか…?」

乙女格闘家「中から飛び出して奇襲作戦!」

剣士「あ、それいいかもしれん。それに宝物もあるかもしれねーし、中調べてみようぜ」

ゾロゾロ…


ターバン男「ちょちょちょ、みんな不用心すぎ!」

ターバン男「中に何があるか分からないっていうのに!」

536: 2014/09/02(火) 00:19:03 ID:ZdzePBGg
 
剣士「…勇気一発よ!」

魔道士「勇気っていうか、バカに近いと思うけど」

剣士「あんだと!?」

魔道士「それに着いてく、私もバカなんだけどね」ハァ


武道家「…バーカ!」


剣士「あぁん!?」

魔道士「…」ギロッ


武道家「魔道士様、申し訳ございません」

剣士「俺にも謝れよ」

武道家「うるせー、バカ!」

剣士「あぁん!?」

537: 2014/09/02(火) 00:19:38 ID:ZdzePBGg
 
魔道士「ほら…。もうそういうのはいいから、調べるなら入って、さっさと調べようよ」

剣士「お、おうっ」

ザッザッザッ…

武道家「少し暗いな…」

乙女格闘家「虫いそう…だけど、お宝もありそう…」

ザッザッザッザッ……


ターバン男「…」

538: 2014/09/02(火) 00:20:11 ID:ZdzePBGg
 
ソロソロ…
 
ターバン男「…」

ソー…

ターバン男「…本当にバカなパーティだな」ハハ


剣士「あ?」

武道家「あぁ?」

魔道士「え?」

乙女格闘家「にゃ?」

…ガチャッ!!バタンッ!!ガチッ!!

539: 2014/09/02(火) 00:20:46 ID:ZdzePBGg
 
剣士「あ…てめぇコラ!!鉄格子閉めて…何しやがる!」

魔道士「っていうか…今、鍵も閉めた!?」

武道家「…お、おいまさか…」

乙女格闘家「…あー」


ターバン男(盗賊団長)「…冒険者ってのは、本当にバカな」

盗賊団長「毎回そうだが、ここまで上手く引っかかるとは思わなかったぜ」


剣士「てめ…!」

…ガシィンッ!!!

盗賊団長「おっと、その鉄格子に触れないほうがいいぞ」

剣士「あ?」

540: 2014/09/02(火) 00:21:38 ID:ZdzePBGg
 
カチッ…ビリビリビリ!!!

剣士「あがががががっ!!」


盗賊団長「はっはっは!鍵を閉めると、その鉄格子に触れたモノに電撃を流すんだよ」

盗賊団長「って、聞こえちゃいないか。気絶するほどの威力だしな!」


剣士「いてて…!ちょっと痺れたじゃねえかコラァ!!」バチバチッ

盗賊団長「」

剣士「てめぇが盗賊だったのか!」

盗賊団長「た、たまにこういう規格外の冒険者もいるんだよな…面倒くせぇ」

剣士「んだとコラァ!」

541: 2014/09/02(火) 00:22:47 ID:ZdzePBGg
 
魔道士「…私たちを閉じ込めて、どういうつもり」

盗賊団長「なぁに、外側から強力な睡眠効果のある薬草を燻して、君らには寝てもらうだけだ」

魔道士「…!」


盗賊団長「ま、目覚めたら女は裸で奴隷船に乗って大海の真上か、奴隷馬車の中…」

盗賊団長「男は二度と目覚めないかもしれないな!ははは!」

盗賊団長「あ、もちろん…金目のものは全部取ってからだけどね?」


魔道士「な…っ!」

乙女格闘家「や、やだぁ!」

剣士「お前、最初っからこの目的で…!」

武道家「ぶち頃すぞ…」


盗賊団長「ふ~…。優しい優しい冒険者さんたちは、次々こうして餌食になってくれるんだよ」

盗賊団長「これで明日からも生きられる、有難うございます皆さん」ニコッ

542: 2014/09/02(火) 00:23:34 ID:ZdzePBGg
 
剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」

…ストンッ!


盗賊団長「…む?」


剣士「さて、どうする?」

武道家「はぁ~…安易な話にゃ乗るなってことだな。まだまだ初心者じゃん俺ら」

魔道士「はぁ…」

乙女格闘家「仕方ないね、乗っちゃった私ら責任あるし」


盗賊団長「この状況から腰を下ろすとは…。本物のバカなのか…」

543: 2014/09/02(火) 00:24:20 ID:ZdzePBGg
 
剣士「ん~…」

剣士「どうにもこうにも、眠らされたらお終いだろ。その前に檻ぶっ壊さないとな」


魔道士「…やめて」

剣士「だけどよ、そうしないと」

武道家「やめとけ…」

乙女格闘家「まだ氏にたくないー…」


盗賊団長「何の話やら。どうせ仲間ももうすぐ戻ってくる。そしたらお休みなさい…終わりだ」

盗賊団長「今回の女は、楽しみだぜ…。良い商品になる」ニヤッ

盗賊団長「男共は、あの世から女二人の最期でも悔しがって見てるんだな」ハハハ!

544: 2014/09/02(火) 00:25:01 ID:ZdzePBGg
 
 
剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」


…スクッ


剣士「今の言葉、イラっとしたぞ。やっぱやるわ」チャキンッ

武道家「俺もさすがにムカついた」スッ

魔道士「…私たちのこと、商品とかあんな言い方…。やっちゃっていいよ。だけど、崩さないでよ…」

乙女格闘家「魔道士ちゃんは私がフォローするよー」


盗賊団長「…あ?」

545: 2014/09/02(火) 00:26:50 ID:ZdzePBGg
 
剣士「お前さー…盗賊さん。俺らをただの冒険者としてみたのが間違いだったな」

武道家「お前らの住処、悪いけど壊すぞ」


盗賊団長「…はぁ?その檻には特殊な反射魔法もかかっているんだぜ」

盗賊団長「それにこのへんの岩は、特殊な鉱石でな。そう簡単にゃ崩せん」

盗賊団長「物理攻撃や魔法攻撃でもよほどじゃないと効かないー…」


剣士「…だから、よほどのことが起きるってことだ」ググッ

武道家「お前、五体満足で残れると思うなよ」スッ


盗賊団長「…はい?」


カッ!!…ボッ…ボゴォォォオオオンッ……!!!!
 
…………
………

546: 2014/09/02(火) 00:27:26 ID:ZdzePBGg
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 中央軍 砂漠港支部 】
 
…ビシッ!

軍人「ご協力、有難うございました!」

剣士「本当にこいつらが盗んでたものの一部貰っていいのか?」


軍人「まさか、盗賊団の一部が住民がなりすましていたとは…」

軍人「盗賊団長を捕まえることが出来ましたので、あとは芋づる式に捕らえられるでしょう」

軍人「その些細なお礼です」


武道家「灯台下暗しってやつだな。もっと軍人さんたちも、頑張れよ」


軍人「…」ビシッ
 
軍人「では、失礼致します」

ガチャッ…バタンッ…

547: 2014/09/02(火) 00:28:12 ID:ZdzePBGg
 
剣士「あー…金にはなったけど、なんか納得いかねぇ展開だったな」

武道家「結局、あの洞穴の岩場一帯ぶっ壊しちまったしな」ハハハ

魔道士「氏ぬかと思った…。だから加減してやめてっていったのに…」

乙女格闘家「でも、あの慌てた顔でちょっと怒りが収まったよ」

魔道士「まぁ確かにね…」

剣士「んじゃ、宿にでも戻りますかー…」


…ガチャガチャッ!!

軍人「す、すいません!」


剣士「ん…まだ何か用?」クルッ

548: 2014/09/02(火) 00:28:52 ID:ZdzePBGg
 
軍人「あ、あの!忘れていたことがありまして!」

剣士「どったの?」

軍人「もしかするとなんですが…」

剣士「うむ」

軍人「剣士様たちのパーティ…でしょうか?」

剣士「…ん?」


…………
……

549: 2014/09/02(火) 00:30:05 ID:ZdzePBGg
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 中央軍本部 転移装置室 】


バチッ…バチバチバチッ!!

ギュウウンッ…!!


…ドサドサッ!!


剣士「あ、あいででで…!」

魔道士「いったぁい…」

武道家「やっぱ慣れねえぞ転移装置…」

乙女格闘家「うぅ…」

550: 2014/09/02(火) 00:31:08 ID:ZdzePBGg
 
剣士「っつーか何だよ、"武装のオッサンが俺らを呼ぶ"とか…」

魔道士「あの時、別の場所に依頼受けにいくって言ってたから、他の支部に私たちのこと伝えてたみたいだね」

武道家「結局、あんな時間かけて砂漠に行ったのに…一瞬で戻ってきちまった」

乙女格闘家「私らを呼ぶなんて、何かあったのかな?」


剣士「まぁいいっての、オッサンに文句いってやる!」

剣士「いちいち俺らに絡まない方向で話してたのはオッサンのくせによ!」

ズンズンズン…ガチャッ!!


剣士「おい、オッサンどこだ!!」


武装中将「来たか」ズイッ

剣士「ぬおっ!?」

551: 2014/09/02(火) 00:31:56 ID:ZdzePBGg
 
武装中将「待っていたぞ。折角の冒険途中で、わざわざ呼び戻してすまなかったな」

剣士「…何だよ!俺らが折角、盗賊団のアジトを見つけて討伐してー…!」

武装中将「お前たちの耳には、入れておいたほうがいいと思ったことでな」

剣士「あぁ!?」


魔道士「…ちょっと剣士静かに。どうしたんですか?」

武道家「武装さん、何かあったのか?」

乙女格闘家「どうしたんですかー?」

剣士「…な、何があったんだよ」


武装中将「…」

武装中将「……大戦士が、行方不明になった」

552: 2014/09/02(火) 00:32:41 ID:ZdzePBGg
 
剣士「…あ?」


武装中将「約1週間前にお前らと別れたあと、小隊長として東方祭壇支部へと向かったのは知っているな」

武装中将「その直後、転移装置が停止」

武装中将「東方祭壇町の支部との連絡線は、現在も絶たれている。その他への転移装置は作動しているのだが…」


剣士「…」


武装中将「大戦士らが戻らないのに辺り、エルフ族が住む地区の国境沿いにて軍を強化配属し、閉鎖をしたものの…」

武装中将「未だに大戦士含む先遣隊からの連絡がつかない」


武道家「だ、大戦士さんが…!?」

魔道士「う、うそですよね…?」

553: 2014/09/02(火) 00:33:32 ID:ZdzePBGg
 
剣士「…すぐに援軍も出せるだろ?救助隊も組めばいいだろ!」


武装中将「もし、大戦士が手こずるような魔獣が出現したとしていたら?」

武装中将「どんな援軍でも、無駄に命を散らすだけだ。そうそう簡単に援軍は出すことはできん……」


剣士「救助が難航しそうなら、せめて国境側から調査隊を組んで、現状を調べればいいじゃないか!」

剣士「その祭壇付近で問題が起きてるなら、何の情報でもいいから手に入れるべきだろ!」


武装中将「…もちろん、そうしている」

武装中将「その結果、一つだけ情報は入手することは出来た」


剣士「…なんだよ」

554: 2014/09/02(火) 00:35:03 ID:ZdzePBGg
 
武装中将「…謎の霧が発生している。その祭壇周辺ないし、広範囲にわたってな」

剣士「…霧だ?」

武装中将「霧だ。どうやら、魔力を有する霧らしく、霧の中では魔力濃度が格段に上昇する」

魔道士「そ、それは人体への影響はあるんですか?強い影響があるというなら、もしかしたら…」

剣士「あ…そうか!もし倒れるくらいのものなら、大戦士兄たちは、行った瞬間に魔力酔いを起こしたんじゃ!?」


武装中将「安心しろ、それはない」

武装中将「魔力を有するといっても、人体が倒れるほどの魔力濃度ではない」


剣士「そ、そうか…」


武装中将「だが、視界が悪く…救助隊ないし援軍を出すには芳しくない状況でな」

武装中将「拳闘家少佐や大戦士、東方支部のメンバーやエルフ族…、行方不明者はとてつもない数だ」

武装中将「彼らを救出を試みる作戦は現在も会議として進んでいるが、

武装中将「いかんせん、安易に決定を下すわけにはいかんのだ…」

555: 2014/09/02(火) 00:37:06 ID:ZdzePBGg
 
剣士「…な、何だよそれ!?早く出せよ!世界平和を担う、世界の中心、中央軍だろ!?」

剣士「それなのに、たかがひとつの町を覆う霧や、転移装置が停止したくらいで何もできないのかよ!」


武装中将「…それは分かっている」

武装中将「だが、無駄に犠牲を増やすことは出来ないんだ」

武装中将「もし同じ状況でお前は、武道家や魔道士らをこの状況で霧の中へ送ることが出来るか?」


剣士「うっ…!そ、それは…!」


武装中将「人はいる。だが、犠牲は出したくない」

武装中将「当初、どこか浅はかな考えだったのかもしれん。たかが行方不明、たかが地震」

武装中将「大戦士を送れば、問題の解決も時間の問題になると思った。あいつ自身が飲み込まれるとは思わなかったんだ」

武装中将「…仮にも世界最強の一角とも呼べる男」

武装中将「本部も、彼に任せておけば良いという結論は出した。しかし…っ」

556: 2014/09/02(火) 00:37:49 ID:ZdzePBGg
 
剣士「…んだよ」

剣士「んだよそれ…!!」

剣士「なんなんだよ、それはっっ!!」


武装中将「俺らの失敗だ。大戦士が戻らぬ以上、慎重になるしかないんだ」

剣士「…大戦士兄を犠牲にして、他のやつが助かる道を探すってことだろ!」

武装中将「…世界を守るための、尊い犠牲になる…かもしれん…」

剣士「…もう大戦士兄は軍人じゃねえんだぞ!!」

武装中将「分かっている!!あいつの事を大事に思うのは、俺だって一緒だ!」

剣士「…ッ」


武装中将「とにかく今は、霧の発生や地震との関連性、全ての問題をあらゆる観点から調査せねばならん!」

武装中将「……それに、大戦士が氏ぬとは思っていない。お前らだって、あいつがどんな男か分かっているだろう」

557: 2014/09/02(火) 00:38:30 ID:ZdzePBGg
 
剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」


武装中将「…話はそれだけだ。今から俺は、その霧の調査やらを大魔術中佐と行わなければならない」

武装中将「また何か進展があれば、お前らに伝えると誓おう」

武装中将「わざわざ、中央を訪ねてきてくれて悪かった」


剣士「…っ」

武道家「しんじらんねぇよ…」

乙女格闘家「大戦士先生が…」

558: 2014/09/02(火) 00:39:01 ID:ZdzePBGg
 
魔道士「…」

魔道士「…」

魔道士「…あっ」ピクッ

魔道士「ぶ、武装先生。ちょっといいですか?」


武装中将「どうした?」

魔道士「その霧は、魔力濃度が高いんですよね?」

武装中将「…そうだ」

魔道士「なら、もしかしたらそれは、誰かが発生させた一種の魔法なのでは…?」

武装中将「何?」

魔道士「謎の霧というか、その存在自体が一つの魔法という考えは…ナシですか?」

武装中将「…どういうことか、説明してくれるか」

559: 2014/09/02(火) 00:39:39 ID:ZdzePBGg
 
魔道士「いえ、本当に私なりの勝手な考えなので…」

武装中将「その考えでもいい、聞かせてくれ」


魔道士「え、えっと…」

魔道士「私は、魔法を使う中でも基本の火炎魔法が得意なんですけど…」


剣士「いっつも燃やすもんな。学生の頃には、爆炎の魔女と…」

魔道士「小火炎魔法」パァッ

剣士「ぬあああっ!!」ボォォッ!!

…ドサッ


魔道士「で、話を戻すんですけど…」

魔道士「もしかしたら、それは水蒸気のように水魔法を霧状にしたものではないかと…」

560: 2014/09/02(火) 00:40:16 ID:ZdzePBGg
 
武装中将「…霧状に?そんなことが出来るのか」


魔道士「水、火、雷などに限らず、"魔法"には魔力が宿っていますよね」

魔道士「そこで、前に考えたことがあるんです」

魔道士「魔法を使うにあたって、周囲の魔力濃度を高めることが出来れば、自然と魔法は強力なものになります」

魔道士「そこで思いついたのが、火魔法と水魔法を合わせ霧状にした、フィールドマジックです」

魔道士「魔法で練られた霧のフィールドですし、その霧の範囲内では魔力を高める効果が得られるはずです」

魔道士「つまり、魔力濃度が上昇している事になるはずです」


武装中将「…!」


魔道士「ですけど、あまりにも繊細で…実践には向かないと諦めていました」

魔道士「何せ、得意な火炎魔法が霧の水分で弱体化しますし、雷魔法は空中を伝い自爆してしまいます」

魔道士「ですが今回のお話の魔力濃度の上昇や霧。私の考えた範囲魔法にとても似ていたので…」


武装中将「……ちょっと待ってろ。その話、アイツと一緒に話をしてもらおう」クルッ

魔道士「え…。は、はい…」

561: 2014/09/02(火) 00:41:01 ID:ZdzePBGg
 
ガチャッ…バタンッ…


魔道士「…?」


剣士「へ、へぇ~…」

剣士「…すげぇな、魔道士。そんな事を考えてたことあんのか」


魔道士「ずーっと前だけどね。だけど、さっき言った通り私が得意な魔法と相性が凄く悪くて…」

魔道士「相性が悪いだけじゃなくて、その霧の維持とかにも魔力を使うし…」

魔道士「なんていうか…難しいんだよとにかく」


剣士「ふーん…」


ドタドタ…ガチャッ!

武装中将「慌ただしくてすまないな。入ってくれ」

大魔術中佐「失礼致します」ペコッ

562: 2014/09/02(火) 00:41:31 ID:ZdzePBGg
 
魔道士「!」


大魔術中佐「…こちらの子が?」

武装中将「そうだ。少し、彼女から魔法論について話を聞いてくれるか」

大魔術中佐「承知致しました。えーと…魔道士さん?」

魔道士「は、はいっ」


大魔術中佐「私は、中央軍本部の大魔術中佐。同じ女性同士、気軽に中佐と呼んでもらって構いません」

魔道士「そ、そんな…」

大魔術中佐「お話、聞きました。あなたの理論、聞かせて下さいますか?」

魔道士「…は、はいっ」


…………
……

563: 2014/09/02(火) 00:42:09 ID:ZdzePBGg
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

剣士「…いつまで話してんだろ。女性同士で盛り上がってるみたいだし」

武道家「魔法論は面倒くせーしなぁ」

乙女格闘家「基本属性に、複合属性、あらゆるなんちゃら…」

剣士「あー、頭が痛くなる!」

武道家「全くだ」


武装中将「お前らな、冒険者ならもう少ししっかり勉強しろ」


剣士「へいへい…」

剣士「それよりオッサン、魔道士の考えってそんな凄いのか?」

564: 2014/09/02(火) 00:42:42 ID:ZdzePBGg
 
武装中将「型に当てはまらない考え方だ」

武装中将「俺たちは、前の地震との関連性ばかり頭に取られたり、これはこうならないという考えが定着している」

武装中将「若者のような柔らかい考えは、あまり浮かばないんだ」


剣士「えーと、つまり…?」


武装中将「…たとえば。四角は四角、三角は三角に当てはめるパズルがあったとして」

武装中将「これをきちんと嵌めろと言われたら、その形通りにいれるだろう?」


剣士「そりゃ…」


武装中将「ところが、中には"四角"へ"三角"を自分なりに工夫し、組み込もうとする者がいる」

武装中将「今回の事もそのようなものだ。無茶苦茶だが、こういった発想が大事なんだ」

565: 2014/09/02(火) 00:43:15 ID:ZdzePBGg
 
剣士「…はぁ」

武道家「お前の場合は、パズルなんか面倒くせぇ!っつって、その根本から切り裂きそうだな」

乙女格闘家「バカだもんね!」

剣士「おい」

乙女格闘家「あっ!ま、魔道士ちゃんたちの話終わったみたいだよ!ほら!」ビシッ

剣士「…」ピクピク


トコトコ…

大魔術中佐「…武装中将殿、終わりました」

魔道士「…」ペコッ

武装中将「うむ。どうだった?」


大魔術中佐「…この子、凄いですよ。私が考えることに、次々と回答していくんです」

大魔術中佐「ぜひ、部下に欲しい人材ですね」


魔道士「そ、そんな私なんか!大魔術中佐さんが、凄い発想で…!」

566: 2014/09/02(火) 00:44:06 ID:ZdzePBGg
 
武装中将「まぁそんな話はいい。それよりその霧の正体は、それで間違いなさそうか?」


大魔術中佐「実際に触れたわけではないので、何ともいえませんが…」

大魔術中佐「話をした限りは、それで間違いはなさそうです」


武装中将「!」


大魔術中佐「ただ、こちらの話では水魔法に限定されておりますが」

大魔術中佐「他の者のたちの報告では、霧状、モヤといっても水気がなかったといいます」

大魔術中佐「と、すると…恐らく純粋な魔力を利用すればいけると思います」

大魔術中佐「例えば、魔力枯渇に使う強力な魔力を持つ純気魔石等をどうにか変換し、」

大魔術中佐「その強大な魔力を霧状にすれば、可能性があるかと…」


武装中将「自然に発生する可能性は?」

武装中将「純気魔石という前提で進めた場合、地震によって地中の純気魔石が掘り返されて起きた可能性もある」

567: 2014/09/02(火) 00:44:39 ID:ZdzePBGg
 
大魔術中佐「過去にこのような事案は全くなかった事です」

大魔術中佐「あり得ないとは言い切れませんが、誰かが起こした可能性のほうが高いと思います」


武装中将「誰かが、意図的に…か」


大魔術中佐「そこで少し、仮説をたててみました」

大魔術中佐「…5年前の地震はその実験の過程で起きた地震で、霧の発生には失敗した」

大魔術中佐「だが、今回は発生に成功。今回の事案を企てた者がいる。その路線が浮かび上がってきましたね」

大魔術中佐「このような魔術は極めて不可思議。よっぽどな魔力の扱いに長けた者の仕業でしょう」


武装中将「…待て、まさか…」

武装中将「共通しその場にいる、魔力の扱いに長けた者…といえば…」


大魔術中佐「…このような不思議な技術を使えるのは、そこに住んでいる面子がいますよね」


剣士「ち、ちょっと待てよ!?そ、その面子ってまさか…!!」

568: 2014/09/02(火) 00:45:36 ID:ZdzePBGg
 
大魔術中佐「その可能性が非常に高くなってきましたね」

大魔術中佐「人間へ恨みを持つ民、魔法の扱いに長けた民族…。つまり……」


剣士「え、エルフ族が人間を襲ったっていうのかよ!?」

 
大魔術中佐「…彼らには、人間を襲う十二分な理由があるでしょう」

剣士「ねぇよ!!絶対に!!」

大魔術中佐「どうしてそう言い切れますか?」

剣士「ジイチャンが…幼エルフやみんなが…!そんなことをするわけねぇ!!」

大魔術中佐「それはお前が出会った一握りのエルフでしょう?」

剣士「そ、それはそうだけど…!」

569: 2014/09/02(火) 00:46:16 ID:ZdzePBGg
 
大魔術中佐「…神隠しという名目ですが、彼らが姿を消したのは、その時の戦犯だからかもしれない」

大魔術中佐「彼らの魔法は未知数」

大魔術中佐「霧だけでなく、何かしらの魔法で魔獣を自由に操り、軍を襲わせたのかもしれません」

大魔術中佐「…東方と西方に別れたのは、元々実験の為に人のいない地から戻らなかったとも言えます」

大魔術中佐「もう何かも…今回の件に繋がっていますね」


剣士「だ、だけど!」


武装中将「…決まった」ガタッ


剣士「…オッサン?」

570: 2014/09/02(火) 00:46:50 ID:ZdzePBGg
 
武装中将「大魔術中佐、今から言う指示をすぐ本部全体へ通達。元帥殿へは俺が伝えておく」

武装中将「今回の案件、エルフ族の行った人間への攻撃行為の可能性が高い」

武装中将「国境、東方側を閉鎖している臨時支部へも同時通達」


剣士「…オッサン!?」


武装中将「今から俺は西方の支部へ行き、直接指揮をとり、エルフ族の町村で調査を行う」

武装中将「軍の規律に乗っ取り、行動をする。ではよろしく頼む」


大魔術中佐「承知致しました。失礼します」ビシッ!

ガチャッ、バタンッ!!


剣士「お、オッサン待てって!エルフ族だぞ!?」

武装中将「可能性が出てきた以上、無視はできん。分かるだろう」

571: 2014/09/02(火) 00:47:57 ID:ZdzePBGg
 
剣士「だ、だけど!」

武装中将「…これが軍だ。政府なんだ」

剣士「そ、そうだけど!!」

武装中将「…大戦士は、エルフ族によって葬らされたかもしれないのだぞ?」

剣士「…っ!」

武装中将「…わかったな。では、早急に動かねばならぬ故、また会おう」

カツカツカツ…バタンッ…!


剣士「…っ!」ギリッ


魔道士「け、剣士…」

武道家「…剣士」

乙女格闘家「剣士…」

572: 2014/09/02(火) 00:48:42 ID:ZdzePBGg
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

カツカツカツカツ…


武装中将(…俺とて、エルフ族がそこまで人間へ攻撃してくるとは思わない)

武装中将(だが、証拠が揃いすぎている)

武装中将(太陽の祭壇を崇める事を名目に、もし今までの準備をしていたとしたら…。)

武装中将(西方の過去の地震も、今回も、彼らが姿を消す十分な理由になる)

武装中将(それに、今の時期は全員が祭壇へ集まる時期とし、人間たちへ奇襲を消し掛ける絶好のチャンスだ)

武装中将(どんな考えでも当て嵌まる以上、エルフ族には何かしらの対応を急がねばならぬ)


武装中将(…すまんな、俺は世界を支える者として、非情にもならねばならないんだ…)

武装中将(だが、その前に…"この考え"。大魔術中佐へ準備を進めさせておこう…)

…カツカツカツカツ…

………

573: 2014/09/02(火) 00:50:52 ID:ZdzePBGg
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

剣士「…っ」ブルブル


魔道士「…剣士、落ち着いて…」

武道家「…」

乙女格闘家「…」


剣士「…」

剣士「…わ、わかった」ボソッ


魔道士「え?」

574: 2014/09/02(火) 00:51:34 ID:ZdzePBGg
 
剣士「…俺ってさ、元々自由だし、素直にもっと生きるって決めたし」

剣士「ワガママだっていうなら、それでもいい」


魔道士「ちょ…まさか…」

武道家「…そのまさかだろ」ハァ

乙女格闘家「そう言うとは思ったけど…」


剣士「大戦士兄も、この武器はエルフ族との友好の架け橋になることを願ってた」チャキッ

剣士「その武器を渡された俺は…。大戦士兄と、エルフ族に関わった俺は!」

剣士「否が応にも、今回のことにも、首を突っ込んでるんだと思う…だから…」


魔道士「…」

武道家「…」


乙女格闘家「みんな武器貰ったけど…私は…」ボソッ

武道家「お前は俺と一心同体みたいなもんだ。俺の武器は、お前の武器でもあるんだぜ」ポンッ

乙女格闘家「…うんっ」

575: 2014/09/02(火) 00:52:06 ID:ZdzePBGg
 
剣士「だから俺が…。俺が動かなくちゃいけない気がするんだ」

剣士「…隠された歴史を知って、大戦士兄やオッサンと関わって、エルフ族には魂を渡された」

剣士「これが偶然じゃなくて、きっと運命だと思う」


魔道士「…剣士。言うと思ったけどさ、本当に危険なんだよ?」

剣士「別に俺一人でも…」

魔道士「はぁ…このバカッ!」

剣士「!?」

魔道士「…私はさ、剣士についていくっていったでしょ」

剣士「…」


武道家「…はぁ」

武道家「仕方ねぇなぁ…」ポリポリ

武道家「お前のその目、そりゃ覚悟を決めた顔だな」

武道家「その気持ちは本物なのは分かるし、そんなお前に着いていかないワケにはいかんだろ」

576: 2014/09/02(火) 00:55:48 ID:ZdzePBGg
 
剣士「…いいのか」

武道家「今更聞くことか?」

剣士「…」


乙女格闘家「何かあったら、一生恨むからね!」

剣士「…乙女格闘家」

魔道士「剣士、何があってもずっと一緒なんだからね」

剣士「…魔道士」


武道家「結局、俺らって子供の頃と何も変わんねぇじゃん」

武道家「ま…俺も最近は大人ぶってたけど、俺らはワガママ、自由気ままが捨てられないんだわな」ククク


剣士「…武道家」

577: 2014/09/02(火) 00:57:35 ID:ZdzePBGg
 
魔道士「…まったく」

魔道士「ほら…リーダー!」


武道家「ほらほら、リーダーさんよ…」

武道家「…どこへ行くんだよ。黙ってたら分からねぇぞ」


乙女格闘家「ほらほらほらっ!」

乙女格闘家「剣士パーティなら、リーダーの剣士がしっかり指揮とってよね!」


剣士「…っ!」

剣士「あぁ…みんな、有難う…!」コクン

剣士「目指すは東方、エルフ族の住む太陽の祭壇の町!」

剣士「さぁ…出発だ!」バッ!

578: 2014/09/02(火) 00:58:08 ID:ZdzePBGg
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・・
・・・
・・

579: 2014/09/02(火) 00:59:13 ID:ZdzePBGg
【to be continued....!】

580: 2014/09/02(火) 01:00:19 ID:ZdzePBGg
 
本日はここまでです、有難うございました。
今回を持ちまして、章の区切りとなります。

また、一つご報告がありまして、仕事柄でキーボードと触れ合う機会が多いのですが、
多忙の中、指先(爪)を痛めてしまい、よっぽどなものではないのですが…
章区切りということもあり、次回の更新は4~7日以内となります。よろしくお願いいたします。

それでは有難うございました。

581: 2014/09/02(火) 01:00:23 ID:fsqoRcvA
おつ!
やっぱり良い作品書くよね

次回:


引用: 剣士「冒険物語…!」