596: 2014/09/07(日) 21:06:17 ID:I76pnGZw
597: 2014/09/07(日) 21:07:18 ID:I76pnGZw
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【これまでのあらすじ】
北西冒険学校に入学した剣士と武道家は、
魔道士、乙女格闘家、僧侶、魔術賢者、大戦士などの仲間と出会い、成長していった。
やがて卒業を迎えた剣士たちは、夢であった冒険者となり世界へと飛び出す。
それから数年。
名実とともに冒険者として実力を磨いた剣士、魔道士、武道家、乙女格闘家の4人。
何もかも順調にいくはずだった。……だが。
剣士が放った一言『学生時代に修学旅行で訪れたエルフ族の村へ行きたい』。
この言葉で世界を統治する"中央軍本部"へ足を運んだ4人。
598: 2014/09/07(日) 21:08:16 ID:I76pnGZw
そこで学生時代以来の武装先生と再び出会い、エルフ族の村の現状を調査してくれるという。
剣士は喜んでそれを承諾したが、その夜、彼らに大地震が襲いかかった。
震源地は東方エルフ族、太陽の祭壇の町。
それは学生時代に話を聞いた、地震後にエルフ族の村の住民全員が消失した
"エルフ族消失事件"そのままであった。
武装中将はこれを重く見て大戦士を再び軍へ呼び戻し、小隊とともに祭壇町へ送り込む。
しかし……。
大戦士を含めた小隊は行方不明となってしまう。
そこで剣士は大戦士のため、エルフ族のため、仲間とともに祭壇町へ行くことを決意した――。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
599: 2014/09/07(日) 21:09:14 ID:I76pnGZw
・
・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
601: 2014/09/07(日) 21:10:00 ID:I76pnGZw
剣士らが東方にあるエルフ族が町、祭壇町への出発を決意してから数日。
東方側にある平野の一角で、彼らはキャンプを張りながら封鎖線を目指した。
そして6日の夜。
ついに、4人は東方封鎖線の目前まで辿り着く…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 深夜 東方平野 】
剣士「ぷはぁ~っ」
武道家「あ゛~っ…食った食った」
魔道士「ごちそう様でした」
乙女格闘家「ずいぶんと遅い晩御飯になっちゃったねー」
剣士「しゃあないだろ、次から次へと魔獣が出てくるんだからよ」
武道家「周囲を落ち着かせようとしたら、すっかり真夜中になっちまったな」
602: 2014/09/07(日) 21:10:48 ID:I76pnGZw
魔道士「この辺て、こんなに魔獣が多いものなのかな」
乙女格闘家「そこまで強い魔獣じゃなかったけど、数が凄かったよね」
剣士「元々そういう地域なんじゃねえの?」
武道家「そうそう。こんな大自然なんだから、いても不思議じゃないぜ」
魔道士「う~ん、なんか活発過ぎるような気がするんだけどなぁ」
剣士「気のせい気のせい。っつーか、もう夜だしさっさと寝ようぜ」
魔道士「まぁ…明日も朝早いしね」
剣士「そういうこと。明日には封鎖線上に着くだろ?」
魔道士「たぶん…。」
武道家「ほんじゃ、テントに戻りますか」スクッ
乙女格闘家「二人とも、お休み~♪」
603: 2014/09/07(日) 21:11:58 ID:I76pnGZw
剣士「おう、お休み」
魔道士「おやすみなさい」
ザッザッザッザッ…
…………
……
剣士「…ふぅ」
魔道士「じゃ、私たちもテントに入ろっか」
剣士「だな」スクッ
魔道士「…」
魔道士「…」クスッ
剣士「…どうした?」
604: 2014/09/07(日) 21:12:42 ID:I76pnGZw
魔道士「ううん、ちょっと思い出しちゃっただけ」
剣士「思い出した?」
魔道士「うん。魔石の洞窟のときのこと」
剣士「…ふむ」
魔道士「ほら、私と僧侶が寝てる間、武道家と二人でずっと戦ってくれてたでしょ?」
魔道士「洞窟も暗かったし、夜だし…。魔獣の話とか、当時の雰囲気に似ててつい…ね」
剣士「あぁ…」
剣士「…」
剣士「あれ?お前に戦い続けてたこと話したっけ?」
魔道士「ううん、僧侶に聞いたんだよ」
剣士「あー…」
605: 2014/09/07(日) 21:13:21 ID:I76pnGZw
魔道士「剣士、妙にそういうところ隠したがるよね」
剣士「いやほら…、別に言うことじゃねぇし…」
魔道士「ふふっ」
剣士「…」
魔道士「…うん。あの時から見たら、少しは成長したよね…私たち」
剣士「そりゃそうだ。そうじゃなかったら、こんな魔獣の棲む平野の真っ只中にいねえよ」
魔道士「強さもだけど、それ以外のことも!」
剣士「あぁん?」
魔道士「なんか色々と成長したなって」
剣士「大人になったってか?」
剣士「…酒の席じゃ、大人になったってよく使うが、本当は実感はねーんだよな」
606: 2014/09/07(日) 21:15:01 ID:I76pnGZw
魔道士「う~ん…。それ、すっごい分かる」
剣士「正直、社会的マナーっつーのか、そういうのは学んだと思う」
魔道士「うん」
剣士「だけど、心っつーか…根本的な精神は学生時代と変わってないんだよな」
魔道士「あ~…うんうん」
剣士「大人になったら一人前だの何だの言うが、大人も性格や精神はそのままの奴が大半ってことだろ?」
剣士「結局、大人って言葉は成長した自分と区切りをつけたい奴が使う言葉だと思うんだよなぁ」
魔道士「あ~…」
剣士「大人になりきれない奴が、自分は大人だって見せる為に使う言葉ってこと」
魔道士「うん…」
剣士「だから俺は、酒の席で大人になったと使う。俺は子供のままでいいわ!ってか!」
607: 2014/09/07(日) 21:15:35 ID:I76pnGZw
魔道士「それじゃダメでしょ」
…ベシッ!
剣士「いてっ!」
魔道士「難しい問題だと思うけど、私たちは後輩から見たら立派な存在なんでしょ?」
魔道士「そんな剣士がそんなんじゃ、ダメでしょっ」
剣士「そういうのが面倒くせぇんだよ。面倒だって思う以上、俺は大人になりきれてないわけで」
魔道士「大人になりきれてない事が分かってれば、充分成長してるよ」
剣士「…そういうもんか?」
魔道士「…そういうもんだ!」
剣士「!」
魔道士「…へへっ」テレッ
608: 2014/09/07(日) 21:16:46 ID:I76pnGZw
剣士「お…。今のやり取りすげぇ懐かしく思ったぞ」
魔道士「ふざけただけ~…って。恥ずかしい…」エヘヘ
剣士「…あぁ!あの時のか…そうだったな。はははっ!」
魔道士「ほ、ほらっ、もう寝よっ!武道家たちも寝たんだからさ!」
剣士「おうよ。だけどさっきのお前、やっぱり可愛い…」
魔道士「も、もう~っ!!もういいから、恥ずかしいから!」
剣士「…」
剣士「…にひひっ」ニヤッ
…グイッ!
魔道士「きゃっ…!」
ギュウッ…!
剣士「…」
魔道士「…っ」
609: 2014/09/07(日) 21:17:22 ID:I76pnGZw
剣士「あ~…やっぱり好きだわ…」
魔道士「…うん」
剣士「ここまで着いてきてくれて、本当にありがとうな」
魔道士「ううん…当たり前だよ…」
ギュッ……
剣士「…」
魔道士「…」
…………
………
…
610: 2014/09/07(日) 21:18:01 ID:I76pnGZw
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
612: 2014/09/07(日) 21:18:49 ID:I76pnGZw
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日 封鎖線上の茂み 】
…ガサッ!
剣士「…結局、ここに来るまでに準備も含めて結構時間かかっちまったな」
武道家「あの平野から結構早足で4時間か…」
乙女格闘家「それにしても、封鎖ってここまで大がかりなんだ…」
…ガヤガヤ
魔道士「うわっ、中央軍人がいっぱいいる…」
剣士「さ~ってと、どうやって通るか…」
剣士「…」
剣士「…ちょっと情報がないか、聞き耳でも…」スッ
613: 2014/09/07(日) 21:19:23 ID:I76pnGZw
ガヤガヤ…
軍人たち「…さて、もうすぐ交代の時間だな」
軍人たち「向こう側の封鎖も終わってるし、住民たちも入り込んだ形跡はないか?」
軍人たち「どうせ魔力感知してるし、入ったらすぐに魔法隊から伝達があるさ」
剣士「…参った。抜けられると思ってたんだが」
魔道士「一般街道は完全にダメだね。絶対に冒険者は通さないよ」
武道家「そもそもエルフ族がいる以上、元々ここは閉鎖されてただろうし、それ以上に今は厳戒態勢なんだろう」
乙女格闘家「どうするの?周囲も警備びっちりで抜けられないよ」
剣士「…強行突破は無理だよなぁ」
魔道士「冗談!そんなことしたら、私らが指名手配で新しい問題になっちゃうよ!」
武道家「それに、さっき魔力感知してるって言ってたぞ。目には見えないが、感知で魔法隊にバレちまう」
乙女格闘家「やっぱ無理なんじゃないかなー…」
614: 2014/09/07(日) 21:19:56 ID:I76pnGZw
剣士「何かないのかよ…」
武道家「剣士…ここは一旦引いて、別の方法を考えるしかないんじゃないか?」
剣士「ここまで来てか…」
武道家「軍の閉鎖はそう簡単に通れねぇよ。それに、強行突破したら魔道士の言う通り指名手配犯だ」
剣士「くっ…」
…ガヤガヤ
剣士「…ん?」ピクッ
軍人A「そういやさ、あそこの渓谷はどうなってる?」
軍人B「あー、森の間にあるでっけーところな。あそこは広すぎてどうにもならんらしい。感知もしてないぜ」
軍人A「…じゃあ、あそこから盗賊やら冒険者が抜ける可能性があるんじゃないのか?」
軍人B「俺らでも危険で近づけねえよ。並の冒険者ですら近づかない渓谷だぜ」
軍人A「おいおい…そんな危ないのか?」
軍人B「渓谷降りるだけで一苦労だし、激流だし、岩場は鋭利状だし…。自殺志願者用だぞあんなん」
615: 2014/09/07(日) 21:20:42 ID:I76pnGZw
剣士「…!」
剣士「聞いたか!みんな!」ニヤッ
武道家「自殺者用っつったな」
魔道士「自頃したくないよ」
乙女格闘家「氏にたくない」
剣士「…見に行くだけ!行くだけ!」
武道家「…はぁ」
魔道士「あの軍人、余計なことを…」
乙女格闘家「…氏にたくない」
………
……
…
616: 2014/09/07(日) 21:21:12 ID:I76pnGZw
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 渓 谷 】
ザァァァ…!!!ゴォォ…!
剣士「ん~…」
魔道士「確かに、軍人さんたちの姿は見えないね」キョロキョロ
武道家「…話の通り岩場は鋭利で、足場は濡れてて落ちやすいし、落下したら即氏だな」
ヒュウウウッ…ギラッ…
乙女格闘家「でもさ…」
剣士「思ったほど…じゃねぇな」
魔道士「確かに…去年行った登った崖のほうが急だったね」
剣士「な?来てみるもんだろ」
魔道士「軍人さんたちが大変っていうから、相当だと思ったけど、そうでもなくてちょっと安心」
武道家「どうせ剣士は、どんな所でも"行こう!"って言うだろうが…」
617: 2014/09/07(日) 21:21:48 ID:I76pnGZw
乙女格闘家(…う~ん……)
乙女格闘家(実は、私たちのレベルが凄い高いだけなんじゃないかって思うけどなー)
剣士「さて、んじゃちゃっちゃと降りるか。岩場飛びながら来れるだろ?」
武道家「余裕」
乙女格闘家「一気に駆け下りても問題ないよー」
魔道士「私は少し遅くなるけど…」
剣士「いいよ、魔道士は俺がアシストするから。ほら、手…つーか背負うわ」
魔道士「うんっ…」ギュッ
乙女格闘家「……。武道家、私もアシスト!」
武道家「…へい」ギュッ
……
…
618: 2014/09/07(日) 21:22:23 ID:I76pnGZw
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 渓谷下 】
タァンッ…タンタンッ…
剣士「…っと」
武道家「うしっ!」
ズザザザァ……
魔道士「ありがと、剣士」
剣士「おう」
乙女格闘家「ありがと~。もうちょっとこのままで…」
武道家「降りてください」
619: 2014/09/07(日) 21:22:55 ID:I76pnGZw
剣士「とりあえず、一番下まで降りれて一安心っつーとこか」
武道家「ま、下の方に広い足場があってよかったな」フゥ
乙女格闘家「みんな、上見てよ…」
乙女格闘家「降りるときは気づかなかったけど、自然が織りなす景色、凄い綺麗だよー」
サァァァァ…ゴォォォ……ッ!
剣士「すっげー景色だなおい…」
魔道士「ここからこの景色を見た人って、そうそういないよね…」ホウッ…
乙女格闘家「きれい~…」
武道家「…おーい」
武道家「景色楽しむのもいいが、見回りが来ないとも言い切れないし、さっさと登ろうぜ」パンッ!
620: 2014/09/07(日) 21:23:26 ID:I76pnGZw
剣士「あぁそうか。ん~…降りる時よりも、登る方の岩壁の角度は少し厳しいな」コンコン
武道家「この足場進んで緩やかなところ探すか?」
剣士「あまり川上や川下に行くとさすがに軍が滞在してるだろうし…ココを登ったほうがいいんじゃないか?」
武道家「俺と乙女格闘家、剣士は余裕だが…」チラッ
魔道士「あはは…の、登れるかな」
剣士「んー…。まぁ背負って足場確保しながら飛べばなんとか」
魔道士「お願いします、ってしか言えないよ?」
剣士「お願いしますとかいらねえから」
魔道士「あっ…。う…うんっ」
乙女格闘家「武道家ー」
武道家「却下」
621: 2014/09/07(日) 21:24:01 ID:I76pnGZw
剣士「ほんじゃ、とりあえず装備とバッグを前に回してー…」
…ザワッ
剣士「……んっ?」ピクッ
武道家「どうした?」
剣士「今…何か…」
武道家「何か?」
剣士「聞こえたような…」
武道家「川の音じゃないのか?激しいからな」
剣士「いや。人の声のような気がする」
武道家「そんなバカな。いや、もともとバカだけど」
剣士「おいコラ」
武道家「気のせいだと思うぜ?本当なら、軍人かもしんねぇぞ?」
622: 2014/09/07(日) 21:24:45 ID:I76pnGZw
剣士「全員ちょっと耳を澄ませてみろよ。水や風の音の合間に、聞こえたんだって!」
武道家「はぁ、しゃあねえな…」
魔道士「もう…」
乙女格闘家「仕方ないなぁ…」
ゴォォォ…バシャアンッ…ザァァァァ…
剣士「…」
武道家「…」
魔道士「…」
乙女格闘家「…」
623: 2014/09/07(日) 21:25:51 ID:I76pnGZw
ザァァァ…!!
…ザワッ
ザァァァァ……バシャアンッ…!
剣士「…ほら、今!」
武道家「た、確かに!」
魔道士「聞こえた…!」
乙女格闘家「…どこから!?」
624: 2014/09/07(日) 21:26:41 ID:I76pnGZw
剣士「…気のせいじゃなけりゃ、ここからだな!」チャキンッ
剣士「この岩壁の中だ…!せーのっ…!」ググッ
武道家「おい剣士、ちょっと待て」
魔道士「ちょっ、ここで大剣振ったら足場崩れー…!」
剣士「そおりゃあっ!!」ブンッ!!
…バゴォォォンッ!!!
乙女格闘家「」
ゴッ…ドシャアッ!!ズゴォンッ……!
パラパラ…
剣士「…」
剣士「…お!?」ハッ
剣士「見ろよみんな、洞窟だぜ!?」バッ!
625: 2014/09/07(日) 21:27:19 ID:I76pnGZw
ビュッ…ゴツゥンッ!!!
剣士「!?」
魔道士「お、洞窟だぜ!?じゃなあぁーーい!!」
武道家「このアホッ!!ここで足場崩れたらどうする気だったんだ!!」
乙女格闘家「激流に落ちるのかと思った……」
剣士「い、いいじゃねえか!洞窟だぜ洞窟!?」
魔道士「…確かに洞窟は現れたけど」
コォォォ…
剣士「今の人の声は、確かにココからしたって!」
626: 2014/09/07(日) 21:28:10 ID:I76pnGZw
武道家「…お前はどうしてこう、余計なものを次から次へと…」
剣士「探検だぜ、冒険だぜ!?」キラキラ
魔道士「本当に人の声がここからしたなら、今のやり取りの音も聞かれてるだろし…」
乙女格闘家「東方側の洞窟だよ?味方って言い切れないんじゃないかな…」
剣士「まぁいいじゃねえか、敵にしろ何にしろ、何かいるってことだろうし!」
武道家「そりゃそうだが…」
剣士「階段状になって、地面に通じてるかもしれねえだろ!進もうぜ!はっはっは!」
武道家「…はぁ」
魔道士「剣士はこうなったら聞かないから…仕方ないね…」
乙女格闘家「それより、暗くて前に進めそうにないんだけど…」
627: 2014/09/07(日) 21:28:49 ID:I76pnGZw
魔道士「仕方ないな…。私が小火炎魔法で…」パァッ
剣士「いや俺のバッグに火魔石のランプ入ってるから、それ使おう」ゴソゴソ
魔道士「…準備いいね」
剣士「いつも持ち歩いてんだよ!こんな時に備えてな!」
魔道士「…そういうことだけは準備いいんだから」
武道家「学生時代の魔石の洞窟の時は、食料忘れてたけどな」
剣士「そりゃオメーもだろ!」
魔道士「…それじゃ、行くの?」
乙女格闘家「行くしかないみたいだし、出発だね…」
…………
……
…
633: 2014/09/09(火) 20:22:06 ID:sDLFofag
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 渓谷の洞窟 】
ザッザッザッザッ……
……ピチョンッ…ピチョンッ…
剣士「…」
魔道士「何なの…ここ…」
武道家「…ただの洞窟じゃねえな。これは…」
乙女格闘家「廃坑か何か…だね」
コオオォォ…
634: 2014/09/09(火) 20:23:21 ID:sDLFofag
剣士「おいおい、ここから声が聞こえたんだぜ?廃坑ってことはないだろ」
武道家「お前、そうは言っても…」
…スッ
武道家「ほら、見ろよこれ」ポイッ
…パシッ!
剣士「…んだこりゃ?」
魔道士「ん~と…」
魔道士「多分、古い線路の金属部分だね。木の部分は腐敗して泥に埋もれてるし」
剣士「…トロッコか何かのってことか」
武道家「相当古い鉱山なんだろ。人の声は気のせいじゃないのか」
剣士「だって、お前らも聞いただろ?」
635: 2014/09/09(火) 20:23:58 ID:sDLFofag
武道家「…」
魔道士「…」
乙女格闘家「…」
剣士「なっ?それで気のせいってことあるかよ」
武道家「じゃあ、正体はなんだっつーんだ」
剣士「エルフ族か何かがいたとか」
武道家「祭壇の町じゃ、エルフ族が行方不明になってたっつっただろ」
剣士「…じゃあ、さっきの声は何なんだ?」
武道家「知らねぇよ!だから気のせいなんじゃねーかって」
剣士「全員が一斉に聞いといて、気のせいはないだろ」
武道家「そりゃそうなんだが…」
636: 2014/09/09(火) 20:24:33 ID:sDLFofag
剣士「ま、こんなところで話してても水掛け論だろ。進めば分かるさ」
武道家「…水掛け論て。お前、妙に変なことわざとか熟語とか…知識蓄えてきてるよな」
魔道士「結構前から、本読んだりしてて色々覚えてるんだよ。頭良くなってるっていうか」
乙女格闘家「へぇ~!剣士、やるじゃん♪」
剣士「くくく…!ほら早くいかないと、こんなところで立ち止まってても"ぬかに味噌"だぜ?」
魔道士「それ"ぬかに釘"ね。っていうか使いどころのようで妙にニュアンス間違ってない?」
剣士「いいから行くぞ!」
魔道士「…」
武道家「…あいつ、本当に頭良くなってるのか?」
魔道士「ごめん、自信なくなってきた」
剣士「さっさと行くぞ!」
………
…
637: 2014/09/09(火) 20:25:08 ID:sDLFofag
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 廃坑深部 】
ザッザッザッ…
剣士「んー…」
魔道士「…同じような景色ばっかで進んでない気がするんだけど」
剣士「なんか地上っつーよりも、地下に向かって進んでる気もする」
武道家「心なしか、泥がより泥っぽく、水交じりになってきてんぞ」
グチョッ…グチョッ…
乙女格闘家「道、間違えたんじゃないかな?っていうか、やっぱり…入るのが間違ってたんじゃ…」
638: 2014/09/09(火) 20:25:42 ID:sDLFofag
剣士「…だけど、ここから戻るっつーのもなー…」
武道家「先に進んで行き止まりだったら、どのみち戻ることになるぞ?」
剣士「岩壁に戻って登ったほうが確実……ってか」
武道家「そういうこと」
魔道士「それに、あまり深く潜りすぎると空気も悪くなるし…」
乙女格闘家「まだそのランプ…ランタン?の炎が消えてないから大丈夫だとは思うけど…」
ボォォ…
剣士「…」
剣士「…しゃあないなあ。戻るか…」
武道家「最初からそうするべきだろ…」
剣士「…ごめんなさいね!」
武道家「ま、ついてきた俺らも俺らだし仕方ないー……」トクン
武道家「んっ…?」トクン
639: 2014/09/09(火) 20:26:24 ID:sDLFofag
剣士「……どうした」
武道家「い、いや…」トクントクン
剣士「…」
武道家「…な、なんか……」トクンッ
乙女格闘家「ど、どうしたの武道家?」
魔道士「武道家?」
武道家「……あったかい」
剣士「…あぁ?」
武道家「わかんねぇ。何かこの辺…あったかいんだ…」トクンッ
640: 2014/09/09(火) 20:27:03 ID:sDLFofag
剣士「いや、意味わかんねぇぞ。むしろ洞窟だから寒いし」
武道家「…いや、違う」
剣士「何がだっつーの!」
武道家「…こっちだ」クルッ
ザッザッザッザッ…!
剣士「お、おい!?」
魔道士「武道家、どうしたの!?」
乙女格闘家「ま、待ってよー!」
ザッザッザッザッ……!!
…………
………
……
…
641: 2014/09/09(火) 20:27:37 ID:sDLFofag
…
……
………
…………
……ザッザッザッザッザッ!!
武道家「近い…気がする」
剣士「何がだよ!」
魔道士「あ、足場がどんどん悪くなるよ?…一体どうしたの!?」
乙女格闘家「う~…武道家、どうしたの?」
642: 2014/09/09(火) 20:28:13 ID:sDLFofag
武道家「…」ピクッ
武道家「…ほら!あれを見ろ!」
剣士「…あ?」
魔道士「何を見ろって……あっ!?」
乙女格闘家「あ、あれって…」
モワッ…サァァ…
剣士「あれは…モヤ?いや、霧なのか…?」
魔道士「もしかしてあれが、謎の霧…魔法の霧?ってことは、出口が近いってこと!?」
乙女格闘家「あれが温かいって…何でそんなの感じたの?」
武道家「わ、わかんねぇけど…何か感じてよ…」
剣士(魔力の霧で落ち着くって…魔力枯渇症だかの進行のせいじゃねえのか…)ギリッ
643: 2014/09/09(火) 20:28:50 ID:sDLFofag
魔道士「…」
魔道士「もしかして武道家……」
武道家「な、何だ?」ドキッ
魔道士「色々戦闘の経験を積んだおかげで、魔力に敏感になったの…?」
武道家「えっ?」
魔道士「そうじゃなかったら、魔力の霧なんか感知できるはずないし…」
武道家「あ、う…うむ!そうかもしれん!」
魔道士「魔法が主力の私より感知が高いって、何かなー」ジトッ
武道家「は…はっはっはっは!やっぱり俺は凄いからな!!」
乙女格闘家「すごーい!さすが私の旦那さん!」
武道家「はははっ!誇っていいぞ!!」
剣士「…」
644: 2014/09/09(火) 20:29:41 ID:sDLFofag
魔道士「あ…待ってよ。でもさ……」
剣士「あん?」
魔道士「さっき私たちが聞いた声って、何だったのかな」
剣士「あ~…」
魔道士「気のせいだったと思いたいけど…」
剣士「…霧が呼んでいた、とか」
魔道士「何それ」
剣士「いや、何となく」ハハ
魔道士「霧がしゃべったって言いたいの?」
剣士「結局、誰とも合わなかったし…。霧が俺らを呼んだんじゃねーかなと」
魔道士「何それ」ハァ
武道家「とりあえず、出口にはいけそうだし早く行こうぜ」
乙女格闘家「そうだよ、早く行こうっ~」
645: 2014/09/09(火) 20:30:15 ID:sDLFofag
剣士「…ま、行くか」
魔道士「魔力の霧…か。町はどうなってるんだろう…」
武道家「出口がどこに出るかすら分からないけどな」
乙女格闘家「変なところに出なければいいんだけど…」
…………
………
…
646: 2014/09/09(火) 20:30:50 ID:sDLFofag
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 祭壇町 旧鉱山 】
…モワッ……ザッザッザッ…
剣士「…やっと外に出たぁぁ!」
武道家「やっぱりこの出入り口、鉱山っぽいな」
魔道士「私たちがここに来れたってことは、軍には見つからなかったってことだね」ホッ
剣士「戦犯にならなくてよかったな」ハハハ
魔道士「ほんとに…」
モワモワ…モワ……サァァ…
乙女格闘家「わっ、霧がすごーい…」
647: 2014/09/09(火) 20:31:36 ID:sDLFofag
剣士「話に聞いてた通り本当に水滴がつかねえ不思議な霧だな」モワッ
魔道士「…魔力を霧状の可視出来るようにして、生命体に影響が出ない程に閉じ込めた霧なのかな」
剣士「お前の理論的にはそうなんだろ?」
魔道士「…そうだけど、実際に見て信じられないよ。こんな技術があるなんて」
武道家「実際も何も、目の前に触れているんだから仕方ない」
魔道士「確かに、魔力に包まれてる感覚っていうか…凄いふんわりするけどさ…」
剣士「…」
剣士「…おい武道家」ボソッ
武道家「ん?」
剣士「お前、この霧の中、調子がいいのか?」ボソボソ
武道家「…まぁ、調子はすこぶる良い。気分は最悪だがな。改めて病なんだと思い知らされたわけだ」ボソボソ
剣士「…」
武道家「一生この中にいりゃ、生きていられるのかもな……」
剣士「…」
648: 2014/09/09(火) 20:32:10 ID:sDLFofag
魔道士「…何をボソボソと話してんの?」
乙女格闘家「聞こえないよ!」
剣士「あ、いや!」
武道家「な、何でもねぇよ!」
魔道士「…?」
剣士「さ、さてと!何か町に行く道とか目印になるものがあればいいんだが!」キョロキョロ
魔道士「旧鉱山ってことは、ここは町から近いのかな?」
武道家「金属だの鉱石は、エルフ族の大得意分野だし…よく使う分そんなに遠くに鉱山を開くとは思えんぞ」
乙女格闘家「鉱山があるから、そこに町を作るっていうのは割とよくあることだしね」
649: 2014/09/09(火) 20:32:43 ID:sDLFofag
剣士「つっても、この霧じゃ無闇に動くと事故も…」
…ボソボソ
剣士「…あ?」
魔道士「…どうしたの?」
剣士「今、話し声が…」
魔道士「また?」
武道家「もうそのネタはいらないぞ」
乙女格闘家「さっきも聞こえたけど、誰もいなかったしね」
……ヒソヒソ
剣士「…ほ、ほら!」
650: 2014/09/09(火) 20:33:15 ID:sDLFofag
魔道士「…みんな、聞こえた?」
武道家「いや。今回は聞こえない」
乙女格闘家「聞こえないよ」
剣士「い…いやいや!今はっきりと、この霧の中から誰かしゃべってただろ!」
武道家「魔道士、魔力の霧は人に聞こえない声を聞かせる効果もあるのか」
魔道士「うーん、魔法学的にはあり得ないと思うけど、謎の技術という以上、可能性はゼロじゃ…」
剣士「いや冷静に分析しなくていいし」
乙女格闘家「簡単にいえば、剣士がもっとバカになったってことだね」
剣士「うるせー!!」
…ヒソ、ヒソヒソ…
ボソボソ……ボソッ……
剣士「…」
651: 2014/09/09(火) 20:33:59 ID:sDLFofag
……シーン
剣士「…声が止んだ」
魔道士「…?」
武道家「やっぱ気のせいだったんだって」
剣士「んーむ……本当に聞こえてたんだけどな…」
乙女格闘家「それより、町に早く進もうよ」
武道家「そうだな。とりあえず町の支部に辿りつかないと話にならんし」
剣士「そうだな…。まぁ、進むか…」
武道家「んむ」
剣士「…」
………
……
…
652: 2014/09/09(火) 20:35:47 ID:sDLFofag
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 祭 壇 町 】
コツ…コツ…コツ…
乙女格闘家「何…これ…」
剣士「ひ…酷すぎる…」
魔道士「これが、エルフ族の町…なの…?」
武道家「そこら中に瓦礫の山…。霧…。血の跡…。なんじゃこりゃ……」
ベチャッ…ドロッ…
…オォォ…ォォ……
剣士「な、何なんだよ……」
剣士「こ、こんな場所に本当に大戦士兄がいるっつーのかよ…!」
653: 2014/09/09(火) 20:37:04 ID:sDLFofag
武道家「武装さんたちの話が本当なら、ココへ大戦士さんたちは送られてるので間違いないはずだが…」
剣士「人の気配…いや、生き物の気配すらしてないぞ…」
剣士(声はあったが、人の気はしなかった。本当に何なのか……)
武道家「唯一分かるのは、鼻に突く氏臭…」
魔道士「何があったんだろう…」
乙女格闘家「本当に私たちがいていい場所なのかな…」
剣士「だ…誰かはいるはずだって!」
武道家「…この霧の中、一軒ずつ家に入って探すか?」
剣士「…」
武道家「それに魔獣の姿も見えないのも気がかりだ」
剣士「…」
武道家「この霧の中、やたらに動き回れるもんでもないだろう…」
654: 2014/09/09(火) 20:37:39 ID:sDLFofag
乙女格闘家「うん…。この霧の中を敵に襲われたらどうしようもないよ…」
剣士「わ、わかってるっつーの!」
魔道士「一旦、支部を探そうよ。もしかしたらこっち側に来ている軍人さんたちがいるかもしれないから」
剣士「…そうだな。大戦士兄もいるかもしれんし…」
武道家「賛成だ」
乙女格闘家「…だね」
剣士「じゃ…行くか…」クルッ
ザッザッザッザッ……
655: 2014/09/09(火) 20:39:15 ID:sDLFofag
コォォ…
ザッザッザッザッ……
武道家「…どこもかしこも酷い有様だな」
ザッザッザッ…
魔道士「…」
魔道士「…ちょっと気になったんだけどさ」
魔道士「武装先生が言ってた、エルフ族が自分の町をこんな風にするかな?」
魔道士「エルフ族は、自分の造り上げるものを"魂"として扱うのに、自分たちの町を壊してまで暴れると思う?」
656: 2014/09/09(火) 20:39:52 ID:sDLFofag
剣士「あ…!そ、そうだよな!エルフ族の魂を、自分たちで壊すわけ…」
武道家「それほど人間を恨んでいたっていう可能性はあるんじゃないか」
剣士「…っ!い、いや…そ、それは!」
武道家「なくはないだろ?非道の復讐の為なら、魂くらい悪魔に売り渡すかもしれん」
剣士「…そ、そうだけどよ!なんかこう…違う気がすんだよ!」
武道家「じゃあ、お前は何の仕業だって考えるんだ。武装さんたちは、あれでも前線にいる経験の高い人なんだぞ?」
剣士「…それはわかんねぇけど、武装のオッサンの考えはあくまでも"霧の外"の考えだろ?」
剣士「霧の中の、町の惨状を知ってたらあんな考え出さなかったんじゃねえかな…」
剣士「オッサンはきっと、誰よりもエルフ族が魂を大切にする民族だって知ってるはずだろ…」
武道家「…なるほど。そりゃ一理ある」
剣士「だろ?」
武道家「だとしたら、これは全て魔獣、魔物の仕業ってことになるわけだが…」
武道家「エルフの姿がねーのもだけど、送られてきたはずの人の姿もねーっつーのが気になる」
657: 2014/09/09(火) 20:40:37 ID:sDLFofag
剣士「…魔族に襲われて、どこかに避難したとか…か」
剣士「んぐぐ…」
剣士「……あーもう!!わけわかんねぇ!!」ガシガシ!
魔道士「と、とにかく!今は、支部を目指そうよ」
魔道士「支部に行けば、何か分かるかもしれないんだから…」
剣士「そ…そうか」
武道家「憶測で言ってても仕方ねーもんな…」
乙女格闘家「まだ敵っていう敵もいないし、停戦状態かもしれないし…」
魔道士「うん。急いで探そう」
…………
……
…
658: 2014/09/09(火) 20:41:31 ID:sDLFofag
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 祭壇町 ―中央軍支部― 】
タッタッタッタッ……
魔道士「あ、あった!」
剣士「ここが支部か…」
武道家「…何だこりゃ、ここ中心に建物が軒並みボロボロじゃないか…」
乙女格闘家「うわ…、道に血痕……引きずられているような跡とか…」
ドロッ…
剣士「…何かと戦ったのは見て分かるが…」
武道家「とりあえず中に誰かいないか確認しよう」
659: 2014/09/09(火) 20:42:02 ID:sDLFofag
トコトコトコ……ギシッ、ギシギシ…
剣士「随分と軋む支部だな。木造のせいか?」
武道家「おいおい、崩れねえだろうな…」
ギシギシ…ギシッ……
魔道士「でも、見た感じ中に人はいなー……」ハッ
魔道士「…えっ!?」
剣士「な…っ!」
武道家「何だこりゃ…!」
乙女格闘家「こ、これ…って…」
675: 2014/09/11(木) 20:10:24 ID:WZfRyJaU
ゴォォォ……
支部軍人たち「…」
小隊軍人たち「…」
ポタッ…ポタッ…
剣士「ひ、ひでぇ……!!」
武道家「…!」
武道家「お、おい!この腕章…中央軍のだぞ!」
武道家「中央軍の本部の隊、それと支部隊のじゃねえのか!?」
剣士「ってことは、中央から送られた面子がここで…やられたのか!」
剣士「ど、どうなってんだ!大戦士兄は…!エルフ族はどこへ!」
676: 2014/09/11(木) 20:11:10 ID:WZfRyJaU
武道家「何だこの遺体は…。剣術や槍、格闘術でもここまでの酷い氏体には…!」
剣士「魔獣の仕業なのか!?だが、ここまで非道なことを…!」
乙女格闘家「…ッ」
魔道士「…っ!」
魔道士「…ご、ごめん私……!」クルッ
タッタッタッタッ……
魔道士「ごほっ…!うえっ……!」
乙女格闘家「ま、魔道士ちゃん!背中…さするよ」
タッタッタッ…スッ…
魔道士「あ…ありがとう……」
677: 2014/09/11(木) 20:11:45 ID:WZfRyJaU
武道家「…無理もないな。氏臭に加えてこの損壊が激しい遺体たち…」
剣士「こ、この中に大戦士兄がいるんじゃないだろうな…」ブルッ
武道家「お、おいおい!そんなわけないだろ、あの大戦士さんだぞ!?」
剣士「そ、そうだよな…!」
武道家「必ずどこかにいて、仲間と戦ってたりするはずだって!」
剣士「お、おうよっ!」
乙女格闘家「…」
乙女格闘家「…地震、魔力の霧、エルフ族の神隠し、魔獣や魔物との魔族との交戦…」
乙女格闘家「繋がりそうで、繋がらない……何か、決定打のあるものがあればいいんだけどね…」
魔道士「お、乙女格闘家…。そ、そのことなんだけど…」ゴホッ
乙女格闘家「どうしたの?」
678: 2014/09/11(木) 20:12:21 ID:WZfRyJaU
魔道士「あの…魔力の霧の技術は、今の人間の技量では絶対に行えない事だと思うから、人間の仕業じゃないはず…」
魔道士「だからエルフ族の仕業だと思ってたけど、自分たちで作り上げ、魂である町をここまで自ら破壊するとは思えない…」
魔道士「つまり人間と、エルフ族の路線は絶対じゃないけど、薄くはなった…」
剣士「…」
武道家「…」
乙女格闘家「…」
魔道士「残された謎は、エルフ族の神隠しと、襲った魔獣の正体…」
魔道士「そこで今、少し考えての……」
魔道士「あり得ないはあり得ない。その言葉通りの仮説をちょっとたててみたけど…」
剣士「…その仮説を聞かせてくれ」
武道家「お前の考えは的を射るからな」
乙女格闘家「そうだよ、教えてよ魔道士ちゃん」
679: 2014/09/11(木) 20:13:35 ID:WZfRyJaU
魔道士「…もしかすると、第三の刺客が…いるってこと」
剣士「第三の刺客?」
魔道士「私たちは、軍もあんな風にパニックを起こすほどの体験をしてるのは分かるでしょ…?」
剣士「そうだな」
魔道士「だけど、私たちは"私たちが見てきた物事や体験"でしか憶測することが出来ないのが普通なの」
剣士「…あのパズルの話か」
魔道士「そう。"あり得ない"という事は絶対じゃないし、今回の魔力の霧だってあり得ないのが現実だった」
剣士「ふむ…。で、その"あり得ない"仮説の第三の刺客ってのはどういう意味だ?」
魔道士「……豊富な魔力を持つエルフ族を使い、この霧を発生させた第三の敵の可能性」
魔道士「可能性は2つあると思う」
武道家「2つの可能性…」
剣士「それは…なんだ?」
680: 2014/09/11(木) 20:14:15 ID:WZfRyJaU
魔道士「1つ目は、謀反を企む軍内部の人間と組んだ、魂すら気にしないエルフたちの仕業」
剣士「あぁ…可能性は確かにあるな」
武道家「エルフ族の技術を使い、軍を潰そうとする人間がいるかもしれないってことか」
乙女格闘家「それだけじゃなくて、世界を掌握しようとするとか、パニックに陥れようとしてるとかもあるね」
魔道士「うん。そして、もう1つ。こっちは非現実的だけど…」
剣士「…非現実的とかは別にいい。お前の考えをそのまま聞かせてくれ」
魔道士「もちろん。もう1つの考えはね…」
魔道士「この霧を発生させる技術を持ち、で人間たちを襲おうと目論んだ連中がいる可能性」
魔道士「…人間、エルフ族。あと1つの種族が残ってるでしょ?」
剣士「あと1つの種族って…」
武道家「…真面目に言ってるのか?」
乙女格闘家「そ、それはさすがに…?」
魔道士「だから、本当にもしかしての可能性だけど、極めて知性の高いー……」
681: 2014/09/11(木) 20:15:02 ID:WZfRyJaU
ビュ…ッ!!
……ヒュオオオンッ!!
剣士「ぬっ!?」ハッ
武道家「なんだ!あぶねぇ!」バッ!
ブンッ!!…キィンッ!
クルクルクル…ザシュッッ!
魔道士「剣士、武道家!?」
乙女格闘家「どうしたの!?」
剣士「…今のは!」
武道家「ナイフの投擲だ!正確に頭狙ってきやがった!」チラッ
ビィィン……
魔道士「な、ナイフってどこから!」
剣士「今の軌道…俺らが入ってきた入口からだ!何かいるぞ!」バッ!
682: 2014/09/11(木) 20:15:37 ID:WZfRyJaU
モワモワ……ザッザッ…
剣士「…足音っ」チャキッ
武道家「ついに、お出ましってわけか」スッ
魔道士「…人か、エルフ族だったら嬉しいんだけどな…」スッ
乙女格闘家「それより敵じゃないことを願うよ…」スッ
ザッザッザッザッザッ……
剣士「…」ゴクッ
683: 2014/09/11(木) 20:18:06 ID:WZfRyJaU
ザッザッザッ……チャキンッ
???『…また、一人…おいでますったようだ』
???『今度は…どンなヤツだ…?』
剣士「…おっ、言葉だと…。もしかして人間か、エルフ族か?」
武道家「…」
武道家「…ん?」ピクッ
武道家「…待て!よく見ろ!」
…モワッ…
???『…』
剣士「…!?」
魔道士「なっ…!」
乙女格闘家「何…あれ……!?」
???『…』ニタッ
684: 2014/09/11(木) 20:18:58 ID:WZfRyJaU
剣士「な…何だお前ら!その恰好、人なのか…!?」
???『ハハ…人間ト一緒にするんジャない」
???『俺ラを見る奴らはよく驚クな。ま、それも楽シいんだが』
剣士「…一体、お前らは…?」
???『…お前らが言ウ種族の話で言えバ、魔物…魔族となルな』
剣士「魔族…だと!?」
武道家「はは…魔道士…」
魔道士「…っ!」
武道家「お前が言いたかったのは、"極めて知性の高い魔獣や魔物"…って考えだろ」
乙女格闘家「魔道士ちゃんの考え、変に当たってたってこと…かな」
魔道士「…ゆ、夢でも見てるの…?本当にこんな……」
685: 2014/09/11(木) 20:19:32 ID:WZfRyJaU
???『まァ…いイ。どうせお前ラは……』チャキンッ
魔道士「ま、待って!意思疎通ができるなら、話をさせて!」
???『あァ?』
魔道士「貴方たちは何者!?前に来てた軍人さんたちは!?エルフ族はどうなったの!」
???『…』
剣士「お、おいおい…そんなん聞く相手じゃ…」
ゴブリンたち『俺ラはゴブリン族。気高キ、戦闘種族…』
剣士「言うのかよ!」
686: 2014/09/11(木) 20:20:04 ID:WZfRyJaU
武道家「…落ち着け。今、ゴブリンっつったか?そんな魔物、聞いたこともないぞ」
乙女格闘家「それに、人型で…人語を理解するって…」
魔道士「貴方たちはどこから現れたの?魔物ってどういうこと?エルフ族について教えて!」
剣士「…そうだ!中央軍の人らや、エルフ族はどこへ行った!」
ゴブリンA『…エルフ?あァ、あいつらか…』
ゴブリンB『あイつらは所詮、媒体に過ギん』
魔道士「媒体?どういうこと…?」
ゴブリンA『…答えらレるのは、ココまデ。さぁみンな、準備をしろ」
ゴブリンたち『ここにイる人間は、使えるヤツ以外、皆殺シ…だ』チャキッ
ゴブリンたち『クク…』
ザワザワザワ……
687: 2014/09/11(木) 20:20:40 ID:WZfRyJaU
剣士「ちっ…好戦的かよ!」
武道家「割と数がいるぞ…」
魔道士「やるしか…ないんだね」
乙女格闘家「…やらなきゃ、やられるよ」
ゴブリンA『…お前ら、イけ!!』バッ!!
ゴブリンたち『ウォォオッ!!』ダッ
…ダダダダダダッ!!!!
剣士「…」チャキッ
武道家「…闘気」ポゥッ
魔道士「中…火炎…」パァッ
乙女格闘家「闘気ぃ…」ポゥッ
688: 2014/09/11(木) 20:21:23 ID:WZfRyJaU
ゴブリンたち『氏ねェェェ!!』
…ブォンッ!!!
剣士「せいやぁぁっ!!」
武道家「連弾っっ!!」
魔道士「魔法っ!!」
乙女格闘家「れんだぁぁんっ!!」
ボッ…ボゴォォォォォォンッ!!!!グラグラ…ッ!!
ゴブリンたち『ガッ……!?』
ゴブリンA『!!』
689: 2014/09/11(木) 20:22:06 ID:WZfRyJaU
ユラッ…
ゴブリンたち『ガハッ…』
ドシャアッ……
ゴブリンA『なッ…!』
剣士「…よわっ!」
武道家「はっ!見かけ倒しかよ」
乙女格闘家「もっと手応えあると思ったんだけど」
魔道士「中級魔法で余裕だね。ってか魔力が目に見えてあがってる…これが霧の効果…」
690: 2014/09/11(木) 20:22:42 ID:WZfRyJaU
ゴブリンA『まタ…か…』ギリッ
剣士「あ?」
ゴブリンA『お前ラのよウな…イレギュラーの存在が……!』
剣士「どっちかイレギュラーな存在だよ」
ゴブリンA『あノ…前に来た、中央軍とヤらの人間ドもモ…!話と違っテ……!』
剣士「…中央軍だと?」ピクッ
ゴブリンA『…』
剣士「やはり知っているのか!その話、詳しく聞かせて貰おうか!」
ゴブリンA『…話スと思うか?』
剣士「話させないと…思うか?」チャキッ
691: 2014/09/11(木) 20:23:22 ID:WZfRyJaU
ゴブリン長(ゴブリンA)『…こレでも一番隊を率いるゴブリン長…』
ゴブリン長『一矢報い、戦いに散らせて貰う!!』クワッ
剣士「…来いよ!!」
…………
……
692: 2014/09/11(木) 20:23:53 ID:WZfRyJaU
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…ギュウウッ
ゴブリン長『ぐっ…!き、キツイぞ…!』
ギリギリッ…
剣士「おめーみてぇな危険なヤツ、縄で縛りあげておくのが丁度いいんだよ」
ゴブリン長『クソッ…不覚…ッ!』
魔道士「…未だに信じられない。あなた、本当に魔物なの?」
ゴブリン長『フン…』
693: 2014/09/11(木) 20:24:41 ID:WZfRyJaU
…グイッ
剣士「ふん…じゃねえんだよ。お前ら、一体何なんだ。詳しく話せ」
ゴブリン長『…』
剣士「…」
ゴブリン長『…』
剣士「…悪いが、容赦しねぇぞ?」チャキッ
ゴブリン長『頃すナら殺せ…!』
剣士「…やっと見つけた大戦士兄や、この事件の手がかり。みすみす頃すと思うか」
ゴブリン長『…!』
ゴブリン長『だイ…戦士…。あァ…中央軍とヤらを率イていた…やツの名前か…』
剣士「…し、知ってるのか!!」
694: 2014/09/11(木) 20:25:14 ID:WZfRyJaU
ゴブリン長『知ってルも何も……くくっ』
剣士「…何を笑ってる」
ゴブリン長『クク…アイツか…』
剣士「何笑ってんだコラァ!」
グイッ!!ギリッ…ギリギリ……
ゴブリン長『ガっ…!』
魔道士「剣士、落ち着いて!」
武道家「そんな締め上げたら、聞けるもんも聞けねぇぞ!」
剣士「あ、あぁ…」パッ
…ドサッ!
ゴブリン長『グっ…』
695: 2014/09/11(木) 20:26:14 ID:WZfRyJaU
剣士「…ゴブリン長だっけか。てめぇ、この状況が分からないなら…分からせるか…?」
…チャキンッ
ゴブリン長『…チッ』
ゴブリン長『す、少シダけなら……話してヤる…』
剣士「!」
ゴブリン長『…』
剣士「…お、おう!!話してくれ!大戦士兄はどうなったんだ!」
ゴブリン長『あいツは……』
ビュッ!!ヒュオオオッ…バスンッッ!!
剣士「!?」
武道家「!」
魔道士「!」
乙女格闘家「!」
696: 2014/09/11(木) 20:27:27 ID:WZfRyJaU
ゴブリン長『…』
ブシュウッ!
……ドサッ!ゴロンッ…
剣士「なっ…!」
武道家「く、クビが吹き飛んだ…!?」
魔道士「なっ……!」フラッ
乙女格闘家「魔道士ちゃん!」ガシッ
魔道士「だ、大丈夫…!それより剣士、武道家!今のは風魔法…恐らく後ろから!出入り口のほう!」
剣士「何っ!?」バッ
モワモワ…サァァ……
???『…あらら、口封じの為に頃すべきじゃなかったかしら。場所がバレちゃった』
697: 2014/09/11(木) 20:28:04 ID:WZfRyJaU
剣士「…誰だ!さっきから霧の中から姿も見せず…!」
???『…待ちなさいって。あせっちゃダメ…』
剣士「あぁ!?」
???『クスッ…中々可愛い子たちが揃ってるじゃない…』
剣士「…?」
コォォ……ギシギシッ…ギシッ!!
???『これで、私の姿が見えるかしらぁ?』ズンッ!
剣士「うおぉっ!?」ビクッ
武道家「ぬおっ!?」
魔道士「うげっ…!」
乙女格闘家「き…きもちわるっ!!」
698: 2014/09/11(木) 20:29:08 ID:WZfRyJaU
???『気持ち悪いなんて心外ねぇ…』ハァァ
剣士「で、でっけぇ蜘蛛…!?」
武道家「恐らく大型のアラクネ…だが!こいつも人語を話すのかよ!?」
魔道士「な…なんなのこれ…次から次へと…」
乙女格闘家「…虫は、だめぇ…」フラァ
アラクネ『私の種族の名前を知ってるのは、とても嬉しいわね』
アラクネ『だけど、"こっち"にいる子と一緒にしないでくれる?』
魔道士「…」ピクッ
剣士「何?」
アラクネ『…』チラッ
ゴブリンたち『…』
アラクネ『ふぅん…。ゴブリン族を一蹴するのは中々やるじゃない』
剣士「い、一体なんなんだよ…お前らは…!」
699: 2014/09/11(木) 20:29:38 ID:WZfRyJaU
アラクネ『…焦らないの。もう少ししたら、全てが分かるから』
剣士「どういうことだ!」
アラクネ『でも、その前に貴方たちは氏んじゃうんだけどね。私のお腹の中で』
剣士「あ?」
アラクネ『…風刃魔法っ!!』パァッ!!
…ビュオオオッ!!
剣士「攻撃魔法!?」
魔道士「あっ!…ち、中風刃魔法っ!!」パァッ!!
ビュオオオッ!!バヒュウンッ!!!!
ヒュオォォッ……!
700: 2014/09/11(木) 20:30:20 ID:WZfRyJaU
剣士「ぐっ…!」
ビュウウッ……
魔道士「…な、なんて発動速度…!一瞬でも遅れてたら…!」ゾクッ
アラクネ『あらぁ?あらあら…。私の魔法を消すなんて……』
魔道士「…っ」
アラクネ『気に入らないわね』ギロッ
魔道士「!」
アラクネ『私はね、魔法だけじゃなくってよ!』ブンッ!!
魔道士「!」
ブンッ!!…ガキィィィンッ!!
剣士「…やらせるかよ!」ググッ
701: 2014/09/11(木) 20:31:44 ID:WZfRyJaU
魔道士「剣士!」
剣士「物理なら…俺の出番だコラァ…!」ギリギリ
アラクネ『あらあら…』グググッ
武道家「おい!余所見してていいのか!?闘気…衝撃波ぁぁっ!!」
…グニッ!
アラクネ『…ただ触ってるだけのようだけど?痛くも痒くもないわよ?』
武道家「発っっ!!」ポウッ
ゴバァァッッ!!!
アラクネ『!!』
ドゴォォンッ!!ズザザザァ……
アラクネ『い…痛いじゃない…!』ググッ
702: 2014/09/11(木) 20:32:37 ID:WZfRyJaU
乙女格闘家「今度は私の出番!!闘気…れんだぁぁんっ!!」バババッ!!
ボボボボォンッ!!…ズズゥン…
アラクネ『…がっ…!』フラッ
アラクネ『中々…やるじゃない……っ』
アラクネ『…ッ』
ドシャアッ!ズズゥン……!!
剣士「…よし!」
武道家「ふぅ…!これは夢か何か…だろ?」
魔道士「この町で何が起きてるっていうの…」
乙女格闘家「見たことのない魔物、魔獣…。それに凄く強いよね…。私たちじゃなかったら…」
剣士「…魔道士、こいつらの存在までは完璧に予測できたっつーことか?」
魔道士「私がさっき立てた仮説は、"極めて知性ある魔物"がやった事かもしれないっていう夢物語だった」
魔道士「だ、だけど…。これを見たら…やっぱり…」
703: 2014/09/11(木) 20:33:24 ID:WZfRyJaU
剣士「知性のある魔物たちが、人間やエルフ族を、飲み込もうとしている…か」
剣士「一体どこから湧いて出てきやがった…突然変異か…?」
魔道士「それは分かんないけど、さっきの会話の中で気になる言葉が2つ出てきたの」
剣士「何だ?」
魔道士「エルフ族が、媒体に過ぎないっていうことと、"こっち側"って言葉」
剣士「あぁ…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ゴブリン長『所詮、エルフ族は媒体に過ぎない』
アラクネ『こっち側のアラクネは…』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
剣士「確かに、そんな感じなことは言っていたな」
魔道士「どんな意味があるかはまだ分からないけど…。この魔物達が元凶で間違いないと思う」
704: 2014/09/11(木) 20:34:07 ID:WZfRyJaU
武道家「じゃあ、これからどうするんだ。ここにいても、何も始まらないぞ」
魔道士「この事を一刻も早く武装先生…じゃないや、武装中将さんに伝えないといけないと思う」
武道家「…そうするべきだ。これは俺らだけでどうこうできる問題じゃない」
魔道士「うん…」
剣士「だけどよ、他に魔物がいたら…この騒ぎだし、俺らを狙ってくるんだろ。霧の中、移動できるか?」
武道家「行くしかないだろ」
乙女格闘家「もしかして、大戦士先生たちもこんな風になって…もっと強い魔物に襲われたんじゃ…」
剣士「おいおい…不吉なこと言うなっつーの。大戦士兄で勝てない相手とか、俺らじゃ絶対に…」
…ズシンッ!!!
剣士「!」
魔道士「!」
武道家「!」
乙女格闘家「!」
705: 2014/09/11(木) 20:34:37 ID:WZfRyJaU
…ズシンッ!!!!ズシンッ…!!!!!ズシンッッ!!!
剣士「お…おいおいおいおい!!何だこの足音!!」
武道家「ば、ばか!でかい声出すな!」
剣士「じ、地鳴りがやべぇ!どんだけデケェ奴いるんだよ!!」
武道家「は、早く逃げようぜ!」
魔道士「うかつに外に出たら、鉢合わせするかもしれないよ!」
乙女格闘家「魔道士ちゃん、いい案はない!?」
魔道士「えっ…!わ…私!?」
乙女格闘家「魔道士ちゃんの考えなら、うまく逃げれそうな気がする!」
魔道士「えっ…!う、う~ん…ちょ、ちょっと待って…!」
ズシンズシンッ…!!バサッ…バサバサッ…!!
706: 2014/09/11(木) 20:35:20 ID:WZfRyJaU
剣士「な、なんか空飛んでる音とかするんだけど…」
武道家「それも一匹じゃねえぞ…」
剣士「魔道士、何も浮かばないならダッシュで町の外へ出たほうがー…」
魔道士「…」
魔道士「…そうだ」
魔道士「…こ、ここにある支部の転移装置を使おうよ!」バッ!
剣士「は!?」
武道家「お、おいおい!それが動かなくなったから、中央本部でも色々困ってるんだろ!?」
乙女格闘家「動かなかったら、使えないよ!」
魔道士「違うの!もしかしてだけど、この霧が影響だとしたら…私の理論で動くはず!」
剣士「…もしかしてって…!この状況で賭けるのかよ!」
魔道士「…うん」
剣士「…」
707: 2014/09/11(木) 20:36:15 ID:WZfRyJaU
武道家「…剣士、どうする」
乙女格闘家「…リーダー!」
剣士「…」
魔道士「…」
ズシンズシンズシンッ…!!バサバサッ!!
剣士「…分かった。お前のこと、信じるぞ」
魔道士「…うん」
武道家「じゃあ、早く転移装置のある部屋探すぞ!」
乙女格闘家「奥の部屋にいつもあったし、大体ある場所は分かるよ!」
708: 2014/09/11(木) 20:37:29 ID:WZfRyJaU
剣士「じゃあ行くぞ!3人とも、しっかり遅れんなよっ!」ダッ!
武道家「おうよ!」ダッ!
魔道士「うん!」ダッ!
乙女格闘家「当たり前だよ!」ダッ!
…ダダダダッ!!ギシギシ!ギシッ!!
剣士「多分、転移装置はあそこの角を曲がったところに…!」
ダダダダッ…!!
…バキャァンッ!!!ボォンッ!!パラパラ…
剣士「うおっ、今の音は!?」バッ
武道家「後ろのほうだ!壁か何か壊れたような…!」
717: 2014/09/13(土) 23:35:17 ID:xApy8kSE
ゴゴッ…ズシンッ……!!
武道家「…っ!?」
???『…同胞の血の臭いが、俺を呼んだのか』
剣士「なっ…!なんだ…こいつは…!」
???『…時はまだ満ちてはおらぬ。だが、ココへ来られるのは少々困る」
剣士「…こいつも…人語を…!」チャキッ
武道家「剣士…こ、こいつは…実力が…!」
剣士「んなの…見てわかるっつーの…!」
???『…その差が見えていながら、我へ挑もうというのか。若き人間よ』
718: 2014/09/13(土) 23:36:13 ID:xApy8kSE
剣士「…守るべき存在がある限り」
???『ふむ、立派な志だな』
剣士「…褒めてくれるのか。礼を言うべきか…?」
???『それでもお前たちを見つけた以上、容赦は出来ぬ事は分かってくれ』ゴォォ
剣士「…っ」チャキッ
武道家「…ずいぶんと似合わねぇ言葉遣いで、おっかねぇこと言いやがるな…!」スッ
???『む?あぁ…では、これでどうだ?』ググッ
…パァァッ!!
剣士「んっ…!」
魔道士「えっ!?」
武道家「なにっ!」
乙女格闘家「えっ…!」
719: 2014/09/13(土) 23:37:27 ID:xApy8kSE
…スタッ
???『これなら、我の言葉遣いでも構わないかな?』
剣士「にん…げん…だと!?」
武道家「お前、人間なのか!?」
魔道士「ど、どういうことなの…!」
乙女格闘家「それに、私たちと変わらない歳に見えるよ…?」
???『ふむ、そうか。ご紹介が遅れてすまないな』
???『我は、りゅ……』
…バサッバサッ!!
???『いつまで話をしている…!早く殺さないか…!』
720: 2014/09/13(土) 23:37:58 ID:xApy8kSE
剣士「また増えやがった…!まるでトカゲの巨大な化け物だな…!」
武道家「…話なんかしてる場合じゃねぇぞ!マジで逃げるぞ剣士!」
剣士「そのほうがよさそうだ!」
魔道士「うんっ!」
乙女格闘家「いそごっ!」
ダッ…ダダダダッ!!
???『人間のガキがぁ…!俺のコトをトカゲだのぬかしやがって…!」
???『俺は話す暇も与えねえからな…!逃がすかよ…!』スゥゥ
剣士「何を…」チラッ
???『カァッ!!!』ボッ!!
ゴォォォォォオッ!!!!
721: 2014/09/13(土) 23:38:35 ID:xApy8kSE
剣士「!?」
魔道士「か、火球っ!?大…水流魔法っ!!」パァァッ!!
…ザバァァンッ!!!ジュオォオッ…!!
魔道士「くっ…!」
???『…ほう、俺の攻撃を』
???『…』
???『なら、これではどうだ……?』グググッ
武道家「まだ何かする気だぞ!」
魔道士「くっ!ま、魔法なら…!この霧の中なら、どんな魔法でも!」
???『…』ニヤッ
???『お前らの世界にゃ、この威力のは見たことねぇだろ…!?』ググッ
ビュッ…ブォンッ!!!
ヒュッ、ヒュオオオオオッッ!!!
722: 2014/09/13(土) 23:39:28 ID:xApy8kSE
魔道士「…風魔法!?打ち返す!大風刃魔法っ!!」パァァッ!!
…ビュウオオオッ!!!
???『…残念』ニタッ
魔道士「!?」
ビュオッ!!
魔道士「えっ!?ま、魔法がすり抜け…!」
…ズバァンッ!!!!
魔道士「きゃああっ!!」
ズザザザァ…!ドォンッ!!
723: 2014/09/13(土) 23:40:32 ID:xApy8kSE
剣士「ま、魔道士!!」
魔道士「ぐっ…!な、何が…!」ズキンッ!
…ポタッ、ポタッ
???『そりゃ魔法じゃねぇんだなぁ。真空波ってやつだ』ギラッ
剣士「ぶ、物理攻撃か…!あんな目に見えた真空波を!」
乙女格闘家「魔道士ちゃん!回復薬っ!」バッ!
魔道士「うっ…!あ、ありがとう…!」
724: 2014/09/13(土) 23:41:05 ID:xApy8kSE
???『…おいおい、回復薬とかやめろよ。そんな粘られちゃ困るぜ?うちの親方様に怒鳴られちまうからな』
剣士「…っ!」
???『さぁて、さっさとクビも飛ばしてやるか…』グググッ
剣士「…全員!魔道士をフォローしながら、振り返らず転移室を目指せ!」
武道家「分かった!」ダッ!
魔道士「ご、ごめんね…!」ヨロッ
乙女格闘家「ううんっ!」ギュッ
ダダダダダッ!!!
???『おいおい、待てよ!大人しくしてろって!』
???『まぁ、落ち着け。ここは、我も一緒に参戦しよう』パァァッ!
725: 2014/09/13(土) 23:41:56 ID:xApy8kSE
ズッ…ズズズゥゥンッ…!!
武道家「今の音は…あいつが元の姿に戻った音だな!」
剣士「…一撃が来る前に!」
魔道士「ぐっ…!」ヨロヨロ
乙女格闘家「もう少しだよ、頑張って魔道士ちゃん!」
ダダダダダッ……!!
剣士「…み、見えた!あそこだ!」
"転移室"
武道家「突っ込め!!」
剣士「ぬおらあああっ!!」
726: 2014/09/13(土) 23:43:29 ID:xApy8kSE
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 転移装置の部屋 】
…バボォンッッ!!!
剣士「…っしゃあ!!」
ドロッ…
剣士「っと…ここも氏体だらけかよ…!」
武道家「きっとここから逃げようとしたんだろうな…」
乙女格闘家「それより、魔道士ちゃん!やっぱり転移装置は止まってるよ…どうやって動かすの?」
魔道士「え…えっと、転移装置が動かないのは多分…魔力源に異常があるからなんだけど…」
魔道士「動力源は他の魔力に干渉されやすくて、それは飛び込むゲートの周りにある部分でー…」
魔道士「…うっ!」ズキンッ
…ポタッ、ポタッ
剣士「魔道士…血が…!」
727: 2014/09/13(土) 23:45:40 ID:xApy8kSE
魔道士「だ、大丈夫だから…!よく聞いてっ…!」ズキンッ
魔道士「この…ゲートの周囲にある部分に、この霧の魔力の粒子が入り込んでるの…!」
魔道士「そのせいで、ゲート全体に魔力を送るのを邪魔してるんだと思う…!」
魔道士「だから、ここにある魔力の霧にある魔力を…使い切る…!」
剣士「使い切るってどうするんだよ!」
魔道士「すぐ説明するから…とにかく、みんなは転移装置の前へ…!」
剣士「わ、わかった」ダッ
タタタタッ…
魔道士「…そ、それじゃ…私がこの部屋にある魔力の霧を使い切るんだけど…!」
魔道士「敵も目の前だし、この支部を壊す勢いで魔法を使うから…それと同時に皆はゲートへ飛び混んで…!」
728: 2014/09/13(土) 23:46:21 ID:xApy8kSE
剣士「お、おう!」
魔道士「…私の火炎に焼かれるのが先か、中央本部へ行くのが先かってね♪」
剣士「お前、怖いこと言うなよ…」
武道家「はは…」
乙女格闘家「魔道士ちゃんの魔法は凄いからね、期待してる♪」
魔道士「…っ」チラッ
モワッ……
魔道士(さ、さっきの真空波で壁に大きな穴が…)
魔道士(そのせいで霧が絶えず部屋に…!それにあの敵もすぐそばにいる…!)
魔道士(この状況でみんなを守るには…方法は…これしか……っ)
729: 2014/09/13(土) 23:46:57 ID:xApy8kSE
ズシンズシンズシン……!!
魔道士「いけない、さっきの奴らが…!じゃあ、行くよ…」
魔道士「全員、衝撃に備えるように食いしばってね!」パァァッ!!
剣士「…」
剣士「待て、よく考えたらお前、魔法を使うって…ゲートに触れないようにどうやって魔法を……」
魔道士「…」ニコッ
魔道士「極…火炎……」パァァァ!!
剣士「おい!!待てって!!」
武道家「ま、魔道士…?」
乙女格闘家「ち、ちょっと待って魔道士ちゃん!!」
730: 2014/09/13(土) 23:47:35 ID:xApy8kSE
魔道士(剣士……ごめんね……)
魔道士「魔法っっっ!!」
剣士「ま…魔道士ぃぃっ!」バッ!
ピカッ………!!
ズッ…ズドォォォォォォオンッ!!!!!
…………
……
…
731: 2014/09/13(土) 23:48:36 ID:xApy8kSE
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 転移装置室 】
バチッ…バチバチバチッ……!!
ギュウウンッ!!バシュンッ!!
…ドサドサッ!!
剣士「…ッ!」
武道家「ぬおっ!」
乙女格闘家「あうっ!」
732: 2014/09/13(土) 23:49:34 ID:xApy8kSE
剣士「こ、ここは…」ムクッ
武道家「どこかの建物…。中央軍の本部…か…?」
剣士「…」
剣士「…!」ハッ
剣士「……ま、魔道士は!」
武道家「…そうだ!魔道士は!?」
乙女格闘家「魔道士ちゃん!?」
…シーン…
剣士「なっ…!何でいないんだ!!!」
武道家「お…おい!冗談だろ!?」
剣士「な、何であいつ…!!」
乙女格闘家「ま、まさか…私たちを逃がすために犠牲に…」ブルッ
733: 2014/09/13(土) 23:50:08 ID:xApy8kSE
剣士「なっ…!!」
武道家「ウソだろっ!!ま、待てよ!!じゃあアイツはまだあの地獄にいるのかよ!?」
乙女格闘家「そ、そんなこと……!」
剣士「~~…っ!」ブルッ
剣士「…も、戻る!俺はあそこへ戻るぞ!!ほら、動かすぞ!転移装置!」
…ゴンッ!!!
剣士「動けよ…!あそこへ戻せ!!おい!!!動け!!!どうすれば動くんだ!!」
ゴツッ!ゴツンッ!!!ゴツンッッ!!!ゴツンッ!!!!!!!
武道家「剣士、拳がイカれちまう!!」ガシッ
剣士「離せコラァ!!!」
…バキィッ!!
武道家「がっ!」
734: 2014/09/13(土) 23:51:41 ID:xApy8kSE
剣士「魔道士のやつ…何で…!!うおおおおっ!!!」
武道家「剣士!しっかりしろ!!」
剣士「うあああああっ!!!」
武道家「くっ…!だらぁぁっ!!」ブンッ!!!
…バキャアッ!!!ズザザザァ…!!
剣士「ぐあっ!!」
武道家「はぁ…はぁ…!落ち着けぇぇ!」
剣士「何だとコラ…!魔道士がお前…何が…!お前…おいっっ!!!」スクッ
武道家「俺だってどうすりゃいいかわかんねぇよ!!」
剣士「んだったら、この装置動かすくらいの気力でぶん殴れや!」
武道家「あぁ!?んなことしても意味ねえんだよ!!」
剣士「気合でどうにかすんだよ!!」
735: 2014/09/13(土) 23:52:42 ID:xApy8kSE
武道家「バカ野郎が!!そんなんでやれたら俺だって……!」ドクンッ
武道家「…う゛っ!?」ドクンッ!!!
剣士「あぁ!?」
武道家「ごほっ…げほっ…げほげほっ!」
剣士「!」
乙女格闘家「!」
武道家「お゛…あ゛…がふっ…!」ゲホッ!
武道家「あ…?」
…ベチャッ!!ポタッ…ポタッ…
剣士「…お、おい!?」
乙女格闘家「ぶ、武道家…?何で、血を…吐いて…」
736: 2014/09/13(土) 23:53:33 ID:xApy8kSE
武道家「う゛っ…あ……っ」グルンッ
…ベチャアッ!ドシャッ…
剣士「え…」
乙女格闘家「…え?」
武道家「…」
ビクッ…ビクンッ……
剣士「ぶ…どうか……?」
乙女格闘家「な…何なの…?えっ……?」
737: 2014/09/13(土) 23:54:14 ID:xApy8kSE
剣士「お…おい!おい!!!」
乙女格闘家「や…やだぁぁっ!!ど、どうしたの武道家ぁぁ!」
武道家「…」
ドタドタ…ガチャッ!!
大魔術中佐「一体さっきから何の騒ぎですか!やかましい!」
大魔術中佐「……って、あなたたちは…」ハッ
剣士「あ、あんたは…」
乙女格闘家「武道家、武道家ぁぁぁっ!!」
武道家「…」
大魔術中佐「な…。ど、どうしたというんです…?」
…………
……
…
738: 2014/09/13(土) 23:54:58 ID:xApy8kSE
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 同時刻 中央都市 教会 】
リンゴーン…リンゴーン……
神官「…う~ん!今日も天気がいいなぁ」ノビノビ
神官「じゃ、本日も人のため…見回りなど頑張りますかぁ!」
…バキッ!
神官「ん?」
カキィンッ!…コロンッ…コロンコロン……
神官「…えっ」
…キラッ
739: 2014/09/13(土) 23:55:56 ID:xApy8kSE
神官「な…何でヒーリング用の杖の魔石が…」
神官「新しく購入したばっかなのに…」
神官「…」
神官「…うっ!?」
…ゾクッ!
神官「な…何だろう、今の悪寒……」
神官「凄く…嫌な感じだった…」
神官「風邪…かな?」
………
…
740: 2014/09/13(土) 23:56:33 ID:xApy8kSE
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 雪降町 魔術賢者の自宅 】
魔術賢者「…」
魔術賢者(…最近、中央軍で色々と動いていると噂を耳にする)
魔術賢者(武装先生…じゃなくて、武装中将殿も動いているというし……)
魔術賢者(あの地震から何かが変な気がする…。他の軍の人間もそれに気づいてる…)
魔術賢者(左官以上は何か教えて貰ってるようだけど…)
魔術賢者(旦那が私に教えないのはちょっと…不満…)ブスー
741: 2014/09/13(土) 23:57:05 ID:xApy8kSE
…スクッ
魔術賢者(ま、軍事機密は夫婦間の問題…じゃないのか…)
魔術賢者(乙女格闘家じゃないし…私にはわからん…)
魔術賢者(魔道士も、これにだったら答えてくれたかもな……)
…カキィーン……!
魔術賢者(ん、何の音…)クルッ
コロコロ…キラッ
魔術賢者(…私の杖の魔石が…落ちた音か)
魔術賢者(ふむ、最近…新調したばかりだったのだが……)
742: 2014/09/13(土) 23:57:38 ID:xApy8kSE
…ゾクッ!
魔術賢者(!)
魔術賢者(な、何…今の悪寒…)
魔術賢者(凄く…嫌な…)
魔術賢者(…)
………
……
…
749: 2014/09/16(火) 21:06:32 ID:agLYR6dA
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1時間後 中央軍本部 応接室 】
コチ…コチ…
剣士「…」
乙女格闘家「…」
剣士「…」
乙女格闘家「…」
剣士「…どうして、こんなこと……」ボソッ
乙女格闘家「…」
750: 2014/09/16(火) 21:07:03 ID:agLYR6dA
剣士「…俺が、あの時エルフ族の村へ行こうと言ったから…?」
剣士「俺がみんなを引っ張ったから…?」
乙女格闘家「…」
剣士「…くそっ!くそぉぉぉっ!!くそぉぉぉ…っ!!!」
乙女格闘家「…」
乙女格闘家「…剣士のせいだよ」
剣士「!」
乙女格闘家「って言えばいいの?」
剣士「何…?」
乙女格闘家「違うでしょ。剣士の言葉に、私やみんなが動かされた」
乙女格闘家「その言葉を信じた以上、剣士の責任じゃないんだよ。ううん、誰が責任とかはないと思うよ」
乙女格闘家「私だって、そんな事言ったら…、何であの時、やめようって言えなかったのって…」グスッ
751: 2014/09/16(火) 21:07:38 ID:agLYR6dA
剣士「乙女格闘家…」
乙女格闘家「だからそうやって自分を責めないで。私だって、知らない世界に飛び込むのが楽しく思った」
乙女格闘家「みんなだって、ぶつぶつ言いながらも洞窟を見つけたり、東方へ乗り込むって言った時にワクワクしてたと思う」
乙女格闘家「……うん。責任とかの問題じゃないんだと思う」
剣士「…」
乙女格闘家「…」
コンコン…ガチャッ
大魔術中佐「お待たせいたしました」
剣士「!」
乙女格闘家「!」
752: 2014/09/16(火) 21:08:24 ID:agLYR6dA
大魔術中佐「…武道家さんの容体は安定しています」
大魔術中佐「さっき貴方たちに早口で説明されたものの、ほとんど聞き取れませんでしたが…」
大魔術中佐「東方の祭壇町へ勝手に行った挙句、行方不明者と怪我人を出したということで相違ないですね?」
剣士「…」
乙女格闘家「…」
大魔術中佐「…本来なら、今すぐ貴方たちを縛り上げ、罪人扱いにするべきでしょう」
大魔術中佐「しかし、祭壇町から生きて帰還した以上、その情報はしゃべって貰いますよ」
剣士「…っ」
乙女格闘家「…はい」
………
……
753: 2014/09/16(火) 21:09:08 ID:agLYR6dA
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大魔術中佐「…にわかには信じられない話ですね」
剣士「…」
乙女格闘家「…」
大魔術中佐「人語を理解し、知性のある魔物。地鳴りを起こす程の大きさの魔物…ですか」
大魔術中佐「しかもそれが人間の姿に変身したと。…夢物語ですね、まるで」
剣士「…嘘は言ってねぇ」
大魔術中佐「それは無論、信じています」
剣士「…信じてくれるのか」
大魔術中佐「そりゃそうです。君だって必氏なんでしょうから」
剣士「…何が」
754: 2014/09/16(火) 21:09:40 ID:agLYR6dA
大魔術中佐「自分の所為で、愛する者を失った挙句」
大魔術中佐「歴戦の友を治療室送りにし、自分の無力さを知ってしまった君が最後にすがれるのは…」
大魔術中佐「私たちしかいないということが、分かっているからですよ」ニコッ
剣士「…ッッ!」
乙女格闘家「ちょっと、そんな言い方!」ガタッ!
大魔術中佐「事実でしょう?」
乙女格闘家「だけど!」
剣士「…いい、乙女格闘家……っっ」ギリッ
乙女格闘家「剣士…」
剣士「…ッ」
755: 2014/09/16(火) 21:10:11 ID:agLYR6dA
大魔術中佐「…」
大魔術中佐「何だ、武装中将殿に聞いたよりよっぽど大人ですね」ポリポリ
剣士「…?」
乙女格闘家「え?」
大魔術中佐「それにしても、武装中将殿も読みが鋭い」フゥ
剣士「…どういうことだ」
大魔術中佐「いや何、前に会った時…エルフ族へ対策をとるって武装中将殿が立ちあがったじゃないですか?」
大魔術中佐「その時に念の為、君たちが行動を起こす可能性が高いので…準備を進めてほしいと言っていたんです」
剣士「!」
乙女格闘家「!」
756: 2014/09/16(火) 21:10:45 ID:agLYR6dA
大魔術中佐「"今回の事案は、剣士たちといえども犠牲者が出る可能性が非常に高い"」
大魔術中佐「"だが情報を得て戻ってきた場合、それを最重要案件とし、処理の計画を立てる"…ってね」
剣士「ぶ…武装のオッサンが…」
乙女格闘家「私たちの行動を…読んでいた…」
大魔術中佐「そういうことです」
大魔術中佐「どうやって東方大陸沿いの監視を突破したのかは分かりませんが、全て予測の範囲内でした」
剣士「…」
乙女格闘家「…」
大魔術中佐「この事は、すぐにでも武装中将殿に伝えます」
大魔術中佐「貴方たちはえーと…武道家を中央都市の治療院へ運ばせるので、一緒に着いていくといいでしょう」
大魔術中佐「それでは私はこれで」スクッ
757: 2014/09/16(火) 21:11:15 ID:agLYR6dA
剣士「…ま、待ってくれ!」
大魔術中佐「はい?」
剣士「…この情報で、きっと武装中将は祭壇町への編成隊を組みなおすと思う!」
大魔術中佐「でしょうね」
剣士「だ、だったら…その時!俺も一緒に、そこへ行きたいっ!!」
大魔術中佐「なぜです?」
剣士「な…なぜって…!!」
剣士「ま、魔道士を助けに…!!」
大魔術中佐「…貴方たちが言うのが本当なら、そこは地獄。またその中へ行く気ですか?」
剣士「だ、だって…魔道士は…!」
758: 2014/09/16(火) 21:12:03 ID:agLYR6dA
大魔術中佐「…」
…グイッ!
剣士「ぐっ…!?」
大魔術中佐「…若造が、舐めるなよ」
剣士「!!」
大魔術中佐「お前は所詮、ただ少し強い冒険者に過ぎなかったということだ」
大魔術中佐「お前のせいで、お前の愛しい人は、地獄を見ている。いや…もう見せられたか?」
大魔術中佐「知性のある魔物…人型がいるんだったか?くくっ…」
大魔術中佐「生殖はどうだ?もしかしたら…どうなっているかな…?」
大魔術中佐「あぁ…その前に、自らの火炎で身体のパーツも残さぬほど吹き飛んだか…?」
剣士「…っ!!」
乙女格闘家「や…っ!そんな事言うの…やめてください…っ!!」
759: 2014/09/16(火) 21:12:44 ID:agLYR6dA
大魔術中佐「…何がやめてだ。お前らヒヨっこが、考えもなしに飛び込むからそういう結果を出したんだろう」
大魔術中佐「この期に及んで、そんなアホな考えをもう持たぬように、改めて教えているんだ」
大魔術中佐「あとは軍に任せて、静かに過ごせ…ってね」
パッ…ドサッ!
剣士「うっ…」
大魔術中佐「大目に見るのは今回までだけだ。これ以後、祭壇町への侵入をしたり…」
大魔術中佐「この中央軍本部へ立ち入った時点で、お前らは重罪として処理する。いいな!」
大魔術中佐「…」
大魔術中佐「ま…それさえ守れば、あとは私らに全部任せておいてください。では」ニコッ
カツカツカツ…
ガチャッ、ギィィ…バタンッ……
760: 2014/09/16(火) 21:13:22 ID:agLYR6dA
乙女格闘家「け、剣士…!」バッ
剣士「…」
剣士「はは…」
乙女格闘家「…剣士?」
剣士「情けない話だな。全くもってあの女軍人さんは正論だよ…」
乙女格闘家「…」
剣士「俺は俺のせいで、魔道士を失ったんだよ。はは…はははっ!」
乙女格闘家「…っ」
剣士「…どうすりゃいいんだよ…」
剣士「俺は…どうすればいいんだ……!!」
………
……
…
761: 2014/09/16(火) 21:13:53 ID:agLYR6dA
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 少しして 西海岸街 】
…ガチャッ
大魔術中佐「失礼致します。中央より転移装置を利用し、武装中将殿にお伝えすべく参りました」
武装中将「…来たか。して、内容は」
大魔術中佐「剣士たちに関してです」
武装中将「…やはりか…。情報は?」
大魔術中佐「得られました」
武装中将「…犠牲者はいたのか」
762: 2014/09/16(火) 21:14:25 ID:agLYR6dA
大魔術中佐「…魔道士が現地へ取り残されたようですが、恐らく氏亡したものと」
武装中将「…っ!」
大魔術中佐「武道家は、怪我自体はなかったものの中央へ戻った後に倒れ、治療院へ送りました」
大魔術中佐「彼は魔力枯渇症。恐らく、霧の魔力地域から、急激に濃度の低い中央へ来たためにショックが起きたものと。」
大魔術中佐「…恥ずかしい事ですが、我々でなく無謀ともいえる若き冒険者によって謎の解明へ近づいたわけですね」
武装中将「…」
武装中将「今はその得られた情報を感謝し、使わせてもらおう。その情報を整理次第、すぐに対策をとる」
大魔術中佐「…承知致しました」ビシッ
………
……
…
763: 2014/09/16(火) 21:15:04 ID:agLYR6dA
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
764: 2014/09/16(火) 21:15:47 ID:agLYR6dA
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数時間後 治療院 待合室 】
剣士「…」
乙女格闘家「…まだ、武道家は目を覚まさない」
剣士「…」
乙女格闘家「…剣士」
剣士「…」
乙女格闘家「…剣士」
剣士「…」
乙女格闘家「武道家は、祭壇町で何かを受けて倒れたの…?」
乙女格闘家「それとも、元々何か…病気を…」
765: 2014/09/16(火) 21:16:27 ID:agLYR6dA
剣士「…」
乙女格闘家「…」
剣士「…それは」
乙女格闘家「…うん」
剣士「それは俺から言う事じゃない。あいつが目を覚ましたら…自分で聞いてくれ」
乙女格闘家「…わかった」
剣士「…」
ガチャッ…ギィィ…
治療員「…武道家さんのお友達の方ですね?」
乙女格闘家「は、はい」ガタッ
剣士「…」
766: 2014/09/16(火) 21:17:13 ID:agLYR6dA
治療員「…先ほど、武道家さんは目を覚まされました」
乙女格闘家「!」
剣士「…」
治療員「面会が可能なので、どうぞ」
乙女格闘家「は、はいっ」
剣士「…」
………
……
…
768: 2014/09/16(火) 21:17:47 ID:agLYR6dA
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 病 室 】
ガチャッ…
乙女格闘家「…武道家!」
剣士「…」
武道家「…よっ」
ダダダッ…ギュウッ…!
乙女格闘家「よ…良かったよぉ…!」グスッ
武道家「おいおい、大げさな。血を吐いて倒れただけじゃねーか」ハハハ
乙女格闘家「うぅぅ~…」ギュウッ…
769: 2014/09/16(火) 21:18:38 ID:agLYR6dA
剣士「…」
武道家「…剣士」
乙女格闘家「あっ…」ハッ
武道家「お前…俺が倒れたあと…どうなったんだ?魔道士は…」
剣士「…」
剣士「氏んだろ、多分」ククッ
武道家「!」
乙女格闘家「!」
剣士「あんな場所で生きてられるわけがねぇよ。氏んじまったぜ、きっと」
剣士「それとも何か、実験体にでもされて、弄ばれてもしたか?」
剣士「さぁーな!知らん知らん!はっはっは!」
770: 2014/09/16(火) 21:19:47 ID:agLYR6dA
武道家「…お前!」
乙女格闘家「剣士…何言ってるの!!」
剣士「…それより武道家、早く元気になれよ。早く依頼でも探そうぜ」
武道家「…待てや」
剣士「あ?」
武道家「お前…何言ってやがる!!」
剣士「…何が?」
武道家「何がって…!」
剣士「依頼探す気ないのか?なら、あとは勝手に仲良くやってくれ」
剣士「俺はちょっと外の空気吸ってくるわ」クルッ
武道家「…おい!待てコラァ!!」
ガチャッ……バタンッ!
771: 2014/09/16(火) 21:20:26 ID:agLYR6dA
武道家「こ…この…!」ググッ
乙女格闘家「ま…待って…!」ギュッ
武道家「…乙女格闘家?」
乙女格闘家「私…今、剣士と顔合わせられないよ…」グスッ
武道家「どうして…。泣いてるからか?」
乙女格闘家「違う…違うの…」
武道家「…じゃあ何で」
乙女格闘家「私、自分で自分が本当に嫌…!」
乙女格闘家「どうしよう…わ、私…」
武道家「どうしたんだ…?落ち着いて話をしてくれ…」
772: 2014/09/16(火) 21:21:50 ID:agLYR6dA
乙女格闘家「…武道家、絶対に私のこと…嫌いになる」
武道家「俺は嫌いになんかならん…言ってくれ…」
乙女格闘家「その…」
乙女格闘家「私…武道家の顔みたら、武道家が同じ立場じゃないって一瞬思っちゃったの…!」ブルッ
乙女格闘家「最低…最低だよ…」
乙女格闘家「こうして、最低だって言い聞かせて…自分を落ち着かせようとしてる自分も…!!」
武道家「…」
乙女格闘家「…こんな思いで、剣士と顔を合わせたくないの…!」
乙女格闘家「それもワガママで、もっと嫌になって…っ」ポロポロ
773: 2014/09/16(火) 21:22:44 ID:agLYR6dA
武道家「…乙女格闘家」
乙女格闘家「…」グスッ
武道家「…乙女格闘家」
…ギュウッ
乙女格闘家「!」
武道家「なぁに、人としてそう思っちまうのは仕方ないことだと思う…」
武道家「だけど、剣士の気持ちも痛いほど分かるし、俺だってどうしていいかわかんねぇ…」
武道家「こんな時、どうすりゃいいんだろうな…」
武道家「…立場が逆だったかもしれないのに、それも分かってるのに…」
武道家「今、俺もアイツにどんな言葉をかけていいのかわかんねぇよ…………」
乙女格闘家「うぅぅ…」
武道家「…」ギュッ…
774: 2014/09/16(火) 21:23:54 ID:agLYR6dA
乙女格闘家「魔道士ちゃん…きっと…無事だよね…」
武道家「あ、アイツが氏ぬわけねぇよ!氏ぬわけねぇ!!」
乙女格闘家「…っ」
武道家「魔道士…剣士…」
………
……
…
775: 2014/09/16(火) 21:24:56 ID:agLYR6dA
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・
・
776: 2014/09/16(火) 21:26:01 ID:agLYR6dA
――――その日、剣士は戻ってくることはなかった。
いや、その日から剣士は姿を消したのだ。
"黄金世代の卵"とも呼ばれたパーティのリーダーが行方不明になったことは瞬く間に広がった。
当然、神官や魔術賢者の耳にも入ることとなり、
回復した武道家、乙女格闘家と合流して剣士の捜索にあたるも、行方を知ることは適わなかった。
あの時、どうして追いかけなかったのか……。
その責任を感じた武道家と乙女格闘家もまた、姿を消した。
そして、それと同時期に、世界は大きく揺れ動く…………。
777: 2014/09/16(火) 21:26:36 ID:agLYR6dA
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 < 数日後 >中央軍本部 】
元帥「…よく集まってくれた。これより、祭壇町における問題解決のための会議を行う」
槍士大将「…」
武装中将「…」
聖大佐「…」
大魔術中佐「…」
豪闘少佐「…」
778: 2014/09/16(火) 21:27:13 ID:agLYR6dA
元帥「本来、拳闘家少佐の参加や大戦士の参加もあっただろう」
元帥「しかし…みなの知っての通り、現在も彼らに関する情報は得られていない」
全員「…」
元帥「他に危害が及ぶ前に、改めて情報の整理を行おうと思う」
全員「…」
元帥「この度起きた地震と同時に、太陽の祭壇の町にてエルフ族の消失と支部の壊滅的被害が確認された」
元帥「その後、拳闘家少佐及び大戦士の小隊が突入。どちらも行方不明となっている」
元帥「更に、剣士率いる若き冒険者パーティが無断とはいえ、知性のある魔物の存在を知り、我々に情報を提供」
元帥「彼らは1名の犠牲者を出すも、エルフ族の仕業と考えていた我々の考えを覆すかもしれぬ情報を持ってきてくれた」
元帥「まぁそれでも、これがエルフ族の仕業ではない!と言い切れる訳ではないが」
779: 2014/09/16(火) 21:27:46 ID:agLYR6dA
槍士大将「…それで、早急に対策を練ればならないということですね」
元帥「その通りだ。全員が集まるまで、多少の時間はかかってしまったが…」
槍士大将「…元帥殿は、これからのこと、どうお考えでしょうか」
元帥「先ず、祭壇町を囲むようにして現在も閉鎖を行っているのを強化し、防衛線とするつもりだ」
槍士大将「防衛線ですか?」
元帥「本当に知性のある魔物が人を襲っていたというなら、外へ漏らすわけには絶対にいかん!」
槍士大将「…でしょうな」
元帥「その後、我々のいずれかを隊長とし、祭壇町へ本格的な"攻撃部隊"を送る」
元帥「指揮者を失う云々を言っている場合ではない」
元帥「いかに知性の高い魔物であろうが、我々を敵としたことを思い知らせてやる他はないだろう」
元帥「多少時間はかかるが、全世界にある支部から攻撃隊のメンバーを組み、祭壇町奪回戦を開始する」
全員「…」
780: 2014/09/16(火) 21:28:26 ID:agLYR6dA
聖大佐「…ちょっとお待ちください、元帥殿」スッ
元帥「なんだね」
聖大佐「その情報…。つまり、知性ある魔獣、魔物の信憑性はどうでしょうか」
元帥「何?」
聖大佐「聞けばそれは、ただの冒険者パーティから受け取った情報というじゃありませんか」
聖大佐「それが大戦士さんクラスの人間ならまだしも、ただの冒険者の情報…自分は信用しきれませんね」
聖大佐「その前に、その情報が本当か軍で人選した調査隊を組み…その確認後に行うべきです」
聖大佐「攻撃部隊1つを編成し、動かすのも、何百万という金…住民たちの血税が消費されるんですよ?」
元帥「それはだな……」
…スッ
武装中将「元帥殿、ここは自分が」
武装中将「聖大佐…この作戦及び今回の情報で動く事を決めたのは自分が思ってのこと」
武装中将「これが虚の情報だった場合、この席は空けるつもりだ」
781: 2014/09/16(火) 21:28:59 ID:agLYR6dA
聖大佐「…面白いですね。武装中将殿がその地位を賭けてまでも、その一般冒険者を信用してると」
武装中将「そうだ」ギロッ
聖大佐「…」
聖大佐「…分かりましたよ。その冒険者たちの話が本当であることを願います」
武装中将「…分かってくれて有難い」
武装中将(…剣士、魔道士、武道家、乙女格闘家…。お前たちが命を賭して得たものを決して無にはしない)
元帥「…全員、分かってもらえたようだな」
元帥「それではこれより、防衛線の確保及び前線部隊の調整に関し、話し合いを進める!」
…………
……
…
782: 2014/09/16(火) 21:29:29 ID:agLYR6dA
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
783: 2014/09/16(火) 21:30:08 ID:agLYR6dA
<…更にその日から数日が流れて…>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 中央軍 依頼一般受付所 】
ザワザワ…ガヤガヤ…
受付嬢「続いての方、どうぞ」
傭兵「失礼する。以前紹介された依頼は完了したのだがー…」
受付嬢「では、新しい依頼表を発行致しますのでお待ちください……」
ガヤガヤ……ワイワイ…
トコトコ……
…ストンッ
冒険者A「はぁーっ…相変わらず混んでるな…」
冒険者A「待合室の椅子にすら座るのにすあ時間かかるの何とかしてくれねぇかなぁ…」
784: 2014/09/16(火) 21:30:47 ID:agLYR6dA
…ポンッ
冒険者B「ういっす!」
冒険者A「…おっ!」
冒険者B「久しぶり。やっぱりここにいたか」
冒険者A「お前、子供生まれるっつってから全然姿見せないから…冒険者辞めたのかと…」
冒険者B「はっはっは!いや何だ、ちょーっとに噂を小耳に挟んだもんでよ」
冒険者A「…噂?」
冒険者B「そうそう。お前、知らないの?」
冒険者A「おう、何だそれ」
冒険者B「実はさ、今日あたり…中央軍での一般公募が始まるらしいんだ」ボソボソ
冒険者A「何っ!?」
785: 2014/09/16(火) 21:31:17 ID:agLYR6dA
冒険者B「ばか、声がでけぇ!」
冒険者A「わ、わりぃ。なんでそんな情報…知ってるんだ?」ボソボソ
冒険者B「本当に何も知らないんだな」
冒険者A「…うるせーよ。で、何でだ?」
冒険者B「少し前に、あの成果あげまくってたパーティが解体っつーか…行方不明になったのは知ってるだろ?」
冒険者A「あぁ」
冒険者B「実はそれは、中央軍に深く関係した事案に触れちまって、その問題に巻き込まれたとかっつー話でな」
冒険者B「その事案がすげー面倒で、一般の冒険者からも軍への応援要請として募集がかかるかもしれないんだと」
冒険者A「…へぇ!でも、何でその情報をお前が?」
冒険者B「身内に中央軍の人間がいてさ、そいつの話だから信憑性は高いわけで」
冒険者A「いいじゃん…。それが本当なら、俺も今日志願するぞ?」
786: 2014/09/16(火) 21:33:10 ID:agLYR6dA
冒険者B「あたりまえじゃねえか!給金はあるし、万々歳だ」
冒険者A「…いつ出るのかなー。本当ならめっちゃ喜ぶんだけど」
冒険者B「信用しろよ…」
ガチャッ…ギィィ…
ドタドタドタ…!!
冒険者A「…あ?」
冒険者B「なんか妙に騒がしい…って!今入ってきた奴、ありゃ中央軍のお偉いさんの制服だぞ!」
冒険者A「何!?ってことはまさか…!」
中央軍人「…みなのもの、静かにしろ!これより、中央軍からの発表がある!」
冒険者A「…!」
冒険者B「…!」
………
……
…
787: 2014/09/16(火) 21:33:41 ID:agLYR6dA
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――この情報は、中央軍が一部の人間へ流した噂だった。
中央軍は、少しでも戦闘力を確保する為、一般の冒険者から改めて軍の補強を行う策を出したのだ。
全て元帥と武装中将の考えの中で半ば強行的に進められた策に、内部からの反発の声も少なくなかった。
…しかし。
既に拳闘家および大戦士の率いた2つの戦闘部隊を失っていた軍は、その補強を受け入れざるを得なかった。
その後、軍へと入隊した冒険者たちは何も知らぬまま、東方大陸の防衛線へと配置される。
そして、配置の完了と、中央軍の"攻撃部隊"の形成が完了する頃には、1か月がたっていた。
その間、中央軍は注意深く相手の動きを探っていたが、
東方祭壇町を含め、世界は何事もなく…ただ静かに時間は過ぎた。
そう…静かに。ただ、静かに。不気味な程に……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
788: 2014/09/16(火) 21:34:12 ID:agLYR6dA
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
789: 2014/09/16(火) 21:35:16 ID:agLYR6dA
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 そして 中央都市の路地裏 】
…バキィッ!!
盗人「がっ…!」
…ドサッ
???A「…ったく、逃げ足ばっか早い盗人だぜ。面倒くせーっつーの」ハァ
???B「あのね、これは依頼なんだからしっかりしろって」
???A「こんな安っぽい依頼受けてたって仕方ねーだろ」
???B「…こういうところからの積み重ねが大事だっての」
???A「そう言うがな、その言葉を言い続けてもう3年目だぜ?」
790: 2014/09/16(火) 21:35:49 ID:agLYR6dA
盗人「ぐっ…!」ブルブル
盗人「て…てめぇら…一体何もんだ…!」
剣豪(豪剣士)「…冒険黄金時代を飾る未来の卵、"剣豪"とは俺のことだ。こいつは"戦士"、俺の勇敢なる仲間さ」
戦士(少戦士)「はいはい。っつーか、盗人に豪語するのは恥ずかしいからヤメてくれないか」
盗人「…てめぇら…覚えとけよ…!」
剣豪「うるせえよ。いいから寝てろ」
ブンッ…バキッ!!
…ドサッ!
……
…
799: 2014/09/18(木) 21:23:59 ID:n/aAw2Iw
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 カフェ 】
…グビッ
剣豪「ったく、本当にショボい依頼ばっかで腹の足しにすらなりゃしねぇ」
戦士「…だから先月に募集された中央軍へ志願すれば良かったって言ったじゃないか」
剣豪「バカ野郎、剣士先ぱ…剣士が軍へ入らなかったのにどうして俺らが」
戦士「あのな…」
剣豪「別に、剣士に感化されて名前変えたわけじゃねーからな」
戦士「何も言ってないだろう」
800: 2014/09/18(木) 21:24:36 ID:n/aAw2Iw
剣豪「…」
戦士「…」
剣豪「剣士たち、どこ行ったんだろうな」ハァ
戦士「行方不明…か」
剣豪「大戦士もあの地震の日から学校に戻ってないみたいだし…嫌な予感がするぜ」
戦士「おいこら"大戦士師匠"または、"大戦士さん"と呼べ」
剣豪「あの人がいなくなってから、すぐに剣士たちが消えたと聞く。何か関係がありそうだが…」
戦士「話聞けよ。軍の緊急志願兵の募集にしろ、何か動いているのは確かだと分かるんだけどな…」
剣豪「…」
戦士「…」
801: 2014/09/18(木) 21:25:26 ID:n/aAw2Iw
ゴゴッ…ミシミシミシ…
剣豪「!」
戦士「!」
ゴゴゴゴ…カタカタ……
剣豪「…」
戦士「…」
カタカタ…カタ……
……
剣豪「…収まったか」
戦士「最近、地震が本当にひどくないか…。前々から地震はあったが…」
戦士「あの日から微震とはいえ、より酷くなった気がする…」
802: 2014/09/18(木) 21:25:58 ID:n/aAw2Iw
剣豪「…余震ってやつじゃないのか?」
戦士「あー…まぁそうかもしんないけど」
剣豪「何か感じてるとでも?」
戦士「いや…」
剣豪「…」
戦士「…」
コツコツコツ…カチャッ
店員「お待たせいたしました、ご注文のコーヒーになります」
戦士「ん…。お前頼んだ?」
剣豪「いや。つーか俺はもう、飲んでるし」グビッ
戦士「だよな。だって、お姉さん」
803: 2014/09/18(木) 21:26:30 ID:n/aAw2Iw
店員「あ、あれっ…」
店員「……あっ!も、申し訳ございません、お隣のお客様でした!」
戦士「あぁ、いえいえ」
店員「し、失礼致します!」ペコッ
カチャカチャ……
戦士「…」
剣豪「…」
トコトコ…スッ
店員「…申し訳ございませんでした。ご注文のコーヒーになります」
???「有難うございます」
店員「それでは、ごゆっくり」ペコッ
タッタッタッタッ……
804: 2014/09/18(木) 21:27:04 ID:n/aAw2Iw
戦士「…」
剣豪「…」
戦士「…あれ?」ハッ
剣豪「どうした?」
戦士「今の声…どこかで聞いたことあるような……」ガタッ
剣豪「おい、どうした」
トコトコ…ポンッ
戦士「あの…すいません」
???「はい、なんでしょうか」クルッ
戦士「あの、もしかして貴方、どこかでー…」
戦士「……って!」
剣豪「…あっ?」
???「あっ!」
805: 2014/09/18(木) 21:27:50 ID:n/aAw2Iw
戦士「もしかして…!そ、僧侶先輩……ですよね!?」
神官「も、もしかして君たち…少戦士と豪剣士!?」
剣豪「…」ペコッ
戦士「お、お久しぶりです!」
神官「い、いや本当に…。どうしたの?こんな所で」
戦士「それはこっちのセリフで…!」
神官「いやいや、僕はこの近くの教会で働いてるからね」
戦士「あ、そうなんですか」
神官「うん」
戦士「…って、そんな話じゃなくて!僧侶さんなら、あの人らの行方知ってますよね!?」
神官「あの人ら?」
806: 2014/09/18(木) 21:28:23 ID:n/aAw2Iw
戦士「はい…」
剣豪「…」
戦士「あの方たちです…」
神官「…」
神官「あぁ、そういうことか」
神官「剣士くんや大戦士先生のこと…だね」
………
…
807: 2014/09/18(木) 21:29:03 ID:n/aAw2Iw
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
戦士「…そうですか」
剣豪「やはり…」
神官「僕も剣士くんを探したけど、手掛かりすら見つからなかった」
神官「…そもそも僕は、剣士くんが何をしたのかすら聞いてないんだよ」
戦士「教えて貰えなかったんですか?」
神官「教えて貰わなかったというより、聞かなかったっていうほうが正しいかな」
戦士「どういうことです?」
808: 2014/09/18(木) 21:29:42 ID:n/aAw2Iw
神官「…聞くに聞けない雰囲気だったんだ」
戦士「…」
剣豪「…」
神官「本当なら、僕は今も剣士くんを探したいと思ってる」
神官「だけど仕事がある以上、抜けるに抜けられないんだよ……」
戦士「…そうですよね」
剣豪「いなくなったのは剣士だけなのか?」
神官「…いや。少しして武道家くんや乙女格闘家さんの姿も見えなくなった」
神官「何かよっぽどな事があったみたいで…」
809: 2014/09/18(木) 21:30:14 ID:n/aAw2Iw
剣豪「…それじゃあ、噂は本当だったのか」
神官「噂?」
戦士「剣士先輩がいなくなった後、すぐにそのパーティ全員が姿を消したって話です」
神官「…そんなことまで冒険者の間で噂に?」
戦士「そりゃ第一線で活躍し、現役世代じゃ世界で一番成果をあげてたパーティといっても過言じゃなかったですからね」
神官「…」
戦士「他の人の行方も知らないんですか?」
神官「最後にあったのは1か月前。剣士くんが消えて、一緒に捜したんだけど…。」
神官「武道家くんたちも消えたのは、それからすぐだったかな」
戦士「…」
戦士「そ、そうだ!魔道士さんは!魔道士さんはどうしたんです?」
810: 2014/09/18(木) 21:31:05 ID:n/aAw2Iw
神官「!」
戦士「剣士先輩、魔道士さん、武道家先輩と乙女格闘家先輩のパーティでしたよね?」
戦士「消えたのが剣士先輩だけなら、魔道士さんは3人と一緒に姿を消したんですか?」
神官「…っ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
神官「武道家くん…魔道士さんはどうしたの?」
武道家「…正直、生きてるか分からない。いや…正直言えば…もう……」
神官「えっ…?」
乙女格闘家「…」ブルッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
戦士「…僧侶先輩?」
神官「…あっ」ハッ
811: 2014/09/18(木) 21:31:39 ID:n/aAw2Iw
戦士「魔道士さんは…どうしたんですか?」
神官「あ…。あー…えっと…」
戦士「剣士先輩の"幼馴染"だし、一緒に愛の逃避行でもしたんですかね?なーんて…」
神官「…え?」
戦士「え?」
神官(剣士くんの幼馴染は武道家くんなんだけど…)
神官(何か間違って学生時代から覚えてたのかな。でもこの場合…こっちのほうが…)
戦士「…?」
神官「えっと…!う、うん。そうみたいだよ」
戦士「!」
神官「だから、武道家くんと乙女格闘家さんで探してたー…とか…うん」
812: 2014/09/18(木) 21:32:12 ID:n/aAw2Iw
戦士「…そうだったのか。じゃあ、剣士さんは魔道士さんと逃避行を…?」
剣豪「…んだよ!それ!」ガタッ
戦士「ん?」
剣豪「結局、恋愛に溺れて平和な暮らし…冒険者の道から逃げたってことなのか…?」イラッ
戦士「バカお前、剣士さんに限ってそんなこと…!」
神官「剣豪…!違うっ!それは違うっ!!」バッ!
戦士「!」
剣豪「!」
神官「あ…。い、いや、違うと思うよ。きっと、そうなる事情があったんだと思う」
神官「彼らが何があっても逃げる人じゃないって…君たちもよく知ってるはずだよね」
戦士「…は、はい」
剣豪「…」
813: 2014/09/18(木) 21:32:49 ID:n/aAw2Iw
戦士「…」
剣豪「…」
神官「…」
戦士「…そっか。そうだよな」
剣豪「まぁ…そうか」
神官「うん。それにさ、剣士くんたちのことだし…」
神官「そのうち、いつの間にかひょっこり現れて…世界で暴れるかもしれないよ」アハハ
戦士「ははっ、違いないですね!」
剣豪「くく…」
神官「…ま、僕は今日はこれで失礼するよ」
神官「いま僕は、この中央都市の郊外にある教会にいるからさ…。何かあったら訪ねてきてね」ニコッ
814: 2014/09/18(木) 21:33:23 ID:n/aAw2Iw
戦士「…ありがとうございます!」ペコッ
剣豪「どうも」ペコッ
神官「じゃ、これで失礼。またね」
戦士「…はいっ」
剣豪「…了解」
…………
……
815: 2014/09/18(木) 21:34:02 ID:n/aAw2Iw
ザッザッザッザッ………
神官(…剣士くん、どこに行ったんだよ…)
神官(君を心配している人は沢山いるんだよ……!)
神官(剣士くん、武道家くん、魔道士さん、乙女格闘家さん…!)
神官(…ッ)
神官(剣士くんのパーティは、ここで終わりなの?)
神官(まだ…終わりじゃないでしょ…!)
神官(……剣士っ…!)
…………
………
…
816: 2014/09/18(木) 21:34:35 ID:n/aAw2Iw
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・
・
817: 2014/09/18(木) 21:35:16 ID:n/aAw2Iw
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 2日後 夜 山奥村 】
…ギシッ
剣豪「…せめぇよ!!」ゲシッ!
戦士「いっ!」
…ドスンッ!!ゴロゴロ!
戦士「いって!」
剣豪「なんで男二人でせめぇベッドで休まねぇといけねぇんだよ!」
戦士「この村で唯一取れた宿に文句いうんじゃないっつーの!」
剣豪「だったらオメーは床で寝てろ!」
戦士「うおい!」
818: 2014/09/18(木) 21:35:51 ID:n/aAw2Iw
剣豪「…ったく、次の依頼だと聞けば、こんな田舎でただの狼退治とは…!」
戦士「仕方ねーだろ!」
剣豪「お前はもっとまともな依頼をとってこれねえのかよ!」
戦士「あのな…!お前がこういう下積みの依頼を断り続けた結果だろうが」
剣豪「…分かってるっつーの!」
戦士「じゃあ言うなよ!」
剣豪「…ッ」プルプル
剣豪「…寝る!」
戦士「おやすみ!」
………
……
…
819: 2014/09/18(木) 21:36:32 ID:n/aAw2Iw
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 付近の森の中 】
ホウ…ホウ…チチチ……
戦士「…ったく」
戦士「結局俺が追い出されてるんじゃないか…」ポリポリ
戦士「まぁ前回の依頼はアイツがクリアしたようなもんだし…許してやるか」ハァ
戦士「…」
サァァッ……ッ
戦士「…月が、綺麗だ」
ソヨソヨ……
820: 2014/09/18(木) 21:37:12 ID:n/aAw2Iw
戦士「…」
戦士「…はぁ」
戦士「…師匠、剣士先輩…武道家先輩……」
戦士「一体どこへ…行ったんですか…」
戦士「魔道士さん…」
戦士「…っ」
ヒュウウウッ……
戦士「…自由であるこそ、冒険者であるとは言いますけど」
戦士「何も言わず突然と、目標の三人が消えてしまったら…俺は…!」
戦士「…っ」
822: 2014/09/18(木) 21:37:58 ID:n/aAw2Iw
サァァ…!フッ……
戦士「…っと」
戦士「月明かりも雲の中へ消えちまった…か。暗闇は好きじゃないんだけどね」
戦士「…」
…ガサッ
戦士「…むっ」ピクッ
ガサガサッ…!
戦士(誰かいる…?)
戦士「…」
戦士「…そこの茂み!隠れてるようだが、誰かいるな!」
…シーン
戦士「…おい、いるのは分かってるぞ。それとも魔獣か?」
戦士「人間ならば、出てこい!出てこないのなら、こちらから仕掛けるぞ!」
…シーン
823: 2014/09/18(木) 21:38:42 ID:n/aAw2Iw
戦士「…」
戦士「…仕方ない。忠告はしたからな!」チャキッ
戦士(とはいえ、本当に人ならば困る。威力も抑え…)
戦士「いくぞ!」ダッ!
ダダダダッ…!!
戦士「…小斬っ!!」ビュンッ!!
…ガキィンッ!!
戦士「うあっ!?」
クルクルクル…ザシュッ!
824: 2014/09/18(木) 21:39:18 ID:n/aAw2Iw
戦士「なっ…!俺の武器が一撃で弾き飛ばされ……」ビリビリ
???「…甘いな」
戦士「言葉…!人か!くそっ、武器を…!」バッ!
???「小火炎魔法っ!」パァッ
…ボォンッ!!
戦士「!」
ズザザザァ……
???「…武器を飛ばされた時点で、お前の負けだ。拾う間に切り捨ててやろうか?」
戦士「何だと!」
???「攻撃を仕掛けるほうが負けてどうする。見えぬ相手に手を抜くのはどうかと思うがな?」
戦士「…くっ!」
825: 2014/09/18(木) 21:40:15 ID:n/aAw2Iw
???「…」
戦士「…何者だ!俺を狙ってきたか!?」
???「…」
戦士(月が隠れたせいで、姿が見えない…。だが、声は男……)
???「…まぁ気にするな。それよりお前は…戦士で間違いないな」
戦士「…やはり貴様、俺を狙って…」
???「あぁ…違う違う。話を聞け…」
戦士「何?」
???「お前に大事な話がある」
戦士「話だと…?その前に貴様は何者だ!それを名乗れ!」
???「…」
戦士「…何故、黙る!」
826: 2014/09/18(木) 21:40:50 ID:n/aAw2Iw
???「…時間もない」
戦士「何?」
???「時間もないんだ。いいか、聞け」
戦士「…その前に、お前が何者か教えて貰おうか。姿も見せない以上、信用は出来ない」
???「…ダメだ」
戦士「…?」
???「そちらからは…もう…」
戦士「何を…言っている?」
???「いいか、今すぐ西方…星降町へ急げ」
戦士「…何?」
???「あそこに…塔の…霧と……」
戦士「一体何を…!」
戦士「…むっ」ピクッ
827: 2014/09/18(木) 21:41:44 ID:n/aAw2Iw
…サァァァ……ッ
戦士(…月明かりが再び出たか…!これで奴の姿を…!)
戦士(…)
戦士(…え?)ピクッ
戦士(……えっ…あっ!!あぁっ!?)
戦士「あ、あぁ・・・貴方はっっ!?」
大戦士「…聞こえたか。いいな…?」
戦士「だ…大戦士…師匠っ!?な、なぜココにっ!!」
大戦士「…いいな。頼んだぞ」
戦士「し、師匠っ!!!」ダッ!
大戦士「まだ…助かる間に……」スゥッ
戦士「…き、消え…!?ま、待ってください!師匠っっ!!」ダッ!
828: 2014/09/18(木) 21:42:19 ID:n/aAw2Iw
大戦士「…」
…スゥッ……シュンッ…
戦士「っ!?」
戦士「き、消えた…!?」
戦士「し、師匠っ!!どこですか、師匠ぉぉっ!!」
オォォォ…………
………
ホウ…ホウ……
ソヨソヨ…サァァッ………
戦士「…っ」
戦士「…大戦士師匠~~っ!!!」
…………
………
…
829: 2014/09/18(木) 21:42:51 ID:n/aAw2Iw
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
830: 2014/09/18(木) 21:43:28 ID:n/aAw2Iw
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日 】
戦士「…」
戦士「…」
…パチッ
戦士「…っ!?」ガバッ
戦士「…」
戦士「あ…。い、いつの間にか山の中だというのに、寝ていたのか…」
831: 2014/09/18(木) 21:44:01 ID:n/aAw2Iw
チュンチュン…
戦士「…」
戦士「全て、夢か…。大戦士師匠……」ギリッ
戦士「…」
戦士「…ん」ピクッ
…キラッ
戦士「あれは…俺の武器…」
戦士「夢の中で…大戦士師匠に吹き飛ばされて…地面へ…」
832: 2014/09/18(木) 21:44:45 ID:n/aAw2Iw
戦士「…」
戦士「…」
戦士「…まさか!」
戦士「夢じゃ…なかった……!?」
…………
……
…
833: 2014/09/18(木) 21:45:19 ID:n/aAw2Iw
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 山奥村 宿 】
ダダダダッ!!バキッ…トゴ゙ォンッ!!
剣豪「!?」
戦士「あ、起きてたか!」
剣豪「そりゃな…。それよりお前、一晩ずっと外に…。つーかドアぶっ壊し…」
戦士「それどころじゃねえよ!」
剣豪「あ?」
戦士「いいから…行くぞ!ほら、早く!」
834: 2014/09/18(木) 21:46:00 ID:n/aAw2Iw
剣豪「おいおい、落ち着けよ…んだっつーんだよ」
戦士「落ち着いていられるかよ!早く出発だ!」
剣豪「…どこに行くっつーんだ?」
戦士「西方大陸の更に遥か西の丘……星降町だ!」
剣豪「…はぁ?」
………
……
…
835: 2014/09/18(木) 21:46:55 ID:n/aAw2Iw
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 馬車の中 】
パカッ…パカッ……
戦士「…最短ルートの海を渡っていく金がなかった」
剣豪「で、大きく外回りをする馬車のコースかよ」
戦士「急いで来てほしいっつってたのに…」
剣豪「大戦士が来てほしいっていう声をねぇ…。夢だろそんなん」
戦士「だから、夢じゃないんだって!」
剣豪「夢じゃないなら、幻覚じゃねえのか」
戦士「…現実だっつーの!」
836: 2014/09/18(木) 21:47:26 ID:n/aAw2Iw
剣豪「お前さ…。そんな夢の話で、なけなしの金使ってさ…」
剣豪「そんな遠くの星降町とか行くっつーのは…分かってんだろうな」
戦士「あぁ?」
剣豪「行き倒れになるかもしれんぞ。まともな飯すら買う金が尽きてるんだからな」
戦士「…そこはそこで仕事があるだろう」
剣豪「…」
戦士「…」
剣豪「はいはい。んじゃちょっと気になった事があるんだが…いいか?」
戦士「おう、なんだ」
剣豪「お前の話が、もし。もーしーもー…本当だとしよう」
剣豪「…何でわざわざお前をそこへ呼ぶ?つか、姿が消えただのなんだの、意味が分からないんだよ」
837: 2014/09/18(木) 21:47:58 ID:n/aAw2Iw
戦士「…そ、そりゃあ…俺が弟子だから…」
剣豪「何かあった虫の知らせとか、色々あるのは理解できっけど、そんな事態なら剣士を呼ばないか?」
戦士「うぐっ…」
剣豪「…お前に助けを呼ぶなんて、普通ないだろ」
戦士「それが仲間にかける言葉かよ。泣くぞ」
剣豪「泣け泣け」
戦士「あのな…」
剣豪「…」
剣豪「…それとも、剣士に伝えれない状況とか…か?」
戦士「!」
838: 2014/09/18(木) 21:48:49 ID:n/aAw2Iw
剣豪「何にせよ、大戦士がそこいて、もう1度会えたらそりゃ嬉しいことだ」
剣豪「だけど呼ぶってことは、何かしらの理由がある」
剣豪「わざわざ星降町へお前を呼ぶか?」
剣豪「俺らが稼いでいないのを知ってるのに…こんな遠くに普通、呼ぶか?」
剣豪「つまり、大戦士が動けない理由が何か…あるかもしれない」
戦士「…そうか」
戦士「軍の転移装置を使えば中央都市とかで待ってるのが普通だろうし……」
剣豪「だろ?俺らが稼いでないの知ってて、こんな遠距離を歩かせて…」
剣豪「…全く、嫌な予感しかしねぇぞ」
839: 2014/09/18(木) 21:50:56 ID:n/aAw2Iw
戦士「…何があるんだろうな」
剣豪「"もしも"お前の話が本当だったら、な」
戦士「そこは信じろよ…」
剣豪「…まぁ、ちょっとした長旅になるし…俺は寝る」カクンッ
戦士「へいへい」
剣豪「…大戦士さんに何事もなけりゃいいけどな」ボソッ
戦士「ん?」
剣豪「…何でもねぇよ」
戦士「…そうか」
…………
……
…
840: 2014/09/18(木) 21:51:39 ID:n/aAw2Iw
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
841: 2014/09/18(木) 21:52:14 ID:n/aAw2Iw
それから数日後。
時間を要したものの、彼らは"星降町"へと辿り着く。
道中、文句を言いながらも剣豪は戦士と同じように大戦士の言葉を信じていた。
戦士が思った以上に言葉の意味を深く考え、何が待ち受けるかも分からぬ土地に、覚悟を決めていた。
だが……
849: 2014/09/20(土) 20:17:17 ID:XyHVtElE
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 星 降 町 】
ザワザワ…ガヤガヤ…
旅行者たち「…♪」
旅行者たち「わーい!綺麗~!」
ワイワイ…!!
剣豪「…」
戦士「…」
剣豪「…すげぇ、人多いんだけど。何これ、こんな場所に大戦士がいるのか」
戦士「丘が多くて、山沿いだから田舎町だと思ってたら…」
850: 2014/09/20(土) 20:18:00 ID:XyHVtElE
…ザワザワ
旅行者A「今日も楽しみだねー♪」
旅行者B「うんうん。世界で一番星が美しく見える丘…ロマンチック~♪」
旅行者A「宿も凄く綺麗だったし、流星群見られるかなぁ♪」
旅行者B「見たいねぇ♪」
剣豪「……立派な観光地じゃねぇかよ!!」
戦士「は…はは…」
剣豪「何、大戦士アホになったの?観光一緒にするために、わざわざ呼び出したの?」
戦士「ど、どうでしょう…」
剣豪「やっぱりお前の幻覚だったんだろ…。金もなしに観光地に来てどうすんだよ…」ハァァ
851: 2014/09/20(土) 20:19:06 ID:XyHVtElE
戦士「…で、でも!どこかに何かあるかもしれねぇだろ!」
剣豪「ど、こ、に、だ」
戦士「…」
剣豪「…」
戦士「と、とりあえず!軍の支部に何か変わった現状がないか聞いてみようぜ!」
戦士「出発出発!おい、行くぞ!」
剣豪「…」
………
…
852: 2014/09/20(土) 20:19:44 ID:XyHVtElE
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 星降町 中央軍支部 】
星降兵「…問題は特に起きていない」
戦士「さ、さいですか」
星降兵「見たところ、冒険者か」
星降兵「残念ながら、この町で一般への依頼配布は行わないようにしている」
星降兵「見ての通りココは観光地として有名で、問題も少なくはない」
星降兵「その為、我々軍が観光客同士の小さなケンカをも含む、些細な問題も解決にあたっている」
星降兵「冒険者の休息のため、町興しをしているほどだ」
853: 2014/09/20(土) 20:20:25 ID:XyHVtElE
戦士「そ、そうすか…」
戦士「…」チラッ
剣豪「…どうすんだよ」
戦士「は、はは」
剣豪「はは、じゃねえよ!何だ、大戦士がココで休息でもとってんのか!?」
戦士「い、いや~…。そ、そうなのかも?あはは…」
剣豪「そんなわけねぇだろうが!!」
戦士「うぅ…」
剣豪「もしかして、お前がここに来たかっただけじゃねえのか!」
戦士「い、いやそれはないっつーの!そもそも、こんな町があるなんて知らなかったし!」
854: 2014/09/20(土) 20:21:29 ID:XyHVtElE
星降兵「おいおい、ここで暴れるのはよせ!」
星降兵「…」
星降兵「…ん?」
星降兵「まてお前たち。今、大戦士と言ったか?」
戦士「あ、は…はぁ。一応…」
星降兵「大戦士…いや、大戦士殿とお知り合いか?」
戦士「お知り合いっていうか、俺は大戦士の弟子で…」
星降兵「で、弟子!?」
戦士「えぇ。数年前までは一緒に世界を旅していました」
星降兵「…」
星降兵「そういえば大戦士殿は引退してから、孤児と旅をしたと聞いた事があるが…」
855: 2014/09/20(土) 20:22:12 ID:XyHVtElE
戦士「…そんな噂が」
剣豪「お前、意外と有名人な」
戦士「俺っていうか、大戦士師匠のほうに俺がくっ付いているだけじゃないか」
剣豪「コバンザメ」
戦士「…怒るぞ」
星降兵「…」
星降兵「…まぁ、それはいい。とにかくココで暴れることは許さん」
戦士「あ、はい…」
剣豪「うい」
856: 2014/09/20(土) 20:23:21 ID:XyHVtElE
戦士「じゃあどうするかなぁ…」
剣豪「…大戦士の情報、まずは集めるしかねぇだろ。お前が本当に"ここにいる"っていうならな」
戦士「ぜってぇ見つけてやる」
星降兵「…いないと思うぞ」ボソッ
戦士「えっ」
剣豪「は?」
星降兵「いや何、この町の規律を守る支部には、様々情報が自然と集まってくるんだ」
星降兵「大戦士殿がこの町へ来ていたら、そりゃすぐに広まるだろうし」
戦士「そ、そうなんですか」
戦士「…」
戦士「…」チラッ
857: 2014/09/20(土) 20:24:04 ID:XyHVtElE
剣豪「…殴っていいか?」
戦士「謝るから。謝るから!」
星降兵「まぁ…だがしかし。」
星降兵「お主が本当にあの方の弟子で、この町に大戦士殿がいるというのなら…いるのかもしれん」
戦士「で、ですよね!」ガバッ!
星降兵「う、うむ。だがな、あの方がここへ来て何をするのか…」
戦士「あー…」
星降兵「そもそも…さっき言った通り、宿やどこかへ現れた話は聞いていない」
星降兵「もしかすると…あちら側へ行ってるのかもしれんが…」
戦士「…あちら側?」
星降兵「我々の管轄は、この町と星の見える丘の周辺までだ。それで…あそこに巨大な山があるだろう?」スッ
戦士「んー…まぁ」ジー
858: 2014/09/20(土) 20:25:09 ID:XyHVtElE
星降兵「あそこの山林および山間部は管轄外でな」
星降兵「あそこの周辺は、基本的に我々は干渉しない地域なんだ」
戦士「なぜです?」
星降兵「ココからでは分からないが、あそこは獣道や平地が多くて…」
星降兵「その道を進むと、エルフ族の住む地区へと続いているので、こちらではなく別の支部の管轄となる」
星降兵「まぁそもそも魔獣が多く、支部の面子でも手を焼く故に干渉はしない方針なのだが。」
星降兵「それでもたまに魔獣が降りて来ることはあるし、その時は対処せねばならんがな」
星降兵「しかも最近は、雲というか霧がかかっていて…より危険で…」
星降兵「あそこへ近づく者はいなくなっている」
戦士「…その山部で、泊まれるような場所はあります?」
星降兵「間に広い平地はあり、キャンプをはるには丁度いいとは思うが、魔獣も多いし、今は霧も出るし…」
戦士「…行ってきます」ダッ!
星降兵「お、おい!?」
859: 2014/09/20(土) 20:25:55 ID:XyHVtElE
剣豪「まぁ言うと思ったがな。大丈夫、心配ないって」
星降兵「心配ないって…お前ら!」
剣豪「あー…。これでも俺も実は、あの"大戦士さん"に学生時代教えてもらってたんだよ」
剣豪「じゃ、俺も行くんでまた」ダッ
タッタッタッタッタッ………!!
…………
星降兵「な、なんと…まさか…」
…………
………
…
860: 2014/09/20(土) 20:27:00 ID:XyHVtElE
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数時間後 星降町の山間部の平野 】
ヒュウウッ……
剣豪「ここが平野ね…」
戦士「本当に山沿いに、広い平野が…」
剣豪「それにあの軍兵の言った通り、さっきから獣の臭いがプンプンするぜ」ツンッ
戦士「確かに大戦士師匠がいるとしたら、ここだろうけど…」
剣豪「あの人なら獣食って生きてそうだが、この広さから探すのは骨が折れるぞ?」
戦士「んー…」
861: 2014/09/20(土) 20:27:30 ID:XyHVtElE
モワッ…ヒュウウッ……
剣豪「…本当に向こう側から霧がかかってやがる…。視界わりぃなー…」
剣豪「こんな中で捜すのかよ…」
戦士「…捜そうぜ」
剣豪「…」
戦士「…」
剣豪「お前、あとでうめぇ飯奢れよ。ぜってぇだからな」
戦士「…それくらいでいいのなら」ニカッ
………
…
862: 2014/09/20(土) 20:28:06 ID:XyHVtElE
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
モワモワ…ムワッ…
…ヒュウウ……
剣豪「…視界悪いわ、獣の臭いするわ、最悪だぜ…クソッ!」
戦士「人の気配がしねぇなぁ…」
剣豪「そりゃいるわけねーだろうが!」
戦士「それに…」チラッ
剣豪「あ?」
863: 2014/09/20(土) 20:28:41 ID:XyHVtElE
戦士「この霧…少し変じゃないか」
…モワッ
剣豪「何が」
戦士「霧っていうかモヤ?いや一緒か。何かコレ、水滴が付かないし…フワフワするぞ」
剣豪「あぁ…確かに。なんか浮ついた感じがするな」
戦士「この土地の特質か何かなのか?」
剣豪「いやしらねえよ」
戦士「ですよね」
ザッザッザッザッ…
剣豪「…」
戦士「…」
864: 2014/09/20(土) 20:29:15 ID:XyHVtElE
ザッザッザッ…
剣豪「…なぁ」
戦士「ん?」
剣豪「冒険者って一体、何なんだろうな」
戦士「…はぁ?」
剣豪「確かに、この世界には秘境や歴史の遺産は残されてる」
戦士「おう」
剣豪「だが、それを取り仕切るのは所詮、中央軍…。つまり、政府だ」
剣豪「俺ら一般冒険者は、その中でいいように使われ、自由に見せているだけの不自由な世界に生きてる気がするんだ」
戦士「…」
865: 2014/09/20(土) 20:29:47 ID:XyHVtElE
剣豪「確かに冒険者は、世界を自由に走り回る」
剣豪「だけどそれは軍の規制の中であり、最近ますます厳しくなってきた」
剣豪「東方側の一部区間じゃ、軍による閉鎖も行われてるらしいじゃないか」
剣豪「まぁ確かに剣士みたく強ければ、自由も利くだろう」
剣豪「だが、事実…酷い扱いの冒険者もいる。軍の規制のせいもあるし、色々理由はあるんだろうが…」
戦士「…」
戦士「そりゃ仕方ないだろうよ…。」
戦士「その規制がなかった時代、冒険者の横暴や事故氏が極端に多かったわけだろ?」
戦士「確かにやりすぎかもしれないが、犯罪を犯す同業者が減り、生きるチャンスが増えたってことさ」
剣豪「…まぁ、そうだが」
戦士「だろ?」
866: 2014/09/20(土) 20:30:35 ID:XyHVtElE
剣豪「…ふむ、そうか」
剣豪「人が生きるこの世界じゃ、真の自由…真の冒険者っていうのはいないのかもしれねぇな…」
戦士「はは、なんか哲学的だ」
剣豪「思った事を言っただけだ。大体合ってるだろ?」
戦士「まぁ」
ザッザッザッ……
戦士「…」
剣豪「…」
867: 2014/09/20(土) 20:31:07 ID:XyHVtElE
ヒュウウッ……ムワッ……
戦士「…」ピクッ
剣豪「…」ピクッ
戦士「…血の臭い」ボソッ
…スッ
戦士「…この臭い、遠くはない」チャキッ
剣豪「魔獣か?」チャキッ
戦士「分からん。幸いこっちは風下…チャンスは得ている」
ヒュウッ…
剣豪「鼻の効く相手なら、すでに俺らは襲われていたってか」
戦士「…足音を頃しながら近づこう。音に敏感な相手でも困る」
868: 2014/09/20(土) 20:31:57 ID:XyHVtElE
ソロソロ……
剣豪「…」
戦士「…」
剣豪「…」
戦士「…」
モワッ……
剣豪(ちっ…霧のせいで視界が悪い。速攻は俺のほうが上だろうが、感覚的なモノはこいつに勝てん)
剣豪(一旦後ろにまわるか…)スッ
戦士(相手への反応は剣豪のほうが早いだろうが、いかんせんコイツは鈍いからな…)
戦士(…一旦俺が前に出る。出来るだけ感覚を研ぎ澄まして、剣豪に先制をとらせたいが…)
869: 2014/09/20(土) 20:32:27 ID:XyHVtElE
剣豪「…」
戦士「…」
ソロソロ……モワッ…
剣豪(くそっ…霧がうぜぇ。鼻に血の臭いが鬱陶しい)ツンッ
戦士(霧の中での目視は無駄だ。血の臭いがひどくて鼻も効かん。とにかく気配を読まねば…)ツンッ
剣豪(…戦士なら、この状況の中でも相手を見つけられるだろうが…)
戦士(…この状況でも、俺なら相手は大体把握できる。だが…)
剣豪(いくら俺でも、霧の中の見えざる敵に、突っ込んでやられてしまう可能性がある…)
戦士(いくら剣豪でも、霧の中の見えざる敵に、突っ込んでやられてしまう可能性がある…)
870: 2014/09/20(土) 20:33:09 ID:XyHVtElE
ソロソロ…ツンッ…
戦士(…血の臭いは消えない。恐らく相手は目の前…。だが、霧で目視が出来ない…!)
戦士(いっそのこと、ある程度の魔法で吹き飛ばすか?)
戦士(いや…相手の数が分からない以上、どうにも動けない…)
…ポンポンッ
戦士(ん?)
剣豪(…戦士、まだなのか)ギロッ
戦士(…もう少し待て…まだだ)
ソロソロ…
戦士(…)
戦士(…)
戦士(……!)ピクッ
…バッ!
871: 2014/09/20(土) 20:33:39 ID:XyHVtElE
剣豪(いるのか…?)
戦士(…)コクン
剣豪(出るか?)チョイチョイ
戦士(ダメだ。まだ相手の数も、種類も分かっていない)ブンブン
剣豪(どうする?)チラッ
戦士(相手が動くのを待つ)チラッ
剣豪(…)
剣豪(…)コクン
剣豪(分かった、突撃だな)チャキッ
戦士(!?)
878: 2014/09/22(月) 23:49:15 ID:zj52igrI
剣豪(…俺に任せろ!)ダッ!
戦士(ちょちょちょっ!全然分かってねぇぇ!)
ダダダダッ…!!
戦士(く、くそっ!えぇい、俺も突っ込んじまえ!!)ダッ!!
ダダダダッ…!!
剣豪(…むっ!)
…スウッ
???「…」
剣豪(霧の中に影…!敵だな!?うおおおっ!)
バッ…ブォンッ!!
戦士(あぁぁ、もう!!俺もやってやらぁ!!)
バッ…ブォンッ!!
879: 2014/09/22(月) 23:50:10 ID:zj52igrI
ガガガッ!!ガキィンッ!!キキキィンッ!!!
剣豪「!」
戦士「!」
???「…び、びっくりする…!なんだ!」ググッ
剣豪「俺の一撃を止めやがったって…人か!?」
戦士「人…だが、俺らの一撃を受け止めた…!?」
???「君らは…人間か!?なぜここに…!」
剣豪「…ぐっ…!お前も人だろ?」ググッ
男エルフ「いや、俺はエルフ族だ」グググッ…
剣豪「…何っ!?」
戦士「エルフ族!?」
880: 2014/09/22(月) 23:50:44 ID:zj52igrI
男エルフ「…この殺気と攻撃は、敵意を持ってやった事なのかな」ググッ
剣豪「あ、いや…魔獣か何かかと…」
男エルフ「なら俺には敵意はない。武器をしまってくれないか」
剣豪「…すまん」
…スッ
男エルフ「ありがとう」
戦士「なぜ…エルフ族がここに…?」
………
……
881: 2014/09/22(月) 23:51:18 ID:zj52igrI
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ベリベリッ…ドシャアッ…
男エルフ「ふぅ、手伝ってくれて助かったよ。一人じゃこの皮を剥ぐのは大変だったんだ」
剣豪「なるほどな。血の臭いは、アンタがこの巨大魔獣を倒したからだったのか」
戦士「こんな相手がこの平野になぁ…」
巨大魔獣『…』
男エルフ「…ところで、君たちはどうしてここに?」
剣豪「それはこっちのセリフだ。エルフ族がいるような場所じゃないだろう」
男エルフ「…」
882: 2014/09/22(月) 23:51:56 ID:zj52igrI
戦士「剣豪、最初からケンカ腰になるな。俺の名前は戦士。こいつは剣豪だ。あなたの名前は?」
ハンター(男エルフ)「…適当でいいんだがな。そうだな…ハンターでどうだ」
戦士「分かった、ハンターだな」
剣豪「…」
ハンター「うん、よろしく」
戦士「えと…じゃあ、襲撃してしまったしたお詫びと言っちゃなんだけど」
戦士「なぜ俺らがここにいるか、先に教えようと思う。俺らは人を探しているんだ」
ハンター「人?」
戦士「…うむ」
883: 2014/09/22(月) 23:52:43 ID:zj52igrI
ハンター「…こんな場所には、人間はいないぞ」
ハンター「早く帰るといい。見たところ…冒険者か何かだろう」
戦士「…ここまで来たのには理由があるんだ。そう簡単に戻れるものじゃない」
ハンター「…」
戦士「今度はこっちが聞きたい。ハンターはなぜここに?エルフ族はこの山の向こう側じゃないのか?」
ハンター「それは…」
ハンター「…」
ハンター「…言えない」
剣豪「おいおい、フェアじゃないだろう。教えろよ」ズイッ
戦士「ま、待て…落ち着け」
884: 2014/09/22(月) 23:53:17 ID:zj52igrI
ハンター「…たまたま魔獣を追いかけていたらココにいたということにしてくれ」
剣豪「してくれってなんだよ。してくれって」
ハンター「すまん…言えるものじゃないんだ」
剣豪「どういうことだよ」
ハンター「…とにかくココから離れて、町のほうに戻れ。ここは危ない」
剣豪「…納得いかねえだろ!」
戦士「ま、待て待て。どうしても理由が言えない事があるのかもしれないだろ」
剣豪「だけどよ…」
ハンター「…すまないな。そういってもらえると助かる」
885: 2014/09/22(月) 23:53:59 ID:zj52igrI
戦士「いや、いい。だけど俺とて、ここから離れるわけにはいかないんだ」
ハンター「…」
戦士「理由は言いたくないなら、無理やりは聞かない。だけどその代わり、情報があったら教えてほしい」
ハンター「情報?」
戦士「この近くでキャンプをした痕跡や、魔獣、魔物類が斬撃された跡とかは見なかったか?」
戦士「…それは、俺の師匠がやったことかもしれないんだ」
ハンター「いや、見ていない」
戦士「……そうか。…有難う」
ハンター「力になれなくてすまないな」
戦士「いや、いいんだ…」
ハンター「とにかく…俺は何も知らない。早く霧の外へ抜けるといい」
886: 2014/09/22(月) 23:55:00 ID:zj52igrI
剣豪「…」
剣豪「…あ?」ピクッ
剣豪「おい、ハンター。ちょっと待て」
ハンター「何だ?」
剣豪「…"霧の外へ抜けろ"ってどういうことだ」
ハンター「…あっ」ハッ
剣豪「おぉ?どうした…意味あり気だな。この霧の中に何かあるみてぇじゃねぇか」
ハンター「い、いや!何でもない!」
剣豪「…慌ててるな?」
ハンター「いや…!」
剣豪「正直に言えよ。この霧の中に何がある。この霧は一体なんだ?」
剣豪「それと、本当に他の人間はいないのか怪しくなってきたな?」
887: 2014/09/22(月) 23:55:39 ID:zj52igrI
ハンター「し、知らん!」
剣豪「そこまでで知らないわけがないだろう。なら、力づくでも…」チャキッ
ハンター「…っ!」
ハンター「くっ…!」ババッ!
…スッ!ググッ…!!
剣豪「…ほう、弓武器を構えるか。本性を現したな?」
戦士「おいおい…」
ハンター「ここならまだ間に合うんだ!早く外へ行け!行かなければ、容赦はしない!」
剣豪「だから理由を話せっつってんだろうが!」
ハンター「だから…」
…ザワッ
ハンター「!」
ハンター「だ、ダメだ!これ以上は…俺の声が…霧を伝う!犠牲はもう見たくない!出ていけ!」
888: 2014/09/22(月) 23:56:13 ID:zj52igrI
剣豪「あぁ!?」
戦士「一体…どういう…」
剣豪「しっかりと話をしろよ!わかんねぇんだよ!」
ハンター「くっ…!」
ザワッ…ザワザワッ……!!
ハンター「!!」
戦士「…な、何だ!?」
剣豪「今、ざわざわと何か…」
ハンター「…っ」
ハンター「くそっ、もう戻って来たのか…?これ以上は!」ダッ!!
ダダダダッ……!!
889: 2014/09/22(月) 23:57:02 ID:zj52igrI
戦士「あっ、待ってくれ!」
剣豪「おい、俺らも追いかけるぞ!」ダッ!
戦士「……それしかないよな」ダッ!
剣豪「…ぜってぇ吐かせてやる」
ダダダダダダッ……
………
……
…
890: 2014/09/22(月) 23:57:48 ID:zj52igrI
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 霧の中 深部 】
タッタッタッタッ……ズザザ…
剣豪「くそっ、見失った!」
戦士「一体どこへ…」
剣豪「…」
剣豪「…んっ」ピクッ
戦士「どうした?」
891: 2014/09/22(月) 23:58:20 ID:zj52igrI
剣豪「何か…ないか?そこ…」
戦士「何かって…」クルッ
剣豪「霧の中だが、妙に黒くて、でけぇものが…」
戦士「ん~…?」
…モワッ…
オォォォォ…ォォォ……ォォ……
剣豪「…っ!?」
戦士「う、うおっ!?何だこれ!?」
オォォォ……ォォ……
剣豪「と…塔か…?」
戦士「こんな場所に…こんな建物が…」
剣豪「…すげぇ高いぞ。霧があるとはいえ、雰囲気でわかる。一体これは…」
戦士「さっきのハンターは、これを隠したかったのか?」
892: 2014/09/22(月) 23:59:13 ID:zj52igrI
剣豪「じゃあ、さっきの奴はこの中にいるんじゃないか?行こうぜ」
戦士「待て待て待て!危険とかあるかもしんねーだろ!」
剣豪「…知ったことか!あいつがいるなら、無理やりにでも真実を聞き出す!」
戦士「確かに気になるが…」
…ソロソロ
剣豪「だったら行くべきだろ!」
戦士「…だが」
…ソロソロ
剣豪「何を迷ってんだよ!」
戦士「…こんな不自然な建物があるかよ!霧といい…建物といい…」
893: 2014/09/22(月) 23:59:52 ID:zj52igrI
剣豪「…びびりかよ!」
戦士「そういう問題じゃー…!」
ソロソロソロ……ヒュッ!!ゴツゴツンッ!!
剣豪「がっ!」
戦士「ぐっ!」
…ドサドサッ!
ハンター「…やれやれ」
894: 2014/09/23(火) 00:00:30 ID:sHPfqZEo
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・
・・
・
895: 2014/09/23(火) 00:01:11 ID:sHPfqZEo
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1時間後 】
剣豪「うぐっ…」ムクッ
戦士「…いつつ」ムクッ
ハンター「気づいたかい、二人とも」
剣豪「…て、てめぇ!」ハッ
戦士「そうだ…突然殴られて…」
ハンター「屈強そうな二人だったけど…」
ハンター「さすがに魔力の宿った気絶効果のある武器じゃ、一撃だったみたいだね」
896: 2014/09/23(火) 00:01:52 ID:sHPfqZEo
剣豪「…ここはどこだ!」
ハンター「さっきの塔から近くにある小屋さ。そんな攻撃的になることはない」
ハンター「別に縛ったりもしてないし、介抱してやったんだぞ?」
剣豪「自分で殴っておいてよく言えるセリフだな…!」
ハンター「あのね…。ま、運が良かったか」
剣豪「運だと?」
ハンター「…とにかく、元気になったなら帰る道を教えるから戻ることだ」
剣豪「あんなもん見せられて、素直に帰ると言えるか?」
ハンター「…」
剣豪「この霧はアレを隠すためのモノだったんだな…そうだろう?」
897: 2014/09/23(火) 00:02:31 ID:sHPfqZEo
ハンター「…」
ハンター「…違う。この霧は…」
…ザワザワッ
ハンター「!」
剣豪「ん…」
戦士「耳に…何か…」
ハンター「…静かに。やはり帰ってきたのか…?」
ハンター「さっきのは一部が戻ってきただけだったが…これは本隊が……」
剣豪「…何がだ」
戦士「帰ってきた…?」
898: 2014/09/23(火) 00:03:14 ID:sHPfqZEo
ハンター「…ま、俺の小屋には滅多に寄らないし別にいいけどな」
ハンター「それよか、声を聞き取られたら困る。早く帰れ」
剣豪「待てよ…。本当に話を聞かせろ。一体なんのことだ」
戦士「…さすがの俺も、ここまでくると気になるの一言だけど」
ハンター「…話すことはないと言っただろう」
剣豪「お前な、ここまでこうしといて、話さないのはないぜ」
剣豪「エルフ族がここにいること、塔、霧。どう考えてもおかしいだろうが」
ハンター「…」
剣豪「…」
戦士「…」
899: 2014/09/23(火) 00:03:51 ID:sHPfqZEo
ハンター「…」
ハンター「…はぁ」
ハンター「……何を…聞きたいんだ」
剣豪「お…?教えてくれるのか?」
ハンター「教えないと、帰る気がないのは分かったからな…」
ハンター「それに考えてもみれば、無駄なことだ。そのほうが犠牲も少ないかもしれん」
剣豪「…?」
ハンター「もういい、教えてやるよ。何を聞きたい」
900: 2014/09/23(火) 00:04:45 ID:sHPfqZEo
剣豪「…遠慮なく聞くぞ。あの塔はなんだったんだ」
ハンター「あの塔は、魔力の塔さ。この霧がいらなくなるようにね」
剣豪「…どういう意味だよ」
ハンター「この霧はね、魔力の霧なんだ。俺らエルフ族の体内に宿る魔力を糧に生み出されたものでね」
ハンター「いや…。今も生み続けられていると言ったほうが間違いではないが」
剣豪「どういうことだ」
ハンター「はは…。まぁ~…軍もバカなもんだってことさ」
ハンター「助け合いだの、仲間だの…人間だの…戦いだの…」
ハンター「いざという時に動けないくせに、どうにもこうにも…」ブツブツ
剣豪「…意味が分からないぞ。一体を何を言っている?」
901: 2014/09/23(火) 00:05:25 ID:sHPfqZEo
ハンター「あぁ、そうか。そこも知らなかったんだな。じゃあ最初からになるか……。」
ハンター「だけどね。それで君たちは、後悔することになるかもしれないよ」
戦士「…後悔?」
剣豪「話を聞くだけで後悔?そんなもんあるわけねぇだろ…」
ハンター「…」
ハンター「君たちは、この世界で起きる事を、知る事になるということさ…」
戦士「…?」
剣豪「だから、御託はいいから本題を早く話せと!」
902: 2014/09/23(火) 00:06:00 ID:sHPfqZEo
ハンター「…じゃあ、よく聞いてくれ」
ハンター「君たちは、地震を知っているよね。あの…1か月程前に起きた大地震さ」
剣豪「そりゃ…な」
戦士「…もちろん。あの日から大戦士さんは姿を消したんだから…嫌でも…」ブルッ
ハンター「あの地震はね…彼らがやってきた合図だったんだ」
戦士「…彼ら?」
ハンター「俺らも信じられなかった。だけど、彼らの話を聞いて、俺らの存在意義がわかった」
戦士「…?」
ハンター「…そういうことさ」ブルッ
戦士「…それじゃ分からないぞ」
剣豪「わかんねぇよ…何を言ってる」
903: 2014/09/23(火) 00:06:55 ID:sHPfqZEo
ハンター「…"魔界"。この言葉、君たちは信じるかい」
戦士「…魔界?」
剣豪「魔界って…何だ」
ハンター「そのままの言葉さ。この世界とは別のもう1つの…別世界」
戦士「…?」
剣豪「さっぱり言ってる意味が分からねぇ。頭大丈夫か?」
ハンター「あぁ、ごめんごめん」
ハンター「…っ」
ハンター「一から話をしないといけなかったね…」
剣豪「だからさっきからそう…!」
904: 2014/09/23(火) 00:08:02 ID:sHPfqZEo
ハンター「…あの1か月前の地震は、魔界とこちら側が繋げた時に起きた衝撃なんだ」
ハンター「信じられないのも無理かもしれないが、この世界と同じように、魔界には魔界の住民がいる」
ハンター「そして、彼らはこちらの世界へ、己が欲望のために魔界の軍隊を引き連れてやってきたのさ」
剣豪「…はぁ?」
戦士「はぁ…」
ハンター「…信じられないよね」
剣豪「…とりあえず、お前が俺らをバカにしてるのは分かった」
ハンター「ぷっ…」
剣豪「斬る」チャキッ
戦士「ちょちょちょっ、ちょい待ち!!」ガシッ!!
905: 2014/09/23(火) 00:08:39 ID:sHPfqZEo
剣豪「離せ!!絶対にこいつ、ぶっ頃す!バカにしてるにも程があるだろうが!」
戦士「まだ話の続きあるかもしれねぇだろ!!」
ハンター「…ははっ、信じられないか。そりゃあ、君たちは見てないからね」
剣豪「何をだよ!」
ハンター「"知性ある魔物"。魔族ってやつをさ…」
剣豪「あぁ!?」
ハンター「絶望だよ。あんなのに…敵うわけがない…!」ブルッ
剣豪「…?」
ハンター「…俺らの存在の意味、人間との違いはようやく分かった」
ハンター「そして、真実を聞いた時、おかしくなりそうだった!」
ハンター「いや、もう…壊れてるのかもしれないけどね…くくく…」クスクス
906: 2014/09/23(火) 00:09:23 ID:sHPfqZEo
戦士「…ハンターさん?」
ハンター「…君たちがもし、生きてココから出れたなら、伝えるといい」
戦士「…」
ハンター「この霧の中だけだと思うな。この塔は…魔力の塔は、もう、完成する」
戦士「…完成?」
ハンター「人間は気づけぬまま、終わるんじゃないかな」
戦士「…?」
ハンター「…俺らエルフ族は…」ブツブツ
ハンター「元々、人間に容姿が似ていたから…」
ハンター「ただ、それだけの為に…先に準備をさせるために送られてきただけだったんだ」ブツブツ
剣豪「…」
戦士「…」
907: 2014/09/23(火) 00:09:58 ID:sHPfqZEo
ハンター「…ぐっ…!?」ズキンッ!!
…ヨロッ
剣豪「…ハンター?」
戦士「ハンターさん!?」
ハンター「…だ、だけど…!」
ハンター「やられっぱなしほど…悲しいものはない…っ!」
ハンター「だったら…チャンスもあろうと…!犠牲を少なくするためにも、君たちに伝えた…!」
ハンター「き…霧が消える前に…!」ブルブル
ハンター「伝えてくれ…俺の言葉を……!」
剣豪「…!?」
戦士「な…何が…!」
908: 2014/09/23(火) 00:10:43 ID:sHPfqZEo
ハンター「霧の中は、よく声が響く…!」
ハンター「奴らに俺の声が気づかれた…お前らも気づかれている…逃げろ…早く…!!」
…ガタガタッ…!!
剣豪「お、おい!」
戦士「ハンターさん!?」
ハンター「…がぁっ!!」
バシュウンッ……!!
キラッ…キラキラ……!
剣豪「…っ!」
戦士「なっ…!?」
909: 2014/09/23(火) 00:13:35 ID:sHPfqZEo
サラサラ…モワァッ………
剣豪「は、ハンターの姿が…消えた…?」
戦士「い、いや違う…!これは…!」
モワッ…
戦士「見ろ…!ハンターのいた場所から、白いモヤのようなものが…」
戦士「ま、まさか…。外を覆う、霧の正体は……」
戦士「…っ!」ハッ
…ズドォォンッ!!
戦士「こ、小屋の壁が壊れた!?」
剣豪「…おい!何か来るぞ!」
ズシンッ…ズシンッ…!!
???『…バカな奴だ。実力を買って、食糧を取らせるのに生かしておいたものを…』
910: 2014/09/23(火) 00:14:09 ID:sHPfqZEo
剣豪「…敵か!?」チャキンッ
戦士「な、何だこいつは…!」チャキッ!
オーク『やはり人間か…。ふん、オーク族である俺も知らぬとはな』ニタァッ
剣豪「オーク…?こいつ、人間か?到底そうは見えないんだが…」
戦士「さっき言ってた、世界を掌握せんとするっていう魔界の住民ってやつ…なのかもしれんぞ」
剣豪「何?じゃあさっきの話は…」
オーク『おいおい、あのバカそんなことまで話をしてやがったのか』
オーク『チッ…最初から霧にしておくんだった…』
911: 2014/09/23(火) 00:14:46 ID:sHPfqZEo
戦士「…っ」
戦士「貴様らは一体何者だ!」
オーク『話を聞いたんだろう?』
戦士「魔界など!魔族など…!」
オーク『やれやれ…』
戦士「…知っている事を話してもらおうか…」
オーク『…』ニタァ
剣豪「…戦士、のんきに話しをしてる場合かよ。こいつ…意外と強いぞ』
オーク『俺が人間如きにやられるかよ…クハハッ!』
剣豪「…っ」チャキッ
…ジリジリ
912: 2014/09/23(火) 00:15:32 ID:sHPfqZEo
オーク『やる気か?人間風情が…』
剣豪「…」
オーク『やめとけ。諦めろ…お前ら如きでは相手にならん』ククク
剣豪「…やってみねば分からん」
オーク『大人しくしておけ。お前らを頃すのは簡単だがー…』
オーク『そうだな…魔力の塔の糧となってもらうのも悪くはない…。丁度あいつらも切れそうだしな…』
剣豪「…あいつら?」
オーク『…そうだな。それがいい…クヒッ…』
剣豪「…気持ちの悪い笑い方しやがって!斬るっ!!」ダッ!
ダダダッ…ブォンッ!!
913: 2014/09/23(火) 00:16:07 ID:sHPfqZEo
オーク『おっと…。ふんっ!』
ビキビキッ…ガキィンッ!
剣豪「…!?」
戦士「っ!?」
オーク『だから無駄だっつーの…』ググッ
剣豪「お、俺の剣を…腕の一本で受け止めただと…!」
オーク『…じゃあ今度はこっちの番か。お前に…耐えられるかな?』ニタッ
剣豪「!」
オーク『ふんッ!!』
ブンッ…ビュオッ!!
914: 2014/09/23(火) 00:17:07 ID:sHPfqZEo
剣豪「うおっ…!」
…ドゴォンッ!!ズザザザァ…ボォンッ……!!
戦士「け、剣豪!!」
オーク『っと…、あ~らら。氏んじまったかな…?』ククク
戦士「な、何なんだ…お前…!その肉体、その力…!」
オーク『くははっ…。だから言ってるだろうが。お前らじゃ相手にならねーってな』
戦士「…っ」
オーク『…やめとけやめとけ。大人しく生け捕りされとけ。お友達みたく氏にたくないだろう?』
戦士「…」
戦士「…ふっ」
オーク『む?』
915: 2014/09/23(火) 00:17:40 ID:sHPfqZEo
ダッ!!ダダダダッ…!!
オーク『ぬっ!?』
剣豪「うおらぁぁっ!!」ブンッ!!
…ザシュウッ!
オーク『ぐぬっ!?』
剣豪「…あんな程度で、俺が氏ぬかよ……!」ユラッ
オーク『な、なんだと…』
剣豪「油断すると、その自慢の筋肉も防御力を落とすらしいな?」
オーク『貴様…よくもこの俺に傷を……!』ギロッ
剣豪「ちょっと最初は油断しただけだ。てめぇ…俺を吹き飛ばしやがって…」ペッ
剣豪「…満足のまま生きられると思うな」ギラッ
916: 2014/09/23(火) 00:18:18 ID:sHPfqZEo
オーク『くははっ!傷一つつけたくらいで戯言を!!』
剣豪「…傷一つで済むと思ってるのか、てめぇ」
オーク『…来い!』
剣豪「行くぞ…」チャキッ
………
……
…
923: 2014/09/24(水) 19:43:03 ID:pdZd/ZQg
皆さま有難うございます。投下致します。
925: 2014/09/24(水) 19:43:42 ID:pdZd/ZQg
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…ザシュウッ!!ボトッ…
オーク『うおぉぉおっ!!お、俺の腕がぁぁ!!』
剣豪「次は…脚か…?」
オーク『わ、わわわ…わかった…や、やめてくれ…!!助けてくれ…!』
剣豪「お前は、俺を殺そうとした」
剣豪「つまり、逆に殺されるってこともあるって覚悟もあったんだろ……?」チャキンッ
オーク『ひ、ひぃぃっ!!』
戦士「…」
926: 2014/09/24(水) 19:44:24 ID:pdZd/ZQg
剣豪「だが、助けてほしいんだろ?なら、助けてやる。質問に答えれば…な」
オーク『な…なんだ…!?こ、答える!』
剣豪「お前らは何者だ。何をしにここにいる。あの塔はなんだ。さっきのエルフ族はどこへ行った!」
オーク『…っ』
剣豪「…」ブンッ!
…ブシャアッ!!
オーク『いぎっ…!!』
剣豪「3…2…1…」
オーク『わ、わかった!答える!!』
剣豪「…」ブンッ!
…ザシュウッ!!
オーク『ぎあああっ!!』
927: 2014/09/24(水) 19:45:10 ID:pdZd/ZQg
剣豪「3…2…」
オーク『お、俺らは人間共の言う相手での…ま、魔物だ!別の世界から…やってきた…』
剣豪「別の世界とはどういうことだ」
オーク『人間界と一緒だ…!お前らに、この世界はなんだと聞いても、答えられないだろう!』
剣豪「なるほど、正論だ。では、何をしに来た」
オーク『こ、此方側の世界を俺らのものとするために!』
剣豪「あの塔はなんだ」
オーク『お…俺らはこの霧の中でしか行動を出来ない!』
オーク『あの塔が完成すれば、俺らの世界と同じ気運を保ち…霧がなくても生存できるようになる!』
剣豪「さっきのエルフ族はどこへ行った」
オーク『え、エルフ族は俺らと同じ世界の出身だ!』
オーク『だが、人間に容姿が似ていて気運がなくても生活できるから先にこちらに送られてきていた!』
オーク『エルフ族は特殊な魔力を持っていて、俺らの魔術式で魔力の霧となるんだ…!』
928: 2014/09/24(水) 19:45:53 ID:pdZd/ZQg
剣豪「…戻せるのか」
オーク『む…無理だ。エルフ族に流れる魔力を膨大に暴走させ、霧へと姿を変えさせる…』
オーク『戻す方法はない…』
戦士「…っ」
剣豪「…そうか。ここにはお前以外の魔物はいるのか。今の数は?」
オーク『お、俺らも人間と同じく食糧を必要とする。故に、こちら側にいる獣を狩りに出ているが…』
オーク『数的にいえば中隊に匹敵する数はいる…』
オーク『今、塔の中には同胞が少し残ってるが…わずかな待機組しかいない…!』
剣豪「べらべらと…何でもしゃべるんだなお前は」ククッ
オーク『た…助けてくれるんだろ…?』
929: 2014/09/24(水) 19:46:25 ID:pdZd/ZQg
剣豪「…だめだ」
オーク『ひっ!』
剣豪「氏ね」ブォンッ!!
…ザシュウッ!!
オーク『はぐっ……!』
ドシャアッ……ドロッ……
剣豪「…最初から赦す気なんざねーよ。バーカ」ペッ
戦士「あぁ…同意見だ」
930: 2014/09/24(水) 19:47:21 ID:pdZd/ZQg
オーク『…ッ!』ピクッ
オーク『がっ…ぐうぅっ…!』ゼェゼェ
剣豪「!」
剣豪「お、おいおい…どんだけ頑丈なんだよ」
オーク『も、もうじき…塔は完成したら…貴様らなど…!ふひっ…ひひひっ…』
剣豪「…」
オーク『あの男と…あの女…いい黒魔石の素材になってくれたからな…』
剣豪「…何!塔に人間がいるのか!?」
オーク『…』
…ガクッ
剣豪「…お、おいコラ!そこで氏ぬのかよ!」
戦士「と、塔の中に人間が!?」
931: 2014/09/24(水) 19:47:54 ID:pdZd/ZQg
剣豪「…捕まえたような言い草だったが」
戦士「剣豪…登ろう。助けるんだ」
剣豪「バカいうな、今の話聞いてたか!?」
戦士「…塔の中にいるのは少しだろう。こいつ程度なら、俺らでやれるはずだ」
剣豪「氏ぬぞ」
戦士「…」
剣豪「…」
…チャキンッ
戦士「…行こう。冒険者は、人の為に」
剣豪「はぁ……。分かったよ…。ほら、行くぞ…」
戦士「…ありがとう」
剣豪「お前ならそう言うと思ってたっつーの…くそっ」
戦士「…ふっ」
932: 2014/09/24(水) 19:48:54 ID:pdZd/ZQg
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 魔力の塔の内部 】
ダダダダダッ…!!
戦士「…とりゃあっ!!」
剣豪「うおらぁぁっ!!」
ブォンッ…ブシャアッ!!
ゴブリン『な、何だコイツら…!!』
戦士「どけどけぇ!捕えられた人間はどこにいる!」
ゴブリン『…言ウと思うか!』
933: 2014/09/24(水) 19:49:45 ID:pdZd/ZQg
戦士「…言わないなら、切り刻む」チャキッ
ゴブリン『はははーっ!やってミろォ!!』
戦士「せいやあっ!」ブォンッ!!
ゴブリン『フンッ!』
ガキィンッ!!キキィンッ!!
戦士「むっ…!」
ゴブリン『ハハハッ!』
剣豪「手ェ抜くんじゃねぇよ戦士」ブォンッ!!
…ザシュウッ!!
ゴブリン『ガッ…!』ドシャッ
剣豪「っしゃ、次ッ!」
934: 2014/09/24(水) 19:50:57 ID:pdZd/ZQg
ダダダッ…!
戦士「くそっ、次から次へと…何が少しだ!」
剣豪「っつーか!登っても登っても、人間なんざいねぇぞ!」
戦士「…っ」
剣豪「あいつに一杯食わされたわけじゃねえだろうな…!」
戦士「…あの中で、俺たちに虚をつくほどの相手には見えなかったがな」
剣豪「そりゃそうだが…」
ダダダダダッ……!!ズザザァ…
戦士「っと、また階段だな!これで何層目だよ!?」
剣豪「分からん!だが、そろそろ最上階に着いちまうんじゃねぇのか!」
戦士「くっ…!どこかで見落としたのか…!」
ダダダダダッ…!!
935: 2014/09/24(水) 19:51:49 ID:pdZd/ZQg
剣豪「…っ」
戦士「どこまで登れば……っ!」
ダダダダッ!!
…キラッ
剣豪「…ん?…おい、階段の上を見ろ!」
戦士「おっ…!次の扉…今までと違う文様が見えるな…」
剣豪「何かあるっぽいぞ!ぶっ壊して入るぞ!」チャキッ
戦士「…何かいたら奇襲になるか。わかった、行くぞ!」チャキッ
ダッダダダダダダダッッ!!
剣豪「うおらぁぁぁっ!!」ビュンッ!
戦士「おらあぁぁぁっ!!」ブォンッ!!
ガツッ…ドゴォォンッ!!パラパラ……
936: 2014/09/24(水) 19:52:19 ID:pdZd/ZQg
剣豪「うしっ!突破ァ!」
戦士「おっしゃ!」
ズザザザァ……
剣豪「お…。今までと違う部屋…だな」
戦士「天井が高い…ドームのようだな。何だ、この部屋は…」
…ギラッ!
戦士「ん…?」
剣豪「…お?」
ギラッ…!
戦士「ん~?なんだありゃ…真っ黒な…石?」
剣豪「なんだよあれ…。つーか、よく見たら部屋全体に…石の結晶っぽいのが…」
ゴォォォ……
937: 2014/09/24(水) 19:53:20 ID:pdZd/ZQg
剣豪「…なんだ、気持ちわりぃな。とにかくあのデカイ結晶みたいな所に行ってみようぜ」
戦士「お、おう…」
タッタッタッタッタッ…
…ギラギラ…
剣豪「…っと、これは…」
戦士「な、何だよこれ…。黒い水晶か?」
剣豪「いや、この輝きは魔石の類か何か…じゃないのか」
戦士「黒い…魔石…?」ハッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
オーク『あの男と女は黒魔石の素材に…』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
戦士「…黒魔石!そういえばアイツが、素材になるとか言っていたな!」
剣豪「ってことは、ここにいた人間はこの魔石の素材になったのか…?」
938: 2014/09/24(水) 19:53:53 ID:pdZd/ZQg
戦士「…人の姿がないってことは、遅かったのか…!くそっ!」
剣豪「ちっ…。これを一体何に使うっつーんだよ…」
戦士「…あいつらが生きるために霧が必要なんだが、それをいらなくする為に~…とか言ってたような」
剣豪「あぁ…」
戦士「…待てよ。じゃあ、これを壊せば……」
剣豪「そういうことかもしれん」
戦士「…やるか?」
剣豪「やるべきか…」
…チャキンッ
戦士「…」ググッ
剣豪「…」グググッ
939: 2014/09/24(水) 19:54:58 ID:pdZd/ZQg
…ブォンッ!!
戦士「せいやっ……!」
剣豪「うおらっ……!」
「…待て!!」
戦士「!?」ピタッ!
剣豪「!?」ピタッ!
「これを攻撃してはダメだ!これは魔力や威力を吸収する、此方側にない特異な魔石!」
「お前たちの高い威力は、この塔に力を貸すだけだ!」
戦士「な、何の声だ!?」
剣豪「どこから話をかけてやがる!敵か!」
940: 2014/09/24(水) 19:55:38 ID:pdZd/ZQg
「…よく、ここまで来てくれた。ありがとう」
戦士「…?」
剣豪「ありがとうだぁ?何もお礼を言われるこたぁねえぞ!それよりどこにいる!」
「…ここだ」
戦士「…部屋には誰もいないぞ!」
剣豪「堂々と姿を見せやがれ!」
「…もう、力もないんだ」
戦士「…力もない?」
剣豪「意味が分からんぞ!お前…敵だな?ここへいた人間はどこへいった!」
941: 2014/09/24(水) 19:57:40 ID:pdZd/ZQg
「……」
「戦士、剣豪…。最期にお前たちを一目見れて、本当にうれしく思うぞ……」
戦士「…え?」
剣豪「な、何…?」
「…悔しいが、俺はここまでだ。お前たちには危険なことをさせてしまって…すまなかった」
「だが、お前たちの実力を一番に知ってるのは俺だ。それを信じさせてもらった…」
戦士「ま…待って…」
剣豪「お、おい…まさか…!」
「…もう、俺はこの黒魔石に取り込まれ、残るのはこの意識だけさ」
「はは、ドジっちまってさぁ…もう、お前らと戦うこともできなくなっちまったよ…」
戦士「ま、まさか…!だ……」
剣豪「大戦士…さん…!?」
942: 2014/09/24(水) 19:58:35 ID:pdZd/ZQg
大戦士「ははっ!気付いてくれたか。…身体はもう、この黒魔石に溶けちまってな」
大戦士「声だけでも届いてること、本当にうれしく思う」
戦士「う…嘘ですよね…?」
大戦士「話すべきことは沢山ある。話したいこともある。だが…時間もない…」
大戦士「お前を呼んで良かったよ。ここへ来てくれて…有難う」
戦士「嘘だ…!嘘ですよね…!あなたほどの人が…!!」
大戦士「…本当にすまない」
戦士「嘘ですよ!!嘘だと言って下さい!!」
大戦士「お前なら必ず来てくれると信じていた。ありがとう」
戦士「なぜ…!何故ですか!何故、大戦士師匠とあろう人がこんな…こと……っ!」
943: 2014/09/24(水) 19:59:12 ID:pdZd/ZQg
大戦士「…」
大戦士「俺は、祭壇町へ小隊長として送り込まれた。そして、知性ある魔物とやらと衝突したんだ」
大戦士「当初は俺を含め、有利に進んだ。俺らで解決まで持って行けるんじゃないか…とね」
戦士「…」
大戦士「だが、それは甘い考えだった。部下たちには本当に…すまないことを…」
戦士「一体、その町で…何が…!」
大戦士「…竜族を知っているか」
戦士「竜族、ですか…?」
大戦士「あぁ…。あの時、俺は……」
944: 2014/09/24(水) 20:00:12 ID:pdZd/ZQg
…
……
………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 祭壇町 支部 】
…シャキンッ!ドサッ!
ゴブリン『…』
…ゴロンッ
大戦士「…まだ、やるか」
ゴブリン長『…なっ…なんだと…!俺ノ部隊が…一瞬で…!』
中央大尉「見たところ、お前がこの部隊を率いるリーダーか」
中央大尉「我々、中央軍を甘く見たことを後悔するんだな」
ゴブリン長『…話ト、違イ過ぎるぞ…!』ギリッ
945: 2014/09/24(水) 20:00:45 ID:pdZd/ZQg
大戦士「話と違う…だと?」
大戦士「それは気になる言葉だな。聞かせて貰おうか」
ゴブリン長『…ッ』チャキンッ
中央大尉「やめとけ。お前の実力では、一人で到底勝てるものではない」
ゴブリン長『…だガ、俺コそ気高き戦闘種族!易々と口を割ルわけには!』
中央大尉「やれやれ、ではココは自分が」チャキッ
大戦士「…頼む」
中央大尉「もちろんです。いざ…参る!」ダッ!
ゴブリン長『…ッ!』
ダダダダダッ…ガキィンッ!!
946: 2014/09/24(水) 20:01:20 ID:pdZd/ZQg
小隊軍人たち「ふぅ…。中央大尉殿が勝利で、ようやく落ち着くきそうだ」
小隊軍人たち「…一時はどうなることかと思ったが、何とかなってよかったよ」ハハハ
小隊軍人たち「さすが大戦士さんたちだ」
小隊軍人たち「つーか、この程度の魔物たちに支部の奴らはやられたのか?」
小隊軍人たち「あっ、それそれ。俺も少し気になったんだよー……」
…ズズゥンッ!!!
小隊軍人たち「なんだ!?」バッ
…ポタッ、ポタッ
小隊軍人たち「…えっ?」
947: 2014/09/24(水) 20:02:00 ID:pdZd/ZQg
???『やれやれ、急ぎ過ぎるぞ人間たちよ』
中央大尉「だ、大戦士さ…」ブルブル
???『おっと、半頃し状態では辛かろう。すまなかったな』
ブォンッ…ズバァンッ!!!
ドシャッ!ゴロゴロ……
大戦士「…!!」
…ザワザワッ!
小隊軍人たち「な、なんだアイツ!?」
小隊軍人たち「い、一体…!!」
小隊軍人たち「でけぇ…トカゲ…?いや…。っつーか、また言葉を…!」
小隊軍人たち「そ、それより副隊長が真っ二つにされ…!」
948: 2014/09/24(水) 20:02:38 ID:pdZd/ZQg
ゴブリン長『…チッ、俺ガかっこよク倒そうとしタところをジャマしヤがって…』
???『…それは済まない事をしたな。では、あの向こうの小隊長の男やってもらえるかな?』
ゴブリン長『…』
ゴブリン長『そ、そレは興が削がレたノで、お前ニ任せる!』プイッ
???『そうか。では、休んでいてくれるか』
ゴブリン長『う、ウむ…』
大戦士「…っ」
大戦士「き、貴様は一体…!」
???『…我の事かな?』
大戦士「随分と、いい話し方だな……!」
???『…』
大戦士「そのでかい身体…!まるでトカゲの化け物…魔獣の一種なのか…!?」
949: 2014/09/24(水) 20:03:21 ID:pdZd/ZQg
???『…そうか、自己紹介が遅れた』
バハムート『我の名前はバハムート。竜族を率いる、竜族の長ともいうべきか』
大戦士「バハムート…?竜族だと?」
バハムート『混乱するのも無理はない。だが、そのような説明の前にお前たちには消えてもらうー……』スゥゥ
大戦士「…ま、待て!話が出来るなら、話をさせてほしい!」
バハムート『…』
バハムート『……ふむ。聞こうか』スッ
大戦士「お前たちの目的は何なんだ!俺は、お前らのような魔物の存在を見たことがない!」
バハムート『…』
大戦士「…っ」
950: 2014/09/24(水) 20:04:27 ID:pdZd/ZQg
バハムート『…良かろう。少し、話をしてやろう』
大戦士「…いいのか」
バハムート『その前に少し。見たところお前は、優秀な人間なのだろうな』
大戦士「…な、何?」
バハムート『我の爪の前に砕け、そこに転がった亡骸…中央大尉といったか。それはお前の特別な仲間のようだ』
大戦士「…っ」
バハムート『だが激昂するわけでもなし、悲観するわけでもなし。この状況に妙に落ち着いている』
バハムート『いや、むしろ…この状況から新たな情報を得ようと、活路を見出そうとしている』
大戦士「…」
バハムート『戦いの場において、非常に優秀。その優秀なお前に、話をしない訳にはいかないだろう』
大戦士「…そう言って貰えると、嬉しいね」
951: 2014/09/24(水) 20:05:33 ID:pdZd/ZQg
バハムート『では、まず……』
???『待て』
バハムート『…むっ?』
バサッバサッ…ズズゥン…!
???『何を悠長に話をしようとしてやがる…』
…ザワザワッ!
小隊軍人たち「ま、また増えた…!」
小隊軍人たち「俺たち…ど、どうなっちまうんだ…」
小隊軍人たち「だ、大丈夫だ…!俺らには、あの大戦士さんがついてるんだから!」
バハムート『…バジリスク、か』
バジリスク『人間は、殺せと言われているだろう…。使えるやつがいるなら別だがな』
バハムート『そうだったな。どうも、礼儀のクセが抜けなくてな』
バジリスク『まぁいい。それより、そこの人間は他の奴より優秀そうだ。そいつは生け捕りで塔の素材としよう』
バハムート『ふむ…それがいいだろう』
952: 2014/09/24(水) 20:06:14 ID:pdZd/ZQg
大戦士「…っ!」
大戦士「話し合いで何とか出来ると思ったのは、やはり無理だったか」チャキンッ
バジリスク『…ふっ、話すことなど何もない……!』
バハムート『話が出来なくてすまないな。では……っ!』スゥゥ
大戦士「…くっ!」チャキッ!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…………
……
…
953: 2014/09/24(水) 20:06:59 ID:pdZd/ZQg
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 塔 最上階 】
戦士「…っ」
剣豪「それで…大戦士さんが…」
大戦士「俺が生涯の中で、最も凶悪で最も強大…」
大戦士「一匹ならまだしも…あの二匹を相手にどうこう出来るものじゃなかった…」
大戦士「気が付けば、俺は黒魔石の中。崩れていく身体を、見続けていた…」
戦士「ぐ、軍をやめた貴方が!大戦士師匠が犠牲になることはなかったはずなのに!」
大戦士「…仕方ないことだ」
戦士「…っ」
954: 2014/09/24(水) 20:08:05 ID:pdZd/ZQg
剣豪「だ、大戦士さん。話を割って…いいか?」
大戦士「…なんだい?」
剣豪「大戦士さんは、どうやって戦士のもとへ現れたんだ?」
大戦士「あぁ…」
戦士「そ、そうだ!俺もそれを聞きたくて…!」
大戦士「あの時までは、黒魔石にエルフ族の魔術師もいてね」
大戦士「その方の魔法のおかげで、お前の前へ行くことが出来た」
大戦士「ま、少しだけ黒魔石の魔力も感化されて、実体化しすぎてお前の武器を吹き飛ばしちまったが」ハハ
剣豪「…」
戦士「…大戦士さんは、どうして俺のもとへ…。俺に助けを求めたんですか…?」
955: 2014/09/24(水) 20:08:54 ID:pdZd/ZQg
大戦士「剣士、武装中将、武道家。だが、今は彼らはココへ来させるべきじゃなかった」
戦士「あの…剣士さんもですか」
大戦士「今、彼らは葛藤と戦っている。俺の話を聞けるべき状況じゃないんだよ」
戦士「ど、どういうことで…」
大戦士「だがまぁ、それを抜きにしても俺はお前へと声をかけたけどな」ハハッ
戦士「…えっ?」
大戦士「お前は、誰よりも大事だと思った一番弟子。お前に声をかけず、誰が逝けたものか」
戦士「だ…大戦士師匠っ…!」
大戦士「…そして、二人とも。お前たちに聞いてほしいことがある」
戦士「は、はいっ」
剣豪「…はい」
956: 2014/09/24(水) 20:09:43 ID:pdZd/ZQg
大戦士「あの話は聞いたのだろう?」
戦士「あの話…ですか?」
大戦士「魔界のこと、魔物のこと。彼らの目的のことだ」
戦士「あ…はい…」
大戦士「よし、それならいい。お前らのやるべき事は、それを中央軍本部へ伝え、世界に危機を訴えること」
大戦士「軍がいかに優秀とはいえ、力を過信し、どうにかなると思っている傾向があるはず。その気持ちを排除せねば…」
戦士「ぼ、僕らが伝えて…信じてくれますか」
大戦士「信じる。俺からの言葉だと、本部にいる"武装中将"へ伝えるんだ」
戦士「…はいっ」
大戦士「そ、それと…すまない。俺は…どうやら…ここまでだ…」
戦士「…師匠っ!?」
大戦士「お前たちともっと…!い、一緒にいたかったよ……」
957: 2014/09/24(水) 20:11:19 ID:pdZd/ZQg
戦士「…大戦士師匠っ……!」ギリッ
剣豪「…ッ」
大戦士「…お前と出会えたこと、お前と世界を歩けたこと、本当に…本当に楽しかった」
戦士「そ、そんなの…僕も一緒です!!」
大戦士「で、弟子とは言い続けていたが…今更…こう思う。お前は……息子の存在だった…と…」
戦士「…っ」ブルッ
大戦士「…ははっ…今更…だな……」
戦士「だ…大戦士師匠っ……!」
大戦士「うん?」
戦士「貴方を…お父さんと…呼んでもいいでしょうか…!」グスッ
大戦士「…そう、呼んでくれるのか」
戦士「…っ」
958: 2014/09/24(水) 20:11:58 ID:pdZd/ZQg
大戦士「…」
戦士「お…」
戦士「お父さん…っ!」ポロポロ
大戦士「…っ!!」
大戦士「は…はは…。なんか、恥ずかしいな。あ…ありが…とう…」
大戦士「願わくば、最期に…思い切り、抱きしめてやりたかった……」
戦士「…う、うっ…あうぅ……」
ポタッ…ポタッ……
959: 2014/09/24(水) 20:12:44 ID:pdZd/ZQg
大戦士「…それと、剣豪」
剣豪「は、はい!」
大戦士「剣豪も、息子の為に有難う。お前も教え子として、冒険者として、弟子として…期待しているからな」
剣豪「…はいっ…」
大戦士「…さ、さて…本当に時間も…少なくなってきた…」
戦士「!」
大戦士「お前たちにはもっと、教えたいこともたくさんあった…んだが…な…」
戦士「お父さんっ…!」
大戦士「さ、最後にも、もう一つだけ…お前たちに頼みが…ある…」
戦士「な、何ですか!!」
剣豪「何でもおっしゃってください!」
960: 2014/09/24(水) 20:13:18 ID:pdZd/ZQg
大戦士「入口の脇の黒魔石の中…!ま、魔道士が…捕えられている…!」
戦士「えっ!?」
剣豪「なっ!?」
大戦士「魔道士も…すでに…取り込まれつつある…!」
大戦士「お…俺が最後の力でお前らに…俺の残った魔力を一時的に渡す……!」
大戦士「そうすれば力を吸収されずに…黒魔石を破壊できる…はず…!」
戦士「ま、魔道士さんが…なぜ…!」
大戦士「説明している暇は…ない!…こ、今後…必ず…剣士たちの力が必要になる時が来る……」
大戦士「その為にも…!か、彼女は失ってはだめだ…!」
961: 2014/09/24(水) 20:13:52 ID:pdZd/ZQg
戦士「で、でも待ってください!剣士さんや武道家さんは、行方不明で…!」
大戦士「か、彼女が戻れば、必ずあいつも姿を現す!」
戦士「…っ!」
剣豪「わ、分かりました…!」
大戦士「では、いくぞ…。あとは頼んだぞ…二人とも…」スゥ
戦士「お…お父さん!!」
剣豪「…大戦士さんっ……!」
大戦士「…」
パァァッ…ッ!!
962: 2014/09/24(水) 20:14:40 ID:pdZd/ZQg
戦士「へ、部屋の黒魔石が輝きを…!」
剣豪「力が…あふれてくる…!」
戦士「…剣豪、この力があるうちに!」
剣豪「おう!」
ダダダダッ…!!
戦士「ど、どこに魔道士さんが取り込まれてるんだ!」
剣豪「…っ」キョロキョロ
「…そこだ」
…ギラッ
魔道士「…」
戦士「!」
剣豪「!」
963: 2014/09/24(水) 20:17:34 ID:pdZd/ZQg
戦士「…い、いた!あそこっ!だけど、どうやって傷つけないように…!」
剣豪「一撃が強すぎたら、魔道士先輩ごと吹き飛ばしちまう!」
「…信じろ。俺の力を受けたお前らだ…出来るはずだ」
戦士「…わかった。やるよ、父さん!」チャキンッ!
剣豪「…大戦士さん、力を借ります!」チャキンッ!
…スッ
戦士「…うおおおおっ!!」
剣豪「…だらぁぁぁっ!!」
…ブォォンッ!!!ガッ…ガキィィンッ!!!
戦士「ぬあああっ!」
剣豪「ぐっ…ぐぅぅっ…!!」
ググッ…ググググッ……!!
964: 2014/09/24(水) 20:18:40 ID:pdZd/ZQg
………
……
「冒険者は、人の為にこそ…。そして、自由に生きてこそ……」
「……俺の役目は、本当にこれで全て……」
……
………
965: 2014/09/24(水) 20:19:18 ID:pdZd/ZQg
…ビキッ!
ビキビキビキッ…!!
戦士「…あっ!」
剣豪「おっ…!」
パキャアンッ……!!キラキラキラ……
戦士「や、やった!」
剣豪「お、おっしゃあ!!」
魔道士「…」グラッ
966: 2014/09/24(水) 20:19:52 ID:pdZd/ZQg
戦士「い、いけない!」ダッ!
ダダダダッ…ガシィッッ!!ズザザザァ…
魔道士「…」ダランッ
戦士「…魔道士さん、魔道士さん!」
魔道士「…」
戦士「…魔道士さんっ!!」
魔道士「ん…」ピクッ
戦士「よかった…生きてる…」
剣豪「それにしても、なぜ魔道士先輩がここに…」
967: 2014/09/24(水) 20:20:50 ID:pdZd/ZQg
戦士「…お父さん、魔道士さんは助けましたよ!」
剣豪「大戦士さんっ!魔道士さんは…無事です!」
……シーン
戦士「…お父さん?」
剣豪「大戦士さん…?」
……シーン
戦士「お父さん…どこ…ですか?」
剣豪「…っ」
戦士「お父さん…。お父さん…っ!?」
剣豪「…ッ」
剣豪「せ、戦士…。大戦士さんは……」
968: 2014/09/24(水) 20:21:35 ID:pdZd/ZQg
戦士「ち、違う!あ、あの人は遊ぶのが好きだから!」
剣豪「…」
戦士「きっと、まだいるのに遊んでるだけなんだよ…!」
剣豪「戦士…」
戦士「…うん、遊んでるだけなんだ……」
剣豪「…」
戦士「凄く強いから…」
剣豪「…」
戦士「…っ」
剣豪「…」
剣豪「す…すまん。お前にかける言葉が…見つからない……」
969: 2014/09/24(水) 20:22:21 ID:pdZd/ZQg
戦士「…」
剣豪「…」
戦士「…だ、大丈夫」
剣豪「…」
戦士「大丈夫だ。大丈夫…」グスッ
戦士「大丈夫だよ…うっ……」ポロポロ
剣豪「…戦士」
戦士「どことなく…お父さんが現れた夜から、こんな気はしてたんだ…」
戦士「分かってた…分かってたけど……」
剣豪「…」
970: 2014/09/24(水) 20:22:58 ID:pdZd/ZQg
戦士「ひぐっ…」
ツー……ポタッ
魔道士「…」ピクッ
戦士「うぅ…うっ……」
…ポタッ…
ポタッ……
魔道士「…」
魔道士「…っ?」
魔道士「えっ?」ハッ
魔道士「…あれ、私……!」ガバッ!
戦士「!」
971: 2014/09/24(水) 20:23:45 ID:pdZd/ZQg
魔道士「私、一体……」
戦士「…っ」
魔道士「あれ…?」
戦士「…」
魔道士「…」
魔道士「…あ、あれ!?」カァッ
魔道士「私、何で裸……!」バッ!
戦士「…っ」
剣豪「…」
972: 2014/09/24(水) 20:24:31 ID:pdZd/ZQg
魔道士「…だ、誰?」
魔道士「っていうか、剣士たちは!?」
魔道士「それにココは…どこ…」
魔道士「…そもそも私…いき…てる…?」
………
……
…
973: 2014/09/24(水) 20:25:20 ID:pdZd/ZQg
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数 分 後 】
魔道士「…服、有難う」
戦士「いえ…。羽織るものだけで、申し訳ないです…」
戦士「それと、今話をした通り、お父さ…いえ、大戦士師匠は……」
魔道士「…」
魔道士「そんなことが…あったなんて……」ブルッ
戦士「貴方も、この黒魔石の素材にされる寸前だったんです」
戦士「大戦士さんの最後の望み、叶えられて本当に良かったと思います…」
974: 2014/09/24(水) 20:26:16 ID:pdZd/ZQg
魔道士「大戦士さんが、私の為に力を使って…。私なんかの為に…」
戦士「…魔道士さん、"私なんか"なんて、言わないでください」
魔道士「!」
戦士「お父さんが助けた貴方がそんな事を言っては、どうにもなりません!」
魔道士「…ごめんね」
戦士「…っ」
魔道士「…でも、大戦士さんがそんなこと…本当に…信じられないよ…」
戦士「…」
魔道士「…」
剣豪「…戦士!そう悔やんでる暇なんかないだろう!」
剣豪「俺らに託されたのは、魔道士先輩を剣士に届け、中央軍に全てを伝えるまでだ!」
剣豪「その全て果たしてから、悔やむべき…だろう…!」
975: 2014/09/24(水) 20:27:01 ID:pdZd/ZQg
戦士「わ…分かってる!分かってるけど!」
魔道士「…」
戦士「分かってるよ…。でも…でも……っ!」
剣豪「…っ」
魔道士「…」
戦士「…わかってる…けど…」
戦士「か、身体の震えが…」ブルッ
戦士「ど…どうすれば…。ぼ、僕は…これから…一人に……!」
戦士「剣豪も魔道士さんも、僕の気持ちなんかわかるわけないからそんなことー…!」
魔道士「…戦士」
ソッ…ギュウッ
戦士「!」
976: 2014/09/24(水) 20:28:02 ID:pdZd/ZQg
ギュウウッ…
戦士「ま、魔道士さん!?」
魔道士「本当にありがとう…戦士」
戦士「ま、魔道士さん…!だ、抱きしめ…!羽織ってるだけだから服が…!」
…パサッ
魔道士「いいの。戦士…ありがとう」
戦士「そ、それは…当然のことで…」カァッ
魔道士「…」
ギュウウッ…!!
戦士「…っ!」
977: 2014/09/24(水) 20:29:28 ID:pdZd/ZQg
戦士「ま、魔道士さん…!?」
魔道士「戦士。手を…貸して」スッ
戦士「えっ?」
グイッ!…スッ…
戦士「!?」
戦士「ま、魔道士さんっ!?ななな、何を!胸に…!」
魔道士「…落ち着いて。大丈夫だから」
戦士「お、落ち着いてって!」
魔道士「戦士。私の胸から、私の鼓動を…感じるよね」
トクン…トクン…
戦士「…そ、そりゃ当然で…!」
978: 2014/09/24(水) 20:30:09 ID:pdZd/ZQg
魔道士「私の身体が、私の心が鼓動を打って、、こうして生きているのは…貴方たちのおかげなの」
魔道士「…ありがとうって、何度言えばいいのか分からない」
魔道士「貴方が私を救ってくれた」
魔道士「そして、今のあなたの気持ちは、凄く…分かる。分かろうと出来る」
魔道士「大事な人が失った哀しみ。大事な人がいなくなること」
魔道士「貴方の哀しみを分かろうとする人が、分かる人がいる。貴方は一人なんかじゃない…」
魔道士「だから……」
戦士「…っ」
魔道士「…」ニコッ
戦士「…」
979: 2014/09/24(水) 20:30:49 ID:pdZd/ZQg
魔道士「…少し、落ち着けたかな」
戦士「は…はい…」ドキドキ
魔道士「うんっ、よかった…」
戦士「…」
魔道士「…」
ヒュッ…ゴツンッ!!!
戦士「」
剣豪「…いつまで魔道士さんの胸触ってんだ!」
剣豪「落ち着いたなら、さっさと魔道士さんを剣士のもとへ連れてくぞ!」
魔道士「あはは…」
戦士「わ、分かってるよ!」
戦士「…って俺ら、よく考えたら剣士さんの場所分からくないか?」
980: 2014/09/24(水) 20:31:20 ID:pdZd/ZQg
魔道士「えっ?」
剣豪「あっ…そうか…」
戦士「…どうしよう」
魔道士「ち、ちょっと待って。剣士の場所が分からないって…どういうこと?」
魔道士「あの3人のことだから、嫌でも居場所なんて分かるような…」
戦士「…あっ!」
魔道士「え?」
戦士「そ、そういうことか…!」
戦士「剣士さんが姿を消したのは、魔道士さんがこんな風になったから…!」
魔道士「待って!剣士が…姿を消した…?どういうこと!」
981: 2014/09/24(水) 20:32:15 ID:pdZd/ZQg
戦士「…そうか、魔道士さんは何も知らないのか」
魔道士「…だから、どういうこと?剣士が消えたの!?」
戦士「えっと、お互いの情報…整理し合いましょう」
魔道士「…う、うん」
戦士「まずは、俺らが知ってる情報から…」
………
……
…
982: 2014/09/24(水) 20:33:00 ID:pdZd/ZQg
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
剣豪「そういうこと…だったのか」
戦士「東方祭壇町で…そんなことが…」
魔道士「…私がいなくなって、パーティが解散してたなんて……」
剣豪「それほど魔道士さんの存在は大きかったってこと…か」
戦士「でもこれで全部が繋がった…!」
戦士「祭壇町での事件、知性のある魔族の存在、剣士さんが姿を消した理由…!」
剣豪「だな。一刻も早く、中央軍にも塔の存在と魔族の話を伝えないといかん」
戦士「魔道士さんが生きてたこと…戻ってきたことも!大戦士さんのこと…も…」
剣豪「…あぁ」
983: 2014/09/24(水) 20:34:28 ID:pdZd/ZQg
魔道士「剣士…」ギュッ
戦士「大丈夫ですよ、魔道士さん。剣士さんは必ず…」ソッ
…ゴツンッ!
戦士「」
剣豪「…アホ」
戦士「ってぇな、何すんだよ!」
剣豪「お前、どさくさに紛れて魔道士さん抱きしめようとしただろ」
戦士「…」
剣豪「お前が魔道士さんのことを大好きなのは知ってるが、あんま調子乗んなアホ」
戦士「ば、バカっ!おいっ!」
984: 2014/09/24(水) 20:35:23 ID:pdZd/ZQg
魔道士「…」クスッ
戦士「ち、違いますよ!魔道士さん!」
剣豪「さっさと行くぞ!他の魔族が帰ってきたら困るだろ!」
戦士「分かってるよ!出発だ出発!」
剣豪「だから行くぞっつってんだろーが!」
戦士「ま、魔道士さん行きましょう!出発!」
剣豪「…アホ」
剣豪(お前がまだ哀しくて温かさを求めるのは分かる。だが、魔道士先輩は…違うだろ…)
魔道士(…剣士)
魔道士(まだ私は、生きてるよ。剣士は今…どこにいるの…?)
………
……
…
985: 2014/09/24(水) 20:37:29 ID:pdZd/ZQg
本日は久々の大量更新となりましたが、ここまでです。
次回は新スレとなります。
ここまでお付き合いして下さっている方々へ、改めて有難うございました。
次回は新スレとなります。
ここまでお付き合いして下さっている方々へ、改めて有難うございました。
986: 2014/09/24(水) 20:38:10 ID:LEPZX2Co
おつ!
次回:
引用: 剣士「冒険物語…!」
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります