1: 2014/09/26(金) 21:13:53 ID:zoqJQ9cI

2: 2014/09/26(金) 21:14:29 ID:zoqJQ9cI
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 星降町 宿 】
 

剣豪「…無事に塔からココへ戻ってこれて良かったぜ」ハァ


…パサッ

戦士「…よくお似合いです!やっぱりどんな服でも似合いますね!」

魔道士「そうかな…?」

戦士「はいっ!」


…ゴツンッ!!

戦士「」
葬送のフリーレン(1) (少年サンデーコミックス)
3: 2014/09/26(金) 21:15:09 ID:zoqJQ9cI
 
剣豪「お前な…!」

戦士「ってぇな!!」

剣豪「恋煩いかよオメーは!人妻みてぇなもんだぞ!」

魔道士「ひ、人妻かぁ…」


戦士「わ、分かってるよ!だけど、あんな一枚羽織っただけじゃダメだろうが!」

剣豪「似合ってまーす!じゃねえっつーの!それよりこれからの事決めるぞ!」

魔道士「あ、あはは…。そ、それじゃこれからどうするの?」


戦士「えーと…先ずはここの軍の支部へ行きましょう」

戦士「お、お父さんのことと…。貴方が生きていたことを、一刻も早く伝えないといけないので…」


魔道士「…うん、わかった」

4: 2014/09/26(金) 21:16:10 ID:zoqJQ9cI
 
戦士「じゃあ、行きましょうか」

剣豪「当たり前だ。ほら、行きましょう」

魔道士「うん…」


………

5: 2014/09/26(金) 21:17:00 ID:zoqJQ9cI
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍 星降町支部 】


戦士「…っていうわけなんですが」

星降兵「…」

剣豪「…」


星降兵「…」チラッ


魔道士「…」ペコッ

6: 2014/09/26(金) 21:17:40 ID:zoqJQ9cI
 
戦士「…お願いします。一刻も早く、武装中将に会わなければならないんです!」


星降兵「まぁ…話は分かった」

星降兵「では、それを踏まえて…もしもの話だが」


戦士「は、はい」

星降兵「もし君が俺と同じ立場で、世界有数の冒険者が師匠だと言う子が現れたら…どうする?」

戦士「…」

星降兵「しかも、その人が氏んだから国のトップを担う人物へ会わせてくれという」

戦士「…」

星降兵「…君なら、信じるかな?」

戦士「…」

星降兵「…どうなんだ」

7: 2014/09/26(金) 21:19:15 ID:zoqJQ9cI

戦士「…」

戦士「…し、信じます…」


星降兵「…ほう?それが、何か大きな問題を起こすかもしれなくてもかい?」


戦士「…はい。きっと、その人の眼を見れば…本当かどうかは分かるはずだから…」


星降兵「…」

戦士「…」

星降兵「…」

戦士「…」

星降兵「…ふっ」

戦士「?」

8: 2014/09/26(金) 21:20:56 ID:zoqJQ9cI
 
星降兵「…分かった。連絡がつくよう、聞いてみよう」

星降兵「だが、君たちが直接…という訳にはいかん。本部の者に許可を取り次第だがな」


戦士「…いいんですか!」

星降兵「君たちの名は、戦士と剣豪…だろう?」

戦士「!」

剣豪「!」


戦士「な、何でそれを!」

剣豪「俺らの名前を…?」


星降兵「はは、やはりな」

星降兵「…実は、大戦士殿の名前を出す二人組のパーティが来たら、連絡をよこすように言われていたんだ」

星降兵「大戦士殿の名前、そして武装中将殿の名前を出す二人組の若い男のパーティがあるかもしれない、とね」

9: 2014/09/26(金) 21:21:27 ID:zoqJQ9cI
 
戦士「だ、誰がそんなことを…」

星降兵「武装中将殿さ。本当に現れるとは思わなかったよ」

戦士「…!」

剣豪「はは…マジかよ…」

魔道士(凄い……!)


星降兵「だが、念には念をおして情報だけ先に共有しろって事は言われてる」

星降兵「すぐに連絡はつくし、転移装置も動く。ちょっとだけ待ってて貰えるかな」


戦士「…は、はいっ!ありがとうございます!」


………
……

10: 2014/09/26(金) 21:22:26 ID:zoqJQ9cI
 
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・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

11: 2014/09/26(金) 21:24:11 ID:zoqJQ9cI
 
それからすぐ、武装中将と連絡がついた3人は転移装置を利用し、中央軍本部へと足を運んだ。

そして、武装中将と対面し――……

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍 本部 】


武装中将「…っ」ブルッ

魔道士「ぶ、武装先生…!そんな…泣かなくても…!」

武装中将「よく…生きていてくれた…!辛かっただろう…!」

魔道士「い、いえ…」

武装中将「ありがとう…。本当に……ありがとう……っ!」

魔道士「…っ」

12: 2014/09/26(金) 21:25:03 ID:zoqJQ9cI
 
武装中将「本当に…すまなく思っている…!」

武装中将「若き者たちへ、軍にも関係のない者へ、ここまで迷惑をかけたこと…」

武装中将「利用してしまったこと、犠牲を出したこと…全てへ…!」


魔道士「仕方のないことです…」

武装中将「…っ」


戦士「…武装さん、話を割りますが…少しよろしいでしょうか」

武装中将「…」


戦士「大戦士師匠の望みは、魔道士さんが剣士さんの場所へ戻ること」

戦士「そして、この問題が全て解決し、平和が訪れること」

戦士「まだ、終わりじゃないんです。だから、俺たちが見た事、聞いたこと…信じてくれますか」


武装中将「当たり前だ。…話を聞かせてくれるか」

戦士「…はいっ」

13: 2014/09/26(金) 21:25:42 ID:zoqJQ9cI
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

戦士「…以上が、俺たちの知った全てです」


武装中将「そんな場所まで侵攻があったとは…」

武装中将(…見落としていた。まさか西方側からも侵攻があるとは!)

武装中将(恐らく、あの前の西方の地震の場所…消失した村に現れた面子だ…くそっ…!)


戦士「その塔は既に、完成間近と聞きました。完成すれば、魔族は一斉に世界に飛び立つかと…」

武装中将「…参った。まさかこんな事態になるとは…」

戦士「…」


剣豪「…武装さん、すぐに東方祭壇町の奪回戦は始めないのか?」


武装中将「無論、準備は進めている。近々、奪回戦の開始する予定ではある」

14: 2014/09/26(金) 21:26:16 ID:zoqJQ9cI
 
剣豪「…へぇ」

武装中将「すぐにでも動けるよう、準備はしているが…あとは元帥殿の許可次第なんだがな…」

剣豪「なるほどな」


武装中将(…拳闘家少佐は、恐らくもうこの世にはいない)

武装中将(彼もまた、世界を担う若者の一人であったというのに…俺のせいで…)

武装中将(老害とはよく言ったものだ…。自分で自分が本当に情けなくなる…!)


戦士「…」

剣豪「…」

魔道士「…」

15: 2014/09/26(金) 21:26:48 ID:zoqJQ9cI
 
武装中将「…」

武装中将「…そうだ、魔道士」


魔道士「は、はい」

武装中将「軍の手に空いている者に、剣士の捜索を頼むか?」

魔道士「!」


武装中将「剣士が姿を消したのは、お前を失った責任感と哀しみ…あらゆる想いのせいだ」

武装中将「その全ては…俺が原因だ…」


魔道士「…」


武装中将「…すぐにでも、あいつに魔道士が生きていることを知らせてやりたいんだ」

武装中将「絶望の淵にいるであろうアイツにもう1度、光を見せたい…」

16: 2014/09/26(金) 21:27:38 ID:zoqJQ9cI
 
魔道士「…お手数、かけることになりますが」

武装中将「構わない。俺の権限をかけ、剣士を探し出すと誓う」

魔道士「…お願いします」

武装中将「…承諾してくれて、ありがとう。すぐにでも捜索を開始させよう…」

魔道士「…」ペコッ


剣豪「…ふっ。これで剣士が見つかって、再び剣士パーティが集まれば…」

戦士「あぁ。再び冒険者たちを照らす光にもなる…!」

武装中将「必ず見つける。絶対に誓う」

魔道士「はいっ!」


武装中将「では、捜索と東方祭壇町奪回戦の会議の為、すぐに連絡を通達するよう伝える!」

17: 2014/09/26(金) 21:28:10 ID:zoqJQ9cI
 
魔道士(…)

魔道士(…剣士、会いたいよ……)

魔道士(1か月も…ごめんね…。私の勝手で……)ブルッ

魔道士(武道家、乙女格闘家…)

魔道士(剣士パーティはまだ終わってないんだから…!)

魔道士(まだ…これからなんだから……!)

…………
………

18: 2014/09/26(金) 21:29:24 ID:zoqJQ9cI
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 教会 】

リンゴーン…リンゴーン…


子供たち「しんかんさーん!」

神官「こらこら、はしゃぎ過ぎるんじゃないからな~」

子供たち「わかってまーす!」

タタタタッ…


神官「…ふふ、子供は本当に元気だね」

神官「さて、僕もそろそろ残った仕事でも片づけようかな」スクッ

19: 2014/09/26(金) 21:30:04 ID:zoqJQ9cI
 
…ポンポンッ

神官「うむ?はいはい、どちらさまですかー…」クルッ

…グニッ

神官「う゛っ」

神官「ほ、頬に指を…。誰がこんな古いイタズラを!」バッ!


魔道士「…」

魔道士「…え、えへへ…。ひ、久しぶり……だね」


神官「…」

神官「…」

神官「…」

神官「…幽霊っっ!?」ビクッ!!!


魔道士「ちょっと」

20: 2014/09/26(金) 21:30:35 ID:zoqJQ9cI
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 教会 応接室 】


神官「よ、良かった……」グスッ

魔道士「ちょっと泣きすぎ…!」

神官「だ、だって…魔道士さん…!」ポロポロ

魔道士「…そんなに泣いたら、私も…」グスッ


剣豪「…」

戦士「…」

21: 2014/09/26(金) 21:31:07 ID:zoqJQ9cI
 
剣豪「…神官さん、魔道士さん。気持ちは分かるが、まだ終わっていないんだ」

神官「そ、それは分かってるけどね…でも…」ゴシゴシ

魔道士「…っ」


剣豪「…神官さん、直球に聞く。剣士の居場所は本当に知らないのか?」

剣豪「この状況だ。ほんの少しでも情報が有ったら欲しいんだ」


神官「…」

神官「僕は本当に知らないよ。知っていたら、今すぐにでも剣士くんにこの事を伝えにいくからね」


剣豪「そりゃそうか…」

戦士「…そりゃそうですよね」

22: 2014/09/26(金) 21:31:52 ID:zoqJQ9cI
 
魔道士「剣士…どこに行ったの…」


神官「…武道家くんや乙女格闘家さんもあれから姿を消したんだ」

神官「僕もこの立場として、色々と情報は入ってくるけど、剣士くんたちの話はさっぱり……」


魔道士「…っ」


剣豪「他の2人がどこかにいれば、剣士の居場所も何とか探せると思ったんだが…」


神官「…」

剣豪「…」

戦士「…」

魔道士「…」

23: 2014/09/26(金) 21:32:41 ID:zoqJQ9cI
 
剣豪「…剣士なら、どう動くか予想はつかないのか?」

神官「剣士くんなら…か。魔道士さん、どう?」


魔道士「剣士…」

魔道士「…」

魔道士「…」

魔道士「…僧侶、私って…生きてたか氏んだかどうか、分からなかったんだよ…ね?」


神官「うん。行方不明だってなってたけど、ほとんどは亡くなったっていう…話で…」


魔道士「…」

魔道士「…剣士は、そのわずかな望みにでも賭けて、動くかもしれないかな…」

24: 2014/09/26(金) 21:33:13 ID:zoqJQ9cI
 
神官「!」

剣豪「まさか!そしたら、あの東方祭壇町に乗り込んだかもしれないのか!」

戦士「あ~…剣士さんなら、ありうるかも……」


魔道士「…剣士自身、あの強大な敵の魔物の前に実力不足だっていうのは…あの時の戦いで充分に理解はしてた」

魔道士「…」

魔道士「だけどもし、剣士が私を生きてると信じたなら、多分戦いにあの町へ一人で戻った可能性が…高いかも」


神官「…っ」

剣豪「だ、大戦士さんですら負けた相手に再び…」

戦士「だけど剣士さんなら確かに、そんなこと関係なしに救出へ向かうかもしれないな…」

25: 2014/09/26(金) 21:33:46 ID:zoqJQ9cI
 
魔道士「でも、私がもう氏んでしまったものと思っていたら…」

魔道士「…剣士が、どこまで私へ想いがあったか…分からないけど…」ギュッ

魔道士「…」

魔道士「…っ」

魔道士「…ごめん…なさい…。だめ、考えられないよ…」ブルッ

魔道士「私が氏んだなんて思って欲しくないけど、でも、そうして新しい道を探して新しい人生を歩もうとしてるとか…」

魔道士「色々考えちゃう…!うっ…うぅ…」グスッ


戦士「ま、魔道士さん…」

剣豪「…」

神官「…」

26: 2014/09/26(金) 21:36:43 ID:zoqJQ9cI
 
戦士「…」

戦士「…えとっ!」

戦士「ま、魔道士さん!」


魔道士「…?」


戦士「け、剣士さんは魔道士さんを見捨てるような人じゃありませんっ!!」

戦士「魔道士さんは、剣士さんが本当に貴方自身を見捨てるような人だと思いますか!」


魔道士「…っ!」

魔道士「…そ、そうだよね…」


戦士「…」コクン

27: 2014/09/26(金) 21:37:16 ID:zoqJQ9cI
 
魔道士「剣士だもん…。剣士だもんね…」


神官「魔道士さん、中央軍も協力するって言ってくれてるんだよ…きっと大丈夫」

魔道士「うん…」

神官「剣士くんは絶対に見つかるよ。魔道士さんの話を聞けば、どんな遠くにいても…すっ飛んでくるよ!」

魔道士「うんっ…」

神官「僕、お茶淹れてくるよ。待ってて」スクッ

タタタタッ…ガチャッ!バタンッ…


魔道士「…」

剣豪「…」

戦士「…」

28: 2014/09/26(金) 21:37:52 ID:zoqJQ9cI
 
剣豪「…まぁ、大丈夫だと思う」

剣豪「剣士は剣士で戻ってくるか、見つかるとは思ってる。だが……」


戦士「待て、剣豪。お前、これ以上魔道士さんの…」


剣豪「ちげぇよ。あっちのことだよ」

戦士「あっち?」

剣豪「…魔界とやらのほう」

戦士「あぁ…」

剣豪「黒魔石にしろ、魔族にしろ、洒落にならねえぞ」

戦士「…武装中将さんがどうにかしてくれるはずだ。それは心配はしていない」

剣豪「それなら、いいんだがな」

戦士「…」


………
……

29: 2014/09/26(金) 21:39:30 ID:zoqJQ9cI
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

30: 2014/09/26(金) 21:40:57 ID:zoqJQ9cI
 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数時間後 中央軍 本部 】


武装中将「…緊急会議を開かせてもらったのは、以上の情報の共有の為でした」


元帥「黒魔石に、星降町に造られた魔の塔…」

槍士大将「…大戦士が、氏んだ…。あの…大戦士がか……!」

聖大佐「魔族…竜族……」

大魔術中佐「魔界の存在、エルフ族が霧に……」


武装中将「星降町の情報でも、謎の霧の確認はしております」

武装中将「この情報は、全てが繋がっています。エルフ族が消えた事も、大戦士が戻らぬことも…」

31: 2014/09/26(金) 21:41:28 ID:zoqJQ9cI
 
元帥「…つまり、魔界に住む住民共が、我らを襲わんとしているということか」

武装中将「夢物語、幻想物語のようですけどね…」


元帥「いや…エルフ族の歴史ないし魔法の歴史、もしかしたら魔獣の存在ですら魔界との関連性も見えてきた」

元帥「我々は人間の長き歴史の中で、全ての時代が変わる瞬間へ立ち会っているのかもしれぬ…」


槍士大将「…元帥殿。これは早急に手を打つべきです。今すぐにでも行動を!」

聖大佐「お待ちください、槍士大将殿。まだ、隊の振り分けや編隊が終了していない。統率を取るべきまで待つほうがいい」

槍士大将「そんなことを言っている場合か!」

聖大佐「統率のない隊など、無駄に命散らすだけですよ!」

槍士大将「では、その塔が完成して一般市民へ魔物たちが動いたらどうする!」

聖大佐「そ、それは…」


元帥「…」

元帥「武装中将、君はどう考える」

32: 2014/09/26(金) 21:42:02 ID:zoqJQ9cI
 
武装中将「…どちらの言い分も正しいのは確かです」

武装中将「ですが、一般人へ被害が出るのだけは抑えたい」

武装中将「…かといって、今の軍ではその"竜族"一匹の相手すら、数百の迎撃力が必要でしょう」


聖大佐「は…。我々軍人が、その一匹と数百で釣り合うレベルとおっしゃるのか?侮辱ですよ」


武装中将「ならお前は、本気の大戦士を相手に、何人の兵力が必要だと思う?」

聖大佐「は?」


武装中将「聞く話では、"竜1匹"に対し、大戦士自身、一人でどうにかなったかもしれぬレベルと言ったらしい」

武装中将「俺は大戦士一人を相手にするのに、そのくらいの兵力は必要と思う」


聖大佐「…過大評価ですな」

武装中将「…」

33: 2014/09/26(金) 21:42:37 ID:zoqJQ9cI
 
元帥「…」

槍士大将「…」

武装中将「…」

聖大佐「…」

大魔術中佐「…」


元帥「…っ」

元帥「…これではいつまでたっても時間ばかりが過ぎていく」

元帥「ここはワシが独断での判断を下す!反対は許さぬ!」


4人「…はっ!」

34: 2014/09/26(金) 21:44:38 ID:zoqJQ9cI
 
元帥「…奪回作戦は中止とし、祭壇町周辺の封鎖区域の強化を行う!東方祭壇町防衛線とし、これを伝えろ!」

元帥「更に、東西のエルフ族の各町村へ連絡隊を送り、この情報の全てを共有する!」

元帥「現状の霧をこれ以上広げぬよう、全てエルフ族を保護し、一度、南方大陸へ避難させる!」


聖大佐「…ま、待ってください!エルフ族を全て南方へ!?」


元帥「…口答えか、反対か」ギロッ


聖大佐「い、いえ…」


元帥「では続ける。同時に、星降町の山沿いにあるという魔力の塔の強襲作戦を開始!」

元帥「一個大隊クラスを三隊!塔の破壊作戦とし、魔族の侵攻を抑える!」

元帥「…この会議が終了次第、作戦の準備を早急に進めるぞ!いいな!」


4人「…了解いたしました!」ビシッ!

………

35: 2014/09/26(金) 21:45:36 ID:zoqJQ9cI
 
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・・・・
・・・
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36: 2014/09/26(金) 21:46:24 ID:zoqJQ9cI
 
…次の日。

中央軍の元帥の指揮のもと、魔族の侵攻を食い止めるべく、その作戦は開始された。

祭壇町の防衛線、星降町の魔の塔強襲破壊戦、エルフ族輸送作戦。

元帥の判断は、まず間違いなく正しかったと言える。


だが…そのすべては、遅すぎたのだ。


そう……。


その日、作戦を開始を決断した時……それは"完成"したのだから…。

37: 2014/09/26(金) 21:47:35 ID:zoqJQ9cI
 
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――――【 星降町 魔の塔 】


…パァァッ!!


???『一時はどうなることかと思ったが、もう魔力霧はいらぬ!』

???『こレで我ラは…』

???『ようやく、刻は来た……!』

???『あとは、あの方へ伝え…我々が動く時…』

???『さぁ…行クぞ……!』


…………
………

38: 2014/09/26(金) 21:48:09 ID:zoqJQ9cI
 
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50: 2014/09/28(日) 20:35:29 ID:l7UEGvXo

・・
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・・・・
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・・・・・・・・・
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51: 2014/09/28(日) 20:36:21 ID:l7UEGvXo
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
――――【 星降町 観光道 】


観光客A「はぁ…はぁ…!」

観光客B「結構、この辺の道って険しいんだね…!」ゼェゼェ

観光客A「私、ちょっと苦しいかも…」

観光客B「あはは、俺なんて余裕だぞ?」

観光客A「そりゃ当然でしょー!」

観光客B「へへ、そりゃそうか!」

52: 2014/09/28(日) 20:37:23 ID:l7UEGvXo
 
観光客A「も~…。あっ、そういやこの登山道のこと…知ってる?」

観光客B「何をだ?」

観光客A「なんか最近、軍の動きが慌ただしいのは強大な敵が現れたからなんだって」

観光客B「へぇ?聞いたことないな」

観光客A「それで、この観光用の登山道も封鎖されちゃうんだってさ」

観光客B「まじかよ!じゃあ、今日登れたのは良かったな」

観光客A「うん。もしかしたら、もう下の方じゃ封鎖されてたりして」


観光客B「おいおい、そしたら俺ら帰れないじゃねえか!」

観光客A「えへへ、かもね」

観光客B「はははっ!」

53: 2014/09/28(日) 20:37:54 ID:l7UEGvXo
 
ヒュッ…ズバァンッ!!

観光客B「は……はっ……?」ズリッ

ズリズリッ…ドシャッ……


観光客A「…」

観光客A「…え?」


ドクッ…ドクッ…


観光客A「…えっ?」

観光客A「…」

観光客A「何…これ……首……」

観光客A「い、いや…嫌っ……!!」

54: 2014/09/28(日) 20:38:51 ID:l7UEGvXo
 
ザザザザッ…ガシッ!

観光客A「…むぐっ!?」

ゴブリン『ウひっ…』

観光客A「ひっ…!?」

ゴブリン『霧がイらないノは、自由デいいな…?』

観光客A「…!?」

ゴブリン『…お前ら、オ楽しみダぜ』ニタッ


ゴブリンたち『…』ニヤッ


観光客A「む…むぐぅぅ…っ!!」


………
……

55: 2014/09/28(日) 20:39:25 ID:l7UEGvXo
  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 東方側 祭壇町 防衛線 】


防衛軍人A(冒険者A)「ふわぁ~…」

防衛軍人B(冒険者B)「くぁ…」


防衛軍人A「…暇」

防衛軍人B「同じく…」

防衛軍人A「…んだよ。軍人ってこういう仕事ばっかなの?」

防衛軍人B「まぁ文句言うなよ、給金はかなり高いじゃないか」

56: 2014/09/28(日) 20:39:56 ID:l7UEGvXo
 
防衛軍人A「そりゃそうだけどよー…」

防衛軍人A「何でこんな場所で、監視役なんだ?それに最近、配属される人も増えてきたし」


防衛軍人B「…わからん」

防衛軍人A「わからんて。情報通のくせに」

防衛軍人B「普段、俺はお前とずっとここに立ってるだけじゃねえか。情報もクソもあるかよ」

防衛軍人A「はは…そうか」
 
防衛軍人B「…ま、これだけでしばらく暮らせるような金も入るわけだし、不満はいえねえよ」

防衛軍人A「ほとんど、嫁のために仕送りだろ?」

防衛軍人B「仕方ねーだろ。これで楽な暮らしもさせてやれるんだから」

防衛軍人A「現実的ですこと…」

57: 2014/09/28(日) 20:40:50 ID:l7UEGvXo
 
…ウー…ウー!!ウー!!

防衛軍人A「!?」ビクッ

防衛軍人B「!?」ビクッ


防衛軍人A「なな、なんだ!?」

防衛軍人B「し、知らねぇよ!」

防衛軍人A「え、えーと確か…このサイレンは、緊急配備ないし緊急招集の合図…だったな!?」

防衛軍人B「だった…はずだ!ってことは、何か起きたのか!?」

防衛軍人A「どっかから冒険者入り込んだとか、そういうことじゃあ…」


…ヒュッ…ヒュオオオオッ…!!

ボォォンッ!!!ボワッ!ゴォォォォッ…!!!


防衛軍人A「ひ…!」

防衛軍人B「火ぃぃぃっ!?」

58: 2014/09/28(日) 20:41:45 ID:l7UEGvXo
 
防衛軍人A「…火!?空から…落ちてきたのか!?」

防衛軍人B「そ、空って…!つーか、祭壇町のほうから何か飛んできたー……」ハッ


…ゴオオォォォォッ!!!!……


防衛軍人A「…へ?」

防衛軍人B「ちょっ、待っ…」


ゴバッ…!!ボォォォォンッ!!!!!!!

ズッ…ズドォォォォンッ!!!!!!!!!!


…………
………

59: 2014/09/28(日) 20:42:46 ID:l7UEGvXo
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍 本部 】


…バタンッ!!!

中央軍人「き、緊急連絡!」

中央軍人「東方町の第二防衛線にて謎の攻撃を確認!被害状況は不明!…って」


ザワザワ…ガヤガヤ…!!

少尉「もういい!準備はまだ終わらないのか!」

新人軍人「し、しかしまだ自分は実践経験も浅く…!」

准尉「今はそんなこと言ってる場合じゃない!早く動け!」

60: 2014/09/28(日) 20:43:56 ID:l7UEGvXo
 
中央軍人「な、なんだ…?何でこんなに本部が慌しい…」

中央軍人「…!」ハッ


…ザッ!

元帥「みな、落ち着け!尉官以上は、直属の部下の話を整理し、左官へ伝えること!」

元帥「それぞれに情報の共有がしっかり出来るよう、伝えるのだ!」

元帥「ただし、情報は確定…コミットではなく"仮定"で進めること!裏付けが取れてから行動事項としろ!」


全員「はっ!!」ビシッ


ザワザワ…ガヤガヤ…!


中央軍人「げ、元帥殿がこんな場所に!?」

中央軍人「これは本当に一体どういうこと……」

61: 2014/09/28(日) 20:45:12 ID:l7UEGvXo
 
…ドカッ!

中央軍人「いっ…!」

中尉「ボサっとするな!さっさと動け!」

中央軍人「あっ!ち、中尉殿…これは一体!」

中尉「あぁ!?これは一体って…お前、何を言ってる!?」

中央軍人「自分は、先ほどまで防衛線付近にいましたので…」


中尉「…あ、あぁ……」

中尉「時間もないし、手短に話すぞ。魔界の話は聞いているな?」


中央軍人「それは…。別の世界からの侵攻という話ですよね」

中尉「そうだ。そいつらが、俺らがたてていた作戦行動の前に動き始めたんだ。俺らが遅すぎたんだよ」

中央軍人「なっ…!」

62: 2014/09/28(日) 20:46:10 ID:l7UEGvXo
 
中尉「確認出来ている情報は、2つ」

中尉「祭壇町の防衛線への攻撃、星降町の魔の塔付近および観光地付近にて、軍の交戦が開始した」

中尉「それに伴い、情報が錯綜している…」


中央軍人「…!」


中尉「この情報は、恐らくもうじき一般公開も始まるはずだ」

中央軍人「一般公開!?」


中尉「先ほど、星降町の観光ルートの数人と、警備にあたっていた軍人が犠牲になったという話が入ってきた」 

中尉「ただでさえ有名な観光地での事故…隠し通すには無理があるという元帥殿の判断だ」


中央軍人「じ、住民らがパニックを起こしますよ!?」

63: 2014/09/28(日) 20:46:43 ID:l7UEGvXo
 
中尉「…っ」

中尉「分かっているが、どうしようもない!」ダッ!

タッタッタッタッタッ……!!


中央軍人「な、なんてことだ…」


………
……

64: 2014/09/28(日) 20:47:25 ID:l7UEGvXo
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市の宿 魔道士の部屋 】


…ドンドンドンッ!! 
 

魔道士「は、はーい!どうぞ~」


…ガチャッ!!


戦士「…し、失礼します!」

魔道士「戦士!どうしたの、そんなに慌てて」

戦士「大変なんです!と、とにかく軍の依頼一般受付所へ急ぎましょう!」

魔道士「…う、うん?」


………
……

65: 2014/09/28(日) 20:48:42 ID:l7UEGvXo
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 一般依頼受付所 】


ガヤガヤ…ワイワイ…!!

冒険者たち「…」

一般市民たち「…」


魔道士「わっ…!な、何これ!凄い人!?ていうか、普通の人たちも…」


戦士「えーと…」キョロキョロ

戦士「…あっ、いた!おーい!」ダッ

タタタタッ…


剣豪「…来たか」

神官「あ、魔道士さん!」

魔道士「あれ、僧侶までいたんだ。この騒ぎ…どうしたの?」

66: 2014/09/28(日) 20:50:24 ID:l7UEGvXo
 
戦士「ちょっと不味い事態になってるみたいです」

魔道士「まずいって…?」

戦士「えと…。あそこの張り紙を見てください!」スッ

魔道士「張り紙って…あれ?」

…ペラッ


戦士「数分前に、中央軍より情報開示が行われたんです」

戦士「俺らが知った、あの全てのことを、一般公表したんですよ!」


魔道士「…え!?」

魔道士「ちょっと待って、急にどうして!?そんなのパニックになるに決まってるじゃない!」


戦士「…武装中将さんたちの作戦決行は、本日からの予定らしかったのですが…」

戦士「その前に、奴らが塔の完成と…放たれた魔族たちが星降町や東方防衛線を攻撃してきたようなんです」

67: 2014/09/28(日) 20:51:54 ID:l7UEGvXo
 
魔道士「…!」

戦士「…ただ、得られている情報はそこまでです」

魔道士「ま、待ってよ…。一体どうなるっていうの…」

戦士「わかりません。だけど、一般受付所にこれが張られたってことは…」


神官「そう…。軍で仕切れる問題じゃなくなっている可能性があるってことだね」

魔道士「塔が完成したってことは、あの魔族たちが…自由に…」ゾクッ

神官「…僕は、その魔族を見た事がないけど。話を聞く限り、どれだけの相手かはわかるよ」

魔道士「…っ」


剣豪「軍はまだしも、冒険者として魔族を相手にしたことあるのは俺らと魔道士さん、あとは剣士たちだけだ」

戦士「…この第一線に立ってた俺らは、何かやれることがあるのか…?」

68: 2014/09/28(日) 20:52:56 ID:l7UEGvXo
 
神官「何かやれることって、今は軍を頼るしか…」

戦士「…この混乱が、そう簡単に収まるとは思えません」


剣豪「その竜族とやらが最強という存在なんだろう?」

剣豪「大戦士さん一人で一匹相手に出来るというなら、大隊程度で何とかなるんじゃねーのか」


戦士「…そう信じてるが」


魔道士「…」

魔道士「…」

魔道士「…っ!」ハッ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

???『…おいおい、回復薬とかやめろよ。そんな粘られちゃ困るぜ?うちの親方様に怒鳴られちまうからな』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

魔道士「ま…待って…」

69: 2014/09/28(日) 20:53:34 ID:l7UEGvXo
 
戦士「…どうしました?」

魔道士「竜族って、巨大なトカゲみたいなもの…なんだよね」

戦士「らしいですよ」

魔道士「なら、それが最強じゃないと思う…!」

戦士「えっ?」


魔道士「いけない…!早く、武装中将さんに伝えないと!」ダッ!


戦士「ま、魔道士さん!?」

………

70: 2014/09/28(日) 20:54:55 ID:l7UEGvXo
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 】

…バタンッ!!

中央軍人「…失礼します!武装中将殿!」

武装中将「今度はどうした!」

中央軍人「お話があるという冒険者が来ております!」

武装中将「何?…こんな時に、わざわざ通したのか!そんな時間はない!」

中央軍人「い、いえ…しかし、武装中将殿を先生と呼ぶ方で…」

武装中将「何?…そうか。なら、許可する」

中央軍人「はっ!冒険者様、こちらです!」


…スッ

魔道士「…武装中将さん!」

71: 2014/09/28(日) 20:56:13 ID:l7UEGvXo
 
武装中将「魔道士か…どうした?」

魔道士「お話聞きました。今、大変なことになってるって!」

武装中将「…行動が遅すぎたんだ。各地で被害が出始めている。まさか…こんなにも早く…!」

魔道士「こんな状況で、お忙しいところ邪魔してごめんなさい。でも、どうしても話をしたくて」

武装中将「何かあったのか」


魔道士「…思い出したんです。竜族には、竜族が"親方"と呼ぶ上の魔族がいることを」


武装中将「な、なにっ!?」

魔道士「…ごめんなさい、私、こんな大事な情報を…」


武装中将「…っ」

武装中将「い、いや。伝えてくれただけ有難い!すぐに情報の共有に努める!」

72: 2014/09/28(日) 20:57:04 ID:l7UEGvXo
 
魔道士「…」


武装中将「それより…魔道士」

魔道士「は、はい」

武装中将「戦士や友達は、中央都市から出すな。ここはまだ安全な場所…必ず守る」

魔道士「…」コクン

武装中将「ココに未だにいる冒険者の力も、これ以上は借りるわけにはいかんのだ…」

魔道士「えっ?ま、まさか!武装中将さんが、一般人の力を借りたのですか?」


武装中将「今日、祭壇町の第二防衛線が壊滅的被害を受けた」

武装中将「そこへ配属された多くの兵力が、1か月前に冒険者から募集した臨時の者たちだったんだ…」


魔道士「…!」

73: 2014/09/28(日) 20:57:58 ID:l7UEGvXo
 
武装中将「くそっ、完全に誤った…。悔やんでも悔やみきれん…っ」

魔道士「これから…どうなるんでしょうか…」

武装中将「なぁに、大丈夫だ。あとは俺らが全力でこの状況を打破していくからな」ニカッ

魔道士「…はい」


武装中将(この僅かな期間にこれほどの事態になるとは……!)

武装中将(…だが。これ以上の被害は絶対に出せない。いや、絶対に出してはならぬ…!)




…………
………

74: 2014/09/28(日) 20:59:25 ID:l7UEGvXo
  
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

75: 2014/09/28(日) 21:04:05 ID:l7UEGvXo
 
――――武装中将の言葉通りにはいかなかった。

東方祭壇町の周囲にある、第一、第二、第三防衛線の全てを突破されるまで僅か4日。

西方側の星降町および近辺の町村に侵攻を受けるまで僅か5日。


元々東方側には確固たる支部が点々としていたため、その後の侵攻はある程度の抑圧に成功した。
 
だが、西方側は広大な山地の小さな村へは防衛拠点となる支部が存在せず、その殆どが犠牲になってしまう。


この事態に中央軍は、この西方側の侵攻を食い止めるため、中央軍の緊急全力迎撃作戦を下す。


そして、中央軍はこの戦いのことを大陸全土が巻き込まれし大戦とし、

『魔族侵攻迎撃戦、東西大陸戦争』…

通称『大陸戦争』と決定する。

76: 2014/09/28(日) 21:04:59 ID:l7UEGvXo

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 西方側 山部 】


ヒュッ…ヒュオオオオオッ…ドゴォォォンッ!!!!


軍人たち「な…何なんだよ…こいつら…!」

軍人たち「どう戦えばいいんだよ…!」


ゴブリン兵たち『…クク』

オーク兵たち『…ヒヒ』

スライムたち『…』

エレメンタルたち『…』ゴォォ

77: 2014/09/28(日) 21:05:56 ID:l7UEGvXo
 
軍人「くっ…!」


オーク『人間如きが俺らに逆らうもんじゃねぇぜ…?』


軍人「戯言を!俺らの住む世界を、荒らすんじゃねぇぇ!!」ダッ!

ダダダダダッ!!

オーク『…』ニヤッ

オーク『…そこは、危険だぜ?』


軍人「何っ!」


スライム『…』バッ!!

…クワッ!!

軍人「ひ…!?」

…バクンッ…!

78: 2014/09/28(日) 21:06:34 ID:l7UEGvXo
 
軍人「…むぐっ…!」

軍人(た、体内に飲み込まれた…!?)


オーク『うはは!』


軍人(こ、これくらい!我が剣術で…!)ググッ


スライム「…」トプンッ

ジュッ…ジュワァァッ!!


軍人「!?」


オーク『あぁ、そうそう。元々スライム族にゃ物理は効かんぞ?

オーク『それに魔法耐性も尋常じゃねえしな、俺らでも一苦労する相手だぜ」ククク

オーク『あと言い忘れたが、捕食するためにそいつの液体はー…」

79: 2014/09/28(日) 21:07:18 ID:l7UEGvXo
 
スライム「…」ペッ!

ボトッ…!ボトボトッ…ドロォッ……

オーク『…聞いちゃいないか。ドロドロに溶けちまった』クク


…ザワッ!

軍人たち「…!」

軍人たち「い、一瞬で…!」

軍人たち「くっ!」

軍人たち「ひ、ひるむな!俺らだって誇り高き中央軍!やってやる!」

軍人たち「うおぉぉお!!」

ダッ…!!ダダダダダダッ…!!!!

80: 2014/09/28(日) 21:08:02 ID:l7UEGvXo
 
オーク『来るか!人間共が!!』

軍人A「うっ、うおぉぉぉ!」ブォンッ!!

…ガキィンッ!!

オーク『俺の肉体は、貴様らの武器など受け付けんぞ!』

軍人A「…」ニヤッ

オーク『むっ』


軍人A「後方部隊っ!!」

魔法軍人「…任せてください!中雷撃魔法っ!!」パァッ!!

バチッ…バチバチバチッ!!バチィッ!!


オーク『ち…!エレメンタル共!』

81: 2014/09/28(日) 21:09:05 ID:l7UEGvXo
 
エレメンタル『…』パァッ!!

バチッ!!バチバチバチィッ!!!


魔法軍人「なっ…無詠唱…!」


…バチバチバチッ!!!

魔法軍人「ぐあああっ!!」


軍人A「なっ…!」

オーク『エレメンタル族の事も教えてやろうか?無能な人間くん』


軍人A「…っ!」
 
軍人A「この…豚面がぁぁ!!」ブォンッ!!

82: 2014/09/28(日) 21:10:26 ID:l7UEGvXo
 
オーク『…てめぇの頭、ひねりつぶす!』

ゴブリン兵たち『ククク…覚悟シろよ……!』チャキッ!


軍人B「やらせるかよ!!」

軍人C「後方部隊、もっと支援だ!回復の準備も怠らないでくれよ!」

軍人D「うおおおっ!」

魔法軍人たち「支援魔法!準備!!」パァァッ!!


ダダダッ…ガキィンッ!!!

ズバァンッ!!…バキィッ……!!ドゴォンッ……!!


…………
………

83: 2014/09/28(日) 21:11:32 ID:l7UEGvXo
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 同時刻 西方山部 後方 】 


……ザッ


槍士大将「…始まったか」

聖大佐「この距離でも、戦いの音が風に乗って聞こえてきますね…」


ガキィンッ…!

ヒュオオオッ……ドゴォンッ……!


槍士大将「中央軍の今ある力を用いて、西方側の侵攻を食い止める…か」

聖大佐「総力戦のようなものです。緊急のため、動ける人数が限られてはいますが…充分でしょう」

槍士大将「…ここから見える場所以外、他の町村にも派遣はされているんだろう?」

聖大佐「確認しているだけで、小さな集落を含め16の町村で同時に戦いが始まっています」

84: 2014/09/28(日) 21:12:33 ID:l7UEGvXo
 
…チャキッ

槍士大将「…この槍も、振わねばならぬ時が来るのか」

聖大佐「そうなるほど、緊迫しなければいいのですが」

槍士大将「この戦いが、今後を左右される可能性は非常に高い」

聖大佐「総力戦…。それほど、ここの戦いに力を入れる必要があったのでしょうか」


槍士大将「今、東方側は元々支部が多く…それほど侵攻被害は出ていない」

槍士大将「元々東方の防衛線の強化もあって、それは元帥殿の考えの及ぶところであったということ」

槍士大将「だが西方側の塔の存在や、まさか西方側のエルフ族の村からも奴らが出現するとは…」


聖大佐「約10年前にあった、あの最初の地震の時の神隠し事件の場所でしょうね」

槍士大将「…だろうな」

聖大佐「しかし知性ある魔物ですか。未だに信じられませんよ」

85: 2014/09/28(日) 21:14:24 ID:l7UEGvXo
 
槍士大将「…分かってる情報では、魔族は我々とは違い、何種類かの種族として存在しているようだ」 
 
槍士大将「得ている情報では、"ゴブリン族"と"オーク族"がほとんどの兵力となっている」

槍士大将「中央軍の一般兵では難しいこともあるが、相手に出来る実力を持った者は決して少なくない」

槍士大将「そのゴブリン族とオーク族が主軸となるならば、この総力戦も勝利は出来るだろう」


聖大佐「…ですが、安易に考えられぬ敵がいます」


槍士大将「分かっている。大戦士がやられた竜族の存在だろう」

聖大佐「はい…。竜族のようなクラスが出てこられれば、こちらとしても壊滅的被害は免れません」

槍士大将「竜族は2体を確認しているが、いつどこで出てくるか…」

聖大佐「それに考えたくはないですが、竜族に匹敵するクラスが何種かいたとしたら…」

槍士大将「…武装中将の話では、竜族の上にもう1体の存在がいる可能性があるそうだからな」

86: 2014/09/28(日) 21:15:47 ID:l7UEGvXo
 
聖大佐「…それが虚の話であることを願うばかりです」

槍士大将「そうなればそれこそ、指揮官たちが前線へ出る時だろうな」

聖大佐「そうですね…」


槍士大将「今はただ、そうならぬよう祈るのみ」

槍士大将「この総力戦の行く末を、見守ろう……」


…………
………

87: 2014/09/28(日) 21:16:52 ID:l7UEGvXo
 
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

88: 2014/09/28(日) 21:17:49 ID:l7UEGvXo
 
この総力戦は、お互いの実力が均衡してか、気が付けば3日がたっていた。

そして、3日目の夜。辺りが暗くなり始めた夕闇の刻の頃……

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 総力戦 夜 】

ボォンッ…ズドォンッ……


槍士大将「…今日も夜戦へ突入したか」

聖大佐「まさかココまで長引くとは……」

槍士大将「俺らが確認出来るのは、この山間部までだ。他の地区はどうなっている?」

聖大佐「一部では侵攻の食い止めに成功したそうですが、別の場所では…」


槍士大将「…」

槍士大将「…明日以降、その地区へ重点的に応援を送るよう要請する」


聖大佐「それが良いでしょうね…」

89: 2014/09/28(日) 21:18:32 ID:l7UEGvXo
 
槍士大将「…」

槍士大将「……ん?」ピクッ


聖大佐「どうしました?」


槍士大将「音が…止まった…?」

聖大佐「音って…」ハッ


シーン…


槍士大将「いや、音だけじゃない。魔法の攻撃すら目視出来ないぞ!」

聖大佐「…戦いが終わったのでしょうか」

槍士大将「いや、これは…!嫌な予感がする!」ダッ!

聖大佐「あっ、大将殿!?」


…………
………

103: 2014/09/30(火) 20:33:41 ID:LzZZN.cg
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 前 線 】


タタタタッ……!!


槍士大将「確か、この辺だな!」

聖大佐「槍士大将殿!あなたが前線へ出ては…!」


槍士大将「…」

槍士大将「…み、見ろ!」


聖大佐「…」

聖大佐「……!?」

104: 2014/09/30(火) 20:34:36 ID:LzZZN.cg
 
オォォォォ……ォォォ………!!


魔族たち『…』

軍人たち「…」


槍士大将「こ…これは…」

聖大佐「魔族も中央軍も、みな…倒れている!?」


槍士大将「…見たところ、倒れている者に目立った怪我はないが…」

槍士大将「大佐、倒れている者に回復は効くか、なぜ倒れたか分かるか?」


聖大佐「やってみます」バッ


…パァァッ!!

聖大佐「…」

…ズズッ…

聖大佐「…うあっ!?」ゾクッ!

105: 2014/09/30(火) 20:35:24 ID:LzZZN.cg
 
槍士大将「…どうした?」

聖大佐「な、なっ…!」

槍士大将「…どうしたのかと聞いている」

聖大佐「だ、ダメです近づいては!」バッ!

槍士大将「どうしたというんだ!」


聖大佐「…っ!」

聖大佐「今、触れた瞬間…自分の魔力を吸い込まれるような感覚が…!」


槍士大将「何っ?」

聖大佐「な、なんだ今の感覚は…!」

106: 2014/09/30(火) 20:35:57 ID:LzZZN.cg
 
槍士大将「…ということはまさか、ここで倒れている仲間と魔族は、魔力を失って……?」

聖大佐「な、何かの技でしょうか。今の感覚…その技の残り香のような気がしますが…」

槍士大将「…魔族もそれで倒れているということは、その魔族すらも飲み込んだ相手がいるということか」

聖大佐「人間が使う技に、このようなものは聞いたことありません…。恐らく、魔族の仕業でしょう」

槍士大将「…その相手はどこに」

聖大佐「大将殿、敵の気配を読み取ることは出来ますでしょうか…」


…サァァ……


槍士大将「…」

槍士大将「…何も感じぬ。ただ、先ほどまでの戦いが嘘のように静かな風が吹くのみ…」


聖大佐「遠くの山には、まだ魔法の明かりが見えています。あそこではまだ戦いは続いているのでしょうが…」

107: 2014/09/30(火) 20:36:47 ID:LzZZN.cg
 
サァァ……ヒュウウッ……


槍士大将「…」

聖大佐「…」


ヒュウウッ……


槍士大将「…」

聖大佐「…」


ヒュウッ……ウゥゥ……


槍士大将「…」

聖大佐「…」

108: 2014/09/30(火) 20:37:20 ID:LzZZN.cg
 
サァァ……

槍士大将「…」

聖大佐「…」


ヒュウウウウッ……ゴッ!!!!!……


槍士大将「…伏せろっ!!!」バッ!

聖大佐「!!」


グォォォォォオッ!!ブォンッ!!!!バスッ!!


槍士大将「っ!?」ブシュッ!

聖大佐「大将殿、腕に傷が!?」


槍士大将「っ…!」

槍士大将「い…今のは何だ!確認できたか!?」

109: 2014/09/30(火) 20:38:18 ID:LzZZN.cg
 
聖大佐「こ、この暗闇では…!」

槍士大将「くそっ!」

…ジュウゥッ!!

槍士大将「ぐっ!?」ズキンッ!

聖大佐「どうしましたか!?」

槍士大将「ぐっ…!ど、毒か何かか…!?」ズキン!

聖大佐「…!」


…ヒュウウウッ!!ゴッ!!!…


槍士大将「くっ…また来たな!」

槍士大将「…ぬらぁぁぁっ!!」ブォンッ!!


…ガキィンッ!!!

110: 2014/09/30(火) 20:39:41 ID:LzZZN.cg
 
???『!』


槍士大将「…何度も同じ手を食らうか!」

槍士大将「姿を現せよ……!うおらぁぁぁっ!!!」グググッ!!


バキャアンッ!!!ズザザザァ…ドォンッ!!


聖大佐「な、何も見えないのに重量音が…!」

槍士大将「手ごたえあり…だが!」


???『…やルな』


聖大佐「…声!」

槍士大将「やはり魔族か何かか…姿を現せ!」


???『ククッ……』


…スゥゥ……

111: 2014/09/30(火) 20:40:23 ID:LzZZN.cg
 
槍士大将「…!」

聖大佐「なっ…!」


バンシィ『…我が名はバンシィ。よクぞ攻撃を与エた。褒メてやろう…!』


槍士大将「ま、まるで本に出てくる氏神の姿…!」


バンシィ『…』ニタッ


槍士大将「この一帯…貴様の仕業か……!」
 
 
バンシィ『…ソのほうが、こちら側に慣れテないアイツにとってイいと思っテね…!』


槍士大将「…あいつだと?」

112: 2014/09/30(火) 20:42:02 ID:LzZZN.cg
 
…ズッ、ズズゥンッ!!!


槍士大将「!」

聖大佐「!」


バンシィ『来タか…デュラハン!』

デュラハン『やはり霧のない自由はいい…。我が愛馬、コシュタバワーも暴れやすかろう…!』コォォ


…ゾワゾワッ!!

槍士大将「…首のない鎧騎士!?馬に乗った人型…!人間ではないのか!?」

聖大佐「ただそこにいるだけで、この二体からのオーラが…!か、身体が…!」ビリビリ


バンシィ『クハハ…!』

デュラハン『そこの人間共…。どうやら、その辺の一般兵とは違う様子だな?実力が、見て取れるぞ…』

113: 2014/09/30(火) 20:43:13 ID:LzZZN.cg
 
槍士大将「…っ」チャキッ

聖大佐「…やるしかないようですね」スッ


デュラハン『ほう…我輩と同じ槍使い…』

デュラハン『そして好戦的…。いいぞ…嫌いではない……!チャキンッ


バンシィ『クッ…クハハ……!』

バンシィ『貴様ノほうは、俺と同ジく魔法を主トするか…!』スゥッ


ォォォ……


槍士大将「…」

聖大佐「…」


デュラハン『…』

バンシィ『…』

114: 2014/09/30(火) 20:43:49 ID:LzZZN.cg
 
槍士大将「いざ…」ダッ!!

デュラハン『…勝負ッ!!』ダッ!!


聖大佐「…大風刃魔法っ!!」パァァッ!!

バンシィ『闇の波動…っ!』パァァッ!!


カッ…ボォォォンッ!!!ガキィンッ!!!!

115: 2014/09/30(火) 20:44:25 ID:LzZZN.cg
 
槍士大将「…ぐっ!な、何という重い攻撃!」ビリビリ

デュラハン『その程度か!』ビュンッ!!

槍士大将「ぬぐっ!」ヒュッ!

デュラハン『避けてばかりでは!』

…ビュビュビュッ!!!

槍士大将「はぁっ!」バッ!

タァンッ!!ヒュオオオッ…!!


デュラハン『飛翔か…高い!』クワッ!


槍士大将「大…水流魔法っ!!」パァァッ!!

ズッ…ズドォォォッ!!!

116: 2014/09/30(火) 20:45:19 ID:LzZZN.cg
 
デュラハン『ただの水流如き!』ブゥンッ!!

…ザバァンッ!!!バシャアッ!!!

槍士大将「なっ!…空からの水の大砲を突き抜くとは!」

デュラハン『…ふんっ!!』

ブォッ…ブォオオオッ!!!!
 

槍士大将「や、槍が伸びっ…!回避をー……」

…ズキンッ!

槍士大将「ぐっ!?」

デュラハン『…』ピクッ


…ズブシュッ!!!

槍士大将「がっ…!?」

117: 2014/09/30(火) 20:46:08 ID:LzZZN.cg
 
デュラハン『…』

槍士大将「…っ!」


聖大佐「や、槍士大将殿っ!!」


ヒュオオオォォッ…ドシャアッ!!

槍士大将「う、うぐっ…!?」

槍士大将「がはっ…!」ズキッ!ズキッ!


デュラハン『…』

ザッザッザッ…チャキッ

槍士大将「…ッ」

118: 2014/09/30(火) 20:47:41 ID:LzZZN.cg
 
デュラハン『…』

槍士大将「…な、なぜ槍を突き付けたまま動かぬ…」

デュラハン『この首を刎ねるのは容易い。だが、気になることがある』

槍士大将「な、何だ…」

デュラハン『何故、避けれるものを避けなかった。あの程度、貴様なら避けられたはず』

槍士大将「…言い訳にすぎん」

デュラハン『聞かせろ』

槍士大将「…っ」

スッ…ドクンドクン……

デュラハン『これは…』


バンシィ『クク…俺ガつけた傷ダな。闇の傷は、呪イをツけ、魔力を奪い、その自由も奪ウ…』

バンシィ『その程度の傷デは、魔力の消失も僅かナものバカりだがな』

119: 2014/09/30(火) 20:48:45 ID:LzZZN.cg
 
槍士大将「…この傷は、俺が未熟ゆえにつけられたもの」

槍士大将「言い訳にもならん!殺せ!」


聖大佐「大将殿!そんなことを言ってはなりません!!」


デュラハン『…』

デュラハン『…実力の有る者を、このような形で打ち取っても何も面白くない』

デュラハン『興がそがれた…帰るぞ』


バンシィ『お、おイ!ソれはないだロう…!』

デュラハン『…我輩は確かに王に忠誠を誓った。だが、己ノ道まデ売ってはおらぬ…!』

バンシィ『…』

デュラハン『…戻るぞ』クルッ

バンシィ『チッ…。ワケの分かラん面倒な奴メ……』

120: 2014/09/30(火) 20:49:27 ID:LzZZN.cg
 
槍士大将「ま、待て…!魔族に情けなど…!」

デュラハン『悔しければ、その情けなき自分の実力を悔やむがいい』

槍士大将「…っ!」


デュラハン『その闇の傷は、傷の治癒が終えれば身体の自由も戻るだろう…』

デュラハン『我輩たちは暗闇の中でしか生きられぬ』

デュラハン『…また戦おう。次に会えることがあればな…ははは……!』

ザッザッザッザッ……!


槍士大将「ぐっ…!」グググッ…

聖大佐「…っ」


…………
………

121: 2014/09/30(火) 20:50:06 ID:LzZZN.cg
 
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122: 2014/09/30(火) 20:51:04 ID:LzZZN.cg
 
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――――【 数時間後 中央軍本部 】


元帥「…」

武装中将「…」

元帥「まさか、槍士大将が敗北するとは…」

武装中将「まさかです。手負いとはいえ、話に聞く限りあっという間だと…」


元帥「だが、そのデュラハンが消えたおかげで西方側に被害が広がることはなかった」

元帥「他の場所へ出現されていては、我が軍の大敗は確実だっただろう…」


武装中将「…っ」

武装中将「闇の魔術を持つというバンシィ、槍士大将の攻撃を通さぬデュラハン…」

武装中将「竜族に、その者たちを従える魔族の王の存在まで…明らかになったということ……」

123: 2014/09/30(火) 20:51:51 ID:LzZZN.cg
 
元帥「…言いたくないことだが、認めざるを得ない」

元帥「この戦いは、長期的に見れば……」


武装中将「元帥殿!」バッ!

元帥「!」


武装中将「…この戦いは、勝ちます」

武装中将「いえ、勝たねばならないのです。人のために、未来のために」


元帥「…」


武装中将「既に…数え切れぬ命が失われました」

武装中将「その者たちの為にも!その言葉は決して言ってはなりません!」

124: 2014/09/30(火) 20:52:25 ID:LzZZN.cg
 
元帥「…すまぬ。そうだな…。あまりのことで、どうかしていたようだ」


武装中将「この総力戦を勝てば、魔族の軍勢にもダメージは大きいものとなるはず」

武装中将「前線に立つ者たちを信じ、今は次の作戦を考えていくべきです」


元帥「…あぁ」


武装中将「今、西方側では総力戦。西方および東方のエルフ族の保護を急ぎ、南方への船を準備しています」

武装中将「竜族がいるという東方側は、不思議と今は落ち着いています」

武装中将「この間に、総力戦を勝ち抜き、エルフ族を安全な南方地区に保護し、優勢で戦いを進めましょう!」


元帥「…分かっている。そうだな、必ず…魔族には勝つ」

元帥「そうだとも…絶対に…」


……………
………

125: 2014/09/30(火) 20:53:19 ID:LzZZN.cg
 
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・・・・・・・・・・・・
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・・・
・・

126: 2014/09/30(火) 20:54:29 ID:LzZZN.cg
 
西方の山に輝き浮かぶは、魔法の花火。

その下で、中央軍と魔族の総力戦は、熾烈を極めた。


………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

軍人たち「うっ、うぉぉぉ!!」

…ブォンッ!!ガキィンッ!!!


アウルベア『…グルッ』ギロッ

カルキノス『ゴポッ…』

アラクネ『うふふ…』

ヒュドラ『…シュルッ』


軍人たち「く、くそっ…!魔獣も意思をもって俺らを襲ってくるなんて反則だろ……!」

軍人たち「それに見た事のない敵も増えてきてる…。そ、それに……」

127: 2014/09/30(火) 20:56:23 ID:LzZZN.cg
 
グール(氏んだ軍人たち)「…ウ…ウゥ……!」チャキッ

スケルトン(氏んだ軍人たち)「ア゛……」パァァ


軍人たち「な、何でお前らが生き返って俺らを襲ってくるんだよぉ!!」

軍人たち「闇の魔法だか知らないが、こんな非道なこと……っ!!」

軍人たち「だ…だけどな……!」チャキッ

…ブォンッ!!ズバァンッ!!!

グール『ガッ……』

ドシャアッ……


軍人たち「お前らとて…容赦は…出来ないんだ……!!すまない!!」


ゴブリン兵『くっ…!や、ヤるな!』

オーク兵『怯むな…攻めろっ!!』

128: 2014/09/30(火) 20:57:32 ID:LzZZN.cg
 
ガ゙キィンッ!!!

…ドゴォォンッ!!ボォンッ……!!


軍人たち「…いかなる犠牲があろうとも、俺らは絶対に勝つ!!うあぁぁっ!!」


魔族たち『…っ!!』


カッ…!!ドゴォォオンッ……!!
 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
………

129: 2014/09/30(火) 20:58:26 ID:LzZZN.cg
 
戦いが長引くにつれ、現れる新たな魔族。

それに応用するように、中央軍も形を変えてこれを迎撃。

お互いの実力は均衡したまま、その後、総力戦は2週間にも及んだ。


その間、エルフ族の保護と輸送作戦も裏で進行。

中央軍の輸送隊のもと、エルフ族を含む西方および東方側の戦域近辺に住む住民たちも、

魔族の侵攻が及んではいない比較的安全な南方大陸へと避難させていった。


そして……

130: 2014/09/30(火) 20:59:10 ID:LzZZN.cg
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 15日目 西方山脈の村 】


中央軍人「…うらああっ!!」

ガキィンッ!!!

クルクルクル…ザシュッ!!


ゴブリン『ま…マて…!』


中央軍人「…俺の友は、そう言って目の前で殺されていったんだ…」

中央軍人「お前も、その運命を呪い…氏ねばいい……!」


ゴブリン『う…うァぁぁッ!!』


ブンッ…ザシュウッ……!!!


ゴブリン『ア゛ッ……』

131: 2014/09/30(火) 20:59:42 ID:LzZZN.cg
  
…ドシャッ……


中央軍人「はぁ…!はぁ…!!」


軍人たち「これで…全て倒したのか…?」

軍人たち「俺らの勝ち…か…?」

軍人たち「うっ…うおぉぉ!!!」

ワァァァッ…!!!


中央軍人「…っ」

中央軍人「……!」ハッ

132: 2014/09/30(火) 21:00:20 ID:LzZZN.cg
 
村人たち「…まま、どこ……」

村人たち「息子が…。私の息子が……」

村人たち「これから俺らは、どうしたらいんだよ……!」



中央軍人「……っ」ギリッ

中央軍人「…失うものが多すぎて、何が…勝利だ……」


………
……

133: 2014/09/30(火) 21:00:52 ID:LzZZN.cg
 
―――15日目の昼。

西方山脈に点々とした村の一つで、

西方側の侵攻し、確認されている魔族軍の最後の一匹が倒れた。

つまり、この総力戦は人間側…中央軍の勝利となったのだ。


しかし歓喜に沸く前線の軍人たちの中、

その村で魔族によって被害を被った住民たちは、涙ながらに訴えた。

「どうして、もっと早く私たちを守ってくれなかったのか」…と。


そして、この『総力戦に勝利した』という言葉が中央軍へ伝わった頃、

中央都市にて―――……

134: 2014/09/30(火) 21:01:37 ID:LzZZN.cg
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市の一角 】


ザワザワ…ガヤガヤ…!!


街人A「聞いたか?魔族軍との戦いで、中央軍が勝ったんだってよ」

街人B「あぁ、当たり前だろ!冒険者たちも軍へ入隊して参加してるらしいし、勝つに決まってるだろ!」

街人C「でもさ、エルフ族の輸送や、その前線付近の住民は強制避難だろ?悲惨だよなぁ」


ザワザワ……!!ワイワイ…!!


ローブの男「…悲惨、か」

ローブの男「その言葉は、そうなっていない人間しか言えない言葉だ」

ローブの男「ぬくぬくと平和な時間が進んでいるココで、戦いも知らぬような奴だからこそ、言えるんだよ…」

135: 2014/09/30(火) 21:02:26 ID:LzZZN.cg
 
街人C「…あ?」

ローブの男「…おっと、聞こえたか。すまないな」

街人C「…好きでここにいるわけじゃねーんだよ。俺だってな、仕事だってまだあるし!」

ローブの男「くっ…くははは!!」

街人C「…何がおかしい!」


ローブの男「自分に起きたことは、大騒ぎして助けを求める」

ローブの男「他人に起きたことは、悲惨だの可哀想だの言葉は言うくせに、動かない」

ローブの男「まさに人間らしい。いいんじゃないか」


街人C「…ケンカうってんのか」


ローブの男「お前、本当に悲惨だと思うなら…その若さを軍に売ったらどうなんだ?」

ローブの男「前線で戦っている軍人たちの囮くらいにはなって、勇敢な氏の称号くらいはもらえるぞ?」

136: 2014/09/30(火) 21:03:14 ID:LzZZN.cg
 
街人C「…頃す」

…グイッ!

ローブの男「…」

街人B「お、おい落ち着けって!アンタも喧嘩売るな!今は軍も厳戒態勢だし、下手に暴れたら一発で牢屋行き…」

ローブの男「あぁ、そうか…それじゃあ訂正する」

街人C「今更謝ってもゆるさねぇぞ!」


ローブの男「…こんなところで粋がっているようじゃ、囮にすらなれない…とね」クク


街人C「てめ…!コラァ!!」ブンッ!!

…バキィッ!!ズザザァ…!

カキィーン…コロコロ……


ローブの男「…」


街人C「はぁ、はぁ……!思い知ったかクソ野郎!」

137: 2014/09/30(火) 21:04:05 ID:LzZZN.cg
 
ローブの男「…」

街人C「…何とか言えよ!そんな厚いローブ着やがって…!どんな面ぁしてやがるか見てやる!」

…グイッ!!…パサッ

街人C「お…」


ギラッ…!!


街人C「け…剣!?大剣…っ!?」

街人C「て、てめぇ冒険者か何かか…!」


ローブの男「だったらどうする」

街人C「い、いや…その…」

ローブの男「…どうした?」


街人C「…ちっ!」

街人C「こ…このくらいで勘弁してやるよ…」クルッ

タッタッタッタッタッ……

138: 2014/09/30(火) 21:05:09 ID:LzZZN.cg
 
ローブの男「…やれやれ」


タタタタッ…チョイチョイ

ローブの男「ん…」クルッ

子供「…ねぇねぇ!」

ローブの男「…何だ?」

子供「これ…落ちたよ」スッ

ローブの男「…」

子供「殴られてたね…。大丈夫…?」

ローブの男「…物好きな子供だ。こんな風貌の俺に、何も思わないのか?」

子供「うんっ。だって、人は優しくしてあげなさいって言われてるから!」

139: 2014/09/30(火) 21:05:42 ID:LzZZN.cg
 
ローブの男「…」

ローブの男「…そうか、いい子だな」


子供「えへへー!えっとね、はいっどーぞ!キラキラしててキレイだねこれっ」


ローブの男「何が落ちたと…」

ローブの男「!」ハッ

ローブの男「これが…俺の剣から落ちたのか?」


子供「わ、わかんないけど…落ちたよ…?」


ローブの男「…この大剣を扱う資格がないって…ことなのかもしれないな……」


子供「え?」

ローブの男「…」

…ポンッ、ナデナデ

子供「あうっ?」

140: 2014/09/30(火) 21:06:50 ID:LzZZN.cg
 
ローブの男「それはあげよう。不思議な魔法の石さ、大事にしてくれよ」

子供「…くれるの!?」

ローブの男「俺に優しくしてくれたお礼だ。お前の親は、さぞかし立派な親なんだろうな」

子供「…ううん」

ローブの男「?」

子供「ぼく、おとうさんも、おかあさんもいないよ…」

ローブの男「…そうだったのか。すまない」

子供「ううん!いいよ!」ニコッ


ローブの男「…ふっ。じゃあ…またな」クルッ

トコトコトコトコ…

………



子供「えへへ…きれいな石もらっちゃった♪」

141: 2014/09/30(火) 21:07:59 ID:LzZZN.cg
 
タッタッタッタッタッ…コツンッ!

子供「いたいっ!」

神官「…はぁ~全く!やっと見つけた!」

子供「あっ!神官さん!」

神官「今は物騒なんだから、一人であまり出歩かないことって言ってるのに!」

子供「ご、ごめんなさい…」シュン

神官「でも無事に見つかって良かった。さ、帰ろう」


子供「うん!」

子供「……あっ!そうだ、神官さん!」


神官「うん?」

子供「これ…」

…スッ

神官「…ん?」

142: 2014/09/30(火) 21:08:59 ID:LzZZN.cg
 
子供「えっとね!これね!今、そこにいたお兄ちゃんにもらったの!」

神官「…見せてくれるかな?」

子供「うんっ」


…キラッ


神官「…へぇ、キレイだね。魔石か何かだね」

神官「…」

神官「……って!?」ハッ

神官「ち、ちょっと待って!こ、これは…!」


子供「知ってるの?」

神官「今、これはどこで手に入れたって言ったかな!?」

子供「さっきいたお兄ちゃんにもらったの」

神官「お兄ちゃんはどこに!?」

子供「えっとね、あっちに行ったよ」

143: 2014/09/30(火) 21:09:50 ID:LzZZN.cg
 
神官「あっちって…」


ザワザワ…ワイワイ……!!

街人「えー、ウッソー!」

街人「マジだって!」

街人「あとで行くから待っててよー!」

街人「あはは!」

ガヤガヤ…!!


神官「…この人ごみじゃ」

子供「神官さん、これが何か知ってるの?」

144: 2014/09/30(火) 21:10:21 ID:LzZZN.cg
 
神官「で、でも…間違いないよ……!」

神官「早くみんなに教えないと!一回、急いで帰ろう!」ガシッ

タッタッタッタッ…!!


子供「わわっ!ど、どうしたの神官さん!」


神官(絶対にそうだ…!)

神官(これはあの時の…!)

神官(ってことは…!っていうことは……!!)


……………
………

145: 2014/09/30(火) 21:11:06 ID:LzZZN.cg
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 最上階の廊下 】

カツカツカツ…

武装中将(今回、総力戦の勝利は何とか得ることができた)

武装中将(現在は輸送作戦および避難している住民らの安全も確保している)

武装中将(かのバンシィやデュラハン、竜族の姿も今は見せていない)

武装中将(…この機に、中央軍の戦闘力の確保および対策を進めねば)


武装中将(…ん?)

146: 2014/09/30(火) 21:11:45 ID:LzZZN.cg
 
…ヒュオオオッ…

武装中将「ガラスが…割れている…」

武装中将「…!」ハッ


…バサバサッ

ローブの男「…こんにちわ」


武装中将「貴様の仕業か…?この中央軍本部へ…ガラスを割って侵入したのか」

ローブの男「…さすがに落ち着いて分析してくれる」

武装中将「何者だ。表には門番もいるはず…どうやってココへ入った」

ローブの男「…壁を飛び越えて」

武装中将「バカな!本部の壁は数十メートルだぞ!いかな飛翔とて、登り切れるものか!」

ローブの男「…」

武装中将「…まさか、魔族か」

147: 2014/09/30(火) 21:12:16 ID:LzZZN.cg
 
ローブの男「…」

武装中将「この俺を知り、直接挑みにきたか…?」チャキッ

ローブの男「…違う」

武装中将「では、何用だ!」

ローブの男「落ち着いてくれ。話があるだけだ…」

ヒュオォォ…バサバサバサッ!!


武装中将「むぐっ…風が…!」

ローブの男「…おっと、ローブが」

…パサッ


武装中将「…」

武装中将「……何っ!?」

148: 2014/09/30(火) 21:13:00 ID:LzZZN.cg
 
ローブの男「…」


武装中将「お、お前…なぜここに…!」


ローブの男「久しぶりだな…オッサン」


…………
………

156: 2014/10/02(木) 21:16:48 ID:6O7FQqm6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1時間後 】

…バタァンッ!!!

武装中将「ん…。何だ、ノックもせず」


魔道士「ぶ、武装先生…!」

神官「武装先生!」

剣豪「武装さん…」

戦士「武装さん!」


武装中将「…お前らか」

157: 2014/10/02(木) 21:17:25 ID:6O7FQqm6
 
神官「武装先生!お話があるんです!」

武装中将「なんだ?」

神官「もしかしたら、"剣士くん"がこの中央都市へ来てるかもしれないんです!」

武装中将「…ふむ?」

神官「…何か、情報を聞いていませんか!」

武装中将「いや…。ところでなぜ、剣士がこの街にいると情報が?」

神官「これを…!」

ゴソゴソ…キラッ


武装中将「これは…魔石か」


神官「はい。この魔石は、僕らが学生時代に訪れたエルフ族の村の鍛冶師に造って頂いた武器の装飾品なんです!」

神官「しかもこれは大剣の…!剣士くんのなんです!」

158: 2014/10/02(木) 21:18:10 ID:6O7FQqm6
 
武装中将「これはどこで」

神官「うちの教会にいる子が受け取ったものです。ですから、この街に剣士くんがいるはずです!」


魔道士「…武装先生、何か知っていることはないですか…!」

武装中将「…すまないが、俺は何も聞いてはいない」

魔道士「そんな…」


武装中将「何かあったら伝えることは伝える。だが、知り得ている情報がない以上、どうにも言えぬ」

武装中将「すまんな…」


剣豪「くそっ…無駄足かよ…!」

戦士「ここに来ればすぐに情報が分かると思ったのに…」

159: 2014/10/02(木) 21:18:46 ID:6O7FQqm6
 
神官「仕方ない、僕らで剣士くんを探しにいこう!」

魔道士「うんっ…!」

剣豪「まだこの街にいるかもしれないしな…」

戦士「…やっと剣士さんを見つけたんだ!魔道士さんのためにも、絶対に見つける…!」

ガチャッ…!!バタンッ…


武装中将「…」

武装中将「やれやれ、あんなに慌てて入ってくるとはな……」

武装中将「それほど愛されているということか…」

武装中将「なぁ…"剣士"」


…スッ

剣士「…」

160: 2014/10/02(木) 21:19:33 ID:6O7FQqm6
 
武装中将「…本当に会わなくていいのか。魔道士は、お前に会いたくて仕方ないだろうに…」

剣士「いや、まだ早いだろう。俺はまだ、顔を見れただけで充分だ」

武装中将「…大戦士の言葉か」

剣士「…」

武装中将「お前のもとにも、大戦士が現れていたとはな…」


剣士「…俺らが祭壇町から戻った数日後の夜、大戦士兄が現れた」

剣士「魔道士が塔へ生きていること、捕われたこと。そして、これからの行く末のこと…」

161: 2014/10/02(木) 21:20:06 ID:6O7FQqm6

…………
……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

剣士「…大戦士兄っ!今の話…!」

大戦士「大丈夫だ。あいつは生きている…」

剣士「…よ、良かった…!良かった……っ!!良かった…………っ!!」


大戦士「…お前には、これからの起きる事を話しておくべきだと思う」

大戦士「そして、お前がやるべきことを…」


剣士「…!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
……
…………

162: 2014/10/02(木) 21:20:39 ID:6O7FQqm6
 
剣士「話を聞いて、すぐにでも魔道士を俺は助けに行きたかった」

剣士「だが大戦士兄は、俺にまだ動く時ではないと。俺には俺にこの時に出来ることがあるはずだ…と」


武装中将「…いくらアイツの言葉とはいえ、お前が魔道士を救うのをやめるとは」


剣士「"あいつらが必ず魔道士を助けてくれるはずだ"と言った言葉を…大戦士兄の言葉を、俺は信じただけだ」

剣士「…今はそれが正しかったとオッサンもわかってるはず」


武装中将「…」


剣士「そして大戦士兄には、最期の言葉として色々と言われたし…聞かされた」

剣士「俺はその通り、世界のために動いてただけさ」

163: 2014/10/02(木) 21:21:24 ID:6O7FQqm6
 
武装中将「…大戦士に、何を言われたかは知らぬ」

武装中将「だが、魔道士は助け出され、この戦いにも活路を見いだせている」

武装中将「一人の冒険者であるお前がこれ以上、この世界の重荷を感じることはないんだぞ」


剣士「…大戦士兄の言葉だ。まだ、会うべきじゃないと」

武装中将「…氏んだ人間の言葉なぞ、お前が気にするべきではない!!」

剣士「…」


武装中将「俺はお前らを利用し、情報を手に入れ、国の犠牲になってもらおうとした!」

武装中将「どんな謝罪をしようとも、その行為は変わらん!」

武装中将「これ以上、国の犠牲となって己の不幸を導くような真似は見せないでくれ…」

武装中将「お前にとっての幸せは、すぐそばにある!すぐに日常は戻ってくるんだ…。俺にその寂しさを…見せないでくれ…」

武装中将「この言葉も、俺が責任を逃れたい言葉だろう…」

武装中将「だが、お前が幸せになって欲しいということは本当だ……」

164: 2014/10/02(木) 21:21:58 ID:6O7FQqm6
 
剣士「…」

剣士「…確かに、オッサンから見たら俺はただの冒険者だよ」

剣士「だけど、こんなことに巻き込まれ、全てを知ってしまったのは…運命だと思う」


武装中将「今なら戻れるんだぞ!」


剣士「戻れない。そうさせたのは、オッサン自身だろ」

武装中将「…っ」


剣士「今、魔道士に会って部屋で抱き合うのもそりゃ幸せだ。これ以上のことはない」

剣士「だけど、こうなった以上…逃げる道はもうないと思うんだ」


武装中将「お前はここから、何をしようというんだ!」

剣士「…戦う」チャキッ

165: 2014/10/02(木) 21:22:28 ID:6O7FQqm6
 
武装中将「バカを言うな!」

剣士「…行方不明なら、行方不明のまま消えて本望」

武装中将「魔道士が哀しむぞ!」

剣士「…あいつには、あいつの人生が」

…バキィッ!!!

剣士「がっ…!」

ズザザァ…!


武装中将「…お前は軍人ではない!」

剣士「ぐっ…!確かに軍人じゃねえよ…!だが俺は、大戦士兄の魂をを受け継いでる!」

武装中将「大戦士はな、他人の幸せを第一に考えていた!お前のそれは、自己満足だ!」

剣士「…俺が平和の為に戦うことが、他人の幸せを考えることじゃないのか!」

166: 2014/10/02(木) 21:23:40 ID:6O7FQqm6
 
武装中将「そういう意味ではない!」

剣士「…大戦士兄は、俺が平和の礎となり、その腕を振えと言葉を残して消えたんだ!」

武装中将「…っ」

剣士「…所詮アンタも、中央軍の中…この仲間が多い地で守られているから…甘いことばかり!」

武装中将「何だと…!」

剣士「よっぽど、他の冒険者のほうが現状を理解してるさ!」

武装中将「どういう意味だ…!」


剣士「恐らくだがな、この国のトップの元帥だっけか?」

剣士「その辺やオッサン、幹部連は"勝利は手に入れたが安心してならない"なんか言ってるんだろ?」


武装中将「…!」

167: 2014/10/02(木) 21:24:30 ID:6O7FQqm6
 
剣士「俺は、この1か月…東方祭壇町を取り囲む防衛線の付近、魔族との前線にいた…」

剣士「そこは中央軍の防衛隊の息の掛からなかった前線だ……」

剣士「そこで、俺ら冒険者が力を合わせ、町や村を守っていたことも知らないだろう!!」


武装中将「な…」


剣士「そこだけじゃない。軍の知らぬところで、魔族は次々と暴れ始めてる」

剣士「そして、その知らぬ場所で今も冒険者は戦い続けている…!」

剣士「だが、それも中央軍は知らず、総力戦の情報だけを表へだし、"勝利した"なんて甘い事言ってやがる…」

剣士「中央軍は確かに活躍したよ。だが、それは軍の知る中でのことだ」

剣士「…お前らが知らないところで、お前らの知らない人間が、戦ってるんだよ!」

剣士「あんたは、冒険者の力もこれ以上借りれないとか言ったんだろうが…俺らは戦っていたのは事実だ」


武装中将「…っ」

168: 2014/10/02(木) 21:25:12 ID:6O7FQqm6
 
剣士「それを、軍に任せて己の幸せだけを考えればいい?」

剣士「…何言ってやがる!」

剣士「現状も知らないのは、お前らのほうだ!」

剣士「…同じ志を持っていた、冒険者の仲間は…目の前で氏んでいった」

剣士「俺は、それを見て…戦うべき道を選んだ」

剣士「本当なら今日、俺はこんな場所にいるべきじゃない。まだ、その冒険者たちと戦わないといけないからだ」


武装中将「…」


剣士「だけど、アンタには今の俺らのような存在もいるんだという…、そういう現状を知って欲しかった」

剣士「だから俺はここへ来た」

剣士「行方不明のままで良いと言ったのは、その魔族と戦い続ける中で氏んでも、魔道士は俺が氏んだと気付かない」

剣士「魔道士には、俺が氏んだと思って欲しくないという…我がままのためさ」

剣士「最期の…願いなんだよ……」

169: 2014/10/02(木) 21:26:06 ID:6O7FQqm6
 
武装中将「…剣士」


剣士「…俺は前線へ戻る。中央軍は、中央軍のままで戦ってればいい」

剣士「俺は冒険者たちの義勇軍で、大戦士兄の言ってくれた"平和の為に力を使え"を貫き通す」

剣士「…魔族との戦いは、アンタらが考えてるほど簡単じゃない」


武装中将「…」

剣士「…っと、違うか…。ごめん…オッサン」

武装中将「…何を謝る」

剣士「…"簡単じゃない”って言葉、取り消す。それじゃ中央軍で散ってった軍人や家族への侮辱だ」

武装中将「…」

剣士「お互い、その力で魔族へ勝てるように、勝利をつかもう…か」

武装中将「…」

170: 2014/10/02(木) 21:26:59 ID:6O7FQqm6
 
剣士「くくっ…。まるで成長してねぇぜ、俺」

剣士「すぐに調子乗って、昔…エルフ族に裏切られた大戦士兄の過去の仲間を侮辱してさ…」

剣士「それで魔道士に怒られたこともあったっけ」


武装中将「…」


剣士「また魔道士がいたら、怒られるところだった。ははっ…それじゃ…」


魔道士「…本当だよ。剣士ったら、まだそんなこと言って…!」


剣士「はは、すまんすまん!」

魔道士「…」


剣士「…」

剣士「……え?」クルッ


魔道士「剣士っ…」ブルッ

剣士「ま…どうし…?」

171: 2014/10/02(木) 21:27:43 ID:6O7FQqm6
 
武装中将「…」


魔道士「剣士…!剣士ぃ……!」グスッ

剣士「なっ…!」


…スッ

神官「剣士くん!!」

剣豪「剣士…さん…っ」

戦士「剣士さん…!!」


剣士「お、お前ら…!!」

魔道士「…剣士っ!!」ダッ

ダダダダダッ…ギュッ!!!

剣士「…!」

172: 2014/10/02(木) 21:28:13 ID:6O7FQqm6
 
魔道士「剣士…剣士…!ひぐっ…!」ポロポロ

ギュッ…ギュウウッ…!!

剣士「…っ」


神官「…やっぱり、剣士くんだったんだね」

剣士「僧侶…なんでここに…!」

神官「…」スッ

剣士「あん?」チラッ


武装中将「…」


神官「武装中将さんが考えていたことだよ。剣士くんが戻ってきたら、こういう手筈になってたんだ」

剣士「何っ!?」

173: 2014/10/02(木) 21:28:52 ID:6O7FQqm6
 
神官「剣士くんが戻ってきて、もしこの部屋にいるようなら、合図を出してほしいと」

神官「たぶん、この状況だから…皆に会えないようにしてるんじゃないかって考えた末の策だよ」


剣士「…オッサンに既に読まれてたのか」

武装中将「…お前が戻るのは、魔道士か俺のところしかいないからな」

剣士「…またオッサンには先に読まれてたってか……」

武装中将「…」


魔道士「け、剣士、剣士ぃ……」ギュウウッ

剣士「魔道士…」

魔道士「会いたかった!会いたかったよ…!」

剣士「ば…バカやろう…。そ、それは…俺だって……」

魔道士「う…あうぅ…」グスッ

剣士「…ッ」

…ギュウッ!!

174: 2014/10/02(木) 21:29:25 ID:6O7FQqm6
 
戦士「…」

剣豪「失恋」ボソッ

戦士「うっせ!」

神官「はは…」


武装中将「…その温かさを感じて、どう思う。友の声を聞いて、どう思う」

武装中将「お前はまだ、その義勇軍に行きたいというのか」


剣士「お、おいおい…オッサン、逆に聞くぞ?俺が戻るのは予想していただろうが、義勇軍の存在はどうだった」

武装中将「それは…」

剣士「…だろうな。俺は、まだココへ戻ってるわけにはいかないんだ…」

武装中将「だが!それでは魔道士が!」


魔道士「…」

剣士「魔道士…」

175: 2014/10/02(木) 21:30:39 ID:6O7FQqm6
 
魔道士「…」

魔道士「ごめんね…。私、さっきの話、ドア越しに聞いてたんだ…」


剣士「…」

魔道士「それで、その……」


剣士「…魔道士、その言葉は待ってくれ」

剣士「俺はさ、本当はこんなこと知られたくなかった。そして本当は、お前に会いたくても会いたくなかった」

剣士「どうしてだか、分かるか…」


魔道士「剣士…本当は私に会いたくなかった…の……?」

剣士「俺が、お前とずっと一緒にいたくなるからだよ…!!」

魔道士「…っ!」


剣士「俺は、このままもう、ずっと一緒にいたいと思っちまってる…!」

剣士「ずっとこのままならって…思ってるんだよ……!」

176: 2014/10/02(木) 21:31:21 ID:6O7FQqm6
 
魔道士「…ッ!」


剣士「戦いの道を選んだと強く言い放っても、欲望には俺は勝てない人間なんだよ…」

剣士「…お前がもう、一緒にいてほしいと言ったら、俺は……」

剣士「だから……」


魔道士「…っ」ゴクッ

魔道士「…い……」


剣士「…っ」


魔道士「い…一緒に……」

魔道士「…っ」ギュッ

魔道士「う……ううん!」

魔道士「…剣士がそう言うなら…私はまだ、一緒にはいれないよ……」

177: 2014/10/02(木) 21:32:08 ID:6O7FQqm6
  
…ドンッ!


剣士「…!」


ヨロッ…


魔道士「やっぱり、剣士の我がままは、やっぱり私が直してあげないとねっ!」

剣士「魔道士…っ」

178: 2014/10/02(木) 21:33:36 ID:6O7FQqm6
 
魔道士(…一緒にずっとこのままいてほしい)

魔道士(そんな本音を、思いっきり叫びたい。抱きしめてほしい、撫でてほしい…)

魔道士(温かさが欲しい、剣士をもっと傍に感じたい。明日からまた、寝起きの剣士の顔を見たい…)

魔道士(…だけど。だけど……!)


武装中将「魔道士!それでいいというのか!」


魔道士「…」

魔道士「…はいっ」ニコッ


武装中将「…!!」


剣士「魔道士…」

魔道士「剣士、あんたは今、その冒険者の義勇軍で戦う仲間がいるんでしょ!」

剣士「あ、あぁ…」

179: 2014/10/02(木) 21:34:08 ID:6O7FQqm6
 
魔道士「だったら、その戦い続ける仲間より、先に落ち着いていいの!?」

魔道士「剣士が今やりたいことは、その仲間とともに、大戦士兄の言葉を受け継ぐことなんでしょ!」

魔道士「わ…私は…大丈夫だから…」ブルッ

魔道士「だから、剣士はまだ、戦って!」


剣士「…」


魔道士「でも…。必ずまた、会いに来てね」


剣士「…わかった」


魔道士「…うんっ!約束!」

剣士「あぁ…約束だ!」

180: 2014/10/02(木) 21:34:39 ID:6O7FQqm6
 
…クルッ

剣士「…みんな、顔を見れて嬉しかったぜ」


神官「本当に行っちゃうの!?」

剣豪「剣士さん!」

戦士「そんな…!やっと会えたっていうのに!」

魔道士「…」

武装中将「…剣士」


剣士「俺はやっぱり、戦いの中で生きていたいらしい」

剣士「世界を巡って、世界で戦い、世界を知る、冒険者でいたいらしい」

剣士「なぁに、また戻ってくるさ」

剣士「みんな…。魔道士のこと、そして己自身のこと、守ってやってくれよ…」バッ!

ダダダダダッ…!!!
 
……………
……

181: 2014/10/02(木) 21:35:58 ID:6O7FQqm6
 
神官「剣士くん!」

剣豪「…剣士さん」

戦士「剣士さんっ…」

魔道士「剣士…頑張ってね…」


武装中将「…」

武装中将「…あいつは、この1か月でどれほどの地獄を見てきたのか」


神官「地獄…ですか」


武装中将「信じられない事だったが、この本部へあそこのガラスを割って入って来たんだ」

武装中将「ここの階層は、大戦士に匹敵する飛翔がなければ届かぬ場所…」

武装中将「それにあいつの身体から出ていたオーラは、もはや並大抵のものではなかった…」

182: 2014/10/02(木) 21:37:10 ID:6O7FQqm6
 
戦士「…剣士さんは、また強くなっていたということですね」

武装中将「強く…なりすぎている。短期間の成長速度ではない…!」

戦士「…」


武装中将「たまに見えていた身体の傷は、その1つ1つが重いもの…」

武装中将「あいつはどこまで自分を傷つけ、この世界の礎となろうというのか…!」


魔道士「…多分、それは違いますよ」

武装中将「何?」


魔道士「剣士は、知らない世界へ飛び込むのが人より好きなだけなんです」

魔道士「魔界の話も知っているだろうし、その強大な相手と戦うのもまた、剣士はきっと楽しんでます」

魔道士「…その義勇軍は冒険者の仲間がいると言ってました」

魔道士「きっとその人たちは、この戦争ともいえる中で、世界を守るためだけじゃなく…」

魔道士「冒険者として知らない世界を見たい人たちなんじゃないでしょうか」


武装中将「…!」

183: 2014/10/02(木) 21:38:05 ID:6O7FQqm6
 
戦士「…はははっ!自分勝手な人間たちみたいじゃないですか、それじゃ」

剣豪「冒険者とは人の為であれ。そして、自由に生きてこそ…だったか?」

戦士「…お父さん、大戦士師匠が使ってた言葉か…」

剣豪「くくくっ…剣士さんそのまんまじゃないか」

戦士「っていうか、その義勇軍に集まってる人たち、みんなそうじゃないか…」


神官「はは…っ。剣士くんみたいなのが、沢山集まってるんだろうね」


戦士「でも…剣士さん、やっぱりその道をやめたわけじゃなかったんだ」

剣豪「…安心した」

戦士「あぁ…」

184: 2014/10/02(木) 21:38:38 ID:6O7FQqm6
 
魔道士「…」
 
魔道士「えへへ…」


武装中将「…どうした?」

魔道士「なんか、剣士は剣士のままで安心したんです。それと……」

武装中将「それと?」

魔道士「なんか、また近いうちすぐ会えそうな気がして」

武装中将「ふむ…」

魔道士「あんな別れ方しといて…。もしかしたら、寂しさ隠しなのかもしれませんけど…」

武装中将「はは…。意外と、そういうカンも当たったりするものだぞ」

魔道士「…だと、いいんですけどね♪」

武装中将「とにかく今は、剣士の無事を祈ることとしよう」

魔道士「はいっ。そうですね…」

………

185: 2014/10/02(木) 21:39:11 ID:6O7FQqm6
 
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

186: 2014/10/02(木) 21:40:11 ID:6O7FQqm6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 3日後 東方大陸 前線付近の村 】


…ザッ!

剣士「…ただいま、みんな」


仲間たち「剣士!?お前、戻って来たのか!」

仲間たち「こんな地獄へ…」


剣士「当たり前だろ。ここでの戦いは、中央軍本部の中将へ伝えてきた」

剣士「…あの人なら、もっと多くへ目を配り、他の場所も守ってくれるよう指示してくれるはずだ」

剣士「もうすぐこの村も、軍の援軍…いや、避難も進めてくれるだろう」

187: 2014/10/02(木) 21:41:05 ID:6O7FQqm6
 
仲間「…お前、本当に本部の中将と知り合いだったのか…」

剣士「だから言っただろ。つーか、俺が離れてから何かあったか?」


仲間「…いや。中央軍が総力戦に勝利した途端、ここへの襲撃もある程度おさまった」

仲間「南側の村や、他の場所とも連絡を取ったが、ほとんど落ち着いているらしい」


剣士「…あとは他の村にも、中央軍が守ってくれるようになれば、安泰っつーことかな」

仲間「だな。魔族との戦いはきつかったが…見ろよ」クイッ

剣士「…」


…タタタッ

村のこども「ありがとう、おにいちゃんたち!」

村のこども「えへへ、お母さんがね、おにぎりもってけって!」スッ

村の大人「…本当に助けていただいて…」

188: 2014/10/02(木) 21:41:36 ID:6O7FQqm6
 
仲間「子供たちの笑顔、見れて良かった。逝った仲間も、きっと喜んでるはずだ」

剣士「…」

仲間「…どうした?」

剣士「こども…か」

仲間「…欲しいのか?」

剣士「ちげえよ!」

仲間「じゃあなんだよ」


剣士「いや…。少し前に、俺がエルフ族の村に行ったことがあるって言っただろ?」

仲間「…あぁ、覚えてるぜ」

剣士「…その時いた、女の子のエルフがいるんだ。無事だっただろうか…ってな」

仲間「確か、西方海岸街の近くっつってたな。あそこは中央軍支部も近いし、大丈夫だろう」

剣士「…だといいんだが」

仲間「心配な気持ちもわかるが……心配のしすぎはやめとけ」

189: 2014/10/02(木) 21:42:53 ID:6O7FQqm6
 
剣士「…心労で俺が参っちまうってか」

仲間「そーいうこと」

剣士「まぁ…今は考えても仕方のないことだし、気にしないことにするさ」

仲間「…っていうか、お前さ、これからどうするんだ?」

剣士「どうするって?」

仲間「とりあえず一旦落ち着いたし、ここへいる必要はないんだぞ?」

剣士「…」

仲間「いつ現れるかは分からないが、少なくとも今はー……」


村の大人「…うわぁぁっ!?」

村のこども「いやああっ!」

190: 2014/10/02(木) 21:43:35 ID:6O7FQqm6
 
剣士「…何だ!?」

仲間「魔族か!?」


…チャキンッ

盗賊たち「はっはっは!魔族とやらが暴れてくれるおかげで、俺らも仕事がしやすいぜ!」

盗賊たち「くくく…!女はいるか!金目のものをよこせぇ!!」


剣士「…まだ、俺らは離れるわけにはいかないようだぜ」チャキッ

仲間「こんな時だというのに…。逆にあのハングリーな精神…見習うべきなのかもしれん」シャキンッ


……………
………

191: 2014/10/02(木) 21:44:20 ID:6O7FQqm6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 村の外 剣士のテント 】

ホー…ホー……

…ゴロンッ

剣士(…ったく、何で魔族の他に人の相手もしねぇといけねぇんだっつーの)

剣士(確かにこんな時だし、元々山賊やら盗賊はチャンスだと思う気持ちもわかるが)

剣士(…)

剣士(…こんな時だから、お前らだってやれることがあるって考えねぇのかよ…)


ザッザッザッ…ピタッ


剣士(ん…誰か来た…?)

剣士「…誰だ。テント、開けていいぞ」

192: 2014/10/02(木) 21:44:58 ID:6O7FQqm6
 
ジィィ……ヌッ…

冒険傭兵(仲間の一人)「…よっ」

剣士「お前か。どうした?」

冒険傭兵「…いやちょっとな」

剣士「まぁ、虫入るから早く閉めろ」

冒険傭兵「おう」

…ストンッ


剣士「なんだよ、そろそろ寝ようと思ってたんだが」

冒険傭兵「いや何、ちょっと村の奴らから話が来てたんだよ」

剣士「…話?」

193: 2014/10/02(木) 21:45:45 ID:6O7FQqm6
 
冒険傭兵「おう。それで、言伝みたくこうして回って来てるわけ」

剣士「言伝?何だ?」

冒険傭兵「…お前って、彼女いたよな?」

剣士「まぁ…」

冒険傭兵「じゃあ良心的にどうかと思うが、村の娘がお前の相手をしたいんだってよ」

剣士「…はぁ?」


冒険傭兵「男だろうし、こんな辺境を守ってもらってるお礼をしたいんだと」

冒険傭兵「で、村長から話を通してくれと。お前のことを気に入った娘が何人かいるみたいだぜ」


剣士「いやいや。村長アホなの?」

冒険傭兵「…いや、意外とあることだろ」

194: 2014/10/02(木) 21:46:17 ID:6O7FQqm6
 
剣士「…俺は結構。断っておいてくれ」プイッ

冒険傭兵「いいのか?」

剣士「いいっつーの」

冒険傭兵「勿体ねぇな。結構いい娘だったぞ」

剣士「欲望満たすためだけに、相手はしねぇよ」

冒険傭兵「…情けねぇな!」

剣士「あのな…」


冒険傭兵「まぁ冗談さ。お前がそういうんじゃ、断っておくぜ」

剣士「そうしてくれ。俺はもう寝る」

冒険傭兵「…分かった」

スクッ…ジィィィ……

ザッザッザッ…ザッザッ…

………
……

196: 2014/10/02(木) 21:47:05 ID:6O7FQqm6
 
剣士「…はぁ」


…ジィィ、ヌッ

冒険傭兵「気が変わったら、行ってみろよ。この村の端っこにいる娘だぞ」


剣士「…いいからお前ももう寝ろ!」


冒険傭兵「うひっ!おっかねぇ!」


…………
………

197: 2014/10/02(木) 21:49:14 ID:6O7FQqm6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


剣士「…」

剣士「…」

剣士「…はぁ」


…ゴロンッ

剣士(そりゃー…まぁ……)

剣士(だけどな…)

剣士(…)

剣士(俺にゃ魔道士がいてくれるから…それでいいんだよ…)

198: 2014/10/02(木) 21:50:26 ID:6O7FQqm6
 
…ゴロゴロ

剣士(…)

剣士(…)


ゴロゴロ……


剣士「…」

剣士「…くそっ!!」バッ!

剣士「…っ」

剣士「くっそ…眠れん!」

剣士「頭冷やす!少し散歩するか…」


………

199: 2014/10/02(木) 21:50:59 ID:6O7FQqm6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 近くの平野 】

ザッザッザッ…

剣士(それにしても…なんだ)

剣士(少し前の戦いが嘘のように、ただ静かな時間が流れてる)


ヒュウウ…


剣士(西方側の総力戦の時は、この平野も地獄のような戦いだった)

剣士(俺も含め、よくこの村を守れたと思う)

剣士(…だが、多くの仲間の氏を見た。きっと、総力戦側も同じような形だったんだろう)

200: 2014/10/02(木) 21:51:46 ID:6O7FQqm6
 
…サァァッ

剣士(今はまだ、ゴブリンやオーク程度の対処できる魔物。時々強力なやつもいるが、まだ問題はない)

剣士(だが…あいつ……!)

ドクンッ…

剣士(…竜族ッ)

ドクンッ…

剣士(恐らく、アイツらが動けばこの村だけじゃない。この一帯は確実に落とされる)

剣士(だけど…)


ドクンッ…!!


剣士(どこかで、アイツと戦いたい俺がいる。負けるのは必須かもしれない)

剣士(しかし…)

…パサッ

201: 2014/10/02(木) 21:52:22 ID:6O7FQqm6
 
剣士(この1か月、俺は前線で戦い続けた。きっと、その経験は俺の身体を確実に成長させている)

剣士(…少なくとも、あの時よりは戦えるはずだ)


スゥゥ…


剣士(…月明かりの中、わずかな風。平野に生える緑が揺れる音…)

剣士(ふぅぅ…)


ブンッ…ブォンッ!!!


剣士(…)

剣士(…まだ。まだだ。俺はまだ戦って、もっと強くなる)

剣士(大戦士兄…俺は、あんたに追いつく。見ていてくれよ……!)


…………
……

202: 2014/10/02(木) 21:53:02 ID:6O7FQqm6
 
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

203: 2014/10/02(木) 21:53:36 ID:6O7FQqm6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 8時間後 中央軍本部 】


元帥「諸君。現在の情報と、これからの作戦について話し合おうと思う」

槍士大将「…」

武装中将「…」

聖大佐「…」

大魔術中佐「…」


聖大佐「…その前に、少しよろしいですか?」スッ

元帥「…構わない」

204: 2014/10/02(木) 21:54:12 ID:6O7FQqm6
 
聖大佐「今更なのですが、元帥殿のご判断でエルフ族の輸送作戦を決行したのは覚えておりますよね」

聖大佐「そして、この作戦は今も継続し、続いている」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
元帥「ここはワシが独断での判断を下す!反対は許さぬ!」

元帥「現状の霧をこれ以上広げぬよう、全てエルフ族を保護し、一度、南方大陸へ避難させる!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

元帥「…それがどうかしたか」


聖大佐「…なぜ、エルフ族の輸送までしたのでしょうかと…」

聖大佐「落ち着いた状況になり、よく考えてもみれば…それは少しおかしいのでは?」


元帥「何がだ」


聖大佐「…この度の襲撃、強襲、戦争。全てのトリガーは、あのエルフ族……。」

聖大佐「その戦犯ともいうべき存在を、軍が命を張ってまで彼らを守る義務はないと考えるのですが」

205: 2014/10/02(木) 21:54:49 ID:6O7FQqm6
 
元帥「…」

聖大佐「…どうでしょうか、間違っていますでしょうか?」

元帥「…それについてだが、今回の事件はエルフ族は犠牲者となっただけに過ぎないと思っている」

聖大佐「と、いうと?」


元帥「魔族の何体かを捕虜とし、エルフ族共々情報を聞き出しているのだが…」

元帥「エルフ族はあくまでも霧の媒体とし、その霧は彼らが一時的に生存できるようにするもの」

元帥「西方側の過去の事件…。あれは魔界とこちら側の世界を通じさせようとして失敗した結果だそうだ」


聖大佐「…ですが、完全にシロとは言えません」


元帥「確かに東方の祭壇の存在や、彼らがいつ牙を剥くかは分からない」

元帥「だが、エルフ族を避難させる際、霧となった者や同胞たち、その家族は涙を流していたそうだ」

206: 2014/10/02(木) 21:55:25 ID:6O7FQqm6
 
元帥「…」

聖大佐「…どうでしょうか、間違っていますでしょうか?」

元帥「…それについてだが、今回の事件はエルフ族は犠牲者となっただけに過ぎないんだ」

聖大佐「と、いうと?」


元帥「魔族の何体かを捕虜とし、エルフ族共々情報を聞き出している」

元帥「エルフ族はあくまでも霧の媒体とし、その霧は彼らが一時的に生存できるようにするもの」

元帥「西方側の過去の事件…。あれは魔界とこちら側の世界を通じさせようとして失敗した結果だそうだ」


聖大佐「…ですが、完全にシロとは言えません」


元帥「確かに東方の祭壇の存在や、彼らがいつ牙を剥くかは分からない」

元帥「だが、エルフ族を避難させる際、霧となった者や同胞たち、その家族は涙を流していたそうだ」

207: 2014/10/02(木) 21:56:02 ID:6O7FQqm6
 
聖大佐「…演技では?」


元帥「エルフ族との歴史は、俺らが生まれる以前、その前から何代にも渡ってきている」

元帥「もし、先代のエルフたちがそのような考えを持っていたとしても、今のエルフ族には何ら関係のないことではないか?」

元帥「むしろ、今日という日まで共にこの世界に生きてきた住民。それを守らない理由はない」


聖大佐「…」

元帥「…では、話を本題に戻すがいいか?」

聖大佐「…はい」


元帥「では…本題だ。現在、総力戦に勝利し、我が軍勢の指揮は満ち足りている」

元帥「総力戦の勝利後、魔族の動きは比較的落ち着いている。これは、彼らも我ら程の戦力と見ていい可能性はある」

元帥「また、武装中将から話があった通り、総力戦で我が中央軍以外にも冒険者が村を守ってたという」

元帥「直ぐにでも東方側や他の地区で、彼らの守る村へ援軍で固め、その負担を軽減したいと思うのだが、意見を頼む」

208: 2014/10/02(木) 21:57:48 ID:6O7FQqm6
 
槍士大将「自分は賛成です。全体的にバラけさせ、世界全体で守りを固めるべきでしょう」

聖大佐「…自分は反対ですね。陥落させられたら困る、主要都市をもっと固め、その他はある程度に抑えるべきです」

大魔術中佐「ふむ…。私はどちらかというと聖大佐殿の考えに賛成です」


元帥「…武装中将はどう思う」


武装中将「元帥殿。その前に、それに加えた情報を少しよろしいでしょうか」スッ
 
元帥「構わぬ」


武装中将「この度、総力戦に駆り出された人数はおおよそ4、50万目安です」

武装中将「中央軍で、支部も合わせた待機人数はその2倍以上」

武装中将「いうなれば、実働出来た人数は100万以上ということ」

武装中将「…世界全体の戦闘を行える人口でいえば、500万を越します」

武装中将「この中で、町村での被害人数は推定1500万以上…これがどういう意味か分かりますか」

209: 2014/10/02(木) 21:58:26 ID:6O7FQqm6
 
元帥「…」

槍士大将「…」

聖大佐「…」

大魔術中佐「…」


武装中将「中央軍の怠慢とも言わざるを得ないと思います」

武装中将「こんな事があると、誰も予想は出来なかったのは仕方ないとは思います」

武装中将「ですが、改めて落ち着き、数字を見直せばこれは恥ずべきこと」

武装中将「今までが平和だったのもあり、予想できないのもあり、仕方ないことではありますが…しかし」

武装中将「この数字は、どういうことでしょうか」


聖大佐「…ちょっとお待ちを。話を割りますが、大隊以上の指揮は将官以上に限られていますよね?」

聖大佐「それを軍全体の責任にするのはどうかと」


武装中将「聖大佐、その大隊の準備をさせたのは、君もだったな」

聖大佐「そ、それは…」

210: 2014/10/02(木) 21:59:48 ID:6O7FQqm6
 
武装中将「もちろん、将官以上…俺らも腑抜けていると言わざるを得ない」

武装中将「だが。これは軍全体が腑抜け、動けなかったために起きた事だと言わざるを得ません」


元帥「…痛い言葉だ」

武装中将「それを踏まえ、自分は今後の作戦の提案をいたします」

元帥「構わん」


武装中将「現在の避難区域を大きく広げ、前線付近数百キロメートル範囲内は危険区域に指定し、避難を迅速に進めます」

武装中将「その後、その避難した場所に軍の臨時支部を設置」

武装中将「少なくとも、彼らは東方と西方の一定の場所からしか出現はしないようです」

武装中将「この落ち着いている間に、守るだけではなく…攻めに転じましょう」


元帥「…!」

槍士大将「…ほう」

聖大佐「なっ…」

大魔術中佐「…」

211: 2014/10/02(木) 22:00:36 ID:6O7FQqm6
 
武装中将「今、確認しているのはバンシィ、デュラハン、竜族の2体」

武装中将「これを撃破できれば、おのずと相手の戦力は傾くはず」


聖大佐「しかし、彼らが主と呼ぶ相手もいるわけですよ」


武装中将「…1体に対し、大隊を2とする。それより強い相手なら、更にその大隊を4、6と増やす」

聖大佐「ははぁ…玉砕覚悟、氏んで勝利をもぎ取る前提だと」

武装中将「軍にいる以上、覚悟はあったはずだ」


聖大佐「…まぁ、既にいる軍に所属している人間はよしとしましょう。」

聖大佐「ですが、東方の防衛線に配置されている人間はどうですか?」

聖大佐「少なくとも、彼らは元冒険者。しかも、何も知らず配置された冒険者たちですよ」

聖大佐「…ただでさえ、総力戦の始まりの時に多くの犠牲を伴っているというのに…」


武装中将「…そうだな」

聖大佐「まさか、引き続き彼らも利用する…と?」

212: 2014/10/02(木) 22:01:44 ID:6O7FQqm6
 
武装中将「先ほど言った、戦闘人口が500万という話」

武装中将「これは、軍の他に…冒険者の数も入れている数と分かるはずだ」


聖大佐「!」


武装中将「…冒険者の数でいえば、3000万人を越す。戦闘能力がある一般市民も混ぜていえば、その10倍はいてもいい」

武装中将「だが、その中でも実力の有る者は少ない。その中で、大きく見積もって500万ということ…だが」

武装中将「俺としては、その戦えるであろう人々をも全て立ち上がらせることが最終目標だ」


槍士大将「ふむ…今の我々が掌握している世界人口は、おおよそ50億に満たない数」

槍士大将「冒険者が増えたとはいえ、その冒険者人口割合は非常に低い…」

槍士大将「だがもし、武装中将のいう一般市民も含んだ"戦闘人口"とあわせ考えると…」


元帥「…全人口のうち、下手をすれば数%を戦闘者として立ち上がらせるということだな」

元帥「そして今いる戦闘能力のある者すべてを使い、西方と東方側の魔族の拠点へ攻め入る…と」

213: 2014/10/02(木) 22:02:42 ID:6O7FQqm6
 
聖大佐「…っ!!」

聖大佐「ば…バカげている!市民や冒険者の力も借りるなど!」

聖大佐「いや、それだけじゃない!その戦闘で敗北すれば、世界は終わりですよ!」

聖大佐「…戦闘が出来る人間のほぼ全て!?ば、バカな提案にも程がある!!」

聖大佐「訓練された軍人が数千万ならまだしも、ただの冒険者や市民など、命を散らすだけだ!」


武装中将「…あくまで俺の考えだ。これは大陸全土…大陸戦争だということは分かるな」

武装中将「だからこそ、俺ら軍だけで勝とうなど、甘い考えではないかと思い始めた」


聖大佐「…あなたが、軍だけで解決するような言い方をしてきたんですよ!」

214: 2014/10/02(木) 22:03:42 ID:6O7FQqm6
 
武装中将「…考え方も変わることもある」

武装中将「それに、問題もかなりあるだろう」

武装中将「戦闘意思のある者の招集準備や、その体制を整理すること」

武装中将「彼らを大隊として派遣する準備もあれば、まだまだ決定を下せるようなものではー……」


…バゴォオンッ!!!!グラグラグラッ……!!

215: 2014/10/02(木) 22:04:14 ID:6O7FQqm6
 
武装中将「むっ…」

大魔術中佐「…何の音?」

聖大佐「何だ?」

槍士大将「会議室の壁が…壊された……?」

元帥「待て…。みな、落ち着け」


モワッ…


武装中将「壁の中から、霧が……」

聖大佐「ま、まさかこの霧は!」

大魔術中佐「なぜ、この本部に!」

槍士大将「しっ…全員静かに。足音がする」


ザッ…ザッ…ザッ……


元帥「何か…来るぞ…」

216: 2014/10/02(木) 22:04:48 ID:6O7FQqm6
 
ザッザッザッ…モワッ……


中央軍人「あ゛……っ」



元帥「何…。軍の人間か?」

槍士大将「…いや、血だらけですね」

武装中将「彼の後ろ、何かいるようです」

聖大佐「ま、まさか…この場所に……」

大魔術中佐「魔族が…?」


…ドシャアッ

中央軍人「た…助け…」

スッ…バキィッ!!ベチャッ!!!


???『……ココが、人間たちの中央軍の本部とやら…か』

217: 2014/10/02(木) 22:05:35 ID:6O7FQqm6
 
…ババババッ!!!

槍士大将「元帥殿、自分の後ろに!」

武装中将「人型か!?人間ではないのか!」

聖大佐「…それならいいんですが!」

大魔術中佐「一体、何者ですか」


???『…霧を使うのは趣味ではないのだが、塔が完成したとはいえ、俺にとっては不十分だったからな』


槍士大将「…やはり魔族か!どうやってここに!」


???『お前たちの便利な技術を利用させてもらったのだよ』


槍士大将「…まさか、転移装置を!」


???『あれは、そう言うものなのか。エルフ族の祭壇から、飛ばせてもらってね』

218: 2014/10/02(木) 22:06:09 ID:6O7FQqm6
 
槍士大将「待て…あれは動かなかったはず…。一体どうやって…」


???『…まぁ、無駄話はいい。用事があるのは…お前だ』スッ

元帥「…」

???『お前がこの世界のトップ…だな』

元帥「…それがどうした」

???『この度の戦いについてー……」


聖大佐「…ここをどこだと思っている!魔族の一匹くらい……」パァァァッ!!


槍士大将「ま、待て!!」

武装中将「早まるんじゃない!!」


聖大佐「極っ!!雷撃まほ……っ!!」

219: 2014/10/02(木) 22:06:51 ID:6O7FQqm6
 
パァッ…バシュウッ!!!

聖大佐「…がっ!?」

…ズブシュッ……!

???『…お前には用事がない。黙っていろ』


聖大佐「あ゛っ……」

……ズザザァ…ドォンッ!!ドシャアッ!

 
槍士大将「せ、聖大佐っ!!!」


聖大佐「…」ダランッ


武装中将「し、心臓を正確にっ…」

大魔術中佐「い、今のは…何を…!魔法!?高速の矢のような…!」

元帥「…っ!」

220: 2014/10/02(木) 22:07:29 ID:6O7FQqm6
 
???『…話を続けても?』

元帥「ぜ、全員動くんじゃない…。話を聞こう……」


???『…ありがとう。では、改めて』

???『この度の戦い、見事だった。我が配下が、その実力の前に敗北をしたことは認めよう』


元帥「…我が配下だと?」


???『あぁ、申し遅れていたな。自己紹介をしよう』


元帥「…っ」

武装中将「…」

槍士大将「…」

大魔術中佐「…」

221: 2014/10/02(木) 22:08:08 ID:6O7FQqm6
 
アリオク『私の名前は、アリオク。』


アリオク『お前たち人間が魔族の軍と呼ぶ全てを…率いさせてもらっている。」


アリオク『突然のことで悪く思うが、この世界…俺に預けてくれないか』ニコッ

222: 2014/10/02(木) 22:08:44 ID:6O7FQqm6
 
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223: 2014/10/02(木) 22:11:33 ID:6O7FQqm6
 
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――――【 1時間後 中央軍本部 】


…シーン

……


……

………ザワッ

…ザワザワ…ガヤガヤ……!!

軍人「…この辺だ」

軍人「うっ…。門番兵たちが倒れている……。血だらけじゃないか…」

軍人「会議室には中佐殿たちがいたはずだが…」

軍人「最上階の途中から、氏体だらけで…。一体何があったというんだ…」

224: 2014/10/02(木) 22:13:03 ID:6O7FQqm6
 
ベチャッ…ドロッ……

軍人たち「…っ」


…ソー

軍人「元帥殿たちは…いらっしゃいますでしょうか……」

軍人「…」

軍人「…えっ?」


…ベチャッ……!


軍人「…え?」

軍人「えっ…あっ……」

軍人「あ……あぁぁっ!!」


………

225: 2014/10/02(木) 22:14:05 ID:6O7FQqm6
 
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――――本日、朝方。

元帥以下、大将、大佐。

以上3名が、中央軍本部にて遺体となって発見された。

武装中将は一命を取り留めたものの、意識不明の重体。

大魔術中佐は行方不明となる。


これにより、中央軍の本部は一時混乱に陥る。

中央軍本部の残された中尉以下は、その指揮も不慣れなもので、

実質、軍の機能は停止したものと……思われた。

だが…。

この騒動の最中。


幹部達のうち、姿を見せず唯一、前線で戦い続けてた男が―…帰還する。


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226: 2014/10/02(木) 22:14:50 ID:6O7FQqm6
 
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――――【 中央軍本部 入口 】


…バババッ!!

中尉「…全員、敬礼!」

軍人たち「…」ビシッ!!
 

???「…俺がいない間に、随分とまぁ大変なことになっちゃって」

???「ま、これも漁夫の利ってやつで上手いこと考えようか」


軍人A「…なぁ」ボソボソ

軍人B「なんだ?」

軍人A「あの人って…少将なんだろ?俺、見た事ないんだが…」

軍人B「あぁ…あまりにも自分勝手で、遥か遠くに飛ばされてたって話だ…」

227: 2014/10/02(木) 22:15:26 ID:6O7FQqm6
 
軍人A「…そんな人が、本部に戻って来たのか」

軍人B「仕方ないだろう。元帥殿も…、大将殿も…。みんな、氏んじまったんだぜ…」

軍人A「謎の襲撃だっけな。だからっつって、飛ばした人間が戻ってくるとは…」

軍人B「…頼りざるを得ない状況なんだろう」

軍人A「名前、何ていったっけ」

軍人B「えーと…確か…」


剣聖少将「…剣聖少将っつーんだが、覚えててくれるか?」ボソッ


軍人A「いっ!?し…失礼しましたぁ!!」

剣聖少将「はっはっは、そんな畏まるな。内緒話は仕方ねぇよ!別にいいぜ!」

軍人A「…は、はいっ!」

剣聖少将「…ま、気楽にいこうや」

…ポンポンッ

軍人A「は…はいっ…」ビクッ

228: 2014/10/02(木) 22:16:00 ID:6O7FQqm6
 
剣聖少将「じゃーな」


ザッザッザッザッ……

ザッザッザッ……

………



軍人A「はぁ…はぁ…。びっくりした……」

軍人B「す、すげぇオーラだったな…」

軍人A「…殺されるかと」

軍人B「はは…。でも確かに、自由な感じはしたわな。なんか、将官らしくねーっつうか」

軍人A「どっちかっつーと、冒険者よりっぽかったな…」

…………
……

229: 2014/10/02(木) 22:16:41 ID:6O7FQqm6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍 会議室 】
 
ガチャッ、ギィィ……


剣聖少将「…へぇ、ここが元帥たちが簡単に殺された会議室ね。狭いしきったねぇなぁ」

中尉「そ、そんな言い方していいんですか…」

剣聖少将「氏人に口なしだろ。どんな偉くても、氏んじまったらただの肉塊と一緒よ」

中尉「し、しかし…」

剣聖少将「氏ぬっつーことは、所詮その程度だったっつーことだ」

中尉「…」

230: 2014/10/02(木) 22:17:14 ID:6O7FQqm6
 
剣聖少将「っつーか、集まったのこれだけ?本気で左官もいなくなったのな」


中尉「…中将殿は意識不明。中佐殿は行方不明ですので」

少尉「じ、自分がこんな場所に…いていいんですか…」

准尉「…っ」


剣聖少将「おいおい頼むぜ。トップらが消えた以上、俺とお前らを合わせた4人が人間側の四天王だぞ?」


准尉「じ、自分は先月に准尉にあがったばかりで、突然こんな場所にこのような形で……」

剣聖少将「…あのなぁ。お前は誰だ?」

准尉「…え?」

剣聖少将「…一般市民か?軍人か?」

准尉「そ、それは軍人でありますが…」

231: 2014/10/02(木) 22:17:45 ID:6O7FQqm6
 
剣聖少将「…本当か?」

准尉「あ、当たり前です!」

剣聖少将「じゃあなぜ、そんなにビビってんだよ」

准尉「うっ…」

剣聖少将「…そんなんで、他の人間が守れるのか」

准尉「あ…その……」


剣聖少将「不安があるなら、俺を頼ってもいいぜ?」

剣聖少将「だが、お前を変えるのはお前自身。この状況を受け入れられるのも、お前自身」

剣聖少将「…この状況が受け入れられないなら、出て行ってもいいんだぞ?」

232: 2014/10/02(木) 22:18:18 ID:6O7FQqm6
 
准尉「…っ」

准尉「…せ、誠心誠意、あたらせていただきます!」


剣聖少将「うむ…いい声だな。だが、その言葉は俺にじゃねえだろ?」

准尉「へ?」

剣聖少将「お前が言うのは、こっちだ!」

ガシッ…グリンッ!!

准尉「うわっ!?」 

 
剣聖少将「…この窓から見える、守るべき人々に言うんだよ」

剣聖少将「お前が誠心誠意あたるのは、この世界に住む人々の笑顔のためなんだからな」


准尉「は…はいっ!」

233: 2014/10/02(木) 22:18:53 ID:6O7FQqm6
 
中尉「…!」

少尉「…っ」


剣聖少将「…さて、諸君。俺の噂は聞いていると思うが、こんな状況だ」

剣聖少将「まず、俺に従うことは必須…と言いたいが。文句があるなら言え、誰が正しいかなんてわからないんだからな」

剣聖少将「意見を言わないやつは、ドンドン外すぞ。いいか!」


…ビシッ!!

中尉「はっ!」

少尉「承知しました!」

准尉「了解いたしました!」

234: 2014/10/02(木) 22:19:39 ID:6O7FQqm6
 
剣聖少将「…では、さっそく始めようと思うんだが、これからのことや、魔族への対抗策をな」

中尉「は、はいっ」 

剣聖少将「…の、前にまず。ココへ呼てぇ奴がいるんだ」

中尉「…呼びたい方ですか?」 
 
 
剣聖少将「ここにいるのが四天王とかいったが、どっちかというと五芒星になるかもしれん」


中尉「…と、いうと?実力の有る者がいるということですか?」


剣聖少将「あぁ…つえぇぞ。俺はしばらく会ってなかったんだがな」

剣聖少将「…噂は聞いてる。ま、一回行方不明になっちまったけどな」

剣聖少将「だが、行方は既につかんだ。アイツのことだから来るかわかんねーけどよ…」

235: 2014/10/02(木) 22:20:30 ID:6O7FQqm6
 
中尉「それは…どなたでしょうか」


剣聖少将「おうよ。まぁ…その…」

剣聖少将「俺の"息子"だ」


中尉「…息子さんですか」

少尉「剣聖少将殿の…子を呼びたいと?」

准尉「自分は構いませんが…」


剣聖少将「…アイツも俺に似て自由だからな~。本当に来るかどうか…」


 
………
……

236: 2014/10/02(木) 22:21:27 ID:6O7FQqm6
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 東方側 防衛線付近の村 】


剣士「…」

剣士「…へっくしょんっ!!」

剣士「…」ズズッ


剣士「…風邪でも引いたか?」


………
……

237: 2014/10/02(木) 22:22:01 ID:6O7FQqm6
 
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238: 2014/10/02(木) 22:23:00 ID:6O7FQqm6
【 to be continue... .】

240: 2014/10/02(木) 22:23:58 ID:6O7FQqm6
 
本日はここまでです。

本来3日にわけて行うパートを一気にやってしまい、
一部を抜け・一部未修正のままアップをしてしまいましたので後日修正を行います。

また、ここで章区切りとなり、次回より、

『最終章後編』

となります。

次回更新は5~7日以内の予定ですが、よろしくお願いいたします。

それでは、ありがとうございました。

241: 2014/10/02(木) 22:26:58 ID:y3RG4D2E
続き楽しみだわー

242: 2014/10/02(木) 22:28:40 ID:MvqzLXWs
おっつ!

次回:


引用: 剣士「冒険物語…!」