1: 2008/09/30(火) 01:41:57.73 ID:Yq+9GnBa0
雪華綺晶「…………シクシク」

雪「…………メソメソ」

雪「…………ヒック」

雪「今日も一人……」

雪「寂しい、ですわぁ……クスン」

3: 2008/09/30(火) 01:45:13.63 ID:Yq+9GnBa0
ジュン「ん? 何だ……泣き声?」

ジ「どこから聞こえるんだろう」

雪「……シクシク。グスン」

ジ「うわああぁっ!」

ジ「パ、パソコンが真っ暗に……水銀燈の時みたいだな。泣き声はここから……?」

雪「グスン。ウゥ……」

ジ「画面の中にドールが……あれは」

雪「……ヒック。だぁれ?」

ジ「きら、きしょう……?」

4: 2008/09/30(火) 01:46:22.57 ID:Yq+9GnBa0
雪「あなたは、だぁれ?」

ジ「ぼ、僕は桜田ジュン。真紅と翠星石のミーディアムだ」

雪「真紅……紅薔薇のお姉さま……うっ」

ジ「えっ、ちょ、おい!」

雪「びえええええええぇぇん!!」

5: 2008/09/30(火) 01:48:06.70 ID:Yq+9GnBa0
五分後。
ジ「落ち着いたか?」

雪「はい……お騒がせ、しました……」

ジ(なんか調子狂うな……)

ジ「で、こんな時間にアリスゲームをしに来たのか? 真紅たちならもう寝てるけど……」

雪「違います……自分のフィールドで泣いていたら、いつの間にかここに……」

8: 2008/09/30(火) 01:51:20.05 ID:Yq+9GnBa0
ジ「ふーん。そういえば、なんで泣いてたんだ?」

雪「それは……あの、紅薔薇のお姉さまのミーディアムさん……」

ジ「長っ。ジュンでいいよ」

雪「では、ジュン様……お願いがあるのです」

雪「私とお友達になってくださいませんか?」

9: 2008/09/30(火) 01:53:01.92 ID:Yq+9GnBa0
ジ「……はあ?」

雪「ダメ、ですか……?」

ジ(くっ! 涙目の上目遣いは反則だろ……!)

ジ「どどど、どうして、急に!? だって、お前は僕たちの敵で……」

雪「敵? 私は……敵、なのですかぁ? ううぅ……」

ジ「うわわわわ! 泣くな、ストップ!」

10: 2008/09/30(火) 01:54:52.18 ID:Yq+9GnBa0
ジ「はあ……。で、敵じゃないのか? だって、前に雛苺を襲っただろ?」

雪「?」

ジ「?」
ジ(なんか変だな)

ジ「よし、一つずつ片付けていこう。まず、敵じゃないのは分かった。それで、なんで僕と友達になりたいんだ?」

雪「その……話し相手が、欲しくて」

ジ(頬を赤らめる雪華綺晶……萌え!)

雪「ご存知のとおり、私は実体がありません。nのフィールド内しか移動できないドールです」

ジ「うんうん」

雪「nのフィールドには誰もいません。唯一の話し相手は憎たらしい兎野郎だけです」

雪「来る日も来る日も兎、兎、兎……正直、もううんざりです」

13: 2008/09/30(火) 01:57:02.60 ID:Yq+9GnBa0
雪「たまに、お姉さま方が入ってこられても、私を見るなり皆さん、何故か怒り出してしまって……」

ジ(怒ってるわけじゃないと思うけど)

雪「私、何か気に触ることでもしてしまったのでしょうか?」

ジ「いや、まあ……」

14: 2008/09/30(火) 01:58:54.24 ID:Yq+9GnBa0
ジ「えーと……次! 次に行こう! 前に雛苺を襲ったのはどうしてだ?」

雪「襲った? 私が桃薔薇のお姉さまを?」

ジ「ほら。前に雛苺を頭からガブリと食べそうになったじゃないか。寸前で真紅たちが止めに入ったけど」

雪「あれは襲ったわけじゃありません!」

15: 2008/09/30(火) 02:00:24.60 ID:Yq+9GnBa0
雪「初めてお姉さまと接触が持てて、舞い上がってしまっただけです!」

ジ「ん?」

雪「私が作られてから早数世紀……何百年も一人きりで過ごし、ようやく、お姉さま方とお喋りできる機会に巡りあえて、嬉しさのあまりつい……」

ジ「『つい』で食べかけたのか……」

17: 2008/09/30(火) 02:03:00.73 ID:Yq+9GnBa0
ジ「……最後に質問。アリスゲームについて、どう思ってる?」

雪「私も早く参加したいですわ」

ジ(なっ! やっぱりこいつ……!)

雪「次はどんな遊びをするのでしょう? うふふ、待ち遠しいですわ」

ジ「……はい?」

18: 2008/09/30(火) 02:05:03.48 ID:Yq+9GnBa0
ジ「あー、雪華綺晶さん?」

雪「なんでしょう、ジュン様」

ジ「雪華綺晶の思い描いてる『アリスゲーム』について教えてもらいたいんだけど……」

雪「姉妹でいろいろなゲームをして遊ぶのですよね? 『ろーざみすてぃか』という賞品を貰える、と聞いていますわ」

ジ「……」

雪「ジュン様?」


ジ(そういえば、前に戦った時も……)

21: 2008/09/30(火) 02:08:43.13 ID:Yq+9GnBa0
回想。nのフィールド内。

真紅「ローズテイル!」

雪「まあ、今回は鬼ごっこですか? 負けませんよ?」

紅「黙りなさい! 花びらよ、捕えなさい!」

雪「あら、捕まってしまいましたわ。では、今度は私が鬼ですね。行きますよー」

紅「なっ……! ローズテイルの拘束をあんな簡単に……!」

雪「えいっ」

紅「ひでぶっ!」

24: 2008/09/30(火) 02:12:52.59 ID:Yq+9GnBa0
雪「うふふ。タッチですわ。また紅薔薇のお姉さまが鬼ですわね」

紅「うっ、ドレスがぼろぼろなのだわ。翠星石! 雛苺!」

翠星石「ガッテン承知ですぅ!」

雛苺「も、もう齧られたくないのよー!」

雪「あら? 皆さん鬼ですか? 困りました。逃げるのが大変そうです」

26: 2008/09/30(火) 02:16:17.70 ID:Yq+9GnBa0
翠「余裕こいてられるのも今のうちですぅ! すこやかにー! 伸びやかにー!」

紅「ホーリエ!」

苺「苺わだちなのー!」

ジ「熱っ! 指輪が熱い! 火傷する!」

翠「指の一本や二本でガタガタぬかすなですぅ!」

28: 2008/09/30(火) 02:19:10.10 ID:Yq+9GnBa0
ジ「やったか!?」(←やってない)

雪「また捕まってしまいましたわ。では、今度は私が皆さんを捕まえる番ですわね」

紅「そ、そんな……」

苺「全然効いてないのー……」

雪「では、参ります(ニコッ)」

翠「あうっ!」 苺「きゃあっ!」 紅「あべしっ!」

雪「ふふふ。楽しいですわ~」

回想終了。

34: 2008/09/30(火) 02:22:20.84 ID:Yq+9GnBa0
ジ(あれは本当に遊んでたのか)

雪「ジュン様? ジュン様!」

ジ「うわあっ!」

雪「どうかされましたか?」

ジ「い、いや、なんでもない」

雪「変なジュン様」

ジ(あ、笑った。子供みたいな笑顔だな。あ、こいつって末っ子なんだっけ)

36: 2008/09/30(火) 02:26:31.22 ID:Yq+9GnBa0
雪「あのぅ、それでお友達には……」

ジ「あ、ああ。そういう話だったっけ。うん。まあ。いいよ、友達くらいなら」

雪「本当ですか!?」

ジ「こうやって画面越しに話すくらいしかできないけど」

雪「十分ですわ!」

ジ(ま、眩しい! なんて眩しい笑顔なんだ!)

雪「うーれしーでーすわー!」

39: 2008/09/30(火) 02:30:09.32 ID:Yq+9GnBa0
雪「あのあの! では、早速お話しましょう! わ、私は雪華綺晶ですっ。趣味は眼帯の薔薇を伸ばすこと。好きなものは……」

ジ「お、おいおい。もっとゆっくりでも大丈夫だって」

雪「そ、そうですか? その、私ったら取り乱してしまって……あら?」

ジ「どうした?」

雪「……邪魔が入ったみたいですわ。ごめんなさい、ジュン様。今日はもう無理みたいですわ」

41: 2008/09/30(火) 02:33:42.36 ID:Yq+9GnBa0
ジ「そっか。今日と同じ時間に来れば真紅たちは寝てるから」

ジ「じゃあ、また明日」

雪「はい。では、その、また明日、ですわ! ……チッ。あの似非紳士ウサギ。今日こそ鍋にしてやりますわ」

ジ「……」

ジ「……なんか、疲れた。寝よう」

44: 2008/09/30(火) 02:36:41.16 ID:Yq+9GnBa0


次の日。深夜。

ジ「う~ん。昨日はあんなこと言ってたけど、本当に来るのかな? 罠って可能性も……」

雪「ジュン様!」

ジ「うわっ!」

雪「お待たせしてしまって申し訳ありません。昨晩の鍋の残りを片付けていたので」

雪「さあ! お話しましょう!」

ジ(なんか……疑ってごめん)

47: 2008/09/30(火) 02:40:08.43 ID:Yq+9GnBa0
それからそれから。二人の夜の密会は毎日のように続いた。

ジ「水銀燈に会ったことは?」
雪「黒薔薇のお姉さまには一度だけ……」

雪「まだ第二ドールのお姉さまには会ったことがありませんの」
ジ「あいつか。えっと、カナ、かな、……金縛り、だっけ?」

雪「昨日は蒼薔薇のお姉さまと遊びましたわ~」
ジ「ああ、だからあんなにボロボロになってたのか……」


紅「最近、ラプラスの姿を見かけないわね?」

54: 2008/09/30(火) 02:44:56.24 ID:Yq+9GnBa0
さらに数日後。

雪「まあ。ジュン様は服を作るのが趣味なのですか?」

ジ「趣味っていうか、昔やってただけっていうか……真紅たちが雪華綺晶と戦……遊んだあと、ボロボ……汚れたドレスを直すのも僕がやってるしね」

雪「まあ。羨ましいですわ~」

ジ(随分とコロコロ表情が変わるようになったよな~)

55: 2008/09/30(火) 02:48:00.81 ID:Yq+9GnBa0
雪「あ。そろそろ空が明るくなってきましたわ。そろそろお暇させていただきますわ」

ジ「ん。もうこんな時間か」

雪「それではジュン様。また明日ですわ」

ジ「うん。またな」

ジ「ふわあ。僕も寝るか」

数字時間後。朝。

紅「のり。ジュンはまだ眠ってるの?」

翠「最近、チビ人間のやつってば、やけに起きてくるのが遅いですぅ」

苺「そうなのよ~。それにジュンったら、目の下にくまさんを作ってるのよ。ねむねむなのよ」

翠「確かに、毎日昼寝ばーっかりしてるです。ちったあ翠星石ともお喋りしたり……ゴニョゴニョ」

のり「……あのね、みんな。ジュンくんも男の子だからそっとしておいてあげて? みんなが眠ってる時しかできない『お仕事』もあるのよ?」

翠紅苺『?』

57: 2008/09/30(火) 02:50:11.25 ID:Yq+9GnBa0
その晩。

紅「それじゃあ、ジュン。おやすみなさい(昼間のりの言ってたことが気になるわね)」

翠「チビ人間も早く寝るですよ(鞄の中からこっそり監視してやるですぅ!)」

苺「おやすみなさーい! なの!(うーんとお昼寝したもん! ヒナ頑張るんだから!)」

ジ「はいはい。おやすみー」


ジ「……そろそろかな」

雪「ジュン様! こんばんわ!」

ジ「こんばんわ。雪華綺晶」

翠紅苺(き、雪華綺晶~~~!?)

58: 2008/09/30(火) 02:51:46.43 ID:Yq+9GnBa0
あと半分くらい? です。
ちょっとペース速めます。


翠(な、なんでパソコンの画面に雪華綺晶が映ってるですか!? それも、なんかジュンと親しそうです!)

紅(わ、私に聞かないでちょうだい!)

苺(う~……ヒナは美味しくないのよ~)

雪「ジュン様。今日はお願いがあるんですの」

ジ「お願い?」

雪「私にドレスを作ってくれませんか?」

ジ「ドレス?」

雪「はい。昨日のジュン様のお話を聞いて、その……」

ジ「?」

雪「お姉さま方が羨ましいなぁって……」

59: 2008/09/30(火) 02:52:46.69 ID:Yq+9GnBa0
翠(声がよく聞こえねえです。何を話してるんですかねえ?)

紅(静かにしなさい、翠星石。あまり騒ぐとばれてしまうわ)

苺(うゆ~……ヒナは苺味じゃないのよ~)


ジ「ドレスか……でも、雪華綺晶はnのフィールドでしか動けないんだろ? こっちの世界で作ったものを着れるのか?」

雪「あ、そうでした……」

ジ「……」

雪「……クスン」

ジ「!!!!」

62: 2008/09/30(火) 02:54:12.54 ID:Yq+9GnBa0
ジ「待った! 泣くな! 一つ思い浮かんだ!」

雪「え……?」

ジ「僕がnのフィールドに行って作れば、お前も着れるんじゃないか?」

雪「あ……で、でも。ジュン様は紅薔薇のお姉さまのミーディアムで……」

ジ「そんなの今更だよ。それよりも、雪華綺晶のミーディアムの方が気になるな。勝手に仲良くなって怒られないかな?」

雪「それなら平気です。私にミーディアムはいませんから」

ジ「あれ? オディールは?」

雪「とっくに解消しました。あんな『雛苺、雛苺』うるさいパツ金小娘なんてこっちから願い下げです」

ジ(っていうことは、最近の戦いはミーディアムなし? マジっすか……)


翠(「泣くな」? 雪華綺晶が泣いてるんですか? 信じられねえです)

紅(よく見えないわね。もう少し近づいてみましょうか)

苺(ヒナの頭はうにゅーじゃないのよ~)

64: 2008/09/30(火) 02:55:42.40 ID:Yq+9GnBa0
翠紅(あ……!)

翠「どういうことです!? ジュンがパソコンの中に入っちまったですぅ!」

紅「これは……nのフィールド? でも、何故ジュンが……」

苺「ヒナは……」

翠「ええい! さっきからうるせえです! せいやっ!」

苺「ごふっ! なの、よ……」

紅「……ダメだわ。騒いでいるうちに入り口が閉じてしまったわ。こうなってしまっては、ジュンが帰ってくるまで待つしかないわね」

翠「ジュンは帰ってこれるですか? さらわれたのかもしれんですよ……」

紅「たぶん平気よ。さっきまでの二人の雰囲気は……その、敵同士って感じではなかったわ」

苺「っていうか、恋人同士みたいだったの~」

翠紅『!!』

苺「うにゅ~……むにゃむにゃ……すぅすぅ……」

翠紅『……』

66: 2008/09/30(火) 02:56:35.52 ID:Yq+9GnBa0
nのフィールド内。

雪「ようこそジュン様。私のフィールドへ」

ジ「お邪魔します。……って、工房?」

雪「はい。材料ならたっくさんありますわ」

ジ「はいはい。じゃあまず、どんなデザインがいい?」

雪「デザイン……ですか?」

ジ「そ。レースがたくさん付いてる、とか、動きやすい、とか。現物の写真なんかあればいいんだけど」

雪「あ! これがいいです!」

ジ(雑誌? どこから取り出したんだ?)

ジ「どれど……うっ!」

雪「これです!」

70: 2008/09/30(火) 03:00:27.82 ID:Yq+9GnBa0
ジ(これって……ウェディングドレスじゃないか!)

ジ(確かに「白」は雪華綺晶に似合うと思うけど。さすがにこれは……)

ジ「あの、他のがいいんじゃないかと……」

雪「ダメですか……ウルッ」

ジ「オーケー。僕に任せてくれ、子猫ちゃん」

下書き中。
ジ「そういえば。僕がドレスなんか作っちゃっていいのか?」

雪「あの、ご迷惑でしたら……」

ジ「違う違う。そうじゃなくて。今、雪華綺晶が着てる服は『お父様』からもらった大事な服なんだろ? 真紅なんかちょっと触っただけで殴られたよ。なのに僕が新しい服を作るなんていいのかなぁって」

雪「……」

ジ「雪華綺晶?」

雪「これは……拾った服なんです」

75: 2008/09/30(火) 03:04:09.25 ID:Yq+9GnBa0
ジ「は? 拾った服?」

雪「私はアストラル体ですから……実体のない人形の服を、お父様は作れなかったんです。生まれてからしばらくは、その、は、裸で過ごしていたんです……」

ジ(頬を染めて照れる雪華綺晶……激萌っ! つーか、ロ-ゼン! 服くらい気合で作れよ!)

ジ「……その頃に会いたかったな」

雪「はい?」

ジ「おっとつい本音が……いやいや、なんでもないよ」

雪「?」

ジ「ま、まあ、そういうことなら、遠慮なく作れるな。……っと、とりあえず全体像はこんなものか」

雪「まあ! 素晴らしいですわ!」

ジ「細かいところはあとで調整するとして……あの、最初にサイズを測っておきたいんだけど」

77: 2008/09/30(火) 03:07:39.88 ID:Yq+9GnBa0
雪「? 何のサイズですか?」

ジ「だから、雪華綺晶の身長とか、す、スリーサイズ、とか……」

雪「え、あ、あの……」

雪「わ、分かりました……」

ジ「!!」

雪「こ、このままでよろしいです、か?」

ジ「あ、できれば下着姿の方が……」

雪「は、はい……」

パチッ。シュルシュル。パサッ。

ジ「じゃ、じゃあ、さっさと測るから」

雪「はい。……ジュン様」

雪「優しく、してくださいね……?」

ジ「!!?!???!?」

ジ(耐えろ! 耐えろ、僕! 負けるな理性! 雪華綺晶は僕を信頼してくれてるんだぞ!)

80: 2008/09/30(火) 03:10:53.89 ID:Yq+9GnBa0
時は流れて。早朝。

ジ「あー、疲れたぁー。……ふっ。本能があれほど強敵とはな。自分の理性を褒めてやりたいよ」

紅「おかえりなさい。ジュン」

ジ「げっ! 真紅! なんでこんな時間に……」

翠「朝帰りとはいいご身分ですぅ。どこで誰とナニをしてたのか、包み隠さず吐きやがれですぅ!」

ジ「翠星石まで……」

苺「浮気は男の甲斐性なのよ~……むにゃむにゃ……」

ジ「……べ、別に何も……」

翠「嘘つくなですぅ! おめぇが雪華綺晶と一緒に話してるのを翠星石たちはばっちり見てたんですよ!」

紅「あなたがnのフィールドに入っていくところもね」

苺「ヒナは愛人の一人や二人、許してあげるのよ~……すぅすぅ……」

ジ「……」

84: 2008/09/30(火) 03:14:03.30 ID:Yq+9GnBa0
ジ(ダメだ……! こいつら目がマジだ!)

ジ(でも、雪華綺晶に真紅たちには黙っててくれ、ってお願いされたし……)

ジ(けどこの状況は……!)

雪「ジュン様。忘れ物です……あら?」

翠紅『雪華綺晶!』

苺「よくものこのこ現れやがったなの、この女狐! ヒナとジュンの輝かしい未来のために氏んでもらうのよ!」

その他全員『!!??』

88: 2008/09/30(火) 03:17:02.05 ID:Yq+9GnBa0
雪「あの、ジュン様。これは……」

ジ(こうなりゃヤケだ……!)

ジ「逃げるぞ、雪華綺晶! 僕をnのフィールドへ!」

雪「は、はい!」

紅「逃がさないわ! ローズテイ」

ジ「真紅! 『夏季限定くんくん浴衣人形』が一階の物置にあるぞ!」

紅「くんくん!」
バタンッ! ダダダダッ……。

ジ「まずは一人……! 次、雛苺! キッチンの戸棚の中に賞味期限が今日までのうにゅーが山積みだ!」

苺「たたた、大変なの~!」

ジ「ちょろい! 最後!」

翠「ふんっ! 翠星石にそんな姑息な手は通用せんです!」

ジ「それはどうかな……!」

90: 2008/09/30(火) 03:20:03.41 ID:Yq+9GnBa0
翠「何とでも言えです! スィドリー」

ジ「愛してる! 翠星石!」

翠「ふぇぇぇえええええ!?!!??」

翠「そそそそんなことを急に言われても翠星石にも心の準備というものがというか翠星石とチチチビ人間では釣り合いが取れてないでもジ

ュジュジュジュンがどうしてもというなら特別にここ恋人に」

ジ「今のうちだ!」

雪「……はい」

ジ「なにむくれてるんだ?」

雪「……なんでもないですっ!」

ジ「よし! 早く入り口を閉じ」

翠「初デートは遊園地がいいですぅぅぅぅっ!」

ジ「うわっ! 飛び掛ってきた!」

翠「もう離れないですぅ。ジュ~ン(ハート」

ジ「……仕方ない。翠星石は連れてくしかないな」

92: 2008/09/30(火) 03:23:08.11 ID:Yq+9GnBa0
工房内。

翠「ジュ~ン☆」

ジ「おーい。いい加減目を覚ませよー」

翠「やっぱり子供は三人は……はっ! こ、ここはどこですぅ!?」

雪「ようこそ、翠薔薇のお姉さま。私のフィールドへ」

翠「す、すいばら~? って、雪華綺晶! それにここは……」

ジ「だから、雪華綺晶のフィールドだって言ったろ。少し落ち着けよ。全部説明するから」

雪「では、お茶をお淹れいたします」

ジ「(説明中)……というわけだ」

翠「……はあ。にわかには信じられねえです。けど」

翠「(チラッ)あんなにニコニコして紅茶を淹れてる雪華綺晶を見ると……」

雪「~♪」

翠「……拍子抜けですぅ」

94: 2008/09/30(火) 03:26:12.47 ID:Yq+9GnBa0
ジ「それじゃ、僕は一眠りしてからドレス作りを始めるから」

翠「家には戻らんのですか?」

ジ「……今戻ったら赤鬼と桃鬼に八つ裂きにされる気がする」

翠「さっきの全部嘘なんですね……」

ジ「ま、ほとぼりが冷めるまでこっちにいるよ。お前はどうするんだ?」

翠「ジュンと雪華綺晶を二人きりにするわけにはいかねーです! 翠星石も一緒にいてやるです! 感謝しやがれですぅ!」

ジ「んじゃ。おやすみー……ぐーぐー」

翠「早っ! のび太並ですぅ」

翠「まあいいです。今はこっちに用があるです……雪華綺晶!」

雪「は、はい!」

翠「翠星石を差し置いてドレスを作ってもらおうなんざあつかましいですぅ。とか、言いたいことはいろいろあるですが」

翠「まず最初に言っておくです。翠星石はお前とは『友達』にはなれないです」

雪「!!」

95: 2008/09/30(火) 03:28:55.57 ID:Yq+9GnBa0
翠「翠星石たちは『姉妹』です。『友達』にはなれんですよ」

雪「え……? じゃあ……」

翠「ま。このローゼンメイデン一、可憐で優雅な翠星石が寂しがり屋の妹を可愛がってやるです。感謝するですよ?」

雪「は、はい! ありがとうございます、翠薔薇の……」

翠「不正解ですぅ! 姉妹なら呼び捨てにするです!」

雪「す、すいせ……翠姉さま……」

翠「う~ん。仕方ないから今はそれで勘弁してやるですぅ」


二時間後。

翠「で、蒼星石ったら……」

雪「まあ。私が以前お会いした時は……」

ジ「ぐーぐー」


紅「見つけたわ、雪華綺晶!」

99: 2008/09/30(火) 03:32:05.23 ID:Yq+9GnBa0
雪「あ、紅薔薇のお姉さま……」

翠「んげっ! 真紅! どうしてここに!?」

紅「あら? 翠星石も一緒だったの? まあいいわ。それよりも……」

苺「ジュンを返すのよ、雪華綺晶!」

ジ「(熟睡中)んがー」

翠「ま、待つです真紅! 雪華綺晶にも事情が……!」

紅「? どうしたの翠星石。あなたが雪華綺晶を庇うなんて。……ああ、操られているのね。可哀相に。あとで助けてあげるわ。今はそれよりも……」

雪「(びくっ)」

紅「私の愚かな下僕を差し出しなさい、雪華綺晶。そうすればあなたと戦う気はないわ」

雪「……え?」

紅「まったく! 主人に嘘をつくなんて、どういうつもりかしら! なによこの『ぐんぐん人形』って! 完全にパチモンじゃない!」

苺「戸棚から黒い悪魔が飛び出したのよ~。ヒナの頭に乗っかったのよ~(涙目)」

ジ「(熟睡中)やめろ! 流しそうめんは、流しそうめんだけは……!」

101: 2008/09/30(火) 03:35:13.23 ID:Yq+9GnBa0
紅「躾のなっていない下僕にはお仕置きが必要だわ。さ、ジュンをよこしなさい」

雪「……嫌です!」

紅「……へえ」

雪「ジュン様は私のために嘘をついてくれました! そんなジュン様に酷いことをするなら……私がお相手しますわ!」

紅「そう。なら、始めましょう。……アリスゲームを!」

紅「ホーリエ!」  苺「ベリーベル!」

雪「くっ! 荊の鞭よ、捕まえて!」

紅「同じ技を何度もくらうわけないでしょう!」

苺「苺わだちなのよ!」

雪「きゃあっ! う、動けない……」

紅「終わりよ! ローズテイル!」

雪「ジュン様。守れなくてごめんなさ……」

ジ「(熟睡中)ひ、雛苺が巨Oに……! これはこれで……」

104: 2008/09/30(火) 03:38:02.85 ID:Yq+9GnBa0
翠「スィドリーム!」

紅苺『翠星石!?』

雪「す、翠姉さま……?」

翠「やれやれ。ぶちキレた真紅は手に負えんですぅ。防ぐのだけで一苦労です」

紅「どういうつもりかしら、翠星石? ああ、そうだったわね。あなたは……」

翠「操られてなんかねえですよ。これは翠星石の意思です」

雪「翠姉さま……」

翠「ジュンはある意味自業自得だと思うですが……妹を守るのは姉の務めです! ジュンと雪華綺晶は翠星石が守るですよ!」

紅「……そう。どういうつもりか知らないけど、立ちはだかるなら容赦しないわよ」

苺「ヒナも怒ってるのよ~!」

翠「ふふん。たまには、姉としての威厳を見せつけてやるですよ! かかってこいや、です! 妹ども!」

雪「負けません……!」

ジ「ぐーぐー……ん? なんだ? 熱っ!? 指輪が熱いっ!?」

105: 2008/09/30(火) 03:41:01.74 ID:Yq+9GnBa0
ジ「うぎゃああ! 火傷する!!」

紅「あら? 起きたようね。ジュン、覚悟はできてるかしら?」

ジ「あっつ……ん? 真紅!? この指輪、お前たちのせいか!」

紅「静かにしてなさい。あなたの調教もすぐに始めるわ(ニコッ)」

ジ「こ、怖え~~」

翠「長期戦はまずいですね。今の真紅はそう簡単に止まらんですよ」

ジ「勝ち目は?」

翠「ほぼゼロです」

ジ「お前、さっき啖呵切ってなかったか?」

翠「ノリです」

翠「真紅は今まで、雪華綺晶と戦う時も手を抜いていたです。力を使いすぎないように、ジュンを気遣って全力を出していなかったです」

翠「けど、今の真紅は怒りで我を忘れている」

ジ「そんなに嫌だったか、ぐんぐん人形……」

翠「本気でキレた真紅はゴジラすら片手でなぎ払うと言われているですぅ」

108: 2008/09/30(火) 03:44:07.01 ID:Yq+9GnBa0
翠「方法は一つ。次の一撃で勝負を決めること。全力で叩き込むです。それ以上長引けば、確実にこちらの負けです」

ジ「失敗したら……?」

翠「ジュンは見事、真紅の奴隷になるです。三角の木馬に乗って『女王様!』って叫ぶ豚野郎に調教されるです」

ジ「お前、そんな言葉どこで知った……?」

翠「パソコンの『Do・M』っていう中にいっぱい入ってたです」

ジ「うがああああああっ!」

翠「ちなみに。成功した場合は、ジュンは翠星石のペットになるです。翠星石は優しいので、毎晩首輪をつけてお散歩してあげるです」

ジ「……」

ジ「……甲乙付けがたいな」

翠雪『!?』

ドカッスカッバキッ!
翠「じょ、冗談に決まってるです! 本気にするんじゃねえですよ!」

雪「ジュン様……」

ジ「ほ、ほめんなふぁい……」

109: 2008/09/30(火) 03:47:00.64 ID:Yq+9GnBa0
翠「とにかく! 絶望的な状況は変わらんです!」

ジ「……ほんの少しでも、勝率を上げる方法がある」

翠「?」

紅「話は済んだかしら? それじゃ、行くわよ……!」

ジ「迷ってる暇はない! 雪華綺晶!」

雪「はい!」

ジ「お前と契約したい!」

翠雪『!?』

翠「何を……!」

雪「……分かりました!」

ジ「頼む! 一撃で決めてくれ! 翠星石! 雪華綺晶!」

紅「お仕置きなのだわ!」

111: 2008/09/30(火) 03:50:06.86 ID:Yq+9GnBa0
そして。

苺「ぶわぁぁああん! 翠星石がいじめるの~!」

翠「油断しているチビ苺がいけないんです~!」

紅「……はあ。うるさいわね」


ジ「……で? お前は何してるんだ?」

雪「ふふふ。ジュン様登り、ですわ」

ジュンの部屋にある鞄の数は、4つに増えていた。

114: 2008/09/30(火) 03:53:08.56 ID:Yq+9GnBa0
翠「しっかし、さっぱり分からんですぅ。どうして、雪華綺晶は実体を持てたんでしょう?」

雪「えと、私にも……」

紅「あのドレスのせいじゃないかしら」

真紅が指差す先――きょとんと首を傾げる雪華綺晶は、純白のウェディングドレスをまとっていた。

紅「ジュンと契約することで二人の間に『絆』が生まれた。そして、ジュンが自ら作ったドレスを着ることで、『絆』はさらに強くなった」

紅「『絆』による力が溢れ、雪華綺晶は実体を得た。ってところかしらね」

ジ「そんなものか?」

紅「さあ? 本当のところは私にだって分からないわ。あくまで推測よ」

翠「けど、ドレスを脱いだら実体化がとけちまうです。真紅の言っていることもあながち間違いじゃないと思うです」

苺「ヒナはみんな一緒で嬉しいのよ~」

当初は怯えていた雛苺も、だいぶ雪華綺晶に慣れたようだ。今では一緒に手紙を書いている姿もしばしば。

115: 2008/09/30(火) 03:56:01.55 ID:Yq+9GnBa0
翠「ほら、チビ人間! 手を休めるなです! さっさと翠星石のドレスも作るですよ!」

紅「あら? 次は私のドレスでしょう。ジュン。美しく仕上げるのよ」

苺「ヒナもヒナも~!」

ジ「分かった分かった。順番な。ったく」

雪「ふふふ。ジュン様はもてますわね」

ジ「こき使われてるだけだと思うけど……」

ドールズ『……はあ』

ジ「なんで揃って肩を竦めてるんだよ?」

雪華綺晶も、真紅たちにだいぶ溶け込めていた。

116: 2008/09/30(火) 03:59:04.83 ID:Yq+9GnBa0
翠「なんでもねーですよ。いいからジュンは裁縫を続けるです! 翠星石のために!」

苺「ちがーうのー! ヒナのためー!」

紅「あら? ジュン。紅茶を淹れてきて頂戴」

ジ「だー! うるさーい!!」



雪「ふふふ……」

雪「ジュン様?」

ジ「ん?」

雪「私、幸せですわ」

寂しさで泣いていた女の子はもういない。

117: 2008/09/30(火) 04:01:28.25 ID:Yq+9GnBa0
ジ「……そっか。よかったな」

雪「はい。……でも」

雪「このドレスを『本来の意味』で着れたら、もっと幸せになれると思いますわ?」

ジ「本来の? ……って!?」

雪「うふふ。いつかその日が来るのを、楽しみにしてますわ。ね、ジュン様?」

ジ「な、な、な……」

雪「ふふふ。ジュン様……」

雪「だーいすき、ですわ」
チュッ。

翠紅苺『あーーーーーーっ!!!!』


120: 2008/09/30(火) 04:02:33.74 ID:FPOrSfuT0
乙。きらきしょーが可愛かった。

121: 2008/09/30(火) 04:02:36.58 ID:swBYlb1z0
乙w

131: 2008/09/30(火) 04:07:42.78 ID:Yq+9GnBa0
どうも、>>1です。
自分の初SSいかがだったでしょうか? 楽しんでいただけたら幸いです。
誤解のないように言っておきますが、自分はドールたちはみんな好きです。嫌いな子はいません。
けど、出せなかったドールたちについては、ごめんなさいです。

支援してくださった方。投下のアドバイスをくれた方。最後まで付き合ってくださった方(こんなにいるとは思ってなかったw)。
みんなに感謝感謝です。
ありがとう。


それでは、この辺で。
もし新作を書いたら、またその時にでも。
ではでは。

引用: 雪華綺晶「………………シクシク。クスン」