216: 2014/02/01(土) 18:56:50 ID:WwBJ36Sk
皆様ありがとうございます。投下致します。

前回:女剣士「冒険者の喫茶店で働く事になりました」【前編】

217: 2014/02/01(土) 18:57:36 ID:WwBJ36Sk
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――――【 次の日(木曜日) 喫茶店 】

コチ…コチ…

マスター「…」

コチ…コチ…

マスター(9時20分…か。まだ女剣士は来ない…と)

マスター(今日は営業日…)

マスター(ふっ…そりゃ当然か。眠気覚ましの一杯も淹れておくか)
葬送のフリーレン(1) (少年サンデーコミックス)
218: 2014/02/01(土) 18:58:23 ID:WwBJ36Sk
 
ダダダダッ…ガチャッ!!

マスター「お…」

女剣士「すすす、すいません~!遅刻しましたぁ!」

マスター「わかってるよ」

女剣士「寝坊しちゃって…って、わかってる…?」

マスター「まだ客も来てないし、落ち着け」


女剣士「全然疲れてないと思ったんですけど、気づけばこんなに寝てしまってて…」

マスター「目に見えない疲れほど怖いものはない。自分の体をもっと知ることだな」

女剣士「はい…」

219: 2014/02/01(土) 18:58:54 ID:WwBJ36Sk
 
マスター「と、本来なら叱る所だろうがそれは仕方ない。やや遠征に近いものもあったしな」

女剣士「あうう…」

マスター「予想通り、こうなるとは思ってた。だから店も…ほれ」チラッ

女剣士「え?」クルッ


マスター「"CLOSE"だ」


女剣士「マスターさん…!」

マスター「ほら、休んでる暇はないぞ」

女剣士「はいっ!早速掃除からしますね!」

220: 2014/02/01(土) 18:59:58 ID:WwBJ36Sk
 
マスター「頼むぞ…と、その前に。今日から奥にお前の仕事着を用意したからな」

女剣士「えっ、仕事着ですか?」

マスター「エプロンだけでは寂しいだろうと。やっぱり華には美しくあってもらおうと思ってな」

女剣士「華だなんて♪」

 
マスター「奥で着替えてこい」

221: 2014/02/01(土) 19:00:43 ID:WwBJ36Sk
 
女剣士「は、はいっ!」

タッタッタッタッタ…


マスター「…」

マスター「…」

マスター「…」


女剣士「…ってマスターさぁん!」

マスター「何だ!」

女剣士「こ…これはちょっと…」

マスター「せっかく用意したんだから、着てみてくれ!」

女剣士「は…はいぃ…」

222: 2014/02/01(土) 19:01:13 ID:WwBJ36Sk
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

キラキラ…!フワフワ…!

女剣士「メイド服だとは…思いませんでした…」プルプル

マスター「不服か?カフェといったらそういう制服が一般的だと思ったんだが」

女剣士「いえ…可愛くていいとは思うんですが少し恥ずかしいなって…」アハハ…


マスター「そうか?よく似合ってるし可愛くていいと思うぞ」

女剣士「あう…で、でもですね。ちょっと短すぎません…?」パサッ

223: 2014/02/01(土) 19:01:57 ID:WwBJ36Sk
 
マスター「そのくらいが普通だと思うんだがな。嫌なら別にいいんだが」

女剣士「い、いえいえ!」

マスター「じゃあ着てくれるのか?」

女剣士「え…えーと…それは…」モジモジ


…ガチャッ!!

女剣士「!」

マスター「おや」


常連「クローズだったけど、中にいるの見えたから入ってきちゃったけど大丈夫?」

マスター「もうオープン時間の予定だったので大丈夫ですよ」

女剣士(うわあ、うわあ~っ!お客さん来ちゃったよ~!!)カァァ

224: 2014/02/01(土) 19:02:37 ID:WwBJ36Sk
 
常連「お、メイド服かい」

女剣士「あ…あはは…」テレッ

常連「若くて可愛いじゃないか。マスター、いつものコーヒーね」

マスター「かしこまりました」


常連「そうそう、今日はこれを持ってきたんだ」

ゴソゴソ…キランッ

マスター「メロディディスクですね。いつもの曲ですか?」

常連「うん、それで頼むよ」

マスター「女剣士、メロディディスクのかけ方は分かるか?」

225: 2014/02/01(土) 19:03:49 ID:WwBJ36Sk
 
女剣士「め…メロディディスクって何でしょう」

マスター「その黒いディスクを、あそこのボックスの隙間に入れて、右側の丸いつまみを回すんだ」

女剣士「あ、はい…わかりました。それじゃあお預かりしますね」

常連「頼んだよ」


トコトコ…ゴソゴソ…スゥゥ…

女剣士(えと…これで入ったかな…?)


マスター「そう…そしたらつまみを回して。音量があがるから」

女剣士「は、はいっ」クルッ

226: 2014/02/01(土) 19:04:19 ID:WwBJ36Sk
 
ジャジャジャ…

女剣士(あ、音楽が鳴り始めた♪)

…ジャアアアアアン!!!!!!ビリビリビリ!!!!

女剣士「!?」

マスター「!?」

常連「!?」


ジャジャジャ…ジャアアアアアアアン!!!!

マスター「そりゃ左…のつま…だ!み…だ、…側!」ジャンジャン!!

女剣士「えっ!き…聞こえません!」

マスター「だか…が…だ!」ジャアーン!!!!

ジャジャジャジャジャ…!!

227: 2014/02/01(土) 19:04:56 ID:WwBJ36Sk
 
トコトコ…ポンッ

女剣士「!」

常連「メイドさん、落ち着いて。こうするんだよ」

トコトコ…クルンッ

ジャジャジャ~…♪タララ~…♪


常連「ははは、びっくりしたよ。確かにたまにこういうこともあるよ」アハハ

女剣士「ほ…本当にごめんなさいです…」


マスター「それの使い方もきちんと教えてなかったからな、俺のせいでもあります。申し訳ありません」

常連「いいよいいよ。仕方ないことだし、叱らないであげてな」ハハッ

マスター「そうですか、お気遣いありがとうございます」

228: 2014/02/01(土) 19:05:29 ID:WwBJ36Sk
 
女剣士(失敗しちゃった…はぁ…)

マスター「…」

女剣士(もっとしっかりしないとなぁ…はぁ…)


マスター「女剣士」

女剣士「は、はい」

マスター「お客様の前だ。ため息とか、暗い顔をするんじゃないぞ」

女剣士「あっ…」

マスター「失敗するのは当然のことだ。それを責めたりはしないが、暗い顔はダメだ」

女剣士「はい…」

229: 2014/02/01(土) 19:06:05 ID:WwBJ36Sk
 
常連「おお、怖いねえマスター」

マスター「はは…」

女剣士「…本当に申し訳ありませんでした」ペコッ

マスター「いいさ。一歩ずつ覚えていけばいい」

常連「そうそう!失敗は成功の母だよ」

女剣士「は…はいっ」


常連「あ~…そういや、マスター」

マスター「はい?」

常連「マスターってまだ冒険家業続けてるんだったよね?」

マスター「趣味のようなものですけどね」

230: 2014/02/01(土) 19:06:38 ID:WwBJ36Sk
 
常連「じゃあ、あの話は聞いたかな?」

マスター「あの話…?」

常連「最近、ギルド同士の争いごとが絶えなくなってるらしいよ」

マスター「…聞いたことないですね、詳しく聞かせて頂けますか?」


常連「中央の東ギルドと、西ギルドで共同クエスト請け負ってたのは知ってるかい?」

マスター「少しだけなら聞きました」

常連「それで、その共同クエスト中に東ギルドの失敗で西ギルドで氏者を出してしまったらしいんだ」

マスター「…ふむ」

231: 2014/02/01(土) 19:07:10 ID:WwBJ36Sk
 
常連「そこから本格的な争いだってさ。かなり荒れてるみたいだよ」

マスター「それはちょっと…冒険者の端くれとしては聞き捨てなりませんね」

常連「ここも冒険者の喫茶店の名目なんだから、少しは気をつけた方がいいかもしれないよ」

マスター「ご忠告感謝致します。肝に銘じますね」


女剣士「マスターさん」ボソボソ

マスター「ん?」

女剣士「ここに飲みにくるギルドメンバーってどっち側の面子が多いんですか?」

マスター「この間の冒険戦士も含めて、まぁほとんど東ギルドだな」

女剣士「この店も東側ですものね」

マスター「心配することはないさ。いくらギルドメンバー同士のケンカだからって、一般市民を巻き込むような…」

232: 2014/02/01(土) 19:07:49 ID:WwBJ36Sk
 
…ガチャンッ!!!

西ギルド員A「…東ギルドの馴染みの店ってのはココか?少し…暴れさせてもらうぜ」

西ギルド員B「これも東が悪いんだ。文句なら東のやつに言いな!」


女剣士「…そうもいかないみたいですね」

マスター「…」ハァ

233: 2014/02/01(土) 19:08:19 ID:WwBJ36Sk
 
西ギルド員A「…東のやつが使ってるって割りには結構いい喫茶店じゃねえか!」

常連「…あんたら西ギルドの?」

西ギルド員A「そうさ。締め上げた東の面子から、よく集まるのはここだって聞いたからな!」

西ギルド員B「ケガしたくなかったら外に出てることだな!」


マスター「やれやれ、噂をすれば何とやらってやつか。恨みますよ常連さん」

常連「相変わらず酷い言われようだな」ハハハ

マスター「いつものことですよ」フッ


女剣士「ふふ…ふ、二人とも落ち着いてますけど…これってかなり危ない状況なんじゃ!」

234: 2014/02/01(土) 19:09:18 ID:WwBJ36Sk
 
西ギルド員A「…お?何だ可愛い娘いるじゃん!」

西ギルド員B「メイドだっけか?うっわ何この衣装!西ギルドに興味はない?」ハハハ

西ギルド員A「ほらほら…そのスカートめくっちゃうぜ~」グイッ

女剣士「きゃー!きゃー!!」

西ギルド員A「うはは!」


マスター「はぁ…」

常連「助けてあげなくていいのかい」

マスター「心配いらないですよ。ほら…」

235: 2014/02/01(土) 19:10:17 ID:WwBJ36Sk
 
女剣士「そういうことは…やめてくださぁぁいっ!」ブンッ!!!

バキィッ!!!ズドォン…!!!パラパラ…

西ギルド員A「」


西ギルド員B「…へ?」

女剣士「ふーっ…ふーっ…。もー!」


マスター「いい速さだな。ただ店をキズつけるのはやめてくれよ?」

女剣士「で、ですけどこの人たちがスカートを引っ張るからですよぉ!」

マスター「まぁお前もパンツの1枚や2枚くらいサービスで見せてやったらいいんじゃないか?」

女剣士「な、何てこと言うんですかぁ!」

236: 2014/02/01(土) 19:11:23 ID:WwBJ36Sk
 
西ギルド員B「てめ、よくも俺の仲間を!」グイッ

女剣士「も…もぉ!変なところばっかり触らないでくださいってば!」ビュッ

ゴツゴツゴツッ!!!…ドサッ

西ギルド員B「」


常連「おぉ!瞬殺…、さすがマスターのところのメイドさんだ…」


女剣士「あ…掌底波の連弾出しちゃった…。ご、ごめんなさい!大丈夫ですか!」

西ギルド員A「」ポケー

西ギルド員B「」ピクピク

マスター「そうなると思ったからサービスで見せてもいいなじゃないかって思ったんだよ、なんてな」

女剣士「あうう…」


マスター「はぁ~…そのままにも出来んし警備隊呼んで拘束してもらうか」

マスター「何やら厄介なことになってるようだしな」

237: 2014/02/01(土) 19:11:57 ID:WwBJ36Sk
 
常連「…となると、今日は店じまいかな?」

マスター「…すいません」

常連「いいよいいよ」ガタッ

トコトコ…


常連「あ、そうそう。女剣士ちゃん」

女剣士「は、はい」

常連「そのメロディディスクは預けておくよ。次に来るまでにきちんと覚えててくれよ?」ニコッ

女剣士「あう…はいっ!あ、ありがとうございました」ペコッ


ガチャッ…バタン…

238: 2014/02/01(土) 19:12:28 ID:WwBJ36Sk
 
マスター「さて…警備隊呼んだら今日は店はちょっと休みだ。東ギルドに行く」

女剣士「えーと私はどうすれば…?」

マスター「ちょっと一緒に来い。東が顔なじみとか関係はない。詫びは入れてもらう」

女剣士「は…はい」


トコトコ…ピタッ

マスター「…あっ」

女剣士「…どうしました?」

239: 2014/02/01(土) 19:13:04 ID:WwBJ36Sk
 
マスター「ちょっと先に外に出てろ。すぐ行く」

女剣士「…は、はい」

ガチャッ…バタンッ… 
 
 
女剣士(…どうしたんだろ?)

240: 2014/02/01(土) 19:13:36 ID:WwBJ36Sk
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 20分後 】


マスター「お待たせ。少しだけ時間かけすぎてしまったな」

女剣士「結構長かったですね…何してたんですか?」

マスター「ちょっと、な。そうならなければいいんだが…」ハァ

女剣士「…?」

241: 2014/02/01(土) 19:14:20 ID:WwBJ36Sk
 
マスター「まぁなったら、なった時に言うさ」

女剣士「わ、わかりました」

女剣士(どうしたんだろ?)
 

マスター「さて、東ギルドの本部に行くか」

女剣士「はいっ!」


トコ…トコ…

………
……

247: 2014/02/02(日) 19:02:15 ID:psuTyvVo
  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市・東ギルド本部 】


ヒュウウッ…!!

女剣士「わぁぁ!大きいですねえ!」

マスター「変わらんな…」ボソッ

女剣士「…今、なんて…」

マスター「何でもない。でかくて当然だ…東ギルドは中央都市で一番でかいからな」


女剣士「何人くらい所属してるんですか?」

マスター「確か200人…ないし300人近かったはずだ」

女剣士「すごい!」

248: 2014/02/02(日) 19:02:52 ID:psuTyvVo
 
マスター「所属してる人からは報酬金の一部をギルドに入れる。そりゃここまででかくなるわな」

女剣士「本当にすごいですねえ」

マスター「人数分の泊まる部屋もあるし、一般開放する食事処もある。至れり尽くせりだ」

女剣士「冒険戦士さんはこんな所に所属してるんだぁ…」


マスター「とにかく中に入るぞ。今回のことをギルドマスターに話をつける」

女剣士「あ、はいっ」

249: 2014/02/02(日) 19:03:22 ID:psuTyvVo
 
ガチャッ…ギィィィ…

女剣士「…!」


ザワザワ…ガヤガヤ…

冒険者「…でさあ、今回の討伐が…」

冒険者「はぁぁ!?俺なんてさあ…」

受付「待機番号46番の方~!準備ができましたので応接室までお願いしますー!」

ギルドリーダー「今回の北方討伐任務に参加証を受け取った奴は午後から会議室Bだぞ!」

冒険者「ギルドリーダー、アイツは少し遅れるそうですよ~」

ザワザワ…!!


女剣士「わぁぁぁ…」キラキラ

250: 2014/02/02(日) 19:03:56 ID:psuTyvVo
 
マスター「相変わらず賑やかなところだ」

女剣士「凄いですね、凄いですねえ!これが中央都市の最大のギルド…!」

マスター「まぁな。とりあえずえーと…受付だ。こっちだったな」クルッ

スタスタスタ…

女剣士(凄い凄い、冒険者さんたちがこんなにいっぱい…!)

251: 2014/02/02(日) 19:04:29 ID:psuTyvVo
 
スタスタスタ…ピタッ

マスター「さて…受付さん」

受付「はい?あ、何かご用事があるなら一旦そこの予約名簿に名前を書いてお待ちください」

マスター「…何?」

受付「ただいま3時間待ちになってます。用事別で名簿にあるので、そちらを参照に番号を…」

マスター「面倒なのはいい。とりあえずギルドマスターに合わせろ」

受付「…はい?」


マスター「いいから、ギルドマスターに合わせろ。別に下っ端に用事があるわけじゃない」

受付「ギルドマスター様は多忙ですので、3ヶ月前からの予約が必要になります」

マスター「…いいから早くしろ。喫茶のマスターが来たって言えばわかる」

受付「承れません。予約をきちんとしてから…」

252: 2014/02/02(日) 19:05:15 ID:psuTyvVo
 
マスター「早くしろって言ってるんだが」

受付「…分からないなら、ガードマンを呼びますよ?よくそういう方がいますので」

マスター「呼ばないなら、力づくでも行くが?」


…トントン

マスター「ん?」

ギルドリーダー「どうかしましたか?」ニコッ


女剣士(あ、この人さっきギルドリーダーって呼ばれてる人だった…かな?)

女剣士(凄い筋肉…きっと強いんだろうなぁ)

253: 2014/02/02(日) 19:05:53 ID:psuTyvVo
 
マスター「お前は…ギルドリーダーだったか?リーダー程度には用事がないんだが」

ギルドリーダー「とはいえ、ギルドを預かる身の1人ですので。用事があるなるなら承りますよ?」

マスター「下の人間には用事がないんだ」

ギルドリーダー「下ともいえないんですがね。これでもトップ5に入りますので」


マスター「それじゃ意味がないんだな」

ギルドリーダー「ギルドマスターは多忙です」ニコニコ

マスター「下には用事がないって言ってるだろう」

ギルドリーダー「ギルドマスターは多忙ですよ」ニコニコ

マスター「もう1度言う、喫茶店のマスターと言えば分かる」

ギルドリーダー「無理です」ニコニコ

254: 2014/02/02(日) 19:06:33 ID:psuTyvVo
 
女剣士「…あわわ」オロオロ


マスター「…」

ギルドリーダー「…」ニコニコ

マスター「…」

ギルドリーダー「…こちらも暇ではないので、本当に力づくで出てって頂きますよ?」

マスター「お前みたいな下っ端に出来ると思うか?」

ギルドリーダー「下っ端下っ端と余り言わないで頂きたい。これでも気の短いほうなので」ニコ…


受付「いけない、お嬢さん!」ボソボソ

女剣士「は、はい?」ボソッ

受付「ギルドリーダーさんは怒ると暴れて手が付けられないんです!」

女剣士「えっ!」

255: 2014/02/02(日) 19:07:05 ID:psuTyvVo
 
マスター「その浮き出た血管。気が短いやつは、いつまで立っても上には上れないぞ?」

ギルドリーダー「だからこれでもトップに組み込む程の実力はありますよ?」ブルッ…

マスター「くくく…そう自分で言う所が…下っ端なんだろうが」

…ブチッ!!


ギルドリーダー「うるせぇな!!!下っ端下っ端と…呼ぶんじゃねええ!!」クワッ


受付「あ…」

女剣士「!」

ザワッ!!ザワザワ…

256: 2014/02/02(日) 19:07:37 ID:psuTyvVo
 
ギルドリーダー「お前ら離れてろ!少しコイツに分からせる必要があるらしいからな…」ググッ

マスター「…」


女剣士「マスターさん!」

マスター「大丈夫だ、そこで見てろ」

女剣士「は、はいっ!」


ギルドリーダー「随分余裕だなぁ…?うぉぉぉっ!攻撃増大魔法っ!」パァッ!!

ビキ…ビキビキッ…

受付「り、リーダーさんやめてください!また本部が壊れてしまいます!」

ギルドリーダー「うるせえええ!」

257: 2014/02/02(日) 19:08:08 ID:psuTyvVo
 
マスター「お前を倒したらギルドマスターに公認で会わせてくれるのか?」

ギルドリーダー「出来たら…なっ!」ブンッ!!!

…ズドォォン!!!ミシミシミシッ


ギルドリーダー「はっは!一撃で沈んで…んおっ!?」

クルクル…スタッ

マスター「そんなのに当たるかよ。しかし驚いた…本当に見た目通りの"パワー馬鹿"だったとはな」

ギルドリーダー「何だと!!」クワッ

フオ゙ンッ!!…ズドォン!!ドォォォン!!!

パラパラパラ…

258: 2014/02/02(日) 19:08:42 ID:psuTyvVo
 
ヒュッ…ヒュンヒュンッ!!

マスター「どうした、全然当たらないぞ?」

ギルドリーダー「おのれちょこまかと…!」


マスター「あぁ、そうだ…女剣士」

女剣士「は…はい」

マスター「こういう力馬鹿の相手は一撃でこっちも大ダメージになる。すぐに突っ込むのは間違いだ」

女剣士(こ、こんな時に指南ですか!?)

マスター「速度のある立ち回りを生かして、相手を見る。そうすると自然と隙は見えてくるからな」

女剣士「は、はい!」

259: 2014/02/02(日) 19:09:29 ID:psuTyvVo
 
ギルドリーダー「ぶつぶつと…さっさと吹き飛べやコラァ!!」

ブンッ…バキャアアンッ!!!


受付「きゃああっ!」

冒険者「ギルドリーダーさん、暴れすぎたらまた本部がめちゃくちゃになっちまう!」

ギルドリーダー「こいつを吹き飛ばすまではやめねぇよ!!」


マスター「まぁこいつほどイージーな相手はいないけどな」

ギルドリーダー「…戯言を!!」

マスター「戯言じゃないって事を見せてやるよ…ふんっ!」ダッ!!

ギルドリーダー「!?」

260: 2014/02/02(日) 19:10:00 ID:psuTyvVo
 
女剣士「えっ!?」

ビュッ…バキィッ!!!!

ギルドリーダー「ぬがっ…!」


女剣士(一瞬で…リーダーさんの場所まで…。早すぎて見えなかった…!それに…)


マスター「自慢の筋力は防御面じゃ微妙だったんじゃないか?」

ギルドリーダー「てめぇ…一体何者…」

グラッ…ドサアッ…


女剣士(空気を振るわせるほどに分かった…あの一撃の威力…!)


マスター「とまぁ、こんな感じに隙さえあれば幾らでも一撃で狙えるわけだ」

女剣士「…っ!」

マスター「今後、連戦になるような依頼だったら改めて隙の突き方は教えるけどな」

女剣士「は…はい!」

261: 2014/02/02(日) 19:10:33 ID:psuTyvVo
 
ザワ…ガヤガヤ…

冒険者「何だあれ…リーダーがやられるなんて…」

冒険者「っていうか一撃!?やばくねえか」

冒険者「…っていうかギルドマスターに用事あるとか…知り合いなのか…?」


女剣士「なんか雰囲気が…」

マスター「あ~…少し暴れすぎたか…」ポリポリ

女剣士「どうしましょう…」


…カツーン…

262: 2014/02/02(日) 19:11:06 ID:psuTyvVo
 
マスター「…ん?」

カツン…カツン…カツン…


ギルド長「随分と騒いでると思ったら…、懐かしい顔ですね」


マスター「…久しぶりだな、ギルド長」

女剣士「ぎぎ、ギルドマスターさんですか!?って、久しぶりって今…」


ザワ…!!

冒険者「ギルドマスターさんが出てきた!?」

冒険者「本当に知り合いみたいだぞ…、一体何者なんだ…」

263: 2014/02/02(日) 19:11:47 ID:psuTyvVo
 
ギルド長「ふむ…ここでは少し人目につきますね。こちらへどうぞ」

マスター「ありがとよ。少し暴れちまったが大丈夫だろ?」

ギルド長「問題ありませんよ。昔からじゃないですか」

マスター「ふん…」


女剣士(ギルド長さんとマスターさんは…知り合いなの…かな?)

264: 2014/02/02(日) 19:12:37 ID:psuTyvVo
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【特別ギルドルーム】


ギルド長「どうぞお掛けになってください」

マスター「言われなくても」スッ

女剣士「失礼します」スッ


ギルド長「で、僕に何か用事があるようでしたが」

265: 2014/02/02(日) 19:13:08 ID:psuTyvVo
 
マスター「面倒だから単刀直入に聞くぞ。お前ら、一体何をした?」

ギルド長「…どうか致しましたか」

マスター「俺の店に、西のギルド員が乗り込んで暴れたんだ」

ギルド長「…」


マスター「挙句の果てに、うちの店員が恥辱な目に合わされた」

女剣士「!」

マスター「スカートをめくられ、男どもの手によってそれはもう欲望の…」

女剣士「ちょっとちょっとちょっと!!そんな事まではされてませんから!」

マスター「む、そうか。まぁそういうこともあった訳だ…まずは謝ってくれ。こいつにな」

266: 2014/02/02(日) 19:13:39 ID:psuTyvVo
 
ギルド長「…ご迷惑をおかけしました。申し訳ないです」

女剣士「…」


マスター「今まで西とのいざこざはあったが、店に乗り込んでくるとは異常だぞ」

ギルド長「…」

マスター「一体…何をしたんだ。噂ではお前の所の失敗で、西のギルドメンバーを氏なせたと聞いたが」

ギルド長「…」

マスター「…」


女剣士(空気が重い…私がいるような場所じゃないと思うんだけど…)

267: 2014/02/02(日) 19:15:12 ID:psuTyvVo
 
ギルド長「隠しても無駄でしょうし、お話します」

マスター「当然だ」


ギルド長「事件の発端は…少し前、冒険戦士くんの独り立ちの試験を考えてからです」

マスター「ふむ」

ギルド長「その際、試験を考案した時に西ギルドにも試験を行う人がいると声をかけられました」

マスター「…それで」

ギルド長「こちらも実力試験を行いたい面子が数人いたので、共同クエストという事である討伐を決めました」

マスター「何だ?」


ギルド長「"オルトロス"の討伐。属に言う上位討伐ですが、東西で8人ずつの16人での出発を決めました」


マスター「…」

ギルド長「そして冒険戦士くんには、これが成功した暁に独り立ちちさせる…と」


女剣士(どどど、どうしよう!何を言ってるのかさっぱり分からない)グルグル

268: 2014/02/02(日) 19:16:28 ID:psuTyvVo
 
ギルド長「こちら側でも実力充分の面子でしたし、向こう側も同様でした」

マスター「…それから」

ギルド長「討伐は順調に進んだそうです。ですが…」

269: 2014/02/02(日) 19:17:56 ID:psuTyvVo
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

オルトロス『…ガアアァッッ!!』ボワッ!!


西ギルド員「…血を流しすぎ…て…動けない…ごほっ…」


冒険戦士「危ないっ!」バッ

…キィンッ!!!ズドォォンッ!!!


西ギルド員「あ…ありがとう」

冒険戦士「当たり前ですよ。それより次!」ハッ


オルトロス『…カァッ!!』ボワッ!!

270: 2014/02/02(日) 19:18:31 ID:psuTyvVo
 
ズドォン!!…パラパラ…

冒険戦士「くっ!」

西ギルド員「もうオルトロスは討伐寸前、先に攻撃を仕掛けてください…!」

冒険戦士「ですがそれでは貴方が野ざらしになってしまう!」

西ギルド員「大丈夫です、私は聖職ですよ?自分の身は自分で守れます」

冒険戦士「…わ、わかりました…」


ダッ…ダダダダダダッ!!

冒険戦士「うああああっ!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

271: 2014/02/02(日) 19:19:04 ID:psuTyvVo
 
ギルド長「それで無事に倒すことはできました…」

マスター「…」

ギルド長「しかし西のギルド員は実際魔力が尽きており、置き去りとなった事でオルトロスの配下の魔物に…」

マスター「…何だそりゃ」

ギルド長「…」

マスター「とんだ言いがかりもいいもんだ。そんなの戦況下だったら当然の判断だろ」

ギルド長「一般ギルド員だったら…ですよね」

マスター「何?」


ギルド長「亡くなったのは、西ギルドでとても慕われている幹部だったんですよ」

マスター「…は」

272: 2014/02/02(日) 19:19:51 ID:psuTyvVo
 
ギルド長「そんな所に送る時点でどうかとは思いましたが…結果は結果です」

マスター「そんなの自業自得じゃないか…それで東と西のいざこざか?」

ギルド長「そうなってしまいました」

マスター「はぁ~…何やってるんだか…」


ギルド長「…」

マスター「ん?てことは…冒険戦士がこの間、依頼を受けに行ったっていうのは…」

ギルド長「という名目の逃がしですよ。冒険戦士は今、非常に危険な状態ですから」


マスター「俺が話しで聞いたのは、冒険戦士がミスで独り立ちの試験を失敗しかけたってだけだったが」

ギルド長「という噂を流したんです。冒険戦士くんの気を多少楽にするのと、東ギルドの格を落とさない為に」

マスター「俺が信じてた分、その効力はあるな」

273: 2014/02/02(日) 19:20:41 ID:psuTyvVo
 
ギルド長「…それは何よりです」 
 
マスター「しかしまぁ…何てこったい。これからどうするつもりなんだ」

ギルド長「西との話し合いの場を設けます」

マスター「取合ってくれるか?仮にも攻撃を仕掛けてくる相手だぞ」

ギルド長「僕の東ギルドの尊厳にかけても」

マスター「…信じるよ」


ギルド長「はい、お願いします。それと…この度は迷惑をかけて本当に申し訳ありませんでした」

マスター「早い解決を望むぞ」

ギルド長「…もちろんです」

274: 2014/02/02(日) 19:21:24 ID:psuTyvVo
 
マスター「とりあえず分かった。あとは勝手にやってくれ」スクッ

女剣士「帰るんですか?」

マスター「もう全貌が分かった以上、話はない。ギルド長、冒険戦士のやつはしっかり守ってやれよ」

ギルド長「当たり前です」


マスター「ん、よし。んじゃ帰るぞ」


ギルド長「…あ、そうだ」

マスター「まだ何かあるのか」

ギルド長「万が一ですが…、僕に何かあったら…」

マスター「それ以上言うな」ギロッ

275: 2014/02/02(日) 19:21:58 ID:psuTyvVo
 
ギルド長「…」

マスター「お前はここのギルドマスターだ。弱みを見せるな。そう…ずっと言い聞かせてきたはずだが」

ギルド長「…はいっ」


マスター「じゃあな。行くぞ女剣士」クルッ

女剣士「あ、はい」


ギルド長「有難うございました…先輩…」ペコッ


ガチャッ…バタンッ…

276: 2014/02/02(日) 19:22:36 ID:psuTyvVo
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トコ…トコ…

マスター「本当に東と西のいざこざか。参った事になってるな…」ポリポリ

女剣士「ま、マスターさん」

マスター「ん?」


女剣士「マスターさんって一体…。東のギルド長さんが先輩って…」

マスター「あ~…」

277: 2014/02/02(日) 19:23:07 ID:psuTyvVo
 
女剣士「もしかして本当に凄い戦士さんだったんじゃ…?」

マスター「あいつは俺が現役で東ギルドの所属だった時代に、後輩だった奴なんだがー…」

女剣士「!」

マスター「今じゃすっかり俺は衰え、あいつは現役のまま。まぁ先輩風を吹かせてるだけだ」

女剣士「…」


マスター「それより、んー…どうするか…」

女剣士「?」

マスター「いや、さすがに店が危険になるっていうのはどうかと思ってな」

女剣士「マスターさんがいれば大丈夫じゃないですか?」

278: 2014/02/02(日) 19:23:40 ID:psuTyvVo
 
マスター「いや…」チラッ

女剣士「…?」

マスター「だから…」チョイチョイ

女剣士「わ…、私ですか!」


マスター「ギルドメンバー吹き飛ばしちゃったし、西のやつに店は完全に目付けられただろ」

マスター「だから喫茶店の方の営業をどうするか迷ってるんだ」


女剣士「きっと大丈夫ですよ」

マスター「そりゃそうだといいんだが、万事には備えたいんだ」

女剣士「むぅ…」

マスター「強いとはいえ、お前は女子だから万が一って事もある。それが心配なんだ」

女剣士「う…」

279: 2014/02/02(日) 19:24:18 ID:psuTyvVo
 
マスター「…だが店を休みにして、コーヒーを淹れない日々ってのも俺としては暇になるし…」ンー

女剣士「店を離れて、冒険しちゃう…とか」ヘヘ

マスター「そりゃお前の願望だろっ!」

女剣士「うぅ、すいません」


マスター「はぁ~ったく…本当にどうするか…」

女剣士「どうしましょうか…って、あれ?」

280: 2014/02/02(日) 19:24:52 ID:psuTyvVo
 
ガヤガヤ…


マスター「なんか妙にざわついてるな」

女剣士「何かあったんでしょうか。お店の方角ですよね?」

マスター「…」

女剣士「マスターさん?」


マスター「どうやら、"そう"なってしまったかもしれん。急ぐぞ!」ダッ

女剣士「"そう"なってしまった?」ダッ

マスター「本部に行く前に言っただろ!そうなってほしくはないって!」

女剣士「あ…」

マスター「急げ!」

女剣士「はいっ!」

281: 2014/02/02(日) 19:25:23 ID:psuTyvVo
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

タッタッタッタ…ズザザ…


マスター「…!」

女剣士「あ…あぁぁ…!」


マスター「…やっぱりか」

女剣士「そ、そんな…何で…」

282: 2014/02/02(日) 19:25:59 ID:psuTyvVo
 
ゴォォォ…パチパチ…ボォン!!!

ジャアアッ…

消火員「水魔隊!足りないぞ!早くしないと燃え移る!!」

消火員「自分らでは限界です!」ググッ


マスター「…っ」

女剣士「お店が…燃えて…」

マスター「っち…」

女剣士「どうして…」

283: 2014/02/02(日) 19:26:32 ID:psuTyvVo
 
消火員「くっそ、火魔法にどんな魔力使いやがった…火が消えん!」

消火員「ダメです!隣に燃え移ります!」

ボォォォ…!!ボォン!!!バチバチ…


女剣士「え…ど…どうして…」

マスター「…」

女剣士「あう…」グスッ

マスター「泣くな…こうなることは少し予想してた。ちょっとココにいると危険だ…こっちに来い」グイッ

女剣士「え…ど、どこに…」

284: 2014/02/02(日) 19:27:05 ID:psuTyvVo
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


タッタッタッタ…
 
マスター「もう少し先だ」

女剣士「一体…どこに行くんですか…?」


マスター「あそこの小屋だ」


タッタッタッタ…ガチャッ、ギィィィ…

…モワッ

女剣士「ごほっ、ごほごほ!埃が…」

マスター「…見ろ。さっき、出かける前にコレを準備してたんだよ」

女剣士「!」

285: 2014/02/02(日) 19:27:52 ID:psuTyvVo
 
…キラキラ…

マスター「…燃やされるのまでは予想外だったがな。商売道具は生きてる」

女剣士「お店にあった珈琲豆とか珈琲メイカーですよね…これ!」

マスター「さすがにメロディボックスは持ってこれなかったが、常連さんのディスクは無事だ」スッ

女剣士「…」


マスター「しっかし…こうなると俺もしばらく身を隠したほうが良さそうだな」ハァ

女剣士「…」

マスター「まぁ…それと、その、女剣士」

女剣士「…何ですか?」

286: 2014/02/02(日) 19:28:32 ID:psuTyvVo
 
マスター「すまないが、もう借金の件はいい。これ以上、見ず知らずの人間を巻き込む訳にはいかん」

女剣士「で、でも…」

マスター「これ以上一緒にいれば危険には違いないからな」

女剣士「…」

マスター「もし東西のいざこざが落ち着いて、店が再開したら飲みに来てくれればいいさ」


女剣士「…」

マスター「俺はとりあえず久々の休暇っていう考えもある」

女剣士「…」

マスター「とりあえず、店は休業。お前も借金を気にせず、自分の道を改めて目指してだな…」


女剣士「…嫌です」ボソッ

マスター「…あ?」

女剣士「嫌ですよ。せっかく、マスターさんとの冒険や学べる事が、楽しみになってきたところなんですからっ!」

マスター「いやそう言っても…」

287: 2014/02/02(日) 19:29:11 ID:psuTyvVo
 
女剣士「私は足手まといになりません。もっと色々教えてくださいよ…!」

マスター「つってもなぁ…だが俺はもうここから離れるつもりだし」ポリポリ

女剣士「離れるって…どこに行くんですか?」

マスター「とりあえず、離れる。いざこざに巻き込まれるのはゴメンだからな」

女剣士「うぅ…」

マスター「だからお前は一旦地元に戻るか、別の発展してる町に移るとかー…」


女剣士「…あっ!」パンッ

マスター「ん?」

女剣士「じゃあ…こういうのはどうでしょうか」

マスター「何だ?」

288: 2014/02/02(日) 19:30:16 ID:psuTyvVo
 
女剣士「その道具を背負って、旅をして、その場その場で珈琲店を開くとか…!」

マスター「…」

女剣士「その名も青空珈琲店!…冒険もしたりして、一石二鳥っていうか…」アハハ…

マスター「…何だそれ」

女剣士「だ、だめですかね?現地の豆なんかも直接農家さんから仕入れたりとか…」

マスター「何だよそれ」ブルッ

女剣士「や…やっぱりダメですよね~…」


マスター「お…面白そうじゃないかよ!」

女剣士「!」ピョコン


マスター「悪くない考えだ…確かに俺は珈琲豆を原産だとか、世界中の人に…」ブツブツ

女剣士「じゃ、じゃあそうしましょうよ!!」

289: 2014/02/02(日) 19:30:50 ID:psuTyvVo
 
マスター「ん~…その前に、お前さ…」

女剣士「はい?」

マスター「何でそんなに少しだけ知り合った俺に固執するんだ?もっと自由に生きていいと思うんだが」


女剣士「…」

女剣士「…何ででしょうね」


マスター「…」


女剣士「自分がいい子でありたいのかも…しれないです」

マスター「ふむ」

女剣士「私のせいで馬車商人さんや、マスターさんが被害を受けたのは事実ですし…」

マスター「確かに、別に良いっていうのに引き下がらなかったな」

290: 2014/02/02(日) 19:31:23 ID:psuTyvVo
 
女剣士「そこから逃げたら、心残りになってしまいますから。最後まで努めたいんです」

マスター「…」

女剣士「っていう思いの中で、きっと心の奥底では自分が良い子でありたいって事なのかもしれません…」

マスター「…」

女剣士「で、ですが!逃げたくないって気持ちとか、マスターさんに冒険の心得を教えてほしいのは本当です!」

マスター「…どっちだよ」

女剣士「あ…」


マスター「…」

女剣士「その…」

マスター「…」

女剣士「あの…」ショボン

291: 2014/02/02(日) 19:32:25 ID:psuTyvVo
 
マスター「…」

マスター「…く」

女剣士「…?」

マスター「く…ははは…はははっ!」

女剣士(マスターさんが…笑った?)

292: 2014/02/02(日) 19:33:01 ID:psuTyvVo
 
マスター「はぁ…お前のその性格、どうにかならんのか」ハハハ

女剣士「うぅ…」

マスター「逃げたくない気持ち、俺から教わりたい気持ち。充分に伝わったよ」

女剣士「…じゃ、じゃあ!」


マスター「いつまでココに戻れるか分からんし、収入も町毎のギルド発行のクエスト頼りで安定しないかもしれんぞ?」

女剣士「…大丈夫です。頑張りますから!」

マスター「…何を言っても、無駄か。ほら…そっち側の珈琲メイカーを持ってきてくれ」ククク

女剣士「じゃ、じゃあ…!」

マスター「いいぜ。ただし、お前が決めた事だ…何も文句を言うんじゃないぞ?」

女剣士「当たり前です!」ピョンッ

293: 2014/02/02(日) 19:33:52 ID:psuTyvVo
  
マスター「じゃあ…うん。当面は、東部側を目指す。慣れてる街道村から少しずつ進んでいこう」

女剣士「はい。私は一旦自分の部屋に戻って、持っていけるものを準備してきますね」

マスター「親に連絡はどうするんだ」


女剣士「あ…それは、きちんと手紙で伝えます。全部…」

マスター「そうしろ」

女剣士「はい…。出先で手紙を書いてすぐに出すつもりです」

294: 2014/02/02(日) 19:35:19 ID:psuTyvVo
 
マスター「よし。それじゃ…」

女剣士「出発ですか!」

 
マスター「冒険者の喫茶店もとい…"青空珈琲店"。本日より営業開始だっ!」

女剣士「…おーっ!」

295: 2014/02/02(日) 19:35:52 ID:psuTyvVo
 
…そういやお前、ずっとメイド服だけど普通の服は?

あーっ!お店にあったはずだから一緒に燃えて…


アパートまでメイド服で戻るのか…

恥ずかしすぎる…しかもあれお気に入りだったのに…うぅ…

はは…

で、でも…元気出していきますよっ!

…………

296: 2014/02/02(日) 19:36:33 ID:psuTyvVo
  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

316: 2014/02/08(土) 21:21:09 ID:BOizPDCY
 
それから互いに準備を終えると、

改めて青空珈琲店として再出発。


2人は

最初の目的地となる街道村へと到着した――…

317: 2014/02/08(土) 21:21:45 ID:BOizPDCY
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日・街道村 】

…ガチャッ!!

宿番「いらっしゃー…あれ?」


マスター「よう」

女剣士「お、お久しぶりです~」コソッ

宿番「随分早いですね今回は?1週間もたってませんよ

マスター「…ちょっとな」

宿番「…?」

318: 2014/02/08(土) 21:23:10 ID:BOizPDCY
 
女剣士「マスターさん」

マスター「ん?」

女剣士「いつもお世話になっていたようですし、やっぱり事情は説明したほうが…」

マスター「…そのほうがいいか。万が一ってことも考えられる…か」


宿番「えーと…何のことでしょうか」

マスター「あぁ。実はな…」

319: 2014/02/08(土) 21:24:44 ID:BOizPDCY
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

マスター「ってわけだ」

宿番「ははぁ…災難でしたね」

マスター「だから今日はここに泊まって、このまま東に抜ける予定なんだ」

宿番「へぇ、なら明日からはどこに向かうんですか?」

マスター「まずは豪火山のふもとの町だな。あそこでコナの珈琲豆が採れるはずだろ。是非、この目で見たい」

宿番「あぁ、確かにそうですね」


女剣士「…珈琲粉、ですか?豆ですか?…??」

320: 2014/02/08(土) 21:25:56 ID:BOizPDCY
 
マスター「粉じゃない、コナ。コナっていう珈琲豆がとれるんだ」

女剣士「そんなのがあるんですか!」

マスター「火山の石灰質の土壌で採れる酸味の強い豆だ。人気なんだぞ?」

女剣士「へえ~…」


マスター「まぁ…とにかく…ってなわけで今日は一晩頼む。明日には出発予定だからな」

宿番「かしこまりました」ペコッ


マスター「さて、部屋も取れたし…ちょっと」スクッ

女剣士「あれ、どこかへ?」

321: 2014/02/08(土) 21:27:38 ID:BOizPDCY
 
マスター「あー…お前は部屋に行ってていい。ちょっと村長に挨拶してくるんだ。しばらく来れなくなりそうだしな」

女剣士「なるほど、わかりました」

マスター「すぐ戻ってくる」

ガチャッ…バタン…


宿番「それじゃえーと」ゴソッ

女剣士「…」

宿番「こちらが部屋のキーになります。いつもの番号の部屋ですので、ごゆっくりどうぞ」スッ

女剣士「101号室でしたね。ありがとうございます」

322: 2014/02/08(土) 21:29:27 ID:BOizPDCY
 
トコトコ…ギシギシ…

宿番「…」

女剣士「~♪」


宿番「お得意様ですからね、ごゆっくりお休み下さいね!」

女剣士「はい~っ」

323: 2014/02/08(土) 21:30:27 ID:BOizPDCY
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1時間後 】

…ガチャッ

マスター「戻ったぞ」

女剣士「おかえりなさいです」


…モワッ

マスター「む…何か妙に部屋がモワっとしてるんだが」

女剣士「あ、せっかくなのでお風呂に先に…。お湯は張ったままなので後でどうぞ!」

マスター「ん…おう」

324: 2014/02/08(土) 21:31:00 ID:BOizPDCY
 
女剣士「えーと…それで、村長さんにはお話をしてきたんですか?」

マスター「うむ。村長にも一応、事情を話してきた。しばらくここにも来れないってな」

女剣士「そうでしたか」

マスター「そしたら…ほれ」ガサッ

女剣士「これは?」


マスター「ここの名産。いつもの世話に、これしか出来ませんがって渡してくれたぞ」

女剣士「何でしょうか?」

マスター「開けてみるといい」


ガサガサ…

女剣士「!」

マスター「それがこの街道村の産物。最高級の"栗"。そしてそれを使った栗団子だ」

女剣士「わぁぁ!」キラキラ

325: 2014/02/08(土) 21:31:41 ID:BOizPDCY
 
マスター「食べていいぜ。今年一番の出来らしい」


女剣士「いっただきまーす!」

マスター「早っ」


モグ…モグモグモグ…

女剣士「あ…甘い!美味しいぃ~!」

マスター「幸せそうな顔だな…何よりだ」

女剣士「マスターさんもどうですか?」モグモグ

マスター「あ…いや、俺は村長の家で頂いたからな。好きなだけ食べろ」

女剣士「はいっ」

326: 2014/02/08(土) 21:32:23 ID:BOizPDCY
 
マスター「…」

女剣士「美味しい~」モグモグ

マスター「…」

女剣士「やっぱり高級品と聞くと味も跳ね上がるようですねぇ」モグモグ

マスター「…」

女剣士「う~ん…」モグモグ


マスター「…ふむ、そうだな。少し待ってろ」

女剣士「?」モグモグ

マスター「えーと…」

カチャカチャ…

327: 2014/02/08(土) 21:33:18 ID:BOizPDCY
 
マスター「栗には…この豆と…」

ゴリゴリ…ゴリゴリ…

カチャッ、パサパサ…ジャー…


女剣士「…」モグモグ

マスター「…」ゴリゴリ

女剣士「…」モグモグ

マスター「…」ゴリゴリ

女剣士「…」モグモグ

328: 2014/02/08(土) 21:34:20 ID:BOizPDCY
 
マスター「…おいっ!」

女剣士「ひゃいっ!?」ビクッ

マスター「少し待ってろって言っただろ!」

女剣士「すいません!」モグモグ

マスター「…食うなっての!」


コポコポ…ジャー…

マスター「…ったく、食べ物に見境ねーのか。ほら」コトッ

女剣士「これは…コーヒーですか?」

マスター「栗に合うように少しのブレンドしてみたんだ。飲んでみろ」

329: 2014/02/08(土) 21:35:26 ID:BOizPDCY
 
女剣士「は、はい」

カチャッ…ゴク…


女剣士「…あっ」

女剣士「…さっぱりしてますね」


マスター「ん、合わなかったか?」

女剣士「いえ…何ていうか初めて飲んだ味です。酸味が多い…のかな?」

マスター「栗団子はとにかく甘いからな。苦味も少し多めに口のリセットにしようとしてみたんだが」


女剣士「普通に飲んだらかなりキツそうですけど、こういう甘いお菓子とは…」モグモグ

グビッ…グビグビグビ…


女剣士「ぴったりです!」プハァ!!

330: 2014/02/08(土) 21:36:16 ID:BOizPDCY
 
マスター「そりゃ何よりで」

女剣士「さっぱりしてて美味しいですねぇ」ホワッ

マスター「俺も飲むかー…」

…コンコン

マスター「はいどうぞ」


宿番「失礼します。って、うわっ!」ムワッ

マスター「ん?」

宿番「こ…コーヒーですか?なんか部屋も温かいですし、すっごい濃い匂いですね」

マスター「あーすまん。迷惑だったか。窓開けてあとで換気するよ」

宿番「いえ、それは構わないんですが。ちょっとお話が…」

マスター「…ん?」

331: 2014/02/08(土) 21:37:03 ID:BOizPDCY
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 宿のロビー 】


制服の男「…」ズーン


…コソコソ

宿番「あそこに座ってる方です。マスターさんに用事があるとかっていう…」ボソボソ

女剣士「なんか立派な服着てますね。軍服ですか?」

マスター「…ありゃ中央軍の尉官の制服だ。俺に用事だって…?」

宿番「一応、その人が部屋にいるかどうか確かめるとだけ言いました。どうします?」


マスター「…ふむ。とりあえず敵意はなさそうだ。行ってみる」スッ

332: 2014/02/08(土) 21:38:46 ID:BOizPDCY
 
女剣士「あっ、マスターさん!」


トコトコトコ…

マスター「…よいしょ。対面に座らせてもらうよ」ストン

制服の男「!」


マスター「その制服、中央軍の人間だな。軍の人間が何か俺に用か?」

騎士少尉「自分は騎士少尉と申します。以後、お見知りおきを」

マスター「俺は軍に知り合いなんかいないぜ?」

騎士少尉「…ギルド長のことは」

マスター「何?」

騎士少尉「実は自分、ギルド長に頼まれて貴方達の護衛や見張りについてくれと」

333: 2014/02/08(土) 21:40:28 ID:BOizPDCY
 
マスター「…なるほどな。やはりとは思ったが、やっぱりソッチ繋がりだったか」

騎士少尉「ギルド長いわく、心配はいらないだろうが一応のためだそうですよ」

マスター「…」

騎士少尉「自分らは東ギルドと深い係わり合いがありますし、そのトップのお願いですから聞かないわけには」

マスター「知ってるよ。俺だって元東ギルドのメンバーだ」

騎士少尉「…そうでしたか」


マスター「まぁ…気持ちはうれしいが余計な世話だ。ボディガードなんかいらん」

騎士少尉「しかし」


マスター「しつこいぞ。俺は俺一人で十分…いや、二人で十分だ」

騎士少尉「…二人?あぁ、あなたに着いているという女性のことですね」

マスター「そんなことまで話してんのかアイツは…」ハァ

334: 2014/02/08(土) 21:41:11 ID:BOizPDCY
 
騎士少尉「だが使命は使命です。あなたたちが拒否をされても、守りの任務に就かせていただきたい」

マスター「…そんなに、俺らが西ギルドメンバーにやられるように思うのか?」

騎士少尉「ギルド長の話では相当な手練だとは聞いてましたが…念には念を、と」

マスター「…」ハァ

騎士少尉「…」


マスター「…分かった、分かったよ。お前、少尉ならそれなりの実力はあるんだろう?」

騎士少尉「それなりには」

マスター「…それなり、ね」ジー

騎士少尉「…?」

335: 2014/02/08(土) 21:42:22 ID:BOizPDCY
 
マスター「ふむ、こりゃいい機会かもしれんな…」ブツブツ

騎士少尉「…いかがなされましたか?」

マスター「いや、ちょっとな」

騎士少尉「ふむ」

 
マスター「まぁとりあえず…女剣士!」

女剣士「は、はいっ!」

マスター「ちょっと来い」

女剣士「はいっ」

トコトコ…

336: 2014/02/08(土) 21:43:21 ID:BOizPDCY
 
騎士少尉「こちらが例の女性ですね」

マスター「…この女剣士と勝負してくれ。これでコイツが負けたら俺らの旅に加えてやる」

騎士少尉「…え?」

女剣士「ええぇっ!?」


マスター「勝ったら中央に帰れ。…その条件なら此方としては飲むが?」

女剣士「ちょちょっと、ちょっと!マスターさん!」

マスター「うっせ」

女剣士「うっせって…ちょっとぉぉ!」

337: 2014/02/08(土) 21:44:48 ID:BOizPDCY
 
騎士少尉「…いいでしょう」スチャッ

女剣士「少尉さんもそんな条件飲まないでぇぇ!」

騎士少尉「マスター殿、約束ですからね?全く…自分がこんな女性と戦うはめになるとは…」

マスター「あぁ…約束だ」


女剣士「なんでぇぇ…」

339: 2014/02/08(土) 21:47:35 ID:BOizPDCY
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 宿の外・村の一角 】


ヒュウウ…

騎士少尉「…女性だからといって容赦はしませんよ」スチャッ

女剣士「どうしてこんなことに…」ブツブツ


マスター「互いに危ない時は俺が仲裁に入る。存分にやれ!」


女剣士「恨みますよマスターさぁん!」

マスター「おうおう…」

340: 2014/02/08(土) 21:48:14 ID:BOizPDCY
 
宿番「だ、大丈夫なんですかね…?」

マスター「大丈夫だと思うぞ。あいつも少尉という実力はあるだろうが、恐らく女剣士には勝てないだろう」

宿番「なぜです?」

マスター「…手が綺麗すぎる。ありゃ尉官になって、部下に命令だけをするようになった人間だ」

宿番「なるほど」

マスター「よくいるんだ。上になると、自分を磨くことを止める奴がな。まぁ見てろ」

宿番「はい」


騎士少尉「…」ゴゴゴ

女剣士「…」

341: 2014/02/08(土) 21:50:38 ID:BOizPDCY
 
騎士少尉「いきますっ!!」ダッ

女剣士「!」スチャッ


騎士少尉「…小突!!」ビュッ!!!

女剣士「このくらい!」キィン!!

騎士少尉「臆せず弾くとは…ですが足元がお留守ですよ!」ヒュッ

女剣士「わわ、蹴り!?」ピョンッ

騎士少尉「よく回避しました…ですが空中に浮いた状態なら!!小突!!」ビュッ!!


マスター(ほう…不真面目な奴にしては、いい槍術と体術の連弾だな)

342: 2014/02/08(土) 21:51:28 ID:BOizPDCY
 
女剣士「うくっ!」グルンッ!!
 
騎士少尉「空中で上体を反らした!?だけどそれは!」

女剣士「えへへ…きゃあっ!」

ドスンッ!!

マスター(空中で体を反らしたらそりゃ倒れるわな。そしてそこは槍の間合いだ…どうする?)


騎士少尉「…好機!えやああっ!」ブンッ

女剣士「わわわわっ!」

グルングルン…ザスザスザスザス!!


騎士少尉「横転でちょこまかと!」

女剣士「くっ…小火炎魔法っ!」ボワッ!!

騎士少尉「ぬあっ!」ボォンッ!!

343: 2014/02/08(土) 21:52:24 ID:BOizPDCY
 
マスター(寝転んだ状態からの一瞬の魔法の練りか!)


女剣士「えへへ、危ないところでした」スクッ

騎士少尉「おのれ妙な魔法技を…」ゴホゴホ


女剣士「今度はこっちの番ですよ!」ダッ

…ダダダダッ!!!

騎士少尉「お…早いですね!」

女剣士「この距離なら剣の間合いが有利!小斬っ!!」ビュッ!!

騎士少尉「…甘い!」

…キィンッ!!!

344: 2014/02/08(土) 21:53:25 ID:BOizPDCY
 
女剣士「えっ!?」

マスター(…へぇ)


騎士少尉「普通の槍ならば"柄は切れている"でしょう。ですがこれは防御にも使える…鋼鉄製」

女剣士「そ、そんなの有りですか!」

騎士少尉「そしてこれはこのまま…武器となる!」ブンッ!!

ガキィンッ!!

クルクル…ザシュッ!!


女剣士「私の剣が…弾かれ…」

騎士少尉「勝負ありですかね」フッ


マスター(…いや)

345: 2014/02/08(土) 21:55:48 ID:BOizPDCY
 
女剣士「…まだです!掌底波ぁっ!」ヒュッ

騎士少尉「へっ?」

…バキィッ!!!!

騎士少尉「がっ…」


女剣士「油断はいけませんよ!」

騎士少尉「ごほっ…、掌底波…とは…」フラッ

女剣士「えへへ!」


マスター(そうだ。女剣士には隠された底力、スキルがある…)

346: 2014/02/08(土) 21:57:24 ID:BOizPDCY
 
騎士少尉「…」ニヤッ

女剣士「!」

騎士少尉「予想外にやりますね。ですがこれは真剣勝負。出来ることは…やらせていただく!」

女剣士「え?」

騎士少尉「これはもういりません!」パッ

…カランカランッ


女剣士「槍を捨てた…?」

騎士少尉「…」

スッ…キラッ

女剣士「…へっ?それは何ー…」

騎士少尉「せいっ!!」ヒュッ

ズバズバッ!!ビリビリッ!!

347: 2014/02/08(土) 21:58:24 ID:BOizPDCY
 
マスター「腰に…隠しナイフか!」


女剣士「!」

騎士少尉「確かにあなたは強い。ですが自分とは決定的な差がひとつある…」


女剣士「きゃあああっ!」

騎士少尉「女性だ、ということ」

348: 2014/02/08(土) 21:59:02 ID:BOizPDCY
 
マスター「ふむ…服を破られたか。女というのが仇となる場面…さぁどうする」

宿番「おぉ!眼福眼福!」


女剣士「やっ、ちょっとお!それは反則…!」バッ

騎士少尉「これが本当の頃し合いだったら、今の一瞬で氏んでますよ!」ヒュッヒュ!!

女剣士「どんどん破かないでください!いやああっ!」ビリビリッ!!

349: 2014/02/08(土) 22:01:27 ID:BOizPDCY
 
騎士少尉「動きが鈍くなれば…もう貰ったようなものですよ!ナイフでも十分に!」ダッ

女剣士「…っ!」バッ


ズバッ…ガキィンッガキィン!!!!


騎士少尉「これで…今度こそ終わった…って、えっ!?」

女剣士「…うぐぐ…」ギリギリ

騎士少尉「そ、それは私が捨てた槍!!」


女剣士「確かに恥ずかしいですが…勝負に負けるのはもっと嫌なんですよ…!」ググッ

騎士少尉「くっ…何て力だ…」ギリギリ

女剣士「うぅぅ…!」ググッ…

350: 2014/02/08(土) 22:02:09 ID:BOizPDCY
 
騎士少尉「し…下着が見えてますよ…?」ニヤッ

女剣士「!」

騎士少尉「そんなに…見てほしいんです…か…?」ググッ

女剣士「そ…そういうことは…言わないでください!」カァッ

騎士少尉「ふふ、弱みを見せましたね!!」バッ!!

女剣士「きゃあっ!」

…ドシャッ!!


マスター(さすがに押し負けたか…。しかし、な)


騎士少尉「2度目の倒れこみは、もう逃がさない!」ビュッ!!

女剣士「この状態からでも!…小突うぅっ!!!」

騎士少尉「なっ!?」

351: 2014/02/08(土) 22:04:12 ID:BOizPDCY
 
…ドスッ!!!

騎士少尉「そ…そんな…バカな…」

女剣士「…」

騎士少尉「…がっ」

グラッ…ドシャアッ…


女剣士「はぁ…はぁ…」

マスター「…自分の勢いで、槍に突っ込んだんだ。カウンターで食らったのと一緒だ…そりゃ倒れるか」スッ

女剣士「マスターさん…」

マスター「ご苦労さん。ほら、上着貸してやる」

女剣士「あ、ありがとうございます」

352: 2014/02/08(土) 22:05:47 ID:BOizPDCY
 
マスター「どれ回復でも…って、槍で刺したのに血が出てないのか?」

女剣士「峰打ちみたいなもんです。鋼鉄の柄で思いっきり、みぞおちを貫きました」

マスター「…なるほどな。女剣士の甘さに軽い痛みだけで済んだか」

女剣士「久々に組み手らしいのをやりましたが、強かったですよ」ハァハァ


マスター「仕方ねえなあ…おい、起きろ。少尉」

騎士少尉「ごほっ、ごほごほ…」

マスター「これで実力差は分かっただろ。うちの店員にも勝てない雑魚が、俺らのお守りなんて100年早い」

騎士少尉「…くっ」

353: 2014/02/08(土) 22:07:05 ID:BOizPDCY
 
女剣士「マスターさん、そんな言い方!」


マスター「少し軍での地位があがったからって、あぐらかいてりゃ実力も落ちるんだよ」

騎士少尉「…あぐらなんか」

マスター「綺麗な手。軍人のくせに女だからって相手に下に見た事。どう見てもそうだろうが」

騎士少尉「…っ」


マスター「出直してこい。それと俺らにはもうお守りはいらん…そう伝えろ」

騎士少尉「…はい」

マスター「…」

ヨロ…ヨロヨロ…

354: 2014/02/08(土) 22:08:01 ID:BOizPDCY
 
マスター「そうだ、騎士少尉!…今はお前の悪さだけを言ったが、良い所もある!」

騎士少尉「…?」

マスター「誰にでも本気になれる事。勝とうとする信念。それがありゃお前はまだまだ上に行ける!」

騎士少尉「…」

マスター「…本気になれるなら、もっと本気で自分を磨け。それだけだ」

騎士少尉「…は、はい。ありがとうございました…」

ザッ…ザッザッ…ザッサッザ゙…


女剣士「…」

マスター「そして女剣士」クルッ

女剣士「は、はい」

マスター「よくやったな。少尉とはいえ、男に勝ったんだ。勝つとは思ってたが…いい動きだったぞ」ポン

女剣士「…」ピクピク

355: 2014/02/08(土) 22:09:49 ID:BOizPDCY
 
マスター「…ん?」

女剣士「…マスターさん」ニコッ

マスター「何だ?」


女剣士「掌底波ぁっ!!」ブンッ

…バキィッ!!


マスター「ぬおっ!な…何をする!!」

女剣士「…一発くらい殴らせてくれてもいいでしょう!泣きそうになったんですよ!!」

マスター「しかしだな!」

女剣士「最後に良い所だけ持って行こうとしないでください!!」

356: 2014/02/08(土) 22:11:06 ID:BOizPDCY
 
マスター「ぬ…」

女剣士「だけど、戦いの場を貰って…改めて自分のことを知れたのは感謝します」ペコッ

マスター「…そうだな」

女剣士「もっともっと強くなります!」

マスター「…あぁ」


宿番「あの、いい話の途中でしたが…そろそろ日が暮れるので…」

マスター「ん?」

宿番「いいものを見せて頂きましたし、今日の晩御飯は奮発しますよ。何か食べたいですか?」

女剣士「いいものですか?そんないい戦いでしたかっ」フンッ

357: 2014/02/08(土) 22:11:54 ID:BOizPDCY
 
宿番「戦いもそうですが、その…ね」ニコッ

女剣士「…戦い以外にいいモノ?」

マスター「そりゃ…お前の体じゃないのか?ま、俺は新鮮な食べ物なら何でもいいぞ」

女剣士「…っ!!」


宿番「ははは…ずばり言いますね。ではでは、村で新鮮な食材でも探してきます」

タッタッタッタッタ…


女剣士「も…」ブルッ

女剣士「もう、今日は色々と嫌ぁぁっ~…!」

358: 2014/02/08(土) 22:12:27 ID:BOizPDCY
 
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

364: 2014/02/09(日) 19:02:13 ID:S/lgixMI

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日 】

ゴソゴソ…

マスター「うっし。出発の準備できたか?」

女剣士「忘れ物ナシ、いつでも行けます」

マスター「それじゃ行くかぁ」ウーン


女剣士「今日は豪火山に向かうんでしたっけ?」

マスター「そうだ」

女剣士「わかりました」

365: 2014/02/09(日) 19:02:47 ID:S/lgixMI
 
…コンコン

マスター「お…どうぞ」

…ガチャッ


宿番「失礼します。今日からしばらく会えませんし、折角なので個人的な挨拶をと」

マスター「そうなるな。今まで世話になった」

宿番「マスターさん…是非、また来て下さいね」

マスター「一生の別れじゃあるまいし、そんな顔すんな」

宿番「ですが寂しいものですよ…。101号室、いつまでも取って置きますから!」

マスター「…うむ」

366: 2014/02/09(日) 19:03:18 ID:S/lgixMI
 
女剣士「戻ってきた頃には、立派な剣士ですよ!」

宿番「もうすでに素晴らしいものを…」

女剣士「…セクハラですよ!」ギロッ

宿番「あはは…す、すいません」


マスター「怒ると怖いんだぞこいつ。もしかしたら宿も壊されるかもしれん」

宿番「わわ…口は災いの元ですね」

マスター「その通りだ。触らぬ神に祟りなしよ」


女剣士「ひ…人を災いみたいに言わないでくださーい!」

367: 2014/02/09(日) 19:04:03 ID:S/lgixMI
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 街道 】


トコトコ…トコトコ…

女剣士「うぅ…色々と疲れましたよ」ハァ

マスター「まぁそう言うな。ほら、貰った団子が余ってるから食べろ」スッ

女剣士「頂きますけど…」

マスター「はは…」


女剣士「はぁ~…」モグモグ

368: 2014/02/09(日) 19:04:41 ID:S/lgixMI
 
マスター「まぁ次に目を向けろ。豪火山のふもとで、楽しいぞ。行ったことないだろ?」

女剣士「そりゃないですけど…歩きで大丈夫なんですか?」

マスター「途中までしか馬車は入れないからな…4、5日かかるが山道を越えて行った方が早いんだ」

女剣士「なるほど」


マスター「それと…次に行く町はな、相当昔に惨劇が起きた場所だって知ってるか?」

女剣士「豪火山の町がですか?」

マスター「もう何百年も前…、豪火山で炎の魔物が大暴れしてな。町が壊滅したらしい」

女剣士「…!」

マスター「生き残った住民は皆無。一度は人が誰もいなくなったんだと」

女剣士「今は…?」

369: 2014/02/09(日) 19:05:15 ID:S/lgixMI
 
マスター「それから数年。そこの出身者たちが町に戻り、やがて長い歳月で復興を遂げたんだ」

女剣士「良かったです」ホッ


マスター「だがその傷跡は今も癒えていない。町外れには数百という石碑が立っているそうだ」

女剣士「…哀しいですね」

マスター「だが、それを力にして今じゃ立派な成長を遂げた町だ」

女剣士「すごいことじゃないですか」

マスター「当時に猛威を振るった火山だったが、今じゃ休火山だ。カルデラ湖で観光名所だとよ」

女剣士「観光名所ですかっ!」

370: 2014/02/09(日) 19:05:54 ID:S/lgixMI
 
マスター「見たいか?」

女剣士「はい!」

マスター「一応、小規模ギルドがあったはずだ。そこで何か、カルデラ湖付近の一般クエストがないか聞いてみるよ」

女剣士「わーい!」


マスター「なかったとしても、俺も久々だしカルデラ湖は見に行くつもりだったしな」

女剣士「やったっ!」


マスター「ん~…出来れば軽いクエストがあればいいんだが…」

女剣士「例えばどんなクエストがありそうですか?」

マスター「火属性のエレメンタルの討伐。たまたま出現して観光客に迷惑をかけるんだよ」

371: 2014/02/09(日) 19:06:27 ID:S/lgixMI
 
女剣士「火属性エレメンタルですか…。物理攻撃が効くんでしょうか」

マスター「あっ…お前、水属性の魔法使えないんだっけか?」

女剣士「からっきしダメですね。火の最下級の魔法しか…」

マスター「あー…」

女剣士「どうしましょう…危険ですか?」


マスター「ふむ…お前、自分の魔力がどれくらいあるかは分かってるか?」

女剣士「一応、小火炎魔法を10回放てないくらいですかね…」アハハ…

マスター「相当魔力がないんだな…。それじゃ武器に属性付与をしても維持する魔力はなさそうか」

女剣士「申し訳ないです…」

372: 2014/02/09(日) 19:06:59 ID:S/lgixMI
 
マスター「…」

女剣士「…」


マスター「…あっ」ポン
 
女剣士「え?」

マスター「そうだ。そうだったな…この近くに確か…」ブツブツ

女剣士「…何かあるんですか?」


マスター「…ふむ、ちょっと道中で寄り道してくぞ。こっちだ」


女剣士「…は、はい」

373: 2014/02/09(日) 19:07:32 ID:S/lgixMI
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 道中にある小屋 】

ザッザッザ…

マスター「お、あったあった。うる覚えだったから心配だったんだが」

女剣士「…ここは?」

マスター「錬金術師が営んでる小さな店だ。ここならお前の装備も強化できそうだからな」

女剣士「錬金術…ですか」


マスター「まさか…それも知らないのか?」

374: 2014/02/09(日) 19:08:08 ID:S/lgixMI
 
女剣士「い、いえいえ。今あるスイッチ1つで点く明かりとか…」

女剣士「ひねると出る水道。冷蔵庫だとか、そういう不思議な技術のことですよね」


マスター「60点。正確にいえば、魔法の力を使わぬように開発された文明の利器の1つだな」


女剣士「あう…。でも何で錬金術屋さんなんですか?そんな場所で私の装備が強化できるんでしょうか」

マスター「お前が想像してるのは、いわゆる生活品の錬金術品だろう」

女剣士「…それ以外に錬金術の用途が?」

マスター「そもそも錬金術ってのは、東方で開発された物で。戦いのために生み出された技術なんだよ」

女剣士「そうなんですか!?」

375: 2014/02/09(日) 19:09:08 ID:S/lgixMI
 
マスター「今日という日、もう平和ともいえる世の中で錬金術は生活品の研究ばかりだがな」ククク

女剣士「そうだったんだぁ…」

マスター「ここは数少ない、冒険者用の武器や防具の錬金術装備、開発を行ってる場所なんだ」

女剣士「へぇ~!」


マスター「さぁて、"アイツ"がいればいいんだが…」

376: 2014/02/09(日) 19:09:39 ID:S/lgixMI
 
コンコン…

マスター「…いるかー?」

???「はーい、お客かな。どうぞー」


…ガチャッ

マスター「よかった、まだやってたか。失礼するぞ…久しぶり」

???「…誰?」

マスター「俺だ。わからんか?」


???「…」

???「…あぁっ!!」


マスター「思い出したか?かなり久しぶりだな…まだやってて安心したよ」

???「思い出した思い出した!!忘れる訳ないよ!久しぶりだねぇ!」

377: 2014/02/09(日) 19:10:19 ID:S/lgixMI
 
女剣士「…知り合いなんですか?」

マスター「あぁ…こいつは女錬金師。俺の現役時代のパーティの1人だよ」

女剣士「えっ!」


女錬金師「おや…初めましてかな?かわいこちゃん」ニコッ

女剣士「そ、そんな可愛いなんて」テレッ


マスター「お前はとっくに引退したものかと少し思ったが、やっぱりまだ経営は続けてたか」

女錬金師「まだまだ現役だよ。おかげ様で、各方のギルドに入用にしてもらってるからねぇ」

マスター「それは何よりだ」


女錬金師「…で、久々に来た理由は自慢かい?」

マスター「自慢だと?」

378: 2014/02/09(日) 19:10:53 ID:S/lgixMI
 
女錬金師「だからさ…この娘のことだよ」ジロジロ

女剣士「…?」


女錬金師「あんたもいよいよ年貢の納め時ってことなのかね?」クスクス

マスター「冗談だろ。こいつはえーと…あれだ、うちの店員だ」

女錬金師「…違うのかい?」

マスター「違う」


女錬金師「なーんだ残念」

マスター「…」

女錬金師「いい加減、あんたも伴侶を見つけたらいいんじゃないのかい」

379: 2014/02/09(日) 19:11:31 ID:S/lgixMI
 
マスター「…相変わらずな奴だ」ハァ


女錬金師「余計なお世話だよ。それより、嫁の自慢じゃないなら一体何の用なんだい?」

マスター「嫁じゃないが、コイツの事には変わりないんだがな」グイッ

女剣士「わわっ」


女錬金師「…ふむ?」

380: 2014/02/09(日) 19:12:08 ID:S/lgixMI
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


マスター「ってわけだ。どうにかならんか?」

女錬金師「属性武器の魔力が維持できない…か」

女剣士「お手数かけます…うぅ」


女錬金師「…うーん。難しいねぇ」

マスター「やっぱりお前でもダメか?」

女錬金師「うーん…。元々の魔力が少ないってのは、補給薬を使っても勿体ないだけだし…」

381: 2014/02/09(日) 19:13:01 ID:S/lgixMI
 
マスター「これは今後のことにも関わるからな。出来れば若いうちに解決させたいんだ」

女錬金師「そうだねぇ。話を聞く限り、ものすごい才能なんだろう?勿体ないもんねぇ」

女剣士「…そ、そんなに厳しい事なんですか?」


女錬金師「そりゃ…魔法も使えない剣士が一人前になるのは難しいよ。聞いてないのかい?」

マスター「いや、いいんだそのことは」

女錬金師「え?」


女剣士「ちょ、ちょっと待ってください。何のことですか一体!」

マスター「いや…いいんだ」

女剣士「気になりますよ!教えてください!」

382: 2014/02/09(日) 19:13:44 ID:S/lgixMI
 
マスター「…女錬金師」ギロッ

女錬金師「何だい。どうせ気づくことだろう」

マスター「そりゃそうなんだが…」


女剣士「…教えてくださいよ」

マスター「…わかった」

女剣士「…」

383: 2014/02/09(日) 19:14:35 ID:S/lgixMI
 
マスター「…剣士というのはパーティや立ち回りにおいて重要な役割があるのは分かるよな」

女剣士「知ってますよ!相手を翻弄する敏捷力、前衛で戦う体力、常に応用できる技術力…ですよね?」

マスター「…その技術力は、いわゆる"オールラウンダー"の意味合いもある」

女剣士「前に言ってた、あらゆる武術、スキルを使えることですか?」

マスター「違う」

女剣士「じゃあ…何ですか?」


マスター「魔法攻撃も含めた、その技術力だ」

女剣士「!」

384: 2014/02/09(日) 19:15:05 ID:S/lgixMI
 
マスター「もちろん…物理だけでも有意義な立ち回りは出来る。だが、限界があるんだ」

女剣士「で…ですが、父は魔法が苦手で…。私以上に使えなかったのに相当強いんですよ?」

マスター「…騎士、だろ?」

女剣士「そ、そうです」


マスター「騎士は力技だ。技術だけでなく武道家のような気力の一撃を備えているんだ」

女剣士「そんな事言ったら、剣術の一撃も気の練りはあります!」

マスター「槍の一点と、剣の全てを飛ばすのではどちらが一撃に長けていると思う?」

女剣士「うっ…」

385: 2014/02/09(日) 19:16:16 ID:S/lgixMI
 
マスター「パーティ、団体戦においては基本的に前衛、中衛、後衛の3つに分かれているのは知っているな?」

女剣士「そうですね」
 
マスター「前衛は切り込み役。中衛以前は火力と支援役だ」

女剣士「はい」

マスター「前衛はやれる事が多ければ多いほど、パーティでは有利になる。もちろん中衛後衛もだが」

女剣士「そう…ですね」


マスター「前衛の騎士や戦士が盾役や火力なら、剣士は何だと思う?」

女剣士「…やっぱり相手の翻弄や、攻撃防御も出来る…万能役ですかね」

マスター「つまり?」

386: 2014/02/09(日) 19:17:06 ID:S/lgixMI
 
女剣士「何でも出来るって事ですね。さっき言ったオールラウンダー…です」

マスター「それを求められる前衛が、魔法に対抗出来ない、相手に合わせられなかったら…後衛はどうなる?」

女剣士「守ろうとやることが増えて、自分の力を出せない…」

マスター「その通り。特に…お前の場合はな」

女剣士「…」


マスター「器用貧乏とでもいおうか。やれる事は多いが、肝心な部分で撃沈されるだろう」

女剣士「…」

マスター「パーティがダメなら一人旅なら?とは思うかもしれんが、益々やる事は多くなる。個の力が重要になるからな」

女剣士「…」

387: 2014/02/09(日) 19:18:53 ID:S/lgixMI
 
マスター「剣士ってのは誰にでもとっつきやすい。もっとも人口が多いのは剣士だといっても過言ではない」

女剣士「そうですね…、人の歴史は剣と隣にありましたから…」

マスター「つまり今日という日、最も没者が多いのは剣士ということになる」

女剣士「!」


マスター「そのほとんどが、本当の剣士になりきれず…な」

女剣士「それが…魔法ということですか」

マスター「それだけじゃなく剣術面もだが…」

マスター「お前は少しの魔法を使える相手と比べたら、剣術で勝っても総合的に見れば危険な状態だ」


女剣士「…」

388: 2014/02/09(日) 19:19:31 ID:S/lgixMI
 
マスター「俺のように大剣を扱い、一撃に特化した剣士もいるが…」

女剣士「…」

マスター「レイピアに近いお前のような剣を使う剣士は火力で押せるわけでもないしな…」

女剣士「…う」


マスター「剣士っていうのは、あらゆる事象を覚えてこそ。それで一人前なんだよ」

女剣士「…」

マスター「そりゃ歴史には物理しか持たない有名な剣士はいる。だが、ほんの一握りの人間しか俺は知らん」


女剣士「じゃ…じゃあ、私が…一人前の剣士を目指しても…無理だってことなんです…か?」ブルッ

389: 2014/02/09(日) 19:21:03 ID:S/lgixMI
 
マスター「そうは思わない。…お前に言わなかった理由として、それを克服できる力があると信じたからだ」

女剣士「なぜ…信じられるんですか…」


マスター「努力が出来るところ。そして、お前の生まれ持った戦いの素質だ」

女剣士「努力と…戦いの素質…?」

マスター「少なくとも俺は、3つスキルの基本をそこまで完璧にこなす人間を見たことがない。その才能は天からの贈り物だろう」

女剣士「…」

マスター「逆に魔法が使えないのは重い事だ。だが…お前はそれに動じずに今日まで戦い抜いた気力がある」

女剣士「…はい」

390: 2014/02/09(日) 19:21:48 ID:S/lgixMI
マスター「…努力と素質。お前はそのままでも充分にゆっくりと前を目指せれば良いと…思っていた」

女剣士「思っていた…?」


マスター「ゆっくりと、独自の戦いや剣技も教えたかった…。だが、そうもいかなくなっただろう」

女剣士「あ…お店が燃えた事ですか…」

マスター「そうだ。実践頼りが多くなるであろう今、悠長に構えてはいられなくなったんだ」

女剣士「…」

マスター「…俺と一緒にいる時点でそれなりの危険はある」

女剣士「…私が西ギルド員を吹っ飛ばした事も要因ですよね…」

391: 2014/02/09(日) 19:22:19 ID:S/lgixMI
 
マスター「そうだ。逃げろと言ったが、お前は俺から教えを請うと言った」

マスター「だから…お前の不得意なエレメンタルの相手の豪火山を目指して進んできたんだ」

マスター「苦手な相手は、何よりも成長の糧となる。俺を尊敬した弟子を無碍には出来んよ」


女剣士「…そうだったんですか」

マスター「…黙ってた事は悪かった」

392: 2014/02/09(日) 19:22:53 ID:S/lgixMI
 
女剣士「じゃあ…私は、これからどうするべきでしょうか」

マスター「だからこそ…この錬金術屋に来たんだ。お前の成長のきっかけとなるようにな」ニカッ

女剣士「!」


女錬金師「…はは、参ったねぇ。こりゃ責任重大じゃないか」

マスター「頼むぞ」


女錬金師「私に任せな!頼まれた!」

女錬金師「…とは言いたいんだけど、どんなに考えても残念ながら本当に浮かばないんだよ…」ハァ


女剣士「…っ」


マスター「やはり魔力の補給薬のガブ飲みしか道はないか?」

女錬金師「冗談だよそんな事!中毒になって倒れてしまうよ!」

マスター「わかってるよ。俺だって冗談でいったんだ」

393: 2014/02/09(日) 19:23:46 ID:S/lgixMI
 
女錬金師「んー…」

マスター「…」


女剣士「あ…あの」

マスター「ん?」

女剣士「私のために、そこまで考えてくれて有難うございました。もう…大丈夫です」

マスター「何だって?」

女剣士「さっき言われた通り、努力で槍のような一点集中の気力だとか、それを剣で磨いてみたいと思います」

マスター「…」

女剣士「確かに魔法は苦手ですが、それを克服出来るように努力します!」

394: 2014/02/09(日) 19:25:07 ID:S/lgixMI
 
女錬金師「ゴメンね…力になれなくて」

女剣士「いえ。私自身、諦めませんから。実践を通して、成長したいと思います」

マスター「…」


女剣士「炎のエレメンタルがなんですか。魔法が使えないからって何ですか」

女剣士「ズタボロだろうが、きっとその中で活路を見出して見せます!」


マスター「…」

女錬金師「…そうかい。すまなかったね」

女剣士「謝らないでください。私のことを考えてくれて、嬉しかったです」

395: 2014/02/09(日) 19:25:44 ID:S/lgixMI
 
マスター「…やはり、ダメか」

マスター「せめて、一瞬の属性付与だとかをイメージできれば何とかなったと思うんだが…」


女錬金師「近くに強力な魔法使いでもいれば、魔力枯渇も問題なく練習できたと思うんだけどね」

マスター「…魔力か…。んーむ…」


女錬金師「…魔力の維持が問題か…」

女錬金師「魔法…、維持…維持か…。うーん、属性付与…。維持…魔法…」

女錬金師「…!」

女錬金師「…え?あ…あっ!も…もしかして!」


マスター「ん?」


女錬金師「ちょ、ちょっと待ってておくれ!」ダッ

マスター「お…おい!」

396: 2014/02/09(日) 19:26:41 ID:S/lgixMI
本日はここまでです。ありがとうございました。

397: 2014/02/09(日) 21:24:28 ID:Wi3lGvn2

引用: 女剣士「冒険者の喫茶店で働く事になりました」