1: 2008/10/03(金) 22:04:02.40 ID:Vt6Qffje0
これは、桜田ジュンを隊長とする探検隊が
幻の猿人『ロゼーン』を捕獲しようと試みる、魂のドキュメンタリーである。

ジャングル奥地

ジュン「よし、ここで休憩にしよう」
翠星石「……もう動けんですぅ」
雛苺「やっと休めるの……」
水銀燈「だらしないわねぇ、水でも飲んで落ち着きなさぁい」
真紅「ちょっと水銀燈! それは私の水筒じゃないの! 返して!」
水銀燈「ちょっとくらい大目に見なさいよぉ! このっ!」
ジュン「お前ら、今体力を使ってどうする! この先はもっと長いぞ!」
ローゼンメイデン 愛蔵版 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
2: 2008/10/03(金) 22:06:51.27 ID:Vt6Qffje0
しばしの休憩を楽しんだ後、ジュンは作戦会議を開いた。
ここからは、ロゼーンを求め更に奥地へと進んで行く事になるのである。

ジュン「みんな、渡した地図を見てくれ。ここが今いる場所、現在地だ」
蒼星石「まだ目的地までは距離があるね」
ジュン「そうだ。だからここでグズグズしている訳にはいかないぞ」
金糸雀「夜のジャングルは危険だってみっちゃんも言ってたかしら!」
ジュン「ああ、手早く移動していこう。それじゃあ本題に入るか」
水銀燈「チュー……はぁ、美味しい」
真紅「返してったら! 水銀燈!」

5: 2008/10/03(金) 22:17:10.33 ID:Vt6Qffje0
ジュン「……という訳だ、分かったか皆」

ジュンの作戦はこのようなものであった。

ここから先を直進していくと、前方に大きな川が見える。
そこまで辿り着いたら川を左手に見つつ更に進んで行く。すると、今度は大きな橋が見える。
その付近で、もう一度作戦を確認する。

翠星石「要は真っ直ぐ行って、川まで出たら右に進んで橋まで行きゃいいです」
ジュン「まぁ、そう言う事だな」
雛苺「翠星石賢いの……ヒナ全然解らないのよ」
ジュン「僕について来ればいいよ。さ、そろそろ出発しよう」

7: 2008/10/03(金) 22:22:02.49 ID:Vt6Qffje0
こうして、桜田ジュン探検隊はロゼーン確保に向け本格始動するのであった。

ジュン「いいか皆! ここからが本番だ。ここから先は危険な生物が沢山いる。気を抜くとやられるぞ!」
翠星石「演技でもねーこと言うなです」
ジュン「よし、点呼取るぞ! 番号!」
水銀燈「1よぉ」
金糸雀「2かしら」
翠星石「3です」
蒼星石「4だよ」
真紅「5よ」
雛苺「6なの」
薔薇水晶「……7」
ジュン「今回は雪華綺晶は欠席したから、代理で薔薇水晶に来てもらった。よろしく、薔薇水晶」
薔薇水晶「私はお姉様がいれば満足です……」

8: 2008/10/03(金) 22:28:42.95 ID:Vt6Qffje0
真紅「雪華綺晶はどうして欠席なの?」
ジュン「ああ……それがな」

~数週間前 nのフィールド~
ジュン「なぁ……どうしても駄目か?」
雪華綺晶「私には体がありませんから」
ジュン「そっか……じゃあ代役は薔薇水晶に頼んでみよう」

ジュン「という訳でだな。薔薇水晶になったんだ」
翠星石「なんか淡々とした会話ですねぇ……」
水銀燈「ま、どうでもいいけど行くなら早くしてくれないかしら」
ジュン「よし、じゃあ出発だ! 全員気合い入れていくぞ!」

全員(水銀燈、翠星石、蒼星石、真紅、薔薇水晶を除く)は出発の雄叫びを上げた後、出発した。

10: 2008/10/03(金) 22:32:37.77 ID:Vt6Qffje0
翠星石「うう……早速疲れてきたです……」
雛苺「翠星石お水は?」
翠星石「もう全部飲んじまったですぅ……」
蒼星石「なら僕のをあげるよ」
翠星石「さすが優しい妹です! やっぱり蒼星石は一番です!」
蒼星石「さっき水銀燈から貰ったんだよ」
真紅「それは私のよ! 返して! ねぇ返してよ!」
ジュン「うるさいぞお前ら! 黙って歩け!」

12: 2008/10/03(金) 22:38:11.46 ID:Vt6Qffje0
水銀燈「(さっきから視線を感じるわぁ。やっぱり後ろの……)」
薔薇水晶「ジー……」
水銀燈「……さっきから視線が鬱陶しいわ」
薔薇水晶「お姉様……手を繋いでもいいですか」
水銀燈「駄目に決まってるでしょう。変な事言わないで」
薔薇水晶「私は諦めません。ジー……」
水銀燈「(ううう……視線が熱い……)」
真紅「ねぇジュン、私飲み物が無いの。何か貰えないかしら」
ジュン「……しょうがない、カ口リーメイトやるよ」
蒼星石「口の中パッサパサになるね」

14: 2008/10/03(金) 22:44:26.76 ID:Vt6Qffje0
蒼星石「ねぇ金糸雀、その傘貸してくれない?陽射しがきつくて」
金糸雀「その陽射しを避ける為に差してるかしら!」
蒼星石「このチョコレートと交換しようよ」
金糸雀「溶けてるかしら……チョコレートフォンデュみたいかしら」
翠星石「金糸雀、可愛い妹の為に貸してやるです」
金糸雀「だ、駄目かしら! 私が陽射しに当たっちゃうかしら!」
ジュン「うるさいな……蒼星石、僕の傘を貸してやるよ」
蒼星石「本当かい? 助かるなぁ」
真紅「口の中……パッサパサね」
水銀燈「ねぇ、もう見ないでくれる?」
薔薇水晶「嫌ですお姉様」
雛苺「くんくん~は~すってきな~探偵さん~♪」
ジュン「うるさいよお前ら! 緊張感持てよ!」

15: 2008/10/03(金) 22:50:38.11 ID:Vt6Qffje0
ジュン一行は、何とか川まで辿り着いた。

ジュン「おお~、こりゃ巨大な川だな」
翠星石「み、水です! 水、水でずよぉぉ」
真紅「ハヒー……ハヒー……」
蒼星石「翠星石、ここの水は飲めないよ。汚いからね」
翠星石「なっ……でもでも、ろ過装置があったはずです! そうですよねジュン!」
ジュン「ああ、確かろ過装置は水銀燈に渡したよな」
水銀燈「? もしかして網みたいなのがついてたやつの事?」
ジュン「うん、それだよ」
水銀燈「あれゴミだと思って捨てちゃったわよぉ。なんか汚かったから」
真紅「……」
水銀燈「い、いけなかったかしらぁ」
薔薇水晶「いいえお姉様素敵です」

16: 2008/10/03(金) 22:56:21.99 ID:Vt6Qffje0
ジュン「仕方ない……このまま進もう」
翠星石「な、何言ってるです! 熱帯のジャングルでは、水分補給を怠ると危険です!」
ジュン「そんな事言っても水がないんだから仕方ないだろ。ちゃんと水筒を渡しておいたはずだぞ」
翠星石「大体各自水筒一本っていう配分がおかしいです! 予備の水くらい持ってこいです!」
ジュン「お前の如雨露から出せばいいだろ」
翠星石「あ……その手があったですよ……」
真紅「何でもいいから……水……うう」

ジュン一行は、翠星石の如雨露から出る水を飲み鋭気を取り戻した。
真紅と翠星石以外は手持ちの水が余っていたので、飲むふりをしていた。

ジュン「よし! じゃあ出発!」
雛苺「はいなのー!」

19: 2008/10/03(金) 23:03:16.29 ID:Vt6Qffje0
翠星石「汚くても水辺を歩いていると気分が晴れるです」
蒼星石「心無しか涼しい気もするしね」
ジュン「このまま順調に行けば問題無く辿り着きそうだな」
金糸雀「あっ! 真紅見るかしら!」
真紅「何よ……私は疲れているのよ。無駄話は止めて頂戴」
金糸雀「無駄じゃないかしら! ホラ、あそこで何か泳いでいるかしら!」
真紅「本当だわ……一体何かしら」
雛苺「何だか大きいのよ」
ズル……ズル……
翠星石「な、なんだか沢山いるですよ」
蒼星石「賑やかだね」
ジュン「(嫌な予感がするけど、口に出さないでおこう)」

20: 2008/10/03(金) 23:09:57.56 ID:Vt6Qffje0
薔薇水晶「お姉様お話が」
水銀燈「……何よぉ。もういいでしょ」
薔薇水晶「何も言わずに私の後ろを見てください。そして、また何も言わず前を向いてください」
水銀燈「……はぁ? 何を言って……」

水銀燈は薔薇水晶の後方に顔を向けた。そして、すぐに前に向き直した。

水銀燈「べ、べ、べ、別に大した事ないんじゃなぁい? ほ、ほほ、本当よぉ」
薔薇水晶「全員に伝えるべきでしょうか」
水銀燈「か、勝手にすればぁ」
薔薇水晶「分かりました。皆さん、後ろを向いてくれませんか」

薔薇水晶の突然の言葉に反応する一同。

ジュン「うん、間違いなくワニの大群がついて来てるな。逃げよう」

24: 2008/10/03(金) 23:17:03.70 ID:Vt6Qffje0
ジュンたちは、氏にもの狂いで駆け出した。

ジュン「に、にげっ逃げろ! もっと早く! 走れ!」
翠星石「追っかけて来るです! やべーです!」
真紅「どうしてこんな危険な道を選んだのジュン!」
ジュン「だっ、だって、現地の生物しかいません、って観光、ガイドにっ……」
蒼星石「ジュン君の持ってたあの本、観光ガイドだったの!?」
水銀燈「やっぱりついて来なければよかったわぁ」
ジュン「と、とにかく橋まで逃げろ! 後は何とかなる!」
薔薇水晶「お姉様……ご相談が」
水銀燈「こ、こんな時に、何、よぉ!」
薔薇水晶「私のお願いを聞いてくれれば、後ろのワニを退治してみせます」

29: 2008/10/03(金) 23:23:47.35 ID:Vt6Qffje0
水銀燈「本当!? お願いって何よぉ!」
薔薇水晶「2つあります。1つ目は、私の事をばらしーと呼んで欲しいのです」
水銀燈「ふ、2つめは!?」
薔薇水晶「その、キス的なものをですね……///」
水銀燈「みんなぁ! 早く橋まで逃げましょう!」
薔薇水晶「悪い条件では無いはずです」
蒼星石「……水銀燈、条件を飲むんだ」
水銀燈「なん、で、話聞いてるのよぉ! ゼェ……ハァ……」
蒼星石「もう皆限界だ、もちろん君自身も。皆を助けると思ってさ、軽くやってよ」
ジュン「! 前にもワニが!」
ズル……ズルル……
翠星石「か、囲まれちまったですぅ」
薔薇水晶「お姉様、ご決断を」
水銀燈「うう……」

32: 2008/10/03(金) 23:27:54.17 ID:Vt6Qffje0
水銀燈「この……倒してきなさい、ばらしー!」
チュッ
薔薇水晶「……感無量です」
ジュン「お前らこんな時に何やってんだ! パニック映画じゃないんだぞ!」
水銀燈「好きでやってるわけじゃ無いわよぉ!」
薔薇水晶「ふふふ……かかって来い」
雛苺「怖いのよ……」

十分後、ワニの大群(合計527頭。真紅も何故か巻き添えを食らった)は薔薇水晶によって倒された

38: 2008/10/03(金) 23:34:56.95 ID:Vt6Qffje0
ジュン「ハァ……ハァ……」
翠星石「最初から……やれです」
金糸雀「真紅大丈夫?」
真紅「何が起こったか分からないわ……ワニを退治し終わった後、いきなり平手打ちされるなんて……」
水銀燈「別にいいけど、何で真紅を叩いたのよぉ」
薔薇水晶「お姉様と一番関係が深いのは真紅ですから。前から嫉妬していたので、つい」
蒼星石「気絶したワニが転がるジャングルで平手打ちされる真紅。中々面白かったよ」
真紅「全然面白くないわ!」
翠星石「ま、危機から逃れられたから良しとするですよ」
真紅「良くないわ!」
金糸雀「あっ! そんな事より見るかしら!」

金糸雀が指差すその先には、大きな木の橋があった。間違いなく人工物のそれは、一同の好奇心を刺激した。

42: 2008/10/03(金) 23:42:09.53 ID:Vt6Qffje0
橋に辿り着いた一同は、作戦会議を始めた。

ジュン「この橋を渡った先に、原住民が住んでいる。その村まで行こうと思う」
翠星石「ちょ、ちょっと待つです! そんなの聞いてねーです!」
ジュン「言ってなかったっけ?」
雛苺「言ってないのよ」
ジュン「……まぁいいんじゃない?」
翠星石「よくねーです! そんなわけ分からん奴らのとこに行くのは危険です!」
ジュン「大丈夫だよ。もうアポは取ってあるから」
蒼星石「どういう事だい?」
ジュン「宿泊の用意とかさ、世話になろうと思って連絡しておいたんだ」
翠星石「な、なら安心ですけど……」
真紅「何と言う部族なの?」
ジュン「えーと……トゥモエ族とか何とか言ってた」
金糸雀「聞いた事無いかしら……」

45: 2008/10/03(金) 23:48:25.14 ID:Vt6Qffje0
ジュン「とにかく、今日はそこまで行ったら終わりだ。頑張るぞ!」
水銀燈「今はまだ午前十一時よぉ。ちょっと早過ぎるんじゃない?」
真紅「私もそう思うわ」
薔薇水晶「私もです。私のほうが真紅より先にそう思いました」
水銀燈「先に同意したからって好意を寄せるわけではないのよぉ……」
ジュン「なんか、村長に言われたんだよ。とにかく早く来ておけって」
金糸雀「なんか不安かしら」
翠星石「休めるなら早く休みたいです! グダグダ言ってねーで行くですよ!」
ジュン「よく言った! 出発するぞ!」
水銀燈「(何か不安なのよねぇ……)」

48: 2008/10/03(金) 23:56:46.41 ID:Vt6Qffje0
ジュン達は出発しようと腰を上げた。ここから、トゥモエ族の村までは約3キロ程である。

ジュン「さ、この橋を渡るんだ」
翠星石「あ……穴だらけです……」
真紅「これは橋じゃなくて巨大な板切れよ……」
ジュン「行くぞ皆! 足元に気をつけろ!」
雛苺「ヒナ怖いの……行けないの」
蒼星石「仕方ないね、僕がおぶってあげるよ」
雛苺「わーい! ありがとうなのー!」

ジュン一行は、ひな鳥の様な足取りで進んでいった。

翠星石「こ、こえーですぅ……」
真紅「した……下を見てはいけないわ」
金糸雀「あれ全部ワニかしら……私達が落ちるのを待ってるかしら」
蒼星石「本当だ……どれどれ」
雛苺「わっ! 蒼星石斜めになってるの! 危ないよ!」
ズルッ!
蒼星石「あ、手が滑っちゃった」
雛苺「! 嫌あああぁぁーーー!」
ジュン「ひぃぃなぁいぃちぃぃごぉぉ---!」

49: 2008/10/03(金) 23:57:12.01 ID:Vt6Qffje0
>>47
今書いてる。

52: 2008/10/04(土) 00:04:26.37 ID:W9iBl21F0
水銀燈「チッ!」
ビュン!
水銀燈「雛苺!」
バサァァ!
ジュン「おお……水銀燈がやった……」
水銀燈「大丈夫? 雛苺……」
雛苺「…………あ、あ」
雛苺「うう……うえぇぇぇえぇん! 怖かったのー!」
水銀燈「わかったから泣かないの。鬱陶しい……」
雛苺「う、う……ありがとうなの、水銀燈優しいのね」
水銀燈「別に。たまたまよぉ、たまたま///」
ジュン「おーい、上がってこーい」
バサッ バサッ  スタッ
水銀燈「ほら、雛苺離れなさぁい。邪魔よ」
水銀燈「それと蒼星石、気をつける事ね。次はないわぁ」
蒼星石「ゴメンよ雛苺、水銀燈」
薔薇水晶「(ああ……お姉様が皆をまとめている。そのお姿に私は……)」
金糸雀「薔薇水晶モジモジしてて気持ち悪いかしら」

54: 2008/10/04(土) 00:11:58.72 ID:W9iBl21F0
ジュン一行は気を取り直し、先へと進んだ。橋は長く、ジュンたちはやっと半分渡りきったところである。

ジュン「気を引き締めて行けよ」
金糸雀「ミシミシいってるかしら」
真紅「そーっとよ、そーっと」
蒼星石「ここら辺でお昼ご飯にしようか」
翠星石「冗談でも言うなです! 本気にされたら堪らんです!」
雛苺「怖いのよ……水銀燈ぅ」
水銀燈「ちょっとぉ……まとわりつかないでよぉ」
雛苺「だってぇ、水銀燈がヒナの事助けてくれたから。水銀燈だーい好き!」
水銀燈「……そう」
薔薇水晶「(その手があったか……)」

55: 2008/10/04(土) 00:16:37.76 ID:W9iBl21F0
ジュン「よし! 生還した!」
金糸雀「カナ生きてる!? ねぇ生きてる!?」
翠星石「あーハイハイ。生きてるですよ」
真紅「スリリングな橋だったわね……」
蒼星石「何とか渡れて良かったよ」
ジュン「よし、ここから村まで一本道だ! いっきに行くぞ!」
ジュン「点呼!」
水銀燈「1よぉ」
金糸雀「2かしら」
翠星石「3です」
蒼星石「4だよ」
真紅「5よ」
雛苺「6なの」
薔薇水晶「7です」
ジュン「今度は全員で言おうな! 出発進行! オー!」
雛苺「オー!」
金糸雀「少数派は嫌だから言わなかったかしら」

58: 2008/10/04(土) 00:22:21.94 ID:W9iBl21F0
ジュン一行は先を目指した。あの橋を渡りきったジュンたちの目に曇りは無い。

ジュン「あと2キロ半くらいか」
真紅「ねぇ、やっぱり早く来過ぎたんじゃなくて?」
ジュン「うーん……でも村長は夕方には着くだろうとか言ってたしな」
翠星石「でもこのままじゃ、昼過ぎには着いちまうですよ」
ジュン「だよなぁ……」
金糸雀「あのワニの大群のせいで遅れると思ったんじゃないかしら」
ジュン「かもな。それが妥当なところだろ」

余裕の面持ちで進む一同。そして村まで一キロ半となったところで、大問題が発生する。

翠星石「何ですコレは……」
ジュン「いや、崖だろ……どう見ても」
翠星石「んなもん言わなくても分かってるです!」

60: 2008/10/04(土) 00:28:01.45 ID:W9iBl21F0
ジュン「深い……すごく深いぞコレ」
蒼星石「何か落としてもみようか」
ジュン「冒険モノの定番だな。やってみよう」
蒼星石「じゃ、これを」
真紅「それ私の水筒! 貴女が持っていたのね!」
蒼星石「じゃ、行くよ」
真紅「待って! それはのりが私のために買ってくれたピンク色の……」
ポイッ
真紅「水筒ーーーー!」
…………
ジュン「無音だ……底無しなのか」
蒼星石「これは危険だね」
真紅「ううっ、く、ひっく……」
金糸雀「調べる意味無かったと思うかしら」

64: 2008/10/04(土) 00:38:13.28 ID:W9iBl21F0
ジュン「さてどうしよう。これを渡るには……」
水銀燈「お先に失礼するわぁ」
バサッバサッ
翠星石「あっ! 水銀燈ずりーです! 翠星石も運びやがれです!」
水銀燈「やぁよ。ジャンプでもすればぁ?」
翠星石「ぐぬぬ……鞄でビューンと飛べれば楽ですのにぃ……」
ジュン「この崖……助走をつければ飛べるか……?」
真紅「グス……ふぅっ、うぅっ、くっ……グス」
雛苺「無理なのよ……」
ジュン「おーい水銀燈! 今からそっちに飛ぶから仕切ってくれー!」
水銀燈「はぁ!? 何を仕切るのよぉ!」
ジュン「みんなのやる気を起こしてくれ! あとでヤクルトやるからさ!」
水銀燈「……嫌よ」
ジュン「普通のヤクルトじゃないぞ。ヤクルト400だぞ」

※ちなみに、乳酸菌シロタ株の量はヤクルトが150億個、ヤクルト400が400億個です

水銀燈「ぎ、銀ちゃんの第一回崖とび大会~!」

68: 2008/10/04(土) 00:44:03.12 ID:W9iBl21F0
水銀燈「さぁ、全員生還目指して頑張ってもらいましょう!」
ジュン「順番はドールズの順番でいいだろ。というわけだ、金糸雀」
金糸雀「ええ!? い、嫌かしら!」
水銀燈「おーっと、何か揉めているようでぇ……は、恥ずかしぃ……」
薔薇水晶「お姉様素敵」
ジュン「行くんだ金糸雀! さぁ早く!」
金糸雀「! 今名案が浮かんだかしら! 行くわよ!」
ダダダッ!
金糸雀「でぇい!」
蒼星石「跳ぶと同時に傘を広げた!」
金糸雀「フワフワと落下していくかしら!」
スタッ!
金糸雀「完璧かしら!」
ジュン「すげぇ、初めて策士の顔を見た……」

71: 2008/10/04(土) 00:50:34.98 ID:W9iBl21F0
水銀燈「次は翠星石よぉ。行きなさぁい」
蒼星石「水銀燈はテンションを考えたようだね」
薔薇水晶「どっちにしても素敵です」
翠星石「普通ならこの如雨露で木を生やして終わりです。皆もそれで渡れて最高です」
翠星石「でも、そんな事しねーです! 翠星石の技を見よ!」
蒼星石「あ、あれは!」
ジュン「如雨露が勢い良く水を噴き出している! その力を利用する気か!」
雛苺「わー、虹がかかってるのー」
蒼星石「でも駄目だ! 全然距離が伸びない」
真紅「……」
ジュン「後でアメやるからさ……元気出せよ真紅」
蒼星石「いけない! 落ちる!」
翠星石「おおおお! 落ちる、でっ、すぅぅぅ!!」

76: 2008/10/04(土) 00:56:46.00 ID:W9iBl21F0
ガッガガガガガ!
翠星石「おおおぉぉ!!」
蒼星石「如雨露を壁に突き刺している! 無理矢理止まる気か!」
ジュン「庭師として、道具をあんな風に使うのはどうなんだろうか」
ガガガガ、ガッ!
翠星石「か、間一髪です……」
蒼星石「と、止まった……」
翠星石「後は、よじ登るだけです。んしょ、んしょ……」
ジュン「頑張れ! 頑張れ翠星石!」
翠星石「あと……少しですぅ……もう、ちょっと」
ガシッ!
金糸雀「よくやったかしら。手を離しちゃ駄目かしら」
翠星石「金糸雀……助かったです」
グイッ!  スタッ!
翠星石「見事生還です!」

78: 2008/10/04(土) 01:01:45.36 ID:W9iBl21F0
蒼星石「次は僕か……」
翠星石「頑張るですよ!」
蒼星石「今まで、僕は翠星石とは苦しみさえも分かち合ってきたつもりだ。だから……」
ダダダダッ!
蒼星石「君だけに辛い思いはさせない! 僕達はいつも一緒だ!」
ジュン「跳んだ! まさか翠星石と同じでよじ登るつもりか!」
蒼星石「行けえええ!」
スタッ
蒼星石「あれ?」
雛苺「普通に着いちゃったのよ」
ジュン「蒼星石は基礎能力が高いからな。普通に行けるのか」
蒼星石「えーと……」
蒼星石「無事、生還だね!」

81: 2008/10/04(土) 01:07:59.46 ID:W9iBl21F0
ジュン「真紅、次はお前だぞ」
真紅「……分かっているわ」
ジュン「策はあるのかよ」
真紅「ええ。実は雛苺とコンビで行こうと思っているの」
雛苺「はいなの!」
真紅「では行きましょう雛苺」
雛苺「がんばるのよー!」
ダダダッ
真紅&雛苺「それっ!」
ジュン「二人同時に跳んだ!」
真紅「雛苺! 行きなさい!」
ブンッ
ジュン「空中で雛苺を投げた!? でもそれじゃ真紅、お前は……」
雛苺「まだげーむおーばーじゃ無いのよ!」
ジュン「かっこいい台詞と共に苺わだちを!?」
真紅「いい子ね、雛苺」
スタッ
真紅「無事生還したわ」
雛苺「うい!」

83: 2008/10/04(土) 01:14:15.84 ID:W9iBl21F0
ジュン「じゃあ次は薔薇水晶か」
薔薇水晶「……」
スタスタ……
ジュン「水晶の橋を渡っている……」
タッ!
薔薇水晶「お姉様……会いたかった」
水銀燈「……」
ジュン「おいおい。これで僕一人か」
雛苺「ジュンも早く来るのよー」
翠星石「来る方法なんかあるんですかね?」
蒼星石「見て、ジュン君が離れていく。助走をつける気だよ」
ジュン「僕ならやれる……いける……いける」
金糸雀「なんかブツブツ言ってて怖いかしら」
ジュン「おおお!!」
ダッダッダッダッダ!
ジュン「うおおおおおーー!」
ダンッ!
蒼星石「跳んだ! これはいい跳躍だ!」
翠星石「というか、最初からこの作戦でやるつもりだったですか!?」
水銀燈「どうしてあんなに落ち着いていられたのかしらねぇ……」

86: 2008/10/04(土) 01:21:28.02 ID:W9iBl21F0
ジュン君は跳んだ。両手を広げ、片足を曲げ、全身で風を感じるその姿は、太陽の光もあって輝いて見えた。
人々はそれを何と表現するだろう。僕は感動を禁じ得ない。
彼は、不氏鳥だったのだ
(蒼星石の日記より一部抜粋)

ジュン「着地! 何とか全員無事か」
真紅「貴方が超人だという事がわかったわ」
ジュン「体を鍛えておいたんだ。通販とかで」
蒼星石「……」
翠星石「何目頭押さえてるですか?」
水銀燈「ねぇそれより……」
ジュン「ああホレ」
ポイッ
水銀燈「! 貰っちゃったぁ貰っちゃったぁ♪ ヤクルト400貰っちゃったぁ♪」
薔薇水晶「(ヤクルト400か……メモメモ……)」
ジュン「よし! 行くぞ!」

88: 2008/10/04(土) 01:27:33.54 ID:W9iBl21F0
ジュン一行は更に奥へと進んでいった。そして、ついに村へと辿り着いたのである。

翠星石「む、村です! 村が見えたですよー!」
蒼星石「ついに辿り着いたね……」
真紅「まだ夕方では無いけれど……結局なんだったのかしら」
ジュン「まぁいいじゃないか。並みの奴らなら夕方までかかる、とかそんな意味だよきっと」
真紅「そうかしらね……」
翠星石「じゃあ早速行くですよ」
ジュン「待て待て。いきなり行くとびっくりするから、僕が先に行って来る」
金糸雀「気をつけるかしら!」
水銀燈「誰かこっちに来たわよぉ」
ジュン「ちょうどいい。話してくる」

90: 2008/10/04(土) 01:31:20.04 ID:W9iBl21F0
トゥモエA「……」
ジュン「……」

翠星石「何やら話し込んでるですよ……」
水銀燈「上手くいくといいわねぇ……」
薔薇水晶「(普通に打ち解けているお姉様も素敵です……)」
真紅「ジュンが来た。結果が出たようね……」

ジュン「お待たせ」
翠星石「どうだったですか!?」
ジュン「中に入れってさ。遅めだけどお昼にするそうだ」

92: 2008/10/04(土) 01:42:04.08 ID:W9iBl21F0
ジュン一行はトゥモエ族からの手厚いもてなしを受け、大量に運ばれてくる料理に舌鼓を打ち、鋭気を回復させていった。
何の肉を使っているとかは訊かないでおいた。

ジュン「お腹いっぱいで大満足だな」
翠星石「意外と裕福な村ですぅ。水も綺麗だったですよ」
真紅「これは良い所を見つけたわね、ジュン」
ジュン「優しい人たちで助かったよ」
金糸雀「そういえばジュンはトゥモエ族を知っているのかしか?」
ジュン「ん? ああ普通は聞いた事ないよな。ホラ、ここに書いてある」
蒼星石「見てみようか」


トゥモエ族
独自の文化を形成している原住民である。村全体の人数は200数名で、男と女の比率は同程度。
原住民としては、かなり裕福な部類に入ると見ていいだろう。ちなみに動物の皮で作った布を身にまとっている。
竹で作った棒状のもの(日本の竹刀に近い)を武器とし、これをトゥモエと呼ぶ。そのため、トゥモエ族という名がついた。

96: 2008/10/04(土) 01:50:15.90 ID:W9iBl21F0
ジュン「なんかどっかで聞いた事あるような部族名だよな」
雛苺「うゆ……」
蒼星石「どうしたんだい雛苺」
雛苺「なんか……思い出しそうだけど駄目なの。出て来ないの」
翠星石「別にどーでもいーです」
水銀燈「顔に見覚えも無いしねぇ」
薔薇水晶「(当たり前の事を言うお姉様も素敵……)」
ジュン「ま、いいだろ。それより皆、今からトゥモエ族の人達が僕らの無事を祈るお祭りをするらしいぞ」
翠星石「うわー……テレビとかで見るですよ。訳分からん踊りとかするですか……」
真紅「私は欠席してもいいかしら」
ジュン「駄目だ。さ、行くぞ。今日は泊めてもらうんだから、せめてこれくらいは付き合わないと」
金糸雀「ジュンも何気に酷い事言ってるかしら」

100: 2008/10/04(土) 01:56:40.98 ID:W9iBl21F0
そして、お祭り開始となった。

ジュン「……」
トゥモエA「トゥモエトゥモエ!」
真紅「……」
トゥモエB「トゥモエトゥモエトゥモエ!」
翠星石「……もう三時間は踊ってやがるです。日も暮れてきたです……」
蒼星石「これは辛いよ……しかも僕達は体育座りで見てるだけ」
水銀燈「さっきから小さな炎の周りをグルグルグルグル……飽きないのかしらぁ」
トゥモエC「トゥモエ! トゥモエ!!」
翠星石「金糸雀が注意されてるです。寝てるからですよ」
金糸雀「うう……うな垂れてただけかしら……」

その後、現地時刻で午後七時になるまで踊りは続いた。

103: 2008/10/04(土) 02:03:30.15 ID:W9iBl21F0
ジュン「やっと終わった……今から夕飯だってよ……」
真紅「疲れた……もう眠いわ」
翠星石「ゴハン食えるなら別に我慢してやるですぅ……」
トゥモエA「ジュン……トゥモトゥモエ」
ジュン「はい……何ですか」
翠星石「まーた話してるですよ」
水銀燈「今度は何かしらね」
薔薇水晶「予想はつきますが」
ジュン「はい……わかりました。ありがとう」
真紅「何だったの?」
ジュン「もう飯の準備は出来てるそうだ。食い終わったら、また踊るんだと」
真紅「えぇ~……」
ジュン「真紅のそんな反応初めて見たよ……とにかく飯食いに行こう……」

105: 2008/10/04(土) 02:08:26.97 ID:W9iBl21F0
夕食も豪華なものであった。しかしこの後に踊りが控えていると思うと、一行の食欲はいまいち伸び悩んだ。

ジュン「もういらね……」
真紅「ご馳走様……」
ジュン「さ、踊り見に行くかぁ」
金糸雀「何時までやる予定かしら?」
ジュン「約二時間みたいだぞ。十時には終わるよ」
金糸雀「うええ……」
水銀燈「とっと行ってとっとと終わらせましょう」
翠星石「今回は水銀燈の言うとおりです……」

109: 2008/10/04(土) 02:17:19.70 ID:W9iBl21F0
ジュン達は先程と同じ様に地面に座った。そして、同じ様な踊りを見せ付けられた。

ジュン「これはもう堪らないな……」
真紅「眠いわ……眠い」
翠星石「何時までやるですか……」
トゥモエA「トゥモエトゥモエ、トゥーモエ」
ジュン「え? 何?」
真紅「話し込んでいるわね……」
雛苺「気になるの」
ジュン「そうですか、分かりました」
翠星石「何だったですか?」
ジュン「何か、今から代表一人を選んで祈りをそいつに込めるんだとさ」
蒼星石「へぇ……何だか面白そうだね。このまま見ているよりは良いかもしれないね」
ジュン「僕は代表に選ばれないみたいなんだ。だから残りの皆で代表を決めてくれ」
翠星石「ここはジャンケンで決めるですよ」
真紅「負けた子が代表な訳ね」
蒼星石「じゃあ行こうか」
翠星石「ジャーンケーン……」

111: 2008/10/04(土) 02:21:14.61 ID:W9iBl21F0
水銀燈 グー
金糸雀 パー
翠星石 パー
蒼星石 パー
真紅 パー
雛苺 パー
薔薇水晶 パー

水銀燈「ちょっ……まっ」
翠星石「やった! 勝ったですー!」
真紅「ふぅ……危なかったわ」
金糸雀「やったかしら!」
水銀燈「ちょっと待ちなさいよぉ! 何かの間違いよぉ……」
ジュン「水銀燈…………行こうか」
水銀燈「うう……」

114: 2008/10/04(土) 02:26:54.64 ID:W9iBl21F0
水銀燈「な、何する気よぉ……」
トゥモエA「トゥモエトゥモエトゥモエトゥモエ!」
ジュン「今から持ってくる柱にくくり付けるそうだ。暴れなきゃ痛くないってよ」
水銀燈「ちょっとぉ……」
薔薇水晶「(あの不安そうな瞳……堪らないです……)」
トゥモエB「トゥモエ!」
水銀燈「痛っ! 手荒に扱うんじゃ無いわよぉ。私はローゼンメイ、」
トゥモエC「トゥモエトゥモエ」
ジュン「準備完了だってさ」
水銀燈「縛っただけじゃないの……こんなのただの嫌がらせよ」
トゥモエD「トゥモエトゥモエトゥモエトゥモエ」
ジュン「おお、アレがトゥモエかぁ。本当に竹刀に似てるなぁ」
蒼星石「(何が始まろうというんだ……ワクワクしてきた)」

117: 2008/10/04(土) 02:32:19.75 ID:W9iBl21F0
翠星石「全員に棒を渡し始めたです」
真紅「あれを使って何をするのかしら」
ジュン「準備出来た? あ、そう。水銀燈、準備出来たってさ」
水銀燈「ちょっとぉ、何するのよぉ」
ジュン「じゃ、早速お願いします」
トゥモエA「トゥモエ!」

トゥモエ族は水銀燈の体を、傷がつかない程度の力で突き始めた。

水銀燈「ちょっと……何コレ、痛い痛い!」
薔薇水晶「お姉様……お姉様……」
ジュン「うわ、コレはコレは」
金糸雀「なんか変な感じになってるかしら」
水銀燈「ちょっとぉ……何なのよぉ」

120: 2008/10/04(土) 02:39:01.68 ID:W9iBl21F0
薔薇水晶「(ああお姉様……私は興奮を抑える事が出来そうにありません……)」
トゥモエA「トゥモエトゥモエットゥモエ」
ツンツンツンツン
水銀燈「ちょ……止め、止めなさいよぉ」
蒼星石「ねぇ、何だか卑猥だよ」
真紅「いやらしいと言った方がいいわね」
翠星石「えOちです」
ジュン「てゆうか、何プレイだよコレは……」
薔薇水晶「(お姉様……こんな私を許して……)」
水銀燈「ちょっとホントに……っ、く……」
蒼星石「(ふふ……ふふふ……)」
薔薇水晶「(お姉様……ふふふふ)」
蒼&薔薇「あーっはっはっはっは!」
真紅「何故か笑い出しているわ……」
ジュン「なんだこの光景は」
金糸雀「客観的に考えると気が滅入るかしら」

124: 2008/10/04(土) 02:46:22.60 ID:W9iBl21F0
ジュン「もう少しだ、頑張れ水銀燈!」
水銀燈「んっ……わ、分かって、る」
薔薇水晶「(もう限界……これ以上は理性が……)」
ダッ!
薔薇水晶「もう止めて! お願い!」
水銀燈「薔薇水晶……」
薔薇水晶「お姉様、約束が」
水銀燈「覚えてたのねぇ……ば、ばらしー」
薔薇水晶「もうこんな事は止めて下さい! お姉様が、うう……」
水銀燈「ばらしー……」
薔薇水晶「(お姉様と触れ合うのは私一人で十分)」

128: 2008/10/04(土) 02:52:51.26 ID:W9iBl21F0
ジュン「……」
トゥモエA「……」
真紅「また話し込んでいるわ」
翠星石「薔薇水晶の言葉を訳してるですよ」
ジュン「そうですか、ありがとう」
金糸雀「どうだったの?」
ジュン「ちょっとやりすぎたってさ。これで祭りは終了だって」
水銀燈「ホッ……」
薔薇水晶「ああお姉様、今縄をほどきます……」
水銀燈「……あり、がとう」
薔薇水晶「(お姉様……今貴女は最後の防波堤を決壊させました。ふふふふ……)」
蒼星石「……」
翠星石「なに黙ってるですか蒼星石」
蒼星石「いや、何でもない。何でもないんだよ……」
金糸雀「何か怖いかしら……」

130: 2008/10/04(土) 03:03:49.65 ID:W9iBl21F0
こうしてジュン達の異様な光景は終わった。

ジュン「話の分かる人たちでよかったよ。ちょっと不満そうだったけど」
翠星石「どっちにしても早めに終わったからいいですよ」
水銀燈「一時はどうなる事かと……」
真紅「ホラ、起きなさい雛苺。ベッドまでは自分で行くのよ」
雛苺「うゆぅー。眠いのよ……」
ジュン「えーと、ここが今日の寝床だ」
真紅「思っていたよりは立派ね」
翠星石「葉っぱだけだと思ってたです。毛皮みたいなのがあるですよ!」
ジュン「良く寝れそうだな。本当に思っていたより立派だ」
金糸雀「さ、もう寝るかしら」
薔薇水晶「(寝る……寝る……)」
ジュン「じゃ、みんな消灯だ。寝るぞ!」
雛苺「うるさいのー、眠れないの」
真紅「雛苺に言われたら形無しね。それじゃ、お休みなさい」
ジュン「おやすみ」

一同は疲れを癒すため眠りについた。数名を抜かして。

132: 2008/10/04(土) 03:11:35.85 ID:W9iBl21F0
夜 午前二時半。

ジュン「うーん……おがっ」
ジュン「目が覚めてしまったな。どうしよう」
雛苺「……なの……なの……」
翠星石「……それは照り焼きですぅ……違うですぅ……」
真紅「……本当です……信じてくださ、い……」
ジュン「こいつらってこんなに寝言激しかったのか。知らなかったな」
金糸雀「Zzzz」
ジュン「あーあ、布団蹴っ飛ばして。まったく」
ジュン「ん? あれ?」
金糸雀「……かしらー……」
ジュン「蒼星石と薔薇水晶と水銀燈がいない。トイレかな」
ジュン「ううっ……僕もトイレに行ってくるかぁ」

135: 2008/10/04(土) 03:20:30.02 ID:W9iBl21F0
ジュン「うう、外は冷えるな。トイレはどこだ?」
スタスタ……
ジュン「ここかなぁ、それともこっち?」
ジュン「(ん? あそこから微かに光が漏れている。もしかしてあそこがトイレか?)」
ジュン「こっちの民族がトイレに光を灯すとも考えにくいけど……」
タッタッタ……
ジュン「トイレにしては広すぎるな。何やってんだ? ちょっと覗いてみるか」
スッ
蒼星石「ホラ、どうしたの? もっと頑張ってよ……」
トゥモエA「トゥモエトゥモエ!」
トゥモエB「トゥモエトゥモエトゥモエ!」
蒼星石「何言ってるか解んないよ。そんなに気持ちイイ?」
シュコ……シュコ……
トゥモエA「トゥモットゥモエ……」
トゥモエB「トゥモトゥモエモエ……」
蒼星石「こんな風にされた事ないんだ……へぇ」

ジュン「何やってんだアイツは……」

136: 2008/10/04(土) 03:24:07.12 ID:W9iBl21F0
蒼星石「ねぇ……今どんな気分? 気持ちイイ?」
シュッシュッシュ……
蒼星石「気持ちイイんだね……ぬるぬるしてきたよ……」
蒼星石「まだ夜は長いんだ……楽しもうよ」
トゥモエA「トゥモエトゥモエ!」
トゥモエB「トゥモエトゥモエトゥモエトゥモエ!」
蒼星石「ふふ……」
蒼星石「もっと凄い事してあげるよ……」

ピシャリ
ジュン「見なかった事にしよう。僕は何も見ていない」

137: 2008/10/04(土) 03:28:49.81 ID:W9iBl21F0
スタスタ……
ジュン「あいつは駄目だ……放っておこう。話にならない」
スタスタ、
ジュン「ん、ここがトイレっぽいな。なんか掘ってあるし」
ジュン「……」
ジュン「ふぅ、スッキリした。……戻るか」

140: 2008/10/04(土) 03:34:21.19 ID:W9iBl21F0
ジュン「そういえば水銀燈と薔薇水晶もいなかったよな……」
ジュン「(まさか……蒼星石と同じ様な……まさかな)」
ダッ!

ジュンが駆け出すまでにさほど時間はかからなかった。

ジュン「あの馬鹿共。いや、馬鹿水晶め。どこにいる?」
ジュン「ん……もしかしてあれかぁ?」

ジュンは村のはずれにある木の根元に、薔薇水晶と水銀燈を見つけた。

ジュン「(よし、ここなら様子を伺える。いかがわしい事は阻止してやるぞ)」

142: 2008/10/04(土) 03:38:52.53 ID:W9iBl21F0
水銀燈と薔薇水晶は、二人仲良く並んで座っていた。

水銀燈「話って何よぉ」
薔薇水晶「お姉様、先に申し上げておきます。それは嘘です」
水銀燈「でしょうねぇ」
薔薇水晶「知っていたのですか?」
水銀燈「勘よぉ、ただの勘」
薔薇水晶「お姉様……」
水銀燈「本当は何が目的なのよぉ」
薔薇水晶「単刀直入に申し上げます、お姉様。今宵、薔薇水晶と一つになりましょう」
水銀燈「嫌よ」

144: 2008/10/04(土) 03:45:03.39 ID:W9iBl21F0
薔薇水晶「そんな……お姉様への愛は本物です!」
水銀燈「だから何よぉ。私にその気は無いわ」
薔薇水晶「あぁん、お姉様~。いいじゃないですかちょっとくらい~」
水銀燈「重いから寄り掛からないで」

ジュン「(何よりかかってんだよ……高校生かお前ら)」

薔薇水晶「……ねぇお姉様。もし今、私がお姉様を襲ったらどうします?」
水銀燈「それは闘うという意味かしら」
薔薇水晶「いえ、性的な意味です」
水銀燈「全力を持って排除するわぁ」
薔薇水晶「……いけず、ですね」
水銀燈「そうねぇ」

ジュン「(なに夜空見上げながら話してんだ)」

146: 2008/10/04(土) 03:56:18.89 ID:W9iBl21F0
薔薇水晶「ねぇお姉様」
水銀燈「何よぉ」
薔薇水晶「私はさっきまで、お姉様と無理にでも一つになろうとしていたんです」
水銀燈「……」
薔薇水晶「でもここまで連れてきて、そして横に並んで話をした瞬間」
水銀燈「……瞬間?」
薔薇水晶「私の中からやましい感情が飛んでしまいました。残ったものは、なんだか暖かいもの……」
薔薇水晶「お姉様。私、この旅に参加出来てよかったです」
水銀燈「旅と呼べる程のものではない気もするけど」
薔薇水晶「慕っているのなら、話しているだけでも幸せなのですね……」
水銀燈「……ハァ」
薔薇水晶「お姉様?」
水銀燈「……気の迷いよぉ。ご褒美あげるわぁ」
チュッ……
薔薇水晶「っ……お姉様……」
水銀燈「これっきりよ、本当に」
薔薇水晶「お姉様……」

ジュン「(……もう帰ろう)」

148: 2008/10/04(土) 04:02:31.78 ID:W9iBl21F0
ジュンはその場から離れ、寝床へと到着していた。

ジュン「まったく……最後に甘いもん見せられたな」
ジュン「うわ、蒼星石のやつまだ帰ってきてない。……僕は何も見てないからな」
ジュン「フンッ! お休み!」

ジュンは、モヤモヤした感情をぶつけるが如く眠りについた。
その後誰よりも早く起きたジュンが自分のパンツを洗った事は、ジュンだけの秘密である。

152: 2008/10/04(土) 04:12:16.20 ID:W9iBl21F0
そして、朝となった。

翠星石「ふぅわ……よく寝たです」
真紅「中々の寝心地だったわ」
雛苺「うゆぅー……」
金糸雀「ばっちり元気かしら!」
ジュン「おお皆……おはよう」
蒼星石「ジュン君おはよう!」
翠星石「蒼星石、何かテカテカしてるですよ。」
蒼星石「そうかな、アハハハ」
真紅「一番良く休めたのでは無くて?」
蒼星石「そうかもね。一番かもしれないなぁ」
ジュン「(僕は何も見ていない僕は何も見ていない)」

153: 2008/10/04(土) 04:12:34.53 ID:W9iBl21F0
眠いナリ

154: 2008/10/04(土) 04:16:57.73 ID:W9iBl21F0
雛苺「あっ、水銀燈! おはようなのー!」
水銀燈「え、ええ……」
翠星石「なんだか元気無いですねぇ……」
水銀燈「な、中々寝つけなかったのよぉ」
薔薇水晶「綺麗な月の見える大きな木の下で……しっぽりと……」
翠星石「?」
水銀燈「な、何でもないわよぉ///」
ジュン「(こっちも色々あったからなぁ……)」
蒼星石「へぇ……」

156: 2008/10/04(土) 04:27:21.07 ID:W9iBl21F0
ジュン「さ、朝ごはんだ朝ごはん。皆行くぞ」
ジュン「(食べる事で何もかも忘れてしまおう。昨日の事も今朝の事も)」
金糸雀「お腹ペコペコかしら!」
雛苺「ごっはんーごっはんー」
真紅「じゃあ行きましょう」
翠星石「朝ごはんに突撃ですぅ!」
ジュン「はぁ……」
蒼星石「ねえジュン君」
ジュン「! なな、何だよ蒼星石」
蒼星石「ジュン君」
ジュン「何だ、よ……」
ボソボソッ
蒼星石「今度ジュン君にもしてあげるね」
ジュン「!」
蒼星石「早く行かないと朝ごはん無くなっちゃうよ!」
タッタッタッタ……
ジュン「(気づいていたというのか……何と言う事だ)」

157: 2008/10/04(土) 04:41:20.39 ID:W9iBl21F0
ジュン一行は、朝食で腹を満たした。特にジュンの食べっぷりには鬼気迫るものがあり、一同を驚かせた。
そして、トゥモエ族との別れの時がやってきた。

ジュン「トゥモエトゥモーエ」
トゥモエA「トゥトゥ、トゥモエトゥモートゥモエ」
ジュン「(なんで股間を押さえてるんだよ……)」

ジュンとトゥモエ族達は抱擁を交わし、互いの無事を祈り合った。そしてジュン達は村を出るのである。
これからいよいよ、ジュン一行は本題へと躍進していく。

ジュン「ふぅ、結構歩いたか……」
翠星石「もう村が見えんです」
真紅「今はどこなのかしら」
ジュン「ええと……ここは村とロゼーンのいるエリアとの、ちょうど中間地点ってとこだな」
金糸雀「じゃあもうすぐかしら!」
翠星石「ロゼーンとか久しぶりに聞いた気がするです」

159: 2008/10/04(土) 04:48:40.93 ID:W9iBl21F0
ジュン「さ、ここからは気を引き締めろよ」
雛苺「ハイなの!」
ジュン「よし! 朝の点呼いっとくか! 番号!」
水銀燈「1よぉ」
金糸雀「2かしら」
翠星石「3です」
蒼星石「4だよ」
真紅「5よ」
雛苺「6なの」
薔薇水晶「7ですお姉様」
ジュン「一致団結! ファイト! オー!」
…………

ジュンは泣かなかった。何とか堪えたのだ。

161: 2008/10/04(土) 04:58:44.22 ID:W9iBl21F0
ジュン「もう少しだみんな、頑張れよ!」
翠星石「足が疲れてきたです……」
蒼星石「急勾配の道が多かったからね。疲労が足にくるんだよ」
真紅「水……もう無いわ」
スッ……
水銀燈「ホラ、飲みなさいよぉ」
真紅「水銀燈、どうして……」
水銀燈「ちょっと、まぁ……色々あったのよぉ。早くしなさい、引っ込めるわよ」
真紅「水銀燈……」
ジュン「ここに来て、チームがまとまってきたな」
薔薇水晶「(優しいお姉様もやっぱり素敵……)」

ジュン達の結束は深く、深く。大地にしっかりと根を張るこの木々たちの様に強くなっていたのである。

ジュン「もうそろそろか。真紅、アレを」

162: 2008/10/04(土) 05:10:53.59 ID:W9iBl21F0
真紅「?」
ジュン「お前! 今さっき結束がどうとか言ってただろ! それくらい解れよ!」
ジュン「あの機械だよ。お前らが出発前に遊んでたやつ!」
真紅「あぁ、これね」
ジュン「そうそう、これだよ」
蒼星石「なんだいコレ」
ジュン「これは電波を受信する装置なんだ。30万もしたんだぞ」
水銀燈「騙されてるんじゃないの、ソレ」
ジュン「何言ってんだ! 家でちゃんと試したさ。なあ真紅」
真紅「ええ、あっちこっちでビコンビコンとうるさかったわ」

165: 2008/10/04(土) 05:21:11.53 ID:W9iBl21F0
ジュン「何でもロゼーンは体の中に電気を生み出す器官があって、それで身を守ったりも出来るらしいんだ」
金糸雀「なんか嘘くさいかしら」
蒼星石「その時に放出される電波をもしも辿る事が出来たら……」
ジュン「ああ。ロゼーンも簡単に捕獲できるだろうさ」
翠星石「そんなに上手くいくとは思えんです」
ジュン「大丈夫、成功する。なんて言っても30万したからな」
ビコンビコン!
雛苺「光ってるの!」
ジュン「いる、近くにいるぞ! 皆、捕獲用の道具は各自持ってくるよう指示しておいたはずだ。早く取り出すんだ!」

166: 2008/10/04(土) 05:28:38.09 ID:W9iBl21F0
水銀燈「私はこの紙袋よぉ。めぐから貰ったの」
金糸雀「カナはみっちゃんからボウルを貰ったかしら! みっちゃんが持ってる中で一番大きなサイズなのよ!」
翠星石「翠星石は虫取り網を持って来てやったです。これでパパパっと捕まえられるですよ」
蒼星石「僕はおじいさんからハチミツを貰ったよ。これでおびき寄せるのかな」
真紅「私はくんくん探偵セットを持ってきたわ。とりあえず大切な宝物を持ってくる事にしたのよ」
雛苺「ヒナはね、くれよんと画用紙を持ってきたのー! これでろぜーんを描いてあげるの!」
薔薇水晶「私は手ぶらで来ました」
ビコンビコーン!
ジュン「……」
蒼星石「ジュン君……ハチミツ舐めるかい?」
ビコンビコン……
ジュン「よし、一旦作戦会議だ」

168: 2008/10/04(土) 05:37:54.54 ID:W9iBl21F0
ジュンは失望した。これは何かの間違いであって欲しいと切に願った。しかし、それは叶わなかった。
紙袋、ボウル、網、ハチミツ、くんくん探偵セット、お絵かきセット。これでどう闘えと言うのだ。

ジュン「お前らにはがっかりさせられたよ……」
翠星石「別に使えんことも無いです!」
ジュン「馬鹿かお前は! こんなもん何の役にも立たんわ!」
金糸雀「キャラ変わってるかしら」
ジュン「どうすんだよお前ら! こんなガラクタ集めて!」
真紅「ちょっと! くんくんはガラクタなんかじゃ無いわ!」
ジュン「うるさいよ!」
翠星石「じゃあジュンはちゃんと用意してるですか!?」
ジュン「モチロンだ! 本当はみんなで別れて探す予定だったからな。自分の分はしっかり用意してる」
真紅「見せてもらおうじゃないの」
ゴソゴソ……
ジュン「ジャーンッ! 全身ゴムスーツだ!」

171: 2008/10/04(土) 05:47:22.59 ID:W9iBl21F0
ジュン「ロゼーンは電気を使えるってのはさっき話したろ? てことはさ、それは最大の武器であり唯一の武器でもあると思うんだ」
翠星石「蒼星石、みんなでハチミツ食うですよ」
ジュン「きっとロゼーンは敵と遭遇したら、まず真っ先に電気を使ってくる。これは間違い無い」
翠星石「美味しい! このハチミツはすっげーです!」
蒼星石「親戚の人から貰ったんだって。自家製のハチミツらしいよ」
ジュン「そこでこのスーツの出番だ。これなら感電する事はない」
蒼星石「薔薇水晶と水銀燈もどうぞ」
薔薇水晶「ハチミツは初めて食べました……優しい甘さですね」
水銀燈「砂糖だけじゃ出せない味ねぇ」
ジュン「近づいて感電させてやろうと目論むロゼーンを逆にしっかりキャッチ! どうだこれなら完璧だろ!」
真紅「これは紅茶に合う甘さね」
金糸雀「お菓子にも合うかしら!」
雛苺「甘くて美味しいの……」
ジュン「聞け!」

173: 2008/10/04(土) 05:56:35.24 ID:W9iBl21F0
ジュン「とにかく、お前らは各自の道具で何とかしろよ! 僕は今から着替える!」
翠星石「うるせー奴です」
真紅「どうでもいいけれど、着替えるのなら木の裏側にでも隠れて頂戴」
ジュン「もう下は穿いちゃったから別にいいだろ」
ビコンビコン!
ジュン「まったく……」
ビコビコビコビコ!
ジュン「うるさいな! 30万もしたんだ、静かにし……ろ……」

ジュン達の目の前には、身の丈5メートルはあろうかという猛獣が立ち塞がっていた。
その猛獣は血走った目を見開き、ジュン一行を睨みつける。

真紅「こ、これこ、れ、これ、が、ロゼーン?」
ジュン「違う……こ、れは、ロゼーンじゃない……普通のゴリラだ」

175: 2008/10/04(土) 06:03:27.25 ID:W9iBl21F0
蒼星石「でも……さっきからビコビコいってるよ」
ジュン「じゃあ、これがロゼーン?」
翠星石「もっと可愛いのを想像してたです……こんなの無理です」
薔薇水晶「この機械、どこを押してもビコビコいっています。壊れたんだと思います」
真紅「ジュン……何とかして頂戴」
ジュン「無理だろ……普通に勝てないぞ」
真紅「あの壊れた機械のせいで怒っているのよ!? 音が刺激したのよ!」
ジュン「根拠の無い事を言うなよ! 馬鹿真紅!」
翠星石「喧嘩してる場合じゃねーです! 来るですよ!」
水銀燈「(こうなったら何とかやれるところまでやって……)」
薔薇水晶「お姉様、ここで提案があります」

176: 2008/10/04(土) 06:09:45.62 ID:W9iBl21F0
薔薇水晶「もしもお姉様が私の願いを叶えてくれるなら、あの怪物ゴリラを倒してみせます」
水銀燈「あのワニの時と同じねぇ……」
薔薇水晶「はい、そうです」
水銀燈「……願いって何」
薔薇水晶「その、お姉様と大人のキッスを……///」
水銀燈「昨日は、話すだけで幸せとか言ってなかったかしらぁ?」
薔薇水晶「やはり現物的なものも欲しくなります」
水銀燈「流石に断るわぁ」
薔薇水晶「お姉様、お願いです。全員を救う為です」
水銀燈「なら見返り無しにやりなさいよぉ」
薔薇水晶「お姉様……お願いします」
水銀燈「うう……」

177: 2008/10/04(土) 06:16:05.97 ID:W9iBl21F0
薔薇水晶「ご決断を、お姉様」
水銀燈「……一回だけよぉ」
薔薇水晶「っ……やった!」
水銀燈「じゃあ……」
クチュ、
薔薇水晶「つっ……ふっ……」
チュク、チュゥ……
薔薇水晶「ふっ、うっ……」
水銀燈「っ……ぷは。これでどう?」
薔薇水晶「お……お姉様ぁ!」
ガシッ!
水銀燈「ちょっと薔薇……ばらしー! 抱きついてないで早くあいつ倒しなさいよぉ!」
薔薇水晶「はいお姉様! 元気百倍です!」

薔薇水晶は颯爽と怪物の前に立ちはだかった。

178: 2008/10/04(土) 06:23:22.57 ID:W9iBl21F0
五分後、薔薇水晶の目の前には怪物が倒れていた。相手を、力で捻じ伏せた結果であった。

薔薇水晶「終わりました」
ジュン「強……正直引く」
翠星石「だから初めからやれって感じです」
真紅「まぁ、助かったのだから」
蒼星石「良しとしようよ」

ジュン達は何とか危機を逃れた。しかし同時に、これからを迫られる状況になったのである。

真紅「ジュン、まだ続けるの? あの怪物はまだ潜んでいるかも知れないのよ」
翠星石「仲間が沢山いるかもしれねーです」
雛苺「そうなったらヒナ怖いのよ……」
ジュン「…………」

180: 2008/10/04(土) 06:31:12.95 ID:W9iBl21F0
ジュンは迷っていた。ここまで来たのだ、ロゼーンを捕まえて帰りたい。しかし、それには大変な危険が伴う。
今まで危険なら何度でも越えてきた。しかし、今回ばかりはどうしようもないのではないか。
ジュンは迷いに迷い、決断した。

ジュン「今回のロゼーン捕獲は………………諦める」
蒼星石「ジュン君……」
真紅「ジュン……」
ジュン「今の怪物が一頭だけじゃないと仮定して、今回は退く」
ジュン「昨日のワニみたいに逃げるだけならともかく、こっちから向かって行くのは分が悪い。そういう事だ」
水銀燈「……妥当な判断かも知れないわぁ」
ジュン「だが……僕は諦めない。必ず、また、挑戦する」

182: 2008/10/04(土) 06:38:26.27 ID:W9iBl21F0
ジュン「だから……その時は、また……みんなに、うっ……」
真紅「ジュン、泣かないで。また一緒にここへ来ましょう?」
翠星石「今度はロゼーンでも何でも捕まえてやるです!」
蒼星石「そうだよ! 一緒に頑張ろうよ!」
雛苺「ジュンと一緒に行くのよー!」
金糸雀「みっちゃんが許してくれたらまた行ってもいいかしら!」
水銀燈「まぁ、もう一回くらいならいいかもねぇ」
薔薇水晶「お姉様が行くなら、私も行きたいです」
ジュン「みんな……みんなーー!」

ジュンは隊員達を抱き締めた。ロゼーンは、まだ終わらないのだ。

184: 2008/10/04(土) 06:45:43.24 ID:W9iBl21F0
ジュン「さぁ、帰るか。僕達の場所へ」
真紅「そうね。その前にジュン、着替えて頂戴」
ジュン「このゴムスーツも持ち越しだな……ハハ」
翠星石「何ここで脱いでやがるですか! 木の裏に行けです!」
ジュン「ハイハイ……ん?」
真紅「? どうしたの?」
ジュン「蒼星石、お前のハチミツになんか居るぞ」
蒼星石「え? うわ、これ鳥かな?」
雛苺「スズメさんみたいで可愛いのー」
水銀燈「カラフルな色ねぇ」
翠星石「必氏にハチミツ食べてるですぅ」
金糸雀「可愛いかしら~」

186: 2008/10/04(土) 07:14:36.72 ID:W9iBl21F0

187: 2008/10/04(土) 07:15:03.35 ID:W9iBl21F0
チチチチ……
蒼星石「飛んでいっちゃった……」
ジュン「このハチミツももう駄目だな。羽だらけだ」
蒼星石「本当だ……このまま持って帰るよ」
ジュン「そうだな、そうしてくれ」
真紅「さて、帰る準備をしましょう」
ジュン「よし! はりきって行くか!」

ジュン達は身支度を済ませ、来た道を戻り出した。一旦村に立ち寄り更に一泊した後、かつてのワニ川へ。
そしてジャングルを抜け、日本へと向かったのである。

そうしてジュン達は、自宅へと帰ってきた。

188: 2008/10/04(土) 07:22:17.80 ID:W9iBl21F0
ジュン達が自宅に帰ってから一週間が経った。それぞれが普段の生活に戻り、ジュンも同様にかつてのリズムを取り戻しつつあった。

ジュン「暇だよな」
真紅「まだ一週間しか経っていないから落ち着かないだけよ」
ジュン「一週間後にはこうやって下でテレビ見てるんだからな……変な感じだよ」
翠星石「翠星石はまだ疲れがとれんですぅ……」
雛苺「ヒナもなのー」
ジュン「はぁ……退屈だな。ニュースくらいしか見るものが無いなんて」
ピッ
――続いてのニュースです、

189: 2008/10/04(土) 07:36:35.77 ID:W9iBl21F0
昨夜ロサンゼルスで開かれた世界的なオークションで、過去最高金額を遥かに上回る
9億円で落札された品があった事が明らかになりました。
これは主催者のロゼンー=メ=イデン氏が自ら出品したもので
世界に数羽しかいないと言われている鳥の羽をハチミツに漬けた『羽ハチミツ』と呼ばれるものです。
この羽ハチミツには不老長寿の効果があるとされ、オークションの効果もあって爆発的な人気を呼びそうだとロゼンー氏は語っています。
では、次のニュースです。
昨夜未明――

ジュン「…………」
翠星石「さっきの紹介のとき、その鳥の写真が出てたです。見たですか?」
ジュン「……見たよ。確かに」
真紅「ジュン……もしかして」
ジュン「真紅、9億あったら何でも買える。もう一度ロゼーンだって目指せるぞ」
雛苺「ジュン凄いのー! お金持ちなのー!」
翠星石「あうう……」
真紅「手が震えてきたわ……」
ジュン「そ、そそ、蒼星石に早く連絡しろ! 間に合わなくなるぞ!」

ジュンの体に再び火がついた。


終わり

191: 2008/10/04(土) 07:40:36.31 ID:W9iBl21F0
これで終わりです。見てくれていた人ありがとう。
途中で規制食らったりしましたが、何とか切り抜けられました。
流石に眠いので寝ます。もし残ってたらまた書き込むかもしれません。

193: 2008/10/04(土) 07:41:51.00 ID:3EZZPqKoO
乙!!

196: 2008/10/04(土) 07:45:43.85 ID:W9iBl21F0
言い忘れた。
一応、今回で三回目の台本SSになります。
水銀燈がふしぎなアメ食べて大きくなる話、
ローゼン「ラプラプ! こっちこっち!」みたいなスレタイの話を書いてた奴です。

引用: 桜田ジュン探検隊  幻の猿人ロゼーンを追え!