8: 2012/01/15(日) 18:00:56.14 ID:U92195xS0
――駅前、pm.1:00

棚町(せっかくバイトも休みだし、有意義に買いもの!と思ったけど……)

棚町(やっぱり一人だと暇ねー)

棚町(今日は純一も家の用って言ってたし――)ハア

棚町(ん、あれは……。恵子じゃない! ラッキーね!)

棚町「おーい、け……」

橘「ごめん恵子! 待った?」

田中「あ、純一くん! えへへ、大丈夫だよ」

棚町(……え?)

棚町(うそ、純一は今日は家の用で……。どういうこと、なの?)


アマガミ Love goes on!(1) (電撃コミックス)
15: 2012/01/15(日) 18:12:40.59 ID:U92195xS0

橘「美也が行先をしつこく聞いてきて、大変だったよ」

田中「美也ちゃんって、妹さんだよね? 仲いいんだー」

橘「いつもと格好が違う!とかで食い下がってきて……」ハハハ

田中「でも、確かに今日の純一くんはかっこいいかも」

橘「きょ、『今日は』ってどういうことさ、恵子」

田中「ふふ、嘘だよ。純一くんはいつもかっこいいから」クスクス

橘「もう、からかわないでくれよ」

キャッキャウフフ

棚町(なんなの、あの空気! それにあのふたり、あんな呼び方じゃなかったわよね……)

棚町(ていうか、なんであたし隠れて様子を伺ってるのよ!)コソコソ

26: 2012/01/15(日) 18:22:24.25 ID:U92195xS0
棚町(……用事があるって、あたしの誘いは断ったじゃない!)

棚町(なのに、どうして恵子と――)コソコソ

橘「今日は、どうしようか。どこか行きたいところってある?」

田中「んー、私は……。純一くんと一緒なら、どこでもいいよ」

橘「それは僕もおなじだけど、そうだなあ……」

田中「あ! そういえば私、観たい映画があるんだけど」

橘「うん。それじゃあ、映画館にしようか」

田中「よかった。ふふ、一緒に観たいなーって思ってたんだ」

キャッキャスタスタ

棚町(ふ、ふたりで映画?! そ、そんなの……、まるっきり……)

棚町(まるっきり……デートじゃない……)

29: 2012/01/15(日) 18:29:46.91 ID:U92195xS0
――映画館内、pm.1:45

橘「ちょうどいい時間にあって、助かったね」

田中「うん、ラッキーだったね」

橘「それにしても、恵子がこんなホラー系の映画好きとは思わなかったよ」

田中「え? そ、そうかな?」

橘「もっとこう、恋愛ものとかが好きなのかなって……」

田中「そういうのも、好きだよ。だけど、ちょっと冷やーっとするのも好きなの」

橘「そうなんだ。恵子の意外な一面、かな?」

棚町(あたしってば……なんで映画館まで着いてきてるのかしら)

棚町(べ、別に……、その、気にしてるわけじゃないんだから……)コソコソ

34: 2012/01/15(日) 18:36:05.33 ID:U92195xS0
――上映中

棚町(――それにしても、恵子がホラー映画なんて)

棚町(そんなの好きだなんて、あたしだって聞いたことないわよ)

デロローン

棚町(それに、こんなの子どもだましじゃない――)

田中「ひ、ひゃうう……っ!」ギュッ

橘「け、恵子?」

田中「ご、ごめん純一くん。手、握っちゃった……」ウルウル

橘「う、うん。僕は、構わないというか、歓迎というか――」

田中「えへへ……」

棚町(あのくっつき方――。ただの友達同士にしては、ちょっとやりすぎじゃない?)

棚町(ちょっと、やりすぎじゃ……)

36: 2012/01/15(日) 18:48:52.37 ID:U92195xS0
――映画館そば、喫茶店

田中「えへへ、面白かったねー」

橘「はは……。だけど恵子、すごく怖がってなかった?」

田中「そ、そんなことないよ! あんなの、平気だもん」

橘「ほんとに? 僕は、映画より恵子が気になっちゃったよ」

田中「もー、純一くんってば!」

橘「ごめんごめん。それにしても、なんで幽霊モノって女の人ばっかりなんだろうな」

田中「うーん、確かにそうかも。どうしてだろうね?」

橘「女性の方が怨みが深い、とか?」

田中「そんなことないよー。男の人だって、妬いたりするでしょ?」

キャッキャッ

棚町(会話が全部聞こえるわけじゃないけど……)

棚町(きっと、今日は恵子があの映画を観たくて、そのために純一を連れてきたんだわ)

棚町(苦手克服のために、みたいな。それだけに決まってる!)

棚町「……苦い」チュルチュル

41: 2012/01/15(日) 19:04:55.82 ID:U92195xS0
――喫茶店前、pm.5:00

田中「今日はありがとう、純一くん。とっても楽しかったよ」

橘「僕も楽しかった。また、今度ね」

田中「うん……。それじゃ、またね」バイバイ

棚町(お別れ、ね。やっぱり、今日は友達同士、映画を観に来ただけだったんだわ。見なかったことにしよ!)

橘「あ――」

田中「……」スタスタ

橘「恵子!」

田中「な、なに?!」フリムキ

橘「あ……、えっと。今日、すぐ帰らなきゃだめなの?」

田中「ううん、そんなこと、ないけど。ちょっと買いものしてから、帰ろうかなって」

橘「そ、それじゃあ僕、荷物持ちでもしていいかな?」ハハハ

田中「え……、一緒に来てくれるの?」パアア

橘「恵子がよければ、だけど」

田中「うん、もちろん。お願いします、純一くん」

42: 2012/01/15(日) 19:10:32.03 ID:U92195xS0
――棚町家、薫自室、pm.9:00

棚町(結局、あの後ふたりは買いものして、ご飯食べて……)

棚町(純一が恵子を家まで送って……お別れ、か)

棚町(な、なんかこれじゃ、あたしがふたりを着け回したみたいじゃない!)

棚町(違うわよ、そんなんじゃなくて! 声をかけるタイミングが、その、なかっただけ)

棚町(まさかふたりが、その、そういう関係なんて……、ありえない)

棚町(だって、恵子は私の親友で……。純一は私の、その、彼氏なんだし!)

棚町(今日は、友達としてふたりで遊んだだけよ。別に、う――、浮気とか、そんなんじゃ)

棚町「……」

棚町「もう、なんなのよ――。いったい」

44: 2012/01/15(日) 19:18:17.01 ID:U92195xS0
ピロリローン

棚町「メール……、純一から?」

棚町「見たいような、見たくないような……」ピッ

From:純一
件名:今日はごめん!
本文:今日は買いもの付きあえなくてごめん!

棚町「」

45: 2012/01/15(日) 19:21:27.98 ID:U92195xS0
ぎゃーミスった

ピロリローン

棚町「メール……、純一から?」

棚町「見たいような、見たくないような……」ピッ

From:純一
件名:今日はごめん!
本文:今日は買いもの付きあえなくてごめん!
    親戚の法事で、どうしても出ろって言われ
    ちゃって……。また埋め合わせするから!

棚町「……ふーん」

棚町「ほ、法事には見えなかったけどねー」

棚町「はは、ははは……」

棚町(純一が、あたしに嘘つくなんて――)

46: 2012/01/15(日) 19:23:38.40 ID:U92195xS0
着地点が見えない
変なもん先行させてすまんけど誰か書いてくれ

54: 2012/01/15(日) 19:58:38.49 ID:U92195xS0
――翌日、輝日東高校

橘「そうそう、それで……」

梅原「まったく、大将は末恐ろしいぜ」

ガラッ

棚町「おっはよー」

梅原「おう、おはよう。棚町さん」

橘「おはよう。また遅刻ギリギリだな、薫」

棚町「うっさいわねー、間に合ってるんだからいいじゃない」

棚町(純一はいつも通り、ね)

田中「おはよう、薫。今日も元気だね」

棚町「お、おはよう、恵子――」

棚町(って、あたしが動揺してどうすんのよ!)

57: 2012/01/15(日) 20:07:27.37 ID:U92195xS0
田中「どうしたの、薫? 私の顔、何かおかしいかな」

棚町「え?! う、ううん。いつも通り、可愛い顔してるわよっ☆」

田中「も、もう! 薫はいっつもそうやってー」

棚町「ホントのことなんだし、いいじゃないのー」

キャッキャ

梅原「まったく、ふたりの仲には入れないな」

橘「ああ、ホントだな」ハハハ

梅原「――そういえば大将。昨日は、なんか用事あったのか?」

橘「……え?」

梅原「いや、昨日電話したんだが、電源落としてただろ?」

橘「あ、ああ。親戚の法事があってさ、切ってたんだ」

梅原「なーんだよ、大勝負の最中かと思ったぜ」

橘「そんなんじゃないよ、電話返せなくてごめんな」

梅原「うんにゃ、いいってことよ。何の用だったか、もう覚えてないくらいだしな」ハッハッハ

棚町(……あくまでも、法事ってことにするのね)

59: 2012/01/15(日) 20:16:04.73 ID:U92195xS0
棚町(別にあたしは、純一と恵子の間になにかあることを疑ってるわけじゃないのよ)

棚町(そう、あくまでも! ……嘘をつかれてたのが、気に入らないだけ)

棚町(そのことだけ認めてくれれば、それでいいのよ。あたしは)

ガラッ

高橋「はい、HRはじめるわよー。すみやかに席に着きなさーい」

梅原「おっと、麻耶ちゃんだ。また次の休みにな、大将」

橘「ああ、続きが気になるよ。……薫も、早く席戻った方がいいぞ」

棚町「え、そ、そうね。そうするわ!」

橘「……? 田中さんを巻き込んでるんだからな」ハハハ

田中「わ、私はもう戻るよ。じゃあ薫、またね」

棚町(なによ、あたしより恵子のことが気になるってわけ?)

棚町(……って、いけないいけない。そんなの、カッコ悪い!)

田中「薫?」

棚町「え? あ、うん! また次ねー」

田中「……う、うん。それじゃ、またね。橘くんも」バイバイ

63: 2012/01/15(日) 20:26:54.88 ID:U92195xS0
――昼休み、学食

棚町「はー、お腹へったー。今日の定食は……っと!」タタッ

橘「おいおい薫、そんなにはしゃぐなよ」

棚町「ふっふっふ、あたしはこのときのために午前の授業を受けていたようなものよ!」

橘「――って言っても、ほとんど寝てたじゃないか」

棚町「うっさいわねー、細かいこと気にする男は好かれないわよ」

梅原「毎度、大将と棚町さんの掛け合いには和まされるねえ」

田中「ふふ……、そうだね」

―――
――


美也「美也はみそラーメンにする! 逢ちゃんと紗江ちゃんはどうする?」

七咲「うーん……、私はA定食かな」

中多「どうしよう……。お、オススメって、あるかな?」

美也「ふっふっふ、そういうことなら美也に任せなさい!」

美也「えーっと、紗江ちゃんへのオススメはねえ――」

64: 2012/01/15(日) 20:34:29.14 ID:U92195xS0
――学食、テーブル

七咲「……あれ、あそこにいるのって、美也ちゃんのお兄さんじゃない?」

美也「へ? あー、ほんとだ!」

七咲「なんだか、すごく賑やかそう」クスクス

美也「もー、恥ずかしいなあにぃ……お兄ちゃんは! ちょっと言ってくるね!」ダッ

中多「み、美也ちゃん?」

―――
――


橘「薫もわかってないな、B定食の至高は焼きサンマに決まっているじゃないか!」

棚町「なに言ってんのよ、焼き魚はちょっと食べにくかったりするし――」

田中「ま、まあまあ。ふたりとも、落ち着いて……」

美也「ちょっとお兄ちゃん!」

橘「み、美也?!」

美也「こっちまで声が聞こえてくるよ! 恥ずかしいからあんまり騒がないで!」

橘「……ご、ごめん」

69: 2012/01/15(日) 20:44:18.96 ID:U92195xS0
美也「もう、お兄ちゃんはちょっと目を離したらこれなんだから――」

橘「だ、だからごめんって……」

美也「逢ちゃんにも笑われちゃったんだからね!」

橘「な、七咲に? またからかわれるな……」

棚町(……美也ちゃん。そうだ、ひらめいたわ!)

棚町(こんなところで変な空気にさせるのもなんだけど……、これしかないわね)

棚町「それにしても、美也ちゃんも大変ねー。純一、昨日は静かにしてたの?」

美也「……? 昨日?」

橘「え! ……、え――、えっと」

棚町(思った通りだわ! このまま畳みかけて……)

棚町「法事なんて、純一が静かにいられるはずがないもの。ねえ?」

橘「そ、そんなことないぞ! 僕だって、やるときはやるんだ」

美也→薫の二人称ってなんだっけ?
そして携帯完全に普通に出しちゃったわ

74: 2012/01/15(日) 20:55:39.46 ID:U92195xS0
棚町「ふふーん、そうかしら? ねえ、どうだったの、美也ちゃん?」

美也「え、えーっと。ほ、法事って何のこと――」



田中「――きゃっ!」ガシャン、ドバッ


梅原「おわっ! ……あっち!」

橘「ど、どうしたの田中さん、大丈夫か梅原!」

田中「ご、ごめんなさい! 腕がひっかかって……」

棚町「け、恵子! いま、何か拭くものを――」

ドタバタ

美也「あ゙……。と、とにかく、学校であんまり変なことしないでよね、兄ちゃん!」スタスタ

棚町「ちょ、ちょっと待って美也ちゃん、まだ聞きたい事が……!」

棚町(ああもう、せっかくのチャンスだったのにっ!)

棚町(それにしても、なんてタイミングでやってくれちゃったのよ恵子は!)

棚町(――まさか、わ、わざとなんて……ね)

棚町(恵子は、そんなことするような子じゃない)

76: 2012/01/15(日) 21:05:11.72 ID:U92195xS0
>>74
×兄ちゃん→○お兄ちゃん

――放課後、教室

カエロー、ドコカヨッテイカナイ?、イイネーイコイコー

橘「薫、今日はバイトか?」

棚町「うん。9時まで、稼ぐわよー」

橘「いつも大変だな、僕もまた今度遊びに行くよ」

棚町「冷やかしに、の間違いじゃなくって?」クスクス

橘「この前も、きちんと注文はしたじゃないか!」

棚町「こんな美人ウェイトレスに接客してもらって、一品二品じゃあねえ?」

橘「からかうなよ、薫――」

棚町「……まあ、また来たいって言うなら、いつでも来なさい」フフン

橘「――ああ、そうするよ」

棚町「それじゃ、また明日ね!」

80: 2012/01/15(日) 21:16:34.80 ID:U92195xS0
――街の通り、pm.4:45

棚町(お昼は、しくじっちゃったわね)

棚町(だけど、これでよかったのかもしれない。あんな搦め手、あたし向きじゃないわよ!)

棚町(こうなったら、正攻法で純一に問いただすしかないわ)

棚町(あんなメールまでして、あたしを騙せると思ったら大間違いなんだから!)

棚町(あんなメール……)

棚町(あんな……)

棚町(あれ? あたしの携帯――、机に入れっぱなし?!)

棚町(取りに戻らなきゃ、でも時間が……、ちょっと間に合わないかも)

棚町「ああ、もう!」

棚町(ちょっと走れば、大丈夫よね!)

85: 2012/01/15(日) 21:28:00.96 ID:U92195xS0
――輝日東高校、教室、pm.4:45

梅原「おわ、もう教室俺たちだけか」

橘「ああ、ちょっと話しこんじゃったな」

梅原「大将といると、時間を忘れるぜ。そんじゃま、ぼちぼち帰りますか」

橘「ああ、悪い梅原。今日はちょっと図書館に寄っていく用があって……」

梅原「大将が図書館……?! 参ったな、俺、今日は傘持ってないぜ」

橘「ど、どういう意味だよ!」

梅原「はっは、冗談冗談。そんじゃ、俺は先帰るわ!」ガラガラ、スタスタ

橘「まったく、梅原のやつ――」

橘「……さて、僕も早く本返して、帰らなきゃ」

87: 2012/01/15(日) 21:31:53.32 ID:U92195xS0
ガラッ

田中「――、純一くん」

橘「あ、田中さん。どうしたの?」

田中「えへへ、その……今日は薫もバイトだって言うから」

田中「一緒に、帰らない? 寄り道も、付き合うよ」

橘「――うん、ありがとう。それじゃ、お願いしようかな」

田中「よかった」パアア


田中「それと、……ちゃんと、呼び直して欲しいな」

橘「え――、ああ。ごめん、恵子」

田中「うん、大丈夫だよ。純一くん」

橘「それじゃあ、ちょっと支度するから――」

90: 2012/01/15(日) 21:44:18.10 ID:U92195xS0
田中「ねえ、昨日のこと……なんだけどね?」

橘「ああ、すごく楽しかったよ。また、一緒にどこか出かけよう?」ゴソゴソ

田中「うん。それも楽しみ、……なんだけど」

田中「薫に、嘘ついたの?」

橘「……え」

橘「ど、どうして?」

田中「今日のお昼、なんだかそんな空気だったから」

田中「『ついてないよ』って、私にも嘘つく?」

橘「――、薫から、出かけないかって誘われたからさ」

橘「家の用がある、って言ったんだ。それだけだよ」

田中「そっか。ううん、別にいいんだ」

田中「薫に正直に言って、なんて言えないし、そのつもりもないよ」

92: 2012/01/15(日) 21:53:23.42 ID:U92195xS0
橘「恵子、僕は――」

田中「これからもね、こういうことって起こるんじゃないかなって思うんだ」

田中「私と薫は友達だし、純一くんとも、それぞれ……、親密だし」

橘「――、うん」

田中「純一くん最近、キスしてくれなくなった」

橘「……え」

田中「昨日も、一回もしてくれなかったし」

橘「あ、ああ……。そういえば、そうだったかも」

田中「薫と付き合い始めてからだよね、してくれなくなったの」

橘「そ、そんなこと――」

田中「あるよ。ちょうど、去年のクリスマス前くらいから」

田中「純一くんには、薫が一番になっちゃったから?」

橘「恵子? な……、なに言って……」

田中「私、そろそろじゃないかなって思ってるの」

田中「この関係が、終わっちゃうのって」

95: 2012/01/15(日) 22:01:07.46 ID:U92195xS0
橘「そんな急に――」

田中「だって純一くん、薫に嘘ついた」

田中「これまでは、『本当のことを話さない』だけでよかったのに」

田中「もう、『本当じゃないことを話す』のが必要になっちゃったんだよ」

田中「私は、純一くんが今まで通り付き合ってくれればいいと思ってた」

田中「薫と付き合い始めても、今まで通りならいいやって……」

田中「だけど、純一くんはそうしてくれなくなった。それに、薫もじきに感付いちゃうよ」

田中「薫は、そういう関係じゃ嫌だって思うんじゃないかな」

橘「僕は……、今でも恵子のことが好きだし……」

橘「薫には……、その、嘘をつき通せれば、大丈夫だと思う」

田中「そっか。でも、薫、もう気付いてるみたいじゃなかった?」

田中「なんだか、今朝から様子も変だったし」

橘「そ、そうかな? 僕はそんな風には感じなかったけど……」


ガラッ

棚町「――気付いてたわよ。間違いだって思ってた、そう願ってたけど」

103: 2012/01/15(日) 22:16:11.15 ID:U92195xS0
――教室、pm.5:00

橘「か、薫?!」

棚町「はー、あたしもダメね。一番近くにいたふたりのこと、気付けなかったなんて」

棚町「盗み聞きなんて趣味悪いかなって思ったけど、今回は許してね」

棚町「全部聞いちゃった。本当の、ことなのね?」

橘「薫、これはお前が思ってるようなことじゃ――」

田中「黙っててごめんね、薫。騙そうと思ってたわけじゃ、ないんだけど」

田中「薫に、私の相談にのってもらってたことがあったじゃない?」

田中「そのとき、橘くん――、純一くんにも話を聞いてもらってたの」

田中「それで、好きになっちゃって、告白したんだけど……」

棚町「ああ、そう。恵子、あたしはあんたのこと、ずっと応援したいと思ってた」

棚町「だけど、それもあたしの一方通行だったみたいね」

棚町「あたしは……、あんたにコイツの話をしたこともあったわ」

棚町「そのときも、あんたは全部知りながら、あたしの背中を押そうとしたってわけ?!」

105: 2012/01/15(日) 22:24:24.98 ID:U92195xS0
田中「薫も純一くんのこと好きだって、ずっと知ってたから」

田中「だから……、その障害に私がなっちゃうよりは、って思ったんだけど」

田中「だって薫、純一くんにもう相手がいるって知ったら、自分の気持ち諦めちゃうでしょ?」

田中「そんなのって、悲しいじゃない」

田中「だから、何も知らない方が薫の幸せになるかなって思ったの」

橘「な、なあ、ちょっと落ち着かないか? ふたりとも、混乱してるだけだって――」

田中「私、薫のこと好きだし、親友だと思ってるよ」

田中「だから、幸せになってほしかった。こんな結果になっちゃったのは、残念だけど」

棚町「……ふ」

田中「だ、だって私だって我慢したんだよ?」

田中「クリスマスだって……、薫に純一くんとられちゃったの、本当は嫌だったんだから」

田中「だけど、みんなが幸せになるためだって思って――」

棚町「――ふざけんじゃないわよ! あたしが欲しかったのは……!

棚町「あたしが欲しかったのは!」

棚町「そんな歪んだ関係じゃない!」

109: 2012/01/15(日) 22:36:23.59 ID:U92195xS0
田中「……薫」

棚町「あたしは、恵子なら信頼できると思ってた。純一なら、頼ってもいいと思ってたわ」

棚町「一番の親友と、中学からずっと一緒だった悪友」

棚町「あたしにとって、すごく大切な人だったのに……」

棚町「こんな……、こんなことって――」ポロポロ

田中「私の気持ちは、いま話したことで全部だよ」

田中「それで、薫が耐えられないって感じるなら、もう――仕方ないって思う」

橘「お、おい……。ちょっと落ち着けって、け……、あ――。田中、さん」

田中「……そっか。純一くんの気持ちも、伝わったでしょ」

田中「私は、今まで通りが続くならそれが一番だけど」

田中「そうじゃなくて、純一くんが薫を選ぶなら……、それでもいいよ」

田中「私にとっても、薫と純一くんは大切だもの――。幸せになってほしいし」

田中「あとは、ふたりで話して決めて」

田中「いつかこうなると思ってたけど、こんなに早いなんて……えへへ」

ガラッ、スタスタ

113: 2012/01/15(日) 22:47:08.67 ID:U92195xS0
――教室、pm.5:15

橘「か、薫……?」

棚町「――、もう、あんたと話すことなんてない」

橘「ちょっと待てよ、薫は誤解してるって」

棚町「どこが……! どう、誤解だって――、いうのよ!」

棚町「短い間だったけど……、夢見させてくれて、ありがとうとでも言えばいい?!」

棚町「やっぱり……、あたしには――」

橘「薫、ちょっと落ち着いて話そう? な?」

橘「僕は、その、薫を騙してたわけじゃなくて――」

薫「……っ!」

パシン!

棚町「……今ので、もうあたしの気は済んだから」

棚町「バイバイ、純一」

ガラッ、スタスタ

117: 2012/01/15(日) 22:58:17.66 ID:U92195xS0
――翌週、昼休み。輝日東高校、テラス

橘(あれから、薫は学校を休み続けてる)

橘(連絡も取れないし、他のみんなにもメールを返したりはしていないようだ)

橘(僕も、当事者、ということになるのかもしれない)

橘(けれど、薫と付き合っていたことは恵子以外に話していないし)

橘(その恵子も、しばらく顔を見ない日が続いている)

橘(梅原は、完全に僕を疑っているけれど……)

橘(けれど……、僕にはどうしようもなかったじゃないか)

橘(僕は、恵子も薫も、どっちも平等に好きだったんだから)

橘(平等に好きな相手が複数いる、というだけで、どうして責められるいわれがあるだろう)

橘(僕は薫も一番好きだったのに、その思いは薫に伝わらないままになっている)

橘(せめて、その誤解を解ければいいのに――)

七咲「先輩、お疲れさまです。お待たせしてしまって、すみません」

橘「……、七咲」

123: 2012/01/15(日) 23:03:50.35 ID:U92195xS0
七咲「なんだか暗い顔してますね、先輩」

橘「いや、そんなことないよ。ちょっと、考え事してただけ」

七咲「もう、約束通り……お弁当、作ってきたんですから。元気出して下さい」

橘「――ほ、ほんとに?!」

七咲「ええ。約束したことですから」

橘「わあ、ありがとう七咲! 元気、出たよ」

七咲「それならよかったです。……ふふ」

橘(みんな好きで、何がいけないだろうか)

橘(僕も彼女が好き、彼女も僕が好き。それだけでは、いけないのだろうか)

橘(いまは、このクールな後輩にも惹かれている)

橘(そしてもし彼女が僕を好いてくれるなら、もう恋人同士でいいじゃないか)

橘(恋に、お互いにスキであること以上の要件なんて、存在しないんだから)


おわり

126: 2012/01/15(日) 23:05:42.60 ID:U92195xS0
俺には無理だった
あと携帯の件は完全に失念していて申し訳ない
もう一個の田中さんSSがほわほわすぎて眩しかったよ

127: 2012/01/15(日) 23:07:32.88 ID:yCmlF9yf0
まぁあのメンバーでハーレム作りたくなる気持ちは解る

128: 2012/01/15(日) 23:08:40.92 ID:PdjWrrvW0
まあ乙
ハーレムルートが好きになれないのはこういうことがあるという・・・
というか橘さん浮気癖染み付きまくりじゃないか・・・

引用: 棚町「純一が恵子と浮気してる?」