1: 2017/05/10(水) 22:14:29.404 ID:LiIHuXnB0.net
 
-夜 街中-


タプリス「ふふっ、いい本が買えましたぁ」

タプリス(ずっと本屋にいたせいか、すっかり遅くなってしまいましたね)

タプリス(ああ、もう外も暗いです。早く帰らないと……)


 『うっ、うぅ……』


タプリス(ん? なんでしょう……誰かの声?)

タプリス「って、女の人が座り込んでます!」


 タッタッタッ

タプリス「だ、大丈夫ですか? 気分が悪いのですか?」

女性「……ぐすっ、ご、ごめんなさい。何でもないですから」

タプリス「そんなっ、何でもない人が、泣くはずありませんよ」


タプリス「何があったんですか? わたしでよければ、聞きますから」

女性「じ、実は……」
天使と悪魔と委員長

2: 2017/05/10(水) 22:16:45.263 ID:LiIHuXnB0.net
 
タプリス「そうですか……お仕事にやりがいが持てなくなってしまったと」

女性「はい、今までがむしゃらにただ、突き進んできましたが」

女性「不意に自分のやってきたことは、なんだったんだろうって思って」

女性「不安になってしまって」

タプリス「……それは、確かにお辛いですね」

タプリス「でも、意味のないことなんて、この世の中にはありませんよ」

女性「えっ」

タプリス「あなたにもちゃんと、向かうべき目的地があったんですよね」

タプリス「でしたら、どのようにそこへ向かったとしても」

タプリス「そこまでの繋がりを知ることは、決して無駄にはならないと思います」

タプリス「それどころか、より深く、目的地のことを知ることができるんです」

タプリス「だから、不安になることなんてないんですよ」

女性「……ッ」

タプリス「ごめんなさい、生意気を言ってしまって」

タプリス「これは、わたしの尊敬する人の言葉の、受け売りなんですけどね」

女性「あ、ありがとうございます。そうですよね……」

女性「なんだか、自信が湧いてきました」

タプリス「少しでもお力になれたのなら、よかったです」ニコッ


女性「あっ……」トゥンク

4: 2017/05/10(水) 22:18:43.604 ID:LiIHuXnB0.net
 
女性「あ、あなた……その、かわいいですね」

タプリス「えっ、そ、そうでしょうか。そんなことは……」

女性「いえ、絶対にかわいいです。今まで、何人も女の子を見てきた」

女性「私が言うんですから!」

タプリス「な、何人もですか?」

女性「私、こういうものです」スッ

タプリス「これは名刺ですか? えっと……、アイドル事務所?」


女性「あなた、アイドルになりませんか? いえ、なるべきです!」

タプリス「ア、アイドルって、あの歌って踊ったりするアイドルですか?」

女性「ええ、そうです」

タプリス「む、無理です! 絶対無理です!」

タプリス「わたし、ただでさえ人見知りなのに、人前に出るなんて……」

女性「世の中には、人生に疲れた人がたくさんいるんです」

女性「でもあなたの笑顔は……そんな人たちに生きる希望を与えてくれる」

女性「現に、私はあなたに希望を貰いました」

タプリス「で、ですけど……」

女性「悩み、困っている人たちを、救済してもらえませんか?」

女性「あなたならきっと、大勢の人たちを救えるはずです」

タプリス「……ッ」

6: 2017/05/10(水) 22:20:46.285 ID:LiIHuXnB0.net
 
タプリス(たしかに天使としての、理にはかなっている気がします)

タプリス(だったらわたしは……)

タプリス「あの、わたし……何をやってもダメダメですけど」

タプリス「それでも本当に大丈夫ですか?」

女性「はい、そのあたりは私たちもプロですから」

女性「きっちりサポートさせていただきます」

タプリス「わかりました、期待はずれだったら」

タプリス「いつでもクビにしてくれて、いいですからっ」

タプリス「こちらこそよろしくお願いします!」

女性「はい、よろしくお願いしますね」



-翌日 事務所-


タプリス「お、お邪魔します……」

女性「あ、千咲さん。よく来てくださいました」

女性「ささ、座ってください」

タプリス「あ、ありがとうございます」

タプリス「なんだか綺麗でおしゃれなところですね」

女性「ふふっ、ありがとうございます」

女性「内装には、これでも気を遣っているんです」

タプリス「それに、他の方もみなさん、女性ばかりなんですね」

8: 2017/05/10(水) 22:22:43.951 ID:LiIHuXnB0.net
 
女性「ええ、ここのスタッフは全員、女性ですよ」

タプリス「え、全員ですか。それは少し、安心といいますか……」

女性「ふふっ、よかったです」

女性「それでは早速ですけど、今日は広報用の写真撮影と」

女性「あとは書類作成、芸名の選定、くらいですかね」

タプリス「は、はい! よろしくお願いします!」

女性「そんなに畏まらなくても、大丈夫ですよ」ニコッ


女スタッフ「社長、撮影の準備ができました」

女性(以下女社長)「わかりました、今行きますね」


タプリス「な、ななななっ!?」

女社長「どうしました?」

タプリス「社長さんって、一番えらい、あの社長さんですよね?」

女社長「ええ、不肖ながら務めさせていただいています」

タプリス「す、すごいです……そんなすごい方に」

タプリス「わたしは昨日、あんな偉そうなこと言ってしまって……」

女社長「お気になさらないでください」

女社長「大切なのは、相手に気持ちが届いたかどうか」

女社長「手段や方法など、些細なことです」

タプリス「あ、ありがとうございます」

女社長「では、写真撮影に行きましょうか」

10: 2017/05/10(水) 22:24:45.416 ID:LiIHuXnB0.net
 
タプリス「うぅ、疲れました……」

女社長「ふふっ、お疲れ様です、撮影はどうでしたか?」

タプリス「あんなひらひらしたお洋服を着たのは、初めてだったので……」

女社長「とても可愛らしかったですよ。やはり、私の目に狂いはなかったです」

タプリス「あはは、だと良いんですけど……」

女社長「それでは次は、芸名を決めましょうか」

タプリス「芸名、ですか」

女社長「本人が本名を強く望むケース以外は、基本的に芸名を採用しています」

タプリス「芸名といっても、全然思いつきません……」

女社長「そういう時は、本名をモジッて決定することが多いですね」

女社長「例えば……、千咲=タプリス=シュガーベルさん」

女社長「シュガーベル、可愛らしいお名前です」

タプリス「あ、ありがとうございます」

女社長「シュガーベル、シュガー……砂糖。ベルは……」

女社長「そうですね、さとうすず、さん」

タプリス「さとうすず?」

女社長「漢字を使うとこんな感じでしょうか、紗藤すずさん」

タプリス「す、すごい、可愛い名前ですね!」


女社長「気に入っていただけましたか?」

タプリス「はい! これでお願いします!」

女社長「ふふっ、決定ですね。それでは、次はレッスンの予定を――」

12: 2017/05/10(水) 22:26:45.204 ID:LiIHuXnB0.net
 
-数日後 ガヴリールの家-


ガヴリール「おいおい、それ本当に大丈夫なのか?」

タプリス「え、何がですか?」

ガヴリール「お前が騙されてないかって、言ってるの」

タプリス「そんなことないですよ! 社長さんをはじめとして」

タプリス「スタッフのみなさんも、とても、わたしに良くしてくれてますし」

ガヴリール「始めは油断させといて、あとから……っていう手口」

ガヴリール「よくあるからな。で、名刺とかはあるの?」

タプリス「ありますよ。はい、どうぞ」

ガヴリール「ふぅん、リリィプロダクション、ね」

ガヴリール「ちょっと調べてみるか」

タプリス「まったく、疑り深いんですから……」


ガヴリール「まぁ別に、お前が本当にやりたいなら、止めはしないけど」

ガヴリール「何か危ないなと思ったら、すぐに言えよ」

タプリス「は、はい。わかりました」

タプリス「その……ありがとうございます、天真先輩」

ガヴリール「それに、お前がアイドルなんて、見世物として面白そうだからな」

タプリス「もうっ、酷いですっ! これでもちゃんとレッスン受けてるんですから!」

ガヴリール「へいへい。まあ、体だけは壊さないようにな」

タプリス「はぁい」

13: 2017/05/10(水) 22:28:49.417 ID:LiIHuXnB0.net
 
-数週間後 スタジオ-


女スタッフ「はい、1、2、3! 1、2、3!」

タプリス「……ッ」

女スタッフ「すずちゃん! ステップ遅れてる! もっと集中しなさい!」

タプリス「は、はい! すみません!」


――

タプリス「はふ……」

女スタッフ「お疲れ様、すずちゃん」

タプリス「は、はい。ありがとうございましたっ!」

女スタッフ「ふふっ、最近、だいぶ動けるようになったわね」

タプリス「そ、そんな……わたしなんてまだまだ失敗ばかりで」

女スタッフ「いえ、伸び率だけでいったら、私が見ている中でNo1よ」

女スタッフ「まぁ、正直最初は不安だったけどね」

タプリス「あはは……ですよね……」

女スタッフ「でも、すずちゃんはとても真面目だし、礼儀正しいし、かわいいし」

女スタッフ「このまま続けていけば必ず、努力は実るわ」

女スタッフ「一緒に頑張りましょう!」

タプリス「あ、ありがとうございます、がんばります!」

14: 2017/05/10(水) 22:30:56.529 ID:LiIHuXnB0.net
 
-事務所-


タプリス「わ、わたしがステージに、ですか?」

女社長「ええ、先輩アイドルのバックダンサーとして、ですけど」

タプリス「そんな……わたしにできるんでしょうか」

女社長「ダンスの技術は、ギリギリで問題ないとスタッフから聞いてますから」

女社長「あとは、すずちゃんの心持ち次第ね」

タプリス「でも、その先輩さんに迷惑をかけそうで……」

女社長「大丈夫よ、そんなの気にする子たちじゃないから」

女社長「リラックスして、ね」

タプリス「は、はい、頑張ります!」



-数週間後 ステージ-


タプリス「今日は、あ、足を引っ張らないように」

タプリス「頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします!」

先輩アイドルA「あなたが、すずちゃんね。よろしく!」

先輩アイドルB「初々しくてかわいい……食べちゃいたいくらい」

タプリス「えっ、えっ?」

先輩アイドルB「ねえ、これが終わったら、お姉さんのお家に来ない?」

先輩アイドルB「手取り足取り、いろいろ教えてあげる……」

先輩アイドルA「ちょっと、あんたねぇ。そうやって何人の新人を……」

先輩アイドルB「ふふっ、冗談に決まってるでしょ。よろしく、すずちゃん」

タプリス「は、はい、よろしくお願いします」

16: 2017/05/10(水) 22:32:42.868 ID:LiIHuXnB0.net
 
 『ありがとうございましたっ!』


-ステージ裏 控室-


タプリス「お、お疲れ様でした!」

先輩アイドルA「お疲れー! すずちゃん、よかったよぉ!」

タプリス「うぅ、必氏すぎて、あまり覚えてません……」

先輩アイドルB「本当にかわいかったわ。どう? この後……」

先輩アイドルA「こらこら、また!」

先輩アイドルB「もう、うるさいわねぇ……」

タプリス「あははは……それにしてもお客さん、女性の方ばかりでしたね」

タプリス「すごい盛り上がりでしたけど」

先輩アイドルA「あれ? 聞いてないの?」

タプリス「えっ?」

先輩アイドルB「ここのライブのお客さんはね、女性会員限定なのよ」

タプリス「そ、そうだったんですか……」

先輩アイドルA「ふふっ、安心した?」

タプリス「えっと、す、少しですけど……」


先輩アイドルB「こんなかわいいすずちゃんを、男の目の前に晒すとか」

先輩アイドルB「猛獣の前に霜降り肉を置くのと同じだわ」

先輩アイドルA「その例えはどうなのよ……って、いけない、もうこんな時間」

先輩アイドルA「それじゃあね、すずちゃん。また、一緒にステージあがろっ!」

先輩アイドルB「バイバイ」

タプリス「はい、今日は本当にありがとうございましたっ!」

17: 2017/05/10(水) 22:34:39.617 ID:LiIHuXnB0.net
 
タプリス(こうして、いつかわたしも、ああなりたいと思いながら)

タプリス(より一層レッスンにレッスンを重ねる日々が続いて)

タプリス(いつの間にか、数ヶ月が過ぎていました)


-事務所-


タプリス「わ、わたしが、ソロライブですか!?」

女社長「ええ、厳密には複数人のローテーションでプログラムを組むんだけど」

女社長「20分間、あなただけの時間が取れそうなの」

タプリス「……ッ」

女社長「客観的に見れば……」

女社長「今まで努力を積み重ねてきた結果は、しっかりと出ている」

女社長「あなたの実力自体に、問題はないわ」

女社長「あとは……あなたのやる気次第ね」

女社長「どう? やってみる?」

タプリス「……はいっ」

タプリス「わたしに、やらせてください! お願いします!」

女社長「ふふっ、いい返事ね。頑張りましょう、すずちゃん」

タプリス「はい!」



タプリス(そして、準備と特訓に明け暮れて)

タプリス(ライブまでの時間は刻々と過ぎていき……)

タプリス(ついに、ライブ当日を迎えたのです)

19: 2017/05/10(水) 22:36:41.353 ID:LiIHuXnB0.net
 
-初ライブ当日 ステージ裏-


タプリス(き、緊張します……でも、やれるだけのことはやりました!)

タプリス(ならわたしは、全力を尽くすのみです!)


司会「では続いては、期待の新星! 妹系アイドル!」

司会「紗藤すずちゃんです! どうぞ!」

 タッタッタッ

タプリス「さ、紗藤すずですっ! よろしくお願いしましゅ!」

タプリス(うぅ……か、噛んじゃっいました! って……)

 シーンッ

タプリス(お客さんが全然……いない)

タプリス(……そっか、そうだよね。やっぱり、わたしなんか)

タプリス「……ッ」

タプリス(ち、違う。よく見たら、三人くらいお客さんが)

タプリス(わたしのステージを、見てくれる人が、いるんだっ)


タプリス(だったら、わたしは……!)


タプリス「今日は、わたしのライブに来てくれて! ありがとうございます!」

タプリス「本当に本当に、涙が出るくらい嬉しいです!」


タプリス「それでは……聞いてくださいっ!」キラッ

21: 2017/05/10(水) 22:38:39.360 ID:LiIHuXnB0.net
 
司会「以上、紗藤すずちゃんでしたー!」

タプリス「あ、ありがとうございました!」

 パチ  パチ     パチ


-ステージ裏 控室-


タプリス「はぁ……はぁ……」

女社長「お疲れ様、すずちゃん」

タプリス「あ、社長さん。お疲れ様です! ありがとうございました!」

女社長「えっと……ごめんなさいね」

タプリス「えっ、どうして社長さんが謝るんです?」

女社長「もう少しお客さんを呼べる見込みだったんだけど」

女社長「予想以上に人数が集まらなくて……」

タプリス「いえっ! 何人であっても、わたしのことを……」

タプリス「見に来てくれたお客さんがいたことが」

タプリス「本当に嬉しかったですからっ」

女社長「すずちゃん……、そうね、これからも頑張っていきましょう」


タプリス「はい! よろしくお願いします!」

22: 2017/05/10(水) 22:40:54.081 ID:LiIHuXnB0.net
 
タプリス(しかし、その後も……)

タプリス(何度かライブに出させてもらえる機会には恵まれましたが)

タプリス(一向に人気の出ないまま、時間だけが過ぎていきました)



-ガヴリールの家-


ガヴリール「どうした、そんなぼーっとして」

タプリス「えっ、そ、そんなことないですよ。元気元気です!」

ガヴリール「……順調なのか? アイドル活動は」

タプリス「はい、順調です! もう何度もライブを開いてもらって」

タプリス「着実に実力を上げてるんですからっ」


ガヴリール「……お前がつらいのなら、やめてもいいんだぞ」

タプリス「……ッ」

ガヴリール「お前がアイドルをやめても、困るやつは誰もいない」

タプリス「……どうして」

ガヴリール「えっ」

タプリス「どうして、そんなこと言うんですかッ!」

23: 2017/05/10(水) 22:42:45.883 ID:LiIHuXnB0.net
 
タプリス「わたしにだって……、わたしのことを見てくれる人が、いるんですッ!」

タプリス「だったらわたしは、その人たちに少しでも元気になってもらいたい!」

タプリス「笑顔になってもらいたいから、頑張るって決めたんです!」

ガヴリール「おい、落ち着けって……」

タプリス「それなのに……ぐすっ、ひどい、です……」

ガヴリール「……」


タプリス「……天真先輩なんて、大っ嫌い!!」

 バタンッ

ガヴリール「……はぁ、余計に焚き付けたか」



- 一週間後 事務所 -


タプリス「はぁ……」

タプリス(あれから天真先輩とは、一度も連絡を取ってませんけど)

タプリス(やっぱり、わたしの言い過ぎ、でしたよね……)

タプリス(でもあんな風に、やめろだなんて言わなくても)

タプリス「……はぁ」

女社長「どうしたの、ため息なんてついて」

タプリス「あ、社長さん。す、すみません」

女社長「別に良いのよ。それより、すずちゃん、最近悩んでるみたいだから」

タプリス「やっぱり、わかりますかね……?」

女社長「ええ。でも、そんなすずちゃんに朗報よ」

タプリス「えっ?」

24: 2017/05/10(水) 22:44:48.219 ID:LiIHuXnB0.net
 
タプリス「ファンレター、ですか?」

女社長「ええ、あなた宛てに。たぶん、初めてよね?」

タプリス「はい、初めてです」

女社長「はいこれ。もし、余裕があるのなら」

女社長「返事を書いてあげると、相手も喜ぶかもね」

タプリス「わ、わかりました!」



-タプリスの家-


 『あなたの眩しい笑顔を見ていると』

 『私も頑張ろうっていう気力が湧いてきます』

 『これからもお体にだけは気をつけて、頑張ってください』

 『陰ながら応援しています』


タプリス「……ッ」

タプリス「うっ……うぅ……」ポロポロ

タプリス「……よかった」

タプリス「今まで、続けてきて、本当によかった……」


タプリス「……がんばらないと」

タプリス「もっともっと、頑張らないと!」


タプリス「……お返事、書かないといけませんね」

25: 2017/05/10(水) 22:46:46.270 ID:LiIHuXnB0.net
 
タプリス(それからも、精力的にライブ、握手会、イベントの数をこなしていった結果)

タプリス(わたしの人気は、徐々にではありますが、上がっていきます)

タプリス(ファンレターもそれに比例して増えていきましたが)

タプリス(最初にいただいた方とは、その後も、やり取りを続けて)

タプリス(何度も何度も、つらい時に励ましてもらいました)



-数ヶ月後 事務所-


女社長「あ、すずちゃん。SNSのコメントへの返信、お願いね」

タプリス「は、はい!」

女社長「あとこれ、ファンレター」ドサッ

女社長「全部に目を通すのは難しいから、目についたものだけでね」

タプリス「わ、わかりました」

タプリス(……あ、この封筒、あの人だ)スッ


女社長「あと、来週の単独ライブの準備は順調?」

タプリス「はい、バッチリだと思います!」

女社長「うん、いい返事! 期待してるわね!」

タプリス「はい!」

27: 2017/05/10(水) 22:48:43.917 ID:LiIHuXnB0.net
 
-単独ライブ当日 ステージ-


タプリス「今日はみなさん、来てくれてありがとうございます!」

 キャー キャー

タプリス「思いっきり、楽しんでいってくださいねー!!」

 ワァー ワァー スズチャーン


タプリス「それでは一曲目ぇ……スタートですッ!!」



-数時間後 ステージ裏-


タプリス「はぁ……疲れましたぁ……」

先輩アイドルA「お疲れ! すずちゃん!」

タプリス「あっ! お久しぶりです! お疲れ様です!」

先輩アイドルB「すごい盛り上がり方だね」

タプリス「ええ、本当にありがたいです」

先輩アイドルA「さすがすずちゃん。いつの間にか私たちに追いつき、追い越して」

先輩アイドルA「もう今では、うちの稼ぎ頭だし」

タプリス「そ、そんなことは……」

先輩アイドルB「やっぱり、あの初々しい時に、手を出しておけばよかった」

先輩アイドルA「こらこら……また、そんなこと言って」

タプリス「またみなさんと一緒に、ワイワイしながらライブをしたいですね」

先輩アイドルA「ええ、私も!」

先輩アイドルB「私とワイワイ、夜のお泊りでもいいのよ?」

タプリス「あははは……」

28: 2017/05/10(水) 22:50:40.435 ID:LiIHuXnB0.net
 
-数週間後 タプリスの家の前の夜道-


タプリス(うぅ、だいぶ遅くなってしまいました)

タプリス(帰ったらシャワーを浴びて、すぐ寝ないと)

 ガサッ

タプリス(ん?)

 ガサガサガサッ

タプリス(ひっ、な、何の音!?)

タプリス(と、とりあえず、逃げないと……)

 タッタッタッ


-タプリスの家-


 バタンッ

タプリス「はぁ……はぁ……、なんだったんでしょう、今の」

タプリス「野良犬か何かですよね、きっと」

タプリス「気にしすぎ、気にしすぎ……」

29: 2017/05/10(水) 22:52:54.774 ID:LiIHuXnB0.net
 
-数週間後 事務所-


女社長「すずちゃん、何かあった?」

タプリス「えっ、どうしてです?」

女社長「何か浮かない顔をしているような気がして」

タプリス「そ、そんなことないですよ」

女社長「そう、それなら良いのだけど。何か相談ごとがあったら」

女社長「いつでも言ってね、どんな些細なことでもいいから」

タプリス「……えっと」

女社長「やっぱり、何かあるのね……話して、お願い」

タプリス「わ、わたしの気のせいかもしれないんですけど……」


――

女社長「最近、誰かにつけられている気がする、と」

タプリス「はい……」

女社長「わかったわ。とりあえず、仕事時には送り迎えのスタッフを常時つけるわね」

タプリス「あ、ありがとうございます」

女社長「あとは警察に……」

タプリス「そ、それは、ちょっと。わたしの勘違いかもしれないので」

女社長「でも……」

タプリス(天使である以上、警察と関わりをもつのは)

タプリス(あまりよろしくないですよね……)

30: 2017/05/10(水) 22:54:40.004 ID:LiIHuXnB0.net
 
タプリス「もう少しだけ、様子を見させてもらえませんか?」

女社長「……わかったわ。でも危ないと思ったら、すぐに言うこと」

女社長「良いわね?」

タプリス「は、はい。あ、それでは、歌のレッスンに行ってきます」

女社長「ええ、行ってらっしゃい」


――

女スタッフ「社長、すずちゃんのSNSの件で相談が……」

女社長「どうしたの?」

女スタッフ「特定のアカウントからの誹謗中傷が、最近ひどくなってきまして」

女社長「……すずちゃんに見せる前には、削除しているのよね?」

女スタッフ「ええ、もちろんです」

女社長「わかったわ。引き続き、監視をお願い」

女社長「あと、あまりにも過激な内容が送られてきた場合は」

女社長「すずちゃんの保護を優先して、即連絡を」

女スタッフ「わかりました」


女社長「……」

女社長「私の大事な子たちには、指一本触れさせないわ」

31: 2017/05/10(水) 22:57:13.765 ID:LiIHuXnB0.net
 
-数日後 住宅街-


タプリス「す、すみません、毎晩ついて来てもらって」

女スタッフ「いえ、良いんですよ。これが私の仕事です」

女スタッフ「それにすずちゃんは、スタッフのみんなから」

女スタッフ「妹のように可愛がられてますし。もちろん、私もそう思ってます」

女スタッフ「だから守ってあげたいという気持ちは、みんな同じです」

タプリス「あ、ありがとうございます。わたしもみなさんのこと」

タプリス「お姉さんのように思ってますから!」

女スタッフ「あははっ、そう言われたら、俄然、張り切っちゃいますよ」


 ブロロロロロッ キキーッ

女スタッフ「ん?」

タプリス「えっ?」


 ガチャ ドスッ

女スタッフ「かはっ……」

 バタンッ


タプリス「な、なななっ……」

女スタッフ「……す、すずちゃ、……逃げ、て」


女性ファン「みぃつけた」ニタァ

32: 2017/05/10(水) 22:59:04.134 ID:LiIHuXnB0.net
 
女スタッフ「……はやく、逃げ――」

 ドスッ

女スタッフ「あがっ……」

女性ファン「うるさい」


タプリス「ひっ! ご、ごめんなさい!」

 タッタッタッ

女性ファン「追いかけっこ? いいわよ?」


――

 タッタッタッ

タプリス(ど、どうして、どうしてこんなことに……)

タプリス(やっぱり社長さんの言うとおり、警察に連絡していれば……)

タプリス(わ、わたしのせい、だ……)


 グキッ バタンッ


タプリス「いたっ! あ、足が……」

女性ファン「ふふっ、もう追いかけっこは終わり?」

タプリス「ひっ……」

女性ファン「そんなに怯えなくてもいいのよ、すずちゃん」

女性ファン「だって、私はあなたのことを、愛しているのだから」ニタァ

34: 2017/05/10(水) 23:00:42.300 ID:LiIHuXnB0.net
 
タプリス「わ、わたしは……あなたのことなんて、知りませんっ!」

女性ファン「そんなはずないじゃない。あれだけ会って、お話もしてるのに」

タプリス「えっ?」

女性ファン「あんなに二人で視線を交わしたじゃない。面白い冗談を言うんだから」

タプリス「し、視線? まさか、わたしのライブに……」

女性ファン「ええ、もちろん。あなたの熱い眼差し、ずっと感じていたわ」

タプリス「……ッ」

女性ファン「だから今日は、一緒になりにきたの、あなたと」

女性ファン「ね、すずちゃん。愛しているわ」ガシッ

タプリス「やめてください! わたしはあなたのことっ!」

タプリス「愛してなんかいませんっ!」

女性ファン「え?」

タプリス「わたしの大事な人たちを傷つけるような人なんて……」

タプリス「大嫌いですっ!!」

女性ファン「……ッ」

タプリス「……」

女性ファン「……フフ」

タプリス「……ッ」


女性ファン「あはははははははははははははっ!!!」

35: 2017/05/10(水) 23:03:01.389 ID:LiIHuXnB0.net
 
女性ファン「どうしても、私のものにならないって言うのね?」

タプリス「そ、そうですっ! 誰があなたなんかに……」

女性ファン「そう、じゃあ……」


 ガシッ ギュゥ

タプリス「かはっ……く、くるしい……」

女性ファン「あなたを頃して、私も氏ぬわ」

女性ファン「だって、私のものにならないんだったら」

女性ファン「誰にも渡したくないもの」

女性ファン「あっちの世界で、一緒になりましょう?」ニタァ


 ギュゥゥゥゥッ


タプリス「……ッッ」ジタバタ

タプリス(だめっ、い、息ができっ……)


タプリス(……わ、わたしが、アイドルになったからっ)

タプリス(あの時、諦めていたらっ)

タプリス(ごめっ……ごめんな……さい……)


女性ファン「ふふっ、最後が醜い顔になるのは、さすがに可哀想ね……」

女性ファン「このナイフで、ひと思いに頃してあげるわ」

 キラッ


女性ファン「氏ねぇぇぇ!!」ブンッ


タプリス(て、天真先輩っ!)

36: 2017/05/10(水) 23:04:52.959 ID:LiIHuXnB0.net
 
 グサッ

 ポタッ ポタッ ポタッ


ガヴリール「……ッ」

タプリス「……えっ?」

女性ファン「なっ!? あんた……」


ガヴリール「……おらぁっ!」

 ドゴォッ

女性ファン「がはっ!!」

 ズサァァ


ガヴリール「大丈夫か、タプリス」

タプリス「て……天真、先輩?」

ガヴリール「遅くなって、悪かったな」

タプリス「せ、先輩! 腕がっ、先輩の腕が!」

ガヴリール「ああ、これか? こんなの大したことない」

タプリス「でも血が、たくさん血が出てっ!」

ガヴリール「……私が来たからには、もう大丈夫だ」

タプリス「先輩、ぐすっ……天真先輩ぃ……」


ガヴリール「タプリス。ちょっとだけ、ここで待てるか?」

タプリス「は、はい……」

ガヴリール「いい子だ」ナデナデ

37: 2017/05/10(水) 23:07:14.874 ID:LiIHuXnB0.net
 
女性ファン「いたたっ、あ、あんた何者よ」

ガヴリール「……」スタスタスタ

女性ファン「答えなさいよ! 何者だって聞いて――」


ガヴリール「お前」

女性ファン「……ッ」


ガヴリール「氏にたいんだってな」ギロッ

女性ファン「ひっ!」


ガヴリール「……なぁ、お前たちも聞いたよな?」

女性ファン「えっ?」


 ドドドドドドッ


女ファンクラブ会員たち「……」ギロッ


 『裏切り者は滅せよ』

 『万氏に値する』

 『裁きの時間だ』


女性ファン「ひぇっ、た、助け……」

ガヴリール「今更、命乞いしても遅い。やるぞ、みんな」


 ドカッ バキッ ボコッ
 

39: 2017/05/10(水) 23:08:58.249 ID:LiIHuXnB0.net
 
女性ファン「」チーン


ガヴリール「ふぅ、ここまでが限界か」

タプリス「て、天真先輩、この方たちは……」

女クラブ会員「私たちは、すずちゃんファンクラブの会員ですよ」

タプリス「わ、わたしのファンクラブ?」

女クラブ会員「ええ。それにしても間に合って、本当に良かった」

女クラブ会員「というか、会長! 腕の怪我、早く治療しないと」

タプリス「えっ?」

ガヴリール「なっ、しーっ、しーっ」

女クラブ会員「あ、オフレコでしたっけ、すみません」

ガヴリール「い、今のは、この人の冗談だぞ。な、何でもないからな、タプリス」

タプリス「は、はい……」


ガヴリール「とりあえず、警察に病院と、少しだけ忙しくなるぞ」

ガヴリール「話はその後、ゆっくりな」

タプリス「は、はい。でも、これだけは言わせてください」


タプリス「本当に……ぐすっ……本当にありがとうございました、天真先輩」

ガヴリール「ああ、別にいいよ。お前が無事だったのなら」

40: 2017/05/10(水) 23:10:44.343 ID:LiIHuXnB0.net
 
タプリス(その後、わたしたちは各所をたらい回しにされ)

タプリス(事務所の方たちからは、怒涛の詫び言葉を浴びてしまい)

タプリス(ようやく一息つけたのは、三日後のことでした)



-病室-


ガヴリール「こんなので入院しないといけないとはな」

ガヴリール「暇で仕方ない……」

タプリス「そう言わないでください、先輩」

タプリス「もし後遺症が出てしまったら、大変です」

ガヴリール「心配しすぎだって、もう片手でもネトゲはできるし」

タプリス「天真先輩……」


 ぎゅぅ

タプリス「……」

ガヴリール「……どうした? まだ怖いか」


タプリス「先輩、わたし……」

ガヴリール「……ん?」

タプリス「アイドルをやめます」

ガヴリール「……」


タプリス「今回の件でわかりました」

タプリス「たしかにアイドルは、たくさんの人たちに」

タプリス「元気を与えることができる存在です」

43: 2017/05/10(水) 23:12:41.910 ID:LiIHuXnB0.net
 
タプリス「でも、それと引き換えに……」

タプリス「大事な人たちが傷つくのはもっと嫌なんです」

ガヴリール「……そうか」

タプリス「先輩、言ってましたよね」

タプリス「わたしがアイドルをやめても、困るやつは誰もいないって」

ガヴリール「ああ」

タプリス「その意味が、ようやくわかりました」

タプリス「……アイドルは、わたしの他にもたくさんいますから」

ガヴリール「そうだな」

タプリス「でも……」

ガヴリール「……」

タプリス「天真先輩を想うわたしは、一人しかいません」


タプリス「だから、わたしは……」


タプリス「アイドルを、やめます」


ガヴリール「……わかった」

ガヴリール「お前が決めたのなら、私は止めない」


タプリス「ありがとうございます、先輩っ」ニコッ

44: 2017/05/10(水) 23:14:52.417 ID:LiIHuXnB0.net
 
-事務所-


タプリス「今まで本当に、お世話になりました」

女社長「こちらこそ、何度も言うようだけど、本当にごめんなさい」

タプリス「いえ、あれが起きなかったとしても、いずれわたしは」

タプリス「こうしていたと思いますから」

女社長「そう、あなたにとって一番大切なものを……見つけたのね」

タプリス「……はい」

女社長「それなら、私からは何も言うことはないわ」


女スタッフ「すずちゃんが自分で決めたのなら、仕方ありませんね」

タプリス「あっ、怪我の方はもう……?」

女スタッフ「ええ、軽傷でしたし、もともと体は頑丈ですから」

タプリス「よかったぁ……わたしのせいで、本当にごめんなさい」

女スタッフ「すずちゃんのせいじゃありませんよ。むしろ私たちが……って」

女スタッフ「このやり取り、何回しましたかね。も、もうやめましょうか」

タプリス「あはは……ですね」

女スタッフ「戻ってきたいなぁって思ったら、すぐ言ってください」

女スタッフ「私たちはいつでも、あなたの帰りを待ってますから!」


女社長「みんな! 今日は早めに切り上げて、すずちゃんの送別会をやるわよ!」

みんな「おー!」

タプリス「あ、ありがとうございます、みなさん!」

タプリス「本当に本当に……お世話になりましたっ!!」

45: 2017/05/10(水) 23:16:45.730 ID:LiIHuXnB0.net
 
タプリス(送別会では、事務所のスタッフさん、そして……)

タプリス(先輩アイドルのみなさんから、とても温かいお言葉をいただき)

タプリス(いかに自分が恵まれていたのかが、よくわかりました)

タプリス(本当に、かけがえのない経験をさせてもらいました)


タプリス(そして、数日が経ち、天真先輩は無事に退院して)

タプリス(わたしたちの日常が帰ってきました)



-ガヴリールの家-


タプリス「はい、あーん」

ガヴリール「別に、反対の手でも食べられるっての」

タプリス「ダメですよ。治るのが遅くなっちゃいます」

タプリス「ほら、お口をあけて、あーん」

ガヴリール「……」パクッ

タプリス「まだまだ、たくさんありますからね」

ガヴリール「はぁ……勘弁してくれ」


――

タプリス「あ、ついでに掃除もしてしまいます」

ガヴリール「別にいいよ、昨日もしてくれただろ……」

タプリス「こういうのは、毎日やらないとダメなんです」

ガヴリール「へいへい」

46: 2017/05/10(水) 23:19:04.720 ID:LiIHuXnB0.net
 
 パタパタパタ
 
タプリス「お掃除お掃除、ふんふんふーん♪」

タプリス「棚のホコリも、とっちゃいます♪」

 ガタンッ ドサッ

タプリス「あっ」

ガヴリール「おいおい、物を壊すんじゃないぞ」

タプリス「だ、大丈夫です、壊れてないですから」

 ヒラヒラッ

タプリス「ん? これは……写真?」


 ペラッ

タプリス(えっ? 写ってるのは、わたし?)

タプリス(というか、これ、ライブの時の……)

タプリス(ッ!? この衣装……見覚えがあります)

タプリス(……これは、初ライブの時の衣装です)

タプリス(天真先輩がどうしてこんなものを……)

タプリス(だって、あの時、お客さんは数人しか……)

タプリス(ま、まさか……)


 ガサガサッ

タプリス(……この封筒、わたしがあの人に出した手紙だ)

47: 2017/05/10(水) 23:20:56.972 ID:LiIHuXnB0.net
 
ガヴリール「おい、何見てる……って!!」

タプリス「せ、先輩……これ」

ガヴリール「いや、その写真はだな! ちょっと知り合いにもらったもので!」

タプリス「……この手紙もですか?」

ガヴリール「そ、それは……」


タプリス「先輩が……あのファンレターをくれた方だったんですね」

タプリス「そして、わたしの初ライブにも、来てくれた」

ガヴリール「……」

タプリス「先輩」

ガヴリール「……ああ、悪いかよ」


ガヴリール「心配だったんだよ、お前が!」

ガヴリール「いきなりアイドルやるなんて、わけのわからないこと言い出してさ!」

ガヴリール「内気で人見知りなお前が、だ!」


ガヴリール「それでもお前は、アイドルになるために一生懸命、頑張ってて」

ガヴリール「悩んでも苦しんでも、ずっと前に進み続けて」


ガヴリール「そしたらいつの間にか、トントン拍子で話が進んでさ」

ガヴリール「お前がなんだか、遠くに行っちゃうような気がして」

ガヴリール「正直言って、寂しかったんだよ……」


タプリス「天真先輩……」

49: 2017/05/10(水) 23:23:05.000 ID:LiIHuXnB0.net
 
ガヴリール「でも、お前が決めたことだからさ」

ガヴリール「せめて私は、お前のこと応援してやろうと思ったんだ」

ガヴリール「変装してライブに行って、ファンレターも本気で書いて」

ガヴリール「ファンクラブの会長にまでなってさ」

ガヴリール「笑えるだろ? お前にアイドルやめろって言った奴が――」


タプリス「笑ったりなんかしませんッ!!」

ガヴリール「……ッ」


 ぎゅぅぅ

ガヴリール「……タ、タプリス?」

タプリス「笑うはず……ないです」

タプリス「わたしがどれだけ、ライブのお客さんに元気をもらったと……」

タプリス「わたしが何度、あのファンレターに救われたと、思ってるんですか」

ガヴリール「……」

タプリス「なんなんですか、先輩は……どうして、どうしてそんなッ」

タプリス「わたしがしてほしいことを、してくれるんですかッ」

タプリス「これ以上わたしを、ぐすっ……どうしたいんですか……」

タプリス「わたしは先輩に、何をしたらいいんです……」


ガヴリール「……私のそばにいてくれ」

 ぎゅぅ

タプリス「……ッ」

ガヴリール「だめか?」

タプリス「……そんなの」

タプリス「決まってるじゃないですか」ニコッ

50: 2017/05/10(水) 23:25:39.875 ID:LiIHuXnB0.net
 
-数日後 ガヴリールの家-


タプリス「社長さんに無理を言って……」

タプリス「初ライブの時の衣装、借りてきちゃいました、てへ」

タプリス「天真先輩、どうですか?」クルクルー

ガヴリール「あ、ああ、その……」


タプリス「その、なんですか? せーんぱいっ?」

ガヴリール「……か、かわいいよ、良く似合ってる」

タプリス「そうですかそうですかぁ」


 ぎゅぅぅ

タプリス「先輩……」

ガヴリール「お、おい」カァァ

タプリス「……初ライブの時、あの場所に先輩がいてくれたから」

タプリス「わたしはアイドルとして、あそこまで成長できたんです」

タプリス「今のわたしがいるのは……先輩のおかげなんです」

ガヴリール「タプリス……」

51: 2017/05/10(水) 23:28:42.315 ID:LiIHuXnB0.net
 
タプリス「だから先輩、わたしは……あなただけのアイドルになります」

タプリス「先輩がかわいいって言ってくれた、わたしを……」

タプリス「先輩は……独り占め、しちゃってください」

ガヴリール「ああ、わかったよ。お前は、私だけのアイドルだ」ナデナデ

タプリス「えへへ、先輩……」


 スッ

ガヴリール「タプリス?」

タプリス「……というわけで、ミュージックスタートです!」

ガヴリール「え?」


 ~♪ ~♪ ~♪

ガヴリール「ちょっ、タプリス! 近所迷惑だって!」

タプリス「あとで、一緒に謝りに行きましょう!」



タプリス「わたしの、この想い、あなたに届け!」



タプリス「紗藤すず、天真先輩のために歌いますっ!」キラッ



おしまい

56: 2017/05/10(水) 23:51:48.922 ID:LiIHuXnB0.net
タプリスはカーテンコール

57: 2017/05/10(水) 23:54:10.520 ID:c+IsILFF0.net
おつやでー

58: 2017/05/11(木) 00:06:26.345 ID:u451Nk5g0.net
乙乙

引用: ガヴリール「千咲ちゃん、アイドルになる」