1: 2008/10/18(土) 20:02:45.42 ID:5OU5PkNA0
 

のり「・・・えぇと、力ずくっていうのはちょっと・・・」

巴「今のままでは桜田君が後戻りできないぐらい駄目人間になってしまいます。
  取りかえしがつかなくなる前になんとしてでも更生させるべきです」


2: 2008/10/18(土) 20:03:58.57 ID:5OU5PkNA0


のり「それもそうだけど・・・」

巴「お姉さんは優しすぎます。ちょっとぐらい厳しい方が彼のためです」

のり「うぅん・・・・まあ玄関で立ち話もなんだし、あがってあがって」

巴「そうですね、まずはお姉さんに納得してもらう必要があるかもしれません。
  では失礼します」

のり「どうぞどうぞ。うふふ」

靴を脱いで家にあがろうとして。

ブォン!

巴「―――!?」

のり「あらぁ。避けられちゃった」

 

6: 2008/10/18(土) 20:05:28.85 ID:5OU5PkNA0
 

一瞬前まで巴の頭部があったところを振りぬかれた凶器。

巴「・・・そういえばお姉さん、ラクロス部でしたね」

のり「そうなのよぅ。レギュラーメンバーだからぁ、常に道具は持ち歩いてるの」

巴「それで、今のは一体どういうつもりですか」

のり「ほら。巴ちゃんジュンくんを連れてくつもりなんでしょ?
   だめよぅ?ジュンくんはずっとウチにいるんだから。
   せっかく学校に行かないように根回ししてきたのに、それを壊されちゃたまらないわぁ」

 

9: 2008/10/18(土) 20:06:58.12 ID:5OU5PkNA0
 

巴「・・・桜田君が引きこもりになるように仕向けたのはあなただったんですね」

のり「そうよぅ。ジュンくんはずっとおうちにいるの。わたしのところにいるの。
   わたしのものなんだから、とらないでね?」

ブォン!

巴「――!」

のり「あぁもう。避けないでよぅ」

 

10: 2008/10/18(土) 20:08:56.67 ID:5OU5PkNA0
 

巴「・・・諸悪の根源はあなたですか。まずはあなたを排除しなくては、彼の社会復帰は望めないですね」

のり「あらあら。ジュンくんは社会復帰なんてしないわ。排除されるのは、あ・な・た 」

ブォン!
ガッ!

のり「あらぁ?」

巴「私もレギュラーメンバーですから。試合道具は常に持ち歩いてるんです」

 

11: 2008/10/18(土) 20:10:03.65 ID:5OU5PkNA0
 

のり「そういえば巴ちゃん剣道部だったわねぇ。でも、これは剣道の試合じゃないわ。
   血で血を洗う、頃し合いなんだから。ラクロスの領域よぅ」
ブォン!

巴「ラクロスがそんなスポーツだなんてはじめて知りました」
ガッ!

のり「実はそうなのよぅ」
ブオッ!ブォン!

巴「そうだったんですか」
ガッ!ガッ!

 

13: 2008/10/18(土) 20:12:05.21 ID:5OU5PkNA0
 

のり「巴ちゃん、竹刀なんかじゃこの合金製の特製鈍器には勝てないわよぅ?
   あきらめてただのしかばねになって?」
ブオン!

巴「お断りします」
ガッ!ビュオッ!
バシッ!
のり「きゃあ!?・・・あっ!」

巴「あなたは頭をかち割ることに執着しすぎです。防御が甘いですよ。
  だからそんなに簡単に道具を手放すことになる」

のり「あぅ・・・」

 

14: 2008/10/18(土) 20:12:38.43 ID:5OU5PkNA0
 

巴「では桜田君の害になるあなたには、ここで退場してもらいます。
  大丈夫ですよ。一瞬で終わります。きっと痛くないです」

のり「・・・・・・」

巴「では・・・・」

のり(・・・甘いわ!)

のりの口から赤い霧が放たれる!

巴「なっ!?くっ、目が・・・!」

のり「ラクロス部伝統秘技!毒霧攻撃!」

 

15: 2008/10/18(土) 20:13:18.33 ID:5OU5PkNA0
 

巴「痛い!目が!目があ!」

のり「タバスコはキくでしょぅ?しかも激辛の特注品だもの」

巴「くっ・・・!どうりでくちびるが腫れてると思った・・・!
  ずっと仕込んでいたんですね!」

のり「口にタバスコを仕込みながらしゃべるのはラクロスの基礎技術よぅ。
   それを必要なときに霧状に噴射するのもね。
   試合場を赤く染める液体の十分の一ぐらいはタバスコよぅ」

 

18: 2008/10/18(土) 20:15:08.87 ID:5OU5PkNA0
 

のり「さあて。目が見えなくちゃ攻撃も防御もないわねえ」

巴「・・・・・・・」

のり「さようなら。巴ちゃん」

ブォン!

スッ…

事もなげに、巴は避けた。

のり「えっ?」

巴「・・・剣道部初伝、『心眼』」

ビュオッ!

のり「あ、」


バキグシャッ

 

19: 2008/10/18(土) 20:16:04.04 ID:5OU5PkNA0
 

巴「・・・ふぅ。水筒に入れてたのがただの水でよかったわ。
  麦茶や玉露で目を洗うのはさすがに抵抗があるし」

雛苺「あー!トモエー!」

真紅「あら、いらっしゃい」

翠星石「なんかきやがったですぅ。・・・あれ、のりはどうしたです?」

巴「桜田君に用があるんだけど、部屋?」

真紅「・・・・・・」
翠星石「・・・・・・」
二体の目が光る。

 

21: 2008/10/18(土) 20:17:56.79 ID:5OU5PkNA0
 

真紅「・・・ジュンに何の用かしら?今は部屋で怪しげな通販に忙しいみたいだけれど」

巴「学校に連れて行こうと思って。引きこもりを脱却させるのよ」


真紅と翠星石の目が完全に剣呑なものになる。

翠星石「・・・そんなことはさせねーです」
真紅「そうね、させないわ」


巴「・・・あなたたちも、彼を家に縛りつけてるのね。
  なら、排除させてもらうわ」

翠星石「やれるもんならやってみやがれですぅ!」
真紅「私達ローゼンメイデンに勝てると思って?」

 

24: 2008/10/18(土) 20:20:04.72 ID:5OU5PkNA0
 

雛苺「なんのおはなししてるのー?」

巴「雛苺、手伝ってほしいの」

雛苺「なあにー?」

巴「この子たちを壊すわ」

雛苺「うん!」


翠星石「チッ!おバカ苺が敵に回ったです!」

真紅「あの子にはのりと私達の計画を話してなかったのが失敗かしら。
   まあ、仕方ないわね。敵になるなら壊すまでよ」

 

25: 2008/10/18(土) 20:21:59.81 ID:5OU5PkNA0
 

真紅の周りに花弁が舞い、
翠星石の手には如雨露。

真紅「たかが人間のメスなんて、私達の手にかかれば」
翠星石「木偶人形と一緒です!」

花弁とツタが蛇のように巴を捕らえようとする!

が、

タンッ

巴「遅いわ」

花弁とツタの狙った場所には、すでに巴はいない!

真紅「なっ・・・」


巴「―――剣道部中伝、『牙突』」

ヒュンッ

 

27: 2008/10/18(土) 20:24:06.54 ID:5OU5PkNA0
 

真紅「――!速い!」

神速の突きを、真紅はぎりぎりで回避する。

ドッ!

真紅の後ろにあった壁に、竹刀の太さと同じ大きさの穴があく!

真紅「・・・舐めてかかってはいけないようね」

そう呟くところにも、

巴「隙だらけね」

ビュオッ!

高速の斬り込み!

真紅「くっ・・・!」

巴「さようなら」

 

28: 2008/10/18(土) 20:25:11.49 ID:5OU5PkNA0
 

竹刀が真紅を砕こうとしたその瞬間!

ヒュンッ ビシッ ギュインッ!

巴「えっ!?」

真紅「・・・甘いのだわ」


空振った!? 真紅はもう巴の間合いの外!


巴「・・・その髪・・・自由に動かせたのね」

真紅「ええ。薔薇乙女を舐めないで頂戴」

真紅はそのツインテールで天井にぶら下がり、巴を見下ろす。

 

30: 2008/10/18(土) 20:26:58.77 ID:5OU5PkNA0
 

翠星石「・・・あっちは真紅にまかせるです。
    ・・・雛苺、本当にやるですか」

雛苺「ヒナはトモエのおてつだいするのー」

翠星石「そうですか。ならこっちも手加減なしです」

雛苺「ふたりでひとつの双子のかたわれごときがヒナにかなうわけないの」

翠星石「言うですねチビ苺」

雛苺「金糸雀がそう言ってたのー。翠星石はカナにもヒナにも勝てないへっぴりだって」

翠星石「金糸雀後でぶっ壊してやるです」

 

32: 2008/10/18(土) 20:28:19.56 ID:5OU5PkNA0
 

翠星石が、如雨露を振るう。

翠星石「それで雛苺?苺わだちでどうやって翠星石と戦うです?」

床を突き破って太いツタが生え、翠星石を持ち上げる。

翠星石「翠星石にはお前のひ弱な苺わだちなんて届かないですよ」

一方で、細めのツタが雛苺めがけて襲いかかる!


雛苺「うふふ。大丈夫なのよ」

ドンッ!

跳躍!

翠星石「な!?」

一瞬で、翠星石の眼前に雛苺の笑顔が現れる!

雛苺「いまのヒナの『しんたいのうりょく』はね、蒼星石よりたかいんだよ?」

 

33: 2008/10/18(土) 20:28:52.32 ID:5OU5PkNA0
 

雛苺の小さな手が振るわれる!

翠星石「―――!」

とっさに足場のツタを操り避ける!

ドゴォォン!!

雛苺「あ、おうちこわしちゃった。もう。翠星石がよけるからだよ?」

翠星石(部屋が・・・・つながっちまったです・・・・
    あんなの喰らったら・・・!)

翠星石「な、なんでお前がそんな力持ってるですか!
    お前はもうアリスゲームに敗北して力をほとんどなくしたはずです!」

雛苺「ええとね、ヒナにもよく分かんないんだけど、
   いきものはね、生きのこるためにつねにしんかしてるんだって。
   生きるためのちからをうしなったら、それをおぎなうものを手に入れるんだって。
   雛苺はちからをうしなったから、ぱわーを手に入れたんだって、ラプラスの魔が言ってたよ」

翠星石「あのウサギの楽しそうなツラが目に浮かぶですぅ!!」

雛苺「ねえ翠星石。次はよけちゃだめだよ?」

無邪気な笑顔が、跳ぶ。

 

34: 2008/10/18(土) 20:32:13.59 ID:5OU5PkNA0
 

真紅「ほら、かすりもしていないのだわ。やる気はあるの?」

巴「・・・・・」

巴の高速の太刀は、どれだけ振るっても真紅に届かない。

真紅「ふふ、ふふふふ」

巴「・・・・くっ」

髪を自在に動かし壁に天井に床に突き立て目にも止まらぬ速さで真紅は室内を飛び回る!

真紅「ほらほらほらほら!」

真紅を追い走り回る巴に、花弁が四方八方から襲いかかる!

巴「痛・・・・!」

真紅「私の花弁はキレるわよ!」

 

35: 2008/10/18(土) 20:32:34.40 ID:5OU5PkNA0
 

巴「ふっ・・・・・!」

真紅の動きを予測して、先回りの一撃を放つ!

真紅「そんなものが届くわけがないでしょう!」

寸前で軌道を変え、真紅は難なく回避した!

逆に隙をさらした巴が花弁の集中攻撃を受ける!

巴「・・・・!」

 

36: 2008/10/18(土) 20:33:10.01 ID:5OU5PkNA0
 

真紅「ふふ。私の花弁は威力こそ低いけれど、それも積もり積もれば致命傷よ。
   貴女も時間の問題ね」

巴「・・・・・」

真紅「諦めなさい。人間が、薔薇乙女に勝てる道理は・・・」

巴「・・・・仕方ないわね」

真紅「あら、諦めたのかしら。意外と素直ね・・・って」

巴は、またもや真紅の軌道を読み待ち受けている。

真紅「そうでもないのね。氏ぬまで分からないということかしら」

巴は、構える。

 

37: 2008/10/18(土) 20:33:31.64 ID:5OU5PkNA0
 

真紅(あの一撃を避けて、またこちらの一撃を加えてやるのだわ)

加速の中で、真紅はほくそえむ。

真紅(あんなに真剣な表情で待ち受けて。私に避けられないはずがないのに)

踏み込みと共に、巴が竹刀を振るう!

真紅(・・・これまで以上に速い!けれど、私の髪の力をもってすれば!)

すでに配置しておいた髪に力を入れ、軌道を修正!

回避は成功!

真紅「結局こうなるのだわ!」

 

38: 2008/10/18(土) 20:34:05.48 ID:5OU5PkNA0
 

剣撃は空振り、そこに花弁の一撃を・・・!


グゥン!


真紅「・・・・え?」

体が、引きずり込まれる!?

真紅「な、なに!?なんだというの!?」

不可視の引力に、髪は抗いきれない!

巴の前にまで引きずり出され!


巴「―――剣道部皆伝、『天翔龍閃』」


バキグシャッ

 

41: 2008/10/18(土) 20:37:48.70 ID:5OU5PkNA0
 

雛苺「翠星石、よけちゃだめなのー!」

ドゴウッ!

翠星石「避けねーですむわけがねーですよおばか苺!」

ドゴベギッ!

雛苺「あー!おトイレもこわれちゃったのー!翠星石のせいだからねー!?」

ドガシャァッ!

翠星石「どう考えてもお前のせいですぅ!」

 

42: 2008/10/18(土) 20:39:16.93 ID:5OU5PkNA0
 

雛苺「んもう、翠星石ってばツタでよけてばっかなのー。
   ・・・・あ。先にツタをこわせばいいのかな」

翠星石「ああっ!ちくしょうです!おばかだから気付かないと思ってたのにですぅ!」

雛苺「ヒナはおばかじゃないのぉ!」

ブチブチィッ!

翠星石「きゃああ!!」

雛苺「それじゃ、翠星石。おやすみなの」

顔面を掴んで。



バキバキャッ



雛苺「・・・・うゆ?」

 

43: 2008/10/18(土) 20:39:42.81 ID:5OU5PkNA0
 

握りつぶした感触がおかしい。


雛苺「・・・あれー?」

翠星石「それは木偶(でく)ですぅ」

雛苺「えっ・・・・」


バキグシャッ

 

44: 2008/10/18(土) 20:43:43.01 ID:5OU5PkNA0
 

翠星石「まったくおばかには困ったもんです。
    翠星石はお前なんかにやられるほど間抜けじゃねーです」

翠星石「日頃から木偶人形と入れ替わって警戒していて正解だったですぅ。
    こういういざという時に翠星石の優秀さが現れるですねぇ。
    ジュンに見せてやりたいです」

 

46: 2008/10/18(土) 20:45:18.08 ID:5OU5PkNA0
 

翠星石「そろそろ真紅も片付いたですかー・・・っていないですね。
    まあ真紅と会う前に一応また木偶と入れ替わっておくです」

巴「つまり今は本物ということね」

翠星石「え?」



バキグシャッ

 

49: 2008/10/18(土) 20:48:02.07 ID:5OU5PkNA0
 

巴「かわいそうに雛苺。大丈夫、仇はとったからね」

巴「・・・それにしてもこんなところで皆伝の技を使うことになるなんて。
  それに竹刀じゃ剣速が出しにくいから疲れるのよね・・・」

巴「まあいいわ。とりあえず桜田君の部屋に・・・」


蒼星石「うわあ!?のりさん!?」

 

51: 2008/10/18(土) 20:51:39.15 ID:5OU5PkNA0
 

蒼星石「ど、どういうこと!? のりさんが首から上はフリーダム・・・!」

キョロキョロ

蒼星石「一体何が・・・・」

チラッ

蒼星石「・・・・・・・・・・・・・・・・首から下はノーマライゼイション・・・・」

……

蒼星石「・・・・・・・・・・・・オパーイ・・・・・・・・・」

ゴクッ

蒼星石「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・触診触診・・・・・」

巴「何をしてるの?」

蒼星石「うわああああああああああああ!!!!!」

54: 2008/10/18(土) 20:56:35.77 ID:5OU5PkNA0
 

蒼星石「とととと巴さん何もしてないよ驚かさないでよびっくりするなあもう!」

巴「むしろそこまでおっOいに興味津々なあなたにびっくりよ」

蒼星石「なんのことかなあ!?大体のりさんは一体どうしってああそうだ救急車いや霊柩車!?」

巴「落ち着きなさい」

 

55: 2008/10/18(土) 21:00:43.41 ID:5OU5PkNA0
 

蒼星石「これが落ち着いてられるわけが!!・・・って、・・・・巴さん、何その返り血・・・
     ・・・・まさか」

巴「ええ、そうよ」

蒼星石「なぜこんなことを」

巴「仕方なかったのよ。お姉さんは桜田君の障害だったから」

蒼星石「障害・・・・?むしろこんな巨Oなお姉さんはジュン君の大人の階段じゃ・・・」

巴「あなた本当に女の子?」

 

 

57: 2008/10/18(土) 21:04:50.20 ID:5OU5PkNA0
 

巴(・・・面倒ね)

のりのナイスバディを見て首を傾げている蒼星石に、ため息をつく。

巴(ちょっと眠っていてもらおうかしら)

蒼星石の氏角から、昏倒させるための一撃を放つ!


ザキィ!


巴「!!」

蒼星石「なんのつもり?巴さん」


竹刀が、蒼星石の鋏に切り裂かれた!

 

59: 2008/10/18(土) 21:10:13.03 ID:5OU5PkNA0
 

巴「・・・・・・・」

蒼星石「そこまで強力な攻撃じゃなかったみたいだけど、不意打ちはよくないと思うよ」

巴「・・・・なんだかあなたの相手をするのが面倒になったから、眠ってもらおうと思っただけよ。
  壊すとかそんなつもりはなかったわ」

蒼星石「そう。
     でも、君の持ってる『それ』を見る限り、信用できないね」

巴「この何かの欠片?これは、雛苺がくれたのよ」

蒼星石「それはローザミスティカ。
     それにベリーベルだけじゃなくて、ホーリエやスィドリームまでついてきてるのはどういうことだい・・・?」

 

60: 2008/10/18(土) 21:13:23.92 ID:5OU5PkNA0
 

巴「これは・・・」

蒼星石「この状況で、問答は無用だったかな。
     とりあえず、翠星石の仇はとらなくちゃだね」

ザンッ!

巴「くっ!!」

蒼星石「薔薇乙女を敵に回すのは、愚かとしか言いようがないね」

 

62: 2008/10/18(土) 21:16:22.69 ID:5OU5PkNA0
 

ザンッ ザンッ!

蒼星石「・・・身のこなしはなかなかだね」

巴「くっ・・・!仕方ないわね、あなたも倒させてもらう・・・!」

蒼星石「元からそのつもりだったんじゃないのかい?
     第一、君の武器はもう使い物にならないよ」

 

63: 2008/10/18(土) 21:18:43.45 ID:5OU5PkNA0
 

巴「・・・そうね」

蒼星石「君はどうやら剣を得手とするようだけど。
     素手でなにかできるのかい?」

巴「・・・・・・・・・・・くす」

蒼星石「・・・・何がおかしい」

 

65: 2008/10/18(土) 21:24:29.87 ID:5OU5PkNA0
 

巴「あなた、剣道三倍段って言葉、知ってる?」

蒼星石「武器を持つ人間に素手で勝つには相手の三倍の段位が必要って考えかい?
     それが今の君にどんな関係が・・・」

巴「違うの。それは『確信犯』や『情けは人のためならず』と同じように、誤解が主流になっただけ。
  本来の意味は違うわ」

蒼星石「へえ。じゃあ本来の意味はどういうものなんだい?」

巴「・・・『剣道を修めた人間は、実は素手で戦った方が強い。その差はおよそ三倍』・・・・・よ」

 

66: 2008/10/18(土) 21:28:08.66 ID:5OU5PkNA0
 

蒼星石「は・・・?・・・・戯言を」

巴「本当よ」

蒼星石「そうかい。じゃあこの一撃、素手で何とかしてみてよ」


鋏による突撃!


巴「ええ、見せてあげる」

巴は自然体で構え、


巴「―――剣道部上伝、『二重の極み』」



ガッ!

ザァァァ…

蒼星石「なっ!?僕の鋏が砂に!?」

 

70: 2008/10/18(土) 21:35:28.26 ID:5OU5PkNA0
 

巴「瞬時に弐連撃を放つことによって、物質の抵抗を無視して完全な破壊を可能にする・・・・
  剣道部のレギュラークラスなら例外なく使える技よ。
  竹刀では使えないから、試合では滅多に見せないけどね。
  竹刀を持っている時より、素手のほうが破壊力があるのよね、剣道って」

蒼星石「ああ・・・・お父様に頂いた庭師の鋏が・・・・・」

巴「聞いてないわね。
  まあいいわ。とりあえず眠ってなさい」

蒼星石「あ・・・・!」

巴「・・・・そんな顔しないで。壊しはしないわ」

蒼星石「・・・え?」

 

71: 2008/10/18(土) 21:39:00.31 ID:5OU5PkNA0
 

巴「お姉さんや真紅、翠星石は桜田君を縛りつけようとしてたから仕方なく排除したの。
  雛苺は、私じゃなくて翠星石に壊された。
  桜田君の障害でもなんでもないあなたを壊す理由はないわ」

蒼星石「・・・・・僕は君を殺そうとしたよ」

巴「私はまだ生きているわ」

蒼星石「・・・・・・・・・・」

 

74: 2008/10/18(土) 21:42:02.25 ID:5OU5PkNA0
 

巴「・・・・・・眠らせる必要もないかしら」

蒼星石「・・・・・・・僕はどうしていいか分からないよ」

巴「どうしていいか、じゃないわ。あなたが何をしたいかよ」


蒼星石「・・・・・僕は・・・・・・」

巴「・・・・・・・」

蒼星石「・・・・・・・・君のおっOいがさわりたぐはあ!?」

巴「あなた本当に女の子?」

 

77: 2008/10/18(土) 21:46:29.23 ID:5OU5PkNA0
 

蒼星石「オーケイわかった服の上からでいいからへぶぅっ!」

巴「性懲りのない・・・」

蒼星石「で、でも僕だってただで君に下るわけには・・・」

巴「そこの首から上がフリーダムなものを自由にしていいわ」

蒼星石「商談成立だベイビー」

 

79: 2008/10/18(土) 21:50:12.18 ID:5OU5PkNA0
 

蒼星石「ベイベベイベベイべー」

巴「ずいぶん時間がかかってしまったけれど、桜田君の部屋に・・・」



みつ「きゃあああああああ!!!!?氏体いいいいいい!!!!!!!?」
金糸雀「きゃあああああああああああ!!!!!!!?かしらあああああああああ!!!!!!」




巴「・・・・・はあ」

 

81: 2008/10/18(土) 21:55:54.64 ID:5OU5PkNA0
 

みつ「遊びに来て玄関あけたらそこに首なし氏体とそれにがっつくおぞましい人形・・・・・ああ」

金糸雀「みっちゃん!?しっかりするかしら!・・・・完全に気絶してるかしら!」

蒼星石「やあ金糸雀」

金糸雀「きゃあああああ呪い人形がしゃべったかしらあああああ!!!!」

蒼星石「ひどいなあ鏡見てよ鏡」

巴(放っておいていいかしら・・・)

 

83: 2008/10/18(土) 21:59:27.42 ID:5OU5PkNA0
 

金糸雀「―――!あ、貴女、その返り血とクールな瞳・・・!
     貴女がこれを!?」

巴(無視できないみたいね・・・・)

金糸雀「だ、だめかしら!みっちゃんには手を出させないかしら!
     みっちゃんはカナが守るんだからーーー!!!」

巴「手を出すつもりはないんだけど・・・」

蒼星石「無駄だよ巴さん。金糸雀は思い込み激しいから」

 

84: 2008/10/18(土) 22:05:17.44 ID:5OU5PkNA0
 

金糸雀「殺られる前に殺れ!かしら!
     ―――沈黙のレクイエム・・・・!」

ごう!

巴「きゃっ・・・・!?」

見えない圧力!

巴(風・・・いえ、音・・・!?)

蒼星石「本気の金糸雀は厄介なんだよなあ・・・」

 

85: 2008/10/18(土) 22:08:09.63 ID:5OU5PkNA0
 

金糸雀「クレッシェンド!!!」

巴「・・・・!」

強くなった音の嵐に吹き飛ばされる!

金糸雀「叩きつけてあげるかしら!」

巴「くっ!」

蒼星石「仕方ないなあ」

蒼星石の蹴りが、金糸雀を襲う!

金糸雀「きゃあ!?蒼星石!?」

 

87: 2008/10/18(土) 22:11:46.24 ID:5OU5PkNA0
 

叩きつける力が弱まり、巴は受身をとって衝撃を流す。

巴「・・・ふう」


金糸雀「どういうつもりかしら蒼星石!貴女もみっちゃんを狙ってるの!?」

蒼星石「違うけど、貴重なおっOいをみすみすミンチにさせるわけにはいかないんだ」

金糸雀「何を言ってるか分かんないけどとにかく貴女も敵ね!?
     じゃあ遠慮はなしかしら・・・!
     うなだれ兵士のマーチ!!」

蒼星石「くっ・・・!」

 

88: 2008/10/18(土) 22:15:43.03 ID:5OU5PkNA0
 

蒼星石「やっぱり不可視の音攻撃は僕とは相性が悪いな・・・」

巴「私も同じようなものね」

蒼星石「でもなんとかしなくちゃだし」

巴「ええ」

金糸雀「何の相談かしら!?」

音のハンマーが、振り下ろされる!

とにかく移動して、なんとか避ける!


巴・蒼星石『二人で金糸雀を仕留める!』

 

89: 2008/10/18(土) 22:19:10.99 ID:5OU5PkNA0
 

蒼星石「金糸雀の攻撃は強力だけど、全方位を無制限に攻撃できるわけじゃない・・・!」

巴「そして、ドールもその目は前に二つあるだけ・・・!」

巴は左へ、蒼星石は右へ!


巴・蒼星石『二つの目標を同時に狙える(かしら/かい)!?』


金糸雀「おのれえええええ!!!!!!」

 

91: 2008/10/18(土) 22:24:24.84 ID:5OU5PkNA0
 

金糸雀「まず一匹ずつ片付ければいいかしらあああ!!!」

蒼星石「おや、僕を狙うのか」

巴「後ろが疎かね」

金糸雀「くぅっ・・・!!」

一度は蒼星石の方向に振るった音の嵐を、自身の周りに戻す!

金糸雀に迫っていた巴は即座に反転し、距離をとる!

金糸雀「近づけさせはしないかしらああ!!!」

蒼星石「その代わり僕らを攻撃もできないけどね」

金糸雀「・・・・おのれえええ!!!」

 

93: 2008/10/18(土) 22:27:17.99 ID:5OU5PkNA0
 

巴「膠着状態、ね」

蒼星石「それでいいのさ。僕らは構えてるだけだけど、金糸雀は常に力を使ってるから。
     そのうち力が切れるか、バイオリンの弦が切れるか・・・」

金糸雀「・・・・・・・・・こしゃくなああ!!!」

蒼星石「仕方がないよ。こっちは能力を使えないドールと、人間なんだから」

 

96: 2008/10/18(土) 22:29:46.69 ID:5OU5PkNA0
 

蒼星石「これで後は、時間の問題、っと・・・」

金糸雀「・・・・・・そうはいかないかしら」

蒼星石「へえ。どうするんだい?」

金糸雀「・・・・・・・・・・・」

蒼星石「諦めなよ。二対一じゃあ、勝ち目はない」

金糸雀「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

99: 2008/10/18(土) 22:32:22.08 ID:5OU5PkNA0
 

金糸雀「・・・・これだけは、使いたくなかったかしら・・・・・」

蒼星石「・・・・・?なんだい、金糸雀」

金糸雀「でも、みっちゃんを守るためなら迷わないかしら!」


金糸雀は、精神統一に入る!!


金糸雀「はあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」


蒼星石「な、何をするつもりだ・・・・・!」

 

102: 2008/10/18(土) 22:37:28.30 ID:5OU5PkNA0
 

金糸雀「ふんっ!!」

金糸雀が、大きく頭を振る!

髪のセットが崩れ、金糸雀の髪が自由を得る!


巴「・・・・何を・・・?」


金糸雀「ふふぅん!!!」

さらに頭を振る!

髪が舞い、そして!


蒼星石「ま、まさか・・・・!?」


金糸雀の髪が、意思に応じて動き出す!!

 

106: 2008/10/18(土) 22:41:06.97 ID:5OU5PkNA0
 

金糸雀の髪は、一本一本が鋼線のように直線に伸び!

床、壁、天井全方位に突き立つ!!


金糸雀「ああああああああああああああああああ!!!!!!!」


そこに立つのはまるで、蜘蛛の糸を張り巡らせた鬼神!!!

 

108: 2008/10/18(土) 22:44:34.61 ID:5OU5PkNA0
 

金糸雀「奥義いいいいいい!!!!!!
     ファァイナルビィトオゥケストゥルアアアアアア!!!!!!!!」


金糸雀が、バイオリンを弾く!

その瞬間!!!!!


巴「きゃあああああああ!!!!?」

蒼星石「うわあああああああ!!!!」


桜田家の半分が吹き飛んだ!!!!!!

 

113: 2008/10/18(土) 22:50:46.15 ID:5OU5PkNA0
 

巴「がっ、は、何、なんなの、あれは・・・」

蒼星石「あれは・・・・『ファイナルビートオゥケストルアアアアアア!!!』・・・・・」

巴「知っているの蒼い子!?」

蒼星石「・・・・あれは、金糸雀の一族に伝わる究極奥義・・・・・・」


蒼星石「・・・金糸雀の髪は、実は全てバイオリンの弦なんだ・・・・・
     そして金糸雀の意思である程度操作ができる。

     その弦を周囲に張り巡らし、
     自身を含んだ空間まるごとを巨大な楽器に作り変える!

     その空間楽器は手元のバイオリンの音に反応して奏でられ、
     バイオリンの力を何倍何十倍にも増幅し
     周囲全てに圧倒的な破壊を撒き散らす!!!

     周囲殲滅型最終究極絶対奥義・・・・!!!!」


 

121: 2008/10/18(土) 22:58:06.78 ID:5OU5PkNA0
 

金糸雀「そう。これはカナの奥の手。
     姉妹で唯一カナだけに与えられた最強奥義。
     真紅は少しだけ真似事ができたみたいだけれど、所詮はまがい物。
     カナの奥義に敵うドールはいない・・・・」

蒼星石「くそ・・・!なんてことだ!全方位を破壊できる不可視の音なんて、どうしようもない・・・!!」

巴「くっ・・・・・」

金糸雀「・・・・今の一撃で、壁や天井はなくなってしまったけれど、床の分がまだあるかしら。
     一撃で壊してあげられるわ」

金糸雀は、バイオリンを構える。

金糸雀「さようなら、蒼星石と人頃しさん」


嵐が、二人を呑み込んだ!!!!

 

124: 2008/10/18(土) 23:03:13.47 ID:5OU5PkNA0
 



―――周囲は、瓦礫の山と化している。


かろうじて桜田家はその半分を残しているが、
隣家や近所も多くが半壊以上。


巴「・・・・・・・・・・・え・・・・」

巴も傷だらけではあるが、どうにか生きている。

巴「蒼星石、私をかばって・・・・?」

蒼星石は、ほとんど壊れている。

蒼星石「・・・・・貴重な・・・・おっOい・・・・・・・」

ガクン

蒼星石は、動かなくなった・・・

 

130: 2008/10/18(土) 23:06:07.73 ID:5OU5PkNA0
 

胸に寄りかかって動かなくなった蒼星石に、感謝する。

巴(・・・・・・でも)


金糸雀「あら。まだ生きてたかしら」


巴(少しだけ寿命が延びただけかもしれない)


金糸雀「じゃあ、もう一発かしら」

バイオリンを、構える・・・


 

132: 2008/10/18(土) 23:11:48.55 ID:5OU5PkNA0
 

だが、その時!!!


みつ「う、うう~ん・・・」

金糸雀「あ!!みっちゃん!起きたかしら!大丈夫かしら!?」

みつ「金糸雀・・・・・・・・・・かなり、あ?」

金糸雀「みっちゃん?」


金糸雀は、自分では気付いていなかったが。
髪を張った天井や壁が吹き飛んだ際。
そこに張られていた髪は一緒に吹き飛んで、金糸雀の頭から抜けていた。

つまり。

今の金糸雀は、鬼神のオーラをまとったハゲドールである!!!



みつ「キモい!!!!!!!」

パタン

みつは再び失神した!
 

134: 2008/10/18(土) 23:15:45.19 ID:5OU5PkNA0
 




沈黙が、場を支配した。




金糸雀「」

パタン





魂を打ち砕かれたドールは、声にならない嘆きと共に、眠りについた・・・・・・

 

139: 2008/10/18(土) 23:21:53.12 ID:5OU5PkNA0
 

巴「・・・・・・・なんとか、生き残ったのかしら・・・・?」

恐怖がまだ抜けていない。

おそらくはローゼンメイデン最強であっただろう金糸雀は主の心無い一言で沈み、
幸運に恵まれた巴は生き残った。

巴「僥倖としか言いようがないわね・・・・」

巴「・・・・・とにかく、本来の目的を果たさなきゃ・・・・・・」



水銀燈「あーっははは!!!なにこれ!すごいことになってるじゃない!!」

 

142: 2008/10/18(土) 23:27:35.82 ID:5OU5PkNA0
 

巴「・・・・・・・」

水銀燈「金糸雀にぃ、蒼星石にぃ、翠星石に、雛苺に真紅。
     ちょっと。五個もローザミスティカが野ざらしになってるじゃない!」

巴「・・・・・・・・」

水銀燈「真紅を私が壊せなかったのは残念だけど、
     とりあえず落ちてるものはもらっちゃおうかしら」

巴「・・・・・・・・」

水銀燈「・・・・なによアンタ。なんのつもり?」

巴「雛苺も蒼星石も、あなたには取られたくないみたいだから」

水銀燈「やる気かしら?人間が?ローゼンメイデン第一ドールの私と?」

巴「そうね」

水銀燈「あはははははは!!!馬鹿じゃないのぉ!?
     遊びにもならないわぁ!」

巴「・・・・・・・・・」

水銀燈「くすくすくす。まあ、そうね。今は気分がいいから、特別に遊んであげるわぁ」

 

143: 2008/10/18(土) 23:32:57.67 ID:5OU5PkNA0
 

黒い羽根の一撃を、横に跳んでかわす。

水銀燈「ほらほらほらぁ!当たると痛いわよぉ!?」

走りながら、巴はあるものを探す。

水銀燈「ほら逃げなさい!這いずり回りなさい!あはははは!!」

巴(・・・・・あった)

 

146: 2008/10/18(土) 23:41:08.82 ID:5OU5PkNA0
 

瓦礫の中から、数本の包丁を拾い出す。

水銀燈「あらぁ?それどうするのぉ?くすくす、投げでもするのかしら」

巴(あれは・・・・・・・・・・・・・あった)

もう一つの材料を拾う。

水銀燈「ちょっ・・・・!何それ!あはははははは!!頭おかしいんじゃない!?」

上から降ってくる嘲笑と黒い羽根をかわしながら。


巴は、『物干し竿』を振るう!

 

148: 2008/10/18(土) 23:44:27.43 ID:5OU5PkNA0
 


巴「―――剣道部中伝、『土龍閃』」


物干し竿が地面を切り裂く!!!

数十の瓦礫が巻き上げられ、水銀燈を襲う!!


水銀燈「なっ!?」

回避したところに、


巴「―――投擲」


数本の包丁―――



バキグシャッ

 

150: 2008/10/18(土) 23:47:40.76 ID:5OU5PkNA0
 

巴「・・・・・・なんだか何をしに来たのか分からなくなってきたわ・・・」

巴「このローザミスティカ?もどうしたらいいのかしら・・・・・」

巴「・・・・・ああもう。とにかく桜田君の部屋に・・・・」




雪華綺晶「少しばかり、お待ちください」

 

153: 2008/10/18(土) 23:53:27.77 ID:5OU5PkNA0
 

巴「・・・・・あなたが七番目のドールかしら」

雪華綺晶「ええ。
       本当はこんな形で現れるつもりはなかったのですけれど、
       ローザミスティカが六つ野放しにされているのは放って置けませんでしたので。
       ちょうど良く二番目のお姉様の体が転がってましたので、
       それを使わせて頂きました」

巴「・・・・?何を言っているのかわからないけれど、あなたもこれがほしいのね」

雪華綺晶「はい。それはあなたには何の意味もないものですわ。
       私達ドールが持っていて初めて価値があるもの。
       そして、もうドールは私一人。
       ・・・・渡して、頂けますね?」

 

155: 2008/10/18(土) 23:57:14.64 ID:5OU5PkNA0
 

巴「・・・・・・・・・」

ローザミスティカを眺める。

巴「・・・・・・・雛苺は嫌だって。他の子も意見はまとまってないみたいよ」

雪華綺晶「お姉様方の意見など、すでに意味はありませんわ。
       アリスになれる可能性をもつのはもう私一人。
       ローゼンメイデンはアリスになるために作られたのですから、
       選択の余地はありません」

巴「・・・・・・・・どうしようかしら」

 

156: 2008/10/19(日) 00:00:33.49 ID:0+8/Fazo0
 

雪華綺晶「・・・・どうするのですか?」

雪華綺晶(・・・・・私は、焦っている。いえ、浮き足立っている。
       でもそれは当然のこと。アリスが、すぐ手の届く所にあるのですから)

巴「・・・・・ううん」

雪華綺晶(・・・・・・早く。早く渡しなさい)

巴「・・・・・・・でもやっぱり雛苺はわたしと一緒に居たいって・・・」

雪華綺晶「・・・・そんなことはどうでもいいのです。
       渡してください」

 

158: 2008/10/19(日) 00:05:53.31 ID:5OU5PkNA0
 

雪華綺晶(私は何をしている。目の前にアリスがあるのだから、手にすればいい・・・!)

雪華綺晶「・・・・貴女の意見はどうでもいいですわ。それは、頂きます」

雪華綺晶(この女は強い。けれど借り物であるこの身体がいくら壊されたところで私は壊れない。
       ジャンクを引きずってでも、私は動ける)

巴「・・・・・・・・」

眉をひそめ、巴は身構えるが、

雪華綺晶「私の本体は精神体。貴女の攻撃など、欠片の痛痒もありませんわ」

嘲りながら、近付く。

 

160: 2008/10/19(日) 00:09:09.80 ID:0+8/Fazo0
 

巴「奪うつもりかしら」

雪華綺晶「いいえ。あるべきところに戻すのです」

巴「同じことよ」

雪華綺晶「どうでもいいことですわね。とにかく、頂きますわ」

手を伸ばして。


巴「ふっ・・・・!」

手刀が、雪華綺晶の腕を打つ。


金糸雀の身体は砕けるが。

雪華綺晶「・・・関係ありませんわ」

雪華綺晶の姿は変わらない。

 

164: 2008/10/19(日) 00:13:51.52 ID:0+8/Fazo0
 

巴「・・・確かに効かないのね」

雪華綺晶「ですから言ったでしょう。大人しく渡しなさい」

巴「嫌よ。・・・・・・精神体、ね」

巴は、一瞬考えるような素振りを見せ、

巴「・・・・久しぶりにやってみようかしら」

雪華綺晶「・・・・・・・?」


巴は、目を閉じ、

巴「・・・・・・・・・・・」


雪華綺晶「・・・・・?・・・・・まあ、頂きますわ・・・」


巴「―――― 破 ! ! ! ! 」



手刀も打撃も無く。

雪華綺晶は切り裂かれた!!!!!

167: 2008/10/19(日) 00:18:52.75 ID:0+8/Fazo0
 

雪華綺晶「がっ・・・・・・!?」

雪華綺晶(な、何・・・・!?何が起きたのです!?)


巴「あら、効くのね。
  今のは『剣気をまとった』の
  気の緩みや煩悩を打ち払うときにも使うの」


雪華綺晶「私は煩悩と同じ扱い・・・・!?」

巴「そうみたいね。
  ・・・・『剣気をまとった手刀』なら効きそうね?」

雪華綺晶「ひっ・・・・・・!」

巴「煩悩退散」



バキグシャッ

 

170: 2008/10/19(日) 00:20:47.04 ID:0+8/Fazo0
 

巴「ふう・・・・なんだか満身創痍ね。
  そもそもの目的を忘れそうだわ・・・・」

巴「じゃあ、桜田君を引っぱり出そうかしら」

 

173: 2008/10/19(日) 00:23:42.76 ID:0+8/Fazo0
 

巴「入るわよ、桜田君」

ジュン「・・・・なんだよさっきからうるさいな」

巴「脱引きこもり計画の余波よ」

ジュン「ずいぶんと壮大だな・・・・
     いや待て。今なんて言った?ひ、引きこもり、だって?」

巴「ヒッキーでもいいわよ」

ジュン「僕は引きこもりじゃない!!!!外に出る必要がないだけだ!!!!」

 

177: 2008/10/19(日) 00:29:23.27 ID:0+8/Fazo0
 

巴「その言い訳は聞き飽きたわ。とにかく、力ずくでも学校に・・・・」

ジュン「・・・・力ずくだって?柏葉が?この僕に?」

巴「ええ、そうよ」

ジュン「く、く・・・・・はははははははは!!!」

巴「・・・・何がおかしいの」

ジュン「何が?何がだって?
     そりゃあ柏葉の言ったことがおかしいに決まってるだろ!
     僕を、力ずくで?この僕を!?」


ジュンの衣服が急激に膨れ上がり!

破裂するように引きちぎれる!!

その下から現れたのは・・・・!!!


ジュン「怪しい通販の薬品で肉体改造を極め、
     怪しい通信教育で数多の武術を極めたこの僕を力ずくでだってええええ!!!!!?」


黒光りする巨大な筋肉!!!!!!!
 

180: 2008/10/19(日) 00:33:24.43 ID:0+8/Fazo0
 

ジュン「フゥン!!」

高速の正拳が、巴に迫る!!

巴「なっ・・・!」

寸前でかわすが、

巴「くうっ・・・!!」

ジュンの拳がまとった拳圧が、巴を吹き飛ばす!!!

ジュン「どゥした柏葉あ!!力ずくで引っぱり出すんじゃなかったのかあァァぁァ!?」

 

184: 2008/10/19(日) 00:39:35.34 ID:0+8/Fazo0
 

巴「くっ・・・!桜田君!いつのまにこんなことに・・・・!」

ジュン「最近真紅の虐待が酷かッたからさあ!
     対抗するために肉体改造に熱中してたのさ!!!!!」

ジュンの上段蹴りが、巴を襲う!!

即座に屈み避けるが・・・!

ジュン「甘ァい!!」

ジュンの脚は急激に軌道を変え!

巴「あああああああ!!!!!」

巴を地面に叩きつける!!


ジュン「数多の武術を極めていると、言っただろゥ?」

 
 

190: 2008/10/19(日) 00:43:50.62 ID:0+8/Fazo0
 

巴(左肩がやられた・・・・!!)

巴(・・・・・くっ!立ち上がれない!!)

ジュン「軽ゥく再起不能にしてやるよ柏葉ァ。
     僕を引きこもりと言った罰だあ」

踵落とし。

巴(こうなれば!)


ノックするように、床を叩く。

それだけで。


ジュン「おォう!?」


床は砂となり、桜田家は崩落する!!!

 

193: 2008/10/19(日) 00:47:36.93 ID:0+8/Fazo0
 

落下の中、瓦礫を足場に体勢を整え着地に備える。

轟音と砂煙の中、受身で衝撃を頃し、

立ち上がった巴の目の前には・・・!!


ジュン「へええ・・・・すげェな柏葉。今のはなンだ?」


屋根の残骸であろう巨大な瓦礫を頭に受けながら、平然と立つ一人の怪物・・・・・!!!


 

194: 2008/10/19(日) 00:50:59.22 ID:0+8/Fazo0
 

ジュン「今のは、あァ~、超高速の二連撃か?」

思い出すように首を傾げ、頭の上の巨塊に触れる。

ジュン「こんな感じかァ?」


たんっ、と。


ノックのような一撃で、巨塊は砂になった。

 

196: 2008/10/19(日) 00:54:27.58 ID:0+8/Fazo0
 

巴「・・・・・・・・・!!」

巴は戦慄する。


ジュン「ぐわッ!ペッペッ!頭の上でやるもんじゃねェな・・・・」


ジュンは一度見ただけで、原理も鍛錬も関係なく、
『二重の極み』をマスターした・・・

巴(怪物・・・・・・!!!!!)

 

199: 2008/10/19(日) 00:57:55.41 ID:0+8/Fazo0
 

ジュン「あァ~、でも面白ェなこれ。おーおー、簡単に砂になる」

瓦礫を砂にして遊んでいる。

巴(今のうちに、逃げなくちゃ・・・・・!!!!)

わずかに、後ずさって、


ジュン「おィおィ柏葉ァ、どォこ行くんだァ?」


一瞬で、ジュンは巴の目の前に現れた。

 

205: 2008/10/19(日) 01:02:39.54 ID:0+8/Fazo0
 

巴「ひっ・・・・・・!」

ジュン「だァめだろゥ?罰はまだ済んでないんだ。
     僕を引きこもりと呼ぶ罪は重いんだからなァ?」

巴「あ・・・・あ・・・・・・」

ジュン「でもさすがに『これ』を人間に使ったら罰とかそういうレヴェルじゃないし。
     仕方ないから」

巴「・・・・・・・・!」

ジュン「平手一発な」


ドゴォウ!!!


巴が吹っ飛び!

平手が扇ぐ形になった方向の家々が、余波で吹き飛ばされた!!!

 

210: 2008/10/19(日) 01:05:30.40 ID:0+8/Fazo0
 

巴「・・・・・がっ・・・・・はぁっ・・・・・・!」

呼吸が出来ない。

全身の肉も骨も砕かれている。

生きているのが奇跡。

いや、あるいは拷問か。

巴「・・・・ああぁ・・・・・!!」

苦悶。


 

216: 2008/10/19(日) 01:13:12.14 ID:0+8/Fazo0
 

巴(痛い。苦しい。嫌。氏。氏なせて)

苦しみの中。

巴(氏なせて頃して助けて痛い)

光が近付く。


雛苺『めっ、だよ、トモエ』

巴(・・・・・雛苺・・・・?)

雛苺『トモエがいなくなるなんて、いやなの』

蒼星石『貴重なおっOいだしね?』


光が、入ってくる。

 

217: 2008/10/19(日) 01:14:30.30 ID:0+8/Fazo0
 

光が、全身を包む。

巴「あ・・・・・?」

傷の痛みが無い。

それどころか、やけに力がみなぎっている。

巴「傷は・・・・?」

巴「・・・・・・・・・・・・・・・」

巴「・・・・・・・?」


身体を見ようとしているのに、見えない。

違和感。

巴「なんだろう・・・・・・・って、あ」

見下ろす位置に、視線を遮るものがあった。

巴「な、なんで・・・・!?」


ジュン「柏葉がボンキュッボンに!?」
 

224: 2008/10/19(日) 01:21:20.73 ID:0+8/Fazo0
 

そう。

なぜか巴は大人なぼでぃになっていた!


巴「な、なななな、な!?」

混乱する巴の頭上に、巨大な光球が舞い降りる!


ローゼン『 やっとアリスが目覚めた 』

ローゼン『 本来の予定とは全く違う流れではあるが・・・・ 』

ローゼン『 ともかく、完全なる少女の目覚めだ 』

ローゼン『 この世界のあらゆるものから祝福を送 』

ジュン「ざけんなああああああああ!!!!!!!!!」

ジュンの渾身のナックル!!!!

ドゴオオオオオウ!!!!!!

光の球は空に還った!!!!!

 

226: 2008/10/19(日) 01:26:26.21 ID:0+8/Fazo0
 

ジュン「ちくしょう!!!ふざけんな!!!何が完全な少女だクソ野郎があああ!!!!」

巴「え・・・・・あの、桜田君?」

ジュン「巨Oで大人でアダルティな色気なんていらねえんだよ!!
     柏葉は前のままで、薄めの胸でクールな空気でそこはかとない色気がいいんだろうがああああ!!!」

 

232: 2008/10/19(日) 01:32:02.18 ID:0+8/Fazo0
 
巴「あ、あの?え?」

ジュン「分かってねえ・・・・!ローゼンのジジイなんにもわかってねえ!!」

がしっと、巴の両肩を掴む。

巴「え?え?え?」

ジュン「絶対に取り戻してやるからなああ!!!!?」

巴「んむう!!!?」


吸い出される!!


雛苺『きゃー』
真紅『それでいいのよジュン』
翠星石『ナイスですぅ』
水銀燈『いやあああ!!こんなやつのなかになんかああ!!』
雪華綺晶『もうどうでもいいです・・・・』
蒼星石『チッ・・・・』


光がジュンを包み、そして!!


巴「・・・・・桜田君が、ボンキュッボンに・・・・!!」
 

239: 2008/10/19(日) 01:40:36.26 ID:0+8/Fazo0
 

ジュン「・・・・・・・・・・・・・・」

巴「・・・・・・・・・・・・・・・・」



なんとなく、言葉に迷う。


巴「・・・・・・・・・・・ええと」

ジュン「・・・・・・素晴らしい力だ!!!」

巴「え?」

 

240: 2008/10/19(日) 01:40:54.34 ID:0+8/Fazo0
 

ゆっさゆっさと母性の塊を揺らしながら、ジュンは咆哮する。

ジュン「とてつもない・・・・果てしない力だ!肉体改造なんて目じゃない・・・!!」

アリスの力。ローゼンメイデン全ての力。

ジュン「この力があれば、僕はこの世界の王になれる・・・・!!!!」

 

242: 2008/10/19(日) 01:44:19.23 ID:0+8/Fazo0
 

巴「桜田君・・・・・・!」

ジュンの凛々しい姿に巴は感動さえ覚えるが、同時に危惧を覚える。

巴「・・・で、でも桜田君。いくらなんでも一人で世界を敵に回すなんて・・・・!」

梅岡「やあ桜田君! 担任の梅岡だよバキグシャッ

ジュン「大丈夫だよ、柏葉。僕は一人じゃない」

巴「え・・・・?」

ジュン「お前がいる」

巴「・・・・・・・・!」

 

244: 2008/10/19(日) 01:48:55.24 ID:0+8/Fazo0
 


ジュン「二人で、世界を手に入れよう」

巴「そ、そんな・・・・・」

ジュン「さあ」

巴「・・・・で、できるかしら」

ジュン「できるさ。僕達二人なら」

巴「・・・・そう、ね」

ジュン「行こう。柏葉・・・・いや、巴」

巴「・・・ええ。ジュン」


手を取り合って!



ジュン「さあ!僕達の戦いは始まったばかりだ!!」



                        ~ 完 ~
 

248: 2008/10/19(日) 01:51:36.05 ID:aLGWBGPM0

綺麗にまとめやがったwww

249: 2008/10/19(日) 01:51:47.74 ID:rdfk1hO2O
あれ……スレタイ……

250: 2008/10/19(日) 01:54:13.29 ID:4nBCrR8U0
終わったwwwwww

252: 2008/10/19(日) 01:55:15.58 ID:0+8/Fazo0
 
ここまで読んでくれた皆さんに感謝です
ではまた機会があれば。



いやー、馬鹿なもの書いてると気分がスッキリするね!

引用: 巴「桜田君を力ずくでも学校に連れて行きます」