1: 2016/10/13(木) 01:32:56.91 ID:KLEAacYy.net
【十月十二日午後・秋葉原UTX】

あんじゅ「あーあ。どうせなら満員のお客さんの前でやりたいわ」

ツバサ「完っ全にフルハウスってやつ?」

英玲奈「だが、どんな状況でも力を発揮できてこそ…」

あんじゅ「はいはい。わかってるわよ…常に完璧を目指すことがチャンピオンの義務だとか言うんでしょ」

英玲奈「わかっているなら何も言うことはない」

ツバサ「ふふふ。まあいいじゃない。屋上を三人だけで貸し切りなんて、私たちしかできないわよ?」

あんじゅ「そーね。たまには三人水入らずで…英玲奈?」

英玲奈「すまない。忘れ物だ…すぐ取ってくるから、二人は先に行っててくれ」

ツバサ「ええ」
あんじゅ「はーい」

チーン

あんじゅ「いつも完璧に見える英玲奈も、案外お茶目なところもあるのね」クス

ツバサ「きっと私たちしか知らないわよ。人前じゃ絶対そんなところ見せないもの」

あんじゅ「それでも屋上に着いてから気づいて引き返すとかじゃないのが英玲奈らしいわよね」

ツバサ「そうね。エレベーターに乗る前に気づいたのは、さすがって感じ」

【更衣室】

英玲奈「ロッカーに…!?」

英玲奈「誰だ?灯りを…いや、これは…停電?」

【エレベーター】

あんじゅ「え?…ちょっと、何?」

ツバサ「停まった…みたいね」

あんじゅ「なんで灯りまで消えるのよ。おかしくない?」

ツバサ「非常灯が点いてる…ってことは、停電ね」

あんじゅ「停電って…雷とか鳴ってなかったと思うんだけど」

ツバサ「それ以外の原因で停電したってことでしょ」

あんじゅ「なにそれ…地震でもないし、何なのよ?」

ツバサ「私に訊かれても…とりあえず非常電話で救援要請しましょ」

あんじゅ「あーあ。もう…完っ全にフルハウス」ハァ
ラブライブ!2期

2: 2016/10/13(木) 01:36:06.63 ID:KLEAacYy.net
【数分前・高坂家】

穂乃果(そのままでも美味しい塩バターパンだけど、オーブントースターで表面がパリッとするまであたためると最高なんだよねー♪)

穂乃果「ん?…あ、あれ?…動かない」

【居間】

『つまり、犯人は──』パッ

雪穂「ちょっ…お姉ちゃん!?なんで消す──」

雪穂「って、いないや…あれ、リモコン踏んだ?…わけじゃないよね」

雪穂「まさか、これって…停電?」

雪穂(テレビ見られないじゃん…しょうがないから部屋行こ)

穂乃果「雪穂!」

雪穂「停電みたいだよ」

穂乃果「う、うん。雪穂、ちょっと来て」

雪穂「いいけど…どこ行くの?」

穂乃果「私の部屋!」

雪穂「えー?なんでよ?」

穂乃果「だって、雷とかじゃないし、急に停電なんて…いつ直るかわかんないじゃん?」

雪穂「まあ、地震も雷もなかったけど…すぐ復旧するでしょ?ブレーカーが落ちただけかも」

穂乃果「でも今から停電じゃ夜までかかるかもしれないじゃん。そしたら暗くなるし…」

雪穂「もしかして…お姉ちゃん、一人でいるのが怖いの?」ニヤニヤ

穂乃果「雪穂と一緒じゃなきゃイヤなの!」グイグイ

雪穂「わ、わかったよ。しょうがないなー♪」

【秋葉原UTX・エレベーター】

あんじゅ「はぁ…最悪のタイミングね」カミノケクルクル

ツバサ「ぼやいてもしょうがないわよ。そんなに時間かからないはずだから大丈夫」

あんじゅ「ツバサはいやに冷静ね?」

ツバサ「いやにって…あんじゅは私と二人きりがイヤなの?」

あんじゅ「そ、そんなことないわよ。…こんな時に変なこと言わないで」

ツバサ「たまには、二人きりでのんびり雑談でもしましょうよ♪」

あんじゅ「雑談ねえ…」

6: 2016/10/13(木) 01:39:13.79 ID:KLEAacYy.net
ツバサ「たとえば…高校生らしく恋話なんてどう?」

あんじゅ「何もないでしょ?私たちアイドルなんだし…」

ツバサ「恋人はいなくても好きな人とか、昔好きだった人とか…何でもありでしょ」

あんじゅ「ツバサはいるの?…そういう人」

ツバサ「いや、特には…居ないけど」

あんじゅ「」ガクッ

【南家】

ことり「もーっ!…せっかく気合い入れて作業しようと思ってたのに」チクチク

ことり(復旧を待ってミシン使ったほうがいいかなぁ…)

理事長「ことり」

ことり「なあに?お母さん」

理事長「あれ、まだあったかしら?アロマキャンドル」

ことり「あるけど…使うの?」

理事長「夜まで復旧しなかったら使ってみようかと思って♪」ワクワク

ことり「…なんか、お母さんワクワクしてない?」

理事長「そんなことないわよ。早く直らないと困るし…」

ことり(本当かなぁ…まあいいけど)

【再び秋葉原・UTX】

英玲奈(エレベーターは…使えないようだな。階段を使うしかないか)

【エレベーター】

ツバサ「あんじゅはどうなの?」

あんじゅ「私だけ話すの?…聞きたい?」

ツバサ「もちろんよ♪」

あんじゅ「しょうがないわね…いたわよ。好きだった子」

ツバサ「だった?」

あんじゅ「その頃からアイドルになるって決めてたの。だから告白とかはしなかったわ」

ツバサ「そうなんだ…それっていつの話?」

あんじゅ「小学生の頃よ。…でも正直、どっちが好きだったのか…微妙なところね」

ツバサ「どっちって?」

8: 2016/10/13(木) 01:41:34.84 ID:KLEAacYy.net
あんじゅ「仲良しの女の子が二人いたの。一人は同い年、もう一人は年下よ」

ツバサ「そんな昔から恋多き少女だったなんて…おませさん♪」

あんじゅ「からって何よ。今はアイドル一筋よ」

ツバサ「本当かなぁ?今でも好きなんじゃない?」

あんじゅ「どうかしらね…私も相手もその頃とは違うし、今は会ってるヒマもそんなにないし」

ツバサ「その二人、どちらかでもあんじゅのこと好きだったんじゃない?」

あんじゅ「んー。今思えば、その二人が両想いだったんじゃないかって」

ツバサ「えぇ!?…あんじゅ、フられちゃったんだ?」

あんじゅ「まだそうと決まったわけじゃないけど…別にいいわよ。あの二人が付き合うんだったら素直に嬉しいし」

ツバサ「切ないね…でもちょっと素敵♪」

あんじゅ「あんまり人に喋ったりしないでよ?」

ツバサ「はーい♪」

【絢瀬家】

絵里「早く復旧しないかしら…」ハラハラ

亜里沙「でも夜じゃなくてよかったね。お姉ちゃん」

絵里「そ、そうね…これくらいなら慌てることないわよね」

亜里沙「うん。…ほら、こうするとあったかいよ♪」ギュ

絵里「亜里沙…ふふ、ありがとう♪」ギュ

亜里沙「でも夜までには電気使えるようになってほしいな。雪穂と、あの番組楽しみにしてたから…」

絵里「テレビ?」

亜里沙「うん。相棒♪」

絵里「相棒って…人が殺されたりするやつでしょ?」

亜里沙「そうだけど、賢い刑事さんが事件を解決するの♪」

絵里「亜里沙、そういうの好きなの?」

亜里沙「再放送のをちょっと見たけど、面白かったよ♪」

絵里「…怖くない?」

亜里沙「犯人は逮捕されるから大丈夫よ。Хорошо♪」

絵里(亜里沙がそう言うなら、見てみようかしら…)

9: 2016/10/13(木) 01:44:41.37 ID:KLEAacYy.net
【音ノ木坂・弓道場】

海未「何やら騒がしい様子ですが…何事です?」

弓道部三年「なんか停電みたい」

海未「はあ。停電…でも雷や地震は無かったように思いますが」

弓道部三年「そうなんだよね。…なんでかしら?」

海未「早めに切り上げますか?」

弓道部三年「そうね。もし長引くようなら、いろいろ準備も必要かもしれないし」

海未(すぐに復旧すると良いのですけど…まあ、とりあえず帰ることにしましょう)

【秋葉原UTX・屋上】

英玲奈(ここには…誰も居ないな。ということは、まさか二人は…)

ヴヴヴ

英玲奈「ツバサ。…どこにいる?」

『やっと繋がったぁ…エレベーターの中よ!ちょっと蒸し暑いわ』

英玲奈「やはりか…閉じ込められたのか?」

『ええ。人生初よ。かなりのレアケース。とんでもない幸運ね』

英玲奈「元気そうで何よりだ。…姫君のご機嫌はいかがかな?」

『…直接訊くといいわ』

『英玲奈!早く助けに来てよ!』

英玲奈「…いや、それは私の役目ではないと思うが」

『冷たいわね。仲間を見捨てるつもり?』

英玲奈「落ち着け。救助の要請はしたのか?」

『したわよ。とっくに…まだ来ないわ。ガリガリ君くらい持ってきてほしい気分よ』

英玲奈「そんなに蒸し暑いのか…」

『何か面白いこと言ってよ英玲奈。体の芯まで冷えるくらいの』

英玲奈「電池の無駄遣いだ。もう切るぞ」

『もー。意地悪なんだから…じゃあ早く来てよね』

英玲奈「だから私は行かないと…切ったのか」

11: 2016/10/13(木) 01:51:14.21 ID:KLEAacYy.net
【矢澤家】

にこ「こころ!ここあ!…大丈夫!?」

ここあ「お姉ちゃんおかえりー♪」タタタ

こころ「おかえりなさいませ。お姉さま♪」

にこ(大丈夫みたいね。夜じゃなくてよかった)ホッ

ここあ「えへへ。お姉ちゃーん♪」ギュー

にこ「二人ともお腹空いてない?」ナデナデ

こころ「まあまあ…といったところでしょうか」

ここあ「おやつなら食べられるよ!」

にこ「じゃあ久しぶりに作ろっか。ホットケーキ」

ここあ「わーい♪ホットケーキ!」キャッキャ

こころ「良いですわね♪…あ、でもホットプレートが…」

にこ「フフン…私を誰だと思ってんの?」

こころ「お姉さま」
ここあ「お姉ちゃん」

にこ「電気がダメなら、ガスがある!」ドヤァ←フライパン

【小泉家】

花陽ママ「あらあら…二人とも来ちゃったのー?」

凛ママ「もしかして…ここも停電?」

花陽「う、うん。…凛ちゃんちも?」

凛「そうだよ。…ほら、やっぱりブレーカーじゃなかったでしょー?」

凛ママ「なーんだ…こっちなら電気使えると思って来たのにー」

花陽ママ「じゃあ帰る?」

凛ママ「帰らない。せっかく来たんだし」

花陽「でも何しようか?…電気は使えないし」

凛「電気がなくてもできることっていったら…」

花陽「折り紙?」

凛ママ「あー、花陽ちゃん昔から上手だったよね」

花陽ママ「今は私より上手いわよー」

凛「よーし!折り紙で原寸大スカイツリーを作るにゃ!」

花陽「無理だと思うけど…」

12: 2016/10/13(木) 01:54:50.32 ID:KLEAacYy.net
【西木野邸】

真姫「産毛のことりーたちーもー♪」

『ピアノの音…真姫ちゃん?』

真姫ママ「ええ。あの子ったら、停電なんて全然気にしてないみたい」クス

『病院は大丈夫?』

真姫ママ「予備電源があるから平気よ。きぃちゃんの方こそ、困ったりしてない?」

『あんまり長引くと冷蔵庫が心配ね。一応、まだ凍ってる保冷剤や氷とかあるからいいけど』

真姫ママ「お店も大変ね。そういえば今頃は秋の新商品?」

『はい。当店自慢の季節のお菓子を各種取り揃えております♪』

真姫ママ「ふふふ。今から行っちゃおうかしら?」

【神田明神】

希「あんじゅ…急にどうしたん?」

あんじゅ「んー。なんか希ちゃんに会いたくなって」

希「そうなん?…まあウチは嬉しいけど♪」

あんじゅ「聞いてよー!よりによって私たちがエレベーターに乗った直後に…」

希「あらら…それは災難やったね」

あんじゅ「それで何もすることないから、ツバサに昔のこととか話したんだけど」

希「なるほどね…穂乃果ちゃんにも会いたいんやない?」

あんじゅ「まあね。でも今日はいいわ。希ちゃんがいれば充分♪」

希「そか」

あんじゅ「そうだ希ちゃん、タロットカード持ってる?」

希「あるけど…何か占ってほしい?」

あんじゅ「希ちゃんと穂乃果ちゃんが付き合ってるのかどうか♪」

希「な、なに言ってるん…そんなん占うまでもなく…」

あんじゅ「恋人同士なの!?」

希「…ノーコメントや」

あんじゅ「えー!?教えてよー!」

13: 2016/10/13(木) 01:56:39.66 ID:KLEAacYy.net
【夜・高坂家】

トプン ザバー

ほのゆき「ふー」

穂乃果「やっぱり電気って大切だよねー」

雪穂「そうだねぇ…何でも電気に頼るのも良くないね」

穂乃果「ホントだね。昔の人は電気がなくてもお風呂に入ってたはずだし…おばあちゃんが私たちくらいの頃とかさ」

雪穂「まあ、何事もなければ便利なんだけどね」

穂乃果「停電とか無ければね。でも思ったより早く復旧してよかったぁ…」

雪穂「もう大丈夫でしょ?一人でも」

穂乃果「今日くらいは一緒に寝ない?」

雪穂「…いいけどね///」

穂乃果「ありがと!雪穂♪」ムギュ

雪穂「ちょっ…お姉ちゃん///」ドキドキ

雪穂(停電のままだったほうが恥ずかしくなかったかも…でも、やっぱり電気は必要だよね)



おわり

引用: 英玲奈「東京が」ツバサ「停電で」あんじゅ「大変よ!」