1: 2017/03/28(火) 18:28:15.934 ID:aHM+mMfb0.net
カーテンの隙間からこぼれる清々しい太陽の光を目に入れて

溜め込んだ息をつく

じっとりと汗ばんだシャツの襟ぐりを摘んでパタパタと風を招き入れる

暑い。無性に暑い

掛け布団一枚を引っぺがして放ると

布団を投げた手は敷布じゃなく、ぐにゅりとした肉体的な柔らかさの上に落ちる

「うっ……ぐすっ……うぅ」

その柔らかさは。そこに縮こまって

白い肌を包み隠さず曝け出している天使

白羽=ラフィエル=エインズワースは――泣いていた

3: 2017/03/28(火) 18:33:13.895 ID:aHM+mMfb0.net
「悪かったわよ」

極力優しく声をかけたつもりだったけれど

ラフィエルは大した反応も示すことなく

さらに体をぎゅっと抱きしめていく

「……悪かったって」

本当に悪かったと思っている

今となっては。

昨日はまったくそうは思わなかったし

している最中も何にも考えてなかったけど

終わって、一夜明けた今となっては

本当に悪いことをしたと思ってる

悪魔としては、天使を堕とす行為として賞賛されるかもしれないけど。

今は、大悪魔だと名乗ることさえ、少し馬鹿らしく思えてしまう

4: 2017/03/28(火) 18:37:59.979 ID:aHM+mMfb0.net
「謝られても……昨日は返って来ません」

ラフィエルの掠れた声が、私の心に響く

顔を向けられたら、その心が折れていたかもしれない

そんなことを思いながら「ごめん」と返して

ラフィエルの体に乗っていた右手をどかす

布団に覆われて隠されていた淫らな臭気が

だんだんとにおって来て、昨日のことを思い出させる

何をどうしたのか……それは隣を見れば全部分かるし

思い出すまでもなく、一秒前のように。それは鮮明だ

簡単に言えば私はラフィエルを襲った

どちらからちょっかいをかけたのか

その話だけをすればラフィエルが悪いんだけど

でも、最終的に手を出したのは私

ごめんなさいと、やめてくださいと

そういうラフィエルを押さえつけて襲ったのは――私

13: 2017/03/28(火) 18:42:52.255 ID:aHM+mMfb0.net
始めはラフィエルが悪いと思っていた

途中、泣き叫ぶラフィエルを力ずくで押さえ込んでいるときは

いつも嫌がらせをしてくるくせに。という反抗心と復讐心

そして、普段は余裕を見せているラフィエルの

余裕のまったくない絶望した顔が私の心を掻き立てた

気持ちよかった

楽しかった

心がとても、躍った

だから……ラフィエルのことなんて考えなかった

「……私が悪い。でも、ラフィエルだって、悪いわよ」

挑発してくるから

普段、嫌がらせしてくるから

それさえなければ、きっと

襲うことなんてなかったはずだから

18: 2017/03/28(火) 18:48:46.368 ID:aHM+mMfb0.net
「あぁ、違う」

頭を振って、考えを取り消す

額に触れた手に、じっとりとした汗が付着する

考えが滅茶苦茶になる

自分が悪いと思ったり

ラフィエルが悪いと思ったり

二人とも悪いと思ったり

最終的に満足しているのは誰で

最終的に泣いているのは誰なのか

それを考えれば、善悪なんてきっと。簡単に分けられるはずなのに

「……ラフィエル、ごめん」

ラフィエルは何も言わない

真っ白な肌を抱きしめるだけ

後処理さえしなかった昨日の自分を軽く憎む

ラフィエルの綺麗な肌

その一部だけは、薄く赤汚れているから

19: 2017/03/28(火) 18:57:49.406 ID:aHM+mMfb0.net
「とりあえず、ラフィエル……シャワーでも浴びてきなさいよ」

あんなことをしておきながらかける言葉は

普段なら善意といえるものでも、言えなくなる

悪意はない。でも、善意だってない

これは、穢した罪滅ぼし

悪魔の癖に、罪を償うなんて馬鹿らしい

普段なら浮かび上がる考えが、今日は大人しく引き下がる

「嫌です」

でも、ラフィエルは断った

小さな声で

泣きはらした声で

普段のラフィエルなら絶対に出さない声で

それが、私の悪魔ではない部分を握り締める

なのに――昨日暴れ回った部分がまた目を開く

弱弱しいラフィエルを。さらに傷つけたいと口元がつりあがる

「……眠ってなさいッ」

心で欲を押さえ込んで、唇を噛み切る

じわじわと熱を奪う唇が、

ラフィエルが流した血、味わった苦痛とは違うものを感じさせる

なんの罪滅ぼしにも、ならない

23: 2017/03/28(火) 19:04:10.321 ID:aHM+mMfb0.net
「分かった。じゃぁせめて体を拭いて。私はシャワー浴びるから」

ぐっと体を起こして、ロフトへの階段をゆっくりと下りる

ラフィエルが上手く逃げ出せなかった要因の一つ

もしも、ガヴリールと同じ家だったら

ヴィネットと同じ家だったら

ただ、嫌われるだけで済んだのかもしれない

「……」

足元に散らばる、自分のとラフィエルの服

ロフトから投げ落とされて散らばった布の枚数は

私達が家に来たときに着ていた服の倍はある

それが、私の乱暴さを、よりはっきりと示す

「……ごめん」

聞こえない声

聞こえても、ラフィエルの心には届かない声

謝るくらいなら、始めから。

そんな言葉が、頭の中で響いた

27: 2017/03/28(火) 19:09:54.099 ID:aHM+mMfb0.net
毎日必ず聞くシャワーの音

流れ出すお湯を体に当てながら、ふと、息を吐く

シャワー室には防犯なのかなんなのか

簡単な内鍵がつけられている

でも、私はかけることなく目を瞑る

――余裕?

「違う」

今すぐにでもシャワー室の扉を開けて

銀色の髪が滑り込んで

背中に抉りこむ痛みが走ってくれないかと、願ってる

でも

無防備に髪を洗っても

無防備に体を洗っても

ラフィエルは私の背中を。

憎いはずの私を頃しには来なかった

30: 2017/03/28(火) 19:19:35.436 ID:aHM+mMfb0.net
ザー……っと、雨が浴室に降り注ぐ

髪を洗っても

体を洗っても

体の内側、心の穢れまでは洗い流してくれない

頭の内側、最低な記憶まで洗い流してくれない

「……逃げたいのね。私」

ラフィエルに頃して貰えれば

私の心は救われる

私の記憶は消えてなくなる

「はぁ……」

水気の多い空気が肺に流れ込んで

雰囲気にも合わずに、咳き込む

このまま血でも吐ければと、私の願いは――届かない

32: 2017/03/28(火) 19:26:21.430 ID:aHM+mMfb0.net
「……ラフィエル」

居間に戻ると

裸のままのラフィエルが自分の服の欠片を黙々と集めていた

舞天高校の制服

元に戻らないそれは拾うたびに、ラフィエルの手から零れ落ちる

まるで、私が何かを零してしまったみたいで

「ラフィエル」

見ていられずに声をかけると

顔が向けられて光のない金色だった瞳が、私を見る

「ラフィ――」

悲鳴が上がった。私じゃない。どこかじゃない。ラフィエルから

一瞬、何が起きたのか分からなくなるような、

そんな驚きに全てが止まった私の前で、ラフィエルがしゃがみこんで

ただただ、ごめんなさい。許してください。そんな懺悔を口にする

それは昨日、私の暴力をラフィエルのせいだと、ラフィエル自身に叩き込んだせい

71: 2017/03/28(火) 22:04:50.601 ID:hQst9Qym0.net
「ごめんなさい……許してください」

心の折れたラフィエルは、今まで私が見ていたラフィエルの面影なんて

容姿だけしか、残っていない

痛めつけたやりたい。途中からそう思ったとはいえ

最初からそんな考えじゃなかったのに

気が付けば、ラフィエルは壊れていた

私に見せる余裕の笑顔

なぜか輝いた笑顔

ラフィエルはもう、そんな表情を見せることは出来ないかもしれない

「……ラフィエル」

そっと、声をかける

ビクビクと怯えたように、ラフィエルの体が震えた

74: 2017/03/28(火) 22:14:43.599 ID:hQst9Qym0.net
「ごめん、もうしないから。大丈夫だから」

右足を一歩、踏み出す

それだけでラフィエルは飛び跳ねるように驚いて

私のことを猟銃を向けられた小動物のような目で見る

逃げたいのに、逃げられない

そんな目をしたラフィエルに、また一歩近づく

「ごめんなさい……許してください……っ」

今にも号泣しそうな震えた声

頭を庇うように体を丸める仕草

顔を庇うラフィエルの頬を思いっきり引っ叩いたからこその、恐怖

パシンッという音、手の平のじんわりとした痛み

赤く染まっていく白い頬、騒がしかった声が途絶えて零れ落ちる涙

その記憶が体を熱くする。

私は――ラフィエルを虐げることを愉しんでいた

76: 2017/03/28(火) 22:19:01.503 ID:hQst9Qym0.net
「もうしないから、安心して」

もうしない。そういう誰かの声は、高ぶっている

噴き出す一歩手前の高揚感に、震えている

それは、誰の声かと他人のように考えて

カーテンの隙間、見える窓ガラスに映る紅い髪の女の子が嗤っているのが見えた

それは誰? それは私

「……ラフィエル」

近づくたびにびくびくと震えて

暴力が怖くて逃げられないちっぽけで惨めな天使

どの口が「もうしない」というのだろう

私は今もこうして、ラフィエルの精神を追い詰めることを愉しんでいるのに。

79: 2017/03/28(火) 22:31:15.637 ID:hQst9Qym0.net
「ほら、ラフィエル」

頭を庇うラフィエルの腕を掴むと

ほんの一瞬だけ抵抗が感じられて

でも、すぐに諦めたように力が抜けていく

抵抗しないから、反抗しないから

だから優しくしてください、痛くしないでください

怖いことをしないでください、許してください

そんな感情を感じる目が、私へと向く

「いつもみたいに笑いなさいよ」

その一言で、ラフィエルは普段通りに目を細めて

口角を釣り上げて、笑おうとする

余裕がない、輝きもない。そんなラフィエルの笑顔は

惨めで、滑稽で、私の散々虐められた心が、癒された気がした

84: 2017/03/28(火) 22:40:08.474 ID:hQst9Qym0.net
「そんなに嫌だった?」

あの行為は、愛情も何もないただの野蛮な行為だった

抵抗をねじ伏せて、叩かれたら倍の力で叩いた

容赦なく組み伏せて、泣きわめく口を黙らせようと平手打ちした

来ていた衣服は、制服だろうと下着だろうと関係なく破り捨てた

押し倒した瞬間こそ、「さ、サターニャさんっ」なんて

いつもみたいに余裕だったラフィエルがこんなことになるのも

無理はないのかもしれない

「……」

ラフィエルは何も言わない

ううん、言いたいけど言えない

そんな風に口をもごもごと動かして、首を横に振る

言いたいことはないです。文句なんてありません。許してください

口癖のようにくっついた謝罪が、聞こえた気がした

85: 2017/03/28(火) 22:48:03.084 ID:hQst9Qym0.net
「ラフィエルが悪いのよ……私が何も言わないからって調子に乗って……」

今までさんざんからかってきた

何も知らないからって適当なことを教えられて

どれだけ恥をかいたのか

どれだけ感謝をした分、裏切られてきたのか

「っ」

奥歯が噛み合わさってギリギリと危なげな音を立てる

強く拳を握りしめた腕が、怒りに震えだす

思い返せば思い返すほど

嫌な思いばかりが蘇ってくる

どこにでも売ってるような、延べ棒でラフィエルの純潔を奪っただけでは

満足できないほどの、怒り

気が付けば、私は

ごめんなさいと泣きながら連呼するラフィエルの髪を引っ掴んでいた

89: 2017/03/28(火) 22:59:15.274 ID:hQst9Qym0.net
「ごめんなさいごめんなさい許してくださいごめんなさいごめんなさいもうしません」

抵抗になるかもしれないと、考えているんだと思う

ラフィエルは髪を掴む私の手を掴まず

だらりと両手を下げて、膝を曲げた辛そうな中途半端な姿勢で懇願する

誠意を見せている。というやつなのかもしれない

「ラフィエル、うるさい」

でも、私が一言そう言って手を振り上げれば

その懇願は口を閉ざして、外の世界の間の抜けた喧騒だけが、聞こえてくる

ぎゅっと目を瞑ったラフィエルは

私の手がいつまでも振られないからか、目を開いて

その瞬間、に満面の笑みで開いた手を固い拳へと変えて――

「ひぁっ……ぁ……ぁぁ……」

――殴る。と、見せかけてほんのわずかな距離で止めてあげたのに

ラフィエルは馬鹿みたいな悲鳴を溢して、

天使どころか女の子でさえ憚られる粗相を床に滴らせる

91: 2017/03/28(火) 23:04:49.444 ID:hQst9Qym0.net
「ごめんなさい……ごめんなさい……」

また謝り出すラフィエルの髪を手放すと

その汚い水たまりの上に落ちて

それでも、ラフィエルはごめんなさいと、言い続ける

こんなのは、ラフィエルじゃない

こんなのは、天使じゃない

こんなのは、女の子じゃない

こんなのは、人間じゃない

人間じゃ、ないのなら――

「……体拭いてシャワー行きなさいよ。逆らうなら、分かるわよね?」

悪い。そんな話では済まない考えを振り払ってから

顔を上げたラフィエルに握った拳を見せると

慌てて立ち上がり、一度使っただろうタオルでまた体を拭いて、浴室へと消えていく

94: 2017/03/28(火) 23:18:10.429 ID:hQst9Qym0.net
扉一枚を隔ててラフィエルがシャワーを浴びているのを

スモークガラス越しに確認しながら、こっそりと着替えを置いて脱衣所を出る

それから生ぬるくて汚い水たまりを掃除して

ラフィエルがかき集めていた制服の欠片と一緒に

雑巾もまとめて、ごみ袋に入れる

もう使えないし、意味がないから

その片付けが終わってから数分

ラフィエルが浴室に消えてから十数分後に

ラフィエルは体を拭きながらも、裸で私の前に現れた

「一応、着替えを用意したはずだけど」

そう言うと、ラフィエルはさっきまでよりは感情のある様子で首を横に振る

「何も、言われなかったので」

それはそう、つまり

ラフィエルは私の命令がない限り、服。下着さえつけないということ。

少なくても、この私の家にいる限りは

96: 2017/03/28(火) 23:31:43.463 ID:hQst9Qym0.net
「用意したんだから着なさいよ。それとも、裸でいたいわけ?」

怒ったような声

それはラフィエルを怖がらせるには十分で

またしてもごめんなさいと言い出して、浴室に逃げ込み

服を着て、戻ってきた

「うまい具合にあったわね」

サイズは少し不安だった

でも、着させてみれば意外と問題なかった服を着たラフィエルは

それでも、いつまた襲われるのかと怯えた様子で私を見る

弱者と強者

支配者側と支配される側

それが明確に分かるラフィエルの弱い姿に、私はつり上がる口元を隠して、ため息をつく

それだけでも、ラフィエルはびくびくとするから、愉しい

99: 2017/03/28(火) 23:50:16.022 ID:hQst9Qym0.net
「ラフィエル、私を殺そうとは思わないの?」

ラフィエルのおびえた姿

それが私の心を満たしていく、癒してくれる

だから、あえて追い詰めるようなことを聞いた

怒らないから。言いたいことを言いなさいよ。と

ラフィエルの中途半端に開いた口を見て言う

「……思いません」

ラフィエルは首を横に振る

私が怒ったわけでも無いのに、ポロポロと

ラフィエルの瞳から零れ落ちていく

そしてまた、「ごめんなさい」と、呟いて。

「思いません。悪いのは、私です……私ですから」

その自責は、私が責めて植え付けたものではなく

本当に、自分からそう思っているかのようで

それ表すように、ラフィエルの濁っていた瞳が少しだけ。昨日に戻る

101: 2017/03/29(水) 00:07:01.178 ID:UBcWi+fv0.net
「天使として、女として大事なものをただの木の棒で貫いたのに?」

なのに、殺そうとは思わないのか

思い出した苦痛を感じる表情で自分の下腹部に触れたラフィエルは

その問いにすら、首を横に振る

ラフィエルは申し訳なさそうな、顔をしていた

さっきまでの砕けきった心と大して変わらない

でも、少しだけ持ち直したはずなのに

ラフィエルは、私に抵抗しようとはしなかった

反抗しようとはしなかった

私が一歩近づくだけで怯えるラフィエルは、

体の痛み、そのトラウマで私を恐れながらも

抵抗しようとはしなかった

105: 2017/03/29(水) 00:19:43.398 ID:UBcWi+fv0.net
イライラする

それは、ラフィエルに? それとも、自分に?

テレビの黒い画面に反射する私は、半分嗤う

なら、見えないもう半分はどうなっているのだろう

「ラフィエルが悪いって言うなら」

ラフィエルの方を掴んで横に振り、

自分との立ち位置を入れ替えて、床置きの柔らかいソファに突き飛ばす

「あんたが悪いなら……もっと乱暴にしても。良いのよね」

ラフィエルの服が乱れて、白い肌が露出する

驚き戸惑う瞳が、私へと向けられる

ゾクゾクとする反面、ドキドキと胸が痛む

左手を振り上げた瞬間、同じように頭を庇ったラフィエルの右腕を引っ叩いて

力任せに掴んで、引きはがす

「や、やめ」

ラフィエルの懇願を消し飛ばす弾かれたような快音

じわじわと痛みと熱を増していく左手

そして私は、唇がつり上がっていくのを、感じた

107: 2017/03/29(水) 00:30:45.206 ID:UBcWi+fv0.net
ラフィエルの金色の瞳に映る私は、笑っていた

天使に打ち勝っているからでも

憎いラフィエルに打ち勝っているからでもなく

ただ、虐げる悦びに打ち震えている愉悦の笑み

ラフィエルの瞳が大きく見開かれて、涙が零れ落ちていく

いや、違う

落ちているのは、私の――

「あんたが悪いのよ……ラフィエル」

敗北を思う心を押し潰して、ラフィエルの心を責める

あんたが悪い。そう、何度も口にして

振り上げた左手の平で右頬を打ち

振り戻る左手の甲で左頬を打つ

白くて柔らかい、ラフィエルの肌が段々と赤くなっていく

ラフィエルの庇おうとする手が、抵抗力を損なって

その瞬間を見計らって、ラフィエルの着たトップスの襟ぐりを掴み

強引に持ち上げて手放すことなく、たたきつける勢いでラフィエルの体を左右に振ると

耐えかねた首回りがビリッっという昨晩聞きなれた音を響かせて、引きちぎれる

投げ出されたラフィエルの体は、鈍い音を立てて、床に落ちた

111: 2017/03/29(水) 00:44:06.066 ID:UBcWi+fv0.net
「ひっぅ……ぁ……」

打ち付けた痛みかそれとも、恐怖からか

弱弱しい声を漏らしながらどこかに伸びたラフィエルの手

それを掴んで仰向けに体を回す

「あんたが、悪いのよ……あんたが」

そもそも、昨日、なぜラフィエルを襲ったのか

なぜ、襲った行為が性的なものだったのか

考えたくないことを考えようとする頭を

その正常な思考回路を焼き尽くすように、ラフィエルへの暴行は過激さを増していく

胸を鷲掴みにして、嫌がるラフィエルを押さえつけて下腹部の割れ目に指を捻じ込んでかき乱す


それが痛みから逃れるためであることを知っていながら


昨日の強引な責めで学んだラフィエルの弱点を執拗に追い込み、

何度も喘がせて、そのたびに、

そう、侮辱し、責め立て、心と体に嘘を塗り込んでいく

112: 2017/03/29(水) 00:51:05.476 ID:UBcWi+fv0.net
ラフィエルの下腹部から指を抜き出すと

ぬちゅりとわずかに粘ついたような音が耳に届く

その淫らな液体を指に塗りたくり、ラフィエルの目の前で、人差し指と親指で弄ぶ

叩かれて赤くなった頬

責め立てられて赤くなった顔

それがより羞恥心によって赤く染まり

目元から涙が零れ落ちていくのを見ながら、ラフィエルの唇に

ラフィエル自身の淫らさを塗り付けて――

「……あんたの、せい」

――唇を、重ねる

汚らしいとは思わなかった

唇を、舌を、噛み千切られると思った

でも、ラフィエルは私のその暴力には抵抗しなかった

いや、泣くことで、私の欲望に反抗し、心に救いを求めてきた

114: 2017/03/29(水) 01:02:15.858 ID:UBcWi+fv0.net
それでも、私はラフィエルへの暴力をやめられない

ラフィエルの苦痛、悲哀、それに歪む顔が、零れる涙が

あふれ出てくる声が

私にとっては堪らなく心地いいものだと気づいてしまったから

そして、羞恥心を刺激するこの行為が私の欲を満たし、心を潤してくれると

知ってしまったから

「もう、遅いのよ」

ラフィエルの口を強引に開かせて


羞恥心、嘆き、悲しみ、苦しみ

それらに歪み、零れる涙を舐めとる私は、嗤っている

116: 2017/03/29(水) 01:08:18.573 ID:UBcWi+fv0.net
壊れたのは……本当にラフィエルなのだろうか

本当に壊れたのは私じゃないのだろうか

考える意味も必要もないことを考える私は、また、思う

なぜ、暴力は肉欲という形だったのか。と

ただただ殴り、蹴り、怪我を負わせるのではなく

貰い手を奪い、自分に縛り付けるような純潔の略奪だったのか

「私は――」

言葉を飲み込む。そして、ラフィエルの体を弄ぶ

ぬちゅりと、くちゅりと

わざと音を立てて、びくびくと震えるラフィエルの耳元で

聞こえるでしょ。と囁き、天使の癖に。と、心を黒く汚らわしいものにしていく

「んっ、っぁ……ぁ……」


「…………」

なぜかラフィエルの胸に雨が降る

それは「本当にそれで良いのか」と聞いている気がして

だから

「もう、遅いのよ」

口癖になったその諦めの言葉を、誰に言うわけでも無く、口にした

120: 2017/03/29(水) 01:15:09.394 ID:UBcWi+fv0.net
完!
保守閲覧THX

121: 2017/03/29(水) 01:17:27.938 ID:UBcWi+fv0.net
壊れたサターニャと壊されたラフィエルが書いてみたかった
でも、思ってたのと違う
最初から壊れてたのがナンセンスだったかな
終点を始点にした時点で失敗だったかもしれない

引用: サターニャ「……ふう」