1:◆GoPzFNH1CI 2015/04/14(火) 18:24:45.30 ID:rmIYlDip0

…………

『いよいよ出撃だね!』

『否応なく気分が高揚します』

『肩を並べて戦えること、誇りに思います、お母さん』

 「ふふ、そうですね。私は後詰めですけれど」

『結局、参加できなくて残念だったね?』

『ええ、でも、仕方ありません。修復の時間も、技量も足りていませんから……』

『お母さんと先輩たちが帰ってくるまでに猛訓練して、びっくりさせてあげるんだから!』

『……精々、実戦の前に怪我しないようにね』

『な……なんですってぇ!』

『ま、まぁまぁ。素直に応援してあげようよ』

 「ほら、もう時間ですよ……それじゃ、くれぐれも気をつけて。後から追いかけますね?」

『はい! 機動部隊、出撃します!』

…………



鳳翔「……」


初めまして!司令官!


2: 2015/04/14(火) 18:26:14.53 ID:rmIYlDip0

※注意書き

この作品は艦隊これくしょんの2次創作SSです。

空母艦娘どうしの呼び方、演習の処理、艤装の扱いなどに独自設定を使用しています。


瑞鶴「鳳翔お母さんの女子力が低い?」 飛龍「うん」



同じ鎮守府のその後の設定ですが、内容の本筋にはほぼ関係ありません。

また、単体でも問題ないよう心掛けて参ります。

3: 2015/04/14(火) 18:27:35.62 ID:rmIYlDip0





提督「んー、もう朝か……あれ?」

鳳翔「……う、ん……」

提督(鳳翔はまだ寝てるか)

提督(いつもは自分が起こされるのに、今日は珍しいな)

提督(また疲れを溜めさせたかな……まだ時間も余裕あるし、もう少し寝かせておこう)

提督(……起こさないように、と)

4: 2015/04/14(火) 18:31:02.48 ID:rmIYlDip0





提督「おはよう」

大淀「おはようございます……あれ、提督?」

提督「そんな化け物見たような顔しないでほしいんだけど……目がまん丸だよ」

大淀「あ、すみません……でも、いつもはお寝坊さんな提督の代わりに、鳳翔さんがいらっしゃるじゃないですか」

提督「う……執務開始には間に合うよう起きてるよ、その辺は大丈夫」

大淀「仕事はしっかりなさってるのはわかってるんですけどね。それで、今日はどうなさったんです?」

提督「ああ、鳳翔がまだ起きないんだ。疲れてるみたいでね」

大淀「そうですか、珍しいですね。いつもは誰よりも早起きなのに」

5: 2015/04/14(火) 18:33:22.34 ID:rmIYlDip0

提督「今日は代わりに任務表を受け取っていくよ」

大淀「了解しました、こちらが週次と月次分になります。……そうだ、丁度良かった」

提督「何かあったかな?」

大淀「朝一で電文が届いてます。本日午後分の、当鎮守府の機動部隊との演習をねじ込んでほしいと」

提督「またか……E海域の発生直前とはいえ、こっちの都合も考えてもらいたいな」

大淀「この近辺で、一番航空戦力が充実しているのがウチですからね」

提督「艦娘から色々言われるのは私なのに……こっちが強く出れないのを知ってて、まったく」

6: 2015/04/14(火) 18:34:51.83 ID:rmIYlDip0

大淀「先方へのお返事は?」

提督「うーん、受ける他ないか。空母には申し訳ないけど、納得してもらうしかない」

大淀「ではそのように。工廠には、正規空母の缶に火を入れておくよう言っておきます」

提督「よろしく頼むよ。……ところで」

大淀「はい?」

提督「君も、私より早く起きて通信室に詰めてくれているんだよね……いつもありがとう」

大淀「あ、あはは、いやですね、どうしたんですか? 今日はやけに素直じゃないですか」

提督「……本当だな。鳳翔の寝顔を思い出したら、何故だか言いたくなってしまったんだ」

大淀「私だって、いつもこんなに早く起きてるわけじゃありませんよ。
作戦前や月初めはともかく、普段は提督の執務開始と同じくらいにここに来ます」

7: 2015/04/14(火) 18:43:04.02 ID:rmIYlDip0

大淀「毎日早いのは、それこそ鳳翔さんですよ」

提督「……そうだね」

大淀「朝食の準備が終わったら、皆の洗濯物を集めて洗って、その後食堂で働いて……
手が空いた時も、お風呂掃除をしたりしてくれてます」

提督「やはり、今日は疲れているんだろうな。もう少し負担を減らせないだろうか」

大淀「私も、お手伝いを増やしたらどうかと言ったことがあるんですけど。
自分が楽しんでやっているからいい、と仰ってました」

提督「そうか……それじゃ、せめて今日くらいはゆっくりしてもらおうかな。間宮には私から言っておこう」

大淀「それがいいですね」

8: 2015/04/14(火) 18:50:02.22 ID:rmIYlDip0

…………

 「……」

 「ふう……後方に控えているのも神経を使うわね」

 「あの子たちは、そろそろ奇襲の準備を整えたころかしら?」

 「最近は落ち着いてきたけれど……また悪いくせが出ていないか、少し心配ね」

 「……ただでさえ、普段より2人も少ないんだから」

『……!!』

 「? どうしました?」

『……』

 「敵の機動部隊が!? 空母は――湾にいるはずじゃ――」

…………



鳳翔「……う、ん……」

9: 2015/04/14(火) 19:02:03.92 ID:rmIYlDip0





間宮「……ああ、提督! おはようございます」

提督「おはよう、間宮」

間宮「あの提督、鳳翔さんのことなんですけど……」

提督「その件で来たんだ。今日はちょっと疲れてるみたいで、まだ寝てる。
悪いけど、今日の朝食当番は休ませてやってほしい」

間宮「そうでしたか……普段は私よりも早く来られるので、心配してたんです」

提督「君には負担をかけるけど……ああ、そうだ。時間があるから何か手伝おう」

間宮「いえ、そんな! 提督に手伝って頂くなんて」

提督「いいから、なんか今日はそんな気分なんだ……野菜を剥くくらいなら出来るよ?」

10: 2015/04/14(火) 19:03:55.63 ID:rmIYlDip0

間宮「そ、それじゃあ、溶き卵をたくさん作って頂けますか? 
意外と力仕事で、私や伊良湖ちゃんだけだと大変なので……」

提督「ん、了解。……あれ、その伊良湖は?」

間宮「今、牛乳を受け取りに行ってもらってます」

提督「そうか……間宮にも伊良湖にも、毎日頑張ってもらっているね。いつもありがとう」

間宮「……何か悪いものでも食べました?」

提督「流石に傷つくんだけど」

間宮「ふふ、ごめんなさい、冗談です。
でも、鳳翔さんにあそこまで奥手だった提督から、素直な言葉が出てくるものですから」

提督「大淀にも言われたよ。そこまでヘタレではないと思ってたんだけど」

間宮「でも、最近はすごく良い間柄になったと思いますよ? 
……なーんて、私が言うことじゃありませんよね」

提督「昔に比べて、良くなっていればいいんだけどね」

13: 2015/04/14(火) 21:38:39.62 ID:rmIYlDip0

提督「こんなものでいいかな」

間宮「ありがとうございます提督。助かりました」

提督「いいんだよ。いつもやってもらってる苦労に比べたら」

間宮「これで朝食は大丈夫そうですね……鳳翔さんには無理しないように伝えておいて下さい」

提督「わかった、ありがとう。それじゃ、執務室に戻るよ」

間宮「はい、お疲れ様でした」

14: 2015/04/14(火) 21:41:56.70 ID:rmIYlDip0




提督「ふう、ただいま」

提督「……あれ? まだ起きて来てないか」

提督「そろそろ〇八三〇か。一人で執務を始めるのも寂し……味気ないな」

提督「とはいえ、寝てるところ起こしたら悪いし、もう始めよう」

提督「午前演習の編成確認から……」

15: 2015/04/14(火) 21:43:40.30 ID:rmIYlDip0





鳳翔「……」

鳳翔「……うぅん……」

16: 2015/04/14(火) 21:50:11.38 ID:rmIYlDip0

…………

 「機動部隊の位置と状況は!? まだ把握できないんですかっ!!」

『……!!』

 「……偵察機が戻りましたか!? 報告を!!」

『……』

 「……え?」

『……』

 「……なに、これ」

『……』

 「……ひ、りゅうちゃん?」

17: 2015/04/14(火) 21:52:00.65 ID:rmIYlDip0

『……』

 「……赤城ちゃんは?」

『……』

 「か、加賀ちゃんは!? 蒼龍ちゃんはっ!?」

『……』

 「……いない?」

『……』

 「いないって……そ、そんなはずありません!! もっとよく探しなさい!!」

『……!!』

 「絶対に近くにいますっ!! こんな……こんなこと……」

18: 2015/04/14(火) 21:54:35.98 ID:rmIYlDip0

『……』

 「……中止? どういうことですか?」

『……』

 「な、なに、いってるんですか? この先で、あの子たちが待ってるんですよ?」

『……』

 「冗談じゃありませんよ……!! 私は、まだ戦います!!」

『……』

19: 2015/04/14(火) 21:56:46.96 ID:rmIYlDip0

 「ほ、ほら、飛行機だって、まだあるんですよ? 皆さん、さあ、行きましょう」

『……』

 「……ど、どうして、ですか? どうして、止めるんですか……?」

『……!!』

 「目の前の味方を……」

『……』

 「むすめを、み、みすてて、にげろって、いうんですか……?」

『……』

 「……せめて……せめて、捜索を……お願いですから……」

『……』

 「そんな、そん、な……う……あ、ぁああああああ!!」

20: 2015/04/14(火) 21:59:05.89 ID:rmIYlDip0

『――洋全域に作戦――国海軍部隊は、――平洋の敵――ッドウェーに対し、猛烈なる強襲を敢行――』

 「嘘」

『加えて――援中の敵艦隊を捕――攻を加え、敵海上・航空兵――事施設に甚大なる損害――』

 「……嘘」

『現在ま――明せる戦果――空母エン――ライズ、――ネットの2隻を撃沈、――空において撃墜せる飛――120機以上』

 「……」

『我が方の損害――航空母艦1隻を喪失――』

 「嘘、うそよ……う、ぐっ……」

…………



鳳翔「く、ふぅっ……ぐっ……う、く……」

21: 2015/04/14(火) 22:12:42.47 ID:rmIYlDip0





提督「どうぞ」

大淀「失礼します、提督。先ほどの演習の件ですが」

提督「ああ、どうだって?」

大淀「先方からの希望の編成が送られてきました。午後演習には、正規空母3隻を出して頂きたいと……」

提督「3隻!? 午前演習の3隻と合わせたら、6隻フル稼働じゃないか」

大淀「まだお返事は打っていませんが……如何いたしますか?」

提督「うーん……仕方ない、受け入れるように伝えてくれ」

22: 2015/04/14(火) 22:18:56.90 ID:rmIYlDip0

大淀「よろしいので?」

提督「向こうが上だから、ある程度は受け入れよう……しかし、貸しだ。しっかり記録しておいて」

大淀「了解しました。しかし、これでは本日の編成が……」

提督「そうだね。本日分の出撃の予定は改めて鳳翔と相談しておく」

大淀「はい。……ところで、鳳翔さんはまだ?」

提督「ああ」

23: 2015/04/14(火) 22:22:46.58 ID:rmIYlDip0

大淀「本当に珍しいですね……そんなに疲れることが何か……」

大淀「……」

大淀「……あっ」

提督「……その顔、何を考え付いたか、大体想像がつくよ」

大淀「い、いえ……夫婦に野暮なことを聞いたな、と。あはは」

提督「いや、間違ってるからね? ……少なくとも昨日は」

大淀「そ、そうですか……それでは、私は通信室に戻りますので……お邪魔しました……」

提督「妙な挨拶はしないでいいよ……連絡よろしくね」

24: 2015/04/14(火) 22:24:25.81 ID:rmIYlDip0



提督「……」

提督「……一〇〇〇か」

提督「いくらなんでも、遅い、な」

提督「そろそろ起きないと、今日もぐっすり寝れなくなる」

提督「……ゆっくりしてほしいけど、これ以上寝るよりは流石に起きた方がいいな」

提督「……起こそう」

25: 2015/04/14(火) 22:26:15.74 ID:rmIYlDip0



鳳翔「……」

提督「……鳳翔? 休んでいるところ悪いんだけど、そろそろ……」

鳳翔「……」

提督「鳳翔? ……鳳翔」



提督「鳳翔!! おい!!」

鳳翔「……ぅ……」

26: 2015/04/14(火) 22:27:50.48 ID:rmIYlDip0





明石「~~♪」

提督「明石、明石!! あかしぃ!!」

明石「あれ、提督? どうされたんで……きゃああああ!? か、改修資材が!!」

提督「そんなもん後回しだ!!」

明石「ちょっと、提督!? 何があったんですか!?」

提督「鳳翔が目を覚まさないんだ!! すぐ診てくれ、頼む!!」

明石「わ、わかりました!! わかりましたから、降ろして下さい!! 皆見てますよ!!」

31: 2015/04/16(木) 19:06:15.01 ID:8Fa/L+9s0

明石「……」

提督「どうかな?」

明石「……はっきり申し上げますが、提督。目を覚まさないという症状、私は見たことがありません」

提督「そうか……」

明石「提督は、何か原因に心当たりは?」

提督「……もう随分前だが、鳳翔が悪夢にうなされていた時期があるんだ」

提督「と言っても、当人はどんな夢か、覚えていないそうなんだけど」

提督「もちろん、それで目を覚まさないなんてことは無かったし、
鳳翔もいつしかうなされることは無くなったと言っていたから……」

提督「今の今まで考え付かなかったが、もしかしたら関係があるかもしれない」

明石「なるほど……それはいつごろの話です?」

提督「いつだったかな……半年以上前は確実だと思うんだけど」

32: 2015/04/16(木) 19:06:54.35 ID:8Fa/L+9s0

大淀「でも、明石がわからないんじゃ、もう……」

明石「いえ、あくまで私自身の話です。他の鎮守府には、もしかしたら前例があるかも知れません」

提督「本当か!?」

明石「すぐ電文を打ちます。鳳翔さんほど高練度の方の問題なら、きっと優先して連絡をくれるはずですよ」

提督「すまない……よろしく頼む」

大淀「鳳翔さんは、ひとまず工廠の方へ運びましょう」

提督「ああ」

35: 2015/04/16(木) 22:47:04.65 ID:8Fa/L+9s0

大淀「さて、今日のところは、鳳翔さんの仕事を分担しましょう」

提督「そうだね。さしあたり全員分の洗濯、昼食の準備……」

大淀「それから、全寮のお掃除ですね」

提督「あとは演習の準備か……人手が足りるといいんだけど」

大淀「いつまでも鳳翔さんに頼りきりというわけにはいきませんからね。皆で協力しないと」

大淀「とりあえず食堂へ、全員集めましょう」

提督「ああ。ちょうど、午前演習組も帰って来た頃だし」

36: 2015/04/16(木) 23:08:11.00 ID:8Fa/L+9s0

大淀「でも、どうやって説明しましょう。普段、鎮守府の家事は鳳翔さんに任せきりで……」

提督「……正直に、鳳翔が目を覚まさない、と言ったら皆を不安がらせるだろう」

提督「少し疲れが溜まっているから、今日は休んでもらうとでも言おうか」

大淀「え、隠すつもりですか!? それはちょっと無理かと」

提督「ん? 何故?」

大淀「さっき明石をお姫様だっこして、叫びながら走ってきたのを忘れたんですか?」

大淀「あんな大声で鳳翔さんが起きない、なんて物騒なこと言ってたら、そりゃ注目されますよ」

提督「何!? そんなことしたっけ!?」

大淀「覚えてないんですか? まあ動転してましたしね」

37: 2015/04/16(木) 23:29:28.09 ID:8Fa/L+9s0

大淀「それに、工廠と提督のお部屋の間には空母寮があります。
正規空母の皆さんがそんなこと聞いたら、そろそろ――」


「「提督!!」さん!!」


赤城「鳳翔!!」

加賀「お母さんが!!」

蒼龍「目を!!」

飛龍「覚まさないって!!」

翔鶴「いうのは!!」

瑞鶴「本当なのっ!?」


提督「お、落ち着け」

大淀「こうなるんじゃないかと思ってました」

38: 2015/04/16(木) 23:53:51.05 ID:8Fa/L+9s0

提督「……本当だ。君たちが心配する気持ちもよくわかる」

提督「でも、見ての通りなんだ。あまり騒がしくしないでほしい」

鳳翔「……う……」

飛龍「お母さん!?」

瑞鶴「すごく苦しそう……朝からずっとなの?」

提督「ああ。呼びかけても応えない」

蒼龍「な、なんとかしてあげられないんですか!?」

提督「今、明石が症例を調査してくれている。それを待つしかないんだ」

加賀「そう、なんですか……」

39: 2015/04/17(金) 00:05:39.63 ID:xIIUzLHX0

翔鶴「提督! せめて、そばで看病させて下さい」

瑞鶴「そうよ、今日は出撃とか演習とか中止にしてさ! 攻略を急いでる海域も無いでしょ?」

提督「……いや」

提督「出撃はともかく、演習は中止できない。我が機動部隊への臨時要請が入った」

飛龍「ま、またですか!? E海域の時期とはいえ……」

蒼龍「何言ってんですか、こんな時に!! お母さんが倒れてるんですよ!?」

加賀「私も反対です、提督。高練度の艦娘の、原因不明の異常と報告すれば
先方も納得するのではないでしょうか」

40: 2015/04/17(金) 00:22:37.75 ID:xIIUzLHX0

赤城「……いえ、待って下さい、皆さん」

赤城「提督の仰る通り、演習をお受けしましょう」

加賀「赤城さん?」

赤城「私だってお母さんが心配です……しかし大局的に、戦略的に考えれば、
現在の状態は軽空母1隻が戦闘不能と言うだけ」

赤城「それで鎮守府の業務が滞るようでは、健全な軍の運営とは程遠いのではないですか?」

赤城「大変な時だからこそ、私たちがしっかりしないと」

41: 2015/04/17(金) 00:38:48.94 ID:xIIUzLHX0

飛龍「確かにそう、なんですけど」

蒼龍「それでも、実際にお母さん見たら、放っておけませんよぉ……」

赤城「察してあげて下さい。今、一番お母さんのそばに居たいのは、提督なのよ?」

瑞鶴「……提督さん」

提督「……私も、鳳翔にずっと付いていてやりたい……でも、目を覚ました鳳翔が、
普段通り回っていない鎮守府を見たら、また心配すると思うんだ」

提督「だから、私たちで出来ることをやろう」

提督「薄情なようだけど、多分、鳳翔ならわかってくれると思う」

42: 2015/04/17(金) 01:50:41.39 ID:xIIUzLHX0

提督「君たちも、協力してくれないか」

蒼龍「わ、わかりましたよ、提督」

翔鶴「そんな、頭を上げてください!」

瑞鶴「今までお母さんに頼りっきりだった仕事、見直す機会かもしれないわね」

加賀「ええ。これからはなるべく、負担を分散できるように考えましょう」

飛龍「お母さん、自分からは絶対、辛いなんて言わないしね……」

提督「……大淀、他の皆に、集合をかけてほしい」

大淀「はい!」



提督「……」

提督「……ありがとうな、赤城」

赤城「いえ……お母さんならきっと、こう言うと思っただけですよ」

43: 2015/04/17(金) 01:54:44.78 ID:xIIUzLHX0





鳳翔「……」

鳳翔「……う……い、や……」



…………

 「……」

『……お母さん、敵部隊の目標はマリ――諸島だそうよ。あそこが失陥すれば、帝都まで遮るものが無くなってしまうわ』

 「……」

『私と瑞鶴は、第一機動艦隊の一員として、あ号作戦に参加します』
 
 「……待って」

『私たちも、先輩たちの誇りを受け継いで立派に戦って来るわ!』

 「待って」

『加賀先輩の仰っていた栄光の第一航空戦隊、その名に恥じぬよう……』

 「待ちなさい!! この戦力で作戦遂行は無茶です!!」

44: 2015/04/17(金) 01:56:36.74 ID:xIIUzLHX0

 「貴女たちもわかっているはずよ、アウトレンジ戦法の困難さを。今の、練度の足りない搭乗員では……」

『目標の目印も無い洋上で出撃して、敵艦と遭遇できなかったり』

『母艦を見失って、燃料を使い切る機も多数出るでしょうね』

 「なら!!」

『でも、やらなければならないんです』

『何もしなければ、本土に居るもっと多くの人々が危険にさらされるわ』

『すでにサイ――島の友軍に、空襲で被害が出ています』

『もう、迷っている時間は無いの。助けに行かなきゃ……もちろん、ただやられる気は無いけどね!』

 「貴女たち……」

45: 2015/04/17(金) 02:01:08.75 ID:xIIUzLHX0

 「……」

 「……約束して。2人揃って、私のところへ帰ってくるって」

『……はい、わかりました』

『安心して! 私には、幸運の女神がついていてくれるんだから!』

『それでは、お母さん』


『『いってきます!!』』


 「……」


 「……いって、らっしゃい」

…………



鳳翔「……ぅ……」

46: 2015/04/17(金) 02:07:17.46 ID:xIIUzLHX0

本日はここまでです。

あ号作戦での鶴姉妹の集結地点は、フィリピンのギマラス泊地だそうで、鳳翔とは会えません。
この差異の理由はこれ以降で書いていけたらと思います。

48: 2015/04/17(金) 19:18:38.97 ID:xIIUzLHX0





提督「忙しい所集まってもらってすまない」

山城「いや忙しくないわよ。出撃が急に中止になったんだから」

扶桑「こら、山城……でも提督、何かあったのですよね?」

長門「予定はきっちり決める提督のことだ。余程のことがあったんだろうな?」

陸奥「今日の出撃予定は私も入ってたけど……ちょっと残念ね」

提督「まあ待って。もうすぐ揃うから」

49: 2015/04/17(金) 19:19:10.93 ID:xIIUzLHX0

提督「……これで全員いるね?」

提督「もう、何人かは気付いているかもしれないけど」

提督「ある不測の事態によって、本日の出撃予定は変更となった」

摩耶「随分勿体ぶるな。一体何があったんだよ」

提督「……単刀直入に言う」

提督「今朝から、鳳翔が目を覚まさなくなった」

「「「!?」」」

50: 2015/04/17(金) 19:21:05.58 ID:xIIUzLHX0

高雄「鳳翔さんが!? ご病気なんですか!?」

提督「全員落ち着いて。……現時点での原因は不明。今は工廠に寝かせているが、随分うなされている状態だ」

神通「そんな……昨日までは元気そうだったのに」

提督「ああ、今朝から突然、なんだ」

妙高「原因は、本当にわからないんですか?」

提督「今はね。明石には、前例がないか他の鎮守府を調査してもらっている」

51: 2015/04/17(金) 19:24:00.58 ID:xIIUzLHX0

五月雨「だから今朝は、寮の前の洗濯物が回収されていなかったんですね」

吹雪「とりあえず、私たちで洗い場まで運んでおいたんですけど……」

提督「そうか、ありがとう」

朝潮「……鳳翔さん、もしかして、疲れを溜め過ぎちゃったんじゃ」

時雨「……僕たちの服、毎日洗ってくれていたものね」

雪風「雪風たちが、鳳翔さんを手伝わなかったから……?」

提督「それは違うよ、雪風。たとえ原因が疲労だとしても、責任は君たちの誰か個人には無い」

提督「この体制を管理している私の責任だし、起きられなくなるまで言いださなかった鳳翔にもあると言える。
軍属の体調管理は基本だからね」

提督「……まあ私は、原因はただの疲労だけじゃないと思うけれど」

叢雲「あんた、すぐ近くで見てて何も気付かなかったわけ?」

満潮「信じらんない。力不足にも程があるわね」

提督「……返す言葉も無いよ。最近は上手くやってると思っていたんだけど」

綾波「そ、そうですよ。司令官と鳳翔さん、とっても仲がいいじゃないですか!」

敷波「時々、見てる方が恥ずかしいくらいベタベタだったけどねー」

52: 2015/04/17(金) 19:26:51.21 ID:xIIUzLHX0

提督「今はわからない原因の話は、もうやめにしよう」

提督「これから仕事を割り振る。全員で鳳翔の抜けた穴を埋めるんだ」

提督「まず午後の演習だが、急遽機動部隊での編成となった。
元の予定では戦艦1、重巡1、駆逐4だったが、ここから駆逐を2減らして正規空母を入れる」

那智「駆逐艦の体力で、2隻が5連戦はきついぞ。対空と雷撃の負担が大きすぎる」

提督「ああ、予定通り4隻は連れて行って、1戦ごとにローテーションさせてくれ。
引率と編成の変化は、長門と妙高型姉妹に任せる」

赤城「提督、空母の方は?」

提督「赤城、加賀、翔鶴は午前の演習が無かったな。こちらも3隻で行って2隻ずつローテーションしてもらう」

加賀「了解しました」

53: 2015/04/17(金) 19:31:04.57 ID:xIIUzLHX0

提督「扶桑は予定通り、鎮守府周辺の対潜哨戒だ」

提督「編成は扶桑、最上、朝潮、満潮。出撃は3回分、その間撤退や入渠の判断は扶桑に一任する」

扶桑「かしこまりました」

提督「続いて遠征班……川内と神通の第2、第3艦隊の遠征予定は取り消し、主に洗濯に回ってもらう。すまないね」

川内「いいのいいの、緊急なんだから気にしないでさ」

神通「私も、鳳翔さんの具合を看たかったので、良かったかもしれません……」

提督「駆逐艦たちにも、洗濯のやり方を教えてやってくれ。洗剤なんかは間宮が知ってるはずだから、頼んだよ」

川内「りょうかーい」

54: 2015/04/17(金) 19:32:19.06 ID:xIIUzLHX0

那珂「提督提督!! 那珂ちゃんの第4艦隊は!?」

提督「第4艦隊には予定通り遠征に行ってもらう」

那珂「えー!? 私だけ!?」

提督「遠征のノルマがまだだからね……午前分の1回と合わせて、海上護衛任務を3回だ」

那珂「こんなときこそ、那珂ちゃんの元気を鳳翔さんに分けてあげるべきじゃなーい? 遠征よりも歌をうt」

提督「那珂」

那珂「は、はーい! お仕事の依頼ですか!?」

提督「工廠の近くで騒ぎを起こしてみろ」

提督「私の権力の及ぶ限り、恐ろしい目に合わせる」

那珂「ごめんなさい流石にわきまえます許して下さいごめんなさい」

提督「わかればいい」

55: 2015/04/17(金) 20:49:54.97 ID:xIIUzLHX0

提督「蒼龍、飛龍、瑞鶴は厨房に入ってもらう。間宮と伊良湖を手伝って、昼食の用意をしてくれ」

蒼龍「了解しました!」

鳥海「……あの、司令官さん?」

提督「どうした?」

摩耶「どうした、じゃねーよ。出撃予定だったあたしらは何すりゃいいんだ」

陸奥「もう、大体の仕事は割り振られたんじゃないかしら」

提督「安心してくれ。大仕事が残ってる」

山城「大仕事?」

提督「山城、陸奥、高雄型姉妹、残りの駆逐艦には」

提督「全艦娘寮の掃除を頼む」

山城「」

提督「掃除だ」

陸奥「」

摩耶「マジかよ……」

56: 2015/04/17(金) 20:50:37.14 ID:xIIUzLHX0

提督「これで大体割り振ったな。何か質問は?」

提督「……よし。慌ただしくなったが、連絡は以上だ」

提督「役割は皆違えど、鎮守府の一員としての自覚を持って、全員で協力して取りかかってくれ」

「「「了解!!」」」

提督「では解散!」


提督「……」

提督「さて、執務に……いや、一度見舞ってから行くか」

57: 2015/04/17(金) 20:51:15.89 ID:xIIUzLHX0





鳳翔「……」

提督「……鳳翔」

鳳翔「……」

提督「高熱があるわけでもなし、顔色もそれほど悪くは無い」

提督「出撃して、激しく損傷したわけでもない」

提督「……ただ、目を覚ましてくれない」

提督「本当に、一体、どうしたんだよ、鳳翔」

58: 2015/04/17(金) 20:52:27.35 ID:xIIUzLHX0

提督「……ん?」

鳳翔「……ぅ……」

提督「涙の跡だ……泣いてるのか? 鳳翔」

鳳翔「ふぅ……」

提督「どんな夢を、見てるんだ? 気丈な君が泣くなんて、どれほど悲しい夢なんだろうな」

鳳翔「……」

提督「許されるなら、君の夫として、男として、悲しみを分かち合いたい」

鳳翔「……」

提督「私じゃ、駄目だろうか。……なあ、鳳翔」

鳳翔「……」

60: 2015/04/18(土) 17:04:38.40 ID:T4sOH+rF0

お疲れ様です。昨日上げられなくて申し訳ありません。

続き更新していきます。
なんとか休日中にきりのいいところまで終わらせたい……

61: 2015/04/18(土) 17:05:48.63 ID:T4sOH+rF0


…………


 「……」

『見て見て、お母さん! 似合ってる?』

 「……」

『最新の迷彩塗装よ。飛行甲板を輸送船に誤認させる効果があるんだって!』

 「……」

『それからね、私、第一機動艦隊の旗艦に選ばれたの」

 「……」

『もう、僚艦も少ないし、飛ばす飛行機も無いんだけど……』

 「……」

『大役、立派に果たしてみせるわ。見ててね、お母さん!』

 「……」

『……お母さん?』

62: 2015/04/18(土) 17:07:54.07 ID:T4sOH+rF0

 「……もう、貴女一人だけに、なってしまいましたね」

『……うん。ごめんね、約束守れなくて』

 「出来れば、行って欲しくない。航空支援のない戦場に、送り出したくなんてありません」

『……でも……』

 「わかっていますよ、それは私のわがままですから」

 「おそらくこれが、機動部隊最後の出撃になるでしょう。熾烈な闘いも、致し方ありません」

『……うん』

 「あれ以来出番の無かった私ですが、戦局の逼迫するこれからは、きっと実戦の機会も与えられましょう」

 「……私も、すぐに行きます」

 「……あの子たちと一緒に、待っていてちょうだいね?」

『……はい!』



『……じゃあね、お母さん!!』



…………



鳳翔「……」

63: 2015/04/18(土) 17:18:45.25 ID:T4sOH+rF0





提督「……よし、今日の書類は大体終わったな」

提督「掃除と洗濯もどうにかなったようだし……皆頑張ってくれた」

提督「また見舞いに行こうかな」

赤城「失礼します、提督! 演習艦隊、帰還いたしました」

提督「ああ、赤城。随分早かったね」

赤城「思ったより早く決着がつきまして、とりあえず勝利の報告をと。詳細な報告書は明日でよろしいでしょうか」

提督「わかったよ、お疲れ様」

赤城「どこかへお出かけですか?」

提督「うん、鳳翔のところへね。一緒に行こうか」

赤城「はい」

64: 2015/04/18(土) 17:25:20.20 ID:T4sOH+rF0

赤城「……心配です」

提督「そうだね。まさかこれほど深刻だとは」

赤城「貴方のことですよ、提督」

提督「私か?」

赤城「ご自分では気付いておられないかもしれませんが、ひどい顔ですよ。
心労が顔に出て、昼間とは別人みたいです」

提督「そうかな……自覚なかった」

赤城「不謹慎ですが、そこまで想われているお母さんが、ちょっと羨ましいですね。
もちろん提督の、ここの皆を大事に思っている気持ちは伝わっていますが」

提督「……」

赤城「お母さんはこの鎮守府でも古参で、提督との付き合いも長いですものね」

65: 2015/04/18(土) 17:26:51.03 ID:T4sOH+rF0


――新たな仲間を発見しました!――

鳳翔『航空母艦、鳳翔です。不束者ですが、よろしくお願い致します』

提督『……』

鳳翔『……あの、提督?』

提督『は、はい! こちらこそよろしくお願いします、鳳翔さん!!』

鳳翔『え、えっ?』

五月雨『提督、どうして急に敬語なんですか?』

提督『え、あ、ああ、わからない。この口調の方が、自然の様な気がして……』

鳳翔『……それは、私が、年長に、見えたからということですか……?』

提督『い、いえいえ!! 決してそんな失礼なことは!!』

鳳翔『……』

吹雪『あの、鳳翔さん? 許してあげて下さい、司令官は私たちに嘘をつくような人じゃありませんから』

提督『吹雪……』

叢雲『単に奥手なだけで、初対面で嘘つくほど上手く喋れないだけでしょ』

満潮『ヘタレと言い換えてもいいわね』

提督『お前らなぁ!』

鳳翔『……ふふっ』

提督『鳳翔、さん?』

鳳翔『冗談ですよ、別に怒ってません……改めて、よろしくお願いしますね、皆さん』

66: 2015/04/18(土) 17:36:48.81 ID:T4sOH+rF0

赤城「その後すぐに、私が着任して……南西諸島海域を攻略中に、二航戦の2人が加わって」

提督「ああ。赤城、蒼龍、飛龍を加えた機動部隊で、沖ノ島海域の防衛に向かったな」

赤城「う……あの、提督、その時のことはちょっと……」

提督「忘れたくても忘れられないよ」

赤城「い、今はちゃんと反省してるんですよ?」

提督「そりゃ当然だろ……もう、あんなぶち切れた鳳翔を見るのは嫌だぞ」

67: 2015/04/18(土) 17:42:57.85 ID:T4sOH+rF0


――沖ノ島海域・あ号艦隊決戦――


提督『……駄目だ、夜戦突入は許可しない!! 蒼龍、飛龍、赤城を止めろ!!』

赤城『提督、何度羅針盤に振り回されたかお忘れですか? 
敵の中核部隊との遭遇が、次はいつになるかわかりません』

飛龍『待って下さい赤城さん!! 貴女は昼戦で大破してるんですよ!? 
それに夜戦じゃ、私たちの出番は……』

蒼龍『む、無理です提督!! もう最大戦速で突撃してる!!』

提督『ぐっ……どうする……』

鳳翔『……』

68: 2015/04/18(土) 17:44:00.28 ID:T4sOH+rF0

扶桑『提督』

提督『扶桑!?』

扶桑『赤城さんを孤立させるわけにはいきません。これから私たちも突撃します』

那智『もはや、赤城の説得は困難だ。こうなったら、やられる前にやるしかあるまい』

提督『ま、待て!! 君たちも無傷じゃないんだぞ』

川内『大丈夫、夜戦なら任せておいて。ぱぱっと全滅させてくるからさ!!』

飛龍『提督、赤城さんは私たちが、ゼッタイ連れて帰ります』

蒼龍『私たちを信じて下さい!!』

提督『……わかった、頼んだぞ。私も近くまで迎えに出る』

鳳翔『……』

69: 2015/04/18(土) 17:44:47.02 ID:T4sOH+rF0

鳳翔『……提督』

提督『ん、どうしました、鳳翔さ……!?』

鳳翔『艦隊の迎え、私も出てよろしいでしょうか』

提督『え、いや、あの』

鳳翔『よろしい、ですよね?』

提督『もちろんですどうぞおすきになさってください』

鳳翔『ありがとうございます、では失礼しますね』



提督『……』

提督『鬼だ』

70: 2015/04/18(土) 17:50:04.86 ID:T4sOH+rF0

飛龍『赤城さん!!』

蒼龍『よかったぁ、無事で……なんとか間に合ったね』

赤城『……わ、わたしは……』

那智『まったく。私たちが夜間戦力を残していたから良かったものの』

川内『無茶だよ、大破した艦が突撃なんて……しかも空母が』

扶桑『戦場で、冷静さを失ってはいけませんよ。一航戦の貴女らしくもない』

赤城『はい……申し訳ありませんでした』

71: 2015/04/18(土) 17:51:56.52 ID:T4sOH+rF0

那智『……しかし、意外だな』

扶桑『何がかしら?』

那智『さっきのは実質命令違反だろう? 旗艦の貴女や、司令官からもっと叱責が飛び出てくると思っていたが』

扶桑『あ、ああ、そのことね……』

川内『それはねー、提督と扶桑さんの優しさなんだよ』

那智『優しさ?』

川内『そうそう。これから赤城さんがどんな目に逢うかわかってるからさ……あ、ほら来た』

那智『ん? 一体何の――ひっ!?』


鳳翔『……』


那智『な、なんだアレは!? 鬼級か!?』

扶桑『よく見て。あれは鳳翔さんよ……』

那智『そ、そんな馬鹿な!! いつもの優しいオーラはどこへ行ったんだ!?』

川内『自分の娘のことが絡むとああなっちゃうんだよ。那智さんも気をつけてね』

72: 2015/04/18(土) 17:53:41.66 ID:T4sOH+rF0

――新たな仲間を発見しました!――

加賀『……航空母艦、加賀です。あなたが私のて』


鳳翔『あかぎちゃあああああん!!!!』


赤城『!!』

加賀『!?』

鳳翔『命令違反、単独突撃、しかも大破状態の正規空母が夜戦ですって!?』

鳳翔『氏にたいの貴女は!? 見てるこっちが、どんな気持ちだったかわかる!?』

赤城『』

蒼龍『お、お母さん落ち着いて!! 完全に首、極まってるから!!』

飛龍『赤城さん白目剥いちゃってるから!! 無事だったんだから、許してあげようよ!!』

73: 2015/04/18(土) 18:05:20.34 ID:T4sOH+rF0

加賀『……』

加賀『あ、あの、航空母艦、加賀で』


鳳翔『よりにもよって、正規空母で一番練度の高い貴女が!! 他の子たちに示しがつきません!!』

赤城『……ハッ!? ま、待って下さい、それだけは!!』

鳳翔『これから1か月、貴女にはおかずを作ってあげません』

赤城『』

赤城『ごめんなさいお願いします、反省してますから、許して下さい!!』

鳳翔『本来は重罪の命令違反で、ご飯とお味噌汁を食べられるだけありがたいと思いなさい。
空母の数が十分でないから、営倉に入れられない代わりの措置です』

赤城『』

蒼龍『あ、赤城さん?』

赤城『……大きな星が点いたり消えたりしている。アハハ、大きい……彗星かな……』

飛龍『いえ、あれはお母さんの九三式ですよ……』

蒼龍『こんな時でも偵察を欠かさないあたり、流石だよねお母さんは』

74: 2015/04/18(土) 18:07:23.83 ID:T4sOH+rF0

提督『お、終わったか?』

扶桑『提督? 今鳳翔さんと合流しましたよ』

那智『なんだ、貴様は来なかったのか』

提督『鳳翔さんに止められてな……ともあれ、全員無事で良かった』

川内『言ったでしょ? 任せておいて、ってさ』

提督『ああ、流石だよ全く……気をつけて帰ってきてくれ』

扶桑『ふふ、了解致しました』



加賀『……あ、あの』

提督『ん?』

加賀『あの、航空母艦、加賀なん、ですけど、グスッ……』

提督『……ご、ごめん』

75: 2015/04/18(土) 18:09:27.54 ID:T4sOH+rF0

提督「あの時の鳳翔は怖かったな……」

赤城「もう二度と慢心したり冷静さを失ったりはしません」

提督「本当に頼むよ」

赤城「……そして、その後も順調に海域を攻略していって」

提督「五航戦の2人も来てくれたな。鳳翔もとても喜んでいた」

赤城「あの戦争では、艦隊に6隻の正規空母が揃っていた期間は、とても短いものでしたからね。
提督には感謝しているんですよ、お母さんも」

提督「……そう、だと良いんだが」

76: 2015/04/18(土) 18:10:53.01 ID:T4sOH+rF0

赤城「どういうことです?」

提督「君たちは鳳翔を母と慕っている。だが私は、君たちを戦場に送りだすのが仕事だ」

提督「あの戦争で離ればなれになった君たちがようやく再会できたのに、また危険な目に逢わせている」

提督「鳳翔も心の底ではきっと、それを望んでは……」

赤城「……」

赤城「……提督、ちょっと」

提督「?」

赤城「歯、食いしばって下さい」

提督「なに?……ぐっ!!」

赤城「……ごめんなさい。でも、提督、それは見当違いですよ」

赤城「時代が違えど、場所が違えど、私たちはこの国を守るために存在しています。もちろん、お母さんも」

77: 2015/04/18(土) 18:12:50.52 ID:T4sOH+rF0

赤城「確かにあの戦争では、私たちはお母さんを残してしまいましたが……
それが軍艦の宿命ですから。お母さんもそれはわかってくれていたはずです」

赤城「それに、今は皆揃っているじゃないですか。
お母さんが提督に私たち6隻の指揮を任せるぐらいには、信頼されていると思って下さいよ」

提督「……なぜ、そう言い切れる?」

赤城「わかりますよ、娘ですもの……それに、私もです。
信頼できない人に、艦載機の皆さんを任せるわけにはいきませんからね」

提督「……赤城」

赤城「だからもっと、シャキッとして下さい! 私が好きになった人は、もっと格好良かったですよ」

提督「お、おい」

赤城「なんですか? 好きじゃなきゃ、指輪なんて受け取りませんよ?」

提督「いや、あれは……」

赤城「……ふふ、ちゃんとわかってます。
そういう意味の指輪じゃないってこと。なんせお母さんにデレデレですもんね」

提督「……まあね」

赤城「ほら、顔洗ってきて下さい。お母さんにそんな顔見せちゃだめですよ」

提督「ああ!」

81: 2015/04/19(日) 01:39:01.17 ID:JNlLA77p0





提督「ああ、君らも来てたのか。演習お疲れ様」

加賀「今来たところです」

翔鶴「補給は済ませておきましたので」

鳳翔「……」

蒼龍「あんまり変わってないみたいだね、お母さん」

飛龍「でも、昼ほど苦しそうじゃないみたい」

瑞鶴「提督さん、明石さんからは?」

提督「いや、まだ……?」

明石「提督、提督!! 報告が来ました!! ありましたよ、前例が!!」

提督「本当か!! すぐに……」


「「「もう少し静かに」」」

明提「ごめんなさい」

82: 2015/04/19(日) 01:39:56.05 ID:JNlLA77p0

提督「それで?」

明石「似たような経験をされた、呉に所属の提督さんからです。対象は榛名さん」

赤城「その1例だけですか?」

明石「ええ、今のところですが」

加賀「症例がデータベース化されていないのは何故なんでしょうか」

瑞鶴「こんな深刻な症状なら、対処法がマニュアルになっててもおかしく無いんじゃない?」

明石「多分、症例が少なすぎるせいだと思います。事実、送られてきたこれも正式な報告書ではなく、
あちらの提督さんの私見をまとめたもののようですから」

翔鶴「それほど稀なケースなんですね……」

83: 2015/04/19(日) 01:40:49.09 ID:JNlLA77p0

飛龍「それで、どんな報告だったの?」

明石「まずあちらの提督さんですが、榛名さんとだけケッコンカッコカリをなさっていますね」

蒼龍「それだと、提督と一緒かはわかんないね」

明石「でも、鳳翔さんの症状とそっくりです。ある日突然悪夢にうなされて、
目を覚まさなくなるところまで一緒です」

提督「解決出来たのなら、鳳翔にも同じことが言えるかもしれないな」

84: 2015/04/19(日) 01:44:00.25 ID:JNlLA77p0

明石「続けますね? あちらの提督さんの手記を纏めたものを添付して頂いたので、読み上げます。


『7月1日未明:昨日の夜から片付けていた書類が一段落し、一旦自室に戻ると、

私のベッドで寝ている榛名の様子がおかしいことに気付く。

はじめは熟睡しているのかと思ったが、尋常でない量の寝汗をかき、時折苦しそうにうめき声をあげている。

声をかけ、名前を呼び、肩を揺さぶるも、全く反応がない。あわてて抱え上げ、工廠へ運ぶ』


『7月1日午前:工廠妖精の見立てでも、原因は不明だという。一応、鎮守府の全妖精に聞き取りを行うよう依頼する』


『7月1日午後:出撃から帰ってきた金剛が、榛名の様子を聞くなり私を締め上げる。

昨日は行為に及んだりなどしていないので、それが原因ではないことを説明し納得させる』


『7月1日夜:今夜は金剛、比叡、霧島が交代で看病してくれるそうなので任せる。私も付いていてやりたかったが、

昨日からの執務が溜まっていたため、〇三〇〇まで作業の後、執務室で仮眠を取る』 」


蒼龍「余計な情報が入ってるんじゃない?」

赤城「何が重要かわかりませんから」

85: 2015/04/19(日) 01:45:27.70 ID:JNlLA77p0

明石「ここから次の日です。


『7月2日朝:誰も起こしてくれずに少し寝坊したため、慌てて工廠に向かう。

榛名の隣に突っ伏して爆睡している比叡を見て少し癒される。榛名に声をかけてみたが、反応は変わりなし』


『7月2日午前:この日は榛名の出撃予定だったが、金剛が連日の無理を押して出撃してくれた。

霧島はずっと資料室に詰めてくれていたが、今のところそれらしき記述はないという』


『7月2日午後:上層部の連中の視察を受ける。比叡と共に鎮守府を案内したが、余計な火種を蒔きたくないため、

工廠は作業中で危険という理由をなんとか納得させる』


『7月2日夜:日中に執務が一段落したので、今夜は榛名に付いてやることが出来る。

金剛姉妹は疲れが溜まっていたようなので、無理矢理休むよう言いつける』」


加賀「2日もそのままだったの……辛かった、でしょうね」

瑞鶴「榛名さんも、その提督さんもね……」

86: 2015/04/19(日) 01:46:37.67 ID:JNlLA77p0

明石「えーと、ここから……あれ?」

提督「どうした?」

明石「いえ、このメモには日付が付いてなくて……とりあえず読んでみますね。


『これから書くことを上に見せたら、荒唐無稽だと鼻であしらわれるだろうし、

もしかすると同僚にも誰にも信じて貰えないかもしれない。

私自身もこの体験は半分夢うつつで、ところどころ記憶が曖昧になってきている。

しかしこの出来事の後に、榛名が健康を取り戻したのは確かだ』 」


飛龍「目を覚ましたんだね! 良かった」

提督「何があったんだ?」

87: 2015/04/19(日) 01:49:25.71 ID:JNlLA77p0

明石「読み上げます。


『榛名の額に乗せた濡れタオルを替えたりしているうちに、私もベッドに突っ伏して眠ってしまったようだ』


『ふと気がつくと、どういうわけか、真っ昼間の港に立っていた。

見慣れた地形は、一見呉の軍港を連想させたが、明らかに別のどこかだった。

どこがどう違うとか、細部は全く覚えていないが、とにかく雰囲気や空気感が違った』


『当てもないまま歩いて行くと、眼下の桟橋に誰かが佇んでいるのが見えた。

それが榛名だった。

慌てて駆け寄ると、ボロボロの艤装を付けたまま海に出ようとしている。

思わず腕を引っ張って、桟橋に引き上げた。

私の姿を見て、誰? と言われたことには、流石に堪えた』


『どこへ向かおうとしているのか問いただすと、すぐそこだから大丈夫だ、と笑った』

88: 2015/04/19(日) 01:50:58.31 ID:JNlLA77p0


『今まで榛名ばかりに気を取られていて気付かなかったが、目の前に構造物が大破し、着底した戦艦が見える。

資料写真で見たことしかない帝国海軍戦艦・榛名の、奮戦し力尽きた姿だと直感した。

榛名はそこへ向かいたがっているようだった』


『何故行きたいのだ、と再び問うと、貴方には金剛お姉様たちの姿が見えないのか、と答え、壊れた戦艦を指さした。

私が目を凝らしても何も見えないが、榛名には金剛たちが手招きしているのが見えているようだ。

必氏でそれは幻覚だと諭しても、まったく聞く耳を持たない』


『私は嫌な予感がした。ここで榛名を行かせてしまったら、もう二度と榛名が帰ってこないような気がした。

根拠はないが、おそらく間違いないように思う』

89: 2015/04/19(日) 01:52:09.99 ID:JNlLA77p0


『私は思い切って榛名を抱きしめた。

榛名は私のことを覚えていないようだったが、勝算が無かったわけではない』


『それが、指輪だった』


『榛名の左手の薬指に、指輪が光っているのが見えたのだ。

指輪を渡した時、とても喜んでくれていたことを今は忘れているだけで、きっと榛名を取り戻せると思った。

私を振りほどこうと暴れる榛名を抑えながら、必氏で語りかけた』

90: 2015/04/19(日) 01:54:27.03 ID:JNlLA77p0


『もし他の艦娘に同じ症例が起こった際の助けとなれるよう、

どう説得したかを書き留めておきたいが、どういうわけだか全く思い出せない。

お前の居場所はここじゃないとか、お前の姉たちが帰りを待っているとか、

月並みだがそのようなことを言ったかもしれない』


『意識がぼやけ、目を覚ますと、我が鎮守府の工廠に戻っていた。

私はいつの間にか、榛名を抱きしめる格好で工廠に寝転がっていた。

榛名を優しく揺り起こすと、彼女はうっすらと目を開け、私の名前を呼んでくれた。

その時の喜びは忘れられない』


『思わず彼女に唇を落とすと、彼女も応えてくれた。

周りに誰もいないのをいいことに、私はさらに舌で彼女の口を優しく押し開き、舌を探した。

彼女が口に意識を集中させているうちに、私は彼女の肩を抑えつけ、もう半ばはだけていた彼女の上着を』 」


提督「明石、待て。もういい」

明石「そ、そうですね。これ以上は蛇足みたいですね……」

98: 2015/04/19(日) 21:05:58.37 ID:JNlLA77p0

提督「確かに科学的根拠は何もないが、もうこの際置いておこう。鳳翔を救うためなら何にでも縋ってやる」

加賀「不明確な点がいくつかありますね。まず、どうしたら夢に入り込めるか」

翔鶴「すぐ近くで一緒に眠る、とかでしょうか」

飛龍「でも、提督はお母さんといつも一緒に寝てるんだよ? 今日の朝に何も無かったのはおかしくない?」

蒼龍「何か条件があると思うんだけど……この提督さんも、すぐ入れたわけじゃないみたいだし」

提督「……明石、ちょっと資料を見せてくれ」

明石「何か気付かれました?」

提督「説得のきっかけになったわけだし、指輪が何かしらの鍵になっている気がするんだが……
普通、指輪はいつも付けているものだしな……」

99: 2015/04/19(日) 21:10:49.13 ID:JNlLA77p0

赤城「……ん? て、提督!! お母さん、指輪付けてませんよ!?」

提督「何だって!? ……本当だ、どうして……秘書艦の仕事の時や、デートの時は付けてくれてるのに……」

瑞鶴「そ、そうだ!! お母さんと榛名さんで、普段違うところがあるじゃない!!」

翔鶴「何かわかったの!?」

瑞鶴「鎮守府の仕事だよ!! お母さん、水仕事の時は外してるんだよ、きっと!!」

飛龍「そっか、皆の衛生を考えなくちゃいけないから……」

蒼龍「で、でも、どうして外したまま寝てたんだろ?」

加賀「お母さんは、次の日に出撃する予定の人たちのために、
遅くまでお弁当の仕込みをしてくれているんです。私も時間がある時は少し手伝っていますが」

赤城「そうね、帰りが日をまたぐ作戦の場合は、いつも持たせてくれていたわね……
仕事で疲れて、付け直さずにそのまま寝るのでしょう」

提督「お互いに指輪を付けて、一緒に寝る……か。気付かなかった自分を殴りたくなる単純さだ」

100: 2015/04/19(日) 21:16:42.63 ID:JNlLA77p0

明石「鳳翔さんと榛名さんに共通するのは、あの戦争を生き延びた艦であるということでしょうか。
もちろん程度の差はあるでしょうが」

提督「そうだな。夢の中で、金剛たちの幻覚を見ていたと言っているし……
自分一人が生き残ってしまって、姉たちの幻影に悩まされていたのかもしれない」

赤城「では、同型艦のいないお母さんはもしかして、私たちの幻影に苦しんでいるということですか……?」

加賀「しかし、あの戦争の時に『艦娘』は存在しません。
榛名さんの夢で、元の艦船と艦娘が同時に存在するのは何故でしょうか?」

飛龍「そうだよね。榛名さんが見た幻影は、艦娘の金剛さんたちみたいだし」

蒼龍「全部が全部、榛名さんの幻想ってこと?」

明石「私の推測なんですが、艦娘は全員が、多かれ少なかれあの戦争の記憶を持ってます。
高練度な艦娘ほど、元の艦船の魂の影響を強く受け、より艤装の力を引き出すことが出来るのですが……」

翔鶴「つまり、その影響が一番大きいのは、ケッコンカッコカリを済ませた後、
練度の上限に到達した艦娘ということですね?」

瑞鶴「お母さんや榛名さんは、自分だけ生き残ってしまったという艦船の魂から、
こんな幻想を生み出して苦しんでるかもしれないってことね」

101: 2015/04/19(日) 21:25:46.13 ID:JNlLA77p0

明石「それから提督、以前に鳳翔さんが悪夢を見ていた時期があると仰ってましたが」

提督「ああ」

明石「もしかして、去年の8月ごろじゃありません?」

提督「……確かに、そのころだったかもしれない。その頃は任務に忙殺されていて、
日記もまともに書けなかったからな……すぐに見なくなったと言ってたから、放置してしまったが」

赤城「どういうことですか?」

明石「……すみません、機動部隊の皆さんにはつらいお話かもしれませんが」

明石「原因のひとつは、MI作戦ではないかと」

加賀「!!」

飛龍「どういうこと? 私たちはあの作戦、ちゃんと成功したじゃない」

蒼龍「そうだよ、もちろん轟沈なんてなかったし」

明石「ここの鎮守府のことだけじゃありません。あの戦争の、MI作戦もです」

翔鶴「そ、それは、先輩たちの……」

瑞鶴「その時お母さんが見ていた悪夢は、私たちがMI作戦を成功させたから見なくなったけれど」

提督「……私とのケッコンカッコカリによって、再びトラウマを蘇らせてしまったのか」

明石「もちろん確証はありません。ただ前例が少ない以上、ある程度目星をつけて原因を推測するしか」

102: 2015/04/19(日) 21:36:50.01 ID:JNlLA77p0

翔鶴「そ、それじゃ急がないと!! 榛名さんは金剛さんたちと共に戦った記憶も多いでしょうが……」

加賀「お母さんは出撃自体が少なかった……戦場の記憶が少ないということは、それだけ余裕もないかもしれないわね」

瑞鶴「私、お母さんの部屋で指輪探してくる!!」

加賀「私も行くわ」

赤城「提督、工廠よりも、ご自分の部屋に運ばれた方がいいのではないですか?」

提督「いや、何があるか分からない。明石や妖精さんがすぐ来れるここの方がいいだろう」

飛龍「明石さん、私たちは何かすることある?」

明石「あの戦争での鳳翔さんの資料を出来る限り持ってきましょう」

蒼龍「そんな軍機みたいなの残ってるかな?」

明石「鳳翔さんの終戦の地は、割と正確に記録が残ってます。港はそう簡単に地形は変わらないので問題ないでしょう」

103: 2015/04/19(日) 21:46:15.74 ID:JNlLA77p0

赤城「空母『鳳翔』は、確か江田島市で終戦、その後呉湾に回航されたのでしたね」

提督「ああ。地形で迷うことはなさそうだから、それは助かるな」

明石「……ありました、提督。敵機が撮影した写真が公開されてます」

提督「よし、これだな。予想が正しければ、終戦前後の江田島に行くはずだ」

明石「気をつけて下さい、提督。飛ばされた場所によっては、近くで同じく偽装されていた
龍鳳さんと間違えるかもしれません。良く地形を覚えて下さい」

提督「わかった」

瑞鶴「指輪あったわよ!! 早く嵌めてあげて」

提督「ありがとう瑞鶴……これでよし。後は寝るだけだな」

明石「どんな弊害が出るかわからないので、薬は使わない方がいいと思います……気持ちを抑えて、何とか眠って下さい」

提督「ああ、わかってる」

104: 2015/04/19(日) 21:57:19.99 ID:JNlLA77p0

提督「……本当は、君たちが説得してくれれば心強いんだが」

赤城「いえ、それでは意味がないんですよ、提督」

蒼龍「いつまでも私たちのことで、お母さんを苦しませたくないもの」

翔鶴「これからお母さんに寄り添ってあげるのは、提督でなくてはなりませんから」

提督「そうか……うん、そうだな」

飛龍「それじゃ、私たちは撤収するから」

瑞鶴「ちゃんと連れて帰ってきてよ!?」

明石「ま、まあまあ」

加賀「きっと大丈夫よ……それでは、お休みなさい、提督」

提督「お休み」

105: 2015/04/19(日) 21:59:24.49 ID:JNlLA77p0

提督「……鳳翔」

鳳翔「……」

提督(随分落ち着いてるように見えるけど、出撃前に覚悟を決めている、とかだったら本当にまずいな)

鳳翔「……」

提督(そもそも呉提督め、睦言を書く余裕があるならもっと有益な情報をだな)

鳳翔「……」

提督(……くそ……焦るな……)

106: 2015/04/19(日) 22:05:52.79 ID:JNlLA77p0


…………


提督「……!!」

提督「ここは……」

提督「……よし、入れたようだ。予想通り、昼間の江田島のようだな」

提督「海岸がこの形……よし、少し南に下れば鳳翔がいるはず」

提督「急がないとな」

提督「……」

提督「……くそ、暑い……第1種軍装のままとは、随分不親切じゃないか……」

107: 2015/04/19(日) 22:12:10.08 ID:JNlLA77p0

提督「……あった、あれか!?」

提督「偽装された飛行甲板……あれだ、空母『鳳翔』……間違いない」

提督「……鳳翔はどこだ……?」


提督「……くそ、見つからない」

提督「船のすぐ近くにいるんじゃなかったのか」

提督「送ってきた情報じゃ、艦船が見えるところに……ん!?」


提督(『鳳翔』の上に、誰かが……)

提督「……見つけたぞ!!」

108: 2015/04/19(日) 22:20:29.51 ID:JNlLA77p0

鳳翔「よいしょ、っと……」

提督「……鳳翔!!」

鳳翔「……? あ、こら、ダメですよ。ここは立ち入り禁止です」

提督「鳳翔……」

鳳翔「ああ、なんだ、軍人さんでしたか。見ない顔ですが、新しく着任された方ですか?」

提督「……」

鳳翔「こんな暑い日に冬服なんて、倒れちゃいますよ? それとも、寒がりなだけですか?」

提督(やっぱり、私がわからないのか)

109: 2015/04/19(日) 22:29:07.68 ID:JNlLA77p0

提督「何、やってるんだ」

鳳翔「見てわかりませんか? 『私』に付けられたワイヤーを外してるところです。お暇なら手伝ってほしいんですけど」

提督「どうして外すんだ? それは、島に見せかける偽装なんだろう」

鳳翔「嫌ですね、飛行甲板にこんなものが付いてたら飛行機を飛ばせないじゃないですか」

提督「飛行機だって?」

鳳翔「私は空母ですよ? 飛行機を飛ばして、夷狄を撃ち滅ぼすのがお仕事です」

提督「……」

鳳翔「早く出撃しないと。まず索敵機を飛ばして……」

提督「……もう、いいんだよ、鳳翔」

鳳翔「はい?」

提督「戦争はもう終わる。君には、飛行機を飛ばすよりも、もっと大事な仕事が待っているんだ」

鳳翔「……あの、言っていることがわかりません。貴方、本当に帝国海軍の方ですか?」

110: 2015/04/19(日) 22:36:54.86 ID:JNlLA77p0

提督「今言ったとおりだ。君はもう、戦う必要はない」

鳳翔「ちょ、ちょっと、近寄らないでください!!」

提督「私と一緒に帰ろう? 君の娘たちだって、鳳翔が帰ってくるのを待ってる」

鳳翔「……貴方の話は全然わかりません。それに、娘が待ってる、ですって?」

提督「そうだ。赤城たち6人が……」

鳳翔「面白い冗談ですね。私の娘たちは、あそこにいますよ?」

提督「何だって? ……!!」



『お母さん、まだですかー?』

『早くこちらへ。皆待っていますよ』

『手伝いに行けなくてごめんねー、ちょっとここ、浅すぎるからさ』

『その代わり、哨戒は任せておいてね!』

『付近には、敵の航空機も潜水艦も見当たりません!』

『今なら、敵の不意を突くことが出来るわ! 皆で出撃しましょう!』



提督(な、何なんだアレは!? 甲板も艦橋も、スクラップ同然の大型空母が6隻……!
それに、艦の上に立ってるのは……赤城たち、なのか!?)

鳳翔「ええ、待っててねー! すぐ行きますからー!!」

提督(なぜ私にも見えてるし、声も聞こえるんだ……!? 話が違うぞ、呉の!!)

111: 2015/04/19(日) 22:46:06.49 ID:JNlLA77p0

提督「鳳翔!! 落ち着いて良く見るんだ、あんなのが君の娘であるはずがないだろう!!」

提督(そうだ、あるはずがない……本物は、私の鎮守府に居る、あの子たちだけだ)

提督(軍艦としての覚悟を決めたあの子たちは、鳳翔にそんなことは言わない!!)

提督「アレは、君が囚われている幻想なんだ!!」

鳳翔「違います!! あの子たちが戻って来てくれたんです、また皆で暮らすんです!!」

提督「……くっ……!!」

112: 2015/04/19(日) 22:52:03.25 ID:JNlLA77p0

提督(もう余裕はない……やるしかないか)

提督「鳳翔っ!!」

鳳翔「きゃあっ!! 何するんですか、離してください!!」

提督「鳳翔、君の左手を見ろ!!」

鳳翔「……!? え、なんで、指輪が……? こんなの嵌めた覚えが……」

提督「本当に覚えはないか? 私がこれを渡した時、言ったことも?」

鳳翔「……」

鳳翔「……う……」

113: 2015/04/19(日) 23:03:14.06 ID:JNlLA77p0


…………


鳳翔『ふー、夜風が気持ちいいですね』

提督『……そう、ですね』

鳳翔『ところで、お話って?』

提督『……貴女が来てくれて、もう随分経ちますね』

鳳翔『ええ、そうですね。あの頃とは比べ物にならないくらい、ここも賑やかになりましたね』

鳳翔『私の娘とも再会できたことも、改めて感謝しています』

提督『……良いんですよ、感謝なんて……私は貴女が喜ぶ顔を見られるのが、一番幸せなんです』

鳳翔『て、提督? そんな言い方されますと、まるで、その……』

提督『鳳翔さん……いえ、鳳翔』

鳳翔『は、はいっ!』

提督『貴女に、これを受け取ってほしいんです』

鳳翔『……これ、って……最初に1つだけ支給される指輪じゃ……』

提督『ええ』

鳳翔『な、なぜ私なんでしょうか? 私を強化しても、戦力的には』

提督『もっと戦力を強化したければ、新しく用意すればいいんです……でも、最初の1つは、私が一番愛するひとに渡したかった』

鳳翔『……』

提督『貴女を愛しています、鳳翔』

鳳翔『……提督……』

提督『鎮守府の家事を率先して引き受けて、毎日遅くまで働く姿。小さい子たちの面倒を見て、慕われている姿。
時には弓を取って、勇ましく闘う姿。……何時しか、すべて愛おしく思うようになりました』

提督『娘同然の空母たちの無事を、いつも祈っていることも』

鳳翔『……』

提督『鳳翔、もう二度と、貴女とあの子たちを離ればなれにはしません。私が必ず貴女を、貴女たちを守ります』


提督『……私を信じて……共に、歩んで頂けませんか、鳳翔』

鳳翔『……提督……わたし……わたしは……』


…………


114: 2015/04/19(日) 23:09:51.17 ID:JNlLA77p0

鳳翔「う、あ」

提督「あの時約束したね。二度と、貴女とあの子たちを離ればなれにはしないと」

鳳翔「やく、そく……」

提督「こんなところで、君を失いたくない。鎮守府の皆も、君の娘たちも……何より、私が一番、君の帰りを待っている」

鳳翔「……で、でも、あの子たちが」


『『おかあさん』』

『『いかないで』』

『『おかあさん』』


提督「……約束は必ず守る。君も、君の娘たちも、私が絶対に守るから」

鳳翔「……ほんとう、ですか?」

提督「だから、一緒に帰ろう……鳳翔」

鳳翔「……」

鳳翔「あ、な、た……」


…………


115: 2015/04/19(日) 23:11:44.40 ID:JNlLA77p0


…………


提督「……う……、ここは……」

鳳翔「……ん……」

提督「戻ってこれた、か……良かった……」

鳳翔「う、ん……」

提督「……鳳翔?」

鳳翔「……ん、ふぁ……おはよう、ございます、あなた……」

提督「……鳳翔っ!!」

鳳翔「きゃっ!! も、もう、今日は甘えん坊さんですね?」

提督「良かった……良かったな……」

116: 2015/04/19(日) 23:14:25.88 ID:JNlLA77p0

鳳翔「あの、あなた、私……」

提督「どうした? まだ気分が悪いか?」

鳳翔「いえ……私、何だかとっても、悪い夢を見ていた気がするんです。はっきりとは、思い出せないんですけど」

提督「……」

鳳翔「それで、ええと、夢の中であなたの声が聞こえて。その声が、私を助けてくれたんですよ」

提督「……そうか」

鳳翔「すごく優しくて、頼もしい声で……でも、何を言っていたかは、思い出せなくて。あなた、何か知っていますか?」

提督「……いいや?」

鳳翔「そ、そうですよね。私の夢だったんですもの、わかるわけありませんよね……私ったら」

提督「そうとも」


提督「……あんな恥ずかしいこと、2回も言ったなんて……忘れててくれていい」

鳳翔「……? 何か?」

提督「いや、何でもないよ」

117: 2015/04/19(日) 23:15:24.05 ID:JNlLA77p0

鳳翔「まあ、大変! もう朝です、お仕事始めないと!」

提督「そうだな。今日も朝食の準備、よろしく頼むよ」

鳳翔「はい、お任せ下さい!」

提督「……ああ、厨房に行く前に、空母寮に顔を出してやってくれ」

鳳翔「え? どうしてでしょうか?」

提督「いいからいいから。少しの間、あの子たちの好きにさせてみるといい」

鳳翔「は、はあ……わかりました」

118: 2015/04/19(日) 23:19:43.22 ID:JNlLA77p0

鳳翔「それじゃ、失礼しますね?」

提督「うん。……なあ、鳳翔」

鳳翔「はい? 何でしょう、あなた」

提督「その指輪、渡した時に、君とした約束を覚えているか?」

鳳翔「もちろんですよ……あ、あら? 私、寝る前に付けたかしら……」

提督「君から見て、その約束を守れるほどの男に、私はなれただろうか?」

鳳翔「……あなた」

鳳翔「私は、いつまで守るかなんて、聞いた覚えはありませんよ」

提督「え?」

鳳翔「二度と離ればなれにしない、なんてこと、今は判断できないでしょう? ですから……」

鳳翔「約束は、守り続けて頂きます。これから、ずっとです」



鳳翔「改めまして、娘ともども」

鳳翔「ふつつか者ですが、よろしくお願い致しますね、あなた!」






119: 2015/04/19(日) 23:25:07.86 ID:JNlLA77p0

本編はこれにて終わりです。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
想像以上に長くなってしまい、また最後は強引な展開だった自覚はあります。申し訳ありません。

これ以後は、本編に入れられなかったおまけのお話を書いていきたいと思います。
少し本編とは雰囲気が違ってくる可能性がありますので、一応ご注意頂きたいと思います。

改めまして、レスを下さった方々、読んで下さった方々、本当に励みになりました。
よろしければもう少しお付き合いください。

120: 2015/04/19(日) 23:26:18.75 ID:uQQ4u+uJ0
乙!幸せな結末で安心したよ

123: 2015/04/20(月) 00:33:42.88 ID:9NbDRxNV0


おまけ1 ~軍人には報告の義務があります~


明石「お疲れ様でした、提督!」

提督「君のサポートがなければ途方に暮れていただろう……本当に助かった。ありがとうな」

明石「いえいえ、何とかなって良かったです!! ところで、提督」

提督「何かな?」

明石「今回のケースの経過を、纏めておく必要があると思うんです。幸い提督の記憶は割と残っているようですし」

提督「そうだね。呉のやつの報告の穴を埋める意味でも、対策を書いておけばある程度助けになるかもしれないな」

明石「全体の経過としてはさほど症状に変わりは無かったので、やっぱり重要なのは夢に入り込んでからのことですね」

提督「ああ、呉のは記憶がかなり曖昧になっているようだったからな」

明石「それじゃ、私が口述筆記して報告書に纏めますので、喋って下さいますか?」

提督「わかったよ。まずはな……」

124: 2015/04/20(月) 00:35:24.09 ID:9NbDRxNV0

明石「……ふーむ。呉提督さんの報告とは大分差異がありますね」

提督「ああ。特に、他の艦船や艦娘の幻影が見えていたところだな」

明石「呉提督さんとの違いはケッコンカッコカリの数ですからね……指輪がきっかけだった以上、この辺りが関係してるのかも」

提督「その辺は何とも言えない。なんせ症例が2つだからな」

明石「そうですねぇ……それで、次が一番大事ですよ。鳳翔さんに、一体どんな説得をして連れ戻したんですか!?」

提督「そんな身を乗り出すなよ、今話すから。ええとだな……ん?」


提督(おいちょっと待て。どんな説得したかって、プロポーズの言葉そのまま言うのか!?)


明石「どうしました提督? さあ、早く早く!!」

提督「え、えーと、その、だな……全部言わなきゃだめなのか?」

明石「それはそうですよ。読んだ人がどう説得すればいいかの一助になるためのものなんですから」

提督「そ、そうだよな。だが、しかし……」


提督(報告書だぞ!? 愛の告白が全国の鎮守府にばら撒かれるとか、どんな羞恥プレイなんだ!?)


提督「明石、提督権限で、それを上層部に送るのは断固阻止する」

明石「え、どうしてですか? 大々的に対策してもらった方がいいんじゃ」

提督「他の鎮守府に送るのは、まあよしとする。だが、上層部が鳳翔を詳しく調査したいとか言ってきたらどうする?」

明石「う……そ、そうですね」


提督(自分の羞恥心と艦娘のリスクを天秤にかけた結果だ……顔なじみも多いし、少しの間からかわれるのは我慢しよう……)

125: 2015/04/20(月) 00:52:38.14 ID:9NbDRxNV0


おまけ2 ~呉提督と榛名さん~


榛名「マルキュウマルマル! 提督、出撃の用意は整っています!」

呉提督「おー、お疲れさん。でも今日はお前、出撃ねーだろ?」

榛名「そ、そうですけど、なんか言わなきゃだめだと思ったんです!」

呉提督「そうかそうか、そうやって力んでるお前も可愛いよ」

榛名「て、提督!? いきなり何てこと言うんですか!!」

呉提督「あ、ごめんごめん、別に力んでなくても可愛かったわ」

榛名「もー!! そういうこと言ってるんじゃないです!!」

呉提督「何だ、嫌だったか? じゃあやめるわ」

榛名「ええ!? あ、あの」

呉提督「どうしたよ」

榛名「その……別に……嫌ってわけじゃ、ありません……ので、その」

呉提督(やっぱ何言っても可愛いなコイツ)

126: 2015/04/20(月) 00:54:13.86 ID:9NbDRxNV0

呉提督「まあ、冗談はこれくらいにして、なんかあったか?」

榛名「じ、冗談……まあ、いいです……こちら、ご連絡です」

呉提督「おう、どっからだ」

榛名「この間、提督が電文を送った鎮守府からですね。あの、鳳翔さんの件の」

呉提督「ああアイツからか、鳳翔も良くなったって言ってたしな……その報告か、どれ」


『 報告書

――悪夢に入り込むことに成功したら、次は艦娘を連れ戻す必要がある。

私、提督が経験した例と、呉提督が経験した例から、その艦娘は自らの姉妹艦や縁の深い艦の幻影に異常な執着心を示す。

確実性はないが、説得によって艦娘の記憶を取り戻し、現実へ連れ帰るほか、有効な手は発見されていない。

以下に、私が鳳翔にどのような説得を行ったかを、説得の例として掲載する――』


呉提督「……ん?」

→提督から鳳翔への赤裸々プロポーズ(原文ママ)


呉提督「」

呉提督「ゥハハハハ、ハーッハッハッハッハッハ!!!!」

榛名「て、提督!?」

呉提督「こいつ、自分の嫁へのプロポーズ載せてやがる!!!! 何もそのまんま載せる必要ねーだろ、ガハハハハ……く、腹が……」

榛名(なんだか可哀そうになってる人がいるのは理解できました……)

127: 2015/04/20(月) 00:56:12.72 ID:9NbDRxNV0


おまけ3 ~毎日が母の日~


鳳翔「さて、今日も頑張って朝ごはんを作りましょう……あら?」

加賀「おはようございます、お母さん」

赤城「今日の朝食は、私たち一航戦にお任せ下さい! 間宮さんも、今日は休んでくださって良いと仰ってましたよ」

鳳翔「そ、そうですか? それじゃ、お言葉に甘えようかしら……」


鳳翔「ふう、朝はゆっくりさせてもらいましたから、お昼は腕によりをかけて……」

飛龍「あ、お母さん! お昼ご飯の準備、もう出来てるよ!」

蒼龍「昼の食堂は私たち二航戦に任せて、お母さんは休んでて!」

鳳翔「え、もう終わっちゃったの? なら、お願いしますね」


鳳翔「よしっ、夜は食堂に来る人も多いですし、私も頑張って」

瑞鶴「ちょっと翔鶴姉! いちばん右のお鍋吹きこぼれちゃってる!」

翔鶴「任せて瑞鶴! ……よしっ、これで全員分のカレーが出来ましたね」

間宮「ありがとうね、二人とも。助かっちゃったわ」

翔鶴「いいえ、いつもお世話になっているのですから」

瑞鶴「これから夕飯の準備は、私たち五航戦に任せてね!」

間宮「まあ、頼もしいですね。それじゃ、お願いしようかしら……」


鳳翔「……」


鳳翔「私の味、皆に飽きられちゃったんでしょうか……」

提督「そ、そんなことはないぞ? ああ、今日は鳳翔の作ったご飯が食べたいな」

鳳翔「あ、あなた!」

提督(空母たち……鳳翔の負担を減らすのは良いが、極端すぎだ……)

128: 2015/04/20(月) 01:10:56.47 ID:9NbDRxNV0


おまけ4 ~演習はなぜ早く終わったのか~


長門「提督、私だ。失礼する」

提督「ああ、長門。昨日は演習お疲れ様」

長門「提督もお疲れ様だったな。赤城から航空戦の所見を受け取って、演習の報告書を纏めてきたぞ」

提督「ありがとう……5戦とも勝利か、流石だな」

長門「ふふ、そうだろうそうだろう」


1戦目:完全勝利S

2戦目:勝利S  損害:翔鶴(小破)

3戦目:勝利S  損害:翔鶴(小破)

4戦目:完全勝利S

5戦目:勝利S  損害:翔鶴(小破)


提督「翔鶴はいつも通りか……」

長門「赤城も加賀もよくカバーして戦っていたんだがな」

提督「いやいや、充分な戦果だよ。……ん?」

長門「どうかしたか」

提督「いや……普段よりボーキサイトの消費が多くないか?」

長門「ああ、それはそうだろうな。何せ、正規空母は3隻とも艦攻しか装備していかなかったから」

提督「」

129: 2015/04/20(月) 01:12:29.67 ID:9NbDRxNV0

提督「ど、どういうことなんだ!?」

長門「私も不思議に思って聞いてみたんだが。この間、新しい攻撃機の機種転換をしたそうだな? 流星だったか」

提督「確かにしたが……」

長門「それと既存の攻撃機を組み合わせた際の、隊列だか速度の違いだかをテストしたかったそうだ」

提督「そ、そうなのか。割と正当な理由じゃないか」

長門「あと、鳳翔が心配だからさっさと切り上げたいとも言っていた」

提督「明らかにそっちがメインだろ」

長門「提督にも見せてやりたかったぞ? こちらの艦載機が、飛行機雲を網の目のように伸ばしながら、見事な隊列で進んでいく様を」

提督「正規空母2隻分の艦攻だからな、そりゃ多かっただろう」

長門「相手の駆逐艦など、空を見上げて感動のあまり涙を流していた」

提督「怖がって泣いてんだよ……かわいそうに」

130: 2015/04/20(月) 01:32:59.36 ID:9NbDRxNV0


おまけ5 ~お掃除をしよう!~


摩耶「ったく、張り切って出撃の準備してたっつーのに……まあ、鳳翔さんのことじゃ仕方ねーけど」

摩耶「でもまさか、全寮の掃除当番とはなぁ……ついてねぇ」

摩耶「ちゃちゃっと終わらせて、間宮んとこでも行くか。……ん?」

高雄「~~♪」

摩耶「お、おい高雄姉!! 何やってんだよ!!」

高雄「何って……畳のホウキがけだけど」

摩耶「ホウキはちゃんと畳の目に沿ってかけろよ!! その方向じゃ、畳がささくれるだろ!!」

高雄「え、あ、ごめんなさい……」

摩耶「ったく、しっかりしてくれよ……んん!?」

愛宕「~~♪」

摩耶「うおおおい、愛宕姉!!!! 何やってんだよ!!!!」

愛宕「何って、畳の雑巾がけよ~?」

摩耶「畳に雑巾かけるときはカラ拭きか、これ以上出来ねえってくらい絞ってからやんだよ!!
こんなビショビショの雑巾で拭いたりしたら、畳が腐っちまうだろ!!!!」

愛宕「え~だって~、私の握力じゃこれ以上絞れないし~」

摩耶「一三〇〇〇〇馬力が何腑抜けたこと言ってんだあああああ!!!!」

鳥海(あらやだ、姉の意外な面を発見)

131: 2015/04/20(月) 01:34:11.91 ID:9NbDRxNV0


おまけ6 ~お掃除をしよう!2~


山城「はあ……久々に出撃できると思ったら掃除……不幸だわ」

陸奥「私も残念だけど、緊急じゃ仕方ないわよ」

山城「理解はしてるけど、戦艦が駆逐艦寮の掃除っておかしくないかしら」

陸奥「人手が足りないからしょうがないでしょ。一番部屋も多いし」

山城「改めて鳳翔さんの偉大さがわかるわね」

陸奥「1人抜けただけでこの有様だものね……まったく、提督がしっかりしないから……」

山城「あの人が一番取り乱しそうなもんだったけど、さっきは中々しっかりしてたんじゃない?」

陸奥「午前中に散々取り乱したんでしょ……ん?」

山城「どうしたの? ……はっ、これは!!」


→ゆきかぜのたからものばこ


陸奥(も、もしかして、この中には……)

山城(雪風の幸運の秘密が……?)

陸奥「だ、ダメよ!! いくら年下の子でも、プライバシーを覗くなんて!!」

山城「そ、そうよね、そりゃそうよね!!」

陸奥「…………」

山城「…………」

陸奥「……でも」

山城「?」

陸奥「掃除の最中に荷物を移動していて、偶然ふたが開くことはあるんじゃないかしら」

山城「……そ、そうね。あるかも、しれないわね」

132: 2015/04/20(月) 01:35:22.14 ID:9NbDRxNV0

陸奥「……山城、そっち持って」

山城「……はい」

陸奥「それでは……」

山城「……」

陸奥「きゃあー!! 三番砲塔が滑ったー!!」

山城「あ、ふたが……ん?」


→カマキリの卵嚢×10(孵化済み)


陸奥「」

山城「」




キャアアアアアアアアアアアアアアア

フコウダワアアアアアアアアアアア


敷波「な、何よ!? 今の声」

雪風「あ、雪風が忘れてたものを、誰かが見つけてくれた気がします!!」

綾波「ど、どんな気なんですか? それ……」

時雨「……不思議だな……僕はこれから、雪風がひどい目に逢う気がするんだ……」

雪風「?」

133: 2015/04/20(月) 01:37:20.81 ID:9NbDRxNV0

また小ネタを思いついたら続きを投下しますが、本日はここまでです。
お付き合い頂きありがとうございました。

137: 2015/04/21(火) 14:59:41.06 ID:/Pn5tmYd0


おまけ7 ~お洗濯をしよう!~


川内「よし、洗濯物干すよ! 皆ついてきて!」

叢雲「ちょっとちょっと、なんで洗濯の手伝いが私たちだけなのよ!」

吹雪「寮の掃除の方が大変だし、仕方ないよ」

神通「4人いれば充分早く終わります。それに、いつもは鳳翔さん1人なんですよ?」

叢雲「う……そうだったわね」

吹雪「しっかり覚えて、これから鳳翔さんを手伝えるようにしなくっちゃ!!」

神通「良い心がけですね。きっと喜んでくれますよ」

139: 2015/04/21(火) 15:01:25.96 ID:/Pn5tmYd0

神通「さて、ウチには大型洗濯機が3台あります。一気に全部回せば、大体全員分洗濯できるんですが」

叢雲「洗うのは簡単だけど、干すときに時間かかっちゃまずいわよ。中に匂いがこもるわ」

吹雪「鳳翔さんなら手際よく出来るんでしょうけど……私たちじゃ1台分くらいしか、短い時間で処理できませんよ」

川内「そうだね。だから、私が手際よく干す方法を教えるよ!」

叢雲「? 干すのに何か技術がいるのかしら?」


川内1・2「「まずは!!」」

川内3・4「「6人に!!」」

川内5・6「「分身する!!」」


叢雲「」

吹雪「ファッ!?」

140: 2015/04/21(火) 15:03:22.23 ID:/Pn5tmYd0

川内1「3人は、物干し竿を持って洗濯機の前に待機!!」

川内2「結構長い上に、金属製で重いから」

川内3「洗濯物を地面につけないように注意だよ!!」

川内4「そして残りの3人が、ハンガーと洗濯バサミを用意!!」

川内5「1枚ずつ取りだして、ある程度ばさばさしてしわを伸ばしつつ」

川内6「洗濯機から遠い順にかけて行こう。この辺の早さは経験の差が出るよ!!」


川内「とまあ、こんな感じ。さあやってみようか」

叢雲「無茶言うな!! あんなん出来るワケないでしょ!!」

神通「そうですよ、姉さん。最初は3人分身くらいから練習しませんと」

吹雪「いや、問題はそこじゃないと思うんですけど……」

141: 2015/04/21(火) 15:05:57.18 ID:/Pn5tmYd0

川内「え、改二になったのに分身出来ないの? だから貴女たちを呼んだんだけど」

神通「姉さんは改二改装後、すぐ出来るようになったんですが」

叢雲「あんたたちの常識を当てはめないで頂戴……神通も分身出来るの?」

神通「いえ、私の場合は肢曲で残像を見せているので、実体を生み出す姉さんとはちょっと違いますね」

叢雲「どうなってんのよ川内型は」

吹雪「わ、私だって改二だし、頑張れば艦載機を飛ばせるようになるかも!!」

叢雲「多分無駄だからやめときなさい。妹はあんななのに、姉二人はなんでこう変わったのかしら」

川内(那珂の方がすごいと思うんだけど……面白そうだから黙っとこう)


那珂「はっ、くしゅん!!」

五月雨「あれ? 那珂さん、風邪ですか?」

那珂「ち、違うよー。那珂ちゃんはいつでも元気!!」

五月雨「体調悪い時はちゃんと言わないとだめですよ? 鳳翔さんがああなって、提督もピリピリしてますから」

那珂「大丈夫大丈夫、アイドルは舞台裏で倒れるものだからね!!」

五月雨「だ、だから倒れる前にですね……もう、早く遠征終わらせましょう」

142: 2015/04/21(火) 15:08:00.98 ID:/Pn5tmYd0


おまけ8 ~お料理を作ろう!~


瑞鶴「……というわけで、今日の昼食づくりの手伝いは、私と二航戦のお二人が入るので」

伊良湖「はい、よろしくお願いしますね!」

瑞鶴「私は何すれば良いかしら?」

伊良湖「お昼は定食が3種類ありますので、瑞鶴さんはAセットのアジフライをどんどん揚げて下さい。大体100匹くらいですね」

瑞鶴「ん、了解よ」

飛龍「伊良湖ちゃん、生姜焼きの焼き加減、これくらいでいいかな?」

伊良湖「ええと……はい、完璧ですね! この調子であと200枚、お願いしますね」

飛龍「うん、任せといて! その後はキャベツの千切りだね」

瑞鶴(飛龍さん、お母さんに色々アドバイスするだけあって女子力高めよね)

蒼龍「……うーん……」

瑞鶴(あれ、蒼龍さん?)

143: 2015/04/21(火) 15:09:11.10 ID:/Pn5tmYd0

蒼龍「むむむ」

瑞鶴「何がむむむだ……じゃなかった。どうしたんですか、さっきから固まって」

蒼龍「あのさ、普段はお母さんや間宮さんたちが、皆のご飯を作るじゃない?」

瑞鶴「ええ。だから今日は代わりに入ってるんじゃないですか」

蒼龍「これって提督に手料理を食べてもらうチャンスじゃないかな!?」

瑞鶴「……こんな時に何を不謹慎な」

蒼龍「う、いや、自覚はあるんだよ? でも普段は全然機会ないし、提督に感想も聞けないし」

瑞鶴「無理ですよ。提督さんはお母さんの料理が一番好きですから」

蒼龍「お母さんには敵わないけど、私も結構練習してるし、提督も美味しいって言ってくれるかも!」

瑞鶴「無理ですよ」

蒼龍「これから毎日、君の味噌汁を飲みたい……なんちゃって、キャー!!」

瑞鶴「それ、随分前に提督さんがお母さんに言ってたわ」

蒼龍「……」

瑞鶴「ほら、固まってないでアジ捌いてください」

蒼龍「うう……少しくらい妄想しても……」

瑞鶴「別にするなとは言ってません。でも手は動かしてね」

蒼龍「うわーん、後輩が冷たいよぉ」

144: 2015/04/21(火) 15:11:17.63 ID:/Pn5tmYd0


おまけ9 ~対潜哨戒をしよう!~


最上「扶桑さん、ボクの艦載機が帰ってきたよ。周辺に敵の水上部隊はいないみたい」

扶桑「そう、ありがとう。それじゃ、このまま進んで鎮守府へ帰還します」

朝潮「私たちは左右で対潜警戒ですね!」

満潮「爆雷も残り少ないわ。もし遭遇したら爆撃がメインになるからよろしくね」

扶桑「そうね、でもこの海域は大体駆逐したから大丈夫だと……あら? 私の瑞雲が……」

最上「? どうかしたの、扶桑さん」

扶桑「ええ、那珂ちゃんの遠征艦隊が帰還中に敵の潜水艦に攻撃されたそうよ」

最上「ええ!? この辺りは何度も対潜哨戒してるのに!!」

朝潮「もしかして、私たちの潜水艦狩りから逃げた深海棲艦が、遠征ルートにぶつかったんじゃ……」

満潮「す、すぐ行かなきゃ!! 扶桑、なんでそんなにのんびりしてるのよ!!」

扶桑「あら、大丈夫よ。だって艦隊の旗艦は那珂ちゃんなのよ?」

145: 2015/04/21(火) 15:12:25.37 ID:/Pn5tmYd0

那珂「五月雨ちゃん!! 村雨ちゃんと春雨ちゃんを連れて、先に行って!! 私の分の物資は諦めていいから!!」

五月雨「了解しました。2人とも行きましょう!!」

春雨「え、ええ!? 無茶ですよ、1人で4隻の潜水艦相手なんて……」

村雨「あ、そっか。春雨はまだ那珂さんと一緒に戦ったこと無かったんだっけ」

五月雨「大丈夫なんです。逆に私たちがいたら、那珂さんが動きにくくなります」

春雨「そ、それって一体……!?」

村雨「いいからいいから、ちょっと下がってて」


那珂×8「「「那珂ちゃん『が』センター、一番の見せ場です!」」」

146: 2015/04/21(火) 15:13:40.43 ID:/Pn5tmYd0

最上「……な、何あれ」

朝潮「那珂ちゃんさんがいっぱいいます……」

扶桑「改二になってから出来るようになったそうよ。すごいわよねぇ」

満潮「すごいの一言で済ませちゃうの……」

妙高「流石は改二の先輩ですね。私も見習わないと」

朝潮「あれ妙高さん、いつの間に?」

妙高「扶桑さんから連絡が来て、丁度演習帰りの子を連れて様子を見に来たんだけど」

扶桑「やっぱり大丈夫だったわね」

最上「……うわ、全部沈めちゃった」

朝潮「もう全部那珂ちゃんさんでいいんじゃないですか」

妙高「ちなみに最高記録は48人だそうよ」

満潮「8艦隊分じゃないの……やかましそうね」


那珂×8「「「お仕事しゅーりょー。おつかれさまっ!!」」」

147: 2015/04/21(火) 15:15:06.06 ID:/Pn5tmYd0


おまけ10 ~夢と約束は、あなたと共に~


鳳翔「ええっ!? 私、1日眠ったままだったんですか!?」

提督「やっぱり覚えてないのか?」

鳳翔「てっきり、普通に寝て起きたとばかり……」

提督「私の反応を見ただろう。それに、空母寮に行った時どうだった?」

鳳翔「そ、そういえば、私の姿を見るなり全員泣きだしちゃって、なだめるのが大変でした」

提督「そうだろうなぁ」

鳳翔「私、どうなってしまったんですか?」

提督「……いや、いいんだよ気にしないで。きっと疲れが溜まってただけさ」

鳳翔「そ、そうですか? だから皆さん、急に私のお手伝いを……」

提督「ああ。これからは君の負担を皆で減らしていくと言っていたよ」

鳳翔「うーん、本当に気にしないでいいのですが……家事は楽しいですし」

提督「料理や洗濯を覚えたい子もいるだろう、女性としてな。そういう子には教えてあげればいいさ」

鳳翔「それもそうですね」

148: 2015/04/21(火) 15:18:37.55 ID:/Pn5tmYd0

鳳翔「そういえば、私が目覚めたときに言われたことですが……」

提督「あれか……野暮なことを聞いてすまなかったね」

鳳翔「いえ、そうではなくて……ただ、何故いきなり聞かれたのかな、と」

提督「言葉通りの意味だよ。私は君たちを指揮するに相応しいのか、少し考える所があって……いや、もう大丈夫だぞ?」

鳳翔「ふふ、そうでなくては困りますよ」

提督「……なあ、もし……もしもの話なんだが」

鳳翔「はい?」

提督「これからの戦争で、あの子たちが……その、沈むことがあったら……」

鳳翔「……」

提督「……いや、すまない。碌でもないことだ、忘れ――」

鳳翔「その時は、私も艦娘としての責務を果たすだけです」

提督「鳳翔?」

鳳翔「結局、私たちは過去から逃れることは出来ませんから。……未来に夢を託して、進み続けるしかないんです」

提督「……」

鳳翔「二度と離ればなれにしないという約束、私はとてもうれしかったんです。あなたがそれを守り続ける覚悟も、感じているつもりです」

鳳翔「ですから、それが破られる時は……最早私たちには、抗いようのない運命に囚われているのではないかと思います」

鳳翔「もちろん、そんなことにはならないと信じておりますが、ね。ふふっ」

提督「鳳翔……」

鳳翔「これから時々、弱音を吐いたり、不安になることもあると思います」

鳳翔「でも、私にはあの子たちが……何より、頼りになるひとがいますから」

提督「……ああ、任せてくれ、鳳翔」

鳳翔「ふふ、だから、大事にしてください。約束も、あの子たちも……私も、ですよ?」


鳳翔「……ね、あなた!」






149: 2015/04/21(火) 15:22:55.56 ID:/Pn5tmYd0

読んで下さった方、本当にありがとうございました。
本編よりもおまけを書く方が楽……というか、自分に真面目な話は向いてないと実感しました……

次の機会があったら、やっぱりアットホームものかイチャラブ○ックスを書きたいと思ってます。
メインはやっぱり鳳翔お母さん+正規空母組になると思いますが……ホント好きなんですこの組み合わせ。

また見かけたら読んで下さいますと、とてもうれしいです。
それでは失礼致します、ありがとうございました。

150: 2015/04/21(火) 15:23:52.37 ID:R4HDH+41o
最高やな…
である意味での親子丼もやってくれるのか
次スレが熱くなるな

154: 2015/04/21(火) 17:30:34.99 ID:YaHFwv2hO

めっちゃ良かったよ!
もし、新たにスレ立てたらこのスレにurl貼って誘導してもらえるとありがたいです

引用: 鳳翔「夢はあなたと共に」