651: 2018/10/18(木) 00:18:39.81 ID:ruXLYJ8u0
652: 2018/10/18(木) 00:24:32.63 ID:ruXLYJ8u0
『本当に、お姉ちゃん?』
東京の方にいる、という断片的情報だけ咲は聞かされていて、それは俺との共通認識でもあった。
ただそれだけだったから、特定するにはその週刊誌ではあまりにも情報が少なすぎた。顔写真などはなし、学年が一年で照さんと一致していること、そして一年ながらエースで白糸台を久しぶりのインハイへ導いたこと。
ネットの海を浚っても大した差はなかった。部員の集合写真はあちこちで見つけたものの、部員数と解像度の関係か、赤髪の女性がいたりいなかったりすることしか確認できない。白糸台の情報管理は、もしかするとこの頃から優秀だったのかもしれなかった。
『どうする?咲』
咲は困ったような顔をしていた。
どんな意味でその問いを受け取ったかは知る由もない。
困り顔のまましばらく逡巡して、『どうしよう、京ちゃん……』と次第に涙目になってきさえしたので慌てて助け舟を出す。
『テレビで一緒に見るか、インハイ』
653: 2018/10/18(木) 00:33:18.94 ID:ruXLYJ8u0
結論から言えば、それは間違いなく照さんだった。
『ツモ』
『ロン』
『ロン』
表情一つも変えずに和了るのは相変わらずで、白の上下の制服に赤髪がよく映えるな、と俺は場違いな感想を抱いていた。
理牌を瞬く間に終え、細い指が次の牌に伸びる、手に入れて別の牌を切る、滑らかなその一連の所作は、確かに子どもながらに見慣れた照さんのそれだったーー俺は多分見とれていた。
今や画面越しにしか見ることができない悲しさと、その彼女がかつて自分のすぐ隣にいて、なおかつ自分のことを見てくれていたという感動がないまぜになって襲ってきて、戦況はろくに頭に入ってこない。
『これはとんでもない瞬間に、私たちは立ち会っているのかもしれません!』などと熱の入る実況アナウンサーの音声を遠くに聞きながら、俺はかつての宮永家の雀卓に、そこにいた人に思いを馳せていた。
654: 2018/10/18(木) 00:53:42.59 ID:ruXLYJ8u0
『ツモ』
照さんの再びの鋭い発声に、思考は現実に引き戻される。アナウンサーの声が大きくなり、解説のプロの声もやや弾んでいる。
いつの間にやら点棒が積み上がり、リードは圧倒的だった。
『すごいな』
そう呟いて すぐに後悔した。いま隣にいる幼馴染がどんな気持ちで見ているのか、何の配慮も示さない無神経な俺がそこにいた。
『…そうだね、さすがだね』
意外にも咲は落ち着いた口ぶりで俺に同意した。思わず横に目をやったが、その表情は楽しそうでもあり、また寂しげでもあった。すまん、という謝罪の言葉もはばかられ、俺はまた画面を注視するしかなくなった。
655: 2018/10/18(木) 01:01:59.34 ID:ruXLYJ8u0
・
・
・
『次の試合も、見るんでしょ?』
帰り際に咲はそう言った。
俺は咄嗟に何も返せず、ただ頷いた。
『私も見るから。一緒に』
結局観戦の為に何日か咲の家に通うことになった。理由は言うまでもない。
『優勝は、白糸台!高校麻雀史に、新たな歴史が刻まれました!』
咲の手前以上、声高に応援するのは憚られたわけでーーそれでも照さんは頂点まで届くと、どこか確信めいたものを途中から感じていたから、その瞬間を俺は比較的冷静に迎えていた。
『もっと喜んであげたらいいのに』
などとまで咲は言う。半泣きだった彼女はどこに行ったのだろうか。
656: 2018/10/18(木) 01:45:08.76 ID:ruXLYJ8u0
やがて優勝校インタビューが始まる。大人しそうだがやり取りははきはきと、緊張したと言いながら自信に満ち満ちている、そんなメンバーだった。
部長らしく仕切っていた一人はなんと照さんと同学年、つまり一年生だった。あえて名前は言わない、本人の名誉の為に。
やがてマイクが照さんに回ってきて、……テレビの前の俺たちはあっけにとられることになる。
=========================
尭深「そして優勝の特集号、ですね」
誠子「……これ、先輩ですよね」
照「そう。……何かおかしい?」
誠子「いえ……そうじゃないんですけど…須賀!ほら」
京太郎「俺っすか!?…いや、間違いなく先輩じゃないですか」
尭深「…驚かないんだね。見たこと、あるの?」
京太郎「あ…まあ、そうですね」
誠子「んー、破壊力あると思いますよ、先輩の笑顔は」
照「……そう、ありがとう」
誠子(…やらかしたかな、ちょっと今の間が…怖い)
657: 2018/10/18(木) 02:10:50.59 ID:ruXLYJ8u0
尭深「先輩は、インタビューの時必ず笑顔ですよね」
誠子(構わずぶっこんだ!?)
照「うん。人前ではそうしたほうがいいって、昔言われたから」
京太郎「部長にですか?」
照「……違う」
京太郎(……あれ?)
照「……」
尭深「私たちも気をつけた方がいいですよね」
照「…そうだね。印象も違うと思うし」
誠子(尭深スゲえよ尭深)
661: 2018/11/01(木) 23:45:04.86 ID:0U8lTa7v0
・
・
・
菫「というわけで…今度の週末はよろしく頼む」
京太郎「普段通りの練習に取材が入って」
尭深「…午後は個人個人に取材が入るから各自行動、ですね」
京太郎「……皆さんはともかく」
尭深「?」
京太郎「俺に話聞いて何か需要があるんですかね」
誠子「それは…今後の活躍次第でしょ」
淡「きょーたろーインタビューで変なこと言わないかなぁ…そしたら蛍光ペンで印つけて付箋ペタペタ貼るのに」
京太郎「よせよ、そのままそっくりお前に返すぞそのセリフ」
淡「淡ちゃんをなんだと思ってんのさ!」
京太郎「筋金入りのおバカ」
淡「ば、バカって言うなー!バカって言った方がバカなんだきょーたろーのばかぁ!」
京太郎「…言って一秒足らずで自分で引っ掛かるのやめろよ…」
662: 2018/11/01(木) 23:47:32.60 ID:0U8lTa7v0
菫「はい、静かに。……まあ、とにかく頼むぞ。特に淡」
淡「えっ、あわっ…はーい」
菫「くれぐれも今日言ったことを忘れずに…いいな?」
淡「うっ、あぁぁ……はいぃぃ」
京太郎(何言われたんだろ)
照「……今日もお疲れ様」スック
菫「ああ、また明日な」
誠子「お疲れ様でーす」
京太郎「……」
663: 2018/11/01(木) 23:53:58.30 ID:0U8lTa7v0
照「……」テクテク
「先輩!」タッタッタッ
照「……どうしたの」
京太郎「ハァハァ…追いついた、よかった」ゼェゼェ
照「……汗、凄いよ」
京太郎「すみません、お見苦しいものを…ちょっと拭かせてください」フキフキ
照「……」
京太郎「…お待たせしました」
照「…うん、ちょっと歩こうか」
京太郎「あっ、はい」
664: 2018/11/02(金) 00:13:45.96 ID:z+k4k/8/0
テクテク
照「…この辺の地理、わかるの?」
京太郎「まあ、休みは買い物に回ったりするんで…大通りはわかります」
照「そう」
照「……私はかなり苦労した」
京太郎「先輩は寮に入ってるんですよね?」
照「うん」
京太郎「制限とかあったりしないですか?門限とか」
照「あるにはある、けど…不自由することはない」
京太郎「…そうですか」
667: 2018/11/02(金) 16:33:52.70 ID:wLUXCuLq0
京太郎「ところで……部室でした、話ですけど」
照「……」
京太郎「……思い出しました、俺」
照「…そう」
京太郎「正直言うと…自信はなかったですけど」
照「…私にとっては」
京太郎「……」
照「……私は、どうしてかよく覚えてたから。あなたの言葉」
京太郎「……びっくりですね」
照「私はあなたが気づいたことにびっくりしてる」
669: 2018/11/03(土) 19:47:48.58 ID:BeYm+4c10
京太郎「それは……気づいてほしそうに、してたからです」
照「…私が?」
京太郎「先輩がです」
照「……そんなつもりじゃ、なかった」
京太郎「…すみません」
照「……あなたが謝ることじゃ、ない」
照「私の問題…だから」
京太郎「先輩の問題…」
670: 2018/11/03(土) 19:52:24.08 ID:BeYm+4c10
照「自分が…自分が、よくわからない」
京太郎「…先輩?」
照「…ごめん、今日は…上手く話せそうにない」
=========================
照『……』ペラッ
京太郎『……』カキカキ
照『……』
673: 2018/11/03(土) 20:55:33.26 ID:BeYm+4c10
コトン
京太郎『よしっ、しゅくだいおわりっ!』ノビ-
照『お疲れ様。ジュースお代わりあるよ』パタン
京太郎『いただきます!あれっ…さきは?』キョロキョロ
咲『……』スゥスゥ
照『…さっき寝てしまった』
京太郎『ぜんぜん気づかなかった…』
照『集中してたからね、京ちゃん』
京太郎『あのね、麻雀するときみたいに、かんけいないものを見ないようにしたら、しゅくだいが早くおわるんです!』ニコ-
照『そう。それはいいことだね』フフッ
674: 2018/11/03(土) 21:15:51.34 ID:BeYm+4c10
京太郎『おぉ…』キラキラ
照『…どうしたの?』
京太郎『笑ってる!』
照『照だけに…じゃなくて。…私だって笑う』
京太郎『うん、知ってるよ?』
照『え』
京太郎『笑ってないように見えても笑ってたり、うれしそうに見えなくてもうれしかったりしてる』
京太郎『…なんとなく、わかる』
照『…そっか』
675: 2018/11/03(土) 21:52:20.64 ID:BeYm+4c10
京太郎『あ、でも…』
照『?』
京太郎『笑ってたほうがいい、かな。かわいいから』
照『…ねえ京ちゃん』
京太郎『なに?』
照『そんな言い方、どこで習ったのかな?』
京太郎『え、…えっと…お父さんがよく言ってるの。「女の子は笑ってたらかわいい」って。…なんで怒ってるの?』
照『怒ってない』
京太郎『…でも、いつもの照さんもかわいいよ』
照『……京ちゃんのバカ。知らない』プイッ
京太郎『えー……ほんとなのに』
677: 2018/11/03(土) 22:57:04.89 ID:BeYm+4c10
====================
カナカナカナ…
照「……」テクテク
京太郎「……」テクテク
照「…あ」
京太郎「寮が…見えましたね」
照「うん。……ここまでで、いい」
京太郎「…そうですか」
678: 2018/11/03(土) 23:19:14.16 ID:BeYm+4c10
カナカナカナ…
京太郎「……ありがとうございました」
照「こちらこそ。送ってくれて」
京太郎「……あの、先輩」
照「遅いから、もう帰らなきゃ」スタスタ
京太郎「先輩!」
照「……」ピタッ
クルッ
照「明日も練習頑張ろう」
・・・
照「ね、須賀君」ニコッ
京太郎「っ……」ズキッ
照「また明日」
京太郎「……はい、…また」
679: 2018/11/03(土) 23:28:37.27 ID:BeYm+4c10
カナカナカナ…
京太郎(…ちっくしょ、なん…で…)
照『ね、須賀君』ニコッ
京太郎(あんな表だけの笑顔で、悲しそうな顔…して)
京太郎(……俺が言ったこと…おれ、の、せい……?)
菫「あっ、すみませ…って……」
京太郎「……先輩」
681: 2018/11/04(日) 00:12:13.13 ID:fp1DB4BZ0
菫「どうしたこんなところで?もう先に帰って…」
京太郎「…すみません、ちょっと……はい」
菫「…大丈夫か」
京太郎「…なにがですか」
菫「いや…何もないならいいんだ、が…」
京太郎「俺は、大丈夫です」
菫「…そうか。…話せないようなことか?」
京太郎「…すみません」
菫「…気にするな。そういう時もある」
682: 2018/11/04(日) 00:24:06.60 ID:fp1DB4BZ0
菫「……ちょっと待ってて」テクテク
京太郎「…?」
ガチャン ドコン
菫「…缶コーヒーで悪いけど」ズイッ
京太郎「……ありがとうございます」
菫「私も飲むから、数分付き合ってくれ」
菫「取材、だけど…イメージは湧いた?」カチャ
京太郎「……そうですね、なんとなく」ズズッ
菫「来るのは記者一人とカメラマン一人、個人への取材は十分くらいで済むんじゃないかな」
菫「そして写真撮影が数枚、もしかしたら数十枚」
京太郎「…何に…って、雑誌に載るんですよね」
菫「そう、編集部がピンとくれば大きいサイズで載って、活躍すれば特集が組まれる。当然また取材も来る」
菫「…嫌か?」
京太郎「いえ、そういうわけでは……すみません、俺やっぱり全然イメージできてないです」
686: 2018/11/13(火) 21:38:44.48 ID:6vStBoZ20
菫「まあ、いいさ…早いうちからマスコミ慣れしておいてくれると助かるんだ」
菫「淡もいるし、な」フゥ
京太郎「あぁ…なるほど」
菫「それにメディア露出があると人気が出るかもしれない。…興味ないか?」
京太郎「うーん……俺はそんなに」
京太郎「…ということは…照さんって、結構人気あったり」
菫「もちろん。よそ行きの面もいいしな」
京太郎「……」
687: 2018/11/13(火) 22:22:46.32 ID:6vStBoZ20
菫「…気になるんだろう?」
京太郎「あっ、いや…「嘘だな」……はい」
菫「心配するな。本人はほとんど気に留めてないようだし、自覚があるかも怪しい」
菫「…さすがに今のは分かりやすすぎないか……らしくもない」
京太郎「…すみません」
菫「何があったかは知らないが…照は君のことを簡単には嫌いにならないさ」
京太郎「…!……そうですかね」
菫「きっとそうさ」
京太郎「…何でも分かるんですね」
菫「何でもは分からないさ…分かることだけだよ」
689: 2018/11/13(火) 22:39:36.00 ID:6vStBoZ20
菫「ところで…私に言及がないのはどういうことかな?」
京太郎「え?」
菫「照ほどではないが、私もそれなりに表舞台に出ているんだけど」ズイッ
京太郎「あ…え、えっと」
菫「君にとっては私は照のお付きの人に過ぎないのかな?」
京太郎「いや、そんな…滅相も無い…ほんと申し訳なく…」
菫「……ふふっ、冗談冗談…本気にするなよ」
京太郎「…そ、そうですよね!びっくりした…」
690: 2018/11/13(火) 23:15:05.89 ID:6vStBoZ20
京太郎「…ありがとうございます、先輩」
菫「なにが、なんて言うのも野暮か」ゴクッ
菫「…あんなひどい顔してたら、誰だってほっとかないさ」
京太郎「そんなにですか」
菫「それはもう……でも、もう顔色も良さそうじゃないか」
京太郎「…この灯りでわかるんですか」
菫「まさか。ただの戯れ言だ」
京太郎「…意外ですね」
菫「何が?」
京太郎「先輩も冗談言うんだなぁ…って」
菫「…私だってそんな時もある。それに」
菫「君と話すのは楽しいからな」フッ
693: 2018/11/13(火) 23:23:14.79 ID:6vStBoZ20
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーまずは地区大会、三年連続の優勝おめでとうございます。
菫「ありがとうございます。部員全員の助けなしでは、とてもできなかったことだと思っています」
ーー夏のインハイ、史上二校目のの団体三連覇を目指す白糸台高校にとっては予選は通過点だと思いますが。
菫「もちろんこの結果で満足しているわけではありません。ただ、一戦一戦勝ち抜いてこその全国制覇ですから。そういう意味では予選の初戦も、インハイの決勝も等しく通過点です」
ーーまずは地区大会、三年連続の優勝おめでとうございます。
菫「ありがとうございます。部員全員の助けなしでは、とてもできなかったことだと思っています」
ーー夏のインハイ、史上二校目のの団体三連覇を目指す白糸台高校にとっては予選は通過点だと思いますが。
菫「もちろんこの結果で満足しているわけではありません。ただ、一戦一戦勝ち抜いてこその全国制覇ですから。そういう意味では予選の初戦も、インハイの決勝も等しく通過点です」
694: 2018/11/13(火) 23:26:59.99 ID:6vStBoZ20
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーまずは地区大会、三年連続の優勝おめでとうございます。
菫「ありがとうございます。部員全員の助けなしでは、とてもできなかったことだと思っています」
ーー夏のインハイ、史上二校目の団体三連覇を目指す白糸台高校にとって予選は通過点だと思いますが。
菫「もちろんこの結果で満足しているわけではありません。ただ、一戦一戦勝ち抜いてこその全国制覇ですから。そういう意味では予選の初戦も、インハイの決勝も等しく通過点です」
ーーまずは地区大会、三年連続の優勝おめでとうございます。
菫「ありがとうございます。部員全員の助けなしでは、とてもできなかったことだと思っています」
ーー夏のインハイ、史上二校目の団体三連覇を目指す白糸台高校にとって予選は通過点だと思いますが。
菫「もちろんこの結果で満足しているわけではありません。ただ、一戦一戦勝ち抜いてこその全国制覇ですから。そういう意味では予選の初戦も、インハイの決勝も等しく通過点です」
695: 2018/11/13(火) 23:29:30.08 ID:6vStBoZ20
ーー白糸台は今年も、校内の対抗戦を勝ち抜いたチームが出場しているそうです。
今年のチームの特徴を、弘世部長に聞いてみましょう。
菫「今年のチーム虎姫は、どのポジションでも点を稼げる攻撃的なチームです。
でも隙がないなどとは思いません。大会ぎりぎりまで各自の課題を確認していきます。
少し私見が混じりますが、とても仲のいいチームだと思っています。誰かが万一失敗しても他でカバーできる、そんなしたたかさも見せていければと思います」
ーー今年は男子も個人戦出場を決めています。練習などにも工夫があったとのことですが。
菫「須賀君(須賀京太郎・1年)は部活も熱心に打ち込んでいて、私も実力に手応えを感じていました。それで、早い段階からチーム(虎姫)と一緒に練習することで互いに切磋琢磨しさらに腕を磨くことができました。今回全国大会出場という結果をまず得ることができました。さらに高みを目指して欲しいと思います」
696: 2018/11/14(水) 00:16:16.22 ID:Roq/n5od0
ーー弘世部長個人としても、やはりインハイには思い入れがあると聞いていますが。
菫「照(宮永照・3年)と一緒に、3度もこの場に立つことができて光栄に思っています。勝たなければというプレッシャーも感じていますが、負けたくない、という意志の方が強い気がします」
ーー3連覇阻止のために挑んでくる他校へメッセージをお願いします。
菫「絶対に勝つ、なんて大きなことは言えませんが、負ける気はさらさらありません。必ず勝ち上がっていきます」
・
・
・
700: 2018/11/25(日) 23:23:05.34 ID:f3SeXOqL0
照「……」ペラッ
ガチャ
淡「…あれ、テルーだけ?他の人は?」
照「…菫は部長の仕事。尭深と誠子がさっき呼ばれてた。…須賀君は他の人と打ってる、みたい」
淡「そっかー。…ねえねえ、お菓子もらってもいい?」
照「ん」スッ
淡「あーん」パクッ
淡「……んー!おいひい!」
照「そうだね」
淡「やっぱこれだね~たったらたった♪」
照「……」サクサク
702: 2018/11/26(月) 00:03:22.13 ID:LzOm3jKi0
照「…インタビュー、どうだった?」
淡「んー、思ったよりラクショーだったよ?」
淡「なんか予選の感想聞かれて、目標聞かれて…」
淡「あと…あ、チームで誰と仲良いかって聞かれたから、みんなって答えた!」
照「…変なこと、言ってない?」
淡「むむっ、テルーまでそんなこと言うなんて…」ヨヨヨ
照「…ごめんね。でも心配だったから」
淡「…あはっ、わかってますよー」
703: 2018/11/26(月) 01:06:07.67 ID:LzOm3jKi0
淡「ねえねえ照先輩」
照「?」
淡「私ももっと本読んだほうがいいかなあ?」
照「……一般的には読書は推奨されているし、わたしもお勧めする」
照「…どうして?」
淡「だってテルーはいっつも本読んでる。麻雀強いし成績もいいし」
照「…私は読みたいから読んでる」
淡「えー……読みたいってならない…楽しいの?」
照「楽しい」
淡「即答…」
淡「じゃあ、本とお菓子、どっちかって言われたら?」
照「……」
淡「……ねえどっち?」ズイッ
照「選べない。淡は意地悪」
淡「えーそんなことないもーん」スリスリ
704: 2018/11/26(月) 01:28:15.35 ID:LzOm3jKi0
淡「ねえテルー、もう一本ちょうだい」
照「ん」スッ
淡「あむっ」サクサク
照「…まずは読みたい、と思える本を探して読むといいと思う」
淡「はふぉえば?」ポリポリ
照「ミステリーだと続きが気になって読みたくなるかもしれない。東野圭吾とか」
淡「ひがしのけいご…?ちょっと待ってメモする」カキカキ
照「映画やドラマによくなってるから多分わかる…あとはそれこそ見て面白かった作品の原作を読んでみたり」
淡「なるほろなるほろー?」
照「…あとはライトノベルとかは比較的とっつきやすいかもしれない」
淡「らいとのべるって?」
照「うん、例えば…」
・
・
・
706: 2018/11/29(木) 00:13:28.81 ID:4sNDvdTE0
淡「誰もこないねー」フニフニ
照「菫も今日はそれぞれでって言ってたから。…なんでほっぺた」
淡「やわらかーい」
照「……」
淡「ぷにぷにー」
照「…暇なの?」
淡「照先輩と遊ぶのでいそがしーい」
照(先輩“で”遊ぶの間違いじゃないかな)
淡「♪」
照(…まあ、別に構わないけど)
707: 2018/11/29(木) 00:15:07.10 ID:4sNDvdTE0
淡「テルーもあーん、して?」
照「……」
パクッ
淡「おいしー?」
照「うん」モックモック
淡「ふふっ、よかったー」ニヘラ
照「……」
708: 2018/11/29(木) 00:26:45.02 ID:4sNDvdTE0
淡「あーあ、テルーといっつも一緒だったらいいのに」
照「……お菓子があるから?」
淡「それも、ある」ニヒヒ
照「……」
淡「テルーといると楽しいし、怒られないし」
照「私も怒らないわけじゃない」
淡「そうかな?」ハテ?
淡「あとテルーの話はためになる!」
照「…菫の話もちゃんと聞かなきゃダメだよ」
淡「ん、えーっとね…菫先輩だって部長だから厳しく言うんだって、わかってるつもり」
照「…それならいいけど」
709: 2018/11/29(木) 00:30:18.90 ID:4sNDvdTE0
淡「そんなのは関係なしに、私はテルーと一緒にいるのが楽しいの」
照「…そう」
淡「…あれー、もっと喜んでもいいんだよテルー?」
照「……」
淡「あっ、照れてる。テルーだけに」ナンチャッテ
照「照れてはない」
淡「うっそだー」アハハ
淡「あーあ、テルーが私のお姉ちゃんだったら良かったのに」
照「……」
710: 2018/11/29(木) 00:34:55.13 ID:4sNDvdTE0
淡「一人っ子だからよくわかんないけど、ぜったい優しいお姉「ダメだよ」ちゃんに」
淡「……テルー?」
照「…ごめんね淡、ちょっと用事…思い出しちゃった」
照「誰か来たらよろしく言っておいて」
淡「えっ…うん、わかった」
パタパタ
ガチャン
淡「…どうしたんだろ」
714: 2018/12/01(土) 23:58:01.78 ID:cNlGN5vb0
~~~~~~~~~~~~~~~~~
京太郎「…それロン!ザンクだな」
「くっ…結局反撃もできないのか」
「や、やっぱり須賀君強くなってる…」
京太郎「うーん、そうかな」
「お疲れさまぁ。うん、私たちも一生懸命やってるからねぇ…上達はしてるはずなんだけどこれだから」
「…前から上手いとは思っていたが、打ち方のバリエーションがますます増えたのでは?」
京太郎「…あ、あざっす」
715: 2018/12/02(日) 00:03:41.48 ID:XAKtxQw40
「一軍だと…れ、練習の質が違ったりするのかな…」
京太郎「…やってることはさほど変わらないんだけどな…強いて言えば各自の意識が高いからかな」
「…というと?」
京太郎「漫然と局をこなしていくんじゃなくて、一人ひとりが目標や課題をきちんと持って打ってる…って感じ?そう教わったよ、…あぁ、えっと」
「菫先輩から?」
京太郎「…はい」
「…大丈夫、前みたいに襲いかかったりはしない…菫先輩を悲しませたくないからね…フフッ…」
京太郎(怖えーよ)
716: 2018/12/02(日) 00:08:26.17 ID:XAKtxQw40
・
・
・
「やー、ダメ元だったけど声かけてみて正解だったよぉ」
京太郎「どういたしまして、俺もいい練習になったよ」
「またまたぁ、そんなご謙遜を」
京太郎「いやいや。マジでマジで」
京太郎(…この前の今日で、照さんと何話せばいいかわかんなかったしな…万が一二人きり残されるって可能性もあったし)
「ま、また打とうね!私たちも上がれるよう頑張ってるから!」
京太郎「うっす、俺も引き続き頑張るよ」
「もちろんだ。菫先輩を独り占めさせたままにはしない」
京太郎「もしもーし、俺そんなことしてませんよー?」
スタスタ
京太郎(…お世辞抜きにいい練習になったなぁ)ホクホク
京太郎(モチベーションも上げてコンディションも整えて…いい調整具合じゃあないか)
京太郎(さてとりあえず戻って一言入れて帰…あれは)
京太郎(…照さん?)
717: 2018/12/02(日) 00:19:59.94 ID:XAKtxQw40
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
唐突に部室を飛び出した私を淡は訝しんでいるに違いなかった。
早足で脇目も振らず部室を飛び出して、勢いのまま駆け上がった階段に足が重くなる頃にやっと、言い訳があまりにもとってつけたものだったことに気づく。
それでもああ言い含めたのだから淡はきっと追いかけては来ない。私の言うことはしっかり聞いてくれるはずだ。
淡『どうしたの、テルー?』
馴れた大型犬のように尻尾をブンブン振っている様を幻視する。
そして、……先の自己嫌悪が宵闇のように降ってきて、息苦しさに私は立ち止まってしまう。
淡には何にも気づいてほしくない。彼女には何の落ち度もないのだから、部室でのんびりとト◯ポでもかじりながら誰かの帰りを待ってればいいのだ。
痛みはここで止めてしまえば、それで何も問題はない。
718: 2018/12/02(日) 00:54:44.09 ID:XAKtxQw40
問題は…ないはずだった。
「先輩っ!」
よもや今聞くことはないだろうと思っていた、その反面聞きたかったのだろうその声が、私を呼んでいた。
私が名前呼びを禁じて、慣れない苗字呼びをするでもなく ただ「先輩」と私を呼ぶのは、彼しかいない。
恐る恐る振り向いた私は、どんな顔をしているのだろうか。
そして彼はーー
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
俺はいま、どんな顔をしているんだろうか。
どんな顔をこの人に、顔色一つ変えずに泣き出しそうなこの人に見せているんだろうか。
「どう、して」
震える唇はそう象って声が溢れた。
窓の外で季節を主張する蝉たちの声に紛れて今にも溶け入りそうな声を俺は拾い上げる。
「理由があえて欲しいなら、答えますけど」
絞り出したつもりもないのに、走ったわけでもないのに俺の声もどこか掠れている。
「放っておけるわけ、ないじゃないですか…照さんのこと」
721: 2018/12/10(月) 23:49:44.66 ID:jwkEoY8i0
表情は表も裏も変わらなかった。堪えているようにも見えた。
時が止まっているような、それでいて何時間も経っているような空間に、俺と照さんの二人だけがいる。
デジャヴを感じて、そこでこの場所が初日に照さんと話した廊下であることに気づいた。
「淡がね、言ったんだ」
雨の振り始めのように唐突に、照さんが言葉を落とした。
「私がお姉ちゃんだったら良かったのに、って」
声が出そうになるのを慌てて飲み込む。彼女の声が、微かに陰る。
722: 2018/12/10(月) 23:51:52.83 ID:jwkEoY8i0
「…私は一瞬、それもいいなと思った。……思ってしまった」
「おかしな話だよね…妹を捨てた私が、妹がいればいいのにって」
「照さん」
「甘い言葉にいい気になって、自分のことしか考えてなくて!咲のことも、京ちゃんだって」
「照さん!」
「…あなただって、こんな私に構う必要なんてない」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
それは本当に私の本心だった。
『放っておけるわけ…ないじゃないですか』
今にも泣き出しそうな、それでも確固とした眼でそう言ってくれた彼は…私の大事な幼なじみだ。
大事だから、突き放した。
723: 2018/12/11(火) 00:01:37.61 ID:Aaw4sTE60
かつて自分が心から麻雀を楽しんで打っていた頃、私の傍には咲と、咲に連れられてやって来た金髪の男の子がいた。
私はその子の師匠で、その子は私たちと打つ麻雀が大好きで、私もまたそうだった。
そんな思い出が、あった。
罪悪感にまみれて苛まれながらすべて隠し通して、沈没船の宝のように奥底でひっそりと眠らせていた、そんな思い出。
白糸台での最後の春、私が新入生名簿に見つけたのは妹の名ではなく、その男の子の名前だった。
724: 2018/12/11(火) 00:25:38.45 ID:Aaw4sTE60
・
・
・
ある日の家族麻雀で気づいた、一つの事実。
最初は鷹揚に構えていたつもりだった私は、程なくのっぴきならない状態まで悪化した家庭環境に精神を逼迫されたのか否か、とにかくそのことーーつまり咲が気付かれないように、意図して勝負から降りていることをやがて許せなくなった。それが彼女の高い実力を証明するものだと分かっていて、いっしょに喜んでやることはできなかった。
私はそれまで出したことのないような声で妹をなじり、泣き出した彼女を顧みもせず、数日後別居を決めた母と共に我が家を出て行ったのだった。衝動的な、自己本位な決定だった。
母に肩入れしたかったわけでも父が嫌いだったわけでもない。私はただ、逃げたかったのだ。
725: 2018/12/11(火) 00:35:46.80 ID:Aaw4sTE60
…逃げた後から後悔と罪悪感が追いついてきた。
妹に向けた怒りの感情は、本当は家族内の閉塞感に起因したもので、やり場をなくしたそれは自分自身に向けられるようになった。
得たものは何もなく、残したものが多すぎた。妹と卓を囲む夢を見た。当たり前のように三麻で、もう一人は金髪の男の子だった。照さん照さんと寄ってきて、私は大型犬のように尻尾を振る様を幻視した。
私が連荘する。咲が嶺上開花で和了って、京ちゃんはニコニコ笑っている。そして懸命に抗って、和了りを掴む。
そんな煌めく景色を側から眺めるモノクロの自分がいる。
私が辛抱していたら、私の心が広かったら、私がもっと冷静だったら、私にもっと気遣いがあったら、私が逃げていなかったら、私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が
そうやって私は、私を断罪することで贖っているつもりだった。
726: 2018/12/11(火) 00:51:11.02 ID:Aaw4sTE60
『笑顔のほうがかわいい』というあの一言は、私の脳裏にこびりついているようだった。
人当たりの良さは私が自然と身につけたスキルのようなもので、完璧な笑顔は保険のようなものだった。
その根底に彼がいることはーーそれ自体は嫌なことではなかった。むしろ心地よかったのかもしれない。
いつしかそれは私のアイデンティティの一部となっていった。
そして隠した感情の行き先として、前にもまして創作された世界に耽るようになった。気を紛らわすためでもあったし、図書室通いなら麻雀に誘われづらいと考えたのかもしれない。
ハッピーエンドの物語は苦手だった。自分には掴む資格がない幸せに目眩がして、本をパタリと閉じていた。
それがただの自己憐憫のように思えて、また嫌になった。
727: 2018/12/11(火) 00:56:22.65 ID:Aaw4sTE60
自尊心がそんな具合だったから、こんな自分でも役に立つのならそれでいい……結局麻雀に戻って来てしまったのは宿命みたいなもの、いや呪いというべきかもしれない。
私は好きでもないその競技が得意らしかった。気持ちが空回りするでもなく麻雀部は華麗に勝ち進んで、あれよあれよと全国を獲ってしまった。
一年目は気がつけば参加することになっていて何の気概もなしにそのまま大会を終えた。
次の年はいつも世話をかけている部員と学校のために、そう思って打った。
そして三年目ーー
私は妹の名前を探していた。
728: 2018/12/11(火) 01:11:25.65 ID:Aaw4sTE60
自分は到底許されない、許されるべきではないと感じていて、それを理由に自分から動くことなく逃げ続けていた。
それなのに、夢の中のあの景色をどこかに探している自分がいた。
絶対にないけど、ないけど万が一、万が一咲が白糸台に来たら……私は情けなさに自嘲することしかできない。自嘲しながら眼は懸命に名簿をずっと辿っていて、私は心の底から自分を軽蔑した。
だがあるはずのない、ただほんの少しだけ頭をよぎった名前をそこに見つけて、私はしばし固まっていた。
729: 2018/12/11(火) 01:21:51.54 ID:Aaw4sTE60
懐かしさや嬉しさより先に、「どうして?」という問いが頭の中を巡り巡っていた。
私がかつて一瞥もせずに切り捨てて、本当は今すぐにでも手に入れたかったその景色ーー目の前に浮かんですぐに掻き消える。
会いたかった。でも会いたくなかった。
幻想が壊れてしまいそうで怖かった。「須賀京太郎」はもう私より小さな男の子じゃなくなっているはずだ。
断罪されるのが怖かった。同時に罵ってくれればと思った。そうする権利が彼にはあって、私は初めて許されると思った。
入学式の日の放課後。私は一晩考えに考えた作戦を実行しにかかった。
彼がいるかもしれない。確率に委ねて私は普段使わない階段を降りて行く。そして、
『……照さん』
当たりか外れかわからないくじを引き当てた。
730: 2018/12/11(火) 01:37:37.85 ID:Aaw4sTE60
慌てて移動を開始、彼は幸い追いかけてくる。ここまで予定通り。
彼が何かしら質問してきたのでそれなりに答えながら歩みを進める。先輩として無視するわけにはいかない。
それでも、先輩以上であってはいけない。それが私の結論だった。
私がかつて一方的に棄てたその関係性を、どうか昔のように、だなんて虫のいい話だ。
私をいくらでも責め立ててくれるのであればそれで構わない。でも他の人の目があるところでそんな蛮行を彼に犯させるわけにはいかない。
彼がここに来たその理由に私自身が絡んでいることをどうしても否定できない以上、最低限の責任は取りたかった。私のせいで高校生活を棒に振るようなことがあってはいけない。
もし万が一京ちゃんが私を慕ってきてもーーその可能性を私はなぜか否定することはできなかったーー私は彼を二度とは傷つけないという自信が持てなかった。それでも……ただ先輩としてなら、後輩としての彼との距離を保って見守っていけると、この高校生活を通して私はそんな付き合い方を学んで自分のものにしていた。少なくともそのつもりでいた。
だから滅多に人の来ないここまでどうにか連れて来て、必氏に追いかけてきた彼のそれでも柔和な表情になぜか納得して、そこでやっと面と向かって、
『京ちゃんなんて知らない』
突き放した、つもりだった。
733: 2018/12/18(火) 23:02:00.27 ID:S/YPpj6m0
『先輩…また来ます』
『…あ、れ…?て、る先輩?』
突き放したつもりだったのに。
『何読んでたんですか?』
『…咲が、麻雀部に入りました』
みっともない姿を見せたはずなのに。
734: 2018/12/18(火) 23:09:45.47 ID:S/YPpj6m0
『俺は、何かを求めたりしません…そんな立場じゃないですから』
『俺はどうあっても先輩の味方です』
『だから…だから焦らなくていいんです』
『俺、ちゃんと待ってますから』
ちっとも諦めてなんてくれなかった。
735: 2018/12/18(火) 23:12:47.29 ID:S/YPpj6m0
まるで最初からそうあるべきだったかのように、京ちゃんは私の傍に来ようとしていた。
麻雀部に入って懸命に練習して昇格を勝ち取った。私たちと一緒に練習を続けて県大会も突破した。
部員のみんなの仲にもすぐに溶け込んで、淡に至っては世話まで焼いてもらっている。
京ちゃんが作ってくれたお菓子は本当に美味しくて、毎日でも食べたいと思った。
気がつけば私の高校生活の一部に彼はすっぽりと収まっていた。彼が一緒にいることに居心地の良ささえ感じ始めて……私は怖くなった。
私はそうあってはいけない。そんな資格は、私にない。
だから再び、
『ね、須賀君』
そして三度、
「…こんな私に構う必要なんてない」
突き放したんだ。
736: 2018/12/18(火) 23:44:40.13 ID:S/YPpj6m0
・
・
・
「…今、俺がどんな気持ちかわかりますか」
「……」
私は答えなかった。わざと見ないようにしていたことを、答えられるはずもない。
「悲しいんです。…情けなくて」
「……」
「情けないですよ、俺は。気づけないなんて」
「…どう、して」
声が震えているのが自分でもよくわかった。
「どうして…どうして、私を責めないの……ひどいことして、この前だって」
「照さん」
遮るように私を呼んだ彼は、いつになく真剣な眼をしていた。卓を囲んでいる時ともまた違う、冷たく燃える蒼さをそこに見た気がした。
737: 2018/12/19(水) 00:24:07.92 ID:17YV/tSO0
「…俺もずいぶん自分勝手な奴なんですよ。照さんがそうだって言うなら、俺だってそうです」
「なに…を…」
「今だから言いますけど…本当は照さんに会いたかったから来たんです。ここに」
息が止まりそうになった。変わらず見つめてくる瞳に耐えられず顔をそらす。
「…咲に頼まれたのは事実です。でも…あいつがなんて言おうと、俺は追いかけてきてたでしょう。あいつの優しさにつけ込んだって言っても、間違いじゃない」
最後は自嘲するように、そう付け加えた。
738: 2018/12/19(水) 00:36:27.70 ID:17YV/tSO0
私はなにも言えずにいた。何を言えばいいというのだろう。
戸惑いを察したのか彼は「すみません、変なこと言っちゃって」と一呼吸置いて、でも、と続けた。
「照さんがどう思っていようと、俺は照さんのことを怒ったりしてません。咲だって…きっとそうです」
「なんでそんな」
「言わないとわからないじゃないですか!」
「……」
無人の廊下に大きく響く。
「…言わないと、わからないじゃないですか…誰にも言わず一人で悩んで隠し通して…そんなの苦しいじゃないですか」
「俺はそんなに信用できないですか…照さんを傷つけるためにわざわざ来るなんて、そんなことすると思って」
「そんなことない!」
「……」
私の声もまた、じんじんと響いた。
「そんなこと、ないよ…だって、私は」
「私は……」
739: 2018/12/19(水) 00:39:20.21 ID:17YV/tSO0
私は、何を言えばいいのだろう。
何を求めている?
何のためにここにいる?
なぜ京ちゃんの声が、聞きたかったんだろう。
「私は……あなたと咲にひどいことをした」
「全部捨てて、逃げたの」
「…そんなことない」
「あるよ」
740: 2018/12/19(水) 01:09:19.23 ID:17YV/tSO0
言葉が後から後から溢れ出てくる。
「悪いのは私。謝らないといけないのも私。それなのに逃げ続けたのも私」
「わかってる。私が間違え続けていなければ、こうはならなかったってこと」
「だから…いくら罵られても、なじられても構わない。そう思ってた」
「それが罰だと思った……でも、あなたはそうじゃなかった。それが嬉しかったけど、哀しかった」
「……それなら…照さんが自分を許せないなら、俺が許します」
「多分そのために来たんです、俺は。この白糸台に」
「だから、…ハンカチありますから、拭いてください」
そう言われて初めて、自分の頬に伝う一雫に気づいた。
「ねえ、京ちゃん。…胸貸して」
差し出されたハンカチを見ないふりして、返事も聞かずに押し付けた。
745: 2019/01/07(月) 00:14:48.07 ID:UL3TYvlA0
京太郎「あの…照さん?」
照「…だめ?」モゾモゾ
京太郎「だめじゃないです、けど」
照「…優しいね、京ちゃんは」
照「……ずっと、こうだったね」
京太郎「……」
照「我儘言って京ちゃんに迷惑、かけて」
照「…散々過去をなかったことにしようとして、そのくせ負担は京ちゃんばっかりにかかって」
照「…ズルいのは、私の方」
京太郎「……そんな、こと」
746: 2019/01/07(月) 00:28:07.56 ID:UL3TYvlA0
照「…春にここで会ったこと、覚えてる?」
京太郎「…忘れもしませんよ」
照「……ひどい人だよね、心細い新入生に案内の一つもすべきなのに、あんなこと言って」
京太郎「そんな」
照「名前の呼び方だって、そう」
京太郎「……」
照「怒っても…当然なのに」
スッ
照「……どうして撫でるの」
京太郎「…嫌だったらやめます」ナデナデ
照「…嫌じゃない、よ」
747: 2019/01/07(月) 01:07:14.57 ID:UL3TYvlA0
京太郎「…照さん」
照「京ちゃんも」
照「…京ちゃんの気持ちを聞かせて。その時の、本当の気持ち」
京太郎「……正直に言うと」
京太郎「ちょっと、寂しかった」
照「……」
京太郎「…照さんに何か考えがあるって思ったのは、本当で…覚えていてもらってたことは嬉しかったんです。それでも」
照「寂しかったね」
京太郎「……はい」
照「…当然、だよ。そう感じるのが、当たり前なんだよ」
照「京ちゃんの気持ち…見ないふりしてたんだ、私」
照「…ごめんね」
京太郎「照さん…」
照「私を、許して」
京太郎「そんな、もう…もちろんですよ」ナデナデ
748: 2019/01/07(月) 01:35:26.48 ID:UL3TYvlA0
京太郎「…すごい今さらですけど」
照「?」
京太郎「俺けっこう汗かいてた気が」
照「気にならない」
京太郎「…この格好のまま誰か来たら言い訳できないと思うんですけど」
照「言い訳が必要なやましいことはしていない。それとも、何かあるの?京ちゃん」
京太郎「いや、ない、ないですけど」
照「…ここは滅多に人来ないし、土曜日だから大丈夫。何してもわからないよ」
京太郎「何もしませんよ!」
照「そう」
京太郎「そんな冗談飛ばせるなら、もう大丈夫ですよね」
照「…待って」
照「まだだめ。ひどい顔になってる」
京太郎「そんなことなかったと思うんですけど…」
照「だめなものはだめ」
京太郎「…はい」
754: 2019/01/13(日) 23:21:55.39 ID:nhSEnHCv0
・
・
・
京太郎「…落ち着きました?」
照「問題ない」フンス
京太郎「荷物、部室に置きっぱなしですよね?今ケータイ見たら部長から連絡来てたんで簡単に返したんですけど」ポチポチ
照「…あっ、私にも来てた。ごめんねスタンプ連打しとこう」テイッ テイッ
照「…京ちゃんは?」
京太郎「俺はこの持ち歩いてるのだけなんで…二人だけでどこかにふけてるとかは思われないはず、多分、メイビー」
照「別にそれならそれでもいいのに」
京太郎「…あんまりそういうことは迂闊に言わないほうがいいかと」
照「京ちゃんにしか言わないよ?」
京太郎「……っ」
照「こうやって京ちゃんとちゃんと話したいって、ずっと思ってたから。気持ちが昂ぶってるかもしれない」
京太郎「……」
756: 2019/01/13(日) 23:32:16.22 ID:nhSEnHCv0
照「ねえ京ちゃん」
京太郎「…何ですか」
照「本当はもっと…ちゃんとした形で謝りたいけど、今言わなきゃいけないことがほかにある」
照「ありがとう京ちゃん。あなたが私を、一人殻に閉じこもってた私を引っ張り出してくれた」
照「諦められても仕方がなかったのに、京ちゃんが諦めてくれなかったから」
京太郎「…照さんが教えてくれたんですよ、諦めの悪さは」
照「…そうだっけ?」
京太郎「きっと上達するからって、そう言ってずっと、格下の俺の練習に根気強く付き合ってくれたのは誰でしたっけ」
照「…懐かしいね。もうずっと前のことみたい」
京太郎「でもついこの前のようにも感じる」
照「京ちゃんは変わったけど…変わってないね」フフッ
京太郎「照さんも」フッ
757: 2019/01/14(月) 00:29:56.40 ID:JOOJhmPG0
照「……」
京太郎「……」
照「…咲の、ことだけど」
京太郎「……はい」
照「…まだ、間に合うかな」
京太郎「あいつはずっと、待ってますよ」
照「…そっか」
照「…大会が終わったら、会おうと思う」
京太郎「…そうですか」
照「京ちゃんも、いてくれるよね」
京太郎「いいんですか」
照「私はいてほしい」
京太郎「…咲に伝えておきます、OKもらえたら俺も一緒にって事で」
照「わかった。…ありがとう、京ちゃん」
京太郎「こちらこそ、本当に…本当に、ありがとうございます」
照「うん」ニコッ
京太郎「……」
758: 2019/01/14(月) 00:55:52.57 ID:JOOJhmPG0
照「…どうしたの?」
京太郎「いえ、相変わらずだなぁ、って…こっちの話です」
照「そう?笑ってたほうがいい?」
京太郎「あ…はい、その話です」
照「笑ってたほうがいいんだ」
京太郎「あの…なんていうか、ですね」
照「……?」
京太郎「いや、上手く言えないというかなんというか…照さんはやっぱり照さんだなって」
照「…そう」
京太郎(あぶねぇ、笑顔がかわいいだなんて…迂闊なこと言うとこだった)
761: 2019/01/14(月) 01:25:06.91 ID:JOOJhmPG0
・
・
・
京太郎「お疲れ様です、先輩」
菫「ん、来たか。照は?」
京太郎「えっ、まだ来てないんですか?先に出たはずなのに」
菫「えっ」
菫「…電話も出なかった」ハァ
京太郎「すみません、二人揃って出歩くのは誤解を招きそうだからって…俺が余計なこと言ったから」
菫「まあ、わからなくもないが…流石にここに来るのに迷子になることはないと思う…思いたいんだけど」
京太郎(言い直した)
ブゥゥッ ブゥゥッ
菫「…!照からだ、ちょっと出てく…」
照「あっ、菫お待たせ」
菫「」
764: 2019/01/23(水) 23:25:24.33 ID:wtbywrOJ0
菫「…来る途中で匂いにつられて洋菓子店に入って物色してた?」
照「うん」
菫「ここでケーキ食べるって分かってるのに…よくもまあそんな」
照「ケーキは買ってないよ?クッキーとかマドレーヌとか」
菫「そういう問題じゃないんだが」ハァ
京太郎「部長、別行動した俺に責任があるんです。どうかその辺で…」
照「京ちゃんは優しい。ほら、このケーキ美味しいからオススメだよ」
菫「君は照に甘いんだ、前にも言ったけど」
京太郎「すんません」
照「ごめんね菫」
菫「…まあいいんだ、いつものことだしな」
京太郎「…すみません、今までもこうしてご迷惑を…」
菫「君が気にすることじゃあない」フリフリ
照「そう、京ちゃんは何も悪くないから」
菫「お前は少しは反省しなさい」
照「はーい。そうそう、二人にも買ってきたから後で分けるね」
京太郎「ははは…」
765: 2019/01/23(水) 23:33:33.38 ID:wtbywrOJ0
京太郎「美味しいですねこれ。流石照さんのオススメ」
照「当然」モキュモキュ
照「…私のも美味しいから、一口食べる?」
京太郎「あ、じゃあこっちの方からちょこっと失礼…ん、美味い」
照「そう、このしつこくない甘み、ベリーの酸味とマッチしてる。生地の作りも丁寧で」
菫「…そろそろ本題に入ってもらえないかな」
照「…?そっか、私が呼んだんだった」パチン
菫「頼むよ…で、話ってなんだ?だいたい想像はつくけど」
照「えっと、報告と、相談」
・
・
・
778: 2019/01/25(金) 00:28:10.59 ID:ogDL7H8f0
菫「…そうか」
照「菫にもたくさん迷惑かけたし、特に京ちゃんのことはたくさん気を遣ってくれたから…すぐに言っておこうと思って」
京太郎「本当に…部長のおかげです」ペコリ
菫「当然のことをしたまでだ、そんな……でも本当に良かったな、須賀君」
京太郎「はい!ありがとうございました!」フカブカー
菫「全く…そんなに頭を下げられても困るよ、せめて個人戦優勝でも持って帰ってきてからにしてくれ」フフッ
京太郎「それはハードル高いっすね…が、頑張ります」
照「……」モックモック
766: 2019/01/23(水) 23:43:04.36 ID:wtbywrOJ0
京太郎「そうだ、部長に相談があるんですよね?」
照「……ギャグ?」
菫「……ぷっ」
京太郎「え…あ、いや、そんなつもりじゃなくて」
菫「くくっ…何かと思った、…ふふふっ」
京太郎「えー…先輩のツボがわかんねぇっすよ…」
菫「…あー、おなか痛い。すまなかったね」
京太郎「いや、なんか俺もすみません」
照「…もう大丈夫?」
菫「大丈夫大丈夫」
767: 2019/01/23(水) 23:49:56.39 ID:wtbywrOJ0
照「…大きく分けて二つ」
照「一つ目。インハイ後に妹に会って話したいと思ってる。問題ないかな?」
菫「白糸台麻雀部として、ということだな」
照「そう」
菫「大会中なら用心もするが…大会後なら特に。須賀君も同席するんだろう?」
京太郎「一応そのつもりです」
菫「それなら安心だ。…もとより姉妹二人、そして君たちのことだ、見知らぬ誰かが入るのはおかしな話だろう」
照「ありがとう、菫」
768: 2019/01/24(木) 00:04:03.74 ID:ynFxmHUI0
菫「…妹さんといえば。長野県予選決勝の牌譜を取り寄せてみたんだ。…ほら」ガサゴソ
京太郎「ありがとうございます、どれどれ…おう、咲はさすが。衣先輩を越えてきたか」
照「天江衣…いつそんなに親しくなったの、京ちゃん」
京太郎「えっ…あー、去年のインハイ後に初めて会ったっけ…」
照「…名前で呼ぶ仲だなんて、聞いてない」ムスッ
京太郎「あ、いや…先輩がそう呼べと言われたので…そんな深い意味はない、ですけど」
菫「須賀君は先輩には逆らい難いんだろう?かつて運動部だったと聞くし」
京太郎「あー…なるほど、それはあるかも」
照「…そう、ならいい」テルテル
京太郎(先輩ナイス!)メクバセ
菫「それなら私を名前で呼んでもらっても差し支えないわけだな」
京太郎(おい先輩!)
769: 2019/01/24(木) 00:06:55.78 ID:ynFxmHUI0
菫「嫌なのか?」
京太郎「いえ、そういう訳では…でも…」
菫「でも?」
京太郎「いや…照さんが」
照「…?呼んであげたら?」
京太郎「え?でもさっき衣先輩のことは」
照「…嫌だった訳じゃない。ただ、私の知らない京ちゃんがいたから、ちょっとびっくりしちゃっただけ」
照「京ちゃんのこと、もっと知らないとね」
京太郎「……っ」
菫「あー暑い暑い、アイスコーヒーにして正解だったよ」ニヤッ
京太郎「なんなんですかもう…」
770: 2019/01/24(木) 00:09:54.94 ID:ynFxmHUI0
菫「それはさておき。わかってはいたが反応薄かったな…嶺上開花連発とかえげつないことやってるんだが」
照「…あの子は強い、から。ブランクだけ心配だったけど、驚くほどじゃない」
京太郎「心配、してたんですね」
照「……まあね」
菫「去年のインターミドルチャンピオンがいるからな、マスコミはそちらに注目しているみたいだ。副将の…」
京太郎「原村…和、ですか」
菫「他の打ち手もレベルは高い。あの龍門渕を倒してきただけはあるな」
京太郎「いいところまで来るでしょうか」
菫「さて。こればっかりは勝負の運だから、なんとも言えないな。十分あり得るとは言っておこう」
照「…多分、勝ち上がってくるよ」
京太郎「俺も直接対決は見たいですけど…」
菫「当たっても妹さんと打つのは淡だけどな」
照「……そこまでは考えてなかった」
771: 2019/01/24(木) 00:14:45.14 ID:ynFxmHUI0
・
・
・
照「…二つ目。京ちゃんのこと」
菫「京太郎君がどうかしたのか?」
京太郎「ちょっ、マジで名前呼びするんですか」
菫「嫌ならやめるけど」
京太郎「そんなことはないですけど」
照「リピートアフターミー。菫先輩」
京太郎「照さんまで……菫先輩?」
菫「…おお、新鮮」
京太郎「そう呼べと言われれば呼びますよ、そんな」
菫「さっきは躊躇っていたじゃないか」
京太郎「だからそれは照さんが…もう!」
照「……」モックモック
京太郎「照さんも追加のケーキ食べてないで話進めてください!」
772: 2019/01/24(木) 00:37:34.53 ID:ynFxmHUI0
照「ふう、やっぱりここのケーキは美味しい…そうだった、京ちゃんのこと」フキフキ
照「…咲と向き合うことにした以上、京ちゃんとの関係を伏せておく意味はないわけだけど…どうしようかなって」
菫「…関係って?」
照「?元から知り合いだって話」
菫「なんだ…てっきり交際報告でもしてくるのかと…」
京太郎「こう、さい…?……いやいやいや!それはないでしょう」
菫「そんなに否定しなくてもいいじゃないか」
京太郎「いや、だってそん、そんな…」
照「…菫はそういう話が好きだから。しょうがない人」フフッ
菫「別にそういう…まあいい」
京太郎(いや絶対好きだろ…俺は詳しいんだ。見ろこのちょっとガッカリした顔)
京太郎(照さんは…)
照「……」モックモック
京太郎(…いいや、考えるだけ無駄なんだ、無駄無駄…)チュー
773: 2019/01/24(木) 00:59:05.73 ID:ynFxmHUI0
菫「…個人的な意見だが、どちらでもいいんじゃないだろうか」
照「どちらでも」
菫「ああ。春ならともかく、数ヶ月過ごした今なら特に違和感はない。照と京太郎君は親しい先輩後輩の仲に見えるよ、十分」
京太郎「そうですかね」
菫「いやまあ、さっきのような仲睦まじさからすると物足りない?かもしれないが」
京太郎「仲睦まじいって…」
照「……」
菫「…うん、とりあえず呼び方をどうするか、だな」
774: 2019/01/24(木) 01:12:34.15 ID:ynFxmHUI0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
京太郎「おはようございまーす」
誠子「おっはよ。…朝から元気だね」
京太郎「あー、うるさかったらすみません」
誠子「いやいや、若いのが元気なのは大いに結構。騒げ騒げ」ハッハッハ
京太郎「…俺たち一つしか変わんないですよね…」
尭深「…須賀君、来てたんだ」
京太郎「あぁ先輩も。おはようございます」
尭深「私たちが頑張ってないと、示しもつかないから。三年も引退しちゃうし」
京太郎「…次期部長はもう?」
誠子「何にも言われてないんだな、これが」
尭深「インハイが終わって、解団式か打ち上げかの時に指名するとかなんとか…」
京太郎「でもお二人のうちどちらかでしょう?」
誠子「やー、どうだろうね。私なんか今後もレギュラー取れるかわかんないし」
京太郎「…いやいや、大会前からそんなこと言わないでくださいよ」
京太郎「おはようございまーす」
誠子「おっはよ。…朝から元気だね」
京太郎「あー、うるさかったらすみません」
誠子「いやいや、若いのが元気なのは大いに結構。騒げ騒げ」ハッハッハ
京太郎「…俺たち一つしか変わんないですよね…」
尭深「…須賀君、来てたんだ」
京太郎「あぁ先輩も。おはようございます」
尭深「私たちが頑張ってないと、示しもつかないから。三年も引退しちゃうし」
京太郎「…次期部長はもう?」
誠子「何にも言われてないんだな、これが」
尭深「インハイが終わって、解団式か打ち上げかの時に指名するとかなんとか…」
京太郎「でもお二人のうちどちらかでしょう?」
誠子「やー、どうだろうね。私なんか今後もレギュラー取れるかわかんないし」
京太郎「…いやいや、大会前からそんなこと言わないでくださいよ」
779: 2019/01/25(金) 00:57:31.64 ID:ogDL7H8f0
ガチャッ
菫「おはよう…まだ揃っていないか」
照「……おはよう」トコトコ
「「「おはようございます」」」
菫「淡は何してんだ…京太郎君、淡が遅れるとかそういうことは聞いてないか?」
京太郎「いえ何も。…あいつが連絡してくると思います?」
菫「期待はしていないが、念のためな」
誠子「……今の聞いた?」ボソボソ
尭深「うーん?」
誠子「うーん?じゃなくてさ…なに、寝ぼけてんの?」
780: 2019/01/25(金) 01:05:59.78 ID:ogDL7H8f0
京太郎「既読つかないっすね…寝てんのかな」
照「電話してみようか」ポチポチ
照「…出ない」
京太郎「あいつ、確かマナーモードにしっぱなしだったような」
照「…詳しいね」
京太郎「同じクラスなんで…菫先輩、どうしましょうか」
誠子「ほら!また」ボソボソ
尭深「どうしたの、さっきから」
誠子「…えぇー」
菫「…ほらそこ二人、話聞いてたか」
尭深「あっはい、お湯沸かしてきますね。ほら誠子も」
誠子「えっ、はーい。…なんだよ私がおかしいのか…」ブツブツ
781: 2019/01/25(金) 01:31:27.77 ID:ogDL7H8f0
・
・
・
ドタバタ ガッシャ-ン
淡「淡ちゃん遅れて参上!」ピキ-ン
淡「…ってなにこれ!」
京太郎「おっす、遅かったな」
淡「おっす!おら淡!…じゃなくて!なんかすごい甘い匂いがするんだけど」
照「遅かったね淡。寝坊?」
淡「そう!昨日スマホいじってたら夜更かししちゃって……テルーなんか食べた?」
照「えっ」
京太郎「照先輩こっち向いて。…口元に付いてます」フキフキ
照「むっ、拭くくらい自分でできる。私は子供じゃないよ京ちゃん」
淡「えっ」
京太郎「わかってますって。ほら、せっかくの紅茶が冷めちゃいますから」
照「それは勿体無い「待って待って待って!」
782: 2019/01/25(金) 01:38:15.87 ID:ogDL7H8f0
淡「なんでお茶会してるの?すっごいずっこい!それに京太郎とテルーの呼び方変わってる!」
誠子「あぁ、ようやく理解者が…」
尭深(そういえばそうだったっけ、でも部長も照先輩も違和感なかったというかなんというか)ズズッ
スタスタスタ
菫「お茶会は私が発案した」
淡「す、スミレ…先輩」
菫「時間より早く集まりやる気を見せてくれてる部員たちの士気を上げたいと思ったんだ…それに」
ズビシッ
菫「この大事な時期に遅刻してくるお嬢様に思い知ってもらうため、かなぁ。なあ淡」
淡「ひっ」
783: 2019/01/25(金) 01:47:29.09 ID:ogDL7H8f0
菫「ひっ、じゃないんだ淡…一時間半も遅れて連絡もなし。その罪は重いぞ」ユラリ
淡「ご、ごめんな、さいぃ…」
誠子「はい、淡の分の白湯」
淡「ううぅ…はい…」
尭深「ごめんね淡ちゃん。部長から言われたと思うけど、今日はお菓子あげられないの」
淡「ああぁ…はい…」
照「……」ブルブル
京太郎「照先輩が怖がってどうするんですか」
照「だってお菓子なしだよ…人生が終わってしまう、暗闇の底に真っ逆さまだよ…?」
京太郎「…ノーコメントで。菫先輩、続き行きますか?」
菫「そうだな、全員揃ったことだし、本腰入れていこうか」
791: 2019/02/16(土) 23:57:09.49 ID:pmC94pj/0
ーーーーーーーーーーーーーーーー
菫「淡」
淡「はーい?」
菫「照」
照「…何?」
菫「…大丈夫だな。じゃあ行こうか」
淡「ちょちょちょ…なんで?なんで私とテルーだけなのさ!点呼しようよ、ほら、ばんごー!って」
尭深「あまり大声だと迷惑になっちゃうよ、駅なんだから」
誠子「しーっ!」
淡「…ばんごーっ」ボソボソ
淡「…だれかノってよっ」
京太郎「大人しくしときなさいっ」コラッ
792: 2019/02/17(日) 00:06:22.75 ID:1zmifRUu0
ガタンゴトン ガタンゴトン
菫「…やれやれ、京太郎君がいて助かったよ」
尭深「二年が頼りなくてすみません」
菫「…ああ、そういうことじゃあないんだ。すまないな」
誠子「他の部員は試合の日だけ来るんですよね?何人か来れれば分担できたんですけど」
菫「お世話係か?照と淡は三人ずついても足りないかもな」
誠子「ぶふっ」
照「誠子、あとで特打ち」
誠子「ぐふっ、先輩聞いてたんですか…」
菫「冗談はさておき…淡はあれで人見知りするからな」
尭深「…そうですね」フフッ
793: 2019/02/17(日) 00:18:18.06 ID:1zmifRUu0
淡「ねえねえ、まだ着かないの?」
京太郎「…五分ごとに聞いてくるのやめてくれないかなぁ?」
淡「だってー…ヒマなんだもん」ムスッ パタパタ
京太郎「照先輩を見習え、ちょっとした時間見つけて今も本読んでるだろ」
淡「本なんて持ってきてないし…そういうきょーたろーこそ」
京太郎「甘いな、淡」ガサゴソ スッ
淡「そ、それは!」
794: 2019/02/17(日) 00:45:16.66 ID:1zmifRUu0
>先輩お薦めの一冊だ、読みたいから静かにしてろよ
>ぐぬぬ…
照「……」
尭深「先輩、お茶飴いかがですか」
照「ありがとう」スッ ハムッ コロコロ
照「……」ペラッ
尭深「…先輩って、須賀君と結構仲良いですよね」
照「……そうかな」
尭深「私にはそう見えます」ニコッ
照「…そう」パタン
795: 2019/02/17(日) 01:10:42.78 ID:1zmifRUu0
照「…おかしいかな」
尭深「いえいえ。…頑張ってますよね、須賀君」
照「…そうだね」
菫「…日程は大体そんな感じかな。把握して気掛けてもらえるか」
誠子「わかりました。…けど」
菫「…何か不服か?」
誠子「違います違います!その…なんで私なのかなって」
菫「私はこれでも期待してるんだ、亦野。今後のこともあるし」
誠子「……それって」
菫「ま、頑張ってくれ。程々でいいからな」ポンポン
誠子「は、はいっ!」
796: 2019/02/17(日) 01:25:37.79 ID:1zmifRUu0
淡「スミレー!きょーたろーがいじめる!」
菫「お前をいじめる程暇じゃないだろ。疲れるから少し休んだらどうなんだ?」
淡「むぅー……もういいもん」プイッ
尭深「淡ちゃーん、飴ー」
淡「わーい!」
誠子(ちょろっ)
797: 2019/02/17(日) 01:28:36.17 ID:1zmifRUu0
京太郎「……」ペラッ
京太郎「……?……!」
京太郎(『まだ早い』ってまさかそういう…)
京太郎「……」チラッ
照「……」チラッ プイッ
京太郎(一瞬目が合った…気のせいか)
京太郎「……」
チラッ
照「……」プイッ
京太郎(…気になるんですが)
>次はー新宿、新宿
誠子「乗り換えですね、荷物確認しましょう!」
淡「着いたの!?」
京太郎「乗り換えだっつーの」パタン ガサガサ
京太郎(…後で訊くか)
800: 2019/02/17(日) 23:37:36.31 ID:1zmifRUu0
・
・
・
淡「着いたー!」
尭深「暑かったね…」パタパタ
誠子「そんなに歩いてないじゃん…暑がりめ」
京太郎「無事、着きましたね」
菫「ああ、助かったよ。荷物もいろいろ任せてしまって」
京太郎「このくらいなんでもないですよ…男手に頼ってください」
菫「ありがとう。お陰で誰もはぐれずに済んだし」チラッ
照「?」
菫「…フロントに行ってくるよ。亦野、一緒に来てくれるか」
誠子「はーい。荷物よろしくね、尭深」
菫「…よろしく頼むよ」メクバセ
京太郎「…目を離さないようにしときます」メクバセ
照「?」
801: 2019/02/17(日) 23:59:10.18 ID:1zmifRUu0
淡「テルー、きょーたろー、こっちこっち!フッカフカだよー」ブンブン
京太郎「…ですって。一旦座りましょう」
照「……」ジー
京太郎「…照さん?」
照「…甘い匂いがする。レストラン…ランチのデザートかな」
京太郎「お昼食べてないんですか?」
照「ううん。でも別腹だから」
京太郎「…後でコンビニでも付き合いますよ」
照「京ちゃんは分かってる。約束だよ」
>早く早くー!
802: 2019/02/18(月) 01:42:26.97 ID:X6KMOLeB0
・
・
・
コンコン
>菫、私
菫「はいはい…よっと」ガチャ
照「頼まれた分、買ってきたよ」
京太郎「…俺が部屋に入っても大丈夫ですかね?」
菫「今更何言ってるんだ…ほら入って入って。買い出し助かったよ」
京太郎「じゃ失礼しまーす…」
ガサッ
菫「…一つ多くないか」
照「……気のせい」
菫「…おい」
京太郎「……すみません、つい」
菫「君は照に甘いんだ…分かっていたんだよそんなことは…」アタマカカエ
照「…ごめんなさい」
菫「…いいよもう…食べてしまえ、淡が来たらまた面倒なことになる」
照「お言葉に甘えて」シュタッ
807: 2019/03/04(月) 01:36:40.66 ID:Xwn8cDMo0
・
・
・
淡「おいしー!」パクパク
照「最近のコンビニスイーツはバカにできない、つい手が伸びる」モックモック
菫「…本来の目的を忘れてもらっちゃあ困るんだが」
尭深「先輩、紅茶入れたのでどうぞ」コトン
菫「…いただこう。さて今後の予定の再確認だが、亦野」
誠子「あ、はい…明日抽選会と開会式です。うちはシード校なので日程は確定済みですが」
淡「くじ引きたかったなー」ハムハム
誠子「…うちの初戦は5日目です。同じブロックの試合が初日にあるので少なくともそこは観戦する予定…です」
808: 2019/03/04(月) 01:39:30.87 ID:Xwn8cDMo0
淡「はいしつもん!」ハイッ
菫「何だ」
淡「じゆーじかんはありますか?」
菫「観戦、対戦相手の牌譜研究、調整目的の練習は揃って行うからそれ以外の時間、ということになる」
菫「ただし勝手に出歩いたりするのはダメだ。必ず私に一声かけること、可能なら二人以上で行動すること」
菫「あと肝心なのは他校の生徒と打たないこと。規約に引っかかるから最悪出場停止だ」
淡「へー」
誠子「お前が一番心配なんだけどなぁ」ハァ
淡「?」
809: 2019/03/04(月) 01:44:01.99 ID:Xwn8cDMo0
菫「あとまあ…これは顧問からのお達しなんだが…」
菫「不純異性交遊が疑われるような行為をしないこと。具体的には…京太郎君と部屋に二人きりといった状況にならないこと」
京太郎「…やっぱりまずいじゃないですか!」
菫「一対一じゃないからな、問題はない」
淡「二人きり……はっ!きょーたろーのケダモノ!フケツ!」
京太郎「何もしてねーだろうがっ」
尭深「襲われないように、気をつけます」ニコッ
京太郎「ひどい!」
誠子「まっ、そこは須賀の良識を信じるとして」
京太郎「先輩…」
810: 2019/03/04(月) 01:44:51.42 ID:Xwn8cDMo0
照「……菫」
菫「どうした…あ、なるほど」ポンッ
菫「一緒に買い出しとか、いつもやってるような事は構わないさ。京太郎君をのけ者にしようだなんて誰も思ってないんだから。先生方も心配しての発言だろうし」
京太郎「菫先輩…」ウルウル
照(……よかった)
菫「とにかく、白糸台高校の生徒として、また麻雀部の一員として自覚を持って行動すること。以上だ」
「「「「「はい」」」」」
811: 2019/03/04(月) 01:46:08.12 ID:Xwn8cDMo0
淡「なんかお腹空いちゃった。…このミニドーナツ開けていい?開けていいよね?」
照「いいよね、菫」ガサッ
菫「またそうやって便乗する…構わないが、やることやりながらだ。タブレットを出してくれ」
ピロン
菫「シード校中心に戦力分析しようと思う。送った資料の1ページ目、臨海高校から順に」
淡「うぇ…今やるの」
菫「どうせするんだからな。今日は最初だから肩慣らし程度だ…今持っているドーナツ一個分くらいの仕事はしてほしい」
淡「うー…はぁい」
菫「さて、予選の結果から見ていこうか。特にこの…」
812: 2019/03/04(月) 01:54:41.98 ID:Xwn8cDMo0
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
京太郎(部屋風呂ってどうも開放感に欠けるよな)ガチャン
淡「あ」
京太郎「ん?」
ドアガシマリマス
ウイ-ン
淡「キグーだね、のどかわいたんでしょ」
京太郎「…淡が正しく言葉を使えるとは…お兄さん嬉しい」
淡「なにか言った?」
京太郎「なーんにも。風呂上がりはこう…一杯、いきたくね?」
淡「おっしゃる通り!」
チ-ン
京太郎(部屋風呂ってどうも開放感に欠けるよな)ガチャン
淡「あ」
京太郎「ん?」
ドアガシマリマス
ウイ-ン
淡「キグーだね、のどかわいたんでしょ」
京太郎「…淡が正しく言葉を使えるとは…お兄さん嬉しい」
淡「なにか言った?」
京太郎「なーんにも。風呂上がりはこう…一杯、いきたくね?」
淡「おっしゃる通り!」
チ-ン
813: 2019/03/04(月) 02:00:14.49 ID:Xwn8cDMo0
チャラン チャラン
京太郎「…ほら、どれにする?」
淡「えっ?」
京太郎「飲むんだろ?いいよ、一本くらい」
淡「…じゃあ、コーラちょうだいっ」
京太郎「はいはい。俺もコーラにしよ」ピッ ガチャン ゴン
淡「……」
京太郎「ほらよっ」ズイッ
淡「…ありがと」
淡「ねえ、…ちょっとおしゃべりしようよ」
814: 2019/03/04(月) 02:12:58.89 ID:Xwn8cDMo0
「「かんぱーい」」ポコン
京太郎「…ペットボトルで乾杯ってのもなんかな」シュッ
淡「いいのっ…プハッ、うぇー」
京太郎「最初は炭酸がキツいだろ?ちょっと置いてから飲めば……ふぅ、ウェってならない」
淡「…マジか」
京太郎「マジマジ。考えたことねーだろ?」
淡「…なんかバカにされてる」ジト-
京太郎「あれ、違った?」
淡「このヤロー!」ガバッ
京太郎「おっと…暴れるとせっかくのコーラが台無しになっちゃうぞーいいのかなー」
淡「ぐぬぬ…覚えてろ…」
815: 2019/03/04(月) 02:13:59.63 ID:Xwn8cDMo0
京太郎「淡はさー」
淡「うーん?」
京太郎「緊張とかしないの?」
淡「なにがー?」
京太郎「大会だよ大会……プレッシャーとか、ないの?」
淡「えっ、きょーたろーもしかしてキンチョーしてる?」ズイッズイッ
京太郎「多少はね…そりゃあさ、俺は個人戦だから負けたら自分の責任っていうか…」
京太郎「でも団体戦って、他のメンバーと責任を共有する…自分が良くても他の人がダメかもしれないし、逆もあるかもしれない。そう考えると、より重いものを背負ってるんだなって」
淡「…むずかしいこと言ってたらキリがないよ」
淡「負けないよ。だって私は強いし、虎姫は強いから」
京太郎「…強いな、お前」
淡「でしょでしょー、もっとほめろー」エッヘン
816: 2019/03/04(月) 02:20:48.75 ID:Xwn8cDMo0
淡「そうだ!勝ったら何かごほうびちょーだい」
京太郎「…負けないって言ってその流れでそれ?」
淡「…ダメ?」
京太郎「ダメとは言わないが…団体優勝したら、って事で。何がいい?」
淡「やった!えっと…んー…ご飯食べに行く、とか?」
京太郎「飯か…まあいいけど」
淡「ほんと!?んふふ、どこ行こっかなー」
京太郎「もう勝ったつもりでいやがる…あんまり高いのは勘弁な」
淡「わかってるわかってる!」
817: 2019/03/04(月) 02:22:16.34 ID:Xwn8cDMo0
・
・
・
ガチャン
淡「……」
尭深「お帰り淡ちゃん。遅かったね」
淡「……」ポフン
誠子「コーラ飲んでるじゃん…あー買いに行こっかなー」
淡「……」ゴロゴロ
淡(きょーたろーとご飯…あれ?もしかして二人きり…)
カァッ
誠子「淡ー?」
淡(で、でも、きょーたろーはOKしてくれたし…それって…)ゴロゴロゴロ
尭深「あんまり転がるとぶつか「ふぎゃっ!」…っちゃったね」
淡「痛い…」サスサス
誠子「何やってんだ…」ハァ
818: 2019/03/04(月) 02:38:42.46 ID:Xwn8cDMo0
~~~~~~~~~~~~~~~
菫「お風呂どうぞ」フキフキ
照「うん。…今日はありがとう」
菫「…なんだ藪から棒に」
照「京ちゃんと買い出しに行かせてくれた」
菫「余計に買ってきたことは許してないからな」
照「」テル-ン
819: 2019/03/04(月) 02:49:03.85 ID:Xwn8cDMo0
菫「…どちらかと言えば京太郎君に感謝するのが筋じゃないのか。お前一人だと絶対許可してないから」
照「うん。それだけじゃないけど」
菫「?」
照「京ちゃんは、自分が買ってきます、何がいいですかって言うこともできた」
照「けど、私が自分で行って選びたいっていう…気持ちを汲んでくれたから、それが嬉しかった」
菫「…それを私に言ってどうするんだ」
照「うーん…京ちゃんの素晴らしさを布教?」
菫「…あいつは優しいな。特にお前に」
照「そうかな」
菫「間違いなくそうだよ」
照「ぶいっ」v
菫「なんだそれ」フフッ
827: 2019/04/01(月) 00:46:51.48 ID:AXixLaei0
照「…じゃあ、お風呂入ってくるね」スタスタ
菫「ああ、ゆっくりするといい」
照「……菫」
照「私、頑張るね。今回は負けられないから」
菫「そうだな。……珍しいな、お前がそんなこと言うなんて」
チラッ
照「そうかもね」
ガチャン
828: 2019/04/01(月) 01:30:07.46 ID:AXixLaei0
ザ-
キュッ クシュクシュクシュ
「……ふぅ」
ザ-
チャポン トプン
(負けられない…か)
(…なんでそんなこと言ったんだろう)
(…自分勝手な、私)
829: 2019/04/01(月) 01:31:25.04 ID:AXixLaei0
バシャン
(……だけど、今回は許す)
(そう願ってくれてる人がいる)
(だから…負けられない。咲と会うまでは、絶対に)
チャポン
(……頑張るよ、京ちゃん)ブクブク
830: 2019/04/01(月) 01:34:31.12 ID:AXixLaei0
ーーーーーーーーーーーーーー
淡「ふぁうぁぁ…眠たい」テクテク
尭深「淡ちゃんグースカ寝てたじゃない」
淡「せいちょーきだからね!寝る子は育つ!」バル-ン
京太郎(成長、ね…どことは言わないが)チラッ
淡「む、今こっち見てた!」
京太郎「お前なんか見るかばーか」シレ-
淡「なにをー!」
テクテク
誠子「今日はどこが見どころですかね?」
照「…やっぱり新道寺、かな。他はいい」
菫「初戦だけ見て帰ってもいいかもな」
誠子「そんなものですか?」
照「一回戦だからね」
831: 2019/04/01(月) 01:35:37.88 ID:AXixLaei0
ガヤガヤ
淡「わー、大きい!」
誠子「小学生並みの感想乙」
京太郎「昨日もモニターあったろうが…何も映ってなかったけど」
淡「そうだっけ?」
菫「おーい、席とったぞ」
「「「「はーい」」」」
前
通路→
菫 照 京 淡 誠 尭
832: 2019/04/01(月) 01:38:28.49 ID:AXixLaei0
菫「予習した通り、新道寺はうちへの対策を前提としてオーダーを組んでいる。裏返せばそれは勝ち上がる自信があるということだ」
菫「資料は各自端末を見ること。特に自分の区間の選手の挙動には注意するように」
淡「えー、じゃあ最後までヒマじゃないですかー」
誠子「他でも気づいたことがあれば言ってくれると助かるなぁ。チーム戦なんだし」
淡「…はーい」
照「…あれ?」
京太郎「…どうしました」
照「どこか行っちゃった」
京太郎「ちょっと見てみますね。んーと……」ノゾキコミ-
スッ スッ
照「……」ジ-ッ
833: 2019/04/01(月) 01:39:25.12 ID:AXixLaei0
京太郎「ああ、違うアプリに飛んでますね。こっちは閉じちゃって…よっと」
照「……すごい。ありがとう京ちゃん」
京太郎「お安い御用です……何か付いてますか?俺の顔」
照「ううん。どうして?」
京太郎「…照さんがじっと見てくるから」
照「……見てた?」
京太郎「見てましたよ、至近距離で。ちょっとビックリしました」
照「…ごめん」シュン
京太郎「あっいや、全然っそんな嫌だったとかじゃないんです。本当にちょっとビックリしただけでっ」
照「…そう。ならいいけど」
淡「……」
834: 2019/04/01(月) 01:40:50.06 ID:AXixLaei0
淡「きょーたろー!」ズイッ
淡「ちゃんと前見なきゃダメだよっ」
京太郎「見るって。どうした急に」
京太郎「お前に言われちゃおしまいだっての」
淡「ふんだ」プイッ
京太郎「なんだよ…」
>お待たせしました。ただいまより一回戦第一試合……
843: 2019/04/16(火) 01:15:40.34 ID:xSvm78ct0
・
・
・
「ツモ。2000・4000」
ワァ-ッ
京太郎「……きっちりトバしましたね」
菫「それができる実力だからな…さすがエース、というところか」
淡「…はっ!私の出番がっ」
尭深「大将戦まで行っても、本気は見れなかったかもしれないし…ね?」
誠子「そうそう、今日は雰囲気知れただけでもオーケーオーケー」
淡「むむむ…」
844: 2019/04/16(火) 01:16:55.78 ID:xSvm78ct0
照「…この後どうするの?」
菫「案外早く終わってしまったし…もう少し見ていこうか。淡も満足するだろ」チラッ
スタッ
>如何……ましたか… ボソボソ
京太郎(ん?…あれは)
>…承って……はい、問題なく ボソボソ
>…それでは、またお呼びください
シュタッ
845: 2019/04/16(火) 01:20:07.45 ID:xSvm78ct0
スック
京太郎「…部長、お手洗いに行ってきても」
菫「ああ、迷わないようにな」
京太郎「さすがに大丈夫ですよ、俺は」
照「…今こっち見た」
京太郎「…気のせいですよ、気のせい。すみません、通りまーす」
キョロキョロ
京太郎(さて、どこに行ったかな)
スッ
「どなたかお探しですか」
京太郎「わっ」
846: 2019/04/16(火) 01:27:44.55 ID:xSvm78ct0
ハギヨシ「お久しぶりです、京太郎君」
京太郎「驚かさないでくださいよハギヨシさん…ご無沙汰してます」
ハギヨシ「私を探して席を外したんでしょう?」
京太郎「お見通しってわけですか…さっきチラッと目があった気がしたんで、飛んでくるかと」
ハギヨシ「私はエンダーマンですか」
京太郎「似たようなものでは…服も黒だし」
ハギヨシ「おやおや、困りましたね」フフッ
京太郎「冗談はともかく…皆さん来てるんですね」
ハギヨシ「ええ。衣様のご所望でもありますし…応援したい方々もできたようですから」
京太郎「…ああ、そういえば一緒に合宿したって」
847: 2019/04/16(火) 01:35:37.00 ID:xSvm78ct0
ハギヨシ「もちろんそれだけではないのですが…直接聞いていただきましょうか」
京太郎「直接…?」
「ハギヨシ、誰と遭逢して……きょうたろ?……京太郎じゃないかっ!」ダッ
京太郎「うわっぷ」ドンッ
「急に走ったり飛びついたり危ないですわよ衣、京太郎さんも吃驚なさいまして?」
京太郎「俺は大丈夫です、衣先輩軽いですし…ちゃんと食べてますか?」
衣「案ずるな、ハギヨシや皆の庇護のお陰で健啖…とまではいかぬが」
衣「久しいな京太郎。壮健か?」ニパ-
京太郎「おかげさまで。先輩もお元気そうで何よりです」ニコッ
848: 2019/04/16(火) 01:36:54.92 ID:xSvm78ct0
京太郎「透華先輩も、お元気そうで何よりです」
透華「もちろんですわ!衣もこの東京行きを心待ちにしていたんですもの、体調管理も万全…まあ、選手としての参加でないのは心残りですけれど」
京太郎「ああ…すみません、うちの幼馴染がお世話になって」
透華「とんでもありませんわ。私たちの完敗でしたから…当然次は負けませんわ!ねえ衣」
衣「…京太郎、咲は強いな」
京太郎「そりゃあ強いですよ、あいつは」
衣「いや、お前が思ってるより一層だ、京太郎」
849: 2019/04/16(火) 01:46:18.52 ID:xSvm78ct0
衣「…面前でまみえて手合った衣だからこそ明々白々と諒解できたのだ…咲は、心の深淵からの情動に突き動かされて、麻雀に心底から向き合っていた。衣にはできなかったことだ」
衣「…京太郎、共に卓を囲んだことを覚えているか?」
京太郎「ああ、俺がぶっ倒れたときですね」
衣「そうだ。…京太郎は衣を責めもせず笑っていたな。それが衣には合点できぬことだった。…恥ずべき事であるからにして逡巡したが、ちゃんと己の口で言おうと思っていたのだ、京太郎。衣は己の力を信じるあまり、卓の上では冷酷な獣のようであった。…鼠の子を咥えて遊ぶ獅子のようなものだ」
衣「…京太郎は対等な打ち手として座してくれてたのだと、漸く気づけたのだ。咲がそうであったように」
京太郎「…俺は、そんな」
衣「実力どうこうの話ではない、姿勢の問題だ。勿論卓の外では気にかけてくれるともがらもおり、京太郎もハギヨシの客人として我らと良い関係を持っていた。だがな、卓での刹那は衣にとって最上の歓喜であり、且つそこで孤独を深めていたのもまた事実なのだ」
850: 2019/04/16(火) 01:50:21.27 ID:xSvm78ct0
京太郎「…先輩にとって特別な麻雀で、分かり合える人が欲しかった?」
衣「掻い摘むとそんなところだ。だのにそんなものはいないと決めてかかっていた。透華が衣のために一、智紀、純を連れてきてくれて、他校の名だたる何某とも打てるようにしてくれて…それでも尚、衣は我儘な子どものようだったな、透華」
透華「そんなこと……そんなことありませんわ」
衣「よいのだ、透華。衣は傲慢だったのだ。だから打たれる必要があった。それが咲で本当に良かったと思っている」
衣「…京太郎。お前が、そして咲がそうであるように、衣も麻雀を楽しんで打とうと思えるようになったのだ。そのことを、面と向かって伝えたかった。麻雀とは、楽しいものなのだな」ニパッ
京太郎「そうですよ、衣先輩」
京太郎「俺にとっても先輩と打てたことはいい経験、いい思い出なんですから」
851: 2019/04/16(火) 01:56:21.33 ID:xSvm78ct0
・
・
・
カツン カツン
京太郎「ただいま戻りましたー」
尭深「おかえり、遅かったね」
誠子「淡が心配してたぞー」
淡「してないしっ」
京太郎「すみません、ちょっと知り合いに会いまして」
カツ カツ カツ ピョコン ピョコン
透華「はじめまして、でよろしくって?」
照「…龍門渕の人」
透華「いかにも、龍門渕高校麻雀部部長、龍門渕透華と申します。以後お見知り置きを」
衣「…天江、衣だ」
淡「…こども?」
衣「ころもだっ!」
誠子「…すごい、本物だ」
852: 2019/04/16(火) 02:01:56.91 ID:xSvm78ct0
菫「…わたしが話そうか。前を失礼」スッ
菫「部長の弘世菫だ。ご丁寧にどうも。須賀君から話は聞いてるよ…今日はどうして?」
透華「友人を応援できればと思いまして。京太郎さんにも偶然お会い出来ましたし、折角ですので一言ご挨拶をと」
衣「……衣は付いてきただけだ」
淡「なんで仲良さそうなの?」ヒソヒソ
照「京ちゃんだから仕方ない」
淡「えぇー…」
853: 2019/04/16(火) 02:02:39.20 ID:xSvm78ct0
菫「…せっかくだから、連絡先を交換してもらってもいいかな?」
透華「喜んで。お待ち下さいまし…」
菫「そうだ、亦野」
誠子「は、はいっ」
菫「龍門渕さん、この子にも連絡先を教えて構わないかな?私は三年だからね」
透華「もちろんですわ。よろしくお願いしますね、えっと…またのさん?」
亦野「あっ、はい、亦野誠子ですっ、よろしくお願いしますっ」ワタワタ
淡「先輩慌てすぎー」
亦野「静かにしてろっ」
淡「はーい」
854: 2019/04/16(火) 02:04:53.03 ID:xSvm78ct0
透華「…確かに登録できましたわ」スッ スッ
菫「ありがとう。これも何かの縁だ、仲良くしてもらえるとうれしいよ」
誠子「……よろしくお願いします」
京太郎「先輩、硬くならないで大丈夫です」
誠子「う、うるさいっ」
衣「…京太郎」
京太郎「?」
衣「楽しそうだな。衣は安心したぞ」ニコッ
京太郎「だから言ったでしょう、大丈夫ですって」
衣「そうだったな。…応援しているぞ、京太郎」
透華「そうですわよ、龍門渕の名にかけて頑張ってもらわないと。簡単に負けてしまったら許しませんわよ」フンス
京太郎「う、うっす」
855: 2019/04/16(火) 02:05:47.31 ID:xSvm78ct0
透華「…ふふっ、冗談ですわ。この龍門渕透華が応援するのですから百人力ですわ!おーほっほっほ」
京太郎「…先輩」
透華「んんっ、失礼…気が昂ってしまいました、よくない癖ですわね」
菫「あ、ああ…ありがとう、わざわざ来てくれて」
透華「とんでもありませんわ。京太郎さんをどうかよろしく…では、また機会がございましたら」フカブカ
衣「また会おう!」ピョコピョコ
京太郎「また連絡しますね」フリフリ
菫「……濃い人だった」
京太郎「あの人もいろいろ武勇伝がありますから…またおいおい」
菫「そうか…」
誠子「…緊張した…」
尭深「お疲れ誠子。お茶飲む?」ポンポン
856: 2019/04/16(火) 02:06:55.99 ID:xSvm78ct0
照「偉そうだったね菫」
菫「は?」
淡「私が部長だー、ドヤー!みたいな」
菫「それはまあ、部長は部長だろう」
淡「よっ、全国一位の部長!」
菫「…お前は全国一位の大将になれよ」ワッシワッシ
淡「痛い痛い、スミレらんぼーだよ!」
京太郎「すみませんなんか…時間とっちゃって」
菫「構わん構わん、いい気分転換になった。さて…始まるぞ」
>お待たせしました。……
863: 2019/04/30(火) 22:01:30.60 ID:WermskqT0
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
京太郎(炭酸飲みてえ…)
ガサゴソ
京太郎(鍵と…財布)
タッ タッ
ガチャン
ウイ-ン
チ-ン
京太郎「あ」
クルッ
照「…こんばんは」ペコリ
京太郎「…こんばんは?」
864: 2019/04/30(火) 22:14:33.06 ID:WermskqT0
京太郎「…何、してるんですか」
照「見ての通り。読書」
京太郎「菫先輩には」
照「ちゃんと言ったよ、涼んでくるからって」
京太郎「…ならいいか」
スッ
照「何飲むの?」
京太郎「…コーラか三ツ矢か、そのあたりを」
チャリン チャリン
京太郎「あ…悪いですよそんな」
照「いいの、普段の迷惑代だと思って」
京太郎「迷惑だなんて思ったことないです」
照「…っ、いいから。先輩命令。受け取らないと失礼。ほら、好きなの押して?」
京太郎「…ありがとうございます。じゃあ」
ポチッ ガタン
865: 2019/04/30(火) 22:20:18.68 ID:WermskqT0
カシュッ
ゴクゴク
京太郎「フー……照さん飲まないんですか?」
照「…飲むよ」
京太郎「…なんで固まってるんですか」
照「ちょっと向こう向いてて」
京太郎「え?」
照「……まじまじ見られると、恥ずかしい、から…」
京太郎「す、すいません」プイッ
照「……」
コクコク
866: 2019/04/30(火) 23:08:47.55 ID:WermskqT0
京太郎「……」
照「……」
京太郎「……昨日ですね、」
照「…うん」
京太郎「咲に電話しました」
照「…そう。なんて?」
京太郎「大した話はしてないんですけどね…衣先輩と透華先輩に会ったこととか、ホテルでどう過ごしてるかとか…ああ、あいつ会場で迷子になったらしくて」
照「…あのホールは絶対何かいる」
京太郎「え?」
照「目印はすぐに見失うし、ちょっと歩いたらどこにいるか分からなくなるし、変なものが邪魔してるようにしか思えない」
京太郎「……」
照「…なに、おかしいなら笑ってよ」
京太郎「…おほんごほん、そうですね、すみません…ふふっ」
照「もう…」
京太郎「いやすいません。……やっぱり姉妹は似るんだなって」
照「……」
京太郎「あいつ言ってましたよ、全力で打つんだ、当たるまで頑張るって」
照「……そっか」
871: 2019/06/02(日) 23:33:42.52 ID:G/4QxGPs0
京太郎「そういえば…本、なんですけど」
照「読んでたよね、ノルウェイの森」
京太郎「わかりました?」
照「…わかりやすい色だから、表紙」
京太郎「確かに」
照「どうだった?」
京太郎「まだ途中なんですけど…なんていうか、主人公流されてるなぁって」
京太郎「すごく辛い状況なのは分かるんです。でも…キスすべきだと思ったからしたとか、そういう気分だから…あの、したとか、こう…なんで?っていう引っかかりがありまして」
京太郎「辛ければそういうことしていいのか?って気分が先に立ちました」
照「…私もあの人はあまり好きじゃないから…分かるよ、その気持ち」
872: 2019/06/02(日) 23:35:50.34 ID:G/4QxGPs0
京太郎「ただこの話自体は好きですよ。雰囲気というか…こう言っていいかわかんないですけど凄く澄んでる。ずっと綺麗なままでいそうな、でもそんなことはなくて」
照「……」
京太郎「冒頭で結果が見えてるわけじゃないですか。それが…なんだろう、切なさっていうとなんか違う気がするんですけど、読み進めてふと立ち止まったときに、思い出して…ああ、でもやっぱりそうだよなあ、そうなっちゃうよね、って」
照「…京ちゃん、よく読んでるね。感心」
京太郎「そ、そうっすかね…照さんからそう言われると嬉しい」
照「そう?私はもっと嬉しい」
京太郎「…え」
照「…好きなものを共有できて、一緒に話せる。…とても素敵なことだと思う」ニコッ
京太郎「……っ」
京太郎(…反則です、照さん)
照「…どうしたの?」クビカシゲ
京太郎「いや、何でもないっす…」
京太郎(…なんで俺、ドキッとしてんだよ)
873: 2019/06/02(日) 23:40:55.49 ID:G/4QxGPs0
京太郎「…ていうか照さん、俺には『まだ早い』ってあの時言ってたじゃないですか」
照「……よく覚えてたね」
京太郎「あれってその……恋愛もの、だったからですか」
照「…うん、村上春樹を読んだことないならびっくりするかなって。性的描写もまあまああるから」
京太郎「…そうっすね」
照「でも…杞憂だったかな。あの時のわたしは京ちゃんをまだ見くびってた」
照「…本当に大きくなったね、京ちゃん」
京太郎「なんですかそれ」フフッ
照「本当だよ。背だけじゃなくて中身も。立派になった」
京太郎「…そんなことないですよ」
照「…京ちゃん、京ちゃんは自分がそう思ってるよりもずっとよくやってると思うよ。だから…自信持っていい」
京太郎「…自信」
874: 2019/06/02(日) 23:42:18.13 ID:G/4QxGPs0
照「京ちゃんが積み重ねてきた努力はみんな知ってる。その努力に信頼を置いていい。私が言うのはおかしな話だけど、保証する」
京太郎「…俺、照さんの言うことならなんでも信じちゃいますよ?」
照「……今はそれでいい」
照「……なんでもはちょっと困る…けど」
京太郎「いいんです。俺はそう決めてますから」
照「…それなら、京ちゃんの期待に応えないとね。…頑張る」
京太郎「…俺も、頑張ります」
875: 2019/06/02(日) 23:43:36.94 ID:G/4QxGPs0
照「…なんかとりとめのない話になっちゃったね」
京太郎「俺は好きですよ、こういうのも」
照「私も、……だよ」
照「…ねえ京ちゃん」 テマネキー
京太郎「どうしまし」
ギュッ
京太郎「た…」
京太郎(ナンデ!?抱きつきナンデ!?)
照「京ちゃん…」スリスリ
京太郎(囁きはダメッ…!ノーカンッ…!そしてやらかい……はっ!)
876: 2019/06/02(日) 23:45:02.68 ID:G/4QxGPs0
京太郎「てっ照さん、まずいですよ!誰かが見てたら」
照「…そう、ここは学校の秘密のスポットじゃない。だからもうおしまい」スッ
京太郎「あっ…」
照「…部屋に戻るね。おやすみ」
スタスタスタ
京太郎「……」
ホオツネリ ギュッー
京太郎「痛ッ!おぉ、いって…」サスサス
877: 2019/06/02(日) 23:47:34.41 ID:G/4QxGPs0
ガチャ
照「……」
菫「おかえり。……どうした、ぼうっとして」
照「…補給、してきた」
菫「?はぁ…まあ、いいんじゃないかな」
照「……」ポスン
照(…何をやってるんだろう、私)
884: 2019/06/17(月) 02:14:30.84 ID:94KNjlMZ0
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
淡「ひぎゃぁー!…あぁ、つっかれたー」ノビ-
尭深「…びっくりしたよ淡ちゃん、大声出して」カチャン
誠子「ノビをしたいのはわかる、うん」コキッ コキッ
照「……」サクサクサク
淡「あー!テルー食べすぎー!」
照「…そんなことない」
菫「いや、食べ過ぎだ。その一枚であとはおあずけ」
照(´・ω・)ソンナ-
885: 2019/06/17(月) 02:15:52.48 ID:94KNjlMZ0
菫「さて、この局は…淡は点数ノルマ達成か」
淡「ふふん」
菫「…亦野も放銃を抑えられたな」
誠子「その分消極的な打ち回しになっちゃって…すみません」
菫「気にしなくていい、そういう練習だからな。照にもお前を狙うよう言ってたし」
誠子「なっ!…なるほどぉ…」
菫「尭深は…少しのプラスか。淡を止めきれなかったかな」
尭深「…ラストでどうにか戻せた、だけですね」
菫「その通り。ラスを他に和了られたらどうするんだ?」
尭深「……すみません」
照「…少しオリるのが早い気がする。稼ぐことが求められるなら、もう少し粘るべき」
尭深「意識、してみます」
>ただいま戻りましたー
886: 2019/06/17(月) 02:28:28.40 ID:94KNjlMZ0
菫「お疲れ様。おかげで助かったよ…多かっただろう?荷物」
京太郎「あれくらいなら全然ですよ。皆さんに手伝ってもらったし」
照「お疲れ、京ちゃん。食べる?」
京太郎「あっ、…いただきます」
尭深「お茶もどうぞ」トクトクトク
淡「むむむ……」
誠子「…何思いつめたような顔して」ヒソヒソ
淡「なっ!別に何もないしっ」ヒソヒソ
誠子「…まあ、いいけど」
887: 2019/06/17(月) 02:30:13.93 ID:94KNjlMZ0
誠子「須賀ー、顧問とか先輩たちは何か言ってた?」
京太郎「んーと…ああ、体調崩したりしてないか確認はされました。あと、今日の午後練は14時ごろから始めたいと」
菫「ん、一応こちらからも確認しておくよ」
京太郎「よろしくお願いします」
菫「…というわけで、予定通り今日の午後から数名が練習に合流、最終調整に付き合ってもらう」
淡「えー」
菫「嫌とは言わせないぞ」
淡「言ってないじゃん!…いや、言ってない、です」
菫「…とにかく、初戦に向けて引き締めていこう。舐めてかかったりできないからな」
888: 2019/06/17(月) 02:32:23.64 ID:94KNjlMZ0
京太郎「明日はみんな応援に来るんですよね」
菫「そうだな。バス4台使って来ると聞いている」
京太郎「俺、また手伝いに行ったほうがいいですか?」
菫「いや…その必要はないさ。そのために他の部員を呼んでいるんだ」
菫「チームの一員として、私たちの側にいてくれればいい」
京太郎「…うっす」
淡「そこ、デレデレしない!」ズイッ ビシッ
京太郎「は?してねーし」
淡「うそだー!」
ナニヲ-
コノ-
尭深「素、ですよね。部長のは」
照「…それが菫のいいところ」
894: 2019/06/23(日) 23:54:27.67 ID:e5oAtFBp0
・
・
・
>ロン!倍満!
>ちょちょっ、えっえっ?
>むっふっふー、まだまだぁ!
トン ジャラッ カチャン
リ-チ!
京太郎「…調子、良さそうですね」
菫「キープしてくれればいいんだがな…それより、」チラッ
菫「昨日は試合、見に行きたかったんじゃないか?」
895: 2019/06/24(月) 01:06:57.42 ID:h5XsH5Kz0
京太郎「試合?…ああ、清澄ですね。いいんですよ、結果大将まで回らなかったわけですし」
菫「中堅の…竹井、だっけ?が最下位をトバし初戦突破、と」
京太郎「強豪校みたいな勝ち方ですね」
菫「全くだな」ハハッ
京太郎「それに…出身が長野だからって見に行くのは怪しまれるなって思いまして」
菫「龍門渕に誘ってもらえば良かったのに」
京太郎「……その手があったか」
菫「準々決勝は見に行くといいさ。他校の視察、ということで話はつけておくよ」
京太郎「…いいんですか、こっちも試合前日ですよ」
菫「構わないさ。むしろだからこそ行って見てきてほしい」
住み「牌譜は当然手に入るがそこには載らない情報や感覚もあるだろう?だから他の部員にも現地で見てもらってるんだが…報告は多い方がいい」
京太郎「…ありがとうございます」
菫「気にするな、win-winさ」
菫「中堅の…竹井、だっけ?が最下位をトバし初戦突破、と」
京太郎「強豪校みたいな勝ち方ですね」
菫「全くだな」ハハッ
京太郎「それに…出身が長野だからって見に行くのは怪しまれるなって思いまして」
菫「龍門渕に誘ってもらえば良かったのに」
京太郎「……その手があったか」
菫「準々決勝は見に行くといいさ。他校の視察、ということで話はつけておくよ」
京太郎「…いいんですか、こっちも試合前日ですよ」
菫「構わないさ。むしろだからこそ行って見てきてほしい」
住み「牌譜は当然手に入るがそこには載らない情報や感覚もあるだろう?だから他の部員にも現地で見てもらってるんだが…報告は多い方がいい」
京太郎「…ありがとうございます」
菫「気にするな、win-winさ」
896: 2019/06/24(月) 01:08:07.22 ID:h5XsH5Kz0
>ロォン!全部もらいっ!
>うっそ…だろ…
>あはは…お星様…
菫「…まずいな、行ってくる」スタスタ
京太郎「…行ってらっしゃーい」
>おい、気ままに打っていいと誰が言った?
>へ?
>やったことを復習しながら、状況考えながら
>…あっ、そうだっけ?
>そうだっけ?じゃないぞ
>あわわわわ…
京太郎(……お茶汲みでもしとこうか)スタスタ
897: 2019/06/24(月) 01:10:29.83 ID:h5XsH5Kz0
ガタッ
京太郎「ん?」
照「あっ…」
京太郎「…何してるんですか」
照「…景色見てた」
京太郎「…隣のビルしか見えませんけど」
照「……」
京太郎「その…持ってる包みは」
照「違うの、これは」
京太郎「……」
照「……あの」
京太郎「あー俺ちょっとお腹空いたなー」
照「!」パァァ
京太郎「あーなんか食べるものないかなー」
照「…これ、食べる?」ガサガサ
898: 2019/06/24(月) 01:36:32.28 ID:h5XsH5Kz0
パクパク
照「…おいひい」
モグモグ
京太郎「…いつもよりも本気で打ってたんですね」
パクパク
照「……うん」
京太郎「…でもだからといって菫先輩が目を離した隙にってのは、あまり褒められたやり方じゃないです」
ゴックン
照「……ごめんなさい」
京太郎「……俺も一緒に謝りますから、ね?」
照「でも!」
京太郎「見逃した時点で共犯だから…なんだっけ、毒を食らわばってやつですよ」ハハッ
照「京ちゃん……」
菫(いい話かなー?)コソコソ
エヘン オホン
京太郎「…照さん」
照「…うん、いっせーのせで…振り向く?逃げる?」
京太郎「逃げちゃいましょうか」
菫「待て待て待て」
899: 2019/06/29(土) 00:50:30.16 ID:dlHEKcLi0
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
京太郎「……」ペチペチ
淡「あっれー?なんできょーたろーがきんちょーしてんのー?うけるー」パタパタ
京太郎「…ほんとな、なんでだろうな」
淡(あれー?)
照『…ロン』
淡「いやったっ!」
京太郎「よしっ!」
イェ-イ ハイタッチ
誠子「おー、元気元気」
京太郎「あっ…すみません騒がしくして」
誠子「気にしない気にしない。新鮮だなぁって」
淡「亦野先輩ババくさーい」
誠子「は?」
淡「…ウソでーす」
尭深「お茶のおかわりいる人ー」
「「「はーい」」」
尭深「…淹れるねー」
903: 2019/07/17(水) 00:06:49.39 ID:bNkYKrQl0
尭深「はいどうぞ」コトン
淡「ありがとー。ハイ先輩」スッ
誠子「おっ、気がきくね」
淡「ハイきょーたろー」
京太郎「サンキュ。…珍しいなお前」
淡「…なにそれ」プク-
京太郎「おーこわ」スクッ
淡「どこ行くの、まだ途中なのに…あっ!またこっそりお菓子食べようとしてるでしょ!」
京太郎「…しねーよそんなこと」
淡「あっやしー!」
尭深「ほらほら、ケンカしないの」メッ
904: 2019/07/17(水) 00:15:57.26 ID:bNkYKrQl0
ゴクゴク
京太郎「……」
スタスタ
菫「…京太郎君」
京太郎「あぁ…部長」
菫「一人黄昏れて…なんだ、心配か?」
京太郎「そうじゃない…はずなんですけどね」
京太郎「だって心配したら失礼でしょう、照さんのこと」
菫「…まあな、雀士としてはそうだろう…けどな」
京太郎「けど?」
菫「あいつもただの高校生で、女の子だ。知ってるだろう?」
京太郎「……はい」
菫「…だから、お前だけでもそう思ってていいと思う。いや…お前だからこそ」
京太郎「…そうですかね」
菫「むしろ心配してやってくれ。きっと喜ぶ」
京太郎「…そう、ですね。わかりました」
905: 2019/07/17(水) 00:17:08.14 ID:bNkYKrQl0
菫「…さて、私もそろそろ準備に入ろうかな」グイッ
京太郎「…菫先輩」
菫「ん?」
京太郎「…先輩の実力は信じてます。でも…先輩のことも心配してても、いいですか?」
菫「……何を言いだすかと思えば」
菫「…好きにすればいい」フッ
スタスタ
906: 2019/07/17(水) 00:18:35.21 ID:bNkYKrQl0
『王者がついに帰ってきた!怒涛の連続和了で場を支配するのは、やはりこの人!宮永照だー!』
尭深「…うるさい人」
菫「そう言ってあげるな、仕事なんだ」スタスタ
誠子「先輩…もう出るんですか」
菫「ああ、いい流れに乗りたいからな」
淡「スミレ、なんかテンション高くない?」
グニッ
淡「あぅっ、ほっへ、ほっへ…」
菫「少しいいことがあったから…な。行ってくる」
ガチャン
907: 2019/07/17(水) 00:19:37.54 ID:bNkYKrQl0
誠子「…なんだろ、いいことって」
尭深「さあ?」
淡「むー、スミレひどい…」イタタタ
ヒョコッ
京太郎「ありゃ、先輩もう出ちゃったんですか」
淡「見送りしないなんて悪いんだー」
京太郎「わりぃわりぃ…後で謝っとこう」
尭深「気にしてなさそうだったから大丈夫だと思うよ…?」
誠子「…そうそう、部長が『いいこと』あったって言ってたんだけどさ、何かわかる?」
京太郎「いいこと?…うーん、心当たりはないですけど」
誠子「そっか。ならいいや」
908: 2019/07/17(水) 00:21:20.36 ID:bNkYKrQl0
ガチャ
淡「お帰りテルー!ラクショーだったね!」ブンブン
尭深「お疲れ様です」
照「…まだ試合は終わってないから、安心するのは早いよ淡」
淡「ごめんなさーい」
誠子「どうでした?」
照「…普通…かな」
照「…そう、普通じゃなかったといえば菫。いつもより元気だったけど」
誠子「そうなんですよ、ちょっといいことがあったって言われてて」
照「いいこと……」
ジ-
京太郎「…いやいや、俺ホントに知らないんですって」
照「…そう」
909: 2019/07/17(水) 00:23:47.81 ID:bNkYKrQl0
淡「むむむ…そうだ、帰ってきたらスミレにゴーモンしなきゃ!」
誠子「…詰問、な。怖いこと平気で言うなよ」
淡「?」
照「…言わなかったのなら、訊いても教えてくれないと思うよ」
淡「むむ…ならきょーたろー!知ってること全部はきなさい!」
京太郎「だーかーらー」
ヤイノヤイノ ワ- ギャ-
尭深「…次鋒戦、始まっちゃうよ?」
照「淡、そこまで」
淡「ちぇー」
誠子「…ほら、チョコ開けたから食べよ?」ゴソッ
尭深「…昨日買ってたやつだ、いいの?」
誠子「みんなで食べよって思ってたからね」
淡「いやった!」ガバッ
910: 2019/07/17(水) 00:24:54.11 ID:bNkYKrQl0
照「……」ウズウズ
京太郎「…じゃあ俺ももーらいっ、先輩方もどうぞ」スッ スッ
尭深「あっ、ありがとう」
照「…いただきます」カサッ ハムッ
照「…ちょっとビター、でもこれもあり」
誠子「照先輩のオッケーいただきましたー」ガッツポ
淡「うんうん、亦野先輩にしてはやるじゃん」
誠子「あ?なんか言ったか、聞こえなかったんだけどー」
淡「なんでもないよ!」
>ロン、7700
尭深「…さすがですね」
照「…尭深も普通通りで、大丈夫」
尭深「あっ…はい。頑張ります」ペコリ
・
・
・
916: 2019/08/20(火) 00:21:29.31 ID:tz2qCxoR0
・
・
・
『終局ー!!最後は苅安賀のトビ終了だ!一位通過はやはり王者白糸台、堅実な打ち回しで一度も首位を譲らず準決勝進出です』
『二位は福岡代表新道寺!下馬評通りの実力を発揮できたと言えるでしょう。先鋒の花田煌は…』
淡「かえったぞー」バ-ン
尭深「お帰り淡ちゃん」
誠子「おー、どうだった?初陣は」ウリウリ-
淡「ラクショーラクショー、なんかツマンなーい」グデ-
917: 2019/08/20(火) 00:23:31.70 ID:tz2qCxoR0
京太郎「部長、新道寺のレポートです」
菫「助かるよ、ありがとう」
京太郎「副将と大将の連携?みたいなのは無かったんですかね。普通に打っていたように見えたんですが」
菫「うーん…一度同じ局で流局しただろう?それかもしれない」
京太郎「…失敗してやめた?」
菫「無理しなかったと言ったほうが正しいかもしれないな。下と点差もあったし……さて」
照「…菫」
菫「ああ行こうか」
京太郎「…どちらへ?」
菫「記者会見、というかインタビューだな」
918: 2019/08/20(火) 00:24:49.88 ID:tz2qCxoR0
菫「…そうだ、一緒に来てみないか?」
京太郎「え?……いやいや、記者会見ってあれでしょう?何人かに囲まれてマイク向けられて」
菫「十数人はいるんじゃないかな…なあ照」
照「…専用の会見場がセットされてる。去年と同じなら」
京太郎「なおさら俺が行ってどうするっていうんですか」
菫「別に質疑応答しろとは言ってない。付いてきて控え室にいてくれたらいい。行き帰りのボディーガードみたいなものだ」
京太郎「でもですね…」
照「…京ちゃんお願い。私頑張るから、来て」
京太郎「…分かりました。見るだけですからね」
菫(…チョロいなこいつ)
菫「…話が早い。持ち物は何もいらないから、新道寺の話の続きでもしながら行こうか」
919: 2019/08/20(火) 00:27:05.11 ID:tz2qCxoR0
・
・
・
スタスタ
京太郎「俺思ってたんですけどね」
菫「うん?」
京太郎「新道寺を狙い撃ちして敗退させた方が準決勝楽にできるんじゃないかって」
菫「そういう考え方もできる。…照、そっちじゃない」クイッ
照「そう。…なんの話?」
菫「なぜ新道寺を落としに行かなかったかって」
照「それも有りだった。でもリスクがある」
京太郎「リスクですか?」
菫「実力からするとこの卓は二強二弱だった。新道寺を削って他を上げるには少々無理打ちしないといけない。足元をすくわれるかもしれないし、うちの後ろ三人は全国の経験が浅い」
920: 2019/08/20(火) 00:28:53.68 ID:tz2qCxoR0
菫「あとは準決勝のことだが、単純に楽になるともいえないと思う」
京太郎「…というのは?」
照「…さっきの菫の説明を借りて、準決勝が三強一弱になったとするね。手っ取り早く勝ち抜きたかったら、どうすると思う?」
京太郎「それは…弱いチームを狙い撃ちして飛ばすのが一番です」
照「そう。余程じゃないとそういう戦いになると思う。そうなると一位と三位の差が小さくなって、大きな手一つで敗退が決まってしまうことになる」
京太郎「…なるほど」
照「ロンは回避できても、ツモ順は誰でもずらせるわけではないから」
・
・
・
921: 2019/08/20(火) 00:30:48.93 ID:tz2qCxoR0
チラリ
京太郎「…バリバリの会見場じゃないですか」
照「…?そうだよ?」
京太郎「緊張、しないんですか」
照「いつものことだから」
菫「卓を囲むのに比べればね、大したことない」
京太郎「俺ならゲロ吐きそうですけど」
菫「最初はそうだったよ、私でもな」
京太郎「…想像もつかないですけど」
>白糸台高校、お願いしまーす
菫「行こうか」
照「…行ってくるね」
925: 2019/08/20(火) 00:50:32.41 ID:tz2qCxoR0
・
・
・
スタスタ
菫「…ほとほと感心するよ、全く」
照「感謝してるのは本当。ウソは言っていない」
京太郎「……」
照「京ちゃん、私おかしかった?」
京太郎「いえ、…立派でした、と、思います」
菫「…どうした、しどろもどろで」
京太郎「いやその、ですね…」
ズラ-ッ
「「「「お疲れ様です!」」」」
フカブカ-ッ
京太郎(いやこんなの聞いてないよ?なんか怖くなってきたよ?)
菫「?」
926: 2019/08/20(火) 00:57:15.13 ID:tz2qCxoR0
菫「…なんだ、そんなことか。それこそ緊張することはないのに」
京太郎「いや…緊張というか…その、殺気というか…」
ギロッ
(菫様と菫様と菫様とあんな近くで近くで近くで近くで)ゴゴゴゴ
京太郎(ひぇっ)
京太郎「は、早く帰りましょう。皆さん待ってるだろうし」スタコラサッサ
菫「あ、ああ」
照(…お腹空いたなぁ)テクテク
930: 2019/08/26(月) 01:16:56.62 ID:qu1t/B5Q0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
京太郎(…徒歩ですぐとはいえ、汗ばむな…ロビーも涼しいのは流石)
京太郎(さて、時間は)ヨッコラセ
???「だーれだっ」ピョンッ
京太郎「おうふ…衣先輩、それにみなさんも。おはようございます」
衣「うむ、おはよう京太郎。時剋に忠実なのは感心感心」
透華「衣こそ、今日は早起き一番乗りでしたのよ」
衣「心底待ち望んでいたからな!試合を見るのも、京太郎に会うのも」
京太郎「…光栄です」
京太郎(…徒歩ですぐとはいえ、汗ばむな…ロビーも涼しいのは流石)
京太郎(さて、時間は)ヨッコラセ
???「だーれだっ」ピョンッ
京太郎「おうふ…衣先輩、それにみなさんも。おはようございます」
衣「うむ、おはよう京太郎。時剋に忠実なのは感心感心」
透華「衣こそ、今日は早起き一番乗りでしたのよ」
衣「心底待ち望んでいたからな!試合を見るのも、京太郎に会うのも」
京太郎「…光栄です」
931: 2019/08/26(月) 01:18:06.71 ID:qu1t/B5Q0
純「京太郎、ちょっと立ってみ」
京太郎「なんすかいきなり…おっとと」
純「智紀どう?どっちが背ぇ高い?」
智紀「私に聞くのは間違ってる…うん、まだ純の方がちょっと高いかな」
京太郎「あー、マジっすか…」
純「まだまだだな、だいぶ伸びたけど。ちゃんと食ってるか?」
京太郎「それはもう…先輩も伸びたんじゃないですか?」
純「…バレた?チョロっとだけな。まだまだ追いつかせねぇから」ガハハ
智紀「…朝からそんなに元気なの、羨ましい」
京太郎「いつもそうでしょう」
智紀「まあね」
932: 2019/08/26(月) 02:09:31.12 ID:qu1t/B5Q0
京太郎「…それにしても」
一「どしたの?」フフン
京太郎「ちょっと心配だったんですよね、一先輩が何着てくるか」
一「心配じゃなくて期待の間違いじゃないのかな」
京太郎「なに言ってんですか」
一「なに、不服?…服だけに」プフッ
京太郎「自分でウケてちゃ世話ないですよ…いや、心底ホッとしてますよ、今日はまともな服で」
一「昨日はいつもの服だったけどね」
京太郎「アウトォー!」
933: 2019/08/26(月) 02:11:00.92 ID:qu1t/B5Q0
一「騒がしいなぁ、周りに迷惑かけちゃダメだよ?」
京太郎「先輩に言われたくないですっ」
一「えぇ…むしろ利益をもたらしてると思うけどな。眼福でしょ?」
京太郎「その意識がある時点で重症だって自覚あります?」
一「やー…寒かったんだよね案外。ここよく冷房効いてるでしょ」
京太郎「俺が今鳥肌立ってるのは別の理由でですけど」
一「それにキミが来るって分かってたし…至近距離で男子に柔肌をずっと晒す趣味はボクには無いかなぁ」
京太郎「なんですかその自意識。中途半端に常識人ぶるのやめてください」
一「ボクはいたって普通の常識を持ち合わせてると思うんだけど」
京太郎「服のセンスを除けばですけどね」
一「辛辣だなぁ」ハァ
937: 2019/10/01(火) 00:13:54.84 ID:9agXujI00
一「まあね、キミに理解されるようじゃ全然ダメだから別にいいんだけどさ」
京太郎「サラッと俺をdisりましたねこの変態先輩」
一「罵倒するにも先輩呼びを省かないとこ嫌いじゃないよ」
ワ- ギャ-
智紀「…こんなに仲悪かったっけ」
純「…えっ」
智紀「えって何」
純「いや…節穴かって」
智紀「えっ」
一「…誤解しないで欲しいんだけどね、ボクにはあの服の声が聞こえるんだよ。『どうか着こなしてくれ』って」
京太郎「あっ、宗教の話は間に合ってるんで大丈夫です」
透華「二人とも、そのくらいにして中に入りますわよ」
「「はーい」」
・
・
・
938: 2019/10/01(火) 00:16:05.21 ID:9agXujI00
衣「今日も画面がよく見える!」
京太郎「いい席ですね。さすがハギヨシさん仕事が早い」
透華「ありがたいことですわ、本当に」
衣「隣に座るぞ京太郎」フンス
京太郎「うっす」
一「じゃあボクも」ポスン ジャラッ
京太郎「…ずっと思ってたんですけどその鎖、重くないんですか」
一「ん?付けてみたい?」
京太郎「何が悲しくてそんな奇抜なファッションでお揃いにしないといけないんですか」
一「そりゃYシャツスラックスに鎖は合わないし、ねぇ…もうちょっとパンクなイメージで全身コーデしてあげるよ」
京太郎「俺出禁になりかねないんですが」
一「昨日のボクの格好の話する?」
京太郎「そうだった!」
939: 2019/10/01(火) 00:17:50.44 ID:9agXujI00
京太郎「いや…でも校則とか考えるとやっぱまずいですね、うん」
一「そっか残念。付け心地試してもらいたかったんだけどなぁ」
京太郎「えぇ…」
一「でもお揃い自体は拒否しないんだ」ズイッ
京太郎「それはまあ…頬にシールくらいなら考えなくもないです」
一「へぇ…ふぅん…」
智紀「…私の目は節穴だった」
純「それみろ、ジュース奢りあざーす」
智紀「くっ、貴重な軍資金が」
純「智紀はもっと人と接さなきゃ…部屋にこもってばかりでないでさ、な?」
智紀「ぐぬぬ」
940: 2019/10/01(火) 00:35:14.55 ID:9agXujI00
ガサゴソ
京太郎「さて…と」
一「あっ、メモるの?勉強熱心だねー」
京太郎「レポート出さないといけないんで。外出との交換条件です」
一「それは大変。手伝うことある?」
京太郎「…知ってること教えてくれたら、そりゃ嬉しいですけど」
一「おぉ、まるでスパイ」
京太郎「…すいません」
一「冗談。うーん…まあ試合見てたらいろいろしゃべっちゃうよ、ねえ透華?」
透華「京太郎さん」
京太郎「はい」
透華「私たちは清澄を応援するために来ました。けれど、あなたのことも同じように助けたいと思っているのですわ」
衣「衣は京太郎に会うのを楽しみにしていたぞ!」ピョンピョン
透華「ですから遠慮せずに頼りなさい!これは先輩命令ですわよ」
京太郎「…先輩方には敵いませんね」
衣「せんぱい、だからな」フフン ドヤァッ
一(かわいい)
透華(かわいい)
京太郎(かわいい)
衣「……むぅぅぅ!揃いも揃って何だその慈愛に満ちた視線は!これではっ…衣は子どもじゃないんだぞ!」
ウワ-ン ジュン トモキ-
944: 2019/10/02(水) 00:37:36.06 ID:lUI718k20
一「…で、どこが勝ち抜くと思う?」
京太郎「清澄…と言いたいですけど願望半分ですね。永水はシードだし姫松も強豪だし」
一「んー、まあボクたちも地元贔屓、色眼鏡かかってるかもしれないけどね…でも清澄は強かったよ」
透華「それに今も、強くなっているはずですわ。県大会の途中でも合宿の数日間でも、大きく成長してきましたもの」
一「姫松も永水も前の大会とかで対戦してデータは集めてるはずだし、そうじゃない二校を中心に見てていいんじゃないかな」
京太郎「…んー、まあ…それもそうか、そうですね」
一「というわけで、清澄じっくり見よう!応援しよっ!ほら始まるよ」グイッグイッ
京太郎「わ、わかったっすから落ち着いて」
945: 2019/10/02(水) 00:38:38.21 ID:lUI718k20
・
・
・
京太郎「…永水が中心になって進んでいきますかね」
透華「同卓はそのつもりでいると思いますわ。“牌に愛された子”神代小蒔ですから」
一「衣もそんな風に言われたりしたっけ」
衣「…無縁の者達の品評に興味はない。が、通ずるものはある。此の世のものとは思えぬ“気”を、時折感じる。…一度は卓を囲んでみたいな」
京太郎「んで、清澄は片岡さん…東場に滅法強く、県予選の東風スコア更新」
透華「巧拙はともかく、東場での勢いは本物ですわ」
純「県大会の時はピーピー泣いてたけどな」
一「ちょっ、その話するの?悪いの純くんでしょ」
京太郎「先輩何したんですか…」
946: 2019/10/02(水) 00:44:09.03 ID:lUI718k20
・
・
・
京太郎「そういえば宮守高校?も初出場なんですね。対等以上に渡り合ってる感じですけど」
一「部員5人だけ、全員三年生なんだって」
京太郎「…いいですよねそういうの。青春って感じ」
一「ねー」
智紀「むしろあの二人気が合うのでは…でも彼には黒髪執事がベストフィット…のはずなんだけど…」ブツブツ
純「ナマモノはやめとけよー、腹壊すぞー」
京太郎「そういえば次鋒は智紀先輩でしたよね。…先輩?」
智紀「……あぁごめん。そう。染谷さんは…巧いよ。大局観があってそれに沿って打ってるというか…あとちょっと染めがち」
京太郎「それは牌譜見てて思いました」
純「研究済みかよ」
京太郎「そんな大それたものじゃあ…予選時点での話ですし」
純「いや、白糸台が清澄のことちゃんと見てるってのがな」
京太郎「ああ……部長と俺、照さんくらいですよ」
純「チャンプも気にしてんのな」ハハッ
透華「純」
純「あ…わりぃわりぃ。軽率だった」
京太郎「いえ…大丈夫です」
947: 2019/10/02(水) 00:46:28.01 ID:lUI718k20
・
・
・
一「…なんか調子悪そう」
京太郎「やり手の部長って感じでしたけどね。初戦のトバシとか」
透華「ああ見えて緊張しいだったりしますのよ、彼女」
一「へー」
衣「……」
透華「…衣?」
衣「…おなかすいた」グゥゥ
シュッ スタッ
ハギヨシ「軽食をご用意いたしました、遅れて申し訳ありません」
衣「わぁ…!」
京太郎「…分かっててもびっくりするんですけど」
ハギヨシ「それは失礼しました」
透華「助かりますわ。…京太郎さん、お昼はどうしますの?」
京太郎「長めに出てていいとは言われてるので…よければご一緒できれば」
透華「決まりですわね。というわけでハギヨシ、よろしくお願いしますわ」
ハギヨシ「承知いたしました。また何かありましたら」スッ
948: 2019/10/02(水) 00:48:14.28 ID:lUI718k20
京太郎「…美味いっすね、ドーナツ」モグモグ
一「案外甘いのいけるクチだよねー。…あっ、衣の口元」
衣「…?」ムグ?
京太郎「あっ、ちょっと動かないで…はい、取れました」
衣「…一言言わぬか、吃驚するではないか!」
京太郎「あー…すみません、つい」テヘッ
衣「…まあよい。しかしどうだ、やはり格別であろう?ハギヨシお手製の菓子は」
京太郎「あぁ、やっぱりそうなのか…市販と言っても分からないくらいですよ。どうやって作るんだろう」
ハギヨシ「さほど難しい工程はありません、京太郎君なら苦戦しないはずです。レシピはこのように」パラッ
京太郎「…いつの間に。ええっと…確かにこれならまあ。トッピングを工夫しても面白そう」
ハギヨシ「その場合生地に調整を加えるとより良いものに…失礼。後ほどに致しましょう」
京太郎「…そうっすね、試合中なの忘れてた」
949: 2019/10/02(水) 00:49:57.64 ID:lUI718k20
一「…ほんと、研究熱心なこと」
京太郎「なんかすいません……ええっと、ほら!凄いですね姫松のエース。初戦は役満和了してましたし」
一「…でも本質は超守備型っていうね。ある意味一つの頂点だよ、あの人は」
京太郎「守備型…照さんは滅多に放銃しないですけど」
一「チャンプは万能型だよ明らかに。春も見たけど…打ち筋が違うもん。ずっと上の次元を透かして見て打ってるような」
一「雲の上の人だよ。衣のそばにいるボクが言うのもなんだけどさ」
京太郎「…凄い人なのはそうなんですけど、普段は普通ですよ照さんは」
一「おっ、惚気くる?話変えようと持ち出したのに結局ボクが聞きたいところに戻ってくるあたり、キミもお人好しだよねっ」
京太郎「…話変えようとしてたのは認めますけど。別に惚気とかそんなんないです。だいたい照さんとはそういう関係じゃないんですって」
一「わざわざ東京まで追いかけていったのに?」
京太郎「…それ向こうの部長にも言われました」ハァ
一「そうだよ、そう見られてもおかしくはないってことだよ。このドーナツにしたって、どうやったら好みの味になるか考えてたでしょ」
>ツモ! ピッ パシン
京太郎「…何ですか今のツモ」
一「…まあいいけど。竹井さんもやっと本領発揮ってとこかな。しっかりレポート上げたいならここからちゃんと見ることだね」
京太郎「…うっす」
955: 2019/10/23(水) 00:30:58.56 ID:i2449y6m0
・
・
・
透華「キタキタキタ、来ましたわ、おいでませのどっち!」
京太郎「」ビクッ
一「あっ、発作みたいなものだから気にしないで」ヒラヒラ
京太郎「あっはい」
透華「…何ですのその哀れみに満ちた目は。一もそんなぞんざいな扱いはやめてくださいな」
一「あー、ごめんね?そう、透華はあのいろいろでっかい原村和にご執心でさ…」
京太郎「なんすかそれ」ヒキッ
透華「言い方!間違ってはいませんけど誤解を招く言い方!それに『でっかい』とは!無関係なワード!流石の私もキレてしまいますわ!」
京太郎「キレッキレですね」
透華「やかましいですわ!」
シュタッ
ハギヨシ「透華お嬢様。一さんも」
透華「…はっ、頭に血が上ってとんでもない振る舞いを…龍門渕の者として恥ずかしいですわ」
一「ごめん、ちょっとからかい過ぎちゃった」
京太郎(執事すげぇ)
・
・
透華「キタキタキタ、来ましたわ、おいでませのどっち!」
京太郎「」ビクッ
一「あっ、発作みたいなものだから気にしないで」ヒラヒラ
京太郎「あっはい」
透華「…何ですのその哀れみに満ちた目は。一もそんなぞんざいな扱いはやめてくださいな」
一「あー、ごめんね?そう、透華はあのいろいろでっかい原村和にご執心でさ…」
京太郎「なんすかそれ」ヒキッ
透華「言い方!間違ってはいませんけど誤解を招く言い方!それに『でっかい』とは!無関係なワード!流石の私もキレてしまいますわ!」
京太郎「キレッキレですね」
透華「やかましいですわ!」
シュタッ
ハギヨシ「透華お嬢様。一さんも」
透華「…はっ、頭に血が上ってとんでもない振る舞いを…龍門渕の者として恥ずかしいですわ」
一「ごめん、ちょっとからかい過ぎちゃった」
京太郎(執事すげぇ)
956: 2019/10/23(水) 00:34:44.41 ID:i2449y6m0
透華「…原村和はデジタル打ちを極限まで極めていますわ。牌効率や5ブロック理論がどうこうというレベルではなく…配牌時点で和了できる点の期待値を即座に導き出して打ってる…そうですわ」ミョンミョン
京太郎「それでこんな早切り…いやいやいや、そこまでいくともうオカルトみたいなものじゃないですか」
透華「…そうかもしれませんわね」
京太郎「…あのデジタルの権化の透華先輩が言うなら、さぞ凄いんでしょうね、原村さん」
透華「あのってなんですか…まあ、ガチガチの理論派だという自負はありますわ。今も昔も同じように」
京太郎「その節は本当にお世話になりました」ペコリ
透華「他でもないハギヨシの珍しい頼み事でしたし。それに…私自身も結構楽しんでましたのよ、一から勉強しているようで」フフッ
衣「衣も最近ようやっと勉強を始めたんだ!」
京太郎「おぉ、それは偉い」ナデナデ
衣「んみゅ…はっ、撫でるでない!子供じゃないんだぞ!」
京太郎「すみません、撫でやすい位置にあったんで」
衣「むむむ…」
957: 2019/10/23(水) 00:45:13.62 ID:i2449y6m0
透華「…あえて文句を言うとすれば、なぜその時に宮永咲さんを紹介してくださらなかったのか!その一点に尽きますわ」
京太郎「あっ…いや、その時は咲がまた麻雀やるって思いもしなかったので…」
透華「でも一緒に打っていたのでしょう?『家でも実戦形式で特訓している』って言ってましたし」
京太郎「…よく覚えてますね、言った本人も確かじゃないのに…いや、でもそうですね。同時進行でやってました、咲と」
透華「やはり…京太郎さんと幼馴染みだと宮永さんから聞いてからずっと引っかかってましたの。この実力なら京太郎さんを指導できたのでは、と」
京太郎「…咲から言ってきたんですか?俺のこと」
透華「ええ、合宿の時に」
京太郎「マジか…意外」
衣「この前も言ったが…お前が思っているよりも咲は強いぞ、京太郎」
京太郎「…そうなんですかね」
智紀「宮永さんを紹介してほしかった…つまり彼女をチームに入れたいということ。その時外れるのは…多分私、だよね」フッ
透華「あああ智紀!そ、そんなつもりではありませんわ、言葉の綾、ね?本気で言ってるわけではなくて」
智紀「大丈夫透華。私も自分の実力はわかってるつもり。所詮ヒキニート廃人のメイド崩れに過ぎないんだよ…」
透華「ともき…ゆるして…ゆるしてくださいませ…」
ワ- ギャ-
京太郎「次の局始まりますよーお二人さーん」
958: 2019/10/23(水) 00:48:01.21 ID:i2449y6m0
・
・
・
>小四喜炸裂ー!
ワァ- ウォォォッ
京太郎「…すごいポーカーフェイスですね」
透華「…偶然の産物としか思っていませんから、きっと」
京太郎「え…でもあれでしょう、四喜和は永水のヤバい服の人の得意技じゃないですか」
一「さすがにアレはないよね」
京太郎「五十歩百歩だと思いますけど」
一「やだなあジョークがお上手なんだから」
京太郎(…手強い)
衣「巫女の奴、思うように和了れず涙目だったではないか。何があった?」
京太郎「んー、多分宮守の片眼鏡の人が何かしてたんだと思います。こう…能力無効化、みたいな」
衣「ほう。…迂闊に頼りすぎたな」
透華「永水は副将がポイントゲッターでしたし…厳しいかもしれませんわね」
京太郎「…さて、いよいよ次か」
960: 2019/10/23(水) 01:03:37.45 ID:i2449y6m0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『本日第一試合もいよいよ大将戦です…』
淡「うわっ、なんだっけこの服……あっ、巫女さんか」ヒョコ
照「…そう」
誠子「どれどれ……えっ、永水負けてるじゃん」
淡「強いの?」
誠子「淡さぁ、一応みんなで確認したじゃない。シード校だよ?」
淡「そうだっけ。忘れちゃった」アハハ
菫「やれやれ。…他校の結果もいいが、まずは明日の試合だ。対戦相手の牌譜と所感メモに目を通して、しっかりイメージトレーニングをすること」
淡「そう言われても…だいたいなんできょーたろーはいないの!?ずっこいずっこい!」
誠子「もう同じ会話繰り返すの嫌なんだけど。なに、そんなに気になるの?もう好きなの?」
淡「…はあ?違うもん!そんなんじゃないもん!」ブンブンブン
『本日第一試合もいよいよ大将戦です…』
淡「うわっ、なんだっけこの服……あっ、巫女さんか」ヒョコ
照「…そう」
誠子「どれどれ……えっ、永水負けてるじゃん」
淡「強いの?」
誠子「淡さぁ、一応みんなで確認したじゃない。シード校だよ?」
淡「そうだっけ。忘れちゃった」アハハ
菫「やれやれ。…他校の結果もいいが、まずは明日の試合だ。対戦相手の牌譜と所感メモに目を通して、しっかりイメージトレーニングをすること」
淡「そう言われても…だいたいなんできょーたろーはいないの!?ずっこいずっこい!」
誠子「もう同じ会話繰り返すの嫌なんだけど。なに、そんなに気になるの?もう好きなの?」
淡「…はあ?違うもん!そんなんじゃないもん!」ブンブンブン
964: 2019/11/12(火) 00:51:17.74 ID:G/ERKAGt0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
京太郎「姫松の…末原?さん、巧いっすね」
衣「気になるか」
京太郎「打ち筋は俺好みですね。信念や理念が一打一打に籠もってるような…名門校の大将張ってるだけある、というか」
衣「落ち着き払っているように見えるが…内では案じているんだろう?」
京太郎「……バレますか。いや…だって緊張しますよ?まともに他人と打ってるの数年ぶりに見るわけで」
衣「…まあそう焦るな。衣だって十二分に肩入れしてるんだ、その程度は諒解できる」
衣「衣に勝った咲を信じろ。衣はそうするし、それしかできぬ」
>カン! ツモ,リンシャンカイホウ
衣「そら来たぞ、しかと見よ」
京太郎「…うっす」
京太郎「姫松の…末原?さん、巧いっすね」
衣「気になるか」
京太郎「打ち筋は俺好みですね。信念や理念が一打一打に籠もってるような…名門校の大将張ってるだけある、というか」
衣「落ち着き払っているように見えるが…内では案じているんだろう?」
京太郎「……バレますか。いや…だって緊張しますよ?まともに他人と打ってるの数年ぶりに見るわけで」
衣「…まあそう焦るな。衣だって十二分に肩入れしてるんだ、その程度は諒解できる」
衣「衣に勝った咲を信じろ。衣はそうするし、それしかできぬ」
>カン! ツモ,リンシャンカイホウ
衣「そら来たぞ、しかと見よ」
京太郎「…うっす」
965: 2019/11/12(火) 00:52:40.08 ID:G/ERKAGt0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
照「……」
スクッ
菫「…もういいのか、観なくて」
照「うん。大丈夫みたいだから。…打ってくるね」
スタスタ
トタトタ
淡「きゅーけいきゅーけいっ!…あれ、テルーは?」
菫「練習しに行ったよ」
淡「入れ替わりかー…つまんないの」チョコン
誠子「入れ違い、な」ドッコラセ
照「……」
スクッ
菫「…もういいのか、観なくて」
照「うん。大丈夫みたいだから。…打ってくるね」
スタスタ
トタトタ
淡「きゅーけいきゅーけいっ!…あれ、テルーは?」
菫「練習しに行ったよ」
淡「入れ替わりかー…つまんないの」チョコン
誠子「入れ違い、な」ドッコラセ
966: 2019/11/12(火) 01:02:54.76 ID:G/ERKAGt0
淡「…あっ、この人テルーと同じ名字!」ズビシッ
誠子「そりゃ名字くらいかぶるでしょ、そんな珍しい名前じゃないし」ゼンコクダシ
淡「ふーん」
菫「……」
>カン! ツモ,リンシャンカイホウ
淡「ほえー」
誠子「お前、当たるかもしれない相手なんだしどうせならちゃんと見ろよ…」
淡「えっ…ほんとだ、大将だ!」
誠子「おいおいおい氏ぬわコイツ」
淡「そのくらいじゃ氏にませーん」
菫(……どうするのかな、照)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
誠子「そりゃ名字くらいかぶるでしょ、そんな珍しい名前じゃないし」ゼンコクダシ
淡「ふーん」
菫「……」
>カン! ツモ,リンシャンカイホウ
淡「ほえー」
誠子「お前、当たるかもしれない相手なんだしどうせならちゃんと見ろよ…」
淡「えっ…ほんとだ、大将だ!」
誠子「おいおいおい氏ぬわコイツ」
淡「そのくらいじゃ氏にませーん」
菫(……どうするのかな、照)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
967: 2019/11/12(火) 11:54:46.46 ID:PrekofYXo
乙
968: 2019/11/12(火) 14:36:35.67 ID:8psezfiZ0
乙ですのだ!
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