1: 2008/12/08(月) 06:37:07.02 ID:sesD0ynA0
ジュン「来ちゃったって・・・お前ここに住む気なのか?」

水銀燈「そうよ、ジュンもその方が嬉しいんでしょ?」

ジュン「いいから帰れよ」

水銀燈「どうして?私の事好きって言ってくれたじゃな?」

ジュン「ダメなもんはダメなんだ、ほら帰れって」

水銀燈「もうめぐとはお別れを済ませてきたわ、今更帰る場所なんてないわよ!」

ジュン「何本気にしてんだよ・・・うちにはドールが三体もいるんだぞ?」

水銀燈「真紅達よりも私が一番好きって言ったじゃない!」

蒼星石「ジュンくんは誰にでもそう言うんだよ、僕も言われたしね」

水銀燈「そんな・・・」

蒼星石「いいじゃない、一緒に住まなくてもたまにこうやって可愛がってもらえばね」

ジュン「蒼星石は賢い子だな、お前が一番好きだよ」

蒼星石「またそうやって嘘ついて・・・チュッ」

水銀燈「嘘よ・・・・」
ローゼンメイデン ねんどろいど 水銀燈 (ノンスケール ABS&ATBC-PVC 塗装済み可動フィギュア)
12: 2008/12/08(月) 11:49:14.31 ID:wzdQeyhd0
水銀燈「ねぇ……お願い……嘘って…嘘って言ってよぉ……」

水銀燈「……ジュンは私を……抱いてくれたじゃない……」

ジュン「なんだよ……一回寝ただけで、もう彼女気取りか?」

蒼星石「ふふっ…彼女は純粋なんだよ。さっ、ジュン君……ここは寒い。早くベッドで僕を暖めてよ」

ジュン「あぁ…お前もくるか? 水銀燈。終わったら帰ってもらうけどな」



水銀燈「……やぁよ……そんなの……やぁよお!!」

21: 2008/12/08(月) 12:51:59.35 ID:wzdQeyhd0
ガシッ

水銀燈「お願い……私を捨てないで……! 何でも…何でもするからあなたの傍に置いてぇ……うっ…ひっく……」

ジュン「なんだよ……今度は泣き落としか?」

蒼星石「……最低だね、水銀燈。泣けばジュン君の同情を引けると思ってるの?」

水銀燈「!? ……そ、そんなこと…私はぁ……」

蒼星石「だったら……僕のジュン君から手を離して……汚らわしい!」

ガッ

水銀燈「あうっ!」

ジュン「……待てよ……蒼星石」

蒼星石「……?」

ジュン「……さっき……何でもするって言ったよな? 水銀燈」

27: 2008/12/08(月) 13:37:15.75 ID:wzdQeyhd0
水銀燈「!!」

水銀燈「え…えぇ……わ、私…何でもするわぁ……お料理だって…」

ジュン「翠星石がいる」

水銀燈「……か、家事だって」

ジュン「雛苺がいる」

水銀燈「…………あなたの話し相手に…」

ジュン「真紅がいる」

水銀燈「………………わ、私の体を……好きに……ジュンの望む…ままに…」

蒼星石「僕がいるよ。ついこの間まで生娘だった君に何ができるの?」

水銀燈「……」



ジュン「……めぐ……」

水銀燈「……え?」

ジュン「……めぐって女の名前だよな……?」

32: 2008/12/08(月) 14:16:31.22 ID:wzdQeyhd0
水銀燈「!?」

ジュン「それにさっきの口ぶり……お前のミーディアムだよな? めぐって」

蒼星石「……ジュン君…もう新しい子は……」

ジュン「お前は黙ってろ」

蒼星石「……うん……」

水銀燈「め、めぐが……何なの……?」

ジュン「質問に答えろ」

水銀燈「……え、えぇ……めぐは私のミーディアムよぉ……」

ジュン「……そうか」ニヤァ…

ジュン「……水銀燈」

水銀燈「な、何?」



ジュン「そのミーディアムのことを……詳しく聞かせろ」

51: 2008/12/08(月) 15:29:49.44 ID:wzdQeyhd0
水銀燈「――――という訳よぉ……」

ジュン「ふぅん……薄幸の少女ねぇ……」

水銀燈「……ね、ねぇ……めぐだけは……」

ジュン「……水銀燈」

水銀燈「!……な…なぁにぃ……」

ジュン「いい子だな……傍に来いよ……」

水銀燈「!? ほ、本当!! あぁ……ジュン! ジュン!……」ギュッ

蒼星石「ジュン君……」

ジュン「……めぐさんとお別れしてきたんだって? いけないなあ……水銀燈のミーディアムなんだから」

水銀燈「でもぉ、私……ジュンのことが……」



ジュン「マスターとドールは仲良しでなきゃあ……そうだ…今度僕が一緒に行って仲直りさせて上げるよ……」

水銀燈「本当!? やっぱり……あなたは……私の大好きなやさしいジュンだわぁ……」

ジュン「ふふふ……」ニヤァ…

蒼星石「……」

76: 2008/12/08(月) 16:41:18.47 ID:wzdQeyhd0



水銀燈「ジューン、こっちよぉ~」

ジュン「そう慌てるなって、めぐさんはどこにも行きや…いや、動けないんだったな……ふふふ……」

水銀燈「?」

ジュン「いや……何でもない。それよりもめぐさんの部屋はどこにあるんだ?」

水銀燈「あそこ……あっ……」

ジュン「どうした……?」

水銀燈「……めぐが……あの…窓から見える黒髪の子が……めぐよぉ……うっ…ひっく……」

ジュン(……ほぉ……)

水銀燈「……めぐぅ……めぐぅ……うっ…えぐ……」

ジュン「ほらほら、そんな泣き顔じゃめぐさんが心配するだろ……僕が先に話をしてくるから、合図したら窓から入ってきな」

水銀燈「……う…うん……うっ…ひっく……」

81: 2008/12/08(月) 17:01:13.72 ID:wzdQeyhd0
病院内……



ジュン「さて……そろそろ出て来いよ……蒼星石」

スタッ

蒼星石「……」

ジュン「分かってるよな? やるべきことは……」

蒼星石「……ジュン君」

ジュン「何だ?」

蒼星石「僕じゃ……僕じゃ駄目なの……?」

ジュン「……お前まで水銀燈みたいな事を言うのか……? もっと聞き分けのいい奴だと思ってたんだが……」ジロッ

蒼星石「うっ……」

ジュン「ふぅ……翠星石でも呼ぶかな……?」

蒼星石「!?……ごめん! 許して! 何でも従います! だ、だから……僕を……捨てないで!」

ジュン「……」ニヤァ…

82: 2008/12/08(月) 17:17:23.68 ID:wzdQeyhd0
ジュン「この部屋だ」

蒼星石「……」

ジュン「何してんだよ? さっさと夢の扉を開けよ」

蒼星石「……うん」



めぐ「……あ、あれ……? き、急に眠k……」パタンッ

ガラッ

ジュン「ほぅ……これは……遠目に見るよりもずっと美しい……」

蒼星石「……」

ジュン「いいね…いいねぇ……」ジロジロ

蒼星石「……あ、あの……ジュン君……」

ジュン「おっと…悪いな……じゃ、始めるか」

85: 2008/12/08(月) 17:33:31.16 ID:wzdQeyhd0
めぐの夢の中……



ジュン「これがめぐの夢の中か……随分辛気くさい所だな」

蒼星石「……」

ジュン「ほら、さっさと心の樹を探して来いよ」

蒼星石「う、うん……」タッ



ジュン「さあて、めぐちゃんはどこにいるのかな~っと」

97: 2008/12/08(月) 17:43:02.40 ID:wzdQeyhd0



めぐ「……うっ…うっ……水銀燈……私を…捨てないで……」



ジュン(……あれがめぐか……ったく女ってのは……みんな同じこと言いやがる……)



めぐ「……うっ…うっ……水銀燈……」

ジュン「こんにちは、めぐさん」

めぐ「!?……だ、誰!……」

ジュン「ちっ……(何モタモタしてやがんだ? 蒼星石の奴……)」

102: 2008/12/08(月) 17:49:58.83 ID:wzdQeyhd0
心の樹の前……



蒼星石「……」

蒼星石「……ごめんね……めぐさん……」

蒼星石「こうしなきゃ……僕は…僕は……」

ジョキンッ

蒼星石「……」

ジョキンッ

蒼星石「……」

113: 2008/12/08(月) 18:00:41.57 ID:wzdQeyhd0



めぐ「……っつうぁ……」ビクッ

ジュン(ふんっ……やっとか……)

めぐ「……」

ジュン「めぐ」

めぐ「……」

ジュン「めぐ」

めぐ「……なあに?」

ジュン(猜疑心は取り払われたようだな……)



ジュン「……僕はね……水銀燈の友達なんだ」

129: 2008/12/08(月) 18:16:31.33 ID:wzdQeyhd0
めぐ「!?」ポロ…

めぐ「……すいぎん…とう……うっ……」ポロポロ

めぐ「……うっ…うぅ……水銀燈……私の…天使様……」ポロポロ

めぐ「……捨てないで……水銀燈……私を…捨てないで……うっ…ひっく……」ポロポロ

ジュン「めぐさん……」

めぐ「うっ……?」

ジュン「……水銀燈からの言葉を伝えるね……」

めぐ「……水銀燈……の?」

ジュン「……うん」



ジュン「『あなたなんて大っ嫌い、顔も見たくない』……と」

148: 2008/12/08(月) 18:29:13.90 ID:wzdQeyhd0
めぐ「!!!!」



めぐ「うっ……」

めぐ「……んぐぅ……」

めぐ「……うぁぁあああああああああああん!!!!」



ジュン(くくっ……疑いのない心に言葉の刃は、さぞ苦しいだろう……)



めぐ「……んぁ…うぐ……水銀燈! あぅ……水銀燈! ……わ、私を……あぶ……嫌わ……うぷっ……うぉえぇ……」ボチャボチャ…

ジュン(ちっ……汚ねえな……)

166: 2008/12/08(月) 18:40:40.14 ID:wzdQeyhd0
めぐ「あぶっ……うぐ……ぐぅ…おぅえ……」

ジュン(……そろそろ……か)

ジュン「大丈夫だよ……めぐさん」

めぐ「あうっ……?」

ジュン「僕が……めぐさんと水銀燈を仲直りさせてあげるから……」

めぐ「!!」

ジュン「大丈夫、僕を信じて……」

めぐ「うっ…うっ……お願いします……お願いします……」



ジュン(……くくくっ……堕ちた……)

190: 2008/12/08(月) 18:57:46.06 ID:wzdQeyhd0



蒼星石「あっ……ジュン君……」

ジュン「待たせたな」

蒼星石「ううん……それで…めぐさんは……?」

ジュン「あぁ……今の彼女は僕のことを天使…いや神の様に思ってるよ…くくく……」

蒼星石「……そう」

ジュン「刷り込みは終了だ。さあ現実へ戻るとするか……お前は本当によく出来た僕の彼女だよ」

チュッ

蒼星石「!!」

ジュン「ふふ……褒美は…後でな……」

蒼星石「うん!」

206: 2008/12/08(月) 19:15:39.34 ID:wzdQeyhd0
めぐの病室……



めぐ「……うっ……」

蒼星石「目を覚ました様だね……」

めぐ「あっ…あなた達は……」

ジュン「やあ…めぐさん」

めぐ「あなたは…夢の……」

ジュン「そう……水銀燈の大事な大事な友達だよ……」

めぐ「あっ…あっ……」

ジュン「みんな僕に任せて……何も心配はいらない」

めぐ「あなたの……あなたの名前は……?」

ジュン「……ジュンです」

268: 2008/12/08(月) 20:52:38.63 ID:wzdQeyhd0
めぐ「あの…あの……」

ジュン「水銀燈のことだね?」

めぐ「!……はい」

ジュン「実はすぐそこまで来ているんだ」

めぐ「!? お願い…水銀燈に……水銀燈に会わせて!!」

ジュン「……落ち着いて……めぐさん……今、感傷的になってはいけない……」

めぐ「えっ…え……」

ジュン「やっと僕が水銀燈をここまで連れてきたんだ……めぐさんが取り乱してはここまでの取り組みが水の泡になってしまう……」

めぐ「ど、どうすれば……」

270: 2008/12/08(月) 20:53:07.45 ID:wzdQeyhd0
ジュン「いいかい? 僕が良いというまで水銀燈に話しかけてはいけないよ」

めぐ「そんな……!?」

ジュン「どんなに水銀燈が好意的に話しかけてこようと……一切の反応をしてはいけない……僕の言うことなら分かるよね……」

めぐ「でも…うっ……」ズキッ

蒼星石(刷り込みされためぐさんには、ジュン君の言葉は神の言葉……抗いようもない……)

ジュン「いいね……」

めぐ「……はい」

284: 2008/12/08(月) 21:20:42.58 ID:wzdQeyhd0
窓から水銀燈を手招きするジュン



水銀燈「!?」

水銀燈「めぐ……、もう何も悩まなくていいのね……全て愛するジュン
に委ねれば……」バササッ



ジュン「おい、見ろよ…あの無邪気な顔を。くくく……」

蒼星石「……」

ジュン「分かってるね……めぐ」

めぐ「はい……」


バサッ


水銀燈「めぐ…めぐぅ……」

めぐ「……」



今日はここまで

290: 2008/12/08(月) 21:29:05.44 ID:fFjjrCzZO
終わりだと

293: 2008/12/08(月) 21:34:42.68 ID:M8RrUt3Y0
なん…だと…

370: 2008/12/09(火) 11:37:42.44 ID:bCPVhffW0
水銀燈「ごめんね……めぐ……この間はお別れなんて言っちゃって……」

めぐ「……」

水銀燈「わ…訳があるの!……私…好きな人ができちゃって……」

めぐ「……」

水銀燈「でもね…でもね!……その人がめぐと仲良くしなさぁいって……」

めぐ「……」

水銀燈「……怒ってるの?……めぐ……」

めぐ「……すぃ……」

ジュン「……めぐ」ボソッ

めぐ「!!……」

水銀燈「お願ぁい! 何か言ってぇ!!……でないと私…私……」

めぐ「……うっ……」

水銀燈「めぐ……?」


めぐ「……かはっ!…うっ…う……」バタッ

水銀燈「めぐぅ!?」

371: 2008/12/09(火) 11:47:38.28 ID:bCPVhffW0
めぐ「あっ……ぐぅ……かはぁ……」ヒューヒュー

水銀燈「めぐ! めぐぅ!?」

ジュン「ここから出ろ! 水銀燈、蒼星石!」

水銀燈「えっ…えっ……?」

ジュン「お前達がここに居たんじゃ人を呼べないんだよ!」

水銀燈「でも…でもぉ……めぐが…めぐがぁ……うっ…うく……」



ジュン「これ以上めぐさんを苦しめるな!!」

水銀燈「!?」

377: 2008/12/09(火) 12:51:36.21 ID:bCPVhffW0
水銀燈「私の……せい……?」

めぐ「……と…ぅ……」ヒューヒュー

蒼星石「……さっ…一緒に来るんだ……水銀燈」

めぐ「……すぃ……ぅ……」ヒューヒュー

水銀燈「……」

蒼星石「水銀燈……?」



ジュン「おい! 何してんだ、さっさと連れてけよ!」

蒼星石「あっ……うん……」



めぐ「……ぃ……ぅ……」ヒューヒュー

水銀燈「……」

380: 2008/12/09(火) 13:31:31.55 ID:bCPVhffW0
あれから数週間……めぐさんは一命をとりとめることが出来たが
以前のような美しさは無く、廃人のようになってしまった。

ジュン君は言った……人の心を支配するには徹底的に人格を破壊すべきだと……
……心を修復する過程で、救いの手を差し伸べることで自らを神……と認識をさせるらしい

刷り込み……抑圧支配……思考も判断も全てジュン君に委ねます……と

何故僕はこんなことを考えるようになったのだろう
僕も心を壊されてしまった……?

わからない……わからないよ……教えて……ジュン君……

382: 2008/12/09(火) 13:43:04.48 ID:bCPVhffW0
―――「……い」

―――「…おい」

―――「おい!」



蒼星石「! な、何?……ジュン君」

ジュン「何、ぼーっとしてるんだよ?……」

蒼星石「ううん……何でもないよ……」

ジュン「まさかお前、まだあのジャンクに構ってるんじゃないだろうな?」

蒼星石「……そんな事……ない…よ」

ジュン「……ふんっ」

383: 2008/12/09(火) 14:04:38.46 ID:bCPVhffW0
僕はジュン君に嘘をついた……。水銀燈は……僕が匿っていた……
何故こんな行動に出たのか自分でも分からない……

姉だから……? ジュン君の命令に背いてまで守るもの?



今は何も……考えたくないよ……

384: 2008/12/09(火) 14:17:56.01 ID:bCPVhffW0



蒼星石「……水銀燈」

水銀燈「あ~~~蒼星石ぃ! あははっ」

水銀燈もめぐさんとの一件以来……心が壊れてしまった……

蒼星石「ほらっ、水銀燈…ちゃんと服を着て……はしたないよ」

水銀燈「う~蒼星石が着せてぇ~」

蒼星石「もうっ……」



最初は興味本位だった。ジュン君の真似事をすることで少しでもジュン君に近づけると
でも……僕の心に芽生えたのは支配欲では無かった……

386: 2008/12/09(火) 14:40:18.46 ID:bCPVhffW0



水銀燈「ねぇ……ヤクルトの蓋とってぇ~」

蒼星石「はぁ……この間教えてあげたでしょ?」

水銀燈「うぅ……とって、とってぇ~~」ジワァ…

蒼星石「分かったよ! 分かったよ……だから泣かないで……」

水銀燈「本当!?」



無邪気に笑みをこぼす彼女はまるで赤子のようだ。
そう……少しでも手を離せば散ってしまいそうな儚い命……

彼女には僕が必要だ……僕が……

389: 2008/12/09(火) 15:02:23.84 ID:bCPVhffW0



水銀燈「ねぇ、蒼星石ぃ……」

蒼星石「何だい? 水銀燈」

水銀燈「えへへ……」

ギュウッ

蒼星石「……えっ?」

急に組み付かれた僕は呆気にとられてしまった

水銀燈「蒼星石、大好きぃー」

蒼星石「……」

あれ……? この状況……僕は前にも……

ズキッ…

鈍い痛みが頭を駆け巡り、僕は考えるのを止めた……思い出してはいけないような何かを……

390: 2008/12/09(火) 15:28:43.83 ID:bCPVhffW0
※※※……はギュっとするのが好きでしたよね……※※※


 
夢を見た……珍しい……
人形でも夢を見る、それは……過去の扉を開くということ


あれは……過去の僕……? 僕の過去……?


僕は緑の衣装に身を包んで嬉しそうに花に水をやっていた



※※※……もう……蒼星石は甘えん坊さんですね……※※※



え……? 僕じゃない? 君は誰……?

392: 2008/12/09(火) 15:54:10.73 ID:bCPVhffW0
「……石」

「…星石」

「蒼星石ぃ!」



蒼星石「ん……あぁ……」

水銀燈「よかったぁ……蒼星石ぃ……」

大きな瞳に涙を貯めながら水銀燈は僕にすがり付いて来た

蒼星石「ふふふ……水銀燈は甘えん坊だなあ……(あれ? この言葉どこかで……)」

水銀燈「だって、だってぇ……蒼星石が泣いてるから……」

蒼星石「え……? 僕が……」

頬に手をあてると濡れた感触が皮膚に伝わり、寝ている間に涙を流したことを悟った

どうして僕は……

394: 2008/12/09(火) 16:12:25.42 ID:bCPVhffW0



ジュン「どうしたんだ、お前? 最近全然姿を見せないじゃないか」

蒼星石「……うん……ちょっとね……」

ジュン「……まぁいい……久々に可愛がってやるよ」

ジュン君は僕と唇を重ねると服の上から小ぶりな胸を弄ってきた

蒼星石「……ん……いいよ……今はそんな気分じゃないんだ……」

ジュン「……っつ……」

急に顔を逸らした為ジュン君の乾いた唇が切れたようだ

蒼星石「あっ……ごめん……」

ジュン「お前……」

397: 2008/12/09(火) 16:43:41.77 ID:bCPVhffW0
ジュン「……」

蒼星石「ジュン君……僕はそんなつもりじゃ……」

ジュン「なんでだ……?」

蒼星石「……え?」

ジュン「なんで……拒否することができる?」

蒼星石「僕だって……嫌な時ぐらい……」

ジュン「いいや! 拒否なんて出来るわけがない! お前らは……」

蒼星石「どうしたの、ジュン君……落ち着いて……」



ジュン「お前らは……僕に依存しなきゃ生きていけない筈なのに!!」

398: 2008/12/09(火) 16:59:22.69 ID:bCPVhffW0
蒼星石「え……?」

ジュン「お前達のささやかな希望や幸福も全部壊して、僕だけを見ていられるようにしたのに……」

蒼星石「何を言っているの……?」

ジュン「……僕だけがお前らの幸せなのに!」

蒼星石「ねぇ……ジュン君……」

ジュン「……もう……忘れてしまったのか……?」

蒼星石「落ち着いて……ジュン君が何を言っているのか分からないよ……」

ジュン「……忘れてしまったのなら……もう一度見ろぉ!」

ジュン君は奥の扉に手を掛けると、力を込めて一気に引き放った

399: 2008/12/09(火) 17:19:04.22 ID:bCPVhffW0
カタカタカタッ……

小さなゼンマイ仕掛けの人形が僕の足に触れて倒れた

蒼星石「あっ……大丈夫かい? 翠星石……」

ジュン「……それがお前の姉か?」

蒼星石「!!……あぐっ……」

猛烈な痛みが頭を襲い、僕は頭を抱えてうつ伏せになった



違う違う違う違う違う……これは翠星石じゃない……なんで…なんで僕はこんな玩具を翠星石と……



ジュン「……思い出したか? 蒼星石……お前の…絶望を」

401: 2008/12/09(火) 17:49:18.27 ID:bCPVhffW0
※※※……は ずーっと一緒ですよ……※※※

※※※……やだよ! こんなの……僕はずっと君と……※※※

※※※……は……の心の中に……だから……※※※

※※※……いかないで!……僕を…僕を一人にしないで……※※※

※※※……最後にギュっと……包んで……抱きしめて……※※※



※※※……泣くな……お前には……※※※

※※※……でも…でも……もう…僕には……※※※

※※※……お前は一人じゃない……傍には……※※※

※※※……君……僕を……離さないで……※※※



※※※……お願い……を……捨てないで……何でも……※※※

※※※……お前は……いらない……※※※

※※※……うぁああああああああああああああああ……※※※

404: 2008/12/09(火) 18:40:27.86 ID:bCPVhffW0
ジュン「……思い出したか? 壊れたお前にその人形を与えたのもこの僕だ!」

蒼星石「うっ…うっ……」

ジュン「……さあ……もう一度全てを忘れて……僕の元に戻って来い……」

蒼星石「……なっ……なんでこんな……酷い……」

ジュン「……酷い……?」

蒼星石「……僕を…僕を……騙してたの?」

ジュン「酷いとは随分な言い草だな……お前に…生きる希望を与えてやったのは僕だぞ」

蒼星石「……こんな…こんな……偽りの希望なんて……いらない!」

405: 2008/12/09(火) 18:51:43.32 ID:bCPVhffW0
ジュン「……どうしたというんだ……? 依存しなきゃ生きられないお前が……まさか……」

蒼星石「……」

ジュン「……水銀燈……か?」

蒼星石「!?……」

ジュン「……依存されることで……お前は……自分を取り戻したっていうのか?……なら……」

蒼星石「やめて……ジュン君……もうこれ以上は……」

ジュン「うるさい! お前は僕だけを見てればいいんだよ!!」

417: 2008/12/09(火) 21:53:45.69 ID:Yy2siB5X0
僕はジュン君の手を引いてnのフィールドに入った。
久しぶりに握る手は大きくそして暖かかった。

ジュン「お前に引かれて飛ぶのも久しぶりだな……」

蒼星石「そうだね…うふふ」



もう何の不安も無い…きっと水銀燈も僕もこの暖かな手に包まれて眠る事ができるのだ……と

418: 2008/12/09(火) 21:59:20.52 ID:bCPVhffW0



水銀燈「蒼星石ぃー」ガバッ

飛び掛るように水銀燈は僕に抱きついてきた。

蒼星石「あははっ……ねぇ…今日はお客さんを連れてきたんだよ」

水銀燈「お客さぁん?」

蒼星石「うん……(大丈夫だよね…きっと)」



胸によぎる一抹の不安を振り切り、僕は水銀燈の手を引いてジュン君の元へ向かった

419: 2008/12/09(火) 22:09:17.61 ID:bCPVhffW0



ジュン「おお……水銀燈……」

水銀燈は不安げな顔をして、僕の背後からジュン君を覗き込んでいる
……無理も無い……彼女の心はまだ完全ではないのだから……

蒼星石「ほら……君の大好きなジュン君だよ」

水銀燈「…ジュ……ン……?」

ジュン「そう……僕だよ…ジュンだ」



水銀燈「……」ススッ

ジュン君を一瞥すると水銀燈は僕の背後へ引っ込んでしまった……

420: 2008/12/09(火) 22:16:57.87 ID:bCPVhffW0
ジュン「はは……嫌われちゃったかな?」

蒼星石「ごめんね…ジュン君」

ジュン「お前が悪いわけじゃないさ……そもそもの原因は僕が……」

蒼星石「……ジュン君…今、その話は……」

ジュン「あぁ……悪い悪い……」

水銀燈「……」ジー…

ジュン「……そうそう水銀燈におみやげがあるんだ……」



ジュン君はそう言うと鞄の中から手の平サイズほどの機械仕掛けの箱を取り出した。
たしか……僕のマスターも持ってた……そう、ビデオカメラという奴だ

423: 2008/12/09(火) 22:30:56.28 ID:bCPVhffW0
ジュン「これにはな……お前の大好きな人が写ってるんだ」

そう言うとジュン君はビデオカメラのTV部分を水銀燈へ向け電源スイッチをONにした

水銀燈「……」ジー…

初めて見る珍しい物体に水銀燈は興味深々のようだ

蒼星石「なんだろうね? 水銀燈」

水銀燈「……」ジー…

ジュン「そら、もう始まるぞ」

TV部分のノイズは鮮明な画像に変わり、中から少女らしき映像が映し出された



蒼星石「……め…ぐ……さん……?」

424: 2008/12/09(火) 22:44:31.85 ID:bCPVhffW0
水銀燈「いっ……いやぁあぁあああああああああああああああああああああああああ……」

蒼星石「!? ちょっと! ジュン君……!?」

ジュン「……」

【めぐ「すすすす……い……ぎん……とぅ……私の……てん…し……さぁ…ま……」】

モニタから映し出された少女は水銀燈のミーディアム……柿崎めぐであった……

以前の美しい黒髪の面影は無く、所々に白髪が混じり 整った顔立ちには深い皺が刻まれていた

水銀燈「いやっ…いやっ……やめてぇ……」

【めぐ「……私の……てん…し……さぁ…ま……」】

水銀燈は両目を塞ぎ、目の前の衝撃から必氏に目を背けようとしている



蒼星石「やめろっ!!」

僕は庭師の鋏を取り出し……愛する…いや愛していた人の喉下へ刃を突きつけた

426: 2008/12/09(火) 23:00:14.37 ID:bCPVhffW0
ジュン「……何のつもりだ……蒼星石……」

蒼星石「それはこっちのセリフだよ……ジュン君……どうして…どうして……こんな……」

目の前の忌むべきモノを睨んだ瞳からは、涙が一粒…二粒……と頬を伝って流れ落ちた



【めぐ「……てん…し……さぁ…ま……」】

水銀燈「うっ…うっ……許して…許してぇ……めぐぅ……」



蒼星石「どうしてこんなことを……」

ジュン「……僕は本当に悪いと思ってるだよ……お前達を悩ませる…思考を残してしまった事に……」

蒼星石「何を!?」

ジュン「……思い出は…無い方が心が痛まないだろ? だから…僕は…お前達のつらい部分を全部……壊してあげるんだよ」

440: 2008/12/10(水) 03:02:46.49 ID:nCDjjt9S0
蒼星石「違う! 僕は知った……いや、思い出したんだ。水銀燈との日々が人を思いやることの大切さを……本当の愛おしさを……」

蒼星石「つらいことや悲しいことがあるからこそ、嬉しいことや楽しいことが一層輝くんだ! 思いのない心なんて……ただの…ただの人形じゃないか!」

ジュン「くくくっ……そのセリフを……人形のお前が言うのか?」

蒼星石「……言いたいことはそれだけかい?」

ジュン「それに……お前は…自ら意思の放棄を行ったことを忘れたのか?」

蒼星石「!?……確かに……僕はあまりの辛さから自分で心を放棄して……考えるのを止めたよ。でも……これからは逃げない!……辛いことも悲しいことも全て僕の一部として受け入れてみせる!!」

ジュン「……」

蒼星石「もういいよね……ジュン君……君の事は忘れない。ジュン君も僕の大事な一部だ……さようなら……僕の愛した人……」



鋏を握る手に力が入り、僕は人を……愛するジュン君を……殺める決意を固めた



442: 2008/12/10(水) 03:55:17.60 ID:xjqV7A4L0
ジュン「……辛いことも悲しいこともねえ……」ボソッ

蒼星石「?」

ジュン「……忘れてやしないか……?」

蒼星石「何を……」

ジュン「くくくっ……都合の悪い事は忘却かい……?」

蒼星石「……」

ジュン「随分と……お前の思い出って奴は自分に都合よくできてるもんだなあ」

蒼星石「言いたいことがあるならはっきり言ったらどうだい……」

ジュン「そうか……まあこれを言ったらお前が”傷つく”かもしれないから伏せといたんだが……」

443: 2008/12/10(水) 04:05:17.58 ID:xjqV7A4L0
ピシッ…ピシッ…

嫌な予感がする……それに触れたら僕の心が脆くも崩れ去ってしまいそうで……

ジュン「……した」

ビシッ…ビシッ…

やめて……”それ”に触れないで……

ジュン「か……ぐ……した」

ビキィ…ビキィ…

やめて…やめて……思い起こしたくない……

ジュン「か…ざ……ぐ……した」

バキィ…バキィ…

う、うぁああああああああああああああああああ……



ジュン「お前が壊した……柿崎めぐを……」

445: 2008/12/10(水) 04:17:53.20 ID:xjqV7A4L0
ガシャァァァーーーーーーーーーーーーン

蒼星石「違う! 違う! 違う!」

僕は庭師の鋏を放り出し、頭を抱えてその場にうずくまった

ジュン「違うことなんてないさあ……お前がその鋏で心の樹を切ったんだもの」

蒼星石「違う! 違う! あれは……命令されて……」

ジュン「命令?」

そう……違う……あれは命令されて……僕の意思じゃない…僕の意思じゃない……

ジュン「ほんとぉ~~に! お前の思い出って奴は都合いいのな」

蒼星石「……う?」



ジュン「お前は自分の口から言っただろう……『何でも従います。だから僕を捨てないで』と」

446: 2008/12/10(水) 04:30:05.03 ID:xjqV7A4L0
蒼星石「うぁ…うあぁあ……」

頭の中が真っ白になる……何も考えたくない……頭が…心が……壊れたくないと叫んでいる

ジュン(もう少し……ダメ押しといくか……)

スッ

蒼星石「……え?」

ジュン君はやさしく僕を抱いてゆっくりと歩き出した……暖かい……この胸に抱かれて……何もかも忘れて……


スタスタ……ピタッ


歩みが止まった……

ジュン「ほら……見ろよ」

僕は言われるがままに正面に視線を向けた

447: 2008/12/10(水) 04:51:51.97 ID:xjqV7A4L0
水銀燈「……許して…許してぇ……めぐぅ……」

蒼星石「すい…ぎん……とう……」

目の前には 猫のように体をくの字に曲げた水銀燈が 頭を抱えて自戒の念に苛まれされていた

ジュン「ほらっ…お前が壊したもう一人の少女……姉の水銀燈だ」



蒼星石「!?……違う! 違う! 違う!」

必氏にジュン君の胸にすがりつき目の前の惨状から目を逸らそうとした

ジュン「違わないね……お前は知ってか知らずか……いや…知っていたんだろうな……分かっていながら”それ”を胸の奥に仕舞い込んでしまったんだ」

蒼星石「違う! 違う! 違う! 違う! 違う! 違う!」

手で耳を塞ごうとしたがジュン君の手が僕の両手を掴んだ

ジュン「そしてお前は水銀燈を介護することで自らは……自分だけは罪の意識から逃れようとしたんだ!……水銀燈に何も告げずに……この卑怯者が!!」



蒼星石「う…あぁ……」

その時……僕の中で何かが壊れた

448: 2008/12/10(水) 05:22:06.90 ID:xjqV7A4L0
蒼星石「……う……あぁ…あぶぅ……」

ジュン「ふふっ……そうやって何も疑いの無い……お前の目が一番綺麗だよ……うっ」

トスッ

ジュン「あっ……」

いつの間にか立ち上がっていた水銀燈が細身の剣でジュンの胸を貫いていた

水銀燈「……」

ジュン「お前……」ドサッ

真っ赤な鮮血が傷口から迸り、蒼星石、ジュン、水銀燈を真っ赤に染めた

そして水銀燈がジュンへ向かって何かを呟くと…その剣を自らの胸に突き立てた

水銀燈はジュンに重なる形で胸の上に倒れこみ、その場には蒼星石だけが残った



蒼星石「きゃっ…きゃ…」

真紅に染まった蒼星石が、二人の傍らで無邪気な笑いをnのフィールドに響かせていた

                                                END

451: 2008/12/10(水) 05:36:23.49 ID:nCDjjt9S0
なんという鬱END・・・

引用: 水銀燈「ジュンが私を好きって行ってくれたから・・・来ちゃった」