渡部「それで、非常に……申し上げにくいのですが」

渡部「僕は、この、軽音部、という部活動をですね」

渡部「まだ、よく分かっていない……というこの状況の中で」

渡部「顧問という役職を、十二分に果たしていく、ということが」

律「あーもー回りくどいな！！　ちゃっちゃと喋ってよ！」

梓「り、律先輩……」

渡部「すみません……要は、皆さんに色々と教えていただきながら、ですね」

渡部「この軽音部に関わっていきたい……と、考えているんです……」

梓「なるほど……」

紬（見た目はユニークだけどまともな人っぽいわね……）

唯「あはは～　先生の話し方おもしろーい！」ｷｬｯｷｬ

澪（うぅ……ヒゲ生やしてる人って何か怖いな……）ﾓｼﾞﾓｼﾞ

律「あ、そーいえば先生名前なんていうの？」

渡部「渡部陽一、と、いいます　はい」

渡部「職業は……戦場カメラマン、です」

唯「陽ちゃん！センジョーカメラマンってなぁにー？」

梓（唯先輩！？）

渡部「戦場カメラマンというのは……紛争地域に赴き、取材、撮影を行うことで」

渡部「いわゆる外部の世界にそれを知ってもらう……それを、まあ、生業とした、カメラマンなわけですね」

唯「？　ふーん」

律（分かってねーな、コイツ）

梓（分かってないですね）

紬（分かってないわね）

澪（分かってないんだろうな）

律「でもさー、カメラマンなのにどうして先生やってんの？」

渡部「アルバイト、です」

律「あー」

渡部「それで……皆さんは、いつも通り、活動してください　僕のことは……気にせず」

律「い、いつも通りって……言われても、なぁ？」

澪（いつも通りやったら怒られちゃうんじゃないか？　ティータイムとか……）ｱｾ

唯「あ、そうだ！　せんせーも一緒にお茶飲もー！」ﾆﾍｰ

渡部「お茶……？」

唯「うん、我がけいおん部ではお茶を飲んでおしゃべりするのです！」ﾌﾝｽ

律「あ、ば、馬鹿……！」

渡部「それは……とても楽しそう、ですね……」ﾆｺ

律「え？」

渡部「のんびりと、お茶を楽しむ……日本が平和な、証です」ﾆｺ

唯「えへー何だか良くわかんないけど褒められたー」ｴﾍﾍ

律「お前って奴は……」

紬「うふふ、すぐ用意してくるわね」

澪（悪い人じゃ無さそう、かな？）ﾁﾗ

紬「はぁい、今日はガトーショコラよ～」

唯「わぁい！おいしそー！」

律「おおぅ、美味そうな香りが……」

渡部「これはまた……とても、素晴らしい……」

紬「うふふ♪」

唯「いただきまーす！」ｶﾞﾌﾟｩ

唯「！　おいひー！」ﾊﾟｸﾊﾟｸ

梓「本当に美味しいですねー」ﾊﾟｸﾊﾟｸ

澪「これを食べたらちゃんと練習するんだぞー」ﾊﾟｸ

律「ったく澪はカタいなぁー」ﾑｼｬﾑｼｬ

───

律「よーし！練習始めっかー！」

梓「はい！」

渡部「ではぁ……僕はここで、聞いてますので……」ﾆｺ

唯「うん！しっかり聞いててね、陽ちゃん！」

澪（知らない人がいると……やりづらいな……）ﾓｼﾞﾓｼﾞ

律「はいワンツースリー！」

　ｼﾞｬｰﾝ　ｼﾞｬｶｼﾞｬｶｼﾞｬｶ　ﾄﾞﾝﾄﾞﾝ

～♪

……
…


律「センキュー！」ｼﾞｬｰﾝ！

渡部「いやぁー……素晴らしい演奏、でした」ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

唯「えへへー」

紬「うふふふ」

律「これで今度のライブも大丈夫だな！」

渡部「ライブ……が、あるんですか？」

梓「はい。　来週、街のイベント会場でやらせてもらえることになったんです！」

渡部「ほう、それは……楽しみですね」ﾆｺ

唯「陽ちゃんも絶対聞きに来てね！」

渡部「はい、それは、顧問ですから」ﾆｺ

皆「あはははは」

───

───

唯「さて！という訳で今日は！休日なのに皆に集まってもらいました～！」ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

梓「誰にしゃべってるんですか？唯先輩」

唯「あずにゃ～ん細かいことは言いっこなしだよ～」ｽﾘｽﾘ

渡部「あはは、いやあ、とっても……仲が、いいんですねぇ」

紬「すみません先生、お休みにわざわざ来ていただいて～」

渡部「いえいえ、顧問ですから……こういうときに……協力しないと」ﾆｺ

渡部「ところで……今日は、何をするのでしょうか」

律「ライブのときに皆で着るTシャツを買おうと思って！」

唯「皆でお揃いのを着るんだよ～」

渡部「なるほど……」

律「よーし、じゃあレッツゴー！」

───　デパート

唯「こっちが服売り場みたいだよ～！」

律「よし！じゃあ買う奴選ぼうぜー！」

紬「私達は私達で見てますから、先生は好きに回ってくださってて結構ですよ？」

渡部「そうですか……では、僕はぁ……食料品売り場の、方へ……行って来ます」

梓「食料品ですか？」

渡部「ええ……ダブルソフトと、美味しい牛乳、を……買ってきます」

梓「そ、そうですか」

唯「じゃ、せんせー、また後でねー」

澪「……はぁ」

律「？　どうした、澪　さっきから全然喋らないじゃんか」

澪「うーん……あの先生、ちょっと苦手なんだ」

唯「えー？陽ちゃん面白いよー？」

澪「うん……何か、こう、掴みどころがないというか……」

唯「そこがいいんだよ～」ｱﾊﾊ

律「お、これどうかな！？」

紬「あら、いいんじゃないかしら」

唯「よーし、じゃあこれ買おー！」

…

店員「ありがとうございましたー　あ、これ、福引券です。どうぞ」

律「お、ラッキー！」

紬「すぐそこで福引やってるみたいね」

唯「行こう行こう！」

ガラガラガラ

律「１等来い！１等！」

ポン

律「どうだ！？」

店員「おめでとーございまーす　４等でーす」

律「４等？　えっと、４等は……」ﾁﾗ

店員「ファンタオレンジ１本でーす」　ｺﾄ

律「………」

唯「………」

梓「………」

紬「………」

澪「………」

律「澪、これやる」ｺﾄ

澪「えええええぇぇぇ！？」

律「あー、ファンタオレンジあんま好きじゃないんだよね」

澪「あー、うー……」

澪「ま、まあ、ありがたくもらっておくよ」

唯「じゃー、買いものも終わったし帰ろっか～」

紬「先生呼んでこないといけないわね」

梓「誰が呼んできます？」

律「よーし！ジャンケンだ！」

唯「ジャーンケーン」

皆「ポン！」

澪「あ……」

律「はい！澪に決定！」

紬「じゃあ、お願いね、澪ちゃん」

澪「うう……」

───

澪「えーっと……どこかな……」ｷｮﾛｷｮﾛ

澪「あれ？ていうかここどこ？」ｱｾｯ



渡部「あれ……皆さん……買い物は、終わったのでしょうか……」

唯「あれ～？　陽ちゃん、澪ちゃんは？」

渡部「秋山さん……ですか？」

律「おっかしいなぁ、澪を先生呼びに行かせたんだけど」

紬「入れ違いになったのかしら」

梓「探しに行った方が良いですかね？」

律「いや、メールしとこう　こっちに帰って来るだろ」

渡部「………」

ﾋﾟﾛﾋﾟﾛﾋﾟﾛ

澪「あ、メールだ」

澪「え！？　もう先生が帰って来てるって！？」

澪「な、なんだよそれ……」ｶﾞｸ

澪「とりあえず戻ろう」ｸﾙｯ

　ドシン！

澪「きゃっ！？」

　ｶﾗｶﾗｶﾗ…

澪（あ……携帯が……）

不良A「痛ってぇなコラァ！」

澪「ひっ！？」ﾋﾞｸｯ

不良B「あれ？なかなか可愛い子じゃん？」ﾆﾀﾆﾀ

　ガシッ

澪「！？　や、やめて！離して！」

───

律「んー？返信来ねーな」

紬「メールに気付いてないのかしら」

梓「探しに行った方が早くないですか？」

唯「んじゃ、澪ちゃん探しに行こう～！」

律「じゃ、手分けして探そう！」

紬「それじゃあ、私はあっちを探してくるわ」

渡部「……では……僕はぁ、あちらを探してきます……」

梓「じゃあ私はあっちを！」

ﾀｯﾀｯﾀｯ

─── 路地裏

不良A「なー、ちゃんと詫び入れてくれよー」

澪「さ、さっきから謝ってるじゃないか……」

不良B「オイ！！」

澪「ひっ…」ﾋﾞｸｯ

不良C「ま、大人しく言うこと聞けよ」ﾆﾔﾆﾔ

不良D「へっへっへっ」

不良E「クククク」

不良F「キキキキ」

不良G「けけけけ」

不良A「おら、こっち向けよ」グイ

澪「っ！　イヤぁッ！　離してっ！」

不良B「仕方ねぇなぁ……無理矢理ヤるか」ﾆﾀﾆﾀ

澪「ひぃ……」ｶﾞｸｶﾞｸｶﾞｸｶﾞｸ

澪「い、イヤっ！助け……」

不良A「おら！抵抗すんじゃねぇ！」ﾄﾞｺﾞｯ

澪「が……ふ……」ｹﾞﾎｯ

不良B「じゃ、脱ぎ脱ぎしましょうね～ｗ」ｸﾞｲ

澪「ひ、やめ……イヤアァァァ！！」

不良C「ヒヒヒヒ、やわらけぇ～」

澪「やだよぉっ！　誰か、誰かぁぁ！！」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ



渡部「………あのぉ…………」

不良A「！？」

不良B「だ、誰だテメェ！！」

澪「先生……」

不良C「あぁ！？　先公だぁ？」

不良D「ケッ、こいつからボコすか」ﾎﾟｷﾎﾟｷ

渡部「………」

渡部「えっと……ですね」

不良A「あぁ？」

渡部「その……貴方方は、その……一人の女の子に、よってたかって……その……」

渡部「そういった乱暴を働く、という行為を……ですね、するのは……」

渡部「非常に感心出来ない、というか……ですね」

不良B「あぁ！？　グダグダうるせーぞオッサン！！ぶっ頃すぞ！！」

渡部「あ、あの、端的に……申し上げますと、ですね」

渡部「僕の生徒に……手を出してるアナタ方を………こう、見てると、ですね」








渡部「反吐が出るんですね」

かっけええええええええｗｗｗ

不良A「あぁん！？　調子乗ってんじゃねーぞ糞オヤジ！！」

不良B「テメェら！やっちまえ！！」

不良C・D・F・G「うおおおおおおおおっ！！！氏ねやあぁぁぁッッ！！！」
　
　　バキィ！！　　　メキィッ！

　ドゴッ！　　　ボカッ！　ドカッ！
　　
　　　　ﾊﾞｷﾊﾞｷﾊﾞｷ　ドゴォォォ


　モクモクモク……


　ｼｰﾝ……


不良A「へっ、氏んだか」

澪「先生ぇぇぇぇぇ！！！！」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

　スッ

不良C「………」

不良B「おー、ご苦労……」

不良C「……」ドサッ

不良A「！？　おい、どうした！？」

　スッ

渡部「………」

不良B「！？　て、テメェ……！」

渡部「戦場カメラマン、というのはですね……やはり、常に戦場に、身を置いている、訳ですね」

渡部「そして、いざというときは、自分で、自分の身を……守らなきゃ、いけないんですね……」

渡部「チンピラ風情にやられてちゃ、こう、戦場カメラマンは……務まらない、訳ですね」

不良A「くっ……」

不良B「応援だ！！応援を呼ぶぞ！！」ﾋﾟﾎﾟﾊﾟ

澪（応援……？）

ドタドタドタ

ヤクザ「坊っちゃん！コイツですかい！」

不良B「ああ、こいつをぶち頃してくれ！」

ヤクザ「坊ちゃんの命令だ、気の毒だが氏んでもらうぞ」ﾁｬｷ

渡部「銃というのは、やはり……生身の人間には、厄介な訳ですね」

渡部「こう、特に路地のように……範囲の限られたエリアでは、地理的に不利なんですね」

渡部「さらに戦場では……」

ヤクザ「うるせぇ！！氏ね！！」　

　パン！

渡部「ぐふっ……」

澪「先生ぇ！！」

ヤクザ「ケッ……腹に喰らったか」

不良B「ひゃははは！！」

澪「先生ぇぇぇ！！」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

ヤクザ「どれ……念のためもう一発……」ｼﾞﾘ…

渡部「……」ｶﾞﾊﾞｯ

ヤクザ「何！？」

　ｼｭｯ　ドゴォッ！

ヤクザ「が、はッ……」ﾄﾞｻ…

不良A「ば、馬鹿なっ……」

不良B「確実に腹にタマ撃ち込んだのに！？」

渡部「いやぁ……この……レンガで補強した、日記帳、が……守ってくれた、訳ですね」ｻｯ

不良A「……！！」

不良B「く……」

渡部「今……謝れば、まだ……許してあげる、余地はぁ……少し、あるんですね」

不良A「オ、オイどうする？」

不良B「ま、まだだ！まだ応援が来るはずだ！」

渡部「こう、集団の暴力や……銃、などというのは……戦場カメラマンには、日常茶飯事、な訳ですね」

渡部「しかし出来ればぁ、日本では……お目に、掛かりたくない……」

渡部「そして……世界からも無くすために……我々は、戦場で、写真を撮る、訳ですね……」

不良A「何か語り出したぞ！やばいよアイツ！手に負えねーよ！」

不良B「こうなったら……」ﾋﾟﾎﾟﾊﾟ　ﾄｩﾙﾙﾙﾙ……

不良B「最終手段だ！　あれだ！アレ持って来い！」

澪（"アレ"……？）

　ｷｭﾗｷｭﾗｷｭﾗ……

不良A「ん？何だこの音……」

不良B「来た……！」


　ゴ　ゴ　ゴ　ゴ　ゴ　


　ドゴァァァ！！

澪「戦車！！？！」

不良B「よし！！これで勝てるぜ！！」ﾆﾔｧ

渡部「戦場では常に……何が起こるか分からない、訳ですね……」

渡部「だからこそぉ……日々の覚悟と……精神力と……」

澪「先生ぇ！！逃げてー！！」ｳﾜｧｧﾝ

不良Bin戦車「チッ、面倒だ！女の方から片付けるぞ！！」

不良Ain戦車「了解！！主砲用意！！」

　ｳｨｰﾝ　ガチャン

澪（こ、こっち向いた！？）

不良A「発射ぁ！！」

　ドゴォォォォン！！

　　　ﾊﾟﾗﾊﾟﾗ…

澪「………」ｷﾞｭｩ…

澪「……？」ﾊﾟﾁ

澪「あれ……私、生きてる……」

渡部「………」ﾎﾞﾀ……

澪「！！　先生！！」

渡部「流石の……私の日記でも……防ぎきれなかった、んです、ね……がはっ」ﾎﾞﾀ…ﾎﾞﾀ…

澪「いやあぁぁっ！！先生ぇ！！」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

渡部「澪、さん……僕に構わず……逃げ、て……ほしいん、ですね……」ﾎﾞﾀﾎﾞﾀ

澪「いや……そんな……嫌だよ……先生ぇ……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

不良A「よし！！これでアイツもお陀仏だ！！」

不良B「女共々トドメを刺してやるぜ！！」

　ゴ　ゴ　ゴ　ゴ　ゴ

渡部「澪さん……逃げて……」

澪「だって……先生……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

渡部（ｸﾝｸﾝ……ん？この匂いは……）

渡部「澪さん、ちょっと……失礼……します」ｺﾞｿｺﾞｿ

澪「え？」

渡部「これは……」

澪「あ……福引で当たったファンタオレンジ……」

渡部「これぇ……いただいても、よろしい……ですか？」

澪「あ、はい、どうぞ……」

ﾌﾟｼｯ

　ｺﾞｷｭ……ｺﾞｷｭ……ｺﾞｷｭ……

渡部「はぁぁ……はぁぁぁぁぁぁ……」ﾄﾞｸﾝ、ﾄﾞｸﾝ

澪「す、すごい！傷がどんどん治っていく！」

渡部「ファンタオレンジは……こう、すごいんですね　力が沸いて来る……訳ですね」

不良A「な、何だアイツは！！」

不良B「構うこたねぇ！！もう一発お見舞いしてやれ！！」

不良A「うおおおおおっっ！！」

　ドゴォォォォォン！！
　　　　　　　　　　　　　　　　ｼｭﾝｯ


不良B「やったか！？」

渡部「何処を狙っているのか、という疑問、ですね……これを問いたい、訳ですね」

不良B「い、いつの間にあんな所に！？」

渡部「澪さん……澪さんは、ここで、見ていて……ください」ｽﾄｯ

澪「せ、先生？」

渡部「……僕はぁ……けいおん部の顧問で……幸せだった、と……」

渡部「皆に……伝えてください……」

澪「先生……！」ｼﾞﾜ…

渡部「………」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

不良A「！？　こっちに突っ込んで来たぞ！？」

不良B「と、特攻だと！　うわああぁぁぁぁぁぁ！！！」


　ドゴオオォォォォォォン！！！


澪「せんせぇ──── ッ！！！！」　ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ



　───　結局、先生の氏体は……発見されなかった……。

　　　　　　　　　私はまだ信じている……彼は何処かで生きている、と。

───

律「みんなーッ！！今日は来てくれてありがとぉー！！」

＼　うおおおぉぉぉ！！　／

唯「行くよーっ！『ふわふわタイム』っ！」

　ｼﾞｬｰﾝ♪　ｼﾞｬｶｼﾞｬｶ♪　

……
…

── 控室

唯「ライブ大成功だったねー！」

律「ああ！　最っ高に盛り上がったな！」

澪「ああ……先生に……見て欲しかったな……」

紬「澪ちゃん……」

梓「……先生……」ｸﾞｽ

律「ん？何だこの写真？」ﾋｮｲ

澪「なんだ？テーブルの上にあったのか？」

律「ああ」

梓「あれ？これ……」

唯「今日のライブのときのあたしたちだ！！」

律「ってことは……」

澪「！！！」








「……皆さん……お元気で…………」

　ｻﾞｯ
　　　　　　　ﾃｸ…ﾃｸ…ﾃｸ…


　　　　　　　　完

渡部さんファンタオレンジでマラリアから助かったんだっけ

( ；∀；)ｲｲﾊﾅｼﾀﾞﾅｰ