1: 2010/10/03(日) 19:44:56.16 ID:2bBXzxseO
憂「はじめまして。ストーリーテラー憂と申します」

憂「私、見聞きした物語を皆様にお聞かせすることを趣味としております。
  暇つぶしと思って、しばしの間、つまらない話にお付き合い下さい」

4: 2010/10/03(日) 19:48:45.98 ID:2bBXzxseO
憂「さて、世界は、物語であふれています」

憂「そして文化や環境の違いで多種多様のものとなり、今や数え切れないほど…」

憂「しかし、どんな文化にも共通しているものがひとつ。それは、唯梓」

憂「本日は古今東西、世界各地の唯梓物語を皆様にお楽しみ頂きたく思っています」

憂「それではひとつめのお話です」
けいおん! 1巻 (まんがタイムKRコミックス)
7: 2010/10/03(日) 19:52:13.43 ID:2bBXzxseO

『魔女の城』



昔むかし、あるところに魔女がいました。
魔女は立派なお城を建てて、誰とも関わりを持たないで、ずっとそこに閉じこもっていました。
そのお城は立派ながらもなんとも不気味で、周辺の人々は気味悪がって近づこうとしません。

「むむむ…気に入らないわね」

おもしろく思わないのは王様です。
自国の領土に自分のものではないお城が建っているのですから。

しかし、王様は何もしません。なぜなら、今までに何度も兵士を送っているのですが、
たびたび追い払われているからです。

「どうにかならないのかしら…そうだ!」

王様は国中にお触れを出し、魔女の城を落としたものにほうびをとらせることを約束しました。

9: 2010/10/03(日) 19:55:01.90 ID:2bBXzxseO
「ねえ憂、誰も入れないお城だって」
「そうみたいだね、お姉ちゃん。王様の軍隊だって追い返されちゃったんだから」
「私はきっと入ってみせるよ」
「いくらお姉ちゃんでも無理だよ…」

それからほうびを目当てに、沢山の人が魔女の城に挑戦しました。
しかし、門を破ることも、忍び込むことも出来ません。

「私ならきっと行ける。ううん、絶対行ける」
「お姉ちゃん、またそんなこと言って…みんなに口だけだ、って笑われてるんだよ?」

若者、唯はそう言いながら城を毎日眺めていました。
結局、誰も魔女の城に入ることすら出来なかったのです。

11: 2010/10/03(日) 19:57:32.88 ID:2bBXzxseO
「ぐぐ…やっぱり兵士でも無理だったもの、平民に出来るわけがなかったのね。…仕方ない」

またしても王様はお城を落とせなかったのです。しかし、王様は諦めたくありません。
とうとう王様は、周りの国々にまで魔女のことを知らせました。
そして、

「見事城を落としたものには、ほうびだけでなく私の娘もあげるわ!」

姫との結婚をも約束しました。姫は美しい黒い髪と、可愛らしい姿で、
たくさんの国から結婚を申し込まれていたのです。
これを聞いた他の国の王様や将軍たちは、我こそはとこぞって魔女の城に押し寄せました。

13: 2010/10/03(日) 20:00:40.03 ID:2bBXzxseO

「ほら見て、憂。あれはドラム国の兵士だよ!」
「強そうな人達…今度こそ魔女の城は落ちてしまうのかな、お姉ちゃん」
「さてね。私は見ているだけだよ」

はじめに来た国の兵士たちは、とても長くて大きな丸太を抱えていました。

「私のビートで扉なんかぶち破ってやるぜ!いっけー!!」

将軍が合図すると、兵士たちが丸太を扉にたたき付けました。
そして、何度も繰り返されているうちに扉はとうとう開きました。

「お姉ちゃん、開いたよ!」
「そんなことより…ほら、魔女だっ!わあ、なんだろ、あの生き物!大きい!」
「あっ…兵士が丸太を食べられて、みんな逃げていくよ…」
「すごいなあ、魔女!初めて見たよ」

結局、城は落ちずに、壊れた門もいつの間にか直ってしまいました。

14: 2010/10/03(日) 20:03:02.29 ID:2bBXzxseO
あくる日、今度は別の国が兵士を引き連れてやって来ました。

「憂。今度のキーボード国は、たくさんの道具を持ってきてるね」
「遠くから攻撃するんじゃないかなあ」

今度の国の王女は、城には近づこうとせず、遠くで大砲の準備を始めました。

「私、魔女を凌辱するのが夢だったの~♪…いきます!マンボウのマネ♪」

王女が合図をすると、大きな音が鳴り響きました。
たくさんの砲弾が発射され、一直線に城へと飛んでいきます。

「近づかなければあの怪物も出ないし、今度こそ魔女は負けるよ、お姉ちゃん」
「魔女は大砲がくるのがわかってたみたいだね~?ほら!」
「そんな…お城が打ち返してる!」

王女は負けじと、今度は打ち返せないほどたくさんの火の矢を放ちましたが、
突然城から現れた風車にすべて返されて、兵器を全て燃やされてしまい、逃げ帰ってしまいました。

そして、とうとう王様も諦めてしまい、誰も魔女の城に近寄らなくなりました。

15: 2010/10/03(日) 20:05:46.90 ID:2bBXzxseO
「やっぱり魔女の城はすごいなあ。他にどんな仕掛けがあるのやら」
「もう誰も近寄れないのかな…」
「私が行くよ」
「ダメだよお姉ちゃん!危ないもの!」
「大丈夫大丈夫、何も危なくないから。
 そうだ憂、ケーキ焼いてよ。とびっきり美味しいのを!」

そして唯は妹のケーキを片手に、人々が見守る中、魔女の城の門の前に立ちました。
唯は扉をノックすると、

「魔女さんこんにちは、お邪魔してもいいですか。お土産もありますよ」

と言いました。すると、扉が開き、周囲の人が驚く中、唯は悠然と中に入ることができたのです。
扉の内側には、魔女がいました。魔女は静かな声で、

「どうぞおかけ下さい…」
「ご丁寧にどうも。おやつの時間にはまだ早いね、よかったら、お城を案内して下さいな」
「構いませんよ」

魔女は唯の頼みを快く聞くと、城の中を案内しはじめました。

17: 2010/10/03(日) 20:09:55.51 ID:2bBXzxseO
「わあ、綺麗な水路。ここで野菜を育ててるんだね」
「魚も捕れます。火事になった時は噴水のように水が出る仕組みだってありますよ」

「あそこにいる大きな生き物は前にも見たね。どうやって育てたの?」
「あれは亀です。大事に育てたら大きくなりました。本当は陸を歩くのは苦手なんですが…」

「ここは難しそうな仕掛けがたくさんだね」
「趣味みたいなものです。もっとも、近頃は何かと役に立ちますね」
「魔女さんはここでお城を守っていたわけだね。…ところで、そろそろお腹がすいたよ」

一通り探索が終わったので、唯ははじめの部屋に戻ると、魔女と簡単な食事をとりました。
デザートはもちろん妹の焼いたケーキです。

20: 2010/10/03(日) 20:12:30.85 ID:2bBXzxseO
「あなたは食べないのですか?」
「魔女さんが食べるのを見てるよ。ところで、きみは魔女と言うにはずいぶんと可愛らしいね」

唯の言うとおり、魔女は口が裂けていたり、長い爪を持っていたりするわけではありません。
しかも服装こそ魔女のそれですが、醜い老人などではなく同い年くらいの少女の姿で、
何より、唯といる間に、一度も魔法を使っていません。

「私は、静かに暮らしたいだけの、ただの人ですから。それに、可愛くなんてないです」

魔女は少し恥ずかしそうに言うと、ケーキを口に運びました。
唯はそれを見て、ニヤリと笑います。


「…美味しい?」

21: 2010/10/03(日) 20:17:56.75 ID:2bBXzxseO
「おーーーい!!みんなーっ!」
「お姉ちゃん!?」

それからしばらくして、唯は城から顔を出しました。人々は驚きを隠せません。
知らせを聞いた王様は、さっそく姫と一緒に魔女の城へ向かいました。

「そこのあなた、よくやったわ!家に来て娘をフ〇ックしていいわよ!」
「フ、〇ァック…恥ずかしい///でもあの人になら…///」
「それなんですけどー、お断りしまーす!!」
「「えっ」」
「お姉ちゃん!?」
「だって、私には…」

そう言った唯の隣に、背の低い黒髪の少女が現れました。

「いい人が出来たからね!」


END

22: 2010/10/03(日) 20:19:15.41 ID:JAad7N3iO
憂「人と人との関係は、まず対話から。なんでも力任せでは、誰とも仲良くなれません」


憂「しかし、怖く思う気持ちも当然ではあります。中に本当の魔女がいたなら、
  このお話はどうなっていたでしょう?」


憂「未知の存在というものは、恐ろしくもあり、同時に魅力的でもあります」


憂「次のお話の彼女は、そんな未知の刺激を知ってしまったのでしょうか」 

25: 2010/10/03(日) 20:24:21.85 ID:2bBXzxseO

『あずにゃんがさずけてくれたもの』



むかし、むかし、ずっとむかし。
日本のどこかに唯というニートが住んでいました。
ある日のこと、唯が山の頂上にある湖の近くを通ったとき、とても可愛らしい猫耳を拾いました。
辺りを見回すと、湖に、天の国からおりてきた三人姉妹の天女がセッションしているではありませんか。


梓「洗濯するんじゃ…!」

純「とか言って、梓もギター持ってきてんじゃん♪」

梓「そ、それは…」

憂「じゃあ今日も『むすんでひらいて』やろっか!」

梓「ねえ、私たちそれしかできないの?」

♪~

26: 2010/10/03(日) 20:26:37.19 ID:2bBXzxseO
「あんまりうまくないですね!」そう言いたい気持ちをおさえながら、
唯は猫耳を水辺の木にぶら下げて様子をうかがうことにしました。

さて、天女たちは天に戻ろうとしましたが、末娘の天女梓の猫耳がありません。


純「アレなくしたらヤバいでしょー…」

憂「梓ちゃん、私たちも一緒にさがそうか?」

梓「大丈夫、二人とも先に帰っててよ。すぐ行くから」

憂「じゃあ先に帰るけど…あんまり無理しちゃだめだよ?」

純「憂、早く帰ってドーナツ食べようよ!」


梓は一人残って水辺を探し歩いていると、水面に猫耳を見つけました。

29: 2010/10/03(日) 20:31:27.71 ID:2bBXzxseO
梓「あっ、私の猫耳!湖に落ちてたんだ…よっと」パシャッ

梓「あれ…あれ?どうして?とれないよう…」パシャパシャ


それもそのはず、木にかかった猫耳が水に映っているだけなのですから。


唯(バカにゃん///)


それを見ていた唯は、梓の足りない子ぶりがあまりに愛おしいので、思わず抱きしめてしまいました。


梓「ひゃっ!あなたが私の猫耳に変なことしたんですね!?ていうか離してくださいー!」

唯「離したくなーい♪」

梓「うう、じゃあ猫耳だけでも返してください…欲しいものは何でもあげますから…」

唯「特にないよ。強いて言うなら、キミかな」キリッ

梓「えっ///」キュン

30: 2010/10/03(日) 20:35:42.40 ID:2bBXzxseO
梓は唯を天宮へ連れて帰り、そっと門の隅に隠しました。天王に見つかるのが怖かったのです。
それから、梓は天王に隠れて唯に食事を運ぶ毎日でした。


梓「唯先輩、ご飯ですよ」

唯「わーい!……んあっ」パカッ

梓「え?」

唯「…んぁー!」アーン

梓「え、えー?///……しょ、しょうがないですねえ///はい♪」

唯「んふー」モグモグ


しかし、そんな幸せな日々も長く続きませんでした。

31: 2010/10/03(日) 20:39:14.41 ID:2bBXzxseO
憂「梓ちゃん最近機嫌いいね」

梓「そ、そうかなあ?へへっえへへ」ニマニマ

純「(気持ち悪っ)でも何て言うか、女の顔になったよね。悪い人に騙されてなきゃいいけど」

梓「なっ…、唯先輩は悪い人なんかじゃないもんっ!!」

純「oh…」

さわ子「唯先輩いぃ~?」ヌゥ


ついに天王に見つかってしまったのです。


さわ子「ガキの癖にサカってんじゃないわよ!しかもヒモじゃないの!」

梓「違います!唯先輩は夢に向かって頑張ってて、私がいないとダメで…えへへ、唯先輩…」

憂「素敵な人だね!」

純(駄目だコイツら…)

さわ子「ぬぐぐ…私は貢ぐ一方だっつーのに!働かざるもの以下略よ!」


天王は怒って、唯に難題を課しました。

33: 2010/10/03(日) 20:41:14.56 ID:2bBXzxseO
さわ子「まずは山の木を切りなさい。一日で。全部!」


唯「一日で全部なんて無理だよ~」

梓「唯先輩、真面目に頑張りましょう!」

唯「…きっと私たち離れ離れになっちゃうね。それでも、愛してるよ…あずにゃん」グスッ

梓「!!…だ、大丈夫です!唯先輩きっと疲れてるんです!一休みしたらどうですか?」


唯は言われたとおりにしました。
すると、次の日の朝、不思議なことに山々の木々は、一本残らず切られているではありませんか。

34: 2010/10/03(日) 20:46:39.29 ID:2bBXzxseO
梓「ハァ、ハァ…おはようございます、唯先輩!」

唯「あれ、木がみんな切られてる…?」

梓「きっと素敵な唯先輩のために、妖精さんがかわりにやってくれたんです!」

唯「…そっか。じゃあ、可愛い妖精さんにご褒美、あげなきゃね」チュッ

梓「あっ///」



さわ子「……梓ちゃん、切ったわよね?」

梓「唯先輩、頑張りましたから」

さわ子「いや、そうじゃなくて、唯ちゃんに切れって私言ったんだけど…」

梓「唯先輩の頑張りにはそれだけの価値があるということです!」

憂「まだ会ったことないけど、きっと頑張る姿はカッコイイんだろうね~♪」

純(何言ってるんだこいつら)

36: 2010/10/03(日) 20:51:19.33 ID:2bBXzxseO
さわ子「……まあいいわ。次は山に火をつけて、焼畑に仕上げるように」


唯は試しに小さく火をつけてみましたが、
火は大変な勢いで唯に襲い掛かり、危うくやけどしそうになりました。


唯「無理、氏ぬ」

梓「そんな!私が危険な目には会わせませんから頑張りましょうよ!」

唯「あーあ、また妖精さんが助けてくれたら、もっとすごいご褒美あげるのにな~」胸元チラッ

梓「今回だけですからね///」


やはり梓にも火は容赦なく燃え、体の毛にも火がつきました。
それ以来、梓の体の毛は生えていないままです。やったね!

38: 2010/10/03(日) 20:56:04.74 ID:2bBXzxseO
三つ目の命令は、


さわ子「じゃあ今度は種を蒔いてちょうだい。たくさんのね」


というものでした。梓もこれには、


梓「これは今までのに比べたら簡単ですね。応援してます!」


と、手伝いませんでした。
しかしめんどくさがりの唯は、種をすべてほら穴に隠してしまいました。


唯「こんなにたくさんの種…めんどくさいよ」

唯「……お腹すいたなあ」


そして次の日。

39: 2010/10/03(日) 20:59:41.29 ID:2bBXzxseO
唯「ぜ、全部終わったよ?ホントだよ?」キョドキョド

梓「やっぱり唯先輩はやればできるひとです!」

さわ子「あ、それなんだけどやっぱ昨日の取り消し。種全部返してちょうだい?」

梓「そ、そんな…!」



唯「はい、種持ってきたよ~」

さわ子「なん…だと…」

唯「こんなこともあろうかと、種はまかなかったのです!」エッヘン

梓「こうなることを予測してたなんて、さすが唯先輩です!!」

さわ子(ただのサボりじゃないの……ん?)

さわ子「ねえ、種が足りないんだけど」

唯「」ビクッ

40: 2010/10/03(日) 21:08:14.71 ID:2bBXzxseO
さわ子「全部返さなきゃ打ち首よ」

唯「打ち首!?」ブルブル

さわ子「正直に言ったら命ぐらいは助けてあげるかも知れないけどねえ?」チラッ

唯「うぐっ、……じ、実は…」

梓「唯先輩!?」



純「ふわぁ…おはよ~。…あれ、その人が梓の恋人?」

梓(恋人、って周りの人に言われると何だか照れる…///)

唯「あっ!そ、その人!その人が食べちゃいました!」ビシッ

純「えっ」

さわ子「テメェ…私の顔に泥を塗りやがって」

純「」


次の日、その天女は打ちモップにされ、キャラが氏にました。

42: 2010/10/03(日) 21:11:17.42 ID:2bBXzxseO
そしてついに、天王は最後の命令を出しました。


さわ子「じゃあ最後はとっても簡単。私が山の上から転がしたまきを、受け止めるだけよ」

唯「それなら私にも出来そう!かんたんかんたん♪」

梓「……」


そして岩山の下で唯が準備していると、梓が唯に耳打ちしました。


梓「まず石を落として唯先輩を頃すつもりです。だから一つ目は見逃してください」

唯「ふえ~…わかった!あずにゃんは優しいね。これをあげよう。この前の種だよ!」

唯「これすっごくおいしいんだよ~♪」ニヘー

梓「あ、ありがとうございます。唯先輩だって、そのっ、優しいです///」

唯「それじゃ、頑張りますか!どんなまきでもこの胸で受け止めちゃうよ!」フンス

梓「……です」

唯「あずにゃん?」

43: 2010/10/03(日) 21:15:45.31 ID:2bBXzxseO
梓「…嫌です。私以外をその胸で受け止めちゃ、嫌ですっ」

唯「……嫉妬深い子猫ちゃん。大丈夫、私の胸はキミのためだけにあるんだから」グイッ

梓「言葉だけじゃ、嫌です…」トサッ


そのころ、岩山の上では天王が岩を落とし、切り株に姿を変えて転がろうとしていました。


さわ子「今の岩で氏んでなきゃ、次は私が直接手を下してやる…イヒヒヒ」ボワワン

しかし、岩山の下には誰もいないので、天王はそのまま下界へと落ちていきました。

44: 2010/10/03(日) 21:18:23.60 ID:2bBXzxseO
挿絵no title

こうしてすべての難題を切り抜けた唯は、

45: 2010/10/03(日) 21:19:08.83 ID:Dezbz36y0
なんだよそのAAwww

47: 2010/10/03(日) 21:20:51.23 ID:2bBXzxseO
唯「うーいーアイスー」

憂「はーいお姉ちゃん♪」

モブ「ねえ憂、前から思ってたんだけど、なんで唯先輩をお姉ちゃんって呼んでるの?」

憂「私、ずっとお姉ちゃんが欲しかったんだ~♪」

モブ「なるほど、わからん」

梓「あーっ、唯先輩またアイス食べてる!太っても知りませんよ?」

唯「私いくら食べても太らないから大丈夫だよお」

梓「またそんな適当なこと言って…」

唯「嘘じゃないよ。…だって、今夜もたくさん運動するんだから、ね?」

梓「もう///」

モブ「そりゃ私たちは今更気にしないけど、そういう話はもう少しこっそりさあ…」

憂「いいなあ…私も二人に混ざりたい」

モブ「……さいですか」


新たな天王となり、梓や憂、他一名と末永く幸せに暮らしました。
めでたしめでたし。

54: 2010/10/03(日) 21:41:59.98 ID:Khvtn8BNO
憂「果報は寝て待て、という言葉があります。素晴らしい言葉ですね」

憂「このお姉ちゃんは、不真面目のおかげで幸せになれました」

憂「なんでも真面目にやればいいというわけではない、賢く生きろということです」

憂「つまり普段からゴロゴロ寝てばかりのお姉ちゃんは偉いということですね」


憂「さて。今日はこれぐらいにして…」コツッ

憂「おや?こんなところに児童書が」ペラ

憂「あ、やっぱりこの本にも、同じようなことが書いてありますね」

憂「そしてその裏に隠れた教訓も。子供に読ませる話だからって、侮れませんよ?」



56: 2010/10/03(日) 22:00:38.11 ID:2bBXzxseO

『かわいいもの好きの平沢唯』



あるところに、『かわいいもの好きの平沢唯』とよばれるわか者がおりました。
唯ちゃんは、たった一人であちらこちらと旅をしていました。
ある日の夕方。唯ちゃんはやどを探していました。

「一ばんとめてくださいな!」
「あいにく※、今日は部屋があいておりません。
もっとも、あなたが、こわいことを知らないお方なら、りっぱなお城にご案内いたしましょう」

そのお城は、やど屋の主人によると、お城へ行った人は、
だれひとり生きて帰れない、おそろしい所なのだそうです。

「お化けやしきっ!?行ってみたーい!」

かわいいお化けと出会えると思った唯ちゃんは、
明かりと、アイスと、ギターのギー太を持って、お城に出かけていきました。


※あいにく――つごうのわるいさま。

57: 2010/10/03(日) 22:04:51.92 ID:2bBXzxseO
お城についた時は、もうすっかり夜になっていて、お城の中もまっくらでした。
唯ちゃんが、くらいろうかをずんずんおくへ進んでいくと、
目の前に、がっしりとしたとびらがあらわれました。

とびらを開けて中に入ると、広い部屋でした。
正面には、大きなソファーと、かべ一面のレコードがありました。

「今夜はここでねよっと。早くお化け出てこないかなあ」

すると、いきなりソファーのかげから、
「出るぞ!」という声がしました。

「出て来ーい!」

と、唯ちゃんが返すと、白くてきれいな足が片一方、ソファーに引っかけられました。
唯ちゃんはアイスを食べながら、足をよくかんさつしました。

58: 2010/10/03(日) 22:10:15.19 ID:2bBXzxseO
するとまた、ソファーのかげから、

「出るぞ!」

という声。

「バッチコーイ!」

唯ちゃんが答えると、ぴょこっと、もう一方の足が出てきました。
唯ちゃんはその足をおかずにしてもうひとつアイスを平らげました。

それからも、唯ちゃんが答えるたびに、
細くやわらかそうなうでや、緑のくろかみ、そして大きなひとみのととのった顔が出てきて、
「あっ」と思う間に、唯ちゃんの前には、かわいらしい女の子がすっくと立っていたのです。

唯ちゃんは、たくさんつみかさなった空のカップを、高くかかげました。

「今日からあなたはあずにゃんだね!」

60: 2010/10/03(日) 22:17:51.45 ID:2bBXzxseO
すると、あずにゃんが、かわいい声で、

「その明かりを持って、こっちに来い!」

と、言いました。
唯ちゃんは言われた通り、明かりを手に持ち、あずにゃんにぴたりとよりそいました。

「もうちょっと、はなれて」

とあずにゃんが、今度はてれくさそうに言ったので、唯ちゃんは、しぶしぶ離れました。
唯ちゃんは、あずにゃんの後について、部屋から部屋を通りぬけていきました。
すると、二人の前に、おもおもしい鉄のとびらがあらわれました。

「あけろ!」
「あずにゃんあけて~」

あずにゃんは、小さなかたで、ガンととびらをおしましたが、
とびらはあかなかったので遠回りすることにしました。

61: 2010/10/03(日) 22:22:47.68 ID:2bBXzxseO
やがて唯ちゃんとあずにゃんは、しめっぽい石のへやに出ました。
あずにゃんは、ゆかの大きなしき石をさして言いました。

「持ち上げろ!」
「あんな大きいの持ち上げられないよお」

けっきょく二人でがんばっても持ち上げられなかったので、あきらめてソファーのあるへやにもどって来ました。
二人でソファーにこしかけると、あずにゃんが言いました。

「これで、城の中のたんけんは終わった」

しかし、唯ちゃんは、

「まだたんけんは終わってないよ」

と言うと、あずにゃんをソファーにおしたおし、

「ここのたんけんがね」

と笑いました。かわいいものを目の前にした唯ちゃんのむらむらは、もうがまんのげんかいでした。

62: 2010/10/03(日) 22:27:18.76 ID:2bBXzxseO
「あずにゃん分ほきゅう※完りょう!かわいかったよ、あずにゃん」

唯ちゃんがあずにゃんをひととおりたんけん※し終わるころには、
あずにゃんはすっかりじゅうじゅんになっていました。

「おまえは一度も私をこわがらなかった!ああ、とうとう私のまほうはやぶれた!」

と、あずにゃんはくやしそうに言うと、こんどは、ほほえみながら言いました。

「そして、あなたのまほうにかかってしまった」

そのことばがおわると、あずにゃんはうでも足も力をぬいて、唯ちゃんに体をあずけました。

「私は、いつまでもあなたのものです。あなたをずっと待っていました、ご主人さま」

唯ちゃんは、朝までじっくりとあずにゃんをかわいがり※ました。



※あずにゃん分ほきゅう――せい的な意味で。
※たんけん――せい的な意味で。
※かわいがり――せい的な意味で。

66: 2010/10/03(日) 22:34:45.29 ID:2bBXzxseO
さて、東の空が明るくなると、
「ふわふわ時間♪ふわふわ時間♪」
という、歌声が聞こえてきました。
唯ちゃんを引き取りに来た、そうぎやの連中でした。ところが、どうでしょう。

「かわいいいあずにゃんをみんなが見に来てくれたよ。自己しょうかいしようね」
「はっはひぃっ!ご主人さまの、しょゆう物のぉっひぃ!あずにゃんですうう!」
「お上手お上手。ほら、もっとないて」
「ああんっ!みなさん、ご主人さまにお○んこいじられてイっちゃういやらしい私を見てえへぇぇっ!!」

「……なんだこれ」

氏んだはずの唯ちゃんは、まどにこしかけて、あずにゃんとまぐわっている※ではありませんか。

こうして、『かわいいもの好きの平沢唯』と平沢あずにゃんは、
この大きなお城に住んで、しあわせにくらすことになりました。

ところが――



※まぐわっている――しているさま。

69: 2010/10/03(日) 22:40:26.75 ID:2bBXzxseO
ある日のこと。

「あーずにゃん!エOチなことしよ?」
「あんっ…ダメですよお…ごはん、つくれないじゃないですか…」

後ろからだきついて来た唯ちゃんにふり向いた、はだかエプロンのあずにゃんは、
そこに、おそろしいすがたを見たのです。

「やっ、だれだ!あっちへ行け!あーっ!」

あずにゃんは、唯ちゃんのかげになりすましていた憂せん手におどろいて、氏んでしまいました。


おしまい

73: 2010/10/03(日) 22:47:18.91 ID:2bBXzxseO
憂「新たな主人を待ち続けた梓ちゃん。彼女にも、幸運は舞い込んで来ました」

憂「しかし、その影には必ず当事者たちを支えてくれている存在がいることを忘れてはなりません」

憂「それを忘れてしまった故の悲劇、そんなお話でしたね」



憂「いかがでしたか?今回お話しした唯梓はほんの一部」

憂「世界にはまだまだ数え切れないほどの唯梓があります」

憂「中には、私さえも知らない唯梓だってあるでしょう」

憂「なぜなら、今もどこかで唯梓が生まれているかも知れないのですから」

憂「ほら、そこにも……」

74: 2010/10/03(日) 22:53:47.53 ID:2bBXzxseO

『おいてけ堀』



唯「ふう、寄り道してたらすっかり遅くなっちゃったあ…暗いよ」

唯「鯛焼きも買ったし、冷めないうちに早く帰ろっと」

キーンコーンカーンコーン

唯「ひっ!……い、いいタイミングでチャイムが鳴るじゃあないのさっ……うう」タタッ


オーイーテーケー


唯「えっ」ドキッ

唯「今何か……」


オーイーテーケー


唯「気のせいじゃない…!」

唯「や、やだっ!この鯛焼きは私のなのっ!」

76: 2010/10/03(日) 22:59:02.54 ID:2bBXzxseO
オーイーテーケー!!


唯「ううーっ!聞こえない聞こえないー!」タタタタ

唯「はあ、はあ……やっと声が聞こえなくなったよお、おっかないなあ…」

ガサガサッ

唯「だ、誰っ!?」

?「その鯛焼き、私に譲って下さいませんか…」

77: 2010/10/03(日) 23:00:57.43 ID:2bBXzxseO
唯「だ、ダメだよっ!これは家でゆっくり食べるんだから!」

?「どうしても?」

唯「どうしても!」

?「どうしても~?」

唯「どうしてもったらどうしてもなのっ!」

?「それじゃあ……これでも?」スチャ


猫梓「にゃ~」


唯「キャーッ!化けあずにゃんだーっ!!」ギュー

梓「にゃっ///」

唯「これは鯛焼きを与えざるを得ないよっ!」

梓「にゃあにゃあ♪」モグモグ

78: 2010/10/03(日) 23:02:50.14 ID:2bBXzxseO
唯「ふう、今日はいい日だなあ」

?「可愛いお姉さん、そんなにいいことがあったんですか?」

唯「そうなんだ~、さっきそこでそれはそれは可愛い化けあずにゃんに出会ってね!」

?「へえ…それはもしかして…」スチャ

猫梓「こんな娘じゃなかったですか!?」

唯「きゃーっ♪」ギュッ

梓「にゃーっ♪」

唯「手が勝手に鯛焼きをあずにゃんの口に運んでしまうーっ!」

梓「おいひいでふ!」モグモグ


※以下ループ

80: 2010/10/03(日) 23:06:16.05 ID:2bBXzxseO
梓「にゃあ!」バッ

唯「きゃー…って、あれ?」

唯「あずにゃん…さっき一緒に食べた分で最後みたい。ごめんね、おいてけ堀ごっこはおしまいだよ」

梓「えっ…」シュン

唯「そんな顔しちゃって…可愛いなあもう!そうだ、今日は家で一緒にご飯食べよ?」

梓「……!はいっ♪」




憂「すべてを失っても抜け出すことの出来ない無限唯梓…」

憂「哀れな少女は、そして化け猫はこれからどうなってしまうのでしょうか。誰にもわかりません」

ム゛ーッム゛ーッ カパッ カチカチ

憂「……そろそろ時間のようです。皆さん、またお会いしましょう。ストーリーテラー憂でした」



END


憂「…今日は二人に精のつくご飯作ってあげなきゃ♪」

83: 2010/10/03(日) 23:15:40.46 ID:2bBXzxseO
終わりです。読んでくれて&支援感謝です
カプスレで見た長靴をはいた猫に憧れて書いたはずがどうしてこうなった

一応全部元ネタはあります。

「魔女の城」…タイトル不明。海外の映画から
「あずにゃんがさずけてくれたもの」…中国の民話。アレンジ激しいです
「かわいいもの好きの平沢唯」…怖いもの知らずのジョバンニ。これは有名かも
「おいてけ堀」…まんまですね

85: 2010/10/03(日) 23:16:17.56 ID:9b9rOiMEP
仲よきことは美しき哉

86: 2010/10/03(日) 23:18:41.97 ID:G7orl2WM0
乙!
できればもっと見たかったが十分ニヤニヤできたよ

引用: 憂「世界唯梓物語」