318: 2014/05/14(水) 21:23:27.05 ID:xUxz6EdSO
勇者「結構、街まで距離あるんだね……俺、もう疲れちゃったよ……」

女僧侶「ええ、もう野宿はこりごりです……シャワーも浴びたいな……」


ーー数週間前、俺の前に現れた自称天使の男、天童世氏見


勇者「食糧も残り少なくなってきたよねぇ……? 腹減ったなぁ……」

女僧侶「次の街までの我慢です。頑張りましょう?」


ーー俺はこいつが現れてから三度氏にかけた


勇者「そうだけどさぁ……? もう俺、腹減って力出ねぇよぉ……?」

女僧侶「……実は、私もです」


ーー 一度目は、火事の家の中に取り残されそうになって。二度目は魔物に焼き殺されそうになって。三度目は……よく、わかんないけど


第一話 「お前は今日氏ぬ!」

第二話 「Hしないと氏ぬ!?」

第三話 「褒められないと氏ぬ!」


天国に一番近い男 [レンタル落ち] 全6巻セット [マーケットプレイスDVDセット商品]
319: 2014/05/14(水) 21:29:57.90 ID:xUxz6EdSO
勇者「……今日中に着くかなぁ? 早く、街に行って休もうよ?」

女僧侶「そうですね……地図を見る限り、もう少しのはずなので頑張りましょう」


ーー嘘か本当か……こいつが天界のものからだと言っている命題を、なんとかクリアしているから俺は生き残る事が出来ている……らしい


勇者「あ~、もう疲れた~! 腹減っった~!」

女僧侶「……私もです」


ーーその命題は……後……


天童「セブンだっ!」

勇者「わっ、わわっ! 急に大声出すなよ……びっくりしたなぁ、もう……」

天童「ハハハ! 相変わらずリアクションがワザとらしいな、勇者君」

320: 2014/05/14(水) 21:37:00.26 ID:xUxz6EdSO
天童「おい、ところでよぉ!?」

勇者「……何だよ、テンション高いなぁ」

女僧侶「天童さん、どうかしましたか?」

天童「おめぇらは、さっきから聞いてりゃよぉ? ブツクサブツクサ文句ばっかり垂れやがって!」

勇者「……だって」

女僧侶「……申し訳ありません」

天童「も~っと、ポジティブな考え方は出来ねぇのかってんだ! ほらっ! 空を見てみろ!」グゥー

勇者「……ん?」

女僧侶「……あれ?」

天童「この澄み渡る青い空っ! なぁ~んか、今日はいい事ありそうじゃねぇかっ! 空からでっけぇハンバーガーが降ってくるとか! なぁ!?」グゥー

勇者「……おっさん、おっさん」

女僧侶「……天童さん?」

322: 2014/05/14(水) 21:44:55.19 ID:xUxz6EdSO
天童「それに、この心地良い風! あ~、腹減ったなぁ~、牛丼食いてぇな~! この風に乗って匂いだけでもこねぇかなぁ!?」グゥー

勇者「……あのさぁ?」

女僧侶「天童さん、食事の話は今は控えて下さい……私も我慢してるんですよ……」

天童「あ~! カレーに、チャーハン、ハンバーグ! なんでもいいから食いてぇなぁ! そう考えると、お子様ランチって凄ぇなぁ? なっ、なっ!?」グゥー

勇者「おいコラ、おっさんっ!」

女僧侶「天童さんっ!」

天童「わっ……! ど、どしたの……? 二人して、そんな怖い顔して……?」ビクビク

勇者「飯の話はやめろっ!」

女僧侶「食事の話は控えて下さいっ!」

天童「えっ、えっ……? 僕、飯の話なんてしてたかな……?」

324: 2014/05/14(水) 21:53:46.02 ID:xUxz6EdSO
ーーーーー


勇者「……もう我慢出来ん。次に魔物見かけたら、どんな魔物だとしても、俺は焼いて食うぞ」イライラ

天童「……勇者、成長したじゃねぇか。俺も付き合うぜ」イライラ

女僧侶「……僧侶として、無益な殺生は認める訳にはいきませんが、今回は許しましょう」イライラ


「いらっしゃ~い! いらっしゃ~い! 道具はいりませんかぁ~!?」


勇者「……ん?」

天童「なんだ、ありゃ?」

女僧侶「ああ、あれは移動商店ですね。ああやって、色んな街を旅してる商人さんがいるんですよ」


女商人「いらっしゃ~い! いらっしゃ~い! 道具はいりませんかぁ~!?」

勇者「おいっ! 天童っ!? 飯売ってるんじゃねぇの、あれ?」

天童「おっ! そうだな! 勇者、行ってみようぜっ!」

325: 2014/05/14(水) 22:00:06.79 ID:xUxz6EdSO
勇者「こんにちはっ!」

女商人「あっ、お客さんですか!? いらっしゃいませぇ~!」ニコッ

天童「!」ドキッ

勇者「おおっ、凄ぇっ! パンにおにぎり……食糧がたんまりあるぞ、オイ!」

女商人「お安くしておきますよ~?」

天童「……」ドキドキ

勇者「じゃあ、俺はおにぎりと……後、パンと……おい、天童! お前はどうする!?」

女商人「はいはい、おにぎりとパンですねぇ~?」ニコニコ

天童「……春は恋の季節ばい」


勇者「はぁ……? 何、言ってんだお前……?」

326: 2014/05/14(水) 22:06:18.68 ID:xUxz6EdSO
勇者「……あれ?」

女商人「ん……? どうかしましたか、お客さん?」

勇者「ねぇねぇ、お姉さん……このおにぎり、賞味期限切れてるよ……?」

女商人「!」

勇者「あっ……! こっちのパンもだっ!? これ、全部賞味期限切れてるじゃないですか!?」

女商人「も、申し訳ありませんっ……! 今、ちゃんとしたヤツ探しますから、少々お待ち下さいっ……!」アセアセ

勇者「あっ、装備とかも売ってるんだ? え~っと……この武器は~っと……」キョロキョロ

女商人「え~っと……え~っと……」

勇者(うわっ、なにこれ!? 凄ぇ錆びてる)

328: 2014/05/14(水) 22:14:30.15 ID:xUxz6EdSO
女僧侶「……勇者さん、勇者さん」ヒソヒソ

勇者「……ん、どうしたの? 女僧侶ちゃん」

女僧侶「今、薬草や回復薬も見てみたんですが……これ……」

勇者「うわ……それも痛んでるヤツじゃん……」

女僧侶「私、この移動商店、駄目な店だと思います……」ヒソヒソ

勇者「う~ん……そうだね……? お腹減ってるけど、街まで我慢する……?」


女商人「あっ、お客さんっ! ありましたよ! 賞味期限の切れてないパンが一つ!」

329: 2014/05/14(水) 22:20:08.11 ID:xUxz6EdSO
勇者「あ~、いいです……僕達、街に行ってから食事とるつもりなので……?」

女商人「えっ……?」

女僧侶「三人で……一つのパンというのも……ごめんなさいね?」

女商人「あっ、待って下さいっ……! 今、探しますっ……!探しますから……!」アセアセ

勇者「あっ、いや……本当に大丈夫です……それじゃあ、また……」


天童「何を言っとるんだっ! 勇者君っ!」

勇者「……ん?」

天童「こんなに素敵で素晴らしい店で買い物をしないなんて、君はどうかしてるよ!」

勇者「……何を言ってるんだ。お前は」

331: 2014/05/14(水) 22:29:24.49 ID:xUxz6EdSO
天童「例えば、このおにぎり! と~っても、美味しそうじゃないか! 何で君は買わないんだ!?」

勇者「……だって、それ賞味期限切れてるもん。腹、壊したくないし、いいよ」

女商人「……うぅ」

天童「じゃ、じゃあ……この剣なんてどうだい? ほら、こ~んなに、格好いいんだよ?」

勇者「……錆びてて使いもんにならねぇじゃねぇか? 大根も切れねぇだろ、ソレ」

女商人「……うぅ」

天童「じゃ、じゃあ……この薬草っ! ほら、女僧侶ちゃんに回復任せっきりじゃ、悪いじゃん?」

勇者「薬草食って、毒くらいたかねぇ~よ」

女商人「……うぅ」

天童「え~っと、え~っと……じゃ、じゃあさ……? このアイテムバックは? お洒落で格好いいじゃん?」

勇者「……あっ、それはいいね? お洒落だし、痛んでないし」

女商人「!」

332: 2014/05/14(水) 22:33:35.39 ID:xUxz6EdSO
勇者「俺、このアイテムバック欲しいです。いくらですか?」

女商人「あ、あの……そ、それは……売り物じゃないんです……」アセアセ

勇者「え~、なんで? これ、いいヤツなのに、何で売ってくれないの?」

女商人「あの……それ……」

勇者「?」

女商人「……主人の形見なんです」


勇者「……えっ?」

天童「……えっ?」

女僧侶「……訳ありのようですね。よろしければ、お話だけでも聞かせてくれませんか?」

333: 2014/05/14(水) 22:42:25.06 ID:xUxz6EdSO
女商人「……うちは元々、鞄屋さんだったんですよ」

勇者「あ~、そうなんだ……このアイテムバック作ってたんだ……」

女商人「主人が獲物を飼って、材料を仕入れて……私が加工して鞄を作って……そうやって生計を立ててきました……」

天童「……ふむ」

女商人「でも、魔王の復活で……狩場にも魔物が現れるようになって……主人はそれで……」

女僧侶「……お悔やみ申し上げます」

女商人「それで、こうやって商人始めたんですけど……やっぱり、私向いてないんですかねぇ……? ダメな商品ばかり捕まされちゃって……」アセアセ

勇者「……」

334: 2014/05/14(水) 22:53:46.65 ID:xUxz6EdSO
勇者「……鞄屋さんを続けようとは思わなかったんですか?」

女商人「正直、考え直した事は何度もありました……でも」

天童「……でも?」

女商人「お客さんは、『頑張れ! 頑張って、移動商店続けろ!』なんて応援してくれるんです」

勇者「……」

女商人「それに、今は物資すらない街が沢山あります……そんな街に例え駄目な物資だとしても、支援すると凄く感謝されるんですよ」

天童「皆、危険な場所には行きたがらないからね~、ほ~んとに物資不足してるのはソコなのに」

女商人「やっぱり、今自分がやる事はコレなんだなぁって。きっと主人もそう言ってくれてるような気がします」ニコッ

勇者「……」

335: 2014/05/14(水) 23:01:30.65 ID:xUxz6EdSO
勇者「え~っと……じゃあ、このおにぎり二つ下さい……」

女商人「……えっ?」

女僧侶「私はこちらのパンを……」

女商人「えっ、えっ……? あの、賞味期限切れてますよ、それ……?」

天童「なぁ~に! 腹の中に入っちまえば変わらんばいっ! あっ、俺はおにぎり三つね!」


勇者「あっ! おっさん、三つも食うんじゃねぇよ! この大食い野郎っ!」

天童「俺はよぉ? 世の中の経済を潤わしてやってるんだよ! それに、女僧侶ちゃんは、一つなんだから、俺が三つ食ってもいいじゃねぇかよっ!」ギャーギャー

勇者「なんだよ、その理論っ! 意味わかんねぇよっ!」ギャーギャー


女商人「あ、ありがとうございますっ……!」

336: 2014/05/14(水) 23:10:12.77 ID:xUxz6EdSO
ーーーーー


勇者「ふ~う……食った食った……」

天童「味はそんなに変わらんもんね……女商人さんはこれからどうされるんですか?」

女商人「私は、物資が不足してる街に支援活動を続けます。でも、その前に西の街で商品を仕入れようと思んですよ」

勇者「あれ、そうなの? 俺達と目的地一緒じゃん?」

天童「よ、よければ、ご一緒しませんかねぇ?」ドキドキ

女商人「あっ! 是非お願いしますっ! 今度は変な商品捕まされないように頑張らなきゃ!」

339: 2014/05/14(水) 23:19:10.15 ID:xUxz6EdSO
勇者「おい、天童? お前、仕入れ手伝ってやれよ? そういうの、上手いだろ?」

女商人「えっ!? 天童さんも商人なんですか?」

天童「あっ、はいっ! 私、商人の天童世氏見です! 仕入れましょう! 貴方の為に素晴らしい商品を仕入れましょうっ!」

勇者「……ん?」

女商人「じゃあ、天童さん! 是非お願いします! もう私、仕入れが下手で下手で困ってるんですよ!」

天童「任せときんしゃいっ! 三割、四割引きは当たり前っ! なんなら、店ごと買い占めてやりましょうっ!」

勇者「おい、天童……? お前、いつもの『商人(天使)』ってヤツはどうしたんだ……?」

女商人「えっ……? 天使……?」

天童「あっ! いや、なんでもありましぇ~ん! 勇者君~? ちょ~っと来てくれるかな~?」コソコソ

勇者「お、おいっ……! 何だよ……?」アセアセ

女商人「?」

345: 2014/05/15(木) 20:50:10.39 ID:vK1DAmelO
勇者「なんだよ、こんな所に呼び出しやがって……」

天童「……」

勇者「女僧侶ちゃん達に聞かれちゃマズい話でもあんのかよ? ……あっ、もしかして命題来たの?」

天童「……」

勇者「命題来たんだったらよぉ、早く確認しようぜ? もう、俺この数日不安で不安で……」

天童「……俺は人を愛しちゃいけないんだ」

勇者「……はぁ?」

天童「俺は天使だから、いくら人間の事を好きになっても、絶対に結ばれる事はないんだ」

勇者「……何、言ってんだお前?」

346: 2014/05/15(木) 20:55:35.40 ID:vK1DAmelO
天童「それに、彼女が振り返ってくれたとしても! ……彼女の気持ちを弄ぶ事になってしまうんだ」

勇者「待て待て……話が見えん……」

天童「だけど!……この胸の高鳴り! そして、トキメキ! なっ、勇者君わかってくれるだろ?」

勇者「え~っと……お前、あの女商人さんに惚れたの……?」

天童「……」コクリ

勇者「それで……自分が天使だって事を、黙っておいてほしいんだ?」

天童「……」コクリ

347: 2014/05/15(木) 21:06:46.00 ID:vK1DAmelO
勇者「なぁ~に、顔を真っ赤にして、バカな事を言ってんだおめぇは!」

天童「なっ……! そんな言い方しなくてもいいだろがっ!」

勇者「おめぇが天使だなんて誰も信じねぇよ! いつもみたいに言っちまえばいいじゃねぇか!」

天童「バ、バカ野郎っ……! 天使と人間との恋愛は天界で禁止されてるんだよ!」

勇者「おめぇみたいなヤツに振り向いてくれるワケねぇよっ! その怪しい風貌から『恋愛』だなんて、どの口が言ってんだよ、バカっ!」

天童「カ、カァ~! 悔しかぁ~! 悔しかぁ~! もう、たまらぁ~んっ!」

勇者「別に黙っておいてやってもいいけどよぉ~? どうせ、お前じゃ無理だぜ? 天界で禁止されてるんなら、あの人の事は素直に諦めろよ?」

天童「童Oのお前にそんな事、言われたくねぇよ!」

348: 2014/05/15(木) 21:16:01.72 ID:vK1DAmelO
ーーーーー


女商人「……お話、終わりました?」

天童「いやぁ~! 急に勇者君がお腹が痛いなんて、言い出したもんですからね! そこの影で糞に付き合わせられましたよ! ハハハ!」

勇者「おめぇ、適当な事言ってんじゃねぇぞコラっ!」

女商人「えっ……! も、もしかしてさっきの賞味期限切れのおにぎりに当たったんじゃ……」アセアセ

天童「あっ! い、いやっ……! 違うんですっ! 勇者君、確か昨日拾い食いしましてねぇ……?」

勇者「おめぇはよぉ……次から次へと出まかせばかりよぉ……」

女商人「ど、どうしよう……? 薬あったかなぁ……? 勇者さん、今、薬出しますね……?」アセアセ

天童「あっ、いやっ……あのっ……! ち、違うんです……! 女商人さん! これは違うんですっ……!」

勇者「……ばーか」

349: 2014/05/15(木) 21:32:25.01 ID:vK1DAmelO
ーーーーー


女商人「ほ、本当に大丈夫なんですか……?」テクテク

勇者「あぁ、あれはこいつの出まかせだから、大丈夫です。それに、俺腹丈夫なんで」テクテク

天童「女商人さん、疲れてませんか? 結構歩きましたよ?」テクテク

女商人「あっ、大丈夫です、天童さん。私、結構体力には自信があるんです」

勇者「おめぇはさっきから、それば~っかりだな!」

天童「いや、レディにそんなキツい事はさせられんばいっ! そうだ! 荷物持ちますよ!」

女商人「あっ、大丈夫です……」アセアセ

勇者(必氏だな、こいつ……)

天童「いやいやっ! 私が持ちますよっ! ほら、ほらっ!」

女商人「い、いえっ……本当に大丈夫ですから……」アセアセ

勇者(あ~んな事して、本当に好感度上がるもんなのかねぇ……? ん……?)


女僧侶「はぁ……はぁ……」

勇者「……」

350: 2014/05/15(木) 21:43:01.68 ID:vK1DAmelO
女僧侶「はぁ……はぁ……」トボトボ

勇者「……」テクテク

女僧侶「はぁ……はぁ……」

勇者「……ねぇ、女僧侶ちゃん?」

女僧侶「えっ……! どうかしましたか……?」

勇者「大丈夫? ちょっと疲れてるみたいだけど?」

女僧侶「ど、どうしたんでしょう……ここ数日、しっかり寝れてないからですかねぇ……少し、疲れました……」

勇者「……ふ~ん」

女僧侶「でも、街までもう少しですからね! 私、頑張りますよっ!」

勇者「……うん」

女僧侶「では、行きましょうか? はぁ……はぁ……」

勇者「……」

351: 2014/05/15(木) 21:49:04.00 ID:vK1DAmelO
勇者「……俺、女僧侶ちゃんの荷物持とうか?」

女僧侶「……えっ?」

勇者「疲れてるんでしょ? 無理はしちゃいけないよ? ほら、貸して」ヒョイ

女僧侶「あっ……ありがとう……ございます……」

勇者「街までもう少しだと思うからさ? あっ、そうだ! 今日ぐらい贅沢しようか? 男戦士さんから貰った餞別使ってさ!」

女僧侶「……はい、有難うございます」


勇者(こ~んなので、好感度上がるもんなのかねぇ~?)

352: 2014/05/15(木) 21:56:26.15 ID:vK1DAmelO
天童「おい、勇者っ! 街が見えたぞっ! ようやく街だっ!」

勇者「おおっ! 街だっ! ついに街が見えたっ!」

天童「よしっ! 今日は宴会しようっ! 皆で酒場で飲むぞっ!」

勇者「てめぇが飲みてぇだけだろがコノヤロっ! でも、まぁ、今日ぐらいはいいよな?」

天童「なんだよ勇者君~、話がわかじゃないか~! さぁさぁ、女商人さんも早く行きましょう!」


女商人「……」

勇者「あれ? 急に、固まってどうしたんですか? 」

女商人「あっ、いや……!」アセアセ

353: 2014/05/15(木) 22:07:01.25 ID:vK1DAmelO
女商人「……あそこにある高台、見えます?」

勇者「あっ、高台ありますね。それがどうしたんですか?」

女商人「そこに、大きな木があるでしょ? ほら、見えます?」

勇者「あぁ、あの赤い実がなってるヤツですね?」

女商人「あの実って、病に効く凄く希少価値の高い実なんですよ」

勇者「へぇ~」

女商人「……これから行く街で、仕入れる事が出来たらいいんですけどねぇ」

355: 2014/05/15(木) 22:26:42.61 ID:vK1DAmelO
女商人「でも……希少価値の高い物ですし……仕入れる事が出来るかどうか……」

天童「なぁ~に! 俺に任せておけば100個でも200個でも仕入れてやるばいっ!」

勇者「……なんで、わざわざ買うの?」

女商人「……えっ?」

天童「そりゃ、俺がうまく事やって恰好いい所、見せてよぉ~? 女商人さんを……あっ、いや、なんでもないナンデモナイ……」アセアセ

勇者「あそこにいっぱいあるんだから、自分で取りに行けばいいじゃん。それが一番手っ取り早いじゃん」

女商人「そうか……商品って、仕入れるだけじゃなくて、自分で取りに行くって方法もあるんだ……」

天童「あのなぁ、勇者? あんだけ人目につく場所にあるのに誰も手ぇつけねぇんだぞ? なんか、あるに決まってんだろ! でっけえ魔物がいるとかよぉ!」

勇者「あぁ、そういう事か……でも、女商人さんが取りに行きたいなら、協力しますよ?」

357: 2014/05/15(木) 22:39:40.37 ID:vK1DAmelO
女商人「……えっ?」

天童「あっ、てめぇ! 何、格好つけてやがる! 女商人さんにいい所を見せるのは俺……あっ、いや、なんでもないナンデモナイ……」アセアセ

勇者「女商人さん、どうします?」

女商人「う~ん……気持ちはありがたいんですが……やっぱり、天童さんの言う通り、魔物がいたりしたら危険ですし……」

天童「なぁ~に! 俺が仕入れてやるから、大丈夫ですって! 大丈夫っ!」

勇者「でも、欲しいんでしょ……? あの実、物資が不足してる街に持って行きたんでしょ?」

女商人「はい……それじゃあ、今日はとりあえず、街に行きましょうか? 皆さんも疲れてらっしゃるようですし」

天童「……実は?」

勇者「……どうするんですか?」

女商人「もし、街で仕入れる事ができなかったら、明日の昼に取りに行きたいと思います。……その時は協力してもらっていいですかね?」

天童「なるほど」

勇者「わかりました」

360: 2014/05/16(金) 21:32:58.64 ID:oT2e7Ko0O
街ーーー


勇者「ふう……ようやく街についたか……」

女商人「そうですね。いい商品があるといいんですが」

天童「じゃあ、早速仕入れに行きましょうか? 二人っきりで! ねっ、二人っきりで!」

勇者「おめぇなぁ……? ちょっと必氏すぎやしねぇかぁ……?」

女商人「え~っと……勇者さん達は、どうされるんですか?」

天童「あっ、女僧侶さん。こういうのは素人がついてきても邪魔なだけすから! 僕と二人っきりで行きましょう! そう、二人っきりで!」

勇者「あのなぁ……?」

女商人「そ、そういうものなんですか……」

天童「勇者君、チミ達は先に酒場にでも行ってなさい。あっ、それと、これこれ……」ヒョイ

勇者「ん……? 何、これ……?」


天童「命題だよ。さっき届いたから、確認しておけ」

361: 2014/05/16(金) 21:41:55.46 ID:oT2e7Ko0O
天童「じゃあ、僕達はこれから、商品仕入れに行くから! 勇者君~、頑張ってねぇ~?」

勇者「いやいや……!」

天童「うわぁ! なんだかこれって、デートみたいですねぇ? 僕照れちゃうなぁ~」

勇者「おいっ、天童っ! おめぇ、命題放ったらかしにしておいて何処行く気なんだよ!?」

天童「……勇者君」

勇者「な、なんだよ、急に真面目な顔しやがって……」

天童「……君はもう、成長した。一人前だ。だから……きっと、命題だって一人でクリアできるよ? ねっ?」

勇者「そっか、確かに俺、ここ数日で自分でも成長したと思うもんなぁ……」

天童「でしょ、でしょ? だから僕は……!」


勇者「なぁ~んて、言うとでも思ったかオイっ! てめぇも付き合えよ! このインチキ天使っ!」

天童「イ、インチキ天使って事ぁ、ないでしょうっ……!」アセアセ

362: 2014/05/16(金) 21:51:48.44 ID:oT2e7Ko0O
勇者「今日のお前は、何かおかしいっ! なっ? 実らぬ恋はとっとと諦めて、ちゃんと命題をしましょうっ!」

天童「命題をやるのはおめぇだろうが! それに、実らぬ恋ってなんだよ!? おめぇみたいなダメ人間にそんな事言われたくねぇよ!」

勇者「はいはい……そのダメ人間を更生させるのが、あんたの仕事でしょ? 天使がそんな無責任な事、言っちゃいけません」

天童「おめぇはよぉ! 普段はインチキ天使、インチキ天使なんて言ってるくせに、こ~んな時だけ、都合のいいやつだな!」

勇者「都合のいいのは……おめぇじゃねぇかよ……」

天童「それにお前、この前『命題なんか一人でやってやる』って、言ってたじゃねぇかよ!」

勇者「えっ……それは……」アセアセ

天童「困った時はいつも、俺に頼るんだなぁ、お前は! 男だったらよぉっ! 命題くらい、自分の力でビシッとやってみやがれっ!」

勇者「……」

363: 2014/05/16(金) 22:05:50.61 ID:oT2e7Ko0O
天童「なぁ~、勇者よぉ……勇者君よぉ……」

勇者「……んっ?」

天童「なぁ、頼むよぉ~? 今回だけは見逃してくれよぉ~?」

勇者「な、なんだよ……今度は泣き落としかよ……」

天童「そりゃさ……俺は天界の掟を破ってるよ……? でも、俺マジなんだよぉ~……」シクシク

勇者「おっさん、おっさん……」

天童「俺がさぁ……あの人を想う気持ちは嘘じゃないんだよ……だってさ? あの人、態度には出さないけど、旦那さん亡くして辛いハズだぜ?」シクシク

勇者「ええいっ! いい歳したおっさんが泣くな! 気持ち悪いっ!」

天童「誰かが、心の支えになってやらなきゃ、いけねぇよ、きっと~」シクシク

勇者「わかった! わかったよ! 今回は一人でやってやるからっ! もう泣くな、気持ち悪いっ!」

天童「えっ、ほんとぉ~? うわぁ、勇者君って優しい~! かっこいいなぁ~!」

勇者「おめぇ、絶対思ってねぇだろ? で、でもよぉ……やばくなったら手伝ってくれよな……?」

天童「任せときんしゃいっ!」

364: 2014/05/16(金) 22:13:00.29 ID:oT2e7Ko0O
ーーーーー


勇者「……ったく、嬉しそうに仕入れに行きやがって。てめぇの面、よく見てみろっての」

女僧侶「勇者さん……私達はどうします……?」

勇者「酒場に行っておけって言われたけどなぁ……俺達、酒飲めないしなぁ……」

女僧侶「未成年ですしね……」

勇者「どうしようかな……? あっ、ちょっと待ってて? 命題だけ確認するから……」

女僧侶「……命題?」

勇者「あっ、なんでもない、なんでもない……! こっちの話!」

女僧侶「?」

勇者「え~っと……命題は……っと……」

365: 2014/05/16(金) 22:17:35.78 ID:oT2e7Ko0O
勇者「んっ……?」

女僧侶「はぁ……はぁ……」

勇者「……」

女僧侶「はぁ……はぁ……」

勇者「……ここ暑いね? とりあえずさ、酒場でもいいから、涼しい所に行こうか?」

女僧侶「……えっ?」

勇者「命題の確認は酒場でするよ。だから、早く休める場所に行こうよ」

女僧侶「……命題?」

勇者「あっ、いやっ……! なんでもないから、気にしないで……」アセアセ

366: 2014/05/16(金) 22:26:41.64 ID:oT2e7Ko0O
酒場ーーー


酒場の主人「おっ、見ねぇ顔だな? 冒険者か? らっしゃいっ!」

女僧侶「はい、私達東の街からやってきました」

勇者「とりあえず、何か冷たい飲み物二つ下さい」

主人「はぁ~、東の街って魔物に襲われた所だろ? お前ら、大丈夫だったのか?」ガチャガチャ

女僧侶「ええ、私達その魔物の討伐部隊でしたの」

勇者「東の街は今、少しずつですが、復興も始まってるので、この街の皆さんも支援してあげて下さい」

主人「……お前ら、若そうに見えるけど、強いんだなぁ? へいっ、ドリンク二つお待ちっ!」

女僧侶「ありがとうございます。もう、私喉がカラカラで……」ゴクッ

勇者「じゃあ、俺も……あっ、その前に命題確認しておこっと……」

367: 2014/05/16(金) 22:35:46.59 ID:oT2e7Ko0O
勇者「え~っと……封筒、封筒っと……あれ? どこやったっけ?」

女僧侶「……」ゴクゴク

勇者「あれっ、あれっ? 何処だ、何処だ? ひょっとして、無くした!?」

女僧侶「……」ゴクゴク

勇者「わっ、びっくりした……薬草の間に挟まってるじゃん……も~う、このアイテムバック使いにくいなぁ……」

女僧侶「……」プファー

勇者「え~っと……うわぁ、タイムリミットは明日かよ……だったら、明日に届けてくれよ……」

女僧侶「……」テクテク

勇者「でも、これって、どういう事なんだろ……?」チビッ


勇者「ブッ……! ちょ、ちょっとっ……! おじさん……!?」

主人「……ん、どうした?」

392: 2014/05/17(土) 00:13:52.83 ID:oo6YVwgPO
勇者「これ、お酒じゃないですか!?」

368: 2014/05/16(金) 22:43:53.61 ID:oT2e7Ko0O
主人「おぉ、特製の麦焼酎だよ。臭いもなくて、飲みやすいだろ?」

勇者「い、いやっ……! あのですね……?」

主人「ウチはね、水にこだわってんのよ、水に。なんなら、ボトルキープしておくか? 気に入ったろ、ソレ?」

勇者「あ、あのっ……! 僕達、未成年ですっ!」アセアセ

主人「……えっ、お前ら未成年なの? だったら、先に言えよ。ここ、酒場なんだからさぁ?」

勇者「す、すいません……」アセアセ

主人「あっ、兄ちゃん! あんたの連れが他の客に絡んでるぞ! ダメだよ、うちは喧嘩はご法度なんだから!」

勇者「女僧侶ちゃんが……? って、女僧侶ちゃんのグラス、空っぽじゃんっ!? なんで!?」

369: 2014/05/16(金) 22:51:34.84 ID:oT2e7Ko0O
女僧侶「そこの貴方達っ!」

「ん~?」「ど~したんですかぁ~?」

女僧侶「貴方達はどうして、そんなはしたない格好をしているんですかっ!」

「だって、私達遊び人だし~」「ねぇ~?」

女僧侶「そんな短いスカートでは、下着が見えてしまいますよ!」

「別に~、コレ見せパンだし~?」「パンツ見せてイケメンよってくるならいいよねぇ~?」

女僧侶「ふしだらな……本来、女性があるべき姿は私のようなこういった……」

「そんなダサい格好最悪~!」「そんなのじゃ、イケメンよってこないし~」

女僧侶「ダ、ダサい……」ピクッ

「あんた、彼氏いた事とか、絶対ないでしょ~?」「キスもまだなんじゃない~?」

女僧侶「……」ピクピク

「デートもした事ないでしょ~?」「マジウケるwww」

371: 2014/05/16(金) 22:57:38.46 ID:oT2e7Ko0O
女僧侶「貴方達っ……!」

「きゃ~、怖い~」「最悪~!」

勇者「ちょ、ちょっと……女僧侶ちゃん、何してるの……落ち着いて……」

女僧侶「放して下さいっ! 勇者さんっ! 今から私が彼女達に女性の嗜みというものを……」

「遠慮しておきま~すwww」「私達、楽しくお酒飲みたいんで~」

勇者「あっ、うん……ごめんね……? 楽し~く、お酒飲んで下さ~い。じゃあ、女僧侶ちゃん、席に戻ろうか……?」アセアセ

女僧侶「放して下さい、勇者さんっ! 放して下さいっ!」ジタバタ

372: 2014/05/16(金) 23:04:28.22 ID:oT2e7Ko0O
女僧侶「うぅ……」ヒック

勇者「女僧侶ちゃん、落ち着いた……?」

女僧侶「……マスター、さっきの飲み物、もう一杯下さい」

勇者「えっ!?」

女僧侶「早く持ってきて下さい……早く……早くっ……!」ヒック

勇者「い、いやっ……! 女僧侶ちゃん、もうやめた方がいいって! って、あんたも持ってくんな!」

女僧侶「ありがとうございます……」ゴクゴク


勇者(おいっ!)

主人(兄ちゃん、悪ぃなぁ? 俺も酔っぱらいの相手は怖ぇからよぉ? ここは大人しく従っておかねぇと……)

女僧侶「あ~、このお水、なんだか凄く美味しいです!」

374: 2014/05/16(金) 23:12:04.69 ID:oT2e7Ko0O
ーーーーー


女僧侶「……もう一杯、くらさぁ~い」

勇者「女僧侶ちゃん、大丈夫……? 呂律が回ってないみたいだけど……」

女僧侶「大丈夫れ~す……それより、勇者さん……」グスッ

勇者「ど、どうしたの……?」

女僧侶「私……あの子達にバカにされちゃいました……」グスッ

勇者「いやいや、そんな事ないって!な、なにかの勘違いだって……!」

女僧侶「この服……ダサいって言われちゃいました……」グスッ

勇者「そんな事ないよ! 俺は可愛いと思うよ!?」

女僧侶「……本当ですかぁ?」

勇者「あぁ、本当、本当! 可愛い、凄く可愛いっ!」

女僧侶「……じゃあ、私とデートしてくれますか?」

勇者「……えっ?」

376: 2014/05/16(金) 23:18:33.47 ID:oT2e7Ko0O
女僧侶「私、あの子達に……デートもした事ないってバカにされちゃいました……」

勇者「い、いやぁ……バカにしてたワケじゃないと思うよ……?」アセアセ

女僧侶「そりゃ、私はデートした事ありませんよ……? でも、それは魔法学校に行って……教会で修行して……」

勇者「う、うん……! そうだね……!」

女僧侶「毎日が忙しかったからですよ……あの子達みたいに日々、ぐーたらぐーたら、過ごしてたワケじゃないからですよ……」

勇者(あれ? なんだか心が痛いぞ?)

女僧侶「それなのに……! あんな風にバカにされるって、酷すぎますっ……! だから、勇者さんっ! 私とデートして下さい!」

勇者「い、いやぁ……」

女僧侶「デートして下さいっ!」

377: 2014/05/16(金) 23:24:48.23 ID:oT2e7Ko0O
勇者「いや……でもさぁ……?」

女僧侶「あっ、勇者さん嫌がってる……やっぱり、私の事ダサいって思ってるんですね……?」グスッ

勇者「いや、そうじゃなくて……デートっていうのはやっぱり、本当に好きな人とした方がいいと思うよ……?」アセアセ

女僧侶「私、勇者さんの事好きですよ?」

勇者「それは、友達として……じゃん……?」

女僧侶「いえ、異性として……一人の男性として、好きです」

勇者「ちょ、ちょっと……女僧侶ちゃん、酔っぱらいすぎだよ……! 俺みたいな奴の何処を好きになるんだよ……」アセアセ

女僧侶「……勇者さん、優しいから」

勇者「……えっ?」

378: 2014/05/16(金) 23:31:31.86 ID:oT2e7Ko0O
女僧侶「だって、今日だって……私の荷物、持ってくれて……優しかったから……好きです……」

勇者(う、うおっ! アレって、本当に効き目あったのかよ!)

女僧侶「だから……私とデートして下さい」

勇者「う、うんっ……! そ、そういう事だったら……ぜ、全然いいよ……!」

女僧侶「ふふ、やっぱり勇者さんって優しいですね? じゃあ、明日のお昼にデートしましょうね?」

勇者「う、うんっ……!」ドキドキ

女僧侶「約束ですよ? 忘れないで下さいね?」

勇者「そ、そんなの忘れるワケないじゃんっ!」

女僧侶「じゃあ、指切り……しましょう……ゆびきりげんま~ん……って……ZZz……」スースー

勇者「あ、あれっ? 眠っちゃったか……飲み過ぎたもんね……」

381: 2014/05/16(金) 23:39:49.08 ID:oT2e7Ko0O
天童「おぉ~い! 勇者いるかぁ~!?」ガラッ

勇者「わっ、天童!? 大声出すなよ? 女僧侶ちゃん、寝てるんだからさ?」

天童「……なぁ~んで、女僧侶ちゃんがこんな所で寝てるんだよ? そんなキャラじゃねぇだろ?」

勇者「まぁ、色々とあってね……」アセアセ

天童「?」

勇者「ところで……女商人さんは……?」

天童「あぁ、ちょっとショックな事があったみたいでよぉ……先に宿屋に行って休んでるってさ……こういう時には酒でも飲んでうさ晴らしした方がいいのによぉ……」

勇者「……仕入れでまた変な商品、捕まされちゃったの?」

天童「バ、バカ~ん! 俺が着いてたから、仕入れは上手くいったよ! 仕入れはね?」

勇者「?」

383: 2014/05/16(金) 23:47:02.94 ID:oT2e7Ko0O
天童「ところで……勇者……」

勇者「ん……?」

天童「すまんかったっ!」

勇者「えっ、えっ? ちょっと、いきなりどうしたの?」

天童「俺は、危うく……天界の掟を破ってしまう所だった……俺の仕事はお前の命題をサポートする事なのによぉ……」

勇者「えっ? 急にどうしたの?」

天童「どうしたもなにも、僕は君の事を思ってですねぇ……!?」

勇者「あっ、わかった! お前、女商人さんに振られたんだろ?」ニヤニヤ

天童「ち、違ぇよぉ! なんで、お前そんなに勝ち誇った目ぇ、してんだよ! よくわからんけど、くやしか~! くやしか~!」

勇者「だぁ~って……急にそんなに態度が変わるっておかしいじゃん……」ニヤニヤ

天童「そ、それは……理由があってだな……」アセアセ

384: 2014/05/16(金) 23:50:21.96 ID:oT2e7Ko0O
勇者「理由ってなんだよ?」

天童「……」ヒョイ

勇者「ん、封筒……? 何これ……?」

天童「神様から……俺に届いたんだよ……」

勇者「えっ? 命題がまた届いたの?」

天童「命題じゃねぇよ……まぁ、とりあえず、読んでみろよ……」

勇者「え~っと……なになに……?」ガサゴソ

386: 2014/05/16(金) 23:52:35.22 ID:oT2e7Ko0O




天童

天界の掟を破ったら即・氏亡





388: 2014/05/16(金) 23:58:59.93 ID:oT2e7Ko0O
勇者「……これ、命題じゃねぇか?」

天童「神様には……全て見透かされてたってワケだ……こうやって、俺に警告してくれたんだなぁ……」

勇者「……だから、女商人の事は諦めるってワケね」

天童「あの人は、人間界でちゃ~ぁんと幸せになるべきだよ……彼女を幸せにするのは俺じゃねぇんだよ……」シクシク

勇者「ド、ドンマイ……天童……」

天童「うるせっ! おめぇに慰められたくねぇよっ! こうなりゃ、おめぇの更生、とことんスパルタでやってやるから覚悟しておけよ!」

勇者「お、俺に当たるんじゃねぇよ……」アセアセ

天童「うるせぇ! おめぇの命題はどうだったんだよ! とっとと見せやがれ!」

勇者「う、うん……はい、これ……」

389: 2014/05/17(土) 00:00:42.99 ID:oo6YVwgPO





勇者

X月X日 午後3時までに

一番大切な約束を守らなければ即・氏亡!






390: 2014/05/17(土) 00:03:28.35 ID:oo6YVwgPO
今日はここまでだす
一分オーバーだったな

395: 2014/05/17(土) 22:44:05.85 ID:oo6YVwgPO
天童「ふ~む……『一番大事な約束を守らなければ即・氏亡か』……」

勇者「約束……」

天童「まぁ、よぉ? 今回は楽勝そうじゃねぇか! 今、午後8時だから、明日の3時まで……後、19時間か……」

勇者「うわぁ……なんか今回は長いねぇ……?」

天童「まぁ、大事な約束を守ればいいだけの話じゃねぇか! ところで、お前……大事な約束って、何かわかってるよなぁ……?」

勇者「わかってるよ! 明日の昼に……」

天童「明日の昼~? バァ~カ! 何、言ってるんだおめぇっ!?」

勇者「……えっ?」

396: 2014/05/17(土) 22:52:10.42 ID:oo6YVwgPO
天童「勇者君……よく思い出しなよ……? 勇者君の『大事な約束』ってのは、今この瞬間だよ?」

勇者「えっ……? 今、この瞬間……? 俺、何か約束したっけ……?」

天童「ほらほら、街に着いた時に言ったじゃんっ! よ~く、思い出して? ねぇねぇ?」

勇者「街に着いた時……え~っと、俺何か言ったっけなぁ……?」

天童「も~う、勇者君は鈍いんだからぁ……じゃあ、ヒント出すね?」

勇者「お、おうっ……」

天童「ヒントは……宴会……」

勇者「……はぁ?」

天童「あれ、まだわからないの? じゃあ、も~っとヒント出すね? ……今日ぐらいは酒場でお酒を飲んでもいいって勇者君、言ってたよね?」

勇者「……あっ! そういや、俺、そんな事言ったかも!」

397: 2014/05/17(土) 23:00:40.32 ID:oo6YVwgPO
天童「という事で……マスターっ! 生中と枝豆をお願いしますっ!」

主人「あいよっ!」

勇者「おいおい、ちょっと待てちょっと待て……!」

天童「いやぁ~、久しぶりのお酒ばいっ……! カァ~! この日をどんなに待ち望んだ事か……」

主人「あいよっ! 生中と枝豆お待ちっ!」

勇者「いやいや、待て待て……! これは大事な約束じゃねぇぞ! 絶対っ!」

天童「なぁ~に、固い事言っちゃいかんばいっ! それじゃあ、いただきまぁ~すっ!」ゴクゴク

主人「追加の注文があったらどんどん言ってくれよな!」

勇者「あっ……! い、いやっ……! この一杯だけでいいですっ!」

天童「カァ~! 五臓六腑に染みるばいっ……! あっ、大将っ! 追加で生、ジョッキで下さいなっ!」

399: 2014/05/17(土) 23:07:10.93 ID:oo6YVwgPO
勇者「おめぇはよぉ! 調子に乗ってんじゃねぇぞっ!」

天童「うわぁ……勇者君怖~い……今日は宴会してもいいって『約束』したのに……」

勇者「これは『大事な約束』じゃ、ねぇよっ!」

天童「勇者君、勇者……」

勇者「……あぁ? なんだよ?」

天童「……本当にそう言える?」

勇者「……はぁ?」

天童「もし、これが『大事な約束』だったら、勇者君は氏んじゃうんだよ? ねぇ、ねぇ?」

勇者「それは……でも……これは違うだろうよ……」

天童「ねぇねぇ、本当の本当にそう言える? 100%自信を持ってそう言える? もし、間違いだったら、勇者君は氏んじゃうんだよ?」

勇者「……」

402: 2014/05/17(土) 23:15:33.63 ID:oo6YVwgPO
天童「あらっ! 枝豆がもうないぞっ! 不思議だっ! こりゃ、不思議だっ!」

勇者「……おめぇはよぉ、白々しいヤツだなぁ」

天童「ねぇねぇ、勇者君~? 僕、追加で注文したいなぁ~? しても、いいかなぁ~?」ニヤニヤ

勇者「……」

天童「勿論、勇者君がダメって言うなら僕はしないよ? でも、僕勇者君と今日宴会してもいいって『約束』してような気がするんだけどなぁ~?」ニヤニヤ

勇者「調子に乗りやがって、この野郎……」

天童「ねぇ、勇者君? 追加で注文してもいい? ねぇ、ねぇ?」ニヤニヤ

勇者「す、好きにしろよ……」

天童「うわぁ~! 勇者君って優しいなぁ! ……という事で大将っ! メニューの端から端までお願いしますっ!」

勇者「お、おいっ……! そんな事したら、金なくなっちまうぞ……!」アセアセ

403: 2014/05/17(土) 23:24:13.03 ID:oo6YVwgPO
女僧侶「……ん?」ムクッ

勇者「あっ、女僧侶ちゃん、起きた……?」

女僧侶「……なんだか、美味しそうな匂いがします」

天童「ああっ、先に始めさせてもらってるよ! ホレ、女僧侶ちゃんも一緒に食べるばいっ!」

女僧侶「違います……天童さんの飲んでる……それ……」

勇者「!」

女僧侶「すみません、マスターっ! 私にも、これと同じ飲み物下さい~!」


主人「あ、あいよっ……!」アセアセ

天童「あらぁ~、女僧侶ちゃんって……酒いけるタチなのねぇ……」

勇者「感心してる場合かっ! おめぇも天使なんだったら、止めやがれっ!」

405: 2014/05/17(土) 23:33:50.99 ID:oo6YVwgPO
ーーーーー

女僧侶「ふふ、このジュースも、とっても美味しいですね?」ゴクゴク

天童「あ、あらぁ~? 女僧侶ちゃんって……お酒、強いんだねぇ……?」

勇者「女僧侶ちゃん、大丈夫? ちょっと、飲み過ぎなんじゃない……?」アセアセ

女僧侶「ふふ、大丈夫ですよ? 心配してくれてるんですか? やっぱり、勇者さんって優しいですね?」ニコッ

天童「あれ、あれ……? 何、このいい雰囲気……? ねぇ、君達、僕が来る前に何かあったの?」

勇者「えっ……! いやっ……! それは……」アセアセ

女僧侶「ふふ、天童さんには秘密です……ねっ、勇者さん?」クスクス

天童「あんらぁ……な~んか、よくわからんけど、くやしかぁ~! くやしかぁ~!」

勇者「……」

406: 2014/05/17(土) 23:39:48.55 ID:oo6YVwgPO
女僧侶「マスター、もう一杯いただけますか?」

主人「ごめん、姉ちゃん……もう品切れ……というか、あんたら飲み過ぎなんだよ……」

女僧侶「え~?」


天童「まぁまぁ、女僧侶ちゃん……それじゃあ、今日はそろそろお開きとしましょうか……」

女僧侶「私……もっと飲みたいです……」

天童「まぁ、またの機会があるからさっ? なっ、近いうちにまた宴会しようぜ、勇者?」


勇者「……ヤダ」

天童「……ぬ?」

勇者「……もう、安易な約束しない」

天童「そうそうっ! それだよそれっ!」

勇者「……はぁ?」

407: 2014/05/17(土) 23:48:24.51 ID:oo6YVwgPO
天童「俺がこの宴会通して言いたかった事……それは、安易な約束事は身を滅ぼすぞって事なんだよ!」

勇者「……はぁ?」

天童「おめぇもこれで懲りただろ? いやぁ~、結果オーライだったけど、勉強になったからよしとしようっ!」

勇者「……ん?」

天童「やっぱり、『大事な約束』ってのは、誰かの役に立ちたいとか、そういう気持ちから生まれる……」

勇者「……おい、お前、今結果オーライって言っただろ?」

天童「え、えっ……?」

勇者「結果オーライって言ったよなぁ? 確かに聞こえたぞ?」

天童「勇者君、君は何か勘違いをしている……よく聞いて下さい……『大事な約束』というのは……」

勇者「うるせっ! なぁ~に、綺麗事言って纏めようとしてやがる! あんだけ、ハメ外しておいてよぉ~!」ギャーギャー

天童「い、いいじゃねぇか! 久しぶりの酒なんだったんだからっ! それに、おめぇだって勉強になったんだからいいだろっ!」ギャーギャー

409: 2014/05/17(土) 23:57:09.61 ID:oo6YVwgPO
ーーーーー

天童「じゃあ、俺は先に女僧侶ちゃん、送り届けるから、お会計よろしくな?」

女僧侶「よろしくお願いします」ペコッ

勇者「もう二度と宴会はしない……絶対にだ……」ブツブツ

天童「おい、勇者? 『一番大事な約束』は忘れんなよ~? 明日の昼なんだからよぉ~?」

女僧侶「忘れないで下さいね?」ニコッ

勇者「あっ……う、うん……わかったよ……」ドキドキ

天童「じゃあ、女僧侶ちゃん行こうか……って、あんたもう、フラフラじゃないの!」

女僧侶「そ、そんな事……ないですよ……? ちょっと、ここの地面がグニャグニャしてるだけすよ……」フラフラ

勇者「お、お~い……怪我しないように帰りなよ~?」

410: 2014/05/18(日) 00:03:41.96 ID:F/Be6Cv0O
勇者「え~っと……それじゃあ、お会計よろしいですか……?」

主人「……ほれ、代金表だ」

勇者「え~っと……ゲッ……!」

主人「……」

勇者「これ、マジっすか……?」アセアセ

主人「そりゃ、あんだけ飲んで食ったら、そうなるわなぁ……? 言っておくけど、うちは良心的な店だぜ……?」

勇者「えっ、いやっ……それはわかってますけど……あのっ……」

主人「……まさか、金ねぇってワケじゃねぇだろなぁ?」

勇者「いやっ、ある事はあるんですけど……そうなったら、これからの旅が……」アセアセ

主人「……」

勇者「な、なんとかなりませんかねぇ……?」

411: 2014/05/18(日) 00:11:17.16 ID:F/Be6Cv0O
主人「……ったく、じゃあよ?」

勇者「まけてくれるんですか?」

主人「うちの麦焼酎は、水にこだわってるって言ってただろ?」

勇者「あっ、言ってましたね?」

主人「その水は、この街の近くの洞窟の中にある、地底湖の天然水なんだ」

勇者「へぇ~、そんな所から仕入れてるんですか……」

主人「ただよぉ……最近、魔物の動きが活発で、その水仕入れるのに、苦労してんだよ」

勇者「は、はぁ……」

主人「兄ちゃん、東の街の魔物討伐した猛者なんだろ? だったら、仕入れてきてくんねぇかな?」

勇者「……そうしたら、まけてくれるんですか?」

主人「あぁ、俺も男だよ。約束する」


勇者「!」

412: 2014/05/18(日) 00:17:15.42 ID:F/Be6Cv0O
勇者「えっ……約束……ですか……?」アセアセ

主人「……なんだよ、いい話じゃねぇかよ? 不満なのか?」

勇者「い、いやっ……! そういう事じゃ、ないんですが……」

主人「?」

勇者「こ、これ……大事な約束なのかな……? それとも、お金払って済ませた方がいいのかな……?」

主人「?」

勇者「あぁっ! でも、もし『大切な約束』だったら、俺氏んじゃうし……どうしよどうしよ……」アセアセ

主人「なぁ~に、ブツブツ言ってんだよ? どうすんの? やってくれるの?」

勇者「あっ……! そ、それはですねぇ……!」アセアセ

413: 2014/05/18(日) 00:23:51.21 ID:F/Be6Cv0O
洞窟前ーー


勇者「も~う……深夜0時に洞窟探索なんてさぁ……」

勇者「暗いしさぁ……怖いしさぁ……眠いしさぁ……」

勇者「……」

勇者「……それに、女僧侶ちゃんとの約束もあるしさぁ?」シクシク

勇者「……」

勇者「もういいよっ! さっさと終らせようっと! じゃあ、行く……ん……?」


警備兵「……」

414: 2014/05/18(日) 00:32:03.80 ID:F/Be6Cv0O
勇者「あの~? ちょっと、どいてもらえませんか……?」

警備兵「ん……? 洞窟探索の方ですか?」

勇者「うん、この洞窟の地底湖の水が欲しいんだ。だから、通してよ?」

警備兵「申し訳ありませんっ……! この洞窟は魔物の巣になっていて、危険ですので、現在封鎖しています!」

勇者「……危険だからさぁ? 冒険者の俺が取りに行くんじゃん」

警備兵「では、どうしてもというのなら……街長から、通行許可証を頂いてきて貰えますか……?」

勇者「えっ、何? 入るのに、そんなのがいるの?」

警備兵「はっ……! しかし、通行証さえあれば、探索を許可します。それは私の誇りにかけて約束させて頂きますっ!」


勇者「!」

415: 2014/05/18(日) 00:37:03.04 ID:F/Be6Cv0O
勇者「あんたの誇りなんかいらねぇんだよっ! も~う……どうして、そんな約束、勝手にしちゃうかなぁ?」

警備兵「?」

勇者「あ~っ……これがもし『大事な約束』だったら、俺氏んじゃうし……どうしよどうしよ……」アセアセ

警備兵「どうか……なされたんですか……?」

勇者「あぁっ! もうっ! 街長さんに通行証さえ、貰ってくれば通してくれるんだね!?」

警備兵「はっ! 約束しますっ!」

勇者「うるせっ! 約束なんかもうこりごりだよっ! じゃあ、街長さんの所へ行ってくるよっ!」

警備兵「はっ!」

419: 2014/05/19(月) 00:09:33.51 ID:bfgHj2j4O
街長家ーー


勇者「す、すいませんっ! 街長さん、いますかっ!? 街長さんっ!」ガンガンッ

街長「……」ムスッ

勇者「あの、 街長さんですか!? 実はお願いがありましてね……」

街長「……あんた、今何時だと思ってるの?」ムスッ

勇者「えっ……? え~っと……今は、1時前ですね……?」

街長「そうだね。1時前だね? ワシ、寝てたんだけど……」

勇者「い、いやぁ……申し訳ありません……」アセアセ

街長「……と、いう事で用件は明日にしてくれ。ワシ、寝る」

勇者「い、いやっ……! ちょっと待って下さいよっ……!」アセアセ

420: 2014/05/19(月) 00:17:11.85 ID:bfgHj2j4O
街長「も~う……何だよお前……ワシ、眠いんだからよぉ……」

勇者「あ、あのっ……! 地底湖ある洞窟の通行証貰えますか……?」

街長「あぁ? ダメダメ……あそこ、魔物の巣なってて、今は危険だから……」

勇者「いえっ、大丈夫ですっ! 実は僕、東の街の魔物の討伐部隊だったんですよ! 腕っぷしには自信あちますからっ……!」

街長「……本当? あんた、そんな風には見えないんだけど?」

勇者「い、いえっ……! 大丈夫ですっ! 僕、絶対に無事に帰ってきますから、通行証下さいっ!」

街長「う~ん……じゃあ、また明日来てくれる……?」

勇者「えっ!? いやっ! 明日って……なんで、今くれないんですか……?」アセアセ

街長「やかましいっ! こっちは眠ぃんだよっ!」

421: 2014/05/19(月) 00:21:35.52 ID:bfgHj2j4O
街長「明日来てくれたら、手続きしてあげるから……ちゃんと約束するから……」

勇者「!」

街長「ねっ? 今は寝かしてくれよ?」

勇者「……は、はい」

街長「だいたい、あんたさ? こんな時間に訪ねてくるって、ちょっと常識がないんじゃないの?」

勇者「も、申し訳ありません……」アセアセ

街長「わかったんなら、とっとと帰ってくれっ! ……全く、バカの相手は疲れるのぉ」

勇者「……」

422: 2014/05/19(月) 00:30:47.07 ID:bfgHj2j4O
宿屋ーーー


天童「おぉ、遅かったじゃねぇか? どうしたんだ?」

勇者「……」

天童「女僧侶ちゃんと、女商人さんはとっくに寝ちまったぞ? なにしてたんだ、おめぇ?」

勇者「うるせぇっ! 全部お前のせいだぞっ! たらふく飲みやがってっ!」

天童「な、なにそんなに怒ってるんだよ……あれ、八割ぐらいは女僧侶ちゃんが飲んだんだぜ……? それに、お前も結構喜んで食ってたじゃねぇかよ?」アセアセ

勇者「うるせぇっ!」

天童「ま、まぁよ……なぁ~んでお前がそんなに怒ってるのかわかんねぇけどよぉ……? 命題忘れんなよ……?」

勇者「……そのせいで明日はもう、大忙しだよちくしょう」

423: 2014/05/19(月) 00:36:41.25 ID:bfgHj2j4O
翌朝7時ーー


天童「……ふわぁぁ、よく寝たなぁ。 お~い、勇者起きろ~」

天童「今日の昼はよぉ……命題の……ん……?」

天童「……」キョロキョロ

天童「あ、あれぇ? 勇者のヤツ、何処行ったんだ……?」

天童「あいつが、こんな時間に起きるなんてねぇよなぁ……どうしたんだろ……?」

天童「……」


天童「……便所かな?」

424: 2014/05/19(月) 00:41:22.18 ID:bfgHj2j4O
勇者「街長さんいますかっ! 街長さんっ!」ガンガンッ

街長「……」ムスッ

勇者「あっ、街長さん!おはようございますっ!」

街長「……君ねぇ? 確かにワシは明日は来いといったけどさぁ?」

勇者「はいっ! だから、こうやって来ました!」

街長「……ちと、早すぎやないかい?」

勇者「えっ?」

街長「まだ、7時だよ君……? ワシ、朝飯も食っとらんよ……」

勇者「い、いやぁ……こっちは緊急なものでして……」アセアセ

425: 2014/05/19(月) 00:47:56.59 ID:bfgHj2j4O
街長「……とりあえず、朝飯食うから、待ってなさい」

勇者「い、いやっ……! 朝飯なんて後でいいじゃないですか! 先に通行証下さいよっ!」

街長「君、な~んでそんな必氏なのよ? ちょっと、君常識なさすぎだよ?」

勇者「い、いやぁ……こっちは命が……」グゥー

街長「……ん?」

勇者「……あっ」グゥー

街長「……ねぇ、君朝飯も食わずに、どうしてそんなに必氏なの?」

勇者「……い、いやぁ」

街長「とりあえずさ……? ご馳走してあげるから上がりなよ? 通行証の話はその後でいいでしょ?」

勇者「す、すいません……」

426: 2014/05/19(月) 00:53:52.58 ID:bfgHj2j4O
ーーーーー


勇者「な、なんか……突然お邪魔した上にこんな事までして頂いて、申し訳ありません……」

街長「なぁ~に、冒険者ってのはそれくらい生きのいい方がいいもんじゃよ。ワシの若いころを思い出すよ」

勇者「あ、ありがとうございます……」

街長「それで……確か、通行証の話じゃったよな?」

勇者「あっ、そうですっ! 通行証頂けますか!?」

街長「う~ん……」

勇者「あ、あれ……? どうしたんですか……?」

街長「いやぁ……君みたいな生きのいいヤツ、ワシは好きなんだけどねぇ……やっぱり、まだ若いし……どうしよう……?」

勇者「えっ、えっ……?」

427: 2014/05/19(月) 01:00:23.33 ID:bfgHj2j4O
街長「いやぁ……最近、この街はモンスターの巣になっている洞窟が近くにある街って、悪い噂が立っててね……まぁ、事実なんだけど……」

勇者「は、はぁ……」

街長「その洞窟で、氏人が出たとなったらさぁ……? やっぱり、この街のイメージダウンは避けられないじゃん……?」

勇者「い、いやっ! 大丈夫ですっ! 僕、東の街を襲った魔物の討伐部隊でしたから!」

街長「えっ……? それ、本当……?」

勇者「はいっ! 腕っ節には自信はありますっ!」

街長「え~、そんなきゃしゃな身体で……? ちょっと、信じられないなぁ……?」

勇者「い、いやっ……! 本当ですっ! 信じて下さいっ!」アセアセ

街長「う~ん……」

428: 2014/05/19(月) 01:08:54.74 ID:bfgHj2j4O
街長「よしっ! じゃあ、こうしようっ!」

勇者「……ん?」

街長「この街から、さらに北に行った所に広~い平原があるんじゃ」

勇者「は、はぁ……?」

街長「そこのど真ん中に、青い木の実がなった大きな木が生えておる」

勇者「ま、まさか……ソレ、取って来いって話じゃないでしょうね……?」アセアセ

街長「おっ、物分りがいいじゃないか? しかし、最近その平原には魔物が溢れておるから、簡単にはいかんぞ?」

勇者「うわぁ……魔物もいるのかよ……」

街長「もし、その青い木の実を無事にとって来る事ができたのなら、君の力を認めて……」

勇者「……認めて?」

街長「この通行証を渡すと、や……」

勇者「わぁ~っ! わぁ~っ!」

429: 2014/05/19(月) 01:14:19.10 ID:bfgHj2j4O
街長「な、なんじゃ……急に大声を出しよって……心臓に悪いわいっ……!」ビクビク

勇者(もう、約束こりごりだよ……なんか、状況がどんどん悪化していってるような気がするなぁ……どうしよう……)

街長「ど、どうする……? このテスト受けるのか……? 受けないのか……?」

勇者(あ~、でも通行証がないと、洞窟には入れないし……もう、どうしよう……?)

街長「……なんじゃ? 急にしおらしくなりおったな?」

勇者「……街長さん」

街長「……ん?」

430: 2014/05/19(月) 01:19:44.02 ID:bfgHj2j4O
勇者「その青い木の実とってきたら、通行証を渡してくれるんですね……?」

街長「えっ……? ちょっと、顔近いよ……怖いよ……渡すからさ……?」アセアセ

勇者「とってきた後に、新しい条件つけるのは無しですよ? その青い実をとってきたら、通行証渡してもらいますよ?」

街長「うんっ、渡すっ! 渡すからっ! ちょっと、君怖いって……!」アセアセ

勇者「約束ですよ!? 絶対に守ってもらいますからねぇ!?」

街長「う、うん……約束するっ……! ワシ、約束するっ……!」

勇者「約束守れなかったら、即・氏亡ですからねぇ!?」

街長「うわっ! 何、その脅し文句! 君、おっかないよ……」アセアセ

431: 2014/05/19(月) 01:25:51.63 ID:bfgHj2j4O
ーーーーー


勇者「あ~、もう……また約束しちゃったよ……もう、頭がこんがらがってきた……」

勇者「え~っと……一度、やる事を整理して落ち着こう……」

勇者「まず、青い木の実をとってきたら……街長さんに通行証が貰えて……」

勇者「通行証を渡せば……洞窟に入れるようになって……」

勇者「洞窟から水を取って、酒場に持って行って……」

勇者「……」

勇者「……女僧侶ちゃんとデートすると」モジモジ


勇者「あ~……とりあえずは木の実を取りに行く所からか……くそっ、時間ないし、出発するかっ!」

433: 2014/05/19(月) 01:32:58.61 ID:bfgHj2j4O
その頃ーー


女商人「あっ、天童さん……」

天童「あらっ! 女商人さん、どうしましたか?」

女商人「女僧侶さん、二日酔いが酷いようで……今日はちょっと……」

天童「あらぁ……昨日調子乗って飲ませすぎたかなぁ……? 女商人さん、すんましぇ~んっ!」

女商人「いえ、元々は私の我儘ですから。女僧侶さんは、今日はゆっくり、体調を整えてもらいましょう」

天童「本当、申し訳ありませんねぇ……俺の力不足のせいで……」

女商人「いえ、いくら天童さんでも、在庫のない商品は買えませんよ。昨日は勉強になりましたし、ありがとうございますっ!」

天童「い、いやぁ~」デレデレ

434: 2014/05/19(月) 01:37:40.51 ID:bfgHj2j4O
天童「まぁ、でもよぉ? 俺と勇者だけでも付き合うんで、今日は頑張りましょうよ!」

女商人「え、えっ……!? 本当に協力して頂けるんですか……?」

天童「だって、昨日『約束』したでしょ? 『赤い木の実を取りに行くのを協力する』って」

女商人「あ、ありがとうございます……」

天童「珍しく、勇者のヤツもやる気になってますから! 俺達に任せて下さいっ!」

女商人「ありがとうございますっ……! あの~、ところで勇者さんは……?」キョロキョロ

天童「あっ、アイツ朝から、姿が見えないんですよ……おっかしいなぁ……」

439: 2014/05/19(月) 21:12:37.91 ID:bfgHj2j4O
ーーーーー


勇者「はぁ……はぁ……平原、平原……」

勇者「平原って何処だよ、も~う……一時間近く走ってるぞ……?」

勇者「北はこっちだから……方角はちゃんと合ってるハズだし……」アセアセ

勇者「え~っと、今、何時だ……? うわっ……! もう9時じゃんっ!」

勇者「も~う……後、6時間しかないじゃん……」シクシク

勇者「これ、時間間に合うのかなぁ……?」


魔物「グルルルル……」

勇者「……ん?」

440: 2014/05/19(月) 21:18:48.24 ID:bfgHj2j4O
勇者「う、うわっ……魔物だっ……!」アセアセ

魔物「ガルルルル……」

勇者「くそっ、アストロンっ! ……って、ちょっと待てちょっと待てよ……?」

魔物「……ガルっ?」

勇者「……そ、そうだ。 この前、この魔法使ったら、戦闘に30分近くかかったんだ」アセアセ

魔物「ガルル……」

勇者「こんなの使ってる場合じゃないよ……俺には時間がないんだから……」アセアセ

魔物「……キシャアっ!」

勇者「う、うわっ……! きたっ……! くそっ、怖いけどやってやるよぉっ!」

441: 2014/05/19(月) 21:26:22.27 ID:bfgHj2j4O
ーーーーー


女商人「あの~? 天童さん……?」

天童「は、はいっ! どうしたとですか!?」

女商人「勇者さん……どうしたんですかねぇ……? もう、9時半ですよ……?」

天童「あのバカ、なにしてやがるんだろ……? いくらアイツでも、忘れるわけないのに、おっかしいなぁ……」

女商人「正午には出発したいんですけどねぇ……」

天童「あっ、ハイっ! それぐらいには戻って来ると思いますよ!」

女商人「……何か急に予定でも入ったんでしょうか?」

442: 2014/05/19(月) 21:35:35.45 ID:bfgHj2j4O
天童「いやぁ~、いくらなんでも、それはないと思いますよ? 昨日、あれだけ忠告したんだし、命題ですし……」

女商人「……命題?」

天童「あっ、いやっ……! なんでもありましぇ~ん」アセアセ

女商人「……やっぱり、見ず知らずの私の為に、危険な事はしたくありませんよね」

天童「い、いやっ……! そ、そんな事ないですよ……! 女商人さんの為なら、こっちは命だってかけますばいっ!」

女商人「ふふ、天童さん? お気持ちだけで十分ですよ。これは私の問題ですし、勇者さんが正午までに戻って来なかったら、私一人で行きます」

天童「い、いやっ……! ちょ、ちょっと俺、アイツ探して来ますよ……! 多分、酒場にでもいると思いますからっ……!」

443: 2014/05/19(月) 21:45:34.96 ID:bfgHj2j4O
ーーーーー

勇者「はぁ……はぁ……」

魔物「ブギュ……」

魔物「キュ~ン……」

魔物「クゥ~ン……」

勇者「な、なんだよこいつら……仲間ばっかり呼びやがって……」

勇者「ち、ちくしょう……結局、30分以上かかっちまったじゃねぇか……」

勇者「くそぉ……こんな事してる場合じゃないのに……早く、青い木の実を取りに行かなきゃ……」

勇者「……ん? 木の実?」

勇者「あれっ……? 木の実って……なんかあったような……なんだったっけ……」

勇者「……う~ん」


勇者「……って、こんなもたもたしてる時間はないんだよっ! 早く青い木の実取りに行かなきゃっ! 時間がないんだからっ!」

444: 2014/05/19(月) 21:52:53.49 ID:bfgHj2j4O
酒場ーーー


天童「あの~? すんましぇ~ん?」

主人「おう、 昨日兄ちゃんの連れか! 水は持ってきてくれたのか!?」

天童「へ……? 水…… ? なんの事ですかね……?」

主人「なんだよ、まだなのかよ! まさか、約束すっぽかす気じゃねぇだろうなぁ……」

天童「!」

主人「あの兄ちゃん、人が良さそうだったから信用したのに……ちくしょう……俺、裏切られたのかなぁ……?」

天童「あ、あのっ……!」

主人「……ん? どうしたの? あっ、あんたが昨日の分のツケ払ってくれるの?」

445: 2014/05/19(月) 21:59:23.03 ID:bfgHj2j4O
天童「あ、あいつ……昨日、大将と何か約束したんですかねぇ……?」アセアセ

主人「あれ? あんた、仲間なのに聞いてないの?」

天童「す、すんましぇ~ん……詳しくお聞かせ願えますか……?」

主人「いや、だからよぉ? あの、兄ちゃんが、昨日の飯代払えねぇって言うからよぉ……」

天童「……あっ」

主人「地底湖の水、取ってきたら代金まけてやるって、約束したんだよぉ?」

天童「あ、あのバカっ……! 昨日、安易な約束事は身を滅ぼすって警告しただろがっ……! まぁ、俺にも責任はあるけどよぉ……!」

主人「?」

446: 2014/05/19(月) 22:08:24.71 ID:bfgHj2j4O
平原ーーー


勇者「はぁ……はぁ……」

勇者「あった……! あれが青い木の実のある大木だっ!」

勇者「よしっ……後は木の実を取って……」

勇者「……」

勇者「通行証もらって……洞窟で水取って……女僧侶ちゃんとデートして……」

勇者「……」

勇者「……やる事、多すぎて嫌になってきた」

勇者「……」

勇者「くそっ! 考えたら、負けだっ! ちくしょうめっ!」

447: 2014/05/19(月) 22:13:33.98 ID:bfgHj2j4O
勇者「……ん?」


魔物「ガルルルル……」

魔物「グルルルル……」

魔物「キシャアっ!」


勇者「そうだよ……この辺、魔物がいるって言ってたなぁ……」

勇者「魔物も倒さなくちゃいけないんだ……も~う……これ以上、やる事増やさないでくれよ……」シクシク

勇者「ええい! ダメだダメだっ! 考えちゃダメだっ! ちくしょうっ! 魔物共、かかってきやがれっ!」シャキン


魔物「キシャアァァっ!」

448: 2014/05/19(月) 22:24:39.30 ID:bfgHj2j4O
ーーーーー


天童「えっ!? それでアイツ、あんたとも『約束』したんですか?」

街長「あぁ、青い木の実をとってきたら、通行証を渡すと約束したぞ?」

天童「カァ~、バカ~ん! バカ~んっ! 酒場の件は、俺にも責任あるかもしれねぇけど、ここまでくると、もう俺関係ねぇよ~」

街長「?」

天童「それで……街長さん、アイツは今、何処に……?」アセアセ

街長「あぁ、ここからずっと北の平原に行っとるわ」

天童「な~んで、そんな所行ってんだよぉ……俺、もう嫌だよ……あぁっ! でも、あいつのサポートが俺の仕事だし……」イライラ

街長「?」

天童「それに、俺にも多少は責任あるし……ちくしょうっ!」

街長「お、おおっ……君も急に大声出して……君達って、ヒステリックなコンビだねぇ……?」アセアセ

天童「あ~んなバカと一緒にしないでもらいたいばいっ! ちくしょうっ! それじゃあ、俺も北の平原行ってきますわ!」

街長「お、おぅ……気をつけるんじゃぞ……?」

449: 2014/05/19(月) 22:41:42.52 ID:bfgHj2j4O





AM11:00

ーータイムリミットまで後、4時間






454: 2014/05/20(火) 23:25:37.70 ID:ly30aC+mO
ーーーーー


女商人「……」

女商人「どうしたんでしょう……天童さんまで戻ってこなくなっちゃいました」

女商人「もう、十一時なのに……なにか急用でも出来たのかしら……」

女商人「……」

女商人「……後、一時間だけ待って、戻ってこなかったら、一人で行きましょう」

女商人「やっぱり、勇者さん達に甘えてたら、申し訳ないないですし、これからの商売の為にも自分一人でやる力をつけませんとね!」

455: 2014/05/20(火) 23:31:33.60 ID:ly30aC+mO
ーーーーー


勇者「はぁ……はぁ……」

魔物「プギュ……」

魔物「キュ~ン……」

魔物「クゥ~ン……」

勇者「見たか、この野郎っ……! 俺だって、もう一人前なんだこの野郎っ……!」

勇者「ふ、ふぅ……まず、これで『約束』一つクリアだ……この、青い木の実を街長さんの所に持って行って……」

勇者「……しかし、これマズそうな木の実だなぁ? もっと赤とかだったら美味しそうなのに……」

勇者「……」

勇者「……ん?」

456: 2014/05/20(火) 23:40:28.66 ID:ly30aC+mO
勇者「……あれっ?」

勇者「赤い木の実って……俺、何か大事な事を忘れてる気がするぞ……? え~っと、なんだろ……?」アセアセ

勇者「女僧侶ちゃんと約束して……違う、その前っ……! 天童と宴会の約束して……違う違うっ! もっと前っ!」

勇者「え~っと……え~っと……」アセアセ


勇者「あっ! そうだ女商人さんだ! 女商人さん! 女商人さんだよ、も~う……」

天童「やぁ~っと、思い出したか、このウスラ馬鹿っ!」ゼェゼェ

勇者「天童!?」

天童「な~んで……こんな事に……あっ、ダメ……ちょっと、お水飲んで休ませて……? もう、ここまで走って来て、僕ヘロヘロなの……」ゼェゼェ

勇者「……」

457: 2014/05/20(火) 23:48:23.46 ID:ly30aC+mO
ーーーーー


勇者「……天童、大丈夫?」

天童「いやぁ……ちょっと休んだら、なんとか回復したばい……って、そうじゃねぇよっ!」

勇者「!」ビクッ

天童「何でこんな事になってるんだよ! 俺、昨日警告してやったのによォ~!?」

勇者「い、いや……それは……なんか俺にもよくわかんない……かな……?」アセアセ

天童「今回の命題は楽勝だったんだよ! 自分で自分の首、締めやがって!」

勇者「……だって」

天童「酒場の主人との約束……警備隊さんとの約束……街長さんとの約束……」

勇者「……うぅ」

天童「お前、今、いったいいくつ約束してんだよ!?」

勇者「うぅ……天童……ど、どうしよう……?」アセアセ

458: 2014/05/20(火) 23:52:07.05 ID:ly30aC+mO
天童「どうしようじゃねぇよ! バカっ! 3時まで後、4時間しかねぇんだぞ! どれが一番大切な約束なんだよ!?」

勇者「……それは」

天童「……」

勇者「……一番大切な約束は」

天童「……」

勇者「女商人さん……女商人さん、一番一生懸命だったもん……」

天童「そう思うんだったら、それを信じて行けっ!」

459: 2014/05/20(火) 23:56:27.60 ID:ly30aC+mO
勇者「……でも」

天童「……あぁ?」

勇者「それじゃあ、他の約束はどうすんだよ? 酒場の主人とか……」

天童「バカ~! も~うっ! バっバっバカ~んっ! もうっ!」

勇者「……」

天童「自分がお金まけてもらう為に水取ってくるのはなぁ! 『約束』って言わねぇんだよっ!」

勇者「……」

天童「『取引』って言うんだよっ!」

460: 2014/05/21(水) 00:03:17.18 ID:G/keBD5GO
天童「ほいほい皆と約束しやがって……そういういい加減な安請け合いはなぁ? 結局、皆を裏切る事になっちまうんだよっ!」

勇者「!」

天童「……お前なぁ? そもそも、最初に約束したのは女商人さんだろ?」

勇者「う、うん……」

天童「女商人さんがよぉ……? 誰かの為に、必氏になって行動をしてるのを見て、心打たれたんじゃねぇのかよ!」

勇者「……」

天童「それを裏切るだなんてなぁ……氏んだ方がマシだっ!」

勇者「!」

天童「えぇっ!? これは俺があの人に抱いてる個人的な感情抜きで言ってんだぞ! わかってんのかオイっ!」

462: 2014/05/21(水) 00:12:11.55 ID:G/keBD5GO
勇者「……」

天童「お前もよぉ? 誰かの役に立ちたいから、この旅始めたんじゃねぇのかよ……?」

勇者「えっ……?」

天童「この旅を始めた時の、その気持ち……ピュアな想い……お前、それ何処にいってまったんだよ!?」

勇者「……」

天童「お前はよぉ? 欲に塗れた最低の人間になっちまったんだよっ! わかるかぁ!?」

勇者「!」

天童「カァ~、決まったねぇ……格好いいねぇ、俺っ! 今の言葉メモしておこ~っと」メモメモ

勇者「!」グッ

天童「ん……? 急に立ち上がってどうした?」

勇者(女商人さん……女商人さん、ごめんっ……! 今、行くからっ……!)ダッ

天童「ったく、やっと気づいたか……あ~、また街まで戻らないといけねぇのか……カァ~! 辛かぁ~! 辛かぁ~!」

464: 2014/05/21(水) 00:18:49.67 ID:G/keBD5GO
ーーーーー

勇者「はぁ……はぁ……なんとか、街に戻って来れたね……今、何時……?」

天童「12時……10分、って所だな……まぁ、後3時間近くあるし、よかったじゃねぇか!」

勇者「それじゃあ、女商人さんと合流して、赤い木の実を取りに行こうか? 女商人さんは何処にいるの?」

天童「あ~、宿屋にいるんじゃねぇか? 正午には出発するつもりって言ってたから、それまでは宿屋にいるだろ?」

勇者「……ん?」

天童「どうした? 早く宿屋に行って合流しようぜぇ?」

勇者「……天童? お前、今なんて言った?」

465: 2014/05/21(水) 00:23:47.86 ID:G/keBD5GO
天童「だから……宿屋に行って合流しようぜ、って……どうした? でっけぇ耳糞でも詰まってんのか、おめぇ?」

勇者「ち、違う違うっ! その前だよ、その前っ! お前、その前になんて言った!?」

天童「だから……女商人さんは正午に出発するつもりだから……あっ……!」

勇者「……」

天童「……」

勇者「間に合ってねぇじゃん、俺達っ!」アセアセ

天童「わ、わからんっ……! ひょっとしたら、まだ宿屋にいるかもしんねぇ……勇者! 探してみるぞ!」アセアセ

466: 2014/05/21(水) 00:29:06.07 ID:G/keBD5GO
ーーーーー


女商人「ここが……高台への入り口ですね……」

女商人「やっぱり、天童さんの言う通り、大きな魔物がいるんでしょうか……」

女商人「……」

女商人「でも……そんな場所じゃないと、いい商材なんて取れませんよね……!」

女商人「不安もあるけど……困っている人達の為です……頑張りましょうっ……!」

女商人「……」


女商人(貴方……どうか天国から、私の事を守っていて下さい……)

471: 2014/05/21(水) 22:54:08.42 ID:G/keBD5GO
ーーーーー


勇者「はぁ……はぁ……」

天童「おいっ! 勇者、どうだった!? 女商人さんは宿屋にいたか?」

勇者「ダ、ダメ……いなかった……天童、そっちは……?」

天童「酒場にも、道具屋にも、何処にもいなかったよっ!」

勇者「えっ……じゃあ……」

天童「くそっ……もう、一人で行っちまったらしいな……ギリギリ間に合わなかったみたいだ……」

勇者「!」

472: 2014/05/21(水) 22:59:11.13 ID:G/keBD5GO
勇者「な、なぁ? 天童……?」

天童「……あぁ?」

勇者「俺、氏んじゃうの……? 今回の命題、失敗って事だよねぇ……?」アセアセ

天童「諦めんじゃねぇ! まだ、12時半だから、後2時間半あるじゃねぇか! とにかく最後の最後まで、諦めんなっ!」

勇者「う、うんっ……! じゃあ、俺達も約束してた高台に行ってみよう! 今からでも合流できるかもしれないよね……」

天童「よっしゃっ! その意気だっ! おめぇ、ちっとは成長したじゃねぇか!」

473: 2014/05/21(水) 23:04:58.63 ID:G/keBD5GO
ーーーーー


女商人「……」

女商人「意外と……魔物は出ないものですねぇ……?」キョロキョロ

女商人「もっと苦労するかと思ってたのに……私、一人でも大丈夫そうですね……」

女商人「……しかし、この獣道は歩きにくいですねぇ? 頂上への道が全くわかりませんわ」

女商人「……ん?」

女商人「あら、別れ道ですか? 困りましたねぇ……?」

474: 2014/05/21(水) 23:09:23.94 ID:G/keBD5GO
女商人「う~ん……」

女商人「……」

女商人「左……ですかね……?」

女商人「……」

女商人「そうですね。 なんとなくですが、左が頂上へと続いてる道な気がします」

女商人「あまり、時間をかけると、勇者さん達も心配しそうですし、急いで実を取って、帰りましょう!」

475: 2014/05/21(水) 23:16:38.92 ID:G/keBD5GO
ーーーーー


勇者「はぁ……はぁ……やっと高台への入り口についたね……」

天童「うわっ! 何、この獣道っ! 今日、俺走ってばかりなのに、またこんな所行くの?」

勇者「しょうがねぇじゃん……女商人さん、もう行っちゃたんだからさぁ……?」

天童「うるせっ! わかってるよ! 元はと言えば、おめぇの責任じゃねぇかっ!」

勇者「……だって」

天童「『だって』じゃねぇよっ! 今はとっとと追いつかねぇといけねぇんだから、無駄口叩くなっ!」

勇者「う、うん……」

476: 2014/05/21(水) 23:20:37.00 ID:G/keBD5GO





PM1:00

ーータイムリミットまで後、2時間






477: 2014/05/21(水) 23:25:16.93 ID:G/keBD5GO
ーーーーー

女商人「あら? 今度は三叉路ですか……? 困りましたねぇ……?」

女商人「右か……左か……真ん中か……」

女商人「う~ん……」

女商人「……真ん中ですかねぇ?」

女商人「……」

女商人「そうですね! 真ん中の道に行ってみましょう!」

女商人「……しかし、コレ頂上に近づいてるんですかねぇ? 一向に頂上が見えないんですが」

478: 2014/05/21(水) 23:30:31.17 ID:G/keBD5GO
ーーーーー

勇者「あ、あれっ……!?」

天童「勇者、どうしたぁ!?」

勇者「天童……コレ、道が二つに別れてるよ……?」アセアセ

天童「右か左か……どっちかが正解で、どっちかがハズレだ……女商人さんは必ずここを通ったハズなんだからよぉ……?」

勇者「ど、どうしよう……天童、どっちの道が正解なんだろ……?」アセアセ

天童「そんなもん、勘で決めるしかねぇじゃねぇかっ! 勇者ァ! おめぇの冴えてる所をビシっと見せてやれっ!」

勇者「う、うん……じゃあ……」

481: 2014/05/22(木) 20:57:50.03 ID:Ihd2G54sO
勇者「……じゃあ」

天童「おぅ! どっちだ!? 女商人さんはどっちに行ったと思う!?」

勇者「右っ!」

天童「おぅ! 右の道だな!? こっちの道に行ったと思うんだな!?」

勇者「う、うん……俺の勘は多分、こっち……こっちの道で合ってると思う……」

天童「よしっ! それじゃあ、早いトコ追いかけるぞ!」

482: 2014/05/22(木) 21:02:24.65 ID:Ihd2G54sO
ーーーーー

女商人「……今度は四叉路ですか。ここ、迷路みたいですねぇ?」

女商人「帰る道も不安になってきましたし……でも、進むしかありませんね……」

女商人「う~ん……」

女商人「左から二番目……ですかねぇ……?」

女商人「……」

女商人「私、遭難とかしてませんよね……?」アセアセ

483: 2014/05/22(木) 21:07:36.07 ID:Ihd2G54sO
ーーーーー


勇者「はぁ……はぁ……あれ……?」

天童「おいっ! いきなり立ち止まって、どうしたんだよ!? もう、残り1時間半しかねぇんだぞ!?」

勇者「なぁ、天童……? ここって……」

天童「……ん?」

勇者「……さっきの別れ道の所なんじゃね?」

天童「ん……? そういえば……なんとなぁ~く、見覚えがあるような……」

勇者「コレ、俺達戻ってきたんじゃねぇの!?」アセアセ

484: 2014/05/22(木) 21:12:52.21 ID:Ihd2G54sO
天童「バカ~んっ! もう、バカ~んっ! 一分一秒を争うって時に、おめぇは何、してんだよ!」

勇者「うぅ……」

天童「おめぇはよぉ!? 勘も鈍いんだな、このポンコツがっ!」

勇者「ごめん……」

天童「だから、俺は左の道の方が気になるって、散々言っただろうが!」

勇者「……えっ? お前、そんな事言ってたっけ?」

天童「細けぇ事は気にすんなっ! とにかく、左の道が正解だっ! 俺の勘を信じて行くぞっ!」

勇者「う、うん……」

485: 2014/05/22(木) 21:18:54.28 ID:Ihd2G54sO
ーーーーー


女商人「なかなか、頂上につきませんねぇ……」

女商人「天童さんが言ってた、誰も手をつけない理由がわかりました……」

女商人「これ、手をつけないじゃなくて……手がつけれないんですわ……」

女商人「多分、この迷路見たいな獣道のせいで、皆、頂上までのルートがわからないのでしょう……」

女商人「困りました……私もたどり着けるんでしょうか……?」

女商人「……」

女商人「……んっ?」

486: 2014/05/22(木) 21:23:02.72 ID:Ihd2G54sO
骸骨「……」

女商人「……ひっ!」ビクッ

骸骨「……」

女商人「こ、これは……遭難者の氏体……でしょうか……?」ビクビク

骸骨「……」

女商人「早く、頂上までのルートを探さないと……私も同じようになってしまいます……急がないと……」

骸骨「……」

女商人「……どうか、安らかにお眠りになって下さい」

骸骨「……」ギギッ

487: 2014/05/22(木) 21:30:29.22 ID:Ihd2G54sO
女商人「……えっ?」

骸骨「……クイ……モノ」ムクッ

女商人「きゃあっ!」

骸骨「オンナノ……クイモノ……」

女商人「こ、こないで下さい……やめて下さい……」ビクビク

骸骨「オレ……ハラヘッタ……クイモノ……ホシイ……」

女商人「くっ……戦えますよ!? 私、商人ですが、戦う事だってできるんですよ!? それ以上近づいたら、斬りますよ……!」ビクビク

骸骨「……」

女商人「……」

骸骨「オマエヲ……」

女商人「……えっ?」

骸骨「クワセロオオオオォォォォ!」ガッ

女商人「き、きゃあっ……!」

488: 2014/05/22(木) 21:41:04.64 ID:Ihd2G54sO
ーーーーー


勇者「あれっ……? 今度は三叉路だよ……?」アセアセ

天童「カァ~! またかよ……」

勇者「右か……左か……真ん中か……どの道が正解なんだろ……」アセアセ

天童「勇者ァ! 今度こそはしっかり、一発で当てろよっ! もう、残り1時間しかねぇんだから!」

勇者「う、うん……」

天童「右か……左か……真ん中か……正解の道はどれだと思うんだ!?」

勇者「え、え~っと……」アセアセ

489: 2014/05/22(木) 21:48:11.42 ID:Ihd2G54sO
勇者「……真ん中?」

天童「よしっ! 真ん中の道でいいんだなっ! もう、後戻りはできねぇぞ!?」

勇者「ちょ、ちょっと待ってくれよ……! そんな言い方しなくてもいいじゃん……」アセアセ

天童「時間がねぇんだよ、時間がっ! お前、この選択間違えたら、氏んじまうんだぞ!?」

勇者「……そう言われると、なんか間違ってるような気してきたなぁ?」

天童「カァ~! モジモジしてんじゃねよっ! 真ん中の道でいいんだな!?」

勇者「……あっ、待って! やっぱり、右の道にするっ! そっちが正解な気がしてきた!」

天童「よしっ! じゃあ、右の道だっ! 急ぐぞっ!」

491: 2014/05/22(木) 21:57:45.01 ID:Ihd2G54sO
女商人「たぁっ! やあっ!」

骸骨「……イタイ……ドウシテ、オレヲイジメル?」

女商人「はぁ……はぁ……」

骸骨「オレ……ハラヘッテ……ウゴケナイ……オマエクッテ……マチニカエル……」

女商人「くっ、動きは鈍いのですが……とにかくタフです……このままじゃ、こちらが先にバテてしまいますわ……」

骸骨「オレ……ミッツノサガシモノヲ……シテイル……」

女商人「……えっ」

骸骨「ヒトツハ……アカイキノミト……」

女商人「この方……やはり、私と同じように木の実を探しにきて、遭難されたんですね……」

骸骨「ヒトツハ……ショクリョウデアル……オマエダ……」

女商人「……ぐっ」

骸骨「ソシテ……サイゴノヒトツハ……」

女商人「……」

492: 2014/05/22(木) 22:06:05.75 ID:Ihd2G54sO
ーーーーー


勇者「あれ……? ここって、またあの三叉路じゃない……? また、戻ってきちゃったのかな……?」アセアセ

天童「勇者君……君、ホントにダメな男なんだね……絶対、ギャンブルとかしない方がいいよ……負けるタイプだよ……」

勇者「う、うん……そうする……」

天童「おめぇはよぉ! こ~んなに切羽詰まった状況なのに、勘の一つも働かせれねぇのか!」

勇者「ご、ごめん……」

天童「五感を越えた第六感ってヤツを働かせてみろよ! シックス・センスってヤツをよぉ! ついでに、体内のコスモを燃やして、セブンス・センシズってヤツも目覚めさしちまえっ!」

勇者「う、うん……」

天童「さぁ! 右の道は消えたから、今度は真ん中と左の二択だっ! どっちが正解だっ!?」

勇者「じゃあ……え~っと……」

493: 2014/05/22(木) 22:10:03.69 ID:Ihd2G54sO
勇者「……真ん中?」

天童「真ん中だと、思うんだな?」

勇者「うんっ、 真ん中っ! 真ん中の道だと思う! 間違いないっ!」

天童「……本当に真ん中だと思うんだな?」

勇者「うん、今度は真ん中っ! 絶対に大丈夫だと思うっ!」

天童「……よし! じゃあ、左の道が正解だな」

勇者「……えっ?」

天童「よしっ! 勇者! 今度は左の道に行ってみるぞ!」

494: 2014/05/22(木) 22:15:46.93 ID:Ihd2G54sO
勇者「いやいや、俺は真ん中って答えたじゃん? なんで左の道に行くのよ?」

天童「あのねぇ……? 今日のお前はとことん冴えてないの。だから、今のお前は何をやっても不正解なの」

勇者「そんな言い方しなくてもいいじゃんかよぉ……」

天童「だから~、勇者君が真ん中って答えたら、その逆の左が正解なの。これ、ギャンブルの『逆張り』ってテクニックね?」

勇者「でもよぉ~? もし、これで左の道行って不正解だったらどうすんだよ? 俺、氏ぬんだろ?」

天童「じゃあ、どうすんだよ? このまま真ん中の道に行くのか!? 今日のお前の勘は冴えてないから、それこそ氏んじまうぞ!?」

勇者「う~ん……」

495: 2014/05/22(木) 22:23:12.13 ID:Ihd2G54sO
勇者「う~んと……う~んっと……レミパン……? ドレミファ……ああっ! 違う違うっ!」

天童「……なぁ~に、ブツブツ言ってんだ、お前?」

勇者「ミラージュ……? ミラーマン教授……? ああっ、違う違うっ! そうじゃないっ!」

天童「おめぇは、何をもたもたしてんだ!? お前なぁ? 命題のタイムリミットまで……」


勇者「『レミーラ』?」ピカーッ

496: 2014/05/22(木) 22:28:24.62 ID:Ihd2G54sO
天童「……あぁ? 今、何したおめぇ?」

勇者「……天童」

天童「……あぁ?」

勇者「左の道はダメだよ。その先……崖になってる……」

天童「はぁ? なんで、お前そんな事がわかるんだよ?」

勇者「俺にもよくわかんないだけださ……女商人さんは真ん中の道を進んだ先の、四又路の少し先にいるよ!」

天童「はぁ? 四又路? なんで、おめぇそんな事わかるんだよ?」

勇者「俺にはわかるんだよ! いいから、真ん中の道を急ぐよっ!」

497: 2014/05/22(木) 22:32:51.46 ID:Ihd2G54sO





PM2:40

ーータイムリミットまで後20分






499: 2014/05/22(木) 22:42:04.34 ID:Ihd2G54sO
天童「おぉ、勇者! おめぇの言った通り、四又路についたじゃねぇか!?」

勇者「う、うんっ……!」

天童「なんか、急に勘が冴え始めたみてぇだなっ! 次はどの道だっ!?」

勇者「一番右は、モンスターの巣になっていて……その隣は、崖になってる……女商人さんがいるのは、その隣っ!」

天童「……左から二番目だな? よしっ! 行くぞっ!」

勇者「ち、違うっ! 天童っ! 行くのは一番左の道だよっ!」アセアセ

天童「はぁ? 女商人さんは左から二番目にいるんだろが?」

勇者「大丈夫……! 少し、遠回りになるけど……道は繋がってるから……! それに、左の道がには冒険者の遺品があるんだ……!」

天童「おめぇなぁ……? 今、遺品なんて漁ってる場合じゃ……」

勇者「天童っ!」

天童「!」

勇者「これは、必要な物なんだよっ! お前が、女商人さんを心配するのはわかるけどさぁ……?」

天童「……」

勇者「頼むよっ! 俺を信じて一番左の道に行ってくれよっ!」

天童「……」

500: 2014/05/22(木) 22:49:02.84 ID:Ihd2G54sO
ーーーーー


女商人「はぁ……はぁ……」

骸骨「ソロソロ……ウゴキガニブクナッテキタヨウダナ……」

女商人「はぁ……はぁ……」

骸骨「ソロソロ3ジ……オヤツノジカンニピッタリダ……」

女商人「……くっ」

骸骨「ヤットミツケタ、サガシモノ……オレ、ズットハラヘッテイタ……」

女商人(あなた……ごめんなさいっ……!)

骸骨「イタダキマースっ……!」


「おめぇの探し物はそれじゃねぇだろ」

女商人「!」

骸骨「ダレダっ!」

天童「おめぇの探し物は『コレ』だろ? ほれ、受け取りな!」ポイッ

骸骨「アアアアアアアっ!」

501: 2014/05/22(木) 22:58:53.25 ID:Ihd2G54sO
天童「3時ジャストっ……! ぎりぎり合流って所だな! あっ、女商人さん……遅れてすんましぇ~ん……」

女商人「天童さんっ……! 天童さん、今あの骸骨に何を投げたんですか……?」

天童「あぁ、あれ……? あれはね……?」

骸骨「アアアアアアアっ!」シュワシュワ

天童「ありゃ、『聖水』だよ?」

女商人「……聖水?」

骸骨「アアアアアアアっ……! アタタカイヒカリ……オレノサガシモノ……コレデオレモ……ジョウブツデキルっ……!」

天童「おめぇ、ずっとソレ、探してたんだってなぁ? まぁ、長い間野晒しでおかしくなっちまったのは気の毒だけどよぉ?」

骸骨「アアアアアアアっ……! アアアアアアアっ……!」

天童「おめぇが、病気の子供の為に赤い木の実を探しにやってきたって事は、ちゃ~んと神様に言っておいてやるから……大人しく成仏しろや!」

骸骨「アアアアアアアっ……! アリガトウ……アリガトウっ……!」シュワシュワ

502: 2014/05/22(木) 23:06:03.08 ID:Ihd2G54sO
骸骨「……」コロン

女商人「この方も……私と同じように……」

勇者「はい、彼の遺品にそう書いてありました……」

女商人「勇者さん……! 勇者さんも助けに来てくれたんですか……!」

天童「木の実探してるうちに倒れて……食料探してるうちに、てめぇの遺品も見失って……まぁ、それでもコイツは最後の最後まで必氏に生きたんだろうな……」

女商人「……そうですね。私も一歩間違えれば同じように」

勇者「あのっ……! 女商人さんっ……!」

女商人「……ん? どうしたんですか、勇者さん?」

503: 2014/05/22(木) 23:13:12.90 ID:Ihd2G54sO
勇者「あのっ……約束破ってすいませんでしたっ……!」

女商人「……えっ?」

勇者「赤い木の実を取りに行くのを協力するって約束してたのに……こんなに遅れて……ごめんなさいっ……!」

女商人「……」

勇者「……」

女商人「ふふ、何言ってるんですか?」

勇者「……えっ?」

女商人「私を助けに来てくれて……こうやって協力して頂いてるじゃないですか? 感謝するのはこっちの方ですよ?」ニコッ

勇者「……」

女商人「あっ、でも……ここから頂上までまだ道があるんですねぇ……ちゃんと行けるかなぁ……?」

504: 2014/05/22(木) 23:20:03.92 ID:Ihd2G54sO
天童「いえいえっ! 女商人さんっ! 頂上まで、勇者君がしっかり、ナビゲートするので、安心して下さいっ!」

女商人「勇者さん、道わかるんですか?」

勇者「えっ……? まぁ……この先の五又路は右から二番目で……その先の六又路は左から三番目で……」

天童「うわっ、何ソレ!?」

女商人「まるで、迷路ですねぇ……私一人じゃ絶対遭難してました……」

勇者「帰りは僕の魔法使えば、高台の入り口に戻れると思いますし……」

天童「あっ、そういや、勇者君、この前変な魔法覚えたね? なんだっけ? 履歴書だったっけ?」

女商人「はぁ~、本当に勇者さんがいてよかったです~。ありがとうございますっ!」

505: 2014/05/22(木) 23:29:37.46 ID:Ihd2G54sO
頂上ーーー


天童「やっと頂上だぞっ!」

女商人「うわ~、いい景色……って、眺めてる場合じゃありませんね? さっそく、木の実集めなきゃっ!」イソイソ

勇者「……なぁ、天童?」

天童「あぁ、どうした? おめぇも木の実集めるの手伝えよ?」

勇者「……やっぱり、俺にはあんたがいないとダメみたい」

天童「……あぁ?」

勇者「女商人さんとの、一番大切な約束忘れてさ……皆との約束裏切る事になってさ……」

天童「……」

勇者「……やっぱり、俺にはあんたがいないとダメみたい」

天童「……」

勇者「……」

天童「やっと気づいたか……って言いてぇ所だけどよ……まぁ、今回はお互い様だな……」

勇者「……えっ?」

506: 2014/05/22(木) 23:35:01.21 ID:Ihd2G54sO
天童「俺の方こそ、女商人さんにうつつを抜かして……好き放題飲んでよ……悪かったな……」

勇者「……うん」

天童「本当はずっとお前のそばにいねぇといけなかったのによ……まっ、結果的に『判断力』……クリアしたから、よしとするか……」メモメモ

勇者「……うん」

天童「破っちまった約束はよぉ? 俺も一緒に頭下げるから、後で皆に謝りに行こうぜ?」

勇者「そうだね……裏切ったままじゃいけないよね……」


女商人「あっ! 勇者さ~ん! 天童さ~ん! ちょっと来て下さ~いっ!」

天童「……ぬ?」

勇者「……ん?」

507: 2014/05/22(木) 23:41:19.66 ID:Ihd2G54sO
女商人「ほらっ! ここ高台なのに、こんな綺麗な川が流れてますよ!?」

天童「あんらぁ~、綺麗な水ねぇ? なぁ、勇者? この水でいいんじゃねぇか?」

勇者「え~? でも、取ってこいって言われたのは地底湖の水だよ?」

女商人「この水、凄く美味しいですよ?」

天童「えっ? どれどれ一口……って、ありゃ、こりゃ上手いっ! 勇者、お前も飲んでみろよ!」

勇者「……あっ、本当だ。凄く美味しいや」

女商人「水が必要でしたら、私が持ってる容器使いますか? この水、凄く美味しいですよ?」

天童「……だってよ? どうするよ、勇者?」

勇者「う~ん……とりあえず、これ持って行ってみるか……?」

508: 2014/05/22(木) 23:46:59.11 ID:Ihd2G54sO
ーーーーー


天童「よしっ! 木の実も根こそぎ取ったっ!」

女商人「なんだか……泥棒みたいな言い方ですねぇ……?」

天童「なぁ~に、商人なんてのは、そんなもんばいっ! 水も大量に取ったっ!」

勇者「お、重い……」プルプル

天童「後は、帰るだけだっ! それじゃあ、勇者君、お願いしますっ!」

女商人「あっ、そういえば、勇者さん脱出魔法使えるんでしたね?」

天童「さぁ、女商人さん……僕の身体にしっかり掴まって……危ないですから……」キリッ

勇者「……おめぇはよぉ? じゃあ、行くよ! リレミトっ!」ビューン

509: 2014/05/22(木) 23:56:14.53 ID:Ihd2G54sO
酒場前ーーー


天童「なぁ、勇者? あの魔法、直接街に戻ってくる事とかできねぇの?」

勇者「う~ん……そういう魔法じゃないみたい……前のは偶然だったのかなぁ……」

天童「女商人さん、帰り道辛そうだったぜぇ? カァ~! 辛か~! 辛か~! 足が棒~! もう、たまらん、たまらんっ! って」

勇者「……それ、ずっと言ってたのはお前じゃん」

天童「でもよぉ? 街についたら、宿屋に直行だぜ? やっぱり、疲れてたんだよ? あの魔法、絶対改良する余地はあるぜ?」

勇者「う~ん……考えておくよ……」

天童「……っと、おっ? 酒場に着いたな? それじゃあ、水持っていくか!」

勇者「う、うん……」

510: 2014/05/23(金) 00:04:34.03 ID:2tdrg9SeO
天童「こんばんはぁ~! とりあえず、生……」ガラッ

勇者「バ、バカっ! もう酒はダメだよっ! 生、いりません! いりませんよ!?」アセアセ

主人「お、おいっ! やっと戻ってきたのか! 無事だったのか! 生き埋めになっちまったのかと思っちまったぞ!?」

天童「……へ?」

勇者「……生き埋め?」

主人「だからよぉ~、あの洞窟に魔物討伐するって魔法使いの親子が来てよぉ? 派手に洞窟ぶっ壊して崩れちまったじゃねぇか!」

天童「……えっ? あの洞窟、崩れたんですか!?」

勇者「俺、あそこ行ってたら、生き埋めになってたじゃんっ!」

主人「……あれ? 何、そのリアクション? もしかして、水取りに行ってないの?」

511: 2014/05/23(金) 00:10:41.09 ID:2tdrg9SeO
勇者「す、すいません……」アセアセ

主人「最悪だ……君を信じた俺がバカだった……まさか、こんな形で裏切られるとは思わなかったよ……」

勇者「ご、ごめんなさい……でも、代わりの水、持ってきたんで……」

主人「あのねぇ……? ウチの水は、そんじょそこらの水と違って、こだわりの……ん……?」

勇者「す、すいません……」

主人「……」マジマジ

勇者「……ん?」

主人「こ、これは……! もしかして、あの幻の『迷いの高台』の水ではないでしょうか……!?」

勇者「あ~、確かに迷路みたいになってたもんねぇ? あそこ、そんな風に呼ばれてるんだ?」

513: 2014/05/23(金) 00:21:10.09 ID:2tdrg9SeO
主人「こ、こんな素晴らしいお水を持って来て頂けるとは……ありがたやっ……! 嗚呼、ありがたやっ!」

勇者「えっ? これ、そんなにいい水なの?」

主人「いいだなんて、とんでもないっ! 最高級の水でございますっ! このような水はただでは受け取れませんっ! どうか、どうかご馳走させて下さいっ!」

天童「えっ、ご馳走? お酒とか飲んでもいいの?」

主人「はっ! 本日は、食って飲んで騒いで踊って! お好きにして下さいっ! 全て、私の奢りとさせていただきますっ!」

勇者「いやいや、悪いですよ……天童、お前も調子に乗るなって……」

主人「いえっ……! いいのですイイノデスっ! このままでは私の気が済みませんっ! どうか、どうかご馳走させて下さいっ!」

天童「宿屋の連れも呼んできていいですかねぇ? やっぱり、お酒は皆で飲んだ方が楽しいと思うですよねぇ~?」ニヤニヤ

主人「ははっ! 是非、お呼びになって下さいっ! この私、精いっぱい腕を振るわせて頂きますっ……!」

勇者「お、おい……天童、調子に乗るなよ……」アセアセ

514: 2014/05/23(金) 00:29:04.06 ID:2tdrg9SeO
そしてーーー


女商人「Oh~♪ お願いさ~♪ Take me to heaven~♪」

天童「♪」


女僧侶「あらあら、女商人さんが歌って……天童さんがそれに合わせて踊って……」

勇者「……あいつは、はしゃぎすぎなんだよ」

女僧侶「お酒って、あんなに人を変えちゃうものなんですねぇ……? 美味しいんですかね……?」

勇者「あっ! いやぁ……女僧侶ちゃんは、飲まない方がいいと思うよ……?」

女僧侶「?」

勇者「あっ……それよりさぁ、女僧侶ちゃん……?」

女僧侶「どうしたんです、勇者さん?」

勇者「あの……今日は約束守れなくて……ごめんね……?」アセアセ

女僧侶「……約束?」

勇者「う、うん……?」

515: 2014/05/23(金) 00:34:45.72 ID:2tdrg9SeO
女僧侶「私、勇者さんと何か約束したんですか……?」

勇者「……えっ?」

女僧侶「昨日、酒場に来た所ぐらいまでは覚えてるんですが……私、それからの記憶が全くないんですよ……」

勇者「あっ……そうなの……?」

女僧侶「今日は、頭がガンガンして、一日動けませんでしたし……やっぱり、旅疲れなんですかねぇ……?」

勇者「あっ……そうなんだ……」

女僧侶「私、何か勇者さんと約束したんですか……?」

勇者「あっ……! いやっ……! 覚えてないんだったらいいんだ……」アセアセ

女僧侶「え~? そんな事、言われたら気になるじゃないですか~。教えて下さいよ~?」

勇者「い、いやぁ……そ、それはねぇ……」アセアセ

516: 2014/05/23(金) 00:39:44.71 ID:2tdrg9SeO
天童「お~い、勇者~! 何やってんだ、お前もこっち来て踊れ~ぃ!」

勇者「あっ、 天童が呼んでるや! 俺、ちょっとあいつの所行って、付き合ってくるよ……」アセアセ

女僧侶「え~? 気になるじゃないですか~?」

勇者「ま、まぁ……また今度にでも話すよ……?」

女僧侶「……約束ですよ?」

勇者「……えっ?」

女僧侶「だから~、約束して下さいね?」

勇者「も~う、わかった……約束ね……?」


天童「な~に、やってんだぁ、勇者っ! おめぇもとっとと踊りやがれっ!」

女商人「女僧侶さんも、一緒に踊りましょうよ~!」

517: 2014/05/23(金) 00:49:06.96 ID:2tdrg9SeO
翌日ーーー


女商人「皆さんには、本当にお世話になりました。ありがとうございますっ!」ペコッ

天童「な~に、困った時はお互い様ばいっ!」

勇者「これから、その木の実を物資のない街に持って行くんですか?」

女商人「はいっ! 今の私に出来るのはこういう事だけですから!」

天童「頑張って下さいっ……!」

勇者「俺達、応援してますから!」

女商人「本当に皆さんには、お世話になりました! お礼の気持ち言っちゃなんですが……コレ、受け取って下さい……」

天童「……えっ、コレって」

勇者「コレ、旦那さんの形見の鞄じゃないですかっ!?」

女商人「はい、やっぱり、鞄は飾るものではなく、使うものだと思うんです……だから、勇者さん、使って下さい」

518: 2014/05/23(金) 00:57:17.88 ID:2tdrg9SeO
勇者「い、いやぁ……でも、こんな大切なもの……」アセアセ

女商人「鞄はまた、作ればいいですから。それに……」

天童「……それに?」

女商人「私、主人の事を気にしてたような気がすんです……やっぱり、主人の事は絶対に忘れる事はありませんけど……」

勇者「……」

女商人「それで足踏みして、前に進めないのは主人も嬉しくないと思うんです」

天童「新しい一歩……って、ワケね……」ニコッ

女商人「本当に、皆さんにはお世話になりました! 皆さんのこれからの旅の無事を祈ってます!」

勇者「女商人さん、ありがとう」

女商人「何か困った事があったら、すぐ呼んで下さいっ! 今度はいい商品持って駆けつけますから! 勇者達は私の大切な仲間です!」

519: 2014/05/23(金) 01:06:55.94 ID:2tdrg9SeO
ーーーーー

天童「……まっ、これが永遠の別れってワケじゃねぇからな」テクテク

勇者「……そうだね」テクテク

天童「でもよぉ……でもよぉ……勇者君……」

勇者「……ん?」

天童「恋って辛ぇよなぁ~!」

勇者「うわっ! 何、その顔っ! 涙でぐちゃぐちゃじゃん!」

天童「苦しいよなぁ~! 切ねぇよなぁ~! もう恋なんてしないなんて、言わないよ絶対……なぁ~んて言っちゃう気持ち、わかるよなぁ~」シクシク

勇者「そ、そうかな……?」

天童「……ぬ?」

勇者「俺は……恋って……もっと、楽しいものだと思うな……」

天童「……おめぇ、なぁ~んか、気に食わねぇな」

勇者「えっ……?」

天童「コノヤロ……人が落ちこんでる所よぉ? こうなりゃ、残り6個の命題、とことんスパルタやってやるからな! 覚悟しとけよ!」

勇者「お、俺に当たるんじゃねぇよ……でも、後6個もあるのか……も~う……」

520: 2014/05/23(金) 01:09:24.36 ID:2tdrg9SeO
第四話はここまで

>>512
トルネコの大冒険的なイメージで補足してくれたら有難い

521: 2014/05/23(金) 02:03:16.56 ID:MeVJOR3po
乙乙

トルネコやった事ないから
トルネコのレミーラって言われてもピンと来んな……
第五話 「優しくしないと氏ぬ!」

引用: 勇者「天国に一番近い勇者」