525: 2014/05/23(金) 21:17:19.53 ID:a5k3wkUxO

526: 2014/05/24(土) 21:14:05.24 ID:BYidx9VtO
ーーまた、今日、運命の日がやってきた

勇者「あ~っ……もう朝か……」

ーーこの数週間、俺は天からの命題をなんとかクリアして、今、こうして生き残っている……らしい

勇者「ったく……やっぱり、野宿はゆっくり寝れねぇな……」

ーー後、命題は6つ……はたしてどんな試練が俺を待ち受けているのか

勇者「今日中に次の街についたらいいんだけどな……さて、今日も一日、なんとかやりますか……」

ーーそして……天童は本当に天使なのか……


天童「あっ、勇者君、起きた? ほらほら、見て見て? 天使っぽいでしょ?」

勇者「……」

天童「やっぱり、天使といったら、頭にわっかだよね? ほらほら、見て見て~?」

勇者「……おめぇは、頭にパルック乗っけて、朝から何をしてんだよ」
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527: 2014/05/24(土) 21:19:56.12 ID:BYidx9VtO
天童「だってよぉ! おめぇがいつまでたっても信用しねぇから、ちょっとぐらい天使っぽい所見せようとしたんじゃねぇかよ」

勇者「……そういう事じゃねぇだろ」

天童「まぁ、今日はよぉ? 待ちに待った命題の届く日だからよぉ?」

勇者「待ちに待ったって……そんなに待ってねぇよ……」

天童「おめぇは、朝から卑屈だなぁ! オイっ! もっと、元気出せよ、もっと前向きになれよ!」

勇者「……はぁ~い」

天童「そろそろ、届くと思うんだけどなぁ~? まっ、今日も一日頑張ろうぜっ!」

勇者「……はぁ~い」

528: 2014/05/24(土) 21:28:32.56 ID:BYidx9VtO
女僧侶「勇者さん、天童さん、おはようございます」

勇者「あっ、女僧侶ちゃん、おはよう」

天童「おっはようっ! いやぁ~、今日もいい朝だね!」

女僧侶「あの~? 朝、起きたら私のテントの中にコレがあったんですけど……」

勇者「……ん?」

天童「あっ! それ、命題の入った封筒じゃねぇか!」

女僧侶「命題……? これって、勇者さん達の物ですかねぇ……?」

勇者「う、うんっ! ごめん! 多分、女僧侶ちゃんの荷物の中に紛れてたんだね……それ、俺のヤツ、俺のヤツ……」アセアセ

天童「あの~? 確認しておくけど……コレ、中は見てないよねぇ……?」アセアセ

女僧侶「ええ、中身を勝手に見るのは失礼だと思い、見てませんが……」

勇者「あっ、よかった! じゃあ、いいんだ! 女僧侶ちゃん、ごめんね?」

天童「神様、女僧侶ちゃんの寝顔見たって事になるなぁ……いくら、神様でもそいつは失礼なんじゃねぇかな……?」ブツブツ

女僧侶「?」

529: 2014/05/24(土) 21:35:14.46 ID:BYidx9VtO
勇者「天童……! 今回はやけに届くのが早いねぇ……?」

天童「……それだけ、厄介な命題かもしれねぇって事だ。勇者ァ! 気合入れろよっ!」

勇者「お、おいっ……! 見る前に、そんな事言って脅さなくてもいいじゃねぇか?」アセアセ

天童「おめぇは前回、甘く見て痛い思いしたのもう、忘れたのかバカっ! おめぇは鶏かっ! ほれっ、鳴いてみろっ!」

勇者「わかったよ……今回はちゃんとするからよぉ……」

天童「ほれ、クックドゥードゥードゥーって! ほれっ! 言ってみろ、ほれっ!」

勇者「うるせぇよ……確認するから、もう黙ってろよ……え~っと……」ガサゴソ

530: 2014/05/24(土) 21:39:22.13 ID:BYidx9VtO





勇者
X月X日 午後8時までに

老人に優しくしなければ即・氏亡!






531: 2014/05/24(土) 21:46:14.90 ID:BYidx9VtO
天童「ふ~む……『老人に優しくしなければ即・氏亡』か……」

勇者「出たよ出たよ……まぁ~た、曖昧な命題が出たよ……」

天童「今、午前7時だから……後、13時間……だな……」

勇者「最近、神様、ちょっと曖昧すぎねぇか……? もうちょっとわかりやすくさぁ……してくれてもいいんでねぇの……?」

天童「おめぇはよぉ! ほ~んとに、罰当たるぞ!? 知らねぇぞ? 神様、怒らせたらおっかねぇんだぞ!?」

勇者「……だって」

天童「文句ばっかり言ってても、しょうがねぇだろ! よし、とりあえず、命題やんぞ! ほら、肩揉めっ!」

勇者「……はぁ?」

532: 2014/05/24(土) 21:53:58.74 ID:BYidx9VtO
天童「あ~、そうだねぇ……肩揉んだ後は、腰も揉んでほしいなぁ……」ゴロン

勇者「……なぁ~に、してんだおめぇは」

天童「腰が終わったら~、足ツボマッサージもしてほしいなぁ~」ゴロゴロ

勇者「……おい、起きろ。おめぇは老人じゃねぇだろ、おめぇは」

天童「それが終わったら~、朝御飯買ってきてほしいなぁ~……焼きそばパンと、コロッケパンと……あっ、ヨーグルトなんかも欲しいなぁ……」

勇者「やかましいわっ! おめぇは老人じゃねぇだろうが!」

天童「勇者君、わからないよ? もし、僕が老人だったら、勇者君は氏んで……」

勇者「うるせっ! 前回、それで騙されて酷ぇ目に合ったんだっ! 今回は騙されねぇぞオイっ!」

天童「お、おおっ……おめぇ、一丁前に成長してるじゃねぇか……」アセアセ

533: 2014/05/24(土) 22:01:40.26 ID:BYidx9VtO
ーーーーー


天童「よ~しっ! 荷物纏めたかぁ~? 朝飯も食ったし、そろそろ次の街に出発するぞ~!」

女僧侶「あっ、天童さん……ちょっと待ってもらえますか……?」アセアセ

天童「あれ? 女僧侶ちゃん、どうしたの?」

女僧侶「あの……テントが上手く畳めなくって……」

天童「あら~、女僧侶ちゃん苦手だもんねぇ? まぁさ、練習だと思ってゆっくり、慌てずにやりなよ?」

女僧侶「は、はいっ……! 申し訳ありませんっ……!」アセアセ


勇者「……なぁなぁ? 天童、天童?」

天童「……あぁ? どうした?」

534: 2014/05/24(土) 22:07:59.97 ID:BYidx9VtO
勇者「これさぁ……? 命題は『老人に優しくしなければ即・氏亡』じゃん?」

天童「おぉ、そうだよ。今日、一日気をつけろよ?」

勇者「これさぁ……? もし、今日一日、老人と会う機会がなかったら……どうなっちゃうワケ……?」

天童「あっ……そうか、確かにそういう事もあり得るなぁ……? そういう時はどうなるんだろ……?」

勇者「どうなるってよぉ……おめぇはいい加減だな! このダメ天使っ!」

天童「ダメ天使て事ぁ、ないでしょう……でも、まぁ老人に会う機会がなかったら……やっぱり、命題失敗なんじゃね?」

勇者「……あぁ?」

天童「だから……老人に会う機会がなかったら、それも命題失敗で、おめぇ氏んじゃうよ」

勇者「!」

535: 2014/05/24(土) 22:14:36.55 ID:BYidx9VtO
勇者「ちょっと待て、ちょっと待て! ここ、平原のど真ん中だぞオイっ!」

天童「なぁ? 俺もこんな所野宿なんてしねぇで、街の宿屋のふかふかのベッドで寝たかったよ、ホント」

勇者「いやっ……そういう事じゃねぇだろっ! こ~んな場所の何処に老人いるってんだよ! 老人がっ!」

天童「あ~、そうだねぇ……老人どころか……人っ子一人いないねぇ……?」キョロキョロ

勇者「こ~んな所で、モタモタしてる場合じゃねぇんじゃねぇのっ!?」

天童「あっ、確かに……凄いねぇ? 今日の勇者君、冴えてるよ。うん、冴えてる」

勇者「早く次の街に向かおうぜっ!」

天童「でもさぁ……女僧侶ちゃんがさぁ……」

勇者「……ん?」


女僧侶「え~っと……え~っと……」モタモタ

536: 2014/05/24(土) 22:24:03.31 ID:BYidx9VtO
勇者「あぁっ……! も~うっ! 女僧侶ちゃんっ!」

女僧侶「あっ……今、畳みますので、ちょっと待ってて下さいね……?」

勇者「いやっ、いいよっ! 俺がやるっ! 俺がやるから、見て覚えてね?」

女僧侶「……えっ?」

勇者「まずは……こうやって、フライシート前室のフレームを押し出すの! こうやってさ……!」グイッ

女僧侶「あっ、最初にやるのはそこだったんですね……」

勇者「そうしたら……ファスナーを閉めて……ベルクローテープを貼り合わせて……!」テキパキ

女僧侶「はいっ……! ありがとうございます! メモ取って、しっかり覚えますね」

勇者「それで……ここから畳むんだけど、畳み方の手順は……」テキパキ

女僧侶「はいっ! 勉強になりますっ!」


天童「……あいつ、優しくする相手間違えてねぇかな? だったら、俺の肩も揉んでくれてもよかったんじゃねぇの?」

537: 2014/05/24(土) 22:31:27.41 ID:BYidx9VtO
ーーーーー


勇者「……と、こうやって、テントは畳むの。覚えた?」

女僧侶「はいっ! 次からは任せて下さい!」

天童「いやぁ~、意外な特技! ダメ人間のお前にも、一つぐらい、才能があるんだね?」

勇者「よしっ! じゃあ、次の街に行くよっ! 皆、急いで!」

女僧侶「えっ……?」

天童「いやぁ~、やっぱり、半分人生畳みかけてただけあって、テントの畳みかたは上手いんだなぁ! いや~、やっぱりおめぇは……」

勇者「おいっ、天童っ! 何、チンタラ喋ってんだおいっ!」

天童「!」ビクッ

538: 2014/05/24(土) 22:40:37.29 ID:BYidx9VtO
勇者「……おめぇはよぉ? わかってんのかオイっ!」

天童「いやっ……勇者君、突っ込み待ち……突っ込み待ちだったの、本当に……」アセアセ

勇者「おめぇはよぉ……? 次の街には、困ってる人や苦しんでいる人が沢山いるかもしれねぇんだぞ、オイっ!」

天童「は、はいっ……その通りでございます……!」

勇者「そんな、人達に優しくしてやるのが、俺達冒険者の指名じゃねぇのかよぉ! おいっ!」

天童「うるせっ! おめぇは、老人探すのに、焦ってるだけじゃねぇか! 都合のいい言い方してんじゃねぇよっ!」

勇者「わかってんだったら、早く行くぞっ! こっちは命がかかったるんだからよぉ!」ギャーギャー

天童「おめぇ、そんな事言って、大変な事になっても知らねぇぞ! 俺に泣きついてきたって知らねぇからな!」ギャーギャー

勇者「泣きつくわけねぇだろが! ほらっ! 出発、出発っ!」


女僧侶「……」

539: 2014/05/24(土) 22:49:03.54 ID:BYidx9VtO
女僧侶「……天童さん、天童さん?」

天童「……ぬ? 女僧侶ちゃん、どうしたね?」

女僧侶「勇者さんって……最近、変わりましたよね……? 前は絶対、あんな事言う方じゃなかったのに……」

天童「あぁ、アレね……? 大丈夫、大丈夫。ありゃ、今だけだから……」

女僧侶「……えっ?」

天童「ありゃ、昼過ぎにはいつもの勇者に戻って……8時前には、ダメな勇者に戻っちまうからさ……? 気にしちゃイカンばいっ!」

女僧侶「……そうでしょうか?」

天童「……ぬ?」

女僧侶「私、勇者さんと幼馴染だから、わかるんですが……あっちが本当の勇者さんの姿な気がするんですよねぇ……」

天童「……」

女僧侶「勇者さん、お父さん失う前までは……あんな前向きで……行動的な性格だったような気がします……」

天童「……まっ、そういう事だろうから、神様もあいつを選んだんだろうね」

540: 2014/05/24(土) 22:58:02.24 ID:BYidx9VtO
女僧侶「……神様?」

天童「あぁっ、いや、なんでもないナンデモナイ……しかし、女僧侶ちゃん、あいつの事よく見てるねぇ? おじさん、ちょっと感心しちゃったよ」

女僧侶「はい、私……ああいう、前向きで行動的な勇者さんの事好きでしたから」

天童「あら!?」

女僧侶「勇者さんがもう一度、昔のように戻ってくれたら……って、あっ! 私、何言ってるんでしょう!」

天童「いや~、意外ねぇ~。意外意外」ニヤニヤ

女僧侶「天童さんって喋りやすいから、つい……あっ、あの! この事は勇者さんには内緒にしておいて下さいね……?」アセアセ

天童「大丈夫よ、大丈夫っ! おじさん、口固いからっ!」


勇者「お~いっ! 何やってんだよっ! 早く、次の街に行くぞ~っ!」


女僧侶「あっ……勇者さんが呼んでますね……? 天童さん、急ぎましょう!」

天童「……ったく、あいつはすぐ傍にこんなに見てくれてる人がいるってのに、なぁ~んで腐っちまったんだよ。勿体ねぇなぁ」

546: 2014/05/25(日) 22:16:14.56 ID:y3utW+O1O
街ーーー


勇者「よしっ! 街についたな!」

天童「今日はやけに張り切ってるなおめぇ……しかし、なんていうかこの街……」

女僧侶「……なんだか、活気のない街ですねぇ?」

勇者「……えっ? そうかな?」

天童「なぁ~んか、じめ~っと、どんよ~り、してる気がするよ? うん、いつもの勇者君みたい」

女僧侶「……なにか、あったんでしょうかねぇ?」

547: 2014/05/25(日) 22:26:33.20 ID:y3utW+O1O
勇者「なぁ? これって、ひょっとして困ってる人、いるんじゃね? 老人とかよぉ!?」

天童「……おめぇはよぉ! 何、瞳輝かせて、他人の不幸を望んでるんだよ!」

勇者「えっ……? あっ、いやっ……」アセアセ

天童「あのね、勇者君? 優しくするのと、不幸を望むのは、全~然違うのっ!」

勇者「う、うん……」

天童「やる気になるのはいい事だけどよぉ? 方向性間違っちゃいけねぇよ! おめぇはちったぁ、落ち着け! なっ?」

勇者「う、うん……ごめん……」

天童「まぁ、とりあえず、街の様子も気になる事だし……街長にでも、話を聞いてみるか? 俺達が力になれる事なら手伝えばいいしな」

勇者「そ、そうだね……街長さんの家に行ってみようか……」

548: 2014/05/25(日) 22:35:14.79 ID:y3utW+O1O
ーーーーー


街長「……そうか、君達は冒険者か」

女僧侶「あの~、この街、なにかあったんですか? 随分と様子がおかしいみたいなんですけど……」

街長「……」

勇者「あのっ……! 僕達、何か力になれる事があれば、協力しますから!」

街長「……君達はまだ、若いじゃないか。未来ある若者を危険な目に合わす事はできんよ」

女僧侶「いえっ! そんな事、言わずにお話だけでも聞かせてくれませんかね?」

街長「……」

勇者「僕達、絶対に力になりますからっ……!」

549: 2014/05/25(日) 22:44:18.43 ID:y3utW+O1O
街長「……街の外れにある、塔が見えるかい?」

女僧侶「あっ、何か高い塔がありますね……」

勇者「あそこに、何かあるんですか?」

街長「あの塔に強大な魔物が住み着いているんだよ……」

女僧侶「……えっ!?」

勇者「魔物!?」

街長「この街はその魔物に支配されている街なんだ……君達も彼らに見つかる前に、早い所他の街に行くんだね……」

550: 2014/05/25(日) 22:51:48.01 ID:y3utW+O1O
女僧侶「で、でも……そんな事なら、その魔物を討伐しないと……」アセアセ

街長「多くの若者達が、君達と同じ事を考えて……そして、氏んでいったよ……どうやら、塔にいる魔物はとんでもない力を持っているらしい……」

勇者「……」

街長「……しかし、彼らは人間界の支配には興味がないらしく、毎月一人の贄を捧げれば、それ以上の事は望まないらしい」

女僧侶「そ、そんな……! それじゃあ……」

街長「あぁ……我々は毎月、待人の中から一人、贄を出す事に決めたんだ……そして、今日がその日だ……」

551: 2014/05/25(日) 23:00:36.45 ID:y3utW+O1O
勇者「……だから、街の人達は皆、元気がなかったんですね」

街長「あぁ……皆、心の中では納得してないのかもしれない……しかし、我々が生き残るにはそれしか方法がないんだ……」

女僧侶「そんなの、贄にされる人可哀想ですっ! 私達がその魔物を……」


「ええんじゃ、ワシらの事は気にしないでおいてくれ」


勇者「……えっ?」

婆「あんたらと同じ事を考えた、ワシの息子も、孫も……隣の家の坊主も……み~んな殺されちまったわ……」

女僧侶「……お婆さん」

婆「あんたらみたいな未来ある若者が命を粗末にしちゃ、イカン。氏ぬのはワシみたいな老いぼれからでええわい……」

勇者(老人!)

552: 2014/05/25(日) 23:12:43.09 ID:y3utW+O1O
街人「……と、いう事だ。彼女を含め、この街の贄に選ばれる老人達は、皆がこの事に納得している。……だから、君達は帰ってくれ」

女僧侶「そんなっ! 私達がなんとかしますよっ! ねっ、勇者さん!?」

勇者「……ぅ……ぁ」

女僧侶「……勇者さん?」

勇者「えっ……? あっ、はいっ! 僕達がなんとかしますからっ……!」

街長「……塔の強大な魔物は、二体いるんだ」

女僧侶「えっ?」

街長「彼らはお互いの力を共有するような、力を持っていて……同時に倒さないと再生する身体を持っているんだ……」

勇者「うわぁ……今回の命題ややこしいなぁ……コレ……」

街長「15人いる部隊ならともかく……たった、3人だろう……? 気持ちはありがたいが……未来ある若者が無駄氏にするのを見るのは、もう沢山なんだっ……!」

女僧侶「……」

553: 2014/05/25(日) 23:26:55.11 ID:y3utW+O1O
ーーーーー


勇者「おいおい、天童……どうするよ、コレ……」

天童「……」

勇者「老人には会えたけどさぁ……? 会えたけど、どうすんだよコレ……? 凄ぇ、魔物が二体もいるらしいぜ、コレ?」

天童「おめぇはよぉ! うだうだ言ってんじゃねぇよ!

勇者「!」ビクッ

天童「この街には困ってる人や苦しんでいる人が沢山いるんだぞ、オイっ!」

勇者「……う~ん」

天童「そんな人達に優しくしてやるのが、俺達冒険者の使命じゃねぇのかよぉ! おいっ!」

勇者「わかってるよ……わかってるけどよぉ……」

天童「わかってんだったら、早く行動しろよっ! おめぇは命がかかってるんだからよぉ! ……って、朝、勇者君言ってたよね?」

勇者「……えっ」

天童「あれぇ~? おっかしいなぁ~? 僕、朝に勇者君に同じ台詞言われたような気がするんだけどなぁ~?」

勇者「いやぁ~、それはさ……? いや、だって『老人に優しくしろ』なんて言われたら、普通重い荷物持つとかさぁ……そういう事、想像するじゃん……」アセアセ

天童「あれれぇ~? おっかしいなぁ~? 朝の元気な勇者君は何処に行っちゃたのかなぁ~?」

勇者「い、いやぁ……それはさぁ……?」


女僧侶「……」

555: 2014/05/26(月) 22:09:20.60 ID:yiDCjPk5O
女僧侶「……勇者さん、やりましょうよ」

勇者「……えっ?」

女僧侶「私達だけでも……この街を救う為に、動きましょうよ」

勇者「いやいやっ……! でもさぁ? 魔物は二体いるんだよ? しかも、同時に倒さないといけないらしいんだよ?」

女僧侶「それは……そうですが……」

勇者「俺達、三人しかいないのにさぁ? どうやってやるんだよ、そんな事? パーティー、二手に別れるんだったら、一人で戦う人間が絶対、出てくるじゃんっ!」

女僧侶「……」

556: 2014/05/26(月) 22:14:39.14 ID:yiDCjPk5O
勇者「天童、一人で出来る?」

天童「バ、バカっ……! 俺はよぉ、天使だから、ノーカンだよノーカンっ!」アセアセ

勇者「……じゃあ、女僧侶ちゃんは?」

女僧侶「確かに、一人で……と、なると、私も不安ですね……」

勇者「ねっ? 俺もさぁ、一人は無理だと思うよ一人は! 俺達3人じゃさぁ……やっぱり、無理だよ……」


女僧侶「それじゃあ、この街の事は見捨てるんですか……?」

天童「そうだよ、おめぇこの街見捨てたら、氏んじまうぞ……? どうすんだよ?」

勇者「い、いやぁ……それはさぁ……?」アセアセ

557: 2014/05/26(月) 22:22:11.30 ID:yiDCjPk5O
女僧侶「……勇者さん、今日の朝はそんな後ろ向きじゃなかったじゃないですか」

勇者「……えっ?」

女僧侶「今日の勇者さん、凄く前向きだったのに、どうしちゃったんですか……」

勇者「いや、それはさぁ……俺は冷静に現状を分析してさぁ……この人数じゃ難しいって事を言ってるだけだよ……」

女僧侶「……」

勇者「ちょ、ちょっと……! 何で、女僧侶ちゃん、そんなに悲しそうな顔してるの!? 俺だってさ、この街救いたいとは思ってるよ!?」

女僧侶「……本当ですか?」

勇者「いや、だって……この街、救わなきゃ、俺氏んじゃうしさぁ……よしっ! じゃあ、こうしようっ!」

女僧侶「?」

558: 2014/05/26(月) 22:32:48.59 ID:yiDCjPk5O
勇者「街長さんは『15人いる部隊だったらなんとかなるかも』って、言ってたじゃん? だから、人数集めようっ!」

天童「おめぇ、15人って……後、12人だぞ!? そんなの、集めれるのかよ?」

勇者「う~ん……それは、わかんないけど……でも、この人数で行くのも無謀じゃん?」

女僧侶「街人が贄になる前に、私達の部隊を増やす、と……」

勇者「そうそう! え~っと、今1時だから、後6時間……! 7時までに、とにかく人を集めれるだけ、集めようよ!」

天童「……で、残り1時間で魔物を倒して、命題クリアってわけか」

勇者「多分、それしか方法はないと思うんだよ……ねっ? だから、とにかく皆で手分けして、協力してくれる人を探そうよ!」

女僧侶「わかりました。7時までに、出来るだけ多くの人を集めましょう」

559: 2014/05/26(月) 22:39:59.32 ID:yiDCjPk5O
ーーーーー


天童「おめぇはよぉ! 一人で勝手に問題ややこしくしていくんだなっ!?」テクテク

勇者「……えっ?」テクテク

天童「今回の命題の意味なんて、丸わかりじゃねぇか! 塔の魔物を倒してよぉ? 贄になる老人救ってクリアじゃねぇか!」

勇者「……そうだけどさぁ」

天童「それを、15人集めるだなんて、無茶な事言い出しやがって……出来んのかっ!? おめぇ、そんな事出来んのか!?」

勇者「いや……でも、そうしないとさぁ……氏んじゃうじゃん……?」

天童「命題クリアできなきゃ、氏んじまうのに、それをややこしくしてどうすんだよ! このバカっ!」

勇者「いや、俺はそうだけどさぁ……やっぱり、女僧侶ちゃんは違うじゃん……?」

天童「……ぬ?」

560: 2014/05/26(月) 22:47:38.42 ID:yiDCjPk5O
勇者「女僧侶ちゃんはさぁ……命題受けてねぇんだから、そんな俺の我儘に付き合わせちゃいけないよ……?」

天童「……」

勇者「やっぱり、女僧侶ちゃんが生き残る確率はちょっとでも上げないとさぁ……?」

天童「……」

勇者「やっぱり、その為には他に人が必要だよ? もし、集まらなかったらさぁ……?」

天童「……」

勇者「俺、一人でやってみるからさ……? 天童、その時は女僧侶ちゃんの事、頼むね……?」

天童「はぁ~ん……ダメ人間のお前でも、一応成長してるんだな?」

勇者「……そう?」

561: 2014/05/26(月) 22:56:02.79 ID:yiDCjPk5O
天童「でもよぉ!? おめぇ、やっぱり足りないよ! うん、何かが足りないね!」

勇者「な、なんだよそれ……」

天童「おじさん、言わないっ! おじさん、言えないけどね! やっぱり、おじさん、何かが足りないと思うな!」

勇者「な、なんだよ……いつもみたいに、言ってくれよ……」アセアセ

天童「ダメっ! それは約束だから、おじさん言えない!」

勇者「……神様から、何か言われてるの?」

天童「違うっ! 神様じゃないっ! おじさん、言えないっ!」

勇者「じゃあ、誰と約束してるんだよ……?」

天童「そりゃ秘密っ! おじさん、口固いから、絶対言わないよっ!」

勇者「もう、わけわかんねぇよ……ほら、とっとと協力者探しに行くぞっ!」


天童(もうちょっと、周りに甘えてもいい気がするんだけどねぇ……あいつ、この数週間の命題で、一人で背負い込む癖でもついたんじゃねぇだろなぁ?)

562: 2014/05/26(月) 23:03:28.87 ID:yiDCjPk5O
ーーーーー


勇者「……とまぁ、そういう理由で」

老人「……帰っておくれ」

勇者「いや、でもこのままじゃ、この街はですねぇ……?」

老人「ワシが犠牲になる事で、息子や孫が助かるんじゃったら、安いもんじゃ……帰っておくれ……」

勇者「しかし、それじゃあお爺さんの命は……!」

老人「もうええっ! 放っておいてくれっ!」バタンッ

勇者「……あっ」


天童「……お~う、またダメだったか」

勇者「……うん」

天童「これで何軒目だ? 老人に優しくしねぇといけねぇのに、老人怒らせてばっかりじゃねぇのか?」

勇者「……そうかも」

563: 2014/05/26(月) 23:10:19.41 ID:yiDCjPk5O
天童「もう5時だぞ……? このままじゃ、15人なんて夢のまた夢だよ」

勇者「……」

天童「後、2時間……どうすんだよ、ホントに。おめぇ、一人で行く気なのか?」

勇者「その時は……うん……」

天童「あのなぁ? そ~んな事して、女僧侶ちゃんが喜ぶとでも思ってんのか? 第一、お前一人でどうやって、二体の魔物を同時に倒すんだよ?」

勇者「……女僧侶ちゃんの方はどうだろ? 協力者、見つかったかなぁ?」

564: 2014/05/26(月) 23:17:39.32 ID:yiDCjPk5O
女僧侶「そこをなんとかっ……! お願いしますっ……!」

老人「……帰っておくれ!」バタンッ

女僧侶「うぅ、またダメでした……もう5時なのに……」

女僧侶「……」

女僧侶「……勇者さん、天童さんのいう通り、お昼にはいつもの勇者さんに戻ってました」

女僧侶「もし、天童さんの言った通りなら……8時前には、もっと後ろ向きな勇者さんになってしまうんでしょうか……」

女僧侶「……」

女僧侶「そんな事はありませんっ! 勇者さんはこの旅で変わりましたっ! だから、きっと大丈夫ですっ!」

女僧侶「7時まで……まだ、時間はありますっ……! だから、協力者を探さなきゃ……!」


「いや~、ここはなんだか活気のない街だね?」

「はい、そうですね。お父様」

女僧侶「……ん?」

565: 2014/05/26(月) 23:24:32.22 ID:yiDCjPk5O
男魔法使い「あら、 男賢者? あんな所に可愛いお嬢さんがいるよ?」

男賢者「お父様、その言い方は少しいやらしいです……」

女僧侶「あっ……!」

男賢者「……あれ? もしかして女僧侶ちゃん?」

女僧侶「男賢者さんじゃないですか?」

男魔法使い「ん? なんなの、君達? 知り合いなの?」

男賢者「はい、魔法学校の同級生なんです。ねっ、女僧侶ちゃん?」

女僧侶「あ、あのっ! 男賢者さんっ! お願いがあるんですよっ!」

男賢者「……お願い?」

566: 2014/05/26(月) 23:33:44.45 ID:yiDCjPk5O
ーーーーー


男魔法使い「ふふ、あの~、私がねぇ、男魔法使い……それで、こっちが息子の……」

男賢者「男賢者です。よろしくお願いします」

勇者「うわぁ……賢者さんって、始めてみた……」

男魔法使い「あら、そう? 君、賢者をみるのは始めて? ウチの息子は私に似て優秀でねぇ~? ふふ」

男賢者「……お父様、やめて下さい」

勇者「……はぁ」

男魔法使い「この間も、地底湖のある洞窟の魔物の討伐をたった5分でしたんだよね? ふふ、洞窟ごと破壊して」

男賢者「ああいった魔物は、生き埋めにするのが一番ですから」

勇者「……ん?」

男魔法使い「聞くところによると、君達塔の魔物を討伐しに行くんだって? 私達も協力しようじゃないか!」

男賢者「女僧侶ちゃん、僕に任せておいて」ニコッ

572: 2014/05/27(火) 22:15:10.98 ID:P8AyqqzGO
勇者「あれっ? 女僧侶ちゃんって賢者さんと知り合いなの?」

女僧侶「……はい」

男賢者「魔法学校の同級生だったんだよね?」

勇者「へぇ~、同級生なんだ……」

女僧侶「はい……」

男賢者「あの日の約束、まだ覚えてる?」

勇者「……ん?」

女僧侶「……あっ! そ、それは」アセアセ

男賢者「僕はまだ、覚えてるよ?」ニコッ

573: 2014/05/27(火) 22:23:12.95 ID:P8AyqqzGO
女僧侶「あ、あの……男賢者さん……?」

男賢者「わかってるって。今は魔物討伐の方が優先……でしょ……?」

女僧侶「は、はいっ……!」

男賢者「返事はまた、後でいいからさ……? 早く塔に行こうよ?」

女僧侶「……」

男賢者「それじゃあ、お父様……女僧侶ちゃん……勇者君……え~っと、それと……」


天童「私、商人(天使)のテンドウと申しますっ! あの、『天使』忘れないで下さいね! 格好書きで、て・ん・し!」

男賢者「え~っと、商人の天童さんですね……? とりあえず、街長さんの家に向かいましょうか?」


天童「……」

勇者「……諦めろって。一番近くにいる俺ですら、おめぇが天使だなんて、まだ半信半疑なんだから」

574: 2014/05/27(火) 22:33:59.70 ID:P8AyqqzGO
ーーーーー


街長「……3人が、5人になった所でなぁ」

男魔法使い「あのね? 貴方、うちの息子の事を舐めてるでしょ? うちの息子は私に似て凄く優秀なんだよ?」

街長「……と、言いますと?」

男魔法使い「うちの息子は魔法学校を首席で卒業した優秀な子なんだよ!? そこらのねぇ、冒険者なんかとはワケが違うよ!」

街長「!」

男魔法使い「だからさぁ、うちの息子に任せておきなよ? この子は私に似て、とっても優秀なんだから!」

街長「そ、それが本当なら……奴らを倒す事が出来るかもしれんっ……!」

男魔法使い「ねっ? だから、私達に任せておきなさいよ?」

街長「それでは皆さん……どうか、この街を……我々を救って下さいっ……!」

男魔法使い「任せておきなさいよ! 我々、魔法使い親子にね!」


街長「……あの~、ちなみにお父様も、魔法学校を首席で?」

男魔法使い「あっ、いや~、私はねぇ、大学出てないの」

街長「……」

575: 2014/05/27(火) 22:41:49.39 ID:P8AyqqzGO
男魔法使い「それじゃあ、道具も一通り揃えた事だし……もう7時だから、そろそろ出発しましょうか?」

男賢者「女僧侶ちゃん、僕が守ってあげるからね?」ニコッ

女僧侶「あっ……いえ、そのっ……」


天童「おい、勇者ァ! おめぇ、あの魔法使い親子にいい所、全部取られちまってるぞ!」

勇者「う~ん……」

天童「おい、『虎の威を借る狐』って諺知ってるか? 今のおめぇみてぇな事を言うんだけどよぉ? 意味わかってんのか?」

勇者「う~ん……」

天童「強いヤツの後ろについて! てめぇは、なぁ~んにもしねぇダメ人間の事を言うんだ! わかったか!?」

勇者「な、なぁ……天童……?」

天童「何だよ……話、聞いてんのかおめぇ」

576: 2014/05/27(火) 22:46:48.27 ID:P8AyqqzGO
勇者「あの、男魔法使いさん、いるじゃん……?」

天童「何だよ……あの人がどうしたんだ……?」

勇者「あの人って……老人……?」

天童「……ん?」

勇者「微妙な所なんだよなぁ……中年にも見えるし……老人にも見えるしさぁ……」

天童「た、確かに……言われてみりゃあ、そうだなぁ? もし、あの人が老人だったら……」

勇者「……ねっ?」


男魔法使い「君達、聞こえてるよ! 私はまだ、若いっ! ほらっ、何してんのっ!」

577: 2014/05/27(火) 22:51:10.81 ID:P8AyqqzGO
天童「もし、老人扱いだったとしたら……」

勇者「あの人にも優しくしないと……俺、氏んじゃうよなぁ……?」

天童「……」

勇者「……ど、どっちなんだろ?」アセアセ

天童「本人は……まだ、若いって言ってるぜ、アレ……?」

勇者「いや、でも老人ってさぁ……? 皆、そういう事言うじゃん……?」

天童「う~ん」

勇者「……どうする?」

天童「よしっ! じゃあ、発想を変えてみようっ!」

勇者「?」

578: 2014/05/27(火) 22:59:28.60 ID:P8AyqqzGO
天童「はい、注目ゥ~! それではァ~、瞳を瞑って想像してみて下さいィ~!」

勇者「久しぶりの金八ネタだな……いいから、普通に話せよ……」

天童「文句を言わずに目を瞑って想像しなさい! このバカチンがァ~!」

勇者「わかったよ……やればいいんだろ、やれば」ギュッ

天童「いいですかァ~? 勇者君はァ~、今、満員の電車の中に乗っていますゥ~」

勇者「電車って何だよ……馬車だろが! 何処の世界の話をしてるんだおめぇは!」

天童「黙って話を聞きなさい! このバカチンがァ~!」

勇者「も~う……わかったよ……」

天童「さてぇ~、満員の電車の中に、あの男魔法使いさんが乗ってきましたァ~」

勇者「……おぅ」

天童「満員電車の中でぇ~、ご老人に席を譲るのはァ~、当たり前のマナーですゥ~」

勇者「う、うん……」

579: 2014/05/27(火) 23:03:44.40 ID:P8AyqqzGO
天童「さて……席に座っている勇者君の前にィ~、あの男魔法使いさんがやってきましたァ~」

勇者「う、うん……」

天童「その時ィ~、正しい行いをしなければならない勇者君はァ~、どのような行動をとったでしょうかァ~?」

勇者「……えっ?」

天童「席を、譲ったか……譲らないか……勇者君はどっちの行動を取ったでしょうかァ~?」

勇者「そ、それは……」

天童「……」

勇者「席を……譲った……!」

580: 2014/05/27(火) 23:10:32.63 ID:P8AyqqzGO
天童「……じゃあよぉ? やっぱり、あの人にも優しくしねぇと氏んじゃうんじゃねぇか、おめぇ」

勇者「うぅ……やっぱり……」

天童「あの人はよぉ? 多分、老人扱いするなとか、余計なお世話だとか言うと思うぜ?」

勇者「……うん」

天童「でもよぉ、そういうのを越えた所にあるのが本当の優しさってヤツなんじゃねぇか?」

勇者「も~う……また、条件増えちゃったや……」

天童「ややこしくしたのは、おめぇだろうが! とにかくよぉ、男魔法使いさんに優しくしながら、魔物を討伐したら、命題クリアだ!」


男魔法使い「お~い、君達、何してるの~? そろそろ行くよ~?」

天童「あっ、すんましぇ~んっ! ホレ、勇者行くぞっ!」

勇者「……も~う」

581: 2014/05/27(火) 23:19:53.07 ID:P8AyqqzGO
塔内部ーー


天童「……ん?」カチッ


ヒュンッ


天童「うおおっ! トラップかっ! やべぇ、矢が飛んできたぞっ!」


男賢者「女僧侶ちゃん、危ないっ!」グイッ

勇者「うわっ……! 男魔法使いさんっ……! 危ないですっ!」グイッ


天童「おいっ! おめぇらっ! 俺はっ!? 俺は誰も守ってくれねぇのかよっ!」

勇者「……おめぇが、変なスイッチ踏んだのが原因だろが」

582: 2014/05/27(火) 23:23:37.85 ID:P8AyqqzGO
男賢者「女僧侶ちゃん、大丈夫?」

女僧侶「あっ……はい、男賢者さんのお陰で……」

男賢者「それは、よかった。ほら、僕につかまって、立って」

女僧侶「あっ……はい、ありがとうございます……」

男賢者「この先……僕が守ってあげるからね?」

女僧侶「……」

男賢者「……ねっ?」ニコッ

女僧侶「あっ……ありがとうございます……」

583: 2014/05/27(火) 23:31:38.07 ID:P8AyqqzGO
勇者「あっ……あのっ……! 男魔法使いさんっ……! 大丈夫ですか……!?」アセアセ

男魔法使い「いやぁ~、君のお陰だよ~、君、以外と使えるんだねぇ? ちょっと、起こすの手伝ってもらえるかしら?」

勇者「あっ……! はいっ……! じゃあ、僕の手につかまって下さいっ……!」

男魔法使い「それじゃあ、ちょっと、引っ張ってもらえるかな?」

勇者「うんしょ……うんしょ……って、わわっ!」ドシーンッ

男魔法使い「もうっ! 君、何やってんのっ!」

勇者「す、すいません……あの……この先、男魔法使いさんは僕が守りますので……」アセアセ

男魔法使い「そんな事言われてもねぇ、説得力ないよっ! 何、その引きつった笑顔! ちょっと気持ち悪いよ!」

勇者「……」


天童「……同じ事してるはずなのに、どうしてこうも違うかねぇ~?」

584: 2014/05/27(火) 23:39:33.51 ID:P8AyqqzGO
ーーーーー


勇者「あ、あれ……道が二手に別れてるぞ……?」

男賢者「多分、この先に魔物がいるんだと思います。 ここでパーティーを二手に分ける必要性がありそうですね」

天童「俺は、戦力不足の方につこうと思うからよぉ? 勇者、女僧侶ちゃん、男賢者さん、男魔法使いさん……この四人を、どう分担するか決めようぜ?」

男魔法使い「どういう風に別れるのがベストな選択なんだろうね……?」

女僧侶「あ、あのっ……! 勇者さんと、私……男賢者さんと男魔法使いさんというのは、どうでしょうか?」


勇者「……えっ?」

585: 2014/05/27(火) 23:45:55.12 ID:P8AyqqzGO
女僧侶「こういうのは……やっぱり、信頼関係が一番だと思うんですよね……?」

男賢者「……」

女僧侶「戦闘の最中、お互いの至らない点をフォローし合うのは、長年の信頼が大切だと思うんです……」

男魔法使い「まぁ、確かに……男賢者の魔法をサポートするのに、最適なのは、優秀な私ぐらいしかいないだろうねぇ?」

女僧侶「だから……男賢者さんと男魔法使いさん……そして、私と勇者さんで……」

勇者「……」

女僧侶「これが、ベストな選択だと思うんですが……勇者さん、どう思いますか……?」

勇者「……いや、俺はそれはベストじゃないと思う」

586: 2014/05/27(火) 23:54:12.73 ID:P8AyqqzGO
女僧侶「……えっ?」

勇者「男魔法使いさんと、俺……そして、男賢者さんと女僧侶ちゃんがベストな選択だと思う」

女僧侶「……どうして、そう思うんですか?」

勇者「そりゃ、俺は命題がでさぁ……? あっ! って、そうじゃなくてそうじゃなくて……!」アセアセ

女僧侶「私の事……信頼してくれてないんですか……?」

勇者「い、いやっ……! そうじゃなくてさぁ、戦力的に考えてだよ! 戦力的に考えて!」

女僧侶「……」

勇者「それにさぁ……? 女僧侶ちゃんも、俺なんかといるより、男賢者さんといた方が安全だと思うんだよね……?」

女僧侶「……えっ?」

587: 2014/05/27(火) 23:59:29.61 ID:P8AyqqzGO
勇者「だってこの人、魔法学校首席で卒業してるんでしょ? 俺、そんな人には勝てないよ」

女僧侶「……」

勇者「俺みたいな奴なんてさ……? どうせ、大した魔法も使えないし、優れた特技もないしさぁ……?」

女僧侶「……」

勇者「やっぱり、男賢者さんと男魔法使いさんのサポートに徹した方がいいと思うんだよねぇ?」

女僧侶「……」

勇者「だからさぁ、この選択がベストだと思うな! 女僧侶ちゃんの為にも! 俺の為にも!」

女僧侶「……」

588: 2014/05/28(水) 00:04:33.20 ID:PG43BnI1O
男賢者「僕は、その選択肢で構いませんが……お父様、どうします……?」

男魔法使い「え~? この子達使えないの? も~う……年寄りに戦闘させないでよ……」

男賢者「お父様は、いつもまだまだ現役……なんて、言ってるじゃありませんか」

男魔法使い「じゃあ、私達の方に天童さんもらうよ? 構わないかな?」


男賢者「はい、わかりました。では、僕と……女僧侶ちゃんで……こっちの道へ……」

女僧侶「……」


男魔法使い「私と……勇者君と……天童さんで……こっちの道だね?」

天童「任せときんしゃいっ!」

勇者「女僧侶ちゃん、気をつけてね?」


女僧侶「……はい」

589: 2014/05/28(水) 00:05:15.99 ID:PG43BnI1O
今日はここまで

595: 2014/05/28(水) 23:16:10.70 ID:PG43BnI1O
ーーーーー


男賢者「ねぇねぇ、女僧侶ちゃん?」テクテク

女僧侶「……」テクテク

男賢者「……女僧侶ちゃん?」

女僧侶「えっ……! あっ、どうしましたか、男賢者さん……?」

男賢者「君の好きだった人って、あの勇者君?」

女僧侶「……えっ?」

男賢者「魔法学校を卒業する日、僕が君に告白したのを『好きな人がいる』って、断ったよね?」

女僧侶「あっ……いや、それは……」アセアセ

男賢者「あれって、勇者君の事だよね?」

女僧侶「……」

596: 2014/05/28(水) 23:21:06.16 ID:PG43BnI1O
男賢者「隠さなくてもいいからさ? 勇者さんの事なんでしょ?」

女僧侶「ど、どうして……わかったんですか……?」

男賢者「女僧侶ちゃんの彼を見つめる目を見てたら……なんとなくね……」

女僧侶「……」

男賢者「……それに」

女僧侶「……それに?」

男賢者「僕はまだ、君の事が好きだからね。好きな人の事はなんとなくわかるんだ」

女僧侶「……あの」

男賢者「……ねぇ、女僧侶ちゃん?」

女僧侶「どうしたんですか?」

男賢者「……僕達と一緒に旅をしない?」

女僧侶「……えっ?」

597: 2014/05/28(水) 23:28:59.64 ID:PG43BnI1O
男賢者「僕は君を必ず守る」

女僧侶「……」

男賢者「そして、世界を平和にもしてみせる……」

女僧侶「……」

男賢者「僕は君の好きだった『明るくて前向きな男』に、今ならなっていると思う。告白したあの時とは違う」

女僧侶「あのっ……! お気持ちは嬉しいんですが……」アセアセ

男賢者「……わかってる。君が好きなのは勇者君だよね?」

女僧侶「……は、はい」

男賢者「でも、彼はさ……?」

女僧侶「?」

男賢者「……君の好きな『明るくて、前向きな男』なのかな? 僕には、そう見えないよ」

女僧侶「!」

598: 2014/05/28(水) 23:37:05.19 ID:PG43BnI1O
男賢者「……少なくても僕なら、こういう状況で、パートナーの君を守りたいと思うな」

女僧侶「……あ、あの」

男賢者「自分には力がない……なんて、言わずにさ? 好きな人を守りぬく事に全力を尽くす事を考えるな」

女僧侶「それは……! 何かきっと、理由があると思うんですよ……」アセアセ

男賢者「……どんな理由?」

女僧侶「それは……わ、わからないですけど……」

男賢者「……僕には彼の事は『後ろ向きでネガティブな男』にしか見えないなぁ」

女僧侶「……」

男賢者「僕は、絶対に君を守る。そして、君の好きな理想の男にもっと近づいてみせる。だから……」

女僧侶「……だから?」

男賢者「この討伐が無事に終われば、僕達と共に旅をする事を考えてほしい」

女僧侶「……」

599: 2014/05/28(水) 23:43:19.58 ID:PG43BnI1O
男賢者「ごめんね? 急に混乱させる様な事を言っちゃって」

女僧侶「そ、そうです……こんな状況の中、そんな事を言われても……私……」

男賢者「……でも、やっぱり自分の気持ちはどうしても伝えたかったから」

女僧侶「……えっ?」

男賢者「この魔物討伐が終わったら、女僧侶ちゃんとは二度と再会できないかもしれないのに、気持ちを伝えないまま終わるのは、やっぱり嫌だからさ……?」

女僧侶「……」

男賢者「後悔したまま人生終わりたくないじゃん? ……なぁ~んて、ちょっとキザな事を言ってみたりして?」

女僧侶「……男賢者さん」

600: 2014/05/28(水) 23:48:07.40 ID:PG43BnI1O
男賢者「ごめんね、返事は後でいいからさ? 今は集中しようか」

女僧侶「……はい」

男賢者「……強い魔力を感じる。多分、この扉の先に魔物がいるんだろう」

女僧侶「……」

男賢者「……大丈夫。僕が必ず、君の事を守るから」

女僧侶「……はい」

男賢者「さぁ、魔物を討伐して、街に平和を取り戻そう!」


ギイィ

601: 2014/05/28(水) 23:55:36.24 ID:PG43BnI1O
魔術師「おやおや……今回の贄は、随分と若いお嬢さんのようですね……」

男賢者「……残念ながら、彼女は贄ではない」

魔術師「……ほぅ?」

男賢者「我々は街を救う為に、貴様を討伐しに来た者だっ……!」

魔術師「おやおや、人間というのは愚かな生き物ですねぇ? 今までに何人の冒険者が私にその同じ台詞を言ったでしょうか?」

男賢者「……」

魔術師「……そして、後悔しながら、私に殺されていったでしょうか?」

男賢者「……僕達をあまり、舐めない方がいいぞ?」

魔術師「ふふふ……一つ、面白い事を教えて差し上げましょう……」

男賢者「?」

602: 2014/05/29(木) 00:02:44.58 ID:+65jznT/O
魔術師「私は魔術の達人です……そう! 天才なのですっ!」

男賢者「……」

魔術師「愚かな人間達が、一生かかっても、使いこなせない魔法を生み出したのですっ!」

男賢者「へぇ……賢者としては、興味がある話だな……」

魔術師「それが、このっ! 結界魔法ですっ!」ブィン

男賢者「……ほぅ」

魔術師「これは魔力以外の物を完全に防ぐ結界です ……つまり、貴方達の剣や弓の攻撃は私には通用しません」

男賢者「なるほどねぇ……確かに、厄介な魔法だ……」

603: 2014/05/29(木) 00:08:52.69 ID:+65jznT/O
魔術師「今までの冒険者達は、この結界魔法になす術なく、氏んでいきました」

男賢者「……」

魔術師「貴方達も同様です……彼等と同じように氏んでいくのです……」

男賢者「面白い魔法だと思うよ……だが、無意味だね……」

魔術師「……何?」

男賢者「僕は賢者だ……そして、彼女は僧侶だ……ここに、魔法以外を使う人間がどこにいる?」

魔術師「何だと……? 貴様、賢者か……!?」

男賢者「魔力が通るんだったら、そんなそんな結界など、無意味だっ! いくぞっ! 女僧侶ちゃん、サポートを頼むっ!」

女僧侶「は、はいっ……!」

魔術師「くそっ……! 面白いっ……! この天才魔術師の力を思い知らせてやるわっ!」

604: 2014/05/29(木) 00:16:48.18 ID:+65jznT/O
ーーーーー


ミノタウロス「ハッハッハっ! 愚かな人間共よ! 俺様の能力を教えてやろうっ!」

男魔法使い「あっ、聞きたい聞きたい」

天童「俺も! 自分で弱点言ってくれるなら是非聞かせて欲しいっ!」

勇者「……俺、あんまり聞きたくない」

ミノタウロス「俺様の能力はっ! 肉体を硬化させて! 全ての魔法を弾く力であるっ!」

男魔法使い「あら~、そりゃ、凄いわ……」

天童「あんら~、こいつ思った以上に厄介な奴ねぇ……?」

勇者「も~う……だから、俺は聞きたくないって言ったじゃん……」

ミノタウロス「ハッハッハっ! お前達も今までの冒険者と同じように八つ裂きにしてくれるわっ!」

605: 2014/05/29(木) 00:25:49.75 ID:+65jznT/O
男魔法使い「いや~……厄介な能力だねぇ……?」

勇者「そ、そうですねぇ……」アセアセ

男魔法使い「まぁ、でもなんとかなるでしょ? それじゃあ、勇者君、お願いね?」

勇者「……えっ?」

男魔法使い「私は今回、役に立たないねこりゃ……」

勇者「ちょ、ちょっと待って下さいよっ……! 男魔法使いさんも戦って下さいよ!」

男魔法使い「何、言ってんの君!? あいつ、魔法効かないんだよ? 私、何も出来ないじゃない!?」

勇者「えっ……!?」

男魔法使い「あのねぇ、私は肉体派じゃないの? もう歳だしね? こういう戦いは、君がやりなさい。君が!」

勇者「歳って……! さっきは、まだ若いとか言ってたじゃないですか!?」

男魔法使い「知らん知らん……ほら、とっととアイツを倒しちまいなさいっ!」

606: 2014/05/29(木) 00:34:27.21 ID:+65jznT/O
勇者「うぅ……何で、こんな時になって老人発言するんだよ……」ブツブツ

ミノタウロス「ほ~う……一番手はお前か……タイマン勝負を挑んでくるとは、ちょっとは根性あるじゃねぇか……」

勇者「い、いやぁ……俺は、そんな事したくないんだけどさぁ……そうだっ! 話し合いとかしようよ!」

ミノタウロス「リングに上がってんのにウダウダ言ってんじゃねぇよっ! おらっ!」ビュンッ

勇者「う、うわっ……!」

ミノタウロス「このチビっ! 逃げんじゃねぇよっ! おらっ! おらっ!」ビュンッ

勇者「ちょ、ちょっとタイムっ……! 話し合いしようよっ……! ねっ、ねっ?」

ミノタウロス「うるせぇ! おらっ!」ビュンッ

勇者「わっ……! わわっ……!」


男魔法使い「……なぁ~にを、やってんだ彼は」

天童「……でも、避けんのは上手ぇなぁ? 一応、成長してんのかな?」

607: 2014/05/29(木) 00:46:39.92 ID:+65jznT/O
ーーーーー


男賢者「はっ! たあっ!」

魔術師「ぐわぁぁぁ!」

男賢者「女僧侶ちゃん、魔力を分けてくれっ!」

女僧侶「は、はいっ……! んっ……!」

男賢者「よしっ……! これでとどめだっ! 僕と女僧侶の魔力を奴にぶつけてやるっ……!」

魔術師「くそっ……! この私が……この私が……! こうなれば、古の魔法を使って……」

男賢者「無駄だよ……貴方の攻撃は、もう見切っている……」

魔術師「それはどうかな……? 隕石をこの塔に落とし……この塔ごと……! そして、周囲の街ごと……! 貴様を潰してくれるわっ……!」

女僧侶「古の魔法……! 隕石を呼び寄せる魔法って……聞いた事はありますが、本当に存在するなんて……!」

608: 2014/05/29(木) 00:56:12.78 ID:+65jznT/O
魔術師「……時は来た」ブツブツ

女僧侶「男賢者さんっ! 呪文の詠唱を始めてますよ……! なんとかしないとっ……!」

男賢者「大丈夫っ……! それより、女僧侶ちゃん、僕に魔力を送ってくれっ! 奴を倒すには魔力がまだ、不十分なんだっ!」

魔術師「……許されざる者達の頭上に」ブツブツ

女僧侶「で、でも……隕石が降ってきたら……私達だけじゃなく、街の人達までも……」

男賢者「今は説明している暇はないっ! 奴を倒すのにはまだ、魔力が足りないんだっ! 僕を信じてっ!」

魔術師「……星砕け降り注げ」ブツブツ

女僧侶「……」

男賢者「いいから、僕を信じてっ!」

魔術師「来たぞ来たぞ……さぁ、これで貴様達も終わりだっ! くらえっ! はあぁっ!」


女僧侶「……んっ」

男賢者「よしっ……女僧侶ちゃん……魔力が……溜まってきたぞ……」

609: 2014/05/29(木) 01:07:08.07 ID:+65jznT/O
魔術師「バカな……何故だ……」

女僧侶「……あ、あれ?」

魔術師「何故だ何故だ何故だっ! 何故、隕石が来ないっ! 私の詠唱が間違っていたとでもいうのか!?」

男賢者「いえ……流石、天才魔術師です……まさか、古の魔法まで使えるとは……おそらく、詠唱も間違っていないと思いますよ……」

魔術師「では……何故……」

男賢者「それは……僕が、貴方の呪文を封じる魔法をかけているからですよ……」

魔術師「……何!?」

男賢者「天才魔術師相手に……それくらいの警戒は当然じゃありませんか……自分の能力を自慢気に語るのは関心できませんね……」

魔術師「……き、貴様ァ!」

男賢者「貴方の詠唱の間……こちらも十分力を溜めさせて頂きましたよ……」

魔術師「!」

男賢者「……くらえっ! これが、僕と女僧侶ちゃんの魔力だっ!」ゴオオオォォッ

魔術師「う、うわああぁぁぁぁ!」

女僧侶「やった……! 奴が燃えていきますっ!」

男賢者「その力……来世では世の為に役立ててもらいたいものです……さて、お父様達は大丈夫かな?」

614: 2014/05/29(木) 23:10:04.74 ID:+65jznT/O
ーーーーー


ミノタウロス「ちょろちょろ逃げてんじゃねぇよっ! ゴキブリか! てめぇは!」ビュンッ

勇者「わっ……! わわっ……!」

男魔法使い「お~い、勇者君、何やってるのよ……」

勇者「い、いやっ……そんな事、言ったって……こんな奴に殴られたら氏んじゃいますよ、僕……」

天童「蝶の様に舞い、蜂のように刺すんだよっ! おめぇはモハメド=アリ先生の試合を見た事ねぇのか!?」

男魔法使い「あ~、猪木との試合はよかったよねぇ? 当時は凡戦なんて言われてたけどねぇ?」

勇者「ちょっとっ……喋ってる暇があるならちょっとは手伝っ……」ガシッ

ミノタウロス「……」

勇者「……ん?」

ミノタウロス「へへへ……捕まえた~っと……」ニヤニヤ

615: 2014/05/29(木) 23:19:24.97 ID:+65jznT/O
勇者「い、いやっ……あのっ……」アセアセ

ミノタウロス「……」

勇者「や、やばい……これ、まずいかも……男魔法使いさんっ……!」


男魔法使い「……はあっ!」ドヒュンッ

ミノタウロス「……フンっ!」カキンッ

男魔法使い「あ、あらぁ~……やっぱり、魔法弾は弾かれちゃうねぇ……」

ミノタウロス「……言ったはずだ。俺には魔法攻撃は通用しないとな」


勇者「や、やばい……これ、まずい……」アセアセ

ミノタウロス「おい、坊主……? 今から、ちっと痛い事するから、気を失うんじゃねぇぞ……?」

勇者「えっ……? い、いやぁ……何、するつもりなんですかねぇ……?」

ミノタウロス「てめぇをよぉ……? ぶん投げて、壁に叩きつけてやるんだよ……こぉ~んな風になぁっ!」ブンッ

勇者「う、うわああぁぁっ!」

616: 2014/05/29(木) 23:25:32.36 ID:+65jznT/O
ドーンッ


勇者「……ガッ」

天童「お、おいっ! 勇者ァ、大丈夫か!?」

男魔法使い「ちょ、ちょっと……君……! こっちに飛んでこないでよ! 危ないじゃないっ!」

ミノタウロス「……うまい具合に、三人固まってくれたな」

天童「……えっ?」

男魔法使い「……えっ?」

ミノタウロス「我が肉体よっ……! より、硬化して我に力を与えたまえっ……!」ムキムキッ

天童「お、おいっ……やべぇぞ……」

男魔法使い「奴の身体が……どんどん膨らんでいく……」

ミノタウロス「我に力をっ……! 全てを砕くパワーをっ……!」ムキムキッ


勇者「ぐっ……ううっ……」

617: 2014/05/29(木) 23:32:53.33 ID:+65jznT/O
ミノタウロス「さぁ……これで最後にしてやる……」

天童「おいっ、勇者っ! 立てっ! あいつ、突っ込んでくる気だぞ!?」

男魔法使い「あんな大きな身体じゃ……逃げ道なんてないじゃないかっ……!」

ミノタウロス「いくぞっ! これでお前達も今までの冒険者と同じように氏ぬのだっ……!」

天童「勇者っ! なんとかしろっ! おめぇ、男だろうがっ!」

男魔法使い「う、うわぁっ……! 来たっ……!」アセアセ

ミノタウロス「うおおおぉぉぉっ! ショルダータックルだああぁぁぁぁっ!」


勇者「ぐっ……うぅぅ……」プルプル

618: 2014/05/29(木) 23:41:52.11 ID:+65jznT/O
天童「男魔法使いさんっ……! こうなりゃ、あんただけでも逃げんしゃいっ!」

男魔法使い「に、逃げるって……何処に逃げるのよ……そんな、逃げ道何処にもないじゃないっ……!」

勇者「ぐっ……ううっ……バイアグラ? ……バイキンマン……ぐっ! 違う違うっ……」

ミノタウロス「うおおおおっ!」

天童「やべぇ! 来たぞっ!」

男魔法使い「このままじゃ、私達全滅してしまうよっ……!」

勇者「バイク王……? さよならBye-Bye(リーシャウロン)……? ぐっ、違う違うっ! そうじゃないっ!」

ミノタウロス「うおおおおっ! これで貴様達も終わりだああぁぁぁっ!」

天童「やべぇっ!」


勇者「『バイキルト』?」ピカーッ

619: 2014/05/29(木) 23:50:29.26 ID:+65jznT/O
ガシッ


ミノタウロス「……ぬ?」

天童「奴の突進が止まったぞ……? しかし、何故だ……?」

男魔法使い「勇者君……? 今、君何かしたの……? って、その身体っ!? どうしたんだね、君っ!?」

勇者「……えっ?」ムキムキ

ミノタウロス「何っ……? こ、こいつ……! 俺と同等の体格になって、俺の突進を止めやがっただと?」

天童「おおっ、勇者ァ! おめぇ、やるじゃねぇか!?」

男魔法使い「君の身体、壁殴り代行のAAみたいだよ! 凄いよ、凄い筋肉っ!」


勇者「う~ん……助かったのはいいけど……この身体、なんだか気持ちわるいなぁ……」アセアセ

620: 2014/05/29(木) 23:57:56.28 ID:+65jznT/O
天童「おいっ、勇者っ! 今、7時57分だから……後、3分だっ……!」

勇者「えっ……! もう、そんな時間なの……?」

天童「後、3分以内によぉ? そこのでか物を倒しちまえっ!」

勇者「おめぇは簡単に言うけどさぁ……?」

天童「なぁ~に、言ってやがる! 今のおめぇの身体だったら、楽勝だりうが! 三冠ヘビー級王座選手権、3分一本勝負だっ!」


男魔法使い「あら? 天童さんは、全日派なの? 私はねぇ、新日派なの。 勇者君、IWGP選手権試合期待してるよ!」

勇者「も~う……二人共、何言ってるかわかんないよ……まぁ、時間ないし、戦うけどさぁ……?」

ミノタウロス「!」

621: 2014/05/30(金) 00:02:41.04 ID:+g4T3Lp1O
勇者「……」ズシンズシン

ミノタウロス「!」ビクッ

勇者「……じゃあ、いくよ?」

ミノタウロス「!」

勇者「……たあっ!」ズバーンッ

ミノタウロス「……ぐわぁぁぁっ!」

勇者「……えっ?」

ミノタウロス「ぐっ……な、なんて重いチョップだ……こいつ、俺の三倍以上の力がありやがるっ……!」

勇者「……えっ、嘘でしょ? ちょっと、軽めに叩いただけだよ、僕」

ミノタウロス「ぐぐっ……しかし、こっちも負けてはいないぞっ……! おらあっ!」

勇者「!」

622: 2014/05/30(金) 00:07:18.62 ID:+g4T3Lp1O
ペチッ


ミノタウロス「はぁっ……はぁっ……」

勇者「?」

ミノタウロス「何……? こいつ、俺のチョップが効いていないだと……!?」

勇者「う、うん……あんまり、痛くない……かな……?」

ミノタウロス「そ、そんなはずはないっ……! くそっ! くらえっ、マシンガンチョップだっ! おらあっ!」


ペチペチペチペチペチペチペチペチ……


勇者「……」

ミノタウロス「おらおらおらおらっ……!」

勇者「……あのさ? 時間ないし、そろそろ終わらせてもいいかな?」

ミノタウロス「!」

624: 2014/05/30(金) 00:15:18.43 ID:+g4T3Lp1O
ミノタウロス「こ、こうなれば……! 俺の必殺技、バックドロップで……!」

勇者「……ん?」

天童「おいっ! バカッ! 簡単に背後を取られてるんじゃねぇよっ!」

ミノタウロス「うおおおっ! くそっ……持ち上がれ……持ち上がれぇぇっ……」ググッ

勇者「あれ……これ……どうしたらいいのかな……?」アセアセ


男魔法使い「……あのね、あのね。勇者君?」

勇者「……ん?」

625: 2014/05/30(金) 00:23:22.61 ID:+g4T3Lp1O
男魔法使い「あのね、あのね……こ~んな感じで、身体を横に逸らすような動きしてみて?」クイクイ

勇者「え~っと……こんな感じですかね……?」クルッ

ミノタウロス「……何っ!?」

男魔法使い「そうそう、そうしたら、相手の背後を取り返せるでしょ?」

勇者「あっ、本当だ……いつの間にか、俺が背後をとってるや……」

ミノタウロス「や、やばいっ……!」

男魔法使い「そしたらね、今度はブリッジする要領で持ち上げたまま、後ろに倒れてみようか? こ~んな感じで……」クイクイ

勇者「え、え~っと……こんな感じですか……?」ググッ

ミノタウロス「う、うおおおおおっ!」


ドシーンッ


ミノタウロス「……グギギ」

男魔法使い「そうっ! それが馳浩の得意技の『裏投げ』だっ!」

天童「1……2……3……! はいっ、カァ~ットっ! 8時ジャストに、勝利の3カウントだっ!」

626: 2014/05/30(金) 00:29:40.80 ID:+g4T3Lp1O
ーーーーー


街長「本当に……皆さん、ありがとうございましたっ……!」

男魔法使い「いやいや、私は何もしてないよ! 今日のヒーローは、うちの息子と勇者君の二人だっ!」

勇者「……えっ?」

男魔法使い「いやぁ~、久しぶりにいい試合を見せてもらったよ! プロレス好きの血が騒いだねっ!」

勇者「い、いやぁ……」

男魔法使い「それに、男賢者もよくやったっ! いや~、やっぱり、君は自慢の息子だよっ!」

男賢者「……いや、今回の討伐は女僧侶ちゃんの力があったからです。お父様」


女僧侶「……えっ?」

627: 2014/05/30(金) 00:37:26.49 ID:+g4T3Lp1O
男賢者「今回の敵は、強い闇の力を持っているのを感じました……それに対抗する聖なる力は私も、お父様も持ってはいません……」

男魔法使い「……ほぅ」

男賢者「今回の勝利は、彼女の協力があったからです。 彼女のなしでは、どうなっていたか、わからないでしょう」

男魔法使い「いや~、なるほど! じゃあ、女僧侶ちゃんも頑張ってくれたんだね! いや~、やっぱり、若い子達の力は凄いねっ!」


女僧侶「あ、ありがとうございます……」

男魔法使い「しかし、うちの息子は優秀な上に、謙虚だときたもんだっ! やっぱり、私にそっくりだねぇ! ハハハハハ!」

天童「ねぇねぇ、男魔法使いさん、男魔法使い? 俺は褒めてくれないの? 俺も頑張ったんだけど?」

男魔法使い「……天童さん、私と一緒で何もしてないじゃない?」

天童「バ、バカ~ンっ! 今回、俺も大活躍したぜぇ? カァ~! もう、たまらぁ~ん! たまらぁ~んっ!」

628: 2014/05/30(金) 00:41:53.72 ID:+g4T3Lp1O
そしてーーー


勇者「……」

天童「まぁ、なんだかんだ、ややこしい展開にはなったけどよぉ……?」

勇者「……あっ、天童?」

天童「『思いやり』……クリアできてよかったじゃねぇか? なっ?」メモメモ

勇者「……うん」

天童「これで、命題は残り5つ……後半分だ……おめぇも順調に成長してるじゃねぇか?」

勇者「う、うんっ……!」

天童「……でもよぉ!?」

勇者「?」

630: 2014/05/30(金) 00:45:51.69 ID:+g4T3Lp1O
天童「おめぇは確かに成長してるよ? だけどよぉ?」

勇者「?」

天童「なぁ~んか、大事な物、失ってねぇか? 胸に手を当てて、よく考えてみろよ?」

勇者「……えっ? なんだよ、ソレ」アセアセ

天童「さぁねぇ~、おじさん知らないねぇ~」

勇者「お、おいっ……! 大事な物ってなんだよ、教えてくれよ……!」

天童「……おじさん、疲れてるから今日は寝るわ~! まぁ、じっくり考えてみなさ~い!」テクテク


勇者「……な、なんだよ。アイツ」

632: 2014/05/30(金) 00:50:45.92 ID:+g4T3Lp1O
女僧侶「……」テクテク

勇者「あれ? あれ、女僧侶ちゃんじゃん? お~いっ!」

女僧侶「……」

勇者「あれっ? 聞こえてないのかな? お~い、女僧侶ちゃん~!」

女僧侶「……あっ、勇者さん」

勇者「女僧侶ちゃん、今日はお疲れ様?」

女僧侶「……」

勇者「やっぱり、俺のパーティー分けの判断正しかったでしょ? ねっ? ねっ、ねっ?」

女僧侶「……」

勇者「……あれ? どうしたの? 女僧侶ちゃん、ぼーっとして、話聞いてる?」

女僧侶「……」

勇者「……お~い?」

女僧侶「あ、あのっ……!」

勇者「……ん?」

635: 2014/05/30(金) 00:55:13.32 ID:+g4T3Lp1O
女僧侶「あの……勇者さん……?」

勇者「……ん?」

女僧侶「勇者さんって……その……あの……」

勇者「……ん? どうしたの?」

女僧侶「あの……その……私の事……」

勇者「?」

女僧侶「……」

勇者「……どうしたの?」

女僧侶「あっ……いえっ……! やっぱり、何でもありませんっ……! 今日は私も疲れたので、もう休みますね……?」

勇者「あっ……うん……わかった……」

女僧侶「そ、それじゃあ……勇者さん……お休みなさいっ……!」


勇者「なんだろぉ? 逃げるように行っちゃったや……なぁ~んか、天童といい女僧侶ちゃんといい、皆おかしいな……?」

636: 2014/05/30(金) 00:57:33.27 ID:+g4T3Lp1O
ーー五話 「優しくしないと氏ぬ!」


637: 2014/05/30(金) 01:02:42.23 ID:YYEBSTSfo
お疲れさま

646: 2014/05/30(金) 21:02:06.27 ID:+g4T3Lp1O
>>644
神様の目的は勇者君に「老人に優しくしてもらう」事ではなく、
「思いやり」の心を学んでもらう為に「老人に優しくする様」命題を出した……って感じかな?

本当は俺がこういう事言うべきじゃないんだけどね。次回はもうちょっと丁寧に書こうと思うよ
補足してくれた人達もthx!

>>640
>>645
この辺は次回の宿題にさせてもらうわ

647: 2014/05/30(金) 21:05:51.26 ID:+g4T3Lp1O
天国に一番近い勇者~heaven cannot wait~


第六話 「大切にしないと氏ぬ!」

引用: 勇者「天国に一番近い勇者」