213: 2014/06/17(火) 23:05:34.30 ID:lPUSyy3KO

215: 2014/06/18(水) 23:17:12.78 ID:BTXTXjcYO
ーー俺の名は勇者。俺は今、魔王を倒して世界に平和を取り戻す為、魔王城のある危険な大陸を旅している


勇者「あ~、野宿ってゆっくり休めないもんだね?」

天童「どうしても、見張り役が一人はいるからな? 2時間起きに起こされるってのも、辛いもんだな」


ーーこいつの名は天童。自称天使の……ただの怪しいおっさんである


勇者「この前さ……? 俺が寝て、5分ぐらいしたら、魔物に襲われたでしょ? なんで、あんなタイミングで襲ってくるかねぇ?」

天童「バカ野郎……いいタイミングじゃねぇか? 俺が寝てる時に襲ってこなかったんだからよぉ?」


ーーだが……こいつの言う通り、俺は神様から与えられた十個の命題をクリアしないと氏んでしまうらしい


勇者「……おめぇはよぉ?」

天童「まっ、そろそろ次の街に着くからよぉ? 今日ぐらいはゆっくり安眠しようぜ?」


ーーなんとか七個の命題をクリアして、残る命題は後三個……


勇者「そうだね。今日ぐらいはゆっくり休みたいね」

天童「おっ、勇者! 街が見えたぞ!?」


ーー果たして、俺は無事にクリアする事ができるのだろうか……
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216: 2014/06/18(水) 23:22:31.58 ID:BTXTXjcYO
勇者「危険な大陸だってのに、結構、人の多い街だね?」

天童「こっちの大陸にも、皆で協力して毎日を全力で生き抜いている人達がいるんだな。おめぇも見習わねぇとなぁ!?」

勇者「……うるせぇな」


ザワザワ……ザワザワ……


勇者「……ん?」

天童「……ん?」

217: 2014/06/18(水) 23:31:39.05 ID:BTXTXjcYO
「おい、聞いたか? どうやら、あの伝説の勇者様の子供がこの街に向かって来てくれてるらしいぞ?」

「……本当か? でも、子供なんだろ? いくら、伝説の勇者様の子供だからって、この街を救えるのかな?」


勇者「……なんか、この街も困ってるのかな?」


「それがよぉ? 勇者様の子供は、10メートル近い化物を一人で倒したり、不思議な能力を持った魔物を一人で倒した人らしいぜ!?」

「マジかよ!? そんなに強いのかよ!? それだったら、きっとこの街も救ってくれるはずだよなっ!?」


天童「……おめぇも随分よぉ? 名前が売れてきたみてぇだな?」


「それだけ強いんだから、きっと、この街を救ってくれるはずだぜっ!」

「あぁっ! 勇者様の到着が待ち遠しいなっ!」


勇者「……」

218: 2014/06/18(水) 23:36:25.97 ID:BTXTXjcYO
天童「……なんかよぉ? この街も問題抱えてるみたいだな?」

勇者「そうだね……今日もゆっくりできそうにないね……?」

天童「……ん?」

勇者「この街に問題があるんだったらさぁ……俺達が解決してあげなきゃ?」

天童「……おぉ」

勇者「……なんか、期待されちゃってるみたいだしさぁ?」

天童「いいねぇ! おめぇ、成長してるじゃねぇか! でもよぉ? 一つだけ訂正しておくぞ?」

勇者「……天童、わかってるって」

天童「……ん?」

219: 2014/06/18(水) 23:43:39.57 ID:BTXTXjcYO
勇者「おめぇ一人でよぉ? 全部解決したわけじゃねぇだろうがよぉ!?」

天童「!」

勇者「周りに支えてくれる人がいたからよぉ? おめぇも魔物を倒す事が出来たんだろうがよぉ!?」

天童「!」

勇者「そこの所、勘違いしてんじゃねぇよ! おめぇみてぇなダメ人間、一人じゃなぁ~んも解決できねぇよ! ……だろ?」

天童「……お、おぉ」

勇者「まっ、あの人達……何か勘違いしてるみたいだけどさ……? やっぱり、俺にはお前や女僧侶ちゃんの助けが必要だからさ……?」

天童「……おめぇ、わかってんじゃねぇかよぉ」ニヤニヤ

勇者「今日も、一日よろしくね?」

天童「なぁ~に、他人行儀になってんだっ! わかってんならいいよっ! まっ、おめぇのフォローは俺に任せときんしゃいっ!」

勇者「じゃあ、とりあえず、あの人達に話を聞いてくるね?」

220: 2014/06/18(水) 23:50:22.73 ID:BTXTXjcYO
勇者「あの~? すみません……」

街人「……ん?」

勇者「あの……この街、何か問題抱えてるんですかね?」

街人「お前、冒険者か? 誰だ、お前?」

勇者「あっ……僕、勇者です……」

街人「……はぁ?」

勇者「いや、だから……さっき、貴方達が話していた……伝説の勇者の子供の……勇者ですよ?」

街人「……」

勇者「んっ、どうしたんですか?」

街人「嘘ついてんじゃねぇよっ! このガキっ! おめぇは狼少年かっ!」

勇者「……えっ?」

221: 2014/06/18(水) 23:58:30.30 ID:BTXTXjcYO
街人「出たよ出たよ! こうやって、勇者様の名前借りてさ? 大金毟り取っていく、泥棒みてぇな冒険者がよっ!」

勇者「いやいやっ……! 僕は勇者ですよっ……! 本当ですっ、本当ですって……!」アセアセ

街人「勉強不足だな、坊主!? そんな事じゃ、金取れねぇぞ!?」

勇者「いやっ……勉強不足って……どういう事ですか……?」

街人「あのね……? 伝説の勇者様の子供は女性なの? おめぇ、男じゃねぇか!」

勇者「……えっ?」

街人「勇者様の子供は女の子一人だけって、知らねぇのか? そんな事も知らねぇなんてよ……おめぇ、ただの引き篭もりじゃねぇの?」

勇者「!」

街人「おらっ、邪魔だよっ! こっちは勇者様を迎え入れる準備があるんだからよぉ! おめぇみたいな奴はとっとと消えろやっ!」

222: 2014/06/19(木) 00:02:58.28 ID:lCt/G+TnO
天童「お、おいっ……! 勇者……どういう事だ……?」アセアセ

勇者「……」

天童「また、おめぇの偽者が現れたって事か? この大陸に、勇者の名を語る偽者がいるって事か?」

勇者「……いや、違う」

天童「……あぁ?」

勇者「姉ちゃんだ……姉ちゃんが、この付近にいるんだ……」

天童「あぁ……そういや、おめぇ姉ちゃんいたな?」

勇者「……うん」

223: 2014/06/19(木) 00:09:23.60 ID:lCt/G+TnO
天童「……でもよぉ? 勇者の子供が一人ってのはどういう事だ? おめぇだって、子供だろ?」

勇者「……」

天童「……あっ! もしかして、おめぇ、母親の不倫相手の隠し子とかか!?」

勇者「……」

天童「その事に気づいたおめぇの父さんはよぉ? 不倫相手と決闘しに行って、命を堕としたってワケか!?」

勇者「……」

天童「ん、待てよ……? そうなると、おめぇは魔王との子供って事になるなぁ……」

勇者「……」

天童「いやぁ~んっ! バカ~んっ! まるで昼ドラみたい~! おじさん、そんな話、あまり好きじゃないなぁ~!」

勇者「姉ちゃんさぁ……? 俺の事、隠したがってたから……」

天童「……ん?」

224: 2014/06/19(木) 00:16:46.23 ID:lCt/G+TnO
勇者「……ほら? 俺、ずっと引き篭もってたじゃん?」

天童「……」

勇者「伝説の勇者様の息子が引き篭もりなんて、周りに知られたらさ……? 俺だけじゃなくて、姉ちゃんや母さん……それに、父さんまでバカにされるじゃん?」

天童「……」

勇者「……だからさぁ? 姉ちゃん、俺の事はなかった事してるんだよ」

天童「……ん?」

勇者「金は仕送ってやるから……父さんや私の名前を汚す事はしないでくれって……」

天童「……」

勇者「俺の住んでた街の近くの人には、バレてたんだけど……姉ちゃんは俺の事をなかった事にして、ずっと旅を続けてたんだろうね……」

225: 2014/06/19(木) 00:23:08.22 ID:lCt/G+TnO
天童「……でもよぉ? おめぇは、あの時と違って、もう成長してんだろ?」

勇者「……えっ?」

天童「おめぇはよぉ! ここまで旅してきて、色々学んできただろがっ!」

勇者「……うん」

天童「言ってやればいいじゃねぇか! 僕も勇者の子供なんです、この街を救いますよ! ってよぉ!?」

勇者「いや……でも……」

天童「なぁ~に、ウジウジしてんだよ! おめぇ、そういう所がよぉ! おめぇのダメ人間な所なんだよっ!」

勇者「……」

天童「なんだよ、なんだよ……5分前のテンションどうしたんだよぉ! 勇者君よぉ!?」

勇者「……」

天童「……ったく、面倒臭ぇ奴だな。ところでよぉ? ホレ、来たぞ?」

勇者「……ん?」

天童「命題だよ、命題」

勇者「!」

226: 2014/06/19(木) 00:28:46.87 ID:lCt/G+TnO
勇者「えっ……? これ、いつ来たの……?」アセアセ

天童「さっき、おめぇが街の人話してる間によ? 神様がコソッと来てな?」

勇者「……コソッと?」

天童「おめぇにバレエねぇように、俺にスッってな?」

勇者「……スッ?」

天童「それで、サッっと帰って行ったよ」

勇者「……コソ泥か? 神様、コソ泥みてぇな真似してんのか!?」

天童「おめぇは、いつか絶対、神様に罰当てられるぞ!? もう、いいから早く何が書いてあるか見てみろよっ!」

勇者「わかったよ……え~っと……」ガサゴソ

227: 2014/06/19(木) 00:29:50.19 ID:lCt/G+TnO
今日はここまで
次回に命題届けます

230: 2014/06/19(木) 21:14:45.79 ID:lCt/G+TnO





勇者
X月X日 午後9時までに

姉に勝てなかったら即・氏亡!






231: 2014/06/19(木) 21:25:24.83 ID:lCt/G+TnO
天童「ふ~む……『姉に勝てなかったら即・氏亡』か……」

勇者「……えぇ?」

天童「今、午前8時だから後13時間……だな……?」

勇者「ダメだよ……それだけは無理だよ……」

天童「おめぇが姉貴に対してウジウジしてっから、そこん所神様がズドーンって命題を討ってきたんだよぉ」

勇者「だってさぁ……? 姉ちゃんは俺と違って、ずっと世界平和の為に旅してたんだしさぁ……?」

天童「いいか? これはチャンスだぞ!」

勇者「……えっ?」

天童「おめぇがここで姉貴に対するコンプレックス吹っ切れば、未来が見えてくる……ここが正念場だぞっ!」

勇者「……簡単にいうけどさぁ? だって、小さい頃からずっと、俺、姉ちゃんに勝った事ないんだぞ?」

天童「まぁ、出来る姉の存在ってのは、おめぇにとって相当なトラウマみてぇになってんだろな?」

勇者「……」

天童「おめぇが引き篭もってる間もよぉ? ずっと、姉貴と比べられてたんだろ? 世界平和の為に戦う姉と……その弟の引き篭もりってよ?」

勇者「……うん」

232: 2014/06/19(木) 21:30:57.11 ID:lCt/G+TnO
天童「でもよぉ!?」

勇者「?」

天童「これを乗り越えなきゃ、何を乗り越えたって崩れちまうんだっ!」

勇者「……」

天童「おめぇも、ここまで命題クリアしたり、旅してきたりして、成長してんだろが!」

勇者「……うん」

天童「そんなモジモジモジモジよぉ、ビビってねぇで勝負挑んでみろやっ!」

勇者「……勝てるわけねぇよ」

天童「おめぇ、勝負なんてよぉ? 色んな方法あるだろが! おめぇが得意な分野で勝負挑めばいいんじゃねぇか!」

勇者「……例えば?」

233: 2014/06/19(木) 21:38:03.50 ID:lCt/G+TnO
天童「例えばよぉ? にらめっこ対決……とか、どうだ?」

勇者「……はぁ?」

天童「おめぇの、そのしみったれた間抜け面だったら、楽勝だろ!? 今日はよぉ、鼻毛も一本飛び出してるし、なにもしなくても勝てるぜおいっ!」

勇者「えっ……? 俺、鼻毛出てる……? うわっ、何で教えてくれなかったんだよっ! 恥ずかしいじゃねぇか!」プチッ

天童「あっ! おめぇ、何で抜くんだよ!? せっかくのいい武器だったのによぉ!?」

勇者「うるせぇっ! これじゃあ、試合に勝って、勝負に負けたみてぇなもんだろがっ!」

天童「……それだよ。その目だよ!」

勇者「……ん?」

234: 2014/06/19(木) 21:42:27.64 ID:lCt/G+TnO
天童「おめぇのその、俺に対する強気を姉貴に向けりゃいいんだよっ!」

勇者「……でも」

天童「……『でも』じゃねぇよ」

勇者「……」

天童「……」

勇者「……だって」

天童「……『だって』じゃねぇよ! この間抜けっ!」

勇者「……」

天童「……」

勇者「どうせ、俺はさぁ……?」

天童「ヨッ! 治ったと、思ったけど、久々に出たな!」

勇者「……」

236: 2014/06/19(木) 21:50:58.77 ID:lCt/G+TnO
天童「よっ! どうせ国国王っ! どうせホームラン王っ!」

勇者「……うるせぇよ」

天童「おめぇはよぉ? ちょっと、姉貴の名前が出てきたら、ま~たネガティブ人間に戻るんだな!?」

勇者「……」

天童「おめぇだって、ここまでやってきたんだろが! おめぇも成長してんだろがよぉ!?」

勇者「でも、俺が成長してる間にさぁ……? 姉ちゃんだって、色々やって成長してるだろうしさぁ……」アセアセ

天童「じゃあ、氏ぬのか? ここで、もう諦めて氏ぬのか!?」

勇者「いや……それはさぁ……? 違うけど……」

天童「だったら、戦えよっ! もっと、前向きになれよっ! 最後の最後まで諦めんなよっ!」

勇者「……う、うん」

237: 2014/06/19(木) 21:57:28.17 ID:lCt/G+TnO
ーーーーー


女僧侶「……勇者さん、街の方と何を話してたんですか?」

勇者「あっ……いやぁ、まぁ、ちょっとね……?」

女僧侶「?」

勇者「あっ……あのさぁ……? 女僧侶ちゃん、相談があるんだけど……?」モジモジ

女僧侶「相談……? 何か、問題でも起きたんですか? 私に出来る事なら、なんでもしますよ?」

勇者「あっ……! するのは俺だからさぁ……? そんなに、真剣に聞いてくれなくても、いいんだけどね……?」アセアセ

女僧侶「?」

勇者「あっ、そうだっ! なぞなぞしよう! 今からさぁ、なぞなぞ出すから、答えてみてよ?」

女僧侶「なぞなぞ……ですか……? 私、結構得意ですよ」

238: 2014/06/19(木) 22:02:31.29 ID:lCt/G+TnO
勇者「じゃあ、問題っ!」

女僧侶「はい」

勇者「え~っと……男君には、何をやっても勝つ事の出来ない兄弟がいました!」

女僧侶「……ふむふむ」

勇者「しかし……男君は、なんとかして、その兄弟に勝たなくてはいけませんっ!」

女僧侶「……ふむ」

勇者「では、ここで問題ですっ! 男君はいったい、何で勝負を挑んだでしょうか!?」

女僧侶「なるほど……勇者さん、わかりましたよ?」ニコッ

勇者「えっ、マジで!? そんなに簡単にわかるものなの? 答え何よ? 俺、何で勝負挑めばいいの!?」ワクワク

239: 2014/06/19(木) 22:08:18.05 ID:lCt/G+TnO
女僧侶「……答えは」

勇者「うんっ! うんうん!」

女僧侶「『負けの数』……ですね……?」

勇者「……えっ?」

女僧侶「あれっ……? 答え、違います……?」

勇者「あっ、いや……ま、まぁ……正解だね……」

女僧侶「ほら、ねっ? 私、なぞなぞ得意でしょ?」ニコニコ

勇者「う~ん……『負けの数』で姉ちゃんに勝負挑めばいいのかぁ……? いや、違うだろなぁ……」

女僧侶「じゃあ、次は私が勇者さんに問題出していいですか?」

勇者「……えっ?」

女僧侶「ふふ、なんだかこういう遊びするのって、小さい時以来ですね? じゃあ、いきますよ? 問題ですっ!」

勇者「あっ、はい……」アセアセ

241: 2014/06/19(木) 22:15:50.50 ID:lCt/G+TnO
「おいっ、来たぞっ! ついに勇者様が来たぞっ!」

「街長の家に案内しろっ! 食事の用意もするんだっ!」


勇者「……えっ?」

女僧侶「……ん?」


「オラオラ、勇者様の到着だっ! お前ら、道を開けろっ!」

「勇者様は旅で疲れてるんだからよぉ! 失礼な事してんじゃねぇぞ!」


勇者「……」

女僧侶「勇者さんはここにいるのに……どうしたんですかね……?」


「さぁ、勇者様っ! 私が街長の家まで、案内します。 さぁさぁ、こちらへ!」

女勇者「……どうも」


勇者「!」

女僧侶「あっ! あれ、勇者さんのお姉さんじゃないですか?」

242: 2014/06/19(木) 22:24:06.21 ID:lCt/G+TnO
女勇者「……ここは、汚い街ですね?」キョロキョロ

街長「あっ……! 申し訳ございませんっ……! やはり、魔物の襲撃で……」

女勇者「……だから、私に依頼したというわけですか」

街長「お願いしますっ……! この街の復興には勇者様の力が必要なのですっ……! どうか、お願いしますっ……!」

女勇者「……私は、報酬さえ頂ければそれで構いません」

街人「……はっ!」

女勇者「このような街に……20000Gも支払う能力はあるんですか?」

街人「その事に関しては、街長と話して下さい……」

女勇者「わかりました……では、案内して下さい……」

街人「はいっ……! 勇者様、こちらですっ……!」

243: 2014/06/19(木) 22:25:35.49 ID:lCt/G+TnO

街長になってる所は街人に脳内修正しておいてくれ

245: 2014/06/19(木) 22:30:59.58 ID:lCt/G+TnO
女勇者「……しかし、本当に汚い街ですね?」

街人「申し訳ありませんっ……!」

女勇者「私……こんな場所で、今晩過ごすんですか……?」

街人「いえっ……! 勇者様には、宿屋の最高級の部屋を用意しておりますっ……!」

女勇者「こんな街の宿屋なんて……たかがしれている物でしょう……」

街人「も、申し訳ありませんっ……!」

女勇者「汚い宿屋に……汚い酒場……汚い道具屋……」キョロキョロ


勇者「……」


女勇者「!」

街人「あれっ……? どうしました? 勇者様?」

246: 2014/06/19(木) 22:37:34.17 ID:lCt/G+TnO
女勇者「……街が薄汚いと、薄汚い冒険者まで集まるようですね」

街人「……はぁ?」

女勇者「早く、案内して下さい。 見たくない物を見てしまったような気がします」

街人「……はぁ?」

女勇者(なんで、あんたみたいなクズがここにいるのよっ……! 父さんの名前を汚すだけの金食い虫のあんたがっ……!)ワナワナ

街人「それでは、街長の家に案内いたしますね? こちらです」

女勇者「はい、よろしくお願いします」


勇者「……」

女僧侶「へぇ~、勇者さんのお姉さんもこっちの大陸へ来てたんですね?」

勇者「……うん」

女僧侶「……私の事、覚えてらっしゃいますかね?」

247: 2014/06/19(木) 22:43:34.86 ID:lCt/G+TnO
天童「……おい、勇者?」

勇者「……ん?」

天童「なぁ~んで、勝負挑まなかったんだよぉ? 今、チャンスだったじゃねぇか?」

勇者「い、いやっ……まだ、何で勝負するか決めてないし、さ……?」アセアセ

天童「……ビビってるだけじゃねぇのか、おめぇ?」

勇者「そ、そんな事ないよ……」

天童「ふ~ん……まっ、いいや! ところで、勇者君よぉ?」

勇者「……ん、どうしたの?」

天童「今日一日、どうすんだよ? 計画を話し合おうぜ?」

勇者「だから、今日はさぁ……? 命題をクリアしなきゃいけないから……」

天童「バ~カっ! おめぇの計画じゃねぇよっ! 俺達の計画だよぉ? 俺達の!」

勇者「……えっ?」

248: 2014/06/19(木) 22:49:28.55 ID:lCt/G+TnO
天童「やっと、街に着いたんだからよぉ? 俺達の計画も話し合おうぜ?」

勇者「計画って……? 何……?」

天童「女僧侶ちゃん? 今、道具はどれくらい残ってるの?」

女僧侶「う~ん……薬草が不足してますかねぇ……? 少し、道具屋で補充しておきたいです……」

天童「俺はよぉ? 酒場で一杯、飲みてぇなっ!」

勇者「あっ……天童、酒場はダメだぞ?」

天童「うん、そうだよな? なんか、この街、困ってるみたいだし、酒場なんかで飲んでる場合じゃないよなっ!」

249: 2014/06/19(木) 22:54:58.08 ID:lCt/G+TnO
女僧侶「天童さん、困ってる事って……何ですか……?」

天童「いや、それがよぉ? 俺も街人の話を盗み聞いただけだから、詳しい事はわかんねぇんだよなぁ」

女僧侶「あら、そうですか……」

天童「でも、街の人にさ? 話を聞いてみたら、わかるんじゃね?」

女僧侶「そうですね、困ってる事があったら、私達も手助けしましょう」

天童「じゃあ、とりあえず街長さんにでも、話を聞いてみっか! 街の長って書くぐらいだから、何か情報は持ってるだろっ!」

女僧侶「じゃあ、そうしましょうか?」

天童「よしっ! 勇者っ! じゃあ、俺達も、街長さん家に行くかっ!」


勇者「!」

250: 2014/06/19(木) 22:58:14.02 ID:lCt/G+TnO
天童「おいおい、何固まってんだよ、おめぇ?」

勇者「いやっ……あのさっ……? もうちょっと後にしない……? もうちょっと、後!」アセアセ

天童「……何でだよ? 問題は早いうちに解決しねぇといけねぇだろが」

勇者「わかってるよ……わかってるけど、さぁ……?」

天童「……」

勇者「なっ、なっ……? 頼むよ、天童……」

天童「……なぁ、勇者?」

251: 2014/06/19(木) 23:02:54.29 ID:lCt/G+TnO
天童「……おめぇ、そんなに会いたくないのか?」

勇者「……」

天童「……いつものお前ならよぉ?」

勇者「?」

天童「間違いなく、ここで街長の家に行ってるだろうが! この街、救う為によぉ? 行動するんじゃねぇのか?」

勇者「……うん」

天童「おめぇよぉ? ここまで、自分に出来る事を一生懸命やってきて、ここまで成長したんじゃねぇか? なぁ、そうだろ?」

勇者「……う、うん」

天童「そこによぉ? 『姉』って存在が入ってきただけで、何でそんな風になっちまうんだよ!? おめぇ、またダメ人間に戻ってんぞ!?」

勇者「……」

252: 2014/06/19(木) 23:08:12.88 ID:lCt/G+TnO
天童「あのな、勇者……?」

勇者「……んっ?」

天童「おめぇが引き篭もってる間によ? 周りの人間や、あの姉ちゃんに何言われたかは、わかんねぇよ?」

勇者「……うん」

天童「でもよぉ? おめぇはちゃんと成長してるじゃねぇか! 言えねぇか? 今なら、今なら言えるんじゃねぇか?」

勇者「……えっ?」

天童「自分は伝説の勇者の息子で……今、世界を救う為に毎日毎日、精一杯旅してますって、言えねぇか!?」

勇者「……」

天童「昔のお前とはもう、違うだろ!? 今なら、姉貴とだって戦えるよっ!」

勇者「……ありがとう」

天童「だからよぉ? そんなに、モジモジしてねぇで、行動してみろやっ!」

253: 2014/06/19(木) 23:18:12.05 ID:lCt/G+TnO
女僧侶「……勇者さん」

勇者「あっ、ごめんね? 女僧侶ちゃん……そんなに心配しないでいいよ?」

女僧侶「……」

勇者「いや……あのさぁ……? 俺、ずっと引き篭もってたじゃん……?」

女僧侶「……はい」

勇者「だからさ……? ちょっと、姉ちゃんに、こういった形で会うのが気まずくてさぁ……? 二の足踏んでたや……」

女僧侶「……」

勇者「でも……そうだよ、大丈夫だよ。俺……天童や女僧侶ちゃんのおかげで変わったからさぁ……?」

女僧侶「……えぇ」ニコッ

勇者「この街……何か、困ってる事、あるみたいだし……俺達も街長さんの家に話を聞きに行こうかっ!」

女僧侶「安心しました。いつもの勇者さんで」

勇者「……えっ?」

女僧侶「私……勇者さんは変わったんじゃなくて、戻ったんだと思いますよ?」

勇者「うん、そうだね……ちょっと、姉ちゃんにビビりすぎてたや……うん、これが本当の俺っ!」

女僧侶「いえいえ……そういう事ではなくて……」

勇者「?」

女僧侶「まぁ、私達も街長さんの家に向かいましょうか」ニコッ

259: 2014/06/20(金) 22:02:46.52 ID:6mB5E1n9O
街長家ーーー


女勇者「……どういう事ですか? 話が違うではありませんか?」

街長「この……10000Gで許してくれ……」

女勇者「報酬は20000Gのはずでしたが? 後、10000Gはどうしたんですか?」

街長「ワシらの街にも……生活じゃあるんじゃ……この10000Gだって……街人達に無理を言って、集めた金じゃよ……」

女勇者「あなた方の生活なんて知りませんよ。 私にだって、生活があるんですよ? 約束が違うのなら、この話はお受けできません」

街長「そんなに金を集めてどうするんじゃ? この10000Gで十分じゃろ?」

女勇者「今は戦いにも、お金がかかる時代なんですよ」

街長「……」

260: 2014/06/20(金) 22:13:22.97 ID:6mB5E1n9O
女勇者「私の父は魔王に破れ、命を堕としました……誰にも、負けない力を持っていたはずなのに」

街長「……あぁ」

女勇者「……何故だかわかりますか?」

街長「……」

女勇者「それは……良い武器や、防具がなかったからです」

街長「……」

女勇者「力だけで、世界を変える事ができるなんて……もう、過去の話なんですよ?」

街長「……」

女勇者「良い武器を使い、良い防具を使い……そして、腕のいい傭兵を雇う……」

街長「……そうじゃな」

女勇者「今の時代、世を変えるには、どうしてもお金の力が必要なんですよ。 力や正義感だけではどうにもなりません」

街長「……」

女勇者「高い報酬金が頂けると聞いて、私はこの街を救う為にやって来たのに……これじゃあ、話が違いますよ?」

261: 2014/06/20(金) 22:19:57.89 ID:6mB5E1n9O
街長「しかし……」

女勇者「……どうしました?」

街長「この10000Gでも……いい装備を買ったり、腕のいい傭兵を雇ったりは出来るじゃろう?」

女勇者「論点をすり替えないで下さい。 お話は20000Gのはずでしたよ?」

街長「傭兵なんて、4000Gもあれば、雇えるじゃろうに?」

女勇者「それだけじゃ、足りませんよ。 戦いは数です」

街長「装備品だって……残りの金額なら、この街の最高級の品が買えるぞ?」

女勇者「この街の武器や防具で、魔王と戦えるんですか? それは、あなた方が世界を知らないだけじゃないんですか?」

街長「……」

女勇者「世界には、もっと高価で、性能のいい武器や防具がありますよ?」

街長「……」

262: 2014/06/20(金) 22:27:33.28 ID:6mB5E1n9O
天童「うぉ~いっ! 街長さん、いるかい? 邪魔するよっ!」ガラッ

街長「……なんじゃ、あんたらは?」

天童「へへぇ~ん……聞いて驚くなよ? 俺達は伝説の勇者の息子と、その仲間御一行だぜっ!」

街長「勇者の……息子……?」

天童「いやぁ、なんか街人がこの街、問題抱えてるって言ってからよぉ? 俺達も話を聞きに来たんだよな?」

街長「女勇者さん……? 勇者様の子供は……あんただけじゃなかったのか……?」


女勇者「……」ギロリ

勇者「や、やぁ……姉ちゃん、久しぶりだね……?」

天童「よぉよぉ、街長よぉ! 俺達にも、話を聞かせてくれよ! あんた、ついてるなぁ? 勇者が二人も揃うなんて、滅多にねぇぞ、おいっ!」

街長「女勇者さん……これは、どういう事じゃ……?」

263: 2014/06/20(金) 22:35:36.74 ID:6mB5E1n9O
女勇者「……実は」

街長「あ、あぁ……」

女勇者「この子は、私の最大の隠し玉なのです……」

街長「……隠し玉?」

女勇者「えぇ……勇者とは、その名声だけで、多くの魔物に狙われる存在です。 魔王軍も、こちらの動向を注意深く観察してるでしょう」

街長「……そうじゃな」

女勇者「だから、私は……この子の存在を隠しているのです」

街長「魔王軍に気づかれないようにか……」

女勇者「はい……この子の存在が知られたら、彼等もそれなりの対策をしてくるでしょう」

街長「……なるほどな」

女勇者「ですから、街長……この事は、どうか内密にお願いしますっ……!」


天童「おいっ! おめぇ、隠し玉だってよ? なんか、格好いいじゃねぇか、おいっ!」

勇者「……」

264: 2014/06/20(金) 22:41:00.11 ID:6mB5E1n9O
女勇者「ちなみに、お金が必要なのも、そういった理由からです」

街長「……ほぅ」

女勇者「私の装備だけではなく……この子や、仲間達の装備も必要でしょう?」

街長「……なるほどな」

女勇者「とても、10000Gなんかじゃ、足りませんよ?」

街長「確かに……四人分の最高級な装備を整えるのは……20000Gでも、少ないかもしれんな……」

女勇者「えぇ……報酬金が20000Gでも、破格の条件なんですよ? この街を救うなら、それくらいは出していただかないと……」

街長「……う~む」

265: 2014/06/20(金) 22:49:23.84 ID:6mB5E1n9O
天童「……おい、勇者?」ヒソヒソ

勇者「んっ……? どうした、天童?」ヒソヒソ

天童「おめぇの姉ちゃんも、銭ゲバなんだな?」

勇者「お、おいっ……! やめろよっ! 怒られんぞ、お前っ!?」

天童「……おめぇよぉ? 男武道家さんに貰った剣があるから、別に武器なんて、いらねぇよな?」

勇者「あぁ……この剣さぁ……? 凄ぇ、使いやすいんだよ……」

天童「だったらよぉ? 街長さん、困ってるみてぇだし、姉貴と戦ってこいよ?」

勇者「……えっ? どういう事?」

天童「だからよぉ? 『お金なんて、いりませんよっ! 僕達、無償で街を救いますっ!』とか、言ってこいやっ!」

勇者「えっ……? で、でも、姉ちゃん交渉中だよ……?」

天童「いいから、ほれっ! 行ってこいっ! 姉貴に勝たねぇと、氏んじまうんだぞ、おめぇ!」

266: 2014/06/20(金) 22:58:03.54 ID:6mB5E1n9O
街長「う~む……そういう事なら……」

女勇者「その報酬金は必ず、私達の力になります……私達を信じて頂けませんか?」

街長「……」


勇者「あ、あのさぁ……?」

女勇者「……」

勇者「あの……姉ちゃん、姉ちゃん……?」

女勇者「……どうしたの? 勇者君?」ニコッ

勇者「ちょっと……街長さん、困ってるんじゃないかなぁ……?」アセアセ

女勇者「勇者君? 交渉はお姉ちゃんに任せておきなさい」

勇者「いや、でもさぁ……?」

女勇者「……勇者君っ!」

勇者「!」ビクッ

女勇者「交渉はお姉ちゃんがするからさぁ……邪魔しないでくれるかな?」ギロリ

勇者「あっ……! は、はいっ……!」


天童(バカっ! おめぇ、何やってんだよっ! リングにすら、立ててねぇじゃねぇか!)

267: 2014/06/20(金) 23:08:07.10 ID:6mB5E1n9O
街長「……わかった、苦しい条件じゃが、あんたらにも事情があるんだから、仕方ないな」

女勇者「……20000Gで納得して頂けたんですね?」

街長「あぁ、全ての問題を解決してくれたら……20000Gを渡すと約束しよう……」

女勇者「わかりました、では、この街の抱えている問題を聞かせて下さい」

街長「……南の洞窟に、魔物が拠点を作り始めておる」

女勇者「……それの、討伐ですね?」

街長「あぁ……奴らが本格的に、この大陸を支配するつもりなら、真っ先に狙われるのは、この街じゃからな」

女勇者「……なるほど」

街長「魔王軍の精鋭部隊じゃから、厳しい戦いになるかもしらんが……どうか、よろしく頼むよ」

268: 2014/06/20(金) 23:22:59.05 ID:6mB5E1n9O
女勇者「ちなみに……傭兵部隊の方達が見当たらないのですが……何処にいるんですかね……?」

街長「……傭兵部隊?」

女勇者「えぇ、私が……その部隊の指揮をとればいいんでしょ?」

街長「ちょっと待ってくれ……! この街の傭兵部隊は……皆、やられてしまったよっ……!」

女勇者「……はぁ?」

街長「だから、ワシらはあんたらに、大金を支払って、依頼したんじゃないか!」

女勇者「では、私、一人で魔王軍の精鋭部隊と戦えと……?」

街長「だから、あんたもその隠し玉連れてきてくれたんだろ? なっ?」

女勇者「……」

269: 2014/06/20(金) 23:30:22.53 ID:6mB5E1n9O
天童「まっ、人数が四人ってのは、厳しいけどよぉ? 俺達に任せておきなよ、おっさんっ!」

女僧侶「えぇ、私達がこの街を必ず救ってみせますよ?」ニコッ

街長「おぉっ! ありがとうっ……! 頼むっ……! この街を救ってくれっ……!」


女勇者「……勝手に話、進めるんじゃないわよ」

勇者「……」


天童「まぁよぉ? 見事、討伐成功したら、酒でも奢ってくれよな! おっさんっ!」

女僧侶「も~う……天童さんはお酒ばっかりですねぇ……」クスクス

街長「わかったよ、報酬に酒も追加しようじゃないか。 だから、頑張ってくれよっ!」


女勇者「……あんたの仲間、何考えてるの? ねぇ?」ギロリ

勇者「うっ……ご、ごめん……」アセアセ

270: 2014/06/20(金) 23:37:01.44 ID:6mB5E1n9O
ーーーーー


天童「よっしゃっ! じゃあ、改めて自己紹介でもしますかっ! 俺は、天使(商人)の天童ねっ!」

女勇者「……」

天童「あの、格好書きで天使忘れないでね? 格好書きで、て・ん・し!」


女僧侶「私は、女僧侶と申します。よろしくお願いします」ペコッ

女勇者「……」

女僧侶「あ、あの~? お姉さん、私の事、覚えてらっしゃいますかね……?」


女勇者「……あ~っ! 最悪っ! やっぱり、あんたみたいなクズといると、調子狂うわっ!」イライラ

勇者「!」ビクッ

271: 2014/06/20(金) 23:44:06.14 ID:6mB5E1n9O
女勇者「ねぇ、あんた? あんた、私の交渉の邪魔したでしょ? どうして、そういう事するの?」

勇者「あっ……あれは……」

女勇者「ねぇ? あんた、どうしていつも邪魔ばかりするの? どうして、父さんの名前、汚すような事するの?」

勇者「いや……でも……」

女勇者「母さんへの仕送りと、あんたが生活できるように仕送りしてるの誰だと思ってるの?」

勇者「ご、ごめん……」

女勇者「あんたが、働かないから、私一人で家計支えてるのよ? 余計な事、言わないで頂戴よ」

勇者「あっ……! 俺の分の仕送りはもう、いいからさ……?」アセアセ

女勇者「それに、あんたの仲間っ! やっぱり、クズの周りにはクズが集まるのね!」

勇者「……いや、二人はクズなんかじゃないよ」モゴモゴ

女勇者「言いたい事があるなら、はっきり言うっ!」

勇者「あっ……! ご、ごめんっ……!」

272: 2014/06/20(金) 23:51:25.08 ID:6mB5E1n9O
女勇者「傭兵の交渉、勝手に中断して、話進めるなんておかしいでしょ?」

勇者「いや……でも、それは……この四人でなんとかなると思ったからさぁ……?」アセアセ

女勇者「商人と……僧侶と……引き篭もりのクズ……! 前衛は、何処にいるのよ、前衛はっ!」

勇者「あっ……そ、それはっ……」

女勇者「傭兵がいないんだったら、街人にでも、前衛やらせればいいでしょ? どうせ、使い捨ての駒なんだから!」

勇者「ご、ごめん……」

女勇者「あんたの仲間が氏ぬのは勝手だけれど、私にまで迷惑かけないでよっ!」

勇者「うぅ……ご、ごめんっ……」

273: 2014/06/20(金) 23:57:59.18 ID:6mB5E1n9O
天童「お姉さん、お姉さん……」

女勇者「……何よ?」

天童「どうですかね? 腕相撲でもしませんかね?」

女勇者「……はぁ? 何、言ってんの、あんた?」

天童「いや、あなたの弟の勇者君も、ここまでの旅で成長したんですよ? だからね……? ちょっと、腕っ節見てあげて下さいよ?」

女勇者「……こんな奴が、あたしに勝てるワケないじゃない?」

天童「いやいやっ……! 勇者君の成長見たら、驚きますよ? さぁさぁっ! 勝負しましょうよっ! 勝負っ!」

女勇者「……」


天童「よっしゃっ! 勇者ァっ! ここで、おめぇの成長を見せて……同時に命題クリアだっ!」ニヤニヤ

勇者「お、おうっ……」

274: 2014/06/21(土) 00:03:31.14 ID:ImDAGelIO
ーーーーー


女勇者「……」ググッ

勇者「……」ググッ

天童「はいはい、構えましたか……? 見合って、見合って……」

女勇者「……」

勇者「……」


天童(……おい、勇者?)ヒソヒソ

勇者(……ん?)

天童(いくら、威張っててもよ……? 相手は女だから、ガツーンとやっちまえっ!)

勇者(う、うんっ……!)

天童(ここで、勝ってよぉ? 命題クリアと同時に、主導権取り戻しちまえよっ! おめぇ、今日はらしくねぇよっ!)

勇者(う、うんっ……わかったっ……!)


天童「よっしゃっ! それじゃあ! レディ……ゴーっ!」

275: 2014/06/21(土) 00:09:42.94 ID:ImDAGelIO
女勇者「……ふんっ」グッ

勇者「……ガッ! うおっ! 痛っ!」

天童「おいおい、勇者ァ! おめぇ、瞬頃すぎるぞっ! 何、やってんだよっ!」

女勇者「ほら……引き篭もりのあんたみたいなクズが勝てるわけないじゃない……」

勇者「痛っ……痛ぇよぉ……そんなに叩きつけないでいいじゃん……」

天童「カァ~! 情けなかぁ~! たまらぁ~ん! もう、たまらぁ~んっ!」

女勇者「そんな調子で魔物討伐なんて出来るの!? あんたみたいな奴でも、氏んだら私と父さんの名前、汚れるんだからね!?」

勇者「うぅ……ご、ごめん……」

276: 2014/06/21(土) 00:15:13.60 ID:ImDAGelIO
女勇者「あんたのバカな仲間が勝手に決めちゃったから……もう、このパーティー行くしかないけど……」

勇者「……うぅ」

女勇者「ほらっ! 4000G渡すから、これで装備買ってきなさいよっ!」

勇者「……えっ?」

女勇者「あんたみたいな奴でも、氏んだら困るの! 街長さんに変な噂流されたらどうするの? 評判落ちるのは私なのよ?」

勇者「ご、ごめん……」

女勇者「本当、お金のかかる子ねっ! 嫌になるわっ!」

勇者「うぅ……ごめん……」

女勇者「私、先に宿屋に行ってるから……準備が整ったら、合流しなさいっ! もう、本当最悪っ!」

勇者「わ、わかった……」

277: 2014/06/21(土) 00:20:54.84 ID:ImDAGelIO
天童「……なぁ? 勇者?」

勇者「……ん?」

天童「言っちゃぁ、悪ィけどよ……? 俺、おめぇの姉ちゃん、嫌いだわ」

勇者「……」

天童「高飛車で威張り腐ってよぉ? それに、おめぇは確かにクズだけど、俺の事までバカしなくてもいいじゃねぇか!」

勇者「ご、ごめん……」

天童「それに……せっかくダメ人間から、成長してるおめぇを、そうやってダメ人間に戻そうとしてる所も嫌いだな!」

勇者「……ご、ごめん」

天童「おめぇよぉ? いつもの調子、取り戻せよ? これから、魔王軍の精鋭部隊戦うんだぜ?」

勇者「ごめん……あのっ……女僧侶ちゃんも……俺のせいでごめんね……?」アセアセ

278: 2014/06/21(土) 00:25:26.43 ID:ImDAGelIO
女僧侶「……しょうがないですよ」

勇者「……」

女僧侶「お姉さん時間の時間は……多分、勇者さんが足踏みしてた時で止まってるんだと思います」

勇者「……うん」

女僧侶「でも、私……勇者の事、ずっと見てきたからわかるんですが……」

勇者「……ん?」

女僧侶「勇者さん、天童さんの言う通り……成長してると思いますよ?」

勇者「……う~ん」

女僧侶「私だって……負けてられないなって、思う時いっぱいありますもん」

勇者「……本当?」

女僧侶「本当ですよ! 自身持って下さいっ! 勇者さんっ!」

勇者「……うん」

279: 2014/06/21(土) 00:31:34.27 ID:ImDAGelIO
女僧侶「四人で、討伐に向かう件は……確かに軽々に決めてしまった、私達にも責任はありますよ」

勇者「……」

女僧侶「でも、やっぱり……傭兵の人達がいないなら、この四人で……」

勇者「……四人で?」

女僧侶「……」

勇者「……ん?」

女僧侶「?」

勇者「……えっ? 何?」アセアセ

女僧侶「……」

勇者「え~っと……この四人で……やるしかないよね……」

女僧侶「はいっ! そうですっ! ほら、やっぱり勇者さん、成長してるじゃないですか!」ニコニコ

勇者「う、うんっ……」

280: 2014/06/21(土) 00:36:46.01 ID:ImDAGelIO
女僧侶「ねっ? だから、今から装備を買いに行って……魔物討伐でお姉さんにいい所を見せましょうよ?」

勇者「う、うん……」

女僧侶「そしたら、きっとお姉さんも勇者さんの事、認めてくれますよ!」

勇者「そうかな……?」

女僧侶「自身持って下さいよ? 今日の勇者さん、いつもの勇者さんらしくありませんよ?」

勇者「……ご、ごめん」

女僧侶「も~う……そんなに謝ってばかりだったら、嫌いになっちゃいますよ?」

勇者「いやいやいやっ……! そりゃ、困るっ……! そいつは困りますっ……!」アセアセ

女僧侶「じゃあ、早く……装備、買いに行きましょうよ? ねっ? 私は前向きな勇者さんの方が好きですよ?」クスクス

勇者「わ、わかったっ……!」

287: 2014/06/21(土) 22:16:02.45 ID:ImDAGelIO
道具屋ーー


天童「おい、勇者?」

勇者「……ん、どうしたの?」

天童「装備買うのもいいけどよぉ? 薬草もきれてるんだから、ちゃ~んと補充しておけよ?」

勇者「あぁ、大丈夫大丈夫……わかってるよ」

天童「……ほぅ」

勇者「俺にはさぁ? 男武道家さんに貰った武器があるし、姉ちゃんから貰った4000Gは、女僧侶ちゃんの装備と、アイテムに使おうよ」

天童「……おめぇさぁ?」

勇者「……ん?」

天童「姉貴の姿が見えなくなったら、元気になるんだな?」

勇者「……えっ?」

天童「おめぇ、姉貴の前では完全にダメ人間に戻ってるじゃねぇか!? こんな所だけで仕切ってても真人間にはなれねぇぞ!?」

勇者「わ、わかってるよ……でもさぁ……?」

288: 2014/06/21(土) 22:21:17.71 ID:ImDAGelIO
天童「おめぇはよぉ!? 姉貴の方が間違った事を言っててもゴメンゴメンって、謝るんだな!?」

勇者「姉ちゃんは……間違ってなんかないよ……俺より長い事旅してるんだし……経験も豊富だしさ……?」

天童「何だ何だ? おめぇにとって、姉貴は神様なのか!? えぇ!?」

勇者「……そうだよ。神様みてぇなもんだよ」

天童「……あぁ?」

勇者「父さんや姉貴みたいな、凄い人達は他にはいないんだから……」

天童「……」

勇者「……」

天童「……じゃあ、何? 今回は本当に無理って事なの?」

勇者「……えっ?」

289: 2014/06/21(土) 22:29:25.96 ID:ImDAGelIO
天童「勇者君、命題どうするの? あの姉貴に勝たないと氏んじゃうんだよ?」

勇者「でも……さっきから、勝負挑んだけどさぁ……? 全部……俺、負けてるしさぁ……」アセアセ

天童「バカ~んっ! 何、言ってやがるっ! 本当、バカ~んっ!」

勇者「……ん?」

天童「おめぇはよぉ? 今の所、全部不戦敗じゃねぇか!? リングにすら、上がってねぇじゃねぇか!」

勇者「……」

天童「ちょっと、言い返されそうになったらよぉ? ビビって、すぐゴメンゴメンって、謝ってよぉ?」

勇者「う、うん……」

天童「何で戦ったっていうんだよ? おめぇ、なぁ~んにもしてねぇじゃねぇか!?」

勇者「ご、ごめん……」

290: 2014/06/21(土) 22:33:15.41 ID:ImDAGelIO
天童「腕相撲の時だってよぉ!?」

勇者「……」

天童「どうせ『勝てないんだろうなぁ~」とか……『負けちゃうんだろなぁ~』とか、思ってたんだろ?」

勇者「……」

天童「おめぇ、普段、戦ってる時、あんな腑抜けた顔してたのか!? えぇっ!?」

勇者「ご、ごめん……」

天童「だから、そうやってすぐ謝ってんじゃねぇよっ! おめぇ、俺に対する強気すら、なくなっちまったのか!」

勇者「……」

天童「……いいか、勇者?」

勇者「?」

291: 2014/06/21(土) 22:40:30.66 ID:ImDAGelIO
天童「おめぇはよぉ? 先ず、ビビらず、ちゃんとリングに立つ事から、始めてみようぜ?」

勇者「……えっ?」

天童「ここまで、おめぇが学んできた事をぶつけてみれば、何か一つおめぇの中で変化が起きるかもしれねぇじゃねぇか?」

勇者「……う、うん」

天童「命題には『負けたら即・氏亡』とは書いてねぇんだから……なっ? ビビってねぇで、自分の成長を見せてやれよ!」

勇者「わ、わかったっ……!」

天童「装備買ったら……魔物討伐の計画話し合う事になるんだろ? そん時はよぉ、なんとしてもおめぇが主導権握れよ!?」

勇者「……う、うん」

天童「俺や女僧侶ちゃんは、誰を信じて行動してると思ってんだ? おめぇの姉ちゃんなんじゃなくて、おめぇなんだからよ!」

292: 2014/06/21(土) 22:51:36.24 ID:ImDAGelIO
宿屋ーーー


女勇者「……装備買うのに、どれだけ時間かかってるのよ。 もう12時じゃない? やっぱり、あんたはクズねぇ」

天童「……勇者? 謝るんじゃねぇぞ?」

勇者「……う、うん」

女勇者「それで……? あんた、何買ったの? 装備、何も変わってないじゃない?」

天童「……言ってやれ、言ってやれ」

勇者「あぁ、俺に装備は必要なさそうだったからさぁ……? あの、お金は女僧侶ちゃんの装備に使ったんだ」

女勇者「……なんで、私が赤の他人にお金出さないといけないのよ?」

天童「……おいっ、 勇者! 言ってやれっ!」

勇者「いやぁ……女僧侶ちゃんはさぁ……? やっぱり回復魔法も使えるしさぁ……?」アセアセ

女勇者「そうね……なぁ~んにも、できないあんたよりかはマシか……じゃあ、今回の計画を話すわよ?」

293: 2014/06/21(土) 23:00:26.18 ID:ImDAGelIO
天童「ちょっと待って下さい、お姉さんっ!」

女勇者「……何なのよ?」

天童「今回の指揮は……勇者君に任せるってのは、いかがでしょうか!?」

女勇者「……はぁ? こいつ、頭も悪いのよ? こんな奴に指揮がとれるワケないじゃない」

天童「いえいえっ……! お姉さんはわからないかもしれませんが……勇者君は、ここまでの旅で成長してるんですよ?」

女勇者「クズが成長しても……人並み以下なの?」

天童「いやいやっ……! そんな事ありませんよっ! 勇者君は成長してますからっ! なっ!?」


勇者「う、うんっ……!」

天童「よし、勇者っ! じゃあ、おめぇの頭のいい所を見せてやれやれっ! 成長した所を見せてやるんだっ!」

勇者「えっ……でも……? 頭のいい所って……どうやって、見せればいいんだよ……?」アセアセ


女僧侶「……あ、あの?」オドオド

勇者「……ん?」

294: 2014/06/21(土) 23:06:33.87 ID:ImDAGelIO
女僧侶「私……なぞなぞ、出しましょうか……?」

勇者「あっ! それいいねっ! そうしようっ!」

女勇者「……何言ってんの? 子供の遊びじゃないんだから?」

女僧侶「あっ……! 大丈夫ですっ! あの……知識の豊富さとかじゃなくて、頭の回転が必要な問題ですからっ!」


天童「頭の回転はよぉ!? 部隊を指揮するにあたって、重要な事だよなぁ!? いいんじゃねぇか、ソレ! なっ?」

勇者「う、うんっ……! いいと思うっ……!」

女勇者「本当……バカの周りには……バカが集まるのね……」

天童「まぁまぁ、そう言わずっ! お姉さん、勝負してみましょうよっ! それで……この問題に答えれた方が指揮をとるという事で!」

295: 2014/06/21(土) 23:12:51.94 ID:ImDAGelIO
天童「よしっ、じゃあ、女僧侶ちゃんっ! 早速問題を出してくれっ!」

女僧侶「はいっ……! あの、勇者さん……? 頑張って下さいね……?」

勇者「う、うんっ……!」

女僧侶「では、問題です!」

女勇者「……」

女僧侶「男君と……友君と……妹ちゃんと……姉さんと……犬のポチで、隠れんぼをしました!」

勇者「……うんうん」

女僧侶「妹ちゃんは、木の影で……友君は……すべり台の下で見つかりました……」

女勇者「……」

女僧侶「では、問題ですっ! 今、隠れているのは何人でしょうっ!」

天童「よっしゃっ! 勇者ァ! 先に答えちまえっ!」

296: 2014/06/21(土) 23:21:58.92 ID:ImDAGelIO
勇者「え~っと……二人、見つかったから……残りは三人だっ!」


女僧侶「……えっ?」

女勇者「……あんた、バカね? 鬼を忘れてるじゃない。 答えは二人でしょ?」

女僧侶「あっ……その答えも違います……」アセアセ

女勇者「うん、知ってる……これ、卑怯な問題よね? だって、犬のポチは『一人』じゃなくて、『一匹』なんだから?」

女僧侶「……あっ」

女勇者「……あたしが、『二人』って答えたら、この問題の正解は『一人と一匹』が正解で」

女僧侶「……」

女勇者「あたしが『一人と一匹』って答えたら、ポチは鬼役になって『二人』が正解になるんでしょ?」

女僧侶「……せ、正解です」

女勇者「……あんた、人のお金で自分だけの装備買うだけあって、卑怯な子ね?」

女僧侶「……す、すいません」

297: 2014/06/21(土) 23:29:03.71 ID:ImDAGelIO
女勇者「残念だったわね? このバカ勝たせる為に、色々工夫したみたいだけど?」

女僧侶「……」

女勇者「でも、わかったでしょ? こいつは、一番最初のひっかけもわからないような、頭の悪い子なの?」

女僧侶「……」

女勇者「こんなバカと仲間だなんて……やっぱり、バカの周りにはバカが集まるのね?」

女僧侶「……そ、そんな事」

女勇者「頭の回転を試す為になぞなぞ……何よ、その発想? 三歳児じゃないんだから」

女僧侶「いや……あのっ……」

女勇者「まぁ……4000Gもネコババしていく、意地汚い三歳児はいないか? 三歳児の方が、まだマシよ」

女僧侶「……す、すいません」アセアセ

298: 2014/06/21(土) 23:34:18.69 ID:ImDAGelIO
勇者「……」

天童「……何で黙ってんだよぉ?」

勇者「……えっ?」

天童「……いくら姉貴だからって、あんな言い方はないだろ、女僧侶ちゃんに?」

勇者「……仕方ないよ。 俺、答えられなかったんだし」

天童「何で、ビビんのかな? こんな、人でなしによぉ!?」


女勇者「……あんた、聞こえてるわよ?」

天童「何が、いけねぇんだよぉ!? こんなの、卑怯でもなんでもねぇじゃねぇか!?」

女勇者「……はぁ?」

300: 2014/06/21(土) 23:41:48.47 ID:ImDAGelIO
天童「意地悪な問題出したのだって、こいつの事を勝たせてやりたいって想いからじゃねぇかっ!」

女勇者「……それが、卑怯っていうのよ」

天童「女僧侶ちゃんだけが装備品買ったのだって、勇者が女僧侶ちゃんを大切にしてやりたいって、想いからじゃねぇか!」

女勇者「……まぁ、人のお金だって事を忘れてるけどね?」

天童「この二人の関係見てよぉ? あんたは何にも思わねぇのかよっ!? 二人の信頼関係わかんねぇのかよ!?」

女勇者「クズとクズが仲良くして……どうなるっていうのよ? お互い、足を引っ張り合うだけでしょ?」

天童「なんで、そういう風な事を言うかねぇっ! お互いがよぉ! 足りない所を助けあって……人間ってにはよぉ……!」

女勇者「勇者……あんたの仲間のバカを止めなさい……付き合ってられないわ……」

301: 2014/06/21(土) 23:50:21.63 ID:ImDAGelIO
勇者「天童、天童……もう、いいからっ……」アセアセ

天童「おいっ、ふざけんなっ! なんで止めるんだよ! おめぇは奴隷かっ! こいつの奴隷かっ!」

女勇者「……こんなメンバーで、魔物討伐なんて、出来るワケないじゃない。 もう、あんた達はいらないわ」

勇者「……えっ?」

天童「うるせぇっ! おめぇなんかよぉ! こっちから、願い下げだ馬鹿野郎っ!」

女勇者「……他の街から傭兵を援軍を願います。 無駄な出費だけど、あんた達よりかは、遥かに役に立つわ」

勇者「いやいや……でも……」アセアセ

天童「あんたは、こいつの成長を何も見てねぇ癖に、よくそんな事ばっかり言えるなぁ! おいっ!」

女勇者「……あんた達は勝手に行動しないでよっ!? あんたみたいなクズでも、氏んだら街長さんにどんな噂流されるか、わからないんだからねっ!」バタンッ

308: 2014/06/22(日) 21:38:14.18 ID:1Ys3QsvkO
女僧侶「あ、あのっ……! 勇者さん、ごめんなさいっ……!」アセアセ

勇者「……えっ?」

女僧侶「私のせいで……私が、変な問題出したせいで、お姉さん怒って、行ってしまいました……」

勇者「……いや」

女僧侶「勇者さん……ごめんなさいっ……! 私、お姉さんに謝ってきますっ……!」

勇者「……」


天童「おいおい! なんで、女僧侶ちゃんが謝らねぇといけねぇんだよっ! もう、あんな奴放っておこうぜ?」

女僧侶「……えっ?」

309: 2014/06/22(日) 21:45:27.56 ID:1Ys3QsvkO
天童「俺もよぉ? 色んなダメ人間担当してきたけど、あそこまで人の話を聞かねぇ奴は、なかなかいねぇぞ?」

勇者「……」

天童「あいつはよぉ? 別に更生しねぇでも氏なねぇんだから、もうどうでもいいじゃねぇか! なっ、勇者?」

勇者「……えっ?」

天童「もう、おめぇがよぉ? あの姉貴に怯えてネガティブ人間に戻ってんの見るの飽きたよ!」

勇者「……ごめん」

天童「もう、この三人だけで魔物討伐に行けばいいじゃねぇか? なっ?」

勇者「……でも」

天童「俺はよぉ? おめぇはもう、姉貴に勝ってると、思うぜ? だって、俺はあの姉貴は嫌いだもんっ!」

勇者「……」

310: 2014/06/22(日) 21:52:29.45 ID:1Ys3QsvkO
女僧侶「でも、天童さん……? 相手は精鋭部隊なんですよ……?」

天童「そんなもんよぉ!? こいつ、一人に任せておけばいいじゃねぇか!? こいつだって成長してるんだからよぉ!?」

勇者「……」

女僧侶「そうですが……」

天童「なっ、勇者? おめぇ、一人で出来るよな? なっ、なっ?」

勇者「……」

女僧侶「勇者さん……? 私達も一生懸命、サポートしますから……?」

天童「おめぇがよぉ? 魔物の精鋭部隊を倒したら、あの糞姉貴もおめぇの力を認めざるを得ないだろ? なっ?」

勇者「……うぅ」

女僧侶「勇者さんは……変わりました……ねっ……?」

天童「魔物討伐して、いい所見せて、姉貴に認められたら命題にもクリアになってるだろ!? そうだろ、おいっ!」

勇者「……くそっ!」ダッ

311: 2014/06/22(日) 21:59:40.13 ID:1Ys3QsvkO
女僧侶「勇者さん……!?」

天童「おいっ、勇者ァ! おめぇ、何処に行くんだよっ!?」


バタンッ


女僧侶「あっ……勇者さん……」アセアセ

天童「くそっ……! あの野郎っ……! 何してやがるっ! これじゃあ、一番最初の魔物討伐から逃げた時と同じじゃねぇか!」

女僧侶「そ、そんな事ありませんよっ…… ! だって、だって……勇者さんは……」

天童「わかってるよ、そんな事! 俺だってよぉ! あいつは、あの時とはもう違うよ……立派に成長してるんだからよぉ!」

女僧侶「と、とにかく……! 天童さん! 勇者さんを追いかけましょうっ!」

天童「あぁっ! わかってるよ、女僧侶ちゃんっ!」

312: 2014/06/22(日) 22:03:04.51 ID:1Ys3QsvkO





PM2:00

タイムリミットまで後、7時間






313: 2014/06/22(日) 22:07:51.68 ID:1Ys3QsvkO
勇者「うぅ……」

勇者「……くそっ! くそっ!」

勇者「……」

勇者「なんでだよっ……! なんで出来ないんだ、俺はっ……!」

勇者「ここまでやってきたんじゃねぇかっ……! いつもみたいにやれば、いいだけじゃねぇかっ……!」

勇者「……」

勇者「うぅ……くそっ……! くそぉっ!」


「……勇者さん、こんな所にいたんですね?」


勇者「……えっ?」

女僧侶「はぁっ……はぁっ……探しましたよ、勇者さん……?」ニコッ

勇者「……」

314: 2014/06/22(日) 22:12:28.15 ID:1Ys3QsvkO
女僧侶「勇者さん……? ちょっと、遅いけど、お昼ご飯にしませんか……?」

勇者「……」

女僧侶「私……走り回って、ちょっと疲れちゃいました……だから、ねっ?」ニコッ

勇者「……」

女僧侶「天童さんも、待ってますよ? 天童さん、お腹空くと機嫌悪くなりますかね?」

勇者「……」

女僧侶「……ねっ? 皆で、ご飯食べに行きましょうよ?」

勇者「……」

女僧侶「皆……勇者さんの事、待ってますから……?」

勇者「……うぅ」

315: 2014/06/22(日) 22:17:36.17 ID:1Ys3QsvkO
女僧侶「……ねっ、戻りましょうよ? 皆、待ってますから」

勇者「……くそっ」

女僧侶「戻って……魔物討伐に行きましょう? 勇者さんと一緒なら、きっと大丈夫ですから」

勇者「……やめて」

女僧侶「だって、勇者さんは……あの時と違って……もう……」

勇者「……やめてくれよっ!」

女僧侶「!」ビクッ

勇者「女僧侶ちゃん……?」

女僧侶「……」

勇者「お願いだから……やめてくれ……お願い……」ボロボロ

女僧侶「……えっ?」

316: 2014/06/22(日) 22:25:12.13 ID:1Ys3QsvkO
勇者「俺さぁ……? ずっと、引き篭もってたじゃん……?」ボロボロ

女僧侶「……はい」

勇者「姉ちゃんや……周りの人達に……色々言われたよ……」

女僧侶「……」

勇者「クズ……出来損ない……恥さらし……社会不適応者……」

女僧侶「……」

勇者「確かに、その通りだよ……その通りだったよ……」

女僧侶「……」

勇者「あの時はさぁ……? 俺、何も考えてなかったけど……やっぱり、今思い出すと、自分がダメだった事を改めて思い知らされるよ……」

女僧侶「……」

勇者「……でもさぁ!? 俺は、変わったんだよっ! 変わったはずなんだよっ!」

女僧侶「……はい」

317: 2014/06/22(日) 22:34:07.23 ID:1Ys3QsvkO
勇者「ここまで、旅をしてきて……色々な事を学んで……俺は、変わってるはずなんだっ……!」

女僧侶「……はい」

勇者「だけどさぁ……? やっぱり、姉ちゃんを目の前にするとさぁ……? 自分がダメだった時の事、思い出してさぁ……」

女僧侶「……」

勇者「自分はまだ、ダメ人間なんじゃないかって思って……身体が震えて……いつも見たいに行動できなくなってさ……?」ブルブル

女僧侶「……」

勇者「あの時と同じように、何も行動出来ない自分になってるのがわかってさぁ……?」

女僧侶「……」

勇者「俺、変わってるんじゃなくて……自分の無駄にしてきた時間のツケを、支払ってるだけだと思うんだよっ!」

女僧侶「……そんな事ないですよ。勇者さんは、もう立派に成長してますよ」

318: 2014/06/22(日) 22:42:40.09 ID:1Ys3QsvkO
勇者「女僧侶や、天童は……そうやって、俺の背中押してくれるじゃん……?」

女僧侶「……はい」

勇者「だけどさぁ……!? 俺、その気持ちに何も応えられてないじゃん!?」

女僧侶「……えっ?」

勇者「皆が後押ししてくれるのに……俺、何もできなくて……皆の期待を裏切っちゃって……」ブルブル

女僧侶「勇者……さん……?」

勇者「そんな自分が、凄く嫌になるんだよっ! あの時の自分を思い出してしまうからさぁ!」

女僧侶「……」

勇者「くそっ……! くそっ……! なんで出来ないんだよっ! 俺は変わってるはずなのによぉ!」ブルブル

女僧侶「勇者さんっ……! 落ち着いて下さいっ……!」アセアセ

勇者「くそっ! くそぉっ!」

女僧侶「勇者さんっ!」


ギュッ


勇者「……えっ?」

319: 2014/06/22(日) 22:53:18.80 ID:1Ys3QsvkO
女僧侶「お願いです…… ! お願いですから、そんなに自分を責めないで下さいっ……!」ボロボロ

勇者「……あっ、女僧侶ちゃん?」

女僧侶「ごめんなさいっ……私達の行動で、そんなに勇者さんが追い詰められているなんて……」

勇者「……く、苦しいよ。女僧侶ちゃん?」アセアセ

女僧侶「もう、いいですからっ……! お姉さんの事は忘れましょう! だから、いつもの勇者さんに、戻って下さいっ!」

勇者「……えっ?」

女僧侶「無理に人と比べなくていいじゃないですか……! 勇者さんは……勇者さんのままでいいじゃないですっ……!」

勇者「女僧侶ちゃん……」

女僧侶「私は、いつもの勇者さんが好きですっ……! だから……だから、もうお姉さんと戦わなくていいじゃないですかっ……!」

勇者「……ありがとう」


天童「……やぁ~っと、見つけたと思ったら、あの二人抱き合ってらぁ? こりゃ、俺の出番はねぇなぁ」

320: 2014/06/22(日) 23:00:58.11 ID:1Ys3QsvkO
ーーーーー


勇者「……ごめんね? 女僧侶ちゃんのおかげで、落ち着いたよ」

女僧侶「いえ、私の方こそ……申し訳ありません……」

勇者「いや、いいんだよ……あ~、でも結局、姉ちゃんには勝てなかったなぁ……」

女僧侶「勇者さん? それは、もういいじゃないですか?」

勇者「う~ん……でもなぁ……命題、どうすっかねぇ……」

女僧侶「勇者さんは、お姉さんに、もう勝ってるじゃないですか?」

勇者「俺、今日……負けっぱなしだったんだよ……?」

女僧侶「う~ん……じゃあ、問題出しますね?」

勇者「……えっ?」

女僧侶「第一問! メロンとみかん……高級な果物はどちらでしょう!?」

勇者「何、その問題……? また、なぞなぞ……?」

女僧侶「はい、なぞなぞです」クスクス

321: 2014/06/22(日) 23:08:10.86 ID:1Ys3QsvkO
勇者「メロンとみかんなら……メロンでしょ? 値段も倍以上違うじゃん?」

女僧侶「はい、正解です! じゃあ、第二問出しますね?」

勇者「うわっ……ひっかけもねぇのかよ、この問題……」

女僧侶「第二問! メロンとみかん……大きさが大きいのはどちらでしょう!?」

勇者「だから……それも、メロンでしょ? メロンみたいな、高級な物にみかんなんかが勝てるわけないよ?」

女僧侶「じゃあ、第三問! ビタミンCが豊富なのはどちらでしょう!?」

勇者「ん……? ビタミンC……?」

女僧侶「はい、ビタミンCです」

勇者「ビタミンCだったら……みかんじゃないの?」

女僧侶「じゃあ、冬にこたつで食べたら、美味しいのはどちらですか?」

勇者「おっ……? なんだなんだ……みかんが逆転してきたぞ……?」

女僧侶「……ねっ?」

勇者「……んっ?」

322: 2014/06/22(日) 23:14:19.90 ID:1Ys3QsvkO
女僧侶「形の違うものを比べる方法なんて、いくらでもありますよ?」

勇者「……」

女僧侶「勇者さんがお姉さんに勝っている所なんて……数えきれない程ありますよ」

勇者「……あるのかねぇ?」

女僧侶「勇者さんだったら……一生懸命な所とか……優しい所とか……」

勇者「……」

女僧侶「自分が苦しい時でも……周りの人を気遣ってあげれる所とか……」

勇者「何か……面と向かって言われると、恥ずかしいもんだね? 女僧侶ちゃん、俺の事、よく見てるんだね?」

女僧侶「はい! 見てますよ!」クスクス

323: 2014/06/22(日) 23:22:41.72 ID:1Ys3QsvkO
勇者「……まっ、それだったら、もう姉ちゃんと張り合うのはいいかな?」

女僧侶「そうですよ」

勇者「え~っと……うわっ! もう三時か!? 天童、怒ってんだろなぁ……」

女僧侶「そうですね? 天童さん、お腹が空くと機嫌悪くなりますから」

勇者「よしっ! んっ……んっ……!」

女僧侶「勇者さん、何してるんですか……?」

勇者「いや……もう姉ちゃんと戦う必要もなさそうだし……ネガティブモードから、切り替えておこうかなって、思ってね?」

女僧侶「そうですね」

勇者「それに、魔物討伐にも行くんだし……こんな腑抜けた顔してたら、またあいつにうるさく言われそうだしさ?」

女僧侶「ふふ」

勇者「カァ~! おめぇ、そんな腑抜けた顔で魔物倒せんのかよ! おめぇのケツ拭くのは、誰だと思ってるんだよぉ!」

女僧侶「あっ、凄い。そっくりです」クスクス

勇者「じゃあ……そろそろ戻ろうか? 迷惑かけてごめんね?」

女僧侶「迷惑なんて、かかってませんよ」

324: 2014/06/22(日) 23:28:08.16 ID:1Ys3QsvkO
ーーーーー


天童「……おめぇはよぉ!? 遅ぇんだよっ! このバカっ!」グゥー

勇者「……はは、悪ぃ悪ぃ」

天童「ランチタイムはとっくに終了してるぜ? どうすんだ? パフェ食うのか? 昼飯はパフェか?」

勇者「……パフェじゃ、腹は膨れんだろ」

天童「じゃあ、どうすんだ!? ティラミスか? それとも、モンブランか?」

勇者「……な、なぁ? 天童?」

天童「……あぁ、どうした? こっちは腹減ってイライラしてんだよ?」

勇者「姉ちゃんと……戦うのは……もう、やめにしねぇ……?」

天童「……命題はどうすんだよ?」

325: 2014/06/22(日) 23:32:37.73 ID:1Ys3QsvkO
勇者「俺にだってさ……? もう、姉ちゃんに勝ってる部分は何処かであると思うんだよ……」

天童「……」

勇者「それを証明する為に、今から戦い挑むよりかはさ……? 今、自分に出来る事をするべきだと思うんだよ」

天童「……」

勇者「おめぇの命題でさ……? 俺、成長してるはずだからさ……? 姉ちゃんにも、もう負けてないはずだからさ……?」

天童「……」

勇者「……今は、この街救う為に、魔物討伐に行くべきでしょ?」

326: 2014/06/22(日) 23:39:47.08 ID:1Ys3QsvkO
天童「……まっ、それだけわかってるんだったら、いいだろ」

勇者「……うん」

天童「もう、ネガティブ人間のおめぇ見るの嫌だからよぉ……? おめぇの信じた道を突き進めや」

勇者「天童……ありがとう……」

天童「でもよ……? 勇者……忘れんなよ……?」

勇者「……えっ?」

天童「例え、おめぇにもう勝ってる部分があるとしても……こうやって、命題が来たって事は、何か意味があるんだよ?」

勇者「……うん」

天童「姉貴との直接対決はもういいよ。違った事で、姉貴を認めさせればいいんだからな?」

勇者「……うん」

天童「だからよぉ? この魔物討伐……おめぇ、気合入れろよ!? 相手は精鋭部隊らしいからよ!?」

勇者「大丈夫……! 俺が今まで学んできた事を……精一杯やってみるよ!」

天童「その顔だったら大丈夫だっ! よしっ、じゃあ飯だっ! とりあえず、飯食いに行くぞっ!」

334: 2014/06/23(月) 21:58:14.98 ID:6LlLb+CrO





PM4:00

タイムリミットまで後、5時間






335: 2014/06/23(月) 22:04:45.33 ID:6LlLb+CrO
天童「ふ~う……食った食った……満腹だぁ……」

勇者「……なぁ? なんで、おめぇさぁ? 鍋焼きうどんとか食うの?」

天童「ランチタイムは終わってたんだから、仕方ねぇじゃねぇか!」

勇者「これから、魔物討伐に行くのにさ? チョイス、おかしくね? なんで、鍋焼きうどんなの?」

天童「そりゃ、俺だってよぉ! バシっと味噌カツ定食で決めたかったよっ! でも、胃もたれが怖かったからよぉ? 鍋焼きうどんにしたんだよっ!」

勇者「まだ、昼じゃねぇかっ! なんで、おめぇはいつもそうやってガッツリ食うんだよっ!」ギャーギャー

天童「食いたいもん食って何が悪ぃんだよ! それに、もう昼じゃねぇよっ!」ギャーギャー


女僧侶「ふふ、いつもの勇者さんに戻ったみたいですね」クスクス

336: 2014/06/23(月) 22:10:39.59 ID:6LlLb+CrO
天童「まっ……じゃあ、そろそろ行きましょうかっ!」

女僧侶「はいっ!」

勇者「……よしっ!」

天童「南の洞窟の入り口は、ここから一時間か、二時間ぐらい歩いた所にあるらしいです。 少し、距離がありますが、頑張りましょうっ!」

女僧侶「一時間か……二時間……?」

勇者「おめぇ、ちょっとよぉ? 曖昧すぎねぇか? 距離感が全く、わかんねぇんだけど……?」

天童「ノンノンノ~ン、勇者君……この天童様の情報網を甘く見てはいけませぇ~ん……」

女僧侶「?」

勇者「……どういう事?」

337: 2014/06/23(月) 22:19:50.78 ID:6LlLb+CrO
天童「洞窟までは一時間ぐらいで着くよ? だけどよぉ? 相手は精鋭部隊だろ?」

勇者「うん」

天童「そんな所によぉ? 正面から飛び込むなんて、危ねぇだろ? だから、なんかいい作戦はねぇかって、考えてみたんだよ」

勇者「ほぅほぅ……」

天童「それでよぉ? 街の人達に情報を聞いて回ったら、そこからさらに一時間ぐらい歩いた所によぉ?」

勇者「うんうん……」

天童「一部の地元民ぐらいしかわからねぇような、洞窟に繋がってる抜け穴みたいなのがあるんだってよ?」

勇者「……抜け穴?」

天童「あぁ……裏口みてぇなもんだな? そこから、行けばよぉ? 奇襲ぐらいは出来るんじゃねぇか?」

勇者「なるほど……奇襲か……」

338: 2014/06/23(月) 22:30:05.63 ID:6LlLb+CrO
天童「まっ、俺もおめぇらのわからねぇ所で、色々動いてたんだよ! ちょっとぐらい褒めてくれよな? なっ?」

勇者「お、おう……いい情報を聞いたよ……」

天童「まっ、どうするかは、近くまで行ってから考えてみようぜ?」

勇者「そうだね、洞窟の様子見てから決めようか?」

天童「……よしっ! じゃあ、勇者君、出発の号令を!」

勇者「……はぁ?」

天童「何、マヌケ面してんだよ? おめぇが指揮をとるんだろがっ! ビシッと決めやがれっ! バカっ!」


勇者「え~っと……じゃあ、今から魔物討伐に向かいますっ! 皆さん、準備はいいですか!? ……って、感じ?」

女僧侶「はいっ! 準備オッケーですっ!」

天童「……まっ、ギリギリ合格点って所だなっ! 俺も準備オッケーだっ!」

勇者「よしっ! じゃあ、出発するよ!」

339: 2014/06/23(月) 22:32:45.78 ID:6LlLb+CrO





PM5:00

タイムリミットまで、後4時間






340: 2014/06/23(月) 22:38:21.11 ID:6LlLb+CrO
勇者「洞窟の前までついたけどさぁ……これ……」コソコソ

女僧侶「……沢山いますね。精鋭部隊」コソコソ

天童「27……28……おい、何人いるんだよ、アレ! ウォーリーを探せしてるんじゃねぇんだぞ! こっちはよぉ!」


魔物「……ん? 何か、声がしたような?」


勇者「……バカっ! 大声出すなよ! おめぇっ!」

天童「す、すまんっ……!」

女僧侶「にゃ~ごぉ……にゃぁ~ごぉ……」


魔物「……猫かな?」

341: 2014/06/23(月) 22:52:08.93 ID:6LlLb+CrO
天童「おい、勇者……? これ、正面突破はいくらなんでも無茶だぜ? 時間はかかっちまうけど、抜け穴使おうぜ?」ヒソヒソ

勇者「いや……天童、でもさぁ……?」ヒソヒソ

天童「……なんだよ、おめぇ? ま~た、ネガティブ発言か?」

勇者「いやいや、違う違う……! 抜け穴使ってもさぁ? 結局、あいつらが戻ってきたら、袋の鼠じゃん?」

天童「まぁ、そうだけどよぉ……? 奇襲ぐらいはできるんじゃねぇか……?」

勇者「だからさ……? おめぇと女僧侶ちゃんで、抜け穴使って、奇襲かけてくれよ?」

天童「……おめぇはどうすんだよ?」

勇者「……俺は正面突破してみるよ」

天童「……」

勇者「俺が正面突破して、あいつらが慌ててる時に、天童達が奇襲をかけたら、あいつらは更に混乱するだろ?」

天童「……そんな危ねぇ事、おめぇに出来るのかよ」

勇者「俺は、偉大な父さんの息子の勇者なんだから……一番危険な事をしなきゃダメだよ?」

342: 2014/06/23(月) 22:58:26.86 ID:6LlLb+CrO
天童「……おめぇは、知らねぇ間に無茶するようになったんだな?」

勇者「……俺も成長したかな?」

天童「成長はしてるけどよぉ……? おめぇ、まだ姉貴と張り合ってんのか?」

勇者「はは……姉ちゃんとは、もう張り合ってなんかないよ? まぁ、一応作戦もあるしね?」

天童「……作戦?」

勇者「今日一日でわかったんだよ……ダメ人間にはダメ人間なりのやり方があるってね……?」

天童「……はぁ?」

勇者「まっ、見ててよ? 一人でなんとかやってみるからさ?」

天童「……お、おいっ!」

343: 2014/06/23(月) 23:04:18.91 ID:6LlLb+CrO
魔物「……ん? 何だあいつ?」

魔物「……どうした?」

勇者「う、うわっ……! 魔物だっ!」アセアセ

魔物「……ガキじゃねぇか?」

魔物「……どうする? 頃すか?」

勇者「逃げなきゃ……殺される……う、うわああぁぁっ!」

魔物「ハハっ! なんだ、あいつ?」

魔物「あっ、こけやがったぞ?」

勇者「うわああぁぁぁ……! くるなくるなっ……!」

魔物「惨めなガキだねぇ? 何だアイツ?」ゲラゲラ

魔物「おいっ! 俺にやらせてくれよ? 俺、あんなガキ追い回すの好きなんだよ!?」

344: 2014/06/23(月) 23:09:56.00 ID:6LlLb+CrO
勇者「うわああぁぁぁっ!」

魔物「おいおい、どうした? 俺、な~んにもしてないぞ? 何、ビビってんだよぉ!?」ゲラゲラ

勇者「近づくなっ! 近づいたら、斬るぞっ!? 嘘じゃないからなっ! 本当に斬るぞっ!?」

魔物「やってみろよおい。 おめぇみてぇな奴なんて……」

勇者「うわああぁぁぁっ!」

魔物「えっ……? 早……」


ズバッ


魔物「……ググッ」バタッ

勇者「はぁっ……はぁっ……」

345: 2014/06/23(月) 23:16:52.72 ID:6LlLb+CrO
魔物「お、おい……どうなってんだこりゃ……」

勇者「だ、だから言っただろっ! 近づいたら、斬るって!」ビクビク

魔物「このガキ……」

勇者「動くなっ! 動いた奴は斬るぞ!? こいつにみたいに氏にたいのかっ!?」

魔物「……おめぇ、あまり舐めてるとよぉ?」ジリッ

勇者「あっ! お前、動いたなっ!? 今、動いただろっ!? 確か動いたよなっ!?」

魔物「……えっ?」

勇者「くそっ! 俺を頃す気なんだなっ! お前、俺を頃す気なんだろっ!?」

魔物「お、おい……坊主っ……? 落ち着けって……」アセアセ

勇者「くそぉ! やられる前にやってやるよっ! くそぉっ! くそぉっ! うわあぁっ!」

魔物「ちょっと待て……! 早っ……!」


バタッ


魔物「……ググッ」バタッ

346: 2014/06/23(月) 23:22:44.73 ID:6LlLb+CrO
「な、なんだコイツ……!?」

「このガキ……強ぇぞっ……!?」

「動くなって、言ってんだろがぁっ! 何で、皆俺の言うこと聞いてくれないんだよぉっ!」

「わ、わかったよ……」

「いいから、坊主……落ち着け……なっ? 落ち着け……?」

「あっ! お前、今動いたなっ!? お前も俺を殺そうとしてるんだろっ!?」

「おい、バカっ! 刺激するなって!」

「ちょっと、待て……? 俺、動いてねぇぞ……動いてねぇってばっ……!」

「問答無用っ! うわぁぁぁっ!」

「早っ……! うわああぁぁぁっ!」


天童「……」

女僧侶「天童さん……? あれ、なんですかねぇ……?」

347: 2014/06/23(月) 23:34:27.25 ID:6LlLb+CrO
天童「……ありゃ、『引き篭もりの振りして相手を油断させよう大作戦』だな」

女僧侶「あっ……だから、勇者さん、あんな感じで戦ってるんですね……?」

天童「しかし、いくらなんでもよぉ? あ~んな、エキセントリックなガキはいねぇんじゃねぇかな?」

女僧侶「……ちょっと、やりすぎだと思いますよね?」

天童「あんなのが存在するならよぉ? 大阪は街中で『かめはめ波』とか『たこ焼きボンバー』なんて、怒号が飛び交う街って事になるぜ?」

女僧侶「……あっ、そうだ! じっくり見ている場合なんかじゃありませんよ!」

天童「そうだね、あいつも頑張ってるみたいだし、俺達も期待に応えないとね……しかし、もうちょっと格好いい作戦はなかったのかね? あいつは……」テクテク

女僧侶「まぁまぁ、お姉さんの事、吹っ切ったみたいですし……いいじゃないですか」テクテク


「お前っ! この野郎っ! 俺の事『童O』ってバカにしやがったなぁ!?」

「おい、待て! 言ってねぇよっ! そんな事、言ってねぇってばっ!」

「問答無用っ! うわああぁっ!」

348: 2014/06/23(月) 23:38:00.53 ID:6LlLb+CrO





PM6:00

タイムリミットまで後、3時間






349: 2014/06/23(月) 23:45:28.46 ID:6LlLb+CrO
天童「抜け穴……抜け穴……何処だ、何処だっ……!」

女僧侶「天童さんっ……! 早く奇襲かけないと、勇者さんも持ちませんよ……」

天童「あぁ……いくらなんでも、ガキ一人にバタバタと倒されてたら、あいつらだって、あいつの本当の姿に気づくだろ……」

女僧侶「え~っと……抜け穴、抜け穴……」

天童「あれっ? でも、それっていい事なんじゃねぇの? だって、あいつは真人間になる為に頑張ってるんだからなぁ……?」

女僧侶「え~っと……え~っと……」

天童「やっぱり、いくら魔物だからって……相手の事、誤解したままってのは、よくない事かもしれねぇしなぁ……?」

女僧侶「ちょっとっ……! 天童さんっ! 何、してるんですか!?」

天童「あっ、すんましぇ~ん……抜け穴探しま~す……」

350: 2014/06/23(月) 23:51:27.61 ID:6LlLb+CrO
女僧侶「あっ! 天童さんっ!?」

天童「どうした、女僧侶ちゃんっ!?」

女僧侶「……この穴じゃないですか?」

天童「おぉっ! これだよ、これっ! よしっ! 俺達も突入するぞっ!」

女僧侶「はいっ!」

天童「よっしゃっ! 勇者、待ってろよっ! 俺達も、奇襲成功させて、おめぇの指揮能力、証明してやるからよぉ!」モゾモゾ

女僧侶「天童さんっ……! 早く、早くっ……!」モゾモゾ

351: 2014/06/23(月) 23:57:23.53 ID:6LlLb+CrO
魔物「おいっ! 何、こんなガキに手こずってるんだよっ!?」

魔物「いやっ……! でも、こいつ……!」アセアセ

勇者「あっ! お前……動いたな!?」

魔物「おいっ……!? 来るぞっ……!?」

魔物「いやっ……! 動いてないっ! 動いてないってばっ……!」アセアセ

勇者「問答無用っ! うわああぁぁぁっ!」

魔物「いや……だから、俺……動いて……」


ズバッ


魔物「……ググッ」バタッ

勇者「来るなぁ……来るなよ、お前達……」

魔物「……ったく、ガキ一人に何人やられてるんだよ? 信じられねぇ」

勇者「……」

352: 2014/06/24(火) 00:03:52.87 ID:2Ixh4I6SO
魔物「もういいっ! 一斉にかかるぞっ! 奥から、援軍も要請しろっ!」

勇者「……くっ!」

魔物「ガキだからって、甘くみるんじゃねぇぞ!? こいつに何人やられたと思ってるんだ!?」

勇者「来るなっ……! 来るなっ……!」

魔物「おい、坊主……? ちょっと、大人を舐めすぎたみてぇだな? 今から、大人の怖さを教えてやるからよ……?」

勇者(くそっ……! そろそろ限界かな……?)

魔物「よしっ、皆っ! 一斉にいくぞっ! うおおおおっ!」

勇者「!」

353: 2014/06/24(火) 00:11:08.51 ID:2Ixh4I6SO
スカッ


魔物「……何で、外れるんだよ? 俺は本気いったハズだぞ?」

勇者「……」

魔物「……お前っ!」ギリッ

勇者「……」

魔物「お前……ただのガキじゃねぇなっ!? 何者だっ!?」

勇者「……勇者」

魔物「……何?」

勇者「俺は……偉大なる父、勇者の息子……勇者だっ!」

魔物「勇者に息子がいただと……? どういう事だっ……? 我々の情報では、娘だったはずなのにっ……!?」

勇者「遊びは終わりだっ! 本気でいくぞっ!」

魔物「くそっ! だから、こんなに強ぇのか! おいっ! 精鋭部隊はどうしたっ!?」

勇者「うおおぉぉっ!」

魔物「それから、魔王様に報告だっ! 勇者に息子がいたと伝えるんだっ! わかったなっ!」

354: 2014/06/24(火) 00:16:57.61 ID:2Ixh4I6SO
ーーーーー


魔物「なんかよぉ? 入り口で、えらく強い引き篭もりが暴れてるんだってよ? 援軍要請出てるぞ?」

魔物「……引き篭もり? なんだ、そりゃ?」

魔物「いや、わかんねぇけどよぉ……? とにかく行って……ん……?」

魔物「……どうした?」


女僧侶「たあぁっ!」ガシッ

天童「ほ~れっ! どっこいしょ~っ!」ガスッ


魔物「……ググッ」

魔物「……ガガッ」


女僧侶「よしっ! 潜入成功ですねっ!」

天童「後は、勇者を信じて暴れまわるだけだっ! 女僧侶ちゃん、気合い入れんしゃいよっ!」


「敵襲~! 敵襲~! 侵入者だぁ~っ!」

355: 2014/06/24(火) 00:25:27.31 ID:2Ixh4I6SO
勇者「入り口の見張りは……お前で最後だ……」グサッ

魔物「……ガッ」

勇者「よしっ……後は、二人と合流して……」

魔物「ガガッ……流石……勇者の息子だ……その力……本物だな……」

勇者「……」

魔物「一つ……聞きたい……」

勇者「……?」

魔物「それほどの……力があるのに……何故、あのような情けない真似が出来た……?」

勇者「……」

魔物「それ程……澄んだ瞳をしているのに……何故、あのような氏んだ魚のような瞳をして……みっともない真似ができた……?」

勇者「……」

魔物「お前の真の姿は……澄んだ瞳をしている……その姿だろう……?」

勇者「……そんな事ないよ。 あれはどっちも俺だよ」

魔物「……どういう事だ?」

356: 2014/06/24(火) 00:44:51.99 ID:2Ixh4I6SO
勇者「俺は……変わったんだよ……」

魔物「……」

勇者「自分に、足りない所を補ってくれる仲間がいて……変われたんだ……」

魔物「……」

勇者「最初は……氏んだ魚の目だっよ? でも、皆が背中を押してくれて、ちょっとずつ変わっていったんだ」

魔物「……」

勇者「だから……あれはどっちも、俺。……あんたもさぁ?」

魔物「?」

勇者「人間襲って、悪い事をした事を、今からでも反省すれば……神様は来世に、変われるチャンスくれると思うよ?」

魔物「ふはは……我が忠誠を誓うのは……神ではなく……魔王だ……今更遅いわ……」

勇者「大丈夫だって……神様は優しいからさ……?」

魔物「……」

勇者「魔物にもあんたみたいな人がいるんだね? じゃあ、俺……行くわ……」ダッ


魔物(あれが……勇者か……自分を殺そうとしていた相手に……優しさを見せれるとは……)

魔物(ふふふ……ははは……だから人間はバカなのだっ……! だからこそ、支配されるだけの生き物なのだっ……!)

魔物(……だが、次は私をバカにしてみてくれ。 あんたがまだ滅んでいないのならな)

357: 2014/06/24(火) 00:46:13.35 ID:2Ixh4I6SO
今日はここまで

362: 2014/06/24(火) 22:15:41.03 ID:2Ixh4I6SO
ーーーーー


「おいっ! 敵襲だっ! 侵入がいるらしいぞっ!」

「あぁ、俺達も早く向かおうっ! 行くぞっ!」

「あっ、待てっ! そっちじゃねぇよっ! 入り口の方からも来てんだよっ!」

「おいおい、どうなってんだ!? そっちは何人来てるんだ!?」

「……一人だ」

「あぁ? 一人だったら、見張りの連中に任せておけばいいじゃねぇかっ! 先にやるのは中にいる二人だよ! バカっ!」

「待て待て待てっ……! 入り口から来てんのはよぉ? 勇者の息子らしんだよっ! あっちだって、手ぇつけられねぇみてぇだぞ!?」

「勇者の息子……? な、なんでそんな奴が来てんだよ……!? おい、どうなってんだっ!」


勇者「……」ダッ


「おいっ! ここまで、入り込まれちまってるぞっ!? あいつだ! あのガキが勇者だっ!」

「おいおい、ちょっと待てっ……! 中の二人はどうすんだ!? やべぇぞ、おいっ!」

363: 2014/06/24(火) 22:22:04.87 ID:2Ixh4I6SO
勇者「……邪魔っ!」ズサッ

魔物「……ガッ!」

勇者「お前も、どけっ!」ザシュッ

魔物「……グッ!」

勇者「よしっ……! 後は二人と合流して……」


魔物「おいおいっ! どうなってんだっ! こいつはよぉ!?」

勇者「……」キョロキョロ

魔物「おいっ! このガキ強いぞっ! 援軍を回せっ! こっちに援軍を回すんだっ!」

勇者「3……4……5人か……?」

魔物「おいっ! 聞こえてんのかっ!? 早く援軍をよこせって言ってるんだよっ!」

364: 2014/06/24(火) 22:30:11.37 ID:2Ixh4I6SO
勇者「……行くぞっ!」ダッ

魔物「来たぞっ! 構えろっ! お前ら、ここで食い止めるんだっ!」

勇者「うおおぉぉっ……! 一つ……!」ザシュ

魔物「な、何っ……!?」

勇者「おおぉぉっ……! 二つ……!」ズサッ

魔物「な、なんだアイツ……ダメだ! たった5人じゃ勝てるわけねぇっ……!」

勇者「うおおぉぉっ! 三つ……! 四つ……!」ズシャッ

魔物「お、おいっ……! 援軍はどうなってる!? おいっ! 誰か聞いてんのかよぉっ!?」

勇者「……お前で」

魔物「!」

勇者「……最後だっ!」

魔物「ガ、ガガッ……」バタッ


勇者「よしっ……! 上手い具合に敵は混乱しているみたいだな……後は、二人と合流するだけだ……!」

365: 2014/06/24(火) 22:36:10.37 ID:2Ixh4I6SO
ーーーーー


女僧侶「たぁっ!」ガスッ

魔物「……ガッ!」

天童「ほれ、どっこいしょっ!」バキッ


魔物「くそっ……! なんだ、あいつら……何処から侵入しやがったんだ……」


女僧侶「たぁっ! はぁっ! せいっ!」

天童「おらおらっ! ほれほれぃ! ほ~らっ、どっこいしょ~っとっ!」


魔物「おいっ、お前ら落ち着けっ! 相手はたったの二人だろがっ!」

366: 2014/06/24(火) 22:45:14.63 ID:2Ixh4I6SO
「隙ありだっ! くらえっ!」

女僧侶「!」

天童「女の子苛めてんじゃねぇよぉ! この助平野郎がよぉっ!」バキッ

「……ガガッ」

女僧侶「……天童さんっ! 助かりましたっ!」

天童「なぁ~に、気にする事ねぇばいっ! 女僧侶ちゃんに何かあったら、アイツに怒られんのは……」


「おっさん、背中がガラ空きだっ! くらえぇぇっ!」

天童「なっ……! しまっ……」

「……ガッ」バタッ

女僧侶「……甘いです」

天童「お、おぉっ……! 悪ィな、女僧侶ちゃん……ちょっと、油断しちまったぜ……」アセアセ

女僧侶「ふふ、これでおあいこですね?」


魔物「おいおい、相手はたった二人だぞ? それに、援軍はどうなってんだよぉっ! いつまでたっても、こねぇじゃねぇか!」

367: 2014/06/24(火) 22:51:40.45 ID:2Ixh4I6SO
魔物「くそっ……こうなりゃ、アレを使うぞっ! まだ、不完全だが仕方ねぇっ!」ダッ


女僧侶「天童さんっ……! 一人逃げますよっ……!」

天童「放っておけっ! 女僧侶ちゃんっ!」

女僧侶「……えっ?」

天童「こいつらが、混乱を立て直したらよぉ……? 不利になるのは、数で劣ってるこっちなんだからよぉ……?」

女僧侶「……は、はいっ!」

天童「今はっ……! 一つでも多く、敵の数を減らす事に集中しましょうっ! ほれ、どっこいしょ~!」

女僧侶「はいっ……! わかりましたっ……!」

368: 2014/06/24(火) 22:54:31.85 ID:2Ixh4I6SO





PM7:00

タイムリミットまで後、2時間





369: 2014/06/24(火) 23:01:07.76 ID:2Ixh4I6SO
女僧侶「はぁっ……はぁっ……」

天童「くそっ……ゴキブリみてぇにぞろぞろ湧いてきやがってよぉ……」


「囲めっ! こいつらを包囲しろっ!」

「相手は二人だが、油断するなよっ! 連携さえとれれば、数で優っている我々の方が有利だっ!」


女僧侶「……くっ!」

天童「くそっ……! こういった、冷静な奴が一番やっかいなんだよ……」


「相手は、僧侶とただのおっさんだっ! 落ち着いてかかれば、我々の敵ではないっ! いくぞっ!」

「うおおぉっ! 人間よ、氏ねえぇっ!」


ザシュッ

370: 2014/06/24(火) 23:12:49.08 ID:2Ixh4I6SO
「……ガッ」

「……グッ」

「……グガガ」


勇者「遅くなってごめんっ!」

女僧侶「勇者さんっ!」

天童「遅ぇよ、おめぇはよぉ!? 間一髪だったじゃねぇか、バカっ!」

勇者「ま、まぁ……間に合ったから、いいじゃん……?」アセアセ

女僧侶「勇者さんの作戦、上手くいきましたねっ!」

天童「半分ぐらいは倒せたんじゃねぇか? でもよぉ? そろそろ敵も落ちついて来てるぜ?」

勇者「もう、騙し打ちは通用しないけど……大丈夫っ! 皆がいるんだからっ!」

女僧侶「そうですね」ニコッ

天童「よっしゃ! じゃあ、勇者御一行様の力を見せるとしましょうかっ!」

勇者「よしっ……! じゃあ、みんなっ! 力を合わせて、後半分……頑張ろうっ!」

女僧侶「はいっ!」

天童「任せときんしゃいっ!」

371: 2014/06/24(火) 23:18:17.83 ID:2Ixh4I6SO
勇者「はぁっ!」ザシュッ

魔物「……くそっ! どうなってんだっ! 相手はたった、三人だぞっ!?」

女僧侶「はぁっ!」ガシッ

魔物「あの女も、動きがよくなってやがる……さっきは、もうバテてたじゃねぇか……」

天童「ほれっ! どっこいしょ~!」バキッ

魔物「く、くそっ……こ、これが……これが勇者の力なのかっ……!」

勇者「……」ギリッ

魔物「なっ……! こいつ……いつの間に……!?」

勇者「うらああぁぁっ!」


ザシュッ


魔物「……ガガッ」

372: 2014/06/24(火) 23:24:54.20 ID:2Ixh4I6SO
ーーーーー


魔物「……まだかっ! 準備はまだ出来んのかっ!」イライラ

「後、二時間っ……! 後、二時間お待ち下さいっ……!」

魔物「……貴様、一時間前にも同じ事を言っておったぞ?」

「も、申し訳ございませんっ……! 八割型は完成しておりますのでっ……!」

魔物「それだけ出来ていれば十分だっ! 起動させろっ!」

「お待ち下さいっ……! まだ、防御性能が不完全なのですっ……! このままでは……」

魔物「黙れっ! あの三人に何人やられたと思っているんだっ! これ以上、被害を拡大させるなっ! 起動させろっ!」

「わ、わかりましたっ……!」

374: 2014/06/24(火) 23:33:41.55 ID:2Ixh4I6SO
ーーーーー


魔物「……ガッ」

魔物「……ググッ」

魔物「……グガガ」


勇者「よ、よしっ……!」

女僧侶「これで……全部、倒しましたかね……?」

天童「……油断するんじゃねぇぞ? まだ、隠れてる奴がいるかもしれねぇからよぉ?」

勇者「よし……じゃあ、後は残党を探し出して……」

女僧侶「そういえば……さっき、逃げ出した魔物が……あちらの方に行きましたよ?」

天童「あっ、そういや、いたねぇ……そんな奴……」

勇者「じゃあ……あっちの方にいるのかな……? ん……?」

375: 2014/06/24(火) 23:38:51.31 ID:2Ixh4I6SO
女僧侶「……どうしました、勇者さん?」

勇者「……何か、音が聞こえる」

天童「……音?」


シュゴォォォォッ


女僧侶「な、なんの音でしょう、コレ……?」

勇者「……何か、嫌な予感がする」

天童「おめぇはよぉ? こんな時にも、ネガティブ人間なのか? おい?」


ミサイル「……」シュゴォォォォッ


女僧侶「あっ……! 勇者さんっ! あれっ!?」

勇者「!」

天童「お、おいっ! なんだ、ありゃ!? やべぇぞ、逃げろっ!」

376: 2014/06/24(火) 23:49:01.17 ID:2Ixh4I6SO
ドゴォォォッ


天童「う、うおおっ……!」

女僧侶「……くっ!」

勇者「……ぐっ! 皆、大丈夫かっ!?」


「……チッ、外したか」


天童「……おいおい、なんだありゃ?」

女僧侶「大きな……ロボット……?」

勇者「お前ら……ここで、そんな物を作っていたのか……?」


機械兵「これが……我が魔王軍の精鋭部隊による……人間界支配への秘密兵器……」

勇者「……」

機械兵「起動戦士『ガムダム』であるっ!」

天童「……なんかよぉ? そんなアニメなかったか? 俺、聞いた事あるような気がするなぁ!」

378: 2014/06/24(火) 23:56:46.89 ID:2Ixh4I6SO
機械兵「……フン、バカにしてられるのも、今のうちだけだ」ギュイーン

天童「おいおい……不細工なロボットで、こっち見るんじゃねぇよ? 降りて戦え! 降りてよぉ!」

機械兵「……氏ね」

天童「……んっ?」

勇者「……天童っ! 危ねぇっ!」


ズガガガガガッ


勇者「……ぐっ!」

天童「う、うおっ! なんだ、あいつ!? 顔から、マシンガン撃ってきやがったっ!」

機械兵「ほ~う……攻撃性能は……申し分なさそうだな……?」

379: 2014/06/25(水) 00:03:49.80 ID:3BHnfNPTO
勇者「……天童、大丈夫だったかっ!?」

天童「お、おぉっ……おめぇのおかげで助かったけどよぉ……?」アセアセ

機械兵「……ロックオン」

勇者「お、おいっ……! 天童、やべぇぞっ……! 狙われてるぞっ!」

天童「やべぇっ! 勇者っ! 走れっ!」

機械兵「……氏ね」ズガガガガガガッ

勇者「うおおぉっ! 走れっ! 走るんだ、天童っ!」

天童「わ~ってるよ! あいつ、絶対出る物語、間違ってるってっ! ロボットは反則だよ、ロボットはっ!」

機械兵「はははっ! 手間隙かけて、金や支援物資を奪い取ったかいがあるな! いいできじゃないかぁ、この機械兵はっ!」

380: 2014/06/25(水) 00:11:36.38 ID:3BHnfNPTO
機械兵「はははっ! 逃げろ逃げろっ! 虫けらどもっ!」ズガガガガガガッ

勇者「う、うおおっ! おいっ……! 天童、やべぇぞコレ……!」

天童「……とにかくよぉ? 逃げ回りながら、あのロボットをぶち壊すしかねぇだろ?」

機械兵「ほらほら、どうした!? 査っきまでの威勢は何処にいったんだっ!」

勇者「あんな、でけぇロボット……どうやって、倒すんだよぉ!?」

天童「とにかくよぉ? 懐に潜り込むだ、懐によぉ!? あれだけ、でかいんだから、懐に潜り込んだら、なんとかなるだろ!?」

機械兵「……ほ~う」

勇者「わ、わかったっ……! よし、行くぞっ……!」

386: 2014/06/25(水) 21:07:00.74 ID:8iwtk221O
機械兵「ほ~う……臆せず、向かってるとはな……? 流石、勇者といったところじゃないか……」

勇者「うおおぉぉっ! くらえぇぇっ!」ブンッ

機械兵「だが、しかしっ……!」キンッ

勇者「何っ……!? 弾かれた……!?」

機械兵「この機械兵の装甲を甘く見すぎたようだな!? そしてっ……!」ブンッ

勇者「何っ……!? こいつ……早いっ……!」

機械兵「バカめっ! この機械兵の動きを甘く見たなっ!? おらああぁぁ!」

勇者「……ぐがっ」

387: 2014/06/25(水) 21:12:21.00 ID:8iwtk221O
機械兵「……ロックオン」ギュイーン

勇者「……ぐぐっ」

天童「おいおいっ! やべぇぞ勇者! 狙われてるぞっ!」

機械兵「……氏ね」

勇者「!」


ズガガガガガガッ


女僧侶「危ないっ! 勇者さんっ!」ダッ

勇者「うっ……おおっ……!」

女僧侶「きゃあああっ!」

勇者「……女僧侶ちゃんっ!?」

388: 2014/06/25(水) 21:18:28.73 ID:8iwtk221O
女僧侶「あっ……あああっ……」

勇者「女僧侶ちゃんっ……! 大丈夫っ……!?」

女僧侶「足を……撃たれました……」


機械兵「……チッ、鼠のような奴らだな。だが、これで終わりだっ!」キュイーン

天童「おい、勇者ァっ! 女僧侶ちゃんを抱えて逃げろっ! 狙われてんぞっ!」

機械兵「……氏ね」


ズガガガガガガッ


勇者「う、うおっ……! おおっ……!」

女僧侶「……勇者さんっ!」

389: 2014/06/25(水) 21:24:46.89 ID:8iwtk221O
天童「くそっ……! なんなんだよ、こいつはよぉ! とにかく、動きをとめねぇと……」

機械兵「……ん?」

天童「おらっ! おらおらっ! 天童100連打だおらっ!」ガシガシ

機械兵「なんだ……防御性能は完全ではないか……全く効いていないぞ」

天童「14……! 15っ……! あ~、疲れた……16っと……!」ガシガシ

機械兵「邪魔だぞっ! 虫ケラがぁっ!」

天童「おいっ、待てよっ! まだ、100発打って……」

機械兵「……ふんっ!」ガスッ

天童「!」

390: 2014/06/25(水) 21:32:00.15 ID:8iwtk221O
勇者「天童っ! しっかりしろっ!」

天童「……うっ、くそっ!」

機械兵「ははは! どうした虫ケラ共っ! さっきまでの威勢は何処にいったんだ! ふははははっ!」


勇者「くそっ……あんな装甲のヤツ……どうやって、戦えばいいんだよ……」アセアセ

女僧侶「……ううぅ」

勇者「攻撃しても、弾かれるし……何か違う方法を考えないと……」

女僧侶「うっ……私……だって……」プルプル


機械兵「よし、 とどめだっ! くらえっ! 動けないお前達を蜂の巣にしてやるっ!」

391: 2014/06/25(水) 21:37:53.01 ID:8iwtk221O
勇者「や、やばいっ……!」

天童「くそっ……!」


機械兵「……」


勇者「……あ、あれっ?」

天童「……どうしたんだ? あいつ、動かねぇぞ?」


機械兵「……どうした? プログラムミスでも、起きたのか?」


女僧侶「……はぁっ、はぁっ」プルプル

機械兵「違うっ……! これは術だっ! この機械兵に何者かが、動きを封じる術をかけているのだな!?」

女僧侶「ぐっ……! 私だって……勇者さんに負けないように、成長しているんですっ……! 回復魔法だけじゃありませんよ……」

392: 2014/06/25(水) 21:43:00.06 ID:8iwtk221O
機械兵「……そうかっ! 防御性能が不十分とは、この事だったのかっ!」

女僧侶「はぁっ……はぁっ……!」プルプル

機械兵「魔法攻撃に対する耐性が不十分だったのかっ……! くそっ……! 動けっ……! 動くんだっ……!」


天童「女僧侶ちゃんっ……! 凄ぇじゃねぇかっ!」

勇者「あいつの動きが止まっている今がチャンスだっ!」

天童「よし、勇者っ! あのロボット、魔法には弱ぇみてぇだからよぉ? 魔法でぶっ壊すぞっ!」

勇者「……あれ?」

393: 2014/06/25(水) 21:48:12.74 ID:8iwtk221O
天童「おい、勇者! 何、ぼけっとしてんだよっ! とっとと魔法攻撃でぶち壊しちまえっ!」

勇者「……な、なぁ? 天童?」

天童「なんだよ!? 早くやれよ、早くっ! 蜂の巣になりてぇのか、おめぇはよぉ!」

勇者「俺さぁ……? この、旅で色々学んでさぁ……? 成長したし……いっぱい、魔法も覚えたけどさぁ……?」

天童「だから、その覚えた魔法でなんとかしろって言ってんだよっ!」

勇者「……攻撃魔法、覚えてねぇんだよ! ど、どうしよう?」アセアセ

天童「……あぁ?」

394: 2014/06/25(水) 21:54:22.51 ID:8iwtk221O
勇者「いや……一応、使えるのはあるんだけどね……ほら『メラ』……」

天童「……改造ライターの方が火力あるんじゃねぇの? それ」

勇者「後はさぁ……? 補助魔法ばかりでさ……? ど、どうしよう……」アセアセ

天童「……なんかよぉ? 機転効かせて、やってみろよ!? 何かあるだろ、何かがよぉ!?」

勇者「え~っと……え~っと……それじゃあ……」


女僧侶「……勇者さん」

勇者「……ん?」

女僧侶「お姉さんに……助けを求めませんか……?」

395: 2014/06/25(水) 22:03:26.99 ID:8iwtk221O
勇者「……えっ?」

女僧侶「お姉さんは……攻撃魔法……使えますよね……?」

勇者「う、うん……姉ちゃんは……俺と違って、優秀だからさ……? 攻撃魔法、使えると思う……」

女僧侶「だったら……私が動きを止めているんで……お姉さんを呼んできていただけませんか……?」

勇者「えっ……? で、でも……」

女僧侶「私も……いつまでこのロボットの動きを封じていられるかわかりません……」プルプル

勇者「……」

女僧侶「ですから……お願いしますっ……! 勇者さん、たった一人の姉弟なんですよね? 手を取り合って下さいよっ!」

勇者「……」

396: 2014/06/25(水) 22:12:28.44 ID:8iwtk221O
勇者「……女僧侶ちゃん、ごめんね?」

女僧侶「はぁっ……はぁっ……」

勇者「俺が姉ちゃんから、逃げてさぁ……? ちゃんと向き合わなかったせいで……こんなに、辛い思いをさせて……」

女僧侶「……いえ」

勇者「姉ちゃんと協力してれば……こんな事にならなかったのに……」

女僧侶「……気にしないで下さい」

勇者「今から……姉ちゃんと向き合って……成長した俺の姿見せて……」

女僧侶「……」

勇者「……戦ってくるよ」

女僧侶「……はい」

勇者「必ず……姉ちゃんを連れてくるから……それまで、頑張ってね……!」

女僧侶「はい……勇者さんの事……信じてます……」

勇者「よし、天童っ! 一度戻るぞっ! 『リレミト』」ヒュンッ


機械兵「くそっ……! 逃げられたかっ! 勇者のくせに……仲間を見捨てて逃げるとはなっ!」

女僧侶(勇者さん……負けないで下さいっ……!)

397: 2014/06/25(水) 22:13:48.79 ID:8iwtk221O





PM8:00

タイムリミットまで後、1時間






398: 2014/06/25(水) 22:24:13.10 ID:rY2T0x7qO
勇者「姉ちゃん……姉ちゃんっ……!」

女勇者「ちょっとっ……! あんた、どうしてそんなにボロボロなのよ? 血まで出てるじゃないっ!」

勇者「それどころじゃねぇんだよっ! 大変なんだよっ!」

女勇者「あんたは、怪我ぐらいで騒ぎすぎなの……本当、手のかかる子……手当てするから座りなさいよ」

勇者「俺の手当てなんかいいよっ! それより、女僧侶ちゃん手当てしに行ってくれよっ! 足、撃たれてんだよっ!」

女勇者「……はぁ?」

勇者「魔物討伐に行った洞窟にさぁ? とんでもないロボットがいて……俺達じゃ手も足も出ないんだよっ!」

女勇者「あんた達……勝手に洞窟行ったの……!?」

勇者「なぁ、姉ちゃんっ! 頼むよ! 助けてくれよっ!」

399: 2014/06/25(水) 22:37:55.96 ID:04q957TeO
女勇者「バカっ! なんで、あんたはそうやって、いつもいつも勝手な事ばかりするのっ!」

勇者「!」ビクッ

女勇者「あぁ……もう、最悪……精鋭部隊を短時間の無傷で討伐したら……名声も得られるのに……」

勇者「……」

女勇者「そしたら、これからの討伐報酬だって釣り上げられるのに……」

勇者「……」

女勇者「ねぇ? あんた、どうして私の邪魔ばかりするの?」

勇者「……」

女勇者「あんたはね? 引き篭もりのクズでわからないと思うけど、私は一つ一つ、成功の為の階段登ってさ?」

勇者「……」

女勇者「そうやって、父さんの名を汚さないように頑張ってるの! なんで、あんたは邪魔ばかりするの!? ねぇ!?」

勇者「俺だってよぉっ!」

女勇者「!」ビクッ

勇者「一歩ずつ、ダメ人間から成長する為の階段登ってきてるんだよぉっ! なんで、わかってくれねぇんだよぉ!」

406: 2014/06/26(木) 21:12:07.18 ID:cImeprIpO
女勇者「……生意気言ってんじゃないわよ」

勇者「……あぁ?」

女勇者「あのね……? あんたは、マイナスなの。そんな人間がいくら、頑張ったって普通にしている人間に勝てるわけないじゃない」

勇者「そんな事……ねぇよ……」

女勇者「あんたの成長って……何よ? 父さんや私に誇れる事、何かしたの?」

勇者「俺だって……今までの旅で強い魔物倒したり……」

女勇者「……そんなの当たり前じゃない」

勇者「……えっ?」

女勇者「魔物倒すなんて、そこらの傭兵や街人でもしてる事よ。 それ以上の事が成長なんじゃないの?」

勇者「……」

407: 2014/06/26(木) 21:19:22.45 ID:cImeprIpO
女勇者「……お金は?」

勇者「……えっ?」

女勇者「世の中を生き抜くには、お金が必要よね? あんた、母さんに仕送りはしてる?」

勇者「……それは」アセアセ

女勇者「毎日、ただただ生きるなんて……犬や猫、それに虫けらだってるしてる事よ? 引き篭もりをやめるだけ事は成長って言えるの?」

勇者「……」

女勇者「……それに、あんたについてきてくれる仲間はいるの?」

勇者「それはっ……! 女僧侶ちゃんや、天童がいるよっ!」


天童「……勇者」

女勇者「……友達ごっこはもう、やめなさい」

勇者「……えっ?」

408: 2014/06/26(木) 21:31:23.65 ID:cImeprIpO
女勇者「そういうのは仲間なんかじゃない……」

勇者「ふざけんなっ! 女僧侶ちゃんや天童は俺の大切な仲間だっ!」

女勇者「この人達は、落ちこぼれのあんたの傷を舐めてくれてるだけじゃない」

勇者「……えっ?」

女勇者「仲間っていうのは……世界の平和を救う為……魔物を討伐する為の、腕の立つ傭兵の事よ」

勇者「……」

女勇者「あんたの周りに、そんな傭兵は集まってくれるの? あんたは友達ごっこを冒険の仲間と勘違いしてるだけでしょ?」

勇者「……違う、違うっ!」

女勇者「あんたみたいな、何も名声を持ってない子の周りに集まる奴なんて……そんな、友達ごっこのクズだけよ」

勇者「二人は違うっ……! 二人はそうじゃないっ……!」

女勇者「……あんな、女の子放っておけばいいじゃない?」

勇者「!?」

410: 2014/06/26(木) 21:42:31.29 ID:cImeprIpO
女勇者「勇者……? よく考えなさい?」

勇者「……どういう事だよ?」

女勇者「ここで……その女の子を助けた所で、何が残るって言うの?」

勇者「女僧侶ちゃんの命が残るじゃねぇかっ!」

女勇者「そう……それだけね……?」

勇者「……はぁ?」

女勇者「その子の命は助かるけど……あんたが魔物討伐した事なんて、そのうち忘れさられ……なかった事になってしまうわ……」

勇者「……何、言ってんだよ姉ちゃん」

女勇者「だから、こういう時は傭兵を使うの。 勇者一行のおこぼれにあやかろうとしたバカな傭兵が……魔物討伐の事を勝手に広めてくれるわ」

勇者「……」

女勇者「そうする事で……噂は広まって……名声を手に入れる事が出来るの。 だから、勇者……傭兵の到着を待つのよ?」

勇者「じゃあ、女僧侶ちゃん、見捨てろって事なのかよ!?」

女勇者「毎日毎日、世界の何処かで誰かが魔物にやられてるじゃない? 僧侶一人の命を守った所で、何になるのよ」

勇者「なんで、そんな考え方なんだよ……それは、間違ってるよ……」ワナワナ

女勇者「……勇者? これは、あんたにとっても成功のチャンスなのよ?」

411: 2014/06/26(木) 21:51:39.94 ID:cImeprIpO
天童「おめぇ、いい加減にしろよっ!」

勇者「いや……いいから、やめてくれよ! いいから……」アセアセ

天童「だってよぉ!?」

勇者「今回は……家族の問題なんだ……俺がなんとかするから……なっ……?」

天童「……勇者」


女勇者「あんた、何なのよ……うちの子にバカな事ばかり、吹き込んでさぁ……?」

勇者「……」

女勇者「この子、こんなに口ごたえする子じゃなかったのよ? うちの子に変な事しないで!」

勇者「……」

女勇者「あんたみたいなバカがそばにいると……この子がもっとダメになっちゃうじゃないっ! もう、この子に近づかないでっ!」

勇者「……今、何て言った?」ワナワナ

女勇者「?」

勇者「ふざけんなよぉ!」

女勇者「!」ビクッ

413: 2014/06/26(木) 22:01:05.36 ID:cImeprIpO
勇者「……俺の事はいいよ。俺の事は」

女勇者「……」

勇者「でもなぁ……? こいつの悪口言う事だけは絶対許さねぇぞっ!」プルプル

女勇者「……」

勇者「あんたが何を俺に教えてくれるっていうのよ……? ねぇ……?」

女勇者「……」

勇者「ずっと、そうだったよね……? 昔から……父さんの名を汚さないように……みっともない真似だけはするなって……」

女勇者「……」

勇者「次に教えてくれるのは……お金の稼ぎ方……? 名声を得る方法……? なんだよ、それ……」

女勇者「……」

勇者「こいつは……ずっとずっと姉ちゃんが教えてくれなかった、生きる為に必要な事……いっぱい教えてくれたっ!」


天童「……勇者」

414: 2014/06/26(木) 22:08:56.32 ID:cImeprIpO
勇者「どうして……ねぇ、昔の姉ちゃんこんなのじゃなかったじゃん……? いつから、こんなに汚れちゃったのよ?」

女勇者「……」

勇者「成功掴んでさ……楽しい……? 幸せ……? 俺はそんなの嫌だな……」

女勇者「……」

勇者「お金や、名声の為に……目の前で起こってる出来事、無視してさぁ……これが正しい勇者の行動なの?」

女勇者「!」

勇者「情けない……俺、これが成功なんだったら、こんなのいらねぇよぉ!」

女勇者「……」

勇者「あんたなんか、俺の仲間じゃねぇよ……俺の仲間はこいつと……今、必氏に洞窟で頑張ってる女僧侶ちゃんだけだよっ!」ダッ

女勇者「勇者っ……!」

416: 2014/06/26(木) 22:32:26.18 ID:cImeprIpO
天童「……お姉さん」

女勇者「……何よ?」

天童「少し、お話をしませんか?」

女勇者「さっきの、ひょうきんな態度はどうしたのよ? 真面目な振りなんかして……バカみたい……」

天童「あなたには、こちらの態度の方が効果的かと、思いましてね?」

女勇者「……はぁ?」

天童「女勇者……19XX年X月X日に産まれた貴方は、12歳の時に父を亡くし、貴方もまた、勇者君と同じように周囲からの期待に押しつぶされてしまう!」

女勇者「……何、言ってんの?」

天童「母親から繰り返される言葉! 『勇者はダメだから、貴方に全てを任せる』お前はその期待に答えるべく、修行に励み力を得た。だが、しかし……」

女勇者「……あんた」

天童「転機はそう! お前が15歳の時!」

女勇者「!」

天童「魔物討伐に行った洞窟で……お前の仲間達は皆、お前をかばって氏んでしまう」

女勇者「あ、あんた……」

天童「その中には……あなたの幼馴染もいましたね……確か、男僧侶さん……でしたかな……?」

女勇者「!」

417: 2014/06/26(木) 22:43:55.01 ID:cImeprIpO
天童「彼が最後に言い残した言葉を……覚えていますか……?」

女勇者「そ、そんな昔の話……もう、忘れたわよ……」

天童「僕達が弱いせいでごめんね? 君は強い勇者なんだから、君は生きて世界を救って……でしたかね?」

女勇者「……ぐっ!」

天童「そこから、貴方の人生は変わり始めた! 周りの人間が傷つく事を恐れ……しかし、それでも父の名に恥じぬ勇者にならねばならいという重圧っ!」

女勇者「……あんた、なんなのよ」

天童「ちょっぴり同情はしますが……今の貴方も……自らの為に、知らずに周りを少しずつ傷つけていっている存在なのではないでしょうか?」

女勇者「仕方ないじゃない……街の人が苦しくなっても……戦うのは私達なんだからっ……!」

天童「……お前の人生それでいいのか?」

女勇者「あんた……なんで、男僧侶さんの事知ってるのよっ! あんた、何者よ!?」

天童「私は天使です」

418: 2014/06/26(木) 22:50:06.26 ID:cImeprIpO
天童「幸い、貴方に命題は届いていません」

女勇者「……命題?」

天童「……ですから、これは一つの警告としてお聞き下さい」

女勇者「……警告?」

天童「勇者君は等身大の自分を見つめて、貴方と向き合いました」

女勇者「……」

天童「……次は、貴方が等身大の自分を見つめ、勇者君と向き合わう番ではないですかね?」

女勇者「私の……等身大……?」

天童「さもなければ……また、同じように……犠牲者が出る事になりかねませんよ……?」

女勇者「……」

419: 2014/06/26(木) 22:53:30.57 ID:cImeprIpO





PM8:50

タイムリミットまで後、10分






420: 2014/06/26(木) 22:58:04.63 ID:cImeprIpO
女僧侶「はぁっ……はぁっ……」

機械兵「ふん……魔力も、もう限界のようだな……?」

女僧侶「……くっ、勇者さんっ」

機械兵「よしっ……! 動く……動くぞっ……!」ググッ

女僧侶「ダメっ……もう……」

機械兵「よしっ……氏ねっ……!」

女僧侶「!」


「おらぁっ!」


女僧侶「……勇者さんっ!」

機械兵「……なんだ、小僧? 戻ってきたのか?」

勇者「……」

421: 2014/06/26(木) 23:03:47.28 ID:cImeprIpO
女僧侶「勇者さんっ……! お姉さんはっ……?」アセアセ

勇者「……ごめん、女僧侶ちゃん。あんな奴に頼んだ、俺がバカだった」

女僧侶「……えっ?」

勇者「あんな奴……俺の姉貴じゃねぇっ……! 俺の仲間なんかじゃねぇよっ!」


機械兵「ふん……魔法も使えないのに戻ってくるとは……無駄氏にだな、小僧……」

勇者「そんなもん、やってみなくちゃわかんねぇだろっ! うおおぉぉっ!」

機械兵「はははっ! 効かんっ! 効かんぞぉっ!」

勇者「くそっ! おおっ! だあぁっ!」

機械兵「無駄だ無駄だっ! 効かぬわっ!」

勇者「今までだって……なんとか、やってきたんだっ……! きっと……きっと今回だって、うまくいくさっ! うおおぉぉっ!」

422: 2014/06/26(木) 23:09:15.00 ID:cImeprIpO
女僧侶「勇者さんっ……! ダメですっ……! 私、もう……!」


機械兵「……よしっ! 動くぞっ! 術がとけたようだな!」

勇者「!」

機械兵「くらえっ! うおおおぉぉっ!」ガスッ

勇者「ぐはっ……!」

機械兵「よしっ……! クリーンヒットっ……! 今のは完全に決まったぞ!」

勇者「……ぐ、ぐぐっ」

機械兵「とどめだ……ロックオン……」キュイーン

勇者「くそっ……魔法だっ……何か魔法さえ使えればっ……!」

機械兵「……氏ね」


ズガガガガガガッ


女僧侶「勇者さんっ!」

423: 2014/06/26(木) 23:13:20.37 ID:cImeprIpO
女勇者「何してるの!? どきなさいっ!」ドンッ

勇者「……えっ?」


ズガガガガガガッ


女勇者「あっ……! ああっ……! あああああっ!」


女僧侶「お姉さんっ!?」

勇者「姉ちゃんっ!?」


女勇者「うっ……ううっ……」ヨロヨロ

機械兵「……あれは勇者の娘じゃないか? どうしてこんな所に? だが、これは幸運な展開だな」

女勇者「……」バタッ

424: 2014/06/26(木) 23:17:25.78 ID:cImeprIpO
勇者「姉ちゃんっ……姉ちゃんっ……! どうしてここに……!」

女勇者「うっ……勇者……」

勇者「……もういいっ! 喋るなっ、姉ちゃん!」

女勇者「……あんた、凄いね?」

勇者「……えっ?」

女勇者「洞窟の入口から……ここまでの魔物……全部あんたが倒したんでしょ……?」

勇者「……」

女勇者「天童さんから聞いたわ……あんた、凄いね……?」

勇者「……天童? 姉ちゃん、連れて来てくれたのか?」


天童「……」

426: 2014/06/26(木) 23:23:26.15 ID:cImeprIpO
女勇者「お姉ちゃんさぁ……? 間違ってた……」

勇者「……えっ?」

女勇者「お姉ちゃん……父さんが氏んで……あんたが引き篭もってたからさぁ……?」

勇者「……うん」

女勇者「父さんの分も……あんたの分も頑張らなくちゃいけない……なんて思って……どんどん、重圧でダメになってたみたい……」

勇者「そんな事ないよっ……! 姉ちゃんは……」

女勇者「あんたは……その間に成長してたんだね……?」

勇者「……」

女勇者「あんたも、お姉ちゃん追い抜くまでもう少しよ……」

勇者「……」

女勇者「あんたに足りない……バカな所……教えてあげる……」

勇者「……えっ?」

427: 2014/06/26(木) 23:32:27.25 ID:cImeprIpO
女勇者「相手は機械兵なんでしょ……? あんなの……弱点なんて一目でわかるじゃない……」

勇者「……弱点?」

女勇者「機械なんて……ショートさせてしまえば……ただの鉄クズよ……」

勇者「ショート……?」

女勇者「雷よ……雷の魔法を使うのよ……」

勇者「で、でも……俺っ……! 雷の魔法どころか、攻撃魔法使えねぇんだよっ……!」

女勇者「あるじゃない……? 勇者一族に伝わる……あの魔法が……」

勇者「……えっ?」

女勇者「正しき心を持った者だけが使える……父さんの必殺技……今のあんたなら、使えるでしょ……!」

勇者「で、でもっ……! あんな凄い魔法……どうせ、俺になんて……」

女勇者「まだ『どうせ』なんて言ってるの!? あんた、成長してるんでしょ!? お姉ちゃんを越えた所、見せてよっ!」

勇者「!」


機械兵「……フン。お涙頂戴の所悪いが、二人仲良く、父の元へ連れて行ってやろう」

428: 2014/06/26(木) 23:40:21.41 ID:cImeprIpO
女勇者「勇者……成長したあんたなら……きっと……」

勇者「えっと……ええっと……家電製品? ……ガキの使い……ああっ! 違う違うっ……」


機械兵「……ロックオン」

女勇者「父さんも……見てるわよっ……! しっかりしなさいっ……!」

勇者「ガギグゲゴ……? ギガワロスwwwww ああっ、違う違うっ! そうじゃないっ……!」


機械兵「氏ねっ!」

女勇者「あんたの成長を見せなさいっ!」


勇者「『ギガデイン』?」ピカーッ

429: 2014/06/26(木) 23:45:30.51 ID:cImeprIpO
ドーンッ


女僧侶「きゃあっ!」

天童「なんだなんだ!? 洞窟の中に雷か!?」


機械兵「ガッ……ガガガガガッ……!」バチバチ


勇者「や、やったっ……! 出来たぞっ……! 父さんの必殺技が……俺にも出来たんだっ……!」

天童「おおっ! 勇者っ! やったじゃねぇか! 後30秒だっ!」

女僧侶「勇者さん、凄いですっ!」


女勇者「まだよっ! まだ、完成じゃないわっ!」

勇者「……えっ!」

女勇者「勇者っ! 後は、あの雷を切り裂くのっ! それで完成よっ! やってみなさいっ!」

勇者「わかったっ! いくぞっ! うおおおっ!」ダッ

430: 2014/06/26(木) 23:51:00.94 ID:cImeprIpO
機械兵「くそっ……! くそっ……! この魔王軍の白い悪魔……ガムダムが……ガムダムがっ……!」バチバチ

勇者「うおおおぉぉぉっ!」

機械兵「防御性能が完全なら……防御性能さえ完全であればっ……!」

勇者「くらえっ! これが……父さんから伝えられ……姉ちゃんから学んだっ……」

機械兵「調整の時間さえあればっ……! こいつらが……後、二時間来るのが遅ければっ……!」

勇者「勇者一族の必殺技だああぁっ!」

機械兵「!」

勇者「くらえっ! 『ギガスラッシュ』!」


ズバーンッ

431: 2014/06/26(木) 23:59:42.56 ID:cImeprIpO
翌日ーーー


女勇者「あんたは、本当、バカね! どうして、そんな事も出来ないの!?」

勇者「ご、ごめん……姉ちゃん……」アセアセ

女勇者「ちょっと、リンゴの皮向いてって頼んだだけなのに……なんで、そんな骨みたいになるのよソレ!」

勇者「じゃあ……こっちの皮の方食べる? 身はいっぱいついてるよ?」

女勇者「あたしは、皮を剥いて頂戴って言ったのに、どうしてそうなるのよ、バカっ!」

勇者「ご、ごめん……」


天童「……あの姉ちゃん、相変わらずだな? 病人なんだから、大人しくしとけっての」

女僧侶「まぁまぁ、久しぶりの姉弟水入らずの時間なんだから、いいじゃないですか?」クスクス


女勇者「もういいっ! 自分でやるから、ナイフ貸しなさいっ!」

勇者「いいって、いいって……俺、やるからさぁ……?」

432: 2014/06/27(金) 00:04:24.59 ID:7NxMSXiiO
天童「しかしよぉ? あの姉ちゃん、あれだけ撃たれたのに、ゾンビみてぇな奴だな?」

女勇者「……聞こえてるわよ。天使の天童さん?」

天童「あっ……すんましぇ~ん……」アセアセ


勇者「……あれ? 天童、おめぇ天使って信じて貰えるの始めてじゃね?」

天童「……えっ?」

勇者「姉ちゃん、どうしたの? 頭でも打った?」


女勇者「あんたは失礼ね……あんたを成長させてくれた仲間の人達だから、ちょっとおべっか使っただけよ」

勇者「……ふ~ん」

433: 2014/06/27(金) 00:13:30.81 ID:7NxMSXiiO
女勇者「あたた……あの……天童さん? 女僧侶ちゃん……?」モゾモゾ

女僧侶「あっ……お姉さん、動かないで下さいっ……! 傷が開きますよ?」

女勇者「あの……今回の事は申し訳ありませんっ!」ペコッ

女僧侶「……えっ?」

女勇者「私……父を失ってから、自分が勇者の後を次ぐ者という事と……この子の親代わりにならなくちゃいけないって思いから……」

女僧侶「……」

女勇者「自分が間違ってる事も気づかずに……周りを否定ばかりする、嫌な人間になってた事に気づけませんでした」

女僧侶「いや……そんな事……」

女勇者「あなた方がこの子を成長させてくれてるのを見て……自分も、この子に負けないように、もう一度、名誉とか捨てて……一からやり直したいと思います」

勇者「……姉ちゃん」

女勇者「傷治したら、必ず合流するからね? それまでに、あたしだってあの必殺技使えるようにしておいてやるんだから!」

勇者「うん、待ってるよ」

434: 2014/06/27(金) 00:21:22.41 ID:7NxMSXiiO
ーーーーー


勇者「……女僧侶ちゃん、足は大丈夫?」

女僧侶「はい、私はもう大丈夫です」ニコッ

勇者「あのさぁ……?」

女僧侶「?」

勇者「姉ちゃんと会ってさ……? 俺、嫌な思い出も思い出してさ……? 落ち込んだりもしたけどさ……?」

女僧侶「……はい」

勇者「その嫌な思い出の中でも……ずっと、俺に優しくしてくれてる人がいてね……?」

女僧侶「……はい」

勇者「その子は……俺が旅を始めた時も……俺が旅の途中でダメになってる時も、ずっとずっと変わらない態度で接してくれているんだ……」

女僧侶「……はい」

勇者「自分を見てくれている人がいる事……凄く、俺にとって大切な存在なんだ」

女僧侶「……」

勇者「女僧侶ちゃん……? 俺、女僧侶ちゃんに言わなきゃいけない事があるんだ?」

女僧侶「……聞かせて下さい」ニコッ

435: 2014/06/27(金) 00:24:41.81 ID:7NxMSXiiO
勇者「あのっ……!」

女僧侶「……」

勇者「俺……女僧侶の事……!」

女僧侶「……はい」

勇者「その……す、す……好……」


「おぉ~いっ! 勇者ァ~! なんで、おいて行くんだよォ~! 待ってくれよォ~!」


勇者「も~う……天童……おめぇは、何でこんなタイミングで来るんだよぉ……?」

天童「……あぁ? 何、言ってんだおめぇ?」

436: 2014/06/27(金) 00:29:12.24 ID:7NxMSXiiO
天童「おめぇの最大の難関『コンプレックス』をよぉ? クリアしたんだから、もっとシャキッとしやがってんだっ!」

勇者「……うるせぇっ! 空気読め、おめぇはよぉ!」

天童「その言い方、ちょっと酷くない? まるで、俺が空気読めない奴みてぇじゃん?」

勇者「……読めてねぇじゃねぇかよ」

天童「何言ってるかよくわかんねぇけどよぉ? 残りの命題は後2つだ! 頑張ろうぜっ!」

勇者「うん、そうだな!」

天童「魔王城はもうすぐだっ! おめぇも気合入れろよっ!」

勇者「……わかってるよ」

天童「よ~しっ! それじゃあ、魔王城に向かって、出発~!」

勇者「……なんで、テンション高いんだよ。アイツはよぉ?」

437: 2014/06/27(金) 00:34:40.73 ID:7NxMSXiiO
女僧侶「……あの~? 勇者さん?」

勇者「……ん?」

女僧侶「さっきのお話は……?」

勇者「あ~、アレ……何か変な邪魔が入ったからさぁ……?」

女僧侶「……」

勇者「それに……魔王城にも行かなくちゃいけないしね……?」

女僧侶「そうですね」

勇者「だから、この旅が終わったら……ちゃんと話すよ? それまで、待ってて?」

女僧侶「わかりました、じゃあ私待ってます」ニコッ

勇者「うん、じゃあ、天童も張り切ってるみたいだし、俺達も行こうか?」

女僧侶「そうですね。私も、旅が終わるのが楽しみです」クスクス

勇者「よし! じゃあ、魔王城まで後少し! 頑張ろうっ!」

女僧侶「はいっ!」

438: 2014/06/27(金) 00:35:31.23 ID:7NxMSXiiO
第八話 「姉に勝たないと氏ぬ!」

ーー完

439: 2014/06/27(金) 00:43:35.54 ID:7NxMSXiiO
本当に余談
>>430の最後に

天童「はい、カァ~ット! 9時ジャストに……僕にも宇宙が見えたぜ!」

とか入れておくべきだったな

440: 2014/06/27(金) 00:50:49.78 ID:UsjGQfDk0
乙。
姉ちゃん結局いい人で良かった

446: 2014/06/27(金) 23:35:23.17 ID:7NxMSXiiO
天国に一番近い勇者~heaven cannot wait~

第九話 「改心させないと氏ぬ!」

引用: 天国に一番近い勇者~heaven cannot wait~