1 :◆InvoDUx.DI 2008/12/22(月) 04:36:51.81 ID:OkBJcQAf0
~はじめに~

この読みものは拙作「水銀燈の今宵もアンニュ~イ」と同じ設定を使い回しています。

#vol3終了後の話ですが知らなくても普通に読めます。

文章はビジュアルノベルのような書き方をしてあります。ちょっと読みにくいかもしれません。

それではしばしの間お付き合いいただければ幸いでございます。










4 :1 ◆InvoDUx.DI2008/12/22(月) 04:37:46.01 ID:OkBJcQAf0
私の朝は早い。まだ、日が昇らないうちから始まる。

病室、無機質な白い空間。いつ頃からか寝泊まりはここでするようになった。

寝床の鞄から半身をおこして佇んでいると、声をかけられた.

「おはよう、水銀燈」

めぐ、私のミーディアム。

最初は、利用しようとしていた。

次に、助けようとした。

「どうしたの?水銀燈。まだ・・・眠たい?」

「いいえ、物思いにふけっていただけよ。おはよう、めぐ」

そして今は―――――――二人で生きようとしている。



ローゼンメイデン 愛蔵版 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
6 :2008/12/22(月) 04:39:38.67 ID:OkBJcQAf0
「なあに?私の事?そうだったらうれしいな」

「朝っぱらから何を馬鹿な事を言っているの?寝ぼけているのはあなたのほうじゃなぁい?」

半分は嘘だ。夜眠るたびに怖くなる。朝、私が目覚めた時にめぐがおはようって言ってくれなかったら・・・。

それどころか、気がついた時には病室ががらんどうになっていたら。

正気をたもてるか自信が無い。

弱くなったものだ・・・そう自嘲しているとめぐが柔らかく微笑んで言う

「そうよ、私はまだ寝ぼけているの。水銀燈がおはようのキスをしてくれたら目覚めるわ」

「はぁ?あなた頭沸いてるんじゃないの?」

恥ずかしさから、毒を吐く。別にそれぐらいなら構わない。

でも、そういえない。それすらも柔らかく受け止めてめぐはおねだりをする。

「ほら、水銀燈。は・や・く」

「っ!・・・」

渋々とめぐの額に軽く口づける。




7 :2008/12/22(月) 04:41:39.29 ID:OkBJcQAf0
「おでこ・・・こっちは?」

「だから、そっちは本当に好きな相手としなさいって言ってるじゃない」

いつものやりとり。

「だから、水銀燈にお願いしているの」

いつものいらえ。このストレートさに、言葉は封じられる。

両手でめぐの頬を挟み込んでくちづける。一呼吸、二呼吸・・・三を数えないうちに離す。

めぐの頬が紅潮している。私も似たようなものだろう。

「へんたぁい」

毒を吐き、照れも一緒に吐き捨てる。

嫌な訳じゃ無い、でもこう言うのが私だと、らしいとおもっている。

「うふふ、ありがとう水銀燈」

めぐの言葉は、いつも感謝。

めぐもわかっているのだ、今が奇跡に因って成り立っている、宝物のような時間だということを。




10 :2008/12/22(月) 04:45:49.12 ID:OkBJcQAf0
朝食の配膳。この時は鞄の中に入って、ベッドの下で待機。

人形の振りをしてめぐと一緒にいたこともあったが、動けないのをいいことに好き勝手されるのはあの一回だけで十分だ。

奇跡。先ほど考えたことを思い返す。私たちは確かに、一度終わった。

私はジャンクにされた、真紅も、雛苺も翠星石も蒼星石もえっとあとだれだったかしら、そう金糸雀も。

お父様の弟子であるエンジュの作った薔薇水晶に敗北した、ローゼンメイデンが、成す術もなく。

末妹である雪華綺晶。

ミーディアムが次々と狙われたあの事件。当然めぐも・・・

戦いの記憶は両方ともにある・・・・・・

nのフィールドを介していろいろな私が混ざったのかもしれない、そしてお父様がおっしゃられた、アリスになる方法は一つではないと。

さらに、自分達の未来は自分達で選びなさいとも。

いまではアリスゲームと言うは喧嘩を売るときのひとつの名称に過ぎない・・・

奇跡といっても、時間が巻き戻っただけで、めぐの病気は治ってはいない。

ほんの少し、ほんの少しだけ猶予をもらっただけに過ぎない。生きることは戦うこと。ならば、生きるための戦いを。




11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/22(月) 04:46:58.89 ID:TOO0o31/O
アンニュ~イktkr
だが今回は予想外にシリアス




12 :2008/12/22(月) 04:48:10.21 ID:OkBJcQAf0
「水銀燈、もういいわよ」

めぐの声で思考の海から引き上げられる。鞄から出て、めぐの脇に腰掛ける。

「今日のゲロは・・・」

「ゲロゲロゲロゲロいわないのっ!何回言ったらわかるのよっ!」

「でもほら、同じネタは繰り返すのが基本だし」

めぐはなぜか古いお約束の多いお笑いが好きだ

「天丼ね・・・でも、レディに相応しくないわよ?お嫁さんになれなくなっちゃうわぁ」

「それまで、生きていられるかな」

「当然よぉ、前より発作の割合も減ったでしょう?」

だが、発作が起きたときはいつも危篤に陥るぐらい酷い。それを解っていてめぐは答える。

「そうね、水銀燈と一緒に・・・生きていくもの、そう、決めたものね」

「そうよ、精一杯生きて、あがいて、それから死にましょう」

それが私たちの戦い。




13 :2008/12/22(月) 04:50:10.73 ID:OkBJcQAf0
「水銀燈、今日はどうするの?」

「そうねえ・・・仕事は乗り気じゃ無いわね・・・ちょっとぶらぶらして来るわ」

「じゃあ、私はいつも通りね、夜遅くなるときは一回戻ってきてね」

「わかっているわぁ、めぐこそ、ゆっくり休んで生気を養いなさぁい」

「うん、またあとで水銀燈」

「またあとで、めぐ」

またあとで、この挨拶も戻ってきてからの変化。さよならじゃない、再会の・・・約束。




14 :2008/12/22(月) 04:52:14.27 ID:OkBJcQAf0
病院の近くの廃教会の屋根の上に座る。

今思えばよくこんな場所で一人で寝起きしていたものだ。

また、物思いにふける。

―――第五ドール、真紅。

私の妹にして、最大のライバル。アリスゲームという使命があったから戦う。

そうじゃない・・・なぜかウマがあわないのだ。ささいな事で争いになる。今は使命はない、仕事は・・・ある。

幸運にも後発ながら自分の番組まで持たせてもらった。代わりにかどうかはしらないが、真紅は自分の番組を失った。

真紅はプライドなら私よりも高いだろう。その真紅が私の番組に出てくれるとはおもえない。

よしんば出てくれたとしても・・・少しの事でいさかいになるだろう。

私にとって、番組は戦い、生きるための戦い。

時代はかわったのだ、一人の人間が人を尋ねるのにも限界がある。

マスコミとよばれる集団なら、情報を得るのにも、発信するのにも都合がいい。

めぐの病気を治せる人物が、新しい薬が、画期的な新手術が・・・わかるかもしれない・・・それをふいにする訳には行かない。

リスナーの皆には悪いけれど、やはり真紅をゲストとしてよぶのは―――――――




17 :2008/12/22(月) 04:54:25.94 ID:OkBJcQAf0
「避けたいところよねぇ・・・」

おもわず一人ごちる。

「何を避けたいのかしら?」

「だれっ!?」

振り向くと、黄色を基調としたドレス・・・

「カナリア!?」

メリーポピンズみたいに傘を掲げてふわりふわりと、漂ってくる

「となり、いいかしら?」

横に腰を下ろしながらそう聞いてくる。

「好きにすればぁ?」

金糸雀、ローゼンメイデンの第二ドール。

容姿も思考も次女とは思えないぐらい幼い、だけども―――驚くほど聡明。




19 :2008/12/22(月) 04:56:36.81 ID:OkBJcQAf0
「それで、水銀燈は何を悩んでいるのかしら?」

やはり聡明だ、一瞬で見抜かれた。それともわかりやすすぎるほど顔に出ていたのか・・・

めぐの言っていたとおり、アリスゲームをしたら本当に雌雄を決することになるかもしれない。

「何でもないわぁ・・・って言っても無駄なのでしょうね?」

「なんでもないような顔はしてなかったわよ、水銀燈。アンニュイな顔してたのかしら?」

「かなわないわね・・・あなたには」

ぽつりぽつりと話す。今のこと、めぐのこと、番組のこと。

相槌を打つだけで、全く話をしなかったカナリアが番組のことになるとふいに口をはさんできた

「前置きはいい加減して、本題を話したらどう?多分水銀燈は真紅のことで悩んでいるのかしら?」

「本当に・・・かなわないわね」

完全に見透かされている・・・不思議と敗北感は無い、それどころか重い荷物を降ろしたような爽快感さえある

「来週・・・順番から言えば、真紅のコーナーじゃない。だけど真紅を呼ぶと番組が崩壊しそうで・・・」

「どういう事かしら?」

小首を傾げて聞いてくる。




20 :2008/12/22(月) 04:57:14.58 ID:OkBJcQAf0
解ってるくせに―――そういおうと口を開きかけたとき、カナリアが言った。

「言い方が悪かったわ水銀燈。真紅を呼んでも、番組は崩壊しないと思うのかしら?」

「まさか、有り得ないわ。他の妹ならまだしも、相手はあの真紅なのよ?うまく行くわけが・・・無いわ」

「決め付けはいけないのかしら?無限に分岐する世界の中には、姉妹仲むつまじく暮らす世界、ううん、真紅と水銀燈が一緒に穏やかに暮らす世界もあったはず、それを否定することは、その輝きを否定するのは、誇り高きローゼンメイデンとして失格かしら」

確かに、その可能性はある。でもそれは元々いさかいの無かった世界での出来事。

一旦こじれてしまった現状では―――

「無理よぉ、私は我慢することもできるわぁ、仕事、責任、何よりも目的があるから」

それでも、噛み付いてくるのなら、私の仕事を妨害するのなら・・・我慢できるかは自信が無い。

落ち着いたとは言え私は最凶のドールなのだ。

「ぐちゃぐちゃにこじれて・・・絡まってしまった糸のようなものよ・・・糸を切ってしまうしかないのよぉ」




22 :2008/12/22(月) 05:01:02.74 ID:OkBJcQAf0
糸。

絆とか縁とか。

そう置きかえるとよくわかる。

―――私は真紅にこだわりすぎた。

―――真紅も私にこだわりすぎた。

その結果がぐちゃぐちゃになった糸玉。

切ってしまえば、ボタンを付ける分も残りはしないほど・・・深く、深く絡まった糸玉

「言ってみたかった台詞があるの・・・・・・水銀燈のおばかさぁん」

「侮辱する気!?」

「ここまで言っても解らないのはお馬鹿さんかしら?糸、切ってしまえばいいかしら?」

「切ってしまえば二度と戻せないわ・・・」

「確かに戻す事は出来ないかもしれないけど・・・水銀燈、ちょっと見るのかしら」

「一体何よ・・刺繍?」

刺繍枠に目を落とす、驚くほど精緻な刺繍がなされている。





24 :2008/12/22(月) 05:03:59.45 ID:OkBJcQAf0
「練習してるのかしら?カナが上手にできるようになれば、みっちゃんの負担が減るし、私たちの手は小さいから細かい作業に最適かしら?」

「凄いわね・・・十分売りものになるんじゃない?」

ああ、カナリアもミーディアムのことを考えて、自分で行動している。姉として誇らしく、そしてわずかに寂しい。

「まだドレスとか、そういう見栄えの必要なところにするのが難しいのかしら。さて水銀燈、ちょっと見てるのかしら」

銀糸の通った針で刺繍をはじめる―――えらく短い糸は私を象徴しているよう

「短くなった糸でも・・・」

短い銀糸でカナリアは刺繍していく。だけども、ほんの少しで糸がなくなる。

「ふふん、ここからがテクニックの見せ所かしら」

黄色い糸を―――残り少ない銀糸に絡ませて―――継いだ。

「機結びっていう技よ、まあ見てるのかしら」




25 :2008/12/22(月) 05:06:01.57 ID:OkBJcQAf0
銀の周りを黄色で・・・さらに緑を継いで・・・これは・・・茎?

「まだまだかしらっ」

青を継いで茎に青のアクセント。縫いはじめの位置に遡っていく、水滴のように茎に点々と青。

次はピンク、始めの位置の銀と黄色の周りに。ああ、これは・・・

「これで仕上げかしら」

最後に継ぐ糸は―――赤。

「薔薇ね・・・」

「ピンクローズ、花芯は黄色に銀のアクセント。ピンクの花びらには赤いアクセントかしら?赤い薔薇の方が映えると思うけど・・・赤の糸も少ないのよね、水銀燈」

見事だ。これで何を言いたいか理解しなければ私のほうがおばかさんなのだろう。

だけど、わずかでもケチをつけたくてあえて言う。

「姉妹にしては一人足りないのじゃなくて?」

虚しい言葉、別に雪華綺晶などどうでもいいはずなのに。




26 :2008/12/22(月) 05:08:36.15 ID:OkBJcQAf0
「抜かりはないのかしら」

そういってカナリアは得意げに刺繍枠を斜めにする。

下地の色と全く同じ色で縫い取りがしてある。光の加減で浮かんだり、消えたり。まさしくこれは雪華綺晶だ。

苦笑をこぼしつつ問う。

「もうミーディアムを手伝えるのではなくて?」

「真紅のマスターが・・・まだまだって」

真紅のマスター・・・ジュンと呼ばれていた少年。ジャンクになったはずの真紅を元通りにした不思議な少年。いずれ至高にたどり着く、そんな気がする。

「手厳しい先生ね」

「そのぶん、勉強になるのかしら?」

顔を見合わせて笑う。めぐと一緒のときとは種類の違う笑い。




27 :2008/12/22(月) 05:11:50.90 ID:OkBJcQAf0
「ねえ、カナリア。どうしたらいいのかしら?」

主語の無い問い。

「水銀燈はどうしたいのかしら?」

返される問い。

「私たちは姉妹。同じ姉妹の窮地は見過ごせないし、困っていたら助けるのよ、でも、それは助けを求められてこそ」

つむぎだされる言葉はすべて真実。だからこそ―――痛い。

「互いを尊重するからこそ、求められるまでは助けることは出来ない・・・それもまた絆というものかしら」

考える、理性ではなく、感情で。

煮えたぎるほどの怒り―――その下に理解してもらえない寂しさは無かったか。

戦いの高揚―――陰で心が泣いていなかったか。

ああ、そうだった。




28 :2008/12/22(月) 05:14:52.96 ID:OkBJcQAf0
「真紅も・・・私の可愛い妹なのだわぁ・・・」

「そうよ、ちょっと生意気で大人びてるけど、私たちの姉妹なのかしら、水銀燈がそれをわかったなら、カナはそれを助けてあげることができるのね、水銀燈」

口にだしたら、言葉の重みが一気にまして、爪先に落ちたような気がした。

痛みを伴う言葉・・・

「でも、どうするの?」

「そこはカナにお任せかしら、水銀燈は・・・夜の6時になったら真紅に連絡すればいいかしら?」

「連絡って・・・それが出来れば悩んでなんかいないわよ!」

そうまくし立てるとカナリアは、指を立てて口で「ちっちっちっ」と言いながら笑みを浮かべて言い放った。

「難しく考えることはないのよ水銀燈。業務連絡程度でいいのかしら、用件のみ簡潔に、真紅のほうは喧嘩腰にならないように、根回ししておくのかしら」

業務連絡・・・?

冷たい感じはしないだろうか・・・「馬鹿にしているの、水銀燈?」などと真紅が言わないだろうか・・・




30 :2008/12/22(月) 05:18:04.34 ID:OkBJcQAf0
「あー、水銀燈?だいたい何を考えているかわかるけど、最初からうまくやろうとしても逆にうまくいかないのかしら」

また顔に出ていたらしい。

この妹はそれを見逃さない。

「まずはきっかけ、それから一歩でいいから歩み寄ることかしら。真紅だって大分まるくなってきたのかしら?」

「だといいけどぉ・・・」

不安は消えない。

しばらくの沈黙、今日はあいにくの曇り空

―――私の心のよう

何を語るでもなく、時だけが流れていく。




31 :2008/12/22(月) 05:20:20.25 ID:OkBJcQAf0
やがて、カナリアが口を開く。

「ん、そろそろおやつの時間かしら」

ごぞごぞと懐から何かを取り出す。あれは・・・?

「みっちゃんの!たっまごやきぃ!」

小さいタッパーにぎっちり詰まった卵焼きを誇らしげに天に掲げて胸を張る。

「みっちゃんの卵焼きは甘くてふわふわでおやつにもなるのかしらーっ!」

掲げたままくるくると回転する―――ここは不安定な屋根の上。

「はわっ!?」

案の定足を滑らせて落下する。

落ちていくカナリアを助けるのは簡単なことだ。

―――けれども、それでは駄目だ。




32 :2008/12/22(月) 05:23:21.26 ID:OkBJcQAf0
「まったく!世話のやける!!」

滑るように屋根から自由落下、落ちる途中にひさしを蹴って加速。

カナリアの胴を抱え込んで周囲を見る―――見つけた。

「しゃっ!」

気合い一閃。翼の竜でそれを確保。

むろんそんなことをすれば落下制御は困難になる。

浮遊感―――激突

「ぐうっ!」

カナリアを抱え込んで衝撃から守ってやる、転がって衝撃を逃がしたいところだが、そうすればもうひとつの守ったものがどうなるかわからない

痛烈な痛み・・・背中がじんじんする・・・カナリアは・・・

「はうっ!?ごめんなさいなのかしら水銀燈!思いっきり背中ぶつけたけど大丈夫かしら!?」

「おばかさぁん・・・屋根の上であんなことしたら・・・落ちるに決まってるじゃなぁい?」

「うう、ごめんなさい」

「それに・・・」




33 :2008/12/22(月) 05:26:23.76 ID:OkBJcQAf0
タッパーを手渡してやる、どうみても安物のタッパーに、何の変哲もない玉子焼き。

だけどそれはきっと―――

「これは、あなたとマスターとの大切な絆なのじゃなくて?」

金額の多寡や、品物の貴賎・・・そんなものは関係ない

それにどれだけの思いがこめられているか・・・

それからどれだけの思いを受け止めれるか・・・

それこそが重要

「そう・・・、みっちゃんは仕事が忙しいかしら。休みの日にだって電話がかかってくる事も、約束の時間に帰って来れない事も、たくさんあるのかしら」

さっきまでのカナリアとはうってかわって寂しげな顔、カナリアもカナリアで悩みがあるのだろう。

「真紅の家に預けられることも、丸一日お話できない事も・・・でもみっちゃんはどんなに忙しいときでも、カナの大好きな玉子焼きを作ってくれるの」

「一度、バイク便で真紅の家に届けられたときはさすがに苦笑したかしら」

そういいながらもカナリアの顔は明るい




35 :2008/12/22(月) 05:29:37.90 ID:OkBJcQAf0
―――絆。

カナリアとミーディアムの間に確かにある。

きっと、私とめぐの間にも今はあるはず・・・ならば・・・

「真紅と水銀燈の間にだってきっと作れるはずかしら?」

また読まれた。本当に小憎らしい妹だ。

「そうねえ・・・出来るといいわねえ・・・」

認めた、認めてしまった。

私のプライドがいまさら何をと告げる、だけども、これは偽らざる本心

「きっとできるのよ、水銀燈。このローゼンメイデン一の頭脳派、カナリアにおまかせかしら」

「頭脳派あんまり関係なく・・・なによ?」

フォークに玉子焼きを刺してこちらに突きつけて来る




36 :2008/12/22(月) 05:32:57.55 ID:OkBJcQAf0
「あーん、なのかしら」

「いらないわよ別に!あなたが食べればいいでしょう!」

「あーん、なのかしら」

「だからいらないって言ってるでしょう!」

「あーん、なのかしら」

しつこい。

しつこさに辟易して食いちぎるように玉子焼きに噛み付き、咀嚼する。

何の変哲も無い、甘めの玉子焼き。

「どうかしら?おいしいかしら?」

「別に、どおってことない普通の味だわぁ・・・」

確かに味だけを評すればそれしか言えない、だけど・・・きっと・・・

「ま、優しい味っていってあげてもよくってよ?」

気持ち。

きっとそれが、この玉子焼きをカナリアにとってのご馳走にしている。




38 :2008/12/22(月) 05:35:25.62 ID:OkBJcQAf0
その後はつまらない話題を肴に、残りすべてを平らげてカナリアは帰って行った。

「水銀燈!ちゃんと夜に連絡するのかしら!」

そういって真紅のところの電話番号を残して・・・

まだ夜までは大分時間がある・・・

私が暇をつぶせる場所はそう多くない、仕事熱心なのもそれが理由かもしれない―――




39 :2008/12/22(月) 05:38:29.61 ID:OkBJcQAf0
私が暇をつぶせる場所はそう多くない、仕事熱心なのもそれが理由かもしれない―――

しばらくかんがえて行く先をきめた・・・槐堂。

お父様の弟子だった、槐。

ローゼンメイデンと似て異なる・・・強いて言えば従姉妹・・・薔薇水晶

幻の第7ドール。狭間の世界の住人・・・雪華綺晶

槐堂にはその二体のドールがいる。

前には無かった施設・・・店舗の後ろの住居。

天窓の鍵はいつも開いている、私を受け入れるかのように

天窓からするりと滑りこむ。

「そろそろ来る事だと思っていました、水銀燈お姉様」

着地する前に声をかけられた、・・・薔薇水晶だ。




40 :2008/12/22(月) 05:41:11.52 ID:OkBJcQAf0
振り返るとテーブルにシチューらしきものを並べている薔薇水晶がいた。

「簡単なものですがどうぞ、お召し上がりになってください」

「なんか、いつもいつも悪いわねぇ・・・それにしてもいつも丁度のタイミングなのはなぜ?」

「それは私が知らせているからです、黒薔薇のお姉様」

雪華綺晶、実体の無いドール。その代償に、ある程度の大きさの鏡さえあれば彼女にとって距離や時間は関係のないものとなる

「覗き見は趣味が悪いわぁ、自重なさぁい?」

「警戒は槐堂の周囲だけ、アリスゲームは終わっていない。そうでしょう、黒薔薇のお姉様」

「まあ、そうといえばそうかしらぁ」




41 :2008/12/22(月) 05:45:10.91 ID:OkBJcQAf0
雪華綺晶と会話している間も料理は運ばれてくる、私の前にはシチュー、それにグリーンサラダと・・・・・・ヤクルト。

テーブルの上には台の様なものがあり、そこにも次々と料理が置かれていく。

鏡にいい感じに映さないと薔薇水晶は食べることが出来ない。

「角度はこれでいい?きらきー?」

「ええ、いつも手間をかけてすまないわね、ばらしー」

この二人は似て異なるものであるにかかわらず、翠星石と蒼星石のように仲がいい。

やはりそこには絆があるのだろう・・・少しだけ嫉妬する

「それにしても・・・」

呆れてつぶやく

「相変わらず雪華綺晶は凄い量食べるわねえ・・・」

テーブルの上だけ見ると食べ物が虚空に消えていく、実にシュールな光景だ。

鏡をのぞくと貪ると言う表現でもかまわないぐらいの勢いで次々と平らげて行く雪華綺晶の姿。

人間並みの分量の4,5人前ぐらいは軽く平らげてしまう。




42 :2008/12/22(月) 05:48:18.94 ID:OkBJcQAf0
「おいしいわ・・・おいしい・・・」

雪華綺晶には妙な性癖がある。

おいしいものを食べると涙を流す、流しながら貪り続けるからシュールを通り越してホラー・・・

だけども・・・この末妹は食べる喜びなど知らなかったに違いない。

―――気の遠くなるほどの時間一人でいたに違いない。

そう考えると落涙は尊いものに見える。

「まあ、たしかにおいしいわよね。相変わらず料理が上手ね、薔薇水晶」

「ありがとうございます、水銀燈お姉様」




44 :2008/12/22(月) 05:52:43.29 ID:OkBJcQAf0
正直、人形作り以外全く何も出来ない槐の生活を支えているのは、薔薇水晶の頑張りに他ならない。

槐はほおって置けば倒れるまで食事もしないだろう。

追い立てて風呂に入れ、寝床を用意してやらねば工房でそのまま寝起きするだろう。

ローゼン・・・お父様はそこまでやらなければ追いつけない。

いや、そこまでやっても後姿を垣間見るぐらいしか出来ない。

―――至高のマエストロ

「水銀燈お姉様?・・・お口に合いませんでした?」

また思考に沈んでいたようだ、まずくは無いと証明するためにあわててシチューをかきこむ。

「なんでもないわぁ、ちょっと考え事があっただけよぉ」

今日の私はおかしい。おかしいのがわかることがおかしい。

普段はプライドの皮で包み隠している、それが出来ない。




45 :2008/12/22(月) 05:56:16.51 ID:OkBJcQAf0
「ねえ、あなたたち」

「なんですか水銀燈お姉様?」

「おいひ・・・・むぐひゅ・・・なんでしょう、黒薔薇のお姉様?」

「ああ、食べてていいわよ、ちょっと、聞きたい事があっただけ」

雪華綺晶は食事を中断させられると捨て犬のような目で見てくるから対処に困る。

「あなたたち、私の番組に出てくれないかしら?姉妹全員持ち回りでコーナーがあるのよ」

しばしの沈黙、いや咀嚼音。

完全に飲み下してから雪華綺晶が口を開く。

「私は・・・大丈夫ですわ、黒薔薇のお姉様」

ちらりと、薔薇水晶をみやる。

「私も大丈夫ですけれども・・・」

逡巡、カナリアでなくてもわかる、その理由は―――




46 :2008/12/22(月) 05:59:26.97 ID:OkBJcQAf0
「大丈夫、あなたも私の妹よ」

「!・・・水銀燈お姉様・・・」

感極まったかぽろぽろと涙をこぼす。本当にこの二人はよく似ている。

「だけど・・・あなたたちはまだ出番じゃ無いわよ、順番だから・・・」

言葉を選ぶ、いまから放つ言葉は、誓い?それとも呪い?

答えのでぬまま、だけど一歩歩み寄るために、言葉にして確固たるものにする。

「次のゲストは・・・」

言葉に詰まる、しばしの思考。

―――くだらないこだわりだわぁ。

そう結論付けて言葉をつむぐ

「次のゲストは真紅。そのあとに雛苺、最後にあなたたち二人よ。出番的にはかなり後になるわね」

言った、もう後戻りは出来ない。カナリアに言ったのとは重みが違う。

約束を違えれば純粋なこの末妹達はきっと悲しみの涙を流すのだろう。それは・・・避けたい。





48 :2008/12/22(月) 06:02:54.56 ID:OkBJcQAf0

「薔薇水晶は料理が得意でしょう?」

「得意かどうかまでは・・・」

「ばらしーの料理は最高」

「ありがとう、きらきー」

「雪華綺晶は、好き嫌いは無いわね?」

「強力な毒でなければ、たいていのものは食べることは出来ます、涙は出ませんが」

決まった。思いつきだが悪くないと思う

「ばらきらのなんでもぺろり・・・ってのはどう?」

うん、雪華綺晶には悪いが凄まじいレシピがくるならそれなりに盛り上がるだろう

「いろんな料理のレシピを大募集、薔薇水晶はレシピに忠実に料理を作る、雪華綺晶がそれを食べる、私とめぐはそれをまぜっ返すわ、一応、雪華綺晶を泣かせる料理にはなにかプレゼントと言うことにしておくわ」

さもないと凄まじい料理しか集まりそうにないものね。

―――心のなかで考える。




49 :2008/12/22(月) 06:07:24.10 ID:OkBJcQAf0
一応食材の都合があるからロケハンはしておかないといけないわね。それでもネタ的な食べ物を入れておくのはお約束というものだわぁ。

「それは・・・美味しいコーナーですね、黒薔薇のお姉様!」

「私も、レシピが増えるのはとても有り難いです、水銀燈お姉様」

輝かんばかりの笑み。これを曇らせるのは―――

「避けたいところよねぇ・・・」

先ほど放った言葉とおなじ音。だけれど正反対の感情が篭っている。

迷いが無いとは言いきれない、けれど、迷いを断ち切る力・・・姉妹の絆。

「大雑把にだけど打ち合わせしましょう、薔薇水晶は苦手な料理法とかあったらいいなさぁい?雪華綺晶は・・・」

「大丈夫、なんでも食べる。ばらしーがつくったものなら間違いない」

これも絆かしら?そう思いながら打ち合わせを詰める。

結局午後のお茶までご馳走になってしまった。

夕食も食べて行ってくださいという薔薇水晶の誘いを断って飛び立つ。




50 :2008/12/22(月) 06:10:54.57 ID:OkBJcQAf0
まだ5時過ぎだというのに既に暗い。もうこの時間は闇が侵食して来ている。

少し早いが病院に戻るべきか・・・考えながら闇に紛れて低空を飛んでいると不意に呼び止められた。

「おーい、水銀燈!」

!?・・・この声は・・・

「あ、やっぱり水銀燈だ。なにやってるんだ?こんなところで?」

真紅のミーディアム!?

「いったい、なんの用かしらぁ?」

舞い降りながら話し掛ける。

真紅のミーディアム。確か、ジュンとか言う。

「別に・・・見かけたからつい」

「おばかさぁん!私はその辺の犬猫じゃ無いのよぉ?」

なんてデリカシーの無い男だろう。水銀燈と話がしたかった―――そう言えば少しは可愛いげがあるのに。




51 :2008/12/22(月) 06:14:23.52 ID:OkBJcQAf0
「水銀燈と話もしたかったしな」

「なっ・・・何をいうのよ」

完全な不意打ち、今日はしてやられっぱなしだ。

「そうだ、この前見た時から気になってたんだけど・・・あ、ちょっとまってな・・・うん、ここならいいか、街灯の近くだし」

そう言ってコートを脱いで塀の上に広げる。

「座って」

「そんなに気を使わなくていいわよぉ別に」

年齢に相応しくない気配り。真紅の仕込みかと思うとあんまりいい気分はしない。




52 :2008/12/22(月) 06:18:26.43 ID:OkBJcQAf0
「どのみち、このままじゃ作業しにくいし」

「作業?」

「うん、ここのところ、逆さ十字が剥がれかけているだろ、あとこっちも、下糸が抜けてる。このままじゃあ全部ほつれてしまう」

呆れた。わざわざ呼び止めたと思ったら。服の修繕とは。

「余計なお世話よぉ、それにお父様の作ったくださった洋服に素人が手を入れてもねぇ」

カチンと来たのだろう、不服げに口を尖らせてぶつぶつ言う。

「そりゃあ、ローゼンとくらべたらまだまだだろうけど・・・それでも、遠目から見てもいま言った所はなおしたほうが・・・」

やはりまだ青い。こういったことをスルー出来るようになれば、いい男になるだろうに。

「いいわ、やってみなさぁい」

そう言ってコートに腰を下ろす。まだ、暖かい。

温もりを分けてもらったような気がして、少しだけうれしくなって軽口を叩く

「だけど、酷い出来だったらジャンクにするわよぉ?」

「言ってろよ、ほら、こっちに裾くれよ」

そういっているうちに針に既に糸が通っている。




54 :2008/12/22(月) 06:22:57.84 ID:OkBJcQAf0
「いやぁん、えっちぃ」

裾を引っ張られたので悪ふざけしてみる。

「ばばばばばばばばかいってるなよ!おまえ達は人形なんだから、そんな気分になる訳無いだろ!」

「ちょっとぐらいなら真紅には内緒にしていてあげるわぁ」

今度は答えない。むっつりした顔で不満げに運針していく。

―――ちょっとからかいすぎたかしら?

それでもぶつぶつと不満を言いながらも、よどみなく精緻に縫っていく。

「ほらよ、不満・・・あるか?ないなら背中も縫いたいんだけどな、ほつれてきてるから」

ものの数分で縫い終えてしまった、不満などあるはずもない。

癪だが修繕レベルの作業ならお父様とまではいかなくても、槐レベルには達しているだろう。

「そおねぇ・・・ま、それなりのできだから任せてあげてもいいわよぉ」

勿体をつけて言う。正直な所めぐから力を吸う訳にいかないので、だいぶんドレスもくたびれてきていたから有り難い。

・・・おくびにも出さないが。




57 :2008/12/22(月) 06:27:53.25 ID:OkBJcQAf0
「ほら、向こう向けよ、・・・寒くないか?」

「暖かいわよぉ・・・あなたこそコートが無いので寒いのではなくて?」

「ちょっとはな、まあ、コートは縫うときに邪魔になるうわっ!?」

背中の羽でドームのように優しく包み込む

「メイメイ、明かりになってちょうだい」

このままでは縫えないのでメイメイに命じて明るく照らす。

「これでどうかしらぁ?」

「ん、あ、ああ、すごく暖かくなった。ありがとな、水銀燈」

「べぇつぅにぃ、私は寒さで震えて背中に針が刺さるのが嫌だっただけよぉ?」

「よし、ちょっとだけまってろよ、これだけ明るければ・・・」

背後なので見えないが、先ほどとは明らかにスピードが違う、凄い、槐を凌駕しているかもしれない。

先程のは暗かったからスピードが遅かった?道理だ。黒い服に黒い糸で裁縫しているのだから・・・




60 :2008/12/22(月) 06:31:54.46 ID:OkBJcQAf0
そこでもう一つの事実に気づく。

この少年は立ったままで、しかも私に着せたままで、これほどのスピードをだしている!?

もし工房で、ちゃんとした設備のあるところで・・・疑問を質問にして話しかける。

「あなた、ドレスとかは作るの?」

「たまに・・・頼まれて、ドレスはまだまだ難しいな」

「どうやって作ってるの?」

「普通に、型紙と針で、たまにマネキンがわりに真紅とかにきせて合わせるけど」

「だれかに教わったりはした?」

「難しい飾りとかは本で、あと槐先生の作業を見てかな、近頃はみっちゃんさんのドール服の本も借りるけど」

―――目眩がした。

全くなんの道具も無しに、師も無しに。この少年は至高にたどり着こうとしている。




61 :2008/12/22(月) 06:35:59.59 ID:OkBJcQAf0
「ほら、終わったぞ。羽がすれてほつれやすいみたいだったから、ちょっとだけ改造しておいたけど、よかったか?」

軽く羽を動かしてみる・・・前より格段に具合がいい。

「かまわないわぁ・・・でも真紅が・・・」「え?」

「真紅が羨ましいわね、いつも綺麗にしてもらえるのでしょう?」

「いや、そんなことはないけど、それにおまえだって別に家に来てもいいんだぞ?・・・何回かメールだしたんだけどな?」

「でも、真紅が・・・ねぇ?」

そう、結局はそこに尽きる。

「真紅はべつに素直じゃないだけで、そこまで嫌ってる訳じゃないとおもうんだけど」

「そう・・・かしら・・・ねえあなた、私の番組に真紅を呼んだらどうなるかしら?」

「どうなるって・・・そりゃ、ぶつぶつ文句言うだろうけど・・・やることはきっちりこなすんじゃないかな」

―――ぶつぶつ文句を言ってやることはきっちりこなす。




63 :2008/12/22(月) 06:39:40.41 ID:OkBJcQAf0
「ぷっ・・・くすくす、あはははははっ!」

「な、なんだよ急に!?」

「いえね、ちょっとおかしいことがあったものだから」

ぶつぶついいながらやることはきっちりこなす人間が、真紅のことをぶつぶついいながらやることはきっちりこなすと評している。

ああ、もう、悩んでたのがばっかみたい

「くだらないことよお、はい、お れ い」

「うわっ?ばっ!?なにをっ!」

頬に口づけてふわりと飛び上がる

「真紅には内緒にしておきなさぁい。また会いましょう、小さいマエストロ」

軽やかに飛び上がる、翼を広げて大空へ舞い上がる。

目指すはスタジオ、やはり電話をするならあそこからじゃないと




65 :2008/12/22(月) 06:43:01.65 ID:OkBJcQAf0

「あれ?銀様今日休みじゃ」「銀様ちーっす」「銀様今日ラジオあったっけ?」「おい、やべえよ、準備してねえよ」

顔見知りのスタッフ達が声をかけてくる。

「ああ、なんでもないわぁ、ちょっと電話を借りたいのだけど」

「ういっす、携帯なら俺が」

「出来れば局のを借りたいわぁ」

「それじゃあ、2スタの電話、めぐちゃんの専用のピンクの奴どうぞ」

「ありがと」

「銀様が礼を・・・」「すげえ、俺達に言うのはじめて聞いた」

いつものスタジオ、いつものセット。我侭を言って専用にしてもらっている。

「そこも改めなきゃねえ・・・、っとこれね」




69 :2008/12/22(月) 06:46:30.66 ID:OkBJcQAf0
電話をかける・・・呼び出し音・・・やけに喉が渇く・・・

「はい、もしもし、桜田ですが」

「あ・・・あ・・・えっと真紅いるぅ?」

間抜けな言葉しか出ない、これが精一杯

「真紅ちゃん?ちょっとまっててね」

・・・保留・・・どんな戦闘よりもヒリ付く感覚・・・

早く出て欲しいような、いつまでも出なくていいような・・・

「もしもし、お電話かわりました、真紅ですが」

「真紅ぅ?水銀燈だけど・・・」






to be continued





71 :2008/12/22(月) 06:53:02.45 ID:OkBJcQAf0
~あとがき~

1,2の時点では本当に真紅はゲストに呼ばないつもりでした
でも、みんなが真紅を待っていたのでこのような話とともに真紅と水銀燈のわだかまりを解消して見ました
ドシリアスなので読みにくかったかもしれません。申し訳ございませんでした。
なお、真紅と水銀燈の会話はいつか公開するときがあるかもしれません。

水銀燈以外は金糸雀、薔薇水晶、雪華綺晶と異色の組み合わせになりました
水銀燈が「はぐれドール」なので真紅サイドのキャラと絡ませにくいためです。
自画自賛ですがうまく行ったとは思っています