287: 2020/05/18(月) 13:43:16 ID:jEvIkXqU
梓「あれ?私の筆箱に入ってたシャーペンがない…」

288: 2020/05/18(月) 13:48:25 ID:jEvIkXqU
憂「…梓ちゃん、どうしたの?」ヒョイッ

梓「んー…、実は、今日シャーペンがなくてね…。多分私が家に置いてきちゃったんだと思う」アハハ…

憂「じゃあ私の貸すよ。丁度二本持ってるから、遠慮しないで使ってね」

梓「憂ぃ…ありがとう!神!!」

憂「いえいえ、そんなの畏れ多いよ~!!」
けいおん! 1巻 (まんがタイムKRコミックス)
289: 2020/05/18(月) 13:57:02 ID:jEvIkXqU
ガサゴソ…

梓(…あれ?まただ……)

梓(今日はちゃんと持ってきてたのになぁ…)

梓(きっとどこかで落としちゃったのかも)

梓(憂にずっと借りてる訳にもいかないし、とりあえず職員室の落とし物ボックスを見に行こう)

純「おはよー梓」

梓「!?な、何だ、純かぁ…」

純「SHR前から職員室に来てどうしたの?今日日直?」

梓(どうしよう…、別に大したことじゃないし、純に言うようなことはないかな……?)

290: 2020/05/18(月) 14:02:07 ID:jEvIkXqU
梓「…日直じゃないけど、進路のこととか先生に相談しに来たんだー」

純「えっら!!ま、頑張って☆そんじゃ!」

梓(良かった、バレてなさそう…。でも今日は純が日直だったような……?)

梓(仕方ないなぁ…。純、何か忙しそうだったし、私が日誌と出席簿を取りに行ってあげよう)

291: 2020/05/18(月) 14:10:25 ID:jEvIkXqU
梓「はい、日誌と出席簿」

純「嘘っ!?私今日日直だった!!?」

梓「そうだよ?も~…。次回からは忘れないでね?」

純「今回はたまたまだから!!ありがと、梓!」

梓「はーい」

梓(結局、いくら探しても見つからなかったなぁ…)ハァ…

梓(部室でもくま無く探したけど、トンちゃんの水槽の中やゴミ箱の中にもなかったよ…)

梓(憂…、今日も借りちゃってごめん!)

292: 2020/05/18(月) 14:16:22 ID:jEvIkXqU
梓(今日もなかった…、これで7回目だと思う)

梓(あのとき、ちゃんとシャーペン10本買っといて良かったよ…)ハァ…

梓(…これって、いじめなのかな…)

唯「あずにゃん!」

梓「…あ、唯先輩。こんにちは」

唯「最近暗い顔してるよ?何かあったら、この偉大なる先輩の私に相談してね!」フンスッ

梓「……ありがとうございます。でも今は大丈夫です」

梓(格好悪くて言えないな…)

293: 2020/05/18(月) 14:23:48 ID:jEvIkXqU
律「…もうやめようぜ」

唯「何で?中野は根っからウザいから、ああでもしなきゃ大人しくならないでしょ」

律「でも…」

澪「唯、いつも抱きついてるのにそこまで言うか…?」

唯「あれだけやれば私を疑ってこないと思ってやってるだけだよ?第一、好きで抱きついてないし」

澪「面倒臭い後輩ができて、唯も大変だなぁ。ま、何故か私には従順で助かるよ」

唯「澪ちゃんには人望寄せてるからね。私がちょっとだらけただけでアレだよ。アイツ」

294: 2020/05/18(月) 14:31:08 ID:jEvIkXqU
律「で、でも…、あんなに盗んでるのバレたら退学になっちゃうじゃん……」

唯「は?今更やめてよ。あれ全部私の部屋にあるから、絶対バレないって」

澪「憂ちゃんに見つからないことを祈るよ。唯が軽音部から欠けたら、私達もここにいる意味がないからな」

唯「ありがとう澪ちゃん!澪ちゃんならわかってくれると思ってたよ~」

律「…」

ガチャッ

紬「皆、早いわね~。梓ちゃんのこと?」

唯「あ、ムギちゃん!そうだよ!」

律「…よ!ムギ」ヘラヘラ

澪「おはよー」

295: 2020/05/18(月) 14:38:56 ID:jEvIkXqU
唯「アイツさぁ、後輩のくせに平気でタメ使って、常識なさすぎじゃん。ふつーにムカつくわあんなん」

律「それは…そうだけど……」

唯「りっちゃんだって前に『可愛げのない後輩だな~』って言ってたじゃん。言い逃れできないからね?」

律「………うん」

澪「よく構ってられるよな。あんな態度されて」

唯「澪ちゃん、他人事みたいに言うけど、こないだ澪ちゃんが私達とケーキ食べてるときさぁ、中野めっちゃ細目で澪ちゃんのこと見てたよ」

澪「嘘!?まあ中野のことだし、私、睨まれてたのかもな…」

296: 2020/05/18(月) 14:47:46 ID:jEvIkXqU
唯「絶対あれ睨んでたよ。つり目で睨んでたからすっごく怖かった~…!」

澪「もう、そういうのはもっと早く言ってくれよな?」ハハハ

紬「中野、早く退学してくれるといいわね~」

澪「そうだな。1年の時の平穏な生活に戻りたい」

唯「やっぱり?中野のせいで軽音部がかき乱されてて私もやってらんないわ」

紬「そうそう、中野ってサークルクラッシャーよね」

唯「それだよそれ!さっすがムギちゃん!」

紬「えへへ」

唯「そんな中野には、もうそろそろ屈辱を味わってもらうよ!」

297: 2020/05/18(月) 14:57:02 ID:jEvIkXqU
律「はぁっ、はぁっ………!」

律「梓!」

梓「ど、どうしたんですか!?こんな遅くにそんなに急いで…」

律「……シャーペン」

梓「…」

梓「何で知ってるんですか?」

梓(何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で????)

梓(何で律先輩が知ってるの??????)

律「…唯達が、梓のシャーペンを盗んでるって言ってたんだよ」

梓「え…」

律「いくら何でも酷いと思う。梓、もう両手で数えられないぐらい盗まれただろ?」

梓「…途中からはもう数えてないんですけど、そうだと思います……」

律「あと、唯達はこれからお前を痛めつけてやろうと企んでいる。気をつけな。何かあったらあたしに連絡して」

298: 2020/05/18(月) 15:09:13 ID:jEvIkXqU
梓「え……と……。ありがとうございます…気をつけます………」

梓(あの唯先輩達が…!?)ドッドッドッドッ……

律「信じられないよな…」

梓「は、はい……」ドッドッドッドッ………

唯「…あずにゃん、これ嘘だよ?」

梓「……へ?」

唯(うんうん、間抜けな声がお似合いだよ、中野には)

律「は………?唯、どういうこと…?」

唯「りっちゃんが、私達にシャーペンを盗んだことなすりつけてるの…」

299: 2020/05/18(月) 15:10:41 ID:jEvIkXqU
唯「憂から聴いたよ。もっと早く言ってくれれば良かったのに…」

梓「憂、が…?」

唯「うん。『梓ちゃん、最近筆箱をしょっちゅう開け閉めしてて、大丈夫かなぁ…』って言ってたから、私が詮索したら、『もしかすると、梓ちゃんのシャーペンが、ときどき誰かに盗まれてるのかも…』って。流石憂だよね、感が鋭い。だからさっき、憂にあずにゃんの居場所を聞いたんだぁ。そしたらまさか、犯人がりっちゃんだったなんて…」ピラッ

律「!?」

梓「…!これって、どういうことですか!?律先輩!!」

律「あ、あたしはこんなのやってない…!!その写真は捏造だ!!!」

唯(ごめんね、りっちゃん…。でもりっちゃんが寝返るのは許さないからね)

300: 2020/05/18(月) 15:15:11 ID:jEvIkXqU
唯「もう言い逃れできないよ?りっちゃん…」

律「ちがっ…!本当に違うんだよ……!きっと何かのいたずら…」

カラン…

梓「あ…私のシャーペン…」

律(何で私の足元に…!?)

澪「うう……これでいいのかな…?」コソッ

紬「りっちゃんと中野にはバレてなさそうだから大丈夫よ」コソッ

301: 2020/05/18(月) 15:20:49 ID:jEvIkXqU
梓「…完全に失望しました。私、律先輩がそこまで私のことを嫌ってるなんて知りませんでしたが、ここまでやるなんて…!!!しかも唯先輩達になすりつけるなんて………!!人としてサイテーです!!!!もう私と関わらないでください!!!!!」タッタッタッタッ…

ドサッ

律「あ…ずさ……」

唯「馬鹿だなぁりっちゃんは。あ、これ言いふらしたら、りっちゃんの指紋を付けてこの写真バラまくからね?」クスッ

唯「いつも通りに、また部活来てね♪あずにゃんも来させるから」

302: 2020/05/18(月) 20:49:05 ID:DvTSb0i2
律(どうしよう…)

律(あたしはただ、話に合わせたり、止めたりしてただけなのに………)

律(…こんなことになるなら、最初に無理して唯達と話を合わせなければ良かったよ)

律(さーて、今日からどう顔合わせればいっかな……)

ピンポーン…

律(澪かな?)

ガチャ

唯「おはよう、りっちゃん!」

303: 2020/05/18(月) 20:59:26 ID:DvTSb0i2
律「ああ、唯か…おはよ」

唯「テンション低いね?私じゃなくて、澪ちゃんが良かった?」スタスタ

律「…」スタスタ

唯「残念っ!澪ちゃんは人の物を盗む人とは一緒に居たくないそうです!」スタスタ

律(声、わざとデカくしてるだろ…。ああ、周囲の視線が怖い……)スタスタ

律「……言ったんだな、嘘を」ボソッ

唯「嘘じゃないよ?あずにゃんも目撃者だし」スタスタ

唯「まぁ今回は許すけど、次からこういうことを他の人の前で言ったら、もっと辱めに遭ってもらうからね」クスッ…

律「…わかった」

唯「ん、良い子良い子~」ナデナデ

304: 2020/05/18(月) 21:11:17 ID:DvTSb0i2
梓(…唯先輩には部活に誘われたけど、今行ったらあの先輩に何されるかわかんないし……)

梓(しっかし、唯先輩も私の状況を知ってるはずなのに、何であの人のいる部活に行かせようとするかなぁ…)

梓(まあ、悪気はないとします。それにしたってデリカシーに欠けてる)

梓(…けど、メールでも励ましてくれたし…)

梓(………唯先輩が何とかしてくれるよね、うん)

305: 2020/05/18(月) 21:19:13 ID:DvTSb0i2
紬「…でも、昨日のは流石にりっちゃんかわいそうだったよ?」

唯「いいのいいの。ムギちゃんは純粋だからそう思えるだけ」

唯「前からあのデコも中野のこと庇ってたしさ、別にいいんじゃない?同族なら早く潰さないと」

紬「そう…なんだ」

唯「あ、私今日はバナナケーキがいいなあ!」

紬「…うん、わかったわ」

紬(あの頃の唯ちゃんも、こんなこと考えてたのかな…?)

306: 2020/05/18(月) 21:24:29 ID:DvTSb0i2
律「…」

ガチャ

唯「そこにいるのはわかってるんだよ?りっちゃん」

グイッ

律「い、痛っ…!!」

バタン…

唯「あ、澪ちゃん呼んでこなきゃ」

唯(澪ちゃんが私の協力者だなんて知ったら、りっちゃんどんな反応するかな?ふふっ)

唯「そこで大人しくムギちゃんと待ってるんだよ?窃盗犯」

307: 2020/05/18(月) 21:29:57 ID:DvTSb0i2
律「…ムギも見てたんだな」

紬「ごめんね……」

律「…」

紬「でも私、中野を庇いたくはないから、これからも仲良くしてほしかったら、ちゃんと中野を退学まで追い込んでね」

律「…ムギまで、一体どうしちゃったんだよ……」

紬「中野梓が嫌いなだけ」

律「唯に脅されてるんじゃないのか?」

紬「まさか…」

律(そうだよな、ムギんちは大金持ちだし…)

308: 2020/05/18(月) 23:53:18 ID:BqO7hC3g
紬「それより」

紬「今は窃盗犯のくせに、よくのうのうと学校に来れたわね。りっちゃん」ニコッ

律「…お前!」ガタッ!!

紬「あら?いくらイライラしてるからって、暴行罪で罪に罪を重ねるつもり?」クスクス…

律「……もういい。警察には言わないから、その代わり梓を解放してやってくれよ…!」プルプル…

紬「梓ちゃんに嫌われちゃったのに?どうして?」

律「…大事な後輩が追い詰められてるとこを見過ごすのは、部長としても、もう…、終わりにしたいんだ……」プルプル…

紬「そう…、中野が退学したら良いわよ」

309: 2020/05/19(火) 00:01:16 ID:J1OOism2
律「中野、か…、お前らも変わっちゃったよな……」

紬「何言ってるの?あんな礼儀知らずの生意気な小娘には、名前を呼ばれる資格なんてないんじゃないかしら」

律(…)

律(そうだ、人間なんてすぐ、どうにだって変われる。最初から期待してたあたしが馬鹿だったんだ…)ギュッ…

律「…あたしのことはどうしたっていい。退部させられようが、たいが、く……させられようが!ただ、梓は…!絶対に守る。後輩いじめなんか、もう絶対にしないって決めたんだ………!!」

ガチャ

唯「いや~、良いご身分だこと」

紬「唯ちゃん!それ私のセリフ!」プンスカ

唯「ごめんねムギちゃん~、一回言ってみたくて」

310: 2020/05/19(火) 00:15:57 ID:J1OOism2
唯「ほらほら、早く澪ちゃんも出ておいで~♪」

澪「…」

澪(……律、ごめん…………)

唯「りっちゃんがぬ・す・ん・だあずにゃんのシャーペンを落としたとこ、澪ちゃんも見たんだってさ~!」

律「……嘘………?」ビクビク…

唯「ひっどいなぁ!本当だよぉ!!」

律(…なるほどな。『あずにゃん』呼びってことは、ドアを開けっ放しにしてるからか…はは……)

唯「はい、澪ちゃん。恥ずかしがらずに、ここは幼なじみとしてしっかりと言うべきだよっ」

律(澪っ!何も言うな!!恥ずかしいフリしとけよ……なぁ…)ビクビク…

澪(あぁあ……律…………)

澪「……昨日、律が梓のペンを落としてるのを、たまたま自転車から見て……。り、り、律が、そんなことするなんて………!衝撃だったよ…。もう、私のこと、友達だなんて思わないでほしい。あと、周りにも絶対に言うな。こんなせ窃盗犯の類友だって、おお思、われたくっないんだ……」

311: 2020/05/19(火) 00:26:43 ID:J1OOism2
律(……さっき『梓の為なら何でもする』みたいなことを言っちゃったけど、友達を失うのは、どんな拷問よりも怖いんだ…。その上、仲の良かったはずの、幼なじみまで……!)

唯「…あずにゃんもう来るよ」

律「待って!!!み、澪っっ!!絶好っ!するからっ……!!!!も、う…梓を、解放してください……」

澪「…窃盗犯の言うことなんて誰が聴くんだよ」

紬「そうよ、まあ…犯罪者の不幸でティータイムが最高になるからいいけどね。さあ唯ちゃん、澪ちゃん、今日はアールグレイを淹れたわよ~」

唯「わ~い!ムギちゃんありがとう!アールグレイって、何故かどんなケーキともベリーマッチなんだよね~♪」

澪「確かに他の紅茶と一味違うよな。特にムギが淹れると、な」

紬「まあ♪嬉しいっ」

312: 2020/05/19(火) 00:34:46 ID:J1OOism2
梓(今日は筆箱ごとカバンの中に入れといたから大丈夫な…はず)

梓(先輩の内の誰かが、律先輩が盗んだことに気が付くと信じます)

梓(…あの人がいなければいいなぁ……)

ガチャッ

梓「失礼しまーす…」

唯「あずにゃ~ん!!」ダキッ

梓「にゃっ!?く、くるひぃれすよぉ…」

唯「ちぇ~、いけずぅ」

梓「もう子供じゃないんですから、拗ねないでください!」

梓(…恐怖心を、溶かそうとしてくれてるのかな)

313: 2020/05/19(火) 00:44:55 ID:J1OOism2
梓(そういえば、律先輩は……)チラッ

梓(珍しく黙ってる)

梓(窃盗犯なのがバレたんだから、まあ当然か)

梓(あの人の割には身の程をわきまえたんだろうなぁ。でも、それなら部活来なきゃいいのに)

紬「はい、梓ちゃん。今日はバナナケーキじゃなくてごめんなさいね…」コト…

梓「いえ、大丈夫です。普段から贅沢させてもらってるので」

紬(色々な意味で、本当に贅沢者よね)

紬「そんな、仲間なんだから気を遣わなくて平気よ」

梓「えっ!?えへへ…本当に、ありがとうございます…」

律(梓の照れた顔、かわいいじゃないか。騙されてるのは気の毒だけど…)

314: 2020/05/19(火) 11:48:17 ID:RAftAZj.
梓(…やっぱり)

梓(律先輩の分はない)

梓(……誰かから無理矢理連れて来られた、とか?)

梓(若しくは…、律先輩のことだから、自分で来ちゃったのかもしれないなぁ)

梓(……うん。考えてても馬鹿馬鹿しい、こんな人の為に部活辞めるもんですか!)

澪「そろそろ練習しよっか」

律「…」

唯「今日からあずにゃんがドラム叩いてもいいんだよ?」

唯(その代わり、みっちり扱いてやるけどね♪)

梓「あ、いや…私はギター一筋なので大丈夫です……」

唯「そっかぁ。じゃあ、そろそろ新しいドラマー見つけないとなぁ」

315: 2020/05/19(火) 11:55:36 ID:RAftAZj.
澪「そうだな」

紬「いざとなったら憂ちゃんを呼びましょうよ」

梓(……どうしてこんなにモヤモヤするんだろう)

澪「ナイスムギ!憂ちゃんの方が窃盗犯なんかよりも上手そう」

梓(澪先輩まで、律先輩のことをシカトどころか………うぅ)

唯「絶対憂の方が上手いよ!!…じゃあ、誰か合図して~」

紬「は~い♪1・2・3・4っ」

316: 2020/05/19(火) 12:05:50 ID:RAftAZj.
唯「あのクソドラムがなかったから、さっきの演奏は自分至上、一番良かったよ~!」

澪「ああ。リズムもキープできない奴と仲良く練習なんて、最初から無駄だったんだ」

律(唯、澪…、あたしのこと、そう思ってたんだ……)

紬「そうよね、あんなのでも家で練習してるのかしら?」

律(紬まで……、あたしは練習してるよ、毎日…)

紬「梓ちゃんはどう?」

梓(え…)

梓(……どうせ律先輩は退学するし、悪口にならない程度ならいっか)

梓「窃盗犯のドラムって、窃盗犯らしく自己中心的じゃないですか。それが無くなるだけで、他の楽器との調和がし易くなっていいと思います」

317: 2020/05/19(火) 12:39:31 ID:lkYUwtCs
律(梓も………)

唯「よく言った!あずにゃんっ」

澪「そうそう、あんなのと幼なじみだったのが恥ずかしいよ」

紬「澪ちゃんお気の毒に…」

澪「ありがとな、ムギ」

律(はは、黙ってればいいんだ。空想に耽って、なにも聴かなきゃいい……)

律(あたしは大丈夫)

律(皆が幸せなら)

318: 2020/05/19(火) 12:48:44 ID:lkYUwtCs
澪「窃盗犯、まだ2ヶ月もここに来てるよ」

唯「面白いよね。呼んだら元気なフリしちゃってさ」

紬「いつかはあの頃に戻れる、とか思っちゃってるのかもね」

唯「そんな訳ないのにね。犯罪者の居場所はここにはないよ」

梓(…これで、いいんでしょうか)

梓(あれから、唯先輩達は、あの人がいないとき、陰口を叩くようになりました) 

梓(………だんだん、疑問が沸いてくるのです)

梓(あんなに仲の良かった先輩達が、どうして……)

梓(犯罪者になったからって、仲間をすぐ見捨てられるんでしょうか)

319: 2020/05/19(火) 14:54:57 ID:zirEP/gY
ガチャッ

唯「あっ!窃盗犯遅~い」

澪「クラスではお前が窃盗犯だってこと、殆どの人にバレてなさそうだ。黙っていてあげてる私達に感謝しろよな、犯罪者」

梓「あ、はは…。早く来いよ窃盗犯!」グイッ

紬「後輩にタメ使われてて恥ずかしいわね、窃盗犯」クスクス…

律「…」

梓(…私がタメになっちゃったの、遠まわしに皮肉られてる………?)

梓「ははは、そうですよ、みっともない」

紬「貴方もよ」ボソッ

梓「…?」

紬「どうしたの?そんなに見つめて…」

梓「……いえ、何でもないです…」

紬「そう?何か顔に付いてるのかもって思ったわ」

梓(聞き間違いだよね………?)

320: 2020/05/20(水) 00:00:39 ID:7GU5nT.s
唯「ムギちゃん」

紬「何?」

唯「りっちゃんのこと、まだかわいそうって思ってるんだね」

紬「…」

唯「口ではあんなキツ~いこと言っといてさ、私がりっちゃんやあずにゃんに話しかけようとしたら、結構ムギちゃんに遮られるんだよね~」

唯「まぁ、ムギちゃんは中野のことは嫌ってるってわかるよ。でも、りっちゃんにはどこか同情してない?」

紬「…同情なんてしてない」

唯「ならいいんだよ~!ムギちゃんには中野側に付いてほしくないだけだから!じゃーねっ」

紬「……またね」

321: 2020/05/20(水) 00:05:00 ID:7GU5nT.s
~♪

カパッ

梓「メールだ」

ピッピッピピッ…

梓「…律先輩からだ」

梓「………もう貴方のなんて見ません。さようなら」ピッ

梓「ふぅ…何だか気味悪かったなぁ」

梓(……明日、ちょっとだけ問いただしてこうかな…)

322: 2020/05/20(水) 00:10:44 ID:7GU5nT.s
律「あ……梓、話を聴いてくれるんだよな…?」プルプル…

梓「メールしたじゃないですか。律先輩からのメールは削除しちゃいましたけど……、その後、少しだけなら話を聴いてあげてもいいかなって思えてきたんです」

律「…そうなんだ」ギュッ…

梓「泣いてます…?」

律「煩いやい!」

梓「…ふふっ。律先輩のしたことは許せてませんけど、昔の律先輩に戻ったみたいで嬉しいです……」

律「…そのことなんだけど」

梓「はい?」

323: 2020/05/20(水) 00:24:36 ID:7GU5nT.s
律「………梓、落ち着いて聴いてくれ」

梓「…はい」

律「あれは、本当に、唯達が仕向けたんだ………」

梓「……信じなくてもいいって条件なら、続きを聴きますよ」

律「………わかった。信じられないのも仕方ないよな」

律「唯達は、前からお前のことを嫌ってた。特にあの唯が、陰で『中野』呼ばわりして、『上下関係もわからない生意気な後輩だから、退学させてやりたい』って言ってたんだ…………」

梓(……あの唯先輩が?どうせ作り話でしょう。今日の私は余裕があるので聴いてあげますけど)

律「それで……唯は単独で梓のシャーペンを盗んで、梓の精神を少しずつ、追い詰めていこうとしたんだ」

律「あたしも最初は何度もやめろって言った。でもだんだん、『唯のことだからすぐ返すだろう』と安心しきって、唯が7本目のシャーペンを盗んだ、と言ってきたときまではテキトーに話を合わせてたんだ…。…言い訳させてもらうと、唯がキレたら怖そうで、逆らえなかったんだ………」

324: 2020/05/20(水) 00:37:26 ID:7GU5nT.s
律「あの反発で、あたしはまたやめるように言ったんだ。そしたらまぁ、脅されたよ。唯に。『お前も共犯だ』って。やっぱり、あのことが気に入らなかったのか、あたしが梓に唯達が盗んでたことを忠告しようとしたら……、唯に、仕向けられたんだ」

律「実際、9本目からか?に、澪とムギも参加するようになった。盗まれたシャーペン、どうなってたと思う?途中までは全部唯の部屋にあったけど、途中からは澪とかムギがストレス発散として折ったり、踏んだり、ミキサーに入れたりしてたんだぜ……。それらをあたしに笑顔で見せつけてくるアイツらは正気の沙汰とは思えなかったよ。だから、梓に忠告する気になれたんだ。丁度唯が梓を痛い目に合わせてやるって言ってたしな」

梓「………これで終わりですか?」

律「ああ。終わりだ」

律「別に同情してもらいたかった訳じゃない。どうせこれで最後だから」

梓「……最後」

律「そう。だから、次の言葉が最後の部長命令だ」

梓「…命令まで聴くなんて言ってな」

律「あたしを抱きしめてくれ」

325: 2020/05/20(水) 00:49:09 ID:7GU5nT.s
梓「………私、まだ律先輩の言うこと、信じられませんよ」

律「それでも、いい」 

梓「…何で私なんですか」

律「守れなくて、ごめん。それを伝えたいから………だと思う」

梓「…」

律「あれから梓のシャーペンが盗まれなくなったことだけが、今のあたしの幸せだよ…」

梓「…本当に盗んでないなら、何で知ってるんですか?」

律「唯が、『りっちゃんがこのまま大人しくしてれば、中野のシャーペンのこと、やめてあげよっかな~』って、あたしに言ってたから」

梓「……それでも、今の私は、律先輩を抱きしめることができません」

律「………そっか。そうだよな…。話だけでも聴いてくれてありがとな」

梓「いえ…」

梓「あの」

326: 2020/05/20(水) 00:53:35 ID:7GU5nT.s
梓「学校は、これからどうするんですか?」

律「…行くよ。行くのやめたら唯に殴られそうだから」

梓「私も、まだ『窃盗犯』呼ばわりしちゃいますよ…多分……。だから、ほ、んとう、なら……、唯先輩に怯えて行く必要はないと思います………」

律「…騙してごめん。これから氏ぬから大丈夫だよ」

梓「え」

327: 2020/05/20(水) 09:39:12 ID:KQrb/qKI
梓「駄目です!!自殺はダメ!!!」

律「…じゃあな」

梓(……このままだと、律先輩が氏んじゃう…!)

梓(…何で氏んだらダメなんだっけ?)

梓(もう、終わったんだ。放課後ティータイムは)

梓(やり直せないんだ。時間は巻き戻せないんだ……)

梓(でも、本当に氏ぬかわからない。引き留めてほしかったんじゃないの?)

梓(私はまだ、律先輩が怖いです。夢でも貴方にいじめられてます)

梓(もう、いなくなってくれた方がいいんじゃないかな)

梓「失礼します、律先輩」

328: 2020/05/20(水) 10:00:49 ID:KQrb/qKI
梓(あの日から、律先輩は行方不明ということで唯先輩達のクラスを混乱させたらしい。その約一週間後に、他県の山奥で律先輩の遺体が発見されたと地方新聞が報道した。氏因は自殺と推定されている)

梓(律先輩は、どんな気持ちで氏んだんだろう)

梓(私があのとき引き留めてれば、氏ななかったに違いない)

唯「あ~あ。窃盗犯氏んじゃったねぇ」ププッ

澪(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい唯に脅されて同調してたんだごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい)ガタガタガタガタ…

紬(りっちゃんが自分のせいで自頃しちゃって、澪ちゃんだって震えてるのに、唯ちゃんはどうして笑ってられるの…?空気が悪くなるから話を変えましょう)

紬「ここは刑務所じゃないんだから、犯罪者の話をしたってしょうがないわ。それより、お茶でもしましょう」

唯「うん!そうだね」

梓「…はい」

329: 2020/05/20(水) 10:11:45 ID:KQrb/qKI
梓(いくら本当に犯罪をなすりつけられたとしても、どうして唯先輩は笑っていられるのでしょうか)

梓(本当は、律先輩の言ってたことが正しかったんじゃないかと思えてきました)

梓(最後まで、信じてあげられなくて、ごめんなさい…!)

律母「…中野さん、ですか?」

梓「……はい」

律母「律と仲良くしてくれてありがとう。律もきっと天国で喜んでいるわ」

梓(律先輩が唯先輩達にされてきたことを、知らないんだこの人は……)

梓「…そうだといいですけど、ね…」

梓(さようなら、平穏)

梓(線香の煙で、私は貴方の最期を追いかけようと思いました)ウルウル…

梓(私も氏ぬので、もう寂しくないですよ)

梓(さようなら、唯先輩、澪先輩、ムギ先輩)

330: 2020/05/20(水) 10:20:55 ID:KQrb/qKI
唯「中野もさ、退学どころか自頃しちゃったみたい」クスッ

澪「ああ…」

唯「どうして中野が氏んだのに悲しそうな声出すの?これは朗報だよ?」

紬「澪ちゃん、もう部屋に籠もることはないのよ?出ていらっしゃい」

澪(もう、ほっといてくれよ……!)

唯「澪ちゃんがあずにゃんのシャーペンを盗み出してからこうなったんだよ?」

唯「澪ちゃんの殺人犯」

澪(……唯?)

唯「今すぐに出て来ないと、澪ちゃんが中野の背中を突き落とした画像をバラまくからね」

引用: 律「あたし、部長だし!」