732: 2016/06/06(月) 01:38:52.89 ID:ihB5mKIT0



最初から:【艦これ】鳳翔「あゝ栄光の、空母機動部隊!」
前回:鳳翔「あゝ栄光の、空母機動部隊!」【幕間11 ~Let's Sing Together~】

幕間12


よく、同じ夢を見ていた。

あの人のおかげで、遠くなっていた記憶。


皆で笑って、泣いて、競い合って、精進を重ねてきたあの子たちが。

生まれたときから、私が成長を見守ってきたあの子たちが。


失われてゆく。

目の前で苦しむ愛しい子たちに、しかし私は何もできない。
733: 2016/06/06(月) 01:41:49.76 ID:ihB5mKIT0

冷たい水。

―― 無事ならいいの……先に逝って……待って――


燃え盛る炎。

―― 飛行甲板の火――ないね……ごめん――


動かぬ躰。

―― ごめんなさい――処分……して――


最後の、写真。

―― 沈むの――月を肴に一杯――



「――――あぁああああっ!!」

734: 2016/06/06(月) 01:42:51.77 ID:ihB5mKIT0

鳳翔「!!」

鳳翔「――はっ、はっ……」

鳳翔「ふぅ……また、同じ夢」

鳳翔(この夢は久しぶりね。最近は見なくなっていたのに)

鳳翔(最後に見たのは……ちょうど1年前、あたりだったかしら)

鳳翔(そうだった。夢を見て、あの人が助けてくれたのよね)

735: 2016/06/06(月) 01:43:27.28 ID:ihB5mKIT0

鳳翔(――そうだ。あの人を起こしちゃったかも)

鳳翔「ご、ごめんなさい。大きい声をだして……あら」

鳳翔「……あなた?」

鳳翔「あなたっ!! どこですか!?」

提督「――鳳翔」

鳳翔「!!」

提督「ごめんよ、1人にして……大丈夫だ、ちゃんといるよ」

鳳翔「あなた……」

736: 2016/06/06(月) 01:43:59.36 ID:ihB5mKIT0

鳳翔「ど、こへ行かれていたのですか?」

提督「汗をかいてたようだから、手ぬぐいと水差しを持ってきた。ほら」

鳳翔「あ、ありがとうございます……んっ」

鳳翔「――ふぅ。安心しました、目が覚めたら隣にいないから」

提督「ごめんごめん」


提督(安心したのはこっちだよ。また目が覚めなくなるんじゃないかと……)

737: 2016/06/06(月) 01:45:24.08 ID:ihB5mKIT0

鳳翔「それにしても、水差しまで持ってきてくださったんですね。用意がいいというか」

提督「……少し、心配だったから」

提督「夏が近づくこの時期は、不安定になる子もいるし」

提督「特に今日は70年前の、あの作戦の日だからね。注意するのは当たり前だろ」

鳳翔「ご、ごめんなさい。ご迷惑を」

提督「そんなもの気にするな。支えていくと決めたんだから」

鳳翔「ありがとう、ございます」

738: 2016/06/06(月) 01:46:05.23 ID:ihB5mKIT0

提督「……よければどんな夢か、話してもらえるかな」

提督「吐き出して、楽になることもあるだろうし」

提督「私も、できる限りのことをしてあげたいし……もちろん、辛ければ話さなくていいんだけど」

鳳翔「いえ、大丈夫ですよ。こちらからお願いしたいです」

提督「無理、してないか?」

鳳翔「いいえ。私も、あなたに聞いておいてほしい」


鳳翔「――ただ、手を握っていてもらえますか?」

提督「もちろん」

739: 2016/06/06(月) 01:48:06.61 ID:ihB5mKIT0

鳳翔「お察しのとおり、MI作戦の夢を見ていたんです」

鳳翔「あの戦争での記憶と、この躰を与えられてからの記憶が混ざった、不可思議な夢なのですが」


鳳翔「それでも、結果はいつも同じ」

鳳翔「私は、先を進むあの子たちを必氏で追いかけて――そして、追いつけない」

鳳翔「次々と、躰が燃えていく。傾いでいく……沈んでいく」


鳳翔「あの子たちに、私は必氏で手を伸ばすのですが」

鳳翔「でも、届かない。すぐそこにいるのに、助けられない」


鳳翔「――そして、私だけがひとり残される」

740: 2016/06/06(月) 01:49:00.00 ID:ihB5mKIT0

鳳翔「私は、海の底を知りませんからね」

鳳翔「夢の中の、想像の恐怖というものが……あの子たちに比べて大きいのかもしれません」


鳳翔「――勝手ですよね、私。まだ、決戦は終わっていないのに」

鳳翔「残った子たちや、護るべき人たち……もしかしたら、軍艦としての使命も」

鳳翔「それよりも自分の気持ちを優先して、あの子たちのところへ行こうとしていたんです」

鳳翔「他のことを、全部投げ捨てて……」

741: 2016/06/06(月) 01:49:57.81 ID:ihB5mKIT0

提督「――勝手なものか」

鳳翔「え?」

提督「親が、自分の子を愛しいと思って何が悪い」

提督「少なくとも、今ここにいる君が、その気持ちを否定することなんてないよ」

鳳翔「あなた……」

提督「誰が何と言おうと、私はそう思うから。もっと頼ってくれていいんだからね」


鳳翔「……ふふ」

鳳翔「ありがとうございます。楽になりました」

提督「ならよかった――さあ、もう布団に戻ろう」

鳳翔「はい」

742: 2016/06/06(月) 01:51:11.93 ID:ihB5mKIT0

鳳翔(――ああ、やっぱり。あなたは本当に優しい)

鳳翔(ずっと苦しんできた記憶から解放してくれるのは、きっとあなたなのでしょうね)


鳳翔(――でも、だからこそ。すこし、わがままを聞いてほしいんです)

鳳翔(わたしと、あの子たちを、守ってくれるという約束)

鳳翔(……それをずっと続けたいという、私のわがまま……)


鳳翔(やはり、例の計画を急がなくては)

鳳翔(――喜んでくれると、いいのですが)

743: 2016/06/06(月) 02:01:03.01 ID:ihB5mKIT0

まずは1か月以上更新しなかったことをお詫びします。すみませんでした!
5月は定時で帰れたのが3回とかちょっちおかしくないですかね……社会人の方々はどうやって時間作って書いてるんでしょう

第5話は書き進めています。今日のだけ何か空気感違いますが、次回からはまたラブコメっていきます。
何回謝ったか知れませんが、もう少しだけ! お待ちいただけると幸いです。

745: 2016/06/06(月) 11:14:51.41 ID:U0ciOcXGo

次回:鳳翔「あゝ栄光の、空母機動部隊!」【最終話】


引用: 鳳翔「あゝ栄光の、空母機動部隊!」 【お題募集】