749: 2016/08/01(月) 01:40:50.21 ID:doOtmwzp0

750: 2016/08/01(月) 01:42:22.83 ID:doOtmwzp0


第5話 ~落花流水~


赤城「呉の提督さんがお越しに?」

提督「うん。またE海域の時期だし、お互いの確認にね。ここに1泊する」

瑞鶴「1泊? 短い出張ね」

提督「あいつの報告は、簡潔なうえに的確でな……時間がかからないんだ」

赤城「提督と同い年の方でしたよね。学校の同期で」

提督「うん、そう。結局、最後まで成績は勝てなかったよ」

瑞鶴「へー。すごいのね、呉さんって」

提督「……航空論で負けたことはないけどな」

赤城(ちょっとムキになっちゃう提督もかわいい)
751: 2016/08/01(月) 01:46:11.83 ID:doOtmwzp0

瑞鶴「――ところで赤城さん、今日はみんなでご飯行くんでしょ」

赤城「グラーフさんも入ったことですし、久しぶりに正規空母の会を……と、思ったんですが」

提督「ああ、全然かまわないよ。向こうも秘書艦だけだし」

赤城「よろしいんですか? 空母がいなくなっちゃいますが」

提督「鳳翔がいるし、話す内容は決まってるから。みんなには改めて周知するよ」

瑞鶴「お母さんに任せちゃって大丈夫か。早めに帰ればいいわね」

提督「いいんだ、ゆっくり楽しんでおいで。費用は持ってあげるから」

752: 2016/08/01(月) 01:48:42.22 ID:doOtmwzp0

赤城「ほ、本当ですか!?」

提督「グラーフもここに来てくれることになったんだし、お祝いも兼ねて」

赤城「いや、うーん……しかし……」

瑞鶴「あのー、大丈夫なの提督さん? 給料日前でしょ」

提督「大丈夫だよ、さすがに居酒屋の会計ぐらい」

赤城「あのお店、お酒の料金は別なんです」

提督「飲み放題じゃないのか?」

瑞鶴「それだと質が悪くなるからって、加賀さんと蒼龍さんがわざわざお店を探してくれたのよ」

赤城「お料理はコースですが、お酒は別料金なぶん全国の銘酒が飲めるんだそうです」

753: 2016/08/01(月) 01:49:30.10 ID:doOtmwzp0

提督「へぇ。この時世で、しっかりした経営してる店だな」

瑞鶴「まー、無理しないでよ提督さん。これまでもパーティとか景品とか、私たちのカラオケとかで出費してたでしょ」

赤城「あう。さすがにカラオケで頼んだ料理は、今度払いますから……」

提督「――いや」

提督「やっぱり私が持つよ。お金気にしたら、気持ちよく飲めないだろうしな」

瑞鶴「え、本気なの? 正規空母はウワバミぞろいだよ」

提督「いいんだ。上げて落とすのも嫌だから」

754: 2016/08/01(月) 01:50:19.94 ID:doOtmwzp0

赤城「そんなの気にしませんのに」

提督「他の子が遠慮するかもしれないから、私が持つことは内緒な。――はい、これ」

赤城「お財布、お預かりします」

提督「足りなかったら私の身分証を使ってね」

瑞鶴「そこまでするとは、覚悟してるわね」

提督「いざとなれば店を買い取ればよし」

瑞鶴「いやどこまで覚悟しちゃうのよ」

759: 2016/08/09(火) 00:53:41.20 ID:GzlUWDB1O

赤城「――と、いうわけで。本日一八〇〇から始めますので、遅れないよう集合してくださいね」

瑞鶴「代金はとりあえず赤城さんに払ってもらって、後日集めることになったわ」

翔鶴「赤城先輩が全員ぶんを? 7人で割るのが早いんじゃないでしょうか」

加賀「割り勘になったら、おそらく貴女が一番損をするわよ」

瑞鶴「翔鶴姉、そんなにお酒強くないもんね」

翔鶴「う……では、お言葉に甘えます」

加賀「赤城さん、給料日前では?」

赤城「大丈夫! 鎮守府のお姉さんとして、それくらいのたくわえはあります」エヘンプイ!

赤城(払ってくれるのは提督ですけど!)

760: 2016/08/09(火) 00:54:31.72 ID:GzlUWDB1O

蒼龍「グラーフが参加するのは初めてだよね」

Graf「ああ。この鎮守府の、空母の強さの秘密を学ばせてもらおう」

Graf「クウボノカイ、楽しみだな!」

蒼龍(……ほとんど、ただの飲み会だってことは黙っててあげよ)


飛龍「あー、私ちょっと遅れていっていいかな? 工廠に、艤装の整備お願いしててさ」

赤城「そうですか、場所はわかりますよね?」

飛龍「大丈夫大丈夫。なるはやで行くから、ごめんねー」

761: 2016/08/09(火) 00:55:16.34 ID:GzlUWDB1O





呉「――おう。来てやったぞ」

榛名「て、提督! あいさつでそんな態度は」

提督「……相変わらずだな、お前は」

鳳翔「ようこそいらっしゃいました。呉さん、榛名さん」

呉「出張とはいえ、ひさびさの京都旅行なんだ。しっかりホストしろや」

提督「なら少しはゲストらしい態度をとれよ!」

鳳翔「宿舎へご案内いたします。こちらへどうぞ」

榛名「お世話になります、鳳翔さん」


鳳翔「――あの、呉さん。例のものは」

呉「ああ、持ってきてるよ。夕方でいいだろ」

鳳翔「はい!」

762: 2016/08/09(火) 00:58:53.74 ID:GzlUWDB1O

提督「長旅だったろう。会議は明日にするか?」

呉「いや、むしろ今日やっつけたい。そんなにかからないからな」

提督「お前が良いならいいんだが」

呉「そもそも、わざわざ出張するほどの内容でもねえんだよ。作戦書を送れば済む」

提督「それでも口頭で聞きたいよ。お前の報告文は簡潔すぎるからな……」

呉「うちの艦隊はそれで結果を出してくれる。細を穿っても柔軟性がなくなるだけだ」

提督「大雑把すぎも問題だろう、次のE海域は――」

呉「わかったわかった。だからちゃんと来てやっただろうが」

提督「本当にわかってるのか」

呉「さっさと終わらせるぞ。明日は榛名と観光だからな」

提督「本当にわかってるのか!?」

763: 2016/08/09(火) 01:01:06.45 ID:GzlUWDB1O

鳳翔「こちらです。お部屋はおひとつということで――」

榛名「ええっ!? ひとつなんですか!?」

鳳翔「あ、あら? 呉さんのご連絡では、お部屋はいっしょだと」

呉「普通だろうよ、夫婦なんだから。お前もいい加減慣れろよ」

榛名「で、でも、ここは鎮守府なんですよ? 他の艦娘に見られたら……」

呉「別にやましいことなんかねえだろ」

榛名「えっ」

榛名(それはそれで、ちょっと……)

鳳翔(榛名さんの気持ちわかりますねぇ)

764: 2016/08/09(火) 01:08:43.54 ID:GzlUWDB1O

呉「――以上から、次のE海域攻略は中規模の作戦が予想される」

呉「また横須賀に集結して、連合艦隊を組む場合も想定すべきだろうな」

提督「了解。いつも通りわかりやすい説明だった」

呉「それから、お前の報告にあった電波障害だが。やはりここ以外の海域では確認されてないな」

提督「そうか。まあ予想通りだな」

呉「深海棲艦の姫と話したってのはマジなのか?」

提督「ああ。信じてくれなくてもいいんだが」

765: 2016/08/09(火) 01:10:33.20 ID:GzlUWDB1O

呉「直接、鎮守府に交信してくるとは。どんなやつか会ってみたい気もするな」

提督「積極的に戦いたい連中ばかりじゃない、と言ってたけど……鵜呑みにするわけにもいかないし」

呉「今さらな話だが、敵さんもやっかいな成長をするもんだな。天候も変えられるのか」

提督「うん。その姫の話じゃ、かなりの実力がないと無理とか言ってたが」


呉「いずれにせよ、同じような場面に出くわしてパニクるのは避けたい」

呉「対策になるかわからんが、霧島が22号電探を改良したものを持ってきた」

呉「明石に渡しておいたから、前回の電波障害のデータと合わせて確認してくれ」

提督「わざわざすまないな。よろしく言っておいてくれ」

766: 2016/08/09(火) 01:11:40.95 ID:GzlUWDB1O

呉「まあ、こっちからはこんな所か」

提督「ありがとう。私たちからは――鳳翔」

鳳翔「はい。陸上攻撃機、および局地戦闘機の当鎮守府運用データです」

呉「おー、助かるわ。今回も使うことになるだろうからな」

榛名「ありがとうございます! これでもっと効率的に配備できますね」

提督「横須賀と佐世保にも送っておいたから、作戦前にもう一度確認しておこう」

呉「相変わらず、開発はできないのが難点だな。もう少し余裕持たせたいところだが」

767: 2016/08/09(火) 01:12:40.96 ID:GzlUWDB1O

呉「――さて、っと。もう話しておくことはないな?」

提督「ないけど……相変わらず早いな、1時間ちょっとで終わるとは」

呉「会議が無駄に長引くのは無能の証だ」

提督「そういや、学校時代からそんなこと言ってたな」


榛名「鳳翔さん、よろしければお茶をお淹れしますので、場所を教えて――」

鳳翔「ああ、そんな! お客さまにやらせるわけには――」

―― ハルナガ ヤリマスカラ! イエ、ワタシガ……


呉「余裕がないと、こうして和むこともできねぇしな」

提督「まったくだ」

呉「かわいいだろ?(榛名が)」

提督「ああ、かわいいな(鳳翔が)」

768: 2016/08/09(火) 01:13:41.33 ID:GzlUWDB1O

呉「――おーい、榛名。いったん部屋に戻るぞ」

榛名「あ、はい……でも、お茶は?」

呉「部屋にティーセットがあっただろ。そっちで淹れてくれ」

榛名「は、はい! お任せください!」

提督「よし。それじゃ解散にするか」

鳳翔「何か必要なものがあれば、すぐおっしゃってくださいね」

榛名「はい! おつかれさまでした!」

769: 2016/08/09(火) 01:14:35.92 ID:GzlUWDB1O





提督「なあ、鳳翔。来客もあることだし、今日の夕飯は外で――」

鳳翔「あ、ごめんなさい。今日は別の方とお約束があるのです」

提督「――え?」

鳳翔「それじゃ、失礼しますね。うふふ」


榛名「あ、あの、提督。舞鶴さんから聞いたんですけど、この近くに美味しいレストランが――」

呉「あー、すまん。今日は先約があるんだ、明日にしてくれるか」

榛名「――え?」

呉「おっと、もう時間だ。また夜にな」



提督「どういうことだ!?」

榛名「どういうことなの!?」

781: 2016/10/14(金) 13:03:07.82 ID:c5vgNDYAO





鳳翔とケッコンカッコカリして、およそ1年半。

お互いに話し合って、カッコカリを外すのは戦後と決めているのだが。


最近は艦隊のみんなの練度も上がって、装備も整って。

ある程度は出撃も落ち着いてきたと感じている。

ここらでひとつ、新たな関係を始めてみるのもいいんじゃないか――


提督「――と、思うんだけど。どうだろう」

「…………」

「……うん。あのさ、決意は伝わってくるけどさ」



飛龍「ゼッタイ相手間違ってるよね」

提督「そんなことはないぞ」

783: 2016/10/17(月) 12:40:52.84 ID:lErojPIVO

飛龍「いきなり連れ出されて、何言われるかと思ったら……」

提督「すまないね、飲み会の前なのに」

飛龍「それで、新たな関係って? 具体的に考えてるの?」

提督「家を買う」

飛龍「」

提督「そして私と鳳翔と君たち6人、1つ屋根の下で暮らすんだ」

飛龍「ファッ!?」

784: 2016/10/17(月) 12:44:03.59 ID:lErojPIVO

飛龍「ななな、なんで!?」

提督「冷静に考えてみると、鳳翔の夢であるお店を出すというのはいつになるかわからない」

提督「敵もどんどん新しい奴が出てきているし、解放すべき海域も増え続けてる」

飛龍「……そうだね」

提督「どんなに準備を重ねても、命の危険が付きまとう状況は変わらない」

提督「現役でいる限り、そんな状況が続くことがわかっているのなら、鳳翔の夢――」

提督「――お店を出すことと、君たちと共に暮らすことくらいは、叶えてあげたいと思った」

飛龍「…………」

提督「それから、なるべく多く君たちと過ごしたいという私の希望かな」

飛龍「う、うーん」

飛龍(あれ……これって私、狂喜乱舞するところかも)

785: 2016/10/17(月) 12:46:25.95 ID:lErojPIVO

飛龍「いやぁ……どう考えても、最初に言う相手はお母さんじゃない」

提督「まずは飛龍に言うべきかな、と思ったんだが」

飛龍「いやいやいやいや、なんでよ」

提督「蒼龍から聞いたぞ? 鳳翔や他の5人といっしょに暮らしたかったんだろ」

飛龍「蒼龍~~!! 秘密って言ったのにぃ!!」

提督「物件はもう目星をつけてある。ここにチラシがあるんだが」

飛龍「あるんかい! 私必要ないじゃん」

786: 2016/10/17(月) 12:48:09.23 ID:lErojPIVO

提督「今日、鳳翔と物件を下見に行こうと思ってたのに、断られてしまってな……」

飛龍「え、そうなの? 断るなんて珍しい」

提督「まあ、いいさ。内緒にして驚かせてやろう」


「……す……」


提督「ん?」

榛名「素敵です!! 榛名、感激です!!」

飛龍「は、榛名さん。いたんだ」

提督「呉のやつと一緒じゃなかったのか?」

榛名「先約があるって断られて……ひとりでこのレストランに来たんです」

提督「先約? 舞鶴に知り合いなんかいたのかな、あいつ」

787: 2016/10/17(月) 12:49:28.37 ID:lErojPIVO

榛名「それにしてもいいなあ、鳳翔さん。私も提督に……い、いえ! なんでもないです!」

提督「榛名さんは、あいつと寝室が別だったりするのか?」

榛名「榛名でいいですよ。いえ、今は執務室の隣で一緒です」

飛龍「なんだ、それならいいじゃない」

榛名「それが、その、遅くまで2人で仕事してると……お姉さまが」

提督「金剛か」

飛龍「『イチャつきながら仕事するくらいならサッサと寝るデース!!』って感じ?」

榛名「す、すごい! どうしてわかったんですか!?」

飛龍「横須賀にいた頃の金剛さん見れば、そりゃねえ」

788: 2016/10/17(月) 12:50:27.20 ID:lErojPIVO

榛名「最近は大規模作戦の準備で、提督もお疲れですし……」

榛名「お姉さまの言葉通りに、ベッドに入ると早くお休みになられますし」

榛名「い、いいえ、邪魔とかそんな感情は全然ないんですよ! お姉さまも私に気を使ってくれてますし!」

榛名「ただ、その、少しくらいは、2人きりで過ごせる時間も……」

榛名「もっと、提督には、いろいろして差し上げたいのに……」


榛名「――って、きゃあああ! 私ったら出張先で何を!!」

飛龍「かわいいじゃないの、気に入った! これから正規空母の会、名誉会員に迎えちゃうよ!」

榛名「空母じゃないのに!?」

飛龍「いい酒の肴になりそう!!」

榛名「何を話させるつもりなんですか!!」

789: 2016/10/17(月) 12:51:38.36 ID:lErojPIVO

榛名「はぁ、はぁ……」

飛龍「提督、とりあえず赤城さんたちと合流したいんだけど――」


「「「キャアアアアアア!!!!」」」

飛龍「って、その声は!」

赤城「1次会が終わってカラオケ行こうと通りかかったら!!」

飛龍「またカラオケですか。好きだなー」

翔鶴「飛龍先輩が、2人っきりで提督とお食事デート!!」

蒼龍「ずるいずるい!! 抜け駆けなんて許せない、私も誘ってよ飛龍!!」

飛龍「見事な説明セリフをどうも。あとデートじゃないから」

790: 2016/10/17(月) 12:57:11.89 ID:lErojPIVO

提督「あれ、もう飲み会は終わったのか?」

Graf「お店のサケを飲み尽くしそうな勢いだったから、無理やり連れだしたのだ」

提督「飲み尽くす!? カ、カードは?」

Graf「……上限かもしれぬ。許してくれ、Tut mir Leid」

提督「」


Graf「ヒリュウの分を1本買ってきた。鎮守府で飲んでくれ」

飛龍「おー、ありがとう! 気が利くね――あれ、加賀さんと瑞鶴は?」

Graf「カラオケに持ち込むサケとサカナを買いに行った」

提督「まだ飲むのか……」

Graf「この店にいることは知らないだろうから、私が迎えに行ってこよう」

飛龍「1人で大丈夫? 酔ってない?」

Graf「問題ない、bierを少し飲んだだけだからな。行ってくる」

飛龍「気を付けてねー」

791: 2016/10/17(月) 12:59:04.10 ID:lErojPIVO

Graf「――ふう。サケは甘すぎてまだ慣れないが、Japanのbierは中々だったな」

Graf「今度は、祖国のものも仕入れてもらうよう頼んでみよう……」

Graf「――おや?」


Graf(あの車に、男と乗っているのは……)

Graf「……ホウショウ?」


Graf「…………」

Graf「……う、ウワキだ、フリンだ。マツボックリでヒマツリだ」


Graf「Mein Got」

792: 2016/10/17(月) 12:59:50.14 ID:lErojPIVO

瑞鶴「これだけ買えば大丈夫かな?」

加賀「そうね。――結局、いつもの安酒がメインになってしまうけれど」

瑞鶴「あのお店、評判なだけあってお酒はおいしかったもんねー」

加賀「誤算だったわ。次からはお店の在庫も調べてから行きましょう」

瑞鶴「3分に1本のペースで一升瓶空けてたら、そりゃ店主さんも青くなるわ……」


―― Mein Gooooooot!

793: 2016/10/17(月) 13:00:28.49 ID:lErojPIVO

加賀「なに、あの叫び声……あら、グラーフ?」

瑞鶴「あ、ほんとだ。おーい」

Graf「――カ、カガ! ズイカク!」

瑞鶴「どしたの、カラオケ向かってたんじゃ――」

Graf「Es ist Unmoral!! Ich habe auf den illegalen Punkt geschaut!!」

瑞鶴「お、おう」

加賀「まるで翻訳サイトにかけたようなドイツ語ね。ちょっと落ち着きなさい」

795: 2016/10/17(月) 21:34:23.84 ID:lErojPIVO

瑞鶴「――えぇ? お母さんが浮気ぃ?」

Graf「付き合いは短くとも、あの笑顔は見間違えようがない!! あれは鳳翔だった!!」

加賀「そうだとしても、それがどうして浮気になるのかしら」

Graf「笑顔だったからだ。あんな笑顔は、Admiralの隣にいる時しか見たことがない」

瑞鶴「……お母さんが一緒の車に乗るほど親しい男性って、提督さん以外にいたかな?」

加賀「少なくとも、舞鶴鎮守府の人ではなさそうね」

796: 2016/10/17(月) 21:36:34.00 ID:lErojPIVO

瑞鶴「あ、そういえば。今日は呉の提督さんが来てるんだったわ」

加賀「呉の? お母さん、そこまで親しかったかしら」

Graf「そうだ、あっちの店にハルナが来ているのだ。クレのAdmiralのことも聞いてみよう」

加賀「……グラーフ、お母さんはどちらへ向かってた?」

Graf「ええと、あっちは――鎮守府の方向だ」

瑞鶴「ということは、どこかへ行った帰りってことかな」

加賀「いずれにせよ、本人に聞けばわかることね。――みんなと合流して、いったん戻りましょう」


加賀「……それにしても」

瑞鶴「あのお母さんが、浮気……」


「「ありえないわ」」

797: 2016/10/17(月) 23:31:26.36 ID:lErojPIVO





鳳翔「――明石さん、ただいま戻りました」

明石「お帰りなさい! いかがでしたか、例のものは」

鳳翔「完璧でした。あの防犯設備なら安心です」

呉「あれじゃ猫の子どころか、アリ1匹入れないだろうぜ。どんだけ金かけたんだ……」

明石「鳳翔さんのご希望ですからね。私の持てる技術をすべてつぎ込んでます」

鳳翔「今日はありがとうございました、呉さん。最近の機械には詳しくないので、とても助かりました」

798: 2016/10/17(月) 23:32:14.26 ID:lErojPIVO

鳳翔「あの人も、きっと喜んでくれると思います」

呉「なに、気にすんなって――で、その旦那はどこ行ったんだ?」

明石「少し前に、飛龍さんを引っ張って出て行きましたが……」

鳳翔「飛龍ちゃんを? みんなと合流したのかしら」

呉「そういや榛名もいねぇな。これが終わったら軽く酒でもと思ったんだが」

明石「――ああ、噂をすれば。みんな戻ってきましたよ」

799: 2016/10/17(月) 23:33:11.15 ID:lErojPIVO

Graf「――こ、この男だ!!」

呉「なに?」

Graf「こいつだ、ホウショウをたぶらかしたのは!!」

蒼龍「ほう」

飛龍「ほう」

赤城「ちょーっと、お話を伺いたいんですが?」

呉「何なんだお前ら……」

800: 2016/10/17(月) 23:34:12.54 ID:lErojPIVO

呉「おいおい、冗談じゃないぜ。こんなとこ榛名に見られたら――」

榛名「あのー、もう見てるんですが」

呉「」

呉「は、榛名、落ち着け。愛してるから落ち着け」

榛名「私も愛してます。で、これはどういうことですか」

呉「これはだな、やむにやまれぬ事情があって――」

提督「待て。先に私だ」

呉「……目が据わってるぞ」

提督「お前には聞きたいことが山ほどある! ちょっとこっちに来い!!」

呉「お、おい! 引っ張んなって!!」

810: 2017/02/08(水) 11:51:32.51 ID:yICCBaGfO





提督「――鳳翔と、どこ行ってたんだ?」

呉「言えん」

提督「…………」

呉「睨むんじゃねぇよ! 鳳翔に口止めされてるんだ、本人に聞けよ」

提督「……本当だろうな」

呉「俺は榛名に囚われているからな。正直、他の女には余計な感情が湧かない」

提督「こんな状況で惚気やがって」

呉「別に惚気じゃない。本気ってだけだ」

812: 2017/02/08(水) 11:57:37.29 ID:yICCBaGfO

呉「榛名や鳳翔の手前、あんな態度を取ったが――お前も察しはしてるんだろ」

提督「うん?」

呉「他の男に軽く付いていくような女じゃない」

呉「それなりの事情があると、わからないほど浅い付き合いじゃないはずだ」

提督「……まあね」


提督「鳳翔を助手席に乗せて走りやがってとか、夕食の時間に行かなくてもいいだろうとか、まだいくつかあるが――」

呉「俺が誘ったわけじゃないけどな」

提督「――まあ、言いたかったのはそれだけじゃない」


提督「1度、改めて礼を言いたいと思ってたんだ」

呉「礼? 何の話だ」

提督「もう1年以上も前だが、鳳翔が目を覚まさないと騒いだ時があっただろう」

呉「ああ、血相変えて電信飛ばしまくってたあれか。まあ当然だが」

815: 2017/02/08(水) 21:36:59.27 ID:yICCBaGfO

提督「こんな言い方で本当に失礼だけど……お前と榛名さんの前例のおかげで対処できたんだ」

提督「鳳翔の分も、合わせて感謝したい。ありがとう」

呉「やめろやめろ。男にそんなセリフ吐かれてもぞっとしねえ」


呉「……まあ、あんな状況ではお互い様だろ」

提督「そうだね」

呉「他の鎮守府の連中にも喚起できたし、それに――」

呉「あの報告書にはさんざん笑わせてもらったしな」

提督「ぐっ」

呉「全国規模で惚気てんのはどっちだったかなー」

提督「く……言うんじゃなかった……」

816: 2017/02/08(水) 21:42:41.56 ID:yICCBaGfO

呉「よその夫婦に首突っ込むのは、これで最後にしたいが――」

呉「悪い話じゃないと思うぜ。お前にとっても、鳳翔にとっても」

提督「そうだ、鳳翔の口止めとは……」

呉「おっと、俺が言えるのはここまでだ。――まあ、あとは本人に聞くんだな」

提督「え? ……あ」


鳳翔「あっ」

榛名「あっ」

呉「邪魔者は消えるから、ゆっくり話せ。俺も、榛名の機嫌を取らなきゃならん」

825: 2017/05/01(月) 00:30:42.43 ID:fOj+2GTH0





榛名「むー」

呉「ほら、そろそろ機嫌直せって」

榛名「ほかの女性とドライブ行ってた人が言いますかー」

呉「だーかーら、事情があったって言ってんだろ」

榛名「なら、その事情を話してくださいよぉ。内容を聞いて、許すか判断しますぅ」

呉「今はダメなんだって。明日あたりには解決してるだろうから……」

榛名「じゃあ許しませんっ」

呉「……おい、そっぽ向くなよ。せっかく埋め合わせに2人で飲みに来てんだろうが」

榛名「知りませんっ。つーん」

呉「つーんてお前。もう酔ってんのかよ」

826: 2017/05/01(月) 00:32:03.69 ID:fOj+2GTH0

呉「…………」

呉「美人は横顔も映えるよな」

(ぴくっ)

呉「お前に似合いそうなブラウスを見つけたから、明日買いに行かないか?」

(ぴくぴくっ)

榛名「ぷ、ぷ、プレゼントなんかで、この大戦艦が心を動かされると――」

呉「そうか、そうだろうな。我ながら卑劣だった、悪かったな」

榛名「…………」プルプル

827: 2017/05/01(月) 00:35:01.83 ID:fOj+2GTH0

呉「じゃあ、うん……電探の改造の礼もあるし、霧島のみやげにでも」

榛名「だ、ダメーーーー!! 私、私じゃないとダメですっ!!」

呉「おう」

榛名「私に似合うって思ってくれたんですよね!? だから――」

呉「だから、買いに行こうって言ってるだろ」

榛名「行こう、って――ハッ!? 提督、私を嵌めましたね!!」

呉「そうだよ?」

榛名「むがー!!」ドカドカ

呉「ハハハッ、俺を騙そうなんて10年早い――って、ちょっ、痛ェ!! 本当に戦艦の馬力で殴るな、肩が外れる!!」

828: 2017/05/01(月) 00:37:39.02 ID:fOj+2GTH0

呉「……気ィ済んだか」

榛名「はぁ、はぁ……とりあえず落ち着きました……」

呉「まさか本気でほかの女と、って……そう思ってるわけじゃないだろうよ」

榛名「……そうですね、本当はわかっていますし、信じてます。でも」

榛名「公務以外で2人っきりは、あの遊園地以来でしたし……ちょっとはしゃいでしまいました」

呉「おいおい、楽しみにしてたのはお前だけだと思ってんのか?」

榛名「え?」

呉「1日で終わる出張を、わざわざ泊まりにして時間作ったんだぞ」

榛名「……あ」

呉「今日はもう帰るぞ。明日はいろいろ、連れまわしてやるから覚悟しとけ」

榛名「――はいっ、提督!」


呉(……さて、向こうは上手くやったかな)

833: 2017/06/27(火) 00:37:06.55 ID:XwdhUPZl0





鳳翔「…………」

提督「…………」

提督(呉のやつと戻ってきてから、鳳翔もそわそわして落ち着かないようだが)

提督(飛龍には話したんだ……先延ばしにはできない)

提督(いい機会と覚悟を決めて、言うんだ。今日、いま!)


鳳翔「あの、今日はすみません。せっかくお誘いいただいたのに、断ってしまいまして」

提督「え、あ、ああ! いいんだ、全然気にしてないから」

鳳翔「お話ししたいことがあるので、ちょっと歩きませんか」

提督「うん。私も、君に話があったんだ」

837: 2017/07/31(月) 00:57:24.67 ID:5FPA1pmt0


提督「…………」

鳳翔「…………」


「「あの」」

鳳翔「あっ」

提督「……ごめん。わ、私から、いいか?」

鳳翔「は、はい。すみません」

提督「すぅー……ふぅ。よし」


提督「鳳翔。いっしょに、暮らさないか!」

鳳翔「えっ……」

提督「空母の子たち6人と、私たち2人で。新しい、家族に――」

提督「家族に、なりたいんだ」

841: 2017/08/10(木) 02:13:26.34 ID:L+qER+590

提督「気が早いけど、家も探したんだ。ここからそんなに離れていない、この物件なんだけど」

鳳翔「こ、これは……」

提督「ほかの提督の伝手で、このあたりの不動産をいくつか紹介してもらってね」

提督「少し築年数は経ってるけど、リフォームがてらあの子たちの部屋も作れる広さだし」

提督「それに、1階の壁を抜けばスペースもとれるし、この辺りは水も綺麗だから」

提督「――小さなお店を開くことも、できると思う」

鳳翔「…………」

843: 2017/08/10(木) 02:37:35.85 ID:L+qER+59o

提督「君が何度も悪夢を見ていることは知っている。あの戦争と、あの子たちの記憶で苦しんでいることも」

提督「それをいっしょに支えるとか、軽々しく言うつもりはない。それは君たちにも失礼だと思う」

提督「けど、これだけは言える」

提督「私は君が望むかぎり、君の隣にいるよ。たとえどんな困難が立ちはだかっていても」

提督「そこから決して逃げたり、目を背けたりせず――」

提督「君の隣に立って、未来に進んでいくと、君に誓おう」

844: 2017/08/10(木) 02:44:05.76 ID:L+qER+59o

提督「前に、間宮の店で話したことを覚えてるかな」

鳳翔「……蒼龍ちゃんと、少し真面目な話をしたという?」

提督「そう、それ。大事な話だから改めて話そうと思っていたんだけど、遅くなってすまなかった」

提督「長い間、この鎮守府で長を務めてきて。何度も大変な目に遭ったけど、その度に君に支えてもらった」

提督「改めて大切だと思ったんだ。君に出会ったこと、君たちに出会ったこと」

提督「君を母と慕う、あの子たちの姿を。そして、あの子たちを心から愛して、慈しむ君の姿を」


提督「私は――いや、俺は」

提督「もっと近くで、ずっと、見守っていたいんだ」

提督「……どう、だろうか。鳳翔」

848: 2017/09/20(水) 01:26:40.31 ID:0Lbo6+gAo

鳳翔「――ふふっ」

提督「?」


鳳翔「あははは……ご、ごめんなさい、あなた」

提督「!! ……だ、ダメか……?」

鳳翔「いいえ! ごめんなさいって、そういう意味じゃありませんよ」

鳳翔「ただ、おかしくって。ふふふっ」

提督「勿体ぶらないで教えてくれよ」

850: 2017/09/20(水) 01:39:45.14 ID:vBtenC6tO

鳳翔「ふふ、これを見てください。不動産のチラシなんですけど」

鳳翔「今日行っていたのは、ここなんです」

提督「ここ、って、同じ物件じゃないか!」

鳳翔「はい。実はもう、私が契約してしまいまして」

提督「そうだったのか。今日、呉と出かけたのは?」

鳳翔「呉さんには物件の斡旋と、明石さんがつけてくれた防犯設備の確認をお願いしていました。私は現代の機械には詳しくないので」

提督「それで、今日じゃないと駄目だったわけだね」

鳳翔「それに、ほかの子に頼むとあなたが不審がるかも、と思ったんですよ」

提督「不審?」

鳳翔「内緒にして、びっくりさせたかったんです。でも、今日は私のほうがびっくりでしたけどね。ふふっ」

851: 2017/09/20(水) 01:57:18.26 ID:vBtenC6tO

提督「そ、それじゃあ」

鳳翔「――はい。ふつつか者ですが、こちらこそ、よろしくお願いいたします」

提督「鳳翔……ありがとう」

鳳翔「お礼は私から言いたいです。本当に、ありがとうございます」

提督「…………」

鳳翔「…………」


「「ふふっ」」

提督「じゃあ、お互いに感謝だな」

鳳翔「そうですね、あなた」

852: 2017/09/20(水) 01:58:19.81 ID:vBtenC6tO

提督「これから忙しくなりそうだな」

鳳翔「ええ。いくら近いとはいえ、仕事が終わったら鎮守府を出ることになりますから」

提督「夜の間のまとめ役と、緊急時のホットラインの整備と……」

鳳翔「それに引っ越しの準備も。私たちの分と、娘たちにも伝えないと」

提督「やることは多いが、1つづつ片付けていかないとな」

鳳翔「それでは、ひとまず戻りましょうか」

提督「そうだね。いつ緊急な呼び出しがあるかわからないし、今日のところは――」

853: 2017/09/20(水) 02:04:23.24 ID:vBtenC6tO

―― ピピピピ……

提督「おっと、噂をすれば……もしもし?」

翔鶴「提督! お休みのところ申し訳ありませんが、すぐ鎮守府へお戻りください!」

提督「何があった?」

翔鶴「地中海方面軍から連絡です。新しい正規空母を舞鶴で受け入れてほしいと!」

提督「それは構わないけど、まだ何も聞いてないぞ……いつ到着する?」

翔鶴「今週中には到着だそうです。上層部は承認済みだと」

提督「連絡が急すぎる! わかった、すぐ戻るよ」

854: 2017/09/20(水) 02:08:36.37 ID:vBtenC6tO

―― ピピピピ……

提督「おっと、また――もしもし?」

瑞鶴「提督さん! 単冠の北方方面艦隊から連絡よ!」

提督「どうした、そんな遠くから」

瑞鶴「千島列島の沖で、新型の軽空母が見つかったから面倒見てくれないかってさ」

提督「軽空母? なんでわざわざ舞鶴まで?」

瑞鶴「特設航空母艦は今までにない艦種だから、お母さんの意見が聞きたいんだって」

提督「また新しい空母が……わかった、今から戻るよ」


瑞鶴「それから、新しい――えー、噴式? エンジンを積んだ試作機を送るから、テストしてほしいって言われてるわ」

提督「そりゃまたなんでウチに?」

瑞鶴「えへへ、改装が終わった私と翔鶴姉しか扱えないんだって。なんか専用機みたいでカッコイイわよね!」

提督「扱いが難しそうだな……とりあえずすぐ戻るから」

855: 2017/09/20(水) 02:27:17.96 ID:vBtenC6tO

―― ピピピピ……

提督「もしもし」

加賀「おつかれさまです、加賀です」

提督「今度はどうしたんだ」

加賀「米太平洋方面軍から緊急信。正規空母艦娘がひとり、東京駅から関西方面の電車に飛び乗って行方不明だと」

提督「なんだって? どういう状況だ、そりゃ」

加賀「なんでも、新しく保護されたばかりの艦娘だそうで。ちょっと目を離した隙に逃げたそうです」

提督「アメリカの艦娘だろ? 1人で乗ってれば目立つんじゃないか」

加賀「駅員さんや車掌さんも探しているようですが、どうやら変装しているようですね」

提督「そりゃ放っておけないな。手空きの子をできる限り集めてくれるか」

加賀「了解です。指示をいただければ、すぐに出れるように準備しておきますので」

提督「頼む」

856: 2017/09/20(水) 02:31:45.79 ID:vBtenC6tO

―― ピピピピ……

提督「も、もしもし」

蒼龍「あー、もしもし? 蒼龍だよー」

提督「今度は蒼龍か。電話来る気がしてたけど」

蒼龍「お母さん宛てなんだけど、東京の三囲神社で巫女さんやらないかって」

提督「今までで一番わからないのが来たな」

蒼龍「返事はいつでもいいって言ってたけど?」

提督「わかった、とりあえず今から戻るから」

蒼龍「よろしくー。待ってるね」


提督「――それから、蒼龍!」

蒼龍「はいはい、なんですか?」

提督「ありがとうな。 君のおかげで一歩踏み出せたよ」

蒼龍「へ? 私なんか言ったっけ」

提督「言ってくれたさ。――2年半近く前だが」

蒼龍「ええー?」

857: 2017/09/20(水) 02:42:17.69 ID:vBtenC6tO





飛龍「――間違い、ないんだね?」

大淀「はい。我が国だけでなく、各国の衛星からの情報もあります」


赤城「――遅れました、飛龍!」

飛龍「飲み会の後で呼び出してごめんね。……これを見て」

赤城「これは?」

飛龍「3日前の偵察写真。ついさっき、各地の艦隊に通知されたわ」


飛龍「新たな、複数の姫が――中部海域に出現」

赤城「…………」

858: 2017/09/20(水) 02:44:30.85 ID:vBtenC6tO

赤城「必氏の思いで攻略したMI周辺海域が、また敵に……」

大淀「すでに海域は封鎖されています。民間の太平洋航路も、大幅な変更を余儀なくされていますね」

赤城「海上護衛も見直す必要があるでしょうし……ほかの艦隊の動きはどうですか?」

大淀「今のところ、海域外に侵攻する兆しはないということで。各艦隊は警戒しつつ、静観の構えです」


飛龍「とにかく、提督に伝えてくるよ」

赤城「あ、私も行きます。大淀さんは他の皆さんに周知を」

大淀「了解しました」


赤城(――侵攻する兆しがない? 今までの姫級は、もっと積極的に動いていたはず)

赤城(また、前に出会った飛行場姫のような異質な敵でしょうか)

859: 2017/09/20(水) 02:48:45.63 ID:vBtenC6tO

飛龍「どうしたの? じっと写真見つめて」

赤城「この写真の空母棲姫……ずいぶんと憂いを帯びた表情のような……」

飛龍「衛星写真ってのはすごいね。敵の表情まで写せる解像度なんてさ」


赤城「飛龍、どう思います? 前回の霧の時と同じような敵だと思いますか?」

飛龍「わからないけど……まあ、会って聞いてみればいいよ」

赤城「あら? 慎重な飛龍にしては、積極的な考えですね」


飛龍「――提督とお母さんが、やっとゆっくり暮らせるきっかけを掴んだんだもの」

赤城「飛龍?」

飛龍「私たちの幸せは、誰にも邪魔させはしない」


飛龍「私が守るわ。提督も、お母さんも、みんなもね」

赤城「…………」

860: 2017/09/20(水) 02:56:40.06 ID:vBtenC6tO

赤城「飛龍~」ワシワシ

飛龍「きゃあっ! な、なに!?」

赤城「肩に力が入りすぎてますよ。貴女らしくもない」

飛龍「え、そうかなぁ?」

赤城「まさか1人で勝てる相手でもなし。慢心はダメ、ゼッタイ。でしょう?」

飛龍「そう、だけど……もとはといえば私の希望だし」


赤城「貴女曰く、家族なんでしょう? お姉ちゃんにも頼りなさい。ね?」

飛龍「お、おね――」

赤城「ほらほら」


飛龍「……ふふっ、そうだったね、赤城さん」

赤城「飛龍! 竣工順でいえば私が長女、飛龍が四女で……」

飛龍「それはまた今度ね」

赤城「んもう」



飛龍「――赤城さん」

赤城「はい?」

飛龍「これからも、よろしくね」

赤城「ええ、こちらこそ」

861: 2017/09/20(水) 02:57:57.41 ID:vBtenC6tO





『…………』



『…………』






『……オカアサン……』

862: 2017/09/20(水) 03:00:08.08 ID:vBtenC6tO





鳳翔「……?」

提督「鳳翔、どうした」

鳳翔「いえ、誰か私を呼んだような……かすかな声が」

提督「周りは誰もいないが?」

鳳翔「そうですよね……気のせいでしょうか」

提督「さあ、いったん帰ろう。報告が大量に来てるみたいだから」

鳳翔「はい!」

863: 2017/09/20(水) 03:02:40.94 ID:vBtenC6tO

鳳翔「あなた、新しい子が来るのですね?」

提督「ああ、沢山な。しかも海外からの艦娘がかなり入ってる」

鳳翔「いいことではないですか。各国から信頼されている証ですよ」

提督「だが、引っ越しと合わせたらとんでもない忙しさになりそうだ」

鳳翔「新しい家のほうはいつでも大丈夫ですから。その子たちが早くなじめるようにしてあげないといけませんね」

提督「そうだね……君にもまた苦労をかける」

鳳翔「いえ、好きでやっていることですし――それに」


鳳翔「仕事が早く片付けば、あ、あなたとの時間も、増えますし……ね?」

提督「……ははっ」


提督(まったく――かなわないなあ)

864: 2017/09/20(水) 03:06:24.22 ID:vBtenC6tO


提督「鳳翔」

鳳翔「はい?」

提督「ありがとう。……愛しているよ」

鳳翔「――はい!」



鳳翔(もうひとつの夢……平和な海で、いつかふたりで、のんびりと船旅でも――)

鳳翔(その時を楽しみに。ふたりで支えあって)


鳳翔「共に未来へ進みましょう――あなた!」







865: 2017/09/20(水) 03:19:46.01 ID:vBtenC6tO

一区切りとなります。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

1スレで2年5か月、足掛け3年。何回終わる終わる詐欺で謝罪したか……
16年の3月で終わらせますとか言ってたのが自分でも信じられません、申し訳ありません。

ある程度書き溜めてから次を立てるつもりでいます。
次スレでもお題の消化と、何よりも更新ペース上げて頑張っていきたいです。
しばらく書いてなかった短編も合わせてやりたいと思いますので、また見かけたら読んでいただけるとうれしいです。


重ね重ねになりますが、長い間お付き合いいただきまして本当にありがとうございました。
またよろしくお願いいたします。

866: 2017/09/20(水) 05:53:03.02 ID:Ifv2CPvLo
ひとまず乙
そして次もはよはよ

867: 2017/09/20(水) 07:57:43.19 ID:1KElWnGA0
うおっ
突然の終わりか…
とりま乙



引用: 鳳翔「あゝ栄光の、空母機動部隊!」 【お題募集】