48: 2019/10/07(月) 22:24:19.60 ID:qAvjVlqX0

最初から:少年「アヤカシノート」第一幕


■第二幕 チグハグ■



ーーー教室ーーー

教師「──はい、そこまで」

教師「それじゃあ回収するから、名前書いてあるか確認して後ろから前に送れー」

「やっべぇ…1問しか出来なかった…」

「先生!プリントの問題より全然難しいんですけど!」

教師「そんなの、基礎が出来てればその組み合わせで応用も解けるだろ?いつも言ってるように」

教師「この小テスト、一応基礎学力テストの対策も兼ねてるからな。…間違えた問題は宿題で解き直しだ」



ブーブー



少年「……」スッ(後ろから受け取る)

少年(正直、こんな問題解けないと思ってたけど……この2問目、この間少女さんと勉強したところだ)

少年(………)



包帯少女「少年君」



少年「!…なに?」

包帯少女「なに、じゃないよ」

包帯少女「プリント、早く」

少年「あ、うん」スッ

包帯少女「」クルッ...

少年(──その包帯は何だい?)

少年(そう訊きたいけど、口にしようとする度言葉が喉につっかえる)

少年(見る限り、いつも通りに身体を動かしてる気がする)

少年(そこまで酷い怪我じゃないのかな…?)
見える子ちゃん 1 (MFC)

49: 2019/10/07(月) 22:26:06.37 ID:qAvjVlqX0

教師「……」パラパラ

教師「よし、ちゃんと人数分あるな。これは採点して帰りに返すから──」ピタッ

教師「………猫又娘」

猫又娘「はい?」

教師「これは、何だ」



(テストの裏に猫の落書き)



猫又娘「あ、それ可愛く描けたんですよ!」

「ほんと、絵上手!」

「でもテスト用紙に書くなんて、猫又娘さん……」

教師「……お前は、自分の成績が分かってるのか?」

猫又娘「はい!」ニコッ

教師「だったらせめてこういう時くらい真面目にやりなさい」

猫又娘「真面目に考えてよく分からなかったので、少しでも加点してもらおうと思ったんです!」

教師「加点?」

猫又娘「芸術点、とか♪」



ワハハハ!



派手娘「先生ー。猫又娘さん、さっき提出用のプリントでも遊んでましたー」

猫又娘「いっ!?派手娘さんなんで!」

教師「…猫又娘、次の休み時間廊下に立ってなさい」

猫又娘「」ガーン

派手娘「ふんっ。バカやってるからよ」

派手娘(あの貼り付けたような笑顔)

派手娘(…相変わらず見ててイライラするのよね)

教師「取り敢えず、授業始めるからな。教科書開け。前やったところの続きから、ページは──」





50: 2019/10/07(月) 22:28:07.95 ID:qAvjVlqX0
ーーー昼休みーーー



ヒソヒソ



「ねーあの包帯って……」

「さぁ……何も話してくれないし、人に言えないことでも……」



ヒソヒソ...



包帯少女「……」

少年(みんな、少女さんのことを見てる)

少年(朝からほとんど喋らない少女さんの様子は明らかに変だけど、そんな檻の動物を見るような目…)

少年(……嫌だな……)

少年「……」

少年(…あの日の事)

少年(分かってる、少女さんと話さないといけないこと)

少年(怖いけど…ここで逃げたら僕は今後ずっと、少女さんと話せなくなるような、そんな気がして……)

少年「……」スクッ

少年「少女さん」

包帯少女「…?」

少年「…お昼、食べに行かない?」





51: 2019/10/07(月) 22:32:12.10 ID:qAvjVlqX0
ーーー第二校庭 端のベンチーーー

少年「……」パクパク

包帯少女「……」ハムハム

少年(む、無言だ…!)

少年(どうしよう、誘ったはいいけどどう切り出せばいいか全然分からない……!)

少年「……」ソワソワ

包帯少女「……」ハム...

少年「……」チラッ

包帯少女「………」

少年「っ……」ガクリ

包帯少女「……ふぅ。なーに?」

少年「」ハッ

包帯少女「何か言いたいことがあるんじゃないの?さっきからずっとこっち見て落ち着きないしさ」

少年「あ、えと…」

少年「…そのお弁当、美味しそうだなって」

包帯少女「……食べたいの?ぼくの箸ごと?」

少年「えぇ!?いやいやもうあんなことは!例え分けてもらうとしても今度はちゃんと──」

包帯少女「冗談」クスッ

包帯少女「少年君、すぐバレる嘘つくからちょっとからかっただけ」

包帯少女「で、本当は何て言いたかったのかな?」

少年「……」

包帯少女「……」

少年「その……」



少年・包帯少女「「包帯のこと」」



少年「っ」

包帯少女「そうだろうね。ぼくだっていきなりこんな人が登校してきたら気になるよ」

少年「…大きな怪我とか…じゃないって言ってたよね?」

包帯少女「うん」

少年「……本当?」

包帯少女「まあこんな見た目じゃ説得力ないよね。なんなら今、包帯外して見せてあげてもいいよ。怪我は何もないから」

52: 2019/10/07(月) 22:35:56.20 ID:qAvjVlqX0

包帯少女「…でも、夜になると痛み出すんだ」

包帯少女「この目と、腕と、足」

包帯少女「だからこれはおまじないみたいなもの。ちょっと大袈裟かもだけど」

少年「痛むって……病院には行ったの?」

包帯少女「ううん。だって痛み始めたのちょうど昨日からだから」

包帯少女(そう。昨日の夜の、"あの時"から…)

少年「昨日から……」

少年(それって、タイミング的にも、どう見ても異常なこの様子からしても)

少年(……あの出来事が関係してる)

少年(僕が、少女さんを池に落とした、あの……)

少年「……」グッ...

少年「少女、さん」

包帯少女「どうしたの、そんなに怖い顔して」

包帯少女「もしかして相当心配してくれてる?大丈夫だよ、見た目ほど重症じゃないし、少年君が気にするようなことはないって」

包帯少女「それよりきみは基礎学力テストの心配をした方がいいよー?今週の金曜日でしょ?あと4日しかない!」

少年「…土曜日の、ことなんだけど…」

包帯少女「……」

少年「……」

包帯少女「…一昨日?」

少年「そう」

少年「その……あの日、さ……」

包帯少女「……あー……」





包帯少女「ごめんね、急な予定で行けなくなっちゃって」





少年「……え?」

包帯少女「でさ、どうだったの?トドノツマリ様の検証。ぼくも興味が無かったと言えば嘘になるから、結果だけは聞いておきたいと思ってたんだ」

少年(覚えてない…?)

53: 2019/10/07(月) 22:37:09.42 ID:qAvjVlqX0

少年「……」

包帯少女「少年君?」

少年「…全くのでたらめだったよ」

少年「テストに向けて僕の頭を良くしてくださいって頼んだんだけど、なんにも変わらず。今日の小テストも少女さんが前に教えてくれたところくらいしか解けなかったしさ」

包帯少女「お、ぼくの特別授業ちゃんと役に立ってるんだ」

少年「おかげさまで」

少年「だから…」

少年「…また、お願いしてもいいかな。テスト勉強」

包帯少女「勿論」ニコッ

少年「!」

少年(笑ってくれた……!)

少年「テスト終わったらさ」

少年「またここでやろうよ。二人野球」

包帯少女「ふふっ、いいね。酷い点数取って補習にでもならなければね」

少年「そこは信頼できる少女先生が付いてるから大丈夫」

包帯少女「慢心は敗北のもとですよー?」







少年(その日から、また僕たちは一緒に過ごせるのだと思えた)





54: 2019/10/07(月) 22:38:14.84 ID:qAvjVlqX0
ーーー登校中ーーー

少年・包帯少女「「あ」」バッタリ

少年「おはよう。今日はいつもより遅いんだね」

包帯少女「…少しね、最近寝不足気味で」

少年「そんなに遅くまで勉強してるの?」

包帯少女「そんなところかな。出来の悪い生徒に教えられるように、ね」

少年「それって僕のことでしょうか…」



テクテク







少年(僕は卑怯だろうか)

少年(少女さんがあの土曜日の事を覚えてないと知った時、思わずホッとしてしまった自分がいた)

少年(彼女が包帯を巻いているその原因すら曖昧にしたままで)





55: 2019/10/07(月) 22:40:22.80 ID:qAvjVlqX0
ーーー休み時間ーーー

同級生A「なんだよ、いいじゃねーかそのくらい」

派手娘「よくないわよ。あんたが拾いなさい」

同級生A「お前の足元にあんだし、お前の筆箱なんだから自分で拾えって」

派手娘「はっ?あんたがぶつかって落としたんでしょうが。早く拾いなさいよ」

同級生A「だからそんくらいお前が──」

派手娘「 ひ ろ え 」

同級生A「……わ、分かったよ」



少年「こわ……」

少年(派手娘さんて、いつも何かに文句付けてたけど、近頃は一段とイラついてるなぁ…)

少年「あのさ、少女さん……─!」

包帯少女「」スー..スー..

少年(寝てる…)

少年「……」

包帯少女「」スー..スー..

少年(……)







少年(だからだろう)

少年(包帯を巻いたその痛々しい姿が、段々と僕に対する当て付けに見えてきてしまうのは)





56: 2019/10/07(月) 22:42:07.29 ID:qAvjVlqX0
ーーー放課後ーーー

包帯少女「……」カキカキ

少年「……」カキカキ

少年(……)

少年「……少女さん」

包帯少女「ん?質問?今やってるとこそんなに難しくないはずだけど…」

少年「いや、今日はちょっと、早く帰らないといけなくて。ごめんね、また明日」







少年(しょうもない嘘をついて、彼女の"無言の責め"から逃れる)

少年(当然少女さんにはそんな気はないのだろうけど、僕はどうしても彼女を直視出来なくなっていた)







ーーー昼休みーーー

包帯少女「──少年君、行かないの?」

少年「えーと……何というかその…」

包帯少女「……」

包帯少女「今日は教室で食べようか。お互い自席で」







少年(それは少女さんにも伝わってしまっているようで)

少年(今日の昼食に会話は無かった)

少年(二人前後の席なのに、彼女は終始背中を向けたままだった)

少年(………)





57: 2019/10/07(月) 22:45:05.78 ID:qAvjVlqX0
ーーー朝 学校ーーー



シトシト



少年「はぁ……雨…」

少年(じめじめして気持ち悪い。靴下も濡れた)



包帯少女「」テクテクテク



少年(少女さん、遅刻ギリギリだ…)

テクテク

包帯少女「……」ストッ

少年「……」

少年(もう…挨拶を交わすことも……)

少年(僕は何がしたいのだろう)

少年(少女さんのことをどう思いたいのだろう…)

少年(こんな自分に手を差し伸べてくれた彼女に対して、僕がしたことと言えば…)



ーーーーー

──ここでこいつを突き落とせばいい

ーーーーー



少年(……あの声……僕の意志だったのか?)

少年(今思えば聞き覚えのある声だった……でもどこで……)

教師「──はいはい、静かにな」

教師「ホームルームの前に、お知らせだ」

教師「今日からうちのクラスに転校生が入る」

ザワザワ

「この時期に転校?」

「何やらかしたんだろうな」

「ヤンキーとか勘弁…」

教師「静かにしなさい!訳ありじゃなくて、明日の基礎学力テストを受けるために今日転入という形で来ただけだ」

教師「入っていいぞ!」

58: 2019/10/07(月) 22:47:00.83 ID:qAvjVlqX0



ガラッ...



「……」トットットッ



「女子…!」

「すごい可愛い…」



「……」

教師「軽く自己紹介してくれるか?」

「………」

「…夢見娘です」

夢見娘「東中学校から来ました」

少年(すごく眠たそうな目をしてる)

少年(…不思議な子だな。見てるとこっちまで眠くなりそう)

夢見娘「………」

教師「………」

「……え、それで終わり?」

教師「…コホン。夢見娘、席はあそこだ。後ろの方で悪いが、何か不都合があったら言ってくれ」

夢見娘「……」



トットットッ



夢見娘「」チラッ

少年「…?」

夢見娘「……」トットッ

少年(今、こっちを見た…)

少年(僕と少女さんの方を)

少年(…気のせい…?)





59: 2019/10/07(月) 22:49:28.66 ID:qAvjVlqX0
ーーー放課後ーーー

少年「……」カキカキ

少年(最初は偶然かとも思ったけど……夢見娘さん、事あるごとに僕らの方を見ていた)

少年(あの眠そうな目で)

少年(僕には全く心当たりがないんだけど…)

少年「少女さん、今日来た転校生なんだけどさ」カキカキ

少年「もしかして少女さんの知り合いだったりする?」

包帯少女「……」ウト..ウト..

少年「……」

少年(まただ。ここ数日ずっとそう。いつも疲れた顔をしてる)

少年(目の下の隈も日に日に濃くなってきてるような気がする)

少年「……少女さん」トントン

包帯少女「んっ」ピクッ

包帯少女「…あ、ごめん」

少年「ううん、いいよ。それより体調良くないなら無理せず休んだ方がいいんじゃない?」

少年「…僕に付き合ってるよりもさ」

少年(また僕はそんな、突き離すようなことを…)

包帯少女「………」

包帯少女「そう、だね」

少年「っ!」

包帯少女「うん。明日はテストの日だし、お言葉に甘えてぼくは帰らせてもらうよ」

包帯少女「少年君も、もう赤点レベルの科目はないだろうしね」

ガサゴソ(帰り支度)

包帯少女「」スクッ

包帯少女「…それじゃ」

少年「…うん」

テクテク

60: 2019/10/07(月) 22:51:43.35 ID:qAvjVlqX0

少年(……)

包帯少女「──テスト勉強」

少年「?」カオアゲル

包帯少女「お疲れ様。教えたこと忘れないように、明日頑張ってね」

包帯少女「こうやって二人で勉強するのも今日が最後だから」

包帯少女「……だから……」

少年「……」

包帯少女「…この時間、嫌いじゃなかった…」ボソッ

少年(─!)

包帯少女「……」...テクテク



テクテクテク...



少年「………」

少年(………)

少年(……僕は……)

少年(……………)



そうだ、きっとこれは、妖怪のせい。友人の仲を引き裂こうとする醜いアヤカシ"ナカタガイ"がやったこと。



少年(……そういえば)



僕のノートはどこ行った?





61: 2019/10/07(月) 22:53:38.81 ID:qAvjVlqX0
ーーー夜 少女の自室ーーー



(ベッドに仰向けになる少女)



包帯少女「………」

包帯少女「……少年君……」



ーーーーー

少年「──土曜日の、ことなんだけど…」

ーーーーー



包帯少女「……」

包帯少女(あんな…怯えた顔されたら)

包帯少女(ぼくはきみに殺された記憶があります……なんて言えるわけないじゃない)

包帯少女(あの日)



ーーーーー

少女「」ゴポゴポ...

ーーーーー



包帯少女(ぼくは確かに溺れたはずだった)

包帯少女(ぼくの口から漏れるソーダ水のような泡沫。暗い湖底に沈んでいくぼくの意識)

包帯少女(でも次に目を覚ました時、ぼくはこのベッドで横になっていたんだ)





62: 2019/10/07(月) 22:57:09.48 ID:qAvjVlqX0
===昨週 日曜日===

少女「……うぅ……」

少女(苦しい……)

少女(たす…けて……)



ーーーーー

「──消え去れ化け物!この穢らわしい存在めが!」

ーーーーー



少女「…!はぁっ!」ガバッ

少女「はぁ……はぁ……」

少女「……ここは……ぼくの部屋…?」

少女「……」スッ

ポチポチ スッ



スマホ『7月7日 日曜日 07:30』



少女「日曜日……」

少女「昨日は土曜日…」

少女「!!」

ペタペタ サワサワ

少女「…ぼくの身体…」

少女「ぼく、生きてる…?」

少女(昨日のあれは夢だった?)

少女(いやでも…あの水の冷たさ、どうにも出来ない息苦しさ……鮮烈に思い出せる)

少女(それに)



ーーーーー

黒服男「」ニタァ

ーーーーー



少女(あの男…はっきりと顔は見えなかったけど)

少女(笑っていた。一瞬見えた少年君の悲痛な表情とは対照的に)

少女「……」

少女(昨日、何があったのか……ぼくに何が起こったのか…)

少女(訊いてみれば分かるかな)

少女「……」スッスッ



スマホ『連絡先 少年:080-XXXX-XXX』



少女「………」

少女「………」

少女(………)

63: 2019/10/07(月) 23:02:39.07 ID:qAvjVlqX0



少女(あれ)



少女(あと1cm指を動かすだけ。それだけでコールが出来るのに)

少女(今少年君と話すのがとても……気後れする)

少女「……」

少女「…もうちょっと、心の準備が出来てから」



.........







ーーー夜ーーー

少女「……あー……」ゴロン...

少女(結局、彼に電話をかけることは出来なかった)

少女(ぼくの中の怖れが消えることはなく、ついぞ事実は確かめられないまま…)

少女「ぼくってこんなに臆病だったっけ……」

少女(ま、明日になれば嫌でも顔を合わせることになるし、明日訊けばいいか)

少女(さすがに面と向かって言えないことはないよね)

少女(……そう決めたら、眠くなってきた)

少女(今日はほとんど何もしてないはずなのにな……)

少女「……」ウトウト

少女(また…明日から……彼との日常に、戻れ……る……)



コツッ、コツッ



少女(……?)



コツッ、キィ...



少女「……!?」バッ

少女「な、なにこれ…!?」



「……」ユラ..ユラ..



少女(ぼくの目がおかしくなった…?目の前に、巨大な鳥類の足骨のような物体が立っている…)

少女(骨盤から下までしかない。最も奇妙なのは…膝の関節らしき部分に挟まってる目玉)

少女(ゆらゆら揺れながら、まるで意思を持っているようにぼくの方に…)

64: 2019/10/07(月) 23:05:50.66 ID:qAvjVlqX0

「……」コツ..コツ..

少女「ひっ…!こ、来ないで…!」アトズサリ

「……」コツ..コツ..

少女「あ……や……」

カラン

少女「!」

少女(ぼくのバット…)

少女「……こ、の…!」ブォン



ガシャン!



パッ...

少女「消えた……?」

少女「なんだったの、今の…」

少女「…!お父さん、お母さん、みんな大丈夫かな…!」

ガチャッ トットットッ







ーーーーーーー

少女「……」トットッ

少女(みんな寝てた。何事もないようにぐっすり)

少女(…けど、普段この時間でも起きてるお父さんまで寝てるのは、偶々そうなだけ…?)

少女「……ぁ」



「……」フワフワ



少女(今度は……何?)

少女(風鈴ともクラゲとも似つかない生物(?)が玄関前を漂ってる)

少女「……」...タッタッ



バキン!



少女「……もしかしてこいつら、外から来てる?」

少女(…確かめないと)

カチッ



ガチャッ



少女「……」テク..テク..

少女「……え」

少女「嘘だ……」

65: 2019/10/07(月) 23:20:16.77 ID:qAvjVlqX0





(無数の目玉の怪物)

(足の異様に長いハリネズミのような生物)

(空飛ぶあばら骨)





少女「これは…夢……」

少女「起きたら忘れられる悪夢…」



目玉怪物「」ギョロ



少女「やっ…!」

バタン! カチッ

少女「………ぷはっ!」

少女「ふぅ……ふぅ……」

少女「家中の窓、閉めてこないと…!」

ドタドタ



.........





66: 2019/10/07(月) 23:22:13.28 ID:qAvjVlqX0
ーーー少女の自室ーーー

ガチャ...

少女「……」フラフラ

少女(……なんとか、外から入れそうな所は全部塞いできたけど……)

少女「覚めない……覚めないよ」

少女(こういうの、明晰夢って言うんだっけ。夢の中で夢を自覚出来る夢)

少女「…また横になれば、次は朝になってるよね」

少女(忘れよう。あんな異様な光景。それこそ、夢に出てきそうな非現実)



チクッ



少女「痛っ」

「……」

少女(針玉みたいな物体が足元に…!)

少女「」ブンッ

グシャ!

少女「……いつの間にここに居たんだろ…」



ゾクッ



少女「!」

少女「え…あ……」

グッ(顔と足を押さえる)

少女「い……たい…!」

少女(なに…!?痛い、痛いよ…!)

少女(右目が焼けるように痛い!)

少女(左腕が、右足が千切れそうなほど痛い!)

少女「ぐぅぅ…!」トサッ

ゴロ、ゴロン



バタバタ ググ...





ーーー翌朝ーーー

少女「………」

少女「………ハッ」

少女「……朝?」

少女「腕……足……付いてる」

少女「右目も、ちゃんとある」

少女「………」

少女(………)



=======

67: 2019/10/07(月) 23:23:53.69 ID:qAvjVlqX0



包帯少女(その日からぼくの身体にあの痛みが染み付いて…こんな大仰な包帯までする始末)

包帯少女(少し遅れて学校に登校した時、周りは当然びっくりしていたけど、ぼくはもっと驚いた)

包帯少女(だって……彼に──少年君に話しかける勇気がまるで湧かなかったから)

包帯少女(以前の自分なら躊躇いなく出来ていたはずのこと。どうして話しかけることすら出来ないのか……思い通りに動けない自分に嫌気が差してきた時、彼の方から声を掛けてくれた)



ーーーーー

少年「──またここでやろうよ。二人野球」

ーーーーー



包帯少女(怯えた顔の少年君についた、ぼく自身の怯えた嘘)

包帯少女(でもそのおかげで、彼に少しばかり元気が戻った気がした)

包帯少女(結局土曜日の事は無かったことにしてしまったけど、それで少年君との日々が戻ってくるなら……そう思っちゃったんだ)

包帯少女「……」

包帯少女(けど、違った)

包帯少女(どんなに嫌だと思っても、無かったことに出来ないこともあった)

包帯少女(それは……あの奇怪な生き物たち)

包帯少女(ぼくはあれらを"オニ"と呼ぶことにした)

包帯少女(あれから毎夜、オニ退治を続けている。…おかげで寝不足の日も続いてる)

包帯少女(触らぬ神に祟りなし。放っておけばいいものをと言う人もいるかもしれない)

包帯少女(でもぼくは見てしまったんだ)

包帯少女(一昨日の晩。外のオニを減らそうとしていた時、1匹のオニが通りがかった通行人に触れた)





包帯少女(その通行人は間も無く、オニになった)





68: 2019/10/07(月) 23:26:29.44 ID:qAvjVlqX0

包帯少女(あの人がどこの誰だったのかは知らない。けれどあの光景が嘘じゃないなら……)

包帯少女(……ぼくが、やらなくちゃ)

包帯少女(この町で何かが起きている。それに気付いているのは多分、今のぼくくらい)



ーーーーー

少年「──今日はちょっと、早く帰らないといけなくて。ごめんね、また明日」

ーーーーー



包帯少女(……少年君……)

包帯少女(何となく察していたのかな。今のチグハグなぼくを)

包帯少女(まるで腫れ物を扱うかのような態度……)



ーーーーー

少年「──僕に付き合ってるよりもさ」

ーーーーー



包帯少女(………)

包帯少女(…少し、寂しい…)

包帯少女「……」ゴロン...

包帯少女(……大丈夫、安心して。きみはぼくが守る)

包帯少女(きみをオニにはしないから)

包帯少女「さてと…」

包帯少女(今日も行こう)

包帯少女(ここ数日でいくつか分かったことがある)

包帯少女(まず、オニは夜にしか姿を見せない。次に、普通の人にはオニの姿は見えないみたい。そして──)

包帯少女(どうやらオニは皆、南町神社の方角からやって来ているようなんだよね)

包帯少女「……」

ゴトッ(バットを手に取る)





69: 2019/10/07(月) 23:29:17.03 ID:qAvjVlqX0
ーーー石段前ーーー

ヒョコヒョコ

ユラリ...

包帯少女「……いるいる」

包帯少女(見たこともないような奴らがウヨウヨ…)

包帯少女(こいつらは何だろう……足から胴まで全部背骨のような身体のくせに、頭の部分には大きな花…?が乗っかってる)

包帯少女「………」

「……」コト..コト..

包帯少女(オニはこちらを視認したからといってひたすらに飛び掛かってくるわけじゃない)

包帯少女(ただ……気が付くと──)

包帯少女「!」バッ

ブォン ガシャン!

包帯少女(…すぐ近くまで寄っていたりする)

包帯少女「…っ」

包帯少女(奴らに触れられてもないのに、もう痛み始めてきた)

包帯少女(……この包帯部位の痛みも、ひしめくオニたちを消すことが出来れば、一緒に消えてくれるのかな)

包帯少女「……」

タッタッタッ



ブォン!



.........





ガシャァン!

包帯少女「一体何匹いるの…」ハァ..ハァ..

包帯少女(斃しても斃してもキリがない…!)

包帯少女(…やっぱり、元を断たないとダメなんでしょうね)

包帯少女「……」ミアゲル

包帯少女(考えられるのは、この石段の上…)

包帯少女(……ともすれば……あの池の付近、だったり……)

70: 2019/10/07(月) 23:31:59.16 ID:qAvjVlqX0





少年「──この上に、落としてきたのかな…」





包帯少女「!?」

包帯少女「少年君…!?なんでここに…!」

少年「こんな時間に行くのはちょっと怖いけど…あのノートが無いと僕は…」

包帯少女(ノート?…アヤカシノートのこと?)



「……」ジリジリ...



包帯少女「!少年君、危ない!」

少年「………」

包帯少女「…くっ」ダッ

タタタッ!

包帯少女「彼に手を出さないで!」ブンッ

ガシャン!

──バシッ

包帯少女「やっ…!」

包帯少女(蹴られた!?近付き過ぎた…!)

包帯少女(腕が痺れて……それより!)

包帯少女「少年君、無事!?」

少年「…やっぱり、怖いな。もうあそこには行きたくない…」

包帯少女「……少年君?」

少年「新しいノートにでも書くかな。でもそれだと──」ブツブツ



トボトボ...



包帯少女「………」

包帯少女「聞こえて、ないの…?」

包帯少女(……見えてもいないみたいだった……)

包帯少女「まさか、無視されたとかじゃ…」

包帯少女(それはないと思いたい、けど)

71: 2019/10/07(月) 23:33:32.03 ID:qAvjVlqX0

フラ...

包帯少女「おっと…」

包帯少女(体のバランスが……っ!?)

包帯少女「腕が…!」

包帯少女(取れてる…!ぼくの左腕!)

包帯少女(けどなんで、取れた左腕の部分だけ、痛みが無くなってる)

包帯少女「あんなところに落ちてるっ…」

タッタッ(駆け寄る)

包帯少女(きっとさっき蹴られた時だ)

包帯少女(…嫌な感覚。ぼくの身体がぼくじゃなくなるみたい…)

包帯少女「……」ヒロイアゲ

包帯少女「………」

包帯少女(………ぇ………)



(拾った左腕の手のひらに、目玉)



包帯少女「……」

...トクン

包帯少女「………」

トクン、トクン

包帯少女「………」

ドクン、ドクン

包帯少女(…………)



──ドクンッ





72: 2019/10/07(月) 23:36:24.69 ID:qAvjVlqX0







ーーーーー

「──私と生涯を共にして頂けませんか?」

ーーーーー







ーーーーーーー



ピピピピッ! ピピピピッ!



包帯少女「!!」ガバッ

包帯少女「……朝……」

包帯少女「……」スマホカクニン

包帯少女「金曜日……テストの日……」

包帯少女(腕は付いてる…ちゃんと)

包帯少女「……」ニギニギ

包帯少女(…普通の、腕…)

包帯少女「………」

包帯少女「………」

包帯少女(分かんない。何もかも)

包帯少女(この町のオニたちも、あの黒服の男も、一度溺れたはずのぼく自身も)

包帯少女(……どうしよう……)

包帯少女(今、すごく……)





──怖い





73: 2019/10/08(火) 01:06:06.19 ID:zHsEh1qz0
ーーー神社ーーー

幼女「……」

幼女「……」

幼女「………」

幼女「……やはりそうか」

幼女「人にも妖禍子(アヤカシ)にも非ず。その者の意図、人の世を亡くす所業」

幼女「…なれば、我は其れを阻もう」

幼女(何故ならば、我が止めねばならぬ因果が、そこに在る故)

幼女「だがあれ程の狂気、如何にして諫めるべきか…」

幼女「……」

(アヤカシノートを手に取る)

幼女「………」パラ..パラ..

幼女「……」

幼女「………」パラ..パラ..

幼女「………」



(最初のページが白紙)



74: 2019/10/08(火) 01:06:46.19 ID:zHsEh1qz0
幼女「………感じる」

幼女「……」スッ



...ヒュオオォ



パラ、パラパラ



パラパラパラパラ!





──ポンポン、ポンッ





イロヌリ瘴女「……!」

イロヌリ瘴女「♪」ヌリヌリ

ピョン

イロヌリ瘴女「~♪」ヌリヌリ



イイフラシ「なー聞いてくれよ。この前麓に住んでる偏屈爺さんがさ──」ペチャクチャ



カネクイ蟲「……」モゾ..モゾ..

カネクイ蟲「……ヴァ」



幼女「……成る程」

幼女(見つけたり、この書物の力。創造主たるかの少年の思想の具現化である)

幼女(……然し、未だ全ての実体を捉えることは敵わず)

幼女「………」

幼女「差し当たりて」

幼女「行使の余地は有、か」





75: 2019/10/08(火) 01:08:35.40 ID:zHsEh1qz0
第二幕はここまでです。

次回からようやく、これまで少ししか出てこなかった人達に焦点が当たっていきます。

第三幕は猫又娘が主体です。

次回:少年「アヤカシノート」第三幕


引用: 少年「アヤカシノート」