112: 2019/10/19(土) 02:21:38.07 ID:uZMymJ9Z0


最初から:少年「アヤカシノート」第一幕

前回:少年「アヤカシノート」第三幕

■第四幕 ユメを食むもの■



ーーーーーーー



ガブリ



一番最初に食べたのは、きみのユメ。

まだ目覚めて間もない時。自分が何者かも分かってなかった時。

目の前に美味しそうな色したユメがあったから、つい齧り付いちゃったんだ。

夢見娘(あの味は今も忘れてない)

きみを初めて知った味だから。







ーーーーーーー



ガブリ



私の親はきみ。

それも、きみが最初に描いたマヤカシ。

…嬉しかった。きみに頼りにされてることが。

夢見娘(苦い悪夢は、私が食べてあげる)

代わりにどんな現実が欲しいかな?







ーーーーーーー



ガブリ



きみが好き。

そう言うことが出来るのは、ユメの中だから。

…今日もきみの顔は見れないなぁ。

夢見娘(だって、こんなにも照れてしまう)

本当に顔を合わせたら、火を噴いてしまいそう。



見える子ちゃん 1 (MFC)


113: 2019/10/19(土) 02:22:55.31 ID:uZMymJ9Z0
ーーーーーーー



ガブリ



色んなユメに目を向けてみた。

……………。

こうして見ると、楽しそうなユメは思ったより少ない。



ーーーーー

派手娘「うるさいイヤホンを電車でするな!」

派手娘「不味いと分かってる料理を客に出すな!!」

派手娘「その気も無いのに友達面するな!!!」

ーーーーー



不満を声高に叫んでいたり。



ーーーーー

二つ編み母「いい?あなたにはその頭しか取り柄がないんだから、これからもお勉強に手を抜くことがないようにするのよ?」

二つ編み「はい。分かってます」

二つ編み父「父さん達の顔に泥を塗らないでくれよなー。はははっ」

二つ編み「……」

ーーーーー



食いしん坊なオトナたちの餌にされていたり。



ーーーーー

同級生A「お前自分のこと僕とか言ってんだ?」

同級生B「おもしれー。お坊っちゃまじゃん。髪も坊ちゃん刈りとかにしないの?(笑)」

ーーーーー



…弱者に縋るワルモノたちが居たり。

みんな私が食べてしまえたら、きみの周りもちょっとは楽しくなるのかな。

夢見娘(明日はどんなユメを見るんだろう)

今日より優しいユメを見れてますように。





114: 2019/10/19(土) 02:24:22.17 ID:uZMymJ9Z0
ーーーーーーー



とっても怖いユメに出会った。



今じゃない時。ずっと昔の時代。

感じたのは、駆ける大きな身体と、大勢の怒号、取り囲む炎……それと、強い怒りの気持ち。

そのユメは食べなかった。食べてしまったら、私まで呑まれてしまう気がして。

……………うん。

やっぱりきみのユメにお邪魔します。

きみの楽しいユメは、私も楽しいし。

きみの嬉しいユメは、私も嬉しい。

きみの辛いユメは――私が食べちゃうんだ。

それだけでこんなに胸が高鳴るのは、なんでだろうね?

夢見娘(きみの隣に居たい)

けれどそれは叶わない。

きみと私は、コインの表と裏の住人。

相容れないって分かってる。







ーーーーーーー



ガブリ



きみのユメを食べちゃった。

とってもとっても悲しい結末だったんだ。

ねぇ。

泣かないで?

溺れてしまったクラスメイト。きみにとっての大切な人?

泣かないで…ってば。

あぁ……。

今日はユメは覗きません。きみの涙が止まるまで、悲しいユメを食べ続けるのです。

夢見娘(大丈夫だよ)

せめてユメの中だけでも、笑っていてくれるなら。



.........





115: 2019/10/19(土) 02:25:27.67 ID:uZMymJ9Z0



ガブリ



消えない、消えない…なくならない。

食べても食べてもきみの悪夢がなくせないんだ。

それに、もう一個嫌なこと。



──世界は、壊れ始めてきてる



元々小さな孔は空いていた。それを"あのヒト"が無理矢理こじ開けた。

ユメの中の私にまで響いてくる、負の感情。……きみがあてられるのも仕様がないよ。



ガブリ



もうお腹はいっぱいだけど、きみを苦しみから遠ざけられるなら、私の食欲はまだまだ尽きません。



ガブ...



……………。

本当は、知ってるんだ。

こんな風にユメを食い散らかすだけじゃ、きみを救ったことにはならないって。

でもね?まるでゲームみたいだったんだ。夜が来るたび、私という理不尽なリセットボタンできみを全部変えられるような気がしていた。

そんなわけないのに。

偉そうにきみを助けているつもりで、していたことはユメを壊すことだけ。

……それでも、私に出来るのはそれだけ。

夢見娘(それが私。ユメを食べるヒト)

…溢れる、溢れてくる。

きみの悪いユメも、世界のねじれも。

間に合わないよ…。

まだ食べ残しがたくさんあるのに…!

やってきちゃうんだ。ユメの世界の終わり──





──午前7時の魔法





116: 2019/10/19(土) 02:27:44.55 ID:uZMymJ9Z0
ーーー朝ーーー



ピピピピッ ピピピピッ



夢見娘「」パチッ

夢見娘「………」

夢見娘「……」ムクリ

時計『AM 7:00』

夢見娘「………」

夢見娘「……私も……」

夢見娘「行くから……待ってて……」





夢に篭ってるだけじゃきみを助けられないなら、いっそきみの近くで見守っていればいい。

それくらい…いいよね?







ーーー教室ーーー

夢見娘「──夢見娘です」

夢見娘「東中学校から来ました」

生徒たち「………」

夢見娘(ここが学校…普段きみが過ごしている場所…)

少年「……」

夢見娘(!)

夢見娘「………」ドキドキ

教師「………」

「……え、それで終わり?」

教師「…コホン。夢見娘、席はあそこだ。後ろの方で悪いが、何か不都合があったら言ってくれ」

夢見娘「……」



トットットッ



夢見娘「」チラッ

少年「…?」

夢見娘「……」トットッ

夢見娘(……こうしてきみと直接会うのは初めてだね)

夢見娘(きみと同じ所に居るだけでうるさいくらい心臓が跳ね回るけど……)





きみの"厄"を払いにやってきました。





117: 2019/10/19(土) 02:29:57.19 ID:uZMymJ9Z0
ーーー昼休みーーー

夢見娘「……」ボー



同級生C「な、なぁ。俺あの転校生ちゃんと昼食べようかなって思うんだけど…!」

「転校生ちゃんて…お前もしかしてああいうのが?」

同級生C「どストライク」

「やめといた方がいいんじゃ?あの子誰かと喋るどころかほとんど動こうともしないだろ。謎過ぎる」

同級生C「そこがいいんだよ!謎に満ちた大人しい子……だからこそ時折見せる表情の変化が愛おしいんじゃないか…!」

「お、おう」

同級生C「よーし、行ってくる」

「せいぜい頑張れ…」



夢見娘「……」ボー



少年「……」パク...

包帯少女「……」ハム..ハム..



夢見娘(………)

夢見娘(……背中合わせの二人……)

同級生C「夢見娘、さん…!」

夢見娘「……?」

同級生C「その……お昼ってもう食べちゃった?」

夢見娘「……食べてない……」

同級生C「!じゃ、じゃあ一緒に食べない?夢見娘さんのこと、色々知りたいし!」

夢見娘「お腹、空いてない……」

同級生C「え、そうなの…?」

夢見娘(みんなのユメが無尽蔵に転がってるから)

118: 2019/10/19(土) 02:30:47.31 ID:uZMymJ9Z0

夢見娘「………」

同級生C「……えーと……そだ!」

ゴソゴソ

同級生C「はいっ」

夢見娘「?」

同級生C「飴だよ。ちょっとしたお菓子ならどうかなーって」

夢見娘「………」

夢見娘「……」ソッ

夢見娘(……アメ……ユメ……)

夢見娘(似ては、いない…)

カサカサ

夢見娘「」アム

同級生C「!」

夢見娘「……」モム..モム..

同級生C(口だけ少し動いてる……かわいい…!)

夢見娘「……」モム..モム..

夢見娘(……甘い……)

夢見娘(きみのユメとどっちが甘いのかな)

夢見娘(……多分、今食べてるアメの方)

夢見娘(今のきみのユメは、少しだけ……苦い気がする)

夢見娘「……」モム..モム..

同級生C「……」ホッコリ



「なにしにいったんだ、同級生Cのやつ…」





119: 2019/10/19(土) 02:32:44.41 ID:uZMymJ9Z0
ーーー放課後 教室の外ーーー

夢見娘「……」



「──少女さん」

「んっ……あ、ごめん」

「ううん、いいよ。それより体調良くないなら無理せず休んだ方がいいんじゃない?…僕に付き合ってるよりもさ」



夢見娘(……放課後の教室。二人だけのお勉強会)

夢見娘(きみと居られるってだけで、とっても素敵なシチュエーション)

夢見娘(……なのに……)



「そう、だね……うん。明日はテストの日だし、お言葉に甘えてぼくは帰らせてもらうよ。少年君も、もう赤点レベルの科目はないだろうしね」

ガサゴソ

「…それじゃ」

「…うん」

テクテク



夢見娘(ままならない……のかなぁ)

夢見娘(二人とも、本心にないことしかしてないよ)



「──テスト勉強、お疲れ様。教えたこと忘れないように、明日頑張ってね」

「こうやって二人で勉強するのも今日が最後だから………だから………」

「…この時間、嫌いじゃなかった…」ボソッ

...テクテクテク



夢見娘(あ、来る)

夢見娘「」スス...

包帯少女「……」テクテクテク...

120: 2019/10/19(土) 02:33:38.78 ID:uZMymJ9Z0

夢見娘(……)

夢見娘「……」チラリ



少年「……」ウツムキ



夢見娘「………」

夢見娘(また、視えない涙を流してる)

夢見娘(歪に生き返ったその子)

夢見娘("あのヒト"の焼け付くような怒りに巻き込まれて、きみとその子の関係はねじれ出しちゃった)

夢見娘(ユメと現実の狭間で、きみの心は押し潰されそうになってるんだ…)

夢見娘(………)

夢見娘(…一緒に支えてあげたいな)

夢見娘(きみに触れることは叶わなくても、そう、一言……ううん、二言くらい交わすだけなら)

夢見娘「……」ドキ.. ドキ..

夢見娘(……その前に)



きみを取り巻くその厄介なユメたちを、食べちゃおうか。



ガブリ





121: 2019/10/19(土) 02:34:42.45 ID:uZMymJ9Z0
ーーー金曜日 テスト当日ーーー

夢見娘「……、…」

少年「……」ノートパラパラ

夢見娘(……きみに話しかける……ことがこんなに難しいなんて……)

夢見娘(……分かってた、けど)

夢見娘(──少年くん)

夢見娘(~~……名前、呼ぶのは出来ないかも…)

同級生C「や。もしかしてテスト、緊張してる?」

夢見娘「……アメの人……」

同級生C「覚え方…」ハハ...

同級生C「俺、同級生Cって言うんだ。よろしくね」

夢見娘「……」

同級生C「それと!今日は飴の人じゃないんだなぁこれが」ガサゴソ

同級生C「はいあげる」

夢見娘「……チョコレート」

同級生C「頭への糖分補給。気休めだけどさ」

夢見娘「……」

同級生C「甘いもの好きかなって思ったんだけど…違った?」

夢見娘「……食べる……」

スッ パク

夢見娘「……」モグ..モグ..

同級生C(はー…!ほんと、小動物みたいだ)

夢見娘(……同級生Cくん……同級生Cくん……)

夢見娘(………少年、くん………)

夢見娘(やっぱり、きみの名前は特別)



教師「うーし。ほら、テスト始めるぞ!ノートはしまえ。カバンは教室の後ろな」



同級生C「もう時間かぁ。夢見娘さん、テスト頑張ろうね」

夢見娘「……」コク

夢見娘「…あなたも」

同級生C「!…あぁ!」

同級生C「♪」テクテク

夢見娘(……頑張る……)



きみのために。





122: 2019/10/19(土) 02:36:03.25 ID:uZMymJ9Z0
ーーーーーーー

生徒たち「「「さようなら」」」

ハヤクカエロー!

テストドウダッター?



ガヤガヤ



夢見娘「スゥ……ハー……」

少年「……」イソイソ

夢見娘(……うん)

夢見娘「」スクッ

トットットッ

少年「……」テクテク

夢見娘「……」トットッ

夢見娘「……あ、の──」

同級生C「夢見娘さーん!もう帰る?もしよかったら途中まで一緒に帰らない?」

夢見娘「……っ、……私は……」



少年「」テクテクテク...



夢見娘(あ……)

同級生C「あ、ごめん。用事とかあったかな?」

夢見娘「……」

同級生C「それなら昇降口のとこまでとか!…夢見娘さんと話がしたいなーって思ったり…」チラッ

夢見娘「……」ジッ

同級生C「……夢見娘さん?」

夢見娘「………」ジー

同級生C「え…俺の顔、なんか変?」

夢見娘「………」ジーーッ

同級生C(えー!?なに!?なんでこんなに見つめて……はっ!もしかしてついに夢見娘さんの心を開くことに──)

夢見娘「…あなたのユメ、食べてあげない…」ボソッ

同級生C「へ?」

スタスタスタ

同級生C「ちょ、あれ?夢見娘さん?なんて言ったの!ねえっ!?」

「あーあ、振られてやんの」

同級生C「はあ!?ちげぇし!まだちょっとシャイなだけだから!」

同級生C「……だよな?俺、嫌われたんじゃないよな…?」

「いや知らんがな。顔色一つ変わんなかったかんな、あの子」

同級生C「うぅ…頼むぅ……」

同級生C(けどなんとなく……怒ってた……?)





123: 2019/10/19(土) 02:37:11.02 ID:uZMymJ9Z0
ーーーーーーー



ガブリ



ご機嫌いかがですか?私はちょっと斜めです。

きみと話すこともまだ出来てないんだもん。

ユメの中ならたくさん会ったのになぁ…。

世界はちょっとずつ壊れてる。

苦いユメも少しずつ増えている。

きみと私は交わっちゃいけないもの……人と妖禍子(アヤカシ)。

……けど本当は、そんなことよりも、

夢見娘(きみに触れたい)

私を創ってくれたきみが、どうしようもなく好きだから。

コインの表と裏だって、たまには重なったっていいでしょう?





124: 2019/10/19(土) 02:39:26.26 ID:uZMymJ9Z0
ーーー翌週月曜日 学校ーーー

少年「……」テクテク

夢見娘(……落ち着いて、私……)

夢見娘(息、整えて……目、逸らさないで……胸、静かにさせて……)

少年「……」テクテク

夢見娘「………ぁ………」

テクテク...

夢見娘(……行っちゃった)シュン





ーーー休み時間ーーー

「ねー二つ編みさん職員室に呼ばれてるって本当?」

「なんかテストの点めちゃくちゃ低かったみたいよ?」

エー ウソー



少年「……」ペラ..ペラ..



夢見娘「……」

夢見娘(今、なら……)

同級生C「──やっほ、夢見娘さん!元気にしてた?」

同級生C「…あのさ、先週、俺なんか嫌なことしちゃったかな…?もしそうだったら謝ろうと思って…」

同級生C「これ!お詫びのしるし……」スッ

同級生C「俺の好きなチューイングキャンディ。名前だけ聞くとちょいおしゃれだよね」

夢見娘「………」

夢見娘「」ヒョイ、パク

夢見娘「……」モムモムモム

同級生C「……おいしい?」

夢見娘「」コクリ

同級生C(かわい過ぎる)キュン

夢見娘「……でも、今日は話しかけないで…」

同級生C「」ガーン





ーーー休み時間2ーーー

夢見娘(今度、こそ……)

夢見娘「……」ギュッ(目を閉じる)

夢見娘(……はじめまして、少年くん……はじめまして、少年くん……)

夢見娘(シミュレーションは、大丈夫……)

夢見娘「……あの、はじめ…まし──」フリカエリ

(少年離席中)

夢見娘「……………」





125: 2019/10/19(土) 02:41:05.86 ID:uZMymJ9Z0
ーーー放課後ーーー

ワイワイ ガヤガヤ

夢見娘「……」

夢見娘(…結局、今日もダメだった…)

夢見娘(きみはもう教室から出て行った)

夢見娘「……はじめまして……」ポツリ

夢見娘(ではない…んだけれど)



「猫又娘ちゃんってさ、トドノツマリ様って信じる?」

猫又娘「えー?」

「みんな結構噂してるでしょ、──。───」



夢見娘(あの子……)

夢見娘(私と同じ、妖禍子(アヤカシ)の子)

夢見娘(人の住む世界に紛れて、人と一緒に笑い合って……どうしてそんなことが出来るのだろう)

夢見娘(……少し、気になる……彼女のユメも……)



「──それはそうとさ!猫又娘ちゃん今日は新しい手品はしないの?」

猫又娘「へ?」

「実は密かに楽しみにしてたり」エヘ

猫又娘「うーん…今日はねー、すこーし忙しいかもだから――」

夢見娘「私も……見てみたい……」

猫又娘「!?」ギョッ

夢見娘「……」

「ほ、ほらほら!夢見娘ちゃんもこう言ってるよ!」

夢見娘(近くで見たことはみたかったな…)

夢見娘「……」ウズウズ

猫又娘「……分かりました!じゃあ一回だけ」

「やった!」

126: 2019/10/19(土) 02:42:30.23 ID:uZMymJ9Z0

猫又娘「じゃ始めるよ?」

猫又娘「…こちらはなんでしょう?」スッ

「それ、今日返されたテスト?」

猫又娘「ご名答!もちろん全部私のです」パララ

「…猫又娘ちゃん、これ夏の補習に引っかかっちゃってるんじゃ…」

猫又娘「と思うでしょ?でもこーすれば…」

サササ スッ

夢見娘(!)

猫又娘「じゃん!全教科満点に早変わり!」

「…?けど点数変わってないよ?」

猫又娘「よーく見て」

「……」ジッ

夢見娘「……」ジー

「……あ、百点満点じゃなくなってる」

猫又娘「その通り!ちなみにこっちの模範解答もみんな私の点数が満点になっております」

「あはは!なにそれ地味だけどすごい!」

夢見娘「……」パチパチ

夢見娘("変える"力……でもなんだろう、この子によく似た影が、ほんの少し見え隠れしてる…?)

「ねーいっつもさ、それってどうやってるの?一つくらい仕組み知りたい!」

猫又娘「それは秘密です♪」

猫又娘「!…今日はここまで!私もう行かなくちゃ」

猫又娘「じゃね!」ササッ

「今度私にだけでも教えてよー!」

夢見娘「……」テフリフリ

夢見娘(……)

夢見娘「……まぶしい……」ポツリ

「?」



まるで自分の影さえ照らすようなその様は……少し羨ましいと思った。





127: 2019/10/19(土) 02:43:28.98 ID:uZMymJ9Z0
ーーーーーーー

あなたのユメを覗いちゃった。

……………。

…分かってしまった。あなたがそこに居る意味、絶え間なく笑う意味、──この世界を守ろうとする意味。

そっか。あなたの本質はあの眩しさにはないんだ。

あなたなりに、その"影"を演じようとしているんだね。

私にも、そんな強さがあればきみを救うことが出来るのかな?

きみに話しかけることも出来ない私なんて……



...ガブリ



夢見娘(!)

…今日のきみのユメは少し、苦くなくなっていた。





129: 2019/10/19(土) 02:47:00.61 ID:uZMymJ9Z0
ーーー翌朝 教室ーーー

夢見娘「……」テクテク

夢見娘(……)



少年「……その、おはよう」

包帯少女「……うん、おはよ」



夢見娘「……」ストッ



少年「…あの、さ」

包帯少女「…なに?」

少年「……暑いよね、最近」

包帯少女「……そうだね」



夢見娘「………」



猫又娘「」ガタッ

スタスタスタ ポン

猫又娘「…ほら、少年君」



夢見娘(……あなたが動いてくれたんだ)

夢見娘(昨日のユメが苦くなかったのはきっと…そのおかげ)

同級生C「…あの…おはよーございます…」ソローリ

夢見娘「……」

同級生C「…き、今日は夢見娘さんに話しかけても、いい日…?」

夢見娘「……」

同級生C「ごめん。しつこくて嫌だってことだったら、もう話しかけたりしないよ。……だめ、かな」

夢見娘(……この人みたいに、喋ることが出来たらな……)

夢見娘「………別に、いい……」

同級生C「ほんと!ありがとう!」

130: 2019/10/19(土) 02:48:39.94 ID:uZMymJ9Z0



包帯少女「──お昼、一緒にあの校庭まで行こっか」ニッ

少年「…是非行こう!」

包帯少女「ふふっ、なにその意気込み」



夢見娘(………)

夢見娘(よかった)フッ

同級生C「!?」

同級生C「今、笑った…?」

夢見娘「!」ハッ

夢見娘「……わ、笑ってない」

同級生C「え、嘘だよ!今絶対笑ってたよねっ。口元がニヤッて…!」

夢見娘「……っ…」プイッ

同級生C(やっばいな本当かわいいこの子)

同級生C「そうだもう一回だけ今の笑顔お願い!今度はちゃんと残しておけるように絶好のシャッターチャンスを──」スマホカマエ

夢見娘「……」ジトー

同級生C「──待っていよう、か……なんて」

夢見娘「……」

同級生C「……」

夢見娘「………」

同級生C「…すみませんでした」

夢見娘「……お菓子……」

同級生C「んえ?」

夢見娘「くれたら、許す……」

同級生C「…!あげるあげる!いくらでも食べて!」ガサゴソ

夢見娘(……)チラリ



少年「─、──。」

包帯少女「──?」

猫又娘「──♪───!」



夢見娘(…うん)




君の、笑った顔。

それを守れれば幸せだなって。

きみの近くにはもうきみを助けようとしてくれるヒトたちがついてるから……

私は私にしか出来ないことを続けてみようと思いました。





131: 2019/10/19(土) 02:51:01.70 ID:uZMymJ9Z0
第四幕ここまでです。

次回第五幕は二つ編みにスポットが当たります。
そしてようやく物語が動き出します。

次回:少年「アヤカシノート」第五幕


引用: 少年「アヤカシノート」