132: 2019/10/28(月) 00:59:03.79 ID:OOuoymdI0


最初から:少年「アヤカシノート」第一幕

前回:少年「アヤカシノート」第四幕

■第五幕 ミえていないことにするもの■



ーーー第二校庭ーーー

カキーン

ゴロゴロゴロ...

包帯少女「おっとぉ…!」ズサァ

包帯少女「ふぅ、なんとか捕れた。…少年君!こっち側は道路の方だよー!」

少年「ご、ごめーん!コントロールが難しくて…!」

少年「打つ方も楽じゃないんだな…」

包帯少女「教えなくちゃいけないのは勉強だけじゃないみたいだね?」

少年「えー?なんて言ったの!」

タッタッタッ

少年「あれ、少女さんこっちに来たってことは…打つの交代?」

包帯少女「ううん。また先生になりに来たの」

少年「はい?」

包帯少女「打ち方、教えてあげる。ほらバット構えて」

少年「そんなに酷かったかな」

包帯少女「ボールこれ一個しかないからさ、ちゃんとぼくのいる方に打ってくれないと、なくしちゃうかもしれないじゃない?」

少年「あはは…」

ギュッ

包帯少女「いい?まず握り方はこう。でもって振り初めは──」

少年(…この時間がすっごく楽しい)

少年(またこうして少女さんと過ごせるようになるなんて、思ってなかった)

少年(……大切にしたい。この人との関係)

ムニュ

少年「!!」

包帯少女「──ここまで振り抜いちゃっていい……これが一通りの動き。どう?出来そう?」

少年「え、えと…」

包帯少女「?分かんなかった?…ふふ、今朝の意気込みはどこいったの?」

包帯少女「もう一回補助するから、動きをなぞってみること」グイッ

ムニュリ

少年「いやその…!」

少年(当たってます…分かり過ぎるほど当たっちゃってます…!)

少年「」モンモン

包帯少女「?」
見える子ちゃん 1 (MFC)

133: 2019/10/28(月) 01:00:50.54 ID:OOuoymdI0

少年「…そ、そういえば!」

少年「猫又娘さん、結構遅いね」

包帯少女「あー、あの子の頭じゃね…今頃補習授業のプリント山積みにしてるんじゃないかな」

少年「えぇ…補習ってプリント解いて提出しないと帰れないんじゃなかったっけ…」

包帯少女「多分あの子のことだから、適当なところで先生誤魔化して抜け出しくる…なんてことしてそう」

少年「さすがに一枚くらいは真面目に提出するんだと思うけど」



猫又娘「おーい!お二人さーん!」テッテッテッ



少年「噂をすれば」

猫又娘「ふぃ~…お待たせ」

包帯少女「補習、お疲れ様」

猫又娘「もーほんとだよー!どうして補習なんてものがこの世にあるのかな!一回授業でやったこともっかいやり直すだけの作業なんてさー!」

少年「一回の授業で覚えられてないからだろうね…」

包帯少女「でも補習終わったってことはある程度頭に入れられたんだよね?」

猫又娘「……えへへ」

少年「…まさか」

猫又娘「いやいやいや!ちゃんとプリントは提出してきましたよ!……ちょーっとお茶目な答えが多いけど」

少年・包帯少女((これは真面目にやってないな))

134: 2019/10/28(月) 01:02:28.45 ID:OOuoymdI0

猫又娘「そんなことよりさ!帰ろ帰ろ!早いとこ作戦会議と洒落込もうじゃあないか」

少年「作戦会議?」

猫又娘「あ…こっちの話」ニシシ

包帯少女「ちょっと待って。その前に」



タッタッタッ



包帯少女「少年くーん!ラスト一回、さっき教えた通りに打ってみてー!」

少年「!…少女さん…」

猫又娘「やきゅう?だっけ。玉当て…私もできるかなぁ」

少年(教えた通りに…)



ーーーーー

包帯少女「──動きをなぞってみること」ムニュリ

ーーーーー



少年(……!)

少年「」ブンブン

猫又娘「?」

少年「…よし」

少年「いくよ!少女さん!」

包帯少女「いつでもどうぞー!」

少年「……」スッ

少年(……ここ!)ブン

カキン!



猫又娘「にゃ?」



──ゴチン!





135: 2019/10/28(月) 01:03:28.06 ID:OOuoymdI0
ーーーーーーー

少年「…ごめんよ、猫又娘さん」テクテク

猫又娘「いいっていいって!こんなのすぐ治るから!」テクテク

包帯少女「綺麗なタンコブになっちゃったね…」テクテク

少年「う……ちゃんと真っ直ぐ打てるように練習します……」

猫又娘「気にしなくていいって言ってるのにー」

猫又娘(この前派手娘さんにシメられた時の方が痛かったくらいなので…)

少年「……けど知らなかったな」

少年「猫又娘さん、僕だけじゃなくて少女さんとも話をしたことがあったんだね」

猫又娘「…まぁね~」

少年「僕たちの仲直りの為に奔走してくれてたんだなって思ってさ……猫又娘さんが居なかったら僕たちは今頃…」

包帯少女「……」

猫又娘「悩みあるところに私あり、ですから!」

猫又娘(それでも、まだ何も解決してないからなー)

包帯少女「…ん」テク...

包帯少女「この道、ぼくと猫又娘さんは右なんだ」

少年「猫又娘さんも?僕は真っ直ぐだから──」

猫又娘「ここで、お別れなんですね…」ヨヨヨ

包帯少女「変なお芝居してないで、行くよ?」

猫又娘「はーい」

少年(面白い人だよなー…)

包帯少女「それじゃ少年君、また明日」テフリフリ

少年「!…あ、あぁ!」フリフリ

少年(また、明日…)

少年(……♪)



タッタッタッ...



.........





136: 2019/10/28(月) 01:05:30.14 ID:OOuoymdI0



猫又娘「さーてと」

包帯少女「……」

猫又娘「…やっと、二人きりになれたね、少女ちゃん…//」

包帯少女「また尻尾掴まれたい?」

猫又娘「真面目にやりますはい」

包帯少女「…第1回作戦会議…って感じでいいの?」

猫又娘「イエス!今日はまず、情報の整理から始めたいかな」

包帯少女「というと?」

猫又娘「私のことはある程度話したよね?だからお次は、少女さんがなんであの化け物と戦ってるのかを知りたいな」

包帯少女「……戦ってる……そう、だね…」

包帯少女「ぼくが初めてオニを見たのは2週間前の…日曜日。夜眠ろうとしてたら部屋に歩く骨みたいなのが入ってきてさ。その時は相当驚いたけど、思わずバットで殴り壊してたよ」

猫又娘「わぁお…」

包帯少女「でもその後…外のあの光景を見た。悪夢か何かだと思ったよ。けどね…」

包帯少女「…次の日の夜も変わらなかったの。身体の痛みもなくならない」

猫又娘「……」

包帯少女「ねぇ、あのオニたちが何をしているのか見たことある?」

猫又娘「なにって…我が物顔で町を飛び回って、侵略…とか?」

包帯少女「ある意味そうなのかもね」

包帯少女「……オニに触られた人が、同じようにオニになるのを見たんだ」

猫又娘「…!」

包帯少女「だからぼくは、あいつらを少しでもこの町から減らそうとしてたんだけど、ちっぽけな一人の力じゃなかなか厳しかったみたいでさ…後はあなたも知っての通りだね」

猫又娘(触られたら、同じ化け物にされる…?)

猫又娘「…あのさ、それならさ、そのオニにされちゃったって人、捜索願いとか出されてるんじゃ…」

猫又娘「ううん、仮にそれが一人だけじゃないんだとすると、もう何人も行方不明になってますってニュースの一つや二つ流れてもいい気がする」

包帯少女「確かに聞かないね。ここの近くで起こってないってだけとか」

猫又娘「うむむ…」

包帯少女「……」

137: 2019/10/28(月) 01:08:00.85 ID:OOuoymdI0

猫又娘(……)

猫又娘「…少女さんがその包帯着けてるのって、さっき言ってた身体が痛むから、なんだよね?」

包帯少女「うん」

猫又娘「んで、痛みが出てきたのも2週前の日曜日」

包帯少女「…うん」

猫又娘「……その前に、何かあった?」

包帯少女「……」

猫又娘「例えば、土曜日に奇妙なことが起こった…とか」

猫又娘(少年君の言ってた、池に突き落とした出来事はまさにその土曜日だったはず)

包帯少女「………」

猫又娘「……」

包帯少女「…何も、ないよ」

猫又娘(!)

包帯少女「どうしてそんなこと訊くの?」

猫又娘「…だってさ、その包帯巻き始めたのも、化け物共が湧き始めたのも同じ日曜日のタイミングだったんでしょ?」

包帯少女「そうだけど…」

猫又娘「……本当に、何もなかった?」

包帯少女「………」

包帯少女「……溺れる、夢を見た」

包帯少女「南町神社あるよね?あの神社の横道を少し行ったところに変な池があってね、そこに溺れて沈んでいく……そんな夢を見たくらい」

猫又娘(……それは多分、夢じゃないんだろうね。そう分かってるから、そんな思い詰めた顔をする)

猫又娘(少年君の名前を出さないのは、彼を庇うため?それとも認めたくないから…?)

包帯少女「──猫又娘さんは?」

猫又娘「ほへ?」

包帯少女「ある程度話したとか言ってたけど、あなたがそもそもどうやって生きてきたのかとか、全然知らないよ?」

猫又娘「私!?……は、物心ついた時にはこうだったんよね。気付いたら猫又としてここに居ました、みたいな」

包帯少女「…やっぱり、あなたオニだよね?」

猫又娘「んー、確かにあの化け物たちと同じような感覚はあるけど…」

包帯少女「……撃退しなきゃ」ユラァ

猫又娘「にゃ!?ストップストップ!オニはオニでも悪いオニじゃないから!」

包帯少女「冗談だよ」クスッ

猫又娘(バット構えるのは冗談でも怖い)

138: 2019/10/28(月) 01:09:40.63 ID:OOuoymdI0

猫又娘「というか!その点で言ったら少女さんも他人事じゃないんよ!」

猫又娘「その包帯の下、私たちとおんなじ気配がしてるんだからね?」

包帯少女「──!」

包帯少女(……そっか……)

包帯少女「…じゃあぼくも猫又娘さんみたいに魔法使えるようになるかな?」

猫又娘「魔法って言うとすごくファンタジックに聞こえるね……少女さんの場合、そのバットに魔力が宿ってるのでは?」プププ

包帯少女「へぇー、そう」グリグリ

猫又娘「痛い痛いバット押し当てるのやめてー!」

包帯少女「…それで、自称良いオニの猫又娘さんはなんで他のオニたちを斃してまわってたの?」

猫又娘「そりゃあねぇ。私たちの住むこの町が好き勝手にされるなんて見過ごせないじゃん?」

包帯少女「…正義のヒーロー?」

猫又娘「そんな大層なもんじゃないよ。私はただ」

猫又娘「──世界を少し、明るくできたらいいなって」

猫又娘「…それだけ」ニコッ

包帯少女「……初めて頼もしく見えたかも」

猫又娘「なにをー!昨日絶体絶命のピンチを助けてあげたじゃんか!」

包帯少女「それはそれ。これはこれ」

猫又娘「意味分かんないから!」

包帯少女「そういうからかい甲斐があるところのせいかなー」ククク

猫又娘「む……」

139: 2019/10/28(月) 01:10:51.08 ID:OOuoymdI0

猫又娘「……とにかく!」

猫又娘「あとは今後の方針を決めていきましょ!」

猫又娘「私思ったんだけど、これまでみたいに闇雲にあいつらを倒してくだけじゃダメなんだよきっと」

包帯少女「それには同意。結局のところあの怪物が何処から現れたのか、そもそもなんなのかが分からないと前に進まない気がする。…でも昨日みたいなのが出てきたら危ないとも思う…」

猫又娘「あー、あのでっかいやつね。野放しにしてたら間違いなく何か起きてたよねぇ…」

包帯少女「うん。だから今まで通りオニ退治は──」

猫又娘「そこだよ!」

包帯少女「え?」

猫又娘「あの化け物退治!それは私一人でやります!具体的には、見張り兼退治ってところですけど」

包帯少女「そんな──」

猫又娘「やられそうになってた誰かさんは大人しく家で寝ててくださいな。そのかわり情報収集の要は任せたから!」

包帯少女「………そういうことなら」

猫又娘「物分かりがよくて助かりますな~」

包帯少女「でもどこから探してけばいいのかな」

猫又娘「…それを考えるのもお任せします」

包帯少女「……」ジトッ

包帯少女「…猫又娘さん、同じ猫又の知り合いとかいないの?」

猫又娘「いないいない。居たらその子にもじゃんじゃん協力してもらってるよー」

猫又娘「……あ」

猫又娘「そうだ言ってなかった。猫又じゃないけどさ、居たよ、うちのクラスに」

包帯少女「そうなの…!?」

猫又娘「うん。ほら先週転校してきたあの子」

包帯少女「あの子って」



包帯少女「…夢見娘さん…?」





140: 2019/10/28(月) 01:12:41.05 ID:OOuoymdI0
ーーーーーーー

少年「……」テクテク

少年(…少女さん…)

少年(柔らかかったな……)

少年「…って、ダメだダメだ。なに考えてるんだ」

少年「ん?」



夢見娘「!」

夢見娘「」タッタッタッ...



少年「……あの人……」





141: 2019/10/28(月) 01:15:06.02 ID:OOuoymdI0
ーーー二つ編み宅ーーー



ガチャリ



二つ編み「…ただいま帰りました」

ドタドタドタ

二つ編み母「ちょっと!帰りが遅いんじゃないの!?」

二つ編み「すみません。補習課題があったもので…」

二つ編み母「そんなのあなたの自業自得でしょう!家のお勉強もあるんだからさっさと帰ってきなさい!」

二つ編み「……はい」

二つ編み母「分かったら部屋に行ってお勉強の続き!今日の分が終わらなかったら承知しませんからね」

二つ編み母「まったく補習だなんて恥ずかしいったらないわ…」トットットッ...

二つ編み「……」





ーーー自室ーーー

二つ編み「……」カキカキ

二つ編み「……」カキ...

二つ編み「………」

二つ編み(……まただ)



──いやぁああ!

──やめてくれ…!

──くる…しい……



二つ編み「………」

グシャッ

二つ編み「やめて欲しいのはこっちの方よ…!」

二つ編み(頭に響く気味の悪い悲鳴)

二つ編み(それは2週間前の日曜日から始まった。最初に聞こえたのは訳の分からない呻き声。でも周りにはわたし以外の人物は見当たらない)

二つ編み(それからずっと、この変な声と…)

二つ編み「……っ」

二つ編み(…何かに見られてるような気配が、わたしの思考を掻き乱す)

二つ編み(本当煩わしい。ただでさえ面倒臭い世界だっていうのに、これ以上わたしの邪魔をしないでよ…!)

二つ編み「……」...カキカキ

二つ編み(……おかげで基礎学力テストの成績は最悪。いつもなら難なく解ける問題も、あの日は全く頭に入ってこなかった)



──もうやだよ……たすけて……



二つ編み(……消えて、くれないかしら……)

二つ編み(この悲鳴も、口うるさい親も、わたし自身も……全部!)





142: 2019/10/28(月) 01:16:28.21 ID:OOuoymdI0
ーーー翌朝 教室ーーー

二つ編み「……」カキカキ

二つ編み(結局昨日終わらなかった…。今の内に片付けておかないと、また怒鳴られる)



「聞いた?二つ編みさんが補習に引っかかってるって…」

「知ってるー、前のテスト悲惨だったんだってさ」

「ぷっ、あのガリ勉から勉強取ったらなにが残るのよ」

クスクス...



二つ編み(……うるさいわね)

二つ編み(どうせ他人を利用することしか能がないくせして、群れたら他人を貶めようとする)

二つ編み(一人じゃ何も出来ないんでしょ?)

二つ編み「……」カキカキ

二つ編み(…一人じゃ何も出来ないのは、わたしも同じか…)



──ここから出してよ…



二つ編み(……すすり泣くような声)

二つ編み(わたし、呪われたのかしら。それとももうすぐ氏ぬ?)

二つ編み(それならそれでいいけれど……)

二つ編み(このままこの苦痛しかない日々を続けさせられるのは、ごめんだわ)

二つ編み「……」ググッ...

ポキッ

二つ編み「!」

二つ編み「……」カチカチ

...ジロッ

二つ編み(っ!)

二つ編み「」バッ



(談笑するクラスメイトたち)



二つ編み「……っっ」

二つ編み(誰……誰なの!?)

二つ編み(お願いだから、もうわたしを見ないで…!)





143: 2019/10/28(月) 01:48:40.79 ID:OOuoymdI0



包帯少女「──夢見娘さんが?」

少年「そう。僕の家の近くに居たんだよ」

猫又娘「見間違いじゃなくてー?」

少年「はっきり顔を見たからそれはないはず。僕に見つかったら逃げていったし…」

少年「それでさ、この前聞きそびれちゃったんだけど、あの人少女さんの知り合いだったりする?」

少年「学校でもよくこっちを見てるんだよね」

包帯少女「え」チラリ



夢見娘「…!」フイッ



包帯少女(…本当だ)

包帯少女「あの子も、人じゃないんだよね?」ヒソヒソ

猫又娘「うむぅ…でも変な悪さするような子には見えないけどなぁ」ヒソヒソ

包帯少女「けど万が一ってことも…」ヒソヒソ

少年「え、なに?二人とも心当たりあったりする?」

包帯少女「知らない子だけど…」

猫又娘「ふむ…」

少年「?」

猫又娘「……だったら直接本人に訊くしかないっしょ」

包帯少女「なっ」

少年「それしかないかなぁ。ずっと見てくるの、気になるしなぁ」

包帯少女「なに考えてるの…!そんな危ないこと…」ヒソヒソ

猫又娘「大丈夫大丈夫、いざとなれば私もいるんだし。それに…あっちの派手娘さんに話しかけるよりはハードル低いと思うから」ヒソヒソ



派手娘「なんであんたらはいつもいつも──!」ガミガミ

同級生A・B「「……」」チヂコマリ



包帯少女「…あれは、また別次元の話でしょ」

144: 2019/10/28(月) 01:52:32.17 ID:OOuoymdI0

猫又娘「ともかくだ、少年君!気にかかることはそのままにしといちゃいかん!」

猫又娘「もしかしたら、あの子きみのことが好きなのかもしれないし?」

少年「!?」

包帯少女「」ムッ

猫又娘「そうと決まれば善は急げ♪行った行った!」



同級生C「──夢見娘さん、おはよう!」

夢見娘「……」コクリ

同級生C「今日は我ながら素晴らしい報告が──」



猫又娘「…あちゃー」

包帯少女「同級生Cくん、だっけ」

猫又娘「ま、しょうがない。あの子が捕まるタイミングで行くしかないね」

包帯少女「……彼、絶対夢見娘さんのこと好きだよね」

猫又娘「ん~…!いいじゃんいいじゃん!恋って素敵だよー!」

猫又娘「私的にはあれくらいアタックしてくれる方が燃えるな~!」

猫又娘「ね?少年君?」

少年「え!?なんで僕!?」

包帯少女「……そうなの?」

少年「いや……えぇ…?僕は…」

包帯少女「……」

少年(えも言われぬ圧力を感じる…)

少年「…好きとか好きじゃないとか、よく分かんない、かな」

猫又娘「えー?つまんなーい。もっとキュンキュンするような話をさー、聞かせておくれよー」

包帯少女「そこ、いい加減黙る」ビシッ

猫又娘「あたっ」

少年「ははは…」

少年(……好きな人、か……)

包帯少女「あなたほんとその元気はどこから湧いてくるの…」

猫又娘「いつでもみんなの太陽ですから!」エッヘン

少年「……」

包帯少女「…ん、どうかした?」

少年「な、なんでもない」





145: 2019/10/28(月) 01:55:58.63 ID:OOuoymdI0
ーーー放課後 学校ーーー

二つ編み「……」テク..テク..

二つ編み「はぁ……」

二つ編み(足が重い…)

二つ編み(家、帰りたくない…)

二つ編み「……」テク..テク..

二つ編み(わたしって何が楽しくて生きてるんだろう)

二つ編み(学校にはただただ文字を書き殴りに来て、家に戻れば両親の言いなり人形)

二つ編み(人並みの遊びなんか知らない…)

二つ編み(挙句……意味分からない呪いまで貰ってきちゃって)

二つ編み(……わたしはなんなの?)

二つ編み「……ぅ……」

二つ編み(気分悪く……)

二つ編み(お手洗い…)

フラフラ



包帯少女「──、─」

猫又娘「──?───」



二つ編み「……」フラ..フラ..

二つ編み(…あの二人…クラスの……)



猫又娘「──見に行ったら、目に見えて少なくなってたんよ」

包帯少女「あの大きなオニがオニを作り出してたってこと?でも──」



二つ編み「……?」フラ...

二つ編み(何の話をしてるのかしら…)

二つ編み(……とりあえず、早く行──)



猫又娘「んにゃー、私はどうしても先々週の日曜日がキーポイントだと思うんだよねぇ。今のところ全部、そこが起点になってるじゃん?」



二つ編み(!!)

二つ編み(2週前の、日曜日…!)

スタスタスタ!

二つ編み「ねぇ!!」

包帯少女「?」

猫又娘「!?」



二つ編み「その話、詳しく聞かせてくれない…?」





146: 2019/10/28(月) 01:56:59.36 ID:OOuoymdI0
ーーーーーーー

少年「一人で帰ってると、やっぱ物足りない気がするなぁ」テクテク

少年(それだけ最近、誰かと一緒にいることが多いんだろうな)

少年(少女さん、今日は猫又娘さんの勉強を見るって言って学校に残ってった……僕は戦力外通告ってことか。まぁ自覚はあるけどさ)

少年(件の夢見娘さんには同級生C君(だっけ?)がベッタリくっついてて話す隙さえなかったし)

少年「なんだろうなー……」テクテク

少年(この引っかかる感じ)

少年(噛み合わない歯車を見てるような、日々…)

少年「……」

少年(やっぱり、あの包帯が……)

少年(……いつ取れるんだろ)

テクテク...





夢見娘「……」ソッ...





147: 2019/10/28(月) 02:00:07.12 ID:OOuoymdI0
ーーー学校ーーー

二つ編み「つまり、その日以来あなたたち二人でその怪物を減らそうとしてたってこと?」

猫又娘「実際協力しようってなったのは一昨日からだけどね~。それまで少女さんが戦ってることも知らなかったもんで」

二つ編み「戦う……あなた陰陽師か何か?」

包帯少女「ぼくは普通の人間だよ」

猫又娘「…趣味はバットによる殴打です」ボソリ

包帯少女「」ギロッ

猫又娘「ひっ!じ、事実じゃん…!?」

包帯少女「偶々手近にあった武器なだけだから」

二つ編み「なんか、思ってたより勇ましい人なのね…」

包帯少女「…というか、信じるの?こんな話」

二つ編み「えぇ。信じる…いえ、信じるしかないの」

二つ編み「だってわたしも、ここ最近ずっとおかしなことが続いてるから」

二つ編み(この地獄から抜け出せるなら、藁にだって縋る)

猫又娘「何があったの?」

二つ編み「頭の中で悲鳴や泣き声が聞こえてきたり、なにかに見られてるような気がしたり…」

...ギョロ

二つ編み「っ!い、今も…」

猫又娘「…誰もいない、はずだけど」

二つ編み「きっとあなたたちの言う怪物の仕業なのよ…!」

二つ編み「だから……わたしも手伝うわ。このバカみたいな事態と一刻も早くおさらばしましょう」

猫又娘「そんな強引に」

包帯少女「…その申し出は正直ありがたいけど、二つ編みさんは平気なの?」

二つ編み「なにがかしら?」

包帯少女「自分から関わっていくとなると、もっと酷いことが起きるかもしれない……そんな可能性が付き纏うんだよ」

二つ編み「…今以上に酷くなることなんてないわよ」

包帯少女「……そう」

二つ編み「………」

猫又娘(…?)

148: 2019/10/28(月) 02:02:06.42 ID:OOuoymdI0

二つ編み「……今分かってることは?」

包帯少女「え?」

二つ編み「手伝うって言った手前情けないけど、わたしそいつらが見えたことないから戦うとかは出来ないと思う。調べ物の方に手を貸すわ。…本当はこの手で叩き潰してやりたいのに…」

猫又娘「例え見えたとしても戦うのは危ないからね!?」

猫又娘(女の子って好戦的な子ばっかりなんだなぁ…)

包帯少女「その話もしようと思ってたところ」

包帯少女「昨日、色々調べてみたんだけど…ごめん、今のところ収穫はゼロ。妖怪とか魔物とかそれらしいワードで検索かけてみたんだけどね…ぼくが見たようなオニの画像はまったく引っかかんなかった」

二つ編み「よく聞くような妖怪じゃないってことね」

包帯少女「うん。確かにどれ一つとして見たことない……それこそ得体の知れない姿形だったからね」

包帯少女「例外もあるけど…」チラッ

猫又娘「にゃはは…」

二つ編み「事実は小説より奇なりとは言うけれど……」

二つ編み(妖怪……そういえば)

二つ編み「…案外、かなりマイナーな怪異とかだったりするのかもしれないわね」

猫又娘「あんなに大暴れしてるのに?」

二つ編み「規模は関係ないのよきっと。あなたたちも聞いたことあるでしょう?」



二つ編み「トドノツマリ様」



包帯少女・猫又娘「「!」」

二つ編み「あの噂だって全く有名ではないけどここ南町ではそれなりに昔から伝えられてきた話だって聞いたわ」

二つ編み「それと同じように、あなたの見た怪物も地域の限られた伝承なんじゃないかしら」

包帯少女「なるほど…」

猫又娘「おー」

包帯少女「…あなたも少しは考えて」

猫又娘「これでも考えてるよ!?」

149: 2019/10/28(月) 02:04:44.72 ID:OOuoymdI0

包帯少女「でも、そんなのどう探していけばいいのかな」

包帯少女「トドノツマリ様みたいな噂になってるとして、一人ずつ聞き込みをしていく…くらい?」

猫又娘「それなら私に任せて!人を集めるのは得意なのですよ!」

二つ編み「いいえ。それは最終手段くらいでいいと思う」

二つ編み「わたしのおばあ……祖母が経営してる古書店があるのよ。多分そこならローカルな言い伝えとかある程度は調べられるはず」

猫又娘(!…私のことも載ってるんかな)

二つ編み「あ。…ごめんなさい、それは明日でもいいかしら」

包帯少女「ぼくは構わないよ」

猫又娘「そういえば二つ編みさんいっつも早々と帰ってるよね。習い事か何か?」

二つ編み「いえ…うち、親が少し厳しいから…」

包帯少女(……)

猫又娘「……その顔!」

二つ編み「え…?」

猫又娘「さては普段からずっとそういう暗い顔してるでしょ」

猫又娘「二つ編みさんがオニたちの影響を受けてるの、案外そういう気の持ちようのせいだったりするんじゃない?」

猫又娘「笑顔は万病の薬だよ!無理矢理でも笑えば、楽しくなってくるよ!」

猫又娘「こうやって!」ニーッ

二つ編み「何の話…」

猫又娘「ほらほら」

二つ編み「……」

包帯少女「……そこまで。二つ編みさん困ってるから」

包帯少女「引き留めてごめん。急いでるんだよね?また明日よろしく」

二つ編み「…そう、ね」

二つ編み(…!もうこんな時間…!)

二つ編み「先に帰るわね、さよなら…!」



スタスタスタ...



猫又娘「……あーあ、結局笑った顔見れなかったなー」

包帯少女「見境ないよね、あなた」

猫又娘「んー?そうは言うけど、あの子は特別だよ。だって」



猫又娘「──二つ編みさんの笑顔、今まで一回も見たことないんだもん」



包帯少女「…!」

包帯少女「……そういうとこ、尊敬するよ」

猫又娘「ほんと?やったっ」





150: 2019/10/28(月) 02:10:32.83 ID:OOuoymdI0
ーーーーーーー

二つ編み「……」スタスタ

二つ編み(……怪物……)

二つ編み(胸糞悪いわ。本当にそいつらのせいなのだとしたら、どうしようもないじゃないの)

二つ編み(そんなの…あまりに理不尽過ぎる)

二つ編み「……」スタスタ



ーーーーー

猫又娘「――無理矢理でも笑えば、楽しくなってくるよ!」

ーーーーー



二つ編み(……)

二つ編み(……笑顔なんて、関係あるのかしら……)

スタスタ...





黒服男「………」





黒服男「…思惑に沿わぬ現況」

黒服男「その要因を探りに来たが……よもや人の子らだったとはな」

黒服男「一つは純粋な人」

黒服男「一つは人と妖禍子(アヤカシ)の混じった猫」

黒服男「一つは…」

黒服男(…水底に沈んだはずのあの娘…)

黒服男「……」

黒服男(だが、それだけではあるまい)

黒服男(あの妖禍子の減りよう……)

黒服男「……娘を現世に戻した存在か」

黒服男(同じ気配を感じる)

黒服男「…道を塞ぐものは除くのみ」





151: 2019/10/28(月) 02:13:05.28 ID:OOuoymdI0
ーーー翌日放課後 校門前ーーー

包帯少女「……」スッ..スッ(スマホいじってる)

タッタッタッ

二つ編み「お待たせ。行きましょうか」

包帯少女「…本当に来れたんだね。補習は平気だったの?」テクテク

二つ編み「ちょっと先生に頼み込んで、プリント繰り上げて終わらせたのよ」テクテク

包帯少女「そんなこと出来たんだ」

二つ編み「…えぇ」

二つ編み(元々成績"だけ"は良かったから…特別処遇ね。こういう時だけは助かる)

包帯少女「でも今日補習の日だったなんてね……猫又娘さん、律儀に出席しちゃうから…」

二つ編み「あの子ただでさえ教師に目付けられてるものね。…さっき補習室出る時すごい目で見てきたけど」

包帯少女「今日分かったことは後でちゃんと教えるって言っといたのに」

二つ編み「…なんか好奇心旺盛な子供を見てるみたい」

包帯少女「言えてる」クスッ

二つ編み「……」

包帯少女「……」

二つ編み(………)

二つ編み「……ねぇ、その包帯」

二つ編み「それも例の怪物にやられたの?」

包帯少女「……これはちょっと違うと思ってる」

包帯少女「あいつらに触れたりするとすごい痛み出すの。それが尾を引いちゃって……着けてないと不安になるようになっちゃった」

二つ編み「…始まりはやっぱり2週間前の日曜日なのよね?」

包帯少女「そう」

二つ編み「……全部その日が……いえ、でもそこに固執するのも……もしかして見えているものが全てとは……」ブツブツ

二つ編み「──その前の日、土曜日あたりに何か変わったことはなかった?」

包帯少女「っ…!」

包帯少女(……)

二つ編み「……聞こえてる?」

包帯少女「…うん」

包帯少女「なかったよ、特に」

二つ編み「………」

包帯少女「………」

152: 2019/10/28(月) 02:14:40.39 ID:OOuoymdI0

二つ編み「嘘ね」

包帯少女「!どうして…」

二つ編み「分かるわよ、それくらい」

二つ編み「でもいい。無理に聞こうとはしないから」

二つ編み「人に知られたくないことの一つや二つ、あるものね」

包帯少女「……」

二つ編み「けど覚えておいて。それがこの怪奇現象の打開の鍵を握ることがあれば、いずれ向き合うことになる」

包帯少女「………知ってるよ」

包帯少女(言われなくても、自分が一番分かってる…)

包帯少女「…二つ編みさんにも、あるの?知られたくないこと」

二つ編み「……あるわ」

二つ編み(……誰にも晒したくないもの……)



ーーーーー

二つ編み母「──あなたの頭なら、この高校くらい行けるでしょ?受験しなさい。いいわね?」

二つ編み「はい」

ーーーーー



二つ編み(………)



二つ編み(それはわたしの──弱さ)





153: 2019/10/28(月) 02:15:33.26 ID:OOuoymdI0
ーーー古書店ーーー

二つ編み「──おばあちゃん、居る?」



...ガララ



老婆「おや…二つ編みちゃん、いらっしゃい」

二つ編み「あのね、今ちょっとした調べ物してて。ここの本、少し読ませてもらってもいいかな?」

包帯少女(口調が柔らかい……意外におばあちゃん子?)

老婆「ええよええよ遠慮せんで。…そちらはお友達かい?」

包帯少女「あ…はい、そうです。不躾なお願いなのに、ありがとうございます」

老婆「しっかりしとるのぉ。気にしなくてええけんの」

老婆「気の済むまで見てっておくれ」ニッコリ



.........





ガサゴソ

二つ編み「……」パラパラ

ガサッ

包帯少女「……んー……」ペラ...

二つ編み「……」パララ

二つ編み「……これは違う?」スッ

包帯少女「ん?…違うね」

二つ編み「はー……これだけ探しても見つからないなんて」

包帯少女「知らなくてよかったような言い伝えなら嫌になるほどあったのにね…」

二つ編み「どれも昔教えて貰ったのばっかりよ」

包帯少女「昔?」



老婆「調べ物は順調かねぇ?」



二つ編み「おばあちゃん……あんまり進んでないの…」

老婆「そうかい……」

老婆「あれま。懐かしいねぇ」

老婆「物の怪、妖怪の本。…二つ編みちゃんの小さかった頃、たくさんお話聞かせたっけねぇ」

二つ編み「うん……覚えてる」

老婆「あんまり怖がらせると夜外に出たがらなくなるもんだから、おうちに帰るのも一苦労だったわね」

二つ編み「そ、そういうのはいいから!」

包帯少女(…なんだか、楽しそう)

154: 2019/10/28(月) 02:16:43.03 ID:OOuoymdI0

老婆「ほほほ。まぁ、根詰めるのも程々にの。茶菓子でも食べて、休憩しなされ」コトッ

二つ編み「…ありがと」

老婆「お友達もどうぞ」

包帯少女「ありがとう、ございます」

包帯少女(すごく優しいおばあちゃんだな…家が厳しいって言ってたけど、このおばあちゃん見てると全然そんな気はしないのに)

包帯少女「……」スッ

包帯少女「あ…!」

包帯少女「これ…これだよ!」

老婆「はて?」

二つ編み「どうしたのよ…?」

包帯少女「このお盆に描いてある絵!」

(1体の異形の絵)

包帯少女「ぼくが見たオニにそっくり!」

二つ編み「そうなの!これが…!」

老婆「ほぉ……」

老婆「あんたたち、妖禍子(アヤカシ)について調べてたのかい?」

包帯少女「あやかし…?」



.........





155: 2019/10/28(月) 02:17:54.77 ID:OOuoymdI0



老婆「ほれ、この本だったはずだよ」スッ

二つ編み「……表紙、何も書いてないよ?」

老婆「古い伝記みたいなものだからねぇ。売り物としても置けないさね」ホホ

二つ編み「……」パラ...

包帯少女「……」ノゾキコミ



『妖禍子。それは古来よりこの南町に語り継がれる異形の存在。その由来や行動目的など、彼らについて判明していることは非常に少ない。しかし唯一はっきりしているのは、彼らの存在は我々人間の世を脅かしかねないということ。見つけ次第封印を施さねばならない。

彼らを知らずに、見逃してしまうことのないようこの書には知りうる限りの見聞を記す。』



包帯少女(……)

二つ編み「……」パラ..パラ..

包帯少女「…!」

包帯少女「これ、見たことある。こっちのも」

二つ編み「どうやら、間違いなさそうね」

二つ編み「妖禍子……これがわたしたちが消し去るべき…」

二つ編み「敵」

包帯少女「………」

二つ編み「………」

ペラ

老婆「こりゃ驚いた……まさか妖禍子に会ったっちゅうんかね?」

二つ編み「わたしは見てないけど、この子がね」

二つ編み「ねぇおばあちゃん、この端書きにある封印って、具体的に何をするの?この本肝心な方法が書いてないよ」

老婆「封印ねぇ……」

包帯少女(…!これ…)



『猫又』



包帯少女(小さな猫に尻尾が二本……猫又娘さんと同じだ)

老婆「具体的にこう封印しますよ…って話は聞いたことないけどねぇ」

老婆「ばあちゃんが知っとるんは、昔々…大勢の妖禍子達がうちらの神社に封じ込められたなんちゅう逸話くらいさね」

包帯少女「!」

二つ編み「それって、南町神社?」

老婆「そうそう」

156: 2019/10/28(月) 02:19:18.43 ID:OOuoymdI0

二つ編み「……」

包帯少女「……」

二つ編み「段々、繋がってきたわね」

包帯少女「うん」

二つ編み(けれど、あと一歩……足りない。封印の件は置いといたとして、まだはっきりとしない部分があるのよね…)

二つ編み「おばあちゃん、妖禍子について他に知ってることってないの?何でもいいの。どんな小さいことでも…!」

老婆「なんだろねぇ……ふーむ……」

老婆「……そのヒトら、今でこそ妖禍子なんて呼ばれて忌み嫌われてるだろう?けんども、ばあちゃんにはねぇ」

老婆「なんとなくだけど、悪さするようなもんにゃ思えないんだよねぇ」

二つ編み「それは感想じゃないの…」

老婆「ほっほっ。何でもええ言うたのは二つ編みちゃんさね」

二つ編み「そうだけどぉ…」

包帯少女「…二つ編みさんさ」

二つ編み「なに?」

包帯少女「おばあちゃんのこと大好きなんだね?」

二つ編み「はっ!?いきなり何言い出すのよ…!?」

包帯少女「だっていつもより楽しそうにお話してるじゃない」

二つ編み「そんなこと…!」

老婆「ばあちゃんと居るのは楽しくないかえ?それは悲しいのぉ」ヨヨヨ

二つ編み「そ、そうじゃないけど……おばあちゃんまで乗っからないでっ」

老婆「ほほほ」

包帯少女「へぇー…なんか、かわいいね」フフッ

二つ編み「!?///」

二つ編み「……わたし、散らかした本片付けてくるから!」

包帯少女「それならぼくも──」

二つ編み「少女さんは待ってて。どの本がどこにあったかなんて覚えてないでしょう?」



スタスタ...



包帯少女「行っちゃった…」

老婆「まあ……本の並び順なんてうちは気にしてないのにねぇ」

包帯少女「あ、そうなんですね」

包帯少女(じゃあ…照れ隠し?)

包帯少女(なんだ、ちゃんと人間臭いところあるんじゃない)

包帯少女(猫又娘さんが居たら、ちょっと面白かったかもね)

157: 2019/10/28(月) 02:20:08.63 ID:OOuoymdI0

老婆「…お友達さんや、名前は何て言うんだい?」

包帯少女「少女です。二つ編みさんとは同じクラスなんです」

老婆「少女さんね……うんうん、覚えたよ」

老婆「のぅ少女さん。あの子、学校での様子はどんなものかね?」

包帯少女「学校で、ですか。普段は…勉強を頑張ってますね。とても真面目ですよ。生徒の中で一番大人びてると思います」

老婆「……そうかい……」

包帯少女「……どうかしたんですか?」

老婆「うんにゃ……ちぃとくらいは気を緩められるようになって欲しゅうてねぇ」

包帯少女「気を……」

包帯少女「……あの、二つ編みさんの親御さんが厳しい、と…本人から聞きました」

老婆「………」

包帯少女「………」

老婆「……あの子と今暮らしてるのは、本当の両親じゃあないのさ」

包帯少女「え…」

老婆「あの子の親はね、あの子が中学に上がる前に交通事故で亡くなってしまってねぇ」

老婆「轢き逃げだって。他にも何人か犠牲になった人がおったっちゅう…」

包帯少女「その事件、覚えてます。この近くで起きたやつですよね」

老婆「うむ……」

老婆「結局、親戚中をたらい回しにされた後、今の……義理の両親さね、養子として迎え入れたのよ」

老婆「子供欲しがっとる言う遠縁の夫婦さね。だども……今のあの子を見てると、とてもじゃないけど良くしてもらっとるようにゃ見えんでねぇ」

老婆「このばばあが引き取りたいっちゅう思いもあるんじゃが…老い先短い身じゃ。あの子の巣立つまで保たん…」

包帯少女「……」



二つ編み「」テキパキ



包帯少女(……そんなの、全然知らなかった)

158: 2019/10/28(月) 02:24:41.84 ID:OOuoymdI0

老婆「あの子、笑わんじゃろ?」

包帯少女「!」

老婆「それどころか、どんな辛いことがあろうと表情に出そうとせん」

老婆「小さい頃からそうじゃった。自分の弱いところを決して見せようとしないのさ」

包帯少女(……直接オニが見えるぼくでもあんなに恐怖を感じるのに……相手の見えない二つ編みさんは)

包帯少女(どれだけの苦痛と闘っているんだろう…)

老婆「そんなだから今の家で不自由を感じていたところで、それを打ち明けることもないんだろうねぇ…」

包帯少女「………」

老婆「……じゃから、少女さんには感謝しておるのよ」

老婆「あの子が友達を連れて来よるなんて初めてでねぇ。ばあちゃんも少し、安心したよ」

包帯少女「ぼくは、そんな大層なものでは…」

包帯少女(うぅ…まともに話したのが昨日からだなんて言えない……まして妖禍子繋がりで…)

老婆「これからも、二つ編みちゃんの友達で居てくれるかい…?」

包帯少女「……」

包帯少女「勿論です」

老婆「……」ニッコリ

二つ編み「──終わったわ…おばあちゃん、あれでいいんだよね?」

老婆「おぉおぉ、上出来だとも」

二つ編み「良かった」

二つ編み「…で、二人とも何の話で盛り上がってたの?妖禍子の言い伝え?」

包帯少女「……二つ編みさんのかわいいエピソードを少々」

二つ編み「え」

二つ編み「なに?なに話したの、おばあちゃん…!」

老婆「さてさて、何だったかねぇ」

包帯少女「ふふっ」

二つ編み「………」

二つ編み「わたしばっかり……少女さん、あなたこそ彼氏放っておいていいのかしら?」

包帯少女「は、え?」

二つ編み「少年君。近頃ずっとベッタリでしょ?寂しがってるんじゃない?」

包帯少女「いや…彼はそういうのじゃ…!」

二つ編み「それにしてはやけに焦るわね」シテヤッタリ

包帯少女(少年君が彼氏…)

159: 2019/10/28(月) 02:27:30.23 ID:OOuoymdI0



ーーーーー

少年「──好きとか好きじゃないとか、よく分かんない、かな」

ーーーーー



包帯少女(ぼくが彼に声を掛けたのはなんとなく放って置けなかったからであって…)

包帯少女(友達、だと思ってた)

包帯少女(……けど……)

二つ編み「ま、いいわ。そういう話題は猫又娘さんの方が好きそうだし」

二つ編み「この本、借りてくねおばあちゃん」パラパラ

老婆「ええよ。失くさんようにの」

二つ編み「妖禍子について書いてある本、これだけかな?」

老婆「それ一冊だけだったと思っちょるよ……探して、見つかったら連絡でもしようかね?」

二つ編み「ありがと。じゃあわたしの携帯に掛けて。番号、今書くから」

ストッ ススッ

包帯少女「……」

(妖禍子の本を手に取る)

パラ..パラパラ..

包帯少女(……!)



『トドノツマリ様』



二つ編み「はい。これわたしの番号ね」

老婆「はいよ」

包帯少女「……おばあさん、訊いてもいいですか?」

老婆「ん?」

包帯少女「この…"トドノツマリ様"について」

包帯少女「この絵、小さい女の子に見えるんですけど、これも妖禍子なんですか?」

老婆「そうさね。そこに載っとるんは全部、そう呼ばれるものじゃから」

包帯少女「……トドノツマリ様が、人の願いを叶えてくれるというのは、本当ですか?」

老婆「あぁ…そんな噂が立っとるみたいねぇ。大抵そういうんは都合良く作られた迷信だったりするがね」

老婆「…どうやらトドノツマリ様に至っては、あながち嘘でもないんじゃ」

二つ編み「そうなの…?」

160: 2019/10/28(月) 02:31:37.29 ID:OOuoymdI0

老婆「ばあちゃんの周りにも居ったよ?やれ辛抱強く願ったら叶えてくれたって叫んでたっけね」

老婆「その人は身長が欲しいと言ってて…事実、20過ぎにも関わらずそれから不自然なくらい背丈が伸びてってねぇ」

老婆「ま、異性に注目されたいなんちゅうしょうもない動機やったらしいけども」

包帯少女「…不思議、ではありますね」

包帯少女(……)

包帯少女「あともう一個。…願いを聞いてもらうと世界に災いがもたらされる…なんて話も聞きました」

老婆「災い?そんなはずないさ」

老婆「トドノツマリ様は、うちらの守り神なんじゃからの」

二つ編み「守り神…」

老婆「遠い昔からずー…っと、あの神社のお社でこの町を見守って下さっとるんじゃ」

老婆「ばあちゃんはそう言い聞かせられて、育ったものよ」

包帯少女「……」

二つ編み「……」

包帯少女「……妖禍子が封じられたのも神社、トドノツマリ様が町を見守ってる場所も神社……」

包帯少女「何か、関係があるのかな…」

老婆「悪い妖禍子が出てこないように見張ってくれとる……というのが有力さね」

老婆「妖禍子に悪いも何も無いと思うんじゃけどねぇ…」

包帯少女(……トドノツマリ様に、神社に、妖禍子に……そして、生き返ったぼく)

包帯少女(あの時、少年君は……もしかして……)

老婆「けんども、少女さん、妖禍子を見たんじゃもんなぁ」

包帯少女「そう、ですね。夜になると、たくさん徘徊してるんです」

老婆「…もし真実なら、あるいは…」





老婆「神社に、良くないことが起きとるのかもねぇ……」





161: 2019/10/28(月) 02:33:30.91 ID:OOuoymdI0
ーーー神社ーーー

幼女「………」

幼女「……何用か?」



黒服男「用など、言わなくても分かっているだろう?」



幼女「……立ち去るがよい。そなたの望む物は此処には無い」

黒服男「俺が何を為すつもりか、把握しているような口振りだな」

黒服男「なら、少し違う。俺が今望むのは…」

黒服男「障害の排除」

幼女「……」

黒服男「お前のような妖禍子(アヤカシ)が存在するとはな」

黒服男「見てくれは人だが……その異能。他の妖禍子を遣い、俺の妨害をしていたか」

黒服男「……何故人間に加担する?」

幼女「………」

幼女「加担には非ず。我の所業は単純」

幼女「人と妖禍子の混ざらぬ事」

黒服男「人間が俺達を受容することは無いからな。その思考は同意する」

黒服男「だからこそ、愚かな人間共を除き去る必要がある」



幼女「……紅(あか)と碧(あお)の獣」



黒服男「…!」

幼女「あの凄惨が繰り返されてはならぬ。我等と人、其の均衡は保たれて然るもの」

黒服男「……」

162: 2019/10/28(月) 02:35:19.92 ID:OOuoymdI0

黒服男「それを知っていて尚、俺を止めようとするか…」

幼女「…憎しみが最後に残すは、虚な無でしかない」

黒服男「その憎しみを生むのも、増長するのも人間だ」

幼女「我等とて完全な存在ではあるまい。相互不干渉、其れが最適解となるのだ」

黒服男「…どうやら言葉を交わすだけ無駄なようだな。お前と俺とでは決定的に価値観が異なる」

...ザッザッ

幼女「………我を消すか?」

黒服男「いや」ザッザッ

黒服男「言っただろう。障害を排除することが目的だと」ザッ...



バシュンッ!



幼女「っ」バッ

幼女「…………?」

黒服男「ほう、こんなノートで妖禍子を生み出せるのだな」ペラ..

幼女「!」

黒服男「む…これは……」

黒服男(奇妙な繋がりだ。あの男の持っていたものか)

幼女「…返還せよ」

黒服男「返すと思うか?」

幼女「……」

黒服男「……」

黒服男「……愚人のように飛びかかるかと思ったが、聡明だな」

黒服男「お前では俺を止められない」

幼女「………」

黒服男「………」

ザッザッザッ...

黒服男「……安心しろ。消えるのは人間だけだ」ザッザッ



スッ...(闇に紛れる黒服男)



幼女「……………」





163: 2019/10/28(月) 02:37:23.06 ID:OOuoymdI0
ーーーーーーー

二つ編み「……」テクテク

二つ編み(……何かしらね。今日は少し…)

二つ編み(楽しかった気がする)

二つ編み(おばあちゃんと話してるだけの時とはまた違う…)



ーーーーー

包帯少女「──へぇー…なんか、かわいいね」フフッ

ーーーーー



二つ編み(少女さんが居たから…?)

二つ編み「……」テクテク

二つ編み(ふぅ…楽観視出来る状況じゃないのにね)

二つ編み(………ふふ)

二つ編み「…そういえば変な悲鳴が聞こえてくることも無かった」

二つ編み(本当にあの子の言ってた"笑顔"なんてものが……影響するのかしら…)

二つ編み「……」テク..

(二つ編み宅)

二つ編み「………」



ガチャ



二つ編み「…!」

二つ編み母「………」

二つ編み「……遅くなりました」

二つ編み母「……」

二つ編み母「どこに行ってたの?」

二つ編み「それは、連絡した通り補習で──」

二つ編み母「嘘をつくんじゃない!」

二つ編み「っ…」

二つ編み母「あなたがあんまり遅いものだから、学校に電話してみたのよ。そしたら補習なんてとっくに終わってるって言うじゃないの!」

二つ編み母「言いなさい、どこに行ってたの?」

164: 2019/10/28(月) 02:44:38.65 ID:OOuoymdI0

二つ編み「……祖母の書店で、調べ物を……」

二つ編み母「あのおばあさん…!またあなたに余計な時間を使わせたのね!?」

二つ編み母「あぁ嫌だわ…!もっと遠くに越せば良かった!そうすればあなたが無駄な寄り道をすることもないのに!」

二つ編み「!…嘘ついたことはすみません。でも必要な調べ物だったんです」

二つ編み母「あなたに今必要なのは成績でしょう!他は二の次!」

二つ編み母「もう高校合格するまで、おばあさんに近付いちゃ駄目ですからね!」

二つ編み「なっ…成績はちゃんと取り返します!祖母は関係ありません!」

二つ編み母「口答えする気……?」

二つ編み「その調べ物だって勉強に集中するために必要なものなんです」

二つ編み「何でもかんでも無駄だゴミだって、決め付けないで下さい」

二つ編み(…あ)

二つ編み母「」ブチッ

二つ編み母「あなたねぇ…!」

二つ編み母「誰のおかげで生活出来てると思ってるの!?路頭に迷いかけてたあなたを引き取った恩を──」

二つ編み(やってしまった)

二つ編み(つい、口から零れてた)

二つ編み(だって今日の全てを否定されたような気がしたんだもの…)

二つ編み母「──あなたが救われた恩はあなたの人生をかけて返すべきでしょう!親が誇れる子供になる。私は無理なことは一言も言ってないはず──」

二つ編み(耳障り…)

二つ編み母「──それなのに最近──だったその成績──、─!──つもり───!?」

二つ編み(あれ…?)

二つ編み母「───!──、────」





二つ編み(この人の顔、のっぺらぼうだったっけ?)





二つ編み(声も、喋ってるのは分かるのに聞こえない……)

二つ編み「あの…すみません」

二つ編み「さっきから何を言ってるのか全然分からないんですけど…」

二つ編み母「~~っ!」

二つ編み母「」ギャーギャー

ガミガミ

二つ編み「……?」





165: 2019/10/28(月) 02:45:50.75 ID:OOuoymdI0
ーーー深夜 自室ーーー

二つ編み「……」ボー

二つ編み「……」



──いやだ…

──しにたい



二つ編み(……そうね……)

二つ編み「………」



──だれかぁ…



二つ編み「………」

二つ編み「……あや……かし……」

二つ編み(……そう)

二つ編み(何もかも)





そいつらのせいなのよ。





166: 2019/10/28(月) 02:47:20.14 ID:OOuoymdI0
ーーー翌日 学校ーーー

猫又娘「妖禍子(アヤカシ)…って言うんだ…」

包帯少女「うん。で、これが今話してた本」トリダシ

猫又娘「ほほぉ」ペラペラ

猫又娘「……お、私が載ってる」

包帯少女「そ。ついでに猫又娘さんが何者かもはっきりしたね」

猫又娘「ついで扱いなのぉ?」

包帯少女「……でも、これでやっと色々見えてきた」

猫又娘「…そだね」

猫又娘「しっかし、トドノツマリ様は守り神だったんね。あの神社に何かが住んでるのは感じてたけど、土地神様だとは……」

包帯少女「まだそうと決まったわけじゃないよ。あくまでも伝聞でしかないから、だから…」

包帯少女「南町神社に行って、確かめてこよう」

包帯少女(なんだかんだで避けてきてしまっていたあの場所…)

猫又娘「……怖い顔してるよ」

猫又娘「少女さんが無理して向かうくらいなら、私だけで見てこよっか?」

包帯少女「ううん。ぼくも行く。あそこに何があるのか、ちゃんと自分で見てこないと」



二つ編み「……」トットットッ



猫又娘「あ、戻ってきた!」

二つ編み「もう昨日の話は共有出来た?」

猫又娘「バッチリです!」

包帯少女「ありがとね。二つ編みさんのおかげで大分筋道が立てられるようになった」

二つ編み「わたしも早く元の日常に戻りたいだけよ」

包帯少女(…元に戻っても、友達のままでいられるよね)

包帯少女「それで、昨日あの後連絡はあったの?」

二つ編み「?何のこと?」

包帯少女「妖禍子について書かれた本が見つかったら追って伝えるって、約束してたでしょ?」

二つ編み「……?…誰と?」

包帯少女「誰って…おばあさんだよ。古書店の、二つ編みさんのおばあちゃん」

二つ編み「おばあちゃん……祖母?」

包帯少女「そう」





二つ編み「わたし、会ったこともないわよ?」





167: 2019/10/28(月) 02:48:36.48 ID:OOuoymdI0

包帯少女「………え」

包帯少女「何言って…昨日古書店で会ったよね…!?」

二つ編み「古書店には行ったけど、その本買って読んでただけよね」

包帯少女(なに?どういうこと…?)

包帯少女(おばあさんのこと知らないなんて、そんな嘘をつくとは思えないけど……)

包帯少女「…じゃあ、トドノツマリ様の昔話をしてくれたのは?」

二つ編み「それはわたしが知ってたから聞かせてあげたんじゃない」

包帯少女「………」

二つ編み「……どうしたの?いきなり祖母の話なんか持ち出して…」

包帯少女「………いや、何でもない。ぼくの勘違いだったみたい」

二つ編み「そう…?」

二つ編み「あと、先に謝っておくわね。わたししばらく放課後は付き合えない。昨日、帰りが遅過ぎるって言われちゃって」

包帯少女「っ…ごめん、ぼくたちのせいで…」

二つ編み「気にしないで」

二つ編み「あなたたち神社に行くのよね?わたしはわたしで妖禍子の封印について探ってみるつもり」

二つ編み「収穫があれば報告するわ。そっちもよろしくね」クルッ



トットットッ(自席に戻る)



包帯少女「………」

猫又娘「……少女さん、さっきの」

包帯少女「うん、おかしかった」

包帯少女「古書店のおばあさん、間違いなく二つ編みさんのおばあちゃんだったはず…」

猫又娘「んぅ……私も昨日行けてれば…!」

168: 2019/10/28(月) 02:51:50.48 ID:OOuoymdI0

少年「──二人とも、今平気?」

包帯少女「…少年君」

猫又娘「おやおやどうしたよお兄さん。思い詰めた顔しちゃって」

少年「……」

少年「…相談があるんだけど…」

猫又娘「割と深刻なやつだったり…?」

少年「まぁ、その……」

少年「夢見娘さんのことで」

包帯少女「──!」

包帯少女(色々あって忘れてた……あの子もつまり…)

包帯少女(妖禍子なんだよね…?)

猫又娘「おー、そういえば少年君に気がある──」

包帯少女「大丈夫なの!?なにかおかしなことされた!?」ズイッ

少年(近っ…!)

少年「…おかしなことというか」



少年「尾けられてるみたいなんだ」ボソリ



包帯少女「……ん?」

少年「下校の時、僕の後ろを付いてくるんだよ…!」ヒソヒソ

少年「気付いたのは一昨日からだけど、多分もっと前からされてたんだと思ってる」ヒソヒソ

少年「一度僕の家まで来てたことがあったし…」ヒソヒソ

169: 2019/10/28(月) 02:53:10.46 ID:OOuoymdI0

猫又娘「わお…」

猫又娘「……ストーカーの妖禍子?」

少年「あや……なに?」

猫又娘「んーん、なんでもない」

少年「だからさ、今日途中まででいいから一緒に帰ってくれないかな」

少年「──猫又娘さん」

猫又娘さん「私?」

包帯少女「……」チラリ

猫又娘「…少女さんは?」

少年「し、少女さんは…」チラッ

少年「っ」メソラシ

猫又娘(?)

少年「明日、とか」

包帯少女「……明日からはまた一緒に帰ろうか。二人で」

猫又娘「え゙」

猫又娘「私は仲間外れ!?」

包帯少女「ははは本気じゃないよー」

猫又娘(目が笑ってないんですが)

包帯少女「……ま、ぼくも今日は行かなくちゃいけないとこがあるしね」

包帯少女(おかしくなったのはぼくか、二つ編みさんか……)

包帯少女「神社には明日、少年君を送ってから向かおう。夢見娘さんのことは任せたから」ヒソ

猫又娘「りょーかい」ヒソ





170: 2019/10/28(月) 02:56:00.78 ID:OOuoymdI0
ーーー放課後 学校ーーー

二つ編み「……」テクテク

二つ編み「……」テクテク



「ねー、お願い!明日までの宿題、終わったら手伝って!」

「ちょっとは自分でやればー?ってか、あんたいつも二つ編みに見せてもらってなかった?」

「だって今のあの人使えなさそうなんだもん。たまに変な独り言言ってて不気味だしぃ」

「友達じゃなかったの?」

「まっさかー(笑)」



二つ編み(………)

二つ編み「……」テクテク

テクテク...







ーーー昇降口ーーー

二つ編み「……」テクテク

二つ編み「……」テクテク



同級生A「頼むよー。こんくらいでいいからよ、今月も足りなくなさそうなんだわ」

下級生「でも、俺ももうお金は…」

同級生B「いいだろ?俺たち友達じゃん。そのうちちゃんと返すからさ」

下級生「…そのうちって、い、いつになるんですか…」

同級生A「近いうちにはぜってーだよ。俺らが信用出来ねぇの?」



二つ編み「………」

二つ編み「……」テクテク

テクテク...





171: 2019/10/28(月) 02:56:48.21 ID:OOuoymdI0
ーーーーーーー

二つ編み「……」テクテク

二つ編み「……」テクテク



──ヒック...グスッ...



二つ編み(……)

二つ編み「……」テクテク



ギョロリ



二つ編み(……っ)

二つ編み「」...スタスタ



スタスタスタ...





172: 2019/10/28(月) 02:57:44.25 ID:OOuoymdI0
ーーー古書店ーーー

包帯少女「ここ…だよね」

包帯少女「………」

包帯少女(うん。並んでる本も昨日見てたものと同じ。ここから見えるところにおばあさんはいないけど…)

包帯少女「……すみませーん」



シーン



包帯少女「すみません!誰かいませんかー!」

...ガタッ

包帯少女(!)

トットットッ ガラッ

中年「あい、いらっしゃい」

包帯少女(え…)

中年「なんかね?お会計かい?」

包帯少女「…あの、このお店におばあさんていませんか?」

中年「ばあさん?さぁ知らんなぁ。ばあさんの客はたまに来るけども。それかほれ、おっさんならここにおるでな、ぶはは!」

包帯少女「……この書店、あなたが持ってるものなんですか?」

中年「いんや、ここは兄が趣味でやってるような店だ。今日は俺が店番してるっつーだけよ」

包帯少女「お兄さん…」

中年「あぁ。別に店番でばあさん雇ったいう話も聞いてねぇからな……君、来る店間違えたかい?」

中年「いやまぁ!俺としちゃ君みたいな子が来てくれるだけで良い清涼剤になっけどなー!ははは!」

包帯少女「……」

包帯少女「…妖禍子って知ってます?」

中年「あやかしぃ?なんでぇ、妖怪のことけ?そこらに置いてある本にしこたま書いてあんじゃねぇか?」

包帯少女「………」

包帯少女「すいません、お騒がせしました」ペコリ

中年「おう、帰るんか。気を付けてな」



テクテクテク...



中年「…学生かぁ。戻りてぇよなぁ、俺もなぁ」

中年(にしても今の子、すげぇ包帯してたけど、怪我は平気なんかね)





173: 2019/10/28(月) 03:00:57.56 ID:OOuoymdI0
ーーーーーーー

少年「──どう、見える?」テクテク

猫又娘「…うーん、まだどこにも見えないかなー」テクテク

少年「おかしいな…昨日はもうこの辺りで後ろにいたんだけど」

猫又娘「誰かといるときはストーキングしないとか?」

少年「どうかな…」

猫又娘「…けど、後をつける以外何もされてないんだよね」

少年「うん、まあ」

猫又娘「その時に訊いちゃえばよかったのに。なんで付け回すのって」

少年「……実際されてごらんよ。結構怖いんだ」

猫又娘「えー?私ならズバッと尋ねちゃうよ?」

少年「みんなが猫又娘さんみたいなわけじゃないから」

少年(……)

少年「……少女さんのこと、なんだけどさ」

少年「最近よく猫又娘さんといるだろ?…その、僕のこと、何か話してなかった?」

猫又娘「少年君の?」

猫又娘(あの子といる時は異変の話しかしないからなぁ)

猫又娘「特にしてないよ」

少年「そっか…」

猫又娘「どしたの?もしや少女さんのこと気になってたりー?」

少年「………」

猫又娘「え……ほんとに?」

猫又娘「つ、ついにお二人さんが──!」

少年「そう決まったわけじゃ…!前にも言ったけど、自分でもまだよく分かってないんだよ」

少年「少女さんが気になるのはその通りでさ。でもそれが友達として気にかかるだけなのか…好きとしての気になるなのかは、全然」

少年「あの包帯だって、いつまで着けてるのか気がかりだし…」

猫又娘(包帯…)

猫又娘(……あの子の包帯からはずっと、私たちと同じ妖禍子(アヤカシ)の気配がしてる)

猫又娘(……それってもしかして……)

174: 2019/10/28(月) 03:02:14.67 ID:OOuoymdI0

猫又娘「……ん?」チラッ



夢見娘「……」ソロリ



猫又娘「あ…!」

猫又娘「いたよ少年君!かなり後ろの方に!」ヒソヒソ

少年「!いつの間に…」

猫又娘「よーし、任せて。私が問い詰めてくるから!」ヒソヒソ

猫又娘「」クルッ

ダッ!



夢見娘「!」

夢見娘「」タッタッタッ



猫又娘「逃げた!?待ちなさいー!」スタタタ

少年「待ってよ僕も──」



スタタ...



少年「……はや……」

少年「………」

少年「………」



ーーーーー

少女「」ニコッ

ーーーーー



少年(あの笑顔がまた見たいって思うのは……)

少年(好き、だからなのかな……)

少年「……………」

ピロリン

少年「!」



[LINE]
猫又娘『ごめーん、見失っちゃった(T_T)』



少年「えぇ……」





175: 2019/10/28(月) 03:06:05.16 ID:OOuoymdI0
ーーー夜ーーー



ザッザッ



黒服男「……」ザッザッ

黒服男(……満月の夜)



ーーーーー

女「~~♪」

ーーーーー



黒服男(未だに貴女を思い出す)

黒服男「……」ザッザッ...

黒服男「………」

黒服男(……もう少しで、あの無念を晴らすことが出来る)

黒服男「……」スッ



...キイィ

ゴオオオォォ...!

シュン、シュン、シュン!



「キシャア!」

「キュー、キュー」ヒラッ

「……」ガシャガシャ

「グオォ…」ゴゴゴ



黒服男「………」



(夥しい数の妖禍子達)



黒服男「……あわれあわれや」...ザッザッ

黒服男「だれぞおにか」ザッザッ

黒服男「てのなるところ」ザッザッ



ゾロゾロワラワラ



黒服男「さいてさいてや」ザッザッ

黒服男「あかいはな」ザッザッ

黒服男「ははなるところ…」ザッザッ...



.........





176: 2019/10/28(月) 03:07:26.27 ID:OOuoymdI0
ーーー少女の自室ーーー

包帯少女「……どうして……」

包帯少女(あの古書店、二つ編みさんのおばあちゃんの居る感じが全くなかった。代わりに雑なおじさんが出てきて…)

包帯少女(まるで最初から居なかったかのように……)

包帯少女「夢でも見てた…?」

包帯少女(店員が知り合いのおばあちゃんになる夢…?)

包帯少女「……」



ーーーーー

老婆「──二つ編みちゃんの友達で居てくれるかい…?」

ーーーーー



包帯少女(そんなはずない!あれが嘘だったなんて、そんな残酷なこと…!)

包帯少女「…訊いてみよう、かな」

ポチッ スッスッ

包帯少女(昨日交換しておいたLINE)



[二つ編みとのトーク]
『唐突だけどさ、二つ編みさんのおばあちゃんって、どんな人だったか覚えてる?』



包帯少女「………」

包帯少女(これで送信すれば)



...ズキッ



包帯少女「痛っ…!」

包帯少女(な、に……急に身体が…!)



ザワザワ...ガサガサ...



包帯少女(変な音……外から…?)

包帯少女「……」ソッ..



「「「……」」」ゾロゾロゾロ



包帯少女「…!?」

シャッ(カーテンを閉める)

177: 2019/10/28(月) 03:12:40.98 ID:OOuoymdI0

包帯少女(なに今の……!)

包帯少女(あれ全部……妖禍子……?)

ズキズキ

包帯少女「あ゙ぃ……!」

包帯少女(痛い…!)

包帯少女(なんで…?奴らに近付いてもない、家中の鍵も締めて入れないようにしてるのに…!)

包帯少女「はぁ…!ぅぐ……」



ーーーーー

「──おい!向こうへ逃げたぞ!」

「──追えー!化け物を逃がすなー!」

「──妖禍子は根絶やしにするのじゃ!」

ーーーーー



包帯少女(…これは…?)



ーーーーー

メラメラ..

ボオォ..



女「」

「……俺は……」

「──生まれて来て善かったのか…?」

ーーーーー



包帯少女(……誰かの、記憶……?)





178: 2019/10/28(月) 03:14:04.25 ID:OOuoymdI0
ーーー二つ編みの自室ーーー

二つ編み「……」スッ、スッ



スマホ『"妖禍子 封印" の検索結果』



二つ編み「………」

二つ編み「…見つかれば苦労しないわよね…」

二つ編み(またあの古書店に行くしかないのかしら)



ーーーーー

包帯少女「──古書店の、二つ編みさんのおばあちゃん」

ーーーーー



二つ編み「……」

二つ編み(…無性に気になる)

二つ編み(あそこにはわたしの知ってる人なんていないけれど……)

二つ編み(わたしの祖母…どんな人なのかしら…?)

二つ編み(……)

二つ編み「…気になるわ」

二つ編み「……」スッ、スッ



[少女とのトーク]
『あなた、わたしの祖母について何か知ってるの?』



二つ編み「……」

二つ編み(そもそもなんで少女さんが祖母の話を出したのか、今思うと疑問ね)

二つ編み(あるいは、あの子にしか見えてなかったものでも…?)

二つ編み「……いいわ。こんな時間にLINEで訊いてももどかしくなりそうだし」

二つ編み(どうせ明日は土曜午前授業。少しくらいお昼過ぎたところでうちの人は気付かないでしょう)

179: 2019/10/28(月) 03:15:09.22 ID:OOuoymdI0



──あああああぁぁ!

──憎い…!



二つ編み「っ……」

二つ編み(また……)

二つ編み「………」

二つ編み「…………」

二つ編み「……………」

二つ編み「……………っっ!」

ダンッ!

二つ編み「もういい加減にして!!」

二つ編み「さっきから何度も何度も何度も何度も!」

二つ編み「わたしの中で叫ばないで!消えなさいよ!」

二つ編み「はぁ……はぁ……」

二つ編み(…!)

二つ編み(わたしのバカ!あんな大声出したら、あの人に聞かれてまた余計なことに…!)

二つ編み「……」

二つ編み「………」

二つ編み(………来ない……?)



ザワザワ...ガサガサ...



二つ編み「………?」

二つ編み(何かしら……足音とは違う、妙な音が)

二つ編み(……外から?)

二つ編み「……」



トットットッ





180: 2019/10/28(月) 03:16:37.48 ID:OOuoymdI0
ーーー玄関ーーー

二つ編み「……」トットッ...

二つ編み「………」



ガシャ、ガシャ

ズズズズ...バサッ



二つ編み(何の音なの?誰かのイタズラ…?)

二つ編み(だとしたら迷惑極まりないわ。ただでさえしつこい悲鳴にうんざりだっていうのに)

二つ編み(…静かにしてちょうだいよ)

...ガチャ



二つ編み「………は………?」



ゾロゾロゾロ(大量の妖禍子の行軍)



二つ編み「な………え………」

二つ編み(……っ!)

二つ編み(まさか……これ、が……)



目玉怪物「……」ギョロッ



二つ編み「──!!」ゾクッ

二つ編み(今の視線……)

二つ編み「……………」

二つ編み「……………」

二つ編み「……は、はは……」

二つ編み(──なんだ、そうだったんだ)

二つ編み(わたし、ずっと勘違いをしてた)

二つ編み(妖禍子が見えなかったわけじゃない……ただ)

二つ編み(わたしが見ようとしていなかっただけなんだ)

181: 2019/10/28(月) 03:17:49.55 ID:OOuoymdI0



バサッ、バサッ

ゴゴゴゴ



二つ編み(あの人ののっぺらぼうな顔も)

二つ編み(周囲にひしめく悪意も)

二つ編み(見えていないことにして…)

二つ編み(……それに、なぜ気付かなかったのかしら)

二つ編み(あの悲鳴…そこに混じるすすり泣く声も……あれは全部──)





二つ編み(──わたしの声じゃないの)





二つ編み「…あはは…!」

二つ編み(笑えちゃうわね!!)

二つ編み(自分の弱さを必氏に隠しておきながら、その実それをぼやかしていたのはわたし自身だなんて!!)

二つ編み(元々壊れテたのは、クルってたノハ、ワタシの方ダッタ!!)

二つ編み「ソンナの、どんなニ足掻イタところデ、ドウにもならナい──無イミにキマッてるのに!」

二つ編み「ソウデショウ?アヤカシサン」



目玉怪物「ゴオォ……」ズッ...



二つ編み「アハ、ハハハハハ!」





アハハハハハハハハハハハ──!





182: 2019/10/28(月) 03:18:57.92 ID:OOuoymdI0
ーーー翌朝 学校ーーー

猫又娘「──少女さん!大変だよ!」テテテッ

猫又娘「昨日の夜外で見張りしてたらさ、見ちゃったんだ!」

包帯少女「…妖禍子(アヤカシ)の群れ?」

猫又娘「!……もしかして少女さんも?」

包帯少女「……」コクッ

包帯少女(包帯の下の痛みと、知らない情景も一緒に…ね)

包帯少女「……ぼく思うんだよ。もうあんまり悠長にしていられる時間はないんじゃないかって」

猫又娘「うん……」

猫又娘(…正直ちょっと気楽に構えてた)

猫又娘(最近は妖禍子の数も少なくなってきてたから、そっちよりもみんなの仲を取り持つことにばかり気がいってた)

猫又娘(そんなんじゃ、根本的な解決にはならないよね)

包帯少女「ねぇ」

包帯少女「今日、早退しよう」

猫又娘「へ?」

包帯少女「神社に行くの。もうなりふり構ってられない」

包帯少女「二つ編みさんも連れて、二限らへんであがろ」

猫又娘「三人いっぺんに?さすがに許してもらえないんじゃ…」

包帯少女「言い訳はぼくが考えておくから。それでもダメそうだったら猫又娘さんの魔法で…」

猫又娘「私変えることくらいしか出来ないよ?」

包帯少女「…先生を変えちゃう」

猫又娘「そこまでの凶行はしないからね!?」

包帯少女「それはそうと夢見娘さんの方はどうだったの?」

猫又娘「え……あー、それが……」

猫又娘「……あと尾けてるところは見つけたんですが、逃げられてしまいまして…」ニャハハ...

包帯少女「………」

猫又娘「……いっそあの子も神社に連れてっちゃう?」

包帯少女「……」

包帯少女「…ありかもね」

包帯少女「今は少しでも、解決の糸口が欲しいから」

猫又娘「きっとあの子、良い妖禍子だから協力してくれるよ!」

包帯少女「…今日に限ってまだ夢見娘さんも二つ編みさんも来てないなんて…」

猫又娘「ぐぬぬ…二人とも遅刻したことなんかないはずなのに」

183: 2019/10/28(月) 03:20:45.74 ID:OOuoymdI0



ガラッ



教師「よーし、夏休み前最後の土曜授業。出席取ってくぞー」

夢見娘「……」トコトコトコ



包帯少女(時間ぴったりに入ってきた)



夢見娘「……」トコトコ

ストッ

同級生C「夢見娘さん、ぎりぎりセーフだよ…」

夢見娘「………」



包帯少女(……なんだろ、少し慌ててるような……)

包帯少女(遅刻しそうだったから…?)

教師「──少女」

包帯少女「!はい」

教師「OKと」

教師「とりあえず全員居るみたいだな」

包帯少女(…?いやいや)

包帯少女「あの、先生。二つ編みさんがまだ来てません」

教師「んー?二つ編み?」

包帯少女「はい。…体調不良の連絡とか来てたんですか?」





教師「よその学年の子か?」





包帯少女「──!」

教師「俺の知る限り三年には居ないよな」

猫又娘「え…」

派手娘「っ」

少年「な…!?」

教師「悪いが他学年の出欠までは分からん。俺じゃなくて、その子の担任に訊いてくれ」

包帯少女「………」



包帯少女(……………)





184: 2019/10/28(月) 03:25:35.55 ID:OOuoymdI0
第五幕はここまでです。

次回第六幕はいよいよ少年が町の異変を知ることになります。そして夢見娘がついに少年と接触します…。

次回:少年「アヤカシノート」第六幕


引用: 少年「アヤカシノート」