355: 2020/02/18(火) 22:10:29.41 ID:Yxrt9fKO0
最初から:少年「アヤカシノート」第一幕
前回:少年「アヤカシノート」第八幕
■第九幕 約束■
ーーー少年の自室ーーー
包帯少女「起きて、少年君、猫又娘さん」ユサユサ
少年「う…んー……!」
少年「少女さん…!目、覚めたんだね」
少年(しまったな、そんなに寝ちゃってたか…)
仔猫「……zzZ」
包帯少女「……」
ムンズ
仔猫「!?」ビクゥッ
ドロン
猫又娘「なになにっ!?何が起きたん!?」
猫又娘「……」
猫又娘「気持ち悪い…何なん、この嫌な気配…」
(黒紫色の空、蔓延る妖禍子)
猫又娘「う…わ、通りで…」
包帯少女「ぼくが起きた時にはもうこうなってた」
少年「え、午前9時って…嘘だろ、こんなに暗いのに…」
猫又娘「仕方ないよ。これもう普通の空じゃない」
包帯少女「…!少年君!」
包帯少女「きみの両親は!?」
少年「両親?」
包帯少女「今居るの!?この家に!」
少年「…見てくる!」
.........
356: 2020/02/18(火) 22:13:39.31 ID:Yxrt9fKO0
少年「……居ない、どこにも」
少年「携帯も置きっぱなしだった」
包帯少女「……」
少年「…あの、実はさ、昨日の夜少女さんの家に電話した時も誰も出なかったんだ」
包帯少女「…そう、やっぱり…」
猫又娘「もしかして私たち以外全員……」
猫又娘「…ごめん…私が昨日の夜、何も見つけられなかったから」
少年「なんで猫又娘さんのせいなんだよ。昨日は緊急事態のようなものだったんだし、そんな中で捜し出せって方が難しいって」
猫又娘「うん、それでもね……時間は無限に待ってくれるわけじゃないなんて分かってたはずなのに…」
包帯少女「……そんなの――」
パシン!(自分の両頬を叩く)
二人「!?」ギョッ
猫又娘「…ニッシシ」
猫又娘「落ち込んでると思った?はっずれー♪」
猫又娘「こんな土壇場で弱音吐いててもどーしよーもないもん!もうここまできたらやることはひとつ!」
猫又娘「鬼も蛇もいっぱい出るだろうけど、期せずして私らにこの町の命運がかかってしまったんだから……」
猫又娘「――運命共同体!出発せにゃなるまいな!」ビシッ
少年「……」
包帯少女「……」
猫又娘「…あれ」
包帯少女「…ちょっとむかっとした。耳摘んでいい?」
猫又娘「なぜ!?」
少年「…本当、どんな時でもブレないよなぁ」
少年(僕なんてこんな悪夢みたいな世界が怖くてたまらないのに…)
少年(…今だって、足の震えを抑えるのがやっと――)
...ソッ
少年「…!」
包帯少女「大丈夫。きみは強い」
少年「……少女さん……」
包帯少女「…ふふっ」
猫又娘「二人の世界に入ってるとこ悪いけど、早いとこ出よう」
猫又娘「…これは私の勘なんだけどさ。なんとなーく、あの人は私らを待ってる気がするんよね」
包帯少女「敵の期待を裏切っちゃ、悪いね」
猫又娘「そゆことよ」
少年「その感じ、僕にも分かる」
少年「…多分あいつが待ってるのってさ…」
三人「――南町神社だ」
357: 2020/02/18(火) 22:20:48.77 ID:Yxrt9fKO0
ーーーーーーー
「キシャア!」
派手娘「ふん!」ドゴッ
「キュー…」ベシャ...
――スルスルスル グイッ
派手娘「!」
「…グォォ…」シメツケ
派手娘「あたしに、触るんじゃないわよ!」ブン!
ビターン!
派手娘「一生這いつくばってなさい」
カツカツ...
ズズズ...
派手娘「…あぁもう!キリがないわね!」
派手娘「あんたらどんだけ暇なのよ!外に出てすることが鬼ごっこ?」
ヒュッ
派手娘「あたしにぶっ飛ばされに来たのは感心するけどね」サッ
派手娘「来るならそこに一列に並びなさいっての!」バッ
ドシーン!
派手娘「全員畳んでやるわ。そうすればこの安っぽい三流映画みたいな演出も終わんでしょ?」
トリップミスしていたため、トリップを変更しました。
「キシャア!」
派手娘「ふん!」ドゴッ
「キュー…」ベシャ...
――スルスルスル グイッ
派手娘「!」
「…グォォ…」シメツケ
派手娘「あたしに、触るんじゃないわよ!」ブン!
ビターン!
派手娘「一生這いつくばってなさい」
カツカツ...
ズズズ...
派手娘「…あぁもう!キリがないわね!」
派手娘「あんたらどんだけ暇なのよ!外に出てすることが鬼ごっこ?」
ヒュッ
派手娘「あたしにぶっ飛ばされに来たのは感心するけどね」サッ
派手娘「来るならそこに一列に並びなさいっての!」バッ
ドシーン!
派手娘「全員畳んでやるわ。そうすればこの安っぽい三流映画みたいな演出も終わんでしょ?」
トリップミスしていたため、トリップを変更しました。
358: 2020/02/18(火) 22:23:46.02 ID:Yxrt9fKO0
ーーーーーーー
猫又娘「ほっ!えい!」ポン、ポン
(ネズミ、ウサギに変えられた妖禍子)
包帯少女「」タッタッタッ
少年「わっ…とと」タッタッ
包帯少女「少年君!」
少年「平気…転びそうになっただけだから」
猫又娘「にしてもこれはやり過ぎだよねぇ…!うじゃうじゃと、こんなにどこに隠れてたんよ」
少年「昨日のお祭りの人が全部妖禍子に化けたみたいだ…」
包帯少女「本当に…ね!」ブォン!
ドシャッ
包帯少女「…っ」ズキッ...
猫又娘(…少女さん、やっぱり…)
少年「あっち!妖禍子が少ない道がある!」
猫又娘「うわ、あからさまに怪しい…」
ゾロゾロゾロ
猫又娘「…ま、他に選択肢もないみたいだね」
猫又娘「行くよ!私から離れないで!」
タッタッタッ...
三人「」タッタッタッ
包帯少女「……っ」タッタッ
猫又娘「……」タッタッ
猫又娘「…少女さん」ボソッ
包帯少女「?」
猫又娘「その包帯の下……今、どうなってるん?」
包帯少女「……」
猫又娘「ここんところずっと感じてたんだ。少女さんが包帯を巻いたとこから、妖禍子の気配がするの」
猫又娘「……少女さん、あなたもしかして――」
包帯少女「しー…」
包帯少女「」フルフル
包帯少女「…ぼくはね、これで満足してる」
包帯少女「彼を最後まで支えることができればそれでいい…そうやって思わせてくれた。今のぼくはそれが全てだから」
猫又娘「……」
包帯少女「…ありがとね」ニッ
猫又娘(………)
猫又娘「ほっ!えい!」ポン、ポン
(ネズミ、ウサギに変えられた妖禍子)
包帯少女「」タッタッタッ
少年「わっ…とと」タッタッ
包帯少女「少年君!」
少年「平気…転びそうになっただけだから」
猫又娘「にしてもこれはやり過ぎだよねぇ…!うじゃうじゃと、こんなにどこに隠れてたんよ」
少年「昨日のお祭りの人が全部妖禍子に化けたみたいだ…」
包帯少女「本当に…ね!」ブォン!
ドシャッ
包帯少女「…っ」ズキッ...
猫又娘(…少女さん、やっぱり…)
少年「あっち!妖禍子が少ない道がある!」
猫又娘「うわ、あからさまに怪しい…」
ゾロゾロゾロ
猫又娘「…ま、他に選択肢もないみたいだね」
猫又娘「行くよ!私から離れないで!」
タッタッタッ...
三人「」タッタッタッ
包帯少女「……っ」タッタッ
猫又娘「……」タッタッ
猫又娘「…少女さん」ボソッ
包帯少女「?」
猫又娘「その包帯の下……今、どうなってるん?」
包帯少女「……」
猫又娘「ここんところずっと感じてたんだ。少女さんが包帯を巻いたとこから、妖禍子の気配がするの」
猫又娘「……少女さん、あなたもしかして――」
包帯少女「しー…」
包帯少女「」フルフル
包帯少女「…ぼくはね、これで満足してる」
包帯少女「彼を最後まで支えることができればそれでいい…そうやって思わせてくれた。今のぼくはそれが全てだから」
猫又娘「……」
包帯少女「…ありがとね」ニッ
猫又娘(………)
359: 2020/02/18(火) 22:24:39.15 ID:Yxrt9fKO0
少年「は…は……」タッタッ
猫又娘(少年君はきっとこのことを知らない……この子が少年君の支えになってるのは間違いないだろうけど)
猫又娘(じゃあそれが失くなってしまったら…?)
少年「――見て!」
猫又娘「!」
少年「向こう、神社の方向だよな!?」
(小山ほどの巨大な黒塊)
猫又娘「ひゃあ…」
少年「なんだよあれ…まさか神社ごと消されたのか…?」
包帯少女「ううん、よく見て。あれの後ろに神社の山がある」
少年「ってことはあそこを通らないといけないってことか…」
少年「迂回して裏からまわった方がいいかもな」
猫又娘「!…そうも言ってられないみたい」
バサバサ シュルルル
カツカツカツ ズズ..ズ..
包帯少女「…囲まれた」
猫又娘「案の定奴らの罠だったわけだね…分かってたとは言え、この量は骨が折れるなぁ」ウヘェ...
包帯少女「けど、進むしかない」
猫又娘「当然!」
「フシュルルル...」
少年「っ…」ゴクリ
少年「ぼ、僕は何をすればいい?僕も出来るならこいつらと戦いたい…!」
猫又娘「それはちとリスキー過ぎんね」
包帯少女「少年君は、ぼくたちの無事を願っててくれないかな」
少年「それって…僕はまた何も出来ずに…」
包帯少女「そうじゃないよ。きみの力が必要になる場面は絶対にやってくる。それまできみが無事でいてくれることが何より大事なの」
包帯少女「きみはぼくが守る。だからぼくたちが無事でいることを、願っていてほしい」
少年「……分かった」
猫又娘「少女さん、くるよ!」
包帯少女「……」グッ(バットを構える)
サッ!
ポン、ポン
グシャッ
.........
360: 2020/02/18(火) 22:25:54.38 ID:Yxrt9fKO0
少年「――猫又娘さん後ろ!」
猫又娘「!」パッ
ポン
「…チュー」
猫又娘「いつの間に後ろに…!」
ガッ
包帯少女「いっ…!」
包帯少女「…この!」ブン!
バキッ
少年「大丈夫!?」
包帯少女「うん、ちょっとかすっただけだから」
猫又娘「いやーしっかしまずいね…これまともに相手してたら永遠に終わんないんじゃないの…!?」
猫又娘「なーんかさっきより包囲網も狭まってるしさ…!」
包帯少女「あっちこっち動き回らなくて済むじゃない?」
猫又娘「少女さん、余裕ありますな…」
猫又娘「私もまだまだ負けてらんないねっ!」
――ドゴォ!
猫又娘・少年「「!?」」バッ
包帯少女「……」チラッ
派手娘「邪魔なのよ、あたしの前を塞ぐなっ!」ズシャッ
夢見娘「……」テクテク
猫又娘「えぇ…素手であんなに…」
少年「夢見娘さん!」
夢見娘「……//」ソッ(派手娘の陰に隠れる)
派手娘「?」
猫又娘「…何しに来たんさ?」
派手娘「決まってんじゃない。あんたらの情けない姿を見に来たのよ」
派手娘「なに?友達が消されたからってこんな化け物共と遊んでるわけ?ほんと見てて飽きないわ、あんたら」
猫又娘「なんでそういう言い方しか出来ないん!?事ここに至ってまでさ!」
猫又娘「私のこと嫌いでもいいよ!けどこういうときくらい邪魔しにこないで!」
361: 2020/02/18(火) 22:26:55.11 ID:Yxrt9fKO0
派手娘「………」
派手娘「どうせ、あの神社に行くとか言うんでしょ?」
「ギャギャギャ!」
派手娘「」ドスッ
「グ…ギャ…」パタ
派手娘「…ふん」ザッ
ジジジジ...
少年(あれは…爆竹!?)
派手娘「耳、塞いでなさい」
派手娘「」ポイポイ、ポイ
パン!パン!パァン!
猫又娘「へ……にゃ……」クラクラ
少年(う…相変わらずすごい音だ)
包帯少女「……!」
(妖禍子の群れの一角に穴が空く)
派手娘「ほら、行くならさっさと行けば?」
猫又娘「……」アゼン
猫又娘「…少年君!少女さん!」
猫又娘「二人とも先に行って!」
少年「猫又娘さんは…!?」
猫又娘「私らはこの子たちの相手をしてから向かう!こんなのに追われてたら元凶君どころじゃないっしょ?」
猫又娘「分かったらとっとと走る!」
少年(……)グッ
包帯少女「ぅ…」ズクン...
少年「少女さん、立てる?」
包帯少女「う、ん……」
少年(やっぱりさっきので怪我を…?)
少年「……」
...ギュ(手を握る)
包帯少女「…!」
少年「…僕についてきて」
包帯少女「ん、エスコートよろしく」ニコッ
タッタッタッ...
362: 2020/02/18(火) 22:27:40.39 ID:Yxrt9fKO0
猫又娘「ふぅ、ひとまず共倒れは避けられたかね」
猫又娘「で?どういう風の吹き回し?」
派手娘「別に。あんたたち、コレを終わらせる当てがあるのよね?だったら早く終わらせて欲しい、それだけよ」
派手娘「というかあんたも行きなさいよ」
猫又娘「……やーっぱ素直じゃないんねぇ」ポツリ
猫又娘「どーせ、ここの連中は自分だけで十分だとか言うつもりでしょ」
派手娘「分かってんならわざわざ訊くな」
猫又娘「確かに派手娘さんなら吹き飛ぼうが刺されようが氏ななそうだけどさ」
「ミィ!」ヒュッ
猫又娘「」ダッ
ポンッ
猫又娘「…と」シュタ
猫又娘「猫の手くらいあっても損はしないよ?」ニシシ
派手娘「……勝手にすれば」
363: 2020/02/18(火) 22:29:40.61 ID:Yxrt9fKO0
ーーー神社ーーー
(……まだ、足りぬか)
(………)
(更なる怪共の使役を要するというか)
(………)
(…躊躇いなど、一切不要)
...ズォオオオ
巨頭「……」ズシン...
(大小様々な妖禍子達)
(……まだ、足りぬか)
(………)
(更なる怪共の使役を要するというか)
(………)
(…躊躇いなど、一切不要)
...ズォオオオ
巨頭「……」ズシン...
(大小様々な妖禍子達)
364: 2020/02/18(火) 22:30:10.48 ID:Yxrt9fKO0
ーーーーーーー
タッタッタッ
少年「思った通り、この辺に奴らはほとんどいない」タッタッ
包帯少女「ほとんどはさっきの所に集まってたみたいだね」タッタッ
少年「そりゃ多いはずだ…」
包帯少女「でもぼくたちも油断は――」
包帯少女「――少年君、止まって!」
少年「っ!」ピタッ...
巨頭「……」ズシ..ズシ..
少年「くそ…こんなときに…!」
巨頭「………」
巨頭「……」ズシ..ズシ..
少年「…?」
少年「襲ってこないのか…?」
包帯少女「こっちに気付いてはいるはずだけど…」
「グォ…」ズルズル
「」バサッ、バサッ
「キュ、キュ」カサカサカサ
包帯少女「それどころか、こっちを避けてる」
少年「さっきの場所に向かってるのかな…もしあそこに集まるように仕組まれてるんだとしたら…」
少年「…猫又娘さん…」
包帯少女「……」
包帯少女「行こう。ぼくたちは後ろを振り返っちゃダメだ」
少年「!…そうだね」
タッタッタッ
.........
タッタッタッ
少年「思った通り、この辺に奴らはほとんどいない」タッタッ
包帯少女「ほとんどはさっきの所に集まってたみたいだね」タッタッ
少年「そりゃ多いはずだ…」
包帯少女「でもぼくたちも油断は――」
包帯少女「――少年君、止まって!」
少年「っ!」ピタッ...
巨頭「……」ズシ..ズシ..
少年「くそ…こんなときに…!」
巨頭「………」
巨頭「……」ズシ..ズシ..
少年「…?」
少年「襲ってこないのか…?」
包帯少女「こっちに気付いてはいるはずだけど…」
「グォ…」ズルズル
「」バサッ、バサッ
「キュ、キュ」カサカサカサ
包帯少女「それどころか、こっちを避けてる」
少年「さっきの場所に向かってるのかな…もしあそこに集まるように仕組まれてるんだとしたら…」
少年「…猫又娘さん…」
包帯少女「……」
包帯少女「行こう。ぼくたちは後ろを振り返っちゃダメだ」
少年「!…そうだね」
タッタッタッ
.........
365: 2020/02/18(火) 22:31:58.37 ID:Yxrt9fKO0
少年「なんなんだろう、こいつ」
包帯少女「……」ミアゲ
(鎮座する黒塊)
少年(ドス黒い…って表現が似合う。よく聞く、吸い込まれそうな黒とかじゃなくて、もっと濁った黒)
少年(見てるだけで不安になってくる…)
包帯少女「この道、少年君と神社に来た時にも通ったよね。こんなに広い更地じゃなかったはずだけど」
包帯少女「…ここにあった家も住んでた人も、消されたんだ」
少年「……」
少年(こんな、滅茶苦茶にされた僕らの町が……本当に元に戻るのだろうか…)
ブルッ
二人「!」
包帯少女「…今、これ少し大きくなった?」
少年「僕にも見えた。こいつがここまで大きくなったのって、ちょっとずつ成長してるから…?」
二人「……」
黒服男「その通りだ、人間」
少年「……お前……」
包帯少女「……」
366: 2020/02/18(火) 22:35:14.58 ID:Yxrt9fKO0
ーーーーーーー
ガンッ! ズシャッ!
派手娘「」ズガッ
猫又娘(おぉ…鬼神の如き、とはまさしくああいうのを言うのでは)
夢見娘「……」ポワッ
「ゥ゙……」パタン
猫又娘(あれは、眠らせてるんかな?)
夢見娘「……」チラ
夢見娘「……夢を見せてあげてるの。それだけ……」
猫又娘「そ、そなんだ」
猫又娘(気付かれてた…)
派手娘「無駄話してる暇あんなら手動かしなさい!」
猫又娘「なにさ!サボってんじゃないかんね!」ポンッ
派手娘「勝手にここに居残ったんだからもっと役に立ちなさいよ」
猫又娘「派手娘さんのために残ったわけじゃないですしー。自意識過剰なのん??」
派手娘「…あんたも一緒にぶちのめしてもいいのよ」
猫又娘「おーこわ」
ササッ
シュッ ドカッ
ヒョイッ
ポン、ポンッ
猫又娘「……派手娘さんはさ、なんでこいつらと戦ってたの?」
派手娘「あ?」
猫又娘「人助けをしようなんて考えてたんじゃ…ないよねっ」テイッ
派手娘「……」
派手娘「気に入らないのよ」バシ
派手娘「あたしらの前にいきなり現れて、荒らしてく」
派手娘「別に好き勝手生きる分には構わないわ。けどこそこそとあたしにちょっかいかけるってんなら容赦しない」
派手娘「あたしはあたしが気に入らないものをぶっ飛ばしてるだけよ!」ドスッ
派手娘「誰かさんみたく世界を助けるだの高尚な志なんか持ってないわ、残念だったわね!」ズガン
猫又娘「……へんっ」
猫又娘「私とおんなじじゃん」
派手娘「は?バカ言ってんじゃ――」
猫又娘「私だって、私が笑っていられるように」
猫又娘(キミともっと笑っていられるように)
猫又娘「私の世界を守ってるんだ。人のためじゃない、私のために私は動いてる」
猫又娘「だから、おんなじだ」サッ
ポンッ
ガンッ! ズシャッ!
派手娘「」ズガッ
猫又娘(おぉ…鬼神の如き、とはまさしくああいうのを言うのでは)
夢見娘「……」ポワッ
「ゥ゙……」パタン
猫又娘(あれは、眠らせてるんかな?)
夢見娘「……」チラ
夢見娘「……夢を見せてあげてるの。それだけ……」
猫又娘「そ、そなんだ」
猫又娘(気付かれてた…)
派手娘「無駄話してる暇あんなら手動かしなさい!」
猫又娘「なにさ!サボってんじゃないかんね!」ポンッ
派手娘「勝手にここに居残ったんだからもっと役に立ちなさいよ」
猫又娘「派手娘さんのために残ったわけじゃないですしー。自意識過剰なのん??」
派手娘「…あんたも一緒にぶちのめしてもいいのよ」
猫又娘「おーこわ」
ササッ
シュッ ドカッ
ヒョイッ
ポン、ポンッ
猫又娘「……派手娘さんはさ、なんでこいつらと戦ってたの?」
派手娘「あ?」
猫又娘「人助けをしようなんて考えてたんじゃ…ないよねっ」テイッ
派手娘「……」
派手娘「気に入らないのよ」バシ
派手娘「あたしらの前にいきなり現れて、荒らしてく」
派手娘「別に好き勝手生きる分には構わないわ。けどこそこそとあたしにちょっかいかけるってんなら容赦しない」
派手娘「あたしはあたしが気に入らないものをぶっ飛ばしてるだけよ!」ドスッ
派手娘「誰かさんみたく世界を助けるだの高尚な志なんか持ってないわ、残念だったわね!」ズガン
猫又娘「……へんっ」
猫又娘「私とおんなじじゃん」
派手娘「は?バカ言ってんじゃ――」
猫又娘「私だって、私が笑っていられるように」
猫又娘(キミともっと笑っていられるように)
猫又娘「私の世界を守ってるんだ。人のためじゃない、私のために私は動いてる」
猫又娘「だから、おんなじだ」サッ
ポンッ
367: 2020/02/18(火) 22:36:58.69 ID:Yxrt9fKO0
夢見娘「………」
派手娘「…そういう顔で笑えるんじゃない」
猫又娘「よっ、それっ」ヒョイ、ポスッ
派手娘「だったらここには自己中が二人居るだけってことね」スッ..ドゴッ
猫又娘「え~?三人の間違いじゃなくて?」
夢見娘「……否定はしない……」
派手娘「とんだ烏合の集まりだわ」
猫又娘「とか言いつつ、息はぴったりだと思わない?私ら」
夢見娘「……」テッテッ
派手娘「このアホ共がのろまなだけよ」ガスッ
猫又娘「またまた、照れちゃって~」
派手娘「」ビュンッ
猫又娘「あぶなっ!?」ササッ
派手娘「わるいわるいてがすべったわー」
猫又娘「なんたる棒読み…」
猫又娘「…とは言え」
ゾロゾロ ワラワラ
猫又娘「捌いても捌いてもまるで減りませんな」
猫又娘「いい加減一休みくらいさせてほしいんだけど…」
368: 2020/02/18(火) 22:37:42.23 ID:Yxrt9fKO0
..ズシン..ズシン
巨頭「……」
猫又娘「…まじ?」
派手娘「チッ、なによあのデカブツ」
猫又娘「ここに来て増援て…ちょっとばかしキツイんじゃないかなぁ…」
夢見娘「……あれは、大丈夫」
猫又娘「どこが!」
巨頭「…ガァア!」ブオッ!
ズシャン!
「キシャア!」
猫又娘「え……妖禍子同士で争ってる…?」
派手娘「ついにイカれたわけ?」
夢見娘「……」
ズシン バキィッ!
猫又娘「…なんだか分かんないけど、私らも便乗させてもらうよ!」
夢見娘「……」コクッ
派手娘「めんど…私の前に立つなら全員潰すわ」
ダッ――
369: 2020/02/18(火) 22:40:26.05 ID:Yxrt9fKO0
ーーーーーーー
黒服男「その物体がなんだか、お前には分かるか?」
少年「……少女さん、僕の後ろに」
包帯少女「ありがとう。でも二人で、ね」
黒服男「…ほう。興味深いな」
黒服男「頃し殺された者の築く関係として、実に奇異ではあるまいか?」
少年「……」グッ...
黒服男「これはな、人間」
黒服男「人の憎悪の凝集体だ」
少年「憎悪…?」
黒服男「そうだ。如何なる人間の中にも存在する、人の本質。お前の中にも眠っていたろう。その女を憎く思う感情が」
少年「ふ、ふざけんな!あれはお前がそう仕向けたんじゃないか!」
黒服男「俺は助長をしたまでだ。もし本当に彼女を信頼していれば、あの悲劇は起こらなかっただろう」
少年「信頼って……僕は……」
少年(…僕が少女さんを信じていなかったから…?元を辿れば、結局僕の卑屈さが原因だってことかよ……)
包帯少女「それは違う」
包帯少女「他人を端から信じられる人なんていないんだよ」
包帯少女「みんな誰だって少しずつ相手を知っていって、時間をかけて信用出来る関係になっていく」
包帯少女「あなたがしたのは、その過程を踏みにじって無理矢理憎しみを向けただけ。そんなの、人の本質でも何でもないってあなたも理解していたんでしょう?」
黒服男「…知ったような口を利いてくれるな」
包帯少女「分かるよ。だってあなたのお母さんとお父さんがそうだったはず」
黒服男「っ!」
包帯少女「…ぼくたちは、あなたの過去を見たから」
黒服男「……そうか」
黒服男「ならば、今すぐ自害しろ」
包帯少女「……」
黒服男「俺の心情が分かるのだろう?俺が望むは唯一つ。世界の癌たる人間の根絶」
黒服男「残るはお前達を含めた三人だけ」
黒服男「いや、より正しくは二人と言うべきか」
包帯少女「………」
黒服男「その物体がなんだか、お前には分かるか?」
少年「……少女さん、僕の後ろに」
包帯少女「ありがとう。でも二人で、ね」
黒服男「…ほう。興味深いな」
黒服男「頃し殺された者の築く関係として、実に奇異ではあるまいか?」
少年「……」グッ...
黒服男「これはな、人間」
黒服男「人の憎悪の凝集体だ」
少年「憎悪…?」
黒服男「そうだ。如何なる人間の中にも存在する、人の本質。お前の中にも眠っていたろう。その女を憎く思う感情が」
少年「ふ、ふざけんな!あれはお前がそう仕向けたんじゃないか!」
黒服男「俺は助長をしたまでだ。もし本当に彼女を信頼していれば、あの悲劇は起こらなかっただろう」
少年「信頼って……僕は……」
少年(…僕が少女さんを信じていなかったから…?元を辿れば、結局僕の卑屈さが原因だってことかよ……)
包帯少女「それは違う」
包帯少女「他人を端から信じられる人なんていないんだよ」
包帯少女「みんな誰だって少しずつ相手を知っていって、時間をかけて信用出来る関係になっていく」
包帯少女「あなたがしたのは、その過程を踏みにじって無理矢理憎しみを向けただけ。そんなの、人の本質でも何でもないってあなたも理解していたんでしょう?」
黒服男「…知ったような口を利いてくれるな」
包帯少女「分かるよ。だってあなたのお母さんとお父さんがそうだったはず」
黒服男「っ!」
包帯少女「…ぼくたちは、あなたの過去を見たから」
黒服男「……そうか」
黒服男「ならば、今すぐ自害しろ」
包帯少女「……」
黒服男「俺の心情が分かるのだろう?俺が望むは唯一つ。世界の癌たる人間の根絶」
黒服男「残るはお前達を含めた三人だけ」
黒服男「いや、より正しくは二人と言うべきか」
包帯少女「………」
370: 2020/02/18(火) 22:42:28.32 ID:Yxrt9fKO0
少年「…なぁ、お前」
少年「――泣いてるのか?」
黒服男「…?」
少年「泣いてはないか。けど…」
少年「さっきからずっと、悲しげな顔をしてる…」
黒服男「………」
黒服男「泣く、だと?」
黒服男「……そうだな。お前のような人間に馬鹿にされる事など、この上なく屈辱でしかない」
黒服男「人間よ、俺が今すぐお前を消せば何が起こるか分かるか?」
黒服男「お前の持つ憎悪が、この醜い塊に飲み込まれるんだ。そして僅かに肥大する……ごく僅かに」
黒服男「これはこの町の人間共が抱え持っていた憎しみの集体だ。どうだ?貴様の抱いた憎悪ですらこれを前には霞む」
黒服男「貴様らのような汚れた存在が俺を哀れむとは、何たる傲慢だ?」
包帯少女「…気付いてる?あなたは今、あなたの嫌う人みたいな考え方しか出来てない」
包帯少女「光があれば陰があるように」
包帯少女「勝者がいれば敗者がいるように」
包帯少女「暖かい感情があれば、目を背けたくなるような感情もある。それが人間なの」
包帯少女「そういう二面性ってね、必氏な人ほど片方しか見えてないものなんだよね」
包帯少女「あなたも同じ。視野の狭い、可哀そうな"ヒト"」
黒服男「………小娘」
黒服男「生き損ないのお前が俺を焚き付けることに何の意味がある?」
黒服男「惨たらしい氏を所望か?」
黒服男「否、横の男が苦しみのたうつ方がお前には堪えるか」
包帯少女「……」
黒服男「終焉に立ち向かう人間が如何程のものか、見極めるつもりであったが…蛇足だったな」
黒服男「どの道貴様らには消えてもらうが、最後に余興を見せてくれ」
黒服男「――娘、男を殺せ」
少年「っ…」
黒服男「……」ニィ...
黒服男「お前は一度、この男に殺されている。その報復をこやつに受けさせてやるべきだろう」
黒服男「或いはそれが出来ないとあれば…先に同じ、自害を選べ」
黒服男「さて、二つに一つだ」
包帯少女「……」
少年「……」
少年(………)
包帯少女「………いいよ」
包帯少女「――氏んであげる」
371: 2020/02/18(火) 22:44:11.66 ID:Yxrt9fKO0
包帯少女「それであなたの気が済むのなら」
少年「な、何言ってるんだよ!そんなの……!」
少年「少女さんが氏ぬくらいなら俺が殺された方がマシだ!もう、きみが氏ぬのは…!」
包帯少女「心配しないで」ニコッ
少年「……………」
包帯少女「さぁ、選んだよ。これでぼくが氏ねばいいんだね?」
包帯少女「でもその前に聞かせて」
包帯少女「あなたは何のためにこの世界を終わらせるつもり?」
黒服男「…どこまでも、俺を嘲るつもりか?」
包帯少女「人を消すことだ、なんて、ぼくはそんなことが聞きたいんじゃない」
包帯少女「あなたは"誰のため"にそれをしているの?」
黒服男「……」
包帯少女「…お母さんと、お父さんのためだよね?」
包帯少女「ねぇ、もう一回考えてほしいんだ」
包帯少女「あなたがぼくたちを憎む理由にしている両親は、あなたに何をしてあげたのか」
包帯少女「お母さんがあなたを産んだ意味。お父さんがあなたに記憶を残した意味…」
包帯少女「…それでももう、止まれないって言うなら」
包帯少女「その悲しみも嘆きも全部、ぼくが受け止めてあげる」
黒服男(………気に喰わぬ)
黒服男(なんだその泰然とした様は。氏が目の前に迫っているのだぞ。一度経験したであろう、苦しい氏が)
包帯少女「……」
黒服男「……」ギリ...
黒服男「……気が変わった」
包帯少女「え?」
シュン!
黒服男「」ガシッ(首を掴んで持ち上げる)
包帯少女「あ゙…がっ……」
少年「少女さん!」ダッ
黒服男「っ」キィィン
バシュッ
少年「ぐぁ…!」ドサッ
372: 2020/02/18(火) 22:45:10.65 ID:Yxrt9fKO0
黒服男「…ふ…はは」
黒服男「苦しいか、娘…!」
包帯少女「ぅ……ケホッ」
黒服男「このまま少しずつ縊り頃してくれようか!」
少年「や…めろ…」グッ...
黒服男「だが一つだけ助かる道をやろう」
黒服男「この男を身代わりにすると言え!そうすればその苦痛から解放してやる…!」
包帯少女「…ぃ…やだ……」
少年「少女さん…!頼む、もういいからっ…!」
黒服男「…っっ!!」
黒服男「何なんだ貴様は!!」ギュゥ!
包帯少女「――……」
黒服男「首を縦に振るだけでよいのだぞ!お前を苦しみの淵に追いやった輩なぞ、同じ目に遭わせてやればいい!」
黒服男(反吐が出る。上辺だけの好感情など今のお前の命を救ってはくれぬ。さぁ醜悪な本性を曝け出すがいい…!)
包帯少女「――」
黒服男(なのに何だ……全てを見透かしたような目……そんな目で)
黒服男「…俺を見るな!」
黒服男「さあ言え!断ればお前を頃し、この書物の妖禍子として朽ちるまで使い潰してやろう!」
少年(アヤカシノートを…!あいつ…!)
包帯少女「……、…」フル..フル..
黒服男「……………そうか」
少年(やめろ……やめてくれ……)
黒服男「なら望み通り…」
黒服男「――氏ね」
373: 2020/02/18(火) 22:45:48.51 ID:Yxrt9fKO0
少年「やめろぉおおおおおおお!!!」
――ピカッ!!
黒服男「!!」
少年(!?ノートが…これって…!)
...ゴォオオオオ!
「キシャアア!」
「」バサ、バサ...
「グゥゥウ…!」
少年(妖禍子が…)
ヒュオオオオオ!
「ギギギ…」
「ジッ!ジィッ!」
少年(吸い込まれていく…!)
.........
374: 2020/02/18(火) 22:47:00.67 ID:Yxrt9fKO0
少年(………)
少年「………?」
(妖禍子の居ない南町)
少年(……さっきの、本当に全部ノートに…?)
包帯少女「……けほっ…」
少年「!少女さん!」タッタッ
包帯少女「…少年、くん…?」
少年「平気!?氏なないよね!?」
包帯少女「…ふふっ、大袈裟だよ」
少年「――!良かった…!」ギュッ
包帯少女「……」...ギュ
黒服男「……」ウナダレ
少年「……あいつ……」
包帯少女「………」
少年「……」
トットットッ
少年「………」
黒服男「……」
少年「」スッ
ガサッ(ノートを手に取る)
少年「……」パラパラ...
少年(…どのページもびっしり、妖禍子で埋まってる)
375: 2020/02/18(火) 22:47:35.66 ID:Yxrt9fKO0
少年「………」
少年「……お前――」
ポン
少年「!」
包帯少女「少年君」フルフル
少年「…けど」
包帯少女「きっと、もう何もしないよ」
黒服男「……」
少年(……全く動かない。そもそもこいつ、生きてるのか?)
少年(とにかく)
少年「…これで終わったんだよな…?妖禍子の奴らも消えて、いつも通りの日が戻ってくるんだよな?」
包帯少女「……」ミアゲ
(黒紫色の空)
包帯少女「まだ、みたい」
少年「え……」
少年「そんな…これ以上何をしろって…」
包帯少女「……」
包帯少女「…神社へ行かないと」
包帯少女「全てが始まったあの場所で、まだしなくちゃいけないことが残ってるんだ」
包帯少女「もうひと頑張りだね」
少年「……よし」
テクテク...
376: 2020/02/18(火) 22:48:08.87 ID:Yxrt9fKO0
ーーーーーーー
猫又娘「おー…」
猫又娘「いやはや、あれだけの妖禍子がぜーんぶ吸い寄せられてくのは圧巻でしたなー」
派手娘「……手、きったな」
夢見娘「………」
猫又娘(上手くやってくれたんだね、少年君、少女さん)
猫又娘「……」フゥ...
夢見娘「」スクッ
...テクテク
猫又娘「あれ?夢見娘さん?」
夢見娘「……まだ、終わってない」
夢見娘「私たちも、行かないと……」
猫又娘「…ま、そうだよね」
猫又娘「ちょっとくらい休憩したかったなぁ…はぁーあ」
猫又娘「派手娘さんはどうする?多分ここに居ても家に帰っても、すぐ町は元通りになると思うけど」
派手娘「あたしも行くわ」
猫又娘「…ん」
猫又娘「おー…」
猫又娘「いやはや、あれだけの妖禍子がぜーんぶ吸い寄せられてくのは圧巻でしたなー」
派手娘「……手、きったな」
夢見娘「………」
猫又娘(上手くやってくれたんだね、少年君、少女さん)
猫又娘「……」フゥ...
夢見娘「」スクッ
...テクテク
猫又娘「あれ?夢見娘さん?」
夢見娘「……まだ、終わってない」
夢見娘「私たちも、行かないと……」
猫又娘「…ま、そうだよね」
猫又娘「ちょっとくらい休憩したかったなぁ…はぁーあ」
猫又娘「派手娘さんはどうする?多分ここに居ても家に帰っても、すぐ町は元通りになると思うけど」
派手娘「あたしも行くわ」
猫又娘「…ん」
377: 2020/02/18(火) 22:50:04.17 ID:Yxrt9fKO0
ーーー石段麓ーーー
少年「…ここ登るの、何回目だっけ」
包帯少女「さぁ…でももう一生分は登った気がする」
少年「まったくだ」ハハッ
少年「……」キョロ、キョロ
少年「まだ屋台とか残ってるんだ」
包帯少女「お祭りやってたの昨日の今日だよ?人が居なくなって片付けられてないだけじゃないかな」
少年「そうかもね」
少年「…そういえば少女さん、結局昨日の花火見れなかったんだよな」
包帯少女「きみに助けてもらってたからね」
少年「……来年は」
少年「二人で来よう。ぐるっと屋台回って、花火見てさ。普通に楽しもうよ」
包帯少女「…今度は流されないようにね」クスッ
少年「!だ、大丈夫!今年ので学んだから!」
包帯少女「だといいけど、ふふっ」
少年「ぅ…登ろ」
包帯少女「うん」
トットットッ
少年「……」トットッ
包帯少女「……」トットッ
――トクン
包帯少女(…!)
包帯少女「……」トッ...
パッ(繋いでいた手を離す)
少年「…?少女さん?」
包帯少女「………」
包帯少女「…ごめん少年君」
包帯少女「どうやらぼくはここまでみたいだ」
少年「??…何が?」
少年「あ、もしかして手痛かった?悪い、配慮出来てなくて…」
包帯少女「自信を失くさないでね。後はきみ一人でも出来るはず」
少年「…?さっきからなんの話を――」
少年(―!)
少年「…その目は…?」
包帯少女「あぁ通りで。視界がさ、濁ってきたと思ったよ」
少年(包帯に巻かれてない左目が、奴ら…妖禍子の目にそっくりだ…)
少年「…ここ登るの、何回目だっけ」
包帯少女「さぁ…でももう一生分は登った気がする」
少年「まったくだ」ハハッ
少年「……」キョロ、キョロ
少年「まだ屋台とか残ってるんだ」
包帯少女「お祭りやってたの昨日の今日だよ?人が居なくなって片付けられてないだけじゃないかな」
少年「そうかもね」
少年「…そういえば少女さん、結局昨日の花火見れなかったんだよな」
包帯少女「きみに助けてもらってたからね」
少年「……来年は」
少年「二人で来よう。ぐるっと屋台回って、花火見てさ。普通に楽しもうよ」
包帯少女「…今度は流されないようにね」クスッ
少年「!だ、大丈夫!今年ので学んだから!」
包帯少女「だといいけど、ふふっ」
少年「ぅ…登ろ」
包帯少女「うん」
トットットッ
少年「……」トットッ
包帯少女「……」トットッ
――トクン
包帯少女(…!)
包帯少女「……」トッ...
パッ(繋いでいた手を離す)
少年「…?少女さん?」
包帯少女「………」
包帯少女「…ごめん少年君」
包帯少女「どうやらぼくはここまでみたいだ」
少年「??…何が?」
少年「あ、もしかして手痛かった?悪い、配慮出来てなくて…」
包帯少女「自信を失くさないでね。後はきみ一人でも出来るはず」
少年「…?さっきからなんの話を――」
少年(―!)
少年「…その目は…?」
包帯少女「あぁ通りで。視界がさ、濁ってきたと思ったよ」
少年(包帯に巻かれてない左目が、奴ら…妖禍子の目にそっくりだ…)
378: 2020/02/18(火) 22:50:42.37 ID:Yxrt9fKO0
...グリュ ビリビリ!
少年「!?」
少年「し、少女さん…腕が…!トゲみたいなのが…!?」
包帯少女「……きみには、あまり見られたくなかったんだけどな」
包帯少女「黙っててごめんね。見ての通り、ぼくはそろそろ行かなきゃいけない時間なんだ」
少年「行かなきゃ…って、どこにだよ!?」
包帯少女「本来居るべき場所に」
包帯少女「一度は氏んだ命。きみに蘇してもらって、きみの成長を見守ることが出来て、ぼくは嬉しかったよ」
少年「……そんなこと、言わないでくれよ……」
少年「嘘だよな…?きみは居なくならないよな…?」
包帯少女「……」ニコッ
メリッ!
包帯少女「グゥ…!」
少年「!…やだ……少女さん…!」ポロ..ポロ..
包帯少女「…もう…強い人は、泣かないんじゃナかったの?」
少年「きみと居られないんじゃ強くても意味なんてない!」ポロポロ
少年「なぁ早く上へ行こう!?あの神社でトドノツマリ様が待ってるんだろ!?だったらまた頼めばいい!きみを元に戻してくれって!」ポロポロ
包帯少女「ううん、これは変えられないから」
少年「そんなこと言うなよ…!きみが諦めたら本当に間に合わなくなるだろ…!」
包帯少女「……大丈夫」
包帯少女「きっとまた会エルから」
379: 2020/02/18(火) 22:51:35.23 ID:Yxrt9fKO0
包帯少女「そうだ、これ」スッ
少年「…バット」
包帯少女「うん。そんなオンボロでもさ、結構昔かラ使い続ケテきた相棒なんだ」
包帯少女「…きみニ預かってイテほしい」
少年「……………」
ベリベリ! バキッ!
包帯少女「ゥ゙ア゙!」
少年「少女さんっ!!」
包帯少女「…さ、ハヤク行っテ…!ぼクをミナイで!」
少年「で、も……」
包帯少女「早クッ!!」
少年「――……、っ……」
少年(……!)ギリッ
少年「」ダッ
タッタッタッ...
包帯少女「……ソレデ、いイノ……」
包帯少女(………)
包帯少女(…神様、聞こえていたら、どうかお願いします)
包帯少女(彼は十分にその責を果たしました。ぼくを守ろうとしてくれました)
包帯少女(ですからどうか…すくわれた結末を下さい)
包帯少女「………」ジッ
包帯少女(――例え繋いだこの手が離れても……大丈夫)
包帯少女(約束だよ)
また会える。
ベキベキッ!
バサッ――
380: 2020/02/18(火) 22:53:27.52 ID:Yxrt9fKO0
ーーーーーーー
タッタッタッ
猫又娘「…!」タッタッ
猫又娘(…ちょっとだけ感じるこの気配…妖禍子?)
猫又娘(……)
猫又娘「……!?」ギョッ
黒服男「……」
猫又娘「………」
派手娘「…何してんの、置いてくわよ?」
猫又娘「あー、えと…」
夢見娘「……」ジッ...
猫又娘「先、行ってて。私もすぐ追いつくから」
派手娘「…そ」
タッタッタッ...
猫又娘「……」スタ、スタ
黒服男「……」
猫又娘「………」
ソー...
ポスッ(頭に手を乗せる)
黒服男「………失せろ」
猫又娘「!…びっくりした。てっきりもう植物状態になってるんかと思ってた」
黒服男「……」
猫又娘「あなたの髪、結構柔らかいんね。意外」ナデ..ナデ..
黒服男「何をしに来た。……嗤うなら嗤え、頃すなら殺せ」
猫又娘「んーじゃあ、なんで道の真ん中でへたり込んでたの?」
黒服男「…最早我が身を起こす事すら叶わぬ…骸も同然だ」
黒服男「……お前に情けがあるのなら、俺に構うな」
猫又娘「……」ナデナデ
黒服男「……」
タッタッタッ
猫又娘「…!」タッタッ
猫又娘(…ちょっとだけ感じるこの気配…妖禍子?)
猫又娘(……)
猫又娘「……!?」ギョッ
黒服男「……」
猫又娘「………」
派手娘「…何してんの、置いてくわよ?」
猫又娘「あー、えと…」
夢見娘「……」ジッ...
猫又娘「先、行ってて。私もすぐ追いつくから」
派手娘「…そ」
タッタッタッ...
猫又娘「……」スタ、スタ
黒服男「……」
猫又娘「………」
ソー...
ポスッ(頭に手を乗せる)
黒服男「………失せろ」
猫又娘「!…びっくりした。てっきりもう植物状態になってるんかと思ってた」
黒服男「……」
猫又娘「あなたの髪、結構柔らかいんね。意外」ナデ..ナデ..
黒服男「何をしに来た。……嗤うなら嗤え、頃すなら殺せ」
猫又娘「んーじゃあ、なんで道の真ん中でへたり込んでたの?」
黒服男「…最早我が身を起こす事すら叶わぬ…骸も同然だ」
黒服男「……お前に情けがあるのなら、俺に構うな」
猫又娘「……」ナデナデ
黒服男「……」
381: 2020/02/18(火) 22:56:53.87 ID:Yxrt9fKO0
猫又娘「…昨日のあなたの質問、私なりに考えてみたんだ」
猫又娘「人がなんで一方的にあなたたちを排除しようとするのか、だったよね」
猫又娘「……」
猫又娘「怖いから」
猫又娘「…じゃないかなぁ」
黒服男「………」
猫又娘「お化け的な怖さとかじゃないよ?多分それは知らないものに対する怖さなんよ」
猫又娘「何も人に限った話でもなくてさ、例えば臆病なワンちゃんは知らない人が来たら吠えて威嚇するよね?そーいうのと一緒」
猫又娘「得体の知れない存在に周りをうろちょろされるより、消してしまえーってなっちゃったんだよ」
猫又娘「…つまりそれってさ、裏を返せば、お互いちゃんと知ることが出来たら人と妖禍子が一緒に暮らすことも出来るってことなのでは?」
猫又娘「なんて考えてみたり」
黒服男「……また妄言か」
猫又娘「んーん、妄想なんかじゃないよ」
黒服男「人間の持つ俺達への感情は、容易には変えられぬ」
猫又娘「そーだね。だからゆっくりでもさ、歩み寄っていければいいんさ」
猫又娘「私みたいに」ニヒッ
黒服男「………おめでたい奴だ、お前は」
猫又娘「あなたがそれを言う?」
猫又娘「あなたのご両親が、そう出来たのに」
黒服男(――)
猫又娘「……」
黒服男「……」
382: 2020/02/18(火) 22:57:38.39 ID:Yxrt9fKO0
ナデ..ナデ..
猫又娘「……ね。子守唄、覚えてる?」ナデ..ナデ..
黒服男「………」
猫又娘「………」ナデ..ナデ..
猫又娘(………)
猫又娘「…ねむれねむれやゆらりゆられ」~♪
猫又娘「たなびくくものごとし」~♪
黒服男「……」
猫又娘「おやまもさともよるのなか」~♪
猫又娘「はかなきゆめみんとす」~♪
黒服男(……お前は……)
猫又娘「あわれあわれやだれぞおにか」~♪
猫又娘「てのなるところにおちて」~♪
黒服男(……俺と、何が違う……?)
猫又娘「けものもとりもかごのなか」~♪
猫又娘「うたかたのゆめみんとす」~♪
黒服男(人でも、妖禍子でもない……歪な存在……)
広い背中を頼るしろい手
重なる刹那願いをかけた
黒服男(……)
年月も水屑も
流れ流れてめぐるあはれ
383: 2020/02/18(火) 22:58:26.96 ID:Yxrt9fKO0
ーーーーー
――貴方への愛が途絶える事も無く
ケモノ「――この子と共に生きよう。それが我々に出来る恩返しだ」
――千代に流れ継いで行きますように
女「……はい。私が貰った愛を次はこの子に…」
――其の名を愛したふたつの花を
女「…そうです。この子の名前、今ようやく決まりました」
――どうか覚えてます様に
ケモノ「聞かせてもらおうではないか」
――もしも貴方の嘆きが闇を囲い
女「"ナガレ"。というのはどうです?」
――ヒトを愛せなくなったとしても
女「この子に注ぐ愛が、永遠に流れ継いで行くように…」
――貴方を変わらず愛する花を
女「貴方を愛する私達の事を」
――どうか覚えてます様に
ーーーーー
猫又娘「――どうか覚えてます様に」~♪
黒服男(…知らなかった)
黒服男(己が授かった名……)
黒服男(そこに込められた愛の意味……)
黒服男(……俺の中は、何で満たされていたのだろうか…)
猫又娘「ねむれねむれやゆらりゆられ」~♪
猫又娘「はかなきゆめもかごのなか」~♪
黒服男(………眠い、な………)
ねむれねむれやゆらりゆられ
はかなきゆめもかごのなか…
スー...
猫又娘「……」
猫又娘「……」
猫又娘(………)
猫又娘「おやすみなさい」
384: 2020/02/18(火) 22:59:21.73 ID:Yxrt9fKO0
ーーーーーーー
タッタッタッ!
少年「」タッタッ!
タッタッタッ!
少年「……っ」タッタッ!
少年(くそ……ちくしょう…!)
少年(なんで少女さんが消えなきゃならないんだ!)
少年(あの包帯――結局僕がどう足掻いたところで、こうなることは決まってたのか…!?)
少年「……」タッタッ
少年(……このノートは全部知ってたのかな)
少年(これがあったから少女さんと知り合って…猫又娘さん、派手娘さん、夢見娘さん……普通なら関わることもない人たちと過ごすようになっていって)
少年(…妖禍子を収束させたのもこいつだった)
(物言わぬノート)
少年(お前は一体なんだ。なんで僕の持ち物なんだよ)
少年(僕はどうすれば少女さんを助けることが出来たんだ…)
少年「……はぁ……はぁ」タッタッ
タッタッタッ!
少年「」タッタッ!
タッタッタッ!
少年「……っ」タッタッ!
少年(くそ……ちくしょう…!)
少年(なんで少女さんが消えなきゃならないんだ!)
少年(あの包帯――結局僕がどう足掻いたところで、こうなることは決まってたのか…!?)
少年「……」タッタッ
少年(……このノートは全部知ってたのかな)
少年(これがあったから少女さんと知り合って…猫又娘さん、派手娘さん、夢見娘さん……普通なら関わることもない人たちと過ごすようになっていって)
少年(…妖禍子を収束させたのもこいつだった)
(物言わぬノート)
少年(お前は一体なんだ。なんで僕の持ち物なんだよ)
少年(僕はどうすれば少女さんを助けることが出来たんだ…)
少年「……はぁ……はぁ」タッタッ
385: 2020/02/18(火) 23:00:39.29 ID:Yxrt9fKO0
少年(……思えば)
少年(彼女はいつも僕のことを見ていてくれた)
ーーーーー
少女「――諦めないで、ちゃんと精一杯抵抗してるんだなって」
ーーーーー
少年(どんな時でも弱音を吐かずに)
ーーーーー
包帯少女「――ぼくも、またきみとお喋りしたい」
ーーーーー
少年(ふと気付くと、僕の前に立ってて…それが僕の道しるべになっていた)
ーーーーー
包帯少女「――ぼくはね、きみと出会えて良かった」
ーーーーー
少年(僕だって、少女さんに勉強を教わるのは分かりやすかったし、二人野球も暇つぶしなんかじゃないくらい楽しかったよ)
少年「はぁ…はぁ…」タッタッ
少年「はぁ……はぁ…」タッタッ
少年「!っと…」ヨロッ...
少年「……はぁ……は…」...タッタッ
少年(………)
――大丈夫。きっとまた会えるから。
少年(……)グッ...!
少年「……約束だよ……はぁ…」タッタッ
少年「はぁ……は…」タッタッ
少年「――絶対、忘れないから!」
タッタッタッタッ...
少年「はぁ……え゙ふっ」
少年「…っはぁ……はぁ……」
少年(着いた…)
少年(…階段、こんな短かったっけ?けど足がものすごく怠い…)
386: 2020/02/18(火) 23:01:08.70 ID:Yxrt9fKO0
少年「……ふぅ……」
少年「…!」
幼女「……」
少年(……小さな女の子……)
少年(顔を見なくても分かる。きっとあの子が)
少年(トドノツマリ様)
少年「……」...ザッ
幼女「……」
少年「……」ザッ、ザッ
幼女「………」(そっと振り返る)
少年(!…この子もだ)
少年(あいつと同じ、どこか悲しげな顔をしてる)
少年「……」ザッ、ザッ
幼女「……」
少年(――そうか)
少年(あの時、きみから見た僕もきっと)
その時何を考えたかは正直あまり覚えてない。
少年「……」スッ(手を差し出す)
ただ、どんな疑問よりも先に口を衝いて出ていたんだ。
少年「友達に、なってくれませんか?」
387: 2020/02/18(火) 23:02:14.94 ID:Yxrt9fKO0
幼女「………」
少年「………」
幼女「……これは、異な事を」
幼女「然し」
...キュ
幼女「感謝する、創造主よ」
少年「……うん」
少年(暖かくも冷たくもない、不思議な手だ…)
幼女「ふむ…」
幼女「付喪神の仕業でもあるまいが、何れも正しく所有者の元へ還る、か」
少年「…?」
幼女「其の書物も然り」
少年「アヤカシノート?」
幼女「些か、実直過ぎる名を付けたものよ」
...タッタッタッ
派手娘「やっぱり、あんたか」
夢見娘「……」
少年「二人とも無事だったんだ。よかった」
少年「…猫又娘さんは…」
派手娘「一緒。後から来るってよ」
少年(……)
少年「あのさ…ここに来る途中、少女さ――」
少年「……人の形をした妖禍子を見なかった?」
派手娘「……」チラリ
夢見娘「………」モジッ...
少年「あ、いや夢見娘さんじゃなくて…」
猫又娘「おい!おーい!」スタッ、スタッ
猫又娘「」バッ
クルクルクルッ シュタ!
猫又娘「…っと」
猫又娘「主役は最後に登場!」
猫又娘「…間に合った?遅刻?」
388: 2020/02/18(火) 23:03:15.57 ID:Yxrt9fKO0
少年「猫又娘さん!」
少年「間に合ってるよ。僕もついさっき来たばかりだから」
猫又娘「丁度いい時に来れたかなー」
猫又娘「世界を救った英雄さんの話も聞けそうだしね」
少年「……え、僕のこと?」
猫又娘「もち」
猫又娘(……)
猫又娘(少女さんがいない)
猫又娘(さっきのはやっぱり…)
少年「……」
幼女「案ずるでない。役者は揃った」
幼女「嘆きに満ちたこの夜に、終止符を打とうぞ」
四人「……」
猫又娘「で、何をするのでしょうか」
夢見娘「……妖禍子の封印……」
幼女「是」
少年「妖禍子ならここに…」
夢見娘「……」フルフル
夢見娘「その子たちは、単純な存在だったからそこに納まったの……」
夢見娘「……私みたいに、少年くんに創ってもらったり、"違うもの"と混ざってたりすると、話は別……」
猫又娘「……」
幼女「今この世を停滞せしめている歪みは、放たれた妖禍子の消失により除かれる」
幼女「書物も合わせ、封じねばならぬ」
幼女「そして残すは二つ」
夢見娘「……」
猫又娘「……ふー」
猫又娘「なーんとなく、そんな予感はしてたけどねぇ」
猫又娘「封印される前に知っておきたいことがあるんだけど、いい?」
幼女「…言ってみよ」
猫又娘「どうして今になってこんなことが起きたのかなって」
389: 2020/02/18(火) 23:04:12.04 ID:Yxrt9fKO0
猫又娘「あの男が産まれたのって大分昔なんよね?…あいつの親が殺された時、まだ赤ん坊だったみたいだけど、何百年も後のこの時代で恨みを晴らす理由があったんかな?」
幼女「……」
幼女「……彼の者は元より封じられていた」
少年「あの村長さんたち、あいつだけ頃すんじゃなくて封印したんだ…?」
幼女「封じたのは我だ」
猫又娘「!」
幼女「彼の者をあのまま生かしたとて、人間の手が迫る事は明白」
幼女「ならば、何人も触れられぬ様封ずる事が彼等の安寧となる」
幼女「其の浅慮に囚われた我は、同様にして妖禍子共を封じていった」
幼女「…この社の中へ」
猫又娘「じゃああのお札は」
幼女「我が施したものだ」
幼女「彼等を護る揺籠と思い、長い時の中見続けていた」
幼女「……だが、其れでは何も終わらぬ。彼の者の憎悪は徐々に、然し確実に渦を巻き…」
幼女「いつしか世を歪ませる螺旋となりて、外界へ放出した」
猫又娘「……」
猫又娘「あなたも…よく無事だったね」
幼女「彼の者の記憶に、我は無かったようだ」
幼女「其の事実が吉と出たか凶と出たかは…最早確かめる術はないが」
少年「………結局………」
少年「事の発端は何もかも……人にあったんだな」
少年「妖禍子だ化け物だって騒いでおいて……本当の"アヤカシ"は僕らのこの――」
少年「胸の中にあるんだろうな…」
派手娘「……」
幼女「………」
幼女「妖禍子とは、そなた達が付けた呼称。我等は単調な運動しか出来ぬ者、高度な思索を行う者であろうが、そこに在る事が全て」
幼女「元々善悪なる概念は存在せぬ」
幼女「…この言葉に、納得出来ようか?」
少年「え…納得出来るか、って?」
少年「あぁ…まあ襲ってきた奴らだってあいつに操られてただけで悪意があるようには見えなかった」
少年「むしろ助けてくれる妖禍子さんがいるくらいだし…」
夢見娘「………」
猫又娘「えへへ…」
幼女「…であれば、よいのであろう」
幼女「創造主よ、そなたが其れを忘れずにいれば、人の世の心地は変わって行ける」
幼女「…そう信ずるに値する」
少年「………」
390: 2020/02/18(火) 23:04:51.39 ID:Yxrt9fKO0
幼女「……我も、そなたに謝罪せねばなるまい」
少年「…?」
幼女「――現世に戻した女。其の命、再び消ゆる事」
幼女「対価を欲したにも関わらず、間に合わせられぬ事」
少年「………」
少年(…少女さん…)
幼女「女の魂魄は…湖沼の底へと戻った」
幼女「あの湖沼には浮かぶ事の無い数々の念が漂っていたが」
幼女「今や一つとして残っておらぬ。何にも邪魔されず、洗われてゆく事だろう」
猫又娘(驚きだ……この子に人を生き返らせる力まであったなんて)
猫又娘(……だったら……そう願えばキミともう一度会うことも……)
猫又娘(………)
猫又娘(…いや、そうじゃないよね)フゥ...
派手娘「……」
派手娘(…善悪がないって何よ。そんなの無機物と変わらないじゃない)
派手娘(んなこじ付けに納得しろなんて…)
幼女「人間」
派手娘「…あたし?」
幼女「約束しよう」
幼女「人の――そなたの領域への侵食が金輪際無い事を」
幼女「人間との衝突は負の結果を生む。我等の存在の固定化が何時終わるかは分からぬ。だが、其れまでは此処で揺蕩い続けようぞ」
派手娘「それで…この町の守り神ってわけ?」
幼女「……我は、斯様な在り様しか見えぬのだ」
派手娘「………」
391: 2020/02/18(火) 23:05:40.54 ID:Yxrt9fKO0
幼女「閑話休題」
幼女「…猫又よ」
猫又娘「うん、もう十分。サンキューね」
幼女「では…封印は一度に一つずつ」
幼女「先ず其の書物を、此方へ」
少年「はい、どうぞ」
幼女「……」スッ
...フワァ
ヒュウウゥゥ
フッ...
少年(光が湧いたと思ったら…ノートが消えた)
猫又娘「おぉ…綺麗…」
幼女「苦痛は無い」
幼女「次は――」
猫又娘「はいはい!私が先!」
派手娘「バカなの?給食のデザートじゃないのよ」
猫又娘「あれ?なに?心配してくれてるん?あ!もしかして私が居なくなると寂しいとかー?」ニヤ
派手娘「チッ…うざい…」
少年「――僕は、寂しいよ」
猫又娘「……」
少年「猫又娘さんが居てくれてから、ここまで来れたんだし……少女さんと仲直りするのだって……」
猫又娘「少年君」
少年「!」
猫又娘「湿っぽいお別れはなし!そんな長々と喋んないで、一言にぎゅっとまとめておくれよ」
少年「一言…??」
少年「…さようなら?」
猫又娘「んーん」
少年「お元気で」
猫又娘「変わってないなぁ」
少年「えー……」
少年(……!)
少年「…ありがとう」
猫又娘「いぇい♪」ピース
猫又娘「じゃー、封じちゃってくださいな」
幼女「……」スッ
392: 2020/02/18(火) 23:06:30.29 ID:Yxrt9fKO0
猫又娘(人間社会は難しい)
猫又娘(色んなものがない交ぜになってて、ぐちゃぐちゃで、最初はびっくりしたっけ)
...フワァ
猫又娘(でも、キミが楽しい処世術を教えてくれたから)
猫又娘(……テストの点数は悪かったけど、私の生き方は何点だったんかなぁ)
ヒュウウゥゥ
夢見娘「……」
ポワァ...
猫又娘(………)
『――なんで暗い顔してるん?笑って笑って!』
猫又娘(……え?)
帽子『へへへっ』
猫又娘(あ……なんで……?)
帽子『お疲れ様』
帽子『僕の代わりにみんなを笑わせてくれたんだって?よく頑張ったね』
猫又娘『……っ……』
タッタッタッ! ギュッ
猫又娘『うん…うん…!頑張った…!』ギュー
猫又娘『私頑張ったんだよ…!』
猫又娘『だって!キミとまた、一緒に笑いたかったから…!』ポロ..ポロ..
帽子『とか言いながら泣いてんじゃん?』
帽子『僕と笑うんでしょ?ほら、せーの!』
帽子『にひひ』ニコッ
猫又娘『……にひひっ』ニッ
フッ...
393: 2020/02/18(火) 23:06:56.43 ID:Yxrt9fKO0
子猫「……」
子猫「」クシクシ
少年「猫に、変身したのか?」
幼女「其奴は既にただの猫だ」
子猫「……」
ダッ
スタッ、スタッ、スタッ...
少年(行っちゃった…)
派手娘「…あんた、今何したの?」
夢見娘「……夢を見せた……」
夢見娘「それだけ……」
夢見娘「……」...テクテク
少年「…夢見娘さん!」
夢見娘「………」
少年「ずっと僕たちを助けてくれてたんだって、聞いたよ」
少年「ごめん…勝手に僕が作り出しておいて、僕たちの都合で封印なんてさ…」
夢見娘「……私は、きみのものだから、いいの……」
少年「でも…」
夢見娘「……少年くんが私のことを考えてくれた。それだけで嬉しいから」
夢見娘「……」ニコッ
少年「…!」
夢見娘「……お願いします……」
幼女「…もうよいのか?」
夢見娘「……」コクリ
幼女「……」スッ
夢見娘(……いつか……)
夢見娘(きみと同じ、人として生まれ変われたら……)
夢見娘(その時は、きみと一緒に……)
...フワァ
ヒュウウゥゥ
フッ...
394: 2020/02/18(火) 23:07:36.35 ID:Yxrt9fKO0
少年「………」
幼女「………」
派手娘「………」
少年(これで、今度こそ終わった…?)
幼女「…後ろを見よ」
少年「?」フリムキ
少年「あ…」
(地平線に僅かにのぞく太陽)
少年「朝が……来たんだ」
派手娘「………」
派手娘「……」ザッザッ
ザッザッザッ...
少年(!…派手娘さん…)
少年(ろくに話せなかったな)
幼女「そなたも帰るがよい。直、世の再生が始まる」
幼女「…我が為せるのは此処まで。最早この場所に留まる意味はない」
幼女「さらばだ」...スッ
少年「…あ、あの!」
幼女「……」チラ
少年「さっき、少女さんはあの池に戻ったって言ってましたよね」
少年「それは…少女さんも封印されちゃったってことですか?」
幼女「……」
少年「また会おうって、言ってくれたんです」
少年「少女さんは、また戻ってこれるんですよね…?」
幼女「………我の力のみでは、不可能だ」
少年「……そう、ですか」
幼女「だが」
幼女「嘗てそなたが見せた意思を超え、想い続けられるのならば、或いは」
少年「想い、続ける…」
少年「……それが出来たらどうなり――」
シーン...
少年(…いない…)
395: 2020/02/18(火) 23:08:08.66 ID:Yxrt9fKO0
少年「……」
少年「……」
少年「………」
少年「………」ミアゲ
(昇りつつある朝日)
少年「……眩しいな」
少年(僕にとってのきみは、この太陽みたいなものだったのかもしれない)
少年「…いや、ちょっと違うか」
少年(太陽に手は届かないけど、きみの手を握ることは出来たんだ)
スッ(手をかざす)
少年「僕の声、聞こえる?」
少年「待ってて。今度は僕がきみの手を引っ張ってさ、連れ出してあげる。きみをひとりにはしないから」
少年「"大丈夫、約束でしょう?"」
少年「だから、また――」
あの綺麗な声で笑って欲しい。
次回:少年「アヤカシノート」終幕
引用: 少年「アヤカシノート」
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