1: 2009/01/25(日) 23:33:39.87 ID:tamnRDL30
【朝】

ジュン「ぐーすかーぴーzzz」
雛苺「(よく寝てるのよ~)」
雪華綺晶「(物音を立てたら駄目ですわ)」
金糸雀「(ミッションは優雅に華麗にスマートにこなすかしら)」
苺「(それじゃいくのよ~)」
金苺雪『(せーのっ!)』
金苺雪『ジュン(様)登りーーーー!!』

――グチャッ。

ジ「おぶふっ……っ!」
金「カナが一番早く登ったかしら!」
苺「ヒナの登り方が一番美しかったのよ!」
雪「私が一番ジュン様のお顔に近いですわ!」
ジ「お、おい、お前ら……」
金「カナの勝ち!」 苺「ヒナ!」 雪「私ですわ!」
ジ「うがっ、人の上で、ごふっ、暴れる、ぶぎゅ!」
金苺雪『わーわーきゃーきゃー!』
ジ「いい加減にどけえええええ!!」
苺「きゃあー! ジュンが怒ったのよ~」
金「これは逃げるが勝ちかしら!」
雪「勝負は明日に持ち越しですわ!」
ジ「いいからとっとと出て行けーーっ!」

6: 2009/01/25(日) 23:46:13.23 ID:tamnRDL30
えー、本編の途中ですが、ちょいと注意事項をば。
お気づきの方もいるかもしれませんが、この作品は自作のSSの続編です。
続編……よりは、エピローグ的な意味合いが強いです。
なんで、初見の方に優しくないかと思われます。
前作を読まれた方も、実は前作からだいぶ間が空いたんで、覚えている方がいるかどうか……
一応、勝手に前作のリンクを張っておくんで、読んでもらえたらよりいっそう楽しめるかと。
では、需要の有無は微妙ですが、書けるところまで書きたいと思います。

1作目 雪華綺晶「………………シクシク。クスン」
2作目 金糸雀「みっちゃん、ただいま……あら? お部屋が真っ暗かしら?」

ローゼンメイデン0―ゼロ― 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
4: 2009/01/25(日) 23:37:02.54 ID:tamnRDL30
~リビング~

ジ「おはようー……」
翠星石「おはようです、ジュン。今日は昨日よりも早いですねぇ」
ジ「チビトリオのせいでな。毎日毎日人の上に登りやがって……あー、眠い」
蒼星石「お邪魔してます、ジュン君」
ジ「いらっしゃい、蒼星石。翠星石、朝ごはんは……」
薔「ほれ。のりが準備してったものを、翠星石はわざわざあっためてやったです。感謝しろです」
ジ「早いな。僕が起きてくるのが分かったのか?」
蒼「ふふ。違うよ、ジュン君。雛苺たちが二階に上がっていったから、慌てて温め始めたんだよ。
  やっぱり食事は温かい方が美味しいって言……むぐぅっ!」
翠「そぉーせぇーせきぃ? いつからそんなにお喋りになったんですぅ?」
蒼「んんっ! んん、んんっ!」
ジ「なあ……口と鼻を塞いでたら、呼吸ができないんじゃないか?」
翠「お喋りな妹はお仕置きですぅ!」
蒼「ん~~~~~~!!」
水銀燈「聞いてないわねぇ……」
ジ「そうだな……って、水銀燈!?」
銀「おはよぉ……ふわぁ……眠いわぁ……」
ジ「お前、僕よりも遅くまで寝てたのか……」
銀「別にいいでしょぉ」
ジ「朝ごはん食べるか?」
銀「食べりゅぅ……」
ジ「はいはい」
蒼「ちょ! 翠星石! もう駄目、あっ、そこは……っ!」
翠「ほれほれほーれ! お姉さまの秘儀を味わうがいいですぅ!」

5: 2009/01/25(日) 23:41:12.06 ID:tamnRDL30
~庭~
ジ「ん? 何やってんだ? 真紅」
真紅「見て分からないの? 下僕なら察しなさい」
ジ「……庭で紅茶を飲んでるようにしか見えないんだけど」
紅「あら、ちゃんと分かってるじゃない。それで正解よ。……薔薇水晶。紅茶のお代わりをお願いするわ」
薔薇水晶「……かしこまりました……ご主人様……」
ジ「頭でも打ったのか?」
薔「違う……メイドさんごっこ……」
紅「言っておくけど、薔薇水晶から言い出したことよ。私が強制したわけではないのだわ」
薔「……どうぞ」
紅「ありがとう。……80点と言ったところね。もう少し精進しなさい」
薔「申し訳ありません……ご主人様……」
ジ「まあ、薔薇水晶はいいとして……どうして急に庭に出てるんだよ?」
紅「たまには気分を変えるのも悪くはないわ。風景が変われば、紅茶の違った味わいも生まれてくるものよ」
ジ「ふーん……」
紅「~♪」  
ジ「……トイレでは飲まないのか?」  紅「ぶふぅぅぅ!!」
ジ「うわ! 汚っ!」  薔「……噴水?」
紅「ななな何を、いい言ってるのかしら、ら? ささ、さっぱりりり理解できないのだだだわ!」
ジ「動揺しすぎじゃないか……」
薔「トイレ……?」
ジ「ああ。実はな――」
紅「薔薇水晶! ジュンを水晶に閉じ込めなさい! 今すぐに!」
薔「……かしこまりました」
ジ「ちょ! 嘘だろ!? うわあああ!!」
薔「……完成」
紅「上出来ね。100点をあげるのだわ」
薔「わーい……」

8: 2009/01/25(日) 23:50:20.19 ID:tamnRDL30
【金糸雀の演奏会】

――――~~~♪♪

ジ「ん? 何だこの音? 庭から……?」


~庭~

――――~~~♪♪

ジ「金糸雀?」
金「あら? どうしたのかしら、ジュン?」
ジ「バイオリンの音が聞こえたから来たんだけど……お前の演奏か?」
金「そうかしら。カナの趣味なのよ」
ジ「ふーん……あ、ごめん。続けていいぞ」
金「そうかしら? じゃあ、お言葉に甘えて……」

――――~~~♪♪

9: 2009/01/25(日) 23:54:33.48 ID:tamnRDL30
ジ「……意外と上手だな」
金「! なな、何を言ってるかしら! カナの腕がプロ級なのは当然かしら!」
ジ「いや、そこまで言ってないんだけど……」
金「う、嬉しくなんかないかしら! ジュンに褒められたくらいで……!」
ジ「いや、だから別に――ん?」

――――ヒュォォォォ!

ジ「なっ!?」
金「か、カナを褒めても何も出ないかしら!」
ジ「出てるっ出てる! 何か真空の刃とか鎌鼬っぽいのが塀を削ってる!」
金「ち、ちなみに曲名は『ツンデレのそよ風』っていうかしら!」
ジ「どこがそよ風だ!」
金「作者は『ドジス・ドジコ』っていう有名な人かしら!」
ジ「誰も聞いてない! っていうか、それなら題名は『ドジっ子のそよ風だろ』」
金「乗ってきたかしら! もっと激しくいくかしら!」
ジ「いくな――うぎゃああああ!!」

――斬ッ!

10: 2009/01/25(日) 23:58:28.42 ID:tamnRDL30
【雪華綺晶とお昼寝】

ジ「zzz」
ジ「zzz」
ジ「zzz……くぁ……あれ? 僕、眠ってたのか……ん?」
雪「すーすーzzz」
ジ「雪華綺晶? 何で僕によりかかって寝てるんだ?」
雪「すやすやzzz」
ジ「本格的に寝てるよ……これじゃ動けないな」
雪「ぅぅ~ん……ジュンさまぁ……zzz」
ジ「寝言?」
雪「慌てては駄目ですわぁ……私を食べたいなら……優しく繊細に扱……zzz」
ジ「どんな夢見てるんだよ……」
雪「ああっ……銀姉さま……ヒナ姉さまにケチャップをかけてはいけませんわ……zzz」
ジ「雛苺を食べかけたのはお前だろ」
雪「ヒナ姉さまには……マヨネーズの方が……zzz」
ジ「食うな!」
雪「うーん……むにゃむにゃzzz」

20: 2009/01/26(月) 00:02:09.26 ID:J6FfggKn0
雪「すやすやzzz」
ジ「こうやって見てみると……ホント綺麗な顔してるよな、こいつら」
雪「……毎日……騒がしく……zzz」
ジ「あれ、雪華綺晶? 泣いてる、のか……?」
雪「ふふ……楽し……です、わ……zzz」
ジ「……よかったな。雪華綺晶」
雪「です、わ……zzz」
ジ「さて! 身動き取れないし、僕ももうひと眠り――」
雪「ジュンしゃまぁ……zzz」
ジ「うあっ!?」

――――シュルシュル。

雪「……にがしましぇんわぁ……zzz」
ジ「き、雪華綺晶! 茨が! 白薔薇の茨が僕に巻きついてる!」
雪「うふふふふ……zzz」
ジ「寝ぼけてるのか!? おい! 起きろ、雪華綺晶!」
雪「ぱっくり……いたらきまぁす……zzz」
ジ「いただくなああああ!!」

24: 2009/01/26(月) 00:06:28.56 ID:J6FfggKn0
【真紅とインターネット】

ジ「それじゃ、行ってきます」
紅「ええ。行ってらっしゃい」

――――バタン。

紅「ふう。珍しく一人ね」
紅「…………」
紅「…………困ったわね。やることがないのだわ」
紅「……そうだわ」

~ジュンの部屋~

紅「ジュンはいつも、この『ぱそこん』というものを操作していたわ」
紅「私もやってみるのだわ。まずは……」

26: 2009/01/26(月) 00:10:06.52 ID:J6FfggKn0

~一時間後~

紅「ど、どうにか起動できたのだわ……」
紅「次は確か、この『e』のマークを押して……」
紅「できのだわ! これが『いんたーねっと』ね」
紅「……けど、これからどうすればいいのかしら?」
紅「『search』……何かを調べるのかしら?」
紅「それじゃあ……『くんくん』と」
紅「! くんくんがたくさん!」
紅「あぁ! くんくん! くんくんがこんなにいっぱい見れるなんて!」
紅「はっ! ……す、少し落ち着くのだわ。ここは冷静に、一番の上の『ぺーじ』を開いて……」
紅「ここは……『くんくん公式サイト』……?」
紅「ああっ! くんくんの過去10年分のアニメが見れるですって!?」
紅「見るのだわ聞くのだわ堪能するのだわ! 早速――!」
紅「『会員登録』が必要……? 『年会費15000円』……?」
紅「何、だと……?」
紅「これは……さすがに、勝手に入ったらジュンに怒られそうなのだわ」
紅「うぅ。でも、10年分のくんくん……」
紅「こうなったら……!」

29: 2009/01/26(月) 00:13:43.70 ID:J6FfggKn0
~一週間後~

ジ「あれ? 何だ、このフォルダ?」
ジ「『Crimson Love』? こんなフォルダ作った覚えないけど……」
ジ「はあ? パスワード? 何だこれ? 新手のウイルスか?」
ジ「うーん……でも、ネットにもこんなウイルス情報載ってないし」
紅「ジュン。ちょっとどいてちょうだい」
ジ「へ? 真紅?」
紅「ほら。早くしなさい」
ジ「え? ちょ、何だよ!」
紅「あら。ちょうどよかったわ」
ジ「は? 何言って――!?」

――――ダララララ、カチッ!

紅「ああ! くんくん!」
ジ「あ…ありのまま、今、起こった事を話すよ!
 『僕が見覚えのないフォルダを削除しようと思ったら、
  真紅がそのフォルダのパスワード30桁以上を2秒で打ち込みやがった』
  な…何を言ってるのかわからないと思うけど、僕も何をされたのかわからなかった…
  頭がどうにか(以下略」

33: 2009/01/26(月) 00:17:10.44 ID:J6FfggKn0
紅「あら? このサイト、前よりも防御プログラムが複雑になってるわね」
ジ「そうだ! き、昨日ネットで読んだ記事……! 
  『最近、くんくん関連のサイトのみからあらゆるデータを盗んでいる凄腕ハッカーがいる』。
  そいつの名前は確か……」
紅「まあ、この程度なら問題ないのだわ。『Red Rose』の力を見せてあげるのだわ!」
ジ「そう! そんな感じの恥ずかしい名前……って、おい!」
紅「さっきからうるさいわね。ジュン、暇なら紅茶を淹れてきてちょうだい」
ジ「そんなことより真紅! ハッキングは犯罪だぞ!」
紅「うるさいのだわ。くんくんのためなら地獄に堕ちてもいいのだわ!」
ジ「その前に僕が捕まる! 誰のパソコンだと思ってるんだ!」
紅「それなら心配ないわ。ばれないように、100以上の工夫を施してあるのだわ」
ジ「そういう問題じゃ――!」
紅「あんまりうるさいと、ジュンの個人データも流してしまうわよ?(にこっ)」
ジ「っ!? …………。紅茶ヲ淹レテキマス」
紅「いい子ね、ジュン」

教訓――――くんくんは最強。

36: 2009/01/26(月) 00:20:55.24 ID:J6FfggKn0


【こたつ】

ジ「寒くなってきたし、こたつでも出すか」
翠「『こたつ』って何です?」
ジ「何だ、知らないのか? うーん……日本独特の暖房器具、とか?」
銀「よく分からないわぁ」
ジ「まあ、実物を見てみた方が早いな。ちょっと待ってろよ」

――設置終了。

薔「これが……『こたつ』……?」
翠「どうやって使うです?」
ジ「見たまま。中に入ってあったまるだけだけど……」
翠「はあ?」
ジ「何だよ、その反応」
翠「騙そうったってそうはいかないです! 中に入るだけであったまるなんてそんな馬鹿な話は――!」
銀「あったかいわぁ」
薔「……ぽかぽか」
翠「ふきゃああああ!? 早すぎるです! もっと疑うことを覚えろです! 
  あの殺意ビンビンな頃の水銀燈と薔薇水晶はどこにいったですか!? 
  カム・バック murderous! Death!」
ジ「意味分からん……」

37: 2009/01/26(月) 00:24:05.55 ID:J6FfggKn0
翠「『闘うことは生きること』です! 常に疑う心を忘れず、背中を見せたら撃たれる覚悟で――!」
ジ「真紅の名台詞が台無しだな……」
銀「っていうかぁ。あなたいっつもそんなこと考えてたのぉ?」
薔「ジュン争奪戦は……まだ継続中……間違ってはいない……」
銀「そうねぇ。それだけは譲れないわぁ。ジュンを私の下僕にするまではねぇ」
ジ「はいはい。……それで? 結局お前はどうするんだ?」
翠「うっ……!」
銀「眠くなってきたわぁ……(ゴロゴロ)」
薔「……うとうと」
翠「し、仕方ないから入ってやるです! か、感謝するですよ!」
ジ「……はあ」
翠「むきーっ! 何ですかその態度は! 翠星石は別に――う? ……本当にあったかいですぅ」
銀「落ちたわねぇ」
薔「……すやすや」
翠「ふにゃ~。気持ちいいですぅ~」
ジ「最初から黙って入れよな。ったく」
銀「ジュンのお馬鹿さぁん。ただ構ってほしかっただけよぉ。ねぇ? 翠星石?」
翠「ぐーぐー(棒読み)」
ジ「思いっきり狸寝入りだな」

39: 2009/01/26(月) 00:27:28.60 ID:J6FfggKn0
【こたつ②】

ジ「ふー、寒い寒い。こたつであったまってから通販でもするかな」

――バサッ。

ジ「あ?」

ドールズ『すやすやzzz』

ジ「何で全員こたつの中で寝てるんだよ……すし詰め状態じゃないか……」
ジ「僕の入る場所は……まあ、ないよな」
ジ「……」

ドールズ『むにゃむにゃzzz』

ジ「……はあ。分かったよ。譲ればいいんだろ、譲れば」
ジ「……」――――カチッカチッ。
ジ「……」――――カチッカチッ。
ジ「……」――――カチッカチッ。
ジ「……寒っ」
苺「ぽかぽかなの~zzz」

40: 2009/01/26(月) 00:31:14.96 ID:J6FfggKn0
【こたつ③】

金「昼間はこたつを取っちゃって、ごめんなさいかしら?」
紅「あれは凄いわね。くんくんの次に好きになりそうだわ」
銀「そのお詫びにぃ……」
苺「今夜はヒナたちが一緒に寝てあげるのー!」
雪「人肌であっためてさしあげますわー♪」
翠「へ、変なことしたら殴るですよ!? で、でも翠星石に『だ・け』ならちょっとくらいなら……」
蒼「翠星石に無理矢理付き合わされました……ううっ」
薔「……ぎゅっ」

ジ「だああぁー!! 重い! 暑苦しい! 鬱陶しい! いいから鞄で寝ろー!」

41: 2009/01/26(月) 00:35:34.19 ID:J6FfggKn0
【雛苺のクリスマス】

苺「もうすぐクリスマスなの~。だから……」
ジ「だから?」
苺「肝試しをするのよ!」
ジ「はあ?」
翠「急に何言ってるです? 寒さで頭がやられたんですか?」
苺「ヒナはまだ翠星石ほど年食ってないから、ボケの心配はないのよ。お肌ピチピチなのよ~」
翠「んなっ!? このチビチビチビ苺ー!」
ジ「はあ。そんなことより、どうして急に肝試しなんだ? 普通夏だろ」
苺「ふっ。敢えて時代の逆を逝く――それがヒナ流の生き方……!」
ジ「何の漫画に影響されたんだ、お前……」


~12月25日。とある公園にて~

苺「諸君! よく集まってくれたのよ!」
銀「寒いわぁ」
金「今にも雪が降ってきそうかしら~」
雪「シロップの準備は万端ですわ~」
紅「まったく! 今日はくんくんのクリスマススペシャルだというのに!」
薔「……録画予約は……ばっちり……」
蒼「どうして僕まで……?」

ジ「やる気ゼロだな」
翠「というか、チビ苺はどうして軍服なんぞ着てるんですかねぇ?」

43: 2009/01/26(月) 00:40:07.22 ID:J6FfggKn0
苺「舞台はここ! ジュンが元・通っていた中学校!」
雪「あら? この公園、ジュン様の学校の隣だったのですか」
ジ「う……っ! うわぁぁぁああぁああぁああ!!」
翠「じゅ、ジュン!?」
金「どうしたかしら!?」
薔「……錯乱?」
ジ「嫌だァァあアぁぁァァアあぁあぁあアぁああ!!」
銀「あらぁ?」
翠「こうなったら……せやっ!」
ジ「ごふっ! ………………」
翠「ふう。大人しくなったです」
蒼「気絶させただけじゃ……」

苺「むー。早くも脱落者が出てしまったの。やっぱり肝試しは怖いのよ」
紅「肝試し以前の問題だと思うのだわ」
苺「まあいいのよ! ヘタレのジュンは放っておいて、ルールを説明するの!」
薔「……ルール?」
苺「ルールは簡単! 校内のどこかに隠されたこの『特製くんくんバッチ』を探してくるだけ!」
雪「はあ……見つけたらどうなるんですか?」
苺「勝者には『ジュンを一日独占する権利』をプレゼンツなのよ!」

銀金翠紅雪薔『!!』
蒼「いらないなぁ……」

44: 2009/01/26(月) 00:43:43.81 ID:J6FfggKn0
苺「制限時間は2時間! それを越えたら勝者はヒナなのよ! それじゃあ、よーい……スタートなの!」
金「ええっ!? もう始まったのかしら!?」
銀「先に行かせてもらうわぁ!」
雪「学校中にnのフィールドを張り巡らせてしまえば、こっちのものですわ!」
翠「くっ! 広すぎるです! 蒼星石! 手分けして探すですよ!」
蒼「ええっ!? ちょ、翠星石! 僕は帰りた――!」
紅「こここここ怖くなんてないのだわ! おおおお化けなんて、うう嘘っぱちなのだわ!」
薔「(誰もいない空間に)うん、お願い……そう、小さいバッチ……みんなにも、伝えて……」

――――ダダダダダッ……・。

苺「行っちゃったのよ」

46: 2009/01/26(月) 00:47:14.94 ID:J6FfggKn0
~十分後~

銀「ちょ!? 何よこれぇ!」
翠「どうして学校に落とし穴があるですか! あわわ! 落ちるですぅ!」
雪「閉じ込められましたわー! きゃあ! ピピ、ピアノが勝手に……!?」
蒼「うわあ! 天井から槍が……!」
薔「くっ……あれは、追跡者……? 手ごわい……!」
金「ここはどこかしらー! どうして校内にお墓があるかしらー!」
紅「……きゅう」 ――――バタッ!

ジ「……ん? うう……」
苺「あ、ジュン! 起きた?」
ジ「ここは……? 僕は今まで何してたんだ……?」
苺「ヒナとお散歩の途中に、転んで気を失ってたのよ? 大丈夫?」
ジ「あ、ああ。何かお腹の辺りが痛いんだけど……ん? 雛苺。何だその格好?」
苺「クリスマスだから特別なのよ~」
ジ「それで何で軍服……まあ、いいや。そのバッチは?」
苺「これ? これは世界に『1つ』しかない特別なバッチなの!」
ジ「ふーん……」
苺「そんなことより、ジュン! 早く帰ってケーキを食べるのよ! パーティなのよー!」
ジ「そうだな。帰るか」
苺「うん!」


苺「……ふっ。計画通り」

53: 2009/01/26(月) 01:19:30.16 ID:J6FfggKn0
【水銀燈とまったりな午後】

ジ「はあ……。お茶が美味しい」
銀「ふぅ……ヤクルトが美味しいわぁ」
ジ「……(ずずっ)」
銀「……(ちびちび)」
ジ「今日はあったかいな」
銀「ぽかぽかするわねぇ」
ジ「……(ずずっ)」
銀「……(ちびちび)」
ジ「……なあ」
銀「なぁに?」
ジ「饅頭にヤクルトって合うのか?」
銀「意外にいけるわよぉ。試してみるぅ?」
ジ「ちょっとだけ」
銀「どうぞぉ」
ジ「ん。……甘っ! 甘すぎるだろ、これ……」
銀「それがいいんじゃなぁい」
ジ「僕はお茶のほうがいいや」
銀「そぉ」
ジ「……(ずずっ)」
銀「……(ちびちび)」
ジ「平和だな」
銀「平和ねぇ」
ジ「……(ずずっ)」
銀「……(ちびちび)」

54: 2009/01/26(月) 01:23:07.44 ID:J6FfggKn0
【風邪】

ジ「はくしょん!」
金「きゃああ! 唾が飛んだかしら!」
苺「ばっちいのー」
ジ「誰のぜいだと……ずずっ。くっ、思っでるんだ……!」
薔「……誰?」
ジ「お前らが昨日、寝る前に暴れて……そのせいで寝る前に汗かいだから……はくしょん! 
  風邪ひいだ……んだろう゛……!」
銀「寝る前に汗って甘美な響きねぇ」
ジ「うるざい……ぅぅ、頭痛い……」
苺「ツッコミに切れがないのー。これは重症なのよ~」
ジ「もうい゛い……寝るから゛……大人ぢくしてろよ……」

ジ「…………zzz」
金「本当に寝ちゃったかしら?」
銀「うなされてるわねぇ」
苺「寝言を録音してあとで聞かせてあげるのよー」
薔「……心配」

翠「ここで翠星石たちの出番です!」
雪「たっぷりねっちりしっとり看病しますわー!」
蒼「何で僕まで……」

56: 2009/01/26(月) 01:26:52.30 ID:J6FfggKn0
翠「お邪魔虫はとっとと出ていけです。ジュンの看病は翠星石たちでするです。しっしっ!」
銀「お邪魔虫って誰のことかしらぁ?」
翠「『年増』と『不思議ちゃん』と『ツイン・チビーズ』です」
銀「としっ……!?」
雪「看病の準備はバッチリ! お湯にタオルに着替え! 私がジュン様の体を拭いて差し上げますわ!」
蒼「不本意だけど……おかゆを作ったから、食べさせてあげるよ」
翠「分かったですか? 騒ぐことしかできない連中はさっさ去れ! ですぅ!」

銀金苺薔『……』

蒼「ものすごく嫌な予感が……」
銀「金糸雀! 雛苺! 雪華綺晶を押さえなさぁい!」
金苺『Yes,we can!』
雪「ああっ! ジュン様のお着替えが!」
銀「薔薇水晶は蒼星石よぉ!」
薔「……了解」
蒼「え? 嘘? 何で!?」
銀「さぁ、翠星石? その道具をお姉ちゃんに渡しなさぁい?」
翠「むむむ……! おととい来やがれこんちくしょう! ですぅ!」
銀「そぉ……なら、力尽くで奪うまでよぉ!」

――――ドンガラガッシャン!

ジ「………………」
――――ムク。
――――ガチャッ。
――――パタン。

ドールズ『ぎゃーすぎゃーす!』

57: 2009/01/26(月) 01:30:48.19 ID:J6FfggKn0
~リビング~

紅「あらジュン。どうしたの? 部屋で寝るのではなかった?」
ジ「……ここで寝る゛」
紅「そう」
ジ「……」
紅「……」
ジ「……」
紅「……ねーんねん、ころーりよー」
ジ「……は?」
紅「これがこの国の子守唄なのでしょう? 少し前にくんくんで覚えたのだわ」
ジ「探偵アニメの何に゛使われたんだよ゛……」
紅「いいから大人しく寝るのだわ。子守唄を歌ってあげるから」
ジ「いいよ゛、別に……静がなら、それで、いぃ……」
紅「そう」
ジ「……zzz」
紅「…………ふぁ。私も眠くなってきたのだわ」
紅「ジュン。隣、失礼するのだわ」
ジ「zzz」
紅「ふふっ。おやすみなさい、ジュン」

Winner――――真紅!

60: 2009/01/26(月) 01:33:59.66 ID:J6FfggKn0
【蒼星石の悩み】

蒼「あの、ジュン君」
ジ「何だ?」
蒼「その……えっと……」
ジ「?」
蒼「……ぼ、僕って影薄いかな!?」
ジ「………………はあ?」
蒼「だって! この作者のSSでは、僕の出番ってほとんどないんだよ!
  1作目は雪華綺晶がメインで、2作目は銀金薔薇の3人!
  真紅たちはちょくちょく出てるけど、僕ってちょい役ばっかりなんだよ!?
  2作目なんてオチ担当だったし!」
ジ「それはある意味、おいしいんじゃないか?」
蒼「でも! 僕もメインをやりたいよ!」
ジ「蒼星石……」
蒼「やっぱり『僕っ子』は時代遅れなのかな……」
ジ「……。……違うよ、蒼星石」

――ポン。

61: 2009/01/26(月) 01:37:24.23 ID:J6FfggKn0
蒼「ジュン君……?」
ジ「『僕っ子』が理由じゃない。ただ……」
蒼「ただ?」
ジ「作者は、お前のキャラ付けに悩んでるんだ」
蒼「――――は?」
ジ「例えば、水銀燈と翠星石は『ツンデレ』。金糸雀は『ドジっ子』。
  ドールズには、みんな固有のキャラ付けがあるんだ」
蒼「そ、そうだね。それで?」
ジ「『腹黒』、『純粋』、『乙女路線』、『空気嫁』……。
  蒼星石のキャラをどれにすべきか、いまだに決まってないんだよ!」
蒼「そ、そんな……!」
ジ「事実なんだ……」
蒼「じゃ、じゃあ! 僕は嫌われているわけじゃないんだね!?」
ジ「もちろんだ!」
蒼「キャラが決まったら、僕も主役になれるかな!?」
ジ「それは無理。このシリーズのSS、今回が最後だから」
蒼「え……?」

63: 2009/01/26(月) 01:41:05.44 ID:J6FfggKn0
【薔薇水晶のお料理講座】

薔「ばらしーの『胃袋掴んでお婿をゲッチュ!』のコーナー……今日のゲストは……
  ……ジュンです…………わー。ぱちぱち……」
ジ「……何だこれ?」
薔「……本日のお料理は……目玉焼き……」
ジ「それ、わざわざ解説するような品目じゃないだろ」
薔「……材料は……まず、ダチョウの卵……」
ジ「ちょっと待て! どこで買ってきた、それ!」
薔「……nのフィールド経由で……アフリカから……産地直送……」
ジ「直『送』じゃないだろ……」
薔「次に……キャビア……」
ジ「おいっ! 何でそんな高級食材が!? それでどうやって目玉焼き作るんだよ!?」
薔「……同じく産地直送……チョウザメは手強かった……」
ジ「狩ったのか!? 『買った』じゃなくて!?」
薔「最後にこれ……怪竜『ゼルグートゥ』の卵……」
ジ「うぉぉぉい!? そんな生物この世にいるのか!? 竜だぞ、竜! それ以前に食べれるのか!?」
薔「……これは、さすがに危なかった……だから……現地にいた『竜頃し』の人と一緒に……」
ジ「やっぱり狩ったのか!? 誰だよ『竜頃し』って! 現地ってどこだよ!?」
薔「まず……卵を割ります……」
ジ「いたって普通に始めるな!」

67: 2009/01/26(月) 01:44:58.63 ID:J6FfggKn0
――――パリンッ。

薔「………………あ」
ジ「ものっすごく嫌な予感がする。主人公補正がかかった『第六感』が告げている……!」
薔「……孵った」
ジ「どれが!?」
薔「ゼル――」  

――――GgyyyyYyaWWwwWAAaaAa!!

ジ「全員集合!! 真紅! 水銀燈! 誰でもいいから助けてくれーー!!」

――――ドタバタ! ピカッ、ドーーーン!

薔「……『一番の調味料は愛情です』……って、最後に言いたかったのに……くすん……」

71: 2009/01/26(月) 01:48:21.35 ID:J6FfggKn0
【翠星石の編み物】

翠「ここをこう通して……う~。難しいですねぇ」
ジ「何してるんだ?」
翠「ひゃあ!? ジュン!?」
ジ「毛糸か、それ?」
翠「みみみ、見るなですぅ! あっち行けですぅ!」
ジ「ちょ、ここは僕の部屋だぞ!」
翠「いいから出てけです! 二時間は上がってくるなですぅ!」
ジ「おい、こら――!」

――――バタンッ!

翠「はあ、はあ……あ、危ないところだったです」
翠「折角、一ヶ月も隠しながら編んでたですのに、直前でばれるところだったですぅ」
翠「さて! もうすぐ完成です! 気合入れるですよ!」



~二時間後~

翠「……か、完成したです……!」
翠「苦節一ヶ月……! ついに、ついに……!」
翠「あとはこれをジュンに渡せば……!」

74: 2009/01/26(月) 01:52:16.90 ID:J6FfggKn0
~リビング~

翠「じゅ、ジュン……? いるですか……?」
ジ「zzz」
翠「寝てるです。今回のSSではよく寝る野郎ですねぇ」
ジ「zzz!」
翠「何か怒ったような気がするですが……気のせいですね」
ジ「zzz」
翠「むぅ……起こすのはちぃっとばかし気が引けるです……そうです!」
翠「これを、こうして……後ろから回して……」
翠「できたです! これでばっちりです!」
翠「さーて! 翠星石は後片付けをしてくるですぅ~♪」

――バタンッ。

ジ「……んあ? 今、誰かいたか?」
ジ「ふわぁ……ん? 何だこれ? マフラー?」
ジ「これ、誰が……あ!」
ジ「そうか……だからさっき……」
ジ「まいったな……」

76: 2009/01/26(月) 01:56:11.47 ID:J6FfggKn0
~ジュンの部屋~

翠「~~♪」
ジ「おーい、翠星石。いるか?」
翠「!」
ジ「ああ、いたいた。あのさ……」
翠「ままま、マフラーのことなんざ翠星石は知らんですよ! 関係ないです!」
ジ「まだ何も言ってないだろ……」
翠「はっ……!」
ジ「もう遅いよ……その、マフラー、ありがとな」
翠「うぅ~……ふ、ふんっ! 単なる暇潰しです! 気が向いただけです!
  ただ! 翠星石がわざわざ作ってやったんですから大切にするですよ!」
ジ「それはそうだけど……えと、ちょっと待ってろよ」
翠「?」
ジ「えーと……あった」
翠「どうしたです? 机の中を漁ったりして」
ジ「これ。お前にやるよ」
翠「ふぇ? これって……マフラー? 何でジュンが……」

80: 2009/01/26(月) 02:00:30.96 ID:J6FfggKn0
ジ「僕も編んでみたんだよ。お前たちのドレス作りの参考にでもなるかなって。
  お前が読んでた本、誰のだと思ってるんだ?」
翠「それはのりの……って、どうして翠星石にくれるですか!?」
ジ「時間がなかったから一本しか作れなくて……お前らのうちの誰かにあげたら、また喧嘩になるだろ?
  だから隠しておいたんだけど……お礼ってことなら、少しは文句も減るかなと思って」
翠「す、翠星石がもらっても、い、いいんですか……?」
ジ「お礼って言っただろ。あげるよ。まあ、あんまり上手くできなかったけど」
翠「ほ、本当です! 翠星石のマフラーの足元にも及ばねえです! けど、翠星石は優しいですから?
  仕方ねえから、もらってやってもいいです!」
ジ「はいはい。それでいいよ」
翠「ふ、ふん! 用が済んだならさっさと出て行けです! 翠星石は忙しいんです!」
ジ「だからここは僕の部屋――!」

――バタンッ。

翠「…………」
翠「…………」
翠「…………うふ」
翠「ふふふふふふ~♪」
翠「もらったです! プレゼントです! ジュンの手作りです!」
翠「あったかーい、です!」

84: 2009/01/26(月) 02:04:28.66 ID:J6FfggKn0
【女の子】

ジ「まったく! あれほど家の中で喧嘩するなって言っただろ!」
ドールズ『……』
ジ「ほら! 破れたドレス直すから! 順番に着替えてこい!」
ドールズ『……はい』

ジ「ったく。全員で喧嘩しやがって……女の子が殴り合いの喧嘩なんか……ブツブツ」
苺「それは偏見なのよ? 女の子だって怒ったら手が出るのよ?」
ジ「そりゃそうだろうけど。もう少しお淑やかになれないのか?」
翠「……そもそも、翠星石たちはドールです。正確には『女の子』とも違うです」
ジ「はあ?」
紅「……前にも言ったはずよ、ジュン。私たちは『人形』。『人間』とは違うのだわ」
ジ「でも、生きてる」

ドールズ『!』

ジ「これは……お前らと何ヶ月も一緒に暮らしてきて、ずっと考えてたことだけど……」
金「何かしら?」
ジ「お前ら……人形なんかじゃないよ」
銀「はぁ?」
ジ「『生きてる』ってだけで、すでに普通の『人形』じゃないだろ?」
蒼「それは……けど!」
ジ「まあ、人間でもないけどな。ネジで動くし」
薔「……うん」
ジ「でも、やっぱりただの『人形』には思えなくて、つまり……」
雪「どういうことですの?」

88: 2009/01/26(月) 02:08:53.68 ID:J6FfggKn0
ジ「うーん……つまり……つまり……」

ドールズ『…………』

ジ「あー……つまり……」
翠「何です!? はっきりと言うです!」
ジ「あーえっと……。いいか? こういうのは僕のキャラじゃないんだ! 一度しか言わないからな!」
銀「はいはぁい。分かったからぁ。それでぇ?」
ジ「だから――」

ジ「捻くれてて」    銀「……失礼ねぇ」
ジ「ドジで」       金「かしらぁ」
ジ「意地っ張りで」  翠「んなっ!?」
ジ「心配性で」     蒼「うぅ……」
ジ「高飛車で」     紅「誇り高いといいなさい!」
ジ「わがままで」   苺「なの~」
ジ「寂しがりやで」  雪「一人は……嫌ですわ……」
ジ「頑固で」      薔「…………」

ジ「泣いて、笑って、怒って、花丸ハンバーグ食べて、紅茶飲んで、くんくんを楽しんで、
  くだらないことで喧嘩して、それで傷ついて、次の日に仲直りして、疲れたら眠って、
  いろんな夢を見て、朝起きて、また騒ぎ出して」
紅「ジュン……」
ジ「お前らが自分のことをどう思ってるかは知らないけど……」
翠「翠星石、たち、は……」

ジ「僕にとって、ローゼンメイデンのドールたちは……」

90: 2009/01/26(月) 02:12:15.72 ID:J6FfggKn0

ジ「普通の『女の子』と、何も変わらないんだよ」

雪「私たちが……」
薔「……女の子……」
ジ「……ほら。できたぞ」
金「あ、ありがとうかしら……」
ジ「金糸雀で最後だよな? ……これで、僕の話は終わり。ほら! 早く片付けろよ!」
苺「ジュン? お顔が真っ赤なのよ?」
ジ「う、うるさい!」
蒼「あはは。最後がちょっと締まらなかったね」
銀「惜しいわねぇ。ふふっ」
ジ「おーまーえーらー!」

ドールズ『きゃー! ジュンが怒ったー!』

93: 2009/01/26(月) 02:15:46.80 ID:J6FfggKn0
ジ「おい待てよ! 部屋の中を片付けてけ!」
ジ「くっ! 逃げやがった!」
紅「仕方ないのだわ」
ジ「うわっ! 真紅! お前も逃げたんじゃ……」
紅「もちろん、逃げるわ。ただ、その前にジュンに言うことがあるのだわ」
ジ「……何だよ?」
紅「あなたも成長しているのね。ジュン」
ジ「……」
紅「そして、私たちも……」
ジ「真紅……?」
紅「『人形』に成長はない。けれど、少しずつ、私たちも変わってきている……」
ジ「……生きてるからだろ?」
紅「そう、ね。……ええ、たぶん、そう」
ジ「……」
紅「ねえ、ジュン? しばらく、みんなのことを放っておいてあげてちょうだい。
  みんな、いろいろと考える時間が必要なの」
ジ「……」
紅「私も、少し一人で考えたいわ」
ジ「あ、ああ……」
紅「……ジュン。さっきは……少し、格好よかったわ。さすが、この真紅の下僕ね」
ジ「なっ!?」
紅「そ、それじゃあ」

――――バタンッ。

ジ「…………」
ジ「……はあ。顔赤くするくらいなら言うなよな」
ジ「……片付けるか」

96: 2009/01/26(月) 02:19:01.10 ID:J6FfggKn0
【いつか】

紅「今日のくんくんも最高だったのだわ!」
薔「……最後の大立ち回りが……グッド……」
銀「あれは凄かったわねぇ。クマ男爵相手にくんくんの大回転回し蹴りっ。痺れたわぁ」
紅「私も覚えてみようかしら」
銀「あなたには無理よぉ。どんくさいものぉ」
紅「くっ……! なら、あなたにはできるというのかしら?」
銀「当然じゃなぁい。身軽な私なら簡単に――」
薔「……最近……水銀燈は体重が増加中……」
銀「!? あなた、何でそのことを!?」
薔「戦いがなくなって……運動量が減少……真紅も……前よりも増え――」
紅「お黙りなさい!」

金「こたつはあったかいかしら~」
雪「ミカンが美味しいですわー」
苺「惰眠を貪りたくなってきたの~」
金「ぽかぽかかしら~」
雪「おせんべいが美味しいですわー」
苺「こたつの中で暮らしたいの~」

蒼「ジュン君! 翠星石! お願い! しばらく泊めて!」
翠「急にどうしたですか? 蒼星石」
蒼「おじいさんとおばあさんが熟年離婚の危機なんだ! しばらく家に戻りたくないんだ!」
翠「おじじとおばばが!? たた大変じゃねえですか! 何で逃げ出してきたです!」
蒼「だって! 毎晩二人から『蒼星石はわしに懐いとるよな?』、『蒼ちゃんは私のことが好きよね?』
  って聞かれ続けるんだよ!? 僕もう限界だよ!」
翠「それは……仕方ないですね」

100: 2009/01/26(月) 02:23:52.81 ID:J6FfggKn0
ジ「うるさいぞお前ら! もう遅いんだから早く寝ろよ!」
ドールズ『はーい』



~一時間後~

ドールズ『すーすーzzz』
ジ「…………」
ジ「…………」
ジ「……はあ。ようやく全員寝たか」
ジ「まったく。毎日騒がしいったらないな。ホント疲れるよ」
ジ「…………」
ジ「……静かだな」

ドールズ『すーすーzzz』
ジ「これだけの静けさは、ちょっと懐かしく感じるなぁ……」
ジ「こいつらのおかげで最近は退屈しないから、そう感じるのかな……?」
ジ「…………」
ジ「あんまり実感がないけど……たぶん僕は今、幸せなんだろうな」

101: 2009/01/26(月) 02:28:58.05 ID:J6FfggKn0
ドールズ『すーすー』
ジ「でも」
ジ「いつか……終わりは来るんだろうな」
ジ「僕が先に氏ぬか、こいつらが先に氏ぬか……まだ実感はないけど……いつかは別れるんだろうな」
ジ「その時、僕は悲しむかな……? それとも、ようやく開放されるって清々するか……?」
ジ「…………」
ジ「……はあ。悔しいけど……たぶん、悲しむんだろうなぁ……」

ドールズ『……すーすー』
ジ「ま。先のことを考えても仕方ないか。こういうのは僕のキャラじゃないよ!」
ジ「…………」
ジ「…………」
ジ「あー、何か今、ふと厨二病っぽい台詞が思い浮かんできた……」
ジ「いつもなら心の中に閉まっておくけど……」
ジ「どうしよう……何か今日は、口にしてみたい気分だ」
ジ「……まあ、どうせ一人だし、たまには言ってみてもいいよな?」

ドールズ『…………』
ジ「……こほん」
ジ「えー……」
ジ「『今はただ……』」
ジ「『今日も明日も明後日も、いつか大切なその日が来るまで……楽しく、騒がしく過ごそう』」
ジ「『その『いつか』に、笑って別れられるために』……。……なんて」
ジ「うわっ! 恥ずかしい! 自分で言ってて恥ずかしいぞ、これは!」

紅「本当ね」
ジ「!?」

103: 2009/01/26(月) 02:32:47.29 ID:J6FfggKn0
翠「……聞いてるこっちの方が恥ずかしいです」
銀「そぉ? 結構格好よかったわよぉ?」
金「ふ、不覚にも、ちょっとだけトキメいてしまったかしら!」
苺「ジュンの黒歴史なのー!」
雪「将来、ふと思い出して悶えるのですわ~」
薔「……録音、する?」
蒼「ちょ、ちょっとみんな! 寝たふりしなくちゃ……!」

ジ「お、お前ら……いつから……」

翠「『たぶん僕は今、幸せなんだろうな』、辺りからです」
紅「そうね」
ジ「うぎゃあああああ!!」
銀「なかなか言えない台詞よねぇ」
苺「鳥肌ものなのよ~」
ジ「う、うあああ!! や、やめろ! 今すぐ忘れろ! 忘れてくれ! どうか忘れてください!」
雪「それは無理な話ですわ♪」
金「せせ、折角のジュンの本心かしら! むむ胸に刻んでおくかしら!」
ジ「嫌だぁああああ!」
蒼「ジュン君。落ち着いて」
薔「……恥ずかしいけど……嬉しい……」
ジ「は、はあ……?」

104: 2009/01/26(月) 02:35:42.87 ID:J6FfggKn0
紅「ジュン。私たちも幸せよ」
銀「こんなふうに穏やかに過ごせる日が来るなんて思わなかったわぁ」
蒼「毎日騒がしくて、いつもお祭り騒ぎで……」
苺「だから、寂しさなんて全然ないのよ?」
雪「独りぼっちは、もうどこにもありませんわ」
金「喧嘩したりもするかしら。でも」
翠「ジュンや姉妹たちと過ごせるだけで……」
薔「……幸せが……いっぱい……」

ジ「…………」

紅「だから。いずれ訪れる『いつか』の別れまで」
苺「いっぱい遊んで! いっぱいお喋りするのよ!」
金「形がなくてもいいかしら! いっぱい、いっぱい……!」
薔「……思い出……作ろう?」
蒼「それでも、寂しさは残るだろうけど」
雪「寂しさを埋め尽くすほど、ジュン様を愛してさしあげますわ」
銀「その代わりぃ……ジュンも私たちのことを……」
翠「たーっぷりと! あ、あ、愛しやがれですぅ!」

105: 2009/01/26(月) 02:38:28.34 ID:J6FfggKn0
ジ「…………」
ジ「…………ぷっ」
ジ「くく……あはははは……!」
ジ「何だよ。僕にあれだけ言っておいて……自分たちの方がもっと恥ずかしいこと言ってるぞ?」

ドールズ『う……っ!』

ジ「あははは! はは……」
ジ「…………はは、はぁ……」
ジ「…………」
ジ「……分かった。いいよ」

ドールズ『え……?』

ジ「明日か100年後か、それは分からないけど……」
ジ「『いつか』のその日まで――」

ジ「――大切にするよ!」
ドールズ『うん……!』

107: 2009/01/26(月) 02:42:58.90 ID:J6FfggKn0
ジ「さて。そろそろ本当に寝なきゃな。だいぶ遅い時間だよ、もう」
苺「眠い、の……」
金「カナもかしらぁ」
銀「お子様ねぇ」
ジ「それじゃあ……」


――――『いつか』の扉に一歩一歩、歩みながら。
――――次に訪れる一日が、
――――もっと幸せな一日になれることを願って。
――――数え切れないほどのたくさんの思い出を作るため、
――――今日を乗り越え、明日へと繋ごう。


全員『おやすみなさい!!』





完!!

108: 2009/01/26(月) 02:44:25.16 ID:DmrlkmS10
完走したようだな、楽しめた

引用: ジュン「僕にとって、ローゼンメイデンのドールたちは……」