1: 2009/02/02(月) 18:52:08.35 ID:Tr3qvR0Y0
ジュン「ふんふ~ん。今日も昼間からパソコン三昧~♪」

プツッ

ジュン「あれっ!?電源が切れた。くそっ、電線工事か?」

ジュン「二時間プレイしてたゲームがパーになったぞ……」

プンッ

ジュン「電気が戻ったけど、やり直す気にはならないなぁ」

ガチャッ

雛苺「ジュン、遊ぼーー!!」

ジュン「……たまにはいいか。よし、遊んでやる」

雛苺「わーい!!」
ローゼンメイデン 愛蔵版 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

5: 2009/02/02(月) 18:57:35.56 ID:Tr3qvR0Y0
雛苺「ねーねー、ジュン登りしてもいい?」

ジュン「普段ならうっとうしいとはねつける所だが、今日の僕はちょっと違う」

ジュン「遊ぶからにはとことん遊ぶ。ジュン登り?結構じゃないか。さぁ来いっ!!」

雛苺「おお~、ジュンが燃えてるの。それっ!ジュン登り~~!」ヨジヨジ

ジュン「」ニヤリ

ガシッ

ジュン「苺落としーっ!!」ブンッ!!

雛苺「ぴぎゃぁあああぁぁあああ!?」

8: 2009/02/02(月) 19:03:08.09 ID:Tr3qvR0Y0
雛苺を掴み、脳天から床に振り下ろすジュン。
もちろんそのまま叩きつけたりはせず、床ギリギリで寸止めする。

ジュン「どうだ!?」

雛苺「……」

雛苺「ほおぉぉぉおおお!凄いの凄いの~~~!もっとやって!もっとやって!」

ジュン「良い度胸じゃないか。じゃあもっと怖くて思わずチビりそうなのをやってやる」

ジュン「苺スイングっ!」グールグール

ジュン「苺風車!」グルグルグルグル

ジュン「デンプシー苺ロール!」ブンブンブンブン

雛苺「ひょぉぉおお!きゃぁぁあああああ!わっほぉぉおおおおお!」

グルグルグルグル



雛苺「……おえぇぇぇ」

11: 2009/02/02(月) 19:08:40.30 ID:Tr3qvR0Y0
ジュン「いや、気持ち悪くなる前に言えよ」

雛苺「うぅぅぅ、でも楽しいの。もっと……」ヘロヘロ

ジュン「もう止めとけって。僕も疲れたし」

雛苺「じゃ、じゃあ別のことをするの」

ジュン「と言っても何する?お前が喜びそうな遊びとか僕には分からないし」

雛苺「これ!」

ジュン「ティッシュがどうかしたか?」

雛苺「テレビで見たのよ。『お父さんスイッチ』!」

ジュン「何だそりゃ」

雛苺「下に行くの」ヨジヨジ

ジュン「はいはい」

14: 2009/02/02(月) 19:14:11.50 ID:Tr3qvR0Y0
一階。居間。

テーブルの上に材料を広げて工作する雛苺。
画用紙を丸く切り、文字を書く。それをティッシュ箱の裏に糊で貼る。
そして曲げたストローを箱の横にセロテープでくっ付ければ、スイッチがあるリモコンに見えないこともない物が出来上がった。

ジュン「これがお父さんスイッチか?」

雛苺「うんっ!でも今日はジュンスイッチね」

ジュン「何となくイヤな予感がしてきたな」

雛苺「じゃあいくの。ジュンスイッチの『あ』。あたまをなでるっ!」ポチッ

ジュン「えーっと頭を撫でればいいのか?」

雛苺「あーっ!しゃべっちゃダメなの!ジュンはロボットなの!」

ジュン(……体の良いおもちゃだな、これ)

ジュン「ウィーン、ガチャ、ウィーン、ガチャ」ナデナデ

雛苺「んふふっ♪」

19: 2009/02/02(月) 19:20:38.60 ID:Tr3qvR0Y0
ジュン(嬉しそうにしてるなぁ。ちょっとイジめてやろうか)

わしゃわしゃ ぐしゃぐしゃ

雛苺「ひゃうぅっ!や、やめて。髪がぐちゃぐちゃになっちゃうの!」

ジュン「暴走シマシタ。キケン、キケン」

雛苺「えええっ!?あぅあぅぅ、ジュンスイッチの『い』。今すぐ止まって!」ポチッ

ジュン「ピタッ」

雛苺「ふぅ~。デキが悪いロボットなの。すぐジャンクになっちゃいそうね」

ジュン(何だとコラ)

雛苺「次は『う』ね。うにゅ~を持ってきてなの」ポチッ

ジュン「ウィーン、ガチャ、ウィーン、ガチャ」

カチャカチャ トンッ

雛苺「もう一個持ってきてくれる?」

ジュン「あんまり沢山食べると夕食が入らないぞ」

雛苺「違うの。ジュンの分よ。一緒に食べよ?」

ジュン「……はいはい」

31: 2009/02/02(月) 19:26:12.35 ID:Tr3qvR0Y0
雛苺「美味しいの~~!」モグモグ

ジュン「あぁ。そうだな」

ジ・苺「ごちそうさまでした」

雛苺「次は『え』ね。絵本を読んで欲しいの」ポチッ

ジュン「絵本なんて家にあったっけ?」

雛苺「物置にたくさんあったのよ」

ジュン「ふ~ん。じゃあ好きなの取って来いよ」

雛苺「はーい!」

トテトテトテ トテトテトテ ポンッ

雛苺「はいっ!コレを読んでちょうだいっ!」

ジュン「……悲しい絵本だけどいいのか?」

雛苺「本当?ネコさんがいて楽しそうよ?」

ジュン「まぁいいか。読んでやるよ――『百万回生きたネコ』」

雛苺「始まり始まりなのーー!」パチパチパチパチ!!

※『百万回生きたネコ』超簡単に説明すると、愛する者に巡り合う為に転生しまくったネコの話。

35: 2009/02/02(月) 19:31:44.90 ID:Tr3qvR0Y0
――――――

ジュン「『ネコはもう生き返りませんでした』 おしまい」

雛苺「――」

ジュン「どうだった?」

雛苺「」ポロポロ

ジュン「うわっ!?ど、どうかしたのか?」

雛苺「ジュン……ジュン……」ギュウッ

ジュン「どーしたんだよ、一体」

泣きながら抱きついてくる雛苺を持て余したジュンは、とりあえず背中を軽く叩いてあげた。

ぽんぽん ぽんぽん

ジュン「ほら。とにかく泣きやめよ」

雛苺「ひっく、ぐすっ……」グシュグシュ

ジュン(確かに物悲しい終わり方だけど、そこまで大泣きするような話か?)

ぽんぽん ぽんぽん

38: 2009/02/02(月) 19:37:40.92 ID:Tr3qvR0Y0
しばらくすると次第に落ち着いてきたのか、雛苺は目元を拭った。

雛苺「……ジュン」

ジュン「何だ?」

雛苺「ヒナは……ううん、ヒナ達は絵本のネコさんと同じなの」

雛苺「お父様に会う為に、たくさんの時代で目覚めてきたのよ」

雛苺「もう別れるのはいやぁ……いやなの……」

ジュン(ドールは何人ものマスターと出会い、そして別れてきたんだっけ)

ジュン(そういう事を思い出させるような絵本は読むべきじゃなかった。まずったな)

雛苺「ずっとこうしていたいの。ジュンがいて、のりがいて、真紅達がいて」グスグス

ジュン「……それは無理だ」

雛苺「っ!!」

40: 2009/02/02(月) 19:43:22.24 ID:Tr3qvR0Y0
ジュン「僕も姉ちゃんも年を取って、いつか氏ぬ時が来る。これはどうしようもない事なんだ」

雛苺「やだやだぁ!氏んじゃやなの!」ブンブンッ

ジュン「大丈夫。まだ当分は氏なないからさ」

ジュン「あ、そうだ。こう考えよう」

ジュン「雛苺は今、『桜田ジュン』っていう名前の料理を食べてるんだ」

ジュン「料理は見てるだけじゃ美味しくないだろ?でも食べればどんどん少なくなって、いつかは無くなってしまう」

ジュン「でも本当に全部が消え去る訳じゃない。栄養になって体の一部になるんだ」

ジュン「分かるか?一緒に生きた思い出が、『桜田ジュン』という存在が、雛苺の一部になるんだ。ずっと一緒だぞ」

雛苺「うぅ~~」ポロポロ

ジュン(……すんなり納得は出来ないか)

雛苺がまた泣き出してしまったので、ジュンは今度は自分から雛苺を抱きしめて頭を撫でてやった。

42: 2009/02/02(月) 19:49:07.46 ID:Tr3qvR0Y0
――――

ジュン「おい。雛苺?」

雛苺「」スースー

ジュン「泣き疲れて寝ちゃったのか。やれやれ」

ジュンはその頬に残る涙の跡をそっと拭いてやり、雛苺を抱き上げた。
一度はリビングのソファーで寝かせようと思ったが、雛苺がシャツをぎゅっと握り締めていたので断念。
自室へ連れて行って一緒にベッドで寝る事にした。

ジュン「僕のベッドで二人でお昼寝なんて、翠星石にバレたら口リコン扱い必至だよなぁ」

だが考えてみれば、今の雛苺を一人で寝かせるのは可哀相な気もする。
目覚めた時に一人だと悲しい思いをするに違いない。一緒にいてあげた方が良いだろう。

ジュン(……出かけてる翠星石達が帰って来ませんように)

45: 2009/02/02(月) 19:54:36.50 ID:Tr3qvR0Y0
雛苺「んん、ジュン……」ギュッ

ジュン「ここにいるぞ」

雛苺「」スースー

ジュン(……これからはもう少し遊んでやろうかな。どうせなら楽しい思い出を残してやりたいし)

ジュン(『桜田ジュン』は、うにゅ~よりも花丸ハンバーグよりも美味しい料理になってやるからな)

ジュン(とは言っても自分を頃して人に尽くすなんてゴメンだから、僕は僕で『雛苺』っていう料理を楽しませてもらうけど)

ジュン「」ナデナデ

雛苺「んゅぅ……」

ジュン「ふふっ」クスッ



ジュン「陽気が気持ち良いや。だんだん眠くなってくる……」

ジ・苺「zzzzzzzz」

47: 2009/02/02(月) 20:00:18.47 ID:Tr3qvR0Y0
――――――

雛苺「ん……」

先に目を覚ましたのは雛苺だった。
体にちょっとした重みを感じる。何が乗っているか理解するまでに数秒かかる。
ジュンの腕だ。ジュンが雛苺を抱いて寝ているのだった。
普段なら「くっつくな!」と怒るジュンがそんな事をしているので、雛苺は少し驚いた。

視線を上げると気持ち良さそうなジュンの寝顔が見える。
雛苺は笑みを浮かべると、ジュンの胸に顔をすり寄せた。

雛苺「」ギュッ スリスリ

ジュン「ん……」ナデナデ

雛苺「!」

抱きつくと寝ているはずのジュンが頭を撫でてくれた。
嬉しくなった雛苺は何度もジュンに抱きついた。

ギュッ ナデナデ ギュッ ナデナデ

雛苺「んふふっ♪」

ジュン「……んっ。ふぁ~わ」

53: 2009/02/02(月) 20:05:44.83 ID:Tr3qvR0Y0
雛苺「あ、起きた。おはようなの」

ジュン「ん。おはよう」

ジュンは眼鏡を掛けて窓の方を見る。まだ日は高く、空は青い。

ジュン(よかった。あいつらはまだ帰ってきてないな)

ジュン「……なんでそんなに笑顔なんだ?」

雛苺「ヒミツなの」ニコニコ

ジュン(一緒に昼寝したのが嬉しかったのか?やっぱり一人にしないで良かったな)

ジュン「夕食まではまだまだ時間があるな。遊ぶか?」

雛苺「うんっ!!」

55: 2009/02/02(月) 20:11:18.13 ID:Tr3qvR0Y0
ジュン「ん~、何をするか……そうだ。久しぶりに『暗闇かくれんぼ』でもしてみるか」

雛苺「暗闇かくれんぼ?」

ジュン「あぁ。暗い家の中、電灯の一番小さな明りだけでやるかくれんぼだ」

ジュン「普段は隠れられない場所も使えるから結構楽しいんだぞ」

雛苺「面白そうなの!」

二人は家中の雨戸を閉めて回った。ガラガラ ガラガラ

暗くなった家の中、二人はトイレの前にいた。

ジュン「鬼はトイレで待つんだ。キッチンタイマーを使うから『もーいいよ』の声で場所がバレる事も無い」

ジュン「最初は僕が鬼をやろう。隠れるのは三分、探すのは十分がルールだ」ピッピッ

雛苺「わ~い!」

タタタ ゴスッ

雛苺「ふぎゃっ!」

ジュン「暗いんだから走るなよ。大丈夫か?」

雛苺「へ、平気なの。それよりも隠れる所を見ちゃダメでしょ?」

ジュン「はいはい。あ、姉ちゃんの部屋は禁止だからな」バタン

59: 2009/02/02(月) 20:20:46.11 ID:Tr3qvR0Y0
ジュンは蓋をした便器に座り、タイマーを見る。

ジュン「……しかし懐かしい。昔はよく柏葉とやったもんだ」

ジュン「夜に外でやるのも楽しいんだよな。木のフリとかが普通に通用するし」

ピピピッ ピピピッ

ジュン「三分経ったな」

ガチャッ

ジュン「行くぞ~」

一声かけてからジュンは捜索を始めた。
昔のノウハウを活かしながら探していくが、家具の配置が変わってたりするので中々大変である。

ジュン「」ガチャ バタン ガサゴソ ガラガラ

雛苺(暗くて音だけが近付いてくるってけっこう怖いの~)

雛苺(まるで本当に鬼がヒナを食べちゃう為に探してるみたい。くすくす)

雛苺(あ、来た来た。見つかるかな?)

ガチャッ

64: 2009/02/02(月) 20:26:14.67 ID:Tr3qvR0Y0
ジュン(まさか僕の部屋に隠れてるってことは無いよなぁ)

ジュン(鞄の中か?)ガチャ、パタン×3

ジュン(ベッドの下か?)ガサゴソ

ジュン(う~ん、いないな)

雛苺(気付いてない気付いてない。なんか笑っちゃいそうなの)ニヤニヤ

笑い声を上げてしまいそうになった雛苺は自分の口を押さえた。
だが場所が悪かった。ホコリがある場所だったので、鼻で息をした雛苺は思わずくしゃみをしてしまったのだ。

雛苺「くしゅっ」

70: 2009/02/02(月) 20:31:40.21 ID:Tr3qvR0Y0
ジュン「……そこかっ!!」

雛苺「あぁぁ。見つかっちゃったの~」

ジュン「初めての暗闇かくれんぼなのに、本棚の上に隠れるとは中々やるな」

ジュン「明るいとバレバレだけど、暗いと気付かないんだよな。ほら、降りて来い」スッ

雛苺「は~い」ピョン

ガシッ ストッ

ジュン「次は雛苺が鬼だ。僕は簡単には見つからないぞ」

雛苺「そんなこと言ってすぐに見つかったらカッコ悪いのよ」

ジュン「ふふん、暗闇かくれんぼの創始者をなめるなよ!」

72: 2009/02/02(月) 20:37:08.82 ID:Tr3qvR0Y0
雛苺「それじゃあ三分ね」ピッピッ バタン

ジュン(さーてどこに隠れるか)

ジュン(体が大きくなったのが痛いなぁ。雛苺みたいに本棚に上ったり出来ない)

ジュン(だけど背が小さい雛苺相手なら高い所に隠れるのは有利な気もする)

ジュン(う~ん……よし!決めた!)

トントントントン



雛苺(くすすっ。階段を上る足音が聞こえてるのよ~)

78: 2009/02/02(月) 20:42:49.43 ID:Tr3qvR0Y0
ピピピッ ピピピッ ガチャッ

雛苺「行くよーーーっ!」

トタトタトタトタ

雛苺(ジュンはどこかな?耳を済ませて音を聞くの)

シーーーン

雛苺(う~ん、分からないの。普通に探そうっと)

雛苺「」ガサゴソ ガチャ バタン

――――――

雛苺「見つからないの」

雛苺「二階は大体探したのよ。暗くてタイマーが見えないけど、もう五分は経ってそう」

雛苺「……もしかしてあの足音はヒナを引っ掛けるため?」

雛苺「一階を探してみるの!」

86: 2009/02/02(月) 20:47:53.29 ID:Tr3qvR0Y0
雛苺「お風呂。いない」ガラガラ

雛苺「リビング。テーブルの下にもソファーの陰にもいない」

雛苺「台所。食器棚の上、床下収納、流しの下にもやっぱりいないの」

ピピピッ ピピピッ

雛苺「あっ。十分過ぎちゃったの」

雛苺「負けちゃった。ジュンーーー!どこなのーーーー!?」



ジュン「ここだぞーーーー」

雛苺「廊下の方から聞こえてきたの」トタトタ

91: 2009/02/02(月) 20:53:34.34 ID:Tr3qvR0Y0
ジュン「ここだ。ここだ」

ガチャ

雛苺「!!」

雛苺「な、何でトイレから出てくるの!?」

ジュン「足音で二階へ誘導し、一階に潜んでおく。そして雛苺が二階に行った隙にトイレに入ったのさ」

ジュン「自分が最初にいたトイレは探そうともしないだろ。上手くいったな」

雛苺「む~~~っ!もう一回やるの!!」

ジュン「いいとも。飽きるまで付き合うさ」

その時のジュンはとても良い笑顔をしていたが、暗いため雛苺にはよく見えない。
だが言葉に込められた雰囲気を感じ取ったらしく、

雛苺「次は見つからないのよっ!」

雛苺は楽しそうな声でそう言った。

98: 2009/02/02(月) 21:00:16.18 ID:Tr3qvR0Y0
夕日が空を赤く染める頃、桜田家の面々は帰宅した。

ガチャッ

の紅翠「ただいま~(だわ)(ですぅ)!」

ジ苺「お帰りなさい(なの~!)」

のり「あら、一緒に迎えてくれるなんて珍しい」

ジ苺「……ふふふっ」ニコニコ

翠星石「何か企んでるですかぁ?」

ジュン「まったく性悪人形はそういう事しか思い浮かばないのか」

雛苺「家族を仲良くお迎えしてるだけなのよ。ねっジュン?」ギュッ

ジュン「うんうん。その通りだ」ナデナデ

翠星石(むむむっ?どういうことですか。妙に仲が良いですね)

102: 2009/02/02(月) 21:06:59.94 ID:Tr3qvR0Y0
真紅「あら。二人とも随分汚れているわね」

雛苺「かくれんぼしてたの!」

ジュン「家の中でやってたからなぁ。ホコリまみれだ」

のり「二人ともご飯の前にお風呂に入ったら?」

ジュン「そうするか」

雛苺「一緒に入ろ?」

ジ翠「っ!!」

ジュン「そ、それは色々とマズイだろ」

のり「大丈夫よ。ドール用の水着が何故かここにあるし」ガサゴソ

ジュン「マジか?ホントに何故なんだ?」

のり「今日はみっちゃんさんの家におじゃましてたのよ」

のり「真紅ちゃん達の予備の服を是非作らせて欲しいって言われてね。ヒナちゃんは前に採寸してたからもう何着か出来てるの」

真紅「着せ替え人形にされたのだわ。カメラのフラッシュでまだ目がチカチカする」

103: 2009/02/02(月) 21:12:31.22 ID:Tr3qvR0Y0
のり「ジュン君は海パンがあるし。それに何より、ヒナちゃんが一人で入るのは危ないわよ」

ジュン「それもそうだな。分かった。一緒に入ろう」

雛苺「わ~い、お風呂♪お風呂♪」

翠星石(ちょっ!?何でОK出すんですかっ!ジュンなら絶対断ると思ったのに!)

真紅(決して私もジュンと入りたい訳じゃないけれど、何かモヤモヤするのだわ)

のり「……」

のり「真紅ちゃん達の水着も作ってもらえるよう言っておくからね」

紅翠「っ!!」ドキッ

ジュン「ははは。そしたら皆で入るか?」

紅翠「っ!?///」ドキッ

のり「そそそそんな、家族のスキンシップは大事だけど、この年で一緒にお風呂なんて///」

ジュン「家の風呂はそこまで広くない。心配しなくても姉ちゃんが入るスペースは無いだろ」

のり「……えぇ~」

109: 2009/02/02(月) 21:19:32.34 ID:Tr3qvR0Y0
脱衣所。

雛苺「真紅達も一緒に入れば良かったのにね」

ジュン「無理だろうな。水着無いからタオル一枚になるわけだし」

雛苺「翠星石が口リコン口リコンってうるさかったのよ。ところで口リコンって何?」

ジュン「えっと……女の子を食べちゃうこわーいお兄さんの事だ」

雛苺「ジュンは口リコンなの?」

ジュン「違う」

ギィィィィ

翠星石「口リコンが正直に答えるはずないですよぉぉぉ~」

ジ苺「」ビクゥッ!?

ジュン「鬼女の如く監視するんじゃない!ビックリするだろ!」

雛苺「ろ、口リコンより翠星石の方がよっぽど怖いのよ~」ビクビク

113: 2009/02/02(月) 21:25:06.23 ID:Tr3qvR0Y0
翠星石「いつもは『子供はキライだ』なんて言ってるくせに、どういう風の吹き回しですかぁ~?」

翠星石「すっごく怪しいですぅ~~」

ジュン「そのネットリ絡み付くような話し方はやめろって。気持ち悪い」

ジュン「そんなに雛苺が心配ならお前も入れば良いじゃないか」

翠星石「だ、誰がチビ人間なんかと……///」ギギギィィィー バタン

ジュン「やれやれ」

雛苺「やれやれなの」

121: 2009/02/02(月) 21:31:15.64 ID:Tr3qvR0Y0
二人は順番に脱衣所を使って水着に着替えた。

雛苺「どう?似合う~?」

ジュン「……」

ジュン(みっちゃんさんったら、もぉ)

ジュン(形状は下腹部に水抜き穴があるオールドタイプのスク水。胸には大きな名札で『ヒナ』の二文字)

ジュン(あの人のことだ。絶対に狙ってやったな)

ジュン「何と言うか、似合い過ぎる程に似合ってるな」

雛苺「♪」

ジュン「んじゃ入るか」

雛苺「うんっ!」

126: 2009/02/02(月) 21:39:20.60 ID:Tr3qvR0Y0
ざっと体を流した後、ジュンは雛苺を抱っこして湯船に入った。

雛苺「気持ちいいの~」

ジュン「子供用お風呂セットが残ってればよかったんだけどなぁ」

ジュン「あ、そうだ。……それっ」ピシュッ!

雛苺「おぉぉ!すごいの!水鉄砲なの!」

ジュン「お風呂遊びっつったら他に何があったかな」

ジュンが記憶を掘り起こしつつ、二人はしばらく湯船の中で遊んだ。
タオルでクラゲを作ったりそれを潰したり、息止め競争してみたり。
石鹸をタオルにこすり付けて吹いて泡を沢山作ると雛苺は大はしゃぎだった。

136: 2009/02/02(月) 21:45:56.69 ID:Tr3qvR0Y0
ジュン「ホコリ落とすだけのつもりだったけど、やっぱちゃんと洗っておくかな」ザバッ

雛苺「じゃあヒナが洗ってあげるの!」

ジュン「そうか、頼むよ」

雛苺「」ゴシゴシ ゴシゴシ

雛苺「背中がおっきいから大変なの~」

ジュン「頑張れ頑張れ。後で頭洗ってやるから」

雛苺「それそれ!」ゴッシゴッシ!!

ジュン「いてて!張り切り過ぎだ。もうちょっと優しくしろって」

雛苺「あっ、ごめんなさいなの。こう?こう?」ゴシゴシ

ジュン「あーそうそう。上手だな」

雛苺「えへへっ」ゴシゴシ

147: 2009/02/02(月) 21:52:55.65 ID:Tr3qvR0Y0
ジュン「次は僕が洗う番だな。目ぇ閉じてろよ」

雛苺「は~い!」

ジュン「」シャカシャカ シャカシャカ

ジュン「けっこう髪長いんだな。カールしてるからそんな印象は無かったけど」

雛苺「洗うの大変?」

ジュン「いーや。それでも大した量じゃないよ」

雛苺「くふぇっ、ぺっぺっ」

ジュン「ははは。口開いたから泡が入ったのか」

153: 2009/02/02(月) 21:58:35.03 ID:Tr3qvR0Y0
体を洗った後、二人はまた湯船に浸かった。

ジュン「10数えて上がるぞ。せーのっ」

雛苺「い~ち!に~~い!」
ジュン「じゅ~う、きゅ~う」

ジ苺「…………」

ジュン「やりなおしだ。せーのっ」

雛苺「じゅ~う!きゅ~~う!」
ジュン「い~ち、に~~い」

ジ苺「…………」

ジ苺「ふふっ、あはははは」

ジュン「12345678910よし出るぞ」

雛苺「えぇっ!?ヒナ数えてないの~~!」

157: 2009/02/02(月) 22:04:41.79 ID:Tr3qvR0Y0
風呂から上がれば夕食である。

急に仲良くなった二人に翠星石は訝しげな目を向けていたが、ジュンは雛苺だけを特別扱いするつもりは無かった。

『どうせなら良い思い出を残したい』という思いはドールズや自分の姉に対しても向けられていたのだ。

ジュン「どうした翠星石。全然食べてないな。具合悪いのか?」

翠星石「ふぇっ!?そ、そんなことないですよ」

雛苺「いらないならヒナがもらうの!」

翠星石「だ、誰がやるもんですか!しっしっ!」

真紅「二人とも暴れるのは止めなさい」

真紅(……ジュンったらどうしたのかしら。急に人が丸くなったみたいね)

***

全「ごちそう様でした~」

ジュン「ふわ~あ。まだ早いけど、もう眠いなぁ。おやすみ~」

のり「ちゃんと歯磨きするのよ?」

ジュン「わーかってるって」バタン

163: 2009/02/02(月) 22:10:23.91 ID:Tr3qvR0Y0
翠星石「……」

翠星石「何があったんですかチビ苺。正直に白状しやがれですぅ!」

雛苺「ふぇっ?今日はジュンが沢山遊んでくれたの。それだけよ」

真紅「あのジュンが?まぁレディに優しくするのは良い事だけど」

翠星石「何か企んでるに違いないですよ」

雛苺「そんな事ないのよ。じゃあ明日、翠星石も一緒に遊ぶといいの!」

翠星石「……ふ~ん。チビ苺がそこまで言うなら確かめてやるですぅ」

真紅「私も確かめるのだわ」

翠星石(くっ!便乗する気ですね?)ジロッ

真紅(あなたは甘えてデレデレして終わりそうだもの。任せられないわ)プイッ

167: 2009/02/02(月) 22:16:31.79 ID:Tr3qvR0Y0
翌朝。

ジュン「今朝の食卓は張り詰めたような空気が漂ってるな」

のり「ふ、不思議ねぇ」

紅翠「……」ピリピリ

翠星石(抜け駆けは無しですよ!)

真紅(抜け駆け?何のこと?)

食事が終わると雛苺がさっそくジュンに飛びついた。

雛苺「ジュン登り~!」

ジュン「おいおい。ご飯食べてすぐに動くとお腹痛くなるぞ」

翠星石(と言いつつも、拒否はしない。う~む)

真紅(ほら、早く確かめなさい)

翠星石(ちょっ!?一番手を押し付けるつもりですかぁ!?)

真紅(あなたが先に確かめると言ったのよ)

翠星石「……うぅ~~」

173: 2009/02/02(月) 22:22:13.03 ID:Tr3qvR0Y0
翠星石「す、翠星石も……登っていいですか?////」

ジュン「えっ?珍しいな。別にいいぞ。ほら雛苺、交代だ」ストン

翠星石(きゃーーっ!何でそんな簡単に許すんですかぁ!////)

ジュン「登らないのか?」

翠星石「い、いえ。いきますですぅ!」ヨジヨジ

翠星石(……ジュンに肩車されてるです)

翠星石「///」ポワポワ

真紅(まったく締りの無い顔をしちゃって。呆れるわ)

ジュン「どうしたジロジロこっち見て。真紅も登りたいのか?」

真紅「えっ!?わ、私はいいのだわ」

ジュン「そうか」

真紅「えっ……あ、あの、その……あなたがどうしてもと言うなら、登ってもいいのだわ」

ジュン「……」

182: 2009/02/02(月) 22:30:26.71 ID:Tr3qvR0Y0
雛苺「ねぇジュン」

ジュン「あぁ。……真紅。登ってくれ。どうしてもだ」

真紅「あっ、えっとその、し、仕方無いわね///」カァーーッ

ジュン「ほーら、翠星石。交代だ」ストン

翠星石(うぅぅ。もっとジュン登りしてたかったですぅ)

ジュン「はい。どーぞ」

真紅「……」ソッ

真紅「///」ヨジヨジ

雛苺「ジュン登り、楽しいでしょ?」

真紅「ふ、ふんっ。下僕に座るのも悪くないわね」

雛苺「下僕なんて言っちゃダメよ。ジュンはジュンなの」

雛苺「真紅も翠星石も素直になったらもっと楽しく遊べるのよ」

186: 2009/02/02(月) 22:36:25.38 ID:Tr3qvR0Y0
真紅「私は素直よ。下僕に座って退廃的な愉しみに浸っているのだわ」

雛苺「むーっ」プクーッ

タタタッ タタタタッ

真紅「あら、何を持って来たの?それはティッシュ箱?」

雛苺「ジュンスイッチの『お』!思いっきりやっちゃえ!真紅落としなのーっ!」ポチッ

ジュン「」ニヤリ

ガシッ

ジュン「そりゃぁぁあああああああああ!」ブンッ!!

真紅「きゃぁぁああああぁぁぁああああっ!?」


この後真紅が気絶したり、ジュンと雛苺がシバかれたりといった一幕もあるが、ジュンが精神的に少し成長した話はここらで終わる。
仲良くなったジュンとドール達の笑顔に満ちた日常はまた別のお話。


『ジュン「苺落としーっ!!」』
                    おしまい。

189: 2009/02/02(月) 22:37:25.98 ID:lcU3OEor0
癒された!乙

207: 2009/02/02(月) 22:47:31.32 ID:Tr3qvR0Y0
久々に苺メインの話書いた。
日常系はマンネリ化しないようにするのが難しくて苦手だw

それではまた別のSSでお会いしましょう~ノシ

引用: ジュン「苺落としーっ!!」