1: 2011/12/11(日) 21:40:29.90 ID:WP7e7KZC0
初オリジナルssです。

主要キャラクターの中にはとあるキャラクターをモチーフにしたキャラクターが少数います。

それでもよければ見てください

2: 2011/12/11(日) 21:41:13.60 ID:WP7e7KZC0


勇者「初めまして」ペコリ

王「そんなに硬くならなくてもよい、楽にしておれ」

勇者「あ、はい」

勇者「こんな子供に何の用があるのでしょうか?」

王「しっかりしておるな」

勇者「はい」

王「うむ、実はお主に重要な用があるのだ」

勇者「なんでしょうか?」

王「お主もわかっておると思うがお主は勇者なのだ」

勇者「え?」

王「お主は勇者なのだ」

勇者「は!?」

王「だからお主は勇者なのじゃ」

勇者「だから、どういう意味!?」

王「知っておるのじゃろう」

勇者「いや、全く知らないんですけど!!」

王「ぬ、父親から聞いておらぬのか?」



3: 2011/12/11(日) 21:42:26.65 ID:WP7e7KZC0
勇者「聞いてないよ、もしかしてあのダメおやじが勇者だったの!?」

王「お主の父親はただのグータラのダメ人間じゃ、だがお主の母親は勇者の血を引いておるのじゃ!!」

勇者「……」

王「母親からは聞いておらぬのか?」

勇者「あの人は俺が小さい時に愛人作って出て行きました」

王「お主の母親がか?」

勇者「はい」

王「いつ頃だ?」

勇者「俺の記憶にあの人との記憶がないのでわからないです」

王「……」

勇者「……」

勇者「王様?」

王「そんな複雑な家庭環境だったとは知らなかった……すまぬ」

勇者「気にしてませんから」

勇者「ところでダメおやじのとは知り合いなんですか?」

王「うむ、お主の父親とは昔からの友人でな、今でも酒場で飲んだりしておるのだ」

勇者「王様が酒場に行っていいんですか?」

王「お忍びじゃから大丈夫だ、あと町の民と話す事も重要じゃしな」

勇者「そうですか」

勇者「そんなにダメおやじと仲いいのに聞いてなかったんですか?」

4: 2011/12/11(日) 21:43:36.81 ID:WP7e7KZC0
王「今でも仲良くやっておると言っておった、お主と母親も仲がいいと……」

勇者「それはあれです、二人目の母親です」

王「……そうか」

勇者「もう慣れてますから、気にしないでください」

王「うむ……」

勇者「で、俺が勇者なのはわかったですけど、具体的にどうすればいいんですか?」

王「おお、忘れておった、お主には魔王を倒しに行ってもらいたい」

勇者「魔王?」

王「うむ、最近は大人しくしておるらしい、しかし魔王は存在自体が脅威、人々は魔王が存在しておるだけで不安なのじゃ」

勇者「それって俺が悪者になるんじゃないですか?」

王「魔王は悪、それは古来から決まっておることなのじゃ」

勇者「だからって何もしてない魔王を倒せって……どうなの?」

王「魔王を倒せば周りの国から大量の討伐金が支給されるのじゃ、そうすればこの国はもっと強くなれる」

勇者「偉そうなこと言っておいて結局金?」

王「金は命より大事なのじゃ、お主も王になればわかる」

勇者「わかりたくもない」

5: 2011/12/11(日) 21:44:22.17 ID:WP7e7KZC0
王「話はここまでだ、質問はあるか?」

勇者「聞きたい事は山ほどあるけど聞いても仕方ないしもういいよ」

王「おい、最初の敬語はどうしたのだ」

勇者「いろいろありすぎてもう面倒臭い」

王「別にいいのじゃが」

勇者「ならこれからタメ口でいい?」

王「別にいいぞ」

勇者「じゃあタメ口で」

王「……では勇者よ、魔王討伐に行ってくれるか?」

勇者「断る」

王「魔王討伐に行ってくれるか?」

勇者「断る」

王「……なぜだ」

勇者「俺が家を出たら妹が一人になっちまう」

王「父親は別として母親がおるじゃろう」

勇者「毎日カジノ漬けのダメな母親なんだ」

王「……そうか」

勇者「俺がいなくなったら妹の面倒を見る人間がいなくなる、それに俺が働かないと家族が飢え氏にしちまう」

王「なんと言っていいのかわからんが―――――」

女大臣「そんな年で家族を養うために働くなんて、なんて健気な勇者なのでしょう!!」ガタン!!


突然入ってきたのは高そうなローブを着た、眼鏡で巨Oの勇者と同い年ぐらいの女の人だった。


勇者「……誰?」

6: 2011/12/11(日) 21:45:45.10 ID:WP7e7KZC0
王「大臣、お主また盗み聞きをしておったのか」

勇者「こんな若いのに大臣?」

王「そうじゃ」

勇者「そんな若さで大臣なんてよっぽどのエリート?」

王「うむ、この国一番の天才と言っても過言ではない」

勇者「天才って本当にいるんだな」

王「うむ、彼女が来てからはあらゆる仕事がうまくいっておる」

勇者「ふーん」

王「じゃが情に弱いのと盗み聞きをする癖があるのが問題じゃ」

女大臣「王様、私は今ものすごく感動しています!!」

王「そ、そうか……」

女大臣「なんて、なんてかわいそうなんでしょう」

勇者「同い年の人にかわいそうって言われるのって意外と傷つくんだぞ」

王「安心しろ、お主よりも1歳も年上じゃ」

勇者「ほぼ同い年……」

女大臣「王様、勇者がいない間、勇者の家にメイドを派遣してはどうでしょうか?」

王「そうじゃな、勇者、お主はどう思う?」

7: 2011/12/11(日) 21:47:07.12 ID:WP7e7KZC0
勇者「もちろん無料だよな?」

女大臣「当たり前です!!」

王「勝手に決めてほしくないのじゃが……」

勇者「いいの!?」

女大臣「いいですよ!!」

女大臣「私が責任を持ってあなたの家族を養っていきます!!」

王「だから勝手に決めないで―――――」

女大臣「この国の財政状況なら彼の家を養うことなど簡単ではありませんか」

王「だからと言って一つの家族だけを特別扱いするのはあまり……」

女大臣「勇者の家族への援助ではダメですか?」

王「……わかった、援助を許可する」

女大臣「これで大丈夫です!!」ズイッ

勇者「あ、ありがとう(本当に凄いな、いろいろ……)」

王「では行ってくれるのか?」

勇者「ここまでやってもらったんだ、行くよ」

王「ではそこにある鉄の鎧、鉄の盾、鉄の剣、鉄の兜はお主にやろう」

勇者「いいの?」

王「うむ、魔王は強敵じゃからな」

8: 2011/12/11(日) 21:49:31.50 ID:WP7e7KZC0
勇者「ありがとうございます」

女大臣「明日までに必要最低限の食料と資金を準備しておきますので」

勇者「あ、ありがとうございます」

女大臣「いえいえ、旅には必要不可欠ですので」

勇者「そうなんだ……」

王「旅はお主の思っている以上に過酷なものなのじゃ」

勇者「わかってます」

女大臣「今あなたが思っている三倍は過酷な旅になります」

勇者「そんなに?」

女大臣「はい」

王「それぐらいの心構えで臨めという事じゃな」

女大臣「では私は明日の準備をしてきます」スタスタ

王「うむ、頼んだぞ」

王「勇者よ、出発は明日だ、しっかり準備しておくのじゃぞ」

勇者「わかりました」

9: 2011/12/11(日) 21:52:31.39 ID:WP7e7KZC0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

勇者の自宅

勇者「ただいま」ガチャ

妹「おかえり!!」タタタッ


茶色がかったツインテールで十歳くらいのかわいい少女が勇者に近寄ってくる


妹「遅かったね」

勇者「ああ、いろいろあってな」ドサッ

妹「その荷物は?」

勇者「ああ、王様にもらったんだ、見るか?」

妹「別にいい」

勇者「ああ、そう……」

妹「お腹空いた、ごはん!!」

勇者「ああ、わかったわかった」スタスタ

勇者「食べ物ってあったかな?」ガチャ

勇者「思った通り、空っぽだな」

10: 2011/12/11(日) 21:55:00.28 ID:WP7e7KZC0
勇者「この時間じゃ食材屋も閉まってるだろうしな、どうしよう」

妹「お兄ちゃん、お腹空いた!!」

勇者「ああ、わかってる」

父親「勇者、帰ってたのか」スタスタ

勇者「なあ、食い物ってもう無いのか?」

父親「さあな、俺は知らん」ガチャ

勇者「おい、どこ行くんだ」

父親「酒場だよ、先に寝てていいぞ」スタスタ

勇者「おい、待て!!」

父親「話なら明日にしてくれ」

勇者「……」

妹「お兄ちゃん、あれは?」

勇者「ん、ジャガイモじゃん」スッ

妹「ジャガイモは嫌!!」

勇者「じゃあ夕飯はないぞ」

妹「もっと嫌!!」

勇者「だったら我慢しろ」

妹「……わかった」

母親「ただいま」ガチャ

11: 2011/12/11(日) 21:56:23.67 ID:WP7e7KZC0
妹「お帰り!!」ダキツキ

勇者「遅かったですね」

母親「ごめんごめん、カジノのおっさんがうるさくてさ」

母親「夕飯ってある?」

勇者「これから作るところです」

母親「そう、私ちょっと出掛けてくるわね」

勇者「どこ行くんですか?」

母親「あんたの給料を倍にしてあげるの」ニッコリ

勇者「待て!!それは今月の生活費――――」

母親「倍になれば問題ないでしょ」バタン

勇者「おい、馬鹿かあんた!!」ガチャ

勇者「どこ行ったんだよ」キョロキョロ

勇者「いない……」

妹「お兄ちゃん……」

勇者「大丈夫、大丈夫だから」ナデナデ

勇者「寒いし中入ろうか」

妹「うん」

12: 2011/12/11(日) 21:57:56.61 ID:WP7e7KZC0
勇者「さて、ジャガイモと少しの調味料で何が作れるのか」

妹「ポテトチップス!!」

勇者「それはお菓子だから駄目だ」

妹「ぶー」

勇者「正直ジャガイモだけで飯なんて無理だよな」

妹「どうするの?」

勇者「買いに行くしかないよな……」

勇者「まだやってる食材屋ってあるかな」

妹「お出かけ!?」

勇者「ああ、買い物行くか?」

妹「行く行く行く!!」

勇者「じゃあ準備しろ」

妹「はーい!!」タタタッ

13: 2011/12/11(日) 21:59:19.61 ID:WP7e7KZC0
勇者「準備できたか?」

妹「うん!!」

勇者「じゃあ行くか」ガチャ

妹「わーい!!」

勇者「北風が冷たい……」

妹「大丈夫?」

勇者「大丈夫大丈夫」ニッコリ


物陰

女大臣「なんて、なんて健気な少年……」ポロポロ

王「わかったから涙を拭いてくれ、目立って仕方ないわい」スッ

女大臣「すいません」ブー

王「またお約束なことを……」

女大臣「ありがとうございます」スッ

王「お主……」

女大臣「もう大丈夫です」ニッコリ

王「いや……そういう意味でじゃなくてじゃな……」

女大臣「早くしないと勇者さんが行ってしまいます」スタスタ

王「う、うむ、そうじゃな」スタスタ

14: 2011/12/11(日) 22:01:27.80 ID:WP7e7KZC0
おばさん「おや、勇者じゃないか、何してるんだい?」

妹「夕ご飯買いに行くの」

おばさん「そうかい、でも今の時間じゃあやってる食材屋は少ないんじゃないかい?」

勇者「でも、家に帰っても何もないんで」

おばさん「……私の買ったやつでよければ少し分けてあげようかい?」

勇者「いいんですか?」

おばさん「ああ、いいよ」

勇者「ありがとうございます」

勇者「お金はちゃんと払いますんで」

おばさん「別にお金なんていいのに」ニッコリ

勇者「ちゃんとお金を払わないと悪いんで」

おばさん「じゃあこの肉と野菜でいいかい?」

勇者「はい」

おばさん「200ゴールドでいいよ」

勇者「はい、ありがとうございます」

妹「ありがとね」ニコニコ

勇者「ありがとうございました」スタスタ

15: 2011/12/11(日) 22:02:40.71 ID:WP7e7KZC0
おばさん「……若いのに大変なんだねぇ」

女大臣「感動です……」ウルウル

王「わかったから泣くのをやめんか」

おばさん「……」ジー

王「いや、決して怪しい者ではないぞ」

おばさん「あんた達は勇者の知り合いかい?」

女大臣「一応知り合いです」

おばさん「しっかりしてるだろ、あの子」

女大臣「そうですね、健気で素敵です」ウルウル

おばさん「そうだろ、あんたもそう思うだろ」ウルウル

王「わしはどう反応すればよいのじゃ?」

おばさん「アンタいい人だね、今日家でご飯食べていかないかい?」

女大臣「いいんですか?」

おばさん「いいさ、人類皆家族じゃないかい」

女大臣「おば様……」

おばさん「おいで」スタスタ

女大臣「はい」スタスタ

王「……」

16: 2011/12/11(日) 22:05:20.42 ID:WP7e7KZC0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



勇者「ん、朝か」ガリガリ

妹「……」スゥスゥ

勇者「そういえば今日出発だったな」スタスタ

妹「あれ?出掛けるの?」

勇者「ああ、ちょっとな」

勇者「あれ?」

勇者「父さん、ここにあった荷物知らないか?」

父親「ああ、それなら売ったぞ」

勇者「は?」

父親「借金返済のために売ったんだ、あれお前のだったか?」

勇者「テメェ自分の物じゃ無かったら売るんじゃねぇよ!!」ガシッ

父親「すまんすまん」

勇者「……」

父親「でも俺は鎧と盾しか売ってないぞ」

勇者「じゃあ誰が―――」

母親「あ、兜と剣は私が売ったわよ」

勇者「何やってんですか!!」

母親「金の兜と剣にしようと思ったら失敗しちゃって」ニコニコ

勇者「そう言えば昨日のお金はどうしたんですか?」

母親「ごめん、負けちゃった」

勇者「……俺出掛けるから、詳しい事は後から来る大臣さんに聞いてくれ」

父親「あ、ああ」

17: 2011/12/11(日) 22:07:21.92 ID:WP7e7KZC0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



勇者「おはようございます」スタスタ

王「うむ、おはよう」

王「鉄の装備一式はどうしたのじゃ?」

勇者「えーと、その……売られちゃった」

王「……どういう事じゃ?」

勇者「父親と母親に売られちゃった」ニッコリ

王「……なんと言っていいかわからんが――――」

勇者「でも俺にはこれがあるから」

王「ヒノキの棒?」

勇者「昔からの愛用品だし」ナデナデ

王「これから城の皆で送るのに布の服にヒノキの棒で歩くのか?」

勇者「問題でも?」

王「わしが満足な装備も与えないケチな王様みたいになってしまうじゃろ」

勇者「実際ケチな王様じゃん」

王「確かにそうじゃが……」

女大臣「心配無用です」ガチャ

18: 2011/12/11(日) 22:09:04.35 ID:WP7e7KZC0
勇者「また盗み聞きしてたの?」

女大臣「はい」

勇者「堂々と言っちゃうもんな」

王「何が心配無用なのじゃ?」

女大臣「こんな事もあろうかと地下通路を作っておきました」

勇者「凄ぇ!!」

女大臣「これで城や町の人に見つかることなく町を出ることができます」

王「いつの間に……」

女大臣「昔の地下通路がありましたので」

王「さすが天才じゃな」

勇者「天才とはちょっと違う気がするけど……まあいいか」

妹「お兄ちゃん!!」タタタッ

勇者「い、妹!?」

女大臣「さすがに家族の方にはお別れを言った方がいいと思いましたので」

王「父親と母親はどうしたのじゃ?」

女大臣「父親は二日酔いで頭が痛いそうです」

勇者「母親はどうせカジノだろ」

女大臣「はい」

19: 2011/12/11(日) 22:10:58.20 ID:WP7e7KZC0
妹「これ持って行って」スッ

勇者「ありがとう……」

妹「狐のお面だよ」

勇者「いや、見ればわかるけどさ……」

妹「見つかっちゃいけないんでしょ?」

勇者「あ、うん、ありがとう」

女大臣「いい光景ですね」ウルウル

勇者「いろいろ間違ってるけどね」

勇者「しかもなんであんた泣きそうなの?」

女大臣「感動的ですので」ウルウル

勇者「この程度で泣けるってヤバくない?」

王「そろそろ出発じゃな」

勇者「ああ」

女大臣「中庭の隅に入口があります」

勇者「じゃあ行ってくる」スタスタ

王「必ずや魔王を倒すのじゃぞ」

勇者「家族のこと任せたぞ」ガチャ

女大臣「わかってます」

20: 2011/12/11(日) 22:11:55.29 ID:WP7e7KZC0
王「大丈夫じゃとよいが……」

女大臣「きっと大丈夫です」

兵士「王様、準備ができました」ガチャッ

王「すまんな、勇者はもう出発した」

兵士「ど、どういう事ですか?」

女大臣「勇者の見送りは必要ないということです」

王「そういう事じゃ」

兵士「わ、わかりました」ガチャ


こうして、貧乏でお人好しで苦労人な勇者の冒険が始まったのである。

31: 2011/12/12(月) 21:39:35.65 ID:rFY/hE9E0
~~~~~~~~~~~~~~~~


城付近の森

ゴトッ

勇者「思ったより長かったな」

勇者「つーかここどこ?」

勇者「確か王様にもらった地図があったよな」ガサゴソ

勇者「最初の町は何処だ?」バサッ

勇者「ここが俺達のいた町だから……」

勇者「まずは農の町か」

パラッ

勇者「ん?」スッ

勇者「手紙?」

『勇者様へ
 これから魔王討伐の旅に出るにあたり言いたいことがあります。
 まずどこかの町で仲間を探すようにしてください。
 仲間がいれば旅も楽しくなりますし、魔物との戦いも有利になります。
 決して一人だと思わず、頑張ってください。
    女大臣より』

勇者「何のチュートリアルだよ」

勇者「……仲間ねえ」

勇者「仲間ってどうやって作ればいいんだろ……」

32: 2011/12/12(月) 21:40:44.42 ID:rFY/hE9E0
勇者「友達みたいな感じで話しかければいいのか?」

勇者「でも仲間ってそんなに簡単なものじゃないよな」

勇者「……まあ向こうで考えればいいかな」スタスタ

勇者「パーティーか……」スタスタ

勇者「俺が戦士だからほしいのは魔法使いと僧侶かな」スタスタ

勇者「後は格闘家とかもいると戦いが楽になるな」スタスタ

勇者「男ばっかだとむさ苦しいし、女ばっかりだとハーレムってバカにされるし……」スタスタ

勇者「パーティーって難しいな……」

勇者「でもみんなで仲良くって素敵だな」

勇者「……何だろう、俄然やる気が出てきたぞ」スタスタ

勇者「おっしゃ!! 強くて素敵なパーティーを作ってやるぜ!!」タタタッ

33: 2011/12/12(月) 21:42:05.87 ID:rFY/hE9E0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

農の町

ワイワイガヤガヤ

勇者「賑わってるけど、町ってより村だな」スタスタ

おじさん「ん、君は旅人かい?」

勇者「あ、はい」

おじさん「旅ができるなんて、若いっていいね」

勇者「そうですかね?」

おじさん「こんなおじさんじゃ旅は出来ないからね」

勇者「あの、すいませんがパーティーを作りたいんですけど何処に行けば作れるんですか?」

おじさん「唐突だね」

勇者「す、すいません」

おじさん「そうだね、酒場とかがいいんじゃないかな」

勇者「ありがとうございます」

おじさん「いい仲間が見つかるといいね」

34: 2011/12/12(月) 21:43:45.53 ID:rFY/hE9E0
勇者「今なら誰がいますかね?」

おじさん「今なら勇者様がいると思うよ」

勇者「勇者様?」

おじさん「うん、なんでも魔王討伐に行くそうで二日前からこの村にいるんだ」

勇者「そうなんですか」

おじさん「今の時間なら酒場にいると思うよ」

勇者(勇者って何人もいるのか? 王様は何も言ってなかったしな……)

勇者「勇者ってどんな人?」

おじさん「会ってみればいいじゃないか、驚くと思うよ、酒場はそこを真っすぐ行けばあるよ」

勇者「あ、ありがとうございます」スタスタ

勇者(驚く?)スタスタ

勇者(まあ、俺以外に勇者の血を引いてる人間がいても不思議じゃないしもしかしたら仲良くできるかもな)スタスタ

勇者(……待てよ、目的は一緒なんだから運が良ければ仲間になってかれるかもしれない)スタスタ

35: 2011/12/12(月) 21:44:39.45 ID:rFY/hE9E0
勇者(しかも仲間が勇者なら最強のパーティーが作れるじゃん!!)

勇者「俺って幸運じゃね?」

勇者「そうと決まれば酒場までダッシュ!!」タタタッ

勇者「こんにちは!!」ガチャ

マスター「いらっしゃい」

勇者「ここに勇者がいるって聞いたんだけど」

マスター「あそこの奥の席に座ってますよ」

勇者「あの人?」チラッ

勇者「あれ、女?」


奥の席に座っていたのは長い黒髪にうろこの鎧をまとった少し年上の美しい女性だった。


マスター「はい、勇者様は女性ですよ」

勇者「え!?」

マスター「どうしたんですか、勇者様に会いに来たんですよね」

勇者「ま、まあな」

勇者(やばい、年上の女と話したこと無いんなんてないぞ)

勇者(あ、女大臣がいたか……でも女大臣とは流れで話しただけだし、なんて声かければいいんだ?)

36: 2011/12/12(月) 21:45:43.07 ID:rFY/hE9E0
勇者(近所のおばさんなら向こうから話しかけてきてくれるんだけどな……)

女勇者「……」ゴクゴク

勇者(牛乳飲んでるって事は未成年?)

勇者(ダメだ……話しかけ方がわからない)

勇者(もう少し観察していよう、そうすれば会話の糸口が見つかるかも)

勇者「……」ジー

マスター「ご注文は?」

勇者「注文?えーと……」

マスター「メニューはこちらです」スッ

勇者「あ、どうも」

勇者(高い……)

勇者(自分で作った方が断然安いじゃん)

勇者(一番安いのは牛乳か)

勇者「ぎゅ、牛乳で」

マスター「ミルクですね、かしこまりました」

勇者(ミルクって言うのか、間違えちゃったよ)

勇者「やばい、こういう店って入ったこと無いから緊張するな」

マスター「どうぞ」スッ

勇者「ありがとうございます」

37: 2011/12/12(月) 21:47:36.01 ID:rFY/hE9E0
勇者(おかわりは……自由な訳ないよな)

勇者(ゆっくり飲まないとな)チビチビ

女勇者「……」ジー

勇者(こっち見てる?)

女勇者「……」スタスタ

勇者「……(やばい、こっち来た)」

女勇者「何か用ですか?」

勇者「え?」

女勇者「さっきからずっと見てたじゃないですか」

勇者「あ、あんたが勇者だって聞いたからさ」

女勇者「はい、私は勇者です」

勇者(本当に勇者なんだ)

勇者「……」

女勇者「何か?」

勇者「あんたが女だったからさ……」

女勇者「勇者に性別は関係ないと思いますが」

勇者「そ、そうだよな」

女勇者「はい」

38: 2011/12/12(月) 21:48:53.62 ID:rFY/hE9E0
勇者「お、俺も勇者なんだよ」

女勇者「はい?」

勇者「俺も勇者なんだ」

女勇者「……」

勇者(あれ、怒らせた?)

勇者「それで目的も一緒だから一緒に旅しようと思ってさ」

女勇者「あなたは本物の勇者なのですか?」

勇者「俺は王様に言われただけだからあんまり実感は無いんだけどな」

女勇者「……」

勇者「どうした?」

女勇者「この人は偽物の勇者です!!」ガタッ

勇者「は!?」

町人達「なんだなんだ?」ザワザワ

勇者「お前何言ってんだよ!!」

女勇者「この男は偽物の勇者です、早くこの町から追い出さないと大変なことになります」

勇者「何意味わかんない事言ってんだ!!」ガシッ

男「おい、勇者様から離れろ!!」

39: 2011/12/12(月) 21:50:13.74 ID:rFY/hE9E0
勇者「待てよ、俺も本物の勇者だ!!」

男「証拠はなんだ」

勇者「証拠?」

男「お前が本物の勇者だって証拠だよ」

勇者「証拠って言われても……」

勇者「無いけど俺は勇者だ」

男「信じられるわけ無いだろ!!」

勇者「だよな……」

男「布の服にヒノキの棒の勇者がいる訳ないだろ!!」

勇者「テメェ人を見た目で判断してんじゃねぇぞ!!」

男「お前と勇者様を比べたら全員が勇者様を勇者だと言うぞ!!」

町人達「そうだそうだ!!」ガヤガヤ

勇者「そ、それは否定できない……」

女勇者「この男を町から追い出してください!!」

勇者「おい、何勝手な事言ってんだ!!」

男「わかりました」

勇者「勝手に話進めんな!!」

40: 2011/12/12(月) 21:51:21.75 ID:rFY/hE9E0
男「勇者様のためにこいつを殺せ!!」

町人達「おォォォォォ!!」

勇者「お前等の大事な勇者様は俺を追い出せって言ってたぞ」

男「構うものか」

勇者「俺が構うわ!!」

男「動くなよ」ジリジリ

勇者「待て、話し合おうぜ」

男「いまさら何言ってんだ」ジリジリ

勇者「話し合えばきっと誤解は解ける」

男「無理だ」

勇者「このわからずや!!」


そう怒鳴ると勇者は自分が飲んでいた牛乳を目の前にいた男の顔めがけて思いっきりかける。
そして怯んだ町人達の人込みを一瞬でかき分け、酒場の外に飛び出す。


勇者「なんでこうなるんだよ!!」タタタッ

勇者「しかもめっちゃ追ってきてるし」タタタッ

勇者「どっか隠れられそうな場所は……」タタタッ

42: 2011/12/12(月) 21:58:09.91 ID:rFY/hE9E0
ひたすら走っていると道の端に人間が一人入れるほどのタルが置いてあった。


勇者「ラッキー!!」

勇者「よっと」ストッ

ドコニイッタンダ? サガセ!!

タタタッ

勇者「逃げ切ったな」ガタガタ

勇者「あれ、出られない?」ガタガタ

勇者「何このお約束の展開」ガタガタ

勇者「うおっ!?」ガタン

ゴロゴロ

勇者「嘘、マジで!?」ゴロゴロ

ゴロゴロ

勇者「お約束過ぎるだろ!!」ゴロゴロ

勇者「ちょ、止まれ!!」ゴロゴロ

勇者「ギャァァァ!!」ゴロゴロ

ドゴン!!

43: 2011/12/12(月) 21:59:33.51 ID:rFY/hE9E0
勇者「なんで最初の町でこんな目にあうんだよ……」フラフラ

勇者「う……回ったせいで気持ち悪いし……」ウエッ

女大臣「大丈夫ですか?」サスサス

勇者「あ、悪い……」

女大臣「吐き気はありませんか?」

勇者「ん?」

女大臣「どうしました?」

勇者「なんでここにいるんだ?」

女大臣「王様に頼まれて来ているんです」

勇者「あ、そう」

女大臣「勇者様もこの町に来てたんですか」

勇者「俺達の町から一番近いからな」

女大臣「そうですね」

勇者「そうだ、この町で勇者に会ったんだ」

女大臣「そうですか」

勇者「なあ、勇者って何人もいるのか?」

44: 2011/12/12(月) 22:01:56.25 ID:rFY/hE9E0
女大臣「どうでしょうね、でもそんなにホイホイ勇者なんていないと思いますが」

勇者「だよな」

女大臣「その女勇者様と話し合うべきだと思いますよ」

勇者「なんで女って知ってんだ?」

女大臣「見てましたから」

勇者「何処から?」

女大臣「最初からですね」

勇者「見てたなら助けてくれよ」

女大臣「あなた一人でも大丈夫だと思いましたので」

勇者「まあ、これくらい一人で乗り切れなきゃダメなんだと思うけど」

女大臣「とにかくあの女勇者様と話してみない事にはどうしようもないですよ」

勇者「そうだけど……酒場までたどり着けないだろ」

女大臣「妹様からもらったお面があるじゃないですか」

勇者「……これをつけろと?」

女大臣「ほかにいい案があるならそちらをどうぞ」

勇者「……」スチャッ

勇者「どうだ?」

女大臣「素敵ですよ」

勇者「棒読みだな」

女大臣「気のせいです」

45: 2011/12/12(月) 22:06:48.67 ID:rFY/hE9E0
勇者「あ、妹元気?」

女大臣「はい、城に来ては王と遊んでいますよ」

勇者「あのドケチ王と?」

女大臣「はい」

勇者「そうか、元気ならいいや」

女大臣「妹様は本当に素敵だと思います」

勇者「だろ、かわいいだろ」

女大臣「はい、めちゃくちゃにしたいくらいかわいいです」

勇者「めちゃくちゃにしたいって……お前女だろ」

女大臣「恋に性別や血縁関係なんて関係ありませんよ」

勇者「お前ってレO?」

女大臣「レOではありません、両刀です」

勇者「あ、そう……」

勇者「別にお前がどんな性癖だろうと気にしないけど妹に手を出したらぶっ頃すからな」

女大臣「わかっています」

勇者「妹が心配になってきた……」

女大臣「いいから早くした方がいいのではないですか?」

勇者「じゃあ行くか」

50: 2011/12/13(火) 22:37:25.02 ID:8bZ0sA4O0
女大臣「ヒノキの棒は隠しておいた方がいいですよ」

勇者「隠すってどうやって?」

女大臣「布に包めば意外とバレませんよ」

勇者「マントでいいかな」キュッ

女大臣「まるで変態みたいですね」

勇者「ストレートに言われると傷つくんだけど」

女大臣「では私はこれで」スタスタ

勇者「ついて来てくれないの!?」

女大臣「一応仕事で来てるので仕事を終わらせてきます」

勇者「ああ、そう言えばそうだったな」

女大臣「時間がありましたら女勇者様の事も調べておきますので」

勇者「ああ、頼む」

女大臣「それではまた」スタスタ

勇者「頑張れよ」

勇者「……俺も行くか」スタスタ

勇者「……」スタスタ

町人「……」ジー

勇者(みんなめっちゃ見てるし)

51: 2011/12/13(火) 22:38:18.35 ID:8bZ0sA4O0
女「何あの人?」ヒソヒソ

主婦「関わらない方がいいわよ」ヒソヒソ

勇者(せめて俺に聞こえないようにしろよ)スタスタ

勇者(とにかく酒場に行かないと)スタスタ

男「何処行きやがったんだ?」キョロキョロ

勇者「……」スタスタ

勇者(面倒臭い奴きた……)

男「おい」

勇者「……」ビクッ

勇者(無視しよう、ここは無視が一番いい)スタスタ

男「お面かぶってるお前だよ」

勇者「わ、私でございますか?(裏声)」

男「お前以外にお面かぶってる奴なんていないだろ」

勇者「ですよね」

男「お前ヒノキの棒を持った頭悪そうな男見なかったか?」

勇者「頭悪くねぇよ!!」

男「は?」

52: 2011/12/13(火) 22:39:17.85 ID:8bZ0sA4O0
勇者「いえ、頭が悪いかどうかはわからないと思いますのですよ(裏声)」

男「勇者様をあれだけ怒らせたんだ、よっぽどバカなんだろうな」

勇者「なんでもあの女勇者が正しいと思ってんじゃねぇぞ」ボソボソ

男「何か言ったか?」

勇者「いえ、なんでもございません(裏声)」

男「独り言言いやがって、気持ち悪い」

勇者「鏡見てこい、目の前にもっと気持ち悪いもんがいるぞ」

男「あ!?」

勇者「なんでもありません(裏声)」

勇者「それより勇者様はどちらにいらっしゃるのでしょうか?(裏声)」

男「勇者様なら酒場だ」

勇者「どうもありがとうございました(裏声)」スタスタ

勇者(裏声しんどいな……)

勇者「女勇者いるか?」ガチャ

女勇者「私に何か用ですか?」

勇者「ああ、つーかついさっき聞いた声忘れんな!!」カパッ

女勇者「あ、あなたは……」ギリッ

53: 2011/12/13(火) 22:40:33.66 ID:8bZ0sA4O0
勇者「マスター、悪いけど他の奴らは入れないでくれ」

マスター「わかりました」ガチャ

女勇者「何の用ですか」

勇者「別にあんたに復讐しに来たわけじゃないから」

女勇者「では何のためにここに来たんですか?」

勇者「とりあえず、話し合いに来た」

女勇者「……いいでしょう、無駄だとは思いますが」

勇者「まず聞きたいんだけど俺の何が気に食わなかったの?」

女勇者「全てですね」

勇者「ぶっ頃すぞ!!」

女勇者「あなたの何もかもが嫌なんです」

勇者「普通に傷つくよ、その言葉……」

女勇者「どうして……どうしてあなたのような人間が勇者なんですか!!」

勇者「そんな事言われてもな……」

女勇者「あなたはいくつの流派を習得したのですか?」

勇者「流派?」

女勇者「剣の流派です」

54: 2011/12/13(火) 22:41:21.90 ID:8bZ0sA4O0
勇者「……ごめん、俺そういうの習得した事無い」

女勇者「……な!?」

勇者「俺自己流だから」

女勇者「あなたのような人間が……なぜ勇者なのですか」

勇者「確かにあんたからしたらムカつくかもな」

女勇者「わかったらこの町から出て行ってください」

勇者「それは出来ない」

女勇者「なぜですか?」

勇者「俺は俺が好きな時に出ていく」

女勇者「言う事を聞けば何も危害は加えません、出て行ってください」

勇者「初めて来た町だからもっと満喫したいんだ」

女勇者「観光気分ですか……」

勇者「そうだ」

女勇者「そんな理由でこの町にとどまるのですか」

勇者「そうだ」

女勇者「……」

勇者(別に出て行ってもいいけどなんか負けた気がするんだよね)

55: 2011/12/13(火) 22:42:08.24 ID:8bZ0sA4O0
勇者「それにあんな事されて黙って帰れるほど優しくないし」

女勇者「わかりました、では私と勝負してください」

勇者「はい?」

女勇者「私と戦って下さい」

勇者「何言ってんのあんた?」

女勇者「私はあなたがこの町にいる事が耐えられない」

勇者「そんなに俺のこと嫌い!?」

女勇者「私は弱い人間が嫌いです」

勇者「別に弱くはないから」

女勇者「だからそれを確かめるために戦うんです」

勇者「面倒臭いな……」

女勇者「嫌なら出て行ってください」

勇者「それはもっと嫌」

女勇者「なら戦って下さい」

勇者「……戦えばいいんだろ」

女勇者「そうだとさっきから言っています、バカなんですか?」

56: 2011/12/13(火) 22:42:58.26 ID:8bZ0sA4O0
勇者「お前ドSなの?」

女勇者「そうです」

勇者「……」

女勇者「何か問題でも?」

勇者「別に……」

女勇者「とにかくあなたを見ているとイライラしてきます」

勇者「俺もお前見てるとムカつく」

勇者「特に自分の事をドSとか言っちゃうところが特にムカつく」

女勇者「MのくせにMじゃないと言い張るあなたのような人間がいるからいけないんです」

勇者「そんなに俺が嫌いか?」

女勇者「はい」

勇者「即答だもんな」

女勇者「当たり前です」

女勇者「私が負けたらあなたの事を一応認めましょう」

57: 2011/12/13(火) 22:43:56.34 ID:8bZ0sA4O0
勇者「無駄に上から目線だな」

女勇者「言っておきますが私の方が年上です」

勇者「そうだけどさ……」

女勇者「あなたが負けたら即刻この町から出て行ってください」

勇者「……勝ったら居ていいのか?」

女勇者「好きにしてください」

勇者「わかった」

女勇者「さあ、剣を抜きなさい」シャキン

勇者「仕方ねぇな」

マスター「すいませんが外でやっていただけますか」

勇者・女勇者「はい、すいません」

勇者「マジでやんのか?」ガチャ

女勇者「当たり前です」スタスタ

女勇者「あなたこそそんな剣でいいのですか?」

58: 2011/12/13(火) 22:46:22.35 ID:8bZ0sA4O0
勇者「ああ、これが俺の刀だからな」

女勇者「言っておきますが手加減はしませんよ」

勇者「俺も手加減する気ないし別にいいよ」

男「お前は偽物の勇者!!」

勇者「違う!!」

男「いつの間に酒場に……」

勇者「地面を掘ってみろ、地下通路があるから」

男「な!?」

勇者「嘘だ」

男「貴様……」

男「勇者様、ここは俺達が――――」

女勇者「皆さんは手を出さないでください」

男「なぜですか!!」

女勇者「彼は私が倒します」

勇者「凄い自信だな」

女勇者「自信がなければ勇者なんてやっていられないと思いますよ」

勇者「確かにそうかも」

59: 2011/12/13(火) 22:52:39.36 ID:8bZ0sA4O0
※補足

女勇者の言っていた流派について

流派は有名どころからマイナーなものまで星の数ほどあり、多くは道場で修行し、認定試験を合格すると習得した事になります。

資格のようなものだと考えてもらえればいいです。

ちなみに女勇者は有名どころの流派はほとんど習得しています。

ちなみに勇者は家族を養うために働いていたため、道場にいったこともありません。

そのため流派や認定の事などをまったく知りません。

64: 2011/12/14(水) 22:01:13.86 ID:Ac/wlcXx0
女勇者は鞘から剣を抜くと五メートルはあった間合いを一気に詰め、勇者目掛けて剣を大きく振り下す。
その攻撃はとにかく速く、周りの野次馬達が完全に彼女を見失ってしまうほどの速さだ。

だが勇者はそんな目にも止まらぬ早業をしっかりと見切り、紙一重の所で剣を回避していた。

勇者は女勇者の顔を見ると僅かに微笑み、無駄のない素早い動きでヒノキの棒を大きく横に薙ぎ払った。

だが女勇者は後ろに跳び、その攻撃を楽々回避する。

女勇者の表情に変化はない。
この程度は女勇者にとっても想定内だ。
自分の前に立っている少年も勇者と名乗っている者。
それが嘘であったとしても今の一撃で氏んでしまってはあまりにお粗末だ。
それに一撃で倒してはあまりにも面白みに欠ける。

彼女はざわつく周りの野次馬達を一瞥すると、勇者に向かって跳ぶ。
それだけで勇者と女勇者の間にあった距離はゼロになる。

女勇者は自分の最大の武器であるスピードを最大限に生かし勇者に斬りかかる。
女勇者のスピードを持ってすれば刹那のうち勇者をただの肉塊にする事も可能だ。
女勇者の剣が攻撃が勇者をズタズタにする……はずだった。

しかし勇者はどの攻撃もギリギリの所で回避し、最後に後ろに軽く跳び、女勇者から距離を置く。

女勇者は剣を持つ手の力を僅かに緩め勇者を睨みつける。
彼女は勇者の戦い方に違和感を抱いていた。
まるで真っ白な紙にインクを一滴垂らしたような漠然とした、しかしどことなくはっきりとした違和感。
そんな不思議な違和感が彼女の胸の内にあった。

65: 2011/12/14(水) 22:04:32.79 ID:Ac/wlcXx0
「今度はこっちからいかせてもらうぞ」


勇者はそう言うと女勇者目掛けて跳ぶ。
トンッ、という音と共に勇者が軽やかに距離を詰める。
その行為自体は別段変ではない。
しかしとにかく速い。
そのスピードは女勇者と同等……いやそれ以上に速かった。

周りの人々がざわつくのがわかる。
だが女勇者は全く怯まなかった。
それどころかこれはむしろ女勇者にとって好都合だ。

確かに速度は勇者の方が速い。
しかしそのスピードを持ってしても覆らないものがある。

それは剣の性能の差だ。
どんなに勇者が速く女勇者を斬りつけてもその攻撃は女勇者の致命傷になる事は無い。
それに引き換え、女勇者の剣は布の服を着た勇者を一撃で頃す事ができる。
それどころか勇者のヒノキの棒が女勇者の剣の刃にぶつかれば勇者のヒノキの棒はたちまち真っ二つだ。

防御は考えない。
女勇者はそう決め、跳び込んでくる勇者目掛けて剣を突く。

だが勇者体が浮いた状態にもかかわらず無理矢理体を捻った。
ゴキキ、という骨を擦るような音が女勇者の耳にも聞こえた。
彼女の剣が勇者の脇腹をかすめる。
勇者の服が斬れ、僅かに赤く染まっていた。

それでも勇者は止まらない。
勇者は勢いそのままヒノキの棒を振り下ろす。

女勇者は勇者の一太刀をかろうじて回避する。
僅かに体勢が崩れるが無理矢理元に戻す。
ついさっきまでの女勇者ならこのまま反撃をしていただろうが、一旦相手と距離を置く。

66: 2011/12/14(水) 22:06:54.15 ID:Ac/wlcXx0
「あなたは―――」


そのあとに続く言葉が女勇者の口から出る事は無かった。
女勇者の中にあった漠然とした違和感が形になる。

目の前の勇者は戦士であって戦士で無かった。

戦場では一瞬のミスが氏につながる。
だから本当に強い戦士とは冷静で堅実に戦える戦士なのだ。
それはどんな戦士も知っている基礎の中の基礎。

しかしこの勇者は全く違った。

この勇者に堅実という言葉は無い。
一瞬一瞬が綱渡りの様な、常に自分の身を危険にさらすような戦い方。
しかもさっきの行動は明らかに自分の体自体を囮に使った、まともな戦士なら絶対に使わない行動だ。

勇者の戦い方を一言で表すならチャンバラだ。
とにかく目の前の敵を倒す。
それだけを重点に置いた戦闘スタイルだ。


「あなたは邪道です」

「だから自己流だって最初に言っといただろ」


勇者はさらっとそう返した。

67: 2011/12/14(水) 22:10:03.14 ID:Ac/wlcXx0












勇者の住む町ではチャンバラが少年達の遊びの主流だった。
町の少年達はお小遣いを貯め、ヒノキの棒を買ってチャンバラをしていた。
もちろん勇者もその一人だ。

しかしヒノキの棒は脆く、一週間もチャンバラをすればヒノキの棒は折れてしまう。
だから少年達は貯めておいたお小遣いで新しいヒノキの棒を買っていた。
しかし勇者の家にはそんなお金は無く、一本のヒノキの棒を買うのが限界だった。

勇者はこう考えた。

ぶつけ合うから折れてしまうのならぶつけなければいい。
だからこそ勇者は剣をぶつけ合う戦い方では無く、剣を避ける戦い方を使うようになった。
敵の攻撃を回避し、相手の隙をつく。
そのために相手の攻撃をギリギリで引き付けて回避するようになっていった。

勇者にとってこの戦いもそのチャンバラの延長線上にあった。
一撃でもくらえば致命傷。
ならその攻撃に当たらなければいいだけの話だ。

ヒノキの棒と剣がぶつかればヒノキの棒は切れてしまう。
なら剣とぶつからなければいい。

勇者はそう考え、女勇者と戦う。

とにかく女勇者の剣を避ける事だけに集中し、女勇者の隙を探した。

女勇者は今まで勇者が戦ってきた相手の中では最強クラスだ。
だが最強でも相手は人間。
隙が全く無いことなどあり得ない。

勇者はその隙を見つけるため、ひたすらに女勇者の攻撃を紙一重で回避する。

68: 2011/12/14(水) 22:14:16.60 ID:Ac/wlcXx0
「どうした、俺を頃すんじゃなかったのか?」


勇者は女勇者を挑発し、微笑する。

頭に血が上れば、攻撃が単調になり、隙が大きくなる。
心の変化は剣の変化に直結するのだ。
これもまた、チャンバラで身に付けた戦術の一つだ。

女勇者の表情が一瞬だけ険しくなる。

勇者はそれを見逃さない。

勇者は気付かぬうちに笑っていた。

女勇者の剣が勇者に襲い掛かる。
しかし勇者はその攻撃をまたしても紙一重でかわすと、女勇者の顔目掛けヒノキの棒で突く。
だが当てる気は無い、その攻撃もあくまで女勇者を怒らせるためのものだ。

女勇者は素早く攻撃を回避し、勇者と距離を置いた。

勇者はヒノキの棒を強く握り、次の一撃のための準備をする。

次の一撃が勝負の時だ。
勇者はそう呟き、女勇者を睨む。

69: 2011/12/14(水) 22:16:24.38 ID:Ac/wlcXx0


 












「あなたには……あなたにだけは負けたくない!!」


女勇者はそう言い放つと剣を持つ手に力が込めた。
頭に血が上っている事には気付いていたがもうどうする事も出来ない。
一度火が付いたらもう止まらないのだ。

お互いの距離は五メートル。
どちらともその気になれば一瞬で詰められる距離だ。

いつの間にか騒いでいた野次馬達が静かになっていた。

静寂の中、先に動いたのは勇者だった。
トンッ、という軽やかな足音が響く。
その足音よりも早く彼女と勇者の距離はゼロになる。

女勇者は剣をさらに強く握り、剣を真横に薙ぎ払った。
ゴウッ!! という音が辺りに響く。
しかし肉を切ったような音は一切しない。

女勇者は瞬時に自分の攻撃がよまれていた事を感じた。
自分の周囲を素早く見渡し勇者の位置を探る。


女勇者が気付いた時には勇者はすでに女勇者の横に回り込んでいた。
そして勢いを頃すことなく女勇者の懐に飛び込む。

沸騰していた頭が一瞬にして冷える。
逃げるかべきか、攻めるかべきか。
女勇者の頭の中に二つの戦術が浮かぶ。
答えは最初から決まっていた。

70: 2011/12/14(水) 22:18:34.56 ID:Ac/wlcXx0
女勇者の腹部に鈍い痛みが走る。
やはり鎧を着ていても痛みは強い。
だが女勇者は勝利を確信していた。

女勇者の左手が勇者のヒノキの棒を掴み、そのまま勇者を引き寄せる。


「私の勝ちですね」


女勇者は勝ち誇ったように笑う。
勝利が確定した感覚に酔いしれる。


勇者に逃げ場は無い。

女勇者は勇者の心臓めがけて剣を突く。
グサッ、という嫌な音が聞こえた。
傷口からは真っ赤な液体が流れ出ている。

女勇者はあまりの驚きに一瞬動きが止まってしまった。

女勇者の剣は勇者に刺さっていた。
しかし剣は勇者の心臓ではなく左腕に刺さっていた。
勇者は躊躇うことなく左腕を盾にしたのだ。

その行為はあまりにも常軌を逸していた。
戦士が腕を盾にするという事は、武器が持てなくなるという事だ。
それなのに目の前の勇者は迷うことなく腕を盾にしたのだ。

驚きのあまり女勇者の思考が一瞬停止する。
それは女勇者の最大のミスだった。

その隙に勇者は女勇者の剣を奪い取る。

71: 2011/12/14(水) 22:22:47.86 ID:Ac/wlcXx0
「な……!?」


我に返った女勇者は言葉を失っていた。
ほんの一瞬の隙。
勇者がそれを狙っていた事にやっと気がついた。

勇者が左腕に刺さった剣の柄の部分を掴む


「まだやる?」


勇者は左腕に刺さった剣を引き抜きながら女勇者に聞いた。
その顔は苦痛で僅かに歪んでいるものの冷静だ。

剣の女勇者に勝ち目は無い。
女勇者はその場に膝をつく。


「負けました……」


女勇者は声を絞り出した。
ひたすらに流派を習得してきた女勇者にとって、自己流なんてものしかしらない勇者に負けた事は屈辱でしかなかった。
自分の下唇を強く噛む。


潔く負けよう。
女勇者はそう心の中で呟く。
勇者らしく、潔く負けを認めよう。
そう、勇者らしく。

女勇者は立ち上がり、勇者に近づいて行った。

72: 2011/12/14(水) 22:23:55.79 ID:Ac/wlcXx0
女勇者「私の負けです……」

勇者「これで認めてくれる?」

女勇者「仕方ありません」

勇者「ほら、剣」スッ

女勇者「ありがとうございます」シャキン

男「勇者様……」

女勇者「彼も勇者です」

男「そ、そうなんですか?」

女勇者「でなければ負けていません」

勇者「なあ、回復魔法とか使える?」

女勇者「出来ないんですか?」

勇者「悪いが俺は魔法の学校には行って無い」

女勇者「仕方ないですね」ポワワン

勇者「悪いな」

女大臣「いい戦いでしたね」スタスタ

73: 2011/12/14(水) 22:24:48.48 ID:Ac/wlcXx0
勇者「何時から見てたんだ?」

女大臣「女勇者いるか? から聞いてました」

勇者「最初じゃねぇか!!」

女大臣「はい、最初から聞いていました」

勇者「お前さ……」

女大臣「なんでしょうか」

勇者「……なんでもない」

女大臣「女勇者様ですよね」

女勇者「はい」

女大臣「単刀直入に質問します、あなたは勇者ではありませんね」

勇者「え?」

女大臣「あなたについて軽く調べさせていただきました」

女大臣「確かにあなたは勇者の血を引く女性の子供だった時期がありました」

女大臣「しかしあなたの母親は勇者の血を引く女性、つまり勇者様の母親の子供ではありません」

勇者「え、意味わかんないんだけど」

女大臣「彼女は勇者ではないという事です」

女勇者「……」

女大臣「何か間違いはありますか?」

85: 2011/12/15(木) 21:58:49.83 ID:p076/jvX0
勇者「ちょっと待ってくれ、俺の頭が追いつかない」

女大臣「追いついて来てください」

勇者「それが出来ないから苦労してるんだろ!!」

女大臣「で、どうなんですか?」

勇者「でもあの人の事を本当の母親だと思ってるんじゃ――――」

女大臣「それはありえません」

勇者「それもわかってんのか」

女大臣「私が調べた所によると勇者の血を引く女が彼女の所にやってきたのは彼女が五歳の時です」

女大臣「五歳ならそのくらいの事はわかるはずです」

勇者「お前あの短時間でそこまで調べたのか」

女大臣「10分もあれば余裕で調べられますので」

勇者「凄ぇな」

勇者「つーか仕事は?」

女大臣「終わらせましたよ」

勇者「仕事しながら調べたのか?」

女大臣「はい、同時に二つの事が出来ないなど、大臣失格ですので」

勇者「お前って凄いな……」

女大臣「で、女勇者様はどう言い訳するつもりですか?」

86: 2011/12/15(木) 22:01:03.52 ID:p076/jvX0
勇者「言い方ってのがあるだろ」

女大臣「職業柄仕方のない事です」

女勇者「……」

女大臣「黙ってないで何か言ったらどうですか」

女勇者「確かに私は勇者ではありません」

勇者「なんでそんなことしたんだ?」

女勇者「長くなりますよ」

勇者「別にいいぞ」

女大臣「話してください」

女勇者「私の家は貧乏でその日食っていくのもつらい家でした」

勇者「俺と同じって事か?」

女勇者「母親は私を生んで間もなく氏んでしまったそうです」

女勇者「そんな風でも私と父は二人で毎日を必氏に生きていました」

女大臣「あなたのお父様とは真逆のタイプの父親ですね」

勇者「あのダメおやじは本当にダメ人間だからな」

女勇者「そんな日々が続いていたある日、父が一人の女性を連れてきました」

勇者「それがあの人って事か?」

女勇者「はい、その女性は勇者の血を引いていると言っていました」

女勇者「私と父とあの女性は貧しいながらも楽しく生活していました」

女勇者「しかし5年ほど経ったある日、あの女性は新しい男を作って私と父の前から姿を消しました」

勇者「家と一緒だな」

女勇者「それがきっかけで父は徐々におかしくなっていきました」

87: 2011/12/15(木) 22:02:35.52 ID:p076/jvX0
女大臣「一途な人は心が脆いですからね」

勇者「家の父親は全然平気だったぞ」

女大臣「あの方はお酒が恋人ですから」

勇者「あ、そうか」

女勇者「それでも父は生きるために必氏で働きました」

勇者「家のダメおやじにそれを聞かせてやりたいね」

勇者「あと母親にも聞かせてやりたい」

女大臣「無駄だと思いますよ」

勇者「知ってる」

女勇者「しかし年老いて心も体もボロボロの父はもう働けるような体ではありません」

女勇者「ですから私が働かなくては生きていけません」

女大臣「そこで勇者の血を引く女性の娘の振りをして勇者として魔王討伐をして賞金をもらうつもりだったわけですね」

女勇者「その通りです」

女勇者「私達の村は人の出入りが激しかったので多くの人々は私とあの女性が本当の親子だと思っていたようです」

女勇者「勇者になるのは簡単な事でした。」

勇者「お前も苦労したんだな」

女大臣「勇者様と一緒で過酷な運命の人間だったのですよ」ウルウル

勇者「なんで涙目なの?」

女大臣「なんて、なんて親孝行な女性なんでしょう」ウルウル

勇者「いや、あんた知ってたんだろ」

女大臣「それでも本人から聞かされると……感動します」ポロポロ

勇者「ほら、ハンカチで拭け」スッ

女大臣「ずみまぜん」ブー

88: 2011/12/15(木) 22:05:47.30 ID:p076/jvX0
勇者「誰が鼻かんでいいって言った!!」

女大臣「だめなんですか?」

勇者「おまっ……鼻水でベタベタじゃん」

女大臣「すいません」ブー

勇者「謝りながら鼻かんでんじゃねぇよ!!」

女勇者「私の話はここまでです」

勇者「とにかくお前は勇者じゃないって事か」

女勇者「まあ、簡単に言えばそう言う事です」

女勇者「ですから、何の努力もしてなさそうなあなたが自分を勇者だと言った時は頃したくなりました」

女大臣「それであんなに勇者様を毛嫌いしていた訳ですか」

女勇者「はい、私は努力しても絶対になれないのに、彼は努力も無しになった勇者になれるなんてムカつきますからね」

89: 2011/12/15(木) 22:07:10.71 ID:p076/jvX0
男「おい!!」

勇者「何、なんか文句あんの?」

男「お前じゃない、俺はそっちの女に言ってんだ」

女勇者「何でしょうか」

男「俺達の店の借金さっさと払え!!」

おっさん達「そうだそうだ!!」

女勇者「待ってくれると言ったではありませんか」

男「それはお前が勇者だと思ってたからだ、勇者じゃないとわかった以上待つ気は無い」

勇者「器が小せぇ奴ばっかだな」

男「黙ってろ!!」

女勇者「今は返せませんが必ず返します」

男「今すぐ返せって言ってんだよ」

おっさん達「早くしろ!!」

勇者「人を肩書きで見る人間なんて氏ねばいいのにな」

女大臣「全くその通りです」

勇者「あ、別にあなた達の事を言ってるわけではありませんよ」ニヤニヤ

男「明らかに俺達の事を言ってるだろ!!」

90: 2011/12/15(木) 22:08:36.29 ID:p076/jvX0
勇者「あ、バレちゃった?」

おっさん達「お前等黙ってろ!!」

勇者「金魚のフンが偉そうに何言ってんだ」

おっさん達「ガキが……」

勇者「なにも思いつかないなら黙っててくれていいよ」

おっさん達「……」

勇者「さすが金魚のフン、ボスがいないと何の出来ねぇのか?」

女大臣「かっこ悪いを形にしたような人達ですね」

男「だから黙ってろ!!」

勇者「すんませーん」

女大臣「続けてください」

男「金がないなら体で払ってもらうしか無いな」ズイッ

女勇者「私に指一本触れたなら一瞬であなたを肉塊に変えますよ」チャキ

男「お前の父親を探し出してそいつから金をもらってもいいんだぜ?」ニヤニヤ

おっさん達「探せばすぐに見つかるぞ」

女勇者「くっ……」ギリッ

男「どうするんだ?」

女勇者「後で……必ず―――――」

男「だから今すぐって言ってんだろ!!」

91: 2011/12/15(木) 22:10:16.62 ID:p076/jvX0
勇者「家族をダシに肉体関係を迫るとか何処の工口小説?」

女大臣「凌辱モノっぽいですね」

勇者「女大臣もそういう本読むのか?」

女大臣「ええ、両刀ですから」

勇者「ああ、納得」

女大臣「でも触手だけは好きになれませんね」

勇者「それは俺もわかる」

男「お前等ちょっと黙ってろ!!」

勇者「はいはい」

女大臣「気にせず続けてください」

男「やれ!!」

おっさん達「おう!!」ガシッ

女勇者「は、離しなさい!!」

男「金が払えたら離してやるよ」

女勇者「貴様……」ギリギリ

男「さすがの勇者様もこれだけの人数に掴まれたら動けないのか?」ニヤニヤ

勇者「あれってボコボコにしても問題無いよな?」

女大臣「あります」

勇者「え?」

女大臣「借金をしたのは彼女ですから今回は彼女の方に非があります」

92: 2011/12/15(木) 22:11:42.74 ID:p076/jvX0
勇者「マジ?」

女大臣「マジです」

勇者「もし俺があいつらをボコボコにしたらどうなるんだ?」

女大臣「この町と私達の町とに大きな亀裂ができて最悪戦争になります」

勇者「俺の行動一つで戦争!?」

女大臣「あくまで最悪の場合です」

女大臣「勇者とはそれほどのものなのです」

勇者「じゃあどうればいいんだ?」

女大臣「自分で考えてください」

勇者「教えてくれないの?」

女大臣「私はいつもあなたの傍にいるわけではありません」

勇者「……自分で考えればいいんだろ」

女大臣「その通りです」

勇者「どうせわかってんだろ」

女勇者「当たり前じゃないですか」

93: 2011/12/15(木) 22:13:25.00 ID:p076/jvX0
女勇者「いいから早く離しなさい!!」

男「離してほしかったら金を払いな」

勇者「いくらだ?」

男「あ!?」

勇者「借金はいくらっだって聞いてんだよ」

男「4000ゴールドだ」

勇者「わかった」ガサゴソ

男「何がわかったんだ」

勇者「ほら、4000ゴールド」ポイッ

男「うおっ!?」ジャラジャラ

勇者「これで文句ねぇだろ」

女大臣「王様にもらった軍資金をあげてしまっていいのですか?」

勇者「別にいい、最初っから貧乏旅の予定だったし」

勇者「つーか俺がこうするってわかってたんだろ」

女大臣「はい」

男「なんでお前が払うんだ!?」

女勇者「どうして……」

勇者「理由がないと金も払っちゃダメなのか?」

男「お前に何の関係ある!!」

勇者「俺と女勇者は一応姉弟になるんだし関係無いわけじゃないだろ」

94: 2011/12/15(木) 22:14:22.70 ID:p076/jvX0
男「何意味わかんない事言ってんだ!?」

勇者「お前のめちゃくちゃな言いがかりよりマシだと思うけど」

男「なんだテメェ!?」

勇者「あ、初めまして勇者と申します」

男「テメェバカにしてんのか!!」

勇者「口が悪いのは元々だ」

勇者「で、どうするんだ?」

男「俺は認めんぞ!!」

女大臣「お金を持って帰ったらどうですか?」

男「ああ!?」

女大臣「叩けば埃が出る身ですよね」

女大臣「ここで引くのが無難だと思いますが?」ニッコリ

男「……チッ、わかったよ」

男「行くぞ」スタスタ

おっさん達「はい」ゾロゾロ

95: 2011/12/15(木) 22:15:29.02 ID:p076/jvX0
勇者「大丈夫か?」

女勇者「どうして助けたんですか?」

勇者「どうしてって言われてもな……」

勇者「俺お人好しだから、他人が困ってると放っとけないんだよ」

女勇者「……あなたはバカなんですね」

勇者「はぁ!?」

女勇者「言葉の通りです」

勇者「テメェに言われたくねぇよ」

女勇者「ついさっきまで頃し合いをしていた人間を助けるなど頭の中身が腐っているのではありませんか?」

勇者「おい、誰のおかげで助かったと思ってやがんだ?」

女勇者「その事に関してはお礼を言います、ありがとうございました」

女勇者「それでも私はあなたの事をバカだと思います」

勇者「バカが余計なんだ!!」

女大臣「ずいぶん仲良くなりましたね」

勇者「これが仲良しだったら猿と犬は親友だな」

女勇者「別に私はあなたの事を否定しているわけだはありません、ただあなたの行為がバカだと言っているだけです」

勇者「そこが一番の問題!!」

女大臣「勇者様、彼女を仲間にしてはどうですか?」

勇者「何言ってんの!?」

96: 2011/12/15(木) 22:16:16.76 ID:p076/jvX0
女大臣「勇者様も彼女の強さは知っていらっしゃるでしょう」

勇者「でも偽物の勇者だぞ、しかもドSだぞ」

女大臣「パーティーには変わった人間が必要ですよ」

勇者「変わったっていうかただの変人だろ」

女勇者「どちらかといえばあなたの方が変人です」

勇者「変人ぞろいのパーティーじゃねぇか」

女大臣「では決定でいいですね」

勇者「勝手に決めるな」

女勇者「私だって受けた恩は忘れません、あなたの旅に同行させていただきます」

勇者「……俺の想像してたパーティーと違う」

女大臣「予想と結果は異なるものです」

勇者「限度ってもんがあるだろ」

女大臣「細かい事は気にしない方がいいですよ」

勇者「もういいよ、わかった」

女勇者「これからお願いします」

勇者「こちらこそ」

こうして、最初の仲間である年上お姉さん系ドS偽勇者(女勇者)が仲間になったのであった。

104: 2011/12/16(金) 22:04:32.67 ID:kkI7seF40
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



スライム「……」プルプル

勇者「……」

スライム「ピキーピキー」訳『か、かかってこい!!』

勇者「……別にお前が襲ってこないなら戦う気はないんだけど」

スライム「ピキキ?」訳『僕をいじめないの?』

勇者「だから襲ってくる気が無いなら俺も攻撃しないって」

スライム「ピキピキー」訳『あれ、君は僕の言葉がわかるの?』

勇者「わかって無かったらとっくに斬りかかってると思うぞ」

女勇者「ついに脳みそが腐り始めたんですか?」

勇者「突然何!?」

女勇者「モンスターに話しかけているので」

勇者「俺はモンスターの言葉がわかるんだよ」

女勇者「……やはり脳みそが腐り始めたんですね」

勇者「本当だからね!!」

スライム「ピピキー」訳『ねえ、言葉がわかるなら薬草をくれない?』

女勇者「ではなんと言ってるんですか?」

勇者「薬草がほしいってさ」

105: 2011/12/16(金) 22:05:38.22 ID:kkI7seF40
女勇者「本当ですか?」

勇者「本当だよ」

勇者「ほら」スッ

スライム「ピ、ピキー!!」訳『ありがとう、本当にありがとう!!』

女勇者「喜んでるみたいですね」

勇者「そりゃ喜ぶだろ、ほしい物もらったんだから」

女勇者「そうですか……」ジー

勇者「そのかわいそうな人間を見るような目をやめろ!!」

スライム「ピキキーピキー」訳『これで友達を助ける事が出来るよ』

勇者「よかったな」

女勇者「……」ジー

勇者「だからその目をやめてくれない?」

スライム「ピキッキ」訳『こ、これは僕の気持ち』スッ

勇者「お礼なんていいよ」

スライム「ピキキ」『そんな事言わずにもらってよ』

勇者「じゃ、じゃあもらうよ」パシッ

スライム「ピキキキ、ピピピキキキキキ」訳『これはスライムの笛って言って、この笛を吹けばいつでもスライムが助けに来てくれるんだ』

106: 2011/12/16(金) 22:06:42.92 ID:kkI7seF40
勇者「あ、ありがとう」

スライム「ピキキ」訳『じゃあまたどこかで』ピョンピョン

女勇者「それはなんですか?」

勇者「スライムの笛だってさ」

女勇者「使えるんですか?」

勇者「これを吹くとスライムが助けに来てくれるんだってさ」

女勇者「だからあなたはバカなんです」

勇者「もしこの笛が役に立ったら土下座しろよ」

女勇者「……所であなたはどうしてモンスターの言葉がわかるんですか?」

勇者「小さい時に人間の言葉がしゃべれるスライムの下で働いてた事があったんだ」

女勇者「どうしてですか?」

勇者「7歳のガキを雇ってくれる所なんて限られてたんだよ」

女勇者「……確かに小さい頃は働ける場所が限られていますからね」

勇者「わかるのか?」

女勇者「はい、私も職場探しには苦労しましたから」

勇者「お互い苦労したんだな……」

女勇者「そうですね……」

107: 2011/12/16(金) 22:08:14.45 ID:kkI7seF40
女勇者「それでそのスライムに言葉を教わったんですか?」

勇者「ああ、結構長い間働いてたからモンスターの言葉は完全にマスター出来てる」

女勇者「スライム以外もわかるんですか?」

勇者「スライムの言葉をマスターしたら自然とわかるようになってた」

女勇者「案外凄い人なんですね」

勇者「いろんな仕事してきたからな、こう見えてもいろいろ出来るんだぞ」

女勇者「自画自賛ですか、気持ち悪い」

勇者「お前が凄い人って言ったからだろ!!」

女勇者「お世辞を本気で受け取るなんて……やっぱりあなたはダメですね」

勇者「お前も十分ダメだろ」

女勇者「あなたほどではありません」

勇者「それは自覚してる」

女勇者「で、次は何処に行くつもりですか?」

勇者「ここから一番近いのは……ドラゴンの村だ」

女勇者「あそこですか……」

勇者「知ってるのか?」

女勇者「はい、何度か行った事があるので」

女勇者「ちなみにドラゴンの住む山が近くにあるからドラゴンの村と呼ばれているんです」

108: 2011/12/16(金) 22:09:27.38 ID:kkI7seF40
勇者「ふーん、ドラゴンが住んでるんじゃないのか」

女勇者「言っておきますがドラゴンの村ではドラゴンは嫌われ者ですよ」

勇者「え?」

女勇者「あそこの村人はドラゴンと非常に仲が悪いですから」

勇者「せっかくドラゴンの村なのに?」

女勇者「なんでもドラゴンが頻繁に襲いに来るそうですよ」

勇者「……おかしいな」

女勇者「どうしました?」

勇者「何でも無い、気にすんな」

女勇者「あなたの事を気にする暇は私にはありません」

勇者「知ってる」

勇者「ドラゴンか……会ってみてぇな」

女勇者「今のあなたと私でドラゴンに勝てると思いますか?」

勇者「戦う気なんて無いよ」

勇者「男ってのは一度はドラゴンに憧れるんだ」

女勇者「わかりませんね……」

勇者「女にはわかんないかもな」

女勇者「多分人類にもわからないと思いますよ」

勇者「じゃあ俺も町の半分は人類じゃないって事か?」

女大臣「そうですね」

勇者「とにかくドラゴンには会ってみたいな」

女勇者「氏ぬなら一人で氏んでくださいね」

勇者「わかったわかった」

女勇者「日が暮れる前に行きますよ」スタスタ

勇者「わかったわかった」スタスタ

109: 2011/12/16(金) 22:10:21.09 ID:kkI7seF40
~~~~~~~~~~~~~~

ドラゴンの村

ザワザワ

勇者「賑わってる?」

女勇者「どちらかと言えばざわついているに近いですね」

勇者「何かあったのんだな」

女勇者「そう考えるのが妥当ですね」

村人「あんたら旅の人かい?」スタスタ

勇者「そうだけど」

勇者「なあ、あの人だかりって―――――」

女勇者「村長は何処にいますか?」

勇者「今俺が質問してるんだけど」

女勇者「まずは村長に会わないといけません」

勇者「そんなに村長に会うのが大事か?」

女勇者「はい、こういう小さな村では特に大事です」

勇者「そうだったのか……知らなかった」

女勇者「だからあなたはバカなんです」

110: 2011/12/16(金) 22:12:45.32 ID:kkI7seF40
村人「村長ならあっちの人だかりの中だよ」

勇者「さっきも言おうとしたけど何あれ?」

村人「知らないのかい、ドラゴンが捕まったんだ」

女勇者「ドラゴン?」

村人「ああ、なんでも凄い弓兵の人が生け捕りにしたそうだ」

女勇者「凄い弓兵ですか……」

村人「ああ、心も広い素敵な人だ」

女勇者「私達とは真逆な人間ですね」

勇者「そうだな」

村人「会ってみるといいよ」

勇者「なあ、ドラゴンには会えるか?」

村人「ドラゴンなら檻に入ってるから誰でも見れると思うよ」

勇者「そうか、ありがとう」

勇者「やっぱりおかしいな……」

女勇者「どうしました?」

勇者「別に」

女勇者「行ってみますか?」

勇者「ああ」

勇者「……」スタスタ

111: 2011/12/16(金) 22:14:46.18 ID:kkI7seF40
女勇者「だから何をそんなに悩んでいるのですか?」スタスタ

勇者「ドラゴンが気高き生き物って事は知ってるよな?」スタスタ

女勇者「はい、ドラゴンの基礎知識ですよね」スタスタ

勇者「ああ、じゃあドラゴンは気高いから危害を加えない限り人間を攻撃しないってのは知ってるか?」スタスタ

女勇者「それは初耳ですね」スタスタ

勇者「それが本当だとしたらこの村人が襲われる事は無いはずなんだよ」スタスタ

女勇者「ですがこの村の人々はドラゴンに何度も襲撃されていますよ」スタスタ

勇者「だからドラゴンに危害を加えている人間がいるはずなんだ」スタスタ

勇者「そいつを探し出す」スタスタ

女勇者「そんな事をしている人間が素直に白状するとは思えませんが」スタスタ

勇者「それをドラゴン本人に聞きに行くんだ」スタスタ

勇者「それぐらい考えればわかるだろ」スタスタ

女勇者「無理ですね、あなたの思考回路はおかしいですから」スタスタ

勇者「その言葉をそっくりそのままお前に返してやるよ」スタスタ

ドンッ

勇者「あ、すいません」

弓兵「別に気にするな」ガハハハ!!

女勇者「弓?」

弓兵「お前達は旅の者か?」

女勇者「もしかしてあなたがドラゴンを仕留めた弓兵ですか?」

112: 2011/12/16(金) 22:15:49.78 ID:kkI7seF40
弓兵「ああ、そうだとも」

それはあごに髭を蓄えた2メートルを超える短髪の大男だった。

勇者「……」

弓兵「何だ坊主、そんな怖い顔してどうしたんだ」

勇者「ちょっと腹が痛いだけだ」

弓兵「そうか、今の時期は食あたりが怖いからな、注意しろよ」ガハハハ

勇者「これから注意するようにするつもり」

弓兵「お前達もドラゴンを見に行くのか?」

女勇者「はい」

弓兵「見たら驚くと思うぞ、めちゃくちゃでかいからな、がはははは!!」

弓兵「おっと、俺は酒場に行く、後で会えるといいな」スタスタ

勇者「ああ」

女勇者「そうですね」

勇者「……どう思う?」スタスタ

女勇者「あの男自体は悪い人間では無さそうですね」スタスタ

勇者「だよな」スタスタ

女勇者「私の予想ですがあの男はこの村に雇われた弓兵だと思います」スタスタ

113: 2011/12/16(金) 22:16:55.14 ID:kkI7seF40
勇者「村に雇われることなんてあるのか?」スタスタ

女勇者「町には兵士がいますが小さな村にはいませんから必然的に強そうな兵士を雇わなければならないんです」スタスタ

女勇者「さっきの男性は見た所フリーの弓兵のようですからドラゴン討伐を依頼されたと考えるのが妥当です」スタスタ

勇者「物知りだな」スタスタ

女勇者「世間の基礎知識です、知っていて当然ですよ」スタスタ

勇者「……」スタスタ

勇者「って事は悪いのはそれを依頼した人間って事か?」スタスタ

女勇者「あくまで私の予想ですが」スタスタ

勇者「ここか……」

勇者「まるで要塞だな」

女勇者「そうですか? 石でできた巨大な虫籠にしか見えませんが」

勇者「ああ、そうも見えるな」


二人の目の前には石造りの四角く窓が二つしかない大きな建物があった。


村長「誰だお前達は」

勇者「勇者です」

女勇者「女勇者です」

村長「勇者?ずいぶん貧相な勇者だな」

勇者「お前もずいぶんと貧相な頭だな、毛は何処に落したんだ?」

女勇者「勇者、きっと今日は急がしくて家に忘れてしまったんです」ヒソヒソ

村長「ずいぶんと生意気なガキと女だな」

114: 2011/12/16(金) 22:21:01.87 ID:kkI7seF40
※補足

モンスターについて

モンスターには二種類おり、理性をもったモンスターと持っていないモンスターがいます。

持っているものの例 スライム・サキュバスなど    持っていないものの例 ゾンビ・ミイラ男など

高等なモンスターはたいてい理性を持っていると考えてもらって結構です。

ただし理性があるからいい奴とは限りません。

125: 2011/12/17(土) 21:54:13.89 ID:Ejlqx7bk0
村長「お前達もドラゴンを見に来たのか?」

勇者「当たり前だろ、ハゲ散らかしたおっさんを見に来たわけじゃねぇ」

村長「俺だって好き好んでハゲてるんじゃねーんだ!!」

勇者「で、ドラゴンは何処だ?」

村長「ドラゴンはこの中だ」

勇者「自由に見ていいんだろ」

村長「勝手にしろ」

女勇者「言われなくても勝手にします」スタスタ

勇者「勝手にさせてもらうぞ」スタスタ

勇者「……」ガチャ

ドラゴン「……」

そこには真っ赤な鱗の全長10メートルはあるドラゴンが鉄の檻に入れられていた。


女勇者「大きいですね」

勇者「そりゃドラゴンだしな」

女勇者「そんな事はわかっています」

ドラゴン「グルルル」訳『人間か、お前達も興味本位でオレを見に来たのか』

勇者「確かに興味本位だけどそれだけで来たわけじゃねぇぞ」

ドラゴン「グルル」訳「ふん、オレを頃しに来たのか?」

126: 2011/12/17(土) 21:56:04.41 ID:Ejlqx7bk0
勇者「別にお前を頃すために来たわけじゃねぇから」

ドラゴン「ガルル」訳『では何の用だ?』

勇者「理由が無いと来ちゃダメか?」

ドラゴン「グルルル」訳『生意気な人間だな』

村人達「……」ザワザワ

女勇者「勇者、周りの者たちが怪しがっています」ヒソヒソ

勇者「また今度来るな」スタスタ

村長「お前等何してる!!」

勇者「ドラゴン見てただけじゃん」

村長「ドラゴンと会話しているように見えたが」

勇者「話しかけちゃダメなのか?」

村長「ドラゴンに話しかけても無駄だぞ、こいつ等は人間の言葉などわからん」

勇者「そんなもんわかんねぇだろ」

村長「お前は頭が悪いみたいだな、こいつ等は人間の言葉もわからん劣等種だぞ」ニヤニヤ

勇者「お前の頭も十分劣等種だぞ」

女大臣「これからさらに劣等種になりますね」

村長「お前達は俺を怒らせたいのか!?」

127: 2011/12/17(土) 21:57:45.49 ID:Ejlqx7bk0
勇者「お前がムカつく事言うから言い返してるだけだ」

女勇者「私は純粋に楽しんでいます」

村長「お前等……」

勇者「こんな変人と一緒にされたくないな」

女勇者「あなたも大概ですよ」

勇者「でもお前よりマシだ」

村長「そんな話はどうでもいい!!」

勇者「あ、そう」

村長「とにかく余計な事は絶対するな、わかったな」

勇者「わかったよ」スタスタ

女勇者「わかっています」スタスタ

勇者「また来るからな」スタスタ

村長「来るな!!」

勇者「さて……これからどうする?」スタスタ

女勇者「とりあえず日が暮れる前に宿を見つけませんか?」スタスタ

勇者「ああ、そうだな」スタスタ

勇者「いくら持ってる?」スタスタ

女勇者「私ですか?」スタスタ

勇者「お前に決まってんだろ」

128: 2011/12/17(土) 21:58:40.10 ID:Ejlqx7bk0
女勇者「私は無一文です」

勇者「……マジで?」

女勇者「でなければ借金などしていません」

女勇者「あなたはいくら持っているんですか?」

勇者「300ゴールドだけど」

女勇者「……安い宿なら何とかなります」

勇者「び、貧乏旅ってわかってたし仕方ないよな」

女勇者「そうですね」

勇者「……」

女勇者「……」

勇者「……と、とにかく宿を探すぞ」

女勇者「勇者、あそこはどうですか?」

勇者「……あそこ?」


それは廃墟一歩手前のオンボロの宿屋だった


勇者「俺は慣れてるからいいよ、別に野宿でも大丈夫だし」

勇者「女勇者はいいのか?」

女勇者「大丈夫です、私も野宿でも大丈夫な人間ですから」

勇者「あ、そう言えばそうだったな」

女勇者「はい」

129: 2011/12/17(土) 22:00:53.09 ID:Ejlqx7bk0
勇者「つーかやってるのか?」スタスタ

女勇者「私に聞かないでください」スタスタ

勇者「お前があそこがいいって言ったんだろ」スタスタ

勇者「こんにちは」ガチャ

おじいさん「いらっしゃい」

勇者「……ここって宿屋だよな?」

おじいさん「そうだよ」

勇者「泊まっていい?」

おじいさん「一部屋50ゴールドだよ」

勇者「人数じゃなくて?」

おじいさん「ああ、何人でも一部屋なら50ゴールドだ」

女勇者「一部屋で」

おじいさん「はいよ」

勇者「勝手に決めるなよ!!」

女勇者「ただでさえ貧乏旅なんです、安い方がいいでしょう」

勇者「お前と同じ部屋って……嫌なんだけど……」

女勇者「それはこっちの台詞です」

130: 2011/12/17(土) 22:02:09.75 ID:Ejlqx7bk0
おじいさん「106号室だよ、これ鍵ね、場所はそこの地図に書いてあるから」コトッ

勇者「じいさん、この地図ボロボロ過ぎて読めないんだけど」

おじいさん「心の目で見てくれ」

勇者「それで見れたら苦労しねぇよ」

女勇者「歩きまわれば見つかります」スタスタ

勇者「お前って案外雑だな」タタタッ

女勇者「ここですね」ガチャッ

勇者「思ったより綺麗だな」

女勇者「二段ベッドですか……勇者はどちらがいいですか?」

勇者「下でいいよ、上行くの面倒臭いし」

女勇者「そんなんだからダメなんです」

勇者「どこかにダメな部分があったか!?」

女勇者「全てです」

勇者「じゃあ俺が上で寝ればいいんだろ」

女勇者「嫌です、私が上で寝ます」

勇者「どっちだよ」

女勇者「あなたは下でいいと言ったじゃないですか」

勇者「お前言ってる事めちゃくちゃだぞ」

女勇者「自分でもわかっています」

勇者「なら言うんじゃねぇ」

勇者「とにかく荷物の整理だ」ガサゴソ

女勇者「勇者、少し出掛けてきていいですか?」

勇者「いってらっしゃい」ガサゴソ

女勇者「行ってきます」ガチャ

131: 2011/12/17(土) 22:03:35.50 ID:Ejlqx7bk0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

夜  宿屋


女勇者「ただいま戻りました」ガチャ

勇者「おかえり」

女勇者「いろいろ調べてきました」

勇者「だと思った」

勇者「なあ、お前はあのハゲをどう思う?」

女勇者「てっぺんハゲはやっぱりかっこ悪いですね」

勇者「俺もそう思うけど今はそっちじゃない」

女勇者「何かしら裏がありそうですね」

勇者「やっぱりそうか」

女勇者「後あの弓兵の事ですが、やはり雇われていたようですね」

勇者「ドラゴンを捕まえるように命令したのは誰だったんだ?」

女勇者「ハゲのようです」

勇者「って事やっぱりあのハゲが何かしら絡んでるって事?」

女勇者「当たり前です、それがわからないなんてあなたはバカですか?」

勇者「すぐバカって言うよな」

女勇者「バカじゃないんですか?」

勇者「もういい、お前面倒臭ぇ」

132: 2011/12/17(土) 22:05:59.99 ID:Ejlqx7bk0
勇者「俺もう一回ドラゴンの所行ってくるわ」

女勇者「わかってます」

勇者「多分遅くなるから先寝てていいからぞ」

女勇者「言っておきますが変な事があったらあなたを肉塊にしますからね」

勇者「そんな気は無い」

勇者「お前の胸がもう少し大きかったらその可能性があったけどな」

女勇者「そうですか、あなたは今すぐに肉塊になりたいようですね」チャキッ

勇者「じゃあ行ってくる」タタタッ

勇者「……」タタタッ

勇者「まだハゲいるじゃん……」タタタッ

勇者「こんばんは」

村長「何の用だ!!」

133: 2011/12/17(土) 22:06:49.46 ID:Ejlqx7bk0
勇者「ドラゴンを見に来ただけだよ」

村長「……怪しいな」

勇者「怪しいならボディチェックしたら?」

村長「得物を置いていけ」

勇者「はい」ポイッ

勇者「これで文句ないだろ」

村長「おい、得物を渡せ!!」

勇者「お前の持ってるのが俺の得物だ」

村長「ヒノキの棒が!?」

勇者「俺がそれ以外に武器を持ってるとでも?」

村長「……」

村長「余計な事はするなよ」

勇者「はいはい」ガチャ

134: 2011/12/17(土) 22:10:45.61 ID:Ejlqx7bk0
注※ドラゴンはドラゴンの言葉でしゃべっていますが読みやすいようにで訳した状態で表記します。


勇者「おい、起きてるか?」

ドラゴン「ふん、また来たのか、人間」

勇者「また来るって言っただろ」ドサッ

勇者「それにどうせ暇なんだろ」

ドラゴン「オレに話しかけてきたのは貴様が初めてだ」

勇者「他の奴らはお前の言葉なんかわかんないからな」

ドラゴン「そうだな、オレは貴様等の言葉がわかるのにな……」

勇者「皮肉か?」

ドラゴン「かもな」

勇者「そうだ、肉持ってきたけど食うか?」

ドラゴン「いいのか?」

勇者「お前にあげるために持ってきたんだ」スッ

ドラゴン「悪いな」モグモグ

勇者「聞きたいんだけどお前は何をして捕まったの?」

ドラゴン「オレは気高き竜だ、人間など相手にはしない、人間共が勝手に騒いでいるだけだ」

勇者「お前はいいのか?」

ドラゴン「ん?」

135: 2011/12/17(土) 22:12:59.70 ID:Ejlqx7bk0
勇者「そんな訳のわからない理由で殺されていいのか?」

ドラゴン「殺されたく無いに決まってる」

ドラゴン「だが、オレがどれだけ足掻いてもここから逃げるのは不可能だ」

ドラゴン「逃げるのが不可能だとわかっているのに足掻くのは無様だろ?」

勇者「生きるために足掻くのを無様だとは俺は思わねぇ」

ドラゴン「それは貴様が人間だからだ」

ドラゴン「オレは気高きドラゴン、無様に生きるよりも美しく散る事に美学を感じる生き物だ」

勇者「気高きドラゴンね……」

ドラゴン「貴様も物好きだな、オレの話し相手をするなんて」

勇者「変人だからな」

ドラゴン「面白いな、貴様は」

勇者「俺もお前と話してると楽しいよ」

ドラゴン「ふん、お世辞か」

勇者「お世辞とかじゃなく本心だよ」

ドラゴン「……」

勇者「どうした?」

ドラゴン「……何でも無い」

勇者「そうか」

勇者「……」

ドラゴン「……」

勇者(何この沈黙……)

136: 2011/12/17(土) 22:15:28.29 ID:Ejlqx7bk0
ドラゴン「……貴様の横にいた女は何者だ?」

勇者「あいつはただの旅の仲間、それ以上でもそれ以下でもない」

ドラゴン「二人旅か?」

勇者「ああ、仲間募集中だ」

ドラゴン「改めて聞こう、貴様の目的は何なんだ?」

勇者「目的なんてねぇよ」

勇者「ただ俺ドラゴンが好きなんだ、かっこいいし」

勇者「特にお前は好きだな、かっこいいし話が合うし」

ドラゴン「……そうか」

勇者「お前は俺の事どう思う?」

ドラゴン「そうだな……今の所は変わった奴だな」

勇者「今の所は?」

ドラゴン「印象なんてものは一秒ごとに変わるものだろう」

勇者「まあ、そうだな」

ドラゴン「やはり貴様は変人だ」

勇者「自覚してるよ」

勇者「それにあんたも十分変だ」

137: 2011/12/17(土) 22:18:32.12 ID:Ejlqx7bk0
ドラゴン「ふふ、氏ぬ前に貴様のような人間に会えてよかった」

勇者「俺もだ、お前に会えて良かった」

ドラゴン「ふふ、かわいい奴だな、貴様は」

勇者「そんな事言ってくれるなんてうれしいねぇ」

ドラゴン「ここで会ったついでだ、オレの願いをきいてくれるか?」

勇者「ここから出してほしいのか?」

ドラゴン「バカ言うな、俺は気高き竜だ、そんな見苦しい事を願ったりしない」

勇者「そうか」

ドラゴン「俺の介錯を頼みたい」

勇者「俺にか?」

ドラゴン「ああ、氏ぬのなら名も無き村人に殺されるよりも貴様に殺されたい」

勇者「……嫌だね」

ドラゴン「……そうか、残ね―――――」

勇者「俺はお前をここから逃がす気でいるからな」

ドラゴン「何?」

勇者「お前が無実だとわかった以上、お前を見頃しには出来ないから」

勇者「俺がここから出してやるよ」

ドラゴン「貴様正気か?」

勇者「ああ正気だ」

勇者「じゃあまた明日来るわ」スタスタ

ドラゴン「阿呆が……」

146: 2011/12/18(日) 22:01:43.81 ID:dHIXAOgd0
~~~~~~~~~~~~~~~~~


檻の建物の外


村長「また話しかけてたみたいだな」

勇者「文句ある?」

村長「返事はあったか?」ニヤニヤ

勇者「あんたこそ育毛シャンプーの効果はあったか?」ニヤニヤ

村長「お前……いい加減にしろよ」ギロッ

勇者「ただのジョークだろ、イライラするとハゲるぞ」

村長「もうハゲとるわ!!」

勇者「自覚はあるんだな」

村長「当たり前だ」

勇者「それよりドラゴンの処刑はいつだ?」

村長「明日の夜だ」

勇者「絶対だな」

村長「なんで予定を変える必要があるんだ」

勇者「女勇者が見たいらしいんだ、早めたりすんなよ」

村長「安心しろ、俺は予定はきちんと守る」

勇者「わかった」スタスタ

勇者「……一旦帰るか」スタスタ

147: 2011/12/18(日) 22:02:41.99 ID:dHIXAOgd0
勇者(その前に弓兵に会っておいた方がいいな)タタタッ

勇者「えっと……酒場は……」キョロキョロ

勇者「あっちか」タタタッ

勇者「こんばんは」ガチャ

マスター「いらっしゃい」

勇者「弓兵いるか?」

弓兵「ん、俺に用か?」

勇者「ああ、ドラゴンについて聞きたいんだ」

弓兵「ドラゴン?」

勇者「あんたが仕留めたんだろ?」

弓兵「ああ、俺が仕留めたんだ、と言っても微妙だけどな」

勇者(微妙?)

勇者「どうやって仕留めたのか教えてくれないか?」

弓兵「どうやってって……別に普通に仕留めただけだぞ」

勇者「ドラゴンは強かったか?」

弓兵「いや、村長の命令で寝込みを襲ったからそこまで大変ではなかったよ」

148: 2011/12/18(日) 22:03:46.16 ID:dHIXAOgd0
勇者「あのハゲか……」

弓兵「俺としては少し不満だったがな」

勇者「あんたは正々堂々戦いたかったのか?」

弓兵「そりゃそうだろ」

弓兵「まあ、雇い主に逆らう訳にはいかんからな」

勇者「そういうもんか?」

弓兵「そういうもんだ」

弓兵「お前も飲むか?」ゴクゴク

勇者「俺未成年だから飲めない」

弓兵「そうか、残念だな」

勇者「あんた名前は?」

弓兵「弓兵だ、呼び捨てでいいぞ」

勇者「あ、ああ」

弓兵「しかしあのドラゴンも気の毒だな、無実の罪で殺されるなんて」

勇者「……あんたわかっててこの仕事を引き受けたのか?」

弓兵「ああ、俺達のいた町ではドラゴンは守り神だったからな」

弓兵「ドラゴンの事は詳しいんだ」

149: 2011/12/18(日) 22:04:39.43 ID:dHIXAOgd0
勇者「ドラゴンが理由が無い限り人間を襲わないってのも知ってたのか?」

弓兵「当たり前だ」

勇者「ならなんでこの仕事を引き受けたんだ?」

弓兵「報酬が良かったんでな」

勇者「やっぱり世の中金って事か……」

弓兵「そう言う事だ」

弓兵「金を得るためなら仕事は選べないんだ」

勇者「その言葉をろくに働いてない人間に聞かせてやりたいね、特にダメおやじ」

弓兵「見損なったか?」

勇者「いや、あんたの言い分もわかるよ」

勇者「理想で飯は食えないからな」

弓兵「苦労したんだな」

勇者「それなりにはしてる」

勇者「そろそろ帰るよ、いろいろありがとな」

弓兵「ああ、またいつでも来い」

勇者「そうする」ガチャ

勇者「つーかマジでそさっきの言葉をダメおやじと母親に聞かせてやりてぇよ」スタスタ

150: 2011/12/18(日) 22:06:08.15 ID:dHIXAOgd0
勇者「……」スタスタ

勇者「ドラゴンにはあんな事言ったけどどうすればいいんだろうな……」スタスタ

勇者「使えそうな道具とか無かったっけ?」ガサゴソ

勇者「スライムの笛……」

勇者「……まあ使ってみて損は無いよな」

ピーーーー

勇者「……」

勇者「……」

スライム「お呼びですか?」ピョンピョン

勇者「ああ、俺が呼んだんだけど、お前しゃべれるの?」

スライム「はい、スライムはしゃべれる個体が多いんですよ」

勇者「意外だな」

スライム「よく言われます」

勇者「なあ、この笛って何回でも使えるのか?」

スライム「はい、何回使ってもらって結構ですよ」

勇者「女勇者の土下座決定だな」

勇者「これ持ってる奴って何に使ってるんだ?」

スライム「いろいろです、簡単な手伝いから性処理までいろいろな事を頼まれます」

勇者「明らかに間違った使い方してる奴がいるのは気のせい?」

スライム「多分気のせいです」

151: 2011/12/18(日) 22:07:29.91 ID:dHIXAOgd0
勇者「まあいいや、お前もこの辺に住んでるんならドラゴンが捕まってる事は知ってるよな」

スライム「はい、あの方には何度も助けていただいて」

勇者「知り合いなんだ」

スライム「この辺りのモンスターの間では有名なんですよ」

勇者「そうなんだ」

勇者「で、あのドラゴンを助けようと思うんだけど手伝ってくれない?」

スライム「あの方を助けて下さるんですか!?」

勇者「ああ、そのつもりだけど」

スライム「僕も何度もあの方に助けていただいています、喜んでお手伝いいたします」

勇者「ありがとう、そこでなんだけどドラゴンの檻の鍵の場所を探してくれるか?」

スライム「任せてください」ピョンピョン

勇者「出来るだけ早くな」

スライム「わかってます」

勇者「……」スタスタ

勇者「一旦寝るか」スタスタ

勇者「疲れたな」ガチャ

おじいさん「……」ウトウト

勇者「布団で寝ろよ」スタスタ

勇者「ただいま」ガチャ

女勇者「遅かったですね」

勇者「起きてたのか」

女勇者「もう朝なので」

勇者「え?」

152: 2011/12/18(日) 22:08:27.11 ID:dHIXAOgd0
女勇者「そろそろ日の出ですよ」

勇者「……マジかよ」

女勇者「時間すらもわからなくなったんですか?」

勇者「それぐらいわかるわ!!」

女勇者「で、どうでしたか?」

勇者「俺の思った通りだった」

女勇者「助けるんですか?」

勇者「そのつもり」

女勇者「やはりあなたはバカですね」

勇者「うるせぇよ」

女勇者「見ず知らずのドラゴンを助けるなんてバカでしかありません」

勇者「悪かったな、バカで」

女勇者「まあ、あなたの仲間になった以上手伝いますよ」

勇者「ああ、ありがとう」

勇者「作戦とかってあるか?」

女勇者「村人を皆頃しにすれば簡単ですよ」

勇者「虐殺じゃねぇか!!」

女勇者「何か問題でも?」

勇者「問題しかねぇよ」

153: 2011/12/18(日) 22:09:58.76 ID:dHIXAOgd0
女勇者「あなたは誰にも見つからずにやるつもりなんですか?」

勇者「当たり前だろ」

女勇者「面倒臭いですね」

勇者「虐殺の方が百倍面倒臭いわ!!」

女勇者「ところで鍵の場所はわかっているんですか?」

勇者「鍵は今探してもらってる」

女勇者「協力者がいるんですか?」

勇者「ああ、一人だけどな」

女勇者「まずは鍵を見つけられなくては私達も動きようがありませんが」

勇者「まあ、確かにそうだよな」

女勇者「鍵を見つけるのに何日かかる事やら……」

スライム「見つかりました」ガチャ

勇者「早くない!?」

スライム「昔の上司が凄く仕事の早い人だったんで」

勇者「どんな人?」

スライム「変わった人でした、今はどこかの国で大臣をしてるそうです」

勇者「だいたい想像がついた」

154: 2011/12/18(日) 22:12:46.06 ID:dHIXAOgd0
女勇者「で、何処にあるんですか?」

スライム「村長の家にあります」

勇者「また面倒臭い所に……」

女勇者「文句を言っても仕方ありません、行きますよ」

勇者「普通夜だろ」

女勇者「私達は暗殺者ではありません、それに朝の方が警戒されません」

勇者「そこまで言うならわかったよ」

スライム「僕も少し行ってきます」

勇者「何処に?」

スライム「ちょっといろいろありまして」ピョンピョン

女勇者「私達も行きますよ」スタスタ

勇者「ああ」スタスタ

160: 2011/12/19(月) 22:31:54.99 ID:yj9GXDXH0
勇者「作戦は?」スタスタ

女勇者「見張りを気絶させて鍵を奪って逃げます」スタスタ

勇者「大丈夫か、その作戦?」スタスタ

女勇者「ダメだったらあなたを囮にして逃げます」スタスタ

勇者「つまり全力で探せって事だな」スタスタ

女勇者「そう言う事です」スタスタ

女勇者「妙ですね……」スタスタ

勇者「何がだ?」スタスタ

女勇者「うまくいき過ぎていると思いませんか?」スタスタ

勇者「それはスライムのおかげだろ」スタスタ

女勇者「確かにそうですが、誰かの操り人形にされているような気がしてなりません」スタスタ

勇者「まあ、確かにな……」スタスタ

女勇者「今は操られているとわかっていても操られるしかないのですが」スタスタ

勇者「他の方法も無いもんな……」

女勇者「ここですね」

勇者「見張りはどっちが倒す?」

女勇者「じゃんけんで決めましょう」

勇者「じゃんけんポン」

女勇者「……私ですか」

161: 2011/12/19(月) 22:33:04.86 ID:yj9GXDXH0
勇者「言っとくけど頃すなよ」

女勇者「私が人頃しをしそうな人間に見えますか?」

勇者「俺の目には殺人鬼にしか見えない」

女勇者「では行ってきます」チャキッ


女勇者は二人いる見張りの後ろに素早く回り込むと、一人の頭を殴り、もう一人の腹を殴る。
見張り二人は声も無く地面に倒れた。


勇者「凄いな」スタスタ

女勇者「これくらい簡単です」

女勇者「行きますよ」ガチャ

勇者「何処だ?」ガサゴソ

女勇者「早くしてくださいね」ガサゴソ

勇者「わかってるよそんな事」ガサゴソ

女勇者「なぜスライムに場所を聞かなかったんですか」ガサゴソ

勇者「お前だって聞いてないんだから同罪だろ」ガサゴソ

女勇者「……何処にあるんですか!!」ガサゴソ

勇者「キレるな、黙って探せ」ガサゴソ

162: 2011/12/19(月) 22:33:53.91 ID:yj9GXDXH0
女勇者「面倒臭い……こんなもの全部壊せば見つかります」チャキ


女勇者は剣を抜くと、目の前に会ったタンスを縦に真っ二つに叩き斬る。


勇者「何してんだ!!」

女勇者「この中にはありません」

勇者「冷静に何言ってんだ、タンス真っ二つじゃん」

女勇者「時間短縮のためです」

勇者「だからって人の物を真っ二つにするな!!」

女勇者「面倒臭いですね」

勇者「面倒臭くない!!」

女勇者「全く」ガサゴソ

女勇者「ん、これですかね?」スッ

163: 2011/12/19(月) 22:34:39.87 ID:yj9GXDXH0
勇者「それでいいだろ」

女勇者「そんなめちゃくちゃな……」

見張り「そこまでだ!!」

勇者「また面倒臭い事に……」

見張り「動くな!!」

女勇者「私達が怪しい人間に見えますか?」

勇者「残念だが今の俺達はただの盗人だ」

女勇者「……そうですね」

見張り「動くなよ」

女勇者「どうしますか?」ヒソヒソ

勇者「俺が何とかする」ヒソヒソ

女勇者「頼みましたよ」ヒソヒソ

勇者「任せとけ」ヒソヒソ

見張り「何こそこそ話してる!!」

164: 2011/12/19(月) 22:36:10.08 ID:yj9GXDXH0
勇者はヒノキの棒を抜くと、見張りとの間にあった距離を一瞬で詰める。

見張りがそれに気づき剣を抜こうとする。
しかしそれはあまりにも遅い。

勇者はヒノキの棒を見張りの膝をヒノキの棒で叩いた。

骨が折れるような音と共に見張りが地面に膝をつく。

勇者は見張りが膝をついたのを見ると、ヒノキの棒をまるでバットのように構える。
そして見張りの頭めがけてヒノキの棒をフルスイングした。

バゴッ、という音が部屋にが響き、見張りが壁に激突する。
棚の上に積まれていた本の山が音を立てて崩れた。

見張りの頭からは血が出ていた。
口が僅かに動いているが何を言っているかは聞きとれない。
頭を打った衝撃で声が出ないのだろう。


「なあ、これって何処の鍵だ?」


勇者は見張りに鍵を見せて尋ねた。
だが見張りの唇が動くが、何を言っているか聞こえない。


「ドラゴンの檻の鍵か?」


勇者がそう聞くと、見張りは首を縦に振った。


「じゃあ、少しの間ここで寝ててくれ」


勇者はそう言うと見張りの首の後ろを軽く殴り、見張りを気絶させた。

165: 2011/12/19(月) 22:38:06.44 ID:yj9GXDXH0
女勇者「相変わらず速いですね」

勇者「女勇者、早く」タタタッ

女勇者「わかっています」タタタッ

女勇者「いいのですか?」タタタッ

勇者「ちゃんと手加減したよ、骨は折れてないと思う」タタタッ

女勇者「顔がバレてしまいましたがいいんですか?」タタタッ

勇者「後でちゃんと謝りに行く」タタタッ

勇者「……やべぇ、日が昇ってきたぞ」タタタッ

女勇者「うまくいき過ぎていますね」タタタッ

勇者「今はやるしかねぇだろ」タタタッ

女勇者「……そうですね」タタタッ

女勇者「村長は私に任せてください」タタタッ

勇者「頃すなよ」タタタッ

女勇者「わかっています」タタタッ

勇者「任せたぞ」

女勇者「はい」


女勇者はさらに加速し村長の顔面にとび蹴りを打ち込む。

村長の体は竹トンボのように吹き飛び、壁に激突する。


勇者「明らかにやり過ぎだろ……」

女勇者「早くしてください」

勇者「今思ったけど絶対勇者のやる事じゃねぇな」ガチャ

166: 2011/12/19(月) 22:39:11.07 ID:yj9GXDXH0
ドラゴン「グルルル」訳『本当に来たのか!?』

勇者「来るって言っただろ」ガチャガチャ

勇者「開いたぞ」ガチャン

ドラゴン「グルル」訳『すまんな』ドスドス

勇者「見つかる前に逃げるぞ」タタタッ

勇者「女勇者、逃げるぞ」ガチャ

女勇者「はい」

弓兵「そこまでだ」

勇者「……弓兵」


そこには弓兵と10人ほどの男が立っていた。


勇者「バレたか……」

弓兵「あれだけ派手に動けばバレるに決まってるだろ」

勇者「……ああ、確かに」

女勇者「そこを退けば危害は加えません、退いて下さい」

男「ならばドラゴンを置いていけ」

167: 2011/12/19(月) 22:42:57.83 ID:yj9GXDXH0
勇者「……退かないとこのハゲを頃すぞ!!」

女勇者「勇者のやる事とは思えませんね」

勇者「お前だって一応勇者だろ」

女勇者「私は偽物の勇者です」

勇者「どうする、退かないと本気で頃すぞ!!」

男「く……」

勇者「退けよ、面倒臭ぇな」

男「村長はもういい、あいつらを頃すぞ」

勇者「だったらこんなハゲなんかいらねぇよ」

弓兵「……そろそろだな」

勇者「何が?」

弓兵「突撃!!」


弓兵が叫ぶと数十人の兵士が辺りから飛び出してきた


兵士「動くな!!」タタタッ

勇者「次から次へとなんだよ」

女勇者「あれは……正規の兵士ですか!?」

弓兵「正確には正規のハンターだ」

勇者「ハンター?」

女大臣「久しぶりですね」スタスタ

勇者「女大臣!?」

スライム「間にあったみたいですね」

女勇者「す、スライム!?」

女大臣「彼もハンターの一人です」

勇者「もはや意味がわからなくなってきた……」

男「なんだお前等!!」

弓兵「おっと、動くなよ」ギリッ

勇者「ちょっ、マジでどうなってんの!?」

弓兵「詳しくはそこの女勇者にでも聞け」

勇者「だからあんた何者?」

168: 2011/12/19(月) 22:45:58.99 ID:yj9GXDXH0
弓兵「ハンターだ」

勇者「ハンター?」

女勇者「世界規模で様々な事件や違法行為を捜査し犯人を逮捕する組織です」

勇者「全然知らない」

女勇者「……でしょうね」

勇者「こいつ等って何したの?」

女大臣「この人達はドラゴンの卵を密猟してました」

女勇者「あらゆるモンスターの卵の密猟は禁止されていましたね」

弓兵「その通り」

女大臣「あなた達のおかげで捜査が楽でした」

女勇者「私達を操っていたのはあなた達でしたか……」

弓兵「お前たちの働きは予想以上だったな」ガハハハ

女大臣「私達の想像通りに動いてくれましたしね」

勇者「そりゃどうも」

女大臣「ちなみにあなた達ともこの町でちょっとだけ会話していますよ」

勇者「いつだよ!!」

女大臣「思い出して下さい」

勇者「もういい、無理だからいいよ」

169: 2011/12/19(月) 22:50:52.99 ID:yj9GXDXH0
弓兵「お前達もだ」

兵士「行くぞ」スタスタ

男達「……」スタスタ

女大臣「ドラゴン、あなたは早く帰った方がいいですよ」

勇者「そうだな、またなドラゴン」

ドラゴン「グルルル」訳『また会おう、勇者』バッサバッサ

弓兵「ご協力に感謝する!!」ビシッ

勇者「したくて協力したわけじゃねぇよ」

スライム「利用してすいませんでした」

勇者「気にしてねぇよ」

女大臣「あなた達のおかげでこの仕事が早く済ませました、感謝します」

女勇者「こちらこそありがとうございました」

勇者「どうでもいいんだけどお前って城に帰ってる?」

女大臣「私はテレポートが使えますので」

勇者「あ、そう」

女勇者「……」

女大臣「ではまた会いましょう」スタスタ

弓兵「ありがとな」スタスタ

スライム「またどこかで」ピョンピョン

170: 2011/12/19(月) 22:54:54.45 ID:yj9GXDXH0
~~~~~~~~~~~~~~~~

昼 村の広場

勇者「女大臣にいいとこは全部持っていかれたな」

女勇者「仕方ありません、あの人は化物ですから」

勇者「……そうだな」

女勇者「結局仲間は見つかりませんでしたね」

勇者「別に急ぐほどでもないだろ」

女勇者「ですがこの先二人旅というのも……」

勇者「なあ、これからは宿屋の部屋分けようぜ、お前怖い」

女勇者「それはこちらの台詞です」

勇者「お前が、あそこの女の子ぐらいナイスバディだったら間違いが起こるけど、今のお前なら絶対に起こらねぇよ」


勇者が指差したのは赤髪のムチムチで巨Oの勇者と同い年くらいの美少女だった。


勇者「今のお前は絶対に安全だ、良かったな」ニッコリ

女勇者「勇者、下半身にお別れを言いなさい」ニッコリ

勇者「目が本気なんだけど……」

赤髪の少女「……」スタスタ

女勇者「勇者、こっちに来ましたよ」ヒソヒソ

勇者「え、もしかして聞こえてた?」ヒソヒソ

女勇者「謝った方がいいのではないですか?」ヒソヒソ

勇者「何を謝るんだよ、ナイスバディーは褒め言葉だろ」ヒソヒソ

171: 2011/12/19(月) 22:56:56.49 ID:yj9GXDXH0
女勇者「とにかく何とかしてください!!」ヒソヒソ

勇者「俺に言うなよ、お前が何とかしろよ!!」ヒソヒソ

赤髪の少女「久しいな」

勇者「え、はい?」

赤髪の少女「会いたかったぞ、勇者」


少女はそう言うと勇者と唇を重ねる


勇者「ん?」

女勇者「な!?」

勇者「……」

勇者「何してんだお前!!」

赤髪の少女「ふふん、これで契りは交わしたぞ」

勇者「誰、お前誰!?」

赤髪の少女「まあ、この姿では仕方ないか」

赤髪の少女「オレだ」

勇者「……もしかして……ど、ドラゴン!?」

ドラゴン「その通り、オレは気高き竜だ」

勇者「待って、俺の知ってるドラゴンと違う」

女勇者「昔聞いた事があります、ドラゴン族にはドラゴンを人間に変える秘術があると」

ドラゴン「その通り、オレは貴様と契りを交わすために人間になったんだ」

172: 2011/12/19(月) 22:57:52.93 ID:yj9GXDXH0
勇者「ち、契り?」

女勇者「婚約の事です」

ドラゴン「これでオレは貴様と契りを交わしたな」

勇者「キスは婚約じゃねぇ!!」

ドラゴン「旅仲間を探しているんだろ、オレが加わる」

勇者「勝手に決めるな!!」

勇者「それに今のお前はただの少女だろ」

ドラゴン「オレの力をなめるなよ」


そう言うとドラゴンは息を大きく吸い、紅蓮の炎を吐いた


勇者「……」

ドラゴン「体だって貴様等よりずっと丈夫だ」

女勇者「わかりました」

勇者「マジか!?」

女勇者「人間になってまであなたに会いに来たのです、それに強いですし」ヒソヒソ

ドラゴン「本当か!?」

勇者「わかった、ただ結婚はしないぞ」

ドラゴン「ふふん、旅が終わるころには気も変わるさ」


こうして、人間になったドラゴン(巨O)が仲間に加わったのだった。

173: 2011/12/19(月) 23:02:42.70 ID:yj9GXDXH0
※補足

ハンターについて

突然出てきちゃいましたが、ドラゴン編中盤には出る事が確定していました。

大抵の町にはハンターがおり、怪しい場所や人間の情報を聞くと捜査をし、逮捕します。

彼等はいわば世界警察の様なものです。

184: 2011/12/20(火) 22:02:10.49 ID:gVD1plu80
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



勇者「今思うと前衛しかいないよな、このパーティー」

女勇者「そう言われるとそうですね」

ドラゴン「それがどうした?」

勇者「だから最後くらい後衛がほしいなって話」

女勇者「最高にどうでもいいです」

勇者「俺にとっては大事な事なの!!」

女勇者「別に今の状態で困る事も無いんですし、大丈夫です」

勇者「この先どんなのが出てくるかわかんねぇぞ」

女勇者「何が出てきても倒します」

勇者「確かにそうだけどやっぱり魔法使いとかほしいじゃん」

ドラゴン「今のままでいい気がするぞ」

勇者「怪我したら回復してくれる魔法使いがいないとこれから絶対厳しいぞ」

女勇者「下級魔法ですが回復なら私が出来ます」

ドラゴン「なら安心だ」

勇者「攻撃魔法は?」

女勇者「できません」

185: 2011/12/20(火) 22:03:42.61 ID:gVD1plu80
勇者「やっぱり一人は魔法使いがいる!!」

ドラゴン「魔法使いはそんなに便利なのか?」

勇者「火とかも操れるんだぞ」

ドラゴン「火ならオレも吐けるぞ」

女勇者「そうですね」

勇者「そういう事じゃねぇんだよ!!!」

女勇者「あなたは本当に面倒臭いですね」

勇者「じゃあお前等は何を仲間にしたいの?」

ドラゴン「もういらんだろ」

女勇者「正直誰でもいいです」

勇者「このままじゃいろいろ危険だろ」

ドラゴン「だいたい魔王を倒す必要があるのか?」

勇者「冒険の根本を否定すんじゃんねぇ!!」

女勇者「いいから次の町へ行きませんか?」

勇者「せめて計画を立てて仲間を探そうぜ」

ドラゴン「勇者、飯はまだか?」

勇者「町に着くまで我慢してくれ」

女勇者「勇者、いいからさっさとしてください」

186: 2011/12/20(火) 22:05:22.69 ID:gVD1plu80
勇者「わかったよ、行けばいいんだろ!!」

女勇者「そう言う事です」

ドラゴン「早く」

勇者「次は何処だ?」バサッ

勇者「えーと……」キョロキョロ

勇者「温泉の町が一番近いな」

ドラゴン「温泉?」

女勇者「大きなお風呂の事です」

勇者「この町はそれが有名なのか?」

女勇者「はい、町の宿屋にはすべて温泉がついているそうです」

勇者「ただのでかい風呂だろ」

女勇者「いえ、ただのお風呂と違い体にとてもいいそうです」

ドラゴン「人間は体にいいものが好きだな」

女勇者「人間はどんな体になろうとも長生きしたい人が多いですからね」

勇者「女勇者はどうなんだ?」

女勇者「私は体をめちゃくちゃにしてまで長生きする気はありません」

ドラゴン「勇者はどうだ?」

勇者「俺も変な体になるんなら長生きしたくないかな」

187: 2011/12/20(火) 22:06:12.10 ID:gVD1plu80
女勇者「とにかく行きますよ、日が暮れます」

勇者「そうだな、野宿は準備が面倒臭い」

ドラゴン「野宿した事あるのか?」

勇者「……ない」

女勇者「基本的に宿屋で寝てますからね」

勇者「……いいから行くぞ」スタスタ

女勇者「そうですね」スタスタ

ドラゴン「勇者、飯はまだか?」スタスタ

勇者「町までの辛抱だから」スタスタ

ドラゴン「……どれくらいだ?」スタスタ

勇者「一時間も歩けば着く」スタスタ

ドラゴン「……」トボトボ

勇者「お菓子ならあるぞ」スタスタ

ドラゴン「本当か!?」

勇者「食うか?」スッ

ドラゴン「ああ!!」モグモグ

女勇者「勇者、私ももらえますか?」

勇者「お前ってお菓子食ったっけ?」

女勇者「はい、大好きです」

勇者「ほれ」スッ

女勇者「ありがとうございます」

188: 2011/12/20(火) 22:07:01.14 ID:gVD1plu80
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


温泉の町


勇者「案外早く着いたな」

女勇者「そんな事はどうでもいいです、早く宿を探しましょう」

勇者「相変わらずのドSだな、お前は」

女勇者「ドSですから、仕方ありません」

ドラゴン「宿なんて何処でもいいだろ」

勇者「俺達は貧乏旅だから、何処でもいいなんて言えないの」

女勇者「大丈夫です、村長の家から盗んでおいたお金があります」

勇者「テメェ何やってんだ!!」

女勇者「女大臣に渡したのですが持っていっていいと言ったので」

勇者「だからって持ってくるな」

女勇者「タンスを斬った時に拾ったので」

勇者「もはや盗人じゃん!!」

ドラゴン「細かい事はいいだろ」

勇者「細かくない、全然細かくない」

勇者「とにかくちゃんと返してこい」

女勇者「3000ゴールドも入っていますよ」

ドラゴン「どうする?」

勇者「……」

勇者「ありがたく使わせてもらおう」

189: 2011/12/20(火) 22:08:02.08 ID:gVD1plu80
女勇者「そうですね」

勇者「宿は普通の所でいいだろ」

女勇者「はい、贅沢は禁物です」

勇者「贅沢は敵だからな」

女勇者「そこの普通の宿屋でいいんじゃないですか?」

勇者「そうだな」

ドラゴン「勇者、飯は?」

勇者「お前そんなに腹減ってんの?」スタスタ

ドラゴン「元がドラゴンだからな」スタスタ

勇者「まあ、言われてみればそうだな」スタスタ

勇者「宿屋に着いたら飯食おうな」スタスタ

ドラゴン「ああ、約束だぞ」スタスタ

勇者「わかったわかった」スタスタ

女勇者「……結婚すればいいんじゃないですか?」スタスタ

勇者「する気は無い」スタスタ

女勇者「そうですか」

勇者「こんにちは」ガチャ

190: 2011/12/20(火) 22:09:29.53 ID:gVD1plu80
おばあさん「いらっしゃい、一部屋300ゴールドだよ」

女勇者「一部屋で」

おばあさん「はいよ、これ鍵ね」カチャン

女勇者「どうも」

勇者「早ぇよ!!」

女勇者「なんですか?」

勇者「だいたい三人で寝られるわけねぇだろ!!」

おばあさん「その部屋はシングルベッド一つとダブルベッド一つだから大丈夫だよ」

勇者「余計な事言ってんじゃねぇ!!」

勇者「俺お前等と寝るの嫌だよ」

女勇者「なら外で寝てください」

勇者「もっと嫌だ!!」

女勇者「なら我慢してください」

女勇者「だいたい私だってあなたと同じ部屋で寝るのは嫌なんです」

勇者「じゃあ別の部屋にしろよ!!」

おばあさん「文句言うんじゃないよ!!」

勇者「すいません!!」

191: 2011/12/20(火) 22:12:39.55 ID:gVD1plu80
キャラクタープロフィール

勇者   年齢18歳

小さな頃から苦労してきたため、性格が捻くれている。
目的のためなら犯罪まがいな事も出来る(ただし殺人はしない)。物凄いお人好し。

パーティーの中で一番スピードが速く、戦い方も独特。

好きな物はドラゴン系の大きくてかっこいいモンスター。


女勇者   年齢22歳   Aカップ

勇者と同じく小さい頃から苦労してきた。
最年長で、パーティーのまとめ役。
ドS。

胸が小さい事がコンプレックス(昔のあだ名はペチャパイ)。

隙が少なく、安定した戦い方をする。

好きな物は甘い物




ドラゴン     年齢(人間年齢)18歳   Dカップ

勇者と結婚するために人間になったドラゴン。
人間になったばかりなので人間社会の事をいまいち知らない。
勇者に対してとても積極的。

パーティーの中では最強の火力を誇る(通称バ火力)。

好きな物は勇者。



女大臣       年齢19歳     Cカップ

勇者達を見守る大臣。
とにかく何でもできる天才。
戦闘もめちゃくちゃ強い
両刀で、かわいい、美しいものなら何でも大丈夫(ただし触手はダメ)。

好きな物は工口本(触手モノ以外)

192: 2011/12/20(火) 22:14:27.46 ID:gVD1plu80
今日はここまでです。

キャラクタープロフィールは新しいキャラクターが出てきたらまたやります。

勇者「パーティーにまともな奴がいない……」【2】

193: 2011/12/20(火) 22:35:55.89 ID:HOUph14W0
乙!!!

引用: 勇者「パーティーにまともな奴がいない……」