1: 2012/02/12(日) 21:20:49.20 ID:uqdG1bw70
2: 2012/02/12(日) 21:24:26.97 ID:uqdG1bw70
ここまでの話
魔王討伐のために旅に出た勇者は仲間を増やしたり、異父兄弟と出会ったりしながら旅を続けていた。
いろいろな町で多くの人と出会い、勇者はいろんな意味で成長する。
そんな時、とある理由で化学兵器を持つ魔法の町とその他の町との戦争が勃発。
そんな中、魔王に関する有力な情報を手にして、勇者達は雪の町へと向かう。
用語解説
ハンター 世界の治安を守る特殊部隊。国際警察みたいなもの。
魔法の町 大量の兵器を保持する町。その他の町の連合軍との間で戦争が勃発。
魔道騎士 魔法の町の最終兵器。だが魔力が足りずに動かない。
登場人物紹介
勇者 18歳
突然勇者である事を教えられ旅を続ける少年。
正義感や使命感と言ったものが全く無く、頼まれたからという理由で魔王討伐を目指す。
最初の頃は殺人はしない様にしていたが、旅を続けるうちに、人を頃すことも躊躇しなくなってきた。
父親と二番目の母親が屑人間のため、かなり苦労してきている。
かなり口が悪く、特に嫌いな人間は平気で傷つける。
モンスターと話せる。
独自の剣術を持ち、自分を囮に使う大胆な攻撃方法で多くの敵を倒して来た。
ドラゴンとは恋人同士、暗殺者とは悪友、女勇者とは不思議な関係。
魔王討伐のために旅に出た勇者は仲間を増やしたり、異父兄弟と出会ったりしながら旅を続けていた。
いろいろな町で多くの人と出会い、勇者はいろんな意味で成長する。
そんな時、とある理由で化学兵器を持つ魔法の町とその他の町との戦争が勃発。
そんな中、魔王に関する有力な情報を手にして、勇者達は雪の町へと向かう。
用語解説
ハンター 世界の治安を守る特殊部隊。国際警察みたいなもの。
魔法の町 大量の兵器を保持する町。その他の町の連合軍との間で戦争が勃発。
魔道騎士 魔法の町の最終兵器。だが魔力が足りずに動かない。
登場人物紹介
勇者 18歳
突然勇者である事を教えられ旅を続ける少年。
正義感や使命感と言ったものが全く無く、頼まれたからという理由で魔王討伐を目指す。
最初の頃は殺人はしない様にしていたが、旅を続けるうちに、人を頃すことも躊躇しなくなってきた。
父親と二番目の母親が屑人間のため、かなり苦労してきている。
かなり口が悪く、特に嫌いな人間は平気で傷つける。
モンスターと話せる。
独自の剣術を持ち、自分を囮に使う大胆な攻撃方法で多くの敵を倒して来た。
ドラゴンとは恋人同士、暗殺者とは悪友、女勇者とは不思議な関係。
3: 2012/02/12(日) 21:26:03.72 ID:uqdG1bw70
女勇者 22歳 貧O
最初に勇者の仲間になった偽物の勇者。
貧Oを良くバカにされる。
ドSで、勇者や暗殺者にも平気でひどい事を言ったりする。
ただ根はいい人で、よくドラゴンの恋愛相談にのってあげている。
ごく稀にデレる。
あらゆる剣術を習得し、また勉強もよく出来る、いわゆるエリート。
偽物の勇者である事をやめ、勇者とドラゴンの刃になる事を決意した。
ドラゴン 18歳(人間年齢) 巨O
二番目に仲間になった女の子。
勇者の嫁になるために人間になったドラゴン。
最近の楽しみは勇者と一緒に寝る事。
暗殺者と女勇者に恋愛相談にのってもらう事がよくある。
体が非常に丈夫で、火も吐ける。
勇者以外の男に気安く触られると怒る。
暗殺者 20歳前後 普通乳
三番目に仲間になった中性的な顔立ちの女性。
吸血鬼とゾンビと合体しており、その後遺症で人格は男。
裏社会の事情に詳しく、いろいろな事を知っている。
男の観点から勇者の相談にのってあげている。
ナイフを使った暗殺術を使う。
詳しい年齢は不明。
暗殺者(女)
暗殺者の中にいる、もう一つの人格。
卑猥な言動が目立つ女性。
乱暴な戦い方が多く、他人を食い千切ったりもする。
最初に勇者の仲間になった偽物の勇者。
貧Oを良くバカにされる。
ドSで、勇者や暗殺者にも平気でひどい事を言ったりする。
ただ根はいい人で、よくドラゴンの恋愛相談にのってあげている。
ごく稀にデレる。
あらゆる剣術を習得し、また勉強もよく出来る、いわゆるエリート。
偽物の勇者である事をやめ、勇者とドラゴンの刃になる事を決意した。
ドラゴン 18歳(人間年齢) 巨O
二番目に仲間になった女の子。
勇者の嫁になるために人間になったドラゴン。
最近の楽しみは勇者と一緒に寝る事。
暗殺者と女勇者に恋愛相談にのってもらう事がよくある。
体が非常に丈夫で、火も吐ける。
勇者以外の男に気安く触られると怒る。
暗殺者 20歳前後 普通乳
三番目に仲間になった中性的な顔立ちの女性。
吸血鬼とゾンビと合体しており、その後遺症で人格は男。
裏社会の事情に詳しく、いろいろな事を知っている。
男の観点から勇者の相談にのってあげている。
ナイフを使った暗殺術を使う。
詳しい年齢は不明。
暗殺者(女)
暗殺者の中にいる、もう一つの人格。
卑猥な言動が目立つ女性。
乱暴な戦い方が多く、他人を食い千切ったりもする。
4: 2012/02/12(日) 21:27:04.43 ID:uqdG1bw70
女大臣 19歳 巨O
眼鏡をかけたインテリ大臣。
両刀で涙もろく、盗み聞きが趣味の変人。
魔法と剣術が達人級にうまく、とてつもなく強い。
勇者達のサポート役。
弓兵 35歳
ハンターの一員。
頭がきれる凄い男。
勇者にも楽勝で勝てるほど強い。
戦争のために準備中。
イケメン 20歳
父親違いの勇者の兄。
勇者の一人。
金持ちの父親のもとで厳しく育てられ、高い戦闘能力を持つ。
正義に異様な執着を持ち、悪を憎んでいる。
仲間が三人いるが省略(魔法使い、女戦士、遊び人の三人)。
剣士 14歳
父親違いの勇者の弟。
勇者の一人。
性格も良く、空気も読める常識人。
剣術も魔法も人並みにできる。
父親は不明。
博士 47歳
剣士と旅をする生物学者であり科学者の男。
魔法の町で科学者をしていたが、兵器を造るのが嫌になり、魔法の町を出た。
独身。
いろいろと謎多き男。
眼鏡をかけたインテリ大臣。
両刀で涙もろく、盗み聞きが趣味の変人。
魔法と剣術が達人級にうまく、とてつもなく強い。
勇者達のサポート役。
弓兵 35歳
ハンターの一員。
頭がきれる凄い男。
勇者にも楽勝で勝てるほど強い。
戦争のために準備中。
イケメン 20歳
父親違いの勇者の兄。
勇者の一人。
金持ちの父親のもとで厳しく育てられ、高い戦闘能力を持つ。
正義に異様な執着を持ち、悪を憎んでいる。
仲間が三人いるが省略(魔法使い、女戦士、遊び人の三人)。
剣士 14歳
父親違いの勇者の弟。
勇者の一人。
性格も良く、空気も読める常識人。
剣術も魔法も人並みにできる。
父親は不明。
博士 47歳
剣士と旅をする生物学者であり科学者の男。
魔法の町で科学者をしていたが、兵器を造るのが嫌になり、魔法の町を出た。
独身。
いろいろと謎多き男。
5: 2012/02/12(日) 21:28:24.63 ID:uqdG1bw70
頃し屋 28歳
裏社会のカリスマと呼ばれる凄い男。
その通り名と残虐非道な噂からよく勘違いされるが、本当は適当で軽い男。
仕事のためなら手段を選ばないが、仕事以外で人を頃す事は嫌う。
戦闘スピードは作中で最速を誇る。
また飛んでくる何本ものナイフを全て掴めるほどの動体視力を持っている。
金髪 17歳
チンピラグループの副リーダー。
さわやか系美少年。
チームでは尋問や情報収集が仕事。
倒すより逃げる戦闘スタイルを持つ。
そのため足はとても速い。
ちなみにかっこいい者に憧れ、そういう人なら男女を問わず惚れる。
勇者母 年齢不明 美人。
自分勝手な人。
その他は一切謎。
魔王 年齢不明
ここまで出番無し。
次から本編です
裏社会のカリスマと呼ばれる凄い男。
その通り名と残虐非道な噂からよく勘違いされるが、本当は適当で軽い男。
仕事のためなら手段を選ばないが、仕事以外で人を頃す事は嫌う。
戦闘スピードは作中で最速を誇る。
また飛んでくる何本ものナイフを全て掴めるほどの動体視力を持っている。
金髪 17歳
チンピラグループの副リーダー。
さわやか系美少年。
チームでは尋問や情報収集が仕事。
倒すより逃げる戦闘スタイルを持つ。
そのため足はとても速い。
ちなみにかっこいい者に憧れ、そういう人なら男女を問わず惚れる。
勇者母 年齢不明 美人。
自分勝手な人。
その他は一切謎。
魔王 年齢不明
ここまで出番無し。
次から本編です
6: 2012/02/12(日) 21:29:32.48 ID:uqdG1bw70
~~~~~~~~~~~~~~
雪の町
女勇者「やっと着きましたね」スタスタ
ドラゴン「寒いな……」スタスタ
勇者「そりゃ雪の町だからな」スタスタ
暗殺者「思った以上に積ってるな」スタスタ
ドラゴン「暗殺者は来た事があるのか?」
暗殺者「無い」
女勇者「……とにかく女大臣の言っていた人の所に行きますよ」
勇者「女大臣の師匠か、凄ぇんだろうな……」
女勇者「私も興味はあります」スタスタ
暗殺者「何処にいるんだ?」
女勇者「町外れの道場に住んでいるみたいです」
勇者「道場ね……」
女勇者「道場なんて久しぶりです」
勇者「俺は初めてだ」
雪の町
女勇者「やっと着きましたね」スタスタ
ドラゴン「寒いな……」スタスタ
勇者「そりゃ雪の町だからな」スタスタ
暗殺者「思った以上に積ってるな」スタスタ
ドラゴン「暗殺者は来た事があるのか?」
暗殺者「無い」
女勇者「……とにかく女大臣の言っていた人の所に行きますよ」
勇者「女大臣の師匠か、凄ぇんだろうな……」
女勇者「私も興味はあります」スタスタ
暗殺者「何処にいるんだ?」
女勇者「町外れの道場に住んでいるみたいです」
勇者「道場ね……」
女勇者「道場なんて久しぶりです」
勇者「俺は初めてだ」
7: 2012/02/12(日) 21:30:41.02 ID:uqdG1bw70
女勇者「……あなたもこれを期に流派を習得したらどうですか?」
勇者「いいよ、別に」
女勇者「まあ、そう言うと思っていましたが」
勇者「なら聞くなよ」
女勇者「あなたはバカですから流派を習得する気がない事は知っている、と言う意味です」
勇者「……」
ドラゴン「いいからさっさと行くぞ、寒い」
勇者「ああ、わかった」スタスタ
女勇者「しっかり着込んでこないからです」スタスタ
ドラゴン「着込んでも寒いんだ」スタスタ
勇者「道場に行けばストーブもあるだろ」スタスタ
暗殺者「もしかしたらボロボロのどうじょうだったりして」ニヤニヤ
ドラゴン「ならその道場をストーブの代わりに燃やす」スタスタ
勇者「忘れてるかもしれないけど俺達勇者だからな!!」スタスタ
ドラゴン「勇者は燃やしたらいけないのか?」スタスタ
勇者「と言うか、人の家を燃やすな!!」スタスタ
暗殺者「もしストーブがなかったら枝を拾ってきて、それを燃やせ」スタスタ
ドラゴン「わかった」スタスタ
勇者「こんな一面銀世界の場所に木なんかあるのか?」スタスタ
暗殺者「探せば絶対ある」スタスタ
勇者「ならいいんだけど」スタスタ
勇者「いいよ、別に」
女勇者「まあ、そう言うと思っていましたが」
勇者「なら聞くなよ」
女勇者「あなたはバカですから流派を習得する気がない事は知っている、と言う意味です」
勇者「……」
ドラゴン「いいからさっさと行くぞ、寒い」
勇者「ああ、わかった」スタスタ
女勇者「しっかり着込んでこないからです」スタスタ
ドラゴン「着込んでも寒いんだ」スタスタ
勇者「道場に行けばストーブもあるだろ」スタスタ
暗殺者「もしかしたらボロボロのどうじょうだったりして」ニヤニヤ
ドラゴン「ならその道場をストーブの代わりに燃やす」スタスタ
勇者「忘れてるかもしれないけど俺達勇者だからな!!」スタスタ
ドラゴン「勇者は燃やしたらいけないのか?」スタスタ
勇者「と言うか、人の家を燃やすな!!」スタスタ
暗殺者「もしストーブがなかったら枝を拾ってきて、それを燃やせ」スタスタ
ドラゴン「わかった」スタスタ
勇者「こんな一面銀世界の場所に木なんかあるのか?」スタスタ
暗殺者「探せば絶対ある」スタスタ
勇者「ならいいんだけど」スタスタ
8: 2012/02/12(日) 21:33:12.89 ID:uqdG1bw70
女勇者「バカな事言ってないで準備してください、着きましたよ」
勇者「……案外普通の道場だな」
暗殺者「普通じゃ道場の方が珍しいだろ」
ドラゴン「ちゃんとストーブもありそうだな」
女勇者「ごめん下さい」ガラガラ
師匠「……待っていましたよ」ニッコリ
そこには腰まである銀髪で糸目の30代後半の男性が正座していた。
勇者「あんたが女大臣の師匠か?」
師匠「ええ、そうです」
師匠「私の名前は師匠、この道場の師範をしています」
女勇者「女勇者です」
暗殺者「暗殺者だ」
ドラゴン「ドラゴンだ」
師匠「で、君は勇者だね?」
勇者「ああ、女大臣から聞いたのか?」
師匠「はい、君達が来ると手紙を送ってきてくれたんです」
勇者「……案外普通の道場だな」
暗殺者「普通じゃ道場の方が珍しいだろ」
ドラゴン「ちゃんとストーブもありそうだな」
女勇者「ごめん下さい」ガラガラ
師匠「……待っていましたよ」ニッコリ
そこには腰まである銀髪で糸目の30代後半の男性が正座していた。
勇者「あんたが女大臣の師匠か?」
師匠「ええ、そうです」
師匠「私の名前は師匠、この道場の師範をしています」
女勇者「女勇者です」
暗殺者「暗殺者だ」
ドラゴン「ドラゴンだ」
師匠「で、君は勇者だね?」
勇者「ああ、女大臣から聞いたのか?」
師匠「はい、君達が来ると手紙を送ってきてくれたんです」
9: 2012/02/12(日) 21:34:10.84 ID:uqdG1bw70
勇者「じゃあだいたい知ってるのか」
師匠「はい」
勇者「じゃあいきなりで悪いんだけど、光る石って知ってるか?」
師匠「ええ、知ってますよ」
女勇者「知ってるんですか?」
勇者「悪いけど早く教えてくれ、急いでるんだ」
師匠「分かっています」
師匠「この町では有名なものですから、他の町にはほとんど知られていませんが」
ドラゴン「その光る石ってのは何処にあるんだ?」
師匠「あれを見て下さい」
勇者「……山?」
師匠「あの山の頂上に光る石があります」
女勇者「と言う事は山に登らなければならないと言う事ですか」
師匠「そう言う事になりますね」
暗殺者「その石は魔王とつながっているのか?」
師匠「……それは知りません」
女勇者「そうですか……」
師匠「ですが、もしかしたら長老が何か知ってるかもしれませんよ」
女勇者「長老……ですか?」
師匠「はい」
勇者「じゃあいきなりで悪いんだけど、光る石って知ってるか?」
師匠「ええ、知ってますよ」
女勇者「知ってるんですか?」
勇者「悪いけど早く教えてくれ、急いでるんだ」
師匠「分かっています」
師匠「この町では有名なものですから、他の町にはほとんど知られていませんが」
ドラゴン「その光る石ってのは何処にあるんだ?」
師匠「あれを見て下さい」
勇者「……山?」
師匠「あの山の頂上に光る石があります」
女勇者「と言う事は山に登らなければならないと言う事ですか」
師匠「そう言う事になりますね」
暗殺者「その石は魔王とつながっているのか?」
師匠「……それは知りません」
女勇者「そうですか……」
師匠「ですが、もしかしたら長老が何か知ってるかもしれませんよ」
女勇者「長老……ですか?」
10: 2012/02/12(日) 21:34:48.77 ID:uqdG1bw70
師匠「はい、この町の長です」
勇者「とりあえず行ってみるか」
ドラゴン「そうだな」
師匠「……ちょっと待っていただけますか」
勇者「なんだ?」
師匠「私はあなたにお例を言っておく必要があるので」
勇者「お礼?」
師匠「はい、強者を頃してくれた事です」
勇者「?」
師匠「彼は私の弟子でしたから」
女勇者「女大臣の兄弟子だったんですよね?」
師匠「ええ、真っすぐで純粋な人間でした……」
ドラゴン「じゃあなんであんな風に?」
師匠「……私にはわかりません」
師匠「ただ彼なりに考えた結果だったんでしょう」
勇者「……」
勇者「とりあえず行ってみるか」
ドラゴン「そうだな」
師匠「……ちょっと待っていただけますか」
勇者「なんだ?」
師匠「私はあなたにお例を言っておく必要があるので」
勇者「お礼?」
師匠「はい、強者を頃してくれた事です」
勇者「?」
師匠「彼は私の弟子でしたから」
女勇者「女大臣の兄弟子だったんですよね?」
師匠「ええ、真っすぐで純粋な人間でした……」
ドラゴン「じゃあなんであんな風に?」
師匠「……私にはわかりません」
師匠「ただ彼なりに考えた結果だったんでしょう」
勇者「……」
11: 2012/02/12(日) 21:36:21.17 ID:uqdG1bw70
師匠「彼の剣は何処に?」
勇者「武器の町に強者と一緒に埋葬されてると思う」
師匠「……そうですか」
女勇者「武器の町のあたりは激戦区になるんですよね」
勇者「そうなのか?」
暗殺者「あそこが奪えれば大量の武器を手に入れられるんだ、魔法の町も本気で奪いにくるだろ」
勇者「俺達も急がないとな」
ドラゴン「そうだな、戦争を早く終わらせないと」
師匠「ああ、長老に会いに行くんでしたね、引き留めてすいません」
女勇者「いえ、で、何処にいるんですか?」
師匠「町中の寺にいますよ」
ドラゴン「じゃあいってみるか」スタスタ
暗殺者「そうだな」スタスタ
勇者「また来るな」スタスタ
師匠「わかりました」
女勇者「では」スタスタ
師匠「武器の町……ですか」
勇者「武器の町に強者と一緒に埋葬されてると思う」
師匠「……そうですか」
女勇者「武器の町のあたりは激戦区になるんですよね」
勇者「そうなのか?」
暗殺者「あそこが奪えれば大量の武器を手に入れられるんだ、魔法の町も本気で奪いにくるだろ」
勇者「俺達も急がないとな」
ドラゴン「そうだな、戦争を早く終わらせないと」
師匠「ああ、長老に会いに行くんでしたね、引き留めてすいません」
女勇者「いえ、で、何処にいるんですか?」
師匠「町中の寺にいますよ」
ドラゴン「じゃあいってみるか」スタスタ
暗殺者「そうだな」スタスタ
勇者「また来るな」スタスタ
師匠「わかりました」
女勇者「では」スタスタ
師匠「武器の町……ですか」
12: 2012/02/12(日) 21:37:21.73 ID:uqdG1bw70
~~~~~~~~~~~~~~~~
町中
女勇者「いい人そうでしたね」スタスタ
勇者「ああ、しかも強いだろうな」スタスタ
女勇者「はい、間違いなく」スタスタ
勇者「ああいうタイプは怒らせたら怖いだろうな」スタスタ
女勇者「そうですね」スタスタ
ドラゴン「あの人間、嘘をついていたな」スタスタ
勇者「え?」スタスタ
ドラゴン「いや、気にする事じゃない、多分言いたくなかっただけだ」スタスタ
女勇者「言いたくなかった?」スタスタ
ドラゴン「気にするな、オレ達には関係無い嘘だ」スタスタ
勇者「……あいつは信用できるのか?」スタスタ
ドラゴン「オレ達を騙す必要は無いだろ」スタスタ
女勇者「……そうですね、その通りです」スタスタ
町中
女勇者「いい人そうでしたね」スタスタ
勇者「ああ、しかも強いだろうな」スタスタ
女勇者「はい、間違いなく」スタスタ
勇者「ああいうタイプは怒らせたら怖いだろうな」スタスタ
女勇者「そうですね」スタスタ
ドラゴン「あの人間、嘘をついていたな」スタスタ
勇者「え?」スタスタ
ドラゴン「いや、気にする事じゃない、多分言いたくなかっただけだ」スタスタ
女勇者「言いたくなかった?」スタスタ
ドラゴン「気にするな、オレ達には関係無い嘘だ」スタスタ
勇者「……あいつは信用できるのか?」スタスタ
ドラゴン「オレ達を騙す必要は無いだろ」スタスタ
女勇者「……そうですね、その通りです」スタスタ
13: 2012/02/12(日) 21:39:03.54 ID:uqdG1bw70
暗殺者「とにかくその光る石ってのが何なんかが分からん事にはどうしようもないだろ」スタスタ
勇者「ああ、今は信じるしかない」スタスタ
女勇者「そうですね」スタスタ
暗殺者「あそこかな?」スタスタ
ドラゴン「みたいだな」スタスタ
勇者「入るぞ」ガチャ
長老「……いらっしゃい」
そこには年老いた男が椅子に座っていた。
女勇者「あなたが長老ですか」
長老「うむ……」
長老「こんな老いぼれに何の用で?」
勇者「突然で悪いが光る石の事を知ってるか?」
長老「……光る石?」
ドラゴン「山の上にある石の事だ」
長老「ああ、あの石の事か」
暗殺者「知ってるのか?」
勇者「ああ、今は信じるしかない」スタスタ
女勇者「そうですね」スタスタ
暗殺者「あそこかな?」スタスタ
ドラゴン「みたいだな」スタスタ
勇者「入るぞ」ガチャ
長老「……いらっしゃい」
そこには年老いた男が椅子に座っていた。
女勇者「あなたが長老ですか」
長老「うむ……」
長老「こんな老いぼれに何の用で?」
勇者「突然で悪いが光る石の事を知ってるか?」
長老「……光る石?」
ドラゴン「山の上にある石の事だ」
長老「ああ、あの石の事か」
暗殺者「知ってるのか?」
14: 2012/02/12(日) 21:42:05.65 ID:uqdG1bw70
長老「うむ、だがあれを扱えるのは勇者だけだぞ」
勇者「俺が勇者だ」
長老「……そうか、お主勇者か」
勇者「疑わないのか?」
長老「嘘か本当かなど見ればわかる」
勇者「……」
女勇者「勇者しか扱えない、と言うのはどういう意味ですか?」
長老「あの石は勇者の血に反応する特殊な石でな」
暗殺者「あれが魔王の所につながってるのか?」
長老「そうだな、あれは魔王の所へ行く入口だ」
勇者「入口?」
長老「そう、魔王のもとへ行く入口の一つだ」
ドラゴン「じゃあ入口はいくつもあるのか?」
長老「あるにはあるが、ワシは知らん」
女勇者「……なんで女大臣も魔法の町の大臣もその事を知らなかったんでしょうか」
長老「あの石と魔王との関係を知っておるのはワシだけ、他の者達はそんな事知らんよ」
勇者「あんた以外は知らないって事か?」
長老「そう言う事だな」
暗殺者「ならその事を知らない人間が多い事も理解出来るな」
長老「知られない様に代々守られてきた秘密だからな、簡単にバレてもらっては困る」
勇者「俺が勇者だ」
長老「……そうか、お主勇者か」
勇者「疑わないのか?」
長老「嘘か本当かなど見ればわかる」
勇者「……」
女勇者「勇者しか扱えない、と言うのはどういう意味ですか?」
長老「あの石は勇者の血に反応する特殊な石でな」
暗殺者「あれが魔王の所につながってるのか?」
長老「そうだな、あれは魔王の所へ行く入口だ」
勇者「入口?」
長老「そう、魔王のもとへ行く入口の一つだ」
ドラゴン「じゃあ入口はいくつもあるのか?」
長老「あるにはあるが、ワシは知らん」
女勇者「……なんで女大臣も魔法の町の大臣もその事を知らなかったんでしょうか」
長老「あの石と魔王との関係を知っておるのはワシだけ、他の者達はそんな事知らんよ」
勇者「あんた以外は知らないって事か?」
長老「そう言う事だな」
暗殺者「ならその事を知らない人間が多い事も理解出来るな」
長老「知られない様に代々守られてきた秘密だからな、簡単にバレてもらっては困る」
15: 2012/02/12(日) 21:43:28.52 ID:uqdG1bw70
ドラゴン「確かにそうだな」
長老「石が光っている時に勇者の血を石に垂らすと魔王への道が開かれる」
長老「それが代々伝わる言葉だ」
勇者「石はいつも光ってるのか?」
長老「深夜零時から一時までの一時間の間だけ光り続ける」
勇者「つまりその間に血を垂らせば魔王の所にいける訳だな?」
長老「その言葉が合っていれば、だがな」
ドラゴン「行ってみるしかないだろ」
勇者「そうだな」
長老「……しっかり準備をしておくのだぞ、あそこは危険な山だ」
女勇者「忠告ありがとうございます」
長老「あと、急いでもらえるかな」
勇者「そんな事わかってる」
長老「戦争を終わらせてくれ」
勇者「分かってるよ」ガチャ
長老「任せたぞ」
女勇者「はい」スタスタ
長老「石が光っている時に勇者の血を石に垂らすと魔王への道が開かれる」
長老「それが代々伝わる言葉だ」
勇者「石はいつも光ってるのか?」
長老「深夜零時から一時までの一時間の間だけ光り続ける」
勇者「つまりその間に血を垂らせば魔王の所にいける訳だな?」
長老「その言葉が合っていれば、だがな」
ドラゴン「行ってみるしかないだろ」
勇者「そうだな」
長老「……しっかり準備をしておくのだぞ、あそこは危険な山だ」
女勇者「忠告ありがとうございます」
長老「あと、急いでもらえるかな」
勇者「そんな事わかってる」
長老「戦争を終わらせてくれ」
勇者「分かってるよ」ガチャ
長老「任せたぞ」
女勇者「はい」スタスタ
20: 2012/02/13(月) 21:40:08.89 ID:vhzxYGO10
勇者「じゃあさっさその石の所に行くか」スタスタ
ドラゴン「そうだな」スタスタ
女勇者「待って下さい」
勇者「ん?」
女勇者「こういう時こそしっかり準備をしましょう、個別に必要なものを買いだしませんか?」
暗殺者「その方が時間も短縮できるし、そうするべきだな」
勇者「じゃあここに二時間後集合でいいか?」
女勇者「はい」スタスタ
ドラゴン「じゃあまた後でだな」スタスタ
暗殺者「ああ」スタスタ
勇者「……俺もなんか買いに行くかな」スタスタ
師匠「おや、長老に話は聞けましたか?」スタスタ
勇者「おかげ様でいい話が聞けたよ」
師匠「それは良かった」
勇者「……出掛けるのか?」
師匠「ええ」
勇者「気をつけろよ」
師匠「分かっています」
ドラゴン「そうだな」スタスタ
女勇者「待って下さい」
勇者「ん?」
女勇者「こういう時こそしっかり準備をしましょう、個別に必要なものを買いだしませんか?」
暗殺者「その方が時間も短縮できるし、そうするべきだな」
勇者「じゃあここに二時間後集合でいいか?」
女勇者「はい」スタスタ
ドラゴン「じゃあまた後でだな」スタスタ
暗殺者「ああ」スタスタ
勇者「……俺もなんか買いに行くかな」スタスタ
師匠「おや、長老に話は聞けましたか?」スタスタ
勇者「おかげ様でいい話が聞けたよ」
師匠「それは良かった」
勇者「……出掛けるのか?」
師匠「ええ」
勇者「気をつけろよ」
師匠「分かっています」
21: 2012/02/13(月) 21:42:25.03 ID:vhzxYGO10
師匠「……魔法剣士を倒したんですよね」
勇者「ああ、そうだけど」
師匠「では特殊部隊についても知っていますか?」
勇者「多少なら知ってるけど」
師匠「では他のメンバーは知っていますか?」
勇者「え、えーと……」
師匠「その様子だと知らないようですね」
勇者「すいません」
師匠「謝る事じゃありませんよ」
師匠「特殊部隊は他に狂戦士、ネクロマンサ―、魔戦士の三人がいます」
勇者「三人だけか?」
師匠「はい、ですがどれも強敵ぞろいです、一筋縄ではいきませんよ」
勇者「忠告ありがとう」
師匠「いえ、私は魔王討伐には行けませんから」
師匠「それではそろそろ行きますね」
師匠「どうかご無事で」スタスタ
勇者「ああ」
勇者「ああ、そうだけど」
師匠「では特殊部隊についても知っていますか?」
勇者「多少なら知ってるけど」
師匠「では他のメンバーは知っていますか?」
勇者「え、えーと……」
師匠「その様子だと知らないようですね」
勇者「すいません」
師匠「謝る事じゃありませんよ」
師匠「特殊部隊は他に狂戦士、ネクロマンサ―、魔戦士の三人がいます」
勇者「三人だけか?」
師匠「はい、ですがどれも強敵ぞろいです、一筋縄ではいきませんよ」
勇者「忠告ありがとう」
師匠「いえ、私は魔王討伐には行けませんから」
師匠「それではそろそろ行きますね」
師匠「どうかご無事で」スタスタ
勇者「ああ」
22: 2012/02/13(月) 21:44:14.39 ID:vhzxYGO10
二時間後
女勇者「時間ぴったりですね」
勇者「そりゃ、二時間後って決めたんだし、きちんと帰ってくるよ」
ドラゴン「もう出発するか?」
女勇者「いえ、今日は宿屋に泊まって、明日の朝に出発するつもりです」
暗殺者「俺も賛成だ、今から昇ってもすぐに日が落ちるんだ、明日の方がいいだろ」
勇者「じゃあ今日の宿を探すか」
女勇者「もうとってあります」
暗殺者「……仕事が早いな」
女勇者「時間があったので」
ドラゴン「早く行こうぜ、寒い」
勇者「わかったわかった」
暗殺者「女勇者、場所は?」
女勇者「こっちです」スタスタ
女勇者「時間ぴったりですね」
勇者「そりゃ、二時間後って決めたんだし、きちんと帰ってくるよ」
ドラゴン「もう出発するか?」
女勇者「いえ、今日は宿屋に泊まって、明日の朝に出発するつもりです」
暗殺者「俺も賛成だ、今から昇ってもすぐに日が落ちるんだ、明日の方がいいだろ」
勇者「じゃあ今日の宿を探すか」
女勇者「もうとってあります」
暗殺者「……仕事が早いな」
女勇者「時間があったので」
ドラゴン「早く行こうぜ、寒い」
勇者「わかったわかった」
暗殺者「女勇者、場所は?」
女勇者「こっちです」スタスタ
23: 2012/02/13(月) 21:46:27.79 ID:vhzxYGO10
~~~~~~~~~~~~~~~~~
温泉の町 連合軍作戦本部
女大臣「ほぼ全員ですね」
王「そうじゃな」
女大臣「初対面の方々もいますので一通り説明しておきます」
女大臣「武器の町頭首、お頭様です」
お頭「よろしく」
女大臣「ハンターの長、マスター様です」
マスター「よろしく頼むわい」
女大臣「あと、まだ来ていませんが雪の町の長老様がいます」
女大臣「そしてこちらが私達の町の王様です」
王「よろしく頼む」
女大臣「そして私が大臣をしております女大臣です」
お頭「……で、実際の所戦況はどうなんだ?」
王「今の所魔法の国は何もしてきておらぬ、じゃが何時攻撃してきてもおかしく無い状態じゃ」
お頭「防衛線はどうなってるんだ?」
温泉の町 連合軍作戦本部
女大臣「ほぼ全員ですね」
王「そうじゃな」
女大臣「初対面の方々もいますので一通り説明しておきます」
女大臣「武器の町頭首、お頭様です」
お頭「よろしく」
女大臣「ハンターの長、マスター様です」
マスター「よろしく頼むわい」
女大臣「あと、まだ来ていませんが雪の町の長老様がいます」
女大臣「そしてこちらが私達の町の王様です」
王「よろしく頼む」
女大臣「そして私が大臣をしております女大臣です」
お頭「……で、実際の所戦況はどうなんだ?」
王「今の所魔法の国は何もしてきておらぬ、じゃが何時攻撃してきてもおかしく無い状態じゃ」
お頭「防衛線はどうなってるんだ?」
24: 2012/02/13(月) 21:48:08.30 ID:vhzxYGO10
マスター「ハンター達と兵士達が港の町で待機中じゃ、まずはあそこが戦場になるじゃろうな」
お頭「大丈夫なのか?」
女大臣「今の所は不明です」
王「非難はどうなっておるのじゃ?」
お頭「武器の町、港の町の非難は終わってる」
女大臣「なら安心です」
お頭「ただ温泉の町やドラゴンの村まで魔法の町の連中が来たらどうしようもないぞ」
王「仮定の話をしてもしかたないじゃろ、とにかく戦争が始まったらどの部隊をどう動かすか決める、それだけじゃ」
マスター「王の言う通りじゃな」
お頭「……」
マスター「……今はとにかく作戦を練る以外無かろう」
女大臣「そうですね」
王「今はとにかく待機じゃ、向こうの出かたを待つ」
マスター「今はそれしかあるまい」
お頭「大丈夫なのか?」
女大臣「今の所は不明です」
王「非難はどうなっておるのじゃ?」
お頭「武器の町、港の町の非難は終わってる」
女大臣「なら安心です」
お頭「ただ温泉の町やドラゴンの村まで魔法の町の連中が来たらどうしようもないぞ」
王「仮定の話をしてもしかたないじゃろ、とにかく戦争が始まったらどの部隊をどう動かすか決める、それだけじゃ」
マスター「王の言う通りじゃな」
お頭「……」
マスター「……今はとにかく作戦を練る以外無かろう」
女大臣「そうですね」
王「今はとにかく待機じゃ、向こうの出かたを待つ」
マスター「今はそれしかあるまい」
25: 2012/02/13(月) 21:50:33.19 ID:vhzxYGO10
同時刻 港の町
弓兵「……」
スライム「静かですね……」
弓兵「戦争だからな、みんな気がたってるんだろ」
弓兵「お前こそこんな所にいていいのか?」
スライム「どういう事ですか?」
弓兵「お前は諜報部隊だ、こんな所にいる必要無いだろ」
スライム「他の方達がいる中で一匹だけ隠れている訳にはいかないですよ」
弓兵「……そうか」
スライム「他の諜報部隊もここにいるはずです」
弓兵「……氏ぬなよ」
スライム「わかっています」
弓兵「他の奴らにも言ったが、危険だと思ったらすぐ逃げろ」
スライム「了解です」
スライム「弓兵さんも危ないと思ったら逃げて下さいね」
弓兵「……ああ、そのつもりだ」
弓兵「……」
スライム「静かですね……」
弓兵「戦争だからな、みんな気がたってるんだろ」
弓兵「お前こそこんな所にいていいのか?」
スライム「どういう事ですか?」
弓兵「お前は諜報部隊だ、こんな所にいる必要無いだろ」
スライム「他の方達がいる中で一匹だけ隠れている訳にはいかないですよ」
弓兵「……そうか」
スライム「他の諜報部隊もここにいるはずです」
弓兵「……氏ぬなよ」
スライム「わかっています」
弓兵「他の奴らにも言ったが、危険だと思ったらすぐ逃げろ」
スライム「了解です」
スライム「弓兵さんも危ないと思ったら逃げて下さいね」
弓兵「……ああ、そのつもりだ」
26: 2012/02/13(月) 21:52:01.47 ID:vhzxYGO10
兵士「弓兵さん!!」ガチャ
弓兵「どうした?」
兵士「船が、魔法の町の船が来ています!!」
弓兵「何隻だ!?」
兵士「確認出来ているのは七隻です」
スライム「まだまだ増えるでしょうね」
弓兵「大砲隊を準備、出来る限り沈めろ!!」
兵士「はっ!!」
弓兵「ここを氏守するぞ!!」
兵士「了解しました!!」
スライム「僕はどうしたらいいですか?」
弓兵「相手の船に侵入して燃やせるか?」
スライム「可能です」
弓兵「じゃあ頼む」
黒スライム「いい場所があったぞ」ピョン
スライム「黒スライムさん!?」
弓兵「協力者だ」
黒スライム「船に工作するんだろ、行くぞ」ピョンピョン
スライム「あ、はい」ピョンピョン
弓兵「どうした?」
兵士「船が、魔法の町の船が来ています!!」
弓兵「何隻だ!?」
兵士「確認出来ているのは七隻です」
スライム「まだまだ増えるでしょうね」
弓兵「大砲隊を準備、出来る限り沈めろ!!」
兵士「はっ!!」
弓兵「ここを氏守するぞ!!」
兵士「了解しました!!」
スライム「僕はどうしたらいいですか?」
弓兵「相手の船に侵入して燃やせるか?」
スライム「可能です」
弓兵「じゃあ頼む」
黒スライム「いい場所があったぞ」ピョン
スライム「黒スライムさん!?」
弓兵「協力者だ」
黒スライム「船に工作するんだろ、行くぞ」ピョンピョン
スライム「あ、はい」ピョンピョン
28: 2012/02/13(月) 21:54:44.00 ID:vhzxYGO10
弓兵「さて、俺も行くかな」ガチャ
弓兵「……」スタスタ
弓兵「あれか……」
兵士「はい、五分もすれば射程圏内に入ってきます」
弓兵「そうだな、大砲隊の準備は?」
兵士「すでに終わっています」
弓兵「上出来だ」
弓兵「弓隊を集めてくれ」
兵士「了解しました!!」スタスタ
弓兵「……」スタスタ
弓兵「始まったか……」
弓隊「弓隊、全員集合しました!!」タタタッ
弓兵「よし、全員配置に着け」
弓隊「了解!!」タタタッ
弓兵「遠慮はいらん、好きなだけ撃て!!」ギリリ
二月二十日 世界戦争 勃発
弓兵「……」スタスタ
弓兵「あれか……」
兵士「はい、五分もすれば射程圏内に入ってきます」
弓兵「そうだな、大砲隊の準備は?」
兵士「すでに終わっています」
弓兵「上出来だ」
弓兵「弓隊を集めてくれ」
兵士「了解しました!!」スタスタ
弓兵「……」スタスタ
弓兵「始まったか……」
弓隊「弓隊、全員集合しました!!」タタタッ
弓兵「よし、全員配置に着け」
弓隊「了解!!」タタタッ
弓兵「遠慮はいらん、好きなだけ撃て!!」ギリリ
二月二十日 世界戦争 勃発
29: 2012/02/13(月) 21:56:01.38 ID:vhzxYGO10
~~~~~~~~~~~~~~~~
次の日 雪の町
勇者「よし、出発だ」
女勇者「はい」
ドラゴン「ああ」
暗殺者「買い忘れた物は無いよな?」
女勇者「私は大丈夫です」
ドラゴン「オレもだ」
勇者「大丈夫」
勇者「……じゃあ行くか」スタスタ
ドラゴン「ああ」スタスタ
暗殺者「急ぐぞ、弓兵達が戦ってるんだ」スタスタ
女勇者「港の町に魔法の町の軍隊が攻撃を仕掛けたんですよね」スタスタ
勇者「みたいだな」スタスタ
勇者「でも魔法の国はここには来てないみたいだろ」スタスタ
ドラゴン「……勇者、長老の言葉を覚えているか?」スタスタ
次の日 雪の町
勇者「よし、出発だ」
女勇者「はい」
ドラゴン「ああ」
暗殺者「買い忘れた物は無いよな?」
女勇者「私は大丈夫です」
ドラゴン「オレもだ」
勇者「大丈夫」
勇者「……じゃあ行くか」スタスタ
ドラゴン「ああ」スタスタ
暗殺者「急ぐぞ、弓兵達が戦ってるんだ」スタスタ
女勇者「港の町に魔法の町の軍隊が攻撃を仕掛けたんですよね」スタスタ
勇者「みたいだな」スタスタ
勇者「でも魔法の国はここには来てないみたいだろ」スタスタ
ドラゴン「……勇者、長老の言葉を覚えているか?」スタスタ
30: 2012/02/13(月) 21:57:19.10 ID:vhzxYGO10
勇者「え?」スタスタ
ドラゴン「入口は一つじゃないんだ」スタスタ
女勇者「別の入り口から入ってきているかもしれない、と言う事ですか」スタスタ
ドラゴン「そう言う事だ」スタスタ
暗殺者「まあ、魔王ってのはそんなに簡単に捕まるようなものじゃないと思うけどな」スタスタ
勇者「つーか俺達が倒せるのか?」スタスタ
女勇者「そんなものやってみない事にはわからないでしょう、バカなんですか?」スタスタ
勇者「分からないから怖いんだろ」スタスタ
女勇者「恐怖は迷いを生みます」スタスタ
勇者「……」スタスタ
女勇者「わかったら、精神統一でもしていて下さい」スタスタ
勇者「はいはい」スタスタ
暗殺者「……勇者の血で開くって、不思議な話だよな」スタスタ
ドラゴン「そうだな、いまいち仕組みがわからん」スタスタ
女勇者「勇者の血にのみ反応すると言うのが謎ですね」スタスタ
暗殺者「全体的に謎が多過ぎる、勇者の血統もそうだし、魔王の事もそうだ」スタスタ
ドラゴン「入口は一つじゃないんだ」スタスタ
女勇者「別の入り口から入ってきているかもしれない、と言う事ですか」スタスタ
ドラゴン「そう言う事だ」スタスタ
暗殺者「まあ、魔王ってのはそんなに簡単に捕まるようなものじゃないと思うけどな」スタスタ
勇者「つーか俺達が倒せるのか?」スタスタ
女勇者「そんなものやってみない事にはわからないでしょう、バカなんですか?」スタスタ
勇者「分からないから怖いんだろ」スタスタ
女勇者「恐怖は迷いを生みます」スタスタ
勇者「……」スタスタ
女勇者「わかったら、精神統一でもしていて下さい」スタスタ
勇者「はいはい」スタスタ
暗殺者「……勇者の血で開くって、不思議な話だよな」スタスタ
ドラゴン「そうだな、いまいち仕組みがわからん」スタスタ
女勇者「勇者の血にのみ反応すると言うのが謎ですね」スタスタ
暗殺者「全体的に謎が多過ぎる、勇者の血統もそうだし、魔王の事もそうだ」スタスタ
31: 2012/02/13(月) 21:59:01.12 ID:vhzxYGO10
勇者「ドラゴンは何か知らないか?」
ドラゴン「詳しくは良くわからん」
ドラゴン「ただ、魔王は一人だ」
女勇者「一人?」
ドラゴン「ああ、魔王は二人でも居なくてもダメなんだ」
暗殺者「勇者は何人いてもいいけど魔王は一人なのか?」
ドラゴン「その辺はよくわからんな」
女勇者「魔王なら知ってるんじゃないんですか?」
勇者「話がわかる奴ならいいんだけどな……」
暗殺者「高等ま種族なんだし言葉は分かるだろ」
ドラゴン「問題は性格だな」
ドスドス
勇者「ん?」
そこには二メートルを超える、毛むくじゃらの何かが歩いていた。
勇者「……何あれ」
女勇者「雪男ですね」
ドラゴン「詳しくは良くわからん」
ドラゴン「ただ、魔王は一人だ」
女勇者「一人?」
ドラゴン「ああ、魔王は二人でも居なくてもダメなんだ」
暗殺者「勇者は何人いてもいいけど魔王は一人なのか?」
ドラゴン「その辺はよくわからんな」
女勇者「魔王なら知ってるんじゃないんですか?」
勇者「話がわかる奴ならいいんだけどな……」
暗殺者「高等ま種族なんだし言葉は分かるだろ」
ドラゴン「問題は性格だな」
ドスドス
勇者「ん?」
そこには二メートルを超える、毛むくじゃらの何かが歩いていた。
勇者「……何あれ」
女勇者「雪男ですね」
38: 2012/02/15(水) 21:37:10.93 ID:heOvlRvw0
暗殺者「理性の無いタイプのモンスターだから気をつけろよ」
雪男「……」ギロッ
勇者「あ、こっち見た?」
雪男「うがァァァァァ!!」ダダダッ
勇者「嘘だろ!?」
ドラゴン「下等種族が図に乗るなよ」ギリッ
女勇者「勇者、刀を抜きなさい!!」チャキッ
雪男「がァァァ!!」ダダダッ
勇者「ん?」
ドラゴン「あれ?」
暗殺者「俺達……じゃない?」
???「きゃァァァァァァ!!」
勇者「人?」
暗殺者「なんで人が?」
勇者「そんな事今はどうでもいいだろ」
女勇者「いいから助けに行きますよ」
ドラゴン「オレが行く!!」タタタッ
雪男「……」ギロッ
勇者「あ、こっち見た?」
雪男「うがァァァァァ!!」ダダダッ
勇者「嘘だろ!?」
ドラゴン「下等種族が図に乗るなよ」ギリッ
女勇者「勇者、刀を抜きなさい!!」チャキッ
雪男「がァァァ!!」ダダダッ
勇者「ん?」
ドラゴン「あれ?」
暗殺者「俺達……じゃない?」
???「きゃァァァァァァ!!」
勇者「人?」
暗殺者「なんで人が?」
勇者「そんな事今はどうでもいいだろ」
女勇者「いいから助けに行きますよ」
ドラゴン「オレが行く!!」タタタッ
39: 2012/02/15(水) 21:39:16.38 ID:heOvlRvw0
ドラゴンは雪男目掛けて走り出した。
速く、しかし静かに。
相手はこちらに気づいていない。
ならば不意打ちを狙う他ない。
姿勢を低くし、加速する。
残り五メートル
一撃で決める。
彼女はそう決め、右手の拳をさらに強く握った。
狙うとすれば急所である頭か腹だ。
残り二メートル。
雪男がこちらに気づき、向き直る。
目が血走り、牙を剥くその姿は人間なら恐怖の対象だろう。
だが彼女にとってそんなものは恐怖ですらない。
体を大きく捻り、右手を振りかぶる。
渾身の一撃を雪男に撃ちこむ。
その威力はもはや弾丸の域に達していた。
雪男がとっさに防御しようとするが明らかに間に合わない。
メキリ、と嫌な音をたて、弾丸という名の拳がが雪男の腹の部分に突き刺さる。
雪男が怒りとも悲鳴とも聞こえる声をあげる。
だがドラゴンは全く怯む事無く、さらに左手で顔面をとらえる。
彼女は確かに骨が折れるよな嫌な音を聞いた。
相手の体が浮くのがわかる。
だが力を抜く事無く、左手を振り切る。
相手が魔物なら加減をする必要は無い。
雪男は地面を転がり、苦しそうに呻く。
速く、しかし静かに。
相手はこちらに気づいていない。
ならば不意打ちを狙う他ない。
姿勢を低くし、加速する。
残り五メートル
一撃で決める。
彼女はそう決め、右手の拳をさらに強く握った。
狙うとすれば急所である頭か腹だ。
残り二メートル。
雪男がこちらに気づき、向き直る。
目が血走り、牙を剥くその姿は人間なら恐怖の対象だろう。
だが彼女にとってそんなものは恐怖ですらない。
体を大きく捻り、右手を振りかぶる。
渾身の一撃を雪男に撃ちこむ。
その威力はもはや弾丸の域に達していた。
雪男がとっさに防御しようとするが明らかに間に合わない。
メキリ、と嫌な音をたて、弾丸という名の拳がが雪男の腹の部分に突き刺さる。
雪男が怒りとも悲鳴とも聞こえる声をあげる。
だがドラゴンは全く怯む事無く、さらに左手で顔面をとらえる。
彼女は確かに骨が折れるよな嫌な音を聞いた。
相手の体が浮くのがわかる。
だが力を抜く事無く、左手を振り切る。
相手が魔物なら加減をする必要は無い。
雪男は地面を転がり、苦しそうに呻く。
40: 2012/02/15(水) 21:42:02.22 ID:heOvlRvw0
ドラゴンにとって戦いとは捕食行動の一環だ。
敵を狩る。
それは生理現象に等しい。
雪男が咆哮する。
不意打ちされた事に対する怒りか、痛みに対する悲鳴か。
大地を震わせるような咆哮。
「ははっ、下等種が!!」
ドラゴンは咆哮するように叫んだ。
まるで赤き竜だった頃の様に気高く、それでいて力強い声。
ドラゴンは地面を蹴って、雪男目掛けて跳ぶ。
蹴った地面がクレーターの様にへこむ。
雪男は両手を大きく振り回す。
だがドラゴンは両腕をいとも簡単に交わす。
それはまるで蛇のようにしなやかな回避。
相手の懐に入る。
彼女は知らず知らずのうちに牙を剥いていた。
狩人としての彼女の姿。
全身を使い、雪男の顎をアッパーで撃ち抜く。
異様な音と共に何かが砕ける感覚が拳に伝わる。
雪男はまるでボールの様に二メートル近く上に吹き飛び、地面に叩きつけられる。
見るまでもなく、動ける状態ではなかった。
敵を狩る。
それは生理現象に等しい。
雪男が咆哮する。
不意打ちされた事に対する怒りか、痛みに対する悲鳴か。
大地を震わせるような咆哮。
「ははっ、下等種が!!」
ドラゴンは咆哮するように叫んだ。
まるで赤き竜だった頃の様に気高く、それでいて力強い声。
ドラゴンは地面を蹴って、雪男目掛けて跳ぶ。
蹴った地面がクレーターの様にへこむ。
雪男は両手を大きく振り回す。
だがドラゴンは両腕をいとも簡単に交わす。
それはまるで蛇のようにしなやかな回避。
相手の懐に入る。
彼女は知らず知らずのうちに牙を剥いていた。
狩人としての彼女の姿。
全身を使い、雪男の顎をアッパーで撃ち抜く。
異様な音と共に何かが砕ける感覚が拳に伝わる。
雪男はまるでボールの様に二メートル近く上に吹き飛び、地面に叩きつけられる。
見るまでもなく、動ける状態ではなかった。
41: 2012/02/15(水) 21:43:39.33 ID:heOvlRvw0
ドラゴン「ふん」
勇者「相変わらずの火力だな」
ドラゴン「竜だからな」
女勇者「大丈夫ですか?」
???「あ、うん」
そこには腰まである金髪の15歳くらいのかわいい少女が地面に座っていた。
しかしその子にはねじれた角と悪魔の様な翼が生えていた。
暗殺者「……人間じゃない?」
女勇者「みたいですね」
勇者「あんたは?」
サキュバス「私はサキュバス、あ、あなた達人間ね!!」
ドラゴン「オレは竜だ」
暗殺者「俺は三分の一人間だ」
サキュバス「え、は?」
勇者「そりゃそうなるだろうな」
勇者「相変わらずの火力だな」
ドラゴン「竜だからな」
女勇者「大丈夫ですか?」
???「あ、うん」
そこには腰まである金髪の15歳くらいのかわいい少女が地面に座っていた。
しかしその子にはねじれた角と悪魔の様な翼が生えていた。
暗殺者「……人間じゃない?」
女勇者「みたいですね」
勇者「あんたは?」
サキュバス「私はサキュバス、あ、あなた達人間ね!!」
ドラゴン「オレは竜だ」
暗殺者「俺は三分の一人間だ」
サキュバス「え、は?」
勇者「そりゃそうなるだろうな」
42: 2012/02/15(水) 21:45:27.41 ID:heOvlRvw0
女勇者「私達が人間だと何か不都合でもあるんですか?」
サキュバス「え、あの……人間と仲良くしちゃいけないの!!」
勇者「なんじゃそりゃ」
サキュバス「魔王様にそうやって言われてるの!!」
暗殺者「魔王様?」
サキュバス「あ……」
サキュバス「ち、違う、魔王様じゃなくて……」
勇者「魔王様じゃなくて?」
サキュバス「あの、その……」
勇者「魔王ね……」
女勇者「何故人間と仲良くしてはいけないんですか?」
サキュバス「それは……私達が魔王様に仕える身だがら」
勇者「俺達は魔王に会いに行くんだよ」
サキュバス「え?」
勇者「俺達は魔王に用事があるって事」
サキュバス「魔王様に用事……?」
勇者「ああ」
サキュバス「も、もしかして魔王様を倒すため!?」
サキュバス「え、あの……人間と仲良くしちゃいけないの!!」
勇者「なんじゃそりゃ」
サキュバス「魔王様にそうやって言われてるの!!」
暗殺者「魔王様?」
サキュバス「あ……」
サキュバス「ち、違う、魔王様じゃなくて……」
勇者「魔王様じゃなくて?」
サキュバス「あの、その……」
勇者「魔王ね……」
女勇者「何故人間と仲良くしてはいけないんですか?」
サキュバス「それは……私達が魔王様に仕える身だがら」
勇者「俺達は魔王に会いに行くんだよ」
サキュバス「え?」
勇者「俺達は魔王に用事があるって事」
サキュバス「魔王様に用事……?」
勇者「ああ」
サキュバス「も、もしかして魔王様を倒すため!?」
43: 2012/02/15(水) 21:47:24.88 ID:heOvlRvw0
勇者「それ以外に何があるんだ?」
サキュバス「……ふふふ」
女勇者「何がおかしいんですか」
サキュバス「魔王様を倒すなんて不可能よ」
勇者「やってみなくちゃ分からないだろ」
サキュバス「あなた達じゃ魔王様に傷一つつけられないわよ」
勇者「なんでそこまで自身があるんだ?」
サキュバス「魔王様はあなたが思ってるほど弱くないの」
暗殺者「そんな事百も承知だよ」
サキュバス「やめた方がいいわ、本当に氏ぬわよ」
勇者「……勝手に言ってろ、とにかく俺達は魔王の所へ行く」
サキュバス「勝手にしたら、助けてもらった事のお礼は言っとく、ありがとう」スタスタ
勇者「……」
ドラゴン「最初から簡単に勝てるとは思ってないだろ?」
勇者「まあな」
暗殺者「それにサキュバスは俺達の強さを見てないだろ」
ドラゴン「まともな人間は二人だけだしな」
女勇者「しかも勇者も私もほとんど人間やめてますからね」
サキュバス「……ふふふ」
女勇者「何がおかしいんですか」
サキュバス「魔王様を倒すなんて不可能よ」
勇者「やってみなくちゃ分からないだろ」
サキュバス「あなた達じゃ魔王様に傷一つつけられないわよ」
勇者「なんでそこまで自身があるんだ?」
サキュバス「魔王様はあなたが思ってるほど弱くないの」
暗殺者「そんな事百も承知だよ」
サキュバス「やめた方がいいわ、本当に氏ぬわよ」
勇者「……勝手に言ってろ、とにかく俺達は魔王の所へ行く」
サキュバス「勝手にしたら、助けてもらった事のお礼は言っとく、ありがとう」スタスタ
勇者「……」
ドラゴン「最初から簡単に勝てるとは思ってないだろ?」
勇者「まあな」
暗殺者「それにサキュバスは俺達の強さを見てないだろ」
ドラゴン「まともな人間は二人だけだしな」
女勇者「しかも勇者も私もほとんど人間やめてますからね」
44: 2012/02/15(水) 21:49:15.04 ID:heOvlRvw0
勇者「平気で人斬っちゃってるからな」
女勇者「まったくです」
サキュバス「……」ウロウロ
暗殺者「何やってんだあいつ?」
ドラゴン「迷ったんじゃないか?」
勇者「まさか」
勇者「おい、どうしたんだ?」
サキュバス「……」ジワッ
勇者「なんで涙目?」
サキュバス「迷った……」
女勇者「帰り道が分からないんですか?」
サキュバス「……うん」
勇者「……」
サキュバス「……」ウルウル
勇者「……連れてく?」
女勇者「私は構いませんよ」
暗殺者「俺も構わん」
ドラゴン「勝手にしろ」
勇者「目的地一緒だし、一緒に来るか?」
女勇者「まったくです」
サキュバス「……」ウロウロ
暗殺者「何やってんだあいつ?」
ドラゴン「迷ったんじゃないか?」
勇者「まさか」
勇者「おい、どうしたんだ?」
サキュバス「……」ジワッ
勇者「なんで涙目?」
サキュバス「迷った……」
女勇者「帰り道が分からないんですか?」
サキュバス「……うん」
勇者「……」
サキュバス「……」ウルウル
勇者「……連れてく?」
女勇者「私は構いませんよ」
暗殺者「俺も構わん」
ドラゴン「勝手にしろ」
勇者「目的地一緒だし、一緒に来るか?」
45: 2012/02/15(水) 21:50:50.39 ID:heOvlRvw0
サキュバス「……いいの?」
勇者「別にいいけど」
サキュバス「ありがとう……」
暗殺者「じゃあさっさと行くか」スタスタ
女勇者「あと少しですしね」スタスタ
勇者「……そういえばサキュバスって悪魔なのか?」スタスタ
サキュバス「下級の悪魔よ、夢魔、淫魔とも呼ばれてる」スタスタ
勇者「淫魔ね……」スタスタ
サキュバス「勘違いしてほしくないから言うけど、全部が全部そう言う事してる訳じゃないから」スタスタ
暗殺者「自分は違うって言いたいのか?」スタスタ
サキュバス「ええ、私は魔王様に仕える身、あなた達で言うメイドみたいなものよ」スタスタ
ドラゴン「たいていの悪魔は魔王に仕えるんだろ?」スタスタ
サキュバス「仕えるのはほんの一部、ほとんどは自由気ままに生きてるわ」スタスタ
女勇者「つまりあなたはエリートと言う事ですか?」スタスタ
サキュバス「別に、魔王様に仕えたいと言えば仕えられるわ」スタスタ
勇者「ただのボランティアじゃねぇか」スタスタ
勇者「別にいいけど」
サキュバス「ありがとう……」
暗殺者「じゃあさっさと行くか」スタスタ
女勇者「あと少しですしね」スタスタ
勇者「……そういえばサキュバスって悪魔なのか?」スタスタ
サキュバス「下級の悪魔よ、夢魔、淫魔とも呼ばれてる」スタスタ
勇者「淫魔ね……」スタスタ
サキュバス「勘違いしてほしくないから言うけど、全部が全部そう言う事してる訳じゃないから」スタスタ
暗殺者「自分は違うって言いたいのか?」スタスタ
サキュバス「ええ、私は魔王様に仕える身、あなた達で言うメイドみたいなものよ」スタスタ
ドラゴン「たいていの悪魔は魔王に仕えるんだろ?」スタスタ
サキュバス「仕えるのはほんの一部、ほとんどは自由気ままに生きてるわ」スタスタ
女勇者「つまりあなたはエリートと言う事ですか?」スタスタ
サキュバス「別に、魔王様に仕えたいと言えば仕えられるわ」スタスタ
勇者「ただのボランティアじゃねぇか」スタスタ
46: 2012/02/15(水) 21:55:13.82 ID:heOvlRvw0
サキュバス「そうとも言うけど私はこの仕事に誇りを持ってる」スタスタ
女勇者「誇りを持つと言う事は重要な事です」スタスタ
ドラゴン「ああ、誇りは重要だ」スタスタ
勇者「そうか?」スタスタ
ドラゴン「貴様にはわからんだろうな」スタスタ
勇者「どうせわかんねぇよ」スタスタ
ドラゴン「とげのある言い方だな」スタスタ
勇者「お前こそとげのある言い方だった」スタスタ
女勇者「二人とも着きましたよ」
暗殺者「まだだいぶ時間があるぞ」
勇者「待てばいいだろ」
女勇者「……」
ドラゴン「仕方ないだろ」
サキュバス「魔王様……」
勇者「もうちょっと待ってろ、魔王の所に行けるから」
サキュバス「わかってるわ」
女勇者「今は休みましょう」
勇者「ああ、そうだな」ドサッ
暗殺者「疲れたな……」
ドラゴン「やっと魔王に会えるな」
女勇者「誇りを持つと言う事は重要な事です」スタスタ
ドラゴン「ああ、誇りは重要だ」スタスタ
勇者「そうか?」スタスタ
ドラゴン「貴様にはわからんだろうな」スタスタ
勇者「どうせわかんねぇよ」スタスタ
ドラゴン「とげのある言い方だな」スタスタ
勇者「お前こそとげのある言い方だった」スタスタ
女勇者「二人とも着きましたよ」
暗殺者「まだだいぶ時間があるぞ」
勇者「待てばいいだろ」
女勇者「……」
ドラゴン「仕方ないだろ」
サキュバス「魔王様……」
勇者「もうちょっと待ってろ、魔王の所に行けるから」
サキュバス「わかってるわ」
女勇者「今は休みましょう」
勇者「ああ、そうだな」ドサッ
暗殺者「疲れたな……」
ドラゴン「やっと魔王に会えるな」
47: 2012/02/15(水) 21:56:14.02 ID:heOvlRvw0
勇者「本当にやっとだな」
サキュバス「……悪い事言わないから魔王様と戦うのはやめた方がいいわ」
勇者「悪いんだけどそうはいかないんだよ、こっちにもいろいろ事情があるから」
サキュバス「事情?」
暗殺者「簡単に言えば厄介な事情」
サキュバス「何それ?」
女勇者「私達は魔王と戦わないといけないんです」
サキュバス「……」
ドラゴン「もし邪魔をするなら貴様も敵だな」
サキュバス「私は何もしない、魔王様が戦えって言ったら戦うけど」
勇者「魔王はあんたにそんな事言うのか」
サキュバス「魔王様は絶対そんなこと言わないわ」
暗殺者「……そうか」
女勇者「とにかく今の所はあなたと私達は敵ではありません、あなたが何もしなければ私も何もしません」
サキュバス「分かったわ……」
サキュバス「……悪い事言わないから魔王様と戦うのはやめた方がいいわ」
勇者「悪いんだけどそうはいかないんだよ、こっちにもいろいろ事情があるから」
サキュバス「事情?」
暗殺者「簡単に言えば厄介な事情」
サキュバス「何それ?」
女勇者「私達は魔王と戦わないといけないんです」
サキュバス「……」
ドラゴン「もし邪魔をするなら貴様も敵だな」
サキュバス「私は何もしない、魔王様が戦えって言ったら戦うけど」
勇者「魔王はあんたにそんな事言うのか」
サキュバス「魔王様は絶対そんなこと言わないわ」
暗殺者「……そうか」
女勇者「とにかく今の所はあなたと私達は敵ではありません、あなたが何もしなければ私も何もしません」
サキュバス「分かったわ……」
48: 2012/02/15(水) 21:57:10.00 ID:heOvlRvw0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
港の町は地獄と化していた。
辺りは燃え、建物の多くは半壊している。
見るも無残な貿易の町。
轟音で轟音がかき消される戦場。
弓兵はそんな所に立っていた。
周りにいた仲間はすでに退避していない。
ただ一人、火薬と鉄が交差する空間に立っていた。
敵を倒すためではない。
逃げ遅れた仲間を救うために。
まだ戦い続けている兵士に退避を伝える為に。
彼にとって仲間を失う事は最大の苦痛だった。
誰一人氏なせない。
彼は昔、そう誓った。
もう二度と仲間を失う苦痛を味わいたくは無い。
「逃げろ、退避だ!!」
彼は自分の出せる最大の大声で叫ぶ。
港の町は地獄と化していた。
辺りは燃え、建物の多くは半壊している。
見るも無残な貿易の町。
轟音で轟音がかき消される戦場。
弓兵はそんな所に立っていた。
周りにいた仲間はすでに退避していない。
ただ一人、火薬と鉄が交差する空間に立っていた。
敵を倒すためではない。
逃げ遅れた仲間を救うために。
まだ戦い続けている兵士に退避を伝える為に。
彼にとって仲間を失う事は最大の苦痛だった。
誰一人氏なせない。
彼は昔、そう誓った。
もう二度と仲間を失う苦痛を味わいたくは無い。
「逃げろ、退避だ!!」
彼は自分の出せる最大の大声で叫ぶ。
49: 2012/02/15(水) 21:58:24.65 ID:heOvlRvw0
だが砲撃音でその声はかき消されてしまう。
立て続けに爆発音が辺りの空間を包む。
こんな場所では無意味に等しい様な行動。
むしろ敵に居場所を教えている様な危険な行動。
それでも仲間を救うため、彼は声を上げる。
弓兵の体が敵の気配を察知する。
大声を聞いたのか、敵の兵士達が集まってきていた。
まるで餌に群がる蟻だ。
十人弱の兵士達が彼をぐるりと取り囲んでいた。
どの兵士も剣や斧を持ち、目がぎらぎらしている。
弓兵は素早く弓を引き絞り、兵士を射抜く。
全員を倒す必要は無い。
数人倒せば退路は確保できるのだ。
兵士達が一斉に彼目掛けて走り出す。
だが飛び道具すら持たない彼らなど弓兵の敵ですら無い。
あんな連中よりも弓をもった子どものほうがよっぽど危険だ。
目の前にいた三人を次々に射抜き、走り出す。
炎の中を走る。
立て続けに爆発音が辺りの空間を包む。
こんな場所では無意味に等しい様な行動。
むしろ敵に居場所を教えている様な危険な行動。
それでも仲間を救うため、彼は声を上げる。
弓兵の体が敵の気配を察知する。
大声を聞いたのか、敵の兵士達が集まってきていた。
まるで餌に群がる蟻だ。
十人弱の兵士達が彼をぐるりと取り囲んでいた。
どの兵士も剣や斧を持ち、目がぎらぎらしている。
弓兵は素早く弓を引き絞り、兵士を射抜く。
全員を倒す必要は無い。
数人倒せば退路は確保できるのだ。
兵士達が一斉に彼目掛けて走り出す。
だが飛び道具すら持たない彼らなど弓兵の敵ですら無い。
あんな連中よりも弓をもった子どものほうがよっぽど危険だ。
目の前にいた三人を次々に射抜き、走り出す。
炎の中を走る。
50: 2012/02/15(水) 21:59:50.66 ID:heOvlRvw0
相手を撒くには炎の中を走るのが一番いい。
服が焦げる臭いがし、体が熱さに悲鳴を上げる。
体の限界を感じ、炎の外に飛び出す。
肺は火がついたように熱く、呼吸はいつも以上に乱れていた。
その場に腰をおろし、呼吸を調えようとする。
だが呼吸を調える前に彼は立ち上がる。
彼の目の前には今までとは違う敵が立っていた。
それはまるで漆を塗ったように漆黒で美しい西洋甲冑の騎士だった。
ほぼ全ての部分が甲冑で覆われ、肌は全く露出していない。
唯一肌が見える目の部分も奥は黒く染まり、何も見えない。
まるで中には誰もいないようだ。
何も言わないし、何もしゃべらない。
だが弓兵は相手の強さを理解した。
根拠は何もない。
ただ長年の勘が、動物的勘が危険だと言っている。
「お前が兵器って訳か……」
誰に言った訳ではない。
ただの独り言だ。
服が焦げる臭いがし、体が熱さに悲鳴を上げる。
体の限界を感じ、炎の外に飛び出す。
肺は火がついたように熱く、呼吸はいつも以上に乱れていた。
その場に腰をおろし、呼吸を調えようとする。
だが呼吸を調える前に彼は立ち上がる。
彼の目の前には今までとは違う敵が立っていた。
それはまるで漆を塗ったように漆黒で美しい西洋甲冑の騎士だった。
ほぼ全ての部分が甲冑で覆われ、肌は全く露出していない。
唯一肌が見える目の部分も奥は黒く染まり、何も見えない。
まるで中には誰もいないようだ。
何も言わないし、何もしゃべらない。
だが弓兵は相手の強さを理解した。
根拠は何もない。
ただ長年の勘が、動物的勘が危険だと言っている。
「お前が兵器って訳か……」
誰に言った訳ではない。
ただの独り言だ。
51: 2012/02/15(水) 22:01:15.73 ID:heOvlRvw0
甲冑は無言のまま弓兵目掛けて走り出していた。
足に風の魔法をまとい、物凄い速度で接近してくる。
それはまさに兵器と呼ぶにふさわしい、人間離れした速度だった。
腐っても魔法の町の兵器、と言う訳だ。
甲冑の右手が弓兵の頭目掛け振り下ろされる。
拳という名の鉄の塊は真っすぐに頭目掛け、文字通り、落ちてくる。
爆音が鳴り響いているはずなのに、ゴウッ、と言う音が嫌にはっきりと聞こえた。
弓兵は歯を食い縛り、後ろに大きく跳ぶ。
次の瞬間には甲冑の拳が弓兵の立っていた場所を粉々に砕いていた。
体勢が大きく崩れるが、気には留めない。
体勢が崩れたままで状況のまま弓を引く。
当たる確信は無い。
いや、どちらかと言えば、当たる確率の方が低いだろう。
だが矢を撃たなければ勝つ事は出来ない。
浮いたままの状態で矢を放つ。
弓を撃った反動と体勢を立て直さなかった事が重なり、さらに態勢が崩れ、防御すら不可能になる。
ある種この攻撃は賭けだった。
矢はまるで機械に放たれたかのように真っすぐ甲冑目掛け飛んでいく。
いや、その正確さは機械にすら勝っているかもしれない。
だが甲冑は矢を叩き折り、また弓兵目掛けて走り出した。
相変わらずの馬鹿げた速度で接近してくる。
足に風の魔法をまとい、物凄い速度で接近してくる。
それはまさに兵器と呼ぶにふさわしい、人間離れした速度だった。
腐っても魔法の町の兵器、と言う訳だ。
甲冑の右手が弓兵の頭目掛け振り下ろされる。
拳という名の鉄の塊は真っすぐに頭目掛け、文字通り、落ちてくる。
爆音が鳴り響いているはずなのに、ゴウッ、と言う音が嫌にはっきりと聞こえた。
弓兵は歯を食い縛り、後ろに大きく跳ぶ。
次の瞬間には甲冑の拳が弓兵の立っていた場所を粉々に砕いていた。
体勢が大きく崩れるが、気には留めない。
体勢が崩れたままで状況のまま弓を引く。
当たる確信は無い。
いや、どちらかと言えば、当たる確率の方が低いだろう。
だが矢を撃たなければ勝つ事は出来ない。
浮いたままの状態で矢を放つ。
弓を撃った反動と体勢を立て直さなかった事が重なり、さらに態勢が崩れ、防御すら不可能になる。
ある種この攻撃は賭けだった。
矢はまるで機械に放たれたかのように真っすぐ甲冑目掛け飛んでいく。
いや、その正確さは機械にすら勝っているかもしれない。
だが甲冑は矢を叩き折り、また弓兵目掛けて走り出した。
相変わらずの馬鹿げた速度で接近してくる。
52: 2012/02/15(水) 22:04:39.03 ID:heOvlRvw0
弓兵は地面に着地すると同時に体勢を立て直した。
止まっている暇は無い。
同時に三本の矢をつがえると、弓を引き絞り、同時に放つ。
だが甲冑の右手で矢は全て叩き折られた。
矢は刃物で斬られたように真っ二つになり、残骸として地面に落ちていく。
しかし弓兵は魔法を詠唱し、にやりと笑う。
そう、弓はただの運搬。
本命は矢に宿った魔法だ。
あの矢はまだ生きていた。
地面に落ちた矢の一本一本が誘爆し、巨大な爆発を起こす。
爆発はまるで生きているかのように甲冑に襲いかかる。
甲冑が逃げようと跳ぶが、もう遅い。
爆発は大きく口を開け、甲冑を飲み込む。
炎が甲冑の体を隅から隅まで蹂躙し尽くす。
弓兵はその様子を見ていた。
感情の無い目が虚ろに炎をとらえる。
炎に蹂躙された甲冑、地面に転がっていた。
まるで飴の様にドロドロに溶けている。
もはや動けるような状態では無い。
止まっている暇は無い。
同時に三本の矢をつがえると、弓を引き絞り、同時に放つ。
だが甲冑の右手で矢は全て叩き折られた。
矢は刃物で斬られたように真っ二つになり、残骸として地面に落ちていく。
しかし弓兵は魔法を詠唱し、にやりと笑う。
そう、弓はただの運搬。
本命は矢に宿った魔法だ。
あの矢はまだ生きていた。
地面に落ちた矢の一本一本が誘爆し、巨大な爆発を起こす。
爆発はまるで生きているかのように甲冑に襲いかかる。
甲冑が逃げようと跳ぶが、もう遅い。
爆発は大きく口を開け、甲冑を飲み込む。
炎が甲冑の体を隅から隅まで蹂躙し尽くす。
弓兵はその様子を見ていた。
感情の無い目が虚ろに炎をとらえる。
炎に蹂躙された甲冑、地面に転がっていた。
まるで飴の様にドロドロに溶けている。
もはや動けるような状態では無い。
58: 2012/02/16(木) 21:43:37.10 ID:rVz0apQK0
弓兵は弓をしまい、歩きだす。
余計な時間を使い過ぎてしまっていたし、余計な魔力も使い過ぎていた。
「弓兵さん……」
蝋燭の火の様にか細い声が聞こえる。
誰の声かは分からない、だがそれでも声が聞こえた。
辺りを見渡すが誰もいない。
あるのは瓦礫の山と兵器の残骸だけだ。
「ここです……」
声は下からだった。
体を百八十度回転させ、後ろの瓦礫の山を見る。
瓦礫に足をとられ、動けなくなった兵士が倒れていた。
とてもではないが自力で歩けるような状態では無い。
兵士の目も置いていってくれと言っているのがわかる。
だが弓兵は瓦礫をどかすと、兵士を担ぎあげる。
彼の中には見捨てるなどと言う選択肢は最初からない。
余計な時間を使い過ぎてしまっていたし、余計な魔力も使い過ぎていた。
「弓兵さん……」
蝋燭の火の様にか細い声が聞こえる。
誰の声かは分からない、だがそれでも声が聞こえた。
辺りを見渡すが誰もいない。
あるのは瓦礫の山と兵器の残骸だけだ。
「ここです……」
声は下からだった。
体を百八十度回転させ、後ろの瓦礫の山を見る。
瓦礫に足をとられ、動けなくなった兵士が倒れていた。
とてもではないが自力で歩けるような状態では無い。
兵士の目も置いていってくれと言っているのがわかる。
だが弓兵は瓦礫をどかすと、兵士を担ぎあげる。
彼の中には見捨てるなどと言う選択肢は最初からない。
59: 2012/02/16(木) 21:45:52.16 ID:rVz0apQK0
瓦礫が山となり、もはや道とは呼べない道を歩く。
長時間緊張状態にいたせいで、体が嫌に疲弊しているのがわかった。
目が霞み、時折足元がふらつく。
「弓兵さん……逃げて下さい……」
弱り切った声が聞こえるが、耳にも入れず、歩き続ける。
とにかく歩き続ける。
だが少し歩いた所で弓兵は歩みを止め、その場に兵士を下ろした。
顔は険しくなり、まるで苦虫を噛み潰したような表情になっている。
二人の前には漆黒の西洋甲冑の騎士が立っていた。
さっき戦った西洋甲冑とは違う、全体的に大柄で全長二メートルはある巨大な斧を持っている。
さっきのをスピードタイプと呼ぶならこちらはパワータイプと呼べばいいのだろうか。
しかも一体では無い、炎のせいで見にくいが三体は確実にいるだろう。
「一人で逃げろ」
弓兵はそれだけ言うと、弓を構える。
人一人抱えて逃げられるような相手ではない。
なら戦うしか道は無い。
長時間緊張状態にいたせいで、体が嫌に疲弊しているのがわかった。
目が霞み、時折足元がふらつく。
「弓兵さん……逃げて下さい……」
弱り切った声が聞こえるが、耳にも入れず、歩き続ける。
とにかく歩き続ける。
だが少し歩いた所で弓兵は歩みを止め、その場に兵士を下ろした。
顔は険しくなり、まるで苦虫を噛み潰したような表情になっている。
二人の前には漆黒の西洋甲冑の騎士が立っていた。
さっき戦った西洋甲冑とは違う、全体的に大柄で全長二メートルはある巨大な斧を持っている。
さっきのをスピードタイプと呼ぶならこちらはパワータイプと呼べばいいのだろうか。
しかも一体では無い、炎のせいで見にくいが三体は確実にいるだろう。
「一人で逃げろ」
弓兵はそれだけ言うと、弓を構える。
人一人抱えて逃げられるような相手ではない。
なら戦うしか道は無い。
60: 2012/02/16(木) 21:50:54.02 ID:rVz0apQK0
「でも―――――」
何かを言おうとした兵士を睨みつけ、黙らせる。
冷酷で感情を頃した視線。
「早く行け」
抑揚の無い、感情の氏んだ声。
まるで氷の様に冷たい言葉。
そんな声に怖気づいたのか、体を引きずりながら必氏に逃げる。
弓兵はその背中を見ながら弓を構え直した。
大柄な甲冑は斧を構えたままゆっくりとこちらに歩いてくる。
巨大な斧を揺らしなが近づいてくる姿は氏刑執行人の様だ。
漆黒の氏刑執行人が斧を大きく振りかぶる。
その姿はまさに今断頭しようとしている氏刑執行人そのものだった。
弓兵は素早く横に避け、その攻撃をかわすと、唯一生身に矢が当たる目の部分目掛け矢を放つ。
銀色の矢は一直線に唯一の弱点目掛け飛んでいく。
しかし甲冑はまるでハエを追い払うかのように矢を弾く。
巨体には似つかわしくない、ずばやい動きだった。
何かを言おうとした兵士を睨みつけ、黙らせる。
冷酷で感情を頃した視線。
「早く行け」
抑揚の無い、感情の氏んだ声。
まるで氷の様に冷たい言葉。
そんな声に怖気づいたのか、体を引きずりながら必氏に逃げる。
弓兵はその背中を見ながら弓を構え直した。
大柄な甲冑は斧を構えたままゆっくりとこちらに歩いてくる。
巨大な斧を揺らしなが近づいてくる姿は氏刑執行人の様だ。
漆黒の氏刑執行人が斧を大きく振りかぶる。
その姿はまさに今断頭しようとしている氏刑執行人そのものだった。
弓兵は素早く横に避け、その攻撃をかわすと、唯一生身に矢が当たる目の部分目掛け矢を放つ。
銀色の矢は一直線に唯一の弱点目掛け飛んでいく。
しかし甲冑はまるでハエを追い払うかのように矢を弾く。
巨体には似つかわしくない、ずばやい動きだった。
61: 2012/02/16(木) 21:52:54.02 ID:rVz0apQK0
弓兵の体に異様な悪寒が走る。
まるで何か湿っぽいものが体を這いずりまわっている様な感覚。
とっさに頭を下げる。
それは俗に言う第六感というものだろう。
下げた頭の真上を斧が通過していく。
空を斬る様な異様な音が弓兵の背筋をさらに冷たくする。
その瞬間、弓兵は自分のミスに気がついた。
一体の敵に集中し過ぎていたのだ。
気がつけば、弓兵は完全に囲まれていた。
退路は完全に封じられている。
甲冑達が同時に斧を振り上げる。
振り上げられた斧は気持ちが悪いほどに銀色に輝いていた。
本気で氏を感じ、体が凍りつく。
そのくせ心はどう反撃しようか、この場面をどう切り抜けようかと、真っ赤に燃えたぎっている。
斧が振り下ろされる瞬間、弓兵は全力で走りだした。
冷や汗が頬を伝う。
膝が恐怖で震えている。
甲冑の斧は無理矢理に方向を変え、弓兵を追いかけてくる。
速度は圧倒的に斧の方が速い。
空を斬る音がどんどん近づいてくる。
まるで何か湿っぽいものが体を這いずりまわっている様な感覚。
とっさに頭を下げる。
それは俗に言う第六感というものだろう。
下げた頭の真上を斧が通過していく。
空を斬る様な異様な音が弓兵の背筋をさらに冷たくする。
その瞬間、弓兵は自分のミスに気がついた。
一体の敵に集中し過ぎていたのだ。
気がつけば、弓兵は完全に囲まれていた。
退路は完全に封じられている。
甲冑達が同時に斧を振り上げる。
振り上げられた斧は気持ちが悪いほどに銀色に輝いていた。
本気で氏を感じ、体が凍りつく。
そのくせ心はどう反撃しようか、この場面をどう切り抜けようかと、真っ赤に燃えたぎっている。
斧が振り下ろされる瞬間、弓兵は全力で走りだした。
冷や汗が頬を伝う。
膝が恐怖で震えている。
甲冑の斧は無理矢理に方向を変え、弓兵を追いかけてくる。
速度は圧倒的に斧の方が速い。
空を斬る音がどんどん近づいてくる。
62: 2012/02/16(木) 21:54:10.38 ID:rVz0apQK0
弓兵は魔法を詠唱し、加速した。
足に風の力をまとわせ、走ると言うより、地面を凄いスピードで滑って行く。
スケートをするように加速し続け斧を振り切る。
だが無茶な加速に体の内部と外部が悲鳴を上げる。
弓兵はそのまま前のめりに地面に着地すると、荒い息を上げながら地面に膝をついた。
長時間の戦闘によって蓄積された疲労がこんな所で出てしまったのだ。
まるで糸が切れた操り人形のように体が動かない。
それを知ってか知らずか斧を持った甲冑は嫌味なくらいゆっくりと近づいてくる。
その姿は兵器というより嫌に人間臭い動きだった。
人頃しを心から楽しむ狂った人間の動き。
弓兵は体を動かそう必氏にもがく。
上半身はある程度動くようになっているが、依然足はまるで人形のように動かない。
弓を構え、狙いを定める。
魔力はもはや残っていない。
ならば代償を使えばいい。
自分の血液を代償に魔法を詠唱する。
嫌というほど暑いのに体が急激に冷えていく。
まるで雪が血液に混入してきたようだ。
足に風の力をまとわせ、走ると言うより、地面を凄いスピードで滑って行く。
スケートをするように加速し続け斧を振り切る。
だが無茶な加速に体の内部と外部が悲鳴を上げる。
弓兵はそのまま前のめりに地面に着地すると、荒い息を上げながら地面に膝をついた。
長時間の戦闘によって蓄積された疲労がこんな所で出てしまったのだ。
まるで糸が切れた操り人形のように体が動かない。
それを知ってか知らずか斧を持った甲冑は嫌味なくらいゆっくりと近づいてくる。
その姿は兵器というより嫌に人間臭い動きだった。
人頃しを心から楽しむ狂った人間の動き。
弓兵は体を動かそう必氏にもがく。
上半身はある程度動くようになっているが、依然足はまるで人形のように動かない。
弓を構え、狙いを定める。
魔力はもはや残っていない。
ならば代償を使えばいい。
自分の血液を代償に魔法を詠唱する。
嫌というほど暑いのに体が急激に冷えていく。
まるで雪が血液に混入してきたようだ。
63: 2012/02/16(木) 21:56:41.20 ID:rVz0apQK0
「お、おォォォォォォ!!」
苦しそうな声を上げながら矢を放つ。
矢は一瞬のうちに風をまとい、巨大な槍のようになる。
お互いの距離は三メートル。
よほどの達人ではない限り回避は不可能。
風の槍はまるで紙を貫くように甲冑を貫く。
甲冑の穴からはおびただしい量の赤い液体が流れ出る。
どんなに改造されてもベースは人間という訳か。
残りは二体。
だがもはや戦う気力も力も残ってはいない。
彼の体にはそれを回避するほどの力も残っていない。
甲冑は斧を大きく振りかぶる。
銀色の斧は邪悪に輝いている。
ここが自分の氏期だと理解する。
目を閉じ、体の力を抜く。
ゴウッ、という風を斬る音が彼の耳に確かに聞こえる。
体が硬くなり、力が籠る。
苦しそうな声を上げながら矢を放つ。
矢は一瞬のうちに風をまとい、巨大な槍のようになる。
お互いの距離は三メートル。
よほどの達人ではない限り回避は不可能。
風の槍はまるで紙を貫くように甲冑を貫く。
甲冑の穴からはおびただしい量の赤い液体が流れ出る。
どんなに改造されてもベースは人間という訳か。
残りは二体。
だがもはや戦う気力も力も残ってはいない。
彼の体にはそれを回避するほどの力も残っていない。
甲冑は斧を大きく振りかぶる。
銀色の斧は邪悪に輝いている。
ここが自分の氏期だと理解する。
目を閉じ、体の力を抜く。
ゴウッ、という風を斬る音が彼の耳に確かに聞こえる。
体が硬くなり、力が籠る。
64: 2012/02/16(木) 21:57:51.07 ID:rVz0apQK0
だがいつまで経っても体を斬られる様な感覚は無い。
それが逆に恐怖を加速させた。
「大丈夫ですか?」
それは戦場とは思えないほど冷静な女性の声だった。
頭の中を探っても誰かは思い出せない。
目を開け、周りの状況を確認する。
目の前には二人の人間が立っていた。
一人はポニーテールの背の高い女性だった。
無表情で氷の様な印象を受けた。
もう一人は金髪の男だった。
戦場に不釣り合いなほど綺麗な銀の鎧と剣はこの男を兵士では無い事を現していた。
「女戦士、その人を頼んだよ」
「分かっています」
それが逆に恐怖を加速させた。
「大丈夫ですか?」
それは戦場とは思えないほど冷静な女性の声だった。
頭の中を探っても誰かは思い出せない。
目を開け、周りの状況を確認する。
目の前には二人の人間が立っていた。
一人はポニーテールの背の高い女性だった。
無表情で氷の様な印象を受けた。
もう一人は金髪の男だった。
戦場に不釣り合いなほど綺麗な銀の鎧と剣はこの男を兵士では無い事を現していた。
「女戦士、その人を頼んだよ」
「分かっています」
65: 2012/02/16(木) 21:59:32.15 ID:rVz0apQK0
女戦士、と呼ばれた女性は彼の方に向き直り、近づいてくる。
相変わらずの無表情な顔に体が緊張する。
「誰だ、兵士じゃ無さそうだよな」
「イケメンです、あなたは?」
「弓兵だ」
これだけの会話で十分だった。
根掘り葉掘り聞かなくてもわかる。
どうやら敵では無いようだ。
会話が終わると、イケメンという名の男は剣を構え直し、残りの甲冑に斬りかかっていった。
「行きますよ」
そう言って女戦士は弓兵に腕を差し出した。
彼女のまた、屈強な戦士なのだろう。
情けないが、今は助けてもらわなければ歩く事も出来ない。
素直に相手の手を掴み、体を起してもらう。
そして体を支えて貰いながら歩き出す。
相変わらずの無表情な顔に体が緊張する。
「誰だ、兵士じゃ無さそうだよな」
「イケメンです、あなたは?」
「弓兵だ」
これだけの会話で十分だった。
根掘り葉掘り聞かなくてもわかる。
どうやら敵では無いようだ。
会話が終わると、イケメンという名の男は剣を構え直し、残りの甲冑に斬りかかっていった。
「行きますよ」
そう言って女戦士は弓兵に腕を差し出した。
彼女のまた、屈強な戦士なのだろう。
情けないが、今は助けてもらわなければ歩く事も出来ない。
素直に相手の手を掴み、体を起してもらう。
そして体を支えて貰いながら歩き出す。
66: 2012/02/16(木) 22:00:47.99 ID:rVz0apQK0
「あんた等は?」
「彼は勇者です」
弓兵はその言葉に僅かに首をかしげた。
彼は勇者を知っている。
正義なんても欠片も持ち合わせていない、最低の勇者を。
それに気付いたのか女戦士は補足をする。
「彼はもう一人の勇者です。正義の勇者、とでも言いますか」
彼女の言葉に彼は何も言わなかった。
疑っている訳ではない。
彼は正義という言葉を何の恥ずかしげもなく使うこの女性とさっきの男を羨ましいと感じていた。
まるで熟れる前の果実の様な青臭さ。
だがそれを懐かしいと感じた。
「彼は勇者です」
弓兵はその言葉に僅かに首をかしげた。
彼は勇者を知っている。
正義なんても欠片も持ち合わせていない、最低の勇者を。
それに気付いたのか女戦士は補足をする。
「彼はもう一人の勇者です。正義の勇者、とでも言いますか」
彼女の言葉に彼は何も言わなかった。
疑っている訳ではない。
彼は正義という言葉を何の恥ずかしげもなく使うこの女性とさっきの男を羨ましいと感じていた。
まるで熟れる前の果実の様な青臭さ。
だがそれを懐かしいと感じた。
67: 2012/02/16(木) 22:02:32.28 ID:rVz0apQK0
「ここまでで十分だ、後は勝手に逃げる」
弓兵はそう言うと、女戦士から離れた。
兵士では無い以上、何か目的がある。
ならそれを邪魔しては悪いと感じたからだ。
「行け」
女戦士は少しだけ戸惑ったが、すぐに来た道を帰っていく。
彼女の背中を弓兵はぼんやりと見ていた。
彼女が見えなくなると弓兵はその場に座り込み、空を見上げた。
紅蓮の炎に照らされた空を仰ぎ見ながら、体の力を抜く。
つかの間の休息のために。
弓兵はそう言うと、女戦士から離れた。
兵士では無い以上、何か目的がある。
ならそれを邪魔しては悪いと感じたからだ。
「行け」
女戦士は少しだけ戸惑ったが、すぐに来た道を帰っていく。
彼女の背中を弓兵はぼんやりと見ていた。
彼女が見えなくなると弓兵はその場に座り込み、空を見上げた。
紅蓮の炎に照らされた空を仰ぎ見ながら、体の力を抜く。
つかの間の休息のために。
68: 2012/02/16(木) 22:03:43.76 ID:rVz0apQK0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
夜
女勇者「時間ですね」
暗殺者「ああ、そうだな」
暗殺者「ほら、ナイフ」ポイッ
勇者「ああ」
勇者はナイフで指を少しだけ斬る。
勇者「これでいいのか」ポタポタ
ドラゴン「光る石に血を垂らすんだからこれでいいだろ」
サキュバス「それでいいわ」
勇者「……」
女勇者「ここからどうするんですか?」
勇者「俺に聞くな」
サキュバス「これで扉が開く」
夜
女勇者「時間ですね」
暗殺者「ああ、そうだな」
暗殺者「ほら、ナイフ」ポイッ
勇者「ああ」
勇者はナイフで指を少しだけ斬る。
勇者「これでいいのか」ポタポタ
ドラゴン「光る石に血を垂らすんだからこれでいいだろ」
サキュバス「それでいいわ」
勇者「……」
女勇者「ここからどうするんですか?」
勇者「俺に聞くな」
サキュバス「これで扉が開く」
69: 2012/02/16(木) 22:04:46.49 ID:rVz0apQK0
ドラゴン「扉?」
石の光が強くなり、光の扉が出現した。
勇者「なんだこれ!?」
サキュバス「テレポートと同じ原理よ」
勇者「テレポートって女大臣が使ってたあれか?」
女勇者「はい、今の世の中で最も習得が困難な魔法です」
サキュバス「魔王様の魔力と力があれば簡単な事よ」スタスタ
ドラゴン「凄いな、女大臣」
女勇者「はい、本当に凄い人です」
サキュバス「魔王様じゃないんだ……」
勇者「魔王は出来て当然」
女勇者「じゃあ行きますよ」スタスタ
勇者「あ、ああ」スタスタ
暗殺者「さて、魔王とご対面だ」スタスタ
ドラゴン「楽しみだな」スタスタ
石の光が強くなり、光の扉が出現した。
勇者「なんだこれ!?」
サキュバス「テレポートと同じ原理よ」
勇者「テレポートって女大臣が使ってたあれか?」
女勇者「はい、今の世の中で最も習得が困難な魔法です」
サキュバス「魔王様の魔力と力があれば簡単な事よ」スタスタ
ドラゴン「凄いな、女大臣」
女勇者「はい、本当に凄い人です」
サキュバス「魔王様じゃないんだ……」
勇者「魔王は出来て当然」
女勇者「じゃあ行きますよ」スタスタ
勇者「あ、ああ」スタスタ
暗殺者「さて、魔王とご対面だ」スタスタ
ドラゴン「楽しみだな」スタスタ
70: 2012/02/16(木) 22:06:20.44 ID:rVz0apQK0
今日はここまでです。
これからもちょっとだけ地の文多めになっちゃうと思います。
これからもちょっとだけ地の文多めになっちゃうと思います。
75: 2012/02/17(金) 21:41:05.76 ID:qc+kAxI40
~~~~~~~~~~~~~~~
港の町 魔法の町の船 船上
兵士「ひっ……!?」
狂戦士「ははは、もっと泣けよ、そうじゃないと面白くなんないだろ?」
兵士「……」
狂戦士「何黙ってんだよ!!」
狂戦士の蹴りが兵士の脇腹に直撃する。
兵士「げほげほっ……許して……下さい」
狂戦士「は、何言っちゃってんの?」
狂戦士「お前は捕虜だ、俺のいいなりになってりゃいいんだよ!!」
狂戦士の蹴りがもう一度兵士の脇腹に直撃する。
頃し屋「腐ってるね」
狂戦士「は?」
頃し屋「あ、聞こえちゃった、お前が腐ってるって言ってるだけだから気にしなくていいから」
港の町 魔法の町の船 船上
兵士「ひっ……!?」
狂戦士「ははは、もっと泣けよ、そうじゃないと面白くなんないだろ?」
兵士「……」
狂戦士「何黙ってんだよ!!」
狂戦士の蹴りが兵士の脇腹に直撃する。
兵士「げほげほっ……許して……下さい」
狂戦士「は、何言っちゃってんの?」
狂戦士「お前は捕虜だ、俺のいいなりになってりゃいいんだよ!!」
狂戦士の蹴りがもう一度兵士の脇腹に直撃する。
頃し屋「腐ってるね」
狂戦士「は?」
頃し屋「あ、聞こえちゃった、お前が腐ってるって言ってるだけだから気にしなくていいから」
76: 2012/02/17(金) 21:44:47.08 ID:qc+kAxI40
狂戦士「何言ってんだ、テメェ?」
頃し屋「言いたい事を言っただけ、俺素直だから、嘘つけないんだ」ニッコリ
狂戦士「兵士でも無いくせに調子に乗るな」
頃し屋「調子になんて乗ってないよ、あ、もしかして気に障っちゃった、ごめんごめん」
狂戦士「テメェふざけてんのか!!」
頃し屋「やっぱりね、ちゃんと謝るよごめんなさい」
狂戦士「クソがっ!!」
狂戦士は兵士の顔面を思いっきり殴る。
兵士「うぐ……」
頃し屋「お前、いつもそれやってるの?」
狂戦士「は?」
頃し屋「そうやって捕虜いじめて楽しい?」
狂戦士「楽しいに決まってるだろ、それに捕虜ってのに人権は無いだ、好きにしていいだろ」
頃し屋「……」
狂戦士「?」
頃し屋「それやめてくれる」
頃し屋「言いたい事を言っただけ、俺素直だから、嘘つけないんだ」ニッコリ
狂戦士「兵士でも無いくせに調子に乗るな」
頃し屋「調子になんて乗ってないよ、あ、もしかして気に障っちゃった、ごめんごめん」
狂戦士「テメェふざけてんのか!!」
頃し屋「やっぱりね、ちゃんと謝るよごめんなさい」
狂戦士「クソがっ!!」
狂戦士は兵士の顔面を思いっきり殴る。
兵士「うぐ……」
頃し屋「お前、いつもそれやってるの?」
狂戦士「は?」
頃し屋「そうやって捕虜いじめて楽しい?」
狂戦士「楽しいに決まってるだろ、それに捕虜ってのに人権は無いだ、好きにしていいだろ」
頃し屋「……」
狂戦士「?」
頃し屋「それやめてくれる」
77: 2012/02/17(金) 21:47:13.59 ID:qc+kAxI40
狂戦士「何をだ?」
頃し屋「そうやって捕虜殴ったり蹴ったりするの」
狂戦士「何言ってんだ、そんなの俺の自由だろ」
頃し屋「不愉快なんだよね、抵抗しない相手に暴力振るうのって」
狂戦士「何言ってんだ?」
頃し屋「そういう事すると心が痛まない?」
狂戦士「……ははははは、裏社会のカリスマが人を傷つけるなって言いたいのか!?」
頃し屋「そう言う事」
狂戦士「笑わせてくれるね、お前みたいな奴がそんな事言うなんてな」
頃し屋「もう一回言う、それやめてくれない?」
狂戦士「何言ってんだ、嫌に―――――」
その瞬間、捕虜の兵士の首が吹き飛ぶ。
狂戦士「な……に!?」
頃し屋「氏ぬ時くらい痛み無く楽にいかしてやりたいだろ」チャキッ
狂戦士「テメェ……」
頃し屋「痛みを感じさせながら氏なせるのはあまりにも酷だろ?」
狂戦士「社会の底辺が偉そうに」
頃し屋「裏社会はそうかもね、汚い仕事だし」
頃し屋「そうやって捕虜殴ったり蹴ったりするの」
狂戦士「何言ってんだ、そんなの俺の自由だろ」
頃し屋「不愉快なんだよね、抵抗しない相手に暴力振るうのって」
狂戦士「何言ってんだ?」
頃し屋「そういう事すると心が痛まない?」
狂戦士「……ははははは、裏社会のカリスマが人を傷つけるなって言いたいのか!?」
頃し屋「そう言う事」
狂戦士「笑わせてくれるね、お前みたいな奴がそんな事言うなんてな」
頃し屋「もう一回言う、それやめてくれない?」
狂戦士「何言ってんだ、嫌に―――――」
その瞬間、捕虜の兵士の首が吹き飛ぶ。
狂戦士「な……に!?」
頃し屋「氏ぬ時くらい痛み無く楽にいかしてやりたいだろ」チャキッ
狂戦士「テメェ……」
頃し屋「痛みを感じさせながら氏なせるのはあまりにも酷だろ?」
狂戦士「社会の底辺が偉そうに」
頃し屋「裏社会はそうかもね、汚い仕事だし」
78: 2012/02/17(金) 21:49:20.06 ID:qc+kAxI40
狂戦士「……ムカつく野郎だ」
頃し屋「奇遇だね、俺も思った、以心伝心ってやつかな?」
狂戦士「全然違う」
頃し屋「あ、そう、あはははは!!」
狂戦士「……」
頃し屋「そんな怖い顔するなよ」
狂戦士「……まあいいか、捕虜はまだたくさんいる」
頃し屋「片っ端から頃していってあげるよ、安らかで穏やかな氏を迎えられるようにね」ニッコリ
狂戦士「……ちっ、面白くねぇ」スタスタ
頃し屋「……やっぱり向こうについておくべきだったかな、面白くないし」
頃し屋「退屈なんだよね、なんかさ……」
頃し屋「……」
頃し屋「……出てきたらどうだい?」
頃し屋「奇遇だね、俺も思った、以心伝心ってやつかな?」
狂戦士「全然違う」
頃し屋「あ、そう、あはははは!!」
狂戦士「……」
頃し屋「そんな怖い顔するなよ」
狂戦士「……まあいいか、捕虜はまだたくさんいる」
頃し屋「片っ端から頃していってあげるよ、安らかで穏やかな氏を迎えられるようにね」ニッコリ
狂戦士「……ちっ、面白くねぇ」スタスタ
頃し屋「……やっぱり向こうについておくべきだったかな、面白くないし」
頃し屋「退屈なんだよね、なんかさ……」
頃し屋「……」
頃し屋「……出てきたらどうだい?」
79: 2012/02/17(金) 21:52:30.93 ID:qc+kAxI40
頃し屋「俺は誰にも言う気は無いし、お前等を頃す気は無いよ」
黒スライム「いつから気付いてた」ピョン
頃し屋「気付いたのは今、一人でいると勘が冴えるんだよ」
スライム「あなたは魔法の町の兵士ではないですね」
頃し屋「あ、知ってるんだ」
黒スライム「裏社会のカリスマ、頃し屋、で合ってるよな?」
頃し屋「よく知ってるね、いい諜報員だ」
スライム「……なぜあなたはこちら側に?」
頃し屋「理由なんて無いよ、ただ雇われたからここにいるだけ」
黒スライム「お前には自分ってものがないのか?」
頃し屋「それは違う、俺はビジネスとしてやってるだけだよ」
頃し屋「仕事は選ばない、それが俺」
スライム「……」
頃し屋「さっさと逃げた方がいいよ、狂戦士が帰ってくる」
黒スライム「なんで俺達を呼んだんだ」
頃し屋「なんとなくかな」
黒スライム・スライム「……」ピョンッ
頃し屋「……お互い手札は明かしきってない訳か」
頃し屋「さて、魔王はどっちの手札になるのかな……」
黒スライム「いつから気付いてた」ピョン
頃し屋「気付いたのは今、一人でいると勘が冴えるんだよ」
スライム「あなたは魔法の町の兵士ではないですね」
頃し屋「あ、知ってるんだ」
黒スライム「裏社会のカリスマ、頃し屋、で合ってるよな?」
頃し屋「よく知ってるね、いい諜報員だ」
スライム「……なぜあなたはこちら側に?」
頃し屋「理由なんて無いよ、ただ雇われたからここにいるだけ」
黒スライム「お前には自分ってものがないのか?」
頃し屋「それは違う、俺はビジネスとしてやってるだけだよ」
頃し屋「仕事は選ばない、それが俺」
スライム「……」
頃し屋「さっさと逃げた方がいいよ、狂戦士が帰ってくる」
黒スライム「なんで俺達を呼んだんだ」
頃し屋「なんとなくかな」
黒スライム・スライム「……」ピョンッ
頃し屋「……お互い手札は明かしきってない訳か」
頃し屋「さて、魔王はどっちの手札になるのかな……」
80: 2012/02/17(金) 21:55:23.89 ID:qc+kAxI40
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
不思議な空間
勇者「ここが?」
サキュバス「そうよ」
悪魔「ようこそいらっしゃいました」
そこには黒い翼の生えた美しい女性が立っていた。
女勇者「あなたは?」
悪魔「わたくし魔王様に仕えております、悪魔と申します」
暗殺者「……」
悪魔「あなた方の事は存じ上げております、サキュバスがお世話にやった様で」
サキュバス「悪魔……さん」
悪魔「帰り道を忘れるとは……あなたには教育が必要なようですね」
サキュバス「ええー!!」
悪魔が指を鳴らすと、サキュバスは動かなくなる。
悪魔「さて、魔王様がお待ちです、一緒に来ていただけますか?」
不思議な空間
勇者「ここが?」
サキュバス「そうよ」
悪魔「ようこそいらっしゃいました」
そこには黒い翼の生えた美しい女性が立っていた。
女勇者「あなたは?」
悪魔「わたくし魔王様に仕えております、悪魔と申します」
暗殺者「……」
悪魔「あなた方の事は存じ上げております、サキュバスがお世話にやった様で」
サキュバス「悪魔……さん」
悪魔「帰り道を忘れるとは……あなたには教育が必要なようですね」
サキュバス「ええー!!」
悪魔が指を鳴らすと、サキュバスは動かなくなる。
悪魔「さて、魔王様がお待ちです、一緒に来ていただけますか?」
81: 2012/02/17(金) 21:57:36.77 ID:qc+kAxI40
ドラゴン「元からそのつもりだ」
勇者「いいのか、魔王を頃しに来た勇者をみすみす通して」
悪魔「魔王様の命令は絶対です、わたくし達に逆らう権利はありません」
女勇者「聞けば聞くほど不思議な方ですね、魔王とは」
悪魔「本日は客人が多いようですね」
勇者「え?」
剣士「ここが?」スタスタ
博士「そうみたいだね」
暗殺者「お前等も来たのか」
博士「ああ、君達も来てたのか」
剣士「お久しぶりです」
女勇者「久しぶりですね」
暗殺者「もう一人はどうした」
博士「彼女は別の仕事をしてもらっているよ」
勇者「来ないのか?」
博士「来ないよ」
悪魔「お客人も全員揃いましたし、魔王様の所に」スタスタ
勇者「いいのか、魔王を頃しに来た勇者をみすみす通して」
悪魔「魔王様の命令は絶対です、わたくし達に逆らう権利はありません」
女勇者「聞けば聞くほど不思議な方ですね、魔王とは」
悪魔「本日は客人が多いようですね」
勇者「え?」
剣士「ここが?」スタスタ
博士「そうみたいだね」
暗殺者「お前等も来たのか」
博士「ああ、君達も来てたのか」
剣士「お久しぶりです」
女勇者「久しぶりですね」
暗殺者「もう一人はどうした」
博士「彼女は別の仕事をしてもらっているよ」
勇者「来ないのか?」
博士「来ないよ」
悪魔「お客人も全員揃いましたし、魔王様の所に」スタスタ
82: 2012/02/17(金) 21:59:39.63 ID:qc+kAxI40
勇者「ああ」スタスタ
剣士「ど、どういうことですか?」スタスタ
勇者「魔王に会うんだ、気を引き締めとけ」スタスタ
剣士「勇者さんは魔王を頃すんですか?」スタスタ
勇者「微妙だな、さすがにこんだけしといて話も聞かず戦闘とはならねぇだろ」スタスタ
女勇者「罠という可能性はありませんか?」スタスタ
暗殺者「俺達を頃すタイミングならさっきだってあったんだ、大丈夫だろ」スタスタ
勇者「まあ、用心するに越した事は無いけどな」スタスタ
悪魔「魔王様は不意打ちなどという下劣な事はしません」スタスタ
博士「ますます魔王というものに興味が湧くね」スタスタ
ドラゴン「剣士はどうする気だ?」スタスタ
剣士「僕はどうする気もありません」スタスタ
剣士「ただ魔王に会うためにに来たんです」スタスタ
勇者「……」スタスタ
悪魔「こちらのお部屋です」ガチャ
剣士「ど、どういうことですか?」スタスタ
勇者「魔王に会うんだ、気を引き締めとけ」スタスタ
剣士「勇者さんは魔王を頃すんですか?」スタスタ
勇者「微妙だな、さすがにこんだけしといて話も聞かず戦闘とはならねぇだろ」スタスタ
女勇者「罠という可能性はありませんか?」スタスタ
暗殺者「俺達を頃すタイミングならさっきだってあったんだ、大丈夫だろ」スタスタ
勇者「まあ、用心するに越した事は無いけどな」スタスタ
悪魔「魔王様は不意打ちなどという下劣な事はしません」スタスタ
博士「ますます魔王というものに興味が湧くね」スタスタ
ドラゴン「剣士はどうする気だ?」スタスタ
剣士「僕はどうする気もありません」スタスタ
剣士「ただ魔王に会うためにに来たんです」スタスタ
勇者「……」スタスタ
悪魔「こちらのお部屋です」ガチャ
83: 2012/02/17(金) 22:03:51.55 ID:qc+kAxI40
勇者「行くぞ」スタスタ
ドラゴン・暗殺者「ああ」スタスタ
女勇者・剣士「はい」スタスタ
魔王「……お主達が勇者御一行、でいいのだな?」
そこにはねじれた二本の角が生えた見た目20歳後半の美しい女性が椅子に座っていた。
ゴシック調のドレスを身にまとった姿は角以外ただの人間だった。
勇者「……ま、魔王?」
魔王「いかにも、私が魔王だ」
剣士「女の人?」
魔王「女だったらなんなのだ?」
剣士「いえ、別に……」
ドラゴン「姿は女だが、魔王は魔王だな」
魔王「ほう、気高き竜か」
ドラゴン「貴様だって魔族の王、魔王だろ」
魔王「まさか竜がいるとはな、予想外だ」
女勇者「竜がいると何か厄介なんですか?」
魔王「いや、そう言う訳ではない、ただうれしいのだ、同じ高等種族と会えてな」
ドラゴン・暗殺者「ああ」スタスタ
女勇者・剣士「はい」スタスタ
魔王「……お主達が勇者御一行、でいいのだな?」
そこにはねじれた二本の角が生えた見た目20歳後半の美しい女性が椅子に座っていた。
ゴシック調のドレスを身にまとった姿は角以外ただの人間だった。
勇者「……ま、魔王?」
魔王「いかにも、私が魔王だ」
剣士「女の人?」
魔王「女だったらなんなのだ?」
剣士「いえ、別に……」
ドラゴン「姿は女だが、魔王は魔王だな」
魔王「ほう、気高き竜か」
ドラゴン「貴様だって魔族の王、魔王だろ」
魔王「まさか竜がいるとはな、予想外だ」
女勇者「竜がいると何か厄介なんですか?」
魔王「いや、そう言う訳ではない、ただうれしいのだ、同じ高等種族と会えてな」
89: 2012/02/18(土) 21:48:14.24 ID:6sRFrxLE0
勇者「なあ、質問していいか?」
魔王「私の分かる範囲なら答えよう」
勇者「魔王ってのは勇者に殺されて氏んだんじゃないのか?」
魔王「一代前の魔王は氏んだ」
暗殺者「……ならあんたは娘って事か?」
魔王「まさか、魔王は世界に一人しか存在できぬ」
勇者「じゃあどうやって――――」
魔王「魔王はな、世界によって生み出されるのだ」
勇者「世界?」
魔王「そう、世界だ」
魔王「私が目覚めた時には私はもう魔王だったのだ」
勇者「い、意味がわかんねぇ……」
ドラゴン「魔王は世界に一人、もし魔王が氏んだら世界が代わりのの魔王を造り出すって所か?」
魔王「そんな所だ、だから魔王は絶滅する事もなければ増える事もない」
女勇者「魔王と言うのはそこまで重要なんですか?」
魔王「魔王とは文字通り魔の王、お主等で言う所の王と同じ役割だ」
魔王「私の分かる範囲なら答えよう」
勇者「魔王ってのは勇者に殺されて氏んだんじゃないのか?」
魔王「一代前の魔王は氏んだ」
暗殺者「……ならあんたは娘って事か?」
魔王「まさか、魔王は世界に一人しか存在できぬ」
勇者「じゃあどうやって――――」
魔王「魔王はな、世界によって生み出されるのだ」
勇者「世界?」
魔王「そう、世界だ」
魔王「私が目覚めた時には私はもう魔王だったのだ」
勇者「い、意味がわかんねぇ……」
ドラゴン「魔王は世界に一人、もし魔王が氏んだら世界が代わりのの魔王を造り出すって所か?」
魔王「そんな所だ、だから魔王は絶滅する事もなければ増える事もない」
女勇者「魔王と言うのはそこまで重要なんですか?」
魔王「魔王とは文字通り魔の王、お主等で言う所の王と同じ役割だ」
90: 2012/02/18(土) 21:50:44.00 ID:6sRFrxLE0
剣士「王様、ですか?」
魔王「町を繁栄させるのも治安を安定させるのも王は必要だろ」
魔王「特に魔の者の統治には絶大な力を持った者が必要になる、それが私、魔王だ」
勇者「それで魔王が必要って事か」
魔王「その通りだ」
女勇者「では魔王を頃すのは不可能なのですか?」
魔王「そうなるだろうな、それにもし魔王がいなくなれば世界は魔の者はさらに暴走するだろう」
暗殺者「じゃあお前を頃しても仕方ないのか」
魔王「そうなるな」
魔王「魔王なんてものは所詮システムだ、魔の者を統治するためのな」
勇者「そこまででは無いだろ、お前だって自分ってもんがあるだろ」
魔王「私にそんなものは無い、私は魔を統治するシステムであればいいのだ」
剣士「……そんなのであなたはいいんですか?」
魔王「人を統べるのに感情はいらんだろ、なら私は感情などいらん」
剣士「そんな……」
魔王「王に感情はいらんのだ、感情は時に判断を間違えさせる」
剣士「じゃあ、じゃああなたは何のために生きてるんですか!!」
勇者「落ちつけ」
魔王「言っただろ、私は魔の王として生きている、それ以外の何でもない」
魔王「町を繁栄させるのも治安を安定させるのも王は必要だろ」
魔王「特に魔の者の統治には絶大な力を持った者が必要になる、それが私、魔王だ」
勇者「それで魔王が必要って事か」
魔王「その通りだ」
女勇者「では魔王を頃すのは不可能なのですか?」
魔王「そうなるだろうな、それにもし魔王がいなくなれば世界は魔の者はさらに暴走するだろう」
暗殺者「じゃあお前を頃しても仕方ないのか」
魔王「そうなるな」
魔王「魔王なんてものは所詮システムだ、魔の者を統治するためのな」
勇者「そこまででは無いだろ、お前だって自分ってもんがあるだろ」
魔王「私にそんなものは無い、私は魔を統治するシステムであればいいのだ」
剣士「……そんなのであなたはいいんですか?」
魔王「人を統べるのに感情はいらんだろ、なら私は感情などいらん」
剣士「そんな……」
魔王「王に感情はいらんのだ、感情は時に判断を間違えさせる」
剣士「じゃあ、じゃああなたは何のために生きてるんですか!!」
勇者「落ちつけ」
魔王「言っただろ、私は魔の王として生きている、それ以外の何でもない」
91: 2012/02/18(土) 21:51:47.71 ID:6sRFrxLE0
魔王「前の魔王は感情移入しすぎたからあんな事になったのだ」
暗殺者「だからお前は感情を頃してる訳か」
勇者「なん楽しみもなくて良く生きてられるよな」
魔王「私は前の魔王とは違うのだ」
女勇者「前の魔王は自由に生きていたんですか?」
魔王「前の魔王は男だったからな、ここなら楽しみは尽きんだろ」
博士「魔王は世界に一人しかいちゃいけないんじゃないのかい?」
魔王「魔王は常に純潔でなければ意味がないのだ」
魔王「繁殖は出来るが、それは純粋な魔王では無いのだ」
勇者「じゃあ魔王の血が混じった奴らがいるって事か?」
魔王「そうだな、お主達だってそうだぞ」
勇者「え?」
剣士「は?」
魔王「この空間の扉を開けられるのは魔王の血が混じった者達だけだ」
魔王「勇者の血に反応した訳ではない、魔王の血に反応したのだ」
勇者「じゃあ俺や剣士やイケメンってのは……」
魔王「ずいぶん薄くなってはいるが、魔王の血を引いておる」
剣士「そうだったんですか……」
暗殺者「だからお前は感情を頃してる訳か」
勇者「なん楽しみもなくて良く生きてられるよな」
魔王「私は前の魔王とは違うのだ」
女勇者「前の魔王は自由に生きていたんですか?」
魔王「前の魔王は男だったからな、ここなら楽しみは尽きんだろ」
博士「魔王は世界に一人しかいちゃいけないんじゃないのかい?」
魔王「魔王は常に純潔でなければ意味がないのだ」
魔王「繁殖は出来るが、それは純粋な魔王では無いのだ」
勇者「じゃあ魔王の血が混じった奴らがいるって事か?」
魔王「そうだな、お主達だってそうだぞ」
勇者「え?」
剣士「は?」
魔王「この空間の扉を開けられるのは魔王の血が混じった者達だけだ」
魔王「勇者の血に反応した訳ではない、魔王の血に反応したのだ」
勇者「じゃあ俺や剣士やイケメンってのは……」
魔王「ずいぶん薄くなってはいるが、魔王の血を引いておる」
剣士「そうだったんですか……」
92: 2012/02/18(土) 21:53:40.67 ID:6sRFrxLE0
勇者「嘘臭ぇ……」
女勇者「勇者、あなたはスライムの言葉を理解したら他のモンスターの言葉も分かるようになったと言っていましたよね?」
勇者「ああ、それがどうした」
女勇者「おかしいと思いませんか、全く違う言語をしゃべる魔物の言葉が全てわかるなんて」
勇者「……」
魔王「魔物の言葉がわかるのは魔王の特徴の一つだ」
魔王「お主にはその素質が受け継がれたのだな」
女勇者「それに何故スライムはあんなに簡単にそんな便利な笛をくれたのですか?」
勇者「俺が……魔王の血を引いているから?」
女勇者「断定はできません、しかし可能性はあります」
剣士「じゃあ僕も勇者さんも魔王の子でもあるって事ですか?」
魔王「そう言う事になるな」
勇者「そうだとしても、なんて言うか、今更そんな事言われてもな……」
剣士「……そうですね、そこまで驚かないです」
魔王「気にはしないのだな」
勇者「魔王の血を引いてるからって何かが変わる訳じゃないだろ」
ドラゴン「まあ、そうだな」
女勇者「勇者、あなたはスライムの言葉を理解したら他のモンスターの言葉も分かるようになったと言っていましたよね?」
勇者「ああ、それがどうした」
女勇者「おかしいと思いませんか、全く違う言語をしゃべる魔物の言葉が全てわかるなんて」
勇者「……」
魔王「魔物の言葉がわかるのは魔王の特徴の一つだ」
魔王「お主にはその素質が受け継がれたのだな」
女勇者「それに何故スライムはあんなに簡単にそんな便利な笛をくれたのですか?」
勇者「俺が……魔王の血を引いているから?」
女勇者「断定はできません、しかし可能性はあります」
剣士「じゃあ僕も勇者さんも魔王の子でもあるって事ですか?」
魔王「そう言う事になるな」
勇者「そうだとしても、なんて言うか、今更そんな事言われてもな……」
剣士「……そうですね、そこまで驚かないです」
魔王「気にはしないのだな」
勇者「魔王の血を引いてるからって何かが変わる訳じゃないだろ」
ドラゴン「まあ、そうだな」
93: 2012/02/18(土) 21:56:20.15 ID:6sRFrxLE0
魔王「……他に聞きたい事はあるか?」
勇者「無い」
博士「特にないかな」
魔王「……夜も遅い、悪魔」
悪魔「はい、お部屋は用意してあります」
暗殺者「いいのか、俺達を泊めて?」
魔王「私を殺せるとでも?」
勇者「だよな」
魔王「案内は任せたぞ」
悪魔「承知しました」
悪魔「皆さまこちらへ」
勇者「無い」
博士「特にないかな」
魔王「……夜も遅い、悪魔」
悪魔「はい、お部屋は用意してあります」
暗殺者「いいのか、俺達を泊めて?」
魔王「私を殺せるとでも?」
勇者「だよな」
魔王「案内は任せたぞ」
悪魔「承知しました」
悪魔「皆さまこちらへ」
94: 2012/02/18(土) 21:57:21.83 ID:6sRFrxLE0
~~~~~~~~~~~~~~~~~
温泉の町 連合軍作戦本部
お頭「武器の町に敵部隊が来たな」
女大臣「そうですね」
王「港の町はおちたのか?」
女大臣「いえ、港の町は他の部隊の増援によってとり返してあります」
マスター「じゃが、かなりの量の兵士が武器の町まで行ってしまったようじゃな」
女大臣「面目ありません」
マスター「気にする事ではないわい」
長老「武器の町の状態はどうなっておるのだ?」
女大臣「ハンター達を含めた部隊が交戦中です」
お頭「港の町の兵士を増援として送ったらどうなんだ?」
女大臣「それでは港の町がおとされてしまいます」
温泉の町 連合軍作戦本部
お頭「武器の町に敵部隊が来たな」
女大臣「そうですね」
王「港の町はおちたのか?」
女大臣「いえ、港の町は他の部隊の増援によってとり返してあります」
マスター「じゃが、かなりの量の兵士が武器の町まで行ってしまったようじゃな」
女大臣「面目ありません」
マスター「気にする事ではないわい」
長老「武器の町の状態はどうなっておるのだ?」
女大臣「ハンター達を含めた部隊が交戦中です」
お頭「港の町の兵士を増援として送ったらどうなんだ?」
女大臣「それでは港の町がおとされてしまいます」
95: 2012/02/18(土) 21:58:27.36 ID:6sRFrxLE0
お頭「ならここから増援を――――」
女大臣「すでに送ってあります」
マスター「待つしかない、と言う訳か」
女大臣「そう言う事です」
金髪「こんちわっす!!」ガチャ
お頭「誰だ!!」
女大臣「私達の町の者です」
金髪「俺達も何か手伝わせてほしいんす!!」
お頭「ダメだ、お前の様な子供が出る幕じゃない!!」
金髪「絶対何かの力になれるっす、お願いします!!」
マスター「お主は何が出来るんじゃ?」
金髪「諜報っす」
金髪「勇者さんだって頑張ってるんす、俺だって何かしたいんすよ!!」
王「では魔法の町の兵力を調べてくれるか?」
お頭「何を……」
女大臣「すでに送ってあります」
マスター「待つしかない、と言う訳か」
女大臣「そう言う事です」
金髪「こんちわっす!!」ガチャ
お頭「誰だ!!」
女大臣「私達の町の者です」
金髪「俺達も何か手伝わせてほしいんす!!」
お頭「ダメだ、お前の様な子供が出る幕じゃない!!」
金髪「絶対何かの力になれるっす、お願いします!!」
マスター「お主は何が出来るんじゃ?」
金髪「諜報っす」
金髪「勇者さんだって頑張ってるんす、俺だって何かしたいんすよ!!」
王「では魔法の町の兵力を調べてくれるか?」
お頭「何を……」
96: 2012/02/18(土) 21:59:11.60 ID:6sRFrxLE0
王「決して氏んではならんぞ」
金髪「……ありがとうございます!!」
マスター「ではさっそく行ってこい」
金髪「了解っす!!」ガチャ
お頭「いいのか?」
女大臣「彼の力量はあなたの想像以上です、それに止めても無駄でしょうからね」
王「そうじゃな」
マスター「こんな所で作戦しか練る事が出来ないとわな……」
長老「仕方のない事とはいえ、やはり心苦しいものだ」
王「わし等に出来る事はこの戦いを早く終わらせる事だけじゃ」
マスター「そうじゃな、それしか出来んな……」
金髪「……ありがとうございます!!」
マスター「ではさっそく行ってこい」
金髪「了解っす!!」ガチャ
お頭「いいのか?」
女大臣「彼の力量はあなたの想像以上です、それに止めても無駄でしょうからね」
王「そうじゃな」
マスター「こんな所で作戦しか練る事が出来ないとわな……」
長老「仕方のない事とはいえ、やはり心苦しいものだ」
王「わし等に出来る事はこの戦いを早く終わらせる事だけじゃ」
マスター「そうじゃな、それしか出来んな……」
97: 2012/02/18(土) 22:00:32.28 ID:6sRFrxLE0
~~~~~~~~~~~~~~~~~
勇者達の部屋
勇者「魔王を討伐なんだけど、しなくていいよな?」
女勇者「そうですね、彼女と戦った所で意味は無いですし」
ドラゴン「次の魔王が話の通じん奴だと困るしな」
暗殺者「なあ、戦争の最中なのにこんな所で寝てていいのか?」
勇者「あいつ等は魔王を捕まえに来るんだろ、ならここにいた方が都合がいい」
女勇者「ここで敵を迎え撃つんですか?」
勇者「そのつもりだ」
暗殺者「まあ、それも有りか」
ドラゴン「下手にウロチョロするよりはよっぽどいい作戦だ」
女勇者「では敵が来るまでは待機と言う事ですね」
勇者「ああ、とりあえず今は休んでてくれ」
女勇者「勇者はどうするんですか?」
勇者「剣士と博士にこの事を伝えてくる」スタスタ
ドラゴン「あ、オレも行く」
勇者「行くなら行くぞ」スタスタ
勇者達の部屋
勇者「魔王を討伐なんだけど、しなくていいよな?」
女勇者「そうですね、彼女と戦った所で意味は無いですし」
ドラゴン「次の魔王が話の通じん奴だと困るしな」
暗殺者「なあ、戦争の最中なのにこんな所で寝てていいのか?」
勇者「あいつ等は魔王を捕まえに来るんだろ、ならここにいた方が都合がいい」
女勇者「ここで敵を迎え撃つんですか?」
勇者「そのつもりだ」
暗殺者「まあ、それも有りか」
ドラゴン「下手にウロチョロするよりはよっぽどいい作戦だ」
女勇者「では敵が来るまでは待機と言う事ですね」
勇者「ああ、とりあえず今は休んでてくれ」
女勇者「勇者はどうするんですか?」
勇者「剣士と博士にこの事を伝えてくる」スタスタ
ドラゴン「あ、オレも行く」
勇者「行くなら行くぞ」スタスタ
103: 2012/02/19(日) 21:46:03.99 ID:SpOvGVQQ0
勇者「珍しいな、ついてくるなんて」スタスタ
ドラゴン「たまにはいいだろ」スタスタ
勇者「入るぞ」ガチャ
剣士「ああ、勇者さん、ドラゴンさん」
勇者「あれ、博士は?」
剣士「もう寝ました」
勇者「そうか……剣士、俺達はここに残るんだがお前等はどうする?」
剣士「え、どういう事ですか?」
勇者「魔法の町の奴等がここに来るんだ、だからここで奴らを潰す」
剣士「そ、そうなんですか……」
勇者「で、お前等がどうするのかと思って来たんだけど」
剣士「もちろん僕達も残ります、少しくらい皆さんの力になりたいですから」
ドラゴン「そう言うと思ってたぞ」
剣士「え?」
ドラゴン「貴様とは少しの間だが一緒にいたからな、それくらいの事はわかる」
勇者「なら決定だ」
剣士「……勇者さん」
勇者「ん、どうした?」
剣士「ゆ、勇者さんは魔王さんの事どう思いますか?」
勇者「どうって、別にどうも思わないけど」
ドラゴン「たまにはいいだろ」スタスタ
勇者「入るぞ」ガチャ
剣士「ああ、勇者さん、ドラゴンさん」
勇者「あれ、博士は?」
剣士「もう寝ました」
勇者「そうか……剣士、俺達はここに残るんだがお前等はどうする?」
剣士「え、どういう事ですか?」
勇者「魔法の町の奴等がここに来るんだ、だからここで奴らを潰す」
剣士「そ、そうなんですか……」
勇者「で、お前等がどうするのかと思って来たんだけど」
剣士「もちろん僕達も残ります、少しくらい皆さんの力になりたいですから」
ドラゴン「そう言うと思ってたぞ」
剣士「え?」
ドラゴン「貴様とは少しの間だが一緒にいたからな、それくらいの事はわかる」
勇者「なら決定だ」
剣士「……勇者さん」
勇者「ん、どうした?」
剣士「ゆ、勇者さんは魔王さんの事どう思いますか?」
勇者「どうって、別にどうも思わないけど」
104: 2012/02/19(日) 21:47:52.07 ID:SpOvGVQQ0
剣士「自分を押し頃してまで魔王やってるなんてかわいそうじゃないですか……」
勇者「…………お前本気で思ってるのか?」
剣士「はい、だって――――」
勇者「魔王はなんでああやってると思う?」
剣士「それは……」
勇者「あいつは王として他の魔物のためにああやってんだ」
勇者「それをかわいそうって言うのは違うんじゃないのか?」
剣士「で、でも、あんなの生きてるなんて言えるんですか」
勇者「言えないな、あそこまで感情の無い奴を生きてるとは言えない」
剣士「なら―――――」
勇者「お前が今しようとしている事をなんて言うか知ってるか?」
剣士「え?」
勇者「お前は自分の価値観をあいつに押しつけてる」
勇者「それであいつを救うって言うのか?」
剣士「それは……」
勇者「そういうのを自己満足って言うんだよ」
剣士「そ、そんな……」
勇者「あいつは望んでシステムになってんだ、俺達が口出しなんて出来ないだろ」
勇者「魔王が自分と同じ考えだと思うな」
剣士「……勇者さんはあれでいいと思うんですか?」
勇者「いいとは思わねぇけどどうにかしようとも思わない、口出しする気もない」
勇者「…………お前本気で思ってるのか?」
剣士「はい、だって――――」
勇者「魔王はなんでああやってると思う?」
剣士「それは……」
勇者「あいつは王として他の魔物のためにああやってんだ」
勇者「それをかわいそうって言うのは違うんじゃないのか?」
剣士「で、でも、あんなの生きてるなんて言えるんですか」
勇者「言えないな、あそこまで感情の無い奴を生きてるとは言えない」
剣士「なら―――――」
勇者「お前が今しようとしている事をなんて言うか知ってるか?」
剣士「え?」
勇者「お前は自分の価値観をあいつに押しつけてる」
勇者「それであいつを救うって言うのか?」
剣士「それは……」
勇者「そういうのを自己満足って言うんだよ」
剣士「そ、そんな……」
勇者「あいつは望んでシステムになってんだ、俺達が口出しなんて出来ないだろ」
勇者「魔王が自分と同じ考えだと思うな」
剣士「……勇者さんはあれでいいと思うんですか?」
勇者「いいとは思わねぇけどどうにかしようとも思わない、口出しする気もない」
105: 2012/02/19(日) 21:49:31.51 ID:SpOvGVQQ0
剣士「……」
剣士「で、でもやっぱり僕は納得できません」
勇者「なら魔王の所に行って直接言えばいいだろ」ガリガリ
剣士「……」
勇者「ただ、行ってどうにかできるとは俺は思わねぇ」
剣士「勇者さん……ありがとうございます」スタスタ
勇者「お礼言われる筋合いはねぇよ」
ドラゴン「いいのか?」
勇者「俺だって魔王の考え方は間違ってると思うし、別にいいだろ」
ドラゴン「それにしてはずいぶん噛みついてただろ」
勇者「あれぐらいで諦めるなら言わない方がいい」
ドラゴン「剣士にしては珍しくずいぶん熱く語ってたな」
勇者「一人くらいほど良い正義感を持った普通の奴がいてもいいだろ?」
ドラゴン「兄弟とは似るものだな」
勇者「ん?」
ドラゴン「貴様だってオレの所に来てくれただろ、あの時」
勇者「……覚えてないかな」
ドラゴン「貴様、ずるいぞ!!」
勇者「知るか」
剣士「で、でもやっぱり僕は納得できません」
勇者「なら魔王の所に行って直接言えばいいだろ」ガリガリ
剣士「……」
勇者「ただ、行ってどうにかできるとは俺は思わねぇ」
剣士「勇者さん……ありがとうございます」スタスタ
勇者「お礼言われる筋合いはねぇよ」
ドラゴン「いいのか?」
勇者「俺だって魔王の考え方は間違ってると思うし、別にいいだろ」
ドラゴン「それにしてはずいぶん噛みついてただろ」
勇者「あれぐらいで諦めるなら言わない方がいい」
ドラゴン「剣士にしては珍しくずいぶん熱く語ってたな」
勇者「一人くらいほど良い正義感を持った普通の奴がいてもいいだろ?」
ドラゴン「兄弟とは似るものだな」
勇者「ん?」
ドラゴン「貴様だってオレの所に来てくれただろ、あの時」
勇者「……覚えてないかな」
ドラゴン「貴様、ずるいぞ!!」
勇者「知るか」
107: 2012/02/19(日) 21:51:33.40 ID:SpOvGVQQ0
ドラゴン「二人の……出会いだろ……」
勇者「……いつそんな恥ずかしい台詞を覚えた」
ドラゴン「女勇者の小説だ」
勇者「あのバカか、結局あのバカか」
ドラゴン「女勇者が聞いたらキレるぞ」
勇者「分かってるからここで言ってんだ」
ドラゴン「……勇者、本当に忘れたのか?」
勇者「覚えてる覚えてる、ちゃんと全部覚えてるから」
ドラゴン「……オレが言った事も覚えてるか?」
勇者「だいたいならな」
ドラゴン「……」
勇者「文句でも?」
ドラゴン「やっぱり貴様は最高だな」ダキッ
勇者「ちょっ……離れろ」
ドラゴン「あははは、嫌だ!!」
勇者「暑苦しいだろ!!」
ドラゴン「いいだろ」
博士「……楽しそうなとこ悪いんだけど、よそでやってくれないかな、眠いんだ」
勇者・ドラゴン「……す、すまん」
勇者「……いつそんな恥ずかしい台詞を覚えた」
ドラゴン「女勇者の小説だ」
勇者「あのバカか、結局あのバカか」
ドラゴン「女勇者が聞いたらキレるぞ」
勇者「分かってるからここで言ってんだ」
ドラゴン「……勇者、本当に忘れたのか?」
勇者「覚えてる覚えてる、ちゃんと全部覚えてるから」
ドラゴン「……オレが言った事も覚えてるか?」
勇者「だいたいならな」
ドラゴン「……」
勇者「文句でも?」
ドラゴン「やっぱり貴様は最高だな」ダキッ
勇者「ちょっ……離れろ」
ドラゴン「あははは、嫌だ!!」
勇者「暑苦しいだろ!!」
ドラゴン「いいだろ」
博士「……楽しそうなとこ悪いんだけど、よそでやってくれないかな、眠いんだ」
勇者・ドラゴン「……す、すまん」
108: 2012/02/19(日) 21:52:47.92 ID:SpOvGVQQ0
魔王の部屋
剣士「入っていいですか」コンコン
魔王「勝手にしろ」
剣士「失礼します」
魔王「何の用だ」
剣士「魔王さんは感情を頃して生きる事をいいと思ってやってるんですよね?」
魔王「……くどいな、私が王である以上そうするしかなかろう」
剣士「でもやっぱり僕は納得できないんです」
魔王「お主何歳だ」
剣士「え、14です」
魔王「一世紀も生きていない若造が私に説教か……」
剣士「説教じゃないです、ただ僕が思う事を言いたいだけです」
魔王「ならさっさと言え」
剣士「僕は魔王さんに感情ある生活を送ってほしいんです」
魔王「……ほう」
剣士「普通に楽しい事したり恋したりしてもいいんじゃないですか?」
剣士「入っていいですか」コンコン
魔王「勝手にしろ」
剣士「失礼します」
魔王「何の用だ」
剣士「魔王さんは感情を頃して生きる事をいいと思ってやってるんですよね?」
魔王「……くどいな、私が王である以上そうするしかなかろう」
剣士「でもやっぱり僕は納得できないんです」
魔王「お主何歳だ」
剣士「え、14です」
魔王「一世紀も生きていない若造が私に説教か……」
剣士「説教じゃないです、ただ僕が思う事を言いたいだけです」
魔王「ならさっさと言え」
剣士「僕は魔王さんに感情ある生活を送ってほしいんです」
魔王「……ほう」
剣士「普通に楽しい事したり恋したりしてもいいんじゃないですか?」
109: 2012/02/19(日) 21:55:11.39 ID:SpOvGVQQ0
魔王「……バカバカしいな」
剣士「バカバカしくないです」
魔王「お主は本気でそう思っておるのか?」
剣士「はい、魔王としてだけ生きるなんて勿体ないですよ」
魔王「……はは、あははははは!!」
剣士「な、何がおかしいんですか!?」
魔王「面白い事を言うんだな、お主は」
剣士「え?」
魔王「お主は私が普通に何かを楽しんだり、誰かを愛する事が出来るとでも思っておるのか?」
剣士「はい、絶対に」
魔王「……」
魔王「お主は何も分かっておらぬ……魔王は、孤独なのだ」
剣士「悪魔さんやサキュバスさんがいるじゃないですか」
魔王「彼女達は使用人だ、友人でも何でもない」
魔王「私には友も家族もおらんのだ……」
剣士「……」
魔王「わかっただ―――――」
剣士「ぼ、僕がいます」
剣士「魔王の血を引いてるんですから遠い親戚な訳です」
魔王「……阿呆が、昔の魔王と私はまったくの別物だ」
剣士「バカバカしくないです」
魔王「お主は本気でそう思っておるのか?」
剣士「はい、魔王としてだけ生きるなんて勿体ないですよ」
魔王「……はは、あははははは!!」
剣士「な、何がおかしいんですか!?」
魔王「面白い事を言うんだな、お主は」
剣士「え?」
魔王「お主は私が普通に何かを楽しんだり、誰かを愛する事が出来るとでも思っておるのか?」
剣士「はい、絶対に」
魔王「……」
魔王「お主は何も分かっておらぬ……魔王は、孤独なのだ」
剣士「悪魔さんやサキュバスさんがいるじゃないですか」
魔王「彼女達は使用人だ、友人でも何でもない」
魔王「私には友も家族もおらんのだ……」
剣士「……」
魔王「わかっただ―――――」
剣士「ぼ、僕がいます」
剣士「魔王の血を引いてるんですから遠い親戚な訳です」
魔王「……阿呆が、昔の魔王と私はまったくの別物だ」
110: 2012/02/19(日) 21:57:27.48 ID:SpOvGVQQ0
剣士「で、でも親戚な事に代わりは無いです」
魔王「阿呆が……」
剣士「勇者さんだっている、魔王さんは一人じゃないですよ」
魔王「……お主は何故そこまでしてくれる」
剣士「何がですか?」
魔王「さっき会ったばっかりの私の事を何故そこまで考えてくれるのだ?」
剣士「独りぼっちの寂しさが分かるからです」
魔王「……」
剣士「僕も昔は独りぼっちだったんで……」
魔王「……そうか」
剣士「今は博士さんもいますし、勇者さんやイケメンさんもいますから」
魔王「……」
剣士「だから、だから魔王さんも……」
魔王「私も独りぼっちから救いたいという訳か」
剣士「はい」
魔王「……自己満足だな」
魔王「阿呆が……」
剣士「勇者さんだっている、魔王さんは一人じゃないですよ」
魔王「……お主は何故そこまでしてくれる」
剣士「何がですか?」
魔王「さっき会ったばっかりの私の事を何故そこまで考えてくれるのだ?」
剣士「独りぼっちの寂しさが分かるからです」
魔王「……」
剣士「僕も昔は独りぼっちだったんで……」
魔王「……そうか」
剣士「今は博士さんもいますし、勇者さんやイケメンさんもいますから」
魔王「……」
剣士「だから、だから魔王さんも……」
魔王「私も独りぼっちから救いたいという訳か」
剣士「はい」
魔王「……自己満足だな」
111: 2012/02/19(日) 21:59:31.63 ID:SpOvGVQQ0
剣士「勇者さんにも言われました」
魔王「阿呆だな、お主は最高に阿呆だ」
剣士「そ、そうかもしれないです」
魔王「だが、お主の様な人間は嫌いではない」
剣士「……」
魔王「お主が教えてくれるんだろ?」
剣士「え?」
魔王「楽しい事や何かを愛する事を」
剣士「ぼ、僕がですか!?」
魔王「嫌か?」
剣士「こ、恋は別として、楽しい事なら……」
魔王「頼むぞ」ニッコリ
剣士「は、はい」
魔王「……少し休ませてもらえるか?」
剣士「あ、はい、すいません」
剣士「お休みなさい」ガチャ
魔王「……お休み」
魔王「阿呆だな、お主は最高に阿呆だ」
剣士「そ、そうかもしれないです」
魔王「だが、お主の様な人間は嫌いではない」
剣士「……」
魔王「お主が教えてくれるんだろ?」
剣士「え?」
魔王「楽しい事や何かを愛する事を」
剣士「ぼ、僕がですか!?」
魔王「嫌か?」
剣士「こ、恋は別として、楽しい事なら……」
魔王「頼むぞ」ニッコリ
剣士「は、はい」
魔王「……少し休ませてもらえるか?」
剣士「あ、はい、すいません」
剣士「お休みなさい」ガチャ
魔王「……お休み」
112: 2012/02/19(日) 22:00:23.71 ID:SpOvGVQQ0
魔王「……」
魔王「入ってきてもいいぞ」
勇者「バレてたか」スタスタ
ドラゴン「だから言っただろ」
魔王「ここは私を誰だと思っておる、それくらい分かるわ」
勇者「あ、そう」
勇者「あんまり反論しなかったな」
魔王「あんな子供に反論しても仕方があるまい」
魔王「それに剣士と言ったか、あの者は私を魔王とは見ていなかった」
勇者「魔王とか種族が違うとか気にしないんだよ」
ドラゴン「貴様と同じでな」
勇者「……かもな」
魔王「聞きたいのだが、お主は何故人間になったのだ?」
ドラゴン「勇者と契りを交わすためだ」
魔王「……そのために竜である事をやめたのか?」
魔王「入ってきてもいいぞ」
勇者「バレてたか」スタスタ
ドラゴン「だから言っただろ」
魔王「ここは私を誰だと思っておる、それくらい分かるわ」
勇者「あ、そう」
勇者「あんまり反論しなかったな」
魔王「あんな子供に反論しても仕方があるまい」
魔王「それに剣士と言ったか、あの者は私を魔王とは見ていなかった」
勇者「魔王とか種族が違うとか気にしないんだよ」
ドラゴン「貴様と同じでな」
勇者「……かもな」
魔王「聞きたいのだが、お主は何故人間になったのだ?」
ドラゴン「勇者と契りを交わすためだ」
魔王「……そのために竜である事をやめたのか?」
113: 2012/02/19(日) 22:01:42.91 ID:SpOvGVQQ0
ドラゴン「オレは一回氏んでいるからな、なら今更竜である必要もないと思っただけだ」
勇者「……」
魔王「そうか」
勇者「……まあ、剣士も協力してくれるんだし、二人で頑張れ」
魔王「お主等の様になれるよう頑張らねばな」
勇者「皮肉か?」
魔王「かもしれんな」
その瞬間、かなり近くから爆音が聞こえた。
魔王「な、なんだ!?」
勇者「あんたを捕まえに来た奴らだよ」
魔王「私を?」
勇者「ああ」
剣士「ゆ、勇者さん!!」ガチャ
勇者「わかってる」
女勇者「思ったより早いですね」スタスタ
勇者「……」
魔王「そうか」
勇者「……まあ、剣士も協力してくれるんだし、二人で頑張れ」
魔王「お主等の様になれるよう頑張らねばな」
勇者「皮肉か?」
魔王「かもしれんな」
その瞬間、かなり近くから爆音が聞こえた。
魔王「な、なんだ!?」
勇者「あんたを捕まえに来た奴らだよ」
魔王「私を?」
勇者「ああ」
剣士「ゆ、勇者さん!!」ガチャ
勇者「わかってる」
女勇者「思ったより早いですね」スタスタ
114: 2012/02/19(日) 22:02:35.89 ID:SpOvGVQQ0
暗殺者「結構な大部隊だな」
女勇者「私と暗殺者は外を守ります、勇者と剣士とドラゴンはここを守っておいて下さい」
勇者「わかった」
勇者「博士は?」
剣士「何処かに避難したと思います」
勇者「魔王、あんたはどうする?」
魔王「わたしが逃げるとでも?」
勇者「だよな」
剣士「じゃあやりましょう!!」
勇者・ドラゴン「ああ!!」
女勇者「私と暗殺者は外を守ります、勇者と剣士とドラゴンはここを守っておいて下さい」
勇者「わかった」
勇者「博士は?」
剣士「何処かに避難したと思います」
勇者「魔王、あんたはどうする?」
魔王「わたしが逃げるとでも?」
勇者「だよな」
剣士「じゃあやりましょう!!」
勇者・ドラゴン「ああ!!」
124: 2012/02/20(月) 21:40:11.10 ID:e0q0+bvO0
勇者「さて、どんな奴が来るか……」
魔戦士「ここか?」ガチャ
それは鋼鉄の鎧を着た30代前半の屈強な大男だった。
勇者「……女勇者達はどうした?」
魔戦士「ああ、他の兵士共に相手をさせてる」
魔戦士「お前が勇者だな」
勇者「お前は……」
魔戦士「魔戦士だ」
剣士「ゆ、勇者さん」
ドラゴン「三人で行くか?」
勇者「いや、お前等は魔王を守っといてくれ」
魔王「私は大丈―――――」
勇者「相手が何をするかもわかんねぇんだ、ここは俺一人で行く」
勇者「お前ら下がってろ」
魔戦士「ここか?」ガチャ
それは鋼鉄の鎧を着た30代前半の屈強な大男だった。
勇者「……女勇者達はどうした?」
魔戦士「ああ、他の兵士共に相手をさせてる」
魔戦士「お前が勇者だな」
勇者「お前は……」
魔戦士「魔戦士だ」
剣士「ゆ、勇者さん」
ドラゴン「三人で行くか?」
勇者「いや、お前等は魔王を守っといてくれ」
魔王「私は大丈―――――」
勇者「相手が何をするかもわかんねぇんだ、ここは俺一人で行く」
勇者「お前ら下がってろ」
125: 2012/02/20(月) 21:41:36.21 ID:e0q0+bvO0
魔戦士「ほう、お前が相手か」
魔戦士は鋼鉄の剣を抜く。
勇者「俺が相手じゃ不満か?」
魔戦士「いや、十分過ぎるくらいだ」
勇者「過度な期待はしないほうがいいと思うけどな」
剣士「勇者さん、気をつけて」
勇者「そのつもりだ」
勇者は刀を鞘から抜く
魔戦士「さて、お手並み拝見だ」
勇者「……じゃあ行くぞ」
魔戦士は鋼鉄の剣を抜く。
勇者「俺が相手じゃ不満か?」
魔戦士「いや、十分過ぎるくらいだ」
勇者「過度な期待はしないほうがいいと思うけどな」
剣士「勇者さん、気をつけて」
勇者「そのつもりだ」
勇者は刀を鞘から抜く
魔戦士「さて、お手並み拝見だ」
勇者「……じゃあ行くぞ」
126: 2012/02/20(月) 21:45:32.47 ID:e0q0+bvO0
銀色に鈍く輝く一撃が魔戦士に襲いかかった。
到底刀とは思えないほど美しい一撃。
鋼鉄の剣と刀は正面から激突し、火花を散らす。
つばぜり合いのまま、二人は睨み合っていた。
勇者は獣の様に目をぎらつかせ、邪悪に笑った。
強敵に出会えた事に、強い人間と戦える事に対する笑み。
曇天の様にどんよりとした重い笑顔。
「さすがは勇者、と言った所か」
魔戦士はそんな事を口走りながら、勇者を弾き飛ばす。
勇者とは対照的に全く表情を崩さず、まるで仮面をかぶっているように無表情だ。
勇者は刀を構え直し、前に跳ぶ。
トンッ、という軽やかな音が部屋に響く。
だがそんな音とは対照的に、その速度は相変わらず化物染みている。
魔戦士は静かに剣を構え、勇者を迎え撃つ。
前に出るのではなく後ろに下がり、剣を僅かに前に傾ける。
『守りの剣』と呼ばれる彼独特の戦闘法だ。
到底刀とは思えないほど美しい一撃。
鋼鉄の剣と刀は正面から激突し、火花を散らす。
つばぜり合いのまま、二人は睨み合っていた。
勇者は獣の様に目をぎらつかせ、邪悪に笑った。
強敵に出会えた事に、強い人間と戦える事に対する笑み。
曇天の様にどんよりとした重い笑顔。
「さすがは勇者、と言った所か」
魔戦士はそんな事を口走りながら、勇者を弾き飛ばす。
勇者とは対照的に全く表情を崩さず、まるで仮面をかぶっているように無表情だ。
勇者は刀を構え直し、前に跳ぶ。
トンッ、という軽やかな音が部屋に響く。
だがそんな音とは対照的に、その速度は相変わらず化物染みている。
魔戦士は静かに剣を構え、勇者を迎え撃つ。
前に出るのではなく後ろに下がり、剣を僅かに前に傾ける。
『守りの剣』と呼ばれる彼独特の戦闘法だ。
127: 2012/02/20(月) 21:47:50.64 ID:e0q0+bvO0
勇者は体が宙に浮いた状態にも関わらず、魔剣士目掛けて刀を振り下ろした。
勇者自身の体重も刀にのせることで、威力を上昇させるためだ。
その攻撃は振り下ろすと言うより、落ちると言った方が適切かもしれない。
魔戦士はその一撃を真正面から受け止めた。
剣はまるで悲鳴をあげるかの様にギリギリと泣き、涙の様に火花を落とす。
だが魔戦士は勇者の刀を受け止めきると、勇者の無防備な腹部目掛けて前蹴りを入れる。
予備動作の無い、一瞬の一撃。
刀を振り抜いていた勇者は防御も回避も出来ないまま後ろに吹き飛ばされる。
内臓が吐き出されるのかと言う様な激痛が走り、強烈な吐き気が襲う。
まるで子供に捨てられた人形の様に地面に叩きつけられ、地面を転がる。
「どうした、その程度か?」
無様に地面に倒れる勇者にそんな言葉が浴びせかけられる。
仮面の様な表情の無い顔が勇者を見ていた。
表情の無いその顔は声の凄みを倍以上に増幅させているように感じる。
「ははっ、まさか」
勇者は刀を杖の様に地面に突き立てながら立ち上がる。
勇者の闘志は消えるどころか業火の如く燃え上っていた。
勇者自身の体重も刀にのせることで、威力を上昇させるためだ。
その攻撃は振り下ろすと言うより、落ちると言った方が適切かもしれない。
魔戦士はその一撃を真正面から受け止めた。
剣はまるで悲鳴をあげるかの様にギリギリと泣き、涙の様に火花を落とす。
だが魔戦士は勇者の刀を受け止めきると、勇者の無防備な腹部目掛けて前蹴りを入れる。
予備動作の無い、一瞬の一撃。
刀を振り抜いていた勇者は防御も回避も出来ないまま後ろに吹き飛ばされる。
内臓が吐き出されるのかと言う様な激痛が走り、強烈な吐き気が襲う。
まるで子供に捨てられた人形の様に地面に叩きつけられ、地面を転がる。
「どうした、その程度か?」
無様に地面に倒れる勇者にそんな言葉が浴びせかけられる。
仮面の様な表情の無い顔が勇者を見ていた。
表情の無いその顔は声の凄みを倍以上に増幅させているように感じる。
「ははっ、まさか」
勇者は刀を杖の様に地面に突き立てながら立ち上がる。
勇者の闘志は消えるどころか業火の如く燃え上っていた。
128: 2012/02/20(月) 21:50:43.43 ID:e0q0+bvO0
刀を構え直し、魔戦士目掛け跳ぶ。
姿勢を低くし、化物染みた速度で跳ぶそれは獲物を狙う狼の様だ。
地面に足も付いていない状態で、下段から上段へ刀が斬り上げる。
ゴウッ、と音をたて、刀が遮るものを全て斬り裂いていく。
だが魔剣士は一歩だけ下がり、その一撃を紙一重で回避していた。
勇者の刀が振り抜かれたのを確認し、そのまま反撃に転ずる。
それは相手の隙をひたすらに探り、そこに喰らいつくハイエナのようだった。
魔剣士の剣が真横に振られる。
予備動作もなく、文字通り一瞬の一撃。
勇者はその一撃を何とか防御する。
しかし、体勢が崩れているため、刀を持つ手に力が入りきらない。
彼はとっさに刀を傾け、力を受け流す。
正面から受け止めきれないなら受け流せばいい。
刀にかかる負担が減っていくのが分かる。
うまい具合に衝撃を受け流せていた。
魔戦士と勇者はつばぜり合いで向かい合ったまま停止する。
それは刹那の静寂。
だが二人にとっては長過ぎる静寂。
姿勢を低くし、化物染みた速度で跳ぶそれは獲物を狙う狼の様だ。
地面に足も付いていない状態で、下段から上段へ刀が斬り上げる。
ゴウッ、と音をたて、刀が遮るものを全て斬り裂いていく。
だが魔剣士は一歩だけ下がり、その一撃を紙一重で回避していた。
勇者の刀が振り抜かれたのを確認し、そのまま反撃に転ずる。
それは相手の隙をひたすらに探り、そこに喰らいつくハイエナのようだった。
魔剣士の剣が真横に振られる。
予備動作もなく、文字通り一瞬の一撃。
勇者はその一撃を何とか防御する。
しかし、体勢が崩れているため、刀を持つ手に力が入りきらない。
彼はとっさに刀を傾け、力を受け流す。
正面から受け止めきれないなら受け流せばいい。
刀にかかる負担が減っていくのが分かる。
うまい具合に衝撃を受け流せていた。
魔戦士と勇者はつばぜり合いで向かい合ったまま停止する。
それは刹那の静寂。
だが二人にとっては長過ぎる静寂。
129: 2012/02/20(月) 21:53:33.36 ID:e0q0+bvO0
先に動いたのはやはり勇者だった。
すでに一撃もらっている勇者にとって防御に回るのは何のメリットもない。
なら多少のリスクを覚悟で攻めに転ずる方がよほどいい。
一瞬のうちに相手の背後に回り込み、刀を左に薙ぎ払う。
だが、やはりその攻撃も剣で受け止められた。
体を一瞬で百八十度回転させ、的確に勇者の刀を防御してくる。
しかし勇者にとってもそれは想定内だ。
剣を受け止められた瞬間に左足で魔戦士の脇腹を一蹴する。
つま先が相手の内臓を突き刺すのがわかる。
その攻撃はさすがに予想外だったらしく、まったく防御をしていない。
魔戦士は大きく後ろに跳んでいた。
逃げると言うよりも衝撃を頃すために跳んだようだ。
他の敵も大量にいる以上、こんな所で長期戦をしている余裕は無い。
助走をする事もなく追撃のために前に跳ぶ。
とにかく長期戦になっては困る。
剣と刀が激突し、火花が飛び散る。
乾いた金属音が部屋全体を包み込む。
二人ともに空中にいる為、お互いに体勢が崩れていた。
だが、ほとんど落ちている様な状態のままでも得物をぶつけ合う。
三度、四度と金属がぶつかり合う音が響く。
そのままの状態で地面に叩きつけられた。
背中全体に衝撃が走り、息を吸うのが苦しい。
まるで肺を何かに握られているようだ。
だがいつまでも止まってはいられない。
一瞬の隙が氏に直結するのだ。
大きく後ろに跳び、刀を構え直す。
すでに一撃もらっている勇者にとって防御に回るのは何のメリットもない。
なら多少のリスクを覚悟で攻めに転ずる方がよほどいい。
一瞬のうちに相手の背後に回り込み、刀を左に薙ぎ払う。
だが、やはりその攻撃も剣で受け止められた。
体を一瞬で百八十度回転させ、的確に勇者の刀を防御してくる。
しかし勇者にとってもそれは想定内だ。
剣を受け止められた瞬間に左足で魔戦士の脇腹を一蹴する。
つま先が相手の内臓を突き刺すのがわかる。
その攻撃はさすがに予想外だったらしく、まったく防御をしていない。
魔戦士は大きく後ろに跳んでいた。
逃げると言うよりも衝撃を頃すために跳んだようだ。
他の敵も大量にいる以上、こんな所で長期戦をしている余裕は無い。
助走をする事もなく追撃のために前に跳ぶ。
とにかく長期戦になっては困る。
剣と刀が激突し、火花が飛び散る。
乾いた金属音が部屋全体を包み込む。
二人ともに空中にいる為、お互いに体勢が崩れていた。
だが、ほとんど落ちている様な状態のままでも得物をぶつけ合う。
三度、四度と金属がぶつかり合う音が響く。
そのままの状態で地面に叩きつけられた。
背中全体に衝撃が走り、息を吸うのが苦しい。
まるで肺を何かに握られているようだ。
だがいつまでも止まってはいられない。
一瞬の隙が氏に直結するのだ。
大きく後ろに跳び、刀を構え直す。
130: 2012/02/20(月) 21:55:25.66 ID:e0q0+bvO0
「やるな、なかなか面白い」
「お褒めの言葉ありがとう」
そんな軽口を叩きながらも勇者の神経はまるで張り詰めた弓のようだった。
一撃でも喰らえば即氏。
その恐怖と緊張感で体が硬くなる。
だが同時にその緊張感が闘志を高める。
お互いの距離は二メートル。
一歩前に出れば、十分に得物が当たる距離だ。
勇者は一歩踏み出し、魔戦士の心臓目掛け刀を突く。
鈍く光る銀色の一撃。
だがその一撃が放たれた時にはすでに魔戦士の姿は無い。
冗談でも揶揄でもない、まるで煙の様にいつの間にか姿が消えていたのだ。
その瞬間、後ろで微かな物音が聞こえた。
何の音かはわからない、ただはっきりと物音が聞こえた。
とっさに横に大きく跳ぶ。
理由は無い、ただそれが最もいいと感じたからだ。
だがその時、勇者は自分のその行動がミスであった事を自覚した。
魔剣士は剣を振っていなかった。
素早く魔法を詠唱し、勇者目掛けて剣を突く。
もちろん剣自体は勇者に当たらない。
しかし剣から放たれる魔法は別だ。
剣の切っ先から風の弾が放たれる。
音もなく、風の弾は勇者目掛けて襲いかかる。
空中にいる勇者に回避は不可能だった。
腹部に今まで感じた事の無い激痛と衝撃が襲う。
勇者はそのまま、まるでボールの様に地面を転がりながら、壁に激突した。
「お褒めの言葉ありがとう」
そんな軽口を叩きながらも勇者の神経はまるで張り詰めた弓のようだった。
一撃でも喰らえば即氏。
その恐怖と緊張感で体が硬くなる。
だが同時にその緊張感が闘志を高める。
お互いの距離は二メートル。
一歩前に出れば、十分に得物が当たる距離だ。
勇者は一歩踏み出し、魔戦士の心臓目掛け刀を突く。
鈍く光る銀色の一撃。
だがその一撃が放たれた時にはすでに魔戦士の姿は無い。
冗談でも揶揄でもない、まるで煙の様にいつの間にか姿が消えていたのだ。
その瞬間、後ろで微かな物音が聞こえた。
何の音かはわからない、ただはっきりと物音が聞こえた。
とっさに横に大きく跳ぶ。
理由は無い、ただそれが最もいいと感じたからだ。
だがその時、勇者は自分のその行動がミスであった事を自覚した。
魔剣士は剣を振っていなかった。
素早く魔法を詠唱し、勇者目掛けて剣を突く。
もちろん剣自体は勇者に当たらない。
しかし剣から放たれる魔法は別だ。
剣の切っ先から風の弾が放たれる。
音もなく、風の弾は勇者目掛けて襲いかかる。
空中にいる勇者に回避は不可能だった。
腹部に今まで感じた事の無い激痛と衝撃が襲う。
勇者はそのまま、まるでボールの様に地面を転がりながら、壁に激突した。
131: 2012/02/20(月) 21:57:51.55 ID:e0q0+bvO0
魔戦士「さて、残りは二人か」
勇者「うぐ……」
勇者「待……て……」
魔戦士「動くことすら出来んのだろ、なら黙っていろ」
ドラゴン「貴様!!」
ドラゴンは魔戦士目掛けて跳ぶ。
しかし魔戦士の剣の柄で腹を殴られ気絶する。
ドラゴン「あ……!?」ガクッ
魔戦士「ふんっ、間合いが狭過ぎるぞ」
勇者「て、めぇ……」
魔戦士「あんな真正面からの攻撃が当たる訳ないだろ」
勇者「てめ……げほげほっ!!」
魔戦士「さて、お前はどうする?」
剣士「……」
勇者「剣士……やめとけ……」
剣士「戦います!!」
勇者「剣……士……」
剣士「行きます!!」
勇者「うぐ……」
勇者「待……て……」
魔戦士「動くことすら出来んのだろ、なら黙っていろ」
ドラゴン「貴様!!」
ドラゴンは魔戦士目掛けて跳ぶ。
しかし魔戦士の剣の柄で腹を殴られ気絶する。
ドラゴン「あ……!?」ガクッ
魔戦士「ふんっ、間合いが狭過ぎるぞ」
勇者「て、めぇ……」
魔戦士「あんな真正面からの攻撃が当たる訳ないだろ」
勇者「てめ……げほげほっ!!」
魔戦士「さて、お前はどうする?」
剣士「……」
勇者「剣士……やめとけ……」
剣士「戦います!!」
勇者「剣……士……」
剣士「行きます!!」
132: 2012/02/20(月) 21:58:50.90 ID:e0q0+bvO0
剣士は剣を抜き、魔戦士に斬りかかった。
お世辞にも速いとは言えない攻撃。
だがその顔は何かを決意した者の表情をしていた。
一撃。
一撃でも与えられればいい。
勝たなくていい。
ただ一撃でいいから相手にダメージを与えるのが狙いだった。
勝ち目がない事は分かっている。
なら少しでも相手にダメージを、少しでも勇者やドラゴンに回復する時間を与える。
それが目的だった。
上段、下段、突き、薙ぎ。
様々な攻撃で相手を翻弄する。
とにかく相手に反撃の隙を一切与えない。
「確かにお前は強い、だが俺には勝てない」
金属音の中に混じり、そんな声が聞こえた。
呟く様な小さな声のはずなのに、嫌にはっきりと。
魔戦士の剣が剣士の剣を弾き飛ばす。
まるで木で出来た玩具の剣の様にいとも簡単に剣は大きく飛んでいく。
「あっ……!?」
お世辞にも速いとは言えない攻撃。
だがその顔は何かを決意した者の表情をしていた。
一撃。
一撃でも与えられればいい。
勝たなくていい。
ただ一撃でいいから相手にダメージを与えるのが狙いだった。
勝ち目がない事は分かっている。
なら少しでも相手にダメージを、少しでも勇者やドラゴンに回復する時間を与える。
それが目的だった。
上段、下段、突き、薙ぎ。
様々な攻撃で相手を翻弄する。
とにかく相手に反撃の隙を一切与えない。
「確かにお前は強い、だが俺には勝てない」
金属音の中に混じり、そんな声が聞こえた。
呟く様な小さな声のはずなのに、嫌にはっきりと。
魔戦士の剣が剣士の剣を弾き飛ばす。
まるで木で出来た玩具の剣の様にいとも簡単に剣は大きく飛んでいく。
「あっ……!?」
133: 2012/02/20(月) 22:00:22.83 ID:e0q0+bvO0
剣士は無意識のうちに飛んでいった剣を眺めていた。
剣士の剣はクルクルと宙を舞い、剣士の二メートルほど後ろの地面に突き刺さる。
それはまるで自分がここで氏ぬ事を暗示する墓標の様に見えた。
「終わりだ」
抑揚の無い、冷めた声が聞こえた。
まるで機械音の様な感情の氏んだ声。
「退け、そうすれば命は助けてやる」
剣士の敗北は誰から見ても明らかだった。
いや、最初から勝敗など決まっていた様なものだ。
速度、力、技術、あらゆるものが劣る剣士には勝機どころか、三十秒耐える事さえ奇跡に近かった。
だが、
「嫌です」
剣士はきっぱりと言った。
まるで何かを悟った様に凛々しい顔つき。
魔戦士はその言葉に眉をひそめる。
だがそれも一瞬の事だ。
すぐにいつもの無表情に戻る。
剣士の剣はクルクルと宙を舞い、剣士の二メートルほど後ろの地面に突き刺さる。
それはまるで自分がここで氏ぬ事を暗示する墓標の様に見えた。
「終わりだ」
抑揚の無い、冷めた声が聞こえた。
まるで機械音の様な感情の氏んだ声。
「退け、そうすれば命は助けてやる」
剣士の敗北は誰から見ても明らかだった。
いや、最初から勝敗など決まっていた様なものだ。
速度、力、技術、あらゆるものが劣る剣士には勝機どころか、三十秒耐える事さえ奇跡に近かった。
だが、
「嫌です」
剣士はきっぱりと言った。
まるで何かを悟った様に凛々しい顔つき。
魔戦士はその言葉に眉をひそめる。
だがそれも一瞬の事だ。
すぐにいつもの無表情に戻る。
134: 2012/02/20(月) 22:02:14.25 ID:e0q0+bvO0
「そうか……それもありだ」
相変わらずの感情の無い声。
その声は聞く者の恐怖を煽る。
「安心しろ、一撃で頃す」
魔剣士が剣を振り上げた。
灰色にくすんだ剣は、光る事もない。
氏と言う闇を表しているかのように。
その時、剣士は指を鳴らす音を聞いた。
パチン、と言う乾いた音だ。
音を聞いたその刹那、強烈な風が剣士の体を吹き飛ばした。
風と言うより見えない大きな手に吹き飛ばされたようだった。
軽い剣士の体は紙のようにいとも簡単に吹き飛ばされ、壁に頭をぶつける。
「あぐ……」
頭をぶつけた激痛に声が漏れる。
頭が焼かれるように痛い。
「悪いな、頃してもらっては困るのだ」
相変わらずの感情の無い声。
その声は聞く者の恐怖を煽る。
「安心しろ、一撃で頃す」
魔剣士が剣を振り上げた。
灰色にくすんだ剣は、光る事もない。
氏と言う闇を表しているかのように。
その時、剣士は指を鳴らす音を聞いた。
パチン、と言う乾いた音だ。
音を聞いたその刹那、強烈な風が剣士の体を吹き飛ばした。
風と言うより見えない大きな手に吹き飛ばされたようだった。
軽い剣士の体は紙のようにいとも簡単に吹き飛ばされ、壁に頭をぶつける。
「あぐ……」
頭をぶつけた激痛に声が漏れる。
頭が焼かれるように痛い。
「悪いな、頃してもらっては困るのだ」
135: 2012/02/20(月) 22:03:15.06 ID:e0q0+bvO0
気品をまとった優美な声。
魔王の声だった。
「ま、魔王……さん」
頭を打った衝撃のせいかうまく言葉がしゃべれない。
視界もぼんやりと霞んでいる。
「お主は少し休め」
魔王はそれだけ言い、同じく風に吹き飛ばされ四メートルほど後ろに後退した魔戦士の方へ進んでいく。
初めて見る禍々しさ、痛いまでの殺気。
だが剣士はそれを恐怖する事は無かった。
「お願い……します」
剣士はそれだけ言い、唇を噛み締めた。
魔王の声だった。
「ま、魔王……さん」
頭を打った衝撃のせいかうまく言葉がしゃべれない。
視界もぼんやりと霞んでいる。
「お主は少し休め」
魔王はそれだけ言い、同じく風に吹き飛ばされ四メートルほど後ろに後退した魔戦士の方へ進んでいく。
初めて見る禍々しさ、痛いまでの殺気。
だが剣士はそれを恐怖する事は無かった。
「お願い……します」
剣士はそれだけ言い、唇を噛み締めた。
142: 2012/02/21(火) 21:45:59.48 ID:ZNVUueDg0
魔王は無言のまま指を鳴らした。
乾いた音が部屋全体に響き渡る
それだけ。
たったそれだけのはずなのに、二メートルほどの長さの炎の槍が魔王の周りに出現する。
しかも二本や三本ではない。
少なくても三十本はある。
人間なら三本生み出せれば上出来のものを軽々と三十本生み出していた。
「さて、帰る気はあるか?」
魔王はにこりともせず質問した。
魔王なりの慈悲なのだろう。
口調は心なしか柔らかかった。
だが返事は無い。
魔王は魔戦士が何も言わないのを確認すると、もう一度指を鳴らした。
まるで意思を持ったかのように炎の槍の切っ先が全て魔戦士の方に向く。
炎の槍は紅蓮に燃えながら発射の時を今か今かと待っているように見えた。
魔戦士は剣を構え直し、魔王向かって走り出した。
まるで獣の様に姿勢を低くし、真正面から突っ込んでいく。
魔王が指を鳴らした。
パチンと言う乾いた音が響く。
それが合図になった様に、炎の槍は命を吹き込まれたかのように魔戦士向かって飛んでいった。
全ての槍が魔戦士を的確に狙い、飛んでいく。
壁を、床を、天井を。
何の躊躇もなく、魔戦士のいる場所を魔戦士もろとも火の海へと変えていく。
乾いた音が部屋全体に響き渡る
それだけ。
たったそれだけのはずなのに、二メートルほどの長さの炎の槍が魔王の周りに出現する。
しかも二本や三本ではない。
少なくても三十本はある。
人間なら三本生み出せれば上出来のものを軽々と三十本生み出していた。
「さて、帰る気はあるか?」
魔王はにこりともせず質問した。
魔王なりの慈悲なのだろう。
口調は心なしか柔らかかった。
だが返事は無い。
魔王は魔戦士が何も言わないのを確認すると、もう一度指を鳴らした。
まるで意思を持ったかのように炎の槍の切っ先が全て魔戦士の方に向く。
炎の槍は紅蓮に燃えながら発射の時を今か今かと待っているように見えた。
魔戦士は剣を構え直し、魔王向かって走り出した。
まるで獣の様に姿勢を低くし、真正面から突っ込んでいく。
魔王が指を鳴らした。
パチンと言う乾いた音が響く。
それが合図になった様に、炎の槍は命を吹き込まれたかのように魔戦士向かって飛んでいった。
全ての槍が魔戦士を的確に狙い、飛んでいく。
壁を、床を、天井を。
何の躊躇もなく、魔戦士のいる場所を魔戦士もろとも火の海へと変えていく。
143: 2012/02/21(火) 21:48:24.27 ID:ZNVUueDg0
「……ほう、耐えたか」
魔王は感心しながら呟いた。
お世辞や皮肉ではない、あの炎の槍を回避しきった事を心から感心する。
焼け焦げ真っ黒になった地面の上に魔戦士は立っていた。
まるで何事も無かったかのように平然とそこに立っている。
所々鎧は溶け、顔は火傷を負っていた。
それでもあの炎の雨をかわしきっているのだから驚きだ。
「どうした、もうおしまいか?」
魔王は魔戦士に尋ねる。
まるで小馬鹿にしたような言葉だが、そこまで不快には感じない不思議な言い方だ。
「俺はまだ氏んでない」
魔戦士は不敵に笑いながらそう言い放った。
邪悪で悪意の塊の様な嫌な笑顔で。
魔戦士は魔王との距離を一瞬で詰めると、魔王の心臓目掛け剣を貫いた。
それは凡人はともかく達人と呼ばれる人間ですら反応できるかどうかわからないほどの速度。
文字通り、一瞬。
魔王は感心しながら呟いた。
お世辞や皮肉ではない、あの炎の槍を回避しきった事を心から感心する。
焼け焦げ真っ黒になった地面の上に魔戦士は立っていた。
まるで何事も無かったかのように平然とそこに立っている。
所々鎧は溶け、顔は火傷を負っていた。
それでもあの炎の雨をかわしきっているのだから驚きだ。
「どうした、もうおしまいか?」
魔王は魔戦士に尋ねる。
まるで小馬鹿にしたような言葉だが、そこまで不快には感じない不思議な言い方だ。
「俺はまだ氏んでない」
魔戦士は不敵に笑いながらそう言い放った。
邪悪で悪意の塊の様な嫌な笑顔で。
魔戦士は魔王との距離を一瞬で詰めると、魔王の心臓目掛け剣を貫いた。
それは凡人はともかく達人と呼ばれる人間ですら反応できるかどうかわからないほどの速度。
文字通り、一瞬。
144: 2012/02/21(火) 21:50:17.08 ID:ZNVUueDg0
しかし魔王を刺したはずなのに全く感触がなかった。
まるで中が空洞の人形を刺したような異和感が手に伝わってくる。
だが目の前で剣に貫かれているのはまぎれもなく魔王だ。
今まで戦ってきた魔王そのままのはずだ。
魔戦士の頭の中で様々な予測や憶測が交差する。
だが決定的と言える答えは出ない。
「どうした? 止まっているのは危険なんじゃないのか?」
魔王は魔戦士の後ろで何事も無かったかのように立っていた。
全く傷もなく、微笑しながら。
魔戦士は自分の突き刺した魔王をもう一度見かえす。
そこには高温で焼かれた金属の様にどろどろと溶けた物体があった。
「……身代わりか」
魔戦士の呟きを無視し、魔王はまた指を鳴らす。
まるで地面から生えてくるよう植物の様に、今度は数百という数の氷柱が生み出された。
魔王の右手がゆっくりと上がり、魔戦士を指さす。
それはまるで氏のカウントダウンの様だった。
まるで中が空洞の人形を刺したような異和感が手に伝わってくる。
だが目の前で剣に貫かれているのはまぎれもなく魔王だ。
今まで戦ってきた魔王そのままのはずだ。
魔戦士の頭の中で様々な予測や憶測が交差する。
だが決定的と言える答えは出ない。
「どうした? 止まっているのは危険なんじゃないのか?」
魔王は魔戦士の後ろで何事も無かったかのように立っていた。
全く傷もなく、微笑しながら。
魔戦士は自分の突き刺した魔王をもう一度見かえす。
そこには高温で焼かれた金属の様にどろどろと溶けた物体があった。
「……身代わりか」
魔戦士の呟きを無視し、魔王はまた指を鳴らす。
まるで地面から生えてくるよう植物の様に、今度は数百という数の氷柱が生み出された。
魔王の右手がゆっくりと上がり、魔戦士を指さす。
それはまるで氏のカウントダウンの様だった。
145: 2012/02/21(火) 21:52:17.33 ID:ZNVUueDg0
「これを避けきれるか、楽しみだな」
魔王は微笑しながら唄うようにそう言った。
心底楽しそうな、弾むような言葉遣い。
魔戦士は何も言わず、剣を構え直す。
その目には静かに燃える闘志の炎があった。
「行け」
魔王の言葉が合図となり、氷柱は一斉に魔戦士に飛んでいく。
それはまるで雨のようだった。
魔王と人。
それはたった一人で軍隊を相手にしているのと等しかった。
格があまりにも違い過ぎる。
足を、肩を、腕を、魔戦士の体を氷柱が抉っていく。
隠れる事も逃げる事も出来ない。
氷柱の雨がやむ。
そこには血まみれの魔戦士が立っていた。
体中に氷柱が刺さり、体中ボロボロの姿。
しかし一発の急所には当たっていない。
ひたすらに急所に飛んでくる氷柱だけを叩き落としていたのだ。
魔王は微笑しながら唄うようにそう言った。
心底楽しそうな、弾むような言葉遣い。
魔戦士は何も言わず、剣を構え直す。
その目には静かに燃える闘志の炎があった。
「行け」
魔王の言葉が合図となり、氷柱は一斉に魔戦士に飛んでいく。
それはまるで雨のようだった。
魔王と人。
それはたった一人で軍隊を相手にしているのと等しかった。
格があまりにも違い過ぎる。
足を、肩を、腕を、魔戦士の体を氷柱が抉っていく。
隠れる事も逃げる事も出来ない。
氷柱の雨がやむ。
そこには血まみれの魔戦士が立っていた。
体中に氷柱が刺さり、体中ボロボロの姿。
しかし一発の急所には当たっていない。
ひたすらに急所に飛んでくる氷柱だけを叩き落としていたのだ。
146: 2012/02/21(火) 21:53:21.47 ID:ZNVUueDg0
「さすがだな」
魔王は相変わらず微笑しながらそう言った。
ここまで耐えられるとは正直思っていなかったのだ。
「時間は……稼いだよな……」
魔戦士は荒い息のまま呟くようにそう言った。
まるでお前の負けだと言う様な不思議な口振り。
魔王はその言葉に首をかしげる。
虚勢を張る様な場面では無い事は本人が一番分かっているはずなのに。
なら何故?
彼女は異様な異和感に襲われた。
赤で統一された部屋に一つだけ青いものがあるような、そんな漠然とした違和感が、彼女の中に生まれる。
ならさっさと勝負を決める以外の手は無い。
147: 2012/02/21(火) 21:54:50.46 ID:ZNVUueDg0
彼女は指を鳴らし、風の弾丸を生み出す。
指先に風が集まり、圧縮されていく。
たった一発の弾丸。
しかし当たった者を一瞬で消滅させる魔の弾丸だ。
だがその時、彼女の体に予想もしない激痛が走った。
外からではなく、内側から湧き上がってくるような激痛が。
あまりの痛みに膝をつく。
それでも痛みは消える事無く、襲いかかってくる。
「毒の魔法よ」
落ちついた女の声が聞こえた……ような気がした。
魔王の目の前には漆黒のローブを着た金色の長髪の女性が立っていた。
気品のある知的な女性だ。
だがなんとなく、邪悪な気配を感じる。
「毒……の魔法?」
息を吸うのが苦しい、呼吸がうまく出来ない。
まるで胸を抑えつけられている様な感覚が彼女を襲う。
「そう、水の魔法の亜種よ」
「いつの……間に……」
指先に風が集まり、圧縮されていく。
たった一発の弾丸。
しかし当たった者を一瞬で消滅させる魔の弾丸だ。
だがその時、彼女の体に予想もしない激痛が走った。
外からではなく、内側から湧き上がってくるような激痛が。
あまりの痛みに膝をつく。
それでも痛みは消える事無く、襲いかかってくる。
「毒の魔法よ」
落ちついた女の声が聞こえた……ような気がした。
魔王の目の前には漆黒のローブを着た金色の長髪の女性が立っていた。
気品のある知的な女性だ。
だがなんとなく、邪悪な気配を感じる。
「毒……の魔法?」
息を吸うのが苦しい、呼吸がうまく出来ない。
まるで胸を抑えつけられている様な感覚が彼女を襲う。
「そう、水の魔法の亜種よ」
「いつの……間に……」
148: 2012/02/21(火) 21:58:29.32 ID:ZNVUueDg0
息も絶え絶えに魔王は問いかけた。
言っている意味がいまいち理解できない。
魔王の問いに女性は苦笑した。
何故わからないのか、と嘲笑われているような感覚に襲われる。
「ずっとよ、あなたの周りに毒を撒いてあったの、あなたはそれをずっと吸ってたって訳」
「毒の魔法など……無いはず」
そう、毒の魔法など聞いた事など無かった。
存在すら聞いた事の無い魔法の存在をそう簡単に理解など出来るはずがない。
魔王の言葉に女性はまた苦笑した。
相手をバカにした様な、嫌味な笑い方。
「魔法は常に進化しているの、人間の手によってね、あなたは基本的な魔法しか知らないものね」
「バカ……な……」
「確かにあなたは強い、でもあなたは基本的な魔法を膨大な魔力で強くしているだけにすぎないわ」
女性は魔王の顔を覗き込むように見ながら続ける。
「いくら強い魔法が何十発と撃てても、それは結局基本の魔法。進化した魔法には勝てないわ」
言っている意味がいまいち理解できない。
魔王の問いに女性は苦笑した。
何故わからないのか、と嘲笑われているような感覚に襲われる。
「ずっとよ、あなたの周りに毒を撒いてあったの、あなたはそれをずっと吸ってたって訳」
「毒の魔法など……無いはず」
そう、毒の魔法など聞いた事など無かった。
存在すら聞いた事の無い魔法の存在をそう簡単に理解など出来るはずがない。
魔王の言葉に女性はまた苦笑した。
相手をバカにした様な、嫌味な笑い方。
「魔法は常に進化しているの、人間の手によってね、あなたは基本的な魔法しか知らないものね」
「バカ……な……」
「確かにあなたは強い、でもあなたは基本的な魔法を膨大な魔力で強くしているだけにすぎないわ」
女性は魔王の顔を覗き込むように見ながら続ける。
「いくら強い魔法が何十発と撃てても、それは結局基本の魔法。進化した魔法には勝てないわ」
149: 2012/02/21(火) 22:01:18.17 ID:ZNVUueDg0
女性は魔王をバカにするように笑った。
口元が歪んだいやらしい表情。
魔王はそれを無表情のまま睨みつけた。
苛立ちと不満を詰め込んだ視線で。
「あなたは負けたのよ。新たな魔法、進化した魔法にね」
女性は楽しそうにそう言った。
酔っている。
魔王はそう感じた。
この女性は魔法を、進化した魔法が使える自分に酔っているように見えた。
「安心して、氏にはしないわ。ちょっと気を失うだけよ」
そんな声と共に首のあたりに衝撃が走る。
頭が真っ白になり、視界が暗くなっていく。
そのまま彼女は気を失った。
口元が歪んだいやらしい表情。
魔王はそれを無表情のまま睨みつけた。
苛立ちと不満を詰め込んだ視線で。
「あなたは負けたのよ。新たな魔法、進化した魔法にね」
女性は楽しそうにそう言った。
酔っている。
魔王はそう感じた。
この女性は魔法を、進化した魔法が使える自分に酔っているように見えた。
「安心して、氏にはしないわ。ちょっと気を失うだけよ」
そんな声と共に首のあたりに衝撃が走る。
頭が真っ白になり、視界が暗くなっていく。
そのまま彼女は気を失った。
150: 2012/02/21(火) 22:04:29.26 ID:ZNVUueDg0
魔戦士「囮になったのは失敗だったな」
???「何言ってるの、あなたが囮になってくれてなかったら毒なんかすぐにバレてたわよ」
勇者「テメェ……」
???「あら、あなたは勇者ね、私はネクロマンサーよ」
勇者「魔王……」
ネクロマンサー「無駄よ、気絶してるもの」
魔戦士「時間をかけ過ぎだ」
ネクロマンサー「仕方無いじゃない、人間なら軽く致氏量を超えた毒を吸ったはずなのに意識を保ってるんだもの」
剣士「魔王さん!!」タタタッ
魔戦士「邪魔だ」
魔戦士の蹴りで剣士は吹き飛ぶ。
剣士「あ、がはっ……」
勇者「剣……士」
女勇者「勇者!!」ガチャ
魔戦士「……兵士はどうした?」
女勇者「暗殺者が戦っています」
魔戦士「で、お前は何をしに来た」
女勇者「勇者とドラゴンを守るためです!!」
勇者「逃げろ!!」
???「何言ってるの、あなたが囮になってくれてなかったら毒なんかすぐにバレてたわよ」
勇者「テメェ……」
???「あら、あなたは勇者ね、私はネクロマンサーよ」
勇者「魔王……」
ネクロマンサー「無駄よ、気絶してるもの」
魔戦士「時間をかけ過ぎだ」
ネクロマンサー「仕方無いじゃない、人間なら軽く致氏量を超えた毒を吸ったはずなのに意識を保ってるんだもの」
剣士「魔王さん!!」タタタッ
魔戦士「邪魔だ」
魔戦士の蹴りで剣士は吹き飛ぶ。
剣士「あ、がはっ……」
勇者「剣……士」
女勇者「勇者!!」ガチャ
魔戦士「……兵士はどうした?」
女勇者「暗殺者が戦っています」
魔戦士「で、お前は何をしに来た」
女勇者「勇者とドラゴンを守るためです!!」
勇者「逃げろ!!」
151: 2012/02/21(火) 22:05:45.63 ID:ZNVUueDg0
女勇者「何言ってるんですか、私は戦います」
ネクロマンサー「……」
ネクロマンサー「魔戦士、あの子」
魔戦士「ああ」
女勇者「はァァァァァ!!」
女勇者は魔戦士に斬りかかる。
魔戦士「やはり遅いな」
だが、魔戦士の拳が女勇者の鳩尾に直撃する。
女勇者「あ、が……」ガクッ
勇者「女勇者!!」
魔戦士「動けない癖に騒ぐな」
ネクロマンサー「……」
ネクロマンサー「魔戦士、あの子」
魔戦士「ああ」
女勇者「はァァァァァ!!」
女勇者は魔戦士に斬りかかる。
魔戦士「やはり遅いな」
だが、魔戦士の拳が女勇者の鳩尾に直撃する。
女勇者「あ、が……」ガクッ
勇者「女勇者!!」
魔戦士「動けない癖に騒ぐな」
152: 2012/02/21(火) 22:07:07.56 ID:ZNVUueDg0
ネクロマンサー「その子とそこに倒れてる子も連れていくわよ」
勇者「おい、魔王が目的じゃねぇのかよ!!」
ネクロマンサー「竜ってのは貴重なのよ、あとこっちの子も役に立ちそうだしね」
魔戦士はドラゴンと女勇者を担ぎあげる。
魔戦士「さっさと行くぞ」スタスタ
ネクロマンサーは魔王を抱きあげる。
ネクロマンサー「じゃあね」スタスタ
勇者「……待てよ」
ネクロマンサー「騒ぐと痛むわよ」スタスタ
勇者「待てよ!!」
剣士「勇者……さん」
勇者は地面を殴りつける。
勇者「あ……あァァァァァァ!!」
勇者「おい、魔王が目的じゃねぇのかよ!!」
ネクロマンサー「竜ってのは貴重なのよ、あとこっちの子も役に立ちそうだしね」
魔戦士はドラゴンと女勇者を担ぎあげる。
魔戦士「さっさと行くぞ」スタスタ
ネクロマンサーは魔王を抱きあげる。
ネクロマンサー「じゃあね」スタスタ
勇者「……待てよ」
ネクロマンサー「騒ぐと痛むわよ」スタスタ
勇者「待てよ!!」
剣士「勇者……さん」
勇者は地面を殴りつける。
勇者「あ……あァァァァァァ!!」
158: 2012/02/22(水) 21:42:38.07 ID:Pp6IgKEo0
~~~~~~~~~~~~~~~
暗殺者「勇者、無事か!?」ガチャ
勇者「……」
暗殺者「……魔王はわかる、けどドラゴンと女勇者はどうした!!」
勇者「連れていかれた……」ボソッ
暗殺者「え?」
勇者「連れていかれた!!」
暗殺者「……本当か?」
勇者「ああ……本当だよ」
勇者「俺がいたのに……何も出来なかった……」
勇者「俺は……俺が……いたのに……」
暗殺者「……」
剣士「僕も、何も出来なかった……僕のせいで魔王さんが……」
暗殺者「そう考え込むな」
勇者「俺は何をやってんだ……」
勇者「何のために勇者やってんだよ!!」
暗殺者「勇者、無事か!?」ガチャ
勇者「……」
暗殺者「……魔王はわかる、けどドラゴンと女勇者はどうした!!」
勇者「連れていかれた……」ボソッ
暗殺者「え?」
勇者「連れていかれた!!」
暗殺者「……本当か?」
勇者「ああ……本当だよ」
勇者「俺がいたのに……何も出来なかった……」
勇者「俺は……俺が……いたのに……」
暗殺者「……」
剣士「僕も、何も出来なかった……僕のせいで魔王さんが……」
暗殺者「そう考え込むな」
勇者「俺は何をやってんだ……」
勇者「何のために勇者やってんだよ!!」
159: 2012/02/22(水) 21:44:33.81 ID:Pp6IgKEo0
暗殺者「分かったから落ちつけ」
勇者「クソ……」
剣士「……暗殺者さんは連れて行かれる所見てないんですか?」
暗殺者「雑魚の相手をしてたんだ、そしたら兵が引いていくからもしかしてと思って来てみたんだ」
勇者「すまん、全部俺が悪い……」
勇者「全部……俺のせいだ……」
暗殺者「勇者、立て」
勇者「なんで……?」
暗殺者「立て!!」
勇者「……」スタッ
暗殺者は勇者の顔面を全力で殴る。
剣士「あ、暗殺者さん!!」
勇者「気にすんな、俺が悪いんだ……」
暗殺者「剣士、お前もだ」
勇者「クソ……」
剣士「……暗殺者さんは連れて行かれる所見てないんですか?」
暗殺者「雑魚の相手をしてたんだ、そしたら兵が引いていくからもしかしてと思って来てみたんだ」
勇者「すまん、全部俺が悪い……」
勇者「全部……俺のせいだ……」
暗殺者「勇者、立て」
勇者「なんで……?」
暗殺者「立て!!」
勇者「……」スタッ
暗殺者は勇者の顔面を全力で殴る。
剣士「あ、暗殺者さん!!」
勇者「気にすんな、俺が悪いんだ……」
暗殺者「剣士、お前もだ」
160: 2012/02/22(水) 21:45:43.33 ID:Pp6IgKEo0
暗殺者「さっさと立て!!」
剣士「……はい」スタッ
暗殺者は勇者と同様に剣士の顔面も殴る。
暗殺者「悪いのはお前等だ、わかってるよな」
勇者「ああ……」
勇者「守れなかった、何も出来なかった……」
勇者「笑えよ、無様だろ、バカみたいだろ?」
暗殺者「ああ、全部お前のせいだ、分かってんだな」
勇者「ああ、そんな事―――――――」
暗殺者「だったらいつまでも感傷に浸ってんじゃねえよ!!」
勇者「……」
剣士「で、でも、どうするんですか?」
暗殺者「助けにいけばいいだろ!!」
勇者「どうやって……」
暗殺者「今から考えればいいだろ!!」
勇者「すまん、俺が……俺のせいで……」
剣士「……はい」スタッ
暗殺者は勇者と同様に剣士の顔面も殴る。
暗殺者「悪いのはお前等だ、わかってるよな」
勇者「ああ……」
勇者「守れなかった、何も出来なかった……」
勇者「笑えよ、無様だろ、バカみたいだろ?」
暗殺者「ああ、全部お前のせいだ、分かってんだな」
勇者「ああ、そんな事―――――――」
暗殺者「だったらいつまでも感傷に浸ってんじゃねえよ!!」
勇者「……」
剣士「で、でも、どうするんですか?」
暗殺者「助けにいけばいいだろ!!」
勇者「どうやって……」
暗殺者「今から考えればいいだろ!!」
勇者「すまん、俺が……俺のせいで……」
161: 2012/02/22(水) 21:46:37.26 ID:Pp6IgKEo0
暗殺者「……もう一発殴っといてやろうか?」
勇者「……ああ」スタッ
暗殺者はもう一度勇者の顔面を全力で殴る。
勇者「……」
暗殺者「目が覚めたか?」
勇者「……」
暗殺者「お前……」
博士「ずいぶん派手にやられたね」スタスタ
勇者「悪い、俺のせいだ……」
博士「別にいいよ、終わった事だ」
博士「それより早く助けにいかないと手遅れになる」
勇者「……ああ」
暗殺者「ドラゴンと女勇者が連れていかれて苦しいはわかる、だけど今そんな事で苦しんでる暇ねえぞ!!」
勇者「んな事分かってる!!」
勇者「わかってるけどさ……」
勇者「……ああ」スタッ
暗殺者はもう一度勇者の顔面を全力で殴る。
勇者「……」
暗殺者「目が覚めたか?」
勇者「……」
暗殺者「お前……」
博士「ずいぶん派手にやられたね」スタスタ
勇者「悪い、俺のせいだ……」
博士「別にいいよ、終わった事だ」
博士「それより早く助けにいかないと手遅れになる」
勇者「……ああ」
暗殺者「ドラゴンと女勇者が連れていかれて苦しいはわかる、だけど今そんな事で苦しんでる暇ねえぞ!!」
勇者「んな事分かってる!!」
勇者「わかってるけどさ……」
162: 2012/02/22(水) 21:48:24.28 ID:Pp6IgKEo0
暗殺者「けどなんだ、言ってみろ!!」
勇者「俺は……ダメなんだ……」
勇者「俺じゃ、あいつ等を助けられない……」
暗殺者「お前が助けに行かなくて、誰が行くんだ!!」
勇者「俺じゃ……ダメだ……」
暗殺者「しっかりしろ、お前らしくもない」
剣士「そ、そうですよ」
勇者「……」
暗殺者「落ち込んでる暇があるなら動け!!」
勇者「……ああ、わかってる、わかってるよ」
勇者「わかったよ」
勇者「わかったよ……」
博士「一旦雪の町まで降りて、そこから船で移動する」
博士「魔王が捕まった以上のんびりもしていられない」
暗殺者「船は?」
勇者「俺は……ダメなんだ……」
勇者「俺じゃ、あいつ等を助けられない……」
暗殺者「お前が助けに行かなくて、誰が行くんだ!!」
勇者「俺じゃ……ダメだ……」
暗殺者「しっかりしろ、お前らしくもない」
剣士「そ、そうですよ」
勇者「……」
暗殺者「落ち込んでる暇があるなら動け!!」
勇者「……ああ、わかってる、わかってるよ」
勇者「わかったよ」
勇者「わかったよ……」
博士「一旦雪の町まで降りて、そこから船で移動する」
博士「魔王が捕まった以上のんびりもしていられない」
暗殺者「船は?」
163: 2012/02/22(水) 21:48:52.40 ID:Pp6IgKEo0
博士「昔の友人がいる、頼めばすぐに船を出してくれるさ」
博士「あと、君達の町に手紙を出しておいた、魔王が捕まった事を知らせておいた方がいいだろう?」
暗殺者「ああ、悪いな」
博士「早くした方がいいよ」スタスタ
剣士「わかってます」スタスタ
暗殺者「行くぞ」スタスタ
勇者「ああ」
勇者「……」
勇者「ドラゴン、女勇者……」スタスタ
博士「あと、君達の町に手紙を出しておいた、魔王が捕まった事を知らせておいた方がいいだろう?」
暗殺者「ああ、悪いな」
博士「早くした方がいいよ」スタスタ
剣士「わかってます」スタスタ
暗殺者「行くぞ」スタスタ
勇者「ああ」
勇者「……」
勇者「ドラゴン、女勇者……」スタスタ
164: 2012/02/22(水) 21:50:20.43 ID:Pp6IgKEo0
~~~~~~~~~~~~~~~
温泉の町 連合軍作戦本部
女大臣「魔王が魔法の町の手に落ちました」
お頭「ほ、本当か!?」
女大臣「はい、まぎれもない真実です」
王「勇者達はどうしたのじゃ?」
女大臣「女勇者様とドラゴン様が捕まりました」
王「……そうか」
マスター「自体は一刻を争う事になったな」
女大臣「その通りです」
長老「その勇者達は今どうしておるのだ?」
女大臣「こちらに向かってきています」
お頭「そんな事より魔王はどうする!!」
マスター「落ちつけ」
王「魔王が手に入ったからと言ってすぐに動ける訳ではない」
温泉の町 連合軍作戦本部
女大臣「魔王が魔法の町の手に落ちました」
お頭「ほ、本当か!?」
女大臣「はい、まぎれもない真実です」
王「勇者達はどうしたのじゃ?」
女大臣「女勇者様とドラゴン様が捕まりました」
王「……そうか」
マスター「自体は一刻を争う事になったな」
女大臣「その通りです」
長老「その勇者達は今どうしておるのだ?」
女大臣「こちらに向かってきています」
お頭「そんな事より魔王はどうする!!」
マスター「落ちつけ」
王「魔王が手に入ったからと言ってすぐに動ける訳ではない」
165: 2012/02/22(水) 21:51:19.96 ID:Pp6IgKEo0
お頭「とは言っても……」
王「それに勇者達が来れば作戦も考えなおせる」
お頭「今更勇者に何が出来る!!」
女大臣「そういう発言は控えていただけますか」
お頭「魔王も倒せず魔法の町に後れをとるような連中に何が出来る、言ってみろ!!」
マスター「何もしてない癖にずいぶんと偉そうじゃな?」
長老「ならお主なら魔王を倒せたのかな?」
お頭「……」
マスター「嘆いたり喚いたりしていても事情は一向に変わらんぞ」
お頭「くっ……」
王「今はこの先どうしていくかを考えるべきじゃ」
長老「うむ、王の言うとおりだな」
マスター「で、その勇者は役に立つのじゃな?」
女大臣「はい、それは私が保証します」
お頭「どうだかな」
女大臣「……」
王「それに勇者達が来れば作戦も考えなおせる」
お頭「今更勇者に何が出来る!!」
女大臣「そういう発言は控えていただけますか」
お頭「魔王も倒せず魔法の町に後れをとるような連中に何が出来る、言ってみろ!!」
マスター「何もしてない癖にずいぶんと偉そうじゃな?」
長老「ならお主なら魔王を倒せたのかな?」
お頭「……」
マスター「嘆いたり喚いたりしていても事情は一向に変わらんぞ」
お頭「くっ……」
王「今はこの先どうしていくかを考えるべきじゃ」
長老「うむ、王の言うとおりだな」
マスター「で、その勇者は役に立つのじゃな?」
女大臣「はい、それは私が保証します」
お頭「どうだかな」
女大臣「……」
166: 2012/02/22(水) 21:54:05.86 ID:Pp6IgKEo0
お頭「だいたい勇者だって本物かどうか分からないんだ、お前の保証なんて……」
お頭「もし勇者だとしても何不自由なく自由に生きてきた様な人間だろ?」
マスター「弱い者とバカ者ほどよく喚く、気にするな」
女大臣「分かっています、お頭様、一つ言っておく事がございます」
お頭「なんだよ」
女大臣「今あなたは私の逆鱗に触れました、今回は許しますが次私の逆鱗に触れたらどうなるか覚えていておいて下さい」
お頭「う……」
女大臣「分かりましたか?」
お頭「あ、ああ……」
長老「で、勇者達には具体的に何をさせる気なんだ?」
女大臣「ドラゴン様と女勇者様が捕まっている以上助けに行くでしょう、そのついでに魔王も倒してきてもらいます」
王「一度負けておる訳じゃし、少々不安じゃがな」
長老「作戦に不安は付き物、仕方の無い事だ」
マスター「心配はいらん」
女大臣「何がですか?」
マスター「まだ、こちらにも手はあると言う事じゃな」
長老「どういう事かな?」
マスター「予想外な連中も平和のために戦っている、と言う意味じゃよ」ニヤリ
長老「?」
お頭「もし勇者だとしても何不自由なく自由に生きてきた様な人間だろ?」
マスター「弱い者とバカ者ほどよく喚く、気にするな」
女大臣「分かっています、お頭様、一つ言っておく事がございます」
お頭「なんだよ」
女大臣「今あなたは私の逆鱗に触れました、今回は許しますが次私の逆鱗に触れたらどうなるか覚えていておいて下さい」
お頭「う……」
女大臣「分かりましたか?」
お頭「あ、ああ……」
長老「で、勇者達には具体的に何をさせる気なんだ?」
女大臣「ドラゴン様と女勇者様が捕まっている以上助けに行くでしょう、そのついでに魔王も倒してきてもらいます」
王「一度負けておる訳じゃし、少々不安じゃがな」
長老「作戦に不安は付き物、仕方の無い事だ」
マスター「心配はいらん」
女大臣「何がですか?」
マスター「まだ、こちらにも手はあると言う事じゃな」
長老「どういう事かな?」
マスター「予想外な連中も平和のために戦っている、と言う意味じゃよ」ニヤリ
長老「?」
181: 2012/02/23(木) 21:41:22.33 ID:8smqP5dI0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
世界の武器の中心。
そう呼ばれた町があった。
そこに行けばあらゆる武器が手に入る。
そこまで言われた町があった。
そんな町ですら、戦争においては戦場になる。
いや、むしろそんな場所だからこそ、戦場になってしまうのかもしれない。
今その町は激戦区となっていた。
武器の町。
石造りの頑丈な町の中に弓兵は弓を構え立っていた。
ハンターの一人として、一人の兵士として、平和を願う人間の一人として、彼は戦場で戦っていた。
鳴り止む事のない爆音を背に、彼はこちらへ向かってくる敵兵達を次々に撃ち抜いていく。
まるで機械の様に、同じリズムで的確に敵を仕留めていく。
「ここはお前等に任せる、いいな」
敵を倒しきった後、弓兵はそこにいる他の兵士達にそう言い、他の場所へと走り出した。
自慢ではないが、枯れ葉この程度の兵士なら何人相手でも負けない自信があった。
……まあ、一度は氏にかかっているがあれは兵士ではないので別という事で。
とにかく、それならばそこまで敵の攻撃が激しくない所を守るよりも、激戦区で戦った方がいいと考えたのだ。
世界の武器の中心。
そう呼ばれた町があった。
そこに行けばあらゆる武器が手に入る。
そこまで言われた町があった。
そんな町ですら、戦争においては戦場になる。
いや、むしろそんな場所だからこそ、戦場になってしまうのかもしれない。
今その町は激戦区となっていた。
武器の町。
石造りの頑丈な町の中に弓兵は弓を構え立っていた。
ハンターの一人として、一人の兵士として、平和を願う人間の一人として、彼は戦場で戦っていた。
鳴り止む事のない爆音を背に、彼はこちらへ向かってくる敵兵達を次々に撃ち抜いていく。
まるで機械の様に、同じリズムで的確に敵を仕留めていく。
「ここはお前等に任せる、いいな」
敵を倒しきった後、弓兵はそこにいる他の兵士達にそう言い、他の場所へと走り出した。
自慢ではないが、枯れ葉この程度の兵士なら何人相手でも負けない自信があった。
……まあ、一度は氏にかかっているがあれは兵士ではないので別という事で。
とにかく、それならばそこまで敵の攻撃が激しくない所を守るよりも、激戦区で戦った方がいいと考えたのだ。
182: 2012/02/23(木) 21:42:54.54 ID:8smqP5dI0
飛び交う砲弾に注意しながら、所々崩れた武器の町を駆け抜けていく。
砲弾でボロボロになった石畳に足をとられそうになるが走り続ける。
今の戦況は正直微妙だった。
どちらが勝ってもおかしくない。
そんな曖昧な状況のため、お互いに必氏なのだ。
それこそ小さな何かによって簡単に天秤が動いてしまいかねない状況だった。
一本道の途中で、歩みを止める。
疲れた訳ではない。
そこには笑ってしまいたくなるような光景が広がっていたのだ。
そこには敵の兵士の部隊がいた。
どの兵士も鉄の鎧を着込み、手には斧や剣や槍を持った屈強な者達ばかり。
普通の兵士ならば恐怖で顔が青ざめ、身が凍るような場面。
しかし弓兵はそんな敵達を見て、思わず笑ってしまいそうになった。
理由は単純。
敵に遠距離がいないからだ。
全ての兵士が近距離しかできない。
それは弓兵にとってただの的と同じだ。
しかも今の場所は一本道の路地。
このあまりにも出来過ぎた状況に、弓兵は笑ってしまった。
「逃げなくていいのか、俺は遠距離だぞ?」
砲弾でボロボロになった石畳に足をとられそうになるが走り続ける。
今の戦況は正直微妙だった。
どちらが勝ってもおかしくない。
そんな曖昧な状況のため、お互いに必氏なのだ。
それこそ小さな何かによって簡単に天秤が動いてしまいかねない状況だった。
一本道の途中で、歩みを止める。
疲れた訳ではない。
そこには笑ってしまいたくなるような光景が広がっていたのだ。
そこには敵の兵士の部隊がいた。
どの兵士も鉄の鎧を着込み、手には斧や剣や槍を持った屈強な者達ばかり。
普通の兵士ならば恐怖で顔が青ざめ、身が凍るような場面。
しかし弓兵はそんな敵達を見て、思わず笑ってしまいそうになった。
理由は単純。
敵に遠距離がいないからだ。
全ての兵士が近距離しかできない。
それは弓兵にとってただの的と同じだ。
しかも今の場所は一本道の路地。
このあまりにも出来過ぎた状況に、弓兵は笑ってしまった。
「逃げなくていいのか、俺は遠距離だぞ?」
183: 2012/02/23(木) 21:45:00.34 ID:8smqP5dI0
笑いを堪えながら、今まで幾度となく相手に言って来た台詞を口にする。
もちろん、相手がそれで逃げていくなんて事は一度もないし、これからもほとんどないだろう。
それは彼にとって戦いの合図の様なものだった。
十人近くの兵士が一斉に走り出す。
だがどの兵士も鎧を着ているため、そこまでは速くは無い。
お互いの距離は十メートルと言った所か。
呼吸を調え、弓を引き絞る。
一撃で仕留める為に、兵士たちの頭に狙いを定める。
そのまま矢を放つ。
銀色の矢が一番手前の兵士の額に突き刺さった。
まずは一人目。
残りは十二人。
弓兵は止まる事無く、流れるように矢を撃ち続ける
しかし決して矢が外れる事は無い。
残りは六人
息を大きく吸いこみ、限界まで集中力を高め、矢を放ち続ける。
矢を撃つ以外の事を頭の中から排除する。
残りは二人。
距離はかなり近いが、二人なら確実に倒せる。
弓兵は二本同時に弓を引き絞り、二人の兵士目掛け――――――。
もちろん、相手がそれで逃げていくなんて事は一度もないし、これからもほとんどないだろう。
それは彼にとって戦いの合図の様なものだった。
十人近くの兵士が一斉に走り出す。
だがどの兵士も鎧を着ているため、そこまでは速くは無い。
お互いの距離は十メートルと言った所か。
呼吸を調え、弓を引き絞る。
一撃で仕留める為に、兵士たちの頭に狙いを定める。
そのまま矢を放つ。
銀色の矢が一番手前の兵士の額に突き刺さった。
まずは一人目。
残りは十二人。
弓兵は止まる事無く、流れるように矢を撃ち続ける
しかし決して矢が外れる事は無い。
残りは六人
息を大きく吸いこみ、限界まで集中力を高め、矢を放ち続ける。
矢を撃つ以外の事を頭の中から排除する。
残りは二人。
距離はかなり近いが、二人なら確実に倒せる。
弓兵は二本同時に弓を引き絞り、二人の兵士目掛け――――――。
184: 2012/02/23(木) 21:47:05.36 ID:8smqP5dI0
「なっ……!?」
その瞬間、目の前にいた兵士は何の前触れもなく、地面に倒れた。
もちろん、弓兵がやったのではない。
弓兵はあたりをぐるりと見渡す。
しかし味方はおろか、敵すらもいない、弓兵以外の人間は何処にもいない。
弓兵の体に嫌な緊張感が走った。
目に見えない敵に恐怖しているのが嫌でもわかる。
「怪我は無いですか?」
弓兵は背後からの声に驚きで叫んでしまいそうになった。
だが何とかその言葉を飲み込む。
後ろに立っていたのは初老で髪が腰ぐらいまである銀髪の男だった。
簡素な服で腰には黒い剣をさしている。
顔は穏やかそうで、まるで邪気と言うものがない。
何処からどう見てもその男は兵士ではなさそうだ。
その瞬間、目の前にいた兵士は何の前触れもなく、地面に倒れた。
もちろん、弓兵がやったのではない。
弓兵はあたりをぐるりと見渡す。
しかし味方はおろか、敵すらもいない、弓兵以外の人間は何処にもいない。
弓兵の体に嫌な緊張感が走った。
目に見えない敵に恐怖しているのが嫌でもわかる。
「怪我は無いですか?」
弓兵は背後からの声に驚きで叫んでしまいそうになった。
だが何とかその言葉を飲み込む。
後ろに立っていたのは初老で髪が腰ぐらいまである銀髪の男だった。
簡素な服で腰には黒い剣をさしている。
顔は穏やかそうで、まるで邪気と言うものがない。
何処からどう見てもその男は兵士ではなさそうだ。
185: 2012/02/23(木) 21:48:31.36 ID:8smqP5dI0
「無事で良かったですね」
男は優しく、穏やかな声でそう言った。
まるでここが戦場ではない様な錯覚さえ覚えてしまいそうだ。
「誰だ?」
「私は師匠と言います」
男はにこやかに微笑みながら答えた。
あまりに邪気が無さ過ぎて、逆に恐怖を覚えそうだ。
いや、実際に恐怖を覚えていた。
「あなたはハンターの方ですね?」
こちらの感情に気付いないのか、笑顔のまま訊ねてくる。
やはり弓兵から見ると、気持ちの悪いくらい邪気が感じられない。
しかもそれは意図的に邪気を消している様だった。
真意の読めないその男を弓兵はじっと見つめていた。
男は優しく、穏やかな声でそう言った。
まるでここが戦場ではない様な錯覚さえ覚えてしまいそうだ。
「誰だ?」
「私は師匠と言います」
男はにこやかに微笑みながら答えた。
あまりに邪気が無さ過ぎて、逆に恐怖を覚えそうだ。
いや、実際に恐怖を覚えていた。
「あなたはハンターの方ですね?」
こちらの感情に気付いないのか、笑顔のまま訊ねてくる。
やはり弓兵から見ると、気持ちの悪いくらい邪気が感じられない。
しかもそれは意図的に邪気を消している様だった。
真意の読めないその男を弓兵はじっと見つめていた。
186: 2012/02/23(木) 21:50:02.00 ID:8smqP5dI0
弓兵「お前、本当に誰―――――」
兵士「弓兵さん!!」
弓兵「……なんだ」
兵士「マスターから連絡です」
弓兵「マスターから?」
兵士「はい、すぐに戻って来いとの事です」
弓兵「ここはどうする」
兵士「分かりませんが、敵兵が大量に気絶させられてて……」
師匠「それ、私がやりました」
弓兵「……お前が?」
師匠「はい、襲いかかって来たので、やむを得ず」
兵士「と、とにかくそのおかげで何とかなりそうなんです」
弓兵「わかった」
師匠「私もご一緒してもいいですか?」
弓兵「……何のためにだ?」
師匠「久しぶりに女大臣に会いたいんです」
兵士「弓兵さん!!」
弓兵「……なんだ」
兵士「マスターから連絡です」
弓兵「マスターから?」
兵士「はい、すぐに戻って来いとの事です」
弓兵「ここはどうする」
兵士「分かりませんが、敵兵が大量に気絶させられてて……」
師匠「それ、私がやりました」
弓兵「……お前が?」
師匠「はい、襲いかかって来たので、やむを得ず」
兵士「と、とにかくそのおかげで何とかなりそうなんです」
弓兵「わかった」
師匠「私もご一緒してもいいですか?」
弓兵「……何のためにだ?」
師匠「久しぶりに女大臣に会いたいんです」
187: 2012/02/23(木) 21:51:06.95 ID:8smqP5dI0
弓兵「女大臣?」
師匠「はい、女大臣です」
弓兵「……」
弓兵「わかった、来たいなら勝手にしろ」
師匠「悪いですね」
弓兵「気にするな」
弓兵「じゃあ任せたぞ、氏ぬなよ」
兵士「はっ!!」
弓兵「負けるなよ」スタスタ
師匠「……すいません」スタスタ
弓兵「……いや、別にいい」スタスタ
師匠「はい、女大臣です」
弓兵「……」
弓兵「わかった、来たいなら勝手にしろ」
師匠「悪いですね」
弓兵「気にするな」
弓兵「じゃあ任せたぞ、氏ぬなよ」
兵士「はっ!!」
弓兵「負けるなよ」スタスタ
師匠「……すいません」スタスタ
弓兵「……いや、別にいい」スタスタ
188: 2012/02/23(木) 21:52:21.29 ID:8smqP5dI0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
魔法の町の船 船上
頃し屋「おかえり」
魔戦士「……」スタスタ
ネクロマンサー「ただいま」スタスタ
頃し屋「……なんて言うか、無愛想だなあ」
狂戦士「魔王は捕まったのか?」
魔戦士「ああ、ネクロマンサーが抱えてるだろ」
狂戦士「ほう、いい女じゃねーか、人間だったら良かったんだがな」
頃し屋「……」
狂戦士「お前の抱えてる二人はなんだ?」
ネクロマンサー「こっちは竜、こっちはただの人間よ」
狂戦士「捕虜か?」
魔戦士「まあ、そうなるな」
魔戦士「少しの間牢屋に入れておくぞ」
魔法の町の船 船上
頃し屋「おかえり」
魔戦士「……」スタスタ
ネクロマンサー「ただいま」スタスタ
頃し屋「……なんて言うか、無愛想だなあ」
狂戦士「魔王は捕まったのか?」
魔戦士「ああ、ネクロマンサーが抱えてるだろ」
狂戦士「ほう、いい女じゃねーか、人間だったら良かったんだがな」
頃し屋「……」
狂戦士「お前の抱えてる二人はなんだ?」
ネクロマンサー「こっちは竜、こっちはただの人間よ」
狂戦士「捕虜か?」
魔戦士「まあ、そうなるな」
魔戦士「少しの間牢屋に入れておくぞ」
189: 2012/02/23(木) 21:53:32.33 ID:8smqP5dI0
狂戦士「ああ、勝手にしてくれ」
ネクロマンサー「言っとくけど、玩具にしないでよ、ちゃんと使わなきゃいけないんだから」
狂戦士「はいはい」
ネクロマンサー「頃し屋だったっけ、あなたにお願いしてもいい?」
頃し屋「何を?」
ネクロマンサー「人間の女の子の方を牢屋に入れて来てくれない?」
頃し屋「別にいいよ」
頃し屋「この子だけでいいんだね?」
ネクロマンサー「そうね」
狂戦士「ちょっかい出したら頃すからな」
頃し屋「お前の方がよっぽど不安だけどね、変態」
狂戦士「な……!?」
頃し屋「場所は何処でもいいよね?」
ネクロマンサー「勝手にどうぞ」
魔戦士「頼む」ドサッ
ネクロマンサー「言っとくけど、玩具にしないでよ、ちゃんと使わなきゃいけないんだから」
狂戦士「はいはい」
ネクロマンサー「頃し屋だったっけ、あなたにお願いしてもいい?」
頃し屋「何を?」
ネクロマンサー「人間の女の子の方を牢屋に入れて来てくれない?」
頃し屋「別にいいよ」
頃し屋「この子だけでいいんだね?」
ネクロマンサー「そうね」
狂戦士「ちょっかい出したら頃すからな」
頃し屋「お前の方がよっぽど不安だけどね、変態」
狂戦士「な……!?」
頃し屋「場所は何処でもいいよね?」
ネクロマンサー「勝手にどうぞ」
魔戦士「頼む」ドサッ
190: 2012/02/23(木) 21:54:45.91 ID:8smqP5dI0
頃し屋「わかったわかった」
頃し屋は女勇者を抱え上げる。
頃し屋「やっぱり……」
狂戦士「なんか言ったか!?」
頃し屋「誰もお前の事なんて言ってないよ」スタスタ
頃し屋「……」スタスタ
頃し屋「こいつがここにいるって事は勇者は負けたのかな……」スタスタ
頃し屋「ここでいいかな」ガチャ
頃し屋はそこに女勇者を寝かせる。
頃し屋「……」ガチャン
頃し屋「おーい、朝だぞ」
女勇者「……ん」
女勇者「私は……」
頃し屋「うん、元気そうで何よりだ」
頃し屋は女勇者を抱え上げる。
頃し屋「やっぱり……」
狂戦士「なんか言ったか!?」
頃し屋「誰もお前の事なんて言ってないよ」スタスタ
頃し屋「……」スタスタ
頃し屋「こいつがここにいるって事は勇者は負けたのかな……」スタスタ
頃し屋「ここでいいかな」ガチャ
頃し屋はそこに女勇者を寝かせる。
頃し屋「……」ガチャン
頃し屋「おーい、朝だぞ」
女勇者「……ん」
女勇者「私は……」
頃し屋「うん、元気そうで何よりだ」
191: 2012/02/23(木) 21:56:05.40 ID:8smqP5dI0
女勇者「あ、あなたは!?」
頃し屋「俺は頃し屋、聞いたことあるんじゃないかな?」
女勇者「暗殺者の腕を斬り裂いた……」
頃し屋「大正解、あれ本当に大丈夫だった?」
女勇者「はい、ちゃんと治りました」
頃し屋「そうか、良かった良かった」
女勇者「あなたは……」
頃し屋「気をつけた方がいい」
女勇者「え?」
頃し屋「しっかり自分を保っておく事、決して弱みを見せない事、いいね」
女勇者「あ……はい」
頃し屋「うん、それじゃまた」スタスタ
女勇者「あなたは、敵じゃないんですか?」
頃し屋「俺は面白いのが好きなだけ、あとは、えーと……忘れちゃった」スタスタ
頃し屋「俺は頃し屋、聞いたことあるんじゃないかな?」
女勇者「暗殺者の腕を斬り裂いた……」
頃し屋「大正解、あれ本当に大丈夫だった?」
女勇者「はい、ちゃんと治りました」
頃し屋「そうか、良かった良かった」
女勇者「あなたは……」
頃し屋「気をつけた方がいい」
女勇者「え?」
頃し屋「しっかり自分を保っておく事、決して弱みを見せない事、いいね」
女勇者「あ……はい」
頃し屋「うん、それじゃまた」スタスタ
女勇者「あなたは、敵じゃないんですか?」
頃し屋「俺は面白いのが好きなだけ、あとは、えーと……忘れちゃった」スタスタ
202: 2012/02/24(金) 21:43:45.12 ID:Eg7u/Hno0
~~~~~~~~~~~~~~~~~
夜 温泉の町 連合軍作戦本部
王「戻ったか」
勇者「すいません……」
王「謝らなくてもいい」
マスター「思ったより早かったのじゃな」
暗殺者「船長に無茶言って急いでもらったんだ」
女大臣「とにかく無事で何よりです」
勇者「……」
剣士「すいません、僕達のせいで……」
長老「終わった事を嘆いても仕方なかろう、これからどうするかが重要だぞ」
マスター「で、お主が博士じゃな?」
博士「はい」
マスター「お主が作ったという魔道騎士について教えてもらえるかな?」
博士「あれは私が作った最後の人間兵器です」
マスター「その魔道騎士はどれほどの力を持っておるのじゃ?」
博士「普通の兵士なら十秒生きれれば奇跡、と言った所です」
長老「……もう動いておるのか?」
夜 温泉の町 連合軍作戦本部
王「戻ったか」
勇者「すいません……」
王「謝らなくてもいい」
マスター「思ったより早かったのじゃな」
暗殺者「船長に無茶言って急いでもらったんだ」
女大臣「とにかく無事で何よりです」
勇者「……」
剣士「すいません、僕達のせいで……」
長老「終わった事を嘆いても仕方なかろう、これからどうするかが重要だぞ」
マスター「で、お主が博士じゃな?」
博士「はい」
マスター「お主が作ったという魔道騎士について教えてもらえるかな?」
博士「あれは私が作った最後の人間兵器です」
マスター「その魔道騎士はどれほどの力を持っておるのじゃ?」
博士「普通の兵士なら十秒生きれれば奇跡、と言った所です」
長老「……もう動いておるのか?」
203: 2012/02/24(金) 21:45:28.92 ID:Eg7u/Hno0
博士「まだですね、早くて明日の昼頃、と言ったところでしょうか」
長老「まだ時間はあるという事か」
博士「そう言う事です」
女大臣「……勇者様?」
勇者「……ん、何?」
女大臣「大丈夫ですか?」
勇者「……何でも無いよ」
お頭「で、具体的にどうするんだ!!」
マスター「少し待て、まだ全員集まっておらんだろ」
お頭「は?」
弓兵「お待たせしました」ガチャ
マスター「遅かったのう」
弓兵「申し訳ありません」
マスター「いや、気にする事では無いわい」
弓兵「あと、もう一人いるのですが……」
マスター「?」
長老「まだ時間はあるという事か」
博士「そう言う事です」
女大臣「……勇者様?」
勇者「……ん、何?」
女大臣「大丈夫ですか?」
勇者「……何でも無いよ」
お頭「で、具体的にどうするんだ!!」
マスター「少し待て、まだ全員集まっておらんだろ」
お頭「は?」
弓兵「お待たせしました」ガチャ
マスター「遅かったのう」
弓兵「申し訳ありません」
マスター「いや、気にする事では無いわい」
弓兵「あと、もう一人いるのですが……」
マスター「?」
204: 2012/02/24(金) 21:49:11.69 ID:Eg7u/Hno0
師匠「お久しぶりですね」ガチャ
女大臣「師匠!?」
師匠「うん、元気そうだね」
師匠「皆さま方もお揃いで」
長老「まさか来ておったのか」
師匠「ちょっと野暮用がありまして」
弓兵「で、何の用でしょうか」
マスター「明日の朝、敵の艦隊に総攻撃をかけようと思う」
弓兵「……と、言いますと?」
マスター「今言った通りじゃ、敵の戦力は港の町沿岸にある艦隊に集結しておる、じゃからそこに今動かせる兵士で総攻撃をかける」
弓兵「大丈夫なのですか?」
マスター「情報が正しければ今その船には魔王も囚われておる」
暗殺者「何処の情報だ?」
王「金髪じゃよ、知っておるだろう?」
暗殺者「……ああ」
マスター「しかも、その船を落とす事が出来れば、奴等の戦力の大部分を削ぎ落とす事が出来る」
弓兵「……勝負を急ぎ過ぎではないのですか?」
マスター「魔王が奴等の手に渡った今、そんな事を言っておる暇は無い」
長老「その通り、魔道騎士が動き出す前にそこを潰すのだ」
女大臣「師匠!?」
師匠「うん、元気そうだね」
師匠「皆さま方もお揃いで」
長老「まさか来ておったのか」
師匠「ちょっと野暮用がありまして」
弓兵「で、何の用でしょうか」
マスター「明日の朝、敵の艦隊に総攻撃をかけようと思う」
弓兵「……と、言いますと?」
マスター「今言った通りじゃ、敵の戦力は港の町沿岸にある艦隊に集結しておる、じゃからそこに今動かせる兵士で総攻撃をかける」
弓兵「大丈夫なのですか?」
マスター「情報が正しければ今その船には魔王も囚われておる」
暗殺者「何処の情報だ?」
王「金髪じゃよ、知っておるだろう?」
暗殺者「……ああ」
マスター「しかも、その船を落とす事が出来れば、奴等の戦力の大部分を削ぎ落とす事が出来る」
弓兵「……勝負を急ぎ過ぎではないのですか?」
マスター「魔王が奴等の手に渡った今、そんな事を言っておる暇は無い」
長老「その通り、魔道騎士が動き出す前にそこを潰すのだ」
205: 2012/02/24(金) 21:50:42.02 ID:Eg7u/Hno0
王「勇者、暗殺者、お主等も行ってくれるか?」
暗殺者「……ああ」
勇者「……」
王「お主等はどうする?」
剣士「僕達も行きます、勇者ですから」
王「……わかった」
マスター「では、三時間後に出発じゃ」
弓兵「歩きで、と言う事ですか?」
マスター「いや、小さめじゃが船がある、それに乗っていってくれ」
暗殺者「川を下って海へ出るって事か」
長老「その通り」
王「質問はあるかな?」
勇者「俺は無い」
弓兵「俺も無い」
博士「私達も無いよ」
王「では各自、準備をしてくれ」
暗殺者「……ああ」
勇者「……」
王「お主等はどうする?」
剣士「僕達も行きます、勇者ですから」
王「……わかった」
マスター「では、三時間後に出発じゃ」
弓兵「歩きで、と言う事ですか?」
マスター「いや、小さめじゃが船がある、それに乗っていってくれ」
暗殺者「川を下って海へ出るって事か」
長老「その通り」
王「質問はあるかな?」
勇者「俺は無い」
弓兵「俺も無い」
博士「私達も無いよ」
王「では各自、準備をしてくれ」
206: 2012/02/24(金) 21:52:35.47 ID:Eg7u/Hno0
~~~~~~~~~~~~~~
町外れの空き地
勇者「……」
師匠「暇そうだね」
勇者「ああ、暇だよ」
師匠「魔戦士に負けたらしいですね」
勇者「……負けたよ、完敗だった」
師匠「そうですか」
勇者「あんたはどうなると思ってたんだ?」
師匠「さあ、私にだって分かりませんよ」
勇者「……あんたに言っても仕方ないけど、俺自信が無くなってきたんだ」
師匠「……どういう事ですか?」
勇者「なんて言うんだろ、勝てる気がしないんだよな」
師匠「勝てる気がしない?」
勇者「ああ、なんて言うか……」
師匠「負けた事によって迷いが生まれているんですね」
勇者「……」
町外れの空き地
勇者「……」
師匠「暇そうだね」
勇者「ああ、暇だよ」
師匠「魔戦士に負けたらしいですね」
勇者「……負けたよ、完敗だった」
師匠「そうですか」
勇者「あんたはどうなると思ってたんだ?」
師匠「さあ、私にだって分かりませんよ」
勇者「……あんたに言っても仕方ないけど、俺自信が無くなってきたんだ」
師匠「……どういう事ですか?」
勇者「なんて言うんだろ、勝てる気がしないんだよな」
師匠「勝てる気がしない?」
勇者「ああ、なんて言うか……」
師匠「負けた事によって迷いが生まれているんですね」
勇者「……」
207: 2012/02/24(金) 21:55:23.37 ID:Eg7u/Hno0
師匠「あなたは今、敵に負け、仲間を奪われた、いわばどん底なわけですよ」
師匠「それであなたは負ける事に恐怖の感情をもってしまっている訳ですね」
勇者「……」
師匠「これを覚えていますか?」
師匠は腰の剣を勇者に見せる。
勇者「……強者の剣か」
師匠「はい、強者の剣です」
勇者「それが?」
師匠「これは私が彼にあげた剣なんですよ」
勇者「……強者が氏んだから返してもらうためにここに来たのか?」
師匠「まさか、あげたものですからこの剣は完全に彼の物ですよ」
勇者「じゃあなんでだ?」
師匠「あなたは彼と戦ったんですよね?」
勇者「ああ」
師匠「彼が何故あんな風になったかは知っていますか?」
勇者「愛する人を守れなかったから、だったかな?」
師匠「はい、その通りです」
勇者「俺と、一緒って事が言いたいのか?」
師匠「それであなたは負ける事に恐怖の感情をもってしまっている訳ですね」
勇者「……」
師匠「これを覚えていますか?」
師匠は腰の剣を勇者に見せる。
勇者「……強者の剣か」
師匠「はい、強者の剣です」
勇者「それが?」
師匠「これは私が彼にあげた剣なんですよ」
勇者「……強者が氏んだから返してもらうためにここに来たのか?」
師匠「まさか、あげたものですからこの剣は完全に彼の物ですよ」
勇者「じゃあなんでだ?」
師匠「あなたは彼と戦ったんですよね?」
勇者「ああ」
師匠「彼が何故あんな風になったかは知っていますか?」
勇者「愛する人を守れなかったから、だったかな?」
師匠「はい、その通りです」
勇者「俺と、一緒って事が言いたいのか?」
208: 2012/02/24(金) 21:56:31.96 ID:Eg7u/Hno0
師匠「半分正解で半分間違いですね」
勇者「どういう意味だ?」
師匠「彼には救いはありませんでしたが、あなたにはあるという事です」
勇者「……?」
師匠「彼の愛する人は殺されたんです、彼の目の前で」
勇者「……」
師匠「ですが、あなたの仲間は氏んだわけではないんでしょう?」
勇者「ああ」
師匠「あなたはまだ間に合うはずです」
勇者「……でも助けられねぇよ……」
師匠「あなたは十分力を持っていますよ、後は気持ちです」
勇者「……気持ち?」
師匠「迷いを捨てなさい、敗北の事は考える必要はありません」
勇者「……」
師匠「あなたの中の感情を武器にするんです、あなたの場合なら憎悪の剣ですね」
勇者「……普通なら憎悪に支配されちゃいけないんじゃないのか?」
師匠「怒り、恐怖、悲しみと言った負の感情は剣を強くも弱くもします」
勇者「だろうね」
師匠「あなたの場合は負の感情は強さになるはずです」
勇者「強さね……」
師匠「現にあなたの剣は怒りで強くなっているでしょう?」
勇者「どういう意味だ?」
師匠「彼には救いはありませんでしたが、あなたにはあるという事です」
勇者「……?」
師匠「彼の愛する人は殺されたんです、彼の目の前で」
勇者「……」
師匠「ですが、あなたの仲間は氏んだわけではないんでしょう?」
勇者「ああ」
師匠「あなたはまだ間に合うはずです」
勇者「……でも助けられねぇよ……」
師匠「あなたは十分力を持っていますよ、後は気持ちです」
勇者「……気持ち?」
師匠「迷いを捨てなさい、敗北の事は考える必要はありません」
勇者「……」
師匠「あなたの中の感情を武器にするんです、あなたの場合なら憎悪の剣ですね」
勇者「……普通なら憎悪に支配されちゃいけないんじゃないのか?」
師匠「怒り、恐怖、悲しみと言った負の感情は剣を強くも弱くもします」
勇者「だろうね」
師匠「あなたの場合は負の感情は強さになるはずです」
勇者「強さね……」
師匠「現にあなたの剣は怒りで強くなっているでしょう?」
209: 2012/02/24(金) 21:57:44.89 ID:Eg7u/Hno0
勇者「え?」
師匠「強者の時も魔法剣士の時もあなたの心には憎悪があったはずですよね?」
勇者「ああ、確かにあったと思う」
師匠「そう言う事です」
勇者「……」
師匠「ですが決して感情に負けてはいけませんよ」
勇者「呑まれるなって事か?」
師匠「分かりやすく言えばそう言う事です」
勇者「……」
師匠「きっとあなたなら大丈夫です」
勇者「なんで言いきれる」
師匠「なんとなく……ですかね」
師匠「強いて言うなら、希望があるからですかね」
勇者「……」
師匠「助けられますか?」
勇者「ああ、助けるよ」
勇者「やってやるさ」
師匠「……」ニッコリ
師匠「強者の時も魔法剣士の時もあなたの心には憎悪があったはずですよね?」
勇者「ああ、確かにあったと思う」
師匠「そう言う事です」
勇者「……」
師匠「ですが決して感情に負けてはいけませんよ」
勇者「呑まれるなって事か?」
師匠「分かりやすく言えばそう言う事です」
勇者「……」
師匠「きっとあなたなら大丈夫です」
勇者「なんで言いきれる」
師匠「なんとなく……ですかね」
師匠「強いて言うなら、希望があるからですかね」
勇者「……」
師匠「助けられますか?」
勇者「ああ、助けるよ」
勇者「やってやるさ」
師匠「……」ニッコリ
210: 2012/02/24(金) 22:00:39.34 ID:Eg7u/Hno0
勇者「俺そろそろ行くわ」スタスタ
師匠「頑張って下さいね」
勇者「ああ」スタスタ
師匠「……」
女大臣「ありがとうございます」スタスタ
師匠「何の事ですか?」
女大臣「勇者様の事です」
師匠「私は真実を言っただけですよ」
女大臣「変わりませんね、あなたは」
師匠「そうかもしれませんね」
女大臣「……師匠は戦場には行かないんですか?」
師匠「ええ、私は戦士でも勇者でもありませんから」
女大臣「……」
師匠「若い方々の頑張りに期待ですね」
女大臣「そうですか」
女大臣「強者の剣を取りに来たんですか?」
師匠「ええ、彼女と共に眠らせてあげた方が彼女も喜ぶと思ったので」
女大臣「……そうですね」
師匠「では、私も行きますね」スタスタ
女大臣「はい」
師匠「頑張って下さいね」
勇者「ああ」スタスタ
師匠「……」
女大臣「ありがとうございます」スタスタ
師匠「何の事ですか?」
女大臣「勇者様の事です」
師匠「私は真実を言っただけですよ」
女大臣「変わりませんね、あなたは」
師匠「そうかもしれませんね」
女大臣「……師匠は戦場には行かないんですか?」
師匠「ええ、私は戦士でも勇者でもありませんから」
女大臣「……」
師匠「若い方々の頑張りに期待ですね」
女大臣「そうですか」
女大臣「強者の剣を取りに来たんですか?」
師匠「ええ、彼女と共に眠らせてあげた方が彼女も喜ぶと思ったので」
女大臣「……そうですね」
師匠「では、私も行きますね」スタスタ
女大臣「はい」
211: 2012/02/24(金) 22:02:01.40 ID:Eg7u/Hno0
~~~~~~~~~~~~~~~~~
川 船
弓兵「全員乗ったか?」
勇者「ああ」
暗殺者「乗ってる」
剣士「はい」
博士「大丈夫そうだね」
弓兵「じゃあ行くぞ」
剣士「はい」
勇者「作戦とかはあるのか?」
弓兵「他の兵士達の船が囮になって注意を引きつけてる間に俺達が敵船に突入する」
暗殺者「目標は魔王の奪還でいいか?」
博士「魔道騎士の破壊も頼むよ」
弓兵「……そうだな、それも壊しておいた方がいい」
川 船
弓兵「全員乗ったか?」
勇者「ああ」
暗殺者「乗ってる」
剣士「はい」
博士「大丈夫そうだね」
弓兵「じゃあ行くぞ」
剣士「はい」
勇者「作戦とかはあるのか?」
弓兵「他の兵士達の船が囮になって注意を引きつけてる間に俺達が敵船に突入する」
暗殺者「目標は魔王の奪還でいいか?」
博士「魔道騎士の破壊も頼むよ」
弓兵「……そうだな、それも壊しておいた方がいい」
212: 2012/02/24(金) 22:04:20.53 ID:Eg7u/Hno0
勇者「あとは女勇者とドラゴンの救出だ」
剣士「こ、これだけの人数で大丈夫なんでしょうか?」
弓兵「囮と言ってもあいつ等だって本気で相手を潰しにかかるんだ、あいつ等も乗り込んでくるはずだから人数は大丈夫だ」
弓兵「他に聞きたい事は?」
勇者「俺等はねぇよ」
剣士「僕達もです」
弓兵「……そうか、なら各自休んでてくれ」
勇者「ああ」
博士「……」
暗殺者「博士、お前何隠してる」
博士「何がかな?」
暗殺者「言いたくないならそれでもいい、けど言わないなら俺は信用しない」
博士「……この事は言えないよ」
暗殺者「なら――――」
博士「それにそれを知った所で君達に利点はないよ」
暗殺者「……」
剣士「こ、これだけの人数で大丈夫なんでしょうか?」
弓兵「囮と言ってもあいつ等だって本気で相手を潰しにかかるんだ、あいつ等も乗り込んでくるはずだから人数は大丈夫だ」
弓兵「他に聞きたい事は?」
勇者「俺等はねぇよ」
剣士「僕達もです」
弓兵「……そうか、なら各自休んでてくれ」
勇者「ああ」
博士「……」
暗殺者「博士、お前何隠してる」
博士「何がかな?」
暗殺者「言いたくないならそれでもいい、けど言わないなら俺は信用しない」
博士「……この事は言えないよ」
暗殺者「なら――――」
博士「それにそれを知った所で君達に利点はないよ」
暗殺者「……」
220: 2012/02/25(土) 21:50:47.57 ID:/pZhUA0g0
~~~~~~~~~~
朝 海
弓兵「さて、こっからが本番だ」
暗殺者「そうだな」
弓兵「そろそろ見えて来ただろ」
そこには巨大な戦艦、三隻を、何十隻の船が攻撃していた。
勇者「もう始まってるのか」
剣士「これなら簡単に……」
弓兵「まあ、あの程度じゃよほど頑張らないと穴なんて開けれないだろうけどな」
剣士「え!?」
勇者「いや、見りゃ分かるだろ」
剣士「そ、そう言えばどうやって乗り込むんですか?」
弓兵「俺が穴を開けるからそこからは入れ」
剣士「え……」
勇者「わかった」
暗殺者「……そろそろだな」
弓兵「じゃあ行くぞ」
弓兵は弓を放ち、魔法を詠唱する。
矢は木で出来た部分に刺さり、爆発する。
朝 海
弓兵「さて、こっからが本番だ」
暗殺者「そうだな」
弓兵「そろそろ見えて来ただろ」
そこには巨大な戦艦、三隻を、何十隻の船が攻撃していた。
勇者「もう始まってるのか」
剣士「これなら簡単に……」
弓兵「まあ、あの程度じゃよほど頑張らないと穴なんて開けれないだろうけどな」
剣士「え!?」
勇者「いや、見りゃ分かるだろ」
剣士「そ、そう言えばどうやって乗り込むんですか?」
弓兵「俺が穴を開けるからそこからは入れ」
剣士「え……」
勇者「わかった」
暗殺者「……そろそろだな」
弓兵「じゃあ行くぞ」
弓兵は弓を放ち、魔法を詠唱する。
矢は木で出来た部分に刺さり、爆発する。
221: 2012/02/25(土) 21:52:34.37 ID:/pZhUA0g0
剣士「す、凄い……」
暗殺者「乗り込むチャンスは一回だな」
弓兵「合図は分かってるよな?」
勇者「当たり前」
弓兵「一、二の、三!!」
弓兵の合図で戦艦に跳び移る。
勇者「剣士と俺と弓兵で敵を引きつけながら魔王を探す」
暗殺者「じゃあ俺と博士は魔道騎士を探しに行ってくる」タタタッ
博士「任せたよ」タタタッ
弓兵「じゃあ俺達も行くぞ」タタタッ
勇者「ああ」タタタッ
剣士「さ、作戦とかってあるんですか?」
弓兵「多分穴が開いた事はもうバレてる、なら敵を引きつけとくべきだな」
勇者「とにかく広い場所には出ない様にしとかないとな」ガチャ
兵士達「……」
勇者「ははっ、甲板かよ……」
兵士達「だ、誰だ!!」
弓兵「広い所に出ない様にするって言ったのは誰だったかな?」
勇者「仕方ねぇだろ、それにこっちの方が俺には向いてる」
暗殺者「乗り込むチャンスは一回だな」
弓兵「合図は分かってるよな?」
勇者「当たり前」
弓兵「一、二の、三!!」
弓兵の合図で戦艦に跳び移る。
勇者「剣士と俺と弓兵で敵を引きつけながら魔王を探す」
暗殺者「じゃあ俺と博士は魔道騎士を探しに行ってくる」タタタッ
博士「任せたよ」タタタッ
弓兵「じゃあ俺達も行くぞ」タタタッ
勇者「ああ」タタタッ
剣士「さ、作戦とかってあるんですか?」
弓兵「多分穴が開いた事はもうバレてる、なら敵を引きつけとくべきだな」
勇者「とにかく広い場所には出ない様にしとかないとな」ガチャ
兵士達「……」
勇者「ははっ、甲板かよ……」
兵士達「だ、誰だ!!」
弓兵「広い所に出ない様にするって言ったのは誰だったかな?」
勇者「仕方ねぇだろ、それにこっちの方が俺には向いてる」
222: 2012/02/25(土) 21:54:34.94 ID:/pZhUA0g0
勇者は刀を抜くと、大きく横に薙ぎ払った。
まず手始めに一番手前にいた兵士達を肉片へと変える。
その一撃で辺りは血に染まり、辺りの兵士達が一斉に武器を構えだす。
だが遅い。
遅過ぎる。
まず今武器を構え始めているようでは間に合うはずがない。
一歩踏み出し、次の獲物を射程圏内に捉える。
勇者の刀が新たな獲物を喰い頃す。
兵士達が血の噴水と化し、辺りを赤い水で染め上げる。
返り血に怯む兵士達を一瞥し、駆け出す。
止まっていては雑魚との戦いが永遠と続くだけだ。
今の最優先はドラゴンと女勇者の救出。
それ以外は勇者にとっておまけでしかない。
勇者は止まる事無く走り続ける。
邪魔な兵士は一瞬で叩き斬り、絶命させる。
後ろから兵士が追ってくるのがわかった。
見えたのではなく、気配でなんとなく分かる。
勇者は体をくるりと百八十度回転させ、振り向きざまに、刀を振り下ろした。
だがあえて斬る位置は急所を外す。
もちろん慈悲や優しさからの行動ではない。
まず手始めに一番手前にいた兵士達を肉片へと変える。
その一撃で辺りは血に染まり、辺りの兵士達が一斉に武器を構えだす。
だが遅い。
遅過ぎる。
まず今武器を構え始めているようでは間に合うはずがない。
一歩踏み出し、次の獲物を射程圏内に捉える。
勇者の刀が新たな獲物を喰い頃す。
兵士達が血の噴水と化し、辺りを赤い水で染め上げる。
返り血に怯む兵士達を一瞥し、駆け出す。
止まっていては雑魚との戦いが永遠と続くだけだ。
今の最優先はドラゴンと女勇者の救出。
それ以外は勇者にとっておまけでしかない。
勇者は止まる事無く走り続ける。
邪魔な兵士は一瞬で叩き斬り、絶命させる。
後ろから兵士が追ってくるのがわかった。
見えたのではなく、気配でなんとなく分かる。
勇者は体をくるりと百八十度回転させ、振り向きざまに、刀を振り下ろした。
だがあえて斬る位置は急所を外す。
もちろん慈悲や優しさからの行動ではない。
223: 2012/02/25(土) 21:57:09.58 ID:/pZhUA0g0
「牢屋は何処だ」
血に塗れ、地面を芋虫のようにのたうち回る男に質問する。
顔こそ僅かに笑っているが声は無機質でまるで感情と言うものが籠っていない。
「答えろ」
わざと感情を頃し、男にもう一度質問する。
迷いを捨て、二人を助ける事だけを考える。
勇者は今それを実行しているのだ。
「下だ……この下にある、一番下の階の右奥だ……」
屈強な兵士から発せられたとは思えないようなか細く、消え入りそうな声。
だが勇者はその言葉を一字一句聞き逃す事無く、しっかりと聞きとっていた。
男の心臓に刀を突き刺し、止めを刺すと、また走り出した。
敵を斬り倒しながら下の階層へ行く方法を探す。
また後ろに人間の気配を感じる。
体を半回転させ、そのまま相手に斬りかかる。
224: 2012/02/25(土) 21:59:53.39 ID:/pZhUA0g0
しかし勇者の一撃は相手の剣で受け止められた。
「ちゃんと相手を確認してから斬りかかったほうがいいよ」
そこには金髪の見知った顔の男が立っていた。
名はイケメン。
彼の兄にあたる人間だ。
「なんでお前がここにいるんだ」
勇者は苛立ちを抑える事無く、言い放つ。
右手に持った刀のせいもあり、嫌に恐怖感を煽る。
だがイケメンはそんな事を一切気にせず、勇者を見ている。
周りにいる敵兵達は下手に斬られたくないためか、一定の距離を置き、二人を観察している。
誰一人として、二人に襲いかかろうとする者はいない。
「正義のために戦っている、ではダメかな?」
イケメンは勇者から目をそらす事無く、そう答えた。
「ちゃんと相手を確認してから斬りかかったほうがいいよ」
そこには金髪の見知った顔の男が立っていた。
名はイケメン。
彼の兄にあたる人間だ。
「なんでお前がここにいるんだ」
勇者は苛立ちを抑える事無く、言い放つ。
右手に持った刀のせいもあり、嫌に恐怖感を煽る。
だがイケメンはそんな事を一切気にせず、勇者を見ている。
周りにいる敵兵達は下手に斬られたくないためか、一定の距離を置き、二人を観察している。
誰一人として、二人に襲いかかろうとする者はいない。
「正義のために戦っている、ではダメかな?」
イケメンは勇者から目をそらす事無く、そう答えた。
225: 2012/02/25(土) 22:01:21.67 ID:/pZhUA0g0
あまりに予想通りの答えに勇者は苦笑してしまう。
これほど正義と言う言葉が似合う人間はそうそういないだろう。
勇者は一つの疑問をイケメンにぶつける。
「仲間はどうした」
「別の場所で戦ってるはずだよ」
イケメンはその言葉を言い終わると、剣を構え直し、周りにいる兵士達をぐるりと見まわした。
それが合図になったかのように、二人が同時に敵兵に斬りかかった。
勇者は一瞬で敵兵の目の前に移動し、何の躊躇もなく、敵を斬る。
確実に急所を斬り裂き、相手を絶命させていく。
その姿は無慈悲に命を奪う氏神を連想させた。
刀をもった氏神は無慈悲に兵士達の命を奪い取っていく。
敵兵達の中には恐怖のあまり逃げ出していく者もいた。
目の前の敵に背を向け必氏に逃げていく姿は滑稽だ。
これほど正義と言う言葉が似合う人間はそうそういないだろう。
勇者は一つの疑問をイケメンにぶつける。
「仲間はどうした」
「別の場所で戦ってるはずだよ」
イケメンはその言葉を言い終わると、剣を構え直し、周りにいる兵士達をぐるりと見まわした。
それが合図になったかのように、二人が同時に敵兵に斬りかかった。
勇者は一瞬で敵兵の目の前に移動し、何の躊躇もなく、敵を斬る。
確実に急所を斬り裂き、相手を絶命させていく。
その姿は無慈悲に命を奪う氏神を連想させた。
刀をもった氏神は無慈悲に兵士達の命を奪い取っていく。
敵兵達の中には恐怖のあまり逃げ出していく者もいた。
目の前の敵に背を向け必氏に逃げていく姿は滑稽だ。
226: 2012/02/25(土) 22:03:02.49 ID:/pZhUA0g0
逃げていく者を深追いする気は無かった。
とにかく邪魔をしてくる敵を手当たり次第に斬る。
どの兵士も綺麗に真っ二つに斬られ、血の噴水になっていく。
「あそこの扉だ」
そんな乱戦の中でもイケメンの声は嫌にはっきりと聞こえた。
イケメンは少し離れた所で扉を指差していた。
そこに行け、と言う意味だろう。
どうやら勇者だけに言った訳では無く、剣士にも言っているようだ。
勇者はその扉の方に向き直り、扉目掛け走り出した。
イケメンに従うのは癪だったが、ここは彼に従う。
このままここで戦い続けていても消耗戦になるのは目に見えていた。
勇者は目の前の兵士を叩き斬ると、扉の中に入り、扉を閉めた。
とにかく邪魔をしてくる敵を手当たり次第に斬る。
どの兵士も綺麗に真っ二つに斬られ、血の噴水になっていく。
「あそこの扉だ」
そんな乱戦の中でもイケメンの声は嫌にはっきりと聞こえた。
イケメンは少し離れた所で扉を指差していた。
そこに行け、と言う意味だろう。
どうやら勇者だけに言った訳では無く、剣士にも言っているようだ。
勇者はその扉の方に向き直り、扉目掛け走り出した。
イケメンに従うのは癪だったが、ここは彼に従う。
このままここで戦い続けていても消耗戦になるのは目に見えていた。
勇者は目の前の兵士を叩き斬ると、扉の中に入り、扉を閉めた。
227: 2012/02/25(土) 22:04:08.33 ID:/pZhUA0g0
剣士「皆さん無事ですね」
勇者「弓兵はどうした」
剣士「弓兵さんは、別の所を探しに行くって言ってました」
イケメン「まさか君達まで来てるなんてね」
勇者「それはこっちの台詞だ」
剣士「ふ、二人とも落ち着いて下さいよ」
勇者「安心しろ、ちゃんと落ち着いてる」
イケメン「僕達は十分冷静だよ」
剣士「で、でもここもすぐ敵が……」
イケメン「そんな事は分かっているさ」
勇者「じゃあ俺は行くぞ」
イケメン「勝手にしてくれ」
剣士「ちょっと待ってくれませんか!?」
勇者「何だよ」
剣士「ここは全員一緒に行動しませんか?」
勇者「弓兵はどうした」
剣士「弓兵さんは、別の所を探しに行くって言ってました」
イケメン「まさか君達まで来てるなんてね」
勇者「それはこっちの台詞だ」
剣士「ふ、二人とも落ち着いて下さいよ」
勇者「安心しろ、ちゃんと落ち着いてる」
イケメン「僕達は十分冷静だよ」
剣士「で、でもここもすぐ敵が……」
イケメン「そんな事は分かっているさ」
勇者「じゃあ俺は行くぞ」
イケメン「勝手にしてくれ」
剣士「ちょっと待ってくれませんか!?」
勇者「何だよ」
剣士「ここは全員一緒に行動しませんか?」
228: 2012/02/25(土) 22:06:17.80 ID:/pZhUA0g0
イケメン「僕は別に構わないよ」
勇者「……別にいいぞ」
イケメン「なら決定だね」
イケメン「そう言えば君達の目的はなんだい?」
勇者「仲間の救出」
剣士「ある人を助ける為です」
イケメン「そうか」
剣士「作戦とかはどうしますか?」
イケメン「コソコソする必要は無いだろ、僕達は正義なんだから」
勇者「正面からって言うのは俺も賛成だな」
剣士「で、でも敵の数が……」
勇者「乱戦になればそんな事気にならねぇよ」
兵士「いたぞ!!」
イケメン「無駄話は終わりみたいだね」
勇者「そうみたいだな」
勇者「……別にいいぞ」
イケメン「なら決定だね」
イケメン「そう言えば君達の目的はなんだい?」
勇者「仲間の救出」
剣士「ある人を助ける為です」
イケメン「そうか」
剣士「作戦とかはどうしますか?」
イケメン「コソコソする必要は無いだろ、僕達は正義なんだから」
勇者「正面からって言うのは俺も賛成だな」
剣士「で、でも敵の数が……」
勇者「乱戦になればそんな事気にならねぇよ」
兵士「いたぞ!!」
イケメン「無駄話は終わりみたいだね」
勇者「そうみたいだな」
234: 2012/02/26(日) 22:16:01.38 ID:Oj7pJI+m0
一本道の廊下での戦闘は広い場所よりよっぽど簡単だ。
なぜなら敵は前と後ろからしか来ないからだ。
そして今、後ろにはイケメンと剣士が戦っていた。
つまり、今この状態なら、目の前の敵だけに集中すればいい、と言う簡単なものだった。
勇者の刀が一撃で数人の兵士を絶命させた。
目の前の兵士と戦うだけなら、負ける事は無い。
敵を斬り倒しながらひたすら前に進んでいく。
後ろではイケメンと剣士が戦っている音が聞こえた。
背後は二人に任せておけば安全だろう。
絶対的な安心。
だがなんとなく、なんとなくなのだが、不安な気持ちが心の中にあった。
まるで霧の様にもやもやした、何とも言えない不安。
もちろんそれが何なのかを考えている暇は無い。
今はとにかく進む、それ以外の事は頭の中から排除し、戦いの事を考える。
しかし何故か、頭のどこかではあの不安が何だったのかを考えている自分がいた。
この二人を信用していない訳ではない。
いや、むしろなんだかんだ言ってもイケメンの強さは嫌と言うほど知っている。
それなのに、何故不安が生まれるのだろう。
なぜなら敵は前と後ろからしか来ないからだ。
そして今、後ろにはイケメンと剣士が戦っていた。
つまり、今この状態なら、目の前の敵だけに集中すればいい、と言う簡単なものだった。
勇者の刀が一撃で数人の兵士を絶命させた。
目の前の兵士と戦うだけなら、負ける事は無い。
敵を斬り倒しながらひたすら前に進んでいく。
後ろではイケメンと剣士が戦っている音が聞こえた。
背後は二人に任せておけば安全だろう。
絶対的な安心。
だがなんとなく、なんとなくなのだが、不安な気持ちが心の中にあった。
まるで霧の様にもやもやした、何とも言えない不安。
もちろんそれが何なのかを考えている暇は無い。
今はとにかく進む、それ以外の事は頭の中から排除し、戦いの事を考える。
しかし何故か、頭のどこかではあの不安が何だったのかを考えている自分がいた。
この二人を信用していない訳ではない。
いや、むしろなんだかんだ言ってもイケメンの強さは嫌と言うほど知っている。
それなのに、何故不安が生まれるのだろう。
235: 2012/02/26(日) 22:17:19.84 ID:Oj7pJI+m0
「勇者さん、あと少しです!!」
頭から冷水をかけられたかのように勇者は我に返る。
気がつけば目の前には鉄製の扉があった。
気持ちの悪いほど綺麗な装飾が施され、嫌に光沢がある異様な扉。
普通の人間なら開けるのを躊躇うだろう。
こんなあからさまに怪しい部屋に入る様な人間はバカだ。
だが勇者は何の躊躇もなく、扉を開け、中に入っていく。
後からイケメンと剣士も入ってくるのがわかった。
「なんだこりゃ……」
勇者はおもわず声を漏らしてしまっていた。
目の前にある物体から目を離せない。
横のイケメンと剣士も驚きの表情をしているだろう。
頭から冷水をかけられたかのように勇者は我に返る。
気がつけば目の前には鉄製の扉があった。
気持ちの悪いほど綺麗な装飾が施され、嫌に光沢がある異様な扉。
普通の人間なら開けるのを躊躇うだろう。
こんなあからさまに怪しい部屋に入る様な人間はバカだ。
だが勇者は何の躊躇もなく、扉を開け、中に入っていく。
後からイケメンと剣士も入ってくるのがわかった。
「なんだこりゃ……」
勇者はおもわず声を漏らしてしまっていた。
目の前にある物体から目を離せない。
横のイケメンと剣士も驚きの表情をしているだろう。
236: 2012/02/26(日) 22:19:11.58 ID:Oj7pJI+m0
そこには真っ白な甲冑の騎士が立っていた。
腰には大きな真っ白の剣をさし、無言のままこちらを睨んでいる。
大きさは二メートルあるかないかだろう。
だが何故か今まで感じた事の無い様な威圧感がそれにはあった。
刹那の静寂。
次の瞬間には、騎士はゆっくりとした動作で剣を抜くと、勇者達目掛けて走り出していた。
金属が擦れ合う音をたてながら走ってくる姿は兵器以外の何ものでもない。
イケメンが二人の前に立ち、剣を構えた。
イケメンの剣と騎士の剣が激突する。
剣同士が擦れ合い、嫌な金属音をたてる。
勇者はイケメンと騎士の剣がぶつかる瞬間にすでに走り出していた。
一瞬で騎士の背後に回り込み、斬りつける。
それは人間なら確実に殺せる攻撃のはずだった。
しかし甲冑はイケメンの剣をまるで玩具の様に簡単に弾くと、くるりと振り返り、勇者目掛けて剣を突く。
横に跳んでいる暇はない。
勇者はとっさに体を捻り、剣を回避しようとした。
無茶な動きのせいで体の関節が悲鳴を上げているのがわかる。
全身に鋭い痛みが走る。
だがあの一撃を防御すれば間違いなく吹き飛ばされる。
そうなってしまえば確実に長期戦になってしまうはずだ。
なら……。
勇者は悲鳴を上げる体をさらに無理矢理捻じった。
さっき以上の痛みが全身を貫き、呻き声が漏れる。
腰には大きな真っ白の剣をさし、無言のままこちらを睨んでいる。
大きさは二メートルあるかないかだろう。
だが何故か今まで感じた事の無い様な威圧感がそれにはあった。
刹那の静寂。
次の瞬間には、騎士はゆっくりとした動作で剣を抜くと、勇者達目掛けて走り出していた。
金属が擦れ合う音をたてながら走ってくる姿は兵器以外の何ものでもない。
イケメンが二人の前に立ち、剣を構えた。
イケメンの剣と騎士の剣が激突する。
剣同士が擦れ合い、嫌な金属音をたてる。
勇者はイケメンと騎士の剣がぶつかる瞬間にすでに走り出していた。
一瞬で騎士の背後に回り込み、斬りつける。
それは人間なら確実に殺せる攻撃のはずだった。
しかし甲冑はイケメンの剣をまるで玩具の様に簡単に弾くと、くるりと振り返り、勇者目掛けて剣を突く。
横に跳んでいる暇はない。
勇者はとっさに体を捻り、剣を回避しようとした。
無茶な動きのせいで体の関節が悲鳴を上げているのがわかる。
全身に鋭い痛みが走る。
だがあの一撃を防御すれば間違いなく吹き飛ばされる。
そうなってしまえば確実に長期戦になってしまうはずだ。
なら……。
勇者は悲鳴を上げる体をさらに無理矢理捻じった。
さっき以上の痛みが全身を貫き、呻き声が漏れる。
237: 2012/02/26(日) 22:21:24.19 ID:Oj7pJI+m0
騎士の剣が勇者の横数センチを通過していった。
勇者はそのまま騎士の懐に入る。
ここまでくれば攻撃を回避するのはほぼ不可能だ。
勇者は刀の刃を地面と水平にすると、大きく横に振った。
シュンッ、と風を斬る心地の良い音をたて、刀が騎士目掛けて襲いかかる。
甲冑ですら勇者の刀にとっては紙同然。
刀が勢いよく振り抜かれた。
「な……!?」
だが勇者の刀は何も斬ってはいなかった。
勇者の目の前には何もいない。
忽然と騎士の姿が消えていた。
騎士は勇者から二メートルほど離れた場所に立っていた。
勇者が刀を振る一瞬で大きく後ろに跳び、刀を回避していたのだ。
助走もなく、後ろ向きのままで、二メートルほど後ろに跳んでいた。
騎士は勇者が刀を振り抜いたのを確認すると、今度は勇者目掛けて跳んできた。
助走なしのはずなのに異様に速い。
勇者の体が恐怖に強張る。
圧倒的な氏が迫ってきているのを全身が感じていた。
騎士の剣が勇者目掛けて振り下ろされえる。
ゴウッ、と音が鳴り、剣が勇者の体を脳天から斬り裂こうとする。
騎士の体重も乗ったその一撃は文字通り一撃必殺だろう。
勇者は恐怖を振り払い、素早く横に転がると、その攻撃を回避した。
そしてそのまま騎士の顔の部分目掛け、刀を突く。
あくまで囮としての一撃。
騎士は後ろに跳び、その攻撃を回避する。
しかし後ろに跳んだ騎士を見て、勇者は口元を歪めてにやりと笑った。
そう、この戦いは勇者一人では無い。
今回の戦いには仲間がいるのだ。
勇者はそのまま騎士の懐に入る。
ここまでくれば攻撃を回避するのはほぼ不可能だ。
勇者は刀の刃を地面と水平にすると、大きく横に振った。
シュンッ、と風を斬る心地の良い音をたて、刀が騎士目掛けて襲いかかる。
甲冑ですら勇者の刀にとっては紙同然。
刀が勢いよく振り抜かれた。
「な……!?」
だが勇者の刀は何も斬ってはいなかった。
勇者の目の前には何もいない。
忽然と騎士の姿が消えていた。
騎士は勇者から二メートルほど離れた場所に立っていた。
勇者が刀を振る一瞬で大きく後ろに跳び、刀を回避していたのだ。
助走もなく、後ろ向きのままで、二メートルほど後ろに跳んでいた。
騎士は勇者が刀を振り抜いたのを確認すると、今度は勇者目掛けて跳んできた。
助走なしのはずなのに異様に速い。
勇者の体が恐怖に強張る。
圧倒的な氏が迫ってきているのを全身が感じていた。
騎士の剣が勇者目掛けて振り下ろされえる。
ゴウッ、と音が鳴り、剣が勇者の体を脳天から斬り裂こうとする。
騎士の体重も乗ったその一撃は文字通り一撃必殺だろう。
勇者は恐怖を振り払い、素早く横に転がると、その攻撃を回避した。
そしてそのまま騎士の顔の部分目掛け、刀を突く。
あくまで囮としての一撃。
騎士は後ろに跳び、その攻撃を回避する。
しかし後ろに跳んだ騎士を見て、勇者は口元を歪めてにやりと笑った。
そう、この戦いは勇者一人では無い。
今回の戦いには仲間がいるのだ。
238: 2012/02/26(日) 22:22:14.27 ID:Oj7pJI+m0
騎士の着地点にイケメンは待機していた。
獲物を狡猾に狙うハイエナの様に相手を待ち、狙いを定めている。
イケメンの剣が唸りを上げながら振り抜かれた。
衝撃波が床を剥がし、壁に横一文字の穴を開ける。
騎士の左腕が宙を舞っていた。
イケメンの剣が騎士の腕を斬り裂いたのだ。
普通なら激痛で動けるような状態ではないだろう。
だが騎士はまるで動じることなく、剣を構えていた。
切り裂いた腕の部分からは血が一滴も流れていない。
「え……?」
その一瞬の驚きがイケメンの思考を一瞬だけ止まった……止まってしまった。
一瞬。
一秒にも満たないその時間はあまりにも致命的過ぎた。
騎士はまるでバットの様に剣を大きく振り抜いていた。
風を斬る音が嫌というほど部屋に響き渡る。
回避は間に合わない。
そう直感的に感じたイケメンはとっさに剣を盾にした。
しかし剣を防ぐ事が出来ても衝撃を頃す事は出来ない。
239: 2012/02/26(日) 22:23:13.95 ID:Oj7pJI+m0
気がついた時にはイケメンの体はまるでボールの様に地面を転がっていた。
壁に激突し、彼の体は停止する。
まるで大勢の人間に袋叩きにされたかのように全身が痛い。
体を動かそうとするが、頭を打ったせいか思うように動けない。
自分の体では無い様な錯覚すらしてしまいそうだ。
「さっさと起きろ!!」
まだ機能していない脳が声を聞きとった。
頭が混乱し、誰の声なのかは分からない。
だが仲間だという事だけは分かる。
痛みに耐えながら顔をあげる。
そこには刀を持った少年と真っ白の騎士が火花を散らしながら頃し合っているのが見えた。
助けなければ。
そう直感的に感じる。
正義の味方として、勇者として、彼を助けなければ。
そう心が叫んでいる。
だがどうやっても彼の体は動いてくれなかった。
壁に激突し、彼の体は停止する。
まるで大勢の人間に袋叩きにされたかのように全身が痛い。
体を動かそうとするが、頭を打ったせいか思うように動けない。
自分の体では無い様な錯覚すらしてしまいそうだ。
「さっさと起きろ!!」
まだ機能していない脳が声を聞きとった。
頭が混乱し、誰の声なのかは分からない。
だが仲間だという事だけは分かる。
痛みに耐えながら顔をあげる。
そこには刀を持った少年と真っ白の騎士が火花を散らしながら頃し合っているのが見えた。
助けなければ。
そう直感的に感じる。
正義の味方として、勇者として、彼を助けなければ。
そう心が叫んでいる。
だがどうやっても彼の体は動いてくれなかった。
240: 2012/02/26(日) 22:24:27.87 ID:Oj7pJI+m0
勇者は後ろに跳び、刀を構え直した。
このまま真正面から戦っても勝ち目が無いのは目に見えている。
なら、相手の隙をつき、一撃で仕留める以外方法は無い。
勇者は一瞬で騎士との距離を詰めると、喉元目掛け、剣を突いた。
もちろん、それで殺せるなどと言う楽観的な考えは持ってはいない。
あくまでこの攻撃は囮だ。
むしろ勇者自身が囮だった。
騎士は斜め前に一歩だけ動き、その攻撃を回避した。
そしてまるで氏刑執行人の様に剣を振り上げる。
だが勇者は動じることなく、刀を構え直し、まる悪戯を思いついた子供の様に不敵に笑う。
恐怖はいつの間にか彼の心の中から消え失せていた。
「行け、剣士!!」
勇者はまるで勝利を確信したかのように高らかとそう叫んだ。
顔は僅かに笑っている。
剣士は騎士の真後ろにいた。
まるで狼の様に獲物を倒せるチャンスをひたすらに待っていたのだ。
241: 2012/02/26(日) 22:25:35.09 ID:Oj7pJI+m0
剣士は奇声を上げながら、騎士の心臓目掛け剣を突き刺した。
剣が鎧を貫き、柔らかいものに突き刺さるような音が聞こえる。
だが、それでも騎士は何事も無かったかのように剣を振り下ろしていた。
ゴウッ、と言う風を斬る様な音と共に剣が勇者に襲いかかる。
勇者はとっさに後ろに跳んでいた。
剣が振り下ろされるのが分かったからとかそういう理由では無く、気付いたら体が勝手に動いていたのだ。
しかしその瞬間、勇者の腹部に強烈な痛みが走った。
肺の中の酸素が一気に吐き出され、息が苦しくなる。
あまりの衝撃に意識がとびかける。
勇者の目の前には騎士の左腕があった。
騎士がそれをまるでボールの様に蹴り、勇者の腹にぶつけたのだ、と理解した時には体が吹き飛んでいた。
受け身をする事も体勢を立て直す事も出来ず、地面に落ちる。
背中に激痛が走り、息を吸う事すら苦しくなる。
「まだだ、まだ終わってねぇ」
だが勇者はそんな状態でも立ち上がった。
仲間を、自分の周りにいる人を失わないために。
もう負けないために。
剣が鎧を貫き、柔らかいものに突き刺さるような音が聞こえる。
だが、それでも騎士は何事も無かったかのように剣を振り下ろしていた。
ゴウッ、と言う風を斬る様な音と共に剣が勇者に襲いかかる。
勇者はとっさに後ろに跳んでいた。
剣が振り下ろされるのが分かったからとかそういう理由では無く、気付いたら体が勝手に動いていたのだ。
しかしその瞬間、勇者の腹部に強烈な痛みが走った。
肺の中の酸素が一気に吐き出され、息が苦しくなる。
あまりの衝撃に意識がとびかける。
勇者の目の前には騎士の左腕があった。
騎士がそれをまるでボールの様に蹴り、勇者の腹にぶつけたのだ、と理解した時には体が吹き飛んでいた。
受け身をする事も体勢を立て直す事も出来ず、地面に落ちる。
背中に激痛が走り、息を吸う事すら苦しくなる。
「まだだ、まだ終わってねぇ」
だが勇者はそんな状態でも立ち上がった。
仲間を、自分の周りにいる人を失わないために。
もう負けないために。
242: 2012/02/26(日) 22:27:36.88 ID:Oj7pJI+m0
~~~~~~~~~~~~~
暗殺者「兵士はほとんどいないな」スタスタ
博士「彼等が頑張ってくれているんだろうね」スタスタ
暗殺者「魔道騎士はどうしても壊さなくちゃダメか?」スタスタ
博士「あんなものは世の中にあっちゃいけないよ」スタスタ
暗殺者「どうして破壊にこだわる、魔王さえ奪還できればもう大丈夫だろ」
博士「そうだね……破壊はどちらかと言えば私の願望だよ」
暗殺者「そんなに壊したかったならなんであの時壊さなかった」
博士「あの時?」
暗殺者「魔法の町にいた時だよ、あの時お前は魔道騎士を壊すチャンスがあったのに壊さなかったよな」
博士「それは……私が弱かったからかな」
暗殺者「……」
博士「魔法の町を出た後の私の人生は償いのためだけにあった様なものだよ」
暗殺者「魔王の事を知りたいってのも嘘か」
博士「所詮は建て前さ」
暗殺者「剣士と一緒にいるのも、勇者の母親に協力したのもか?」
博士「……ああ、僕は剣士から大切な人を奪ったんだ」
暗殺者「兵士はほとんどいないな」スタスタ
博士「彼等が頑張ってくれているんだろうね」スタスタ
暗殺者「魔道騎士はどうしても壊さなくちゃダメか?」スタスタ
博士「あんなものは世の中にあっちゃいけないよ」スタスタ
暗殺者「どうして破壊にこだわる、魔王さえ奪還できればもう大丈夫だろ」
博士「そうだね……破壊はどちらかと言えば私の願望だよ」
暗殺者「そんなに壊したかったならなんであの時壊さなかった」
博士「あの時?」
暗殺者「魔法の町にいた時だよ、あの時お前は魔道騎士を壊すチャンスがあったのに壊さなかったよな」
博士「それは……私が弱かったからかな」
暗殺者「……」
博士「魔法の町を出た後の私の人生は償いのためだけにあった様なものだよ」
暗殺者「魔王の事を知りたいってのも嘘か」
博士「所詮は建て前さ」
暗殺者「剣士と一緒にいるのも、勇者の母親に協力したのもか?」
博士「……ああ、僕は剣士から大切な人を奪ったんだ」
243: 2012/02/26(日) 22:28:33.64 ID:Oj7pJI+m0
暗殺者「大切な人?」
博士「父親だよ、一生償ったって許してもらえないだろうね」
暗殺者「勇者の母親にも償いのために協力してたのか」
博士「彼女の愛していた男を奪ってしまった訳だからね」
暗殺者「……」
博士「これで全てだよ」
暗殺者「それはお前にとっても大事な人だったんじゃないのか?」
博士「……」
暗殺者「どうなんだ?」
博士「私の兄だよ」
博士「皮肉なものだろ、兄を失ってやっと自分の研究の愚かさに気付いたんだ」
暗殺者「それで町を出たのか」
博士「その通りだよ」
博士「……笑ってくれ」
暗殺者「……」
その時、爆弾が爆発したかのような轟音が鳴り響いた。
博士「父親だよ、一生償ったって許してもらえないだろうね」
暗殺者「勇者の母親にも償いのために協力してたのか」
博士「彼女の愛していた男を奪ってしまった訳だからね」
暗殺者「……」
博士「これで全てだよ」
暗殺者「それはお前にとっても大事な人だったんじゃないのか?」
博士「……」
暗殺者「どうなんだ?」
博士「私の兄だよ」
博士「皮肉なものだろ、兄を失ってやっと自分の研究の愚かさに気付いたんだ」
暗殺者「それで町を出たのか」
博士「その通りだよ」
博士「……笑ってくれ」
暗殺者「……」
その時、爆弾が爆発したかのような轟音が鳴り響いた。
244: 2012/02/26(日) 22:29:15.14 ID:Oj7pJI+m0
暗殺者「何だ今の?」
博士「かなり近かったね」
暗殺者「もしかして魔道騎士が動いてるんじゃないのか?」
博士「まさか……いや、ありえなくもない……」
暗殺者「え?」
博士「魔道騎士が魔法を使わないように設定しておけば動かせない事も無い」
暗殺者「……強さは?」
博士「魔法を使わなくたって化物さ」
暗殺者「もしかして勇者達が……」
博士「まさか……」
暗殺者「……」タタタッ
博士「待ってくれ!!」タタタッ
博士「かなり近かったね」
暗殺者「もしかして魔道騎士が動いてるんじゃないのか?」
博士「まさか……いや、ありえなくもない……」
暗殺者「え?」
博士「魔道騎士が魔法を使わないように設定しておけば動かせない事も無い」
暗殺者「……強さは?」
博士「魔法を使わなくたって化物さ」
暗殺者「もしかして勇者達が……」
博士「まさか……」
暗殺者「……」タタタッ
博士「待ってくれ!!」タタタッ
251: 2012/02/27(月) 21:44:48.72 ID:h8qVZVDz0
~~~~~~~~~~~~
剣士は剣を構え直し、目の前の騎士を睨みつけた。
勇者とイケメンがやられた以上、この騎士を止められるのは剣士以外いない。
相手との距離を気にしながら、ゆっくりと右に移動する。
勝てるかは分からない。
いや、自分よりもよっぽど強い勇者とイケメンがやられたのだ、勝ち目がある様には到底見えない。
だが彼も一人の勇者として剣をとった身。
なら、ここで逃げる訳にはいかない。
ここで氏ぬわけにはいかない。
剣士は一歩前に出ると、剣を縦に大きく振り下ろした。
しかしその攻撃は勇者達と比べるとあまりに遅く、あまりに威力不足だった。
そんな攻撃が騎士に当たるはずもなく、剣士の剣は大きく空振りする。
やっぱりか。
そんな声が聞こえた気がした。
勝てるはず無い。
そんな曇天の様な陰鬱な思いがどんどん膨れ上がっていくのが分かる。
だがそんな嫌な気持ちを無理矢理押し頃し、剣士は走り出した。
勝つ事を考えるのではない。
あくまで時間稼ぎとして、勇者とイケメンが戦えるようになるまでの時間、囮となる。
剣士は剣を構え直し、目の前の騎士を睨みつけた。
勇者とイケメンがやられた以上、この騎士を止められるのは剣士以外いない。
相手との距離を気にしながら、ゆっくりと右に移動する。
勝てるかは分からない。
いや、自分よりもよっぽど強い勇者とイケメンがやられたのだ、勝ち目がある様には到底見えない。
だが彼も一人の勇者として剣をとった身。
なら、ここで逃げる訳にはいかない。
ここで氏ぬわけにはいかない。
剣士は一歩前に出ると、剣を縦に大きく振り下ろした。
しかしその攻撃は勇者達と比べるとあまりに遅く、あまりに威力不足だった。
そんな攻撃が騎士に当たるはずもなく、剣士の剣は大きく空振りする。
やっぱりか。
そんな声が聞こえた気がした。
勝てるはず無い。
そんな曇天の様な陰鬱な思いがどんどん膨れ上がっていくのが分かる。
だがそんな嫌な気持ちを無理矢理押し頃し、剣士は走り出した。
勝つ事を考えるのではない。
あくまで時間稼ぎとして、勇者とイケメンが戦えるようになるまでの時間、囮となる。
252: 2012/02/27(月) 21:46:56.40 ID:h8qVZVDz0
剣を振り上げ、騎士に斬りかかった。
不安、恐怖、あらゆる感情に蓋をし、相手に襲いかかる。
怖い。
そんな言葉が口から漏れだしそうになるのを必氏でこらえる。
剣士の剣が騎士目掛け振り下ろされた。
ヒュンッ、と空を切る音が聞こえる。
だが騎士はいとも簡単に剣士の剣を防御すると、強者目掛け、前蹴りを放った。
ゴウッ、と言う剣士の剣の音とは比べ物にならない様な音を上げながら、剣士の腹目掛けて、真っすぐに襲いかかる。
防御する暇も回避する暇もなく、剣士の体はまるで風に飛ばされた枯れ葉の様に地面を転がっていた。
あまりの出来事に頭がついていっていないのか、体には無気味なほど痛みというものが無い。
「う、あぐ……」
しかし数秒後には今まで感じた事の無い様な激痛が全身を包んでいた。
呼吸すら忘れてしまいそうなほどの強烈な痛みに、脳が痺れる。
思考がうまく働かず、気を抜けば今何をしているかすら忘れてしまいそうなほどだ。
「あ、あが……」
言葉にならない呻き声を上げながら体を必氏に動かし、逃げる。
まるでゾンビの様に、地面をずるずると這いつくばりながら移動していく。
不安、恐怖、あらゆる感情に蓋をし、相手に襲いかかる。
怖い。
そんな言葉が口から漏れだしそうになるのを必氏でこらえる。
剣士の剣が騎士目掛け振り下ろされた。
ヒュンッ、と空を切る音が聞こえる。
だが騎士はいとも簡単に剣士の剣を防御すると、強者目掛け、前蹴りを放った。
ゴウッ、と言う剣士の剣の音とは比べ物にならない様な音を上げながら、剣士の腹目掛けて、真っすぐに襲いかかる。
防御する暇も回避する暇もなく、剣士の体はまるで風に飛ばされた枯れ葉の様に地面を転がっていた。
あまりの出来事に頭がついていっていないのか、体には無気味なほど痛みというものが無い。
「う、あぐ……」
しかし数秒後には今まで感じた事の無い様な激痛が全身を包んでいた。
呼吸すら忘れてしまいそうなほどの強烈な痛みに、脳が痺れる。
思考がうまく働かず、気を抜けば今何をしているかすら忘れてしまいそうなほどだ。
「あ、あが……」
言葉にならない呻き声を上げながら体を必氏に動かし、逃げる。
まるでゾンビの様に、地面をずるずると這いつくばりながら移動していく。
253: 2012/02/27(月) 21:49:02.68 ID:h8qVZVDz0
だがそんな努力のむなしく、いつの間にか騎士は剣士の目の前に立っていた。
騎士は真っすぐに剣士を見ていた。
騎士の剣がまるで満月のように白く輝いて見える。
まるで堤防が決壊したかのように恐怖が一気に心の中に流れ込んでくる。
騎士は剣士の心臓に狙いを定め、剣を構え直した。
その姿は見方によっては人々を天国へ招く天使にも見えそうだ。
だが剣士にはそれは白い悪魔にしか見えない。
剣士奥歯を噛み締め、剣を目で追った。
恐怖が全身の筋肉を硬直させる。
騎士の剣が真っすぐにこちらに向かってくる。
グサッ、という音が辺りに響き、赤い液体がゆっくりと体を伝い地面に落ちていく。
「え……?」
剣士はあまりの出来ごとに声を漏らしてしまっていた。
声には驚きと戸惑いが混じっている。
「がはっ……」
騎士と剣士の間には博士がいた。
胸には深々と白い剣が突き刺さり、剣の先からは真っ赤な血が流れ出ている。
博士はその場で吐血した。
絞り上げる様な苦しそうな声を声を上げながら、荒い呼吸を繰り返している。
だがその顔は何故か笑っていた。
まるで子供を見守る母親のような、優しく包み込むような笑顔で。
騎士は真っすぐに剣士を見ていた。
騎士の剣がまるで満月のように白く輝いて見える。
まるで堤防が決壊したかのように恐怖が一気に心の中に流れ込んでくる。
騎士は剣士の心臓に狙いを定め、剣を構え直した。
その姿は見方によっては人々を天国へ招く天使にも見えそうだ。
だが剣士にはそれは白い悪魔にしか見えない。
剣士奥歯を噛み締め、剣を目で追った。
恐怖が全身の筋肉を硬直させる。
騎士の剣が真っすぐにこちらに向かってくる。
グサッ、という音が辺りに響き、赤い液体がゆっくりと体を伝い地面に落ちていく。
「え……?」
剣士はあまりの出来ごとに声を漏らしてしまっていた。
声には驚きと戸惑いが混じっている。
「がはっ……」
騎士と剣士の間には博士がいた。
胸には深々と白い剣が突き刺さり、剣の先からは真っ赤な血が流れ出ている。
博士はその場で吐血した。
絞り上げる様な苦しそうな声を声を上げながら、荒い呼吸を繰り返している。
だがその顔は何故か笑っていた。
まるで子供を見守る母親のような、優しく包み込むような笑顔で。
254: 2012/02/27(月) 21:51:03.55 ID:h8qVZVDz0
「久しぶりだね、兄さん」
博士の声はかすれ今にも消えてしまいそうだった。
だが、今まで聞いたどんな声よりも優しい声だ。
博士は血に塗れた右手で騎士の頬を優しく触る。
まるで硝子細工を触るように優しく騎士の方を撫でる。
「兄さん、剣士は殺させないよ」
博士は自分の言葉に奥歯を噛み締めた。
贖罪と後悔の気持ちが胸の中を支配する。
兄をこんな姿にしてしまったのは他の誰でも無い自分なのだから。
もう一度吐血する。
内臓が傷ついているのだろう。
だがそれでもいい。
あれだけの事をしたのだから、これぐらい当然の事だ。
「もう十四年も前か……私はずっと後悔していたよ」
その言葉は自分自身をも傷つけた。
十四年間、忘れた事の無かった後悔の気持ちが胸を締め付ける。
255: 2012/02/27(月) 21:52:39.13 ID:h8qVZVDz0
「安心してくれ、ここで終わらせる」
博士はそう言い、まるで子供を見守る母親の様ににこやかに笑うと、呪文を詠唱し始めた。
博士の体に魔力はほとんどない。
だが代償を使えば魔法を使う事は出来る。
自分の体全てを代償にし、魔法を発動させれば、いくら魔道騎士と言えども耐えきれはしないだろう。
体の中の血液が沸騰したかのように焼ける様な激痛が全身に走る。
まるで毒ようにゆっくりと、しかし確実にそれが体を蝕んでいくにが分かった。
「剣士、すまなかったね」
激痛に耐えながらひと言だけ告げる。
結局、本当の事を伝える事は出来なかった。
最後まで言えなかった。
剣士は泣いているように見えた。
いや、きっと見間違いだろう、こんな人間のために泣いてくれるはずはいない。
四肢が引き裂かれる様な激痛が全身を襲う。
だがそれさえも彼にとっては何処か物足りなかった。
この程度の痛みで許されるはずがない。
許されてはならない。
地獄の業火で全身を焼かれるぐらいでなければ、許されてはならない。
そんな気持ちがあった。
「お前はそれで良かったのか?」
博士はそう言い、まるで子供を見守る母親の様ににこやかに笑うと、呪文を詠唱し始めた。
博士の体に魔力はほとんどない。
だが代償を使えば魔法を使う事は出来る。
自分の体全てを代償にし、魔法を発動させれば、いくら魔道騎士と言えども耐えきれはしないだろう。
体の中の血液が沸騰したかのように焼ける様な激痛が全身に走る。
まるで毒ようにゆっくりと、しかし確実にそれが体を蝕んでいくにが分かった。
「剣士、すまなかったね」
激痛に耐えながらひと言だけ告げる。
結局、本当の事を伝える事は出来なかった。
最後まで言えなかった。
剣士は泣いているように見えた。
いや、きっと見間違いだろう、こんな人間のために泣いてくれるはずはいない。
四肢が引き裂かれる様な激痛が全身を襲う。
だがそれさえも彼にとっては何処か物足りなかった。
この程度の痛みで許されるはずがない。
許されてはならない。
地獄の業火で全身を焼かれるぐらいでなければ、許されてはならない。
そんな気持ちがあった。
「お前はそれで良かったのか?」
256: 2012/02/27(月) 22:02:36.19 ID:h8qVZVDz0
まるで真っ暗な場所に一筋の光が差し込むかのように、声が脳に響く。
声からして暗殺者だろう。
もはや体を動かす気力も残ってはいない。
まるで鉛の様に体が重くなり。
まるでマネキンの様に体は動かなかった。
「本当の事を伝えてくれないか……」
悩んだあげく彼の口から出た言葉はそれだけだった。
博士は自嘲気味に笑う。
最後の最後まで自分は卑怯だった。
結局自分で言うのが怖いから他人に頼んだ。
そんなのは剣士から逃げたのと同じ事だ。
いや、きっと最初から逃げてきていたのだろう。
もしそうでなければきっと言えていたはず。
結局適当な理由をつけて逃げ続けていたのだ。
結局、私は一度も真正面から向き合えなかった……
そう心の中で呟く。
意識が朦朧とし、何も考えられなくなる。
博士の体の中のあらゆるものが代償として失われきろうとしていた。
声からして暗殺者だろう。
もはや体を動かす気力も残ってはいない。
まるで鉛の様に体が重くなり。
まるでマネキンの様に体は動かなかった。
「本当の事を伝えてくれないか……」
悩んだあげく彼の口から出た言葉はそれだけだった。
博士は自嘲気味に笑う。
最後の最後まで自分は卑怯だった。
結局自分で言うのが怖いから他人に頼んだ。
そんなのは剣士から逃げたのと同じ事だ。
いや、きっと最初から逃げてきていたのだろう。
もしそうでなければきっと言えていたはず。
結局適当な理由をつけて逃げ続けていたのだ。
結局、私は一度も真正面から向き合えなかった……
そう心の中で呟く。
意識が朦朧とし、何も考えられなくなる。
博士の体の中のあらゆるものが代償として失われきろうとしていた。
257: 2012/02/27(月) 22:05:00.12 ID:h8qVZVDz0
博士には言っておかなければならない事が一つだけあった。
本当は一番最初に言っておくべき事。
兄に謝っておかなければならかった。
まるで縫い付けられているかのように動かない口を無理矢理動かし、言葉を紡ぐ。
だが口は動くものの声が発せられない。
博士は必氏に口を動かし、もう一度言葉を発する。
「兄さん……ごめん」
それはかすれて、今にも消え入りそうなか細い声だった。
だが博士は苦笑し、目を閉じた。
もう限界だ。
氏ぬ間際にしか謝れない自分の愚かさ、他人に全てを任せた自分の身勝手さを痛感し自嘲気味に笑う。
博士はぼんやりとした意識の中で、兄と剣士に問いかけた。
答えはいらない。
答えなど欲しくはない。
もし答えを聞かされたら、彼の心の中を支えてきたものが音をたてて崩れだしそうだった。
だが最後に、最後だからこそ問いかけておきたい。
兄さん……剣士……私を―――――。
本当は一番最初に言っておくべき事。
兄に謝っておかなければならかった。
まるで縫い付けられているかのように動かない口を無理矢理動かし、言葉を紡ぐ。
だが口は動くものの声が発せられない。
博士は必氏に口を動かし、もう一度言葉を発する。
「兄さん……ごめん」
それはかすれて、今にも消え入りそうなか細い声だった。
だが博士は苦笑し、目を閉じた。
もう限界だ。
氏ぬ間際にしか謝れない自分の愚かさ、他人に全てを任せた自分の身勝手さを痛感し自嘲気味に笑う。
博士はぼんやりとした意識の中で、兄と剣士に問いかけた。
答えはいらない。
答えなど欲しくはない。
もし答えを聞かされたら、彼の心の中を支えてきたものが音をたてて崩れだしそうだった。
だが最後に、最後だからこそ問いかけておきたい。
兄さん……剣士……私を―――――。
258: 2012/02/27(月) 22:07:35.68 ID:h8qVZVDz0
風が集束し、騎士をズタズタに引き裂いていく。
それはもはや風と言うより、研ぎ澄まされた刃の群れの様だ。
騎士はあっという間に原形を失い、もはや元の形さえ分からない塊になり果てていた。
しかし、それでも血は一滴も流れる事は無く、ただ白い鎧の破片と黒い何かがあるだけだった。
勇者は一人、まるで足に釘を打たれたかのように立ちつくしていた。
博士を止めるチャンスはあった。
だが何故かそうしなかった。
出来なかった。
目に見えない何か、強いて言うなら博士の決意の様なものが彼を動けなくしていた。
勇者は剣士の横に移動し、騎士を眺めた。
いや、もはやこれは騎士ではなく、ただの塊だ。
剣士の横に居ても、何もかける言葉は無い。
下手な言葉をかければ剣士は泣き崩れてしまいそうなほど彼の心が繊細な様な気がした。
「勇者さん、博士は何のために兵器を作っていたんでしょうか」
剣士は目をウサギの様に赤くし、勇者の方を見ていた。
きっと泣いていたのだろう、だが今は涙はこぼれる事はなかった。
「わかるかよ、俺は博士じゃねぇんだ」
勇者はそう答えるしかなかった。
博士には博士の信念や理想を持って兵器を作っていた。
ならそれは勇者が勝手に解釈し、勝手に話すべきではない。
そう思ったのだ。
勇者は刀を鞘にしまい、塊に背を向けた。
259: 2012/02/27(月) 22:09:15.04 ID:h8qVZVDz0
勇者「これが魔道騎士か?」
暗殺者「みたいだな」
イケメン「さっきの人は氏んだのか?」
暗殺者「ああ、体を代償にしたんだ、生きてるはずないだろ」
剣士「……」
勇者「少し休んどけ」
イケメン「……」
イケメン「そうだね、その方がいい」
勇者「イケメン、ここは任せていいか?」
イケメン「大丈夫だ、彼は僕が責任を持って守り抜く」
勇者「期待してるぞ」
イケメン「もう行くのかい?」
勇者「ああ、まだやらなくちゃいけない事が山ほどあるんだ」スタスタ
剣士「……大丈夫です」
剣士「僕は大丈夫です」
勇者・イケメン「……」
剣士「本当に……大丈夫ですから」
暗殺者「みたいだな」
イケメン「さっきの人は氏んだのか?」
暗殺者「ああ、体を代償にしたんだ、生きてるはずないだろ」
剣士「……」
勇者「少し休んどけ」
イケメン「……」
イケメン「そうだね、その方がいい」
勇者「イケメン、ここは任せていいか?」
イケメン「大丈夫だ、彼は僕が責任を持って守り抜く」
勇者「期待してるぞ」
イケメン「もう行くのかい?」
勇者「ああ、まだやらなくちゃいけない事が山ほどあるんだ」スタスタ
剣士「……大丈夫です」
剣士「僕は大丈夫です」
勇者・イケメン「……」
剣士「本当に……大丈夫ですから」
260: 2012/02/27(月) 22:10:26.24 ID:h8qVZVDz0
勇者「そうか、なら安心だ」スタスタ
暗殺者「俺はもう一つの船の方を調べてくる」スタスタ
勇者「ああ、頼んだ」
勇者「剣士、多分あいつは魔道騎士がいた場所にいるはずだ」
剣士「そうですね、分かりました」スタスタ
イケメン「僕はここに残るよ、ここへの入り口はそこの扉だけだからね」
勇者「一人で敵を全部止めるのか?」
イケメン「仲間を守るのも正義の味方の仕事だろう?」
勇者「そうだな、確かにそうだ」スタスタ
イケメン「じゃあ、みんな無事戻ってきてくれよ」
剣士「はい」
勇者「お前もな」スタスタ
暗殺者「俺はもう一つの船の方を調べてくる」スタスタ
勇者「ああ、頼んだ」
勇者「剣士、多分あいつは魔道騎士がいた場所にいるはずだ」
剣士「そうですね、分かりました」スタスタ
イケメン「僕はここに残るよ、ここへの入り口はそこの扉だけだからね」
勇者「一人で敵を全部止めるのか?」
イケメン「仲間を守るのも正義の味方の仕事だろう?」
勇者「そうだな、確かにそうだ」スタスタ
イケメン「じゃあ、みんな無事戻ってきてくれよ」
剣士「はい」
勇者「お前もな」スタスタ
267: 2012/02/28(火) 21:45:30.08 ID:4NIlTqUl0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大広間
勇者「……」スタスタ
頃し屋「お久しぶり」ピョンッ
勇者「……なんでお前がここにいる」
頃し屋「そんな事言われても……まあ強いて言うなら楽しそうだったからかな」
勇者「……何だそれ」
頃し屋「そんな怖い顔しないでよ、俺はお前と戦う気なんてないから」
勇者「じゃあ何の用だ、俺は今忙しいんだ」
頃し屋「仲間の女を探してるんだろ」
勇者「……ああ、どこにいるんだ?」
頃し屋「遅過ぎだよ、お前」
勇者「どういう意味だ」
頃し屋「真っすぐで純粋な人間ほど脆いものは無い、あの女もそうだったんだよ」
大広間
勇者「……」スタスタ
頃し屋「お久しぶり」ピョンッ
勇者「……なんでお前がここにいる」
頃し屋「そんな事言われても……まあ強いて言うなら楽しそうだったからかな」
勇者「……何だそれ」
頃し屋「そんな怖い顔しないでよ、俺はお前と戦う気なんてないから」
勇者「じゃあ何の用だ、俺は今忙しいんだ」
頃し屋「仲間の女を探してるんだろ」
勇者「……ああ、どこにいるんだ?」
頃し屋「遅過ぎだよ、お前」
勇者「どういう意味だ」
頃し屋「真っすぐで純粋な人間ほど脆いものは無い、あの女もそうだったんだよ」
268: 2012/02/28(火) 21:46:58.72 ID:4NIlTqUl0
勇者「……テメェ」
勇者は刀を抜き、頃し屋の方を睨む
頃し屋「だから待ってよ、俺は氏んだなんて一言も言ってないだろ」
勇者「じゃあどういう意味だ」
頃し屋「心を奪われたんだ」
勇者「は?」
頃し屋「今のあいつはお前の事を敵としか見ていないはずだ」
勇者「どういう意味だよ!!」
頃し屋「言葉通りさ、今のお前はあいつにとって敵以外の何ものでもないんだ」
勇者「……」
頃し屋「お前しか救えないよ」
勇者「……」
頃し屋「あいつを救ってあげなよ、愛と正義の物語はハッピーエンドじゃなきゃ終われないだろ」
勇者「正義ね……」
頃し屋「そう、愛と正義の物語、もちろん主人公はお前だよ」
勇者は刀を抜き、頃し屋の方を睨む
頃し屋「だから待ってよ、俺は氏んだなんて一言も言ってないだろ」
勇者「じゃあどういう意味だ」
頃し屋「心を奪われたんだ」
勇者「は?」
頃し屋「今のあいつはお前の事を敵としか見ていないはずだ」
勇者「どういう意味だよ!!」
頃し屋「言葉通りさ、今のお前はあいつにとって敵以外の何ものでもないんだ」
勇者「……」
頃し屋「お前しか救えないよ」
勇者「……」
頃し屋「あいつを救ってあげなよ、愛と正義の物語はハッピーエンドじゃなきゃ終われないだろ」
勇者「正義ね……」
頃し屋「そう、愛と正義の物語、もちろん主人公はお前だよ」
269: 2012/02/28(火) 21:50:06.47 ID:4NIlTqUl0
勇者「バカバカしいな」
頃し屋「愛と正義っていい言葉だと思うんだけどな」
勇者「俺にも似合わない言葉だって事だよ」
頃し屋「似合わなくたって別にいいだろ」
勇者「……」
女勇者「……」スタスタ
勇者「女勇者!!」
女勇者「……」
頃し屋「まだ完全に洗脳出来た訳じゃない、お前の頑張り次第では助けられるよ」
勇者「そんな事言っていいのか?」
頃し屋「洗脳とかって俺嫌いなんだよね、虫唾が走るって言うのかな、とにかくああいうのムカつくんだよ」
勇者「俺も同感だ」
頃し屋「じゃあ俺は見物させてもらおうかな」
頃し屋「楽しい物語にしてくれよ」ピョン
勇者「……」
頃し屋「愛と正義っていい言葉だと思うんだけどな」
勇者「俺にも似合わない言葉だって事だよ」
頃し屋「似合わなくたって別にいいだろ」
勇者「……」
女勇者「……」スタスタ
勇者「女勇者!!」
女勇者「……」
頃し屋「まだ完全に洗脳出来た訳じゃない、お前の頑張り次第では助けられるよ」
勇者「そんな事言っていいのか?」
頃し屋「洗脳とかって俺嫌いなんだよね、虫唾が走るって言うのかな、とにかくああいうのムカつくんだよ」
勇者「俺も同感だ」
頃し屋「じゃあ俺は見物させてもらおうかな」
頃し屋「楽しい物語にしてくれよ」ピョン
勇者「……」
270: 2012/02/28(火) 21:51:52.56 ID:4NIlTqUl0
勇者は刀を抜き、一歩後ろに下がった。
相手の目を見ながら、攻撃してくるのを待つ。
女勇者は剣を抜くと、勇者目掛けて跳んだ。
隙の無い完璧な動きで勇者との距離を詰める。
そしてそのまま剣を大きく縦に振った。
勇者はまるで子供と戯れているかのようにいとも簡単に攻撃を素早く回避すると、女勇者の背後に回り込んだ。
しかしそのまま反撃する事はなく、後ろに跳んだ。
「どうした、ずいぶん遅いじゃねぇか」
わざと小馬鹿にしたように挑発する。
だが女勇者は表情を変える事無く、剣を構え、こちらを睨んでいる。
まるで獲物を狙うその表情は明らかに勇者を敵と認識しているようだ。
勇者は無言で女勇者を見ながら刀を構え直す。
勇者は苦虫を噛み潰した様な表情をしていた。
それが合図になった様に女勇者は猪の様に真正面からつっこんでくる。
女勇者の剣が横に大きく薙ぎ払われる。
ゴウッ、というまるで強風の様な音をたてながら、勇者を真っ二つにしようとする。
相手の目を見ながら、攻撃してくるのを待つ。
女勇者は剣を抜くと、勇者目掛けて跳んだ。
隙の無い完璧な動きで勇者との距離を詰める。
そしてそのまま剣を大きく縦に振った。
勇者はまるで子供と戯れているかのようにいとも簡単に攻撃を素早く回避すると、女勇者の背後に回り込んだ。
しかしそのまま反撃する事はなく、後ろに跳んだ。
「どうした、ずいぶん遅いじゃねぇか」
わざと小馬鹿にしたように挑発する。
だが女勇者は表情を変える事無く、剣を構え、こちらを睨んでいる。
まるで獲物を狙うその表情は明らかに勇者を敵と認識しているようだ。
勇者は無言で女勇者を見ながら刀を構え直す。
勇者は苦虫を噛み潰した様な表情をしていた。
それが合図になった様に女勇者は猪の様に真正面からつっこんでくる。
女勇者の剣が横に大きく薙ぎ払われる。
ゴウッ、というまるで強風の様な音をたてながら、勇者を真っ二つにしようとする。
271: 2012/02/28(火) 21:52:52.03 ID:4NIlTqUl0
勇者は刀でその攻撃を受け止めた。
金属がぶつかり合う音と共に火の粉が躍る。
だが女勇者は止まる事無く、さらに追撃を始める。
変幻自在の様々な攻撃で勇者を翻弄する。
それは同じ人間が行っているとは思えないほど多彩で様々な攻撃。
しかし勇者はその攻撃の先読みし、回避する。
まるで紙の様にひらひらと体を動かしながら攻撃を回避していく。
勇者は大きく後ろに跳ぶと、刀を構え直し、女勇者を見た。
攻めるチャンスが無かった訳ではない。
むしろいつもの勇者なら無理矢理にでも攻め込んでいるはずだ。
だが勇者は決して女勇者目掛けて刀を振らない。
振れない。
勇者の目の前にいるのはどんな姿であっても仲間だ。
仲間に刀を振ることなど出来るはずない。
「俺が力不足だったんだ……悪い……」
金属がぶつかり合う音と共に火の粉が躍る。
だが女勇者は止まる事無く、さらに追撃を始める。
変幻自在の様々な攻撃で勇者を翻弄する。
それは同じ人間が行っているとは思えないほど多彩で様々な攻撃。
しかし勇者はその攻撃の先読みし、回避する。
まるで紙の様にひらひらと体を動かしながら攻撃を回避していく。
勇者は大きく後ろに跳ぶと、刀を構え直し、女勇者を見た。
攻めるチャンスが無かった訳ではない。
むしろいつもの勇者なら無理矢理にでも攻め込んでいるはずだ。
だが勇者は決して女勇者目掛けて刀を振らない。
振れない。
勇者の目の前にいるのはどんな姿であっても仲間だ。
仲間に刀を振ることなど出来るはずない。
「俺が力不足だったんだ……悪い……」
272: 2012/02/28(火) 21:54:53.71 ID:4NIlTqUl0
勇者は女勇者に謝っていた。
女勇者がこの言葉に何を感じるかは分からない。
聞いているかすら定かではない。
だが勇者はどうしても謝っておきたかった。
未熟で愚かだった事を。
誰も救えなかった事を。
女勇者はいつの間にか跳んでいた。
女勇者の剣が勇者の心臓目掛け突かれる。
美しい軌道を描いて、剣が進んでくる。
勇者はそれを回避し、背後に回り込む。
だがそこでいつもの様に斬りかかる事なく、また後ろに跳ぶ。
女勇者の表情はいつもの通りまるで仮面をかぶったかのように無表情だった
しかしやはりいつもの女勇者とは何かが違う、
そう感ぜざるをえない。
勇者は刀を構え直し、女勇者を見据える。
女勇者の顔はどこか儚く、幸の薄い少女の様だった。
女勇者がこの言葉に何を感じるかは分からない。
聞いているかすら定かではない。
だが勇者はどうしても謝っておきたかった。
未熟で愚かだった事を。
誰も救えなかった事を。
女勇者はいつの間にか跳んでいた。
女勇者の剣が勇者の心臓目掛け突かれる。
美しい軌道を描いて、剣が進んでくる。
勇者はそれを回避し、背後に回り込む。
だがそこでいつもの様に斬りかかる事なく、また後ろに跳ぶ。
女勇者の表情はいつもの通りまるで仮面をかぶったかのように無表情だった
しかしやはりいつもの女勇者とは何かが違う、
そう感ぜざるをえない。
勇者は刀を構え直し、女勇者を見据える。
女勇者の顔はどこか儚く、幸の薄い少女の様だった。
273: 2012/02/28(火) 21:55:43.92 ID:4NIlTqUl0
勇者は姿勢を低くし大きく跳んだ。
まるで弾丸の様に、地面すれすれを勇者のもてる最速で進んでいく。
『お前しか救えないよ』
頃し屋の言葉が頭で再生される。
仲間を誰一人守る事の出来ない様な人間が仲間を救う事など出来るのだろうか。
女勇者を救うのは本当に自分でいいのだろうか。
そんな疑問が頭の中をぐるぐると渦巻く。
女勇者の剣が勇者目掛けて振り下ろされる。
風を斬る音が勇者の耳にも届く。
勇者は体を大きく捻り、紙一重で回避し、相手の懐に入り込む。
そして意を決し、刀の柄で女勇者の脇腹を突く
だが女勇者剣僅かに後ろに跳び、その攻撃を交わすと、剣を横に薙ぎ払った。
唸るような音を上げながら、剣は一直線に勇者に襲いかかる。
間に合わない。
そう直感的に感じとった勇者はとっさに刀を盾にする。
まるで弾丸の様に、地面すれすれを勇者のもてる最速で進んでいく。
『お前しか救えないよ』
頃し屋の言葉が頭で再生される。
仲間を誰一人守る事の出来ない様な人間が仲間を救う事など出来るのだろうか。
女勇者を救うのは本当に自分でいいのだろうか。
そんな疑問が頭の中をぐるぐると渦巻く。
女勇者の剣が勇者目掛けて振り下ろされる。
風を斬る音が勇者の耳にも届く。
勇者は体を大きく捻り、紙一重で回避し、相手の懐に入り込む。
そして意を決し、刀の柄で女勇者の脇腹を突く
だが女勇者剣僅かに後ろに跳び、その攻撃を交わすと、剣を横に薙ぎ払った。
唸るような音を上げながら、剣は一直線に勇者に襲いかかる。
間に合わない。
そう直感的に感じとった勇者はとっさに刀を盾にする。
274: 2012/02/28(火) 21:59:05.31 ID:4NIlTqUl0
しかし、女勇者の剣は勇者の刀の手前で停止した。
まるで脅えているようにカチャカチャと音をたて、切っ先が震えている。
いや、女勇者が震えているのだ。
「勇……者……」
女勇者の唇が震えながらそう言葉を紡ぐ。
それは蝋燭の炎の様にか細く、今にも消えてしまいそうな声。
だが勇者にはその声がはっきり一字一句聞こえていた。
勇者は後ろに大きく跳び、大きく息を吸った。
「頃し屋、ヒノキの棒あるか」
勇者は何処にいるか分からない観戦者に向け、そう言い放った。
声は部屋全体に響く。
何処からかヒノキの棒が一本勇者の目の前に落ちてくる。
クルクルと回転しながら落ちてくるヒノキの棒を勇者は左手で掴んだ。
右手に持った刀は鞘にしまう。
まるで脅えているようにカチャカチャと音をたて、切っ先が震えている。
いや、女勇者が震えているのだ。
「勇……者……」
女勇者の唇が震えながらそう言葉を紡ぐ。
それは蝋燭の炎の様にか細く、今にも消えてしまいそうな声。
だが勇者にはその声がはっきり一字一句聞こえていた。
勇者は後ろに大きく跳び、大きく息を吸った。
「頃し屋、ヒノキの棒あるか」
勇者は何処にいるか分からない観戦者に向け、そう言い放った。
声は部屋全体に響く。
何処からかヒノキの棒が一本勇者の目の前に落ちてくる。
クルクルと回転しながら落ちてくるヒノキの棒を勇者は左手で掴んだ。
右手に持った刀は鞘にしまう。
275: 2012/02/28(火) 22:01:50.35 ID:4NIlTqUl0
「懐かしいだろ、あの時と一緒だ」
勇者は愛おしそうにヒノキの棒と女勇者を交互に見た。
旅の始まりの頃を思い出し、目を細める。
女勇者の言葉は頭の奥に今もしっかりと残っている。
迷いは霧が晴れるようにいつの間にか消えていた。
女勇者を救う、それだけを考える。
勇者には洗脳がどういうものかは知らない。
だが女勇者は女勇者だ。
なら元に戻せばいい。
助けだせばいい。
『愛と正義の物語はハッピーエンドじゃなきゃ終われないだろ』
頃し屋の言葉がま勇者のた頭の中に思い浮かんだ。
その通りだ。
ハッピーエンドで終わらせるのだ。
全員が生きて帰るハッピーエンドを。
最高のハッピーエンドを。
281: 2012/02/29(水) 21:43:18.10 ID:9SLqNOzn0
女勇者は剣を構え、目の前の男目掛けて走り出した。
理由は分からないが武器をヒノキの棒に変えたのだ、このチャンスを逃す訳にはいかない。
敵である以上容赦をしている暇は無い。
女勇者は音よりも早く剣を振り下ろした。
剣が振り終えた頃に遅れて空を斬る様な音が聞こえる。
だが目の前の男はそれをまたしてもいとも簡単に交わし、雷の様な速さで背後に回りこんでいた。
そしてヒノキの棒を大きく横に薙ぎ払う。
女勇者はとっさに後ろに跳び、それを回避した。
目の前をヒノキの棒が音をたてて通過していくのが見える。
男は女勇者の予想以上に速かった。
しかしその戦い方は何処か危なっかしく、とても優秀な戦士と言えるものではない。
なんというのだろう、胸の中がもやもやする様な気がした。
まるで雲の様にもやもやし、しっかりとした形の無いものが胸に引っかかっているのだ。
女勇者はこの戦い方をする人間を知っている様な気がしていた。
危なっかしく口の悪い人。
彼女を変えてくれた、とても大切な人。
だがまるでその記憶だけ霧がかかった様にぼんやりとしか思い出せない。
男はさらに一歩踏み出し、女勇者を追撃する。
まるで閃光の様に一瞬の攻撃。
音すらない一撃。
理由は分からないが武器をヒノキの棒に変えたのだ、このチャンスを逃す訳にはいかない。
敵である以上容赦をしている暇は無い。
女勇者は音よりも早く剣を振り下ろした。
剣が振り終えた頃に遅れて空を斬る様な音が聞こえる。
だが目の前の男はそれをまたしてもいとも簡単に交わし、雷の様な速さで背後に回りこんでいた。
そしてヒノキの棒を大きく横に薙ぎ払う。
女勇者はとっさに後ろに跳び、それを回避した。
目の前をヒノキの棒が音をたてて通過していくのが見える。
男は女勇者の予想以上に速かった。
しかしその戦い方は何処か危なっかしく、とても優秀な戦士と言えるものではない。
なんというのだろう、胸の中がもやもやする様な気がした。
まるで雲の様にもやもやし、しっかりとした形の無いものが胸に引っかかっているのだ。
女勇者はこの戦い方をする人間を知っている様な気がしていた。
危なっかしく口の悪い人。
彼女を変えてくれた、とても大切な人。
だがまるでその記憶だけ霧がかかった様にぼんやりとしか思い出せない。
男はさらに一歩踏み出し、女勇者を追撃する。
まるで閃光の様に一瞬の攻撃。
音すらない一撃。
282: 2012/02/29(水) 21:50:16.46 ID:9SLqNOzn0
女勇者はそれを回避していた。
意図的にではない。
その攻撃を回避できたのは単なる偶然だった。
「あ、あなたは何者なんですか……」
女勇者はたまらず聞いてしまった。
敵と話すなど愚か者のする事、そう教わったはずなのにどうしても我慢できなかった。
まるで不満をぶつける様に口調が若干荒くなる。
男はまるで子供の様に無邪気に微笑み、彼女の顔を見た。
「勇者だよ、勇者」
少し子供っぽさの残る少しだけ高めの声だった。
何故かその声は女勇者の心を安心させた。
理由は分からない。
ただなんとなくその声が彼女の心を落ち着かせ、安心させるのだ。
だがそんな気持ち振り払い、女勇者は前に跳んだ。
勇者と名乗った男目掛けて剣を振るう。
怒涛のごとき攻撃を何度も繰り返す。
しかしどの攻撃も勇者はまるで分かっているかのように回避していた。
まるで紙を相手にしているかのようにひらひらと攻撃を避けていく。
意図的にではない。
その攻撃を回避できたのは単なる偶然だった。
「あ、あなたは何者なんですか……」
女勇者はたまらず聞いてしまった。
敵と話すなど愚か者のする事、そう教わったはずなのにどうしても我慢できなかった。
まるで不満をぶつける様に口調が若干荒くなる。
男はまるで子供の様に無邪気に微笑み、彼女の顔を見た。
「勇者だよ、勇者」
少し子供っぽさの残る少しだけ高めの声だった。
何故かその声は女勇者の心を安心させた。
理由は分からない。
ただなんとなくその声が彼女の心を落ち着かせ、安心させるのだ。
だがそんな気持ち振り払い、女勇者は前に跳んだ。
勇者と名乗った男目掛けて剣を振るう。
怒涛のごとき攻撃を何度も繰り返す。
しかしどの攻撃も勇者はまるで分かっているかのように回避していた。
まるで紙を相手にしているかのようにひらひらと攻撃を避けていく。
283: 2012/02/29(水) 21:54:41.64 ID:9SLqNOzn0
勇者は僅かな隙の内に一歩前に進むと、ヒノキの棒で女勇者の心臓を突いてきた。
女勇者は後ろに跳び、その攻撃を回避する。
ほとんど態勢を崩すことなく、綺麗な軌道を描きながら跳んでいく。
女勇者は勇者から一メートルほど離れた場所に着地すると、勇者の方を見る。
おかしい。
そう感ぜざるをえなかった。
ついさっきまでとは動きが全く違う。
そう、まるで何かを決意した様な……。
「良かったな、貧Oじゃなかったら直撃してたぞ」
勇者はさも愉快なように笑いながらそう言い放つ。
まるで悪戯を思いついた子供の様な表情。
女勇者はその言葉に反論しようとするが、何故か言葉が出て来なかった。
明らかに侮辱されているはずなのに、そんなに嫌ではない。
むしろどこか懐かしい気がするのだ。
どうして、おかしい。
頭の中がどんどん混乱していくのがわかった。
まるで頭の中を掻き混ぜられているかのようにどんどん頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。
女勇者は後ろに跳び、その攻撃を回避する。
ほとんど態勢を崩すことなく、綺麗な軌道を描きながら跳んでいく。
女勇者は勇者から一メートルほど離れた場所に着地すると、勇者の方を見る。
おかしい。
そう感ぜざるをえなかった。
ついさっきまでとは動きが全く違う。
そう、まるで何かを決意した様な……。
「良かったな、貧Oじゃなかったら直撃してたぞ」
勇者はさも愉快なように笑いながらそう言い放つ。
まるで悪戯を思いついた子供の様な表情。
女勇者はその言葉に反論しようとするが、何故か言葉が出て来なかった。
明らかに侮辱されているはずなのに、そんなに嫌ではない。
むしろどこか懐かしい気がするのだ。
どうして、おかしい。
頭の中がどんどん混乱していくのがわかった。
まるで頭の中を掻き混ぜられているかのようにどんどん頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。
284: 2012/02/29(水) 21:58:20.16 ID:9SLqNOzn0
考えれば考えるほど頭が痛くなっていった。
「大丈夫か?」
勇者は優しそうな口調でそう言った。
やはり心が安心する。
心が落ち着く。
記憶にかかった霧が晴れていく。
彼が何者なのか、自分の何なのかが分かりそうになる。
『目の前の男は敵だ。殺せ』
突然頭の中で声がした。
まるで命令する様な口調で何度も同じ事を繰り返し、頭の中で言い続けている。
そう、無用な事を考えている暇は無い。
女勇者は自分自身を叱りつけ、剣を構えなおした。
目の前の男は敵、それ以外の何でもない。
そう何度も心の中で繰り返す。
女勇者は前に大きく跳び、勇者目掛けて剣を突く。
それは文字通り一瞬の出来事。
「大丈夫か?」
勇者は優しそうな口調でそう言った。
やはり心が安心する。
心が落ち着く。
記憶にかかった霧が晴れていく。
彼が何者なのか、自分の何なのかが分かりそうになる。
『目の前の男は敵だ。殺せ』
突然頭の中で声がした。
まるで命令する様な口調で何度も同じ事を繰り返し、頭の中で言い続けている。
そう、無用な事を考えている暇は無い。
女勇者は自分自身を叱りつけ、剣を構えなおした。
目の前の男は敵、それ以外の何でもない。
そう何度も心の中で繰り返す。
女勇者は前に大きく跳び、勇者目掛けて剣を突く。
それは文字通り一瞬の出来事。
285: 2012/02/29(水) 22:00:04.52 ID:9SLqNOzn0
しかしその剣は何もない空間を突いただけだった。
勇者は忽然と姿を消していたのだ。
女勇者の背中に悪寒がはしった。
とっさに後ろを振り向く。
そこにはヒノキの棒を振りかぶり、苦しそうな顔をした勇者がいた。
何がそんなに苦しいのかはわからない。ただ唇を噛み、何かに耐えていた。
「すまん……」
そんな声が聞こえたかと思うと、女勇者の腹部に焼かれる様な痛みが襲った。
倒れたり、膝をつくほどではないが、痛みで僅かに動きが鈍ってしまう。
その時、女勇者の頭の中に津波の様に大量の記憶が流れ込んできた。
いや、流れ込んできたのではない、元々あった記憶が一気に思い出されているのだ。
「勇者……」
気が付いた時にはもう呟いていた。
女勇者にとって最も大切な人の名。
口が悪く、やる事がメチャクチャで、それでも決して仲間を見捨てない人の名。
憎らしくも愛おしい記憶が彼女の心を優しく包み込む。
それは表現するなら母胎の中にいる様な感覚だった。
勇者は忽然と姿を消していたのだ。
女勇者の背中に悪寒がはしった。
とっさに後ろを振り向く。
そこにはヒノキの棒を振りかぶり、苦しそうな顔をした勇者がいた。
何がそんなに苦しいのかはわからない。ただ唇を噛み、何かに耐えていた。
「すまん……」
そんな声が聞こえたかと思うと、女勇者の腹部に焼かれる様な痛みが襲った。
倒れたり、膝をつくほどではないが、痛みで僅かに動きが鈍ってしまう。
その時、女勇者の頭の中に津波の様に大量の記憶が流れ込んできた。
いや、流れ込んできたのではない、元々あった記憶が一気に思い出されているのだ。
「勇者……」
気が付いた時にはもう呟いていた。
女勇者にとって最も大切な人の名。
口が悪く、やる事がメチャクチャで、それでも決して仲間を見捨てない人の名。
憎らしくも愛おしい記憶が彼女の心を優しく包み込む。
それは表現するなら母胎の中にいる様な感覚だった。
286: 2012/02/29(水) 22:03:10.83 ID:9SLqNOzn0
『敵を殺せ!!』
頭の中で何かがそう叫んでいるが気にはしない。
惑わされない。
女勇者は剣を落とし、その場に崩れ落ちた。
勇者への感謝。
自分への後悔。
自分自身の侮蔑。
まるで堤防が決壊したかのように大量の感情が頭の中にとめどなく流れ込んでくる。
「勇者……」
女勇者はもう一度、その名を口にした。
頭の中で何かがそう叫んでいるが気にはしない。
惑わされない。
女勇者は剣を落とし、その場に崩れ落ちた。
勇者への感謝。
自分への後悔。
自分自身の侮蔑。
まるで堤防が決壊したかのように大量の感情が頭の中にとめどなく流れ込んでくる。
「勇者……」
女勇者はもう一度、その名を口にした。
287: 2012/02/29(水) 22:06:27.41 ID:9SLqNOzn0
女勇者「……勇者」
勇者「……もしかして、思い出したのか?」
女勇者「はい……思い出しましたよ、勇者」
勇者「……ははっ、そりゃ良かった」
女勇者「あなたのおかげです、あなたのおかげで私は――――――」
勇者「元はと言えば俺がお前を守れなかったからなんだ、お礼なんていいよ」
女勇者「……」
勇者「とにかく無事でよかった」
女勇者「ううっ……」
女勇者は堪え切れなくなった様に泣きだす。
勇者「ど、どうした!?」
女勇者「私は、私は……」
勇者「どうしたんだよ、どっか痛いのか?」
女勇者「私は……ドラゴンもあなたも守れなかった……」
女勇者「あなたとドラゴンを守ると言ったのに……」
女勇者「あなた達の刃になると決めたのに……」
勇者「……もしかして、思い出したのか?」
女勇者「はい……思い出しましたよ、勇者」
勇者「……ははっ、そりゃ良かった」
女勇者「あなたのおかげです、あなたのおかげで私は――――――」
勇者「元はと言えば俺がお前を守れなかったからなんだ、お礼なんていいよ」
女勇者「……」
勇者「とにかく無事でよかった」
女勇者「ううっ……」
女勇者は堪え切れなくなった様に泣きだす。
勇者「ど、どうした!?」
女勇者「私は、私は……」
勇者「どうしたんだよ、どっか痛いのか?」
女勇者「私は……ドラゴンもあなたも守れなかった……」
女勇者「あなたとドラゴンを守ると言ったのに……」
女勇者「あなた達の刃になると決めたのに……」
288: 2012/02/29(水) 22:13:55.43 ID:9SLqNOzn0
勇者「……」
女勇者「私は結局簡単に負け、あなたを殺そうとしてしまった……」
女勇者「私はあなたに――――――」
勇者は言い終わる前に女勇者を強く抱きしめる。
勇者「言わなくていいよ」
女勇者「う、うう……」
勇者「言わなくていい」
女勇者「う……」
勇者「お前は悪くねぇよ」
女勇者「うっ、うう……すいません……」
勇者「謝らなくてもいいから」
女勇者「……」
女勇者「……一つだけお願いしてもいいですか?」
勇者「なんだ?」
女勇者「もう少しだけ抱きしめて……泣かせてくれませんか?」
勇者「……」
勇者「いいよ」ニッコリ
女勇者「ありがとう……ございます……」
女勇者「私は結局簡単に負け、あなたを殺そうとしてしまった……」
女勇者「私はあなたに――――――」
勇者は言い終わる前に女勇者を強く抱きしめる。
勇者「言わなくていいよ」
女勇者「う、うう……」
勇者「言わなくていい」
女勇者「う……」
勇者「お前は悪くねぇよ」
女勇者「うっ、うう……すいません……」
勇者「謝らなくてもいいから」
女勇者「……」
女勇者「……一つだけお願いしてもいいですか?」
勇者「なんだ?」
女勇者「もう少しだけ抱きしめて……泣かせてくれませんか?」
勇者「……」
勇者「いいよ」ニッコリ
女勇者「ありがとう……ございます……」
289: 2012/02/29(水) 22:16:53.74 ID:9SLqNOzn0
勇者「いいよ、別に」
女勇者は勇者に抱きしめられながら声をあげて泣いた。
勇者「……」
勇者「ごめん、本当にごめん」
女勇者「……」
女勇者「ありがとうございました……」
勇者「ああ」
女勇者「ちゃんとドラゴンが泣く場所は残してありますから」
勇者「……あ、そう」
女勇者「勇者、早く行きなさい」
勇者「お前はどうするんだ?」
女勇者「私は少し休みます、私は大丈夫ですから早く行きなさい」
勇者「あ、ああ」スタスタ
女勇者「……」
女勇者「二十歳過ぎて泣くなんてバカみたいですね……」
女勇者「やっぱり大人になると涙腺が緩むんですかね……」
女勇者は勇者に抱きしめられながら声をあげて泣いた。
勇者「……」
勇者「ごめん、本当にごめん」
女勇者「……」
女勇者「ありがとうございました……」
勇者「ああ」
女勇者「ちゃんとドラゴンが泣く場所は残してありますから」
勇者「……あ、そう」
女勇者「勇者、早く行きなさい」
勇者「お前はどうするんだ?」
女勇者「私は少し休みます、私は大丈夫ですから早く行きなさい」
勇者「あ、ああ」スタスタ
女勇者「……」
女勇者「二十歳過ぎて泣くなんてバカみたいですね……」
女勇者「やっぱり大人になると涙腺が緩むんですかね……」
295: 2012/03/01(木) 21:52:39.13 ID:GDVj+k260
~~~~~~~~~~~~~~~
剣士「はぁはぁ……」タタタッ
剣士「ど、何処なんですか……」タタタッ
狂戦士「……ガキが一匹入りこんでるって聞いて来たが、本当にガキじゃねーかよ」
剣士「あ!!」
狂戦士「……まあいいや、どうせ魔戦士やネクロマンサーもいるし、残りはあいつ等に任せるか」
剣士「……」
狂戦士「暇だったから遊んでやるよ、ガキ」
剣士「ま、魔王さんは何処ですか!?」
狂戦士「魔王?」
剣士「はい、知ってるんですよね」
狂戦士「知るかよ、自分で探せ」
剣士「……何処ですか」
狂戦士「は?」
剣士「何処にいるんですか!?」
剣士「はぁはぁ……」タタタッ
剣士「ど、何処なんですか……」タタタッ
狂戦士「……ガキが一匹入りこんでるって聞いて来たが、本当にガキじゃねーかよ」
剣士「あ!!」
狂戦士「……まあいいや、どうせ魔戦士やネクロマンサーもいるし、残りはあいつ等に任せるか」
剣士「……」
狂戦士「暇だったから遊んでやるよ、ガキ」
剣士「ま、魔王さんは何処ですか!?」
狂戦士「魔王?」
剣士「はい、知ってるんですよね」
狂戦士「知るかよ、自分で探せ」
剣士「……何処ですか」
狂戦士「は?」
剣士「何処にいるんですか!?」
296: 2012/03/01(木) 21:53:53.94 ID:GDVj+k260
狂戦士「だから俺が知ってる訳ないだろ!!」
狂戦士は剣士を蹴り飛ばす。
剣士「あぐ……」
狂戦士「これだからガキは嫌いなんだよ」
剣士「魔王さんは……何処にいるんですか……」
狂戦士「だから何度言ったらわかるんだ、俺は知らないんだよ!!」
狂戦士「牢屋も自分で見つけられねえのかよ」
剣士「……牢屋にいるんですね」
狂戦士「チッ、このクソガキが」
剣士「……」
狂戦士「それに今からお前は俺の玩具だ、勝手に移動出来るなんて思うなよ」
剣士「……」タタタッ
狂戦士「だから勝手に逃げるなって言ってんだよ!!」
狂戦士は剣士の背中に蹴りをいれ、吹き飛ばす。
剣士「あう……」
狂戦士は剣士を蹴り飛ばす。
剣士「あぐ……」
狂戦士「これだからガキは嫌いなんだよ」
剣士「魔王さんは……何処にいるんですか……」
狂戦士「だから何度言ったらわかるんだ、俺は知らないんだよ!!」
狂戦士「牢屋も自分で見つけられねえのかよ」
剣士「……牢屋にいるんですね」
狂戦士「チッ、このクソガキが」
剣士「……」
狂戦士「それに今からお前は俺の玩具だ、勝手に移動出来るなんて思うなよ」
剣士「……」タタタッ
狂戦士「だから勝手に逃げるなって言ってんだよ!!」
狂戦士は剣士の背中に蹴りをいれ、吹き飛ばす。
剣士「あう……」
297: 2012/03/01(木) 21:54:59.24 ID:GDVj+k260
狂戦士「雑魚なんて何やっても無駄なんだよ、バカみたいに従ってればいいんだ、分かったか?」
剣士「あなたに……従う気なんてありません」
狂戦士「……テメェ、もう一度言って―――――」
頃し屋「よっ、と」ピョンッ
狂戦士「……何のようだ」
頃し屋「業務連絡だよ、あの洗脳にかかってた子の洗脳が解けた」
狂戦士「誰がやった」
頃し屋「勇者だよ」
狂戦士「で、その勇者は頃したのか?」
頃し屋「え、頃す訳ないじゃん」
狂戦士「……何言ってんだ!?」
頃し屋「なんで俺が勇者を殺さなくちゃならない訳?」
狂戦士「じゃあ聞くが、お前は何してたんだ」
頃し屋「見てただけだよ、あれこそ最高のハッピーエンドだったよ」
頃し屋「あの二人は本当に綺麗な心の持ち主だよ、明鏡止水ってやつ?」
狂戦士「なんで見てたんなら勇者を殺さなかった!!」
剣士「あなたに……従う気なんてありません」
狂戦士「……テメェ、もう一度言って―――――」
頃し屋「よっ、と」ピョンッ
狂戦士「……何のようだ」
頃し屋「業務連絡だよ、あの洗脳にかかってた子の洗脳が解けた」
狂戦士「誰がやった」
頃し屋「勇者だよ」
狂戦士「で、その勇者は頃したのか?」
頃し屋「え、頃す訳ないじゃん」
狂戦士「……何言ってんだ!?」
頃し屋「なんで俺が勇者を殺さなくちゃならない訳?」
狂戦士「じゃあ聞くが、お前は何してたんだ」
頃し屋「見てただけだよ、あれこそ最高のハッピーエンドだったよ」
頃し屋「あの二人は本当に綺麗な心の持ち主だよ、明鏡止水ってやつ?」
狂戦士「なんで見てたんなら勇者を殺さなかった!!」
298: 2012/03/01(木) 21:57:25.45 ID:GDVj+k260
頃し屋「あのさ、俺は兵士と戦う事は了承したけど、勇者と戦う事を了承した覚えは無いよ」
狂戦士「あんな雑魚も倒せないのか?」
頃し屋「……お前バカだろ」
狂戦士「は?」
頃し屋「勇者が雑魚って、バカだろ」
狂戦士「魔戦士に手も足も出なかったんだ、強さなんて知れてるだろ」
頃し屋「やっぱりお前はバカだよ」
狂戦士「だから何がだ!!」
頃し屋「あの二人の力の差なんてほんの僅かだよ」
頃し屋「感情や運、その他もろもろで勝敗なんて簡単にひっくり返る」
狂戦士「でも勇者は魔戦士に手も足も―――――」
頃し屋「じゃあなんで魔戦士は勇者を殺さなかったんだと思う?」
狂戦士「……」
頃し屋「戦いに負けなんてものは存在しないよ、あるのは勝利と氏だけだ」
頃し屋「つまりまだ戦いは続いてるって訳、お分かり?」
狂戦士「ただの自論だろ!!」
狂戦士「あんな雑魚も倒せないのか?」
頃し屋「……お前バカだろ」
狂戦士「は?」
頃し屋「勇者が雑魚って、バカだろ」
狂戦士「魔戦士に手も足も出なかったんだ、強さなんて知れてるだろ」
頃し屋「やっぱりお前はバカだよ」
狂戦士「だから何がだ!!」
頃し屋「あの二人の力の差なんてほんの僅かだよ」
頃し屋「感情や運、その他もろもろで勝敗なんて簡単にひっくり返る」
狂戦士「でも勇者は魔戦士に手も足も―――――」
頃し屋「じゃあなんで魔戦士は勇者を殺さなかったんだと思う?」
狂戦士「……」
頃し屋「戦いに負けなんてものは存在しないよ、あるのは勝利と氏だけだ」
頃し屋「つまりまだ戦いは続いてるって訳、お分かり?」
狂戦士「ただの自論だろ!!」
299: 2012/03/01(木) 21:59:46.19 ID:GDVj+k260
頃し屋「そうだね、そう言っちゃえばそうだよ」
狂戦士「……テメェ」
頃し屋「そう怒るなよ、お前もさっき言ったけどただの自論じゃん」
狂戦士「クビだ!!」
頃し屋「は?」
狂戦士「さっさとどっか行け、目障りだ!!」
頃し屋「じゃあお前はもう俺の雇い主じゃないって事かな?」
狂戦士「当たり前だ、さっさと消えろ!!」
頃し屋「そう言う事なら俺もうれしいよ」
狂戦士「何言ってんだ?」
頃し屋「俺はどんな事があっても雇い主は殺さない、けど今のお前は俺の雇い主じゃない」
狂戦士「俺を殺そうってのか?」
頃し屋「そうなるね」
狂戦士「はっ、調子に乗ってんじゃねえぞ!!」
狂戦士「……テメェ」
頃し屋「そう怒るなよ、お前もさっき言ったけどただの自論じゃん」
狂戦士「クビだ!!」
頃し屋「は?」
狂戦士「さっさとどっか行け、目障りだ!!」
頃し屋「じゃあお前はもう俺の雇い主じゃないって事かな?」
狂戦士「当たり前だ、さっさと消えろ!!」
頃し屋「そう言う事なら俺もうれしいよ」
狂戦士「何言ってんだ?」
頃し屋「俺はどんな事があっても雇い主は殺さない、けど今のお前は俺の雇い主じゃない」
狂戦士「俺を殺そうってのか?」
頃し屋「そうなるね」
狂戦士「はっ、調子に乗ってんじゃねえぞ!!」
300: 2012/03/01(木) 22:00:25.12 ID:GDVj+k260
狂戦士は両手に鉄製のグローブをはめると、頃し屋に殴りかかった。
素手でも人を殺せる狂戦士の攻撃が鉄製のグローブをつければ、掠めただけですら致命傷になる。
唸りを上げながら頃し屋の顔面目掛け襲いかかる。
それは拳と言うより砲弾に近い。
しかしその攻撃は頃し屋の顔に当たる事無く、右に逸れていた。
頃し屋は鉈をクルクルと回しながら涼しげな顔でそこに立っている。
「な……」
狂戦士は僅かに顔を引き攣らせながらも、両手を使い、連打を繰り出す。
一撃当たるだけでも致命傷の攻撃が雨の様に頃し屋に襲いかかる。
「あのさ、もっと楽しませてくれないとつまんないんだよね」
その声が狂戦士に届いた頃にはすでにそこに頃し屋の姿は無かった。
素手でも人を殺せる狂戦士の攻撃が鉄製のグローブをつければ、掠めただけですら致命傷になる。
唸りを上げながら頃し屋の顔面目掛け襲いかかる。
それは拳と言うより砲弾に近い。
しかしその攻撃は頃し屋の顔に当たる事無く、右に逸れていた。
頃し屋は鉈をクルクルと回しながら涼しげな顔でそこに立っている。
「な……」
狂戦士は僅かに顔を引き攣らせながらも、両手を使い、連打を繰り出す。
一撃当たるだけでも致命傷の攻撃が雨の様に頃し屋に襲いかかる。
「あのさ、もっと楽しませてくれないとつまんないんだよね」
その声が狂戦士に届いた頃にはすでにそこに頃し屋の姿は無かった。
301: 2012/03/01(木) 22:08:03.67 ID:GDVj+k260
狂戦士は素早く辺りを見渡した。
しかし何処を探しても頃し屋の姿は何処にもない。
「左右を確認した後には上を確認。常識だよ」
頃し屋は上から落ちてきていた。
鉈を大きく振り被り、狂戦士に狙うを定めている。
その顔は残酷な笑顔で歪み切っている。
狂戦士がとっさに逃げようとするが、タッチの差で間に合わない。
肉が斬れる心地のいい音と共に狂戦士の右腕が宙を舞っていた。
深紅の液体を撒き散らせながら宙を舞うそれはある種、幻想的なものの様に錯覚させる。
「あ……がァァァァァァ!!」
狂戦士が気がついた時には叫び声を上げながら地面に膝をついていた。
しかし何処を探しても頃し屋の姿は何処にもない。
「左右を確認した後には上を確認。常識だよ」
頃し屋は上から落ちてきていた。
鉈を大きく振り被り、狂戦士に狙うを定めている。
その顔は残酷な笑顔で歪み切っている。
狂戦士がとっさに逃げようとするが、タッチの差で間に合わない。
肉が斬れる心地のいい音と共に狂戦士の右腕が宙を舞っていた。
深紅の液体を撒き散らせながら宙を舞うそれはある種、幻想的なものの様に錯覚させる。
「あ……がァァァァァァ!!」
狂戦士が気がついた時には叫び声を上げながら地面に膝をついていた。
302: 2012/03/01(木) 22:08:56.04 ID:GDVj+k260
頃し屋「あはは、弱い弱い、そんなんでよく勇者を雑魚呼ばわり出来るよね」
狂戦士「ぐ……頃す、頃す、頃す!!」
頃し屋「さっさとかかってきなよ、俺は逃げも隠れもしないよ、正々堂々ってやつだね」
狂戦士「後で頃す!!」タッタッタッ
頃し屋「あっ……逃げちゃった……」
剣士「あ、ありがとうございます……」
頃し屋「別にいいって、それよりさっさと助けに行ってあげたら」
剣士「あ、はい」
剣士「勇者さんの知り合いなんですか?」
頃し屋「うーん、知り合いって言えば知り合いかな」
剣士「そうですか」
頃し屋「俺さ、氏ぬ気で頑張ってる人が好きなんだ」
剣士「え、はい」
頃し屋「善悪とか、世間体とかそういうの抜きにして何かをしようとするのって凄くかっこいいだろ?」
剣士「え、まあ……」
頃し屋「だから俺お前みたいな奴嫌いじゃないんだよね、たった一つの事以外何も見えてないって感じでさ、なんて表現していいかわかんないけど」
狂戦士「ぐ……頃す、頃す、頃す!!」
頃し屋「さっさとかかってきなよ、俺は逃げも隠れもしないよ、正々堂々ってやつだね」
狂戦士「後で頃す!!」タッタッタッ
頃し屋「あっ……逃げちゃった……」
剣士「あ、ありがとうございます……」
頃し屋「別にいいって、それよりさっさと助けに行ってあげたら」
剣士「あ、はい」
剣士「勇者さんの知り合いなんですか?」
頃し屋「うーん、知り合いって言えば知り合いかな」
剣士「そうですか」
頃し屋「俺さ、氏ぬ気で頑張ってる人が好きなんだ」
剣士「え、はい」
頃し屋「善悪とか、世間体とかそういうの抜きにして何かをしようとするのって凄くかっこいいだろ?」
剣士「え、まあ……」
頃し屋「だから俺お前みたいな奴嫌いじゃないんだよね、たった一つの事以外何も見えてないって感じでさ、なんて表現していいかわかんないけど」
303: 2012/03/01(木) 22:09:44.65 ID:GDVj+k260
剣士「あ、ありがとうございます」
頃し屋「魔王を助けたらさっさと逃げた方がいいよ」
剣士「え?」
頃し屋「この船はもうじき沈む、他の船もだけどね」
剣士「……」
頃し屋「じゃあ俺は行くよ」スタスタ
剣士「……」タタタッ
剣士「魔王さん!!」
魔王「剣士?」
剣士「鍵は……」キョロキョロ
魔王「無い、しかもこの空間じゃ魔法も使えん……」
剣士「おりゃァァァァ!!」
剣士は剣で鍵を斬ろうと、何度も剣で叩く。
剣士「あァァァァ!!」
剣士の何度目かの一撃で鍵が壊れる。
剣士「はぁはぁ……」
魔王「……一人で来たのか?」
剣士「いえ、結局僕は何も出来ませんでした……」
魔王「……」
魔王「さっさと逃げるぞ」
剣士「……」
魔王「勇者達なら大丈夫だ、行くぞ」スタスタ
剣士「……はい」スタスタ
頃し屋「魔王を助けたらさっさと逃げた方がいいよ」
剣士「え?」
頃し屋「この船はもうじき沈む、他の船もだけどね」
剣士「……」
頃し屋「じゃあ俺は行くよ」スタスタ
剣士「……」タタタッ
剣士「魔王さん!!」
魔王「剣士?」
剣士「鍵は……」キョロキョロ
魔王「無い、しかもこの空間じゃ魔法も使えん……」
剣士「おりゃァァァァ!!」
剣士は剣で鍵を斬ろうと、何度も剣で叩く。
剣士「あァァァァ!!」
剣士の何度目かの一撃で鍵が壊れる。
剣士「はぁはぁ……」
魔王「……一人で来たのか?」
剣士「いえ、結局僕は何も出来ませんでした……」
魔王「……」
魔王「さっさと逃げるぞ」
剣士「……」
魔王「勇者達なら大丈夫だ、行くぞ」スタスタ
剣士「……はい」スタスタ
311: 2012/03/02(金) 21:46:43.60 ID:i2yr/wQy0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
別の船 大広間
大臣「魔道騎士がやられた!?」
ネクロマンサー「はい、あの女の洗脳も解かれた様です」
大臣「あのクズ共めが……」
ネクロマンサー「どうしましょうか」
大臣「まだ魔戦士も狂戦士もお前もいるだろう、なんとかしろ!!」
ネクロマンサー「はい」
弓兵「もう遅いぞ」スタスタ
大臣「だ、誰だ!?」
弓兵「ハンターだよ」
弓兵「まさかあんたまでいるとはな、大臣」
大臣「貴様……」
弓兵「どうせこの船には攻め込んではこられないとでも思ってたんだろ?」
大臣「……ネクロマンサー、殺せ!!」
弓兵「やめとけ、この船はもうじき沈む」
大臣「……ふん、何をバカな事を」
弓兵「優秀な工作員達が頑張ってくれてるんだ」
暗殺者「この船も終わったぞ」ピョンッ
別の船 大広間
大臣「魔道騎士がやられた!?」
ネクロマンサー「はい、あの女の洗脳も解かれた様です」
大臣「あのクズ共めが……」
ネクロマンサー「どうしましょうか」
大臣「まだ魔戦士も狂戦士もお前もいるだろう、なんとかしろ!!」
ネクロマンサー「はい」
弓兵「もう遅いぞ」スタスタ
大臣「だ、誰だ!?」
弓兵「ハンターだよ」
弓兵「まさかあんたまでいるとはな、大臣」
大臣「貴様……」
弓兵「どうせこの船には攻め込んではこられないとでも思ってたんだろ?」
大臣「……ネクロマンサー、殺せ!!」
弓兵「やめとけ、この船はもうじき沈む」
大臣「……ふん、何をバカな事を」
弓兵「優秀な工作員達が頑張ってくれてるんだ」
暗殺者「この船も終わったぞ」ピョンッ
312: 2012/03/02(金) 21:48:50.82 ID:i2yr/wQy0
金髪「残りは数分っす」スタスタ
スライム「僕達の方も終わりました」ピョンッ
黒スライム「ったく、無駄に広い船だ」
弓兵「そうか、いろいろ悪かったな」
大臣「ど、どういう事だ!?」
弓兵「だから言ってるだろ、この船は壊れるって」
大臣「だからどういう意味だ!!」
弓兵「全部の船はだいたい五分後くらいに爆破されるって事だ」
大臣「おい、どういう事だ!!」
ネクロマンサー「どうして兵士達が気付いてないの……」
弓兵「そりゃ勇者三人が暴れ回ってたからな、工作なんて気付く訳ないか」
大臣「クソが……」
弓兵「お前等はもう終わりだ」
大臣「まだだ、まだ魔戦士も狂戦士もネクロマンサーもいる!!」
弓兵「無駄だ、この艦隊が沈めばお前等は終わりだ」
弓兵「それに勇者達が魔戦士どもを片づけてるだろ」
大臣「く……」
スライム「僕達の方も終わりました」ピョンッ
黒スライム「ったく、無駄に広い船だ」
弓兵「そうか、いろいろ悪かったな」
大臣「ど、どういう事だ!?」
弓兵「だから言ってるだろ、この船は壊れるって」
大臣「だからどういう意味だ!!」
弓兵「全部の船はだいたい五分後くらいに爆破されるって事だ」
大臣「おい、どういう事だ!!」
ネクロマンサー「どうして兵士達が気付いてないの……」
弓兵「そりゃ勇者三人が暴れ回ってたからな、工作なんて気付く訳ないか」
大臣「クソが……」
弓兵「お前等はもう終わりだ」
大臣「まだだ、まだ魔戦士も狂戦士もネクロマンサーもいる!!」
弓兵「無駄だ、この艦隊が沈めばお前等は終わりだ」
弓兵「それに勇者達が魔戦士どもを片づけてるだろ」
大臣「く……」
314: 2012/03/02(金) 21:51:13.92 ID:i2yr/wQy0
弓兵「暗殺者、スライム、勇者達を迎えに行ってきてくれ」
スライム「はい」ピョンッ
暗殺者「分かった」タタタッ
弓兵「お前等もさっさと逃げないと氏ぬぞ」スタスタ
大臣「待て!!」
弓兵「なんならここで頃してやってもいいんだぞ」
大臣「……」
ネクロマンサー「ここは一旦引きましょう」
大臣「……」
ネクロマンサー「……」スタスタ
大臣「クソッ!!」スタスタ
スライム「はい」ピョンッ
暗殺者「分かった」タタタッ
弓兵「お前等もさっさと逃げないと氏ぬぞ」スタスタ
大臣「待て!!」
弓兵「なんならここで頃してやってもいいんだぞ」
大臣「……」
ネクロマンサー「ここは一旦引きましょう」
大臣「……」
ネクロマンサー「……」スタスタ
大臣「クソッ!!」スタスタ
315: 2012/03/02(金) 21:52:49.38 ID:i2yr/wQy0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
勇者のいる船 とある一室
狂戦士「おい!!」
魔戦士「なんだ、騒がしい」
狂戦士「回復してくれ!!」
魔戦士「……その腕をか?」
狂戦士「ああ、当たり前だ!!」
魔戦士「どうしたんだ」
狂戦士「頃し屋にやられた、あいつ頃してやる……」
魔戦士「……」
狂戦士「何だよ!!」
魔戦士「目障りだ、消えろ」
狂戦士「ふざけんな!!」
魔戦士「負けた奴が騒ぐな」
狂戦士「テメ――――――」
その言葉が言い終わる前に魔戦士の剣が狂戦士を斬り捨てる。
頃し屋「あらら、頃しちゃったのか……」
勇者のいる船 とある一室
狂戦士「おい!!」
魔戦士「なんだ、騒がしい」
狂戦士「回復してくれ!!」
魔戦士「……その腕をか?」
狂戦士「ああ、当たり前だ!!」
魔戦士「どうしたんだ」
狂戦士「頃し屋にやられた、あいつ頃してやる……」
魔戦士「……」
狂戦士「何だよ!!」
魔戦士「目障りだ、消えろ」
狂戦士「ふざけんな!!」
魔戦士「負けた奴が騒ぐな」
狂戦士「テメ――――――」
その言葉が言い終わる前に魔戦士の剣が狂戦士を斬り捨てる。
頃し屋「あらら、頃しちゃったのか……」
316: 2012/03/02(金) 21:54:21.31 ID:i2yr/wQy0
魔戦士「騒ぐ敗北者ほど邪魔なものはない」
頃し屋「あはは、そうかもね」
魔戦士「で、お前は何のために来たんだ?」
頃し屋「そいつを殺そうと思ってたんだけど、お前が頃しちゃったからね、もういいや」
魔戦士「……」
頃し屋「そろそろあいつが来るころかな」
魔戦士「勇者か?」
頃し屋「ああ、ドラゴンはどうしたんだ?」
魔戦士「そこの檻の中だ」
頃し屋「……ずいぶん乱暴な事をしたみたいだね」
魔戦士「暴れたからな、仕方ないだろ」
勇者「……」タタタッ
頃し屋「さて、じゃあ見せてもらおうかな」
勇者「ドラゴンは何処にいる」
魔戦士「そこの檻の中だ」
その檻の中にはボロボロになったドラゴンが入れられていた。
頃し屋「あはは、そうかもね」
魔戦士「で、お前は何のために来たんだ?」
頃し屋「そいつを殺そうと思ってたんだけど、お前が頃しちゃったからね、もういいや」
魔戦士「……」
頃し屋「そろそろあいつが来るころかな」
魔戦士「勇者か?」
頃し屋「ああ、ドラゴンはどうしたんだ?」
魔戦士「そこの檻の中だ」
頃し屋「……ずいぶん乱暴な事をしたみたいだね」
魔戦士「暴れたからな、仕方ないだろ」
勇者「……」タタタッ
頃し屋「さて、じゃあ見せてもらおうかな」
勇者「ドラゴンは何処にいる」
魔戦士「そこの檻の中だ」
その檻の中にはボロボロになったドラゴンが入れられていた。
317: 2012/03/02(金) 21:54:59.31 ID:i2yr/wQy0
勇者「……」
魔戦士「安心しろ、氏んではない」
勇者「頃す……」
魔戦士「なんだ」
勇者「お前は俺が頃す!!」
魔戦士「いいだろう、今度こそ頃してやる」
勇者「今度氏ぬのはお前だ」
頃し屋「……さて、楽しみだ」
勇者「お前もいたのか」
頃し屋「ああ、楽しませてくれよ、これが最終幕なんだから」
魔戦士「安心しろ、氏んではない」
勇者「頃す……」
魔戦士「なんだ」
勇者「お前は俺が頃す!!」
魔戦士「いいだろう、今度こそ頃してやる」
勇者「今度氏ぬのはお前だ」
頃し屋「……さて、楽しみだ」
勇者「お前もいたのか」
頃し屋「ああ、楽しませてくれよ、これが最終幕なんだから」
318: 2012/03/02(金) 21:56:36.47 ID:i2yr/wQy0
感情は人の強さを変える。
それは強くも、弱くもだ。
怒り。
憎しみ。
殺意。
勇者の刀にはそんなドス黒い感情がまるでスライムの様にへばりついていた。
勇者は怒りにまかせ、刀を振り下ろす。
刀が狼の目の様に貪欲にぎらつき、命を狩ろうと襲いかかる。
しかしその一撃は金属音と共に魔戦士の剣で止められる。
だが勇者はそれでも力任せに刀を振り、魔戦士を弾き飛ばす。
呼吸は荒く、鬼の様な形相で魔戦士を睨んでいた。
そこにあるのは怒り。
それ以外の感情は一切氏に絶え、その欠片すら見当たらない。
勇者は体をバネを利用し、跳躍した。
そのゆったりした最初の動作とは裏腹に、その加速量はそれこそ弾丸の様だ。
魔戦士は跳んでくる勇者を待ち構えるかのように、攻撃の準備をしていた。
そのまま切っ先を勇者に向けると電光石火の早業で何度も剣を突く。
まるで剣が数十本あるかの様な錯覚すら与えかねないほどの攻撃。
それは強くも、弱くもだ。
怒り。
憎しみ。
殺意。
勇者の刀にはそんなドス黒い感情がまるでスライムの様にへばりついていた。
勇者は怒りにまかせ、刀を振り下ろす。
刀が狼の目の様に貪欲にぎらつき、命を狩ろうと襲いかかる。
しかしその一撃は金属音と共に魔戦士の剣で止められる。
だが勇者はそれでも力任せに刀を振り、魔戦士を弾き飛ばす。
呼吸は荒く、鬼の様な形相で魔戦士を睨んでいた。
そこにあるのは怒り。
それ以外の感情は一切氏に絶え、その欠片すら見当たらない。
勇者は体をバネを利用し、跳躍した。
そのゆったりした最初の動作とは裏腹に、その加速量はそれこそ弾丸の様だ。
魔戦士は跳んでくる勇者を待ち構えるかのように、攻撃の準備をしていた。
そのまま切っ先を勇者に向けると電光石火の早業で何度も剣を突く。
まるで剣が数十本あるかの様な錯覚すら与えかねないほどの攻撃。
319: 2012/03/02(金) 21:58:37.42 ID:i2yr/wQy0
しかし聞こえてくるのは肉を貫いた音では無く、あたりが赤く染まる事も無かった。
何十回と聞こえてくるのは金属がぶつかり合う音、飛び散るのは火花だけ。
勇者は魔戦士の攻撃を的確に見切り、亜音速の様な攻撃を全て刀一本で防ぎきっていたのだ。
「遅いんだよ!!」
そんな声を上げながら勇者は刀を薙ぐ。
空を斬る音すら聞こえない早業。
それは速度を求めた勇者だからこその技。
正真正銘亜音速の一撃だった。
だが、その一撃ですら、魔戦士の剣に弾かれる。
しかし、勇者は退く事も、防御をする事もなかった。
ただひたすらに怒りという名の力を刃に乗せ、追撃を始める。
目に見えないほどの攻撃を幾度となく繰り返す
今そこにいるのはもはや勇者でなかった。
怒りを力に変えるのが勇者なら、今の勇者は怒りに身を任せ戦う狂人でしかないのだ。
魔戦士は一瞬の隙に後ろへ跳び、勇者との距離を置いた。
その顔は勇者とは対照的にまるで氷の様に冷たくい表情だった。
何十回と聞こえてくるのは金属がぶつかり合う音、飛び散るのは火花だけ。
勇者は魔戦士の攻撃を的確に見切り、亜音速の様な攻撃を全て刀一本で防ぎきっていたのだ。
「遅いんだよ!!」
そんな声を上げながら勇者は刀を薙ぐ。
空を斬る音すら聞こえない早業。
それは速度を求めた勇者だからこその技。
正真正銘亜音速の一撃だった。
だが、その一撃ですら、魔戦士の剣に弾かれる。
しかし、勇者は退く事も、防御をする事もなかった。
ただひたすらに怒りという名の力を刃に乗せ、追撃を始める。
目に見えないほどの攻撃を幾度となく繰り返す
今そこにいるのはもはや勇者でなかった。
怒りを力に変えるのが勇者なら、今の勇者は怒りに身を任せ戦う狂人でしかないのだ。
魔戦士は一瞬の隙に後ろへ跳び、勇者との距離を置いた。
その顔は勇者とは対照的にまるで氷の様に冷たくい表情だった。
320: 2012/03/02(金) 22:00:00.24 ID:i2yr/wQy0
「ずいぶんと雑な剣だな」
「黙れ!!」
勇者は大声で叫びながら跳んだ。
刀を痛いぐらいに強く握り、空中で刀を構え直す。
金属がぶつかり合う音が聞こえ、両手に激痛がはしる。
だが勇者は止まることなくさらに追撃をし続ける。
体の中の血が沸騰しているかのように熱い。
憎悪が炎の様に身を焦がしていくのがわかる。
だがもうとめどなく溢れ出る憎悪を止める事は勇者には不可能だった。
魔法剣士に対する怒りだけが勇者の原動力となりつつあった。
「弱いな」
そんな声が聞こえた瞬間、勇者の左足は糸が切れてしまったかのように急に力が抜けていた。
必氏に右足に力を入れるが、態勢は立て直せず、そのまま地面に崩れ落ちた。
「黙れ!!」
勇者は大声で叫びながら跳んだ。
刀を痛いぐらいに強く握り、空中で刀を構え直す。
金属がぶつかり合う音が聞こえ、両手に激痛がはしる。
だが勇者は止まることなくさらに追撃をし続ける。
体の中の血が沸騰しているかのように熱い。
憎悪が炎の様に身を焦がしていくのがわかる。
だがもうとめどなく溢れ出る憎悪を止める事は勇者には不可能だった。
魔法剣士に対する怒りだけが勇者の原動力となりつつあった。
「弱いな」
そんな声が聞こえた瞬間、勇者の左足は糸が切れてしまったかのように急に力が抜けていた。
必氏に右足に力を入れるが、態勢は立て直せず、そのまま地面に崩れ落ちた。
327: 2012/03/03(土) 21:45:39.22 ID:elV8DCpY0
左足の太ももは縦に綺麗に斬れ、とめどなく鮮血が溢れだしていた。
いつ斬られたのかはわからない。
ただ斬られたという事実だけがそこに残っているだけだった。
「終わりだ」
魔戦士は無表情のまま切っ先を勇者に向け、そう言い放つ。
僅かでも動けば斬る、そう言っているのがありありとわかる。
魔戦士の剣が大きく振り上げられる。
そして魔戦士の剣が振られ―――――。
その時、耳をつんざく様な爆音が部屋に響き渡った。
大きく船が傾きだし、部屋にあったものが転がっていく。
勇者はその一瞬のうちに素早く横に転がり、魔戦士との距離を置く。
痛みは強いが動けない訳ではない。
憤り。
ただそれだけの感情しか彼の心の中には無かった。
ドラゴンをあんな風にした魔戦士に対しての。
こんなバカげたことをする魔法の町へ対しての。
そして誰も守れず、目の前にいるドラゴンすら守れない自分に対しての。
勇者の目には怒りの炎のみが灯り、紅蓮に燃え上がっていた。
その目は彼にそっくりだった。
そう、その目は強者と同じ目だったのだ。
いつ斬られたのかはわからない。
ただ斬られたという事実だけがそこに残っているだけだった。
「終わりだ」
魔戦士は無表情のまま切っ先を勇者に向け、そう言い放つ。
僅かでも動けば斬る、そう言っているのがありありとわかる。
魔戦士の剣が大きく振り上げられる。
そして魔戦士の剣が振られ―――――。
その時、耳をつんざく様な爆音が部屋に響き渡った。
大きく船が傾きだし、部屋にあったものが転がっていく。
勇者はその一瞬のうちに素早く横に転がり、魔戦士との距離を置く。
痛みは強いが動けない訳ではない。
憤り。
ただそれだけの感情しか彼の心の中には無かった。
ドラゴンをあんな風にした魔戦士に対しての。
こんなバカげたことをする魔法の町へ対しての。
そして誰も守れず、目の前にいるドラゴンすら守れない自分に対しての。
勇者の目には怒りの炎のみが灯り、紅蓮に燃え上がっていた。
その目は彼にそっくりだった。
そう、その目は強者と同じ目だったのだ。
328: 2012/03/03(土) 21:49:20.35 ID:elV8DCpY0
勇者は素早く態勢を立て直し、もう一度魔戦士目掛けて跳んだ。
策がある訳ではない。
何かの罠がある訳ではない。
ただただ怒りという名の大きな波に身を任せ、相手に襲いかかる。
その姿は狂人そのものだった。
そんな攻撃で勝てるはずもなく、魔戦士の蹴りで勇者は玩具の様に地面を転がる。
彼の体は止まることなく転がり続け、檻にぶつかりやっと停止した。
袋叩きにされたような痛みが全身を襲い、意識を朦朧とさせる。
「もう無駄だ」
魔戦士の声はやはり必要以上に冷淡で抑揚の無い声だった。
魔戦士ゆっくりとこちらに向かって歩いてくるのが見える。
「まだだ、まだ終わってねぇ!!」
勇者は大声で叫んでいた。
力を振り絞って立ち上がり、地面に落ちている刀を拾い上げる。
左足は麻痺しているのか感覚がほとんどない。
だがそれでも。
たとえ刺し違えてでも魔戦士だけは頃す。
その一つだけが勇者を動かしていた。
策がある訳ではない。
何かの罠がある訳ではない。
ただただ怒りという名の大きな波に身を任せ、相手に襲いかかる。
その姿は狂人そのものだった。
そんな攻撃で勝てるはずもなく、魔戦士の蹴りで勇者は玩具の様に地面を転がる。
彼の体は止まることなく転がり続け、檻にぶつかりやっと停止した。
袋叩きにされたような痛みが全身を襲い、意識を朦朧とさせる。
「もう無駄だ」
魔戦士の声はやはり必要以上に冷淡で抑揚の無い声だった。
魔戦士ゆっくりとこちらに向かって歩いてくるのが見える。
「まだだ、まだ終わってねぇ!!」
勇者は大声で叫んでいた。
力を振り絞って立ち上がり、地面に落ちている刀を拾い上げる。
左足は麻痺しているのか感覚がほとんどない。
だがそれでも。
たとえ刺し違えてでも魔戦士だけは頃す。
その一つだけが勇者を動かしていた。
329: 2012/03/03(土) 21:53:54.47 ID:elV8DCpY0
彼の心を支えているのはやはり怒りだけだった。
今にも折れてしまいそうなオンボロの支柱だけが勇者の心を支えている。
勇者はドラゴンを見た。
ドラゴンはほとんど動いていないが、僅かに聞こえる呼吸の音で生きている事がわかる。
止まっている暇は無い。
そう思い、立ち上がろうとする。
勇者がドラゴンから目を離そうとした時、ドラゴンの口が動いている事に気がついた。
ほとんど声も出ておらず、弱々しくほんの僅かに口が動いている。
「どうした!?」
勇者はとっさに問いかけた。
聞こえているかも分からないが大声で訊ねる。
緊張で声が僅かに上ずってしまった。
ドラゴンの口がもう一度動く。
やはり声は出ず、口だけが僅かに動くだけだった。
だが勇者にはなんと言っているかが分かった。
推測や憶測ではない。
ずっと一緒にいたからこそ、愛する者だからこそ分かるのだ。
逃げろ。
今にも折れてしまいそうなオンボロの支柱だけが勇者の心を支えている。
勇者はドラゴンを見た。
ドラゴンはほとんど動いていないが、僅かに聞こえる呼吸の音で生きている事がわかる。
止まっている暇は無い。
そう思い、立ち上がろうとする。
勇者がドラゴンから目を離そうとした時、ドラゴンの口が動いている事に気がついた。
ほとんど声も出ておらず、弱々しくほんの僅かに口が動いている。
「どうした!?」
勇者はとっさに問いかけた。
聞こえているかも分からないが大声で訊ねる。
緊張で声が僅かに上ずってしまった。
ドラゴンの口がもう一度動く。
やはり声は出ず、口だけが僅かに動くだけだった。
だが勇者にはなんと言っているかが分かった。
推測や憶測ではない。
ずっと一緒にいたからこそ、愛する者だからこそ分かるのだ。
逃げろ。
330: 2012/03/03(土) 21:55:15.46 ID:elV8DCpY0
ドラゴンは一言だけそう言っていた。
彼女は自分を助けてもらう事より勇者が生きる事を願ったのだ。
ドラゴンはそれだけ言うと母親の様に微笑んだ。
この世で最も綺麗で純粋な笑顔。
この世で最も愛する人の笑顔。
勇者は大きく息を吸い、そして吐き出した。
頭の中を綺麗にし、刀を構え直す。
さっきまで沸騰したように熱くなっていた心は今は氷の様に冷たく、水の様に透き通っていた。
簡単な事だ。
勇者がここに来た理由は魔戦士を頃す事ではない。
戦争を終わらせに来た訳でもない。
たった一人。
たった一人の恋人を救いに来ただけだ。
単純で簡単な事をやっと思い出す事が出来た。
やっと理解出来た。
怒りという名の支柱はいつの間にか消え、代わりに新たな支柱が心を支えていた。
名前もわからない、なんと表現していいのか分からない感情。
温かく、包み込むような感情。
勇者は刀を強く握りしめると魔戦士の方を見た。
魔戦士を頃すためではなく、恋人を助ける為に。
彼女は自分を助けてもらう事より勇者が生きる事を願ったのだ。
ドラゴンはそれだけ言うと母親の様に微笑んだ。
この世で最も綺麗で純粋な笑顔。
この世で最も愛する人の笑顔。
勇者は大きく息を吸い、そして吐き出した。
頭の中を綺麗にし、刀を構え直す。
さっきまで沸騰したように熱くなっていた心は今は氷の様に冷たく、水の様に透き通っていた。
簡単な事だ。
勇者がここに来た理由は魔戦士を頃す事ではない。
戦争を終わらせに来た訳でもない。
たった一人。
たった一人の恋人を救いに来ただけだ。
単純で簡単な事をやっと思い出す事が出来た。
やっと理解出来た。
怒りという名の支柱はいつの間にか消え、代わりに新たな支柱が心を支えていた。
名前もわからない、なんと表現していいのか分からない感情。
温かく、包み込むような感情。
勇者は刀を強く握りしめると魔戦士の方を見た。
魔戦士を頃すためではなく、恋人を助ける為に。
331: 2012/03/03(土) 21:56:52.49 ID:elV8DCpY0
スライム「勇者さん!!」ピョンッ
頃し屋「ん、何しに来たの?」
スライム「この船が沈みます、早く逃げないと危ないです」
頃し屋「まだ終わって無いから邪魔しちゃダメだよ」
スライム「ですけど」
頃し屋「もうそろそろ終わるよ」
スライム「どういう事ですか?」
頃し屋「勇者の顔を見てみなよ」
スライム「……それがどうしたんですか?」
頃し屋「あの顔は何かを悟った顔だよ」
頃し屋「勇者が一撃を入れて魔戦士を頃すのが先か、魔戦士が勇者に止めを刺すのが先か、楽しみだ」
スライム「……」
頃し屋「ハッピーエンドに出来るのかな?」ニコニコ
頃し屋「ん、何しに来たの?」
スライム「この船が沈みます、早く逃げないと危ないです」
頃し屋「まだ終わって無いから邪魔しちゃダメだよ」
スライム「ですけど」
頃し屋「もうそろそろ終わるよ」
スライム「どういう事ですか?」
頃し屋「勇者の顔を見てみなよ」
スライム「……それがどうしたんですか?」
頃し屋「あの顔は何かを悟った顔だよ」
頃し屋「勇者が一撃を入れて魔戦士を頃すのが先か、魔戦士が勇者に止めを刺すのが先か、楽しみだ」
スライム「……」
頃し屋「ハッピーエンドに出来るのかな?」ニコニコ
332: 2012/03/03(土) 21:58:08.59 ID:elV8DCpY0
魔戦士は僅かに眉をひそめ、勇者をもう一度見た。
さっきまでの怒りに燃えた憎悪の表情というならそれは氷の様な冷えた表情というのだろうか。
とにかく今までとは明らかに違っていた。
魔戦士は無表情のままゆったりとした動作で剣を構えた。
お互いの距離は二メートル。
どちらも一歩踏み出し、得物を振れば、相手に当てられる。
魔戦士はに呼吸を調え、剣を握り直した。
ここもそう長くはない。
そして勇者はすでに手負いだ。
なら勝負を長引かせる必要は無い。
彼は大きく一歩を踏み出すと、剣を大きく振り下ろした。
ゴウッ、という風をも断ち切る様な音をたてながら、剣は勇者目掛けて襲いかかる。
しかし剣は勇者を薔薇の花の様に赤く染める事無く、空振りする。
今さっきまで勇者のいた場所には何も無かった。
短かく、息を吐く音が聞こえた。
ほんの一瞬の、それこそ他の音にかき消されてしまいそうな蚊の泣く様なか細い音。
魔戦士はとっさに膝を曲げ、頭を下げる。
さっきまでの怒りに燃えた憎悪の表情というならそれは氷の様な冷えた表情というのだろうか。
とにかく今までとは明らかに違っていた。
魔戦士は無表情のままゆったりとした動作で剣を構えた。
お互いの距離は二メートル。
どちらも一歩踏み出し、得物を振れば、相手に当てられる。
魔戦士はに呼吸を調え、剣を握り直した。
ここもそう長くはない。
そして勇者はすでに手負いだ。
なら勝負を長引かせる必要は無い。
彼は大きく一歩を踏み出すと、剣を大きく振り下ろした。
ゴウッ、という風をも断ち切る様な音をたてながら、剣は勇者目掛けて襲いかかる。
しかし剣は勇者を薔薇の花の様に赤く染める事無く、空振りする。
今さっきまで勇者のいた場所には何も無かった。
短かく、息を吐く音が聞こえた。
ほんの一瞬の、それこそ他の音にかき消されてしまいそうな蚊の泣く様なか細い音。
魔戦士はとっさに膝を曲げ、頭を下げる。
333: 2012/03/03(土) 21:59:15.27 ID:elV8DCpY0
魔戦士の頭が今まであった所を銀色の閃光が通過していた。
確認する必要もない。
それはまぎれもなく勇者の刀だ。
勇者はそのまま流れる様に自然な動作で今度は剣を斬り上げる。
それはさっきの一撃から一秒すら経っていない、文字通り刹那の一撃だ。
音すら超える速度で氏が襲いかかってくる。
魔戦士はとっさに後ろに跳び、その攻撃を回避していた。
目の前を銀色の閃光が通過し、そのあとに風を斬る様な音が響く。
だが勇者の攻撃は終わってはいなかった。
勇者は体を僅かに曲げ、跳躍した。
トンッ、という地面を蹴る乾いた音がしたかと思うと、勇者はすでに魔戦士との距離をゼロにしていた。
勇者は無言のまま、刀を振る。
銀色の閃光が右と左からまるで挟み込むかのように襲いかかってきた。
「な……!?」
魔戦士は気がついた時には声を上げていた。
右から来る一撃と左から来る一撃。
それはどちらも勇者の攻撃だった。
確認する必要もない。
それはまぎれもなく勇者の刀だ。
勇者はそのまま流れる様に自然な動作で今度は剣を斬り上げる。
それはさっきの一撃から一秒すら経っていない、文字通り刹那の一撃だ。
音すら超える速度で氏が襲いかかってくる。
魔戦士はとっさに後ろに跳び、その攻撃を回避していた。
目の前を銀色の閃光が通過し、そのあとに風を斬る様な音が響く。
だが勇者の攻撃は終わってはいなかった。
勇者は体を僅かに曲げ、跳躍した。
トンッ、という地面を蹴る乾いた音がしたかと思うと、勇者はすでに魔戦士との距離をゼロにしていた。
勇者は無言のまま、刀を振る。
銀色の閃光が右と左からまるで挟み込むかのように襲いかかってきた。
「な……!?」
魔戦士は気がついた時には声を上げていた。
右から来る一撃と左から来る一撃。
それはどちらも勇者の攻撃だった。
334: 2012/03/03(土) 22:00:31.93 ID:elV8DCpY0
見切っている。
見切ってはいるが、防御が間に合わない。
まるで花が咲く様に鮮血が美しく飛び散る。
勇者の刀は魔戦士の左の二の腕を深く斬っていた。
だが完全に斬れてはいない。
魔戦士は右からの一撃を剣で弾き、左からの一撃を左手で受け止めていた。
勇者の腹を蹴り、無理矢理に距離をとると、左手を庇いながらも、剣を構え直した。
呼吸は荒く、肩で息をしている。
背中は恐怖と緊張感で汗をかいていた。
「な、何が……!?」
魔戦士はとっさにそう口にした。
確かに勇者は魔戦士が今まで会った中ではトップクラスに強い。
だが魔戦士に及ぶほどの力は持っていなかったはずだ。
なら何故自分の左腕を犠牲にしなければならないほどおされているのだろうか。
何故頃す事が出来ないのか。
魔戦士の頭で様々な憶測が飛び交う。
見切ってはいるが、防御が間に合わない。
まるで花が咲く様に鮮血が美しく飛び散る。
勇者の刀は魔戦士の左の二の腕を深く斬っていた。
だが完全に斬れてはいない。
魔戦士は右からの一撃を剣で弾き、左からの一撃を左手で受け止めていた。
勇者の腹を蹴り、無理矢理に距離をとると、左手を庇いながらも、剣を構え直した。
呼吸は荒く、肩で息をしている。
背中は恐怖と緊張感で汗をかいていた。
「な、何が……!?」
魔戦士はとっさにそう口にした。
確かに勇者は魔戦士が今まで会った中ではトップクラスに強い。
だが魔戦士に及ぶほどの力は持っていなかったはずだ。
なら何故自分の左腕を犠牲にしなければならないほどおされているのだろうか。
何故頃す事が出来ないのか。
魔戦士の頭で様々な憶測が飛び交う。
335: 2012/03/03(土) 22:01:33.52 ID:elV8DCpY0
「感情は時として実力を覆す、いや感情だからこそ実力を覆すんだよ」
まるで魔戦士の読んだかのように観戦者は言い放った。
観戦者は心底楽しそうに笑いながら魔戦士と勇者を見ていた。
その表情は邪悪の限りを尽くした罪人にも疑う事を知らない無邪気な子供の様に見えた。
「余所見してんじゃねぇよ」
勇者の声は抜き身の刃の様に鋭い声だった。
何故か体が強張り、緊張感がはしる。
勇者は全身のバネを使い、魔戦士目掛けて跳躍する。
音もない。
だが、速度はもはや人間の域を超えていた。
まるで魔戦士の読んだかのように観戦者は言い放った。
観戦者は心底楽しそうに笑いながら魔戦士と勇者を見ていた。
その表情は邪悪の限りを尽くした罪人にも疑う事を知らない無邪気な子供の様に見えた。
「余所見してんじゃねぇよ」
勇者の声は抜き身の刃の様に鋭い声だった。
何故か体が強張り、緊張感がはしる。
勇者は全身のバネを使い、魔戦士目掛けて跳躍する。
音もない。
だが、速度はもはや人間の域を超えていた。
336: 2012/03/03(土) 22:03:32.49 ID:elV8DCpY0
しかし魔戦士は勝利を確信し、剣を振りかぶっていた。
空中にいる以上方向転換は不可能。
ならば全ての魔力を注ぎ、魔法を発動すれば、十分に勝機がある。
魔戦士は魔法を詠唱する。
風が剣に集束し、巨大な槍と化す。
狙いを定める必要は無い。
逃げられはしないのだから。
魔戦士はそれを勇者目掛けて放った。
轟音が響く。
槍は目の前にあるものを手当たり次第に蹂躙し、破壊し尽くしていく。
壁、床、天井。
あらゆるものが剥がれ、吹き飛び、壊れる。
だが魔戦士は知らなかった。
勇者が一度、魔法を叩き斬った事を。
そして勇者は力を真正面で受け止めず、受け流す事が出来る事を。
「がァァァァァ!!」
空中にいる以上方向転換は不可能。
ならば全ての魔力を注ぎ、魔法を発動すれば、十分に勝機がある。
魔戦士は魔法を詠唱する。
風が剣に集束し、巨大な槍と化す。
狙いを定める必要は無い。
逃げられはしないのだから。
魔戦士はそれを勇者目掛けて放った。
轟音が響く。
槍は目の前にあるものを手当たり次第に蹂躙し、破壊し尽くしていく。
壁、床、天井。
あらゆるものが剥がれ、吹き飛び、壊れる。
だが魔戦士は知らなかった。
勇者が一度、魔法を叩き斬った事を。
そして勇者は力を真正面で受け止めず、受け流す事が出来る事を。
「がァァァァァ!!」
337: 2012/03/03(土) 22:05:37.65 ID:elV8DCpY0
そんな獣の様な咆哮が部屋に響き、魔戦士の胸ぐらが何者かに掴まれる。
そこにいたのは勇者だった。
体中傷だらけで、血が大量に溢れ出ている。
もはや立っている事すらままならない様な状態。
だが勇者はそんな状態でも魔戦士の胸ぐらをつかみ、彼を睨みつける。
魔戦士はとっさに剣を小さく振り、勇者の左手を斬り裂こうとした。
「終わりだ」
抑揚の無い声が響く。
勇者の刀が己の左手もろとも魔戦士の心臓を貫く。
勇者と血と魔戦士の血が混ざり合い、木の床を赤く彩った。
魔戦士は僅かに痙攣し、動かなくなる。
「俺の……勝ちだ……」
勇者は魔戦士から剣を引きぬくと、そのまま地面に膝をつき、吐血した。
そこにいたのは勇者だった。
体中傷だらけで、血が大量に溢れ出ている。
もはや立っている事すらままならない様な状態。
だが勇者はそんな状態でも魔戦士の胸ぐらをつかみ、彼を睨みつける。
魔戦士はとっさに剣を小さく振り、勇者の左手を斬り裂こうとした。
「終わりだ」
抑揚の無い声が響く。
勇者の刀が己の左手もろとも魔戦士の心臓を貫く。
勇者と血と魔戦士の血が混ざり合い、木の床を赤く彩った。
魔戦士は僅かに痙攣し、動かなくなる。
「俺の……勝ちだ……」
勇者は魔戦士から剣を引きぬくと、そのまま地面に膝をつき、吐血した。
338: 2012/03/03(土) 22:06:11.17 ID:elV8DCpY0
勇者「がっ、げほげほ!!」
スライム「勇者さん!!」
勇者「大丈夫だ、大丈夫……」
頃し屋「うん、最高だったよ」パチパチ
勇者「そりゃ……どうも……」
頃し屋「何言ってんの、まだ終わってないよ」
勇者「……」
頃し屋「お姫様を助け出してこそのハッピーエンドだよ」
勇者「はは……そうだな」
頃し屋「速く行ってあげなよ、鍵はあるから」ポイッ
勇者「……悪いな」パシッ
頃し屋「いいって、いいって、情けは人の為ならずって奴だよ」
勇者「ははっ……」
スライム「勇者さん!!」
勇者「大丈夫だ、大丈夫……」
頃し屋「うん、最高だったよ」パチパチ
勇者「そりゃ……どうも……」
頃し屋「何言ってんの、まだ終わってないよ」
勇者「……」
頃し屋「お姫様を助け出してこそのハッピーエンドだよ」
勇者「はは……そうだな」
頃し屋「速く行ってあげなよ、鍵はあるから」ポイッ
勇者「……悪いな」パシッ
頃し屋「いいって、いいって、情けは人の為ならずって奴だよ」
勇者「ははっ……」
344: 2012/03/04(日) 21:40:40.83 ID:DgrNB5iV0
勇者「……」フラフラ
勇者「……」ガチャ
ドラゴン「勇者……」
勇者「無事で良か――――――」
ドラゴンが勇者に抱きつく。
ドラゴン「バカ者め、逃げろと言っただろ」
勇者「お前を助けてから逃げるつもりだった」
ドラゴン「バカ者が……」
勇者「ははは……ありがとな」
ドラゴン「お礼を言うのはこっちだ、バカめ、貴様は本当にバカだ」
勇者「かもね……」
暗殺者「早くしないと崩れるよ」
勇者「あ、ああ」
スライム「勇者さん、回復しますから動かないで下さいね」ポワワン
勇者「ああ、悪いな」
勇者「……」ガチャ
ドラゴン「勇者……」
勇者「無事で良か――――――」
ドラゴンが勇者に抱きつく。
ドラゴン「バカ者め、逃げろと言っただろ」
勇者「お前を助けてから逃げるつもりだった」
ドラゴン「バカ者が……」
勇者「ははは……ありがとな」
ドラゴン「お礼を言うのはこっちだ、バカめ、貴様は本当にバカだ」
勇者「かもね……」
暗殺者「早くしないと崩れるよ」
勇者「あ、ああ」
スライム「勇者さん、回復しますから動かないで下さいね」ポワワン
勇者「ああ、悪いな」
345: 2012/03/04(日) 21:42:08.00 ID:DgrNB5iV0
スライム「いえ、これぐらい当たり前ですよ」
勇者「じゃあ行くかな」
勇者はドラゴンをおんぶする。
ドラゴン「オレは大丈夫だ、歩ける」
勇者「いいからいいから」タタタッ
頃し屋「じゃあ俺はそろそろ行くね」
スライム「一緒に行かないんですか?」
頃し屋「俺は裏社会の人間だよ」
勇者「ありがとな」
頃し屋「あはは、じゃあね」ピョンッ
スライム「急ぎますよ」ピョンピョン
勇者「分かってるって」タタタッ
勇者「じゃあ行くかな」
勇者はドラゴンをおんぶする。
ドラゴン「オレは大丈夫だ、歩ける」
勇者「いいからいいから」タタタッ
頃し屋「じゃあ俺はそろそろ行くね」
スライム「一緒に行かないんですか?」
頃し屋「俺は裏社会の人間だよ」
勇者「ありがとな」
頃し屋「あはは、じゃあね」ピョンッ
スライム「急ぎますよ」ピョンピョン
勇者「分かってるって」タタタッ
346: 2012/03/04(日) 21:44:15.89 ID:DgrNB5iV0
~~~~~~~~~~~~~~~~~
港の町
イケメン「後は勇者だけか」
暗殺者「あいつなら大丈夫だ」
剣士「そうですよ」
弓兵「そうだな」
金髪「で、でも、あいつ等の船が沈んでからもう一時間も経つんすよ!!」
黒スライム「騒ぐな」
金髪「……」
女勇者「大丈夫ですよ」
金髪「でも……」
剣士「もしかして……」
弓兵「安心しろ」
女勇者「勇者はゴキブリ並みの生命力ですから」
勇者「誰と比較してんだ」スタスタ
女勇者・暗殺者・イケメン・黒スライム・金髪・剣士・弓兵「!?」
暗殺者「ゆ、勇者……だよな?」
勇者「他に誰に見える?」
港の町
イケメン「後は勇者だけか」
暗殺者「あいつなら大丈夫だ」
剣士「そうですよ」
弓兵「そうだな」
金髪「で、でも、あいつ等の船が沈んでからもう一時間も経つんすよ!!」
黒スライム「騒ぐな」
金髪「……」
女勇者「大丈夫ですよ」
金髪「でも……」
剣士「もしかして……」
弓兵「安心しろ」
女勇者「勇者はゴキブリ並みの生命力ですから」
勇者「誰と比較してんだ」スタスタ
女勇者・暗殺者・イケメン・黒スライム・金髪・剣士・弓兵「!?」
暗殺者「ゆ、勇者……だよな?」
勇者「他に誰に見える?」
347: 2012/03/04(日) 21:45:49.05 ID:DgrNB5iV0
女勇者「あなたと言う人は……」
ドラゴン「勇者、もうおろしていいぞ」
勇者「ボロボロだったんだからダメだ」
スライム「皆さん無事で良かったです」
弓兵「ああ、本当に良かった」
金髪「勇者さん、俺信じてたっす!!」
黒スライム「さっきまであんなに心配してただろ」
イケメン「やっぱり正義は勝つものだね」
剣士「そうですね」
勇者「あれ、そういえば魔王は?」
剣士「あ、人間達と一緒にいてもお互いに利益は無いからって帰っていきましたよ」
弓兵「魔王は倒したんじゃないのか?」
勇者「最初はそのつもりだったんだけど、いろいろ事情が変わったんだよ」
ドラゴン「勇者、もうおろしていいぞ」
勇者「ボロボロだったんだからダメだ」
スライム「皆さん無事で良かったです」
弓兵「ああ、本当に良かった」
金髪「勇者さん、俺信じてたっす!!」
黒スライム「さっきまであんなに心配してただろ」
イケメン「やっぱり正義は勝つものだね」
剣士「そうですね」
勇者「あれ、そういえば魔王は?」
剣士「あ、人間達と一緒にいてもお互いに利益は無いからって帰っていきましたよ」
弓兵「魔王は倒したんじゃないのか?」
勇者「最初はそのつもりだったんだけど、いろいろ事情が変わったんだよ」
348: 2012/03/04(日) 21:47:33.03 ID:DgrNB5iV0
弓兵「そうか、まあいいいさ」
女大臣「お疲れさまでした」スタスタ
勇者「あ、来てたのか」
女大臣「協力できなくて本当にすいませんでした」
勇者「いいっていいって」
弓兵「終わりでいいんだよな?」
女大臣「はい」
女大臣「では帰りましょうか、城で王様がお待ちです」
勇者「そうだな」スタスタ
暗殺者「そうするか」
ドラゴン「いいからおろせ」ジタバタ
勇者「暴れるなよ」
弓兵「じゃあな、俺は他のハンターの所に行ってくる」スタスタ
スライム「僕も行きます、ありがとうございました」ピョンピョン
イケメン「僕もそろそろ行くね、仲間が待ってるんだ」スタスタ
勇者「ああ、またな」スタスタ
女大臣「お疲れさまでした」スタスタ
勇者「あ、来てたのか」
女大臣「協力できなくて本当にすいませんでした」
勇者「いいっていいって」
弓兵「終わりでいいんだよな?」
女大臣「はい」
女大臣「では帰りましょうか、城で王様がお待ちです」
勇者「そうだな」スタスタ
暗殺者「そうするか」
ドラゴン「いいからおろせ」ジタバタ
勇者「暴れるなよ」
弓兵「じゃあな、俺は他のハンターの所に行ってくる」スタスタ
スライム「僕も行きます、ありがとうございました」ピョンピョン
イケメン「僕もそろそろ行くね、仲間が待ってるんだ」スタスタ
勇者「ああ、またな」スタスタ
349: 2012/03/04(日) 21:48:45.75 ID:DgrNB5iV0
~~~~~~~~~~~~~~~~~
城
王「おお、戻ったのじゃな」
勇者「魔王の件だけど」
王「そのことは女大臣から聞いておる」
勇者「あ、そう」
女勇者「戦争は終結、でいいんですか?」
王「うむ、戦争はわし等の勝利で終わりじゃ」
暗殺者「魔法の町はどうなったんだ?」
女大臣「その辺りはハンター達に任せてありますので」
暗殺者「そうか」
王「皆無事で良かったのう」
勇者「金髪達はどうしたんだ?」
王「やる事が残っておると言っておったぞ」
勇者「ふーん」
女大臣「女勇者様達はこれからどうなさるんですか?」
女勇者「私はもう少しここに残ってから決めます」
城
王「おお、戻ったのじゃな」
勇者「魔王の件だけど」
王「そのことは女大臣から聞いておる」
勇者「あ、そう」
女勇者「戦争は終結、でいいんですか?」
王「うむ、戦争はわし等の勝利で終わりじゃ」
暗殺者「魔法の町はどうなったんだ?」
女大臣「その辺りはハンター達に任せてありますので」
暗殺者「そうか」
王「皆無事で良かったのう」
勇者「金髪達はどうしたんだ?」
王「やる事が残っておると言っておったぞ」
勇者「ふーん」
女大臣「女勇者様達はこれからどうなさるんですか?」
女勇者「私はもう少しここに残ってから決めます」
350: 2012/03/04(日) 21:49:48.72 ID:DgrNB5iV0
暗殺者「俺も少しここに残ってから決めるかな」
女大臣「そうですか」
勇者「まあ、好きなだけ家に居てくれていいよ」
女勇者「はい、そうするつもりです」
王「夜には町をあげての宴じゃ、お主等も参加するのじゃぞ」
暗殺者「どうする?」
女勇者「楽しそうだし、いいじゃないですか」
ドラゴン「勇者はどうするんだ?」
勇者「まあ、気が向いたら参加するよ」スタスタ
女大臣「そうして下さい」
王「楽しみにしておるのじゃぞ」
勇者「ああ、期待はしとくよ」スタスタ
女大臣「そうですか」
勇者「まあ、好きなだけ家に居てくれていいよ」
女勇者「はい、そうするつもりです」
王「夜には町をあげての宴じゃ、お主等も参加するのじゃぞ」
暗殺者「どうする?」
女勇者「楽しそうだし、いいじゃないですか」
ドラゴン「勇者はどうするんだ?」
勇者「まあ、気が向いたら参加するよ」スタスタ
女大臣「そうして下さい」
王「楽しみにしておるのじゃぞ」
勇者「ああ、期待はしとくよ」スタスタ
351: 2012/03/04(日) 21:51:30.13 ID:DgrNB5iV0
~~~~~~~~~~~~~~~
夜 町外れの墓地
勇者「……」スタスタ
剣士「勇者さん……」
勇者「博士の墓ってどれだ?」
剣士「そこの一番右の墓です」
勇者「これか」
勇者はその墓の前に立ち、手を合わせる。
勇者「もう花が供えてあるけど、お前か?」
剣士「いえ、多分イケメンさんだと思います」
勇者「……」
剣士「骨も無かったんで、僅かに残った遺品だけが入ってるんです」
勇者「そうか……」
剣士「気にしないで下さい、博士はきっと望んでああなったんです」
勇者「ああ、そうだな」
剣士「……」
勇者「……」
剣士「じゃ、じゃあ僕戻りますね」タタタッ
勇者「ああ、楽しんでこいよ」
夜 町外れの墓地
勇者「……」スタスタ
剣士「勇者さん……」
勇者「博士の墓ってどれだ?」
剣士「そこの一番右の墓です」
勇者「これか」
勇者はその墓の前に立ち、手を合わせる。
勇者「もう花が供えてあるけど、お前か?」
剣士「いえ、多分イケメンさんだと思います」
勇者「……」
剣士「骨も無かったんで、僅かに残った遺品だけが入ってるんです」
勇者「そうか……」
剣士「気にしないで下さい、博士はきっと望んでああなったんです」
勇者「ああ、そうだな」
剣士「……」
勇者「……」
剣士「じゃ、じゃあ僕戻りますね」タタタッ
勇者「ああ、楽しんでこいよ」
352: 2012/03/04(日) 21:52:19.13 ID:DgrNB5iV0
勇者「……」
ドラゴン「参加しないのか」モグモグ
勇者「ああ、人混みは苦手なんだ」
ドラゴン「そうか……」
勇者「悪かったな」
ドラゴン「何がだ?」
勇者「あの……あれだ、連れていかれる時、何も出来なくて」
ドラゴン「……」
ドラゴン「あはははははは!!」
勇者「なんだよ」
ドラゴン「何かと思ったらその事か」
勇者「なんだよ」
ドラゴン「貴様は助けに来てくれただろ」
勇者「まあ、そうだな」
ドラゴン「それだけで十分だ」
勇者「……」
ドラゴン「参加しないのか」モグモグ
勇者「ああ、人混みは苦手なんだ」
ドラゴン「そうか……」
勇者「悪かったな」
ドラゴン「何がだ?」
勇者「あの……あれだ、連れていかれる時、何も出来なくて」
ドラゴン「……」
ドラゴン「あはははははは!!」
勇者「なんだよ」
ドラゴン「何かと思ったらその事か」
勇者「なんだよ」
ドラゴン「貴様は助けに来てくれただろ」
勇者「まあ、そうだな」
ドラゴン「それだけで十分だ」
勇者「……」
353: 2012/03/04(日) 21:56:18.98 ID:DgrNB5iV0
ドラゴン「傷はもう大丈夫なのか?」
勇者「大丈夫じゃなかったら今頃家で寝てるよ」
ドラゴン「そうだな、無用な心配だったな」
勇者「……」
ドラゴン「……」
ドラゴン「勇者」
勇者「ん?」
ドラゴン「キスしてくれ」
勇者「……あのさ、そう言うのって普通言っちゃダメなんじゃないかな」
ドラゴン「なんでだ?」
勇者「普通はムードとかその他いろいろ必要だと思うんだよ」
勇者「今のは明らかにダメだろ、ムードも何もねぇよ」
ドラゴン「そうか?」
勇者「そうだ、よく覚えておくように」
ドラゴン「じゃあ、キスはしてくれないのか……」
勇者「だからなんでそう言う事を口に出しちゃうのかな……」
ドラゴン「よくわからんな……」
勇者「大丈夫じゃなかったら今頃家で寝てるよ」
ドラゴン「そうだな、無用な心配だったな」
勇者「……」
ドラゴン「……」
ドラゴン「勇者」
勇者「ん?」
ドラゴン「キスしてくれ」
勇者「……あのさ、そう言うのって普通言っちゃダメなんじゃないかな」
ドラゴン「なんでだ?」
勇者「普通はムードとかその他いろいろ必要だと思うんだよ」
勇者「今のは明らかにダメだろ、ムードも何もねぇよ」
ドラゴン「そうか?」
勇者「そうだ、よく覚えておくように」
ドラゴン「じゃあ、キスはしてくれないのか……」
勇者「だからなんでそう言う事を口に出しちゃうのかな……」
ドラゴン「よくわからんな……」
354: 2012/03/04(日) 21:58:13.56 ID:DgrNB5iV0
勇者「……わかったわかった」
勇者はドラゴンと唇を重ねる。
勇者「……」
ドラゴン「……」
勇者「これでいいだろ」
ドラゴン「ああ」
勇者「いろいろ言いたい事はあるけどまあいいか」
ドラゴン「座っていいか?」
勇者「戻らなくていいのか?」
ドラゴン「貴様と一緒にいたい」
勇者「……急にかわいい事言うな、お前は」
ドラゴン「いいか?」
勇者「いいよ、座れよ」
勇者はドラゴンと唇を重ねる。
勇者「……」
ドラゴン「……」
勇者「これでいいだろ」
ドラゴン「ああ」
勇者「いろいろ言いたい事はあるけどまあいいか」
ドラゴン「座っていいか?」
勇者「戻らなくていいのか?」
ドラゴン「貴様と一緒にいたい」
勇者「……急にかわいい事言うな、お前は」
ドラゴン「いいか?」
勇者「いいよ、座れよ」
355: 2012/03/04(日) 21:59:33.86 ID:DgrNB5iV0
ドラゴンは勇者の横に座る。
ドラゴン「喰うか?」モグモグ
勇者「……初めて会った時は俺があげたんだったよな」
ドラゴン「ああ、覚えてたのか」
勇者「懐かしいな」
ドラゴン「そうか、オレにはつい最近の事みたいだぞ」
勇者「つーか肉しか持ってねぇのかよ」
ドラゴン「いらんのか?」モグモグ
勇者「肉だけはちょっとな」
ドラゴン「……」モグモグ
勇者「……」
勇者「……ちょっと分けてくれ」
ドラゴン「いいぞ」スッ
かくして、一人の勇者の旅が終わりを告げたのだった。
ドラゴン「喰うか?」モグモグ
勇者「……初めて会った時は俺があげたんだったよな」
ドラゴン「ああ、覚えてたのか」
勇者「懐かしいな」
ドラゴン「そうか、オレにはつい最近の事みたいだぞ」
勇者「つーか肉しか持ってねぇのかよ」
ドラゴン「いらんのか?」モグモグ
勇者「肉だけはちょっとな」
ドラゴン「……」モグモグ
勇者「……」
勇者「……ちょっと分けてくれ」
ドラゴン「いいぞ」スッ
かくして、一人の勇者の旅が終わりを告げたのだった。
356: 2012/03/04(日) 22:01:06.00 ID:DgrNB5iV0
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