1: 2009/03/01(日) 08:07:32.79 ID:zsiC+S0/0
「長門……今何て言った?」
 まだ冬の寒気が残る3月のこと。俺は長門に呼び出され屋上にきていた。
 冷たい風が体を冷やす中、さらに背筋が凍りついた。
 長門の発言によって。
「古泉一樹が氏亡した」
 ……嘘だろう?

2: 2009/03/01(日) 08:10:38.87 ID:zsiC+S0/0
「長門、悪い冗談はよせ。怒るぞ」
「冗談ではない。事実」
「おい!」
「聞いて」
 頭の整理が追いつかないまま、長門は語り始めた。
「私たちはこの2週間を7万8千823回ループしている。これで7万8千824回目にあたる」
「……なんだって?」
 ループ。その言葉を聴いたとき、一瞬であの出来事が思い浮かんだ。
「それはつまり、夏休みの時と同じってことか?」
「そう」
 今年の夏休みのことだった。ハルヒの我侭極まりない思考により、数週間をループしたことがあった。
 何回だったかは忘れてしまったが、時間に直すと何百年分もの時間を過ごしていたはずだ。
「そして前回と同じ様に、この時間軸での規定事項もある」
 規定事項とは、絶対に変更できないルールの様なものだ。
 多少の例外はあるが、行き着く結果は同じこと。
 ということは、今回の規定事項は、まさか。
「それが、古泉一樹の氏」
 何も言い返せない俺に、長門は真実を話し始める。

3: 2009/03/01(日) 08:12:14.68 ID:zsiC+S0/0
氏因は閉鎖空間での戦闘。涼宮ハルヒの力が強まり、以前より強力な神人が出現するようになった」
「彼ら、機関と呼称されている集団でも、抑制が不可能な状態に陥っている」
 ……ってことはなにか。ハルヒのせいで古泉が氏んだのか?
 あいつが不機嫌だから、ただそれだけで、古泉は氏ななければならなかったのか? それも何万回も。
 そう考えるとハルヒに対する怒りが生まれてきた。
 そして。
「どこへ?」
 踵を返し歩き出す俺を長門が呼び止めた。
「ハルヒの所へ行ってくる」
「駄目」
「なぜだ! あいつが原因なんだろう? じゃあ本人にどうにかしてもらうしかないじゃないか」
「私は、古泉一樹との約束を守りたい。だから、駄目」
「……約束?」

5: 2009/03/01(日) 08:13:53.79 ID:zsiC+S0/0
 今から5万236回前の時間軸。私は古泉一樹を今と同じ様に屋上に呼び出し、事実を伝えた。
「……」
 古泉一樹の反応は無く、沈黙が流れる。しばらくして
「……長門さん」
 彼が口を開く。
「お願いをしていいですか?」
「何?」
「これまで何万、何千回と世界をやり直してきて、僕の氏という結果は避けられなかった。もうどうしようもないでしょう」
「それなら、僕はこの世界の安定を望みます。これから先も、ずっと同じ事を繰り返しても、意味が無い」
「ですから、僕が氏んでも、彼ら、特に涼宮さんには話さないでください。話せば、きっとまた世界が壊れる」
「……了解した」
 彼が話している間、私は一切の口出しをすることなく、話を聞いていた。
 そして、その願いを叶えなければならないと感じた私は、それを了承した。
「ありがとうございます、長門さん。では、約束ですよ」
 そう言って笑った彼は、少し、泣いている様な気がした。



8: 2009/03/01(日) 08:15:17.27 ID:zsiC+S0/0
「だから、私はその約束を守りたい」
「……」
 長門が語っている間、俺はなにも喋らなかった。
 今、こいつにかけてやれる言葉が無いからだ。
 古泉と長門がそんな約束を交わしていたなんて。そしてそれを従順に守ろうとしている。
 ……それに比べて俺はどうだ。目先の事実で頭に血が上り、何の解決にもならない手段を取ろうと図った。
 二人の願いを無視する、身勝手極まりない行動をとる所だったのだ。
「分かった。このことは、ハルヒには内緒にする」
「……ありがとう」
「? 長門。今、礼を言ったか?」
「そう。何故?」
「……いや」
 驚いたな。長門に礼を言われたのは初めてだ。いや、そもそもこいつは元々感情が無いはずなのに。
 長門も少しずつ変わってきている。張り付いた無表情の裏にも、多少の人間味が出てきたのだろうか。
 古泉との約束を守ろうとする気持ち、感謝の気持ち。
 喜ばしいことだった。これで少しは自分というものをもってくれることだろうしな。
 ……ただ、この場に、いや、この世にか。古泉がいない事だけが本当に悔しい。
 なあ古泉。お前も、みたかっただろう? ありがとうと言った時のこいつの、ささやかな笑顔を。

9: 2009/03/01(日) 08:17:02.63 ID:zsiC+S0/0
 数週間前
「……古泉、顔色が悪いぞ。風邪でも引いたか?」
 とある放課後の事。俺はいつも通り文芸部……SOS団室にいた。
 この時はまだ朝比奈さんも、長門も、ハルヒも来ていなくて、部屋の中には俺と古泉の二人だけだった。
 とりあえず、と将棋の盤を持ち出し、これまたいつも通りに勝負をしていたわけだが。
 なかなか古泉が手を進めようとしないのを見越した俺は、遅いぞと野次を飛ばそうとした。
 が、野次の前に出た言葉がそれだ。
 見るからに体調が悪そうで、お世辞にも元気とは言えない状態だった。
「……やはり分かりますか。実は、ここ最近バイトの方が忙しくなっていまして、ね」
 こいつの言うバイト。それは閉鎖空間での神人との戦闘をあらわすものだった。
「……そうか。まあ、あまり無理しないで、休みもとれよ」
「そうもいきませんよ、これが僕の使命ですから、ね」
 そう言って笑う古泉。それを見て、色々なものがこみ上げてきた。

10: 2009/03/01(日) 08:18:16.78 ID:zsiC+S0/0
「なぁ、古泉。お前はもっと、普通の生活をしたいとは思わないのか?」
 素直な気持ちだった。こいつはもっと、高校生という時間を楽しむべきだ。
 いくら世界のためとはいえ、自分を犠牲にする必要なんてない。
「普通の、ですか。……まあ、僕にとってはこれが普通の生活みたいなものですからね」
「なんでもいいんだ。もっと遊びたいとか、そうだな。恋愛とか」
「健全な高校生なんだ、そういう相手がいてもいいだろう?」
「……」
 意外な反応だった。こういう質問は大抵曖昧な言葉で誤魔化されてたからな。
「いるのか?」
「……僕は今までそういった感情とは無縁の生活をしてきました。だから確証はないですが、おそらくそう思える相手はいます」
「そうか。なら、せめてそいつと仲良くやれよ」
「いえ、彼女は僕に興味はありませんよ。それに、そういった関係になりたいとも思えません。彼女を見ているだけでいいのです」
 好意を寄せている相手を見ているだけでいいなんておかしな話だ。
 誰だって、相手に振り向いてもらいたいはずだからな。それに、自分に興味がないのを何故知っているのかも分からない。
 そう思ったが、これ以上追求するのも野暮だと思い、その場はそれ以上聞かないことにした。

11: 2009/03/01(日) 08:21:17.65 ID:zsiC+S0/0
 今思えば、きっと古泉が好意を寄せていたのは、長門だったんだろう。
 そう考えると、合点がいく。確かに長門なら、ハルヒ以外の人間に関心は持たないだろうし。
 例えば長門が静かに本を読んでいるサマを見るのは、俺だって嫌いじゃなかった。
 気のせいかも知れないと思っていた、時々古泉が長門に向ける視線は、やはり勘違いではなかったのだろう。
 ……古泉、本当にお前はすごいな。
 普通、世界よりも自分の方が大事だろう? 俺だってそうだ。
 もしどちらかを取れといわれれば、俺は迷わず後者を選ぶだろう。自分あっての世界だからな。
 それなのに、古泉は世界を選択した。自分がいなくなっても、SOS団が、俺たちが幸せに暮らせるようにと。
 好きな相手に、最後の我侭を託して。
 ……なあ古泉、それでよかったのか?
 もし願いが叶っても、そこにお前は居ないんだぞ。俺たちが笑っている日々の中に、お前の笑顔だけないんだ。
 本当に、いいのか?
 そう問いかけてみても、もちろん答えを持っている本人はいない。
 今あいつが目の前にいて、一発殴ることができるのなら、俺は間違いなくそうしていただろう。
 自分の氏を受け入れて、それでもなお微笑む姿が容易に想像できたから。
 このどうしようもないやるせなさと怒りを、どこに持っていけばいいのだろう。
 吹き付ける風が、一層俺を切なくさせた。
 ……今年は、寒いな。



確認して気付いたが結構誤字脱字多かったから修正しながら投下。こっから速度低下します。

12: 2009/03/01(日) 08:25:02.35 ID:zsiC+S0/0
「なあ長門」
「何?」
「ハルヒに伝えなたくないのは分かった。だがどうするつもりだ? ハルヒだけじゃなく、いずれ学校中に知れ渡るんじゃないのか」
「問題ない。情報改変を行う」
「……なるほどな」
 その翌日、長門の宣言通り、古泉の氏は転校ということで皆の意見が合致。
 ……世界のために戦って、それで氏んで、誰にも知られないなんて。出来の悪いおとぎ話をみているような気分だった。
 だが、これでいい。……これでいいんだ。
 この時俺は、悪い結果ではあったが、事態は収拾したと、思っていた。
 まあ、ハルヒの機嫌がずっと悪いであろうことは言うまでもなかったから、さほど気にならなかったんだが。
 今にして思えば、簡単なことなんだよ。

13: 2009/03/01(日) 08:30:09.60 ID:zsiC+S0/0
「どういうことよ、キョン!」
 朝比奈さんの淹れたお茶がなみなみ注がれている湯飲みをテーブルに叩きつけ、ハルヒが迫ってくる。
「俺に聞くな」
「おかしいじゃない。古泉君がまた転校するなんて」
 そうだよな、お前ならそこに絶対疑問を持つと思っていたさ。
 だがな、既にある程度の質問は答えられるようにしてあるんだ。こういう時に言葉に詰まると不信感を持たれかねんからな。
「どこがだ。元々変な時期に転校してきたんだ。変な時期にいなくなっても、普通だろう?」
「……あんた、なんでそんなに冷静なの?」
「過ぎたことをどうこう言っても仕方がないからな」
「……」
 少しきつく言い過ぎたか? だが、他に言い訳のしようもないしな。
「……ちょっと冷たすぎるわよ」
 そう、呟くように言ったハルヒは、特等席に戻った。その顔は、やはり納得できないといった様な。
 何も知らないくせに。
 この一言に、いいようのない憤りを感じたのは確かだ。
 俺が冷たい? そりゃあそう見えるだろうさ。
 だがな、俺はもう、昨日のうちに自分の中でキリをつけたんだ。
 何も知らないお前には、分からないだろうがな。
 ……と、いかんいかん。抑えろ。ハルヒが何も知らないのも仕方ないんだ。
 そう、仕方ないんだ。

17: 2009/03/01(日) 08:36:19.08 ID:zsiC+S0/0
 ハルヒの不機嫌はそれから収まってはいなかったものの、特に大きな動きもないらしく、時間はすぎて行った。
 だが、古泉の氏からちょうど1週間後、それは起こった。ハルヒが、学校を休み始めたのだ。
「長門、何か知らないか?」
 ハルヒもいなくて、少し広く感じる部室で、長門に尋ねてみた。
「恐らく古泉一樹の氏が大きな要因と考えられる」
「やっぱり、か」
「それに」
「昨日から世界の各所に空間の異常を観測している」
 空間の異常? まさか。
「閉鎖空間、か?」
「そう」
 俺は重要なことを見落としていたようだった。
 今の会話にも出てきた、閉鎖空間、この存在を。
 そう、いくら古泉の氏という事実を曲げても、ハルヒが納得できなければ意味が無い。
 転校なんて曖昧な理由じゃ、こうなるのも当然、というわけだった。
「……そう、か」
 どうすりゃいいってんだ……。

19: 2009/03/01(日) 08:43:34.26 ID:zsiC+S0/0
 長門はなんとかするとは言っていたが、あいつのトンデモ能力に勝てるとは思えない。
 一抹の不安を抱え帰宅した俺は、気疲れからか部屋でいつの間にか眠りについた。
 気が付くと、周りの景色は俺の部屋のそれではなく、代わりによく見慣れたものになっていた。
「学校……?」
 毎日通っている所だ、分からないわけがない。
 動揺はしたものの、落ち着いて見渡してみると、辺りは暗かった。
 夜かと思ったがそうではないようだった。空の色がおかしい。雲があるわけでもなく灰色に染まっている。
 ……これは、見覚えがある。できればあまり来たくない場所……いや、空間だ。
 そう、これは間違いなく、閉鎖空間だった。
 どうなってるんだ、これじゃまるであの時と同じじゃないか。
 以前、ハルヒと二人で閉鎖空間に閉じ込められたことがあった。今回と同じく学校で。
 違うのは、ハルヒが居なくて、俺一人だということ。
「……とりあえず、誰か居ないか探してみるか」
 閉鎖空間に巻き込まれるときは必ず意味があるはずだ。それを俺一人で気付けるはずもない。
 ならば、きっとここには誰かしら他の人もいるだろう。
 そう思い、敷地内の探索に当たろうと思ったが、生憎アテがない。
 となればやはり前と同じルートを回ってみるしかないだろう。

21: 2009/03/01(日) 08:47:42.85 ID:zsiC+S0/0
 そんなわけで俺は今文芸部……SOS団室の前にいる。だが、目の前の扉を開けないでいた。
 明らかに人の気配があったからだ。こんな狭く、心細い世界で生気を感じられるというのに、ドアノブを回すのが怖かった。
 そう、誰がいるか分からない。ハルヒや長門、朝比奈さんならば、安心できるのだが。
 朝倉涼子がいないとは限らない。もう、それくらいの事が起こってもいいくらいなんだ。
 右腕が重い。鉛でもつけられているような感覚。だが。
 このままじゃ埒があかん、開けるしかない、そうだろう?
 半ば強引に自分を納得させ、意を決してドアを開く。
 その先で、俺の予想を遥かに超える人物が待っていた。
 そいつは窓の縁に腰を齎せながらこっちを見て微笑んでいる。
「……古泉?」

25: 2009/03/01(日) 08:52:26.11 ID:zsiC+S0/0
「どうも、またお会いしましたね」
「本物、なのか?」
「ご心配なく。紛れも無く、古泉一樹本人ですよ」
 勿論言葉ではなんとでも言えるし、偽者だったとしても本物じゃないなんて言わないだろう。
 だが、俺には目の前にいる古泉が本物だと理解できた。これは、長い間見慣れてきた友人の笑顔そのものだから。
「生きていたのか……」
「その様子だと長門さんから全て聞いたようですね」
「皆さんには知られずに済むのが一番だったのですが……まあ、貴方には伝えておいたほうが良かったかもしれないですね」
 困ったように笑う古泉を見て、色んな言葉が我先にと溢れてきた。多すぎてこの喉じゃとても言い切れないほどに。
 ……だが、こんな機会を望んでいた。俺は古泉に歩み寄る、そして。
 鈍い音が、部屋に響いた。

27: 2009/03/01(日) 08:55:16.00 ID:zsiC+S0/0
ガッシ、ボカッ!ボクは氏んだ。ふんもっふ(笑)

ごめんノリだけでやった。ちゃんとやる。

>>22
結構前に
ハルヒ「え? もう一度言ってみなさいよ!」(スレタイちょっと曖昧)
ってのと
長門有希の願望
このふたつかなー。後者は結構迷惑かけましたorz
>>23
おはやう
>>25
ごめん、その人じゃないんだ。あれは俺も感動した。
それに感化されて書いたわけじゃないんだけどw

29: 2009/03/01(日) 08:58:40.77 ID:zsiC+S0/0

「……これは、随分ハードなご挨拶ですね」
 痛み出したであろう頬を手で覆いながら、立ち上がる古泉。
「殴られた理由、分かるよな?」
「……ええ」
「なんで、なんで俺たちに何も言わなかった」
 こいつの考えや行動を、表面上は全て納得したかのように振舞っていた。
 だけど俺はそんなに冷酷でもなければ、利口な人間じゃない。友人が一人居なくなって平静を装える程、薄情な人間のつもりもない。
「……」
 答えは返ってこない。苦笑を浮かべ、沈黙する古泉。
「お前がどれだけ悩んだか知らない。苦しんだかも分からない。だがそれは、お前が俺たちに相談しなかったからだ」
「相談……?」
「そうだ。お互いの顔をみるだけで全て伝わるなんて、有り得ないだろう? 何かに悩んでいることは分かったが、所詮そこまでだ」
「せめて、せめて一言。何でもいいんだ。助けろ、とか、協力しろ、とか」
 握った拳は、力が入りすぎて、少し、痛い。

30: 2009/03/01(日) 09:03:04.44 ID:zsiC+S0/0
「しましたよ」
 古泉が口を開く。その顔からは再び笑顔が消え、真剣な、少し怒っているような。
「正確にはしたらしい、ですけどね。長門さんから聞きました。僕は過去数万回のケースに置いて、皆さんに何度も打ち明けたそうです」
「しかしそれでも何も変わらず、行き着く結果は同じでした。ならばせめて、何も知らないほうがいいと、そう思ったのです」
 古泉が話し終えると、俺は自分の考えがどれだけ浅はかで、都合のいいものだったのかを深く後悔した。
 もう何万回も世界をループしてるんだ。そんな多くの選択肢の中で、相談するなんて簡単なことを、試さなかったはずもない。
 俺は、本当の意味で何も知らなかったんだ。
「……すまん」
 謝るしかできなかった。誤解していたこともそうだし、たった一人で、常人では体験することもない恐怖と戦っていたことを、甘く考えていたことも。
「構いませんよ、誤解が解けたのならば何よりです」
 そう告げる古泉は、また笑顔に戻っていた。
「……どうしました?」
「ん? 何がだ?」
「! 何でもありません。……すみませんでした、そして。ありがとうございます」
「なんだ急に」
「いえ、気にしないでください」
 後から聞いた話だが、俺はこの時無意識に涙を流していたらしい。


31: 2009/03/01(日) 09:08:15.42 ID:zsiC+S0/0

「さて、お前が生きていたことは喜ばしいことなんだが、それ以上に大きな問題が残ってる。ここから出る方法はあるか?」
「実は僕もあまり状況が飲み込めていません。これといった案は……。お役に立てず、申し訳ありません」
 とりあえずお互いの誤解が解けた今、やるべきことは唯一つ、閉鎖空間からの脱出。
 と言っても二人とも何も知らないんじゃどうしようもないな。思い浮かぶのは
「例の能力は使えないのか? 一応ここも閉鎖空間なんだろう?」
「それも不可能でした。能力は使えますが、今回は神人もいないようですし使いようがないのです」
「覚えていますか? 以前貴方と涼宮さんがここに閉じ込められた時、僕は機関の仲間の力を借りてやっと侵入できたことを」
「今回は逆のようです。空間内からの力が大きすぎて、僕一人ではとても」
 なるほど。打つ手なしとはこういうことだな。
「……そうですね。僕や貴方がここにいるなら、他のSOS団員も居るかもしれません、まずはそれを探してみませんか?」
 こういう時、こいつがいると心強い。
「そうだな。じゃあ俺は1階から探してみる。古泉は上からあたってくれ」

32: 2009/03/01(日) 09:11:09.33 ID:zsiC+S0/0
「必要無い」
 ふと後ろから声がした。振り返ると同時に扉が開き、長門と朝比奈さんが入ってきた。
「長門! やはりお前もここにいたのか」
 これで一人を除いてSOS団員が揃った。その欠けている一人が居なくてSOS団と呼んでいいのかは分からないが。
「……ハルヒはいないのか?」
「聞いて」
 俺の質問には答えず、長門が話しだす。
「この世界はもうすぐ崩壊する」
 その口から出たのは、絶望を含んだ宣告だった。

34: 2009/03/01(日) 09:16:03.11 ID:zsiC+S0/0
「つまり、この世界に納得できなかった涼宮さんが、新しく作り変えようとしている、と」
「そう」
「そう、ですか。今回も、止められなかったんですね」
 長門さんが語った内容は、僕の予想と寸分違わないものだった。
 僕はあの時、閉鎖空間での戦いの時に、確かに息絶えた。裏づけとして、それから今に至るまでの記憶がすっぽり抜けていることもある。
 にもかかわらずこうして僕は生きている。いや、正確には生き返ったのかも。
 とにかく、これが意味していることは、コンティニュー。
 つまりは、また失敗してしまった、そういうことだ。
「止める方法はないのか、長門」
 彼が必氏に食い下がっている、けど。
「不可能。過去7万8千822回のシークエンスにおいて、打開できたことは一度も無い」
 ……やっぱり。
「おい、それはつまり」
「平面時間に直して1分26秒後、7万8千824回目の世界に空間移動する」

37: 2009/03/01(日) 09:21:17.52 ID:zsiC+S0/0
 7万8千823、時間に直すととてつもない時間を浪費していることになる。
 そしてその数字は、僕たちが同じ間違いをしてきたという、目を背けようが無い歴史。
 今回もまた、幾度と無く繰り返してきた過ちの一欠片となるんだろう。恐らく、次も、そのまた次も。
 同時に、それだけの数僕が氏に至ってきたという事を考えると、少しだけおかしくなった。
 朝比奈さんや、彼が慌てふためいている中で、笑うなんてできないけれど。
 そんな考えに耽っていると、突然大きな地震が起こった。
 この世界の崩壊と、新しい世界の創造が始まったのだろう。
「もうすぐ。あと47秒」
「……古泉」
 覚悟を決めたのか、先程とは違って冷静な面持ちで、彼が僕に声をかけてきた。
「次は、お前も幸せになれる世界だと、いいな」
 そう告げる彼は笑っている。本気で思っているらしい。
「……そうですね」
 僕もお返し。いつもの仮面ではない。友人に想われている、幸せな人間、古泉一樹としての、本当の笑顔で。

39: 2009/03/01(日) 09:25:16.62 ID:zsiC+S0/0
「あと20秒」
 長門さんはこんな状況下でも律儀にカウントしてくれている。その端整な顔立ちは、少しも崩れていない。
 ……ああ、もう一度それが見れただけでも、僕は。
 これ以上に幸せな終わりもないだろうな。
 と、長門さんがカウントをやめ、僕に近づいてきた。
「ごめんなさい。約束、守れなかった」
 唐突に言われ、少し驚きもしたけど、嬉しかった。
「……いいんです。気にしないでください」
 彼女が僕との約束を果たそうと必氏になってくれた、それだけで本当に。
 こんな短時間の内にさっき以上に幸せな気持ちになれるなんて、思ってもみなかった。
 ……こんな終わりも、いいかな。
 ああ、世界が、終わる。

41: 2009/03/01(日) 09:30:39.16 ID:zsiC+S0/0
 夢を見た。いつもの部室で、皆で談笑している夢を。
 俺がいて、朝比奈さんもハルヒも笑っている。長門、は流石に笑ってはいないが、心なしか楽しそうな表情を浮かべている。
 そして、古泉もそこにいて、やはり笑っている。これが俺やハルヒが望んでいた世界なんだ。やっぱり、皆いるほうがいいに決まってるよな。
「……きて」
 ん? 何か声が聞こえたような。
 ……ああそうか、これは夢だからな、きっともう朝で、妹辺りが俺を起こしにでもきたんだろう。
 もう少し、この綺麗な夢を見ていたかったんだけど、な。
「起きて」
 俺は、抑揚の無いその声に現実に引き戻された。
「……長門?」
 目を開けると予想していた朝とは真逆の、暗い世界だった。
 閉鎖空間なのかとも思ったが、色の無い空とは違い、しっかりと黒い。普通に夜のようだった。
 まだはっきりとは働かない頭で、周りを見渡してみた。ここは、学校に続く坂道、か?
 更にそこには、俺を起こした長門と、朝比奈さん、古泉が立っていた。
「……また会ったな」

44: 2009/03/01(日) 09:36:27.07 ID:zsiC+S0/0

「おはようございます。時間軸は夜ですから、今晩はとでも言うべきでしょうか」
「そんなのはいい。それよりどういうことだ」
 起きてから、薄々感じていた違和感があった。それは
「何故記憶が消えてない」
 そう、今までは新しい世界に来るたびにその前の世界での記憶は全て消えていた。
 デジャヴなんかはあったものの、はっきりと残っていることなど、ただの一度もなかったのだ。
「……それについては彼女が説明してくれますよ」
「そうか。それじゃ長門、よろしく頼む」
 長門は、相も変わらず淡々とした口調で、つらつらと話し始めた。


47: 2009/03/01(日) 09:41:15.64 ID:zsiC+S0/0
「涼宮ハルヒの能力は既に限界だった。情報統合思念体はそう判断している」
「限界?」
「力には限りがある。私にも、彼女にも。彼女の力は弱まっていた。だから不完全なままこの世界に」
「記憶の残留もそのせいだと考えられる」
 無限と思えていたこいつらの力にも、そんなものがあったなんて。そうそう都合よくはできてないわけか。
 もっとも、何万回も世界をやり直せるなんて、限界が随分と高かったんだな。
 ……? まてよ、ってことは、まさか。
「長門、ちょっと待て」
「なに?」
「ハルヒの力がもう尽きたのは分かった。だがそれはつまり、もう世界をやりなおせないってことだよな?」
「そう」
「もし、もし古泉がまたこの世界で氏んでしまったら、もう」
 そう。いわばコンティニュー回数が0になったのだ。ということは、一歩間違えればゲームオーバー。
 本当の意味で、最後なのだ。
「その心配はない。彼女の力は消滅した」
「……なに? どういうことだ」
「つまり、母は子供を産み、出産の度に体は弱りますが、時間が経ち回復すれば、また産むことも可能です。しかし、母体が力尽きてしまえば、それもできなくなります」
 古泉が分かりやすいのか分かり辛いのか微妙な例えで説明してくれた。
 つまり、あいつの力が、本当の意味で枯渇したのだ。
「もう閉鎖空間は発生しない。古泉一樹が氏亡する要因が消えた」

49: 2009/03/01(日) 09:44:21.27 ID:zsiC+S0/0
 もう古泉が氏ななくて済む。その事実が堪らなく嬉しかった。
 それに閉鎖空間が無くなれば、機関も当然その意味を失う。もうバイトに急ぐ必要もない。
 普通の高校生になれるのだ。
「そうか……そうか。古泉、よかったな。これで、何の問題もなく、全員幸せになれるんだ」
「……それが、そうでもないんです」
 この後の古泉が告げた言葉で、俺は再び気分を突き落とされることになる。
 どうして? と聞き返すより早く、続きを口にする。
「涼宮さんは、もうこの世界にはいません」
 その瞬間、頭の中が真っ白になった。

51: 2009/03/01(日) 09:49:12.21 ID:zsiC+S0/0
「……は、ははは、冗談はよせよ」
「……僕が、冗談でこんなことをいうと思いますか?」
「嘘だろ……? おい、嘘だよな!」
 そんな馬鹿な。頃しても氏なない、なんてよく言うが、それがそのまま当てはまるような奴だぞ?
 それが、いない、だと?
 信じたくなくて、古泉にすがりついた。
「事実」
「長門……」
「先程、母体が力尽きるという表現をしましたが、その母体こそが、涼宮さん本人なんですよ」
 それじゃなにか。ハルヒが氏んだから、それに伴って能力が消えたってことか。
「そんなのありか……」

56: 2009/03/01(日) 09:55:41.05 ID:zsiC+S0/0
「すいません、僕たちは、もう一つ残酷なことを告げなければいけません」
 もう既に絶望のどん底だった。これ以上なにがあるっていうんだ。
「長門さんの力で、記憶を、消します」
「……何故だ」
「情報統合思念体は、涼宮ハルヒの存在と、それに繋がる情報を全て絶つという結論を出した」
 ハルヒが氏んで、そのうえ忘れる、ってことだろう。
 それじゃあ、古泉と同じ、いや、記憶にも残らない分それより酷いじゃないか。
 おとぎ話ですら、何かしらの救いがあるってのに。
 SOS団で過ごした思い出も全部水の泡。これほど辛いこともない。
 いや、団長が欠けた時点で、SOS団はその名前の意味を失った。そう呼ぶことすらできない。
 現実は、冷たく、鋭く俺たちを切り裂くばかりだった。
「私は、役目を果たさなければならない。分かって」

58: 2009/03/01(日) 09:59:44.20 ID:zsiC+S0/0
「ちょ、ちょっと待ってくれ。少しだけ時間をくれ」
「……了解した。けれど10分後に開始する。情報統合思念体は問題の早期修復を望んでいる」
 とっさの一言を残し、とりあえずその場を離れようとしたが、その僅かな隙にも長門は追い討ちをかけてきた。
「ああ……」

 古泉と長門はこの場からはいなくなった。どうやら二人でどこかに行ったらしい。
 都合がいい。一人で考えたかったことだし、な。

 俺は、ハルヒがいないという事実を受け入れきれずにいた。
 古泉の時だって、自分の中で纏めるまでかなりかかったんだ。それをこの数分でなんて、無理だろう。
 もういない? 今までの記憶をなくす?
 もし、あいつがこの世界にも存在していて、長門たちがそれに気付いてないだけだとしたら。
 ハルヒは俺たちを覚えていても、俺たちが忘れてしまっていたら、どんなに悲しいだろう。
 そんな淡い期待の篭った考えをもってみたが、結局自分を納得させることができなかった。もしかしたら。
 そう思って坂を上り、校庭を見ても、そこに姿があるはずもなく、校舎が寂しげに建っているだけだった。

60: 2009/03/01(日) 10:01:10.29 ID:zsiC+S0/0
>>53
それも知ってます。これはもうちょい前からちょっとずつ製作してたんだけどあのSSに感化されて製作を早めたのは内緒。

62: 2009/03/01(日) 10:05:05.94 ID:zsiC+S0/0
 夜の月に照らされた桜が、風になびいている。どこか寂しげに、けど鮮やかに。
 ああ、あいつは本当に、いなくなったんだな。
 これはきっとハルヒからの最後の贈り物。なんでだろうな、そう思った。
 さっき長門から聞いたが、今日の日付は4月4日。明日は入学式らしいからな。
 門出の日に、花があったほうがいいと、思ってくれたんじゃないだろうか。
 ようやく、ハルヒの氏を少しだけ受け入れられた気がした。
 悲しさもあった。だが、自分がいなくなってまでも、SOS団を守ろうとしたその思いが、嬉しくもあって。
 涙は流さないことにした。今日は、俺たちだけじゃなく、涼宮ハルヒの門出の日だと、思ったから。
 それから俺は、雲一つ無い夜の空を見上げ、一言だけ呟く。
「さよならだ、涼宮ハルヒ」
 視界が、暗くなっていく。長門が情報改変を開始したのだろう。
 薄れいく意識の中で、俺はもう一度繰り返す。
 さよならだ、涼宮ハルヒ。

65: 2009/03/01(日) 10:10:11.73 ID:zsiC+S0/0
 私は彼の希望で情報改変の時間を先延ばしにした。
 そして、その期間のうちに古泉一樹に呼び出され、言うままに後をついていった。
 随分坂を下った気がする。朝比奈みくるや、彼の姿はもう見えない。

 と、古泉一樹が立ち止まり、振り向くなり
「長門さん。新しい約束をしてくれませんか?」
 と、告げた。
「……なに?」
「……僕を、忘れないで欲しいのです。僕も、忘れませんから」
 それは無理な願いだった。私は役目を全うしなければならない。彼の記憶を消すことも、また変えられない行為。
 約束をする意味も無いと思いながらも、何故か私は肯定する。
「了解した」
「ありがとうございます」
 その瞬間の古泉樹の微笑は、少しいつもと違ってみえた。
「……そろそろ開始する」
「わかりました。……ここは、また会いましょうとだけ言っておきます」


 情報操作完了。これでもう、私の役目は終わり。
 全て指示に従い、その通りの行動をした。
 問題は一つもない筈なのに、流れているこの涙は、止まってくれなかった。
 エラー発生。

70: 2009/03/01(日) 10:16:20.77 ID:zsiC+S0/0

「キョンくん起きて!」 
「ぐあ! ……朝からそんな大技を。それが兄に対する仕打ちか」
「だって全然起きないんだもん。今日入学式でしょ、早くしないと遅刻するよー」
 ……なんとも寝覚めの悪い朝だ。鈍い痛みと同伴なんて、お世辞にもいい目覚ましとは言えないぞ。
 わが妹ながら、あの性格はどっからきてんだか。
 さっきも言われたが、今日は高校の入学式の日だった。
 初日から遅刻するわけにはいかんからな、そこは感謝しておこう。他にもっと起こし方があっただろうとは、言わないでおく。
 そんなわけでまだ痛みの残る腹と共に、家を出た。
 学校に続く坂道。これからほぼ毎日通う場所、か。
 桜の花びらが舞っているが、この坂に木はないし、きっと校庭にあるんだろう。
 ……それにしても、綺麗な桜だな。泣きそうになってくるぜ。
 高校生にもなって、桜が綺麗だから泣いてしまいました、なんて恥ずかしいから、あくまで心の中だけだがな。
 ……なんでこんなに切なくなるんだろう。今まで何回も見てきたはずなのに。

74: 2009/03/01(日) 10:22:33.33 ID:zsiC+S0/0
 こうして新しい門出、入学式が始まったわけだが、どうも腑に落ちないことがあった。
 デジャヴっていうんだったか、こういうの。
 初めてのはずの入学式を、もう体験したかのような感覚に陥ったのだ。
 校長の長ったらしい話の最中、俺はずっとそのデジャヴのせいでもやもやしていた。
 ……人生で何回かはあるっていうし、気のせいなのか?
 とりあえず、そう思うことにした。

77: 2009/03/01(日) 10:25:36.90 ID:zsiC+S0/0
 式が終わり、生徒はそれぞれの教室に向かう。
 1年間世話になる教室に入り、指定された席に座った。
 HRが始まり、担任が自己紹介をした後は生徒の番だ。
 俺も、当たり障りのない自己紹介をしておいた。良くも悪くも安定した滑り出し。
 とりあえずスタートを切り、安心して気付いた。
 なんだ、俺の後ろの席が空いてるぞ。まさか、初日から遅刻なのか?

79: 2009/03/01(日) 10:31:35.86 ID:zsiC+S0/0
 そんなことを考えていると、そのまさかだ。廊下から足音が響いてくる。
 その音に、何故か心地よさと懐かしさを覚えている俺がいるのも、変な話なんだが。
 足音の主は教室の扉を勢いよく開くと、教壇へ向かい歩いていく。
 おいおい……なにをするつもりだよ。
 担任の、ええと、岡部だったか? も困ってる様子だ。……そりゃそうだよな。
 その女生徒は、教壇のど真ん中に仁王立ちをすると、こう啖呵を切る。
「自己紹介。東中出身よ。で、悪いけど、普通の人間には興味ないの」
 ……? なんだ? これもデジャヴだ。聞いたことのあるような。
 もうちょっとで思い出せない。何か、大切な。
「この中に未来人、異世界人、超能力者がいたらあたしのところへきなさい」
 女は続けるが、俺はまだ頭につっかえた何かがとれずにいた。
 もう少し、もう少しで何か思い出せそうなんだ。
「それと、そこのキョン。あんたもよ」
 とびきりの笑顔で、そいつは俺を指差す。霧が、晴れていく。
「お、おい。とりあえず名前を言わないか」
 岡部が腫れ物に触るかのように恐る恐るすすめる。
「なによ。……まぁいいわ。私の名前は――」
 そうだ。こいつの名前は――。
『涼宮ハルヒ』

84: 2009/03/01(日) 10:37:11.45 ID:zsiC+S0/0
 入学式を終えた僕は、急いである場所へ向かった。式の最中、思い出した真っ先に会いたい人の元へ。
 文芸部室、と書かれた札が掛かった部屋に入る。ノックを忘れていたが、それほど夢中だった。
 扉を開くと、そこにはやっぱり彼女がいて。いつものように、本を読んでいる。
 彼女は僕に気付くと本を閉じ、立ち上がってこちらに近づいてくる。
「涼宮ハルヒが最後に使った力は強力すぎて、対処しきれなかった。記憶を消せたのも一時的なもの」
「恐らく、彼女の能力が消滅したのもそのせい。彼らも、時間が経てば思い出す」
 そうらしい。機関が涼宮さんを発見できなかったのも、力の消滅のせいで観測しきれなかったというものらしいから。
 涼宮さんが生きていてくれたのは嬉しい。でも今は
「そうですか。そんなことより、また会えて嬉しいですよ、長門さん」
「そう」
 これほど涼宮さんの能力に感謝したことはない。これほど誰かに会いたいと思ったことも。
 それをどう伝えようか迷っていると、長門さんがまた口を開いた。
「約束、守った」
「! ……ええ、ありがとうございます」
「……そして長門さん、再三すみませんが、最後の約束を、していただけないでしょうか」
「約束というか、お願いなんですけどね。……僕と――」
 end


みくる「ふえぇん、私の出番はないんですかぁ?」
古泉「ええ、それはもう完璧なまでにありません」
長門「……貴方は使いづらい」
みくる「ふえぇぇえん、酷いです!」
キョン「やれやれ」

87: 2009/03/01(日) 10:39:17.73 ID:zsiC+S0/0
ということで終わりです。
付き合っていただいてありがとうございます。

よければ感想、ご指摘など頂けたら幸いです><

90: 2009/03/01(日) 10:40:11.42 ID:qro1euVxO
終わったか…

99: 2009/03/01(日) 10:43:13.12 ID:zsiC+S0/0
自分でも思うほど尻下がりでした。
もうなんか設定の説明とかめんどくさくて無理やりねじこんだりもしたからなぁ

100: 2009/03/01(日) 10:43:57.26 ID:pL0OyJTHO
ん…終わりか?

なんでハルヒは生き返ったんだ? あと入学式に戻ってハルヒがキョン分かるって事はハルヒに記憶があるんだろ? じゃあハルヒは自分の能力とかもう自覚してるの?

104: 2009/03/01(日) 10:49:08.32 ID:zsiC+S0/0
>>100
ハルヒは元々世界に居たんだけど能力がなくなったので思念体も機関も観測できなかった。
もしくはし辛くて発見までに時間を要した、という設定です。
多分ハルヒが自覚してるとのうのうと登校なんてできないと思うので、SOS団の記憶だけは引き継いでるという方向で。
というか前の世界を正夢の類だと思ってる。

125: 2009/03/01(日) 11:37:05.98 ID:zsiC+S0/0

 4月5日。私は学校に居た。役目はもう終わった、そう思っていた。
 けど、情報統合思念体から新しい報告があった。
 涼宮ハルヒが生きている。
 理解できなかった。確かに昨日観測した時は、涼宮ハルヒと思われる生命体は存在していなかったのに。
 その疑問に対する回答がこれ。
”能力消滅により、個生命体としての情報が変化。これまでの個体情報には当てはまらない”
 確かにそうだった。私たちは、以前の彼女の情報があるかどうかだけを探し、それで判断していた。
 それが本当ならば、彼女が生きているのも頷ける。
 そして、もう一つの報告があり
”涼宮ハルヒが現在の世界を創造する際、全ての力を使い切り、記憶を繋ぎとめ、結果として力が消滅”
 つまり、私が行った情報改変は、その場しのぎでしかなかったということ。
 願望を実現する能力。もし彼女が
『過ちを繰り返さないために、記憶を引き継ぐ』
 これを願ったのならば、逆らうことはできない。
 弱りかけとはいえ私たちでは太刀打ちできなかったその能力が、破れるはずもなかった。
 ……近いうち、彼らはまた、思い出すことになるだろう。古泉一樹も、また。
 この気持ちを表現できる言葉があるならば、そう。嬉しい。

126: 2009/03/01(日) 11:42:54.65 ID:zsiC+S0/0
 情報統合思念体は私に選択肢を与えた。
 曰く、涼宮ハルヒの能力消滅に伴い、私の役目も終わった。そして今は他に重要視すべき存在は居ない。
 これから私にどうしたいのか。それを問う。
 どうしたい。以前の私なら意思はなかった。言われるままにしていた。
 けれど、いつからだろうか。私はこう願うようになっていた。
『人間として、生きたい』
 情報統合思念体は、私の願いを受け入れてくれた。




 こうして私は今、有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェース。
 宇宙人、長門有希ではなく、一つの有機生命体、人間、長門有希として新しい一歩を踏み出している。
 入学式を終えて、部室に向かうと、まだ誰も来ていなかった。
 記憶が戻っていないのか、単に私が早すぎただけなのか。
 いずれにしても、次に誰かがその扉を開けるとき、私はきっとこうする。
 新しい私の、最初の一歩と、私の居場所を作ってくれた人達に向けて。笑顔を。
 

127: 2009/03/01(日) 11:47:00.26 ID:zsiC+S0/0
終わり。
やっぱいれない方がよかったな。判断は正しかったようで。
それじゃ皆さんまた会う日までー

130: 2009/03/01(日) 12:34:28.09 ID:/m1sxl5BO
乙だぁぁぁぁぁ!!!

引用: キョン「さよならだ、涼宮ハルヒ」