56: ◆kT8UNglHGg 2010/09/26(日) 02:48:33.35 ID:cAgiM8s0
夏休みを前にした、ある休日のことだった。
私は憂と共にガレージの片づけをしていた。
元はと言えば、リビングで使う大きなすだれを探しに来たのだけれど、
これがなかなか見つからずに、捜索ついでに少し片づけをすることになったのだ。
唯「ういー、見つかったー?」
憂「だめ、全然見つからないよ。どこにしまっちゃったかなぁ」
そんなこんなでかれこれ1時間が経つが、
片づけの進行具合はもちろんのこと、肝心のすだれもまだ見つからない。
そろそろ休憩を入れたいなぁ、と憂の背中を見ながら考えていると、
憂「あっ!」
憂がなにか見つけたらしく、がさごそと荷物の下からそいつを引っ張り出してきた。
唯「なぁに、どうしたの憂?」
私はそばに寄って、それが何なのか確認し、ごくりと唾をのんだ。
私たちが子供のころ使っていたビニールプールが、くたくたになって横たわっていた。
28: 2010/09/26(日) 01:54:54.36 ID:cAgiM8s0
出来たけど、2時から投下するひといるのか
あんまり間隔つまってもあれだし、待ってるかな
あんまり間隔つまってもあれだし、待ってるかな
57: 2010/09/26(日) 02:49:47.77 ID:cAgiM8s0
ん? 唾をのんだ? なぜ?
私は自分の反射的な行動に不可解さを感じつつ、ビニールプールを拾い上げる。
唯「こりゃまた懐かしいね」
憂「ほ、ほんとだね。すごい昔のやつだよ……」
答えた憂の声には、どことなく元気がなかった。
憂もきっと片づけで疲れているんだろう。
唯「……そうだ!」
私ははたと思いつくと、ビニールプールを持って庭に出た。
唯「うい、プールで休憩しよ!」
憂「ええっ!?」
驚いて憂が手を開く。
無理もなかろう、私たちは今や高校生。
そして本来ビニールプールなんてものは、年齢が一桁でなければ入ってはいけないものである。
58: 2010/09/26(日) 02:50:52.59 ID:cAgiM8s0
憂「で、でも……そんな」
憂は耳まで赤くして、後ずさりをする。
気持ちは分からなくもないけれど、そこまで恥ずかしがることだろうか。
唯「あー、ダメだね憂は。童心を忘れちゃいけないよ」
私はちっちっと指を振る。
憂「童心……」
唯「そう、童心だよ」
憂が唾といっしょに、なにか心を飲みこんだ。
憂「そうだね、今日は暑いし、汗かいちゃったしね。ここ埃っぽいから汚れちゃったし」
憂「プールとか遠くてなかなか行けないし海なんてもってのほかで、だから童心にかえってビニールプールもいいよね」
唯「うん、いいよいいよ」
私はずらずらと理由を並べあげた憂に笑いかけると、水道にホースを繋いでまずはプールを洗い始めた。
59: 2010/09/26(日) 02:51:42.88 ID:cAgiM8s0
――――
唯「よし!」
私は額に水をかけて汗を流し、かぶりを振って水を飛ばした。
思い出の中に封印されていたビニールプールが私の足元によみがえっている。
憂と二人で冷たい水を掛け合って遊んだ夏の日。あのころに比べると、ずいぶん身体も大きくなった。
私は感慨を覚えつつ、いそいそと家に上がって、合宿のときに持っていった水着に着替えた。
唯「ういー? ヘーイういー! 準備できたよー!」
わざわざ自分の部屋まで着替えに上がってしまった憂を呼び、私は外に飛び出そうとした。
その時、ふと私は立ち止まった。目の端に写った光景に、奇妙な既視感がある。
唯「……?」
窓の向こうに、揺れる水面を光らすビニールプール。
唯「……あぅっ」
見つめていると、突然体の中から甘美な感覚が漏れ出た。
私はぶるぶる首を振り、その感覚をはじき飛ばす。
60: 2010/09/26(日) 02:52:43.06 ID:cAgiM8s0
憂「……お姉ちゃん?」
背後から憂の声がした。
私は正気に戻って振り返る。
唯「おぉ」
なんというなやましバディだろうか。
しかもそれを惜しげもなく披露するような面積の小さい水着。
妹のくせに、姉に恥をかかせようというわけである。
唯「大した度胸じゃん」
憂「そ……そうかもね」
憂はまた顔を赤くして、鼻を掻いた。
唯「……?? まぁ、うん……」
どうにもさっきから、憂の反応がおかしい気がする。
ただの気のせいだろうか。
61: 2010/09/26(日) 02:54:06.17 ID:cAgiM8s0
いや、おかしいと言うなら私の方こそ。
唯「……っん」
外に置いてあるビニールプールを見て、私はまた酔いしれた。
この感覚は、一体何なのだろう。
知っているような気がするのに思い出せない。
唯「行こっか」
私は視線を窓から外すと、憂の手を取った。
素足をぺたぺた鳴らして外に出ると、庭を歩いてプールの水に足を突っ込む。
唯「~~っ」
まだ夏の最盛は来ておらず、気温もそれほど高くない。
水の冷たさに、私はぶるりと震えた。
憂「ど、どうお姉ちゃん?」
憂の声がかかる。
ええい、ここまできて引き下がれるか。
62: 2010/09/26(日) 02:55:18.20 ID:cAgiM8s0
私はゆっくりと足を曲げ、プールの水に浸かった。
入ってしまえばどうというほどでもない。たかが半身、体が冷えてしまうわけでもなかった。
唯「良い感じだね。憂もおいでよ!」
ばしゃばしゃ水を叩いて、私は憂を呼ぶ。
憂は少しためらった後、そろそろと足をプールに入れていく。
憂「つ、つめたくない?」
唯「ない」
じれったくて、私は憂の足を掴んで強く揺さぶった。
憂「きゃっ!」
バランスを崩した憂が私に倒れこんでくる。
私はさっと腕を広げて憂の体を受け止める。ばしゃあ、と水が溢れて、私たちは抱き合うような格好になった。
憂「……もうっ」
憂が抗議の声を上げたが、私の意識は別のことを考えていた。
違う。こっちじゃない。
逆だ。
63: 2010/09/26(日) 02:56:34.10 ID:cAgiM8s0
私は全身に力を入れると、ぐるりと回って憂を下に押し倒した。
さらにプールの水量が減る。
憂「だだ、だめっ」
ようやく憂が慌てて私の腕から逃れようとする。
もう遅い。私は思い出してしまった。
むかーしむかし、このビニールプールであったことを。
膝を水に浸しながら抱いた感情を。
唯「憂……」
憂「やめて、おねえちゃぁんっ」
私は憂の首筋に舌を這わせた。
憂の口からでる言葉は、やや煽られたふうに揺れる。
憂「だめ、だってば……」
抵抗の声が小さくなっていく。
代わりに憂の体が熱くなっていき、私たちの水濡れた体を冷やさないようにしてくれた。
64: 2010/09/26(日) 02:57:40.94 ID:cAgiM8s0
唯「ん、ういっ、うい……」
私の舌は、憂の体と磁石でくっついているかのように離れず、かつ自在に滑っていく。
私は水着のふちから舌を差し込み、憂の乳Oを舐めようと懸命に動かした。
憂「あっ、いや……んううぅ……」
けれど、私の舌先に突起の感触は訪れない。
舌裏に感じる、憂の肌とは違う感触から思うに、ギリギリで届いていないのだろう。
憂「ん、は、くぅ……やめて、そんなの……」
憂が苦しそうにうめく。
私だって憂を気持ちよくしてあげたいのに、もう少しで舌が届かない。
唯「……うい」
私は一旦、水着との隙間から舌を抜くと、憂の名前を呼んだ。
憂「うん……?」
唯「家の中でなら、脱がしていいよね?」
65: 2010/09/26(日) 02:59:04.18 ID:cAgiM8s0
――――
私はリビングで早速憂を押し倒した。
あの日もこんなオーラルだったな、と私は思い出していた。
憂の視線が窓の外を向く。
外を気にしているのではなく、ビニールプールを見つめている。
唯「海に行きたい、って憂が言ったんだよね」
こくりと憂が頷く。
唯「だけど私たちだけじゃ無理だから、ビニールプールを用意して遊んでた」
唯「そしたら……変なはしゃぎ方しちゃったんだよね」
私もビニールプールを見た。
そこにあるべき海は、あの日と違い水たまりのような浅さであった。
66: 2010/09/26(日) 03:00:28.18 ID:cAgiM8s0
唯「そうして、いつの間にか家に戻って……海を見ながらしたんだったね」
唯「……忘れてたよ」
私は息を吐いて、憂の鎖骨にキスをする。
憂「そりゃあ……忘れるようにしてたもん」
憂「覚えていたら、こういうふうになっちゃうから」
憂は首をもたげて、私の耳をぺろりとなめた。
憂「……姉妹なのに」
唯「そうだね。でも……」
憂「でもじゃないよ」
私が言いかけた言葉を、憂は厳しい口調で止めた。
憂「……また、忘れなきゃだめ。こんなのいけないから」
唯「……」
67: 2010/09/26(日) 03:02:15.69 ID:cAgiM8s0
唯「ふぅーっ……」
私は、涙が出そうになるのを懸命にこらえた。
憂「……」
憂が視線を惑わせた。
私の体を眺めて、結局はくちびるにキスをする。
憂「ん……」
切なげな声をあげて唇を離した憂の頭を、だまって撫でてあげた。
憂は深呼吸をした。
憂「けど、ね……」
唯「うん?」
重たい口調で、憂は言った。
憂「私は、ちゃんと覚えてるから……」
68: 2010/09/26(日) 03:03:32.98 ID:cAgiM8s0
憂「いつまたこんなことがあっても、びっくりしないように……」
憂「急に昔のあやまちを思い出して、苦しくならないように……」
憂「私がちゃんと覚えておくから、お姉ちゃんは忘れてね」
唯「うい……?」
それって、と言おうとした私のくちびるを憂が塞ぐ。
憂「ん……お姉ちゃんは何も考えなくていいから」
憂「ことが終わったら、ちゃんと忘れるんだよ」
唯「……」
私は頷けなかった。
こんなことを言われてしまって、もはや忘れられる自信はない。
唯「憂……これから嘘をひとつだけ言うから、何も言わずに信じてくれないかな」
憂「……うん、いいよ」
憂の吐息が熱くなったのがわかった。
唯「今後……こういうことがあっても、ちゃんと忘れるって約束する」
69: 2010/09/26(日) 03:04:48.71 ID:cAgiM8s0
こくりと憂は頷いた。
憂「約束だね」
唯「それじゃあ……」
嘘はひとつだけ。
私は深く息を吸うと、憂の瞳を見つめた。
唯「好きだよ、憂」
憂「……私もだよ、お姉ちゃん」
私たちは笑い合い、ふと、窓の外を見た。
ビニールプールに潮が満ちているような気がした。
おしまい
引用: 唯「同じ窓から見てた海」
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