74: ◆ZoaEhxgi7I 2010/09/26(日) 04:55:34.57 ID:LBXmWLk0
そいじゃ5時からの行きます!

<諸注意>

※作中時間として唯たちが1年で、夏合宿~学園祭ライブの話です。

※けいおん!第1巻を手に取り、一緒に読んでみるのを奨励。

※梓はこの段階では未登場なので出ません。ファンの方ご了承ください。

※ちょっとだけ”ハレルヤオーバードライブ!”というバンド漫画とクロスさせてます。

※「」は肉声。『』はパソコンやマイクからの音・音声とします。


※そんじゃ、テンションバリバリで投下してくぜぃ! 


  ”夜 露 疾 駈 !”

75: 2010/09/26(日) 04:57:15.56 ID:LBXmWLk0
[前半]

<舞台は紬の別荘。唯たち初めての合宿初日、その夜まで遡る>


白い湯気とバスタオルを体にまとい、

4人の乙女が露天風呂から脱衣所までやってきた。


澪「ふー。いいお湯だったな」

紬「この別荘は広くはないけれど、ここの露天風呂は好きなのよね」

律「おーい、唯行くぞ~。キンキンに冷えたフルーツ牛乳だぁ!」


ぽ~い!


唯「はわわわわわ」


きゃっち!


律「ほら、澪もムギもいくぞ~」

澪「コラ、投げるな!」

紬「うふふ、いただきます」


律「そいじゃァ!」

キュポポン×4

グビッグビッグビッグビっ×4

ぷはぁー×4
高3!
76: 2010/09/26(日) 04:58:26.78 ID:LBXmWLk0

律「ぅくーっ! たまらん!」

澪「律、その言い方おっさん臭いぞ」

唯「お風呂のあとの牛乳って、最高のひと時だねぇ~」

紬「ええ、そうね~」


時計は午後10時を少し回ったくらい。
あたりはとても静かで、遠くでセミの鳴き声が聞こえてくるくらいだ。
4人はパジャマに着替え、リビングにやってきた。


澪「よし! 明日は朝から練習するからもう寝るぞ」

律「ええええええええええええええええええええ!」

澪「な、なんだよ律」

律「澪、お前は私をおっさん臭いといったけど、お前はおばあちゃんだなっ」

澪「な、なんだってー!」

律「だってー! まだ寝るの早すぎるぅ~! もっと遊ぼうぜぇ~。なーなーなー!」

ジタバタジタバタ

77: 2010/09/26(日) 04:59:39.77 ID:LBXmWLk0

唯「うん。みんなで大富豪しようよ。大富豪!」

律「いいねぇ。あたしトランプ持ってくるよ」

澪「ええい! やめろ! やめろぉ! もう寝て明日に備えるのっ!」

唯「ぶーぷー」

紬「私も、寝るには少し早い気もするわぁ」

澪「ちょ、ムギまで!」

律「そうそう。唯もギター弾けるようになってんだし、遊んでても大丈夫さ」

78: 2010/09/26(日) 05:01:37.52 ID:LBXmWLk0

澪「確かに唯のギターもいい感じだけど、でももっと上手くなるよう練習する方がいいだろ!」

律「この~。まじめで堅物のいけいけ頑固ちゃんめ~」


ぐぬぬぬぬぬぬ……


唯「どうしよう、ムギちゃん?」

紬「それじゃぁ中間を取ってこうしない」

律&澪「中間?」


紬「他のバンドの演奏を見てみるの。その、インターネットの動画サイトから」

唯「ほうほう」

紬「そしたら演奏時の参考になるし、一通り見てたらいい時間になるんじゃない」

律「おお、それはいい」

澪「私もそれなら賛成。上手い人たちのを見れば勉強になることも多いだろうしな」

79: 2010/09/26(日) 05:02:37.69 ID:LBXmWLk0

彼女らは別荘にある、大きめのパソコンに電源を入れる。

パソコンの名前はWindows。画面の枠が”窓”に見えるため、そう名づけられた。


紬「ちゃんと、ネット回線も繋がってるでしょう」

律「あぁ、回線速度も悪くない。ぬるぬる動画が見れそうだ」

唯「”ぬるぬる動画”ってなんだか卑猥な響き///」

澪「よーつべあたりにあるかな? 律、検索してみてよ」

律「おっけー」

カチカチッ

80: 2010/09/26(日) 05:03:43.77 ID:LBXmWLk0

カチカチッ

律「さーて、動画サイトを開いたものの、」

紬「そうねぇ。どんなバンドを見てみる?」


唯「はいはい! 私<アニメ、はるみねーしょん>の第1話見たーい」

澪「バンドの演奏を見るんだろうが!」

唯「じゃぁブルーハーツ! もしくはRCセクションの!」

澪「し、渋い」


紬「でもあんまりレベルの高い人たちのを見ても、参考にできないんじゃぁ」

澪「そうだな……いや、でも色々と見てみようよ」

律「じゃぁ”邦楽”と適当なワードで検索して、いくつかリンクを踏んでみるか」

カチカチッ

81: 2010/09/26(日) 05:04:58.03 ID:LBXmWLk0

唯「へー、音楽関連の動画って結構あるんだね」

律「めぼしそうな動画を、片っ端から見てくか」

澪「見終わったら、みんなで感想を言い合おう」

紬「はい。そういえばお茶とかは用意します?」


唯澪律「ちょーだーい」×3

ポクポクポク……

律「よし、お茶も手に入れたことだし、まず1組目再生」カチッ


タンタタンタタンタタタタ タンタタンタタンタタタタ♪

(略)

ジジャーン!


唯「こーいうのってカントリー調って言うんだよね」

紬「ほんとに『美しい日』って感じな、海が似合う曲ね」

律「バンド名のイメージと音が、まさしくあの冒険小説の主人公だな…」

澪「普通すぎて逆に新鮮。よかったよ」

82: 2010/09/26(日) 05:06:13.62 ID:LBXmWLk0

律「それじゃぁ2組目!」カチッ


ジャンデェジャンデジャンデ、ジャンデジャンデジャン~。♪

(略)

ジャーン!


唯「これは若さが全力疾走い! まさに青春!」

紬「そうね~。紙飛行に乗ってどこまでも飛んできたくなる曲ね」

律「なんかこう。キラリ輝く”閃光”ってかんじだな」

澪「文化祭っぽさに親近感が湧くなぁ」



律「それじゃぁ3組目!」カチッ

チャンチャッチャッチャチャ、チャンッチャッチャチャー♪、チャンチャッチャッチャチャ、チャンチャチャッチャ~

(略)

セーーーーーーー…

唯「この5人って仲良くバンドしてそうでいいね~」

紬「歌詞も中高生の心情をキュッと掴んでるわ~」

律「そういえばこの曲のタイトルと同じ、ジャンプの主人公いなかった?」

澪「いないよ。でもそれってスラムダンクの主人公のことだよな」

83: 2010/09/26(日) 05:07:21.82 ID:LBXmWLk0

律「それじゃぁ4組目!」カチッ

ホワホワホワワワン ホワホワホワワワン ホワホワホワワワン ホワホワホワワワン アハン♪

(略)

ジャン♪

唯「なんで味噌汁?」

紬「さぁ?」

律「みお~。ブッシュってどーゆー意味ぃ?」

澪「それはぁ、つまりちん毛って意味っ! って何言わせるんだよーーーーーーっ///」



律「それじゃぁ5組目!」カチッ

―――
――

84: 2010/09/26(日) 05:08:27.28 ID:LBXmWLk0

唯「みんなで一緒に曲を聞いてくと楽しいねぇ~」

律「でも私たちのバンドも参考になる。ってのはなかなかないな」

澪「私たちの感想も、演奏じゃなく曲の方だったしな。いまさらだけど」

紬「今度は高校生のバンドでも聞いてみない?」



律「高校生のバンド……そういえば気になる噂があんだけど」

唯「んー。どんなどんな?」

律「あぁ。なんでも、とあるライブハウスの出来事なんだが」

紬「ふむふむ」

律「コスプレでステージに上がった、高校生バンドのギタリストがいたらしい」

澪「それはまぁ、珍しくもなくないか?」

85: 2010/09/26(日) 05:10:01.07 ID:LBXmWLk0

律「いや、そのコスプレ衣装が問題で、”ウマ”のコスプレなんだよ」

澪「……”ウマ”のコスプレって、さすがにそれは」

紬「……どんなのかしら?」

唯「本当ならちょっと見てみたいね」


律「もしかしたら、よーつべ内にあるかも。検索していいかな」

唯「どうぞどうぞ」

律「えーっと、確かあのバンドの名前は……」






律「”メタルりかちゃん”だ」

カチカチッ

86: 2010/09/26(日) 05:11:37.54 ID:LBXmWLk0

律「おっ。”メタルりかちゃん”で検索したら1件ヒットした。ライブ映像みたいなのがある」

唯「折角だから見てみようよ」

澪「うん。律、再生よろしく」

律「おっけー。それじゃぁポチットな」


カチッ


――パソコンの画面から、映像が流れ出す。


ワーワー!!

ボーカル『今日はこのバンド、”メタルりかちゃん”のライブへようこそぉ!』

観客『ワー』


紬「けっこうお客さん入ってるわね」


ギタリスト『声が小せぇもう一回ィィィィィ!』

観客『ワーワーワーワーワーワ~~~~~~~~~~~~~~~~!』


澪「この人の……なにこの衣装? 海賊? バイキング??」


ベーシスト『準備できたよ』

ドラムス『こっちも~』

ボーカル『う~し』

87: 2010/09/26(日) 05:12:38.31 ID:LBXmWLk0


唯「どんな演奏するんだろう?」

律「”メタルりかちゃん”だからな。メタルだろ」


ボーカル『それじゃぁ一曲目! 毎度おなじみ”メタルりかちゃんのテーマ”から』

観客『わ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~lっ!』


澪「みんなテンション高いなー」

紬「楽しそうでいいわね~」









ドラムス『それじゃいくよ~』

ドラムス『イチ!! ニ!! サン!! シッ!!』カッカッ



 カッ♪





唯澪律紬「おお~~~~っ!」

88: 2010/09/26(日) 05:14:28.68 ID:LBXmWLk0

ギター『ギュァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』

ドラム『┣″┣¨┣″┣¨┣″┣¨┣″┣¨┣″┣¨┣″┣¨┣″┣¨┣″┣¨┣″┣¨ン!』

ベース『ガガガガガガガ!ガガガガガガ!がががががが!ガガガガガガ!ガガガガ╋┓″ッ!』

ボーカル『╋┓″ゴオッアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』



唯澪律紬「す、すごい……ヘビーメタル!!」



唯(大空へ昇っていく、ドラゴンみたいな音を出す、すごいバカテクギタリスト!)

律(めちゃめちゃ叩いているのに、決して崩れない、百獣の王みたいな熟練ドラマー!)

澪(巨大な猛毒コブラのように、存在感のある、地面を這っていく重量ベース!)

紬(他の音圧に負けない、かいじゅうの咆哮のような力あるボーカル!)



唯澪律紬(これで私たちと同じ高校生!?)


観客『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』


 ジャーン♪

ワーワー



唯澪律紬「……」

89: 2010/09/26(日) 05:15:30.69 ID:LBXmWLk0

唯「( ゚д゚)ポカーン」

澪「( ゚д゚)ポカーン」

律「( ゚д゚)ポカーン」

紬「( ゚д゚)ポカーン」


唯「( ゚д゚)……」

澪「( ゚д゚)……」

律「( ゚д゚)……」

紬「( ゚д゚)……」





澪「も、もっかい見てみよう」

律「う、うん」

90: 2010/09/26(日) 05:16:35.62 ID:LBXmWLk0


ギター『ギュァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』

ドラム『┣″┣¨┣″┣¨┣″┣¨┣″┣¨┣″┣¨┣″┣¨┣″┣¨┣″┣¨┣″┣¨ン!』

ベース『ガガガガガガガ!ガガガガガガ!がががががが!ガガガガガガ!ガガガガ╋┓″ッ!』

ボーカル『╋┓″ゴオッアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』

―――
――



唯「……すごいね」

紬「ええ」


律(この人たち、すげぇカッコイイけれど、)

澪(このレベルの演奏をするのは、今の私たちには無理だなぁ……)

紬(私たちも一生懸命だけど、それでもこの人と比べると、まだまだって感じねぇ~)

唯(……)

91: 2010/09/26(日) 05:18:26.19 ID:LBXmWLk0

唯「……でも、この人たちの音楽も凄いけどさ、」

律「おお?」


唯「観客の人たち、すっごい盛り上がってるよね」


観客『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』


唯「この歓声、まるで津波のような勢いがあってさ」

澪「うん」


唯「もうみんな、ハイテンションで、”感動の海”に飲まれまくってます、って感じだよね」

紬「そんな感じね。本当に”感動の海”、だわ」

92: 2010/09/26(日) 05:19:59.52 ID:LBXmWLk0

唯「私たちの演奏でも、こんな、”感動の海”は作り出せるかな……」


澪律紬「……」


唯「みんなで同じ、モニターを見てるだけじゃなく、私は、向こう側の”海”に触れたいっ!」


澪律紬「……」


唯「こんな、観客を魅了するようなライブを、学園祭でっ!」





唯「 ねぇみんな! やったろうじゃんっ!! 」

93: 2010/09/26(日) 05:21:59.89 ID:LBXmWLk0

澪「……そうだよ! やってやろうよ! 唯!!」

紬「”メタルりかちゃん”さん達には及ばないかもだけど、がんばろう!」

律「おおし! その意気やよし! うん! 軽音部しゅーごー!」

唯澪紬「うおー!」×3
がしっ


――4人は円陣を組んだ。


律「私たち4人はさっき、”メタルりかちゃん”が創った”感動の海”をモニター越しに見た」

律「今度の学祭ライブでも、同じようにモニターから…」


律「…いや、<同じ窓から見てた海> を、私たちもこの手で作りだそう!」


澪「ちょい待ち、なんだその言い回しは」

律「詩的表現だよ。<みんなで一緒に モニター越しで 見ていた感動>よりかっこいいじゃん」


律「とにかく、負けてられないぜぇぇぇぇ!」


唯「うん!」

紬「やろう!」

澪「やってやろう!」

94: 2010/09/26(日) 05:22:50.80 ID:LBXmWLk0

律「桜ヶ丘高校軽音部~ファイトォォォォ!」

唯澪紬「おー!」×3





律「じゃぁもう寝ようか」

唯澪紬「
        ∧∧
       ヽ(・ω・)/   ズコー
      \(.\ ノ
    、ハ,,、  ̄
                   」

澪「なんでだよ!」

律「だってもう夜中2時ジャン。今夜は寝よう。んで早起きして練習!」

紬「そうね。さすがにもう寝なきゃ」

唯「早起きして練習だねっ」

澪「…………わかったよ。じゃぁおやすみ~!」

―――
――

95: 2010/09/26(日) 05:23:48.38 ID:LBXmWLk0

<翌朝>

律「さてさて、」

律「まぁ私が一番に早起きしたわけですが……」


紬「zzz」

唯「うぃ~。もう食べられないよ~。うへへへ~」

澪「ぅーん」


律「おーい。朝だぞー。澪はパンツ丸出しだと風邪ひくぞー」

澪「むにゃむにゃ……」


律「とりあえず写真撮っておこ」

パシャッ

96: 2010/09/26(日) 05:25:27.57 ID:LBXmWLk0
[後半]


気持ちを新たにした夏合宿も終わり、夏が終わり、2学期となる。



その間も”同じ窓から見てた海を、この手で創り出す”

これを合言葉に、彼女たちはライブに向けて練習をがんばった。


いろいろと細かい所も詰め、ライブではオリジナルの曲をやることに。

ボーカルは唯が、ギターも担当しながらやることになったのだが……




唯「ギター弾きながら一緒に歌、歌えない…orz」

さわ子「仕方ないなぁ…」

さわ子「先生が一週間。つきっきりで特訓してあげるわ!!」

唯「先生っ!!」


さわ子「それじゃまず歯ギターのやり方は…」

唯「それはいいです。」

97: 2010/09/26(日) 05:26:39.13 ID:LBXmWLk0

さわ子「さて、ボケはここまでよ。これからは血のにじむような特訓の開始よ!」

唯「望むところです! さわちゃん師匠!」


さわ子「よろしい! とりあえず、ギターでも歌でも大事なのは、質のいい反復練習よ」

唯「おっすです! 師匠!!」


さわ子「時間はあるわ。最初は本当にゆっくりのペースでいいから。丁寧に歌とギターを弾くの」

さわ子「そして慣れてきたら一段階ペースを上げてみる。難しいところでは決してごまかさず、」

さわ子「できるまで何度も何度も反復練習をする。とにかく頭でなく、指に、喉に、体に覚えこますの」

さわ子「それだけで全然違った世界が見えるようになるわ」

唯「はい! 頑張ります!」


ジャァアァアアアアン!

唯「君を見てると~」

98: 2010/09/26(日) 05:28:20.13 ID:LBXmWLk0
―――
――


……そうして、1日目の特訓が終わった。

さわ子「よし! 今日はこれまで」

唯「はい! ありがとうございました」


さわ子「それにしても平沢さん。気合入ってるわねー。何かあったの?」

唯「みんなと約束したんです。”同じ窓から見てた海”を作り出そうって」

さわ子「う~ん? どういうこと」

唯「ようするに、見に来てくれた人を、興奮の渦に巻き込むようにしたいんです」

さわ子「なるほど。その心意気やよし! のこり6日も頑張りましょう」

唯「はい!」


――そうしてさわ子の教えを忠実に守り、ハイペースで頑張った結果……

99: 2010/09/26(日) 05:34:07.95 ID:LBXmWLk0
<1週間後>

さわ子「みんな! 待たせたわね!!」

さわ子「さぁ唯ちゃんっ!!」

唯「……」コクッ


  ギャイイィンッ


澪「おおーーっ!! ギター上達してる!!」

紬「わーっ」


唯「君゛を゛見゛て゛る゛と゛い゛つ゛も゛ハ゛ート゛ドキ゛ドキ゛~」


律澪紬「
        ∧∧
       ヽ(・ω・)/   ズコー
      \(.\ ノ
    、ハ,,、  ̄
                 」



さわ子「いやー。練習させすぎちゃった☆」

唯「こ゛え゛枯゛れ゛ち゛ゃ゛っ゛た゛☆」

律「だめじゃん!!」

100: 2010/09/26(日) 05:35:41.73 ID:LBXmWLk0

――最終的にボーカルは澪になった。


このアクシデントがあってからも、4人は最後の追い込みを頑張った。

すこしでもいいものができるように。

すこしでも、あの動画の、演奏力に近づけるように。


4人とも、観客の感動の”海”を、

自分たちの手で創りだすっていう気持ちは、ずっと一緒だったから。










――そして本番

101: 2010/09/26(日) 05:36:46.29 ID:LBXmWLk0

律「よーし。みんないくぞーっ!!」

唯&紬「おーっ!!」

澪「……」ブルブル


アナウンス『続きましては、軽音部によるライブです。皆さん盛大な拍手を』



  わああああああああああああああああああああああああおああああああああああっ


澪(だ…だめだっ…!!)

唯「澪ちゃんっ!!」





唯「私、澪ちゃんが頑張って練習してたの知ってるから!」

澪「……」

唯「絶対大丈夫だよ! がんばろう!」

澪(……)

102: 2010/09/26(日) 05:37:55.03 ID:LBXmWLk0

澪(……そうだよな)


澪(”海”を作ろうって、約束したもんな。それでみんな頑張ってきた)


澪(だったら、怖気づいてなんていられないじゃないか!)


澪(……律、行けるよ!)


律(よし! ムギに唯。準備はいいか)


紬(おっけーよ!)

唯(ばっちこいだよ!)


律「……」

律「1・2・3・4!!」カッカツ


  ジャラァァン♪


澪「きみを見てると、いつもハートドキドキっ!」

  わああああああああああっ

103: 2010/09/26(日) 05:39:07.68 ID:LBXmWLk0

唯(おおっ、始まった)


唯(練習通りに、私は指を動かしていく。と同時に色々な音が聞こえだす!)


唯(……澪ちゃんの歌声が、少し震えてるのが分かる!)


唯(そして律ちゃんのドラムが、少し走り出した!)


唯(澪ちゃんはそれに気づいて、リズムキープと声音をしっかり保った!)


唯(ムギちゃんはあくまで全体が自然になるように、キーボードを弾いている!)


唯(わたしはわたしの役目を果たすため、全力でギターを演奏し続ける!)

104: 2010/09/26(日) 05:41:49.49 ID:LBXmWLk0

唯(大舞台なのに不思議と緊張はない。次はすこし難しいBメロ)


唯(逆光で分かりにくいけど、観客の何人かが、手拍子しているのが分かる)


唯(アンプの音が割れて、雑音が入ったのが聞こえた。何故だろう。演奏に集中しないといけないのに、)


唯(むしろ時間の流れがゆっくり感じられて、全部の音が見えているように流れて、耳から入ってくる!)


唯(澪ちゃんの、りっちゃんの、ムギちゃんのリズムが、体の中に入っていって、)


唯(それに合わせて指を、どう動かせばいいか、わかる。というより自然と指が動いてく!!)


唯(何度も何度も何度も何度も、練習してきたせいかな?)


唯(少しアドリブを入れてみると、澪ちゃんが驚いた。ごめんごめん)

105: 2010/09/26(日) 05:43:23.70 ID:LBXmWLk0

唯(見えないけど、後ろのりっちゃんが、スポットライトで熱そうにしている)


唯(左側にいるムギちゃんが、楽しそうに笑い出そうとしている)


唯(……いつの間にか、他人の感情まで、私の耳に、体の中に流れ込んできてる)


唯(なんだか、私の感覚が研ぎ澄まされていくのを感じる)


唯(……1番も終わりだ。声が枯れてるけど、コーラスは歌う)


澪「ふわふわたーぁいむ!!」

コーラス「ふわふわたーぁいむ!」

澪「ふわふわたーぁいむ!!」

コーラス「ふわふわたーぁいむ!」たーいむ」


唯(2回目のコーラスで、5人ほどの観客が歌っていた)

唯(2番のコーラスでは、客席の半分が歌うのが、この時点でなんとなくわかった)

106: 2010/09/26(日) 05:45:07.91 ID:LBXmWLk0

唯(そうして歌は2番に入る。私たちも観客も、だんだんテンションが上がってゆく)


唯(私の指は相変わらず、オートマチックで動いていく。テンションも指も止まれない!)


唯(客席の半分が立ち上がって、私たちに合わせて手拍子をしてくれてる)


唯(私の、澪ちゃんの、りっちゃんの、ムギちゃんのリズムが、体の中に入っていって、)


唯(そこに客席からの手拍子が混じって、体の中で大渦を巻いて、私の体からはみ出たその渦が、)


唯(私のギターの音に乗って、この体育館中を、この空間を駆けていく!)



唯(1人1人の音が、その渦に巻き込まれ、その渦がますます大きくなる!!)

107: 2010/09/26(日) 05:47:21.86 ID:LBXmWLk0

唯(気づけば、この体育館中で奏でられた、私のギターが、澪ちゃんの声とベースが、)


唯(りっちゃんのドラムが、ムギちゃんのキーボードが、観客の手拍子と声と息づかいと心音までもが、)


唯(一つに合わさって、巨大な一体感が生まれてく……そうして、)





唯(合宿のとき、モニター越しでしか見たことのなかった、)


唯(あの時創り出したいと思っていた、まるで本物みたいな、歓声の津波が起きて!)


唯(私たち4人が一緒に手を伸ばしてた、”同じ窓から見てた海”が、目の前に現れた!!!)



観客「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああー」


108: 2010/09/26(日) 05:48:10.16 ID:LBXmWLk0


唯(私たちの演奏は、まだまだ下手だ)


唯(そうだとしても、みんなが、世界が一つになってゆく感覚が、ここにあった)


唯(頑張って練習してよかった。これが、バンド……。音楽!)


唯(まるで魔法みたいだ……この楽しさは、やめられないっ!)



唯(演奏の途中だけど、無性に叫び出したくなってきた)



唯「けいおん大好きーーーーーーーーーーーーーぃ!」

109: 2010/09/26(日) 05:48:38.02 ID:LBXmWLk0

――そうして、軽音部4人の演奏は終わった。


澪「みんな、ありがとーっ!!」

律(これで澪も恥ずかしがり克服できそうだな)


ガッ


びたっ

澪「きゃんっ!!」

澪「あいたたた……」


ざわ……ざわ…………


澪「え……?」



  いやあああああああああああああああああぁぁぁ...




――こうして今年の文化祭は幕を閉じました。

<終わり>

110: 2010/09/26(日) 05:53:54.90 ID:LBXmWLk0
解説・補足

いかがだったでしょうか?けいおんSSを書き終えたのは初めてです。
とにかく、なんとなくでもいいから熱い話を書いてみたかった!

(あと同じトリップで別作品のSSを書いとります。見かけたら援護よろしくm(_ _)m)


「同じ窓から見てた海」

=「メインの4人が一緒に、パソコンのモニター越しに見てた、ライブ客の感動(一体感)」

そしてそれを手に入れるために頑張ってた。という話です。


”窓”や”海”の解釈は強引です。反省はするが後悔はしていない。


ちなみに、作中で出てきた”メタルりかちゃん”ってのは

『ハレルヤオーバードライブ!』という青春ラブコメ音楽漫画(?)に登場するバンドです。

その漫画内では主人公の先輩・道しるべ役なので、このSSでもその役目をやってもらいました。

またこの漫画、楽器の演奏描写がカッコよく、音楽を通して結ばれる絆、ってのは

けいおん!と通じる部分があるので機会があれば一読おすすめ。


あと前半で唯たちが見てたのは
HUCKLEBERRY FINNとGalileo GalileiとWhiteberryとRADWIMPSのPV(?)です。


そいじゃこんな感じでしゅーりょー!  次の人っ!

  (=゚ω゚)ノ タッチ! 

111: 2010/09/26(日) 06:08:30.36 ID:jk2WkkSO
お疲れ~

ハレルヤオーバードライブも読んでみるわ

引用: 唯「同じ窓から見てた海」