1: 2012/11/05(月) 21:49:08.22 ID:8H7sn3WR0
勇者「正義のために戦おう」の続編です。

勇者「正義の為に戦おう」【1】
勇者「正義の為に戦おう」【2】
勇者「正義の為に戦おう」【3】

簡単なあらすじ

正義のために戦う心の弱い勇者は自分が信じる正義を探すため旅をしていた。
その中で多くの敵に負け、やられ、罵倒されながら少しずつ成長していく。
そんな時魔王が人間を滅ぼそうとしているのを知り、それを止めようと魔王と戦うも敗北。
人間と魔物との全面戦争が始まる。
最初に狙われた和の町で防衛戦をするも肉体的にも精神的にも巨人にボコられ負ける。
一方で勇者の仲間の魔法使いには不穏な気配が近寄っていた。



2: 2012/11/05(月) 21:49:57.08 ID:8H7sn3WR0
登場人物紹介


勇者   男

主人公。
正義の為に戦っているが芯がぶれやすく(というか芯がほとんど無い)また壊れやすい弱点がある。
剣の腕前は達人級だが魔力が上手く使いこなせていないので今一つ。
あと心の弱さが剣にも出ている。
童O。


正義  刀

勇者の刀。
人間時の姿は銀髪の美少女。
勇者の最大の理解者。
読み方はせいぎ。
まさよしじゃない。


魔法使い   女

勇者の仲間。
魔法が使えない魔法使い。
今は呪いが使える。
ネガティブで自分に自信が無いタイプで傷つきやすい。
スタイルはいい。


鍛冶屋   男

勇者の仲間。
勇者の事はそこそこ尊敬している。
魔法使いの事をよく気にかけている。
巨O好き。
魔法使いに勝ったらおっOいを揉む約束をしている。
Lv1魔王とワンルーム勇者 11巻 (FUZコミックス)
3: 2012/11/05(月) 21:51:19.84 ID:8H7sn3WR0
英雄   女

勇者と同じく人格を持つ剣の使い手。
火を操る。
自分の仲間の為に剣を振るい、その他がどうなろうと気にはしない。
魔王には半端者と呼ばれている。
読み方はえいゆう。


勝利   剣

英雄の剣。
人間時は美形の金髪。
性格は多分作中で一番まとも。


逃亡者  男

勇者と同じく人格を持つ剣の使い手。
性格は適当でマイペース。
一人の大切な人の為に全てを失う覚悟がある。
剣の腕前は化け物級で魔力の使い方もうまい。
ただ戦闘中に気を失うのが弱点。
白髪。
貧O好き。
非童O。


信義  剣

逃亡者の剣。
人間時の姿は褐色に金髪の美女。
露出の多い踊り子の様な服装をしている。
ただ外見とは裏腹に献身的で逃亡者の事を気遣ったりもしている。
スタイルはめちゃくちゃいい。
読み方はしんぎ。


武人  男

勇者と同じく人格を持つ剣の使い手。
強さを求め孤高に生きる事を望んでいる。
リーダーシップがある。
頭で想像した事を具現化できる。
戦闘は羽が生えたり怪狼になったり這い寄る混沌になったりとやりたい放題。
他にも見せてない技がたくさんある。

4: 2012/11/05(月) 21:53:38.01 ID:8H7sn3WR0
真理   剣

武人の剣。
人間の時の姿は短い黒髪の少年。
古風な話し方をする。
剣らしく強さを求めている。


姫    女

逃亡者の大事な人。
父親が殺されて以来おかしくなっている。
普通なら殺されてもよかったがとある理由で生かされていた。
今は逃亡者に助け出されて一緒に行動している。
非処O。
珍しくか弱い女性。
性格は謙虚でおしとやか。
あとおっOいも謙虚。
不幸属性。
数少ないか弱い系ヒロイン。


魔王    女

ラスボ……ヒロイン。
ストレートロングの長い髪に切り揃えられた前髪のお嬢様系美少女。
能力は不明。
魔王らしく人間を殺そうとしている。
剣の腕前は怪物級。
一個大隊くらいなら一人で潰せる。
多分一番強いヒロイン。


老人   男

竜の山に住むおじいさん。
RPGで言う何処に行くのか教えてくれる占い師的なポジション。
呪い師で人生経験豊富。



次から本編です。

5: 2012/11/05(月) 21:56:23.61 ID:8H7sn3WR0
~~~~~~~~~~~~~~~~


勇者「……」

武人「目が覚めたか」

勇者「ここは?」

武人「和の町の一角だ」

勇者「……巨人は!?」

武人「撤退した。町はほぼ全壊。当分はとてもじゃないが武器は作れないだろうな」

勇者「すまない」

武人「別にいいさ。四人とも巨人に負けてるんだ」

逃亡者「武人は仕方ない。俺達が不甲斐無かったんだ」

武人「終わった事を悔いても仕方ない」

勇者「……すまない」

英雄「……悪かった」

逃亡者「みんな負けたんだし誰も悪くない」

武人「それよりももっと大事なことがある」

勇者「なんだ」

武人「個人の弱さだ」

逃亡者「ああ、嫌ってくらいに分かったね」

武人「少しでも全員修行をした方がいいと思うんだ」

勇者「……」

武人「勇者、あと英雄。お前達は竜の山の老人の所に行って来い」

勇者「……」

6: 2012/11/05(月) 21:57:40.77 ID:8H7sn3WR0
英雄「な、なんでだ!!」

武人「お前達は心的な問題が大きい。少しあそこの老人のありがたい話を聞いて来た方がいいと思う」

英雄「ふ、ふざけるな!!」

武人「俺はいたって真面目だぞ」

英雄「私は弱く無い!!」

武人「……俺も修行する。逃亡者も修行する。勇者も修行する。ならお前も修行するのが普通だろう」

英雄「何故竜の山なんだ!!」

武人「嫌か?」

英雄「ああ、嫌だ」

武人「何故」

英雄「……」

勇者「嫌なら別の場所でいいんじゃないのか?」

武人「理由が無い嫌なら困る」

英雄「……理由はある。だが言いたくない」

武人「ダダをこねても変わらんよ」

英雄「変えろ!!」

逃亡者「わがままだま」

英雄「うるさい」

7: 2012/11/05(月) 21:59:41.68 ID:8H7sn3WR0
武人「……じゃあこうしようか。今から勝負してお前が勝ったら考える」

英雄「……いいぞ」

武人「言っておくが剣の勝負じゃないぞ。危ないから」

英雄「じゃあ何でやるんだ」

武人「ゲームだ」

英雄「ゲーム?」

武人「ああ」

逃亡者「なら俺もやっていい?」

武人「当たり前だ。四人でやってお前がトップだったら変えるって事だ」

勇者「俺も頭数に入ってるのか」

武人「それくらいの息抜きはしておけ」]

勇者「わ、分かった」

武人「サポートは自分の剣にしてもらえばいいだろ」

逃亡者「楽しそう」

勇者「……」

逃亡者「で、何やるわけ?」

武人「人生ゲームだ」

英雄「子供のおもちゃじゃないか!!」

逃亡者「いいじゃん。楽しいし」

8: 2012/11/05(月) 22:00:40.62 ID:8H7sn3WR0
勇者「何と言うか……いいのか?」

武人「俺達が遊んでいる二時間で世界は滅ばないから大丈夫」

勇者「……まあ、お前の言うとおりだが」

武人「二時間ってのは意外と短いから」

勇者「……」

英雄「……」

逃亡者「楽しそうだ」

武人「楽しめればいいんだ」

勇者「もう一度聞くがいいんだな?」

武人「いいんだよ。細かいこと気にするな」

9: 2012/11/05(月) 22:01:46.18 ID:8H7sn3WR0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


勇者「じゃあ始めるか」

正義「ねえ、どういう成り行き?」

勇者「俺にもよく分からん」

勝利「細かいこと気にしててもどうしようもないんじゃない?」

真理「くだらんな」

武人「そう堅苦しい事言うなよ」

信義「で、誰が最初?」

勇者「俺からだ」クルクル

正義「2ね」


大怪我する。マイナス20000ゴールド

勇者 マイナス10000ゴールド 職業無し 独身


勇者「……」

正義「あなたらしいって言えばあなたらしいかもしれないけど……」

逃亡者「次は俺だな」クルクル

10: 2012/11/05(月) 22:03:30.35 ID:8H7sn3WR0
信義「4よ」


お金を拾う プラス100ゴールド

逃亡者 10100ゴールド 職業無し 独身


信義「うーん。微妙ね」

逃亡者「勇者よりはマシなんだからいいだろ」

勇者「すまん、正義……」

正義「いや、だから別にいいんだけどね」

勇者「……俺が弱かったから」

正義「運だから、このゲーム」

勝利「次だよ」

英雄「……」クルクル

勝利「9か」


結婚する 結婚資金を払う マイナス5000ゴールド

英雄 5000ゴールド 職業無し 既婚


英雄「……」

勝利「うん、うん……うん……いいんじゃない?」

信義「フォロー下手くそ過ぎでしょ!!」

16: 2012/11/06(火) 22:24:54.42 ID:BEXi/5Ro0
正義「もう少しいいフォローは無いの?」

勝利「ごめん。限界……」

武人「次は俺か」クルクル

真理「7だ」


武器屋になる。

武人 10000ゴールド 武器屋 独身


逃亡者「安定した職業に付けたな」

勇者「そうか?」

英雄「少なくとも氏にはしないな」

真理「だがどうなんだ? やはり剣士の方が――――」

逃亡者「ゲームくらい剣士以外の職業をやらしてくれよ」

真理「……」

正義「勇者よ」

勇者「ああ、知ってる」クルクル

正義「10ね」

17: 2012/11/06(火) 22:26:25.11 ID:BEXi/5Ro0
悪党を倒す プラス5000ゴールド

勇者  マイナス5000ゴールド 職業無し 独身


逃亡者「勇者らしいな」

信義「ええ、悪党って辺りが物凄くらしいわね」

勇者「……」

正義「ごめんなさい。私もそう思う」

勇者「別に謝ってくれなくていい」

逃亡者「じゃあ回すよ」クルクル


結婚する  マイナス5000ゴールド

逃亡者 5100ゴールド 職業無し 既婚


逃亡者「もう結婚か……」

武人・勝利・正義・信義・勇者(絶対姫様の事考えてる)

18: 2012/11/06(火) 22:29:39.07 ID:BEXi/5Ro0
英雄「……」クルクル

逃亡者「無言で回すなよ」

英雄「うるさい」



子供が生まれる

英雄  所持金5000ゴールド 職業無し 既婚 子供あり


英雄「……」

勝利「え、英雄?」

英雄「皮肉だな」

勝利「え、あ、うん」

正義「……何この微妙な感じ」

信義「つっこんでいいの?」

逃亡者「多分ダメ」

19: 2012/11/06(火) 22:30:19.41 ID:BEXi/5Ro0
武人「まわしていいか?」クルクル

逃亡者「どうぞ」

正義「聞きながらまわしちゃってるけどね」


初収入  3000ゴールド

武人  13000ゴールド 武器屋 独身


武人「を、初収入だ」

勇者「安定した仕事だな」

真理「そんな風に老いていいものか……」

武人「だからゲームだってば」

英雄「私には大事な戦いだ!!」

勝利「熱くならない」

逃亡者「ゲームなんだから楽しもうぜ」

英雄「……」

勇者「ただゲームでも負けるのは嫌なんだ」

正義「それは分からないでもないけどね」

20: 2012/11/06(火) 22:30:56.99 ID:BEXi/5Ro0
武人「俺も負けたくは無いな」

逃亡者「俺だって」

勝利「結局みんな負けず嫌いじゃん」

信義「そんな事最初っから分かってたでしょ」

勝利「まあ、そうかも」

逃亡者「あ、勇者。まわしていいよ」

勇者「ああ」クルクル


剣士になる。

勇者  マイナス5000ゴールド 剣士 独身


真理「ほう、いいじゃないか」

勇者「ありがとう」

真理「例えゲームであっても剣士にならねばな」チラッ

武人「なんでこっち見るんだよ」

正義「でも結局マイナスなのよね」

勇者「四人の中で唯一な」

逃亡者「まだ序盤なんだし逆転の可能性は十分あるよ」

勇者「そ、そうだな」

21: 2012/11/06(火) 22:31:25.64 ID:BEXi/5Ro0
信義「でもこの差ってそんな簡単に引っくり返せるの?」

逃亡者「俺と英雄は無職だから」

信義「あ、そうだったわね」

勝利「英雄は主婦みたいなもんじゃな――――」

正義「勝利?」

英雄「……誰が主婦だ?」

勝利「いや、その、あの……」

逃亡者「でも実際尽くしそうだよな」

武人「ああ、そんな感じだな」

英雄「そんな訳ないだろう!!」

信義「そこ二人。なんで火に油を注ぐ」

勇者「いや、本心からだろう。お前はいい奥さんにも母親にもなるぞ」

英雄「……」

正義「よ、予想外な所から予想外な台詞が……」

勝利「そ、そんな事言うキャラだったっけ?」

英雄「……ぜ、絶対違うからね!!」

22: 2012/11/06(火) 22:33:29.61 ID:BEXi/5Ro0
武人「おい、大丈夫か」

信義「いろんな意味でね」

英雄「う、うるさいうるさい!! みんな嫌い!!」

逃亡者「これはこれでいいんじゃないかな?」

武人「賛成」

勇者「むしろこっちの方がかわいらしいかもしれんな」

正義「それ以上言うのはやめてあげたら?」

勝利「え、英雄。落ちついて」

英雄「うう……」ウルウル

逃亡者「なんか……ごめん」

武人「少しおちょくり過ぎた。反省してる」

勇者「別に本心なんだから――――」

正義「空気を読みなさい」

勇者「……」

信義「ゲームなんだから楽しみましょう」

勇者「そうだな」

逃亡者「じゃあ回すか」


漁師になる

逃亡者 5100ゴールド  漁師 既婚

26: 2012/11/07(水) 21:55:11.17 ID:zjq8hvgq0
信義「なんで漁師?」

逃亡者「こっちが聞きたいよ」

武人「何とも言えない職種だな」

正義「漁師って実際はどうなの?」

勇者「魚がとれればいいがとれなければ最悪だ」

正義「ようは博打?」

勝利「実力も多少はあるんじゃないか?」

武人「ああ、長年の勘や技量も大切だ」

逃亡者「あとは英雄だけだよ」

英雄「分かってる」

武人「どうぞ」

英雄「ああ」クルクル

27: 2012/11/07(水) 21:56:18.49 ID:zjq8hvgq0
音楽家になる

英雄  所持金5000ゴールド 音楽家 既婚 子供あり  


勇者「何とも言えんな」

正義「なんで口にしちゃうの?」

勇者「あ、すまん」

信義「遅いわよ」

英雄「……合う合わないは別にいい。音楽家はこのゲームの職としてはどうなんだ? 有利か?」

勝利「勝ちに行く事にしたんだね」

英雄「ああ」

武人「完全に運だと思うよ。実力もあるけど八割運だと考えていいと思う」

英雄「……」

逃亡者「運がよければ大差を付けて勝てるぞ」

英雄「そうだな。それくらいしなければ一位にはなれない」

真理「勝利にこだわる事はいい事だな」

正義「ゲームなんだから楽しみなさいよ」

28: 2012/11/07(水) 21:57:28.53 ID:zjq8hvgq0
真理「ゲームだからこそ本気で戦うのが面白いんじゃないか」

信義「そう言うタイプは相手をドン引きさせる可能性が高いって知ってた?」

逃亡者「辛辣だな。生理中か?」

信義「んな訳無いでしょう」

逃亡者「はは。すまんすまん」

勝利「今のはギャグでもダメだよ」

逃亡者「ああ、悪かった」

正義「で、次は?」

武人「俺だ」クルクル


こうしてゲームは続き

29: 2012/11/07(水) 21:58:04.10 ID:zjq8hvgq0
~~~~~~~~~~~~~~~~~


中盤


勇者  マイナス3000ゴールド  剣士  独身

英雄  7000ゴールド  音楽家  既婚  子供二人

逃亡者  30000ゴールド 商人 既婚  子供一人

武人   25000ゴールド 武器屋 独身 


英雄「くそ、このままでは……」

勇者「……」

正義「結局プラスにはならないのね」

勇者「すまない」

正義「別にいいんだけどね」

逃亡者「なんだかんだでトップか」

武人「でもすぐに引っくり返せるぞ」

勇者「お、俺は……」

信義「九割の確率で不可能ね」

勇者「……」

30: 2012/11/07(水) 21:58:30.86 ID:zjq8hvgq0
正義「落ち込まないの」

勇者「……」

英雄「一攫千金を狙うしか無いな」

勝利「そう簡単に出来るとは思えないけどね」

英雄「そんな事は分かってる」

勇者「じゃあ回すぞ」クルクル


職を失う

勇者  マイナス3000ゴールド 無職 独身


正義「波乱万丈ね」

勇者「好きでやってる訳じゃない」

正義「知ってるわよ」

逃亡者「絶望的だな」

信義「ええ、片手で崖に掴まってるくらい絶望的ね」

勝利「別の言い方では絶体絶命って言うね」

勇者「……」

31: 2012/11/07(水) 21:59:18.92 ID:zjq8hvgq0
正義「とにかくマイナスを無くしましょう」

勇者「あ、ああ……」

英雄「次は私だ」クルクル


子供が生まれる。

英雄  7000ゴールド  音楽家  既婚  子供三人


逃亡者「子だくさん……」

英雄「……」

逃亡者「いや、別に茶化してはないよ」

英雄「わ、私だって……」ウルウル

逃亡者「分かってる分かってる」

勇者「いい家庭が――――」

正義「空気!!」

勇者「すまん」

信義「なんで空気が読めないの?」

正義「頭が固くて正論と真実しか言えないからよ」

信義「嘘がつけないって罪ね」

正義「そうね」

32: 2012/11/07(水) 21:59:56.67 ID:zjq8hvgq0
武人「逃亡者。早く回せ」

逃亡者「ああ」クルクル


怪我して職を失う マイナス5000ゴールド

逃亡者 25000ゴールド   無職  既婚


逃亡者「職を失うのは二回目だ」

信義「かわいそうにね」

逃亡者「ずいぶんと楽しそうな口調だな」

信義「そう? きっと気のせいよ」

逃亡者「……嫌な笑顔」

真理「武人。少し寝ていいか?」

武人「飽きてきた?」

真理「ああ」

勝利「正直だね」

真理「では、寝る」ゴロン

信義「いいの?」

武人「真理は剣以外の事にはあんまり興味を示さないから。こんかいはもった方だと思うよ」

37: 2012/11/08(木) 22:09:45.73 ID:xF3tYdNG0
正義「いいの? それで」

武人「いいのいいの」

武人「じゃあ回すぞ」クルクル


本を買う  マイナス1000ゴールド

武人 24000ゴールド 武器屋 独身


逃亡者「今の所俺がトップだね」

武人「たった1000ゴールドの差だろ?」

勇者「俺は……」

正義「数えない方がいいわよ」

英雄「負けられん。負けられんぞ」

勝利「少し肩の力抜きなよ」

英雄「……」

勝利「熱くなりすぎ」

英雄「ならどうしろと!!」

逃亡者「冷静にならなくちゃ勝てる試合も負けるって事」

38: 2012/11/08(木) 22:10:24.45 ID:xF3tYdNG0
勝利「そ、そう言う事」

英雄「……」

勇者「深呼吸するといいぞ」

武人「気分転換にお茶でも飲んだらどうだ?」

信義「なんだかんだで優しいのねあんた達」

正義「根はいい奴ばっかりだからじゃない?」

勇者「じゃあ回すぞ」クルクル


お金を拾う  自分の前の人から2000ゴールドもらう

勇者 マイナス1000ゴールド  無職  独身 

武人 22000ゴールド 武器屋 独身


勇者「すまんな……」

武人「ゲームだから」

正義「ゲームで謝るのは怪我させた時くらいよ」

勇者「そうだな」

武人「まあたった2000ゴールドだしな」

勇者「差はいまだに広いな」

39: 2012/11/08(木) 22:10:57.17 ID:xF3tYdNG0
信義「大陸一つ分くらいあるわね」

勇者「……」

正義「うん。実際それくらい逆転は絶望的よ」

英雄「勝利。私はどうだ」

勝利「大陸半分くらいかな」

英雄「……」

英雄「負けるわけにはいかん」クルクル


こうして戦いは続き

40: 2012/11/08(木) 22:11:23.39 ID:xF3tYdNG0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


終盤


勇者   マイナス6000ゴールド   無職  独身

英雄   27000ゴールド   音楽家   既婚  子供三人

逃亡者  32000ゴールド  戦士   既婚  子供一人

武人   30000ゴールド  武器屋  独身


勇者「結局プラスにはならなかったな」

正義「とりあえず逆転は無理なんだからゴールまでに資金をプラスにしましょう」

勇者「ああ、そうだな」

英雄「あと少しだ」

逃亡者「よくあそこから逆転したね」

英雄「なめるな」

逃亡者「いや、別になめたつもりは無いんだけどな……」

信義「うかうかしてると逆転されるわよ」

逃亡者「分かってる」

41: 2012/11/08(木) 22:11:58.03 ID:xF3tYdNG0
信義「勇者。あなたよ」

勇者「ああ……」

正義「回さないの?」

勇者「少し深呼吸してただけだ」クルクル


無職だった場合化け物に変化する  

勇者  マイナス3000ゴールド  化け物  独身


勇者「化け物?」

正義「もはや職業じゃないわね」

逃亡者「いや、昔はモンスター職ってのがあったらしいから別に普通なんじゃないか?」

正義「何、そのモンスター職って」

逃亡者「そのモンスターの気持ちになるんだってさ」

正義「どうするとどうなるの?」

逃亡者「そのモンスターになれた連中もいたらしいよ」

正義「給料は?」

逃亡者「さあ、そこまでは書いてなかったからな」

42: 2012/11/08(木) 22:12:45.71 ID:xF3tYdNG0
正義「ほとんど無職みたいなもんでしょ」

武人「でもなんで無職のままだと化け物になるんだろうな」

逃亡者「あれだろ捨てるものが無くなったからだろ」

勇者「ああ……そう言う事か」

勝利「納得していいの?」

正義「本人がいいならいいんじゃない?」

勝利「まあ、そうだね。正義は?」

正義「納得してる訳ないでしょ」

勝利「だよね」

英雄「……回していいか?」

逃亡者「どうぞ」

英雄「……」クルクル


仕事が軌道に乗る  プラス10000ゴールド

英雄 37000ゴールド  音楽家 既婚 子供三人  


英雄「やっ――――!! 当たり前だ」

正義「よく我慢できたわね」

英雄「あ、当たり前だ」

43: 2012/11/08(木) 22:13:45.19 ID:xF3tYdNG0
逃亡者「まあ、時々素が出てたけどな」

英雄「……なんとでも言え。逆転だ」

武人「まだ終わってない」

英雄「残り数ターンだろう」

武人「まあ、でも最後までやってみないと」

逃亡者「行くぞ」クルクル



仕事が成功 プラス4000ゴールド

逃亡者 36000ゴールド  戦士  既婚  子供一人


逃亡者「ああ、残念」

信義「あと1000ゴールドね」

英雄「……」

逃亡者「今ホッとしただろ」

英雄「気のせいだ」

信義「顔がゆるんでるわよ」

英雄「……」

信義「何さりげなく自分の顔を触ってんのよ」

英雄「き、気のせいだ」

正義「もう動揺しちゃってるじゃない」

47: 2012/11/09(金) 22:11:29.75 ID:Cq1D9clq0
武人「じゃあ次は俺か」

英雄「……」

信義「顔怖い」

英雄「……」

信義「もはや無視?」

武人「回すぞ」クルクル


商品が無くなる  マイナス5000ゴールド

武人 25000ゴールド  武器屋  独身


武人「しまったな」

英雄「……」グッ

正義「小さくガッツポーズしないの」

英雄「してない」

正義「見えてないと思ってるの?」

英雄「……」

勝利「もう言う事は無いよ」

48: 2012/11/09(金) 22:12:56.55 ID:Cq1D9clq0
英雄「……」

勇者「俺か」

英雄「ああ、さっさとしろ」

正義「完全に眼中にないって感じね」

勇者「仕方ないだろう」

正義「ええ、いまだにマイナスだからね」

勇者「とにかくマイナスを無くすぞ」

正義「ええ、そうね」

勇者「いくぞ」クルクル


お金を拾う 次の人から6000ゴールドもらう

勇者 0ゴールド  化け物  独身

英雄 31000ゴールド  音楽家  既婚  子供三人


勇者・武人・勝利・逃亡者・正義・信義「……」

英雄「貴様ァァァァ!!」

勇者「すまん……本当にすまん」

武人「もはやギャグの領域だな」

49: 2012/11/09(金) 22:13:37.92 ID:Cq1D9clq0
逃亡者「神様が舞い降りたんだろ。笑いのな」

武人「だろうな」

英雄「頃す!!殺ォォォす!!」


英雄は勇者の胸倉を掴み大きく揺さぶる。


勇者「悪かった。だからあんまり揺するな」

英雄「許せるか!!」

勝利「英雄。気持ちは痛いくらいに分かる、だから一旦落ちつこうよ」

英雄「落ちつけるか!!」


英雄は左手で勝利の胸倉を掴み大きく揺する。


勝利「ええー……」

勇者「悪い。俺のせいで」

勝利「いや、いいんだよ。これで英雄の気が済むなら」

逃亡者「大人だな。あの二人」

信義「大人って言うか。なんか違うんじゃない?」

50: 2012/11/09(金) 22:14:06.66 ID:Cq1D9clq0
正義「みんな馬鹿なのよ。私達を含めて」

信義「ああ、納得」

真理「……おはよう」

武人「ああ、おはよう」

真理「なんだか騒がしいが、何かあったのか?」

武人「ただの遊びだよ」

真理「そうか」

逃亡者「……」

信義「どうしたの?」

逃亡者「いや、別に」

信義「あんたの言いたい事は分かってるわ」

逃亡者「そうか」

信義「今を楽しみましょう?」

51: 2012/11/09(金) 22:15:22.90 ID:Cq1D9clq0
逃亡者「ああ、そうだな。その通りだ」

武人「じゃあ明日には竜の山に向かってくれ」

正義「ええ、分かったわ」

真理「我等はどうする」

武人「俺達も修行だ」

真理「了解した」

信義「私達は?」

逃亡者「俺達も修行だよ。各地をまわっていろいろ知ろうと思う」

信義「そう」

武人「やる事は決まった訳か」

正義「そのようね」

52: 2012/11/09(金) 22:15:57.70 ID:Cq1D9clq0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日    馬車の中


英雄「……」

勇者「いつまで拗ねてるんだ」

英雄「うるさい」

勇者「今更何を言ってもあの老人の所へは行くんだ。もう腹を決めろ」

英雄「一体どこの誰のせいだと思ってるんだ」

勇者「それは悪かったが――――」

英雄「……もういい。疲れた」

勇者「……」

正義「ゆ、許してくれたの?」

勇者「わ、分からん」

勝利「許すも何も、ゲームなんだし怒る訳ないだろ?」

勇者「それはそうか……」

英雄「……」

正義「絶対違うでしょ。だってあんなに睨んでるんだもん」

勇者「そ、そうだな」

53: 2012/11/09(金) 22:16:49.41 ID:Cq1D9clq0
勝利「英雄も子供じゃないんだからゲームくらいで怒らないでよ」

英雄「怒ってない」

勝利「ならその仏頂面やめてよ」

英雄「……」

勇者「……すまん」

英雄「……」

勝利「ごめんね」

正義「いいのよ」

勇者「そろそろ着くな。準備をしたほうがいいぞ」

勝利「はい」

正義「分かったわ」

英雄「……」

勇者「英雄。大丈夫か?」

英雄「お前に心配される筋合いは無い」

58: 2012/11/10(土) 22:15:40.64 ID:xpvHte+p0
勇者「……」

英雄「……」

勇者「老人と何かあったのか?」

正義「あなたはなんでそうやって無自覚に地雷を踏み抜くのかしらね」

英雄「……言う気は無い」

勇者「……すまん」

英雄「ただ、お前はもう私の秘密を知っている訳だからな……」

勇者「……?」

英雄「いや、何でも無い」

正義「え、勇者何か知ってるの?」

勇者「え、い、いや……」

勝利「着くよ」

勇者「ああ、そうか」

59: 2012/11/10(土) 22:16:09.89 ID:xpvHte+p0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


老人の家


勇者「お久しぶりです」

老人「はい。久しぶりです」

勇者「今回は修行の為に来ました。よろしくお願いします」

老人「聞いてますよ。あとお仲間さんが来ていますから後で会って下さい」

勇者「え、あ、はい……」

老人「いろいろ大変そうですから」

勇者「……はい」

英雄「……」

老人「何年ぶりで――――」

英雄「初めまして、老人様。短い間ですがお世話になります」

老人「……」

英雄「よろしくお願いします」

老人「……はい。英雄さんでしたか? よろしくお願いします」

60: 2012/11/10(土) 22:16:40.29 ID:xpvHte+p0
英雄「はい」

勇者「老人。あの双子は?」

老人「戦争が始まりましたから少しの間はここに来ません」

勇者「そうですか」

英雄「……」

老人「まあ、あの二人は今の元気ですし問題は無いでしょう」

勇者「……そうですか。ならいいんです」

老人「勇者さんはまず鍛冶屋さんに会って来た方がいいと思いますよ」

勇者「仲間って鍛冶屋ですか?」

老人「はい。早く行ってあげた方がいい」

勇者「じゃあ会ってきます」スタスタ

正義「……」

勇者「どうする?」

正義「……私は待ってるわ」

61: 2012/11/10(土) 22:22:13.79 ID:xpvHte+p0
勇者「ああ。分かった」スタスタ

勇者「入るぞ」ガチャ

鍛冶屋「ああ、勇者」

勇者「何かあったのか?」

鍛冶屋「まあな……」

勇者「何があった」

鍛冶屋「魔法使いが消えた」

勇者「……」

鍛冶屋「それで魔法使いがいなくなったと同時に町の荒くれ者が一人いなくなったらしい」

勇者「……それで?」

鍛冶屋「さあ。関係無いかもしれないし、関係あるかもしれない」

勇者「……」

62: 2012/11/10(土) 22:22:52.13 ID:xpvHte+p0
鍛冶屋「何にも分かんねえんだ」

勇者「……すまん」

鍛冶屋「別に謝らなくていいよ」

鍛冶屋「老人なら何か知ってるんじゃないかって思ったんだけど、何も分かんないってさ」

勇者「……」

鍛冶屋「何か分かんないか?」

勇者「……すまん」

鍛冶屋「……いや、悪い。魔法使いの近くにいたのに気付けなかったんだ……」

勇者「鍛冶屋……」

鍛冶屋「とりあえずお前が来るって聞いたからここで待ってたんだ」

勇者「そうか」

鍛冶屋「で、そっちはどうだった?」

勇者「和の国がやられた。重要な武器の拠点がやられたんで今頃各国の王が話し合って作戦を練っている所だろう」

鍛冶屋「……」

勇者「戦況としてはあまり良くないな」

63: 2012/11/10(土) 22:23:38.11 ID:xpvHte+p0
鍛冶屋「分かってるよ」

勇者「魔法使いがいないか……」

鍛冶屋「……どうしよう」

勇者「……俺には分からん」

鍛冶屋「……」

勇者「魔王は関わっているのか?」

鍛冶屋「わ、分かんない」

鍛冶屋「その男と魔王が関わってたかも分かんないし、魔法使いがその男と関わってたかも知らないんだ」

勇者「……とりあえず少し調べてみない事にはどうしようもないな」

鍛冶屋「そうだな」

勇者「頼む」

鍛冶屋「分かった」

鍛冶屋「じゃあ俺ちょっと行ってくるよ」

勇者「何処に行くんだ?」

鍛冶屋「辺境の村で少し聞いてみる」

64: 2012/11/10(土) 22:24:21.68 ID:xpvHte+p0
勇者「ああ、分かった」

鍛冶屋「……」スタスタ

勇者「……」

勇者「老人はどうお考えですか?」

老人「さあ、私にも詳しくは分かりませんよ」スタスタ

勇者「……この一件は鍛冶屋に任せようと思います」

老人「いい判断だと思います」

勇者「少し前に言っていた話覚えていますか?」

老人「はい」

勇者「今がその時なんだと思います」

老人「私もそう思います」

67: 2012/11/11(日) 22:57:20.54 ID:/QYSAmAS0
老人「勇者さん。少しいいですか?」

勇者「はい」

老人「あなたと英雄に少し行ってきてほしい所があるんです」

勇者「行ってきてほしい所?」

老人「はい。ここから少し奥に行くとリンゴの木があるのでリンゴをとってきてほしいんですよ」

勇者「……構いませんが」

老人「後、道中は絶対に剣を抜かないで下さい」

勇者「え?」

老人「木刀を渡しますから敵はそれで倒していって下さい」

勇者「あ、はい」

老人「ではお願いします」

勇者「は、はい……」

68: 2012/11/11(日) 22:58:25.28 ID:/QYSAmAS0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


辺境の村


鍛冶屋「……」スタスタ

正義「大丈夫?」

鍛冶屋「……正義」

勝利「お久しぶり」

鍛冶屋「なんだよ二人して」

勝利「心配だったんだよ」

鍛冶屋「別に大丈夫だよ」

正義「……」

勝利「手伝おうか?」

鍛冶屋「いや、いい」

正義「……本当にいいの?」

鍛冶屋「ああ」

勝利「……」

正義「勝利、行きましょう」

勝利「ああ、何かあったら呼んでくれ」

鍛冶屋「分かった」

69: 2012/11/11(日) 22:59:18.22 ID:/QYSAmAS0
鍛冶屋「……」

鍛冶屋「……」スタスタ

魔法使い「鍛冶屋さん」

鍛冶屋「……魔法使い?」


そこにいたのは黒いローブを深くかぶった魔法使いだった。


魔法使い「お久しぶりです」

鍛冶屋「……何処行ってたんだ?」

魔法使い「町を転々としていました」

鍛冶屋「……そうか」

魔法使い「鍛冶屋さんがここにいるって聞いたから来たんです」

鍛冶屋「誰に」

魔法使い「魔王さんに」

鍛冶屋「……」

魔法使い「……」

鍛冶屋「なんで魔王と顔見知りなんだよ」

70: 2012/11/11(日) 23:00:06.44 ID:/QYSAmAS0
魔法使い「町で知り合ったんです」

鍛冶屋「ま、町って」

魔法使い「はい。山の町です」

鍛冶屋「……俺が気付かなかっただけなのか」

魔法使い「……」

鍛冶屋「聞いていいか?」

魔法使い「はい」

鍛冶屋「お前は魔王の味方なのか?」

魔法使い「仲間……ではないです。ただ情報交換をしているだけですから」

鍛冶屋「……じゃあ俺の情報と引き換えに何かを魔王にあげたって事か?」

魔法使い「そう言う事です」

鍛冶屋「……」

魔法使い「……」

鍛冶屋「何をしたんだ」

魔法使い「武具を提供しただけです」

71: 2012/11/11(日) 23:01:24.27 ID:/QYSAmAS0
鍛冶屋「本当にか?」

魔法使い「はい。いい武器を買って彼等にあげました」

鍛冶屋「……なんで――――」

魔法使い「なんで私が人を救わないといけないんですか」

鍛冶屋「……」

魔法使い「私を嫌っている人達をなんで命懸けで助けなきゃいけないんですか!!」

鍛冶屋「……」

魔法使い「答えて下さい」

鍛冶屋「……」

魔法使い「答えて下さい!!」

魔法使い「ありがとうとさようならを言いに来たんです」

鍛冶屋「待てよ」

魔法使い「……」

鍛冶屋「戻ってこいよ」

魔法使い「……私は人を頃しました。もう戻れません」

鍛冶屋「あの、男か」

72: 2012/11/11(日) 23:02:10.44 ID:/QYSAmAS0
魔法使い「あの荒くれです」

魔法使い「もう戻れないんです」

鍛冶屋「別に――――」

魔法使い「もう決めた事ですから」

鍛冶屋「お前は何がしたいんだよ」

魔法使い「分かりません」

鍛冶屋「分かりませんって何だよ」

魔法使い「でも勇者さん達といるよりも魔王さんといた方がいいと思うんです」

鍛冶屋「……」

魔法使い「じゃあ、もう会う事は無いです」スタスタ

鍛冶屋「……」

鍛冶屋「……クソ」

76: 2012/11/12(月) 22:17:51.69 ID:LaJSj3Sk0
~~~~~~~~~~~~~~~~


勇者「……」スタスタ

英雄「……」スタスタ

勇者「……」スタスタ

英雄「……」スタスタ

勇者「なあ」スタスタ

英雄「なんだ」スタスタ

勇者「……いや、何でも無い」スタスタ

英雄「……最後まで言え。中途半端に言うのが一番イラつく」

勇者「老人との間に何かあったのか?」

英雄「……もう予想が付いてるんじゃないのか?」

勇者「いや……」

英雄「……別に聞いても面白い話じゃない」

勇者「……じゃあ聞かないでおく」

英雄「そうしろ」スタスタ

勇者「……」スタスタ

英雄「少しいいか?」

勇者「あ、ああ」

77: 2012/11/12(月) 22:18:50.54 ID:LaJSj3Sk0
英雄「私は魔法使いの気持ちが少しだけ分かるんだ」

勇者「……」

英雄「あいつは呪い師になったんだろう?」

勇者「なんでそれを」

英雄「老人から少しだけ聞いたんだ」

勇者「そうか」

英雄「なんで自分の事を嫌いな人間を命懸けで救わなきゃいけないんだ?」

勇者「……」

英雄「別にお前を責めている訳ではない。ただどう思うのか聞きたいんだ」

勇者「俺にも分からん。俺の正義だって分からないのに他人の事なんて分かる訳が無い」

英雄「私はそんな他人は助ける気は無いと思ったんだ。自分の仲間だけ助ければいいと」

勇者「……昔の俺なら怒ったかもしれんな」

英雄「ははっ。確かにな」

勇者「……ありがとう」

英雄「な、何がだ」

勇者「話してくれてありがとう」

78: 2012/11/12(月) 22:19:50.69 ID:LaJSj3Sk0
英雄「べ、別にお前の為に言った訳ではない」

勇者「でも少しお前や魔法使いの気持ちを分かる事が出来たんだ。ありがとう」

英雄「……私の気持ちより魔法使いの気持ちを理解してやれ」

勇者「いや、お前も仲間だ。お前の気持ちもしっかりと理解する」

英雄「……」

英雄「か、勝手にしろ」

勇者「ああ」

英雄「……」

勇者「……」

英雄「そ、そろそろだ。行くぞ」スタスタ

勇者「え、ああ」スタスタ

英雄「……」///

勇者「?」スタスタ

英雄「お前、私の背中を見なかったのか?」

勇者「見たぞ」

英雄「……」

79: 2012/11/12(月) 22:20:30.38 ID:LaJSj3Sk0
勇者「それがどうした」

英雄「お前、馬鹿なのか?」

勇者「いや、自覚は無いが……」

英雄「ふ、はははは!!」

勇者「!?」

英雄「お前なかなか面白いな」

勇者「そ、そうか」

英雄「ああ、嫌いじゃない」スタスタ

勇者「……」

英雄「……ここだ」

勇者「……ずいぶん大きいな」

英雄「そりゃあな」


それは五メートルほどある大きな木だった。


勇者「これがリンゴの木か?」

英雄「まさか。リンゴの木は向こうだ」

勇者「じゃあこの木は?」

80: 2012/11/12(月) 22:21:07.43 ID:LaJSj3Sk0
英雄「これは墓だ」

勇者「墓?」

英雄「ああ。私も知らないが昔の人の墓らしい」

勇者「……名前とかは分からないのか?」

英雄「さあな。探せば何処かに彫ってあるんじゃないか?」

勇者「……」スタスタ

英雄「探すのか?」

勇者「ああ、少し気になる」

英雄「……」

勇者「先行っててくれ」

英雄「手伝ってやる」スタスタ

勇者「ありがとう」

英雄「礼はいい」


『伝説の戦士たる男 ここに眠る』


勇者「……」

英雄「あったのか?」

81: 2012/11/12(月) 22:22:07.68 ID:LaJSj3Sk0
勇者「ああ」

英雄「伝説?」

勇者「なんで伝説なのにこんな所に?」

英雄「さあな」

勇者「伝説の戦士と言われているくらいならもっといい場所に埋葬されるはずなのに」

英雄「いい伝説かどうかは分からんぞ」

勇者「悪い伝説なら墓すら作られないだろう」

英雄「……そうだな」

勇者「なんなんだ……」

英雄「伝説の戦士か……」

勇者「……本当に伝説の戦士だとしてもなんでこんな所に……」

英雄「さあな」

勇者「……」

英雄「いいからリンゴを取るぞ」

勇者「あ、ああ」スタスタ

84: 2012/11/13(火) 22:07:00.89 ID:wtCVI4Bg0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


砂漠の城


逃亡者「久しぶり」

砂漠の女王「お久しぶりですね」

砂漠の女王「ご用はなんでしょうか」

逃亡者「分からない?」

砂漠の女王「だいたい予想はついています」

逃亡者「だよね」

逃亡者「姫様はどう?」

砂漠の女王「お元気ですよ」

逃亡者「そうか」

砂漠の女王「そちらはどうですか?」

逃亡者「いろいろな場所回ってるけど、まあ普通かな」

砂漠の女王「そうですか」

逃亡者「そっちはどう? 何か進展はあった?」

砂漠の女王「一応全ての国と協力体制になりました。一応はどの国も協力は惜しまないと言っています」

85: 2012/11/13(火) 22:07:32.37 ID:wtCVI4Bg0
逃亡者「そりゃよかった」

砂漠の女王「はい」

格闘家「失礼します」ガチャ

格闘家「来てたのか」スタスタ

逃亡者「ああ、格闘家か」

砂漠の女王「何でしょうか」

格闘家「いや、谷の国の王からの手紙を届けに来たんだ」

砂漠の女王「ありがとうございます」

逃亡者「あいつはなんだって?」

格闘家「最大限の協力をするそうだ」

砂漠の女王「協力は惜しまない、ですか」

逃亡者「……変わったもんだな。あの屑が」

格闘家「……まあな」

逃亡者「……」

格闘家「姫に会えるか?」

砂漠の女王「いいですか?」

86: 2012/11/13(火) 22:08:29.09 ID:wtCVI4Bg0
逃亡者「ああ、構わねえよ」

砂漠の女王「奥の部屋です」

格闘家「ありがとう」ガチャ

格闘家「じゃあチラッと見て来るよ」スタスタ

逃亡者「……」

砂漠の女王「多少はああやって人と会っておくのも大切ですからね」

逃亡者「そうかもな」

砂漠の女王「……武人はどうですか?」

逃亡者「ん、別に変わった様子は無いぞ」

砂漠の女王「そうですか」

逃亡者「何かあったか?」

砂漠の女王「いえ、ただまさか和の町が壊滅するとは想像していませんでしたから」

逃亡者「まあ、多少ショックを受けてただろうな。あいつは絶対見せないけど」

砂漠の女王「武人はそう言う事を隠しますから」

逃亡者「知ってるよ。で、あいつは剣の修行をしてるのか?」

87: 2012/11/13(火) 22:11:23.71 ID:wtCVI4Bg0
砂漠の女王「はい。さらに剣技を研ぎ澄ますと言っていました」

逃亡者「一筋だね」

砂漠の女王「あなたもですよ」

逃亡者「間違い無い」

砂漠の女王「……」

逃亡者「……」

逃亡者「谷の王は何を何を考えてるか分からんから注意した方がいい」

砂漠の女王「そうですね」

逃亡者「……」

砂漠の女王「……」

砂漠の女王「魔王は人間の仲間もいると聞きます。注意して下さい」

逃亡者「分かってるよ」

逃亡者「じゃあそろそろ行くよ」

砂漠の女王「はい」

逃亡者「じゃあ」スタスタ

88: 2012/11/13(火) 22:11:54.67 ID:wtCVI4Bg0
逃亡者「……」ガチャ

信義「姫様の所に行く?」

逃亡者「いや」

信義「……」

逃亡者「その前に谷の王を見に行く」

信義「……確かに怪しいわね」

逃亡者「あいつは強い奴に付くタイプだからな。魔王側についててもおかしくない」

信義「言えてる」

信義「一人で行く気?」

逃亡者「ああ」

信義「……」

逃亡者「何?」

信義「別に、さっさと行きましょう」

逃亡者「ああ」

格闘家「待てよ」

91: 2012/11/14(水) 22:28:01.30 ID:TQdUE8660
逃亡者「……なんだ」

格闘家「俺も手伝うぞ」

逃亡者「別にいい」

格闘家「昔の仲間だろ」

逃亡者「ああ、前の王の時代のな」

格闘家「……お前はいい兵士だった」

逃亡者「昔の話はいいよ」

格闘家「どうせ何言ったって一人で行くんだろ?」

逃亡者「分かってるだろ?」

格闘家「ああ」

信義「逃亡者?」

格闘家「少しの間はここにいる。今度飲もうや」

逃亡者「そうだな」

92: 2012/11/14(水) 22:28:41.48 ID:TQdUE8660
~~~~~~~~~~~~~~


老人の家


勇者「……」

正義「……またたそがれてる」

勇者「別に好きでやってる訳じゃない」

正義「そんな事知ってるわよ」

勇者「……」

正義「何かあったの?」

勇者「まあな」

正義「それは英雄と? それとも他の何か?」

勇者「……」

正義「別にあなたが英雄と何をしようと別に何も言う気は無いわ」

勇者「……」

正義「何? 怒ってる?」

勇者「いや、考え事だ」

正義「結局何があったの?」

93: 2012/11/14(水) 22:29:27.22 ID:TQdUE8660
勇者「墓があった」

正義「墓?」

勇者「ああ。墓だ」

正義「誰の?」

勇者「伝説の戦士の墓らしい」

正義「伝説の戦士の墓がなんでそんな所に?」

勇者「さあな」

正義「で、あなたはそれが気になる訳ね」

勇者「ああ、そう言う事だ」

正義「……」

勇者「分かるか?」

正義「分からない」

勇者「……」

正義「あなたは……」

勇者「?」

正義「あなたはその人の事を知っているの?」

勇者「いや、知らない」

94: 2012/11/14(水) 22:31:01.05 ID:TQdUE8660
正義「有名じゃないのに伝説の戦士……」

勇者「不思議だな」

正義「でも」

勇者「ん?」

正義「いえ、何でも無い」

勇者「最後まで言ってくれ」

正義「ええ。わかった」

正義「その人がどんな事をしたとしても墓を立てた人にとってはその人は伝説の戦士だったんでしょ?」

勇者「ああ……」

正義「……」

勇者「……」

正義「何か思う事があった?」

勇者「多少な」

正義「……」

勇者「なんだ」

正義「あなたがどんな思想をもってどんな事をしても私はあなたの味方よ」

95: 2012/11/14(水) 22:31:58.88 ID:TQdUE8660
正義「だから信じられる答えを見つけなさい」

勇者「……言われなくてもそのつもりだ」

正義「ふふっ」

勇者「……」

正義「いや、予想通りの答え過ぎてね」

勇者「……」

正義「勘違いしないでね。別に悪い意味じゃないのよ」

勇者「分かってるさ。そこそこ長い付き合いだ」

正義「……まだ数カ月の付き合いだけどね」

勇者「俺には物凄く長く感じたがな」

正義「私もよ。何年分の出来事が詰まったみたいな数か月だった」

勇者「……」

正義「……」

正義「頑張りましょう。勇者」

勇者「そうだな。正義」

101: 2012/11/16(金) 21:58:00.71 ID:esX4ZDje0
鍛冶屋「……」ガチャ

勇者「ああ、お帰り」

鍛冶屋「魔法使いがいた」

勇者「……そうか」

鍛冶屋「なんだよ」

勇者「一緒にいないと言う事は何かしらあったんだろう?」

鍛冶屋「こういう無駄な所で鋭いんだな、お前」

勇者「褒められたと思っておく事にする」

鍛冶屋「ああ、そうしとけ」

勇者「で、どうだったんだ?」

鍛冶屋「魔法使いは魔王と繋がってた」

勇者「……」

鍛冶屋「驚かないのか?」

勇者「驚いてる」

正義「驚き過ぎると声も出ないものよ」

勇者「身をもって実感したな」

鍛冶屋「ああ、俺もついさっき実感してきた」

102: 2012/11/16(金) 21:58:35.49 ID:esX4ZDje0
勇者「魔法使いはお前に任せる」

鍛冶屋「……」

勇者「言っておいただろう」

鍛冶屋「ああ、分かったよ」

勇者「出来るか?」

鍛冶屋「やってやるよ」

正義「どうするの?」

鍛冶屋「分かんねえよ」

正義「……大丈夫?」

鍛冶屋「何とかする」

勇者「ああ」

鍛冶屋「少し稽古してくれ」

勇者「分かった」

正義「……脳筋ね」

103: 2012/11/16(金) 21:59:07.62 ID:esX4ZDje0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


鍛冶屋「おりゃァァァァ!!」

勇者「……」


鍛冶屋の木刀を勇者は簡単に回避する。


英雄「なんだ?」

正義「特訓よ」

英雄「……特訓?」

正義「魔法使いをもう一度仲間にするために頑張るんですって」

英雄「いたのか?」

正義「みたいよ」

英雄「そうか」

英雄「で、なんで特訓なんだ?」

正義「私に聞かないで、あの二人が始めたんだから」

英雄「まあ、そりゃそうか」

正義「ああやって戦ってると頭の中が整理できるのかもね」

英雄「どうなんだろうな」

正義「少なくとも私には分からないわ」

104: 2012/11/16(金) 21:59:51.19 ID:esX4ZDje0
勝利「一つ聞きたいんだけど、あの鍛冶屋って子ボコボコだけど大丈夫?」

正義「いつもの事だから心配いらないわ」

勝利「……あれって特訓になってるのか?」

英雄「効率はお世辞にもいいとは言えないな」

正義「でしょうね」

勝利「でしょうねって……」

正義「後で稽古付けてあげたら?」

英雄「私に出来る事なんて無い」

勝利「簡単な事だけでも教えてあげればいいじゃん」

英雄「……」

勝利「嫌なの?」

英雄「構わない」

勝利「じゃあ教えてあげなよ」

英雄「……仕方ない」

正義「あ、終わったみたいね」

勝利「ボコボコだね」

正義「いつもの事よ」

105: 2012/11/16(金) 22:00:17.42 ID:esX4ZDje0
勇者「少し休んでくる」

正義「ええ、分かったわ」

鍛冶屋「……」ハァハァ

英雄「振りが大振り過ぎるな。もう少しコンパクトに振れば当たる確率もあがる」

鍛冶屋「え?」

英雄「お前の攻撃は大振りなんだ」

鍛冶屋「そ、それを治せばいいのか?」

英雄「多少はマシになるだろうな」

鍛冶屋「あ、ありがとう」

英雄「……」

勝利「あと攻めの踏み込みがちょっと甘いね。もう半歩踏み込むと丁度いいかも」

鍛冶屋「そ、そうか」

英雄「頑張れ」

鍛冶屋「あ、ありがとう」

正義「うん、いいんじゃない?」

106: 2012/11/16(金) 22:01:17.62 ID:esX4ZDje0
英雄「な、何がだ?」

勝利「……そう言う英雄もいいって事だよ」

正義「そう言う事」

英雄「……」

鍛冶屋「なあ、一試合頼んでもいいか?」

勝利「そんなボロボロでまだ戦うの?」

正義「少し休んだ方がいいわよ」

鍛冶屋「時間が無いんだ」

勝利「……」

正義「……」

英雄「先に言っておくが手加減は出来んし一試合だけだぞ」

鍛冶屋「ああ、分かってる」

110: 2012/11/18(日) 22:35:29.35 ID:QBzlCvf40
~~~~~~~~~~~~~~~


魔法使い「……」

旅人「元気が無さそうですね」

魔法使い「……」

旅人「もしかして何かあったんですかね?」

魔法使い「どうせもう気付いているんでしょう?」

旅人「へへへっ。その辺は言わない事にしておきます」

魔法使い「……」

旅人「魔王様から伝言です」

魔法使い「なんですか」

旅人「そろそろ始まる。お前はどうする?」

魔法使い「……私は私で動きます」

旅人「へへっ。そうかですかい」

魔法使い「勘違いしないで下さい。私はあなた方の仲間ではありません」

旅人「ええ、そうでしたね」

魔法使い「……」

111: 2012/11/18(日) 22:36:09.29 ID:QBzlCvf40
旅人「後もう一つ」

魔法使い「……伝言ですか?」

旅人「いいえ。これはあっしが個人的に話す内容です」

魔法使い「……」

旅人「聞きますかい?」

魔法使い「……はい」

旅人「魔王は総攻撃を開始します」

旅人「川の町はあっしの担当でしてね。あっしの仕事はあそこを制圧するんでさぁ」

魔法使い「……」

旅人「嬢さんの実家のある町です。どうしますか?」

魔法使い「……それはどういう意味ですか?」

旅人「いえ、別に深い意味はありませんよ。本当に」

魔法使い「……」

旅人「では、そろそろ行きますかね」

魔法使い「……」

112: 2012/11/18(日) 22:36:38.05 ID:QBzlCvf40
~~~~~~~~~~~~~~~~~~


老人「元気ですね」

勇者「おかげ様で」

老人「鍛冶屋さんも元気そうで」

勇者「はい」

老人「……で、どうでしたか?」

勇者「……あの墓ですか?」

老人「ええ」

勇者「あれは何なんですか?」

老人「それはあなたもご存じでしょう?」

勇者「……伝説の戦士の墓、ですか?」

老人「そう書いてあったでしょう?」

勇者「はい。書いてありました」

老人「それが全てです」

勇者「で、でも、ならなんであんな場所に墓を作ったんですか?」

老人「……」

113: 2012/11/18(日) 22:38:54.05 ID:QBzlCvf40
勇者「……」

老人「それはご自分で考えて下さい」

勇者「……はい」

老人「何か分かるといいですね」ニッコリ

勇者「そうですね」

老人「……魔法使いさんの話は聞きました」

勇者「……」

老人「鍛冶屋さんに任せるんですよね?」

勇者「はい。そのつもりです」

老人「……」

勇者「鍛冶屋は魔法使いの一番の理解者ですから。彼に任せるべきでしょう」

老人「ええ、私もそう思います」

勇者「……少し前の話はこの事を言っていたんですか?」

老人「ええ、まさかここまでになるとは思っていませんでしたがね」

勇者「それはやはり……」

老人「呪い師の宿命、かもしれません」

勇者「……」

老人「特に魔法使いさんはそう言うのを気にするタイプでしたから」

勇者「そう、ですね」

114: 2012/11/18(日) 22:40:19.88 ID:QBzlCvf40
老人「……」

勇者「……」

老人「なたは今の最優先をお忘れない様に」

勇者「……はい」

老人「答えは見つかりましたかね?」

勇者「見つかった様な、見つからなかったような……」

老人「……まあ、そんなものですよ」

勇者「いいんですか?」

老人「そんなにすぐに答えが見つかると思いますか?」

勇者「いえ」

老人「ですが見えかけているんですから後少しですよ」

勇者「そうでしょうか」

老人「コンパスがある旅と無い旅は全然違うでしょう?」

勇者「……」

老人「そう言う事です」

勇者「……」

115: 2012/11/18(日) 22:40:52.41 ID:QBzlCvf40
老人「……もう一度魔王やあなたの他の仲間と対峙すれば何か見えてくるかもしれません」

勇者「……」

老人「ご武運を」

勇者「はい」

老人「明日には戻るんでしたね」

勇者「はい。ですが有意義な一週間でした」

老人「英雄は成長できたんですかね……」

勇者「彼女なりに何かを感じ取っていますよ」

老人「……だといいんですが」

勇者「……」

老人「……」

老人「では、また会いましょう」

勇者「ええ、また」

119: 2012/11/19(月) 22:23:55.65 ID:cfpIZ1H20
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





カンカン


勇者「……」ガチャ

鍛冶屋「……」

勇者「……」

鍛冶屋「ああ、どうした?」

勇者「何してるんだ?」

鍛冶屋「ああ、刀を打ってるんだ」

勇者「ああ、そういえば鍛冶師だったな」

鍛冶屋「最近あんまりやってなかったからな」

勇者「そうだな」

鍛冶屋「戦士兼鍛冶師だと思っといてくれ」

勇者「ああ、そうしておく」

鍛冶屋「……」カンカン

120: 2012/11/19(月) 22:26:59.00 ID:cfpIZ1H20
勇者「……お前の腕前はどの程度なんだ?」

鍛冶屋「……うーん、そこそこかな」

勇者「そこそこ……」

鍛冶屋「だいたい鍛冶師の腕前っていろいろあるからな」

勇者「そうなのか?」

鍛冶屋「俺はとにかく攻めに特化した刀が専門だな。切れ味とか軽さとかそういうのに重点を置いてる」

勇者「ほう」

鍛冶屋「俺の父親はとにかく堅くて強い剣を作るタイプだから俺とは正反対だな」

勇者「お前はなんでそっちを作らなかったんだ」

鍛冶屋「合わなかっただけだよ。俺は基本的に受け身じゃないし」

勇者「……」

鍛冶屋「俺の刀は攻めが強い分防御が脆い。衝撃を受け流すのにも普通以上の技術が必要になる」

勇者「?」

鍛冶屋「刀って言うのは力を受け流す為に柔軟さが必要になるんだ」

鍛冶屋「んで俺はそれを捨てて斬れ味と軽さをさらに強化してるんだ」

勇者「そうなのか」

鍛冶屋「完璧な刀ってのは存在しないよ。新しい金属でも発見されない限りな」

121: 2012/11/19(月) 22:27:29.46 ID:cfpIZ1H20
勇者「正義はどうなんだ?」

鍛冶屋「正義か……」

勇者「……」

鍛冶屋「ちょっと見せてくれるか?」

勇者「ああ」

鍛冶屋「……」

勇者「どうだ?」

鍛冶屋「うーん、どちらかと言えば俺の刀に似てるかもな」

勇者「そうなのか?」

鍛冶屋「ああ、そこそこ軽いし、切れ味もいい。まあその分柔軟さとかがちょっと無いけどな」

勇者「……」

鍛冶屋「なんだよ」

勇者「いや、正直お前がそこまで凄い鍛冶師だとは思わなかった」

鍛冶屋「基本だよ。これくらい出来ないと」

勇者「そうなのか」

鍛冶屋「俺なんてまだまだだよ」

勇者「……」

122: 2012/11/19(月) 22:32:24.96 ID:cfpIZ1H20
鍛冶屋「悪いんだけど気が散るから出てってくれないか?」

勇者「あ、ああ」ガチャ

勇者「……」スタスタ

英雄「……なんだ」

勇者「いや、別に通りかかっただけだ」

英雄「……」

勇者「……」

英雄「……」

勇者「……」

英雄「なんでここにいるんだ」

勇者「いや、深い理由は無い」

英雄「さっさと行け」

勇者「……お前に聞きたいんだが、正義の勇者と言うのは愚かなのか?」

英雄「愚かだな」

勇者「何故だ」

英雄「正義も勇者も英雄も全部曖昧で人によって様々だからだ」

123: 2012/11/19(月) 22:35:23.05 ID:cfpIZ1H20
勇者「……」

英雄「何度も言うが人の為にと正義の為には違うぞ」

勇者「ああ、分かってる」

英雄「まあ、私や魔法使いはその人の為にもも好きじゃないんだがな」

勇者「ああ」

英雄「正義も偽善的で独善的だから嫌いだ」

勇者「じゃあ俺が嫌いか」

英雄「ああ、嫌いだ」

勇者「……」

英雄「……」

英雄「冗談だ」フフッ

勇者「……そうか」

124: 2012/11/19(月) 22:35:56.09 ID:cfpIZ1H20
英雄「お前は逆に清々しくて嫌いじゃない」

勇者「なんだそれ」

英雄「自分で考えろ」

勇者「……」

英雄「お前はとことん正義に執着してるからな」

勇者「……」

英雄「別に変わるなとは言わないぞ」

勇者「……そうか」

英雄「お前がどうなるのかも見てみたいからな」

勇者「あ、ありがとう」

英雄「じゃあまた明日」スタスタ

勇者「ああ」

129: 2012/11/20(火) 22:05:32.46 ID:hzMY67qx0
勇者「……」

正義「勇者」

勇者「……なんだ」

正義「楽しそうだったわね」

勇者「……聞いてたのか?」

正義「ええ、少しだけね」

勇者「……」

正義「別に盗み聞きする気はなかったの。悪いわね」

勇者「別に怒っては無い」

正義「そう。ありがとう」

正義「英雄も英雄で少し変わったのね」

勇者「そうか?」

正義「ええ、いい意味で少し変わったわ」

勇者「……」

正義「あなたも変われるわよ」

勇者「……」

勇者「俺は変わるべきなのか?」

130: 2012/11/20(火) 22:06:19.42 ID:hzMY67qx0
正義「なんで?」

勇者「いや、別に意味は無いんだが」

正義「じゃあ聞くけど私が言ったらあなたはそうする?」

勇者「……いや、分からん」

正義「でしょう」

勇者「……」

正義「自分で考えればいいのよ。変わりたいと思えば変わればいいし、変わらない方がいいと思えば変わらない方がいい」

正義「何度も言ってるけど、私はどうなってもあなたの味方よ」

勇者「……」

正義「あなたは難しく考え過ぎなのよ。もっと単純に自分の感情に素直に生きてみたら?」

勇者「だが……」

正義「だから、あなたがその結果どうなっても私はあなたの味方よ」

勇者「……」

勇者「なんで、そこまでしてくれるんだ」

正義「聞きたい?」

131: 2012/11/20(火) 22:06:52.25 ID:hzMY67qx0
勇者「ああ、相棒だからな」

正義「……そうね。あなたが私が人間だった頃に似てるから、かしら」

勇者「……」

正義「それも、聞きたい?」

勇者「ああ」

正義「……」

勇者「俺はお前の相棒だ。俺もお前の事は知りたい」

正義「……そうね、少し長くなるから今度でいい?」

勇者「ああ、別にいい」

正義「じゃあ、私も寝るわ」

勇者「おやすみ」

正義「ええ。おやすみ」

132: 2012/11/20(火) 22:08:46.45 ID:hzMY67qx0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


砂漠の町


勇者「……久しぶり」

武人「久しぶりだな」

英雄「……」

勇者「逃亡者は」

武人「まだ来てない。後で合流するだろう」

勇者「……そうか」

武人「勇者と英雄は城の護衛を頼む」

勇者「ああ」

英雄「わかった」

武人「俺達は表を固めておく」

勇者「敵の部隊は見えるか?」

武人「今の所はそこまで来てない。でも今日中にはここに攻めてくる」

勇者「……」

武人「……俺と逃亡者。あとその他の者達でここは守る。お前等は城の護衛を頼む」

勇者「ああ」

133: 2012/11/20(火) 22:09:59.95 ID:hzMY67qx0
逃亡者「遅くなっちゃったね」スタスタ

武人「いや、いい」

英雄「……」

武人「じゃあ頼むぞ」

勇者「ああ」

逃亡者「で、お前等はどうだった?」

英雄「さあな」

勇者「分かった様な分からんような感じだな」

武人「まあ、そんなもんだろうな」

勇者「……」

武人「一日そこらで分かったら苦労しないだろうしな」

勇者「そうかもしれんな」

逃亡者「武人はどう?」

武人「そこそこ。まあ少しは成長したと思う」

勇者「お前はどうだった?」

逃亡者「……俺もお前等と変わらんよ」

134: 2012/11/20(火) 22:10:46.83 ID:hzMY67qx0
勇者「結局そんなもんか」

英雄「一日二日で強くなれれば苦労しないだろうな」

勇者「そうだな」

武人「じゃあそろそろ行ってくれ」

勇者「ああ」スタスタ

英雄「……」スタスタ

逃亡者「敵が来そうに無かったら少し行くよ」

英雄「何のためだ」

逃亡者「姫様見に行くんだよ」

英雄「ああ……」

逃亡者「なんだよその反応」

英雄「……」スタスタ

勇者「気にするな」

逃亡者「……気付かないうちに仲良くなったな」

勇者「気のせいだ。気のせい」スタスタ

138: 2012/11/21(水) 22:06:51.16 ID:orhCWWwm0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


砂漠の城


砂漠の女王「お帰りなさい」

英雄「久しぶりだな」

勇者「お久しぶりです」

砂漠の女王「どうでしたか?」

英雄「くだらなかった、と言ったら?」

砂漠の女王「ならば仕方の無い事です」

英雄「……」

勇者「非常に有意義な時間でした。私にとっても英雄にとっても」

砂漠の女王「そうですか。それはいい事です」

勇者「ありがとうございます」

砂漠の女王「いえ、お礼は武人に言って下さい」

勇者「……私達のいない間に何かありましたか?」

砂漠の女王「全ての国の同盟の話は聞きましたか?」

勇者「はい」

139: 2012/11/21(水) 22:07:57.72 ID:orhCWWwm0
砂漠の女王「他には何を聞いていますか?」

勇者「いえ、特には」

英雄「敵がここを攻めようとしている事を聞いただろう」

勇者「ああ、忘れてた」

英雄「……」

勇者「それくらいだな」

砂漠の女王「……その情報には足りない部分が少しありますね」

勇者「え?」

砂漠の女王「他の場所にも軍が向かっているそうです」

勇者「な……」

砂漠の女王「もちろん、ここにくる兵士がのが最も多いはずです。ですが、今回は主要な町をほぼ襲撃しようとしているみたいです」

勇者「……困ったな」

砂漠の女王「敵にも、何か考えがあるんでしょうか」

英雄「さあな。ただ敵の動きに翻弄されてもいい事は無いだろう」

砂漠の女王「はい。その通りです」

勇者「で、どうするんですか?」

砂漠の女王「ここ以外の場所は対策済みです」

勇者「ここは?」

砂漠の女王「作戦はすでに立ててあります」

英雄「大丈夫か?」

140: 2012/11/21(水) 22:08:32.17 ID:orhCWWwm0
砂漠の女王「ええ、きっとうまく行きます」

英雄「……」

勇者「……」

砂漠の女王「優秀な兵士たちは各町に配置してあります」

勇者「そうですか」

砂漠の女王「この町にも兵士達はいます。武人と逃亡者もいます。心配はありません」

英雄「……私達は何故ここなんだ」

砂漠の女王「……あなた方二人は囮です」

勇者「囮?」

砂漠の女王「はい。あなた方二人を隠す事によって敵はここが手薄だと感じるはずです。ですから多少多くの兵を投入し無茶な攻め方をしてでもここを落とそうとするはずです」

勇者「……そこで俺達が出れば、敵を潰せる訳か」

砂漠の女王「はい」

英雄「……つまり私達はギリギリまで出てはいけないのか?」

砂漠の女王「そうなりますね」

英雄「そんな事見透かされるに決まっているだろう」

砂漠の女王「それも想定済みです」

英雄「……」

砂漠の女王「確かに作戦としては穴だらけです。ですがこうしなければいけないんです」

141: 2012/11/21(水) 22:09:26.38 ID:orhCWWwm0
英雄「……」

勇者「了解しました」

砂漠の女王「ありがとうございます……」

英雄「……正気か?」

勇者「策が無いんなら仕方が無いだろう」

英雄「……」

逃亡者「だからこそ、この無茶な作戦を成功させて戦況を引っくり返すんだよ」

勇者「……」

英雄「……」

勇者「いつの間に……」

英雄「……」

逃亡者「もしこの作戦が成功すれば、魔王軍はかなりの兵を無駄に浪費する羽目になるからな」

英雄「バカバカしい。そんなにうまく行くか」

逃亡者「そう思いたいなら思えばいいんじゃない?」

142: 2012/11/21(水) 22:10:47.48 ID:orhCWWwm0
勇者「……」

逃亡者「正直四の五の言っていられる場面じゃないんだよ」

砂漠の女王「はい。恥ずかしながらその通りです」

英雄「……」

勇者「だろうな」

逃亡者「敵の兵力も分からない。こっちは最大の武器生産地を潰されてる。兵だって多いとは言えない。どう考えてもこっちが不利だ」

勇者「ここで何かしら巻き返さないと厳しい訳か」

砂漠の女王「はい」

英雄「で、敵兵力は?」

砂漠の女王「わかりません。ですが私が思うに想像を超える大軍勢だと思います」

英雄「……」

勇者「……」

逃亡者「とりあえず激戦だね」

勇者「ああ」

砂漠の女王「優秀な兵士もいます。あなた方ほどではありませんが頼りにはなるでしょう」

英雄「ふん、所詮は一兵士だ」

143: 2012/11/21(水) 22:13:25.94 ID:orhCWWwm0
砂漠の女王「……」

英雄「勝率は」

逃亡者「やってみない事には分かんないだろうね」

英雄「……」

逃亡者「とにかく準備はしっかりしておいた方がいい」

勇者「ああ」

英雄「そんな事分かっている」

砂漠の女王「……」

勇者「……」

逃亡者「出来る限りの事はするよ。成功の保証は出来ないけどな」

勇者「何とかしてでも成功させて見せます」

砂漠の女王「お願いします」

148: 2012/11/22(木) 22:08:31.09 ID:w+b+B24z0
~~~~~~~~~~~~~~~~


勇者「……」

正義「どう?」

勇者「何が?」

正義「正直この作戦危うくない?」

勇者「ああ、実際誰もが気付いているだろう」

勇者「作戦が漏れている可能性も高い。それも見越しての作戦だろうな」

正義「つまりかなりの量の敵が押し寄せてくるのも十分に考えられるって事?」

勇者「ああ」

正義「……他の場所に敵が行く可能性は無いの?」

勇者「薄いだろうな」

正義「そうすれば裏をかけるんじゃないの?」

勇者「それはこちらも想定済みだろう」

正義「どういう事?」

149: 2012/11/22(木) 22:10:05.43 ID:w+b+B24z0
勇者「勝つ戦いでは無く守る戦いをすればいい事だ」

正義「?」

勇者「援軍を待つ戦いかたをするつもりなんだ」

正義「……籠城戦って事?」

勇者「ああ、ここ以外はその準備をしているはずだ」

勇者「籠城戦は守る側が非常に有利だ。しかも主要都市を落とそうとすれば必然的に援軍が来る早さも上がる」

正義「それだと魔王側の方のリスクが大きそうね……」

勇者「ああ、そう考えればここで少しでも無茶をして俺達四人を頃した方がいいと考えるだろうな」

正義「……」

勇者「お互いにここが正念場だ」

正義「あなたはどう立ち回るの?」

勇者「兵士達を援護しながら動こうと思う。下手に前には出過ぎない様にする予定だ」

正義「いいの?」

勇者「ああ、逃亡者や武人達が前線に出るはずだ。俺が出過ぎても困るだろう」

逃亡者「まあ、妥当な判断だね」

勇者「またか……」

逃亡者「またかってなんだよ」

150: 2012/11/22(木) 22:13:31.38 ID:w+b+B24z0
正義「まあ、間違っては無いわね」

逃亡者「勇者は兵士を助けながら入り込んだ敵を狩っていってくれ」

勇者「分かった」


コンコン


逃亡者「どうぞ」

勇者「俺の台詞だ」

???「夜遅くに申し訳ありませんわ」


そこに立っていたのは薄桃色の長い髪をした女性だった。
糸目に柔らかそうな物腰は安心感を抱かせるが、何故かそれが違う様な気がしてならない。
兵士の服に身を包んだその姿は言い知れぬ恐怖を覚えさせた。

正義「あなたは?」

狩人「私は狩人。ここ二いる兵士達の長だと思っていただいて問題ありませんわ」

勇者「……」

狩人「あら? なんです、その人を疑う様な目は」

勇者「いや、別に」

狩人「ああ、私の武器を見たいんですわね?」

151: 2012/11/22(木) 22:16:31.01 ID:w+b+B24z0
勇者「ね、別にそう言う訳では……」

狩人「私の武器は弓。これよ」


それは大きめの何の変哲もないボウガンだった。


勇者「では、あなたは遠距離からの支援ですか?」

狩人「いえ、私も前線です」

勇者「え、ですが……」

狩人「弓兵が前線に出てはいけないというルールはありませんでしょう?」

勇者「え……」

狩人「実際そういう弓兵がいてもおかしくない。そうでしょう?」

勇者「……」

狩人「わかりまして?」ニッコリ

勇者「わかりました」

逃亡者「あんたの腕前は?」

狩人「そこそこ、と言ったところでしょうか」

逃亡者「無難な答えだな」

152: 2012/11/22(木) 22:22:39.45 ID:w+b+B24z0
狩人「ええ、ナルシスとではありませんから」ニッコリ

逃亡者「……」

狩人「では、また戦場で」ガチャリ

逃亡者「……」

勇者「……食えない奴だな」

狩人「声が少し大きいですわよ」

勇者「……」

逃亡者「食えない奴の方が多いんだ。今更気にすんな」

勇者「そうだな」

逃亡者「さてと、じゃあ俺もそろそろ――――」

勇者「ちょっと待ってくれるか?」

逃亡者「?」

勇者「前の戦争の事を教えて」

逃亡者「聞いてどうする」

勇者「どうするって……」

逃亡者「別に話してもいいが、どうするかだけ教えろ」

勇者「……そ、それは……」

逃亡者「さすがに興味本位、なんて答えは無しだぜ?」

155: 2012/11/23(金) 22:38:10.56 ID:RXCGVyQz0
勇者「分かってる」

逃亡者「……じゃあちゃんと話してくれよ」

勇者「……墓を見つけたんだ。で、その墓がもしかしたらと思ってな」

逃亡者「墓ね……で、それの正体を知りたい訳だ」

勇者「いや、そう言う訳では無いんだが」

逃亡者「……面倒臭いな」

勇者「……」

逃亡者「まあいいや、で、その墓にはなんて書いてあったんだ?」

勇者「……伝説の戦士が眠るとだけ」

逃亡者「知らないな……多分俺達には関係ない」

勇者「そうか」

逃亡者「なんでその墓が気になったんだ?」

勇者「伝説の戦士と書いてあるのに山奥の人も来ない様な場所にあったんだ」

逃亡者「……分かんないな。悪いね」

勇者「いや、別にいい」

逃亡者「別にそいつの正体を知る気はなかった訳だ」

勇者「……」

156: 2012/11/23(金) 22:38:41.07 ID:RXCGVyQz0
逃亡者「じゃあなんでわざわざ俺に聞いた訳?」

勇者「お前もその伝説の戦士と同じだと思ったんだ」

逃亡者「……」

勇者「お前も英雄になれたんだろう?」

逃亡者「……タイミングが悪かったんだよ」

勇者「ああ」

逃亡者「お前はそれを理解した訳か」

勇者「……」

逃亡者「英雄も勇者も成りたくてなるものじゃないって分かったんだろ?」

勇者「ああ、嫌と言うほどに理解できた」

逃亡者「そうか。そりゃよかった」

勇者「……」

逃亡者「いい事だな」

勇者「……」

逃亡者「……そろそろ時間だ。話は生き残ってからにしようや」

勇者「……」

逃亡者「じゃあ行ってくるかな」

157: 2012/11/23(金) 22:40:32.76 ID:RXCGVyQz0
勇者「氏ぬなよ」

逃亡者「大丈夫だよ」

信義「私が付いていれば大丈夫よ」

逃亡者「氏亡率三割増しだ」

信義「怒るわよ」

逃亡者「ごめんごめん」

正義「気を付けてね」

逃亡者「ああ、分かってる」

逃亡者「俺は氏ねないから」ニッコリ

160: 2012/11/24(土) 21:59:22.65 ID:GlGvlKLU0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


見渡す限りの砂の海。
それはまるで氏後の世界にいる様な感覚を覚えた。

それはあながち間違っていないだろう。
そう武人は考えていた。

実際にこの場所はそうなるのだ。
氏後の世界よりもひどい、狂気と殺戮がこの場所に襲いかかる。
その地獄にも似た光景を頭で思い浮かべるのは彼が思っていた以上に簡単なことだった。

耳を澄ませば風の音に混じってサクッ、と言う音が聞こえる。
答えは単純で明快。
千を超えるほどの敵兵の足音だ。


『出来る限り敵を狩る。だが無茶はしないようにな』

「分かってるさ。その程度の分別は俺にだってある」

161: 2012/11/24(土) 21:59:48.58 ID:GlGvlKLU0
武人の声には自嘲の色も混じっていた。
一体何を自嘲したいのかは彼にも分からない。
ただ彼のその言葉には紛れもなくその意思が込められていた。

剣の柄に手を伸ばし、そのままゆっくりと鞘から刀を抜く。
刀身はまるで獣の牙の様に鈍く凶悪に光っていた。

英雄になりたい訳ではない。
勇者になりたい訳ではない。

ただ己の為。
己の腕を試すために彼は一本の刀を持ち、敵に挑む。
それが剣士として生きる事を望んだ彼生き様なのだ。


「真理。一つだけ聞いていい?」

『なんだ』

「勇者は使えると思う?」

『……さあな。ただ顔つきは違ったと思うぞ』

「ああ、俺もそう思う」

162: 2012/11/24(土) 22:00:18.11 ID:GlGvlKLU0
彼はそう呟き、僅かに笑った。

敵が僅かに見え始めた。
小さな黒い点が地平線のあたりに見える。


「行こうか」

『ああ』


まるで雪の様に純白の翼が彼の背中に生える。
その翼は大きく羽ばたかせ、彼はふわりと浮きあがった。

天使にも似たその姿のまま彼は低空を駆けていく。
それはさながら獲物の群れに突進していく鷹の様だった。

眼前の敵の怒鳴り声を聞きながら、彼はその手の刀を振るった。

163: 2012/11/24(土) 22:04:58.30 ID:GlGvlKLU0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


音は無い。
ただ風の音が聞こえて来るだけだ。

ただ微かに、ほんの微かにだが戦いの気配を感じる。

もちろん普通の人間だったら感じられないだろう。
ただ彼は、逃亡者は感じ取ることが出来た。
それは彼が戦いの中で生きていた根っからの戦士だからだ。

魚が水の気配を察知できるように、彼も戦いの気配を察知できる。
彼にとっての戦いとは魚にとっても水と同義と言ってもそこまで問題は無いだろう。

無表情のまま彼は剣を右手に立っていた。

ただ自分の出番を待つ。
それは獲物を狡猾に待ち続け、仕留めるハイエナの様だった。


「あら? あなたも分かるの?」

「狩人……何の用だ?」

164: 2012/11/24(土) 22:05:36.51 ID:GlGvlKLU0
「あら、私は戦いに来たのよ」


その笑みは整っていた。
整い過ぎているほどに整っていた。
まるで演技染みたほどに、それ以上に。

彼女はにこやかに笑いながらボウガンを構え、何も無い砂漠に標準を合わせ始める。
だがその顔は大真面目だ。


「何やってんだ」

「狙ってるのよ。少しでも援護してあげた方がいいでしょ?」

「……そうだな」


逃亡者の言い方は何処か冷めた言い方だった。
もちろんその反応が正しいのだろう。

見えない敵が見える。
それこそ魔法か変な冗談だ。

165: 2012/11/24(土) 22:09:18.99 ID:GlGvlKLU0
「もちろん見えてるわ」


心を呼んだかのような彼女の言葉に逃亡者は無言で返事をした。
別に否定する気は無い。
だがそれを全て信じられるほど彼女の事を知ってはいないのだ

「だいたい距離は三キロとちょっとって所かしらね……十分私の射程範囲内よ」


彼女は更に続ける。
その言葉には絶対とも言えるほどの自信に満ち溢れていた


「じゃあお前の射程ってのはいくつだよ」

「……五キロ先なら余裕で当てられる」

168: 2012/11/25(日) 21:47:29.92 ID:jYu8oN/G0
彼女は標準を合わせ、引き金を引く。
その一連の動作はまるで何かの機械のように滑らかで的確だった。

ヒュン。

矢が空を斬る音は聞こえた。
だが肝心の矢を逃亡者の目は捉えられなかった。


「……」

「命中」


相変わらずその笑顔は病的なほど整っている。
それは背筋が凍えてしまいそうなほどに。

169: 2012/11/25(日) 21:48:44.05 ID:jYu8oN/G0
「お前は……」

「私は矢を撃つ時、そして人がその矢に当たる時が一番嬉しいの」


酔った様な彼女の目は何処か虚空を眺めていた。

多分同じだろう。
そう逃亡者は感じ取っていた。

彼も彼女も同じようなものだ。
戦いの中でしか生きられない。
魚が水の中でしか生きられないのと同じように。


『でもあなたには姫様がいるでしょう?』

「ああ、だから氏ねないんだよ」

「ええ、私だって氏ねないわ」

170: 2012/11/25(日) 21:49:28.78 ID:jYu8oN/G0
彼女はその笑みを崩す事無く、淡々と続ける。


「そろそろ敵が来る。私達で食い止めましょう?」

「ああ、最初からそのつもりだよ」


逃亡者の言葉を聞き彼女はまた笑う。
相変わらず病的なほど整った笑みだ。


「じゃあ、俺は行く」

「裏切り者には気を付けてね」


彼は何も答えない。
それを彼女は肯定と捉えた様だった。


「私は目がいいの。だからいろいろ見える。気を付けてね」


彼女の言葉を聞き終わるよりも先に、彼は走り出していた。

171: 2012/11/25(日) 21:50:32.15 ID:jYu8oN/G0
~~~~~~~~~~~~~~~


骨が軋む。
筋肉が悲鳴を上げる。
全身が壊れそうになりながらも逃亡者は走る。

ブチッ、と言う嫌な音と共に足の腱に強烈な痛みがはしる。
だがそれもほんの一瞬の事。
次の瞬間にはその痛みは消え、足も今まで通りに悲鳴を上げながら動いていた。

余りの痛みに視界が霞み、意識がとびかける。
だが更なる痛みによってそれさえ中断させられる。


「おォォォォォォォ!!」


風のように駆けながら、まず一人目の敵兵の首を刎ねた。

きっとその兵士は逃亡者の存在に気付かなかっただろう。
そして斬られた事も。

172: 2012/11/25(日) 21:54:16.65 ID:jYu8oN/G0
加速し過ぎた体を急停止させるため、地面に両足を突き刺す。
地面は大きく抉れ、辺りを覆う様に砂煙がまき上がった。

まるで壊れた操り人形のように両足があらぬ方向に曲がり、腰が砕けていた。
だがそれもあっという間に元の姿へと戻る。

彼は素早く剣を横に振り、目の前の敵兵を片付ける。
そして体を半回転させ、背後の敵の心臓を貫いた。

深紅の液体が彼の頬を濡らす。
獣の唸り声の様な、敗者の叫び声の様な声が聞こえた。

彼は笑っていた。
狩人のそれと同じように。
歪なほど整ったあの笑顔で。


『まずは敵を殲滅するわよ』

173: 2012/11/25(日) 21:54:59.95 ID:jYu8oN/G0
「分かってる」


剣を片手にニヤリと笑うすの姿は魔王のそれにそっくりだった。

殺意の炎が目に灯る。
その目は水を得た魚のように生き生きとしていた。

逃亡者は大きく一歩前に踏み出し、剣を大きく振り下ろすと、敵兵を真っ二つにする。
返り血も一切気にせず、彼は次の敵に剣を振るった。


「生きて帰るぞ。信義」

『ええ、姫様の為にね』

177: 2012/11/26(月) 22:23:11.59 ID:WdEE76qE0
~~~~~~~~~~~~~~~~~


勇者「始まったか」

正義「そうね」

勇者「……」

正義「まだ出番じゃないわよ」

勇者「分かってる」

正義「ならなんでそんな顔してるの?」

勇者「どんな顔だ」

正義「戦いたくて仕方ないって顔」

勇者「……」

正義「本当よ」


コンコン


勇者「入ってくれ」

兵士「どうも」

178: 2012/11/26(月) 22:23:38.32 ID:WdEE76qE0
勇者「……お前は?」

兵士「はい。姫様の護衛に参りました」

勇者「なら姫様の部屋に行け」

兵士「はい。ですが姫様が何処にもおらず……」

勇者「姫様は階段の傍の部屋にいると思うが?」

兵士「も、もう一度探してきます」

勇者「ああ、そうしろ」

兵士「ありがとうございます」ガチャ

勇者「……」

正義「なんだったのかしら」

勇者「さあな」

正義「……姫様の護衛って事は敵が来てる?」

勇者「まさか、早過ぎるだろ」


その瞬間、勇者目掛けてナイフが飛んで来る。

179: 2012/11/26(月) 22:24:28.19 ID:WdEE76qE0
勇者「!?」


勇者はそれを刀で弾き飛ばす。


勇者「誰だ……」


それは全身黒ずくめの男だった。
背中には刀を背負っている。


忍者「……」

勇者「……」

忍者「お主を暗頃しに来たでござる」

勇者「忍者か」

正義「……いや、黒服とござるだけで判断するのはどうなの?」

忍者「その通りでござる」

正義「合ってるんだ」

勇者「……何故ここにいるのか、を聞くのは無粋だな」

180: 2012/11/26(月) 22:25:16.56 ID:WdEE76qE0
忍者「さようでござる」

勇者「……」

忍者「……」

正義『勇者、行けるわよ』

勇者「いいのか? 忍者は忍ぶものだろう?」

忍者「それだけで生きていくには世知辛い世の中でござる。多少の戦闘も出来ねば忍者は務まらんでござるよ」

勇者「そうか」

忍者「魔王様の姪によりお主の命、頂戴するでござる」

勇者「……来い」

181: 2012/11/26(月) 22:26:40.25 ID:WdEE76qE0
勇者は忍者の刀を身を翻して回避すると、素早く刀を構え直した。
少しだけ上がった呼吸を調える。

勇者は一歩前に踏み込むとそのままの勢いで大きく刀を振り下ろす。

金属音。

刀と刀がぶつかり合い、火花を散らす。
忍者と勇者の顔はぶつかりそうな位近づいている。

鍔迫り合いの状態が続く。

一瞬でも気を抜けば氏ぬ。
そう動物的な何かが叫んでいた。


「お、ォォォォォ!!」


獣の様な方向を上げ、前に進む。

刀がギチギチと悲鳴を上げる。
しかしそんな事は気にせず、更に前に進んだ。

182: 2012/11/26(月) 22:27:34.79 ID:WdEE76qE0
こんな所で時間をとっている暇は無い。
勇者の頭の中には下がって態勢を立て直すと言う選択肢は端から無いのだ。

金属が弾けるような音が響き、まるで磁石が反発しあう様に二つの影が離れる。


「悪いが、力押しはあまり得手ではないのでな」


そう呟いた忍者の表情は無表情だった。

勇者はそれに何も答えず素早く跳ぶ。
まるでそれが答えだと言わんばかりに。

銀色の閃光が光る。
それと同時に耳を貫く様な金属音が響く。

だが勇者はそんな事は気にも止めず更に刀を振るった。
二度、三度と刀がぶつかり合う音が響く。
剥き出しの殺意が幾度となく激突し合う。

185: 2012/11/27(火) 17:56:45.16 ID:gHYMQnMo0
勇者の刀が横に薙ぎ払われる。
その瞬間、忍者の目が獲物を見つけた獣の如く光ったのに勇者は気付いた。
だが、すでに刀は振り払われている。

鮮血が散る。
勇者の右肩が血に濡れた。

忍者は追撃の為に前に跳ぶ準備をする。
しかし、それは彼のミスだ。


「が、あァァァァァァ!!」


勇者は獣だ。
彼は、退かない獣だ。
例え腕をもがれ様が、彼は刀を持っている限り、そして勝機がある限りは退かないのだ。

勇者の刀が忍者の肩の肉を喰らう。

肉を斬る感覚。
ぬるま湯の様な生温かい液体が顔に飛び散る感覚。

186: 2012/11/27(火) 17:57:15.54 ID:gHYMQnMo0
だが勇者の刀が致命傷になるよりも前に忍者は後ろに跳び、距離を置く。


「いい判断でござる」

「ありがとう」

「お主とは違う形で会いたかったでござる」

「俺もそう思う」


互いの距離は二メートル弱。
狭い部屋で武器を構えたままお互いに敵の動きを探り続ける。


「お前の名前は」

「忍者に名前は無いでござる。拙者は忍者。それ以上でも以下でもない」

「そうか」


勇者の目の色が変わる。
それは会話が終わったと言う合図でもあった。

187: 2012/11/27(火) 17:58:33.90 ID:gHYMQnMo0
風を刀に纏わせる。
まるで何かが渦巻く様なギュルギュルと言う気味の悪い音が鳴り響いた。

しかし勇者は前には出ない。
ただじっと相手が動くのを待ち続ける。

無音。
静寂。
まるで時間が止まってしまったかのようにあらゆるものが一ミリたりとも動かない。

忍者の体がほんの僅かに動く。
それが引き金だった。

そう、まるで盆に入った水が溢れる様に、一度溢れだせばそれは止められなくなる。
それどころか更に溢れだす。

忍者は一歩踏み出し、刀を大きく振り下ろす。
それに対応する様に勇者も刀を振り返した。

何処かで見た光景。
勇者の剣技は燕返しの亜流だ。

二本の刀は激突する事も無ければ擦れ合う事も無く、するりと互いを避け、進んでいく。

赤い液体が飛び散る。
それが誰のものなのかは勇者も分からなかった。

188: 2012/11/27(火) 17:59:58.35 ID:gHYMQnMo0
忍者と勇者は同時に一歩下がっていた。
いや、正確にはよろめいて後ろに下がってしまっただけだ。


「今のは、効いたでござる」

「ああ、俺もだ」


どちらも醜悪で不敵な笑みを浮かべる。
それはまさしく戦いを純粋に楽しむ鬼のそれだった。

勇者は右肩から、忍者は左腕からおびただしい量の出血をしている。
だがどちらもそんな事は毛ほども気に止めていない。


「拙者も、本気を出せてもらうでござるよ」


忍者はニヤッと笑うと何かを詠唱し始める。

それはすぐに起こった。

189: 2012/11/27(火) 18:01:26.33 ID:gHYMQnMo0
消えていく。
彼の腕が、足が、体が消えていっていく。
まるで何かに溶けていくようにゆっくりと体が消えていった。


「な……」

「拙者の秘技、楽しむでござる」


何も無い場所から声が響く。
すでに彼の体は溶けきり、もはや欠片すらどこにもなかった。


『ど、どうなってるの!?』

「俺に聞くな」

「消える事ぐらい忍者のたしなみの一つでござるよ」


楽しそうな、歌う様な声が響く。
だがその声が何処から発せられたのかを特定するのは至難の業だ。
それこそ部屋にある酸素を掴むのと同じくらいに。

190: 2012/11/27(火) 18:02:22.78 ID:gHYMQnMo0
「これが忍者の真髄でござる」


ヒュッ、と音が鳴る。
微かに地面を蹴る音が聞こえる。

体を冷たい風が駆け抜けていくのが分かった。

勇者は素早く刀を斬り上げる。

金属音が響いた。

見えない刃を受け止められたのはもはや野生の勘でしか無かった。
気配も無い足音もほぼ無い。そんな相手とこのまま戦い続けるのは至難の業だ。


『正義、策は無いか?』

『不可能よ。あんなのどうやって……』

193: 2012/11/30(金) 22:42:44.19 ID:Gt3tX+XR0
後ろに一歩下がる。

策は無い。
だが、このままその場にいてもなぶり頃しだ。

視界が霞む。
血を流し過ぎている。

刀を構え直し、何も無い場所を眺める。


「拙者を見つけられるでござるか?」


勇者は答えない。
無言のままじっと耐え続ける。

タンッ、と言う足音が響いた。
そしてすぐに空を切る音が響く。

強烈な痛み。
一瞬間があり、赤い液体が飛び散った。

194: 2012/11/30(金) 22:43:39.71 ID:Gt3tX+XR0
「さすがでござる」

「……ありがとう」


勇者の左手には見えない剣が刺さっていた。

左手を盾にするのが限界だった。
いや、それさえも間に合うかどうか怪しいかった。

だが、それでもこうなればどうにかなる。
退かなければ、策はある。


『勇者!!』

「……捕まえたぞ」

195: 2012/11/30(金) 22:44:19.77 ID:Gt3tX+XR0
勇者の目が光る。
殺意を超えた笑みが美しく輝いていた。

彼の刀が大きく振り上げられる。
ゴウッ、と音をたて、刀が振り下ろされた。

金属同士がぶつかり合う音。


「まさか、そんな事をしてくるとは……予想外でござる」

「……俺の勝ちだ」


勇者が歯を見せて笑う。

それとほぼ同時に彼の刀が強烈な風を纏った。


「ぬ……!?」

196: 2012/11/30(金) 22:45:11.33 ID:Gt3tX+XR0
忍者の刀が弾き飛ばされる。
予想外のそれは彼に隙を生ませた。

銀色の風が集束。
勇者の刀が巨大な風の刃と化す。


「消し飛べ」


彼の刀が振り下ろされた。

風は刃となり、目の前のあらゆるものを切り裂き、蹂躙し尽くす。
それはまさに天災のように塵一つ残さない。

部屋が砕ける音。
飛び散る破片。

その中に赤黒いものが混じっているのを勇者はしっかりと見ていた。

197: 2012/11/30(金) 22:45:45.10 ID:Gt3tX+XR0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「あァァァァァ!!」


体を激痛が走る。
胃をすり潰される様な痛みが襲い、強烈な吐き気が体を襲った。

だが彼の剣は敵を切り裂き続ける。

生きて帰る。
姫の為に戻る。
ただそれだけを心の柱として彼は戦い続ける。

逃亡者の剣が敵の首を跳ねる。
血に濡れ、狂喜とも苦悶ともとれる表情を浮かべるその姿は悪魔と見間違えてしまいそうだ。

息を吐きだし、意識を高める。
剣を持つ力が自然と強くなった。

201: 2012/12/01(土) 22:09:44.98 ID:kyMEGrWC0
『後少しよ』

『そうだな』


奥歯を噛み締め、体を百八十度回転。
そのまま背後にいた敵の心臓を突き刺す。

今現在彼が目で確認出来ている敵は三人。

逃亡者は体を大きく前に傾けるとそのまま跳躍した。
低空を高速で跳ぶその姿は弾丸に似ていた。

その勢いを頃す事無く最初の敵の上半身と下半身を分断する。
血は噴水のように飛び散り辺りを赤く染める。

まずは一人。

地面に着地し、体の素早く反転させる。

足の骨が軋む。
全身の血が熱湯のように熱い。

202: 2012/12/01(土) 22:10:18.70 ID:kyMEGrWC0
だがそんな体の悲鳴を無視し、剣を構える。


『だ、大丈夫?』

『さあ、そんな事分からん』

『無茶すれば本当に氏ぬわよ』

『そりゃ氏ぬだろうな』


信義はそれ以上何も言わなかった。
きっとこれ以上言っても無駄だと悟ったんだろう。


「もし俺が氏んでもお前は絶対に安全な場所に送り届けるよ」

『……当然よ』


疾駆の如く宙を駆ける。
目の前の敵の首を一撃で撥ねとばした。

203: 2012/12/01(土) 22:11:00.85 ID:kyMEGrWC0
あと二人。

意識が薄れる。
気を抜けば眠る様に意識が無くなるはずだ。

敵の剣が逃亡者目掛けて振り下ろされる。

しかし彼は体を僅かに捻じり無理矢理にかわすと、そのまま左手で相手の顔面に拳を叩き込む。


「あ、がァァァァ!!」


激痛が脳を支配する。
とんだ意識を激痛が引き戻す。
もはやそれは戦いと言うより拷問に近かった。

あと、一人。

204: 2012/12/01(土) 22:11:47.82 ID:kyMEGrWC0
だがそれと同時に足がもたつき、体が大きく傾く。


『逃亡者!! しっかり!!』


返事をする気力さえ残っていなかった。
もはや自分が何をしているかさえ忘れてしまいそうなほど意識は混濁しきっていた。

だが、それでも彼は剣を構えると大きく振った。

鮮血。

それが相手の血だと言う事も確認しないまま、彼は大きく跳びその場を後にした。

205: 2012/12/01(土) 22:12:57.39 ID:kyMEGrWC0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


武人「……」

真理「終わったな」

武人「ずいぶん逃がしたな」

真理「まあ、逃亡者や勇者や英雄がいるんだ。大丈夫だろう」

武人「……」

真理「戻るか?」

武人「ああ」

魔王「中々いい戦いっぷりだったぞ」

武人「!?」

魔王「別にお前を頃す気は無い。安心しろ」

武人「……」


武人は剣を振るうがそれは何かによって停止させられる。


忍者「短気は損でござるよ」

武人「!?」

209: 2012/12/02(日) 21:52:33.65 ID:PC7CHFJl0
魔王「別に防ぐことなど出来る」

忍者「そうでござったな。申し訳ない」

魔王「右手はどうした」

忍者「少し経てば生えて来るので安心するでござる」

魔王「そうか」

武人「……」

魔王「オレは勇者に会いに来たんだが、丁度お前がいたんでな」

真理「ここの戦いは我等の勝ちだ」

魔王「ああ、そうだな」

武人「……興味が無さそうだな」

魔王「別にここを落とせるとは思っていない」

武人「……」

魔王「目標は別にあるんだよ」

武人「お、お前……」

忍者「そろそろ終わった頃でござるよ」

魔王「そうか。じゃあそろそろ行くかな」

210: 2012/12/02(日) 21:53:26.89 ID:PC7CHFJl0
武人「待――――」

魔王「今回のお前は観客だ。俳優じゃない」

忍者「……もしやる気なら拙者が戦うでござるよ」

武人「別にいい」

忍者「いい判断でござる」

真理「いいのか?」

武人「こんな状況で戦って勝てるか」

忍者「……では」ピョンッ

武人「……」

真理「どうするのだ」

武人「戻るに決まってるだろう」タタタッ

211: 2012/12/02(日) 21:54:08.46 ID:PC7CHFJl0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


町中


勇者「……」

正義「……」

魔王「元気そうだな、勇者。そして正義」

勇者「……なんでお前が」

魔王「会いに来たんだよ」

正義「わ、私達に!?」

魔王「当たり前だろう」

英雄「……」

魔王「お前は呼んでないぞ」

英雄「黙れ」

魔王「……」

英雄「お前は私が頃す」

魔王「もう一度言う。お前はここでの登場人物では無い。消えろ」

英雄「断る」

212: 2012/12/02(日) 21:54:43.76 ID:PC7CHFJl0
勇者「英雄」

英雄「私はこいつが嫌いだ」

魔王「奇遇だな。オレもだ」

英雄「……お前のその何でも知ってるふうな口振りは本当に不快だ」

魔王「貴様も変わらんだろう。自分だけが不幸だと思うな。そしてそれを他人のせいにするな」

英雄「な……」

魔王「世間が悪い。あいつ等が悪い。そんなのは子供の言い訳だ」

英雄「……」



魔王は英雄の剣を素早く交わすとそのまま彼女の腹に突きを喰らわせた。


英雄「う……」

魔王「愚かだな」

英雄「だ……まれ」

魔王「……ここで頃してしまってもいいんだぞ」

勇者「魔王!!」

213: 2012/12/02(日) 21:55:32.17 ID:PC7CHFJl0
魔王「……お前は関係ないだろう」

勇者「……俺が戦う」

魔王「……いい目だ」


魔王はゆっくりと剣を抜く。


魔王「怒りと殺意の混じったいい目だ」

勇者「……」

魔王「来い」

正義「……一つだけ聞いていい?」

魔王「……なんだ」

正義「なんで勇者なの?」

魔王「……似ているからだ」

216: 2012/12/03(月) 22:05:16.72 ID:AM/6+h2a0
正義「誰に」

魔王「オレにだ」

勇者「……」

魔王「昔のオレを見ているようだ」

勇者「……」

魔王「戯言はもういいか?」

勇者「ああ、もういい」

魔王「では始めようか」

勇者「ああ、お前はここで頃す」

魔王「出来ればいいがな」

217: 2012/12/03(月) 22:05:53.44 ID:AM/6+h2a0
お互いの距離は五メートル。
どちらも獲物を構えたままピクリとも動かない。

それが何かを狙って動かないのか、それともただ単純に動かないだけなのか、動けないのかは勇者には判断できなかった。

ただただ漠然と時間だけが無意味に消費されていく。
そして集中力も同様に無益に消費されていった。


「どうした、攻めないのか?」


楽しそうな魔王の声が響く。
その笑顔はまさしく無邪気な子供のそれだった。

勇者は無言のまま魔王との距離を推し測る。
一番いい攻め時をただひたすらに待ち続ける。

今までの彼なら怒りにまかせて突進していただろう。
だが今の彼は怒りの炎の中にもしっかりと冷静さをもっていた。

218: 2012/12/03(月) 22:07:20.56 ID:AM/6+h2a0
「つまらんな、ならこちらから行かせてもらうぞ」


軽快な足音が響き、魔王が前に跳ぶ。

それは勇者にとっては想定内の行動だ。
しかしわかっとしてもそれが避けられるかどうかは微妙だった。

体を僅かに斜めにし、魔王の一撃に備える。

彼女は勇者の一歩手前に着地し、そのままの勢いで剣を大きく振り下ろした。
強烈な一撃はまるでかまいたちの様な強烈な飛ぶ斬撃を生み出す。

得物同士が激突し、火花を散らす。
勇者の両手に強烈な痛みがはしった。


「う、ぐ……」


両手の痺れに耐え、魔王を押し戻すと、勇者はそのまま地面を蹴った。

お互いの距離は一メートル。

219: 2012/12/03(月) 22:08:07.27 ID:AM/6+h2a0
『勇者。無茶よ』

『分かっている』


そう、そんな事は分かっている。
ここで跳ぶのは最善なんかでは無い。
むしろ悪手に近い。
だが攻めなければ確実にジリ貧、もしくは不意を突かれ一瞬で殺される。
長期戦になればなるほど実力差が露呈するだけなのだから。

体を傾け出来るだけ加速する。
切っ先を魔王に向けたまま一直線に魔王目掛けて突進する。

魔王の剣が横に薙ぎ払われた。

だが、勇者は下がる事無く。それを刀で受け流すと、右手を引き、そのまま突きを繰り出す。

勇者と魔王の剣が高らかに鳴く。
火花を散らしながら鍔迫り合いの状態になる。

220: 2012/12/03(月) 22:09:40.21 ID:AM/6+h2a0
「いいぞ、やはり攻めて来なければ面白くない」

「ああ、そうだな」


勇者は歯を剥いた獣染みた顔で笑った。
魔王は無邪気な子供の様な笑みで答えた。

得物同士が凶悪な音をたて擦れ合う。
剥き出しの殺意がぶつかり合う。


「楽しんでいるな、勇者」

「……」


沈黙
彼は答えなかった。

226: 2012/12/05(水) 21:47:24.35 ID:HIGRpQVe0
だが魔王は更に続ける。


「お前は戦いを楽しんでいる。そうだろう?」

「……ああ。そうだな。その通りだ!!」


下から上へ、勇者の刀が斬り上げられる。
銀色の閃光が真っ直ぐな軌道を描いた。

魔王は一歩下がり、その一撃を下げる。

その顔は満面の笑みを浮かべていた。
残忍な、凄惨な、見る者の肌を粟立たせる様な笑みを。


「……魔剣を知っているか?」


澄んだ声は良く通った。


「……ああ、秘剣の上を行く剣技だろう?」



魔王の突然の問いに勇者は数秒遅れで答えた。
彼女の意図はよく分からない。

227: 2012/12/05(水) 21:48:16.38 ID:HIGRpQVe0
その言葉に魔王は僅かにまた笑う。


「その通り、ではお前は魔剣をどのようなものだと思う?」

「……人の手で造られた決して人が防御できない剣技だ」

「ああ、だからこそ才能のよって生まれた業ではなく、努力によって生まれた業なのだろう?」

「そうだ、抽象的な何かではなく具体的に理詰めによってつくられたものこそが魔剣だ」


勇者の言葉に魔王はにやりと笑う。

その笑みの意味は分からなかった。
だがそれを見た瞬間、勇者は体がゾワリと恐怖するのを感じた。


「そうだ。その通りだ。だが」


魔王はそこでわざと言葉を切る、そして吐き出すようにこう言った。


「それじゃ面白くないだろう」

228: 2012/12/05(水) 21:50:04.65 ID:HIGRpQVe0
魔王の体が宙に浮く。
まるで風船のようにゆっくりと上昇しながらも勇者の方へと近づく。

理由は分からない、ただ勇者は危機を感じていた。
第六感の様な何かが危険だと警告を鳴らし続ける。

地上約六メートルほど上に魔王はいる。
ただそこでごく自然に立っていた。

魔剣とは理詰めによってつくられた完成された剣技だ。
力や才能をふんだんに使った理不尽で無骨な攻撃では無く、努力によってあらゆる隙や無駄を省いた洗練されたが魔剣と呼ばれる技なのだ。


「魔剣。『フォールダウン』」


声が聞こえた時にはすでに魔王の姿は消えていた。

刹那、勇者の背筋を何かが駆け抜ける。
それが危機だと気付くよりも早く、彼は頭の上で刀を盾にした。

轟音。
激痛。

229: 2012/12/05(水) 21:51:17.13 ID:HIGRpQVe0
両足が地面に沈み、全身を強烈な痛みがはしる。
骨が軋む様な音を彼は確かに聞いた。


「……さすがにまだまだ無駄が多いな」

「お、お前は……」


魔剣とは理詰めの技だ。
洗練されきってこその魔剣。
だが彼女はそれを才能と力で無理矢理洗練しきった。

無骨で無駄だらけの秘剣にも満たない一撃を才能と力だけで魔剣まで昇華したのだ。
それほどまでの才能と力を彼女は持ち合わせていた。

勇者は無理矢理に魔王を押し返し、そのまま追撃の為に前に跳ぶ。


「攻めて来ないと面白くないもんな」

230: 2012/12/05(水) 21:53:04.93 ID:HIGRpQVe0
魔王の無邪気な声を聞きながら彼は刀を振るった。
鋭い音と共に火花が四散する。

だが彼はそのまま力で魔王を弾き、更に刀を振り、追撃を始める。

上段、下段、突き、斬り上げ。
攻撃の隙さえ与えない怒涛の猛攻を魔王に浴びせかける。


『ゆ、勇者……』

『ここで退けば、勝ち目は無い』


この攻めがいかに無駄かは勇者が一番知っていた。
だが退かない。
退けない。

もしここで防御に転じればあの魔剣によって負ける。
勇者はそれを本能で理解していた。


「あァァァァァ!!」

235: 2012/12/06(木) 21:53:22.11 ID:zpdRaL610
咆哮と共に刀を振り下ろす。
風によって大剣と化した刀は轟音を立てながら魔王の頭目掛け襲いかかった。

だがそれすらも魔王は受け止めてしまう。
その表情は笑顔すらないものの危機と言うものがほとんど存在しなかった。

勇者はそのまま体と腕の向きを変え、突きの態勢を取る。
そしてそのまま風の槍に形を変えたそれをを前に突きだした。

魔王は防御しなかった。
しかしその代わりに体をくるりと翻し、その一撃を紙一重で回避した。


「な……」


そのまま魔王の剣が振られる。
その瞬間攻守が完全に入れ替わった。

勇者は素早く魔王の剣を打ち払いながら後退する。
だが魔王は勇者と一定の間合いを保ち、剣を振り続ける。

236: 2012/12/06(木) 21:55:31.40 ID:zpdRaL610
勇者が一歩退けば魔王は一歩前に出る。
だからといって勇者が前に出るのは自殺行為でしか無い。
しかしこのままの状態でもジリ貧だ。


大きく一歩下がる。
だが魔王はまるですっぽんか何かの様に喰らいついて来た。
決して離れる事無く、隙の無い攻撃を何度もうち込み続ける。

体を屈め出来る限り体の面積を少なくする。
ほとんど焼け石に水だがやらないよりはマシだ。

魔王の剣が彼の頬を僅かにかすめる。
まるで詰め将棋の様にゆっくりとしかし着実に追い詰められていた。

すでに手の内は全て見せているこちらに対し、魔王はまだいくつ隠し玉があるのかすら分からない。


『正義、魔力は後どれくらいだ』

『半分って所よ。大技は二発か三発が限界』

『了解』

237: 2012/12/06(木) 21:56:21.88 ID:zpdRaL610
今のこの状態での大技は無意味以外の何ものでもない。
ダメージを与えるどころか態勢を立て直すこと自体出来るかどうか怪しい。

だが、タイミングさえ合わせれば態勢を立て直す程度なら可能なはずだ。
とにかく一度戦闘を仕切り直すタイミングを探り続ける。

魔王の剣が勇者の右肩を切り裂いた。
強烈な痛みがはしり、血が吹き出る。
一瞬視界が白一色に塗りつぶされた。

痛みによって生み出された一瞬の隙。
視界が戻った時には魔王の剣が目の前に迫っていた。

全神経を切っ先に集中。
魔力の風を刀に纏わせる。

世界の音が消えた。
無音。
映像はまるで絵の様に現実味が無くなった。

血が飛び散る。
だが痛みは無かった。

238: 2012/12/06(木) 21:57:06.25 ID:zpdRaL610
風が音をたて集束。
巨大な竜巻を発生させた。


「切り裂く」


轟音。
巨大な風の渦がまるで槍の様に直進。
勇者の正面にあるあらゆるものを破壊し尽くした。

風の斬撃は勇者の目の前にあったもの全てを飲み込みあらゆるものを吹き飛ばしていた。

だが。


「正面で意味が無いだろう。上がガラ空きだ」


ニヤリと笑う魔王と目があった。

239: 2012/12/06(木) 21:58:09.40 ID:zpdRaL610
魔王が剣を構え直す。
その構えを勇者は知っていた。


「『フォールダウン』」


声が聞こえた。
冷めた声は地面から這い出る異形の様な何かを連想させた。

体が凍えた。
そのくせ全身は焼けつく様に熱い。

素早く刀を頭の上で盾にする。

一際巨大な音が響いた。
今までとは全く違う。
鈍い音が。

245: 2012/12/07(金) 21:57:05.92 ID:BI4Zo3v90
「折れたか」


魔王の声が響く。
冷めた様な、呆れた様な、何とも言えない語り口調。


「正義?」


勇者の刀にはひびが入っていた。
鍔付近に大きな亀裂がはしり、もう一度得物同士をぶつけあえば確実に折れてしまうはずだ。


「おい、正義……」

「無駄だ。今の正義は仮氏状態。今のお前はただの腕の立つ剣士だ」

「……」

246: 2012/12/07(金) 21:58:55.97 ID:BI4Zo3v90
だが勇者は無言のまま刀をしまうと素手のまま構える。
その目は正真正銘本気の目をしていた。

擦り足のまま前に進む。

素手の両手を顔の辺りで構え、ゆっくりと魔王に近づいていく。

だがその前に英雄が割り込む


「下がれ」

「……英雄」

「そんな状態で何が出来る。下がれ」

「貴様が出て来る必要は無い。貴様が下がれ半端者」


その言葉に英雄は笑う。
それに対応するかのように魔王の顔は険しくなった。

英雄は剣を抜き、切っ先を魔王に向け、中段で構える。

247: 2012/12/07(金) 22:02:04.74 ID:BI4Zo3v90
「どうやら、どうしても氏にたい様だな」

「氏ぬのはどっちかな」


魔王が宙に浮く。
まるで風に舞い上がるこの葉の様にゆっくりと。
しかしまるで階段を上がっていくようにしっかりと。

上と下。

英雄と魔王が対峙する。


「お前はここで退場だ。安心しろ。特等席は用意してやる」


澄んだ魔王の声。


「もう一度聞く――――」

「くどい」

248: 2012/12/07(金) 22:03:29.59 ID:BI4Zo3v90
静寂。
まるでそこだけ時間が凍結してしまったかのようにあらゆるものがピクリとも動かない。
だが、肌を刺すような殺気はそこには確かに存在している。


「『フォールダウン』」


声。

魔王の姿が消え、英雄の目がきらりと光る。

鮮血。
真っ赤な血が床を濡らす。


「……」

「残念だ。だが多少の誤算も仕方が無いのかも知れんな」


魔王の剣は英雄の胸を貫いていた。
それは英雄を貫き、剣先は床に刺さっている。


「オレが剣を振っていたら負けだった。だが、突きだ」

249: 2012/12/07(金) 22:04:19.46 ID:BI4Zo3v90
「英雄!!」


勇者の声が響いた。
その叫び声は乾いた大地にすぐさま消えていく。

彼女は英雄の胸から剣を引き抜くと勇者の前へと進んだ。
そして少し微笑む。


「仇を打ちたかったら竜の山に来い。オレはそこで待っている」

「お前は何がしたい!!」

「言っただろう。オレは人間を滅ぼしたい。そしてそれを楽しみたい」


魔王は言葉を切り、剣を抜く。
そして勇者の顔に剣先を向け、微笑んだ。


「いい目だ。オレを頃しに来い。お前なら楽しめそうだ」


魔王は言い終わるとまるで階段を駆け上がるかのように空を駆けて行った。

256: 2012/12/09(日) 22:28:37.72 ID:IIPAdrK70
勇者「英雄!!」

英雄「……なんだ」

勇者「……」

英雄「私は負けた。ただそれだけだ」

勇者「……すまない」

英雄「……別にお前が謝る必要は無い」

英雄「私が勝手に戦って勝手に氏ぬだけだ」

勇者「……」

勝利「……」

英雄「悪いな」

勝利「いや、大丈夫。こっちは気にしなくてもいいよ」

英雄「そうか……」

勝利「……」

英雄「私が氏んだら。お前はどうなるんだ?」

勝利「少しの間はこのまま。でも三日くらいでただの剣に戻る」

英雄「……そうか」

勝利「楽しかったよ」

257: 2012/12/09(日) 22:29:19.29 ID:IIPAdrK70
英雄「ああ、私もだ」

勝利「……」

英雄「勝利、勇者は?」

勝利「どっか行ったよ。あいつなりに気を利かせてくれたんじゃない?」

英雄「ふん。くだらん」

勝利「言うと思った」

英雄「……勇者の事を頼む」

勝利「そうだね。あいつは最後の希望だ」

英雄「……」

勝利「それと英雄の個人的な感情もあるのかな?」

英雄「……」

勝利「ごめんごめん」

英雄「……」

勝利「お休み、英雄」

英雄「ああ……」


英雄は目を閉じる。

258: 2012/12/09(日) 22:30:04.90 ID:IIPAdrK70
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


数分後


武人「勇者!!」タタタッ

勇者「……」

勝利「……遅かったね」

逃亡者「……なんて言えばいいか分からないけど――――」

勝利「別に誰のせいでもないよ」

勇者「……」

勝利「それより正義はどうしたの?」

勇者「分からん。ひびが入ってからは……」

鍛冶屋「勇者。大丈夫か!!」

勇者「俺は大丈夫だ……」

鍛冶屋「……」

勝利「……正義と英雄がやられた」

鍛冶屋「正義が?」

259: 2012/12/09(日) 22:31:17.06 ID:IIPAdrK70
勇者「刀にひびが入ったんだ」

鍛冶屋「……」

勇者「……」

鍛冶屋「俺が直すよ」

勇者「え?」

鍛冶屋「俺が直せば何とかなるだろ」

武人「……直せるのか?」

鍛冶屋「俺だって鍛冶師の端くれだ。何とかなる。いや、何とかする」

勇者「……すまん」

勝利「それより戦況は?」

武人「一応はこっちの勝ちだ」

逃亡者「でもこっちのダメージもそこそこ大きいかな」

勝利「そうか……」

武人「一旦城に戻ろう」

勝利「そうだね。英雄は……勇者、頼む」

勇者「俺が運ぶのか?」

勝利「ああ。頼む」

勇者「……」

260: 2012/12/09(日) 22:32:32.08 ID:IIPAdrK70
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


砂漠の城


砂漠の女王「……そう、ですか」

武人「申し訳ありません」

砂漠の女王「いえ、こちらこそ無茶な作戦を……」

勝利「いいんですよ。魔王が出て来るなんて誰も思わないじゃないですか」

砂漠の女王「……」

勝利「だから誰のせいでもないでいいじゃないですか」

勇者「……」

勝利「勇者……」

砂漠の女王「ゆっくり休んで下さい」

勇者・武人「はい」

勇者「……」スタスタ

武人「じゃあ、また明日」

勇者「ああ」

265: 2012/12/10(月) 22:18:34.81 ID:2xfCRWUZ0
武人「……」スタスタ

勇者「……」スタスタ

勇者「鍛冶屋」ガチャ

鍛冶屋「勇者。英雄の亡骸の傍に居なくていいのか?」

勇者「……ああ。大丈夫だ」

鍛冶屋「……」

鍛冶屋「正義を呼んでみてくれ」

勇者「……正義、聞こえないのか?」

勇者「……」

鍛冶屋「……ダメか?」

勇者「ああ。ダメみたいだな」

鍛冶屋「……」

勇者「直せるのか?」

鍛冶屋「直すだけなら俺でも何とかなる。あとは正義の材料が分かればなんとかなるんだけど……」

266: 2012/12/10(月) 22:19:15.52 ID:2xfCRWUZ0
勇者「材料?」

鍛冶屋「ああ、違う金属じゃあ直せないだろ」

勇者「そ、そうだな」

鍛冶屋「分からないか?」

勇者「悪い……」

鍛冶屋「……」

鍛冶屋「正義を貸してくれるか? 少し調べてみようと思う」

勇者「ああ、頼む」

鍛冶屋「ありがとう」


鍛冶屋は正義を受け取る。


勇者「頼む」

鍛冶屋「ああ、わかった」スタスタ

267: 2012/12/10(月) 22:20:25.33 ID:2xfCRWUZ0
勇者「……」

信義「ねえ、姫様知らない?」

勇者「知らない」

信義「……そう」

勇者「どうしたんだ?」

信義「いや、姫様がいないのよ」

勇者「……いない?」

信義「ええ、部屋にもいないし……」

勇者「だが護衛の兵士がいたんだ。敵に連れていかれた訳でもないだろう」

信義「え?」

勇者「?」

信義「護衛の兵士って誰?」

勇者「どういう事だ」

信義「城に兵士はいるけど姫様を護衛する兵士はいないはずよ」

268: 2012/12/10(月) 22:21:18.55 ID:2xfCRWUZ0
勇者「……」

信義「……」

勇者「じゃああいつ等は?」

信義「少し砂漠の女王の所に行ってくる」タタタッ

勇者「……」

勝利「結局勝った様に見えていろいろ裏でやられてたって事かな」スタスタ

勇者「勝利」

勝利「残り少ない時間くらい何か手伝った方がいいだろう?」

勇者「そう、だな」

勇者「……」

勝利「……」

勇者「……」

勇者「英雄の遺体はどうするんだ?」

勝利「……任せるよ」

勇者「……」

269: 2012/12/10(月) 22:23:50.08 ID:2xfCRWUZ0
勝利「心臓が傷ついてた。逃亡者なら回復できたかもしれないけど英雄はそう言うタイプじゃないから」

勇者「そうか……」

勝利「どうしようもなかった。それ以外の何ものでもないよ」

勝利「不幸に不幸が重なった。とでも言えばいいかな」

勇者「……」

勝利「……」

勝利「あんまり気に病まない方がいいよ」

勇者「ああ」

勝利「……」

勇者「……」スタスタ

275: 2012/12/12(水) 22:21:41.53 ID:TgsQLO5a0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~


武人「……」

真理「……」

真理「悲しくないのか?」

武人「悲しいに決まってるだろ。仲間がやられたんだ」

真理「他の奴もそう思っているんだろうな」

武人「さあな……」

真理「……」

武人「だが勇者も逃亡者もそう強くは無いからな。少なからず心に引っ掛かってるだろうな」

真理「……」

武人「俺がもう少し早かったらもしかしたら――――」

真理「仮定の話は辞めた方がいい。悲しくなるだけだ」

武人「……」

真理「それに結論は結局変わらない」

276: 2012/12/12(水) 22:22:18.23 ID:TgsQLO5a0
武人「……」

真理「なら考えない方が絶対いいだろう?」

武人「そう、だな」

真理「ああ、そうしろ」

武人「……」

真理「それよりも正義もやられたんだ。そっちの方を考えた方がいい」

武人「そ、そうだな……」

真理「どうするんだ?」

武人「さあな」

真理「……」

武人「俺達は駒だ。作戦を考えるのは俺達の仕事じゃないだろう」

真理「ああ、そうだな」

武人「……」

真理「……何を考えてるんだ?」

277: 2012/12/12(水) 22:23:04.07 ID:TgsQLO5a0
武人「今竜の山に行ったら――――」

真理「魔王は勇者を指名した。お前が行っても魔王の部下と戦うだけだ」

武人「……」

真理「分かるだろう?」

武人「じゃあ俺はどうすれば英雄に償えるんだ」

真理「たら、ればの話は辞めろと言っただろう」

武人「分かってる!! 分かってるんだけどな……」

真理「……」

武人「やっぱり俺は人間なんだよ」

真理「……そうだな。お前はただの人間だ」

武人「……」

真理「戦士として生きるのは難しい。仕方の無い事だ」

278: 2012/12/12(水) 22:23:35.18 ID:TgsQLO5a0
武人「……」

真理「悔し涙を流してしまうようでは尚更な」

武人「な……」

真理「知らないとでも思ったか?」

武人「……」

真理「別に悪いとは言ってないだろう」

武人「泣きたくなかったんだけどな」

真理「……」

武人「やっぱり無理だった」

武人「……」

真理「少し休め。楽になる」

武人「……」

真理「……」

武人「そうする」

真理「そうしろ」

279: 2012/12/12(水) 22:24:50.58 ID:TgsQLO5a0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


勇者の部屋


勇者「……」


コンコン


勇者「どうぞ」

勝利「正義はどう?」

勇者「鍛冶屋に任せてある」

勝利「そう」

勇者「ああ」

勝利「……」

勇者「……」

勝利「目が赤いよ」

勇者「……」

283: 2012/12/13(木) 22:49:17.26 ID:uS4kvBX20
勝利「泣いてた?」

勇者「仲間だからな」

勝利「……ありがとう」

勇者「礼を言うのは俺の方だ」

勝利「……」

勇者「助けてくれてありがとう」

勝利「……」

勇者「そしてすまなかった」

勝利「……」

勝利「やめてくれ」

勇者「……俺が不甲斐無いばっかりに」

勝利「やめてくれ!!」

284: 2012/12/13(木) 22:49:43.63 ID:uS4kvBX20
勇者「いや、俺が悪いんだ。俺が弱かったから……」

勝利「……」

勇者「俺はダメだ……正義も英雄も……」

勝利「正義は悩んでもいい。でも英雄は関係ない」

勇者「……いやどっちも俺のせいだ……」

勝利「……」

勇者「謝っても謝りたりない。すまない」

勝利「……いい加減にしろよ」

勇者「……」

勝利「英雄は自分の意思で戦って氏んだ!! それだけの事だ!!」

勇者「だが……」

勝利「お前のせいでも誰のせいでもない!! 英雄はそう言う同情が嫌いなんだよ!!」

勇者「……」

勝利「百歩譲って英雄に申し訳ないと思うなら仇を取れ!! うじうじくだらない事言ってんじゃねえ!!」


勝利は勇者の胸倉を掴む。

285: 2012/12/13(木) 22:57:14.28 ID:uS4kvBX20
勇者「……」

勝利「その顔やめてくれよ」

勇者「すまん……」

勝利「……」

勇者「悪い。部屋に戻らせてくれ」

勝利「……」

勇者「じゃあ」スタスタ

勝利「ああ」

勇者「……」スタスタ

勝利「……」

勇者「頭を冷やす」

勝利「分かった」

勝利「後で行っていい?」

勇者「ああ。夕方に来てくれ」

289: 2012/12/15(土) 21:42:33.61 ID:8Cyqucf60
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


逃亡者「……」

砂漠の女王「すいません」

逃亡者「いや、別にいいよ」

砂漠の女王「……」

逃亡者「薄情だよな」

砂漠の女王「?」

逃亡者「勇者も武人も英雄が氏んだのを悲しんでるのに俺だけ悲しんでない」

砂漠の女王「いえ、姫様が攫われたのでは……」

逃亡者「理由にはならないよ」

砂漠の女王「どういう意味ですか?」

逃亡者「悲しむのに理由は無い」

砂漠の女王「……」

逃亡者「どんなに切羽詰まった状況でも悲しい時は悲しいもんだ」

砂漠の女王「……そう、ですか?」

290: 2012/12/15(土) 21:43:35.13 ID:8Cyqucf60
逃亡者「そうだよ」

砂漠の女王「あなたは悲しくないと?」

逃亡者「そうだな。間接的とは言え姫様をあんな風にしちまった国の兵士だ」

砂漠の女王「ですが――――」

逃亡者「仲間だよ。あいつがどう思っていたかは別にしてね」

砂漠の女王「……」

逃亡者「……」

砂漠の女王「ですが、あなたが薄情だとは思いません」

逃亡者「何を根拠に?」

砂漠の女王「薄情な人は自分を薄情だと言いません」

逃亡者「……確かにそうかもね」

砂漠の女王「……」

逃亡者「励ましてくれてありがとう」

砂漠の女王「いえ」

291: 2012/12/15(土) 21:44:26.58 ID:8Cyqucf60
逃亡者「……」

砂漠の女王「相手は谷の国の王ですか?」

逃亡者「多分。そうだろうな」

砂漠の女王「行きますか?」

逃亡者「ああ、一応武人達に話してからだな」

砂漠の女王「……お気を付けて」

逃亡者「大丈夫」

砂漠の女王「……」

逃亡者「多分、格闘家も何かしら関わっていると思います」

砂漠の女王「……私もそう思います」

逃亡者「あいつの手引きで兵士が入ってきた。と考えれば辻褄が合うからな」

砂漠の女王「谷の王の命令でしょうか?」

逃亡者「十分にあり得る話だな」

292: 2012/12/15(土) 21:47:11.66 ID:8Cyqucf60
砂漠の女王「ですが、そうだとするとあなたは裏切られた事に――――」

逃亡者「そんなの人が氏ぬのと同じくらい日常茶飯事だよ」

砂漠の女王「……」

逃亡者「それに俺が何回裏切られたと思ってるの?」

砂漠の女王「そうですね」

逃亡者「武人の所に行ってくる」

砂漠の女王「はい」

逃亡者「……」

砂漠の女王「どうしました?」

逃亡者「いや、聞きたいんだけど谷の王に会ったのっていつだ?」

砂漠の女王「つい先日会いましたよ。わざわざ兵を出す事を告げに」

逃亡者「そう」

砂漠の女王「はい」

逃亡者「ありがとう、んじゃまた後で」スタスタ

293: 2012/12/15(土) 21:49:02.95 ID:8Cyqucf60
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


勇者「……」


コンコン


勇者「勝利か?」

武人「いや、俺だ」

勇者「……」

武人「入っていいか?」

勇者「ああ」

武人「……」ガチャ

勇者「何か用か?」

武人「少し心配でな」

勇者「大丈夫だ……」

武人「姫様が攫われたらしい」

勇者「やっぱりか」

295: 2012/12/16(日) 21:54:29.51 ID:ctJDotXQ0
武人「逃亡者は谷の国に行くそうだ」

勇者「そうか」

武人「お前は竜の山に行くのか?」

勇者「……ああ。行く」

武人「……」

勇者「お前はどうする」

武人「俺は守りに徹するつもりだ」

勇者「……」

武人「お前と逃亡者がオフェンスなら俺と狩人はディフェンスだ」

勇者「大丈夫か?」

真理「我等をなめるな。そんな簡単に氏ぬわけ無かろう」

武人「ははっ。そう言う事だ」


コンコン


勇者「勝利か?」

勝利「ああ、入っていいか?」

296: 2012/12/16(日) 21:55:06.52 ID:ctJDotXQ0
勇者「武人と真理がいるがいいか?」

勝利「いいよ。それに二人に会いに行く手間が省けた」ガチャ

武人「……俺達にも用があったのか?」

勝利「うん。ちょっとした用がね」

勇者「……」

勝利「武人と真理にも聞いてほしい事だ」

真理「……」

武人「ああ」

勝利「知ってると思うけど、あと二日もすればこの体は消える」

武人「ああ、知ってるよ」

勝利「……その前に頼みがあるんだ」

武人「なんだ」

勝利「正義を直すのに俺を使ってほしい」

勇者「……」

真理「……」

武人「……」

297: 2012/12/16(日) 21:55:39.40 ID:ctJDotXQ0
勝利「俺と正義は同じ鉄で作られてる。直すのに問題は無いよ」

武人「だが、お前は……」

勝利「どの道消えるんだ。問題は無い――――」

勇者「やめろ」

勝利「……」

勇者「英雄も失って、お前まで――――」

武人「好きにすればいい」

勇者「武人!!」

武人「勝利の要望だ。それに正義をすぐ直せるんだ」

勇者「だが、そうすれば勝利は……」

勝利「だからどの道消えるんだ」

武人「戦力は多い方はいい」

勇者「なら使い手を見つければ――――」

勝利「別にいいよ」

勇者「……」

勝利「それにそんな簡単に見つかると思ってるの?」

勇者「……」

298: 2012/12/16(日) 21:56:13.68 ID:ctJDotXQ0
勝利「……」

武人「何でそこまでするのかだけ聞かせてくれ」

勝利「そうだね……正直深い理由は無い」

勇者「なら尚更」

勝利「でも、このまま退場するのは嫌なんだ」

勇者「……」

勝利「それに英雄を頃したのは俺自身だ」

勇者「……」

真理「……償いの為に自分を犠牲にするのか?」

勝利「そうかもね」

真理「それは償いではなく自己満足だぞ」

勝利「知ってる」

真理「……」

勝利「でも自分がそれで満足できるならいいんじゃないの?」

真理「……」

勝利「他人が満足しても自分が満足できなきゃ意味が無い」

299: 2012/12/16(日) 21:57:07.83 ID:ctJDotXQ0
真理「お前がそれでいいんならいいさ」

勇者「……」

武人「俺も真理も賛成だ。お前はどうする」

勇者「……」

勝利「お前の為じゃない。ただの自己満足だよ」

勇者「……」

勝利「じゃあ一つ条件を付けていい?」

勇者「なんだ」

勝利「英雄の仇を取ってくれ」

勇者「……」

勝利「これでいい?」

勇者「……」

勇者「……わかった。悪いな、勝利」

勝利「いいよ。別に」

303: 2012/12/17(月) 21:06:08.72 ID:/cMHV3Ra0
勇者「……鍛冶屋を呼んで来る」ガチャ

勇者「……」スタスタ

武人「本当に、いいんだな」

真理「武人。その言い方はどうかと思うぞ」

武人「分かってる。でも勝利の意思はこれくらいの事で揺るがないし、揺るぐのならやらない方がいいだろう」

真理「……」

勝利「いいんだよ。それが俺の償いだ」

真理「……償いか」

勝利「無駄だって言いたいんだろ? でも――――」

真理「わかってる」

勝利「……だよね」

武人「ありがとうな」

勝利「いいんだよ。けど勝ってね」

武人「ああ」

勝利「……」ニコッ

304: 2012/12/17(月) 21:07:06.58 ID:/cMHV3Ra0
勇者「……」ガチャ

鍛冶屋「……」

勝利「ほら、使いなよ」


勝利は鍛冶屋に剣を投げる。


鍛冶屋「……本当にいいのか?」

勝利「みんな同じことを言うね」

武人「仲間だからじゃないのか?」

勝利「仲間ね。安っぽい言葉」

武人「知ってる」

勝利「……じゃあそろそろ剣に戻ろうかな」

勇者「……」

武人「……」

勝利「勝ってくれよ」

真理「心得た」

勝利「ふふ……」ニッコリ

305: 2012/12/17(月) 21:08:19.73 ID:/cMHV3Ra0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


正義「……あれ?」

勝利「おはよう」

正義「私、どうしたんだっけ?」

勝利「魔王の一撃を受けて折れたんだ」

正義「私が?」

勝利「そう」

正義「……」

勝利「思い出せそう?」

正義「……ごめん。無理」

勝利「ははは。仕方ないよ。突然だったし」

正義「もう少し詳しく教えてくれない? あとここは何処?」

勝利「魔王の魔剣を受け止めた時に折れたんだ。そんでここが何処かは俺にも分かんない」

正義「ゆ、勇者は!?」

勝利「無事だよ。でも英雄は氏んだ」

306: 2012/12/17(月) 21:09:11.56 ID:/cMHV3Ra0
正義「え、じゃあ……」

勝利「ああ、俺はもう少ししたら消えるはずだった」

正義「だ、だった?」

勝利「ここは正義の意識の中なのかな?」

正義「え、ど、どういう事?」

勝利「君を直すために勝利を使ったんだ」

正義「……でも、じゃああなたは」

勝利「どうなるんだろうね。消えるのか、溶けるのか、誰にもわからない」

正義「い、いいの?」

勝利「魔王に勝ってくれるって約束したんだ。いいんだよ」

正義「……」

勝利「お前に前会ったのは何十年前だったかな」

正義「な、何の話?」

勝利「覚えてないよね。俺だって曖昧だもん」

正義「……」

勝利「長く生き過ぎるってのも問題だな……」

307: 2012/12/17(月) 21:10:28.77 ID:/cMHV3Ra0
正義「……」

勝利「もう少ししたら目が覚めると思うよ」

正義「そうね」

勝利「負けるなよ」

正義「分かってる」

勝利「じゃあ……」

正義「ええ」

勝利「……」

正義「……」

正義「ありがとね」

勝利「いいよ」

310: 2012/12/19(水) 22:08:06.61 ID:szBJMwnU0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


砂漠の女王「お久しぶりですね」

王「元気そうで何よりだ」

砂漠の女王「そちらの国の様子はどうでしょうか」

王「まずまずだな。今の所敵が攻め込んでくる気配もなさそうだ」

女秘書「砂漠の国は大丈夫ですか?」

砂漠の女王「痛み分けと言った所です」

海辺の王「まあ、どの国も大差ないだろう」

砂漠の女王「……」

海辺の王「……なんだ」

砂漠の女王「英雄が戦氏しました」

海辺の王「……そうか」

王「英雄はお主の国の兵士だったな」

海辺の王「ああ」

砂漠の女王「遺体は我が国にあります。戦争が終わったら――――」

311: 2012/12/19(水) 22:08:54.25 ID:szBJMwnU0
海辺の王「もし引き取り手がいないなら共同墓地に埋葬してくれ」

砂漠の女王「何を言っているんですか」

海辺の王「それが俺の国の方針だ」

砂漠の女王「……」

王「その話は後にしてくれ。今は戦況の話をしたい」

砂漠の女王「谷の王は」

王「欠席だと手紙が届いておる」

砂漠の女王「……」

王「では話を始めよう」

砂漠の女王「はい」

王「やつらが次に狙うと思われる場所は川の町だ」

海辺の王「根拠は?」

王「海辺の町を落とせば山の国と海辺の国を攻めるのにうってつけだ。それにあそこは魔術師が多い場所だ」

砂漠の女王「武器の次は魔法を、と言う事ですか?」

王「そんな所だな」

海辺の王「あそこには俺の国の兵士がいるが、不安か?」

312: 2012/12/19(水) 22:09:25.10 ID:szBJMwnU0
王「一応こちらの国の兵士も増援として送っておこうと思う」

海辺の王「だがそんな防戦でどうする」

女秘書「我々は守りです。攻めは勇者様達が行う予定ですので」

海辺の王「ほう……そうか」

砂漠の女王「私からもよろしいですか?」

王「なんだ」

砂漠の女王「谷の王が怪しい動きをしている事はご存知ですか?」

海辺の王「まあ、確かにらしくない動きを何度もしているな」

砂漠の女王「はい。それで少し前なのですがお姫様が何者かにさらわれました」

海辺の王「谷の国の前の王の娘か?」

砂漠の女王「はい」

海辺の王「それが谷の王の仕業だと?」

砂漠の女王「はい」

海辺の王「……それは無い」

砂漠の女王「な、何故そう言い切れるのですか」

海辺の王「あの王はそんな事しないぞ。あいつは自分の身が一番かわいいんだ。そんな危険な事はしない」

313: 2012/12/19(水) 22:10:23.78 ID:szBJMwnU0
砂漠の女王「……」

海辺の王「現に逃亡者を捕まえようとしていないだろう」

砂漠の女王「……確かに」

王「だが、万が一という可能性もある」

砂漠の女王「はい。それで逃亡者が谷の城に向かうそうです」

海辺の王「危険な行為だな」

砂漠の女王「もしそれで不穏な事があったのなら、それを何かしらの方法で知らせると言っていました」

海辺の王「それで?」

砂漠の女王「谷の城の近くに兵士を置いておいていただきたい」

王「……無断でか」

砂漠の女王「はい」

王「だが、もし違ったらどうする気だ?」

砂漠の女王「……」

女秘書「そうなった場合、この戦いの後も血が流れる事だって十分にあり得ます」

海辺の王「あの王なら特にな」

砂漠の女王「……」

王「この件はまた後で話そう。今回はこの辺りにしようか」

314: 2012/12/19(水) 22:10:54.29 ID:szBJMwnU0
女秘書「そうですね」

王「女秘書」

女秘書「はい」

王「砂漠の女王について行け」

女秘書「……はい」

砂漠の女王「……」

王「近いうちにもう一度会いに行くと思う」

海辺の王「俺の所にはこないのか?」

王「もちろん行く」

王「そろそろ終盤だ。この辺りでいい加減纏まっておいた方だいいだろう」

女秘書「私は何をすればいいですか?」

王「勇者達に会っておいてくれればいい。あ奴等の策も聞いておいて損は無いだろう」

女秘書「分かりました」

315: 2012/12/19(水) 22:11:27.66 ID:szBJMwnU0
~~~~~~~~~~~~~~~~


正義「……」

勇者「正義」

武人「おはよう」

鍛冶屋「良かった……」

正義「ありがと、鍛冶屋」

鍛冶屋「あ、ああ……」

逃亡者「……良かったね」

狩人「……これで全員ね」

信義「ええ」

真理「そうだな」

正義「私は何日寝てたの?」

勇者「三日だ」

武人「よし、じゃあ始めるか」

正義「……どういう事?」

逃亡者「反撃の始まりだよ」

正義「え?」

武人「魔王達に反撃するんだ」

320: 2012/12/20(木) 22:15:01.41 ID:nCqJYVfD0
正義「……」

逃亡者「で、その作戦を決めようって訳」

正義「そ、そう」

逃亡者「とりあえず俺は谷の国に行く」

勇者「俺は竜の山に魔王を倒しに行く」

武人「ああ、知ってる」

狩人「私達はどうしますか?」

武人「他の国の動きを見て決めようと思う」

鍛冶屋「俺達は守るのか?」

武人「ああ、だがお前は魔法使いを止める仕事があるだろう」

鍛冶屋「……」

女秘書「勇者様」コンコン

勇者「お、女秘書!?」

女秘書「お久しぶりです」

勇者「あ、ああ。久しぶり」

武人「どうしたんだ?」

321: 2012/12/20(木) 22:15:29.17 ID:nCqJYVfD0
女秘書「一応今後の方針が決まりましたので、その説明を」

武人「他の国は何と?」

女秘書「次に襲われるであろう場所は川の町ですので、そこを重点的に守りを固めていくと言う事になりました」

武人「じゃあ俺と狩人、あと鍛冶屋は川の町で待機だな」

女秘書「勇者様と逃亡者様についての話は聞いています」

勇者「そうか」

女秘書「ご武運を」

勇者「ああ」

鍛冶屋「ま、魔法使いの情報はないのか?」

女秘書「残念ながら……」

武人「どうするんだ?」

鍛冶屋「武人達と一緒に行くよ」

武人「そうか」

逃亡者「これで全員行動決定かな?」

狩人「そうね」

武人「各自出発はいつの予定だ?」

322: 2012/12/20(木) 22:16:17.91 ID:nCqJYVfD0
逃亡者「俺は明日かな」

勇者「俺もそれくらいの予定だ」

武人「じゃあ俺達も明日辺りに川の町に行くか」

狩人「ええ」

鍛冶屋「そうだな」

女秘書「頑張りましょう」

勇者「ああ」

武人「そうだ」

鍛冶屋「氏ぬなよ」

逃亡者「お前こそ」

正義「……」

信義「こういうのもいいんじゃない? 面白くて」

正義「そうね」

信義「氏なないでね」

正義「ええ、あなたこそ」

323: 2012/12/20(木) 22:16:57.69 ID:nCqJYVfD0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





勇者「……」

鍛冶屋「……」

鍛冶屋「大丈夫か?」

勇者「何が」

鍛冶屋「何がって……深刻そうな顔してるじゃん」

勇者「まあ、魔王と戦う訳だからな」

鍛冶屋「だよな」

勇者「お前だって魔法使いと戦うかもしれないんだろう?」

鍛冶屋「うーん。多分戦う事になると思うな」

勇者「……」

鍛冶屋「だってそうしないと分かんないだろ。あのバカ」

勇者「魔法使いと一番よく居たのはお前だからな。お前が一番よく分かっているだろう?」

鍛冶屋「そうだな」

324: 2012/12/20(木) 22:17:29.02 ID:nCqJYVfD0
勇者「……」

鍛冶屋「……」

勇者「よし、風呂行くか」

鍛冶屋「そうだな」

正義「あなた達本当に好きね」

勇者「別にいいだろ」スタスタ

鍛冶屋「ああ」スタスタ

勇者「……」

鍛冶屋「久々だな」

勇者「ああ、そう言えばそうだな」

勇者「……」ガチャ

逃亡者「あ、お前等も風呂入りに来たの?」

勇者「ああ」

鍛冶屋「逃亡者も?」

逃亡者「まあね。お前等も風呂好きだよな」

勇者「まあ、よく入っていたからな」

鍛冶屋「……」

328: 2012/12/21(金) 22:20:42.53 ID:qwEPdUXx0
勇者「初めて会ったのも風呂だったしな」ヌギヌギ

逃亡者「ああ、そう言えばそうだったね」ヌギヌギ

鍛冶屋「なんか凄い前の出来事みたいだよ」ヌギヌギ

勇者「……」スタスタ

逃亡者「勇者は魔王と戦うんだろう?」スタスタ

勇者「ああ」

逃亡者「あいつの能力知ってるか?」

勇者「能力?」

鍛冶屋「でも魔王って基本的に何でも出来るんだろ?」

逃亡者「その中でも魔王がよく使う能力があるんだ」

勇者「あの浮いたりするやつか?」

逃亡者「そう、あれあれ」

勇者「風か?」

逃亡者「いや、あれは重力だ」

鍛冶屋「じゃあの浮いてるのって重力を無効化したりしてるの?」

329: 2012/12/21(金) 22:36:06.68 ID:qwEPdUXx0
逃亡者「まあ、詳しくは分かんないけど、重力の向きとか力を操作してるんだと思う」

勇者「……覚えておく。ありがとう」

逃亡者「いいっていいって」

逃亡者「で、鍛冶屋は魔法使いを助けに行くんだろ?」

鍛冶屋「……助けに行くって言うか……」

逃亡者「惚れてるんだろ?」

鍛冶屋「ん、まあ」

逃亡者「……若いね」

勇者「お前だって若いだろ」

逃亡者「心はおっさんだよ」

勇者「……俺もそうなのか」

逃亡者「これで童Oはお前だけになるな」

勇者「……」

逃亡者「可哀想に」

勇者「別にどうでもいい」

鍛冶屋「逃亡者の初めては姫様?」

330: 2012/12/21(金) 22:36:39.14 ID:qwEPdUXx0
勇者「鍛冶屋。そういう質問はあまり良くないぞ」

逃亡者「……そういう事いきなり聞いてくる?」

鍛冶屋「あ、ゴメン」

逃亡者「その辺はノーコメントで」

鍛冶屋「うん。そうして」

逃亡者「まあ、お前等ならうまくいくと思うよ」

鍛冶屋「根拠は?」

逃亡者「別にないけど、なんとなく?」

鍛冶屋「……」

武人「楽しそうだな。お前等」スタスタ

勇者「うるさかったか?」

武人「いや、別に」

逃亡者「恋バナってやつだよ。一緒にやる?」

武人「……別にいいけど」

勇者「恋人はいるのか?」

武人「意外な所から意外な質問だな」

331: 2012/12/21(金) 22:37:25.30 ID:qwEPdUXx0
逃亡者「ガツガツした質問し過ぎだね」

武人「恋人はいない」

鍛冶屋「ふーん。今までは?」

武人「いない」

逃亡者「よかったな、勇者」

勇者「なんだ、その言い方は」

逃亡者「女の友達とかはいないのか?」

武人「……友達かどうかは分かんないけど、一応いる」

勇者「……」

逃亡者「勇者は?」

勇者「正義がいる」

鍛冶屋「なあ、それなんか違わないか?」

勇者「女だろ」

逃亡者「うん。それはなんか違う」

勇者「……」

鍛冶屋「でも意外だな。武人って頭硬そうなイメージあったから女友達なんていないと思ってた」

武人「まあ、女の知り合いなんてその一人だけだからな」

332: 2012/12/21(金) 22:38:29.66 ID:qwEPdUXx0
逃亡者「どんな人?」

武人「どんなって……時々飯を作って持って来てくれたりする感じかな」

鍛冶屋「めっちゃいい人やん」

逃亡者「凄くいい人だな」

武人「そ、そうか?」

鍛冶屋「大事にしろよ」

逃亡者「ああ、そう言う人は大事にした方がいい」

武人「あ、ああ……」

逃亡者「勇者。そんなに落ち込むなって」

勇者「別に落ち込んでない」

武人「何の話だ」

勇者「何でもない」

武人「……」

逃亡者「武人も氏ねない身だね」

武人「いや、あの子には俺なんかよりもっといい男が現れるさ」

鍛冶屋「別に好きじゃないのか?」

武人「……俺よりもふさわしい奴がいるって事だ」

337: 2012/12/24(月) 22:19:42.95 ID:99bQOsvE0
鍛冶屋「寂しい事言うなよ」

武人「真実だ」

武人「それに俺はこれから戦うんだぞ。そんな事言えるか」

勇者「生きて帰ってこればいいだろう」

武人「……」

逃亡者「無事帰ってこればいいんだって」

武人「そうかもしれないな」

逃亡者「全員無事で帰って来れるようにね」

武人「……そうだ」

鍛冶屋「……ああ」

勇者「誰も氏なずに勝つ。それが目標だな」

武人「戦争が終わったら集まれるといいな」

勇者「ああ」

鍛冶屋「大丈夫だよ」

逃亡者「だといいんだけどね」

武人「出来る限り頑張ればいいんだよ」

勇者「ああ、そうだな」

338: 2012/12/24(月) 22:20:27.49 ID:99bQOsvE0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


女湯


正義「思ったより騒いでないわね」

信義「そりゃあ子供じゃないんだからそんなにギャアギャア騒がないでしょ」

正義「いや、あのメンバーなら有り得るんじゃない?」

女秘書「一理あります」

正義「でしょ?」

狩人「戦場に行く前だから気分が高揚しててもおかしくないと思うんだけどね」

信義「それはあんただけよ」

狩人「そうかしら?」

信義「当たり前じゃない。そんなふうになるのは戦闘狂だけよ」

狩人「私が戦闘狂って事かしら?」

信義「そう聞こえなかった?」

正義「あなたも逃亡者に似てきたね」

信義「え?」

正義「そういう言い方とかよく似てる」

信義「……嫌だ嫌だ」

339: 2012/12/24(月) 22:20:57.87 ID:99bQOsvE0
正義「ふふっ」

信義「きっとあんたも知らないうちに勇者に似てきてるんじゃない?」

正義「かもしれないわね」

女秘書「でも、悪い事だとは思いませんよ」

狩人「お互いがお互いを理解してるともとれるんじゃない?」

信義「だといいんだけどね」

正義「……」

信義「何?」

正義「いや、関係無いけど、大きいなと思って」

信義「何が」

正義「え、胸が」

信義「当たり前じゃない。あんたと一緒にしないでよ」

正義「私だって人並みにはあるわよ」

狩人「人並みって言うのは普通にって事?」

正義「た、確かにこのメンバーの中では後ろから数えた方が早いけど……」

女秘書「……」

340: 2012/12/24(月) 22:21:40.62 ID:99bQOsvE0
正義「あ」

信義「最下位ね」

狩人「ええ」

女秘書「貧O好きだって多くいます。問題ありません」

狩人「ポジティブね」

信義「でも一理なくもないわね」

正義「え?」

信義「意外とそう言う人多いらしいわよ」

正義「でも勇者と鍛冶屋は……」

信義「あの二人はただの巨Oバカでしょ」

正義「ええと、うん。そうね」

信義「あの二人は基準にしちゃ駄目よ」

正義「じゃ、じゃあ逃亡者は?」

信義「あいつも駄目ね」

正義「じゃあ誰?」

狩人「武人とかいいんじゃない? 頭が固そうだけど一番普通じゃない?」

女秘書「ええ、そうですね」

341: 2012/12/24(月) 22:25:55.23 ID:99bQOsvE0
短いですが今日はここまでです。
二日間も休んでしまってすいません。

今日はクリスマスイブ。明日はクリスマスです。
皆さんがいいクリスマスを過ごせるように願っています。
メリークリスマス。

勇者「正義の為に戦おう」【完】

引用: 勇者「正義のために戦おう」正義「その2よ」