343: 2019/05/17(金) 13:52:38.97 ID:dd6+2abs0


前回:【ラブライブ】千歌「ポケットモンスターAqours!」【その17】

最初から:【ラブライブ】千歌「ポケットモンスターAqours!」【その1】

■Chapter086 『決戦! 四天王! ①』





千歌「──……さて」
 「バクフ」


チャンピオンロードを抜け、梨子ちゃん、曜ちゃんと別れて、歩くこと数十分。


千歌「ついに……辿り着いたね」
 「バクフー」


旅の終着点。


千歌「ウテナシティ、ポケモンリーグ……!」


ウテナシティ自体は正直、街と言えるのか怪しいほど、建物が少なく、ここまでにあったのはポケモンセンターだけだった。

ポケモンセンターで回復を済ませ、その先にある大きな建物──ポケモンリーグまで一直線に歩いてきた。

ポケモンリーグの建物は建物と言うよりは、山の中にくりぬかれて出来ているような形をしていた。

大きなモンスターボールを模した意匠の入口以外は岩石に覆われ、その先には山肌が続いている。

更にその山のずーっと先に、高い塔のようなものが見える。

その様相をぼけーっと眺めているわけだけど……。


千歌「……って、ここで立ち往生してても仕方ないよね」
 「バクフ」

千歌「行こう……!」
 「バク」


バクフーンを一旦ボールに戻し、建物に入ろうとすると……。

その入口に黒い衣装に身を包んだ、ショートボブのベージュの髪の女性が立っていた。恐らくポケモンリーグの門番だろう。

彼女は私の姿を認めると、


門番「ここはポケモンリーグです。これより先はオトノキ地方の全てのジムバッジを揃えた人しか通る資格がありません」


そう告げてくる。

私はごそごそとバッグの中からバッジケースを取り出して、開いてみせる。


門番「……“コメットバッジ”、“ファームバッジ”、“スマイルバッジ”、“ハミングバッジ”、“クラウンバッジ”、“ジュエリーバッジ”、“フォーチュンバッジ”、“スティングバッジ”……。確かに。オトノキ地方のジムバッジ全てを揃えていますね」

千歌「はい」

門番「……ポケモンリーグは待ち構える四天王全員に勝つか負けるまで外に出ることは出来ません。それをわかった上で、この先に進みますか?」

千歌「はい!」

門番「……わかりました。では、通ってください。……御武運を」


ペコリと頭を下げる女性の横をすり抜けて建物の中に足を踏み入れると、

──ゴゴゴ……。

と、音を立てて背後の扉が硬く閉ざされた。


千歌「……ここが、ポケモンリーグ……」


辺りを見回すと、球形に繰り抜かれた空間の中央に真円の足場。

更にその足場の丁度真ん中にエレベーターのようなものが存在し、さらに円状の足場の上半分からは熊手のように橋が伸びていて、それぞれその先に扉が見える。
ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow

344: 2019/05/17(金) 13:53:41.95 ID:dd6+2abs0

千歌「……このエレベーターは」


まず中央のエレベーターに近付いてみるが……全く反応はない。


千歌「……エレベーターは動かないみたい……。となると……」


私の視線は四つの扉の方に向く。


千歌「……あの先にそれぞれ四天王がいるってことかな……」


特に順番の指定とかはないようだ。

よく見てみると、扉の上になにやらマークがある。

左から順にピンク色をした光が羽を広げたようなマーク、水色の氷の結晶のようなマーク、黒色の竜のようなマーク、そして白色の刃のようなマークだ。


千歌「……って言っても何も情報もないし……全員に勝たなくちゃいけないんだもんね。左から順番に進もう」


私はまずは一番左の扉から入ることにする。

──扉の前に辿り着いて。


千歌「……よし、行こう……!」


扉を押し開けた──。





    *    *    *



345: 2019/05/17(金) 13:56:32.62 ID:dd6+2abs0


──扉の向こうにはポケモンジムでも見慣れたバトルスペースが拡がっていた。

ただ、その内装は非常にファンシーでピンク色が溢れている。

私はゆっくりと奥へと歩を進めると──奥に人影があった。


 「……やっと来たみたいね」

千歌「……え」


私に声を掛けてくるその人には……見覚えがあった。


千歌「にこさん……?」

にこ「ええ、久しぶりね、千歌」

千歌「?? どうして、にこさんがここに?? ここ、ポケモンリーグですよ?」

にこ「……あー、えーとね」

千歌「??? ここって四天王しか居ないんですよね??」

にこ「そうよ。つまり、そういうことよ」

千歌「……? どゆこと?」

にこ「……はぁ、あんたホントおばかなんだから……」

千歌「え、ご、ごめんなさい……」

にこ「わたしがその四天王の一人よ」

千歌「……え?」


一瞬ポカーンとしてから、


千歌「え!?」


驚く。


にこ「だから、ちゃんと勉強しておきなさいって言ったじゃないの……まあ、ここまで辿り着けたわけだし、別にいいけど。とにもかくにも、ここまで来たらやることは一つ、バトルのみよ」


にこさんはそう言って、6つのボールを放る。


 「クチ」「マリ」「フィー」「キッスゥ」「ミミッキュ」「クレフィー」

にこ「じゃあ、バトルルールの説明をするわね。確認するけど、この部屋が最初の挑戦?」

千歌「は、はい!」

にこ「わかった。最初に説明しておくと、このバトルルールは四天王全員で共通ルールだから忘れないようにしなさいよ」

千歌「はーい」

にこ「ここポケモンリーグでのルールは最初に6匹を見せ合って、そのあとにお互い3匹選出ポケモンを決めてから戦うわ。つまり使用ポケモンは3体。3体全てが先に戦闘不能になった方が負けよ。一度3匹のポケモンを決めたら戦闘中選ばなかった3匹と入れ替えることは出来ない。だけど、その3匹の中でだったら、一匹ずつ出しても、同時に出しても、いつ交換しても構わないわ」


まずお互い6匹を見せ合うってことは、こっちも全部手持ちを出さないといけないだろう。

私は6個のボールからポケモンを出す。


 「バクフ」「ワッフ」「ピィィ」「ワォン」「グォ」「ゼル」


にこ「バクフーン、トリミアン、ムクホーク、ルガルガン、ルカリオ、フローゼルね。ちなみに、にこの手持ちはクチート、マリルリ、ニンフィア、トゲキッス、ミミッキュ、クレッフィの6匹よ」

千歌「はい! わかりました!」

にこ「じゃあ、全員ボールに戻してから……トレーナースペースに後ろの方に台座があるでしょ」

346: 2019/05/17(金) 13:57:47.90 ID:dd6+2abs0

言われて見てみると、確かにトレーナースペースの後ろの方に台座がある。

そこには丸い3つの窪み。


千歌「ここに選んだ3匹のボールを置くんですね」

にこ「そういうこと。ルールは把握できたかしら」

千歌「はい!」

にこ「それじゃ相手に見えないように3匹選んで。選出できたら、言って頂戴」

千歌「わかりました!」


バトルスペース内のトレーナースペースに入り、にこさんに背を向けて台座を見る。

──3匹か……。

にこさんにはダリアシティでお世話になったから、そのときの手持ちは見られているし、バトルも見られてるから戦略が筒抜けな可能性が高い。

……となると、あのときまだ手持ちにいなかったルカリオとフローゼル、それと……。


千歌「うん、この3匹にしよう」


三つのボールをセットして振り返る。


にこ「準備は出来たかしら」

千歌「はい!」

にこ「それじゃ……始めましょうか」


にこさんが一歩前に歩み出る。


にこ「──四天王『大銀河宇宙No.1! フェアリーアイドル』 にこ! さぁ、ショータイムの始まりよ!!」


お互いの一匹目のボールがフィールド舞う──バトルスタート……!!





    *    *    *



347: 2019/05/17(金) 14:02:15.15 ID:dd6+2abs0


千歌「行くよ!! ルカリオ!!」
 「グゥォッ!!!」

にこ「行くわよ! ニンフィア!!」
 「フィーー!!!」


にこさんの一匹目はニンフィア。


にこ「“ハイパーボイス”!!」
 「フィイィィィィィーーーーーーー!!!!!!!!!!」

千歌「わわぁ!!!?」
 「グゥォ!?」


開始早々、いきなりの大技が飛び出す。


千歌「ぐ、うるさ……」


耳がキーンとする。


千歌「ルカリオ、大丈夫……!?」
 「グ、グゥォッ!!!!!」


とりあえず、問題なさそうだ。

だけど、この狭い空間でこの技を連発させるのは不味い……!

速攻勝負するしかない……!


千歌「“バレットパンチ”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


踏み込み飛び出す、神速の弾丸拳。

ニンフィアは避ける暇すらなく拳が直撃する。


 「フィーーーッ!!!!?」


幸いニンフィアは火力はあるものの動きが速いわけではなさそうだ。

“バレットパンチ”が炸裂して軽く後ろに吹き飛ぶ、


千歌「畳み掛けろ!! “コメットパンチ”!!」

 「グゥォッ!!!!!」


飛び出し、流星拳を叩き込もうとした瞬間、


にこ「マリルリ!!」

千歌「!」


にこさんが追加でボールを放って、マリルリを繰り出す。


 「マリーー」


──ガシッと、マリルリはルカリオの拳を真正面から、受け止める。


千歌「え!?」


そして、そのままルカリオの拳を掴んで、

348: 2019/05/17(金) 14:05:13.54 ID:dd6+2abs0

 「グ、グゥォ!!!?」


持ち上げる。

可愛らしい見た目に反してなんというパワーだろう、


千歌「ま、まずい!! フローゼル!!」
 「ゼルルッ!!!!!」


私もすかさず二匹目を繰り出し、


千歌「“みずのはどう”!!!」
 「ゼルーーーーー!!!!!!」


後方からルカリオの援護をする。


 「マリ!!」


前方からの水波攻撃に気付いたマリルリは、


 「マリッ!!!!」


飛んで来る“みずのはどう”に向かって、ルカリオを投げつけてくる。


千歌「っく……! ルカリオ!!」

 「グゥォッ!!!!!」


こっちに向かって吹っ飛ばされているルカリオは宙にいるまま、波動を操作し、

器用に自分には攻撃が当たらないように捻じ曲げる。


にこ「! ちゃんと、考えてるじゃない!」


“みずのはどう”なら波動攻撃だから、いざというときにルカリオも攻撃を操作できる。

こういう連携技は積極的に使っていかないと、

何せ──メガシンカは当分使えないからだ。

四天王は4人全員を勝ち抜かないといけないと門番の人は言っていた。

ただ、メガシンカは連発すると身体への負担が大きい。

それを考えるとメガシンカはもっと後に温存したい。

そんなことを考えていたら、


にこ「ニンフィア! まとめて吹っ飛ばすわよ!!」
 「フィーー!!!」


再びニンフィアが前に出てくる。

“ハイパーボイス”はダメだ!


千歌「フローゼル! “いちゃもん”!!」
 「ゼル、ゼルッル!!!!」


フローゼルがニンフィアに“いちゃもん”を付ける。

“いちゃもん”を受けたポケモンは同じ技が連発できなくなる。


にこ「封じてきた……! “ムーンフォース”!!」
 「フィーーー!!!!!!」

349: 2019/05/17(金) 14:06:30.96 ID:dd6+2abs0

“ハイパーボイス”を封じられた瞬間、にこさんは咄嗟に技を変えてくる。

月のエネルギーを攻撃に変えたフェアリー技が飛んで来る。

エネルギー技なら撃ち合える……!!


千歌「ルカリオ! “ラスターカノン”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオは対抗する形ではがねのエネルギーを集束して、発射する。

フィールド中央で二匹の攻撃がぶつかり合い──相頃する。

でも、これでまたニンフィアは“ハイパーボイス”が使える状態になってしまった。

とにかく、まずはニンフィアだ……!!


千歌「ルカリオ!! “しんそく”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


床を蹴って、ルカリオが飛び出す。


にこ「マリルリ!!」
 「マリッ」


再びフィジカル担当なのか、マリルリが前に出てくる。

こうしてニンフィアを守りながら、範囲攻撃で制圧するのが、にこさんの戦い方なんだろう。


千歌「なら……!! ルガルガン、行くよ!!」
 「ワォーーーンッ!!!!!」

にこ「! あのときのルガルガンね……!!」


私はルガルガンを繰り出す。


千歌「“アクセルロック”!!」
 「ワォンッ!!!!」


ルガルガンは天井や壁を跳ね回りながら、軌道の読めない高速軌道で接近する。


にこ「速い……厄介ね」


 「グゥォッ!!!!!」「ワォーーーーンッ!!!!!!」

二匹のポケモンが軌道の読みにくい高速技で翻弄する。


にこ「なら……マリルリ、“ばかぢから”!!」
 「マリッ!!!!!」


マリルリが突然地面を殴りつける、

すると、


千歌「わわ!?」


建物がぐらぐらと揺れる。

それによって、


 「グォッ!?」 「ワゥッ!!!」


床や壁や天井を蹴って加速していた二匹の動きが一瞬鈍る。

350: 2019/05/17(金) 14:08:08.56 ID:dd6+2abs0

にこ「確かに速いけど……少し鈍らせれば十分目で追えるわよ!!」

千歌「……っ!」


にこさんの対応が早い。

完全に見切られる可能性が高いが、一旦引く……?

いや、引いても“ハイパーボイス”が飛んで来るだけだ。


千歌「突っ込め!!」

 「グゥォッ!!!!」「ワォンッ!!!!!」


スピードダウンは痛いが、誤差だ。

そう自分に言い聞かせ二匹を突撃させる。


にこ「マリルリ!! “はたきおとす”!!」
 「マリッ!!!!」

 「グゥォッ!!!!?」

千歌「!? ルカリオ!!?」


マリルリに狙いを定めて飛び出したルカリオが綺麗に迎撃され、床に叩き落とされる。

──でも……!!

本当の狙いは、


千歌「行けぇ!! ルガルガン!!」

 「ワォーーーーンッ!!!!!」


ルガルガンでマリルリの後ろに隠れているニンフィアを攻撃すること……!

変則的な軌道で、マリルリを周り込むように突っ込んでいく。

ニンフィアを射程に捉えた……そのとき、

──ヌッと黒くて凶悪そうな、口が現われた。


千歌「!!!?」

にこ「“ふいうち”!!」
 「クチーーーッ!!!!!!」

 「ギャウッ!!!!?」


ルガルガンがその大きな口に食べられた。


千歌「ル、ルガルガン!!?」


その大きな口は──


 「クチーーー」

千歌「クチート……!!」


クチートの大アゴのようなツノだった。

 『クチート あざむきポケモン 高さ:0.6m 重さ:11.5kg
  大人しそうな 顔に 油断を していると 突然 振り向き
  バクリと 噛み付かれる。 鋼の 顎は ツノが 変形した
  ものだ。 噛み付くと 絶対に 放さないので 注意。』

351: 2019/05/17(金) 14:10:55.71 ID:dd6+2abs0

にこ「ルカリオはマリルリが……ルガルガンはクチートが押さえたわ」

千歌「……っ」

にこ「じゃあ、今度こそニンフィア……!!」
 「フィァァ……!!!」


ニンフィアが息を吸う。“ハイパーボイス”の予兆。


千歌「──……それを待ってたんです!!」

にこ「……は?」


言葉と共に──ヒュン! と音がする。


にこ「!? な、なんの音……!?」


にこさんがキョロキョロと周囲を見回す。


にこ「……何もない……? こけおどしとは小細工使ってくれるじゃない!! ニンフィア、決めてやりなさい!! “ハイパーボイス”!!!」
 「…………」

にこ「……ニンフィア?」
 「フィ……ア……」


ニンフィアが突然、パタリと倒れる。


にこ「ニンフィア!?」


にこさんが傍らのニンフィアを見ると──ニンフィアは攻撃を受けて、戦闘不能になっていた。


にこ「攻撃!? いつのまに……!?」

千歌「確かに、ルカリオもルガルガンも速いけど……もっと速い攻撃があったとしたら? それこそ、“ハイパーボイス”みたいに!」

にこ「もっと、速い……空気の振動……まさか!?」

千歌「そうです! 空気です!!」
 「ゼルルルッ!!!!!!」


フローゼルが尻尾を高速回転させながら、声をあげる。

ニンフィアを攻撃したのは他でもない。──“かまいたち”だ。

音波で攻撃する、ということは攻撃の瞬間口を大きく開かないといけない。

口の中なんて、どう考えても急所でしかない。

固定砲台のように、大技を繰り出すニンフィアの急所に攻撃を叩き込むこと、フローゼルはずっとソレを狙っていたのだ。


千歌「“かまいたち”!!」
 「ゼルッ!!!!!」


再度、フローゼルから空気の刃が飛び出し、


 「マリッ!!!?」


今度はマリルリを切り裂く。


にこ「っく……!! “アクアジェット”!!」
 「マ、マリッ!!!!」


距離を詰めるために飛び出そうとしてくるマリルリ──

352: 2019/05/17(金) 14:13:38.83 ID:dd6+2abs0

 「マリッ!!?」


──がつんのめった。


にこ「!?」

 「グゥォッ!!!!」


先ほどマリルリに叩き落とされたルカリオが、足を掴んだのだ、


千歌「そのまま、上にぶんなげろ!!」

 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオがマリルリを真上に放り投げる、


 「マリィーー!!!?」


……更に──ギャギャギャッ!!! と金属を擦るような、嫌な音がフィールド上に響き渡る。


にこ「こ、今度は何よ!?」


にこさんが音のする方を振り返ると、


 「ク、クチーーー!!!!?」
にこ「!!?」


クチートの大アゴに噛み付かれたルガルガンが、アゴの中で高速回転を始めていた。


千歌「“ドリルライナー”!!!」

 「ワォーーーンッ!!!!!」


無理矢理身を捩りながら、鋼のアゴを内側から──ぶち壊した。


 「ク、クチィィィ!!!!!?」


クチートの上顎をぶっ壊し、そのままの勢いで、空中にいるマリルリに向かって、


千歌「“アイアンヘッド”!!!」

 「ワォーーーーンッ!!!!!!」

 「マリィッ!!!!!?」


回転も加わった、鋼鉄の頭突きを炸裂させた。

玉突きのように吹っ飛ばされたマリルリは、その弾力のある身体で、室内の壁、床、天井を何度も跳ね回ったあと──


 「マ、マリ……」


気絶した。


千歌「よっし……!!」

 「ク、クチィ……」


残るはクチートだけだけど……。

353: 2019/05/17(金) 14:15:26.08 ID:dd6+2abs0

にこ「……正確には、戦闘不能じゃないけど……上顎を吹っ飛ばされてるし、とてもじゃないけど、戦闘続行は出来ないわね。マリルリ、クチート、ニンフィア。わたしの手持ちは全て戦闘不能よ」

千歌「……じゃあ!!」

にこ「ええ、千歌。あなたの勝ちよ」

千歌「ぅやったーー!! ルガルガン! ルカリオ! フローゼル! 皆よくやったよー!!!」
 「ワォーンッ」「グォ」「ゼルーー」


3匹を抱き寄せる。


にこ「……まさかストレート負けするとはね……。ホントに強くなってここまで辿り着いたのね」

千歌「えへへ……」

にこ「……負けたのは悔しいけど……ま、最後にちゃんと戦うことが出来てよかったわ」


──と、にこさんが意味深なことを言う。


千歌「最後……? どういうことですか?」

にこ「あー……えっとね、わたし……近いうちに四天王をやめようと思ってるの」

千歌「……え!? なんでですか!?」


確かに今回のバトルの結果は私が3匹を残してのストレート勝ちだったとは言え、にこさんは紛れもない実力者なのには変わりないはず……。


にこ「あーいや、強さの問題じゃなくてね。グレイブ団の異変の間、結局わたしはダリアシティに付きっ切りで他の四天王みたいに地方全体の警護の仕事が出来なかったのよ。それで思ったのよ、まだダリアのジムをこころとここあに任せるのは早かったかなって……」

千歌「そ、そうですか……?」


こころちゃんとここあちゃんも相当手強かった記憶があるんだけど……。


にこ「強さよりも……単純に経験がね。ゴーストポケモンの撃退こそ問題なかったものの、街の人の避難誘導とかは、お世辞にもうまく出来てたとは言いがたかったのよ」

千歌「……なるほど」


確かにあの二人はかなり騒がしかったし、そういう誘導指示とかはうまく出来なさそうかも。


にこ「だから、にこがダリアのジムリーダーに戻って……その後どうするかをもう少し慎重に考えようと思ってね」

千歌「戻って……ってことは、にこさん昔はジムリーダーだったんですね」

にこ「ええ。後任は任せてくれって二人が言うから、ダリアのジムリーダーから、四天王に昇格したんだけどね。でも、やっぱり街の皆をちゃんと守れてこそだもの……」

千歌「そっか……」


ジムリーダーは街の人たちを守る役割もあるから、そういうことなら仕方ないのか……。


にこ「……ま、二人がもっと成長して大人になったら戻ってくるかもしれないから」


そう言いながら、にこさんは肩を竦める。


にこ「なにはともあれ……四天王一人目突破よ」

千歌「! はい!!」

にこ「にこの後ろにワープ装置がある。そこから、最初の広場に戻れるわ。次の部屋も頑張りなさいよ」

千歌「はい!!」


にこさんからの激励を受けて──私は次なる四天王との戦いに挑みます。



354: 2019/05/17(金) 14:16:06.68 ID:dd6+2abs0


>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【ポケモンリーグ】
no title

 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.61  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.55 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.58 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.59 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.63 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.59 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:173匹 捕まえた数:15匹


 千歌は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.




355: 2019/05/17(金) 15:38:05.37 ID:dd6+2abs0

■Chapter087 『決戦! 四天王! ②』





千歌「──……よっ、と」


にこさんの部屋を突破し、ワープ装置で中央の広間に戻ってくる。


千歌「……お」


すると、にこさんの部屋に続く橋がぼんやりと光っているのが目に入る。

恐らく突破した証なんだろう。

その光はさっきまで居た部屋の方から中央のエレベーターへと伸びている。


千歌「この光が全部集まると、エレベーターが動くってことだね」


そしたら私は晴れてチャンピオンに……でも、


千歌「この上……何があるんだろう……?」


……まあ、いっか。

どちらにしろ、この先に進むには勝つしかないんだ。


千歌「よし、次の部屋に進むぞ」


私は左から2番目の部屋に向かって歩を進める──





    *    *    *





──二つ目の部屋に入って、まず思ったことは……。


千歌「さ、さっむ……っ!!」


とにかく寒かった。


 「あら? お客さんなんて、久しぶりね」

千歌「!」


凍えていたら奥から声を掛けられる。

そこに居たのは金髪で長身の女性。

356: 2019/05/17(金) 15:39:05.18 ID:dd6+2abs0

絵里「こんにちは、私は絵里よ。こうして会って話すのは初めましてね、千歌ちゃん」

千歌「は、はじめまして! ……って、なんで私のこと知ってるの?」

絵里「あなたのことは、海未からよく話を聞かされてるからね……海未には会った?」

千歌「い、いえ、まだです」

絵里「そう……それじゃ残念ね」

千歌「え?」

絵里「あなたは海未に会うことなく、このポケモンリーグを去ることになるみたいだから……」

千歌「……!」

絵里「……なんてね」


絵里さんはいたずらっぽく舌を出す。


千歌「私は負けるつもりはありません!!」

絵里「ふふ、気合い十分ね……。それじゃ、皆出てきて」


絵里さんが6つのボールを放る。


 「シア…」「バニバニ~」「ジュラルー」「コーーン」「ドパン!!」「ジュゴ~ン」


絵里「私の手持ちはグレイシア、バイバニラ、ルージュラ、キュウコン、サンドパン、ジュゴンよ」

千歌「皆、出てきて!」
 「バクフ」「ワッフ」「ピィィ」「ワォン」「グォ」「ゼル」

絵里「千歌ちゃんの手持ちはその6匹ね」

千歌「はい!」

絵里「それじゃ……お互い選出に入りましょうか」

357: 2019/05/17(金) 15:40:24.43 ID:dd6+2abs0

絵里さんはそう言ってポケモンをボールに戻す。

私も皆をボールに戻して、選出に入る。

見た感じ、絵里さんの手持ちはこおりタイプばかりだった。

道理で部屋も寒いわけだ。

ここはいわば敵地、きっとこのフィールドはそれぞれの四天王が戦いやすいようにチューンナップされているんだろう。


千歌「さて……今回はどうしようかな」


とりあえず、相手がこおりタイプなら……。

バクフーンを外す理由はない。後は同じようにこおりタイプに強いルガルガンと……。


千歌「へ、へっくち!!」


うぅ……寒い。

……暖かそうな子がいい。たぶん。


千歌「よし……この3匹で」

絵里「準備は出来たかしら?」

千歌「はい!」


ボールをセットし終えて絵里さんの方に向き直る。


絵里「それじゃ、始めましょうか。四天王『凍てつくアクアブルースノウ』 絵里。全力でぶつかり合いましょう!!」


お互いのボールが放たれる……バトル開始だ──





    *    *    *



358: 2019/05/17(金) 15:42:23.75 ID:dd6+2abs0


千歌「行くよ! バクフーン!!」
 「バクフーーーンッ!!!!!」

絵里「キュウコン! サンドパン! GO!!」
 「コーーンッ!!!」「ドパンッ!!!!」


アローラキュウコンの特性“ゆきふらし”によって、フィールド内に“あられ”が降り始める。

そして、その中を──


 「ドパンッ!!!!!」


真っ白なアローラサンドパンが飛び出してくる。


千歌「は、速い!?」

絵里「“メタルクロー”!!」

 「ドパンッ!!!!!」


普通のサンドパンよりも発達している巨大な爪がバクフーンに切りかかる。


千歌「“ほのおのパンチ”!!」
 「バクフッ!!!!」


技を受けるために、炎を纏った拳を前に突き出す。

──ガイン、という硬いものを弾く音と共に、


 「ドパンッ!!!!?」


サンドパンの爪が炎拳に弾き飛ばされ、その衝撃で一瞬無防備な状態になる。


千歌「“かえんほうしゃ”!!」
 「バクフーーーー!!!!!!」


すかさず、追撃。

この至近距離で、こおりタイプのサンドパンが“かえんほうしゃ”を受けたら大ダメージは間違いないだろう。

──が、


 「ドパンッ!!!!」


サンドパンがキラキラと輝くオーラのようなものを纏って、炎の中から飛び出してくる。


千歌「っ!?」

絵里「“きりさく”!!」

 「ドパンッ!!!!!!」


そのまま、バクフーンを切り裂く。


 「バクフッ……!!!!」


今度は完全に不意を突かれてしまったせいで、攻撃が直撃し、バクフーンが後ろに仰け反る。

だが、サンドパンの攻撃はそれだけでは終わらない。


絵里「“じしん”!!」

 「ドパンッ!!!!!!」

359: 2019/05/17(金) 15:43:28.00 ID:dd6+2abs0

サンドパンは床に爪を突きたて、そのまま床ごとぐらぐらと揺する。


 「バ、バクフーー」
千歌「バクフーン、落ち着いて!!」


大きな揺れに動揺を見せるバクフーン。

私は揺れる足元に視線を落とし、転ばないようにしていると、


絵里「ふふ、足元ばっかり見てちゃダメよ」


絵里さんが意味深なことを言う。

直後──バキ、バキリ、と何かが砕けるような嫌な音が頭上から聞こえてくる。


千歌「……な、何!?」


咄嗟に天井を見上げると──いつの間にか天井に出来ていた大きなつららが、落っこちてきていた。

“つららおとし”だ……!!


千歌「“ふんか”!!」
 「バクフーーーーンッ!!!!!!!!!」


咄嗟に頭上に向かっての爆炎でつららを溶かす。

だが、炎を防御に使ってしまったために、前方からの攻撃に無防備に──


絵里「サンドパン! “アクアテール”!!」
 「ドパンッ!!!!!!」


サンドパンが身を捻って、みずタイプの尻尾攻撃を繰り出してくる。

避けきれない。


千歌「っく!!」


私はバクフーンとサンドパンの間に向かってボールを投げる。


 「ワッフッ!!!!」
千歌「しいたけ!! “コットンガード”!!」


飛び出した、しいたけが毛皮を膨らませ──ボフっと音を立てながら、サンドパンの尻尾を受け止める。


 「ド、ドパン……!!」


攻撃を受け止められ、焦ったサンドパンに向かって、


千歌「“ずつき”!!」
 「ワッフッ!!!!」


頭突いて反撃。

だが、


絵里「サンドパン!! “いかりのまえば”!!」

 「ドパンッ!!!!」

 「ワゥッ!!!?」

360: 2019/05/17(金) 15:45:14.01 ID:dd6+2abs0

サンドパンは、まるで怯まず反撃してくる。

いくら、効果がいまひとつなんだとしても、ダメージが薄すぎる。

恐らく原因は──サンドパンの周りにあるキラキラと光るオーラのせいだ。

そして、それを使ってるのはさっきから攻撃してこない、後ろのポケモン。


千歌「キュウコンの技……!!」


思い至ってキュウコンの方を見ると、キュウコンの居る場所の上の方にはオーロラが広がっていた。


千歌「“オーロラベール”……!!」


確か、輝くベールで味方の防御と特防を一気に上げる技だ。


絵里「……ふふ」


絵里さんが不敵に笑う。

キュウコンを放っておくと攻撃がうまく通らない……!

サンドパンは前衛で食い止めている、なら今のうちに……!


千歌「ルガルガン!! お願い!!」
 「ワォーーンッ!!!!!」


ボールから繰り出したルガルガンが床を蹴って飛び出す。

ルガルガンはそのまま、壁を蹴って一気にキュウコンに肉薄する。


千歌「“アクセルロッ──」


 「──ドパンッ!!!!!!」

 「ギャゥッ!!!?」

千歌「んなっ!!?」


先ほどまで、しいたけと組み合っていたはずのサンドパンがルガルガンに追いつき、ぶっとい爪でルガルガンを押さえつけていた。


絵里「ふふふ、驚いてるわね」

千歌「……!」

絵里「サンドパンの特性は“ゆきかき”。あられが降るフィールドでは、素早さが倍増するわ」


つまり……そのスピードによって追いつかれたと言うことだ。


絵里「それに……キュウコンも攻撃は出来るわよ! “ふぶき”!」
 「コーーーンッ!!!!」


キュウコンの方から強烈な冷風が飛んで来る。


 「ワ、ワゥ…!!」


その冷気によって、パキパキとしいたけの足元が凍り始める。


千歌「っく……!! バクフーン、“ねっぷう”!!」
 「バクフーーー!!!!!」


対抗するように、“ねっぷう”を撃つ。

どうにか相性のお陰で攻撃は拮抗しているが──

361: 2019/05/17(金) 15:46:29.44 ID:dd6+2abs0

絵里「行くわよ、グレイシア!!」
 「シア」

絵里「“ふぶき”!!」
 「シアアーーーー!!!!!」


繰り出された3匹目、グレイシアからの追加の“ふぶき”で一気に劣勢になる。


千歌「ぐ……!!」


前衛では、


 「ワゥッ!!!!」

 「ドパンッ!!!!」


どうにか、爪を引き剥がし、自身のタテガミの岩でルガルガンがサンドパンと撃ちあっているが、

後衛同士の戦いは完全にパワー負けしている。


 「バ、バクフーー……!!!」

千歌「! バクフーン!!」


完全に“ねっぷう”が押し負け、“ふぶき”によってバクフーンも凍り始める。

いや、それだけじゃない──。


千歌「……っ」


自分自身の吐く息が白い。

気付けば私の足元も凍り始めている。

肺に刺さる冷たい空気と、凍て付く寒さが集中力をどんどん奪っていく。


千歌「……ぐっ……しっかりしろ!!」


頭を振りながら、自分を鼓舞する。


絵里「……こおりタイプの真髄は場の支配」

千歌「……っ……?」

絵里「寒さは相手の思考能力を奪い、全てを雪と氷に閉ざしていくわ。もうここは私たちが完全に場を支配している」

千歌「……ぐ……」


だんだん足に力が入らなくなり、床に片膝をついてしまう。

床はもう雪だらけで、ついた膝が冷たい。


 「ワ、ワゥ……!!!」

 「バクッフゥ……!!!」


二匹にもどんどん雪が降り積もり姿が見えなくなっていく。

指示を──出さなきゃ。

頭ではそう思ってるはずなのに、


千歌「は……はっ……」

362: 2019/05/17(金) 15:47:56.85 ID:dd6+2abs0

もう、寒すぎて舌がロクに回らない。

手足が悴み、寒さがもはや痛い。


 「ギャゥッ!!!?」


──ルガルガンの悲鳴が聞こえる。

指示を全く出してあげられなかった所為で、ついにサンドパンに撃ち負けてしまったんだろう。


絵里「……雪に閉ざされて眠るといいわ。大丈夫、勝負がついたらちゃんと助けてあげるから」


千歌「ぐ……ぅ……」


もう……ホントに……ダメ、だ……。

何故だか、だんだんと眠くなってくる。

寒いと眠くなるってのは、どうやら本当らしい。

そんなどうでもいいことを考えながら──私の意識は落ちて行った。





    *    *    *





 「ワフ」


──声がする。


 「ワゥ、ワフ」


──昔から知ってる聞きなれた鳴き声。

その鳴き声はどんどん近付いてきて、


 「ワゥ」


その鳴き声がすぐ傍で聞こえるようになったとき、全身が暖かいものに包まれる。

──知ってる。この感覚。


千歌「しい……たけ……」
 「ワゥ」


しいたけの暖かい“ファーコート”。


 「ワゥ…」
千歌「えへへ……相変わらず、しいたけは暖かいね……」
 「クゥーン…」


辺りは室内だと言うのに、強烈な“ふぶき”のせいで完全にホワイトアウトしていた。

これが四天王絵里さんの実力……。

こんな圧倒的なフィールド支配力……勝ち目があるんだろうか。

そんなことを考えていると、


 「ワォン」
千歌「わっ」

363: 2019/05/17(金) 15:49:22.84 ID:dd6+2abs0

しいたけが身を寄せながら、頬を舐めてくる。


千歌「…………いや、まだだよね」
 「ワゥ」


バトルは3匹の手持ちが完全に戦闘不能になるまで続く。

まだこうして“ふぶき”が止んでいないのは、絵里さんもまだ戦闘が完全に終わってるとは思っていない証拠だ。


千歌「……最後まで、戦う……私が諦めちゃダメだよね」
 「ワッフ」


暖かい、しいたけが傍に居てくれるお陰なのか、だんだん頭が働くようになってきた。

……とは言ったものの、どうするか。

ルガルガンは恐らく既に戦闘不能だ。

バクフーンも雪に埋もれて、こおりづけ状態。

まともに動けるのは、しいたけのみだ。


千歌「……そういえば、しいたけ」
 「ワゥ?」

千歌「しいたけだけ……まだ、やってないよね」
 「ワゥ」

千歌「必殺技」
 「ワフ」

千歌「海未師匠は……のんびりやさんのしいたけには、向いてないって言ってたけどさ」
 「ワォ」

千歌「……やってみない?」
 「ワン」


しいたけが立ち上がる。


千歌「うん、ありがと。しいたけ」
 「ワッフ」


私もゆっくりと立ち上がる。

真っ白な視界。辺りは“ふぶき”による風の音しかしない。

寒くて、冷たくて、前も見えず、何もわからなくて怖い。

でも……。


千歌「私には……しいたけがいる」
 「ワォン」


誰よりも心強い、ちっちゃい頃から私を守って、そばに居てくれた、しいたけが──。

──集中しろ。

吹き荒ぶ風の中だけど、耳を研ぎ澄まして、音を聞け。

きっと来る筈だ──

 ──ザッ

雪を掻きながら、トドメを刺しに──

 ──ザッザッ


 「──ドパンッ!!!!!」

千歌「──そこだ!!!! “かたきうち”!!!」
 「ワォンッ!!!!!」

364: 2019/05/17(金) 15:51:49.59 ID:dd6+2abs0

飛び掛ってきた、サンドパンのボディに向かって──


 「ドパンッ!!!?」


しいたけが思いっ切り“ずつき”を叩き込む。

反撃されると思っていなかったのか、自分の飛び掛かる速度を逆に利用された一撃に、サンドパンは大きなダメージを負って雪の上を転がる。

そのまま、転がったサンドパンが何かにぶつかる。


千歌「……!!」


恐らくそのぶつかったのは、


千歌「バクフーン!! “かえんぐるま”!!」
 「──バ、ックフゥゥゥ……!!!!!!!」


バクフーンだ。


 「ド、ドパァァァンッ!!!!!?」


一気に加熱し、バクフーンは自分の身に火炎を纏って、サンドパンを巻き込みながら、氷を溶かして復活する。


千歌「バクフーン!!! ありったけの炎で!!! やるよ!!!」
 「バクフゥーーーーー!!!!!!」

千歌「“ふんえん”!!!」
 「バクフゥゥーーーーー!!!!!!!」


バクフーンの全身から、超高温の噴煙が噴き出す。

この技は味方を巻き込むから使うのを躊躇していたが、もうここまで来たら関係ない。

全身の炎熱エネルギーを一気に放出して、周囲の雪や氷を溶かしていく。


千歌「ここで炎を使い切るつもりで!!!! 一気に燃え上がれぇ!!!!」
 「バックフゥゥゥゥゥーーーーーーンッ!!!!!!!!!!」

千歌「“もえつきる”!!!」


バクフーンを中心に、なにもかも顧みずに発する超高熱が、周囲の“ふぶき”を一気に吹き飛ばす。


絵里「……なっ!!?」


晴れた先で絵里さんが驚いた表情をしていた。

急な超熱波がフィールド全体を一気に覆い尽くす。


絵里「ぐっ!!!? なんて、熱量!!?」
 「コーンッ!!!!!」

千歌「一気に全部焼き尽くせ!!!」
 「バクフゥゥゥゥーーーー!!!!!!!!!!!!」


爆炎が絵里さんたちに向かって拡がっていく。


絵里「!! キュウコン!! “ぜったいれいど”!!」
 「コーーーーーンッ!!!!!!」


キュウコンが全てを凍て付かせる冷気を放つが──

バクフーンの全てを掛けた爆熱はそれを上回り。


 「コ、コーーーンッ!!!!!?」

365: 2019/05/17(金) 15:53:25.69 ID:dd6+2abs0

キュウコンを飲み込む。


絵里「キュウコン!!?」

千歌「いっけぇぇーーーーー!!!!!」


膨れ上がった爆炎が全てを飲み込んでいく。

……爆炎が晴れた先で、


 「コ、コーーン……」


煤まみれになったキュウコンが倒れていた。


千歌「……はぁ……はぁ……よしっ!!」


キュウコンを押し切った。


絵里「く……!!」


だが、


 「バ、クフ……」


バクフーンは──ぷすぷすと音を立てて、背中から煙を立てている。

全ての炎を出し切ってしまったせいで、もう炎が出せなくなってしまった。


絵里「……まさか、あそこからキュウコンを倒すなんて思ってなかったわ……。でも」
 「シア……!!!」

絵里「まだ、私にはグレイシアが残ってる……炎が使えなくなったバクフーンに、負けるなんてことはさすがにないわ」

千歌「…………」

絵里「……終わりよ、グレイシア、“れいとうビー──」


グレイシアが“れいとうビーム”を撃とうとした瞬間──


 「ワォッ!!!!」

絵里「!?」


グレイシアの足元から飛び出す真っ白な影、

絵里さんが目を見開いた。


絵里「──“あなをほる”!!!?」

千歌「しいたけ!!! “ギガインパクト”!!!!」

 「ワォンッ!!!!!!」


穴から飛び出した、しいたけが、グレイシアを真下から最大の攻撃力で突き飛ばした。


 「シアァァ!!!!?」


とてつもない勢いで全身をぶつけられたグレイシアは、そのまま天井に身体を打ち付け、


 「……シ、ア……」


──ドサッと音を立てながら、床に落下したのだった。

366: 2019/05/17(金) 15:54:28.17 ID:dd6+2abs0

絵里「……うそ」

千歌「……か……勝った……」


私は気が抜けて、思わず尻餅をついてしまう。

そこに──


 「ワフッ」


しいたけが駆け寄り、飛び掛かってくる。


千歌「うわわっ!!? しいたけ!?」
 「ワゥ、ワォンッ」

千歌「あ、あははっ! もうくすぐったいっ!」


しいたけは勝てたことがよほど嬉しかったのか、私の頬を舐めながら、全力でじゃれ付いてくる。

そんな私たちの元に、


絵里「……まさか、あそこから負けると思わなかったわ」


絵里さんが歩み寄ってくる。


千歌「あはは……正直、私もあそこから勝てるとは思ってませんでした……」


絵里さんの言葉に苦笑する。


千歌「でも……」

絵里「でも?」

千歌「皆を信じて最後まで戦ったから……勝てました」

絵里「……そう」


絵里さんは私の言葉を聞いて、肩を竦める。


絵里「その硬い絆に負けてしまったと言うなら……仕方ないのかもしれないわね」


そう言って苦笑する。


千歌「えへへ……ずっと一緒にいた子だから」

絵里「その仲間との絆と……諦めない強さ……海未が認めた理由がわかった気がするわ。おめでとう、千歌ちゃん、四天王二人目突破よ」

千歌「……はい!!」


かなりの苦戦を強いられたけど、どうにか強敵、絵里さんとのバトルを制し──私は三人目の四天王の間へと進みます。



367: 2019/05/17(金) 15:55:05.91 ID:dd6+2abs0


>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【ポケモンリーグ】
no title

 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.62  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.59 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.58 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.59 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.63 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.59 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:179匹 捕まえた数:15匹


 千歌は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.




368: 2019/05/17(金) 17:20:49.42 ID:dd6+2abs0

■Chapter088 『決戦! 四天王! ③』





千歌「──……ここが3つ目の部屋」


左から3つ目の部屋の中に入ると、なんだか随分と天井の高いフィールドがあった。

しかも中央のバトルステージは両側を橋に吊るされているような状態で、その下は大きな穴のようになっていて、底が見えなかった。


千歌「た、高い……」

 「いらっしゃい、挑戦者さん」

千歌「!」


室内の私が入ってきたのとは反対側から声が掛けられる。

栗色のショートヘアー、前髪はおでこを出しているのが特徴的な、綺麗な顔立ちの女性だった。


ツバサ「初めまして、私はツバサよ」


そう言ってツバサさんは6つのボールを放る。


 「マンダァ」「リュー」「サザンドーラ」「ヌメルゥ」「ジャランラ」「ガブ…」

ツバサ「もちろん、バトルをしに来たのよね」

千歌「はい!」


私も6匹のポケモンを出して見せる。


ツバサ「ここまで来たらやることは一つだものね。私の手持ちはボーマンダ、カイリュー、サザンドラ、ガブリアス、ヌメルゴン、ジャラランガの6匹よ」


全部ドラゴンタイプ……どうやらドラゴン使いのようだ。


ツバサ「さ……選出して、始めましょうか」


そう言ってツバサさんは選出準備に入る。


千歌「……」


このバトルへの移行がやたらスムーズな感じ……どこかで見たことがあるようなと思ったけど、英玲奈さんだ。

ここまで来たらやることは一つ──って物言いもなんか似てる気がする……まあ、それはいいとして、選出しないと。


千歌「……さて、と」

369: 2019/05/17(金) 17:22:17.82 ID:dd6+2abs0

回復したとは言え、ルガルガンは一度休憩させてあげたい。だから、今回はお休み。

どちらにしろこの部屋の構造だと、壁や床、天井を跳ね回る戦い方が得意なルガルガンだと戦い辛いしね……。

バクフーンも炎が戻るまでもう少し時間が掛かりそうだし、今回は控えに回ってもらおう。

そうなると候補は4匹……。

この広くて高いこのバトルフィールド……どう考えても、飛行しながら戦うことを考えての構造だと思う。

ムクホークはいた方がいい。

同じ理由で、高所で自由が効くのは──ルカリオかな。

波導を使えばちょっとの間、壁にも貼り付けるし。

残るは……フローゼルか、しいたけか……。

どっちも飛ぶのは無理だけど……。

悩んだ末に──しいたけを選択する。

続投にはなってしまうけど、ここぞと言うとき頼りになるのは、なんだかんだで付き合いの長い、しいたけだしね。


千歌「……選出できました!」

ツバサ「そう、それじゃ始めましょう。四天王『飛翔する竜翼』 ツバサ。お互い全力で楽しみましょう」


──お互いのボールがフィールドを舞う。バトルスタート……!





    *    *    *



370: 2019/05/17(金) 17:23:09.74 ID:dd6+2abs0


ツバサ「サザンドラ!!」
 「サザンドーラ!!!!!」

千歌「ムクホーク、行くよ!!」
 「ピィィィィ!!!!!!」


ムクホークが開幕と同時に飛び出す。


千歌「“すてみタックル”!!」
 「ピィィィィ!!!!!!!!!!」


一気に加速して、最高速に達し、サザンドラに向かって飛び込んでいく。


ツバサ「“りゅうのはどう”!!」
 「サザン、ドーーラッ!!!!!!」


サザンドラは一直線に向かってくるムクホークに向かって、ドラゴンエネルギーを渦巻かせながら放ってくる。

──ただ、ムクホークの戦い方に小細工は存在しない。

そのまま、“りゅうのはどう”に突っ込み──


 「ピィィィィィィ!!!!!!!!!」


ダメージを受けながらも、その中を突っ切って、サザンドラに肉薄する。


 「サザンッドラーー!!!!!」

ツバサ「……!」


そのまま、突撃し、サザンドラを後方に突き飛ばす。


ツバサ「そういう“すてみ”な戦い方、嫌いじゃないわ! “かえんほうしゃ”!!」

 「サザンッ!!!!」


サザンドラの三つの首が同時に炎を放射する。


千歌「“ブレイブバード”!!」

 「ピィィィィ!!!!!!!」


でも、そんなの構いなしに再び突撃する。

メラメラと音を立てながら燃え盛る炎の中を突き抜けるように、


 「ピイィィィィィィ!!!!!!!」


再びサザンドラに肉薄し、クチバシを突き立てる。


 「サザンッ!!!!!」


そして、密着した距離のまま、一気に攻撃を畳み掛ける。


千歌「“インファイト”!!」

 「ピィィィィィ!!!!!!!!!」


そのまま、全身の膂力で無理矢理サザンドラを殴りつけ──


 「サザンッ……!!!!」

371: 2019/05/17(金) 17:25:25.64 ID:dd6+2abs0

強引にぶっ飛ばし、サザンドラを壁に叩き付ける。


 「サ、サザン……」


壁に叩き付けられ、大ダメージを受けたサザンドラはヘロヘロと落下していく。


ツバサ「戻って、サザンドラ! いくわよ、ボーマンダ!」
 「マンダァ!!!!!」


早い試合展開。サザンドラを戦闘不能にし、次に出てきたのはボーマンダ。

そして、それと同時にツバサさんの首もとのネックレスが光る。


ツバサ「メガシンカ!!」

千歌「……!!」


──メガシンカを使ってきた。

光に包まれたボーマンダは──前足が極端に短くなる代わりに、立派な翼が更に巨大化する。


ツバサ「“すてみタックル”!!」
 「マンダァァッ!!!!!」


一気に最高速になって、ムクホークの方に飛び出すメガボーマンダ。


千歌「! 速い!!」

 「ピィィッ!!!!」


“すてみ”で戦った分手負いのムクホークは回避もままならず、


 「ピィィィィ!!!!!?」


“すてみタックル”が直撃し、今度は逆にこっちが壁に叩きつけられてしまった。


 「ピ、ピィィィ……」

千歌「戻って、ムクホーク!! ルカリオ、行くよ!!」
 「グゥォッ!!!!」


まずはお互いパワーファイトで一匹ずつ戦闘不能だ。

私は二匹目、ルカリオを繰り出す。


千歌「“はどうだん”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオは空中を飛んでいるボーマンダに向かって、波導を球状に集束して発射する。


 「マンダァァーー!!!!!」


フィールド内を高速で飛行しながら、ボーマンダは避けようとするが──。

“はどうだん”は相手の波導を感知して追いかける技だ。

フィールド上空を旋回しながら飛び回るボーマンダをしつこく追尾する。

動きを制限したところで……。

372: 2019/05/17(金) 17:26:34.53 ID:dd6+2abs0

千歌「追撃するよ!! “きあいだ──」

ツバサ「ガブリアス!! “ダブルチョップ”!!」

千歌「!!」

 「ガァーーーブッ!!!!!」


いつのまにか、繰り出されたガブリアスがルカリオに向かってチョップを振り下ろしてくる。


 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオは咄嗟にお馴染みの骨状の武器を作り出して、ガブリアスのチョップを受け止める。


ツバサ「“アイアンヘッド”!!」

 「ガァブッ!!!!」


畳み掛けるように、繰り出される鋼鉄の頭突き。


千歌「“あくのはどう”!!」
 「グゥーーォッ!!!!!」


両手が塞がった状態のルカリオはその場で、ガブリアスの頭部目掛けて波導エネルギーを発射する。


 「グワブッ!!!!」


顔面に波導を食らって怯んだところに、


千歌「“ボーンラッシュ”!!!」

 「グゥォッ!!!!!」


得物を振り回して、ガブリアスに攻撃、


 「ガ、ガブッ!!!!!」

ツバサ「ボーマンダ!! “ドラゴンダイブ”!!」

 「マンダァッ!!!!!」

千歌「くっ!?」


だが、自由にはさせてもらえない。

空中を旋回していた、ボーマンダが“はどうだん”に追われたまま、高速で落下してくる。


千歌「ルカリオ!! “みきり”!!」

 「グゥォッ!!!!」


攻撃が当たる直前で飛び退き、ボーマンダの攻撃を回避、


 「マンダァッ……!!!」


ボーマンダはフィールドを凹ませながらも、攻撃が外れたことを理解すると、速度を保ったまま、再び上空へと高速で離脱していく。

このままじゃ、“はどうだん”は当たりそうもない。

──なら、

ボーマンダを追いかけて、フィールド上に降りてきた“はどうだん”を、


 「グゥォッ!!!!」

373: 2019/05/17(金) 17:28:10.18 ID:dd6+2abs0

ルカリオの波導を操る力で持って、


千歌「標的を変える──!!」


 「ガァブッ!!!!?」

ツバサ「!! ガブリアス!!」


急激に進行方向を変えられ、ガブリアスは咄嗟に対応しきれず“はどうだん”が炸裂する。


千歌「“インファイト”!!」

 「グゥォッ!!!!!」


畳み掛けるように、ルカリオが全力の“インファイト”を仕掛ける。


 「ガァブッ!!!!!!」


ガブリアスは咄嗟にガード姿勢を取る、そこに向かって、


 「グゥゥゥォァァァッ!!!!!!」


拳を、蹴りを、頭を、ありとあらゆる部位を使いながらルカリオが猛攻を仕掛ける。

ガブリアスは防戦一方でどんどん体力を削られていく──ように見えたが、


ツバサ「ガブリアス!! “げきりん”!!」

 「ンガアアアアアアアアアブッ!!!!!!!!!!!!!」

千歌「!?」


突然ブチギレるように、とんでもない雄叫びを上げ、それに呼応するように、ガブリアスを中心にフィールド上がひび割れる。

そのまま、ガブリアスが乱暴に腕を振るうと──

──バキ、メキ!! と音を立てながら衝撃波が発生し、


 「グゥゥォッ!!!!?」


ルカリオを吹っ飛ばす。

そして、ルカリオが吹き飛んだあと、余った破壊のエネルギーが更にフィールドに大きなヒビを入れる。


千歌「ぐ……凄い破壊力……!?」


組み合ったルカリオを強引にパワーだけで引き剥がし、

更に余ったエネルギーはフィールドすらも、めちゃくちゃに割り砕いている。


 「ガァァァブッ!!!!!!」


暴れたままのガブリアスが吹っ飛んだルカリオを追いかけて、飛び出してくる。

肉薄のために踏み切った足元すらも、ガブリアスの破壊的なパワーで──メキ、バキバキ!! と音を立てながら、ヒビ割れ、軋み、凹む。

デタラメなパワーだが──


千歌「怒りに任せた直線的な攻撃──見切れる!!」

 「グゥォッ!!!!」

374: 2019/05/17(金) 17:30:12.59 ID:dd6+2abs0

ルカリオが飛び出してきたガブリアスに向かって手を翳す。

──必殺の一撃。


千歌「──そこ!! “はっけい”!!」

 「グゥゥォッ!!!!」


飛び込んできたガブリアスの胸部に向かって、波導のエネルギーを直接ぶつける。


 「グワァァァァァブッ!!!!!!!!」


“はっけい”が直撃した、ガブリアスが悲鳴をあげて、崩れ落ち──


 「ガァァァァァブッ!!!!!!!!」

千歌「!!!?」


──ていなかった。


 「ガァァッァブッ!!!!!!」

 「グゥワッ!!!?」


ガブリアスは無理矢理、ルカリオに噛み付き、


 「グゥォッ!!!!?」

千歌「ルカリオっ!!!」


噛み付いたまま、首を縦に振るって、ルカリオを地面に叩き付ける。


 「グゥワッ!!!!!」


叩き付けられ、浮いたルカリオに向かって、


 「ガァァァブッ!!!!!」


乱暴に尻尾を横薙ぎにし、フィールドの外側まで吹っ飛ばす。


 「グ、グォッ!!!!!」


ルカリオは、大きなダメージを負ったものの──ダンッ!! と大きな音を立てながら、どうにか波導を使って壁に着地する。


 「ガァァァァァブッ!!!!!!!!」


怒り狂ったガブリアスは、そのまま、ルカリオに向かって飛び出す──


千歌「! ルカリオ! そこで待ってれば、ガブリアスは勝手に落ちるよ!!」

 「グゥォッ!!」

375: 2019/05/17(金) 17:32:55.84 ID:dd6+2abs0

ルカリオはフィールドの外──つまり、ルカリオに向かって突っ込んでいけば奈落の底に落ちるだけだ。

──と、思ったら、


 「ガァァアァブッ!!!!!!!」


ガブリアスは手足を折畳み、


千歌「い゛っ!!?」


そのまま、飛び出した。


ツバサ「残念、ガブリアスは飛べるわよ」

千歌「き、聞いてない!!」

ツバサ「言ってないもの」


そのまま、音速を超えるスピードでガブリアスがルカリオに迫る。


千歌「“しんそく”!!」

 「グゥォッ!!!!!」


壁を蹴って、ルカリオが飛び出す。


 「ガァァァァブッ!!!!!!!」


直後、ルカリオが数瞬前に居た場所にガブリアスが突き刺さる。

それと同時に──バキバキッ、メキッ!! っとヤバイ音が響き渡る。

とつもないパワーで突き刺さったガブリアスを中心に、内壁がへしゃげて、一気にヒビが入っていく。


千歌「あ、当たってたらやばかった……!!」


ルカリオは“しんそく”で移動しながら壁を走る。

そこに向かって、


 「マンダァッ!!!!!」

千歌「!」


ガブリアスの“げきりん”に巻き込まれないように距離を取っていたボーマンダがここぞとばかりに襲い掛かってくる。


ツバサ「“ドラゴンクロー”!!」

 「マンダァッ!!!!!」


ボーマンダの爪が迫る。


千歌「ルカリオ!! 骨!!」

 「グゥォッ!!!!」


私の指示で、再び作り出した得物で爪を受け止める。


ツバサ「その悪い足場で戦えるかしら!!」

376: 2019/05/17(金) 17:35:30.94 ID:dd6+2abs0

ツバサさんの言う通り、ルカリオが立っているのは壁だ。

空中を自在に飛べるボーマンダと打ち合うのは分が悪い。

だから、


千歌「骨!! 突き刺せ!!」

 「グゥォッ!!!!!」

ツバサ「!?」


爪を受け止めた骨が急にたわんで、その両端がボーマンダの腕に突き刺さる。


 「マ、マンダァッ!!!!!」


驚いて、飛び退くボーマンダ。

骨はあくまで波導のエネルギーだ。

硬化できるなら、軟化も出来る。

硬い先端だけ残して、得物を柔らかくし、攻撃をいなしながら、先端を突き刺した。

自前の武器だからこそ出来る芸当だ。

──だが、


 「ガァァァァッァブッ!!!!!!!!!!」

 「グゥォッ!!!!!?」

千歌「ルカリオ!!?」


そんなことを考えてる場合じゃなかった。

壁を抉り壊しながら、ガブリアスが壁に張り付くルカリオに、ジェット機のような速度でぶつかってくる。

猛スピードで突っ込まれたルカリオは──


 「グ、グォ……」


吹っ飛ばされ、呻き声をあげる。

二匹のドラゴンポケモンとずっと戦闘していたのだ、もう限界だ。


千歌「戻れ!! ルカリオ!!」


私はルカリオをボールに戻す。


 「ガァァァァァァブッ!!!!!!」


怒り狂うガブリアスはボールに戻ったルカリオを追いかけて、壁から飛んで来る。

ただ、何度も言うようにガブリアスは怒りに任せて直線的に突っ込んでくる。

軌道もタイミングも見切れる。


千歌「しいたけ──」
 「ワフッ」


繰り出した最後の手持ち、しいたけと共に迫るガブリアスの軌道を見切って、


千歌「“かたきうち”!!」
 「ワフッ!!!!」


ガブリアスを打ち上げるように、前傾姿勢から、後頭部による“ずつき”を下から上に向かって叩き付けた。

377: 2019/05/17(金) 17:37:49.49 ID:dd6+2abs0

 「ガァァァァァブッ!!!!!!!」


音速で飛びながら、掬い上げられるように打ち上げられたガブリアスは──

──ドゴンッ!! と大きな音を立てながら、背後の壁面に激突し、


 「ガ、ァ、ブ……」


ついに気絶して、やっと大人しくなった。


千歌「や、やっと倒せた……」
 「ワフッ」

ツバサ「戻りなさい、ガブリアス」


残るはお互いトリミアンのしいたけとメガボーマンダ。


ツバサ「ボーマンダ!! “すてみタックル”!!」

 「マンダァッ!!!!!!!」


ボーマンダが飛び出す。


千歌「しいたけ! “コットンガード”!!」
 「ワフッ!!!!」


しいたけの得意技、“コットンガード”でしいたけが一気にもふもふと膨張していく。

──ドガスンッ と音を立てながら、ボーマンダが激突してくる。


 「ワ、ワォッ!!!!!」


強烈な突進に無傷まではいかないものの──しっかりと受け止める。


 「ワンッ!!!!」


頭を振るって、ボーマンダを追い払う。


ツバサ「! ボーマンダの攻撃を真っ向から受け止めるなんて、とてつもない防御力ね……」

千歌「それがしいたけの自慢なんで!」

ツバサ「でも、受け止めるだけじゃ、勝てないんじゃない?」


確かに、攻撃を受けるだけじゃ、ダメージは与えられない。でも……。


千歌「そうでもないですよ!」

ツバサ「……? 何言って……」


ツバサさんが訝しげに顔を顰めていると、


 「マン、ダ……ァッ……」

ツバサ「!? ボーマンダ!?」


ボーマンダは苦しげな表情をしている。


ツバサ「何!? こ、これは……どく状態!? いつの間に……!?」

千歌「さっき、攻撃を突き刺したときに……毒を注入しました!」

ツバサ「突き刺した……? ……ルカリオの骨か……!!」

378: 2019/05/17(金) 17:39:07.67 ID:dd6+2abs0

──そう、ルカリオはただ怯ませるためだけに骨の形を変えて突き刺したわけじゃない。

あの骨を刺したのは、“どくどく”を決めるためだ。


千歌「そして、しいたけの防御力でボーマンダが力尽きるまで凌ぎきれば、私たちの勝ち!!」
 「ワォンッ!!!!!」

ツバサ「……なるほど。なら、もう残された選択肢はシンプルね!!」

 「マンダ……ァッ!!!!!!」

ツバサ「ボーマンダ!! “げきりん”!!!」

 「マンダアアアアアァァァァァァ!!!!!!!!!!!」


ボーマンダが怒りのエネルギーを解放して突っ込んでくる。


千歌「“コットンガード”!!!」
 「ワッフゥッ!!!!!!」


さらにしいたけがもこもこと毛皮を増やして、防御を増す。

そこにボーマンダが突っ込んできて、爪や、尻尾、翼に、頭とあらゆる部位でめちゃくちゃに攻撃を仕掛けてくる。


 「ワッフッ!!!!!!」

 「マンダ、アァァァァアァァ!!!!!!!!!!!!」

ツバサ「攻撃を受けきれずトリミアンが倒れるのが先か!! もうどくが回ってボーマンダが力尽きるのが先か!!! 勝負!!」


盾と矛が全力でぶつかり合う。

メガシンカのパワーを載せた攻撃が、何度もしいたけに叩き付けられる。


 「ワッフッ……!!!!」


いくら防御が高いとは言え、至近距離で全力の攻撃を叩き込まれ続けるのは、さすがにかなりのダメージを貰う。


千歌「しいたけ!! 頑張って!!」
 「ワォーーンッ!!!!!!」

ツバサ「ボーマンダ!!! 怒りのパワーを全力でぶつけなさい!!」

 「マンダアァァァアァァァァァッッ!!!!!!!!!!!」


もうここまで来たら、本当に攻撃と防御の力比べ。


 「ワフッ!!!!!」

 「マンダアァァァァッ!!!!!!!!!」


防御を続けるしいたけ、暴れるボーマンダ、

不意に、

──ガスン、


 「キャゥンッ!!!!!?」


その内の一発が偶然、しいたけの急所を捉えてしまった。


千歌「しいたけ!!?」


しいたけの体が揺れる。

379: 2019/05/17(金) 17:39:54.53 ID:dd6+2abs0

千歌「──頑張れっ!!!! しいたけっ!!!!!」
 「ワ、ォンッ!!!!!!!!!!!」


しいたけが私の声に呼応するように、気合いを込めて、地面を踏みしめる。


 「マンダ、アァァァァァッ!!!!!!!!!」


激しい攻撃は尚も続くが──次第に、


 「マンダ、ァァッ……!!!!!」


ボーマンダの雄叫びは力を失っていき、


 「マン、ダァァッ……!!」


そして、


 「マン、ダ…………」


毒によって、力尽きたのだった。


ツバサ「……よく頑張ったわ、戻って、ボーマンダ」


ツバサさんがボーマンダをボールに戻した。


千歌「しいたけ!!」


バトルが終わり、しいたけに駆け寄ると、


 「ワフ……」


しいたけは私の頬の頬をペロっと舐めたあと、


 「ワゥ……ッ」


ドサっとフィールドに崩れ落ちた。


千歌「……! ……しいたけ、ありがとう……よく頑張ったね……」
 「クゥーン……」


満身創痍の相棒を抱きしめる。


ツバサ「……本当にギリギリの戦いだったようね」


そう言いながら、ツバサさんがこちらに向かって歩いてきていた。

380: 2019/05/17(金) 17:40:32.79 ID:dd6+2abs0

千歌「はい……どっちが先に倒れてもおかしくなかった……」

ツバサ「……でも、一瞬でも長くフィールドに立っていた方が勝者。トリミアン──しいたけちゃんって言うのかしら? その子のガッツの勝利よ」

千歌「……はい!」

ツバサ「これで、四天王は何人目?」

千歌「えっと、ツバサさんで三人目です」

ツバサ「そう……じゃ、次が最後ね」

千歌「……最後──」


つまり、残るは……。


千歌「海未師匠……」

ツバサ「海未さんは強いわよ」

千歌「はい……知ってます」


他でもない、私を鍛えてくれた人。

海未師匠が居なかったら、ここまでは確実にたどり着けていなかった。

私にとっての恩師。

そんな海未師匠との約束──『ポケモンリーグで待っています』

やっとその約束が果たせる。


ツバサ「検討を祈るわ」

千歌「……はい……!!」


私は三人目の四天王を突破し──最後の戦いへと望みます……。



381: 2019/05/17(金) 17:41:23.90 ID:dd6+2abs0
>>380 訂正

千歌「はい……どっちが先に倒れてもおかしくなかった……」

ツバサ「……でも、一瞬でも長くフィールドに立っていた方が勝者。トリミアン──しいたけちゃんって言うのかしら? その子のガッツの勝利よ」

千歌「……はい!」

ツバサ「これで、四天王は何人目?」

千歌「えっと、ツバサさんで三人目です」

ツバサ「そう……じゃ、次が最後ね」

千歌「……最後──」


つまり、残るは……。


千歌「海未師匠……」

ツバサ「海未さんは強いわよ」

千歌「はい……知ってます」


他でもない、私を鍛えてくれた人。

海未師匠が居なかったら、ここまでは確実にたどり着けていなかった。

私にとっての恩師。

そんな海未師匠との約束──『ポケモンリーグで待っています』

やっとその約束が果たせる。


ツバサ「検討を祈るわ」

千歌「……はい……!!」


私は三人目の四天王を突破し──最後の戦いへと臨みます……。



382: 2019/05/17(金) 17:41:57.63 ID:dd6+2abs0


>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【ポケモンリーグ】
no title
 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.62  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.62 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.60 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.59 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.65 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.59 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:185匹 捕まえた数:15匹


 千歌は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.




383: 2019/05/17(金) 18:39:43.15 ID:dd6+2abs0

■Chapter089 『決戦! 四天王! ④』





──四つ目の部屋、入口に刃のマークがあった部屋。

踏み入れた部屋の奥では、


海未「────」


海未師匠が正座をして待っていた。


千歌「……」


私がバトルスペースにつくと、


海未「……来ましたか」


海未師匠はゆっくりと目を開ける。


千歌「師匠……」

海未「よくここまで辿り着きましたね、千歌。流石、私の弟子です」


海未師匠はすっと立ち上がり、ボールを放る。


 「ケンキ」「エルレ」「ストライ」「クワ」「──ギル」「──ムシャ」

海未「……今さら言葉は必要ありません」

千歌「……はい!」


私も手持ちを出す。

384: 2019/05/17(金) 18:40:44.79 ID:dd6+2abs0

 「バクフ」「ワッフ」「ピィィ」「ワォン」「グォ」「ゼル」

海未「私の手持ちは見ての通り、ダイケンキ、エルレイド、ストライク、カモネギ、ニダンギル、グソクムシャの6匹ですが……」


海未師匠はそのうち三匹をボールに戻す。


千歌「……!」

海未「ここまで来て、手持ちを隠すような小細工をするつもりはありません。私はダイケンキ、ストライク、エルレイドの三匹で戦います」


手の内を包み隠さず、予め選出を私に教えてくる。……海未師匠らしい。


千歌「ムクホーク、フローゼル、しいたけ。戻れ」


私も3匹をボールに戻し。


千歌「私はバクフーン、ルガルガン、ルカリオの三匹で戦います!」

海未「……わかりました。他に何かありますか?」

千歌「海未師匠」

海未「なんですか」

千歌「……今日ここで、師匠を越えます」

海未「……いいでしょう。なら見せてください、貴方の実力を。四天王『剣心』 海未。いざ、尋常に……」


 「バクフー」

 「ケンキ」


お互い最初の手持ち、バクフーンとダイケンキが前に出る。──最後の戦いが、始まった。





    *    *    *



385: 2019/05/17(金) 18:42:02.26 ID:dd6+2abs0


海未「ダイケンキ!」
 「ケンキ!!!」


海未師匠の一匹目ダイケンキは前足の鎧から刀を取り出す。

 『ダイケンキ かんろくポケモン 高さ:1.4m 重さ:94.6kg
  前足の 鎧の 一部が 大きな 剣に なっている。
  アシガタナと 呼ばれる 剣を 振るい 相手を 倒す。
  一睨みで 敵を 黙らせ 吼える だけで 敵を 圧倒する。』

どうやら、アシガタナと呼ばれる武器らしい。


千歌「バクフーン、行くよ!」
 「バクフーー!!!!」


バクフーンの背中に炎が滾り、攻撃の態勢に入る。

──が、


 「ケンキ!!!!」


ダイケンキは一瞬でバクフーンに肉薄してくる。


海未「“シェルブレード”!!」

 「ケンキッ!!!!!」


アシガタナを振るって、斬りつけて来る。


千歌「“ブレイククロー”!!」
 「バクッ!!!」


その刀を、バクフーンが鋭い爪で受けるように切り裂くと──

刀は中腹から綺麗に折れてしまう。


海未「……!」

 「ケンキッ」


ダイケンキはすぐさまバクフーンから距離を取り、最初に取り出したのとは逆の脚から、もう一本のアシガタナを取り出す。


海未「“ブレイククロー”……炎熱の攻撃力を載せて、切断能力を向上させていますね」


師匠は切断され床に落ちたアシガタナを見てすぐさま分析をする。


海未「一筋縄ではいかなさそうですね……!! “れんぞくぎり”!!」

 「ケンキッ!!!!」


再びアシガタナを構え、ダイケンキが飛び出してくる。


千歌「もう一回!! “ブレイククロー”!!」
 「バクフーーー!!!!!」


再び、炎熱を爪に宿しながら、鋭い爪でアシガタナを受ける。

ぶつかる爪と刀、再び炎熱がアシガタナを──


海未「すぐに引いて、返しなさい!!」

 「ケンキッ!!!!」

386: 2019/05/17(金) 18:44:08.73 ID:dd6+2abs0

攻撃が交わる瞬間、炎熱で焼ききれる前にダイケンキは刀を引き、


 「バクッ!!!?」


そして、目にも止まらぬスピードでバクフーンの籠手に当たる部分を上から叩く。


千歌「っ!! 速い……!!」


籠手を撃たれ、僅かに姿勢の崩れたバクフーンの喉元に──


 「ケンキッ!!!!」


ダイケンキのアシガタナが横薙ぎに一閃。


 「バクフッ!!!!!」


だが、バクフーンもただでは食らわない。

無理矢理、上半身を仰け反らせることによって、攻撃はバクフーンの首の皮一枚のところを薙ぐだけに終わる。


 「ケンキッ!!!!」


しかし、ダイケンキの“れんぞくぎり”は終わらない。横薙ぎに抜けた一閃がすぐに切り返して戻ってくる。


千歌「“ねっぷう”!!」
 「バクフッ!!!!」

 「ケンキッ!!!」


だが、それが届く前にバクフーン体毛が爆発し、激しい“ねっぷう”を生み出す。

爆風を目の前で受け、ダイケンキが怯んだところに──


千歌「“ほのおのパンチ”!!」
 「バクフーーー!!!!」


炎を纏った拳を打つ。

その拳は──

──ガキンッ!


千歌「!」

 「ケンキッ」


ダイケンキの前足の鎧に防がれる。


海未「“メガホーン”!!」

 「ケンキッ!!!!」


そして、鋭いツノをバクフーンの鳩尾辺りに向かって、突き立ててくる。


千歌「……掴めっ!!」
 「バクフッ!!!」


バクフーンは身を引きながら、そのツノを両手で掴む。

387: 2019/05/17(金) 18:48:02.79 ID:dd6+2abs0

海未「……そうこなくては!! “ハイドロポンプ”!!」

千歌「!」

 「ケンキィッ!!!!」

 「バクフッ!!!!」


ツノを掴んで無理矢理止めたところに、至近距離から“ハイドロポンプ”。

バクフーンは攻撃が直撃し、フィールドの後方まで一気に吹っ飛ばされる。


海未「畳み掛けなさい!! “アクアテール”!!」

 「ケンキッ!!!」


吹っ飛んだバクフーンに飛び掛かるように、追撃を仕掛けてくる。


千歌「バクフーン!! 走って!!」

 「バクフッ!!!!!」


バクフーンはすぐに起き上がり、私の背後を迂回しながら走り出す。

バクフーンが飛び出したすぐ後に──

──ビシャンッ! と音を立ててダイケンキの縦薙ぎ尻尾が床を打つ。


海未「“アクアジェット”!!」

 「ケンキッ!!!!」


海未師匠は攻撃を外しても冷静に追撃の手を打ってくる。


千歌「こっちも加速!! “ニトロチャージ”!!」

 「バクフーー!!!!」


二匹が走り回る中、考える。

ダイケンキは武器であるアシガタナと、自身の持っている鎧で攻撃を防ぐ、攻防のバランスが両立したポケモン。

それに加え単純にみずタイプであることも考えるとバクフーンの攻撃は遠距離でも近距離でも対応されてしまう。

じゃあ、どうするか……。


 「バクフッ!!!!」

 「ケンキッ!!!」


思案しながら、フィールドを駆ける二匹を目で追う。

その際──最初に斬り裂いたアシガタナが目に入る。

……相手が丈夫な鎧を持っていても、バクフーンの炎熱をしっかり伝えれば、攻撃は通る。

──梨子ちゃんとの戦いのときもそうだったけど、炎と言うのは分厚い壁などには正直あまり強くない。

炎が散ってしまうからだ。

対象全体を飲み込むほどの火力があれば別だけど、炎は壁に当たるとすぐに直進能力を失ってしまう。

普通の物理的な攻撃と違って、炎そのものに重さがあるわけじゃないからだと思う。

ただ……そんな炎でもって、梨子ちゃんとの勝負には勝利した。

そして、そこから一つのアイディアを思いつく。


千歌「……やってみる価値はある」

 「バクッ!!!」

388: 2019/05/17(金) 18:51:01.89 ID:dd6+2abs0

いいタイミングでバクフーンが私の元に戻ってくる。


千歌「バクフーン!! やるよ!!」
 「バクッ!!!」


──集中。


千歌「……ふぅー……」


──拡がらないように──

── 一点に向かって──

──炎を通す──

イメージは──


千歌「……針のように──」
 「バクフ……ッ!!!!」

 「ケンキッ!!!!!」

海未「“メガホーン”!!」


ダイケンキが“アクアジェット”のスピードを載せたまま、ツノを突き立ててくる。

そのツノの頂点に向かって──指差した。


千歌「──“ひのこ”!!」
 「──バク!!!」


限界まで細く、集束した炎が飛び出し──


海未「……!」


ダイケンキのツノの先から、貝殻の兜を貫き進み──

──ボンッ!!!! と音を立てて、ダイケンキの鎧の内側で爆発した。


 「ケ、ンキッ……」


急に頭部に──しかも、兜の内側に爆発を食らったダイケンキは、白目を向いて、その場で気絶した。


海未「……あえて大きな火力の技ではなく、技の威力を絞って、一点を貫く精度を上げた……ということですね」


海未師匠はダイケンキをボールに戻しながらそう言う。


海未「行きなさい!! ストライク!!」
 「ストライーク!!!!」


前に出てきた二匹目、ストライクは、その場で“きあいだめ”を始める。


千歌「バクフーン!! もう一発……“ひのこ”!!」
 「──バクッ!!!!」


バクフーンが先ほど同様、鋭く“ひのこ”を放つ──が、


海未「──二度も通用すると思ってるんですか?」
 「ストライ──」


ストライクが構え、

389: 2019/05/17(金) 18:51:47.78 ID:dd6+2abs0

海未「“しんくうは”!!」
 「ライクッ!!!!!」


真空を切り裂く衝撃波が、真っ向から“ひのこ”を掻き消し──


 「バクッ!!!!」
千歌「!」


そのまま、バクフーンもろとも、切り裂いた。


千歌「バクフーン!!」
 「バ、ク……」


バクフーンが倒れる。

今度は海未師匠の一撃必殺が決まる。


千歌「……戻れ、バクフーン」


私はバクフーンをボールに戻す。


千歌「ルガルガン!!」
 「ワォーーーンッ!!!!」


ルガルガンが雄叫びをあげながら飛び出す。


千歌「“アクセルロック”!!」
 「ワォーーーンッ!!!!!」


ルガルガンは一気に加速し、壁や天井を跳ね回りながらストライクに迫る。

だが、海未師匠は猛スピードのルガルガンなど、大した問題だと思っていないのか、


海未「…………」


目を瞑っている。


 「ワォーーーンッ!!!!」


今まさにルガルガンが、ストライクに飛びかかろうと言う瞬間──


海未「──そこです、“かまいたち”!!」
 「ストライクッ!!!!」


── 一閃。


 「ギャウッ!!!」


空気の刃がルガルガンを捉え、切り裂いた。


千歌「……!! ルガルガン、大丈夫!?」

 「ワ、ワォンッ!!!」


どうにか耐えたようだ。

やっぱり海未師匠相手にただ速いだけじゃ、通用しない。

一点、正確に、相手の弱点をぶち抜く──。

390: 2019/05/17(金) 18:53:14.88 ID:dd6+2abs0

千歌「“ドリルライナー”!!」

 「ワォンッ!!!!」


ルガルガンが回転を始める。

回転したまま、自身の鋭いタテガミの岩で──打ち抜く。これしかない。


海未「……シンプルですね、いいでしょう。受けて立ちますよ。ストライク!!」
 「ストライクッ!!!!」


真っ向から飛んで来るルガルガン、構えるストライク。


 「ワォォーーンッ!!!!」

海未「──“つばめがえし”!!!」
 「ストライクッ!!!!!」


二匹の攻撃が交差する。

結果──


 「ワォ……ン」


ルガルガンが静かに崩れ落ちた。


千歌「……くっ」


技の精度が足りなかった。


海未「……いえ、お見事です」

千歌「え?」

 「ストライ……」


数テンポ遅れて、ストライクも崩れ落ちる。


千歌「……!」

海未「相討ちですね」


これでお互い残るは一匹。


 「グゥォッ」

 「エルレ」


ルカリオとエルレイドが前に出る。


海未「……千歌」

千歌「なんですか」

海未「本当によくここまで辿り着きました。私は貴方がここまで辿り着き、今──師である私を越えようと全力で戦ってくれていることが何よりも嬉しいんです」

千歌「……」

海未「……ですので、私は師として……千歌、貴方の越えるべき壁として、エルレイドと共に私の磨き上げた心と、技と、体の全てをぶつけようと想います」

391: 2019/05/17(金) 18:54:10.77 ID:dd6+2abs0

その言葉と共に、海未師匠が取り出したペンダントが七色に光る。

あれは──


千歌「キーストーン……!!」


──メガペンダントだ。

そして、呼応するようにエルレイドが光る。

大きな腕の刃がより一層大きく鋭くなる。


 「エルレ……!!!」

海未「さあ、来なさい!! 千歌!!」

千歌「はい!! ルカリオ!!」
 「グゥォッ!!!!!」

千歌「メガシンカ!!」
 「グゥゥゥォッ!!!!!!!」


ルカリオが七色の光に包まれ、メガシンカする。

師匠と全力で戦うために──


海未「一撃です」

千歌「!」

海未「私は……次の一撃で貴方たちを仕留めるつもりで攻撃します。千歌、貴方もそのつもりで来なさい」

千歌「……はい!!」

 「グゥォッ……!!」

 「エルレ……」


二匹が構える。

392: 2019/05/17(金) 18:55:18.92 ID:dd6+2abs0

海未「──……すぅー……」

千歌「──……ふぅー……」


トレーナーの私たちも呼吸を整え、集中。メガストーンを通して、ポケモンと意識を同調させる。


海未「──剣心一如……剣即ち、其れ心也」
 「エルレ」

千歌「行くよ、ルカリオ!! 波導の力を斬撃に!!」
 「グゥォッ!!!」


二匹が腕を引き、そして──斬る。


千歌・海未「「──“いあいぎり”!!!!」」
 「グゥォッ!!!!!!」 「エルレィッ!!!!!!!」


二匹の剣が── 一閃した。


千歌「…………」

海未「…………」


それは一瞬のことだった。

お互いの全力の斬撃がぶつかり合い──


 「グ……」


ルカリオが先に膝をつく。


海未「……勝負、ありましたね」


海未師匠が肩を竦めて、こちらに歩き出す。


海未「千歌──」

千歌「……」

海未「──貴方の勝ちです」

 「エル……レ……」


そして、ルカリオが膝をついてから数刻遅れて──エルレイドが崩れ落ちた。


千歌「……ありがとうございました!!!」


私は、ただここまで育ててくれた師匠に、万感の感謝を込めて──頭を下げるのだった。 





    *    *    *



393: 2019/05/17(金) 18:56:20.80 ID:dd6+2abs0


海未「おめでとうございます、千歌。これで貴方は四天王を全員倒したことになります」

千歌「は、はい……えへへ、なんか実感沸かないな……」

海未「実感、ですか?」

千歌「だって、その……私、これでオトノキ地方のチャンピオンになったってことですよね……!?」


最強の四人のトレーナー、四天王を全て倒したと言うことはそういうことだろう。


海未「……ああ、そのことなんですが」

千歌「ふぇ?」

海未「まだ、貴方は戦わなくてはいけない相手が一人残っています」

千歌「え? どゆこと?」

海未「……現チャンピオンです」

千歌「……はっ」


そう言われて、梨子ちゃんが話していたことを思い出す。


 梨子『チャンピオンになれるのって……一人だよね』


だから、先に梨子ちゃんと決着を付けたわけだが、

最強の称号と言うのは、そのときの一番強い人、比較級で『最も』『強い』で『最強』なのだ。


千歌「すでにチャンピオンがいるのは、どう考えても当たり前……!!」

海未「広間に戻ると、中央にエレベーターがありましたよね」

千歌「あ、はい」

海未「四天王を全て倒した今、そのエレベーターで上の階へ昇れます。そこからチャンピオンの間に続く場所に行くことが出来ます」

千歌「わかりました。……ところで」

海未「なんですか?」

千歌「この地方で一番強いトレーナーって……」


誰なんだろうか……?


海未「……行けばわかりますよ」

千歌「……ま、それもそっか」

海未「千歌」

千歌「?」

海未「貴方は私の自慢の弟子です。次会うときは是非、新しいチャンピオンとして、会えることを祈っていますよ」

千歌「……! ……はい!!」





    *    *    *



394: 2019/05/17(金) 18:57:44.86 ID:dd6+2abs0


中央広間に戻ってくると、


千歌「……あ」


それぞれの通路から光が伸び、中央のエレベーターへと集まっていた。


千歌「…………」


私がエレベーターの前に近付くと、

──ウイーンと無機質な音と共にエレベーターのドアが開く。

乗れということだろう。

私がエレベーターに乗り込むと、扉が閉まり、勝手に上昇が始まる。

これから向かうんだ──チャンピオンのところに。


千歌「……っと、今のうちにポケモンたちの回復をしておかないと」


私はリュックから“きずぐすり”やら“げんきのかけら”やらを取り出して、ポケモンたちの治療を始める。


千歌「せっかくだから……最後にリュックの中の整理もしておこうかな……」


ごそごそリュックを漁りながら中身を確認していると──


千歌「ん……?」


なにやら赤い宝石のようなものを見つける。


千歌「……………………。…………なんだっけ、これ……?」


しばらく頭を捻って──


千歌「……あ、思い出した。旅立ちのとき、ダイヤさんから貰ったやつだ。えーと、確か……“ほのおのジュエル”だったっけ……? ほのおタイプの技を一回だけ強化してくれるってやつ」


すっかり存在を忘れていた。


千歌「今考えてみれば、使いどころが結構あった気がする……」


しかし、


千歌「今更使うタイミングあるかな……んー……」


バクフーンはここまでの戦いで炎の強化の仕方をいろいろと習得して来た。今更一発だけ威力が欲しいってタイミングがピンポイントに来るだろうか。

少し迷ったけど、


千歌「……まあ、なんかしら使えるかもしれないから、一応持っておこ」


私はとりあえずそのジュエルを上着のポケットに捩じ込んだ。

……間もなく、エレベーターは最上階へと辿り着く──





    *    *    *



395: 2019/05/17(金) 18:59:58.02 ID:dd6+2abs0


エレベーターから出た先は、屋外だった。

ポケモンリーグの建物の遥か上、山から伸びた塔のような場所。


千歌「たっか……」


背後に目をやると、雲の向こうの眼下に小さくチャンピオンロードの山が見える。

そして、前方に視線を戻すと──

更に高いところへ続く階段が伸びている。


千歌「まだ昇るのか……」


私は階段を進んでいく。

その間はただひたすら階段で、他には特に何もない。

ただ、強いて言うなら周りに柵があるけど。

逆に言うなら柵しかない。

柵の向こうには空があって、そこからずーーっと下にポケモンリーグの建物が中にあった山肌が見える。

たぶん……と言うか確実に落ちたら氏ぬな。

大人しく真っ直ぐ登ろう……。

しばらく階段を登っていると──大きな広場のような場所に出た。


千歌「うわ……何ここ」


そこは、庭園のような場所だった。

草木が生い茂り、奥の方には大きめの池があるし……しかもその池には滝まである。

滝を伝って上の方を見上げると、上にはまた少し小さめの庭園のような場所があるようだ。

そこにある池から水が落ちてきてるらしい。

そして──


千歌「……!」


そんな庭園の池のほとりに人影を見つける。

396: 2019/05/17(金) 19:01:56.96 ID:dd6+2abs0

その人は、風に紺碧の髪を靡かせて、私を見つけると、優しく笑う。

──この笑顔は知っている。小さい頃からいっつも、私の傍で笑って見守ってくれていた存在。


千歌「──……果南ちゃん」

果南「や、千歌。よく来たね」


果南ちゃんは腰に手を当てて、にこにこしている。


果南「ここにお客さんが来るのは本当に久しぶりだよ。……それが、まさか千歌だなんて」


間違いない、つまり、


千歌「果南ちゃんが……チャンピオン……!」

果南「うん、そうだよ」

千歌「強いトレーナーなんだってことは、なんとなくわかってたけど……チャンピオンだったんだ」

果南「ま、わざわざ自分がチャンピオンだとか言わないからね……。それはそうと千歌」

千歌「なぁに?」

果南「……旅はどうだった?」

千歌「どう……。うーん……いろんなことがあった」

果南「例えば?」

千歌「楽しいこと、悲しいこと、大変なこと、怒ったり、泣いたり、笑ったり!」

果南「あはは、全然具体的に例えられてないね」

千歌「だって、一言じゃ言い表せないくらいいろんなことがあったんだもん……それと」

果南「……それと?」

千歌「……たくさんの人たち──友達、ライバル。そして、ポケモンたち──仲間たちと出会った」

果南「ふふ、そっか」

千歌「皆といろんな景色を見て、一緒に過ごして、一緒に笑って、一緒に戦って── 一緒に強くなってきた」

果南「…………」

千歌「旅に出て……本当によかった」

果南「そっかそっか。……ここはその旅の終着点」

千歌「……うん」

果南「千歌が見たもの、知ったもの、感じたもの──そして、ここまで辿り着いたその強さを、今ここで見せてよ」


果南ちゃんがボールを構える。


果南「難しいことは何一つない。ホンキで戦って、最後に立ってた方が、この地方のチャンピオンだよ」

千歌「……うん!」


私もボールを構えた。


果南「オトノキ地方『チャンピオン』 果南。千歌、全力でおいで! 私も全身全霊で戦うからさ……!!」

千歌「うん!!」


二つのボールが中を舞う。私の旅の終着点。本当の本当に最後のバトル──開始だ……!!



397: 2019/05/17(金) 19:02:31.53 ID:dd6+2abs0


>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【チャンピオンの間】
no title
 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.65  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.62 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.60 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.61 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.67 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.59 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:190匹 捕まえた数:15匹


 千歌は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.




398: 2019/05/17(金) 23:08:40.38 ID:dd6+2abs0

■Chapter090 『最終決戦! チャンピオン・果南!!』





千歌「行くよ!! しいたけ!!」
 「ワンッ!!!」

果南「ニョロボン! 頼むよ!」
 「ニョロッ!!!!」


果南ちゃんのニョロボンが一気に飛び出して、拳を引く。


果南「“ばくれつパンチ”!!!」

 「ニョロボッ!!!!!」

千歌「“コットンガード”!!!」
 「ワッフッ!!!!!!」


──ガスン!! 強力な拳撃を自慢の毛皮で受け止める。


果南「しいたけ、久しぶりだね!! しばらく見ないうちに随分成長したみたいだね!」

 「ニョロォッ!!!!」


続け様に逆の手を使って、ニョロボンが拳を穿つ。

──ガスン!!


 「ワ、ワフッ」


二撃目、一瞬しいたけが怯む。


果南「二発じゃ足りない? じゃ、もう一発!!!」

 「ニョ、ロォッ!!!!!」


──ドガスン!!!!!

更に攻撃は止まず連続で最大級の攻撃がしいたけを襲う。


 「ワフッ!!!」


でも、


千歌「しいたけの防御は簡単には崩れないよ!!」


ここまででもずっとお世話になってきた私のパーティの最強の盾だ。

真っ向勝負で攻撃を受けることに関しては負けるつもりはない。


果南「──みたいだね!!」

 「ニョロッ!!!!」


四撃目──と、思ったらニョロボンは今度は拳ではなく、しいたけに掴みかかってくる。


千歌「!?」
 「ワ、ワォッ!!!?」


そして、ニョロボンはしいたけを掴んだまま、後ろ向きに転がり始めた。

399: 2019/05/17(金) 23:10:03.24 ID:dd6+2abs0

果南「“じごくぐるま”から──」

 「ワ、ワォォ!!!?」

千歌「しいたけっ!?」


ニョロボンはしいたけを掴んで“じごくぐるま”で巻き込み、更に、


果南「“ともえなげ”!!」

 「ニョロボンッ!!!!!」


そのまま、投げ技に派生。しいたけは後方の池に投げ飛ばされる。


 「ワ、ワゥーンッ!!!!!!」


しいたけが鳴き声をあげながら──ザブーン! と大きな水しぶきをあげる。


果南「ニョロボン!! 一気に決めるよ!!」

 「ボンッ!!!!」


ニョロボンは受身を取りながら、素早い動作で体勢を立て直し、池に向かって走り出す。


千歌「ま、まずい!!」


いくら、しいたけの防御が自慢といっても、水中でニョロボンと肉弾戦をするのは、どう考えても無理だ。


果南「ニョロボン!! “ばくれつパンチ”!!」

 「ニョロォッ!!!!!!」


またしても繰り出される“ばくれつパンチ”。


 「ワ、ワゥッ!!!!」


強烈な拳が水面に顔を出したまま無防備な、しいたけに襲い掛かる。

私は咄嗟に池向かってボールを投げた。


 「ボンッ!!!!!!」


強烈な拳が、池を打ち、しいたけが着水したときよりも大きな水しぶきがあがる。

──が、


果南「! 居ない!!」


拳を穿った先にしいたけの姿はなかった。


千歌「フローゼル!!」
 「ゼルルルルルッ!!!!!!」

 「ワ、ワフッ」


ボールから飛び出した、フローゼルが間一髪のところでしいたけを救出したのだ。


 「ワゥ!!!」


フローゼルの力を借りて、しいたけが岸に上がる、

400: 2019/05/17(金) 23:12:39.62 ID:dd6+2abs0

フローゼルも池から飛び出し、岸からあがった瞬間、


 「ボンボンボンッ!!!!!!」


ニョロボンがクロールをしながらとてつもない勢いで二匹に迫る。


千歌「! フローゼル!! “れいとうビーム”!!」

 「ゼルゥッ!!!!!」


咄嗟にニョロボンが泳ぐ池に向かって、“れいとうビーム”を放つ。

冷凍光線は一気に池を凍結し──


 「ボン……ッ!!!!」


泳ぐニョロボンごと、こおりづけにするが──


果南「“ばかぢから”!!!」

 「ボォォンッ!!!!!」


果南ちゃんが指示を出すと、ニョロボンの全身の氷にヒビが入り、


千歌「う、うそっ!!?」


それどころか、

──バキバキバキ!!! と大きな音を立てながら、池に張った分厚い氷がニョロボンを中心にヒビが入り、割れ砕ける。


果南「氷なんて、誰でも気合いで砕けるよ!!」

千歌「そんなの果南ちゃんだけだよっ!!?」


なんて力任せな戦い方だ。

今まで戦ったどんなトレーナーよりもパワーに特化した強引な戦法だ。


千歌「っく!! フローゼル!! “ハイドロポンプ”!!」

 「ゼルゥゥゥーーーー!!!!!」


水中のニョロボンに向かって、激流による攻撃で牽制するが、


果南「ヌオー!!」

 「ヌオーー」


その二匹に間に放たれる、果南ちゃんの二番手、ヌオーが“ハイドロポンプ”を真っ向から防ぐ壁になる。

しかも──


 「ヌオーー♪」

千歌「き、効いてない!? というか、吸収してる!?」


“ハイドロポンプ”はヌオーに当たった傍から、どんどんとヌオーの肌に吸収されていく。


果南「ヌオーの特性“ちょすい”は水を一切通さず吸収するよ!」

千歌「……っ」


そして、ヌオーのフォローで自由になったニョロボンが、

401: 2019/05/17(金) 23:13:46.34 ID:dd6+2abs0

 「ニョロォッ……!!!!!」

千歌「う、うそぉ!!?」


先ほど割り砕いた、馬鹿でかい池の氷を担ぎ、


果南「“なげつける”!!!」

 「ボンッ!!!!!!」

 「ワォッ!!!?」 「ゼルゥッ!!!!?」


岸に居る二匹に向かって投げつけてくる。


千歌「そ、それ防ぐのは無理!! ルガルガン!!」
 「ワォーーンッ!!!!」


私はルガルガンを繰り出す。ルガルガンは飛び出すと同時に身を捻って、回転して飛び出す。


千歌「“ドリルライナー”!!!」

 「ワォォーーーーンッ!!!!!!」


そのまま、落ちてくる巨大な氷塊に向かって突撃し、

──ギャギャギャギャッ!!! と大きな音を立てながら、空中で掘削する。

一気に氷塊の内部までドリルで穿ち、


 「ワォーーンッ!!!!!!」


──内側から粉砕する。


千歌「……よし!!」

果南「さすがだね! ニョロボン、“しんくうは”!!」

 「ボンッ!!!」


ニョロボンが水面に顔を出したまま、ルガルガンに向かって“しんくうは”を放ってくる。


千歌「っ!! “アクセルロック”!!」

 「ワォンッ!!!!!」


ルガルガンは砕けて舞い散る空中の氷の欠片を足場にし、

ピンボールのように跳ね回りながら、直進してくる“しんくうは”をギリギリで回避する。


千歌「ぶ、ぶな……っ!!」

果南「回避もさすが!! でも遅い!!」

 「ボンッ!!!!」

千歌「!?」


回避に集中していた、その隙に池から飛び出してきたニョロボンが、気付けばフローゼルの目の前に走りこんできていた。


果南「“ばくれつパンチ”!!」

 「ニョロォッ!!!!!」


再び繰り出される、激烈な拳、

402: 2019/05/17(金) 23:15:32.62 ID:dd6+2abs0

千歌「しいたけっ!!!」

 「ワォッ!!!!!」


私の咄嗟の声に反応した、しいたけが“コットンガード”を使いながら、再び攻撃を受け止めに前に出る。

──ドガスンッ!!!! と言う鈍い音と共に攻撃を受け止めるが──


 「ゥワゥッ……!!!!」

千歌「……!!」


しいたけが苦しげ表情を歪める。

昏倒まではいかなかったが、一度水に落とされたせいで、毛皮の膨張が弱く、ダメージを貰ってしまった。

そして、再び怯んだ隙に、


 「ボンッ!!!!!」


ニョロボンは素早く、しいたけに掴みかかる。


 「ワゥッ!!!?」

千歌「しいたけっ!!?」

果南「“ちきゅうなげ”っ!!!」

 「ボォンッ!!!!!」

 「ワォォォォン──」


ニョロボンはそのまま、真上に向かって、しいたけを投げ飛ばす。


千歌「ぐっ……!! “ソニックブーム”!!」

 「ゼルゥッ!!!!!」


だけど、私が思考を止めている暇はない。

前方のニョロボンに向かって、フローゼルが音速の衝撃波を放つ。


 「ボンッ!!!!!」


さすがに、攻撃に次ぐ攻撃の姿勢を取っていたニョロボンは対応しきれず、怯む。

そして次の指示は空中のルガルガンから──


千歌「ルガルガン!! そのスピードまま、ヌオーに突っ込め!!」

 「ワォーーーンッ!!!!!」


ルガルガンが“アクセルロック”のスピードを維持したまま、岸辺でぼんやりとしているヌオーに向かって飛び出した。

まずは一匹だけでも……!!


果南「ヌオーは別にボーっとしてるわけじゃないよ!!」

千歌「っ!?」


この行動は読まれてた……!?


 「ヌ、オーー」


ヌオーが気の抜けるような声を出しながら、ルガルガンの方を見て、拳を引く。

403: 2019/05/17(金) 23:16:28.90 ID:dd6+2abs0

千歌「!? や、やば!!?」


でも、もうルガルガンは止まれない。

一直線に突っ込むルガルガン、その鼻先に、


 「ヌオーーー」


ヌオーの腕が突き出てくる。


果南「“カウンター”!!!」

 「ヌオー」

 「ギャゥッ!!!!!?」


ルガルガンは悲鳴をあげながら、打ち返された。

自分のスピードが速すぎた故に、顔面に食らった拳のダメージが大きすぎる。

そして、それとほぼ時を同じくして──

──ズドンと大きな音を立てながら、


 「ワ、ワゥンッ……!!!!!!」


高く高く投げ飛ばされていた、しいたけが落下してくる。


千歌「しいたけ!! ルガルガン!!」

果南「ニョロボン!!」

 「ボンッ!!!!!」

千歌「!!」


ただ、果南ちゃんは畳み掛けるような展開の中、全く休む暇を与えてはくれない。

ニョロボンが再び拳を引く。

──“ばくれつパンチ”だ……!!

しいたけが投げ飛ばされ、狙われるのは当然目の前のフローゼル。


千歌「伏せて!!!」

 「ゼルゥッ!!!!!」


咄嗟に叫ぶ回避の択。


 「ボンッ!!!!!」


拳が風を切りながら──奇跡的にフローゼルの頭上に抜けて行く。


千歌「!! や、やった!!!」


──が、


 「ボンッ!!!!」

千歌「!?」

404: 2019/05/17(金) 23:18:44.51 ID:dd6+2abs0

ニョロボンはそのまま拳の軌道を強引に捻じ曲げて、打ち下ろしてくる。

──ダメだ、避けきれない……!!

そう思った瞬間、


 「ワォォォーーーーンッ……!!!!!」

果南「……!」


満身創痍のルガルガン飛び出してきて、


千歌「!!」

 「ギャゥンッ!!!!!」


フローゼルの代わりに拳にぶつかり吹き飛ばされる。


千歌「“アクアジェット”ォ!!!!」

 「ゼルルルゥッ!!!!!!」


その一瞬出来た隙に、前傾姿勢のフローゼルが一気に加速してニョロボンの足腰に向かって、至近距離から突撃する。


 「ボンッ!!!!?」

果南「しまった!? ニョロボン!!」


その進路は──


 「ワゥッ!!!!」


さっき落下してきた、しいたけのいる方だ……!!

しいたけが吼えながら走り出す。

フローゼルの“アクアジェット”によって、押されているニョロボンと挟み撃ちにするように、


千歌「しいたけ!! “ギガインパクト”!!!」

 「ワォォォーーーンッ!!!!!!!」

 「ボォォーーーンッ!!!!!!?」


ニョロボンの背中に向かって、最大級の破壊力をもって突進する。

その衝撃でニョロボンは派手に吹き飛んだ。


千歌「よ、よし……っ……まず、一匹……!!」


三匹掛かりでどうにかニョロボンを突破する。

だが、安心している暇は全くなかった。


果南「ヌオー!! “じならし”!!」

 「ヌオーーー」

千歌「だわぁっ!!?」

 「ワゥッ!!!?」 「ゼルッ……!!!」


ニョロボンを予想外の展開で討ち取られたと言うのに、果南ちゃんは全く動揺を見せずに次の手を打つ。

ヌオーがぐらぐらと地面を揺らし、私ともども咄嗟に対応出来ずに体勢を崩してしまう。

405: 2019/05/17(金) 23:20:56.69 ID:dd6+2abs0

果南「“どろばくだん”!!」

 「ヌオーー」


ヌオーが、転んだ しいたけに向かって、泥で出来た巨大な爆弾を投げつける。

もちろん、体勢を崩した回避なんて出来るはずもなく。


 「ワッフッ……!!!!!?」


“どろばくだん”が、しいたけに直撃する。


千歌「しいたけっ!!」

 「ワ、ワゥ……」


しいたけ、戦闘不能だ。


 「ゼ、ゼルッ!!!」


だが、しいたけが狙われたお陰でフローゼルは立ち上がれた。


千歌「フローゼル!!」

 「ゼルッ!!!!!」


フローゼルは再び加速し、


 「ヌオーーー?」


ヌオーの横をすり抜け、


千歌「“たきのぼり”!!」

 「ゼルッ!!!!!!」


池に向かって落ちてきていた滝を伝って、上昇していく。


果南「へー、ここで逃げるんだ!」

千歌「……ぐ」


果南ちゃんが挑発してくるけど、我慢だ。

真っ向からのパワー比べじゃ勝ち目がない。

なら展開を有利に運ばせるために、一度高所を取る。

そして、更に、


千歌「行くよ!! ムクホーク!!」
 「ピィィィィ!!!!!!」


ムクホークが、ボールから飛び出し、脚を掴んだ私もろとも空に羽ばたく。

──果南ちゃんは飛べる手持ちを持っていない。

なら、高いところまで飛び立って、攻撃が届かない場所まで逃げてしまえばこっちが圧倒的に有利だ。


果南「なるほどね!!」

406: 2019/05/17(金) 23:24:24.57 ID:dd6+2abs0

果南ちゃんは私の作戦の意図を汲んだのか、すぐさまボールを放る。

新手のようだが、構うもんか、


千歌「ムクホーク全力離脱──」


一気に上昇しようとした瞬間──


 「ピィィィィ!!!!!!?」

千歌「!!!?」


ムクホークが何かの攻撃を食らって、


千歌「わぁぁぁっ!!!!?」


脚を掴んだままの私もろとも、吹っ飛ばされる。

回る視界の中、攻撃の飛んできた方向を、どうにか確認すると、


 「グドラ……!!」

千歌「キングドラ!!!?」

果南「キングドラ!! もう一発、“ハイドロポンプ”!!」

 「グドラッ!!!!!」

千歌「っ……!! “オウムがえし”!!!」

 「ピ、ピィィィィィ!!!!!!」


飛んで来る、“ハイドロポンプ”を強引に真似て返す──が、

ムクホークから飛び出した水砲はキングドラのものに簡単に掻き消され、そのまま“ハイドロポンプ”が迫ってくる。

相頃するには威力が全然足りない。


千歌「くっそ……!!!」


私は咄嗟に、ムクホークから手を放し、受身を取りながら地面に着地する。

身軽になった、ムクホークが“こうそくいどう”で急上昇し、

キングドラの攻撃は今度はどうにか掠る程度で済んだ。


果南「そう易々と、空に逃がすと思う?」

千歌「ぐ……!!」


その口振りから、やはり果南ちゃんは空までは追って来れないようだが、空に逃がさないように対策を打ってくる。一筋縄では行かない。

さらに気付くと、


 「ヌオーー」

407: 2019/05/17(金) 23:26:02.42 ID:dd6+2abs0

ゆっくりではあるが、ヌオーが“たきのぼり”でフローゼルを追いかけ始めている。

もしこのままの状態で上側のフロアにヌオーが辿り着いてしまえば、お互いフローゼルにもヌオーにも指示が出来ない状態になってしまう。

五分の状態になれば、結局パワー負けすることが目に見えている。

だが、もうフローゼルは指示が届かない場所まで上昇してしまっている。

かえって、逃がしたことが仇になった。

気付いて、引き返してくれればいいけど……。いくらなんでも、それは都合が良すぎる。

とにかく……。

空中を旋回する、ムクホークに視線を戻す。


 「ピィィィィ!!!!!!」


高速で飛び周りながら指示を待つムクホーク。

高速軌道で回避体勢の今、どうにか次の作戦を考えなくちゃ──


 「──ピィィィィ!!!!!!?」

千歌「え!?」


ムクホークの悲鳴があがる。

原因は──見ていたからわかる。


 「グドラッ……!!!!」


キングドラによる狙撃だ。


千歌「ムクホークッ!!」

 「ピ、ピィィィィ!!!!!!!」


ダメージは負ったものの、どうにか無事で安堵する。

だが……。


千歌「あの動き回ってる、ムクホークを狙い撃ちしたの!!? 下から!!?」

果南「キングドラは“スナイパー”だよ。あれで回避してるつもりなの?」


果南ちゃんが得意気に言う。


 「グドラ……!!!」


キングドラが再び狙いを定めてくる。

──もうダメだ、考えてる暇がない。


千歌「“すてみタックル”!!!」

 「ピィィィィ!!!!!!!!!!」


避けられないなら、“すてみ”で戦う他ない。

ムクホークが十八番の突進攻撃で、空から一直線にキングドラに向かって急降下する。


果南「“ハイドロポンプ”!!!」

 「グドラァーーー!!!!!!!」

408: 2019/05/17(金) 23:28:22.95 ID:dd6+2abs0

撃ち出される、水砲。

そこに向かって一直線に、


千歌「突っ込めぇぇ!!!!」

 「ピィィィィィ!!!!!」


ムクホークは錐揉み回転しながら、“ハイドロポンプ”に突っ込み、

──撃ち出された激流の中を強引に突き抜け、一直線にキングドラに向かって落ちていく。


果南「うわっ、脳筋!?」

千歌「果南ちゃんに言われたくないよ!?」

 「ピィィィィ!!!!!!」

 「グ、ドラッ!!!!!!」


そのまま、“すてみタックル”が水面のキングドラに直撃する。

だが、威力をかなり“ハイドロポンプ”に殺されていたのか、全然致命傷になっていない。

もちろん、それは織り込み済みだ。

目的はあくまで肉薄。


 「ピィィィィ!!!!!!!」

 「グドラッ!!!?」


ムクホークは猛禽の爪を食い込ませながら、キングドラを掴み、持ち上げる。


果南「!!」

 「ピィィィィィ!!!!!!!!!!!!」


甲高い鳴き声をあげて、気合いを入れながら、力強く羽ばたき、キングドラごと、一気に上空まで上昇していく。


果南「!? ま、まさか!!?」


天高くまで昇ったムクホークは、傍を落ちている滝よりも更に高高度で上昇したのち、

サマーソルトをして、地面に向かって急降下を始める。

重力のパワーを借りた、“すてみ”の一撃、


千歌「“いのちがけ”!!!!」

 「ピィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!」


──ズドォォンッ!!!!! とド派手な音を立てて、ムクホークがキングドラもろとも、地面に落ちてくる。


果南「!! キングドラ!!」


その衝撃に、地面に亀裂が入り、砕けた地面が砂煙となって巻き上がる。

それが晴れると──


 「グ、ドラ……」

 「ピィィ……」


ムクホークとキングドラは気絶していた。

出来ればこのタイミングで道連れ技で自分の手持ちを減らしたくなかったけど……一方的にやられるよりは何倍もマシだ。

409: 2019/05/17(金) 23:29:27.92 ID:dd6+2abs0

果南「……っく、戻れ」

千歌「戻って、ムクホーク!」


お互いポケモンをボールに戻し、次の手持ちを繰り出す。


千歌「行くよ、ルカリオ!」
 「グゥオッ!!!!」

果南「ヤドラン!」
 「ヤド」


こちらの5匹目ルカリオと果南ちゃんの4匹目ヤドランが対峙する。


果南「ヤドラン! “サイコキネシス”!」
 「ヤドー」


ヤドランが念動力を放ってくる。

自由を奪われるとめんどくさいこと、この上ない。


千歌「ルカリオ! “しんそく”!!」
 「グゥォッ!!!!」


ルカリオは狙いを定められないように、一気に加速する。

そのお陰か、


 「ヤドーーヤドーー」


動きの鈍いヤドランは追いつけていない。


果南「……なら、“サイコショック”!!」
 「ヤドー」

千歌「“サイコショック”でも同じだよ!!」


狙いを定められないなら、当たらない。

──と、思った矢先。

──ガンッ!!!


 「グゥォッ!!!!?」

千歌「んなっ!?」


ルカリオが壁にぶつかった。

今の今までそこに壁なんてなかった……つまり、


千歌「“サイコショック”を設置した!?」


“サイコショック”は念動力を実体化させてぶつけて攻撃する技だ。

確かにこういう使い方をすれば、狙いが定められなくても当てられる。

“しんそく”で壁に激突し、怯んだところを、


果南「今度こそ捕まえた!!」
 「ヤド」

 「グゥォッ!!!!」


“サイコキネシス”で捕縛される。

410: 2019/05/17(金) 23:31:27.71 ID:dd6+2abs0

千歌「ルカリオッ!!」


そのまま、サイコキネシスによって、ルカリオは空中を振り回される。


 「グ、グゥォッ!!!!!!」


そして、そのまま、水辺の辺りに思いっきり墜落させられる。


 「グ、ォ……!!!!」

千歌「ルカリオ!!! 大丈夫!!!?」


私はすぐさま、ルカリオに駆け寄る。


 「グ、グォッ!!!!」


どうにか無事のようだ。


果南「“サイコショック”!!」
 「ヤド」

千歌「!」


今度こそ、念波が私たちの周囲に具現化し、四方八方から、飛び掛ってくる。

回避──無理。

一瞬で判断を下し、決断。

やるしかない。


千歌「ふぅーーー……!!!」


呼吸を整え、ルカリオの波導と意識を同調させる。


千歌「撃ち抜け!!! “バレットパンチ”!!!」
 「グゥォッ!!!!!!」


──ダン、ダン、ダンッ!!!! と銃声のような音を響かせながら、弾丸拳が周囲の実体化した“サイコショック”を撃ち抜いていく。


果南「!! やるね、千歌!!」

千歌「……どういたし、まして……っ……!!」


集中して迎撃したため、軽く息を切らせながら、返事を返す。

そして、ルカリオは攻撃を退けた直後に、後方の池に片足をつけて、


千歌「“みずのはどう”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


水を操り、一気に波立たせる。

それをヤドランに向かって飛ばすが──


果南「そんな技じゃ効かないよ!! “ドわすれ”!」
 「ヤド……」


ヤドランは更に気の抜けるような顔をする。

411: 2019/05/17(金) 23:33:07.17 ID:dd6+2abs0

果南「“ドわすれ”は痛みすら忘れる技。そんな攻撃じゃダメージにならないよ」

千歌「……ぐ、“はどうだん”!!」
 「グゥォッ!!!!」


ルカリオから放たれた“はどうだん”が直撃するが、


 「ヤドォ……」
果南「無駄だって!」


ヤドランにはほとんどダメージがない。


果南「ま……“ドわすれ”はその分動きが更に鈍くなっちゃうのは玉に瑕だけど……」

千歌「……へー」

果南「……? 千歌、なに笑ってんの?」

千歌「……ふふん、いいこと聞いたと思って」

果南「……。千歌がそういう顔するときって大体ロクでもないこと考えてるんだよね。ヤドラン!! ルカリオが何かしてくるよ!!」
 「ヤァン……?」

果南「“ドわすれ”はもういいから!」


果南ちゃんはルカリオと私の動きをじっと見つめて確認する。


果南「……何してくるつもり? 千歌……!!」


──ヒュルルルルルルル。


果南「……? え、何この音?」


漫画にでも出てくるような、何かが落ちてくるような音があたりに響く。

その間も果南ちゃんは、私たちから目を離さない。


果南「何が落ちて…………──落ちてきてる!!!?」


果南ちゃんがハッとした顔で上を見上げた瞬間、


──ゴツンッ!!!

 「ヌオッ!!!!!」

 「ヤドッ!!!!!?」


頭上から落ちてきたヌオーの頭が、ヤドランの頭に直撃した。

二匹はそのまま、バタリと昏倒した。


千歌「ナイス!! フローゼル!!」

 「ゼ、ゼルゥッ!!!!!」


息も絶え絶え、ボロボロな状態のフローゼルが滝を降りながら、私に返事をしてくる。

412: 2019/05/17(金) 23:36:23.95 ID:dd6+2abs0

果南「な……まさか、上からヌオーをヤドランの頭上に狙って堕とした……!?」

千歌「“かまいたち”で吹っ飛ばしてね!! フローゼルがまだ負けてなくて助かったよ!!」

果南「んなバカな!? トレーナーからの指示もなしにそんなこと出来るわけ……!!」

千歌「指示、してたよ」

果南「…………? ……まさか、さっきの“みずのはどう”……!!」

千歌「ニシシ、正解っ!」


そう、さっきの“みずのはどう”は攻撃のために使ったわけじゃない。

ルカリオの波導で作り出したシグナルを、池から滝を通じて、離れたフローゼルに指示を送るためだ。

もちろん、難しい指示は出来ないから、あくまで地上のヤドランの位置をなんとなく伝えて、ヌオーをそこに堕とす様に指示しただけだけど。


果南「……く、くく」

千歌「……?」

果南「まさか、こんな戦法使ってくると思ってなかったよ!! 面白くなってきたじゃん!!」


果南ちゃんは楽しそうに笑って、ヌオーとヤドランをボールに戻しながら、


果南「行くよ!! ギャラドス!!」
 「ギシャァァァァァ!!!!!!!!」


5匹目、ギャラドスを繰り出す。


果南「“ぼうふう”!!!」
 「ギシャァァァァァ!!!!!!!!!!!」


ギャラドスが雄叫びをあげると、突然周囲に“ぼうふう”が発生する。


千歌「ぐ……!!」


その“ぼうふう”は“たつまき”を巻き起こしながら、こちらに迫ってくる。


千歌「フローゼル!! “うずしお”!!」
 「ゼルッ!!!!!」


梨子ちゃんと戦ったときに使ったのと同様に、背後の水を巻き上げ、“うずしお”で相殺を狙う。

──が、


 「ギシャァァァァッァァ!!!!!!!」

千歌「いっ!!!?」


そんなことお構い無しに、“ぼうふう”と“うずしお”の向こう側から、巨大な尻尾が降って来た。


果南「“ドラゴンテール”!!!」

 「グゥォッ!!!?」 「ゼルッ!!!!」


二匹が尻尾の衝撃に吹き飛ばされる。

そのダメージで満身創痍だったフローゼルは、


 「ゼ、ゼル……」


さすがに倒れてしまう。

413: 2019/05/17(金) 23:38:06.63 ID:dd6+2abs0

千歌「く……!! 戻れ、フローゼル!!」


ルカリオは……!?


 「グゥォッ!!!!」


まだ、立っている。

そんなルカリオに向かって、


 「ギシャァァァァァ!!!!!!!」

千歌「!!」


ギャラドスが頭から突っ込んでくる。


果南「“かみつく”!!!」


突っ込んでくるギャラドスの頭には果南ちゃんが掴まっていて、すぐ傍で指示を出している。


 「グゥォッ!!!!!」


突進の勢いを載せたまま、ルカリオがギャラドスの大口に飲み込まれる。


千歌「ルカリオッ!!!」

 「グ、グォォォッ!!!」


だが、ルカリオは辛うじて、ギャラドスの大口の間で、両手両脚を上下に突っ張って耐えていた。


千歌「セ、セーフ!!」

果南「ギャラドス!! “かみくだく”!!!」
 「ギシャァァァッ!!!!!!」

 「グゥォッ!!!!」


ギャラドスが顎に力を入れて、閉じようとする。


千歌「ルカリオ!! “かいりき”!!」

 「グゥゥォッ!!!!!」


動き回るギャラドスを走って追いかけながら指示を出す。

が、閉じる力とそれを開く力では圧倒的に抉じ開けるほうが不利だ。

“かいりき”のパワーでも押し負け始め、徐々に口がしまっていく。


千歌「ルカリオ!! メガシンカ!!」


メガバレッタが光り輝き、


 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオがメガルカリオへとメガシンカする。

一気にパワーを上昇させた、ルカリオが閉じられそうになるギャラドスの大口を押し上げる。


 「ギシャァァァァァァッ!!!!!!!!!!」

414: 2019/05/17(金) 23:39:42.00 ID:dd6+2abs0

雄叫びをあげながら、地面を這いずるように高速で移動する、ギャラドス。

ルカリオは一瞬片足だけ浮かしてから、ギャラドスが擦る地面に震脚をする。

そして、そのまま力を込めて──


千歌「“ともえなげ”!!」

 「グゥゥォァァァッ!!!!!!!!!」

果南「んなぁっ!!?」
 「ギシャァァァァァァ!!!!!!!!」


ギャラドスを下から掬い上げるように、後方に向かって投げ飛ばす。

──ズズン!! とギャラドスの巨体が地面を転がった。

その際にギャラドスに掴まっていた果南ちゃんも投げ出され、地面を転がる。


果南「いてて……」

 「ギシャァァァァァ!!!!!!」

千歌「よっし、ルカリオ!!」
 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオが地を蹴って飛び出す。


果南「!」


果南ちゃんは身を起こしていた最中だったため、指示が遅れる。

その隙に、ギャラドスの下顎から、上に向かってのアッパーカット。


千歌「“スカイアッパー”!!」

 「グゥォッ!!!!!」

 「ギシャァァァァァッ!!!!!?!?」


ギャラドスが大きく仰け反る。

地面に着地したルカリオは更に追撃のために、地を蹴り──


果南「──“げきりん”!!!」

 「ギャシャァァァァアァァァァァァァァアァッァァァァッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


──飛び出したルカリオを、ギャラドスが強引に身を捩り、体をぶつけて、


 「グゥォァッ!!!!!?」

千歌「ルカリオッ!!?」


ルカリオは地面に叩き付ける。

すぐに受身を取るが、


 「ギシャァァァァァァアァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!!」


怒り狂ったギャラドスは、回転しながら、頭からルカリオの方に突っ込んでくる。


千歌「“しんそく”!!!!」

 「グゥォッ!!!!!!!!!」

415: 2019/05/17(金) 23:41:20.21 ID:dd6+2abs0

間一髪のところでルカリオはその場を離脱する。

──バガンッ!!! とド派手な音を立てて、ギャラドスが突っ込んだ地面は、


千歌「ひ、ひぇ!!?」


とてつもない威力の頭突きによって、綺麗な縦穴が完成する。


 「ギャシャァァァァァアァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!」


怒り狂うギャラドスは、すぐさまルカリオを追って飛び出す。


千歌「く……あれヤバイ!! 当たったら終わりだ……!!」


私もルカリオを追って走りだす。

その横で私と同じように果南ちゃんが併走してくる。


果南「ギャラドスーーー!!! “アクアテール”!!!!」

 「ギャシャァァァァァァァーーーー!!!!!!!!!!!」


ギャラドスが、大きな尻尾で広範囲を薙ぐ。


千歌「!? ルカリオ!! ジャンプ!!」

 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオはどうにかジャンプをして回避するが、


千歌「指示聞こえてるの!!? あれで!!?」

果南「ま、大雑把な指示しか出来ないけどね」


果南ちゃんが得意気に笑いながら、鼻を鳴らす。

ただ怒り狂って暴れてるだけなら、どうにか怒りが収まるまで逃げ回ればいいと思ってたけど……。

大雑把でも、指示を聞けるなら話は別だ。

どこかで何かしらの攻撃が当たってしまう可能性が高い。

となると──


千歌「殴り勝つしかない!!! ルカリオ!!!」

 「グゥォッ!!!!!!!!!」


逃げ回るルカリオが、地面を踏みしめ、再び跳躍する。

身を捻りながら、背後に迫るギャラドスに膝を突き出す──


千歌「“とびひざげり”!!!!」

 「グゥォッ!!!!!!!!」


思いっきり振るった膝蹴りが、ギャラドスの眉間に直撃する。


 「ギシャァァァァァァッ!!!!!!!!!!」


ギャラドスは耳を劈くような鳴き声をあげる──が、

怯んでない。

416: 2019/05/17(金) 23:43:26.67 ID:dd6+2abs0

 「ギシャァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!」


そのまま、中空のルカリオに向かって、“ずつき”を繰り出す。


 「グゥォッ!!!!!!?」

千歌「ルカリオ!!!?」


ルカリオが“ずつき”によって地面に叩き落される。


 「グ、グォ……!!!!」


どうにか受身を取って、素早く立ち上がるが、もう限界が近い。

そんなルカリオに向かって、


 「ギシャァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!」


ギャラドスは“げきりん”が落ちついてきたのか、身を引きながら狙いを定める。


千歌「……!! 仕留めるつもりだ!!」


私は全身に思いっ切り力を込め、全身の筋肉をフルパワーで稼動させて、ルカリオの元まで全力疾走する。


果南「ギャラドス!!!」


果南ちゃんが指示を出そうとする。


千歌「──ルカリオ!!!」


私はルカリオの元に滑り込みギリギリで辿り着く。


千歌「やるよ!!!!」
 「グゥォッ!!!!!!!!!!」

果南「“ギガインパクト”!!!!!」

 「ギャシャアァァァァァァァァッァァ!!!!!!!!!!!!!!!」


上から降って来る破壊の一撃、それに対抗するのは、もちろん──

私とルカリオの必殺技。


千歌「──“はっけい”!!!!!!」
 「グゥゥォッ!!!!!!!!!!!!」


両手をギャラドスの眉間にあわせ、突き出す。

インパクトの瞬間──ズ、ドンッ!!!! 大きな音を立てて、二匹の攻撃がぶつかる。

上から落ちてくるのがあまりの破壊力だったせいか、

受け止めているルカリオの足元が──ミシミシと音を立てて砕け始める。


千歌「ま、け、る、かぁぁ!!!!!」
 「グゥゥゥォァァァァァッ!!!!!!!!!!!!」


強大なパワーが拮抗し、辺りに衝撃波を発生させながら、ぶつかり合う。

417: 2019/05/17(金) 23:45:06.59 ID:dd6+2abs0

果南「ギャラドス!!! ぶっつぶせぇぇ!!!!!!」

 「ギシャアァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

千歌「ルカリオォ!!!!!」
 「グゥゥゥゥォッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


二匹の雄叫びがあがる。

氏力を尽くした最大級の攻撃のぶつかり合い。


 「グ、ゥッ!!!!!!!!」


ルカリオが苦悶の表情を浮かべる。


千歌「大丈夫ッ!!!!」
 「!!!!」


私はルカリオの腕に手を添える。


千歌「集中して!!! 私たちなら絶対出来る!!!!」
 「グゥォッ!!!!!!!!!!!!!」


その瞬間、ルカリオの波導が一気に膨れ上がり──


千歌「いっけぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!!!」

 「──ギャシャァァァッァァァ!!!!!!!!!!!!」


轟音を轟かせながら、ギャラドスの頭が跳ね上がった。


果南「!! ギャラドス!!!」

 「ギャ、シャ、ァァァァァァ……」


そのまま、ギャラドスは後方に仰け反るようにして──ぶっ倒れたのだった。


千歌「は……はぁ……はっ……はぁ……っ……!!!」


どうにか、打ち勝てた。


千歌「ル、ルカリオ……やった、ね……!! ……ルカリオ……?」
 「…………」

千歌「……ルカリオっ……!!」


ルカリオは全てのパワーを出し切ってしまったのか、立ったまま気絶していた。


千歌「……ありがとう、よく頑張ったね」


労いの言葉と共に、ルカリオをボールに戻す。


果南「……まさか、ここまで追い詰められるか」


果南ちゃんもギャラドスをボールに戻しながら、そう言う。

418: 2019/05/17(金) 23:47:04.81 ID:dd6+2abs0

私は立ち上がり、最後のボールを構える。

果南ちゃんも同様にボールを構え──


果南「お互い残るポケモンは最後の一体」

千歌「……うん」

果南「千歌の最後の手持ちはバクフーンだよね」

千歌「そうだよ。果南ちゃんは?」

果南「ラグラージだよ。……なんの因果かね、お互い最後は最初に貰ったポケモンで決着をつけることになるみたいだね」
 「ラグッ……!!!!!」


ラグラージがボールから飛び出す。

──最初に貰ったポケモン、と言うことは果南ちゃんはミズゴロウを貰って旅に出たということだろう。


千歌「バクフーン、行くよ!」
 「バクフーーー!!!!!」


私もバクフーンを繰り出す。


果南「千歌……これが本当に最後だ」

千歌「うん」

果南「一切の手加減なしの全力のぶつかり合い……!!」


果南ちゃんが左耳に掛かってた髪を手でかきあげると──そこには、貝殻の装飾のされたピアスがしてあった。

そして、その貝殻ピアスの内側に留められている珠が──七色に光る。

キーストーン。メガピアスが光っている。


果南「ラグラージ!! メガシンカ!!!」
 「ラァァァーーーグ!!!!!!!!」


ラグラージが光に包まれ──


 「──ラグゥッ!!!!!」


元から逞しかった身体は更に筋骨隆々となり、その中でも腕がより一層発達して、巨大になる。


果南「……さあ、全力で掛かってきな!!! 千歌!!!」

千歌「……行くよ!!! バクフーン!!!」
 「バクフーーーー!!!!!!!!!」


本当に本当の最後の一騎打ちの火蓋が──切って落とされた。





    *    *    *



419: 2019/05/17(金) 23:48:26.06 ID:dd6+2abs0


千歌「バクフーン──」


集中する。

炎を一点に集中して打ち出す、この技。


千歌「“ひのこ”!!」
 「バクフッ!!!!!!」


集束された炎が一直線に飛んでいく。


果南「打ち返せ!!!」
 「ラァグッ!!!!!!」


ラグラージは拳を真っ直ぐ叩き込み──


千歌「いっ!!!?」


完璧に“ひのこ”を打ち返してくる。


千歌「わわわっ!!?」
 「バクッ!!!!」


私は咄嗟にバクフーンの身体に掴まり、直後バクフーンが走り出す。

──ドンッ!!!

私たちが今さっきいた場所に跳ね返ってきた“ひのこ”が炸裂し、爆ぜる。


千歌「な、なんで打ち返せるの!?」

果南「ラグラージはパワーがあるからね!!」

千歌「それだけで出来るわけないでしょ!!?」


たぶん、果南ちゃんはデタラメに攻撃を撃ってるだけじゃなく、あらゆる攻撃の精度がいいんだ。

高速・超威力の拳を振るいながら、“ひのこ”を芯で捉え、エネルギーのロスなく打ち返している。

ここまで必殺技を使い続けてきてわかったことだけど、完璧に攻撃が当たると、飛んで来た攻撃そのもののパワーを減衰させることなく綺麗に跳ね返すことも出来そうだとは思っていた。

それをいとも簡単やってくるとは思わなかったけど、


千歌「打ち返してくるんだったら、“ひのこ”で戦うのは向いてない……なら、“だいもんじ”!!!」
 「バクフーーーーッ!!!!!!!!」


私を乗せて駆けながら、バクフーンが大の字の業炎を噴き出す。


果南「ラグラージ!! 構わず、ぶん殴れ!!」
 「ラァァーーーグッ!!!!!!!」


ラグラージが力任せに拳を振るうと、“だいもんじ”すらも一発で掻き消されてしまう。

そして、そこからの反撃、


果南「思いっきり、振りかぶれ!!!」
 「ラァァァーーーァグッ!!!!!!!!」


ラグラージが空を拳で殴ると──


 「バクッ!!!!!?」
千歌「うぇぇ!!?」

420: 2019/05/17(金) 23:50:56.15 ID:dd6+2abs0

バクフーンの身体が拳圧を受けて、後ずさる。


千歌「力任せすぎるでしょ!?」


メガシンカしてるとは言え、いくらなんでもパワーがデタラメすぎる。

恐らく遠距離で戦うのは無理だ。

……いや、ラグラージはどう見ても近距離タイプのポケモンだけど。

ただ、とてつもないパワー差があっても、近付けば近付くほど相手の呼吸も読みやすくなる。

私に勝機があるとしたら、そこの読み合いしかない。


千歌「バクフーン!! “ニトロチャージ”!!」
 「バクフッ!!!!!」


バクフーンは肉薄するために、一気に加速する。

“ニトロチャージ”は走り回りながら全身の筋肉を発熱させ、速度を向上させる技だから、掴まったままでは多少熱いが、今バクフーンから離れるわけにはいかない。


果南「!! 真っ向から来るんだね!! いいよ、来なっ!!」
 「ラァーーーグッ!!!!!」


向かってくるバクフーンに対して、ラグラージが大きな腕を引く。

またあの力任せの豪腕で殴り飛ばすつもりだろう。

──集中。

呼吸を整えながら、ラグラージをよく観察する。

恐らく威力を頃しきるには、あの拳の中心に向かって、こちらも大きな火力を叩き込む必要がある。

ただ、あれだけの火力をバクフーンの筋力だけで張り合うのは不可能だ。

だけど……一つ試してみたいことがある。

バクフーンの特徴の一つとも言えることが、技に応用出来るかもしれない。


千歌「ぶっつけ本番だけど……やるよ!!」
 「バクフッ!!!!!」

果南「ぶん殴れ!!!」
 「ラァァァーーーグ!!!!!!!」


ラグラージの拳が迫ってくる。

──あの拳の中心を完璧に狙え!!


千歌「“ほのおのパンチ”!!」
 「バァァーーークッ!!!!!!」


バクフーンがスピードを載せたまま拳を突き出す。

その拳はラグラージの拳とインパクトする瞬間に、

──ボォンッ!!!! と大きな音を立てて爆ぜる。


果南「!?」
 「ラグッ!!?」

千歌「!! 出来た!!」

421: 2019/05/17(金) 23:52:29.84 ID:dd6+2abs0

ラグラージの腕を爆発する拳で弾き飛ばす。

──バクフーンの特徴……それは爆発する体毛だ。

これは火力の調整にも使っているし、バクフーンの戦いにはそもそも密接な要素だ。

もし、この爆発を一点に集中できたら……?

そう、


千歌「近接攻撃で火力が出せる!!」
 「バァァーーーークッ!!!!!」


バクフーンが続け様に拳を振るう。


果南「なるほどね!! 次から次へと、よく考えるね!!」
 「ラァァァーーーグッ!!!!」


ラグラージも再び拳で空を穿つ。

──ボゥンッ!!!

また、爆発する拳と相頃し合う。

二匹が超火力の拳を打ち付けあう。


千歌「──そこ!!」


──ボゥンッ!!!


千歌「──そこだっ!!」


──ボゥンッ!!!!


連続で攻撃の芯を見抜かないといけないのに果南ちゃんは何度も攻撃を連打してくるため、まったく休む暇がない。


果南「いいね、そういう風に新しい可能性を考えるの!!」

千歌「はぁ……!! はぁ……!!!」

果南「私も昔、チャンピオンと戦ったとき、誰も使ったことないような、見たことも聞いたこともない技でやられたこと、思い出すよ!!」

千歌「ぐ……っ!!! ──そこぉっ!!!」


──ボゥンッ!!


果南「結局一度も勝つことが出来ないまま、あの人はチャンピオン辞めてどっかに行っちゃったけどさっ!! でも、お陰で私も、あの人と同じように自分たちだけの技を……見つけたんだ!!」

千歌「自分たちだけの……!!! 技……!!?」


今、打ち合うのでも精一杯なのに、まだ上があるの……!?

一瞬ラグラージの攻撃が止み、


 「バクッ!!!!!!」


──ボゥンッ!!!!


バクフーンの爆炎拳が突き刺さる──が、


 「ラァァァァグッ!!!!!!!」


ラグラージは──ズン!! と、震脚しながら攻撃を堪える。

と、同時に──

422: 2019/05/17(金) 23:56:38.46 ID:dd6+2abs0

果南「全部のみずのエネルギーを──拳に集めろ!!!」


どんどん、みずのエネルギーがラグラージの拳に集束していくのが目に見えてわかる。


千歌「……!!」


──あ、ヤバイ。

脳が警鐘を鳴らし始める。

この技はヤバイ。

直感でわかった。


果南「──ぶっとばせぇぇぇぇ!!!!!! “アクアハンマー”!!!!!!!」
 「ラァァァァァァァァァグッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」



──…………。

…………。


千歌「…………?」


気付いたときには、空が見えた。


千歌「な、にが……」


全身が痛い。

どうにか身を起こすと、


 「バ、ク……ッ」


バクフーンが倒れている。

バトルフィールドの奥の方で戦っていたはずなのに──私たちはフィールドの入口辺りに居た。


千歌「吹っ飛ば……された……っ」


遠くに居るラグラージに目をやると、


 「ラ、グ……ラグゥ……!!!!」


息を切らしたラグラージ、そしてそのラグラージの前方は爆弾でも落ちてきたのかとでも言わんばかりに、ラグラージの拳が炸裂した場所を中心に半球状に床が抉り取られている。


千歌「何、その……威力……っ」


ラグラージへの反動も大きいようだが、本当にとんでもない威力の技だった。


果南「ピカチュウの“ボルテッカー”を拳だけに集めて放つ技“ボルテッ拳”……それを参考にして作った技。本来“アクアテール”で使うエネルギーを“アームハンマー”に集束して、ね。……私たちだけのこの技に付けた名前は──“アクアハンマー”」


──のしのしと前方からラグラージが歩いてくる。


千歌「っ゛……バクフーン……っ!! 立てる……っ……?」
 「バ、クフーーーンッ……!!!!!」


バクフーンが力を振り絞り立ち上がる。

423: 2019/05/18(土) 00:00:06.73 ID:x2+V1vVn0

千歌「……行くよ……!!」
 「バクッ!!!!!!」


──私はバクフーンと一緒に走り出す。


果南「! まだ動けるのか……!!」
 「ラァァーーグッ」

果南「“アクアハンマー”は自分への反動もでかいから何発も連発出来ないし、チャージも必要だから無防備になる……一発で仕留めたかったんだけど」

千歌「“かえんほうしゃ”ァ!!!」
 「バクフーーーーッ!!!!!!」


バクフーンから噴き出す火炎。

だが、


 「ラグッ!!!!!」


またラグラージが拳で掻き消す。


千歌「っく……!!」

果南「……こうなったら、動き封じてもう一回やるしかないよね!!」

千歌「!?」

果南「“じしん”!!!」
 「ラァァーーーーグッ!!!!!!!!」


ラグラージが両の拳を思いっきり地面に叩き付け、床を粉砕しながら、大地を大きく揺する。


千歌「ぐっ!!?」
 「バクフッ!!!」


バクフーンともどもバランスを崩す、そこに向かって更に──


果南「“いわなだれ”!!!」
 「ラァァァーーーーグッ!!!!!!!」


粉砕した床を構成する岩石が雪崩れのように襲ってくる。


千歌「……!!!」


もうすでに満身創痍の私たちは避けることもままならず──

“いわなだれ”に飲み込まれる。


千歌「──ぐ……」
 「バク、フーーーンッ……!!!!!」


気付くと、

バクフーンが私の上に覆いかぶさるようにして、岩から庇ってくれていた。


千歌「バク、フーン……あり、がと……」
 「バク……」


周囲は岩に飲まれ、ほとんど身動きが取れない。

岩がない部分は天に一箇所だけ小さく見える穴だけだ。


果南「──千歌、生きてる?」

424: 2019/05/18(土) 00:01:00.34 ID:x2+V1vVn0

そこを通して外から、果南ちゃんの声が聞こえてる。


千歌「どうにか……ね……っ」

果南「……まだやる?」

千歌「もちろん……っ……!!」

果南「そ。……それ聞いて安心した……!!」
 「ラァァーーーグッ!!!!!!!」


ラグラージの鳴き声、そして穴の先から、ラグラージの大きな拳が再びみずエネルギーを充填している姿が見える。


果南「ラグラージ……行くよ!!!!」
 「ラァァァァァァァァグッ!!!!!!!!!!!」


──“アクアハンマー”が来る……!!


 「バクフ」


バクフーンが小さく鳴いて、私の方を見る。


千歌「大丈夫……」


私は傍らのバクフーンを撫でた。


千歌「……私は最後まで、諦めない」


勝負が完全に決着する、その瞬間まで。


 「バクッ」


バクフーンが頷く。


千歌「いつだって……二人で励ましあって……最後まで戦ってきたもんね……」
 「バクッ!!!!」


バクフーンの背中から爆炎が噴き出す。


千歌「懐かしいね、この状況……まるで、キミがヒノアラシだったとき、初めてクロサワの入江で出会ったときみたいだね……」
 「バクフッ!!!!!!」


あのときは私は外にいたけど、


千歌「今は……一番そばで一緒に戦ってるね……」
 「バクフッ!!!!!!!!!!」


背中の炎が一気に火力を増す。


千歌「──私のことは気にしなくていいっ!!!!! 全力の炎でぶっ飛ばせ!!!!!!」
 「──バクフーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

果南「ラグラージ!!!! “アクアハンマー”!!!!!」
 「ラァァァァァァグッ!!!!!!!!!!!!」

千歌「バクフーン!!!!!! “ふんか”!!!!!」
 「バクフゥゥゥゥゥゥーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!!!」


上から迫る、水撃の拳と、下から噴き出す、業火の炎がぶつかり合う。

425: 2019/05/18(土) 00:02:52.94 ID:x2+V1vVn0

千歌「いっけぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
 「バクフーーーーーーンッ!!!!!!!!!」

果南「押し潰せぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
 「ラァァァァァァァーーーーーグッ!!!!!!!!!」


二匹の全力がぶつかり合い、衝突するエネルギーが競り合いながら一気に膨張する。

──だが、

優勢なのは──


 「ラァァァァァァァァアァァーーーーーーグッ!!!!!!!!!!」


──ラグラージだった。


千歌「……!!!!」


弾ける、みずのエネルギーが上から私たちを押し潰す。


千歌「──……がっ……!!!」
 「バ、ク……!!!!!」

果南「これで……終わりだぁぁぁぁぁ……!!!!!」
 「ラァァァーーーーーグッ!!!!!!!!!!」


──エネルギーが膨れ上がる。……強烈な衝撃を直上から受けて、意識が飛びそうになる。


千歌「…………ぅっ…………」

果南「はぁ……はぁ……!!!」


私たちの動きを封じるために使った、“いわなだれ”の岩もほとんどが吹き飛んでしまう。

私たちが押しのけることすら出来なかった、あの岩たちが消し飛ぶほどの威力を叩きつけられた。


千歌「…………ぐ……」

果南「千歌……終わり、だね……っ」


メガシンカの同期のせいか、大技を使ったラグラージと同じように息を切らせる果南ちゃん。


果南「ホントに……強く……なった、ね……っ……うかうか、してたら……すぐに、追い抜かされ──」

 「バク、フ……」

果南「……! なんで……」

千歌「…………は、……ぁ……っ」
 「バ、ク……」

果南「なんでまだ立てるのさ……」

千歌「…………相棒が、まだ……立ってる、から……」
 「バク、フーーーーン……!!!!」

果南「もう、動けないでしょ」

千歌「……そんなの……知ら、ない……」

果南「わからずや……千歌のそういうところ、昔っから──大好きだよ」

千歌「……ふふ」


ラグラージの拳に再びエネルギーが集まっていく。


果南「……ラグラージ!!!!!」
 「ラァァァァーーーーーグッ!!!!!!!!!」

426: 2019/05/18(土) 00:03:58.71 ID:x2+V1vVn0

ラグラージの拳が──向かってくる。

もう身体がロクに動かない。バクフーンも同じだよね。

でも──


千歌「諦めたりなんか──するもんか……!!!」
 「バク、フーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


バクフーンの背中に炎が滾る。


千歌「──“かえんほうしゃ”!!!!!」
 「バクフーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!」


至近距離、迫る拳に向かって、バクフーンの“かえんほうしゃ”が噴き出される。


 「ラァァァグッ!!!!!!!!!!!!!」
果南「これで、本当に終わりだよ……!!! 千歌ァッ……!!!!」

千歌「ま、だ、だァぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
 「バァァァクゥゥゥゥ、フゥゥゥゥッゥーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!」


バクフーンの雄叫びとともに、火力が倍──いや3倍、4倍、いやもっともっと大きな火力になる。


果南「ぐっ!!? 火事場の馬鹿力!? でも、それだけで私たちの“アクアハンマー”は越えられない!!!!」
 「ラァァァァァァアァァァァグゥゥゥゥッ!!!!!!!!!!!」


炎がどんどん押されて行く。


千歌「もっとぉ!!!!! もっとだぁぁぁぁ!!!!!!」
 「バァァァァァァクフゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


もっとだ、もっと火力を増すんだ、

──そのとき。

ポケットが熱くなる。


千歌「──“ほのおのジュエル”……!」


これは、ポケモンが使うものだった気がするけど……何故か、ジュエルは私に反応して、赤く、熱く──光っていた。


果南「!? な、なにっ!!?」

千歌「…………」

427: 2019/05/18(土) 00:05:22.50 ID:x2+V1vVn0

ジュエルを握り締める。

──ドクン。

ジュエルから、エネルギーが溢れてくる、そして、それが傍らのバクフーンに拡がって行く。

その中で、ふと──新しい技が見えた気がした。


千歌「バクフーン……」
 「──バクッ」

千歌「一緒に戦おう──最後まで……!!!!」
 「バクフーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!!!!」


バクフーンの背中の炎が──さらに激しく、燃え上がる。


果南「くっ……!!!? ラグラージ!!!!!!」
 「ラァァァァァァァァグッ!!!!!!!!!!!!!!!」

千歌「果南ちゃんっ!!!!!! ラグラージッ!!!!!!」

果南「!!!」

千歌「これが、私と、バクフーンの!!!!!! 全身全霊、全力の炎だよ……っ!!!!!!!」
 「バァァァァァァァァーーーーーーーーーー」


バクフーンの噴き出す炎が更に勢いを増して、どんどん、どんどんどんどん膨張していく。

バクフーンとの絆が生み出した──最強の炎が、


千歌「────“ダイナミックフルフレイム”!!!!!!!!!!!!」
 「バァァァァク、フゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


膨れ上がった炎は、どんどん膨張し──


果南「……マジか」


全てを飲み込み──周囲全てを灼熱の爆炎と共に──吹き飛ばした──





    *    *    *



428: 2019/05/18(土) 00:06:52.45 ID:x2+V1vVn0


果南「…………」


果南ちゃんが大の字になって横たわっている。


千歌「………………ぅ……」


もう私も立っていることは出来なかった、ふらふらとよろけて、倒れそうになる。


 「バク」

千歌「……!」


そこをバクフーンに支えられる。


千歌「ありがと、バクフーン……」
 「バク」

果南「…………最後の最後で……Z技……使うなんて……」

千歌「……? ……Z技……?」

果南「……さっきの技……そういう名前なの。本来、Zクリスタル……ってのが、ないと……使えないはず、なんだけど……ね」

千歌「そう、なんだ……なんで、使えたんだろ……」

果南「さあね……ポケモンとの絆と、Zパワーリングって言う……強化アイテムで、使うらしいけど……土壇場で似たような、条件が、揃ったのかもね……」


辺りを見回す。

──Z技によって、庭園はもはや見る影もなく、丸焦げになっていた。

……いや、私たちが使った技だけど。

そして、その中で、


 「ラ、グ…………」


ラグラージが戦闘不能になって横たわっていた。


果南「…………ははは」


果南ちゃんが突然笑い出す。

429: 2019/05/18(土) 00:08:59.65 ID:x2+V1vVn0

千歌「……果南ちゃん?」

果南「ホント……ポケモンとトレーナーの可能性は、面白いね……っ」


果南ちゃんはそう言いながら、本当に可笑しそうに笑う。


果南「こんな戦いになるなんて……考えてもみなかった。……最後の最後で、ポケモンの新しい可能性を……見れた気がするよ」


そう言いながら、果南ちゃんは──


果南「い、つつ……っ」


起き上がろうとする。


千歌「か、果南ちゃん……!?」

果南「……千歌……っ」


果南ちゃんがよろよろと歩いてきて、

今にも倒れそうな足取りのまま私たちに近付いて──手を差し出してきた。


千歌「……!」

果南「本当に……本当に楽しい、最高のバトルだったよ……!!」

千歌「……うんっ!!」


私は、果南ちゃんの手を、握った。

もうお互い、まともに動くこともままならないはずだったのに、

その握手だけは──お互いの健闘を心の底から讃えあう、この握手は、

お互いとても力強い握手だったと言うことを、私は一生忘れることはないと想う……。




430: 2019/05/18(土) 00:13:17.19 ID:x2+V1vVn0

■FINAL Chapter 『でんどういり』





あのあと、ボロボロになった私たちは、戦闘後しばらくしてからチャンピオンの間に上って来た海未師匠の応急処置を受けて、やっとまともに動ける状態になりました。

それが、あの戦闘から半日経ってからのこと──


海未「本当に……ボロボロですね」


もはや元の原型がなくなってしまったフィールドを見て、海未師匠が肩を竦める。


果南「全くね……ま、私にはもう関係ないし」

海未「……淡白な物言いですね」

果南「“チャンピオンの間”は……もう新チャンピオンのものだからね」

千歌「え……いらない……」

果南「まあまあ、そう言わないの」


果南ちゃんはそう言いながらケラケラ笑う。


千歌「いやでも……もうただの瓦礫の山だし……」

果南「千歌がやったんじゃん」

千歌「いや、そうだけどさ……」

果南「それより、行こうか」

千歌「? 行く? どこに?」

果南「あそこ」


果南ちゃんが指差す先──ここチャンピオンの間の最奥から、更に上に続く階段。


果南「……あの先に、殿堂入りの間がある」

千歌「殿堂入りの間……」

果南「あそこで、千歌と、一緒に戦い抜いたポケモンたちを永遠に記録する」

千歌「!! ……うん……!」


私は殿堂入りの間に向かって、足を踏み出そうとしたとき、海未師匠がその場に棒立ちなのに気付き、


千歌「海未師匠は……?」


思わず訊ねてしまう。


海未「“殿堂入りの間”は歴代チャンピオンしか足を踏み入れることは出来ません。ここで待っていますよ」

千歌「そっか……行って来ます」


私はそう行って、階段を歩き出す。

431: 2019/05/18(土) 00:13:46.28 ID:x2+V1vVn0

果南「……海未」

海未「? なんですか?」

果南「長い間、世話になったね」

海未「……世話した覚えはありませんよ」

果南「……言われてみれば、世話された覚えもないや」

海未「よく言いますね」

果南「お互いね」





    *    *    *



432: 2019/05/18(土) 00:14:30.53 ID:x2+V1vVn0


──殿堂入りの間。

そこはだだっ広い空間の中央に──大きな装置が置いてあるだけの部屋だった。


果南「千歌、そこに手持ちのボールをはめてあげて。一匹ずつ登録するからさ」

千歌「……うん!」


一匹ずつ、ここまで戦ったポケモンたちを──登録していく。


    *    *    *

433: 2019/05/18(土) 00:17:05.13 ID:x2+V1vVn0


 『No.157 バクフーン♂/バクフーン
  :Lv.75 特性:もうか  おや:千歌
  おくびょうな 性格。
  Lv.5のとき クロサワの入江で 出会った。』


────
──

 『──ごめんね……。研究所にいたのに、突然こんなところ連れてこられて……初めて見る野生ポケモンに追いかけられて、怖かったよね……』
  『ヒノ…』

 『震えてたね……すっごい怖い思いしたんだよね……。ごめんね。もう少し早くチカたちが研究所に来てれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに』
  『…………』

 『……でも、もう大丈夫だから……今助けるから……!! ──私はキミのパートナーだから……!!』
  『ヒノ…!』



 『……こうさ──』
  『──ヒノオオオオオオ!!!!!』

 『!? あ、あっつ!!? ヒ、ヒノアラシ……?』
  『ヒノッ!!!』

 『──そうだよね……。……私、言ったもんね──一緒に強くなろうって……!!』
  『ヒノッ!!!』

 『──負けるもんかっ!!!!』
  『ヒッノォ!!────マグッ!!!』

 『ありったけの!!!!! “ひのこ”を!!!!!!』
  『マグゥゥゥッ!!!!!』

 『やきつくせえええええ!!!!!!』
  『マグウウウゥゥゥゥゥ!!!!!!』



  『マグゥ──バグフー…!!』

 『進化した……!! やったー!! バクフーン!!』
  『バクフーン!!!』



──
────


バクフーン。

ヒノアラシのとき、クロサワの入江で出会って、ずっとここまで旅をしてきた最初のパートナー。その炎でいつでも私の行く道を照らしてくれる最高のパートナー。




    *    *    *


434: 2019/05/18(土) 00:18:00.88 ID:x2+V1vVn0



 『No.676 しいたけ ♀/トリミアン
  :Lv.68 特性:ファーコート おや:美渡
  のうてんきな 性格
  ウラノホシタウンで タマゴから うまれたようだ。』


────
──

  『ワンッワォゥ!!』
 『わわ!? なんだ、しいたけか……』



 『しい……たけ……』
  『ワゥ』

  『ワゥ…』
 『えへへ……相変わらず、しいたけは暖かいね……』
  『クゥーン…』



 真っ白な視界。辺りは“ふぶき”による風の音しかしない。寒くて、冷たくて、前も見えず、何もわからなくて怖い。でも……。

 『私には……しいたけがいる』
  『ワォン』

 誰よりも心強い、ちっちゃい頃から私を守って、そばに居てくれた、しいたけが──。



──
────


しいたけ。

昔から、私の傍に居て、一緒に育ってきたポケモン。最後の最後までここぞというときに頼りになる子だった。




    *    *    *


435: 2019/05/18(土) 00:18:45.18 ID:x2+V1vVn0



 『No.398 ムクホーク♂/ムクホーク
  :Lv.65 特性:すてみ おや:千歌
  いじっぱりな 性格
  Lv.10のとき 2番道路で 出会った。』


────
──

  『ピィィィィィ!!!!!!』

 『……よし、決めた……!』

 『キミは絶対、チカが捕獲するんだから!』

  『ピィィィィィィ!!!!!!』



  『ピィ…』

 『ムックル? 寒いの……?? ど、どうしよ……!!』
  『ピ、ピィィィィ──』

 『…………あ。…………進化した……!!』
  『ピィーー』

 『えへへ! ムクバードーっ!』
  『ピピィ!』



  『ピィィイイイイイイイ!!!!!!!!!』

 『ムクホークー!! 調子どうー!?』
  『ピィイイイイイイイ!!!!!!!!』



──
────


ムクホーク。

ムックルのときに初めて自分の手で捕獲したポケモン。私の旅の切り込み隊長を努め、私の翼となってくれた。




    *    *    *


436: 2019/05/18(土) 00:19:27.55 ID:x2+V1vVn0



 『No.745 ルガルガン♂/ルガルガン(たそがれのすがた)
  :Lv.66 特性:かたいつめ おや:千歌
  わんぱくな 性格
  Lv.26のとき 4番道路で 出会った。』


────
──


  『ワンッ ワン』

 『──待て』
  『ワンッ』

 『お手』
  『ワン』

 『よしよし、いい子だね。食べていいよー』
  『ワンッ ワンッ』



  『クゥーン』
 『イワンコ……』

  『クゥン?』
『一緒に来る?』

  『クゥーン』
  『あはは、そればっか……。君はホントにマイペースだね……。……明日は良い天気になりそうだね……』

 『イワンコ、夕日好きなの?』
  『…』

 『夕日、綺麗だね』
  『…』



  『ふふ……』

  『ワンッワンッ!!!!』

 『──私たちはもう、キミの仲間だよね……っ!!! イワンコッ!!!!!』

  『ワンッ──ワォオーーーーーーン』

 『“アクセルロック”!!!』
  『ワォーーーーン!!!!!!』



──
────


ルガルガン。

最初はルガルガンの群れから追い出されたイワンコだった。進化先の姿がわからない子を引き取って、一緒に戦い、今の姿になって、ここまで前線で戦い続けてくれた。




    *    *    *


437: 2019/05/18(土) 00:20:23.98 ID:x2+V1vVn0



 『No.448 ルカリオ♂/ルカリオ
  :Lv.73 特性:せいぎのこころ おや:千歌
  ようきな 性格
  セキレイシティで タマゴから うまれた。』


────
──



──パキ、パキパキ。

 『ん──』
  『リュオ…』

 『か、かわいい……!』
  『リュォ…?』

 『リオル……かわいい』
  『リュオ』

 『! チカが“おや”だってわかるんだね』
  『リュォ』

 『リオル、よろしくね』
  『リュオ』



 『リオル!! 避けて!!』
  『リオ…』

 『リオル!!』
  『リオ…──』

 『な……』
  『──フー…』

 『進化……した……?』



 『皆が信じてくれた。……私が旅して、歩んできた道は繋がってたんだって、実感した。……そんな皆が傍に居てくれる。なんか、それだけで不思議と……勇気が湧いて来る』
  『グゥォッ!!!!!』

 『なんかチカ、今ね……負ける気がしない……!!』
  『グゥォッ!!!!!』

 『波導の力を斬撃に──』
  『グォッ!!!!』

 『──……“いあいぎり”!!』
  『グォァッ!!!!!!!』



──
────


ルカリオ。

メガシンカを一緒に経験し、ずっとエースとして頑張ってくれた相棒。ルカリオと切り開いた道は数知れない。きっとこれからも私の力になってくれることだろう。




    *    *    *


438: 2019/05/18(土) 00:21:19.50 ID:x2+V1vVn0



 『No.419 フローゼル♀/フローゼル
  :Lv.66 特性:すいすい おや:千歌
  ゆうかんな 性格
  Lv.47のとき スルガ海で 出会った。』


────
──



『そこに、キミの大切なモノがあるんだよね……!! でも、周りをただ攻撃するだけじゃ、ダメなんだよ……っ!』
 『ゼル…!!』

『ここに暮らしてる、いろんな人たちと、ポケモンたちと、助け合って一緒に守ろう……?』
 『ゼル…』

『怖く……ないから……ね?』
 『ゼル…』

『大丈夫……キミの大切なモノはきっと、チカにとっても大切なモノだから……』
 『ゼル…』



 ……私……このまま、氏ぬのかな……。──もう自分が上に流されてるのか、下に流されてるのか。上下左右、前後ろすらも全くわからない。

 ……ああ、こんなことなら……。泳げるポケモン──捕まえておくんだったな……。……私の意識が、ぶくぶくと……海に沈んで行く、中で。

  『──ゼル……!!!』

 聞き覚えのある鳴き声がしたと、思った──。



 『キミ……!! コメコで会ったブイゼル君だよね!?』
  『ゼルルルッ!!!!!』

 『来てくれたんだね……っ!!』
  『ゼルッ!!!!』



──
────


フローゼル。

絶対絶命だったときに、コメコシティで知り合ったブイゼルが、進化して駆けつけてくれた。その後は一緒に道中を共にし、私が海を渡るときにその力を貸してくれた。


    *    *    *


439: 2019/05/18(土) 00:22:26.82 ID:x2+V1vVn0


千歌「バクフーン……。しいたけ……。ムクホーク……。ルガルガン……。ルカリオ……。フローゼル……。皆、ありがとう……。皆が居てくれたから、私……ここまで来られたよ……!」

果南「……そして、最後に」

千歌「……?」

果南「千歌も登録しないと」

千歌「わ、私……?」

果南「そうだよ。そのポケモンたちと一緒にここまで歩んできたのは、紛れもなく千歌なんだから」

千歌「……うん、わかった」


 『 千歌
   でんどういり おめでとう! 』


千歌「……えへへ」

果南「……さて、じゃあ帰りますか」

千歌「ん、帰る?」

果南「ウラノホシにね。報告することいっぱいあるだろうしさ」

千歌「……うん、そうだね! 皆! 出ておいで!!」
 「バクフッ!!!!」「ワン、ワォゥ!!!」「ピィィ、ピィィィィィ!!!!!!!」「ワォォーーーーンッ!!!!!!」「グゥォッ」「ゼルルッ!!」

千歌「皆! ウラノホシタウンまで競争だよ!!」

 「バクッ!!!!!」

 「ワンワゥッ!!!!」

 「ピィィィィィ!!!!!!!」

 「ワォーーーンッ!!!!!!!」

 「グゥォッ!!!!!!」

 「ゼルゥッ!!!!!!!」


一人と六匹で同時に駆け出す。


果南「って、走って帰るつもりなの!? ……まあ、いいけどさ」

千歌「さあ、みんな!!! 一緒に行こうーーーー!!!!!」


私たちは──どこまでも駆けて行く。

一緒に──どこまでも一緒に……。



440: 2019/05/18(土) 00:23:39.12 ID:x2+V1vVn0


>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【ウラノホシタウン】
no title
 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.75  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.68 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.65 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.66 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.73 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.66 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:192匹 捕まえた数:15匹


 千歌は
 レポートを しっかり かきのこした!



441: 2019/05/18(土) 00:24:05.90 ID:x2+V1vVn0


    *    *    *





──
────
──────
────────





    *    *    *



442: 2019/05/18(土) 00:25:49.84 ID:x2+V1vVn0


──全ての戦いを終え、それなりに時間が経ちました。

あの後、皆がどうなったのか……少しだけ話しておこうかな。

──まず梨子ちゃんの話。


梨子「お母さーん?」

梨子母「なにー??」

梨子「私のイーゼルどこあるか知ってるー?」

梨子母「イーゼル……なんでそんなもの失くすのよ……」

梨子「あはは……あっちこっちで絵描いてたから……」

梨子母「全く……私は知らないわ。ポケモンたちにでも探してもらいなさい。あ、メガニウムとチェリムは夕飯のお手伝いしてくれてるから、他の子に頼んでね」

梨子「……はーい」
 「ヴォッフ」

梨子「あ、ムーランド、もしかしてどこにあるか知ってるの?」
 「ヴォッフ」

梨子「ち、ちょっと待ってよー! 今いくから、服引っ張らないでってー……!!」


梨子ちゃんは旅が全て終わった後、タマムシシティに戻って行きました。

今でも頻繁に連絡を取り合っていて、最近はよく絵を描いたり、曲を作ったりしてるって言ってたかな。

なんか、いんすぴれーしょんが止め処なく溢れてきてしょうがないんだってさ。

──これは余談だけど、梨子ちゃんがこの旅で見て、感じた、想いや景色をまとめた一連の芸術群……タイトル『星』という作品たちは、後に芸術界で大きな反響を呼ぶことになるんだけど……それはまた別のお話──


 主人公 梨子
 手持ち メガニウム♀ Lv.62 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
      チェリム♀ Lv.56 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
      ピジョット♀ Lv.59 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ネオラント♀ Lv.52 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      メブキジカ♂ Lv.56 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
      ムーランド♂ Lv.55 特性:きもったま 性格:ゆうかん 個性:しんぼうづよい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:163匹 捕まえた数:14匹



    *    *    *

443: 2019/05/18(土) 00:30:07.35 ID:x2+V1vVn0


──次は曜ちゃん。


亜里沙「宇宙みたいなイメージにしたいんですけど……」

曜「宇宙……もうちょっと具体的なイメージとかは?」

亜里沙「えっと、キラキラでビカビカーって感じで……」

曜「……よし、一旦絵に描いてみようか!?」

ことり「曜ちゃーん?」

曜「あ、ことりさん!」

ことり「この間の新作衣装のことについてなんだけど……あれ、亜里沙ちゃん」

亜里沙「こんにちは! ことりさん!」

ことり「……もしかして、お客さんとして来てるのかな?」

曜「うん、そうなんだ! 新作衣装については、あとで確認しにいくね!」

ことり「うん、よろしくね」


亜里沙「……それにしても、曜さんってホントすごいですね」

曜「え? 何が?」

亜里沙「だって、コンテストクイーンになったのに、いろんなコーディネーターさんの話を聞いて衣装作りのお手伝いしてくれてて……」

曜「……まあ、それが私の夢だからね」

亜里沙「夢……ですか?」

曜「うん! 皆が想い想いの衣装とポケモンたちで、最高のコンテストライブを作り続ける──それが私の夢だよ!!」


曜ちゃんはコンテストクイーンの座についた後、コンテスト運営委員会の役員に就任しました。

特にコンテストライブにおける衣装制作や一次審査の見直しについては、今でも頻繁に意見を出し、委員会内外問わず、多くのコーディネーターから一目置かれているそうです。

加えて最近はいろんなコーディネーターさんに衣装アイディアを出す、衣装デザイナーもやりながら、理想のコンテストを目指して日々邁進中。

旅の後はウラノホシからお引越しして、最近はセキレイシティを本拠地に活動を頑張っているみたいです。


 主人公 曜 ✿
 手持ち カメックス♀ Lv.54 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
      ラプラス♀ Lv.47 ✿ 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
      ホエルオー♀ Lv.45 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
      ダダリン Lv.47 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
      カイリキー♂ Lv.44 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
      タマンタ♀ Lv.43 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:170匹 捕まえた数:23匹 コンテストポイント:120pt



    *    *    *

444: 2019/05/18(土) 00:33:31.80 ID:x2+V1vVn0


──ルビィちゃん。


ルビィ「えっと……最近の採掘計画だと……」
 「ピピピ」

ルビィ「って、わぁ!? コラン、なんでジュース零してるの!?」
 「ピピピピ」

ルビィ「ピピピじゃないよ! って、あああーーー!!! 資料が、大切な資料がぁーーー!!!」
 「ピピピピピピ」

ルビィ「もうーーー!!! コランーーーー!!!!」
 「ピピピピピピーーーーー」

ルビィ「逃げないでよぉぉーーーー!!!」

ダイヤ「全く……騒がしいですわよ、ルビィ」

ルビィ「お、お姉ちゃーん……コランが資料にジュース零しちゃったぁ……」

ダイヤ「……はぁ……そんなことだろうと思って、控えを取っておきましたわ」

ルビィ「ホントに!? お姉ちゃん、ありがとう!!」


ダイヤ「全く……先が思いやられますわね……あれで本当に巫女なんて務まるのかしら……?」
 「メレ…」

ダイヤ「ボルツ……見守れって?」
 「メレ…」

ダイヤ「……はいはい、気長に見守るつもりですわよ……」
 「メレ……」


ルビィちゃんは事件後長くなっていた睡眠時間も、今ではすっかり健康なときと同じような状態に戻り、元気に過ごしてるみたい。

今はクロサワの巫女を継ぐ為に日夜勉強に励んでいるそうです。

ただ、ダイヤさん曰く、おっちょこちょいなところは旅立つ前に戻ってしまったなんて言っていて、お姉さん視点からだと相変わらず心配事が絶えないとかなんとか……。

ルビィちゃんのグラードンは今でも眠ったままで、普段はオハラ研究所にいるそうです。

空いた手持ちにはダイヤさんとお揃いの新しいポケモンを捕まえたって言ってたけど……まあ、これは余談だから、いつか別の機会に話そうかな。


 主人公 ルビィ
 手持ち バシャーモ♂ Lv.51 特性:もうか 性格:やんちゃ 個性:こうきしんがつよい
      メレシー Lv.53 特性:クリアボディ 性格:やんちゃ 個性:イタズラがすき
      アブリボン♀ Lv.40 特性:スイートベール 性格:のんき 個性:のんびりするのがすき
      キテルグマ♀ Lv.47 特性:もふもふ 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      ドンファン♂ Lv.45 特性:がんじょう 性格:さみしがり 個性:ものをよくちらかす
      オドリドリ♀ Lv.35 特性:おどりこ 性格:いじっぱり 個性:すこしおちょうしもの
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:141匹 捕まえた数:15匹



    *    *    *

445: 2019/05/18(土) 00:35:15.28 ID:x2+V1vVn0


──次に花丸ちゃん。


鞠莉「花丸ーいるー?」

花丸「なんずら?」

鞠莉「この間、研究発表会があったじゃない……」

花丸「ずら? 一昨日の?」

鞠莉「そうそれ……あのときの研究資料どこやったか知らない?」

花丸「また、失くしたずら!?」

鞠莉「いやー……なんか寝ておきたらどっかいっちゃって……」

花丸「そんなわけないずら!! ちゃんと探してください!!」

鞠莉「……ぅ……そんなに怒らなくても……」

花丸「あの研究は未来に繋がってく研究なんずらよ!!? もっとあの研究の重要さをちゃんと理解してください!!」

鞠莉「s...sorry...それはそうと花丸」

花丸「なんずらか!?」

鞠莉「頼まれてた、論文と書物が取り寄せられたわ」

花丸「……ホントずら!!? 超貴重な文献なのに……」

鞠莉「部屋に置いておくから、好きなときに読むといいわ」

花丸「はい!!! わかりました!!」


花丸ちゃんは鞠莉さんの助手になりました。

日々研究のお手伝いで忙しいみたいだけど……鞠莉さん曰く、最近お小言を言うことが増えてきたことがちょっと不満だとかなんとか……。

近いうちにダリア大学への入学も視野に入れて、推薦入学ための研究実績? みたいなもののために、毎日奮闘してるとか。


 主人公 花丸
 手持ち ドダイトス♂ Lv.45 特性:しんりょく 性格:のうてんき 個性:いねむりがおおい
       カビゴン♂ Lv.43 特性:くいしんぼう 性格:のんき 個性:たべるのがだいすき
      デンリュウ♂ Lv.41 特性:プラス 性格:ゆうかん 個性:ねばりづよい
      キマワリ♂ Lv.40 特性:サンパワー 性格:きまぐれ 個性:のんびりするのがすき
      フワライド♂ Lv.41 特性:ゆうばく 性格:おだやか 個性:ねばりづよい
      イノムー♂ Lv.42 特性:あついしぼう 性格:ようき 個性:たべるのがだいすき
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:189匹 捕まえた数:78匹



    *    *    *

446: 2019/05/18(土) 00:36:29.91 ID:x2+V1vVn0


──そして、善子ちゃん。


鞠莉「──そういえば……善子はどこ行ったの?」

花丸「え? 善子ちゃんなら、博士に頼まれごとをされたって言ってさっき出て行きましたけど……」

鞠莉「頼まれごと……? そんなの、してないわよ」

花丸「…………善子ちゃん、まさか」

鞠莉「……あの子はまたサボりなの!? ちょっと捕まえてくるわ!!」

花丸「いってらっしゃーい」


善子「……全く、鞠莉はこの堕天使ヨハネのことコキ使いすぎなのよ。今月だけでどれだけポケモン捕獲したと思ってるのよ」
 「そうロト。週休は8日制希望ロト」

善子「アンタは何しれっとついてきてんのよ……」

鞠莉「待ちなさい!! 善子ーーー!!! って、ロトムもいるの!!?」

 「ロトッ!!?」
善子「げっ!? もう、気付かれた!!? ドンカラス、逃げるわよ!!!」
 「カァーーーーー!!!!!!」

 「よ、善子ちゃん、待ってロトーーー」

鞠莉「待ちなさいっ!! 善子ーーーー!!!!! ロトムーー!!!!」

善子「あーーーもう!!! だから、わたしは!!!!! 善子じゃなくて、ヨハネだってばーーーーーー!!!!!!!」


善子ちゃんも成り行きで鞠莉さんの助手になったとか。

ただ、鞠莉さんとは意見が食い違うことも少なくなくて、よくケンカしていると言うのは花丸ちゃんの談。

まあでも……たまに会うとすごい生き生きしてる気はするかな。なんだかんだで鞠莉さんの助手をやってるのは好きみたい。


 主人公 善子
 手持ち ゲッコウガ♂ Lv.56 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい
      ドンカラス♀ Lv.58 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい
      ムウマージ♀ Lv.55 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
      シャンデラ♀ Lv.53 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
      ユキメノコ♀ Lv.52 特性:ゆきがくれ 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい
      アブソル♂ Lv.63 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:193匹 捕まえた数:100匹



    *    *    *

447: 2019/05/18(土) 00:39:56.08 ID:x2+V1vVn0


そして──私、千歌の話。


千歌「音ノ木……やっぱり、めちゃくちゃ高いな……。風つよ……」
 「バクフッ」

千歌「頂上……初めて来たかも」
 「バク」

千歌「!! ……うわぁーーー!! すごい景色っ!! 雲の下にアキハラタウンやセキレイシティがあんなにちっちゃくみえる……!!」

 「ここからの景色、絶景だよねー」

千歌「!」

 「あ、ごめんごめん。そんなに警戒しないで~……私も景色眺めてるだけだから」

千歌「あ、はい」

 「でも、すごいね。一人でここまで登って来るなんて……もしかして、腕利きのトレーナーさんなのかな?」

千歌「腕利き……えへへ、まあそれほどでも……。……あなたはいつもここに?」

 「うぅん、今日はたまたまかな。たまには故郷を見に戻るのもいいかなって」

千歌「そうなんですか」

 「うん」

千歌「ところで」

 「ん?」

千歌「あなたもポケモントレーナーですよね?」

 「…………ふふ、そういうことかー」

千歌「ポケモントレーナー同士、目が逢ったら……!!」

 「戦うのが礼儀だもんね!! いいよ!」

千歌「えへへ! 全力で行きますよ! 出番だよ、バクフーン!!」
 「バクフーーー!!!!!!」

 「私も負けるつもりないよっ!! 行くよ、リザードン!!」
  「リザァーーーー!!!!!!」


今日もこの地方のどこかで、ポケモントレーナーとして、

いろいろな人と、ポケモンと、出会い──そして戦い、競い合っています。

貴方もポケモンが大好きな人なら──もしかしたら、どこかで出会って戦うことになるかもしれないね……!

その日を楽しみにしてるよ。いつの日か全力で戦おうね!! いつの日か……──


 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.81  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.75 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.69 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.72 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.80 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.71 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:200匹 捕まえた数:15匹





    *    *    *

448: 2019/05/18(土) 00:40:31.63 ID:x2+V1vVn0





──ポケットモンスター、縮めてポケモン。

動物図鑑には載っていない、不思議な不思議な生き物。

その姿は海に、山に、森に、川に、草原に、街に、ありとあらゆるところに生息し、その数は100...200...300...400...いや、それ以上いると言われている。

これはそんな世界で生きる、少女たちとポケモンたちの……出会いと絆の物語──





<THE END>


449: 2019/05/18(土) 00:40:59.44 ID:S8QGpOZgO
乙でした!!!

450: 2019/05/18(土) 00:41:29.58 ID:x2+V1vVn0
終わりです。お目汚し失礼しました。


長い作品でしたが、お付き合い有難う御座いました。

少しでもポケモンの世界で千歌たちと一緒に旅をしている気分を感じて頂けていればと想います。


……最後に。

ちょっとした余興として、

千歌の手持ち6匹。バクフーン、しいたけ、ムクホーク、ルガルガン、ルカリオ、フローゼルの6匹でレートに潜ってみました。

そのときそれぞれの子をちゃんと活躍させてあげられた回を何戦か、バトルビデオとしてあげておきますので、ポケモンUSUMを御持ちで興味のある方は見て頂ければ嬉しく思います。

パーティメンバーPGLリンク (QRコードもあります。ご自由にお使いください。)
https://3ds.pokemon-gl.com/rentalteam/usum/BT-4859-9000

 バクフーン
 【XP5G-WWWW-WWX6-PMTU】

 しいたけ
 【J5DW-WWWW-WWX6-PMXC】

 ムクホーク
 【55NW-WWWW-WWX6-PUAN】

 ルガルガン
 【3E7G-WWWW-WWX6-PM28】

 ルカリオ
 【LJ9W-WWWW-WWX6-PLQZ】

 フローゼル
 【KNCG-WWWW-WWX6-PU86】


最後に改めて、ここまで読んで頂き有難う御座いました。

また書きたくなったら来ます。

よしなに。


過去作

善子「一週間の命」

千歌「――私はある日、恋をした。」

ダイヤ「もう一人の妹?」 ルビィ「もう一人のお姉ちゃん?」


452: 2019/05/18(土) 01:07:41.75 ID:bPt+LEf10
乙でした
ここ最近の楽しみだったので終わるのが少し寂しい反面、すっきり終わってくれて嬉しいです

453: 2019/05/18(土) 14:02:45.11 ID:ghGxCN++o


毎回更新楽しみにしてたからさみしい

引用: 千歌「ポケットモンスターAqours!」 Part2