20: 2015/09/13(日) 19:50:13.43 ID:28Y7hCbSo
【向日葵「葉桜の季節」】



葉桜の色とは、何色になるのだろうか。

白桃色の花びらは数を減らし、しかし芽吹く若葉色もまだそこそこ。むき出しになった枝の茶色が一番主張して……その三色が微妙に入りまじったコントラストを作っている。さすがに満開の時期よりも綺麗とは思わないが、なんとなく風情はある。

窓際の席から見えるその何とも形容しがたいのどかな混合色を見ながら……私は後ろの席の元気な声たちにまた意識を戻した。


「部活はどこか入るの? もう2年だし入りづらいかぁ……でもうちのとこだったら全然今からでも大丈夫だよ!」

「う~ん、部活入るかは決めてないなぁ……私中学の時も入ってなくてさ。生徒会だったんだよね」

「あっ、生徒会!? 古谷ちゃんも前そんなようなこと言ってたけど……もしかしてそこでも一緒だったり?」

「そうそう。一年の頃からずっとね」

「ほんとにずっと一緒だったんだね~、ねー古谷ちゃん?」

「…………」

「……ちょっとー、もしもしー?」

「……えっ……あ、はい?」

「もう聞いててよ~! 古谷ちゃんたちの話してたのにー」

「あぁ……ごめんなさい」


会話は思いっきり聞こえていたのだが、恥ずかしいので聞こえてなかったふりをしてからみんなの会話に加わった。


私の後ろの席の女の子。そしてその机の周りを囲む三人の女の子。

櫻子と、私の友人たち。


中学を卒業して別々の高校に進むことになった私と櫻子だが、なんと櫻子は進学先の高校で猛勉強して成績を上げ、私がいる高校に転校してきた。

本人は姉のツテのおかげというが、櫻子に身についている実力は本物であり……それらは全て、私のために励んだ結果だという。


私の元に、戻ってくるために。
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21: 2015/09/13(日) 19:52:10.39 ID:28Y7hCbSo
「ところで次の授業ってなんだっけ?」

「現文だよ~。あ、うちらの現文の先生面白い人なんだよ! たぶん今日も何か話してくれるから」

「話?」

「雑談というか、無駄話が多い先生なんだよね~。だからクラスごとに進行度の差がついちゃうこともあって……まあその話が結構面白いからみんなに好かれてる先生なんだけど」

「良い先生が多いんだねー……あ、じゃあ私始まる前にトイレ行ってこようかな」

「あーん私もいく~! 櫻子ちゃん一緒にいこ?」

「あはは、はいはい」


両の手に二人の友達を繋いで教室を出る櫻子を見送る。そんな私の後ろから声がかかった。


「ふーるたーにちゃん?」

「ん……はい?」

「もう、なあにぼーっとしちゃって。二年に上がってから窓の外見てばっかりだね?」

「そんなことないですけど……だって葉桜が綺麗なんですもの」

「ふふっ……じゃあそんなことあるんじゃーん」


櫻子にくっついてトイレに行った二人とは別の友人が、櫻子の席に残ってそこに座り……私を後ろに向かせて話しかけてきた。この子とは……いや、先ほどまでここにいた櫻子以外の三人は、去年1年間も私と同じクラスだった私の友人だ。


「古谷ちゃんも櫻子ちゃんともっとお話すればいいのに。話したいこといっぱいあるんでしょ? 思い出話とかさ」

「ん、まぁ……」

「も~話しなよ話しなよ! ってか私たちもそういうの聴きたいし!」

「ん~……」


手持無沙汰に現代文のノートをぱらぱらとめくりながら、自分の中学時代を思い返す。


「私、櫻子と学校でそこまでうるさくおしゃべりしたりはしてこなかったので……」

「えーっ! うっそー」

「本当ですわ。櫻子とは今まで何年もずっと同じクラスだったけど、あの子は昔から友達が多い子でしたから……学校ではいつも他の話し相手に囲まれていて」

(そう……今みたいに)

22: 2015/09/13(日) 19:53:58.98 ID:28Y7hCbSo
私たちのこの構図は中学時代のそれに酷似していた。

私は櫻子の近くの席に座っていて、櫻子と誰かが話しているのをまるでかけっぱなしのラジオのように聴いている。時折櫻子が私をからかうような話題を挙げれば、「……ちょっと、聞こえてますわよ?」と私が言葉を入れる。


櫻子の机はいつだって賑やかな友人たちに囲まれている。それはこの高校でも同じだった。

ふつう、転校したての子というものはすぐには近づきづらい存在だろう。だが櫻子にそんな壁は無かった。話しやすくてどんな子にも笑顔で応えてくれ、フレンドリーの塊みたいな子だとわかるやいなや多くのクラスメイトが櫻子の机を囲んだ。特に私の友人たちなど、授業間の小さな休み時間でもほぼ毎回集まってくるようになった。

この一年間味わっていなかった懐かしい感覚。友達を取られたような……いや、友達に櫻子を取られたような、でも構図で言えば昔と変わらないとも納得できる感覚。


私たちの間で、あの中学のときと違うことといえば?


それは……ここでは言えないこと。


「でもさー櫻子ちゃんは古谷ちゃんに何か話したいこといっぱいありそうだけど? なんとなく」

「まだこの学校のことでわからないことが多いんでしょう。じきに慣れますわ」

「そういうのじゃない気がするんだけどな……?」


取り立てて話すこともなく、口を開けば簡単に喧嘩に発展してしまったのが昔。

話したいことが多すぎて、でもまだ「人前での接し方」がわからないのが今。

話したいことなんて山ほどあるけど、誰かに聴かせられるような軽いものでもありませんので。


廊下の方に目線を戻すと、先ほど出て行ったときと同じフォーメーションでトイレから帰ってきた櫻子と目があった。

「この子たちには参っちゃうよ」とでもいいたげに、おかしそうに笑っている。

私も穏やかな気持ちを、微笑ましく視線だけで返す。


私たちにとっては、それだけでも充分立派なコミュニケーションだった。


23: 2015/09/13(日) 19:54:26.35 ID:28Y7hCbSo



あれは三月の……いつだったか。


早めに学校から帰ってこれた私は夕飯の準備をしていた。主菜の準備と並行して副菜、汁物の調理……少し忙しくしているところに、玄関が開く音が聞こえた。

包丁で具材を刻みながら、振り向かずに私は「楓? おかえりなさい」と言った。次の瞬間腰元に突っ込んできた大きな塊に私は悲鳴をあげる。

姿勢を低くしながらわざと驚かせるように抱き着いてきたのは櫻子だった。「こら、危ないじゃないの!」とは怒らなかった。怒れなかった。そんなことよりも先に大事なことがあった。


慌てて包丁を置いて鍋の火を止め、櫻子が手にしっかり持っていた紙を見る。


ちらほら目に付いた「100」という点数はもはやどうでもよくて、私が見たかったのは「1」の文字。


学内順位の欄にある、「1」という数字。


「さ、櫻子……っ!!///」

「やったよ向日葵、私やったんだよぉ……!!」


それは櫻子が私の元に帰ってくるためのパスポートだった。

努力して努力してやっと掴み取った、燦然と輝く一位の判が押されたパスポート。


櫻子なら大丈夫だと信じていた。そしてその時点なら櫻子も相当な自信を持っていただろう。

でもついに掴み取ったそれが形になっていることが嬉しくて、この一年の壮絶な努力を見事実らせたこの子が愛しすぎて、私は思いっきり櫻子を抱きしめた。

私に押された櫻子がしりもちをついてもなお強く抱きしめ続けた。櫻子も涙目で震えながら嬉しさをかみしめていた。楓が学校から帰ってくるまで、ずっとずっと抱き合っていた。

24: 2015/09/13(日) 19:55:33.70 ID:28Y7hCbSo
春休みは毎日のように……いや、本当に毎日櫻子と一緒にいた。一緒に新しい学校にあいさつに行き、一緒に新生活の準備をした。

撫子さんの制服を引っ張り出して試着して……足りないものも全部一緒に買い足した。何度目かのデートにも行ったし、みんなで一緒にお花見だってした。朝起きてから夜寝るまで、ほとんど櫻子と一緒にいた。


今思えば、この一年の間に話したいと募った思い出話などは全部あの春休みに出し尽くしたかもしれない。

櫻子の秘密だけでなく、花子ちゃんの気持ちや撫子さんのエピソード……一年間ずっと私に秘密を守り抜いた楓の本心も全部聞いた。あの時だけでも、同じ話を何度も何度も繰り返し聞かされた。それでも私たちが話に飽きることなんて一向になかった。


そして今から先週ほど、櫻子が転校生としてこのクラスにやってきた。私だけは知っていたその事実……知っていたのに、改めて「ただいま」と言ってきてくれた櫻子に涙を抑えきれなかった私を、私たちを見たクラスのみんなは衝撃を受けただろう。その噂はあっという間に学校中に行きわたって、そしてこの春という始まりの季節にすぐに溶けていった。


つい一週間ほど前のことなのに、情景的に過ぎ去っていったのが原因なのか、それともあれからの一週間が濃すぎるのか……ずいぶんと昔のことのように思い返される。



もう何度も振り返ったそのシーンたちに想いを馳せていると、ちょんちょんと背中をつつかれた。

先生に気にされないよう少しだけ身体をひねって振り返ると、いたずらっぽく微笑む櫻子が小さな紙を渡してきた。

折りたたまれたそれを両手でこっそり開いていく……どうせ真面目な内容は書いてないのでしょうと想像してたのに、案の定の文字が出てきた私は思わず笑顔を隠し切れない。


『今日の夕飯なに?』だなんて……そんなの今聞くことじゃなさすぎるでしょう!



「それじゃあここを……そうね、大室さん読んでみてくれる?」

「わひゃいっ!?///」

「今のとこから次の形式段落まで。はいどうぞ」

「はい! えっと……こほん」


ほーら、こんなことしてるからばちが当たるんですわよと私は心の中で笑う。しかし誰かに頼らなくとも自分一人で読み上げる範囲を覚えているあたりは、さすがに昔と違った。


変わってるようで変わってない、私と櫻子。

変わってる部分も変わってない部分も何もかも嬉しくて……昔と変わったのはどこか、変わってないのはどこかを探しあうのも楽しくて、全部愛しさとなって募っていく。


櫻子は指定された範囲を綺麗に読み上げた。ほっと一息ついて席に着くその机に、ぽいっと紙を放ってあげる。

ああ、前の席じゃなくて隣の席だったら……この子の嬉しそうな表情が見れたのに。

でも恥ずかしがってしまう私の赤面を隠せるから、ここはここでいいのかもしれない。


『ハンバーグ。』とだけ書かれた紙だけど……その辺に落っことしちゃダメですからね? 誰かに見られたら恥ずかしすぎますから。


25: 2015/09/13(日) 19:56:49.62 ID:28Y7hCbSo



学校であまり話さないのは、単純に人前では話すことが思いつかないから。

でも知り合いのいない二人になった途端……どうしてこんなにも言葉が出てくるのだろう?

櫻子と一緒の通学時間はそんな楽しみのうちのひとつだった。学校であった事などを話しながら一緒に帰る……この一年退屈だと思っていた電車通学の時間も、櫻子と一緒なら大切なひとときに思える。


「向日葵さ、なんで『古谷ちゃん』って呼ばれてんの?」

「さぁ……最初に誰かにそう呼ばれて、気づいたらみんなその呼び方になってましたわ」

「私は聴き慣れないからびっくりしたよ。逆に『向日葵』って呼んだら『誰のこと?』なんて言われちゃったし」

「ふふ……でもこれでも仲良くやってましたのよ?」

「それはわかる! みんな良い子だもんねー……向日葵のこと大切にしてくれてる感じ、すごく伝わってきた」

「妬きました?」

「くふふ……それこっちのセリフ! 向日葵、私に友達取られちゃったって感じてるんじゃない?///」

「意外とそんなことはありませんわよ。櫻子を友達に取られた感じはしますけどね」

「そっちかい! まあ……今はちょっとしょうがないよね。私も一応てんこーせーだしさ」


手を頭の後ろに回し、得意気に足を組む櫻子。この子は自分が転校生だから気にされていると思っているようだが……きっとクラスメイトたちが櫻子に近づいているのはそれだけではないだろう。

確かに私がいつまでもうかうかしていたら、関係の薄い人がどんどん割り込んできてしまうかもしれない……

櫻子はこうして私の元に戻ってきてくれたのだから、私だって櫻子に歩み寄ってあげなければ。

26: 2015/09/13(日) 19:57:26.51 ID:28Y7hCbSo
電車を降りて駅を出て、自宅までの道を歩く。一応周囲に人がいないのを確認してから、隣を歩く櫻子に半歩近づいて話してみた。


「私たちのこと……みんなは、どう思ってるんでしょうね」

「どうって?」

「いえ……同じ中学を卒業しただけの二人って思われてるなら、ちょっと考えを改めないとって……」

「え、どゆこと?」

「だ、だからその……櫻子にぐいぐい来る女の子がこの先現れてしまうかもしれませんから、ただの友達同士じゃないんだってところを見せる……というか」


自分ではわかりやすく言っているつもりなのに、櫻子はばかみたいにぽかんとしている。以前よりも勉強ができるようになったからといって、勘の鈍さまで養われるわけではないのか……そう思った私は、いっそストレートに伝えてしまおうと勇気を奮った。


「わ、私たちの関係を……おおやけに付き合ってることにしちゃってもいいんじゃない? ってことですわよ」

「…………」


せっかくまじまじと目を見てこんな恥ずかしいセリフを言ったのに、櫻子はまだぽかんとしている。それどころか私も予想しなかったことを意外そうに言ってきた。


「え、私たちが付き合ってることって……みんなまだ知らないの?」

「はぁ……!? そりゃあそうでしょう、言ってませんもの!」

「うそー!? 私もうオープンに知られてるもんだとばっかり!」

「そんなわけないじゃない……! 確かに付き合いが長いことくらいはもう皆も知ってるかもしれませんけど、誰もそういう関係だなんて思ってませんわよ!」


いったいどんな思考手順を踏んでその結論に至ったのかはわからないが、櫻子は大きく驚愕していた。思わず呆れてしまう。

27: 2015/09/13(日) 19:57:56.38 ID:28Y7hCbSo
「こっちに転校してくる前から私のこと知ってた子が何人かいたからさ、てっきり向日葵が話してたもんだとばっかり」

「確かに話はしましたけど、付き合ってるってことまでは言ってませんわ……だいいちその時まだ付き合ってないですし」

「櫻子っていう大好きな子がいるんですわ~とか言ってたんだと思ってたよ」

「そんなバカみたいに言うわけないじゃないの! 大切なことだし……誰にも詳しくは言ってないですわよっ」

「大切なこと、か……」


何気なく言ったその一言をすくいあげられ、恥ずかしくなって思わず櫻子の顔から目を逸らしてしまう。

しかし次の瞬間櫻子はセカンドバッグを持っていない方の私の手をぱっと取ると、真剣な目で聴いてきた。


「確認なんだけどさ、私たち付き合ってるんだよね?」

「なっ……///」

「今更すぎて『付き合おう』なんてここまで一回も言ってこなかったけど……この際はっきりさせとこ?」

「こ、こんな道端で?」

「こんな道端で」


櫻子が決してからかってるわけじゃないことは声のトーンからもその眼差しからも充分伝わってきた。

それにしてもムードとかはもうちょっとあってもいいんじゃないだろうか……小さくため息をつきながらも、大切に言葉を紡ぐ。

28: 2015/09/13(日) 19:59:31.94 ID:28Y7hCbSo
「ええと、その……付き合って、ください……///」


「おし、おっけー!」

「…………はぁぁ!? おっけーってなんですのよ!」

「これでおっけーでしょ? 私たち付き合ってることになれたね♪」

「もう……!」


十何年もの付き合いの中で生まれて初めて言ったこの大事すぎる言葉を「おっけー」で受け取られてしまった私は一瞬もやっとしかけたが、同時に大きなわだかまりが消えていくようにすぅっと何かが解けていく気もした。


「そうだよ。私たち付き合ってるんだよ。それでいいじゃん」

「?」

「周りがそれを知ってようが知ってまいが関係ない。私と向日葵だけが知ってれば充分なこと……みでしょ?」

「でもそれだと、誰かが櫻子に馴れ馴れしく近づいてきたときにどうすれば……」


「だーかーらー、もう心配性だなぁ向日葵は……」


櫻子は急に立ち止まったかと思えば、握っていた私の手を持ち上げるように寄せて……バランスのとれなくなった私は社交ダンスのようにくるりと回されてから、櫻子に倒れこんでしまった。

そしてそんな私ごと、ぽすんと優しく包み込む。


「きゃっ! ちょ、ちょっと!」

「向日葵は私の前の席だから……私のことが見えないから、だから心配性になっちゃってるのかなー」

「な、なにが?」



「私、ずっと向日葵しか見てないよ?」

「!」

29: 2015/09/13(日) 20:00:02.27 ID:28Y7hCbSo
「向日葵から私は見えないかもしれないけど、私はずっと向日葵を見てるんだよ。どんな子と話してたって向日葵のことしか見えてないし、向日葵が視界からいなくならないように気を付けてるくらいだもん」

「えっ……」


「向日葵に会いたかった。向日葵の傍にいたかった。だから一年間も氏ぬ気で頑張ったんじゃん! 全部全部向日葵のためなんだよ?」


「他の誰が来たって、この気持ちは……もう一生動かない。忘れちゃわないでよ……私が向日葵を大好きってこと!」

「ぁ……///」


櫻子は私の胸にきゅっと顔をうずめると、すぐにまた手をとって家までの道を元気よく歩き出した。


確かに私は忘れていたのかもしれない。私が櫻子に想う気持ちはいつも一方的なものだと……長い間勘違いしていた。

素直になれずに反発していた中学時代。あの頃からだって本当の気持ちは変わっていないはずなのに……私はまだ櫻子からの愛を受け取ることに慣れていないだけだった。


「け、決して忘れてるわけじゃ、ないんですけどね……」

「ん?」

「いえ……じゃあ櫻子も忘れないでくださいよ? 私がいつだってあなたを気にしてること」

「忘れるわけないじゃんそんなの。だって私たち付き合ってるんだから!」

「ふふっ……///」



私たちが一緒に歩む新しい時間は、まだまだ始まったばかり。

この先どうなるかなんてわからない。また喧嘩のひとつもしてしまうかもしれない。

でも……こうして隣から愛を伝え、あなたからの愛を受け取っているだけで……それだけで私は、永遠ともいえる時間にだって立ち向かっていける気がした。


当たり前にしたいようでいて、決してその新鮮さも忘れないでいたい、胸の奥がきゅんとする気持ち。

これからもずっとずっと、噛みしめていきたい嬉しさ……

30: 2015/09/13(日) 20:01:39.47 ID:28Y7hCbSo
「忘れないようにさ、毎日お互い『好き』って言ってくことにしない?」

「もう、バカップルじゃないんですから……やですわよそんなの」

「向日葵が言わなくても私が言っちゃうもんねー! 向日葵だいすき♪」

「……はいはい」

「こらー! ちゃんと好きって言え!」

「はぁ……大好きですわよ、櫻子」

「うんっ、私も大好きだからね~」


「何やってんだし二人とも……」

「うわぁーーっ!? は、花子っ! 楓!」


気づけば私たちは自宅の前まで到着していて、そして後ろには花子ちゃんと楓が一緒にいた。

二人して呆れたかのような目をこちらに向けてきている……


「き、聴いてましたの!? どこから!?」

「おねえちゃんが付き合ってくださいって言ってるあたりから、ずっと後ろにいたの……」

「結構前じゃんか! なんで言ってくれなかったの!?///」

「単純にバカップル二人の視界が狭すぎただけだし……いいから早く家入っちゃってよ」

「い、今のは全部誤解ですからね? 私たち別にそんなつもりじゃ……」

「はいはい、言い訳はおゆはん食べながら聴くの♪」

「ちょっ、楓まで~!」


妹たちに背中を押され、大室家へと帰宅した。


今ではもう……みんなで一緒にこの家に帰ってくることのほうが、当たり前になりかけている。


~fin~

31: 2015/09/13(日) 20:04:27.50 ID:28Y7hCbSo
ありがとうございました。


34: 2015/09/14(月) 21:16:32.01 ID:w969oY3SO
さくひまは何故こんなにも素晴らしいのか

乙でした

引用: 櫻子「みんなで作る光のパズル」/向日葵「葉桜の季節」