148: 2008/12/10(水) 22:44:49 ID:t7FLCVaf
夕暮れ時。
ネウロイの襲来も無く、訓練、食事、休憩……と全てスケジュール通り、順調に事が運ぶ。
501部隊にとってはごく平凡で、平穏で、そして貴重な一日も終わりに差し掛かっていた。
ミーナも必要な書類に一通り目を通した後、ううん、と背伸びをした。
「ミーナ、少し休んだらどうだ?」
横で腕組みをし様子を見ていたトゥルーデが気遣い、穏やかに諭す。
「またにはテキトーもいいんじゃない?」
トゥルーデの横にあるソファーにだらしなく寝転がるエーリカも同調する。
「まあね。でも、こういう時こそ、しっかり仕事しないと」
「ミーナらしいな」
夕日に染められたトゥルーデの顔が和らぐ。窓の外を見る。まもなく日没だ。
エーリカもソファーの上で穏やかな日常を満喫していると見える。
ミーナは書類をとんとんとまとめると、必要な部分にすらすらとサインをしていく。
カールスラント製万年筆の書き味はとても滑らかで、かりかりと嫌味な音を立てない。
ミーナを含め、カールスラント出身者がこぞって愛用している理由だ。
突然、執務室のドアが開かれた。
扶桑の割烹着の姿をした芳佳だった。
「ん? どうした宮藤?」
振り返るトゥルーデ。
「お、ミヤフジぃ。今日、食事当番?」
「宮藤さん、どうかしたのかしら?」
「大変です、坂本さんが!」
芳佳の言葉に、一同は戦慄した。
「何ですの、この異臭は?」
鼻をハンカチで押さえてペリーヌが台所にやって来た。
「少佐が料理を作ってたんですけど……失敗しちゃったみたいで」
エプロン姿のリーネが、外も中も完全に黒焦げ……煤か灰の塊になった鍋……つい1時間前まで鍋だった物体……を指して言った。
「少佐が? 一体何をなさっていたの?」
「……このお鍋、もう使えませんね」
苦笑するリーネ。
ネウロイの襲来も無く、訓練、食事、休憩……と全てスケジュール通り、順調に事が運ぶ。
501部隊にとってはごく平凡で、平穏で、そして貴重な一日も終わりに差し掛かっていた。
ミーナも必要な書類に一通り目を通した後、ううん、と背伸びをした。
「ミーナ、少し休んだらどうだ?」
横で腕組みをし様子を見ていたトゥルーデが気遣い、穏やかに諭す。
「またにはテキトーもいいんじゃない?」
トゥルーデの横にあるソファーにだらしなく寝転がるエーリカも同調する。
「まあね。でも、こういう時こそ、しっかり仕事しないと」
「ミーナらしいな」
夕日に染められたトゥルーデの顔が和らぐ。窓の外を見る。まもなく日没だ。
エーリカもソファーの上で穏やかな日常を満喫していると見える。
ミーナは書類をとんとんとまとめると、必要な部分にすらすらとサインをしていく。
カールスラント製万年筆の書き味はとても滑らかで、かりかりと嫌味な音を立てない。
ミーナを含め、カールスラント出身者がこぞって愛用している理由だ。
突然、執務室のドアが開かれた。
扶桑の割烹着の姿をした芳佳だった。
「ん? どうした宮藤?」
振り返るトゥルーデ。
「お、ミヤフジぃ。今日、食事当番?」
「宮藤さん、どうかしたのかしら?」
「大変です、坂本さんが!」
芳佳の言葉に、一同は戦慄した。
「何ですの、この異臭は?」
鼻をハンカチで押さえてペリーヌが台所にやって来た。
「少佐が料理を作ってたんですけど……失敗しちゃったみたいで」
エプロン姿のリーネが、外も中も完全に黒焦げ……煤か灰の塊になった鍋……つい1時間前まで鍋だった物体……を指して言った。
「少佐が? 一体何をなさっていたの?」
「……このお鍋、もう使えませんね」
苦笑するリーネ。
149: 2008/12/10(水) 22:45:42 ID:t7FLCVaf
「どうして無茶したの、美緒」
「すまん」
割烹着姿のまま、ベッドに寝かしつけられる美緒。横には仕事そっちのけで美緒を看病するミーナの姿。
美緒はどこか元気がなく……まるで何かの瘴気に当てられた様な顔をし、声にいつもの張りが無い。
「宮藤、お前が横に居ながら何と言う……」
「いいんだ、バルクホルン。今回、宮藤には一切手出し無用と厳命したからな」
「しかし……」
「そうよ美緒。宮藤さんは料理が得意なんだから、彼女に任せれば良いじゃない。ネウロイとの戦いでもないのに何故そこまで」
「これは私の……私自身の“戦い”なんだ」
「た、戦い?」
ぎょっとする一同。
「でも少佐、どうしてそこまで?」
エーリカが興味津々と言った感じで口を挟む。
「私は確かにウィッチだが、その前に、ひとりの扶桑の女だ。二十歳も近いと言うのに、料理のひとつも出来んで、どうする」
「別に料理ができなくたって……」
「そうそう。トゥルーデなんて、か~な~り雑な味付けなんだから。別にいいじゃん」
「なっ!? クリスとエーリカの時は別だぞ?」
「私は……煮物ひとつまともに作れぬ不器用な女……」
美緒は諦観の呟きを口にすると、それっきり、毛布をかぶって皆に背を向けた。恥じらいか、情けなさを自認したのか。
「ちょ、ちょっと美緒?」
「少佐、何もそこまで思い詰めなくても」
「そうですよ坂本さん! 何もいきなり煮物からやらなくても良かったんですよ」
「……宮藤さん、貴方美緒に一体何を教えようとしてたの?」
「はい?」
一同から疑惑の視線が向けられる。おどおどしながら答える芳佳。
「煮物です、扶桑の。色んな具を一緒に柔らかく煮込んで味を染み込ませて、おかずにするんですよ。
煮物といっても煮込み、煮付け、含め煮、煮染め、煮浸し……、色々有るんですけど、今回は鶏肉とにんじんと……」
「それは作り方が非常に難しいものなのかしら?」
「いえ。……それほどでも」
「『煮物』か。カールスラントで言うと、家庭料理の……アイスバインやアイントプフみたいなものか?」
トゥルーデが首を傾げながら芳佳に問う。
「あー、ちょっと近いかも知れませんね。て言うかカールスラントの料理はよく分からないけど」
「なら、今度作ってやろう。私の得意……」
「中佐、大変ダ! 台所の方から異臭ガ! サーニャの部屋ニ!」
エイラが医務室に飛び込んできた。
「大丈夫。把握しています」
ミーナはこめかみを押さえて、答えた。
「今晩のご飯、おにぎりだけ?」
ルッキーニがふてくされる。軽いおやつならいいけど、夕食のメインがおにぎりなんて……と表情が語っている。
「まあ、イモだけよりかはマシかな……」
隣に座るシャーリーが呟く。
「ほら、形も色々有るし、味もたくさん作ったから、飽きないとは思うよ」
大至急全員分のおにぎりをこしらえた芳佳が苦笑いする。
「扶桑の家庭料理だ~って聞いてたから、ちょっと楽しみにしてたのに」
「ごめんねルッキーニちゃん。今度はちゃんと作るから」
「芳佳ちゃんの、おにぎり……」
「サーニャ、ゆっくり食べろヨ? 胸つかえるゾ?」
お隣では北欧コンビがおにぎりをちまちまと食べていた。
「でもお米ばっかりってのも、少し飽きるね」
「一応空腹は満たされる。今回はそれで問題ない」
エーリカとトゥルーデの会話。フォローしているのだかそうでないのか、微妙だ。
「芳佳ちゃん、また今度一緒におにぎり作ろう?」
「あ、うん」
一人満面の笑顔のリーネ。
なんだかんだでわいわいとおにぎりを頬張る一同の中に、美緒の姿はなかった。
「すまん」
割烹着姿のまま、ベッドに寝かしつけられる美緒。横には仕事そっちのけで美緒を看病するミーナの姿。
美緒はどこか元気がなく……まるで何かの瘴気に当てられた様な顔をし、声にいつもの張りが無い。
「宮藤、お前が横に居ながら何と言う……」
「いいんだ、バルクホルン。今回、宮藤には一切手出し無用と厳命したからな」
「しかし……」
「そうよ美緒。宮藤さんは料理が得意なんだから、彼女に任せれば良いじゃない。ネウロイとの戦いでもないのに何故そこまで」
「これは私の……私自身の“戦い”なんだ」
「た、戦い?」
ぎょっとする一同。
「でも少佐、どうしてそこまで?」
エーリカが興味津々と言った感じで口を挟む。
「私は確かにウィッチだが、その前に、ひとりの扶桑の女だ。二十歳も近いと言うのに、料理のひとつも出来んで、どうする」
「別に料理ができなくたって……」
「そうそう。トゥルーデなんて、か~な~り雑な味付けなんだから。別にいいじゃん」
「なっ!? クリスとエーリカの時は別だぞ?」
「私は……煮物ひとつまともに作れぬ不器用な女……」
美緒は諦観の呟きを口にすると、それっきり、毛布をかぶって皆に背を向けた。恥じらいか、情けなさを自認したのか。
「ちょ、ちょっと美緒?」
「少佐、何もそこまで思い詰めなくても」
「そうですよ坂本さん! 何もいきなり煮物からやらなくても良かったんですよ」
「……宮藤さん、貴方美緒に一体何を教えようとしてたの?」
「はい?」
一同から疑惑の視線が向けられる。おどおどしながら答える芳佳。
「煮物です、扶桑の。色んな具を一緒に柔らかく煮込んで味を染み込ませて、おかずにするんですよ。
煮物といっても煮込み、煮付け、含め煮、煮染め、煮浸し……、色々有るんですけど、今回は鶏肉とにんじんと……」
「それは作り方が非常に難しいものなのかしら?」
「いえ。……それほどでも」
「『煮物』か。カールスラントで言うと、家庭料理の……アイスバインやアイントプフみたいなものか?」
トゥルーデが首を傾げながら芳佳に問う。
「あー、ちょっと近いかも知れませんね。て言うかカールスラントの料理はよく分からないけど」
「なら、今度作ってやろう。私の得意……」
「中佐、大変ダ! 台所の方から異臭ガ! サーニャの部屋ニ!」
エイラが医務室に飛び込んできた。
「大丈夫。把握しています」
ミーナはこめかみを押さえて、答えた。
「今晩のご飯、おにぎりだけ?」
ルッキーニがふてくされる。軽いおやつならいいけど、夕食のメインがおにぎりなんて……と表情が語っている。
「まあ、イモだけよりかはマシかな……」
隣に座るシャーリーが呟く。
「ほら、形も色々有るし、味もたくさん作ったから、飽きないとは思うよ」
大至急全員分のおにぎりをこしらえた芳佳が苦笑いする。
「扶桑の家庭料理だ~って聞いてたから、ちょっと楽しみにしてたのに」
「ごめんねルッキーニちゃん。今度はちゃんと作るから」
「芳佳ちゃんの、おにぎり……」
「サーニャ、ゆっくり食べろヨ? 胸つかえるゾ?」
お隣では北欧コンビがおにぎりをちまちまと食べていた。
「でもお米ばっかりってのも、少し飽きるね」
「一応空腹は満たされる。今回はそれで問題ない」
エーリカとトゥルーデの会話。フォローしているのだかそうでないのか、微妙だ。
「芳佳ちゃん、また今度一緒におにぎり作ろう?」
「あ、うん」
一人満面の笑顔のリーネ。
なんだかんだでわいわいとおにぎりを頬張る一同の中に、美緒の姿はなかった。
150: 2008/12/10(水) 22:46:40 ID:t7FLCVaf
翌日の午後。
「坂本さん、今度は簡単な焼き魚です。ブリタニアでは扶桑と同じく、色々な魚がたくさん獲れるんですよ。
今日は活きのいい鯖を近くの市場で買って来ました」
「よし、ご苦労。今度こそ、皆に扶桑の料理を振舞おうじゃないか」
「は、はい」
一抹の不安を覚えながら、笑顔で答える芳佳。汗が一筋、頬ににじむ。横で同じくエプロン姿のリーネが微笑む。
「一体何ですの、この煙は!?」
もうもうたる煙と焦げた臭いにむせかえりながら、ペリーヌが台所に怒鳴り込んで来た。
「もうすぐ夕食だと言うのに……少佐! 一体どうなさいまして?」
「あ、ペリーヌさん。手を貸してください。少佐が」
「!?」
慌てる芳佳を見て驚愕する。横ではおろおろするリーネが居た。
割烹着姿のまま、ベッドに横になる美緒。横にはおろおろしながら看病するペリーヌの姿があった。
「少佐、しっかりして下さい! わたくしがついてますわ!」
「ああ……ペリーヌか、すまんな。心配掛けて」
目を開け、答える美緒。心なしか、やつれている様に見える。
「宮藤さん! 貴方が横にいながら何故……」
「良いんだ、ペリーヌ」
「少佐、でも……」
「今回も私が全て自分でやると言ったんだ。手を出すなと。だからこれは全て、私の責任だ」
「ですけど……」
「心配掛けてすまん。ペリーヌも心配するな、私なら大丈夫だ、ほら」
弱弱しい手つきでペリーヌの頭を撫でる。
ほっとしたのか、ペリーヌは目頭をハンカチで押さえながら、医務室から去った。
「坂本さん……」
横に居る芳佳が美緒を見る。
「すまんな、宮藤」
「美緒! また無茶を!」
ミーナが医務室に飛び込んで来た。
「宮藤さん、美緒にあれだけ無茶をさせてはいけないと……今度は何をさせたの!?」
「焼き魚です。魚に塩を振って、外はこんがり、中はふっくら焼き上げる……」
「……魚のソテーかしら?」
「近いですね。というかほぼそのもの、かも」
「すまない、ミーナ。そっとしておいてくれ」
「美緒」
「私は……焼き魚ひとつ出来ぬ不器用な女……」
美緒はそう言うと、毛布を頭からかぶって沈黙した。
「坂本さん、今度は簡単な焼き魚です。ブリタニアでは扶桑と同じく、色々な魚がたくさん獲れるんですよ。
今日は活きのいい鯖を近くの市場で買って来ました」
「よし、ご苦労。今度こそ、皆に扶桑の料理を振舞おうじゃないか」
「は、はい」
一抹の不安を覚えながら、笑顔で答える芳佳。汗が一筋、頬ににじむ。横で同じくエプロン姿のリーネが微笑む。
「一体何ですの、この煙は!?」
もうもうたる煙と焦げた臭いにむせかえりながら、ペリーヌが台所に怒鳴り込んで来た。
「もうすぐ夕食だと言うのに……少佐! 一体どうなさいまして?」
「あ、ペリーヌさん。手を貸してください。少佐が」
「!?」
慌てる芳佳を見て驚愕する。横ではおろおろするリーネが居た。
割烹着姿のまま、ベッドに横になる美緒。横にはおろおろしながら看病するペリーヌの姿があった。
「少佐、しっかりして下さい! わたくしがついてますわ!」
「ああ……ペリーヌか、すまんな。心配掛けて」
目を開け、答える美緒。心なしか、やつれている様に見える。
「宮藤さん! 貴方が横にいながら何故……」
「良いんだ、ペリーヌ」
「少佐、でも……」
「今回も私が全て自分でやると言ったんだ。手を出すなと。だからこれは全て、私の責任だ」
「ですけど……」
「心配掛けてすまん。ペリーヌも心配するな、私なら大丈夫だ、ほら」
弱弱しい手つきでペリーヌの頭を撫でる。
ほっとしたのか、ペリーヌは目頭をハンカチで押さえながら、医務室から去った。
「坂本さん……」
横に居る芳佳が美緒を見る。
「すまんな、宮藤」
「美緒! また無茶を!」
ミーナが医務室に飛び込んで来た。
「宮藤さん、美緒にあれだけ無茶をさせてはいけないと……今度は何をさせたの!?」
「焼き魚です。魚に塩を振って、外はこんがり、中はふっくら焼き上げる……」
「……魚のソテーかしら?」
「近いですね。というかほぼそのもの、かも」
「すまない、ミーナ。そっとしておいてくれ」
「美緒」
「私は……焼き魚ひとつ出来ぬ不器用な女……」
美緒はそう言うと、毛布を頭からかぶって沈黙した。
151: 2008/12/10(水) 22:47:55 ID:t7FLCVaf
翌日の昼下がり。
「坂本さん、今回は刺身です。近くのドーバー海峡では、色々な魚がたくさん捕れるんですよ。
今日は獲れたてのアジを近くの漁港で買いつけて来ました」
「よし、ご苦労。今度なら……いや、今度こそ、皆に扶桑の料理を振舞ってみせる!」
美緒の目に、異様なぎらつきが見える。包丁を持つ手が震える。
「は、はい」
大いなる不安を覚えながら、笑顔で答える芳佳。汗が頬を伝う。横ではエプロン姿のリーネが微笑んでいた。
「美緒、どうしてこんな無茶をしたの!」
小一時間も経たぬうちに、美緒はストレッチャーに乗せられ医務室に運ばれた。横ではミーナが涙目になっている。
「すまん……今度こそは、と思ったんだが……」
ミーナは芳佳を睨みつけた。
「宮藤さん。今回は何を?」
「さ、刺身です。鮮度の良い魚をおろして、生で食べるんですよ」
「生魚ですって?」
「新鮮な魚ならお腹壊しませんから大丈夫です。扶桑では普通に食べますよ。お祝いの席なんかでもよく振舞われるんです。
日持ちさせたいときは酢でしめたりするんですけど……」
「ニシンの酢漬けに似てるわね……」
ミーナは祖国の料理と比較してみたが、ふと我に返り、美緒の手を取った。
「美緒、指が傷だらけじゃない。どうして……」
「坂本さんに包丁を握らせたの、まずかったですかね。扶桑刀の扱いは凄く巧いから、包丁も同じ様にいくかな~なんて」
「料理と戦いは違うのよ!」
「いいんだ、ミーナ」
ふらふらと、手を出す美緒。数本の指が包帯で巻かれ、何とも痛々しい。包帯交じりの指で、ミーナの頬を撫でる。
「心配掛けてすまない。私が不器用なばっかりに……」
「美緒」
「私は……刺身ひとつ出来ぬ不器用な……」
「今晩は魚の煮付け?」
「ええ。余った……と言っても殆ど残っちゃったんですけど、アジを醤油、砂糖、酒、みりんで煮てみました。
ショウガも一緒に煮てるから、ご飯にぴったりですよ」
芳佳がアジの煮つけを皆に振舞う。
「へえ。この煮魚のソース、甘辛くて結構いけるね」
一口食べたシャーリーが率直な感想を述べる。
「ありがとうございます。あ、小骨に気をつけて下さいね」
「早く言ってよー。なんか喉がちくちくする」
「ああ、早くご飯をごくん、て飲み込んで。取れるから」
「ウニュゥ……あ、取れた」
「扶桑の料理ねえ。なんか少佐みてると、凄い危険な料理って気がするよ」
シャーリーが少しにやける。
「でも、芳佳はぱぱーっと作っちゃうよ。芳佳みてると扶桑の料理すごく簡単に見えるけど?」
「それは……」
言いかけて口ごもるペリーヌ。
「ナンダヨ、言いたい事あるなら素直に言えヨ?」
にやけるエイラ。
「……おいしい」
ちまちまと煮付けを食べるサーニャ。
「芳佳ちゃん、今度私にも扶桑の料理教えて? 私もブリタニアの料理教えてあげる」
笑顔で芳佳の手を握るリーネ。なんだかとても嬉しそうだ。
「坂本さん、今回は刺身です。近くのドーバー海峡では、色々な魚がたくさん捕れるんですよ。
今日は獲れたてのアジを近くの漁港で買いつけて来ました」
「よし、ご苦労。今度なら……いや、今度こそ、皆に扶桑の料理を振舞ってみせる!」
美緒の目に、異様なぎらつきが見える。包丁を持つ手が震える。
「は、はい」
大いなる不安を覚えながら、笑顔で答える芳佳。汗が頬を伝う。横ではエプロン姿のリーネが微笑んでいた。
「美緒、どうしてこんな無茶をしたの!」
小一時間も経たぬうちに、美緒はストレッチャーに乗せられ医務室に運ばれた。横ではミーナが涙目になっている。
「すまん……今度こそは、と思ったんだが……」
ミーナは芳佳を睨みつけた。
「宮藤さん。今回は何を?」
「さ、刺身です。鮮度の良い魚をおろして、生で食べるんですよ」
「生魚ですって?」
「新鮮な魚ならお腹壊しませんから大丈夫です。扶桑では普通に食べますよ。お祝いの席なんかでもよく振舞われるんです。
日持ちさせたいときは酢でしめたりするんですけど……」
「ニシンの酢漬けに似てるわね……」
ミーナは祖国の料理と比較してみたが、ふと我に返り、美緒の手を取った。
「美緒、指が傷だらけじゃない。どうして……」
「坂本さんに包丁を握らせたの、まずかったですかね。扶桑刀の扱いは凄く巧いから、包丁も同じ様にいくかな~なんて」
「料理と戦いは違うのよ!」
「いいんだ、ミーナ」
ふらふらと、手を出す美緒。数本の指が包帯で巻かれ、何とも痛々しい。包帯交じりの指で、ミーナの頬を撫でる。
「心配掛けてすまない。私が不器用なばっかりに……」
「美緒」
「私は……刺身ひとつ出来ぬ不器用な……」
「今晩は魚の煮付け?」
「ええ。余った……と言っても殆ど残っちゃったんですけど、アジを醤油、砂糖、酒、みりんで煮てみました。
ショウガも一緒に煮てるから、ご飯にぴったりですよ」
芳佳がアジの煮つけを皆に振舞う。
「へえ。この煮魚のソース、甘辛くて結構いけるね」
一口食べたシャーリーが率直な感想を述べる。
「ありがとうございます。あ、小骨に気をつけて下さいね」
「早く言ってよー。なんか喉がちくちくする」
「ああ、早くご飯をごくん、て飲み込んで。取れるから」
「ウニュゥ……あ、取れた」
「扶桑の料理ねえ。なんか少佐みてると、凄い危険な料理って気がするよ」
シャーリーが少しにやける。
「でも、芳佳はぱぱーっと作っちゃうよ。芳佳みてると扶桑の料理すごく簡単に見えるけど?」
「それは……」
言いかけて口ごもるペリーヌ。
「ナンダヨ、言いたい事あるなら素直に言えヨ?」
にやけるエイラ。
「……おいしい」
ちまちまと煮付けを食べるサーニャ。
「芳佳ちゃん、今度私にも扶桑の料理教えて? 私もブリタニアの料理教えてあげる」
笑顔で芳佳の手を握るリーネ。なんだかとても嬉しそうだ。
152: 2008/12/10(水) 22:48:50 ID:t7FLCVaf
「美緒、はい。あーんして」
「……何か、すまんなミーナ。色々と」
「そんな手で何か持つなんて出来ないでしょう?」
「まあ、な」
美緒はミーナにスプーンでお粥を食べさせて貰っていた。
しかもまた医務室だ。美緒は自重気味に笑い、うなじの辺りを掻いた。
「でももう、暫くは料理は駄目よ。私が隊の指揮官として命令します。今後は宮藤さんに任せること」
「ミーナの命令とあっては、仕方ない」
苦笑いする美緒。
「でも、美緒……」
「ん?」
「貴方、そんなに不器用には見えないけど……」
「わ、私にだって、出来ない事くらい、ある」
少し顔を赤らめる美緒。ミーナはくすりと笑った。
「なら、貴方の代わりに作って差し上げましょうか?」
「それは……」
(本当は、ミーナに食べて欲しかったんだ……)
内心そう呟き、真剣に悩む美緒に、ミーナは食事の続きをさせた。
end
----
「……何か、すまんなミーナ。色々と」
「そんな手で何か持つなんて出来ないでしょう?」
「まあ、な」
美緒はミーナにスプーンでお粥を食べさせて貰っていた。
しかもまた医務室だ。美緒は自重気味に笑い、うなじの辺りを掻いた。
「でももう、暫くは料理は駄目よ。私が隊の指揮官として命令します。今後は宮藤さんに任せること」
「ミーナの命令とあっては、仕方ない」
苦笑いする美緒。
「でも、美緒……」
「ん?」
「貴方、そんなに不器用には見えないけど……」
「わ、私にだって、出来ない事くらい、ある」
少し顔を赤らめる美緒。ミーナはくすりと笑った。
「なら、貴方の代わりに作って差し上げましょうか?」
「それは……」
(本当は、ミーナに食べて欲しかったんだ……)
内心そう呟き、真剣に悩む美緒に、ミーナは食事の続きをさせた。
end
----
221: 2008/12/11(木) 23:48:37 ID:g83yLK0n
とある日の気怠い午後。
台所には美緒、芳佳、イーネ、そしてペリーヌの四人が集まっていた。
それぞれ割烹着やエプロンを身に付けている。
今日の主役はペリーヌだ。
「少佐、今回は僭越ながらこのわたくしが、料理を伝授させていただきます」
「ガリア料理か。ガリア料理は見た目にも美しくソースが美味と聞くが」
「その通りですわ少佐! 流石は知識も豊富で、ガリア出身のわたくしとしては……」
「ペリーヌさん、良いから早く作りましょうよ。あんまり時間無いんだし」
「み、宮藤さんにその様な事を言われるすじ……」
「ペリーヌ、すまん。私も早く料理が作りたい。手短に頼む」
「は、はい! 分かりましたわ少佐! 今すぐに! 宮藤さんリーネさん、冷蔵庫から食材の入ったボウルをお出しなさい」
芳佳とリーネはペリーヌの指示に従い、冷蔵庫に予め保管してあった幾つもの具材を調理台の上に並べていった。
誰にも言ってないが、美緒の為にと、手の掛かりそうな食材は全て、ペリーヌが徹夜で下ごしらえしていた。
ペリーヌ自身、実は料理など殆ど作った事が無い(かつては専属の料理人に作らせていた)のだが、
美緒の為にと、全く慣れない手つきで通常の三倍以上の時間を掛け、造り上げた自慢の一品である。
またペリーヌは常に左手を隠していた。指に巻かれた2つの包帯を見せたくない為である。
「今回はサラダを作ります。ガリア風のサラダと申しましても、リヨン風、ニース風、南部風、地中海風……
様々な種類がありまして、また我がガリアに誇る宮廷料理をはじめとして各地方の家庭料理など、様々な……」
「ペリーヌ……すまん、作り方を」
「は、はい! 申し訳ありません、つい説明が長くなってしまいました。宮藤さん、リーネさん。
ここにある具材と、皿を並べてくださる?」
「あ、はい」
「こんな感じですか?」
適当に皿を調理台の上に並べていくリーネと芳佳。
「……センスのカケラも無いですわね。まあ盛りつけですから良いですが」
右手で髪をさっとかきあげると、ペリーヌは幾つかのボウルに作られた食材を見せ、言った。
「今回は火も水も使わない、“安全”な料理でしてよ?」
ちらりと芳佳を見る。先日の扶桑料理の様な悪臭と煙は出さない、と言う皮肉の現れだろうか。
「ガリアでも基本的な、マセドワーヌを作ります。3~4cm角に切った野菜を盛りつけ、
お好きなソースと混ぜ合わせて出来上がりですわ。このマセドワーヌとは、語源をマケ……」
「賽の目に切ってあるんだね、リーネちゃん」
「細かいね、芳佳ちゃん」
「ちょっとそこ、勝手に触れないでくださいまし!」
説明そっちのけで食材を観察する芳佳とリーネを怒鳴りつけるペリーヌ。
「なるほど。これを盛りつければ良いんだな?」
「その通りです、少佐! ささ、どうぞどうぞ」
美緒の前に一枚、すっと皿が差し出される。
「……うーむ」
何故か浮かない顔の美緒。手を顎にやり、何か納得が行かない様子だ。
「どうかなさいまして?」
「いや、盛りつけるのは良いんだが……私が盛りつけをしたところで、果たしてそれで私が料理を作った、と言えるのかどうか……」
「何を仰います! 盛りつけはその人のセンス、品格が問われる大変重要な部分でしてよ?少佐ならきっと、
その素晴らしいセンスで見る人を唸らせる様なまばゆいばかりのサラダが出来るに決まってますわ!
さあ、どうぞ! わたくしがついていますから!」
ずい、と具材のボウルと皿を寄せられ、苦笑いする美緒。
「まあ、そんな大仰に言われてもな。私なりに、やってみよう」
「私達もやってみようか、リーネちゃん」
「うん」
「ちょっとそこの二人! さっきから少佐を差し置いてなんて事を!」
「良いんだ、皆で楽しくやるのも良いじゃないかペリーヌ」
「は、はい。まあそうですわよね」
なんだかんだ言いながら、実は、美緒は芳佳とリーネの盛りつけを見てみたかったのだ。
台所には美緒、芳佳、イーネ、そしてペリーヌの四人が集まっていた。
それぞれ割烹着やエプロンを身に付けている。
今日の主役はペリーヌだ。
「少佐、今回は僭越ながらこのわたくしが、料理を伝授させていただきます」
「ガリア料理か。ガリア料理は見た目にも美しくソースが美味と聞くが」
「その通りですわ少佐! 流石は知識も豊富で、ガリア出身のわたくしとしては……」
「ペリーヌさん、良いから早く作りましょうよ。あんまり時間無いんだし」
「み、宮藤さんにその様な事を言われるすじ……」
「ペリーヌ、すまん。私も早く料理が作りたい。手短に頼む」
「は、はい! 分かりましたわ少佐! 今すぐに! 宮藤さんリーネさん、冷蔵庫から食材の入ったボウルをお出しなさい」
芳佳とリーネはペリーヌの指示に従い、冷蔵庫に予め保管してあった幾つもの具材を調理台の上に並べていった。
誰にも言ってないが、美緒の為にと、手の掛かりそうな食材は全て、ペリーヌが徹夜で下ごしらえしていた。
ペリーヌ自身、実は料理など殆ど作った事が無い(かつては専属の料理人に作らせていた)のだが、
美緒の為にと、全く慣れない手つきで通常の三倍以上の時間を掛け、造り上げた自慢の一品である。
またペリーヌは常に左手を隠していた。指に巻かれた2つの包帯を見せたくない為である。
「今回はサラダを作ります。ガリア風のサラダと申しましても、リヨン風、ニース風、南部風、地中海風……
様々な種類がありまして、また我がガリアに誇る宮廷料理をはじめとして各地方の家庭料理など、様々な……」
「ペリーヌ……すまん、作り方を」
「は、はい! 申し訳ありません、つい説明が長くなってしまいました。宮藤さん、リーネさん。
ここにある具材と、皿を並べてくださる?」
「あ、はい」
「こんな感じですか?」
適当に皿を調理台の上に並べていくリーネと芳佳。
「……センスのカケラも無いですわね。まあ盛りつけですから良いですが」
右手で髪をさっとかきあげると、ペリーヌは幾つかのボウルに作られた食材を見せ、言った。
「今回は火も水も使わない、“安全”な料理でしてよ?」
ちらりと芳佳を見る。先日の扶桑料理の様な悪臭と煙は出さない、と言う皮肉の現れだろうか。
「ガリアでも基本的な、マセドワーヌを作ります。3~4cm角に切った野菜を盛りつけ、
お好きなソースと混ぜ合わせて出来上がりですわ。このマセドワーヌとは、語源をマケ……」
「賽の目に切ってあるんだね、リーネちゃん」
「細かいね、芳佳ちゃん」
「ちょっとそこ、勝手に触れないでくださいまし!」
説明そっちのけで食材を観察する芳佳とリーネを怒鳴りつけるペリーヌ。
「なるほど。これを盛りつければ良いんだな?」
「その通りです、少佐! ささ、どうぞどうぞ」
美緒の前に一枚、すっと皿が差し出される。
「……うーむ」
何故か浮かない顔の美緒。手を顎にやり、何か納得が行かない様子だ。
「どうかなさいまして?」
「いや、盛りつけるのは良いんだが……私が盛りつけをしたところで、果たしてそれで私が料理を作った、と言えるのかどうか……」
「何を仰います! 盛りつけはその人のセンス、品格が問われる大変重要な部分でしてよ?少佐ならきっと、
その素晴らしいセンスで見る人を唸らせる様なまばゆいばかりのサラダが出来るに決まってますわ!
さあ、どうぞ! わたくしがついていますから!」
ずい、と具材のボウルと皿を寄せられ、苦笑いする美緒。
「まあ、そんな大仰に言われてもな。私なりに、やってみよう」
「私達もやってみようか、リーネちゃん」
「うん」
「ちょっとそこの二人! さっきから少佐を差し置いてなんて事を!」
「良いんだ、皆で楽しくやるのも良いじゃないかペリーヌ」
「は、はい。まあそうですわよね」
なんだかんだ言いながら、実は、美緒は芳佳とリーネの盛りつけを見てみたかったのだ。
222: 2008/12/11(木) 23:49:35 ID:g83yLK0n
美緒は内心思った。
(まさか盛り付けで……いや、そんな事は無い。とりあえず二人の盛り付けを見て、参考に……)
「少佐? 宮藤さんとリーネさんに何か?」
「いや、何でもない。どう盛り付けるか、考えていたんだ」
「それは少佐のお好きな様にして下さい。他人のなんて参考になりませんわ。自分だけの素敵な……」
(私自身が参考にならないから困ってるんだ、ペリーヌ)
美緒は内心冷や汗で震えていた。
そんな緊張状態にある美緒を知ってか知らずか、芳佳とリーネは皿に洗ったレタスをちぎり、
その上に適当に具材を載せ、まぶしていく。
「この緑色の……きゅうりかな?」
「私、トマト多めがいいかな」
お好みの食材を取っては、盛り付けていく。
「……少佐、野菜はお嫌いですか?」
ペリーヌが美緒の横で心配そうに声を掛ける。
「え? いや、そんな事は無いが、どうした急に?」
「少佐、野菜を前に顔色が宜しくなくて……わたくしともあろうものが、最初に少佐のお好みを聞いておくべきでしたわ。
申し訳ございません!」
何もしていないのに平謝りされても困る、と美緒は心の中で悲鳴を上げた。
「ち、違うぞペリーヌ。今色々考えていたんだ。お前の心配は全くの杞憂だ。案ずるな」
美緒はペリーヌを落ち着かせようと、とりあえず手を動かす。
横にあるレタスを株からぶちぶちともぎり取り、皿にどんと投げ入れ……考えれば考える程、どうして良いか分からなくなる。
手近にある具材から順に、どさどさと大雑把に載せていく。
皿の上にまさに具材が山盛りになったところで、右手の近くにあったソースを何種類かぶちまけた。
「こ、これでどうだ?」
「……」
一同は固まった。食材を積層状に積み上げただけで、小山が出来ていた。センスの問題以前に食べにくい。
しかもソースを複数ごちゃ混ぜで掛けてしまったので、混濁してしまって味が謎になってしまう。
皿に致命的な事に、美緒が力任せにもぎり取ったレタスはまだ洗う前、泥がついた状態のものだった。
勿論綺麗に洗ったレタスも用意されていたが、芳佳とリーネが使っていたので、美緒は思わず手近に転がっていた
未洗浄のレタスの玉に手を伸ばしたのだ。
「しょ、少佐……お見事ですわ!」
とりあえず賞賛してみるペリーヌ。
「そ、そうか? 本当にそうか?」
自分が信じられないのか、挙動不審に陥る美緒。
「え、ええ! 勿論ですとも! わたくしが言うのですから間違いありませんわ! ねえ、宮藤さん、リーネさん?」
「あの、坂本さん……」
「少佐……レタス、洗いました?」
「ん?」
「う、上だけ食べれば、問題有りません事よ?」
ペリーヌが必氏のフォローを入れる。
「よし、では早速試食と行くか」
美緒はフォークとスプーンを手に、自分が作った“サラダ”に手を伸ばした。
「どうしてサラダでこんな目に!」
ストレッチャーの上で悶え苦しむ美緒はミーナに付き添われ、そのまま医務室に搬入された。
やがて医務室からひとり出てきたミーナは、しゅんとしょげかえるペリーヌを前に、落ち着いた、しかし冷徹な声で問うた。
「ペリーヌさん。坂本少佐に何を?」
「サラダを……ガリアの一般的なサラダを……」
「サラダ……それで坂本少佐が、医務室に?」
「申し訳ありません。……わたくしの責任です」
涙するペリーヌ。
思わず溜め息が出るミーナ。天井を見上げる。
ミーナは、それ以上ペリーヌを責める気にはなれなかった。
美緒には“前科”が有る。
そしてペリーヌは、彼女なりにベストを尽くしたのだ。台所の状態、昨夜ずっと奮闘していた彼女を見れば、理解出来る事だった。
「まあ、仕方ないわ……。残りの具材は、今晩の食事でみんなで食べましょう」
「はい」
ミーナは涙にくれるペリーヌの肩をそっと抱き、台所へと戻った。
(まさか盛り付けで……いや、そんな事は無い。とりあえず二人の盛り付けを見て、参考に……)
「少佐? 宮藤さんとリーネさんに何か?」
「いや、何でもない。どう盛り付けるか、考えていたんだ」
「それは少佐のお好きな様にして下さい。他人のなんて参考になりませんわ。自分だけの素敵な……」
(私自身が参考にならないから困ってるんだ、ペリーヌ)
美緒は内心冷や汗で震えていた。
そんな緊張状態にある美緒を知ってか知らずか、芳佳とリーネは皿に洗ったレタスをちぎり、
その上に適当に具材を載せ、まぶしていく。
「この緑色の……きゅうりかな?」
「私、トマト多めがいいかな」
お好みの食材を取っては、盛り付けていく。
「……少佐、野菜はお嫌いですか?」
ペリーヌが美緒の横で心配そうに声を掛ける。
「え? いや、そんな事は無いが、どうした急に?」
「少佐、野菜を前に顔色が宜しくなくて……わたくしともあろうものが、最初に少佐のお好みを聞いておくべきでしたわ。
申し訳ございません!」
何もしていないのに平謝りされても困る、と美緒は心の中で悲鳴を上げた。
「ち、違うぞペリーヌ。今色々考えていたんだ。お前の心配は全くの杞憂だ。案ずるな」
美緒はペリーヌを落ち着かせようと、とりあえず手を動かす。
横にあるレタスを株からぶちぶちともぎり取り、皿にどんと投げ入れ……考えれば考える程、どうして良いか分からなくなる。
手近にある具材から順に、どさどさと大雑把に載せていく。
皿の上にまさに具材が山盛りになったところで、右手の近くにあったソースを何種類かぶちまけた。
「こ、これでどうだ?」
「……」
一同は固まった。食材を積層状に積み上げただけで、小山が出来ていた。センスの問題以前に食べにくい。
しかもソースを複数ごちゃ混ぜで掛けてしまったので、混濁してしまって味が謎になってしまう。
皿に致命的な事に、美緒が力任せにもぎり取ったレタスはまだ洗う前、泥がついた状態のものだった。
勿論綺麗に洗ったレタスも用意されていたが、芳佳とリーネが使っていたので、美緒は思わず手近に転がっていた
未洗浄のレタスの玉に手を伸ばしたのだ。
「しょ、少佐……お見事ですわ!」
とりあえず賞賛してみるペリーヌ。
「そ、そうか? 本当にそうか?」
自分が信じられないのか、挙動不審に陥る美緒。
「え、ええ! 勿論ですとも! わたくしが言うのですから間違いありませんわ! ねえ、宮藤さん、リーネさん?」
「あの、坂本さん……」
「少佐……レタス、洗いました?」
「ん?」
「う、上だけ食べれば、問題有りません事よ?」
ペリーヌが必氏のフォローを入れる。
「よし、では早速試食と行くか」
美緒はフォークとスプーンを手に、自分が作った“サラダ”に手を伸ばした。
「どうしてサラダでこんな目に!」
ストレッチャーの上で悶え苦しむ美緒はミーナに付き添われ、そのまま医務室に搬入された。
やがて医務室からひとり出てきたミーナは、しゅんとしょげかえるペリーヌを前に、落ち着いた、しかし冷徹な声で問うた。
「ペリーヌさん。坂本少佐に何を?」
「サラダを……ガリアの一般的なサラダを……」
「サラダ……それで坂本少佐が、医務室に?」
「申し訳ありません。……わたくしの責任です」
涙するペリーヌ。
思わず溜め息が出るミーナ。天井を見上げる。
ミーナは、それ以上ペリーヌを責める気にはなれなかった。
美緒には“前科”が有る。
そしてペリーヌは、彼女なりにベストを尽くしたのだ。台所の状態、昨夜ずっと奮闘していた彼女を見れば、理解出来る事だった。
「まあ、仕方ないわ……。残りの具材は、今晩の食事でみんなで食べましょう」
「はい」
ミーナは涙にくれるペリーヌの肩をそっと抱き、台所へと戻った。
223: 2008/12/11(木) 23:50:28 ID:g83yLK0n
「へえ、このサラダ細かいね」
「細かく切る事で食べやすくなり、ソースで好みの味に出来るとはなかなか合理的だな」
エーリカはサラダの細かさに感心し、トゥルーデはその合理性に感心した。
「うえー、あたしもっとトマト多い方がいい~」
「ちゃんと食べないと大きくなれないぞ? ほら」
だだをこねるルッキーニ、それをあやすシャーリー。まるで親子の会話だ。
「しかし細かいなあ。もっとざっくり豪快に行ってもいいんじゃない?」
豪快な料理を得意とするシャーリーらしい感想だ。
「サーニャの好きなのはどれダ? 取り分けてやるからナ?」
「……ありがとう」
めいめいがボウルから具材を好き勝手に盛り付け、ソースで味付けしていく。
美緒を“医務室送り”にしてしまった罪悪感からか、いつもの元気で仕切り屋的なペリーヌは見られなかった。
テーブルの隅でひとりしょげかえり、どよんとしたオーラを漂わせている。
「リーネちゃん、美味しいね」
「芳佳ちゃんのも美味しいよ。今度、また一緒に作ろう?」
芳佳とリーネは相変わらずだった。リーネの笑顔が、ひときわ明るく映った。
end
----
秘め声CDを参考に、書いてみました。頑張れペリーヌ。頑張れ少佐。
各国の料理については、その都度グーグル先生に聞いているんですが……
色々あってなかなか難しいですね。
ではまた~。
「細かく切る事で食べやすくなり、ソースで好みの味に出来るとはなかなか合理的だな」
エーリカはサラダの細かさに感心し、トゥルーデはその合理性に感心した。
「うえー、あたしもっとトマト多い方がいい~」
「ちゃんと食べないと大きくなれないぞ? ほら」
だだをこねるルッキーニ、それをあやすシャーリー。まるで親子の会話だ。
「しかし細かいなあ。もっとざっくり豪快に行ってもいいんじゃない?」
豪快な料理を得意とするシャーリーらしい感想だ。
「サーニャの好きなのはどれダ? 取り分けてやるからナ?」
「……ありがとう」
めいめいがボウルから具材を好き勝手に盛り付け、ソースで味付けしていく。
美緒を“医務室送り”にしてしまった罪悪感からか、いつもの元気で仕切り屋的なペリーヌは見られなかった。
テーブルの隅でひとりしょげかえり、どよんとしたオーラを漂わせている。
「リーネちゃん、美味しいね」
「芳佳ちゃんのも美味しいよ。今度、また一緒に作ろう?」
芳佳とリーネは相変わらずだった。リーネの笑顔が、ひときわ明るく映った。
end
----
秘め声CDを参考に、書いてみました。頑張れペリーヌ。頑張れ少佐。
各国の料理については、その都度グーグル先生に聞いているんですが……
色々あってなかなか難しいですね。
ではまた~。



コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります