214: 2008/12/11(木) 23:14:06 ID:gRgadu53


『あなたの良いところ』


ある、爽やかに晴れた朝。

本日非番であるリネット・ビショップは、どうも落ち着かない…と、厨房の整頓なんかを始めていた。
彼女は働き者なのだ。たとえ自身が休日であっても、なにか仕事をせずにはいられない。

ごま油の瓶についたべたつきを布巾で拭いとっていると、上官:ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケが食堂へと入ってきた。
ミーナも本日午後から非番なのだ。
「あ、見つけたわ。リーネさん」
「…? なんでしょう、ミーナ中佐」
「今日の午後、なにか用事はあるかしら?」
「とくにありませんけど…」
「よかった、ちょっと付き合ってくれない?」
「私でよければ、喜んで」
「本当? 街に買い出しに行きたいのだけど」
「わかりました。お供します!」
「ふふ、ありがとう」


空の青々とした午後。
身支度を整え、カールスラント製軍用車に乗り込む。
「いい天気ね…」
「風が気持ちいいですねぇ」
なにやら和やかに始まった二人の休日。
きっと楽しいものになる…そんな気がした。


215: 2008/12/11(木) 23:15:23 ID:gRgadu53



街に出た。戦争中であるにもかかわらず、人々の活気はおとろえていなかった。
ふたりは必要なものを一通りそろえ、それからは好きなものからなにからたくさん見て楽しんだ。

軍人とはいえ基地を離れれば、年頃の少女なわけで。
いろいろなものに好奇心をくすぐられては、そこかしこを歩きまわった。
そんなわけで4本の足は束の間の休息を求める。リネットが案内して、雰囲気の良い喫茶店へ立ち寄った。

紅茶を一口二口飲んだところで、二人の視線が重なった。
指先を組んでその上に顎をのせるミーナ。ちらりと上目遣いでリネットを見つめ、口を開く。

「リネット・ビショップ軍曹。今から質問をしますので、答えてください」

形式ばった口調で呼びかけられ、リネットは一瞬身体を強ばらせたが、あとに続く言葉を聞いて力を抜いた。

「最近、どうですか。」
丁寧語ではあるものの、ミーナの表情にはよそよそしさなど欠片もなかった。
ミーナは、まっすぐにリネットを見ながら、質問を続ける。

つらくないですか。毎日楽しんでいますか。

「…おかげさまで、毎日楽しく過ごしております」
リネットもミーナの目から目を逸らさずに答える。

「それはよかったわ」

屈託のない笑顔をみせるリネット。ミーナは、喜びのような安堵のような、複雑な感情が全身を包むのがわかった。

そう。ミーナは姉として、あるいは母として、リネットを愛してきたのだ。
ストライクウィッチーズは、一部隊で一つの、家族なのだから。

「宮藤さんとずいぶん仲良くなったわね?」
いつのまにか丁寧語がぬけていた。
「はい。芳佳ちゃんが来てから、私も先輩としてがんばろうって思ったんです。それに芳佳ちゃんは本当にすごくて。天才っていうんですよね、きっと。
だから私だって追いつきたい。芳佳ちゃんとも一緒にがんばろうって約束しました」

「…充実していると思う?」
「はい。とっても」

嬉しいことであるはずなのに、ミーナの胸はちくりと痛んだ。
その気持ちは、子が初めて誰の手も借りずに自らの足で立ったときの、親のそれに似ている。

「リーネさんは、成長したのね」
「そんなこと…」

否定しつつもリネットは、今の自分は以前よりずっと活発になったのだということに気づいているのだ。

216: 2008/12/11(木) 23:16:23 ID:gRgadu53

すこし、紅茶を飲む。

リネットがカップを口につけながらミーナを盗み見ると、ミーナもまた、深い愛情をたたえた目をこちらに向けた。

「私ね、初めて会った頃から、あなたに憧れていたの」

上官の口から驚くべき単語がとびだし、リネットは心底驚いた。
「国を、人々を守りたいと言う貴女に心奪われていたの。私はほら、国も家族も、守れなかったから…
きっとうらやましかったんだわ。リーネさんの、純粋な瞳と、強い意志が。」

驚きすぎて、考えるより先に口と身体が動きだす。がたんと立ち上がり、リネットは頬を紅潮させながら声を張り上げた。

「私も…!ミーナ中佐と初めてお会いしたときから、ずっと…憧れてきたんです。
中佐はカールスラントのエースで、みんなのお姉さんで…なんでもできるし、美人だし、字が上手いし、歌が上手いし、……何よりみんなからとっても尊敬されているじゃないですか!」
「ちょ、ちょっとリーネさん!買いかぶりすぎよ!そんなこと言うならあなただって、可愛くて、私なんかよりずっと家庭的で、料理もお裁縫も得意なうえに戦闘だってどんどん成長して!
…それにいい身体してるし!」
「なんですかそれ! そんなの全部中佐のほうがすごいですっ」
「いいえ。全然、リーネさんのほうが! というかまず歳が違うじゃない!」

可能性の差が……とかなんとかミーナが言いはじめたところで、リネットは堪えきれず吹き出した。

二人して、何をやっているんだか。
客の少ないときであったのがせめてもの幸い。
二人は恥ずかしそうに席につき、髪や襟を正す。それでもやはり笑いはこらえられず、しばらくの間涙までながして爆笑した。

「私、ミーナ中佐には何度お礼を言っても足りない気がします」
「私も、あなたには感謝しているわ」

わけがわからないが、なんだかうまくまとまったと、また笑った。


一段落ついたところで、ミーナは手首をひっくり返して時計を見た。
「あら、そろそろ帰らないと。みんなが待ってるわ」
そうですね、とリネットも自らの時計を見てこたえる。

ミーナはすばやく荷物を持って立ち上がるとリネットに近づき、前髪をよけておでこにキスをした。
「…み。ミーナ中佐!?」
そして瞳を見つめなおす。

「ねえ、リーネさん。もし私が空から降りることになったら、そのときは…隊のみんなを頼むわよ」

217: 2008/12/11(木) 23:17:13 ID:gRgadu53

微笑みかけてからミーナはリネットに背を向け、歩きだす。
突然、大切なことを何食わぬ顔で言ってのける上官の後ろすがたに向かって、リネットは叫んだ。

「ちゅ、中佐はまだまだ大丈夫です! 私が保障しますから!」

驚きの表情で振り向いてから、ありがとう、と手をあげるミーナ。
リネットはまた顔が熱くなるのを感じながら、ミーナを見送った。

…しかし。
困ったことにリネットもミーナも一つの車に乗ってきたのだ。
なんだか恥ずかしいことを叫んでしまったと思い、でも心はこの上なくすっきりしていて。
それでも今また顔を合わせるのは恥ずかしくて。

うぅ、とうなってごまかしてから、リネットは先をゆくミーナを追いかけるのだった。


Fin.

いいですかねこんなんで。なんかいろいろおかしい気がw

さて、ミーナリーネ。現時点で恋人になるとかは結構考えづらい二人だと思うんだ。しかーーし!数年後。数年後にはどうなるかわからないぜ!?
たとえば三年後。リーネ18歳ミーナ21歳…ふたりとも魅力十分の大人の女性
どこか深くが似ているふたりは強く惹かれあい、やがて愛しあう…とかがあってもいいんじゃないの!毎夜のランデブーとかがあってもいいんじゃないの!
とか考えているのは多分私だけ。

では、いろいろと失礼しました。

218: 2008/12/11(木) 23:33:47 ID:x4Dw2ZaL
GJ
素晴らしすぎる
>リーネ18歳ミーナ21歳
大いに有りダナ

引用: ストライクウィッチーズpart13