304: 2008/12/13(土) 04:40:40 ID:wgE8KhbE
今日はどうにも寝つきが悪い。美緒は目を開け、空虚な天井をぼんやりと見つめた。
このまま目をあけていればいつかはまぶたも重たくなるだろうか。そう思ってじっ
としてみるが、やはりそう上手くはいかない。それどころか逆に眠気は遠のいてい
くようだった。
夜の静寂に、小さなため息が混じってとける。そういえば、今日はシーツ一枚では
少し肌寒い。
ブリタニアの夜は夏でも涼しく過ごしやすいが、時に扶桑では信じられないほど冷
え込むことがあった。なるほどこれでは頭も冴えてしまうわけだと、美緒はもう眠
ることをすっかり諦めてしまい、体を起こした。
(仕方ない、何か飲み物でも飲んで気分でも変えよう)
確か戸棚にお茶の葉があったはずだ、とベッドを降り、美緒は重い足取りで食堂へ
と向かった。
*
「あら美緒、どうしたのこんな時間に」
その先客は落ち着いた、柔らかな笑みで美緒を迎えた。
「ミーナ」
美緒はその名を呼んで、隣の椅子に腰かける。
「それはこっちの台詞だ」
するとさっき寝ていたときよりもずっと気が安らいで、それはきっとミーナのせい
に他ならなかった。
話を聞くとミーナはつい先ほどまで報告書の作成やら予算繰りの修正やらを片付け
ていたらしかった。手伝ってやれなかったことを詫びると「私の仕事だから」とミ
ーナらしい言葉が返ってくる。
「それで、どうしてあなたはここに?」
相応に会話が弾んだ後、そう聞かれ、はっと食堂に来た理由を思い出す。このまま
部屋に戻れば不思議とすぐに寝付けそうな気がしたが、それもおかしな話なので、
美緒はそのままここに来たいきさつを話した。
このまま目をあけていればいつかはまぶたも重たくなるだろうか。そう思ってじっ
としてみるが、やはりそう上手くはいかない。それどころか逆に眠気は遠のいてい
くようだった。
夜の静寂に、小さなため息が混じってとける。そういえば、今日はシーツ一枚では
少し肌寒い。
ブリタニアの夜は夏でも涼しく過ごしやすいが、時に扶桑では信じられないほど冷
え込むことがあった。なるほどこれでは頭も冴えてしまうわけだと、美緒はもう眠
ることをすっかり諦めてしまい、体を起こした。
(仕方ない、何か飲み物でも飲んで気分でも変えよう)
確か戸棚にお茶の葉があったはずだ、とベッドを降り、美緒は重い足取りで食堂へ
と向かった。
*
「あら美緒、どうしたのこんな時間に」
その先客は落ち着いた、柔らかな笑みで美緒を迎えた。
「ミーナ」
美緒はその名を呼んで、隣の椅子に腰かける。
「それはこっちの台詞だ」
するとさっき寝ていたときよりもずっと気が安らいで、それはきっとミーナのせい
に他ならなかった。
話を聞くとミーナはつい先ほどまで報告書の作成やら予算繰りの修正やらを片付け
ていたらしかった。手伝ってやれなかったことを詫びると「私の仕事だから」とミ
ーナらしい言葉が返ってくる。
「それで、どうしてあなたはここに?」
相応に会話が弾んだ後、そう聞かれ、はっと食堂に来た理由を思い出す。このまま
部屋に戻れば不思議とすぐに寝付けそうな気がしたが、それもおかしな話なので、
美緒はそのままここに来たいきさつを話した。
305: 2008/12/13(土) 04:41:22 ID:wgE8KhbE
「それなら、私が飲み物を用意するわ。ここで待っていて」
それくらいは自分でやるからいいぞ、という美緒の言葉もそのままに、ミーナは台
所へと移った。冷蔵庫を開ける音や焜炉をつける音が聞こえてくる。そういえば、
ミーナが台所に立っているのを見るのは久しぶりだ。前に作ってくれた、カールス
ラントの料理はとても美味かった。また馳走になりたいものだな、と台所の向こう
に語りかけると、
「そうね、でもその前にあなたの手料理が食べてみたいわ」
と返ってくる。ミーナめ、分かって言っているのだから性質が悪い。今度宮藤にで
も頼んで教えてもらうべきだろうか、そんなことを考えて始めていると、ミーナが
向こうからマグカップを持って戻ってきた。「どうぞ」とさし出されたカップの中
は白で満ちていた。ホットミルクのようだ。
「眠れない時はこれを飲むといいって聞いたから……、嫌いじゃなかったわよね?」
「ああ。ありがとう、いただくよ」
ほのかに湯気のたつそれに口をつけると、そのまま飲めるほどよい温度に温められ
ていたようで、冷ますことなく飲むことができた。すうと胃の中にミルクが注がれ
ると、体が芯から温められていくのを感じた。
「熱くない?」
「いや、丁度いい温度だ。とても温まる」
不思議だった。どうしてこうもあたたかいのだろう。体だけではなくて、心まであ
たたかくなる。それに、カップの白を見つめているともっと落ち着く気がした。
「ホットミルクは、ミーナに似ているのかもな」
「あら、どういうことかしら」
「いや、たいしたことじゃないんだが、」
とても温かくて、安らぎをあたえてくれるんだ。こいつもミーナも、そんなところ
が似ている。
「それと、ミーナの肌はミルクのように白くて綺麗だからな」
そんな風にいうとミーナは「ちょっと、美緒」と頬を染め、視線を落ち着きなくき
ょろきょろとさせたものだから、美緒はそこでやっと自分が恥ずかしいことを言っ
てしまったのだと自覚する。
「い、いや、すまない、つい、な」
しかし、素直にそう思ったのだから仕方ないじゃないか。そう付け加えようとした
が、余計に泥沼に入りこみそうな気がして、代わりに頭を掻いて誤魔化した。もし
かすると自分は普段からこういうきざったらしいことを気付かないうちに言ってし
まっているのだろうか。
それくらいは自分でやるからいいぞ、という美緒の言葉もそのままに、ミーナは台
所へと移った。冷蔵庫を開ける音や焜炉をつける音が聞こえてくる。そういえば、
ミーナが台所に立っているのを見るのは久しぶりだ。前に作ってくれた、カールス
ラントの料理はとても美味かった。また馳走になりたいものだな、と台所の向こう
に語りかけると、
「そうね、でもその前にあなたの手料理が食べてみたいわ」
と返ってくる。ミーナめ、分かって言っているのだから性質が悪い。今度宮藤にで
も頼んで教えてもらうべきだろうか、そんなことを考えて始めていると、ミーナが
向こうからマグカップを持って戻ってきた。「どうぞ」とさし出されたカップの中
は白で満ちていた。ホットミルクのようだ。
「眠れない時はこれを飲むといいって聞いたから……、嫌いじゃなかったわよね?」
「ああ。ありがとう、いただくよ」
ほのかに湯気のたつそれに口をつけると、そのまま飲めるほどよい温度に温められ
ていたようで、冷ますことなく飲むことができた。すうと胃の中にミルクが注がれ
ると、体が芯から温められていくのを感じた。
「熱くない?」
「いや、丁度いい温度だ。とても温まる」
不思議だった。どうしてこうもあたたかいのだろう。体だけではなくて、心まであ
たたかくなる。それに、カップの白を見つめているともっと落ち着く気がした。
「ホットミルクは、ミーナに似ているのかもな」
「あら、どういうことかしら」
「いや、たいしたことじゃないんだが、」
とても温かくて、安らぎをあたえてくれるんだ。こいつもミーナも、そんなところ
が似ている。
「それと、ミーナの肌はミルクのように白くて綺麗だからな」
そんな風にいうとミーナは「ちょっと、美緒」と頬を染め、視線を落ち着きなくき
ょろきょろとさせたものだから、美緒はそこでやっと自分が恥ずかしいことを言っ
てしまったのだと自覚する。
「い、いや、すまない、つい、な」
しかし、素直にそう思ったのだから仕方ないじゃないか。そう付け加えようとした
が、余計に泥沼に入りこみそうな気がして、代わりに頭を掻いて誤魔化した。もし
かすると自分は普段からこういうきざったらしいことを気付かないうちに言ってし
まっているのだろうか。
306: 2008/12/13(土) 04:41:54 ID:wgE8KhbE
「そうだ、ミーナも飲むといい。私だけというのもなんだしな」
気恥ずかしい空気を払拭するように言うと、ミーナは
「あ、私はさっき、」
と手を振った。だから遠慮するかのように思われたのだが、そこで言葉を止めて少
しの間考える素振りを見せると今度は、
「いいえ、なんでもないわ、そうね、いただこうかしら」
と差し出したカップを受け取った。するとミーナはわざわざカップを回して口に運
んだので、美緒は思わずくすりと微笑ってしまった。
おいおい、ミーナ、それじゃ、同じところから飲むことになっているぞ。
*
「ねぇ、マッサージをしてあげましょうか」
カップの片付けを終わらせ、洗い場から戻ってきて、ミーナは言った。
「筋肉が硬直していると、眠れないっていうわ。美緒、疲れているんじゃない?」
そういえばここ最近ネウロイの襲撃も不定期になってきていて、思うように体を休
ませてやることが出来なかった。肩を回してみると、確かに重い。なのでミーナの
言葉に甘えさせてもらうと、ここでは場所が悪いということで、ミーナの部屋に行
くことになった。
「それじゃ、よろしく頼む」
ベッドにうつ伏せになると、それに続いてミーナのベッドに乗る感触が伝わってく
る。「ちょっと失礼するわね」と今度は私の足あたりに軽く乗っかられる心地がす
ると、今度は指で腰を押され――
「う、あっ!」
「ちょっと美緒、まだ軽く押しただけよ?」
そんな馬鹿な、今ものすごく強い力で押された気が――
「あっ、くっ、ううっ、ま、待て、ミーナ、」
何度も襲いくる強烈な刺激に耐えかねて体を反転させるとミーナはくすくすと笑っ
ていて、きっと自分は押せばおかしな声をあげるおもちゃのようになっていたのだ
ろうと思う。あんまりに楽しそうにしているものだから「こら、真面目にしないか」
と叱ると、ミーナは「ごめんなさい、つい」と返す。美緒にはそれがさっきの自分
の真似ごとのように感じられて、妙な気恥ずかしさに襲われる。ホットミルクを飲
んだときのように熱くなってくる顔を隠したくて、またベッドにうつ伏せた。
気恥ずかしい空気を払拭するように言うと、ミーナは
「あ、私はさっき、」
と手を振った。だから遠慮するかのように思われたのだが、そこで言葉を止めて少
しの間考える素振りを見せると今度は、
「いいえ、なんでもないわ、そうね、いただこうかしら」
と差し出したカップを受け取った。するとミーナはわざわざカップを回して口に運
んだので、美緒は思わずくすりと微笑ってしまった。
おいおい、ミーナ、それじゃ、同じところから飲むことになっているぞ。
*
「ねぇ、マッサージをしてあげましょうか」
カップの片付けを終わらせ、洗い場から戻ってきて、ミーナは言った。
「筋肉が硬直していると、眠れないっていうわ。美緒、疲れているんじゃない?」
そういえばここ最近ネウロイの襲撃も不定期になってきていて、思うように体を休
ませてやることが出来なかった。肩を回してみると、確かに重い。なのでミーナの
言葉に甘えさせてもらうと、ここでは場所が悪いということで、ミーナの部屋に行
くことになった。
「それじゃ、よろしく頼む」
ベッドにうつ伏せになると、それに続いてミーナのベッドに乗る感触が伝わってく
る。「ちょっと失礼するわね」と今度は私の足あたりに軽く乗っかられる心地がす
ると、今度は指で腰を押され――
「う、あっ!」
「ちょっと美緒、まだ軽く押しただけよ?」
そんな馬鹿な、今ものすごく強い力で押された気が――
「あっ、くっ、ううっ、ま、待て、ミーナ、」
何度も襲いくる強烈な刺激に耐えかねて体を反転させるとミーナはくすくすと笑っ
ていて、きっと自分は押せばおかしな声をあげるおもちゃのようになっていたのだ
ろうと思う。あんまりに楽しそうにしているものだから「こら、真面目にしないか」
と叱ると、ミーナは「ごめんなさい、つい」と返す。美緒にはそれがさっきの自分
の真似ごとのように感じられて、妙な気恥ずかしさに襲われる。ホットミルクを飲
んだときのように熱くなってくる顔を隠したくて、またベッドにうつ伏せた。
307: 2008/12/13(土) 04:42:28 ID:wgE8KhbE
「ふふ、腰のあたりはあとにして、先に他のところをほぐすわね」
そう言ってミーナは背中のあたりを押していく。優しい指づかいだった。触れたと
ころが温かくなって、それがそのまま体に染みていく。やがてそれが全身にまわる
と、心地よさが体中を包んでいて、いつの間にかすっかり力も入らなくなっていた。
きっとその魔法の手が触れたところは、自分の体ではなくなってしまうのだ。そう
して段々と奪われてしまって、今はもうこの体はほとんどミーナのものだった。
「あ、んっ……」
だから、最後に残った腰まわりに触れられたとき、不意にこんな声を出してしまっ
たのも、きっと美緒のせいではないのだ。
「ふふっ、美緒ったら、なぁに今の可愛らしい声は」
そう、ミーナが悪いんだ。だって今、美緒は体の自由が利かないのだし、そもそも
そんな風に魔法をかけたミーナが原因であって、だから決して今のは自分のせいで
は――
「ん、あ、はぁっ、」
あああ、やめないかミーナ! そう言葉にしたくても出てくるのは吐息に混じった
情けない声ばかりで、抵抗したくても力が入らないので、美緒はもうミーナにされ
るがままになるしかなかった。今はもうこの体は完全にミーナのものなのだ。きっ
と、顔を見られるような体勢でないことが唯一の救いだった。美緒が腑抜けただら
しない顔になっていることは間違いなかった。
ああ、なんたることだ。仮にも扶桑の撫子が、こんな声を!
悔しいやら恥ずかしいやらで、美緒はシーツをつかんで耐えた。今切に願うことは、
早くミーナがこの遊びに飽きてくれることだった。
夜の静寂に、美緒の声がいくつも混じってとけていった。
*
ようやく体が戻ったあと、美緒はミーナに扶桑の正座を教えた。
「いいか、あのようなことは今後二度と」
そして、ミーナが満足のいくまで美緒を好きにしたように、美緒は満足のいくまで
ミーナに説教をした。まったく、人がどれだけ恥ずかしい思いをしたと思っている
んだ。
それでも、体がずいぶんと軽くなっていたことには気付いていたから、美緒は決し
て強い口調で叱咤することはなかった。ミーナもそれを分かっていたのか、わざと
らしくしょげた真似をして美緒の言葉を聞いていた。きっと、この説教は「ごっこ」
で、さっきの遊びの続きなのだった。
そう言ってミーナは背中のあたりを押していく。優しい指づかいだった。触れたと
ころが温かくなって、それがそのまま体に染みていく。やがてそれが全身にまわる
と、心地よさが体中を包んでいて、いつの間にかすっかり力も入らなくなっていた。
きっとその魔法の手が触れたところは、自分の体ではなくなってしまうのだ。そう
して段々と奪われてしまって、今はもうこの体はほとんどミーナのものだった。
「あ、んっ……」
だから、最後に残った腰まわりに触れられたとき、不意にこんな声を出してしまっ
たのも、きっと美緒のせいではないのだ。
「ふふっ、美緒ったら、なぁに今の可愛らしい声は」
そう、ミーナが悪いんだ。だって今、美緒は体の自由が利かないのだし、そもそも
そんな風に魔法をかけたミーナが原因であって、だから決して今のは自分のせいで
は――
「ん、あ、はぁっ、」
あああ、やめないかミーナ! そう言葉にしたくても出てくるのは吐息に混じった
情けない声ばかりで、抵抗したくても力が入らないので、美緒はもうミーナにされ
るがままになるしかなかった。今はもうこの体は完全にミーナのものなのだ。きっ
と、顔を見られるような体勢でないことが唯一の救いだった。美緒が腑抜けただら
しない顔になっていることは間違いなかった。
ああ、なんたることだ。仮にも扶桑の撫子が、こんな声を!
悔しいやら恥ずかしいやらで、美緒はシーツをつかんで耐えた。今切に願うことは、
早くミーナがこの遊びに飽きてくれることだった。
夜の静寂に、美緒の声がいくつも混じってとけていった。
*
ようやく体が戻ったあと、美緒はミーナに扶桑の正座を教えた。
「いいか、あのようなことは今後二度と」
そして、ミーナが満足のいくまで美緒を好きにしたように、美緒は満足のいくまで
ミーナに説教をした。まったく、人がどれだけ恥ずかしい思いをしたと思っている
んだ。
それでも、体がずいぶんと軽くなっていたことには気付いていたから、美緒は決し
て強い口調で叱咤することはなかった。ミーナもそれを分かっていたのか、わざと
らしくしょげた真似をして美緒の言葉を聞いていた。きっと、この説教は「ごっこ」
で、さっきの遊びの続きなのだった。
308: 2008/12/13(土) 04:43:39 ID:wgE8KhbE
「それじゃ、私は戻るからな。以後気をつけるように」
そう言って、美緒は部屋に戻ろうとドアのほうに歩いていった。きっとミーナはま
たわざとらしく「はい」と言って、それでこの「ごっこ」は終わりのはずだった。
しかし聞こえてきたのは、
「待ちなさい? まだお礼の言葉を聞かせてもらってないわよ?」
という悪戯っぽい声で。
「っ……!?」
後ろから美緒の体を止めるのは、ミーナの魔法の手。それはさっきうつ伏せになっ
ていたせいで触れられることのなかった、二つのそれだった。
「お、おい、ミーナ、」
ああ、一体どこでこんな真似を覚えたんだ。そう考えて、心当たりが多すぎること
に気付く。特に最近、宮藤がきてからというもの、どうも部隊内でこれがまた流行
りだしたような……、ああ、しっかりしてくれミーナ、お前までそっちにいってし
まったら、私はどうしたらいいんだ。
「それとも、そんなに効かなかったかしら?」
と、揉みながら、ミーナ。
「い、いや、とても気持ち良い……じゃない、良かったぞ。ありがとう、ミーナ」
「よくできました。それじゃあ、解散っ」
そうして解放されたあと、部屋に戻ってベッドに横になると、すぐにでも夢におち
ていけそうな気がした。目を閉じると、ふわふわと体が自分のものではないかのよ
うに軽かった。
(まったく、ミーナのやつ)
そんな中、胸に残るミーナの手の感触だけがやけにリアルで。
美緒は今度、『お返し』でもしてやろうかと小さく微笑うのだった。
----
ホットミルクは良いものです。
この二人ならではの大人な雰囲気を出そうと頑張っていたら、
全然違う方向に行ってしまいました。
きっとこの二人は部隊で一番のバカップルに違いないです。
読んでくださった方、ありがとうございました。
そう言って、美緒は部屋に戻ろうとドアのほうに歩いていった。きっとミーナはま
たわざとらしく「はい」と言って、それでこの「ごっこ」は終わりのはずだった。
しかし聞こえてきたのは、
「待ちなさい? まだお礼の言葉を聞かせてもらってないわよ?」
という悪戯っぽい声で。
「っ……!?」
後ろから美緒の体を止めるのは、ミーナの魔法の手。それはさっきうつ伏せになっ
ていたせいで触れられることのなかった、二つのそれだった。
「お、おい、ミーナ、」
ああ、一体どこでこんな真似を覚えたんだ。そう考えて、心当たりが多すぎること
に気付く。特に最近、宮藤がきてからというもの、どうも部隊内でこれがまた流行
りだしたような……、ああ、しっかりしてくれミーナ、お前までそっちにいってし
まったら、私はどうしたらいいんだ。
「それとも、そんなに効かなかったかしら?」
と、揉みながら、ミーナ。
「い、いや、とても気持ち良い……じゃない、良かったぞ。ありがとう、ミーナ」
「よくできました。それじゃあ、解散っ」
そうして解放されたあと、部屋に戻ってベッドに横になると、すぐにでも夢におち
ていけそうな気がした。目を閉じると、ふわふわと体が自分のものではないかのよ
うに軽かった。
(まったく、ミーナのやつ)
そんな中、胸に残るミーナの手の感触だけがやけにリアルで。
美緒は今度、『お返し』でもしてやろうかと小さく微笑うのだった。
----
ホットミルクは良いものです。
この二人ならではの大人な雰囲気を出そうと頑張っていたら、
全然違う方向に行ってしまいました。
きっとこの二人は部隊で一番のバカップルに違いないです。
読んでくださった方、ありがとうございました。
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります