2: 2009/04/05(日) 21:58:42.00 ID:MX/6xrxHO
ここはとある学校の屋上。
今日も非道な行為が繰り返される……
ある少女を標的にして。
男子A「やらしい帽子かぶりやがって! ここどこだかわかってんのか!? 学校だぞ!こんなもんこうしてやる!」ゲシゲシ
蒼星石「やめてよ……帽子……返して」
男子B「生意気な女だな。あ、オトコ女だったか」
蒼星石「帽子返してよ……」
男子C「オラオラ!ここに金玉ついてんだろ?」ゲシゲシグリグリ
蒼星石「あっ……んっ……やめ、やめてよ、帽子返してよ……」
男子A「気持ち悪ぃ声出してんじゃねぇよ、オトコ女のくせに!」
キンコーンカンコーン
男子B「ちっ、チャイムだ。今回はこの辺にしといてやるよ」
男子C「先公にチクったら、わかってんだろうな?」
男子A「こんな帽子、いらねえよ」ポイッ
今日も非道な行為が繰り返される……
ある少女を標的にして。
男子A「やらしい帽子かぶりやがって! ここどこだかわかってんのか!? 学校だぞ!こんなもんこうしてやる!」ゲシゲシ
蒼星石「やめてよ……帽子……返して」
男子B「生意気な女だな。あ、オトコ女だったか」
蒼星石「帽子返してよ……」
男子C「オラオラ!ここに金玉ついてんだろ?」ゲシゲシグリグリ
蒼星石「あっ……んっ……やめ、やめてよ、帽子返してよ……」
男子A「気持ち悪ぃ声出してんじゃねぇよ、オトコ女のくせに!」
キンコーンカンコーン
男子B「ちっ、チャイムだ。今回はこの辺にしといてやるよ」
男子C「先公にチクったら、わかってんだろうな?」
男子A「こんな帽子、いらねえよ」ポイッ
3: 2009/04/05(日) 21:59:57.26 ID:MX/6xrxHO
男子生徒からの卑劣な虐めは終わった。
毎日繰り返される非道な行いに、蒼星石は疲れ果てていた。
しかし尚、蒼星石に忍び寄る人影があった……
それに気付かず泣き続ける蒼星石。
コツン……コツン……
蒼星石「……ふぇ……うえっ……うわあああん」
翠星石「……蒼星石? また虐められたですか? イヤならイヤって強く言い返さないとダメですよ?」
人影の正体は特別教室に移動する途中の翠星石であった。
翠星石はいつものように蒼星石の心配をする。
蒼星石「翠星石……ぐすっ……だって……」
翠星石「だっても何もねーです! と・に・か・く! 次に何かあったら翠星石に言うですよ!お姉さんなんだからいつでも力になるです!」
翠星石は蒼星石の数少ない味方だった。
引っ込み思案な蒼星石は友達が少なく、男の子のような見た目から虐めを受けていた。
そんな蒼星石をいつも心配してくれる翠星石のことが、蒼星石は大好きだった。
6: 2009/04/05(日) 22:01:23.90 ID:MX/6xrxHO
蒼星石「ふぇっ……ありがどう……ずいぜいぜぎぃ……ぐすっ……」
翠星石「ほら、泣き止むです。授業の前に保健室に行くですぅ」
翠星石は蒼星石の手を引いて保健室へ向かう。
先日からジュンが学校に通い始めた影響からか、お姉さんとしての自覚が出てきたのだろう。
ここのところの翠星石からは責任感が強く感じられるようだった。蒼星石にとって。
--翠星石の手、あったかいな……
二人は保健室へと向かう。
翠星石が手を引っ張り、引きずられるような形で蒼星石がついていく。
翠星石「ほら、保健室についたですよ」
蒼星石「……ありがとう。翠星石。僕はもう大丈夫だよ」
翠星石「何かあったら翠星石も力になるですよ。もっとお姉さんを頼れですぅ」
蒼星石「……うん、そうするよ」
こうして、決して幸せとも形容できず、非凡な訳でもない日常を過ごしていた蒼星石と翠星石。
彼女たちに転機が訪れるのはそれから間もなくしてだった。
7: 2009/04/05(日) 22:03:10.92 ID:MX/6xrxHO
学校は休み。蒼星石と翠星石は桜田家で他愛ない話をしていた。
そこに現れた黒い影。窓ガラスが割れ、漆黒の羽根が部屋に舞い落ちる。
水銀燈だ。
水銀燈「あらぁ? 性悪翠星石と泣き虫蒼星石じゃなぁい。真紅はいないのぉ? せっかく会いにきてあげたのにぃ……」
翠星石「……水銀燈! 翠星石はともかく、蒼星石の悪口を言うんじゃねぇです!」
蒼星石「……翠星石……いいんだ。ホントのことだから」
翠星石「……でも……」
水銀燈「ふふっ。お馬鹿さぁん。そんなことだから虐められっぱなしなのよぉ」
翠星石「なんですかその言い方は!」
水銀燈「別にぃ……ただ、お馬鹿さんに心の持ち方ってものを教えてあげようと思ったのよ」
蒼星石「……心の……持ち方……?」
8: 2009/04/05(日) 22:05:02.59 ID:MX/6xrxHO
水銀燈「そうよぉ。心の持ち方しだいで物事は前向きに捉えられるわぁ」
水銀燈のいきなりの助言に、戸惑いを隠し切れない翠星石と蒼星石。
そんなことにはお構いなく、水銀燈は続ける。
水銀燈「今、蒼星石は虐められている。この世に絶望を感じている。そうでしょう?」
蒼星石「…………」
水銀燈「でも、考え方を変えてみなさぁい。虐められているのは事実。でも支えてくれる人もいるじゃなぁい」
蒼星石「………………」
蒼星石はそっと翠星石に視線をやる。
目が会った瞬間、頬を薄紅色に染めてうつむく蒼星石。
それを見て翠星石は優しく微笑んで言う。
9: 2009/04/05(日) 22:06:07.15 ID:MX/6xrxHO
翠星石「……そうですね。水銀燈の言う通りですぅ。蒼星石、翠星石がいつでも支えてやるですよ」
蒼星石「あ、ありがとう……」
水銀燈「支えてくれる人がいるなら、希望をなくしちゃダメよぉ。」
蒼星石「そうだね。僕、翠星石をもっと大事にするよ。」
翠星石「それは翠星石の台詞ですよ?蒼星石は何よりも大事な妹ですから。」
水銀燈「私としたことがムダな時間を過ごしちゃったわぁ。真紅もいないこの家に用は無いし、もう帰りましょう」
黒く美しい羽根を広げ、水銀燈が飛び去っていく。
二人がそれを見送ったのと同時に、ジュンが部屋に入ってきた。
10: 2009/04/05(日) 22:09:38.50 ID:MX/6xrxHO
ジュン「翠星石に蒼星石。いたのか。羽根があるってことは水銀燈も来てたんだな。」
翠星石「あ、チビ人間。ちょうどいいところに。また『アレ』をお願いしたいんですけど……」
ジュン「やれやれ、お前らも大変だな。いいよ。蒼星石、こっちにおいで」
蒼星石「ありがとう、ジュン君。いつもゴメンね……」
ジュン「蒼星石、それは言わない約束だろ」
ジュンはいつも、虐めを受けている蒼星石の衣服や帽子の傷を修繕していた。
その姿に蒼星石は憧れと尊敬を抱いていた。
ジュン「はい、蒼星石。だいたい終わったよ」
蒼星石「ありがとう、ジュン君」
蒼星石が微かに笑う。
控え目ながら、彼女なりの精一杯の笑顔だった。
ジュンはそれをわかっていた。
わかっていたが故に、問いかける。
11: 2009/04/05(日) 22:10:52.76 ID:MX/6xrxHO
ジュン「まだ虐められてるんだな……。大丈夫か?僕でよければいつでも相談に乗るよ」
翠星石「相談役は翠星石がいるですぅ。チビ人間はもっと他のところで何かしらやってればいーのですぅ」
ジュン「人が協力するってのに何だその言い方は~!」
翠星石「でも……」
ジュン「……え?」
翠星石「翠星石の可愛い可愛い妹のために協力してくれるのには感謝してやるですぅ。有り難く思えです」
ジュン「ひっかかる物言いだが……蒼星石を大切にしてるんだな。良い事だよ」
蒼星石「ふふっ。二人ともありがとね。少しだけ……元気が出た気がするよ」
照れ笑いを浮かべる蒼星石。
蒼星石はジュンや翠星石、ここにはいないが真紅や雛苺に支えられていることを実感しはじめていた。
金糸雀は蒼星石のよき理解者であったし、ドールズと一緒に過ごす時は笑顔を取り戻しつつあった。水銀燈のおかげで。
蒼星石「心の……持ち方……か」
12: 2009/04/05(日) 22:12:38.07 ID:MX/6xrxHO
しかしそれからも虐めは続いた。
蒼星石は何度も心を折られ、ついには学校に行かなくなってしまった。
翠星石は学校に通い続けたが、一瞬たりとも蒼星石の事が頭から離れることはなかった。
それは蒼星石も同じであり、学校には行かなくなっても翠星石には会いたい。
蒼星石はジュンの部屋でいつも翠星石のことを考えていた。
時々、水銀燈が気を紛らわしに来てくれたが、翠星石でなければ物足りない。
蒼星石は自分の気持ちの変化を、微かに、だが確かに感じていた。
毎日、翠星石が帰宅するまでの時間が億劫だった。
蒼星石「翠星石……」
19: 2009/04/05(日) 22:28:55.76 ID:MX/6xrxHO
>>16
ボーイッシュとは違う表現な事は理解しているつもりです。
男の子のような~ は虐めを受けている記述にボーイッシュは合わないと思ったので。
>>17
ドールズの容姿のまま、小学生~中学生くらいの大きさです。
ジュンと同じくらいかちょっと小さいくらい。
基本的に、学校ではドールの能力を隠して過ごしてます。
細かいところは脳内補完でお願いします。
行水を終えたので続き投下。
ボーイッシュとは違う表現な事は理解しているつもりです。
男の子のような~ は虐めを受けている記述にボーイッシュは合わないと思ったので。
>>17
ドールズの容姿のまま、小学生~中学生くらいの大きさです。
ジュンと同じくらいかちょっと小さいくらい。
基本的に、学校ではドールの能力を隠して過ごしてます。
細かいところは脳内補完でお願いします。
行水を終えたので続き投下。
22: 2009/04/05(日) 22:32:42.19 ID:MX/6xrxHO
窓の開く音がする。
蒼星石が視線を上げると、水銀燈の姿。
いつもは窓を割るのだが、今日は様子が違う。
長女の落ち着きと気品を帯びている。
その水銀燈が、囀るような声で問いかける。
水銀燈「また泣いてるのぉ?」
蒼星石「水銀燈……。また、来てくれたんだね」
蒼星石は明るい表情を作る。
だが内心では翠星石を期待し、そうでないことに落胆していた。
それでも、水銀燈に悟られてはいけないと思った。それは失礼だとわかっていらたからだ。
水銀燈「その顔……翠星石がよかった、っていう顔ねぇ」
蒼星石「……え?」
蒼星石は驚愕を顔に表す。
--何故?僕は笑っていたのに。
24: 2009/04/05(日) 22:34:32.84 ID:MX/6xrxHO
水銀燈「なんでわかるのかって顔ねぇ。当たり前よぉ。私はお姉さんよぉ?」
蒼星石「水銀燈は……優しいんだね」
水銀燈「あら、なんでそう思うのかしら?」
蒼星石「だって、翠星石じゃないからって嫌な顔する僕に、怒りもしないじゃないか」
蒼星石の言葉に、水銀燈は一瞬の戸惑いを覚える。
しかし、すぐにこう答えた。
水銀燈「だって、笑ってくれたじゃなぁい」
蒼星石「それは……」
水銀燈「例え作り笑いでも、気を遣ってくれたんでしょう?」
水銀燈は微笑み、話を続ける。
水銀燈「ちょっと長い話をするわね」
25: 2009/04/05(日) 22:38:41.53 ID:MX/6xrxHO
水銀燈「私は長女だからわかるの。貴女は翠星石に恋をしているわぁ」
水銀燈「もちろん、恋愛、って意味でね。他に無いでしょうけど」
水銀燈「だけど、貴女は真面目な子。姉妹である故、同性である故、どこかに罪悪感を感じているの」
水銀燈「それでも、そんな不安定な心を誰にも話せない。ただ、翠星石への想いを募らせるだけ」
水銀燈「真紅が言ってたわぁ。『最近、蒼星石が笑ってくれないの』ってねぇ」
水銀燈「そんな心の状態でも、私には微笑んでくれた」
水銀燈「頼ってくれてると思って良いのよねぇ? だとしたら作り笑いでも嬉しい。それは姉として誇れることなのよぉ」
水銀燈「ごめんなさいね。私の独りよがりねぇ。貴女への助言にも何にもなってなかったわぁ。この辺にしておきましょう」
26: 2009/04/05(日) 22:40:40.67 ID:MX/6xrxHO
一通り話し終えて、水銀燈が一息つく。
蒼星石は問いかける。
蒼星石「ううん。水銀燈の言葉には不思議な力があるよ。でも、僕はどうしたら良いのかな……?」
水銀燈「やれるようにやってみなさぁい。私と真紅も昔はいがみ合ってたけど、今は上手くやってるわぁ」
蒼星石「え? ってことは……」
水銀燈「貴女の察してるとおりよぉ。私と真紅はビアンカップルなのぉ」
蒼星石「え?……ええ!?」
突然の告白。蒼星石にはにわかに信じられない話だった。
すぐには心の整理がつかない。
それでも、水銀燈の言葉から勇気を貰えた気がした。
蒼星石「ええと……ありがとう、かな?」
水銀燈「え?なんでお礼するのかしら?」
蒼星石「いや、僕もわからない。けど、ありがとう。水銀燈のおかげで大きく前に進めた気がしたんだ」
水銀燈「そう。それなら良かったわぁ。翠星石と上手くやんなさいよぉ」
水銀燈が飛び去る。
いつも美しい羽根が、きょうは一層美しく見えた。
その漆黒の輝きが、清らかにさえ思えるほどに。
28: 2009/04/05(日) 22:45:28.25 ID:MX/6xrxHO
翠星石「ただいまですぅ。」
蒼星石「あ、おかえり。翠星石」
満面の笑みで翠星石を迎える蒼星石。
翠星石の存在が蒼星石にとっての唯一の癒しなのだ。
翠星石「元気そうですね。何か良いことがあったですか?」
--水銀燈が遊びに来てくれたんだ。
とだけ蒼星石は伝えた。
翠星石「水銀燈も素直じゃないですねぇ。さっきすれ違ったんですが『はやく帰ってあげないと蒼星石がぐずるわよぉ』なんて言ってたんですよ?」
蒼星石「ははっ。水銀燈らしいね」
翠星石「ところで、大事な話があるんですが……」
蒼星石「何かな?」
翠星石「もう学校には二度と行かないですか……?」
蒼星石「え……?えっと……」
翠星石の問いかけに、空気が重くなる。
蒼星石は苦い記憶を思い出していた。
汚れた帽子、破れた衣服、傷ついた身体、そして心。
蒼星石の表情が哀しみに染まる。
29: 2009/04/05(日) 22:47:31.56 ID:MX/6xrxHO
蒼星石「だって……虐められるし……」
翠星石「翠星石が協力してやるですよ?」
蒼星石「でも、もう辛いのは嫌なんだ……」
蒼星石は頑なに学校へ行くことを拒否する。
次第に、翠星石の語気が荒くなっていく。
翠星石が怒りと悲しみの交じった声で怒鳴る。
翠星石「なんでもっと姉を信用してくれねーですか!もっと頼って良いですのに!」
蒼星石「……翠星石……」
翠星石は涙を浮かべ、必氏に訴えた。
蒼星石がいない学校なんて嫌だ、そんな気持ちでいっぱいだった。
しかし、蒼星石は首を縦に振らない。
蒼星石「……ごめんね、翠星石」
翠星石「もう知らないですっ!」
翠星石は鞄で窓を突き破り、どこかへ飛んでいってしまった。
窓の割れたのを見た学校帰りのジュンが、外から急いで部屋まで向かってきた。
31: 2009/04/05(日) 22:51:41.30 ID:MX/6xrxHO
ジュン「何があったんだ!?」
蒼星石「……ジュン君……」
蒼星石はジュンに事の顛末を話す。
蒼星石「どうしよう……翠星石を怒らせちゃった……」
ジュン「仕方ないな。あいつもお前を想う気持ちが強いからな」
蒼星石「嫌われちゃったかな……ぐすっ……」
ジュン「大丈夫、翠星石はお前を嫌いになったりしない」
蒼星石「本当に……?翠星石に謝りたいよ……」
ジュン「ああ、本当さ。僕に考えがある」
--考えって?
蒼星石が聞くのよりも先に、ジュンは下の部屋へ向かっていた。
蒼星石はただそれを見送るだけだった。
32: 2009/04/05(日) 22:54:39.30 ID:MX/6xrxHO
下の部屋では真紅と雛苺がくんくんのDVDを見ていた。
真紅「あら、ジュン?珍しいわね。勉強もしないでこの部屋に来るなんて」
ジュン「真紅、ちょっと話があるんだ」
ジュンは真紅に「考え」を伝える。
真紅「わかったわ。ホーリエ。メイメイのところに」
ジュン「頼んだぞ」
教会にいた水銀燈のところにホーリエが到着した。
水銀燈「ん、ホーリエ?何か用かしら?」
ホーリエとメイメイが水銀燈の周りを飛び回る。
水銀燈「わかったわぁ。協力してあげる」
ホーリエが真紅の元へ帰っていく。
それと同時に、教会へ来客があった。
--水銀燈ー?いるですかー?
33: 2009/04/05(日) 22:58:31.44 ID:MX/6xrxHO
翠星石の声が教会に響く。
ちょうど良い、と水銀燈は考えた。
水銀燈「あらぁ、翠星石じゃなぁい。何かあったの?」
翠星石「実はですね……」
翠星石が蒼星石との会話の内容を伝える。
水銀燈はそれを黙って聞いていた。
翠星石「……という訳なんです。蒼星石を傷つけてしまったです……」
水銀燈「なるほどね。私に考えがあるわぁ」
34: 2009/04/05(日) 22:59:33.34 ID:MX/6xrxHO
翠星石「考え、ですか?」
水銀燈「そうよ。今から言う場所に向かいなさぁい。そこに蒼星石も呼んでおくわぁ」
水銀燈はそう言うと、翠星石にその場所を伝えた。
翠星石が教会を後にする。
水銀燈「メイメイ。ホーリエに連絡して。『準備OK』ってね」
5分程の時間で、メイメイが桜田家に着く。
真紅「メイメイ? わかったわ。蒼星石も向かわせるのだわ」
36: 2009/04/05(日) 23:01:18.45 ID:MX/6xrxHO
そして蒼星石と翠星石は、とある公園--
水銀燈と真紅が結ばれた公園へ向かった。
水銀燈「真紅も好きねぇ。あの場所。なんて、私も同じよね」
水銀燈が独り言をつぶやく。
どこか懐かしむような目だった。
翠星石と蒼星石を、昔の自分と真紅に重ねているような目。
水銀燈「ホント、懐かしいわねぇ……」
37: 2009/04/05(日) 23:02:39.02 ID:MX/6xrxHO
公園には蒼星石が先に着いた。
先に、といっても1分ほどの違いだった。
翠星石の姿が見えると、蒼星石の表情が固くなる。
緊張と決意の間、得体のしれない感情が込み上げてくる。
勇気を振り絞り、蒼星石が話しだす。
先に、といっても1分ほどの違いだった。
翠星石の姿が見えると、蒼星石の表情が固くなる。
緊張と決意の間、得体のしれない感情が込み上げてくる。
勇気を振り絞り、蒼星石が話しだす。
38: 2009/04/05(日) 23:03:47.17 ID:MX/6xrxHO
蒼星石「翠星石、話があるんだ」
39: 2009/04/05(日) 23:04:30.91 ID:MX/6xrxHO
翠星石「……はい」
41: 2009/04/05(日) 23:05:20.45 ID:MX/6xrxHO
蒼星石「翠星石、僕は……今までごまかしてきた……。自分にも、翠星石にも、水銀燈にも、みんなに甘えてきた……」
43: 2009/04/05(日) 23:06:22.52 ID:MX/6xrxHO
翠星石「蒼星石……」
44: 2009/04/05(日) 23:07:16.76 ID:MX/6xrxHO
蒼星石「怖かったんだ。認めるのが。伝えるのが。叶わないのが。君を好きなこと。愛していること」
45: 2009/04/05(日) 23:08:21.96 ID:MX/6xrxHO
翠星石「…………え?」
46: 2009/04/05(日) 23:09:15.95 ID:MX/6xrxHO
翠星石は謝られると思っていたから、驚きを隠せない。
--蒼星石は今なんて?
48: 2009/04/05(日) 23:10:14.48 ID:MX/6xrxHO
蒼星石は涙を堪えながら、笑顔で言葉を紡いでいく。
翠星石の反応に恐怖を覚えながらも、自分の想いを必氏に伝えていく。
49: 2009/04/05(日) 23:11:10.23 ID:MX/6xrxHO
蒼星石「何より、君に迷惑をかけたくなかった。君を困らせたくなかった」
50: 2009/04/05(日) 23:12:06.82 ID:MX/6xrxHO
蒼星石の必氏の告白に、翠星石は涙を流さずにはいられなかった。
翠星石「……うぅ……うっ……うっ……」
53: 2009/04/05(日) 23:14:05.38 ID:MX/6xrxHO
蒼星石「泣かないで。今なら言える。僕は君が好きだ。叶わなくても良い。ただ、知って欲しい。聴いて欲しい」
翠星石「うっ……うっ……」
翠星石はひたすら泣いていた。
感動……?悲観……?
どちらも、違う。
翠星石が泣いていた理由はすぐに明らかになった。
54: 2009/04/05(日) 23:15:39.21 ID:MX/6xrxHO
蒼星石「僕が君を想う気持ちは紛れも無い、真実だから。もう一度だけ言うよ。好きだ、翠星石」
--言いたいことは全て言えた。
蒼星石の笑顔は晴れやかだった。
叶うはずのない恋。姉妹であるうえに、同性なのだ。
禁断の想いであることを知りながら愛してしまった自分の我が儘に、蒼星石は自ら終止符を打った。悲壮な決意だった。
55: 2009/04/05(日) 23:16:41.32 ID:MX/6xrxHO
翠星石「蒼星石の……バカ……です……」
蒼星石「……翠星石……」
翠星石「そんなこと言われたら、翠星石はどうすりゃ良いですか!?」
蒼星石「……無理しないで良いよ。イヤならイヤって……」
翠星石の戸惑う姿に蒼星石は罪悪感を覚えた。
--自分の勝手な想いのせいで……
58: 2009/04/05(日) 23:18:41.17 ID:MX/6xrxHO
蒼星石の心は酷く不安定になった。
頭が揺れているような感覚、異次元に迷い込んだような錯覚。
その時だった。
翠星石「翠星石も蒼星石が大好きですぅ! 伝えようとして、悩み続けたのに……どうして先に言っちゃうですか!」
蒼星石「え……翠星石……!?」
翠星石の反応に戸惑いを隠せない蒼星石。
頭蓋に殴られたような衝撃が襲った。
翠星石の涙の理由、それは大きな『愛情』だった。
59: 2009/04/05(日) 23:19:42.43 ID:MX/6xrxHO
翠星石「そりゃ、翠星石の『好き』と蒼星石の『好き』は違うニュアンスかもしれねーです……」
蒼星石「……うん。やっぱり、そう……だよね……。」
希望が自己嫌悪へと移り変わる。
--何を期待したのだ、自分は。叶わない事を覚悟したんじゃないのか!
蒼星石は葛藤する。不安定な自分の心を憎んだ。
60: 2009/04/05(日) 23:21:10.12 ID:MX/6xrxHO
翠星石「……でも。蒼星石のそんな顔を見てたら胸がキュンっとなって、苦しくなって……。うまく言葉にできないです……けど! 好きです! 蒼星石!」
蒼星石の頭が真っ白になった。
--今、翠星石はなんて言ったのかな? 好き? スキ? スキッテドウイウコトカナ……?
蒼星石が我を取り戻すまでには10秒ほどかかった。
蒼星石が呆けているあいだ、ずっと翠星石は蒼星石を見つめていた。
やっとのことで蒼星石が言葉を発した。
63: 2009/04/05(日) 23:22:16.33 ID:MX/6xrxHO
蒼星石「翠星石……! ぐすっ……僕も大好きだよぉ!」
蒼星石が翠星石に駆け寄る。
二人は強く抱きしめ合った。
翠星石「蒼星石……! 蒼星石の涙、温かいですぅ……」
蒼星石「翠星石の腕も温かいよ……ずっと、ずっと一緒だよ!」
翠星石「当たり前ですぅ……二人で庭師姉妹なんですから」
64: 2009/04/05(日) 23:26:32.51 ID:MX/6xrxHO
二人は強く抱き合っていた。
いつまでも、いつまでも。
互いの涙が枯れるまで。
長く永い時にも、刹那のような時にも感じられた。
ただ、そこには二人の『愛』があった。
それだけは確かだった。
その姿を黒と紅の影が見守っていたのを、二人は知らない。
『庭師の恋』fin.
65: 2009/04/05(日) 23:26:49.59 ID:lajTOrko0
>>1乙
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