1: 2013/03/10(日) 16:40:28 ID:1aZx062U
王「では頼んだぞ勇者よ」
勇者「はっ。無事に魔王を倒した暁には、例の件を頼みます」
王「わかっておる。お前の弟と娘の結婚を認めよう」
勇者「ありがたき、お言葉……この勇者、ただいまを持って出発します!!」
2: 2013/03/10(日) 16:45:32 ID:1aZx062U
酒場
勇者「すまない。共に旅をしてくれる者を探しているのだが」
店主「ちょい待ち……あー、っと。武道家、戦士、商人、ちょうど三人居るね、資料見るかい?」
勇者「……」
勇者「それで構わない。明日には出発したいのだが、それまでに集まるか?」
3: 2013/03/10(日) 16:50:19 ID:1aZx062U
店主「二階の待機スペースに居るから、今すぐにでも呼べるけど……明日で良いの?」
勇者「であれば表で待っていよう。すぐに呼んでくれ。契約は私が直接行う」
店主「了解」
15分後。
4: 2013/03/10(日) 17:00:18 ID:1aZx062U
女武道家「へぇ~っ、アンタがボク達を雇おうとしてる奴?」
女戦士「やめとけやめとけ、オレ達は相当な気分屋だぜ? まっ、どうしてもってんなら、1000000000ゴールドで考えてやるよ」
女商人「戦士……貴女の言葉は現実味が無さすぎる。300000000ゴールドにして置くべき」
勇者「……」
勇者「武器を構えなさい」
5: 2013/03/10(日) 17:05:59 ID:1aZx062U
武道家「……はっ?」
勇者「私は勇者。これから天を握ろうとする魔王の野望を打ち砕きに行く」
戦士「勇者!? お前みたいな痩せこけた奴がか?」
勇者「旅の途中途中で得た宝は全てお前たちにやろう。それで納得できたら仲間になって欲しい」
商人「納得できなければ?」
勇者「3対1だ……それで私が勝ったなら、この旅に着いて来て貰う」
6: 2013/03/10(日) 17:11:55 ID:1aZx062U
武道家「ボク達が勝ったら?」
勇者「支度金として王からそれなりの額を受け取っている。それをお前達にやろう。そして着いて来いとも言わん」
戦士「カッ、おもしれぇ!! やってやるよっ。商人も良いよな」
商人「……問題ない」
8: 2013/03/12(火) 16:15:16 ID:2wKHIWq2
勇者「さぁ、掛かって来なさい」スッ
戦士「ん? 腰の剣は飾りか?」E鉄の剣
勇者「抜く必要が有ると判断したら抜かせて貰おう」
武道家「開始の合図は?」E鉄の爪
勇者「お好きにどうぞ」
商人「こっちは全員で戦う」E悪のそろばん
勇者「お好きにどうぞ」
9: 2013/03/12(火) 16:20:02 ID:2wKHIWq2
戦士「大怪我じゃ済まないかも知れないが……良いんだな?」ジャキ
勇者「お好きにどうぞ」
勇者「と、言うかな。私が『その気』なら、既に三度は頃しているぞ?」
戦士「チッ、行くぞ!! オレ達の超絶連携技を喰らえッ!!」
10: 2013/03/12(火) 16:24:48 ID:2wKHIWq2
戦士「泰山天狼剣!!」
武道家「真狼牙風々拳!!」
商人「絶・天狼抜刀牙!!」
勇者「……」
勇者「激流を制するは静水」スゥゥッ
11: 2013/03/12(火) 16:31:13 ID:2wKHIWq2
商人「っ!?」
武道家「コイツ、ボク達のウルフコンビネーションを……」
戦士「避けやがった」
バキン、バキン、バキン。
勇者「擦れ違い様にお前達の武器を砕いた。此にて決着としよう」
12: 2013/03/12(火) 16:42:43 ID:2wKHIWq2
勇者「では、私は旅に出るとしよう」
戦士「お、おい! オレ達はどうすんだよ!?」
勇者「戦いの他、ダンジョンのトラップ。一人では厳しい場面も有ると考えて仲間を集めようとしたが……」
商人「……なに?」
勇者「まさか今の者達がこれ程に弱いとは思わなかった」
武道家「はぁっ!?」
勇者「だから着いて来なくて構わない。もし着いて来たいと言うのなら、礼儀を弁えた上、師匠と弟子の関係を取る」
13: 2013/03/12(火) 16:59:59 ID:2wKHIWq2
戦士「弟子になんかなるわけねぇーだろ!!」
武道家「ボク達を舐めんな!!」
商人「貴方は一人で旅をするべき……」
勇者「そうか。そうしよう」
14: 2013/03/12(火) 17:02:26 ID:2wKHIWq2
勇者、旅立ちの街を出発
最初の目的地、北の街サザンクロスへ。
15: 2013/03/12(火) 17:11:06 ID:2wKHIWq2
森のフィールド
虎「グオオオオッ!!」
野生の虎があらわれた。
勇者「むっ?」
虎「ガアアアアアッ!!」ガバァッ
勇者「……」
勇者「……」クワッ
虎「!!?」ピタッ
勇者「よしよし」ナデナデ
虎「くぅんくぅ~ん」ゴロゴロ
勇者(魔物と言えど……無駄な殺生は避けねば)
16: 2013/03/12(火) 17:12:48 ID:2wKHIWq2
勇者(それと)チラッ
戦士「……」
武道家「……」
商人「……」
勇者(着いて来てるな……さて、どうしたものか)
17: 2013/03/12(火) 17:51:06 ID:2wKHIWq2
サザンクロス キングの根城
兵士「キング様、勇者と名乗る者がこの入街許可を求めておりますが、いかがなさいましょう?」
キング「なに、勇者? フッ……アイツか。終に使い走りまで落ちたようだな。良かろう、許可を出せ」
兵士「はっ、では早速向かいます」ダッ
キング「くくっ、久し振りだな……あの雑魚がどこまで成長したか見てやろう」
18: 2013/03/12(火) 17:59:27 ID:2wKHIWq2
サザンクロス 入り口検問所
兵士「キング様から許可が出たぞ」
勇者「ならば、そのキング様に挨拶へ行かねばなるまい」
勇者「……それと、もし女の三人組が後から現れたら通してくれ。私の仲間だ」
兵士「女の三人組だな? わかった。さっさと行け」
24: 2013/03/13(水) 00:07:40 ID:H0kWLQdA
応接間
キング「久し振りだな……今は勇者と呼んだ方が良いかな?」
勇者「……」
勇者「この街には盗賊が頻繁に現れ、人々から強奪を繰り返していると聞いた」
キング「そんな事か? だからこうして外壁を高い壁で覆い、唯一の入り口には検問を設けているだろう?」
25: 2013/03/13(水) 00:10:56 ID:H0kWLQdA
勇者「それにしては、随分と被害が頻繁に出ているようだが?」
キング「……キサマ、何が言いたい!?」
勇者「まさかと思うがキングよ、その盗賊……お前が指揮しているのではあるまいな?」
キング「ふっ、バカげた事を。盗賊団のアジトは掴んでいる。近々向かうつもりでいたが、せっかくだ……勇者に頼むとしよう」
26: 2013/03/13(水) 00:16:03 ID:H0kWLQdA
キング「まさか、イヤとは言わぬよなぁ、勇者?」
勇者「……良いだろう。盗賊は私が何とかしよう」
キング「ほぅ、断るかと思ったが……まぁそうだよなぁ? 昔から俺に一度も勝てた試しがないキサマでは、逆らえんよなぁっ」
勇者「……」
27: 2013/03/13(水) 00:19:26 ID:H0kWLQdA
勇者「……」
キング「アジトの在処は検問所の兵士が詳しく知っている。聞いて向かうがいい」
勇者「承知した。勇者として、この街を救うとしよう」ザッ
キング「……」
キング「行ったか……」パチン
28: 2013/03/13(水) 00:23:39 ID:H0kWLQdA
忍兵士「はっ、ここに!!」シュタ
キング「先にアジトへ出向き、俺からの伝令を伝えろ」
忍兵士「して、内容は?」
キング「今から勇者がそちらへ向かう。発見しだい……殺せ」
忍兵士「御意!!」バッ
キング「変に勘ぐらなければ生かして置いたものを……バカな奴だ」
30: 2013/03/13(水) 09:46:12 ID:H0kWLQdA
盗賊のアジトへ 山間部の峠
勇者「あれが脇道の宿屋……と言う事は、話し通りならこの近くらしいが」
勇者「だが陽も沈んで来た。今日はここに泊まるとしよう」
宿の中へ
勇者「すまない、宿泊希望だ。部屋は空いているだろうか?」
ババア「フェッフェッフェッ、一部屋なら空いとるよ」ゴゴゴゴゴ
31: 2013/03/13(水) 09:51:01 ID:H0kWLQdA
ババア「四人一部屋でいいんだね?」
勇者「……はぁぁっ。それで構わない」
勇者「いつまでも隠れてないで出て来なさい」
ガサガサ
戦士「流石は勇者だな」
武道家「ボク達の尾行に気付くなんて」
商人「男と相部屋でも文句ない。むしろ私達と一緒に寝れる運を凄いと思うべき」
33: 2013/03/13(水) 13:49:08 ID:H0kWLQdA
一時間後 宿の一室
勇者「つまり、お前達は私の弟子として着いて来ると言うのだな?」
商人「そう」コクリ
勇者「では弟子としての条件を述べるとしよう」
戦士「条件だぁ?」
34: 2013/03/13(水) 13:56:35 ID:H0kWLQdA
勇者「まず一つ、私の事は勇者では無く、『師』または『師匠』と呼べ」
勇者「私とて未だ若輩者の身だが、そこの関係を曖昧にしては、お前達は何も私から覚えようとしないし、教えを乞おうともしない……有り体に言えば成長しない」
戦士「……」チラッ
武道家「……」コクッ
商人「……」コクッ
戦士「ああ、分かったよ。これからはアンタの事を、師匠……そう呼ぼう」
35: 2013/03/13(水) 14:00:44 ID:H0kWLQdA
勇者「よし。ではもう一つ。これからの旅では私が絶対だ。どんなに理不尽に思えようとも、必ず私の指示に従って貰う」
戦士「……」チラッ
武道家「……」コクッ
商人「……」コクッ
戦士「それもオッケーだ。アンタの弟子で居る間は、アンタ……師匠の指示には従うよ。これで良いかい?」
36: 2013/03/13(水) 14:07:05 ID:H0kWLQdA
勇者「そうか……」
勇者「それなら私も、弟子で在るお前たちを命懸けで守る事を誓おう」ニコリ
戦士「なっ!?」カァァッ
武道家「よ、よくそんな恥ずかしっ、こと、い、言えるよねっ」カァァッ
商人「よろしく」
37: 2013/03/13(水) 14:11:19 ID:H0kWLQdA
トン、トン。
勇者「ん?」
ババア「フェッフェッフェッ、夕食をお持ちしました」
勇者「ああ、入ってください」
ババア「しつれい、いたします」ゴゴゴゴゴ
38: 2013/03/13(水) 17:30:16 ID:H0kWLQdA
戦士「にしても、随分と背の高いばあさんだなぁ」
武道家「てか、ガタイも良いよね?」
商人「健康の秘訣を聞くべき」
ババア「フェッ、フェッ、本日は珍しい酒が入りましたので、食前酒にお酌しますじゃ」トクトクトク
勇者「……」
39: 2013/03/13(水) 17:32:58 ID:H0kWLQdA
武道家「あの~、ボク達は未成年だから、師匠だけ飲んでください」
ババア「あら、そうなのかい? それならお兄さん……どうぞ」
勇者「……」
勇者「ご婦人。その酒、まずは貴女が飲んでみてくれないかな?」
40: 2013/03/13(水) 17:37:45 ID:H0kWLQdA
ババア「フェッ!? お客様の酒を飲む訳にはいきませぬよ」
戦士「そうだぜ師匠? 乾杯仲間が欲しいなら、オレらがジュースでしてやるって」
商人「ビールだめなんで、オレンジジュースください」
勇者「……」
勇者「ご婦人。私はお願いしているのでは無い。命令しているのだ!!」キッ
41: 2013/03/13(水) 17:46:03 ID:H0kWLQdA
勇者「それとも……その酒を、飲めない理由でも有るのかな?」
ババア「……フッ」
ババア「よくぞ俺の変装、そして毒酒を見破った!!」バッ
勇者「お前のような、でかいババアが居るか……」
刺客「俺こそが鉞殺界平等術の使い手よぉっ!! この二本の草刈り鎌から逃れるすべなどないのだぁ!!」
42: 2013/03/14(木) 00:36:15 ID:hK8jYzsQ
戦士「鉞殺界平等術だって!?」
武道家「鉞殺界平等術と言えば、無慈悲として有名な暗殺拳……どうしてこんな所に」
商人「ここは四人で一斉に飛び掛かるべき」
勇者「……」
勇者「お前たちは下がっていなさい。私が一人で戦おう」スッ
43: 2013/03/14(木) 00:47:04 ID:hK8jYzsQ
武道家「でも師匠!?」
勇者「見る事もまた戦いだ」
勇者「暗殺者よ、着いて来るがいい」バッ
刺客「窓から外に飛び降りやがった!! にがさねぇぜ勇者!!」バッ
44: 2013/03/14(木) 13:24:47 ID:hK8jYzsQ
宿の庭園
勇者「ここならば」
刺客「広い場所なら、俺の技を避けれると思ったかぁ~? あぁん?」
勇者「来なさい」スッ
刺客「こいつっ、スマシやがってぇっ!! 氏ねぇぇぇっ!! 鉞殺界平等術究極最終奥義、二刃擲刺刺氏嚥翔殺ッ!!!」
45: 2013/03/14(木) 13:34:06 ID:hK8jYzsQ
商人「ッ!!?」
戦士「草刈り鎌を高速で、しかもブーメランのように投擲して扱っている!!?」
勇者「……」
勇者「激流に逆らえば呑み込まれる。むしろ激流に身を任せ同化するのだ」
武道家「それでも師匠は避けないっ、引かない!? 逆に鎌へ、刺客の方へ近付いているぅっ!!?」
46: 2013/03/14(木) 14:02:27 ID:hK8jYzsQ
ここで、戦士、武道家、商人は信じられないものを見た。
飛来する凶器をすり抜けたのである。それもまるで朝食のクロワッサンにコーヒーを合わせるがの如く当然にっ!!
これには流石の刺客も驚きを隠せない。物体が物体を素通りするなど在ってはならない事なのだっ。
50: 2013/03/14(木) 17:02:25 ID:hK8jYzsQ
勇者「発ッ」
刺客「ぐはっ!? まさか、戻って来る鎌までも避けるとは」ズザァ
刺客「だが、今ので完全に俺を怒らせたようだな? さっきのが最速だと思っているのだろう? 違うねっ!!」
刺客「更に五倍まで速度を上げられるのだっ、今度こそ氏ねぃ勇者!!」
51: 2013/03/14(木) 17:05:06 ID:hK8jYzsQ
戦士「これは、客観的に見れるから気付けたが……」
武道家「師匠の動きは、何て柔らかいんだっ」
勇者「……」
勇者「忠告しておこう、先ほどの技はもう使わない方がいい」
52: 2013/03/14(木) 17:14:12 ID:hK8jYzsQ
刺客「くくっ、怖じけずいたのかぁ!?」ジャキ
勇者「聞かぬか……さらばだ」スタスタ
刺客「待てっ、どこに行きやがるっ」
刺客「氏ねぇぇぇっ!! 鉞殺界平等術究極最終奥義、二刃擲刺刺氏嚥翔殺ッ!!!」ブンブン
53: 2013/03/14(木) 17:19:05 ID:hK8jYzsQ
商人「鎌が……」
刺客「あるぇっ? 何で鎌が検討違いの方向に飛んで行くんだぁ?」
キュルキュル
刺客「戻って、来る、鎌を、キャッチ、しないと、キャッチ、キャッ……」ザシュッ
刺客「ぐひゃあああああ!!」
勇者「忠告はしたが。私の攻撃で、感覚が狂っていた事に気付かなかったようだな……」
54: 2013/03/14(木) 17:42:01 ID:hK8jYzsQ
勇者「さて、明日は早い」
戦士「……って、ここで、さっきの部屋で寝るつもりか師匠!?」
勇者「そうだ。まぁこの宿には他客の気配が無いから誰も泊まっていないだろう。それぞれ違う部屋を使うといい」
商人「師匠……私と言う情報体は、改めて貴方を尊敬に値する人物だと決定した」
勇者「……こちらこそ」
勇者「明日から、よろしく頼む」ニコッ
55: 2013/03/15(金) 10:07:59 ID:e6mtcUb2
翌日 宿の一室
チュンチュン
勇者「……」ムクッ
勇者「それぞれ別室にした筈だが……」
戦士「くー、くー」
武道家「すぅっ、すぅっ」
商人「くんか、くんか」
56: 2013/03/15(金) 15:32:04 ID:e6mtcUb2
勇者「ほら、起きろ。今から戻るぞ」
武道家「うにゅ……おはよう、ししょー」
戦士「ふあぁ~っ、戻るってどこにだ?」
商人「……んっ、略さずに、んん~~っ、しっかり、と……教えるべき」コクリコクリ
57: 2013/03/15(金) 15:35:02 ID:e6mtcUb2
勇者「サザンクロスへ、キングの根城へ戻ると言ったのだ」
商人「ボケるには早い師匠。まだ盗賊は倒してない」
勇者「……」
勇者「その必要は無くなった。先に表で待っている。お前たちは二十分で支度しなさい」
58: 2013/03/15(金) 16:35:24 ID:e6mtcUb2
サザンクロス キングの根城
キング「くくっ、距離を考えれば、そろそろ勇者の氏んでいる頃か……建前上の手紙でも書かねばなるまいな」
バン!!
キング「ッ!?」
キング「誰だッ!!? 応接間と言えど、ノックをしろと教えてあるだろうっ」
59: 2013/03/15(金) 16:37:25 ID:e6mtcUb2
勇者「……」
勇者「キングよ、ただいま戻った」
キング「勇者っ!? だぁ~とぉ!?」
キング「よくぞ使命も果たせずにおめおめと戻って来れたなっ!!」
60: 2013/03/15(金) 18:44:05 ID:e6mtcUb2
勇者「なぜ私が使命を果たしてないと分かる?」
キング「なっ……そ、それはっ、時間だ!! こんなに早く帰って来れる筈がない!!」
勇者「勇者の事が信じられないか? ふっ、それはそうとキングよ……昨日ここで私を盗み見ていた者の気配は感じぬが、今日は休みか?」
キング「キサマ、まさかっ!?」
勇者「どうやら単独行動だったようだが……変装してまで私の命を狙って来た理由を聞きたいなぁ、キング!!」スッ
61: 2013/03/15(金) 18:49:17 ID:e6mtcUb2
キング「……」
キング「くっ、ふっ……」
キング「ふははははははははっ」
キング「仕方ない、俺が直々に相手をしてやるぞ勇者よ」スッ
勇者「やはりお前が盗賊団の親玉だったか」
62: 2013/03/15(金) 21:29:17 ID:e6mtcUb2
キング「キサマが知る必要はない……あの頃のように跪かせてやるぞ、あの頃のようになっ!!」
勇者「……」
─────────────
十五年前
幼勇者「……」
63: 2013/03/16(土) 00:21:06 ID:x72I9oB2
幼キング「もう姫に近付くのは止めろっ!!」バキッバキッ
幼弟「ぐぅわっ」ドサッ
幼勇者(またやられている……助けないと)ザッ
幼姫「何をやってるのよ!! だいじょうぶ幼弟?」タッタッタッ
幼弟「うん……」
64: 2013/03/16(土) 10:14:12 ID:x72I9oB2
幼勇者「もうやめるんだっ」
幼キング「ああ? お前も弱いクセにいちいち出て来てムカつくをだよっ」ドカッバキッ
幼勇者「ううっ」ドサッ
幼弟「にいさん……」
幼姫「もう我慢できませんっ、父上に頼んで、貴方をこの街から追放しますっ」
幼「なにっ!? 幼姫、俺はお前が好きなだけなんだっ、弱っちぃコイツらより、俺を好きになれ幼姫!!」
65: 2013/03/16(土) 10:19:22 ID:x72I9oB2
幼姫「悲しい人……例え貴方が国の王になろうとも、私は貴方を好きになりません」
幼キング「ぐうっ、コイツらか……コイツらが居るからぁっ!!」ドゴッバキッ
幼弟「うわぁっ!?」
幼勇者「くっ……」
幼姫「やめてぇっ、幼弟をこれ以上イジメないでっ」
66: 2013/03/16(土) 10:23:33 ID:x72I9oB2
─────────────
勇者「……」
勇者(同じ女性(ひと)を愛し、共に散ったキングよ……同情はするが、お前は道を誤った!!)
勇者「私は、あの頃の私では無い。掛かって来るがいい……いや、掛かって来いっ、キング!!」ザッ
67: 2013/03/16(土) 15:30:30 ID:x72I9oB2
戦士「ししょ~っ!! 城の中に居る兵士はみんな眠らせたぜ」ダダッ
武道家「って言うか、兵士は殆どいなかったからすぐに終わったけどね」
商人「らくちんぽ ん……」
勇者「ふっ……盗賊のアジトに、兵士を割き過ぎたようだな」
キング「チッ、まぁいい。この俺をお前らの国のハリボテ王と一緒にせん事だなっ、行くぞっ!!」バッ
68: 2013/03/16(土) 16:37:40 ID:x72I9oB2
キング「ちぇああああああ!!」キャオラ
勇者「むっ!?」スゥッ
戦士「あのキング、なんて鋭い手刀突きの連打だ……」
武道家「でも、師匠もそれを紙一重で避け続けてるっ」
キング「氏ねぇい、勇者ぁぁぁぁっ!!!」ズダダダダダッ
69: 2013/03/16(土) 16:41:11 ID:x72I9oB2
勇者「……」
勇者「ふんっ!!」ガシッ
キング「なんだとっ!? くっ、あの頃の勇者では無いなっ!!?」
商人「師匠がキングの突きを見切って手首を掴んだ」
戦士「勝負ありだな」
70: 2013/03/16(土) 16:51:30 ID:x72I9oB2
勇者「勝機」バッ
キング「こっ、この俺がぁっ!!」グラァ
勇者「激烈双弾八卦掌!!」ドゴォォン
キング「ぐはぁっ!?」ドサッ
武道家「師匠の攻撃が……」
商人「通った」
71: 2013/03/16(土) 16:57:18 ID:x72I9oB2
勇者「命までは取らん……」
キング「ぐっ、くくっ、俺に生き恥を晒せと言うのか?」ヨロヨロ
勇者「そうでは無い。この国の民に謝罪するのだ」
勇者「お前の行った事は悪だが、これ程の街を作り上げた手腕は素晴らしい。もう一度やり直せ……キング」
72: 2013/03/16(土) 18:03:06 ID:x72I9oB2
冷めたハートじゃ 愛せやしない
待ち続けても 夜明けは来ない
キング「姫……お前の愛が欲しかった」
一人立つ SILENT FIGHTER
暗闇にゆれる炎の中で 夢を求めて
キング「は、ははっ。お前の思う通りにはいかん!! さらばだっ、勇者ぁぁぁぁっ!!!」ザシュゥゥッ
73: 2013/03/16(土) 18:07:07 ID:x72I9oB2
キング「フッ……」ドサァッ
DO SURVIVE! 渇いた心が
DO SURVIVE! 求めて泣いてる
武道家「ッ!?」
戦士「手刀で自分の首を切りやがった!?」
DO SURVIVE! 明日さえ見えずに
勇者「姫への愛、このサザンクロスでしかと見届けた……」
終わることのない 旅路の果てで
74: 2013/03/16(土) 21:22:17 ID:x72I9oB2
戦士「なぁ師匠、これからどうすんだ?」
勇者「この国はキングの恐怖政治……兵士は皆、不本意ながら盗賊紛いな事をしていたのだ。まずは真実を知らせねば」
勇者「そして、キングの墓を建てる」
武道家「こんな奴の墓をですか?」
勇者「同じ……女を愛した男だからだ」
75: 2013/03/17(日) 00:19:48 ID:NiKR6CKI
商人「……」
商人「っ?」タタタッ
商人「あっ……戦士、武道家、このテラスから街を見下ろして」
戦士「ん、なんだよ?」
武道家「なぁに商人?」タタッ
勇者「……」
76: 2013/03/17(日) 00:22:52 ID:NiKR6CKI
戦士「なっ、これはっ!?」
武道家「街の建物の配置が、上から見下ろすと姫の名前になってる!?」
勇者(キング……)
勇者(この街を姫へ贈りたかったのだな……)
77: 2013/03/17(日) 10:31:10 ID:NiKR6CKI
数日後
サザンクロス キングの根城
,
82: 2013/03/18(月) 23:28:16 ID:58XaS9T6
街の中央広場にて演説
新キング「前キングはその悪行ゆえ、勇者様に討たれた……しかし立てよ国民、これは終わりなのか? 否、始まりなのであるっ!!」
国民達「おーーーっ!!」
武道家「……今度のは、しっかりとした王みたいですね師匠?」
勇者「そうだと、願いたいな」
戦士「理由は教えないのか? 師匠なら、なんでキングが盗賊紛いな事をさせてたのか知ってるんだろ?」
勇者「……」
勇者「許せ。これは墓場まで持って行く」
83: 2013/03/18(月) 23:36:47 ID:58XaS9T6
勇者「さぁ、出発だ」スッ
商人「次はどこ?」
勇者「東へ向かう。トロルとオーガの混合生物が支配し、人々を奴隷のように扱っている街が在るらしい。そこを解放する」
商人「トロル、オーガ……鬼。データベース照合。『鬼哭街(きこくがい) カサンドラ』、了解」
84: 2013/03/18(月) 23:39:25 ID:58XaS9T6
キングの根城サザンクロス解放
鬼哭街カサンドラへ
,
85: 2013/03/18(月) 23:49:11 ID:58XaS9T6
森のフィールド ムーの大森林
武道家「ふぅっ、ふぅっ」
戦士「なんだよこの森……歩いても歩いてもモンスターばっかで抜け出せねぇぜ」
商人「お陰で私達のレベルは上がってる」
戦士「まぁ、戦ってるのは殆ど師匠一人だけどな」
86: 2013/03/18(月) 23:56:42 ID:58XaS9T6
勇者「……そろそろか」
勇者「次はお前達だけで戦ってみなさい」
戦士「えっ?」
ガサガサッ
フシギソウ「ソヴゥゥゥゥゥッ!!」
アダマン「ピギィィ!!」
野生のフシギソウがあらわれた
野生のアダマンタイマイがあらわれた
88: 2013/03/19(火) 08:14:42 ID:DF.SNWOw
戦士「よっしゃ、やってや……」
?「危ないっ、近接真空魔法!! シャオ!!」バッ
スパンスパン
フシギソウ「」ボトボト
アダマン「」ボトボト
勇者「!?」
武道家「敵が……」
商人「悲鳴を上げる間も無く細切れになった」
89: 2013/03/19(火) 08:21:44 ID:DF.SNWOw
?「大丈夫か?」ニコリ
戦士「あ、ああ……」
?「……」
僧侶「俺は僧侶、魔物に教われてると思い助けに入ってしまったが……」チラッ
勇者「……」
僧侶「そっちの奴を見るに、余計な事をしてしまったようだな」
91: 2013/03/19(火) 11:26:10 ID:DF.SNWOw
勇者「いや、礼を言おう。貴方は一人旅かな?」
僧侶「……」
僧侶「僧侶、と言っても派閥が有ってな。そして大きく六つの派閥に別れている」
僧侶「魔王が現れた時、それぞれのトップが会合し、『派閥の垣根を越え、力を合わせて魔王を討とう』……となったんだが」
勇者「裏切りか?」
僧侶「ああ。最初から賛成しないならまだしも、一度賛成し、今更になって和を乱すと有っては、俺はソイツを殺さなくてはならない」
92: 2013/03/19(火) 11:31:37 ID:DF.SNWOw
勇者「その目的で単独行動を?」
僧侶「まぁ他にも幾つか目的は有ったし、一人の方が動き易いからな」
僧侶「ふっ、喋り過ぎたか……じゃあ俺は行くとしよう」ヒラヒラ
武道家「ししょ~。ボク達も行こうよぉ」
勇者「そうだな」
僧侶「っとそうだ。名前を聞くのを忘れていた。何かの縁だ、教えてくれないか?」
勇者「……」
勇者「私は、勇者だ」
93: 2013/03/19(火) 11:40:43 ID:DF.SNWOw
僧侶「なにっ」ピクッ
僧侶「勇者だぁ!? だが成る程……相当な手練れの風格が有る筈だぜ、お前が勇者とはなぁっ」
戦士「なんだアイツ、雰囲気が!?」
僧侶「勇者現れし時、神の使い乱れると聞く。古臭い古文書なんざ信じてはいないが……剣を抜け勇者!!」キッ
勇者「お前の剣と俺のシャオクロス……どちらが強いか確かめてみたい」
94: 2013/03/19(火) 14:03:38 ID:DF.SNWOw
>>93
× 勇者「お前の剣と俺のシャオクロス……どちらが強いか確かめてみたい」
○ 僧侶「お前の剣と俺のシャオクロス……どちらが強いか確かめてみたい」
× 勇者「お前の剣と俺のシャオクロス……どちらが強いか確かめてみたい」
○ 僧侶「お前の剣と俺のシャオクロス……どちらが強いか確かめてみたい」
95: 2013/03/19(火) 14:13:06 ID:DF.SNWOw
勇者「……」
勇者「私の剣は人を救う為に存在する救世剣。その剣で人を傷付ける事はできん」
勇者「お前が悪人ならば話は別だが、そうは思えないからな……」
僧侶「そうか……だが、余計に試したくなった。意地でも剣を抜いて貰うぞ?」スッ
僧侶「ふぅ~~~ッ、シャオッ!!」バッ
96: 2013/03/19(火) 15:00:21 ID:DF.SNWOw
戦士「あの僧侶、一瞬で距離を縮めたっ!?」
武道家「避けて師匠!!」
勇者「……」
僧侶「どうしたっ、避けねば大変な事になるぞ!!」シュン
97: 2013/03/19(火) 15:02:54 ID:DF.SNWOw
勇者「……」
僧侶「……」
勇者「……」ニコリ
僧侶「チッ!!」ピタッ
僧侶「なぜ避けようとしない? なぜ剣を抜かない!?」
勇者「ならばこちらも聞こう。なぜお前の攻撃には殺気が無いのだ?」
98: 2013/03/19(火) 15:11:10 ID:DF.SNWOw
僧侶「なっ!?」
僧侶「ははっ……寸止めするつもりだったのも見切られていた訳か」
僧侶「その人物の力量を見るなら、剣を見ずに拳を見ろとは良く言ったもの……勇者よ、お前のは大きく、大切な者を包み守ろうとする手だ」
勇者「私はこれでも医学の道を目指していた身。魔王を討った後は医者として各地を旅しようと思っている」
勇者「そんな者の手に、血の匂いが染み付いてしまっては駄目だろう?」
99: 2013/03/19(火) 16:57:06 ID:DF.SNWOw
僧侶「医者……だ、と?」
勇者「この時代にと笑うがいい。魔法が有れば、確かに外傷や後天的な病は治るかも知れぬ」
勇者「だが私は、魔法では救えぬ者……そんな者達に手を差し伸べて救いたいのだ」
僧侶「……」ギリッ
僧侶「勇者よ、頼みが有るっ!!」
戦士「なんだよ、急に師匠へ土下座したぞ?」
100: 2013/03/20(水) 00:25:24 ID:3OJp0N4A
僧侶「俺の妹を……妹を診てやってくれ!!」
勇者「お前の妹を?」
僧侶「ああ、お前の妹は生まれつき目が見えんのだ。何かしらの治療方法が見付かると思い僧侶の道に着いたが……この地位になってなお何も見つからない」
武道家「魔法も万能じゃないからねぇ」
101: 2013/03/20(水) 00:26:26 ID:3OJp0N4A
僧侶「頼む勇者!! 神仏に祈ろうと、魔法を極めようと、治らないんだ……頼む、診るだけでもっ」
商人「ペッ。私達は魔王を倒すべく旅をする宿命。そんな寄り道は……」
勇者「よかろう」
商人「!?」
商人「そう。まずは身近な困ってる人を助ける。これが勇者一行の基本」
102: 2013/03/20(水) 00:37:16 ID:3OJp0N4A
僧侶「すまぬ、勇者よ……」
勇者「魔法が発達し、怪我や病気が簡単に治療される時代。故に医学は廃れ、志す者も居なくなった」
勇者「だからこそ、その魔法で治療できない者は諦められる。私はそんな者達の、最後の希望で在りたい」ニコリ
勇者「とは言ったが、完全に治せると断定は出来ない。それでも私が診療して構わぬのだな?」
僧侶「……頼むっ、頼むっ!!」
103: 2013/03/20(水) 01:12:46 ID:3OJp0N4A
勇者「では行こうか? して、場所は?」
僧侶「この森を抜けてすぐの、アイリと言う街だ」
勇者「……」
勇者「ちょうどカサンドラへの道中だな……よし、さっそく向かおう」
104: 2013/03/20(水) 01:20:20 ID:3OJp0N4A
鬼哭街カサンドラの道中
水鳥の街アイリへ
,
105: 2013/03/20(水) 01:24:03 ID:3OJp0N4A
水鳥の街アイリ 僧侶の家
僧侶「妹ぉぉぉぉぉおお!!」バンッ
妹「えっ、兄さん!?」
妹「もう……私の部屋に入る時はノックしてって言ってるじゃないですかっ」フラフラ
僧侶「立たなくて良いっ。そのまま、ベッドに腰掛けてろ」
107: 2013/03/20(水) 09:41:25 ID:3OJp0N4A
妹「え、えっ? あの……はい」チョコン
僧侶「……」ニコッ
僧侶「勇者、頼む」
勇者「分かった。診るだけは診てみよう」
勇者「妹さん。不快に思うかも知れないが、少しの間だけ我慢して欲しい」スッ
妹「?」
僧侶「その方は勇者で在り、お医者さんでも在るんだ。我慢……できるな?」
妹「お医者、さん? はぁ……兄さんがそう言うなら。ジッとしてます」
108: 2013/03/20(水) 09:48:39 ID:3OJp0N4A
勇者「では、失礼する」
勇者「……」
妹「……」アーン
勇者「……」
妹「……」ベェー
勇者「……ふぅ」
勇者「あい分かった。結論から言おう……これは治療が可能だ」
109: 2013/03/20(水) 09:55:56 ID:3OJp0N4A
妹「っ!?」
僧侶「本当かっ!? じゃあ早速……」
勇者「慌てるな。治療は可能だと言ったが、今すぐにでは無い。『ハイポーション』と言う調合薬が要るのだ」
僧侶「ハイポーションと言えば、ポーションに多種の自然物を混ぜ合わせて作ると言われる……あの?」
勇者「……」コクッ
勇者「そしてもう一つ。この妹さんが、本当に目を治したいと思っているかどうか」
110: 2013/03/20(水) 10:02:39 ID:3OJp0N4A
妹「……」
僧侶「何を言ってるんだ勇者!? 妹は生まれからずっと目を治したいと泣いて来たんだぞ? だから俺だって妹を支えて来たし、こうやって治療法を探したりして来たんだ」
勇者「……」
勇者「妹さん……私が治療を行えば99%、ほぼ完治する。それでも……良いのかな?」
妹「……」
僧侶「だから何を言ってるんだ!? これ以上、俺の妹を侮辱すると……」
妹「このままで、いいです」
僧侶「妹!?」
111: 2013/03/20(水) 10:07:02 ID:3OJp0N4A
>>110
× 妹は生まれからずっと
○ 妹は生まれてからずっと
× 妹は生まれからずっと
○ 妹は生まれてからずっと
112: 2013/03/20(水) 10:13:59 ID:3OJp0N4A
僧侶「何故だっ!? いつも目が見えるようになりたいと、俺の腕の中で泣いているじゃないか!?」
妹「……」
妹「……ふ」
妹「だって、だって兄さん? 私の視力が復活したら、兄さんの腕の中で泣く事もできなくなってしまう」
僧侶「えっ?」
妹「私の視力が復活したら、兄さんが私の事を考える時間が減ってしまう」
113: 2013/03/20(水) 11:46:07 ID:3OJp0N4A
僧侶「……」
僧侶「違うな」
妹「違わない!!」
僧侶「違う。確かにお前からの好意は感じていた……だが、目を治さないのはそうでは無いだろ?」
妹「っ」ビクッ
僧侶「お前は怖いんだよ……目が見えるようになる事がな」
114: 2013/03/20(水) 13:31:53 ID:3OJp0N4A
僧侶「これまでは『見えない』で済んでいた事が、これからは形を覚え、名前を覚え、最初からのスタートだ」
妹「……」
僧侶「それは大変な事だろう。オタオタして子供にも笑われるだろう」
妹「……」グッ
僧侶「だがそれでも俺は、お前に光有る世界を、色彩豊かに輝く世界を見せてやりたいんだ!!」
僧侶「大丈夫……俺は傍に居る。そして俺の姿も見て欲しい。妹よ……俺の居る世界へ、来い!!」
115: 2013/03/20(水) 16:35:59 ID:3OJp0N4A
妹「兄さ……」
妹「おにいちゃん……」ポロポロ
僧侶「俺の腕でいつでも泣け、愛する妹よ」ギュッ
僧侶「勇者、頼む……治してきれっ」
勇者「……」
勇者「分かった。では早速調合に入ろう。隣の部屋を借りても良いかな?」
僧侶「ああっ。材料は何でも言ってくれ。寺院から俺が取って来る」
116: 2013/03/20(水) 18:07:43 ID:3OJp0N4A
翌日 妹の部屋
勇者「これにて処置は完了となる」
妹「すぅー、すぅー」
僧侶「この包帯は、いつ取れるんだ?」
勇者「……」
勇者「数日後、激痛が訪れ、その激痛が引いた後に視力が回復して行くだろう」
僧侶「激痛、か……妹に堪えれるか?」
勇者「僧侶よ、お前が傍に居て手を握ってやるのだ」ニコリ
117: 2013/03/20(水) 18:58:19 ID:3OJp0N4A
勇者「それとハイポーションの原液を置いてゆく。じゅうぶんに回復するとは思うが、万が一の時には、今日やったようにきっちりと量り、300倍に薄めて使いなさい」
僧侶「助かる……興味本意で聞くのだが、これを原液のまま使ったとしたらどうなるんだ?」
勇者「……」
勇者「ハイポーションは強力な細胞活性促進剤。まず氏んだ方がましだと思える激痛が訪れて、それを堪えれば、凄まじい身体能力を手に入れられる。そして数日の後……氏ぬ」
僧侶「成る程、強すぎる薬は毒と言う訳か……頭に入れて置こう」
118: 2013/03/20(水) 21:43:14 ID:3OJp0N4A
勇者「ふっ、妹を、大切にな」ニコリ
勇者「では私は、寝てる弟子達を起こしてカサンドラへ向かうよ」
僧侶「……」
僧侶「勇者よ、約束しよう。魔王を倒す時には必ず駆け付け、お前の手助けをすると」
119: 2013/03/20(水) 23:51:55 ID:3OJp0N4A
水鳥の街アイリ 僧侶の家を出発
再度 鬼哭街カサンドラへ
,
120: 2013/03/21(木) 00:24:12 ID:YJBPruug
鬼哭街カサンドラ 巨大牢獄
奴隷「話が違うじゃないか!! 今日まで働けば妻は解放するって言ったろ!!」
オーガ「ああん? 聞こえんなぁっ!! フンッ!!」ドンッ
奴隷「ッ!!? ぐはぁっ……」ドサッ
オーガ「これで貴様ら奴隷も分かっただろ? このオーガトロル様に逆らうとどうなるかがなぁ!?」
奴隷達「……」ブルブル
オーガ「わかったら地下炭鉱へ行けい!! 病で働けなくなったら解放してやるわっ!!」
121: 2013/03/21(木) 00:32:22 ID:YJBPruug
ゴブリン「オーガ様~っ」タッタッ
オーガ「ああん? なんだぁ?」
ゴブリン「勇者一行が、カサンドラへ向かって来ているとの情報が入りました」
オーガ「……」ニヤリ
オーガ「やっと来おったか? とっくに『アレ』は完成していたと言うのになぁっ」
オーガ「ガア~っハッハッハッ!!」
122: 2013/03/21(木) 00:51:32 ID:YJBPruug
カサンドラ300メートル手前 林の中
戦士「作戦はどうするんだ師匠?」
武道家「あの高い鉄格子の壁をよじ登るとか?」
商人「ユニーク。あの鉄格子には、高確率で電流が流れていると考えるべき」
武道家「むっ」
勇者「……」
勇者「一先ず夜を待とう。警戒が薄まれば夜襲。変わらぬようなら早朝に仕掛ける」
123: 2013/03/21(木) 12:00:14 ID:YJBPruug
勇者「そして作戦だが……」
武道家「……」ゴクリ
勇者「門番をしている二匹のモンスターが見えるな?」
デスストーカー「……」
カンダタ「……」
商人「どっちも覆面をして巨大な斧を持ってる」コクッ
124: 2013/03/21(木) 19:47:04 ID:YJBPruug
勇者「私があの二匹の注意を引きつつ突破する。お前達は後から入り住民を解放するのだ」
戦士「分かった……けど、師匠は?」
勇者「私はオーガを叩き潰す」
勇者「元凶を断ち、この街を真の意味で救わなくてはな」
125: 2013/03/22(金) 01:12:42 ID:b2HUQf7k
戦士「一人で大丈夫なのか? オレ達だってそれなりに……」
勇者「心配するな」ニコリ
勇者「優先して救うべきは弱者だ。全員助け終えたなら、その時に増援として来なさい」
戦士「……師匠」
武道家「ボク達を残して氏なないよね?」
勇者「ここのオーガに倒されるようでは、勇者として旅立とは思わないよ。さぁ、私が見張りをしているから、お前達は仮眠を取りなさい」
127: 2013/03/22(金) 10:57:04 ID:b2HUQf7k
商人「……」ジィーッ
勇者「……」
勇者「ふふっ。よかろう」
勇者「次による村は私の産まれ故郷。ここを無事に解放したら、そこでしばし休息を取ろう」ニコリ
戦士「本当だな? ここを乗りきったら、次の村で師匠は休むんだな?」
勇者「約束だ」コクリ
武道家「……じゃ」
商人「寝る。おやすみ」コテッ
128: 2013/03/22(金) 10:59:33 ID:b2HUQf7k
勇者「……」
勇者「ああ……」
勇者「約束だ……」
,
129: 2013/03/22(金) 11:04:18 ID:b2HUQf7k
翌日早朝 カサンドラ入り口 大扉前
デスストーカー「んっ?」
カンダタ「おい、そこの男!! 何を素通りしようとしている!? 止まれっ」ジャキ
勇者「……」
デスストーカー「何だお前は? 奴隷志願者かぁっ? ウヒャヒャッ」
130: 2013/03/22(金) 15:56:08 ID:b2HUQf7k
ガサゴソ
戦士「師匠はどうやって突破するんだ?」
武道家「門番二匹に、門自体の高さが凡そ40メートル……」
商人「しかも門は内側からしか開かない。鉄壁」
勇者「……」
カンダタ「しかし、こんなにヒョロくちゃ奴隷にもなれんぜぃ? 俺達はもう仕事が終わる時間だから、氏体の処理とか面倒を起こしたくないんだ。見逃してやるから帰りな」シッシッ
131: 2013/03/22(金) 16:32:10 ID:b2HUQf7k
勇者「ハイヤーッ!!」ズドンッ
カンダタ「ぐえええええええ!!?」
商人「!?」
戦士「まるで打ち上げ花火みてぇに敵を空高く蹴りあげた!?」
勇者「踏み台にさせて貰うぞっ」ダンッ
武道家「更に跳んで、蹴りあげた敵を足場にして二段ジャンプ!?」
戦士「これは……」
商人「門の高さを越える!?」
132: 2013/03/22(金) 16:43:52 ID:b2HUQf7k
カンダタ「あぎゃっ!!」ズデン
デスストーカー「おい、寝転がってる場合じゃねぇぞ!? 早く伝えないと俺らが……ん?」
ゴゴゴゴゴ
デスストーカー「スイッチが押されて門が開いた? まさかっ!?」
勇者「私を追って来るがいい。オーガに侵入者を許したと知られたくないのだろ?」シュタ
デスストーカー「テメェ!!」ダダッ
カンダタ「待ちやがれ、ブッ頃してやるっ!!」ダダッ
133: 2013/03/22(金) 16:48:31 ID:b2HUQf7k
商人「……」
武道家「ボク達も行こうっ」
戦士「ああっ」コクッ
商人「奴隷の地下収容所は街の西側。中に入ったら壁伝いに走る」
134: 2013/03/22(金) 17:10:32 ID:b2HUQf7k
勇者「……」タタタッ
勇者(街の中央広場。ここがベストか)ピタッ
カンダタ「ヒー、ヒーッ……やっと観念して止まったかこのヤロウ」
デスストーカー「この巨大戦斧で、胴体を真っ二つにしてやるぜっ」
135: 2013/03/22(金) 20:20:55 ID:b2HUQf7k
勇者「……」
勇者「よかろう」
勇者「そのナマクラで私を切れるかどうか、試してみるがいい!!」スッ
デスストーカー「氏ねぃ!! 戦斧闘術奥義、猛牛青龍斬!!」ズバァァッ
カンダタ「戦斧闘術奥義、青龍猛牛斬!! このクロスコンビネーション、どう避けるぅぅう!?」ズバァァッ
136: 2013/03/22(金) 21:29:52 ID:b2HUQf7k
勇者「……」
勇者「ふん!!」ピタァッ
デスストーカー「なっ!? コイツ……」ググッ
カンダタ「俺達の斧の刃を、人差し指一本ずつで受け止めやがった!?」ググッ
勇者「どうした? 指一本も切り落とせないのでは、私の身体を切る事などできんぞ?」
137: 2013/03/23(土) 09:51:35 ID:TdydRhX6
カンダタ「ぐっ、コイツ……」
ドシーン ドシーン ドシーン
カンダタ「!!?」ブルブル
勇者「むっ!?」
オーガ「なんだぁ? 朝早くから、ずいぶんと騒がしいじゃあねぇか?」
デスストーカー「お、お、おっ、オーガ様ぁぁっ!!?」
138: 2013/03/23(土) 10:37:32 ID:TdydRhX6
カンダタ「い、今すぐにコイツを仕留めますので、どうかお休みになっていてくださいぃぃ!!」ガタガタ
デスストーカー「どうかここは我々にお任せをッ!!」ブルブル
勇者「……」
オーガ「ああん? 聞こえんなぁ……六触手葬場鞭」グゴゴゴ
139: 2013/03/23(土) 11:27:14 ID:TdydRhX6
カンダタ「オーガ様の肩から鞭のような触手がぁぁぁ!!」
オーガ「役立たずは……」ブンッ
デスストーカー「ひぎゃっ!?」メギャン
オーガ「要らん!!」ブンッ
カンダタ「うげぇっ!?」ボムギッ
140: 2013/03/23(土) 11:39:06 ID:TdydRhX6
オーガ「フフッ」ジロリッ
勇者「……」
オーガ「お前が勇者か?」
勇者「……だと言ったら?」
オーガ「門番が二人掛かりで勝てない訳だ」
オーガ「だが、この広場に空いた『巨大な穴』を見ろ勇者ぁぁああ!!」
141: 2013/03/23(土) 11:47:45 ID:TdydRhX6
勇者「これは……」
オーガ「この穴は貴様の『墓』だっ」
オーガ「ここで勇者が氏に……」
オーガ「このカサンドラの恐怖伝説を、より強固なものとするのだぁ!!」
勇者「こんなものの為に民を働かせていたのか……」グッ
勇者「来いオーガよ!! 私が直接お前の相手をしてやろう!!」スッ
142: 2013/03/23(土) 16:57:36 ID:TdydRhX6
ダッダッダッダッ
ホブゴブリン「オーガ様、我々もお手伝い致しますっ!!」
オーガ「お前らは見ておれ、勇者は俺一人で充分よっ!!」
ホブゴブリン「はっ。よしゴブリン共ぉっ、勇者が逃げれぬように、オーガ様と勇者の回りを囲むのだぁっ」
勇者「……」
勇者(手下達がリングロープの役割を果たすか、よかろう!!)
143: 2013/03/23(土) 17:57:21 ID:TdydRhX6
オーガ「ククッ、いたぶり、なぶり頃してやる……六触手葬場鞭!!」シャァァッ
勇者「これはっ!?」シュルシュル
ゴブリン「オーガ様の鞭が勇者の手足に巻き付いて動きを封じたぞぉ!!」
ウェアウルフ「ヒャハァーッ!! これで勇者はおしめぇーだぁーっ!!!」
144: 2013/03/23(土) 23:06:46 ID:TdydRhX6
オーガ「執念胴衣……そして必殺のぉっ」
ゴブリン「執念胴衣が出たぞ!! オーガ様の右肩が金剛石のように硬くなるぅぅっ」
オーガ「ボンバー、タックルゥッ!!!」ズドォォッ
ウェアウルフ「アレは恐怖のボンバータックル!? あの技を食らって立ち上がった者は未だにかつていねぇ!!」
勇者「ぐはぁっ!!?」ドゴォッ
ホブゴブリン「勇者のヤロウ、まともに喰らいやがったぜ!!」
145: 2013/03/23(土) 23:18:10 ID:TdydRhX6
勇者「はぁっ、はぁっ……」ヨロヨロ
オーガ「ほう、まともに受けても立ち上がるか? だが、それが精一杯のようだな!?」
オーガ「オラッ!!」ブンッ
勇者「ぐっ!?」ドゴッ
オーガ「ガハハハッ、宣言通り、じわじわとなぶり頃しだっ!!」
146: 2013/03/23(土) 23:51:12 ID:TdydRhX6
オーガ「恐かろう?」ブンッ
勇者「つッ!?」ドゴッ
オーガ「恐くて声も出せんのかぁ? ああん!?」ブンッ
勇者「ぬうぅっ」グラァッ
147: 2013/03/24(日) 00:12:52 ID:aDUEw/KY
オーガ「ガーッハッハッハッ!!」ドンッ
勇者「うぅっ……」ガクガクッ
勇者「……」
ゴブリン「勇者の奴、とうとう気を失いやがったぜぇ!!」
ウェアウルフ「オーガ様、そろそろトドメを刺してやってください」
148: 2013/03/24(日) 00:20:47 ID:aDUEw/KY
オーガ「フッフッフッ。ではこの技で葬ってやるとするか」
オーガ「執念胴衣……そして必殺のぉっ」
勇者「……」
ウルフ「ヒャハァー!! 勇者の最後だぁっ」
149: 2013/03/24(日) 00:28:40 ID:aDUEw/KY
ウェアウルフ「勇者の、最後だぜぇ」
ウェアウルフ「勇者の、勇者、の……」スパンッ
ウェアウルフ「ゆう、しゃ……」ボトッ
ウェアウルフ「あれ、なんで俺、俺の頭が、体から、離れちまってんだ?」ゴロゴロ
戦士「五月蝿いぜワン公」シュッ
武道家「ししょ~~っ!! 救出終わったよぉ~~っ!!」
150: 2013/03/24(日) 00:33:42 ID:aDUEw/KY
勇者「……」ピクッ
勇者「そうか、ならばこんな芝居も必要あるまい」
勇者「はあああああああああああッ!!!」ブチブチブチッ
オーガ「なにッ!? 俺の葬場鞭を引き千切っただと!!?」
オーガ「だが、例え勇者とて、俺の本気のボンバータックルに堪える事は不可能なはずっ!!」
151: 2013/03/24(日) 00:38:22 ID:aDUEw/KY
勇者「私にしてみれば、先ほどの門番もお前も変わらない」
オーガ「なんだとぉ?」
勇者「一本だ!!」ピッ
勇者「この右手の人差し指一本で、お前の技を破ってやろう」
オーガ「ぐぎぎっ……もう許さんぞっ!!」
152: 2013/03/24(日) 00:52:49 ID:aDUEw/KY
YouはShock 愛で空が落ちてくる
オーガ「ボンバー、タックルゥッ!!」ドドドッ
YouはShock 俺の胸に落ちてくる
勇者「ほおぉぉぉぉっ、漠竜独指突!!」ピタァッ
熱い心 クサリでつないでも 今は無駄だよ
商人「師匠が指一本で敵の突進を受け止めた!!」
邪魔する奴は 指先ひとつでダウンさ
153: 2013/03/24(日) 01:00:07 ID:aDUEw/KY
勇者「どうした? 私をなぶり頃しにするのでは無かったのか?」ズブズブ
YouはShock 愛で鼓動早くなる
オーガ「ぐぎゃああああああ!?」
YouはShock 俺の鼓動早くなる
ゴブリン「ああっ、オーガの金剛石の肩に勇者の指が突き刺さってゆくぅっ!!」
お前求め さまよう心 今 熱く燃えてる
勇者「この技で逝くがいい!! 漠竜独指突、百連撃!! ずあああああああ!!!」ダダダダダダダダッ
全てとかし 無惨に飛び散るはずさ
オーガ「ぎぃぃやああああああッ」ドシーン
154: 2013/03/24(日) 01:04:54 ID:aDUEw/KY
俺との愛を守る為 お前は旅立ち
オーガ「いでぇよぉっ」ゴロンゴロン
明日を 見うしなった
ゴブリン「オーガ様っ、そっちは穴ですぅっ!!」
オーガ「アレ!? そんなバカなァァァッ!! グヒャッ」ヒューッ
微笑み忘れた顔など 見たくはないさ
勇者「どうやらその穴は、私では無く、自らの墓標となったようだなオーガよ!!」
愛を取り戻せ……
,
155: 2013/03/24(日) 01:15:56 ID:aDUEw/KY
戦士「見張りもみんなここに集まってたから、すげぇ楽だったぜ」タタッ
武道家「師匠、残りの奴はどうするの?」Eイーグルクロー
商人「悪は滅すべき」E正義のそろばん
勇者「……」
勇者「私の答えは決まっているよ」ニコリ
157: 2013/03/24(日) 10:35:09 ID:aDUEw/KY
戦士「……答えは?」E破邪の剣
勇者「それはな」
勇者「カサンドラに居る魔王の手下達よ!! 命が惜しくばここから立ち去るのだ!!」
勇者「そして東へ行け!! 東の外れに魔族達が集まって暮らす街が在る!! そこで人間との共存方法を学ぶのだ!!」
ゴブリン「……」
ウェアウルフ「……ヘッ」
ホブゴブリン「我々に退路は無い!! ここで貴様を頃す!! 全員で掛かれ、生かして帰すな!!」
158: 2013/03/24(日) 10:39:14 ID:aDUEw/KY
奴隷「そいつは……」
奴隷「こっちのセリフだ!!」ゴンッ
ホブゴブリン「ッッ!!?」ドサッ
奴隷「こちとら肉体労働ばっかでな、無駄に筋肉は付いてんだ。オーガ以外にゃ負けねぇ!!」
奴隷「みんな、俺達の街を取り返そうぜーっ!!」
奴隷達「オオオオオオオっ!!!」
159: 2013/03/24(日) 10:43:41 ID:aDUEw/KY
奴隷「オラッ!!」ドゴッ
ゴブリン「ぎゃぴっ!?」ドサッ
戦士「……」
戦士「どーすんだ師匠?」
勇者「……」
勇者「もはや我々の役目は終わった。後は任せよう、人々の裁量も捨てたものではないからな」ニコリ
160: 2013/03/24(日) 10:45:06 ID:aDUEw/KY
鬼哭街 カサンドラ解放
勇者の故郷 奇跡の村へ
,
161: 2013/03/24(日) 16:40:47 ID:aDUEw/KY
夕暮れ 河原の野宿地
パチパチ パチパチ
武道家「ししょ~。魚が焼けたよ」
勇者「腹が減っているのだろ? まずはお前達が食べなさい。私は最後で良い」ニコリ
戦士「あ……」チラッ
商人「実行」チラッ
162: 2013/03/24(日) 17:32:12 ID:aDUEw/KY
武道家「だねっ。ボクはししょ~の右側♪」ヨリヨリ
戦士「じゃあオレは師匠の左側だな」ヨリヨリ
商人「私は……師匠の膝の上」ポンッ
勇者「……」
勇者「ど、どうしたんだお前たち?」
163: 2013/03/24(日) 17:41:33 ID:aDUEw/KY
商人「まずは私から。はい師匠……あ~~ん」
勇者「……」
商人「あ~~ん」
勇者「……」
商人「あ~~ん」ウルウル
勇者「い、いただこうかな」パクッ
164: 2013/03/24(日) 20:37:35 ID:aDUEw/KY
戦士「なぁ師匠? オレらは弟子だけど子供じゃねぇぜ?」クッツキ
武道家「そうそう♪ 守ってくれるのは嬉しいけど、いつもいつも甘やかされるのは、そんなに嬉しくないかな?」クッツキ
勇者「むっ……そ、そうか?」
商人「師匠の事、私達はまだよく知らない。だから師匠の昔の事など、主に恋愛部分を話して欲しい」
165: 2013/03/24(日) 20:50:18 ID:aDUEw/KY
勇者「……」
勇者「ふっ、私も人の子。恋愛だってしたさ。年下だったが、母のような優しさで全てを包んでくれる人だった」
戦士「へぇ~。で、告白はしなかったのか?」
勇者「彼女は私の弟が好きでな。弟も彼女が好きだ。私の出る幕は無いさ……」
武道家「でもでもっ、好きだったら思いを伝えるぐらいはっ」
166: 2013/03/24(日) 21:01:26 ID:aDUEw/KY
商人「いくじなし」
勇者「……」
勇者「見守る愛もある…」
勇者「彼女と弟が幸せになれれば、私はそれで良いのだ」
,
170: 2013/03/27(水) 09:31:17 ID:lf.PDakk
勇者の故郷 奇跡の村
?「くそっ、何が魔法だ!! 医学こそが発展の道だと言うのに、こんな田舎の村に飛ばしやがって!!」
?「んっ?」
少年「ゲホッ、ゲホッ」
少女「少年!! ううっ……どうしたら」オロオロ
171: 2013/03/27(水) 09:43:55 ID:lf.PDakk
?「おい、どうしたんだ?」
少女「あ、あのね、少年がお菓子を食べたらねっ……」
少年「ゲホッ、ゴホッ」
?「……」
?「ふむっ、どうやらノドにに詰まっただけらしいな」
172: 2013/03/27(水) 10:03:49 ID:lf.PDakk
?「背中を叩くぞ? フッ!!」トン
少年「がはっ!! ゲホッ……はぁっ、はぁっ、なおっ……た」
少女「良かったね少年!! あのっ、ありがとうございます」ペコリ
?「気にするな……」
母「少年!!」タタタッ
少年「あ、ママ!! ぼく、この人に助けて貰ったよっ」
173: 2013/03/27(水) 10:08:10 ID:lf.PDakk
母「……」ジィー
母「もしかして勇者ちゃんかい?」
?「いや、俺は……」
母「ほら、近くに住んでる母だよっ。今は魔王討伐の最中なんだろ? この村には長く居れないのかい?」
?「……」
?(そうか、俺は勇者に似てるのか。しかも勇者は魔王討伐の最中。ここに寄る確率は低い)
174: 2013/03/27(水) 10:13:34 ID:lf.PDakk
偽勇者「いや、しばらくはここで休んで行く予定だよ」ニコリ
偽勇者(ここなら『実験』が出来そうだ。くくっ……誰もこの俺を邪魔する事などでかぬぅぅ)
偽勇者「それと、俺の家を教えてくれないかな? 久し振りだから、なんか忘れちゃって」
母「へ? ふふっ、相変わらず変な勇者ちゃんだねぇ。ついておいで」
偽勇者(良い木偶がたくさんできそうだ)ニヤリ
,
175: 2013/03/27(水) 10:54:46 ID:lf.PDakk
奇跡の村手前一キロ地点
勇者「……」
戦士「……」
武道家「……」
商人「ユニーク」
戦士「なぁ師匠、なんでそんな格好してんだ?」
178: 2013/03/27(水) 16:47:23 ID:lf.PDakk
勇者「今の私は勇者だ。村の者に気を使わせる訳にも行くまい。それに私も……静かに休息したいのだ」
武道家「ふ~ん、だからそんなボロを被ってるんだね?」
勇者「まぁそうだな。泊まるのは安宿になるだろうが、その代わりにこの辺を案内してやろう。綺麗な花がさく大木が在るのだ」ニコッ
商人「師匠、嬉しそう」
戦士「何だかんだ言っても、故郷だしな」
179: 2013/03/27(水) 16:53:55 ID:lf.PDakk
勇者の故郷 奇跡の村
勇者「……」
戦士「あの、花が咲く木は……」
商人「バカ。木は伐採されてこんなクソ田舎には似合わない下品なデザインの診療所が建ってる。戦士は少し察するべき」
武道家「ししょう……落ち込まないでください」
勇者「時は流れるものだ。仕方ないさ」
180: 2013/03/27(水) 18:32:49 ID:lf.PDakk
勇者「今日は宿に戻るか……明日になったら美味しい野葡萄の場所へ案内しよう」ニコリ
武道家「さんせ~♪ 宿の人が温泉が有るって言ってたし、ボク入りたい」
戦士「マジか? 温泉なんてひっさしぶりだなぁ」
商人「師匠も入る?」
勇者「そうだな」
商人「私達と?」
勇者「それは遠慮して置こう」
181: 2013/03/28(木) 11:18:39 ID:SV3jonEk
深夜 宿の温泉 露天風呂
勇者「ふぅぅっ……生き返るな」チャプン
勇者「マナーは悪いが、少し、寝るか……」
ガラガラッ
武道家「やっほーししょー!!」
戦士「背中を流しにきたぜ~っ」
商人「つまり泡姫」
勇者「……」
182: 2013/03/28(木) 16:30:47 ID:SV3jonEk
商人「みんなタオル巻いてるから目を逸らさなくても平気」
勇者「呆れているのだ……」
戦士「まぁまぁ師匠、あがってあがって」グイグイ
勇者「……」
勇者「では、流して貰おうか」ザパーッ
武道家「いいからだしてるねぇししょー♪ ここに座って」グイグイ
183: 2013/03/28(木) 16:37:51 ID:SV3jonEk
商人「私が師匠の背中をソープする」
商人「んしょ、んしょ」ゴシゴシ
戦士「おっ、じゃあオレは左腕っと」ゴシゴシ
武道家「ボクは右だね~♪」ゴシゴシ
184: 2013/03/28(木) 16:41:23 ID:SV3jonEk
商人「どう師匠? 気持ちいい?」
勇者「……」
勇者「ふぅっ、誰かに施されるのは初めてだが……」
武道家「だが?」ゴシゴシ
勇者「心地よいものだな……ありがとう」ニコリ
185: 2013/03/28(木) 16:48:37 ID:SV3jonEk
戦士「へへっ。本当はさ、もちっと『サービス』しようかって話しだったけど、師匠が怒りそうだからヤメたんだ」ジャブジャブ
勇者「……」
勇者「いや、お前達がやりたいと言うなら止めんよ」
戦士「へっ、そうなの?」
商人「戦士、だから言ったはず、師匠はムッツリ……」
勇者「お前達が色仕掛けの訓練をしたい、と言うのならだがな」
戦士「ああ、ふふっ。やっぱそうだよな」
商人「戦士、だから言ったはず。師匠は尊敬すべき人格者だと」
186: 2013/03/28(木) 16:53:41 ID:SV3jonEk
翌日 宿の前
戦士「今日もそれを被ってんだな?」
勇者「ここに滞在してる間はな……」
武道家「それでししょー、今日はどこに連れてって来れるんですか?」
勇者「ん? 今日はこの地方に生っている莓と葡萄を摘んで食べる」
商人「莓狩り了解。楽しみ」
187: 2013/03/28(木) 17:01:41 ID:SV3jonEk
時間は戻り 数日前 診療所
村民「勇者様、宿泊していた旅人の男を連れて来ました」
旅人「どこだここはっ、離せぇっ!!」
偽勇者「ふむっ、いい締まりをしている……よし、コイツにしよう。手術台の上に乗せて固定するのだぁっ」
村民「はっ!!」
旅人「手術!? や、やめろっ、助けてくれぇ!!」ジタバタ
188: 2013/03/28(木) 17:06:18 ID:SV3jonEk
偽勇者「フッフッフッ、お前はこの勇者の手で生まれ変わるのだっ、恨まれる筋合いなどないわぁっ!!」バキッ
旅人「ぐはっ!?」ガクッ
偽勇者「これで静かになったな。さっさと運べぇっ!!」
村民「……」
村民「あ、あの勇者様? これで私の子供達は……」
偽勇者「んん? ああ、お前の家族には手を出さんでやろう」
189: 2013/03/28(木) 21:54:47 ID:SV3jonEk
偽勇者(この男は従順だと思っていたが、意見を言うようになって来たな……そろそろ『きる』か)
村民「ありがとうございます!!」
村民(妻、息子、娘、すまない。こんな父を許してくれっ!!)グッ
偽勇者「気にするな。お前はよく働いてくれるからな」
191: 2013/03/29(金) 13:51:27 ID:mHzuHX.U
奇跡の村近く 深緑の森 湖畔
武道家「湖に足だけ浸けるの冷たくて気持ちいいですよ~!! ししょーもどーですかぁ~?」チャプチャプ
勇者「いや、私は……」
戦士「し~しょう!! 休息、するって言ったよな?」ガシッ
勇者「……」
勇者「では、お嬢さん達とご一緒しようか」ニコッ
商人「こっちこっち」グイグイ
192: 2013/03/29(金) 13:55:51 ID:mHzuHX.U
武道家「ほらししょー、小さい魚がたくさん寄って来るよ~♪」チャプチャプ
勇者「ほぉ……これはケアリーフィッシュだな」チャプン
武道家「ケアリーフィッシュ?」
勇者「皮膚表面の古い角質を食べてくれる」
193: 2013/03/29(金) 14:01:52 ID:mHzuHX.U
武道家「うっ、それじゃあボクの足が汚れてるみたいだよぉ……」チャプチャプ
勇者「ははっ、毎日歩き旅をしてるのだ、仕方ないさ」
武道家「フォローになってないです」ガクッ
戦士「商人は足浸けないのか? 冷たくて気持ちいいらしいぞ?」
商人「戦士こそ。足具を外したんだったら……」
戦士「お、オレは冷たいの苦手だから良いんだよ」
194: 2013/03/29(金) 14:06:17 ID:mHzuHX.U
勇者「二人とも浸かりなさい」
戦士「……」ビクッ
商人「……」ビクッ
武道家「ほ~ら、戦士と商人も魚にパクパク啄まれたらぃぃよ」
戦士「……」チラッ
商人「……」
商人「……」コクン
戦士「わかったよ!! 傷だらけの足を見せれば良いんだろ見せれば!!」ヌギヌギ
195: 2013/03/29(金) 14:29:12 ID:mHzuHX.U
商人「がんばって」ヒラヒラ
戦士「お前も脱ぐんだよタコ!!」
商人「きゃぁぁぁぁっ!! ぃやぁぁぁぁぁっ!!」
戦士「うるせー!!」
196: 2013/03/29(金) 14:31:17 ID:mHzuHX.U
──────。
……っ。
勇者「静かにっ、遠くから声が聞こえる!!」
戦士「えっ?」
商人「あ、はい」
197: 2013/03/29(金) 14:41:25 ID:mHzuHX.U
少女「ひっく、ひっく……」ポロポロ
勇者「……」タッタッタッ
勇者「こんな所で泣いて、どうしたのかな?」ニコッ
少女「ふぇっ? うぅっ……うぇぇん!! パパがぁっ、パパがぁ!! うわぁぁぁぁぁん!!」ダキツキ
勇者「……よしよし。安心するまで泣きなさい」ナデナデ
198: 2013/03/29(金) 14:47:06 ID:mHzuHX.U
数十分後
少女「……」ギュッ
勇者「落ち着いて来たかな?」ナデナデ
戦士「で、そのガキはどうすんだ?」イライラ
勇者「そう急かすな。ねぇ少女ちゃん? 泣いてた理由を、教えてくれるかな? こう見えてもおじさんはね……」
勇者「勇者なんだ」バッ
199: 2013/03/29(金) 15:26:01 ID:mHzuHX.U
少女「え……ゆう、しゃ、さま?」
勇者「そうだ。この勇者が、少女ちゃんの悩みを聞いてあげよう」ニコッ
少女「う、そ……殺さないで、殺さないで、コロサナイデ」ガクガク
勇者「ん? 私は頃したりしないよ?」
武道家「少女ちゃ~ん、この人はね? これまでずっと困ってる人を救って来た凄い人なんだよ?」
200: 2013/03/29(金) 15:31:53 ID:mHzuHX.U
戦士「ほれっ、勇者様の顔をよく見てみな。優しそうな顔してるだろ?」グイッ
少女「あうっ」
勇者「……」ニコリ
少女「本当だ……村の勇者様と、ほんのちょっと違う」
201: 2013/03/29(金) 15:41:02 ID:mHzuHX.U
勇者「村の勇者? そんな者が居るのか?」
少女「うん。最初はみんなのケガを治してあげてたのに、今はね……今は、人を、頃してたの……ぐすっ」
少女「それでね、勇者様と村の勇者様は、顔もそっくりだよ?」
商人「……」
商人「情報を結合簡略して解答を出すと、村には師匠の偽者が居て悪さをしてる」
202: 2013/03/29(金) 16:05:32 ID:mHzuHX.U
少女「それと、私のパパも、パパもぉぉぉっ!!」
勇者「……」
勇者「民の涙は国の血だ」
勇者「となればこの勇者、行かねばなるまい!!」
203: 2013/03/29(金) 18:45:03 ID:mHzuHX.U
奇跡の村 偽勇者の診療所
村民「そっ、そんな勇者様!! 話が違います!!」
手術台の上
妻「……」
偽勇者「うるさいっ、この勇者に逆らうかぁ!!」バキッ
村民「うぐっ」ドサッ
村民「さ、逆らうなんて、そんな……」
204: 2013/03/29(金) 18:49:41 ID:mHzuHX.U
偽勇者「ならば何故、娘を村の外へ逃がしたぁっ!!」
村民「!?」ビクッ
偽勇者「気付かないとでも思ったかぁ? どうせ他の街に助けを求めさせ、この勇者の諸行をチクろうとさせたのだろぅ?」
村民「ぐっ……」
偽勇者「まぁいい。そろそろ潮時だと思っていた所だ。この女で最後の人体実験をして、村から消えるとしよう」
205: 2013/03/29(金) 18:55:43 ID:mHzuHX.U
村民「貴様ぁ!! それでも勇者か!!」ダッ
偽勇者「ふんっ!!」ドゴッ
村民「うごっ!?」
偽勇者「学習しない奴よ。お前達の命は、この新薬の完成!! 延いてはこの勇者が世界へ名を残す為の礎になるのだぁ!!」
偽勇者「それとな……俺は、勇者では無い。お前たちが勝手に勇者と呼んだから乗っかっていただけよ」
村民「なっ!? なんて、事を……」
206: 2013/03/29(金) 19:01:53 ID:mHzuHX.U
偽勇者「そう悲しむ事は無い。数多き犠牲のお陰で……」パクッ
偽勇者「ふしゅる~~~っ!! この、スペシャル筋力増強剤が完成したのだからな!!」ムキムキッ
偽勇者「どれ、力試しに、お前の首をネジ切ってやろう」ドシーンドシーン
村民「すきにしてくれ」
村民「娘、息子、妻……すまないっ」
207: 2013/03/29(金) 19:05:39 ID:mHzuHX.U
バンッ!!
偽勇者「ん!? 誰だぁ!?」
娘「パパぁ~!!」トテトテ
村民「む、娘ぇっ!!」ギュッ
勇者「……」
勇者「人の涙を食い物にする」
勇者「貴様は断じて、勇者では無いッ!!!」
208: 2013/03/30(土) 00:33:51 ID:2UOO/tqY
村民「!?」
村民「ゆ、勇者様が二人!?」
娘「パパっ、いま来たのが本物の勇者様だよっ!!」
偽勇者「お前が勇者か……確かに、俺と同じ顔をしている」
209: 2013/03/30(土) 09:29:51 ID:2UOO/tqY
偽勇者「だが……このスーパーパワーになった天才に、勝てる訳などないのだぁっ!!」ダッ
勇者「……」スッ
勇者「せぃやぁぁっ!!」ドンッ
偽勇者「ぎひぃっ!?」ドテーン
偽勇者「ぐっ、くくっ……さすがは勇者だ。だがなぁっ」バッ
勇者「ッ!?」
210: 2013/03/30(土) 09:34:46 ID:2UOO/tqY
偽勇者「動くなぁ!! 動けばこの女の首をへし折るぞっ!!」ギュッ
妻「……」
村民「つ、妻ぁぁぁぁっ!?」
偽勇者「村民よっ、妻を助けたくば、お前が勇者を頃すのだ!!」
村民「なっ!?」
勇者「なんたる外道……」ググッ
211: 2013/03/30(土) 09:39:39 ID:2UOO/tqY
偽勇者「そこに立て掛けて有る鉄の剣を使えぃ」
妻「……」
村民「ゆ、勇者様……私、はっ、どうしたら」
娘「勇者さまを頃しちゃダメだよパパっ!!」
勇者「……」
勇者「村民よ……私を頃しなさい」ニコリ
212: 2013/03/30(土) 09:43:06 ID:2UOO/tqY
勇者「見られていては頃し難かろうから、後ろを向こう……さぁ」クルッ
偽勇者「ぐっひっひっ、それでこそ勇者だ!! 早く殺せ村民」
娘「パパっ!!」
村民「わたし、は……私はぁぁぁぁっ!!」ガッ
213: 2013/03/30(土) 09:47:51 ID:2UOO/tqY
村民「うおおおおおおお!!」
偽勇者「なぜ俺に掛かって来る!?」
勇者「ッ!? 止めるのだ村民よっ!!」
偽勇者「バカがっ、氏ねぃ!!」ドスンッ
村民「ぐはぁっ……」ドサッ
214: 2013/03/30(土) 09:54:43 ID:2UOO/tqY
村民「……」
娘「パパぁぁぁぁっ!! イヤぁぁぁぁぁっ!!!」タタッ
勇者「ほおぉぉぉぉっ……でりゃあぁぁぁぁぁああ!!」カッ
偽勇者「げひっ!? げひゃぁぁっ」
ドゴーン ガラガラガラガラ
壁を突き抜けて外まで蹴り跳ばされる偽勇者
勇者「貴様には、地獄すら生ぬるい!!」
215: 2013/03/30(土) 10:01:23 ID:2UOO/tqY
偽勇者「くっ、だがこの薬を飲めば……」ゴクリ
偽勇者「更に超人になれるのだぁ!! これで勇者など相手にならぬわぁっ」ムキムキムキムキッ
勇者「……」
勇者「確かに相手にならんな……その程度では、私の相手にはならん!!」スッ
216: 2013/03/30(土) 10:10:35 ID:2UOO/tqY
桃色に 染まりゆく 東雲を追いかけて
疾走する欲望マシン あなたを乗せて
偽勇者「なんだとぅ!? この天才の拳を喰らぇ!!!」バッ
勇者「フンッ」パシッ
風に舞い かおる髪 もうちょい体よせ合いたい
あいつは血まなこ 憎しみ燃やす
勇者「懺血到悔拳!!」ズドンッ
偽勇者「ゴハァッ!? ぎっ、ぎぎっ……」グラグラ
偽勇者「お、俺の、か、からだがっ、萎んで行くぅぅぅっ!!?」プシュゥゥッ
217: 2013/03/30(土) 10:15:16 ID:2UOO/tqY
怪物に心を バリバリ食いちらかされて
思わずあなたを 奪っちまったんだよ
偽勇者「また薬を飲まなくては!!」
勇者「させんっ!!」ジャキン
勇者「はぁぁぁぁっ!!」ザスンッ
この広い世界の中 2人しかいないような
寂しさかみしめ 胸かきむしる
偽勇者「ひぃぃぃっ、俺の指がぁぁぁっ!?」ボトボト
218: 2013/03/30(土) 10:23:03 ID:2UOO/tqY
勇者「これで薬は飲めまい……」
Getaway getaway オレはピ工口
ひたむきで滑稽な 逃亡者
偽勇者「萎むのが止まらないぃっ、こ、これ以上萎んだらぁぁっ!!」プシュゥゥッ
涙は流さないでおくれ
悲しいけど美しいのがLIFE
偽勇者「た、たしゅけ……あばっ!!」パンッ
暗い未来は もう描かない
夢のスピードは もうゆるめない
勇者「萎縮するスピードに耐え切れず身体が崩壊したか」
Getaway getaway 地の果てまで
こわいもの全部 ふきとばせ
何もかも 新しい瞬間
後ろはふりかえらないで
219: 2013/03/30(土) 10:31:22 ID:2UOO/tqY
武道家「ししょー!! やっぱり荷物倉庫に遺体が沢山あったよ~っ」タッタッ
戦士「うおっ!? 壁に穴が空いてる……って師匠、剣を抜いたのか?」
商人「それに、泣いてる……」
勇者「……」
勇者「ここで散って行った者達の為に、私ぐらいは泣いて涙を添えても良かろう」ツゥッ
220: 2013/03/30(土) 10:38:13 ID:2UOO/tqY
診療所内
娘「パパっ、パパっ!!」ギュゥッ
妻「しっかりしてアナタ!!」
村民「……」
村民「妻よ、目が覚めたのか?」
村民「ダメな、とーちゃんで、ごめんなぁ……家で寝た切りになってる息子にも、変な薬を飲ませ続けてすまないとっ、ごふっ!!?」
221: 2013/03/30(土) 10:41:46 ID:2UOO/tqY
娘「パパっ!?」
妻「あなたっ!?」
村民「どうやら、お迎えが来たようだ……」
村民「最後は偽者の勇者を手伝って馬鹿な事をしたが、それ以外は……」
村民「幸せだったぞお前たち」ニコッ
,
222: 2013/03/30(土) 11:02:38 ID:2UOO/tqY
勇者の故郷 奇跡の村解放
砂漠の国 ジャガンノートへ
,
223: 2013/03/30(土) 13:06:51 ID:2UOO/tqY
フィールド 海沿いの砂浜
戦士「なぁ、師匠? あの男の子は助かったかなぁ?」
勇者「……」
勇者「適切な薬を与えたつもりだ。あれから継続して家族が世話をして上げてれば、今頃は歩けるまでになっているだろう」
武道家「お父さんの分も、生きて欲しいよね……」
勇者「ああ。父親の方は、腹部に風穴が空いて手の施しようが無かったからな」
224: 2013/03/30(土) 16:42:20 ID:2UOO/tqY
商人「師匠は……あの村に残らなくて良かったの?」
勇者「確かに私の故郷だが、あの村は偽者とは言え『勇者』にすがり落ちた。復活する時まで勇者を頼ったのでは、いずれまた落ちる」
商人「手厳しい」
勇者「厳しい事だが、もはや私の出る幕は無かろう。他の国からも救援が来ると言うし、時間は掛かるだろうが必ず復活するさ。私に出来るのは信じるだけだよ」
225: 2013/03/30(土) 16:47:44 ID:2UOO/tqY
勇者「それに……」
商人「魔王」
勇者「うむ。奴を野放しにいつまでも留まっては居れん」
戦士「で、次はどこに向かうんだ師匠?」
勇者「この先の港で船に乗り、海を渡ろうと思う」
226: 2013/03/30(土) 19:04:19 ID:2UOO/tqY
ザッパーッ
勇者「むっ!?」
海の中からモンスターが襲ってきた!!
シビレクラゲ「しびれ~」バッ
ゼニガメ「かめー」バッ
サハギン「さっは」バッ
227: 2013/03/30(土) 19:15:40 ID:2UOO/tqY
戦士「ひとーつ、人世の生き血を啜り!!」E破邪の剣
戦士は破邪の剣を敵に向けて翳した
灼熱の閃光がほとばしる!
ヤキクラゲ「…」プスプス
武道家「ふたーつ、不埒な悪行三昧!!」Eイーグルクロー
ズバーッ
ゼニガメ「……」イキヅクリ
商人「みっつ、見事にたたっきる!! あ、勇者一行!!」E正義のそろばん
ザシュッ
サハギン「……」ハンギョ
228: 2013/03/30(土) 20:40:42 ID:2UOO/tqY
まもののむれを倒した!
戦士はレベルがあがった
武道家はレベルがあがった
商人のレベルはもうあがらない
戦士「へへっ、どーよ師匠?」
勇者「……」
勇者「よく、ここまで成長したな」
武道家「や、やめてよもぅ、照れるってばぁ……えへへ」ニヘラ
230: 2013/03/31(日) 09:31:52 ID:ts7Mi0lc
勇者「私の考え方は全て行動で示して来たつもりだ。そしてお前達は信念を貫くだけの実力を手に入れた。もはや、私が教える事は無い」
商人「……どう言う意味?」
勇者「これからは師弟の関係を止めようと思う」
商人「!?」タタッ
商人「それはダメ。駄目」ギュゥッ
勇者「……」
勇者「やはり止めるよ」
231: 2013/03/31(日) 09:34:33 ID:ts7Mi0lc
商人「……」ウルウル
戦士「ちょっ、待てよ師匠!!」
武道家「そうだよっ、そんな急に……」
勇者「……」
勇者「ここで師弟の関係は終わり」
勇者「そしてここからは、『仲間』として、よろしく頼む」
232: 2013/03/31(日) 09:39:32 ID:ts7Mi0lc
戦士「あっ」
勇者「もう師匠と呼ぶ必要は無い。これからは仲間として、勇者……と呼んで欲しい」ニコリ
武道家「うぅっ……でもぉ」チラッ
戦士「だよなぁ」チラッ
商人「ううん。これからも師匠……そう呼ぶ」
233: 2013/03/31(日) 09:46:18 ID:ts7Mi0lc
戦士「あははっ、オレも……かな?」
武道家「だよねだよね? ボクも師匠の方が呼びやすいし」
勇者「……」
勇者「うむ。呼びやすいならそちらでも良かろう。だが、もう我々は対等な仲間だ。それを忘れないでくれ」
戦士「はいよ」
戦士 武道家 商人
(それに、勇者だと世界中みんなの勇者様だけど、師匠なら私達だけの師匠だしね)
234: 2013/03/31(日) 09:54:41 ID:ts7Mi0lc
港の船着き場
船員「すまねぇな、今朝出たばっかでよ。次の船が出るまで、後十日掛かるんだよ」
戦士「ここで足止めかよ。早く出発して来た意味がないな」
勇者「仕方有るまい。ここから歩いて半日の所に二つの街が在る。そのどちらかへ行き次の船まで滞在しよう」
武道家「う~ん。しょうがないよねぇ」
235: 2013/03/31(日) 10:09:28 ID:ts7Mi0lc
勇者「北へ行けば『金色の帝都』と呼ばれる魔王の進軍を退けた都に着く」
勇者「南へ行けば『鉄火面の街』と呼ばれる街に着く」
勇者「お前たちが決めなさい」
戦士「ふ~ん。それじゃ>>235にするぜ!!」
,
236: 2013/03/31(日) 10:10:21 ID:ts7Mi0lc
勇者「よし、帝都だな」
,
239: 2013/03/31(日) 16:45:17 ID:ts7Mi0lc
港の船着き場を出発
金色の帝都へ
,
241: 2013/03/31(日) 22:21:10 ID:ts7Mi0lc
金色の帝都 二年前
帝の間
帝「北の国が先日の魔王軍との戦で大打撃を受けたと聞く……」
帝「賢者よ、この機に全軍を率いて北の国を制圧し、我が帝都の配下とするのだっ!!」
賢者「失礼を言いますが帝、その魔王軍が近々この都を攻めて来ると言う情報も入りました」
賢者「ここは我が軍を留まらせ、魔王軍を討った後に北へ攻めるのが得策かと」
242: 2013/03/31(日) 23:20:56 ID:ts7Mi0lc
帝「ならん!! 体制を建て直したらどうするのだ!! 今すぐに向かぃ賢者!!」
賢者「し、しかし、それでは都の守りが……」
帝「ええいっ、賢者!! 捨て子だったお前を拾い育てたのは誰だ? 言ってみろ?」
賢者「……」
賢者「それは、帝です……」
243: 2013/03/31(日) 23:26:51 ID:ts7Mi0lc
帝「私が救った命だ……ならば私の為に尽くすのが筋だろうが!!」
賢者「わかりました。そう言うので有れば、明日にでも北の国へ向かいます」
帝「ふん……わかれば良いのだ。だいたい、北の国も落とし切れずに撤退したと言うのに、すぐこの都に来る訳がなかろうが!!」
賢者「……」
賢者(俺は、俺は一体何の為にっ!!)ギュッ
244: 2013/04/01(月) 18:04:44 ID:M1HcY2lk
賢者「都の守備はどういたしましょうか?」
帝「あん? 第六部隊だけ残して置けい」
賢者「そ、それでは余りにも……」
帝「……」キッ
賢者「いえ、仰せのままに。早速準備に取り掛かるので失礼します」
245: 2013/04/01(月) 23:25:15 ID:M1HcY2lk
翌日 北の国への進軍途中
団長「賢者様、この戦……大丈夫でしょうか?」パカラッパカラッ
賢者「何か不安が有るのか?」パカラッパカラッ
団長「はっ、私にはどうも上手く行きすぎて、裏があるような気がするのです」
賢者「……」
賢者「ふむ。例えば、だが。魔王軍が本来攻めたかったのは帝都だったとするならどうだ?」
246: 2013/04/01(月) 23:37:15 ID:M1HcY2lk
団長「……」
団長「帝都に攻めたかったのに、北の国へ攻めた?」
賢者「ああ。だが、中心部で在る帝都さえ落としてしまえば、後は時間の問題なのだから、わざわざ端から攻める意味がわからん」
団長「それも、壊滅ギリギリまで追い込んで置きながら撤退してますしね」
賢者「人間の力を試してみたかったのか、それとも……」
団長「我々を……いえ、賢者様を帝都から離れさす事が目的か、ですね」
247: 2013/04/02(火) 09:48:10 ID:HSkJvAFk
賢者「俺を、か?」
団長「はい。黙っておりましたが、昔の私はそれはもう血の気が多い性格でして、そして自分の力を過信しておりました」
賢者「お前ほどの実力が有れば、過信とは言わぬよ」
団長「ありがとうございます。ですが、そんな時に魔王と出会いました」
248: 2013/04/02(火) 10:05:37 ID:HSkJvAFk
賢者「魔王と?」
団長「黒き巨大な竜に股がる魔王……触れる事さえ叶いませんでした。そして私に向けて言ったのです」
団長「『頃す価値さえ無い』、と。だから私は生きているのですが、正直……騎士としては終わりました」
団長「ですが賢者様、そんな時に貴方とも出会ったのです。貴方は強い……もしかしたら魔王と同等か、それ以上に」
249: 2013/04/02(火) 10:09:53 ID:HSkJvAFk
賢者「……」
団長「魔王と対等に戦えるのは賢者様のみ」
団長「もしそれを魔王軍が知っていたら。北の国への攻撃が賢者様を帝都から離す作戦だったとしたら」
賢者「……私は、どうしたら良い?」
団長「全軍で戻りましょう!! もしもの時は、私の命にて責任を取ります!!」
250: 2013/04/02(火) 12:01:39 ID:HSkJvAFk
賢者「いや、俺だけ戻ろう。お前は指揮を取り、このまま進軍、制圧に動いてくる」
団長「で、ですがっ!?」
賢者「お前はまだ若いではないか? 氏すにはまだ早い……良いな? このまま進軍するのだぞ?」
団長「ぐっ……はい。賢者様の、命令とあれば」
賢者「ふっ」ニコリ
賢者「では、私は踵を返す!! ハイヤー!!」パカラッパカラッ
団長「賢者様、どうかご無事で……」
251: 2013/04/02(火) 16:55:25 ID:HSkJvAFk
帝都 入り口付近
魔王「なんだ……兵士共は出て来ぬのか?」
側近「そのようですね。魔王様の力を恐れて逃げたしたのでしょう」
側近(賢者を魔王様と戦わせない為に策を練ったとは言えないな。小賢しい手を魔王様は一番嫌う)
側近(しかし、あの賢者の力は危険過ぎるのだ。魔王様に万が一が有ってはいかん)
側近(お許しください魔王様……)
252: 2013/04/02(火) 20:57:35 ID:HSkJvAFk
城内 帝の間
兵士「帝様、お逃げください!! 魔王軍との戦力が圧倒的すぎます!!」
帝「け、賢者は何をしている!?」
兵士「……」
兵士「はっ? 賢者様は帝様の命を受けて北の国へ……」
帝「ええい、使えん!! 賢者、全く使えん!! さっさと呼び戻すんだ!!」
兵士(賢者様が居たから、帝にもなれたと言うのに……この男はっ!!)
253: 2013/04/03(水) 10:41:05 ID:VZXt9dc2
帝都 入り口付近
魔王「これだけ待っても出て来ぬか……」
デーモン「魔王様ッ、ここは我ら悪魔部隊にお任せください!!」
魔王「……」
魔王「好きにせい」
デーモン「ははっ!! 行くぞお前らっ!! 我々の力を人間どもに見せ付けてやるのだぁっ!!!」バッ
悪魔達「オオーーーーーッ!!」
254: 2013/04/03(水) 10:53:32 ID:VZXt9dc2
デーモン「手始めに俺様の極大火炎魔法で燃やし尽くしてやるぜぇ!!」シュィィィン
デーモン「喰らえぃ、メラゾー……」
賢者「凍の輪!!」
デーモン「まぁぁアアァァッ!!?」ピキピキ
悪魔「ああ!! デーモン隊長の両腕が突然凍ったぁ!!」
256: 2013/04/03(水) 10:59:46 ID:VZXt9dc2
魔王「ムッ!?」
賢者「それほど燃やしたくば、まずは自らが燃えてみるがいい!!」
賢者「灼の輪!!」ゴォッ
デーモン「ぎぃやぁぁぁぁぁっ!!?」ボォォォッ
側近(あのデーモンを一瞬で灰に!?)
257: 2013/04/03(水) 11:05:10 ID:VZXt9dc2
魔王「面白い……」ニヤリ
魔王「黒竜号ッ!!」
バハムート「ガオォォォォウ!!」スゥッ
魔王「フンッ」スタッ
賢者「魔王……」
側近(魔王様がバハムートの背中から降りた!? 背に乗ったままでは勝てないと思ったからですかっ!?)
258: 2013/04/03(水) 11:17:36 ID:VZXt9dc2
賢者「……」ザッ
魔王「……」ザッ
魔王「どうした、来ぬのか?」
魔王「安心しろ。俺とお前の戦いに手出しはさせん」
259: 2013/04/03(水) 11:21:38 ID:VZXt9dc2
賢者(伝わって来る力を見て取れば、俺と魔王はほぼ互角)
賢者(部下が手を出さないと有れば勝利も……最悪相討ちに持ち込む事もできるだろう)
賢者(だが……)チラッ
側近「……」キッ
バハムート「グルルゥッ」
260: 2013/04/03(水) 11:25:24 ID:VZXt9dc2
賢者(勝ったとして、勝った後はどうなる?)
賢者(間違い無く残った部下達に帝都は攻め落とされ、民は皆頃しにされるだろう)
賢者「……」
賢者「魔王よ……」
魔王「なんだ?」
261: 2013/04/03(水) 20:37:14 ID:VZXt9dc2
賢者「ここは引け」
魔王「はっ……くだらぬ。早く構えよ」
賢者「……」
賢者「勿論、ただとは言わん」
262: 2013/04/04(木) 11:17:19 ID:KDnXJnVU
賢者「ぬおぉぉぉぉぉっ!!」ザシュゥッ
魔王「!?」
側近「自ら左足を切り落とした!!」
賢者「ぐっ……俺の、左足を、お前にくれてやるっ。これで引けい!!」ケンケン
魔王「……」
魔王「貴様の覚悟、しかと見届けた。今日は引いてやろう」バッ
バハムート「グウウッ!!」アタマニノセ
263: 2013/04/04(木) 11:21:36 ID:KDnXJnVU
魔王「だが一つ忠告してやる」
賢者「……」ドサッ
魔王「貴様程の男をこんな風にしか扱えない王など、さっさと見捨てるんだな。でなければ、これより更なる災いが訪れ、この国は自滅するであろう」
賢者「世迷い言を……」
魔王「戻るぞ側近!!」
側近「はっ、全軍撤退だ!!」
264: 2013/04/04(木) 14:18:13 ID:KDnXJnVU
賢者「……」
賢者「俺は……」
賢者「俺はっ!!」グッ
,
265: 2013/04/04(木) 14:24:11 ID:KDnXJnVU
現在 金色の帝都 入街門
戦士「ほ~~っ」
武道家「金色の……って割にはピカピカじゃないね」
商人「金色じゃない帝都に改名すべき」
266: 2013/04/04(木) 16:04:59 ID:KDnXJnVU
勇者「これからしばらく滞在するのだ。この方が落ち着いてよかろう」
戦士「そうなんだけどさぁ……あっ、装備を新しくしたいんだけど師匠?」
武道家「ボクも~っ、ボクのステに武器が追い付いて来ない感じなんだよねぇ」
商人「私も新装備を所望する」
勇者「ふむ……そうだな、では皆で行くとするか?」
267: 2013/04/04(木) 16:35:23 ID:KDnXJnVU
金色の帝都 武器屋
店長「へいらっしゃい!! いい武器が揃ってるよ」
勇者「では、見させて貰おうか」
戦士「店長、エクスカリバーってあるか?」
店長「有るよっ」
武道家「じゃあ、アルテマウェポンは?」
店長「有るよっ」
商人「雷神最強の剣盾?」
店長「有るよっ」
269: 2013/04/04(木) 18:41:52 ID:KDnXJnVU
店長「まずはこれが伝説の蛇龍、アルテマウェポンの爪を加工した手甲だ」ピカピカ
武道家「お~っ、なんて神々しい!!」
(;´д`)
271: 2013/04/04(木) 19:26:39 ID:KDnXJnVU
戦士「これが噂に聞くエクスカリバーかぁ……へへっ、手にしっくりと馴染むぜ」ブンブン
商人「……」パリン
商人「雷神最強の剣盾じゃ私の力に着いて来れない。こっちのロトの剣を貰う」ジャキ
勇者「資金は貯めて有るから、お前たちは値段を気にせず好きな品を選びなさい」
274: 2013/04/05(金) 10:12:13 ID:YTfqdN72
戦士「師匠は……そのままで良いのか?」
勇者「ああ。恐らく魔王に最も通ずるのはこの剣だろう」
商人「♪」ブンブン
商人「?」
商人「店長、こっちの剣は何?」
店長「それは、ついこないだ手に入れた、念願のアイスソードよ!! だけど残念ながら売りもんじゃないんだ。悪いねお嬢ちゃん」
275: 2013/04/05(金) 10:16:11 ID:YTfqdN72
商人「……」
商人「?」
商人「店長、この剣が欲しい」
店長「えっ? いやっはっはっ、ありがてぇんだが、この剣は売れねぇよ」
商人「……」
商人「?」
商人「店長、私は、この剣が気にいった。この剣が欲しい」
店長「……」
店長「だからすまねぇなぁお客さん!! そいつは俺のもんなんだ」
277: 2013/04/05(金) 10:22:44 ID:YTfqdN72
商人「……」
商人「?」
商人「店長、私はお前の血で化粧がしたい」スッ
勇者「なにをしている?」ゴツッ
商人「痛い……」サスサス
278: 2013/04/05(金) 10:27:06 ID:YTfqdN72
勇者「ふむ。どうやらこのロトの剣、呪われているようだな」
店長「そっ、そうだったんですかい?」
店長「……」
店長「呪われた品を売ったとあっちゃあ、先代に顔向けできねぇ……このアイスソード、売ってやるよ」
商人「♪♪」
279: 2013/04/05(金) 10:33:15 ID:YTfqdN72
勇者「助かるよ」
店長「ただし、値段は安くしねぇぞ? ひゃっはー、しめて100000000000000ゼニーだぁっ!!!」
勇者「むっ」
勇者「安いな店長……気を使わせてすまない」ニコッ
店長「へっ、いい旅を続けてくれよ旦那」
280: 2013/04/05(金) 10:37:19 ID:YTfqdN72
金色の帝都 城下町広場
武道家「これからどうするの?」
勇者「まずは宿を探し一息吐く……」
勇者「そしてたまには、旨い料理でも皆で囲もう」ニコリ
戦士「おう、さんせー!!」
商人「問題ない」ブンブン
281: 2013/04/05(金) 10:40:48 ID:YTfqdN72
大騎士「おい貴様らぁっ、ちょっと待てぇぇい!!」ドスドスドス
勇者「……」
勇者「私達かな?」
大騎士「そうだっ、帝様が貴様らをお呼びになっている!! 直ちに出頭しろぉ!!」
282: 2013/04/05(金) 10:45:40 ID:YTfqdN72
勇者「頼む態度では無いな……もし、断ったらどうするのだ?」
大騎士「なぁ~にぃっ、断るだとぉぉ!?」
大騎士「ふっふっふっ、呼べと命じられたのは後ろの女達のみ。男のお前は、頃しても良いと言われているのだぁっ!!」ジャキ
勇者「……」
勇者「来なさい」スッ
283: 2013/04/05(金) 10:58:12 ID:YTfqdN72
大騎士「しねぇぇぇい!!」バッ
商人「危ない師匠!!」ドン
勇者「なにっ!?」グラッ
商人「あっ……」ズバァァッ
戦士「商人!?」
武道家「しょ~~に~~ん!!」
284: 2013/04/05(金) 11:02:46 ID:YTfqdN72
商人「し、しょ……」ドサッ
大騎士「ちっ、女を頃しちまったぜ!! こうなりゃヤケだ、皆頃しにしてやる!!」
戦士「てめぇぇっ!!」バッ
武道家「長門の仇ぃぃっ!!」バッ
大騎士「大剣剣舞術!!」ブンブン
戦士「ぐはっ!?」ズシャァァッ
武道家「うそっ!?」ズバァッ
285: 2013/04/05(金) 11:05:28 ID:YTfqdN72
大騎士「次は貴様だぁ!!」バッ
勇者「くっ」
勇者「ぐああああっ!!」ズバァッ
勇者「……」ドサッ
戦士「……」
武道家「……」
商人「……」
286: 2013/04/05(金) 11:07:15 ID:YTfqdN72
大騎士「ぐはははっ!! 逆らうからこうなるのぁっ!!」グリグリ
勇者「……」
大騎士「があっはっはっはっ!!」
大騎士「があっはっはっはっ!!」
287: 2013/04/05(金) 11:10:40 ID:YTfqdN72
──パリンッ。
大騎士「はっ?」
パリン、パリン、パリン、パリンッ!!!
大騎士「なっ、なんだ? 景色が崩れて……」キョロキョロ
商人「……」
商人「ジャスト十秒。いい夢は、見れたかよ?」
288: 2013/04/05(金) 11:22:42 ID:YTfqdN72
武道家「商人の得意技、幻覚蛇眼……マヌーサ」
戦士「いつ見ても恐ろしい技だぜ」ゴクリ
大騎士「ぐ、ぐぬぬっ……馬鹿にしやがってぇ!!」
大騎士「今度こそしねぇぇぇい!!」バッ
290: 2013/04/05(金) 17:15:08 ID:YTfqdN72
賢者「闘指気真空波!!」バァッ
大騎士「ぐへぇあぁっ!?」ドゴォォッ
商人「!?」
戦士「大騎士の野郎が、突然ブッ飛びやがった!!」
291: 2013/04/05(金) 19:51:58 ID:YTfqdN72
大騎士「け、賢者様……なんでぇっ」ドサァァッ
賢者「我が騎士団が剣を抜く時は、悪と戦う時か、弱き者を守る時だけだ。今回はそのどちらにも該当しない」
賢者「お前は出世を急ぎ過ぎている。少し……頭を冷やせ大騎士」
大騎士「賢者、さま……すいやせん、でし、た」ガクッ
292: 2013/04/05(金) 20:08:54 ID:YTfqdN72
賢者「……」
賢者「そなた達にもすまぬ事をした」
商人「ぺっ、絶対に許さな……」
勇者「許そう」
商人「!!?」
勇者「この帝都の王に頭を下げられたら、許さぬ訳には行くまい」ニコリ
293: 2013/04/05(金) 20:26:08 ID:YTfqdN72
賢者「ふふっ、世辞か? 片足が義足の王など何処に居る? 俺は賢者」
勇者「そうか。いや、私は本当にお前を王と思ったのだ」
勇者「この騎士ですら……」チラッ
大騎士「……」
勇者「お前の事は信頼しているようだからな」
295: 2013/04/06(土) 10:10:53 ID:EP21vr/6
賢者「コイツも、以前は真っ直ぐな騎士だったのだ……だが、最近まで帝の近くに置かれていた為に、少し考え方が拗れてしまった」
賢者「これから、ゆっくりと更正させて行くさ……」
賢者「それと、帝が呼んでいると言う件だが」
勇者「……」
賢者「この町に入る時にチェックと称した身体検査が有っただろ?」
296: 2013/04/06(土) 10:17:19 ID:EP21vr/6
戦士「あ~っ、アレな?」
武道家「女性だったけど、ヤケにベタベタ触って来たよね?」
賢者「あの場所には『鷹見の水晶』が置かれていてな、帝はもう一つの水晶から身体検査の現場を覗いているのだ」
商人「氏ねゲスやろう」
賢者「そして気に入った女性が帝都に来ると、高い報償金を餌に夜を共にするよう迫って来る」
297: 2013/04/06(土) 10:26:39 ID:EP21vr/6
賢者「俺が知ったのはつい最近だが、知ってからは都へ来た者に忠告はするようにしている」
勇者「止めは、しないのか?」
賢者「その金は税金だが、旅人からすれば一度抱かれるだけで大金を手にする事も確か。選ぶのはあくまでも本人に任せている」
勇者「……」
勇者「そうでは無い。止めないのか? と聞いたのは、旅人の女性を……では無く、帝を、だ」
298: 2013/04/06(土) 10:32:46 ID:EP21vr/6
賢者「……」
賢者「俺はただの一兵士。帝に俺の言葉は届かん」
賢者「ここに現れたのも、大騎士の無礼と……」チラッ
戦士「なんだよ?」
武道家「なに?」
商人「……」
賢者「この者達が帝と会えば、帝の命が危ないと思ったからに過ぎない」フッ
299: 2013/04/06(土) 10:38:03 ID:EP21vr/6
弓騎士「け、賢者さまぁぁっ!!」タッタッタッ
賢者「弓騎士か、どうした?」
弓騎士「ま、まっ、魔王軍が帝都に攻めて来ましたぁっ!!」
勇者「ッ!?」
賢者「なにッ!!? 直ぐに全軍を城門に召集させろっ!!」
弓騎士「はいっ!!」ダッ
300: 2013/04/06(土) 10:44:03 ID:EP21vr/6
勇者「私は勇者!! 賢者よ、私達も力を貸そう」
賢者「お前がっ!? フッ……確かに、強い瞳をしている」
賢者「では頼むぞ? 我が軍が召集するまで俺と共に時間を稼いでくれ!!」
勇者「心得た!! お前達も行くぞ!!」
戦士「おっけー師匠!!」
武道家「新しい武器で風穴あけてやるもんね~っ!!」
商人「滅」
301: 2013/04/06(土) 11:04:44 ID:EP21vr/6
金色の帝都 一キロ手前上空
バッサバッサ バッサバッサ
雲の魔神「よし、そろそろ降下を始めろ!!」
山の魔神「帝都を奪う前に賢者を頃すのだ!!」
魔族達「オオオオオオオオッ!!」
炎の魔神「賢者など魔王様の手を煩わせるまでもない!!」
風の魔神「我ら五魔星が葬ってくれるっ!!」
側近「フフッ……」
302: 2013/04/06(土) 11:11:44 ID:EP21vr/6
側近(魔王様に認められるのは、私だけでいい……私、だけでっ)
側近「この海の魔神がお前を頃してやるぞ賢者!!」
側近「全軍、ピオリムとスクルトを重ね掛けしておけっ!! 賢者を頃し次第、帝都に攻めいる!!」
,
303: 2013/04/06(土) 11:39:24 ID:EP21vr/6
帝都 入り口
賢者「俺と勇者一行が先に出る、門を開けろ!!」
兵士「はっ!! 開けろぉっ!!」
ゴォォォォッ
街娘「賢者様……大丈夫、ですよね?」
賢者「お前達の願いが俺の力となる。必ず勝つと約束しよう」ニコッ
少年「賢者さま、おれも戦うよっ!!」
賢者「残念だがそれは無理だ……俺が全て倒してしまうからな」ナデナデ
304: 2013/04/06(土) 11:43:51 ID:EP21vr/6
戦士「賢者の回りに街人がみんな集まってんな」
武道家「凄い、人望だよね……」
賢者「民よ聞けい!! 俺がお前達の希望だ!! お前達が俺を信じてくれる限り、俺は絶対に負けん!!」
民達「おおおおおおおおっ!!」
賢者「では行くぞ勇者?」
勇者「……」コクッ
305: 2013/04/06(土) 13:37:07 ID:EP21vr/6
金色の帝都 城門前
ゴォォォォッ
賢者「今は部隊の大半が各方面へ出ているが、呼び戻す遣いは送った。それに魔族どもで黒くなった空を見れば、それぞれの判断で戻って来るだろう」
勇者「時間は?」
賢者「早ければ一刻。遅ければ二刻判」
勇者「……」
勇者「持ち堪えて見せよう」
306: 2013/04/06(土) 13:44:22 ID:EP21vr/6
勇者「信頼しているぞ、仲間達よ?」
戦士「へへっ、任せとけって師匠」Eエクスカリバー
武道家「ボク達もだいぶレベルアップしたもんね」Eアルテマウェポンの爪手甲
商人「私は魔族の血で化粧がしたい」E右手ロトの剣 E左手アイスソード
307: 2013/04/06(土) 13:50:05 ID:EP21vr/6
賢者「んっ?」
賢者「いや、上手くすれば時間を稼げそうだぞ?」
バッサバッサ バッサバッサ
炎の魔神「お前が賢者か」タトッ
風の魔神「はっ、ただの人間じゃねぇか?」タトッ
山の魔神「甘く見るな。魔王様が唯一認めた人間なのだ」タトッ
雲の魔神「だとしても、我ら五魔星には勝てんがな」タトッ
308: 2013/04/06(土) 13:57:45 ID:EP21vr/6
ゴゴゴゴゴゴゴッ
側近「……」タトッ
賢者「……」
ゴゴゴゴゴゴゴッ
勇者(敵は随分と賢者へ執着している)
勇者(そして目の前に降りたのは五人。他の魔族も地に降りているが、遥か後方で待機している)
勇者(これは……そうか!?)
309: 2013/04/06(土) 14:00:26 ID:EP21vr/6
勇者「……」チラッ
賢者「……」コクッ
勇者「……」クイッ
戦士「……」コクッ
武道家「……」コクッ
商人「……」コクッ
310: 2013/04/06(土) 14:11:23 ID:EP21vr/6
側近「賢者とは因縁の有る私が一対一で戦う。お前達は手を出すな」
風の魔神「おいおいっ、そりゃねーんじゃないか?」
勇者「ふっ、お前はその者の優しさに気付かぬのか?」
側近「……」
風の魔神「なんだとぉ!?」
勇者「五魔星といったが、その者と他の四人にはハッキリとした実力差が伺える。つまりその者は、「邪魔だからすっこんでろ」と言ったのだ」
311: 2013/04/06(土) 14:24:49 ID:EP21vr/6
風の魔神「キサマァァッ!! よし、決めた!! まずはキサマを頃してやる!!」
勇者「他の三人も同時に相手をしよう。プライドが許さないのなら、順番を決めて置くのだな。すぐに終わる」スッ
賢者(挑発も上手い。流石は勇者か……ならば俺も、本気で戦わねばなるまい!!)
賢者「ぬあああああああッ!!」ビキビキ
側近「こおおおおおおおッ!!」ビキビキ
312: 2013/04/06(土) 14:55:05 ID:EP21vr/6
風の魔神「くくっ……我が拳は風を友とし、風の中に真空を走らせる。即ち風の刃」スゥッ
勇者「……」
風の魔神「フッ」
風の魔神「ヒャッハー!! 切れろ切れろぉぉっ!!」シュババババッ
勇者「ぐぅっ!?」
313: 2013/04/06(土) 15:03:04 ID:EP21vr/6
風の魔神「なんだ? ガードするので精一杯かぁ?」
風の魔神「トドメだっ!! 風戟光角拳奥義、真空旋風掌ッ!!」ドォォォォウッ
勇者「……」
勇者「はあっ!!」ダンッ
風の魔神「上に、跳んだ!?」
314: 2013/04/06(土) 16:51:31 ID:EP21vr/6
勇者「天翔ッ、闘指気真空波!!」バァッ
風の魔神「ぐぅへぇあぁぁっ!!?」ドゴォォン
賢者(アイツ、俺の技を一度見ただけで……)
側近「どこを見ている? お前の相手は私だぞっ?」
315: 2013/04/06(土) 19:31:16 ID:EP21vr/6
風の魔神「……」ガクッ
炎の魔神「おおおおおおおお!! よくも弟星、風の魔神をっ!!」ボォォォッ
炎の魔神「次は俺が相手だッ!!」
勇者「……」タトッ
勇者「いいのかな、お前一人で?」スッ
炎の魔神「うるせぇ!! 俺の前に立つ者は、この怒りの炎に包まれる!!」ボォォォッ
316: 2013/04/06(土) 19:42:30 ID:EP21vr/6
金色の帝都城門 遥か前方位置
デスフリッター「風の魔神様がやられたっ!? ぐぬぬっ……我ら鳥獣部隊は先行して都を攻めるぞ!!」
鳥獣部隊「オオオオオオオオ!!」
暴れ牛鳥「待てデスフリッター!! 我らは決着がつくまで待機と指示が出ていただろ!?」
ドラゴンフライ「そうだぜ、お前の部隊だけ出るなんて勝手な行動は慎んでもらおう」
317: 2013/04/06(土) 19:45:36 ID:EP21vr/6
ポッポ「頭を冷やすのじゃデスフリッター!!」
デスフリッター「……」
デスフリッター「お前らが使える魔神達はまだ生きてるから良い……俺らの使える風の魔神様は氏んじまったんだぞ!?」
デスフリッター「弔い合戦だ!! 鳥獣部隊、全軍突撃ィッ!!!」バッサバッサ
318: 2013/04/06(土) 19:58:59 ID:EP21vr/6
戦士「エクス──
カリバァァァァァァァァァッ!!!
」
武道家「燃え上がれボクのコスモ──
アルテマ流星けぇぇぇぇん!!!
」
商人「黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅きもの 時の流れに埋もれし 偉大なる汝の名において 我ここに 闇に誓わん 我等が前に立ち塞がりし すべての愚かなるものに 我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを──
ドラグスレイブッッ!!!
」
319: 2013/04/06(土) 20:02:39 ID:EP21vr/6
デスフリッター「クッ、クェェェェエエ!!?」ジュゥッ
ポッポ「デスフリッター!?」
戦士「へっ、ここは通さねぇよ!!」ジャキ
武道家「どうしてもって言うなら」スッ
商人「私達を倒して進め虫けらめ」ジャキジャキ
320: 2013/04/06(土) 20:22:29 ID:EP21vr/6
暴れ牛鳥「なにぃっ!?」
武道家「ねぇ、ボク達のペンダントが光ってるよ?」ポワッ
戦士「初めて三人で行ったダンジョンで見付けたやつか」ポワッ
商人「体が暖かい……これなら、前に失敗したアレが使えるかも知れない」ポワッ
321: 2013/04/06(土) 20:27:26 ID:EP21vr/6
戦士「んじゃ、やってみるか……タイミングを合わせろよ二人ともっ!!」バチバチッ
武道家「うんっ!!」バチバチッ
商人「あ、せーーーーの!!」バチバチッ
ポッポ「生意気な人間どもめ、かぜおこしを喰らえッ!!」バッサバッサ
戦士 武道家 商人
「「「トリプルッ!! ギガッ、ディィィィィィィィィィン!!!」」」
322: 2013/04/06(土) 21:41:02 ID:EP21vr/6
ドゴォォォォォォォォォォン!!!
側近「……」
賢者「卑怯とは言うまい?」
側近「ふふっ、私はお前を殺せればそれで構わん」スッ
賢者「そうか……ならば」スッ
側近 賢者
「「ただ、氏合うのみ!!」」バッ
324: 2013/04/06(土) 22:03:22 ID:EP21vr/6
側近「賢者ッ、貴様は私のスピードに着いて来る事はできない!! この無限の蹴りを受けろっ」スゥッ
賢者「ぬっ!?」
側近「飛燕千烈脚!! あぁだだだダダダダダダダダァァ!!!」
賢者「お前が千の蹴りなら、俺は千の拳で迎え撃つ……」スゥッ
賢者「羅行千界拳!! づぇあぁたタタタタタタタタッッ!!!」
325: 2013/04/06(土) 23:06:39 ID:EP21vr/6
側近「甘い、甘い、あまぁぁい!!」ズドドドドドッ
賢者「ぬおおおおおおおッ!!」ズダダダダダダッ
側近「……」
側近「……」ニヤリ
側近「ちぃえああぁぁアア!!」ズドンッ
賢者「ぐはぁっ!?」ドサァッ
326: 2013/04/06(土) 23:14:55 ID:EP21vr/6
側近「ふふっ。あの頃ならともかく、片足を義足にした貴様では私に勝てない」
勇者「賢者っ!!」
賢者「来るなッ!! これは俺が招いた結末だ。俺の手で片を付ける」ググッ
賢者「側近、よ……お前は、賢者と呼ばれる者のみが扱える究極魔法を知っているか」スゥッ
327: 2013/04/06(土) 23:39:15 ID:EP21vr/6
側近「……」
側近「時間稼ぎのつもりか? つまらないハッタリを……」
賢者「……」
賢者「究極魔法。その名を、『マダンテ』と言う」
側近「まっ、マダンテだとぉっ!? いや……まさか、貴様が使える筈が無い!!」
賢者「俺の全魔力、そして魔術回路を破壊し、二度と魔法は使えなくなってしまうが……これもまた運命。従おう」ゴゴゴゴゴゴッ
328: 2013/04/06(土) 23:43:53 ID:EP21vr/6
賢者「本当は魔王に取って置きたかったのだが……」チラッ
勇者「お前の勇姿、しかと見届けた」
賢者「頼むぞ勇者よ。魔王を倒してくれっ!!」
側近「ちぃっ、マダンテなど使わせるかっ!!」バッ
賢者「ここでは被害が出る……場所を変えるぞっ、バシルーラ!!」ドンッ
側近「グウッ!!?」ギュワァーン
329: 2013/04/07(日) 08:15:42 ID:AjuvboA.
賢者「……」
勇者「……」コクッ
賢者「ルーラ!!」ギュワァーン
勇者「さて、こちらも終わらせようか」スッ
炎の魔神「……」ドサッ
330: 2013/04/07(日) 08:28:09 ID:AjuvboA.
山の魔神「こうなれば、我らが相手だ」
雲の魔神「言って置くぞ? 風と炎の魔神は我らの足元にも及ばない」
勇者「……」
勇者「掛かって来なさい」クイッ
331: 2013/04/07(日) 15:02:11 ID:AjuvboA.
雲の魔神「くくっ、我が拳は我流。我流は無形。雲のように掴み所の無い拳で、貴様は成す術なく倒れるのだ」スッ
勇者「側近とやらの実力は認めよう。尊敬もしよう。だが、私に取っては、側近か、それ以外か、でしか分けていない」
勇者「先に倒した二人と、これから倒すお前達は、私にとって何も印象が変わらない」
雲の魔神「チッ、言わせておけばぁぁっ!!」ギリッ
山の魔神「ペースを乱すな。同時に掛かるぞッ!!」スッ
332: 2013/04/07(日) 15:14:27 ID:AjuvboA.
山の魔神「フフッ……」ドシンドシン
勇者「……」
山の魔神「鬼の拳!!」ドォッ
勇者「遅いっ、はぁぁぁぁっ!!」ドスンッ
山の魔神「ぐはぁぁッ!? 凄まじい、威力だ」グラッ
山の魔神「だがっ!!」ガシッ
勇者「むっ!?」
333: 2013/04/07(日) 15:23:51 ID:AjuvboA.
山の魔神「力だけならばこちらも自信が有ってな……わざと攻撃させ、こうやって腕を掴んでしまえば」ニヤリ
勇者「くっ……」
山の魔神「今だ、雲の魔神!!」
雲の魔神「お前の命、無駄にはせん!!」ゴゴゴゴゴゴッ
雲の魔神「魔神クラウドが究極最終奥義ッ、超級武神覇弾!! 消し飛べぇぇぇぇっ!!!」ドゴォォォォォォッ
334: 2013/04/07(日) 17:09:20 ID:AjuvboA.
勇者「ッ!!?」
山の魔神「ガッハッハッ!! 共に地獄へ落ちようぞぉぉ!!」
ズドォォォォォォォォォオオ!!!
パラパラパラ
雲の魔神「……」
雲の魔神「消し炭も残らぬか……山の魔神よ、お前の意志、受け取ったぞ!!」グッ
335: 2013/04/07(日) 17:33:32 ID:AjuvboA.
雲の魔神「しかしこの俺が、たかが人間相手に……全魔力を消費するエネルギー波を放つ事になるとは」
雲の魔神「……」
雲の魔神「だが疲れたとは言ってられんか。早く後方部隊の指揮に戻らねば」バッ
トタッ
雲の魔神「!!?」クルッ
勇者「……」
勇者「おしいな……」
336: 2013/04/07(日) 17:43:57 ID:AjuvboA.
勇者「魔法に頼らず、己が拳か武器を用いて掛かって来れば、私に勝てたかも知れぬものを」スッ
雲の魔神「な、なんで貴様が生きている!?」
勇者「魔王には魔法が効かぬ。何故なら、果てしなく高い対魔力数値を持っているからだ」
勇者「そしてそれは、この私も同じ事。私に魔法は効かん!!」
337: 2013/04/07(日) 17:55:19 ID:AjuvboA.
雲の魔神「魔王様の事を知っている……き、貴様はっ!?」
勇者「私の名は勇者」
雲の魔神「勇者だとっ、ぐぅっ……ギギッ、余計に貴様を頃す理由ができた!!」
勇者「……」
勇者「この剣を抜き、お前たちの忠誠心に捧げよう」ジャキッ
338: 2013/04/07(日) 18:04:38 ID:AjuvboA.
雲の魔神「そっ、その剣はぁっ!!?」
勇者「この剣は『夢想転生剣』。魔王の持っている剣と同じ物だ。そしてお互いに……必殺の一振りとなる」
雲の魔神「そこまで魔王様を知っていると有っては生かして置けぬ……」
雲の魔神「氏ねぃ、勇者ぁぁぁぁぁっ!!!」バッ
339: 2013/04/07(日) 23:25:57 ID:AjuvboA.
金色の帝都城門 遥か前方位置
魔族「ギャハァァァァッ!!」
戦士「くっ、どんだけ居るんだよ……キリがねぇぜ!!」ザッ
武道家「商人、残りのエリクサーは?」
商人「さっきので最後」
340: 2013/04/07(日) 23:34:23 ID:AjuvboA.
ポッポ「クククッ、もっと絶望的な事を教えてやろうか?」バッサバッサ
戦士「なにっ?」
ポッポ「ワシは変身能力を持つ種族でな、変身すると戦闘能力が爆発的に上昇する……」
武道家「そんなっ!!」
ポッポ「その変身を、ワシは後二回残しておる」ニヤリ
商人「もうおしまいだあ」ガクガクブルブル
341: 2013/04/07(日) 23:37:51 ID:AjuvboA.
ポッポ「ワシの変身を見せてやる!!」
ポッポ「ポッポモン進化~っ」バッサバッサ
ピジョン「ピジョンモン!!」バッサバッサ
ピジョン「生意気な人間共め、かぜおこしを喰らえっ!!」バッサバッサ
342: 2013/04/07(日) 23:51:32 ID:AjuvboA.
僧侶「ほぉぉぉっ、シャオ!!」スパァッ
ピジョン「おや、ワシの体が?」ズバズバズバッ
ピジョン「細切れになっとるぅ~っ!?」バラバラ
戦士「お前はっ!?」
僧侶「どうやら良いタイミングだったようだな? 勇者に借りを返しに来た」スタッ
343: 2013/04/08(月) 00:16:16 ID:T2Fglud6
僧侶「ベホマラー」
武道家「おおっ」キュイン
僧侶「これでやれるか?」
商人「援軍が来るまで堪える」キュイン
344: 2013/04/08(月) 10:39:49 ID:T2Fglud6
北陸より更に北 離れ小島
側近「ぐっ!?」ギュワァーン
側近「どこまで飛ばしたんだ?」キョロキョロ
ギュワァーン
賢者「……」スタッ
賢者「ここなら、思う存分に戦えるな」
345: 2013/04/08(月) 15:29:28 ID:T2Fglud6
側近「……」グッ
賢者「……」スッ
賢者「ハァッ!!」バッ
側近「ふっ!!」パシッ
側近「てやぁっ!!」シュッ
賢者「トアッ!!」パシッ
346: 2013/04/08(月) 15:34:49 ID:T2Fglud6
側近「チッ!?」グラァ
賢者「好機!!」ガシッ
側近「ッ!!? 貴様、私の体を!? 離せッ!!」ドスッドスッ
賢者「ぐぅっ、氏ぬまで離さんよ!!」
347: 2013/04/08(月) 15:40:42 ID:T2Fglud6
時間の中で生きてる 孤独な囁き
賢者「側近、お前はここで俺と共に逝くのだ!!」バチバチィ
手探りの中 覚えた ぬくもりと淋しさ
側近「魔力が大幅に上昇している……まさかっ、本当にマダンテを!!」
まぶしく輝く お前の身体抱き寄せ 今
賢者「……」ニヤリ
そうさ愛する人には 時代は流れ 徨う心に 明日は見えない
348: 2013/04/08(月) 15:47:00 ID:T2Fglud6
光の中で揺れてる お前の微笑
側近「ひっ!? ぃやだ、氏にたくない、魔王様ぁっ!!」
足音だけをのこして 闇に消える シルエット
賢者「その愛、氏して魔王へと届けよ!!」
満たされ 羽ばたき 女神が背中向けて 今
側近「愛してますっ、魔王様ぁぁぁぁァァァアア!!!」
賢者「究極魔法、マダンテ!!!」カッ
だから今日より 明日より 愛が欲しい
夢より愛する君が欲しい 全てが・・・
349: 2013/04/08(月) 15:50:54 ID:T2Fglud6
ドゴオオォォォォォォォォォォォォン!!!!
勇者「ッ!!? 空が……」
勇者「逝ったか、賢者よ……私は、私の役目を果たそう」
雲の魔神「……」ドサァッ
350: 2013/04/08(月) 16:08:32 ID:T2Fglud6
ダダダッ
勇者「……」ピクッ
団長「敵は城門の前方凡そ一キロ!! 全軍突撃ィィッ!!」バッ
大騎士「おおおおおおおお!!」
騎士達「おおおおおおおお!!」
勇者「私も手伝おう」
団長「……」
団長「この魔神達は貴方が?」
351: 2013/04/08(月) 16:11:30 ID:T2Fglud6
勇者「賢者の助けが有ったから倒せた」
団長「え?」
団長「け、賢者様は!?」
勇者「……」
勇者「賢者は……」
352: 2013/04/08(月) 16:19:10 ID:T2Fglud6
賢者「俺は、ここに居る」スタッ
団長「賢者っ!!?」
勇者「ッ!? 賢者……生きて居たのか?」
賢者「フッ、神の気紛れか知らぬが、ルーラ一回分の魔力が残っていたのだ」
勇者「そうか……」ニコッ
賢者「心配を掛けたな、勇者よ」ニコッ
353: 2013/04/08(月) 16:25:53 ID:T2Fglud6
数時間後、魔王軍の七割を殲滅し、三割を撤退させる事に成功した。
,
355: 2013/04/08(月) 20:39:57 ID:T2Fglud6
勇者「僧侶……すまない、礼を言う」
僧侶「ふっ、気にするな。俺は借りを返しただけだ。がんばったのはコイツらだよ」
戦士「へへっ♪」
武道家「ボクも強くなったでしょ?」ニコッ
商人「……」
商人「師匠、私はお前の血で化粧がしたい」
勇者「まだその呪われた剣を持っていたのか? 捨てて来るから寄越しなさい」バッ
商人「ああん」
356: 2013/04/08(月) 20:48:53 ID:T2Fglud6
僧侶「しかし良かったのか? かなりの待遇で歓迎すると賢者は言っていたが……」
勇者「すぐ近くの森に有るコテージハウスを借りた。しばらくはそこで、のんびり休息するよ」
勇者「それに……今は帝都に、外部の者が立ち入る時では無い」
僧侶「……」
僧侶「変わるといいな?」
勇者「変わるさ。何かを決意した目をしていたからな」
357: 2013/04/08(月) 21:16:03 ID:T2Fglud6
金色の帝都 街の広場
男「賢者様だ!! 賢者様が戻って来たぞぉぉっ!!」
女「賢者さまぁぁっ!!」
賢者「ッ!? どうして民は避難していないのだ?」
兵士「もちろん、裏側から逃げるようにと言いましたよ? ですが……賢者様を置いて逃げる者は、誰一人としておりませんでした」ニコリ
358: 2013/04/08(月) 23:38:27 ID:T2Fglud6
幼女「ふぇぇっ、けんじゃさま~っ」トテトテ
ギュッ
賢者「ふふっ、おお、ヨシヨシ。俺は無事だ、安心しなさい」ナデナデ
兵士「こんな幼い子供までが、賢者様の『義足』に怖がらず抱き着いているではありませんか……これほど民に愛されている方を他に知りません」
賢者「皆も聞けぇぇっ!! 兵は誰一人欠く事なく、そして俺も無事だぁぁぁっ!!」
民達「おおおおおおおおお!!」
359: 2013/04/08(月) 23:45:36 ID:T2Fglud6
賢者「そして、もう一つ聞いて欲しい!! 私はこの戦いで魔力を失った。後は絞りカスのような魔法が一度か二度……使えるかも知れないが、以前みたいに魔法は使えない」
賢者「よって、今日限りで賢者を止め、一人の兵士として生きようと思う!!」
ダッダッダッ
帝「なにぃっ!! 賢者キサマ、魔力を失ったと言うのか!?」
360: 2013/04/08(月) 23:52:10 ID:T2Fglud6
賢者「……」
賢者「少し、離れていなさい」ニコリ
幼女「うん」トテトテ
賢者「はい。最早この俺は、賢者と呼ばれる存在とは程遠いでしょう」
帝「ぐぬぬっ……この、役立たずがぁッ!! 魔法が使えなくなってどうするぅ!!」バキッ
賢者「ぐっ!? すみません帝……」ドゴッ
361: 2013/04/08(月) 23:58:29 ID:T2Fglud6
帝「拾ってやった恩を仇で返しおってぇ!!」
賢者「……」キッ
帝「なんだぁ、その目は? 気に喰わんなぁ!! よし、決めた!!」
帝「民どもよ聞け、明日から全ての税金は五倍だ!! 反対する者はここで処刑する!!」
362: 2013/04/09(火) 00:02:35 ID:NefDBqY.
賢者「なッ!? 血迷ったか帝!!!」
帝「五月蝿い!! この俺さえ潤えばそれで良いのだ!! それと賢者、キサマは氏刑だ!! ここで首を落としてやるっ」
帝「おい誰か、賢者を処刑しろ!!」
大騎士「……」
弓騎士「……」
363: 2013/04/09(火) 00:06:45 ID:NefDBqY.
帝「んっ?」キョロキョロ
帝「ちっ、おい団長、お前が賢者を処刑しろ!! 処刑しなければお前も同罪だ!!」
団長「……」
賢者「……」
団長「賢者様……」ニコリ
団長「どうやら私は目が疲れて見えなくなりました。ついでに、耳も遠くなり聞こえなくなりました」クルッ
364: 2013/04/09(火) 00:10:46 ID:NefDBqY.
帝「あ? だぁれが後ろを向けと言ったぁ!?」
兵士「俺もっ、団長と同じです!!」クルッ
大騎士「俺もっ!!」クルッ
弓騎士「俺もです!!」クルッ
男「……」
男「ああ~っ、何か耳に詰まって聞こえねぇやぁ」クルッ
女「ほんとぉだぁ。聞こえなぁい」クルッ
母「ほらっ、幼女ちゃんも」クルッ
幼女「きこぇなぁぃ」クルッ
365: 2013/04/09(火) 00:21:10 ID:NefDBqY.
帝「民どもまで後ろを!? どうなっている」
団長「賢者様? 『王が民を決めるのではなく、民が王を決める』。そう賢者様が私に言った言葉を、私は今でも覚えています」
団長「そして民が、我ら騎士団が、命を投げ出しても仕えたいと思うのは、一緒に氏んでも良いと思うほど慕っているのはっ、この帝都でたった一人です!!!」
賢者「ッ!!?」
賢者「……」グッ
賢者「帝よ、最初で最後の通告だ。今貯まっている資金はお前にやろう。そしてその金を持ち、この帝都から去れ!!」
366: 2013/04/09(火) 00:32:23 ID:NefDBqY.
帝「なんだとぉっ!?」
賢者「思えば俺の判断も間違っていたのかも知れぬ。前帝に時期帝を決めるよう託された時、忠義などを感じてお前を帝に推薦するのでは無かった……」
帝「俺をっ、バカにするか賢者ァァ!!! 魔法を使えぬキサマなど、俺ですら殺せるのだっ!!」
帝「民どもと纏めて吹き飛ばしてやるっ、氏ねぃ!! ベギラゴ……」バッ
賢者「これが、本当に最後の魔法だ!! 将の輪!!」バッ
367: 2013/04/09(火) 00:37:39 ID:NefDBqY.
帝「ひぎっ!?」ガクガク
賢者「塵も残さん!!」
帝「ぎひゃああああああああ!!!」ザシュュュッ
ヒューッ
賢者「終わった……」スゥッ
368: 2013/04/09(火) 00:42:05 ID:NefDBqY.
団長「大役、お疲れ様でした」
賢者「これで、この帝都も変わるだろう」
団長「いえ、変わるのでは有りません。賢者様が、変えるのです」
賢者「……」
賢者「で、有れば、俺からも条件が二つ有る」
369: 2013/04/09(火) 00:46:48 ID:NefDBqY.
賢者「勇者一行を見ていて思ったのだが、あの者達は仲間だから強いのだ。仲間に強い上下関係が有ってはならない。よって……」
団長「よって?」
賢者「俺が魔法を使えなくとも、これからも俺を賢者と呼べ。どうも帝はしっくり来ない」ニコリ
団長「くすっ。はい、わかりました賢者様。そして、もう一つは?」
370: 2013/04/09(火) 00:50:24 ID:NefDBqY.
賢者「こちらは民達を見て思った。家族とはとても素晴らしいものだとな」
団長「あ、あのっ……」
賢者「団長よ、俺は子供が欲しい」
団長「……」
賢者「団長よ、美しい妻が欲しい」
団長「あぅっ……」
373: 2013/04/09(火) 09:36:12 ID:NefDBqY.
賢者「お前から好意を持たれていると感じたのは、俺の思い違いか?」
団長「けんじゃ、さまぁ……」カァァッ
賢者「それとも好意を持っていた俺の方だけで、貴女は……俺を好きではなかったのですか?」
タッタッタッ
団長「わ、わたしもっ!! 私も一人の女として、貴方をお慕いしておりましたっ!!」ギュッ
374: 2013/04/09(火) 09:41:40 ID:NefDBqY.
賢者「そうか……」ニコッ
賢者「ありがとう、俺を好きでいてくれて、ありがとう」ナデナデ
大騎士「ひー、熱すぎて見てらんねぇよ賢者様」パタパタ
賢者「ふっ、すまぬな……」
賢者「再び聞けぃ民達よ!! 見ての通り、俺はこの者と結婚する!!」
弓騎士「おやおや、ふふっ」
兵士「何故か、泣けて来ます。やっと幸せに成られるのですね賢者様……」グスッ
375: 2013/04/09(火) 09:54:09 ID:NefDBqY.
賢者「俺の就任祝いと結婚祝いだ!! これから十日間、都を上げて祭りをするぞっ!!」
賢者「金の心配はするな、これまでに貯まっている税金を全て吐き出す!! 金は全て俺が出す!!」
賢者「これが俺からの、ただ一つのワガママだ!! 新たな都の門出をっ、民達の手で盛大に祝って欲しい!!」
民達「おおおおおおおおお!!」ワーワー
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376: 2013/04/09(火) 10:00:24 ID:NefDBqY.
それから数日後 森のコテージ
勇者一行はコテージ庭の木々にハンモックを設置し、寝転がりながら皆で夜空を見上げていた
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377: 2013/04/09(火) 10:16:44 ID:NefDBqY.
武道家「団長さんのウェディングドレス姿、キレイだってねぇ~」ゴロゴロ
勇者「ああ、そうだな」
武道家「ぼ、ボクも、魔王を倒したらウェディングドレス着たいなぁ」チラッチラッ
勇者「ああ、そうだな。世界が平和になったら、お前達は女としての幸せを見つけなさい」
武道家「うっ……微妙に話が通じてない気がする」ガクッ
商人「ザマァwwwwwwwwwwww」
378: 2013/04/09(火) 10:45:33 ID:NefDBqY.
戦士「ごほん……でさ、師匠」
勇者「どうした?」
戦士「見守るだけでいいって言ってたけど、師匠はもう……告白とか、本当にしないのか?」
勇者「……」
勇者「ああ、しない」
379: 2013/04/09(火) 10:49:33 ID:NefDBqY.
勇者「例えるなら、そうだ……お前達に、あの星座は見えるか?」スッ
戦士「あのヒシャクみたいなやつ?」
商人「杓」
武道家「神殿とかで、お清めの水を掬ったりするんだよね?」
380: 2013/04/09(火) 10:54:31 ID:NefDBqY.
勇者「うむ、北斗七星と言うのだ。ならば、その脇に在る小さな星も見えるな?」
戦士「う~ん、アレかな? 小さくてすぐに消えちまいそうだけど」
勇者「私はあの星でいい。北斗七星の横でひっそりと輝くあの星で……」
戦士「そっ、か……良いぜ師匠?」
381: 2013/04/09(火) 11:00:34 ID:NefDBqY.
勇者「……」
勇者「なにがだ?」
戦士「よっ、と!!」スタッ
トテトテ
戦士「師匠が忘れられるまで、オレは二番で良いよ」ギュッ
武道家「~~~~~~~!!?」
商人「二番は私。戦士は今すぐ師匠から離れるべき!!」
ワーワー ワーワー
勇者「ふふっ……」
勇者(私もいつか幸せになれるのだろうか?)
勇者(生きて、魔王を倒せるか?)
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382: 2013/04/09(火) 11:02:17 ID:NefDBqY.
ひとまずここまでが中編と言う事で一区切りです
続きは後日ここか、別スレ立てて書きますm(__)m
長くなりそうなので、たぶん別スレかも。その時はリンク貼ります
385: 2013/04/10(水) 12:01:55 ID:IdPeHFNU
なんか、ここだけで収まりそうなので、続きはここに書きますm(__)m
後編
勇者「言ったはずだ! あなたの全てを目指したと!!」
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387: 2013/04/10(水) 18:21:11 ID:IdPeHFNU
金色の帝都 解放
砂漠の街 セイントキングダムへ
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388: 2013/04/10(水) 19:05:30 ID:IdPeHFNU
砂漠の街への道中 豪華客船の船上
戦士「お~~~っ」キョロキョロ
武道家「みてみてっ、ししょー!! イルカだよイルカっ、イルカがたくさん泳いでるよぉ~♪」
商人「師匠、こっち」グイグイ
勇者「ははっ、わかった分かった」
389: 2013/04/10(水) 20:58:13 ID:IdPeHFNU
僧侶「フッ、元気が有るのは良い事じゃないか?」
勇者「有りすぎて困るがな……」
僧侶「それで勇者よ、これからの予定はどうなっている?」
勇者「まずは砂漠の国ジャガンノートへ向かい、そこを経由してセイントキングダムを目指す」
僧侶「セイントキングダム? 聞かぬ場所だな……」
勇者「最近になって出来た街だ。私はそこで噂の真実を確かめねばならぬ」
390: 2013/04/10(水) 22:04:47 ID:IdPeHFNU
僧侶「うわさ?」
勇者「ああ。実は……」
乗客「キャァーーーーッ!!!」
僧侶「なんだ!?」バッ
勇者「ッ!!?」バッ
戦士「し、師匠!! あっちの空を見てくれ!!」
392: 2013/04/10(水) 22:15:32 ID:IdPeHFNU
勇者「あれはっ……」
僧侶「黒い空が、近付いて来る!?」
武道家「あは、は……渡り鳥の群れ、じゃないよね?」
商人「だとしたら、私のデータベースには存在しない鳥類」
394: 2013/04/10(水) 22:26:13 ID:IdPeHFNU
豪華客船の数百メートル前方上空
改造ポッポ「魔王様!! あそこに乗っているのが反逆者です!!」ガチョンガチョン
魔王「ほぉっ……この魔王に反抗する者は、例え蟻でも許さん!! お前たちは船の真上まで行き待機だ。俺が一人で根絶やしにしてくれる!!」
魔王「ハイヤー、黒竜号ッ!!」
バハムート「グアアアアアアアアウ!!!」バッサバッサ
改造ポッポ(ククッ、ワシをこんな体にした報い……受けるがいい!!)
395: 2013/04/10(水) 22:34:16 ID:IdPeHFNU
豪華客船の船上
勇者「どうだ、残ってる者は居たか?」
戦士「いや、乗組員に聞いたら、みんな中に避難したらしいぜ?」
武道家「こっちは誰も居ないよ~っ」タッタッ
商人「こっちも大丈夫」
僧侶「どうやら、甲板には我々だけのようだな……」
396: 2013/04/10(水) 22:40:46 ID:IdPeHFNU
戦士「にしても、何だよあのデカイ竜は!?」Eエクスカリバー
武道家「まさか、あのまま突っ込んで来たりしないよね?」Eアルテマウェポンの爪手甲
商人「沈まない。この豪華客船タイタニック号は絶対に沈まない」Eアイスソード
僧侶「どう来ると思う?」スッ
勇者「恐らく……降りて来るだろうな」スッ
397: 2013/04/10(水) 22:51:12 ID:IdPeHFNU
バッサバッサ バッサバッサ
戦士「魔物の群れが上空に集まったぜ!?」
武道家「やっぱり竜も居るよぉ!!」
勇者「……」
勇者「ッ!!」
勇者「来るぞッ!! みんな構えるんだ!!!」
398: 2013/04/10(水) 22:57:04 ID:IdPeHFNU
ガアッ──
魔王「ガアッハッハッハッハァッ!!!」バァァッ
ズドォォォォォォォォン!!!
魔王「ぬぅん!!」ドシーン
商人「っ!?」グラグラ
戦士「まさか、あんな高さから飛び降りて来るなんて!!」グラグラ
武道家「しかも、ちゃんと着地してる!!」
403: 2013/04/11(木) 09:36:43 ID:wEvq/srw
勇者「魔王……」
魔王「んっ、キサマは?」
勇者「私は、勇者だ!!」
魔王「……」
魔王「なるほど、勇者となったか……キサマが相手と有れば、この魔王も全身全霊を賭けて戦わねばなるまい」ニヤリ
404: 2013/04/11(木) 09:40:27 ID:wEvq/srw
改造ポッポ「魔王様!! その前にあの男をっ、あの男を頃してください!!」ガチョンガチョン
僧侶「……」
魔王「……」
魔王「ポッポよ、うぬは誰の命令で降りて来た?」
改造ポッポ「へっ? あ、あのっ、それはっ!!」
406: 2013/04/11(木) 09:47:14 ID:wEvq/srw
魔王「俺の命令を聞けぬ者は、我が魔王軍にぃっ……」ググッ
改造ポッポ「ひぃっ!? 魔王様、どうかお許しをぉぉっ!!!」
魔王「いらぬわッ!!」ゴォッ
改造ポッポ「ぴぎぃぃぃぃっ!?」バキィッ
パラパラ パラパラ
改造ポッポの破片「ピーッ……ガガッ」
407: 2013/04/11(木) 09:52:09 ID:wEvq/srw
勇者「……」
戦士「おいおいっ」ブルッ
武道家「あのポッポを一撃でっ!?」
商人「物凄い剛拳」
408: 2013/04/11(木) 09:59:01 ID:wEvq/srw
戦士「でも……さ?」
武道家「うんっ!!」
商人「魔王が破壊する剛の拳だとすれば、師匠は隙を誘う柔の拳。遅れは取って無い」
勇者「宿命か……」スッ
魔王「フッ、この魔王は天を握るのだ。邪魔はさせん!!」スッ
409: 2013/04/11(木) 10:07:18 ID:wEvq/srw
僧侶「待てっ!! 魔王よ、最初の相手はこの俺だ!!」
戦士「僧侶の奴、師匠の前に!?」
勇者「ッ!? 下がるのだ僧侶!!」
僧侶「勇者……魔王の拳をそこからじっくり見て置け。俺は一発でも多く奴の攻撃を受ける……お前は、奴の攻撃を見切る事に専念しろ!!」スッ
411: 2013/04/11(木) 11:54:26 ID:YCGQrKl2
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