1: 2013/06/21(金) 20:19:55 ID:o5swmwm.
>>10巻までのネタバレあり
※捏造あり
※進撃世界観けっこう無視
※クリスタにピアノ弾かせたいだけ
※捏造あり
※進撃世界観けっこう無視
※クリスタにピアノ弾かせたいだけ
2: 2013/06/21(金) 20:20:34 ID:o5swmwm.
ウォール・ローゼ南方面駐屯地。
今日最後の講義を終え、訓練兵たちはそれぞれ講堂を後にしていく。
クリスタも皆と同じように講義棟の廊下を歩いていた。
使用されていない教室の中へ何気なく目をやった時、あることに気づいた。
クリスタ「あれって、もしかして・・・。」
3: 2013/06/21(金) 20:21:10 ID:o5swmwm.
ガラッ。
クリスタ「お邪魔します。・・・勝手に入って大丈夫かな?」
教室内には、布のかけられた大型の物体があり埃をひどくかぶっていた。
バサッ。
布をはぐると埃が舞い上がり、うっかり吸い込んでしまった。
クリスタ「ゲホッ、ゲホッ。・・・・やっぱり、ピアノだ。」
そこには古いグランドピアノがあった。
布を被せてあったおかげで、ピアノ自体の汚れはさほどひどくなさそうだ。
4: 2013/06/21(金) 20:21:44 ID:o5swmwm.
クリスタ「よいしょっと。」カパッ。
蓋を開けると、濃い象牙色に変色した鍵盤が現れる。
クリスタ「ちょっとだけ弾かせてもらっちゃお・・・。」
椅子の高さを調節する。
クリスタ(ピアノに触るの久しぶり。うふふ、嬉しい。)
椅子に腰掛け、そっと演奏し始めた。
5: 2013/06/21(金) 20:22:17 ID:o5swmwm.
クリスタ(音のずれがひどいなぁ。随分、長い間、放置されてたのね。かわいそうな子。)
ピアノの音色が講義棟に流れた。
クリスタ(お母様が好きだった曲・・・。今頃、どうしてるかな・・・。)
ちょっとだけ。そのつもりが、気づけば夢中になって弾いていた。
6: 2013/06/21(金) 20:22:52 ID:o5swmwm.
ガラッ
クリスタ「!!」ビクッ
マルコ「ピアノ弾いてたのクリスタだったのか。」
クリスタ「ご、ごめんなさい・・・。」
マルコ「何で謝るの?
マクダウェルの『野ばらに寄す』。すごく素敵だったよ。」
8: 2013/06/21(金) 20:23:27 ID:o5swmwm.
クリスタ「!! 本当?うれしい。マルコもピアノ弾けるの?」
マルコ「クリスタほどじゃないけど、ちょっとだけね。
でも、このピアノ、音が狂いまくってるね。」
クリスタ「そうなの。綺麗な音で歌わせてあげたいのに・・・。」
9: 2013/06/21(金) 20:24:05 ID:o5swmwm.
マルコ「よし。今度の休みに調律道具借りてくるよ。」
クリスタ「マルコ、調律できるの?」
マルコ「僕のおじさんが調律師でさ。調律のやり方、教えてもらったんだ。」
クリスタ「すごい!あっ、でも、その前にこのピアノ弾いてもいいか許可もらわないと。」
10: 2013/06/21(金) 20:24:40 ID:o5swmwm.
マルコ「じゃあ、今から一緒にキース教官のところへ行こう。」
クリスタ「一緒に行ってくれるの?」
マルコ「ああ。ちゃんとしたクリスタの演奏、聴きたいからね。」ニコッ
クリスタ「ありがとう。」///
11: 2013/06/21(金) 20:25:32 ID:o5swmwm.
「休日および自由時間になら好きにするがいい。」
キース教官は意外にもあっさりと許可をくれた。
クリスタ(優等生のマルコが一緒にお願いしてくれたから・・・。)
マルコ「良かったね。」
クリスタ「うん。マルコのおかげだよ。ありがとう。」
マルコ「いやいや。僕は何もしてないよ。じゃあ、次の休日だね。」
12: 2013/06/21(金) 20:26:09 ID:o5swmwm.
数日後。講義棟。
ガラッ。
マルコ「お待たせ~。」
ユミル「マルコ、おせぇよ。クリスタ待たせんな。」
クリスタ「こら、ユミル。そんなこと言わない。
わざわざ調律の道具取りに帰ってくれてたんだから。
本当にありがとう。」
13: 2013/06/21(金) 20:26:41 ID:o5swmwm.
マルコ「いいよ、いいよ。ちょっと家に用事もあったし。ついでだから。
でも、意外だな。ユミルもピアノに興味あるんだ。」
ユミル「んなわけないじゃん。私が興味あるのはクリスタだけ。
大切なクリスタを男と二人きりになんてさせたくないからね。」
クリスタ「ちょっと!マルコに失礼だよ。」
14: 2013/06/21(金) 20:27:19 ID:o5swmwm.
ユミル「ほら、さっさと調律しな。女神クリスタの演奏を私は早く聴きたいんだよ。」
クリスタ「もう!ユミル!あなたは黙ってて。
ごめんね。何か手伝えることある?」
マルコ「じゃあ、鍵盤のふたと天屋根はずすから、そっち側持ってくれる?」
クリスタ「分かった。・・・うんしょ。」
16: 2013/06/21(金) 20:28:11 ID:o5swmwm.
マルコ「重いから気をつけてね。・・・そっと床に置こう。
次に手前のパネルを外して・・・。」
クリスタ「ユミル、勝手に調律道具いじっちゃダメだよ。」
ユミル「この二股に分かれてるの何だ?」
マルコ「それは音叉。それを叩いて出る音と真ん中のラの音を合わせるんだ。」
17: 2013/06/21(金) 20:28:49 ID:o5swmwm.
ユミル「ラって何だ?」
クリスタ「この鍵盤から出る音のことだよ。」ポーン
ユミル「ふーん。他の音はどうやって合わせるんだ?」
マルコ「音叉で合わせたラの音を中心に1オクターブ下のラ、1オクターブ上のラを合わせるんだ。
他の音は自分の耳を頼りに調整していくんだ。」
18: 2013/06/21(金) 20:29:31 ID:o5swmwm.
ユミル「??? よくわかんないけど、マルコは耳がいいのか?」
マルコ「僕はそんなに良くないよ。
普通の人よりはちょっとだけ音感があるくらいで。
ピアノを小さいころからやってると絶対音感っていう、
すべての音をドレミファソで答えられる特殊能力がつく人もいるみたいだけど。
僕はそんなに一生懸命、練習しなかったからね。残念ながら絶対音感はないんだ。」
19: 2013/06/21(金) 20:30:22 ID:o5swmwm.
ユミル「クリスタはあんの?」
クリスタ「単音だったらね。和音だと三つぐらいまでなら問題ないけど、不協和音とかは厳しいかな。」
マルコ「それでもすごいよ。じゃあ、クリスタ、音合わせるの手伝ってね。
ええと、チューニングハンマーをこのピンにはめて・・・。」
20: 2013/06/21(金) 20:31:04 ID:o5swmwm.
―1時間後。
マルコ「よし、できたかな。試し弾きするから、おかしな音がないか聞いててね。」
クリスタ「いいよ。」
ユミル「マルコが弾くのかよ。」
マルコ「まぁ、そう言わないで。いくよ・・・」
21: 2013/06/21(金) 20:31:51 ID:o5swmwm.
大きく息を吐き身体の力を抜くと、鍵盤に置いた指を動かし始めた。
クリスタ(・・・シューマンの『トロイメライ』。
子どものころを思い出す郷愁を誘うメロディー。
優しく柔らかい音色。マルコらしいな。)
22: 2013/06/21(金) 20:32:27 ID:o5swmwm.
マルコ「ふぅ~。久しぶりに弾いたよ。音のずれは大丈夫そうかな?」
クリスタ「ええ、ばっちり。それより、マルコ、すごく上手で驚いたよ。」
マルコ「そう?そんなに難しくない曲だからね。」
クリスタ「そんなことないよ。簡単な曲ほど上手に聴かせるの難しいもん。
特にこの曲、演奏者の感性がそのまま出るから。
私はマルコの弾き方、好きだよ。」
23: 2013/06/21(金) 20:33:07 ID:o5swmwm.
マルコ「ははは。そんなに褒められると照れちゃうな///」
ユミル「・・・・」グスッ
クリスタ「あれ?ユミル涙ぐんでる。」
ユミル「う、うるさい///」グスッ
クリスタ「楽しかった出来事とか家族のこととか、優しい記憶が浮かんでくる曲だから。
ユミル悪ぶってるけど、本当は純粋なんだね。」
ユミル「ちがうし。」ゴシゴシ
24: 2013/06/21(金) 20:33:58 ID:o5swmwm.
マルコ「でもさぁ、ピアノって庶民の家庭には高級品だよね。
僕はおじさんが調律師だったおかげで、おじさんの家にピアノがあって練習できたけど。
クリスタの家って裕福なんだね。」
クリスタ「!! ううん、ぜんぜんそんなことないよ。えーとね、ピアノは・・・その・・・。」
ユミル「・・・・。」
25: 2013/06/21(金) 20:34:35 ID:o5swmwm.
クリスタ「・・・親戚の家に・・・たまたま置いてあって・・・。」タジタジ
ユミル「ほらっ!そんなのどうでもいいから、次はクリスタ弾いてよ。」
クリスタ「う、うんっ!」
マルコ「おっ、楽しみ。何弾いてくれるの?」
ユミル「私のためだけに演奏してくれるよな。」
26: 2013/06/21(金) 20:35:12 ID:o5swmwm.
クリスタ「うーん、何にしようかな。
さっきマルコが『トロイメライ』弾いてくれたから・・・。うん、決めた。」
クリスタは流れるような指さばきで弾き始めた。
ピアノから音が溢れ、流れ、教室中を満たした。
27: 2013/06/21(金) 20:35:45 ID:o5swmwm.
マルコ(・・・これはすごいぞ。リストの『愛の夢 第三番』。
何度か他の人の演奏を聴いたことがあるけど、こんなに透明感のある音は初めてだ。
常に流れるアルペジオを粒の揃った音できれいになめらかに弾きつつ、
左手、右手、交互に出てくるメロディーを芯を持った音できっちり出してくる。
素人の僕にだって分かる。彼女は本物だ。)
28: 2013/06/21(金) 20:36:23 ID:o5swmwm.
ユミル(ちょっとちょっと、何かヤバイんだけど。ものっそい指動いてるんだけど。
なのに微笑んで余裕で弾いてて。クリスタ、まじすげぇよ。
・・・めっちゃきれいな曲だな。弾いてるクリスタは女神そのものじゃん。
ずっと聴いていたい・・・)
29: 2013/06/21(金) 20:37:07 ID:o5swmwm.
クリスタ「むぅー・・・。久しぶりだと指がうまく回らないなぁ。」
マルコ「すごいよ!!感動したよ!!」
ユミル「やるじゃん。」ナデナデ
クリスタ「えへへ、ありがとう。『トロイメライ』って確か‘夢’って意味でしょ。
だから夢つながりでこの曲にしてみたの。」
30: 2013/06/21(金) 20:37:53 ID:o5swmwm.
マルコ「夢か・・・。クリスタって、もしかしてピアニストになることが夢だったんじゃない?」
クリスタ「!?とんでもない。私って手が小さいから・・・。
でも、子どもの頃はピアノの先生になるのが夢だったな。」
マルコ「そんなに上手なのにもったいないよ。
たくさんの人に君のピアノを聴いてもらうべきだよ。
どうして兵士になんかなろうと・・・。」
31: 2013/06/21(金) 20:38:52 ID:o5swmwm.
ユミル「まぁ、人にはそれぞれ事情があるじゃないの。詮索するのは野暮だよ。
でも、ピアノの先生って夢はここでも叶えられるんじゃないか?」
クリスタ「えっ?」
ユミル「生徒集めて、ここで教えればいいじゃん。クリスタ先生。」
32: 2013/06/21(金) 20:39:37 ID:o5swmwm.
マルコ「そうだよ。自由時間と休日はここ使っていいんだし。
クリスタがピアノを教えるって言ったら、みんな喜ぶよ。(主に男子が)」
クリスタ「・・・私なんかが教えていいのかな・・・。」
マルコ「もちろんだよ。自信持って。」
33: 2013/06/21(金) 20:40:09 ID:o5swmwm.
ユミル「じゃあ、クリスタピアノ教室の生徒募集のポスター書こうぜ。」
クリスタ「そうだね・・・。
それで、もし教えて欲しいって人が来れば、やってみようかな。」
マルコ「大丈夫。みんな飛びつくから。(主にラのつく人が)」
ユミル「早速ポスター作って、食堂の掲示板に張ろう。」
50: 2013/06/22(土) 20:41:03 ID:KX3C4stk
―その日の夕食時間 食堂
掲示板には一枚のポスターが新しく貼られていた。
『クリスタピアノ教室 生徒募集
ピアノの先生はじめました。
興味のある方は自由時間に講義棟・旧教室へお越し下さい。』
51: 2013/06/22(土) 20:42:03 ID:KX3C4stk
ザワザワ、ガヤガヤ
ベルトルト「ライナー、掲示板見た?」
ライナー「ああ。もちろんだ。」
ベルトルト「・・・やるんだな。」
ライナー「クリスタの個人レッスンだ。
ここは戦士として責任を果たさなくてはならない。」
ベルトルト「それなら僕も・・・。」
52: 2013/06/22(土) 20:42:37 ID:KX3C4stk
ライナー「いや、お前はいい。責任を果たすのは俺一人で十分だ。」
ベルトルト「ずるいぞ、ライナー。」
ライナー「何とでも言え。ここは譲れん。」
ベルトルト「別に、定員があるわけじゃないんだからいいだろう?」
ライナー「生徒が増えれば、一人当たりのレッスン時間が短くなる。
俺はできるだけ長くクリスタと二人の時間を過ごしたい。」
ベルトルト「でも、僕らだけじゃなさそうだよ。レッスン希望者。」
53: 2013/06/22(土) 20:43:26 ID:KX3C4stk
―別のテーブル
アルミン「ピアノかー。ちょっと弾いてみたかったんだよね。」
エレン「ピアノって何だ?」
ミカサ「私も知らない。」
アルミン「指を使って鍵盤を押さえて音をならす楽器だよ。
といっても本で仕入れた情報で、僕も実物は見たことはないけど。」
54: 2013/06/22(土) 20:44:00 ID:KX3C4stk
エレン「へぇ~。どんな音がするんだろうな。」
アルミン「エレンも興味ある?じゃあ、一緒にレッスン受けようよ。」
エレン「俺はいいよ。兵士に必要な技術じゃなさそうだし。」
ミカサ「そう。エレンはもっと立体機動術を私から学ぶべき。」
55: 2013/06/22(土) 20:44:36 ID:KX3C4stk
アルミン「でもピアノで演奏する曲って、外の世界から持ち込まれたものがほとんどなんだって。
昔、外の世界の人たちがどんな音楽を楽しんでいたのか僕は知りたいんだ。」
エレン「外の世界の音楽か・・・。
習うつもりはないけど、ちょっとだけのぞいてみようかな。」
ミカサ「エレンが行くなら私も行こう。」
アルミン「それじゃあ、明日の自由時間、みんなで行ってみよう。」
56: 2013/06/22(土) 20:45:10 ID:KX3C4stk
―翌日、自由時間
ガラッ
アルミン「お邪魔します。」
クリスタ「あっ、アルミンたちも来てくれたんだ。どうぞ、入って。」ニコッ
ユミル「予想以上にいっぱい来たな。」
マルコ「クリスタの人徳だよ。」
57: 2013/06/22(土) 20:45:50 ID:KX3C4stk
エレン「なんだ、いつものメンバーほとんど来てるじゃないか。」
コニー「俺は珍しそうだから見にきただけ。」
サシャ「美しい音楽はお腹が満たされると聞きましたので。」
ジャン「そりゃ心だろ。
俺はガキの頃ちょっと習ってたことがあるんでな。お前らを笑いに来ただけだ。」
アニ「私は暇つぶし。」
58: 2013/06/22(土) 20:46:20 ID:KX3C4stk
アルミン「じゃあ、レッスン希望は僕とライナーとベルトルトだけかな。」
ライナー「エレンとミカサは?」
エレン「俺らも見学。」
ミカサ「エレンに従うだけ。」
ライナー「そうか。」
ライナー(よし、三人で収まったか。これ以上増えるなよ。)
59: 2013/06/22(土) 20:46:52 ID:KX3C4stk
マルコ「もう、来ないかな?じゃあ、クリスタ先生どうぞ。」
クリスタ「先生だなんて/// えっと、ピアノをはじめて見る人は?」
ジャン以外「はーい」
クリスタ「うん。ほとんどだね。
それじゃあ、どんな音がするか、とりあえず弾いてみせるね。」
60: 2013/06/22(土) 20:47:38 ID:KX3C4stk
ユミル「クリスタ待ちな。さっき、ジャンも弾けるって言ってただろ。
ジャンに弾かせてみようぜ。」
ジャン「はぁ?なんでだよ。」
ユミル「ジャンはいつも口ばっかりでかいからな。弾けるなんてどうせ嘘だろ。」
61: 2013/06/22(土) 20:48:11 ID:KX3C4stk
ジャン「何言ってんだ。俺はトロスト区のモーツァルトと呼ばれた男だぞ。
家には足踏みオルガンしかなかったけどな。
弾いてやるから耳かっぽじって聴いとけ。」
マルコ「曲は?」
ジャン「ベートーベンの『エリーゼのために』だ。」
クリスタ(モーツァルトじゃないんだ。)
62: 2013/06/22(土) 20:48:51 ID:KX3C4stk
ジャン「よし、いくぞ。」
ピ口リ口リピ口リラ~♪
ユミル(これ、昨日と同じピアノか?こんなイヤな音だっけ?)
クリスタ(そんな叩きつけないで。荒いタッチだなぁ。ピアノがかわいそう。)
マルコ(いるんだよね。エリーゼ弾ければピアノが上手なつもりの人。
ノンレガートのゴツゴツしたエリーゼ。ある意味、斬新だな。
あっ、展開部入らず演奏終わっちゃった。そこからがいいところなのに。)
63: 2013/06/22(土) 20:49:44 ID:KX3C4stk
ジャン「はぁはぁ・・・。どうだ。」ドヤ
コニー「すげー。なんかいっぱい音がでるな。」
サシャ「どういう仕組みなんでしょうか?でも、ちっともお腹が満たされません。」
アルミン「鍵盤を下ろすと後ろに張ってある弦が弾かれるのか。なるほど。」
64: 2013/06/22(土) 20:50:23 ID:KX3C4stk
エレン「なんで息が荒いんだ?」
ミカサ「ピアノと戦ってたんでしょう。目が血走ってたし。」
ライナー「ピアノとは相当の覚悟を持って臨まなければならないのか。」
ベルトルト「自分とピアノ。負けることのできない戦い・・・か。」
アニ「・・・くだらない。」
65: 2013/06/22(土) 20:50:57 ID:KX3C4stk
ジャン「ちょっ、お前ら俺の演奏に感想はないのか。」
サシャ「はじめて聴くものなのでよく分からないです。」
コニー「ピアノを弾いてる人間見んのも初めてだから、
手で弾くのが正しいのかどうかさえ分からん。」
ジャン「正しいよ!!」
68: 2013/06/22(土) 22:26:28 ID:KX3C4stk
マルコ「まぁまぁ、じゃあ次はクリスタで。
クリスタの演奏を聴いたら、みんなジャンの評価もできると思うから。」
ユミル「ささっ、クリスタ先生どうぞ。折角だから、さっきジャンが弾いた曲やってよ。」
クリスタ「えっ?いや、でも、それは・・・。」
69: 2013/06/22(土) 22:27:11 ID:KX3C4stk
ミカサ「そうしてくれた方が判断しやすい。」
エレン「ピアノ勝負か。おもしろそうだな。」
ジャン「いいぜ。俺も正直なみんなの感想聞きたいし。」
ユミル「なっ、ああ言ってるし、やっちゃいな。」
クリスタ「うう・・・。しょうがないな・・・。」
椅子に座り、しばらく目を閉じ集中する。
教室にクリスタのピアノの音が流れ出すと、そこにいる全員が息を呑んだ。
70: 2013/06/22(土) 22:27:45 ID:KX3C4stk
マルコ(やっぱりすごいな。
昨日、クリスタに簡単な曲ほど上手に弾くのは難しいって言われたけど、その通りだな。
音数が少なければ少ないほど、弾き手の技術の優劣がはっきり出る。
ジャンは譜面に書いてある音符を、鍵盤の上で音に変換してるだけ。いわば、作業だ。
クリスタは一音一音に意味を持たせて、まるで物語を紡いでいるようだ。
喜び、切なさ、苦しみ、悲しみ、彼女の生み出す音はすべてを演じ表現する。まさに演奏だ。
ジャンには悪いがすべてにおいて比べ物にならないよ。)
71: 2013/06/22(土) 22:29:49 ID:KX3C4stk
アルミン(うわぁ。きれいな音だな。悲しげなメロディーが胸に迫ってくる。)
アニ(音に洗われて心がきれいになっていくみたい・・・。)
ユミル(切なげなクリスタの表情・・・。胸がきゅんきゅんする。)
ベルトルト(僕にはクリスタの背中に天使の羽根が見えるよ。)
ライナー(足元のペダルになりたい。)
72: 2013/06/22(土) 22:31:16 ID:KX3C4stk
クリスタ「・・・ふぅっ。ピアノってこんな音だよ。」
パチパチ パチパチ
コニー「すげぇよ。俺、よく分かんないけど、なんか体がビリビリッて震えたよ。」
サシャ「ジャンの時と違って、お腹、じゃなくて胸がいっぱいになりました。ごちそうさまです。」
ミカサ「そもそもジャンと同じ曲なの?クリスタの方が長い曲だった。」
マルコ「えーと、ジャンは曲の途中までだったから・・・。」
73: 2013/06/22(土) 22:32:06 ID:KX3C4stk
エレン「何だよ。最後まで弾けねぇのかよ。」
ジャン「うっせぇ。楽譜があれば弾けんだよ。あんな長いの全部覚えられるか。」
アニ「クリスタはばっちり覚えてたけどね。」
ジャン「はっ、弾けもしない奴らに文句言われたくないね。」
75: 2013/06/22(土) 22:32:51 ID:KX3C4stk
ライナー「だが、ジャン。クリスタに比べるとお前の腕前は・・・。」
ジャン「言われなくても分かってるよ。
クリスタに比べたらゴミみたいな演奏だったって。
でも、言っとくけど、クリスタと比べるからヘタクソなだけで、
俺の演奏自体はそんなに悪くなかったはずだ。
クリスタが別格すぎるんだよ。」
76: 2013/06/22(土) 22:34:27 ID:KX3C4stk
クリスタ「ううん、そんなことないよ。
私がジャンよりちょっとだけ多く、今まで練習をしてきただけだから。
今からピアノ再開すれば、あっという間に私より上手になるよ。」
ジャン「本当か?」
77: 2013/06/22(土) 22:36:48 ID:KX3C4stk
クリスタ「うん。そもそもピアノって女の人より男の人の方が向いてるんだ。
身体能力の高さや体格の良さは、表現の幅を広げるのに有利だから。
有名なピアニストも男の人の方が圧倒的に多いしね。」
マルコ「感受性豊かで繊細な表現は、なかなか男性には難しいけど、
豪快で力強い演奏は女性には向かないからね。」
78: 2013/06/22(土) 22:37:51 ID:KX3C4stk
エレン「じゃあ、あれか。男の身体能力を持った女が一番うまくなるのか?」
マルコ「もしくはその逆。女性の心を持った男性。
実際にピアニストにはゲOが多いらしいし。」
ユミル「それって・・・ミカサとライナーじゃんw」
83: 2013/06/23(日) 16:33:57 ID:k6wKB2Zo
ライナー「おいおい、俺はゲOじゃないぞ。」
ミカサ「アルミン。私、今、褒められているの?馬鹿にされているの?どっち?」
アルミン「褒められてるよ・・・多分。」
サシャ「じゃあ、ミカサも習ったらいいじゃないですか。きっと上手になりますよ。」
ミカサ「エレンがやらないことは私もやらない。」
84: 2013/06/23(日) 16:34:56 ID:k6wKB2Zo
コニー「なぁなぁ、ちょっとピアノ触ってみてもいいかー?」
クリスタ「いいよ。自由に音出してみて。」
エレン「俺も俺も。」
アルミン「僕も触ってみたい。」
ポーン♪ポロン♪ピロン♪
コニー「おおっ、簡単に音出んじゃん。」
クリスタ「鍵盤を押さえるだけで音が出るから。簡単でしょ?」
85: 2013/06/23(日) 16:35:34 ID:k6wKB2Zo
アルミン「ふむふむ。左の方へ行くと低い音。右の方へ行くと高い音になるのか。」
エレン「鍵盤一つ一つ音がちょっとずつ違うんだな。ポーン♪
・・・あっ、これはさっき聴いた音。この隣がこの音で・・・ポーン♪
3つ隣がこの音で・・・ポーン♪7つで1セットか・・・ポロロロロン♪」
コニー「エレン、お前さっきから何ぶつぶつ言ってんだよ。」
エレン「いや、よくわかんないんだけど、何かがわかるような・・・。」
コニー「はぁ?大丈夫か?」
86: 2013/06/23(日) 16:36:19 ID:k6wKB2Zo
エレン「・・・左から順番に白いのと黒いのを交互に右端まで押さえていって・・・」ピロピロピロピロ♪
クリスタ(エレン、半音階なんて弾き始めてどうしたのかな?)
マルコ(もしかして・・・音を確認してる・・・?)
エレン「よしっ。大体分かったぞ。」
アルミン「えっ?」
エレン「ちょっと椅子座らせて。
ジャン、お前がさっき弾いてた曲ってこれだろ?」ピロリロリピロリラ♪
ジャン「何!?」
87: 2013/06/23(日) 16:36:54 ID:k6wKB2Zo
マルコ「エレンすごいじゃないか!!
一本指打法だけど、右手、左手ちゃんと音をとれてる。」
アルミン「まさか、ジャンの押さえた鍵盤を1回見ただけで記憶したの?」
エレン「えっ?お前らわかんないの?さっきこの音してたじゃん。」
コニー「わかんないのって、わかんねぇよ。」
88: 2013/06/23(日) 16:37:39 ID:k6wKB2Zo
クリスタ「ちょっとエレン。
ピアノの鍵盤を見ないように後ろを向いて立ってくれるかな?」
エレン「ん?いいけど。」
クリスタ「今から弾く音を聴いてね。」
クリスタ(まずは単音の旋律で・・・)ポーン♪ポーン♪ポーン♪
クリスタ「エレンこっちに来て、今聴こえた音を出してみて。」
エレン「いいよ。」ポーン♪ポーン♪ポーン♪
89: 2013/06/23(日) 16:38:15 ID:k6wKB2Zo
クリスタ「ありがとう。また後ろ向いててね。じゃあ次ね。」
クリスタ(今度は三和音。ト調の主和音、下属和音、属和音。)ジャーン♪ジャーン♪ジャーン♪
クリスタ「また、今の音、出してみて。」
エレン「いいけど。」ジャーン♪ジャーン♪ジャーン♪
クリスタ「次いくね。」
エレン「はいはい。」クルッ
クリスタ(次もいけるかな?嬰ハ短の属七、減七、導七の和音。)ジャーン♪ジャーン♪ジャーン♪
クリスタ「どうぞ。」
エレン「こうだろ。」ジャーン♪ジャーン♪ジャーン♪
90: 2013/06/23(日) 16:38:53 ID:k6wKB2Zo
クリスタ「すごい!!全部正解だね。エレン、絶対音感があるよ!!」
エレン「何だそれ?」
クリスタ「音を聴いただけで、それが、どの音程か分かる能力だよ。」
エレン「そんなの、聴けば分かるんじゃないのか。」
マルコ「普通の人は分からないんだよ。
子どもの頃から音感を鍛えないと、なかなか身につかないんだけど・・・。
エレンは天性の絶対音感保持者なんだ。」
91: 2013/06/23(日) 16:39:35 ID:k6wKB2Zo
クリスタ「エレン、ぜひ、ピアノを弾いて。
神様が与えてくれた才能を無駄にしてはいけないわ。」
エレン「そんなこと言われてもなぁ。あんまり興味ないし。」
アルミン「エレン、一緒に習おうよ。そんな才能があるなんてすごいよ。
僕なんてちっとも音分かんなかったし。」
エレン「アルミンでも分かんなかったのか?ミカサは?」
ミカサ「音は音。何を理解するというの?」
アルミン「ねっ、君は特別なんだよ。」
92: 2013/06/23(日) 16:40:15 ID:k6wKB2Zo
エレン「そうか・・・。」
エレン(・・・ピアノだったらミカサを越えられるかもしれないのか?
一つぐらいミカサに勝てるものが欲しい・・・。)
エレン「よし。俺、ピアノやってみる。クリスタ、俺にも教えてくれ。」
クリスタ「良かった。こちらこそよろしくね。」
93: 2013/06/23(日) 16:40:53 ID:k6wKB2Zo
ミカサ「エレンがやるなら・・・。クリスタ、私も習いたい。」
エレン「お前はいいよ。何でも真似するなよ。」
ミカサ「でも・・・。」シュン
クリスタ「いいじゃない。ミカサもきっと上手になるから。一緒にがんばろうね。」
ミカサ「うん。」
ジャン「ミカサもやるのか・・・。俺もやっぱり教えてくれよ。クリスタ先生。」
クリスタ「もちろんだよ。」
94: 2013/06/23(日) 16:41:40 ID:k6wKB2Zo
ユミル「ってことは、
生徒はライナー、ベルトルト、ジャン、アルミン、ミカサ、エレンの六人だな。」
クリスタ「それじゃあ、レッスンは一時間ずつね。
月・ライナー、火・ベルトルト、水・ジャン、木・アルミン、金・ミカサ、土・エレンで。
レッスン時間以外は、このピアノでみんな自由に練習していいからね。
教本まだ用意できてないから、楽譜の読み方とか手のフォームとか
基本的なことからはじめるね。
レッスンはもちろん無料だけど、新しい教本や楽譜が必要になった場合は、
申し訳ないんだけど、自費でお願いするね。」
95: 2013/06/23(日) 16:42:23 ID:k6wKB2Zo
ライナー「了解した。」
ベルトルト「レッスン料とらないなんて、本当にいいの?」
クリスタ「うん。私、先生させてもらえるだけで嬉しいから。気にしないでね。」ニコッ
マルコ「それじゃあ、今日はもう遅くなったし解散だね。」
クリスタ「えーと、明日は火曜日だから、ベルトルトだね。
自由時間になったらこの教室に来てね。」
ベルトルト「うん。わかったよ。」
96: 2013/06/23(日) 16:43:23 ID:k6wKB2Zo
ユミル「はーい、撤収、撤収。」
「おつかれー」ガラガラ ピシャッ
ピアノの片付けに残ったクリスタとマルコ、ユミルを残し、皆、宿舎へ帰っていった。
マルコ「教本どうするの?」
クリスタ「うーん。やっぱり楽しくないと続かないからなぁ。
『バイエル』とか使いたくないなぁ・・・。」
97: 2013/06/23(日) 16:44:12 ID:k6wKB2Zo
マルコ「ちょっと難しくても、気に入った曲に挑戦する方が楽しいかもね。」
クリスタ「そうだよね。みんなには何か一曲選んでもらうとして・・・。
あとは『ル・デリアトゥール』使って、基本的なテクニックを身につけてもらおうかな。」
マルコ「うん。それでいいんじゃない。」
98: 2013/06/23(日) 16:44:55 ID:k6wKB2Zo
クリスタ「マルコ、今度の休みって空いてる?」
マルコ「いいよ。楽譜買いに行くんでしょ。付き合うよ。」
ユミル「もちろん、私も付いていくし。」
マルコ「僕の家にも、いくらか楽譜あるからそれも持って来るよ。」
クリスタ「マルコにはお世話になりっぱなしでゴメンね。ありがとう。」
99: 2013/06/23(日) 16:45:37 ID:k6wKB2Zo
マルコ「ん~、じゃあ、お礼に一曲弾いてくれない?」
ユミル「おい、調子にのんな。」
クリスタ「いいよ。そんなのでお礼になるなら。」
マルコ「やった。」
クリスタは椅子に腰掛け鍵盤に手をかけた。
クリスタ(訓練で疲れたみんながよく眠れますように・・・。)
♪~♪~~♪♪♪~~~♪~~~
100: 2013/06/23(日) 16:46:11 ID:k6wKB2Zo
マルコ(ショパンの『ノクターンOp.9-2』。静かな夜にぴったりだ。
甘く感傷的な主題が少しずつ形を変えながら何度も繰り返される。
左手の伴奏形はかなり音が飛ぶけど、決して雑にならず、
テヌートが嫌味にならない絶妙なバランスで効いている。
・・・あぁ、心が穏やかになる。)
101: 2013/06/23(日) 16:46:52 ID:k6wKB2Zo
クリスタ「・・・ふぅ・・・。少しはお礼になったかな?」
マルコ「十分すぎるくらいだよ。今日はいい夢が見られそうだよ。」
ユミル「もう1回聴かせてよ~。」
クリスタ「うふふ。また今度ね。それじゃ、蓋をしめて・・・。」
マルコ「天屋根閉めて・・・と。」
クリスタ「おやすみなさい。」
マルコ「うん。また明日ね。」
113: 2013/06/25(火) 13:58:26 ID:oKsu4Sd.
―次の休日。
小雨が降りしきる中、マルコは傘をさし宿舎前に立っていた。
クリスタ「遅くなってゴメンね。待った?」
マルコ「ううん。雨降っちゃったね。あれ?ユミルは?」
クリスタ「ユミル風邪ひいてて、あまり体調良さそうじゃなかったから、
この天気だし、無理やり置いてきちゃった。」
マルコ「そっか。ひどくなると大変だもんね。それじゃあ、行こうか。」
クリスタ「うん。」
二人は駅馬車の停留所に向かって歩き出した。
114: 2013/06/25(火) 13:59:11 ID:oKsu4Sd.
マルコ「レッスンは順調?」
クリスタ「うーん。一回ずつしかやってないから。ライナーはまだ見れてないし・・・。
でも、アルミンとミカサはさすがだよ。音符の読み方すぐ覚えちゃった。
一つ教えたら十以上のことを理解してくれるからすごく楽。」
マルコ「あの二人、座学の成績ずば抜けてるもんね。」
115: 2013/06/25(火) 13:59:50 ID:oKsu4Sd.
クリスタ「ベルトルトはとっても真面目。アルミンもだけど、私の言ったこと全部メモしてるの。
一生懸命覚えようとしてくれてて、嬉しくなっちゃった。
手がね、とっても大きくて、指が意外にほっそりと長くて。
本物のピアニストの手みたいなんだよ。ちょっとうらやましいかな。」
マルコ「ピアノに向かっているベルトルトは様になりそうだ。」
116: 2013/06/25(火) 14:00:27 ID:oKsu4Sd.
クリスタ「そうなの。かっこよくてびっくりしたよ。
ジャンはね、楽譜はばっちり読めるんだ。
でも、オルガンで練習してきたせいもあって、タッチが荒くって・・・。
そこをどうにか直せたら、きれいな演奏ができると思う。」
マルコ「ジャンは何でも器用にこなすから、教え方が良ければすぐに直るよ。」
117: 2013/06/25(火) 14:01:00 ID:oKsu4Sd.
クリスタ「うん。私、がんばるよ。
エレンは・・・、もう、無理に楽譜を読ませないことにした。
音符の読み方説明してたら、顔が?マークだらけになっちゃって。
エレンの場合、音ありきだから。とりあえず耳で聴いて覚えてもらって。
音と音符を結びつけるのは慣れてきてからでいいかなぁって。」
マルコ「ははは、エレンらしいね。」
118: 2013/06/25(火) 14:01:37 ID:oKsu4Sd.
クリスタ「でも、エレンすごいんだよ。
私が『きらきら星』弾いたら、すぐに音とって演奏してね。
もちろん、指使いはめちゃくちゃだから、一から教えたけど。
するとね、すべての調に移調して弾き始めて、びっくりしたよ。」
マルコ「エレンがどんな弾き手になるのか今から楽しみだね。」
クリスタ「もっと早くピアノ始めてたら、間違いなく神童だって騒がれてたと思う。
ちょっと遅かったけど、それでもエレンの才能に気づいてあげれて良かった。」
119: 2013/06/25(火) 14:02:14 ID:oKsu4Sd.
停留所に着くと、二人は駅馬車に乗り込んだ。
馬車の天井を覆う幌に雨粒が落ち、ボタボタという音が響く。
クリスタ「雨粒の音・・・。」
マルコ「ショパンの前奏曲『雨だれ』みたいだね。」
クリスタ「途切れなく続く変イ音がまるで雨粒の落ちる音に聴こえるんだよね・・・。
だけど私、この曲聴くとものすごく不安になるんだ。」
120: 2013/06/25(火) 14:02:52 ID:oKsu4Sd.
マルコ「そう?しっとりと穏やかな曲じゃない?
中間部は嬰ハ短調に転調して、暗く激しい感じになるけど。」
クリスタ「最初は雨粒の音なんだけど、転調してからは不気味な足音に聴こえて。
ささやかで幸せな生活を送っていても、後ろから悪魔の足音がどんどん近づいてきて、
気づいたときには手遅れで絶望する・・・。そんなイメージかな。」
121: 2013/06/25(火) 14:03:32 ID:oKsu4Sd.
マルコ「おもしろい解釈だね。
悪魔の足音か・・・。今の僕たちからすれば巨人の足音ってところかな。
だけど、最後は足音が一旦途切れ、また明るい変ニ長調に戻る。
絶望の後には救いがあるよ。」
クリスタ「前向きだね。マルコらしい。そっか、救いか。
私は最後の長調で、天国に召されたのかと思ってた。」
122: 2013/06/25(火) 14:04:06 ID:oKsu4Sd.
マルコ「ぷぷっ、クリスタ、後向きすぎるでしょ。」
クリスタ「もう、笑わないでよ。けっこう真剣に考えてたんだから。
・・・でも、嬉しいな。訓練兵になったら音楽の話なんてできないと思ってたから。
マルコがいてくれて良かった。」ニコッ
マルコ「///。僕も楽しいよ。
訓練兵になる前も、友達とこんなに深く音楽のこと話すことなかったから。」
123: 2013/06/25(火) 14:04:48 ID:oKsu4Sd.
クリスタ「友達か・・・。
私はね、周りに同年代の子がいなくて・・・、友達って呼べる人がいなかった。」
マルコ「そうなんだ・・・。」
クリスタ「だから、毎日、毎日ピアノを弾いてたの。
ピアノを弾いてたら、悲しいとか寂しいとか、そういうの忘れられるから。
だけど、訓練兵になってみたら、周りとどう接していいかよく分からなくてね。
そんな時、なぜかユミルが絡んできて・・・。
随分と彼女には助けられてるんだ。突飛な言動にはたびたび困らせられるけど。
私にとって、ユミルは初めての友達なんだ。
あっ、これユミルには内緒ね。すぐ調子に乗っちゃうから。」シー
マルコ「ははっ、分かったよ。
あっ、街に着いたみたいだ。降りよう。」
124: 2013/06/25(火) 14:05:28 ID:oKsu4Sd.
二人は書店、楽器屋をめぐり、めぼしい楽譜を買い集めていった。
クリスタ「とりあえず必要な楽譜と教本は揃ったかな。」
マルコ「それは良かった。それじゃ、そこのカフェでお茶にしよう。
雨の中、随分と歩いたから疲れたんじゃない?」
クリスタ「うん。街に出てくるの久しぶりだから、ちょっと人混みに疲れちゃった。」
125: 2013/06/25(火) 14:06:02 ID:oKsu4Sd.
店に入り、マルコはカフェオレを、クリスタは紅茶を注文した。
クリスタ「マルコってここの街、詳しいんだね。本屋さんの場所とかよく知ってたし。」
マルコ「あっ、言ってなかったけ。ここ、僕の地元なんだ。僕の家もすぐ近くだよ。」
クリスタ「知らなかった。でも、すごく助かったよ。マルコのおかげで買い物が早く済んだから。」
マルコ「それはそれは。お役に立てて光栄です。クリスタ姫。」
クリスタ「うふふ。もう、姫なんてやめてよ。」
126: 2013/06/25(火) 14:06:42 ID:oKsu4Sd.
マルコ「ははは。
ところで、クリスタってさ・・・、好きな人いるの?」
クリスタ「!?」///
マルコ「えっと、突然変なこと聞いてごめんね。
クリスタって男子にすごく人気があるからさ。ちょっと気になって。」
クリスタ「私って、人気あるの?」
マルコ「うん。告白とかされない?」
クリスタ「全然されない。むしろ、男の子たちから話しかけられることがほとんどないよ。
ちょっと寂しいくらい。」
127: 2013/06/25(火) 14:07:23 ID:oKsu4Sd.
マルコ(そうか。クリスタにはいつもユミルがべったりだしな。
ライナーたちも影で盛り上がるばっかりで、本人目の前にしたら固まってるし。)
クリスタ「私って男の子たちに嫌われてるのかな・・・。」シュン
マルコ「そんなことない。僕は好きだよ。」
クリスタ「えっ・・・?」///
マルコ「・・・あっ。」///
128: 2013/06/25(火) 14:07:54 ID:oKsu4Sd.
マルコ(まずい。早く何か言わないと・・・。)
マルコ「う、うん。そう、友達としてね。
クリスタ優しいし、趣味合うし、友達としてって意味で・・・。」///
クリスタ「そ、そうだよね。もう、やだな・・・、マルコってば・・・。」///
クリスタ(はぁー、びっくりした。そうよ、友達、友達。)
129: 2013/06/25(火) 14:08:28 ID:oKsu4Sd.
クリスタ「マルコのほうこそ好きな子いないの?」
マルコ「僕?僕は・・・、いないかな・・・。」
クリスタ「そっか。私ね、一度でいいから、恋してみたいんだ。
ピアノの曲って恋愛をテーマにしたものが結構あるでしょ。
私、恋したことないからうまく表現できなくて・・・。」
マルコ「難しいよね。僕は子どもの頃、好きだった子いたけど片思いで終わったから。
恋の喜びを表現しろって言われても、どう弾いていいのかさっぱりだよ。」
130: 2013/06/25(火) 14:09:11 ID:oKsu4Sd.
クリスタ「片思いって、・・・ふられたの?」
マルコ「ううん。告白すらしなかったよ。
僕の友達もその子のこと好きでさ。
争ってまでどうこうなりたかったわけじゃないし、自分の気持ちは胸に閉まっといたよ。」
クリスタ「マルコって欲がないよね。訓練の時も、一歩引いて他の人に譲ってることがあるから。」
131: 2013/06/25(火) 14:09:48 ID:oKsu4Sd.
マルコ「うーん・・・。
欲がないってわけじゃなくて、人と競争したり、ぶつかったりするのが苦手なんだ。
自分が諦めることで、物事がスムーズに流れるんなら、それでいいやって思っちゃう。」
クリスタ「その気持ち、私も分かるな・・・。
でも、それって、マルコの優しさでしょ。立派だと思うけど・・・。」
132: 2013/06/25(火) 14:10:28 ID:oKsu4Sd.
マルコ「優しさなんかじゃないよ。僕は臆病だから。争いを避けて自己防衛してるだけだよ。
欲しいものを欲しいって言える人間の方がよっぽど強くて立派だよ。」
クリスタ「だけど、どうしても譲れないものができたらどうするの?」
マルコ「んー、その時になってみないと分からないなぁ。
欲しいって言える勇気があればいいけどね・・・。
あっ、雨が止んだみたい。そろそろ出ようか。」
クリスタ「うん。」
133: 2013/06/25(火) 14:11:12 ID:oKsu4Sd.
店を出る。
クリスタ「奢ってもらっちゃった・・・。ありがとう。」
マルコ「いいよ、それぐらい。
ちょっと家に楽譜取りに行って来るから、その辺のお店で時間潰してて。」
クリスタ「わかった。」
クリスタは目に付いた一軒の雑貨屋に入った。
クリスタ(あっ、これとかユミルにいいかも。おみやげに買って帰ろう。)
134: 2013/06/25(火) 14:11:49 ID:oKsu4Sd.
―女子宿舎
クリスタ「ただいま~。ユミル調子はどう?」
ユミル「遅い!!今、何時だと思ってんだよ!!」
クリスタ「えっ?午後4時だけど。」
ユミル「こんな遅くまで病気の私を置いて、マルコと二人でどこ行ってたんだよぉ~~~。」
クリスタ「楽譜買いに行っただけだって。しかも全然遅くないし。
でも、だいぶ調子良さそうだね。良かった。」
135: 2013/06/25(火) 14:12:58 ID:oKsu4Sd.
ユミル「・・・何もされてない?何か変なこと言われたり、変なとこ触られたりしてない?」
クリスタ「もう!いい加減にしてよ。マルコはそんな人じゃないから。怒るよ。」
ユミル「あぅぅ・・・、だってさ・・・、心配だから・・・。」
クリスタ「はいはい。あっ、これユミルにおみやげ。」
ユミル「これは・・・、髪留め?」
クリスタ「うん。ユミル、だいぶ髪伸びてきたじゃない。
これだとシンプルで訓練の邪魔にならなそうでしょ。
髪の毛切るんだったら、必要ないけど・・・。」
136: 2013/06/25(火) 14:13:37 ID:oKsu4Sd.
ユミル「クリスタ、ありがと~。絶対、髪切らないし。まじ大好き。結婚してくれ!」ムギュ~
クリスタ(・・・僕は好きだよ・・・か。)///
ユミル「あっ、真っ赤になってる。ほんとクリスタはかわいいよ。」
クリスタ(・・・やだっ、私ってば何思い出してるの・・・。)///
137: 2013/06/25(火) 14:14:13 ID:oKsu4Sd.
―男子宿舎
マルコ「ただいま。あー、疲れた・・・。」ガシッ!!
マルコ「!?」
ベルトルト「さぁ、マルコ、そこに座ろうか。」
マルコ「え、ええと・・・。」
ライナー「今日は、お前とゆっくり話がしたくてな。」
マルコ「いや・・・、そんな、ぜんぜん、話すことないデス・・・。」
138: 2013/06/25(火) 14:14:57 ID:oKsu4Sd.
ベルトルト「今日はユミル、一緒じゃなかったみたいだねぇ。」
ライナー「クリスタと二人きりでお出かけ・・・って、まるでデートだな。」
マルコ「そ、そんなつもりじゃないし。やだな、二人とも笑顔が怖いよ。」
ベルトルト「時間はたっぷりあるから、クリスタの一挙一動、すみずみまで聞かせてもらおうかな。」
ライナー「まずは、クリスタの匂いについて語り合おうか・・・。」
マルコ(だれか助けて・・・。)
こうして長い夜は更けていった。
139: 2013/06/25(火) 14:15:47 ID:oKsu4Sd.
―月曜日、自由時間
クリスタ「ライナーは今日が初めてのレッスンだね。」
ライナー「ああ。」
クリスタ「じゃあ、とりあえず、演奏する時の姿勢から確認するね。
まずは、椅子の高さを合わせるよ。ちょっと座ってみて。」
ライナー「ああ。」
140: 2013/06/25(火) 14:16:23 ID:oKsu4Sd.
クリスタ「・・・・うん。はい、立っていいよ。
椅子の高さはね、鍵盤に手を置いたときに、手首と肘がほぼ水平になるように調整するの。
かなり椅子下げなくちゃ。やっぱりライナーって大きいね。」ニコッ
ライナー「ああ。」
クリスタ「・・・よいしょ。これぐらいの高さかな。もう一度座ってみて。」
ライナー「ああ。」
141: 2013/06/25(火) 14:17:04 ID:oKsu4Sd.
クリスタ「それで、両手を鍵盤に置いてみて。
・・・うん。椅子の高さはばっちりだね。今度からは自分で調整してみてね。
ほら、肩の力を抜いて、リラックスして。」ポンポン
椅子の後ろに立ち、ライナーの両肩をクリスタは優しくたたく。
ライナー「ああ。」
142: 2013/06/25(火) 14:17:49 ID:oKsu4Sd.
クリスタ「手の力も抜いて。指は伸ばさず軽くボールを握ってるような形で・・・。」
ライナーの後ろから、クリスタは腕を伸ばし、ライナーの手の形を整える。
ライナー(・・・俺の平常心もそろそろ限界だ・・・。
大きいねって、クリスタさんが言ったから、毎週火曜はピアノ記念日。
あぁ、めちゃくちゃいい匂いがする。ピアノ最高。)スーハースーハー
クリスタ「ほら、そんなに背中を丸めないで。背筋を伸ばして・・・。」サスサス
ライナー「む、無理・・・。」
クリスタ「顔赤いし、調子悪そうだけど大丈夫?」
143: 2013/06/25(火) 14:18:33 ID:oKsu4Sd.
ライナー「す、すまん。ちょっと手洗いに・・・。」
クリスタ「あっ、うん。行ってきていいよ。」
ガラッ。
前屈みのまま教室を出て行くライナー。
クリスタ「お腹の調子が悪かったのかな・・・。」
一人残された教室でクリスタは呟いた。
156: 2013/06/27(木) 13:55:20 ID:0GgHq1/w
―火曜日、自由時間
クリスタ「ト音記号の音符は読めるようになったかな?」
ベルトルト「うん。頑張って覚えてきたよ。」
クリスタ「よかった。じゃ、今日はヘ音記号の音符の読み方をやるんだけど、
その前に、はいっ、これ教本。」
ベルトルト「これ、何て書いてあるの?」
クリスタ「『ル・デリアトゥール』。指の基礎練習の本だよ。
運動する前の準備体操みたいなものかな。
毎日、10分でもいいから、ちゃんとした指の形でその本に取り組むと、
あっという間に上手になるよ。」
157: 2013/06/27(木) 13:55:55 ID:0GgHq1/w
ベルトルト「そうなの?」
クリスタ「うん。騙されたと思ってやってみて。
あっ、もちろん今からその本の使い方も指導するから。」
ベルトルト「わかった。」
クリスタ「それとね、その本だけじゃおもしろくないから、
みんなには自分で練習曲を一曲選んでもらおうと思って。
初心者でもがんばれば弾けそうな楽譜をいろいろ用意したよ。」バサッ
ベルトルト「うわっ、たくさんあるな。」
158: 2013/06/27(木) 13:56:43 ID:0GgHq1/w
クリスタ「どんな曲がいいかな~。
最初だし、やっぱり、ゆったりめの曲じゃないと難しいよね・・・。」
ベルトルト「クリスタに任せるよ。僕、よく分からないし。」
クリスタ「わかった。ベルトルトに似合いそうなのは・・・。
これ、どうかな?ちょっと弾いてみるから聴いててね。」
♪~~♪~~♪~♪♪~~~
ベルトルト(優しく穏やかで、どこか懐かしい・・・。
クリスタが僕のために選んでくれた曲だ。すごく嬉しい。)
159: 2013/06/27(木) 13:57:22 ID:0GgHq1/w
クリスタ「こんな感じの曲だけど、どうかな?」
ベルトルト「うん。気に入ったよ。ぜひ、その曲を弾けるようになりたいな。」
クリスタ「よかった。」
ベルトルト「何ていう曲?」
クリスタ「シューマンの『見知らぬ国と人々について』」
ベルトルト「不思議な曲名だね。」
160: 2013/06/27(木) 13:58:07 ID:0GgHq1/w
クリスタ「この曲はね、『子どもの情景』っていう曲集の中の一つでね。
子供の心を描いた作品なんだ。
でも、子ども向けってわけじゃなくて、大人が遠い日々を思い出しながら弾く感じ。
子どもの頃持っていた、まだ知らない世界への憧れとか不安とか、
そういう気持ちを表した曲かな。」
ベルトルト「なるほど。だから、初めて聴く曲なのに、懐かしさを感じるんだね。」
161: 2013/06/27(木) 13:58:43 ID:0GgHq1/w
クリスタ「うん。優しい温もりに包まれる曲。
もの静かで穏やかなベルトルトにぴったりだと思うよ。
それにね、この曲、ベルトルトの手の大きさを活かせるんだ。
左手の伴奏部分がね、小さな手だと音が途切れちゃうの。
私はペダル踏んでごまかしてるけど、
やっぱりちゃんと音をつないで弾いた方がきれいだから。」
ベルトルト「難しそうだけどできるかな?」
クリスタ「大丈夫。最初は片手ずつゆっくり練習するから。」
162: 2013/06/27(木) 13:59:41 ID:0GgHq1/w
ベルトルト「よろしくね。
それより、ライナーはどんな曲選んだの?
昨日はライナーのレッスンだったよね。」
クリスタ「うふふ。気になる?」
ベルトルト「うん。やっぱり、クリスタの選曲?」
クリスタ「そうだよ。
戦士にふさわしい格好いい曲を弾きたい、って言うからこの曲を勧めたの。」
♪♪~♪♪♪~~
163: 2013/06/27(木) 14:00:23 ID:0GgHq1/w
ベルトルト(重々しくて悲しいメロディー。だけど壮大で心に響く・・・。)
クリスタ「こんな曲。」
ベルトルト「確かに格好いいね。何ていう曲?」
クリスタ「ヘンデルの『ハープシコード組曲第4番 ニ短調 サラバンド(HWV437)』」
ベルトルト「長くて覚えれない・・・。」
164: 2013/06/27(木) 14:00:58 ID:0GgHq1/w
クリスタ「ごめんごめん。ヘンデルの『サラバンド』でいいよ。
ヘンデルさんって人、『サラバンド』っていう曲をたくさん書いてるから、
他の曲と区別するために色々と題名に付いてるんだ。
でも、この『サラバンド』が一番有名だよ。」
ベルトルト「そうなんだ。ライナーの無骨な感じが出てて、良い選曲だと思うよ。」
クリスタ「うふふ。ありがとう。
それじゃ、レッスン始めようか。まずは先週のおさらいから・・・。」
165: 2013/06/27(木) 14:01:51 ID:0GgHq1/w
―水曜日 自由時間
ジャン「だからさ、簡単なんだけど『おぉ~、すげぇ』って言われる曲が弾きたいんだって。」
クリスタ「難しい注文だなぁ。」
ジャン「もちろん、エレンよりイカした曲ってのが前提で。」
クリスタ「エレンはまだ曲決めてないし。
ジャンはピアノ経験あるから、曲の難易度がちょっと高くても大丈夫そうだけど。」
166: 2013/06/27(木) 14:02:34 ID:0GgHq1/w
ジャン「難しい曲は勘弁してくれ。俺は地道に練習する気ないんでね。
初見で弾ける程度で、ドラマチックで疾走感があって、心が震える曲。」
クリスタ「もう、無理ばっかり。
疾走感って言ったら、それなりに速い曲になるよ。」
ジャン「速弾きなら自信がある。
ただ譜読みが大変なやつとか、音飛びが激しいのは面倒くさい。」
167: 2013/06/27(木) 14:03:29 ID:0GgHq1/w
クリスタ「うーん。ハチャトゥリアンの『少年時代の画集』って使ったことある?」
ジャン「ない。」
クリスタ「その中の『エチュード』って曲なんだけど・・・。」
♪♪~♪♪♪♪~♪♪~
ジャン(やべぇ、これ超かっこいい。
譜面を見る限り難易度はそんなに高くないのに、なんだこの緊迫感。
胸騒ぎがして、何ともいえない焦燥感にかられる。
無機的で冷たい感じの曲なのに、心がどんどん熱くなるぜ。)
168: 2013/06/27(木) 14:04:29 ID:0GgHq1/w
クリスタ「・・・ふぅ。どうかな?」
ジャン「この曲に決めた。絶対、エレンには弾かせないでくれ。」
クリスタ「それは約束できないよ。エレンだって弾きたいって言うかもしれないし。」
ジャン「頼む。この曲だけは。」ペコリ
手を合わせ、頭を下げるジャン。
クリスタ「しょうがないなぁ。わかったよ。
そのかわり、練習は真面目にしてね。」
ジャン「サンキュ。」
169: 2013/06/27(木) 14:05:08 ID:0GgHq1/w
ジャン(これで、ミカサに格好いいとこ見せれるぜ・・・。)
クリスタ(エレンは教えなくても、ジャンの演奏聴いたら、
勝手に覚えて弾いちゃうだろうな・・・。)
クリスタ「じゃ、レッスン始めよっか。」
ジャン「あぁ。ばっちり弾けるように頼むぜ。」
172: 2013/06/27(木) 15:13:10 ID:0GgHq1/w
―木曜日 自由時間
クリスタ「はい、これ。アルミン専用の教本。用意しておいたよ。」
アルミン「ありがとう。」
クリスタ「でも、本当にいいの?基礎から始めたら、あんまり楽しくないよ。」
アルミン「うーん、楽しさは求めてないって言ったら嘘になるけど、
どうせ習うなら本格的な技術と知識を身につけたいからね。」
クリスタ「うふふ。アルミンは偉いね。
それじゃ、その『バイエル』と『プレインベンション』を練習しつつ、
楽典もしっかり教えるからね。」
173: 2013/06/27(木) 15:13:49 ID:0GgHq1/w
アルミン「うん。よろしくお願いするよ。
それと・・・、クリスタ、曲の作り方って知ってるかな?」
クリスタ「えっ?」
アルミン「ほら、ここにある曲は全部、壁の外から来たものでしょ?」
クリスタ「そうだけど・・・。」
174: 2013/06/27(木) 15:14:26 ID:0GgHq1/w
アルミン「巨人のいなかった時代、人々は音楽を生み出していた。
音楽だけじゃなく文学や絵画、いわゆる芸術を楽しんでいたんだ。
だけど、巨人が出現して壁の中に閉じこもってからは、
生きることに精一杯で、新しいものを創造する余裕がなくなった。
巨人への恐怖が、人間から自由な発想力を奪い去ったんだ。
人は思考して初めて人といえる。
何も考えずただ生きるのは、エレンじゃないけど、家畜と一緒だと思う。
今、人類は本来の人間らしい文化的な生活から、随分後退しているんだ。
僕はそれが悔しい。巨人なんて関係ない。人間らしく生きたい。
だから、僕は壁の中で新しい音楽を作ってみたいと思ったんだ。」
175: 2013/06/27(木) 15:15:19 ID:0GgHq1/w
クリスタ「すごいよ、アルミン!新しい音楽か・・・。考えたこともなかった。」
アルミン「だけど、いざ曲を作ろうと思っても、どうすればいいのかさっぱりでさ。
偉そうなこと言ったけど、今の僕にはできそうにないんだ。
だから、クリスタ、僕に作曲方法を教えて欲しい。」
クリスタ「ごめんなさい・・・。
作曲には、和声楽とか楽式論とか、音楽理論の知識が必要になると思うんだけど・・・。
私、そういうの、あまり詳しくなくて・・・。教えれないんだ・・・。」シュン
176: 2013/06/27(木) 15:16:04 ID:0GgHq1/w
アルミン「そっか・・・。気にしないでよ。
壁に閉じこもって百年。誰もやらなかったことをやろうとしてるんだから、
そんなに簡単なことじゃないってのは覚悟してるから。」
クリスタ「先生なのに・・・。本当にごめんね・・・。」
アルミン「やだなぁ。そんなに落ち込まないでよ。
大丈夫。本でも調べながら試行錯誤してみるよ。」
クリスタ「うん・・・。ありがとう。」
アルミン「それじゃ、今日もレッスンお願いするよ。」
177: 2013/06/27(木) 15:16:46 ID:0GgHq1/w
―レッスン後
アルミンは宿舎へと歩いていた。
アルミン(クリスタのこと困らせちゃった。レッスン中、ずっと元気なかったし。
自信なくさせたかな。うーん、どうしよう・・・。
あ、マルコがいる・・・。)
アルミン「おーい、マルコー。」
マルコ「やあ、アルミン。どうしたの?今日は確かピアノの日だっけ。」
アルミン「そうだよ。今終わって宿舎に帰るところ。」
マルコ「そう。どうだった?今日のレッスン。」
アルミン「それが―――――」
178: 2013/06/27(木) 15:17:31 ID:0GgHq1/w
―旧教室
クリスタは窓枠に座り、夜空をぼんやり眺めていた。
クリスタ(ダメだなあ・・・私。
アルミン、せっかくやる気出してくれてるのに、
それに応えることができないなんて。先生失格・・・。)
179: 2013/06/27(木) 15:18:16 ID:0GgHq1/w
ガラッ
マルコ「お邪魔するよ。」
クリスタ「マルコ・・・。」
マルコ「アルミンから大体話は聞いたよ。
音楽理論か~。弾き手にはあまり必要な知識じゃないからね。
勉強してなくて当たり前だよ。」
クリスタ「でも、先生やる以上、何でも教えてあげられなくちゃ。」
180: 2013/06/27(木) 15:19:09 ID:0GgHq1/w
マルコ「アルミンには音楽理論、僕が教えるよ。
和声学の基本ぐらいなら分かるから。
だから、クリスタは実技の方をしっかり見てあげてよ。」
クリスタ「それじゃ、ダメだよ。
ろくに生徒の質問に答えられない、マルコには頼りっぱなし。
これじゃ、おままごとの先生じゃない。
やっと、この場所で自分ができることを見つけたの。
いい加減にはしたくないの。」
181: 2013/06/27(木) 15:19:55 ID:0GgHq1/w
マルコ「ん~、それじゃあ、アルミンとクリスタと僕、三人で一緒に勉強しようよ。
音楽理論について、僕ももっと学びたいし。」
クリスタ「でも・・・、それって、やっぱりマルコの迷惑になる・・・。」
マルコ「迷惑じゃないよ。何でも一人でしようとしないで。
困ったときは誰かに頼ればいいよ。」
クリスタ「だけど・・・。自分のことは自分で・・・。」
182: 2013/06/27(木) 15:20:39 ID:0GgHq1/w
マルコ「はぁ・・・。」
大きな溜息をつくと、マルコはピアノに向かい、椅子を鍵盤の中心より右にずらした。
その左隣にもう一脚、椅子を置いた。
マルコ「クリスタ、こっちに来て座って。」
クリスタ「えっ?」
マルコ「いいからさ、右側に座ってね。僕は左側。」
クリスタ「?」
183: 2013/06/27(木) 15:21:39 ID:0GgHq1/w
マルコ「パッヘルベルの『カノン』弾ける?」
クリスタ「うん。」
マルコ「いつもより1オクターブ上で弾いてくれるかな。」
クリスタ「いいけど・・・。」
♪~~♪~~♪~~♪~~
教室に、明るく落ち着いた旋律が流れる。
クリスタ(もともとピアノ曲じゃなくて、四重奏の室内楽の曲だから・・・。
ピアノだともの足りないな・・・。)
184: 2013/06/27(木) 15:22:21 ID:0GgHq1/w
オスティナート主題が四回繰り返されたところで、
マルコは鍵盤に手をかけ演奏に加わった。
音が交差し、一瞬で華やかになる。
クリスタ(すごい!寂しく頼りなかった音が、マルコの音にしっかり支えられる。
マルコの弾く通奏低音が演奏に深みを増し、右手は私の弾く主題を追いかけて・・・。
音が絡み、縺れ、一体となって流れていく。なんて心地いいんだろう。)
185: 2013/06/27(木) 15:23:09 ID:0GgHq1/w
演奏が終わると、クリスタはうっとりと甘美な余韻に身をゆだねていた。
クリスタ「音に包み込まれて、まだ頭がふわふわしてる。」
マルコ「連弾は初めて?」
クリスタ「うん。ずっと一人で弾いてたから。」
マルコ「そっか。」
クリスタ「マルコの音と調和して、弾いててすごく気持ちよかった。」
マルコ「うん。」
クリスタ「一緒に弾くのがこんなに楽しいなんて知らなかった。」
マルコ「ね。一人よりずっといいでしょ。」
クリスタ「・・・あっ。」
186: 2013/06/27(木) 15:23:54 ID:0GgHq1/w
マルコ「何でもかんでも自分一人で抱え込もうとしないでさ。
困ったときはお互い様だし。」
クリスタ「・・・うん。」
マルコ「僕じゃ頼りないかもしれないけど。」
クリスタ「そんなことないよ。でも、マルコすごいね。
さっきの『カノン』、即興で合わせたの?」
マルコ「即興というか、『カノン』は和音進行が最後まで変わらないから、
和音を適当に分散させてれば、何とかなるんだよ。」
187: 2013/06/27(木) 15:24:33 ID:0GgHq1/w
クリスタ「うーん、和声学ってやっぱり大事なんだね。」
マルコ「でもさ、古い音楽理論にこだわる必要はないと思うんだ。
アルミンは新しい音楽を作りたいって言ってるんでしょ。
昔ながらの手法じゃなく、自由な発想で作ればいいんだよ。
音楽なんだから、楽しまなくちゃ。」
クリスタ「そっか。そうだよね。
ありがとう、マルコ。気が楽になったよ。」
マルコ「よかった。
それじゃ、今日はもう遅いから宿舎に戻ろう。」
クリスタ「うん。また明日ね。おやすみなさい。」
195: 2013/06/30(日) 20:05:41 ID:7SVZy61U
―金曜日 自由時間
ミカサ「うぅ・・・、ぐすっ・・・。」
クリスタ(どうしよう・・・。泣かせちゃった・・・。)
クリスタ「ね、もう1回やってみよ。
たん・うん・うん・たん・たん・うん・うん・たん・・・。」
「たん」で手を叩き、「うん」は手を握る。
ミカサ「たん・うん・たたん・うん・たん・たたん・・・
やっぱり、できない・・・、うぅ・・・」グスッ
196: 2013/06/30(日) 20:06:23 ID:7SVZy61U
クリスタ(まさか、ミカサがリズム音痴だったなんて。しかも重度の。)
クリスタ「大丈夫。慣れたらすぐにできるようになるから、ね?」ナデナデ
ミカサ「こんな簡単なことができないなんて・・・。
これじゃ・・・、ひっく、エレンを守れ・・ひっく・・ない・・・」シクシク
クリスタ「リズムが取れなくても、エレンのこと守れるから。」ナデナデ
197: 2013/06/30(日) 20:07:07 ID:7SVZy61U
ミカサ「私・・・、ピアノに向いてない・・・。」グスッ
クリスタ「そんなことないよ。
楽譜の読み方あっという間に覚えたし、手のフォームだって一番きれい。
打鍵も安定してるから、音だって初心者と思えないぐらいしっかり出てるよ。」
ミカサ「でも・・・、リズム・・・。」
クリスタ「誰にだって苦手なことはあるよ。最初から何でもできる人なんていないよ。」
198: 2013/06/30(日) 20:07:50 ID:7SVZy61U
ミカサ「私は何でもできる。今までは何でもできてた。・・・でも、できない・・・。
自分をうまくコントロールできない・・・。こんなこと、はじめて・・・。」
クリスタ(ミカサにとって、初めての挫折なのね・・・。
いつも気丈なミカサが落ち込んでる。・・・ちょっとかわいい。)
ミカサ「エレンにはできることが、私にはできない。そんなのダメ。
すべてにおいて常にエレンの先を歩いていないと、彼を守ることができない。」
199: 2013/06/30(日) 20:08:56 ID:7SVZy61U
クリスタ「・・・ねぇ、どうしてエレンを守ろうとするの?」
ミカサ「家族だから。」
クリスタ「家族か・・・。でもさ、家族って助け合うものじゃないの?
ミカサばっかり頑張る必要ないと思うけど・・・。」
ミカサ「エレンは・・・、私が支えないと生きていけない。」
クリスタ「それ、エレンに失礼だよ。エレン、赤ちゃんじゃないんだから。
ミカサはエレンのお母さんのつもりなの?」
200: 2013/06/30(日) 20:09:35 ID:7SVZy61U
ミカサ「・・・そう、私はおばさんにエレンのことを頼まれた。
だから、私が母親代わり・・・。」
クリスタ「母親じゃ・・・、恋人になれないよ?」
ミカサ「!?」///
クリスタ「ミカサのこと見てたら分かるよ。エレンのこと好きなんでしょ。」
ミカサ「な、何を言っているの?私は家族であって、好きとか・・・そんなんじゃ・・・」///
201: 2013/06/30(日) 20:10:10 ID:7SVZy61U
クリスタ「じゃあ、たとえば私がエレンの恋人になってもいいの?」
ミカサ「それはダメ。絶対に。」
クリスタ「どうして?ミカサはエレンのこと好きじゃないんでしょ?」
ミカサ「そんなわけ・・・ない。でも、家族の好きであって・・・。」///
クリスタ「いつまでもそんな風に自分の気持ちごまかしてたら、エレン誰かにとられちゃうよ?」
ミカサ「それは嫌・・・。」
202: 2013/06/30(日) 20:10:48 ID:7SVZy61U
クリスタ「ね、そろそろ母親をやめたら?
このままだと、エレンはミカサのこと母親のような存在としか思わないよ。
男の子なんだもん。守られるより、守りたいはず。」
ミカサ「・・・そうかな・・・。」
クリスタ「うん。そうだよ。だから、ミカサは頑張り過ぎないでいいの。
ちょっとくらいできないことがあっても大丈夫。
むしろ、エレンのこと頼るくらいの気持ちでいいんじゃないかな。」
クリスタ(って、昨日マルコに言われたことをまねてみる。)
203: 2013/06/30(日) 20:11:33 ID:7SVZy61U
ミカサ「頼る・・・。」
クリスタ「エレンね、音感だけじゃなくってリズム感もすごくいいの。
リズム打ちの練習、つきあってもらったら?」
ミカサ「・・・そうする。」
クリスタ「よかった。・・・それじゃあ、ミカサの練習曲決めようかな。」
ミカサ「うん。」
クリスタ「今回は、リズムが簡単なのにしようね。
シンコペーションのリズムが無くて、ミカサの良さをいかせる曲・・・。」ゴソゴソ
204: 2013/06/30(日) 20:12:09 ID:7SVZy61U
クリスタ「うん。これにしよう。バッハの『平均律クラヴィーア曲集第一巻 1番 プレリュード』」
ミカサ「?」
クリスタ「この本、結構難しいんだけど、このプレリュードだけは初心者でも大丈夫。」
ミカサ「楽譜見せて。」
クリスタ「いいよ。譜読みしてみて。」
ミカサ「・・・・・・・・。」
クリスタ「ハ長調だし、ミカサだったら初見で弾けるかも。」
205: 2013/06/30(日) 20:12:45 ID:7SVZy61U
ミカサ「ちょっと弾いてみる・・・。」
♪♪♪♪♪♪♪♪~
クリスタ(ミサカすごいな。もう鍵盤感覚が身についてる。習い始めたばかりなのにね。
一音、一音、打鍵も深く、まだ教えてないのにレガート奏法が自然とできてる。
タッチの良さは天性のものね。譜読みも早くて正確。やっぱり頭いいんだなぁ。
まだぎこちないけど、的確に16分音符を刻んでいく。
直していくところはたくさんあるけど、
ミカサの感情を抑えて淡々とひく弾き方はこの曲に合ってるかな。)
206: 2013/06/30(日) 20:13:27 ID:7SVZy61U
パチパチパチパチ
クリスタ「初めてなのに、すっごく上手だよ。」
ミカサ「本当?」
クリスタ「うん。どう、この曲?」
ミカサ「いろんな感情がすぅっと溶けて消えて・・・。心が静かになる。
すごく落ち着く。私、この曲練習したい。」
クリスタ「よかった。じゃあ、レッスン続けよう。」
ミカサ「うん。」
207: 2013/06/30(日) 20:14:01 ID:7SVZy61U
―レッスン後
クリスタが帰った後の教室で、ミカサは一人手を叩いていた。
ミカサ「たん・うん・うん・うんたん・うん・たたん・うん・・・」
ミカサ(こんなことができないなんて悔しい・・・。情けない・・・。)
ミカサ「たん・ったたん・うん・うん・たん・うん・たたん・・・」
ミカサ「・・・何度やってもできない・・・。」シュン
208: 2013/06/30(日) 20:14:40 ID:7SVZy61U
ガラッ
エレン「ミカサいる?」
ミカサ「!?なぜ、ここへ?」
エレン「いや、なんかクリスタがとにかく行けって・・・。」
ミカサ(クリスタのお節介・・・。)
エレン「なんだ、これ?小さな子どものためのリズム練習?」
エレン(そういえばクリスタ、何があっても絶対に笑うなって言ってたな・・・。)
209: 2013/06/30(日) 20:15:24 ID:7SVZy61U
ミカサ「練習中・・・。」
エレン「ふーん。たん・うん・うん・たん・たん・うん・うん・たん・・・か。
簡単じゃん。なんでこんなの練習すんだよ。」
ミカサ「簡単じゃない。私は・・・それができない。」シュン
エレン「えっ?マジで?」
ミカサ「・・・」コクン
エレン「ちょっとやってみせろよ。」
210: 2013/06/30(日) 20:16:01 ID:7SVZy61U
ミカサ「わかった・・・。
たん・・・うん・うん・・うん・たん・うん・たたん・・・」
エレン(ぷぷっ。ミカサがカクカクしてる。やばい、おもしれぇw)
ミカサ「たたん・うん・うんたん・うん・うん・たん・・・」
エレン(でも、笑っちゃいけないんだよな。はぁー、深呼吸・・・)
エレン「ミカサ、落ち着け。俺のあとに真似してみろよ。」
ミカサ「うん。」
211: 2013/06/30(日) 20:16:42 ID:7SVZy61U
エレン「たん・うん・うん・たん・たん・うん・うん・たん」
ミカサ「たん・うん・うん・うん・たん・うん・たん・うん」
エレン「たん・うん・うん・たん・たん・うん・うん・たん」イラッ
ミカサ「たん・うん・たたん・うん・うん・たん・うん・うん」
エレン「たん・うん・うん・たん・たん・うん・うん・たん」イライラッ
ミカサ「うん・うん・たん・うん・たたん・うん・うんた・たん」
213: 2013/06/30(日) 20:17:46 ID:7SVZy61U
エレン「あー、もう!お前、わざとだろ!真面目にやれよ!」
ミカサ「そんな!?私は真剣にやっている・・・。」
エレン「だって、こんなの誰でもできるだろ!」
ミカサ「それが、私にはできないの!!・・・うぅ・・・うぁぁぁぁん・・・」
ガラッ
ミカサは泣きながら教室を走って出て行く。
214: 2013/06/30(日) 20:18:37 ID:7SVZy61U
エレン「おっ、おい。」
エレン(冗談抜きでできないのか・・・。あのミカサだぞ。
なんでも器用にこなし、いつも俺の前を行くあのミカサが・・・泣いてた。
できないって泣いてた・・・。)
エレン「うーん、明日なんて謝ろう・・・。」
一人残された教室でエレンは頭を悩ませた。
220: 2013/07/02(火) 15:33:19 ID:QXJcmXFc
レスありがとう。ゆっくり進行でスマン。
続きいきます。
続きいきます。
221: 2013/07/02(火) 15:34:58 ID:QXJcmXFc
―土曜日 自由時間
クリスタ「エレンの馬鹿!鈍感!アホ!」ポカポカ
エレン「そんな叩くなよ。だから、反省してるって。」
クリスタ「ミカサ、昨晩、ずっと宿舎で泣いてたんだから!」ポカポカ
エレン「今日、ちゃんと謝ったんだからいいだろ。」
クリスタ「よくないよ。ミカサ、ずっと元気ないじゃん。
エレンは不器用だから、できない人の気持ちがよく分かるでしょ。」
エレン「ちょっ、ひどくないか?それ。確かに俺は不器用だけど・・・。」
222: 2013/07/02(火) 15:35:36 ID:QXJcmXFc
クリスタ「立体機動の姿勢制御訓練、最初はエレン、ボロボロだったじゃない。
あの時ミカサはどうしてくれた?」
エレン「あれはベルトの装備の欠陥で、俺が無能なわけじゃない。」
クリスタ「そんなことはどうでもいいの。
できないエレンのこと、ミカサは笑った?馬鹿にした?怒った?」
エレン「・・・うまくいくようアドバイスしてくれて、練習につきあってくれた。
それでも結果のでない俺に、一緒に兵士になるのやめようって・・・。」
223: 2013/07/02(火) 15:36:11 ID:QXJcmXFc
クリスタ「その時エレンはどんな気持ちだった?」
エレン「そりゃ、惨めだったよ。情けなかったよ。
誰でも簡単にできることが自分にはできないんだからな。」
クリスタ「そう。ミカサはまさに今その気持ち。
しかも装備の欠陥とかっていうベタなオチはないの。
自分の感覚は他の人と交換できないから。
正直ね、あそこまでひどいリズム感は矯正が難しい・・・。
彼女は生涯、リズム音痴という理由のない悲運に見舞われてしまうの。」
エレン「そんなにひどいのか・・・。」
224: 2013/07/02(火) 15:36:46 ID:QXJcmXFc
クリスタ「うん。治すには相当の努力が必要だと思う。
リズム感なんて生きていくのに必要のないものだけど、
ミカサの中では一生、できないことへの劣等感が残っちゃう・・・。」
エレン「俺は不器用だけど、努力して何事も人並み以上にはできるようにしてきた。
負けず嫌いだからな。ミカサも涼しい顔してるけど、本当は俺と同じで負けるのが嫌いだ。
悔しいだろうな・・・。」
225: 2013/07/02(火) 15:37:28 ID:QXJcmXFc
クリスタ「ね、ミカサだって完璧じゃない。苦手なこともある普通の女の子なんだよ。
少しは優しく接してあげようよ。」
エレン「普段の俺って、ミカサに冷たく見えるのか?」
クリスタ「うーん、冷たいっていうか・・・そう、ミカサの前では反抗期の子どもみたい。」
エレン「何だそれ。」
クリスタ「本当は大好きで甘えたいんだけど、自立心が邪魔をして素直になれないって感じ。」
エレン「おいっ、誰が、大好きで甘えたいんだよ。俺はそんなんじゃねぇ。」///
クリスタ「そうなの?そういう風に見えるんだけどなぁ。」
クリスタ(赤くなった・・・。少しはミカサに脈あるのかな・・・。)
226: 2013/07/02(火) 15:38:27 ID:QXJcmXFc
エレン「はぁー。もういいよ。わかったよ。ミカサに優しくすればいいんだな?」
クリスタ「そうそう。お願いね。それじゃ、レッスンはじめよっか。」
エレン「おう。」
クリスタ「エレンはとにかくたくさん曲を弾いていこう。
数をこなせば基本的な指使いとか身についていくから。考えるより身体で覚えよう。」
エレン「そのほうが得意だぜ。」
227: 2013/07/02(火) 15:39:01 ID:QXJcmXFc
クリスタ「あっ、その前に。これから弾く曲の主旋律だけ覚えて。」
エレン「何の曲?」
クリスタ「エレンの練習用ではないんだけど。ミカサともっと仲良くなるための曲・・・かな?」
エレン「はぁ?」
クリスタ「いいから、いいから。ちゃんと聴いて覚えてね。」
228: 2013/07/02(火) 15:39:38 ID:QXJcmXFc
―日曜日
休日でゆっくり眠っている仲間たちを起こさないようにベッドを抜け出し、
クリスタは身支度を整えると、掃除道具を持って講義棟へ向かう。
クリスタ「ピアノの教室のお掃除しなきゃ。レッスン室はきれいじゃないとね。」
講義棟に入ると、ピアノの音が聞こえてきた。
クリスタ(誰か練習してるのかな?)
旧教室の前まで来ると窓から中を覗く。
クリスタ(あっ、マルコだ。)
229: 2013/07/02(火) 15:40:21 ID:QXJcmXFc
ガラッ
クリスタ「マルコ、おはよう。」
マルコ「おはよう。早起きだね。」
クリスタ「私はここの掃除しようと思って。昼前からみんな練習しに来るでしょ。その前に。」
マルコ「偉いね。僕も掃除手伝うよ。」
クリスタ「いいよ、いいよ。マルコは弾いてて。
マルコだってみんなに遠慮して、こんな朝早くから弾いてるんでしょ。」
230: 2013/07/02(火) 15:41:04 ID:QXJcmXFc
マルコ「遠慮ってわけじゃないけどさ。僕も練習しないとみんなにすぐ追い抜かれそうで。
ほら、ほうき貸して。二人でやったほうが早く終わるよ。」
クリスタ「ううん。私がマルコのピアノ聴きたいの。楽しくお掃除できる曲をお願いします。」
マルコ「はは、掃除の曲か。難しいね。うーん・・・。
では、ほうきを持ったお姫様。ワルツを一曲いかがでしょうか?」
♪♪♪~♪♪♪♪♪♪♪~~♪♪♪~~
231: 2013/07/02(火) 15:41:41 ID:QXJcmXFc
クリスタ(ウエーバーの『舞踏への勧誘』。舞踏会の様子を表したちょっとした物語。
序奏部は、ダンスを申し出る紳士と、その誘いを受ける淑女との間で交わされる会話。
マルコの柔らかく丁寧なタッチは、上品で礼儀正しい男性をイメージさせる。
主部はダンスの開始。華やかなワルツが突然始まり、舞踏会の様子が展開していく。
何度も同じ旋律が繰り返され、二人は優雅に華麗に踊り続ける。
やっぱり男の人はいいなぁ。あの音量や迫力は私には出せないよ。)
232: 2013/07/02(火) 15:42:15 ID:QXJcmXFc
クリスタはワルツのステップを軽く踏んでみる。
クリスタ(一度だけお父様に連れて行かれた舞踏会を思い出すな。
絢爛な舞踏場に華美に着飾った女の人たち。ここの生活からは程遠い世界。
あの頃はまだレイス家の後継者になる可能性があったから、
子どもの私にいろんな男の人がダンスを申し込んできた。
卑屈で、品定めするような男たちの視線。すごく嫌だった・・・。
曲の最後は冒頭の序奏部が穏やかに繰り返され、紳士と淑女が別れの挨拶を告げる。
そして、静かに舞踏会の幕が閉じる・・・。)
233: 2013/07/02(火) 15:43:19 ID:QXJcmXFc
クリスタ「あっ、聴き入っちゃって全然掃除してなかった・・・。」
マルコ「ははは。それじゃ、僕は机とか窓とか拭いていくから、クリスタは床掃いてね。」
クリスタ「結局、手伝わせちゃったね。ごめん。」
マルコ「謝らないでよ。この部屋使ってるのクリスタだけじゃないんだから。」フキフキ
クリスタ「ありがとう。でも意外だったな。マルコがこの曲弾くの。」サッサッ
マルコ「そう?庶民の僕には似合わないかな。確かにワルツなんて踊れないけどね。」フキフキ
234: 2013/07/02(火) 15:44:09 ID:QXJcmXFc
クリスタ「そういう意味じゃなくて。豪華できらびやかな感じがね、マルコっぽくない。」サッサッ
マルコ「はいはい。僕は地味で目立たない男だよ。」フキフキ
クリスタ「違うって。マルコっぽくないけど、演奏はすごく良かったって言いたいの。
マルコの人柄からは想像できない、明るく華やかな音でびっくりしたよ。」サッサッ
マルコ「褒められてるのかな、それ。」フキフキ
クリスタ「褒めてるよ。」サッサッ
235: 2013/07/02(火) 15:44:50 ID:QXJcmXFc
マルコ「でもクリスタ、僕に遠慮しなくなったね。言いたいことはっきり言うようになった。」フキフキ
クリスタ「うーん、マルコって話しやすいから、つい。ダメかな?」サッサッ
マルコ「ダメじゃないよ。むしろ嬉しい。」フキフキ
クリスタ「よかった。気を遣わずに話できる人、あんまりいないから。」サッサッ
マルコ「みんな個性的だからね。打ち解けるには時間がかかるかも。」フキフキ
236: 2013/07/02(火) 15:45:31 ID:QXJcmXFc
クリスタ「ねぇ、さっきの曲なんだけどさ。」サッサッ
マルコ「うん。」フキフキ
クリスタ「舞踏会が終わってさよならした後、紳士と淑女はどうなったんだろうね。」サッサッ
マルコ「そうだなー。どういう目的でダンスに誘ったかにもよるんじゃない?」フキフキ
クリスタ「うーん。たまたま見つけた綺麗な女性を気まぐれで誘ったのかな。」サッサッ
マルコ「それだったら、その場かぎりでバイバイだね。」フキフキ
237: 2013/07/02(火) 15:46:26 ID:QXJcmXFc
クリスタ「でも、踊ってる最中に恋が芽生えて盛り上がって、こう・・・」サッサッ
マルコ「こうって何w」フキフキ
クリスタ「じゃあ、マルコはどう思うのよ。」サッサッ
マルコ「僕は、前から気になっていた淑女にやっとダンスを申し込めた紳士かなって思う。
誘いにのってくれた嬉しさが、あの大音量のワルツで表現されてるんじゃないかな。」フキフキ
238: 2013/07/02(火) 15:47:14 ID:QXJcmXFc
クリスタ「じゃあ、舞踏会の後は・・・。」サッサッ
マルコ「住所交換して手紙でも書いたかな。」フキフキ
クリスタ「あはは。急に堅実になるんだ。」サッサッ
マルコ「手の早い紳士と尻の軽い淑女じゃ、物語が台無しだよ。」フキフキ
クリスタ「///。・・・マルコもはっきりと言うようになったね。」
マルコ「うん。僕もクリスタに遠慮しない。」
クリスタ「ふふっ。掃除終わったね。あっ、もうこんな時間だ。マルコ、教室からいそいで出るよ。」
マルコ「えっ?何で?」
クリスタ「いいから。理由は後で。早く早く。」
239: 2013/07/02(火) 15:47:59 ID:QXJcmXFc
―数分後
ガラッ
ミカサ「クリスタ・・・いない。練習見てくれる約束してたのに。」
トコトコトコ、ポスッ
ミカサ「仕方がない。一人で練習しよう。」
♪♪♪♪♪♪♪♪~
240: 2013/07/02(火) 15:48:44 ID:QXJcmXFc
ガラッ
ミカサ「!?」
エレン「よ、よう。」
ミカサ「・・・・・・。」ウルウル
エレン「ちょっ、いきなり、泣くなって。昨日も謝っただろ。この間は本当に悪かったって。」
ミカサ「・・・・・・。」ウルウル
エレン「あー、もう、ごめんって。」ナデナデ
ミカサ「・・・・うん///」ニコッ
エレン「うっ。」///
エレン(しおらしいミカサ・・・、カワイイとか思っちまった・・・。)
241: 2013/07/02(火) 15:49:41 ID:QXJcmXFc
エレン「今、練習してる曲聴かせろよ。」
ミカサ「エレンが望むなら。ただ・・・、あまり上手ではない・・・。」
エレン「みんなそうだろ。始めたばかりだし。」
ミカサ「わかった。では、聴いてて・・・。」
♪♪♪♪♪♪♪♪~
242: 2013/07/02(火) 15:50:24 ID:QXJcmXFc
エレン(なるほどな。クリスタが俺に教えた曲の意味がやっと分かった。)
エレン「ミカサ、ストップ。」
ミカサ「?」
エレン「ちょっと座らせてもらうぞ。」ヨイショ
ミカサ(エレンが同じ椅子に・・・。身体の右側がエレンと密着)///
エレン「あっ、これじゃ弾きにくいよな。悪い。もうちょい離れるわ。」
ミカサ(せっかくのエレンの温もりが・・・)シュン
243: 2013/07/02(火) 15:51:06 ID:QXJcmXFc
エレン「今のもっかい最初から弾いてくれ。」
ミカサ「うん。」
♪♪♪♪♪♪♪♪~
エレン(よし、ここで入る。)
エレンの右手が演奏に加わる。
ミカサ(・・・私の弾くプレリュードにエレンの奏でるメロディーが調和する。
モノクロだった世界が突然鮮やかになったみたい。すごくきれい。
エレンの音と私の音が混ざり合い一体となる。気分が段々高揚する・・・。)
244: 2013/07/02(火) 15:51:44 ID:QXJcmXFc
エレン「一緒に弾くのって結構楽しいのな。」ニコッ
ミカサ「ハァ、ハァ・・・」///
エレン「ミ、ミカサ?」
ミカサ「お願い。もう1回しよ・・・。」///
エレン「い、いいけど。」
♪♪♪♪♪♪♪♪~
245: 2013/07/02(火) 15:52:29 ID:QXJcmXFc
―その頃、教室の窓の外
マルコ「のぞき見は良くないよ。」
クリスタ「だって、エレンがちゃんとミカサに優しくするか気になるんだもん。」
マルコ「でも、考えたね。グノーの『アヴェ・マリア』か。
バッハの『プレリュード』をそのまま伴奏に使って作られた曲だから、
エレンでもすぐに合わせられる。」
246: 2013/07/02(火) 15:53:14 ID:QXJcmXFc
クリスタ「この前、マルコが連弾してくれたでしょ。
あの時、すっごく楽しくて気持ちよかったから、仲直りさせるにはもってこいかなって。」
マルコ「そう。また連弾しよっか。」
クリスタ「うん。あっ、二回目の演奏が終わったね。
うふふ。ミカサってば目が潤んでる。頬も赤く染めちゃって。そんなに感動したのかな。」
マルコ「ははは。見つめ合っちゃって。エレンも楽しかったんだろう・・・って、あっ///」
クリスタ「あっ///」
247: 2013/07/02(火) 15:54:02 ID:QXJcmXFc
マルコ「ク、クリスタ、ここを離れよう。今すぐに。」///
マルコはクリスタの手を引いて、慌ててその場を離れる。
クリスタ「う、うん。」///
マルコ「友人のああいうところは見ちゃいけない。」///
クリスタ「・・・手の早い紳士と尻の軽い淑女・・・」///
マルコ「そんな風に言っちゃダメだから。」///
クリスタ(マルコの手、大きくて温かい。胸がドキドキするのはあの二人のせいだよね。
それとも・・・。)
二人は真っ赤になったまま歩き続けた。
254: 2013/07/03(水) 18:55:51 ID:Cn7xKjg6
サシャ「おや、マルコにクリスタじゃないですか。おててつないで仲良しさんですね。」
クリスタ「あっ」パッ
マルコ「や、やぁ、サシャ。」パッ
サシャ「朝ごはんもう食べました?」
クリスタ「ううん。私たちはこれから。」
サシャ「じゃ、一緒に行きましょう。
それより、クリスタって最近ユミルと一緒じゃないですね。」
クリスタ「そうなのよ。休日も自由時間もふらっとどこかへ行っちゃって。」
255: 2013/07/03(水) 18:56:24 ID:Cn7xKjg6
サシャ「喧嘩でもしたんですか?」
クリスタ「そんなことないよ。一緒にいる時は相変わらずべったりくっついてくる。」
サシャ「どこ行ってるんでしょうね。」
クリスタ「聞いても教えてくれないし。ねぇ、マルコ知らない?」
マルコ「さぁ・・・、僕も知らない。」
マルコ(知ってるけど・・・ユミルに口止めされてるからなぁ・・・。)
256: 2013/07/03(水) 18:57:03 ID:Cn7xKjg6
サシャ「今日のみなさんのご予定は?」
マルコ「僕はアルミンと作曲の勉強。」
サシャ「作曲ですか?」
マルコ「そう。新しい曲を作ろうとしてるんだ。ぜんぜん進んでないけどね。」
サシャ「何だか、おもしろそうです。私も見に行っていいですか?」
マルコ「いいけど・・・、つまんないと思うよ。」
257: 2013/07/03(水) 18:57:40 ID:Cn7xKjg6
サシャ「構わないです。最近みなさんピアノにはまってて、相手してくれる人いないんですよ。」
クリスタ「サシャもピアノ弾いてみる?」
サシャ「いえいえ、とんでもない。私みたいな田舎者にはもったいないです。」
クリスタ「そんなことないよ。」
サシャ「その・・・、じっと座っとくのが苦手なので・・・。勘弁です。」
マルコ「ははは、サシャらしいね。じゃ、朝ごはん食べたら一緒に曲考えよう。」
クリスタ「私も加わっていいかな?」
マルコ「もちろん。」
258: 2013/07/03(水) 18:58:19 ID:Cn7xKjg6
―朝食後 食堂
アルミン「今日はここでやるんだ。ピアノで音出さないと考えにくくないかな。」
マルコ「いやー、ほら、みんな休日は練習でピアノ使うから。邪魔しちゃ悪いなって。」
マルコ(エレンとミカサがまだあの教室にいるかもしれないし・・・)
アルミン「そうだね。ここでできることをすればいっか。」
サシャ「はい、質問。アルミンはどんな曲を作ろうとしてるんですか?」
アルミン「それがさ・・・。なかなかイメージが沸かなくて。
とにかくみんなが楽しめる曲を作りたいんだけど・・・。」
259: 2013/07/03(水) 18:58:55 ID:Cn7xKjg6
サシャ「でも、ピアノの曲なんですよね?」
アルミン「一応ね。ここにはピアノしかないし。」
サシャ「私、ピアノ弾けないから楽しめません。」
アルミン「いや、聴いて楽しむとか・・・。」
サシャ「私の村にはピアノありません。」
アルミン「・・・・。」
260: 2013/07/03(水) 18:59:29 ID:Cn7xKjg6
クリスタ「確かに、サシャの言うとおりだわ。ピアノなんて一部特権階級の娯楽品。
みんなが楽しむのは難しい。」
マルコ「そうなると・・・、他の楽器?」
アルミン「他の楽器も入手困難だしね。」
クリスタ「うーん・・・。」
261: 2013/07/03(水) 19:00:05 ID:Cn7xKjg6
サシャ「あの、私、歌なら歌えますよ。」
アルミン「!?そうだ、その手があった。」
マルコ「盲点だった。サシャ、偉いよ。」
クリスタ「サシャ、天才だよ。」ギュッ
サシャ「私もクリスタにぎゅってされて嬉しいです。でも、歌がどうかしましたか?」
262: 2013/07/03(水) 19:00:43 ID:Cn7xKjg6
アルミン「楽器がなくても楽しめる音楽。それが歌なんだよ。」
クリスタ「歌詞とメロディーさえ覚えれていれば、貧富の差なんて関係なく楽しめる。」
マルコ「歌詞があったほうが曲のイメージ考えやすいしね。」
アルミン「じゃあ、歌詞から考えよう。」
サシャ「何の歌にしましょうね。・・・お肉の歌がいいです。」
アルミン「食品は自重して。」
サシャ「はい、すみません・・・。」
263: 2013/07/03(水) 19:01:17 ID:Cn7xKjg6
マルコ「まぁ、処O作だしさ。楽しんでもらう対象を全人類とか大きくしないで・・・。」
クリスタ「自分たちの身近なところで・・・。」
アルミン「訓練兵団・・・の歌?」
サシャ「大賛成です。私みんなで歌いたいです。きっと楽しいですよ。」
マルコ「訓練兵団の歌なら、歌詞に仲間の思いを入れたいね。」
アルミン「うん。作曲は僕とマルコがやるとして、歌詞はみんなで作りたいな。」
クリスタ「うふふ。なんだか楽しくなってきた。」
アルミン「それじゃ、今日の夕食後、みんなに集まってもらうように声をかけとこう。」
264: 2013/07/03(水) 19:01:51 ID:Cn7xKjg6
―夕食後 旧教室
アルミン「そういうわけで、みんなに訓練兵団の歌の歌詞を考えてもらいたい。」
ライナー「突然、そんなこと言われてもな。」
コニー「オレ、歌とか興味ねぇし。」
アニ「馬鹿馬鹿しい。」
ジャン「アルミンとマルコで勝手に作ればいいだろ。巻き込むな。」
265: 2013/07/03(水) 19:02:29 ID:Cn7xKjg6
マルコ「まぁ、そう言うなよ。この歌が完成すれば、壁内初の快挙になるんだ。
みんなでいい歌詞を考えて、歴史に残る歌にしたいじゃないか。」
アルミン「歌の出来次第では、ずっと訓練兵団で歌い継がれるかもしれない。
そうなれば、僕たち104期生の魂は永遠に残るんだよ。」
エレン「なんかそれカッコいいな。」
マルコ「兵士を目指した以上、いつ氏ぬかわからない。
だから少しでも自分たちが生きた証をこの世界に残していこうよ。」
ベルトルト「生きた証・・・か。」
ジャン「悪くねぇな。」
266: 2013/07/03(水) 19:03:13 ID:Cn7xKjg6
ライナー「だが、どうやって作る?俺には詩のセンスなんてないぞ。」
コニー「作文とかマジ勘弁。」
ミカサ「私は言語力が欠如している。」
サシャ「とりあえず、みんなが今思っていることを言葉に出してみましょうか。」
クリスタ「うん。黙ってても仕方ないしね。」
ユミル「何でもいいのか?」
アルミン「何でもいいよ。訓練兵生活を思ったとき、パッと頭に浮かんだことを言葉にするんだ。
それを繋げていけば、歌詞っぽくなると思う。」
クリスタ「私、書記やるね。出された言葉、黒板に書いていくから。」
267: 2013/07/03(水) 19:04:02 ID:Cn7xKjg6
マルコ「じゃ、僕から右回りで。歌いだしは訓練兵の歌ってかんじで。」
アルミン「うん。」
エレン「ああ、いいぜ。」
マルコ「いくよ。・・・歌え、兵士の歌を」
アルミン「人類への忠誠を胸に」
ミカサ「大切な家族を」
エレン「駆逐してやる」
アニ「つまらない」
ベルトルト「故郷へ帰る」
ライナー「戦士として責任を果たし」
コニー「父ちゃん、母ちゃん、見返したい」
サシャ「おいしいご飯と」
ユミル「女神クリスタ」
ジャン「あぁ、憲兵団になりたいなっと」
268: 2013/07/03(水) 19:04:56 ID:Cn7xKjg6
マルコ「ははは・・・、カオスだね。」
アルミン「まぁ、予想はしてたけど・・・。」
クリスタ「でもさ、使えそうな言葉はあるよ。忠誠とか家族とか故郷とか。
その調子でどんどん言ってもらおうよ。」
アルミン「そうだね。じっと考えてても浮かばないからね。」
マルコ「じゃあ、二順目いくよ。」
269: 2013/07/03(水) 19:05:43 ID:Cn7xKjg6
―2時間後
コニー「もう、何も浮かばねぇ。」
アニ「疲れた・・・。」
ベルトルト「何周したんだろう・・・。」
ライナー「30周はいってるな。」
マルコ「たくさん言葉が出たね。そろそろいいかな。」
アルミン「うん。みんなの言葉をまとめたら大体こんな感じかな。
クリスタ、黒板に書いてくれる。」
クリスタ「わかった。」カキカキ
270: 2013/07/03(水) 19:06:29 ID:Cn7xKjg6
さぁ歌おう 兵士の歌を
人類への忠誠を 家族への愛を
壁の向こうに世界がある
我らは恐れず進み行く
壁の向こうが我らの故郷
祖先の大地を取り戻せ
我らは気高き訓練兵団
戦え それが自由への道
272: 2013/07/03(水) 19:07:40 ID:Cn7xKjg6
クリスタ「書けたよ。」
マルコ「うん。いいんじゃない。」
コニー「漢字が多いな。ひらがなふってくれ。」
ジャン「たくさん言わせた割に短いな。」
アルミン「使える言葉はほんのわずかしかなかったよ。」
ユミル「クリスタって言葉、入ってないじゃん。」
クリスタ「入りません。」
サシャ「パァンについても触れられてませんね。」
アルミン「触れません。」
273: 2013/07/03(水) 19:08:16 ID:Cn7xKjg6
エレン「駆逐・・・。」シュン
ミカサ「・・・・。」ナデナデ
ジャン「エレン、お前、ふざけんなっ。」
マルコ「まぁまぁ。落ち着いて。」
ライナー「男らしくて俺は結構気に入ったぞ。」
ベルトルト「壁の向こうが故郷ってところが、すごくいい。」
アニ「・・・短くていいんじゃない。」
274: 2013/07/03(水) 19:08:53 ID:Cn7xKjg6
アルミン「みんな協力してくれてありがとう。頑張って曲を付けるよ。」
ジャン「イカした曲、期待してるぜ。」
サシャ「早くみんなで歌いたいです。」
マルコ「遅くまでありがとう。今日は解散で。」
クリスタ「あっ、みんな3ヶ月後にピアノの発表会やるから。そのつもりでいてね。」
ライナー「そんなものやるのか。」
クリスタ「うん。やっぱり目標があった方が練習し甲斐があるでしょ。」
アルミン「じゃあ、この歌も完成させて、そこで披露できたらいいな。」
クリスタ「うふふ。楽しみにしてる。」
275: 2013/07/03(水) 19:09:39 ID:Cn7xKjg6
アルミン「それじゃあね。」
「おつかれー」
それぞれ宿舎に帰っていく。
クリスタ「さてと、私たちはお片づけ。」
ユミル「黒板消すぞー。」
クリスタ「あっ、ちょっと待って。」
マルコ「大丈夫。ちゃんとノートに書いたから。」
クリスタ「ありがとう。ユミル消していいよ。」
276: 2013/07/03(水) 19:10:17 ID:Cn7xKjg6
マルコ「椅子と机を整理して・・・・。」
ユミル「うわっ、手がチョークの粉だらけになった。」
クリスタ「今日はたくさん書いたり消したりしたから・・・って、ユミル怪我してるの?」
ユミル「ん?」
クリスタ「左手の指先、ほとんどの指に絆創膏貼ってるじゃない。」
ユミル「あぁ、これ?乾燥して逆剥けしちゃってさ。水仕事はヤダねぇ。」
クリスタ「そうなの?左手だけ・・・。」
マルコ「ほらほら、片付いたし僕たちも戻ろう。」
ユミル「もうすぐ消灯時間だしな。早く帰ろうぜ。」
クリスタ「う、うん。お疲れ様。」
277: 2013/07/03(水) 19:14:42 ID:Cn7xKjg6
続きは後日
この需要のないSSにいつもレス下さるそこの貴方。感謝してます。
ユミルって・・・ヴァイオリンとチェロ、どっちが似合うんだろう?
この需要のないSSにいつもレス下さるそこの貴方。感謝してます。
ユミルって・・・ヴァイオリンとチェロ、どっちが似合うんだろう?
278: 2013/07/03(水) 19:16:50 ID:etn6bsyY
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